衆議院

メインへスキップ



第1号 平成24年1月24日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十四年一月二十四日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第一号

  平成二十四年一月二十四日

    午前十時開議

 第一 議席の指定

 第二 常任委員長の選挙

    …………………………………

  一 国務大臣の演説

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 議席の指定

 日程第二 常任委員長の選挙

 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災害対策特別委員会、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会、沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会、青少年問題の総合的な対策を確立するため委員二十五人よりなる青少年問題に関する特別委員会、北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会、消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる消費者問題に関する特別委員会、科学技術、イノベーション推進の総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる科学技術・イノベーション推進特別委員会、郵政改革に関する諸問題を調査するため委員四十五人よりなる郵政改革に関する特別委員会及び東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十五人よりなる東日本大震災復興特別委員会を設置するの件(議長発議)

 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等の諸問題を調査するため委員四十五人よりなる海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)

 野田内閣総理大臣の施政方針に関する演説

 玄葉外務大臣の外交に関する演説

 安住財務大臣の財政に関する演説

 古川国務大臣の経済に関する演説


このページのトップに戻る

    午前十一時三分開議

議長(横路孝弘君) 諸君、第百八十回国会は本日召集されました。

 これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 議席の指定

議長(横路孝弘君) 日程第一、議席の指定を行います。

 衆議院規則第十四条によりまして、諸君の議席は、議長において、ただいまの仮議席のとおりに指定いたします。

     ――――◇―――――

 日程第二 常任委員長の選挙

議長(横路孝弘君) 日程第二、常任委員長の選挙に入ります。

 経済産業委員長が欠員となっておりますので、この際、経済産業委員長の選挙を行います。

太田和美君 経済産業委員長の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(横路孝弘君) 太田和美さんの動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、経済産業委員長に中山義活君を指名いたします。

    〔拍手〕

     ――――◇―――――

 特別委員会設置の件

議長(横路孝弘君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。

 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災害対策特別委員会

 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会

 沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会

 青少年問題の総合的な対策を確立するため委員二十五人よりなる青少年問題に関する特別委員会

 北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会

 消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる消費者問題に関する特別委員会

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる科学技術・イノベーション推進特別委員会

 郵政改革に関する諸問題を調査するため委員四十五人よりなる郵政改革に関する特別委員会

及び

 東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十五人よりなる東日本大震災復興特別委員会

を設置いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

 次に、海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等の諸問題を調査するため委員四十五人よりなる海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(横路孝弘君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。

 ただいま議決されました十特別委員会の委員は追って指名いたします。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) 休憩前に引き続き会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説

議長(横路孝弘君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、財務大臣から財政に関する演説、古川国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣野田佳彦君。

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 第百八十回国会の開会に当たり、この国が抱える諸課題と野田内閣の基本方針について、謹んで申し上げます。

 昨年九月、野田内閣は、目の前にある課題を一つ一つ解決していくことを使命として誕生いたしました。日本再生元年となるべき本年、私は、何よりも、国政の重要課題を先送りしてきた決められない政治から脱却することを目指します。

 「与野党が信頼関係の上に立ってよく話し合い、結論を出し、国政を動かしていくことこそ、国民に対する政治の責任であると私は信じます」これは、四年前、当時の福田総理がこの演壇から与野党に訴えかけられた施政方針演説の一節です。

 それ以降も、宿年の課題は残されたまま年々深刻さを増し、国の借金は膨らみ続けました。そして、東日本大震災によって、新たに解決を迫られる課題が重くのしかかっています。

 私たちは、この国難とも呼ぶべき危機に立ち向かいながら、長年にわたって先送りされてきた課題への対処を迫られています。国民に対する政治の責任を果たさなければなりません。

 野田内閣がやらなければならないことは明らかです。大震災からの復旧復興、原発事故との戦い、日本経済の再生です。この大きな課題の設定と国として進めるべき政策の方向性について、与野党に違いはありません。

 社会保障と税の一体改革も同様です。昨年末、自公政権時代の問題提起も踏まえながら、民主党内の政治家同士による熟議の末に、政府・与党としての素案をまとめました。その上で、各党各会派との協議をお願いしています。少なくとも、持続可能な社会保障制度を再構築するという大きな方向性に隔たりはないのではないでしょうか。具体的な政策論で異論があるのであれば、大いに議論しようではありませんか。

 我が国の政治過程において今俎上に上っている諸課題は、幸いにして、世界各地の民主主義国家で顕在化しているような、深刻なイデオロギーや利害の対立をはらむものではありません。さきの国会で、各党会派が当初の主張の違いを乗り越えて、三次補正予算と関連法の合意を達成できたことが一つの証左です。私たち政治家が本気で合意を目指し、動かそうとするならば、政治は前に進んでいくのです。

 今求められているのは、わずかな違いを喧伝するのではなく、国民の真の利益とこの国の未来をおもんぱかる、大きな政治です。重要な課題を先送りしない、決断する政治です。

 日本が直面する課題を真正面から議論し、議論を通じて具体的な処方箋をつくり上げ、実行に移していこうではありませんか。全ての国民を代表する国会議員として、今こそ、政局ではなく、大局を見据えようではありませんか。

 大震災からの復旧復興、原発事故との戦い、日本経済の再生。野田内閣は、この三つの優先課題に、改造後の布陣で引き続き全力を挙げて取り組むことをお誓いします。

 あの大震災から十カ月余りがたちました。今なお仮設住宅で不自由な暮らしを余儀なくされている方々に、少しでもぬくもりを感じていただきたい。大震災の災禍を乗り越え、一日も早く被災地に復興のつち音を力強く響かせたい。そうした思いで、これまで国としても懸命に取り組んでまいりました。

 さきの国会で成立した三次補正予算と関連法によって、復興庁、復興交付金、復興特区制度など、復興を力強く進めていく道具立てがそろいました。復興という名をいただいた新しい役所は、被災者に寄り添い続け、必ずや被災地の復興をなし遂げるという、与野党がともに刻んだ誓いのあかしです。復興庁を二月上旬に立ち上げ、ワンストップで現地の要望をきめ細かに酌み取り、全体の司令塔となって、復興事業をこれまで以上に加速化していきます。

