衆議院

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第3号 平成23年9月15日(木曜日)

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平成二十三年九月十五日(木曜日)

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 議事日程 第三号

  平成二十三年九月十五日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)


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    午後二時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(横路孝弘君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。井上義久君。

    〔井上義久君登壇〕

井上義久君 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました野田総理の所信表明演説に対し、質問をいたします。(拍手)

 初めに、台風十二号による豪雨や土砂災害で亡くなられた方々に衷心より哀悼の意を表するとともに、かけがえのない家族を失われた御遺族、被災された皆様に心からのお見舞いを申し上げます。

 政府に対し、行方不明者の捜索や被災された方々への支援、寸断された道路などのライフラインの復旧、町の復興に総力を挙げるよう求めます。

 また、東日本大震災の発生から半年を迎えました。改めて、亡くなられた方々に衷心より哀悼の意を表します。とともに、御遺族、被災された皆様に心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 さて、前経済産業大臣が、就任からわずか九日で、不適切な発言の責任をとって辞任しました。

 ふるさとを追われ、仕事を奪われ、先の見通しがないまま避難生活を余儀なくされている被災者の苦しみやふるさとへの思いがわかっていない、そういう人物を適材適所と称して担当大臣に任命した総理の責任は、極めて重いものがあります。

 しかし、総理は、後任の経済産業大臣に枝野前官房長官を充てました。

 菅内閣は、大震災、原発事故で初動を誤り、その後の対応も後手に終始し、結果、復旧復興をおくらせた責任をとって退陣せざるを得ませんでした。その内閣のかなめであった官房長官を、原発政策をつかさどる経済産業大臣に任命したのはなぜですか。私には到底理解できません。前政権の失政に対する深刻な反省がないとしか言いようがありません。それでは、被災者の思いにこたえることができないばかりか、本格的な復旧復興も期待できません。総理、そうではないですか。

 さらに、民主党は、私ども野党が今臨時国会で予算委員会の開催を求めたのに対し、内閣ができたばかりで体制が不十分、不完全な内閣として、予算委員会の開催を拒否、わずか四日間でこの会期を閉じようとしております。

 総理、あなたの内閣は、体制不十分で、不完全な内閣なのですか。もしそうであるならば、あなたの内閣に国民の生命と財産を任せることはできません。

 所信表明演説で、与野党は徹底的な議論と対話によって懸命に一致点を見出すと叫んだのは、総理、あなたですよ。ところが、内閣発足早々、国会論戦から逃げ、それでは信頼関係は生まれません。

 直ちに予算委員会を開会すべきと思いますが、総理、いかがですか。

 政権交代からわずか二年で、既に三人目の総理誕生となりました。その間、総理、あなたは、政権を支える財務副大臣、財務大臣という重要閣僚として、子ども手当や農家の戸別所得補償、高速道路の無料化などマニフェストの主要政策実現に奔走してこられたと思います。

 ところが、二百七兆円の総予算を組み替えれば財源は捻出できると豪語したものの、結局、財源は見つからずじまい、約束したマニフェストはほとんど実現できず、抜本的な見直しが迫られております。

 さらに、八月、赤字国債の発行に必要な特例公債法の成立の前提として子ども手当など民主党の主要政策について見直すことを、民主、自民、公明の三党で合意しました。

 そこでは、高速道路無料化については平成二十四年度予算概算要求において計上しない、高校無償化及び農業戸別所得補償の平成二十四年度以降の制度のあり方については、政策効果の検証をもとに、必要な見直しを検討する、また、二十四年度以降の子供に対する手当の制度のあり方についても、児童手当法に所要の改正を行うことを基本とすることを確認いたしました。

 この三党合意を誠実に履行することを改めて求めたいと思います。総理、明確にお答えください。

 政権運営の基盤は、何といっても国民の信頼です。そのためには、みずからに政治と金にまつわる疑惑があれば、進んで説明責任を果たすこと、そして自浄作用を働かせることです。

 そこで、まずは、総理自身の政治献金問題についてただしたいと思います。

 その一つは、みずからの政治資金団体に、政治資金規正法で禁じられている在日外国人複数名から献金を受けていたというものであります。さらに、法人税を脱税していた企業からの献金やパーティー券購入もあったと報じられています。総理、これらは事実ですか。

 政治と金の問題は、民主党政権誕生以来、尽きることなくまとわり続けてきました。鳩山元総理の実母からの巨額の資金提供や亡くなった方々からのいわゆる故人献金、小沢元幹事長の資金管理団体をめぐる事件等々、指摘すれば切りがありません。

 さらに、菅前総理の資金管理団体から市民の会と称する政治団体へ六千二百五十万円もの渡し切り献金、民主党全体では一億五千万円を超える金が流れ込んでいたという事実が明らかになりました。

 なぜ一政治団体にこれほどの巨額の資金が流れ、また、その資金がどのように使われたのか、説明責任は全く果たされておりません。この市民の会への渡し切り献金について、民主党として調査し、国民に説明すべきと思いますが、総理、いかがですか。

 東日本大震災からの復旧復興について伺います。

 東日本大震災は、未曾有の天災であり、国難であります。だからこそ、既存の枠を超えた迅速な対応、果敢な決断が求められてきました。

 ところが、震災直後から、前菅内閣は、対策本部やチームを次々と乱立させ、危機対応で最も重要な指揮系統を混乱させてきました。その結果、迅速な対応ができず、被災者の支援や復旧復興のおくれを招きました。

 震災発生から既に半年が経過しているにもかかわらず、いまだに避難生活を余儀なくされている被災者は八万三千人を超えています。さらに、仮設住宅に入居したものの、収入がない、仕事がなく生活再建の見通しが立たない、瓦れきの処理もようやく五〇%が仮置き場へ搬入されただけ、市町村の復興計画も国の指針のおくれから前へ踏み出せない、具体化しない等々、大きく立ちおくれています。

 総理、あなたは、菅政権の主要閣僚である財務大臣でした。被災者の生活再建や復旧復興のおくれは、あなたにも責任があります。その自覚と深い反省がなければ、前政権と同じ道をたどることになります。総理の認識を伺います。

 次に、第三次補正予算について伺います。

 復興のための本格的な補正予算は、私どもが懸念したとおり、菅前総理の政権延命のために先延ばしされ、震災発生から半年たった今に至っても編成されておりません。このまま補正予算の編成、国会への提出がおくれれば、予算の執行は冬となり、年を越してしまいます。一刻も早く、本格的な補正予算を編成し、国会に提出すべきです。

 公明党は、今月八日、震災復興及び経済対策に必要な予算に関する提言を発表し、政府にも申し入れを行いました。

 被災した市町村の復興を強力に進めるための復興一括交付金や復興基金の創設、集団移転促進事業の拡充、被災した土地の買い上げ、借り上げなどを提案しております。あわせて、中小企業の資金繰り支援などの円高対策と、節電エコポイントを初めとしたエネルギー対策など、日本経済の再生を目指す総合経済対策についても提言をしております。

 政府・与党は第三次補正予算について与野党協議を呼びかけておりますけれども、まずは、これらの提言を真摯に受けとめ、政府案を早急にまとめるべきです。第三次補正予算をいつまでに編成し国会に提出をするのか、総理の明確な答弁を求めます。

 復興庁について伺います。

 復興を迅速かつ一体的に進めていくためには、各省庁の縦割りを排し、復興に係る計画立案から実施までの権限を一元的に有する復興庁の設置が不可欠であります。

 私は、震災発生から間もない三月二十二日、政府にいち早く復興庁の設置を求めました。そして、復興基本法にも復興庁の設置が盛り込まれました。復興庁を年内に設置すべきと考えますが、総理の見解を求めます。

 また、公明党は、八月二十四日、復興特区制度の早期実現に向けた提言を政府に提案いたしました。

 ポイントは、四点あります。

 一点目は、被災企業の再生と企業誘致を推進するため、大胆な税制上の特例措置を設けることです。

 二点目は、自治体が定める条例により法律による規制を緩和、適用除外できる、いわゆる上書き権の特例です。

 三点目は、被災市町村が作成した土地利用再編計画を総理大臣が認定することで、個別法による許可等を不要とし、手続を一元化することです。

 そして四点目は、特区ごとの国と地方との協議会の設置です。規制の特例措置等について協議し、迅速に実施するための仕組みです。

 被災地の復興を強力に後押しするために、政府は復興特区制度の早期創設に本腰を入れて取り組むべきです。総理の決意を伺います。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故対応について伺います。

 去る八日、総理は、福島県庁で行われた原発周辺十四市町村長との意見交換会で、福島県の再生のために、できることをサポートさせていただくと述べられました。私は、このサポートという言葉に強い違和感を覚えました。

 原子力発電は国策として進められてきました。国策であるがゆえに、今回の原発事故からの地域の再生は、市町村の考え方を尊重することは当然ですけれども、国は、サポートではなく、主体的に責任を持って進めるべきではないでしょうか。その覚悟がなければ、地域再生はおぼつきません。総理の基本的な認識を伺います。

 福島県の復旧復興について、現行法では、被災地が原発周辺に限定され、福島県全体の復興に対応できないとの強い声があります。福島県の再生のための特別法を制定し、県民生活や産業の再生、県や市町村がつくる復興計画の実現に必要な財源は、国が全額手当てをすべきです。

 さらに、福島復興再生基金の創設です。

 スマートコミュニティーのモデル事業や、食品安全を含めた長期的放射線防護の確立、長期的健康管理を行う施設整備や人材確保など、福島の復興には国を挙げて取り組むとの姿勢を明確にすべきです。総理の見解を求めます。

 原発事故の損害賠償について伺います。

 事故から半年近くが経過した八月三十日、ようやく、東京電力が賠償の範囲と金額を提示しました。これに対して、被災者からは、被害を十分に反映していない、そのような強い声が上がっております。

 例えば、牛肉の放射性セシウム汚染に対する賠償については、原子力損害賠償紛争審査会の中間指針に盛り込まれたにもかかわらず、検討中とされました。さらに、避難等対象区域外で自主避難された方々の賠償については何も触れられておりません。

 支払い方法についても改善すべき点があります。

 賠償金は三カ月ごとに支払うとしていますが、毎月支払うようにするなど、実態に沿った対応をすべきです。特に農林水産業に対する賠償は、時期を逸すれば、農期や漁期に向けた準備などに支障を来すおそれがあり、影響は深刻です。

 また、申請から支払いまでの期間の短縮や二回目以降の手続簡略化など、請求手続も簡素化すべきです。

 以上、原発事故の賠償については、当事者である東京電力任せではなく、政府が積極的に関与し、弁護士会の協力を得るなど、被災者に寄り添った対応をすべきです。総理の見解を求めます。

 震災から半年たった今に至っても、放射性物質に汚染された瓦れきや汚泥等の廃棄物処理は、最終処分場の確保も含め、全く進んでいません。また、土壌等の除染対策についても、一部地域で自治体や住民の手で自主的に進められていますが、警戒区域等の原発周辺地域では実施のめどすら立っておりません。

 いまだに処理の見通しが立たないのは、除染体制の構築や最終処分場の確保など、早期に必要な対策を講じてこなかった政府の対応のおくれによるものです。

 今急ぐべきは、さきの国会で議員立法により成立をした放射性瓦れき処理法に基づき、汚染廃棄物の処理や除染の基準、除染技術と体制の構築、最終処分場等の確保などを進めることです。これらの見通しや検討状況について伺います。

 また、大規模な除染等の対策を進めるためには、十分な予算措置が必要です。

 予備費二千二百億円の活用に加え、我が党が提案しているとおり、第三次補正予算で、東京電力への求償を前提として約三兆円規模の予算を確保すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 原子力・エネルギー政策について伺います。

 まず、検討のあり方です。

 政府は、震災後の六月に、関係閣僚から成るエネルギー・環境会議を設置し、今後のエネルギー政策の議論を開始いたしました。確かに政府挙げての検討の場ではありますが、国民に開かれた会議とは言えません。

 一方、経済産業省は、大臣の諮問機関である総合エネルギー調査会で基本計画の見直しを開始すると聞いています。しかし、同調査会は、我が国のエネルギー政策にお墨つきを与えてきた審議会であり、従来同様の手法でエネルギー政策の検討を行うのであれば、今回の未曾有の大震災、大事故を踏まえた検討のあり方としては不十分であると言わざるを得ません。

 社会全体に影響を与えるエネルギー政策の見直しに当たっては、国民に開かれた議論が必要です。総理の見解を求めます。

 原子力発電について伺います。

 公明党は、これまで、太陽水素系エネルギー社会を目指し、それまでの過渡的エネルギーとして原子力発電を容認してきました。

 しかし、今回、我が国において発生した重大な事故を直視し、原子力発電に依存しない社会への移行に今こそ本格的に取り組むべきと考えます。思い切った省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの導入、化石燃料の高効率化を推進しつつ、段階的に原子力発電を縮小していくべきです。

 また、今後、原子力発電所の新増設は、基本的には行うべきではないと考えます。核燃料サイクルについても、実現性、安全性、経済性はもちろん、外交、安全保障的観点も含めて、慎重に再検討すべきです。

 原子力政策の基本的な方向性について、総理の見解を伺います。

 政府は、原子力安全規制に関する組織について、環境省の外局として原子力安全庁を設置する方針を閣議決定しました。原子力の推進と規制の分離は必要であり、経済産業省からの原子力規制行政の分離は当然と考えます。

 さらに、新たな規制組織には、独立性、中立性、専門性、そして強い規制権限などが求められます。そのためには、内閣から独立した地位が与えられている独立行政委員会として設置すべきと考えます。

 民主党のマニフェストでも同様の提言がなされております。総理の見解を伺います。

 省エネルギーについては、促進するための仕組みづくりが不可欠です。

 公明党は、マニフェストで、二〇二〇年までに三〇%以上のエネルギー効率アップを掲げています。例えば、消費電力を一割削減できると試算されるLEDへの切りかえを、エコポイント制度を活用して促進することなどが考えられます。

 省エネルギーの今後の目標と促進策について、総理の見解を伺います。

 再生可能エネルギーの導入について、公明党は、マニフェストで、二〇三〇年までに電力の三〇%を賄うことを主張しております。その方策として再生可能エネルギー電力の全量固定価格買い取り制度の導入を提案し、さきの国会で、そのための法律が成立いたしました。

 再生可能エネルギー導入の実効を上げるには、意欲的な目標設定と、それに基づく具体的な制度づくりが重要です。

 政府は、二〇二〇年に一次エネルギー供給量の一〇%という目標を地球温暖化対策基本法で掲げていますが、大震災前の目標であり、意欲的とは言えません。目標を引き上げるべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 原子力発電の段階的縮小の検討に伴い、地球温暖化をもたらすCO2を原発に頼らずにどう削減していくかも重要な課題です。

