衆議院

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第26号 平成22年4月27日(火曜日)

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平成二十二年四月二十七日(火曜日)

    ―――――――――――――

  平成二十二年四月二十七日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 放送法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

高山智司君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、参議院送付、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(横路孝弘君) 高山智司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

議長(横路孝弘君) 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長滝実君。

    ―――――――――――――

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔滝実君登壇〕

滝実君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、近年における人を死亡させた犯罪をめぐる諸事情にかんがみ、これらの犯罪に対する適正な公訴権の行使を図るため、これらの犯罪のうち、法定刑に死刑が定められているものについては公訴時効の対象から除外し、法定刑に懲役または禁錮が定められているものについては公訴時効期間を延長するものであります。

 なお、この改正については、その施行前に犯した罪であって、その施行の際公訴時効が完成していないものについても適用することといたしております。

 また、刑の時効等についても所要の改正を行うものであります。

 本案は、参議院先議に係るもので、去る四月十四日本委員会に付託され、十六日千葉法務大臣から提案理由の説明を聴取し、二十日質疑に入りました。二十三日には参考人から意見を聴取し、本日質疑を終局し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(横路孝弘君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

高山智司君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(横路孝弘君) 高山智司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(横路孝弘君) 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長川内博史君。

    ―――――――――――――

 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔川内博史君登壇〕

川内博史君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約附属書1及び附属書6の改正に対応するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、他のタンカーとの間におけるばら積みの貨物油の積みかえを行う一定のタンカーに、船舶間貨物油積替作業手引書の作成及び備え置きまたは掲示を義務づけるとともに、当該貨物油の積みかえの際の事前通報を義務づける等、船舶からの油の排出による海洋汚染を防止するための規制を強化すること、

 第二に、窒素酸化物の放出規制の対象となる原動機の範囲を拡大する等、船舶からの排出ガスの放出による大気汚染の防止のために、窒素酸化物、硫黄酸化物等の放出に係る規制を強化すること

などであります。

 本案は、去る四月二十日本委員会に付託され、二十一日前原国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、二十三日より質疑に入り、本日質疑終了後、採決いたしました結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 放送法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、放送法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。総務大臣原口一博君。

    〔原口一博君登壇〕

国務大臣(原口一博君) 放送法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 通信・放送分野におけるデジタル化の進展に対応した制度の整理合理化を図るため、各種放送形態に係る制度を統合し、無線局の免許及び放送業務の認定の制度を弾力化する等、放送、電波及び電気通信事業に係る制度について所要の改正を行う必要がございます。

 これらが、今般、法律案を提出した理由でございます。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、放送に係る制度の整理合理化を図るため、放送関連の四つの法律を一つに統合するとともに、放送を基幹放送と一般放送に区分し、放送の業務の参入について、基幹放送は認定、一般放送は登録とするとともに、放送の業務と電気通信設備の設置、運用を一の者で行うことも、それぞれを別の者が担うことも選択可能にする一方、地上放送において放送の業務と無線局の設置、運用を一の者が行う場合には、無線局の免許のみで足りる現行の制度も併存させることとしております。

 第二に、放送の多元性、多様性等を確保するため、基幹放送について、いわゆるマスメディア集中排除原則の基本的な部分を法定化し、複数の基幹放送事業者への出資に関しては、一定の範囲内において定める水準を超えないことを原則とすることとしております。

 第三に、放送については、このほかに、設備の維持、重大事故が発生した場合の報告、放送番組の種別の公表、有料放送の提供条件の説明、再放送同意をめぐる紛争に係る電気通信紛争処理委員会によるあっせん及び仲裁等に関する規定を整備することとしております。

 第四に、電波利用に係る制度の合理化、弾力化を図るため、主たる目的に支障のない範囲で、一つの無線局を通信及び放送の双方の目的に利用することが可能となるよう、無線局の免許及び目的変更の許可に関する規定を整備するとともに、免許を要しない無線局の空中線電力の上限の見直し、携帯電話基地局の免許の包括化、電波監理審議会による意見の聴取等に関する規定を整備することとしております。

