衆議院

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第11号 平成23年11月24日(木曜日)

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平成二十三年十一月二十四日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第六号

  平成二十三年十一月二十四日

    午後一時開議

 第一 経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案(第百七十七回国会、内閣提出)

 第二 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案(内閣提出)

 第三 平成二十三年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 東日本大震災からの復興に関し地方公共団体が実施する防災のための施策に必要な財源の確保に係る地方税の臨時特例に関する法律案(内閣提出)

 第五 経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための地方税法等の一部を改正する法律案(第百七十七回国会、内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙

 国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙

 日程第一 経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案(第百七十七回国会、内閣提出)

 日程第二 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案(内閣提出)

 日程第三 平成二十三年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 東日本大震災からの復興に関し地方公共団体が実施する防災のための施策に必要な財源の確保に係る地方税の臨時特例に関する法律案(内閣提出)

 日程第五 経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための地方税法等の一部を改正する法律案(第百七十七回国会、内閣提出)

 復興庁設置法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を聞きます。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) 御報告することがあります。

 永年在職議員として表彰された元議員谷洋一君は、去る十月二十四日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。

 谷洋一君に対する弔詞は、議長において去る十八日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され 再度国務大臣の重任にあたられた正三位勲一等谷洋一君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

     ――――◇―――――

 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙

 国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙

議長(横路孝弘君) 検察官適格審査会委員及び同予備委員並びに国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙を行います。

太田和美君 検察官適格審査会委員及び同予備委員並びに国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(横路孝弘君) 太田和美さんの動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、検察官適格審査会委員に平沢勝栄君を指名いたします。

 また、

 石関貴史君を川内博史君の予備委員に、

 太田和美さんを辻惠君の予備委員に、

 近藤三津枝さんを平沢勝栄君の予備委員に

指名いたします。

 次に、国土開発幹線自動車道建設会議委員に茂木敏充君を指名いたします。

     ――――◇―――――

 日程第一 経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案(第百七十七回国会、内閣提出)

 日程第二 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案(内閣提出)

議長(横路孝弘君) 日程第一、経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案、日程第二、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長海江田万里君。

    ―――――――――――――

 経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔海江田万里君登壇〕

海江田万里君 ただいま議題となりました両案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。

 まず、両案につき、その要旨を申し上げます。

 経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案は、経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図る観点から、個人所得課税、法人課税、資産課税、消費課税、納税環境整備について所要の措置を講じようとするものであります。

 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案は、東日本大震災からの復興を図ることを目的として平成二十三年度から平成二十七年度までの間において実施する施策に必要な財源を確保するため、財政投融資特別会計財政融資資金勘定からの国債整理基金特別会計への繰り入れ等の税外収入の確保のための措置を講ずるとともに、復興特別税を創設するほか、復興債の発行に関する措置等を定めるものであります。

 以上両案のうち、所得税法等改正法案は、第百七十七回国会に提出され、本年二月十五日当委員会に付託され、同月二十三日野田前財務大臣から提案理由の説明を聴取し、同月二十五日から質疑に入りましたが、六月十日、改正規定の一部を削除するとともに、法律案の題名を改めるなどの内閣修正が行われました。同国会においては、七月十五日に参考人から意見を聴取するなど慎重な審査が行われましたが、今国会まで継続審査に付されていたものであります。

 今国会におきましては、十月二十八日、施行期日を修正するとともに、国税通則法の改正規定の一部を削除するなどの内閣修正が行われ、十一月十八日安住財務大臣から改めて提案理由の説明を聴取しました。

 また、復興財源確保法案は、今国会に提出され、十一月七日当委員会に付託された後、九日安住財務大臣より提案理由の説明を聴取いたしました。

 同月十八日には両案について質疑に入り、同日、寺田学君外三名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の三会派共同提案により、所得税法等改正法案に対し、所得税法、相続税法、租税特別措置法等に係る改正事項の一部を削除する等の修正案が、また、復興財源確保法案に対し、復興特別所得税の課税対象期間及び税率の変更、復興特別たばこ税に係る規定の削除並びに復興債等の償還期間の変更を行うとともに、附則に決算剰余金の償還費用の財源への活用及び復興に係る特別会計の設置についての規定を追加する等の修正案がそれぞれ提出され、提出者を代表して寺田学君から両修正案の趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、二十二日には、両案及び両修正案について、参考人から意見を聴取し、野田内閣総理大臣に対する質疑を行うなど慎重な審査を行い、質疑を終局いたしました。質疑終局後、所得税法等改正法案に対する修正案について内閣の意見を聴取いたしました。引き続き、両案及び両修正案を一括して討論を行い、順次採決いたしましたところ、両案はそれぞれ賛成多数をもって修正議決すべきものと決しました。

 なお、復興財源確保法案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 両案につき討論の通告があります。順次これを許します。佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました所得税法等一部改正案、復興財源確保法案及びそれぞれの修正案に反対する立場から討論を行います。(拍手)

 政府は、復興財源を確保するため、連帯して負担を分かち合うと述べましたが、本会議及び財務金融委員会の質疑の中で、それが全く成り立たないことが明らかとなりました。

 民主、自民、公明の三党合意に基づく修正案によれば、見送られたたばこ増税の分が所得税の増税に上乗せされ、二十五年間で庶民に八・一兆円もの増税を押しつけるものとなっております。その一方、法人税については五%の恒久減税を実行することとしております。そのため、二十五年の累計では二十兆円の減税となり、三年間だけ二・四兆円の付加税を課すとしても、大企業には十七・六兆円もの大減税となるのであります。

 庶民には約八兆円の増税、大企業には約十八兆円の減税であります。これでどうして負担を分かち合うことになるのでしょうか。

 リーマン・ショック後の景気後退の時期に次々と内部留保を積み上げる大企業に、これほど大規模な恒久減税を行う必要はありません。野田内閣のやり方では、復興財源を確保するどころか、法人税減税のためにさらに大規模な赤字国債の発行を行わざるを得なくなり、財政破綻を一層深刻なものにするのであります。

 なぜ、こんなことをするのでしょうか。財界の言い分を丸のみしたからではありませんか。

 日本経団連が九月に発表した平成二十四年度税制改正に関する提言によりますと、負担増を行うのであれば、法人実効税率五%引き下げに伴うネット減税分を限度として付加税を時限的に課すか、施行を一定期間おくらせる方式をとるべき、いずれも三年以内と書いております。

 庶民に増税を押しつけながら、自分には減税しろというのは、余りにも虫のいい話であります。野田内閣はそれを忠実に実行しているだけではありませんか。国民の立場に立った政治であれば、財界の身勝手を抑え、応分の負担を求めるのが筋であります。

 次に重大なのは、国税通則法の改悪が盛り込まれたことであります。

 国税法案とその修正案では、税務署の権限を強化し、税務調査や徴税事務における納税者の権利を実質的に後退させております。とりわけ、修正案では、原案に盛り込まれていた納税者権利憲章の制定が、目的規定とともに削除されてしまいました。さらに、任意調査を行う場合、文書によって事前通知を行うという規定も削除されました。許しがたい後退であります。法案では、帳簿、資料の任意提出に罰則規定を盛り込むなど、重大な内容も明らかとなりました。

 民主党は、国税当局に対し著しく立場の弱い納税者の権利を保護するため、納税者権利憲章の制定を公約していたのではありませんか。にもかかわらず、三党協議で自民党の主張を受け入れ、提案していた法案を一層改悪し、税務署の権限強化へとかじを切ったのであります。到底認めるわけにはいきません。

 消費税増税についても重大な問題が浮き上がりました。

 もともと民主党は、政権を担当する四年間は消費税は上げない、仮に引き上げる場合には、消費税増税をマニフェストに書いて、総選挙で国民の信を問うと約束していたのであります。

 ところが、総理は、信を問うのは、増税法案を提出するときではない、法案を通した上で消費税増税を実施する前だと言いかえたのであります。そんな言い方は、民主党のマニフェストにも、総選挙のときの党幹部の発言のどこにもありません。完全に、すりかえであります。

 国民に信を問うことなしに消費税増税法案を国会で通すというのは、明白な公約違反であり、直ちに消費税増税を撤回すべきであります。

 日本共産党は、消費税増税に絶対に反対だということを強調して、討論を終わります。(拍手)

議長(横路孝弘君) 丹羽秀樹君。

    〔丹羽秀樹君登壇〕

丹羽秀樹君 自由民主党の丹羽秀樹でございます。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、ただいま議題となりました東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案並びに経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案に賛成の立場で討論を行います。(拍手)

 東日本巨大地震・津波災害発生から八カ月以上がたちました。被災地東北の方々の、一刻も早くもとのふるさとを取り戻そうとする現場での復旧復興への必死の努力がなされる一方で、さきの菅内閣以来の民主党政権による拙劣な震災対応により、いまだ七万人以上の方々が、避難者として、ふるさとを離れて暮らさざるを得ないという状況に置かれております。

 少し前を振り返れば、民主党の震災対応のひどさが、いかにスピーディーな復旧復興を妨げてきたか、おわかりいただけると思います。

 すなわち、ことし五月二日に成立した第一次補正予算に続き、我ら自由民主党は、さらなる迅速な対応が必要との認識から、既に四カ月以上前の七月八日に、本格的な復興予算として、十七兆円規模の対策案を提示しておりました。

 しかるに、予算提出権を持つ肝心の政府・与党民主党は、震災発生以来、不手際を重ねて、国民と野党からだけではなく、与党内ですら見切りをつけられていた菅内閣の延命をいたずらに許し、結果として、その退陣の花道の一条件として、わずか約二兆円の第二次補正予算を七月二十五日に成立せしめたにすぎません。

 また、野田総理が就任してから初の、さきの第百七十八回臨時国会も、適材適所により任命されたはずの閣僚による不適格な発言を恐れて、与党民主党は、たった十八日間の会期で、議論の場である国会を閉じてしまったのです。

 つまり、民主党は、被災地で苦しむ多くの方々を横目で見ながら、政局にうつつを抜かしたあげく、自分たちの都合だけで動いてきたのです。こうした経緯があったことを、民主党の方々はもうお忘れでしょうか。

 このように、未曾有の大災害で危機に陥った被災者を一刻も早く救おうとする決意と覚悟と算段もなく、マニフェストは神聖な国民との契約と言いながら、そのすべてをほごにして良心の痛みというものを感じない民主党政権が遅まきながらやっと提出した、本格的な復興予算である平成二十三年度第三次補正予算案は、総額十二・一兆円のうち、震災復興関連は九・二兆円であります。

 その内容は、瓦れき処理、除染といった災害からの復旧活動を初め、被災者の生活支援、中小企業並びに農林漁業者などへの融資による経営再建と雇用確保、そして社会資本としてのインフラ整備などの経費を歳出項目として挙げており、これらの措置が必要であるという点については、基本的に我が党も認識を共有するものであります。

 しかし、それを執行面で財政的に担保する歳入法案たる今回の二法案については、その財源の工面の仕方について問題点が多々あったと言わざるを得ません。

 今回の補正予算を編成するに当たって自民党がかねてから主張してきた復興債を活用することは、大規模な復旧復興活動を可能とする点で、現在とり得る最良の方策であると考えますが、それを償還する財源調達のため、所得税、法人税のみならず、たばこ税の引き上げまで断行するとし、あまつさえ、その償還期間を十年として法案に明記していたことについては、合理的な理由を見出せませんでした。

 たばこ税については、昨年十月に、一本三・五円もの過去に前例のない大増税が実施されたばかりであります。そのときは健康目的のために喫煙者を減らすためとされ、今回は復興費用を賄うためというのでは、取れるところから取るという政府・与党の安易な姿勢が見え見えであったのです。

 また、葉たばこ農家の多くが岩手や福島など東北にあることから、復興財源に充てる増税が被災地の産業にかえって打撃を与えることにつながりかねませんでした。現に、報道によれば、震災の影響や高齢化などにより、JT、日本たばこ産業株式会社の廃作募集に対し、平成二十四年以降、その意向を表明した葉たばこ農家は全体の四割弱、四千百六戸にも達しており、先行きに大きな不安を持っていることが明らかとなったところです。

