衆議院

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第32号 平成23年7月14日(木曜日)

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平成二十三年七月十四日(木曜日)

    ―――――――――――――

  平成二十三年七月十四日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙

 災害弔慰金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案(内閣提出)及び電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙

議長(横路孝弘君) 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙を行います。

小宮山泰子君 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(横路孝弘君) 小宮山泰子さんの動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、日本ユネスコ国内委員会委員に加藤公一君を指名いたします。

     ――――◇―――――

小宮山泰子君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 災害対策特別委員長提出、災害弔慰金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(横路孝弘君) 小宮山泰子さんの動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 災害弔慰金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

議長(横路孝弘君) 災害弔慰金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。災害対策特別委員長吉田おさむ君。

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 災害弔慰金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔吉田おさむ君登壇〕

吉田おさむ君 ただいま議題となりました災害弔慰金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 昭和四十八年の第七十一回国会におきまして、災害弔慰金の支給及び災害援護資金の貸付制度が議員立法により発足し、いわゆる個人災害に対する救済措置が始まりました。その後、数次にわたる災害弔慰金の支給限度額の引き上げ及び災害見舞金制度の新設等の改正を経て、今日に至っております。

 災害弔慰金は、自然災害により死亡した者の遺族に対し支給を行うとされており、また、遺族の範囲は、配偶者、子、父母、孫または祖父母とされております。

 しかしながら、最近における社会情勢と家族のあり方の変化により、兄弟姉妹が同一の世帯で支え合いながら生活をしたり生計を維持する家族形態が少なからず出てきております。

 今般の東日本大震災においても、兄弟姉妹で世帯を構成している方々で犠牲に遭われた方もおいでになります。兄弟姉妹であっても、被災により肉親を失った心の痛みは、何ら異なるところはありません。また、関係者からも、他の制度に基づく遺族給付金の支給範囲と格差が生じているとの指摘もあるところであります。

 このようなことから、本案は、遺族の範囲に、他の遺族のいずれもが存しない場合に、死亡した者の死亡当時、その者と同居し、または生計を同じくしていた兄弟姉妹を加えようとするものであります。

 なお、この法律は、公布の日から施行し、改正後の遺族の範囲に関する規定は、平成二十三年三月十一日以後に生じた災害に係る災害弔慰金について適用するものであります。

 以上が、本法律案の提案の趣旨及びその内容であります。

 本案は、本十四日の災害対策特別委員会において、内閣の意見を聴取した後、全会一致をもって成案と決定し、これを委員会提出法律案とすることに決したものであります。

 何とぞ議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案(内閣提出)及び電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案及び電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。経済産業大臣海江田万里君。

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案並びに電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 資源価格の乱高下や国際的な資源獲得競争が激化している中、我が国のエネルギー供給における化石燃料の占める割合は依然として高い水準となっております。化石燃料の大半を海外からの輸入に依存している我が国にとって、エネルギーの安定供給の確保のためには、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの純国産エネルギーである再生可能エネルギーの導入拡大は必要不可欠です。このため、再生可能エネルギーに由来する電気の導入の比率を高めていくことが重要です。

 また、国内外で地球温暖化対策の強化が求められる中、再生可能エネルギーに由来する電気は、発電段階で温室効果ガスを排出しないという強みを有しており、地球温暖化対策にも資するものです。

 加えて、我が国経済を成長軌道に乗せるためには、昨年取りまとめた新成長戦略を着実に実現させることが重要です。中でも、日本のすぐれた環境技術・製品を国内外に展開し、成長と雇用の確保を実現するグリーンイノベーションに向けた取り組みの推進は喫緊の課題であり、再生可能エネルギーの導入拡大は、関連産業の成長を通じた市場の確保と雇用の増大に大きく貢献するものであります。

 こうした点を踏まえ、本法案により再生可能エネルギーに由来する電気について固定価格買い取り制度を導入し、再生可能エネルギーを用いる発電設備の設置に関して投資回収の不確実性を低減させ、その導入拡大を一層促すことといたします。

 次に、本法案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、経済産業大臣が認定する再生可能エネルギー発電設備から得られる電気について、電気事業者に対して、経済産業大臣が定める一定の期間、一定の価格により調達する契約の締結に応じるよう義務を課します。

 第二に、電気事業者が調達に要した費用については、賦課金という形で、すべての電気の需要家に電気の使用量に応じて御負担いただくこととします。その際、再生可能エネルギーの導入拡大は、エネルギーの安定供給の確保及び温室効果ガスの削減という国民全体の利益となるものでありますことにかんがみ、地域ごとの再生可能エネルギーの導入状況の違いにより賦課金の負担に不均衡が生じないよう、経済産業大臣が賦課金の単価を全国一律で定めるなど、所要の措置を講じます。

 第三に、電気事業者に対して再生可能エネルギーに由来する電気について一定量の利用を義務づけてきた電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法は、今般、再生可能エネルギーの導入拡大効果がより大きいと見込まれる固定価格買い取り制度を導入することから、廃止することといたします。ただし、既存の発電設備の運転に著しい影響が生じないよう、必要な経過措置を講じます。

 続きまして、電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 現在、エネルギーの安定供給確保や地球温暖化対策、グリーンイノベーションの促進といった観点から、再生可能エネルギーの導入拡大が我が国にとって重要な課題となっております。

 こうした中で、再生可能エネルギーの導入拡大のために提出した電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案に基づくいわゆる買い取り制度を円滑に実施し、あわせて、再生可能エネルギーの導入拡大に関する規制の合理化等を図るため、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、買い取り制度による賦課金等、法律により国が定めた外生的、固定的なコストの変動に起因する料金等の改定については、簡易かつ機動的な手続として、事前届け出により行うことができることといたします。なお、公益事業に係る規制の整合性の観点から、ガス事業法についても同様の措置を講じます。

 第二に、再生可能エネルギー活用のすそ野を広げる観点から、現在、送配電ネットワークの利用が認められていない、地域限定の電気事業者である特定電気事業者が再生可能エネルギー等の外部電源を調達できるよう、送配電ネットワークの利用のための制度を整備する等、規制の合理化を行います。

 第三に、買い取り制度により送配電ネットワークに接続する発電設備が増加し、その接続に当たっての紛争の増加が予想されます。このため、発電事業者と送配電ネットワーク運用者との間の紛争が適切に解決されるよう、体制整備を行います。

 以上が、両法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案(内閣提出)及び電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。平智之君。

    〔平智之君登壇〕

平智之君 民主党の平智之です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案及び電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 まず、エネルギー政策の今後についてであります。

 現行のエネルギー基本計画では、二〇二〇年までに再生可能エネルギーを一〇%、そして、原子力を含むゼロエミッション電源の比率を、二〇二〇年までに五〇%以上、三〇年までに七〇%を目指すとしております。

 しかしながら、新たな原発の増設は極めて困難な状況であり、現行のエネルギー基本計画は、実質的に抜本的な見直しを迫られております。今後、政府は、エネルギー政策全体の見直しをどのように行うのか、そして、再生可能エネルギーをどのように位置づけるのか、お考えをお伺いします。

 なお、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度については、国民の負担を伴うものであることから、本来は、まずエネルギー政策全体の見直しを行った上で慎重に議論すべきだとの意見もありますが、この点についても見解をお伺いします。

 次に、当面の原子力の位置づけについてお伺いをします。

 昨日の記者会見で菅総理は言われました。これからの日本の原子力政策として、原発に依存しない社会を目指すべきと考えるに至りました、つまり、計画的、段階的に原発依存度を下げ、将来は原発がなくてもきちんとやっていける社会を実現していくと。

 私も一人の議員として、基本的にはそのお考えに賛同するものであり、原子力の将来の方向性は大いに議論するべきものと考えます。しかし、当面の問題はエネルギー需給にかかわる国家政策なのであり、具体的かつ現実的でなければなりません。

 再生可能エネルギーは、一朝一夕には増大せず、当面の電力供給源にはなり得ません。火力発電所の稼働率アップや再稼働も行われておりますが、温暖化ガスの発生あるいは割高なコスト等の問題もあり、火力だけでは限界があると言われております。原子力の利用を当面のエネルギー源から直ちに排除することは、現実的には不可能と言わざるを得ません。

 しかしながら、周知のとおり、既存の原発の再稼働が極めて困難となっている今、国民、産業界から、電力の供給に関して大きな不安が示されております。政府が打ち出したストレステストは、国民の安心を確保するためではありましたが、その唐突さと基準の不明確さから、かえって、国民、産業界の不安を拡大させております。

 今後、政府として、当面の電力供給源としての原子力の位置づけ、そして、原子力発電所の再稼働についてどのようにお考えであるのか、見解をお聞かせください。

 次に、再生可能エネルギーの将来的見込みについてお伺いをします。

 今回の特別措置法案では、再生可能エネルギーのうち、当面、太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力の五種類を買い取ることとし、その後、そのほかの再生可能エネルギーについても、実用可能となり次第、順次買い取りの対象としていくこととしております。

 ところで、固定価格買い取り制度では、買い取りの価格が高いと国民負担が増大し、逆に買い取りの価格が低いと導入促進が進まないとの問題が指摘されております。

 政府として、この買い取りの価格と期間の設定についてどうお考えなのか、また、その結果、将来的に再生可能エネルギー普及の電力量がどの程度となると見込んでおられるのか、見解をお伺いします。

 次に、菅総理の再生可能エネルギー二〇%目標についてお伺いをします。

 菅総理は、本年の五月にフランスで開催された主要国首脳会議において、発電電力量に占める再生可能エネルギーの割合を二〇二〇年代のできるだけ早い時期に少なくとも二〇%を超える水準との目標を表明されました。

 この二〇%目標は、現在のエネルギー基本計画では二〇三〇年の見込みの水準であります。菅総理の目標は、これを大きく前倒しする内容となっております。政府としては、今後、具体的にこの目標をどのように実現するおつもりなのか、お考えをお聞かせください。

 次に、国際競争力についてお伺いをします。

 国民の負担を伴いながら再生可能エネルギーの導入を促進する以上は、新設される発電設備等にできるだけ国産品が使用され、我が国の産業、雇用に大きなメリットがもたらされることを期待いたします。そのためには、太陽光発電や風力発電等の設備について、日本のメーカーが十分な国際競争力を持つことが必要であります。