 第五に、電気通信事業に係る制度の整理合理化を図るため、いわゆるコンテンツ配信事業者等と電気通信事業者との間における電気通信役務の提供をめぐる紛争等に係る電気通信紛争処理委員会によるあっせん及び仲裁、第二種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者の接続会計に関する規定を整備するとともに、有線放送電話に関する法律の廃止及びこれに伴う規定の整備等を行うこととしております。

 第六に、附則において、政府は、この法律の施行後三年以内に、表現の自由ができるだけ多くの者によって享有されるようにするための制度のあり方について、放送の健全な発達を図り、国民にその効用をもたらすことを保障する観点から、新聞社、通信社その他のニュースまたは情報の頒布を業とする事業者と基幹放送事業者との関係、いわゆるクロスメディア所有規制のあり方を含めて検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとしております。

 以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしておりますが、電気通信紛争処理委員会の委員の任命に関する改正規定等は公布の日から、電波監理審議会による意見の聴取に関する改正規定等は公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から、免許を要しない無線局に関する改正規定等は公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 放送法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。永江孝子さん。

    〔永江孝子君登壇〕

永江孝子君 民主党の永江孝子でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出の放送法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 私は、愛媛県にあるローカル放送局で二十五年間働いてまいりました。畑で農作業をしているおじいちゃんやおばあちゃんに、ことしのできはどんなですかとお尋ねしたり、町工場の職人さん、経営者の方々に物づくりの御苦労を伺ったりする取材の日々の中でも、胸には、地域の放送は地域固有の文化を守る仕事だとの使命感を抱いてまいりました。あわせて、放送は国民の知る権利に奉仕する仕事だとの誇りも持ってまいりました。

 きょうは、その延長線上としてこの場に立たせていただいております。

 この法律案は、一般には余り耳なじみがないかもしれませんが、通信・放送の世界のルールであり、このルールが適正かつ合理的であることで通信・放送があるべき姿を保つことができ、国民の皆様の知る権利が守られると考えます。そして、理にかなった改正は、現政権が進める地域主権にも資するものだと信じております。

 二十一世紀に入り、通信・放送の技術は日進月歩のスピードで発展し、私たちの生活は飛躍的に便利になりました。また、通信のブロードバンド化、放送のデジタル化が進み、通信・放送の垣根が低くなり、放送波、携帯電波、ケーブルなどを通じて、受信者にとっては、テレビ、携帯、コンピューターでほぼ同様のコンテンツを受信することが容易になってきました。

 民主党は、このような通信と放送の融合が急速に進展してきた現実を踏まえ、既存の通信・放送に関する法体系の総合的な見直しが必要であると訴えてきました。

 このたび提出された放送法等の一部を改正する法律案は、まさに、このところの通信と放送の融合、さらに、将来の技術革新を見据えて、現実におくれをとっていた法体系の必要な整理合理化を図ったものです。

 そこで、最初に、原口総務大臣にお尋ねいたします。

 今回の放送法等の一部を改正する法律案により、通信と放送の総合的な見直しを行った背景や目的を具体的にお示しください。

 本改正の目玉は、放送に関する制度を整理し、放送形態別に四本の法律に分かれていたものを一本の法律に統合したことです。そして、放送について、基幹放送と一般放送という区分を設けました。すべての放送について、現放送法の根幹である番組編集の自由が確保されている一方、従来どおり、放送法で求められてきた自主的な番組規律の適用を求めています。

 公共の電波を預かる放送事業者は、公共の福祉に寄与することが求められる一方で、あくまでその検証作業は、表現の自由が脅かされるおそれがないように、政府の関与を避け、自主自律が貫かれることが重要と考えます。