 さらに、政府は、税外収入を確保するためとして、そのJTの株式売却を法案にうたっておりましたが、たばこの価格がはね上がれば、当然売り上げは落ち、JTの業績は悪化することが予想されました。であれば、業績が悪化したJTの株が売却されても、本当に政府が見込むだけの収入が調達できない可能性が非常に高いと言わざるを得ないのです。

 復興債の償還期間については、復興増税の期間、すなわち、国民の皆様にどのような負担をお願いするかという議論に直結するため、与野党間で大きな争点になりました。

 政府提出の原案で十年と明記された理由について、野田総理は、今を生きる世代で負担を分かち合い、若い世代に負担を先送りしないようにという趣旨の答弁をされてきましたが、千年に一度という未曾有の大震災からの復興、しかもその経費の多くが、長期にわたって使用される道路や港湾、河川、海岸、そして鉄道や空港といった社会インフラの整備に充てられ、その恩恵を多くの世代が受けるという事情に加え、単年度当たりの国民負担軽減といった点をかんがみれば、建設国債に準じた償還期限を考えるのが自然であり、現に、阪神大震災のときもそのように対応しております。

 また、我が党は、復興債によって集められた資金については、別の使途に流用されないよう、そして、その歳入や歳出が国民の皆様にわかりやすく示せるように、他の予算と一緒に一般会計に計上することはせず、復興特別会計を創設し、区分整理することを提言してまいりました。これは、来年度以降の一般会計の膨張をしっかりと抑制するという財政規律の観点からも要請される措置であります。

 こうした意見の相違を抱えながらも、自公民三党は、政党間協議を断続的に行い、復興債の償還期限は二十五年で、財源調達の方法としては、たばこ税の引き上げは行わないこととしました。また、復興特別会計を来年度予算から創設し、増税幅圧縮のために、税外収入についても、与野党の立場を尊重しつつ、関係各所への影響等を十分見きわめることになりました。さらに、多年度にわたる復興債の発行を認めることをかんがみて、復興の基本理念に資する施策の経費へ充てることを旨とする附帯決議を付することで合意しました。

 このような経緯と結果を踏まえて、政府提出の東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案が修正され、それに付随して、経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案も同様の措置が施されたため、我々自由民主党は、両法案に賛成することにいたしました。

 最後に、冬を間近に迎えながらも、いまだ生活が安定せず、日ごとに不安が大きくなってきている被災者の方々のためにも、我々自由民主党は、一日も早い復旧復興、そして日本経済の再生に向け、全力を傾注し邁進することを改めてお誓いし、私の賛成討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(横路孝弘君) 阿部知子さん。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 東日本大震災からの復興のための財源の確保法案に対する修正案及び所得税法の一部改正法案に対する修正案につき、社会民主党・市民連合を代表して、反対の立場から討論を行います。(拍手)

 冒頭、この間のTPP協定をめぐる野田総理を初めとする政府の対応は、著しく国益を損ねるものであり、厳しく糾弾したいと思います。

 総理は、衆参両院での集中審議において最後までみずからの考えを表明されず、多くの自治体が反対決議を上げる中、APECへと旅立たれました。オバマ大統領との会談で表明したとされる見解は、米側からは、日本はすべてを交渉のテーブルにのせるものと受けとめられており、ホワイトハウスのホームページにもさように書かれております。

 国民や自治体、そして国会に対して語る言葉を持たず、米国との協議においては米側の一方的な解釈がまかり通るとなれば、日本の国益をかけた交渉など、できようはずもありません。かくもあいまいで、すべてがやぶの中では、国民は到底納得できるはずもなく、総理としての根本的資質に欠けると断じざるを得ません。

 さて、財源確保法については、緊急かつ巨額の政府支出に対して増税を担保にとる形での対応に固執した余り、予算提出がおくれたばかりか、現役世代や経済に過重な負担を強いる結果となっています。

 復興所得増税は、その期間が十年から二十五年に延長されたとしても庶民増税に変わりはなく、もしも二十五年の長きにわたる定率増税をしくならば、むしろ、所得税の累進の強化や金融証券課税等、税制そのものの見直しが図られてしかるべきです。一方、復興法人税については実質的に減税となり、結果として、庶民増税、企業減税の不公平税制となりました。

 その他財源に関して、修正案では、新たに決算剰余金の償還費用財源への活用を二〇一一年から二〇一五年度まで定めておりますが、特別会計の剰余金は対象外であり、相変わらず切り込みは不十分です。

 次に、税制改正法案についてです。

 三党協議の末に成年扶養控除の縮減が削除されたことは評価いたしますが、給与所得控除の上限設定や相続税の課税強化、地球温暖化対策課税の特例までもがまとめて削除されたことは、問題が残ります。

 さらに、国税通則法の改正については大きな問題があります。

 本来、この改正は、税務調査手続の制度化、納税者権利憲章の策定など、五十年ぶりの大改正とされています。しかし、修正案では、納税者に不利な規定ばかりが残され、肝心の納税者権利憲章の策定が削除されてしまいました。これでは、課税庁の権限強化のみが先行し、長年税務行政に大きく貢献してきた納税者の権利は弱まるばかりであり、このことは、政権交代の主要課題であった納税者主権の確立をも疑わせるもので、断じて認めることはできません。

 以上、両修正案に反対の立場を表明して、私の討論を終わります。(拍手)

議長(横路孝弘君) 竹内譲君。

    〔竹内譲君登壇〕

竹内譲君 公明党の竹内譲です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました、民主党、自民党、公明党提出の東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法案等二法案に対する両修正案及び修正部分を除く二法案の原案に賛成する立場から討論を行います。(拍手)

 平成二十三年度第三次補正予算が十一月二十一日に成立しましたが、東日本大震災発生から既に八カ月と二十日が経過いたしました。この間の民主党政権の余りにも遅い対応には猛省を求めなければなりませんが、今般の三次補正予算の成立によって、被災地の本格的な復旧復興に向けた第一歩を踏み出すことが可能となります。

 公明党は、何度も被災地に足を運び、被災された方々からさまざまな要望を聞き、政府に対して多くの提言をするとともに、予算の成立に向けて最大限の協力を行ってきました。復興特区や復興庁設置などの法案を含め、関連法案の早期成立を図り、迅速な執行が図られるよう、強く期待するものであります。

 以下、賛成する主な理由を申し述べます。

 いわゆる財源確保法案では、復興債の発行及びその償還財源を明らかにすることにより、本格的な復旧復興を確実に進めていくための財源が明確化されています。

 公明党は、集中復興期間である五年間で十九兆円とされる財源については、まずは公務員人件費の削減など税外収入の確保に全力を挙げ、その上で、国民の皆様の税負担はできる限り最小に抑えるよう、強く訴えてまいりました。

 例えば、子ども手当の見直しによる歳出削減分については集中復興期間以降も償還財源に充当するとともに、決算剰余金が発生した場合にはできる限り復興債の償還に回すよう求めてきました。さらには、そもそも公的な支出や債務を削減するという視点から、PFIやレベニュー債などの手法により民間資金を積極的に活用することも提案してきました。

 こうした中で、修正案においては、附則で、決算剰余金を公債または借入金の償還財源に充てる場合には、復興債の償還費用の財源に優先して充てるよう努める旨が規定されました。また、その他の提案についても、総理初め政府が積極的に取り組む姿勢が明確にされたところであり、評価できるものであります。

 償還期間についても、修正案では、当初案の十年から二十五年へと大きく延長されることとなりました。この結果、毎年の国民の税負担は軽減されることとなりますが、国難とも言える厳しい状況を乗り切るために、国民の皆様には所得税額に二・一%の付加税をお願いすることになります。

 法案では、今後、一定期間を経た後に、復興の状況等を勘案し、復興費用及び必要な財源を確保するための措置のあり方を見直すとしていますが、その際には、歳出の徹底した見直しなど税外収入を最大限確保するとともに、力強い経済成長を取り戻し、税収をふやすことで、この税率の縮減や増税期間の短縮がなされるよう、政府に強く求めるものであります。

 また、追加的な復興経費が見込まれる場合には、新たな増税を行わず、一層の税外収入などの確保に努めるべきと考えます。

 次に、修正案では、附則において、復興に係る特別会計を平成二十四年度において設置する規定が追加されました。

 復興の財源の大宗を国民の皆様からの税によって賄うのであれば、その財源が本当に復興に必要な施策に充てられていると、国民から見える形で経理されなければなりません。また、その施策の執行に当たっても、復興に関する施策以外への流用や転用などは、断じてあってはなりません。さらに、復興に係る資金の流れだけでなく、資産や負債がわかるように、バランスシートの明確化も必要です。そうした観点からも、特別会計の設置は極めて重要であります。

 平成二十三年度税制改正について申し述べます。

 公明党は、政府が提出した平成二十三年度改正関連法案の多くは、抜本改革と称しつつも、実は、民主党のマニフェストの財源の整合性をとるために、その一部のみを先食い的に実施するものであり、したがって、原則として、消費税を含む税制の抜本改革の中で、きちんと税体系全般の整合性を図るべきであると申し上げてきました。

 今般の修正案においては、この考え方に沿い、所得税の控除の見直しを初めとした規定が削除され、国税通則法の見直しなど、必要な納税環境の整備にとどめたことは評価するものであります。

 以上、主な賛成理由を申し上げました。

 予算が成立し、また、関連法が成立しても、政府がそれを強力に執行できる体制をいち早くつくる必要があります。特に、復興庁の目的は、被災地の復興を全面的にサポートするためにあります。その原点をしっかりと見据え、権限のあり方を含め、与野党で率直に議論し、より被災者の視点に立ち、被災地域にとって使い勝手のよい組織を早急に立ち上げることが重要であります。

 最後に一言、民主党政権における三つの損失について指摘しておきたい。

 第一には、時間の損失であります。

 まさに、二次補正、三次補正をめぐる対応を見てもわかるとおり、党内政争に明け暮れ、緊急に対応すべき復興対策がおくれてきたことが、その象徴であります。

 第二には、手続の無駄であります。

 例えば朝霞公務員宿舎問題です。一たんは事業仕分けにおいて凍結になったものが、昨年末に、当時の野田財務大臣の判断で事業の再開が決定。本年九月に着工が始まり、世論の厳しい声が高まるや、一転して野田総理は、わざわざ十五分の現地視察をもって、五年間の事業凍結を決定したのです。この間、行政事務や地元の混乱などを含め、どれだけの損失が生じたのか。こうしたことは、民主党政権になってから枚挙にいとまがありません。

 特に事業仕分けは、結局はパフォーマンス優先の政治ショーで、ほとんど成果を上げられなかったと言わざるを得ず、いつの間にか、提案型政策仕分けなるものに変質したことが、何よりの証左であります。

 そして、三番目の最大の損失とは、政治への信頼の喪失です。

 そもそも見通しの甘い、実現困難なマニフェストを掲げ、国民を欺き続けたにもかかわらず、なお謝罪もせず修正もしないまま、国民の政治不信を極限にまで高めてしまったことであります。

 さらに、消費税について、そもそも二〇〇九年の総選挙時には、民主党は四年間は消費税を引き上げないと公約したにもかかわらず、総理は、消費税引き上げを決めてから信を問うと平然と言い放つ。もはや開き直りに近く、国民を欺くこそくなやり方ではありませんか。

 野田総理は、みずからの著書「民主の敵」の中で、「民主党では、二〇〇五年に特別会計改革・野田プランをとりまとめました」「三一特別会計六〇勘定の内、二四特別会計五一勘定を廃止する方針です」「雑巾を絞ればもっと水が出るように、まだまだムダの絞り出しが足りません」「このまま今のからくりが残ってしまったら、三年後に消費税を引き上げたとしても、砂漠に水を撒くのと同じです」「消費税率アップを安易に認めてしまうと、そこで思考停止し、今のからくりの解明はストップしてしまうと思います」と述べています。