 一方で、再生可能エネルギー関連産業の国際競争は激化しており、政府の支援なくして国内メーカーの優位性を維持することは極めて困難だと考えます。

 政府として、我が国の関連産業の競争力について、現状のレベルと今後の見通しをどのような認識でお考えなのか、そして、今後どのような支援策を講じようとしているのか、お答えください。

 次に、産業界等への影響についてであります。

 特別措置法の目的には、「国民経済の健全な発展に寄与すること」とすることとあります。

 政府は、経済効果として、再生可能エネルギー関連産業が、二〇〇九年から二〇二〇年で約一兆円から十兆円の規模に拡大すると試算をしております。

 他方、負の面としては、電力を多く消費する産業において何らかの負担緩和措置をとらない限り、コスト増で著しく国際競争力が低下すると懸念されております。

 産業に対するプラスとマイナスの影響について、政府の見解をお伺いします。

 また、再生可能エネルギー電気に係る賦課金、いわゆるサーチャージについては、費用負担調整機関と呼ばれる新たな機関を設置することとしています。これは、発電量よりも買い取り電気量の方が多くなるような都市部と、逆に発電量の方が多くなる地域との間で買い取りの負担に顕著な偏りが生じる問題、それに対処するための機関とされています。

 こうした地域間の調整をする仕組みの導入について、その必要性をお答えください。

 次に、電力ネットワークのためのアクセスについてお伺いをいたします。

 風力発電等を実施しようとしても、電気事業者が保有する送電網への発電者からの接続が難しく、これが再生可能エネルギーの普及促進の大きな障害になっているとの指摘があります。

 そこで、今回の電気事業法改正案においては、発電者が電気事業者の送電網を使えるようにする託送供給制度や、その際の送配電ネットワーク利用ルールの運用体制など、送配電ネットワークの利用に係る制度を整備するための規定が設けられております。

 政府は、この措置で電力ネットワークのためのアクセスが十分に達成されると考えているのか、つまり、風力等の発電者を十分に応援することができると考えておられるか、お考えをお聞かせください。

 次に、国民への周知方法についてお伺いをします。

 固定価格の買い取り制度の導入は、我が国のエネルギー自給率の向上や地球温暖化対策に資するという効果がある一方で、電気料金の上昇という形で国民に負担を生ぜしめます。再生可能エネルギーを買い取るのは国民なのであります。

 したがって、本制度の施行に際しては、国民の皆さんに丁寧な説明を行い、制度の意義や内容について十分な理解を得ることが不可欠であります。こうした国民の理解を得るため、政府としてどのような取り組みを行うおつもりなのか、お答えください。

 最後に、エネルギー安定供給の将来像を示すためにも、早急に、冒頭申し上げた新たなエネルギー基本計画を示すことを改めて求めるとともに、原子力災害の賠償スキームが与野党協議のもとにしっかりと確定をされ、原子力災害の被災者の皆さんに一刻も早い安心と納得が得られますことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 平智之議員にお答えをいたします。

 エネルギー政策の見直しに関する御質問をいただきました。

 今後のエネルギー政策のあり方については、幅広く国民各層の御意見を伺いながら、予断なく議論を行ってまいります。

 再生可能エネルギーについては、エネルギーの安定供給確保や地球温暖化対策、環境関連産業育成の観点から重要であり、その導入拡大が必要であると認識しておりますが、エネルギー政策全体の中における位置づけについては、こうした議論の中で検討してまいります。

 次に、エネルギー政策の見直しと固定価格買い取り制度の方向性に関する御質問をいただきました。

 御指摘のとおり、エネルギー政策については、東日本大震災を踏まえ、今後、抜本的な検討を行うこととしております。

 一方で、エネルギー政策全体を見直す中において、再生可能エネルギーが今後の我が国にとって非常に重要なエネルギー源であり、一層の導入拡大が必要となることは確実な方向であると考えております。

 このため、まずは、再生可能エネルギーの導入拡大にとって大きな効果を持つ本法案を成立させていただき、再生可能エネルギーの導入拡大を図るための枠組みを早期に構築することが重要と考えております。

 次に、当面の電力供給源としての原子力の位置づけと原子力の再起動に関する御質問をいただきました。

 御指摘のとおり、化石燃料や再生可能エネルギーには、さまざまな課題があり、当面の電力供給源としては限界がございます。原子力は、エネルギー安全保障及び地球温暖化対策の観点から、当面、国民生活の安定、企業の経済活動を支えるエネルギー源として重要であります。

 また、原子力発電所の再起動については、安全性の確保を大前提とした上で、新たに導入した安全評価のうち、一次評価をクリアした原子力発電所については、立地地域及び国民の皆様に丁寧に御説明しつつ、再起動をお願いしてまいります。

 次に、買い取り価格や買い取り期間の設定及び再生可能エネルギー電気の発電電力量の見込みに関する御質問をいただきました。

 太陽光発電以外の電源の買い取り期間は、発電設備の更新期間等を参考に、十五年を軸に検討してまいります。

 買い取り価格については、標準的な再生可能エネルギーの発電設備の導入が、経済的に成り立ちつつ、国際的にも遜色のない水準として、キロワットアワー当たり十五円から二十円の幅の中で、二十円に近い水準とする予定でおります。

 太陽光発電の買い取り期間については、住宅等の設備は現行の余剰買い取り制度と同様に十年を、事業用の設備は太陽光発電以外の電源と同様に十五年を軸に検討しております。

 買い取り価格については、住宅用の設備は、来年度の場合、三十円台後半になると想定しております。事業用の設備は、これを参考に、事業用設備としての特殊性等を勘案して定めることとしております。また、買い取り価格は、技術開発等による発電コストの低減により、毎年下がっていくと考えられます。

 ただ、いずれの買い取り価格・期間についても、本法案の国会審議における御議論も踏まえ、パブリックコメント等を経た上で決定する予定でおります。

 また、経済産業省の試算では、本制度により買い取られる電気の総量は、二〇二〇年時点で約四百億キロワットアワーになると見込んでおります。

 次に、菅総理の主要国首脳会議における再生可能エネルギーの割合の御発言をどのように実現するかについて御質問をいただきました。

 菅総理が表明された目標の実現に向けては、本法案による固定価格買い取り制度の導入に加え、革新的技術の開発及び普及、規制緩和などの政策を総動員し、政府全体で連携し、全力を挙げて取り組んでまいります。

 次に、再生可能エネルギーの分野における日本メーカーの国際競争力の現状と見通し及び政府の競争力強化に向けた支援策に関する御質問をいただきました。

 再生可能エネルギーの分野では、日本企業の国際競争力は高いものと承知しています。例えば、日本製の太陽電池は、製品の効率や品質の高さを競争力として、過去長期間にわたり、生産量におけるシェアは世界第一位でありました。また、水力発電設備や地熱タービンでも、日本製品は高い技術力を有しております。

 しかしながら、この分野での国際競争は激化しております。太陽電池については、二〇〇九年には日本製品のシェアは中国製品に抜かれ世界第二位となり、また、風力発電機についても、中国メーカーが急速にシェアを伸ばしております。

 本制度は、効率的な設備による再生可能エネルギーの導入を図るものであります。我が国産業がその設備の供給を担えるよう、経済産業省としては、発電設備の高性能化や部材の技術開発などを支援することにより、国際競争力の維持強化に最大限努力してまいります。

 次に、本制度導入による経済効果及び電気料金の負担増に伴う産業界への影響に関する御質問をいただきました。

 本制度導入による経済効果については、例えば太陽光発電に関しては、原材料の調達、加工から製造、販売に至るまでの幅広い産業分野にわたって、需要が拡大し、設備投資が増大することが期待されます。また、太陽電池パネルの導入量が増加することにより、地域の施工会社の事業拡大が期待されるなど、広範な雇用創出効果が見込まれます。

 さらに、本制度の導入により、太陽光発電システム及び施工等の国内売り上げが、二〇二〇年に、現在の約六倍程度に増加、風力発電が約二倍以上に増加すること等の効果を見込んでおります。また、海外市場に目を向けると、二〇二〇年に、再生可能エネルギー関連市場が十兆円規模に拡大することと見込まれております。

 一方で、本法案で導入する固定価格買い取り制度は、再生可能エネルギー由来の電気の買い取りに要した費用を電気料金に上乗せして回収するものであります。このため、産業界の中には、特に電気を大量に使用する産業を中心に、電力コストが上昇し事業活動に影響が及ぶことを懸念する声があることは私も承知をしております。

 このため、再生可能エネルギーの導入拡大を図りつつも、固定価格買い取り制度による負担が重くなり過ぎないように、本制度による負担総額を軽減、限定するような工夫を講じてまいります。

 具体的には、本制度による賦課金がキロワットアワー当たり〇・五円を超えないよう制度を運用してまいります。また、電力を大量に使用する産業に対しては、省エネルギーの促進や研究開発などの面で支援を行ってまいります。

 次に、費用負担調整機関の設置による地域間調整の必要性に関する御質問をいただきました。

 本制度では、電気料金に上乗せする形で電気の需要家が買い取り費用を負担することとしています。しかしながら、地域ごとで再生可能エネルギーの導入量や電力需要の規模等が異なるため、例えば再生可能エネルギーの導入が進んだ地域ほど負担がふえるなど、地域間で負担に大きなばらつきが生じるおそれがあります。

 しかし、再生可能エネルギーの導入拡大は、我が国全体としてのエネルギー自給率の向上に貢献すること、また、温室効果ガスの削減にも寄与することにかんがみれば、電気の需要家全体に裨益することから、全国規模で広く薄く御負担をいただく性質のものであると考えております。

 このため、地域間での負担の不均衡については調整を行う必要があると考え、費用負担調整機関を設置し、地域間の調整を行う予定でございます。

 次に、電力ネットワークへのアクセスに関する御質問をいただきました。

 本法案においては、電力ネットワークへの接続に当たっては、周波数や電圧の維持が可能な場合、電力会社は発電事業者の接続を原則拒むことができないとしています。また、周波数や電圧の維持に支障が生ずるおそれがある場合であっても、発電事業者がその支障を回避するために必要となる費用等を負担すれば、同様に、接続を拒むことはできないとしております。

