衆議院

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第5号 平成22年2月1日(月曜日)

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平成二十二年二月一日(月曜日)

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 議事日程 第四号

  平成二十二年二月一日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(横路孝弘君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。谷垣禎一君。

    〔谷垣禎一君登壇〕

谷垣禎一君 私は、自由民主党・改革クラブを代表して、さきの鳩山総理の施政方針演説について質問いたします。(拍手)

 演説において、総理は、命を守るという美しい理念を掲げられ、さらには、マハトマ・ガンジーの七つの社会的大罪まで引用されました。しかしながら、国民が政治に求めていることに真正面から向き合っておられないのではないかという危惧の念を強く抱きました。

 まず何より、私は、今、我が国の民主主義及び法治主義が深刻な危機に瀕していることを指摘しなければなりません。

 民主党小沢幹事長の公設秘書や元秘書が相次いで政治資金規正法違反容疑で逮捕されたにもかかわらず、小沢幹事長は、いまだ不十分かつ不可解な説明を繰り返すばかりであります。追及さるべきは、単なる政治と金の問題ではありません。より憂慮しなければならないのは、このように政治と国民との信頼関係をつくることに消極的な方が鳩山政権の実質的なリーダーであることです。

 小沢幹事長は、この四カ月余りの間、要所で鳩山政権の政策決定のかぎを握ってきました。我が国の内閣総理大臣であり、かつ民主党の代表である鳩山総理の小沢幹事長に対するコメントが、二度と出てこない政治家という礼賛であったり、幾度にもわたる、信じておりますという盲目的信頼の発言であったりしたことは、この国の実質的な支配者がだれかということを如実に示しております。

 鳩山総理が小沢幹事長に対してこのように物も言えない状況であるとすれば、施政方針演説への質問に当たり、私は、根源的な問いから投げかけなければならないのではないかと考えております。

 あえてお尋ねいたします。

 鳩山総理、あなたは、本当にこの国の為政者であり、最高意思決定権者なのでしょうか。名実ともに民主党を代表されているのでしょうか。小沢独裁と言われる政権及び民主党の現状に対する見解を冒頭にお尋ねいたします。

 小沢幹事長の件については、司直の手が周辺に及んでいる者が与党の幹事長に居座り、党大会という公の場で検察当局に対決を宣言したり、検察を含む行政の長である総理までが、どうか闘ってくださいとそれを擁護したりすることは、極めて異様な事態であります。権力の座にある者が、その地位を利用して検察当局の捜査に有形無形の圧力を加えていく、そのようなことが許されてよいはずがありません。

 先日の民主党大会では、小沢幹事長の弁明に対し大きな異論もないばかりか、その後も所属議員から検察批判が繰り広げられております。

 権力の座にある者は、ただでさえ、李下に冠を正さずという慎重さと謙虚さが求められるはずであります。にもかかわらず、今や、政権の責任者である総理大臣、与党第一党の責任者である幹事長、そしてそこに所属する国会議員、党員までもが、そろいもそろって、検察との対決を宣言し、喝采する。そんなことでは、我が国の法治国家としての実質を政権の側から覆すことになってしまいます。

 私も身を置いてまいりました法曹界では、剣とてんびんを持つ正義の女神の姿が、司法の公正さをあらわす象徴としてたっとばれてきました。てんびんは正義を、剣は力をあらわし、剣なきはかりは無力、はかりなき剣は暴力にすぎないとして、法秩序がその適正な執行と車の両輪の関係にあるものとされてまいりました。さらに重要なことは、この正義の女神は目隠しをしているということです。これは、法秩序がすべての人に等しく適用されるべきとの理念を体現するものとされております。

 このような司法の公正の精神からは、検察の捜査が、権力のありかにとらわれず公平公正に行われ、時にはそれが政権与党に及ぶことは、むしろ健全なことと受けとめるべきです。

 しかるに、今般の鳩山総理や小沢幹事長、そして多くの民主党議員の対応には、残念ながら、権力を有するがゆえに求められる謙虚さが決定的に欠けており、自浄作用の片りんすら存在しません。私は、厳しい自省を求めたいと思います。

 鳩山総理、いかがでしょう。反論はございますか。御意見を求めます。

 今回の件で最も遺憾なことは、鳩山総理が、御自身の献金問題も含めて、既に総選挙前から出ていた話で、こういう問題があるにもかかわらず民主党を選んでいただいたと、国民の理解が先般の総選挙で得られたかのような発言をされたことであります。しかし、今回の小沢幹事長にかかわる政治資金規正法違反事件や、鳩山総理への御母堂からの十二億六千万円にも上る贈与の話は、総選挙前には何ら明らかにされておりませんでした。

 国民は、先般の総選挙で、確かに、マニフェストを信じ、鳩山政権への交代を選択したのだと思います。しかし、政府がまとめた平成二十二年度予算案は明白なマニフェスト違反予算であり、マニフェストは、もはや過去の空証文となっております。

 さらに、新たな内閣の実態は小沢政権であり、その影の総理大臣に重大な政治と金の問題が発生し、その独善的な検察批判に対して、民主党議員が万雷の拍手かあるいは重苦しい沈黙でこたえるに及んで、このような党のためにみずからの票を投じたのではないという思いに駆り立てられている国民も少なくないのではないでしょうか。

 このような小沢独裁に堕した鳩山政権には、もはや民意に支持された政権としての正統性は失われていると考えますが、総理は、なお国民の信は鳩山政権にあるとお考えなのでしょうか。御見解をお伺いします。

 我が自民党は、昨年夏の総選挙に敗北して以来、日本らしい日本を建設するという結党以来の党是に立ち返り、国民の皆さんの信頼を再び獲得できるよう努力を積み重ねてまいりました。

 保守主義とは、人間の良心、矜持に期待する行動規範であるとともに、一人の判断より多数の判断、一時期の熱情より時代を超えて積み上げられてきたよき伝統、規範、秩序を大切にする、時代に適さぬものは改め、秩序の中に進歩を求めるということであります。

 現在の民主党の姿は、我々が目指すものと対極にあるものと言わざるを得ません。すなわち、鳩山民主党政権から浮かび上がるのは、衆知を集めてよりよきものをつくっていくということとは無縁な姿であります。

 その如実な表現が、小沢幹事長ではないでしょうか。一人で密室ですべてを決め、小沢幹事長がいなければ司令塔も羅針盤もないというのが政権の実態であります。政府への政策の一元化はかけ声にすぎず、進んでいるのは、小沢幹事長への権力の一元化であります。我が党は、このような鳩山政権の本質たる小沢独裁と徹底して対峙していく決意です。

 まずは、鳩山総理の偽装献金疑惑及び小沢幹事長の土地購入に係る政治資金疑惑の双方について、関係者を幅広く証人や参考人として国会に招致し、真相究明のために立法府としての役割を果たすことを求めます。

 その上で、予算及び予算関連法案の質疑、論戦を通じて、鳩山政権のやみを追及し、総辞職または解散・総選挙を迫ってまいります。

 他方で、我々自民党は、党利党略に基づいた不毛な政争をやるつもりはないと常々申し上げてまいりました。政治と金をめぐる真相究明とあわせて、国民が求める政策論議をしっかりと行ってまいります。

 我が党の考え方は、自分だけよければよいというものではありません。今だけよければよいというものでもありません。次の世代の負担に頼らない、自制心のある財政を目指さなければなりません。

 少子高齢化社会に向かって、社会保障の給付を十分に実現していくには、国民にきちんと負担をお願いする覚悟が必要です。給付は、負担なくしてはあり得ません。税制への長期展望のない政治は、未来の国民に無責任な政治であります。

 これを前提として、まずは、平成二十二年度予算案にかかわる質問に移らせていただきます。

 自民党は対案を作成しております。財政規律を守るとともに、景気にも配慮し、公務員人件費の一〇%カットや理念なきばらまきを排することで財源を捻出することによって、真に必要な分野に資源を集中的に投ずることを可能としたものになっております。

 一方、政府案は、明らかなマニフェスト違反予算です。

 民主党は、マニフェストで、国の総予算二百七兆円を全面的組み替えと明記し、無駄遣い、不要不急な事業を根絶することで九・一兆円の財源を生み出し、やがては十六・八兆円の恒久財源を生み出すとされてきました。そして、二百七兆円の予算から一割程度を捻出することはたやすいことだとうそぶいてこられました。ところが、これを、みずからの手で二百十五兆円にまで膨らませているではありませんか。二百七兆円は一般会計と特別会計を合わせた純計ベースの計数ですが、一般会計が三・八兆円増加したばかりでなく、さらに大きく膨張しているわけであります。

 そもそも、二百七兆円の中には税金とは関係ない保険料などを原資とするものも含まれており、結局、いわゆる二百七兆円予算なるものは、いかにも財源の捻出が可能であるかのように見せかけるための、目くらましの大ぶろしきだったということではないでしょうか。二百七兆円予算の全面的組み替えというのは、一体何だったんでしょうか。

 また、後ほど述べますが、消費税の議論の必要性が閣内にはあるようであります。このことも、無駄排除による財源の捻出というマニフェストの基本構造が破綻を来したことから生じているのではないでしょうか。総理の御見解を伺います。

 次に、公債発行額ですが、鳩山総理は、昨年の自公政権が提出した補正予算案に対する質問において、ばらまきは行う、借金はふやす、めちゃくちゃと、当時の補正予算案を批判されました。にもかかわらず、今般の政府予算案の公債発行額は、当初予算のみで、昨年の当初予算と一次補正予算を足したものと同額の四十四兆円に膨らみました。幾ら何でもこれは無節操なのではないでしょうか。

 公債発行額が膨らんだことは、この要因がむちゃのマニフェストにあったことは明らかであります。

 今回の予算案は、子ども手当や高速道路無料化、農業の戸別所得補償など、理念なきばらまきのつじつま合わせに苦心惨たんした結果、マニフェストどおりのばらまきとマニフェスト違反が混在し、一貫性がなく、政策体系の体をなしていない予算になってしまった感が否めません。

 代表例として、子ども手当についてお尋ねします。

 我々自民党は、あくまで、まず自助、すなわち、個人の自由と努力が基本として尊重されるべきであると考えております。それを共助という形で家族や地域社会など顔の見える間柄同士がともに支え合い、それだけでは立ち行かないところには、国民全体で相互に助け合う公助が必要と考えてまいりました。

 例えば、子供を育てるに当たっては、一義的には、まず親、家庭が責任を持ち、足らざるところを社会が補うべきではありませんか。

 子ども手当は、このような根本的な議論がないままに、子育て世帯にいきなり公助ありきで現金をばらまくという施策にほかなりません。家庭の所得や子供の属性による区別もなく、子供一人当たり一律月一万三千円を支給するという政策は、個々人の努力や創意工夫を大切にする姿勢とは縁遠いものであり、きめ細やかなニーズにこたえるものでもありません。しかも、現行の児童手当の仕組みも残したまま導入されますが、衣がえで財政負担が増大する一方で、国民にとって何がよくなるのか、さっぱりわかりません。

