衆議院

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第32号 平成22年5月27日(木曜日)

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平成二十二年五月二十七日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十一号

  平成二十二年五月二十七日

    午後一時開議

 第一 放送法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 社会保障に関する日本国政府とアイルランド政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(参議院送付)

 第四 航空業務に関する日本国と中華人民共和国マカオ特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件(参議院送付)

 第五 外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮を仕向地とする貨物の輸出及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入につき承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件

 第六 口蹄疫対策特別措置法案(農林水産委員長提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 厚生労働委員長辞任の件

 厚生労働委員長の選挙

 総務委員長近藤昭一君解任決議案(浜田靖一君外六名提出)

 日程第一 放送法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 社会保障に関する日本国政府とアイルランド政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(参議院送付)

 日程第四 航空業務に関する日本国と中華人民共和国マカオ特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件(参議院送付)

 日程第五 外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮を仕向地とする貨物の輸出及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入につき承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件

 日程第六 口蹄疫対策特別措置法案(農林水産委員長提出)

 航空法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後五時三十九分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 厚生労働委員長辞任の件

議長(横路孝弘君) お諮りいたします。

 厚生労働委員長藤村修君から、委員長を辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 厚生労働委員長の選挙

議長(横路孝弘君) つきましては、これより厚生労働委員長の選挙を行います。

高山智司君 厚生労働委員長の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(横路孝弘君) 高山智司君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(横路孝弘君) 起立多数。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、厚生労働委員長に鉢呂吉雄君を指名いたします。

    〔拍手〕

     ――――◇―――――

高山智司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 浜田靖一君外六名提出、総務委員長近藤昭一君解任決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(横路孝弘君) 高山智司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、日程第一に先立ち追加されました。

    ―――――――――――――

 総務委員長近藤昭一君解任決議案(浜田靖一君外六名提出)

議長(横路孝弘君) 総務委員長近藤昭一君解任決議案を議題といたします。

 提出者の趣旨弁明を許します。秋葉賢也君。

    ―――――――――――――

 総務委員長近藤昭一君解任決議案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔秋葉賢也君登壇〕

秋葉賢也君 自由民主党の秋葉賢也です。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、ただいま議題となりました総務委員長近藤昭一君解任決議案について、提案の理由を御説明いたします。(拍手)

 まず、案文を朗読いたします。

  本院は、総務委員長近藤昭一君を解任する。

   右決議する。

 以下、その理由を説明いたします。

 申すまでもなく、総務委員長は、国会法に定める院の役員であり、行政機構、公務員制度、地方自治など、国の基本的な仕組みにかかわる問題などを所管する委員会の長であります。公正かつ公平な立場で円満な委員会運営に努めるという大変重大な任務を負っていることは、だれも異を唱えないはずであります。

 しかしながら、近藤昭一君は、総務委員長に就任して以降、私ども自民党を初めとする野党の主張に十分耳を傾けることなく、委員会運営において、政府や与党の一方的な振る舞いを許してきたのであります。中立的な立場を放棄し、政府・与党の権力にくみしている近藤昭一君を総務委員長として認めることは、これ以上できないのであります。

 総務委員長近藤昭一君の解任を求める第一の理由は、第百七十三回臨時国会での委員長就任あいさつの発言内容と実際の運営が全く一致しておらず、就任以降、与野党合意のない中で、委員長職権を濫用した委員会のセットや強行的な開会を幾度となく続けているということであります。

 順を追って御説明申し上げます。

 まず、昨年十一月十九日の理事懇談会において、翌二十日の初回委員会を職権で決めました。近藤昭一君は、政権交代後初めて開かれる総務委員会を与野党の合意を待たずに一方的に決めるという信じられない暴挙とともにその職務をスタートさせたのであります。

 さらに驚くべきは、その委員会の議題であります。

 従来の常識では、初回委員会というのは、委員長の就任あいさつ、理事互選などのいわゆる手続、そして大臣あいさつ等にとどめるのが通例であります。しかし、近藤昭一君は、これらに加え、人事院勧告説明、給与法の提案理由説明、質疑、採決、さらには、それまでの理事懇談会で与党から全く言及のなかった郵政株式売却停止法の提案理由説明、質疑、採決までをも議題としたのであります。これらの議題がいかに非常識なものかは、委員会のスケジュール表が、一枚におさまらずに、二枚を縮小して配られていたことからも端的にわかります。

 そして、十一月二十日には、自民党、公明党が欠席する中、就任後初となる委員会の開会をちゅうちょすることなく強行し、委員長就任あいさつ、理事互選、大臣あいさつ、人事院勧告説明、給与法提案理由説明、質疑を行ってしまいました。

 その際の委員長のあいさつは、皮肉としか言いようがありません。野党最大会派の自民党と第二会派の公明党の理事、委員の姿が見えない中、委員各位の御指導、御協力を賜り、公正な委員会運営を図ってまいりたいと高らかに宣言したのであります。一体、だれの、どういった行為で我々が委員会の欠席という手段をとらなくてはならなかったのか。公正な立場にある委員長としての自覚が全く欠如している、ゆゆしき発言ではありませんか。

 全く情けない実態。これが、国権の最高機関たる国会の一翼を担う衆議院、その常任委員会の一つである総務委員会の一こまなのであります。

 このような上辺だけの発言が許されてよいのでしょうか。今や言行不一致は鳩山政権の常套手段となっていますが、国民の政治への信頼失墜を招くこのような行為が許されるわけがありません。

 さすがに不公正過ぎると御自身が気づいたのでしょう。初めて与野党全会派がそろう委員会となった十一月二十六日、近藤昭一君は、ここ数日間の委員会運営が円滑でなかったことについてはまことに遺憾である、今後は委員長として円満なる委員会の運営に努めたいと発言し、それまでの一連の委員会運営に不手際があったことを認めて、陳謝いたしました。

 私は、この率直な言葉には、近藤昭一君の高い見識と豊富な経験、誠実な性格があらわれているとの認識を改めて確認し、言葉どおり、公正で円満な委員会運営が行われるよう、心から御期待を申し上げました。

 しかし、その発言からわずか四日後、十一月三十日の理事懇談会において、またもや与野党の一致を見ないまま、翌十二月一日の委員会を職権で強行にセットしたのであります。そして、十二月一日、我が党が欠席する中、委員会の開会を強行し、郵政株式売却凍結法の提案理由説明、質疑、採決を行った上、議院運営委員会に本会議への緊急上程を申し入れました。

 二度にわたって公正な委員会の運営を宣言した委員長あいさつの内容とは全くの裏腹であるこれらの運営が、同法案の成立を急ぐ政府・与党の強い意向に沿ったものであることは間違いありません。当時の新聞を見ると、衆参の民主党国対委員長に対し、会期末までに仕上げるのがあなたたちの務めだ、しっかり頼むと、小沢幹事長が天の声を発した様子が報道されております。

 近藤昭一君、委員長あいさつは単なるセレモニーではありません。あなたがたった五日前に行ったばかりの反省と陳謝の弁は、一体何だったのですか。私たちが抱いた期待をいとも簡単に裏切るこうした行為を、どう釈明するのですか。常任委員長が公正で中立な立場を放棄して、どうして国民の信頼を得ることができるのでしょうか。

 近藤昭一君の一方的な運営は、ことしに入ってからも続きます。

 二月二十三日の理事懇談会において、翌二十四日の委員会を、与野党の合意なく、職権で強行にセットいたしました。そして、二十四日には、我が党が欠席する中、委員会の開会を強行し、地方税法、地方交付税法の質疑を行ったのであります。

 さらに、五月十日、理事懇談会において、翌十一日の委員会を、これまた与野党合意のないまま、職権で強行にセットいたしました。のみならず、質疑の時間配分まで、野党筆頭理事に何の相談もなく、一方的に決めようとする与党側の主張を全面的に受け入れ、決定したのであります。

 十一日には、我が党は委員会に出席して、委員長及び与党の強引な運営に強く抗議しましたが、近藤昭一君は、休憩もせず、野党側に何の配慮も行わずに、予定どおり、一般質疑、放送法と高度テレビ利用促進法の提案理由説明を行ったのであります。

 そして、近藤昭一君は、続く五月二十三日の理事懇談会で、翌二十四日の委員会を職権で強行にセットいたしました。その二十四日、野党が激しく抗議する中、委員会の開会を強行し、放送法と高度テレビ利用促進法の質疑を進め、民主党理事による質疑打ち切りの動議をちゅうちょなく受け入れ、強行採決へ突き進んだのであります。

 民主党筆頭理事の福田昭夫君は二十三日の理事懇談会で採決、緊急上程を提案しましたが、実はそのとき、放送法に関する与野党の実務者による真摯な修正協議がまだ始まったばかりでありました。そして、採決が行われたのは、その提案の翌日であります。いかに近藤昭一君が与党の意向を受けた運営に徹しているか、御理解いただけるものと思います。

 近藤昭一君の暴走はとどまるところを知りません。

 強行採決を行ったその日のうちに、翌二十六日正午の理事懇談会を職権でセット。二十六日に野党四党がそろって自分の解任決議案を提出するとの動きを察知するや、正午の理事懇談会を待たず、解任決議案提出二分前の午前十一時二十三分に、職権で二十七、二十八日両日の委員会をセットしたのであります。

 何をそんなに急いでいるのですか。まさか、まさか郵政改革法の審議を強行に進めるためではないでしょうね。

 前回の郵政民営化法案の審議のときには、国民の広範な議論を喚起しながら、実に五十日間、質疑二十回、計百二十時間、参考人質疑四回、地方公聴会三カ所という、慎重かつ十分な審議を行いましたが、今回も、郵政改革と銘打っている以上、もちろん前回に準じた、いや、前回以上に審議を尽くしていただけるものと信じて疑いません。

 しかし、現状は、二十七、二十八日両日の委員会セットに関しては、もはや、修正協議だけではなく、筆頭間協議も理事懇談会すらも行わせず、委員会の定例日すらも無視するという、顔に似合わない極悪非道ぶりを発揮したのであります。近藤昭一君の名は、戦後日本の憲政史において、劣悪きわまりない常任委員長として記録と記憶に残ることになるでありましょう。

 以上申し上げてきたとおり、総務委員長近藤昭一君の運営手法は、与野党による合意形成を全く重視せず、与党側にのみ全面的に配慮した運営に終始一貫しております。近藤昭一君には、委員長の職責として最も優先されるべき公平性が全く欠落しており、これ以上その職にとどまっていただくわけにはまいりません。

 総務委員長近藤昭一君の解任を求める第二の理由は、放送法の法案審議において、我が党の資料要求を理不尽に拒否する与党に加担するとともに、修正協議を打ち切り、審議不十分のまま、採決、本会議緊急上程を行ったことであります。

 今回提出された放送法改正案は、制定以来六十年ぶりという全面的な大改正であります。

 それにもかかわらず、これまでの通信・放送の総合的な法体系に関する議論の俎上に一度ものせられたことのないまま、また、昨年来より民主党政権においても具体的な議論の形跡もなく、総務大臣の強い意向により突然追加された項目が含まれております。その内容というのも、報道に対する権力の恣意的な介入にもなり得る条項でありまして、国民の自由と権利を守るためにも慎重に審議をするべきものでありました。

 参考人質疑では、五人の参考人全員から懸念が示されたのを初め、総務省の今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラムにおける構成員からも、リセットして出直すべきだとの声が上がっております。慎重審議を求める声は、野党だけではなく、国民の声でもあるのです。

 法案審議では、自民党、公明党がそれぞれ提出した修正案に基づき、与野党間で修正協議が行われてきましたが、二十五日、与党は、野党との円満な形で決着させる機会を突如打ち切った上、民主、社民共同で、修正協議を踏まえた修正案とやらを一方的に提出してまいりました。近藤昭一君は、野党の、与党修正案に対する質疑を改めて行いたいとの当然の主張を無視する形で、この突然出された与党提出案を委員会の議題として加えたのであります。

 それならばこの場で与党修正案に質疑したいとの公明党、共産党の申し出に対しては、今度は、修正協議の結果出された修正案であり、質問は政府にしてほしいと、議題に加えておきながら質問をさせないという、およそ委員会運営の常識では全く考えられない野党議員からの質問権剥奪行為に及んだのであります。

 まずは、十分な修正協議を行った上で合意を目指すのがあるべき姿ではありませんか。さらに、与党が修正案を出したのであれば、与党の修正案を踏まえた上で、再度十分な質疑時間を確保し検討するというのが議会制民主主義の原則的ルールではありませんか。

 そもそも私たちは、今回の放送法改正が六十年ぶりの大改正ということで、二十時間の審議時間を要求していたのであります。しかし、実際には、政府に対する質疑は約十時間と、半分で打ち切られる始末であります。近年繰り返された放送法の改正とは比べ物にならない大改正なのであります。国民の権利に直結する内容を持つ改正案なのです。それにもかかわらず、強硬に質疑を許さないというのは、これこそ権力の濫用にほかなりません。