 その際、発電事業者と電力会社との間で費用負担等について紛争が生じることが予想されるため、中立的な立場から電力系統利用協議会が紛争解決を行うことができるよう、その機能を強化する改正も盛り込んでございます。

 これらにより、発電事業者の電力ネットワークへのアクセスが十分に達成され得るものと考えております。

 次に、本制度の導入に伴う周知、広報に関する御質問をいただきました。

 御指摘のとおり、全量固定価格買い取り制度の趣旨や導入に伴う負担について国民の皆様の御理解を得ることが非常に重要でございます。このため、これまでも、制度の立案過程におけるパブリックコメントの実施や全国各地方での説明会、シンポジウムの実施など、各種メディアを活用した広報活動を展開してまいりました。

 今国会で本法案を成立させていただいた場合には、制度の施行に向けて速やかに準備を進めるとともに、引き続き、制度の内容や負担について国民各層への周知を図り、御理解と御協力を得られるよう努めてまいります。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 近藤三津枝さん。

    〔近藤三津枝君登壇〕

近藤三津枝君 自由民主党の近藤三津枝です。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表し、ただいま議題となりました政府提出の再生可能エネルギー電気調達特措法並びに電気事業法及びガス事業法について質問いたします。(拍手)

 初めに、東日本大震災によりお亡くなりになりました方々の御冥福をお祈りいたしますとともに、被災された皆様方に心からお見舞いを申し上げます。

 三月十一日の発災から四カ月以上が経過しましたが、避難所などで不自由な避難生活を余儀なくされている被災者の方々は、今なお十万人に上っています。暑い夏の季節、被災者のお気持ちを思いますと、胸が痛みます。

 そのような中、昨日、菅総理は、またしても唐突に脱原発を表明されました。戦後エネルギー政策の大転換と銘打っていますが、余りに内容がありません。エネルギーは、国民生活そして日本の産業を支える基礎です。その基礎を、かけ声だけで、どのように脱原発にするのか、そのための具体的な政策、ロードマップを明らかにすることなく宣言をするだけでは、国民、産業界は不安に陥るばかりです。

 今は、まず、メルトダウンしようとしている中で菅総理が視察した福島第一原子力発電所を、低温停止という安定な状態にすることが第一です。やめる総理の政治信条などを聞いている暇は今の国難の日本にはないことを申し上げ、質問に入らせていただきます。

 さて、再生可能エネルギー電気調達特措法に関しては、このような厳しい被災地の状況をよそに、菅総理は、私の顔を見たくないなら法案通せ、その作戦でいく、このように発言されました。本法案は、我が国のエネルギー構造を中長期的にどのように転換していくかという重要課題にかかわる法案であり、こうした課題を総理の進退問題とてんびんにかける菅総理の振る舞いは前代未聞です。国会に真摯な法案の審議を求めるべき行政府の長が、総理の責任を逃れ、無責任な発言をするようでは、国民の政治不信を招くだけではなく、世界からも日本の国の品格が問われます。

 私は、五月二十五日に経済産業委員会で質問に立ち、海江田経済産業大臣に、日本に蔓延する負の連鎖を断ち切るためには、即刻、菅総理は辞任するべきと考えるがどうかとただしました。この質問に対し、海江田大臣は、菅内閣に対する批判は私に対する批判だと深刻に受けとめているとお答えになりました。

 ならば、経済産業大臣にお聞きします。

 この菅総理の発言に対する批判を深刻に受けとめ、どう釈明するおつもりなのか。また、経済産業大臣は、いずれ私も責任をとると発言されていますが、その時期はいつなのか、お聞かせください。

 それでは、本法案の内容について質問します。

 自然エネルギーを生活や産業に利用できるエネルギーに変えていくには、多額の投資とたゆまぬ技術開発が必要であり、一朝一夕でかなうものではありません。本法案が成立したからといって、今の不安定な電力供給問題を一気に解決できる特効薬でないことを、まずもって私たちは認識すべきです。

 一方、東日本大震災後、我が国の五十四基の原子力発電所のうち、現在三十五基が停止し、仮にこのままの状態が続けば、来年の四月には我が国のすべての原子力発電所が停止する事態も想定されます。

 さらに、菅総理の、余りに唐突な、場当たり的なストレステストの指示により、停止中の原子力発電所の再稼働へのハードルがさらに高くなりました。菅総理の場当たり的な指示によって、我が国の経済、市民生活、さらには地球温暖化問題にまで深刻な悪影響を及ぼす事態となっています。

 今、早急にやらなければならないことは、日本にある既存の電力施設を、安全に、そして効率的に活用できる状態にすることです。そして、政府は、国民、産業界が実行可能な、現実的な省エネルギー政策を立案し、国民、産業界の協力のもと、果敢に実行していくべきです。

 再生可能エネルギーの普及は一日にして成るものではありませんから、本法案は目の前のエネルギー危機に対する即効性のある政策とはならないと考えますが、経済産業大臣の見解をお示しください。

 さて、再生可能エネルギーの先鞭は、自民党政権のとき、二〇〇三年に導入されたRPS制度にさかのぼります。そして、太陽光発電の余剰電力買い取り制度についても、これは二〇〇九年十一月に開始されていますが、自民党政権下の二〇〇九年七月一日に成立したエネルギー供給構造高度化法によってこの余剰電力買い取り制度がスタートしたのです。

 今回の法案が実施されたとしましても、個々の住宅の太陽光発電については全量を買い取るものではないと経済産業省は言っています。つまり、自民党政権下に決まった現在の余剰電力買い取り制度をそのまま継承する方針なのです。

 このような事実を踏まえ、これまでの自民党が実行してきた再生可能エネルギーの推進政策について、経済産業大臣はどのように評価しているのか、見解をお示しください。

 本法案は、三月十一日、まさに東日本大震災の直前の閣議で決定された法案です。そして、この法案に盛り込まれている全量買い取り制度は、民主党政権が平成二十二年六月に閣議決定したエネルギー基本計画を実現するための手段であるはずです。この基本計画は、十四基の原子力発電所の新設が前提となっていました。

 ところが、東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故を受けて、三月三十一日に、菅総理は、このエネルギー基本計画を抜本的に見直すことを明らかにしました。このエネルギー基本計画の見直しについては、四月十三日、経済産業委員会で、私の質問に対して海江田大臣も、抜本的な見直しをすると答弁をしています。

 このようにエネルギー政策の目標が不明確になった以上、まずなすべきことは、福島原子力発電事故を早期に収束させることに集中し、今回の原発事故の検証の上に立ってエネルギー基本計画を見直すことが筋というものです。このような根幹を決めてから、目標達成の手段として再生可能エネルギーの買い取り制度を提案し直すべきと考えています。このように順序が逆である政府の対応について、経済産業大臣の見解をお伺いします。

 次に、太陽光発電について経済産業大臣に質問します。

 住宅からの太陽光発電の買い取りは、日照条件のよい西日本、とりわけ九州に有利で、一方で、日照時間の短い被災地の東北、北海道には不利な政策と言われています。このことは、現在の電気利用者への付加金、太陽光サーチャージからも明らかです。

 サーチャージは、余剰電力買い取り制度の電力事業者ごとに定められています。それによりますと、平成二十三年度では、太陽光発電が普及している九州電力の地域では、電気料金に一キロワットアワー当たり〇・〇七円が上乗せされています。一方、東北電力の地域では、日照時間が短く、太陽光発電に条件の不利な地域が多いため、太陽光発電の買い取り量は少なく、上乗せ金額は〇・〇三円と小さくなっています。すなわち、九州電力の〇・〇七円に対し、東北電力はその半分以下の〇・〇三円となっているわけです。

 しかし、本法案が成立しますと、全国一律の買い取り価格となり、電気利用者への負担も全国一律となります。本法案による制度の変更により、被災地の東北などから、太陽光発電が普及しやすい西日本へ、電気料金を介した北から南への所得移転が発生するのではないでしょうか。これと同様に、太陽光発電の条件が不利な内陸部から、条件のよい沿岸部への所得移転も生じるのではないでしょうか。この点について、経済産業大臣の見解をお伺いします。

 さらに経済産業大臣に質問します。

 住宅用の太陽光発電の耐用年数は二十年程度と言われていますが、今回の法案は、本当に十年程度の買い取り制度で投資に見合った資金の回収ができるのでしょうか。お伺いします。

 菅総理は、さきのサミットで、これも唐突に、太陽光パネルを住宅一千万戸に設置すると表明しました。すかさず海江田経済産業大臣は、そんなことは聞いていないと表明されました。

 全国の戸建て住宅、およそ二千六百万戸です。しかも、日本では太陽光発電に適した地域と不適格な地域がある中で、日本全国の三分の一以上に当たる一千万戸もの住宅で太陽光発電を本当に行うことができるのでしょうか。住宅政策を担う国土交通大臣にお伺いします。

 農林水産省は、我が国の耕作放棄地三十九・六万ヘクタールのうち、およそ十七万ヘクタールが再生可能エネルギーのために利用可能で、このうち十一万ヘクタールに太陽光発電を設置した場合、五百八十億キロワットアワーの発電が可能である、このような試算を発表しています。この場合、太陽光パネルの寿命から、一度パネルを設置しますと、少なくとも二十年間は耕作できなくなると考えます。

 農水省として、食料自給率の向上という最重要政策課題をわきに置いて、本当に再生可能エネルギーの拡大策を推し進める政策に方向転換するつもりなのか、農林水産大臣にお伺いします。

 ドイツでは太陽光発電などの再生可能エネルギーが増加していますが、その大きな要因は固定価格買い取り制度にあると言われています。

 ドイツでは、再生可能エネルギー法に基づく買い取り費用を家庭や企業への電気料金の上乗せによって実現しています。我が国の法案と同じです。ドイツでは、その負担の上限値が設定されていないので、国民の負担は年々増加し、電力中央研究所の調査によりますと、二〇一一年には年間およそ一万三千五百円の水準になるとのことです。日本の一世帯当たりの電気料金に当てはめれば、一〇%から一五%の上乗せになります。

 今回の法案は、電力料金という公共料金にはね返る問題があるにもかかわらず、全量買い取り制度の固定価格、この制度の継続される期間などが、法律ではなく政令以下にゆだねられ、電気料金上乗せの上限設定も規定されていません。すなわち、法案が成立してしまえば、国会の関与なしに、役所が電気料金の上乗せ額などを決めるということです。

