衆議院

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第31号 平成23年7月8日(金曜日)

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平成二十三年七月八日(金曜日)

    ―――――――――――――

  平成二十三年七月八日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 予防接種法及び新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(第百七十四回国会、内閣提出、参議院送付)

 原子力損害賠償支援機構法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

小宮山泰子君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 第百七十四回国会、内閣提出、参議院送付、予防接種法及び新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(横路孝弘君) 小宮山泰子さんの動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 予防接種法及び新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(第百七十四回国会、内閣提出、参議院送付)

議長(横路孝弘君) 予防接種法及び新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長牧義夫君。

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 予防接種法及び新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔牧義夫君登壇〕

牧義夫君 ただいま議題となりました予防接種法及び新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、今後、平成二十一年に発生した新型インフルエンザと同程度の感染力や症状を呈する新型インフルエンザ等感染症が発生した場合の対応に万全を期するため所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、新たな臨時の予防接種の類型を創設すること、

 第二に、新型インフルエンザ等感染症が新たに発生した際に、国として必要なワクチンを円滑に確保するため、特例承認を受けたワクチンの製造販売業者を相手方として、損失等を国が補償することを約する契約を締結できるものとすること、

 第三に、感染症の発生及び蔓延の状況、改正法の施行状況等を勘案して、予防接種のあり方等について総合的に検討を加えること等、所要の検討規定を設けること

等であります。

 本案は、第百七十四回国会に提出され、昨年四月十四日、参議院において可決の上、本院に送付され、継続審査となっていたものであります。

 今国会においては、去る六月一日細川厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、十五日から質疑に入り、本日質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、民主党・無所属クラブより、法律番号及び法律の略称の年表示を「平成二十二年」から「平成二十三年」に改める修正案が提出され、趣旨説明を聴取いたしました。次いで、採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対して附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 原子力損害賠償支援機構法案(内閣提出)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、原子力損害賠償支援機構法案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣海江田万里君。

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 原子力損害賠償支援機構法案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法案は、原子力事業者による損害賠償の実施を支援する組織として原子力損害賠償支援機構を設立し、大規模な原子力損害が生じた場合において、当該原子力損害の賠償に責任を負う原子力事業者に対し、機構が必要な資金の交付その他の業務を行うことにより、被害者への賠償の迅速かつ適切な実施を確保するとともに、電力の安定供給等を図ることを目的として提出するものであります。

 次に、法案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、原子力損害賠償支援機構の設立等の基本的な事項について定めております。

 第二に、原子力損害賠償支援機構の組織について定めております。

 原子力損害賠償支援機構には、運営委員会を置き、原子力事業者への資金援助に係る議決等、機構の業務運営に関する重要事項に関する議決を行います。

 第三に、原子力損害賠償支援機構の業務について定めております。

 原子力事業者が損害賠償を実施する上で機構の援助を必要とするときは、機構は、運営委員会の議決を経て、融資や資金の交付等の資金援助を行います。

 さらに、必要がある場合には、機構は、事業者の経営合理化等を内容とする特別事業計画を事業者と共同で作成し、主務大臣の認定を受けた上で、政府が交付する国債を活用して行う特別資金援助を実施いたします。

 なお、特別事業計画の認定を受けた原子力事業者は、通常の負担金に特別な負担金を加算した額を原子力損害賠償支援機構に納付するものとします。

 また、機構は、機構の業務に要する費用として、原子力事業者から負担金の収納を行います。

 第四に、機構は、原子力損害を受けた者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行う等、損害賠償の円滑な実施に資するための相談その他の業務について定めております。

 以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。

 以上が、原子力損害賠償支援機構法案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 原子力損害賠償支援機構法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。高邑勉君。

    〔高邑勉君登壇〕

高邑勉君 民主党の高邑勉でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました原子力損害賠償支援機構法案について質問します。(拍手)

 まず、冒頭に、すべての国会議員の皆さんに申し上げます。

 被災者の皆さん、被害者の皆さんは、この法案の成立を待っておられます。

 私は、このたびの原発事故発生以来、四十八日にわたり福島県に通い続け、いつふるさとに帰れるかわからない、不安の日々を過ごしておられる皆さんに会ってまいりました。

 先日も、ある農家のおばあさんが目に涙をためてこう語られたんです。

 牛がいるんだ、うちに。この間一時帰宅したら、五頭いた牛のうち二頭が死んでいた。残った三頭が、五頭の子牛に乳を与えていた。牛は、ほかの子に乳はとらせない。牛でさえ助け合っているのに、政治はどうして足の引っ張り合いばかりをしているのかと。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

高邑勉君(続) 現地に身を置けば、与野党の駆け引きや、だれそれがいつやめる、そんな話はどうでもいいんです。それよりも、きょうよりもあした、あしたよりもあさってという、生きる望みや、希望につながる目に見えた支援こそが今必要なのであります。

 主役は、被災者の皆さんなんです。一刻も早く被害者の方々に必要な賠償が支払われるよう、本法案の迅速な国会審議、そして成立を、与野党の議員の皆さんに心からお願い申し上げます。

 さて、原子力発電所事故経済被害対応チーム関係閣僚会合が本法案の枠組みについて決定したのは五月十三日です。はや二カ月がたとうとしています。

 民主党内のプロジェクトチームでは、被害者の方々に少しでも早く支払いを可能にし安心していただきたいという思いから、二度にわたり、政府に対し法案の早期提出を求める意見書を提出しました。これを受けて、政府は、六月十四日に法案を閣議決定いたしました。今や一刻の猶予も許されません。

 賠償範囲の大枠は紛争審査会が七月中にまとめる中間指針で示される予定とのことですが、いまだ賠償総額の見通しは立っていません。また、事故の収束に要する費用総額も明らかになっていません。

 先日、地下水汚染拡大防止のための遮水壁の設置について、債務超過の懸念から公表を見送ったという報道がありました。株主総会を前にして経営を優先するが余り、国民生活の安全をまず第一に考えて事故収束を図るという基本原則がないがしろにされていることを憂慮します。まずは安全確保が急がれることは、言うまでもありません。

 そんな中で、法律上の賠償責任を有する東京電力は資金調達面で非常に厳しい状況に陥っており、迅速な賠償に支障を来すおそれが高くなっています。賠償が適切に行われるためには、国の支援が不可欠です。

 そこで、総理にお尋ねします。

 本法案は、原子力損害賠償の迅速かつ適切な実施を法律の目的として掲げていますが、万が一今国会中に本法案が成立しなかった場合、福島県や近隣の県を中心として、一刻も早く支払いを必要とされている被害者の方々への支払いが滞る可能性や、十分な支払いが行き渡らない可能性が出てくるんでしょうか。本法案が成立しなかった場合に予測される事態についてどうお考えか、お答えください。

 続いて、海江田大臣にお尋ねします。

 大臣は、電気料金の値上げを抑え、早く賠償金が届くようにしたい、安易な料金転嫁はさせないと明言しておられます。

 被害者の完全救済と国民負担の極小化、さらに、一日も早い事故の収束と電力の安定供給、これらをすべて可能とするスキームを実現することが政府に課された使命であります。

 報道によれば、電気料金転嫁による十二年度の値上げ幅が一六%に上る可能性があるそうですが、この賠償支援に伴って、東京電力は特別負担金を払うとのことです。電気料金は上がるんでしょうか。ぜひ御明言いただきたいと思います。

 また、各電力会社が支払う一般負担金についてはいかがでしょうか。負担金が料金転嫁の対象となるか否か、及びその根拠について、政府の見解を明らかにしてください。

 また、東京電力に金融支援を実施している大手銀行の株主総会では、支援の妥当性、債権放棄要請の有無について相次いで質問が出ました。

 本法案が成立し、原子力損害賠償機構による支援措置が動き出した後、政府として、東京電力に融資をする銀行に対し債権放棄を求める予定はあるのでしょうか。これは金融システムにも大きな影響を与える話です。明確にお答えください。

 次に、本法案の枠組みにより、東京電力は存続します。法案では、国から特別資金援助を受けるためには、機構による経営内容の徹底した見直しが義務づけられ、事業者にも経営合理化に最大限の努力を尽くすことが義務づけられています。被害者への迅速かつ適切な損害賠償、電力供給確保のためとはいえ、国民の理解を求めることが必要です。

 政府は、東京電力の経営合理化、経費節減の徹底について、どのような姿勢で臨み、その厳正さや客観性を確保しようとしているのか、御答弁願います。

 さらに、東京電力に対する不信や不満から、一部には、東電を破綻させるべきだという声があります。また、株主や債権者の責任を追及し、JALのような法的整理をすればよいという意見もあります。

 政府として東電の法的整理をするという選択肢をとらなかった理由は何でしょうか。株主や債権者が会社更生法の適用を申請すればよいとの指摘もありますが、政府としての見解を明らかにしてください。

 また、政府は、エネルギー基本計画の早急な見直しを行うことを表明しています。

 本法案第一条には、原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保を図ると明記されています。本法案の枠組み自体が、現状を固定したままで、今後のエネルギー政策の見直しの方向性まで拘束するものなのかどうか、政府の見解を明らかにしてください。

 さて、私が足しげく通わせていただきました南相馬市の桜井市長、彼は、いつもこう言うんです。

 復興に必要なのはお金だけじゃありません、復興とは、みずから生きるすべを取り戻すこと、自尊心を取り戻す闘いなんだ、そうおっしゃいます。また、御自身も二十六年間酪農を営んでおられた市長は、牛の汗は私の汗と同じだ、私たちは彼らから命をもらって生きている、だから、牛の苦しみは自分の苦しみなんだ、そうおっしゃいます。

 警戒区域内には、今もなお、置き去りにされた動物たちが生息しております。避難した畜産農家は、国による安楽死の指示の中で、家族同然の家畜たちの命を案じ、みずからを責め、苦しんでおられます。先般、相馬市の酪農家の方が原発さえなければと書き残してみずからの命を絶たれたことを、忘れてはなりません。

 日本国内のみならず、世界から寄せられる被災動物たちの命への懸念に対して、我が国として、このまま無為に見殺しにすることはあってはならないと思います。

 被災動物を救うことは、命をなりわいとした畜産農家の方々の心を救い、彼らの、これから生きていくという誇りを守ることにほかならないんです。人間の引き起こした災害によって、罪のない動物を餓死させ、もしくは、安楽殺とはいえ殺処分をすることについては、生きとし生けるもの、やおよろずの自然に対しての冒涜であり、被災者にとっても、これほどの不条理はありません。そこに、命への尊厳と感謝、恐れと鎮魂の思いがなければ、だれも救われないのではないでしょうか。

 そんな中、先般、南相馬市の警戒区域から、馬二十八頭と豚二十六頭が厳格な条件のもとで区域外に搬出されました。豚の飼育者である前田さんは、孫が畜産を継ぎたい、だから獣医師を目指して今高校に通っているんだと、笑顔でおっしゃってくださいました。

 こうして、未来に希望を持って、いずれふるさとに帰り、動物たちの命とともに生きていこうという人の営みこそとうといと私は思いますが、皆さん、いかがでしょうか。(発言する者あり)

議長(横路孝弘君) 静粛に願います。

高邑勉君(続) そこで、総理にお尋ねします。

 先日、動物・生物学者の皆さんから、警戒区域内の被災動物を放射能の影響を受けた貴重な生物資源として保護観察下に置いて、そこに国家的な研究機関を設立すべきとの提言がなされました。被災動物保護研究センターという、仮称ではありますが、まさに未来への希望につながる、この牧場をつくってはどうかという提案について、どのようにお考えでしょうか。総理の御答弁をお願いいたします。

 最後に、野党の皆さんが議員立法で御提案されている平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律案について。

