衆議院

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第4号 平成23年2月15日(火曜日)

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平成二十三年二月十五日(火曜日)

    ―――――――――――――

  平成二十三年二月十五日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 検査官任命につき同意を求めるの件

 国家公安委員会委員任命につき同意を求めるの件

 宇宙開発委員会委員任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件

 社会保険審査会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

 平成二十三年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)及び所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑

 片山総務大臣の平成二十三年度地方財政計画についての発言並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明並びに質疑


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    午後二時二十二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 検査官任命につき同意を求めるの件

 国家公安委員会委員任命につき同意を求めるの件

 宇宙開発委員会委員任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件

 社会保険審査会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

議長(横路孝弘君) お諮りいたします。

 内閣から、

 検査官

 国家公安委員会委員

 宇宙開発委員会委員

 労働保険審査会委員

 中央社会保険医療協議会委員

 社会保険審査会委員長及び同委員

及び

 運輸審議会委員に

次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。

 内閣からの申し出中、

 まず、

 検査官に森田祐司君を、

 国家公安委員会委員に前田晃伸君を、

 労働保険審査会委員に小賀野晶一君を、

 中央社会保険医療協議会委員に印南一路君及び西村万里子さんを、

 社会保険審査会委員長に渡邉等君を、

 同委員に宮城準子さん及び西島幸夫君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 宇宙開発委員会委員に服部重彦君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(横路孝弘君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

 次に、

 運輸審議会委員に島村勝巳君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(横路孝弘君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 平成二十三年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)及び所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、平成二十三年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣野田佳彦君。

    〔国務大臣野田佳彦君登壇〕

国務大臣(野田佳彦君) ただいま議題となりました平成二十三年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、平成二十三年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案について御説明申し上げます。

 平成二十三年度予算は、中期財政フレームに基づき財政規律を堅持するとともに、成長と雇用や国民の生活を重視し、新成長戦略及びマニフェスト工程表の主要事項に係る施策を着実に実施する、元気な日本復活予算であります。

 こうした施策を盛り込んだ予算全体としては、税収等の収入が依然として低水準にある中で、歳出歳入両面において最大限の努力を行い、基礎的財政収支対象経費については、平成二十二年度当初予算の水準である約七十一兆円を上回らないものとしつつ、新規国債発行額については、平成二十二年度当初予算における発行額を下回る四十四兆二千九百八十億円に抑制したところであります。

 本法律案は、平成二十三年度の財政運営に資するため、同年度における公債の発行に関する特例措置を定めるとともに、基礎年金の国庫負担割合を二分の一とするために必要な臨時の財源を確保するため、財政投融資特別会計、外国為替資金特別会計及び独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構に関する特例措置を定めるものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、平成二十三年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行することができることとしております。

 第二に、平成二十三年度において、特別会計に関する法律第五十八条第三項の規定にかかわらず、財政投融資特別会計財政融資資金勘定から、一兆五百八十八億円を限り、一般会計の歳入に繰り入れることができることとしております。

 第三に、平成二十三年度において、特別会計に関する法律第八条第二項の規定による外国為替資金特別会計からの一般会計の歳入への繰り入れをするほか、同特別会計から、約二千三百九億円を限り、一般会計の歳入に繰り入れることができることとしております。

 第四に、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構は、平成二十三事業年度について、特例業務勘定における積立金のうち一兆二千億円を平成二十四年三月三十一日までに国庫に納付しなければならないこととしております。

 次に、所得税法等の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。

 本法律案は、所得、消費、資産等にわたる税制の抜本改革の実現に向けて、経済活性化と財政健全化を一体として推進するという枠組みのもとで、現下の厳しい経済状況や雇用情勢に対応する等の観点からの税制の抜本改革の一環をなす緊要性の高い改革として、個人所得課税、法人課税、資産課税、消費課税、市民公益税制、納税環境整備等について所要の措置を講ずるものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、個人所得課税について、給与所得控除の上限設定及び役員給与等に係る給与所得控除の縮減、成年扶養控除の対象の見直し、上場株式等の配当等に係る軽減税率の特例の適用期限の延長等を行うこととしております。

 第二に、法人課税について、法人税の基本税率及び中小企業者等の軽減税率の引き下げ、これにあわせた課税ベースの拡大、雇用促進税制及び環境関連投資促進税制の創設等を行うこととしております。

 第三に、資産課税について、相続税の基礎控除の引き下げ及び最高税率の引き上げ等の税率構造の見直し等を行うこととしております。

 第四に、消費課税について、地球温暖化対策のための課税の特例を創設する等の措置を講ずることとしております。

 第五に、市民公益税制について、認定特定非営利活動法人等に寄附をした場合の所得税の税額控除制度を創設する等の措置を講ずることとしております。

 第六に、納税環境整備について、納税者権利憲章を作成するものとするとともに、更正の請求期間を延長する等の措置を講ずることとしております。

 その他、エネルギー需給構造改革推進投資促進税制の廃止等既存の租税特別措置の整理合理化を図り、あわせて住宅用家屋に係る所有権の移転登記に対する登録免許税の特例等の適用期限を延長するなど、所要の措置を講ずることとしております。

 以上、平成二十三年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 平成二十三年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)及び所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。岡田康裕君。

    〔岡田康裕君登壇〕

岡田康裕君 衆議院議員の岡田康裕でございます。

 民主党・無所属クラブを代表いたしまして、平成二十三年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣にお伺いいたします。(拍手)

 まず、冒頭、このたびの大雪や新燃岳の噴火、高病原性鳥インフルエンザにより深刻な被害に遭われている皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。一日も早い復興に向け、全力を尽くす所存でございます。

 さて、いよいよ審議入りするこの予算関連法案は、まさに国民生活に直結するものばかりです。先日、こちらにいらっしゃる谷垣総裁から、角番の八百長相撲にはつき合えないという趣旨の御発言がございましたけれども、多くの国民の皆さんは、与野党がただぶつかり合うだけで、結局は、何も決まらない、何も進まない、その国会の形骸化した姿こそ八百長だと感じているのではないでしょうか。

 角番なのは、まさに、この国の経済であり、社会保障制度であり、財政ではありませんか。全国の皆さんが、不安や、いら立ち、そして、お人によってはお怒りを持ってこれらの法案の行く末を見ておられます。党派を超えて、国民生活のための議論を目指していこうではございませんか。

 それでは、まず、公債の発行の特例等に関する法律案について質問させていただきます。

 この法案は、特別会計や独法などからの約二・五兆円の繰り入れに加え、約三十八・二兆円のいわゆる赤字公債を発行しようとするものです。合計すれば約四十・七兆円分であり、二十三年度予算案における収入の約半分を担うことになります。予算案本体と切っても切れない関係にある重要法案でございます。

 まず、野田財務大臣にお伺いいたします。

 建設公債約六兆円を加えますと、合わせて四十四・三兆円の公債発行となり、税収見通しを上回ります。政権がかわって、公債発行額が急激にふえたことに多くの方が不安を感じておられます。この数字を御理解いただくためにも、政権交代前の平成二十一年度当初予算と比較して、税収がどう変化をし、マニフェスト施策全体で歳出をどの程度押し上げて、お金の使い方の見直しやストックの取り崩しがどの程度進んだのか、具体的に御答弁をお願いいたします。

 次に、与謝野大臣にお伺いいたします。

 この四十四・三兆円という数字は、昨年六月に政府が閣議決定をしている財政運営戦略の中期財政フレームに沿った目標達成の第一歩であると認識をしております。しかし、この財政運営戦略を今後達成していこうとすれば、二〇一五年度までに二〇一〇年度の基礎的財政収支赤字額対GDP比を半減、二〇二一年度までに黒字化しなければなりません。

 あえて具体的にお伺いいたします。

 国債金利と経済成長率が同程度であったと仮定した場合、今後、二〇一五年度までに、また、二〇二一年度までに、収支を何十何兆円改善しなければならないことになりますか。お伺いいたします。

 私は、与謝野大臣に特に期待をしている一人でございます。

 過去を振り返れば、国債発行額を三十兆円以下に抑制するという閣議決定もありましたし、二〇一一年度までに国と地方を合わせた基礎的財政収支の確実な黒字化を閣議決定したこともございました。これまでにも、何度も修正や見直しや先送りが繰り返されてきているわけです。まさにその中におられた与謝野大臣でいらっしゃるからこそ、わかられることがおありだと思っております。今度こそ、そういう強いお気持ちで今臨まれているものと信じております。

 短期的な景気対策による歳出増を除けば、これまでなぜ修正や見直しや先送りを繰り返さざるを得なかったのか、今後の御決意とともに、御答弁をお願いいたします。

 次に、税制改正に盛り込まれた各論について、玄葉国家戦略担当大臣にお伺いいたします。

 本改正案では、国税と地方税を合わせた法人実効税率を約五%引き下げ、中小企業軽減税率を一五%まで引き下げることとしております。マニフェスト施策の一つでございますけれども、財政が大変厳しい中、あえて踏み込む減税措置。日本経済を本格的な回復軌道に乗せていくための一つの起爆剤と位置づけられていることと思いますけれども、その意図されているところをお願いいたします。

 なお、本法案が年度末までに通らなかった場合に、法人税率の引き下げが不透明になるだけでなく、国民生活に具体的にどのような影響が生じるのか、お伺いいたします。

 最後に、総理にお伺いいたします。

 少子高齢化、人口減少、経済の中長期的な見通し、社会保障制度の持続可能性、巨額の財政赤字など、多くの国民の皆さんが将来の見通しに自信が持てなくなっております。これまでの政治において、だれもが、不人気な政策を避けて、厳しい決断を下さず、新しい時代に備えてこなかった結果でございます。

 菅総理は、施政方針演説の冒頭、経済、財政、社会保障の一体的強化についてその必要性を説かれ、これら課題に真正面から向き合う決意を表明されました。負担がふえるということは、だれにとってもうれしいことではありません。しかし、あえてそこに取り組もうとするその決意が一人一人の心に響けば、みんなで一緒に乗り越えようじゃないか、そういう機運が盛り上がってくるはずなのであります。

 先日、ある自営業者の方のところへお伺いした際、また厳しいお声をいただきました。政治や行政が、事の順序として、まず隗より始めるべき部分をどう対処するのか。同じようなお声をたくさんいただいております。

 四十四・三兆円という二けた兆円の金額規模からすれば、確かに、けたの違う数字かもしれません。しかし、政治は、やはり、信なくば立たずであり、国民からの信頼なくしては前に進めない世界だと思っております。いま一度、議員定数やその経費、国家公務員人件費等の削減について今後どのように進めようとされているのか、御決意を具体的にお聞かせいただければと思います。

 以上、四点お伺いいたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 岡田康裕議員にお答えをいたします。

 今、経済、財政、社会保障の一体的な強化といったことに真正面から取り組んでいくには、まず隗より始めよ、そういう覚悟で臨まなければならないという御指摘をいただきました。私も、そのとおりだ、このように考えております。

 そういった中で、具体的には、これまでも、事業仕分けを初め、まず行政の無駄の削減に全力を挙げてきたところでありますが、これは、ある意味で永久に続けていかなければならない、そういう覚悟で取り組んでまいりたい、こう考えております。

 それに加えて、公務員人件費の総額二割削減につきましても、いろいろと手だてを今尽くしておりますけれども、このことを、法律あるいは出先機関の配置、あるいは給与、人件費についての交渉などを通して、何としても二割削減につなげていきたい、こう考えております。

 さらに、内閣においては、閣僚の歳費の一割削減は、政権交代前の内閣以来継続いたしておりますけれども、これからの展開の中ではさらなる切り込みも考えなければならない、このように考えております。

 加えて、議員定数についてであります。これについては、民主党として、衆議院で八十、参議院で四十程度の定数削減を決定いたしておりますけれども、この問題は、内閣としてというよりも、やはり政党間で協議をいただくことが必要ではないかと考えているところであります。

 それに加えて、我が党の中では、国会議員の歳費についても、ぎりぎりのところではやはり考えなければならないという議論もあります。こういったことについても、私も、内閣総理大臣として、と同時に、民主党の代表としてしっかりと取り組んでまいりたい、このように考えております。

 以上、この問題で、まさに隗より始めよという気持ち、これは私自身が持たなければいけないことはもとよりでありますが、この議場におられる皆さんにおかれましても、その姿勢を国民の皆さんにきちっと示せるような、そういう合意形成を図っていただくよう心からお願い申し上げて、答弁にさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣野田佳彦君登壇〕

国務大臣(野田佳彦君) 岡田康裕議員からは、政権交代以降の予算編成についての御質問をいただきました。

 二十三年度の税収見込みは約四十・九兆円であり、二十一年度当初の税収見込み約四十六・一兆円と比べて約五・二兆円減少しています。

 税外収入については、政権交代以降、最大限の努力を行っており、二十三年度では約七・二兆円確保したのでありますが、二十一年度当初と比べると約二兆円減少しております。

 一方、二十三年度予算の歳出は二十一年度当初と比べて約三・九兆円増加をしていますが、この要因は、国債費の増加約一・三兆円、二十二年度予算における社会保障の自然増約一・一兆円や、マニフェスト主要施策のうち歳出削減以外で財源を確保した部分約一・一兆円等となっています。

 以上の結果、新規国債発行額は二十一年度当初と比べて約十一兆円増加することとなりますが、税収が低い水準にある中で、財政規律にぎりぎりの配慮を行った結果と考えています。

 なお、こうした中で、マニフェスト工程表に掲げられた主要施策については、歳出削減等で三・六兆円の安定的な財源を確保した上で、子ども手当、農業戸別所得補償、高校の実質無償化等の施策を実施しているところであります。

 ちなみに、政権交代以降の二年間の予算編成についてそれぞれ申し上げますと、二十二年度予算については、税収が約八・七兆円落ち込む中で、税外収入、過去最大規模、十・六兆を確保するなど、ぎりぎりの努力を行い、新規国債発行額を約四十四・三兆円にとどめました。二十三年度予算においては、財政運営戦略に基づき、新規国債発行額を二十二年度当初と同水準である約四十四・三兆以下に抑制するところであります。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 財政運営戦略の目標の達成に必要な収支改善幅についてお尋ねがありました。

 内閣府の経済財政の中長期試算の慎重シナリオによれば、国と地方の基礎的財政収支について、二〇一五年度までにその赤字の対GDP比を二〇一〇年度の水準から半減するとの目標の達成にはおおむね五兆円程度、二〇二〇年度までに黒字化するとの目標の達成にはおおむね二十三兆円程度の収支改善幅が必要になると見込まれます。

 なお、国債金利はその時々の短期金利や物価上昇率等の影響を受けるため、同試算においては、目標の期間を通じて、国債金利と経済成長率が同程度となるとの仮定は置いておりません。

 次に、過去の財政健全化目標等の見直しについてのお尋ねがありました。

 過去には、御指摘のように、国債発行額を三十兆円以下に抑制することや、二〇一一年度には国と地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化するといった財政健全化目標を定めたこともありました。しかしながら、想定外の経済状況の悪化によって税収が減少したことや、社会保障の一体改革などを含めた歳入改革が現在まで実施に至らなかったこと等により、目標達成には至りませんでした。

 こうしたことから、財政健全化を達成するためには、慎重な経済見通しを前提とするとともに、新成長戦略を着実に実施し、さらに、無駄の削減、社会保障と税の一体改革を同時に進めていくことが重要であります。

 政府としては、財政運営戦略で示した財政健全化の目標に向け、中期財政フレームの財政規律を堅持し、引き続き、デフレ脱却と経済成長の実現を確かなものとしつつ、社会保障改革と財政の持続可能性を確保するため、一歩一歩取り組んでまいりたいと考えております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣玄葉光一郎君登壇〕

国務大臣(玄葉光一郎君) 法人実効税率の引き下げの意図と、税制改正法案が年度内に成立しない場合の国民生活への影響に関する岡田康裕議員のお尋ねについて答弁いたします。

 平成二十三年度税制改正におきましては、米国と並んで世界一高い日本の法人実効税率を引き下げることで、企業が海外へ移転して雇用が失われることを回避し、国内での投資の増加や雇用の創出につながる効果を期待しております。これは、岡田議員の御指摘のとおり、成長と雇用の実現、デフレ脱却に向けた大きな一歩となるものと考えております。

 税制改正法案が年度内に成立しない場合の国民生活への具体的な影響という御質問でありますけれども、住宅用家屋の売買等に係る登録免許税の軽減措置が失効する、旅行者等が入国の際に行う紙巻きたばこやウイスキー等の輸入に関する税率の特例が失効する、農林漁業用A重油に係る石油石炭税の免税措置が失効する、中小企業に関する軽減税率、これは、現在一八%、法案が通れば一五%、通らなければ本則の二二%になってしまう、そういうことなど、企業関係の租税特別措置が期限切れとなり、さまざまな事業・取引活動や経理処理に支障が生じるなどが考えられるところでございます。

 ぜひ、税制改正法案の年度内成立に向けて、議員の皆様の御理解を賜りたいと存じます。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 後藤田正純君。