 子ども手当と児童手当で、制度設計がどのように異なり、それによっていかなる政策効果の差異が生じるのか、総理に改めてお伺いいたします。

 むしろ、子ども手当の導入による混乱すら考えられます。すなわち、導入に当たり、マニフェストにも載せておらず、やらないと公言しておられた住民税の年少扶養控除の廃止を行った結果、負担の方が上回ってしまう世帯も相当数出てくることが想定されます。そういう御家庭にとっては、子ども手当のどこが子育てに優しい施策であり、何が控除から手当へだったのかということになります。それとも、とりあえずは、参議院選挙前にはそうした御家庭にも子ども手当の給付を行い、控除廃止による増税の影響は選挙後になる方が望ましいとでもお考えなのでしょうか。

 鳩山政権は、このようなちぐはぐなてんまつについてどのような認識をお持ちなのでしょうか、お教えください。

 予算を決定するプロセスにも問題が大きかったと思います。

 事業仕分けは、鳴り物入りでスタートしたものの、期待された削減額も出せず、我が国の成長に不可欠な科学技術予算の削減を図るなど、内容についても疑問符のつくものでした。

 行政刷新会議資料において、概算要求からの削減額は約一兆円とされておりますが、このうち、当初、事業仕分けの成果として説明されていたのは七千億円程度だったはずであります。最終段階で歳出削減額が積み上がったのは、小沢幹事長が民主党としての重点要望として申し入れた土地改良予算の半減などが影響しているとされておりますが、これが事実であるとすれば、数千億円もの事業仕分けを一挙になし遂げた最大の事業仕分け人は小沢幹事長であり、不透明な密室の中で事業仕分けが行われたということになります。

 税制においても同様であります。

 鳩山総理は、政府税制調査会の開催により税制改正のプロセスが透明になったと胸を張っておられますが、暫定税率を維持するとか、価格高騰時の暫定上乗せ分の停止措置を設けるといった措置や、自動車重量税の国分の暫定上乗せ分を半減する、あるいは、たばこ税を一本三・五円引き上げるといった内容は、小沢幹事長が予算重点要望をまとめる前の政府税調の議論からは一切うかがい知ることができません。鳩山総理は、この過程で、暫定税率廃止は国民への誓いなどと抵抗を試みられたようですが、小沢幹事長の提案の前では、はかない結果となりました。

 政府は、公平、透明、納得の税制と喧伝しておられますが、その実態は、不公平、不透明、不可解な税制改正であったと言わざるを得ません。

 結局、鳩山内閣の予算、税制の意思決定は、どの団体にあめを与え、どの団体にむちを与えるかという、選挙至上主義に偏った小沢幹事長のさじかげん一つによって決められたことになります。鳩山総理は、このような密室で決断した天の声なりツルの一声によって予算、税制が決定されているという現状をどのようにお受けとめなのでしょうか、見解を伺います。

 小沢独裁のもとでの鳩山政権の経済財政運営における最大の欠陥は、選挙に向けた戦略や謀略はあっても、将来の財政の姿、健全化への道筋が何ら示されていないことであります。

 本来、予算は、将来の財政のあるべき姿を見据えながら編成されるべきものであります。ところが、鳩山政権においては、中期財政フレームの策定は本年前半に先送りされております。中期的な経済財政の運営方針を示さぬまま予算や税法の審議を国会に求めることは、政府・与党の怠慢にほかならないと考えます。

 既に、我々自民党は、さきの衆議院選挙の際、まず第一に、国、地方の債務残高対GDP比を二〇一〇年代半ばにかけて安定化させ、二〇年代初めには安定的に引き下げる、第二に、このため、今後十年以内に国、地方のプライマリーバランス黒字化の確実な達成を目指す、第三に、まずは景気を回復させ、五年を待たずに景気対策によるものを除く国、地方のプライマリーバランス赤字の対GDP比の半減を目指す、こういった目標を掲げました。

 政府におかれても、平成二十二年度政府案の審議の前提として、中期の財政見通しと財政再建目標を早急に提示することを求めたいと考えます。鳩山総理の今後の対応をお聞かせください。

 国民の我が国の社会保障や財政の将来に対する不安は、今や覆いがたいものがあります。政治的意図で数字の真実から逃げ続ける時間的余裕はありません。

 近年の国債発行の要因は、景気対策もさることながら、少子高齢化による社会保障費の増分に伴う赤字国債であります。平成十年には、建設国債の発行額と赤字国債の発行額が十七兆円で拮抗し、その後、恒常的に赤字国債の発行額が上回っております。

 二十一年度当初予算において、大まかに言うと、建設国債は八兆円、赤字国債が二十六兆円と、約一対三の比率であります。また、公共事業費は、決算ベースで、ピーク時の十年度の約十三兆円から二十年度では約七兆円弱と、ほぼ半減しております。さらには、我が国の社会保障費を除く一般政府総支出の対GDP比は、G7諸国の中で最も低いものであります。

 すなわち、歳出の構造が変わっており、いわゆる「コンクリートから人へ」の転換は、既に我々が政権を担っていた時代になされていたのであります。そうであれば、今の課題は、「コンクリートから人へ」を呼号することではなく、安定的な財源の裏打ちを得て社会保障の安心を強化し、財政を発散させないための具体的な歳出歳入一体改革のプログラムを早急に固めることにあります。

 最近になって、仙谷大臣も消費税増税の検討を急ぐお考えを示され、菅副総理も次期総選挙が想定される平成二十五年秋までに方向性を示すお考えを示されておりますが、三年間もの時間を空費している余裕はありません。ここは与野党が胸襟を開いて、持続的な社会保障制度の構築に取り組むべきときと考えます。

 我々がかつて呼びかけても応じていただけませんでしたが、与野党の立場が逆転した今、自民党は、与党との協議に応じ、社会保障制度改革の具体的メニューと具体的な安定財源の確保策について合意する用意もあります。そのため、超党派の社会保障円卓会議を設置し、与野党で検討を深めることを提案いたしますが、鳩山総理のお考えを伺います。

 次に、政治主導のあり方についてお伺いいたします。

 議会制民主主義のもと、国民に選ばれた国会議員が中心となって政策の決定、実行を行うべきであるとの考え方にはもちろん賛成です。利害関係が錯綜する中で、みずからの信念と主義主張に沿って必要な調整を行い、いずれの道を進むべきかの選択をするのが政治の役割と心得ます。

 しかしながら、鳩山政権の唱える政治主導には幾つかの点で違和感を禁じ得ません。

 その原因の第一は、本当に求められている政治決断がなされていないということにあります。

 昨年十一月十三日の首脳会談で、オバマ大統領が普天間基地問題の早期決断を促したのに対し、鳩山総理みずから信じてほしいとお答えになったにもかかわらず、鳩山政権は、十二月十五日には移転先の決定を先送りされました。総理の、信じてほしいとか信じるという言葉がいかに中身に乏しいものであるかが、ここでも明らかにされたわけであります。

 総理は、その後、何よりも沖縄県民の気持ちを大事にしながら五月までに結論を出す旨再三答弁されていますが、他方で、平野官房長官は、沖縄県名護市長選の結果をしんしゃくしなければならないという理由はないと発言され、移転先の合意がなくても移転先の決定を行うかのような発言を繰り返されております。平野官房長官の発言のとおりであるとすれば、鳩山政権は、時間を空費して、いたずらに沖縄県民の心情をもてあそんでいるだけであります。結局は国の責任で決めるというなら、何のために決断に何カ月もの時間を費やしているのでしょうか。政治主導を叫ぶにふさわしい決断力や胆力を欠いているだけではないかという疑いを禁じ得ません。

 政治決断をここまでずるずると引き延ばしていることで、緊密であった日米関係に深い亀裂が入り、国益の重大な損失を招いております。これらの責任を総理はどうお考えでしょうか、お尋ねいたします。

 また、五月に適切な移転先を決定できなければいかなる責任をおとりになるかについてもお伺いいたします。

 鳩山政権の政治主導への疑念は、この点にとどまりません。

 予算編成においては、政務三役が電卓をたたいたり官僚より夜遅くまで働いたことをもって政治主導を誇るがごとき場面すらありました。このように政治家が官僚化することが政治主導というのであれば、履き違えも甚だしいことだと考えます。

 そもそも、黙っていても背中に人がついてくるのがリーダーであり、私が主導していると一々言わなければならないとすれば、それこそリーダーシップが欠如していることのあらわれにほかなりません。鳩山政権が政治主導を呼号すればするほど、政治主導の空回りを感じざるを得ません。

 内閣において政治主導が真に機能しているのであれば、最高意思決定権者である総理のおられる官邸こそが存在感を発揮するはずであります。しかし、内閣の実態は、政治家が官僚化し、本来行われるべき政治決断が空洞化している、政治主導ならぬ政治空洞なのではないでしょうか。みずからの政治的指導力への評価とあわせて、鳩山総理のお考えを伺います。

 政府参考人制度の廃止や内閣法制局長官の答弁禁止にも問題があります。

 政治主導の実現に向けて、国会審議の場において政治家同士が十分に議論を尽くす前提として、国会議員がその議論の基礎となる情報収集を自由に行うことができなければなりません。その際、専門的、技術的知見を有する官僚に質問を行うことは不可欠ですし、官僚隠しによって国会の行政監視機能が弱体化することがあってもいけません。

 憲法解釈に関する答弁が多い内閣法制局長官についても同様であります。実際、先日の予算委員会において私が天皇の憲法上の地位につき質問した際、内閣法制局長官に御答弁いただければ、より審議がスムーズであったことは疑いようもありません。

 いずれにしても、政治主導の名のもとに不都合な真実を覆い隠すことは、国民の手に政治を取り戻すどころか、国民の知るすべを奪い、政治を国民の手の届かないところに追いやってしまうことになりかねません。それは、政治独裁にほかなりません。

 政府参考人制度の廃止や内閣法制局長官の答弁禁止について慎重な対応を求めますが、総理の御見解をお伺いいたします。

 私は、今回の質問を通して、内政、外交の全般にわたって民主的プロセスに鈍感な鳩山政権における小沢支配の一端について指摘させていただきました。これに対する鳩山総理の危機意識や存在感は、驚くほど乏しいものがあります。

 今、インターネットの動画投稿サイトにおいては、鳩山総理が野党時代になされた発言と総理大臣になってからなされた答弁をつなぎ合わせ、その矛盾をあからさまにした鳩山由紀夫VS鳩山由紀夫という動画が大きな反響を呼んでいると聞いております。総理には、その場しのぎの言葉がいかに多いか、改めて思い知らされます。

 総理は、年頭所感で「ハネムーンの期間は過ぎました。」と述べられましたが、果たして、国民にとってこの四カ月余りの新婚旅行はいかがなものだったのでしょうか。仲人がいつの間にか影のように寄り添い、旅行計画は好き放題に変えられ、楽しみにしていた場所には行けず、約束されたお土産も買えませんでした。過去の疑惑が噴出しても、わかっていて結婚したはずだと開き直られる始末。新郎に将来設計が全くなく、今後生活が成り立つ見通しもありません。信じてくれと繰り返されても、むなしく響くばかりであります。

 今や、鳩山政権の政権たる正統性は、政策面でも政権担当者の資質の面でも崩壊いたしました。日米間の信頼に亀裂を入れ、経済財政のマクロの政策が不在のままミクロの政策に血道を上げて、テレビ映りのできばえに終始する。