 修正協議による合意形成に応じないのは、今回の放送法改正案だけではありませんでした。

 我が党は、先月、公明党、みんなの党と共同提案という形で独立行政法人通則法の対案を提出いたしました。独立行政法人制度の効率化、透明化を図るためには、政府案と比べて、私ども野党三党が提出した対案の方が実効的なのは、だれの目にも明らかでありました。天下りの根絶をうたい、事業仕分けをセンセーショナルに行って無駄の撲滅をアピールされている政府ならば、当然、何らかの形で我々の提案を受け入れていただけるものと期待し、政府案の修正協議を要請いたしました。

 しかし、修正協議にすら一切応じることなく、政府提出の独立行政法人通則法は、将来ビジョンも示されることなく、あいまいなままに、不完全で中途半端な内容のまま委員会を通過したのは周知のとおりであります。

 良識ある議員の皆さん、国民の皆さんは、何かおかしいとお気づきになるはずです。

 近藤昭一君の委員会運営の手法は、真にこの国のことを思って協議をするのではなく、政府・与党の一方的な権力の誇示であり、実に形式的な、上辺だけのアピールに終始しているのが実態です。採決を急ぎたい与党の思惑により、与野党各会派による真摯な修正協議がまさに形だけのものとなり、ひいては議会運営の形骸化を招いている始末です。与野党の合意形成にほとんど努力をせず、与党に加担する近藤昭一君は、民主党独裁政治を総務委員会の場でもありありと示したものであり、その責任は極めて重いのであります。

 また、五月十三日の総務委員会において、我が党の小里泰弘君が、政治家と放送事業者との癒着の疑惑を追及いたしました。小沢一郎民主党幹事長と幹事長の地元のテレビ局である岩手めんこいテレビとの関係であります。

 岩手めんこいテレビ局が開設される際、大株主として、実際に株を購入していない人たちの名前が載っているのではないか、その人たちは小沢幹事長とのつながりがある人たちではないのかとの疑惑が報道されております。

 言うまでもなく、公共性の高い放送事業者には、国民から疑惑を持たれないように努力をしなければならない、仮に疑惑を持たれた場合には、みずから積極的に説明し、疑惑を晴らしていく姿勢が必要です。そのためにも、十分な質疑時間の中で、癒着が生まれないような制度を検討することも総務委員会の重要な役割であることは言うまでもありません。

 我が党は、疑惑解明のため、岩手めんこいテレビの開設時から現在までの営業報告書、株主総会に提出された決算書の提出、民主党小沢幹事長、フジテレビの日枝会長の参考人招致を求めておりますが、与党はこれらの要求にほとんど応じておりません。

 とりわけ、岩手めんこいテレビの資料の提出要求については、過去五年以前の分の提出を政府・与党が拒否しました。政府・与党が拒否したのです。

 原口大臣が、当時、野党の筆頭理事だったときには、私どもが、与党として、要求のあった資料の請求には誠意を持って応じてまいりましたのとは、まさに百八十度の対応の違いであります。

 まず、総務省は、行政手続法に基づく行政指導によって同社側に資料提出を依頼するか、理事会での協議を待ちたいとの趣旨を主張し、与党も、国会として資料を求めるのは権力の濫用に当たると主張したのであります。しかし、一度公表された営業報告書の提出を求めることのどこが権力の濫用なのでありましょうか。

 政府と与党が一体となって、その権力を維持することに躍起になっており、国民の利益といったことは二の次、三の次にされているのではありませんか。口蹄疫の被害拡大をほったらかしにして海外出張を強行する大臣の方が、よほど権力の濫用、私物化だと思うのは私だけでしょうか。少なくとも、強行採決を繰り返す近藤昭一君の方がよほど権力を濫用しているのは間違いございません。

 我が党は、平成八年の同社の営業報告書の一部と思われる資料を独自に入手し、一部黒塗りにした上で、資料として委員に配付をいたしました。審議に先立ち、岩手めんこいテレビに事業報告書の一部かどうか確認をとりましたが、同社からは、回答を差し控えさせていただきますとの返答がありました。これは、資料提出を拒むための、政府・与党、岩手めんこいテレビによる連係プレーなのではありませんか。

 我々、議会に籍を置く者は、国民の代表として、放送事業者と政治家との癒着が疑われる案件を放置することなど許されるはずがありません。これは、立法府の自浄作用の観点から見て、与野党を問わず、厳しく求められる姿勢なのであります。このように、審議に必要な資料が時の権力者によって徹底的に阻害される状況で、一体どうやって放送事業の公正を確保することができましょう。

 現在の民主党を初めとする与党には自浄作用を果たそうとする姿勢が全く見られず、自分たちに都合の悪いことから逃げ続けているばかりであります。鳩山総理、小沢幹事長、石川知裕君、小林千代美君、政治と金にかかわるこれだけの民主党議員の疑惑、だれが、みずからの罪を認め、責任を認め、自浄作用を発揮しようとしましたか。

 体面を維持しようとする余り、みずからの説明責任から逃げ続けてばかりの民主党。事業仕分けを行い、子ども手当を支給して、国民に民主党政権になってよかったとアピールしているようですが、その陰で、独裁政治がまかり通っております。

 その子ども手当も、全額国庫負担の約束をあっさりとほごにし、地方負担を継続させた上で、満額支給は見送りになりました。さらに、ガソリンの暫定税率の廃止の公約も守られることなく継続となり、高速道路の新料金制度も見送り。まさに国民への裏切り行為は、数え上げれば切りがありません。

 日本郵政の社長らも事実上天下りであることは明らかであるにもかかわらず、あっせんがなければ天下りではないという解釈を持ち出して、何とか正当化しようと、醜い言いわけを重ねてまいりました。

 このような、自分の都合しか考えない無節操な民主党の姿勢を端的にあらわして暴走を繰り返す近藤昭一君の委員会運営は、言語道断であり、その責任を厳しく問わなければなりません。

 委員長に就任した最初の委員会から暴挙を行い、御自身が就任の際に二度にわたって宣言した公正や円満といった運営が全くなされていない以上、明らかに委員長としては不適格であり、本来ならば、みずからの判断でおやめになるべき状況であると言えます。

 私どもは、二十五日の総務委員会終了後、近藤君自身が何らかの判断をされるものとお待ちを申し上げておりました。しかし、そのような良識が御本人並びに民主党側から全く示されないどころか、委員長職権が濫用され続ける事態を重く受けとめ、本解任決議案を提出した次第であります。

 与党の皆さんには、権力の傘に隠れるのではなく、本決議案に御賛同していただくことで議会人としての最低限の良識を示していただきたいと思います。

 国民が望んでいることは何なのか、いま一度胸に手を当てて考えていただきたい。今や鳩山政権の常套手段となった強行採決で、本当に国民の利益にかなうのか。与党側の公正で円満な対応を切に切に御期待申し上げ、趣旨の説明とさせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 討論の通告があります。順次これを許します。大谷啓君。

    〔大谷啓君登壇〕

大谷啓君 民主党の大谷啓でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました総務委員長近藤昭一君解任決議案に対して、断固反対の立場から討論を行います。(拍手)

 反対の理由は、本解任決議案が、野党諸君の党利党略の国会対応の末の暴挙にほかならないからであります。

 これまでも、野党諸君は、今国会でさまざまな審議の先送り、引き延ばしを重ねてきました。

 今回の総務委員会における放送法等の改正にかかわる質疑でも、人を罪に陥れるような、事実を強引にこじつけた発言で大臣を誹謗中傷するなど、議題に全く関連しない質疑に時間を割いていたのであります。

 国会を、党利党略の場ではなく、真摯な国民の議論の場にしようと努力してこられた近藤委員長は、強引と非難されるような委員会運営は一切してこなかったと私から断言できます。

 そもそも、放送・情報通信にかかわる法体系の総合的な見直しは、本来ならば、もっと早く、自公政権時代に対応しておかなければならなかったのであります。

 本法案は、通信と放送の融合時代に即した大幅な改正を行うもので、情報通信、放送分野における新サービスの創出やさらなる技術革新に資するもので、多くの関係者が早期の成立を待ち望んでおります。

 また、この法案は、マスメディア集中排除原則の基準を法定化するとともに、地方ローカル局が直面する厳しい経営状況を踏まえた措置をとることで、民主主義の健全な発展に資するメディアの多元性、多様性を確保する重要な法案であります。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

大谷啓君(続) 近藤委員長は、本法案の迅速な成立が求められる中、さまざまな関係者や有識者からの参考人質疑も行い、丁寧な審議を心がけてきました。

 審議の積み重ねの中で、論点は絞られ、我々与党も、野党諸君からの放送法改正案に対する修正の提案に耳を傾けてまいりました。積極的に修正協議も行い、真摯に話し合いを重ねてきたのであります。しかし、とにかく審議を引き延ばしたいという野党諸君の思惑から、残念ながら最終合意が調いませんでした。それを受け、修正協議の中で、与野党が共通認識を持っていた項目について我々与党が修正案を提出し、野党諸君に採決に応じるように求めましたが、それすら拒否されたのであります。

 近藤委員長は、まさに断腸の思いで委員会の採決を決断したのです。郵政改革法案の審議を控え、小沢幹事長の指示で突然採決が決められたなどと野党諸君は言いますが、そのような妄想は一切やめていただきたい。

 野党諸君は事あるごとに小沢幹事長の独裁などと批判しますが、私たち民主党は、現場からすれば、大変風通しがよく、自由闊達な議論が行える極めて民主的な政党であると、私自身は誇りに思っております。

 今回の件も、論点は絞られ、もう採決の機が熟したがゆえの採決実施であり、その近藤委員長に対して解任決議案を提出し、ばり雑言を浴びせかける野党諸君の行為は、暴挙以外の何物でもありません。

 野党諸君は、審議を少しでもおくらせて、参議院選挙を前に与党の実績を一つでも少なくしてやろう、自分たちにとって都合の悪い郵政改革法案の審議を参議院選挙の後に先送りしようと考えているんじゃないですか。

 このような見え透いた党利党略の上の委員長解任決議案には断固反対であり、議員各位の良識により本解任決議案を速やかに否決されるようお願い申し上げます。

 最後に、野党諸君に対して、国民の生活を第一に考えた真摯な国会運営に協力していただくことを心より要請し、反対討論を終わります。(拍手)

議長(横路孝弘君) 山口俊一君。

    〔山口俊一君登壇〕

山口俊一君 自由民主党の山口俊一であります。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表し、ただいま議題となりました総務委員長近藤昭一君解任決議案に賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 近藤昭一君の与党に偏った一方的、強引な運営手法は、趣旨弁明でるる説明があったところであり、近藤委員長のお人柄を知る者として大変残念でありますが、これに全面的に賛成するものであります。

 私がここで申し上げたいのは、五月二十五日の総務委員会で行われたことが、ただの強行採決にとどまらないということであります。すなわち、法案の修正協議という与野党間の信頼に基づく真摯な議論が断ち切られ、与野党の信頼を崩壊させる暴挙が行われたのであります。その点、先ほどの反対討論をなさったお話を聞いておりましたが、残念ながら、若干事実誤認があるようであります。

 そうした暴挙を主導したのは、言うまでもなく、民主党国会対策委員会であります。そして、影響を受けたのは、我々野党にとどまりません。近藤委員長、そして修正協議の民主党の実務者であった黄川田議員、あなたもこの暴挙の被害者なのではありませんか。

 二十四日の修正協議では、与野党双方から忌憚のない意見があり、電波監理審議会に関する規定を削除する点については、おおむねの合意を見ました。また、その他についても、各党がそれぞれ持ち帰り、委員会審議等も踏まえながら協議を継続していこうということになっておりました。

 このように、与野党間で意見の違いはあれ、円満な形で協議が進んだのも、与野党の実務者の誠実な姿勢によるところが大きく、それはまさに議会政治のあるべき姿と言っても差し支えないでありましょう。私は、このまま修正協議が進めば恐らく何らかの与野党合意ができるものと大変大きな期待をいたしておったわけであります。

 しかし、その最中、修正協議に参加をしておらない民主党の筆頭理事の福田議員が、民主党国対の指令を受けて、修正協議は終わった、まとまりそうもないと突然主張して、どうぞ職権を使って委員会をセットしてくださいと、近藤委員長に職権の濫用を求めたのであります。翌二十五日の修正協議の際も、福田議員は、協議の行われておる場に何度も入り込み、その都度打ち切りを宣言なさいました。

 さらに、驚くべきことに、昨日、筆頭間協議や理事懇談会をさえ経ずして、解任決議案提出の何と二分前に、一方的に二十七、二十八の委員会を決めたわけであります。民主党の皆さんは二分前だから瑕疵はないとおっしゃるかもわかりませんが、この言いわけは恥の上塗りでしかなく、こっけいにすら思えてしまうのは、恐らく私だけではないと思います。