    〔後藤田正純君登壇〕

後藤田正純君 自由民主党の後藤田正純であります。

 自由民主党・無所属の会を代表して、ただいま議題となりました平成二十三年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案外一案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。(拍手)

 まず初めに、熟議の国会について伺います。

 菅総理、あなたの有言実行という言葉、熟議の国会という言葉がむなしく聞こえてなりません。本来ならば、マニフェスト選挙をうたって政権交代したのであれば、あなたの模範とするイギリス政治に倣い、熟議したはずのマニフェストを淡々と有言実行していけばよいのです。それがなぜできないのでしょうか。マニフェストそのものにみずからが迷い、実現可能性のないものであったことを自覚し始めたからこそ、国会審議が熟議とならなくなったのではないでしょうか。

 総理みずから仮免だったと認めたように、政権交代から一年半、あなた方は一体何をしてきたのでしょうか。さらに言えば、政権交代までに何の国家プランも持たずに、野党時代には与野党協議にも応じてこなかったツケが、今まさにみずからに返ってきているのではないでしょうか。

 政権交代後の政権運営を見ていると、重要政策については国会が終わる六月に方向性を出すとの答弁ばかりで、熟議を巧みに避ける先送り延命内閣のためのこそくな国会運営と言うほかありません。

 普天間の腹案のときも、昨年の中期財政フレームのときも、税制抜本改革、TPP、農政改革を含む産業構造改革も、キーワードは、すべて、通常国会が終わる六月まで待ってくださいとの答弁で、どうして熟議の国会ができるのでしょうか。

 加えて、国会では、仮免総理の仮免予算、破綻したマニフェスト予算について、あなた方の言いわけ、言い逃れを聞かされているだけではないでしょうか。国の形を決める重要な政策である財政構造改革、社会保障改革、産業構造改革についてはすべて六月まで先送りされることとなると、議論のしようがありません。

 通常国会はまだ四カ月もあるんです。統一地方選挙まで二カ月もあるんです。通常国会、そして統一地方選挙を今から逃げ切ろうとする姿勢がまさに問われているのです。あなたにとっての熟議の国会とは一体何を議論する国会なのか、なぜ統一地方選挙まで重要政策を示せないのか、総理の見解を伺います。

 次に、マニフェストについて伺います。

 さきの予算委員会ではマニフェスト違反についての議論ばかりが目立ったのも無理はありません。民主党政権は、歳入歳出の双方において、数兆円単位のマニフェスト違反を修正という言葉で言い逃れをしようとしており、今後の日本のあらゆる選挙のあしき先例となります。民主党政権にとって許されるマニフェストの修正とは一体どのくらいの予算規模までなのか、総理に見解を伺います。

 特に最低保障年金月額七万円についての議論においては、これから制度設計を議論するとの驚くべき答弁がなされましたが、そもそも一年半前のマニフェストでは年金の制度設計はしていなかったのか、これからのマニフェストは制度設計がなくてもよいものなのか、総理に見解を伺います。

 マニフェストの修正は、民主主義の原則から、本来あってはならないものであります。その点からいえば、マニフェストを掲げて政権交代を果たし、マニフェスト原理主義を訴えて民主党代表選挙を戦ったのは、小沢氏及び小沢氏を支援する民主党議員ではないでしょうか。現政権では、マニフェストを貫こうとしている人たちではなく、マニフェストをこそくに修正しようとする人たちが政権の中枢を占めているのはなぜか、総理の見解を伺います。

 小沢氏との代表選挙での争点のもう一つは、クリーンかクリーンでないかというものでしたが、我々野党六党は一致して証人喚問を求めております。しかしながら、民主党は中途半端な党内処分をけじめとしただけで、いまだに国会に対して証人喚問の回答はなく、本末転倒としか言いようがありません。小沢氏処分を支持率回復の道具にするようなこそくな民主党のやり方こそが、政権末期の象徴的な事例であります。

 総理も岡田幹事長も、小沢元代表の国会招致が必要と明言してきたではありませんか。ところが、今に至っても民主党は政倫審出席に努力すると言い続けるのみであり、このてんまつを見ている国民は、もはや民主党を全く信用しておりません。今となっては、国会招致のあり方は証人喚問しかあり得ないのです。総理、あなたが決断すれば実現することなのです。その決断をするか否かを明確に御答弁ください。また、鳩山前総理はクリーンと言えるのかどうか、なぜ処分対象にならないかも、あわせて総理に伺います。

 次に、財政運営について伺います。

 内閣府の試算によると、政府の財政健全化目標の達成には、慎重シナリオで、国、地方を合わせて、二〇一五年度に約五兆円、二〇年度に二十三兆二千億円の財源が足りない計算となっており、消費税率一%で二・五兆円とすると、二〇年度不足分は消費税約九・三%分に相当します。民主党マニフェストを忠実に四年間で実行すればこの目標すら達成できず、さらなる消費増税をしなければならないと思いますが、それでもマニフェストを四年間で実行するのか、マニフェストと財政運営戦略との整合性について、総理と与謝野大臣に見解を伺います。

 総理が野党時代、徹底的に批判してこられた、自民党政権における、橋本内閣の財政構造改革法案、小泉内閣の歳入歳出一体改革、いずれも、抱きつきなどはせずに、政権与党がみずから法案や方針を示してまいりました。歳入改革としては消費税を含む税制抜本改革、歳出改革としては歳出削減目標を示していたことは、それぞれの内閣で深くかかわられた与謝野大臣がよく御承知と思います。

 六月に示す税と社会保障の一体改革の成案、そして来年度中に提出予定の法制上の措置、いずれにおいても、歳出削減案、消費税率、引き上げ時期について明確に示すということでよいのか、総理と与謝野大臣に見解を伺います。

 民主党政権の政策実現及び財政健全化のための財源には税と社会保障の一体改革が不可欠との考えのようですが、無駄削減と事業仕分けによって財源を捻出し、消費税引き上げは不要との民主党の基本理念は転換するとの考えでよいのか、総理に見解を伺います。

 与謝野大臣には「民主党が日本経済を破壊する」との御著書がありますが、具体的に民主党政権のどのような政策が日本経済を滅ぼすのか、改めて与謝野大臣の見解を伺います。

 特に与謝野大臣が批判してこられた子ども手当の財源に消費税増税分が充てられるのか否か、総理と与謝野大臣に見解を伺います。

 年金支給年齢引き上げ及び保険料の引き上げに対する発言を与謝野大臣がされておりますが、総理は、政府として否定するおつもりはありませんか。見解を伺います。

 内閣府の平野副大臣は、社会保障の自然増加を当たり前としているが、議論が必要であるとの発言をされています。オバマ大統領は、予算教書について、分相応の生活に切り詰め、将来への投資を促すと述べております。今の日本の社会保障制度は税収に対して分相応なのかどうか、これから示される税制抜本改革は社会保障の維持のためのものなのか、拡充のためのものなのか、総理と与謝野大臣に見解を伺います。

 民主党政権は社民党との修正協議に入られたそうですが、そもそも、予算審議中にこのような話が出ること自体、国会を愚弄しており、提出者たる内閣の覚悟が疑われても仕方ありません。社民党は、それぞれ、予算関連法案を財源とする沖縄関連予算及び法人税率引き下げの撤回を要求しておりますが、総理の見解を伺います。

 六月までにTPP参加について結論を出すとのことですが、これまで何も準備も説明もせずに農業団体の不満と怒りを買った政治主導は、政権の体をなしていない象徴的な出来事であります。

 本来、産業界と農業団体のTPPに対する考えの違いを埋めるならば、まずは来年度予算に農業関係予算措置を入念に整えてから産業界と調整を図るべきであったのではないでしょうか。来年度予算には農業改革に向けたさらなる予算措置もなく、業績好転の大手企業への中途半端な法人税減税が農業改革より先に来ること自体、本末転倒としか言いようがありません。総理に見解を伺います。

 また、財務大臣は、このたびの法人税減税財源は財政運営戦略と整合性のとれた恒久財源となっていないことを早くも認めておられますが、閣議決定、国際約束とは、そんなに軽いものなのでしょうか。財務大臣に見解を伺います。

 ことしは、法人税率引き下げ前にもかかわらず、大手企業業績は好転しております。内需中心の大手企業が競争優位になると、大企業と競合する地方の同業中小零細企業はますます厳しい競争環境に置かれるとの声もあります。一兆円を超える法人税減税に対して、中小企業の軽減税率引き下げ七百億円程度の対応で本当に地方の中小零細企業は守られるのか。さらなる中小零細企業対策が必要と考えますが、財務大臣に見解を伺います。

 成長戦略としての税制改革は、リスクを負って挑戦している企業に対して、さらなる研究開発減税や投資促進減税こそが必要と考えます。今回の税制改正では、成長戦略としてどの産業分野を強化するのか全く政府方針が見えませんが、総理の見解を伺います。

 また、消費税を引き上げるときは国民に信を問うとおっしゃっています。六月に消費税の方針を出し、来年度中に消費税を含む税制抜本改革の法制化をし、その予算関連法案を前提に二十四年度予算をことしの年末に作成することになるはずですが、必然的に、国民に信を問う時期は、ことしの六月から臨時国会前にすべきと考えられます。まさか、二十四年度以降にまた先送りをするおつもりでしょうか。総理の見解を伺います。

 中曽根元総理は、政治家は歴史法廷の被告席に座る、こう述べられております。まさに我々政治家は、その覚悟でいつもいなければならないと思います。菅総理は、小沢氏よりも御自分が歴史という法廷に立たされているのだという自覚を持っていただきたい。

 既に民主党政権は、直近の世論によれば、発足以来最低の支持率。早期解散を求める声は五割を超え、民主党の看板政策である子ども手当、最低保障年金、高速道路無料化は、見直すべき政策のトップスリーと調査結果が出ております。つまりは、歴史にゆだねることもなく、国民は、早く裁きを受けるよう求めているのです。そういう意味で、民主党政権は、マニフェスト違反について数々の客観的証拠を突きつけられているにもかかわらず、いまだに自供しない被告人とも見られているのです。

 総理として自分のやりたいことをするためには、いつの時代も権力が必要です。民主主義における権力とは、国民の支持であります。抱きつく相手は、野党ではなく、寄り添うという意味での国民なのです。菅総理、解散権とは、政権延命の道具ではなく、国民のためのものなのです。国民生活を第一に考えるならば、国民の声にこたえ、早期に解散して信を問うべきであると強く申し上げて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 若干、質問の順番とか一部変更があったようですので、少し行ったり来たりするかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。

 まず、熟議の国会に関連した御質問をいただきました。

 マニフェストは国民との約束でありまして、子ども手当、高校授業料の実質無償化、農業の戸別所得補償など、多くは既に実行、着手しております。引き続き、その実現に向けて努力を行っていくことが基本であります。

 また、マニフェストをも踏まえ、景気・雇用対策、国民生活にとって必要不可欠な予算及び関連法案をこの国会に提出し、御審議をいただいております。まさに、重要政策が出されていないと言いますけれども、この予算と予算関連法案こそが重要政策でありまして、ぜひともこのことをまず御議論いただきたい、このように考えております。

 さらに、予算と並行して、これも国民にとっての最重要課題であります社会保障改革に取り組んでいることは御承知のとおりであり、もはや先送りできない喫緊課題であることは論をまちません。

 したがって、内閣としては、重要政策を先送りしているのではなくて、最も喫緊な課題、すなわち、予算及び関連法案の審議、成立をお願いしておりまして、それに続いて、四月までには社会保障改革のあり方と姿を示す予定といたしております。

 熟議の国会において、これらの課題につきまして順次御審議、御議論をいただき、国民の期待にこたえた成案が得られることをぜひ御協力をお願いいたしたいと思います。

 次に、マニフェストの修正についての御質問をいただきました。

 マニフェストについては、既に申し上げましたように、多くの事項を実施し、また着手をしており、今後も引き続き、実現に全力を挙げてまいります。同時に、その財源についても、税金の無駄遣いを洗い出し、事業仕分けなどを進め、また、予算の振りかえ等によって財源確保を実行しております。

 ただし、総選挙以降の状況の変化や国民の声に対応することも必要と考え、ことし九月で衆議院議員の任期の折り返し点を迎えることから、党として、歳入歳出を含めたマニフェスト全体の検証を行う予定といたしております。マニフェストの見直しに当たっては、基本的な理念、方向性は維持すべきであると考えておりますけれども、検証に基づく歳入歳出の見直しの規模については、当然ながら、今後の党の議論と作業によるものと認識をいたしております。仮に、検証の結果、見直すことが必要となった場合には、その理由を丁寧に国民の皆さんに説明して御理解をいただきたい、このように考えております。

 次に、年金の制度設計についての御質問をいただきました。

 民主党の年金改革案の骨格は、まず第一に、すべての人が同じ年金制度に加入することで透明性、公平性を高め、かつ職業を異動しても未加入などの問題を生じない一元化であります。第二に、所得の一定割合を保険料として納付する所得比例年金を基本とし、現役時代の収入の少ない人には税を財源とする最低保障年金を補足的に給付するということで、すべての高齢者に一定額の年金を保障する形になっております。以上のような制度設計の骨格をマニフェストに記載しているわけでありまして、その方向性は明確だと思います。

 なお、マニフェストについて、具体的な手段と予算額をお示ししている事項もあり、また、政策方針をお示ししている事項もあり、それは各政党とも、それぞれ同様な扱いだと考えております。

 社会保障改革については、今後、政府・与党で早急に議論を進め、年金を含めたあるべき社会保障の姿について国民にお示ししたいと考えております。

 マニフェストの修正についての御質問をいただきました。

 マニフェストは国民との約束であり、既にお答えしたとおり、多くは既に実行、着手しており、また、引き続き、その実現に向けて努力を行っていくことが基本です。

 一方、これもお答えしましたが、総選挙以降の状況の変化や国民の声に対応するため、ことし九月で任期の折り返し点を迎えることから、この検証を行ってまいりたいと考えております。この中で、これからのあり方について国民の皆さんにも御理解をいただけるものと考えております。

 民主党は、政権交代以来、政府・与党一体で政権運営に努めており、マニフェストの検証は党大会でも確認された方針であります。政策調査会を中心として民主党議員全員が議論に参加しますので、御懸念には及びません。

 次に、小沢議員の国会説明、鳩山前総理の処分に関する質問をいただきました。

 小沢議員の強制起訴を受けまして、昨日、党役員会において、小沢議員を、党倫理規則に基づき、判決が確定するまでの間、党員権停止処分とするとの発議を決定したことは御承知のとおりであります。同時に、小沢議員が国会で説明をする必要があるという認識は変わっておりません。その具体的な方法などについては、国会のルールに従い、各党各会派において関係委員会等で議論、決定すべきであると考えております。

 なお、鳩山前総理については、国会で説明を尽くし、裁判も決着しており、何より、総理辞任という重い決断で政治責任をとられたもの、そのように理解をいたしております。

 次に、マニフェストと財政運営戦略の整合性について御質問をいただきました。

 財政健全化については、経済成長、社会保障改革と一体的に実現することが重要と考えており、今後も、財政運営戦略で示した道筋に向けて成長と雇用拡大を実現していくとともに、社会保障と税の一体改革を着実に進めながら目標の達成を目指してまいります。

 マニフェスト主要事項については、恒久財源を確保して実現してきております。四年で実現するのが基本ですが、政権任期の折り返し点の九月ごろまでに、できたこと、できていないことなどを検証し、どうしても実行が難しいものについては、国民の皆さんにその理由等を説明して、理解を得たいと考えております。

 社会保障と税の一体改革の成案等についての御質問をいただきました。

 自由民主党政権下では、公共事業中心の第一の道、市場原理主義に基づく第二の道といった経済政策が行われましたが、結果的に、安定的な経済成長には結びつかず、巨額の財政赤字が積み上がりました。これに対して何度か財政改革の取り組みも行われましたが、リーマン・ショックなどもあり、いまだ、持続可能な社会保障や財政とはなっておりません。

 社会保障改革については、政府・与党も既に取り組みを始めております。昨年末には、一、若者世代への支援を強化し、全世代対応型の社会保障とする、二、子ども・子育て支援を強化し、未来への投資としての社会保障とする、三、サービス給付を重視し、雇用創出効果を高める、四、縦割りを超えた包括的支援を行う、五、安定財源を確保し、次世代に負担を先送りしないの、改革の五原則をまとめました。

 この基本原則に基づき、四月ごろまでに、あるべき社会保障の姿、方向性を明らかにし、六月までには、具体的な制度改革案と、必要財源の安定的確保と財政健全化を同時に達成するための、消費税を含む税制改革の方針を提示したいと考えております。

 次に、子ども手当の財源についての御質問をいただきました。

 子ども手当についても、他のマニフェスト主要施策と同様、既存の予算の縮減等によって恒久的な財源を確保して実施することとしており、消費税を充てることは想定しておりません。

