衆議院

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第3号 平成22年10月7日(木曜日)

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平成二十二年十月七日(木曜日)

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 議事日程 第三号

  平成二十二年十月七日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)


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    午後二時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

議長(横路孝弘君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。井上義久君。

    〔井上義久君登壇〕

井上義久君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました菅総理の所信表明演説に対し、質問をします。(拍手)

 質問に入る前に、昨日、日本人の鈴木章さん、根岸英一さんのお二人にノーベル化学賞が授与されることが決定をいたしました。まずは、お二人に心よりお祝いを申し上げます。(拍手)

 日本の科学技術、特に素材技術の底力を示す快挙であり、これ以上の喜びはありません。

 鈴木氏は記者会見で、日本は資源のない国だから、努力して知識をつくる理科系の力が大事だと述べられています。全く同感です。国としても科学技術振興にいま一層の力を入れるよう求め、質問に入ります。

 さて、鳩山前総理の政権投げ出しを受けて菅政権が発足したのが六月八日。初の所信を受けて私が代表質問に立ったのは六月十四日でした。そのとき、私は、成長戦略や財政健全化の道筋を内閣として示さない責任、昨年十一月にデフレ宣言をしておきながら、肝心のデフレを克服するための具体策を提示しない責任などをあなたに問いました。

 あれから四カ月近くたった今、菅内閣は何をしてきたかと、今再びあなたの責任を問わなければなりません。

 この間、菅内閣は、党内政局にかまけ、民主党代表選に追われて、円高、株安の急進展やデフレの深刻化など、国内外の重要課題に機敏に対応できず、政治空白を招きました。あなたからは、総理の座に居座りたいという気持ちしか伝わらず、日本経済、国民生活を断固として守るという強い覚悟、意思が全く感じられませんでした。

 総理、あなたは、政治主導だとか有言実行内閣とおっしゃいますが、強調されればされるほど、うつろに響きます。政治空白の間、地方経済はさらに疲弊し、国民生活は厳しい状況にさらされています。総理は、この四カ月間、国民の生活を守るために、具体的に何一つ実行してこなかった。総理、そうではありませんか。この点、国民は冷静に見ています。

 もう一つは、民主党が掲げるマニフェストの問題です。

 代表選による菅、小沢対決は、文字どおり、マニフェストの扱いをめぐる対立でした。マニフェスト修正主義とマニフェスト原理主義の対立は、民主党内の国会議員を二分しました。

 そこで、伺います。

 昨年の衆議院選挙で掲げたマニフェストと、ことしの参議院選で掲げたマニフェスト、あなたが実行するマニフェストはどちらなのですか。主要政策は修正するのですか。参議院選挙のマニフェストで消えた工程表はどうなったんですか。また、それらについて民主党内のコンセンサスはできているんですか。伺います。

 このことで混乱すれば、迷惑をこうむるのは国民です。国民生活にかかわる重要なことなので、民主党のマニフェストの位置づけと菅内閣の方針を明確にしてください。

 この国会では、疲弊している地方経済や厳しい雇用情勢についてまず真っ先に議論すべきであるにもかかわらず、またしても政治と金の問題を取り上げざるを得ないのは、まことに残念です。

 九月十四日、東京第五検察審査会は、小沢氏の資金管理団体の政治資金規正法違反事件で、起訴すべきであるとする二回目の議決を行いました。今後、小沢氏は強制的に起訴されますが、政治家に対し適用されるのは初のケースであり、この事態を重く受けとめなければなりません。これまで我が党は、まず小沢氏本人が、そして民主党自身が自浄能力を発揮して、国会で説明責任を果たすよう繰り返し求めてきましたが、一向に応じてこなかった。

 説明責任を果たしていない点では鳩山氏も同様です。鳩山氏は予算委員会において関係資料の公表を約束しましたが、いまだに実行されておりません。総理は、このまま公表しなくてもよいとお考えなのですか。

 民主党がクリーンな政治を掲げて再出発するのであれば、総理は、民主党の代表として、まずは、小沢、鳩山両氏に対し、国会において証人喚問も含めて説明責任を果たすよう指示し、党としての自浄能力を発揮すべきと考えますが、いかがですか。お答えください。

 所信表明演説において、総理は、クリーンな政治が私自身の政治活動の原点と言われました。それならば、この臨時国会で、秘書がやったとの政治家の言い逃れを許さないために、政治家の監督責任を強化する政治資金規正法改正案を直ちに受け入れ、成立させるべきです。あわせて、企業・団体献金の全面禁止も早急に実現させるべきです。

 これまで、再発防止策について与党は全く積極的ではありませんでした。今国会で決着をつけるべきです。総理の決意を国民に示してください。

 さらに、現在月割りで支給されている歳費を日割り支給に変更するため、八月の臨時国会では、我が党が、国会議員が歳出削減の先頭に立ち、みずから身を削るべきと、議論をリードしてきました。与野党合意に基づき、日割り計算で、当選前に当たる部分の歳費を自主返納できる特例措置が実現、実施をされました。

 また、これとあわせて、国会議員歳費の日割り支給へ歳費法を抜本的に改正するとの与野党合意も取りつけました。この臨時国会でぜひとも実現すべきです。総理の決意を伺います。

 菅内閣の経済政策について伺います。

 現下の急激な円高を初め、日本経済を取り巻く環境は非常に厳しく、一瞬たりとも気を抜けない重大な局面に差しかかっております。

 まずは、八月以降、一ドル八十円を割り込む勢いで進んだ急激な円高ですが、デフレが深刻な我が国にとっては、それに追い打ちをかける非常事態です。さらに、足元の経済も、本年四月―六月期の実質GDPが二次速報では〇・四%、名目GDPに至ってはマイナス〇・六%と景気は減速し、デフレ脱却の道筋は見えてきません。加えて、エコカー補助金が九月で終了するなど、これまでの景気対策の効果が減殺され、景気の先行きは一層不透明になってきました。

 私は、日本経済のターニングポイントは八月であったと思います。

 このとき民主党は何をしていたのか。代表選挙、党内選挙にかまけていた。金融政策においても日本銀行の対応は鈍く、結果として、デフレと円高をさらに助長してしまいました。代表選挙の影響かどうかわかりませんが、総理も財務大臣も全く本気度が見受けられない口先介入を繰り返すばかりで、内閣としての明確なメッセージが皆無に等しい状況が一カ月近く続きました。

 この民主党自身が招いた政治空白、まさしくモラトリアムが、結果として日本経済を一層厳しい状況に追い込んでしまいました。この責任は極めて重大です。

 地域経済は本当に疲弊しています。ある自動車メーカーの下請企業は、エコカー補助金が終わり、メーカーの生産調整で受注量が激減、加えて、円高を理由にコスト削減を迫られているが、原材料は値下がりしていないと悲鳴を上げております。また、ある革製品を扱う中小企業は、この春の口蹄疫問題で輸出品価格が暴落した上に、今回の円高で、このままでは国内の業界は全滅だ、うちもだめかもしれないと苦しい胸のうちを明かしていました。あげくは、円高によって仕事がなくなり、海外移転を真剣に検討を始める企業がふえており、国内産業そして雇用の空洞化の懸念は足元から迫ってきております。総理、これが現場の声です。

 若者を初め、雇用情勢も依然として厳しい。加えて、日中関係を初め、外交問題の影響が経済にも波及しかねない状況にあります。なぜこうした事態に至ってしまったのか。総理、民主党政権は、もっと現場をよく見て、そして手を打つべきです。現場を歩いて対策を真剣に考えていないから、あらゆる対策が後手後手になってしまうのです。まさに、民主党政権が招いた政治不況です。

 日本経済の実情及び民主党政権が招いた政治空白の責任を総理はどう認識しているのか、伺います。

 円高対策について伺います。

 財務省、日本銀行は、九月十五日、日本単独による為替介入を実施しました。その効果もあってか、一時は一ドル八十五円まで戻したものの、現在は八十二円台後半から八十三円台で推移をしています。私は、単独ではあるものの、日本政府のこれ以上の円高は許さないとのメッセージを内外に示すという点では、為替介入そのものに意味があったと評価をします。

 しかしながら、官房長官は、為替介入による為替の防衛ラインが八十二円台との認識を示しました。さすがに財務大臣は否定しましたが、政権内で繰り広げられる相変わらずの食い違い発言に国民はうんざりです。まさに、政府として国民、企業を守ろうという覚悟も気概もない、危機感の欠如そのものではありませんか。

 現時点で、特に輸出企業が採算ラインとして想定しているレートは一ドル九十円ぐらいです。にもかかわらず、政府は、円高基調が明白になり、そして一ドル八十二円台になるまでなぜ手を打たなかったのか。余りにも遅きに失した。もっと早い時期に、円高基調が明確になった時点で介入していれば一層の効果があったのではないですか。

 八十二円だから介入という政策的あるいは政治的な根拠はないはずです。総理の円高対策に対する認識と今後の対応について答弁を求めます。

 急激な円高を阻止するには、国際的な協調体制の確立が望ましいことは言うまでもありません。現実的に主要国が自国通貨安を容認、放置している現状では難しいものの、G8やG20などを通じて、日本の状況を説明し、理解を求める努力が不可欠です。総理の決意を伺います。

 日本銀行は、五日の金融政策決定会合で、追加的な金融緩和策として、実質ゼロ金利政策の実行、さらには、長期国債や不動産投資信託などの金融資産の買い入れを含む措置を決定しました。率直に評価しますが、引き続き、金融緩和の効果が早期に発揮されるよう万全の措置をとるべきです。

 これまでの政府と日銀による経済財政運営を見るにつけ、両者の連携不足によって対策が後手に回っているとの印象を否めません。今後は、政府と日銀がデフレ脱却という目標を共有しつつ、政府の対策と相まって、日銀が適切に金融政策を講じることが重要です。そのため、日本版物価目標政策を導入し、政府及び日本銀行が協調して政策を講じる枠組みをつくるべきと考えますが、総理の金融政策に関する基本認識を伺います。

 経済対策について、菅内閣もようやく重い腰を上げました。

 九月二十四日に、予備費九千二百億円弱を活用した経済対策を閣議決定しましたが、余りにも遅過ぎます。そして、余りにも小さ過ぎます。また、二十七日には、菅総理が言うところのステップツーに移行し、補正予算編成を指示しました。

 これまで何もしなかったのに、急に動き出した。切れ目なく対策を講じているという政府の姿勢を懸命に示そうとしているのでしょうか。

 であれば、伺います。

 予備費活用の決定の二十四日から二十七日までのわずか三日の間に、補正予算編成の指示をするほどの劇的な経済的変化があったのですか。むしろ、予備費の活用という逐次投入的な手法をとらず、もっと早い時期に補正予算編成を指示すべきではなかったのですか。まさに場当たり的な対応そのものではありませんか。総理の答弁を求めます。

 しかも、先般の所信表明演説でも、政府としての経済対策の目的、対策の規模などの考え方は示されず、与野党に協議を求めるのみでありました。総理の言葉からは、日本経済をどうするかという政府としての矜持や責任感がうかがえません。

 まずは、政府の考え方を速やかに提示し、早く国会に提出すべきです。補正予算の規模や具体的方向性、財源等についてどのように考えているのか、総理の答弁を求めます。

 当面の経済財政運営もままならない中にあって、これから平成二十三年度当初予算の編成が本格化してきますが、民主党政権で果たして本当に大丈夫なのでしょうか。

 これまでも申し上げてきたとおり、民主党政権には、明確な中長期の財政健全化や成長戦略、当面のデフレ脱却に向けた道筋について、目標程度のものは示したつもりでしょうけれども、具体的な形は全く見えていません。さらに、経済の司令塔不在の状況は相変わらずであると指摘せざるを得ません。総理の認識を伺います。

 この臨時国会で最優先すべきは、言うまでもなく、景気、経済の断行です。

 私どもは、菅政権が招いた政治空白の間も、徹底して現場を歩いてきました。急激な円高、株安が進行し、輸出関連企業や中小企業経営者からは悲鳴が上がり、国民生活は危機にさらされています。