 この制度が導入されるとなれば、国会で、毎年、どのように運用されているか監視できるようにするため、国会報告などの国会の関与の規定を設けるべきと考えますが、経済産業大臣の見解をお聞かせください。

 本法案については、経済団体からも、負担が国民生活や企業の産業競争力に悪影響を与える、このような反対の意見が数多く寄せられています。

 電力料金の値上げは、我が国の産業の海外移転にもつながります。産業政策をつかさどる経済産業大臣として、電力を使用することで成り立っている産業に配慮のない本法案を本当に意義のある政策と考えているのか、大臣の見解を求めます。

 最後に、今回の再生可能エネルギーの買い取り制度では、水力発電については、ダム発電は対象外で、中小水力発電しか対象にならないとの見解を経済産業省から得ています。

 水力は、我が国最大の自然エネルギーです。ことしの夏場のピークカットでは、夜間電力を使って下流のダムの水を上流のダムに上げ、昼間に発電をする揚水式発電が威力を発揮しています。再生可能エネルギーを考えるとき、水資源の有効利用、ダムの再開発など、土砂循環など環境にも配慮したダム政策の再構築が極めて有効です。

 民主党政権は、これまでの八ツ場ダム建設中止に見るようなダム政策をこの際抜本的に見直すべきだと考えますが、国土交通大臣の見解をお聞かせください。

 以上、本法案の問題点、課題について質問をさせていただきました。本法案にはまだまだ課題が山積し、かつ、電気料金によって新たな国民負担を求める法案でもあります。立法府にふさわしい、質、量ともに十分な審議を行うことを最後に強く求め、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 近藤三津枝議員にお答えいたします。

 まず、過去の私の発言に対する御質問をいただきました。

 私は、現在、菅内閣の一員でありますので、菅総理に対する批判は、その内閣の一員である私への批判だと考えるのは当然のことだと思います。

 そして、私の責任をとる時期でございますが、本法案を初めとして、経済産業大臣として今解決しなければいけない問題については、真摯に、そして全力を傾注して、この解決のために頑張ってまいります。

 その後の出処進退の時期は、私一人で決めさせていただきます。

 次に、原発が再稼働できず電力不足のおそれがある状況について、再生可能エネルギー政策の即効性に関する御質問をいただきました。

 御指摘のように、安定した電力供給を確保するためには、省エネルギー対策を進めるとともに、原子力、火力、水力など既存の電源をしっかりと活用することが重要でございます。

 再生可能エネルギーについては、今後の我が国にとって重要なエネルギー源であり、一層の導入拡大が必要となることは確実な方向であると考えております。

 このため、まずは、再生可能エネルギーの導入拡大にとって大きな効果を持つ本法案を成立させていただき、再生可能エネルギーの導入拡大を図るための枠組みを早急に構築することが最優先だと考えております。

 次に、自民党政権下での再生可能エネルギー政策に対する評価に関する御質問をいただきました。

 議員御指摘のように、二〇〇三年のRPS法の施行以降、我が国の再生可能エネルギーの導入量は約二・五倍の伸びを見せており、RPS制度は一定の効果を上げてきたと評価をしております。

 しかしながら、RPS制度は電気事業者に一定量の再生可能エネルギーの利用を義務づけるものですが、再生可能エネルギーによる発電を行う者と電気事業者との相対交渉で電気の取引価格が決定され、また、電気事業者としては、相対的に安価な再生可能エネルギー源を利用するという傾向がございました。

 そのため、現在は高価であっても、将来的に供給の潜在力の高い、例えば太陽光発電などの再生可能エネルギーは劣後することになってしまい、結果的に、こうした再生可能エネルギーによる発電を行う者にとっては、投資回収できるか否かに関して不確実性がございました。

 このため、RPS制度のもとで再生可能エネルギーの義務量を大量に引き上げたとしても、実際には投資が十分に進まず、結果的に、電気事業者が国内でその義務量を満たすだけの再生可能エネルギーによる電気を確保することが困難となることが予想されます。

 他方、現時点では発電コストが高く、RPS制度のもとでは普及が進みにくいと考えられていた太陽光発電については、余剰電力の買い取り価格と期間を固定する固定価格買い取り制度により、導入量が大きく伸びたという実績がございます。

 以上のような事情を総合的に勘案し、今般、RPS制度から固定価格買い取り制度に全面的に移行することが適当だと考えております。

 次に、エネルギー基本計画を見直した上で本法案を議論すべきではないかとの御質問をいただきました。

 御指摘のとおり、エネルギー政策については、今後、抜本的な検討を行うこととしています。一方で、エネルギー政策全体を見直す中においても、再生可能エネルギーの一層の導入拡大が必要となることは確実な方向であり、しかも、それはできる限り早く取り組んでいくべき課題と考えております。

 このため、まずは、再生可能エネルギーの導入拡大にとって大きな効果を持つ本法案を早期に成立させていただき、再生可能エネルギーの導入拡大を図るための枠組みを早期に構築することが重要と考えております。

 次に、太陽光発電の偏在を原因とした地域間調整による所得移転について御質問をいただきました。

 我が国にとっては、日照量などの違いにより、太陽光発電の普及にとって適した地域と必ずしもそうではない地域があることは、議員御指摘のとおりであります。

 しかし、再生可能エネルギーの導入が、我が国全体としてのエネルギー自給率の向上に貢献し、温室効果ガスの削減にも寄与することにかんがみれば、地域間調整を行うことで、本制度の導入による負担を全国で広く薄く御負担いただくことが適切であると考えております。

 また、今般の全量買い取り制度においては、太陽光発電のみならず、風力発電やバイオマス発電などのさまざまな再生可能エネルギーを対象としております。

 例えば、御指摘の東北地方について言えば、青森県は、日照量は比較的少ない一方で、風力発電の導入実績日本一を誇っています。このように、それぞれの再生可能エネルギーについて、各地域の特性に応じた導入が進んでいくことが考えられます。

 このため、地域間調整を実施した際に、北から南、内陸部から沿岸部への所得移転が生ずるとは一概に言えないものと考えております。

 住宅用太陽光発電の投資回収年数に関する御質問をいただきました。

 平均的な太陽光発電システムの費用は、新築一戸建ての場合、周辺機器や設置費用を含めて、現時点では約二百万円程度であります。このケースの場合、平成二十三年度においては、国の補助金が約十九万円であり、加えて、自治体から補助金などが支給される場合があります。また、現在実施している余剰電力買い取り制度による売電収入が年間で約十万円となります。さらに、みずから太陽光で発電した電気を自家消費することにより電気代が減り、これによる節約分が年間で約五万円になります。

 こうした試算に基づけば、平均的なケースでは、十年間の買い取りを行うことにより、おおむね設置から約十二年目程度で投資に見合った資金の回収ができると考えています。

 次に、国民の負担増につながる本制度の運用について、国会報告等の国会の関与を規定すべきではないかとの御質問をいただきました。

 御指摘のとおり、本法案で導入する固定価格買い取り制度は、再生可能エネルギー由来の電気の買い取りに要した費用を電気料金に上乗せして回収するものであります。

 電気料金に上乗せされる賦課金の額については、買い取り価格や買い取り期間、再生可能エネルギーの導入量によって決まってまいります。

 本法案では、買い取り価格や買い取り期間について、毎年度、その年度の開始前に経済産業大臣が決定することとしております。これらについては、毎年度、審議会で御意見を聞き、パブリックコメントを行った上で決定し、決定した後は速やかに公表する予定でございます。これらを通じて、本制度の適切な運用が確保されるものと考えます。

 最後に、エネルギー基本計画の見直しを行った上で、産業界にも配慮した制度を構築することに関する御質問をいただきました。

 御指摘のとおり、エネルギー基本計画については、東日本大震災を踏まえ、今後、抜本的な見直しを行うこととしています。一方で、エネルギー政策全体を見直す中においても、再生可能エネルギーの一層の導入拡大が必要となることは確実な方向であり、本法案の成立が重要であると考えております。

 ただし、本制度により国民負担が過重になることは決して望ましいことではないと考えております。このため、制度全体の負担総額を軽減、限定するとの観点から、賦課金がキロワットアワー当たり〇・五円を超えないように運用するとともに、電力を大量に使用する産業に対しては、省エネルギーの促進や研究開発などの面で支援を行ってまいります。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣大畠章宏君登壇〕

国務大臣(大畠章宏君) 近藤三津枝議員から、二点御質問を賜りました。

 まず第一は、住宅への太陽光発電機器の設置についてお尋ねをいただきました。

 住宅、建物の省エネ化を推進することは重要な課題であり、そして、これまでも、住宅エコポイント制度を初め、税制、融資などにより取り組みを進めてきたところでございます。

 その中で、住宅への太陽光発電機器の設置につきましては、経済産業省がエネルギー政策の一環として、住宅用太陽光発電導入支援対策補助金等により普及を図ってきたところであり、今後、さらなる推進策について検討されるものと伺っております。

 国土交通省といたしましては、太陽光発電機器のさらなる普及について、引き続き、経済産業省に全面的に協力をしていくとともに、先ほど御指摘をいただきましたけれども、かなり高い目標値でありますけれども、環境省、経産省とともに、連携をして積極的に取り組んでまいりたいと考えているところであります。

 次に、再生可能エネルギー活用としてのダム政策に関するお尋ねをいただきました。

 国土交通省において実施しているダム事業の多くは、洪水調節などの河川を適切に管理する目的のほかに、それぞれの利水事業者による事業参画の御判断のもとに、上水道、工業用水、そして御指摘の再生可能エネルギー活用としての発電などの利水目的をあわせ持つ多目的ダム事業として実施しているところであります。

 現在、国土交通省において実施しておりますダム事業について、八ツ場ダムを含む全国の個別ダムを対象として、今後の治水対策のあり方に関する有識者会議が取りまとめられました中間取りまとめに従って、事業の方向性に関する一切の予断を持たずに、再生可能エネルギー活用という観点も含め、治水、利水上の総合的な観点から検証を進めているところであり、その結論に従って適切に対応してまいりたいと考えているところであります。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣鹿野道彦君登壇〕