 被災者の方々が生活の再建を進める上で、最大の不安は、働く場の確保です。復興特区制度などを活用して、内外から新たな投資を呼び込むとともに、被災した企業の復旧を加速させ、被災地の産業復興と雇用確保を進めます。

 ふるさとが復興する具体的な未来図を描くのは、ほかならぬ住民の皆様自身です。地域のことは地域で決めるという地域主権の理念が今ほど試されているときはありません。多様な主体が参加した住民自治に基づく、開かれた復興を全力で応援します。

 大震災の発災から一年を迎える、来る三月十一日には、政府主催で追悼式をとり行います。犠牲者のみたまに対する最大の供養は、被災地が一日も早く復興を果たすことにほかなりません。

 先人たちは、終戦の焼け野原から高度経済成長を実現し、石油ショックから世界最高の省エネ国家を築き上げました。大震災に直面した私たちにも、同じ挑戦が待っています。もとに戻すのではなく、新しい日本をつくり出すという挑戦です。これは、今を生きる日本人の歴史的な使命です。

 頑張っぺ福島、負げねど宮城、頑張っぺし岩手、そして、頑張ろう日本。大震災直後から全国に響くエールを、これからもつないでいきましょう。東日本各地の被災地の苦難の日々に寄り添いながら、全ての日本人が力を合わせて、復興を通じた日本再生という歴史の一ページをともにつくり上げていこうではありませんか。

 今般の大震災が残した教訓を未来に生かしていくことも、私たちが果たさなければならない歴史的な使命の一つです。もう、想定外という言葉を言いわけにすることは許されません。津波を含むあらゆる自然災害に強い持続可能な国づくり、地域づくりを実現するため、災害対策全般を見直し、抜本的に強化します。

 東京電力福島第一原発の事故との戦いは、決して終わっていません。昨年末のステップ2完了は、廃炉に至るまで長く続く工程の一里塚にすぎません。福島を再生し、美しきふるさとを取り戻す道のりは、これから本格的に始まるのです。

 避難されている方々がふるさとにお戻りいただくには、安心して暮らせる生活環境の再建を急がなければなりません。病院や学校などの公共サービスの早期再開を図るとともに、とりわけ子供や妊婦を放射線被害から守るため、生活空間の徹底した除染、住民の皆様の健康管理、食の安全への信頼回復に取り組むとともに、被災者の目線に立った、公正で円滑な賠償に最善を尽くします。また、関係する市町村や住民の皆様の御意向を十分に把握し、警戒区域や避難指示区域の見直しにきめ細かく対応します。

 私は、内閣総理大臣に就任後、これまで三度、福島を訪れました。山々の麗しき稜線、生い茂る木々の間を流れる清らかな川と水の音。どの場所に行っても、どこか懐かしい郷愁を感じます。日本人誰もが、ふるさとの原型として思い浮かべるような美しい場所です。

 福島の再生なくして日本の再生はありません。福島がよみがえらなければ、元気な日本も取り戻せないのです。私は、このことを何度でも繰り返し、全ての国民がこの思いを共有していただけることを願います。

 この願いを具体的な行動に移すため、国が地元と一体となって福島の再生を推進するための特別措置法案を今国会に提出します。

 被災地が確かな復興の道を歩むために、そして、我が国が長きにわたる停滞を乗り越えて将来に繁栄を引き継いでいくために、日本経済の再生にも全力で取り組みます。

 分厚い中間層を復活させるためにも、中小企業を初めとする企業の競争力と雇用の創出を両立させ、日本経済全体が元気を取り戻さなければなりません。企業の国内投資や雇用創出の足かせとなってきたさまざまな障害を取り除き、産業と雇用の基盤を死守します。同時に、新たな付加価値を生み出す成長の種をまき、新産業の芽を育てていくための環境を整備していきます。

 日本再生のための数多くのプロジェクトを盛り込んだ二十四年度予算は、経済再生の次なる一歩です。四次補正予算とあわせ、早期の成立を図ります。また、歴史的な円高と長引くデフレを克服するため、金融政策を行う日本銀行との一層の連携強化を図り、切れ目ない経済財政運営を行ってまいります。

 世界経済の先行きが不透明な中で、人口減少に転じた我が国が力強い経済成長を実現するのは、容易ならざる課題です。しかし、だからこそ、日本経済の潜在力を冷静に見きわめ、さまざまな主体による挑戦を促す明快なビジョンを描かなければなりません。

 このため、国家戦略会議において、新成長戦略の実行を加速するとともに、新たな成長に向けた具体的な工程表を伴う日本再生戦略を年央までに策定し、官民が一体となって着実に実行します。

 日本に広がる幾多のフロンティアは、私たちの挑戦を待っています。女性は、これからの日本の潜在力の最たるものです。これは、減少する労働力人口を補うという発想にとどまるものではありません。社会のあらゆる場面に女性が参加し、その能力を発揮していただくことは、社会全体の多様性を高め、元気な日本を取り戻す重要な鍵です。日本再生の担い手たる女性が、社会の中でさらに輝いてほしいのです。

 農業、エネルギー・環境、医療・介護といった分野は、新たな需要を生み出し、二十一世紀の成長産業となる大きな可能性を秘めています。さきに策定した食と農林漁業の再生に向けた基本方針・行動計画を政府全体の責任で着実に実行するとともに、これらの分野でのイノベーションを推進します。

 海洋国家たる我が国の存立基盤であり、資源の宝庫である海洋や、無限の可能性を持つ宇宙は、政府を挙げて取り組んでいく人類全体のフロンティアです。

 産官学の英知を結集して、挑戦を担う人づくりへの投資を強化するとともに、こうした内外のフロンティアを夢から現実に変え、日本再生の原動力とするための方策を国家ビジョンとして示します。