 被害者の方々に一刻も早く必要な資金を届けたいという思いは共有していると理解しています。原子力損害賠償支援機構法案の成立と相まって、被害者の方々に安心をお届けできることを強く願っております。

 主人公は、私たちではありません。被災者の皆さんのため、被害者の皆さんのために、本法案の迅速な成立を心からお願い申し上げて、私の代表質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) まず冒頭、高邑議員におかれましては、福島県南相馬を初め被災地に寄り添って、長く滞在をして支援を行っていただいていることに、心から敬意をあらわしたいと思います。大変御苦労さまです。

 まず、この法案が成立しなかった場合に予測される事態についての御質問をいただきました。

 本法案は、原子力被害の賠償の迅速かつ適切な実施を図るため、政府が損害賠償の支払い等に係る援助を行う仕組みを構築するものであります。

 損害賠償の総額の見通しは、いまだ明らかになっておりませんけれども、かなり大きな金額になることが想定されております。今国会中に法案が成立しなかった場合には、東京電力による迅速かつ適切な損害賠償の支払いが滞る可能性が生じると懸念をいたしております。ぜひとも、私の立場からも、迅速なる成立を心からお願いを申し上げます。

 次に、エネルギー政策の方向性について御質問をいただきました。

 本法案は、原子力損害賠償の適切な実施に向けた体制を早急に整備すべく、必要な措置を講ずるものであります。

 電力事業形態のあり方などを含むエネルギー政策については、国民各層の御意見を伺いながら予断なく検討を行うこととしており、今回の支援の枠組みはこの検討に影響を与えるものではない、このように認識をいたしております。

 次に、被災動物の研究機関設立についての御質問をいただきました。

 高邑議員からは、現地の牛や豚の動向について、写真などを含めていろいろと私にもお伝えをいただいております。

 御提案については、放射線の動物への影響という学術的観点や動物愛護の観点から大変意義深い提案であり、警戒区域内にいる動物を研究拠点まで移動をする、そしてそこで飼育するといったような問題は、現実的な課題としていろいろあると思いますけれども、一つの貴重な提案としてしっかりと受けとめさせていただきたい、このように考えているところであります。

 なお、残余の質問については、関係大臣から答弁をしていただきます。(拍手)

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 高邑勉議員にお答えいたします。

 議員より、電力会社が機構に支払う特別負担金及び一般負担金と電気料金との関係に関する御質問をいただきました。

 最初に、一六%の値上げ報道についての御指摘がありましたが、これは根拠のない数字でございます。

 本法律案の枠組みにおいて東京電力が支払う特別負担金は、東京電力の経営合理化努力を通じて捻出されるべきであることから、特別負担金による料金の値上げということはございません。

 他方、機構による制度運営のための各電力会社が支払う一般負担金については、原子力発電事業のコストとして料金原価に含まれるものです。

 なお、経営判断として電気料金の値上げを行う場合には、経済産業大臣の認可が必要であり、仮に電力会社から申請が出された場合には、厳格に審査を行ってまいります。

 いずれにせよ、政府の支援に当たっては、電気料金を含め、国民負担の極小化を図ることを基本としてまいりたいと考えております。

 次に、金融機関による債権放棄に関する御質問をいただきました。

 政府は、今般の支援に先立ち、東京電力がすべてのステークホルダーに協力を求め、とりわけ金融機関から得られる協力の状況について政府に報告を行うことを確認しております。したがいまして、東京電力及び東京電力のすべてのステークホルダーがそれぞれ民間の立場で必要な協力について判断するものと考えておりますが、政府が金融機関による債権放棄を求めるものではありません。

 次に、東京電力の経営合理化に関する御質問をいただきました。

 東京電力の経営合理化については、本法案による支援に先立ち、東京電力の厳正な資産評価と徹底した経費の見直しを行うため、東京電力に関する経営・財務調査委員会を設置し、既に調査を開始しております。

 また、本法案に基づく支援の前提となる特別事業計画においては、この委員会の調査結果を活用し、東京電力の徹底した経営合理化を定めることとしています。政府は、経営合理化の具体的な取り組み等を含む計画の内容を厳正に審査した上で、支援を実施することとしております。

 次に、東京電力の法的整理に関する御質問をいただきました。

 仮に東京電力の法的整理が行われる場合、法律の定めにより、約五兆円に上る東京電力の社債が優先的に弁済されることになり、被害者の方々の賠償債権や事故処理に当たる事業者の取引債権の完全な履行が不確実になるおそれがあります。したがって、被害者の方々が適切な賠償を受けられるようにするとの観点からは、法的整理は望ましくありません。

 なお、総額数兆円に及ぶ可能性のある賠償債務が未確定であるため、更生計画を作成することは極めて困難であると考えられます。

 以上でございます。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 額賀福志郎君。

    〔額賀福志郎君登壇〕

額賀福志郎君 自由民主党の額賀福志郎であります。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、また、被災地茨城県の住民の一人として、ただいま議題となりました政府提出の原子力損害賠償支援機構法案について質問をいたします。(拍手)

 冒頭、内政、外交のすべての面で漂流、迷走を続け、国民生活を不安に陥れ、日本没落の道をひた走っている菅民主党政権について一言申し上げます。

 国会延長以来、初の本会議がやっと開催されました。本日は、会期延長から十六日目であります。この間、大震災でいまだに避難生活を強いられている方々に対して、何ら有益な議論をできませんでした。このことについて、菅総理は平然としているように見受けますが、私は、一人の政治家として、まことに申しわけないと思っております。

 このような事態を招いた責任は、退陣表明したにもかかわらず総理の座にしがみついている、菅総理、あなた自身にあります。政権を一日でも長くもたせるために手段を選ばない政治手法について、今や大多数の国民が絶望感を持っているのであります。

 また、やっと復興大臣を任命したかと思えば、松本龍復興担当大臣がみずからの放言で辞任するなど、復旧復興は一歩も進まない。被災地の方々の民主党政権への不信感は、今、頂点に達しようとしております。

 さらに申し上げます。

 去る六日に、菅総理は、全原発にストレステストを行うという考えを唐突に打ち出しました。佐賀県の玄海原発の再稼働を一度は了承した岸本英雄玄海町長は、政府の言っていることが二転三転し、信じられない、憤りを持って同意を撤回しましたと、怒りをあらわにしておりました。古川康佐賀県知事も、閣僚が同じ方向で発言をしてくれないと地方は動けませんよと、あきれ返っておりました。

 総理、あなたは、原発事故の後のエネルギー政策をどうしていくのかを根本的に考えようとしておりません。国民生活と雇用を守る産業政策も持っていない。どういう国づくりをしていくのかの理念も構想もない。ただ総理のいすに座っていたいだけの話ではありませんか。

 さらに、昨日の参議院予算委員会の礒崎陽輔議員の質疑で、海江田経済産業大臣は、いずれ時期が来ましたら私も責任をとらせていただきますと辞任を示唆する答弁をする深刻な事態であります。菅総理同様、いずれ辞任する大臣が所管する法律案の審議について、果たして、被災者、被災地のために成果を上げることができるのか、甚だ心配であります。

 菅民主党政権の政治姿勢は、被災者不在、国民不在、国会軽視と断じざるを得ません。菅総理の所見を聞かせてください。

 また、海江田大臣は、いつ、どのような責任をとられるのか、お答えいただきたいと思います。

 この際、菅総理、一刻も早く菅民主党政権は退陣し、国民に信を問われてはいかがですか。それこそ復旧復興への近道であり、あなたの決断を求めたいと思います。

 それでは、本論に入ります。

 まず初めに、自由民主党は、七〇年代の石油ショック以来、無資源国の我が国が、国民生活を向上させ、経済成長を拡大していくために、原子力発電を基盤エネルギーの一つとして育成してまいりました。

 もちろん、原子力発電の展開のためには安全確保が最重要でありました。しかし、今度の地震や津波で、その安全の基盤は打ち砕かれました。私たちは、強い反省の念を持ち、今度の事故を徹底的に検証し、原子力発電事故の教訓を国際的に共有していきたいと思っております。

 また、我が党は、これまでのエネルギー政策について、安全性、リスク分散、コスト面、環境面など多面的にゼロベースで見直し、エネルギー供給体制を再構築することに着手したところであります。

 さて、政府は、去る十四日、東京電力福島第一原子力発電所事故に係る原子力損害賠償支援機構法案を閣議決定しました。

 我々自由民主党は、被害者への迅速かつ確実な賠償、電力の安定供給、日本経済の安定、この三つを最大の命題と位置づけております。

 特に被害者への迅速かつ確実な賠償につきましては、今般の原発事故被害者を一刻も早く救済し、国による仮払金の支払いを促進させるため、平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律案、いわゆる仮払い法案を、六月二十一日に、自民党、公明党、みんなの党、たちあがれ日本・新党改革と共同で参議院に提出し、本日審議入りをしたところであります。

 もちろん、損害賠償支援のための枠組みが必要であるという点でいえば、我が党としても異論のないところであります。しかし、政府提出の法案の内容は、我が党が掲げる三つの命題に照らしまして種々の問題点があります。我が党は、被災者の皆様や国民の皆さんの安全・安心確保のために、しっかりと議論を行い、対案を出してまいりたいと考えております。

 そこで、以下の点について政府の見解を求めたいと思います。

 まず、東京電力の責任について総理の見解を伺います。

 政府は、本法案の枠組みによって、東京電力を破綻させることなく救済の手を差し伸べることとしておりますが、東京電力の経営陣の責任や組織のリストラ、資産の売却についてどのように考えておられるのか。

 東京電力福島第一原発事故での損害賠償への支援措置が必要であることは言うまでもありませんけれども、そこに公的な支援を注入する以上、その資産内容の評価や経営内容の見直しについて、厳正かつ客観的な評価が求められていくことは当然であります。加えて、株主や金融機関などのステークホルダーについても、本来は、東京電力の構成員あるいは関係者として、無関係ではないはずであります。その責任のとり方についてどのように考えているのかという点についてもお伺いをいたします。

 他方で、政府は、法律案の枠組みが東京電力の資金繰りや金融市場に対してどのような影響を及ぼすことになると認識をしておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

 さらに、この法律案ではすべての原子力事業者に負担金を課すこととしているため、この負担金を原価算入できることになれば、当然、電気料金の値上がりにつながります。東京電力管内のみならず、全国の電気料金への影響が懸念されるところであります。

 福島第一原発事故が収束しない現状において、賠償の総額が一体どの程度になるのかということも定かではありません。このような状況で、賠償の実効性をどのように確保していくのか、また、見直し条項について、一年後なのか二年後なのか、総理の見解を求めたいと思います。

 次に、国の責任について伺います。

 昨年六月、菅内閣は、エネルギー基本計画の第二次改定版で、原子力については、供給安定性、環境適合性、経済効率性を同時に満たす基幹エネルギーとして位置づけ、二〇二〇年までに九基、二〇三〇年までに少なくとも十四基以上の原子力発電所の新増設を行うとともに、原子力発電所の設備利用率の引き上げ、総電力に占める原子力の割合を将来的に五〇%に高めるということを閣議決定しております。

 自由民主党も、長年にわたり政権与党として原子力政策を進めており、今回の原発事故に対して責任を痛感しているのは当然であります。このたびの福島第一原発事故の賠償額は巨額に上ると言われております。国の責任というものを明確に打ち出す必要があると考えます。具体的には、原賠法の改正を行い、国の責任のとり方を明確にしていくべきだと私は考えますが、総理の御所見をお伺いしたいと思います。