 今回の改正では、電波監理審議会がみずから調査審議し、総務大臣に建議することができる内容が盛り込まれています。これは、民意を反映した国会同意人事で選任される有識者の皆様に、第三者的な立場から政府の放送行政に対するチェックをしていただき、公権力の介入から言論、放送の自由を守ることを目的としたものと理解しますが、この権限が個別具体的な放送番組を調査審議することにつながらないか、懸念する向きもあります。

 そこで、原口総務大臣にお伺いします。

 テレビによる基幹放送については、原則、従来どおり、番組調和原則等の適用に加え、新たに、放送番組の種別を区分する基準とその種別を公表するよう求めていますが、その理由をお答えください。あわせて、電波監理審議会の権限についてのお考えをお聞かせください。

 次に、基幹放送のハードとソフトの分離についてお尋ねをいたします。

 本改正では、基幹放送について、無線局の設置、運用、いわゆるハードの業務のみを行う者と、ソフト部分である放送の業務のみを行う者とを分離できるような制度を導入し、手続も事業内容に応じて簡素化を図っています。これにより、放送事業者が、ハード・ソフト事業を一体的に行うことも、それらを別に行うことも、どちらも選択できるようになり、経営の柔軟性が増します。

 原口総務大臣にお尋ねします。

 この措置は放送業界にどのような利点をもたらすのか、お答えください。

 次に、マスメディア集中排除原則についてお尋ねをいたします。

 マスメディア集中排除原則は、放送の多元性、多様性を確保する重要な原則です。ところが、今までは、マスメディア集中排除原則は省令に委任されてきました。本改正では、この原則を確実に担保するため、法定化し、出資の上限を法律に明記しました。しかも、これまでの上限二〇%を緩和し、最大三分の一未満までの出資を容認することとしています。

 確かに、地方経済が疲弊する中で、地方局の経営状況は年々厳しくなっています。広告収入は減少し、地上デジタル化への多大な設備投資も影響して、経営体力はぎりぎりのところまで来ております。ある地方局は、このままでは体力がもたないとの経営判断をし、経費削減として、自社制作番組の凍結という厳しい決断をしております。仕方のない経営判断とはいえ、とても残念なことです。

 地方のメディアは、現場を熟知したみずからの目で地域を見詰めて、地域の情報を取材、放送することで、地域の皆さんに問題を知らしめ、議論を起こし、解決の糸口を提起します。ローカル局から発信される地域性は、決して失ってはいけない多元性、多様性です。これから私たちが目指す地域主権の中では、地方メディアの果たすべき役割がますます重要になってくると考えます。

 よって、ローカル局の経営状況を勘案して、出資上限を三分の一未満まで可能にしたことは、地域からの情報発信を維持し、多元性、多様性を確保するための必要措置と考えます。

 ただし、一方で、安易な引き上げにより、マスメディア支配が集中しても問題です。

 そこで、原口総務大臣にお尋ねをいたします。

 地域主権の実現の中で地方メディアの果たすべき役割について、お考えをお聞かせください。

 次に、本法案のもう一つの目玉である、通信と放送の相互参入の促進についてお尋ねをいたします。

 本法案は、放送の無線局の免許を受けた者が通信に、通信の免許を受けた者が放送に参入することを可能にします。これにより、事業者の経営の自由度が高まり、通信と放送融合時代の通信・放送事業者の新たな事業展開、新たな通信・放送サービスの創出につながることが期待されます。また、その結果、国民の皆様が、豊かな通信・放送サービスを享受できるようになります。

 原口総務大臣にお伺いします。

 例えば、どのような新たなサービスを期待しているのか、どのように国民の皆様の生活が便利になるのか、幾つか例を挙げて示していただきたいと思います。

 最後に、来年七月に迫った、日本の放送にとって歴史的な前進となる地上デジタル放送への移行について、総務大臣にお尋ねをいたします。

 地上アナログ放送停止まで、残すところ四百五十日ほどとなりました。円滑な地上デジタル放送への移行に向けて、政府、関係放送事業者を初め、自治体も含めて、全力で送信設備の整備を進めるべきであることは言うまでもありません。同時に、あまねく全国民の皆様がこれまでと同じようにテレビを見られるように、受信者側の対策についても総力を挙げて取り組まなければなりません。