 総理には、このみずからの言葉をよくかみしめてから消費税引き上げに臨まれることを指摘し、私の討論を終わります。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも修正であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(横路孝弘君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 平成二十三年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 東日本大震災からの復興に関し地方公共団体が実施する防災のための施策に必要な財源の確保に係る地方税の臨時特例に関する法律案(内閣提出)

 日程第五 経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための地方税法等の一部を改正する法律案(第百七十七回国会、内閣提出)

議長(横路孝弘君) 日程第三、平成二十三年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律等の一部を改正する法律案、日程第四、東日本大震災からの復興に関し地方公共団体が実施する防災のための施策に必要な財源の確保に係る地方税の臨時特例に関する法律案、日程第五、経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための地方税法等の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長原口一博君。

    ―――――――――――――

 平成二十三年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

 東日本大震災からの復興に関し地方公共団体が実施する防災のための施策に必要な財源の確保に係る地方税の臨時特例に関する法律案及び同報告書

 経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための地方税法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔原口一博君登壇〕

原口一博君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 初めに、平成二十三年度地方交付税総額特例法等改正案は、東日本大震災の復興事業等の実施に係る特別の財政需要等に対応するための震災復興特別交付税約一兆六千六百三十五億円を措置するため、平成二十三年度分の地方交付税の総額及び一般会計から交付税特別会計への繰入金の額の特例を設けるとともに、震災復興特別交付税の額の決定に関する特例を設けようとするものであります。

 次に、防災財源確保法案は、東日本大震災からの復興を図ることを目的として東日本大震災復興基本法第二条に定める基本理念に基づき平成二十三年度から平成二十七年度までの間において実施する施策のうち全国的に、かつ、緊急に地方公共団体が実施する防災のための施策に要する費用の財源を確保するため、臨時の措置として個人住民税の均等割の標準税率及び地方のたばこ税の税率を引き上げる特例を定めようとするものであります。

 次に、地方税法等改正案は、経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図る観点から、個人住民税における扶養控除の見直し及び退職所得に係る税額控除特例の廃止等を行うほか、更正の請求期間の延長等の納税環境の整備等所要の措置を講じようとするものであります。

 平成二十三年度地方交付税総額特例法等改正案及び防災財源確保法案は、今国会に提出され、去る十一月七日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、本委員会に付託され、去る十七日川端総務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。

 地方税法等改正案は、第百七十七回国会の二月十五日の本会議で趣旨説明及び質疑が行われ、本委員会に付託され、同月二十二日の委員会において、片山総務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行いましたが、六月十日及び今国会の十月二十八日の二度にわたる内閣修正が本院において承諾されたため、去る十一月十七日改めて川端総務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。

 去る二十二日には、防災財源確保法案に対し、個人住民税の均等割の標準税率の特例の期間及び税率に係る修正並びに地方のたばこ税の税率を引き上げる特例に係る規定の削除等を行う修正案が、また、地方税法等改正案に対し、題名の修正及び個人住民税における扶養控除の見直しに関する規定の削除等を行う修正案が、それぞれ民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会及び公明党の三会派共同により提出され、修正案提出者から趣旨説明を聴取いたしました。

 その後、三法律案及び両修正案について質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、各案について順次採決いたしましたところ、まず、平成二十三年度地方交付税総額特例法等改正案は全会一致をもって可決すべきものと決し、次いで、防災財源確保法案及び地方税法等改正案に係る各修正案及び修正部分を除く各原案はいずれも賛成多数をもって可決され、両案は修正議決すべきものと決しました。

 なお、防災財源確保法案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) これより採決に入ります。

 まず、日程第三につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、日程第四及び第五の両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも修正であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(横路孝弘君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 復興庁設置法案(内閣提出)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、復興庁設置法案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣平野達男君。

    〔国務大臣平野達男君登壇〕

国務大臣(平野達男君) 復興庁設置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、本年六月二十四日に施行されました東日本大震災復興基本法に基づき、復興に関する施策の企画立案及び総合調整並びに実施に関する事務等を所掌する復興庁を設置し、東日本大震災からの復興の円滑かつ迅速な推進を図るため、提出するものであります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、復興庁の設置、任務、所掌事務について定めております。

 復興庁は、内閣に置き、復興に関する内閣の事務を助けること及び復興に関する行政事務の円滑かつ迅速な遂行を図ることを任務としております。

 また、復興庁は、その任務を達成するため、復興に関する施策の企画立案及び総合調整、復興に関する関係行政機関の経費の見積もりの方針の調整、関係地方公共団体に対する情報の提供、助言その他必要な協力、復興推進計画の認定に関すること、復興交付金の配分計画に関すること等を行うこととしております。

 第二に、復興庁の組織について定めております。

 復興庁は、内閣総理大臣を長とし、事務統括権、関係行政機関の長に対する勧告権等を有する復興大臣を置くとともに、副大臣一人、大臣政務官三人を置くこととし、各大臣政務官は、復興大臣の命を受け、特定の復興局の所掌事務に係る政策の企画立案及び政務に関し、復興大臣を補佐することとしております。

 また、復興庁に、すべての国務大臣等をもって組織する復興推進会議及び関係地方公共団体の長及びすぐれた識見を持つ者をもって組織する復興推進委員会を置くこととしております。

 さらに、復興庁に、地方機関として、岩手県、宮城県及び福島県の各県庁所在地に復興局を置くこととしております。

 第三に、復興庁は、別に法律で定めるところにより、平成三十三年三月三十一日までに廃止するものとすること、その他所要の措置について定めております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して四月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 復興庁設置法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。畑浩治君。

    〔畑浩治君登壇〕

畑浩治君 民主党の畑浩治でございます。

 ただいま議題となりました復興庁法案につきまして、民主党・無所属クラブを代表いたしまして質問させていただきます。(拍手)

 本格的な復興のための第三次補正予算が成立しました。これで、復興に向けての施策の全体系が明らかになり、必要な施策手段は一通りそろったわけでございます。また、地方に対しては、復興交付金や復興特別交付税により自治体負担をゼロにするなど、こういう措置がとられることになりました。地域が主体的に進める復興事業に対する財政支援も万全となったものであり、被災地の地方公共団体は高く評価しているところであります。

 中身はできました。次は、これらの中身を入れる器、すなわち、これらを効果的に実施に移していく組織が課題となります。

 所掌事務の議論も大切ですが、復興推進のためには総理や復興大臣のリーダーシップが大前提であり、これがいかに発揮できるような制度設計とするかが重要であります。野田総理と、これまでさまざまな省庁を精力的に指示して動かしてきました平野復興大臣のリーダーシップには、深く敬意を表する次第でございます。

 所掌事務を事業実施権限の有無のみにこだわるのではなくて、実質的に必要な事業が実施されるような組織のあり方を考える必要があります。このような観点から、本法案における組織を活用しつつ、いかに復興庁の長としてのリーダーシップを発揮していこうと考えておられるのか、総理に伺います。

 復興庁は、他の省庁と並びの存在ではなく、みずから実施するかどうかはともかくとして、一段高い立場に立って、他省庁に対して、強力な権限のもとで、復興施策を一元的に実施できる体制であることが一番のポイントとなります。

 本法案では、復興大臣に勧告権が付与されております。これ自体は、かつての総理府の外局であった国土庁、環境庁等にもあったものでございます。

 本法案における復興大臣の勧告権について、総合調整機能及び復興事業の推進という両面で、これまでの勧告権とどのように異なり、どのような効果があるのか、そしてどのような点で強力になっているのか、お答えください。

 復興庁が直轄事業等の実施権限を直接有すべきという議論があります、この点は、全くの白地から組織をつくる場合にはあり得る考え方であり、一概に否定されるものではないと考えますが、三陸沿岸道路を初めとして、直轄事業が相当程度進み始めている状況の中で、改めて既存の省庁から復興庁に権限を切り分けることは、実務上の混乱を生み、復興事業の迅速かつ円滑な実施にかえって支障になる可能性があると考えます。

 強いて直轄事業実施権限を復興庁に所掌させる場合に考えられる手法としては、事業の性格ではなくエリアで一律に切り分けるとか、権限自体を復興庁に付与しつつ、実施については現行の地方整備局等に委任する、そのような整理も想定されますが、かえって実務的な合理性から離れた技巧的な整理というような気もいたします。直轄事業等の実施権限を復興庁に所掌させることについては、実務上のデメリットの方が多いのではないかと危惧するところであります。

 結局のところ、復興庁が責任官庁としての復興施策を一元化できるかどうか、統括できるかどうかは、復興庁が復興予算を掌握できるかどうかにかかっていると私は考えます。

 私が主査を行っていました民主党の復興庁設置法作業部会では、特に、法案第四条第二項第一号で規定されている予算の一元的調整権を最大限活用して、復興予算は、各省任せにせず、復興庁が一元的に統括することが必要であるとの提言を行ったところであります。この点についての運用方針を伺います。

 さらに、復興関係予算を特別会計として、当該特別会計を復興庁が所掌すること、当該特別会計関係予算については一括計上して復興庁を通じて予算要求することなど、予算面でのハンドリングを強化して対応することも想定されますが、いかがお考えでしょうか。

 もう一つの、役所が強力に機能するかどうかのポイントは、予算権限とともに、人事であります。

 すなわち、復興庁及び復興局に優秀な人材を持ってくることは大前提でありますが、同等のポストであれば各省庁よりも年次の高い人を充てるというような重みのある人事を行うことも考えられますが、人事の方針はどのようにお考えでしょうか。

 次に、復興庁によるワンストップの対応に関してお伺いいたします。

 復興庁は、その調整機能により、被災市町村からの要望や事業の手続等にワンストップで対応することとしており、被災市町村にとっては、省庁の縦割りの問題が解決されるという期待が高いものと思われます。そして、復興は市町村が主体になって行われるべきものであります。したがいまして、復興庁は、政府の組織ではありますが、市町村の意を酌んで、市町村の立場に立って各省庁と調整に当たるべきものであると考えます。

 しかしながら、政府内における省庁間の調整次第では、迅速に結果を出すことができず、市町村の期待にこたえられないこともあるのではないかという危惧を持っております。政府内における調整、決定等はどのようなプロセスでなされるのか、そして、復興庁の調整に当たるスタンスはどのようなものか、伺います。

 また、原子力災害からの復興に関するワンストップ窓口に関して伺います。

 復興庁と原子力災害対策本部との関係、役割は、復興施策が復興庁と対策本部に分かれるなど、複雑になっております。現地に赴いた政務三役の話によれば、対策本部と復興本部の間に仕事が落ちて、お見合い状態になることが多かったと聞いております。復興庁設置によって、このようなお見合い状態は解消されなければなりません。

 長期的な原子力災害対策については、復興庁が県や市町村からの一元的窓口になるべきものと考えます。また、除染等の長期的な原子力災害対策については、関係省庁任せにせず、復興庁において総合的な調整を行うべきものであります。特に、長期帰宅困難地域への支援策及び復興策については、復興庁が責任を持って対応すべきと考えます。

 以上についての所見を伺います。

 さらに、瓦れき処理について伺います。

 瓦れきについて、例えば、私の地元の岩手県宮古市のものを東京都に一部受け入れていただくなど、広域的な処理も始まりつつあります。大変ありがたいことだと思っております。

 しかしながら、被災地の地元市町村には、放射性物質に汚染された瓦れきを持ち込まないでほしいというようなメールや投書も寄せられます。これらの投書の当否は別として、岩手県の瓦れきの焼却灰は八千ベクレルを超えないものであり、国の基準からすると、最終処分場に埋立処分が可能であります。

 そうであれば、他の自治体に委託して焼却したものを、最終的には被災地の地元市町村に持ってきて最終埋立処分をするということもあってしかるべきだと思いますし、地元の市町村は、まずは、できるだけみずからで対応しようという思いを持っております。