 次に、現在の社会保障制度及び今後の財政改革について御質問をいただきました。

 今回の社会保障改革については、先ほど申し上げた五原則にお示ししたように、若者世代や子ども・子育てへの対応などサービスが不足している施策について、新たなニーズに対応して機能強化を行うとともに、持続可能な社会保障を目指し、その安定的な財源を確保しようとするものであります。

 一般論で言えば、多少の負担をしても安心できる社会をつくっていくことを重視するのか、それとも、負担はできる限り少なくして個人の自己責任に任せるのか、大きく二つの道がありますが、私は、前者の道が望ましいと考えております。

 まずは、あるべき社会保障の姿をしっかり議論し、社会保障制度の安定強化に必要な財源と税制改革を一体的に考えるというスタンスで臨んでいく所存であります。

 次に、予算修正についての質問をいただきました。

 来年度予算は、成長と雇用や国民の生活を重視し、新成長戦略やマニフェスト施策を着実に実行する最善のものとなっていると考えております。政府としては、このような来年度予算と関連法案に速やかに御賛同いただき、成立させていただけるよう、丁寧に説明してまいりたいと思います。

 なお、政党間で予算修正について協議をすることが、特に国会の皆さんに対して失礼なことであるとは私は考えておりません。

 次に、TPPと農業関係予算措置についての御質問をいただきました。

 TPPを含む包括的経済連携に関する我が国の取り組みについては、昨年十一月に包括的経済連携に関する基本方針を策定し、国民に対する説明に努めてきました。今月からは、平成の開国と国民の暮らしとの関係に理解を深めていただくため、国家戦略担当大臣や関係府省の副大臣を全国に派遣し、フォーラムを順次開催していくことといたしております。

 TPP協定については、国民の理解の深まりぐあいや関係国との協議の結果などを総合的に勘案しながら、六月をめどに交渉参加について結論を出します。

 農業予算については、平成二十三年度予算編成において、関係四大臣会合を開催し、農業の競争力強化などに向けた施策内容の充実を図りました。

 具体的には、戸別所得補償制度について、対象の畑作物への拡大、生産性向上のための規模拡大加算の導入などを行うほか、農村に雇用と活力を生み出し、農業を成長産業へと導く六次産業化対策を強化することといたしました。

 現在、私が議長を務める食と農林漁業の再生実現会議において我が国農業の潜在力を引き出す大胆な政策を検討いたしているところであり、六月をめどに基本方針を、十月をめどに行動計画を策定することといたしております。

 なお、法人実効税率の引き下げは、平成二十三年度税制改正において、企業が海外へ移転して雇用が失われることを回避し、国内投資の増加や雇用創出につながる効果を期待して行うこととしたものであり、本末転倒との御指摘は当たらないと考えております。

 次に、成長戦略としての税制改革に関する質問をいただきました。

 二十三年度税制改正においては、法人実効税率の引き下げや中小法人に対する軽減税率の引き下げに加え、雇用を増加させた企業を支援する雇用促進税制、成長分野である環境分野への投資を促進する環境関連投資促進税制、国際的な企業立地競争の中で我が国の魅力を向上させるための総合特区制度、アジア拠点化推進のための税制など、対象を絞った政策税制措置をあわせて講じたところであります。

 政府としては、新成長戦略の実現に向け、三段構えの経済対策を切れ目なく推進しており、そのステップスリーとしての二十三年度予算では、新成長戦略関連施策に重点配分を行ったところであります。直近の十二月の統計では失業率が五%を切るなど、徐々に成果もあらわれてきております。

 また、産業界も呼応し、十年後の設備投資を約百兆円とする目標を掲げているところであり、新成長戦略を着実に実行することにより、我が国経済が本格的な成長軌道に乗ることを期待いたしております。

 次に、消費税の引き上げと、信を問う時期についての御質問をいただきました。

 社会保障改革と税の一体改革は、国民利益のために避けて通れない最重要課題であると認識しております。超党派の議論と国民的合意が必要と考えております。

 そして、かねて申し上げておりますように、社会保障改革に基づき、その財源確保のための税制抜本改革において仮に消費税の引き上げが必要ということになれば、改正する税制を実施する前に民意を問うというこの方針に変わりはありません。

 少し前後しましたが、年金改革の中で、支給開始年齢の引き上げ等についての御質問をいただきました。

 年金改革については、今後の社会保障改革の検討の中で、さまざまな観点からの議論を進めていくこととなります。なお、この年金支給開始年齢の引き上げについては、当面の検討課題とは考えておりません。

 最後に、後藤田議員の方から、解散についていろいろと御指摘がありました。

 しかし、私は、今やらなければいけないのは、せっかく経済が立て直りつつある中でのステップスリーであるこの予算を成立させ、予算関連を成立させて、そして成長軌道に乗せていく、同時に社会保障と税の一体改革をきちんと議論する、さらには経済連携と農業改革をきちんと議論する、そのことこそが、今、国民の皆さんの期待にこたえて国会としても内閣としてもやらなければならないことだと考えており、解散については全く考えておりません。(拍手)

    〔国務大臣野田佳彦君登壇〕

国務大臣(野田佳彦君) 後藤田議員から、二問御質問をいただきました。

 まずは、法人税減税と財政運営戦略に関する御質問でございます。

 法人実効税率については、財源確保は十分なものとは言えないものの、新成長戦略の一環として、デフレ脱却と雇用拡大を最優先して、思い切った引き下げ措置を講ずることとしたところでございます。

 また、予算全体としては、歳出の大枠約七十一兆円、新規国債発行額約四十四兆円という財政規律は堅持をさせていただきました。

 政府としては、財政健全化を、経済成長、社会保障改革と一体的に実現することが重要と考えており、今後も引き続き、新成長戦略と財政運営戦略を一体的に推進し、成長と雇用拡大を実現していくとともに、社会保障と税の一体改革を着実に進めながら、財政運営戦略で示された財政健全化目標、これはまさに国際公約です、その達成を目指していきたいというふうに考えています。

 二つ目は、中小零細企業に対する配慮に関する御質問をいただきました。

 厳しい経済状況の中、中小企業を支えることが重要な政策課題であると認識しております。二十三年度税制改正においては、中小企業に対し、基本税率の引き下げに加え、軽減税率を思い切って一五%まで引き下げること、新たに導入する雇用促進税制の適用要件を緩和すること、欠損金の繰越年限を二年延長する等、十分な配慮を行っています。

 二十三年度予算においては、中小企業の海外展開支援、研究開発支援、資金調達の円滑化に必要な経費等に重点的に予算を配分させていただき、前年度比五十八億円増の千九百六十九億円を確保しています。

 ちなみに、中小企業対策の関連の予算は、昭和五十年代は大体二千億ありましたけれども、昭和六十年代に入って、平成に入って、どんどんどんどん減ってきています。政権交代以後はこの予算は着実にふやしてまいりまして、平成二十三年度の千九百六十九億円というのは、昭和六十三年以降最大の規模であるということを御理解いただきたいと思います。

 これにより、我が国の産業、雇用、暮らしを支える中小企業の活性化が図られるものと考えています。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 後藤田議員にお答え申し上げます。

 財政健全化については、経済活性化や社会保障の持続可能性確保と一体的に実現することが重要であります。社会保障の安定強化のための具体的な改革案とともに、その必要財源を確保するための税制改革について、本年六月までにお示しをすることとしております。

 社会保障と税の一体改革の成案等の内容についてお尋ねがありました。

 六月までにお示しする社会保障の制度改革案と税制改革の方針において、抽象的な案ではなく、可能な限り具体的な内容を明確にしてまいります。

 次に、財政健全化責任法案についてお尋ねがありました。

 自民党が今国会に提出した財政健全化責任法案と、閣議決定しております財政運営戦略とは、財政健全化を進め、財政に対する内外の信認を確保するという問題意識は共通しているものと私は認識をしております。

 主要な内容においても、一つは財政健全化目標の内容、二つ目はペイ・アズ・ユー・ゴー原則の導入、三番目には税制抜本改革の実施と共通をしており、大変立派な責任感のある法案と認識しており、その成立を期待しております。

 次に、財政健全化と財源確保についてのお尋ねがありました。

 財政健全化については、財政運営戦略に掲げられた目標に向けた一歩として、国債発行額の抑制や歳出歳入両面においての取り組みを示した中期財政フレームにのっとった財政運営を行ってまいります。

 無駄削減や事業仕分けについては、事業の必要性や効率性の観点から、不断の見直しとして進めているところでございますけれども、これらの歳出削減に関する取り組みと、社会保障改革、経済活性化の取り組みについては、一体的に取り組んでいく必要がございます。

 民主党政権の政策に関する見解についてお尋ねがありました。

 民主党政権発足時の状況では、マクロ経済財政に関し具体的な道筋が見えず、これに危機感を覚え、お尋ねの著書を執筆いたしました。

 その民主党政権においても、昨年六月に財政運営戦略や新成長戦略が作成され、菅総理は、正面から日本の将来のために改革に取り組もうとされております。

 次に、子ども手当についてでございますが、消費税の問題とは切り離して考えるのが基本であると認識しております。

 次に、現在の社会保障制度、今後の財政改革についてお尋ねがありました。

 今回の社会保障改革においては、まずは、あるべき社会保障の姿をしっかりと議論した上で、社会保障制度の安定強化に必要な財源と税制改革を一体的に検討してまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 竹内譲君。

    〔竹内譲君登壇〕

竹内譲君 公明党の竹内譲でございます。

 私は、公明党を代表して、平成二十三年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案外一案について質問をいたします。(拍手)

 初めに、平成二十三年度予算案の問題点について、三点指摘しておきたい。

 まず第一に、成長戦略の実行に向けた予算の重点配分が中途半端であり、デフレ脱却や景気回復の展望が全く見えてこないことであります。

 二点目は、本予算案は、マニフェストに固執する余り、安易な国債増発や埋蔵金、個人増税に頼り、結果として、財政健全化に向けた道筋をより不透明にしてしまったことです。

 そして三点目は、本予算案によって、マニフェストの破綻がさらに明白になったことです。特に、二年目に達成、進捗すべき子ども手当、高速道路無料化、暫定税率廃止などは、恒久的な財源手当ても不明確なままで、到底、期限内の達成は不可能であります。

 いわゆる特例公債法案について質問いたします。

 本法案の最大の問題点は、平成二十三年度予算案における税収見積もりよりも国債発行予定額の方が多いという点であり、これは、昨年度に引き続き、二年連続の異常事態となっています。そもそも新規国債四十四兆三千億円は、麻生内閣における景気対策などを含めた補正予算後の規模であり、それをそのまま踏襲することがおかしい。

 もちろん、中期財政フレームの枠内であるとの回答は予想されますが、しかし、やはり、国債発行が税収の範囲を超えることを二年続けて容認することはできません。その意味で、中期財政フレーム自体に甘さがあるのではないでしょうか。まず、この点についてお答えください。

 また、恐らく、デフレ脱却のためには歳出を圧縮するのは妥当ではないとの反論も予想されます。しかしながら、総理は、一昨年の十一月十七日の本会議における私の質問に対して、財政出動の大きさによって景気対策をはかるのは間違っている、もっと知恵を使えば、財政に頼らないでも大きな需要を生む分野はあるはずだと答えています。とするならば、今回の予算案は知恵を使っていないということになりますが、総理、いかがですか。

 内閣府の経済財政の中長期試算によれば、二〇一五年度における国、地方の公債等残高は一千兆円を超えます。また、国、地方の基礎的財政収支についても、財政運営戦略の目標値の達成が困難であることは明白です。このようなことも大きな要因として、スタンダード・アンド・プアーズが日本の長期国債の格付を引き下げたことは御承知のとおりであります。

 実は、私は昨年二月十六日の本会議におきまして、同社が日本国債の格付の見通し、いわゆるアウトルックを引き下げたことを取り上げ、これは、民主党政権では財政再建がおくれるとの見方に基づいており、財政の膨張やデフレを食いとめる対策がとられなければ格下げになる可能性がある、これらは明らかに、政権交代した民主党の財政運営に世界が警鐘を鳴らし始めたというべきと指摘しておりました。そして、不幸にも、そのことが実現してしまったのであります。菅総理はこのような世界情勢に疎かったということでしょうか。総理の認識をお伺いします。

 さて、政府の中期財政フレームは、三年間だけの取り組みであり、四年目、五年目の取り組みは何ら担保されていません。財政運営戦略における二〇一五年の国、地方の基礎的財政収支赤字の対GDP比半減に向けた歳出歳入の改革はどのようになるのか、具体的施策をお示しください。

 総予算についても膨張しています。

 民主党は、二〇〇九年のマニフェストでは、当時の国の総予算二百七兆円の全面的な組み替えや無駄の削減などで、二〇一三年度までに十六兆八千億円の財源を生み出すとしていました。それが来年度予算案では二百二十兆円を超えており、二年連続で増加しています。

 政府は、特別会計については中期財政フレームでも数値目標は掲げておらず、歳出のたがが緩んでいるのではないでしょうか。どうして特別会計を含めた総予算について中期財政フレームをつくらなかったのですか。お答えください。

 次に、このたびの税制改正は、まさに司令塔なき経済無策内閣を象徴するかのように、税制の抜本改革の明確な理念や全体像もないままに、場当たり的で、単なる財源あさりに終始する内容となりました。

 例えば法人減税は、二〇〇九年の民主党のマニフェストの中でも強調されていたとは言えません。結局、税率は、国、地方合わせて実効税率を五%引き下げることになりましたが、議論の過程では、専ら税率引き下げに伴う減収分の代替財源をどうするかに終始し、税率、減税規模の決定は迷走を重ねました。

 これらの経緯を見るにつけ、菅内閣が、成長戦略を含めた経済政策に関する基本的理念や戦略性を全く持ち合わせていないことが改めて明白になったと言わざるを得ません。

 菅総理は、第一の道、すなわち、公共事業中心の経済政策は失敗し、第二の道、すなわち、行き過ぎた市場原理主義に基づき、供給サイドに偏った生産性重視の経済政策も誤っていたと述べています。そして、第三の道、すなわち、経済社会が抱える課題の解決を新たな需要や雇用創出のきっかけとし、それを成長につなげようとする政策を進めるとしています。

 しかしながら、法人減税というのは、総理が失敗したと言うその第二の道ではありませんか。なぜ総理はその第二の道に戻るのですか。しかも、今回の法人減税は極めて不十分との声も聞かれます。租税特別措置の見直しなどによって代替財源を確保したことから、実質的な減税は二・三%程度という試算もあります。総理は、経済界から言われて仕方なく減税したのですか。

 また、代替財源の一部として、特別償却の廃止縮減や減価償却の見直し、研究開発税制の縮小などが決定されましたが、これらはむしろ企業の海外流出を加速するおそれがあり、逆効果であります。特に研究開発税制の縮小は、先端的な産業や技術の創出を阻害することになりませんか。これらの点につき、お答えください。

 総理は、今後、子ども手当や農業の戸別所得補償、高速道路無料化など民主党のマニフェストを検証し、場合によっては見直しもあり得ると述べています。

 しかし、本来、総理のなすべきことは、むしろこれらの第三の道の政策を貫徹し、やり抜くことではありませんか。それが政権交代の目的であり、国民との約束であったはずです。もしもそれができないというのであれば、潔く民主党のマニフェストを撤回、謝罪し、多くの企業経営者が希望するように、例えば法人税を韓国並みに引き下げるなど、第二の道に戻ることも検討すべきではありませんか。総理、いかがですか。

 結局、第二の道とも第三の道とも区別のつかないどっちつかずの政策判断によって、歳出が膨張し財政が悪化するだけで、国内での投資や雇用の増加は期待できず、デフレ対策にも余り効果のない予算になってしまったのであります。

 限られた財源の中では選択と集中が求められています。これらの点につき、総理の認識をお伺いします。

 さて、このたびの改正では、子ども手当の財源に充当するとしていた配偶者控除の見直しは先送りされました。子ども手当の最も主要な財源をなぜ確保しなかったのですか。総理は、統一地方選挙を前に、主婦の反発を恐れて見送ったのですか。

 平成二十二年度改正で当分の間税率とされたいわゆるガソリン税等の暫定税率も、廃止どころか維持されたままですが、これはいつまで当分の間税率とするおつもりですか。総理の今後の方針と見通しについてお示しください。

 他方で、このたび、地球温暖化対策税を導入され、平年度ベースで約二千四百億円もの税金を徴収することになりました。環境税は、本来、暫定税率の問題や日本の経済競争力、さらには他の環境施策とあわせて、トータルで議論すべきであります。

 これによって、二酸化炭素の抑制効果はどの程度と試算されていますか。

 さらに、地球温暖化対策税をどのように活用していくかも重要です。その意味では、持続的経済発展のためのグリーンイノベーションにつながるように財源を活用すべきであると考えます。

 これらの点について菅総理の明快な答弁を求めて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 竹内議員の御質問にお答えを申し上げます。

 平成二十三年度予算案とデフレ脱却についての御質問をまずいただきました。

 私は、雇用の創造こそが、国民に安心と生きがいを与えるとともに、消費をふやし、内需をふやす契機であり、デフレ脱却と景気回復のかぎである、このように考えております。こうした考え方のもと、新成長戦略の実現に向け、三段構えの経済対策を切れ目なく推進してまいりました。