 アジア太平洋への玄関口として大きな潜在力を秘め、本土復帰から四十周年を迎える沖縄も、フロンティアの一つです。

 その潜在力を存分に引き出すために、二十四年度予算において、使い道を限定しない、自由度の高い一括交付金を用意します。また、地元の要望を踏まえ、二十四年度以降の沖縄振興に関する二法案を今国会に提出します。

 経済再生のためには、エネルギー政策の再構築が欠かせません。

 そのためには、国民の安心、安全を確保することを大前提にしつつ、経済への影響、環境保護、安全保障などを複眼的に眺める視点が必要です。化石燃料が高騰する中で、足元の電力需給の逼迫を回避しながら、温室効果ガスの排出を削減し、中長期的に原子力への依存度を最大限に低減させるという、極めて複雑な方程式を解いていかなければなりません。

 幅広く国民各層の御意見を伺いながら、国民が安心できる中長期的なエネルギー構成を目指して、ゼロベースでの見直し作業を進め、夏を目途に、新しい戦略と計画を取りまとめます。あわせて、新たなエネルギー構成を支える電力システムのあり方や、今後の地球温暖化に関する国内対策を示します。

 また、原発事故の原因を徹底的に究明し、その教訓を踏まえた新たな原子力安全行政を確立します。

 環境省の外局として、原子力の安全規制をつかさどる組織を新設するとともに、厳格な規制の仕組みを導入するための法案を今国会に提出し、失われた原子力安全行政に対する信頼回復とその機能強化を図ります。

 まず隗より始めよ。これは、どのような政策課題に取り組むに当たっても、政治と行政を担う者が国民の皆様に示さなければならない国家の矜持です。

 さきの国会で、政府全体の歳出削減と税外収入の確保のための具体策に結論を得ることはできませんでした。与野党の考え方の差は決して大きくはなかっただけに、残念でなりません。

 国家公務員給与の約八%を引き下げる法案及び郵政改革関連法案について、今国会においてこそ速やかに合意を得られるよう、野党の皆様に改めてお願いを申し上げます。

 行政の無駄遣いの根絶は、不断に続けなければならない取り組みです。責任ある財政運営を行うために、過去二代の政権を通じて、私自身も懸命に努力をしてまいりました。しかしながら、まだまだ無駄削減の努力が不足しているという国民の皆様のお叱りの声が聞こえます。行政改革に不退転の覚悟で臨みます。

 皮切りとなるのは、独立行政法人改革です。大胆な統廃合と機能の最適化により、法人数をまずは四割弱減らすなどの改革を断行します。

 次に、特別会計改革です。社会資本整備事業特別会計の廃止や、全体の勘定の数をおおむね半減させるなどの改革を進めます。

 これらの改革に関連する法案を今国会に提出し、成立に万全を期します。

 また、あらん限りの税外収入の確保に向け、国家公務員宿舎を今後五年間で二五%削減し、政府資産の売却を進めます。

 国民目線を徹底し、聖域なき行政刷新の取り組みを着実に進めるとともに、公務員制度改革を引き続き推進します。

 行政サービスを効率化し、国の行政の無駄削減を進めるためにも有効な地域主権改革を着実に具体化していきます。二十四年度予算では、補助金の一括交付金の総額をふやし、使い勝手を格段によくします。

 また、国の出先機関の原則廃止に向けて、具体的な制度設計を進め、必要な法案を今国会に提出いたします。

 さらに、地域社会を支える基盤である郵便局において三事業のサービスを一体で提供し、利用者の利便性を高める郵政改革の今国会での実現を図ります。

 行政だけではありません。誰よりも、政治家自身が身を切り、範を示す姿勢が不可欠です。

 既に、違憲状態と最高裁判所から指摘されている一票の格差を是正するための措置に加えて、衆議院議員の定数を削減する法案を今国会に提出すべく、民主党として準備しているところです。与野党で胸襟を開いて議論し、この国会で結論を得て実行できるよう、私もリーダーシップを発揮してまいります。

 政治・行政改革とともに、今、国民のために、この国の将来のために、やり遂げなければならない、もう一つ大きな課題があります。それが、社会保障と税の一体改革です。

 団塊の世代が、支える側から支えられる側に移りつつあります。多くの現役世代で一人の高齢者を支えていた胴上げ型の人口構成は、今や三人で一人を支える騎馬戦型となり、いずれ、一人が一人を支える肩車型に確実に変化していきます。今のままでは、将来の世代はその負担に耐えられません。もう改革を先送りする時間は残されていないのです。

 過去の政権は、予算編成のたびに苦しみ、さまざまな工夫を凝らして、何とかしのいできました。しかし、世界最速の超高齢化が進み、社会保障費の自然増だけで毎年一兆円規模となる状況にある中で、毎年繰り返してきた対症療法は、もう限界です。

 もちろん、一体改革は、単に財源と給付のつじつまを合わせるために行うものではありません。社会保障を持続可能で安心できるものにしてほしいという国民の切なる願いをかなえるためのものです。

 失業や病気などにより一たび中間層から外れるともとに戻れなくなるとの不安が社会にじわじわと広がっています。このままでは、リスクをとってフロンティアの開拓に挑戦する心も萎縮しかねません。お年寄りが孤独死するような社会であってよいはずがありません。働く世代や子供の貧困といった悲痛な叫びにも応えなければなりません。

 政権交代後、国民の生活が第一という基本理念のもと、人と人が支え合い、支え合うことによって生きがいを感じられる社会づくりを目指してきました。全ての人が居場所と出番を持ち、ぬくもりあふれる社会を実現するために、社会保障の機能強化が必要なのです。

 我が国では、先進諸国と比べて、現役世代に対する支援が薄いと指摘されています。その最たる例が、子育て支援です。社会の中で女性の能力を最大限に生かすとともに、安心して子供を産み、育てられる社会をつくるために、総合的な子ども・子育て新システムの構築を急がなければなりません。

 こうした点を含めて、支える側たる現役世代の安全網を強化し、子供からお年寄りまで全ての国民をカバーする全世代対応型へと社会保障制度を転換することが焦眉の急なのです。