 公明党は、こうした国民の声を受けとめ、生活の安心を取り戻すための即効性のある緊急経済対策として、既に五つの観点から具体的に提案をしております。

 第一は、地方経済の活性化です。

 地方が持つ知恵、資源の活用や仕事の創出など、各自治体が地域事情に即して行う事業支援に、スピード感を持って大胆に取り組む必要があります。そのために、地方への臨時的な財政措置として、地域活性化臨時交付金を創設すべきです。地方の実情に応じた事業を積極的に実施することで、地域の中小零細企業等を支援し、経済の活性化を図るべきです。

 また、民主党政権は、厳しい経済状況であるにもかかわらず、一年間で一八・三%もの公共事業費を削減し、地域経済に大打撃を与えました。公共事業は地域における雇用の受け皿にもなっており、極端な削減は地域の経済と雇用に深刻な悪影響を及ぼしています。

 民主党政権による極端な削減から地域経済を守るために、橋梁や下水道の老朽化対策や道路のミッシングリンクの解消、幹線道路の整備、ゲリラ豪雨対策、学校や病院の耐震化など、真に必要な社会資本整備を前倒して実施し、地域の雇用を確保すべきです。

 第二は、雇用対策です。

 今春卒業した大学生のうち、未就職者は三万二千人。対策は急務です。また、いわゆる就職留年は七万九千人とも言われています。

 公明党は、いち早く、卒業後三年間は新卒扱いにと主張してきましたが、政府の動きはまことに鈍い。未就職の卒業者を採用した企業に対する奨励金の実施等、早急に実現すべきです。

 加えて、ふるさと雇用再生特別交付金と緊急雇用創出事業の第二弾を実施し、地域の知恵と資源を生かした緊急的な雇用創出にも取り組むべきです。

 第三は、中小企業への支援です。

 円高、株安に伴う景気の不透明感は、年末、年度末の資金繰りにも不安を与えています。緊急保証制度の延長や保険料の引き下げ、金融円滑化法の延長など、中小企業金融支援を切れ目なく実施すべきであります。

 また、法人税率の引き下げなど、我が国の企業立地競争力を高める施策とともに、成長分野の事業に取り組もうとする中小企業を支援するため、官民ファンドをフル活用し、リスクマネーの提供を積極的に行うべきです。

 第四は、新しい福祉の実現へ向けた取り組みの強化です。

 うつ病、児童虐待、DVなど心の病の克服や、ひとり暮らしの高齢者の生活支援など、新たなリスクに対応できる体制の整備は喫緊の課題です。介護従事者や事務職の給与の改善も急がなければなりません。

 そして、医師不足など、地域医療の閉塞状況の打開に大胆に取り組むことが重要です。

 私たちが与党時代に編成した二十一年度補正予算では、地域の医療再生や医師確保を支援するため、総額三千百億円の交付金を盛り込みました。しかし、民主党政権は、この予算を事業仕分けで七百五十億円分も執行停止をしました。その結果、産科・小児科医の確保や地域医療の再生を計画していた自治体は大打撃を受けました。執行停止した分は直ちに復活させるべきです。

 加えて、医師の地域偏在、医師不足解消に向けた適正配置を行う調整機関、国立医師バンクを創設すべきです。

 第五に、環境対策を進めることで地域の需要を喚起させることです。

 例えば、環境に配慮したリフォームも住宅エコポイント制度の対象にするなど、中古住宅・リフォーム市場を大きく拡大すべきです。

 また、来年の七月には地上デジタル化に完全に移行しますが、その支援強化として、家電エコポイントを来年度も延長すべきです。

 さらに、電気自動車の普及と充電インフラの整備や、公共施設等への太陽光発電施設の設置を積極的に拡大することも、地域の需要喚起に大きく貢献をします。

 以上、具体的な対策について総理の見解を求めます。

 公務員制度改革について伺います。

 民主党政権は、昨年の衆議院選マニフェストで、天下りあっせんの全面禁止、国家公務員の総人件費二割削減などを国民に約束しました。ところが、さきの通常国会では、大幅に後退した、天下り自由化法案ともいうべき改正案を提出してきました。

 一方、通常国会閉会後に閣議決定した退職管理基本方針は、独立行政法人などへの現役公務員の天下りを容認するなど、民主党にとって改革の一丁目一番地だったはずの天下りの根絶を断念する内容です。

 政府は、一体、公務員制度改革に関する全体像や工程表をいつ示すのか、総人件費二割削減はどう実現するのか、労働基本権付与の問題を含め、総理の答弁を求めます。

 次に、公務員等による税金の不正使用について伺います。

 国あるいは地方公務員による裏金づくりは後を絶ちません。公明党は、ことし四月、公務員のみならず、公金が投入されている独立行政法人等も対象に含めた不正経理防止法案を提出しました。

 総理は、行政府の最高責任者として、公務員等による税金の不正使用を根絶させる立場にあります。この法案を再提出しますが、総理には、当然、この法案の趣旨に賛同いただけると思いますが、いかがでしょうか。

 独立行政法人改革について伺います。

 国家公務員の天下り先、無駄遣いの温床などの指摘がなされている独立行政法人改革は急務です。

 私たち公明党は、現在の独立行政法人制度そのものを廃し、現在百四ある法人を、廃止、民営化、国への移管、特別の法人の四つに仕分けする抜本改革案を、本年六月、国会に提出しましたが、審議未了で廃案となりました。真の独法改革を行うためには我が党の法案の成立が不可欠であると考えますが、総理の見解を求めます。

 目下の外交課題の最大の懸案の一つは、言うまでもなく日中関係です。

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をめぐる民主党政権の場当たり的な対応によって、日中関係は大きく損なわれたばかりでなく、結果的に、日本は圧力を加えたら屈する国という誤ったメッセージを内外に与えてしまいました。総理はこの点についてどのように認識されているのか、伺います。

 また、尖閣諸島は日本固有の領土であるという日本の立場のアピールも極めて弱かった。民主党政権には、外交に不可欠な、事態を打開する交渉力、外交力が欠如していると言わざるを得ません。

 もっと早い段階からあらゆる外交チャンネルを使って問題解決に全力を挙げていれば、今回のような外交的敗北とも評される結果を招くことにはならなかったとの指摘もあります。

 この政治責任は重大であると思いますが、総理はどのように受けとめているか、お答えいただきたい。

 中国人船長の釈放について、那覇地検の次席検事は、中国との関係や日本国民の利益を考えて釈放を判断したと、その理由を述べています。

 そもそも検察は法と秩序に基づいて判断すべきであって、なぜ検察の権限でこうした判断ができるのか、極めて疑問です。政治的な介入があったとすれば、事実上の指揮権発動であり、内閣の責任は極めて重い。

 他方、これだけ日中間の外交問題になっていたにもかかわらず、検察の判断を了としたとの政府の説明では、余りにも無責任であり、きちんと国民に対して説明すべきです。

 また、いまだ勾留されているフジタ社員の残る一名の早期釈放を政府として強力に働きかけるべきです。具体的な取り組みを伺います。

 次に、米の戸別所得補償制度について伺います。

 二十二年度産米の収穫が最盛期を迎える中、全国で新米の価格が大幅に下落し、農家は不安を抱いています。

 政府は、モデル事業を始めるに当たって、米の需給は引き締まると豪語しておりましたが、結果は、引き締まるどころか緩む一方です。米価格が下がり続けて、本当に変動部分は約束どおり払ってもらえるのか、来年の米づくりはどうなるのか、農家の不安は尽きません。

 現場の農家からは、米づくりの意欲を失う、米は主食だと言いながら産地がないがしろにされているなど、悲痛な叫びが聞こえてきます。こうした声にこたえるためにも、出口対策として、三十万トン程度の緊急買い入れや棚上げ備蓄の前倒しなど、早急に実施すべきです。

 さらに、日本の農業を発展させ、持続可能なものとするためには、担い手や専業農家の育成につながるよう、産地ごとの再生産価格が確保できる経営安定対策と、環境直接支払いの拡充等が必要です。全国一律の所得補償制度を早急に見直すべきです。総理の見解を求めます。

 次に、今般の異常気象による農業、水産業被害への対応について伺います。

 ことしは、春先までの日照不足と五月以降の猛暑により、農作物が軒並み不作に見舞われております。野菜の価格は高騰し、家計を直撃、農家にとっては収入減は免れられません。猛暑、酷暑による作物の減収にも農業共済が適用されるよう要件を緩和するなど、具体的な対策が必要です。

 さらに、漁業においても海水温の上昇による被害が出ており、特にホタテなど養殖業の被害は深刻です。魚価の安定対策など、漁業者の所得補償も推進すべきです。

 また、宮崎県の口蹄疫被害に対し支給される手当金について、非課税扱いとする税制改正を早急に実現させるとともに、我が党の主張で特措法に盛り込んだ基金を一日も早く設置し、地域の実情に即して復興のためにも使えるよう、使途を拡大すべきです。総理の見解を伺います。

 次に、高額療養費制度の見直しについて伺います。

 難病やがんなど、高額な治療を継続されている方のさらなる負担減が求められています。特に負担感が強い、七十歳未満で年間所得三百万円以下の世帯の負担上限額を、現行の八万円から約四万円に半減すべきです。また、二つ以上の医療機関にかかった場合も合算できるよう見直すべきです。

 菅総理は、ことしの六月、私の代表質問に対し、制度のあり方を検討すると答弁されました。この間、どのように検討がなされたのか、お答えいただきたい。

 若い女性に急増している子宮頸がんは、ワクチン接種と検診で、予防がほぼ一〇〇%可能ながんです。これまで、ワクチンの早期承認が実現をし、ワクチン接種への公費助成や検診の無料クーポンなども、不十分ながら進んでいます。

 こうした予防策の恒久的な事業化を目指すために、公明党は、各党に呼びかけて、子宮頸がん予防法案を臨時国会に再提出したいと考えております。予防法案の扱いも含め、政府の子宮頸がん予防の取り組みについて総理に伺います。

 我が党は、全国で約二百五十万人とも言われるうつ病で悩む人の声を深刻に受けとめ、治療方法として効果的な認知行動療法を推進し、本年四月より保険適用となりました。

 患者さんからは、気づいたら薬の種類が半分以下に減り、電車の人込みにも耐えられるようになりましたなどの喜びの声が上がっております。しかし、実際は、専門家の数も少ない上に、保険適用されるのは医師の治療の場合だけで、普及がなかなか進んでおりません。

 今後、精神科医や心理職などの専門家の育成と、精神科医だけでなく、心理職などとのチーム医療に対しても保険適用を可能とするよう改善を図るべきです。総理の答弁を求めます。

 さて、大阪地検特捜部の現職検事による証拠改ざん事件は、刑事司法の根幹を揺るがす前代未聞の不祥事であり、極めて遺憾です。

 この事件は、大阪地検の前特捜部長、副部長の逮捕という検察史上例のない事態にまで発展し、検察に対する国民の信頼を失墜させてしまいました。特捜部の組織的な関与があったならば、極めて深刻な事態です。徹底した捜査で事件の全容解明を急ぎ、速やかに国民に真相を公表すべきです。

 あわせて、再発防止に向けた抜本的な検察改革が急務です。また、今回の事件を機に、取り調べの全面可視化なども視野に入れた捜査手法改革についても議論を行うべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 本来、年金、医療、介護等の社会保障制度は、国民生活の根幹にかかわる最重要施策であり、政権交代があったからといって簡単に変えるべきものではありません。

 我が党は、国民の安心を確保するために、社会保障ビジョンの取りまとめを現在進めております。年金、医療、介護、子育てなどの分野について、負担と給付を含め、トータルなビジョンを提案したいと考えております。

 これまで民主党は、最低保障年金を初め、高齢者医療制度も廃止すると言いながら、いまだに具体策を示しておりません。政権与党として、社会保障制度の具体案をきちっと示すべきです。その上で、私は、国民の将来の安心を確保するため、社会保障に関する与野党協議会を設置すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 総理は熟議の国会と言われましたが、まずは自身が掲げる有言実行の有言の中身をより具体的に示さなければ議論にもなりません。残念ながら、総理の所信からは、国民生活を立て直すための改革像や、それを実現するための気迫が私には伝わってきませんでした。