 このような言動は、与野党間の信頼関係を壊し、真摯な協議をないがしろにするものであり、激しい憤りを感じております。本解任決議案は、形式上、総務委員長近藤昭一君に対するものでありますが、私の気持ちとしては、民主党の幹事長、国対委員長、そして筆頭理事への辞職勧告の意味も込められております。

 黄川田さん、修正協議が民主党国対の方針で一方的に断ち切られ、さぞ御無念のことと思います。それでも、あなたは、委員長の不手際で与党提案の修正案が議題となっておるかどうかさえ定かでない中、堂々と答弁に立たれました。

 かつて、私と現大臣であります原口先生が筆頭理事を総務委員会で務めておったときに、さまざまな法案の提案、修正あるいは日程協議等、お互いに信頼をしつつ、議論をして、合意を図ってまいりました。ともに実は身内を説得しながら、胃が痛くなるような毎日でありました。

 しかるに、今の国会、委員会は、信義もルールもない、国民不在の廃墟と化しつつあります。

 どうか、いま一度冷静に御自分の胸に問うていただきたい。このような良識のかけらもない一方的な国会運営が続いていいのかどうか。そして、間違っている行為に対しては、本解任決議案に賛意を示すことで、毅然と、間違っていると意思表示をしていただきたい。

 民主党を初めとする与党の国会運営は、法律に反していない限り何をしてもいいという、およそ民主的とはほど遠い発想に基づいており、行き着く先は、我が国の民主主義の形骸化であり、破壊であります。

 近藤昭一君が、政権交代後初めての総務委員会で、自民党と公明党が欠席をする中で、委員各位の御指導、御協力を賜り、公正な委員会運営を図ってまいりたいとの委員長就任あいさつをしたのも、就任あいさつという決められた手続さえ踏めば、その後の議事を進めることができる、この際中身や出席会派はどうでもいいという、民主党国対の思惑が見え見えであります。

 また、近藤君が就任以来その職権を濫用して委員会をセットすること、その回数、何と五回を数えます。これも、理事会や理事懇さえ開けば何をどう決めても瑕疵はないんだというふうな意思のあらわれにほかなりません。しかし、我が党の大野筆頭理事が何度も何度もその場で指摘をしておるように、与党の言うとおりの結論ありきの理事会や理事懇ならば、全く開く必要がなくなってしまうのではありませんか。国会の空洞化にほかなりません。

 さきに行われた独法通則法改正案の審議では、自民、公明、みんなの野党三党共同で修正案を提出させていただきました。政府案に対しては、政府、与党双方から法案の不備を認める発言がありました。政府提出法案をよりよいものに修正をするのは我々立法府だけに認められた責務であり、まさにその責務を果たす環境が整っていたのです。しかし、与党は、野党が申し入れた修正の内容の検討すらせず、修正協議そのものを拒否してしまいました。

 こうした独善的な、強権的なやり方は、国民不在であり、少数意見の圧殺であり、ひいては独裁への第一歩と言わざるを得ません。

 さらに、今回、放送法改正案の審議においても、修正協議を一方的に打ち切って、身勝手な修正案を突如提出し、採決を強行してしまいました。

 また、与党が放送法の採決、緊急上程を提案し、近藤昭一君がそれに基づく時間設定を職権で決めたことも同様であります。緊急上程は、この法案は審議を急ぐので緊急的に当日の本会議の議題に加えてもらいましょうという与野党の広範な合意が必要であるという議会運営上のルールがあります。しかし、民主党は、それが法規上のルールでないことから、与党だけの意思で緊急上程を行おうと画策したに違いありません。

 当日の議院運営委員会も、総務委員会での強行採決、緊急上程の申し入れを見越して、理事会、委員会の開会を一方的におくらせてしまいました。与野党の合意がなくても緊急上程の申し入れさえあれば受け入れるとの、議運委の意思が透けて見えるわけであります。

 以上、総務委員会を中心に、民主主義の形骸化につながる与党の国会運営を具体的に申し上げてまいりました。

 議会運営とそのプロセスは、国民に開かれたものでなくてはなりません。与党の一方的な都合で、形式的に手続さえ踏んで何もかも強引に物事を進めるということでは、実際の議論は意味をなさず、国民の政治への信頼は失われるばかりです。だからこそ、国民の意見を代表する広範な各会派による開かれた協議は、最大限尊重されなくてはなりません。

 その観点からも、今回、放送法の修正協議が行われているさなかに与党が一方的にその協議を打ち切り、採決を強行したことは、許されざる暴挙であります。その与党の暴力的行為を許し、放置し、みずから議事進行を積極的に進めた総務委員長近藤昭一君の責任が、残念ながら、厳しく問われなくてはならないということを強く申し上げて、私の賛成討論といたします。(拍手)

議長(横路孝弘君) 稲津久君。

    〔稲津久君登壇〕

稲津久君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました総務委員長近藤昭一君解任決議案につきまして、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 一昨日の総務委員会における放送法の審議途中において、野党各党が強く反対したにもかかわらず、近藤委員長が、都合わずか十二時間余りの審議で一方的に質疑を打ち切り、採決を強行したことは、極めて遺憾であり、まさに暴挙と言わざるを得ません。

 放送法については、公明党も三項目にわたる修正案を提出し、修正要求を求めてきたところであります。民主党は、事もあろうに、採決の当日、三項目のうち一項目だけを盗み取るように、与党案として突如提出したあげく、修正案を可決させたのであります。

 そもそも総務委員長は、国会法に定められた院の役員であり、委員会運営においては、党派に偏することなく、公平な運営に心がけることが求められるのであります。しかるに、近藤委員長は、その職責の重要性を全く理解していないのではないかと言わざるを得ません。

 思えば、昨年秋の臨時国会において、自民、公明、みんなの党が欠席する中、総務委員会を強行開会し、委員長就任あいさつを行うなど、およそ良識ある委員長とは考えられない行動をとり、委員会運営にも大きな混乱をもたらしました。しかも、そのあいさつの中で、近藤委員長は「私も、その職責の重要性を認識するとともに、委員各位の御指導、御協力を賜りまして、公正なる委員会運営を図ってまいりたいと存じます。」と述べていますが、言葉と行動が全く一致していないのであります。

 今回の放送法改正は、通信・放送分野のデジタル化に対応して各種の制度を統合するなど、法制定以来の法体系そのものの抜本改正であり、しかも、電波監理審議会による番組編集への介入が懸念されるなど、慎重審議が求められる法案であります。

 近藤委員長は、一時期マスコミに籍を置いた経歴の持ち主であります。にもかかわらず、放送法という報道機関の根本法の審議を強引に進めるなどとは、およそマスコミ界出身の議員とは思われない暴走行為と言わざるを得ません。

 今国会における民主党の数を頼んだ強引な議会運営の手法は、目に余るものがあります。議会制民主主義をないがしろにする姿勢は、断じて容認できません。

 今回の強行採決の背景には、先日、小沢幹事長が、全国郵便局長会の総会において、郵政改革法案の今国会成立を約束すると明言したことに起因すると思われます。次々と明らかになる失政、公約違反の連続で鳩山政権に対する国民の信頼が地に落ちる中、参議院選挙を目前に、何としても業界団体の票をつなぎとめたいとのゆがんだ選挙戦略が、このような形で国会審議を暴走、形骸化させていることは明白であります。

 近藤総務委員長は、この民主党の暴走に一方的に追随するのみで、全く反省の姿が見られないのは極めて遺憾であります。しかも、失敗したとはいえ、与野党合意のないまま本会議緊急上程を画策した罪も重大であります。与党に一方的に偏り、恣意的運営を行うことは、総務委員長としてまさに失格であると言わざるを得ません。

 以上の理由から、近藤昭一君にこの際強く反省を求め、解任決議案に対する私の賛成討論といたします。(拍手)

議長(横路孝弘君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、近藤昭一総務委員長解任決議案に賛成の討論を行います。(拍手)

 近藤昭一委員長は、二十五日の委員会において、与党の強行方針に唯々諾々と従って、放送法改正案の質疑を終局し、野党の質疑権を封殺して、採決を強行したのであります。委員会の公平公正な運営を尽くすべき委員長の職責を投げ捨てたものであり、委員長解任は当然であります。

 今回の放送法等改正案は、制定以来六十年ぶりの大改正であり、放送の自由にかかわるだけに慎重な審議が求められておりました。野党から修正案が提出をされ、与野党の修正協議が開始をされ、参考人質疑を行って、いよいよ本格的な審議に移ろうとしたやさきに強行採決が行われたのであります。

 二十五日の朝の理事会で、与党は、修正協議打ち切りを一方的に主張し、与党修正案を提出しました。これに対して、野党側は、修正案への質問通告は前日十六時までに行うという理事会合意があることを指摘し、与党修正案に対する質疑時間を後日保証することを求めました。

 近藤委員長は、与党修正案の趣旨説明はさせていただく、その質疑については筆頭間で協議いただきたいと仕切って、委員会を開会したのであります。この経過は、速記録からも明瞭であります。だから、二十五日の最初の質疑者、公明党の西議員と、私塩川は、与党修正案提出者への質疑は留保をして政府質疑を行ったのであります。

 ところが、近藤昭一委員長は、こうしたみずからが仕切った議事さえも貫かず、なし崩し的に与党修正案に対する質疑を開始し、与党の動議に従って強行採決の暴挙に至ったのであります。しかも、緊急上程の決議まで強行し、乱暴きわまりない委員会運営を行ったのであります。断じて容認できません。

 加えて、重大な問題は、本法案の緊急上程を見越して十二時の議院運営委員会を先延ばしにし、何の合理的な理由もなく十三時の本会議を延期するという、まさに前代未聞の珍事まで引き起こしたのであります。

 その背景には、郵政法案と派遣法は何が何でも押し通すという小沢一郎幹事長の指示があったのであります。幹事長の指示が発せられるや否や、それまでの与野党協議や経過を投げ捨てて強行に走る、議会制民主主義を踏みにじって恥じない民主党の姿勢を厳しく糾弾するものであります。

 そもそも、この法案は、放送に対する総務大臣の権限強化を内容とする法案です。

 その第一は、総務大臣が放送番組の編集事業者を直接審査、認定することにし、認定事業者が番組編集準則に違反していると判断すれば、業務停止命令まで可能にしたことであります。

 現行の放送局免許は、電波法に基づく施設免許であります。これは、番組内容に対する行政の直接的な審査、関与を防ぐことで、放送の自由を制度的かつ厳格に保障してきたものであります。この原則を変えることは、番組内容への行政の恣意的な介入を招きかねません。

 第二は、マスメディア集中排除原則の出資上限規制の法定化を口実に、新たに集中排除原則違反に対する免許取り消し権限を総務大臣に与えたことです。

 与党修正案によって、電波監理審議会の権限強化規定を削除したとしても、総務大臣の権限強化法案という本質は、何ら変わるものではありません。

 本法案は、NHK会長の権限強化も盛り込んでいます。国民の代表としてNHKの執行を監督する経営委員会に、監督される側の会長が加わることは、経営委員会の監督機能を弱める一方で、会長への権限集中を一層強めるものとしかなりません。

 こうした重大な内容を持つ本法案を、十分な審議を尽くさず、強行採決をした近藤昭一委員長と与党の責任は重大であり、解任は当然です。

 以上申し述べ、賛成討論を終わります。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 採決いたします。

 この採決は記名投票をもって行います。

 本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。――議場閉鎖。

 氏名点呼を命じます。

    〔参事氏名を点呼〕

    〔各員投票〕

議長(横路孝弘君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。

 投票を計算させます。

    〔参事投票を計算〕

議長(横路孝弘君) 投票の結果を事務総長から報告させます。

    〔事務総長報告〕

 投票総数 四百五十三

  可とする者(白票)       百四十三

  否とする者(青票)        三百十

議長(横路孝弘君) 右の結果、総務委員長近藤昭一君解任決議案は否決されました。(拍手)