 昨今、きょうよりもあしたがよくなるとの思いを抱けない若者がふえていると言われます。日本社会が次世代にツケを回し続け、そのことに痛痒を感じなくなっていることに一因があるのではないでしょうか。

 将来世代の借金をふやし続けるばかりの社会で、若者がきょうよりあしたがよくなるという確信を持つなど、無理な相談です。社会全体の希望を取り戻す第一歩を踏み出せるかどうかは、この一体改革の成否にかかっていると言っても過言ではありません。

 このような背景や認識に基づいて、政府・与党は、経済状況を好転させることを条件に、二〇一四年四月より八%へ、二〇一五年十月より一〇%へ段階的に消費税率を引き上げることを含む素案を取りまとめました。引き上げ後の消費税収は、現行分の地方消費税を除く全額を社会保障の費用に充て、全て国民の皆様に還元します。官の肥大化には決して使いません。

 これは、社会により多くのぬくもりを届けていくための改革です。消費税引き上げに当たって最も配慮が必要なのは、低所得者の方々です。

 このため、社会保障の機能強化により低所得者対策を充実するとともに、国民一人一人が固有の番号を持つことになる社会保障・税番号制度を導入し、給付つき税額控除の導入を検討するなど、きめ細かな対策を講じます。また、所得税の最高税率を五%引き上げ、税制面でも格差是正と所得再分配機能の回復を図ります。

 グローバルな金融市場の力が席巻する今、一たび国家の信用が失われると、取り返しがつきません。欧州諸国の状況を見れば一目瞭然です。この一体改革は、金融市場の力に振り回されない強靱な財政構造を持つ観点からも、待ったなしなのです。

 社会保障・税一体改革は、経済再生、政治・行政改革とも一体で、まさに包括的に進めていかなければならない大きな改革です。今後、各党各会派との協議を進めた上で、大綱として取りまとめ、自公政権時代に成立した法律の定める本年度末の期限までに、関連法案を国会に提出します。

 二十一世紀に入ってから、内閣総理大臣としてこの演壇に立たれた歴代の先輩方は、年初の施政方針演説の中で、持続可能な社会保障を実現するための改革の必要性を一貫して訴えてこられました。

 「持続可能な社会保障制度を実現するには、給付に見合った負担が必要です」「経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ段階的に消費税を含む税制抜本改革を行うため、二〇一一年度までに必要な法制上の措置を講じます」「これは、社会保障を安心なものにするためです。子や孫に負担を先送りしないためであります」

 これらは、私の言葉ではありません。三年前、当時の麻生総理がこの議場でなされた施政方針演説の中の言葉です。

 私が目指すものも、同じです。今こそ、立場を超えて、全ての国民のために、この国の未来のために、素案の協議に応じていただくことを願ってやみません。

 国民の御理解と御協力を得るために、改革の意義や具体的な内容をわかりやすく伝えていく努力も欠かせません。私と関係閣僚が先頭に立って、国民の皆様への情報発信に全力を尽くします。また、社会保障の最前線で住民と接している自治体の関係者とも密接に協力してまいります。

 大西洋の世紀からアジア太平洋の世紀へ。産業革命以来の世界の構図が変わり、世界の歴史の重心が大きく移り行く時代を私たちは生きています。歴史の変動期には、常にチャンスとリスクが交錯します。

 アジア太平洋の世紀がもたらすチャンス。それは、言うまでもなく、世界の成長センターとして、これからの世界経済の発展を牽引していくのがこの地域であるということであります。

 この地域の力強い成長を促し、膨大なインフラ需要や巨大な新中間層の購買力を取り込んでいくことは、我が国自体に豊かさと活力をもたらします。日本の再生は、豊かで安定したアジア太平洋地域なくしてあり得ません。

 アジア太平洋の世紀がはらむリスク。それは、既存の秩序が変動する過程で地域の不安定さが増し、安全保障の先行きが不透明になっていることです。

 多くの国で指導者が交代期を迎える本年、我が国を取り巻く安全保障環境は予断を許しません。また、発展途上の金融市場、環境汚染や食料、エネルギーの逼迫、日本を追いかける形で進む高齢化といったこの地域で散見される課題も、安定した成長を阻む要因です。

 こうした課題の解決に、日本の技術や知見に熱いまなざしが向けられています。課題解決先進国となるべき日本の貢献なくして、豊かで安定したアジア太平洋地域もあり得ないのです。

 我が国は、幸いにして、アジアにも太平洋にも軸足を持っている海洋国家です。これからの歴史の重心に位置するという地政学的な恵みを最大限に生かし、アジア太平洋地域が安定と繁栄を享受できるように貢献していかなければなりません。これは、世界全体にとっての課題であり、かつ、我が国の国益を実現するための最大の戦略目標です。

 私は、アジア太平洋地域の安定と繁栄を実現するため、日米同盟を基軸としつつ、幅広い国や地域が参加する枠組みも活用しながら、この地域の秩序とルールづくりに主体的な役割を果たしていくことが、我が国の外交の基本であると考えます。

 貿易・投資の自由化、エネルギー・環境制約の克服といった経済面での課題だけではなくて、テロ対策や大量破壊兵器の拡散防止、海洋航行の自由の確保、平和維持や紛争予防といった安全保障面での課題、さらには、自由と民主主義、法の支配といった共通の価値の確認など、地域で対話を深めていくべきテーマには事欠きません。我が国は、多様性あふれるアジア太平洋地域において、共通の原則や具体的なルールを率先して提案し、志を同じくする国と手を携えながら、地域の安定と繁栄に向けて戦略的に対応していきます。

 まずは、アジア太平洋自由貿易圏、いわゆるFTAAP構想の実現を主導し、高いレベルでの経済連携を通じて自由な貿易・投資のルールづくりを主導することが、こうした戦略的な対応の先駆けです。

 日韓、日豪交渉を推進し、日中韓やASEANを中心とした広域経済連携の早期交渉開始を目指すとともに、環太平洋パートナーシップ協定、いわゆるTPP協定への交渉参加に向けた関係国との協議を進めていきます。あわせて、日・EUの早期交渉開始を目指します。