 政治は国民のためにあります。公明党は、国民の声を真摯に受けとめ、国会における真剣な議論を通じて、国民生活を守り、国益を守るために全力で闘うことをお誓いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 答弁に入る前に一言申し上げます。

 昨日の本会議での私の発言に関し、不適切との御指摘をいただきました。御指摘を真摯に受けとめ、以後、与野党が十分議論に臨めるよう努めたいと思います。

 井上議員の御質問に順次お答えをいたしたいと思います。

 まず、この四カ月間の取り組みとマニフェストについてお尋ねがありました。

 政権発足以降、参議院選挙と代表選挙が行われましたが、その間も含め、内閣としては、元気な日本を復活させるための来年度予算の概算要求の取りまとめ、急激な円高、デフレへの緊急対応策を初めとする経済対策の策定など、公務優先を貫き、政府としてやるべきことをしっかりやってきたと考えております。

 また、昨年の衆議院のマニフェストは、任期中の実現を国民に約束したものであり、引き続き、最大限実現するよう取り組んでまいります。

 なお、参議院選のマニフェストについては、これまでも御説明してきたとおり、国民の皆様の声にも耳を傾け、総選挙後の環境の状況の変化に応じ、〇九年の衆議院マニフェストの中で特に強調したい部分などを記載したところであります。

 今後も、参議院選挙で示された国民の声を踏まえ、国民に丁寧に説明しながら政策を進めてまいりたいと思っております。

 次に、小沢氏、鳩山氏に関する質問及び政治改革課題に関する質問をいただきました。政治とお金をめぐる問題、政治改革に関して何点か御質問をあわせていただいております。

 まず、鳩山議員に対する問題については、検察処分、検察審査会審査、裁判ともすべて終了し、かつ、鳩山前総理御自身が総理辞任という大変重い形で政治責任をとられた、このように認識をいたしております。

 次に、小沢議員の国会における説明の件につきましては、まず、国会に関することでありますので、国会で御議論、御決定をいただくべきものと考えます。

 なお、小沢議員につきましては、御本人も説明責任を果たしていくと表明されておりますので、司法手続に入っていること等を踏まえつつ、説明の場、方法を含めて、御本人がみずから判断し、対応されることが望ましいと考えております。

 また、政治家の監督責任強化、企業・団体献金禁止に関する政治資金規正法改正につきましては、各党各会派で協議に入る具体的な御提案を期待いたしております。その場合、民主党としても積極的に対応するよう指示をいたしたいと考えております。

 この件での最後に、いわゆる歳費日割り法案につきましては、国会議員各位の処遇に関する問題でありますが、各党各会派、協議を進め、成案を得ることを期待いたしております。

 経済財政運営と経済の現状認識についての御質問をいただきました。

 私自身の政治の原点は、現場からの発想にあると考えております。このため、総理に就任してから、六回にわたり、現場視察を行っては車座での意見交換を繰り返し、政策立案についての指示を行ってきました。

 例えば、京都のジョブパークを訪問し、新卒者雇用支援の対策を検討し、あるいは、大田区の中小企業や北九州のリチウムイオン電池の部品工場等を訪問し、空洞化問題について検討を加え、低炭素型雇用創出産業の立地支援の拡充などの対策を盛り込んできたところであります。

 民主党代表選挙の間も、政府としては、新成長戦略実現のための三段構えの経済対策など、経済対策の検討を絶え間なく実施してきたところです。

 今後とも、現場からの発想を大切にして政権運営に当たっていきたいと考えております。

 円高対策について御質問をいただきました。

 現在、我が国においてデフレが進行し、経済情勢が依然として厳しい中、為替相場の過度の変動は、経済、金融の安定への悪影響から、看過できない問題であります。こうした考え方を踏まえ、為替相場の過度の変動を抑制する観点から、先般、為替介入を実施したところであります。

 今後とも、引き続き為替の動向に注視していくとともに、必要なときには断固たる措置をとってまいりたいと考えております。

 また、関係国通貨当局間では、為替を含む金融情勢について、常日ごろから連絡をとりつつ、意見交換を行っております。引き続きG7各国等と適切に協力してまいりたいと思います。

 井上議員から御指摘の日本版物価目標政策に関連し、日銀は、先日、十月五日の金融政策決定会合において、日本銀行は、中長期的な物価安定の理解に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで実質ゼロ金利政策を継続するとの決定をされたところであります。日銀において、こうした方針に基づき、引き続き、デフレ克服を初め、経済を金融面から支えていただくことを期待いたしております。

 補正予算の編成、デフレ脱却に向けた道筋及び経済の司令塔について御質問をいただきました。

 所信で述べたとおり、経済成長、財政健全化、社会保障改革の一体的実現が解決すべき重要政策課題であり、政府は、新成長戦略及び財政運営戦略に基づき、一丸となって経済財政政策に当たっているところであります。

 具体的には、円高、デフレ状況に緊急的に対応するため、経済財政政策担当大臣が中心となって、新成長戦略実現に向けた三段構えの経済対策を九月十日に決定いたしました。

 この第一弾として、直ちに執行できる、当初予算の経済危機対応・地域活性化予備費を活用して、必要な対策を講じました。

 続いて、切れ目ない対策を講じるため、与野党からの提言も踏まえ、九月二十七日に、今国会での補正予算の編成を含む第二段階の経済対策の検討を指示いたしました。

 こうした取り組みにより、デフレ脱却を実現するとともに、日本経済を本格的な成長軌道に乗せてまいりたい、このように考えております。

 公明党としての緊急経済対策を踏まえての御質問をいただきました。

 公明党が提案されている経済対策については、政府の経済対策と軌を一にする部分が多いと考えております。

 まず、雇用対策や中小企業対策については、一部は既に第一段階の予備費で同様の事業を実施しているところです。さらに、公明党が提案されている地域経済の活性化や福祉、環境対策については、現在検討している第二段階の経済対策において、御党の御提案も参考としつつ、政府として責任を持って取りまとめてまいりたいと考えております。

 補正予算については、与野党の枠を超えた御理解と御協力をいただければ大変ありがたい、このように思っております。

 公務員制度改革の全体像や総人件費二割削減等について御質問をいただきました。

 政府は、昨年秋の新政権発足後、直ちに、天下りのあっせんを廃止するなど、公務員制度改革に取り組んできたところであります。

 現在、公務員の労働基本権や使用者機関のあり方等を含めた総合的、抜本的な公務員制度改革の具体像を検討しており、これらに加え、内閣人事局等についても一体的に検討し、改革の全体像を示す法案として、次期通常国会に提出していきたいと考えております。

 また、国家公務員の総人件費二割削減については、まず第一に、地方分権推進に伴う地方移管、第二に、各種手当、退職金等の水準や定員の見直し、第三に、労使交渉を通じた給与改定など、さまざまな手法により、四年間かけて、平成二十五年度までに達成することを目標といたしております。

 公務員等の不正経理防止についての御質問をいただきました。

 政府としても、公務員や独立行政法人職員等の不正経理の防止の徹底を図ることは重要な課題であると認識をいたしており、御指摘の問題意識は共有しているものと考えております。

 公明党において再提出を予定されている不正経理防止法案については、不正経理に対する罰則のあり方について、関係機関においてよく検討を行う必要があると考えております。

 いずれにせよ、政府としては、引き続き、予算執行の適正化に向けて積極的に取り組んでいく所存であります。

 独立行政法人改革についての御質問にお答えします。

 独立行政法人については、昨年の事業仕分けの対象とし、改革を進めておりますが、公明党の改革案では、すべての事務及び事業について廃止等の措置を講ずることとしていると承知をいたしております。

 政府としても、年内をめどに、すべての独立行政法人の業務を例外なく検証いたします。その結果に基づき、各独法の事務事業についての見直しの基本方針を策定し、廃止を含めた組織の見直しや今後の制度改革につなげてまいりたいと考えております。

 尖閣諸島周辺領海内での衝突事故及び中国河北省での邦人拘束についての御質問にお答えいたします。

 尖閣諸島が我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いないところであり、領有権をめぐる問題は、そもそも存在をいたしておりません。

 今回の事件は、国内法に基づいて適切に対応、処理したものであります。したがって、日本は圧力を加えたら屈する国と内外で受けとめられるとの指摘は当たらないと考えております。

 また、尖閣諸島に関する我が国の立場については、国内外で正しい理解が得られるよう今後とも努力をしてまいります。

 中国河北省で拘束されている一名の方については、身柄の安全確保とともに、人道的観点からの迅速な解放を中国側に求めており、これを引き続き求めていく所存であります。

 戸別所得補償制度についてお答えを申し上げます。

 二十二年産米の取引が昨年の当初価格よりも低い価格で開始されたことは承知しております。米価の下落に対しては、米戸別所得補償モデル事業に参加をされている方については農家の所得が補償されることになると認識をいたしております。

 なお、政府が米価の下支えのために備蓄運営上必要のない米の買い入れを行うことは、消費者の理解を得にくいこと、米モデル事業の非参加者が米価上昇の最大のメリットを受けること等の問題があるとは考えております。備蓄運営のあり方については、二十三年度予算編成における検討課題と認識しているところであります。

 戸別所得補償制度については、全国一律の交付単価としたことにより、生産を効率化させてコストダウンを図ったり、品質を向上させて高価格で販売するなど、努力した農業者の所得が向上する仕組みとなっており、担い手の育成に資するものと認識をいたしております。

 なお、条件不利な産地における生産コストの格差是正や環境保全型農業の取り組みに対しては、支援のあり方等について現在検討をいたしているところであります。

 猛暑等における農林水産業被害と口蹄疫被害への対応についてお答えを申し上げます。

 農業共済では、猛暑、酷暑による減収や品質低下に伴う収入減については、既に補てんの対象となっているところと承知をしております。

 漁業や養殖業の一部で海水温の上昇による影響が出ていると聞いており、被害が発生した場合には、漁業共済による損失の補償や融資により被害漁業者の経営の安定に資するよう、速やかに対応してまいりたいと考えております。

 今回の口蹄疫の発生農場に交付される手当金などについては、口蹄疫対策特別措置法の趣旨を踏まえ、必要な免税措置が講じられるよう調整をいたしているところです。口蹄疫対策特別措置法に基づく基金については、法の趣旨に即したものとなるよう最終調整を行っており、近日中にも案を取りまとめてまいりたいと考えております。

 高額療養費制度、子宮頸がんの予防及びうつ病対策についてお答えを申し上げます。

 高額療養費制度については、本年七月から社会保障審議会で議論を始め、九月には、年間収入三百万円以下の方の自己負担限度額を見直した場合の試算をお示ししたところであり、引き続き、幅広い観点から検討してまいりたいと思っております。

 子宮頸がんの予防については、無料クーポン券などにより検診の強化充実を図っているほか、子宮頸がん予防ワクチンの接種推進について、予算編成過程で今後検討してまいりたいと考えております。

 うつ病対策については、認知行動療法の研修など、精神科医や心理職等の専門家の育成を行っているほか、心理職を含めたチーム医療に対する診療報酬上の評価を行っているところです。認知行動療法におけるチーム医療の保険適用についても、その有効性、安全性等を見きわめた上で検討してまいりたいと思います。

 検察の信頼回復についての御質問にお答えいたします。

 今回の検察をめぐる証拠改ざんなどの一連の事態については、極めて遺憾なことだと認識をいたしております。

 これについては、最高検察庁が既に検証を開始しており、法務大臣のもとでも、第三者による会議を設け、検察のあり方等に関する検討を行うものと承知しております。検察に対する信頼回復のため、幅広い観点から検討が行われ、それを踏まえた適切な対応がなされるものと考えております。

 また、取り調べの可視化や捜査手法のあり方についても、法務省などの関係省庁において調査検討が進められているところであります。

 社会保障に関する与野党協議会の設置についての御質問にお答えを申し上げます。

 最低保障年金を含む新たな年金制度の内容については、今後、党派を超えた国民的な議論を行い、平成二十五年の法案提出を目指すこととしています。

 また、後期高齢者医療制度廃止後の新たな制度については、八月に基本骨格を示したところであり、引き続き検討を進め、年末までに具体的な成案を取りまとめることといたしております。