 そこで、原口総務大臣にお伺いをします。

 最近では、集合住宅や受信障害対策の共聴施設の改修のおくれ、また、新たな難視聴の問題などが起こっております。これらの問題について、総務省がどのような対策を講じているか、お答えください。

 情報通信産業は、経済成長の重要な牽引役です。通信と放送の融合の時代に沿った法体系は、ホワイトスペース、電子書籍、遠隔医療、スマートグリッドなど、未来に期待される新たなサービスの創出や通信と放送分野のさらなる発展に不可欠です。

 本改正にとどまることなく、今後も、産業の発展に資するように見直しを行うとともに、情報通信分野に限らず、ICT発展の足かせとなっている規制を見直し、不断の規制改革を政府全体で継続することをお願いし、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣原口一博君登壇〕

国務大臣(原口一博君) 永江議員から、七点お尋ねがございました。

 永江議員は、放送を通して地域固有の文化を守る、その先頭に立ってこられました。敬意を表し、この法案の目的について申し上げたいと思います。

 今回の法案は、国民の知る権利、言論の自由、そして表現、放送の自由、これを保障する、そして、今私たちは、言論のとりで、この議論をしていますけれども、すべての国民のコミュニケーションにおける権利を保障する、そのために、今年度末のブロードバンドゼロ地域の解消、来年七月のテレビ放送の完全デジタル化に対応して通信・放送制度の整理合理化を行うものでございます。

 このことにより、事業者の経営の選択肢の拡大、利用者の権利保障、通信・放送の安全、信頼性の向上等を通じて、経営の多角化や国民の利便性の向上を図ろうとするものでございます。

 次に、テレビによる基幹放送について、放送番組の種別を区分する基準等を公表するよう求める理由についてお尋ねがございました。

 本改正は、テレビによる基幹放送について、放送の自主自律のもとで、放送事業者がみずから番組調和原則の適切な履行に努めることを促す環境を整備することを理由とするものでございます。

 次に、電波監理審議会の権限についてお尋ねがございました。

 建議という言葉は、我が国の法令では、審議会等が行政機関に対しみずから意見を述べる際に使われるものでございまして、本改正は、御指摘のとおり、民意を反映した国会同意人事で選任される有識者の皆様に大所高所に立って放送行政のあり方をチェックしていただくようにするものでございます。

 本改正に関し、放送事業者に資料の提出を求めたり、直接説明を求めたりする権限は、電波監理審議会には一切与えておりません。また、個別の放送番組に介入させる意図も全くございません。むしろ、逆です。

 次に、放送事業者の事業形態に係る選択制の導入についてお尋ねがございました。

 本改正では、ハード、ソフト一致を前提とする現行の地上放送においてその分離も選択可能とする一方で、ハード、ソフト分離を前提とする現行の衛星放送等においてその一致も選択可能とすることとしております。

 これにより、放送事業者において新たな事業選択が可能となり、経営状況を踏まえた柔軟な経営を行えることとなると考えています。

 次に、地方メディアの役割についてお尋ねがございました。

 まさに、緑の分権改革、地域主権改革ということを申し上げていますが、地方メディアは、地方文化等の拠点であって、情報を発信し、共有することによって、人々の社会への参加を促し、民主主義をしっかりと強固なものにするといった大事な役割を担っていると考えております。

 今後とも、マスメディア集中排除原則のあり方を検討するに当たっては、こうした地方メディアの役割の重要性とその多様性の確保に留意してまいります。

 次に、通信・放送の相互参入についてお尋ねがございました。

 この改正によってどんな便利なことがあるか。例えば、放送局の深夜の空き時間を使って、電子広告やあるいは電子新聞、こういった更新情報を大容量で一斉に多くの人に送ることができます。事業者の創意工夫により、経営が多角化され、国民の利便性も向上することを期待しています。