 こうした取り組みを進める上で、近隣諸国との二国間関係の強化を同時並行で進めることが、我が国外交の基礎体力を高めます。既に、米中だけでなく、韓国、ロシア、インド、オーストラリアなど主要各国の首脳と個別に会談し、個人的な信頼関係を築きながら、二国間関係を進展させてまいりました。

 今後とも、北方領土問題など各国との懸案の解決を図りつつ、関係の強化に努めます。

 特に、日米同盟は、我が国の外交、安全保障の基軸にとどまらず、アジア太平洋地域、そして世界の安定と繁栄のための公共財です。二十一世紀にふさわしい同盟関係に深化、発展させていかなければなりません。

 普天間飛行場の移設問題についても、日米合意を踏まえ、引き続き、沖縄の皆様の声に真摯に耳を傾け、誠実に説明し、理解を求めながら、沖縄の負担軽減を図るために全力で取り組みます。

 また、アジア太平洋地域での安定と繁栄は、中国の建設的な役割なしには語れません。

 これまでに首脳間で幾度となく日中両国の戦略的互恵関係を深めていく方針を確認してきました。これからは、その内容をさらに充実させ、地域の安定した秩序づくりに協力を深めていく段階です。国交正常化四十周年の機を捉え、人的交流や観光促進を手始めに、さまざまなレベルでの対話や交流を通じて、互恵関係を深化させていきます。

 今後の北朝鮮の動向については、昨年末の金正日国防委員会委員長の死去を受けた情勢変化を冷静に見きわめ、関係各国と緊密に連携しつつ、情報収集を強化し、不測の事態に備えて、引き続き万全の態勢で臨みます。

 拉致問題は、我が国の主権にかかわる重大な問題であり、基本的人権の侵害という普遍的な問題です。被害者全員の一刻も早い帰国を実現するため、政府一丸となって取り組みます。

 日朝関係については、引き続き、日朝平壌宣言にのっとって、核、ミサイルを含めた諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を図るべく努力していきます。

 イランの核問題については、深刻な懸念を国際社会と共有します。平和的、外交的な解決に努力することを基本とし、原油市場や日本経済への影響などにも総合的に勘案しつつ、各国と連携して適切に対応いたします。

 また、消費者行政に万全を期すとともに、テロやサイバー攻撃、大規模自然災害、国内外の重大事件・事故など、国民の生命、身体、財産を脅かす緊急事態については、常に緊張感と万全の備えを持って危機管理対応を行います。

 我が国は、アジア太平洋地域の安定と繁栄を超えて、人類全体によりよき未来をもたらすためにも、積極的に貢献します。これは、国際社会への責任を果たすだけではなく、この国に生まれてよかったと思える、誇りある国の礎となるものです。

 先日、南スーダンでの国連平和維持活動に、自衛隊の施設部隊を送り出しました。国際社会と現地の期待に応え、アフリカの大地でインフラ整備に必死に汗を流す自衛隊員の姿は、必ずや日本人の誇りの一部となるはずです。こうした海外での貢献活動に加えて、軍縮・不拡散、気候変動などの人類の安全な未来への貢献、ODAの戦略的活用を通じた人類の豊かな未来への貢献にも努めてまいります。

 私は、大好きな日本を守りたいのです。この美しいふるさとを未来に引き継いでいきたいのです。私は、真に日本のためになることを、どこまでも粘り強く訴え続けます。

 ことしは、日本の正念場です。試練を乗り越えた先に、必ずや希望と誇りある日本の光が見えるはずです。

 この国は、今を生きる私たちだけのものではありません。未来に向かって永遠の時間を生きていく将来の世代もまた、私たちが守るべき国民です。この国を築き、守り、繁栄を導いてきた先人たちは、国の行く末に深い思いを寄せてきました。私たちは、長い長い歴史のたすきを継ぎ、次の世代へと渡していかなければなりません。

 今、私たちが日本の将来のために先送りできない課題があります。拍手喝采を受けることはないかもしれません。それでも、さきに述べた大きな改革は、必ずやり遂げなければならないのです。

 全ての国民を代表する国会議員の皆様、志を立てた初心に立ち返ろうではありませんか。困難な課題を先送りしようとする誘惑に負けてはなりません。次の選挙のことだけを考えるのではなく、次の世代のことを考え抜くのが政治家です。そして、この国難のただ中に国家のかじ取りを任された私たちは、政治改革家たる使命を果たさなければなりません。

 政治を変えましょう。苦難を乗り越えようとする国民に力を与え、この国の未来を切り開くために、今こそ、大きな政治を、決断する政治を、ともになし遂げようではありませんか。日本の将来は、私たち政治家の良心にかかっているのです。

 国民新党を初めとする各党各会派、そして国民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げ、私の施政方針演説とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 外務大臣玄葉光一郎君。

    〔国務大臣玄葉光一郎君登壇〕

国務大臣(玄葉光一郎君) 第百八十回国会の開会に当たり、外交の基本方針について所信を申し述べます。

 私は、外務大臣就任以来、我が国の国益を最大化することを目指し、着実な成果を目指す、結果重視の実のある外交を全力で進めてきました。我が国が震災からの復興に取り組んでいる最中も、国際社会では、新興国の台頭、国際的に活動する主体の多様化、情報通信技術の革命的な進歩、欧州の経済危機、アラブの春に見られる民主化の動きなど、多くの新たな事態が発生しています。加えて、ことしは、米国、中国、韓国、ロシア、フランスなどで選挙や指導者の交代が予定されています。

 国益は、安全保障、繁栄、価値の三本柱から構成されます。日本が国益を確保するには、我が国自身による安全保障面での努力はもとより、みずからが位置するアジア太平洋地域にあるリスクを最小化して、成長の機会を最大化することが重要です。そのために、この地域に民主主義的な価値に支えられた豊かで安定した秩序をつくり、その中で、昨年来の大きな命題である震災からの復興を進め、地域諸国との共生の中で日本の再生を図っていく必要があります。