国務大臣(鹿野道彦君) 近藤議員の御質問にお答えいたします。

 耕作放棄地を活用した太陽光発電の設置についてのお尋ねであります。

 農地は、食料の安定供給にとって不可欠な資源であり、食料自給率の向上に向けて、耕作放棄地の復旧等に取り組んでいく方向性は変わりありません。

 一方、今般の震災を契機といたしまして再生可能エネルギーへの注目度が高まる中、農山漁村に豊富に存在する太陽光等の資源を積極的に活用することは、地域におけるエネルギーの安定供給に貢献するとともに、新たな所得を生み出し、地域の活性化に資する取り組みとして重要と認識をいたしております。

 このため、農林水産省といたしましては、食料供給力を損なわずに再生可能エネルギーの導入拡大が図られるよう、農地への復元が困難な耕作放棄地等における太陽光発電の導入について検討を行っていく考えでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 稲津久君。

    〔稲津久君登壇〕

稲津久君 公明党の稲津久です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案及び電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案に関し、関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 質問に入ります前に、総理の政治姿勢について一言申し上げたいと思います。

 総理は、本法案について、原発事故で再生可能エネルギー促進は急務との姿勢を示しておりますが、法案成立に意欲を見せたのは、六月二日のいわゆる退陣表明後です。三月十一日の発災から三カ月も経過をした時点での表明は、どう見ても、政治的意図によるものと言わざるを得ません。

 加えて、その政治的意図の核心部分は、総理の、歴史に名を残したいとの強いこだわりであると申し上げます。

 これまでも何度か、歴史を強く意識した発言が総理の態度表明にあります。例えば、本年一月の、社会保障と税の一体改革の協議を野党に求めたときの、歴史に対する反逆行為発言、また、五月十三日、中部電力浜岡原発停止決定での、評価は歴史の中で判断してほしい、さらに、五月二十五日、G8サミット演説で、原発事故の教訓を世界に伝えることが歴史的責務など、あらゆるところで歴史にこだわった発言を繰り返してきました。そして、昨日夕刻の突然の記者会見。席上、脱原発がその時代の総理の責務と、ここでもまた歴史を意識した発言でした。

 しかし、歴史に名を残すことに執着する余り、手順の無視、議論抜き、突然のトップダウン手法、常に後出しの説明。このことで、どれだけ多くの方々が迷惑を受けたか。結果、自治体との関係悪化、国民の広い理解も得られず、さらには閣内不一致。こうした状況を繰り返し、直近の世論調査では、内閣支持率は二割を大きく割り込み、過去最低を更新しています。

 ここまで来れば、重ねた失態による結果から、菅総理、もう十分に歴史に名は残しておりますよと申し上げますとともに、一刻も早く退陣されることが、その呪縛から解放される最善の方法であると訴えさせていただきます。

 それでは、本法案の質問に入らせていただきます。

 まず、我が党の、原子力発電と再生可能エネルギーについての基本的な考え方を申し上げます。

 公明党は、これまで、過渡的エネルギーとして原子力発電を容認してまいりました。しかし、今回の東京電力福島第一発電所事故により、原子力への依存を徐々に減らしていかなければならない、そして、それを電力の安定供給を確保しながら達成するためには、省エネルギーと再生可能エネルギーの拡大に最大限の努力をしていかなければならない、このように考えております。

 再生可能エネルギーは、その名のとおり、枯渇せず、国産であり、燃料費がかからないという特徴から、我が国のエネルギー安全保障にふさわしいエネルギー源です。

 我が国は、二〇〇八年には、化石燃料の輸入のためにGDPの五%、二十三兆円を費やしています。これを減らし、再生可能エネルギーを拡大することが、経済的にも安全保障上も有益であることは言うまでもありません。

 また、再生可能エネルギーは、環境保全型社会の基盤となります。同時に、再生可能エネルギーは、エネルギー利用時点でのCO2を発生せず、低炭素社会にふさわしいエネルギー源です。また、化石燃料やウラン燃料と比べて、採取に当たっての環境負荷が小さく、利用の際に廃棄物をほとんど発生させないなど、環境においてすぐれております。

 再生可能エネルギーの拡大は、日本経済の発展にも貢献します。その世界市場は、現在の二十二兆円から、二百兆円にも達すると言われており、日本経済の今後に大きな可能性を秘めた分野です。

 また、再生可能エネルギーは、地域密着型のエネルギーでもあり、地域の活性化と雇用の確保、中でも、被災地の復興に資すると期待するものであります。

 こうした再生可能エネルギーの可能性に着目し、公明党は、自公政権下の二〇〇九年に固定買い取り制度の導入を提唱して、現在の太陽光発電の余剰買い取り制度の導入を構築いたしました。そして、二〇一〇年参議院選挙のマニフェストにおいては、二〇三〇年に電力の三〇%を自然エネルギーで賄う自然エネルギー大国を目指すことを公約いたしました。さらに、公明党として本院に提出している気候変動対策推進基本法にも、本年中の同制度の創設を盛り込んでおります。

 その意味で申し上げるならば、提出の本法案は、公明党が構築した制度の拡充法であるということを明確に申し上げます。

 従来、エネルギーについては、ベストミックスということが言われてきました。しかし、この言葉は、あいまいな政策表明に終わってしまうおそれがあります。

 政府においては、原子力や化石燃料中心の政策を明確に転換して、中長期的に再生可能エネルギーを一つの柱とする社会を目指すことを決定すべきと考えますが、国家戦略担当大臣、経済産業大臣、環境大臣の見解を伺います。

 さて、再生可能エネルギーを普及させるために世界的に成功している政策が、再生可能エネルギー電力の固定価格買い取り制度です。一九九〇年代以降、再生可能エネルギー電力の爆発的普及に成功したドイツやデンマーク、スペインで共通して採用している支援政策が、固定価格買い取り制度です。

 再生可能エネルギーを普及させるための社会的制約の第一は、現段階では再生可能エネルギーが市場競争力を持っていない、つまり、発電単価が他の電源と比べて高く、商業的に大規模に利用されていないという点にあります。しかし、既に世界的な化石燃料の価格高騰の状況や原子力発電のコストの問題、また、再生可能エネルギー技術が進展していくことを考えれば、この点は解消されていく可能性があります。

 その上で、地球温暖化等を考慮すれば、比較的短期間のうちに再生可能エネルギー設備を普及する必要があり、そのために、再生可能エネルギーに短期間で競争力を獲得させるための政策が必要です。それこそが固定価格買い取り制度であり、それを具体化する本法案の必要性について、我々も認識を共有するものであります。

 その観点から、本特別措置法案の具体的な内容についてお伺いをいたします。

 本法案では、再生可能エネルギー電気の買い取り価格及び買い取り期間は、経済産業大臣が定めることとなっております。固定価格買い取り制度の本質が再生可能エネルギー技術に市場競争力を与えることにあるならば、その買い取り価格は、一定の事業成立性のある価格であることが求められます。これまでの検討では太陽光以外は一律価格とする方針のようですが、事業成立性を考慮するならばコストベースが望ましいのではないかと考えますが、経済産業大臣の見解を伺います。

 一方、本法案では、買い取り価格の設定に当たっては、電気使用者が支払う賦課金、いわゆるサーチャージの負担が過重なものにならないよう配慮しなければならないとも定めております。事業成立性が必要といっても、電気は国民生活、国民経済の重要な基盤ですから、過重な負担にならないよう配慮することは当然必要であると考えます。

 また、我が国の電気料金は、もともと、アメリカ、韓国などと比べて二倍程度の価格水準にあります。しかも、今後、原子力発電の停止で、代替する化石燃料の高騰などにより、電気料金が上昇していくことが懸念されています。

 これに関しては、世界一高い燃料を買わされているなどとの指摘もある電気事業の高コスト体質をどう改革するか、そのためには電力自由化のさらなる推進が必要なのではないかといった重要な課題があります。

 経済産業大臣は、本法案による過重な負担の回避、今後の電気料金の抑制策についてどのような方針か、お伺いをいたします。

 次に、本法案では、住宅用の太陽光発電からの買い取りは、余剰分のみとなっています。

 しかし、余剰分に限らず、家庭で消費される太陽光発電による電気も、同じく環境価値を有しております。家庭ごとに電力の余剰率には一〇から九〇%程度と大きな差があり、同じ投資に対して、家庭によって不公平を生じることになります。これを全量買い取りにすれば、余剰のみと比べて飛躍的な太陽光発電の普及が可能となり、導入量の拡大による技術学習効果によってコスト低下も早まり、長期的に、制度の目的に資するのではないか。他方、現行制度の連続性や、節電効果がより大きくなるという観点から、余剰買い取りの方がよいという説もあります。

 余剰分に限定する理由を経済産業大臣に伺います。

 さて、再生可能エネルギーの普及に対する社会的制約としては、系統連系に関する障害が大きな要因と指摘をされております。そのため、再生可能エネルギーの普及には、再生可能エネルギー設備に関する優先接続の原則を確保することが不可欠です。

 本法案では、電気事業者は、再生可能エネルギー発電設備と変電・送電・配電用設備との電気的接続を拒んではならないとされていますが、電気事業者による電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるときは接続を拒否できるとされています。

 しかし、本法案の所期の目的を達成するためには、電気事業者の接続義務は最も重要な規定の一つであり、恣意的に再生可能エネルギー設備との接続が拒否されることがあってはなりません。本法案には、経済産業省令で定める正当な理由があるときには接続が拒否できるとの規定があり、この規定で十分であると考えますが、経済産業大臣の見解を伺います。

 なお、送電網整備のためには、国は、必要に応じて、現在の電力会社間連系を含む系統の増強への支援を積極的に行うべきであると考えます。

 特に風力発電については、地域ごとの分布に偏りが大きく、適地に大量導入するためには送電網の整備が必要です。例えば、風力発電の大きなポテンシャルがある北海道の電力を津軽海峡を越えて首都圏に送電できるようになれば、地域経済の活性化にも大きく資するものと考えます。

 首都圏の電力安定供給、再生可能エネルギー電力の大幅導入のために、北海道、東北、首都圏を結ぶ高圧直流大容量幹線を敷設してはどうかと考えますが、経済産業大臣の見解を伺います。