    ―――――――――――――

浜田靖一君外六名提出総務委員長近藤昭一君解任決議案を可とする議員の氏名

あべ  俊子君   逢沢  一郎君   赤澤  亮正君   秋葉  賢也君

麻生  太郎君   甘利   明君   井上  信治君   伊東  良孝君

伊吹  文明君   石田  真敏君   石破   茂君   石原  伸晃君

稲田  朋美君   今村  雅弘君   岩屋   毅君   江渡  聡徳君

江藤   拓君   遠藤  利明君   小里  泰弘君   小野寺 五典君

小渕  優子君   大島  理森君   大野  功統君   加藤  勝信君

加藤  紘一君   金子  一義君   金子  恭之君   金田  勝年君

鴨下  一郎君   川崎  二郎君   河村  建夫君   木村  太郎君

岸田  文雄君   北村  茂男君   北村  誠吾君   小池 百合子君

小泉 進次郎君   古賀   誠君   後藤田 正純君   河野  太郎君

高村  正彦君   近藤 三津枝君   佐田 玄一郎君   佐藤   勉君

齋藤   健君   坂本  哲志君   塩崎  恭久君   塩谷   立君

柴山  昌彦君   下村  博文君   新藤  義孝君   菅   義偉君

菅原  一秀君   田中  和徳君   田野瀬良太郎君   田村  憲久君

平   将明君   高市  早苗君   高木   毅君   竹下   亘君

竹本  直一君   武田  良太君   武部   勤君   橘  慶一郎君

棚橋  泰文君   谷   公一君   谷垣  禎一君   谷川  弥一君

谷畑   孝君   徳田   毅君   中川  秀直君   中谷   元君

中村 喜四郎君   永岡  桂子君   長島  忠美君   長勢  甚遠君

二階  俊博君   西野 あきら君   西村  康稔君   額賀 福志郎君

野田  聖子君   野田   毅君   馳    浩君   浜田  靖一君

林   幹雄君   平井 たくや君   福井   照君   福田  康夫君

古川  禎久君   古屋  圭司君   保利  耕輔君   細田  博之君

町村  信孝君   松浪  健太君   松野  博一君   松本   純君

三ッ矢 憲生君   宮腰  光寛君   村上 誠一郎君   村田  吉隆君

茂木  敏充君   森   英介君   森山   裕君   柳本  卓治君

山口  俊一君   山本  公一君   山本  幸三君   山本  有二君

吉野  正芳君   赤松  正雄君   池坊  保子君   石田  祝稔君

稲津   久君   漆原  良夫君   江田  康幸君   遠藤  乙彦君

大口  善徳君   斉藤  鉄夫君   高木 美智代君   竹内   譲君

遠山  清彦君   富田  茂之君   東   順治君   古屋  範子君

赤嶺  政賢君   笠井   亮君   穀田  恵二君   佐々木 憲昭君

志位  和夫君   塩川  鉄也君   高橋 千鶴子君   宮本  岳志君

吉井  英勝君   浅尾 慶一郎君   江田  憲司君   柿澤  未途君

山内  康一君   渡辺  喜美君   園田  博之君   与謝野  馨君

城内   実君   小泉  龍司君   衛藤 征士郎君

否とする議員の氏名

安住   淳君   阿久津 幸彦君   阿知波 吉信君   相原  史乃君

青木   愛君   赤松  広隆君   東   祥三君   網屋  信介君

荒井   聰君   五十嵐 文彦君   井戸 まさえ君   池田  元久君

石井   章君   石井 登志郎君   石毛 えい子君   石関  貴史君

石田  勝之君   石田  三示君   石田  芳弘君   石津  政雄君

石原 洋三郎君   石森  久嗣君   石山  敬貴君   泉   健太君

磯谷 香代子君   市村 浩一郎君   稲富  修二君   稲見  哲男君

今井  雅人君   内山   晃君   打越 あかし君   生方  幸夫君

江端  貴子君   枝野  幸男君   小川  淳也君   小沢  一郎君

小沢  鋭仁君   小野塚 勝俊君   小原   舞君   緒方 林太郎君

大泉 ひろこ君   大串  博志君   大島   敦君   大谷   啓君

大谷  信盛君   大西  健介君   大西  孝典君   大畠  章宏君

大山  昌宏君   太田  和美君   逢坂  誠二君   岡島  一正君

岡田  克也君   岡田  康裕君   岡本  英子君   岡本  充功君

奥田   建君   奥野 総一郎君   奥村  展三君   加藤   学君

加藤  公一君   鹿野  道彦君   海江田 万里君   柿沼  正明君

笠原 多見子君   梶原  康弘君   勝又 恒一郎君   金森   正君

金子  健一君   神山  洋介君   川内  博史君   川口   浩君

川口   博君   川越  孝洋君   川島 智太郎君   川端  達夫君

川村 秀三郎君   菅   直人君   木内  孝胤君   木村たけつか君

吉良  州司君   城井   崇君   黄川田  徹君   菊田 真紀子君

菊池長右ェ門君   岸本  周平君   北神  圭朗君   京野  公子君

工藤  仁美君   櫛渕  万里君   楠田  大蔵君   沓掛  哲男君

熊谷  貞俊君   熊田  篤嗣君   黒岩  宇洋君   黒田   雄君

桑原   功君   玄葉 光一郎君   小泉  俊明君   小平  忠正君

小林  興起君   小林 千代美君   小林  正枝君   小宮山 泰子君

小宮山 洋子君   小室  寿明君   小山  展弘君   古賀  一成君

古賀  敬章君   後藤  英友君   後藤   斎君   後藤  祐一君

郡   和子君   近藤  和也君   近藤  昭一君   近藤  洋介君

佐々木 隆博君   佐藤 ゆうこ君   斉木  武志君   斉藤   進君

齋藤   勁君   斎藤やすのり君   坂口  岳洋君   阪口  直人君

笹木  竜三君   階    猛君   篠原   孝君   柴橋  正直君

下条  みつ君   城島  光力君   白石  洋一君   神風  英男君

首藤  信彦君   瑞慶覧 長敏君   末松  義規君   杉本 かずみ君

菅川   洋君   鈴木  克昌君   鈴木  宗男君   仙谷  由人君

園田  康博君   空本  誠喜君   田島  一成君   田嶋   要君

田名部 匡代君   田中けいしゅう君   田中 眞紀子君   田中 美絵子君

田中  康夫君   田村  謙治君   平   智之君   高井  崇志君

高井  美穂君   高木  義明君   高野   守君   高橋  昭一君

高橋  英行君   高松  和夫君   高邑   勉君   高山  智司君

滝    実君   竹田  光明君   橘   秀徳君   玉木  朝子君

玉木 雄一郎君   玉城 デニー君   玉置  公良君   樽床  伸二君

中後   淳君   津川  祥吾君   津島  恭一君   辻    惠君

筒井  信隆君   手塚  仁雄君   寺田   学君   土肥  隆一君

道休 誠一郎君   富岡  芳忠君   豊田 潤多郎君   中井   洽君

中川   治君   中川  正春君   中島  政希君   中島  正純君

中津川 博郷君   中塚  一宏君   中根  康浩君   中野  寛成君

中野   譲君   中野渡 詔子君   中山  義活君   仲野  博子君

永江  孝子君   長尾   敬君   長島  昭久君   長島  一由君

長妻   昭君   長安   豊君   仁木  博文君   西村 智奈美君

野木   実君   野田  国義君   野田  佳彦君   羽田   孜君

萩原   仁君   橋本  清仁君   橋本  博明君   橋本   勉君

畑   浩治君   鉢呂  吉雄君   初鹿  明博君   鳩山 由紀夫君

花咲  宏基君   浜本   宏君   早川 久美子君   原口  一博君

伴野   豊君   樋口  俊一君   樋高   剛君   平岡  秀夫君

平野  博文君   平山  泰朗君   福嶋 健一郎君   福島  伸享君

福田  昭夫君   福田 衣里子君   藤田  一枝君   藤田  大助君

藤田  憲彦君   古川  元久君   古本 伸一郎君   細川  律夫君

細野  豪志君   本多  平直君   馬淵  澄夫君   前原  誠司君

牧   義夫君   牧野  聖修君   松岡  広隆君   松木けんこう君

松崎  公昭君   松崎  哲久君   松野  頼久君   松原   仁君

松宮   勲君   松本  大輔君   松本  剛明君   松本   龍君

三日月 大造君   三谷  光男君   三村  和也君   三宅  雪子君

三輪  信昭君   三井  辨雄君   水野  智彦君   皆吉  稲生君

宮崎  岳志君   宮島  大典君   向山  好一君   村井  宗明君

村上  史好君   村越  祐民君   室井  秀子君   本村 賢太郎君

森岡 洋一郎君   森本  和義君   森本  哲生君   森山  浩行君

矢崎  公二君   谷田川  元君   柳田  和己君   山尾 志桜里君

山岡  賢次君   山岡  達丸君   山口  和之君   山口   壯君

山崎  摩耶君   山崎   誠君   山田  良司君   山井  和則君

山花  郁夫君   山本  剛正君   湯原  俊二君   柚木  道義君

横粂  勝仁君   横光  克彦君   横山  北斗君   吉川  政重君

吉田   泉君   吉田 おさむ君   吉田  公一君   吉田  統彦君

笠   浩史君   和嶋  未希君   和田  隆志君   若井  康彦君

若泉  征三君   鷲尾 英一郎君   渡辺 浩一郎君   渡辺   周君

渡辺  義彦君   阿部  知子君   照屋  寛徳君   中島  隆利君

服部  良一君   吉泉  秀男君   亀井  静香君   下地  幹郎君

松下  忠洋君   石川  知裕君

     ――――◇―――――

 日程第一 放送法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(横路孝弘君) 日程第一、放送法等の一部を改正する法律案、日程第二、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長近藤昭一君。

    ―――――――――――――

 放送法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔近藤昭一君登壇〕

近藤昭一君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 両法律案のうち、まず、放送法等の一部を改正する法律案は、通信・放送分野におけるデジタル化の進展に対応した規制の整理合理化を図るため、放送法、電波法及び電気通信事業法について、各種の放送形態に対する規制を統合するとともに、無線局の免許及び放送業務の認定の制度を弾力化する等所要の改正を行おうとするものであります。

 次に、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の一部を改正する法律案は、デジタルテレビジョン放送の送信設備等の整備を引き続き促進するため、平成二十二年十二月三十一日までとされている廃止期限を、平成二十七年三月三十一日まで延長しようとするものであります。

 放送法等一部改正案は、四月二十七日本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、同日に、高度テレビジョン放送施設整備法一部改正案は五月十一日に、それぞれ本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、去る十一日両案について原口総務大臣から提案理由の説明を聴取した後、十三日から質疑に入りました。

 十九日には、放送法等一部改正案に対し、石田真敏君外二名から、また西博義君から、それぞれ修正案が提出され、翌二十日提出者からそれぞれ趣旨の説明を聴取し、両案及び両修正案に対する質疑を行い、二十一日には参考人から意見を聴取いたしました。二十五日、黄川田徹君外一名から、電波監理審議会の建議に関する規定の削除を内容とする修正案が提出され、提出者から趣旨の説明を聴取した後、両案及び各修正案に対する質疑を行い、質疑を終局いたしました。

 次いで、順次採決いたしましたところ、まず、放送法等一部改正案に係る石田真敏君外二名提出の修正案及び西博義君提出の修正案はいずれも賛成少数をもって否決され、黄川田徹君外一名提出の修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、高度テレビジョン放送施設整備法一部改正案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 討論の通告があります。順次これを許します。谷公一君。

    〔谷公一君登壇〕

谷公一君 自由民主党の谷公一です。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表し、ただいま議題となりました内閣提出、放送法等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。(拍手)

 主要な法案の審議ごとに強行採決がされ、衆議院議長もそれに何も異を唱えずに静観するという、目に余る異常な国会運営に歯どめがかかりません。各委員会では、不正常のまま次回委員会日程が次々と決まっています。

 総務委員会では、二十五日にこの放送法の採決が修正協議を打ち切る形で強行に行われ、昨日には、理事懇談会も開かれていないのに、委員長の独断で、本日とあしたの委員会が立てられました。

 理事会も、理事懇談会も、修正協議も、筆頭間協議も、何もかも無視する巨大与党の大暴走です。野党との協議の場が必要ないのなら、もはや、この国は民主主義国家ではありません。民主主義の形骸化にほかなりません。

 二十五日の総務委員会での与党の暴挙は、先ほど我が党の山口俊一議員、公明党の稲津久議員、日本共産党の塩川鉄也議員らが厳しく指摘し、糾弾したとおりです。今や暴走特急と化した与党は、このまま、郵政改革法案の審議も、野党の意思を無視して強行するに違いありません。

 横路衆議院議長の公正で民主的な議会運営を強く強く求めます。どうか、議長におかれましては、実質的な民主主義を取り戻す責任と義務が課せられている、そういう思いで取り組んでいただきたいと思います。言うべきときに言うべきことをしっかりと言ってこそ、議長の権威が守られるのです。今声を発せずに、いつ発するのでしょうか。

 今国会には、政府より、独立行政法人通則法の一部を改正する法律案が提出されました。これは、つまみ食い法案と称されております。つまり、自公政権時代に提出された法案の一部を切り出し、自分の都合のいいところだけをつまみ食いして使ったわけであります。