 そのステップスリーとして、平成二十三年度予算案について、成長と雇用、デフレの脱却、そして国民の生活が第一をテーマに、選択と集中を図ったものです。具体的には、元気な日本復活特別枠を活用し新成長戦略関連施策に重点的配分をするとともに、税制面でも、法人実効税率の引き下げや雇用促進税制の創設を行ったものであります。

 また、昨年十一月には、デフレ脱却・成長促進型の総合的な国内投資促進策を取りまとめたところであり、産業界も呼応し、十年後の設備投資を約百兆円とするという目標が示されたところでもあります。

 これらにより、雇用の空洞化を防ぎ、我が国経済を本格的な成長軌道に乗せることを目指しております。

 こうした道筋により、医療、介護、子育て、環境など需要の見込める分野で雇用を創造し、成長と雇用に重点を置くということで、こういったところに知恵を使ってまいったところであります。

 次に、日本国債の格下げに対する認識についてお尋ねをいただきました。

 昨年春のギリシャの財政危機の当時、私、財務大臣を務めており、世界情勢を把握した上で、財政健全化や国債の信認の重要性を実感いたしました。財務大臣時代には、財政運営戦略も責任者として策定をいたしました。

 大切なのは、財政規律を維持し、我が国財政に対する市場の信認を確保すること。財政運営戦略に基づき、そのことを着実に進めてまいりたい、このように考えております。

 法人税減税の趣旨等に関する御質問をいただきました。

 平成二十三年度税制改正においては、企業が海外へ移転して雇用が失われてしまうことを回避し、国内投資の増加や雇用創出につながる効果を期待して、法人実効税率の思い切った引き下げを行うことといたしたものです。

 これは、行き過ぎた市場原理主義に基づく第二の道とは異なり、雇用を拡大するという意味で第三の道、すなわち、経済社会が抱える課題の解決を新たな需要や雇用創出のきっかけとし、それを成長につなげていこうとする政策の一環だ、このように理解をいたしております。

 いずれにせよ、法人実効税率の引き下げは、日本経済をデフレから脱却し、雇用と国内投資を拡大する観点から、私自身の判断として最終的に決断したものであります。

 次に、第三の道と予算案について御質問をいただきました。

 私が提唱した第三の道とは、これまでのような公共事業や供給サイドに力点を置いた考え方、これはいつも間違っていたというのではなくて、これが的確な時代もあったけれども、今日においてはこれらの政策が日本の成長にはつながらないという意味で、私は、第一の道、第二の道ではなく、今は第三の道をとるべきだということを申し上げてまいりました。課題解決を新たな需要、雇用創出のきっかけとして、それを成長につなげていくことを目指す考え方であります。

 第一の道とか第二の道に戻ることは、今日の時点、日本経済にとってプラスではない。第三の道を進めて、雇用をキーワードとして経済の立て直しを実現してまいりたいと思っております。

 そのため、新成長戦略に基づき、医療、介護、子育て、環境などの需要の見込める分野で雇用を創造し、成長と雇用に重点を置いた国づくりを強力に進めてまいります。

 例えば介護分野については、潜在的な需要がありながら、供給がないために需要が顕在化していません。そこで雇用を生み出すことが、失業率を低下させ、収入を生み、消費につながっていく、こうした考え方に基づいて雇用を創造すれば、所得がふえ、消費がふえ、経済が活性してまいります。

 このような新成長戦略の着実な実施もあって、現在、我が国の景気は、足踏み状態にあるものの一部持ち直しに向けた動きが見られるようになっております。また、昨年十二月の失業率は四・九%と十カ月ぶりに五%を下回るなど、次第に効果が上がってきていると考えております。

 平成二十三年度予算については、この第三の道による戦略を裏づけるため、成長と雇用、デフレ脱却、そして国民の生活が第一をテーマに、選択と集中を図りました。具体的には、元気な日本復活特別枠を活用し新成長戦略関連施策に重点配分するとともに、税制面でも、法人実効税率の引き下げや雇用促進税制の創設を行うことといたしているところであります。

 次に、配偶者控除の見直しについての御質問をいただきました。

 配偶者控除については、働き方の選択に対してできる限り中立的で公正なものとなるように制度を見直しすべきなど、見直しに積極的な意見がある一方で、夫婦が生活の基本的単位である点を重視する考え方も一方であることなどから、その見直しに慎重な意見もあります。

 このため、平成二十三年度税制改正大綱では、配偶者控除をめぐるさまざまな議論、課税単位の議論、社会経済状況の変化等を踏まえながら、引き続き検討を続けていくことといたしているところであります。

 次に、ガソリン税等の暫定税率についての御質問をいただきました。

 ガソリン税等の暫定税率については、二十二年度税制改正において、これまでの十年間の暫定税率を廃止する一方、厳しい財政事情や地球温暖化防止の観点などを勘案し、当分の間、その税率水準を維持することといたしました。

 平成二十三年度税制改正においては、この当分の間の税率について、地球温暖化対策のための税の導入にあわせて検討し、引き続き、国及び地方の厳しい財政事情や地球温暖化対策の観点を踏まえ、これを維持することといたしたところであります。

 次に、地球温暖化対策のための税の効果と財源の活用についての御質問をいただきました。

 地球温暖化対策のためのCO2排出削減は、御指摘のとおり、地球温暖化対策のための税のみならず、揮発油税等の他のエネルギー関係諸税や、規制、金融、さらには税収を活用したグリーンイノベーションの促進など、さまざまな政策手段によって実現していくものであると認識をいたしております。

 税による直接効果を算出することは困難でありますけれども、そうしたさまざまな政策手段を講じていくことにより、二〇三〇年に、一九九〇年比三〇%程度のエネルギー起源CO2排出量の削減を見込んでいるところであります。

 残余の質問は、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) まず、中期財政フレームについてお尋ねがございました。

 税収を超える財源が国債発行によって調達されているような現在の状況をこのまま放置しておくことは、竹内議員が強く懸念されるように、将来、長期金利の上昇や債務残高比率の発散を生じ、日本に対する国際的な信認も失われることとなりかねません。

 今後につきましては、本年半ばに、平成二十四年度から二十六年度までを対象とする新しい中期財政フレームを定め、財政健全化目標に向けた取り組みをさらに一歩進めることとしております。

 財政運営戦略目標達成に向けた施策についてお尋ねがありました。

 財政健全化目標の達成のためには、相当程度の追加的な収支改善を行う必要があります。また、財政健全化については、経済活性化や社会保障の持続可能性確保と一体的に実現することが重要であります。

 財政運営戦略に定めた取り組みを着実に実施し、また、社会保障の安定強化のための具体的な改革案とともに、その必要財源を確保するための税制改革について、本年六月までにお示しをすることとしております。

 中期財政フレームと特別会計との関係についてお尋ねがございました。

 財政運営戦略に示された財政健全化目標では基礎的財政収支の赤字縮減が掲げられておりますけれども、これは、一般会計と特別会計を両方含むものでございます。

 次に、法人減税の代替財源としての投資増税の影響についてのお尋ねがありました。

 平成二十三年度税制改正においては、国内企業の国際競争力強化と外資系企業の立地を促進し、雇用と国内投資を拡大する観点から、課税ベースの拡大とあわせて法人実効税率の引き下げを行うこととしたところでございます。

 したがって、御懸念のような企業の海外流出を加速するものではないと考えております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表して、公債特例法案、所得税法等改正案について質問します。(拍手)

 一年前のこの本会議で、私は、発足間もない民主党政権にこのように聞きました。それまでの政策を抜本的に切りかえることができるか、国民に増税を押しつけ、大企業、大資産家に減税を行ってきた政策を転換できるかと。そのとき、鳩山総理は、家計を直接支援する、そして、国民の暮らし、生活が第一という政治を実現してまいりたいと答えたのであります。

 ところが、その後の事態は、この言明を裏切るものとなりました。税制についての基本姿勢、今回提案された公債特例法案、所得税法等改正案を見ると、全く逆の方向が打ち出されていると言わなければなりません。

 まず、消費税についての姿勢であります。

 これまで政府は、四年間は上げないと何度も答弁をしてまいりました。だからこそ、一昨年十一月、当時の藤井裕久財務大臣は、消費税増税法案を二〇一一年度までに成立させることを義務づけた所得税法附則百四条については、修正するのが筋だと思いますと答えていたのであります。

 藤井さんの次に財務大臣になったのが菅総理でありました。菅総理は、一年前、「附則百四条は前の政権のもとでの条文であり、今の鳩山政権の方針とは明らかに矛盾をいたしております。確かに、撤回、削除ということも考える可能性も私はあり得るかと思います」と答えていました。ところが、今はどうでしょう。附則百四条を守るという立場に百八十度転換したのであります。これをどう説明するんでしょうか。

 民主党は、もし上げる場合は国政選挙で国民の審判を受けると言っていました。それなのに、二年たったら消費税増税法案を国会で通してしまうというのは、明確な公約違反であり、国民に対する裏切り行為ではありませんか。

 柳沢伯夫元厚労大臣は、今、菅内閣の社会保障・税一体改革集中検討会議のメンバーになっております。柳沢氏は、新聞のインタビューでこう言いました。今の経済状態で試算し直せば、消費税率を一五%近くに上げなければつじつまが合わないと。与謝野大臣も同じ考えでしょうか。

 与謝野大臣は、自民党にいたとき、こう言いました。一%ずつ上げて選挙に負けていたらしようがない、選挙で負けるんだったらどおんと上げなくてはいけないと。今も、この姿勢に変わりはありませんか。

 菅内閣は、庶民に大増税を押しつける方針を固めながら、今回提出した法案で法人実効税率を五%下げるとしております。しかし、二百四十四兆円もの莫大な内部留保を抱え、手元資金がだぶついている大企業にこれ以上法人税を減税しても、内部留保がますます積み上がるだけではありませんか。

 一九九八年に、OECDは、各国間で激しくなった法人税引き下げ競争に警鐘を鳴らしました。にもかかわらず、ギリシャを初め多くの国々は引き下げ競争に走りました。それが一因となって、今、深刻な財政悪化に苦しんでおります。

 峰崎前財務副大臣は、昨年、G20の財務大臣・中央銀行総裁会議で、法人税率の引き下げ競争に歯どめをかける必要があると訴えました。総理は、法人税率引き下げ競争について、どのような認識をお持ちでしょうか。税引き下げ競争をとめるための国際的協調こそ必要なのではありませんか。

 政府は、法人実効税率を引き下げたら九万人の雇用拡大につながると説明しています。果たしてそうなるのでしょうか。その前提は、もしも企業が減税分を国内投資に回したなら、もしも海外移転を控え国内投資に転換したならというものであり、投資がふえれば雇用の増加が期待できるという程度のものであります。根拠が余りにも脆弱ではありませんか。現に日本経団連会長は、雇用について、約束できないと言っております。経済産業省のアンケート調査でも、投資先を決める最大の理由に税制を挙げたものはありません。

 大企業の収益がリーマン・ショック以前に回復したと言われているのに、新卒者の採用を大幅に絞っております。今、三月卒業の多くの学生が、就職の当てもなく、不安な日々を過ごしております。まず、その解決が必要であり、また、労働法制の抜本改革が必要なのであります。

 家計を温め、国内市場を拡大してこそ、企業は設備投資をするのではありませんか。答弁を求めます。

 次に、証券優遇税制の再延長についてです。

 政府税調では、二〇一一年十二月末で、一〇%の軽減税率を本則の二〇%に戻すと合意していたはずであります。なぜ土壇場で延長することにしたのでしょうか。一体、それはだれの要望でしょうか。

 民主党は、現在の所得税について、所得再分配機能や財源調達機能が低下していると言い、昨年の税制改正大綱でも、累進構造を回復させる改革を行って所得再分配機能を取り戻す必要があると書きました。

 高額所得者の所得税負担率が年収一億円を境目に低下していくのは、証券優遇税制が大きな原因であります。累進構造を回復させると言うなら、この大資産家優遇税制をことしで終わらせるべきではありませんか。

 最後に、納税者権利憲章についてです。

 一九六二年に制定されて以来、半世紀ぶりに国税通則法の改正が提案され、納税者権利憲章を法制化しようとしております。日本共産党は、一九九二年に納税者憲章(草案)を発表して以来、その制定に力を尽くしてまいりました。

 税務署の職員が、任意の調査にもかかわらず、突然納税者を訪問して家の中に押し入り、たんすをあけたり、ハンドバッグをのぞくというような人権侵害事件は後を絶っておりません。こうした強権的な徴税を苦に、納税者が自殺する事件まで起こっております。

 納税者権利憲章は、このような税務行政に歯どめをかけ、民主的な税務行政に転換するものでなければなりません。政府の案で、これまでの人権侵害事件は本当になくなるのか、答弁を求めます。

 国税通則法も改正されますが、その内容は、納税者の権利拡大というよりも、納税者の義務が強調されております。

 任意の税務調査についての事前通知は原則義務化としながら、例外規定を設けております。また、税務職員が、根拠なく修正申告を強要したり、帳簿書類や病院のカルテまで不当に持ち帰るなどの行為をかえって正当化するものとなっております。納税者の権利を制定するのが目的なのに、なぜ義務の強化を書き込むのでしょうか。

 権利侵害事件をなくすために納税者権利憲章を制定するというのであれば、納税者の権利をきちんと書き込むものにすべきではありませんか。

 以上で質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 佐々木議員にお答え申し上げます。

 まず、附則百四条についての御質問です。

 附則百四条の規定は、平成二十三年度、つまりは二十四年の三月末までに、年金、医療、介護、子育てなど社会保障に必要な費用の増大を踏まえ、消費税を含む税制抜本改革法案を提出することを政府に義務づけているものであります。政府としては法律を尊重する義務を、一般的には、法律でありますから負っており、この規定を踏まえて、しかるべく対応してまいりたいと考えております。

 社会保障と税の一体改革については、内閣発足以来の重要課題として取り組み、本年の六月までに成案を得ることといたしております。この道筋については、今申し上げましたように、ことしの四月に社会保障の姿を、六月には税を含めたものを出しますので、その後の与野党協議が、ぜひ進んでほしいと思いますが、そういうものが進んだ中ではこの百四条に沿った形の対応が可能になる、このように認識をいたしております。

 次に、消費税引き上げ時期と公約の関係についての御質問をいただきました。

 さきの総選挙で民主党が国民にお約束をしたことは、今回の総選挙の任期中に消費税の引き上げは行わないということであり、この方針は現在でも維持をされております。大きな税制改正を実施する前には国民の信を問う、このことは繰り返し申し上げているところであります。

 また、今後速やかに、社会保障のあるべき姿と、これを実現するための安定的な財源の確保策の検討を進めることにしておりますが、消費税を含む税制改革に関する結論については、今後の議論次第であり、現段階で確定的なことを申し上げることはできません。

 なお、社会保障改革と税の一体改革については、超党派の議論の積み重ねに基づき、国民合意が得られる成案を得ることを目指しており、公約違反とか国民に対する裏切りという御指摘は当たらない、このように認識をしております。

 法人実効税率の引き下げの効果に関する質問をいただきました。

 法人実効税率の引き下げについては、企業が海外へ移転して雇用が失われることを回避し、国内投資の増加や雇用創出につながる効果を期待しております。

 産業界は、国内投資促進策が講じられた場合には、十年後には約百兆円の設備投資を目指すなどの考え方を示しており、国内投資や雇用の拡大に積極的に取り組んでいただけるもの、このように考えております。

 法人税率の引き下げ競争についての御質問です。

 グローバル化が進展する中で、国際的な観点から税制のあり方を考えることが重要となってきているということはそのとおりでありますが、各国の税制を比較する際には、単に税率水準だけでなく、課税ベース、税以外の公的負担、税を取り巻く社会経済状況なども考慮する必要があると考えております。

 今回の法人実効税率の引き下げは、企業の海外移転により国内の雇用が失われることを防ぐものであり、我が国の経済社会状況を踏まえた適切な措置と考えております。

 いずれにしても、各国の租税政策については、それぞれの国がみずから決定することが原則ではありますけれども、グローバル化が急速に進展する中で、税制面においても国際的な協力が重要となっており、峰崎さんの意見の御紹介もありましたけれども、そういった意見も十分念頭に置きながら国際的な協力ということも考えてまいりたい、このように思っております。

 次に、法人実効税率の引き下げの効果に関する御質問をいただきました。

 法人実効税率の引き下げにより、企業が海外へ移転して雇用が失われることを回避し、国内投資の増加や雇用創出につながる効果を期待しております。

 例えば、今般の法人課税の見直しについては、一定の前提のもとで行った試算では、国内投資による実質GDP成長率の押し上げ効果が〇・二%程度、その需要増加に対応する雇用創出効果が九万人程度と見込まれております。また、産業界は、政府が国内投資促進策を講ずる場合は、十年後に約百兆円の設備投資を目指すという行動目標を明らかにいたしております。