 次に、大規模な自然エネルギー事業の進め方について伺います。

 太陽光発電のメガ事業を進めれば、住宅用と比べて買い取り価格が比較的低くなるため、需要家の負担を比較的小さくできる可能性があります。そこで、太陽光発電のメガ事業を促進するために、事業成立性を考慮した買い取り期間、買い取り価格の設定や、土地利用などに対する社会的な合意をスムーズに進めるための制度づくりが必要になります。

 また、風力発電については、既に大規模のファームが主流となっており、優先接続制度や送電網の整備、土地利用に対する社会的合意をスムーズに進めるための制度づくりが必須です。

 そこで、大規模な自然エネルギー事業を促進するために、具体的には、紛争予防的な土地利用のゾーニングを行うとともに、地域のオーナーシップ、意思決定プロセスへの参加、事業利益の地域還元などを確保していくことが重要と考えますが、経済産業大臣、そして国土交通大臣の見解を伺います。

 最後に、近年高まるエネルギー需要や地球温暖化防止などの観点から、原子力発電の施設を増設したり、新たに導入を検討する国がふえるという、原子力ルネサンスの動きがあります。そうした中で、核兵器の拡散や核テロの脅威が高まることが懸念され、国連の潘基文事務総長も、原子力ルネサンスが世界の新たな不安材料となることへの憂慮を示しています。

 こうした懸念に対処するために、国際原子力機関による監視体制の強化はもちろんながら、再生可能エネルギーや省エネ技術の普及といった、エネルギー政策における国際協調によって核拡散防止の環境づくりを進めるというアプローチが考えられます。

 東日本大震災の復旧復興に当たるこのとき、日本は、省エネルギー、再生可能エネルギーによる新しいエネルギー社会のモデルをつくり上げ、こうした面で世界に貢献していくこともできるのではないでしょうか。

 今、被災地の人々を初め国民は、日本の前途に明るい希望をなかなか持てない状況にあります。我々政治家は、国政を預かる者として国民に希望の光を送りたい。その意味で、再生可能エネルギー、自然エネルギーによる環境保全型社会の構築を高々と掲げ、世界に貢献しようではないかと訴え、私の質問といたします。(拍手)

    〔国務大臣玄葉光一郎君登壇〕

国務大臣(玄葉光一郎君) 稲津議員から、原子力と再生可能エネルギーについてのお尋ねがございました。

 エネルギー政策につきましては、質的転換が必要です。原発について、減原発、すなわち、原発を徐々に減少させていく方向で考えるとともに、成長戦略のかなめとして、新しい技術体系に基づく、分散型の新システムへのパラダイム転換を目指します。

 具体的には、最新鋭の省エネ機器や、超電導を活用したエネルギーロスゼロ革命や、次世代型の蓄電池、太陽電池による電池革命、化石燃料のクリーン化といった新たなフロンティアの開拓に挑戦をし、こうした新しい技術を生かせる新しいエネルギーシステムを構築していく必要があります。その大きな方向性を示すため、短期、中期、長期に分けた現実的な工程表をつくり上げていきます。

 このような考え方のもと、私が議長であるエネルギー・環境会議で、革新的エネルギー・環境戦略を検討しています。七月末ごろを目途に、当面の電力需給の安定に関する考え方と、中長期的な課題に関する基本的な考え方の整理をお示しいたします。それをもとに、日本の将来のエネルギー政策のあり方について国民的な議論を行っていくべきであると考えております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 稲津久議員にお答えいたします。

 今後のエネルギー政策のあり方に関する御質問をいただきました。

 まず、再生可能エネルギーについては、エネルギーの安定供給確保や地球温暖化対策、環境関連産業育成の観点から重要であり、その導入拡大が必要であると認識をしています。

 一方、原子力については、これまでの計画を見直し、今回の事故の検証も踏まえながら、その扱いをしっかりと検討してまいります。

 原子力、再生可能エネルギーを含めた今後のエネルギー政策のあり方については、幅広く国民各層の御意見を伺いながら、予断なく議論を行ってまいります。

 次に、買い取り価格に関する御質問をいただきました。

 再生可能エネルギーを利用した発電事業のコストは、個々の再生可能エネルギー源ごとに、それぞれ設備の規模や立地条件等によって差があることは事実でございます。

 この点について、個々の再生可能エネルギー源ごとの事業性を考慮してコストベースで買い取り価格を決める考え方があります。

 しかしながら、この考え方の場合、発電コストの高い電源にも一定の利益率を見込んで買い取り価格を設定することから、高目の買い取り価格が設定される可能性がございます。国民負担の抑制にそぐわない面があることは否めない事実でございます。

 他方で、再生可能エネルギー源の種類によらず一律の買い取り価格を設定する考え方がございます。

 この考え方の場合、発電コストの低い電源から先に導入が進む、あるいは、一律の買い取り価格を意識して発電コストを下げる創意工夫が働きやすく、国民負担の抑制に資すると考えられます。

 本制度においては、再生可能エネルギーの導入拡大を図りつつ、国民負担を抑制する観点から、太陽光を除く再生可能エネルギー由来の電気について、一律の買い取り価格にしたいと考えております。

 なお、一律の買い取り価格としても、すべての再生可能エネルギー源で、その価格で発電コストを賄うことができる設備が存在し得ることから、実際には、一部の再生可能エネルギー源については全く導入が進まないということはないと考えております。具体的には、太陽光以外の再生可能エネルギー由来の電気について、買い取り価格を一キロワットアワー当たり二十円近くに設定すれば、いずれの再生可能エネルギーも十分導入する可能性があると考えられます。

 次に、本法案の枠組みによる過重な負担の回避、電力料金の抑制策に関する御質問をいただきました。

 固定価格買い取り制度による電力の需要家への負担が過重になることは、決して望ましいことではないと考えます。このため、負担が重くなり過ぎないよう、制度全体の負担総額を軽減、限定するような工夫を講じるとともに、電力を大量に使用する産業に対しては、省エネの促進や研究開発の面で支援を行ってまいります。

 また、燃料費の上昇は電気料金への上昇圧力となりますが、電気料金の値上げについては、最大限の経営効率化努力を行った上での各社の経営判断事項であり、実際に上昇するかどうか、現時点において判断することはできません。仮に値上げの申請が出された場合には、経済産業大臣の認可が必要となりますので、厳格に審査を行い、国民負担を極小化したいと考えております。

 さらに、電力自由化を含むエネルギー政策のあり方については、国民各層の御意見を伺いながら、予断なく議論を行ってまいります。

 次に、住宅用太陽光発電を余剰分に限定することに関する御質問をいただきました。

 現行の太陽光発電の余剰買い取り制度では、太陽光発電によりつくられた電気のうち、自家消費せずに余った電気、余剰分を買い取ることとしています。

 本法律における住宅用太陽光発電の扱いについては、1.国民負担の総額を抑えることができる、2.住宅において節電を促すことができる、3.各戸での配線変更など制度変更による利用者の混乱を回避することができるといった点にかんがみ、余剰買い取り制度を継続することとしております。

 次に、電気事業者の接続義務について御質問をいただきました。

 送電網への接続については、本法案により周波数や電圧の維持が可能な場合、電力会社は発電事業者の接続を原則拒むことができないとしております。

 加えて、接続ルールの監視等を行う電気事業法上の第三者機関ESCJの機能強化や、電気事業者が恣意的に接続を拒否した場合の経済産業大臣による勧告、命令の実施等を講ずることとしており、これらにより、発電事業者の系統への接続が十分担保されるものと考えております。

 次に、首都圏の電力安定供給、再生可能エネルギー電力の大幅導入のための、北海道、東北、首都圏を結ぶ高圧直流大容量幹線の敷設について御質問をいただきました。

 送電ロスが小さい高圧直流送電線は、大容量の電力を長距離輸送する場合に効果的であることから、御指摘のような、首都圏への電力の安定供給や再生可能エネルギーの導入の促進に向けた選択肢の一つであると認識をしています。

 一方で、新しい幹線の敷設に当たっては、用地の買収や建設に関してコストと時間がかかるため、直流送電線の整備については、費用対効果や実現可能性等を考慮しつつ検討してまいります。

 最後に、自然エネルギー事業の促進のために土地利用のゾーニングや地域のオーナーシップ等が必要ではないかとの御質問をいただきました。

 再生可能エネルギーを積極的に推進していくエリアを設定し、集中的な導入拡大に取り組んでいくことは、再生可能エネルギーの効率的な導入方法の一つであり、政府としても、重要な検討課題であると認識をしております。

 また、御指摘のように、地域による再生可能エネルギーの導入を促進するためには、地域住民の参加が進み、地域へのメリットが生じることが重要だと考えます。

 このため、本法案では、例えば、地域住民が共同で資金を出し合い太陽光発電や風力発電を設置する場合についても買い取り対象とする予定でおります。これにより、地域住民が再生可能エネルギーの導入拡大に参画するとともに、売電による収入を得ることも期待されております。

 今後、本法案の成立を契機に、地域のさまざまな創意工夫によって、それぞれの特徴を生かした再生可能エネルギーの導入拡大が進んでいくことを切に期待しております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣江田五月君登壇〕

国務大臣(江田五月君) 中長期的なエネルギー政策についてのお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、省エネルギーと再生エネルギーを新たにエネルギー政策の柱と位置づけ、強力に推進する必要があります。特に再生可能エネルギーについては、御指摘のとおり、低炭素社会にふさわしいエネルギー源であり、これを社会の基幹エネルギーにまで高めていくため、大量普及とコスト低減の好循環をつくり出すことが必要です。

 環境省としても、再生可能エネルギーを基幹とする低炭素社会の構築に向け、全力で取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣大畠章宏君登壇〕

国務大臣(大畠章宏君) 稲津久議員の御質問にお答えを申し上げます。

 先ほど海江田大臣からも御答弁がございましたが、私の方への御質問は、大規模な自然エネルギー事業の促進のために、紛争予防的な土地利用のゾーニングについてお尋ねを賜りました。

 太陽光発電、風力発電等の自然エネルギーは、地球温暖化対策に資する貴重なエネルギーであり、低炭素・循環型社会の形成に寄与するものと認識しております。

 一方で、大規模な自然エネルギー事業を実施するに当たっては、周辺の都市環境に影響を及ぼすことが予想されることから、その際は、地元公共団体や地域住民の理解が重要でございます。

