衆議院

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第6号 平成22年11月4日(木曜日)

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平成二十二年十一月四日(木曜日)

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 議事日程 第六号

  平成二十二年十一月四日

    午後一時開議

  一 国務大臣の演説に対する質疑

    …………………………………

 第一 保険業法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(第百七十四回国会、内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑

 日程第一 保険業法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(第百七十四回国会、内閣提出)


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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(横路孝弘君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。伊吹文明君。

    〔伊吹文明君登壇〕

伊吹文明君 私は、自由民主党・無所属の会を代表し、野田財務大臣の財政演説に対し、菅内閣の基本姿勢、日本の政治を担っている民主党の政治理念について、菅総理に質問をいたします。(拍手)

 まず、さきの豪雨により被害を受けられた奄美地方の方々に心よりお見舞いを申し上げます。災害による生活不安を払拭し、地域の復旧復興を急ぐため、政府が早急に万全の措置を講じられるよう強く求めます。

 菅総理は、所信表明演説に対する同僚の稲田朋美議員の質問に対し、自分の言葉で答弁せよというのなら原稿を読まずに質問せよとの、売り言葉に買い言葉の答弁をなさっております。本会議における代表質問は、あらかじめ原稿を提出するのが慣例であることは御存じだと思います。しかし、答弁は、質問と違って、あらかじめ原稿を提出する慣例はありませんので、自分の言葉で、宰相としての経綸を堂々と国民に語ってください。それに基づき、同僚議員が質疑の応酬を予算委員会で行う予定であります。

 そもそも、民主主義では、集団の意思は多数で決まります。しかし、その前に、意思の違いを調整する辛抱強い努力が必要であり、我が党が与党時代も、当時の野党との意見の調整、妥協を図りながら議会を運営してまいりました。しかし、今国会では、各野党が要求する小沢議員の国会での説明が民主党内で道筋もつけられないまま議運委員長の職権で本会議を立てたことは、憲政史上の汚点であり、強く反省を求めるものであります。

 我が党の過去を振り返ると、田中角栄総裁、中曽根康弘総裁、金丸信副総裁、その他の先輩、同僚も、時には理不尽な報道によるものであっても、国民の批判にさらされた場合は、いかに党内に権力基盤があっても、議員辞職や離党など、みずから身を処し、国会で説明責任を果たしてまいりました。非常に重要なことは、それを実現する党内秩序と良識が存在したのであります。

 菅総理、あなたに処理を丸投げされた御党の岡田幹事長は、民主党衆議院議員の小沢一郎さんと面談すらできないではないですか。公職選挙法、政治資金規正法、政党助成法のもとで公的組織である政党のあり方としては、岡田さんの言葉どおり、まさに異常であります。このような一政党内の異常さが、国民の代表が集う国権の最高機関の審議に持ち込まれることは、本末転倒と言わざるを得ません。

 残念ながら、きょう、小沢一郎先輩は議席に着いておられませんが、どうぞ岡田幹事長、しっかりとお話し合いをしていただきたいと思います。

 我々がかつて参議院選挙に敗れ、山口二区の補欠選挙に負けたとき、あなた方は、これが直近の民意と大上段に振りかぶられました。夏の参議院選挙の議席の大幅な減、北海道五区の補欠選挙の結果は、あなた方の言葉をかりれば、直近の民意でしょう。

 その直近の民意の圧倒的多数は、小沢議員のさらなる説明を求めています。この直近の民意を無視し、党所属国会議員と対話すらできない幹事長の立場を考えれば、ここは、菅さん、あなたが調整に乗り出すべきではありませんか。政党人として、議会人として、当選十回を重ねた菅衆議院議員の率直な感想を第一問として伺います。

 本題の平成二十二年度補正予算です。

 予算は内閣のすべての政策を金銭で表示するもので、いわば内閣の理念、意思の表現であります。予算編成の責任者たる財務大臣が各国内閣で重きをなすのはこのためであります。

 平成二十二年度当初予算及び補正予算は、民主党政権の理念の表現、哲学の金銭表示とみなすべきとの理解でよろしいのか、その政治理念、民主党の目指すべきものは何なのかを説明してください。これが第二の質問です。

 政府は、円高・デフレ対策のための緊急総合経済対策として、急激な円高、株安、景気の下振れリスク等への対応のため、補正予算を編成したとしています。しかし、その目的に対し適切な政策が講じられているとは、残念ながら思えないのであります。

 参議院選挙の敗北、民主党の代表選挙で政治空白が生じ、景気浮揚策を打つタイミングを逸したことは否めません。二十二年度予算の予備費をもって九月に第一弾の対策を講じられたとき、必要なら補正予算を検討すると述べられましたが、あのときに一体的対策を講じなかったその姿勢が、マーケットに悪い印象を与えてしまいました。

 なぜここまで補正予算がおくれたのか、また、その責任について総理の釈明を伺うのが第三の質問です。

 補正予算では、前年度剰余金の増加と二十二年度税収が当初見積もりよりふえたことを前提に、国債の追加発行がないとの、平成十四年以来の異例の歳入内容となっています。

 しかし、前年度剰余金の増加と税の増収見込みは、二十一年度及び当二十二年度前半の企業業績の改善によるものです。自公政権末期に、リーマン・ショックに対処するため編成された、技術開発、地方の生活関連公共事業を中心とした補正予算、すなわち金融緩和の受け皿づくりの補正予算による景気対策のたまものであったのです。政権交代後、あなた方は、あの補正予算の未消化分を執行停止し、ばらまき公約の財源として、子ども手当等、家計への支出に変えてしまったのです。

 さらに、今回の補正予算の歳出内容も、金融緩和による通貨量の拡大に対する国内の受け皿が準備できず、ケインズが指摘しているように、有効需要の不足している日本経済の現状のもとでは、日本銀行による金融緩和、通貨量の増発は海外に抜けてしまい、国内景気の浮揚に効果的なものとはなってはおりません。

 マクロ経済の初歩知識である乗数効果は、一単位の追加支出を企業に行った場合の方が家計に行った場合よりも有効需要の増加ははるかに大きいことを教えています。かつて、参議院予算委員会の審議の際、菅総理は、我が党の林芳正議員の乗数効果の質問の答えに窮されましたが、今回の補正予算の財源となっている剰余金と法人税の増収、すなわち、二十一年度及び二十二年度前半の企業業績の改善はいかなる理由によって生じたのかを菅総理に伺います。これが第四の質問です。

 我が党が九月に官邸に持参した緊急経済対策についてでは、当初予算に計上されているばらまきマニフェストの撤回を求め、その財源を景気浮揚策に充てるよう求めております。

 子ども手当、高速道路無料化、戸別補償、高校無償化の四Kばらまき政策を続ける一方で、国民から預かっている税財源で補正予算を編成することは間違いだと思います。あなたたちは、家計への給付が成長をもたらすと訴えていましたが、さきに述べた乗数効果からも、首をかしげざるを得ません。総理が繰り返し述べておられる介護等による雇用の拡大も、介護報酬を生み出す経済の活性化、成長があってのことではないんですか。

 ばらまきマニフェストを撤回し、景気浮揚対策にその財源を振り向けることを求めますが、菅総理の、政治的言いわけではなく、経済学的反対論を述べてください。

 恒久財源のない恒久政策は将来に借金を残すだけです。子ども手当が、その子供が将来支払うであろう税金で返済せねばならぬ国債が財源になっているのでは、子供の税金を親が先にもらって民主党に投票するという許しがたい悲喜劇を生じます。自公政権の定額給付金は一年限りの景気対策でした。家計に直接給付して支持を得るという誘惑に負けぬ姿勢が、民主主義を健全なものとする政治の責任ではないでしょうか。

 我が党は、責任ある財政運営を行い、将来世代への過度な負担の先送りを断ち切るべく、財政健全化法を本院に提出いたしております。菅総理、野田財務大臣はこれに考えを同じくするところがあると伺っております。高齢化に伴い増加する社会保障の財源は、高齢者も含め、すべての人が支払いに応じ負担する消費税に求めるとの考え方を共有するか否かを、第六の質問として総理に伺います。

 この法案を審議することは、与野党の財政の現状認識について相互理解を深め、国民への義務でもあると思います。国会のことは国会で決めていただきたいなどとお得意の慣用句に逃げず、審議の必要性について、第七の質問といたします。

 先般の民主党代表選挙では、政治と金の問題を背負っていた小沢元代表が相手であったから、菅さん、あなたは勝ったと言われています。総選挙で国民との契約とまで言ったマニフェストは履行すべきであるという小沢元代表の主張は、民主制における選挙公約という点からは、当たり前の主張であります。しかし、これを実行すれば、我が国経済、財政、国民生活は破綻をします。

 菅さん、あなたは、国家戦略大臣、財務大臣、総理大臣として国政に参画し、現実を直視した結果、民主党マニフェストの虚構と危険性に気づいたからこそ、我が党の主張に近い消費税の引き上げにまで言及されたのではないですか。

 マニフェストは、財源の制約から実行が不可能であれば国民に説明をする、四年間かけて実行するなどと総理は述べていますが、マニフェストには、各年ごと、四年間の工程表が明記されていることをお忘れではないでしょう。二十二年度は七兆一千億、そして二十五年度では十六兆八千億分を完全に実施し、その財源はすべて無駄の排除で手当てするというのが国民との約束なのですよ。既に一年目の約束は果たせておらず、先送りなど許されることではありません。公約違反を認めないのはどのような説明になるのか、国民にわかりやすく教えてもらいたいのが第八の質問であります。

 参議院選挙の民主党公約では工程表は消えてしまい、玄葉政調会長は、さきの予算委員会の集中審議で、総選挙のマニフェストは修正したと平然と答弁しています。総選挙の公約違反に知らぬ顔を決め込むことを認めてしまえば、できもしない公約により票をとり、権力を握り、政府を掌握すれば、できないことを説明し、許してもらいたいでは、票の振り込め詐欺ではありませんか。菅さん、参議院選挙で民主党が負けたのは、あなたの消費税発言のせいなどではありません。国民がだまされたということに気づいたからですよ。

 小沢元代表の主張を立てれば国は滅び、菅総理の路線をとれば、民主主義、選挙の原点が崩れてしまう。さきの総選挙で当選され、今やじを飛ばしておられる議場内の民主党の議員の皆さん、そして、その議員の諸君の投票によって成立した民主党政権の正統性、レジティマシーそのものが崩れてしまうんです。

 この矛盾を解決する唯一の方法は解散・総選挙をすることです。その際、各党が実現可能な公約を掲げ、だまして票はとらぬことです。民主党政権の正統性について、第九の質問といたします。

議長(横路孝弘君) 伊吹文明君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。

伊吹文明君(続) 結びに申し上げます。

 領土を守り、そこに住む人の生命と財産を守り、国民の意思により国のあり方を決める主権を守ることは政治の最大の役割です。この目的のため、対外安全保障の根幹を、核のない我が国は日米安保条約を中心とした日米関係に求めてきました。しかし、民主党の、国家の存在、安全保障の現状に対する認識の軽さが、日米の信頼関係を根底から覆してしまったのです。その信頼関係の揺らぎは、最近の尖閣列島や北方領土での日本が侮られるような事態を招いているではありませんか。