 次に、地上デジタル放送への移行についてお尋ねがございました。

 受信障害などの共聴施設については、本年三月に共聴施設デジタル化加速プログラムを策定し、説明会などにより周知徹底を図るとともに、デジタル化改修に対する助成等を行っております。

 また、新たな難視については、中継局整備や共聴新設などによる対策を講じるとともに、暫定的に衛星による対策も実施することとしております。

 これらの対策を通じ、デジタル移行に万全を期してまいります。国民の皆様の御協力をお願い申し上げます。

 最後に、ICTの重要性と規制の見直しの継続について御指摘がありました。

 ICTは、もうコストではありません。ICTは、すべての社会経済活動の基盤であり、経済成長の牽引となるものでございます。

 本改正にとどまることなく、私は、二〇一五年までに基本的なブロードバンドを、日本全国に光の道を進める光の道構想を提唱しており、その中で、ICTの利活用を阻む制度の見直しなど、ICTそして日本経済全体の発展に資する改革に政府全体で取り組んでまいっていきたいと思います。

 まさに、永江議員の御地元の松山、坂の上の雲、私たちはもう一度この日本においてしっかりとつくって、再生を果たしてまいりたいと思いますので、御支援をよろしくお願いいたします。

 以上、答弁を終わります。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 坂本哲志君。

    〔坂本哲志君登壇〕

坂本哲志君 自由民主党の坂本哲志です。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、ただいま趣旨の説明がありました内閣提出放送法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。(拍手)

 今回の放送法等の改正は、通信・放送体系の見直しを実に六十年ぶりに行うことになる大改正であります。法案については、原口大臣が提案理由で説明されたとおりであります。

 特にことしは、ブロードバンドゼロ地域の解消、テレビ放送の完全デジタル化という、通信・放送にかかわる二つのインフラ政策の目標達成期限を間近に控える年であることから、時代に対応した法整備が求められ、自民党政権時代より論議が進められてまいりました。

 昨年八月には、総務省の情報通信審議会より通信・放送の総合的な法体系のあり方について答申がなされ、現行の放送法、電気通信事業法など九本の通信・放送関連法を、コンテンツ、伝送サービス、伝送設備の三つの観点から、縦割りではなく横断的大くくり化を図ると提言されております。

 今後は、光回線を中心とするインフラの整備拡充と運用の問題、通信・放送の連携や統合による巨大資本メディアの出現や言論、表現の自由と倫理性、成長産業として国際競争力の強化の問題など、あらゆる課題が想定されていますし、いわゆる二〇一〇年問題として、光回線というインフラの大部分を持つNTTの取り扱い、あるいはNHKのあるべき姿の論議も避けて通れない問題であります。

 それだけに、入念でそして慎重な論議を進め、世界で最速、最安のデジタルインフラのもとで、世界最先端の通信・放送サービスを実現していくために、法体系も国際的な整合性を考慮していく必要があります。

 しかし、放送法の一部改正法案の質問に当たって、私は、そもそも、この鳩山政権、なかんずく原口総務大臣のもとで、この通信・放送分野の改革を語り、法案を提出する資格があるのだろうかという疑問が頭をもたげてまいりました。

 今般、鳩山総理の献金虚偽記載問題に始まり、第一秘書の有罪判決、小沢幹事長の政治資金管理団体による不動産取得問題、小林千代美議員への北海道教職員労働組合からの不正献金問題など、民主党議員の政治と金をめぐる事件は枚挙にいとまがありません。

 今法案の趣旨説明をされた原口総務大臣御自身の政治団体にも、NTTの労働組合の政治団体アピール21から多額の資金提供が行われております。このような大臣に、総務省所管の通信・放送行政に対して公正な判断ができるのでしょうか。

 そもそも、アピール21は、同団体のホームページで次のように言っています。

 NTT労組にとって最重要課題である二〇一〇年のNTT経営形態の論議が迫っており、民主党の友好・支援議員を中心とする国会対策を強化する必要があります。推薦議員への支援を積極的に行うことでNTT労組の政策の実現につなげたいと考えます。