 政府は、エネルギー基本計画の策定に当たって、二〇二〇年二五%削減目標をどう考えているのか、また、今後の地球温暖化対策について、総理の見解を伺います。

 次に、社会保障と税の一体改革について伺います。

 本年六月、政府・与党がまとめた社会保障・税一体改革案は、民主党が野党時代から強く主張してきた年金制度の抜本改革や高齢者医療制度の見直しなど、根幹部分で具体性がありません。その一方で、財源については、二〇一〇年代半ばまでに段階的に消費税を一〇%まで引き上げるとしております。

 しかし、社会保障制度の中で最も大きな財源を要する年金制度の骨格が決まらずして、国民に負担をお願いする財政論議が果たしてできるのでしょうか。民主党がマニフェストに掲げている最低保障年金の支給額や所得制限などの設定いかんによっては、所要額は大きく変わってくるはずであります。

 結局、初めに消費税一〇%ありきということではないでしょうか。それでは国民の理解は得られません。また、私たちも、そういう議論にくみするわけにはいきません。総理の見解を求めます。

 今後の年金制度改革について、公明党は、二〇〇四年改革の骨格を維持しつつ、これをベースに必要な改善を進めることが現実的な対応であると主張してきました。しかし、これに民主党は真っ向から反対をしてきました。

 ところが、今般の改革案では、公明党が主張してきた低所得者への加算や受給資格期間の短縮、被用者年金の一元化を盛り込むなど、まさに現行制度の改善案となっています。一方で、民主党がマニフェストに掲げた最低保障年金の創設や国民年金を含めたすべての制度の一元化については、何ら具体的記述がありません。

 結局、今回の社会保障・税一体改革なるものは、民主党の年金マニフェストが、絵にかいたもちであり、実現可能性が極めて低いことをみずから認めたということになると思いますが、総理、いかがですか。

 もういいかげんに、民主党が言うところの年金抜本改革案は、実現はおろか、具体的な制度設計すら困難であると認めるべきです。答弁を求めます。

 総理は、就任会見の折、一体改革案に基づき、今後、与党内で具体的な制度設計に向けた議論を進めるとともに、与野党の協議を丁寧に進めていくと述べておられます。しかし、先ほど申し上げたとおり、この案には、民主党がこれまで主張してきた制度の根幹部分が明らかになっていない上、閣議決定もなされていません。

 現政権の総意として決定できないものを野党と協議して決めようというのは、余りにも無責任ではありませんか。

 公明党は、既に昨年末、新しい福祉社会ビジョンを発表し、与野党協議を呼びかけてきました。政府・与党は、もし与野党協議と言うなら、責任ある案を提示すべきです。総理の見解を伺います。

 次に、農業について伺います。

 農業は、国民の命を支える生命産業であり、国の基です。ゆえに、農業を支える政策は、将来にわたって安定し、農業者が安心して取り組めることが必要です。

 しかし、民主党が、農業政策の柱と位置づけ、すべての農家が対象としている戸別所得補償制度は、その予算が農林水産省予算全体の四分の一以上を占めているにもかかわらず、いまだにそれを裏づける法律もありません。安定財源の確保にも不安があります。

 一方で、八月上旬に閣議決定された日本再生のための戦略、また、食と農林漁業の再生のための中間提言では、農業の競争力強化、体質強化を進めるとして、例えば、平地で二十から三十ヘクタール規模の経営体が大宗を占める構造を目指すなど、担い手の育成をうたっております。実は、これこそ、零細農家切り捨てだとして、民主党が批判してきた政策そのものです。

 我が党は、従来から、戸別所得補償制度を抜本的に見直し、集落営農等を含めた担い手の育成に重点化することや、環境直接支払いの拡充などを求めてまいりました。

 三党の合意でも戸別所得補償制度の見直しが明記されていますが、今後どのように見直すのか、総理の見解を伺います。

 次に、TPP、環太平洋経済連携協定について伺います。

 閣僚の中からは、農業の戸別所得補償制度を充実させればTPPの早期判断の道筋が描けるとの発言がありました。総理も同様のお考えなのでしょうか。

 TPPについて、公開されている情報が極めて少なく、アメリカを初めオーストラリアやニュージーランドなど交渉の中心となる国においても、その効果について懐疑的な意見が出ております。

 また、TPPは、農業分野のみならず、知的財産やサプライチェーン、医療、金融、保険など、極めて幅広い国内の制度に関連した内容が含まれており、十分かつ慎重にその影響について検証しなければなりません。

 日印経済連携協定の例を見ても、平成十六年に共同研究会を立ち上げ、その報告書をもとに平成十八年から交渉を開始、五年の議論を経て署名に至りました。

 総理はできるだけ早期に結論を出すとしておりますが、政府の姿勢は余りに拙速であると言わざるを得ません。TPPについて、総理の見解を伺います。

 東日本大震災の発生から既に半年が経過をいたしました。また、台風に伴う集中豪雨、大規模な土砂災害も発生をいたしました。

 この間、政治が、被災者の生活再建や復旧復興に十分な役割を果たしてきたのか、被災者の思いにこたえてきたのかということについて、私自身、じくじたる思いがあります。しかし、復旧復興はもちろん、景気、経済、外交、安全保障など課題は山積をしており、瞬時も立ちどまっている余裕はありません。

 公明党は、どこまでも被災者の思いに寄り添い、国民の期待にこたえ、国難を乗り越えるために全力でそれらの課題に取り組む決意です。

 総理、もう、体制が不十分、不完全などという甘えは許されません。政府は、国民の生活を守り国益を守るという緊張感を強く持てと申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 公明党の井上幹事長の御質問にお答えをいたします。

 まず最初に、枝野経産大臣の任命について御質問をいただきました。

 枝野経産大臣は、先般まで官房長官の要職にあり、特に、三月十一日以降、震災復旧復興にとどまらず、原発事故収束の問題にも非常に深く携わってこられました。今回、その経験と教訓を生かしていただくことは本格的な復旧復興を急ぐための即戦力であると期待をしており、適材適所の人選と考えておる次第であります。

 次に、野田内閣、予算委員会に関する御質問をいただきました。

 我が内閣が、体制が不十分あるいは不完全な内閣との認識は持っておりません。政府としては、大震災復興、原発事故収束と被災者支援のための第三次補正予算の速やかな編成の準備を進めていきたいと考えております。

 また、国会の日程等については、国会で、各党各会派の御議論に基づき、ルールにのっとり決定されるものと理解をしております。

 三党合意についての御質問をいただきました。

 民主、自民、公明の三党間では、八月四日に政調会長レベルで「子どもに対する手当の制度のあり方について」を、また、八月九日には幹事長レベルで「確認書」を取り交わしております。

 私は、民主党代表に選出をされた翌日、組閣を行う前に、自民、公明、それぞれの総裁、代表と党首会談を行わさせていただき、その場で、三党合意について、私が約束したのだから、ぜひ信頼をしてくださいと申し上げました。

 三党の合意、確認については、誠実に履行をしてまいりたいと思います。

 現在、来年度予算の概算要求基準を政府内で取りまとめている最中でありますけれども、高速道路無料化については、三党合意にのっとって、概算要求に計上しないこととしております。高校無償化、農業戸別所得補償、子供に対する手当についても、同様に、三党の合意に沿って検討を進めてまいりたいと考えております。

 私個人にかかわる団体の寄附等に関する御質問をいただきました。

 私個人の政治資金にかかわる問題については、例えば、脱税企業との御指摘の法人に関しては、これまで国会答弁等でお答えをしてきましたとおりであり、既に返金をしております。また、最近御指摘をいただいた外国籍の方からの寄附問題に関しては、誠実に対応していきたいと考えており、現在、専門家にも御協力をいただき、調査をさせていただいております。結果が出ましたら、改めて御報告をいたしたいと考えております。

 菅前総理の政治資金に関する御質問もいただきました。

 政治家個人としての政治資金の問題に関しては、政治家それぞれが説明し適正な措置を講じるべきものであり、菅前総理も、国会答弁等で説明するべきはされ、政治資金収支報告書にも記載されていると理解をしており、党として調査をする必要はないと考えております。

 前政権における震災対応についてのお尋ねがございました。

 これまでにも、政府は、地方自治体とも協力して、仮設住宅の建設、瓦れき撤去、被災者の生活支援など、復旧作業に全力を挙げてまいりました。

 発災当初から比べれば、かなり進展してきていることも事実でありますけれども、迅速さに欠け、必要な方に支援の手が行き届いていないという御指摘もいただいております。

 さまざまな御指摘を真摯に受けとめ、震災からの復旧復興、そして原発事故の収束という眼前の課題を着実に解決していく覚悟であり、そのための第三次補正予算の編成、自治体にとって使い勝手のよい交付金や復興特区制度なども早急に具体化してまいります。

 公明党を初め各党の皆様にも御協力をいただきますようにお願い申し上げます。

 次に、三次補正予算のスケジュールについてのお尋ねがございました。

 一刻も早い被災地の復旧復興に向け、今後、財源も含め調整を図り、なるべく早く三次補正予算の内容を固めてまいります。その際に、御党の御提言も参考にさせていただきたいと考えております。

 復興庁についてのお尋ねがございました。

 被災地の要望をしっかりと受けとめ、復興を加速していくためには、省庁の枠組みを超えて、被災自治体の要望にワンストップで対応できるよう、復興庁を設置することが重要と考えております。そのために必要な法案を早急に国会に提出いたします。

 復興特区制度の早期創設についても御質問をいただきました。

 地域における創意工夫を生かした復興を図るため、規制、制度の特例措置、税財政、金融上の支援措置を講ずる復興特区に関する制度については、可能な限り早期に実行に移せるよう、必要な法案を早急に国会に提出いたします。

 福島県の地域再生における認識についてのお尋ねがございました。

 福島の再生なくして日本の信頼回復はありません。国が、この原発事故と大震災がもたらした国難に全力で立ち向かうのは当然でございます。

 私は、福島の方々が抱くふるさとへの思いや将来像を大切にし、福島の再生を確信できるよう、国の責任として、全力で支援をしてまいります。

 福島県再生のための特別法及び福島復興再生基金等についてのお尋ねがございました。

 原子力災害からの復興については、復興の基本方針において、「長期的視点から、国が継続して、責任を持って再生・復興に取り組む」と記載されているように、福島の復興に国を挙げて取り組んでまいります。

 特別法の制定及び福島再生のための基金については、八日に佐藤福島県知事を訪問した際に、御要望を直接賜りました。

 特別法については、福島県の御要望を踏まえ、なるべく早い時期に対応できるよう、速やかに検討を行ってまいります。

 また、福島の復興のための財政支援については、現在、第三次補正予算案の中で検討中であり、あわせて基金についても検討を行わせているところでございます。

 続いて、東京電力の損害賠償に関する御質問をいただきました。

 政府としては、今回の原発事故により被害を受けたすべての方々が、その損害額すべてについて迅速かつ適切に賠償が受けられることが何よりも重要であると考えております。

 この中で、牛肉の放射性セシウム汚染に対する賠償に関する具体的な算定基準等については、東京電力で調整中と承知しています。引き続き、東京電力において速やかな対応が図られるよう、しっかりと促してまいります。

 また、政府等の指示によらない自主避難の取り扱いについては、原子力損害賠償紛争審査会において改めて検討されることと承知をしています。

 賠償の支払い方法については、東京電力に対して、請求手続の簡素化や被害実態に即した賠償の支払いがなされるよう、着実に促してまいりたいと思います。

 また、国においても、原子力損害賠償支援機構を通じた賠償支援及び当事者間の和解交渉の仲介体制の整備などを通じ、適切かつ迅速な賠償を促進してまいります。

 次に、放射性物質による汚染の対処に関する御質問をいただきました。

 住民の方々の不安を取り除くとともに、復興の取り組みを加速するためにも、汚染された廃棄物の処理や土壌等の除去は喫緊の課題でございます。

 さきの国会で成立した放射性物質環境汚染対処特措法については、まずは基本方針の閣議決定と基準等の策定を急ぎ、あわせて除染技術や体制の整備を行うことで、来年一月一日の全面施行に向けて万全を期してまいります。

 また、汚染された廃棄物や除染後に出る土壌を保管、処分するための安全な施設の確保については、国が責任を持ってロードマップを作成し、公表したいと考えております。

 特措法に基づく除染等の措置については、東京電力の負担のもとに措置を実施するという基本原則も踏まえつつ、政府として、緊急的に必要な財政的な措置を図ってまいります。まずは予備費で約二千二百億円の費用を計上しましたが、引き続き、第三次補正、また来年度通常予算においても、必要な予算を確保し、迅速な除染に努めてまいります。

 エネルギー政策の検討のあり方についてのお尋ねがございました。

 七月にエネルギー・環境会議で決定した中間的な整理においては、基本的な論点を示したところでございます。こうした中間的な整理を通じて国民各層の幅広い意見をいただき、そうした国民各層の御意見を踏まえて、来年夏を目途に、革新的エネルギー・環境戦略の策定を行ってまいります。

 エネルギー基本計画については、白紙から抜本的に見直し、新しい戦略と計画を打ち出すこととしておりますが、その際、総合資源エネルギー調査会の委員に、これまでの政策に批判的な方の委員の数をふやすなど、できる限りオープンでバランスのとれた議論ができるよう見直しを行うとともに、幅広く国民各層の御意見をいただく場を持ちながら検討を進めてまいります。

 原子力政策の基本的な方向性に関する御質問もいただきました。

 原子力発電については、脱原発と推進という二項対立でとらえるのではなく、中長期的には、原発への依存度を可能な限り引き下げていくという方向性を目指すべきと考えております。

 また、現状では、原子力発電所の新増設は困難だと考えます。他方、建設中の原子力発電所等については、進捗状況もさまざまであり、個々の状況をしっかりと踏まえ、立地地域の方々の御意見も踏まえながら、個別の事案に応じて検討していく必要があると考えております。

 核燃料サイクルについては、エネルギー・環境会議において、原子力政策の徹底検証を行い、新たな姿を追求すると整理されており、今後の原子力政策の見直しを議論していく中でしっかりと議論を行ってまいりたいと思います。

 原子力安全庁についてのお尋ねがございました。

 今般の原子力事故対応の反省点を踏まえるならば、大規模な原子力事故に際しては、政府の総力を結集して俊敏に対応することが何よりも重要であります。

 そのための体制としては、内閣から独立した合議制の委員会形式ではなく、内閣の責任のもとで、迅速な意思決定が行われ、適切に危機管理対応が行われる組織形態が適切であると認識をしております。

 省エネルギーの今後の目標と促進策についてのお尋ねがございました。

 我が国は、これまで、官民を挙げた省エネルギーの取り組みにより、世界最高水準のエネルギー効率を実現してまいりました。震災後のエネルギーを取り巻く状況の変化を踏まえ、省エネルギーの推進が一層重要になったと認識をしております。

 省エネルギーの具体的な目標については、今後、エネルギー政策全体を議論していく中で検討を進めてまいりますが、世界最先端のモデルを構築すべく、省エネ設備、機器の導入支援、技術開発等、さまざまな政策を一段と強化してまいります。