 このため、御指摘の土地利用ゾーニングにつきましては、都市計画における住民参加手続等の活用により、周辺の都市環境との調和を図りつつ自然エネルギーの活用が促進されるよう、地方公共団体とともに、連携して検討してまいりたいと考えているところであります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 吉井英勝君。

    〔吉井英勝君登壇〕

吉井英勝君 私は、日本共産党を代表して、再生可能エネルギー買い取り法案及び電気事業法改正案について質問いたします。(拍手)

 私たちは、かねてから、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を提唱し、再生可能エネルギーの爆発的普及を主張してきました。それは、放射能汚染という最悪の環境汚染を起こさないそうしたエネルギーこそが、人類社会の将来を展望したときに、不可欠だからであります。その必要性は、まさに今回の東電福島原発事故によって実証されました。

 そこで、質問に入ります。

 第一に、再生可能エネルギーと原発をエネルギー政策にどう位置づけるのかという問題です。

 政府は、エネルギー政策基本法に基づくエネルギー基本計画において、原発は、安くて、クリーンで、安定供給にすぐれている三Eのエース、基幹電源だと位置づけて推進してきました。その一方、再生可能エネルギーは、クリーンだが、高い上に、供給も不安定だと、低い位置づけしか与えてきませんでした。今回の福島原発事故を受けて、こうした位置づけを根本的に変えたのか、伺います。

 また、エネルギー基本計画において、再生可能エネルギーを、いつまでに、どの程度普及する目標を持つのでしょうか、さらに、原発からはいつまでに撤退するのか、明確な答弁を求めます。

 福島原発事故による大規模な放射能汚染は、福島県民はもとより、全国民の健康、生命、財産を侵害し、営業と雇用、そして地域経済や地域社会を破壊しました。今、多くの乳幼児を持つ親たちが、放射能で汚染された大気、水、土壌、海、食品を初めとした生活環境の汚染によって、不安な日々を送らされています。

 原発は発電時の二酸化炭素排出量は少ないかもしれませんが、今回の大事故を受けても、なお、原発はクリーンだというのでしょうか。はっきりお答えいただきたいと思います。

 原発は、安定した供給電源でしょうか。

 福島原発事故によって、この夏、石油危機に続き二度目の電力使用制限令を出さざるを得なくなりました。この十年間を見ても、原発は、地震、事故、トラブル隠しでたびたび停止しています。原発は、安定な供給電源とは言えないのではありませんか。

 原発は、安い電源でしょうか。

 これまで、電力会社や政府、資源エネルギー庁などは、水力や火力などに比べて、原発の発電コストは五円三十銭で最も安く、一方、再生可能エネルギーのコストは高く、中でも太陽光発電は原発の九倍もの発電コストがかかると説明してきました。しかし、今回の事故を契機に、原発コストは、安いどころか、隠されたコストがあることが明らかになってまいりました。

 そこで、伺います。

 原発の建設、維持管理、核燃料購入など、これまでに投じられてきた費用は総額幾らになるのか、使用済み核燃料の再処理や高レベル放射性廃棄物処分費、さらに、廃炉に至るバックエンド費用等を総額幾らと見積もっているのか、電源立地交付金などの電源三法に基づく交付金や、旧動燃事業団以来の再処理研究開発や高速増殖原型炉「もんじゅ」開発などの技術開発費を含めて、これまで原発のために投じた予算は総額で幾らになるのか、また、それぞれ一キロワット時当たりで見ると幾らになるのか、明らかにされたいと思います。

 原発は、少なくとも一キロワット時当たり十円六十八銭で、最も高いコストの電源という試算も出ております。さらに、これらに、今回の福島第一原発事故による大規模な賠償費用や事故処理コストが加わります。海江田大臣は何兆円規模と言いますが、総額幾らと見積もっているのか、それぞれ明確な答弁を求めます。

 第二に、これまでの原発中心の大規模集中立地から、再生可能エネルギー中心の小規模分散、その地域で発電したものをその地域で消費する仕組み、すなわち地産地消型エネルギー政策への大転換をどう進めていくのかという問題であります。

 政府は、これまで、日本は資源のない国と言い、エネルギーの多くを石油などの化石燃料や原発に依存してきました。しかし、再生可能エネルギー、自然エネルギーに目を向ければ、日本は世界でトップクラスの資源国だと言えます。

 風力、太陽光を初め、小水力発電、洋上風力、潮汐発電、海洋温度差発電、木質バイオマス発電、地熱発電など、日本列島は、その豊かな自然に依拠した新しいエネルギーを生み出す可能性を持っています。現に、岩手県葛巻町、高知県檮原町、長野県飯田市などの各地で、多様で具体的な取り組みが進められております。

 ヨーロッパでは、ドイツ、スペインなどで再生可能エネルギーの普及が進んでいますが、それは、電力の固定価格買い取り制度の導入など、国レベルで政策を進めているからであります。

 今、日本で問われているのは、国レベルでの政策の転換です。買い取り制度とともに、発送電分離について検討するべきではありませんか。送電部門を分離して電力の安定供給と再生可能エネルギー電源の優先接続を行うことが、諸外国では当然の方策となっています。政府の見解を求めます。

 次に、買い取り制度の費用負担のあり方についてです。

 法案は、電力会社が買い取り費用を電気代に上乗せし、しかも、それを単に届け出のみで認める仕組みになっています。現行の太陽光促進付加金のように電気料金に上乗せされると、電気代が上がることとなり、これでは普及を妨げるという懸念の声が上がっております。

 そこで検討すべきは、電気代に含まれている電源開発促進税です。

 標準世帯で月平均百十二円、全国で年間三千五百億円、これまでに総額五兆円が電気代とともに徴収され、その多くが、原発推進のため、立地自治体への交付金の財源としてばらまかれてきました。この電源開発促進税を再生可能エネルギーの買い取り費用に充てれば、新たな電気代の値上げなしで、固定価格買い取り制度による再生可能エネルギーの爆発的普及を図ることができるではありませんか。

 その方策をこそ進めるべきだということを指摘して、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 吉井英勝議員にお答えをいたします。

 エネルギー基本計画における再生可能エネルギー及び原子力発電の位置づけに関する御質問をいただきました。

 今回の震災及び原発事故により、原子力の安全性に対する国民の信頼が揺らいでいるという現実は、厳しく受けとめる必要があります。また、こうした観点から、昨日の記者会見で総理からお話があったところでございます。

 このため、原子力については、これまでの計画を見直し、今回の事故の検証も踏まえながら、その扱いをしっかりと検討してまいります。

 原子力発電や再生可能エネルギーの位置づけを含め、今後のエネルギー政策のあり方については、幅広く国民各層の御意見を伺いながら、予断なく議論を行ってまいります。

 次に、再生可能エネルギー及び原子力発電の今後の見通しに関する御質問をいただきました。

 まず、再生可能エネルギーについては、エネルギーの安定供給確保や地球温暖化対策、環境関連産業育成の観点から重要であり、その導入拡大が必要であると認識をしています。このため、二〇二〇年代のできるだけ早い時期に発電電力量の二〇%を超える水準となるよう、大胆な技術革新やその普及に取り組んでまいります。

 一方、原子力については、これまでの計画を見直し、今回の事故の検証を踏まえながら、その扱いをしっかりと検討してまいります。

 原子力、再生可能エネルギーを含めた今後のエネルギー政策のあり方については、幅広く国民各層の御意見を伺いながら、予断なく議論を行ってまいります。

 次に、原子力発電に係るクリーンとの表現に関する御質問をいただきました。

 議員御指摘のとおり、クリーンという表現は、発電過程で二酸化炭素を発生しないという趣旨で、平成十九年のエネルギー基本計画の中で用いました。他方、平成二十二年六月に改定したエネルギー基本計画の中では、クリーンという表現ではなく、もともとの趣旨を踏まえ、「発電過程においてCO2を排出しない低炭素電源である」と表現をしております。

 次に、原発は安定した供給電源なのかとの御質問をいただきました。

 原子力発電の燃料であるウランは、石油、天然ガスに比べ、可採年数が長く、また、特定の地域への強い偏在がないなどの特徴があり、こうした点を踏まえて、供給安定性にすぐれた電源と位置づけてまいりました。

 一方で、原子力発電所は、これまでも、地震やトラブルにより停止してきたことは事実でございます。特に今回の地震では、東京電力福島第一原子力発電所を初め東北地方の原子力発電所が停止するなど、電力の安定供給に支障を来す事態が発生いたしました。

 このような状況を受け、今後、東京電力福島第一原子力発電所の事故原因についての徹底的な検証を踏まえつつ、災害時にも安定的な供給電源と言えるかといった点も含め、原子力発電所の位置づけについてしっかりと議論を行ってまいります。

 次に、原発の建設、維持管理、核燃料購入などの費用、使用済み核燃料の再処理や高レベル放射性廃棄物処理費などのバックエンド費用、電源立地交付金や技術開発などの予算について御質問いただきました。

 原子力発電に係るコストについては、平成十五年から十六年にかけて、総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会の報告において、OECD諸国が統一に行っている試算方法に基づき試算を行っております。

 この試算において、一定の前提のもと、標準的な原子力発電所一基を四十年間運転した場合に、建設費や一般的な廃炉費を含めた資本費、維持管理費、ウラン燃料購入費の合計で約九千億円と見積もられており、これを運転期間中の総発電電力量で割ると、一キロワット時当たりは約四・五円となります。

 また、使用済み燃料の再処理や高レベル放射性廃棄物の処分を含む核燃料サイクルのバックエンド事業については、総事業費を約十八・八兆円と見積もっており、これをもとに、一キロワット時当たりのバックエンドコストは約〇・八円と試算しております。

 さらに、電源立地交付金や技術開発などの予算については、OECDにおける試算方法に含まれておりませんが、試算時点において政府全体の原子力関連予算は約四千七百億円となっており、平成十六年度の原子力発電量で割ると、一キロワット時当たり約一・八円となります。

 なお、原子力発電のコストについては、今回の事故の検証を踏まえ、今後のエネルギー政策を検討していく中で見直しを行っているところでございます。

 次に、福島第一原子力発電所の事故による賠償費用と事故処理コストの見積もりについて御質問をいただきました。

 現在、文部科学省に設置した原子力損害賠償紛争審査会において、今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故による損害の範囲等を定める指針の策定作業が行われており、今月中に中間指針が取りまとめられる見込みであります。