 せめて、今国会を通じ、みずから及び小沢幹事長の疑惑の真相解明に全力を尽くすこと、予算案及び予算関連法案の論戦に当たっては、我々野党の主張に十分耳を傾け、改めるべき政府・与党の過ちは速やかに改めることを求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣鳩山由紀夫君登壇〕

内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 自由民主党の谷垣総裁にお答えをいたします。

 民主党は、自立した議員、政治家がみずからの意思で集まった政党でありまして、役職を語る前に議員全員が同志であるとまず心得ておりますので、そのことから申し上げたいと思います。

 総理と幹事長の位置づけ、関係についての御質問でありますが、その上に立ちまして、民主党は、民主的な党内選挙を経て代表を選出し、その代表が幹事長ほかの党役員を選任することとしておりまして、健全な党内民主主義を貫いております。

 したがいまして、幹事長職は、代表の信任と委託に基づいてその職務に当たっておるわけでありまして、幹事長職が党や政府を支配するなどというようなことは一切ありません。

 政権党となった以上、党務については幹事長を初めとする党の役職者、部局にゆだねることは当然でありまして、私が連立首班として国民に対する責任を優先することも当然でございます。そのために、私は、行政の長としての責任、指導力をしっかり発揮してまいりたいと存じます。

 なお、大事なことは、イメージづくりではありません。国民の皆さんのためにどんな仕事をするか、政策をするか、それがすべてだということを申し上げておきたい。

 検察の捜査への対応についてのお尋ねであります。

 現職の国会議員が逮捕されたことは大変遺憾であり、また、検察の捜査については、謙虚にその進展を見守っていかなければなりません。しかし、いまだ捜査中であり、事実関係が解明されていないということも、これも御承知のとおりでございます。

 また、小沢幹事長に関する御指摘については、報道の域を出ておりません。事実関係はいまだに明らかではありません。小沢氏みずからが、みずからの潔白を説明するために公正な捜査に協力をする、そのように言っておられ、事情聴取にも応じ、記者会見でも説明しているところでございます。

 私が行政の長の立場にあるということは言うまでもなく自覚しているところでありまして、検察が公正な捜査を行うことを信じております。検察の捜査を冷静に見守っていきたいと考えています。この姿勢は、私のみならず、党所属議員も同様であると考えております。

 鳩山政権への民意の支持についての御質問でございました。

 私の発言とマニフェストの実行について御質問をいただいたわけでありますが、私は、昨年の六月に私の資金管理団体の問題が指摘されたにもかかわらず、国民の皆様が勇気を持って政権交代を選択してくださった、鳩山のこのもとで民主党を支持していただいて、大きな期待を寄せていただいたことへの責任を痛感しております。

 したがいまして、国民の皆様のお気持ちに感謝を申し上げ、身を粉にして国民の皆様方の御期待にこたえ、使命を達成していかなければならないんだ、そのことを申し上げたところでございます。決して、選挙が済んだ、それでみそぎが終わったなどというようなことを、傲慢なことを申し上げたつもりは毛頭ございません。

 また、マニフェストの実行に際しては、前政権以来の九兆円にも及ぶ税収の落ち込みもあり、一部実施を見送ったことは確かでありますが、そのことは国民の皆さんに真摯に謝罪を申し上げたところでもございます。

 いまだ政権の負託をいただいてから四カ月余り、補正予算の成立に続いてマニフェストの実行を盛り込んだ本年度の予算の早期成立を国会にお願いをしているところでございまして、民主党、そして連立政権は、マニフェスト及び三党合意を着実に実行していきたい、そして、次の総選挙で改めて国民の皆様にその実績に基づいて真意を問うべきものだ、そのように考えているところでございます。

 それから、お尋ねでは必ずしもないかもしれませんが、国会への証人、参考人招致に関しましては、ぜひ国会で御議論をいただきたいと思います。

 総予算の組み替えに関する質問でございます。

 二十二年度の予算については、予算の全面的な組み替えに取り組み、公共事業関係費を一八・三%減とする一方で、社会保障関係費は九・八%増、さらに文教及び科学振興費は五・二%増と、大変大きくめり張りをつけた予算だ、そのように思っております。

 また、二十二年度の予算におきましては、マニフェストの主要事項を実現するための財源は、大幅な歳出削減、公益法人などの基金の返納、さらに特別会計の見直しなど、徹底した予算の見直しにより確保したところでございます。

 続いて、子ども手当と児童手当の違いについて御質問がございました。

 児童手当は、もう御案内のとおりだと思いますが、子供が育つ御家庭に注目をして、したがいまして、所得制限を設けた上で、子供の年齢や出生の順位によって手当額に差異を設けるものでございました。

 一方の子ども手当は、子供に注目をして、子供の健やかな育ちというものをひとしく社会が支援するという観点から、所得制限を設けずに、子供の年齢や出生の順位にかかわらず一律の手当額を支給することとしておりまして、両者はその趣旨、制度の内容が異なっているところでございます。

 また、支給対象を中学校修了まで拡大いたしましたし、手当額も大幅に引き上げておりまして、その給付総額は児童手当の二倍以上ということになります。

 子ども手当の創設によりまして、少子化が進展する中で、安心して子育てできる環境を整備することができる、私ども政府はそのように考えているところでございます。

 子ども手当と扶養控除の見直しについてのお尋ねがありました。

 控除から手当へ、我々のその理念は、相対的に高額の所得者に有利な所得控除というシステムから、相対的に支援の必要な方々に有利な手当へと切りかえるというものでございます。

 子ども手当は、次代の社会を担う子供一人一人の育ちを社会全体で支援しようというものでありまして、安心して子育てできる環境整備に資すると考えております。二十三年度におきましてはまた新たな制度設計が必要だ、そのように考えておりますが、少なくとも二十二年度は負担増になる御家庭はない、そのように考えております。

 それから、予算、税制に関する公開性についての御質問でございます。

 従来は密室で行われてきました予算編成に当たって、予算の査定作業をいわゆる事業仕分けという形で公開したのが、この新しい内閣、大きな特徴でございます。

 この事業仕分けというものは、予算編成そのものを国民の皆さんに公開し、どこに無駄があるのか問題提起をしたことで大変大きな成果があった、私はそのように思っております。したがいまして、来年度以降も、こうした成果を踏まえて、税金の無駄遣いの一掃を目指してさらに磨きをかけていきたいと思っております。

 また、税制改正につきましても、従来二元化されていた税制改正の意思決定の仕組みを、政治家をメンバーとする政府税調に一本化した上で、これを公開したわけでございます。

 旧政権と比較をして申し上げれば、大幅に透明性が高まっている、そのように思っておりまして、密室で決まったなどという御指摘はまさに旧政権にこそ当てはまるのではないか、そのように思います。

 なお、特定の団体に対するあめとかむちとかいうお話をされましたけれども、どこのことだかよくわかりません。そのような御指摘は国民の皆様方からはいただいておりません。党からの要請事項も、国民の皆様方の声の一つの集約の結果でありまして、幅広い意見も取り入れる一環として、貴重な御意見として参考にしたまでだということを御理解願いたいと存じます。

 それから、中期の財政見通しについての御質問であります。

 財政をここまで厳しいものにしたのはどなたかなどということは申し上げませんが、本年の前半には、複数年度を視野に入れた中期財政フレームを策定いたしますとともに、中長期的な財政規律のあり方を含む財政運営戦略を策定して、財政健全化に向けた長く大きな道筋を示してまいりたい、そのように考えております。

 それから、超党派での社会保障円卓会議の設置についての御質問がございました。

 年金や医療、介護などの社会保障制度を信頼できる持続可能なものにするために、財源を確保しながら、連立政権の合意とかあるいはマニフェストで示した政策をまずは着実に実行してまいりたいと考えております。

 いわゆる社会保障円卓会議の御提起をいただいたわけでございますが、つい最近まで、百年安心とかいろいろなこともおっしゃっておられたわけでありますので、野党の皆様方とは、まずは国会の審議の中で真摯に議論をするというところからスタートするべきものではないか。議論を通じて、もし必要であるならば設置のことも将来的に考えてまいりたいと思っておりますが、まずは国会で審議するのが妥当な道ではないか、そのことを申し上げておきます。

 普天間飛行場の移設に関するお尋ねでございます。

 普天間飛行場の移設問題については、沖縄県民の皆さんのお気持ちを大事にしながら、安全保障上の観点も踏まえながら、新政権としていま一度しっかりと検討をしたいということで検討することにしたわけでございます。無責任な先延ばしなどという発想は一切ございません。

 いずれにいたしましても、現在、官房長官を長とする沖縄基地問題検討委員会で精力的に議論を行っているところでございまして、アメリカともすり合わせをして理解を求めて、国が責任を持って五月末までに結論を出します。

 それから、政治家の官僚化あるいは総理官邸の存在感、総理としての政治指導力についてのお尋ねをいただきました。

 鳩山内閣においては、まず政治家みずからが働くことによりまして官僚の皆様方に範を垂れ、また、政治決定に従っていただくことによって国民のための政治を実現していくことを目指しております。各省の大臣以下の政務三役が、「国民の生活が第一」という政策立案を行って日々意思決定をして、さらに、国会審議においても誠意と責任感を持って当たるのは当然のことだと思っております。

 また、官邸のあり方、内閣の指導力についての御意見も賜りましたが、閣僚が大いに意見を述べ合い、議論をし、そして内閣として責任を持って決定していくことがこの鳩山連立政権でございます。したがいまして、議論をまずは尽くした上で、最終的には、私自身の決断で内閣としての最終方針を決定するのは言うまでもないことでございます。

 今後とも、私の決断の内容とか、あるいはその背景をきちんと国民の皆さんにお伝えをする、そして御理解を深めていくということが重要であることは言うまでもありません。

 それから最後に、政府参考人制度の廃止等についての御質問がございました。

 このことに関して、国会を言論の府として活性化して国会審議を充実させるためには、最終的な責任を持っている政治家が質問及び答弁にそれぞれの責任を果たしていくことが肝要だ、そのように考えているのでございます。

 したがいまして、当然、その過程において、内閣の法制局による法律的な見地からのさまざまな検討の結果を含め、必要な情報を関係する部局から提出させた上で政治家が答弁の内容を判断いたすわけでございます。

 官僚に質問しなければ国会審議が成り立たないなどということは決してありません。官僚隠しとか国会の行政監視機能の弱体化などという御批判は当たらないものだ、そのように考えてございます。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 石原伸晃君。

    〔石原伸晃君登壇〕

石原伸晃君 自由民主党・改革クラブを代表し、鳩山総理大臣の施政方針演説について、引き続き質問をさせていただきます。(拍手)

 総理、なぜ小沢幹事長の資金管理団体による土地購入事件について全く演説では触れられなかったのですか。臭い物にはふたをするという姿勢では、国民の理解は到底得られません。

 我が党の谷垣総裁は、質問の冒頭、小沢独裁と言われる政権のありように言及をいたしました。この質問に対し、総理は、幹事長が党や政府を支配することはない、民主的なプロセスの選挙を経て幹事長を選出した、このように御答弁をされました。

 総理がこのように感じられても、今そちらにいらっしゃる当選一回の方々やテレビをごらんの方々がどうもそういうふうには思われていないからこそ、谷垣総裁は質問をされたのだと思います。

 総理の情緒的な、まるで詩を朗読するような、「命を守りたい。」と始まる演説で、国民の皆様方が本当に聞きたかったのは、政治不信を払拭しようと努める総理の切実な一言であったと私は思います。