 我が国の繁栄には、平和で安定した世界の構築が不可欠です。そのために内向き傾向からの脱却を進めることも重要です。

 これまでも、十四年間で半減した政府開発援助予算について反転の端緒を開くとともに、南スーダンへの自衛隊部隊の派遣による人的貢献、防衛装備品等の海外移転に関する基準の策定、環太平洋パートナーシップ交渉参加に向けた関係国との協議の開始など、さまざまな課題に正面から取り組んできました。輸入規制など風評被害への対応についても、福島県の一部において家畜の平均卸売価格が震災前の水準に戻った例もあり、今後とも粘り強く働きかけていきます。

 本年も、日本ならではの構想力を発揮して、逆転現象、すなわちピンチをチャンスに転じること、例えば、震災からの復興を日本の再生につなげていくことや、気候変動を機会として日本の技術を世界に展開することが不可欠です。私は、アジア太平洋地域にとどまらず、世界に打って出る積極的な外交を展開していきます。

 アジアでは、日本を取り巻く国際環境は著しく変化しています。

 アジア太平洋地域の成長の機会を最大化し、リスクを最小化するためには、国際法にのっとったルールを基盤とする、開放的で多層的なネットワークを地域の各国とともにつくることが重要と考えています。そのために、これらの国々との協力関係を強化することに加え、東アジア首脳会議、アジア太平洋経済協力といった枠組みを活用し、共通の課題の解決に向けて役割を果たしてきました。

 二十一世紀の国際環境の変化に対応し、アジア太平洋地域での豊かで安定した秩序づくりに資する日米同盟のあり方について、不断に検討し続けていきます。

 日米同盟は、日本の外交、安全保障の基軸であり、アジア太平洋地域と世界の安定と繁栄のための公共財です。日米両国は、さまざまなレベルで信頼関係を深めてきました。これに基づき、安全保障、経済、文化・人的交流を中心に、日米同盟を一層深化、発展させます。

 また、安全保障面においては、昨年の2プラス2の結果に基づき、幅広い分野での具体的協力を推進していきます。その際、在日米軍が我が国に必要な抑止力の確保に不可欠な役割を担っていることを踏まえ、普天間飛行場の移設を含む在日米軍再編については、沖縄の皆様の御理解を得るべく、政府として全力を挙げて取り組んでいく考えです。

 沖縄の負担軽減については、これまでも、米軍属に対する裁判権の行使に関する運用について日米合同委員会において新たな枠組みに合意するなど、努力を重ねてまいりました。引き続き、一つ一つ、目に見える成果を積み重ねていく決意です。

 アジア太平洋地域における開放的で多層的なネットワークには、中国の全面的な参加が不可欠です。

 その中国とは、ことし、国交正常化四十周年を迎え、戦略的互恵関係の一層の深化を目指します。地域のみならず、世界の安定と繁栄のために、中国が建設的役割を果たしていくことが重要です。そのためにも、幅広い分野で協力を進めることにつき両国間で一致してきており、具体的な取り組みを進めます。

 日本、米国、中国三カ国の戦略的な対話と協調が、地域の平和と安定のために、これまでになく重要な時期にあり、既に存在する日中韓、日米韓、日米豪、日米印といった枠組みに加え、昨年提唱した日米中の対話を立ち上げたいと考えています。

 韓国は、基本的価値を共有する、最も重要な隣国です。

 難しい問題が起きることもありますが、日韓両国が、未来志向の考えのもとで、大局的な見地から協力する必要があります。両国間関係をさらに重層的で強固なものとすべく、引き続き、首脳、閣僚を含む両国の人的往来や文化交流を活発化させます。

 竹島問題は、一朝一夕に解決する問題ではありませんが、言うまでもなく、韓国側に対して、受け入れられないものについては受け入れられないとしっかりと伝え、粘り強く対応していきます。

 ロシアとの関係では、アジア太平洋地域のパートナーとしてふさわしい日ロ関係を構築すべく、ウラジオストク・APECの成功に向けた協力を含め、あらゆる分野における協力の進展に向けて努力します。

 両国間の最大の懸案である北方領土問題については、先般、根室管内を訪問し、その一日も早い解決が必要との思いを改めて強くしました。近くラブロフ外相が訪日する予定ですが、ロシア政府との間で実質的な議論を行っていきたいと考えます。

 朝鮮半島情勢については、金正日国防委員長の死去を受けた新しい事態に適切に対応します。

 日米韓で連携し、安保理決議及び六者会合共同声明違反であるウラン濃縮活動の即時停止を含む、北朝鮮による具体的行動を強く求めていきます。

 日朝関係については、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を図るべく努力していきます。

 拉致問題は、我が国の国家主権と国民の生命、安全にかかわる重大な問題であり、国際社会全体にとっての重要な関心事項です。全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現するため、全力を尽くします。

 東南アジア諸国連合とは、昨年の日・ASEAN首脳会議でバリ宣言を採択しました。これを踏まえ、連結性強化や防災面等の協力を推進します。また、ことしは日・メコン首脳会議を日本で開催し、メコン地域諸国との協力を一層深化させます。

 豪州とは、安全保障分野での協力や相互依存的経済関係の強化を進めます。

 インドとは、昨年末の野田総理の訪問の成果を踏まえ、戦略的グローバルパートナーシップをさらに発展させます。

 昨年末のミャンマー訪問では、政府首脳に対し、民主化、国民和解に向けた最近の動きを評価し、政治犯の釈放を含むさらなる努力を強く求めました。また、アウン・サン・スー・チー氏とは、日本の経験を踏まえ、法の支配や民主主義、自由貿易、人間の尊厳や人間の安全保障について議論しました。そして、両者に対して、歴史的な友好関係に立脚して、一層の改革を支援していく考えを伝達しました。

 その後、ミャンマーにおいて、さらに多数の政治犯が釈放されたことを歓迎します。

 太平洋島嶼国との関係では、ことし五月に沖縄県で開催する太平洋・島サミットにおいて、さらなる関係強化を図ります。

 古来、日本は、東西の文化を柔軟に受け入れ、融合してきました。そして、調和を重んじ、相互に尊重し合うという価値を育んできました。アジア的価値に根差しながら西洋的価値を取り入れ、民主主義をアジアでいち早く導入したのも日本です。そのような日本だからこそ果たせる役割があると感じていますし、役割を果たしていきたいと考えています。