 再生可能エネルギーの目標についての御質問をいただきました。

 再生可能エネルギーの導入拡大については、さまざまな御意見をお伺いしながら、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。このため、再生可能エネルギーの導入拡大に向けて、固定価格買い取り制度の導入に加え、規制・制度改革や研究開発など政策を総動員して取り組んでおり、今後とも最大限の努力を重ねてまいります。

 二〇二〇年二五%削減目標についての御質問をいただきました。

 エネルギー政策見直しの際には、エネルギー政策基本法にも規定されている地球温暖化の防止の観点も踏まえつつ、国民が安心できる中長期的なエネルギー構成のあり方を検討していく必要があると考えております。

 なお、現時点では、すべての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築と、意欲的な目標の合意を前提とした温室効果ガス二五%削減目標を変更しているものではありません。

 地球温暖化問題については、地球規模での解決にどう貢献できるのかについて、引き続き、真剣に考え、知恵を絞ってまいりたいと思います。

 年金制度改革と消費税率の引き上げについての御質問をいただきました。

 社会保障・税一体改革成案においては、年金制度の改善や子育て支援の充実などの当面の社会保障改革に係る安定財源の確保と財政健全化の同時達成を図るため、消費税率を二〇一〇年代半ばまでに段階的に一〇%まで引き上げることとしております。

 この一体改革の議論の過程において、民主党は、将来の社会保障のあり方について「「あるべき社会保障」の実現に向けて」と題する取りまとめを行い、これを政府に提言いたしました。

 御指摘の年金制度改革については、提言の中で新制度の骨格が示されておりますし、マニフェストでは、平成二十五年度に新たな制度の決定をお約束しております。

 今回の成案では、新しい年金制度の創設について、国民的な合意に向けた議論や環境整備を進めてその実現に取り組むこととしており、今後、政府内でも検討を進めていきたいと考えております。

 一方で、制度の抜本改革を実現するための番号制度の導入等に時間がかかることから、成案は、まず現行制度の改善に重点を置くという観点から取りまとめを行ったところでございます。

 社会保障と税の一体改革の協議についてのお尋ねがございました。

 本年六月の政府・与党社会保障改革検討本部において成案を決定するに当たり、政府はもとより、連立与党としても、この成案をもとに各党協議を進めることについて、了承が得られております。

 社会保障と税の一体改革は、どの内閣であっても先送りできない課題でございます。成案が御党の御主張と重なる部分が数多いことは、私も承知をしております。国民にとってよりよい案を取りまとめ、その実行を確実にするためにも、御党の御協力を賜りたいと考えております。

 農家の戸別所得補償制度についてのお尋ねがございました。

 戸別所得補償制度は、全国一律単価としているため、農地の集積や集落営農の組織化によりコストダウンを図った場合には所得が増加する仕組みであり、規模拡大を誘導する効果を有しています。また、本年度から規模拡大加算を新たに導入していますが、本制度に対する農業者の方々の評価は高く、昨年度を上回る加入をいただいております。

 引き続き本制度の着実な実施を進めるとともに、今回の三党合意を踏まえ、今後、平成二十四年度以降の本制度のあり方について、政策効果の検証をもとに、必要な見直しを検討してまいります。

 TPPについての御質問をいただきました。

 世界経済の成長を取り込み産業空洞化を防止していくためには、国と国との結びつきを経済面で強化する経済連携の取り組みを欠かすことはできません。

 このため、包括的経済連携に関する基本方針に基づき、高いレベルの経済連携協定の締結を戦略的に追求してまいります。

 TPP協定については、随時、関係国との間で情報収集や協議を行ってきております。その結果得られた情報については、国益を確保する観点からさまざまな検討、分析を行うとともに、国民の理解を深めるため、可能な限り説明に努めてきており、今後とも努めていく考えでございます。

 八月十五日に閣議決定をいたしました政策推進の全体像にあるような広範な視点も踏まえて、TPP協定への交渉参加について、しっかりと議論をし、できるだけ早期に結論を出したいと考えております。

 戸別所得補償制度は、農業が食料の安定供給や多面的機能の維持という重要な役割を担っていることを評価し、意欲ある農業者が農業を持続できる環境を整えることを目的とする制度であり、貿易自由化のために実施しているものではございません。

 以上、御質問にお答えをさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、野田総理に質問いたします。(拍手)

 冒頭に、台風十二号による記録的豪雨がもたらした大災害によって犠牲になった方々への深い哀悼とともに、被災者の方々に心からのお見舞いを申し上げます。

 大量の土砂によるせきとめ湖の決壊など二次被害の防止に万全を尽くすとともに、激甚災害指定を行い、被災者の生活再建への支援、自治体への財政支援を強化することを強く求めます。また、台風、豪雨災害から人命を最優先で守り抜くために、避難体制の抜本的強化など、全国的な防災の総点検を行うことを提案します。総理の答弁を求めます。

 東日本大震災から半年がたちました。被災地では、被災者の皆さんの懸命の努力で復興への息吹も起こっています。しかし、多くの被災者が、不自由な避難生活を余儀なくされ、先が見えない不安と苦しみのもとに置かれています。

 大震災からの半年間、政府の対応は、余りに遅く、不十分だと言わなければなりません。復興に逆行する一連の問題点も浮かび上がってきました。私は、幾つかの角度から大震災に対する政府の基本姿勢を問うものです。

 第一は、被災者の生活となりわいの再建の問題です。

 一人一人の被災者が、破壊された生活となりわいの基盤を回復し、自分の力で再出発できるように公的支援を行うことこそ、復興に当たっての国の最大の責任です。政府はその責任を果たしてきたと言えるでしょうか。被災地ではさまざまな問題が山積みですが、二つの問題に絞って伺いたい。

 一つは、被災した事業者が再出発するための直接支援の問題です。

 帝国データバンクの調査によると、岩手、宮城、福島の沿岸部の市町村の中で特に被害の大きい地域に本社がある五千四社のうち、二千四百九十八社が営業不能状態となっています。多くの漁業者、農業者も、事業再開にはほど遠い状況です。放置するならば、大量廃業、大量失業の危機が迫っています。

 七万人を超えると言われる震災失業者の失業手当が十月下旬から切れ始めます。多数の失業者が職を求めて地元を離れざるを得なくなることへの強い懸念の声が上がっています。このままでは、地域から人がいなくなり、地域社会を復興する土台そのものが崩壊してしまいます。復興のためには、事業再開のための従来の枠を超えた個々の事業者への直接支援が、文字どおり待ったなしの緊急課題です。総理にその認識はありますか。

 商工業者にとっても、漁業者、農業者にとっても、事業再開の最大の足かせとなっているのが二重ローンの問題です。

 被災地がその解消を強く求め、我が党も債務の凍結、減免のための具体的提案を示す中で、政府も、県ごとに産業復興機構をつくり、公的支援を行うと発表しました。しかし、この機構はいまだに設立さえしていません。その原因は、被災事業者を選別して、支援は再生の見込みがあると判断された事業者だけ、地域金融機関からの債権買い取りはできるだけ安くという国の姿勢にあります。

 この姿勢を改め、政府が国の方針として、事業再開の意思がある被災事業者はすべて支援の対象とする、そのために必要な資金は国が責任を持って手当てする、このことを明確に示し、機構を直ちにスタートさせるべきです。総理の答弁を求めます。

 いま一つは、被災した医療機関の再建です。

 被災三県では、百四の病院、診療所が全壊、九百三十四の病院、診療所が一部損壊という大被害を受けました。しかし、震災から半年たっても、復旧は大幅におくれ、入院機能の喪失、勤務医の転出、診療所の廃業が大問題になっています。

 被災医療機関、特に民間病院・診療所に対する国の支援が余りに貧弱で、復旧が医療機関任せになっているという批判が、医師会や保険医協会など多数の医療関係者から寄せられています。総理はこの声をどう受けとめますか。

 これまでの姿勢を改め、公立病院への支援の拡充を図るとともに、民間病院・診療所への支援制度を新たに創設し、すべての医療機関の復旧に国が責任を負うという姿勢を明確にすべきです。選択と集中の名で病院の統廃合を進め、医療提供体制を縮小する従来の政策は抜本的に転換すべきです。答弁を求めます。

 第二は、大震災に便乗した財界、大企業の身勝手を許していいのかという問題です。

 大企業が自由勝手に沿岸漁業に参入できるようにする水産特区構想を国と宮城県が押しつけようとしていることに対して、漁業協同組合を初め被災地から激しい批判の声が上がっています。

 目先の利益第一の企業に漁協と同格の漁業権を与えたら、漁業資源の適切な管理が損なわれ、浜の荒廃を招きます。何よりも、浜の復興の主人公は漁業者の皆さんであり、漁協が一体になって反対している方針を押しつけて、どうして復興ができますか。

 漁業者の皆さんが海がある限り海で生きるという必死の思いで頑張っているときに、国がやるべきは、生産、加工、流通一体で水産業のインフラを復旧するために、本腰を入れた支援に乗り出すことではないですか。水産特区の押しつけはやめ、こうした支援こそ抜本的に強化すべきだと考えますが、いかがですか。

 いま一つただしたいのは、TPPへの態度です。

 日本経団連は、大震災を乗り越えるためにもTPP参加を急げと号令をかけています。しかし、TPP参加による関税撤廃は、日本の米の九〇%を破壊するなど農業に壊滅的な打撃を与えるだけではありません。ワカメ、昆布、サケ・マスなど、水産業にも壊滅的な被害が及びます。被災地の地域経済を支える第一次産業を土台から破壊して、どうして復興ができますか。

 総理は、TPP参加が被災地の復興に重大な障害をつくるという認識をお持ちでしょうか。TPP参加は食料自給率向上と両立し得ないという認識をお持ちでしょうか。もしもそうした認識があるなら、TPP参加をきっぱり断念することを明言すべきであります。

 第三は、復興財源の問題です。

 総理は、復興財源の一部を臨時増税で賄うとの方針を示しています。報道によれば、法人税、所得税の臨時増税を行うが、法人税については、五%の減税をした上でその減税分の一部を一時的に増税するとされています。

 結局、これでは大企業の負担増は一円もなく、所得税増税、サラリーマンと自営業者にだけ増税を求めるという話になるではありませんか。

 日本経団連は法人税の純増税は絶対に容認できないとしていますが、こんな身勝手を受け入れるつもりですか。大企業に復興のための新たな負担を求める意思があるのかどうか、明確な答弁を求めます。

 日本共産党は、第一に、復興財源というなら、まず何よりも、法人税減税と証券優遇税制の延長、大企業や大資産家への減税のばらまきを中止する、不要不急の大型公共事業の中止、原発の建設・推進予算の削除、政党助成金の廃止など、歳入歳出の見直しの一部を充てるべきだと主張しています。

 第二に、当座の復興資金の調達については、二百五十七兆円という空前の規模に膨らんでいる大企業の内部留保を復興に役立てるために、通常の国債とは別建てで、市場に出さない震災復興国債を発行し、大企業に引き受けを要請することを提案しています。我が党の提案についての総理の見解を伺います。

 次に、原発災害について質問します。

 原発事故はいまだ収束の見通しが立たず、放射能汚染の被害は日々拡大し、十万人もの人々に先の見えない避難生活を強いています。まず、総理に伺いたいのは、この大事故を引き起こした責任をどう自覚しているかということです。

 政府は、IAEAが各国に過酷事故対策をとることを勧告していたにもかかわらず、日本では過酷事故は起こり得ないとして、何の対策もとってきませんでした。日本共産党は、国会質疑で、福島原発について、大地震と津波による全電源喪失の危険性を具体的に警告し対策を求めたにもかかわらず、何の対策もとってきませんでした。

 総理、あなたには、民主党政権も含めた歴代政権が、原発安全神話にどっぷりとつかって、とるべき対策をとってこなかったという認識と反省はありますか。原発事故は、歴代政権の原子力政策が引き起こした人災であるとはっきり認めるべきであります。そうしてこそ、今後の対応や方策も、真剣で、道理に立ったものになります。明確な答弁を求めます。

 原発事故によって大量かつ広範囲に広がった放射能汚染から、国民、わけても子供たちの命と健康を守ることは、日本社会の大問題です。

 福島原発から放出された放射性物質の総量は、広島型原爆の二十個分という莫大な量に達しています。これだけの規模で広がった放射性物質を除染し、適切な方法で処理し、封じ込めるという事業は、人類がこれまでに取り組んだことのない一大事業であり、その自覚に立った構えが求められます。総理はどのような構えで除染に取り組むのか、その自覚と覚悟をまず伺います。

 最新の科学的知見によれば、放射能による健康被害には、これ以下の被曝なら安全という、いわゆる閾値は存在しないと言われており、放射能汚染に対しては、被曝は少なければ少ないほどよいという大原則に立った対策が求められます。

 政府が八月にまとめた除染方針のような、年間二十ミリシーベルトを超えたら国が直接除染するといった受け身の姿勢では、国民の命と健康を守ることはできません。この姿勢を改め、能動的、積極的な放射能汚染対策を打ち立てるべきではありませんか。

 私は、その立場から、四つの具体的対策に政府が責任を持って取り組むことを求めます。

 第一は、放射能汚染が疑われるすべての食品を迅速に検査し放射線量を測定する体制を速やかにつくることです。

 第二は、妊婦と子供を守るための緊急除染です。保育園、幼稚園、学校、通学路、公園、病院などを中心に線量を測定し、高線量のホットスポットを迅速に除染することです。そのための専門家の配置を国が責任を持って行うことです。

 第三は、詳細な放射能汚染地図をつくり、放射能で汚染された地域の危険を最小にする恒久的除染に取り組むことです。除染には住民の理解と協力が不可欠です。除染計画は住民の納得と合意で決め、実施と財政的な手当ては国が全面的に支援すべきです。

 第四は、科学者、専門家などの知恵と力を総結集し、放射能汚染の測定と除染を推進する強力で特別な体制、放射能測定・除染推進センターをつくることであります。

 以上述べた具体的対策に政府が直ちに取り組み、日本の命運がかかった一大事業として放射能汚染対策に本腰を入れて臨むことを強く求めます。総理の見解を伺います。

 原発災害の賠償問題も、待ったなしの緊急課題です。

 政府は、八月、賠償に関する中間指針を発表しました。しかし、福島県知事を会長とする福島県原子力損害対策協議会は、中間指針は福島県の被害を十分に反映したものになっていないとし、事故によって福島県民がこうむったさまざまな損害はすべて賠償されることが大原則と訴えています。この声をどう受けとめますか。

 損害賠償は、その範囲を恣意的に限定するのではなく、全面賠償、原発事故がなければ生じることのなかった損害について、被害者が求めるものはすべて賠償することを大原則にすることを明確にすべきではありませんか。