 鳩山民主党政権は、一度の選挙の勝利をもって、自分たちの思いどおりに何もかにもできると勘違いされているようです。国民の皆様方の示された民意とは、二大政党制のもと、政権交代がいつでも起こるという緊張感を政治に与えたのであって、決して、民主党政権に白紙委任状を与えたわけではありません。支持率が五〇%を割り込み、不支持率が支持率を逆転していることからも、それは明らかであります。

 谷垣総裁の指摘されたマニフェスト違反予算、不透明な税制改革、相次ぐ閣僚の発言のぶれなどによって、国民の皆様は早くも民主党政権の危うさに気づき始めております。

 私たち日本人は、自分のことだけを考えるのではなく、常に、伝統を大切にし、子供たちの未来を第一に考えてきました。現在とは、過去から未来への大きな流れの一部であって、私たちはその緩やかな大河の中にあると認識をしてまいりました。

 総理は、施政方針演説の内容とは裏腹に、今、その日本の古きよき伝統を、文化を、感性を破壊しようとしています。自分たちだけよければいいんだ、今がよければいいんだ、日本だけがよければいいんだ、選挙に勝てばそれでいいんだとばかりに、子供たちの借金を元手にビジョンなきばらまきを繰り返す、何も決断せぬまますべての物事を先送りする。友愛の道の行き着く先には、政府に依存して、他人に依存して、そして無気力な国民と、国益を主張することもできない脆弱な国家が待っているのではないでしょうか。そんな日本を、私たちは断じて許すことはできません。

 私は、総理の演説を聞いていて愕然と実はいたしました。

 総理は、昨年インドを訪問し、尊敬されるマハトマ・ガンジー師の慰霊碑に刻まれた七つの社会的大罪が今の日本と世界が抱える諸問題を言い当てていると述べられ、施政方針演説の冒頭に引用されました。まさに、私もそのとおりだと思います。

 しかし、七つの大罪が言い当てているのは、鳩山政権の抱える諸問題でもあると思います。

 今御答弁をされた普天間問題への対応こそ、ガンジーの碑に刻まれた理念なき政治そのものだと私は考えます。また、御議論のあった子ども手当や戸別所得補償こそは、まさに労働なき富の象徴であります。母親からの十三億円もの子ども手当を知らなかった、私は知らないと強弁する総理は、良心なき快楽に酔っていらっしゃるのではありませんか。

 これから、できる限り具体的に質問をさせていただきますので、ぜひ明確な御答弁をお願い申し上げます。

 まずは、理念なき政治の大罪についてであります。

 先ほども申し上げましたとおり、普天間問題に象徴される鳩山内閣の外交姿勢は、テレビをごらんの皆様方は、やはり、先送りと迷走を繰り返し、理念なき政治ではないかというような危惧を持たれたのではないでしょうか。普天間基地の移設問題の検討状況は今どうなっているんですか。また、そもそも総理のおっしゃられる五月決着とは何を指されているのですか。

 与党三党の合意のもとでの候補地の選定、地元の受け入れの同意、米国側との合意という三点をすべて五月までに決着されるのか、総理、お答えいただきたいと思います。できます、やりますというお言葉だけでは、沖縄の方々を含め、だれも納得いたしません。

 普天間飛行場の移転を含む米軍再編は、抑止力の維持と沖縄の負担軽減を目的としてきました。総理も、日米安全保障条約改定五十周年に合わせて発表されました首相談話の中で、米軍の抑止力は大きな役割を果たしているとしていますが、今回の演説では全くこれも触れられていません。抑止力が必要だという認識が変わったのですか。そもそも、総理の言う米軍の抑止力とは、何に対する抑止力なのですか。

 総理は、今後、これまでの日米同盟の成果や課題を率直に語り合うとも述べられております。それなら、総理、御持論である駐留なき安保論も日米で率直に語り合われるのでしょうか。

 総理は、日米同盟を重層的な同盟関係に深化、発展させるとも述べられておりますが、岡田外務大臣・クリントン国務長官の会談においては、日米関係の深化のプロセスの開始しか実は合意できなかったのではありませんか。これは、まさに信頼なくして日米関係の深化は進まないということのあらわれだと指摘せざるを得ません。総理及び外務大臣のお考えをお聞かせください。

 鳩山内閣は、各国から高い評価を受けてまいりましたインド洋の海上自衛隊の補給支援活動を打ち切りました。補給支援の中止により、日本はテロとの闘いを放棄することになりますが、総理は、それでもアメリカの理解と国際社会の共感を得られるとお考えでしょうか。

 演説を聞く限り、アフガニスタンへの五十億ドル、四千五百億円、パキスタンには十億ドル、九百億円と大盤振る舞い、日本は小切手外交に逆戻りするわけですが、外務大臣、小切手外交は国益を損なうことになりませんか。連立与党に遠慮することなく、正々堂々と御持論をお述べいただきたいと思います。

 総理の演説では、拉致問題についても、政府の総力を挙げて最大限の努力を尽くすと紋切り型の表現にとどまっています。民主党の幹部からは、拉致より日朝関係改善を優先すべきだとの考えが示されるなど、また、総理の演説を聞きますと、文脈から、まず日朝国交正常化ありきとの印象を受けます。総理は、すべての拉致被害者の一日も早い帰国のために、これから何をなさるおつもりでしょうか。

 さて、理念なき政治の次なる代表例が、政府と与党の二元体制であります。

 民主党のマニフェストには、政府と与党を使い分ける二元体制から、内閣のもとの政策決定の一元化へとあります。しかし、予算編成の最終段階で、民主党の幹事長を中心に重要要点が政府に突きつけられまして、総理が喜んでそれを受け入れられたように映りました。これは、明確なマニフェスト違反の二元体制でありまして、理念なき政治の代表例だとそのとき総理も思われたのではありませんか。

 また、鳩山政権は、陳情を制限し、民主党幹事長に一本化しました。これは、明らかに一政党の余りにも露骨な選挙対策であり、国民の政府への陳情の権利を制限するものと断じざるを得ません。行政は国民のものであるはずです。総理は、このような陳情のあり方をどのようにお考えでしょうか。

 さらに質問を続けさせていただきます。

 民主党が進める外国人の地方参政権付与について、我が党は、そもそも憲法上も問題があり、安全保障の観点なども加えて論点を整理すべきで、拙速な法案の提出、成立は断固阻止するとの立場をとっております。マニフェストに書かれていなかったにもかかわらず、総理はいまだに、日本は日本人だけのものではないとの思いから、今国会に政府提出法案として提出しようとしているのでしょうか。それとも、小沢幹事長が強く働きかけてきたからですか。結局は、お得意の、政府と与党を使い分ける二元体制でこの問題も先送りされるのですか。

 理念なき政治というものは、まだまだかいま見ることができます。

 マニフェストにおいて、皆さん方は、脱官僚、天下り禁止とあれだけ大騒ぎしたのに、それに明確に違反する日本郵政の天下り人事を強行いたしました。まさに、理念なき政治の集大成と言わざるを得ません。

 改めてお聞きいたしますが、日本郵政の役員選定手続は、マニフェスト違反の天下りであるばかりか、極めて不透明で、かつ法律を無視しています。総理は、なぜ国民の皆さん方が反対する人事を強行されたのですか。改めて伺わせていただきます。

 鳩山政権は、官僚依存を脱するどころか、元官僚だった方に依存する過去官僚依存というふうに言われております。

 齋藤社長の後任の東京金融取引所社長は大蔵省のOB、四代続けて大蔵省の出身であります。総理は、演説の中で、裏下りとやゆされるような事実上の天下りのあっせん慣行にも監視の目を光らせると述べられたのに、これは天下りじゃないんだと、引き続いて今回も御答弁されるのでしょうか。

 また、官房長官も、大臣と官庁OBによる就職あっせんは天下りではないと答弁されています。総理もそのようにお考えなら、民主党は与党になった途端に天下りの定義を変えたということでありますので、明確にお示しいただきたいと思います。

 さらに、民主党の重要公約である公務員給与の二割削減が議論されていないようですけれども、これもまた先送りされるのですか。総理、支持母体である労働組合に遠慮することなく、御持論をしっかりとお述べいただきたいと思います。

 次は、総理がどのように制御すべきか哲学が問われるとまで述べられている第二の大罪、労働なき富について伺わせていただきます。

 財源の裏づけもなく、所得制限もなく、十年間で五十兆円以上の税金をばらまく子ども手当。総理は先ほど、制度が、内容が異なっている児童手当との違い、子供さんたちにひとしく手当てをするから一律なんだと御答弁されましたけれども、本当に景気や消費に明るい灯をともす政策とお考えですか。もしそうなら、その理由を国民の皆様方にわかりやすく説明していただきたいと思います。

 私たち自民党は、子ども手当などの直接給付よりも、幼児教育の無償化や子育て施設の整備などが、子供をはぐくむ重要政策だと考えます。子ども手当を支給するより子供を育てやすい環境を整えてほしいとの、先ほど総理は環境の整備にも御言及されましたが、国民の切実な希望をどうお考えでしょうか。

 子ども手当に所得制限を設けるべきだと、アンケートでは国民の皆様方の七割以上が求めております。総理は、先ほど、制限を与えなかった、一律だと、リーダーシップによって所得制限を導入しなかった政治決断について御言及されました。実は、でも、この結果、子ども手当がばらまきであることをみずから世間に私は明らかにしてしまったんだと思います。

 なぜ総理は子ども手当に所得制限を導入しなかったのか。総理にもし子供さんがいたら、本当に子ども手当をいただくんですか。

 さらに、マニフェストではあれほど全額国費と言いながら、ここでもマニフェストに違反して地方や企業に負担を求めたことを総理はどのように釈明されますか。国民との契約と呼ぶマニフェストの契約不履行の理由をお聞かせ願いたいと思います。

 あわせて、年金についても、この場で若干質問させていただきます。

 鳩山総理は、年金記録問題について、国家プロジェクトとして来年度から二年間に集中対応すると述べられておりますけれども、年金記録問題の解決だけでは、当然、低年金、無年金など年金問題の根本的な解決にはつながりません。年金問題の解決のために、総理はどのような日程で何をなされるおつもりでしょうか。

 先ほども我が党の谷垣総裁から質問をさせていただきましたが、年金問題のような国民的な課題について、私たちは、これまで、与党、野党の別なく、全政党による協議機関を設け、政権交代などの影響を受けない形で協議すべきだと主張してまいりました。総理は、まず国会で議論と含みを持たせていただいたのか、それとも、やはり独善的に御自分たちだけでお決めになるのか、お考えをいま一度聞かせていただきたいと思います。

 さらに、年金制度改革の中で民主党が約束された、月額七万円の最低保障年金はいつになったら創設されるんですか。年金通帳はいつ導入されるのですか。具体策に乏しい演説でしたので、この際、具体的にお答えいただきたいと思います。

 さて、総理は、労働なき富をどのように制御していくか、その哲学が問われるとまでおっしゃっております。

 民主党の政策には、労働なき富、先ほども谷垣総裁が御指摘されたように、随所に見られます。そのもう一つが、農業の戸別所得補償であります。努力しない方が得をする、よいものをつくる者がばかを見る、これこそ子ども手当に並ぶ労働なき富だと……(発言する者あり)これだけ賛成の意見が出るとは夢にも思いませんでした。