 その場合、新たに埋立処分場の造成が必要になったりするために、この点に相当程度の資金がかかります。この面でも財政負担が危惧されるところであります。この造成費用について、復興交付金、またはその他の財政措置によって国からの財政支援があるのか、伺います。

 復興庁の主要な業務であります復興特区法の運用に関して伺います。

 復興特区法においては、復興推進計画、復興整備計画、復興交付金事業計画と、三つの計画をそれぞれ作成する必要があります。この三つの計画をそれぞれ作成するのは大変な負担だという地方公共団体の声があります。

 特に、事業面の計画である復興整備計画と、それを財政的に裏打ちする復興交付金事業計画は、内容的に重なるところが多いものと考えます。これらが一体として手続できるような運用の工夫と簡素化が必要と考えますが、いかがでしょうか。

 的確に機能する復興庁をつくることは、復興施策に魂を入れることになります。復興庁は、復興基本方針の取りまとめや各省庁の対応に抜けがないかをフォローするだけの組織であってはなりません。復興庁は、被災自治体の期待も高く、災害からの迅速な復興を牽引する責任官庁としての役割をしっかりと担うべきものであります。

 復興庁が早期に設立され、全体の復興施策のペースメーカーとしてしっかりと復興施策を先導することを期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 民主党・無所属クラブを代表しての畑浩治議員の御質問にお答えをいたします。

 私に対する御質問は、復興庁の長としてのリーダーシップについてのお尋ねでございました。

 復興庁においては、内閣総理大臣を長とし、復興大臣一人、副大臣一人、復興局を担当する大臣政務官三人を置くとともに、すべての国務大臣等によって構成される復興推進会議を設置するなど、強力な政治主導体制を確保しております。

 また、復興庁は、復興特区制度や復興交付金などを所掌し、市町村の復興事業を強力に支援するとともに、各府省の予算要求の事前調整を行うことなどにより、復興施策を一体的に進めることとしています。

 これらの組織と権限を活用して、被災地の要望を各府省任せにすることなく復興庁が一元的に受けとめ、復興庁の長である内閣総理大臣から、例えば予算要求などの方針を示して各府省に実施させることなどにより、省庁の縦割りを排除したワンストップ対応を実施し、復興を力強く推進してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から御答弁をさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣平野達男君登壇〕

国務大臣(平野達男君) 畑議員からは、私に対して六問、質問をいただいております。

 まず、復興庁の勧告権について御質問をいただきました。

 復興庁は、各府省の総合調整を担い、必要があれば勧告を行うこととしております。このような勧告権は、かつての国土庁や環境庁にもありましたが、復興庁の勧告権は、対等な立場同士の調整にとどまらず、内閣直属の機関として一段高い立場からその権限を行使することができること、勧告の範囲が限定されていないことといった点で、より強力な権限となっております。

 このような権限により、縦割りを排しまして、政府一体となった復興施策が実施できるものと考えております。

 復興庁による予算の調整について御質問をいただきました。

 市町村が復興事業を円滑かつ迅速に行えるよう、政府が一体となって支援していく必要があります。このため、御指摘のとおり、復興庁が、予算要求の調整権を最大限活用し、地方公共団体の要望を一括して受けとめるとともに、各府省の主体的な取り組みの促進と、各府省が持つノウハウ、人材の総合的な活用を進めまして、各種復興事業を統一的に推進してまいります。

 また、復興に係る特別会計につきましては、三党協議の結果、二十四年度予算編成における復興予算のあり方などを踏まえつつ、今後検討される予定でございます。復興庁と特別会計の関係に係る検討に当たって、協力してまいります。

 復興庁及び復興局の人事の方針について御質問をいただきました。

 迅速な復興を推進していくためには、各府省の縦割りを排除するとともに、各府省が持っている専門知識と能力を活用することが重要でございます。このため、復興庁及び復興局には、各府省の制度や復興施策に詳しい人材、そして何よりも、熱意を持った人材を結集してまいります。

 復興庁による各省調整についての御質問がございました。

 復興の主体は地域であり、被災した自治体の要望を受けとめ、政府全体を調整して一元的に支援していくことが重要でございます。このため、現地におきましては、市町村の復興計画の作成や事業を実施する際に、国と地方の協議会を通じて関係機関と調整するとともに、本庁においては、復興特区制度や復興交付金等を活用しつつ、各省施策の総合調整を行っていくこととしております。

 また、その際には、省庁縦割りを排し、自治体のニーズに迅速かつワンストップで対応できるようにしてまいりたいと考えております。

 長期的な原子力災害対策の担当について御提言をいただきました。

 復興庁設置法案において、復興庁は原子力災害からの復興に関する事務も幅広く担う旨を明記しております。

 ただし、原子力災害対策法に基づきまして原子力災害対応を専門的に担う原子力災害対策本部が置かれている間は、同法の趣旨に基づき、まずは同本部が調整を担うことが効率的かつ効果的であると考えます。

 一方、避難指示が解除された地域の復興策や、長期に帰宅が困難な避難者への支援などにつきましては、復興庁が中心となって推進してまいります。また、自治体の要望につきましても、復興庁がワンストップで受けとめてまいりたいと考えております。

 最後に、復興特区法案における三つの計画に関する簡素化等についての御質問をいただきました。

 復興特区法案における復興推進計画、復興整備計画、復興交付金事業計画の三つの計画は、それぞれ内容、手続等が異なっているため、地方公共団体の使い勝手から、個別の計画として取り扱うこととしております。

 なお、計画策定はできるだけ簡便に行えるよう工夫したいと考えておりまして、例えば、地方公共団体は三つの計画のうち必要なものを策定すればよいが、三つの計画の中で必要なものを組み合わせて一つの計画として策定し、一体として手続を進めることも可能としたいと考えており、その旨、復興特区基本方針に記述することとしたいと考えております。

 私からは以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣細野豪志君登壇〕

国務大臣(細野豪志君) 畑議員から、災害廃棄物について御質問をいただきました。

 被災地の皆さんが、この廃棄物の処理に大変な御苦労をされております。国が責任を持って支援をし、そして、国が主体となって予算の確保もしていかなければならないと考えております。

 また、被災地の復興のためには、災害廃棄物の広域処理が不可欠であります。全国の自治体の皆さん、さらには国民の皆さんに、広域処理の必要性と安全性について御理解を賜れるように、全力で努力することを約束させていただきます。

 埋立処分場に関する財政支援についてお答えいたします。

 市町村等が、廃棄物の三R、リデュース、リユース、リサイクルを総合的に推進するために整備する一般廃棄物処理施設については、その整備費用に対し、循環型社会形成推進交付金による財政支援を行っているところであります。特に、第三次補正予算では、災害廃棄物の迅速な処理を図るため、廃棄物処理施設の整備に要する費用を計上しております。

 この御質問に対しましてお答えいたしますと、当該循環型社会形成推進交付金の対象となるものと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 加藤勝信君。

    〔加藤勝信君登壇〕

加藤勝信君 自由民主党の加藤勝信でございます。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表いたしまして、ただいま議題となりました復興庁設置法案に対して質問をいたします。(拍手)

 冒頭、発災から八カ月余が経過いたしましたが、改めて、東日本大震災によりお亡くなりになられた方々と、その御遺族の方々に、深く哀悼の意を表します。また、今なお避難所での生活を余儀なくされている方々、仮設住宅などでお過ごしの方々、職を失われた方々を初め、被災された方々にお見舞いを申し上げます。

 さらに、こうした困難に雄々しく立ち向かっておられる多くの方々に、また、その支援に当たっておられる方々に、心より敬意を表する次第であります。

 被災地では、復興住宅の建設を初めとするまちづくりは、まさにこれからであります。瓦れきの撤去も、仮置き場に搬入されたのはまだ六割にすぎず、原発事故被災地では、ようやく除染が始まったばかりであります。そして、被災地は厳しい冬を迎えようとしております。被災者の方々にすれば、本当に安心して暮らせる日は一体いつ来るのかというのが、偽らざる心情ではないでしょうか。

 野田総理は、東日本大震災からの復旧復興は、この内閣が取り組むべき最大かつ最優先の課題であると繰り返し述べておられますが、政権発足から三カ月になろうとしている現在、被災地の現状、被災者の方々の実情をどのように認識しておられるのでしょうか。総理御自身の言葉でお答えいただきたいと思います。

 野田総理は、総理就任まで、財務大臣として菅政権の中枢におられました。また、就任記者会見で、復旧復興について、一生懸命取り組んでおりますけれども、まだ不十分という御指摘もいただいておりますと述べられております。

 五百旗頭東日本大震災復興構想会議議長は、八月か九月には第三次予算案や関連法案が成立し、秋が深まるころには復興事業が始まると期待していた、率直に言って遅過ぎると発言されています。

 菅内閣から野田内閣に至る今日までの間、政府が行ってきた震災対応について、政府側の体制も含めて、野田総理自身はどのように評価をされているのでしょうか。

 また、総理は、就任の際に、復旧復興の作業を加速化させていくということが私どもの最大の使命であるというふうに思いますと述べておられます。さらに、復興対策本部など三本部合同会議の席で、スピード感を持ってやるべきことを実行し、被災者の御期待にこたえていきたいと発言されたと聞いています。

 被災地では、仮設住宅の寒さ対策が進んでいない地域もあり、復興の大前提としてきた瓦れきの処理も、仮置き場に搬入されたのは、被災三県の平均で六三%にすぎません。原子力損害賠償についても、本払いは進んでいません。

 避難期間が長引くほど地元に戻らない人がふえるとも指摘されています。復興は、時間との勝負でもあります。

 総理は、就任後、復旧復興を加速するために、具体的にどのような取り組みを行ってこられたのか、お伺いいたします。

 復興庁法案に関して伺います。

 野田総理は、本法案を見られたのでありましょうか。私は、本案を見たときに唖然としました。いや、何だこれはと、怒りが心頭に達しました。復興基本法における復興庁の趣旨とは余りにかけ離れているではないですか。

 私も、復興基本法の与野党協議にかかわった一人であり、審議においては答弁にも立ちました。与野党協議を踏まえ、復興庁は復興に関する予算と権限を一元化したスーパー官庁であるとの認識で答弁を行いました。総理も、省庁の枠組みを超えて、被災自治体の要望にワンストップで対応できる復興庁を設置すると言われていたのではありませんか。

 復興庁法案を議員立法で出すべきとの声もありました。行政組織にかかわることであり、二重行政や漏れがあってはならないということで、政府に法案作成をゆだねたわけであります。さらに、権限の調整に時間を要するんだ、そういうことで、それでは年内には成案をということでいきましょうと、大きく譲歩したところであります。

 そうした経緯の中で今回のような内容の法案を提出するというのは、余りにも、与野党協議の結果を、そして、国会で成立した復興基本法をないがしろにするものではないでしょうか。

 政府案の復興庁では、現行の復興対策本部とほとんど変わりがありません。これでは、復興基本法の議論の際に政府が提出した法案の方向と何ら変わりがないではありませんか。何のための与野党協議であり、復興基本法であったのでしょうか。

 条文に即して申し上げます。

 復興基本法では、復興庁の所掌事務として、「復興に関する施策の企画及び立案並びに総合調整に関する事務」とあわせ、「復興に関する施策の実施に係る事務」を明確に規定しております。

 他方、復興庁設置法案では、「復興のための施策に関する基本的な方針に関する企画及び立案並びに総合調整に関すること」を初め、企画立案及び総合調整についてはいろいろと書かれております。しかし、施策の実施に関する規定は復興特区などに限定されており、さらに、他の府省の所掌に属する復興施策は復興庁の所掌事務には含まれないとされているではありませんか。

 また、先般成立した第三次補正予算でいえば、復興庁の予算となり得るのは、東日本大震災復興交付金、東日本大震災復興推進調整費程度ではないのですか。

 被災地が望んでいるのは、復興施策を企画立案から実施に至るまで一元的に行う組織であったはずであります。そうした組織であるからこそ、さまざまな情報が集まり、被災地の実情に沿った、的確かつ迅速な対応を期待できるのであります。政府案では、復興庁は単なる受付窓口にすぎなくなってしまいます。