 今後、あるべき社会保障の全体像については、必要とされるサービスの水準、内容を含め、国民の皆さんにわかりやすい選択肢を提示し、その上で、それに必要な財源を一体的に議論する必要があると考えております。

 議論に当たっては与野党を超えた議論が不可欠であると考えますが、先ほど、社会保障についてのトータルなビジョンを提案したい、社会保障に関する与野党協議会を設置すべきとの御意見を井上議員からいただいたところであります。我々の考え方と軌を一にするものであり、御提案を真摯に受けとめて、建設的な議論をしたいと考えております。

 他の党の参加も含めた議論の進め方についても、ぜひ相談に乗っていただければありがたいと思っております。

 以上、答弁とさせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、菅総理に質問します。(拍手)

 まず、民主党小沢元代表の政治資金疑惑についてです。

 検察審査会が、政治資金規正法違反の罪で起訴すべきだと二度にわたって判断を下し、強制起訴となったことは極めて重大です。国会は、小沢氏の証人喚問を行い、収支報告書の虚偽記載だけでなく、ゼネコンによるやみ献金疑惑を含めた真相の徹底的な究明を図り、政治的道義的責任を明らかにすべきです。同時に、民主党と総理自身が約束してきた企業・団体献金禁止を直ちに行うべきです。民主党代表である総理の見解を問うものです。

 次に、尖閣諸島問題について質問します。

 私は、この間の中国漁船衝突事件のような事態を繰り返させないために何よりも重要なことは、日本政府が尖閣諸島の領有の大義を理を尽くして主張することにあると考えます。

 日本共産党は、一九七二年に見解を発表し、日本の領有には歴史的にも国際法上も明確な根拠があることを明らかにしています。さらに、十月四日、より踏み込んだ見解を発表し、日本政府並びに各国政府に我が党の見解を伝えています。

 尖閣諸島の存在は、古くから日本にも中国にも知られていましたが、近代に至るまで、いずれの国の領有にも属さない、国際法で言う無主の地、持ち主のない土地でした。日本政府は、一八九五年一月十四日の閣議決定によって尖閣諸島を日本領に編入しましたが、これが歴史的には最初の領有行為となりました。これは、無主の地を領有の意思を持って占有する、国際法で言う先占に当たります。そして、それ以降、今日に至るまで、尖閣列島は、戦後の一時期、米国の施政下に置かれたことがありましたが、日本による実効支配が続いています。

 以上の歴史的事実に照らして、日本による領有は国際法上明確な根拠があることは明らかですが、まず、総理に確認しておきたい。

 中国側は尖閣諸島の領有権を主張していますが、その最大の問題点は、中国が、一八九五年から一九七〇年までの七十五年間、一度も日本の領有に対して異議も抗議も行っていないという事実にあります。

 中国は、一九七〇年代に入ってから、にわかに尖閣諸島の領有権を主張し、その主張の中心点は、日清戦争に乗じて日本が不当に奪ったものだというものです。しかし、日清戦争の講和を取り決めた下関条約と、それに関するすべての交渉記録に照らしても、日本が中国から侵略によって奪ったのは台湾と澎湖列島であり、尖閣諸島がそこに含まれていないことは明らかです。

 日本共産党は、過去の日本による侵略戦争や植民地支配に最も厳しく反対してきた政党ですが、日本による尖閣諸島の領有は日清戦争による侵略とは全く性格が異なる正当な行為であり、中国側の主張が成り立たないことは明瞭だと考えます。総理の見解を示していただきたい。

 日本側の問題点はどこにあるか。それは、歴代政府が、一九七二年の日中国交正常化以来、本腰を入れて日本の領有の正当性を主張してきたとは言えない点にあります。

 一九七八年の日中平和友好条約締結の際に、中国のトウショウヘイ副首相が尖閣諸島の領有問題の一時棚上げを唱えたのに対し、日本側は領有権を明確な形では主張しませんでした。一九九二年に中国が領海法を決め、尖閣諸島を自国領と明記した際にも、外務省が口頭で抗議しただけで、政府としての本腰を入れた政治的、外交的対応が何らなされなかったことは極めて重大であります。

 そして、今回の事件でも、民主党政権は、国内法で粛々と対処すると言うだけで、領有の大義を、根拠を示し、理を尽くして主張するという外交活動を行っているとは言えません。総理、ここにこそ一番の問題があると考えませんか。

 我が党は、日本政府に、こうした態度を改め、歴史的事実、国際法の道理に即して尖閣諸島の領有の正当性を中国政府と国際社会に堂々と主張する外交努力を強めることを求めるものです。

 同時に、中国政府に対しても、今回のような事件が起こった場合、事態をエスカレートさせたり、緊張を高める対応を避け、冷静な言動や対応を行うことを求めます。

 以上の諸点に対して総理の見解を伺いたい。

 次に、経済危機をどう打開するかについて質問します。

 リーマン・ショックから二年、大企業の生産はV字回復を果たし、利益を急増させています。しかし、国民の暮らしの実態はどうでしょう。民間企業の賃金は、この一年間で平均二十三万七千円も減り、過去最大の落ち込みです。多くの中小企業から、大不況に加えて急激な円高でいよいよ立ち行かないとの悲鳴が聞こえてきます。農家からは、米価の大暴落で血の気が引いてみんな真っ暗な顔だ、とても生活ができないなどの声が殺到しており、政府による過剰分の買い上げは急務であります。

 ところが、総理の所信表明演説では、経済危機のもとで国民生活がどんなに深刻な実態にあるかについての認識が全く語られませんでした。これは一体どういうことか。まず、国民の暮らしの実態を直視し、苦しみに心を寄せることが、日本の政治に責任を負う者の務めではありませんか。国民生活の苦境をどう認識しているのか、答弁を願いたい。

 それでは、どうやって国民の暮らしを守り、経済危機を打開するか。

 この間の日本経済の異常さの一つに、大企業の空前の金余りという現象があります。大不況のもとでも、大企業は、内部留保を一年間に二百三十三兆円から二百四十四兆円に膨張させ、現預金など手元資金だけでも五十二兆円に達しています。企業が利益を上げても、そのお金が、設備投資や雇用に回らず、使い道のないまま企業の内部に滞留しているのであります。

 この巨額の資金を投資や雇用などの生きたお金として日本経済に還流させることが日本経済の危機打開のために必要不可欠であることは論をまたないでしょう。それは、総理も、企業が抱える現預金は二百兆円超、この資金を国内投資などに誘導する必要があると述べているとおりです。

 では、そのために何が必要か。

 政策投資銀行が日本の大企業三千六百三十八社を対象に行った調査報告では、企業が新たな設備投資を行う最大の判断基準は、製造業、非製造業ともに需要の動向にあるという結果を紹介し、多くの企業で、需要のあるところで生産することが基本方針になっていると指摘しています。逆に言えば、企業の利益が、投資や雇用に回らず、内部にため込まれたままになってしまうのは、日本経済が極度の需要不足に落ち込んでいるからにほかなりません。

 需要といっても、世界経済危機のもとで、これまでのような外需頼み一本やりでは立ち行かないことは明らかです。私は、経済危機を打開する唯一の道は、家計を直接応援し、内需を底上げする政策への転換を図ることにあると考えますが、総理の見解を求めます。

 私は、そのために、二つの点に絞って具体的提案をいたします。

 第一は、人間らしい雇用を保障することです。

 派遣労働者を初めとした非正規雇用労働者の解雇や雇いどめは、ことしに入ってからも四万二千人に達しています。

 労働者派遣法を抜本改正し、雇用は正社員が当たり前の社会に踏み出すことは急務であります。我が党は、抜け穴だらけの政府案に対して、製造業派遣の全面禁止、専門業務の抜本見直しなど、派遣労働者から正社員への道を開く抜本的修正案を提案しております。我が党の修正案に対する総理の見解を求めます。

 最低賃金を時給千円以上に引き上げることは民主党の公約だったはずです。ことしは労働者の運動で平均十七円の引き上げとなりましたが、全国平均は、なお七百三十円です。七百三十円では、盆暮れ、正月、休み返上で働いても年収百五十万円。

 総理、公約した時給千円は、いつ実現するつもりですか。財界系のシンクタンクも、最低賃金の引き上げは、国民の購買力を高め、需要を拡大し、最大の成長戦略になると主張していることを、どう受けとめますか。中小企業への賃金助成を含む支援をとりながら、全国一律の最低賃金制の確立と時給千円以上への抜本引き上げを早急に図るべきではありませんか。

 新卒者の就職難は、超氷河期と言われる深刻な事態です。学校を卒業した若者の社会人としての第一歩が失業者という社会でいいのか。政府は、二つの方向で経済界に協力を働きかけるべきです。

 第一は、新卒者の採用数を確保することであります。

 かつて、超氷河期と言われた時期に、どの企業も新卒採用を急激に絞り込み、その結果、企業としても社員の年齢構成に大きなひずみが生まれた過ちを繰り返さないことが大切です。

 第二に、学業と両立できる就職活動のルールを確立することです。

 今、学生の就職活動は、三年生から就活に追われる、一つの企業からの四次面接、五次面接など繰り返しの呼び出しなど、学生の大きな負担となり、大学教育に深刻な障害をもたらしています。卒業後三年間は新卒扱いとすることも含め、過熱した就職活動を是正するルールをつくるために、大学、経済界、政府の三者による協議を直ちに開始することを提案します。総理の答弁を求めます。

 第二は、社会保障を削減から拡充に転換することです。

 民主党政権は、後期高齢者医療制度は直ちに廃止という公約を投げ捨て、廃止を先送りにしました。しかも、八月二十日に決定された方針では、高齢者を別勘定とし、給付費の一割を高齢者自身に負担させる新制度案をつくり、来年の通常国会に法案を提出するとしています。これは、うば捨て山との激しい怒りを呼んでいる現在の制度と、その根本思想においてどこが違うのですか。

 後期高齢者医療制度は速やかに撤廃し、老人保健制度に戻し、国民合意で、よりよい制度への改革を図るべきです。答弁を求めます。

 いま一つ、看過しがたい重大な問題があります。

 厚生労働省は、五月十九日、全国の都道府県に、国保料の値上げを抑えるために市町村が独自に行っている一般会計からの繰り入れをやめよとの通知を出しています。今でも、一人当たりの国保料は平均で九万六百二十五円。高過ぎる国保料が払えず、国保証が取り上げられ、命を落とす悲劇が全国に広がっています。

 市町村からの繰り入れをやめよということは、異常に高い国保料を国がさらに値上げせよと迫ることであり、政令市などでは一万円から三万円の値上げになってしまいます。命を削る通知は撤回し、国保への国庫負担の増額で国保料引き下げに踏み出すべきではありませんか。答弁を求めます。

 総理が真剣に家計と内需を活発にしようと考えておられるならば、とるべき政策は、今提案した人間らしい雇用と社会保障の充実こそが土台になるべきです。ところが、総理が新成長戦略の柱に据えているのは法人税の減税です。

 しかし、日銀の白川総裁も、我が党議員の質問に対して、大企業の手元資金は今は非常に潤沢、この資金を使う場所がないことを金融機関の経営者からも企業の経営者からもしょっちゅう聞くと答弁しています。

 空前の金余りにある大企業に法人税減税でさらに数兆円ばらまいたとして、一体どのような効果が生まれるのか、どうして投資や雇用が生まれるのか、説明していただきたい。内部留保がさらに積み上がるだけではないですか。税収が減り、その穴埋めを消費税増税に頼るとなれば、家計と内需をさらに落ち込ませ、企業の投資や雇用もいよいよ低迷するだけではないですか。

 大企業を応援すればいずれ経済がよくなり家計に回る、こうした自民党流の破綻した古い道から抜け出し、国民の暮らし最優先で内需主導の経済発展を目指す、政策の大転換が必要だと考えますが、いかがでしょうか。総理の答弁を求めます。

 最後に、沖縄の米軍基地問題について質問します。

 総理は、所信表明で、普天間基地の辺野古移設を決めた日米合意を推進すると宣言しました。しかし、沖縄県民の総意は、いよいよ揺るぎないものとなっています。ことしに入ってからも、名護市長選挙、全会一致の県議会決議、九万人の県民大会、名護市議選挙など、沖縄県民は、普天間基地の閉鎖、撤去、県内移設反対という総意を、繰り返し日米両政府に突きつけてきました。