 我が国は、こうしたアジア太平洋地域におけるネットワークの形成にとどまらず、国際社会の諸課題に積極的に関与していきます。

 第一に、政治、安全保障面での貢献です。

 我が国は、平和維持、平和構築において、国連平和維持活動への協力を通じ、より積極的な役割を果たします。

 ハイチ等における取り組みに加え、日本政府は、今般、国連南スーダン共和国ミッションへの自衛隊施設部隊の派遣を開始しました。今後とも、日本の得意分野を生かして国際社会の平和と安定に向けた貢献を行い、そのための環境整備を進めていきます。

 アフガニスタンの平和構築は、国際社会として成功させるべき重要な課題です。

 先日の同国訪問の際のカルザイ大統領との会談において、私は、安定と持続可能な成長に向けた取り組みを引き続き支援することを表明するとともに、七月に東京で開催する閣僚級会合の内容について議論し、具体的な方向性について、おおむね一致を見たところであります。成果が上がるよう、さらに関係国との調整を進めます。

 アフガニスタンの安定を図る上で、パキスタンを含む周辺地域の安定も重視していきます。

 中東和平についても、直接交渉再開に向けた働きかけやパレスチナに対する支援などを通じて、引き続き貢献します。

 また、我が国にとって重要な海上航行の安全確保については、海賊対処行動に加えて、ソマリア及び周辺国の安定と海上取り締まり能力の向上などへの支援を継続します。

 国際社会の公共財である海洋に関する協力については、昨年のEASにおいて一定の成果を上げることができましたが、引き続き、アジア太平洋地域の関係国とともに、国際法と整合的な形での共通理念やルールを強化すべく、積極的に取り組みます。

 核軍縮・不拡散分野では、二〇一〇年核兵器不拡散条約運用検討会議で採択された行動計画の着実な実施を促進するとともに、日豪両国が主導してきた軍縮・不拡散イニシアチブを推し進め、核リスクの低減を通じた、核兵器のない世界の実現に向けて、国際社会の議論を主導します。

 不拡散の分野では、日本は、特に北朝鮮とイランの核問題の現状に深刻な懸念を有しています。国際社会の懸念を解消するために、イランが、問題の平和的、外交的解決のために決断し、速やかに実質的行動をとることを求めます。

 この問題の解決に当たっては、効果的な制裁及び原油価格の安定の必要性に留意をし、国際社会と連携しつつ、我が国としても能動的に役割を果たしていきます。

 原子力安全については、東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえ、事故の徹底検証から得られる知見と教訓を国際社会と共有し、国際的な原子力安全の向上に貢献していくことは、我が国が果たすべき責務と考えます。

 その一環として、ことし後半に、国際原子力機関との共催で、原子力安全に関するハイレベルの国際会議を日本で開催します。

 新しい国際秩序の構築に際しては、国連の強化は不可欠であり、我が国は、国連の組織改革と機能強化に取り組んできました。

 特に、安保理改革の実現及び日本の常任理事国入りを目指し、積極的に取り組みます。

 また、国連を初めとする国際機関の邦人職員の増強、中でも幹部職員の増強に力を入れてまいります。

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約については、昨年五月の閣議了解を受け、政府として、今国会に、条約及び国内担保法案を提出することを目指します。

 第二に、経済、社会面での貢献です。

 途上国の安定と発展や地球規模課題の解決のため、そして我が国自身の平和と発展のために、ODAは極めて有効な手段です。近年影響力を増す新興国との協力を強化し、NGOを含む民間セクターとも連携しながら、ODAを戦略的かつ効果的に活用します。

 具体的には、ミレニアム開発目標達成と、その先の国際開発目標策定、防災や平和構築などの諸課題に率先して取り組むほか、インフラ整備などを通じて、途上国の持続的な成長を後押しします。

 そして、これらの取り組みの根底にある哲学が、我が国が、構想力を発揮し、国際社会における議論を主導してきた、人間の安全保障です。

 人間の安全保障の実現が課題となっているアフリカにおいて、開発支援と貿易・投資の拡大、平和と安定への貢献、グローバルな課題への対応を三本柱とする外交を着実に展開します。また、来年、横浜で、第五回アフリカ開発会議を開催します。

 さらに、世界の持続可能な開発に向け、ことし六月開催の国連持続可能な開発会議や、年末の国連気候変動枠組み条約第十八回締約国会議での議論に貢献し、世界のグリーン経済への移行や低炭素成長実現の基盤づくりに主導的役割を担います。春には、東アジア低炭素成長パートナーシップ対話を東京で開催する予定です。

 日本の高い技術力を生かし、省エネ、創エネ、蓄エネの最先端モデルを世界に発信したいと考えます。

 化石燃料、レアメタル等のエネルギー・鉱物資源及び食料の安定供給のため、新興国を含めた資源国との多層的な協力関係強化が重要です。特に我が国は化石燃料の海外依存度が極めて高いため、資源国、輸送経路の沿岸国などとの関係強化を図り、エネルギー安全保障の実現のための努力を続けます。

 そのためには、何よりも原油の供給と価格の安定が重要であるとの考えに立ち、年始に中東諸国を訪問しました。同時に、我が国は、世界最高水準のエネルギー・環境技術をさらに強化していく必要があります。中東各国要人との会談では、この分野での各国との協力を呼びかけ、賛同を得たところであります。

 次に、海外の成長を日本の成長につなげるためには、貿易立国として、世界の需要を日本の内需として捉えることが必要です。包括的経済連携に関する基本方針に基づき、アジア太平洋自由貿易圏の実現に向けて主導的役割を果たし、より幅広い国々と、高いレベルでの経済連携を積極的かつ多角的に進めます。

 具体的には、TPPについては、交渉参加に向けた関係国との協議を通じ、関係各国が我が国に求めるものについてさらなる情報収集に努め、十分な国民的な議論を経た上で、あくまで国益の視点に立って結論を得ていく考えです。