 鳩山内閣の行う戸別補償モデル事業は、米の生産コストと販売価格との差を全国一律に交付するものでございまして、本来マニフェストで約束をされた農家の戸別補償とは明らかに違っております。この制度では、米に生産が偏りまして、米が余って農家に混乱を与えるだけだと考えますが、総理の基本的な見解をお伺いいたします。

 さらに、マニフェストでは、畜産・酪農、漁業、林業への補償も明記されておりますけれども、これからの四年間に実行するのは、どうも米だけのようです。この制度では農業のみならず農林水産物全体の生産性を低下させることは、だれの目にも明らかだと思います。

 総理は、演説の中で、我が国の農林水産業の六次産業化を唱えられましたが、それで総理の掲げる食料自給率五〇%の目標が達成できるのか。そもそも、農業の六次産業化とは何をイメージされているのか。まさか、一次、二次、三次と足して六次産業なのではないと思います。農家の皆様の理解の得られる六次産業化ということを、ぜひ説明していただきたいと思います。

 以上述べてまいりましたように、個別の政策には、労働なき富の分配政策が数多く見受けられます。

 同様のものは、まだまだあります。まさに財源なきばらまきのオンパレードです。それは国民の目にも明らかです。命を守りたいとおっしゃる割には、子供たちに借金を押しつける財政赤字の垂れ流し、財政再建の方向性が全く示されていません。総理は一体、ガンジー廟の前で何を誓ってきたのでしょうか。総理、本当にこれで日本はよくなるのでしょうか。

 次は、総理、多少耳が痛いかもしれませんが、しっかりと聞いていただきたいと思います。第三の大罪、良心なき快楽についてであります。

 総理は、自身の政治資金疑惑について、国民の皆さんに多大な御迷惑と御心配をおかけしたことを改めておわび申し上げたいと述べられております。一体、国民の皆様方に対して何を謝られたのか、私にはよくわかりません。

 政治における良心なき快楽とは、まさに法律の抜け穴を利用した金集めではありませんか。冒頭、小沢幹事長の資金管理団体による土地購入事件について演説では全く触れなかったと指摘させていただきましたが、総理、総理にまつわる一連の政治と金の問題と小沢幹事長の事件を国民の皆様方がどう考えているのか、改めてこの場で質問をさせていただきます。良心はお痛みにならないのでしょうか。

 総理の国会答弁をどれだけ聞かせていただいてまいりましても、七年間に、毎月一千五百万円、合計十二億六千万円ものお金をもらいながら全く知らなかったということには、納得ができませんし、国民の多くの方々も同じ気持ちだと思います。知らなかったと言い張れば脱税にはならないと考えられたのですか。

 また、贈与は民法上の契約でありますので、お母様にお返しすることもできたはずです。にもかかわらず、総理があえて贈与を認め、納税されたのはなぜか、そのような巨額のお金を一体何に使ったのか、国民の皆様への説明責任はまだ果たされておりません。おわびするよりも、改めてしっかりとこの場で御説明してください。

 さて、最近の鳩山内閣の閣僚の皆さんは、良心もなく、権力の快楽に酔いしれているように見えます。

 放送への監督権限を持つ総務大臣が、関係者によるとというクレジットの報道では何の関係者かわからず、明確にしなければ電波という公共のものを使ってやるにしては不適だと、報道現場を萎縮させるような発言をすることは、国民の知る権利を侵すことにつながると考えますが、総理はどのように思われましたでしょうか。

 鳩山内閣は、検察当局が捜査情報や捜査方針を外部に漏らすことはないとの答弁書を閣議決定されております。にもかかわらず、今回の鳩山総理と小沢幹事長をめぐる一連の政治と金の疑惑に関しまして、官房長官は、そういうふうに思うところがあるような気がすると、さも検察当局のリークを示唆するかのような発言をされていますが、総理もそういうふうに思うところがあるような気がしますか。お答えください。

 さて、第四の大罪は、人格なき教育であります。

 総理の演説にありますように、人格を養う教育が重要な政策であると私も思いますが、そうであるならば、教育は政治的に中立でなければなりません。

 民主党の最大の支持母体の一つに日教組があることは周知の事実であります。その委員長を経験された民主党の幹部の方が教育の政治的中立性はないと発言されていることを、総理はどう考えられますか。総理が本当に一国の為政者であり、最高意思決定権者であるならば、教育の政治的中立性をこの場所でしっかりと確認していただきたいと思います。

 教育問題について、さらに質問をさせていただきたいと思います。

 民主党は、マニフェストで、教員免許更新制度について抜本的な見直しをうたわれております。制度が見直されて更新制度がなくなりますと、適格性に欠ける教員の身分まで保障することとなり、教育の質が低下することは明らかであります。総理の施政方針とは反対に向かうのではないかと心配をしております。お答えください。

 ところで、高校の無償化は、すべての意志ある高校生が安心して勉学に打ち込める社会をつくるためとマニフェストでは説明されております。それならば、一律無償化ではなくて、就学援助や、あるいは給付型の奨学金を充実する、低所得者の方に限って授業料を免除する、これで十分なはずであります。学校の耐震化予算を減らしてまで、ここでも全員を無償化する必要が本当にあるのか、総理にお尋ねをいたします。

 さて、道徳なき商業も七つの社会的大罪に刻まれています。

 総理は、施政方針演説の中で、経済のしもべとして人間が存在するのではなく、人間の幸福を実現するための経済をつくると述べられています。しかし、財政規律という国家の最低規範を失い、国債の発行を続け、借金をふやし続ける現政権こそ、国家規模で道徳なき商業を実践していると断言せざるを得ません。

 私たち自民党は、これまで、国債の発行に当たっては常に自省を持ってやってまいりました。現政府が、二〇一三年度に国債発行残高が、現政権の調査で、一千兆円を超え、個人金融資産を凌駕すると試算をしております。格付会社が日本国債の格付見通しを引き下げるなど、マーケットは既に鳩山政権の財政運営にイエローカードを出しています。

 こんな中、演説では、財政規律の確立はこれから考えるとことし前半へ先送り、社会保障の安定財源として不可欠な消費税の問題は全く素通り、具体策なし。この事態が国の信用の破綻につながるとは、総理はお考えにならないんでしょうか。先ほどは、社会保障について安定財源を確保していくとだけしか述べられておりませんので、明確にお答えいただきたいと思います。

 民主党の皆さん方は、税金の無駄遣いと天下りの根絶により財源を捻出するとされております。現実は、しかし、大きく違うようであります。無駄遣いと定義を変えた天下りの根絶によって、一体どれくらいの財源が捻出されたのでしょうか。

 また、国の総予算、この点については谷垣総裁よりも御質問されましたが、二百七兆円の組み替えによって前財務大臣は二十兆円ぐらい軽く出せるよと言われておりましたけれども、実際に捻出されたのは一体幾らだったんですか。財務大臣に伺いたいと思います。

 どれだけ財源を捻出されましても、民主党マニフェストにあるばらまき政策を実現しますと、すべて消えてしまい、財政の健全化にはつながりません。総理のお答えを求めます。

 総理の演説には二十四カ所で命のとうとさが述べられていますが、私たちが成長戦略の重要な柱の一つと位置づけるITの二文字はどこにも見当たりません。命と生活を守るというのは、一昔前のどこかの政党のスローガンとそっくりのような気もいたします。総理は、日本の競争力の源泉でありますIT技術を軽視されているんですか。お答えいただきたいと思います。

 話題をちょっとかえさせていただきたいと思います。

 人間性なき科学、御言及されております。マニフェストに余りにもこだわる余り、地元住民の悲鳴も聞かず八ツ場ダムを中止しようとする民主党政権が、実は私はそれにダブります。

 総理は、演説の中で、地域のことはその地域に住む住民が責任を持って決める、鳩山内閣の改革の一丁目一番地ですと述べられているのに、住民の皆様方が継続を求める八ツ場ダムを中止するのは、この演説に反しませんか。本当に中止して、事業を継続するよりも多くの税金をつぎ込むことになってしまえば、まさに本末転倒ではないでしょうか。

 具体的に聞かせていただきます。

 マニフェストでは川辺川ダムと八ツ場ダムの中止を明記していますが、なぜこの二つのダムが中止なのか、国交大臣にその具体的な理由をお尋ねしたいと思います。

 もう一つ国交大臣にお尋ねしたいと思います。

 なぜ、八ツ場ダムよりもBバイCが低く、しかも住民もいなくて進捗率もおくれている岩手県の胆沢ダムは継続なのですか。これも小沢幹事長の強い指導で重要要点と同じように決まったのでしょうか。

 さらに国土交通大臣に伺いますが、大臣のタスクフォースが出てきて時間を一カ月浪費したあげくに、最後は再生機構に丸投げでお任せという、迷走に迷走を重ねた日本航空の再建問題であります。

 民間企業の市場原理に従えば、市場から淘汰されるべき企業が公的資金を使って再生する以上、国民負担を最小限にする、確実な再建計画をつくることは最低の条件であります。今言われている計画からは、明確な出口戦略、すなわち、確実な再建は見えてきません。廃止すれば国民生活に大きな影響が出る国内線のみに限って再生をして、収益悪化の最大要因である国際線事業や、ホテル、旅行業から撤退するくらいの大胆な計画が必要ではないか。国交大臣のお答えを求めます。

 もう一つは、八つもある労働組合の存在です。

 私は、まさか民主党の支持母体とは思いませんけれども、ここにも大胆なメスを入れる覚悟があるのかどうか、国交大臣にお尋ね申し上げます。

 次は、インフラ整備について伺います。

 総理は、成長のフロンティアとしてのアジアの中の一節で、アジア、さらには世界との交流の拠点となる空港、港湾、道路など、真に必要なインフラは整備すると述べられております。私も賛成であります。

 しかし、その具体的な基準は全く示されていません。与党の幹事長が必要と言ったら必要なのか。公共事業予算を一八・三%削減したと胸を張る「いのちを守る予算」と矛盾をしないのか。真に必要なインフラとそうでないインフラを判断する基準をぜひお示しいただきたいと思います。

 私がこれまで取り組んでまいりました高速道路についても、若干質問をさせていただきたいと思います。

 民主党の要望にこたえまして、高速道路会社が道路公団に先祖返りをいたしまして、野方図な高速道路建設を行うためのスキームがどうも検討されているようですが、それは一体どのようなスキームなのか。まさか、民間の道路会社の高速道路建設に国費を投入しようとしているのではありませんよね。国交大臣にお話を聞かせていただきたいと思います。

 この問題も、総理に改めて聞かせていただきましょう。先ほども谷垣総裁が御質問されましたが、ガソリンに関する暫定税率の廃止という重大な公約違反について、財源がないというだけではなくて、どう責任をとられるのでしょうか。

 さて、次は、環境問題についても質問をさせていただきます。

 温暖化ガスの二五%削減目標についてです。

 総理は、COP15が失敗に終わったのは何が原因か、また、その場において日本の存在感が極めて希薄だったとの報道がありますが、なぜだとお思いでしょうか。

 温暖化ガス二五%削減、総理も大胆過ぎる目標だという指摘もあるとも述べられていますけれども、この目標を達成するには、多少寒くても暖房はつけない、多少暑くても冷房もつけない、コンビニエンスストアの深夜営業もやめよう、夜のテレビ放送もやめよう、国民全体でやせ我慢をしなければ、この目標はなかなか達成できないと思います。目標達成への具体的な方策、また、あらゆる政策を総動員すると述べられておりますけれども、工程表についてもお示しいただきたいと考えます。