 これは、アピール21の会長が平成二十年七月のあいさつで述べている言葉であります。まさに労働組合が、その資金力をバックに、政府の政策に圧力を加えていくと表明しているのであります。

 事実、NTT労組は、平成二十年の一年間だけでも、民主党の国会議員に対し、何と総額七千四百万円もの資金提供をしております。

 例えば、菅副総理には平成二十年十月に五百五十万円、仙谷国家戦略担当大臣には年間四百六十万円超、赤松農林水産大臣にも四百九十万円、枝野行政刷新担当大臣に四百万円、もちろん、原口総務大臣にも五百万円。原口総務大臣に至っては、この五百万円もの巨額な献金を受け取っていたにもかかわらず政治資金報告書への記載を忘れたようで、そのような金銭感覚は、私には到底理解のできないものであります。

 資金提供は、大臣のみならず、副大臣、政務官へと及び、寄附がなされております。個別の名前を言えば切りがありません。現在の鳩山内閣で閣僚を務める議員への資金提供を合計すれば、総額にして、平成二十年の一年間だけでも何と四千万円近くにもなります。

 それだけではありません。アピール21からの献金は地方議員にまで及んでおります。総理の地元、北海道の道議会議員、市議会議員、町議会議員にまで、平成二十年の一年間だけで、資料費などという名目で約五百万円がばらまかれております。

 北海道は、農林水産業や商工業ともに、その経済は厳しいと聞いており、自民党の政策部会でも北海道選出の先生方は声をからして現状を訴えておられますが、庶民の生活とは裏腹に、北教組にいたしましても、NTT労組にいたしましても、労働組合だけは、お金の使い道に困るような別次元の世界のようでもあります。

 このような労働組合丸抱えの政党、そして内閣がつくられていることは、まさに日本の将来を危うくするものであり、この民主党の政治と金と労働組合の抜き差しならぬ関係を国民の皆様に選挙で仕分けしていただきたいと思います。

 このような鳩山政権のもと、今回提案されました放送法の一部を改正する法案の中で、幾つか首をかしげざるを得ない問題があります。

 原口大臣にお伺いをいたします。

 まず、マスメディア集中排除原則の法定化という条項に関連して、いわゆるクロスメディア所有規制条項を附則として掲載したという点であります。

 クロスメディア規制の基本は、同一の者が新聞、テレビ、ラジオを同時期に支配することを規制するというものであります。今後は、これら三事業以外にも、通信社、ニュースや情報を流すことを専門とする事業者、さらには動画の配信を業とする事業者など、基幹メディア事業者に対し、国内外を含め、さまざまな分野からの参入が予想され、重要な問題であります。

 資本の肥大化による言論やニュースその他の単一化が懸念されたり、利用者の選択肢が狭まったりする危険性、さらには災害、テロへの備えなども含めると、大変幅広い論点を含んでおります。

 しかしながら、広範な課題を含むクロスメディア規制を附則にした意味がよくわかりません。唐突につけ加えられた感が否めません。

 附則は、本則との関係において、関連性、妥当性、合理性がなくてはなりません。今後重要な問題を含んでいるだけに、中途半端な形で法案に盛り込むことは、必要以上の混乱と疑心暗鬼を招くことになります。附則で盛り込むなら、この際削除すべきですし、本格的に来たるべき時代に対応する用意があるとすれば、もっと方向性を明確にして、本則に盛り込むべきであります。

 原口大臣に対し、附則として検討条項という記述で盛り込んだ意味とその意義をお尋ねいたします。

 続きまして、電波監理審議会、いわゆる電監審に係る規定の改正についてであります。

 改正法第五十三条の十二の二において電波監理審議会の建議事項が記載されていますが、この事項に、事もあろうに、放送法第一条の目的をそのまま記述しています。そして、わずか五人の審議会委員に、本法の目的である「放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること」など、三つの原則をすべてゆだねております。