 次に、経済への影響についてであります。

 本法案の支援措置では、負担金をすべての原子力事業者に課すことといたしております。それが電気料金に転嫁されて、国内の電気料金の水準が引き上げられることが想定されます。今国会に提出している再生可能エネルギー電気の固定価格買い取り法案も、再生可能エネルギーの買い取りに係る費用を電気料金に上乗せして回収するものであります。さらに、原子力発電所の停止に伴う代替火力発電の燃料費負担増加分も加わって、電力料金が大きく値上がりする可能性があります。

 他方、停止中の原発再稼働が難航することになれば、電力不足が懸念されます。これは、国内企業の産業競争力の低下や海外移転の誘発となり、国内経済や国民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります。

 政府は国民負担の極小化を図ると言っておりますけれども、みずからの政策に起因する電気料金の引き上げによる国民生活や経済活動の影響についてどのように認識しているのか、総理の見解をお尋ねいたします。

 続いて、原子力事業者に課される負担金について、今回の事故処理と今後の事故への備えとの区分について伺います。

 本法律案では、原子力事業者は、毎年度、原子力損害賠償支援機構に一般負担金を納付しなければならないということになっております。しかしながら、この負担金の性格は不明確であります。

 政府は、機構の位置づけを、原子力事業者による相互扶助の考え方に基づき、将来にわたって原子力損害賠償の支払い等に対応できる支援組織とするとのことでありますが、もしそうであるとするならば、この一般負担金は、将来の大規模な原子力事故に起因する賠償補償のために積み立てられるものでなければおかしいこととなります。

 もし、そうではなくて、一般負担金が既に発生している福島第一原発事故の賠償に充てられるというのであれば、これはどのような考え方に基づくものなのか、事故発生に関係のない他の電力会社がみずからの会社の関係者に説明ができるようにする必要があります。

 今回の賠償や事故処理に必要な資金と今後の事故の備えに必要な資金については、機構において明確に勘定を区分する必要があると思いますが、政府はどのように措置をするつもりなのか、お聞かせ願いたいと思います。

 また、現時点におきましては、東京電力の賠償負担がどこまで増加するかを見通すことは不可能であります。各原子力事業者の一般負担金の性格や規模が不明確なままでは、原子力事業者の将来に向けた経営判断に悪影響を及ぼすことになります。原子力事業者は民間の株式会社であります。当然に株主等への説明責任が求められることになります。政府の、原子力事業者の負担金の額についての見通しやその性格についての総理の考え方を明確に示していただきたいと思います。

 さて、民主党政権は、政権交代をしてから、まさに二年になろうとしております。既にマニフェストは破綻し、東日本大震災の復旧復興対策についても被災者の皆さん方の期待を裏切るばかりであります。

 さらに、鳩山政権も菅政権も、みずからがぶち上げた普天間問題、社会保障と税の一体改革、TPP問題などについては、政策として完結することができず、責任を放棄しているのであります。結局、二人の総理を初め民主党は、国民の皆さん方に対し、うそをついていることになります。

 かつて、所得倍増計画の政策を掲げて高度経済成長のスタートを切った一言居士の池田首相の名語録は、私はうそはつきませんというものでありました。これは大いに話題となって流行語にもなり、「私は嘘は申しません」という映画にもなったほどであります。

 菅総理、あなたが師とも仰いだ市川房枝さんは、当時、池田首相にこういう質問をしております。

 うそを言わなくてはならない政治界、うそで固まっている政治界だとしましたならば、国民の信頼が得られないことは当然であります、私は、機会あるごとに国民の方々にこのことをお伝えして、選挙の際には主権者としてうそを言わない政治家を出すように訴えてまいりました。さらに、うそを言わない自民党、当時は自民党が政権与党でした、うそを言わない自民党、うそを言わない政界とするために、池田総理に一層の努力をしていただかなければならないと思っております、こういう質問をしたわけであります。

 これに対し、池田首相は、お話しのとおり、私はうそを申しませんと国民にお誓いをいたしましたと答えたのであります。

 私は、菅総理に対し、市川房枝さんの質問の中の自民党という言葉を民主党に置きかえて、同じ趣旨の質問をすることとしたいと思います。総理辞任の約束も含めてお答えをいただくことにし、また同時に、民主党の議員の皆さん方にも、責任は菅総理ばかりではない、民主党を構成している民主党の皆さん方、民主党の友党の方々が同罪であると思っております。一政治家として、みずからの信念に基づいて、本当に被災者や被災地のために、国家国民のために、十年や二十年先を見詰めてしっかりと判断していくことがあなたたちの責任ではないですか。

 私どもは、これだけ、千年に一度の大災害に当たりまして、最初から、与野党のけんかはしない、国家国民、被災地、被災者のためにお互いに手をとってやっていこうと誓い合って、自民党は、しっかりと提言をし、議員立法をつくり、国会の場で議論をしようとしております。あなた方は、国会の場で、我々の提言をおくればせながら少しずつ採用して行政にのせているのが実態であります。

 どうか民主党の皆さん方も、我々自民党は今野党の立場でありますけれども、しっかりと、この大震災の、将来のために、あるいはまた日本の新しい成長をこの被災地においてモデルをつくるために、全力を尽くして頑張りたいと思っております。あなた方も、良識を取り戻して、議会人としての責任を果たしていただくことを心からお願いして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 額賀福志郎議員の御質問にお答えを申し上げます。

 まず、民主党政権の政治姿勢についていろいろと御指摘をいただきました。

 政権を一日でも長くもたせるために手段を選ばない政治手法というふうに私を批判されました。

 しかし、私が考えておりますのは、行政は停滞を許されない、特にこの大震災の中であります、そういった意味で、この間におきましても、六月の二十五日には復興構想会議からの提言をいただき、復興本部を立ち上げ、そして、やるべきことについては、原子力発電所の事故の収束を含めて、着実に前進をさせているところであります。もちろん、被災者の皆さんから、もっともっと早くしろ、そういう面で不十分のあることは承知をしておりますけれども、決して行政として足踏みを続けているわけではないということだけは国民の皆さんにしっかりとお伝えをしておきたい、このように考えます。

 次に、本法案における資産評価とステークホルダーへの責任追及について御質問をいただきました。

 東京電力の厳正な資産評価と徹底した経費の見直しを行うため、東京電力に関する経営・財務調査委員会を設置し、既に調査を開始しており、九月には報告を取りまとめる方針であります。

 また、本法案の枠組みにより東京電力を支援するに当たっては、経営責任の明確化のための方策、東京電力による株主を含む関係者に対する協力の要請などについて特別事業計画に記載するよう求めることといたしております。また、当計画の認定に当たっては、東京電力が経営の合理化により賠償資金を確保するため最大限の努力を尽くすことが必要だ、こういう姿勢で臨んできているところであります。

 次に、本法案が金融市場や電気料金に与える影響についての御質問をいただきました。

 本法案は、迅速かつ適切な損害賠償の実施や電力の安定供給などを確保することを大前提とした枠組みとなっております。一方、金融・資本市場全体の安定に不要、不測の悪影響を生じさせないことも重要であり、引き続き市場の動向等について注意してまいりたい。

 また、各電力会社の一般負担金は電力料金の原価に含まれるものではありますけれども、しかし、各社の経営効率化努力により国民負担が極小化されるべきものと考えております。

 次に、賠償の総額が定かでない中、いかにして賠償の実効性を確保するかについて御質問をいただきました。

 本法案は、最終的な賠償の損害総額が定かでない中にあっても、東京電力福島原子力発電所事故による被害者、被害事業者の方々に対する迅速かつ適切な損害賠償が実現するよう、政府として万全を期すためのものであります。第二次補正予算においても、当面の賠償支払いに十分備えるため、交付国債の発行額を二兆円とすることといたしております。

 本法案の成立を通じて、早期の損害賠償を実現し、被害者の方々のお手元に適切な賠償金が届くようにいたしたいと考えております。

 なお、見直しにつきましては、賠償の状況などを踏まえて適切に考えてまいりたいと思っております。

 次に、原子力損害賠償法の見直し等について御質問をいただきました。

 原子力損害賠償支援機構法案は、一義的な賠償責任は東京電力が負うことを前提に、原子力事業者と共同して原子力政策を推進してきた国の社会的責務を認識しつつ、原子力損害賠償法に基づき、東京電力に対する支援を行うものであります。

 原賠法の見直しについては、政府としては、まず、事態の収束、被害者の救済に全力を投じるべきであり、その後、今般提出した原子力損害賠償支援機構法案の附則にあるとおり、原子力損害の賠償の実施の状況や原子力被害に係る政府の援助のあり方などについて検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずる必要がある、このように考えております。

 次に、電気料金の産業競争力への影響についての御質問をいただきました。

 電気料金の値上げについては、各電力会社において最大限の経営効率化努力を行った上で経営判断される事項であり、実際に上昇することになるかどうか現時点で判断はできませんけれども、しかし、値上げの申請があった場合には、政府として厳格に審査をしてまいりたいと考えております。

 また、国内の電力コストの上昇等による国内企業の産業競争力の低下や海外移転を招かないように、産業競争力の観点から、エネルギー改革の推進や国内立地支援など、我が国の競争力強化に向けた施策を幅広く検討してまいる所存であります。

 次に、今回の事故処理に必要な資金と今後の事故の備えに必要な資金との区分の必要性に関する御質問をいただきました。

 今般の枠組みは、原子力事業者による相互扶助を基本的な考え方とするものであります。これは、大規模な災害が生じた際には、単独の原子力事業者のみでは損害賠償や事後の措置に対応し切れないとの現実を踏まえたものであります。

 仮に、勘定を区分して管理する方法では、事故を起こした事業者に単独で対応することを求めることになります。その場合には、まず、原子力発電に関するリスクを分散させることができないために、結果として、損害賠償や事故処理に支障を来すおそれがあります。さらに、会計上の扱いとして、すべての債務を単独の事業者が直ちに負うことになり、経営が立ち行かなくなるおそれがあります。

 このため、相互扶助の考え方で制度を創設することといたしたものであります。

 次に、一般負担金の性格や規模、負担金が電気料金に及ぼす影響について御質問をいただきました。

 すべての電気事業者が毎年度負担する一般負担金は、円滑な損害賠償の履行を確保するために必要な金額を、相互扶助の考え方のもとで、共同して負担するものであります。この一般負担金の額については、具体的な金額は今後決められることとなりますけれども、事業者の規模や内容等の事情を考慮し、算定されることになります。

 いずれにせよ、各社の収支の状況に照らし、電気の安定供給等の事業の円滑な運営に支障を来すおそれがないように設定されるものと理解しております。

 また、一般負担金は、機構を維持し運営していくための事業コストとして料金原価に含まれていくことになりますけれども、まずは、各社の経営効率化努力によって、電気料金を極力上げずにこの仕組みが維持運営されていくべきものと認識をいたしております。

 次に、うそをつかない政治についての御質問をいただきました。

 私は、例えば昨年の六月の参議院の選挙の折に消費税について触れ、自由民主党が提案されていた一〇%というものを参考にして検討したいということを申し上げ、多くの国民の皆さんに私の不十分な説明で反発をいただき、多くの仲間を失ってしまったことを今でも申しわけなく思っております。

 それから一年、この問題では、社会保障のあり方を徹底的に議論いただき、そして、それを維持するためには、どうして、どういう形で費用を負担していくのかということも議論をしていただき、党として一定の方向性を確立していただきました。

 このように、私が考えていたことが、何か、選挙のときに言って、その後になって手のひらを返したようにうそをついたということを言われるとすれば、それは全く当たっておりません。

 あえて申し上げますと、額賀さん御自身もお認めになりましたように、今回の特に原子力の事故に関して言えば、もちろん現政権にも大きな責任はありますけれども、これを長年進めてきた中心的な政党は自由民主党であるわけでありまして、そういったことも含めて、ぜひ、責任を分かち合う、そういう姿勢で問題の解決に当たっていただきたい、そのことを心からお願いして、私の答弁とさせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 額賀福志郎議員にお答えをいたします。