 賠償責任と負担は、東京電力に第一義的に求めることはもとより、電力業界、原発メーカー、大手ゼネコン、鉄鋼・セメントメーカー、大銀行など、原発で大もうけをしてきた原発利益共同体に責任と負担を求めるべきです。総理の見解を問うものです。

 原発事故は、原発に依存したエネルギー政策の根本からの見直しを迫っています。

 総理は、定期検査中の原発の再稼働について、安全性を確保しながら進めるとしています。しかし、事故の収束もできず、事故防止対策の前提となる事故原因の調査さえ途上じゃありませんか。これでどうして安全性の確保ができるというのですか。

 原子力の規制機関とされてきた原子力安全・保安院は、やらせまで行っていたことが明らかになり、規制機関失格の烙印が押されました。規制機関がない、まともな対策もないもとでの再稼働など論外だと考えますが、いかがですか。

 一方で、総理は、原発の新設は困難と述べています。それならば伺います。

 建設中の二基の原発、建設準備中の十二基の原発について、政府として中止を求める意思はありますか。破綻したプルトニウム循環サイクルから撤退し、青森県六ケ所村の再処理施設の閉鎖を求める意思はありますか。自分の国では危なくて使えないものを他国に押しつける原発輸出政策は中止すべきではありませんか。答弁を求めます。

 多くの国民は、今、原発事故の中に、ほかの事故には見られない異質の恐ろしさを目の当たりにしています。すなわち、一たび重大事故が発生し、放射性物質が外部に放出されたら、それを完全に抑える手段は存在せず、被害は空間的にどこまでも広がる危険があり、時間的にも将来にわたって危害を及ぼす危険があり、地域社会の存続すら危うくします。

 このような事故は、ほかの事故には見られない、原発事故だけに特有の異質の危険だと考えますが、総理の認識を伺いたい。

 私たちは、こうした異質の危険は、今の原発の技術が本質的に未完成で危険であることに起因するものであると考えます。すなわち、今開発されているどんな型の原子炉も、発電の過程で莫大な死の灰を生み出します。しかし、人類がこの死の灰を閉じ込めておく保障を持っていないことは、スリーマイル、チェルノブイリ、福島と、三度にわたって経験したことではありませんか。さらに、核のごみを、その危険がなくなる百万年という単位で安全に処分する方法も人類は持っていません。

 総理は、今の原発の技術が本質的に未完成で危険なものであるという認識をお持ちでしょうか。答弁を願いたい。

 安全な原発などあり得ません。一たび重大事故が起きれば取り返しのつかない事態を引き起こす原発を、世界有数の地震・津波国日本において社会的に許容していいのかが問われています。私は、総理に、原発から速やかに撤退し原発ゼロの日本を目指す政治的決断を行うとともに、期限を設定して原発をなくし、同時並行で自然エネルギーの急速な普及を進めるプログラムをつくることを強く求めます。明確な答弁を求めます。

 総理は、税と社会保障の一体改革の名で、二〇一〇年代半ばまでに消費税率を一〇%まで引き上げる法案を来年三月までに国会に提出するとしています。しかし、一体改革といいますが、この改革で社会保障はよくなるのでしょうか。

 政府が六月に決定した方針では、医療では現行の医療費の三割負担に加えて外来受診のたびに定額負担を上乗せする、年金では支給開始年齢を六十八歳ないし七十歳まで引き上げるなど、社会保障切り捨てのオンパレードではありませんか。その一方で、国民にあれだけ約束した後期高齢者医療制度の廃止の公約は、全く影も形もないではありませんか。

 消費税を一〇%に上げて社会保障を悪くする、これが政府の一体改革の正体ではないですか。総理の答弁を求めます。

 総理は、日本社会で中間層の厚みが損なわれ、格差が拡大してきたことを問題にしています。

 しかし、所得の少ない人に重くのしかかる消費税増税は、格差の拡大に追い打ちをかけ、中間層をますます貧困に落とし込みます。総理にその自覚はないのですか。

 貧困と格差を本気で問題にするなら、消費税増税は中止し、応能負担、負担能力に応じた負担という原則に立って、税制と社会保障のあり方を土台から再構築することこそ必要だと考えますが、いかがですか。答弁を求めます。

 最後に、米軍基地と日本外交の問題です。

 総理は、沖縄・普天間基地の問題について、辺野古移設を推進すると述べました。

 しかし、総理は、本気で県内移設が可能だと考えているのですか。あなたの目には、沖縄で県内移設反対が党派を超えた島ぐるみの揺るがぬ意思となっているという現実が見えないのですか。

 米国議会でも、レビン上院軍事委員長などの有力議員が、辺野古移設は非現実的、実行不可能と述べています。米議会の中からも辺野古移設を疑問視する声が上がっているのに、総理は何の疑問も感じないのですか。

 玄葉外相が、辺野古移設について、踏まれてもけられても、誠心誠意沖縄の皆さんに向き合っていくと述べたことが県民の怒りを呼び起こしています。琉球新報は、「踏みつけているのは誰か」と題する社説で、これは加害者が被害者であるかのごとく装う、明らかな主客転倒発言だと批判しています。県内移設反対の沖縄県民の声を無視し、危険きわまる最新鋭輸送機オスプレーの配備を押しつけようとしている日米両政府こそ県民を踏みつけにしてきた張本人ではないか、このような批判が起こっています。総理は、沖縄のこの声にどうこたえますか。

 野田内閣が向き合うべきは、沖縄県民ではなく、米国政府であります。普天間基地の無条件撤去を求めて米国政府と本腰の交渉を行うことを強く求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 共産党志位委員長の御質問にお答えをいたします。

 まず第一問目は、台風十二号による豪雨災害等についてのお尋ねがございました。

 危険な状態にある五カ所の河道閉塞、いわゆるせきとめ湖については、国において緊急調査を実施し関係自治体の警戒避難体制を支援するとともに、排水等緊急的な対策の検討を進めるなど、二次災害の防止に万全を尽くしているところでございます。

 また、激甚災害の指定については、現在、関係施設の被害状況等の迅速な把握に努めており、その被害が指定基準を満たせば、速やかに対応してまいります。

 さらに、御指摘のような避難体制のあり方等については、今回の大雨災害における実態を調査した上で、必要な改善を図ってまいります。

 続いて、事業者の再建支援についてのお尋ねがございました。

 被災事業者が早期に事業再開できるよう支援することは、被災者の暮らしの再建、地域経済の再建、復興のために重要でございます。

 このため、事業者の資金繰りを強力に支援するとともに、事業用施設設備及び機械等の復旧支援、仮設店舗・工場の整備、被災農漁業者の経営再開に向けた復旧作業への支援などを実施してまいります。

 続いて、二重ローン問題についてのお尋ねがございました。

 政府としては、六月十七日に決定した政府の対応方針などに基づき、債権の買い取り等を行う産業復興機構を県ごとに設立することとしております。現在、政府による具体的な支援の方法も含め、県や地域金融機関と精力的に調整を進めているところであり、早急に産業復興機構を設立することを考えています。

 続いて、医療機関の災害復旧や医療提供体制のあり方についての御質問をいただきました。

 医療機関の災害復旧については、まずは早急に回復できる施設の復旧を急ぐ観点から、二十三年度第一次補正予算において、一部損壊の病院復旧等に必要な費用を計上したところでございます。

 今後さらに、被災地の医療機能の復興に向け、第三次補正予算の編成に当たっては、民間医療機関への支援も含めて、国としてできる限りの支援を検討してまいります。

 また、医療提供体制のあり方につきましては、さきに取りまとめられた社会保障・税一体改革成案を踏まえて、地域の実情に応じた効率化、重点化と充実等により、安心で良質な医療を確保できるよう検討してまいります。

 続いて、水産特区構想についてのお尋ねがございました。

 水産業の復興に当たっては地域主体の取り組みが基本となるものであり、水産特区の具体化についても、地域ごとの漁業の特性等を踏まえ、地元のさまざまな意見をしっかりと伺いながら、真に被災地の復興に資するものとなるよう努めてまいります。

 生産、加工、流通一体的な水産業のインフラ復旧は地域経済再生のためにも極めて重要であり、水産加工施設や市場等の共同利用施設の早期復旧に必要不可欠な機器等の整備を支援しているところでございます。

 今後とも、地域の方々の意見を踏まえ、さらに本格的な復興に向けて取り組んでまいります。

 震災復興、食料自給率とTPPとの関係についてのお尋ねがございました。

 東日本大震災からの復旧復興は、この内閣が取り組むべき最大かつ最優先の課題でございます。東北の被災地の基幹産業である農林漁業の再生に全力で取り組んでまいります。

 TPPについては、八月十五日に閣議決定した政策推進の全体像にあるように、被災地の農業復興にも関係していると認識をしています。他方で、国際交渉の進捗、産業空洞化の懸念等も踏まえる必要があります。

 経済連携と食料自給率との関係については、昨年十一月に閣議決定した包括的経済連携に関する基本方針において、高いレベルの経済連携の推進と、我が国の食料自給率の向上や国内農業、農村の振興とを両立させ、持続可能な力強い農業を育てるための対策を講じることとしています。

 政策推進の全体像にあるような広範な視点を踏まえ、TPP協定への交渉参加について、しっかり議論し、できるだけ早期に結論を出していく考えでございます。

 復興財源としての法人税などについての御質問をいただきました。

 平成二十三年度税制改正法案に盛り込まれた法人実効税率の五%引き下げについては、復興の基本方針において、与野党間での協議を経て、その実施を確保することとしております。

 一方で、復旧復興のための税制措置については、同基本方針において、基幹税などを多角的に検討することとし、税制調査会が、具体的な税目、年度ごとの規模等を組み合わせた複数の選択肢を復興対策本部に報告した上で、与野党間での協議を経て同本部で決定することとしており、法人税や所得税も含め、税制措置の内容を早急にまとめたいと考えております。

 復興財源についてのお尋ねがございました。

 復興の財源については、復興の基本方針において、一次、二次補正予算等における財源のほかに、歳出削減、税外収入及び時限的な税制措置により確保することとしております。

 現在、財務大臣を中心に歳出削減及び税外収入による財源確保策を検討しており、また、税制調査会では時限的な税制措置の複数の選択肢を議論しているところであり、歳入歳出両面からの財源確保の取り組みを進めているところでございます。

 国債の大企業引き受けについてのお考えをお示しされました。

 一般論として申し上げれば、国債の安定消化のためには、まずは政府が財政規律を維持し、市場の信認を確保していく必要があると考えています。

 なお、現在の国債の発行は順調に行われており、特に大企業に対して国債の引き受けを要請するようなことは考えておりません。

 原発安全神話に対する認識についての御質問をいただきました。

 今回の原発事故においては、地震と巨大な津波の発生により、従来の設計、評価における検討の範囲を超えた、極めて厳しい事態が発生をいたしました。地震や津波に関する想定が不十分だったことなど、これまでの原子力安全行政が十分でなかったことは認めざるを得ません。この点、政府も事業者も、原子力に関する安全神話にとらわれてきたという事実は謙虚に反省すべきであると考えます。

 今後、事故原因等の徹底的な検証を踏まえ、安全性確保のための抜本的な対策を講じてまいります。

 除染等に関する御質問をいただきました。

 住民の方々の不安を取り除くとともに、復興の取り組みを加速するためにも、既に飛散してしまった放射性物質の除去は喫緊の課題であると受けとめております。

 原子力災害対策本部で取りまとめた除染に関する緊急実施基本方針や、さきの国会で成立した放射性物質環境汚染対処特措法に基づく対策によって一日でも早く除染が進むよう政府が一丸となって総力を挙げることはもちろんのこと、自治体の協力も仰ぎつつ、民間や研究機関の知見、さらには世界の英知を総動員して、全力で取り組んでまいります。

 国の除染に対する姿勢についてのお尋ねがございました。

 本格的に除染を進めるために、政府として、今回、除染に関する緊急実施基本方針を決定しました。これを受けて、県や市町村の協力を仰ぎつつ、国の責任として大規模な除染を行ってまいります。

 年間被曝線量が二十ミリシーベルト以下の地点においても、安全かつ円滑に除染が行われるよう環境を整備するため、財政措置、専門家の派遣などの必要な支援を国として強力に実施してまいります。

 放射性物質による汚染への対処に関する御質問もいただきました。

 住民の方々の不安を取り除くとともに、復興の取り組みを加速するためにも、放射性物質による汚染への対処は喫緊の課題でございます。

 食品中の放射性物質の検査については、国みずからも、流通段階の買い上げ調査を実施し、食品の安全性の確保に努めているところでございます。

 また、除染の推進については、八月二十六日に除染に関する緊急実施基本方針を取りまとめ、徹底的かつ継続的な除染を実施することを決定いたしました。

 国は、市町村の要望に合わせ、財政措置、専門家の派遣などの支援を実施してまいりますが、その際、子供が安心して生活できる環境を取り戻すことが最も重要であり、学校、公園など、子供の生活環境を徹底的に除染していく所存でございます。

 モニタリングについては、航空機を用いた広域のモニタリング、土壌調査、計画的避難区域等の詳細なモニタリングなどを実施するとともに、空間線量率や放射性物質濃度のマップを作成しているところであり、引き続き、自治体や事業者と連携をしつつ、国が責任を持ってモニタリングに取り組んでまいります。

 除染のための拠点については、福島県に政府の現地対策チームを置くなど体制整備を図っており、今後も、定員の増員などにより必要な整備を行ってまいります。

 原子力損害の賠償についてのお尋ねがございました。

 本件事故により生じる損害については、事故との相当因果関係が認められるものはすべて原子力損害賠償法に基づき適切な賠償が行われることとなっており、原子力損害賠償紛争審査会の中間指針は、そのような考えに立ち策定をされているものでございます。

 ただし、被害者の適切な救済のため中間指針で残された課題については引き続き審議が行われることとされ、その結果は、必要に応じ指針に追加されるものと承知をしております。

 また、原子力損害賠償法では、原子力事業者に賠償責任を集中することにより、被害者の迅速かつ適切な保護を図ることとされております。

 なお、原子炉メーカーなど産業界は、これまで、避難住民の方々に対し宿舎の確保や雇用機会の維持、確保に努めるなど、協力を進めていると承知をしており、本件事故の収束や避難住民の方々に対する支援など、産業界を含め関係者が一丸となって取り組むことが重要であると考えております。

 定期検査中の原発の再稼働についてのお尋ねがございました。

 定期検査で停止中の原子力発電所の再起動については、事業者が行ったテストを保安院が評価し、さらにその妥当性を原子力安全委員会が確認した上で、地元の理解や国民の信頼が得られているかという点も含め、政治レベルで総合的に判断を行ってまいります。

 また、原子力安全・保安院によるやらせの問題は、言語道断であります。この問題に関しては、第三者委員会において事実関係の徹底的な解明等を行っていただいているところであり、その結果をしっかりと受けとめた上で、国民からの信頼回復に全力を尽くしてまいります。