 予算委員会でこの点についてしっかりとした質疑を行うことを申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 伊吹議員にお答えを申し上げます。

 まず冒頭、宰相としての経綸を堂々と国民に向かって語ってほしいということでありますので、私も精いっぱい、私の言葉でできるだけ語ってまいりたいと思いますので、ぜひお聞きをいただきたいと思います。

 まず最初の質問は、小沢議員の説明責任に関する質問でありました。

 北海道五区補欠選挙の結果は一つの民意のあらわれとして真摯に受けとめて、今後の政権運営、民主党の活動の糧とさせていただきたいと考えております。

 その上で申し上げれば、小沢議員御自身が、国会で決めた決定には私はいつでも従うと十月七日の記者会見でも表明されております。

 いずれにしても、政治家の説明責任については、まずは本人の意思が第一であり、現在、幹事長を中心として、本人の意思確認を含む環境整備について努力を行っていただいております。幹事長のこうした努力を見守っていきたい、このように思っております。

 第二に、政権の目指すものについての御質問をいただきました。

 予算は金銭で内閣のすべての政策を表示するものではないかという御指摘は、一般的に言えばおっしゃるとおりだと思っております。

 そこで、私は、所信表明でも述べましたけれども、今回の補正、そして来年度の予算を含めて、ただ、今のいろいろな課題にこたえるための予算という考えではなくて、二十年間にわたって経済が低迷し、社会が閉塞をする中で多くの課題が先送りされてきた、それを突破するための戦略に基づく予算という位置づけをいたしております。

 所信表明でも述べましたように、この政権では、国民が政治に参加する真の国民主権を実現することを目指しながら、第一に経済成長、第二に財政健全化、第三に社会保障改革、これらの一体的な実現と、その前提としての地域主権改革の推進、そして、国民全体で取り組む主体的な外交の展開を五つの重要政策課題として所信表明でも申し上げました。

 ぜひ野党の皆さんにも、他の問題をもちろん取り上げることは結構ですけれども、私が正面から皆さんに提起したこの五つの課題についても御議論をいただきたいと、この場からお願いを申し上げておきたいと思います。

 そして、日本経済の立て直しに当たっては、雇用を基軸とした経済成長が必要であり、医療、介護、子育て、環境など需要が多く見込める分野で雇用を創造し、成長と雇用に重点を置いた国づくりを強力に進めたいと考えております。

 御指摘のとおり、予算は内閣のすべての政策をあらわすものでありますので、ぜひ、二十二年度補正予算はこうした基本的な考え方に基づいて提起をいたしておりますので、皆さんの御理解と御賛成がいただければありがたいと思っております。

 次に、補正予算の提出時期について御質問いただきました。

 政府としては、現下の円高や海外経済の減速懸念等の厳しい経済情勢や先行きの悪化懸念を踏まえ、早い段階から切れ目のない対策を講じてきたところであります。八月末には経済対策の基本方針を決定し、これに基づき、九月十日に新成長戦略実現に向けた三段構えの経済対策を決定いたしました。その上で、まずステップワンとして、二十二年度予算でこのような事態にすぐ対応できる予備費を活用し、この予備費そのものが既に経済危機対応・地域活性化予備費という位置づけでありましたので、これを使っての政策を提起いたしました。

 伊吹さんからは、なぜこのときに補正予算を一緒に出さなかったかという趣旨のお話がありましたが、御承知のように、補正予算を提起すれば、国会に審議をお願いして、ある程度の時間がかかることを覚悟しなければならないことは当然であります。しかし、予備費であれば即実行できるというところで、まずステップワンとしては即実行できるスピーディーな対応をしたということをしっかりと御理解いただきたいと思っております。

 そして、その後、間を置かず、九月二十七日に、経済対策のステップツーにおいて、与野党と意見交換を進めるよう政調会長に指示し、野党の皆さんからの申し入れも十分取り入れて、十月八日に対策を閣議決定いたしたわけです。

 これも伊吹先生御承知のように、こうした政策方針を決定して具体的に補正予算の数字を固めるのにはやはり三週間程度の時間が必要なわけでありまして、大車輪で対応した結果、十月二十九日に補正予算を国会に提出したもので、ぜひとも、それだけ重要でスピーディーさを要する補正予算でありますから、皆さんにもスピーディーな審議を心からお願い申し上げます。

 このように、今回の補正予算は、単発の場当たり的なものではなく、新成長戦略の実現による景気の自律的な回復という大方針のもと、一連の対策をステップワン、ステップツー、さらには来年度予算のステップスリーとして考えられたもので、タイミングを逸したという御指摘は全く当たっておりません。

 次に、企業業績の改善について、自民党の補正予算のたまものと考えるけれどもいかがかという御趣旨の御質問がありました。

 リーマン・ショック以降の景気の持ち直しとともに、企業収益が改善をいたしてきました。その背景には、私も自民党時代の予算そのものが効果が全くなかったと申し上げるつもりはありません。しかし、最も大きいのは今年度予算そのものにあると思いますが、いかがでしょうか。

 つまりは、今年度予算の規模を……(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

内閣総理大臣(菅直人君)(続) 今年度予算の規模についていろいろな議論がありましたけれども、G20などの場でもいろいろ議論がありましたけれども、私は、今の日本の状況ではまだ出口戦略にストレートに入るには早過ぎるという認識のもとに、少なくとも、それ以前の自公政権がつくられた予算の規模に関して、必ずしも規模としてはそれほど変わらない予算をつくることによって景気刺激的な予算として継続をしたというのが、基本的に、私は、今日における景気のいわゆる腰折れとか二番底を回避してくることができた最も大きな要素と考えております。

 昨年の政権交代以降、新政権では、経済、雇用問題に力を入れ、適時対策を講じるとともに、今申し上げたように、二十二年度予算でも、国民生活を守り、経済への影響に配慮した規模、内容として景気の下支えをいたしたところでありまして、これによって二番底等が回避された、このように考えているところです。

 次に、財源の支出先について、考え方に対する御質問がありました。

 まず、現在のように需要が不足する中では、供給能力を高める政策を行うだけではますますデフレが進行してしまいます。小泉・竹中政策が大失敗したのは、デフレ下においてデフレを促進するような経済政策をとったからであることは、だれの目にも今や明らかだと思います。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

内閣総理大臣(菅直人君)(続) そこで、私たちは、雇用の創造に基づく消費や需要の創出を進めていくことが重要と考えて進めてまいりました。

 具体的には、雇用の創造によりまず失業率が低下をしますと、ある意味では賃金に対して引き上げの圧力になって、それそのものがデフレからの脱却の一つの要素になります。加えて、雇用が増大することは、当然、新たに仕事についた人によって消費が刺激され、そうした人の所得がふえ、そしてさらなる需要が回復をしていく。つまりは、雇用が創造されるというところからスタートをして、そうした経済の好循環を生み出したいというのが基本的な私たちの考え方であります。

 政府としては、こうした雇用の創造を起点とした経済の好循環を確かなものとするために今回の経済対策を着実に実施していきたいと考えております。その意味で、潜在需要の多い医療、介護、子育て、環境など新たな雇用を生み出して、新しい需要の創造を目指しているわけです。

 何か、家計への直接給付についていろいろ御質問もありましたけれども、子ども手当そのものは、基本的には少子化対策、子育て支援を目的としており、もちろん、その経済効果としてもプラスの要素になるとは思っておりますけれども、基本的には、今の福祉がややもすれば子供に余りにも手が薄い、これに対して対応しようというのが子ども手当の基本的な考え方であるということは、改めて申し上げておきたいと思います。

 社会保障の財源を消費税に求めることについての御質問をいただきました。

 社会保障制度がしっかりしなければ国民の将来不安はぬぐえず、改革を急ぐ必要があると考えております。

 一般論としては、私はいつも申し上げますが、二つの考え方があると思います。多少国民の皆さんに負担をしていただいても安心な社会をつくることを重視するのか、それとも、負担はできるだけ少なくして個人の責任に多くを任せるのか。私は、前者の、ある程度の負担をしても安心な社会をつくることが必要だ、このように考えております。

 こういった基本的な考え方に立って、社会保障改革の全体像について、必要とされるサービスの水準、内容を含め、国民にわかりやすい選択肢を提示した上で、その財源をどう確保するか、それに、消費税を含む税制全体の議論を一体的に行っていきたいと考えております。このため、先月二十八日には政府・与党社会保障制度検討本部を立ち上げたところであります。

 今後は、ぜひとも党派を超えた社会保障改革の検討を進めたいと考えており、野党の皆さんとも意見交換をし、御提案があればぜひそれも受けとめながら、建設的な議論を行ってまいりたいと考えております。

 次に、自民党財政健全化法案質疑に関して御質問をいただきました。

 先般、自民党が本院に提出された財政健全化責任法案は、その方向性や財政健全化の目標などについて、私たち政府が決定した財政運営戦略と基本的には同じ方向にある、このように認識をいたしております。

 また、我が国の財政の状況や今後の財政健全化に向けて道筋を国民の前でオープンに議論することは、各党各会派が問題意識として共有すべきものが生まれてくる機会になると思っております。

 このような重要な課題について国会で十分な議論を行うためには与野党を超えた広い合意が必要であり、もちろん国会という場での御議論ですけれども、我が党を含め各党各会派の熱心な議論を期待いたしているところであります。

 次に、マニフェストの工程表に関する御質問をいただきました。

 昨年の総選挙マニフェストに掲げたものの中で、暫定税率など見送りをいたしましたけれども、しかし、子ども手当、高校無償化、農業の戸別補償など、マニフェストに盛り込んだ多くは実現ないしは着手をいたしていることは、いろいろな機会にも申し上げてまいりました。

 それに加えて、昨年の予算編成では、過去二十年間の自民党を中心とした政権ではやれなかったことを思い切ってやりました。まずは、公共事業を一八%減らす一方で、社会保障を九・八%増加させ、教育費を五・二%増加するなど、予算編成が非常に硬直化していたものを大きく変えることができたことは、私は改革の大きな第一歩だったと確信をいたしております。

 今後もマニフェストについてはできるだけ誠実にその実現を図ってまいりますけれども、もちろん、財政上の制約などでどうしてもできないものについては、しっかり国民の皆さんに説明をして御理解をいただきたい、このように思っているところであります。

 最後に、解散・総選挙に関する御質問をいただきました。

 伊吹先生からは、参議院選挙に負けたのは消費税の発言ではないと、ある意味では、私にとっては何とお答えしていいのかわからないような御質問でありましたが、少なくとも私自身の反省は、まだまだ無駄の削減など徹底的にやるということを前提に、社会保障と一体でこうした議論を行わなければならないということも含めて申し上げたつもりであったわけですけれども、残念ながら、私の表現の不十分さで、何か即時に消費税を引き上げるかのような誤解を招いたことが大きな敗因であったと思っております。