 本法案につきまして、私の責任がどうなのかということについても御指摘をいただきましたが、本法案を初めとして、経済産業大臣として今解決しなければいけない問題については、真摯に、そして全力を傾注して、これの解決のために頑張っていくということをまずお伝え申し上げます。

 そして、その上で、まことに恐縮でございますが、出処進退の時期は私一人で決めさせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 佐藤茂樹君。

    〔佐藤茂樹君登壇〕

佐藤茂樹君 公明党の佐藤茂樹でございます。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました原子力損害賠償支援機構法案に関し、菅総理並びに関係大臣に質問いたします。(拍手)

 菅総理、あなたは、みずからの総理退陣時期に関する発言で、一定のめどとして、公債特例法案、第二次補正予算案、再生可能エネルギー法案の三つの法案の成立を掲げられました。しかし、なぜこの三つなのでしょうか。

 今、国を挙げて早急に取り組むべき最重要の課題は、被災地域の復興や復旧であり、被災者や原発被害者の救済であります。そのための賠償スキーム法案は極めて重要かつ緊急を要するものであるはずですが、総理はそれをイの一番に挙げることすらなかった。総理は、絶対に成立させるというほどの重要性を感じていないのではないですか。

 なぜ、被害者の早期救済が第一の立場で、本支援機構法案や、公明党を含め野党五党提出のいわゆる仮払い法案の成立を重視されないのか、総理の明快な答弁を求めます。

 具体的な質問に入る前に、原発の安全性といわゆるストレステストの問題について伺います。

 海江田大臣が六月十八日に原発の安全宣言を出し、菅総理も翌十九日のネット番組で、私も全く同じと言い切られました。海江田大臣は、玄海原発の現地も訪れ、安全性に国が責任を持つと確約され、それを受けて、玄海原発の再稼働に向けて関係者も含め動き出そうとしていたやさきに、菅総理が、突然、すべての原発について、安全性評価、ストレステストを実施することを明らかにし、玄海原発の再稼働も白紙に戻ってしまいました。

 もちろん、原子力の安全性の徹底を図ることは必要なことであります。しかし、国の根幹にかかわるエネルギー政策の方針が、まさに場当たり的に変わり、しかも閣内亀裂まで起こしている。もはや行政府としての遂行能力すら持ち得ていないのではありませんか。

 総理、もういいかげんにしてください。原発立地自治体の住民のみならず、国民は大変に困惑しています。このままでは、定期点検で停止中を含めた原発すべてが長期の運転停止に追い込まれる可能性も出てきており、電力不足が長期化し、国民生活や日本経済への影響も懸念されます。

 政府は、原発の安全性と再稼働の関係、さらにストレステストの位置づけについて、明確な統一見解を示すべきではありませんか。菅総理並びに海江田経済産業大臣の答弁を求めます。

 政府は、昨年閣議決定したエネルギー基本計画の見直しを前倒しするとしています。その中で、エネルギー政策における原子力の位置づけをどのように再検討するつもりなのか。そもそも、総理の原子力政策の根幹というのは一体何なのでしょうか。脱原発なのですか、どうですか。その考え方次第では、原発の存在が前提となり、原子力事業者に負担金を求める本支援機構法案との矛盾を抱えることになりませんか。総理の見解を伺います。

 福島第一原発においては、特に原子炉の安定的な冷却、冷温停止に向けた懸命な作業が続けられており、関係者の決死の御努力に対して敬意を表します。

 しかし、例えば大量の汚染水の処理に関しては、予定どおり作業が進まず、年末までに終える目標の処理計画におくれが出る可能性があるとの指摘もあります。残念ながら、東電が示したロードマップどおりに進むかどうかは極めて不透明であります。

 原発事故の収束に向けた取り組みの現状をどう認識しているのか、また、ロードマップの見直しもあり得るのか、菅総理並びに細野原発事故担当大臣の答弁を求めます。

 以下、四つの視点から具体的に質問いたします。

 原発事故の賠償スキームをつくるに当たっての第一の視点として、被害者への賠償金支払いを完全に補償できるスキームでなければなりません。公明党を初め野党五党共同で、国の責任のもとで仮払いを迅速に行い、また、紛争審査会の基準で対象外となっている方々も柔軟に救済することが可能な、いわゆる仮払い法案を参議院に提出しております。

 本支援機構法案が仮に成立し、賠償の枠組みが決定しても、原発事故の収束がいつになるかわからず、また、被害の損害範囲が確定し、本格的に賠償金の支払いが始まるまでには、相当の月日がかかります。

 急ぐべきは被害者の救済です。本支援機構法案と仮払い法案は相対立する法案ではありません。よって、被害者の側に立てば、国が責任を持って被害者の手元に仮払金をいち早く届けることが急務であり、速やかに仮払い法案の成立を急ぐべきと考えます。総理の明快な答弁を求めます。

 本支援機構法案の前提となっている原賠法について質問いたします。

 原賠法第三条では、賠償責任は原子力事業者が無過失・無限責任を負うこととなっており、本支援機構法案でも、その前提でスキームが構築されております。

 一方、同法第三条一項ただし書きでは、「異常に巨大な天災地変」による原子力損害は、原子力事業者は免責され、政府が措置することとしています。

 昭和三十五年五月十八日の国会での政府答弁では、このただし書きの意味は「関東大震災の三倍以上の大震災」としており、今般の東北地方太平洋沖地震の規模から見れば、この政府答弁に該当するという解釈も成り立つのではないかと考えます。なぜこのただし書きの条項を適用しなかったのか、その解釈を含め、総理の見解を求めます。

 いずれにしても、現行の原賠法の枠組みのままでは、国の責任が極めてあいまいであるばかりか、今般の大規模な地震、津波を伴った原発事故による巨額な損害賠償に対応し切れているとは到底思えず、法的に限界があります。よって、私は、原賠法制定時の議論を検証するとともに、今般の事故を踏まえた上で、国の責任の明確化や国と原子力事業者の責任、負担のあり方の見直しなどを含め、速やかに見直し論議を進めるべきと考えますが、総理の認識を伺います。

 第二の視点は、国の責任についてです。

 今般の政府の賠償スキームでは国の責任が極めてあいまいであり、東電と国との賠償に係る責任のあり方について明確化すべきです。

 政府案では、原賠法の枠内で、賠償責任は原子力事業者に負わせ、政府は被害についての責任を負わないこととなっています。しかしながら、原子力政策を推進し、原子力施設の安全基準を策定し、それを認めた政府の責任はどうなるのか。さらには、今回の事故に関して政府が行った避難指示や警戒区域の設定、出荷制限等によって住民がこうむった被害や苦痛などの責任が皆無と言えるでしょうか。

 もちろん東電に第一義的な責任がありますが、同時に国も一定程度の責任を有しており、その認識に基づくスキームとすべきではありませんか。総理の答弁を求めます。

 関連して、東京電力の責任について伺います。

 東電は、本来ならば債務超過は免れません。しかし、本支援機構法案が成立すれば、債務超過にならないだけでなく、株式上場は維持され、銀行からの融資も政府保証つきで機構を通じて受けることが可能です。

 東電は、地域独占により電力の安定供給を担うなど、公益という観点からすれば特異な会社です。しかし、一民間企業であることも事実です。であるからこそ、例えば、法的整理あるいは一時国有化をすべきとの声も聞かれます。

 今般、なぜ、債務超過を回避し、法的整理等の選択肢を事実上排除するスキームとしたのでしょうか。一部では東電救済ではないかとの声も聞かれますが、今後の東電のあり方について総理の考えをお聞きします。

 また、東電は、本来ならば債務超過の可能性が高い会社であり、これだけの損害をもたらした以上、徹底した経営責任、株主責任を求めることは当然と考えますが、総理の答弁を求めます。

 本法律案では、原子力事業者からの拠出による機構を設置するとしています。これは、あってはなりませんが、今後の原子力災害による損害賠償に備え、一種の保険的、互助的なものであり、十分に検討すべき仕組みであると考えます。

 他方、法案では、この機構の枠組みを、既に起きた今般の東電による事故にも遡及して適用し、東電以外の原子力事業者にその分の負担金の拠出を求めることは、相互扶助とはいえ、疑問を感じます。総理の答弁を求めます。

 また、原子力事業者が負担する一般負担金の年度総額及び事業者ごとの負担率について、具体的な金額が不明な上、負担率も、何を基準として決定されるのかもわかりません。東京電力の特別負担金も含め、負担金の額及び負担率について、どの程度となると想定しているのか、海江田原子力経済被害担当大臣の答弁を求めます。

 賠償にかかる費用の負担について伺います。

 スキーム検討に当たっての第三の視点として、できる限り国民の負担の最小化を図るということを指摘したいと思います。そのためには、東電みずからが資産の売却や徹底したリストラを進めるなどの努力が欠かせないことは言うまでもありません。それでも、巨額に上る賠償の財源として、結局、電力料金に転嫁され、利用者や国民が負担増に苦しむことになりかねません。

 電気料金の値上げは、特に低所得者層ほど逆進的に負担が重くなってしまいます。こうした家計の負担増がどれくらいになると考えているのか、将来にわたる全体像を含め、総理並びに海江田大臣の答弁を求めます。

 第四に、電力の安定供給に支障が出ないようにしなければなりません。

 東電管内の今夏の電力需要は逼迫し、需要抑制一五%を初め、国民の協力もあって、節電への取り組みも進められております。しかし、一方で、過度な節電によって、熱中症になり、さらに、命を落とされる人も出るなど、多くの方の生活や健康に害をもたらしています。

 不要不急の電気を消すことなどはぜひとも実行に移していただきたいことではありますが、命を削ってまで行き過ぎた節電を行うことがないように、政府はきちんと国民に適切な節電のあり方を啓蒙すべきではありませんか。総理の答弁を求めます。

 また、震災直後の計画停電では大混乱が生じました。総理、今夏には計画停電は起こさないと宣言してください。答弁を求めます。

 あわせて、電力の安定供給は日本の命綱であります。電力の安定供給に向けた方針について総理の答弁を求めます。

 最後に、日本の国家国民のために総理に申し上げたいと思います。

 私は、総理の居座りともとれる一連の言動に対してもやりきれない思いを持っていますが、それ以上に、一国の総理が、被災地の方々や原発被害者に目を向けない、寄り添う心を持ち合わせていないことに対し、憤りすら覚えます。

 その証拠が、復興担当大臣でありながら被災地の方々の感情を逆なでするような言を弄し、わずか九日で辞任するような人物を任命したことに端的にあらわれております。

 一九四六年に、ルース・ベネディクトは、名著「菊と刀」でアメリカ文化人類学史上最初の日本文化論を著し、日本文化を恥の文化と位置づけました。それから六十五年がたって、失政に次ぐ失政を重ねながら、地位に異常な執着を見せ、みずからの延命のためだけに首相の座に居座り続ける恥知らずな日本の首相を見たときに、ベネディクトはどのように感じるでしょうか。

 歴史の審判で恥知らずな史上最低の首相との烙印が押される前に、一分でも一秒でも早く、潔く身を処すべきであると最後に申し上げ、私の代表質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 佐藤茂樹議員の御質問にお答えを申し上げます。

 まず最初に、この法案について、私が一定のめどとした項目に入っていないのは重要性を感じていないからではないかという御指摘をいただきましたが、これは全く、何か勘違いをされているのではないでしょうか。