 鳩山総理の尊敬されますマハトマ・ガンジー師は、こういう言葉も残されております。健康な人であれば、だれもが自分の食べるだけのものは労働して得なければならない、そして、自分の肉体を維持するのに十分な量を超えて食べる人は、皆、盗人ですと、ガンジー師は続けます。

 お母様から七年間で十三億円以上もお小遣いをもらいながら、全く知らなかったと答弁ができる総理。ばれたら、贈与でしたと開き直り、五億七千五百万円もの贈与税をキャッシュでぽんと払える総理の生活は、ガンジーの思想とは全く相入れないと思うのは、私だけではなく、きょうこの演説を聞いている大多数の国民の皆様方も同じではないでしょうか。

 なお、総理の先ほどの御答弁を聞いていても、やはり、やります、心配はありません、見守ります、冷静に対処しますという答弁でございますので、質問に対して不十分なところがございましたら再質問をさせていただきたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣鳩山由紀夫君登壇〕

内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 石原議員にお答えをいたします。

 四十二問、御質問をいただきました。

 まず、普天間飛行場の移設問題の検討状況についてでございます。

 言うまでもございません、五月決着とは、普天間飛行場の移設問題の結論を出すことでございまして、今、官房長官を長といたします沖縄基地問題検討委員会におきまして、精力的に議論を進めているところでございます。特定の前提を置かずに、いわゆるゼロベースということで幅広く検討しているところでございます。

 その普天間飛行場の移設問題に関しまして、さらにお尋ねがございました。

 三点をすべて五月までに決着をするのかということでございますが、御指摘のとおり、三点、与党の三党合意のもとでの選定、地元の受け入れ同意、さらには米側の合意という三点を念頭に置きまして、五月までに結論を出すことにいたします。

 それから、米軍の抑止力についてお尋ねがございました。

 日米安保条約の第五条、御案内と思いますが、我が国に対する武力攻撃は自衛隊のみならず米軍とも対決することになるために、侵略は未然に抑止をされるということになります。このような在日米軍のプレゼンスは、アジア太平洋地域の平和と安定に寄与する抑止力として機能しております。したがいまして、これは維持されなければならない、このように考えております。

 いわゆる常時駐留なき安全保障ということについて御質問がございましたが、常時駐留なき安保の議論に関しては、現在、私は封印をしておりまして、内閣総理大臣として日米間で協議することはありません。

 日米関係についての御質問でございます。

 ハワイでの日米外相会談では、同盟関係をさらに深化させていくための協議プロセスを開始することで合意するということがございました。ただ、それだけではございませんで、アジア太平洋地域の情勢とか、あるいはグローバルな課題についても両国の協力を話し合った、そのように聞いております。

 日米安保条約の五十周年を記念することしでございます。日米同盟を二十一世紀にふさわしい形で深化をさせていくということは、私とオバマ大統領、それぞれ談話を発出して確認しているところでございます。

 それから、補給支援の中止についてのお尋ねであります。

 国際テロへの対策上一定の成果があったということを否定するつもりはありません。しかし、他方で、補給回数が一時期に比べてかなり減少してきたということに伴って、補給支援活動の意味合いが小さくなっていたということは事実だ、そのように申し上げます。

 したがいまして、補給支援活動は終了いたしましたが、テロとの闘いというのはある意味でその根源を絶つということが最も重要なことであるものですから、民生支援を中心として、引き続いて国際社会によるテロ対策の取り組みに積極的、主体的に貢献をしていきたい。このような日本の考え方は米国を初めとする国際社会にも十分理解をされておること、私はそのように考えております。

 それから、拉致問題についてのお尋ねでございますが、私ども、日朝国交正常化ありきなどという発想を持ち合わせているわけではありません。

 昨年、拉致被害者の御家族とお会いしたときに、自分の家族を早く帰してほしいという大変痛切な思いをお伺いしました。まさに命を守る政府といたしまして、一日も早い問題の解決を約束いたしたところでございまして、今後、情報の収集あるいは分析の体制を強化するとともに、具体的な行動を北朝鮮から引き出さなければなりません。したがいまして、六者会合を初め関係国と一層緊密に連携をして、この問題の解決に最大限の努力をしてまいります。改めてそのことをお約束したいと存じます。

 政策一元化と重点要求受け入れについてのお尋ねでございます。

 政策決定の過程におきまして、国民から要望やあるいは御要請というものをいただいて、それを政策決定の重要な素材とするのは当然のことでございます。

 政策の決定は、以前から説明をいたしておりますように、政府部内で一元的に決定をしております。予算の編成におきましては、昨年の十二月十六日に民主党初め与党各党から御要望もいただきました。また、野党からも御要望もいただきました。特定の人間が要望事項を突きつけたなどという事実はありません。国民から直接負託を受けた政治家が責任を持って使命を全うする、政治主導という考え方に立っておりまして、マニフェスト違反という御指摘は的外れでございます。

 陳情のあり方についての御質問でございます。

 民主党は、多大な公費と時間を費やしているいわゆる永田町もうでとかあるいは霞が関もうでなどというようなことを行わなくても、必要な意見、要望というものはむしろ党の地方機関あるいは議員を通じて確実に政権与党に伝わる仕組みを目指している、そのように理解をしております。

 政府としては、行政の遂行や政策の策定過程で必要な意見というものの聴取は今後とも広く行ってまいりたい、そのように考えておりまして、請願法とかあるいは国会法、地方自治法などで定められております請願というものは、法の手続にのっとり適切に今までも処理されているということでございます。

 永住外国人についての地方参政権、地方選挙権の付与についての御質問でございますが、この問題に関しては、私は積極的な思いを持っているということは以前も御答弁を申し上げたところでございます。

 ただ、我が国の制度の根幹にかかわる重要な問題である上に、さまざまな御意見、与党側にも野党側にもさまざまな御意見があることは理解をしております。したがいまして、今、政府としては、そのような多くの国民の皆さんの御意見なども伺いながら、法案の提出に向けての論点の整理などを行っている、そういう状況でございます。

 日本郵政の役員人事に関しての御質問でございます。

 日本郵政の役員選定の手続は、株主提案による取締役選任という法的手続にのっとったものでありますので、これは天下りというものではありません。

 社長に就任した齋藤氏は大変能力のある方である、私はそのように考えておりまして、一言で言えば適材適所ではないか、そのように思うのでございます。

 東京金融取引所の社長人事についてのお尋ねでございます。

 東京金融取引所は、平成十六年四月から株式会社になっております。その社長は、一般の株式会社と同様の手順で選ばれているところでございます。

 ただ、鳩山内閣としては、天下りあっせんの根絶だけではなく、いわゆる法の網の目をくぐるような天下りあっせん慣行にもこれからは特に監視の目を光らせていきたい、そのように考えております。

 私どもの天下りの定義についてのお尋ねがございました。

 民主党は、もとより、天下りのあっせんの全面禁止というものを主張してまいりました。内閣が発足をして後、この主張を実際に実行に移していくために、府省庁によるあっせんを禁止し、官民人材交流センターのあっせんというものも原則禁止したところでございまして、定義を変えたという御指摘は当たりません。

 なお、政務三役も政府の一員でありますので、再就職のあっせんというものは当然認められないことでございますし、また、職員のOBのあっせんによる場合も、同一府省庁出身者が何代にもわたって特定の団体などのポストに再就職をするなどという場合については、当該の府省庁の当該団体に対する行政上の権限とか、あるいは契約、補助金などの関係及び当該再就職の経緯について精査をして、適正を期する必要がある、そのように考えております。

 総人件費二割削減についてのお尋ねに関してでありますが、民主党のマニフェストは、総人件費を四年間かけて、すなわち平成二十五年度までに二割削減するということをうたったわけでございまして、その具体的な手法として、地方分権推進による地方への移管とか、あるいは各種の手当、退職金などの水準や定員の見直しとか、あるいは公務員制度改革などの後の労使交渉を通じた給与の改定など、さまざまな手法によってこれを実現してまいりたいと考えております。

 子ども手当の効果などについての御質問がございました。

 子ども手当については、次代を担う子供一人一人の育ちを社会全体で担っていこう、支援していこうという趣旨の制度でありまして、したがいまして、労働なき富などという批判は当たりません。子ども手当は、まさにフランスなどで見られるように、少子化対策に極めて有効である、そのように私どもは考えているところでございます。

 子供を育てやすい環境の整備についての御質問がございました。

 御指摘の点については、子ども手当を創設するのみならず、保育所の待機児童解消などに向けた取り組みを強化したい、そのように考えておりまして、今年度の補正予算、あるいは来年度予算に盛り込んだところでございます。これによりまして、子供の育ちを社会全体で支え合うという仕組みをつくり上げてまいります。

 また、子ども手当は、子育て世帯の可処分所得をふやすことになります。結果として、我が国の消費、ひいては景気向上に寄与するものと考えております。

 子ども手当の所得制限についての御質問であります。

 子ども手当は次世代の子供たち一人一人の育ちを社会全体で応援するという理念のもとで実施するものでございまして、家計の収入のいかんにかかわらず確実に支給されるよう、したがいまして、所得制限というものは設けないということにいたしたことを御理解願いたいと存じます。

 子ども手当の費用負担についての御指摘でございますが、平成二十二年度に関しましては、新たに支給する分については国が負担をするということにしました。ただ、過去の経緯もかんがみて、地方自治体と事業者にも、現行の児童手当における御負担を単年度の措置としてお願いをしたということでございます。

 したがいまして、今後については、地方自治体などの御意見も十分にお聞きをしながら、平成二十三年度の予算編成過程において検討をしてまいりたいと考えております。

 年金問題への対応についてのお尋ねがございました。

 年金につきましては、まずは、ぼろぼろにされてしまったのが年金記録問題でありますので、そのことに関して、ぼろぼろにされた年金記録問題に二年間集中的に取り組むということを決めました。そして、四年間かけて、無年金あるいは低年金の対策も含む現行制度の抜本的な改革について、実態把握を進めながら、新制度の議論と並行して取り組みを進めてまいりたい、そのように考えております。

 年金問題に関する全政党による協議機関の設置、これは谷垣総裁からも賜ったわけでございますが、まずは国会審議の場などにおいて真摯に議論をすることからスタートをしてまいりたいと思っておりますので、御理解を願いたいと存じます。

 最低保障年金の創設時期についてのお尋ねでございます。

 民主党のマニフェストにおいては、新たな年金制度のための法律を平成二十五年に成立させるということを提示しておりますので、そのとおりにいたしたい。今、そのために準備をしていきたいと考えているところでございます。

 年金通帳に関しては、いつから導入するのだという御質問がございました。

 これに関しては、まず平成二十二年度、ことしでありますが、年金の加入者などがパソコンを使ってインターネットで即時に御自身の保険料の納付状況などを閲覧、印刷できる仕組みを実現するということでございまして、それによって制度の基盤ができ上がる、そのように考えております。