 総理は、沖縄県民の総意を踏みつけにした日米合意を、民主主義の国で実行できると本気で考えておられるのですか。もはや不可能であることは、だれの目にも明瞭ではありませんか。答弁を求めます。

 しかも、この間発表された民主党政権の初めての防衛白書は、普天間飛行場の代替の施設を決めない限り、普天間飛行場が返還されることはないと言い放ちました。辺野古移設を受け入れなければ、普天間は返さない。東京新聞も、これでは恫喝に近いと批判しました。このような居丈高な姿勢が許されると考えているのですか。

 さらに、米軍は、嘉手納基地の滑走路の改修に伴って、嘉手納基地の周辺空域で訓練を繰り返しているF15戦闘機など百数十機の米軍機を普天間基地などに目的地外着陸させると発表し、既にその訓練が始まり、地元自治体から激しい抗議の声が起こっています。嘉手納基地を使用する航空機の墜落事故は、一九八二年以降だけで、十三件十五機に達しています。世界一危険な基地と裁判所も認定している普天間基地にさらなる危険を負わせるということは断じて許されるものではありません。

 総理、負担軽減に最大限努力という言明が口先だけのものでないというなら、普天間基地への目的地外着陸を中止するよう、アメリカにきっぱりと要求すべきではありませんか。

 普天間問題の解決の唯一の道は、日米合意を白紙撤回し、移設条件なしの撤去、無条件撤去を求めて、アメリカと本腰の交渉をするしかない。私は、総理にこのことを強く求めるものであります。

 今沖縄に新基地建設を迫ることは、二十一世紀の先々まで県民に、基地との共存、永久共存を迫るものであり、そうした勢力にはおよそ国の独立も平和も語る資格はないと言わなければなりません。日本共産党は、国民とともに二十一世紀に基地も安保もない独立、平和の日本を目指す決意を申し上げて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 志位委員長にお答えを申し上げます。

 まず、小沢議員の国会における説明の件につきましては、国会に関することでありますので、国会で御議論、御決定をいただくべきものと考えます。

 なお、小沢氏本人も説明責任を果たしていくと表明されておりますので、司法手続に入っていることなどを踏まえつつ、説明の場、方法を含めて、御本人がみずから判断し、対応されることが望ましい、このように考えております。

 また、企業・団体献金禁止の問題につきましては、各党会派で建設的な議論を進め、成案を得ることを期待しております。民主党としても野党各党から具体的な提案があれば積極的に対応していくよう指示をいたしたいと考えております。

 次に、尖閣諸島の領有権に関する問題についてお答えを申し上げます。

 尖閣諸島については、一八八五年以降、政府が再三にわたり現地調査を行い、単にこれが無人島であるのみならず、清国の支配が及んでいる痕跡がないことを慎重に確認した上で、一八九五年一月十四日に閣議決定を行って、正式に我が国の領土に編入することにいたしたわけであります。

 尖閣諸島は、自来、歴史的に一貫して我が国の領土たる南西諸島の一部を構成しており、一八九五年五月発効の下関条約第二条に基づき、我が国が清国から割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には含まれておりません。

 なお、尖閣諸島の領有権については、中国及び台湾が独自の主張を開始したのは、一九七〇年代以降であります。

 このように、尖閣諸島が歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であることは疑いのないところであり、現に我が国が有効に支配しております。尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題は、そもそも存在をいたしておりません。

 さらに、尖閣諸島の領有権の正当性を主張する外交努力についての御質問をいただきました。

 さきにお答えしたとおり、尖閣諸島が我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いないところであり、領有権をめぐる問題は、そもそも存在しておりません。

 かかる我が国の立場は、七八年の日中平和友好条約締結の際や一九九二年に中国が領海法を制定した際も含め、累次の機会に我が方から中国に明確に伝えてきているところであります。また、ASEMの際の温家宝総理との懇談においても、私から、我が国の先ほど述べた原則的な立場をきちんと申し上げたところであります。

 我が国の立場について国内外で正しい理解が得られるよう今後とも努力する考えであることを申し添えておきます。

 中国に対して冷静な対応を求めることについての御質問をいただきました。

 所信表明でも述べましたように、日中両国は一衣帯水のお互いに重要な隣国であり、両国の関係は、アジア太平洋地域、ひいては世界にとっても重要な関係だと認識しております。中国には、国際社会の責任ある一員として、適切な役割と言動を期待するところであります。日中両国の間にさまざまな問題が生じたとしても、隣国同士として冷静に対処することが重要と考えております。

 政府による過剰米の買い入れについての御質問にお答えします。

 二十二年産米の取引が昨年の当初価格よりも低い価格で開始されたことは承知しておりますが、米価の下落に対しては、米戸別所得補償モデル事業に参加しておられる農家については農家の所得が補償されることになると承知しております。

 なお、政府が米価の下支えのために備蓄運営上必要のない米の買い入れを行うことは、消費者の理解を得られないこと、米モデル事業の非参加者が米価上昇の最大のメリットを受けること等の幾つかの問題があると考えているところであります。

 国民生活に対する認識についてお答えをいたします。

 我が国の景気は、リーマン・ショックで大きく落ち込んで以降持ち直してきておりますが、このところ環境の厳しさを増しているとの認識を持っております。失業率が高水準にあるなど、依然として厳しい状況にあります。

 私自身も、大田区を訪問し、中小企業の経営者と意見交換をしました。最悪の状況は脱しつつあるものの、不況や円高による影響で、取引先が海外移転をした、あるいは仕事がなくなったなどの苦境が続いていることをお伺いしたところであります。

 経済危機を打開する道についての御質問がありました。

 需要が不足している中、供給側がコスト削減を進めてもデフレが進むことになり、景気は回復をいたしません。そのため、供給者本位から消費者目線に転換する必要があると考えております。

 このため、医療・介護・子育てサービス、環境といった、国内でも潜在的に需要が多い分野をターゲットに、政府が先頭に立って雇用創出に取り組んでまいりたいと考えております。

 共産党の改正労働者派遣法修正案についての御質問をいただきました。

 現在審議をお願いしている労働者派遣法改正案は、いわゆる派遣切りを招いたとの反省を踏まえ、派遣労働者の保護を強化するための抜本的な改正を行うものであります。改正案は、労働政策審議会で公労使三者がぎりぎりのところで合意した、バランスのとれたものであると認識しております。

 共産党の修正案は、改正法案では不十分で、さらに規制を強化しようという内容でありますけれども、派遣で働くことを希望している労働者の選択肢を狭めてしまうことにもなり、適当ではないと考えております。

 いずれにせよ、改正法案については、今臨時国会で十分に審議をいただき、早期の成立をお願いいたしたいと思います。

 最低賃金引き上げについての御質問をいただきました。

 本年六月の雇用戦略対話において、二〇二〇年までの目標として、できる限り早期に全国最低八百円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均千円を目指すことを政労使で合意いたしました。

 また、最低賃金の引き上げにより最も影響を受ける中小企業に対しては、今後、適切な支援策を検討してまいる所存です。

 今後とも、雇用、経済への影響にも配慮し、財界を含め、労使関係者と調整を丁寧に行いつつ、地域の実情を踏まえながら、最低賃金の引き上げに取り組んでまいりたいと思います。

 新卒者雇用についてお答えを申し上げます。

 将来を担う新卒者が一日でも早く就職できるようにすることが重要であります。このため、新卒者雇用・特命チームを設置し、その取りまとめを踏まえ、卒業後三年以内の既卒者を採用する企業やトライアル雇用を行う企業への奨励金の創設等、新卒者雇用に関する緊急対策を先般の経済対策に盛り込んだところであります。

 さらに、関係大臣から経済団体に対して、採用枠の拡大、卒業後三年間は新卒扱いをすること、早期の採用選考活動の抑制の要請をいたしているところです。

 今後とも、新卒者の就職の実現のため、全力を尽くしてまいりたいと考えます。

 後期高齢者医療制度についての御質問にお答えいたします。

 後期高齢者医療制度は、七十五歳に到達した途端に、それまでの保険制度から分離、区分した保険制度に加入させるものであります。現在検討を進めている新たな制度では、高齢者の方々も現役世代と同様に国保か被用者保険に加入し、年齢による差別を解消することといたしております。

 老人保健制度に一たん戻すことについては、たび重なる見直しにより不安や混乱が生じるおそれがあるほか、事務を担うことになる市町村や多くの拠出金を負担する被用者保険も反対であるなどの問題があります。

 政府としては、幅広い国民の納得と信頼が得られる新たな制度を創設すべく、引き続き具体的な検討を進め、本年末までに具体的な成案を取りまとめたいと考えております。

 国民健康保険の財政についての御質問をいただきました。

 国民健康保険は、まず第一に、健康保険のように事業主負担がないこと、第二に、構造的に低所得者が多いことといった事情があり、財政力が弱いことから、他の医療保険制度に比べて多くの補助がなされております。

 しかしながら、国民健康保険の財政は引き続き厳しい状況にあることから、平成二十二年、さきの通常国会において、平成二十一年で期限を迎えた財政基盤強化策を四年間延長するための国民健康保険法の改正を行ったところであります。

 法人税減税と消費税増税についての御質問がありました。

 法人実効税率の引き下げについては、日本から企業が海外流出して雇用が失われることを防ぐといった観点も含め、課税ベースの拡大等による財源確保とあわせ、二十三年度予算編成、税制改正作業の中で検討して結論を得ることといたしております。

 消費税について御指摘がありましたが、政府としては、社会保障改革の全体像について、必要とされるサービスの水準、内容を含め、国民の皆さんにわかりやすい選択肢を提示した上で、その財源をどう確保するか、消費税を含む税制全体の議論を一体的に行うことといたしております。法人税減税の穴埋めのために消費税増税を行うといったことは考えておりません。

 大企業優先から国民の暮らし最優先への内需主導の経済発展ということについての御質問にお答えいたします。

 日本経済を本格的な成長軌道に乗せ、豊かな暮らしを実現するには、安定した需要や雇用を創出するとともに、産業競争力の強化とあわせて、富が広く循環する経済構造を築く必要があります。こうした認識のもと、新成長戦略を策定し、現在、その実施の段階に入っております。

 成長と雇用に重点を置いた国づくりを進め、豊かで安心な暮らしを実現いたしたい、こう考えております。

 普天間基地問題に係る日米合意等についての御質問をいただきました。

 普天間飛行場の移設問題については、本年五月の日米合意を踏まえて取り組むと同時に、沖縄に集中した基地負担の軽減にも全力を挙げて取り組んでまいっております。沖縄の方々の御理解を求め、誠心誠意話し合いをしてまいりたいと思います。御指摘の防衛白書においても、沖縄県の理解を得べく一層の努力を行うという趣旨が記述をされていると理解しております。

 御指摘の、普天間飛行場への目的地外着陸、ダイバートについては、現在、嘉手納飛行場の滑走路改修工事が行われているため、緊急時に限り行われるものと承知をしております。いずれにせよ、周辺住民への影響を最小限にするよう働きかけているところであります。

 以上、志位委員長に対する答弁とさせていただきます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 重野安正君。

    〔重野安正君登壇〕

重野安正君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、菅総理の所信表明演説に対し質問をします。(拍手)

 総理は、今回の演説を先送り一掃宣言と位置づけ、有言実行で取り組む決意を表明されました。意気込みは買いますが、問題は、実現への道筋であり、その実行力であります。必ずやりますと言っても、実際の行動が伴わなければ信を失うだけであります。

 この間の首相発言を見ましても、有言の内容も、抽象的な言葉ばかりでイメージがわいてきませんし、説得力がないと言われても仕方ありません。大ぶろしきを広げたと言われないだけの実績を残せるかどうか、改めて総理の決意をお聞かせください。

 構造改革による打撃やリーマン・ショック後の世界不況の後遺症などによって、日本はデフレスパイラルの悪循環から抜け出せなくなっています。その打開策は、可処分所得の増大による家計の再建であり、そのためには、家計の収入をふやし、将来への不安を取り除くことであります。まずは、生活の立て直しを優先すべきです。貧困と格差の拡大という災厄に見舞われた日本社会をどう立て直すか、総理のプランをお示しください。