 逆に言えば、国民の皆さんが参議院選挙で示された一つの意思は、もっと原点に戻って頑張れ、そういう叱咤激励であったと私は受けとめているところであります。

 私の内閣としては、マニフェストについて、先ほど申し上げたように最大限の実現のための努力を行うと同時に、この国会冒頭で御説明をいたしました、二十年にわたって先送りされてきた五つの重要課題を先送りしないよう全力を挙げて取り組んでいく、そのことがこの内閣の仕事であって、総選挙については全く念頭にないことを申し上げて、答弁とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 大串博志君。

    〔大串博志君登壇〕

大串博志君 民主党の大串博志です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表しまして、一昨日の野田財務大臣の財政演説を受けましての質問を行わせていただきます。(拍手)

 まず、菅総理に対して、現在の日本の経済の状況、そして、それへの対応について、お考えをお尋ねしたいと思います。

 リーマン・ショック以降、世界各国においていろいろな対策がとられてきました。その結果、世界経済は、当初懸念された恐慌的状況に陥ることを免れ、今日に至っています。しかし、やはりその傷跡は大変大きいものであったと言わざるを得ません。先進諸国、すなわち、大きな経済におけるバブルの崩壊は長期的な経済低迷、デフレ的傾向に帰結するのではないかというおそれを今の世界経済は示すものとなっています。

 また、日本においては、少子化、人口減少、未曾有の需要不足、そして投資機会の不足という構造的な課題を抱え、国の経済社会制度そのものを見直していく必要性に迫られている段階に来ています。この深刻さに真正面から向き合い、外的環境の厳しい中で、さらに内的にもこのような構造的な問題を抱える日本経済を、これまでの延長線上ではない大胆な発想で、いかにつくり直して、立て直していくのかが問われています。

 このような状況下で、日本経済の短期、中期、長期の見通しをどう見ているのか、そして、それに対して、どのような改革を行い、どのような方向性に日本経済を引っ張っていこうとしているのか、総理のビジョンを述べていただければと思います。

 さらに、顕著に減速傾向を示す足元の景気動向への対応は、まさに待ったなしであります。先ほど述べましたように、先進国経済が低迷する様相を長引かせる中で、近い将来の景気の動向については、強い危機感を持って慎重な態度で臨んでいくべきだと思います。

 去る八月半ば以降に円高が急進し、経済減速傾向が明らかになって以降、政府は、八月末には九千二百億円規模の経済対策の方針を打ち出し、さらに、その一カ月強後の十月初めには約五兆円規模の経済対策を打ち出しました。一カ月半のうちに約六兆円に及ぶ経済対策を打ち出したわけであります。思い出してみても、二年前、リーマン・ショックが九月に発生した後、補正予算案が国会で議論され始めるまでに数カ月かかったことと比べると、相当程度迅速な動きであったと私は思います。

 私が述べたような危機感を政府も共有してくれていると理解していますが、今回の経済対策、補正予算案について、どのような考えでどのような対策としたのか、菅総理の思いを述べていただきたいというふうに思います。

 さらに、今回の経済対策を含む補正予算案は、現下の厳しい経済情勢のもとで、国民生活を緊急に支えるものであります。したがって、国会で熟議の上、できるだけ速やかに世の中に送り出し、執行していくべきものであります。

 いわゆるねじれ国会の中にあっては、本補正予算案は、国会の審議の中でも与野党の幅広い理解と支援を得られるようなものであってしかるべきものです。この点、どのような工夫や考え方が用いられたのか、野田財務大臣から御説明をいただきたいというふうに思います。

 さらに、円高の問題についてです。

 この数カ月間の円高への動きは相当に激しいものがあります。輸出産業を中心とする我が国産業に大きなマイナス影響を与えかねないものであります。確かに、ほかの準備通貨国・経済圏である米国あるいはユーロ圏がそれぞれの通貨の通貨安を受け入れているという見方のある中で、日本単独の為替市場での行動の効果が限られるということはあろうかとは思います。しかしながら、為替の変動が過度に激しい場合には、変動を抑制するという観点から果断な行動を日本単独でもとるべきだと思いますが、野田大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

 あわせて、国際通貨体制についてお伺いします。

 中国が、世界第二位の経済大国として私たちの目の前にあらわれてきています。世界経済に大きな影響を与える存在です。しかしながら、中国においては、経済の世界における民主主義とも言える市場経済的な運営が完全にはなされていません。その大きな要素が為替です。世界第二位の経済大国が十分な柔軟性を欠く為替制度を維持しているという現実、これが世界経済にある種のインバランスをつくり出している可能性も否定できません。

 中国一国の問題というよりも、国際通貨体制全体について、新しい目線でそのあり方を考えるべきときに来ているのではないかと思いますが、野田財務大臣の所見をお伺いいたします。

 現在の日本経済の最大のリスクの一つは、長引くデフレです。これについて、先般、日本銀行は、実質のゼロ金利政策を明確化する決定を行いました。この点については、歓迎し、受けとめたいと思います。

 日本の長期化するデフレは、金融面の、マネタリーな現象であるのか、それとも、日本経済の需要不足に象徴されるような構造的な問題なのかという点の論争が長く闘わされてきました。そのどちらの立場をとるかによって、金融政策に対する態度が異なります。この論争には知的な興味を覚えますが、政策決定者の一人として考えるときの結論は一つです。すなわち、両方の可能性から対応をとるということであります。

 すなわち、構造的な需要不足に対応するために、日本経済社会の構造的な転換を含む改革を行っていかなければなりません。他方、マネタリーな要因であるという可能性に対応し、適時かつ果断な金融政策の実施を通じて、適度なインフレとそしてインフレ期待が生じるよう、金融政策の信頼性、そしてクレジビリティーを高めることが極めて重要であります。

 この点、目標を設定する政府、そしてそれに対しての完全なオペレーショナルインディペンデンシーを持つ中央銀行という、イギリス型の、政府と中央銀行との関係を前提としてのインフレーションターゲティング政策も、中央銀行に対する政治の圧力を排しつつ金融政策についての説明責任を高めていくという仕組みとして、一考に値すると思います。

 このようなマネタリーな面、構造面の双方から、デフレに対して本腰を入れた対応をとるということについての野田財務大臣の見解を求めます。

 次に、財政についての課題です。

 日本の財政が危機的な状況にあることは、だれの目にも明らかです。日本の財政の持続可能性をどのように確保していくか、この点は、党派を超えて、国民的な議論のもとに理解を得て、しかも、早急に具体化していかなければならない課題です。先般の参議院選挙においては消費税の議論が大きく取りざたされましたが、財政の持続可能性を考える際には、歳出、歳入の両面から取り組みを行っていかなければなりません。

 政府は、事業仕分けなどを通じて、これまでの政権ではなし得なかった、聖域なき歳出の見直しに取り組んでいます。さらに、先般、政府・与党社会保障改革検討本部を立ち上げ、また、その前に、民主党においては、税と社会保障の抜本改革調査会での議論を開始させ、国民にとっての真の安心をつくり出すために、抜本的な社会保障制度改革の取り組みを始めています。

 野田財務大臣にお尋ねします。

 今、政府は、六月に策定した財政運営戦略、中期財政フレームに基づいて中期的な財政運営を行うこととしていますが、そこから一歩踏み込んで、財政の持続可能性を確保していくための具体的なステップについてどのように考えているのか、社会保障制度改革を含めた歳出構造の改革をどう行っていくのか、税制を含めた歳入面での改革をどう行っていくのか、さらに、それを行っていく上で、当面の脆弱な経済状況、極めて深刻なものに対してどのようにバランスをとっていくのか、御所見をお伺いしたいと思います。

 以上、中期的、長期的な経済財政運営のあり方も踏まえながら、極めて厳しい足元の景気動向への対応などについてお尋ねしました。

 今回提案されている補正予算案は、今の景気を何とかしてほしいという国民の皆様の生活の中からの声にこたえるものであります。国会において大いに議論を尽くし、そして早期に国民の皆さんに生活の下支えをお届けできるよう私たち議員一人一人も取り組んでいくことの大切さを改めてこの場で申し述べて、私からの代表質問とさせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 大串博志議員の御質問にお答えをいたします。

 まず、日本経済の見通しと方向性のビジョンについての御質問をいただきました。

 日本経済の短期の見通しについては、基本的に、現在、消費、投資を中心とした自律的な経済成長が期待をされておりますけれども、残念ながら、まだそこまでは回復せず、下振れのリスクが増大している状況であります。

 また、中長期的に見ると、内需、外需の環境について慎重な前提を置いた慎重シナリオのもとで、二〇二〇年度までの平均名目、実質ともに一%台半ばの成長という見通しもありますが、もう少し積極的なシナリオのもとでは、二〇二〇年度までに平均名目三%、実質二%を上回る成長が試算されているところであり、これが私たちの新成長戦略の一つの目標となっていることは、御承知のとおりであります。

 その中で、日本経済を引っ張るビジョンについてでありますが、私は、この日本経済の立て直しのかぎとして、雇用ということを言っております。

 これは、単に失業者に対する対策としての雇用ということではなくて、新たな雇用を創造して失業率を低下させることが、賃金全体を押し上げる力にもなり、デフレ脱却の道につながると同時に、新たに雇用についた人が消費をすることで消費が刺激され、そういった形で需要が回復し、経済が活性化する、そういう好循環を生む上でのキーがこの雇用にあると考えているからであります。

 こういった分野は、言うまでもなく、医療、介護、子育て、環境など需要が見込める分野でありまして、こういったところに重点的に、場合によっては財政配分も含めて行っていくことが必要だと考えております。

 また、あわせて、新成長戦略にも盛り込みましたが、アジアの目覚ましい発展を我が国の成長につなげていくということが重要であります。

 せんだって、日本とインドのEPAが実質合意をし、また、先日、私が出かけたベトナムとの間で、日本にとっては史上初の原子力施設の受注が決まり、レアアースの採掘権が確保されるといった、そういったアジアの国々の成長を日本の成長につなげていくということが一歩一歩今進みつつある、このように申し上げても決して言い過ぎではないと思っております。

 短期的なカンフル剤の投与ではなく、このような、雇用から始まる中長期的な成長経路の軌道に日本経済を乗せることが大切と考えておりまして、今から来年度に向けて、ステップワンはもう既にスタートしておりますが、ステップツー、ステップスリー、そういった形で成長軌道に乗せていきたい、このように考えているところであります。

 第二点として、経済対策と補正予算案の考え方について御質問をいただきました。

 これは、大串さん御自身も話がありましたように、やはり、スピード感、時間軸というものが大変重要だと考えております。

 先ほど御指摘もいただきましたように、本年度予算が成立した後、日本経済の二番底などを避けるためにいかにするか。

 そこで、まずステップワンとしては、即座に活用できる経済活性化予備費を使ってそうした活性化のつなぎ役をお願いし、それと並行して、現在お願いしている補正予算の立案を始め、提出をさせていただき、そしてステップスリーとしては、言うまでもなく、来年度予算にそれをつなげていって、こういった形で、それこそ、車のギアをだんだんとチェンジしながら加速していくような、そういう日本経済の運転によって成長軌道に乗せていきたい、このように考えているところであります。

 第二に、新成長戦略の実現による自律的な回復という大方針のもとに、先ほども申し上げましたように、雇用というものを一つの軸として、政策に一貫性、整合性を持たせて推し進めていくという考え方であります。