 このような投資や雇用の増加により、所得が増加し、消費の増加につながり、経済の好循環がもたらされることを期待しているところであります。

 次に、経済産業省のアンケート調査や、新卒者の就職難についての御質問をいただきました。

 新卒者の就職状況は非常に厳しく、特に大学生については過去最低の内定状況にあります。こうした状況を踏まえ、新卒者雇用・特命チームで対策を練り、現在、全力で支援を進めております。

 これまで、ジョブサポーターを二千名に倍増するなどの取り組みを行い、一月までに約二万五千人の就職が決定したところであります。さらに、特命チームによる取り組みとして、二月一日以降、卒業前の未内定学生に対する追加募集についても企業に奨励金を出す特例措置を始めたところであります。また、私から企業に対し、未内定学生を積極的に採用するよう、いろいろな機会を通じてメッセージを出しているところであります。

 今回の法人実効税率の引き下げにより、産業界においては雇用の拡大に積極的に取り組んでいただけるよう、これからも働きかけを強めてまいりたいと考えております。

 なお、御指摘の経済産業省のアンケートによると、企業の海外展開の主な理由となっております事業コストという項目がありますけれども、この事業コストの中には税負担が入っており、税制が企業行動に影響を与えていると理解をいたしております。

 今後とも、一人でも多くの方が卒業までに就職できるよう総力を挙げて支援してまいりたい、このように考えております。

 次に、家計による国内市場拡大についての御質問をいただきました。

 家計を充実していくためには、雇用の安定確保を図ることが必要であります。雇用がふえれば消費がふえ、それが国内需要を生み、国内市場を拡大していくという好循環を生み出します。こうした取り組みに加えて、新成長戦略の工程表を一つ一つ仕上げていくことが、企業行動を促進することになります。また、法人実効税率五%引き下げも、企業の雇用や投資促進に効果があると考えたものです。

 このように、家計、企業両面への取り組みにより日本経済を成長軌道に乗せていきたい、こう考えております。

 証券優遇税制についての御質問をいただきました。

 いわゆる証券優遇税制については、金融庁の延長要望を受け、税制調査会において議論が行われました。この結果、公平性や金融商品間の中立性の観点からは二〇%本則税率とすべきであるが、景気回復に万全を期すため、二年延長して、二〇一四年、平成二十六年一月から二〇%本則税率とすることといたしました。この本則税率化については、経済金融情勢が急変しない限り、確実に実施していくことといたしております。

 次に、納税者権利憲章について御質問をいただきました。

 平成二十三年度税制改正において、納税者の権利保護の観点を十分に踏まえつつ、適正公平な課税の維持にも配慮して、納税者権利憲章の策定と税務調査手続の見直し等を行うことといたしております。

 納税者権利憲章については、諸外国の例も踏まえ、納税者の権利保護のみならず、課税の適正化の観点にも配慮して、一覧性のある形で、わかりやすく策定することといたしております。

 税務調査手続については、納税者の権利保護と適正公平な課税との適切なバランスを図りつつ、手続の透明化と納税者の予見可能性の向上を図ることといたしております。

 税務当局においては、従来から、法令の規定に基づき適切な対応を行ってきていると承知しておりますが、今般の憲章の策定を踏まえ、納税者からより一層信頼される税務行政に向け、取り組んでまいりたいと思っております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 佐々木先生からは、まず、消費税の税率についてのお尋ねがございました。

 柳沢氏は大変立派な方でございますけれども、柳沢氏と私は、常に同様な考え方をしているわけではございません。

 次に、私の自民党時代の発言についてお尋ねがございました。

 税をお願いする場合は、一つは、経済との関係、消費者マインド、痛税感、担税力、徴税実務上の問題などなど、すべてを考慮して仕組みを考えるべきと思っております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 中島隆利君。

    〔中島隆利君登壇〕

中島隆利君 社会民主党の中島隆利です。

 社会民主党・市民連合を代表し、ただいま議題となりました国税二法案に対し、菅総理にお伺いします。(拍手)

 最初に、公債発行特例法案について質問します。

 来年度当初予算は、過去最大の九十二・四兆円、公債発行額は昨年と同規模の約四十四兆円で、公債依存度は四八%になります。

 政府の財政運営戦略では、歳出の大枠は七十一兆円以下、新規国債発行額を四十四兆円以内に抑えるとしてきましたが、そもそもこの枠は、どのような基準、考えで設けられたのでしょうか。歳出を決めて赤字公債の額を決めるやり方は、公債発行の限度をなくし、強い財政とは相入れないものではないでしょうか。今後の国債管理政策の見通しについて答弁をお願いします。

 来年度予算案では国債利払い費として約十兆円を計上していますが、長期金利が一%上昇すれば、利払い費は一・五兆円増加すると聞き及んでいます。現在、日銀が銀行券ルールに抵触する勢いで国債を買い支えていますが、国債の長期金利上昇による利払い増加のリスクをどのようにお考えなのでしょうか。

 また、デフレ脱却による景気の回復を展望した場合、長期金利の上昇を招く可能性は否定できないと考えます。このとき、さらなる財政負担増に対し、どのように対応するおつもりか、お聞かせください。

 次に、所得税法の改正案についてお伺いします。

 今回の改正は、給与所得控除の上限設定や相続税の控除縮小などを進めているものの、抜本的な格差是正に立つのであれば、所得の再配分機能を最も発揮しやすい所得税制で、最高税率の引き上げや税率の適用範囲の見直しを行うべきと考えますが、今後の見通しをお聞かせください。

 成年は基本的に独立して生計を立てる存在であるべきとの観点から、成年扶養控除の縮減廃止が盛り込まれています。成年扶養控除の増収分を三歳児までの子ども手当の上積み分に充てるとされていますが、子ども手当の支給と無関係の層からの増税は、財政あさりの指摘を受けても仕方がないのではないですか。

 また、成年扶養控除の廃止縮小の根拠として、独立して生計を立てるべきとか、働くことが前提と言われています。しかし、そもそも、働きたくても働けない方々が扶養されてきたのではないでしょうか。ニートあるいは引きこもりの事案には、医者はおろか外部との接触も困難な中、社会参加に向けて懸命に向き合う家族もあります。このような方々に一方的に新たな税負担を求めるのではなく、実態に即した対応を検討すべきではないでしょうか。

 さて、控除の廃止縮小は、税負担だけでなく、国民健康保険料の負担増にも波及しかねません。控除廃止縮小に伴う社会保険料負担増など、家計に及ぼす影響についてどう対応するおつもりか、答弁をお願いします。

 次に、法人税の実効税率五%引き下げについてお聞きいたします。

 私の地元熊本県で、かつて、農家を営み、破産して離農された方から、地方経済は大変厳しく、農家や中小零細企業の困窮は極限状態だ、なのに、なぜ大企業には法人減税で、なぜ庶民には消費税引き上げなのかと、悲痛な訴えを受けました。

 日銀の資金循環統計によれば、企業の保有する現金、預金の総額は、過去最高、二百五兆円を上回っています。もちろん、中小企業はこの限りではないでしょうが、金余りの中、大企業に五%減税をしても、金余りを助長するだけではないでしょうか。そうではなくて、企業内にある現預金を投資や雇用あるいは働く者への配分に回すよう強く促すことこそ求められているのではないでしょうか。総理のお考えをお聞かせください。

 また、法人税率の引き下げは地方の税収も低下させます。法人税率引き下げに伴う地方財政の悪化に対し、どのような手だてを講じるのか、明確にすることを求めます。

 地球温暖化対策税制についてお伺いいたします。

 来年度導入予定の地球温暖化対策のための税は、現行の石油石炭税に税率を上乗せした、課税の特例にすぎません。昨年の環境省案と比べても、規模で、初年度三百五十億円程度と、大変小さくなりました。これでどの程度のCO2削減が期待できるのでしょうか。

 今後の制度設計については、税率は価格効果のあるものとし、揮発油税などの旧暫定税率分は現行水準を維持もしくは引き上げて環境税化する、税収、使途は、一般財源として温暖化対策以外の、福祉や中小企業の社会保険料負担の軽減などにも使う、自治体への税収の配分など地球温暖化対策に自治体が果たす役割を適正に反映する、これを柱とした環境税の創設こそ必要と考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 税制改正大綱に盛り込まれた納税者権利憲章に関連してお聞きいたします。

 納税者権利憲章の策定については、その視点は、従来必ずしも重要視されてこなかった納税者の権利保護を専ら確認するものであると理解してよろしいでしょうか。

 また、納税者権利憲章とあわせて制度化させる予定の税務調査の手続規定において、調査に係る物件の提示もしくは提出、あるいは事前通知の例外など、ともすれば課税権力の強化につながりかねない条文も散見されます。これらの点について見直す考えはあるのかどうか、お聞かせください。

 最後に、社会保障と税制の一体改革についてお伺いいたします。

 生活の安心、将来の安心を提供することは政治の大きな役割であり、その観点から、今後の社会保障のあり方、公平公正な税負担のあり方を議論することを否定するものではありません。

 ただし、将来の社会保障の姿を具体的に国民に示すことこそが先決で、その後に、企業の適正な負担のあり方、所得税や資産課税のあり方を含めた税制全般の改革で国民合意を得る努力をすべきです。なぜ低所得者層に負担の重い消費税率引き上げなのでしょうか、総理のお考えをお聞かせください。

 税収や社会保険料を安定的に確保していくためには、何よりもまず、雇用と所得の安定が必要です。正規労働者が減少し、低賃金で不安定な非正規雇用が、就業者全体の三四%、千七百万人を上回る現実、民間労働者の賃金が二十年以上も前の一九八九年の水準にまで低下している現実を考えたとき、消費税率引き上げありきではなく、雇用と所得の安定こそ前提とすべきであります。総理、いかがでしょうか。

 雇用が不安定化し、所得水準が低下し続ける中での消費税率引き上げは、三党連立合意に反し、景気に与える影響を含め、社会全体を一層不安定にするものと強く警鐘を鳴らし、私の質問とさせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 中島議員にお答え申し上げます。

 財政運営戦略における歳出の大枠と新規国債発行額について御質問いただきました。

 財政運営戦略では、二〇一五年度までに、国、地方の基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランスの赤字の対GDP比を半減し、二〇二〇年度までに黒字化するなどの目標を定めております。こうした財政健全化目標を達成するため、中期財政フレームを策定し、二十三年度予算から二十五年度予算までの歳入歳出両面にわたる取り組みを定めております。

 この中で、今後三年間の歳出の大枠約七十一兆円を定めて、これを上回らないものといたし、また、国債発行額については、二十三年度予算において二十二年度の水準である約四十四兆円を上回らないものとし、二十四年度予算以降についても、財政健全化目標の達成に向けて着実に縮減することを目指し、歳入歳出両面における最大限の努力を行う旨定めているところであります。このような道筋に沿って財政健全化を進めてまいりたいと考えております。

 国債費が増大するリスクに関する質問をいただきました。

 我が国の財政は、国及び地方の長期債務残高が二十三年度末で約八百九十二兆円と見込まれるなど、主要先進国の中で最悪の状況にあり、御指摘のとおり、金利の上昇が利払い費の大幅増をもたらす構造になっております。このため、財政運営戦略で定めた財政規律を堅持し、財政健全化を着実に進めていくことで市場の信認を確保していく必要があります。

 政府としては、財政健全化を経済成長、社会保障改革と一体的に実現することが重要だと考えており、今後も、財政運営戦略で示した財政健全化への道筋に向けて成長と雇用拡大を実現していくとともに、社会保障と税の一体改革を着実に進めながら目標の達成を目指してまいりたいと考えております。

 次に、所得税の税率についての御質問をいただきました。

 所得税については、累次の改正により累進緩和や各種控除の拡充が行われ、所得再分配機能や財源調達機能が大きく低下しております。このため、雇用形態や就業構造の変化も踏まえながら、所得再分配機能等を回復するための改革を進める必要があります。

 こうした観点から、二十三年度改正においては、給与所得控除の上限設定や成年扶養控除の見直し等を行うことといたしました。

 今後、最高税率や、税率の適用範囲も含めた税率構造のあり方について、今般の控除の改正による税負担の変化も踏まえながら、さらに検討してまいりたいと考えます。

 成年扶養控除の見直しについての御質問をいただきました。

 成年扶養控除については、本来、成年が基本的に独立して生計を立てるべき存在であることなどを踏まえ、その対象を見直すことにいたしました。

 その際、障害者、要介護認定者その他心身の状態等により就労が困難な方、高齢者などについては控除を存続することといたしており、また、所得制限についても平均的な所得を上回る水準に設定するなど、広範な方について負担増にならないよう配慮しているところであります。

 成年扶養控除の見直しに伴う配慮についての御質問をいただきました。

 成年扶養控除の対象から外れる方の状況はさまざまであると考えられますが、税制上、一律に対応するよりも、むしろ自立支援や就労支援等の施策によりきめ細かく対応することが望ましいと考えております。

 政府としては、ニート等の職業的自立支援の観点から、地域若者サポートステーション事業を拡充し、就労支援の観点から求職者支援制度を創設するなど、きめ細かく対応しているところであります。

 また、今般の控除の見直しでは社会保障制度への影響は限定的であると考えておりますが、今後、さらに影響の精査を進め、必要に応じて対応を検討してまいりたいと考えております。

 次に、法人実効税率引き下げと地方税収の影響に関する質問をいただきました。

 法人実効税率の引き下げについては、企業が海外へ移転して雇用が失われることを回避し、国内投資の増加や雇用創出につながる効果を期待しており、経済界に対しては、私からも、国内投資や雇用の拡大につなげていただくことを要請いたしているところであります。

 経済界は、国内投資促進策が講じられた場合には、十年後には約百兆円の設備投資を目指す等の考え方を示しており、国内投資や雇用の拡大に積極的に取り組んでいただけるものと考えております。

 なお、法人税率の引き下げにより法人住民税が減収となる一方で、課税ベースの拡大により法人事業税は増収となるため、地方法人二税全体では減収は生じないところと承知をいたしております。

 次に、地球温暖化対策のための税の効果と制度設計についての御質問をいただきました。

 地球温暖化対策のためのCO2排出削減は、地球温暖化対策のための税のみならず、揮発油税等の他のエネルギー関係諸税や、規制、金融など、さまざまな政策手段によって実現していくものであります。

 税による直接的な効果を算出することは困難でありますが、そうしたさまざまな政策手段を講じていくことにより、二〇三〇年に、一九九〇年比三〇%程度のエネルギー起源のCO2排出量の削減を見込んでいるところであります。

 地球温暖化対策については、こうした施策の効果を検証しつつ、引き続き政府として検討してまいります。

 次に、納税者権利憲章及び税務調査の規定についての質問をいただきました。

 納税者権利憲章は、納税者の権利保護の観点から、納税者が受けられるサービスや求めることができる内容をお示しするとともに、課税の適正化の観点をも踏まえ、納税者に気をつけていただきたい事項などについて、一連の税務手続に沿って、一覧性のある形で、わかりやすく簡潔にお示しすることといたしております。

 また、税務調査については、今般、手続の透明性や予見可能性を高める観点から、原則として税務当局が事前通知を行うことを法制化することとしています。

 他方、適正公平な課税を維持する観点から、事前通知を行わない例外事由を法定化するとともに、あわせて、物件の提示、提出を求めることができることを明確化するなど、納税者の権利保護と適正公平な課税とのバランスを図った見直し案となっております。

 社会保障と税一体改革の進め方についての御質問をいただきました。

 社会保障と税の一体改革を進めていくに当たっては、議論の順序が重要であり、消費税の税率引き上げありきではありません。御指摘のように、まず、あるべき社会保障の姿をしっかり議論し、社会保障制度の安定強化に必要な財源と税制改革を一体的に考えるというスタンスで取り組んでいく所存であります。

 雇用と所得の安定についての御質問をいただきました。

 御指摘のように、税収や社会保障の財源を安定的に確保していくには、日本経済を本格的な成長軌道に乗せ、雇用と需要の創出が必要であります。雇用の拡大により失業率が低下すれば、賃金、すなわち所得の上昇圧力となります。それにより消費が刺激され、需要が回復すれば、さらに雇用が創出されるという好循環が生まれてまいります。

 政府としては、新成長戦略の実行により新たな雇用と需要を創造していくとともに、求職者支援制度や雇用促進税制の創設など、雇用をつなぐ、つくる、守るというこの三点からしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

 直近の統計では失業率が四・九%と十カ月ぶりに五%を下回るなど、少しずつ成果も出てきており、引き続き強力に取り組んでまいります。

 以上、御質問にお答えをいたしました。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

    〔議長退席、副議長着席〕

     ――――◇―――――

 国務大臣の発言(平成二十三年度地方財政計画について)並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

副議長(衛藤征士郎君) この際、平成二十三年度地方財政計画についての発言並びに内閣提出、地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。総務大臣片山善博君。

    〔国務大臣片山善博君登壇〕

国務大臣(片山善博君) 平成二十三年度地方財政計画の概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨について御説明を申し上げます。