 この十年、資本金十億円以上の大企業の経常利益は十五兆円が三十二兆円に、内部留保は百四十二兆円が二百二十九兆円になり、家計は苦しいのに企業は豊かになっている。企業の余剰資金をどう家計や労働者に回すのかが重要です。

 法人税を引き下げても、それが果たして国民生活に回ってくるのか、疑問を持たざるを得ませんし、日本経済を支えている中小企業の多くにとって、効果的だとは言えません。課税ベースの拡大と、企業の社会的責任としての保険料負担のあり方もあわせて検討していくべきだと考えますが、総理の考えをお聞かせください。

 補正予算については、社民党の提言も真摯に受けとめられ、国民生活にとって前進と言えるものにしてほしいと考えます。

 具体的には、特別養護老人ホーム、本年度、さらに十万人分追加すること、待機児童の解消の緊急対策を実施し、一年で十万人分に対応する認可保育園、認定こども園などの新設、増設をすること、身近な公共事業のための地域活性化交付金を継続することなど、安心と雇用づくりと地域を元気にする対策の実施を求めていきたいと考えます。

 また、尖閣諸島周辺における状況等に対処するための海上保安庁の巡視活動強化のため、巡視船やヘリコプターをふやすことを求めていますが、こうした提案について総理はどのように受けとめておられますか、お聞かせください。

 続いて、森林・林業政策についてお尋ねします。

 私は、今こそ、百年先を見据えた大きな視点に立って、国土の七割を占める山と森の再生を図るプランが必要だと考えます。現在、最終取りまとめに向けて作業が進められております森林・林業再生プランも、今までの林業政策の反省の上に立って、そういう方向性のものになるように期待いたします。

 まずは、二〇二〇年に木材自給率五〇%を目指すとしている目標を実現するために、人材育成、路網整備、施業集約などの事業促進と予算確保がなければ絵に描いたもちとなります。京都議定書に基づき、毎年五十五万ヘクタールの間伐の実施が必要となっていますが、その達成のため、補正予算でもしっかり手当てすべきであります。林業への新規就業者を毎年一万人、技術を持った林業就業者を十万人規模にふやすため、緑の雇用事業予算の増額を初め、研修や教育制度などを充実強化する必要があると考えます。

 以上について、総理の明快な答弁を求めます。

 公務員賃金について伺います。

 労働基本権制約の代償措置の根幹をなす人事院勧告制度を尊重すべき立場にある閣僚から、勧告以上の公務員給与引き下げを求める発言が相次いでいるのは極めて遺憾であります。憲法に保障された労働基本権が制約されている現状のもとで、人事院勧告制度を無視した一方的給与削減等は断じて行うべきではないと考えますが、総理の見解を伺います。

 さて、私たちは、それこそ政権交代前から、労働者を保護する立場で、労働者派遣法改正案づくりにともに努力してまいりました。菅総理大臣、細川厚労大臣は、まさに野党時代から尽力されてきたキーパーソンであり、最強の布陣だと考えております。また、郵政改革法案についても、三党連立政権合意書を踏まえ、速やかに法案の成立を図ることが求められています。派遣法改正案と郵政改革関連法案の今国会での成立に向け、やり遂げるんだという気迫と決意を示していただきたい。

 次に、大阪地検特捜部の証拠改ざん、隠ぺい事件は泥沼の様相を呈している。この事件は、まさに我が国の司法制度の根本を揺るがす問題であり、何としても徹底的に解明していただきたいし、問題を、この事件の実行者である個人の問題に矮小化することは許されません。

 また、佐賀容疑者は、検察側のストーリーに乗らず徹底抗戦する、取り調べの全面可視化を要求すると語っていると報じられています。これまで取り調べの可視化に対して検察が消極的であったのは、検察が、ストーリーをつくり、証拠を捏造してきたからだと疑われてもおかしくありません。

 検察に対する国民の不信は頂点に達している。私は、直ちに取り調べの全過程の可視化に踏み切るべきだと考えます。総理からその旨をはっきりと指示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 次に、東京第五検察審査会の二度の議決がありましたが、国民から問いかけられた政治と金の問題は、立法府としても答えを出していかねばなりません。検察審査会の可視化とともに、小沢元幹事長の国会における説明を求めます。民主党も責任与党としてこの問題に答える義務があると考えますが、民主党代表たる総理のお考えをお聞かせください。

 また、国会議員の定数のあり方は、議会制民主主義の根幹のルールとして、多数会派が拙速に取り扱うべきものではありません。国会の、行政に対する批判、監視機能のあり方、違憲判決が相次ぐ一票の格差是正や衆参両院の関係なども含め、十分な国民論議の時間を確保する必要があります。大政党だけで押し切ることのないように強く求めておきたいと思いますが、総理の見解をお聞かせください。

 児童虐待については、相変わらず悲惨な事件が後を絶ちません。児童虐待防止対策を包括的に所管し、省庁横断的に実行する拠点として、総理大臣を本部長とする児童虐待防止対策本部を速やかに設置するよう提案いたしますが、総理はどのようにお考えでしょうか。

 厚生年金病院や社会保険病院については、さきの国会で二年間の存続延長となりましたが、病院の将来が見えないこともあり、医師も看護師も患者も不安を募らせています。地域医療を支えているこれらの病院の公的な存続に向け、改めて独立行政法人地域医療機能推進機構法案を提出すべきと考えますが、見解を伺います。

 総理は、主体的で能動的な外交を主張していますが、この間の尖閣問題や沖縄問題の対応を見ても、看板に偽りありという感が否めない。国民一人一人が自分の問題としてとらえ、国民全体で考える外交というのも、政府が責任逃れをしているような印象を与えかねません。総理みずから日本外交の立て直しにどう取り組むのか、決意をお聞かせください。

 そもそも、尖閣諸島が日本固有の領土であることは論をまちません。政府の立場を支持します。

 ただし、菅政権の今回の中国漁船船長の逮捕やその後の取り扱いについては、疑問の点も少なくありません。また、国民からは、政府は果たして領土や国民をどう守るのか、不信の念は消えておりません。

 偏狭なナショナリズムや尖閣諸島周辺での軍事的な対応は絶対に避けるべきである、そういう声があることも事実であります。双方が冷静に実務的な解決を目指す努力が求められると思います。総理の考えをお尋ねします。

 普天間基地問題について尋ねます。

 沖縄の負担軽減と言うのであれば、普天間基地の代替施設を国外、県外に求めるべきです。来月に予定されている沖縄県知事選挙では、容認派とされてきた現職仲井真知事も県外移設を求める姿勢に転じたと言われています。これが沖縄現地の現実であります。それでも頑迷に辺野古への移設を強行されるおつもりなのか、伺います。

 既に、米国側の都合で、日米合意どおりにグアムの基地を整備することは困難となっています。破綻しつつある米軍再編に関する日米の合意にこだわって問題を先送りするのではなく、合意の見直しを強く求めるべきであると考えますが、いかがですか。

 これまでの政府は、垂直離着陸輸送機MV22オスプレーについて、アメリカからは聞いていないとして、普天間配備どころか、名護市に計画中の普天間代替施設への配備も一貫して否定し続けてきました。しかし、八月三十一日に日米両政府が発表した専門家協議の報告書では、オスプレーの配備も前提にしていることが明らかになっています。おかしいと思うのは私だけではないでしょう。沖縄の負担軽減と言いながら新たな負担が盛り込まれているというのは、一体どういうことでしょうか。総理の見解を伺います。

 熟議の国会として、政策本位の論戦で与野党が徹底的に議論を尽くすのは、国会がねじれていようといまいと当たり前のことであり、今こそ、真の議会制民主主義のあり方を模索する機会にしていかなければなりません。菅政権には、ぜひとも、昨年夏の政権交代にあらわれた民意に立ち返り、国民生活が第一をしっかり実現してほしいと思います。

 社民党も、昨年の、十のテーマ三十三項目の政策合意の実現を強く求めるとともに、同時に、問題ありというものについては毅然とブレーキをかけていく決意であることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 重野議員からの御質問にお答えをいたします。

 まず、有言実行についてということで御質問をいただきました。

 所信表明では、これまで二十年の長きにわたり先送りされてきた五つの重要政策課題に今こそ着手し、次の世代に残さないで解決していかなければならないとの覚悟を申し上げたところであります。

 五つの重要政策課題、すなわち、経済成長、財政健全化、社会保障改革の一体的実現、そして、その前提としての地域主権改革の推進、さらには主体的な外交の展開について、それぞれ具体的な考え方を所信表明で御説明し、各党各会派の議員の皆さんに御協力をお願いさせていただきました。

 大ぶろしきを広げたというふうに言われないようにという御指摘でありますが、率直に申し上げて、大ぶろしきを広げたんですよ。つまり、どういうことかといえば、二十年間にわたって先送りされてきた課題を、本当にそれを進めるためには、単独で、民主党だけでできるとは思っておりません。まして、私一人でできるとは思っておりません。ですから、私は、この五つの問題について、国会の中で熟議で議論をした中でそれを超えていこうということを全議員、全国民に訴えたいということで、大ぶろしきを広げさせていただいたところであります。

 日本経済の立て直しについての御質問をいただきました。

 御指摘のように、経済低迷が長く続き、社会の閉塞感が深まっているところであります。先送りをしてきた重要政策課題に今こそ着手し、これを次の世代に残さないで……(発言する者あり)

副議長(衛藤征士郎君) 諸君、静粛にお願いします。

内閣総理大臣(菅直人君)(続) 次の世代に残さないで解決していくこと、それがこの政権の役割であると認識をいたしております。

 そのために、まずなすべきことは、経済成長の実現であります。政府が先頭に立って、医療・介護・子育てサービス、環境といった需要のある分野の雇用をふやし、経済を活性化する。失業や不安定な雇用を減らし、だれもが居場所と出番を実感することができる社会をつくっていくことであります。こうした成長と雇用に重点を置いた国づくりを、新設した新成長戦略実現会議で力強く推進してまいりたいと思います。

 次に、課税ベースの拡大と企業の社会保険負担の拡大について御質問をいただきました。

 法人実効税率の引き下げについては、日本から企業が海外流出して雇用が失われてしまうことを防ぐといった観点も含めて、課税ベースの拡大等による財源確保とあわせて、二十三年度予算編成、税制改正作業の中で検討して結論を得ることといたしております。

 社会保険料についてお尋ねがありましたが、政府としては、社会保障改革の全体像について、必要とされるサービスの水準、内容を含め、国民にわかりやすい選択肢を提示した上で、その財源をどのように確保するのかもあわせて一体的に議論する必要がある、このように考えております。

 社民党の補正予算に対する提案についてお答えいたします。

 補正予算の編成を含む経済対策については、子育て、介護、地域活性化、雇用、人材育成など、指摘された点を含む五つの柱で検討しており、その基本的な方向性は、社民党からの御提案と大きく変わってはいないと考えております。

 補正予算は、国民生活に直結する課題であり、与野党間で意見交換を進め合意を目指したいと考えており、ぜひ社民党からも建設的な協議に参加をいただくようお願いを申し上げたいと思います。

 森林・林業の再生についての御質問をいただきました。

 全体としては、御指摘のような提案について、政府も私自身も同様の認識を持っております。

 林業について、私も現場をかなり回ってきましたけれども、ドイツなどでは、十倍から二十倍の生産効率を上げて日本にまで輸出をしている。日本は、何と、これだけ山がありながら二割しか国産材が使われていなくて、八割が輸入されている。

 こんな状況を打破して、まさに森林・林業再生プランを民主党も提案させていただいているところでありまして、これに基づいて、路網整備、施業を集約した間伐、緑の雇用事業を通じた人材育成等について、必要な予算措置を講じながら着実に推進し、我が国の森林・林業を早期に再生してまいりたい、このように考えております。

 公務員給与の削減について御質問をいただきました。

 本年の人事院勧告の取り扱いについては、現下の社会経済情勢、厳しい財政事情、他方で、国家公務員の労働基本権制約の代償措置としての性格などを勘案し、政府において、現在、鋭意検討を行っているところであります。