 今回の放送法等の一部を改正する法律案について、私は、隠れみの法案と呼称いたします。

 政府は、今度は、自公政権時代に準備された法案を隠れみのに、これまでの通信・放送の総合的な法体系に関する審議の俎上に一度ものせられたことがない、また昨年来よりの民主党政権においても具体的な議論の形跡もない項目を、突然法案に追加してきたのであります。

 放送法制定以来という、六十年ぶりという全面的な大改正であるにもかかわらず、改正策定での過程の議論が一般にはほとんど公開されないまま、いえ、そもそも議論自体があったのかと、不明なまま突如追加されてきた項目とは、次の三点であります。

 一つは、NHK会長が経営委員会の新たなメンバーとなること、そして経営委員の欠格事由の緩和。二つ目に、電波監理審議会の権能強化。三つ目に、クロスメディア所有規制のあり方を含め検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすると、法案の附則に新たに盛り込んできたことであります。

 まず最初の、NHK会長が経営委員会のメンバーに加わることについて。

 昭和三十四年以前は会長が経営委員会のメンバーでありましたが、法改正により除外されました。その理由は、意思決定機関の経営委員会と、業務執行機関である会長の権限の均衡を失する可能性があるからというものです。

 それでも、NHKの組織は、権限が会長に集中しやすい、制度的に独裁的な体制が可能な仕組みであったので、またそのような実例も出てきたので、三年前の平成十九年の法改正により、経営委員会の監督権限の強化を図ったばかりでございます。

 NHKの統治機構に関する重大な改正が、政府内の審議会等で具体的な議論もなく、唐突な改正が行われるようでは、NHKのガバナンスの上からも適切ではありません。

 同時に、今回の経営委員の欠格事由の見直しについても、納得のいく答弁がなされていません。

 現行法で担保している欠格事由、すなわち、任命の日以前一年間において、放送の送受信機の製造・販売業者の役員であった者などは任命できないという条文、この立法の趣旨は尊重されるべきであり、本改正は行うべきではありません。

 二点目に、電波監理審議会に関する改正についてであります。

 放送上の問題については、自主規制機関として放送倫理・番組向上機構、いわゆるBPOが機能しています。にもかかわらず、放送表現における問題も含めて、政府からの独立性のない電波監理審議会が独自に調査、判断し、建議するという仕組みがなぜ必要なのか。新たな建議の仕組みをつくらなければ何が不都合か。

 前回の放送法改正の際、問題を起こした放送局に対し再発防止計画の提出を求めるとの条文案を我々の政権が入れた際には、当時の民主党が、行政裁量の範囲が不明確で広過ぎるとの理由で削除要求し、修正案が成立した経緯があります。そのときの民主党筆頭理事は、原口総務大臣、あなたであったではありませんか。

 今回は、そのとき以上に、憲法の保障する表現の自由の侵害、もしくは放送現場に十分な萎縮効果を生みそうな項目を盛り込んできました。

 本改正については、関係団体を初め有識者などから、電波監理審議会の権能強化がメディア規制につながりかねないとの懸念が生じるとの意見表明が多数発せられており、先日行われました参考人質疑でも、全員から、だれ一人の例外もなく、表現の自由にかかわる問題であることから、慎重に審議を進めるべきとの意見が表明され、今回、政府案より削除する修正がなされることとなりました。

 三番目に、クロスメディア規制のあり方を今後検討すると附則に挿入したことについてであります。

 広範な課題を含むクロスメディア規制のあり方を附則にしたこと、今後の議論の方向性等、原口大臣からは納得のいく答弁が何らなされていません。全く唐突な感じです。

 今後、重要な問題を含んでいるだけに、中途半端な形で法案に盛り込むことは、必要以上の混乱と疑心暗鬼を招くことになります。多種多様の意見を聞きながら慎重に進める国民的な議論がなされなければなりません。附則で盛り込むことには反対であります。

 五月二十四日の報道によれば、小沢幹事長が郵政法案の今国会成立を全国郵便局長会に約束したそうであります。どこの幹事長が何をだれに言っても構いませんが、私は次のくだりを読んだとき、怒りを覚え、そして唖然としました。そこには、総会に同席した佐藤泰介参議院総務委員長は、最終盤に相当強引なことをやらないといけないと述べ、強行採決も辞さない意向を明らかにしたと報道されております。

 公正でなければならない国会の常任委員長が公の場でこのような発言をすること自体、私には信じられません。この方は、立法府の常任委員長としての矜持をお持ちではないのでしょう。この方は、天の声をにしきの御旗にしてせっせと働く中間管理職なのでしょう。ヒラメのように最高実力者の動きを見ながらその指示に唯々諾々と従う、多くの与党議員のお一人なのでしょう。

 総務委員会での強行採決も、法案成立を約束なさった大幹事長の気持ちをそんたくし、功を争うかのように強行採決したのでしょう。

 鳩山内閣は、時がたてばたつほど、国民の期待を失い、見放され、信頼を失ってきています。時がたてばたつほど、政策のぶれがあらわになり、政策の中身の粗さが、そしてまた政策のもたらす悪影響が明らかになり、危機管理が試されたときも極めてお粗末な対応しかできないということが、今回の口蹄疫対策で白日のもとにさらされました。このままでは、間違いなく、日本が、我が国が壊れてしまいます。

 一方、内閣支持率低下に反比例して、国会運営は、強引に、強圧的に、そして暴力的になってきています。焦りといら立ちとおびえが反映され、正常な感覚を失いつつあると言っていいでしょう。

議長(横路孝弘君) 谷公一君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。

谷公一君(続) 私たちは、前政権の施策を隠れみのに何の議論もせず、どさくさに紛れて、数の力で放送法等を改正するようなことに、到底賛成などできるわけはありません。

 以上申しまして、私の討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(横路孝弘君) 野田国義君。

    〔野田国義君登壇〕

野田国義君 民主党の野田国義です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出の放送法等の一部を改正する法律案、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論をさせていただきます。(拍手)

 今回の放送法等の改正は、実に六十年ぶりの法体系の見直しを行うものであります。近年の放送や情報通信技術の急速な発展により、通信と放送の融合が進展してきた現実を踏まえ、今日の技術や市場に合った法体系に見直しをいたしております。

 以下、二法案の主なすぐれた点について具体的に申し上げます。

 第一に、放送関連の四法を一体化し、有線テレビジョン放送、有線ラジオ放送及び電気通信役務利用放送の間で異なっていた一般放送の参入制度を、登録を原則とする制度に整理している点であります。

 この措置により、放送の種類による参入制度の相違が整理合理化されるとともに、新規参入しやすくなる効果が期待できるところであります。

 第二に、基幹放送について、現行の無線局免許のみによる参入手続に加えて、無線局の設置、運用のハード部分と放送業務のソフト部分を分離することを希望する事業者のために、無線局の免許と放送業務の認定による参入手続を選択できるようにしているところであります。

 第三に、一つの無線局を通信と放送の双方の目的に利用可能とする免許制度に改めている点であります。

 これにより、通信と放送の融合時代に即した無線局の利用が可能になり、事業者にとっても経営の選択の幅が拡大をいたします。この結果、通信・放送が融合した新たなサービスの創出や新規参入など、市場の活性化が期待できるところであります。

 第四に、放送の多元性、多様性を確保するために設けられているマスメディア集中排除原則の基本的な部分を法定化している点であります。

 これまで、複数の基幹放送事業者に対する出資基準は省令に委任されてきましたが、マスメディア集中排除原則が民主主義の健全な発展に資する重要な役割を果たしていることを考えれば、その範囲を法定化し、民意を反映した国会のコントロールのもとに置くのは当然の措置だと考えます。

 第五に、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法の期限を延長している点であります。

 地上デジタル放送への完全移行が来年七月に迫ってきている中で、移行への準備のペースを緩めるわけにはいきません。本法の延長により、地上デジタル放送の施設に対する支援措置なども延長されることとなるところであります。

 与党は、放送法等改正案に対して、電波監理審議会に調査、建議機能を加える規定を排除する修正案を提出いたしております。総務委員会の審議を通じて、この電波監理審議会に関する改正が言論の自由を守るため、あくまでも放送行政のあり方等に関して大局的な見地から提言を行うことを想定しているものであるということは理解できましたが、しかし、参考人質疑における有識者の皆様からの意見などを踏まえ、修正を行い、今後議論を深めていくべきだと思います。

 これらが、日本の国際競争力強化、経済成長のためにも、一刻も早く成立させるべき法案であることを最後に申し上げ、賛成討論を終わらせていただきます。

 よろしくお願いいたします。(拍手)

議長(横路孝弘君) 西博義君。

    〔西博義君登壇〕

西博義君 公明党の西博義でございます。

 私は、公明党を代表して、放送法等の一部を改正する法律案に対しまして、反対の立場で討論いたします。(拍手)

 まず初めに、六十年ぶりの大改正と言われるこの法案について、与野党が修正協議を行っている最中にもかかわらず、与党側が強行採決を行ったことに対して、強く抗議をいたします。

 まだ修正協議の議論が始まったばかりの段階でありました。電波監理審議会の建議等についておおむね合意が得られ、他の修正項目についても検討を始めた矢先の突然の強行採決でありました。

 事は憲法の表現の自由にもかかわる事項であり、慎重に協議を行うべきであります。修正協議に応じておきながら、なぜ修正協議の結論を待てないのか、甚だ疑問であります。

 郵政改革法案の審議入りを急ぐために、重要な放送法案の修正協議をないがしろにしたというならば、まさに党利党略という以外にありません。このたびの政府・与党の暴挙を強く非難するものであります。

 さて、今回の放送法等の一部改正の一部の事項については、初めから拙速さが問題視されていました。

 放送法改正案の大部分の改正事項は、情報通信審議会で議論され、答申された内容を踏まえたものとなっていますが、電波監理審議会に建議を付与すること、日本放送協会会長を経営委員会の構成員とすること、経営委員の欠格事由を見直すこと、さらにクロスメディア所有規制のあり方について検討することなどは、突然、法案に盛り込まれました。

 情報通信審議会でも全く議論されておらず、ほかにもオープンな議論が行われたという事実もありません。これらの電波監理審議会の建議や日本放送協会の経営委員会の構成などの改正内容については、政策決定過程が極めて不透明であります。

 政府は、現在、今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラムを設置し、言論の自由を守るとりでを構築するための議論が行われています。みずから設置した機関での議論も待たずにこうした改正を行うことこそ、政府・与党の拙速な姿勢のあらわれではないでしょうか。

 放送法一部改正案の最大の問題は、電波監理審議会に、みずから調査審議し、建議できる権限を付与したことであります。

 建議等ができる重要事項としては、放送法の目的規定をそのまま条文化しています。つまり、電波監理審議会は、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保することに関する重要事項」及び「放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすることに関する重要事項」について、みずから調査審議し、建議することができるようになります。

 これらの規定が非常にあいまいで、電波監理審議会の権限の及ぶ範囲が明確でないため、野党議員ばかりか与党議員からも、表現の自由を脅かすことになるのではないかとの懸念が示されました。先日開かれた総務委員会参考人質疑でも、すべての参考人から、この改正は行うべきではないとの強い意見が表明されたところであります。

 政府による放送内容への不当な介入を防ぐため、放送行政を監視することが改正の趣旨であるとしていますが、その趣旨が明確な規定になっておりません。また、放送行政への監視役をゆだねるというものの、電波監理審議会の委員は総務大臣が任命しており、組織的にも政府から独立性がある機関ではありません。ゆえに、その役割を託す機関としては問題があります。放送による表現の自由を確保する観点から、この改正を行うことは断じて許されません。

 修正協議をつぶしたものの、電波監理審議会の建議等の問題は、当然、与党にとっても看過できるほど軽い問題ではありません。そこで、みずから修正せざるを得ないという失態を演じることになるわけでありますが、その修正案が提案されたのは、事もあろうに、委員会当日の朝の理事会でした。そして、出されたばかりの修正案について、わずか数十分後に開かれる委員会で審議を行うよう野党に求めるという、常識的には考えられない無理な要求をしてきたのであります。

 与党は、ルールどおり、修正案などは遅くとも前日までに提案し、質問者に検討する時間を与えるという、最低限の国会ルールすら遵守できないのですか。これでは、慎重な審議など到底行えるわけがありません。将来に禍根を残す与党の国会運営を厳しく糾弾するものであります。

 また、日本放送協会の会長を経営委員会の構成員に加えていることも、十分検討されたのかどうか問題であります。

 日本放送協会の会長については、意思決定機関である経営委員会と業務執行機関である会長の権限の均衡を失する可能性があるとして、構成員から除かれた経緯があります。改善が図られてきたといっても、日本放送協会のガバナンスの確立は、まだ十分とは言えません。政府が日本放送協会に関するガバナンスに関してしっかり検証せずに改正を行おうとする理由が、明確ではありません。