 まず、平成二十三年度地方財政計画の概要について御説明を申し上げます。

 本計画の策定に際しては、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、国の取り組みと基調を合わせつつ、経費全般について徹底した節減合理化に努める一方、社会保障関係費の増加を適切に反映するとともに、地域の活性化、雇用、子育て施策等に取り組むために必要な経費を増額計上しております。その上で、財政運営戦略に基づき、交付団体初め地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、平成二十二年度の水準を下回らないよう確保することを基本としております。

 あわせて、地方財政の健全化を図る観点から、交付税特別会計借入金について、償還計画を新たに作成した上で、着実な償還を行うこととしております。

 引き続き生じます財源不足については、適切な補てん措置を講じることとし、地方財政の運営に支障が生じないようにしております。

 以上の方針のもとに、平成二十三年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出総額の規模は、八十二兆五千五十四億円となり、前年度に比べ三千七百八十六億円の増となっております。

 次に、地方税法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 最近における社会経済情勢等にかんがみ、個人住民税における扶養控除の見直し、寄附金税額控除の対象の見直し及び適用下限額の引き下げ、更正の請求期間の延長等の納税環境の整備並びに個人住民税等の脱税犯に係る懲役刑の上限の引き上げ等の罰則の見直しを行うとともに、税負担軽減措置等の整理合理化等を行うこととしております。

 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 平成二十三年度分の地方交付税の総額について、十七兆三千七百三十四億円を確保するとともに、単位費用の改定を行うほか、普通交付税と特別交付税との割合を改める等の改正を行うこととしております。

 次に、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 本法律案は、本年三月三十一日に期限切れを迎えることとなっております国の財政上の特別措置について、十年間の延長等を行おうとするものであります。

 以上が、平成二十三年度地方財政計画の概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 国務大臣の発言(平成二十三年度地方財政計画について)並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

副議長(衛藤征士郎君) ただいまの地方財政計画についての発言及び三法律案の趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。皆吉稲生君。

    〔皆吉稲生君登壇〕

皆吉稲生君 民主党・無所属クラブの皆吉稲生でございます。

 私は、ただいま議題となりました地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 質問に入る前に、私の地元でございます霧島山系新燃岳の噴火、さらには、東北、北陸など豪雪によって亡くなられた方々、被害を受けられた皆様に、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 また、全国の皆様から新燃岳噴火に伴う被害に対し多くの御支援やお励ましをいただいておりますことに、地元を代表して感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。

 同じく、私の地元の出水市を初め全国で広がりを見せております鳥インフルエンザへの対応も含めて、今現在、政府として全力で対策を講じていただいておりますが、地域の実情に即した、きめ細かな対策、支援を改めてお願いいたします。

 さて、全国の地方自治体は、極端な財政硬直化が進み、厳しい財政状況の中にあります。

 自公政権が続けてきた旧来型の画一的な公共事業型の景気対策は、いたずらに後年度負担を増額させ、地方財政をいまだに苦しめております。また、自公政権が行った見せかけの三位一体改革は、補助金を削減し、地方交付税を三年間という短期間に五・一兆円も削減し、地方は急激に疲弊をいたしました。

 その後、世界的な不況の影響もあり、地方の景気はさらに冷え込んでおります。地方の景気を疲弊させ、格差を拡大し、地方財政を危機的な状況に追い込んだ自公政権の後遺症は、いまだにいえておりません。

 民主党は、元気な地方を復活させるため、改革の一丁目一番地に地域主権改革を掲げ、政権交代をさせていただきました。民主党は、地域のことは地域が決める地域主権改革によって、全国津々浦々の地域がそれぞれ創意工夫を発揮できてこそ、地方の、そして全国の立て直しが可能だと考えております。

 地域主権改革のためには、地方が自由に使える財源をふやさなければなりません。

 そこで、まず、片山総務大臣にお伺いをいたします。

 総務大臣は、旧自治省、鳥取県知事、大学教授と、さまざまなお立場で地方行財政とかかわってこられました。地域主権改革を進める上で、ひもつき補助金ではなく、地方が自由に使える財源を増額することで、地方の行政、住民の生活がどのように改善するのか、御経験を踏まえて御説明ください。

 民主党政権となって初の予算でありました平成二十二年度予算では、危機的な地方財政を支えるために、地方が自由に使える財源である地方交付税を出口ベースで一・一兆円増額いたしました。一兆円以上の増額は十一年ぶりでございます。さらに、平成二十三年度予算案でも、約〇・五兆円増額し、十七・四兆円確保することといたしております。

 厳しい財政状況でも地方の自主財源を増額するというのは、民主党が地域主権改革を着実に進めている証左でございます。

 そこで、総務大臣にお答え願います。

 国の財政状況も大変厳しい中で、地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源を確保するため、政府はどのような方針を持っておられるのか、御説明をお願いいたします。

 民主党は、マニフェストでお約束したひもつき補助金の一括交付金化を平成二十三年度からスタートさせます。これも、地方が自由に使い方を決定できる仕組みづくりで、大きな一歩でございます。

 昨年十月、各府省が最初に一括交付金にしてよいと回答した補助金額は、投資的補助金額三・三兆円のうち、わずか二十八億円であったとお伺いをしました。しかし、菅総理は、霞が関の抵抗を政治主導で抑えて、平成二十三年度の予算案で五千百二十億円の一括交付金を創設いたしました。これにより、各都道府県は、対象となる事業の中から、各府省の枠にとらわれることなく、自由に事業を選択することができるようになります。まさに画期的なこの仕組みは、官僚に頼りっ放しの自公政権ではなし得なかったことではないのでしょうか。

 そこで、菅総理にお伺いをいたします。

 平成二十四年度は、市町村分も含めて合計一兆円強の一括交付金化をするとのことでございますが、今後もさまざまな抵抗に屈せず実現していく決意をお聞かせください。

 次に、民主党が目指す新しい公共確立のための税制について質問いたします。

 少子高齢化が進む中、住民が安心して暮らせる社会を実現するには、教育、子育て、まちづくり、防犯や防災、医療、介護、福祉などの分野で、住民による公益活動が不可欠でございます。NPOは、こうした公益活動を直接行うだけでなく、個人や企業の公益活動を支援するなど、幅広い役割を担っています。

 そこで、総務大臣にお尋ねします。

 本地方税法改正案で、認定NPO法人以外のNPO法人への寄附であっても、地方団体が条例において個別に指定することにより、個人住民税の寄附金税額控除の対象とすることができるとしていますが、この改正の意義をお答えください。

 最後に、一言申し上げます。

 私たち国会議員の責務は、政府の予算案、関係法等について、熟議を尽くした上で、一日も早く成立を図り、国民の生活を立て直すことに邁進すべきと考えています。

 これらの重要な法案が成立しなかった場合、私の地元の鹿児島県で、四月交付予定の地方交付税が、約二百五十億円の減額となり、全国で一兆五千億円の減額となります。四月は、地方自治体は、大変財政の厳しい時期です。一時借り入れでしのいでいる自治体も数多くあるわけでございます。そして、このことは、景気回復や雇用対策に大きな影を落とし、国民生活に重大な影響を与えることは必至でございます。

 野党の皆さん、いやしくも予算案や地方財政の安定的な運営を期するための本法案を政争の具としてもてあそぶことなく、真摯に対応されますように求めまして、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 皆吉稲生議員にお答えを申し上げます。

 一括交付金についての御質問をいただきました。

 この一括交付金については、皆吉議員からもお話がありましたように、当初は、投資的経費約三兆余りの中で、二十八億円しか各省庁から出てきませんでした。そこで、片山大臣ともいろいろと相談をして、私の方から、かなり強く、一体だれがその現場の責任ある役所のメンバーなのだ、そういうことを言ってきている人がいたら私にもその名前を教えてくれ、このように申し上げた中で、それぞれの大臣が大変頑張っていただきまして、五千百二十億円という形になりました。

 中には、まだ継続事業が多いものですから、去年と余り変わらないんじゃないかと言われますけれども、継続事業はだんだん減ってまいりますので、非常に大きな意味を持っている。実は、地域主権戦略会議には何人かの現職の県知事さんも来られておりますけれども、その中でも大変大きな評価をいただいているところであります。

 そして、来年度は、市町村分を含めて合計一兆円規模で実施することになっておりまして、これは、不退転の決意でその方向で進めていきたい。各省庁の枠にとらわれず自由に事業を選択できるということで、大きな意味があると思っているところであります。

 引き続き、私が議長を務める今申し上げた地域主権戦略会議を中心に、政治主導で進めてまいりますので、皆さん方にもぜひ御指導をいただきたいと思います。

 以上、答弁といたします。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣片山善博君登壇〕

国務大臣(片山善博君) 皆吉議員から、私に三点のお尋ねがありました。

 まず、地方が自由に使える財源の増額につきましては、先ほど総理の方から一括交付金の趣旨などについて答弁があったとおりであります。

 地方が自由に使える財源を充実しますことは、地方自治体がこれまで以上に住民に向き合って、その納得を得ながら行政サービスを提供することにつながりますので、地方の行政運営の効率化に資するものであるとともに、福祉、介護、医療を初めさまざまの地域ニーズに即した対応がなされることにより、住民生活の向上が図られるものと考えております。

 次に、地方一般財源の確保の方針についてのお尋ねでありました。

 地域主権改革に沿った財源の充実を図るため、地域主権戦略大綱に従い、地方の安定的な財政運営に必要となる地方税財源を充実確保してまいりたいと考えております。

 その際は、住民自治の観点から、地方自治体がみずから納税者に向き合い、その納得を得ながら財政運営を行うことを旨とし、地方税、地方交付税等の制度全般にわたり、地方自治体の自主性、自立性を高める観点からの見直しに取り組むとともに、当面は、財政運営戦略に基づき、平成二十五年度までの間、一般財源総額を、平成二十二年度の水準を下回らないよう適切に確保してまいる方針でございます。

 最後に、個人住民税の寄附金税額控除についてのお尋ねでありました。

 個人住民税の控除の対象は、これまで、所得税の控除の対象の範囲内に限ってきたところでありますけれども、今回、所得税の控除の対象となっていないNPO法人への寄附金であっても、地方団体が条例において個別に指定したものについては控除の対象としようとするものであります。これによりまして、地域において活動するNPO法人を支援することを通じて、新しい公共によって支え合う社会の実現に取り組もうとするものであります。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 坂本哲志君。

    〔坂本哲志君登壇〕

坂本哲志君 自由民主党の坂本哲志です。

 自由民主党・無所属会派を代表して質問いたします。(拍手)

 地方税法の一部改正案、また地方交付税法の一部改正案など地方税関連法案に対して質問をいたします。

 質問に入ります前に。

 先週の木曜日、菅総理は、小沢一郎元民主党代表と会談されました。小沢元代表が政治資金規正法違反で強制起訴されたことを受け、総理は小沢氏に自発的な離党を求めましたが、小沢元代表は拒否したと報道にありました。この光景を、国民は、子供たちは、また諸外国はどう感じたでありましょうか。

 日本国の最高責任者である総理大臣が、民主党の元代表とはいえ、一兵卒になった政治家に対し、強制起訴という厳しい事態になったことを受け、離党を求めたことに対し、一兵卒が事もなげにこれをはねつけて、そして総理は引き下がってくる。

 国民は、菅総理の、使命感の希薄さ、相手を説得するに足りる人としての重厚さ、度量の欠如を改めて認識したでありましょう。子供たちは、総理大臣とはその程度のものかと純粋に政治の軽さを感じ、刑事被告人に対する政治家の考え方に不信感と失望感を持ったでありましょう。そして、諸外国は、日本という国の統治能力のなさを見てとり、今後日本にはどんな揺さぶりも可能であると侮ったでありましょう。民主党という政党が、いかに政治と金に対して鈍感な体質の政党であるか、国を担う責任感にいかに欠けているかを物語るものであります。

 そのような政権が提出しました、今回の法案についてであります。

 まず、平成二十三年度地方交付税であります。

 地方団体に交付される出口ベースの総額は、十七兆三千七百三十四億円、平成二十二年度と比べ、四千七百九十九億円、二・八%の増とあります。しかし、この増額には、さまざまなからくりがあり、結局、地方への配慮が全くない、無味乾燥で、官僚主導の配分テクニックに沿ったものでしかないと断言せざるを得ません。

 今回の地方交付税を見るとき、昨年の補正予算の地方交付税とセットで見なくてはなりません。

 昨年、二十二年度の補正予算における地方交付税の財源は、前年度、平成二十一年度の決算剰余金、いわゆる税の上振れとして生じた五千七百五十八億円がありました。また、その時点で、平成二十二年度、今年度の増収も七千三百六十八億円が見込まれておりました。つまり、昨年の時点で地方団体が当然もらえる権利を持つお金は一兆三千億円余りあったのです。ちなみに、この剰余金、上振れ分は、リーマン・ショックの後、自民党が打った適切な経済対策の結果として出てきたものであります。

 私たちは、その全額を交付税に回すことを考えましたが、とりあえず二十一年度上振れ分の五千七百五十八億円全額を地方交付税に盛り込むべきと訴えました。しかし、政府が平成二十二年度の地方交付税として配付したのは三千億円にとどまり、残り一兆百二十六億円は来年度回しとなりました。

 民主党は、交付税を四千七百九十九億円増額したと吹聴していますが、この一兆百二十六億円がなければ、逆に五千億円以上のマイナスであります。それにもかかわらず、四千七百九十九億円ふえたと吹聴するのは、民主党お得意のごまかしでしかありません。

 また、地方の財源不足の補てんは、国と地方が一対一で負担する、いわゆる折半ルールがあります。平成二十三年度に約一兆円を繰り越したことで、折半ルールの対象額が減り、国の負担が軽減される結果となりました。そして、国の負担が軽くなった分だけ、地方にしわ寄せが生じているのです。国の財政事情によって地方固有の財源である地方交付税の配分額が左右されることは、あってはならないことであります。

 政府が本当に地方経済の実態を把握し、地方への思いを寄せるなら、地域活性化や雇用創出のためのさらなる予算措置をとるべきであります。

 自民党は、選挙公約において、総額二兆円に上る地域交付金の実施を主張しております。

 菅総理は、地方の苦しい実態をわかっておられるのでしょうか。なぜ、もっと地方経済を重視した、別枠や特例費を盛り込んだ交付税にしなかったのですか。総理にお伺いをいたします。

 また、以上の点を踏まえて、今回の地方交付税総額の増額、事実上は減額でありますが、その見解を、地方の味方であるはずの片山総務大臣にお尋ねいたします。

 一方で、地方が自由に使えるお金として鳴り物入りで宣伝している地域自主戦略交付金、いわゆる一括交付金は、さらにひどく、政策と言える代物ではありません。

 菅総理は、各省庁から最初に出てきたお金は二十八億円、その後私の一言で五千百億円にしたと自慢げに言われますが、その九割は継続事業というひもつき、残り一割も、この時期になっても都道府県への配分基準は決まっておりません。

 各都道府県は、現在、来年度の一般会計予算案を発表していますが、そのどこにも、地域自主戦略交付金や一括交付金の文言は出てきません。予算も、もちろん計上されていません。配分が決まったら、六月か九月の補正で配分額の一割分を組むのみですと地方は言うだけであります。自治体の方は、迷惑がっているか無視しているかのどちらかであります。大山鳴動して、ネズミ一匹出てきませんでした。

 それと対照的に、政府の方は、内閣府に一たん予算を集め、そしてまた配分するという、屋上屋を重ねる法律案を提出し、無駄の典型を今行おうとしております。まさに、民主党政権の政策形成能力がいかに未熟であるかを物語っています。

 私の地元である熊本県の幹部は、本物の一括交付金であれば、それはそれにこしたことはないが、今回はひもつきと変わらない、それより、国の政策誘導をどうするかということを考えると、一定の補助金は大切なことであると言います。

 片山総務大臣が知事を務められた鳥取県でも、現職の知事が、一括交付金の導入がやや目くらまし的に使われている、政府は高らかに一括交付金の意義を言っているが、社会資本整備費は全体で減った格好になっていて、そこまでの内容があるのかは疑問が残るとの見解を示しています。

 そこで、片山大臣にお伺いをします。

 地域自主戦略交付金とは、名前は、いかめしくもっともらしいものの、財政調整機能を持ったものではありません。かといって、特例交付金のように、経済活性化に寄与する目的を持った交付金でもありません。

 第一に、一体、この地域自主戦略交付金の自治体に対する目的は何ですか。その根拠を明らかにしてください。

 第二に、今のままの制度設計であるならば、子ども手当と同様の、自治体へのばらまきと言った方が当てはまるのではないですか。それなら、地方交付税の枠を広げた方が自治体にとっては好ましいのではないでしょうか。

 第三に、もしあなたが辛口の批判をする知事や学者だったら、今もって配分基準も定まらないこの未整備な政策をどう評価しますか。率直にお答えください。

 地方税法等の一部を改正する法案についてお伺いいたします。

 改正の一つ、成年扶養控除の廃止は、二十三歳から六十九歳までの成年を扶養する者のうち、原則として、年間給与収入の五百六十八万円以下を除いて控除を廃止するものであります。