 その後、年金通帳の導入について、さらに必要性を含めて、私ども導入すると申し上げたものでありますから、検討を進めてまいりたいと考えております。

 農業の戸別所得補償についてのお尋ねでございます。

 平成二十二年度に実施をいたします米のモデル事業でありますが、これは全国平均の販売価格と生産費の差額を交付単価に設定しておりまして、したがいまして、このことはマニフェストにおいて記載していることと合致している話でございます。

 また、全国一律の交付単価にあえてしたわけであります。そのことによって、むしろ、規模拡大によるコストの削減とか、あるいは高品質化による付加価値の向上など、努力してくださった農家の方々は所得が向上するという仕組みになるわけでございます。

 さらに、米の需給調整に参加をした農家の方々に対しては強力なメリットになるわけでございますので、米の需給がむしろ引き締まることになるのではないか、そのように考えているところでございます。

 農林水産政策についてのお尋ねでございます。

 来年度から戸別所得補償制度のモデル対策を生産性向上を促すような仕組みで水田農家に対して導入する、また、本格的な実施や拡大する対象品目などについても今後検討を進めてまいりたい。私も、米以外に幅広く対象品目をふやすべきだ、そのように考えております。

 さらに、生産から加工、流通まで一体的にとらえ、新たな価値を創出するのが六次産業化でございます。先ほど足し算というお話がありましたが、むしろ我々は掛け算だというような考え方でございまして、こういう取り組みを推進して、農山漁村の活性化あるいは国内生産の増大を図って、食料自給率の五〇%を目指してまいりたいと考えております。

 それから、労働なき富の分配についてのお尋ねがございました。

 所得の再配分、食料の安定、安全確保などは、まさに国家が果たさなければならない重要な役割でありまして、労働なき富の意味するところではありません。また、子ども手当や農家への戸別所得補償などは決してばらまきではありませんので、御批判が当たっているとは決して思っておりません。

 まさに、私ども、ガンジー師の問題提起は、今日の日本のあるいは世界の抱えている諸問題を鋭く言い当てているな、そのように考えておりまして、目指すべき日本のあり方についての政治理念として施政方針演説において提起をした次第だと御理解を願えればと思います。

 それから、私や小沢幹事長の政治資金の問題がございました。

 私にかかわる問題につきましては、検察による解明を受けて、国民の皆様方に真摯におわびを申し上げたところでございます。また、全く承知をしていなかったことではございますが、捜査の結果を受けて、贈与という形で申告し、納付いたしたところでございます。

 したがいまして、法律の抜け穴を利用した金集めだという御指摘は当たってはいないと私は思ってはおりますが、しかしながら、国民の皆様方の御理解あるいは御支持をいただけるように、御批判は真摯に受けとめさせていただき、改めるべきところは根本的に改めてまいる、そして政権交代に期待をしてくださいました国民の皆様方におこたえをしてまいることが私の使命である、そのように考えておるところでございます。

 また、小沢幹事長の問題に関しましては、現在、検察が捜査中でございます。捜査の進展による事実の解明をやはり冷静に見守ること、これが大事だということを申し上げているのでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、お騒がせをしたりあるいは御心配をいただいているということに関して、国民の皆様方に真摯におわびを申し上げたいと思います。

 母からの資金提供についての御質問が重ねてございました。

 母からの資金提供に関しましては、全く承知をしていなかったとはいえ、結果として、私のために提供され使われたということは捜査で解明をされたわけでございますので、その事実に基づいて贈与というふうに思い、申告をして納税を行ったところでございます。

 なぜ返却をしなかったのかというお尋ねでございますが、私は、承知をしておりませんでしたので、当然借用書などもなく、後から貸し付けとして処理することは不適切である、そのように判断をいたしたのでございます。

 資金の使い道について、検察からも違法な支出があったという指摘はありませんでしたが、今後、裁判による事実認定の最終確定と、検察に提出をいたしました書類の返還を待ちまして、使途の分析、検証を行うように弁護士の調査チームに既に依頼をしているところでございます。その目的は、私の資金管理の改善であり、公表につきましては弁護士とよく相談したいと考えております。

 原口総務大臣の発言についてのお尋ねがありました。

 原口総務大臣の発言は、記者会見の場で、いわゆるクロスオーナーシップということに関して、報道が一色になってしまう危険性に関する質問を受けたものだ、そのように理解をしておりまして、その後、原口大臣は、国会の委員会あるいは記者会見の場で、報道現場を萎縮させるような意図などというものは全くなかったということを丁寧に説明をしてきていると私は考えております。

 教育の政治的中立性についての御質問がございました。

 教育は、中立かつ公正でなければならない、当然でございます。政治的な中立性を確保することは重要なことだ、そのように思います。このことは、常にいつの時代においても尊重されるべき普遍的な理念であると考えております。

 なお、お尋ねの民主党の幹部の発言ということについては、個別の議員の発言でもあり、お答えすることは差し控えたいと考えております。

 教員免許更新制度についての御質問でございます。

 学校教育では教員の質の向上を図るということが当然必要でありまして、教員の資質向上方策の抜本的な見直しの一環として、教員の免許更新制の見直しを行うものでございます。

 なお、指導が不適切な教員の人事管理といったものは、指導改善研修とかあるいは分限処分などを活用して実施をしていきたいと思っております。

 それから、高校無償化についての御質問であります。

 高等学校への進学率は約九八%に達しておりまして、国民的な教育機関というものになっていると認識をしております。したがいまして、教育の効果は広く社会に還元されなければならないということで、その教育費は社会全体で負担するべきだ、そういう認識のもとで高校無償化というものが行われるということでございます。

 また、これは世界的な常識でありまして、多くの国で後期中等教育はもう既に無償としているところでございます。

 なお、耐震化の関連予算とのかかわりでお話しされましたが、この耐震化の関連の予算に関しては、重点化により増額をしたことでございますし、また今後も、来年度の予算の枠の中に二兆円の景気対策枠というものがございます。これを活用して、さらに充実をしていきたいと今考えているところでございます。

 国の財政規律に関する御質問でございます。

 巨額の債務残高のほとんどは旧政権から引き継がせていただいたものではございますけれども、内外の市場の信認を確保していかなければなりません。そのためにも財政規律を維持することはやはり重要である、そのように考えておりまして、したがいまして、財政運営戦略というものを策定したい、本年前半にそのものを策定いたします。そのことによって、財政の健全化の道筋を具体的に示してまいりたいと考えております。

 また、さらに財政の健全化に関するお尋ねがございました。

 私どもは、マニフェストの政策を実現することを決してばらまきだとは考えておりません。二十二年度の予算においては、マニフェストに掲げられました事業の財源は、国債の増発によらないで、歳出削減あるいは公益法人の基金返納など、予算の組み替えによって確保をしてまいったところでございます。

 このように、財政の中身を転換して、歳出全体を必要性の高い分野に重点的に配分するということで経済成長との両立を図っていく、財政健全化に取り組んでまいりたいと思っております。

 それから、今後のIT政策に対する取り組みでございます。

 私の演説においては、確かにITに関しての文言はありませんでしたが、ICTの文言はございました。すなわち、情報通信技術でございまして、情報通信技術の徹底的な利活用によって、地域の絆の再生や成長の基盤づくりを行うことが重要だということを申し上げましたし、また、高度情報通信システムの共有によってアジア全体での繁栄の分かち合いを行うということが私の演説の中でも述べられておりまして、IT、ICTともに極めて十分に重視をしていきたい、そのように考えております。

 八ツ場ダムの中止について、これは後で国交大臣もお答えをいたしますが、八ツ場ダムの中止は、いわゆる政策転換、できるだけダムというものによらない治水へ政策転換をしていきたいという発想に基づいたものでございまして、当然、地域との関係については、今後とも、中止の方針に至った考え方など、御理解をいただくことが必要だと思っておりまして、その努力は続けてまいりたいと思います。

 地元住民の方々の御意見や御要望というものも十分に伺った上で、その生活再建に万全を期していくことはやはり大変大事なことだ、そのように考えております。

 日本航空の経営が悪化した最大の原因は何かということでございます。

 これは不採算路線の維持とか、あるいは大型機の大量保有とか、あるいは人員余剰などの構造的な高コスト体質を日本航空が有していたということだと思いますが、それのみならず、あるいは政府の政策によって、最初から採算のとれない地方空港の建設など、航空行政にもかなり問題があったということを申し上げておかなければなりません。

 真に必要なインフラについてどのような判断かということでございます。

 国民の命を守るため、安全、安心に資するインフラ、あるいは世界との交流の拠点となる空港、港湾、道路など、我が国の活力、成長力に資するインフラなどを重点的に整備していきたいと思っておりますが、その中で判断材料の一つとして考えるのは、民間の知恵やあるいは資金というものをいかにして活用できるかというところにかなりあろうかと思います。

 さらに、個別の事業の採択に当たっては、厳しい財政事情を踏まえて、公共事業の評価の厳格な実施を行ってまいりたいと考えております。

 暫定税率の廃止についてのお尋ねでございます。

 いわゆる暫定税率については、厳しい財政事情や、現在は石油価格が安定しているということなどを踏まえて、また環境問題も若干これは当然考えたわけでありますが、現行の十年間の暫定税率は、暫定税率そのものに関しては廃止をいたしますが、当分の間、揮発油税など、ガソリン税などの税率水準は維持することとしたわけでございまして、そのことについて国民の皆様方に率直におわびを申し上げたところでございます。

 COP15の評価及びCOP15での日本の存在感に関するお尋ねがございました。

 私は、COP15が失敗に終わった、あるいは日本の存在感が希薄であった、そのような指摘は当たらないと思っております。

 COP15では、私自身、そちらに参りましたが、各国首脳の議論に積極的に参加をさせていただいて、コペンハーゲン合意というものが、留意事項がついたわけではありますが、取りまとめができた、そのように思っておりまして、安堵したところでもございます。

 ただ、十分ではなかったという御指摘も、それも当然だと思っております。また、私は今後の交渉の重要な基礎になったということだと理解をいたしております。

 それから、温室効果ガスの二五%削減への具体的な方策に関する御質問をいただきました。

 今年度の第二次補正予算あるいは来年度の予算において、エコポイント制度あるいはエコカーの普及、再生エネルギーの導入支援など、二五%削減に向けた第一歩となる予算を盛り込んだところでございます。住宅に関するエコという話も盛り込んだところでございます。

 また、これは新たな国民運動が必要だ、おっしゃるとおりでございまして、産業界以上に国民の皆さんの意識というものに働きかけることが大事だ、そのように思っておりまして、チャレンジ25というキャンペーンも開始したところでございます。

 さらに、国内の排出量の取引制度あるいは再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の導入、さらには地球温暖化対策のための将来的な税の導入といったものの検討、あらゆる政策を総動員して実現を図っていきたい、そのように思っております。

 また、原子力発電も、地球環境問題ということを考えたときに、さらにはエネルギーの安定供給の立場からも重要だ、そのように考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣岡田克也君登壇〕

国務大臣(岡田克也君) 私には二問、御質問いただいたと思っております。

 第一問は、一月十三日のクリントン長官との日米外相会談で、日米関係の深化のプロセスを開始することだけしか合意できなかった、これは信頼なくして日米関係の深化が進まないということのあらわれではないかと。