 また、会長に付与される議決権が及ぶ事項について、みずからに関連する事項が含まれており、経営委員会の議決について公正さが確保できるのかどうか、疑問が生じます。

 総務委員会の政府答弁を聞いても、なぜ日本放送協会会長に議決権を与えなければならないのか、もう一つ明確な理由にはなっておりません。

 日本放送協会の経営方針の決定をめぐる経営委員会と執行部の意見の相違が改正の背景にあるといいますが、会長への議決権の付与が問題の解決につながるという関係性が不明であります。会長初め執行部は、基本的に毎回経営委員会に出席しており、発言も自由にしております。それでも意思の疎通に問題があるのであれば、経営委員会の運営の問題であり、経営委員会の構成の問題ではないはずです。これでは問題のすりかえであります。

 公明党は、憲法が保障する表現の自由を守り、高い公共性を有する日本放送協会のガバナンスを確立する観点から、拙速に改正が行われようとしている放送法等の一部を改正する法律案には反対であることを表明して、私の討論といたします。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) これより採決に入ります。

 まず、日程第一につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(横路孝弘君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

 次に、日程第二につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(横路孝弘君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 社会保障に関する日本国政府とアイルランド政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(参議院送付)

 日程第四 航空業務に関する日本国と中華人民共和国マカオ特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件(参議院送付)

議長(横路孝弘君) 日程第三、社会保障に関する日本国政府とアイルランド政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第四、航空業務に関する日本国と中華人民共和国マカオ特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長鈴木宗男君。

    ―――――――――――――

 社会保障に関する日本国政府とアイルランド政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 航空業務に関する日本国と中華人民共和国マカオ特別行政区との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔鈴木宗男君登壇〕

鈴木宗男君 ただいま議題となりました両件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、日・アイルランド社会保障協定は、平成二十一年十月二十九日、ダブリンにおいて署名されたもので、我が国とアイルランドとの間における年金制度への二重加入の問題の解決を図ること等を目的とするものであります。

 その主な内容は、

 年金制度について、原則として就労が行われる締約国の法令のみを適用し、五年を超えない見込みで就労する場合には自国の法令のみを適用すること、

 両国での年金保険期間を通算すること

等であります。

 次に、日・マカオ航空協定は、本年二月十日、マカオにおいて署名されたもので、我が国とマカオとの間の定期航空路の開設及び定期航空業務の安定的な運営を可能にするための法的枠組みについて定めるものであります。

 その主な内容は、

 相手側が指定する航空企業が付表に定める路線において航空業務を運営する権利を相互に許与すること、

 相手側が指定する航空企業が使用する燃料の関税等を免除すること

等であります。

 両件は、参議院先議に係るもので、五月十九日本委員会に付託され、同日岡田外務大臣より提案理由の説明を聴取し、二十六日質疑を行いました。質疑終局後、採決を行いました結果、いずれも全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 両件を一括して採決いたします。

 両件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、両件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第五 外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮を仕向地とする貨物の輸出及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入につき承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件

議長(横路孝弘君) 日程第五、外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮を仕向地とする貨物の輸出及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入につき承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長東祥三君。

    ―――――――――――――

 外国為替及び外国貿易法第十条第二項の規定に基づき、北朝鮮を仕向地とする貨物の輸出及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする貨物の輸入につき承認義務を課する等の措置を講じたことについて承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔東祥三君登壇〕

東祥三君 ただいま議題となりました承認を求めるの件につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 平成十八年十月九日の北朝鮮による核実験を実施した旨の発表を契機として、外国為替及び外国貿易法第十条第一項に基づき、同年十月十四日以降、北朝鮮からのすべての貨物の輸入を禁止する等の措置が継続して実施されております。

 また、昨年五月二十五日の北朝鮮による二回目の核実験を実施した旨の発表を受け、外国為替及び外国貿易法第十条第一項に基づき、同年六月十八日以降、北朝鮮へのすべての貨物の輸出を禁止する等の措置が継続して実施されております。

 政府は、その後の我が国を取り巻く国際情勢にかんがみ、本年四月九日の閣議において、これらの措置を継続することと決定いたしました。

 本件は、一年間を期限として、四月十四日以降も当該措置を講じたことについて、国会の承認を求めるものであります。

 本件は、去る五月二十五日本委員会に付託され、昨日直嶋経済産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、質疑を終了したものであります。質疑終局後、採決を行った結果、承認すべきものと議決いたしました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) 日程第六は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第六 口蹄疫対策特別措置法案(農林水産委員長提出)

議長(横路孝弘君) 日程第六、口蹄疫対策特別措置法案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。農林水産委員長筒井信隆君。

    ―――――――――――――

 口蹄疫対策特別措置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔筒井信隆君登壇〕

筒井信隆君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 本年四月以来、宮崎県で発生している口蹄疫は、関係者の懸命の努力にもかかわらず、感染の拡大が続いており、発生農家や周辺地域の農家の経済的、精神的負担ははかり知れず、地域経済にも重大な影響が及んでおり、宮崎県のみならず、国の畜産の崩壊にもつながりかねない深刻な事態となっております。

 今回の口蹄疫は、その感染力の強さにより爆発的に感染が拡大しており、現地では、殺処分、埋却処理が追いつかない状況となっております。このため、政府は、殺処分を前提としたワクチン接種という緊急措置を実施せざるを得ない状況に追い込まれております。

 こうした危機的状況を踏まえ、本案は、平成二十二年四月以降に発生が確認されました口蹄疫に起因する事態に対処するため、口蹄疫の蔓延を防止する措置として、車両等の消毒の義務化、患畜等の死体の埋却等の支援、患畜等以外の家畜の殺処分等について定めるとともに、口蹄疫に対処するために要する費用の国による負担、生産者の経営や生活の再建支援等の特別措置を講じようとするものであります。

 この法律は、公布の日から施行するものとし、平成二十四年三月三十一日までの時限立法としており、それまでの間に、効果的な家畜伝染病の発生の予防及び蔓延の防止のあり方等について検討を行い、家畜伝染病予防法の抜本的な見直しを含め、所要の措置を講ずるものとしております。

 本案は、昨二十六日の農林水産委員会において、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに可決くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 航空法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、航空法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国土交通大臣前原誠司君。

    〔国務大臣前原誠司君登壇〕

国務大臣(前原誠司君) 航空法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 我が国においては、今後、羽田空港及び成田空港における発着容量の拡大、航空機の小型化に伴う多頻度運航の進展、団塊世代の操縦者の大量退職が予測されており、これらに的確に対応するため、航空運送事業に従事する操縦者の安定的な確保が喫緊の課題となっております。

 また、我が国における航空事故の大半が操縦者に起因して発生しており、その傾向について改善が見られないことから、こうした状況を改善するため、現在、技能審査が義務づけられていない自家用航空機等の操縦者を対象とした技量維持を図る仕組みを導入する必要がございます。

 さらに、航空身体検査証明の有効期間に係る国際民間航空条約附属書の改正を受け、航空運送事業に従事する操縦者の多くを占める定期運送用操縦士の有効期間の適正化を図る等、航空機の航行の安全を確保しつつ、航空会社の負担の軽減に資するための措置を講ずる必要があります。

 こうした状況を踏まえ、本法律案を今国会に提出することとした次第でございます。

 次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。

 第一に、新たな航空従事者技能証明の資格として、航空会社が主として使用する二人操縦機の副操縦士に特化した准定期運送用操縦士の資格を創設することとしております。

 第二に、操縦技能証明を有する者は、飛行前の一定期間内において、航空機の操縦に従事するために必要な知識及び能力を有するかどうかについて審査を受け、これに合格していなければ航空機の操縦等を行ってはならないとする仕組みを導入することとしております。

 第三に、国際民間航空条約附属書の改正を受け、現在、操縦技能証明の資格ごとに一律に定められている航空身体検査証明の有効期間について、年齢、心身の状態等に応じて定めることとしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、航空法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 航空法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。阿知波吉信君。

    〔阿知波吉信君登壇〕

阿知波吉信君 民主党の阿知波吉信です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました航空法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 航空行政の失敗、これこそ政権交代に前後して一気に問題噴出となった行政課題です。明らかに前政権の失政です。

 例えば、JALは経営破綻、ANAも六百五十億円の大きな赤字を計上するなど、航空産業には赤信号がはっきりともっております。

 また、空港にしましても、国際競争力のあるハブ空港が欠如し、今やアジア各国の後塵を拝する始末です。羽田と成田を見るまでもなく、我が国の航空ネットワークは大きく分断され、ひたすら国民に不便を強いるばかり。また、特別会計のもと、過剰な需要予測に基づき、全国につくり続けた九十八カ所の空港も、有利子負債一・一兆円の関空を代表に、赤字経営が常態化。地方空港では、黒字なのか赤字なのかすらわからない不透明な経営状況が続いております。そして、不採算路線から、地方空港から、どんどんと撤退が相次いでいる始末。

 私は、日本の空に向かって叫びたい。一体だれがこんな状況にしてしまったのか。

 しかし、皆さん、そのツケを、不良債権を一手に引き受けているのが鳩山政権であり、その陣頭指揮に当たっているのが前原大臣です。ならば、皆さん、問題山積の今こそ、ここに集う国会議員が、一致団結して体制を立て直し、総力でもって国難に立ち向かう、その姿勢をはっきりと国民に示していこうではありませんか。未来への展望を打ち出していこうではありませんか。

 まず、JALの再生につきまして質問をいたします。

 JALについては、裁判所の関与によって、透明性と衡平性を確保しつつ、企業再生支援機構や政策投資銀行からの支援によって再生を図るという渦中にただいまございます。その目的は、我が国の航空ネットワークを守るということです。

 私は、この支援スキームについては、これまで、経営危機を理由にした欠航が一便もないこと、何より無事故であること、航空機材の差し押さえなどが海外においても発生していないこと、懸念されていた現金取引や前金取引の要求などが起きていないことから、高く評価しております。国際的な信用維持に成功しているのです。

 もちろん、JAL自体には大きな責任があります。現在も、一月ごとに黒字、赤字を繰り返していますし、再生計画案の提出も八月末へと二カ月延期するなど、苦悩が続いております。しかし、今後、社員四万七千人のうち二万人余りの削減、国際線は四割、国内線は三割縮小と、大きな出血を覚悟しての再生なのです。

 一たん転んだ会社が、必死に起き上がろうとしております。ならば、皆さん、温かい手を差し伸べていこうじゃありませんか。足を引っ張り、石をぶつけ、殺してしまうことは簡単です。しかし、皆さん、生かしてこその政治ではありませんか。

 質問します。

 JALに対する公的支援によって、JALによる過剰な運賃の割引や新型の航空機への買いかえ促進、さらには、成田発にかえて、ホノルルやサンフランシスコなど、羽田空港発の有望な路線が開設されるということから、航空市場における公正競争についての懸念が一部で出ております。

 公正競争の確保とJAL再生支援策とのバランス、関係について、大臣のお考えをお聞かせください。

 次に、航空法の改正について質問します。

 准定期運送用操縦士を新設し、二人操縦機の副操縦士の訓練に特化することによって、パイロットの養成期間を現行の三十五カ月から九カ月間短縮可能とし、安全性の向上とパイロットの安定的な確保、効率性の確保が両立されるものとされております。

 私は、パイロットの養成については、能力や技能の向上など、安全性の確保が第一だと考えております。本改正によってそれが確保され得るのか、大臣の所見をお聞かせください。

 さらに、航空身体検査の有効期間の延長について質問します。

 改正案では、国際標準に合わせて、パイロットが六十歳未満の場合、現在の六カ月ごとの検査を一年に延長するとされております。検査期間を延長する中で安全性がしっかり確保できるかどうか、大臣のお考えをお聞きします。

 次に、社会資本整備特別会計、空港整備勘定について質問します。

 空港勘定の収入のうち、六割がJALやANAなど民間航空事業者からの負担です。この資金を使って全国に九十八の空港をつくり続けてきました。これが、世界的にも高額な空港の着陸料や世界でもまれな航空機燃料税という形で、企業経営を圧迫し、国際競争力をそいでおります。

 民間企業への高い公租公課、これの改善なくして我が国航空産業の再生はないと考えますが、大臣のお考えをお聞きします。

 そして、さらに、大臣は、これまでにも、特別会計をゼロベースで見直す旨を発言されております。特に、この特別会計のうち、航空関係職員の定員が七千百四名で、そのうち航空管制業務が四千四百三十六人とのことですが、これら公務員の給与も、JALとANAなど少数の民間事業者によって大半が維持されているわけです。

 私は、公務員の給与は、特定の企業に頼るのではなく、広く税金で賄われるべきであると考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。

 航空管制業務につきましては、イギリス、ドイツ、カナダなど海外の国々では、既に株式会社などの民間法人で実施されております。

 受益と負担の関係を明確にすること、また、公務員の総人件費二割削減というマニフェストの実行の観点からも、経営を分離し、民間法人化してみたらいかがでしょうか。重ねて質問いたします。