 こうした組織で、被災地の要望にこたえ、円滑かつ迅速な復興を推進できると野田総理は本当に考えておられるのでしょうか。復興基本法に沿って、復興に関する責任、権限、予算を復興庁に一元化する方向で全面的に見直すべきと考えますが、野田総理の見解をお伺いいたします。

 平野復興対策担当大臣は、復興特別委員会で「復興庁は今東京に置くということを考えております」と答弁されております。しかし、政府が言うように、被災者に寄り添って復興を進めるというのであれば、復興庁はむしろ被災地に置かれるべきではないでしょうか。復興庁が復興に関する権限を本当に有しているのであれば、現地において、相談から決定、事業の実施まで、スピード感を持ってワンストップで対応できるはずであります。

 復興庁がどこに置かれるのか、そこに政府の復興に対する取り組み姿勢があらわれると、被災地の方は大きな関心を持って見ておられます。復興庁は被災地にこそ設置すべきと考えますが、野田総理大臣の御認識をお伺いいたします。

 本法律案では、復興庁の人員及び機構について明確な規定がなく、具体的にどのような体制になるのか、明らかではありません。

 現在の復興対策本部では、常駐者は、本部事務局に約百人程度、岩手県、宮城県、福島県のそれぞれの現地対策本部事務局におよそ十人程度と聞いております。復興庁が、被災地の要望にきめ細かくこたえ、かつスピード感を持って対応していくために、復興庁全体の人員規模をどの程度と考え、また、どのように人材を集め、どのような組織をつくり上げていくつもりなのか、平野復興対策担当大臣にお伺いいたします。

 本法律案の第十七条で「復興庁に、地方機関として、復興局を置く」と規定され、復興局は、岩手県、宮城県及び福島県に設置されることとなっております。しかし、被災三県以外にも広範囲に甚大な被害がもたらされており、復興庁の地方機関を設置してほしいという声が聞かれます。

 被災三県以外の関係者は、東京にある復興庁に出向けということなのでありましょうか。それとも、支所の設置などの対応が図られ得るのでありましょうか。

 また、復興庁や復興局と、他の省庁やその出先機関との関係はどのようになるのでありましょうか。

 本法律案により復興庁が設置されたとしても、権限が一元化されていない状態では、被災地方公共団体は、復興庁や復興局にも要望し、その上、他の省庁やその出先機関にも出向かねばならないことになりかねません。特に、復興局と他の省庁の出先機関との関係、役割分担などについて、どのように考えておられるのでしょうか。平野大臣にお伺いをいたします。

 本法律案の復興庁は、ある意味で、現在の復興対策本部が名前を変えただけの組織と言わざるを得ません。そうした復興庁のために、大臣一名に加え、副大臣を一名、大臣政務官を三名も増員する必要はあるのでしょうか。現状と比べ、どういう機能や役割を期待して増員を考えておられるのか、平野大臣にお伺いをいたします。

 先ほど可決されました復興財源確保法案では、修正により、附則に、復興に係る歳出歳入を経理する特別会計を平成二十四年度に設置することが盛り込まれました。復興資金の流れを透明化し、復興債を別途管理することは、復興基本法でも規定されており、極めて適切な修正であったと考えます。

 復興に関する特別会計については復興庁の所管とすることが、権限の一元化とともに、復興の推進のために不可欠であり、当然と考えますが、野田総理はどのようにお考えになっておられるのでありましょうか。

 さきの国会で成立した平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法では、環境大臣が放射性物質による環境の汚染が著しい地域を除染特別地域として指定し、国が除染などの措置を実施しなければならないなどとされております。

 放射性物質に汚染された地域の除染は、地域住民の健康や生活環境の安定を図る上では極めて重要な問題であり、特に、地域外に避難され、一日も早く住みなれた土地に戻って生活することを望まれている方々にはなおさらであります。

 復興庁が除染特別地域における除染の実施などを担うことも考えられるのではないかと思いますが、平野担当大臣の御所見を伺います。

 最後に、福島原発の事故を含め、東日本大震災は、未曾有の災害であります。未曾有の事態には、まさに、これまでにない対応が、これまでにない政府の体制の構築が必要であります。与野党間で対立するような話とは思えません。霞が関の視点に立つのか、被災地の視点に立つのかの問題であります。

 復興基本法に沿って、復興に関する責任、権限、予算を一元化したスーパー官庁たる復興庁を一日も早く、どんなに遅くても来年の三月十一日までには発足させ、被災地の期待にこたえる復興を円滑かつ迅速に図っていくべきではありませんか。

 この点を再度強く求めて、私の質疑を終わらせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 自由民主党の加藤勝信議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まず最初に、被災地の現状に対する認識についてのお尋ねがございました。

 これは、加藤議員も御指摘ございましたけれども、野田内閣にとっては、東日本大震災の復旧復興、そして原発事故の収束というのは、最優先で最大の課題であるというふうに受けとめております。

 発災後、政府は、被災地の復旧復興対策に全力を挙げて取り組み、仮設住宅の建設あるいは散乱瓦れきの撤去などは、ほぼ完了したところであります。しかしながら、これから冬を迎える仮設住宅の寒さ対策や、市町村の復興計画の策定と実行など、被災地はさまざまな問題を抱えており、政府として対処しなければならない課題は山積しているというふうに認識をしています。

 続いて、政府の震災対応に対する評価に関するお尋ねがございました。

 政府は、これまで、地震、津波による被害については、地元自治体とも協力して、仮設住宅の建設、瓦れき撤去、被災者の生活支援などに全力で取り組んでまいりました。こうした取り組みは、発災当初から比べれば相当程度進展してきていることも事実でございますが、一方では、迅速さに欠ける、必要な方々に支援の手が行き届いていないという御指摘もいただいております。

 去る二十一日には第三次補正予算が成立したところであり、御指摘を真摯に受けとめ、復興事業がさらに加速できるように全力で取り組んでまいりたいと思います。

 続いて、総理就任後の復旧復興に対する取り組みについての御質問をいただきました。

 総理就任後、除染事業、汚染された稲わらに係る肉用牛肥育農家支援、中小企業等グループ補助金など、予備費を活用して機動的な対応を行うとともに、本格復興のための三次補正を取りまとめ国会で成立させるなど、復興の基本方針に掲げられた施策の具体化を着実に進めてきております。同時に、今後の復興財源のスキームを取りまとめ、関連法案を国会に提出いたしました。さらに、復興特区法案や復興庁法案など、復興のかぎとなる制度や組織の具体化を図り、法案を国会に提出させていただいたところであります。

 また、例えば、被災市町村における復興計画策定に関しても、国の職員が専門家として各市町村に頻繁に出向き、計画策定を技術的な面からも支援しているところであります。

 原子力損害に対する賠償についても、被害者の速やかな救済のため、原子力損害賠償支援機構による支援を着実に行っているところであります。

 今後とも、復興施策の具体化と、被災者や被災自治体の支援に全力を挙げてまいります。

 続いて、復興庁の権限についてのお尋ねがございました。

 復興庁については、市町村が復興事業を円滑かつ迅速に行えるよう、各府省の縦割りを超えて支援できる機能が重要であります。

 このため、各省が行う補助を横断的に一括する復興交付金や、各省の規制、制度や税制等に切り込み、その特例を実現する復興特区など、既存の枠組みを超える強力な実施権限を担うこととしています。また、総合調整権限についても、復興関係予算の調整権や勧告権などを含む強力なものとしています。

 このような権限を発揮して、被災自治体の要望をワンストップで受け付け、各省調整を進め、支援策を実現してまいります。

 復興庁の設置場所についての御質問をいただきました。

 復興庁の本庁は、各府省に対し本省レベルでの総合調整を強力に行う必要があるとともに、立法府への対応や予算要求の調整等も必要となることなどから、東京に置くこととしております。

 一方、被災三県には、それぞれ、大臣政務官が担当する復興局を設置し、本庁の機能をできるだけゆだねるとともに、十分な人員を配置し、現地において、自治体の要望をワンストップで受けとめ、対応してまいります。

 復興庁と復興に係る特別会計についての御質問をいただきました。

 先般の三党政調会長による協議の結果を踏まえ、復興に係る特別会計を平成二十四年度に設置するため、必要な法制上の措置を講じてまいります。

 特別会計の具体的な制度設計につきましては、二十四年度予算編成における復興予算のあり方などを踏まえつつ今後検討することとしており、復興庁と特別会計の関係についても、その一環として検討してまいります。

 残余の質問については、関係大臣が答弁をさせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣平野達男君登壇〕

国務大臣(平野達男君) 加藤議員からは、私に四問、質問をいただいております。

 まず、復興庁の人員と機構の規模について御質問をいただきました。

 復興庁の人員につきましては、被災自治体への支援や、そのニーズに対するワンストップでの対応を実現するため、各省の制度や復興施策に詳しい人材を確保し、現地にできるだけ配置することが必要だと考えております。

 また、その規模につきましても、現在の復興対策本部事務局の規模を大幅に超えた十分な体制を確保することとしております。さらに、復興の進捗に合わせて弾力的に機構の変更が可能となるよう、スタッフ制の組織とすることとしております。

 復興局が設置されない被災地への対応、復興局と他の出先機関との関係について御質問をいただきました。

 復興庁の出先機関につきましては、被災三県に復興局を置くこととしておりますが、その他の地域についても、被災自治体に対する支援等をしっかりと行うことができるよう、被災自治体の御意見を伺いながら、必要な体制を検討してまいります。

 また、復興局は、総合調整権限を発揮し、各省庁の地方出先機関の取り組みを支援し、地域における復興施策を一体的に進めてまいります。市町村からの要望についても、決してたらい回しにせず、現地でワンストップで対応していきます。

 副大臣及び大臣政務官の増員について御質問をいただきました。

 復興庁については、大臣一名、副大臣一名、被災三県を担当する大臣政務官三名を置くこととしております。これは、東日本大震災からの復興という国の重要課題に対しまして高度な政治レベルの判断と調整を行うことができるよう、また、現地に駐在して、地方の政治レベルの対応や関係機関との調整ができるようにするためであります。

 なお、現在の復興対策本部の副大臣及び大臣政務官も、他の多くの業務と兼務しながらこのような役割を果たしていただいております。今回の増員により、さらに、被災地の声を受けとめて復興を進めていくことができるようになると考えております。

 除染の担当機関について御質問をいただきました。

 放射性物質の除染については、いわゆる放射性物質汚染対策特措法に沿って、環境省に専門家を結集させ、国の責任においてみずから実践するとともに、関係機関の調整を行うこととしております。その上で何らかの問題が発生した場合には、復興庁と、専門機関である原子力災害対策本部が連携して強力な総合調整を行い、被災地域の要望を踏まえながら問題を解決していくこととしております。

 私からは以上でございます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 石田祝稔君。

    〔石田祝稔君登壇〕

石田祝稔君 公明党の石田祝稔です。

 ただいま議題となりました復興庁設置法案について、公明党を代表して質問いたします。(拍手)

 三月十一日の東日本大震災の発災から八カ月が過ぎ、本年も、あと一カ月余りとなりました。改めて、お亡くなりになられた方々に対し、心からの御冥福をお祈り申し上げます。また、今なお三十三万人に及ぶ皆様が避難生活を余儀なくされております。一日も早くもとの生活に戻れるように与野党を超えて取り組まねばならないと強く決意するものです。

 私は、党にあって、東日本大震災対策本部の事務局長、また、復興特区・復興庁検討プロジェクトチーム座長の任を務めていることもあり、我が党の全国の地方議員から、連日のように東日本大震災からの復興に関する意見や提言が数多く寄せられています。さらに、公明党では、国会議員が率先して、土日を中心に毎週のように東北三県を初め被災現場に赴き、被災自治体の首長を初め、被災者の方々とひざ詰めの対話をしています。この現場における対話、そこから生まれる共感と復興への決意こそが最も大事なことで、真の復興を後押しする根源の力と確信しています。