 原子力発電所の新設、核燃料サイクル及び原発輸出政策に関する一連の御質問がございました。

 原子力発電所の新増設については、現状では原子力安全に対する国民の信頼が失われているといった点を踏まえ、客観的な状況に対する認識として、困難と申し上げたものであります。

 他方、建設中の原子力発電所等については、進捗状況もさまざまであり、個々の状況をしっかりと踏まえ、立地地域の方々の御意見も踏まえながら、個別の事案に応じて検討していく必要があると考えております。

 核燃料サイクルについては、エネルギー・環境会議において、原子力政策の徹底検証を行い、新たな姿を追求すると整理されており、今後の原子力政策の見直しを議論していく中で、しっかりと議論を行ってまいります。

 また、国際的な原子力安全の向上に資するため、今回の原発事故の経験と教訓を共有すべく努力を続けてまいります。

 こうした観点から、これまで進められてきた各国との協力を着実に推進していくとともに、原子力発電所の輸出を含めた国際的な原子力協力のあり方については、原発事故原因の徹底的な検証を踏まえ、できるだけ早い時期に我が国としての考え方を取りまとめる方針でございます。

 原子力発電所特有の危険の存在及び原子力技術に関する御質問をいただきました。

 今回の事故で示されたように、原発事故は、外部に放射性物質が放出された場合、周辺住民の方々や地域の環境に悪影響を及ぼす長期的なリスクがあると認識をしています。したがって、原子力については、原子炉等規制法等の特別な規制制度のもとでその利用が図られてまいりました。

 他方、今回のような事故をあらかじめ想定し、十分な対策を準備できなかったことは事実であります。この点については真摯に反省し、原発事故が再発することがないよう、事故原因の徹底的な検証を踏まえつつ、原子力安全規制を抜本的に強化するなど、世界最高水準の安全性を確保すべく取り組んでまいります。

 また、原子力発電の運転後には高レベル放射性廃棄物が発生しますが、これを安全な形で地層処分し生活圏から完全に隔離することが、国際的にも共通の考え方となっています。

 現在最も重要なことは、原発事故の収束に向けて総力を挙げて取り組むことであります。大気や土壌、海水への放射性物質の放出を確実に食いとめることに全力を注ぎ、作業員の方々の安全確保に最大限努めつつ、事故収束に向けた工程表の着実な実現を図ります。世界の英知を集め、技術的な課題も乗り越えてまいりたいと考えております。

 脱原発及び自然エネルギーの普及に関する御質問をいただきました。

 原子力発電については、脱原発と推進という二項対立でとらえるのではなく、中長期的には、原発への依存度を可能な限り引き下げていくという方向性を目指すべきと考えております。

 今後、自然エネルギーの普及も含め、国民が安心できる中長期的なエネルギー構成のあり方について、幅広く国民各層の御意見を伺いながら、エネルギー・環境会議を中心に検討してまいります。

 社会保障と税の一体改革についての御質問をいただきました。

 本年六月に決定した社会保障・税一体改革成案は、社会保障を全世代対応型へと転換し、総合的な子ども・子育て支援を進めることや、地域の実情に応じた質の高い医療・介護サービスを効率的に提供することなどにより、社会保障のほころびに対応するものでございます。

 今後、改革案の具体化を早急に進め、消費税収を主たる財源として安定財源を確保することにより、必要な社会保障の機能強化と社会保障全体の持続可能性の確保を図ってまいりますので、各党各会派の皆様にも政策協議に御参加いただきますようにお願いを申し上げます。

 税負担などのあり方についての御質問もいただきました。

 社会保障・税一体改革成案においては、二〇一〇年代半ばまでに消費税率を一〇%まで引き上げることとしているほか、社会保障の機能強化にも取り組むこととしております。

 いずれにせよ、消費税負担と社会保障のあり方については、消費税の負担のみに着目するのは適当ではなく、税、社会保障全体としての再分配を総合的に勘案する必要があると考えております。

 普天間飛行場の移設問題についての御質問をいただきました。

 普天間飛行場の辺野古沖への移設とともに、約八千名の海兵隊員のグアム移転や嘉手納以南の土地の返還などを内容とする現在の日米合意は、全体として、少なくとも現状に比べると、沖縄の大きな負担軽減につながると考えており、政府としては、引き続き、沖縄の皆様の御理解を得るべく、誠実に努力をしていく考えでございます。

 なお、レビン上院軍事委員長らの提言については、あくまで米議会の議員らによる見解であり、米国政府として現行案へのコミットメントは変わらない旨公式に表明していると承知をしています。

 最後に、普天間問題に関する沖縄の声についての御質問をいただきました。

 普天間飛行場については、固定化を回避し、危険性の一刻も早い除去を図り、沖縄の負担軽減を目指すことが必要でございます。

 沖縄において県外移設を求める声があることは承知をしておりますが、政府としては、引き続き、日米合意を踏まえつつ、沖縄の皆様に誠意を持って御説明し、理解を求めながら、普天間飛行場の移設に向けて全力で取り組んでまいります。

 また、MV22オスプレーの沖縄配備について、安全性や騒音等に対する御懸念があることも承知をしております。地元の方々が安心できるよう、本件に関しても、丁寧に、誠意を持って御説明してまいります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 重野安正君。

    〔重野安正君登壇〕

重野安正君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、野田内閣総理大臣の所信表明演説に対し、質問します。(拍手)

 冒頭、東日本大震災及び台風十二号を初めとする災害の犠牲者にお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 まず、台風十二号災害について伺います。

 行方不明者の捜索救助に全力を尽くすとともに、復旧事業や被災者支援、交通網の回復を促進するため、早期に激甚災害に指定し、特別交付税の繰り上げ交付、予備費の活用や第三次補正予算による手当てをするべきだと考えます。万全の対応を求めます。

 さて、歴史的な政権交代から二年、今大切なのは、なぜ政権が交代したのか、どういう方向を目指していたのかをしっかり踏まえて、政権交代の原点である、国民の生活が第一という理念に立ち戻り、国民の期待にこたえるべく、実績を積み重ねることではないでしょうか。

 二〇〇九年九月九日の政策合意の実現、中でも、労働者派遣法改正案、郵政改革関連三法案については、早期成立を図るべきであります。改めて、政策合意の実現に向けた総理の決意を明らかにしていただきたい。

 あわせて、対話と理解を丁寧に重ねた合意形成、議論を通じて合意を目指すというのであれば、民自公三党で決めたことを押しつけるのではなく、少数政党の意見にも耳を傾けるべきだと考えますが、総理、いかがですか。

 未曾有の被害を出した東日本大震災から半年が経過いたしました。復興の主体は被災者であるという視点を踏まえ、被災者の生活、権利及び人間の尊厳の回復を重視して、復興に全力を挙げるべきだと考えます。

 さて、厚生労働省は、東日本大震災の影響で失業した労働者は三県で少なくとも七万人に上る可能性があるとしていますが、農漁業従事者や個人事業者も加えれば、職を失った人ははるかに多いと思います。

 失業手当が切れ始める秋以降、経済的に追い込まれる労働者が続出するとの懸念が広がっています。被災地の雇用問題についての総理の認識と対策についてお示しください。

 また、必死に奮闘している漁業者や農業者に、二重ローン問題が立ちはだかっています。株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法案の早期成立を図ることが、被災者を救い、復旧復興を進めていく力となると考えますが、総理の見解を伺います。

 被災地のシンボルである三陸鉄道を初め、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた鉄道について、国の補助率を抜本的に拡充し、事業者の負担なしで速やかな復旧復興ができるようにすべきではないでしょうか。あわせて、継続審議となっている交通基本法の早期成立を期すべきだと考えますが、総理の答弁を求めます。

 総理は、演説の冒頭で、忘れてならないものがあると連呼されました。しかし、重要なことを総理は忘れていませんか。

 原発事故を引き起こしたのは、虚構の安全神話の上に、やらせと隠ぺいを繰り返し、危険性を指摘する声を無視し、地震国である日本に五十基以上の原発をつくった政府と電力事業者にあります。その点についての反省も被災者への謝罪もないのは、一体どういうことですか。また、原発事故の収束は、国家の挑戦ではなく、国家の責任ではありませんか。最初から認識が間違っていると言わざるを得ません。総理はどのようにお考えか、お示しください。

 総理、児玉龍彦東大教授が厚生労働委員会に参考人として出席され、国民の総力を挙げた測定と除染の体制に関する四つの緊急提言をされました。総理は、どう受けとめ、対応されようとしているのでしょうか。そして、原発事故は、今の安全委員会や保安院の人たちが失敗したわけだから、彼らには直ちに退いてもらい、原発、核汚染、放射線医学、環境、食料などの最先端技術を持つ専門家チームを立ち上げるべきだという提案についての見解を伺います。

 放射能汚染が懸念される農畜産物、水産物について、国の責任による徹底した検査、安全基準の作成など、消費者の信頼確保に向けた取り組みをどのように実行していくのか、総理の決意をお聞かせください。

 また、私は、被曝したおそれのあるすべての人に、広島や長崎の被爆者と同様に被曝者健康手帳を渡し、医療費の完全無償化を図ることを提案したいと思いますが、総理のお考えをお聞かせください。

 自然エネルギーを中心に据えたエネルギー政策に転換し、菅前総理が提唱した原発に依存しない社会への道筋を明確にしていただきたいと思います。総理の見解を求めます。

 原子力発電所の新増設、リプレースを、着工済み原発を含めてすべて中止し、今後地震の危険が大きい立地の原発、四十年たった等の老朽炉、危険炉を廃炉にするとともに、定期検査等で運転を停止中の原子炉については、事故の収束、検証、安全、地元の同意の四条件が整うまでは再稼働するべきではないと考えますが、見解を求めます。

 総理は、分厚い中間層の復活に言及されています。中間層とは、一体何を指すのですか。また、中間層縮小の原因は、小泉構造改革による雇用と賃金の破壊にあります。安定した良質な雇用こそ中間層復活の最大のかぎではありませんか。総理のお考えをお聞かせください。

 総理は、社会保障と税の一体改革への熱意を述べられました。しっかりとした社会保障を築くことに異論はありません。しかし、その前提が消費税増税ありきというのでは、ぬくもりのある社会を取り戻すことはできません。橋本内閣が行った消費税増税の後に日本社会はどうなっていったのかを思い出すべきであります。

 消費税ではなく、欧州並みの所得税の累進性強化を行えば財源は十分賄えるのではありませんか。総理の考えをお尋ねいたします。

 先日、民主党の前原誠司政調会長が、野田総理の所信表明がなされる前に米国ワシントンで講演し、政府の重要な方針である国連平和維持活動の際の自衛隊の武器使用を緩和することや、武器輸出三原則を見直すことに言及したと報じられています。与党政調会長として問題ある発言と言わざるを得ません。これらは、国内では長く議論が続いてきた問題であり、憲法の平和原則にもかかわる重大な問題であります。

 また、前原氏は、自衛隊の活動について、米国の手の回らないパズルのピースを日本や他の友好国が埋めていくとも述べています。自衛隊は米国の下請なんでしょうか。マニフェストで緊密で対等な日米関係を築くことを掲げながら、このような露骨な対米追従政策を勝手に表明することは、国民の信頼を裏切るものと言わなければなりません。

 震災と原発事故で、あすの暮らしも見通せない人々が大勢いる中で、武器使用基準の緩和、武器輸出三原則の見直し等をしている場合ではないと考えますが、総理の認識を伺います。

 さて、総理は、政治と政治家に求められているのは正心誠意だとの決意を表明されました。辺野古への新基地建設を認めないという沖縄県民の意思は、既に明白です。ウチナーンチュに寄り添い、米軍基地の負担と重圧に苦しむ県民の心を理解し、国外、県外への移設を求めて対米交渉をやり直す正心誠意こそ見せていただきたい。

 アシュトン・カーター国防次官も、上院の指名公聴会で、辺野古に移す計画を再検討する可能性を示しました。アメリカも変わってきています。日米合意の見直しに関する総理の決意を伺います。

 残念なことに、沖縄振興については、沖縄県の要望にこたえたものになっていません。県が求めている新沖縄振興法や沖縄振興一括交付金創設等、沖縄振興への具体的な取り組みについての総理の明快な答弁を求めます。

 また、沖縄振興は、地域主権ではなく、日米同盟の深化・発展の項目に挙げられています。しかし、菅内閣当時、予算委員会で、基地の受け入れを条件に振興策を展開するかのごときリンク論を否定する統一見解が示されています。

 普天間移設と沖縄振興のリンク論について、改めて否定していただきたい。

 十一月にハワイで開催されるAPEC首脳会議での合意に向けて、環太平洋経済連携協定、TPP交渉が行われています。TPPは、日本にとって本当に必要なものなのか、国民にどんな利益があるのか、立ちどまって考えねばなりません。

 TPPへ参加を見送る姿勢を表明し、日本農業の再生に向けた諸課題への取り組みを強化すべきではないでしょうか。総理のお考えをお聞きします。

 本年は、国際森林年に当たります。改正森林法も成立し、新たな森林・林業基本計画が決定されました。また、台風十二号による災害によって、森林や土壌の保水力の向上など大型台風対策としても森林・林業再生の必要性が浮き彫りになりました。

 山村の振興、労働者や技術者など人材の育成、国産材の需要拡大、森林吸収源の達成及び森林整備予算の確保についての総理の見解を伺います。

 また、国有林は、企画立案と実行を一体的に進めるため、早期に組織、事業のすべてを一般会計に移行させ、人材育成を図る中で、民有林への指導、サポート、地域貢献を果たせる体制の確立を図ることが重要と考えますが、総理の御見解を伺います。

 二年前の国連女性差別撤廃委員会の求めに対する今年八月の日本政府の報告は、余りにも消極的なものでありました。二年間の政府の取り組みへの評価と、今後の取り組みの強化についての決意を伺います。

 あわせて、選択的夫婦別姓制度や婚外子相続差別撤廃などを含む民法改正案はいつ提出されるのか、明らかにしていただきたい。

 また、東日本大震災の復興、福島第一原発の事故や放射能被害の対応、エネルギー政策の転換に関する意思決定に関する女性の参加の確保についても、具体的にお答えください。

 八月十七日、福島県の小学生四人が、原子力災害対策本部や文部科学省の担当者に、約四十通の子供たちの手紙を手渡しました。その中に、大人が勝手につくった原発でなぜ福島の子供たちが被曝しなくてはならないのか、なぜこんなつらい目に遭わなくてはいけないのか、これほどの事故が起きても、どうしてまた原発再開を目指すのか、このような状況で総理大臣がかわっても、よい国がつくれるとは思いませんとの手紙があります。総理は、どう感じてそのお手紙を受け取られたのでしょうか。

 総理、声なき未来の世代にこれ以上の借金を押しつけてよいのでしょうかと言うのなら、子供たちにこれ以上の放射能を押しつけてよいのでしょうかと言いたくなる。今を生きる政治家の責任が問われているのはどちらなのでしょうか。