 つまりは、私、重要性ということでいえば、この法律もそうですし、第三次補正もそうですし、来年度予算もそうです。つまり、そういった重要性の問題と私自身の出処進退に関する問題とは分けて論じているわけでありまして、この三項目に入れなかったから軽視をしているという、そういう御指摘は全く当たりません。

 御指摘のような、被災者、原発被害者の救済のみならず、被災地の復旧復興といった問題は、当然のことですが国政の最重要課題であり、全力で取り組んでおります。

 原子力事故の賠償に全力を尽くすべきことも喫緊の課題であることは論をまちません。また、これ以外にも多くの重要課題があるわけでありまして、ぜひとも各党各会派の御協力をお願いして、この法案もぜひ早急に成立をさせていただきたい、このようにお願い申し上げます。

 ストレステストの位置づけに係る統一見解を示すべきとの御質問をいただきました。

 私は、今回の事故があってから、それまで原子力というものに考えていた私自身の考え方も、率直に申し上げて、変わってまいりました。かつては、安全性をしっかり確認すれば原子力をもっと活用するということも十分にあり得るという立場で行動してまいりましたが、今回の大きな事故を踏まえて、これまでのようなレベルでの安全性という考え方だけでは不十分ではないか、そこで、これから原子力行政のあり方なども含めて抜本的に新しい方向性を示していく必要がある、このことをこれからの大きな課題として取り組む必要がある、このように考えているわけであります。

 今回の原発事故の発生という事態を踏まえますと、多くの国民や住民は、原子力発電所の再稼働についても、これまでの原子力安全・保安院による安全評価だけでは十分ではないと感じられているのではないでしょうか。原子力発電所の安全性のさらなる向上と、国民、住民の方々の安心、信頼の確保のため、原子力安全委員会も関与する形で新しいルールづくりを進めるべきと考えております。

 こうした状況を踏まえて、政府において、欧州諸国でも行われることになりましたストレステストを参考に、原子力安全委員会も関与する中で、我が国の原子力発電所に関する総合的な安全評価を行うことを考えていただいているところであります。このため、具体的なルール、手続等について、海江田大臣と細野大臣に検討をお願いいたしております。

 次に、原子力政策と機構法案との関係についての御質問をいただきました。

 今回の事故を受けて、エネルギー基本計画や原子力安全行政について、先ほども申し上げましたように、これまで考えていた水準の安全性ということだけでは不十分だ、そういった意味で原子力政策の根幹のあり方を見直す必要がある、こういう姿勢で取り組んでまいりたいと思っております。

 原子力については、今回の事故の検証を踏まえ、安全性の確保のための抜本対策を講じてまいります。他方、再生可能エネルギーについては、導入を抜本的に拡大し、基幹的エネルギーとしていくことを目指します。

 こうした点を含め、エネルギー政策については、最終的にはエネルギーのあり方は社会のあり方そのものを決めるわけでありますから、そのエネルギー政策の選択も、最終的には国民がそのあり方を選択していくべき課題だと思っております。

 なお、原子力損害賠償支援機構法案は、原子力損害賠償の適切な実施に向けた体制を早急に整備すべく、現在の制度のもとで必要な措置を講じるものであり、今後の原子力政策の進め方をあらかじめ何か決めてしまう、そういった性格のものではない、このように認識をいたしております。

 次に、ロードマップの現状認識と見直しについての御質問をいただきました。

 四月の十七日に東京電力がまとめました道筋に基づく事故収束に向けた取り組みについては、循環冷却システムの構築など、一つ一つ着実に実現しており、成果が上がってきているものと認識しております。

 道筋において目標とされている、放射線量が着実に減少傾向となっている状況がありますステップ1については、まだ窒素封入が終わっていない炉もありますけれども、ほぼ当初の予定どおり七月中旬までにはステップ1が達成できる、このように考えており、政府としても引き続き全力で取り組んでまいります。

 次に、野党が提出された国による仮払い法案について御質問をいただきました。

 今回の原子力事故により被害を受けた方々が迅速かつ適切に賠償を受けられることが重要です。野党の皆さんが提出されている国による仮払い法案については、東京電力が進めている仮払いの動きを生かしつつ、被害者救済をさらに加速するにはどうすることが最も効果的かという観点から、国会でよく御議論をいただきたいと考えております。

 いずれにせよ、政府としては、東京電力による迅速かつ適切な賠償に万全を期するためにも、原子力損害賠償支援機構法案の早期成立が不可欠である、このように考えております。

 次に、原子力損害賠償法の解釈についての御質問をいただきました。

 原子力損害賠償法において原子力事業者を免責とする「異常に巨大な天災地変」については、昭和三十六年の法案提出時の国会審議において、人類の予想していないような大きなものであり、全く想像を絶するような事態であるなどと説明をされております。これは、原子力事業者に責任を負わせることが余りにも過酷なそのような場合以外は原子力事業者を免責しないという趣旨であると理解をいたしております。

 このため、政府としては、今回の福島原子力発電所の事故の賠償については、この規定を適用せず、東京電力が責任を負うことを前提に対応を進めてきているところであります。

 次に、原子力損害賠償法の見直しについての御質問をいただきました。

 原子力損害賠償支援機構法案は、一義的な賠償責任は東京電力が負うことを前提に、原子力事業者と共同して原子力政策を推進してきた国の社会的責務を認識しつつ、原子力損害賠償法に基づき、東京電力に対する支援を行うものであります。

 原賠法の見直しについては、政府としましては、まずは、事態の収束、被害者の救済に全力を投じるべきであり、その後、今般提出した原子力損害賠償支援機構法案の附則にあるとおり、原子力損害の賠償の実施の状況や原子力損害に係る政府の援助のあり方などについての検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずる必要がある、このように考えております。

 次に、損害賠償に関する国の責任の認識に関する御質問をいただきました。

 今般の事故に関する原子力損害賠償法上の賠償責任は、一義的に東京電力が負うべきものであります。他方、原子力事業者と共同して原子力政策を推進してきた国の社会的責務を踏まえつつ、東京電力による損害賠償を支援すべく、本法等を通じた支援を行うことといたしております。

 東京電力の法的整理についての御質問をいただきました。

 仮に東京電力の法的整理が行われた場合には、被害者の方々の賠償債権や事故処理に当たる事業者の取引債権の完全な履行が不確実になるおそれがあり、そういった観点から、こうした法的処理ということについて、適切ではないと考えたところであります。

 今後、東京電力については、最大限の経営合理化と経費削減を行いながら、被害者への迅速かつ適切な賠償、福島原子力発電所の状態の安定化及び事故処理に関係する事業者等への悪影響の回避、電力の安定供給を行っていく必要があると考えております。

 また、本法案の枠組みにより東京電力を支援するに当たっては、経営責任の明確化のための方策、東京電力による株主を含む関係者に対する協力の要請などについて特別事業計画に記載するよう求めることといたしております。また、当計画の認定に当たっては、東京電力が経営の合理化により賠償資金を確保するため最大限の努力を尽くすことが必要だと考えております。

 東京電力以外の原子力事業者による負担金の拠出に関する御質問をいただきました。

 今回の支援の枠組みは、原子力事故に対応するため、原子力事業者の相互扶助の考え方をとっているものであります。大規模な原子力事故には一事業者で対応するには困難が予想されるため、相互扶助のための負担を原子力発電を行っていく上でのコストと考え、枠組みを構成しているところであります。

 本法案は、巨額の損害賠償を負う可能性のある原子力事業者による相互扶助のもと、損害賠償の実施と電力の安定供給を可能とさせるものであり、本法案の対象である原子力事業者は、将来生じる事故のみならず、既に起こった事故であっても、現に対応の困難さに直面しているものであるならば支援の対象とすべきものと考えたところであります。

 賠償にかかる費用負担についての御質問をいただきました。

 各電力会社の負担金は電気料金の原価に含まれるものではありますが、各社の経営効率化努力により国民負担が最小化されるべきものと考えております。

 また、料金の値上げについては、各電力会社の経営判断事項ではありますが、実際に上昇するかどうか現時点では判断できませんが、値上げの申請があれば、政府として厳格に審査を行ってまいります。

 次に、適切な節電啓発、計画停電、電力の安定供給についての御質問をいただきました。

 政府としても、節電啓発に当たって熱中症等への配慮が必要だということを認識いたしており、政府が提示した家庭の節電対策メニューの中でも熱中症等に気をつけるよう明記するとともに、テレビコマーシャル等においても国民の皆様の注意喚起に努めております。

 今後とも、過度の節電による熱中症等の健康被害の回避に配慮しながら節電啓発活動を進めてまいりたいと思います。

 また、計画停電は、東京電力及び東北電力管内において既に不実施が原則の状態に移行しておりますが、引き続き、計画停電回避のため、需給両面からしっかりと対策を講じてまいります。

 さらに、電力の安定供給に向けては、電力会社によるさらなる供給力の積み増しを政府として最大限支援してまいる所存であります。

 終わりのところでいろいろと御指摘をいただきました。

 何か私が、被災地の方々や原発被害者に目を向けていないとか、寄り添う心を持ち合わせていないというふうに一方的に決めつけられておりますけれども、私は、そうした皆さんのことを忘れたことは一度もありません。

 また、失政に次ぐ失政というような御指摘もいただきましたけれども、例えば今回の原発事故については、現在政権を担っている私自身あるいは我が党に大きな責任があることは言うまでもありませんけれども、長年与党であった公明党の皆さんにも、そうした責任は、少なくともその一端はあるわけでありまして、他人にすべての失政を押しつけてその責任を免れようとすることこそ、私は、恥の文化として、反する行動だということを申し上げ、私の答弁とさせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 佐藤茂樹議員にお答えをいたします。

 ストレステストの位置づけに係る統一見解を示すべきとの御質問をいただきました。

 原子力発電所の安全性については、通常の法令上の確認に加え、今般の事故を踏まえ、緊急安全対策等を講じ、安全性のチェックを行ってまいりました。しかしながら、国民、住民の方々に十分な理解が得られているとは言いがたい状況にあるのも事実でございます。

 こうした状況を踏まえ、細野大臣とも相談し、欧州各国で行われることとなったストレステストを参考に、我が国の原子力発電所に関する総合的な安全評価を行うことを考えております。原子力安全委員会の意見なども踏まえ、今後、具体的内容について検討してまいります。

 次に、負担金の額及び負担金率に関して御質問をいただきました。

 すべての原子力事業者が毎年負担する一般負担金の総額や負担率については、事業者の規模や内容等の事情を考慮し算定されることになります。

 一方、特別負担金は、特別資金援助を受ける原子力事業者が、特別資金援助の実施に伴う財政負担を埋め合わせる期間、一般負担金に加えて支払うものであり、収支の状況に照らし、電気の安定供給等に係る事業の円滑な運営に支障を来したりするおそれのない範囲で、できるだけ高額の負担を求めるものであります。

 これらの負担金の具体的な水準等につきましては、今申し上げた基準に基づき、今後、適切に定めていくことになります。

 次に、賠償に係る国民負担に関する御質問をいただきました。

 本法案の枠組みにおいて東京電力が支払う特別負担金は、東京電力の経営合理化努力を通じて捻出されるべきものであることから、特別負担金により料金が値上げされることはございません。

 他方、機構による制度運営のため各電力会社が支払う一般負担金については、原子力発電に伴うコストとして電気料金の原価に含まれるものであります。

 ただし、電気料金の値上げについては、最大限の経営効率化努力を行った上での各社の経営判断の事項であり、実際に料金値上がりについて現時点で判断することはできませんが、仮に値上げの申請が出された場合には、経済産業大臣の認可が必要になりますので、厳格に審査を行い、国民負担を極小化したいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣細野豪志君登壇〕