 労働者派遣法改正案と郵政改革関連法案についての御質問をいただきました。

 労働者派遣法改正については、私自身も、現大臣の細川さんも、社民党や国民新党の皆さんと汗をかいてこの案をまとめたことは今でももちろんよくよく覚えておりまして、この法案によって、行き過ぎた規制緩和を適正化し、派遣労働者を保護するための抜本的な改正を行ってまいりたいと考えております。この国会において速やかな成立を目指してまいりたいと思います。

 また、郵政改革関連法案については、民主党と国民新党との間の合意書において、速やかにその成立を期すとしているところであり、今国会において、その合意のとおり、速やかな成立を目指してまいりたいと考えております。

 検察の取り調べの可視化等についての御質問にお答えします。

 被疑者取り調べを録音、録画の方法により可視化することについては、その実現に向けて取り組むこととし、法務省などの関係省庁において調査検討を進めているところであります。今後も、引き続き幅広い観点から着実に検討を進めていくことといたしたいと思っております。

 小沢元幹事長の国会における説明についての御質問をいただきました。

 小沢議員の国会における説明の件につきましては、国会に関することでありますので、国会で御議論、御決定をいただくべきものと考えます。

 なお、小沢氏本人も説明責任を果たしていくと表明されておりますので、司法手続に入っていること等を踏まえつつ、説明の場、方法を含めて、御本人がみずから判断され、対応されることが望ましいと考えます。

 また、御指摘の政治改革、国会改革の諸課題につきましては、改革を求める国民の期待にこたえるのが政党の責務と考えます。その実現に当たっては、政党間で十分に議論をし成案を得るべきことは当然のことだと考えております。

 児童虐待と地域医療機能の推進について御質問をいただきました。

 本年七月、総理を本部長とし、全閣僚により構成する子ども・若者育成支援推進本部において、子ども・若者ビジョンを決定いたしたところであります。本ビジョンにおいては、児童虐待の発生予防のための支援の充実や、早期発見、早期対応等に取り組んでいくこととしております。

 また、社会保険病院及び厚生年金病院については、引き続き、地域医療に支障が生じないよう留意しながら、その譲渡、売却を進めるとともに、その中で、地域医療を確保し、病院の安定的運営を図るための新たな受け皿づくりが必要となれば、そのための法案の提出についても検討してまいりたいと考えております。

 日本外交を立て直す決意等についての御質問をいただきました。

 我が国が平和と繁栄を確保するためには、受動的な対応では不十分であります。所信表明で述べた主体的で能動的な外交とは、国民一人一人が自分の問題としてこうした問題をとらえ、国民全体で考えるものでなければならないという趣旨であります。こうした国民一人一人の責任に対する自覚を背景に主体的な外交を展開していく、それが政府としての責任だと考えております。

 尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、領有権をめぐる問題は、そもそも存在しておりません。いずれにせよ、日中両国間にさまざまな問題が生じたとしても、隣国同士として冷静に対処することが重要と考えております。

 普天間飛行場の移設及びオスプレーの配備に関する御質問をいただきました。

 普天間飛行場の移設問題については、本年五月の日米合意を踏まえて取り組むと同時に、沖縄に集中した基地負担の軽減にも全力を挙げて取り組んでまいります。沖縄の方々の御理解を求め、誠心誠意話し合ってまいりたいと思います。

 なお、オスプレーの沖縄への配備については、その可能性を否定し得ないものの、米国からは、現時点では具体的に決まっているわけではない旨の回答を得ていることを申し上げておきたいと思います。

 以上、答弁をさせていただきました。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 渡辺喜美君。

    〔渡辺喜美君登壇〕

渡辺喜美君 総理、なぜ体当たり船長を釈放したんですか。釈放までの間、だれが司令塔になったんですか。情報収集、分析、シミュレーションなど、官邸の危機管理体制に問題はなかったんですか。

 悪質だから逮捕したのに、まるで治外法権を認めたに等しい釈放じゃありませんか。

 検察の判断を了とした官邸は、実質的にどういう検討をして、実質的にどういう判断のもとに了としたんですか。釈放により、日本は圧力に屈する国だと国際的に受けとめられる悪影響を考慮したんですか。

 中国との緊張関係の中で、国民は、国家の役割や巨大な隣人とどうつき合っていくのか、その国家戦略を真剣に考え始めたやさきだったんです。

 尖閣問題について、総理の言う国民全体で考える主体的で能動的な外交とは、一体何なんですか。

 中国は、尖閣諸島を、台湾、チベット、新疆ウイグル問題と同じ、核心的国家利益と位置づけたと言われています。温家宝首相との会談でこの話は出たんですか。もしそうなら、七八年の尖閣棚上げ方針の大変更であります。日本も相当な覚悟で臨まなければなりませんが、いかがですか。

 菅総理が尊敬しておられる永井陽之助先生は、中国は文明の中心地域という世界観を持った覇権主義国家である、これに対抗する戦略として、中国を含めた多角的な力の均衡体系をアジアにおいて形成することが日本に与えられた大きな使命であると説いておられます。菅総理の対中国戦略を伺います。

 検察庁の証拠隠滅事件の教訓は、真実よりも、起訴して有罪判決をかち取る、そういうことを優先する組織文化を抜本的に改め、検察職員の職業倫理の確立、そのための人事評価制度を構築することであります。これは政治の役割じゃないんですか。

 このような問題があるのに、なぜ国家公務員法改正案をこの国会で提案しないんですか。また、内閣人事局をつくらないのは、基本法違反、明白じゃありませんか。

 六月の所信表明では、天下り禁止などの取り組みも本格化させると総理は言いました。今回は、天下りについて全く言及がありません。六月時点の言葉は有言実行するんですか。

 代表選で、総理は、国家戦略室は局への格上げを念頭に強化するとおっしゃいました。政治主導で、総理直属の国家戦略局の本格稼働に本気で取り組むおつもりがあるんでしょうか。

 代表選公約では、国家公務員給与について、人事院勧告を超えた削減を目指すと言っておられました。今は、何ですか、検討中に後退しちゃったじゃありませんか。総理大臣として有言実行できるんですか。

 菅総理の有言実行とは、思いつきを口にしてはすぐに迷走、都合が悪くなったらなかったことにするというものであります。例えば、ついこの間まで言っていた、消費税一〇%、増税すれば景気がよくなるという話はどうなっちゃったんですか。

 総理は雇用を先にふやすと言われていますが、その具体策は何なんでしょう。みんなの党は、ばらまきよりも減税、特に、自由償却による投資減税が雇用拡大にもつながると考えています。

 一昨日、日銀は金融緩和を決定しましたが、これはアリバイづくりのようなものであります。円高には効き目がありません。日銀は量的緩和四十兆円を追加する必要があります。また、日銀法を改正して、例えば、二、三年以内に生鮮食品を除いた消費者物価指数をプラス二、三%にするという物価安定目標を政府、日銀が共有すべきと考えますが、どうでしょう。

 もし菅内閣がやらないのであれば、我々がやらせていただきます。民主党のデフレ脱却議連の議員立法に期待して、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 尖閣事案の対応と我が国の対中国外交についてお答えを申し上げます。

 尖閣諸島が我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、領有権をめぐる問題は、そもそも存在いたしておりません。

 今回の事件は、検察当局が国内法に基づいて適切に対応、処理したものであります。したがって、日本は圧力に屈する国だと国際的に受けとめられるとの指摘は、全く当たっておりません。また、情報収集や危機管理の面でも適切に対応したものと考えております。

 所信表明で申し上げた、国民全体で考える主体的で能動的な外交とは、国民一人一人が自分の問題としてとらえ、国民全体で考えるものであるという私の考え方を申し上げました。こうした国民一人一人の責任に対する自覚を背景に政府として主体的な外交を展開するというのがその趣旨であります。

 外交上のやりとりの詳細を申し上げることは差し控えますが、私と温家宝総理との懇談では、戦略的互恵関係を推進していくことで一致をいたしました。

 日中関係全般については、アジア太平洋地域の平和と繁栄、経済分野での協力関係の進展を含め、大局的観点から戦略的互恵関係を深める日中双方の努力が不可欠と考えております。

 次に、検察組織の文化等についての御質問をいただきました。

 今回の検察をめぐる証拠改ざんなどの一連の事態については、極めて遺憾だと考えております。

 これについては、最高検察庁が既に検証を開始しており、法務大臣のもとでも、第三者による会議を設けて検討を行うものと承知しております。これらの過程において幅広い視点から検察のあり方に関する検討が行われ、それを踏まえた適切な対応がなされなければならないと考えております。

 国家公務員法改正や内閣人事局、天下り根絶についての御質問をいただきました。

 政府においては、公務員の労働基本権や使用者機関のあり方等を含めた総合的、抜本的な公務員制度改革の具体像を検討しているところであります。

 通常国会での廃案法案に含まれていた内閣人事局等についても、これらと一体的に検討することが総合的、抜本的な改革を実現する上でより適当であると判断し、次期通常国会に関連法案を提出することといたしたいと思います。

 また、天下りの根絶については、民主党政権発足後、直ちに、公務員の再就職あっせんを内閣の方針として禁止するなどの取り組みを進めてきたところでありますが、さらに、あっせん規制違反行為等に対する監視機能の強化を図ることにいたしております。

 政治主導、官邸主導を進めるための国家戦略局についての御質問がありました。

 政治主導、官邸主導は、昨年、政権交代のときに国民の皆様にお約束をした民主党政権の基本となる政策であり、菅内閣においても引き続きこれを推進していくことは言うまでもありません。

 国家戦略室については、国の重要政策の司令塔として、税財政の骨格、経済運営の基本方針、その他総理が特に命じた内閣の重要政策に関する基本的な方針の企画立案及び総合調整機能を国家戦略担当大臣に担っていただくとともに、これに加えて、総理直属のスタッフとして、重要政策に関する調査、分析や総理への情報提供、提言を行う機能もあわせて担っていくことにしております。

 政治主導、官邸主導による政府の政策決定を強力に推進するため、さらに、現在の国家戦略室を法律上明確に位置づけ国家戦略局とすること等を内容とする政治主導確立法案をさきの通常国会に提出し、現在、継続審議の扱いとされているところであります。

 政治主導確立法案について、今国会において御審議の上、ぜひ速やかに成立させていただけるよう、みんなの党の皆さんにも御協力のほど、お願い申し上げます。

 公務員給与削減についての質問をいただきました。

 本年の人事院勧告の取り扱いについては、現下の社会経済情勢や厳しい財政事情、他方で、国家公務員の労働基本権制約の代償措置としての性格などを勘案し、政府において、現在、鋭意検討を行っているところであります。

 消費税についての御質問をいただきました。

 消費税を含む税制に関して、超党派で国民的な議論が必要であるという考え方は、参議院の選挙の前から今日に至るまで、一貫して変わっておりません。参議院選挙では超党派の議論を呼びかけたわけですが、そのことが、すぐに消費税を引き上げるのではないかとの誤解を招いたことは反省をいたしております。

 消費税については、社会保障改革の全体像について議論する中で、消費税を含む税制全体の議論を一体的に行っていきたいと考えております。社会保障制度がしっかりしなければ、国民の将来に対する不安はぬぐえず、この不安を解消していくことが、消費の低迷、経済の停滞の原因の一つを除去することになると考えているからであります。

 雇用を先にふやすのなら、その具体策は何かとの御質問でありますが、例えば、潜在的な需要のある介護や保育の分野で雇用をふやすことが、これがひいては、デフレ圧力を下げ、また、サービスの生産を伸ばし、そして収入の中から幾ばくかの税金を払うことによって財政健全化にも資するものでありまして、具体策は何度も申し上げておりますので、ぜひ御理解をいただきたいと思っております。

 金融政策についての御質問をいただきましたが、物価安定目標に関しては、日本銀行は、中期的な物価安定の理解に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで実質ゼロ金利政策を継続する、こういうことを明示されたわけであります。日銀において、こうした方針に基づき、引き続き、デフレ克服を初め、経済を金融面から支えていただくことを期待いたしております。