 復興庁設置について、この現場からの声を基本に据えて、以下、具体的に質問いたします。

 政府は、復興庁について、復興基本法で「可能な限り早い時期に法制上の措置を講ずるものとする」と定めていますが、この復興基本法は六月二十日に成立、しかし、復興庁設置法案が国会に提出されたのは、今月に入った十一月一日です。実に四カ月以上もの時間が過ぎています。

 そもそも復興庁は、公明党を初め野党の主張を政府が受け入れる形で復興基本法にその設置が定められたものであります。東日本大震災から市街地などを復興するためには、土地利用だけをとってみても、市街地は国土交通省、農地は農林水産省など、霞が関の縦割りによる手続を必要としていました。そこで、復興を迅速かつ強力に進めるために、復興に関する施策の企画及び立案並びに総合調整、実施までを一貫して行うスーパー官庁として、復興庁を提案いたしました。

 しかし、この政府案の復興庁は、スーパー官庁構想は骨抜きにとメディアが報じるほど、公明党が提案し、また、想定された復興庁とは異なったものになっていると言わざるを得ません。

 復興基本法では、東日本大震災からの復興に関する施策の企画立案、総合調整、そして実施までを復興庁のつかさどる事務として定めています。しかし、政府の復興庁設置法案では、なぜか実施のみが切り離されてしまっているのです。

 当初、復興庁について、政府案では、附則で検討項目とされ、一年後に検討とされていました。私は、これではとても被災地、被災者の期待にこたえることはできないと思わざるを得ませんでした。

 公明党は、復興債の発行、復興特区、復興庁の設置を提案しました。与党もその考えに理解を示し、結果として、閣法を取り下げ、議員提案で復興基本法を成立させました。

 私たち野党は、修正協議の中で、一日も早く復興庁を設置すべきと強く主張いたしました。政府からは、復興庁の所管する事務などについて二重行政にならないように配慮するので一定の時間がかかる等の説明を耳にしましたが、政府案の復興庁では、他省庁から権限を移すような規定にはなっていません。各省庁の調整の痕跡など、みじんもないではありませんか。

 一体、なぜ法案提出にこんなにも時間がかかったのか、全く理解に苦しみます。総理に明確な答弁を求めます。

 復興等の実施権限について伺います。

 企画立案や総合調整については、東日本大震災からの復興のための施策などと大きな範囲を対象として規定している反面、実施する事務については、復興推進計画の認定、復興特区支援利子補給金の支給、復興交付金の配分計画などと、実施の具体の例は極めて限定なものになっています。

 復興庁設置は、決して、復興特区へ国のお金を配ることを目的として復興基本法に盛り込んだわけではありません。いわゆる受付官庁、資金配付官庁ではないのです。いや、そうであってはならないのです。東日本大震災からの復興のための施策を一体的かつ強力に進めるためのものであったはずです。

 思えば、復興債の償還期間について、総理はたびたび「償還の道筋を明らかにする」という復興基本法の規定を引用されており、復興基本法の規定を重要視されているものと認識しています。その総理が、なぜ、復興基本法に定める東日本大震災からの復興に関する施策について、企画立案や総合調整と施策の実施とを切り離し、十分な実施権限を持たない復興庁設置法案を提出されたのか。復興庁設置法案のどこに、復興に関する施策の実施に係る事務があるのか。総理が今国会の所信表明演説でおっしゃった「前例にとらわれず果断に実行する力強さをあわせ持った機関」とは、一体何を指しておっしゃっているのか。政府案の復興庁は、一体何の事業を前例にとらわれず果断に実行するのか。総理の答弁を求めます。

 私は、実施に係る事務について提案いたします。瓦れきの処理を一元的に行う事務を復興庁に所掌させてはどうか。

 瓦れきの処理は、最終の処分まで膨大な仕事量となります。全国的に自治体の協力も得なければなりません。さらに、放射性瓦れきの処分も大きな課題であります。処分の方法、処分地の確保等々、まさに省庁の縦割りを排して一体的に取り組まねばなりません。総理の答弁を求めます。

 実施の事務については、今後、委員会の質疑を通して、さらに提案してまいりたいと思います。

 復興庁の総合調整について伺います。

 政府案では、復興庁は、他の省庁に対して円滑な復興事業を促す勧告権を与えられていますが、この勧告権は、現在、各省庁の総合調整を担う内閣府が持っている権限ですが、今日まで、内閣府が各省庁に対して勧告権を行使した事例というのはあるのでしょうか。また、政府は、復興庁が勧告権を行使する要件について、具体的にどのようにお考えでしょうか。勧告権がどう機能するのか、すなわち、組織上、通常の省庁より上位に位置づけられた復興庁が、この勧告権で各省庁の縦割りをどのように排することができるのか、よくわかりません。総理の答弁を求めます。

 さらに、復興庁の設置に当たっては、どのように人材を集めるのか。

 現在内閣府に置かれている復興対策本部を初めとして、各省庁から人材が集められ、復興庁が組織されることになるかと思われますが、政府案では、復興庁を内閣府と同等の位置、つまり、各省庁より一段高いところに位置づけています。

 企画立案や総合調整などに当たっては、大局的な見地からの判断が必要です。各省庁から集められた人材が、縦割り的な視点から、出身省庁を過剰に意識しないのか、いわゆる省益といったものにとらわれずに仕事をすることができるのか、ここは、まさに、復興庁の長たる野田総理のリーダーシップが問われる場面であります。総理の認識を伺います。

 東日本大震災という未曾有の国難を乗り越えるため、復興庁には、官民を問わず、広く我が国の持てる人材の総力を結集する必要があります。

 事実、発災直後から、被災地では、国際機関、民間団体に在籍する多くの日本人が救援、応急対応に奮闘してくださいました。世界各地で紛争や災害の被災者支援や復旧復興に活躍した実績を持ち、高い能力とノウハウを備えた民間人が、復興庁でその力を遺憾なく発揮できるようにすべきであります。

 また、被災地を最もよく知る被災自治体の職員やそのOBを初め、全国の地方公務員やそのOBについても、活躍できるようにすべきではないでしょうか。

 これらを踏まえ、民間人や地方公務員等の採用については、別途定員枠を設けるべきと考えます。あわせて、復興庁が本格稼働する来年度以降の復興庁全体の定員について、その規模、中身をどのようにお考えになっているのか、総理の答弁を求めます。

 復興局について伺います。

 政府案では、復興庁の権限の一部を復興局に分掌させ、ワンストップでの対応を行うということになっております。しかし、例えば復興計画の認定など、被災市町村との調整が重要な事務の権限を復興局が持たなければ、復興局と本庁との両方を行き来せざるを得ません。

 具体的に、どの程度まで復興局に権限を持たせるのでしょうか。例えば、復興局限りで決裁できる事業費はどの程度になるのかなど、予算、人事も含め、具体的かつ明確にお答えください。総理の答弁を求めます。

 また、政府案では、岩手、宮城、福島の三県に復興局を設置した上で、支所を設置することとしています。支所は、被災市町村からの相談、要望を受ける機関となることが期待されるところですが、果たして十分な人材が確保されるのでしょうか。

 総理もよく御存じのように、東日本大震災で甚大な被害を受けた市町村の復興に当たっては、非常に広範な事業が必要です。その非常に広範な事業の相談、要望を、復興庁のもとに設置した復興局のさらに下部に設置した支所で対応し切れるのでしょうか。また、支所を設置する基準等はどのようにお考えになっているのか、総理の答弁を求めます。

 政府の復興庁設置法案では、復興局の位置を、盛岡市、仙台市、福島市としていますが、例えば岩手県では、甚大な被害を受けた沿岸部から盛岡市まで、車で約二時間はかかります。より被害の大きいところにこそ十分な対処をするという観点からいえば、沿岸部に復興局を設置するということも考えられるかと思います。

 この復興局の位置は、沿岸部の被災市町村の首長を初め、各自治体の実務者などの声を実際に聞かれた上での判断なのでしょうか。また、なぜ復興局を県庁所在地に置かなければならないのか、その明確な理由を総理に伺います。

 全壊した家屋三千二百二十五軒、半壊は二万三千五軒。これは、今月十八日時点での茨城県の住宅被害状況です。政府が復興局を置くとしている岩手県、宮城県、福島県以外にも、東日本大震災で甚大な被害を受けた県があります。

 現在、政府には、茨城県の震災対応を担当する部局はなく、担当者すらいない状況のようですが、これでは、政府の不作為により震災復興をおくらせることになりかねません。岩手、宮城、福島以外の被災県について、担当者、担当部局を明確にしなければなりません。

 また、復興局でワンストップ対応といっても、では、復興局の置かれる三県以外は一体どこで対応するのか。相談、要望、そして特区の認定と、すべて、東京に設置予定の復興庁の本庁に行かなければならないのでしょうか。被災地に寄り添う優しさを持った復興庁とすべく、岩手、宮城、福島以外の各被災地にどのように対応するおつもりなのか、明確な答弁を求めます。

 復興推進委員会について伺います。

 復興推進委員会は、単なる復興構想会議の名称変更にとどまってはなりません。委員会には、被災地に密着した方や、被災者の声なき声をも代弁できる方を登用するとともに、女性、子供、障害者等、多様な意見が反映できる体制を整えるべきと考えます。

 復興構想会議からメンバーを選んで規模を縮小することは適当でないと考えますが、いかがでしょうか。

 また、復興庁設置法案には、復興推進委員会の役割として、復興のための施策の実施状況を調査審議することが筆頭に挙げられております。その使命を果たすため、同委員会の被災地での開催を求めます。現地からもそうした意見が寄せられております。総理の明快な答弁を求めます。

 復興庁の発足時期について伺います。

 復興庁設置法案は、震災発生から七カ月がたってようやく国会に提出されました。復興特区法案も復興庁設置法案も、本当に、遅過ぎると言わざるを得ません。

 復興庁が一日早く発足すれば、予算執行と復興の事業展開が一日早く進みます。私は、遅くとも来年三月十一日、発災一年までには復興庁を発足させるべきと考えます。総理の決意をお聞かせください。

 最後に、被災地には既に寒い冬が訪れました。いまだに仮設や借り上げ住宅等に暮らしている方々、事業の再開を目指して必死に奔走する方々、住みなれた土地から離れ、生活の再建、地域の再興を信じて耐え忍んでいらっしゃる方々のために、私たち公明党は、全身全霊を挙げて、復旧復興に一層尽力してまいる決意であります。

 政府・与党には、菅政権下での大幅なおくれを取り戻すべく、復旧復興に全力を挙げて取り組むことを強く申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 公明党の石田祝稔議員の御質問に順次お答えをしてまいります。

 まず最初に、復興庁設置法案の提出に時間がかかったことについての御質問をいただきました。

 被災地の一刻も早い復旧復興を目指して、これまで、まずは、復興庁における重要な実施事務である復興特区や復興交付金の検討を急いでまいりました。それを特区法案として取りまとめ、本国会に提出をしました。

 それを踏まえて、復興庁設置法案を取りまとめました。これは、復興基本法に関する三党協議の際に、年内に成案を得て、その後速やかに設置法案を国会に提出することとしていたものを、むしろ前倒しして本国会に提出したものであることをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

 続いて、復興庁の実施権限等についてのお尋ねがございました。

 復興庁設置法案においては、復興庁は、復興に関する施策の実施に係る事務として、被災自治体が行うハード補助事業を横断的に一括する復興交付金制度や、各府省の規制や税制に切り込み、被災自治体のための特例を実現する復興特区制度などの強力な事務を担うこととしています。

 このように強力な復興特区制度と復興交付金制度を担うほか、内閣総理大臣を長とし、そのもとに復興大臣を置き、各府省の精鋭を集結すること、また、現地では、大臣政務官が担当する復興局が、実施事務のみならず、各省の出先の総合調整も行うことなど、これまでにない組織となっており、前例にとらわれず果断に実行する力強さをあわせ持つものと考えております。