 まず、信頼関係がなくして日米同盟の深化が進まないという御指摘は、私はそのとおりだと思います。しかし、この日米外相会談において、この深化のプロセスを開始することだけしか合意できなかったというのは事実誤認だと思います。

 先ほど総理自身も御指摘をいただきましたけれども、全体八十分の会談の中で五十分は、例えば、アフガニスタンの復興支援をいかに協力して行っていくか、あるいはイランの核の問題への対応、北朝鮮の核の問題、ミサイルの問題、拉致の問題への対応、そして核不拡散、核軍縮についての対応、そういったさまざまな問題について日米間での協力を話し合ったところであります。

 そして、この日米間の深化の、日米同盟の深化の問題につきましても、ここで議論したからこそ、それから一週間後の一月十九日、2プラス2、日米の外相そして防衛担当相で宣言ができたということであります。単に合意だけしたということではございません。

 それからもう一点は、アフガンへの五十億ドル、パキスタンへの十億ドルというのは大盤振る舞いであって、小切手外交に逆戻りするんじゃないか、こういう御指摘でございます。

 まず、昨年十一月に、五年間で最大五十億ドルのアフガニスタン支援策を決めたところであります。その柱は三本。最初は、治安能力の向上、二番目は、元タリバン末端兵士の再統合、三番目は、持続的、自立的発展のための支援であります。

 先般のロンドンにおけるアフガニスタン支援会議においても、日本がイギリスと中心になって元タリバン兵士、末端兵士の再統合の問題について議論を行ったところであります。

 いずれにしても、我が国援助関係者が、国際機関との連携のみならず、無償資金協力や技術協力などさまざまなノウハウや経験を生かして実施するものであります。

 議員は、小切手外交とか大盤振る舞い、こう言われますけれども、例えば、アフガニスタンについての二十億ドルの支援、これはほとんどもう使いましたけれども、これは自民党あるいは自公政権のもとでつくられたものであります。そういったものについても大盤振る舞いであり小切手外交だと言われるんでしょうか。

 あるいは、議員御指摘の……(発言する者あり)静粛にしてください、静粛に。議員御指摘のパキスタンに対する十億ドル。パキスタンに対する十億ドルも、大盤振る舞いであり、小切手外交に戻るのか、こう言われましたが、パキスタンに対する十億ドルは、麻生政権のもとで決定されたものであります。もし、これをばらまきであり小切手外交だと言うのなら、それは、私にではなく前外相、中曽根前外相にお聞きをいただきたいと思います。(拍手)

    〔国務大臣菅直人君登壇〕

国務大臣(菅直人君) 石原議員からの私への質問は一問でありまして、無駄遣いと天下りの根絶ではどのくらいの財源が捻出されたのか、また、国の総予算二百七兆円の組み替えにより実際に捻出されたのは幾らだったか、こういうことだったと思います。

 平成二十二年度予算においては、マニフェストの主要事項を実現するために、各省庁における概算要求の絞り込みや行政刷新会議における事業仕分け等を通じて予算の全面的な組み替えを実現してまいりました。

 こうした各省庁の概算要求の絞り込みや事業仕分けに当たっては、一般会計、特別会計の事業について必要性、緊急性等の観点から見直しを行うとともに、独立行政法人、公益法人に対する支出や基金については、国家公務員再就職の数などの情報開示も踏まえつつ、見直しを行ったところであります。

 こうした作業を行って、国の総予算の見直しにより二・三兆円に上る大幅な歳出削減を行うとともに、公益法人などの基金の返納等により一兆円の税外収入を確保し、あわせて新規施策に充てることのできる財源を合計で三・三兆円確保したところであります。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣前原誠司君登壇〕

国務大臣(前原誠司君) 石原議員にお答えをいたします。

 私への質問は五問でございました。

 まず、八ツ場ダムと川辺川ダムの中止の理由についてお尋ねがありました。

 日本が抱える少子高齢化、人口減少、莫大な借金、こういった背景で公共事業の大幅な見直しを行っておりまして、河川行政も、できるだけダムに頼らない治水への政策転換を今図っているところでございます。

 この政策転換への入り口として、着手から長時間経過したにもかかわらず、多額の事業費を執行してきたにもかかわらず、いまだ完成していない八ツ場ダムと川辺川ダムについて、本体工事の中止を表明したものでございます。

 次に、胆沢ダムについてお尋ねがありました。

 できるだけダムに頼らない治水への政策転換を進めるため、現在、直轄事業、補助事業合わせて百四十三のダム事業の見直しを行っております。

 この検証対象の選定に当たりまして、次の三つの客観的な要件のいずれかに該当する事業は、その対象から除外したところでございます。

 一つは、既にダムに頼らない治水対策の検討が進んでいるところ、これは具体的には川辺川ダムでございます。二つ目には、既存施設の機能増強を目的にしたもの、つまりは、今あるダムの更新であります。そして三つ目は、昨年十一月までに本体工事の契約を行っているもの。この三つでございます。

 お尋ねの胆沢ダムにつきましては、平成十五年一月に本体工事を契約し、既に本体の工事が進んでいることから、検証の対象から除き、事業継続といたしました。

 なお、議員は進捗率が低いとおっしゃいましたけれども、本体工事はほぼ完成しております。

 三番目の御質問でございますけれども、日本航空の事業再生計画についてのお尋ねがございました。

 日本航空の事業再生計画は、企業再生支援機構法に基づいて設立をされました公正中立な立場から判断を行う企業再生支援委員会により、三年以内の事業再生が見込まれると判断をされたものでございます。

 いずれにいたしましても、具体的な計画内容は、今後半年程度かけて策定されることになっております会社更生法に基づく更生計画において定められることになりますけれども、路線、機材、人員の大幅なダウンサイジング、アライアンス効果等によるネットワークの再構築、コア事業への集中、バランスシートの健全化など、包括的な事業再構築により抜本的な経営改善を実施することになります。

 このような内容の更生計画を着実に遂行することにより、国民目線に立った再生を実行してまいります。

 四つ目の御質問でございますが、日本航空の労働組合についてお尋ねがございました。

 グループ企業も含めまして二兆三千億円以上の債務を抱えている会社でございます。本来であれば、これだけの大きな債務を抱えている会社は清算をする会社でございますが、航空事業の中核を担っているということで、会社更生法再生という道筋をとったわけであります。

 従業員の皆さん方には、この視点を十二分に厳しく酌み取っていただいて、一人一人が自覚を持って日本航空の再生に臨んでいただきたい、このように考えております。

 労働組合につきましては、これは労働基本権に基づく労働組合活動でございますので、国土交通大臣が口を出すものではございません。

 最後に、高速道路建設についてお尋ねがございました。

 連立与党の重点要望は、特にミッシングリンクなど、高速道路の早期整備に対する地元の強い要望を反映したものであると理解しております。

 高速道路の整備のあり方については、これまでの経緯や高速道路整備に対するさまざまな御意見も踏まえ、必要な事業をできるだけ効率的に進めることができるよう検討を行ってまいります。

 いずれにいたしましても、河川のところで申し上げたように、今の大きな予算の見直し、使い道を変えていくという観点から、道路予算についても縮小、抑制に転じたところでございます。

 今後の高速道路の整備、維持管理につきましては、平成二十三年度予算の概算要求までに抜本的に検討を行ってまいる所存でございます。

 以上です。(拍手)

議長(横路孝弘君) 石原伸晃君から再質疑の申し出がありますが、残りの時間がわずかでありますから、ごく簡単に願います。石原伸晃君。

    〔石原伸晃君登壇〕

石原伸晃君 三点お話をさせていただきたいんですが、別に総理のことを揚げ足をとるつもりではなかったんですが、日本航空の破綻の原因は質問していないんです。それと、原子力発電所の重要性というのは、質問項目に入っておりますが、議場が騒がしくて質問できなかったので、それだけ冒頭お話しさせていただきます。

 三点お話を聞きたいと思います。

 永住外国人への参政権付与ですけれども、論点整理をして提出を検討していると。しかし、党内が意見が割れたり、憲法にも関係するということで、慎重にというニュアンスを私は受け取ったんですけれども、まさか強行採決するようなことがないということを確約願いたいと思います。

 二番目、天下り。定義は変えていない、全面禁止とおっしゃっております。全面禁止を目指す。そうであるならば、やはり日本郵政の社長並びに副社長人事は、これはだれが見ても天下りですから、これは例外であったとお認めいただきたいと思います。

 三点目、政治と金。何に使ったのか、資料の返還をもって検討するということですが、昨年、名古屋の国税局が、不動産会社の社長が一億六千万円の所得隠しを行ったということで所得税法違反で告発しているんですね。毎年一億八千万円の生前贈与、所得隠しではないと思いますけれども、七年間知らなかったということでは、国税庁の業務に大きな支障を来します。これは、総理個人の問題ではございません、国税全体の問題でありますので、厳しく対処していただきたい。

 三点お伺いさせていただきたいと思います。(拍手)

    〔内閣総理大臣鳩山由紀夫君登壇〕

内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 石原議員にお答えいたします。

 一つ答弁漏れがございましたことをおわび申し上げます。

 検察当局による情報漏えいの可能性についての御質問がございました。

 検察当局におきましては、従来から捜査上の秘密の保持について格別の配慮を払ってきたものであり、捜査情報や捜査方針を外部に漏らすなどというようなことはないし、あってはならないものだ、そのように考えているところでございます。

 それから、お尋ねが、再質問で三つございました。

 永住外国人の地方参政権、選挙権のことに関して、強行採決をするしないなどというようなことは、採決の方法はまさに議会でお決めいただくことでありまして、私がここで申し述べるべき話ではない、そのことを申し上げておきます。

 それから、日本郵政の役員人事は例外かどうかということでございますが、先ほども申し上げましたように、日本郵政は、株主提案による取締役選任という法的な手続にのっとったものであり、天下りではないということで、例外とかいう話ではないんです。

 我々が禁止した天下りは何だといえば、これは省庁から退職するOBに対してそのあっせんを行うということでありまして、今回の日本郵政に関しては、そのような役所からのあっせんというものによって社長の人事が決められたわけではありませんので、天下りではない、くどいようですが、そう申し上げておきます。

 それから、私自身のことでございますが、先ほどもこれも申し上げたところでございますが、検察に提出した書類が返還される、その返還を待ちまして使途の分析、検証を行うように弁護士の調査チームに既に依頼をしているところでございまして、その目的は、資金の使い道は別に検察からも違法な支出があったということを指摘されていたわけではないわけでありますので、私の資金管理の改善であるという目的でございます。

 公表について、弁護士とよく相談をして考えてまいりたい、改めて申し上げておきたいと思います。

 以上、三点でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

高山智司君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

議長(横路孝弘君) 高山智司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  鳩山由紀夫君

       財務大臣  菅  直人君

       総務大臣  原口 一博君

       法務大臣  千葉 景子君

       外務大臣  岡田 克也君

       文部科学大臣  川端 達夫君

       厚生労働大臣  長妻  昭君

       農林水産大臣  赤松 広隆君

       経済産業大臣  直嶋 正行君

       国土交通大臣  前原 誠司君

       環境大臣  小沢 鋭仁君

       防衛大臣  北澤 俊美君

       国務大臣  亀井 静香君

       国務大臣  仙谷 由人君

       国務大臣  中井  洽君

       国務大臣  平野 博文君

       国務大臣  福島みずほ君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  松野 頼久君


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