 最後に、財源が不足する中で、今後、我が国に国際競争力の高い交通インフラを整備し、我が国成長の基盤としていくためには、空港、道路、港湾、鉄道など、会計別、勘定別の縦割りの現行制度を改め、選択と集中による、優先順位に応じた総合戦略が必要となるでしょう。

 このためには、まず、国土交通省の中にある旧建設省と旧運輸省の予算や縄張りなどの垣根を取り払う、こういう抜本的な改革が不可欠です。まず、大臣には、身内の改革を行っていただきたい。大臣には、それを実行する力も権限も備わっております。今後、この改革がありやなしや、大臣のお覚悟を確認し、私の質問といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣前原誠司君登壇〕

国務大臣(前原誠司君) 阿知波議員にお答えをいたします。

 公正競争の確保とJAL再生支援策のバランスについてお尋ねがありました。

 日本航空は、年間旅客数約五千万人、本邦航空会社の国際線六十九路線の約五割を占める三十四の単独路線、国内線二百四十八路線の約四割を占める九十七の単独路線を運航するなど、我が国の発展基盤である航空ネットワークの重要な部分を担っており、我が国国民生活、経済活動にとって必要不可欠でございます。

 このため、企業再生支援機構による全面的な支援のもと、裁判所の関与により、透明性、衡平性を確保しつつ、国民目線に立った確実な再生を図ることとしております。

 一方、公的資金を投入して行われる日本航空の再生に向けての取り組みが、航空会社間の公正な競争環境や日本航空の構造的な改革を阻害するものであってはならないと考えておりまして、二月の五日に日本航空あてに文書を発出し、適切に指導監督を行っているところでございます。

 今後とも、企業再生支援機構と連携をしながら、公正な競争を確保しつつ、日本航空の確実な再生が図られるように取り組みを行ってまいります。

 次に、本法案により導入される准定期運送用操縦士資格の安全性についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、操縦士の養成においては、必要な操縦技能を担保し、安全性を確保することが重要と考えております。

 准定期運送用操縦士は、エアライン機の副操縦士に特化した操縦士資格であり、その養成においては、初期段階からエアライン機の運航環境を想定した訓練が長期かつ重点的に実施されていることから、エアライン機の操縦技能について効果的に付与することが可能であり、現行制度と同等以上の安全性が確保できると考えております。

 次に、航空身体検査証明の有効期間の見直しによる安全性への影響についてお尋ねがありました。

 今回の改正により、航空身体検査証明の有効期間については、エアライン機の機長など一部の資格者について延長することとなりますが、医療技術の進歩、検査実績等を踏まえ適切に設定した国際民間航空条約附属書の国際標準に基づき有効期間を設定することとしていること、既に当該有効期間に合わせている諸外国において安全上の問題は特段発生していないこと、さらには、過去の病歴など心身の状態により必要な場合には当該有効期間の短縮ができることとすることなどから、安全上の問題はないと考えております。

 次に、公租公課は軽減すべきでないかというお尋ねがありました。

 エアラインが負担している公租公課の主なものとしては、着陸料、そして航空機燃料税がございます。

 着陸料は、滑走路の利用の対価として航空会社が支払うものであり、これまでも地方航空ネットワーク維持のため政策的に引き下げを実施してきたところでございますけれども、平成二十一年七月より軽減を拡充し、平成二十二年度においても継続することとしております。

 航空機燃料税は、一般会計を通じて空港整備勘定に繰り入れられ、我が国の国際競争力の強化等を図るため、首都圏空港の整備や安全、安心に係る維持更新など重点的な投資に用いられてきており、航空機燃料税は増加してきたものの、航空機燃料税では不足であるため、一般会計からの繰り入れ等を今まで行ってきたところであります。

 公租公課のあり方を含めた空港整備勘定の見直し、首都圏空港の容量拡大やオープンスカイ政策の推進等、今後の航空行政のあり方については、国土交通省成長戦略会議で議論を重ねて、五月の十七日に取りまとめをいただいたところでありまして、その議論を踏まえまして、航空会社の負担軽減を図る観点から、関係省庁と調整し、御趣旨のような検討を進めていきたい、このように考えております。

 次に、管制業務に従事する職員の給与についてお尋ねがございました。

 国土交通省は、各種の管制サービスを行うに当たりまして、その直接の受益者である航空会社から、サービスの対価として、航行援助施設利用料を徴収しているところでございます。

 航空管制官等の管制業務に従事する職員の給与についても、管制サービスに係る経費であるため、受益と負担の関係から、サービスの受益者である航空会社が支払う航行援助施設利用料で賄うことが妥当であると考えております。

 いずれにいたしましても、特別会計すべてを見直していくというのが現内閣の方針でございますので、この空港整備勘定も聖域なく見直してまいりたいと考えております。

 次に、航空管制の民間法人化についてお尋ねがありました。

 航空管制業務は、交通警察と同様の性格を有する公権力の行使であり、特に、ハイジャック、テロ等への対応は国家的な危機管理業務であるとともに、航空機の安全な運航を支える重要な業務であることから、今後、羽田空港の二十四時間国際拠点空港化など首都圏を中心に航空交通の大幅な増加が見込まれる中、より一層安定的な業務の提供が求められます。

 また、我が国の空は、在日米軍や自衛隊の空域が複雑に入り組んでおりまして、その中で米軍等と空域に係る交渉や日々の運用調整が必要となるといった我が国特有の事情もございます。

 このようなことにかんがみれば、我が国において航空管制業務を国以外の独立した主体に行わせることについては、慎重な検討が必要だと考えております。

 なお、業務の効率化につきましては、これまでも業務拠点の集約化など効率的な業務運営に取り組んできており、今後とも、航空交通の大幅な増加に適切に対応しつつ、効率化に努めてまいりたいと考えております。

 最後に、国際競争力の高い交通インフラを整備していくための、国土交通省における抜本的な改革についてお尋ねがございました。

 インフラ整備に当たりましては、縦割りを排除し、総合的に進めていくことが重要だと考えております。このため、政権交代後初めての編成となる平成二十二年度の国土交通省の予算におきましては、既存予算編成を抜本的に見直し、施策の大転換を図るとともに、事業の効果や妥当性等を十分に吟味しつつ、マニフェストの実現など、重要施策を推進するための予算を重点的に計上したところでございまして、今までのような一律的な横並びの予算編成は全くとっておりません。

 また、昨年十月には、国土交通省の重要な政策課題について迅速かつ効果的に対処するため、政務三役のもとに省内から人材を集めた国土交通省政務三役政策審議室を設置し、所管産業の国際競争力を向上するための、選択と集中、規制改革などを中心とした成長戦略の取りまとめ作業に当たらせたところでございます。

 また、国土交通省は、今まで、四省が一緒になったところでございまして、国際部門は四つございました。これを、我が政権では一つに集約して、当然のことながら、一省としての国際業務に集中できる仕組みに変えたところでございます。

 今後とも、政治の強いリーダーシップのもと、この成長戦略に沿って、省内の力を結集して、国際競争力の高い交通インフラの整備に精力的に取り組んでまいりたい所存でございます。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 三ッ矢憲生君。

    〔三ッ矢憲生君登壇〕

三ッ矢憲生君 自由民主党の三ッ矢憲生でございます。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、ただいま趣旨の説明がありました航空法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 航空法の質問に入ります前に、去る四月十三日、本会議で趣旨説明、質疑の行われた高速自動車国道法及び道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の取り扱いについてお伺いいたします。

 この法案は、既に国土交通委員会に付託されているにもかかわらず、一カ月以上たった今も全く審議が行われておりません。政府・与党からは一向に審議促進の要請もなく、いわばたなざらし状態であります。

 この法案に関しては、政府・与党間できちんとした意見調整も行われないままに国会に提出されたと考えざるを得ませんが、今後、この法案の取り扱いをどうするつもりなのか、政府としては撤回も含めて対応するのか、前原大臣の考えをお聞かせいただきたいと思います。

 それでは、航空法について一問だけお伺いさせていただきます。

 本法案は、二〇〇六年ICAO改正の実施に伴い、欧州、アジアでは既に新たな制度が導入されており、全体の方向性、趣旨は理解する一方、本改正により、副操縦士養成の訓練期間が短縮されますが、実態として安全性の確保、向上につながるものか、十分に審議する必要性もあります。

 航空機事故は、全体の六割以上が操縦士に起因しております。今回の法改正により、訓練期間が短縮されますが、どのように安全性が向上するのか、また航空会社の経営にどのような効果をもたらすのか、簡潔に御答弁いただきたいと思います。

 さて、五月三日、輸送実績で世界第四位のユナイテッド航空と第六位のコンチネンタル航空が年内の合併を発表し、世界最大の航空会社誕生が報じられました。その背景には、格安航空会社の台頭等により、世界じゅうの航空会社が熾烈な競争を繰り広げている実態があります。既に、メガキャリアも、合併やアライアンスの拡大強化によりコストを削減しなければ生き残れない時代に突入しており、日本の航空産業も厳しい競争環境のもとに置かれております。

 先日の国土交通省の成長戦略会議の発表によれば、徹底的なオープンスカイの推進とありますが、本邦航空会社が世界で戦える競争環境を整備せずにオープンスカイを進めれば、コスト競争力の高いアジアの航空会社に需要が奪われ、日本の航空産業は淘汰されてしまいます。

 民主党政権の発足後は、羽田のハブ化、オープンスカイ推進といったかけ声は聞こえてきますが、その具体的な戦略、道筋は見えず、ともすれば、ハブ化とオープンスカイが、手段ではなく、目的になっていることを危惧するものであります。

 政府は、将来の航空産業のビジョンをどう描き、空港及び航空産業の競争力をどのように高めるのか、その道筋を示す必要があります。前原大臣は、どのようにオープンスカイを進め、アライアンスと格安航空会社間で激化する国際競争の中、どのように競争環境を整備していこうとされているのか、明確にお答えいただきたいと思います。

 ところで、民主党政権発足後八カ月が経過し、日本航空の再建問題では、多額の公的資金投入と借金棒引きがなされようとしていますが、今なお更生計画が定まっておりません。

 そもそも、日本航空の再建について本来政府が果たす役割は、日本航空のネットワーク全体を残すことではなく、離島路線や地方路線等の国民の生活に大きく影響する路線を維持させることです。

 日本航空が有する国際線の大部分は、他社が競合している路線であり、日本航空の路線が大幅に縮小されても、競争原理は働き、代替手段もあります。公的資金を最小化し、確実に再建させるため、税金投入が必要な路線を具体的に検証し、国会、国民に示すべきです。

 しかしながら、民主党政権は、日本航空のネットワーク全体を残すのか、国民生活に欠かせない国内路線を残すのか、政府がどこまで関与するのか、十分な分析も議論もしないまま、国民のコンセンサスを得ずに進めたために、いまだ計画も決まらない迷走を続けており、この問題は極めて深刻だと考えます。

 日本航空は、一月に経営破綻しましたが、現在の計画では、七千三百億円の債権カット、六千億円のつなぎ融資、三千億円の資本投入、合計で一兆六千三百億円という多額の公的資金の投入、かつ金融機関の借金肩がわりという事態を引き起こしています。そして、今なお、国内、国際合計二百路線以上のほとんどがリストラされないまま、毎日赤字を垂れ流しているんです。

 一部には、国内に余計な空港をたくさんつくって、不採算路線を押しつけたことで日本航空の経営が厳しくなったと言われております。しかし、実際には、一九九一年から十幾つの地方空港が開港していますが、日本航空が就航しているのは、但馬空港ただ一つであります。不採算路線の中心は、収入の変動が大きい国際線が多く、アライアンスの波に乗りおくれた日本航空の経営の判断のおくれが破綻の主要因なのです。

 その見方を誤れば、窮境原因の本質である甘えの体質、親方日の丸の体質は決して変わらず、確実な再建はできません。経営破綻の真の原因を放置したまま、路線削減等のリストラを中途半端にして更生計画を策定すれば、近い将来、国民の税金が無駄になると申し上げておきます。

 航空行政全般及び日本航空の再建にかかわる諸問題について、その火元責任が自民党政権時代にもあることは否定しません。しかし、今なお更生計画が固まらない現政権の責任は極めて大きく、更生計画提出が八月に延期され、行政の管理、指導が機能していないと思われます。更生計画の策定が延びた原因及び行政責任につき、菅大臣並びに前原大臣からの明確な答弁をお願いします。

 そもそも、政府が民間企業の経営に介入する場合は、出口戦略を政府が明示するべきです。前原大臣は、四月二十一日の国土交通委員会の集中審議で、業界全体の大きな方向性の中で、市場の公平な競争が担保されるように、航空会社間で首を絞め合うようなことがないように、そして日本航空の二次破綻がないように路線の見直し、これらにしっかり関与したいと述べています。集中審議から一カ月以上が経過し、前原大臣は、国土交通行政の責任者として、この答弁に即した出口戦略、日本航空の事業規模をどう考えているのか、具体的に御答弁いただきたいと思います。