 第三は、予算、税制といった財政だけでなく、お金を使わないけれども効果のある規制・制度改革にも力を入れているところであります。「日本を元気にする規制改革一〇〇」として、都市再生、住宅投資の加速化、介護・医療分野での雇用創出など、規制・制度改革も政策手段として強力に進めてまいりたいと思います。

 こうした政策を総合的、一体的に発動していくことにより、需要と雇用に立脚した経済成長をぜひとも実現してまいりたい、このように考えております。(拍手)

    〔国務大臣野田佳彦君登壇〕

国務大臣(野田佳彦君) 大串議員からは、私には五問、御質問がございました。謹んでお答えをしたいというふうに思います。

 まず、補正予算についてのお尋ねでございます。特に、与野党の幅広い理解と支援を得られるような工夫をどうするかというお尋ねでございました。

 補正予算を含む経済対策の策定に当たりましては、まず、与党からの御提言だけではなくて、各党から、野党からの御提言もしっかり受けとめまして、規模感あるいは中身において相当程度取り入れたというふうに思っております。

 その上で、五つの柱を立てました。「雇用・人材育成」、そして「新成長戦略の推進・加速」、「子育て、医療・介護・福祉等」、それから「地域活性化、社会資本整備、中小企業対策等」、そして「規制・制度改革」、この五本の柱を重要と位置づけまして、その中で、経済の活性化や国民生活の安定、安心に真に役立つ政策を実施することとしております。

 現下の厳しい経済情勢に対応し、景気回復を確実にするためにも、本補正予算の一刻も早い成立が必要でございます。お尋ねがあるならば、丁寧に丁寧に丁寧にお答えをしていきたいと思いますが、一方で、切れ目のない経済対策が必要でございます。速やかな御審議もあわせて心からお願いを申し上げたいと思います。

 続いて、為替介入の方針についてのお尋ねがございました。

 現在、我が国においては、デフレが進行し、経済情勢が依然として厳しい中、為替相場の過度な変動は、経済や金融の安定に悪影響を及ぼし、看過できない問題だというふうに認識をしています。

 こうした考え方を踏まえまして、為替の動向については従来から細心の注意を払ってきたつもりでございますが、その中で、議員御指摘のとおり、九月十五日、約六年半ぶりに為替介入を実施させていただきました。これは、為替相場の過度な変動を抑制する観点から実施したものでございます。

 引き続き、為替の動向については重大な関心を持って注視をしていきながら、必要なときには、介入も含めて断固たる対応をとっていきたいと考えております。

 続いて、三問目は、国際通貨体制についての御質問でございました。

 国境を越えた資金の大規模な移動が世界経済の不安定要因の一つになっているという指摘がございます。国際金融・通貨体制を安定させることは、ますます重要となってまいりました。

 こうした状況を踏まえまして、先般、韓国の慶州で開催されましたG20の財務大臣・中央銀行総裁会議におきまして、通貨については、根底にある経済のファンダメンタルズを反映し、より市場で決定された為替レートシステムに移行することに加えまして、これまでの合意からさらに踏み込んで、準備通貨を持つ国々を含む先進国、いわゆるドル、円、ユーロ、こうした通貨を持つ通貨当局は、為替レートの過度な変動や無秩序な動きを監視するということに合意をした次第でございます。

 国際通貨体制全体についても、安定的でよく機能する国際通貨システムを促進するための努力を再活性化することに合意をいたしました。

 このように、大串議員御指摘のように、国際協調の観点から取り組みを進めていくことが重要であり、我が国としても、こうした取り組みに積極的に参画をしてまいりたいと考えております。

 四点目のお尋ねは、デフレへの対応についての御質問、マネタリーな面と構造面、双方から本腰を入れよという御趣旨だったと思います。

 日本銀行は、先日、十月五日でございますが、金融政策決定会合において、金融緩和を一段と強力に推進するために包括的な金融緩和政策を決定したところであり、一歩踏み込んだ措置をとられたものと認識をしています。

 なお、日本銀行は、中長期的な物価安定の理解に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで実質ゼロ金利政策を継続すると明示もいたしました。

 日銀においては、こうした方針に基づき、引き続き、デフレ克服を初め、経済を金融面から支えていただくことに期待をしたいというふうに思います。

 また、政府としても、新成長戦略において、デフレの終結をマクロ経済運営上の最重要課題と位置づけまして、当面は、デフレによって抑えられている需要の回復を中心に政策努力を行うこととしております。

 さらに、デフレ脱却と経済の自律的回復に向けた道筋を確かなものとするために、総理もお答えございましたけれども、三段構えの経済対策を決定し、ステップツーの対策を実現するための経費等を計上した補正予算を今般提出したところでございます。

 今後も、ステップスリーとして、平成二十三年度予算における新成長戦略の本格実施を図ることにより、日銀の金融政策と一体となって、デフレ脱却と雇用を起点とした経済成長を実現するために全力で取り組んでいきたいと考えております。

 最後に、財政の持続可能性を確保していくための具体的なステップについての御質問がございました。

 現在、政府として解決すべき最重要課題は、経済成長、そして財政健全化、社会保障改革、これを一体として実現することだと考えます。

 特に財政健全化は、どの内閣にとっても逃げることのできない課題でございます。六月に財政運営戦略を閣議決定いたしました。そのことによって財政健全化への道筋をお示ししたところでございます。新成長戦略実現会議や中期財政フレームに基づく予算編成を通じて、新成長戦略と財政運営戦略を一体的に推進し、成長と雇用拡大を実現しながら、一歩ずつ目標の達成を目指していきたいと考えております。

 また、社会保障改革においては、大串議員御指摘のとおり、先日、政府・与党社会保障改革検討本部を設置したところでございます。社会保障改革の全体像を国民にお示しした上で、そのために必要な財源をどう確保するか、こうした考えを詰めていきたいと考えております。

 さらに、現下の厳しい経済情勢に対応し、デフレ脱却と経済の好循環を確かなものとするために、今般、新規国債の発行を伴わない形で平成二十二年度補正予算を提出したところでございます。

 いずれにせよ、持続可能な財政、社会保障制度改革の構築やセーフティーネットの充実は、雇用の創出、国民の将来不安の払拭による消費需要の刺激につながり、経済成長、財政健全化、社会保障改革を一体的に実現するものであると考えております。

 大串議員も税と社会保障の抜本改革調査会の事務局長を務めておられますけれども、政府と与党一体となって、さらには野党の皆さんとも意見交換しつつ、着実に改革を進めてまいりたいと考えております。

 ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 斉藤鉄夫君。

    〔斉藤鉄夫君登壇〕

斉藤鉄夫君 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました補正予算案に対し、菅総理に質問をいたします。(拍手)

 総理、菅政権発足から二十兆円、民主党政権発足から四十二兆円、これは、この間失われた東証一部上場企業の時価総額、つまり、日本を代表する企業の失われた資産の総額です。民主党菅政権による政策不況でこれだけの損失を日本経済にもたらしながらも、まだあっけらかんとしている菅政権に対し、野党時代に民主党がおっしゃっていた、政権交代こそ最大の景気対策であるという言葉をそっくりそのままお返しいたします。

 今、日本は劣化を始めています。そのリーダーシップを発揮しているのは、総理、あなたです。総理は、ことし七月の参議院選挙において、民主党内で議論されていなかった消費税増税論議を突如打ち出しました。そして、今国会冒頭の所信表明演説では熟議の国会と言いながら、またしても、民主党内で何の議論もなされていなかったTPP参加の検討を指示しました。民主党内は再び紛糾しています。安易なリーダーシップにより、党内はおろか日本国全体を混乱に陥れ、かえって建設的な議論を遠のかせてしまっていることに気がつかないのですか。

 今月一日、ロシアのメドベージェフ大統領が北方領土の国後島を訪問するという、我が国主権にかかわる重大な事態が起こりました。九月二十七日の中ロ首脳会談以降、尖閣諸島の日中問題に歩調を合わせたかのように、同大統領が北方領土への訪問を明言しておりました。にもかかわらず、対中外交同様に腕をこまねき、大統領訪問を回避することができなかったのは、総理の重大な失策であると考えます。答弁を求めます。

 鳩山前総理の迷走により混迷をきわめる普天間問題に端を発する日米のぎくしゃくした関係、尖閣諸島の問題での菅政権の幼稚な対応によって複雑化する日中関係、そのような日本の国際的威信の低下を見透かすかのようなロシア大統領の今回の訪問、これらの問題はつながっています。それをつなげているものは、民主党政権の定見と覚悟のなさであります。このように、国民は、この一年、劣化の一途をたどる日本の政治に不安を抱き始めています。総理の所感を求めます。

 次に、政治と金の問題についてお尋ねします。

 公明党は、今般の補正予算審議に当たり、小沢氏の証人喚問も含めて、説明責任を果たすよう求めてきました。

 総理は、十月十三日の衆議院予算委員会において、公明党の石井政調会長の小沢氏証人喚問に関する質問に対し、場合によれば御本人の意向に沿わないでもこれをやらざるを得ないというときには党として判断していきたいと答弁されました。御本人の意向に沿わないでもと総理みずから言われたとおり、民主党代表として、小沢氏の証人喚問を行うことを決断し、説明責任を果たすよう指示すべきではありませんか。答弁を求めます。

 次に、企業・団体献金の解禁について指摘をしておきたい。

 特会の中で何が行われ、無駄、税金の浪費はないのか、政官業の癒着が制度の裏にあったかもしれない、そのことも議論いただきたい。総理、これは、先日の事業仕分け第三弾の冒頭、担当大臣によるあいさつです。しかし、その前日に、岡田幹事長は、その政官業の癒着の温床と指摘されてきた企業・団体献金の再開を決定しました。さまざまな課題について決定が先延ばしされる中、こういうことの決定は早いんですね。私はびっくりしました。

 衆院選、参院選の両マニフェストにも企業・団体献金禁止を掲げ、総理自身、所信表明演説で年内に方針を取りまとめたいと明言したことを、よもやお忘れではないでしょうね。総理は公約に反しないと言われたと聞きます。しかし、だれが見ても公約に反しており、クリーンな政治に逆行しているではありませんか。

 所信表明演説で、金のかからないクリーンな政治の実現、国民の強い要望です、私自身の政治活動の原点ですと高らかに宣言された総理の認識を改めて伺いたい。

 いまだなされていない高速道路無料化、暫定税率の廃止、子ども手当もしかりです。いとも簡単に前言を撤回し、マニフェスト違反を繰り返す。そして、場当たり外交により日本の国際的地位を失墜させる。さらにその上に、政治と金の自浄能力のない民主党菅政権に国民の血税の使い方をゆだねることはできないと国民は思い始めております。

 そのような民主党政権による補正予算案で、果たして景気浮揚や経済対策が成果を上げることができるのか、信頼に足る景気対策であるのか、国民、市場、そして世界はじっと見詰めているのです。

 十月の月例経済報告によれば、景気はこのところ足踏み状態という下方修正がなされ、市場関係者や専門家の間からも、菅政権の経済運営による人災が一因ではないかといった声が上がっています。総理、年末を前に足踏み状態にある経済について、どうとらえ、どのように手を打とうとされているのか。