 残余の質問は、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣仙谷由人君登壇〕

国務大臣(仙谷由人君) 総理からほとんどお答えをいたしておりますので重複になる可能性が高いと思いますが、あえて御指名をいただきましたので答弁をいたします。

 まず、渡辺議員から、政府の主導的な対応について御質問をいただきました。

 今回の事件につきましては、事件発生、逮捕、その後の、法的な手続、中国側との外交ルートを通じたやりとりなどなど、海上保安庁、国土交通省、法務省、外務省といった各省庁がそれぞれの所掌に応じて対応をいたしまして適切に処理したものと考えております。事件に対応した各省庁からは、官房長官の私のところに適時適切に報告がございまして、必要に応じて協議を行うとともに、総理大臣にも報告を行ったところでございます。

 危機管理体制についての御質問もございました。

 今回の事件、関係各省庁がそれぞれの所掌に応じて対応して、情報収集や分析を含めて適切に処理したと考えております。事件に対応した各省庁からは、官房長官の私のところに適時適切に報告があって、必要に応じて協議を行うとともに、総理にも報告を行いました。

 したがって、御指摘のような危機管理体制上の問題はなかったと考えております。

 それから、検察の判断を了としたことについての御質問がございました。

 那覇地方検察庁におきましては、被害の程度、犯行の計画性の有無、我が国における前科の有無に加えて、引き続き被疑者の身柄を勾留したまま捜査を継続した場合の我が国国民への影響や今後の日中関係などの事情を考慮し、総合的に判断し、これ以上被疑者の身柄の拘束を継続して捜査を続けることは相当でないと判断をされて被疑者の釈放を決定した、そういうふうに承知をいたしております。

 私としては、この判断は、那覇地検が事件の性質等を総合的に考慮した上で、国内法、刑事訴訟法に基づいて粛々と判断を行った結果として、その判断を了としたものでございます。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 田中康夫君。

    〔田中康夫君登壇〕

田中康夫君 与党統一会派、国民新党・新党日本の田中康夫です。

 第百七十六回国会における、与党として唯一の代表質問を行います。(拍手)

 菅直人さんは、昨日、この議場でおっしゃいました、生産コストと販売価格の差額を補てんする農業者戸別所得補償制度の導入は、意欲のある農家が安心して農業を継続できる環境を整えるためだと。本当ですか。意欲ならぬ、余裕のある裕福な兼業農家、とりわけ、片手間農家と呼ばれる公務員世帯がやみ手当を得るがごとき本末転倒をもたらしませんか。

 地方自治に携わった経験に基づき、一例を挙げます。

 夫が県庁職員、妻が学校教諭の兼業農家は、給与所得のみでも、二人合わせて県民所得の四倍近い年収。米、野菜等の耕作物はほとんどが自家消費。申しわけ程度に出荷するのみ。にもかかわらず、週末に小一時間、ガートラ、ガーデントラクターを運転するだけで所得補償交付金対象となります。販売価格よりも生産コストが高いからです。

 一方、周囲の耕作放棄地も借り受け、減農薬・有機農法に取り組む専業農家は補償の対象外となりがち。なぜでしょう。自律的、持続的な農業経営を実践すればこそ辛うじて採算がとれているから。皮肉な話です。

 国民新党と新党日本は、平成二十三年度概算要求に関する提言書で、県民所得よりもはるかに恵まれた公務員世帯は、ノーブレスオブリージュの矜持を抱いて戸別所得補償から除外すべきと記しました。この点に関する菅さんの哲学を伺います。

 国民新党と新党日本は、地方公務員の退職手当債並びに給料の調整額も、その廃止を提言しています。

 財政難を理由にさまざまな住民サービスを切り捨てる一方、全国の都道府県、市区町村の大半は、公務員の退職金を満額支給するため、毎年巨額の退職手当債を発行しています。潔しとしなかった片山善博さんや私は、当時も今も少数派。発行額は、平成十九年度五千三百八十九億円、二十年度五千六百九十一億円、二十一年度四千八百六十五億円。起債残高は二兆円に達します。

 返済義務を負うのは国民です。平成二十七年度まで今後五年余りも退職手当債の起債を特例措置として認める地方財政法の見直しを可及的速やかに行ってこそ、真の地域主権の覚悟を各自治体にもたらします。

 地方公務員の、いわゆる給料の調整額も摩訶不思議な存在です。

 民間でも支給される危険な作業等への諸手当とは異なり、養護学校教諭や管理栄養士といった職種ごとに、慣例として、労使交渉で設けられた給与割り増し分が調整額。しかも、手当と違い、その額がボーナスや退職金にも反映され、膨大な既得権益を地方公務員にもたらします。納税者の理解を得られないと都道府県レベルで抜本的に廃止したのも、私と、その直後に、片山知事でした。親方日の丸ならぬ親方自治体を見直す都道府県は、その後、青森県を除き、あらわれていません。

 一体、どこの世界に、経営状態と関係なく従業員の給与を決める企業があるか。極めて真っ当な認識を総務大臣就任直前の新聞に寄稿されていた片山さんに、地方公務員の退職手当債、給料の調整額、以上二点への忌憚なき見解を伺います。

 前回、六月十四日の私の代表質問では、内閣総理大臣が地方の給与をどうこう言うのは、それこそ地方分権の考え方として問題だと奇妙な逃げを打たれた菅さんも、今回の所信表明演説では、現在の財政状況を放置すればどこかで持続できなくなると明言されるに至りました。同じく、有言実行の覚悟のほどを伺います。

 国民新党・新党日本の提言書では、利子もつかずに眠る百五十兆円ものたんす預金や当座預金の冬眠資金を有効活用し、経済対策の原資とする、読売新聞も社論として掲げる無利子非課税国債の発行に加え、長期間にわたって動きのない休眠口座の預貯金も社会政策を実施する元手とすべきと記しました。

 へそくり預貯金者が他界し、親族すら口座の存在を把握し得ず、全国銀行協会の内規で、最終取引日から十年を経過すると自動的に金融機関の不労所得と化す休眠口座の金額は莫大です。今回、私の求めに応じて、初めて金融庁が三菱東京UFJ、三井住友、みずほの三メガバンクに照会し、自己申告された金額のみでも年間三百億円。他の金融機関も含めた益金は、少なくとも年間一千億円に上ると予測されます。

 イギリスでも、休眠口座の預貯金を金融機関から国家へと寄附する法改正を行い、それを元手に、NPO支援を初めとする新しい社会施策を展開するビッグ・ソサエティー・バンク構想をデービッド・キャメロン首相が打ち出しました。

 今国会こそ政策の国会にと宣言された菅さん、その菅内閣の司令塔を自任する官房長官の仙谷由人さん、お二方の、無利子非課税国債発行、休眠口座活用に対する率直かつ真摯な答弁を求め、私の代表質問を終えます。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 田中康夫議員にお答えを申し上げます。

 戸別所得補償制度は、農業が食料の安定供給や多面的機能の維持という重要な役割を担っていることを評価し、意欲ある農業者が農業を継続できる環境を整え、食と地域の再生と食料自給率の向上を図るものであります。このような考え方から、規模の大小や、専業、兼業にかかわらず、すべての販売農家、集落営農を制度の対象としているところであります。

 退職手当債は団塊の世代の大量退職に対処するため、地方公務員給与の調整額は地方公務員の職務の特殊性に対応するため、それぞれ設けられたものであると承知をいたしております。もとより、その具体的な運用は適切に行われるべきものでありますが、いずれにせよ、地方公務員給与については、各地方公共団体において、国民、住民の理解と納得が得られるよう、情報開示を徹底し、その適正化に自主的に取り組むことが肝要であると考えております。

 無利子国債について御質問をいただきました。

 御指摘が、相続税を免除するという意味での無利子国債という意味であるとすれば、無利子ゆえに失われる利子収入よりも軽減される相続税額の方が大きい人が主に購入するものと想定され、国の財政収支は、その分、悪化するものと思われます。

 現在、国債の発行、消化が総じて円滑に行われている中、あえてこうした相続税を免除する国債を導入する必要性があるのか、また、税の公平性や、市場、経済への影響等の観点から、慎重に検討する必要がある、このように考えております。

 休眠口座の活用についてでありますけれども、いわゆる休眠口座については、会計上、一たんは金融機関の収益として認識されるものの、実務上、預金者は権利を失うことなく、いつでも払い戻しが受けられることとなっております。

 このような問題に加え、休眠口座の国庫への寄附については、まず、休眠口座の管理コスト負担の問題、第二に、金融機関の財務への影響、第三に、請求が来た場合の払い戻し資金の確保等の多くの論点があり、慎重な検討が必要だと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣仙谷由人君登壇〕

国務大臣(仙谷由人君) 田中康夫議員の御質問にお答えいたします。

 総理と全く同じ質問でございますので、総理がおっしゃったとおり、全く同じお答えでございます。

 そのことを申し上げて、答弁といたします。(拍手)

    〔国務大臣片山善博君登壇〕

国務大臣(片山善博君) 田中議員にお答えをいたします。

 田中議員からは、地方公務員の退職手当債と調整額についての御質問がございました。

 退職手当債と申しますのは、本来、退職手当というのはその年度の財源で手当てをすべきものでありますけれども、これは特例で、国会で地方財政法を改正されまして、年度を区切って発行を自治体に認めているものであります。

 これをもうやめてしまって退職手当債の発行を認めないというのは、これは立法論としてはあると思います。私も大いにあり得ると思います。ただ、この種のことで、年度を区切って、一応何年度間は認めるというようなことを自治体に認めているものですから、その年度は多少長いと私も思いますけれども、発行を認めるというのが常識的な取り扱いではないかと思います。

 ただ、決して、自治体は安易に発行を許されるものではないと私は思います。現に、田中議員も言及していただきましたけれども、私が知事をやっておりました鳥取県では、退職手当債の発行はいたしませんでした。なぜかといいますと、これは、しょせん将来の負担に先送りするだけでありまして、将来の鳥取県の財政事情などを考えますと、やはり発行すべきではないと思ったわけであります。

 他の自治体にどうするかということでありますが、一応、さっき申しましたように法律で認められておりますので、その間は発行はできるのでありますけれども、ぜひ、総理も先ほど答弁でおっしゃいましたけれども、現在及び将来の財政の状況をしっかりと県民、住民に示して、さらには、自治体の議会が本当に真剣に吟味をしていただかなければいけない。右から左にすっと通すということでは決していけないと思っております。その点の助言をよくしていきたいと思います。

 調整額の御質問がございましたが、調整額は、国家公務員にも認められていて、地方公務員にも認められているものでありますけれども、これも決して、自治体が調整額を自治体の職員に支給しなければならないというものではありません。支給するかどうかは、それぞれの自治体の判断によります。

 これも安易に自治体が支給していいと私は思いません。やはり、財政事情でありますとか、それから、きちっと住民の皆さんの理解が得られているかどうか、これが重要だろうと思います。

 鳥取県では、私はこの調整額は廃止をいたしました。なぜかといいますと、県の財政事情と、それから、県民から非常に厳しい反発がありました。それから、地方議会、県議会で大いに議論がありまして、やはりこれは廃止した方がいいのではないかという議論がありました。そんなことを踏まえて廃止したわけであります。

 したがって、他の自治体でもぜひ、先ほど申し上げましたように、財政状況をよく公表して、そして、議会で本当に真剣に議論をすることが必要だろうと思います。

 廃止せよということをそれぞれの個別の自治体に、総務省から、政府から指示することはできません。法律上、それは許されておりません。ただ、情報公開を徹底して、議会でよく議論をしてくださいということは助言できますので、今後、必要な助言を十分やっていきたいと思っております。

 以上であります。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  菅  直人君

       総務大臣  片山 善博君

       法務大臣  柳田  稔君

       外務大臣  前原 誠司君

       財務大臣  野田 佳彦君

       文部科学大臣  高木 義明君

       厚生労働大臣  細川 律夫君

       農林水産大臣  鹿野 道彦君

       経済産業大臣  大畠 章宏君

       国土交通大臣  馬淵 澄夫君

       環境大臣  松本  龍君

       防衛大臣  北澤 俊美君

       国務大臣  岡崎トミ子君

       国務大臣  海江田万里君

       国務大臣  玄葉光一郎君

       国務大臣  自見庄三郎君

       国務大臣  仙谷 由人君

       国務大臣  蓮   舫君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  古川 元久君


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