 続いて、瓦れき処理の復興庁における一元化についての御質問をいただきました。

 復興庁設置法案において、復興庁は原子力災害からの復興に関する事務も幅広く担う旨を明記しております。

 瓦れき処理については、政府が一丸となって一刻も早く解決しなければならない課題であり、また、その処分に当たっては専門的な知見が求められております。こうした観点から、廃棄物処理について専門性を有する環境省による瓦れきの処理を推進するとともに、復興庁が、その総合調整権限を発揮して、関係行政機関の連携の確保、自治体の要望の反映を行い、政府一体となって取り組みを進めてまいります。

 復興庁の勧告権についての御質問をいただきました。

 内閣府においては、これまで、実際に勧告権を行使した事例はありません。

 復興庁においては、例えば復興特区制度の拡充などにおいて各省との意見が異なることも想定されますが、一般的には、勧告権を背景とした強力な総合調整権限を持っていることにより、縦割りの弊害が打破され、円滑な調整が進むものと考えております。

 続いて、復興庁の人材についての御質問をいただきました。

 迅速な復興を推進していくためには、各府省の縦割りを排除するとともに、各府省が持っている専門知識と能力を活用することが重要であります。

 このため、復興庁は、各府省から人材を結集する一方、内閣総理大臣を復興庁の長とし、事務を統括する復興大臣、副大臣を増員するとともに、大臣政務官も増員し被災三県の復興局を担当させるなど、強力な政治主導体制を整備することで、縦割りを排除し、被災自治体の要望にワンストップで対応してまいります。

 また、職員については、自治体職員、定年退職者や民間からの人材も協力いただくとともに、復興庁の規模も、現在の復興対策本部事務局の規模を大幅に超えた十分な体制を確保することとしておりますが、具体的な人員体制については、現在、事前の準備を進めているところでございます。

 続いて、復興局の権限についてのお尋ねがございました。

 復興局については、復興の主体である市町村が復興事業を円滑かつ迅速に行えるよう支援するため、復興庁の権限をできるだけ与えることとしております。

 具体的には、被災地からの提案や要望を一元的に受けとめ、市町村の復興計画の策定、実行を支援するとともに、復興特区、復興交付金への対応を一括して行うことに加え、各省の出先機関が行う復興事業の調整と推進を行わせることとしております。

 続いて、復興局の支所の人材、設置基準についての御質問をいただきました。

 復興局には各省の制度や復興施策に詳しい人材を配置し、支所については、復興局の職員による巡回を活用して、現地の相談や要望に適切に対応してまいります。

 また、支所の設置場所については、復興局からの距離などを踏まえつつ、被災自治体の御意見を伺いながら検討してまいりたいと思います。

 復興局の位置について御質問をいただきました。

 復興庁については、被災三県を初め各方面の御意見を伺いながら、その検討を進めてまいりました。

 その結果、復興局については、県庁との連携の確保や県内広域にわたる被災地への交通の便から、県庁所在地に置くこととしております。

 被災三県以外の対応についての御質問をいただきました。

 復興局が置かれる三県以外の被災地域についても、被災自治体に対する支援をしっかりと行うことができるよう、必要な体制を検討しているところでございます。

 例えば、現地の被害状況や被災自治体の意見を踏まえ支所を置くことを検討するほか、復興庁が中心となって関係機関による合同支援チームを派遣するなど、被災自治体の負担とならないよう支援を行ってまいります。

 復興推進委員会のあり方についての御質問をいただきました。

 復興構想委員会の委員の人選については、被災地の実情に通じた有識者など、復興推進委員会の役割にふさわしい人選を行うことが重要であると考えております。その際、御指摘のように、女性の方など、多様な意見を反映できるよう検討してまいります。

 また、復興推進委員会の開催場所については、委員が参集する際の利便性などにも留意をし、適切な開催方法が検討されるものと考えております。

 復興庁の発足時期について、最後に御質問をいただきました。

 本国会において速やかに法案を成立させていただければ、御指摘のように、三月十一日より前に発足できるよう準備を進めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 穀田恵二君。

    〔穀田恵二君登壇〕

穀田恵二君 私は、日本共産党を代表して、復興庁設置法案について、野田総理に質問します。(拍手)

 東日本大震災からの復興を図る上での基本原則は、被災者の生活となりわいの再建です。被災者の生活再建がなければ、地域が復興したとは言えません。

 そのための国の支援策は、被災者の意向に沿って、生活再建に必要とされる対策を具体的に進めていくことであり、上からの計画を押しつけるものであってはなりません。このことを、私たちは、この八カ月間余り、一貫して主張してきましたが、復興のための政府組織のあり方についても、この基本原則が大事だと思います。

 震災直後から、迅速な復興を図るための組織のあり方について議論がありました。かつての復興院のような強力な組織が必要だという主張が自民党などからなされ、一方、政府は、現行の対策本部体制で対応できるという考え方でした。

 私たちは、肝心なことは、国が何をどこまで支援するのか具体的なメッセージをはっきり示すことであり、国の支援がどうなるかわからないため、被災地域、自治体は具体的な計画がつくられない、ここに、復興をおくらせている一番の原因があると指摘してきました。

 具体的に、被災者の住宅や店舗、事業所等の再建に対する支援、水産業を初めとしたなりわいの再建、二重債務の問題などなど、被災者支援の中身と財政支援を明確にして被災自治体の再建計画づくりを支援し、その内容を最大限尊重して推進していくことが最も重要なことだと提起してまいりました。

 そうした中で、今回、復興庁が提案されています。一体、この官庁は何をするものなのか、その位置づけをまずはっきりさせていただきたいと思います。

 復興庁の最大の眼目は、政府の説明では、岩手、宮城、福島の三県に復興局を置き、ワンストップで被災自治体の要望に対応することだといいます。これは、現行の現地対策本部と何がどう変わるのでしょうか。

 この間、被災自治体からは、国に対して、実際の事業実施に当たって、所管官庁に何度も足を運ぶということがないように一元的に事が進められるようにしてほしいと、一元的窓口を求めてきましたが、この法案は、そうした要求にこたえられるものとなっているのですか。また、現行ではできないどのようなサービスが可能になるのでしょうか。答弁を求めます。

 法案によれば、復興庁の体制についてはっきりしているのは、内閣総理大臣を長として、復興大臣、副大臣一人、大臣政務官三人を置くことだけで、職員の体制については一切詳細が明らかにされていません。

 ワンストップで地方自治体を支援すると強調しながら、実際に仕事をする体制を示さないというのはどういうことですか。現在の復興対策本部は、東京に百十七名、岩手、宮城、福島の三県に各八名の現地対策本部で、しかも、数カ月で交代という体制にすぎません。これで、どうして、ワンストップで地方自治体に対する支援を進めることができるのですか。必要な職員を配置すべきです。その際、出先機関の廃止は、逆行するものであり、維持拡充すべきであります。

 また、復興推進委員会と称する審議会を置くこととしていますが、自治体の復興計画の支援実務を専らの任務とする復興庁において、何を調査審議し、意見具申するというのでしょうか。あわせて答弁を求めます。

 次に、復興庁に強力な権限を持たせるべきという議論についても触れます。

 典型的な意見が、経済同友会の提言です。東北復興院の創設を提唱し、将来の道州制導入を念頭に置いて、司令塔機能を持つ組織を設置し、東北の復興を、高齢化やグローバル化といった我が国がかねて直面する課題を解決する先進モデルとすることを主張しています。

 こうした考えは、震災からの復興に便乗して、かねて直面する課題を解決する、すなわち、福祉や医療など社会保障の切り捨て政策を実施する先進モデルにしようというものにほかなりません。

 震災復興に便乗して、被災者の生活再建や地域の復興ではなく、大企業の国際競争力を追求する政策を実現するため強力な権限を持つ組織が必要だなどという方向は、とるべきではありません。道州制など、国の形を変える議論が復興庁を通して進むということがあってはならないと思いますが、総理の見解を求めます。

 被災者を基礎にした復興を進める上で重要なことは、住民の意向を反映させることです。

 復興庁の主な仕事は、復興特区法案に基づく復興推進計画の認定や復興交付金の配分などです。その特区法案では、事業を実施する法人や経済団体などは、法案に規定されていない新たな特例を提案できるとしています。

 一方、特区法案の第一条で被災地域の住民の意向を尊重するとしながら、その具体的手だては規定されていません。計画の作成段階で計画の作成主体である被災自治体が住民に対する説明を行っているからという政府答弁は、納得できるものではありません。

 事業の実施段階で被災住民の意向や要望を把握し、的確に反映させる具体的手だてについて答弁を求めます。

 また、今後、広範囲に被災した土地の所有関係を明確にすることが大きな問題となります。

 特区法案では、復興推進計画に基づき新たな施設の立地を行うための農地転用や、地震や津波で境界が不明となった地籍の境界を確定する場合について、手続を簡素化する特例措置を規定しています。所有権の登記名義人や土地所有者の所在が不明であることを、どのような基準で確認しようというのでしょうか。

 被災住民の合意がなければ、復興まちづくりをスムーズに進めることはできません。住民の同意を得る手続を簡略にすることで混乱を引き起こすことなどは、避けなければなりません。具体的な対策について、どのようにするつもりですか。

 復興対策を進める上で、国の機関の体制だけでなく、被災自治体を初めとした地方自治体の体制の確保が必要です。

 被災自治体の最低限の機能を果たすため、国の機関や全国の自治体は、みずからもぎりぎりの定員しかない体制のもとで、多くの職員を派遣し、応援してきました。応援を受けた被災自治体の財政負担を一層軽減することが求められています。具体的提案を明らかにしていただきたいと思います。

 また、本来なら、単なる派遣による応援でなく、消防職員を含めて被災自治体の体制を確保するためには、定員増が必要です。

 二〇〇五年に合併した石巻市では、合併の十年後から普通交付税が段階的に減らされるため、震災前から、二割以上の職員削減計画を進めてきました。被災自治体であっても、交付税削減に何の猶予もありません。

 これで、どうして、必要な職員を確保できるでしょうか。これは石巻市だけではありません。少なくとも復興が軌道に乗るまで交付税の削減を猶予してほしい、この被災自治体の切実な要望にこたえるべきではありませんか。明確な答弁を求めます。

 最後に、東京電力福島原発事故についてであります。

 いわゆる自主避難された住民を初め、精神的被害や風評被害を含め、事故があったためにこうむっている被害について東京電力に全面的な賠償を行わせることが、引き続き緊急の課題です。

 いまだに被災者を、賠償もないまま、日々の生活を不安にさらし続けていることに、総理として、その責任をどのように感じているのですか。

 政府と東京電力は、原子炉の冷温停止状態を年内に達成し、短期的な緊急対策を柱としたステップ2を完了する方針を強調しています。しかし、原子炉の状態でさえ把握できていないというのが実態ではありませんか。事故原因についても、津波の前に地震動によって重大事故が起こったという指摘もされていますが、その解明も全く進んでいません。

 事故がどのように起こり、その後、事態の深刻さを増した経過が全く解明されていないのに、冷温停止状態が達成されたなどと、さも安全であるかのように言うことが、どうして、被災者に対する東電と国の責任を果たすことになるのでありましょうか。

 また、福島第一原発事故の検証を行わないまま停止中の原発を再稼働させることは、「事故の究明、徹底調査を行うことがすべてのスタートの大前提」という総理の言明にも反するものではありませんか。

 以上、明確な答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 共産党の穀田恵二議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まず最初に、復興庁の位置づけについての御質問をいただきました。

 復興庁が担う機能は、復興特区、復興交付金や、被災地の要望への一元的な対応、さらには、各府省が行う復興事業の総合調整などであります。また、復興庁は、各府省が行う公共インフラ等の復興施策に関する事業計画や工程表を示すとともに、被災自治体による復興計画の策定、実行の支援なども行うこととしており、これらを通じて、復興事業の推進と被災自治体の支援を強力に進めてまいります。