国務大臣(細野豪志君) 佐藤議員より御質問をいただきました。

 事故の収束に向けた取り組みの現状、さらには東京電力のロードマップの見直しの可能性についての御質問でございます。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故の収束に向けた取り組みは、四月十七日に東京電力が公表したいわゆる道筋に基づいて、政府と東京電力が一体となって取り組んでまいりました。

 今月中旬、ステップ1からステップ2への移行という重大な時期を迎え、改めて関係者の力を結集し、一刻も早い事故の収束を実現する必要がございます。ステップ2への道筋を進めるに当たり、政府が一歩前に出るべきであると私は考えます。そこで、今回改定する道筋は、政府と東京電力が一体となって取りまとめ、統合対策室として公表することとしたいと思います。

 事故の収束に向けた具体的な取り組みは、さまざまなトラブルと試行錯誤の連続ではありましたけれども、佐藤議員も御指摘をされたとおり、現場の大変な努力の結果として、多くの困難を乗り越え、循環注水冷却システムの構築などの成果を上げてきました。今後も、個々の具体的な対策のあり方、設計や作業内容の見直し、スケジュールの変更などは生じることが考えられますけれども、そのような障害は必ず解決できるものと考えております。

 したがって、道筋に示す事故収束に向けた考え方やスケジュールなどの基本的な枠組みについて、見直す必要はないと認識しております。

 政府としては、道筋においてステップ1の目標とされている、放射線量が着実に減少傾向となっているという状態を、当初の予定どおり七月中旬までに達成できるよう、引き続き全力で取り組んでまいります。

 その際、かぎとなるのは、現場の作業環境であります。政府としても、作業員の放射線管理や医療体制の強化を最優先課題として取り組んでまいりたいと思います。

 議員各位、さらには国民の皆さんにおかれましても、現場の皆さんの献身的な努力があることをぜひとも御理解いただきまして、御支援を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 吉井英勝君。

    〔吉井英勝君登壇〕

吉井英勝君 私は、日本共産党を代表して、原子力損害賠償支援機構法案について質問いたします。(拍手)

 三月十一日に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故は、チェルノブイリ原発事故に並ぶ史上最悪の大事故であり、いまだに収束していません。そのもとで、大気、水、土壌、海洋などを放射能で汚染し、福島県民初め日本国民の生命、健康、財産に甚大な被害を及ぼし続けています。

 まず、今回の原発災害に対する被害補償を考える上ではっきりさせておかなければならないのは、なぜ原発事故が起きたのか、その原因と責任の問題であります。

 そもそも、今回の福島第一原発事故は、想定外の事故ではありません。私は二〇〇五年以降、国会質問などを通じて、政府と東電に対して原発の安全性について具体的に警告してまいりました。全電源喪失が起こり、今回明らかになった炉心溶融に至ることも指摘し続けてまいりました。ところが、東電も政府も、我が国の原発は多重防護による安全対策によってそうした事態は起こり得ないとしてきたのであります。しかし、あってはならないとしてきた事故は現実に起きました。

 菅総理は、四月二十六日の予算委員会で、私の質問に対して、これまでの政府の対応は間違いだったと答弁しました。総理、福島第一原発事故は、安全神話にどっぷりつかり、警告を無視して安全対策を怠ってきた東京電力と、原発推進の国策を強引に推し進めてきた歴代政府によってもたらされた人災であることをはっきり認めるべきではありませんか。

 この認識に立てば、東京電力は全面的な賠償に第一義的責任を果たさなければなりません。「異常に巨大な天災地変」だなどといってみずからの賠償責任の免責を求めるなど、言語道断であります。断じて認めることはできないと思いますが、総理の認識を伺います。

 次に、全面賠償についてです。

 東電に迅速で全面的な賠償を実施させる、これが被害賠償における国の責任の基本であります。原発事故がなかった場合に得られるであろう収入と現実の収入との差額のすべてを賠償する、事故に起因するすべての被害を対象にする、全面賠償の原則を国として明確にするべきです。総理の答弁を求めます。

 地理的に二十キロ、三十キロという機械的な線引きで被害者を切り捨てないこと。また、被害の実態は極めて多様であり、目に見えない放射能汚染と内部被曝を含む健康被害、生産、出荷、販売ができなくなったり自殺者まで出した農林水産業、加工業、中小商工業と観光業の莫大な営業損害、いわゆる風評被害なども含めて対象とすること。自主避難を含め、避難によってこうむったあらゆる被害、物的・精神的被害も当然対象とするべきではありませんか。

 ところが、今、政府の紛争審査会で賠償の基準とする指針づくりが行われていますが、その内容は、対象を二十キロ、三十キロ圏内に限定するなど、全く被害の実態にそぐわない不十分なものです。

 なぜ被害を全面賠償する指針が出せないのか。指針づくりを行う審査会委員は、中立の建前をとりながら、九人中三人が、加害者である東電を含む電力会社がつくった日本エネルギー法研究所に所属し関係する法律家で構成されています。被害者の委員は一人も入っていません。

 賠償の基準づくりの協議に被害の当事者である住民の立場の人を入れて、被害の実態を十分踏まえ、被害者が納得できる基準づくりができるよう、審査会のあり方を見直すべきではありませんか。

 現行賠償法は、その目的から「原子力事業の健全な発達」の文言を外し、被害者救済に徹する法制度に改めるべきであります。

 次に、東電に第一義的な賠償責任をどう果たさせるかということであります。

 そのためには、東電の全資産を可能な限り賠償に充てさせ切ることです。賠償金額は、事故そのものが進行中ですが、少なくとも数兆円から十数兆円単位と見込まれています。東電の純資産は一兆六千億円ですから、清水前社長が早晩資金ショートすると認めており、東電は、債務超過が見込まれる、実質破綻していると見るべきではないでしょうか。総理の認識を伺います。

 したがって、破綻企業であるなら、通常、法的整理によって、賠償原資として、東電の資産、株主、金融債権者などステークホルダー、利害関係者に最大限の負担を求めるのが筋ではありませんか。

 ところが、本法案は、政府と支援機構が何度でも資金援助し、東電を債務超過にさせないという仕組みであり、東電の存続を絶対の条件にした異様な救済策、東電救済スキームとなっています。法案は特別事業計画で関係者への協力要請を規定していますが、なぜ株主責任やメガバンクなどに債権放棄を求めないのか。枝野官房長官も、当初は、そうしないと国民の理解は得られないと会見で述べていたではありませんか。

 法案はまた、賠償資金として、交付国債などの公的資金と最終的には税金の投入も予定していますが、これは現在の地域独占体制と総括原価方式のもとでは、結局、その返済の原資は、電力会社の事業収入、すなわち電気代です。一体、国民の電気料金は幾ら値上がりするのか、その額、規模、期間などの全体像について、責任ある試算を示していただきたいと思います。

 総理、機構法案は、結局、三井住友銀行など三メガバンクと経産省、財務省がつくったシナリオに基づく、国民負担によって東電の株式上場を維持し、大株主で巨額の金融債権を持つメガバンク救済のスキームではありませんか。これでは、到底国民の理解を得ることはできないものであります。

 国民に安易に賠償負担を求めることは許されません。賠償財源として、東京電力及び電力業界のいわゆる埋蔵金、内部留保を活用すべきであります。既に積み立てられている使用済み燃料再処理等引当金二兆九千億円を取り崩すことを初め、原発推進のための核燃料再処理費用で今後も電気代から積み立てられる約十六兆円を活用して、賠償財源に充てるべきではありませんか。

 もう一つ大事な問題は、原子炉メーカーなどに責任をとらせることであります。

 事故を起こした福島第一原発は、アメリカGE社製のマーク1を原型としています。今回、欠陥品であったことが最悪の形で証明されたわけですから、これを納入したメーカーなど関係事業者に賠償責任を問うべきではありませんか。

 そもそも我が国の実用原発は、戦後、日米原子力協定のもとで、日米の原子力産業によって導入、推進されてきました。東芝、日立、三菱重工、GEといった原子炉メーカーと、鉄鋼、セメント、ゼネコン、大商社、メガバンクなど、これらを中心として形成されてきた原発利益共同体ともいうべき財界中枢の利害関係者にその社会的責任を果たすよう求めることを強く主張するものであります。

 最後に、今回の事故を踏まえるならば、エネルギー政策の抜本転換は不可避です。ところが、政府は、昨年六月に決定した原発十四基を新増設するというエネルギー基本計画を見直すと言いながら、いまだにその方向すら示していないのはなぜですか。総理の答弁を求めます。

 我が党は、原発からの撤退、再生可能エネルギーの本格的導入、爆発的普及を提言しています。この方向こそ求められていることを強調して、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 吉井議員にお答えを申し上げます。

 事故の原因と賠償責任についての御質問にお答えします。

 今回の原子力事故、原発事故については、地震や津波に関する想定が不十分だったことなど、これまでの原子力安全行政が十分でなく、間違っていたということは認めざるを得ない、このように考えます。原子力に関する安全神話が政府にも事業者にもあったことを謙虚に反省すべきと考えます。

 今後、事故原因等の徹底的な検証を踏まえ、安全性確保のための抜本的対策を講じてまいります。

 今回の事故により生ずる原子力損害の賠償については、原子力損害賠償法によって、一義的には、原子力事業者である東京電力がその責任を負うべきものと考えております。しかしながら、政府としても、被災者の方々に対する賠償が適切かつ迅速に行われるよう、原子力事業者に対し、必要な援助はしっかりと行ってまいります。

 次に、原子力損害の賠償についての御質問をいただきました。

 今回の原子力発電所の事故により生ずる損害については、事故との相当因果関係が認められるものについては、原子力損害賠償法に基づき、適切な賠償が行われることになっております。

 被害者の迅速、公平、適正な救済を図るため、法律、医療、原子力工学の学識経験者で構成される原子力損害賠償紛争審査会は、公正中立な立場から、賠償すべき損害の範囲等について、可能なものから順次指針として示してきたところであります。

 今後、これまで取り扱われていない被害に関しても審議を進め、御指摘のように、被害者である住民の方々の声にも耳を傾けながら被害の実態調査を行い、今月中にも原子力損害の全体像を示す中間指針を取りまとめてまいりたい、そういう予定になっております。

 次に、原子力損害賠償法の改正について御質問いただきました。

 被害者の保護を万全なものとするためにも、原子力事業が健全に事業運営されることが重要であり、御指摘のようなことは考えてはおりません。

 次に、東京電力の経営状態についての認識と法的整理についての御質問をいただきました。

 事故処理が終わらず、損害賠償の総額や見通しもいまだ明らかでない中、仮に東京電力の法的整理を行うこととした場合には、まず、迅速かつ適切な損害賠償の実施とか、原子力発電所の安定化、及び事故処理に関係する事業者等への悪影響の回避とか、国民生活に不可欠な電力の安定供給、こういった三つの目的の同時達成を果たすことが困難となるという観点から、適切ではないと考えたわけであります。

 なお、本法案の枠組みにより東京電力を支援するに当たっては、経営責任の明確化のための方策、東京電力による株主を含む関係者に対する協力の要請等について特別事業計画に記載するよう求めることといたしております。また、当計画の認定に当たっては、東京電力が経営の合理化により賠償資金を確保するため最大限の努力を尽くすことを要件といたしております。

 次に、関係者への協力要請に関する質問をいただきました。

 本法案に基づく今回の支援は、東京電力の救済ではなく、迅速かつ適切な損害賠償の実施に万全を期し、事故処理に関係する事業者等への悪影響を回避することなどを目的とするものであります。

 本法案において交付国債を通じた政府の特別な支援を行うに当たっては、株主や債権者も含めて、東京電力によるすべてのステークホルダーに対する協力の要請が前提となっており、主務大臣がその内容について厳正に審査を行うこととなっております。