 また、財務省、日本銀行は、九月十五日、日本単独による為替介入を実施しました。しかし、その後も一ドル八十円台を推移し、十月二十九日には一時一ドル八十円三十七銭まで上昇し、戦後最高に迫る高値水準をつけました。にもかかわらず、政府にも日銀にも、日本の産業と雇用を守るためには体を張ってでもできる限りのことをするという覚悟が見えてきません。政府、日銀の連携の悪さも世界に見透かされ、さらに円高が進む。とまらぬ円高に悲鳴を上げる製造業下請中小企業の苦悩が、総理、あなたにはわかっていないのですか。円高対策について総理の所見を伺いたい。

 補正予算案の位置づけについて確認したいと思います。

 今、日本の経済財政運営で必要なものは、一つはデフレ脱却、景気回復であり、二つ目に財政の健全化でございます。

 デフレ脱却、景気回復に向けて、政府は六月に新成長戦略を策定しました。同じく財政健全化に向けては、財政運営戦略を発表しました。今回の補正予算案は、それ以降初めて提出されたものであり、いわば菅内閣の経済財政運営についてのグランドデザインと言えます。

 今回の補正予算案は、政策の趣旨や規模において、その二つの柱を実現するにふさわしい予算案なのか、スローガンだけではないのか、総理、お答えください。

 公明党は、八月三日の衆議院予算委員会で、追加的な経済対策の必要性について、財源も含めて提示いたしました。それから既に三カ月が経過しています。余りにも遅過ぎるのではありませんか、もっと早い時期に補正予算編成を指示すべきだったと反省されませんか。総理の答弁を求めます。

 また、政府が経済対策をまとめ始めたころから既に円高は進行し、その上に、エコカー補助金などの経済対策効果が切れていくことは明々白々でありました。ちょうどそのころ、米国を初め国際経済の世界では、不況からの脱却に向けて大胆な金融緩和を始め、各国政府、中央銀行みずからが血眼になっている中で、菅内閣ののんきなこと。我々の忠告に耳を傾けませんでした。

 そもそも、何のために臨時国会を十月上旬に開いたのでしょうか。開会と同時に補正予算を提出すべきだったのではないですか。

 総理、残念ながら多くの国民は、菅内閣に、経済に対する危機感と、それを乗り越える確固たる経済政策があるのか、理念があるのかと、大いなる疑問を感じております。総理の答弁を求めます。

 さて、平成二十二年度補正予算案について伺います。

 今補正予算案のもととなる経済対策では、国費ベースで五・一兆円の規模となっています。しかしながら、実際には経済対策とはほど遠い、まさしく粉飾がなされていることをまずは指摘しておかなければなりません。

 第一は、地方交付税一・三兆円であります。そもそも地方交付税は、昨年度及び今年度の増収に伴ういわば自然増であり、経済対策としてカウントすることが適当なのか、甚だ疑問であります。しかも、今年度活用分は三千億円であり、残りの一兆円は来年度予算に回されており、結局は来年度の地方財政計画の中に組み込まれるだけで、経済対策とは到底言えないのではありませんか。政府の資料でもあえて別掲で地方交付税を除いた数字を記しているのも、そうしたやましさがあるからでしょう。まさに、みずから粉飾であると公言しているようなものであります。

 第二は、来年度予算の公共事業の契約の前倒し二千四百億円、いわゆるゼロ国債であります。結局は来年度当初予算の枠内で行う公共事業にすぎず、追加的な需要を生み出すものではありません。

 このように考えれば、真正の補正予算の規模は、五・一兆円ではなく、四兆円にも満たないことになるのではありませんか。総理の答弁を求めます。

 また、政策の一貫性に疑問を持つ施策も見受けられます。

 例えば、我々が政権与党だったときの平成二十一年度第一次補正予算で盛り込んだ地域医療再生基金、これは、医療機能の強化や医師確保などの取り組みを支援するためのものですが、鳩山政権では、このうち七百五十億円を執行停止にし、多くの自治体で計画の変更を余儀なくされるなど、大混乱を招きました。しかし、今般の補正予算では、一たんみずから減らした基金を大幅に拡充しているのであります。それでは、昨年の執行停止と、それによる自治体の大混乱は一体何だったのでしょうか。

 総理は執行停止の間違いをお認めになりますね。まさに、民主党政権の政策の一貫性のなさ、場当たり的な対応そのものではありませんか。総理の答弁を求めます。

 さて、今回の事業仕分けにより、ジョブカードは廃止との判断が下されました。政府が六月に示した新成長戦略で、二〇二〇年までにカード取得者を三百万人にするとしていたにもかかわらず、たった四カ月で方針転換をしたのでしょうか。総理の答弁を求めます。

 私たち公明党が九月二日に発表した緊急経済対策では、雇用対策に三千百二十五億円、地方の知恵を活用した需要創出に一兆二千億円の交付金の創設を提案しております。

 しかし、今回の予算案では余りにも規模が小さ過ぎます。来春卒業する学生の三割がいまだ就職のめどが立っていないなどの雇用の現状を御存じないのか。一に雇用、二に雇用、三に雇用と言って総理になられた方が取りまとめたとはとても思えません。場当たり的な対策ばかりで、持続的に雇用を生み出す姿が全く示されておりません。菅総理、あなたは一体どのような方法で五十万人もの雇用を生み出そうとお考えか、お答えください。

 また、中小企業対策について言えば、経済を成長させ、仕事を生み出すことが最重要課題であるにもかかわらず、ホチキス政策と巷間やゆされるように、各省からの寄せ集め政策集のような内容になっており、戦略も方向性もない。これでは民間からの投資を呼び込むことも困難です。どこに注力し需要をつくろうとしているのかわからない政策の予見性の欠如が今回も露呈した格好であります。

 総理、あなたは、この国を一体どうしたいのか、どのようにして元気にしたいのか。雇用対策や中小企業対策に象徴されるように、この予算案で景気回復への責任を果たしていると総理は本当にお思いか。見解を求めます。

 このたび提出された予算案は、いわば規模の小さい本予算のようなものであり、余りに総花的であります。緊急性を持って取り組んでいく角度が全く見えず、現在の厳しい経済状況、疲弊する現場の現状を認識しているとは到底言えません。

 さまざまな問題が多様化する世の中であるからこそ、よりきめ細やかな政治の下支えが求められています。私たち公明党は、これからも、地域の皆様の切実な現場の声を敏感に感じ取りながら、全議員が一丸となって働いてまいることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 斉藤鉄夫議員にお答えを申し上げます。

 まず、リーダーシップについての御質問、これはTPPに関することだったかと思います。

 TPPについて、まず、現在の日本の農業の活性化と再生をいかに実現していくのか、このことと経済の自由化ということ、この二つをいかにすれば両立させることができるか、これは、我が国が今考えなければならない最も大きな課題だと考えております。

 御承知のように、現在の農業従事者の平均年齢は六十五・八歳でありまして、このままの形では、経済の自由化と必ずしも関係なく、このまま衰退していきかねない状況にありますので、何としても若い人が農業に参画できるような抜本的な農業の改革が必要だ、このように考えているところであります。そういった形をしっかりとリーダーシップを持って進めていきたいと思っております。

 また、新成長戦略の展開の中で、社会保障制度改革など、これらも、困難があっても果断に取り組まなければなりません。これについては与野党を超えた議論をぜひお願いいたしたい、このように思っております。

 次に、ロシア大統領の国後訪問と各国との関係についての御質問をいただきました。

 ロシアの最高指導者による北方四島訪問の計画については、我が国は日ロ二国間の問題として、さまざまなレベルで懸念を何度も表明しておりました。しかし、残念ながらメドベージェフ大統領が国後島を訪問したことは、極めて遺憾なことだと考えます。このことによって、しかし、我が国の北方領土問題に対する基本的な考え方、立場が揺らぐものではありません。

 近年、ロシアがアジア太平洋地域に対する関心を高めている状況の中で、これからの対ロ外交について、この間、やや対ロ外交の中での北方領土交渉の目に見える進展が必ずしもなかったわけでありますけれども、これからもう一度、こういった問題にしっかりと取り組む体制をつくっていきたいと考えております。

 今回の訪問を受け、現地の事情等について説明を受けるため、河野駐ロシア大使を一時帰国させました。ロシアの国内的要因が強いとの説明もありましたけれども、しかし、情報収集などをもっとしっかりするようにと私の指示を伝えたところであります。

 また、日中関係あるいは日米関係についてもいろいろと御指摘をいただきました。

 日中関係については、大局的観点から、戦略的互恵関係の充実にこれからも努めてまいりたいと思っております。

 日米関係につきましては、私の二度にわたるオバマ大統領との首脳会談など、日米同盟を深化させる、それは三本の柱である、一つは安全保障、一つは経済、一つは文化・人材交流、こういった方向性で一致をしておりまして、APECの折にも、日本に来られるオバマ大統領と三度目の首脳会談を持ちたい、このように考えているところでありまして、米国との関係は非常にしっかりした関係で推移している、私はこのように思っているところであります。

 次に、小沢議員の説明責任と企業・団体献金、さらにはマニフェストと補正予算についての御質問をいただきました。

 小沢議員の国会での説明については、小沢議員御本人が、国会で決めた決定には私はいつでも従う、こういう表明をされているところであります。

 いずれにしても、政治家の説明責任については、まずは本人の意思が第一であり、現在、幹事長を中心として、本人の意向を確認するなど、環境整備について努力を行っている最中であります。幹事長の努力をしっかりと見守ってまいりたい。

 次に、企業・団体献金についてお話がありました。

 私は、いろいろな議論の中で一番問題なのは、企業・団体献金などでもし政策が左右されるとすればそれは大変な問題だ、このように思っております。かつてのロッキード事件など、私もいろいろな場面を経験いたしましたけれども、そういった、金によって政治が、政策が左右されることがないことであります。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

内閣総理大臣(菅直人君)(続) 私は、もちろん、できる限り個人献金が望ましいということを考え、できるだけの努力はいたしております。この企業・団体献金についても、究極的には個人献金が取ってかわるべきだと考えておりますけれども、我が党のマニフェストは、ごらんをいただければわかりますように、そうした企業・団体献金を全面禁止するという法律が制定された三年間の経過措置を経て、その間に個人献金を拡大するという時間を経てそれを実行していくという形になっておりまして、そういう意味で、これまで申し上げてきたマニフェストそのものに矛盾するものではないということを申し上げたところであります。

 最大限個人献金に移していくよう、ぜひ野党の皆さんにも一緒に御努力をお願いいたしたい、このように思っております。

 次に、経済認識と対策についての御質問をいただきました。

 我が国の景気は、リーマン・ショックで大きく落ち込んで以降、一定の持ち直しをしてきておりますけれども、このところ足踏み状態になっているというのは御指摘のとおりであります。また、円高の傾向が進んでいることも御指摘のとおりであります。この点について、先ほど野田財務大臣からも、いろいろな形で、やるべきときにはしっかりやるとありました。