 原発事故の最大の被害者である福島の子供たちの声をしっかり受けとめた政治の実現を願い、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 社民党の重野幹事長から御質問をいただきました。順次御答弁申し上げます。

 まず、〇九年政策合意と政党間協議についてのお尋ねがございました。

 〇九年の三党政策合意については、連立与党である国民新党との間でも、これを尊重していくことを確認しております。

 労働者派遣法改正案、郵政改革関連三法案につきましては、野田内閣においても、その速やかな成立に向けて誠実に取り組む決意でございます。

 なお、予算や法案に関しては、国会審議を通じ、また政党間協議において、各政党の建設的な御意見、御提案に対し誠実に耳を傾けてまいりたいと考えております。

 被災地の雇用対策についてのお尋ねがございました。

 先日も、被災地の厳しい雇用情勢を伺い、雇用なくして被災地の再生はないと強く実感したところでございます。

 今後、本格的な安定雇用を生み出すため、これまでの「日本はひとつ」しごとプロジェクトの推進に加え、第三次補正予算に向けて、産業政策と一体となった雇用面での支援や、若者、女性、高齢者、障害者の雇用機会の確保について検討してまいります。

 株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法案早期成立についての御質問をいただきました。

 政府としては、六月十七日に決定した政府の対応方針などに基づき、農林漁業者も含めた被災事業者を支援し、債権の買い取り等を行う産業復興機構を県ごとに設立することとしております。

 現在、県や地域金融機関と、産業復興機構を早急に設立すべく精力的に調整をしているところでございます。

 なお、株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法案については、現在審議中であり、与野党間においても引き続き協議が続けられているものと承知しておりますが、いずれにせよ、政府としては、二重債務問題に対する対応を迅速に進めてまいります。

 被災鉄道復旧のための補助制度拡充及び交通基本法案の早期成立についてのお尋ねがございました。

 鉄道は国民生活や経済活動を支える基盤的な社会インフラであり、その復旧は極めて重要な課題でありますが、津波により甚大な被害を受けた沿岸部の路線については、復旧に至っていない区間が残っているものと承知をしております。

 今般の東日本大震災により被害を受けた三陸鉄道等の三セク鉄道の復旧については、被害実態、事業者の経営状況等も踏まえ、必要な支援策について三次補正予算に盛り込むべく検討しているところでございます。

 また、交通基本法案につきましては、地域における公共交通の維持、確保などの課題に対する取り組みを推進するためのものであり、早期に成立させていただきたいと考えております。

 原発事故の原因と事故の収束についてのお尋ねがございました。

 福島においていまだに厳しい避難生活をされている方や、県外も含めて風評被害に苦しんでおられる方が数多くいらっしゃることについて、大変申しわけなく思っております。

 今回のような事故をあらかじめ想定し、十分な対策を準備できなかったことは事実でございます。この点を真摯に反省し、原発事故が再発することのないよう、事故原因を究明し、情報公開と予防策を徹底してまいります。

 さらに、原子力安全規制の組織体制を見直し原子力安全庁を創設するとともに、事故原因の徹底的な検証を踏まえつつ原子力安全規制を抜本的に強化するなど、世界最高水準の安全性を確保すべく取り組んでまいります。

 事故の収束は、国家として責任を持って取り組むことは当然ではありますが、世界の英知を集め、技術的な課題も乗り越えなければならない、国家の挑戦でもあります。

 放射性物質による汚染への対処に関する御質問をいただきました。

 児玉教授の四つの緊急提案も含め、放射性物質による汚染への対処に関しては、各分野の専門家から貴重な御指摘をいただいているものと承知をしています。

 また、分野横断的な専門家の結集に関しても、当然しっかりと対応していかなければならない問題だと考えております。このため、内閣官房に、各分野の専門家から成る放射性物質汚染対策顧問会議を設置したところでございます。

 今後、こういった会議体などを通じて必要な知見を求め、適切に検査や除染が進むよう万全を期してまいります。

 農畜産物、水産物の放射能汚染への対応についての御質問もいただきました。

 食品の放射能汚染の検査については、地方自治体における検査機器の整備を支援するとともに、政府の各機関でも検査機器を整備し地方自治体からの依頼に対応するほか、国みずからも流通段階の買い上げ調査を実施しているところでございます。

 また、事故後速やかに暫定規制値を設定し、これを超える農畜産物等は市場に流通しないように努めております。

 今後、暫定規制値にかわる新たな規制値を設定し、さらなる安全の確保を図ってまいります。

 被曝者の健康管理と医療費の無料化についての御提案、御質問がございました。

 まず、福島県民の皆様の健康状況を長期間にわたり継続的に把握していくことが重要であることから、現在、県が主体となって県民健康管理調査が実施をされております。

 政府としては、この調査が長期間にわたり安定的に実施できるよう、平成二十三年度二次補正予算において九百六十二億円の予算を措置するとともに、放射線医学総合研究所等を通じて技術的な支援も行っております。

 今後、福島県民にどのような健康支援を行っていくかを考える上でも、まずは県民健康管理調査を実施し、実情をしっかりと把握することが重要と考えております。

 エネルギー政策見直しについての御質問をいただきました。

 原子力発電については、脱原発と推進という二項対立でとらえるのではなく、中長期的には、原発への依存度を可能な限り引き下げていくという方向性を目指すべきと考えます。

 今後、自然エネルギーの普及も含め、国民が安心できる中長期的なエネルギー構成のあり方について、幅広く国民各層の御意見を伺いながら、エネルギー・環境会議を中心に、冷静に検討してまいります。

 原子力発電所の新増設、再稼働に関する御質問をいただきました。

 現状では原子力発電所の新増設は困難だと考えており、中長期的には、原発への依存度を可能な限り引き下げていくべきと考えています。他方、建設中の原子力発電所等については、進捗状況もさまざまであり、立地地域の方々の御意見も踏まえながら、個別の事案に応じて検討していく必要があると考えております。

 また、定期検査で停止中の原子力発電所の再起動については、事業者が行ったテストを原子力安全・保安院が評価し、さらにその妥当性を原子力安全委員会が確認した上で、地元の理解や国民の信頼が得られているかという点も含め、政治レベルで総合的に判断を行ってまいります。

 さらに、すべての既存の原子力発電所について、ストレステストの二次評価を実施し、安全性の検証、確認を行った上で、運転の継続について判断を行ってまいります。

 中間層についての御質問をいただきました。

 私は、富裕層とまでは言えないが、貧困状態でもなく、みずから働いて生活を支えることができる層を中間層と考えております。

 このような層を復活させるため、意欲あるすべての人が働くことができる全員参加型社会の実現を図り、雇用を安定させるとともに、働きがいのある人間らしい仕事の実現を図ります。また、貧困の連鎖に陥る者が生まれないよう、確かな安全網を張ってまいります。

 社会保障財源を確保するための税目についてのお尋ねがございました。

 若い世代を含め、国民が将来に不安を持たないようにするため、社会保障のための安定財源を確保し、あわせて財政健全化を同時に達成するための社会保障と税の一体改革は、どの内閣であっても先送りできない課題でございます。

 社会保障の安定財源となる税収については、一定規模の社会保障の財政需要を賄えるものであると同時に、経済の動向や人口構成の変化に左右されにくいことが求められ、消費税は社会保障の主要な財源にふさわしい税目であると考えております。

 国際平和協力業務に従事する自衛官の武器使用権限及び武器輸出三原則等についての御質問をいただきました。

 国際平和協力業務に従事する自衛官の武器使用権限については、国会や、PKOの在り方に関する懇談会等における議論を踏まえつつ、引き続き検討することが必要であると考えております。

 武器輸出三原則等については、防衛大綱の見直しの過程でさまざまな意見がございました。こうした経緯を踏まえて、新防衛大綱においては、防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策を検討する旨が明記されており、今後とも幅広い視点から検討してまいります。

 普天間飛行場の移設についての御質問をいただきました。

 普天間飛行場の移設については、日米両政府間で日米合意を着実に実施していくことを確認しており、引き続き米国と協力していく所存でございます。

 沖縄において県外移転を求める声があることは承知しておりますが、現在の日米合意は、全体として、少なくとも現状に比べると、沖縄の大きな負担軽減につながると考えており、引き続き、沖縄の皆様の御理解を得るべく、誠心誠意努力してまいります。

 沖縄振興についての御質問もいただきました。

 本年度は現行の沖縄振興計画の最終年度であり、政府として、その総仕上げをしっかりと行ってまいります。また、来年度以降の新たな沖縄振興策については、沖縄の優位性や潜在力を生かした自立的発展につながるよう、しっかりと検討してまいりたいと考えております。

 なお、私の内閣は、基地を受け入れれば、それを条件に振興策を展開するというリンク論には立っておりません。(発言する者あり)

 所信表明ではリンクしておりません。「また、」という言葉を使っています。

 次に、TPPについての御質問もいただきました。

 世界経済の成長を取り込み、産業空洞化を防止していくためには、国と国との結びつきを経済面で強化する経済連携の取り組みを欠かすことはできません。このため、包括的経済連携に関する基本方針に基づき、高いレベルの経済連携協定の締結を戦略的に追求いたします。

 同時に、農業の活性化や再生も重要であり、先般の食と農林漁業の再生実現会議で中間提言を取りまとめたところです。

 農業は国のもとなりという発想のもと、東北の被災地の基幹産業である農業の再生を図ることを突破口として、食と農林漁業の再生実現会議の中間提言に沿って、早急に農林漁業の再生のための具体策をまとめます。

 TPPについては、八月十五日に閣議決定した政策推進の全体像にあるような広範な視点を踏まえ、協定への交渉参加について、しっかりと議論し、できるだけ早い時期に結論を出していきたいと考えております。

 森林・林業の再生についてのお尋ねがございました。

 森林は、水源の涵養、土砂災害防止、地球温暖化防止などの公益的機能を有しており、森林・林業の再生を図り、緑豊かな国土を次世代に伝えていくことが政治の使命と考えております。

 今後、森林・林業基本計画に基づき、森林吸収量の目標達成に向けた間伐、人材育成、地域材の利用拡大等の施策により、森林・林業の再生、森林・林業を支える山村の振興に努めてまいります。

 また、国有林野については、その組織、技術力、資源を活用して、森林・林業の再生に貢献できるよう、その債務を区分経理した上で、組織、事業のすべてを一般会計に移行することを検討してまいります。

 男女共同参画についてのお尋ねがございました。

 政府は、これまでも男女共同参画に向けた取り組みを進めてきたところでございますが、女子差別撤廃委員会の最終見解も踏まえ、昨年十二月には、第三次男女共同参画基本計画を策定いたしました。その中で、民法改正について引き続き検討を進めるとともに、女性の参画拡大について重点的に取り組むこととしており、今後とも本計画を推進してまいります。

 また、民法改正については、選択的夫婦別氏制度の導入などについて、平成八年に法制審議会において民法改正案の要綱を決定し法務大臣への答申が行われたところであり、いろいろな意見がありますが、この答申を踏まえ、引き続き与党内において調整してまいりたいと考えております。

 さらに、東日本大震災の復興や原子力災害への対応等においては女性の視点が重要であると考えており、今後とも、御指摘の分野において女性の参画が進むよう取り組んでまいります。

 最後に、福島の子供たちの声についての御質問をいただきました。

 福島第一原子力発電所の事故により福島県の子供たちに不安を与えていることは、大変申しわけなく感じております。

 まずは放射性物質の除染等に全力で取り組み、住民の方々の不安を取り除くとともに、復興の取り組みを加速してまいりたいと思います。

 また、国民の不安を和らげ、安心できるよう、原子力を含めた今後のエネルギー政策のあり方全体について、幅広く国民各層の御意見を伺いながら議論を行ってまいる所存でございます。

 以上で答弁を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 渡辺喜美君。

    〔渡辺喜美君登壇〕

渡辺喜美君 みんなの党、渡辺喜美であります。(拍手)

 震災、原発、台風の被害に遭われた皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 一日も早い復旧復興をなし遂げることが政治の務めであります。

 こんなときに、総理、なぜ、朝霞の公務員住宅、着工したんですか。これは、事業仕分けで民主党が凍結をしたものですよ。被災地では、まだ、住む家もない、仕事もない、そういう人がたくさんいるんです。公務員住宅が先なんですか。無駄の徹底的な削減というのは、うそですか。

 復興財源を捻出するためにも、朝霞の公務員住宅の工事を中止していただけないでしょうか。

 みんなの党は、増税の前にやるべきことがあるだろうと訴え、徹底した無駄の削減を掲げています。

 総理は、以前、二万六千人の国家公務員OBが四千七百の法人に天下りし、年間十二・六兆円もの血税が流れている、このからくりを壊さない限り、どんな予算を組んでも経済危機を乗り切ることはできないと書いたじゃありませんか。最近の論文では、現状では改革はまだ十分な姿とは言えないと言いわけをしている。でも、二年も経過しているんですよ、二年も。

 このからくりの解明状況と、これを壊す方向性、十二・六兆円のうち幾らを復興事業に振り向けるのかについて、総理の覚悟をお伺いいたします。

 民主党代表選の政権構想には、公務員制度改革の実現、天下りの根絶と掲げていました。でも、所信表明では急速にしぼんでいます。これは、無駄を永遠に生産する仕組みは見直さないということなんでしょうか。

 政権構想では再就職あっせん禁止の徹底を掲げていましたが、これは具体的に何をやるのか、再就職等監視委員会の立ち上げをいつまでにやるのか、お答えください。

 高位スタッフ職を整備するとも書いてありました。これは、高級窓際局長ポストをつくって、役所内の天下りをさせるということですよ。無駄じゃないんですか。

 高位スタッフ職の整備、この場で撤回を明言していただきたい。

 政府提案の公務員制度改革法案は、私が行革大臣のとき、民主党も賛成をして成立した基本法の思想とは逆方向であります。今の課題は、総理直属の国家戦略局、強力な権限を持った内閣人事局、政治任用を柔軟に行えるよう幹部を特別職とすることであります。政府の法案には、いずれも欠落しています。

 みんなの党、自民党共同提案の国家公務員法改正法案、幹部公務員法案こそ、基本法の思想を忠実に反映するものであります。総理は、これらの法案を、この際、丸のみされたらいかがでしょうか。お答えください。

 片山前総務大臣が、増税プランが固まらなければ第三次補正予算は組めなかったと語っておられます。財務省路線に乗って補正予算編成をおくらせ、復興がおくれている、この現状への責任、総理はどうお考えでしょうか。

 次に、増税によらない復興財源の逆提案をいたします。

 まず、みんなの党は、議員歳費三割、ボーナス五割カット、この法案を提出してまいりました。半年で三百万カットの時限法は今月で終わり。復興財源捻出のために、みんなの党は三たび法案を提出いたしますから、ぜひこれはのんでください。