 今回の原子力損害賠償の総額は、事故が収束した上で、同指針に基づいて見通しが定まっていくものと考えており、現時点では明らかではありませんが、今次の補正予算に二兆円の交付国債を考えておりますことから、何兆円かにはなろうかと思います。

 また、事故処理コストについては、東京電力は、平成二十三年三月期決算において、その時点で合理的に見積もられる額として、福島原発の原子炉等の冷却や放射性物質の飛散防止等の安全性の確保等に要する費用、損失として四千二百六十二億円を計上しています。加えて、平成二十三年六月十七日に当面の取り組みのロードマップを見直したことにより、事故処理コストは三百八十億円増加することを明らかにしております。

 次に、送電部門の公的管理による電力の安定供給と再生可能エネルギー電源の優先接続が諸外国では当然の方策となっているのではないかとの御質問をいただきました。

 送電部門の管理については、ドイツやフランス等の諸外国では、政府や公営企業といった公的部門に限定されておらず、民間企業により実施されている国もございます。今後、送電部門のあり方については、エネルギー政策の見直しの中で、予断なく議論を行ってまいります。

 また、再生可能エネルギー電源の優先接続に関する規定は、スペインやドイツ等において導入されている事例がある一方、イギリスやフランスでは導入されていない事例もございます。

 こうした中で、今回の法案におきましては、再生可能エネルギー電源の導入円滑化に向け、発電事業者が送電線や蓄電池の設置等による系統増強に係る費用負担を行う場合には接続できることを明確化いたしました。

 最後に、電源開発促進税の活用に関する御質問をいただきました。

 電源開発促進税は、発電用施設の設置及び利用の促進などを目的としている税であり、法律によって使途が限定されていることに配慮する必要があります。

 一方、再生可能エネルギーの買い取り費用の回収については、各電気事業者が需要家に対しサーチャージの支払いを請求することを認める、固定価格買い取り制度を導入する予定でございます。

 御指摘のような税方式で買い取り費用を回収する場合、国民負担増加に対する昨今の厳しい社会情勢を踏まえると、安定的に買い取り費用の財源を確保することは非常に困難でございます。したがって、需要家の皆様に広く、薄く御負担をいただく方式で買い取り費用を回収することとしております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 阿部知子さん。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党の阿部知子です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表し、ただいま議題となりました電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案並びに電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 まず、冒頭、菅総理御自身が大変思い入れが深く、また今後の日本のエネルギー政策の大きな方向性を見きわめる本法案の本会議質疑において総理の御見解を伺えないのは、極めて不自然であり、また、残念なことであります。

 我が国の主権者たる国民が、みずからの生存や健康、生きとし生けるものをはぐくむ環境を守り、また経済活動の根幹であるエネルギー政策をどう選び取っていくのか、その選択肢を問われているのが今日であると思います。別途、国民と総理との真摯な対話が行われることを期待いたします。

 三月十一日に発生した大地震、津波、そして福島第一原発事故は、私たちの身の回りの当たり前の景色や価値観をも大きく変えるものでした。被災地の方々のみならず、多くの国民にとって、命のいとおしさ、人間と自然との共生、そして地域のきずななど、私たち一人一人にとって本当に大切なものに改めて気づかせてもくれました。

 他方、残念なことに、福島第一原発事故はいまだ収束せず、その放射線汚染のために不安を抱く被災者、国民も多く、とりわけ、子供たちの将来を案ずる親御さんの思いは深刻です。

 そのような中、三重の被害という過酷な現実を乗り越えるべく福島県が取りまとめた復興ビジョンの基本理念には、まず「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」が挙げられています。また、同時に、再生可能エネルギーなどの集積による復興も宣言されておりますが、この被災地からの声を海江田大臣はどう受けとめ、支援していくお考えでしょうか。

 また、この法案は、くしくも震災当日の三月十一日に閣議決定されたものですが、審議開始もおくれ、被災自治体のみならず、全国自治体からも早期の成立を期待する声が上がっております。

 昨日、秋田で、三十五道府県の参加で自然エネルギー協議会が発足いたしましたが、エネルギーの自立を図るために、それぞれの地域の特性に応じて固定価格買い取り制度を活用できるよう、強く望んでおられます。そのためには、太陽光、風力、洋上風力、水力、小水力、バイオマス、地熱などについて、それぞれの電源種ごとの事業収益性に見合った買い取り価格と期間が設定されることが重要と考えます。また、それによって投資もおのずと活性化するはずです。

 海江田担当大臣は先ほど一律とおっしゃいましたが、改めて、こうした観点からお考え直していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 加えて、この再生可能エネルギーの普及が本格化するためには、電力会社による全量買い取り義務が確実に履行されることが前提になります。電力会社がむやみに接続を拒むなどということが起こらないよう政省令の中でも明確化すべきと考えますが、いかがですか。

 また、これまで、その供給の不安定性や送電網に与える負荷が指摘されてきたことも踏まえて、早急にスマートグリッドの普及を図るとともに、送電網を発電とは分離して管理することも必要と思われますが、先ほど、これも海江田担当大臣は予断なくとおっしゃいましたが、そのようなゆとりもないと思います。明確に、はっきりと方針を定められてはいかがでしょうか。

 いずれにしろ、今回再びこの再生可能エネルギーへの大胆な転換の波に乗りおくれることがあれば、我が国の経済再生にとってのマイナスははかり知れないものがあります。二〇〇二年に成立したRPS法での買い取り目標の設定や太陽光発電の余剰買い取りという仕組みが限定的なものであったことで、再生可能エネルギーの大幅な普及はおくれ、我が国はデフレ脱却にも環境関連産業による雇用創出にも十分な効果を上げられなかったと思います。そして、いまだにデフレ経済は深刻であり、そこに東日本大震災が起こりました。

 今度こそ、再生可能エネルギーを我が国の基幹エネルギーとしてしっかりと位置づけ、また、世界の、なかんずく中東やアジアの再生可能エネルギー活用の機運に先陣を切る覚悟を持って臨むべきです。

 経世済民、そしてエネルギーの主権者は国民であることを明確にして、再生可能エネルギーの本格的な普及に向けたものとしての本法案を成立させるべく、海江田担当大臣の決意をお尋ねして、最後の質問といたします。(拍手)

    〔国務大臣海江田万里君登壇〕

国務大臣(海江田万里君) 阿部知子議員にお答えいたします。

 福島県の復興支援に関する御質問をいただきました。

 福島県の復興ビジョンにおいては、「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」との理念のもと、再生可能エネルギーの飛躍的推進が位置づけられています。

 再生可能エネルギーの導入につきましては、復興構想会議の提言の中にも同様に盛り込まれているところでありまして、政府としても、最重要な課題であると考えております。福島県の提言内容等を十分に踏まえつつ、政府全体で連携し、全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。

 次に、買い取り価格に関する御質問をいただきました。

 再生可能エネルギーを利用した発電事業のコストは、おのおのの再生可能エネルギー源ごとに、それぞれの設備の規模や立地条件等によって差があることは事実でございます。

 先ほども御答弁申し上げましたが、この点について、個々の再生可能エネルギー源ごとの事業性を考慮して買い取り価格を決める考え方がございます。

 しかしながら、この考え方の場合、発電コストの高い電源にも一定の利益率を見込んで買い取り価格を設定することから、高目の買い取り価格が設定される可能性があり、国民負担の抑制にそぐわない面がございます。

 他方で、再生可能エネルギー源の種類によらず一律の買い取り価格を設定する考え方がございます。

 この考え方の場合、発電コストの低い電源から先に導入が進む、あるいは、一律の買い取り価格を意識して発電コストを下げる創意工夫が働きやすく、国民負担の抑制に資すると考えられます。

 本制度においては、再生可能エネルギーの導入拡大を図りつつ、国民負担を抑制する観点から、太陽光を除く再生可能エネルギー由来の電気について、一律の買い取り価格にしたいと考えております。

 次に、電気事業者が接続拒否できる場合を明確化すべきではないかとの御質問をいただきました。

 本法律案では、再生可能エネルギーによる発電を行う者から送電網への接続を求められたときは、電力会社は、接続に必要な費用を当該発電を行う者が負担しない場合、電気の円滑な供給の確保に支障が生じるおそれがある場合や、省令で定める正当理由がある場合を除き、接続を拒んではならないと規定しております。

 電気事業者が送電網への接続を恣意的に拒否することのないよう、省令で定める正当理由は明確な内容を規定することや、不適切な事案に対する経済産業大臣の勧告、命令の実施、接続ルールの監視等を行う電気事業法上の第三者機関ESCJの機能強化を通じ、接続義務が着実に履行されるよう努めてまいります。

 次に、スマートグリッド及び発送電分離に関する御質問をいただきました。

 再生可能エネルギーの供給の不安定さという短所を克服するとともに、送配電網に与える負荷を軽減するため、スマートグリッドの普及を図ることは極めて重要であると認識しております。

 このため、現在取り組んでいる国内四地域における実証事業を進め、スマートグリッドの技術を高度化するとともに、そのビジネスモデルを確立するよう努めてまいります。

 また、発送電分離など電力事業形態のあり方を含む今後のエネルギー政策については、今回の事故原因について徹底的な検証を行い、その検証結果を踏まえ、国民各層の御意見を伺いながら、予断なく議論を行ってまいります。

 最後に、本法案の成立に向けた決意に関する御質問をいただきました。

 再生可能エネルギーの導入拡大は、エネルギーセキュリティーの向上、地球温暖化対策や環境関連産業の育成等の観点から重要なものだと考えております。

 本法案による全量固定価格買い取り制度の導入は、再生可能エネルギーの導入拡大にとって大きな効果を有するものと考えており、ぜひとも早期に成立させていただきたいと考えております。

 この成立にかける思いは人後に落ちないつもりでございます。

 以上でございます。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       厚生労働大臣   細川 律夫君

       農林水産大臣   鹿野 道彦君

       経済産業大臣   海江田万里君

       国土交通大臣   大畠 章宏君

       環境大臣     江田 五月君

       国務大臣     玄葉光一郎君

 出席副大臣

       経済産業副大臣  松下 忠洋君


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