 現在は、超就職氷河期と言われるほど厳しい就職条件にあります。大学卒業者も、二年、三年就職浪人を強いられるのはざらであります。今の時期、親の扶養に頼らざるを得ない子供は相当な数に上ります。さらに、早期退職を迫られた父親、パートが見つからない母親、一方で、高齢者の仲間入りをした父母を扶養しなければならない子供も増加をしています。

 それでも、家族のきずなを保ち、親が子を、子が親を扶養するという、家族の協力体制で乗り切ろうとしているのです。その数、四百七十万人です。そのうち、今回の廃止で百十万人以上が大幅増税を強いられるのです。

 菅総理は、一に雇用、二に雇用、三に雇用と言っていたではありませんか。なぜ、もっと雇用対策の充実によって、独立して生計を立てようとする人をふやさないのですか。最小不幸社会などと言いながら、成年扶養控除の廃止という増税は、不幸な家族をますますふやすだけではありませんか。

 家庭内の成年や六十代の高齢者を厄介者扱いしてあぶり出し、それこそ、扶養、被扶養という家族のきずなを断ち切り、不必要な不要者扱いにし、日本の家族の結束や麗しさを打ち壊すだけではありませんか。

 これも、子ども手当というばらまき行政の財源探しにほかなりません。旧国鉄の資産売却に財源を求め、相続税を引き上げ、さらに成年扶養控除を廃止するというなりふり構わぬやり方は、本末転倒と言う以外にありません。それは、税や財政の体系を壊し、国家そのものを破綻に導くものでしかありません。

 菅総理にお伺いします。

 このような財源あさりは、これまで組み上げられてきた税の体系を壊してしまうものと思われませんか。なぜ、安易に成年扶養控除の廃止という手法をとられるのですか。それにより、家族のきずながまた一つ失われると思いませんか。あなたは税と社会保障の一体改革と言っていますが、今回の地方税法の一部改正は、税の体系を壊し、一方で、家族という社会保障の土台をも崩し、引き離してしまうものだと思われませんか。お答えください。

 さて、二月八日の衆議院予算委員会において、与謝野大臣は、消費税率を引き上げた場合の地方への配分について、今のところ、地方にという考え方はだれもおっしゃらないと、地方財源の拡充を否定されました。

 与謝野大臣は麻生内閣においても経済財政政策担当大臣を務めていますが、このとき策定されました平成二十一年度税制改正法附則百四条及び中期プログラムには、「地方消費税の充実を検討するとともに、地方法人課税の在り方を見直すことにより、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系の構築を進める」と明記されています。与謝野大臣が地方消費税の充実を否定するのは、この検討を踏まえたものなのでしょうか。仮にそうであるならば、検討の場において地方自治体の意見を聴取したのでしょうか。

 そのほか、地方軽視とも受け取れる与謝野大臣の一連の発言に対して、九日、全国知事会の会長である麻生福岡県知事が、記者会見を開いて懸念を表明しました。地方の怒りのあらわれであります。

 しかし、与謝野大臣は、十日の閣議後の記者会見でも同様の発言をされました。地方の財源拡充は不必要なんでしょうか、それとも、この論議の中に地方を巻き込むための挑発的な発言なのでしょうか。与謝野大臣の説明を求めます。

 加えて、ここまで地方に冷たい発言をされるなら、地方を大切にする自民党の公認で獲得したバッジを返してください。国を憂うあなたならば、たとえ民主党政権程度の中にあっても、幕末の志士が脱藩して目的を果たそうとしたように、バッジがなくとも、私たちが敬愛してきた与謝野馨であるなら、そのモチベーションは保てるはずであります。一言つけ加えさせていただきます。

 そして、菅総理には、もっと地方と向き合ってほしい。あなたは地方に冷た過ぎます。突然のTPP参加を初め、どこを向いて政治をしようとしているのですか。地方の財源についても同様の考え方ですか。見解を求めます。

 このままの政権が続けば、日米、日中、そして日ロなど、外交の行き詰まりはもとより、我が国が地方から音を立てて崩れていくことは必定であります。来るべき統一地方選挙で菅政権にノーを突きつけ、一刻も早く政権を交代し、国の姿を正常に戻すことが日本を救う唯一の道であることを国民の皆様方に強く訴え、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 坂本哲志議員にお答えを申し上げます。

 まず、答弁に際して、坂本議員の方から私と小沢議員の対応について御意見をいただきましたので、一言申し上げておきます。

 昨日、民主党の役員会において、小沢議員を党倫理規則に基づき、判決が確定するまでの間、党員権停止処分とするとの発議を決定いたしました。民主党としての一つのけじめでありまして、坂本議員にいろいろと言われることではない、このように考えております。

 次に、地方交付税の別枠や特例費についての御質問をいただきました。

 地方の実態については、私自身、全国各地を訪れ、さまざまな地方の現場の実情をこれまでも伺ってきたところであります。このような地方の声も踏まえ、平成二十三年度の地方財政計画は、地域活性化、雇用、子育て施策等に取り組むために必要な経費を増額計上いたしました。

 これにあわせて、平成二十二年度限りとされた交付税の別枠加算を合計一・三兆円確保すること等により、交付税総額を〇・五兆円増額確保するなど、一般財源総額を適切に確保し、地方に最大限配慮をいたしたところであります。

 なお、平成二十二年度途中の交付税の増収分については、巨額の財源不足が継続している状況にかんがみ、検討の結果、従来からの取り扱いを踏まえ、基本的には翌年度に繰り越すこととしたものであり、国の負担が一方的に軽減されたとの御指摘は当たらないと考えております。

 次に、成年扶養控除の見直しについてお答え申し上げます。

 成年扶養控除については、本来、成年者が基本的に独立して生計を立てるべき存在であることなどを踏まえ、その対象を見直すことといたしました。

 その際、障害者、要介護認定者その他心身の状態等により就労が困難な方、高齢者などについては、控除を存続することといたしております。また、所得制限についても平均的な所得を上回る水準に設定しているなど、広範な方について負担増にならないよう配慮しているところであり、子ども手当のための財源あさりではありません。

 次に、個人住民税の成年扶養控除見直しについての御質問をいただきました。

 個人住民税の成年扶養控除については、所得税において成年扶養控除が見直されることに伴い、税体系上の整合性や地方財源を充実する必要性、地方団体からの要望等を踏まえ、所得税と同様、見直すことといたしました。

 心身の状態により就労が困難な扶養親族や高齢者については引き続き控除対象とするなど、個別の事情にも配慮した見直し内容となっており、御指摘は当たらないと考えております。

 次に、消費税の地方配分についての御質問をいただきました。

 消費税のあり方については、まず、あるべき社会保障の姿をしっかり議論し、その上で、社会保障改革の全体像と、財源としての消費税を含む税制抜本改革を考えていきたいと思っております。

 国、地方間の税財源の配分のあり方についても、社会保障における国と地方の役割分担を踏まえつつ、この検討の中で議論していくこととなります。その際、社会保障において重要な役割を果たしている地方団体の意見も十分伺いながら進めてまいります。

 また、TPPについても、今月から国家戦略担当大臣や関係府省の副大臣を地方に派遣し、フォーラムを順次開催していくことを予定いたしております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣片山善博君登壇〕

国務大臣(片山善博君) 坂本議員から、私には二点のお尋ねがありました。

 最初、地方交付税の総額についてでありまして、これは、先ほど総理から概略の答弁があったとおりであります。

 年度途中の交付税総額の補正に際しましては、従来より、増収の場合は翌年度への繰り越し、減収の場合は国の特例加算による補てんで対処するとともに、いずれの場合にも、巨額の財源不足が継続している状況にかんがみまして、翌年度以降、国と地方が折半することを基本としてまいりました。

 今回の措置も、従来からの対処を踏まえたものでありまして、仮に、平成二十二年度に増収分の全額を地方団体に配分したとした場合、平成二十三年度の交付税総額については、今回の別枠の加算を含む特例措置とは異なるものとなったことも考えられるところであります。

 今回の交付税の措置につきましては、かつて地方交付税が突如大幅に削減されたときのことを思い起こすまでもなく、地方団体に最大限配慮したものであり、御指摘のような御批判は当たらないものと考えております。

 次に、一括交付金についてのお尋ねが三点ございました。

 地域自主戦略交付金の目的は、地域のことは地域が決めるとの基本的な考え方に立ちまして、地方の自由度の拡大を図るためのものであります。

 今回、内閣府に一括して予算を計上し、対象となる事業において、各府省の枠にとらわれずに地方が自由に事業を選択して使えることとしており、これにより地域の実情に即した事業を実施することができるようになるところにその意義があるものでありまして、御指摘のような、ばらまきとは無縁のものであると考えております。

 地方の立場から見ましても、事業選択の決定権限が今回の場合には都道府県にゆだねられるものでありますので、その趣旨や意味をよく御理解していただいた知事でありますれば、これを有意義な政策であると受けとめていただけるはずであります。

 いずれにいたしましても、新しい制度でありまして、地方の御意見も聞きながら慎重に検討を進めているところでありますが、これを、今後、年々進化させていきたいと考えているところであります。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) お答えする前に、先ほどの共産党の佐々木議員の御質問に、補足させていただきます。

 私が申し上げたのは、消費税をお願いするときは、一つの方法だけではなく種々の組み合わせがあるということでありまして、断定的にどの方法がよいと、現段階では考えておりません。税の議論については、各方面からの御意見に謙虚に耳を傾けながら進めていかなければならないと考えております。

 次に、坂本議員の御質問にお答え申し上げます。

 地方自治体の意見は極めて重要と認識しておりますが、現在は、あるべき社会保障の姿の議論を始めたところであり、この段階で地方財政の観点の議論をすることは、国民にわかりやすい議論をもたらさないと考えております。あるべき社会保障の姿をしっかり議論し、その上で、社会保障における国と地方の役割分担を踏まえた税財源の配分のあり方を検討してまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 西博義君。

    〔西博義君登壇〕

西博義君 公明党の西博義でございます。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました平成二十三年度地方財政計画、地方交付税法等の一部を改正する法律案、地方税法等の一部を改正する法律案、公害の防止に関する事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に関して質問いたします。(拍手)

 まず初めに、地方の歳入改革に関する基本的な考え方について質問いたします。

 地域主権戦略大綱には、「地域に必要なサービスを確実に提供できるよう、地方財政の所要の財源を確保することで、住民生活の安心と安全を守るとともに地方経済を支え、地域の活力を回復させていく」という基本理念が書かれております。これは、歳入改革の基本理念というより、目的について述べたものです。歳入改革についてどのような方向性を目指そうとしているのか、大綱には示されておりません。

 私は、地方歳入改革については、自立性、安定性、予見性を高めることが重要であると考えますが、総理のお考えを伺いたい。

 次に、地方財政の健全化について質問いたします。

 昨年六月閣議決定した財政運営戦略では、三十二年度までに国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化達成を目標としています。交付税特別会計借入金償還を繰り延べし、最終償還年度を、三十八年から六十二年度に延長しています。二十三年から二十五年度までは一千億円ずつ償還し、二十六年度以降は一千億円ずつ増額して償還、三十三年度以降は、三十年間、毎年一兆円を償還するとしております。

 さて、今年度の地方交付税は、年度途中の補正等で一兆三千百二十六億円の増額がありました。このように、年度途中で地方交付税の増額が見込める場合など、例えば、二十三年度で一千億円となっている償還額を少し増額して繰り上げ償還する、すなわち、住宅ローンの繰り上げ返済のような規定を法案に入れることは検討しなかったのか、伺いたい。

 前国会での地方交付税法一部改正案の質疑の際に、年度途中の地方交付税の増額については、臨時財政対策債を縮減に充てるという新しいルールを定めることを提案しました。臨時財政対策債の縮減、そして繰り上げ償還など、借金返済を優先するルールの法制化についてお考えを伺いたい。法制化して、財政健全化に取り組む毅然とした政府の態度を示してはいかがでしょうか。総理の決意を伺いたいと思います。

 子ども手当について質問します。

 子ども手当については、二十三年度においても地方負担が残ったままです。昨年十二月二十一日、地方六団体は、共同で、全国一律の現金給付は国が全額負担すべきであり、地方負担の継続は遺憾とする声明を発表しました。神奈川県や群馬県など多くの地方自治体から、地方負担を拒否する声明や訴訟の検討などが示されております。

 財政運営戦略では、「国は、地方財政の自主的かつ安定的な運営に配慮し、その自律性を損ない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない」と自己規定していますが、地方負担はこれに反しています。地方の声に真摯に耳を傾けるべきではないでしょうか。総理から明確な答弁を伺いたい。

 地域主権改革の工程表に関して質問いたします。

 地域主権戦略大綱では、直轄事業負担金廃止の時期が示されていませんが、廃止の目標はいつなのか、明確にされたい。

 また、地域主権改革の工程表には、直轄事業負担金の廃止だけではなく、地方税財源の充実確保、地方自治法の抜本見直しなど、重要事項に関して明示されておりません。早急に改訂版を作成すべきであると思いますが、いかがでしょうか。

 一括交付金について質問いたします。

 ひもつき補助金を段階的に廃止し、地域の裁量を拡大するとして、地域自主戦略交付金が創設されます。方向性は評価できますが、当面は、継続事業にほとんどが充てられることになります。また、依然として、国のチェックがあり、地方にとって自由裁量の拡大は限定的です。本当に地方の自由度を増すために、権限もあわせて移譲することを考えていないのかどうか、伺いたい。

 地方消費税について質問します。

 さきの予算委員会で、我が党の坂口副代表が、消費税の引き上げに関して、地方への配分はどうなるかと質問しました。しかし、消費税の地方への配分に関しては、答弁があいまいとなっております。

 昨年六月に閣議決定された地域主権戦略大綱では、既に「地方消費税の充実」と明記されております。この閣議決定を変更されたのか、もう一度、消費税の地方への配分について、総理から政府の考えを明確に示していただきたい。

 課税自主権について質問します。

 課税自主権の拡大については、中身が示されていませんが、具体的にどのようなことを考えているのか、示されたい。

 また、自立性を高めるという意味は、必要な収入を確保するという量的な改革もありますが、税金をかける権限をみずからの責任で行うという質的な改革もあると思います。地方の課税自主権を拡大するために、例えば、固定資産税などを法律から条例へと委譲するというようなことは検討されているかどうか、伺いたい。

 最後に、税制改正に関して質問いたします。

 税制改正については、人的控除のあり方に対する基本的な考え方が明らかにされないまま、財源確保の観点から、成年扶養控除の見直しが行われようとしています。税に対する哲学を欠いた手法は、税制をゆがめ、税への信頼を失わせることになります。控除から手当へというスローガンではなく、税制上、人的控除をどのようにしていくか、総理に、はっきりと考えを示していただきたい。

 地方税の負担軽減措置の見直しも行われています。

 平成二十二年度税制改正大綱で示された負担軽減措置の見直し基準を機械的に当てはめ、廃止縮減を行っております。そもそも、負担軽減措置を設ける場合、税務当局が、対象などを限定する余り、適用しにくい、役に立たない措置にしているという実態があります。適用件数や適用金額が少ないので廃止縮減するというのは自己矛盾です。適用件数や金額が少ないのが問題ならば、負担軽減措置の対象や範囲を広くして、政策効果があらわれるようにすべきではありませんか。

 また、基本的な政策との整合性や実情を踏まえて見直したのかは、甚だ疑問であります。

 例えば、農業関係では、農地の流動化を進める不動産取得税の軽減措置の幾つかが廃止縮減されていますが、農地の規模拡大に資するものにすべきではないでしょうか。農業生産法人への贈与税の納税猶予特例の廃止にあわせて、不動産取得税の軽減措置を廃止しています。

 特に、相続税や贈与税の問題は、主に都市部の問題であります。都市農地の保全に関する基本的な方針を定めておられず、現状では、都市部において農業生産法人の設立に踏み切れる状況ではありません。基本方針を定め、農業生産法人の設立を支援する税制上の措置を講ずるべきではないのでしょうか。

 地方税の負担軽減措置について、他の政策や実情を踏まえない機械的な見直しには妥当性があるのかどうか疑わしいと思います。このことをお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 西議員にお答えを申し上げます。

 地方の歳入改革の方向性についての御質問をいただきました。

 平成二十三年度においては、交付税を〇・五兆円増額確保するなど地方の一般財源総額を適切に確保するとともに、ひもつき補助金の一括交付金化を行ったところであります。

 地方の歳入改革を行うに際しては、御指摘のとおり、自立性、安定性、予見性を高め、税財源の充実を図ることが重要であると考えております。

 今後、地域主権改革を確立するためには、国と地方の役割分担の大幅な見直しとあわせて、それぞれの担う役割に見合った形へと国、地方間の税財源の配分のあり方を見直すことが必要だと考えております。

 また、地方公共団体が事務事業のみならず税の面でも創意工夫を生かすことができるよう、課税自主権の拡大を図ることも重要だと考えております。

 地方交付税については、本来の役割である財源調整機能と財源保障機能が適切に発揮されるよう、地方税とあわせ、地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源の総額の適切な確保を図ってまいりたいと考えております。