 と同時に、御承知のように、円高のこの傾向は、一方ではアメリカがとっているドル安政策によって、必ずしも円ばかりでなく、新興国の通貨が軒並み上昇していることもあります。また、その中で、我が国が、企業がたくさんの金を持ちながら必ずしも投資をしていない、そういう構造もあります。そして、内需が必ずしも伸びていないという構造もあります。そういうマクロ経済的な観点からすると、これらのお金を思い切って海外で有効に使うということも必要であります。

 今回、ベトナムでレアアースについての採掘権を我が国にパートナーとして認めていただきましたけれども、海外におけるそうした資源などに思い切って投資をしていくことが円高を抑制する一つの手段にもなり得るわけでありまして、そういったことも含めた総合的な対策といいましょうか、対応が必要だ、このように考えております。

 また、現下の経済情勢についてはスピード感を持って対応していかなければならない、このように考えておりまして、ステップワン、ステップツー、ステップスリーという形で、切れ目のない対策を順次打ってきているところであります。

 そういった形での対応をしっかりしていきたいというのが、経済に対する認識と対策についての私からの答弁であります。

 次に、補正予算の位置づけについての御質問をいただきました。

 今般の補正予算を含む経済対策は、新成長戦略実現に向けた三段構えの経済対策のステップツーとして行うものであり、その場しのぎの対策ではなく、新成長戦略に基づいて、医療、介護、子育て、環境など、中長期的な需要の強化に資する施策、事業を大胆に推進するものであります。

 また、その財源としては、税増収や、既定経費の削減等により、新たな国債の発行を行わないこととしており、財政規律にも配慮を行っているところであります。

 補正予算の提出時期についての御質問をいただきました。

 政府としては、現下の円高や海外経済の減速懸念等の厳しい経済情勢、先行き悪化の懸念を踏まえ、早い段階から切れ目のない対策を講じてきているところであります。

 八月末には経済対策の基本方針を決定し、これに基づき、九月十日に新成長戦略実現に向けた三段構えの経済対策を決定いたしました。その上で、まずステップワンとして、二十二年度予算の予備費を活用して、第一の、経済危機対応・地域活性化予備費の九千二百億円を使った緊急的対応をいたしました。

 先ほども他の党から話がありましたが、補正予算を同時に出せばいいのではないかという指摘もいただきましたけれども、補正予算の審議には一定の期間がかかりますので、二十二年度予算で既に積んである予備費を使って即刻実行することがまずステップワンとしては必要だという考えで行ったところであります。

 その後、間を置かないで、九月二十七日に、経済対策ステップツーについて与野党と意見交換を進めるよう政調会長に指示をし、野党の皆さんからの申し入れも十分取り入れ、十月八日に対策を閣議決定し、その後、これも御承知のように、実際の予算案をつくるには三週間程度は作業がかかりますので、それを急いで実行して、十月二十九日に提出をいたしたところであります。

 このように、今回の補正予算は、ステップワン、ステップツー、さらにはステップスリー、そういう切れ目のない中で、タイミングを逸したという指摘は全く当たらない、このように考えております。

 補正予算の規模について、予算の粉飾がなされているのではないかという御指摘をいただきました。

 今般の補正予算を含む経済対策は、従来のように、必ずしも、規模がこれだけ大きいからとかこれだけ小さいからということではなくて、雇用を起点として経済を回復軌道に乗せていくという、しかも、切れ目のない政策の一つのステップツーとして位置づけられたところであります。

 そういった意味で、御指摘の地方交付税交付金一・三兆円の追加については、おっしゃるように税収増に伴う措置でありまして、同時に、そのうち三千億円を二十二年度中に交付し、また一兆円についても、このことがめどがつきますので、さまざまなものに対して契約等については活用できるという意味で、そういう意味での活用は可能だと考えております。

 公共事業の前倒しについては、お金の支払いは二十三年度でも、今申し上げたように、今年中の契約ができることとなります。

 このような考え方に立てば、今回の経済対策の規模は、合わせますと五・一兆円となるという意味であります。

 さらに申し上げれば、今回の経済対策は三段構えで、第一弾の予備費が〇・九兆円、続いて今回、第二段階の五・一兆円、そして第三段階が来年度の予算という形で切れ目なく講じていきますので、これで本格的な成長路線に乗せていきたいと考えています。

 地域医療再生基金の拡充についての御質問をいただきました。

 今回の地域医療再生基金の拡充は、昨年執行を停止したものとは発想と仕組みが根本的に異なっております。今回は、対象とする医療圏を、市町村よりやや大きい二次医療圏から都道府県単位の三次医療圏に拡大し、広域的な事業を対象とすることとし、また、各地域のニーズに応じた、めり張りのある柔軟性の高い仕組みとしております。

 このように、地域における医療課題の解決や医療機関の機能強化を図ったものであり、場当たり的に対応したものではないと考えております。

 政府の雇用対策についての御質問をいただきました。

 今回のジョブカード関連事業の仕分け結果は、ジョブカード制度の政策目的自体は極めて重要であると認めた上で現行の関連事業の問題点を指摘されたものと理解しており、そうした問題を含めて今後のあり方を、行政刷新会議の本会議、私が議長でありますけれども、そこで検討してまいりたいと考えております。

 また、政府の雇用対策としては、環境、健康、観光分野といった潜在的に需要が大きい分野をターゲットに雇用創出に取り組むこととしており、三段構えで成長と雇用に重点を置いた経済対策を推進してまいります。

 この雇用対策については、新たな雇用をつくる分野、それから、外国に企業が出るようなものを何とかとどめて雇用を守る分野、そして、特に中小企業は、今なお新規卒業生に対する求人倍率は四倍程度になっているけれども、残念ながらそれが、ミスマッチといいましょうか、マッチングが十分にできていない。つくる分野、守る分野、つなぐ分野、この三つの分野をしっかりと念頭に入れて対策に当たっているところであります。

 卒業後三年以内の者を採用する企業への支援の拡充や、今申し上げた中小企業を中心とするミスマッチ解消の強化、特に雇用情勢が厳しい新卒者や若年者の支援を強化していく。さらには、雇用調整助成金の要件緩和、派遣労働者の直接雇用を促進するための奨励金の拡充など、雇用の下支えと生活支援をしていきます。医療、介護、環境など成長分野における人材育成の強化など、施策を盛り込んでいるところであります。

 さらに、今回の経済対策においては、重点分野雇用創造事業の拡充やGDP押し上げに伴う雇用創出を二十万人程度、雇用調整助成金の要件緩和による雇用の下支えを二十五万から三十万人程度、合計で四十五万から五十万人程度を創出、下支えの人数と見込んでおります。

 今後とも、新成長戦略を着実に実施することにより、新たな成長分野を支える質の高い雇用を創出し、所得がふえ、消費がふえ、経済が活性化するという好循環を生み出していきたい、このように考えております。

 中小企業対策についての質問をいただきました。

 今回の補正予算では、円高やデフレといった厳しい経営環境下にある中小企業への効果的な対策を講じるよう努力をいたしました。具体的には、十五兆円規模の融資、信用保証枠を用意し、まず、中小企業の資金繰りに支障が生じないよう万全を期すこととしております。加えて、物づくり中小企業の技術開発や海外展開の支援、農商工連携を初めとする新事業の展開支援など重点的に実施することにより、我が国経済を支える中小企業の活性化や投資の促進を図ることといたしております。

 最後に、景気回復への責任について御質問をいただきました。

 これまで述べてまいりましたように、政府としては、厳しい経済情勢や先行き悪化懸念を踏まえて、来年度に向けて、三段構えで成長と雇用に重点を置いた経済対策を切れ目なく実行してまいります。

 六月には五・三%でありました失業率は、直近の統計で、九月は五・〇%まで下がってきております。今般の補正予算をぜひ早期に成立させていただきステップツーの経済対策を切れ目なく実施するとともに、次にはステップスリーとして、来年度予算や税制等、平成二十三年度における新成長戦略の本格実施につなげ、デフレ脱却と景気の自律的回復に向けて万全を期してまいりたいと考えます。

 どうか皆様の御理解と御支援をあわせてお願い申し上げ、答弁とさせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、財政演説について質問いたします。(拍手)

 政権交代後、一年と二カ月が経過しました。国民の多くは、生活の苦難から何としても抜け出したい、これまでの政治を根本から変えたい、このように願ってきました。しかし、民主党政権はその願いにこたえたでしょうか。内政面でも外交面でも、失望と落胆の声が国民の中に大きく広がっているのであります。

 第一に、生活第一はどこに行ったのでしょうか。

 国民の暮らしに改善の兆しはありません。この一年間に離職した労働者は七百二十四万人に上っており、新たに採用された人を四十万人も上回り、雇用者総数は減り続けております。大手企業ほど非正規労働者を真っ先に切り捨てております。そのため、民間平均給与は年に二十四万円も減少し、五世帯に一世帯が貯蓄ゼロ、生活が苦しくて自殺する人が年に八千三百人を超えています。その一方、大企業は、内部留保を二百兆円をはるかに超える規模で積み上げているのであります。

 このような事態を招いたのは、民主党政権が、財界、大企業を応援することには力を尽くすが、国民の暮らしを直接支援する有効な手だてを講じなかったからではないでしょうか。菅総理はその責任をどう感じているのでしょうか。

 菅総理が推進する新成長戦略にも、今回の補正予算案にも、危機に瀕した国民の生活と営業を救済する有効な手だてはほとんど見当たりません。

 第二に、自立した外交、対等な日米関係はどこに行ったんでしょうか。

 米軍の普天間基地については、最低でも県外という公約を投げ捨て、結局は、辺野古に米軍基地をつくるという最悪の選択をし、沖縄県民に押しつけようとしているのであります。県民の怒りは頂点に達しております。

 日本農業に壊滅的な打撃を与えるTPPの推進を、十月の所信演説で菅総理は突如として打ち出しました。その発端は、昨年十一月来日したアメリカのオバマ大統領の提案だといいます。菅内閣はこれに唯々諾々と従い、農民からごうごうたる非難と落胆の声が寄せられ、政権内部もばらばらであります。菅内閣は、それでも推進するというのでしょうか。

 第三に、クリーンな政治はどこに行ったんでしょうか。

 民主党は、小沢一郎氏の政治資金規正法違反事件で国民の厳しい批判を浴び、企業・団体献金の禁止を公約に掲げ、公共事業を受注している企業からの献金を受けないと決めていたはずであります。ところが、最近になって、突然、受注額一億円未満の企業からの献金を受け取るということにしたのであります。これは、明らかに逆行です。一体、国民にどう説明するというのでしょうか。

 小沢氏について言えば、我々は、証人喚問で四億円の原資等の説明を求めております。菅総理も、何らかの形で国会で説明することが必要と答弁されました。総理自身は、何を説明すべきだと考えているのか、この場で明らかにしていただきたい。

 次に、経済政策の基本にかかわる問題についてです。

 内部留保の中核である利益剰余金と資本剰余金は、合わせて二百二十七兆円、十年間で七三%もふえております。大企業は投資先のない空前の金余りなのに、国民の中では貧困化が進んでおります。大企業は、利益を株主配当や役員報酬に回し、海外向けの投資をふやし、海外で利益を上げても国内には還流させておりません。国内産業、雇用、税の空洞化を一層進めております。総理は、これをどのように認識されていますか。