 また、法的整理については、賠償総額も明らかでない中、現実的に更生計画が認可されることは困難であるほか、被害者の方々の賠償債権や、事故処理に関係する事業者が有する東京電力への取引債権が損なわれることなどにより完全な損害賠償が行われないことになるおそれが高いため、適切ではないと判断いたしました。

 いずれにしても、政府としては、国民の理解を得るべく、国民負担の極小化を図ることを基本に、東京電力による着実な賠償が実施されるよう取り組んでまいります。

 次に、電力料金についてお答えを申し上げます。

 各電力会社の負担金は電力料金の原価に含まれるものではありますけれども、各社の経営効率化努力により国民負担が最小化されるべきものと考えております。

 また、料金の値上げについては、各電力会社の経営判断事項ではありますが、そして、実際に上昇するかどうかは現時点では判断できませんけれども、値上げの申請があれば、政府としては厳格に審査を行ってまいります。

 次に、法案とメガバンクの救済との関係について御質問をいただきました。

 本法案は、メガバンクの救済ではなく、一、被害者への迅速かつ適切な損害賠償のための万全の措置、二、東京電力福島第一原子力発電所の状態の安定化、事故処理に関係する事業者等への悪影響の回避、三、電力の安定供給といったことのためのスキームであります。

 次に、賠償財源の検討についての御質問をいただきました。

 東京電力は、賠償原資を確保するため、資産の売却を含め最大限の努力を行うものと考えております。その際、御指摘のような資産については、その存在理由、趣旨、法的位置づけ等を踏まえて、売却や取り崩しの是非を慎重に判断すべきと考えております。

 次に、メーカー等の利害関係者の責任についての御質問をいただきました。

 原子力損害賠償法が定める原子力損害については、他のメーカー等が事故の原因に関与している場合を含め、原子力事業者のみが賠償責任を負うという責任集中の仕組みがとられております。

 こうした中で、原子炉メーカーなど産業界は、社会的責任を認識しつつ、これまで、避難住民の方々に対して宿舎の確保や雇用機会の維持確保に努めるなど、協力を進めてきていると承知しております。

 今回の原子力事故の収束や被害を受けた方々に対する救済など、産業界を含め関係者が一丸となって取り組むことが重要だと考えております。

 次に、エネルギー基本計画見直しについての御質問をいただきました。

 現行のエネルギー基本計画では、二〇三〇年に原子力発電を総発電電力量の五三%とする目標が定められておりましたが、これを含めて根本から見直すことといたしており、原子力への大幅な依存ではなく、再生可能エネルギーを基幹的エネルギーとしていく位置づけ、また、省エネルギーへの取り組みの強化、こういった方向にかじを切ってまいりたいと思っております。この方向に沿って、幅広く国民各層の御意見を伺いながら、しっかりと検討してまいります。

 なお、残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 吉井英勝議員にお答えいたします。

 今回の事故は人災であるとの御指摘をいただきました。

 我が国は、エネルギー安全保障の観点から、長年にわたり原子力を基幹電源とするエネルギー政策を進めてまいりましたが、地震や津波に伴う今回の事故をあらかじめ想定し十分な対策を準備できなかったことは事実で、深刻な反省をしなければなりません。

 その上で、今後、事故原因について徹底的な検証を行い、安全確保のための抜本的対策を講じてまいります。(拍手)

    〔国務大臣細野豪志君登壇〕

国務大臣(細野豪志君) 事故の原因と責任について御質問をいただきました。

 吉井議員が御指摘をされたとおり、我が国の原子力安全対策には大きな問題がありました。これは、当初から事故に対応する中で、私自身がだれよりも痛感をしております。

 政府としては、こうした反省の上に立って、まずは、一刻も早い事故の収束に向けて全力で取り組んでおるところであります。

 また、事故から徹底的に教訓を酌み取ることも大切であると考えております。先般IAEAに提出いたしました政府の報告書の中では、私自身が総括をする中で、二十八項目にわたる教訓を導き出しております。

 今後、我が国の原子力安全対策は、根本的な見直しが不可避であると考えております。特に、今回のような事故の再発防止の一環として、原子力安全規制に関する行政体制の強化を図ることが重要な課題の一つであります。

 今後、原子力安全・保安院を経済産業省から独立させ、一元的な原子力安全規制機関の創設を視野に入れ、新たな組織や制度の青写真をできるだけ早期に示したいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣高木義明君登壇〕

国務大臣(高木義明君) 吉井議員から四つの質問がありました。

 最初に、原子力損害賠償の範囲についてのお尋ねであります。

 今回の東京電力福島原発の事故により生じる損害については、事故との相当因果関係が認められるものは、原子力損害賠償法に基づいて、適切な補償が行われることとなっております。この相当因果関係の考え方につきましては、原子力損害賠償紛争審査会が策定する、原子力損害の範囲の判定等の指針に示されていくことになります。

 次に、原子力損害賠償審査会の策定する指針についてのお尋ねがございました。

 この指針については、被害者の迅速な救済を図るため、可能なものから順次策定をされています。これまでの指針においては、政府の指示による避難や農作物の出荷停止などにより生じる損害、避難生活等に伴う精神的損害、いわゆる風評被害のうち、差し当たって相当因果関係が認められる損害などが賠償すべき対象として示されています。

 今後、被害の詳細な調査結果を踏まえた上で、これまでの指針で対象とされなかった被害について、今月中に、原子力損害の全体像を示した中間指針として取りまとめていただきたいと考えております。

 次に、原子力損害賠償紛争審査会のあり方の見直しのお尋ねであります。

 今回の事故については、被害者の迅速、公平、適切な救済を図るため、法律、医療、原子力等の学識経験者で構成される原子力損害賠償紛争審査会が、公正中立の立場から、賠償すべき損害の範囲等について指針として示してきました。この指針の策定に当たりましては、地元の自治体や関係団体等からのヒアリング、十六分野七十六名の専門委員による詳細な調査など、被害の実態の把握に努めているところであります。

 原子力損害賠償紛争審査会は、審議の内容を全面的に公開するなど、国民の理解を得つつ、その公正中立な運営がなされていると承知をしております。

 このように、原子力損害賠償紛争審査会は適切にその機能を果たしており、そのあり方の見直しは考えておりません。

 最後に、原賠法の目的の改正についてのお尋ねでございます。

 政府としては、まず、事態の収束、被害者の救済に全力を投じるべきであり、その後、今般提出をした原子力損害賠償支援機構法案の附則にあるとおり、原子力損害の賠償の実施状況、原子力損害に係る政府の援助のあり方等について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずる必要があると考えておりますが、被害者の保護を万全なものとするためにも、原子力事業が健全に運営されることが原賠法の重要な柱であり、直ちに見直すことは考えておりません。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 吉泉秀男君。

    〔吉泉秀男君登壇〕

吉泉秀男君 社会民主党の吉泉秀男です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表し、提案をされている原子力損害賠償支援機構法案について質問させていただきます。(拍手)

 冒頭、特定避難勧奨地点の指定について、苦言を呈したいと存じます。

 総理、これは一体何なのですか。隣の家は避難地点に指定をされましたけれども、自分の家は指定されない。放射能汚染が拡大をしている中で、こんなことがあり得るんですか。隣同士でございます。しかも、指定の可否は郵送で知らされるだけ。理由は何も示されていない。こんなことが許されますか。

 指定されなかった地点での住民や子供にも生活があります。一地点にじっとしているわけではないわけです。地域コミュニティーのことなど、考慮もされないんですか。こんな非常識で官僚的なやり方が、総理のやり方なんですか。

 住民は怒っております。直ちに見直して、もっと血の通った施策をお願い申し上げさせていただきます。

 さて、この法案をつくる過程で取り交わされた原子力損害賠償に係る東電と海江田大臣の確認事項、この中で、迅速かつ適正な賠償を確実に実施する、こういう確認をしてから、はや三カ月になろうとしております。しかし、被害者に支払われたのは、わずか五百億円。余りにも少額であり、遅過ぎます。原子力損害賠償審査会も、一次、二次、二次追補と、指針をまとめているわけであります。ましてや仮払いでございます。

 東電の二十二年度決算で災害特別損失一兆百七十五億円を計上しておりますけれども、この額に、損害賠償に見合う損失計上は一切ありません。私には、東電に誠意があるとは思えません。被害者対策は二の次としか思っていないのではないかとしか受け取れないのでございます。

 また、原子力損害賠償責任保険一千二百億円、これを政府はいつ支払うのですか。このことも賠償が遅くなっている一要因だろうというふうに思っております。賠償を怠っている東電の姿勢、そしてそれを許している政府の対応に対して、被害者の怒りははかり知れないものがございます。

 総理はこれまで、損害賠償にどうかかわり、どう対応してきたのか、お伺いをさせていただきます。

 次に、支援機構について質問をさせていただきます。

 私は、損害賠償については、まず東電が現有資産処分も含めて賠償を行う、これが大前提だろうというふうに思っています。そして、不足する場合は、上限を定めず、国が援助する義務がある、こういうふうに思っております。

 その中で、まず、支援機構の出資総額、これは現段階で幾らを予定しておるのか、そのうち政府の出資額は幾ら予定をしておるのか。

 二つ目として、機構の心臓部である運営委員会、これを八人以内というふうにされておりますけれども、だれが担うのか、委員の中立性は保たれるのか。また、五月にできた、東京電力に関する経営・財務調査委員会との関係はどう整理をするのでございましょうか。

 三点目。資金援助を交付国債で対応するとされておりますけれども、今年度の発行額はどのぐらいを予定しているのか、そして、被害者にいつ支払われようとしているのか。

 四つ目。機構は損害の賠償の資金確保のため東電の資産を購入できるとしておりますけれども、この資産には、送配電施設、この施設も当然含まれると解釈をしておりますけれども、どうなのか。

議長(横路孝弘君) 吉泉秀男君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。

吉泉秀男君(続) はい。

 原子力事業者が毎年機構に納付する負担金等々が出ております。今、出されました。

 最後に、焦点となっている玄海原発に関連して一言付言いたします。

 社民党は、定期点検中の原発の再稼働は、立地県と立地自治体だけで合意形成を図るのではなく、周辺の県や自治体、周辺の地域住民も含めて理解を得るべきであり、それができない場合は再稼働すべきではない、こういうふうに考えております。

 福島原発事故の事実を直視すべきでございます。このことを強く申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 吉泉秀男議員の御質問にお答えを申し上げます。

 まず、特定避難勧奨地点の指定についての御質問であります。

 避難区域の外に事故発生後一年間の積算線量が二十ミリシーベルトを超えると推定される地点が相当数存在しており、こうした地点を特定避難勧奨地点に設定し、居住する住民に対して注意喚起をするとともに、避難を支援しております。

 特定避難勧奨地点の設定に当たっては、特に妊婦や子供のいる世帯を考慮するなど、線量のみならず家族構成も考慮し、できるだけ柔軟に設定するよう配慮いたしております。

 また、該当する住民に避難の希望の有無を確認する調査を実施しているところです。

 不安を感じている住民がいらっしゃることは承知しており、今後とも、市町村と連携しながら、きめ細やかな説明、除染、モニタリングを実施することなどにより、地域の住民の方々の御理解を得られるよう努力してまいります。

 次に、東電及び政府の損害賠償への対応についての御質問をいただきました。

 今回の原子力事故により被害を受けられた方々が迅速かつ適切に賠償を受けられることが重要であります。

 現在、東京電力は、千人体制で仮払い補償金の支払いを実施しており、支払いのペースを加速し、これまで六百億円近くの仮払いを行うとともに、七月の五日には避難住民の方々への追加仮払いも決定をいたしております。