 同時に、四月二十一日の集中審議で峰崎財務副大臣は、一月に入って機構の支援決定前に、おおよその出口戦略を持っておかないと、政策投資銀行のお金をどんな形で融資するにせよ、これは国民の税金であるため、責任を持って融資できる状況にする必要があるという観点から、さまざまな意見を私自身は提起したと答弁されました。また、一月十九日以降、本来ならば、もう少し深掘りした成長戦略、どうしたら生き残れるのかについて、方向性は出しておくべきだったと答弁されています。

 国民の税金を預かる財務省として、現在、どのような方向性を出して、どう関与しているのか、また峰崎副大臣と同様の認識で相違ないのか、菅大臣に明確な答弁をお願いします。

 現在、日本航空の日々の運航は企業再生支援機構と政策投資銀行の二者によるつなぎ融資で継続され、また、九月末までにはメガバンクへの借りかえ、リファイナンスが必要であります。

 前原大臣は、四月二十一日に、民間の金融機関によるリファイナンスが確実に行われるような更生計画をしっかり立てていただくと発言されました。これは、メガバンクが政府保証なしにリファイナンスに応じなければ確実な更生計画とは言えないという趣旨の発言であります。あわせて、峰崎副大臣は、日本航空の確実な再建のために、民間銀行もリファイナンスに応じるような抜本的な更生計画の策定が必要不可欠と判断していると答弁されています。

 もしメガバンクがリファイナンスに応じなかった場合、政策投資銀行が言ってみれば肩がわりするあるいは政府保証をつけるというようなことは、私はあり得ないと考えておりますが、菅大臣も、峰崎副大臣と同様に、九月末のリファイナンスで政府保証のように肩がわりするようなことは一切なく、退路を断って、再建が確実な更生計画を策定するという見解に相違ないか、簡潔な御答弁をお願いします。

 また、航空産業全体を発展させるために、市場の公平公正な競争環境確保も極めて大きな行政の役割であると考えます。

 既に、二月に、前原大臣の発言や国交省の文書でも、公的資金をバックにした運賃の割引は競争環境をゆがめるとの通達が出されていますが、その対象となるバースデー割引やマイレージのキャンペーンは一つも取り下げられることなく今日に至っております。

 前原大臣は、さきの集中審議で、公平性が失われることがあってはならない、やはり何らかの措置を考えないといけない問題だと答弁され、公平公正な競争環境の確保について、その重要性と問題意識があることを明確に答弁されています。以来、一カ月以上が経過しましたが、報道では、羽田の国際線発着枠を十月から日本航空に二便付与するなど、リストラもせずに、新規路線、事業拡大を認める一貫性のない対応が続いています。

 いかなる業種も産業も、経営破綻した企業は、まずはリストラに専念し、黒字を確保することが経営の最優先課題であります。

 多額の公的資金がつぎ込まれている中で、行政の側で具体的な対策が実行されなければ、市場はゆがめられてしまいます。公的資金を使った再建期間中の新規路線開設等、事業拡大の禁止、株主優待券のさらなる発行やマイレージのキャンペーンを含め、公的資金をバックにした割引施策への制限、そして公的資金の最小化によるリスク回避と確実な再建のためにも、代替便のある国際事業の大幅な縮小と、新機材投資の抑制も踏まえた三千億の出資の減額、こういう具体的な政策を実行し、政府が産業全体を健全に発展させる環境を整備すべきと考えます。

 前原大臣が発言した、公平性が失われない何らかの措置とは、いつまでに何を実行されるのか、明確かつ具体的にお答えください。

 最後になりますが、日本航空の再建にかかわる問題は、昨年秋から、新聞、雑誌、テレビで多くの情報が流れているにもかかわらず、国会には必要な情報開示が全くなされないまま現状に至っており、国会軽視と言わざるを得ません。

 これまで、一月十九日に発表された再生計画詳細の情報開示や、企業再生支援機構、日本航空の参考人招致を幾度となく申し入れたにもかかわらず、全く対応されていない現状は、極めて遺憾であります。透明性、衡平性を重視すると言ったにもかかわらず、これまでの民主党の対応は不誠実かつ無責任きわまりないものであり、民主党の議員の中にも、この問題に関してはおかしいと思っておられる方も必ずいるはずです。

 公的資金の使途を明らかにする情報の透明性や国会審議の充実は、民主主義の原点です。一連の不誠実な対応につき、強く改善を求めるとともに、この件に関して前原大臣の見解をお伺いして、私からの質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣前原誠司君登壇〕

国務大臣(前原誠司君) 三ッ矢議員にお答えをいたします。

 まず、高速自動車国道法及び道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する等の法律案の取り扱いについてお尋ねがございました。

 本法律案は、政府として閣議決定を行い、国会に提出をし、この本会議でも趣旨説明、議論をさせていただいたものでありまして、その審議をぜひお願いしたいと考えております。

 次に、本法案により導入される准定期運送用操縦士資格について、その安全性及び航空会社の経営にもたらす効果についてお尋ねがございました。

 准定期運送用操縦士は、エアライン機の副操縦士に特化した操縦士資格であり、その養成においては、初期段階からエアライン機の運航環境を想定した訓練が長期的かつ重点的に実施されることから、エアライン機の操縦技能について効果的に付与することが可能であり、現行制度と同等以上の安全性を確保できるものと考えております。

 また、当該資格制度の導入によりまして、養成期間の短縮など、効率的な操縦士養成が可能となることから、航空会社においては、操縦士養成に係る負担軽減を図りつつ、今後必要となる操縦士数を安定的に確保できるものと考えております。

 次に、激化する国際競争の中、どのようにオープンスカイを進め、競争環境を整備していこうと考えているかについてお尋ねがございました。

 世界、とりわけアジアの活力を我が国の成長に結びつけていくためには、羽田の二十四時間国際拠点空港化による内際ハブ機能の強化を図るとともに、成田の三十万回化に向けた地元合意を機にオープンスカイを戦略的に進めることで、我が国を中心とする国際航空ネットワークの強化を図ることが極めて重要であると考えております。

 国土交通省成長戦略会議が五月十七日に決定した報告書においては、これらの取り組みを長期的視野に立って総合的に進める観点から、オープンスカイの推進や羽田、成田の容量拡大など、我が国の空港・航空産業の競争力強化に資する多様な施策が盛り込まれているとともに、工程表も示されておるところであります。

 国土交通省といたしましては、これらの施策をPDCAサイクルに乗せながら計画的に進めていくことで、国際航空ネットワークの強化と我が国の空港・航空産業の競争力強化両立に向けてまいりたいと考えております。

 日本航空再生計画の策定が延びた原因及び行政責任についてお尋ねがございました。

 五月二十五日、日本航空は、更生計画案の提出時期について、当初の本年六月三十日までを八月三十一日までに変更することを東京地方裁判所に申し立て、裁判所よりその決定を受けました。

 延期の理由としては、路便及び機材の徹底した見直しと適正な組織規模の実現によるコスト削減策を追加的に実施して収益力を強化し、危機対応力を高めるとともに、利害関係人と調整を図り、より確実な更生計画案を策定するためであると聞いております。

 日本航空においては、徹底した構造改革を日々着実に進めていることから、更生計画の提出を延期しても損失の拡大や二次破綻のおそれは生じないものと考えております。

 重要なことは、日本航空において、国民目線に立った確実な再生が達成されるようしっかりと取り組んでいただくことであり、国土交通省といたしましても、引き続き、企業再生支援機構と連携をして日本航空の確実な再生に努力をしてまいりたいと考えております。

 次に、公平な競争環境の確保と、日本航空の確実な再生に向けた出口戦略と事業規模についてのお尋ねがございました。

 日本航空の再生に当たっては、それぞれの会社が適正な路線規模を確保した上で競争していくことが望ましいと考えております。このため、日本航空においては、窮境原因の一つでもある不採算路線の見直しを行うことが不可欠であると考えております。

 国土交通省といたしましては、四月二十八日に公表された、国際線が約四割の縮小、国内線が約三割の縮小となる路線便数計画をもとに、今後作成される財務三表、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書をよく見ながら、今回の計画が十分なものになっているかを検証していくこととしたいと考えております。

 次に、公平な競争を確保するための取り組みについてお尋ねがございました。

 国土交通省としては、公的資金を投入して行われる日本航空の再生に向けての取り組みが航空会社間の公正な競争環境や日本航空の構造的な改革を阻害するものとならないよう指導監督を行っていく旨の文書を、二月五日に日本航空あてに発出し、この考え方に沿って適切に対応しているところでございます。

 今後とも、会社更生法、航空法、株式会社企業再生支援機構法といった法律に基づきまして、公正な競争が確保されるように、不断の取り組みを行っていきたいと考えております。

 最後に、日本航空の再建に関する情報開示についてお尋ねがございました。

 日本航空の再建については、情報公開の観点から、可能な限りの情報提供に努めることが重要であると考えております。

 今後の更生計画に影響を与える可能性の高い重要な経営情報等については、開示することは困難ですが、日本航空においても、例えば裁判所に提出した資料のうち、管財人が支障がないと判断した内容等については公表するなど、適時適切な情報公開に努めているものと承知しております。

 国土交通省といたしましても、日本航空において可能な限りの情報提供が行われるように求めてまいりたいと考えております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣菅直人君登壇〕

国務大臣(菅直人君) 三ッ矢議員の方から、日本航空経営再建問題に関連して、何点か御質問をいただいております。

 まず最初に申し上げておきたいのは、言うまでもありませんが、航空行政を所管するのは、第一義的には国土交通大臣であります。私は、企業再生機構を所管する経済財政担当大臣として、また政投銀及び国庫一般を担当する財務大臣としての立場からお答えを申し上げたいと思います。

 まず、日本航空の更生計画の提出期間が延期された理由とその行政責任についての御質問にお答えをいたします。

 日本航空の再生支援につきましては、基本的には、司法手続のもと、管財人たる企業再生支援機構において判断されるべき事柄でありますが、更生計画案提出時期の延期の理由として、日本航空の再生をより一層確実なものとする観点から、関係者が十分な調整を行った上で、徹底した路線便の見直しを行い、再建が確実となるよう、抜本的な更生計画案を作成する必要があると機構において判断したことによるものと聞いております。

 なお、日本航空及び企業再生支援機構においては、既に徹底した経営構造改革を日々着実に進めており、更生計画の提出を延期しても、経営上の損失が拡大したり、二次破綻のおそれが生じたりするような状態にはないものと承知をいたしております。

 また、日本航空においては、現状、収益力が回復しており、資金繰りも特段の問題はなく、当面、追加的な資金投入の必要も見込んでいないと聞いているところであります。

 さらに、峰崎副大臣の答弁を受けて、関連の御質問をいただいております。

 日本航空については、一月十九日、企業再生支援機構において支援決定し、事業再生計画が公表されており、再生に向けて一定の方向性が打ち出されているところであります。

 この支援決定と同日に、裁判所により会社更生手続開始の決定を受けており、現在、事業再生計画を踏まえた更生計画を作成中と聞いております。

 財務大臣としては、国庫を所管する立場から、現在作成されている更生計画が確実な再建につながるものとなるよう注視してまいりたい、このように考えております。

 さらに、九月末のリファイナンスで政府保証のような肩がわりをするようなことはないだろうなという御趣旨の御質問をいただきました。

 具体的な金融の内容は、今後策定される更生計画によって確定することになると聞いております。

 実は、政府保証については、昨年のある段階で、私はまだ財務大臣ではありませんでしたけれども、交付国債を発行して政府保証をあらかじめするといったような案が一部から出てきましたが、率直に言って、私は、それには反対をいたしました。

 そして、今の状況は、御存じのように、企業再生支援機構が管財人となっていて、この企業再生支援機構にはいわば保証する機能も与えられておりますので、その管財人として判断をされることは、私は、再生をしていくということにおいて、まさに管財人としての判断に基本的には任せている、また、そういう権限になっております。

 いずれにせよ、先ほど申し上げたとおり、企業再生支援機構において、再建が確実な抜本的な更生計画案を策定することが不可欠と考えており、今回の更生計画の提出時期の延期も、そうした考え方に即した判断であると承知をいたしております。

 以上です。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) この際、暫時休憩いたします。

    午後八時三十六分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       財務大臣  菅  直人君

       総務大臣  原口 一博君

       外務大臣  岡田 克也君

       農林水産大臣  赤松 広隆君

       国土交通大臣

       経済産業大臣臨時代理  前原 誠司君      

 出席副大臣

       国土交通副大臣  馬淵 澄夫君


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