 今問われているのは、大企業にため込まれた巨大な内部留保を、国内の労働者、中小企業、社会に適切に還流させ、家計消費中心の内需拡大に切りかえることであります。

 そのためには何が必要か。

 まず第一に、大企業に応分の負担を求めることであります。

 法人税の減税なぞは論外であります。下げ過ぎた法人税を少なくとも十年前に戻す、税率は累進課税にし、中小企業には負担をかけない、このようにして、内部留保を国庫に還流させ、それを財源に社会保障、医療、介護を充実させることが必要であります。こうしてこそ、所得の再分配機能を復活させることができるのであります。財務大臣の答弁を求めます。

 第二は、労働者を使い捨てる大企業の横暴を抑えることです。そのためにも、労働法制を抜本的に改正し、非正規雇用を正規雇用に切りかえる、中小企業への支援をふやしながら、最低賃金を千円に引き上げることなどが必要です。

 第三は、大企業による下請単価の不当な切り下げを許さず、適切な引き上げを行うよう指導し、下請中小企業の経営を安定させることであります。

 三点について、明確な答弁を求めます。

 民主党政権の一年を振り返ると、内政、外交、政治姿勢のどれをとっても、自民党政権との基本的違いを見出すのは不可能となりました。

 日本共産党は、財界、アメリカ言いなり政治から国民が主人公となる政治への根本的な転換を求めて闘い続けることを表明し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 佐々木議員にお答えをいたします。

 まずは、国民の暮らしを支援する有効な手だてを講じていないのではないかという御指摘であります。

 日本経済を本格的な成長軌道に乗せ、豊かな暮らしを実現するには、安定した需要や雇用を創出するとともに、産業競争力の強化とあわせて、富が広く循環する経済構造を築く必要があります。こうした認識のもと、新成長戦略を策定し、現在、その実施の段階に入っております。

 具体的には、新成長戦略を実現し、経済の先行き悪化懸念に対応するため、来年度に向けて、三段構えで成長と雇用に重点を置いた経済対策を切れ目なく推進しているところであります。

 既に、ステップワンとして、予備費を活用した緊急的な対応を実施し、ステップツーとして、補正予算の編成を含む緊急総合経済対策を決定し、現在、それに基づく補正予算の審議をお願いしているところであります。こうした政策を通じて、雇用と需要を創出し、国民の生活を守っていく考えであります。

 なお、大企業の内部留保が二百兆円以上積み上がっているという御指摘がありました。

 私も、企業が多くの内部留保を抱えて投資を余りしていない状況に対しては、もっと投資をするように、場合によってはもっと賃金に振り当てるように、そういうことは機会があるごとに経団連初め経営団体にも申し上げております。

 ただ、実際の数字を調べてみますと、二百兆円と言われるものの中で、資本金一億円未満の中小企業に留保されているものが百二十六兆円でありまして、一億円以上のものは、その差額ですから、七十数兆円というのが事務方が調べてきている数字でありまして、そうでないというのであれば、また予算委員会でもどうぞ御質疑をいただきたいと思います。

 TPPと日米関係についての御質問をいただきました。

 私は、いつも申し上げていますように、日本の農業の活性化及び再生というものと貿易の自由化というものをいかにして両立させるかということが重要だと考えております。

 我が国農業従事者の平均年齢は六十五・八歳であり、このままでは経済の自由化とかいう問題を抜きにしてもなかなか立ち行かなくなるわけで、若い人が農業に参画できるようにして農業を活性化していかなければならないと考えております。そのことと私の内閣が掲げている国を開くということとの両立の道筋をつけていかなければならないと考えております。

 国民に理解していただくための中身が必要であり、現在、党、内閣、さらには国民の皆さんと議論しながら、一定の方向性を出していきたいと考えております。

 新成長戦略で決定したとおり、十一月の、横浜で私が議長を務めるAPECまでに、包括的経済連携に関する基本方針を策定することといたしております。その関連で、関係閣僚間で、日本を取り巻く国際経済情勢や国内産業の現状及び見通しなどを踏まえ、しっかりと議論をしていただいております。

 普天間飛行場の移設問題については、本年五月の日米合意を踏まえて取り組むとともに、沖縄の負担軽減策も着実に進めていかなければならないと考えております。

 今後とも、日米両国は、基本的価値と戦略的利益を共有する同盟国として、それぞれの責任と役割を分担しながら、二国間のみならず、アジア太平洋地域情勢及びグローバルな課題について、緊密な連携のもとで、ともに役割を果たしていく覚悟であります。

 次に、企業・団体献金と小沢氏の説明に関する質問をいただきました。

 民主党としては、企業・団体献金によって政策が左右される、もしくは、そのような疑いを招くことがあれば問題であり、そのようなことがないよう、企業・団体献金を減らし、個人献金の促進ということを求めてきております。

 そういった中で、総選挙マニフェストにおいては、三年の経過措置を経て企業・団体献金を全面的に禁止することを掲げ、あわせて、それまでの間の暫定措置として、国や自治体と一件一億円以上の契約関係にある企業などの献金を禁止するという制度改正を提案いたしております。

 このたびの党の方針は、制度改正以前における暫定措置であり、企業・団体献金の禁止を制度化する方針そのものには変更はありません。内容においても、今申し上げたような意味で、マニフェストに矛盾するものではありません。

 また、小沢議員の国会での説明についてお尋ねがありましたが、小沢議員御自身が、国会で決めた決定に私はいつでも従うと表明されております。

 いずれにしても、政治家の説明責任については、まず本人の意思が第一であり、現在、幹事長を中心として、本人の意向確認を含む環境整備について努力を行っていただいているところでありまして、その努力を見守りたい、このように思っております。

 大企業の金余りと空洞化についての御質問をいただきました。

 先ほど申し上げましたように、企業の内部留保がかなりある段階で、もっと投資やあるいは賃金に引き当てるという方向性は、私自身も、そうあるべきだという立場で臨んでいるところであります。

 その中で、例えば設備投資に関しても、一九七〇年代の初頭は、大体、設備の平均の年齢といいますか、七年程度であったのに対して、現在は十三年間と、設備の老朽化が進んでいて、思い切った投資が進んでいない。一方で、生産性の低下にも懸念が持たれております。

 将来、我が国の産業競争力強化を図るためには、これらの資金を国内投資や国内競争力の強化に資するような海外の資源確保などに誘導する必要があると思っております。

 このため、日本国内投資促進プログラムの策定を経済産業大臣に指示し、国内投資の促進に向けて官民の行動計画を取りまとめることといたしております。現在、幅広く産業界などに参加をいただいて、国内投資促進円卓会議での議論を重ねているところであります。

 次に、労働法制の抜本改正と最低賃金引き上げについての御質問をいただきました。

 非正規労働者のうち、派遣労働者については、行き過ぎた規制緩和を適正化し、派遣労働者を保護するための抜本的改正を行う法案を提出いたしているところであります。

 有期契約労働者についても、その雇用の安定や公正な待遇が図られるよう、必要な施策について検討を開始したところであります。

 最低賃金の引き上げについては、最も影響を受ける中小企業に対して適切な支援策を講じていかなければなりません。今後とも、雇用、経済への影響には配慮し、労使関係者との調整を丁寧に行いながら、最低賃金の引き上げに取り組んでまいりたいと考えます。

 こうした対策に加えて、そもそも、雇用をふやすことを通じて賃金水準が上がるよう、経済構造を変える必要があります。政府が先頭に立って雇用をふやすべく、三段構えの経済対策を推進しているところであります。

 なお、残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣野田佳彦君登壇〕

国務大臣(野田佳彦君) 佐々木議員からは、法人税を十年前に戻せといった御提案などを含めて、私の見解を問うという質問の御趣旨だったと思います。

 法人課税については、まずは成長戦略との整合性や企業の国際的な競争力の維持向上、国際的な協調などを勘案しつつ、見直していく必要があると考えています。

 論外という御指摘がございましたけれども、法人実効税率の引き下げについては、課税ベースの拡大等により、財源確保とあわせて平成二十三年度予算編成、税制改正作業の中で検討し、結論を得ることとしています。

 今後、税制調査会において、国内の雇用や設備投資の増加、我が国企業の海外流出の抑制、海外企業の我が国への立地の増加といった観点から、その効果についてしっかり検討していく必要があると考えています。

 御質問ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 阿部知子さん。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党の阿部知子です。

 ただいま議題となりました政府提出の平成二十二年度補正予算に関しまして、社会民主党・市民連合を代表して質問をいたします。(拍手)

 冒頭、去る十月二十日奄美を襲いました豪雨によってお亡くなりになられた三名の御高齢者の方々、また、被害に遭われた皆様に、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げますとともに、迅速な救援に当たられ、復興支援のために御尽力いただきます皆様に、心より敬意を表します。

 さらに、ほっとする間もなく奄美地方を台風十四号が襲いました。避難所等での生活でいかばかりの御不安があろうかと思うときに、この間の異常気象や多発する自然災害の背景にございますいわゆる地球温暖化への取り組みは、待ったなしであると思います。

 そこで、菅総理にお伺いいたしますが、温暖化対策基本法や環境税へのお取り組みは、いかが進められるのでしょうか。

 また、奄美の災害にあっては、道路、ガス、水道、電気、通信などの生活インフラがずたずたにされる中、海上保安庁の巡視船が御高齢者や御病人の搬送に当たり、それが人的被害の拡大を防いだと思います。

 日本は島々から成り立つ国であります。今後、こうした島々の防災対策にどうお取り組みになるのか、松本防災担当大臣にお伺いをいたします。

 さて、リーマン・ショック以降、我が国の経済は低迷し、雇用情勢も悪化の一途をたどる中、さらに株安、円高などの状況が襲い、年末に向けては景気の二番底が懸念されます。そうした中で組まれる補正予算でありますから、当然、菅総理にあってはどこに力点を置かれるのか、まず明らかにしていただきたいと思います。

 社民党は、既に、去る八月の二十七日、地方、雇用、社会保障、格差、貧困対策に大きく寄与する四・七兆円の経済対策を要望いたし、あわせて、この間、悲惨な児童虐待事件の多発に対して、総理その人を本部長とする児童虐待対策本部の設置を求めてまいりましたが、果たして菅総理の御答弁やいかにと伺います。

 さらに、こうした経済対策以外に、実は、我が国の社会の不安定化を増長し、さらに、社会保障の空洞化を招いておるところの非正規雇用の増大に対して、労働者派遣法の改正を社民党としては強く求めてまいりました。菅総理も、暮らせる賃金、あるいは人間的な働き方を旨とする社会を第一と考えておられると思いますが、労働者派遣法の改正の取り組みに、どのように迅速に進められるのかについてお伺いをいたします。

 こうした内政問題以上に、今我が国を覆う外交上の問題あるいは国際情勢は、さまざまに大きな難題が山積してございます。中国、アメリカ、ロシアなどの大国との間に惹起する問題もしかりでありますし、また、円高対策一つにしても、G8やG20などの国々との協調なくしては事を運ぶことができません。