 続いて、復興局の役割についての御質問をいただきました。

 現行の現地対策本部は、各省の出先機関が行う復興事業の調整と推進を行っていますけれども、新たにつくる復興局は、こうした業務に加えて、市町村が復興計画を策定し実行する際の助言や支援を行うとともに、先ほど申し上げたとおり、復興特区や復興交付金への対応を一括して行うこととしております。

 これらの機能を活用して、被災自治体からの提言や要望を現地においてワンストップで受けとめ、決してたらい回しにすることなく、支援をしてまいります。

 復興庁の体制及び復興推進委員会についての御質問をいただきました。

 復興庁は、被災自治体への支援や、そのニーズに対するワンストップの対応を実現するため、各省の制度や復興事業に詳しい人材を確保し、現地にできるだけ配置していくこととしています。その規模については、先ほど穀田議員みずから、現在の復興対策本部の事務局、数字を挙げていただきましたけれども、その規模を大幅に超えた十分なものとするべく、現在、事前の準備を進めているところであります。

 また、復興推進委員会については、復興の進みぐあいを把握し、問題があれば、その解決のための方策を提言いただくこととしております。

 続いて、復興庁の権限についてのお尋ねがございました。

 復興の主体は地域であり、国は、被災した市町村が復興事業を円滑かつ迅速に行えるよう、一元的な支援をしていくことが重要であります。

 このような観点から、被災者の生活再建や地域の復興を強力に推進するため復興庁に強力な権限を付与することとしたものであり、御指摘のような大企業優遇のためのものではございません。こうした権限を活用して、被災した自治体の要望をワンストップでしっかりと受けとめ、縦割りを排除するとともに、各府省のノウハウと人材を総合的に活用して自治体を支援してまいります。

 続いて、復興特区法案における被災住民の意向や要望を反映させる具体的な手だてについての御質問をいただきました。

 復興特別区域法案においては、復興特区に関する計画のうち、特に住民に影響があると見込まれる土地利用再編に関する特例適用のために地方公共団体が作成する復興整備計画については、公聴会の開催等、住民の意見を反映させる措置について規定するとともに、土地利用計画などの事項を定める際の公告、縦覧、意見書提出などの手続を規定しているところでございます。

 また、その他の復興特区に関する計画についても、地域の状況や住民の意向を把握し、住民に対して責任を有する地方公共団体が作成することとしており、必要な住民の意向の把握や住民への説明は、それぞれの地方公共団体が、地域の実情に応じて、適切な方法で行われるものと考えております。

 続いて、土地所有権者等が不明な土地の確認及び住民の同意に係る手続についてのお尋ねがございました。

 復興特別区域法案においては、所有権者等の所在が不明な土地の確認については、不動産登記簿、戸籍謄本、住民票、避難者に関する情報、近隣住民から収集した情報などに基づき行うことを考えているところであります。

 また、先ほど答弁いたしましたとおり、復興特別区域法案において、復興特区制度を活用して復興まちづくりを進める際の住民の意見を反映させるための一連の措置を規定しているところであります。

 現在、被災地においては、復興まちづくりを進めるため、市町村が中心となって住民の意向の把握や合意形成に取り組んでいるところでありますが、国としては、地域の要望を踏まえ、県とも連携して、職員の派遣や技術的な助言など、さまざまな支援を行ってまいります。

 続いて、応援を受けた被災団体の財政負担の一層の軽減についての御質問をいただきました。

 被災団体の復旧復興体制の充実を図ることは重要であり、このため、被災団体の財政負担の軽減を図ることが必要と考えています。

 被災団体が他団体から職員派遣を受ける場合や、御指摘の消防職員を初め、新たに職員を採用する場合に必要となる経費については、特別交付税により措置することとしています。また、先日成立した第三次補正予算においては、震災復興特別交付税を創設し、被災団体の事業の実施状況に合わせて地方負担分の全額を措置することにより、その負担をゼロにすることとしています。

 今後とも、復旧復興に係る財政負担については、別枠で所要の交付税額を確保することにより、被災団体の円滑な財政運営が図れるよう対処してまいります。

 なお、交付税の合併特例制度は、合併時に生じる財政負担に対処するためのものであり、この制度とは別に、被災団体の復旧復興に係る財政負担は、交付税の算定において適切に対応をしてまいりたいと思います。

 最後に、原発の関連で、三問、御質問をいただきました。

 まず、原子力損害賠償に関する御質問でございます。

 今回の原発事故により被害を受けたすべての方々が、その損害額すべてについて迅速かつ適切に賠償を受けられることが、何よりも重要であります。このため、政府としては、原子力損害賠償支援機構による支援や、原子力損害賠償紛争審査会による和解の仲介などを行っているところであり、東京電力により迅速かつ適切に賠償がなされるよう、万全を期してまいります。

 事故原因の解明に関する御質問をいただきました。

 原子炉内部の状態は直接確認できていませんが、圧力容器底部の温度や格納容器内の温度から、損傷している燃料も適切に冷却され、格納容器からの放射性物質の放出は抑えられています。

 事故の原因については、地震により外部電源が喪失し、その後の津波により非常用ディーゼル発電機や冷却用海水ポンプ等が機能を失ったため、全交流電源喪失や冷却機能の喪失に至ったものと推定をしています。

 政府としては、事故調査・検証委員会や、原子力安全・保安院に設置された意見聴取会、また、国会に設置された東京電力福島原子力発電所事故調査委員会等の場を通じて、さらなる事故原因の解明に向けた取り組みを進めてまいります。

 事故原因の調査と原発再稼働に関する御質問をいただきました。

 事故原因の調査は、今申し上げたとおり、鋭意行っているところでありますが、これまでに判明している事故の状況を踏まえ、既に、各原発に対して、緊急安全対策等の対策を講じてきております。

 定期検査で停止中の原子力発電所の再稼働については、事業者が行ったテストを保安院が評価し、さらにその妥当性を原子力安全委員会が確認した上で、地元の理解や国民の信頼が得られているかという点も含め、政治レベルで総合的な判断を行ってまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 中島隆利君。

    〔中島隆利君登壇〕

中島隆利君 社会民主党の中島隆利です。

 社会民主党・市民連合を代表し、ただいま議題となりました政府提出の復興庁設置法案について、総理にお伺いします。(拍手)

 東日本大震災復興構想会議の今月十日の会合で、五百旗頭真議長が、政府の復興施策について、率直に言って遅過ぎると苦言を呈しました。議長のこの指摘をまつまでもなく、震災から八カ月以上たって復興対策の司令塔の仕組みが議論されるというのは、余りにもスピード感が欠如しています。

 総理、復旧復興がおくれているとの指摘に対し、どのような認識をお持ちですか。

 一つだけ例を挙げてお聞きします。

 今回の震災に際し、三千億円を超える義援金が寄せられました。日本赤十字やNHK等に寄せられた義援金は、第一次、第二次、合わせて九割程度が被災地、被災者に届けられたものと承知します。

 しかし、政府を窓口にして集められた約二十億円の義援金については、いまだに被災県に届けられていません。何が原因でおくれているのですか。年末までには被災者に届けるべきではないですか。総理、お答えください。

 さて、東日本大震災復興基本法では、復興庁の役割に復興に関する施策の実施が含まれています。所信表明演説でも、復興庁に強い調整・実施権限を持たせると総理は述べています。

 しかし、法案では、復興施策の実施権限は復興庁にゆだねられていません。理由は何ですか。これまでの施策の実施で随所に見受けられた省庁縦割りの弊害をどのように取り除いていくおつもりですか。

 恐らくは、復興大臣に、勧告権、求報告権、総理に対する意見具申権といった強い権限を持たせることによって、特定省庁の利害を排除したり、施策の統一化を図るお考えだと思いますが、これら復興大臣の権限はどのような場合に発揮されるのでしょうか。お答えください。

 復興の中心は、あくまでも、被災者を含めた地域住民であり、自治体です。政府が果たすべき役割は、被災者そして被災地に寄り添い、その苦悩を真摯に受けとめ、復興を支援し、不安を安心に変えていくことです。この点、法案が、被災自治体に対し、窓口を一元化し、ワンストップで対応する仕組みをつくったことは評価します。

 その際、復興の妨げになる二重行政を排除することが重要になりますが、被災三県に設置される復興局と支所、さらに各省庁の地方出先機関の役割分担はどのようになるのでしょうか。

 東日本復興構想会議にかわり、法案では、新たに復興推進委員会が設置されます。復興構想会議の委員の皆さんのこれまでの努力には敬意を表したいと思います。一方、復興構想会議では、当初、復興財源のあり方で議論が空転したり、委員から提案された復興のグランドデザインも、言葉ばかりが躍っているのではないかとの指摘がありました。

 新設される復興推進委員会においては、被災現場を回って被災者、被災地の声を復興庁に届ける役割を担っていただきたいと思います。復興推進委員会のメンバーはどのような構成になりますか。民間から登用するとすれば、どのような方々になるのでしょうか。お答えください。

 最後になりますが、第三次補正予算、復興特区法、そして復興庁設置法が成立しますと、復旧復興に向けた体制は、形の上では整うことになります。これまでおくれが指摘されてきた復旧復興のテンポを一気にスピードアップし、被災地に安心を届けるために尽力していただくことを強く政府に要請し、私の質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 社民党の中島隆利議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まず最初に、復旧復興がおくれているとの指摘に関する御質問をいただきました。

 政府は、これまで、全力を挙げて被災地の復旧復興対策に取り組んできたところでありますが、仮設住宅の建設や散乱瓦れきの撤去などは、ほぼ完了しております。しかしながら、御指摘のように、五百旗頭議長のお言葉にもあるように、遅過ぎるという御指摘もいただいてはおります。

 去る二十一日に第三次補正予算が成立をしたところであり、質問の最後にスピードアップしろという御要請もございましたけれども、そうした御指摘も真摯に受けとめ、復興事業がさらに加速できるよう、全力で取り組んでまいります。

 政府に寄せられた義援金についてのお尋ねがございました。

 政府でお預かりしている義援金については、中立公正な配分を徹底するため、配分割合を決定する機関のあり方などについて検討を行ってまいりました。

 近く、東日本大震災を受けて日本赤十字社等が設置した義援金配分割合決定委員会で議論いただいた上で配分割合を決定し、可能な限り早く被災者の手に渡るよう、被災県に送金をすることとしております。

 復興庁の権限、省庁縦割りの排除、復興大臣の権限についての御質問をいただきました。

 復興庁については、市町村が復興事業を円滑かつ迅速に行えるよう、各省の縦割りを超えて支援できる機能が重要であります。

 このため、各省が行う補助を横断的に一括する復興交付金や、各省の規制、制度や税制等に切り込み、その特例を実現する復興特区など、既存の枠組みを超える強力な実施権限を担うこととしています。また、総合調整権限についても、復興関係予算の調整権や勧告権などを含む強力なものとしています。

 このような権限を発揮して、被災自治体の要望をワンストップで受け付け、各省調整を進め、支援策を実現してまいります。

 二重行政の排除についての御質問をいただきました。

 被災自治体を支援するためには、国の窓口がワンストップであるとともに、中島議員御指摘のように、復興局と各省の出先機関の二重行政を排除することが重要であります。

 このため、復興局と支所が総合調整権限を発揮し、地方出先機関の取り組みを支援し、地域における復興施策を一体的に進めてまいります。

 復興推進委員会の委員の人選についての御質問を最後にいただきました。

 復興庁設置法案において、復興推進委員会は、復興施策の実施状況を調査審議するなどの事務をつかさどることとしています。

 委員の人選については、被災地の実情に通じた有識者など、復興推進委員会の役割にふさわしい人選を行うことが重要であると考えております。

 以上で答弁とさせていただきます。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   野田 佳彦君

       総務大臣     川端 達夫君

       財務大臣     安住  淳君

       環境大臣     細野 豪志君

       国務大臣     平野 達男君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  齋藤  勁君

       内閣府副大臣   後藤  斎君


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