 原口大臣にお伺いしますが、このようなことが果たして電監審で可能なのでしょうか。その背景は何なんでしょうか。

 アメリカでは、通信・放送関連分野の規制監督権限を有する、FCC、アメリカ連邦通信委員会という国家機関があります。大統領が五人の委員を任命して委員会をつくり、そのもとに約二千名の職員が働くという独立規制機関であります。

 民主党のマニフェストには、このアメリカの組織に倣い、日本版FCCを設立するとあります。

 原口大臣にお伺いしますが、電監審にこれだけの幅広い権限をゆだねるということは、まさに日本版FCCの第一歩なのでしょうか。国家権力をチェックするマスメディアに対して、このようなマスメディアをチェックする公的機関をつくる意図がもしこの電監審に込められているとするなら、もう一つ巨大な監督官庁を出現させることになります。

 民主党は、郵政や病院など、これまで民営化しようとしてきた組織を、実質的には次々と国営企業化しつつあります。その流れからいくと、新たな官庁の出現も十分に予想されますし、その背後に莫大な献金を続ける省庁関連団体の労働組合の存在があることも十分予測できます。まさに、ソ連や東ドイツがとうに脱ぎ捨て去った政治体制への回帰を、民主党政権が今始めようとしているというふうにしか見えません。

 なぜ、これほどまでに調査審議事項を電監審に一元化させて、大きな権限を与える条文が盛り込まれているのか、その意図と今後の展開についてお聞かせください。

 最後に、NHK経営委員会に係る規定の改正についてお伺いいたします。

 まず、NHKに係る規定の改正の項目に、NHK会長が経営委員会のメンバーに加わるとあります。これは、どのような議論の結果追加されたのでありましょうか。自民党政権では、一度もこのような改正が論議されたことはありません。原口大臣が就任以来次々とつくり続けている有識者会議で検討されたものでしょうか。閣内でどのような議論がなされ、どのような経緯で提出されたものなのか、具体的にお答えください。

 あわせて、NHKの会長が経営委員会の構成員でなくなったのは、昭和三十四年の法改正によるものであります。今回、経営委員会に戻す趣旨と、期待される機能についてお聞かせください。

 私は、今回のNHK会長の経営委員会入りを聞いたとき、昨年の総選挙における民主党のマニフェストに掲げられたある公約が頭をよぎりました。その公約とは、公開会社法であります。

 報道によれば、上場企業の監査役会に従業員代表の選任を義務づけるとあり、それにより労働組合の権益をますます拡大できるようにするそうですが、まさか、NHKの経営委員会にも今後労働組合代表を入れるための布石として今回の改正項目を追加したのではありませんか。お答えください。

 また、NHKの経営委員会のメンバーは、国会同意人事であります。本改正により、NHK会長についても国会同意人事にするおつもりなのか、あわせて、今後のNHK改革の道筋を明らかにしていただきたい。

 また、NHK経営委員は、国会の同意人事であることからも、その委員の人選に当たり、これまで欠格事由を厳しくしてまいりました。今回の改正案では、任命の日以前一年間に放送用の送受信機の販売製造の役員であった者についての欠格事由を解除し、端的には、任命の日の前日までにこれをやめれば経営委員に任命できるのではないでしょうか。例えば、NHKと取引を通じた利害関係者であったにしても、そうでなくなったものとして、すぐにNHK執行部に対して物言える経営委員になれるのではないですか。甚だ疑問が残ります。

 委員会は、国民のための委員会でなくてはなりません。視線は常に視聴者である国民であることを念頭に委員会が運営されていかなくてはなりません。今回の改正での委員会ではそれはまず不可能と考えますが、原口大臣のお考えをお尋ねいたします。

 以上、今回の放送法の一部改正について質問いたしました。透明で公正な、未来への第一歩となる国民全体の法律にしなくてはなりません。原口大臣の明快なる答弁を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣原口一博君登壇〕