 さらに、国家公務員の総人件費二割カットの法案も再提出をいたします。これも丸のみをお願いいたします。いかがでしょう。

 また、国債整理基金特別会計では、今まで、十一回、合計二十五兆円の定率繰り入れを停止してまいりました。今のような国難のときにこそ、定率繰り入れ停止を決断し、十兆円以上の財源を捻出すべきと考えますが、いかがでしょうか。

 復興財源の捻出、デフレ脱却、円高対策、一石三鳥になるのが国債の日銀引き受けであります。千年に一度の非常事態なのですから、日銀引き受けをやって復興財源を捻出すべきではありませんか。

 次に、税と社会保障の一体改革の中で、消費税を社会保障目的税としたら、一体、財政再建はどうなるんでしょうか。

 国税庁と年金機構の徴収部門の合体を図り、民主党のマニフェストにも書いてある歳入庁を創設し、徴収の効率化を図るべきではありませんか。

 今でも、社会保険料には国税徴収法が適用されるはずであります。法人の納めるべき厚生年金保険料や医療保険料が、年間、何と約十二兆円も未収になっている。違いますか。

 また、税と社会保障の一体改革の法案に増税が盛り込まれるならば、法案を国会に提出する前に衆議院を解散すべきです。これを約束していただけますか。

 円高、デフレ対策について、G7では安住大臣が円高の是正について理解を求めましたが、無視されました。各国とも、深刻な危機対応で手いっぱいなのです。

 円高は、日本の金融政策に問題があるからなのですよ。だったら、なぜ、隣に座っていた白川総裁に大胆な金融緩和を要請されないのですか。

 鉢呂経済産業大臣の失言は言語道断でありますが、辞任の裏側でつぶやかれていることは御存じでしょうか。

 鉢呂前大臣は、総合資源エネルギー調査会の委員の人選で、当初三名だった脱原発派に九名から十名を加えて、原発続行賛成、反対を半々にする人事案を固めていたそうです。

 枝野大臣は、その人事案を引き継がれましたか。鉢呂前大臣からの引き継ぎどおりの人事を行い、賛成、反対が半々になるようになさいますか。はっきり御答弁をお願いします。

 枝野大臣は、一昨日、政府の東電に対する支援がなかった場合、破綻などで生じるであろう株主や債権者の負担は当然していただくのが市場のルールとおっしゃいました。同感です。

 普通の企業が債務超過または資金繰りで破綻になった場合、原子力損害賠償支援機構法による支援がないとすれば、株主は、保有する株式の価値がゼロになるのが通常です。同じ御認識でしょうか。

 また、取引銀行は思い切った債権カットを求められることになるのが通常です。これも同じ御認識でしょうか。

 結局、増税や電気料金値上げによる国民負担を回避し、枝野大臣の言うように、まず負担すべき者が負担をするという考え方を徹底するには、東京電力を破綻処理するしかありません。

 だったら、原子力損害賠償支援機構法の執行を停止すべきじゃありませんか。

 みんなの党が提出した同法の修正案は、債務超過のおそれのある原子力事業者を職権で破綻処理できるものであります。これを丸のみしていただけませんか。

 みんなの党は、電力自由化で、供給拡大、電気料金値下げを目指すべきと考えます。

 今、ミニ電力会社、PPSがコンバインド・ガスタービンの効率のよい発電設備を増強しようとすると、環境アセスに三年、許認可に三年、工事に半年、合計七年もかかるんですよ。

 今は、東京電力に対してだけ、一定の発電所建設について環境アセスを免除しています。PPS、ミニ電力会社に対しても特例の適用をすべきではないでしょうか。

 今こそ、発送電分離、電力小売自由化を行う、電力自由化宣言を断行すべきではありませんか。

 そして、既得権やしがらみを断った改革をやるためにも、筋金入りの日の丸官僚、改革派官僚である古賀茂明さんを起用すべきであります。

 退職するかどうかは本人の自由意思と称して、仕事も与えず飼い殺しにしようとしていたら、本人はやめるしかないじゃありませんか。

 仕事を与えるか与えないか、枝野大臣と蓮舫大臣にお伺いをいたします。

 松下幸之助翁は、無税国家を提唱し、厳しい経済状況のときこそ、国は大減税をして景気を直すべきだとおっしゃいました。これは、経済成長により財政再建をする考え方であり、正論であります。

 野田総理は、国債発行残高が多くなっているということだけを理由として、幸之助翁の考え方を否定なさるんでしょうか。

 今、日本の国家経営にとって必要なことは、増税ではなく減税、円高ではなく円安政策であることを申し添えて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) みんなの党、渡辺代表の御質問にお答えをしてまいります。

 公務員宿舎朝霞住宅についてのお尋ねがございました。

 国家公務員宿舎のあり方につき見直しを行うとの事業仕分け結果を受け、財務省にて政務三役を中心に宿舎のあり方を検討し、おおむね五年で、宿舎を一五%強、三・七万戸程度を削減するなどの方針を定めました。宿舎を削減し、不要宿舎の跡地を売却することで、復興財源にも貢献できると考えております。

 このような全体の方針を踏まえ判断した結果、真に必要な宿舎として、朝霞住宅の事業再開を決定しております。

 いわゆる天下り法人への財政支出と復興財源の確保についてのお尋ねがございました。

 衆議院調査局の調査結果によれば、国家公務員の再就職者が在籍している法人に対する貸し付け等を含む国からの資金交付額は、平成十八年度において十二・六兆円とされております。

 政府としては、真に必要な経費は適切に措置をしつつ、無駄の根絶に向け、できるだけの努力を行うことが必要であり、平成二十三年度予算においても、事業仕分け等を最大限活用することにより、独立行政法人や公益法人に対する支出やその不要資産の見直しを行ってきたところでございます。

 今後とも、独立行政法人、公益法人等への無駄な支出の根絶に取り組むとともに、復興財源の確保に向けて、さらなる歳出削減、税外収入の確保を検討してまいります。

 再就職あっせん禁止と再就職等監視委員会についての御質問をいただきました。

 民主党政権発足後、直ちに、府省庁による再就職あっせんを内閣の方針として禁止するとともに、独立行政法人の役員人事において公募を実施するなど、再就職の適正化について取り組んできたところであります。

 これに加え、再就職等規制の監視機能強化を目的の一つとする国家公務員制度改革関連法案の早期成立を図ってまいります。

 なお、再就職等監視委員会については、同意人事案が前国会において採決が行われなかったため廃案となっていますが、今後、改めて人事案を国会に提出し、同意が得られ次第、速やかに立ち上げ、規制違反行為の監視に万全を期してまいります。

 新たな専門スタッフ職の整備についての御質問をいただきました。

 新たな専門職の整備は、天下りのあっせんを根絶する一方、定年まで勤務できる環境を整備していく中で、人材を適材適所で最大限活用するために必要であると考えております。

 自民党、みんなの党が提出した国家公務員法改正法案等についての御質問をいただきました。

 各党が提出した法案の賛否については、政府としてコメントすべき立場にはございません。

 いずれにせよ、国家公務員制度改革は、一部分だけを切り出して議論するのではなくて、労働基本権のあり方も含めた全体像を一体的に検討すべき課題と考えております。

 政府としては、総合的な改革を実現するための国家公務員制度改革関連四法案をさきの通常国会に提出したところであり、これらの法案が国会審議を経て速やかに成立するよう努力をしてまいります。

 補正予算編成のスケジュールについて御質問をいただきました。

 当面の復旧復興については、一次、二次合わせて六兆円規模の補正予算を編成し、これを執行するとともに、東日本大震災復旧・復興予備費の活用により、機動的対応を図っているところでございます。

 他方、本格的な復旧復興を総合的かつ計画的に進めるためには、必要となる復興施策の精査、復興事業に係る財源の確保等、国による復興のための取り組みの全体像を明らかにすることが必要であり、こうした観点から、七月末に、復興の基本方針を策定いたしました。

 この基本方針に沿って、一刻も早い被災地の復旧復興に向け、三次補正予算の編成を速やかに進めてまいります。

 議員歳費についての御質問をいただきました。

 行政の無駄を徹底排除することは当然の前提として、渡辺議員が指摘をされた、議員がみずから身を切る覚悟なくしては、大きな改革、国民負担を語ることはできないと考えております。

 議員歳費やボーナスだけではなく、定数削減という大きな問題もあります。ぜひ、与野党協議で具体的に詰めていくよう、与野党が協議のテーブルに着くことを強く期待しております。

 国家公務員人件費二割削減についての御質問をいただきました。

 国家公務員総人件費の削減については、地方分権推進に伴う地方移管、各種手当、退職金等の水準や定員の見直し、労使交渉を通じた給与改定など、さまざまな手法を組み合わせることにより平成二十五年までにめどをつけることとし、二割削減という目標の達成に向けて取り組んでいるところでございます。

 特に国家公務員の給与については、去る六月三日に、給与のおおむね八%を減額する法案を国会に提出しているところであり、まずはこの法案の早期成立に御協力をお願いいたします。

 定率繰り入れの停止についての御質問をいただきました。

 国債整理基金への定率繰り入れは、毎年度、国債残高の一定割合を一般会計から繰り入れることにより、国債償還のための財源を制度的に確保する仕組みとなっております。

 こうした定率繰り入れに基づく減債制度は、財政規律を確保するための重要な柱であり、国債償還に対する市場の信認の礎となっているため、定率繰り入れの停止は、市場からの信認を損なうおそれがあること、繰り入れを停止した分だけ国債償還の負担を将来へ先送りするにすぎず、財源にはならないことから、適当ではないと考えております。

 復興財源のための日銀引き受けについての御質問をいただきました。

 日銀の国債引き受けについては、戦前戦中に多額の公債を日銀引き受けにより発行した結果、急激なインフレが生じたことへの反省から、財政法において禁止をされています。

 復旧復興のための財源については、復興基本方針に基づき、次の世代に負担を先送りすることなく、今を生きる世代全体で連帯して負担を分かち合うことを基本とし、できる限り歳出の削減や国有財産の売却等の努力を行った上で、時限的な税制措置について検討を進めてまいります。

 財政再建についての御質問をいただきました。

 本年六月に決定した社会保障・税一体改革成案においては、二〇一〇年代半ばまでに段階的に消費税率を一〇%まで引き上げ、社会保障の安定財源確保を図ることとしております。

 このような取り組みなどにより二〇一五年度段階での財政健全化目標の達成に向かうことで、社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成への一里塚が築かれるものと考えております。

 歳入庁創設についての御質問をいただきました。

 歳入庁の創設については、平成二十二年度、平成二十三年度の税制改正大綱でも設置する方向で検討を進めることとしており、今後の年金制度改革や社会保障・税にかかわる番号制度の議論などを踏まえつつ、国民の皆様の視点に立った徴収体制を構築する観点から検討してまいります。

 また、十二兆円の未収との御指摘は、すべての給与所得者が厚生年金や健康保険に加入し保険料を支払う前提に立つ試算と承知をしています。しかしながら、今の制度では、例えばパート労働者は厚生年金や健康保険の対象とはなっておらず、すべての給与所得者から保険料を徴収することにならないことを御理解いただきたいというふうに思います。

 税制改革と解散についての御質問をいただきました。

 若い世代を含め、国民が将来に不安を持たないようにするため、社会保障のための安定財源を確保し、あわせて財政健全化を同時に達成するための社会保障と税の一体改革は、どの内閣であっても先送りできない課題であります。社会保障制度の維持強化に必要な財源と税制改革を一体的に考え、仮に消費税率の引き上げをお願いするときには、その結論を得て実施する際には国民に信を問う、この方針に変更はございません。

 この議論の過程において、与野党の超党派的議論と合意形成を目指すことは言うまでもなく、与野党協議への積極的な御参加をお願いしたいと思います。

 環境影響評価法の適用除外に関する御質問をいただきました。

 環境影響評価法においては、災害対策基本法に基づき指定公共機関等が実施する災害復旧事業について環境アセスメントの義務規定を適用しないこととされています。これは、災害対策基本法において指定公共機関等として位置づけられ、災害復旧に責任を負う東京電力及び東北電力が、今般の震災により失われた電気供給力を補うために行わなければならない発電設備の増強について、その供給義務を果たすための措置として特例が認められているものでございます。

 指定公共機関等ではなく、災害復旧に責任を負わないPPSは、環境影響評価法の適用除外の対象にはなりません。

 松下幸之助さんの無税国家論についての御質問をいただきました。

 松下さんは、無税国家という大きな理想を掲げられましたが、同時に、国の重要課題の一つである財政危機について真剣に考えておられ、国債残高の増大に歯どめをかける必要性を主張しておられました。

 今や、松下さんが想定をしていたよりもはるかに深刻な財政状況を招いており、これ以上の借金を将来の世代に残してしまうことは、断固阻止しなければなりません。

 その一方で、経済成長と財政健全化は、車の両輪として同時に進めていかなければなりません。そのため、昨年策定された新成長戦略の実現を加速するとともに、大震災後の状況を踏まえた戦略の再強化を行い、年内に日本再生の戦略をまとめ、経済成長につなげていきたいと思っております。

 これが、天上の人となった松下幸之助さんに対して、私が一番やらなければならない使命と考えていることでございます。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣安住淳君登壇〕

国務大臣(安住淳君) 日銀の白川総裁に対して金融緩和を要請したのかという問いでございます。

 日本銀行に対しては、常に、政府との緊密な情報交換、連携のもと、適切かつ果断な政策対応をとるよう私としては期待をしております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣枝野幸男君登壇〕

国務大臣(枝野幸男君) まず、総合エネルギー調査会の人事案についてのお尋ねでございます。

 この人事案については鉢呂大臣からしっかりと引き継ぎを受けておりまして、鉢呂前大臣の示された方針を踏まえて、半々になるかどうかというのは、これは、賛成か反対か、明確に二つに分けられるわけではございませんので断言はできませんが、原子力政策に対する意見を幅広く、バランスよく委員になっていただこうと思っておりますので、よろしく御理解をいただければと思っております。

 原子力損害賠償支援機構法による支援がない場合の株式価値や取引銀行による債権カットについての御質問をいただきました。

 この支援がなかった場合にどういう状況になっていたのかという具体的な判断については、現時点で私の立場から申し上げるべき、あるいは申し上げられる問題ではないと考えております。

 しかしながら、東京電力が機構法の枠組みによる支援を申し込むに当たっては株主や金融機関を含むステークホルダーに対して必要な協力を求めなければならないとされており、特別事業計画の認定に当たっては、支援がなかった場合に生じたであろう事態を踏まえ、東京電力の取り組みが適切かつ十分なものであるかどうかをしっかりと精査してまいります。

 原子力損害賠償支援機構法の執行を停止すべきではないかとの質問をいただきました。

 この機構法は、被害者への迅速かつ適切な損害賠償のための万全の措置、東京電力福島原子力発電所の状態の安定化及び事故処理に取り組む関連事業者等への悪影響の回避、そして電力の安定供給という三つの命題を確保するため、国民負担の最小化を図ることを基本として東京電力の損害賠償支払いに関する支援を行うものであり、適切に執行してまいりたいと考えております。