 また、原子力損害賠償補償契約に基づく補償金については、東京電力から補償金の支払いの請求があった場合には、請求内容について速やかに審査や調査を実施し補償金を支払うこととしており、二次補正予算案において計上したところであります。

 政府としては、四月末に原子力損害賠償紛争審査会を設置し、原子力損害の範囲の判定等の指針について、相当因果関係が明らかなものから順次策定していただくとともに、東京電力による迅速かつ適切な賠償に万全を期するために、原子力損害賠償支援機構法案を提出させていただいております。

 いずれにせよ、迅速、公平かつ適切な賠償が行われるよう、政府としましても東京電力に促してまいりたいと思います。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 吉泉秀男議員にお答えをいたします。

 まず、機構を設立するための出資額に関する御質問でございますが、機構の資本金としては総額百四十億円を想定しており、そのうち政府が出資する額として、二次補正予算に七十億円を計上することとしております。

 次に、機構の運営委員会の中立性の確保及び東京電力に関する経営・財務調査委員会との関係に関する御質問でございます。

 本法案では、運営委員会は、負担金の額や資金援助の実施等に係る議決を行うなど、機構における中心的な役割に位置づけられており、その委員は、電気事業、経済、金融、法律または会計に関して専門的な知識と経験を有する者から選ばれるものとしています。委員の任命の際には、厳正中立な立場の方の選任を行うなど、中立性を確保するつもりでございます。

 また、東京電力に関する経営・財務調査委員会は、本法案による支援に先立ち、東京電力の厳正な資産評価と徹底した経費の見直し等を行うため設置されたものであり、既に調査を開始しております。

 本法案に基づく特別事業計画の申請に当たって、機構は、この委員会の調査結果を活用し、東京電力の経営内容の徹底した見直し等を行うこととしております。

 次に、交付国債の発行額及び被害者への損害賠償の支払い時期に関する御質問でございます。

 二次補正予算においては、当面の損害賠償に十分備えるため、交付国債の発行限度額を二兆円とすることとしています。

 次に、機構が東京電力の資産を購入した場合に不良資産を抱え込むおそれがあるのではないか、また、資産には送配電施設も含むのかとの御質問でございます。

 機構による原子力事業者の保有する資産の買い取りは、迅速な賠償金支払いのための資金を確保させるためのものであります。

 具体的には、適切な資産評価がなされないおそれがある場合や速やかな売却が困難と判断される場合には、機構が適切な価格で買い取り、後に売却することを前提にしており、いたずらに不良資産を抱え込むことはございません。

 また、本法案の資産の買い取りの対象には、送配電施設も含めた原子力事業者が有するあらゆる資産が対象となります。

 最後に、原子力事業者が機構に納付する負担金に関する御質問でございます。

 すべての原子力事業者が毎年度負担する一般負担金の額について、現時点で具体的な金額は決まっておりません。今後決められることになります。

 また、特別負担金は、特別資金援助を受けた原子力事業者が、特別資金援助の実施に伴う財政負担を埋め合わせる期間、一般負担金に加えて支払うものであります。その金額は、当該事業者の収支の状況に照らし、電気の安定供給等に係る事業の円滑な運営の確保に支障を生じない限度において、できるだけ高額の負担を求めることとしております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 柿澤未途君。

    〔柿澤未途君登壇〕

柿澤未途君 ただいま上程されました、内閣提出、原子力損害賠償支援機構法案につきまして、みんなの党を代表して質問いたします。(拍手)

 この法案は、一言で言って、死に体内閣によるゾンビ企業救済法案であります。

 東京電力は、原発事故による被害の賠償債務を東電だけで支払うのは難しいとしています。民間企業の経営者が、債務の支払いができないと言う。そのことを言った時点で、東電は企業として破綻していると断定してよいのだと思います、債務が支払えないんですから。

 にもかかわらず、本法案では、事実上破綻をしている東電を企業として存続させ、法的な破綻処理では当然の株主責任も金融機関の貸し手責任も問われない、そのかわり、交付国債や電気料金の値上げで賠償資金を調達する、東電が起こした原発事故なのに、損害賠償のツケを国民に払わせるような内容になっております。

 なぜ法的破綻処理をとらないんですか。東電を企業として存続させるのが自己目的化しているからではありませんか。東電が企業として基本的に今の姿のまま存続をしていいと考えているのか、それが正しいことだと思っているのか、まずお答えください。

 そして、政府は、東電の資産売却やリストラがとことんまで行われていると考えているのでしょうか。

 原発事故の責任をとって引責辞任をした清水前社長に対して、五億円にも上るとされる退職金の支払いを当面は見送ると株主総会で言いましたが、これは、いずれは五億円を清水前社長に支払う、こういう意味なんでしょうか。そして、三月に労使交渉で決まっているからと、全社員に夏のボーナスを支給するというではありませんか。事故賠償のために国民負担を強いるような法案を政府に提出させておいて、こんな姿勢が許されるはずがありません。

 企業年金の問題も過去に取り上げましたが、東電の資産売却とリストラをどこまで求めるのか、今の極めて不十分な東電の姿勢を認め、許すのか、基本的な姿勢を伺います。

 東電の資産売却について伺います。

 東電には、送電網という巨大な資産があるではないですか。発電部門と配電を含む送電部門の発送電分離を国の方針として決定し、東電に送電網の売却を求める、それを賠償の原資にする、そうすれば、国民負担の最小化と電力事業の改革が同時に実現できるではありませんか。発送電分離を国の方針として今決定すべきと考えますが、見解を伺います。

 昨日の参議院予算委員会で、菅総理は、古賀茂明さんの件について、著書を読んで自分なりの知見を持ちたいと答弁をされました。ということは、菅総理が自分なりの知見を持つまでは古賀さんへの退職勧奨は凍結されるということであると理解をいたします。

 しかし、そもそも、再生可能エネルギーの拡大とそのための発送電分離をしなければならないと考えるなら、そのことを極めて強く主張し提言されている古賀さんに退職を求める必要がないと思います。このままなら、結局、菅総理は、電力改革に抵抗していると言われる経産省幹部の意向に従って、都合の悪い人物の排除に加担をしていると受けとめざるを得ません。

 電力改革に対する菅総理の覚悟を示す上で、一歩進んで、古賀さんに対する退職勧奨の撤回を海江田大臣に指示すべきであります。見解を伺います。

 次に、原発の運転再開について伺います。

 玄海原発を含めたいわゆるストレステストの実施について、菅総理と海江田大臣との間に決定的な食い違い、閣内不一致が生じております。もはや、どちらかがやめなければ、いや、どちらもやめなければ、立地自治体に対する説明の整合性も信頼関係も持ち得ない状況であると考えます。

 菅総理が言った、経産省と保安院が安全と言ったからといって国民は信用しないというのは、まさにそのとおりだと思います。しかし、昨日の菅総理の答弁のように、そこに原子力安全委員会を入れたからといって、そのことは何にも変わりません。総理官邸も含めた既存の国の機関すべてに疑いの目が投げかけられているのです。

 原発の安全性点検、ストレステストは、信頼の揺らいでいる国の機関が実施をするのではなく、国家行政をチェックする国会のもとに専門家を集め、客観性と信頼性を持った安全性点検を早急に進めるべきであります。

 そして、脱原発依存という、これまでのエネルギー政策の大転換を進めようとするなら、まさに私たちがこれから法案として提出をするような、原発の再稼働に関する住民投票、そしてエネルギー政策に関する国民投票が必要になるでしょう。国民、住民不在のまま、やらせメールとできレースで原発再開を決めていく、このようなことはあってはならないと考えます。

 一昨日の予算委員会でも解散の可能性についてお伺いをいたしましたが、原発再開の是非、エネルギー政策のあり方をめぐり総理自身が国民に信を問う可能性についてお伺いをして、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

内閣総理大臣(菅直人君) 柿澤議員にお答えします。

 東京電力の法的整理についての御質問をいただきました。

 現在、東京電力は、迅速かつ適切に損害賠償を実施するとともに、一刻も早く原子力発電所を安定化させることが求められております。このような中で、東京電力の法的整理が行われる場合、被害者の方々の賠償債権や事故処理に当たる事業者の取引債権の完全な履行が不確実になるおそれがあり、適切ではない、このように判断いたしました。

 発送電分離についての御質問をいただきました。

 発送電分離など電力事業形態のあり方を含む今後のエネルギー政策については、今回の事故原因について徹底的な検証を行い、その検証結果を踏まえて、国民各層の御意見を伺いながら予断なく議論を行ってまいりたいと考えております。

 次に、経産省古賀氏の退職勧奨についての御質問をいただきました。

 古賀氏の件については、経産省人事であるため、任命権者である経済産業大臣の判断のもとで行われるべきもの、このように承知をいたしております。

 原発の安全性点検、ストレステストの実施についての御質問をいただきました。

 原子力発電所の再稼働に関する安全性については、東京電力福島原子力発電所の事故の発生に伴い、現行法令に基づく原子力安全・保安院による安全性の確認だけでは国民、住民の方々に十分な理解が得られるとは言いがたい状況にある、このように認識をいたしております。

 こうした状況を踏まえ、政府においては、欧州諸国で行われることになったストレステストを参考に、原子力安全委員会も関与する中で、我が国の原子力発電所に関する総合的な安全評価を行うことを考えております。その内容が客観性と信頼性を有したものとなることは重要であり、現在、具体的なルール、手続等について、海江田大臣と細野大臣に検討をお願いいたしているところであります。

 次に、エネルギー政策等に関する国民投票についてお尋ねがありました。

 原子力を含む今後の我が国のエネルギー政策のあり方については、いかなる形にせよ、国民各層の御意見を幅広く伺いながら検討していくことが重要だと考えております。

 今回の原発事故の発生という事態を踏まえると、多くの国民や住民は、こういったことについて関心を高めており、また、そうしたことを何らかの形で意思表示をしていく機会を待っているもの、このように思っております。

 また、今回の原発事故の発生という事態を踏まえると、多くの国民や住民は、原子力発電所の再稼働についても、これまでの原子力安全・保安院による安全評価だけでは十分でないと感じられていると思います。原子力発電所の安全性のさらなる向上と、国民、住民の方々の安心、信頼確保のため、原子力安全委員会も関与する形で新しいルールづくりを進めるべきと考えており、先ほども申し上げたように、そうした方向での検討をお願いいたしております。

 最後に、エネルギー政策で信を問うかとの御質問がありました。

 ただいま申しましたように、エネルギー政策というものは、社会のあり方そのものを規定するものでありまして、国民の重大な関心事であることは言うまでもありません。そういった意味で、国民の意思に基づいて将来のエネルギーのあり方が決められるということは好ましいというふうには思いますが、何かこのことで特に私が信を問うとか問わないとか、そういうことについては一切考えておりません。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 柿澤未途議員にお答えいたします。

 東京電力の退職金の支払い、資産売却、リストラの姿勢に関する御質問をいただきました。

 今回の法案に基づく政府による支援は、東京電力による最大限の経営合理化と経費削減などを大前提としており、国民の理解を得るためにも、東京電力に対し、御指摘の点も含め、聖域なく最大限の努力を求めております。

 なお、東京電力の取り組みが十分なものであるかについては、東京電力に関する経営・財務調査委員会においてしっかりと調査し、これを踏まえ、政府として対応してまいりたいと考えております。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   菅  直人君

       文部科学大臣   高木 義明君

       厚生労働大臣   細川 律夫君

       経済産業大臣

       国務大臣     海江田万里君

       国務大臣     細野 豪志君

 出席内閣官房副長官及び大臣政務官

       内閣官房副長官  仙谷 由人君

       内閣府大臣政務官 和田 隆志君


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