国務大臣(原口一博君) 坂本議員から、七点お尋ねがございました。

 まず、クロスメディアの所有規制を附則として検討条項にした意味とその意義についてお尋ねがございました。

 言論が一色になってはならない。資本による制約によって言論が一色になってはならない。表現や、放送そして報道の自由を守る、その観点から、現行のクロスオーナーシップの規律が言論の多様性、多元性を確保する観点から十分に機能しているか否か、近年出現している新たな情報の配信形態も含め見直す必要がないのか、よく検証することが必要であり、御指摘の条項は、こうした点を反映して附則に規定したものでございます。

 次に、電波監理審議会についてお尋ねがございました。

 これは、放送法の施行事務に関する審議機能を電波監理審議会に一元化することに伴い、同審議会において、従来のように総務大臣が設定した諮問事項を審議するのみならず、放送行政のあり方について大所高所から総務大臣に対し建議することができることとするものです。

 したがって、マスメディアをチェックするものではございませんで、放送行政のあり方をチェックするものであって、日本版FCCの第一歩となるものではございません。

 次に、NHK会長を経営委員会のメンバーに加える件についてお尋ねがございました。

 委員もたしか総務省の政務官をなさったと思いますから御議論をお聞きになっていると思いますが、これは唐突に出てきたわけではなく、ここ数年の衆参の総務委員会において、経営委員会とNHK執行部との関係が、かなり敵対的というかいびつな形になっている、修正動議によって押し切るという形では放送、報道の自由、表現の自由というものまで影響が及ぶのではないか等の御議論があったことを反映したものでございます。

 民間企業のトップを務められた福地会長も、総務委員会の席で、執行の一員が経営委員会に加わるのは結構なこと、会長が経営委員会に議決権を持って入るということは大きな進歩と述べられております。実質的なCEOじゃないんです、COO、これで権限が果たせるか、そういう御疑念をお持ちでございました。

 次に、会長を経営委員会に戻す趣旨と、期待される機能についてお尋ねがございました。

 本改正は、経営委員会による経営方針の決定が実際的な業務執行の観点から見ても適切かつ迅速に行われ、NHKの役割がしっかりと発揮されることを目的とするものであり、経営委員会に今後労働組合代表を入れるための布石として本改正を行うものではございません。

 次に、NHKの会長を国会同意人事にするのかどうかについてお尋ねがございました。

 答えはノーです。放送番組編集の自由を確保するという要請は変わることがないため、従来どおり、会長の任免については、国会同意人事ではなく、経営委員会の権限に属することとしております。

 次に、経営委員会の欠格事由の緩和についてお尋ねがございました。

 この規定が創設された昭和二十五年当時と異なり、民間の放送事業者がふえ、送受信機メーカーに対するNHKの影響力は相対的に縮小しています。会社法制の変更により、委員会設置会社が普及し、もともとはメーカーの出身者でなくても社外取締役に選任され、欠格事由に該当してしまうことにより、人選の幅が限られてきていること、一方、NHKの経営委員にはこれまで以上に経営に関する知見を有する人材が求められていることにかんがみて、今回、欠格事由を緩和するものでございます。

 これにより、広く有為な人材の中から経営委員を選ぶことができるようになり、開かれた公共放送としてのNHKの委員会運営が行われるものと考えています。

 最後に、今後のNHK改革の方向性についてお尋ねがございました。

 通信・放送分野におけるデジタル化は進展を続けており、NHKを取り巻く環境は休みなく変化していくと考えられています。NHKがその変化にしっかりと対応していくことが今後も重要でございます。

 特に、NHKは、国民が支払う受信料を財源としており、質の高い放送サービスを効率的、効果的に実施できるよう、業務全般を国民目線に立って常に見直すこと、公共放送としての役割やその社会的使命を果たすため、経営改革の成果を国民に適切に還元していくことが必要であると考えております。

 以上、答弁申し上げました。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣  原口 一博君

       法務大臣  千葉 景子君

       国土交通大臣  前原 誠司君

 出席副大臣

       総務副大臣  内藤 正光君


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