 機構法修正案に関する御質問をいただきました。

 御党御提案のような破綻処理を前提とした制度設計とする場合、被害者の方々の賠償債権や、今まさにこの瞬間も福島の原子力発電所等で収束作業に当たっている関係企業向けの債権などの完全な履行が不確実になるおそれがあり、適切ではないと考えております。

 次に、発電所設置についての環境影響評価の適用除外に関する質問をいただきました。

 現行法によっては適用除外の対象にならないことは、総理からも御答弁があったとおりであります。

 もっとも、電力供給の拡大や電力料金の引き下げに向けてさまざまな規制の見直しの必要性は意見を同じくするところであり、今後検討してまいりたいと考えております。

 電力の自由化に関する御質問をいただきました。

 発送電分離などの電力事業のあり方については、エネルギー・環境会議と連携しつつ、総合資源エネルギー調査会の議論も踏まえ、幅広い観点から、予断なく検討してまいります。

 その際、七月のエネルギー・環境会議の中間的な整理を踏まえ、電力自由化や発送電分離を含め、従来のシステムがベストであるとの前提には立たず、ゼロベースで検討をしてまいります。

 次に、経済産業省職員の人事についての御質問をいただきました。

 御指摘の職員については国会やメディア等で議論があることは承知をしておりますが、個別の人事について、その一つ一つについてお話をするのはなじまないと考えており、本件について、お答えを差し控えさせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣蓮舫君登壇〕

国務大臣(蓮舫君) 人事についてのお尋ねがございました。

 人事については、能力・実績主義のもとで適材適所の観点から行われるべきものであり、国家公務員制度改革を担当します国家公務員制度改革推進本部事務局の人事についても、そのような観点から、適切に行われていると認識しているところでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 下地幹郎君。

    〔下地幹郎君登壇〕

下地幹郎君 私は、国民新党・新党日本を代表して、野田内閣総理大臣の所信表明演説に対する質問をいたします。(拍手)

 冒頭、台風十二号で被害に遭われた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

 野田総理、私ども衆参の国会議員七百二十一名は、東日本大震災でお亡くなりになられた一万五千七百八十七名、行方不明四千五十九名の皆様のとうとい思いを忘れることなく、政治の役割を果たしていかなければなりません。

 被災した皆様には、お一人お一人、大きな夢があったはずであります。それが、あの大地震と大津波の中で一瞬にして失われてしまいました。その無念の気持ちをしっかりと受けとめた復興策を政治は推し進めていかなければなりません。

 この不幸な出来事の中で、私たちは気づかされたことがあります。それは、きずなという人と人とのつながりの大切さであります。

 我が国は、戦後、焼け野原から経済大国として発展を遂げてまいりました。しかし、その過程で、人や地域のつながり、他人を思いやる心を見失ってきたかもしれません。東日本の復興は、被災者から気づかされたきずなを国民が育てていく、そのことによってなし得ることができると思います。

 自分の考えに反対する人を抵抗勢力と決めつける、敵をつくり政権浮揚を図る政治は、きずな社会を育てていく上で、古い政治手法だと言われることになるでしょう。みずからの考えと違う人たちにも多くの時間をかけて説得していく、そのことが、国民が期待している優しい安心社会をつくることになると思います。

 野田総理、しかしながら、今の政治は、優しい安心社会をつくるための政策の継続性を持ち合わせておりません。安倍内閣以降、野田総理は六人目の総理大臣であります。総理大臣が一年ごとに五人もかわってきたということは、日本国としての政策に継続性がなかったということであります。

 総理大臣がころころかわり、政策が首尾一貫しないことで政治が混乱し、そのことで、国民の信頼を失い、国際社会から信用も損なうことになりました。それだけに、政策の継続性という観点から、安倍内閣以降の政策を検証し、政治的に継続できる価値のある政策があるならば、いま一度復活させることも考えてみたらいかがでしょうか。

 新しい総理がみずからの内閣で新しい政策を提案しなければ改革論者ではないという声を恐れず、足取りを速めるだけではなくて、三回に一回は過去を振り返り、手直しをしながら未来を考えるという政治姿勢があってもよいのではないかと思います。

 野田総理に求められているのは、着実な足取りで安定した政治を行うことです。そのことを強く認識し、私が提案する歴代内閣の政策の継続性ということについての総理のお考えをお聞かせください。

 成長なくして財政再建なし、財政再建なくして成長なしというお考えを野田総理は示されました。

 しかしながら、我が国の歳出圧力は底なし沼に陥りつつあります。震災復興二十三兆円、基礎年金の二分の一の国庫負担十兆円、B型肝炎訴訟の和解金三兆円、毎年度一兆円増加する社会保障費など、歳出圧力は想像を絶するものであります。

 これらの歳出要因の財源を既存の国債の発行で補えば、財政再建は次世代にツケを回すことになります。消費税の税率の見直しで財源を補おうとすれば、一〇%にしても、一五%にしても、補えるものではありません。また、増税は景気の足を引っ張ります。倒産する会社や失業者、生活保護世帯がふえ、消費が減っていけば、増税原理主義者の皮算用どおりに税収は上がりません。

 野田総理、このような現実を直視し、財政経済政策はこれまでの既成概念にとらわれるべきではありません。まずは徹底的に行財政改革を行うこと、新しい財源を確保すること、そして大胆な景気対策を行うことであります。この三つを政治が決断し、増税は最小限のものにすべきであります。

 一つ目の徹底的な行財政改革は、これまでの蓮舫大臣が行ってきたような、各種団体からヒアリングを行い無駄を積み上げる方式では、効果に限界があります。削減金額の総額を決定し、それを各省庁及びその先の各種団体に割り振りするという、大胆で荒っぽい政治決断をしなければ、無駄を省くことはできません。

 また、私ども国民新党は、特別会計と一般会計との一体運用による財源確保を提案してまいりました。

 予算委員会や本会議で特別会計が一般会計と同じように論議されることになれば、国会の予算審議を通じて、無駄があると言われる特別会計が透明になると思います。このような特別会計の見直しの手法については、国会全体で新しい仕組みをつくることが大事ではないでしょうか。

 二つ目の新しい財源については、特別会計において、剰余金の活用に加え、さらなる積立金の活用を決めるべきであります。また、国有財産の売却も徹底的に行うべきであります。特に売却金額の大きい郵政株の売却については、早期に実現しなければなりません。

 NTTの純資産は三兆円、株式三分の二の売却で、株式の売却総額は十五兆円を超えました。日本郵政の純資産は十兆円であり、その株式の三分の二を景気回復を考えながら十年以内に売却すれば、株の売却総額は二十兆円を下ることはありません。大胆な国有財産の売却は、増税幅を小さくするための最大の財源であります。

 三つ目に、大胆な景気対策についてであります。

 無利子非課税国債と贈与税の非課税をセットにした、新しい仕組みの国債を発行します。経済対策を大胆に行うための財源を金利の支払いのない国債で集め、大胆な予算編成をします。同時に、贈与税の非課税によって若年層への贈与が加速され、個人消費が刺激されることになります。

 また、無利子非課税国債は、これまでの既存の国債とは大きく違い、金利の支払いのないことで、財政再建にも大きく貢献します。そして、四十兆円を超えるたんす預金がこの無利子非課税国債や若年層への贈与として市場に流通することで、経済を活性化することにもなるのです。

 野田総理、私の三つの提案についてのお考えをお聞かせください。

 民主党は、前国会で、子ども手当、高速道路の無料化、高校無償化、農家戸別所得補償制度といった、政権交代時のマニフェストを見直す方向にかじを切りました。

 これらの項目は、政権交代前の日本が格差社会で、所得、地域、企業といったあらゆる分野において大きな隔たりを埋めるためにつくられた四つの政策であり、厳しい所得環境にさらされている人々を支えることが目的であったと思います。

 今、政権交代から二年目を迎えたこの時点で、日本の格差社会は本当に改善されたのでしょうか。私は、されていないと思います。我が国の生活保護予算が三兆円を超えている現実を直視すべきではありませんか。野党はばらまきだと批判しますが、これらの政策は、ばらまきではなく、セーフティーネットなんです。

 野田総理、あなたには、あと二年間、政権運営のかじ取りを行える時間があります。その二年間を全力で、国民と約束をしたマニフェストを守るために頑張っていただきたい。

 そして、衆参のねじれから、国会対策のために政権交代時のマニフェストの根幹を見直すことはやめるべきであります。今やらなければいけないことは、厳しい所得環境にある国民を、政権交代時の四つのマニフェストで守ることであります。

 野田総理、野田総理の、成長なくして財政再建なし、財政再建なくして成長なしという言葉の最終的な目標は、国民生活を守るということではないでしょうか。マニフェストの見直しについての総理のお考えを聞かせてください。

 野田総理、あなたは、衆議院の任期残り二年間を最後までおやりになって衆議院選を迎えるか、みずからの決断で、任期半ばにして国民に信を問うために解散するのかの二つの選択肢しかありません。もう、民主党から四人目の総理大臣を選出することは、国民が認めません。

 野田総理、あなたが途中で総理大臣の職を投げ出すようなことがあれば、今お座りの総理大臣のいすと政権をみずから野党に明け渡すべきであります。

 野田総理の最後の戦いは、二年前の政権交代のときに国民から寄せられた期待を守れるかということと、日本の底力を世界に示せるかということであります。

 日本国も野田総理も、今、土俵際に追い詰められ、足一本で踏みとどまっているという厳しい認識を持つべきであります。そこから土俵の真ん中まで押し戻すために、どのように正心誠意おやりになろうとしているのか、その覚悟のほどをお聞かせください。

 そして、野田総理、この歴史的な困難から日本を再生していくには、総力戦で正心誠意挑まなければなりません。あの人が好きだとか嫌いだとかではなく、すべての心を合わせて頑張ることが必要であります。

 その先頭になって頑張っていただくことを期待して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 国民新党の下地幹事長から、大変大胆な御提言も含めて、大変熱のこもったエールも送っていただいたことを、心から感謝申し上げたいと思います。

 まずは、内閣の政策の継続性についての御質問をいただきました。

 政策の継続性については、一般的には議員の御指摘のとおりだと思います。それを変更する場合においては、例えば、予算、法律案という形で、国会での審議、成立が前提となっております。また、政策の変更について大きな選択は、言うまでもなく、選挙において民意を問うことであります。

 現在の政権は、二年前の総選挙における国民の選択によって誕生し、民主党と国民新党が連立政権を担っています。下地幹事長が御案内のとおり、現政権においても、多くの政策を旧政権から引き継いでいるとともに、民意に従って改革すべきは改革する努力を続けており、今後ともそうした努力を国民新党とともに進めていきたいと考えております。

 次に、徹底的な行財政改革及び特別会計の見直しについての御提案、御意見をお伺いいたしました。

 政権交代後の過去二回の予算編成では、事業仕分けによる無駄の削減などで、特別会計を含め予算の効率化に最大限取り組み、成果を上げてきたと認識をしています。

 また、昨年の事業仕分けの評価結果等を踏まえた特別会計制度改革については、東日本大震災への対応のため一時作業を停止しておりましたが、順次作業を再開したところであり、可能なものについては来年の通常国会に法案提出ができるよう取り組んでまいりたいと思います。

 今後も行政刷新の取り組みを継続、強化することが重要であります。行政に含まれる無駄や非効率の根絶に取り組んでまいります。

 続いて、特別会計の剰余金等の活用や国有財産の売却についてのお尋ねがございました。

 特別会計の剰余金、積立金については、一般会計の財源として既に最大限活用してきたところでありますが、今後も、活用できるものについてはその確保に努めてまいります。

 国有財産については、財源確保という観点から、売却すべき財産は積極的に売却し、税外収入の確保に努めてまいります。

 日本郵政株式会社の株式については、いわゆる日本郵政株式売却等凍結法により、その処分が停止をされています。現在継続審議となっている郵政改革関連法案が成立すれば、政府保有義務がかからない株式は売却が可能となりますが、現時点では、日本郵政グループの事業、経営の見通しが立っておらず、具体的売却の時期、収入を見込むことは困難でございます。

 今後、郵政改革関連法案の早期成立を目指すとともに、財源確保の観点から、株式の売却に向け、そのための環境整備を含め努力をしていきたいと考えております。仮に売却が確定をした場合には、それ以降の時点における復興の財源フレームの見直しの際に売却収入を織り込むことになります。

 続いて、無利子非課税国債という大変大胆な御提起をちょうだいいたしました。

 相続税や贈与税を減免する無利子非課税国債については、無利子ゆえに失われる利子収入よりも軽減される税額の方が大きい方が主として購入するものと想定をされ、国の財政収支はその分悪化することになるかもしれません。

 現在、国債の発行、消化が総じて円滑に行われている中で、こうした特別な国債が必要あるのかどうか、また、税の公平性や市場、経済への影響等の観点から、慎重に検討させていただきたいと考えております。

 続いて、マニフェストの見直しについての御質問をいただきました。

 マニフェストは国民の皆様とのお約束であり、現下の厳しい状況においても、政策の優先順位と選択に基づき、さらに努力を重ね、その理念についてはしっかりと貫いてまいりたいと思います。

 今後、大震災からの復興、原発事故の収束と被災者支援のさらなる推進を着実に進めながら、マニフェストの個別具体の政策については、国民新党との政権合意、自民党、公明党と民主党の合意、確認を踏まえ、政党間協議を進めていきたいと考えております。

 正心誠意にかける覚悟についての御質問をいただきました。

 日本の経済社会は、長年の懸案事項を抱え、さらに大震災からの復旧復興、原発事故の収束、さらには経済と金融の危機からの脱却という喫緊の課題を乗り越える必要があり、下地議員御指摘のとおり、まさに国難ともいうべき事態であります。

 野田内閣として、我が国の危機を乗り越え、希望と誇りある日本の再生をなし遂げるために、連立与党である国民新党の御協力をいただき、また、各党各会派の一致協力を正心誠意を持ってお願いし、政策を具体的に、着実に前進させていく決意でございます。

 以上、答弁を終わります。ありがとうございました。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   野田 佳彦君

       総務大臣     川端 達夫君

       法務大臣     平岡 秀夫君

       外務大臣     玄葉光一郎君

       財務大臣     安住  淳君

       文部科学大臣   中川 正春君

       厚生労働大臣   小宮山洋子君

       農林水産大臣   鹿野 道彦君

       経済産業大臣   枝野 幸男君

       国土交通大臣   前田 武志君

       環境大臣     細野 豪志君

       防衛大臣     一川 保夫君

       国務大臣     自見庄三郎君

       国務大臣     平野 達男君

       国務大臣     藤村  修君

       国務大臣     古川 元久君

       国務大臣     山岡 賢次君

       国務大臣     蓮   舫君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  齋藤  勁君


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