 次に、年度途中の交付税の増額と借金返済についての御質問をいただきました。

 平成二十二年度途中の交付税の増収分については、巨額の財源不足が継続している状況にかんがみ、検討の結果、従来からの取り扱いを踏まえ、基本的には翌年度に繰り越すことといたしました。

 平成二十三年度においては、臨時財政対策債の大幅な縮減や新たな仕組みのもとで交付税特別会計借入金の償還を開始することとし、地方財政の健全化を図ることといたしております。

 子ども手当の地方負担分についての御質問をいただきました。

 平成二十三年度の子ども手当の制度設計に当たっては、地方との協議に努めるなど、地方側の意向も踏まえた検討を行ってきたところであります。最終的には、今年度と同様、子ども手当創設前からある児童手当の地方負担については従前どおりとしておりますが、それ以外については、上積み分を含め、全額国費で対応したものであります。

 なお、児童手当分の地方負担については、従来から地方交付税で措置しているところであり、財源面での手当てをしているところであります。

 政府としては、まず、平成二十三年度の子ども手当の支給が円滑に遂行されるよう、地方に御理解いただけるよう努力を続けてまいる所存であります。

 次に、消費税の地方配分について御質問をいただきました。

 御指摘のとおり、地域主権戦略大綱においては、「社会保障など地方行政を安定的に運営するための地方消費税の充実など、税源の偏在性が少なく、税収が安定的な地方税体系を構築する」ことが明記されており、そのことについては変更はいたしておりません。

 消費税のあり方については、まず、あるべき社会保障制度の姿をしっかりと議論し、その上で、社会保障改革の全体像と、財源としての消費税を含む税制抜本改革を考えてまいりたいと思っております。

 地域主権の観点も含めた国、地方間の税財源の配分のあり方も、この検討の中で同時並行的に議論していくことになると考えております。

 次に、人的控除のあり方についての御質問であります。

 人的控除については、所得再配分機能等を回復させる観点から、高所得者に対して結果的に有利になっている所得控除の見直しなどによる課税ベースの拡大、さらには、所得控除から税額控除、給付つき税額控除、手当へという改革を進めているところであります。

 具体的には、二十二年度税制改正において、子ども手当の創設と相まって年少扶養控除を廃止し、高校実質無償化の実現に伴い、特定扶養控除について、十六歳から十八歳の扶養控除の上乗せ部分を廃止したところであります。

 また、二十三年度税制改正においては、成年扶養控除については、本来、成年者が基本的に独立して生計を立てるべき存在であること等を踏まえて見直し、配偶者控除については、配偶者控除をめぐるさまざまな議論、課税単位の議論、社会経済状況の変化等を踏まえながら、引き続き検討していくことといたしたところであります。

 今後とも、所得税の人的控除については、以上のような基本的な理念の上に立って見直しを進めてまいりたいと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣片山善博君登壇〕

国務大臣(片山善博君) 私の方からも御答弁を申し上げます。

 最初に、交付税の年度途中の増額と借金返済についてであります。

 これは、総理の方から基本的な考え方は先ほど御答弁申し上げたとおりでありますが、平成二十二年度途中の交付税の増収分につきましては、御指摘の臨時財政対策債や交付税特別会計借入金の縮減に活用することも検討いたしましたが、現下、巨額の財源不足が生じている現状にもかんがみまして、従来からの取り扱いを踏まえて、基本的には翌年度に繰り越すこととしたものであります。

 その上で、平成二十三年度におきましては、御指摘の、年度途中の交付税の増収による繰り越し財源も活用し、臨時財政対策債の大幅な縮減を、これは一・五兆円でありますけれども、行うとともに、交付税特別会計借入金の新たな償還計画を策定して着実な償還を開始することとし、関連する地方交付税法等の改正法案を今国会に提出しているところであります。

 次に、直轄事業負担金の廃止と、それから地域主権改革の工程についてのお尋ねであります。

 直轄事業負担金のうち、維持管理に係る負担金につきましては、平成二十三年度から全廃をすることとしております。建設に係る負担金につきましては、平成二十五年度までに、国と地方の役割分担のあり方や今後の社会資本整備のあり方など、地域主権の実現に関するさまざまな課題との整合性を確保しながら検討を行い、現行の直轄事業負担金制度の廃止とその後のあり方について結論を得ることとしているところであります。

 御指摘の、時期につきましても、その中で検討してまいりたいと考えております。

 地域主権改革の工程につきましては、本年一月二十五日の地域主権戦略会議におきまして、地域主権改革の主要課題の具体化に向けた工程表を提示したところであります。

 この工程表では、補助金等の一括交付金化でありますとか出先機関改革など、地域主権戦略会議が中心となって現在取り組んでいる改革課題をクローズアップして取り上げておりますけれども、御指摘の直轄事業負担金の廃止、それから地方自治法の抜本見直し、地方税財源の充実確保などにつきましては、地域主権戦略大綱で示した工程に沿って取り組みを推進することとしているところであります。

 地域主権改革は、内閣の最重要課題の一つでありまして、地方自治体や国民にとって関心の高い改革であるとの認識をしております。御指摘の課題も含めまして、取り組みの進捗状況を踏まえつつ、関係者にとってわかりやすい工程を順次お示ししたいと考えているところであります。

 次に、一括交付金と権限移譲についてであります。

 一括交付金は、地方の権限として実施する事業について、ひもつき補助金等を廃止し、各府省の枠にとらわれないで自由に事業を選択して使えるようにするなど、その使途について地方の自由度を拡大しようとするものであります。

 地方の自由度を拡大するためには国の関与を縮小していくことが必要でありまして、このため、箇所づけ等の国の事前関与を廃止するとともに、継続事業分の縮小とあわせて、客観的指標に基づく、恣意性のない配分を順次拡大したいと考えているところであります。

 次に、課税自主権の拡大についてであります。

 課税自主権の拡大については、地域主権改革を推進する観点からも重要な課題であると考えておりまして、平成二十三年度税制改正大綱において、住民自治の確立に向けた地域主権改革税制について明記したところであります。

 具体的には、地方団体がみずから判断し決定できる部分を拡大するという観点から、例えば、地方税法が定めている過剰な制約を取り除き、自治体が自主的に判断し、条例で決定できる範囲を拡大することでありますとか、自治体が課税に当たって納税者である住民と直接向き合う機会をふやすようにすることなどについて検討を進めてまいりたいと考えております。

 なお、御指摘がありました、固定資産税など基幹的な税に係る制度の骨格についてでありますけれども、これは、やはり、枠法である地方税法にその骨格部分については規定する必要があると考えております。その上で、できる限り自治体の自主性が発揮できるような仕組みを構築することが課税自主権の拡大の趣旨、意味だろうと考えております。

 最後に、地方税の税負担軽減措置等についてお尋ねがございました。

 特定の政策目的により税負担の軽減等を行う措置は、国の判断で地方に減収を生じさせるものであり、地域主権改革を進めるためにも、こうした措置は可能な限り行わない方向で見直しを行うこととしたところであります。

 このため、平成二十二年度税制改正時において、見直しに関する基本方針を定めたところでありますけれども、その中で、御指摘がありましたような、適用件数や金額が少ないものなどについては、その必要性に応じてそれぞれの自治体において軽減措置を講じることができるものである、そういう事情にもかんがみまして、この際、見直しをすることにしたものであります。

 御指摘の、農地に係る不動産取得税の軽減措置につきましても、以上のような考え方のもとで、関係省庁とも十分議論した上で、税制調査会においてその取り扱いを決めたところであります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、地方財政計画外三法案について、菅総理並びに片山総務大臣に質問します。(拍手)

 まず、地域主権改革です。

 これまで、民主党は、地域主権改革を一丁目一番地と言い、自公政権の地方分権改革との違いを強調してきました。ところが、民主党政権が昨年提出した第一次の地域主権改革法案の中身は、自公政権下の地方分権改革推進委員会の勧告をそのまま実行するものです。さらに、今国会に提出を予定している第二次法案からは、地域主権改革の言葉さえ削られています。菅総理、それはなぜですか。名実ともに、自公政権の地方分権改革を継続するということではありませんか。

 政府は、国の地方に対する義務づけ、枠づけを見直すと言います。しかし、その中には、憲法に基づく国民の生存権を保障するための国と自治体の義務を見直す内容まで含まれています。

 例えば、保育の最低基準です。待機児童解消のために、特例的に保育所の面積基準を条例に委任するとしています。しかし、待機児童解消策だからとこれを許せば、自治体が面積基準を引き下げることになるのではありませんか。待機児童の解消と言うのなら、認可保育所の増設こそが必要です。結局、最低基準への国の責任を投げ捨てることになるのではありませんか。

 障害者分野でも、障害者施設の人員配置や居室面積などの義務規定が自治体任せにされるのではないか、私たち抜きに私たちのことを決めないでという最も大切な当事者参加の原則すら国は保障しないのではないか、大きな不安の声が上がっています。

 菅内閣の地域主権改革は、あらゆる分野で国のナショナルミニマム保障への責任を投げ捨てることになるのではありませんか。総理の答弁を求めます。

 次に、地方自治体に対する国の財源保障責任です。

 菅内閣は、昨年六月の財政運営戦略で、国の一般歳出と地方交付税の合計額を今後三年間七十一兆円以内にする歳出の大枠を決め、地方財源抑制の仕組みを導入しました。

 来年度の地方財政計画では社会保障費の自然増を見込んだと言いますが、一方で、公共サービスを支える一般行政経費を抑え、人件費を大きく削減しています。三年間大枠が固定化されれば、一層の社会保障費の抑制や公務員人件費の削減を地方自治体に強いることになります。

 総理、今後、自治体独自の施策である子供や障害者への医療費助成などが削減されないと言えるのですか。

 公務員人件費の削減は住民サービスの後退につながります。民主党政権は、地方に行革は押しつけないと言いました。それなのに、なぜ地方財政計画には職員の純減数値を明記するのですか。国からの定員純減やアウトソーシングの押しつけは、やめるべきではありませんか。公契約法の制定こそ行うべきです。答弁を求めます。

 片山大臣は、図書館などは指定管理者制度になじまないと述べました。それなら、図書館を対象から外すべきです。指定管理者制度の抜本的な見直しを行うべきではありませんか。

 菅内閣は、一括交付金化によって地方の自由度が拡大すると言いますが、三位一体改革と同様、地方の財源を減らすことになるのではありませんか。離島など条件不利地域への財源保障は減らすべきではありません。答弁を求めます。

 最後に、地方税等の滞納者が増加し、自治体による差し押さえ、競売件数が増加している問題です。

 総理、地方税等の滞納者増加の原因をどう認識していますか。構造改革路線による貧困の拡大、三位一体改革の税源移譲による低所得者への住民税増税、社会保険料の負担増といった国の施策によって、払いたくても払えない滞納者が増加しているのではありませんか。

 自治体の徴収現場では深刻な事例が後を絶ちません。サラ金まがいのおどしや、生活の場の自宅さえ差し押さえ、競売して、寒空に住民をほうり出すことを自治体が行っているのであります。

 なぜこうしたことが横行しているのか。それは、国が地方に徴税強化を押しつけているからです。厚労省は、国保料、国保税の収納率を向上させるために、市町村が緊急プランを作成するように通知を出し、預貯金、給与等の差し押さえを行うことを求めています。この通知後の四年間で、差し押さえは、二倍以上の十八万件となりました。また、総務省は、積極的な差し押さえや競売で地方税等の徴収率を上げた自治体徴収機構を特別表彰するなど、徴税強化をあおってきたのであります。

 菅総理、生存権を脅かす徴税強化に自治体を駆り立ててきた国の責任をどう考えますか。この徴税強化を直ちにやめることを強く求め、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 塩川鉄也議員にお答えを申し上げます。

 まず、地方分権改革との違い等についての御質問をいただきました。

 地域主権改革は、地域のことは地域に住む住民が責任を持って決められるようにするための改革であり、この国の形を変える大改革だと認識をいたしております。

 地域主権改革の実現は、この政権の最重要課題の一つであります。現在継続審議となっている地域主権改革関連法案については、鳩山政権のもとで出された地方分権改革推進委員会の第三次勧告を受け立案したものです。また、今国会に提出を予定している法案については、鳩山政権下の第三次勧告と福田政権下の第一次勧告を受け立案するものもありますが、第一次勧告の内容が民主党政権が目指す地域主権改革の方向性と一致しているために、そのようにしたものであります。

 今国会に提出する法案の名称はまだ正式に決定はしていませんが、いずれにせよ、私が議長を務める地域主権戦略会議を中心に政治主導で改革を強力に進めて、この地域主権改革を実現してまいりたいと考えております。

 次に、義務づけ、枠づけの見直しについての質問であります。

 地域主権改革は、地域のことは地域に住む住民が責任を持って決められるようにするというものでありますが、事柄によっては、ナショナルミニマムの観点から、国が全国統一の基準等を決めることが適当なものも確かに存在をいたしております。例えば、保育所や障害者施設の人員の配置基準等については、国で基準を設けた上で、都道府県等に条例で定めることとしております。

 ナショナルミニマムの観点と地域主権改革の観点は、対立または分離されるものではなくて、両者のバランスをどのように図っていくかが重要である、このように認識をいたしております。

 次に、地方の社会保障費についての質問です。

 平成二十三年度の地方財政計画においては、国の社会保障関係費が増額したことも踏まえつつ、地方単独事業も含め、地方の社会保障関係費の増加等を適切に計上し、その財源を確保しているところであります。

 今後とも、地方歳出について、国の歳出の取り組みと歩調を合わせつつ、地域の社会福祉サービスの安定的な提供に必要となる地方の財源を適切に確保してまいりたいと考えております。

 地財計画上の職員純減と公契約法の制定についての御質問であります。

 平成二十三年度の地方財政計画上の職員数については、地方団体が独自に定め公表している定員管理計画における今後の定員純減の取り組みを勘案するなどして定めたものであり、定員純減を地方に押しつけているものではないと承知をいたしております。

 また、公契約の契約先企業における賃金等の労働条件については、関係法令を守ることは当然として、その具体的なあり方は、当該企業の労使間で自主的に決定されることが原則であります。こうした労働条件のあり方に関しては、発注者である国の機関や地方公共団体も含めて幅広く議論を進めるべきと考えております。

 一括交付金について質問をいただきました。

 一括交付金は、その使途について、地方の自由度を拡大することが目的であり、国の財源の捻出を直接目的とするものではありません。

 なお、平成二十三年度における一括交付金化五千百二十億については、各省から提出された平成二十三年度要求・要望額ベースの約五千四百億円と比較すると、約三百億円、約六%の削減となっており、地方の自由度拡大による効果が、これを超えて期待することができるのではないかと思っております。

 また、一括交付金の配分に当たっては、離島など条件不利地域に配慮した仕組みを設けることといたしております。

 次に、地方税の滞納についての御質問です。

 地方税の滞納残高及び毎年新規に発生する滞納額は、この十年間を見ますと、上下動いたしております。これは、景気の動向等さまざまな要因が影響を及ぼしているものと考えられ、引き続き注視してまいりたいと思っております。

 最後に、地方税や国民健康保険料の徴収についての質問であります。

 地方税や国民健康保険料については、負担の公平の観点から、納めることが原則であり、公平かつ適正な徴収が重要であります。

 一方、生活に困窮している方などに対しては、地方税については、減免や徴収猶予のほか、滞納処分の執行の停止をすることができることとされております。また、国民健康保険料についても、分割納付や減免などの措置を講ずることができることとされております。

 地方公共団体においては、住民個々の状況を踏まえ、減免等の措置を講じるなどして、適切に徴税が行われるべきものと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣片山善博君登壇〕

国務大臣(片山善博君) 私の方には、指定管理者制度についてのお尋ねでございました。

 指定管理者制度につきましては、その導入以来、幅広く活用されているところでありますが、今日まで、お触れになったような点も含めて、さまざまな課題が生じているところであります。

 そこで、昨年末のことでありますけれども、例えば、この制度は住民サービスの質の向上がその趣旨であることとか、それから制度の導入に当たっては、これをしゃくし定規に考えるのではなくて、自治体の自主性にそもそもゆだねられているものであること、そういう趣旨につきまして、改めて自治体に対して助言を行ったところであります。

 このたびのこの助言を受けてそれぞれの自治体が今後どのように対応していかれるのか、当面、その状況等を見守ってまいりたいと考えているところであります。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  菅  直人君

       総務大臣

       国務大臣    片山 善博君

       財務大臣    野田 佳彦君

       文部科学大臣  高木 義明君

       厚生労働大臣  細川 律夫君

       国土交通大臣  大畠 章宏君

       国務大臣    枝野 幸男君

       国務大臣    玄葉光一郎君

       国務大臣    中野 寛成君

       国務大臣    与謝野 馨君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 藤井 裕久君

       総務副大臣   鈴木 克昌君

       財務副大臣   五十嵐文彦君


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