 新政権発足以降、政権の未熟さあるいは相手国との重層的なパイプの不在によって必ずしも十分な信頼関係が得られていない現在の我が国にあって、さきの鳩山政権にあっては友愛を外交の理念として掲げて取り組んでこられたことと思いますが、果たして、菅総理には、そもそも外交哲学の根本に何を置かれるのかをお伺いいたします。

 あわせて、この間、APECを控えて、菅総理は、突如、TPPへの加盟検討を打ち出されました。国際化する社会の中で、FTA等の重要性は十分理解しながらも、なぜ、アメリカが主導し、また、日本とのさまざまな障壁を抱えるこのTPPを優先させるのか、国民には全く説明がございません。

 政権交代以降、東アジア共同体を掲げ、中国、韓国を含むASEANプラス3あるいはASEANプラス6など、経済連携の中軸には東アジアを置くことを戦略的に展望してきたはずでございます。ここに至って、TPPを突如持ち出され、そして、この大きな戦略の変更を行おうとする菅総理の意図とは何であるのか、きちんとお話をいただきたいと思います。

 あわせて、食料の自給率、地域の疲弊や第一次産業の再生に対する諸策は緒についたばかりであります。この米価の下落を前に、農家は戸別の所得補償制度の先行きをかたずをのんで見守っております。国民にも全く説明がされておらないままTPPの加盟検討を進められる菅総理は、私は、国民不在の政治と思わざるを得ないと思います。

 最後に、肝炎対策についてお伺いいたします。

 菅総理は、かつて厚生労働大臣として、薬害エイズ問題へのお取り組みを高く評価するものですが、であれば、肝炎対策についても、まず、原告の皆さんとお会いになり、悲惨な生活実態をきちんと受けとめて、行政の責任を明らかにして謝罪するところからすべては始まると思います。

 国民の生活が第一を掲げた民主党政権には、ぜひとも、今、円高に打ちひしがれ、この先行きを懸念する多くの中小企業者や地域経済の疲弊の中に苦しむ皆さんに対してしっかりと下支えをするのだという決意を持って、この補正予算に取り組んでいただきたいと思います。

 以上をもって私の質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 阿部知子議員にお答えを申し上げます。

 地球温暖化対策について、施策の速やかな実施に関する御質問をまずいただきました。

 御指摘のとおり、地球温暖化に対する取り組みは待ったなしの課題であると認識をいたしております。このため、今国会に、我が国の地球温暖化対策の基本的方向性を示した地球温暖化対策基本法を提出しており、御審議の上、速やかな成立をお願いいたしたいと思います。

 また、地球温暖化対策のための税については、平成二十三年度の実施に向けた成案を得るべく、しっかりと検討をしていく予定にいたしております。

 政府が最も力を入れた対策についての御質問をいただきました。

 我が国経済の現状を見ると、需要が不足し、供給側が幾らコスト削減に努めても、値下げ競争になるばかりで、ますますデフレが進む状況にあります。消費も投資も力強さを欠く中、経済を活性化していくには、雇用を起点とした成長が必要であると考えております。

 こうした考え方のもと、現下の経済情勢にスピード感を持って対応するため、来年度に向けて、三段構えで成長と雇用に重点を置いた経済対策を作成し、切れ目なく政策対応を実行しているところであります。

 今般の補正予算はその第二弾に当たるわけで、その編成に当たり最も力を入れたのは、成長と雇用の創出につながるような施策の充実であります。

 具体的には、「雇用・人材育成」、「新成長戦略の推進・加速」、「子育て、医療・介護・福祉等」、さらには「地域活性化、社会資本整備、中小企業対策等」、「規制・制度改革」の五つの柱のもと、経済の活性化や国民生活の安定、安心に真に役立つ施策を盛り込みました。

 これらの施策により、成長分野における雇用創出が家計の所得や支出の増加につながるという、経済の好循環を確かなものとしていきたいと考えております。

 児童虐待について御質問いただきました。

 政府としては、本年七月、私を本部長とする、全閣僚により構成される子ども・若者育成支援推進本部において、子ども・若者ビジョンを決定いたしました。本ビジョンにおいては、児童虐待の発生予防のための支援の充実や、早期発見、早期対応等に取り組んでいくことといたしております。

 本ビジョンの内容を踏まえ、政府全体で児童虐待防止対策に取り組んでまいりたいと考えます。

 今月十一月は児童虐待防止推進月間であり、私も、きょうはそのオレンジリボンを胸につけております。政府としても、さまざまな広報啓発活動などを実施しております。家庭、学校、地域など、社会全体で関心と理解を深めていただきたいと考えております。

 次に、労働者派遣法改正案についての御質問をいただきました。

 現在提案しております労働者派遣法改正案は、登録型派遣や製造業務派遣の原則禁止などを内容とし、行き過ぎた規制緩和を適正化して派遣労働者の保護を行うための抜本的な改正を進めるものであり、今臨時国会で、速やかに御審議をいただき、早期の成立をお願いいたしたいと考えております。

 次に、諸外国との信頼関係及び外交姿勢に関する質問をいただきました。

 私の内閣が発足して以来、例えば日米関係については、オバマ大統領との間で二度の首脳会談を通じ、二十一世紀にふさわしい形で日米同盟を深化させる三本の柱ということで、安全保障、経済、そして文化・人材の交流、こういうことで進めようということで一致をし、信頼関係を深めてまいりました。

 また、先般、私はベトナムを公式訪問し、史上初めて、原子力発電所の受注やレアアースの採掘権の確保といった、そうした成果を上げることができました。

 また、世界第二の人口を擁するインドとの間では、EPA交渉に大筋合意し、先般訪日されたシン首相とともに、これを歓迎し、関係の書面にサインをいたしました。

 そのほか、韓国の李明博大統領との間でも、二度の会談を通じ、日韓の連携強化を図ってきております。

 このように、政権交代以降、国益を増進させるとの戦略的観点から、私や各閣僚が積極的に外国要人と会談を行い、諸外国との信頼関係を構築してきております。

 私は、所信表明でも述べたとおり、国際社会が今や歴史の分水嶺とも呼ぶべき大きな変化に直面している中、主体的で能動的な外交を推進していくことが必要と考えております。その際、国を開き、世界の活力を積極的に取り込むとともに、国際社会が直面する課題の解決に向け、先頭に立って貢献する決意であります。

 次に、環太平洋パートナーシップ、TPP協定及び東アジア政策についての御質問をいただきました。

 日本の農業の活性化及び再生と、貿易の自由化をいかにして両立させるかが重要であります。我が国の農業従事者の平均年齢が六十六歳近くになっており、このままでは将来の日本の農業は立ち行かなくなります。若い人が農業に参画できるように、農業を活性化していかなければならないと考えております。

 そのことと、私の内閣が掲げている、国を開くこととの両立の道筋をつけていかなければなりません。国民に理解していただくための中身が重要であり、党、内閣、国民との議論を通して一定の方向性を出していきたいと考えております。

 EPA、FTAは、アジア太平洋諸国と成長、繁栄を共有するためのかけ橋として重要であります。ASEANプラス6を初めとする東アジア諸国との経済連携についても着実に実施をいたしてまいります。

 先日、ASEANとの間で、ASEANプラス6、ASEANプラス3、さらにはアメリカとロシアを含めた東アジア首脳会議なども行われました。やはり、アジア太平洋という地域は、一つのこれからの大きな、日本にとってのより重要な地域になっていると考えておりまして、そういう意味では、アジアと同時に、太平洋地域との関連も深めていくことが必要だと思っております。

 B型肝炎訴訟への対応についての御質問をいただきました。

 B型肝炎訴訟の問題については、国会はもとより、広く社会の各界各層において、国民お一人お一人の問題として、さまざまな御議論をいただくことが必要だと考えております。

 政府としては、原告の皆様のお気持ちに思いをいたしつつ、今後とも、誠意を持って和解協議を進めるとともに、広く国民の納得を得ながら解決が図られるよう、最大限努力してまいりたいと思います。

 阿部議員はこの道の専門家でもありますので、このB型肝炎の持っているいろいろな背景はよく御存じだと思います。そういった中で、もちろん、患者さんといいますか感染された皆さんのことと同時に、幅広い国民の皆さんの理解もあわせて得ることの必要性も御理解がいただけると思っております。

 原告の方々にお会いすることについては、和解協議が進んでいることでもありますが、今後、しかるべきときに適切に対応してまいりたいと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣松本龍君登壇〕

国務大臣(松本龍君) 阿部議員にお答えいたします。

 このたびの災害につきましては、私からも、亡くなられた方々、また、被災された方々に、お悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。

 御指摘のとおり、このたびの災害では、海上保安庁の巡視艇が、負傷者や救援要員の搬送など、いろいろな意味で活躍をされました。そういう意味では、現地にこの間行きましたときも、大変感謝をされておりました。また、警察、自衛隊、消防等々、同じように、島外からの救援も含めて頑張っておられたことも御報告をしたいと思います。

 島々において、災害では、負傷者や物資あるいは資機材がありますけれども、それらの緊急輸送も含めて、広域的な支援体制の確保の重要性について改めて認識しているところであります。

 今後、今回の災害の教訓と学習を含めて、関係省庁との連携のもと、島々における災害対策の充実に全力で取り組んでまいります。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第一 保険業法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(第百七十四回国会、内閣提出)

議長(横路孝弘君) 日程第一、保険業法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長石田勝之君。

    ―――――――――――――

 保険業法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔石田勝之君登壇〕

石田勝之君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、平成十七年の保険業法の改正前から共済事業を行ってきた団体等のうち、一定の要件に該当するものについて、保険業法の規制の特例を設け、当分の間、その実態に即した監督を行うことを可能とし、保険契約者の保護等の観点から必要な規制を整備するものであります。

 本案は、第百七十四回国会に提出され、本年五月二十六日当委員会に付託され、同日亀井前国務大臣から提案理由の説明を聴取し、質疑に入りましたが、以後、今国会まで継続審査に付されていたものであります。

 今国会におきましては、去る十一月二日提案理由の説明を省略した後、質疑に入り、質疑終局後、大串博志君外二名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の共同提案に係る、特定保険業に係る制度について検討を加える時期を、「この法律の施行後適当な時期」から「この法律の施行後五年を目途」に改めることとする修正案が提出され、提出者を代表して竹内譲君から趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  菅  直人君

       総務大臣  片山 善博君

       法務大臣  柳田  稔君

       外務大臣  前原 誠司君

       財務大臣  野田 佳彦君

       文部科学大臣  高木 義明君

       厚生労働大臣  細川 律夫君

       農林水産大臣  鹿野 道彦君

       経済産業大臣  大畠 章宏君

       国土交通大臣  馬淵 澄夫君

       環境大臣

       国務大臣  松本  龍君

       防衛大臣  北澤 俊美君

       国務大臣  岡崎トミ子君

       国務大臣  海江田万里君

       国務大臣  玄葉光一郎君

       国務大臣  自見庄三郎君

       国務大臣  仙谷 由人君

       国務大臣  蓮   舫君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  古川 元久君

       財務副大臣    五十嵐文彦君


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