 日中韓については、早期交渉開始を目指します。さらに、日韓、日豪交渉を推進し、日・EUの早期交渉開始を目指すとともに、ASEANプラス3やASEANプラス6といった経済連携の枠組みづくりにも積極的に貢献してまいります。

 海外市場の開拓を進めることも重要です。

 アジアを中心とした世界のインフラ需要は膨大です。高速鉄道、水、環境技術など、日本のすぐれたインフラ技術を提供し、各国の発展を支え、ともに成長するというウイン・ウインの関係を構築していきたいと考えます。その際には、国際協力機構の海外投融資を含むODAの活用も検討してまいりたいと考えます。

 第三に、日本的な価値を生かした外交の推進が重要と考えます。

 日本は、古くから、外国のさまざまな文化や技術を取り入れ、柔軟に日本流にアレンジし、日本ブランドともいうべきものをつくり上げてきました。

 最近、サウジアラビアでは、テレビで日本人の礼儀正しさなどを紹介する番組が放映されて、我が国への関心が喚起されました。その後、訪日ビザの発給件数が三倍になりました。

 私は、いわゆるクール・ジャパンを超えて、精神性を含めた多様な日本の魅力を発信し、国家戦略として日本文化を海外展開させ、日本的な価値に対する理解の増進に取り組みます。また、文化協力を通じた国際貢献の充実を図ります。特に、昨年の震災で示された日本と海外とのきずなを育むために、人と人との交流にも力を入れていきます。

 以上のような政策を効果的に実施するためには、オール・ジャパンで外交を推進することが必要です。

 その観点から、地方自治体や民間企業、NGO、市民の皆様との連携を強化します。日本企業の海外での活動を支えるためにも、海外で活躍する日本国民の生命、身体、財産を保護し、利益の増進に努めます。また、外交上不可欠な情報収集・分析能力をさらに強化します。

 外交記録の公開についても積極的に実施していきます。

 昨年、我が国は未曽有の大災害に見舞われましたが、世界は、災害を一旦受け入れた上で力強く立ち上がろうとする被災者、そして日本国民の強靱さに注目しました。

 私が二十数年愛読している「言志四録」の中で、江戸時代の儒学者の佐藤一斎は次のように説いています。逆境に遭う者はよろしく順をもってこれを処すべし、順境におる者はよろしく逆境を忘れざるべし。

 ことしは、たつ年です。日本は、苦しい今こそ内向き傾向から脱却して、竜のように立ち上がり、世界の中で課せられた使命を一層能動的に果たしていかなければなりません。

 外交は国の総力を挙げて進めていくべきものであり、議員各位におかれましては、ぜひとも超党派での御協力をお願いいたします。そして、国民の皆様の御理解、御協力を賜りたくお願い申し上げます。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 財務大臣安住淳君。

    〔国務大臣安住淳君登壇〕

国務大臣(安住淳君) 平成二十四年度予算及び平成二十三年度第四次補正予算の御審議に当たり、財政政策等の基本的な考えについて所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明申し上げます。

 未曽有の被害をもたらした東日本大震災から約十カ月がたちました。この間、政府としては、震災からの復旧復興のための補正予算を三次にわたり編成するなど、復旧復興、景気の下振れの回避に全力を挙げて取り組んでまいりました。こうした中、我が国経済は、依然として厳しい状況にあるものの、緩やかに景気が持ち直してきているところです。

 他方、欧州政府債務危機の動向等による海外経済の減速懸念、為替の動向、原子力発電所事故の影響による電力供給の制約など、さまざまなリスク要因が存在することも事実です。

 本年は、さまざまな苦難を乗り越えながら、我が国経済を確かな再生の軌道に乗せていく年としていかなければなりません。

 そのためには、引き続き、震災からの復興、福島の再生等の足元の課題に全力で取り組むとともに、少子高齢化、生産年齢人口の減少、経済のグローバル化といった環境変化に対応した経済社会の構造転換を進め、我が国の成長基盤の強化を図っていくことが不可欠です。

 規制、制度の改革等を通じた新規産業の創出、アジア太平洋地域を初めとする世界経済の成長を取り込むための高いレベルでの戦略的かつ多角的な経済連携、官民一体となったインフラ分野の海外展開といった取り組みを推進し、金融政策を行う日本銀行と緊密な情報交換、連携を保ちつつ、デフレの脱却と経済の活性化に向けて取り組んでまいります。

 また、欧州の政府債務問題を見ても明らかなように、悪化した財政を放置すれば、安定した経済成長を実現する上で、大きなリスクになりかねません。次に述べる社会保障と税の一体改革などを通じ、財政健全化に一刻も早く取り組み、経済の安定的な成長の基盤を築いていく必要があります。

 我が国の社会保障制度は、世界に誇り得る国民の共有財産として、支え合う社会の基盤となっております。将来世代にこれを引き継ぎ、かつ、子供からお年寄りまでの国民生活の安心を確保する全世代対応型の社会保障制度を築き上げていくためにも、社会保障・税一体改革により、必要な負担を分かち合う仕組みをつくっていくことが不可欠です。

 一方、社会保障を支える我が国財政に目を転ずれば、税収が歳出の半分すら賄えず、国及び地方の長期債務残高が平成二十四年度末には対GDP比一九五%に達すると見込まれるなど、主要先進国の中で最悪の水準にあります。欧州の政府債務問題を踏まえれば、財政健全化は、市場や国際社会の信認を維持し、我が国の経済や国民生活を守る上で、逃げることのできない課題です。

 政治改革、行政改革等の、みずからの襟を正す取り組みにもこれまで以上に踏み込み、国民の御理解を得ながら、消費税収について、社会保障財源化し、経済状況を好転させることを条件に、二〇一四年八月に八%、二〇一五年十月に一〇%へと税率を段階的に引き上げるなど、社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成への第一歩を踏み出していかなければなりません。

 今後、本年度内に消費税法の改正を含む税制抜本改革の関連法案を国会に提出いたします。

 続いて、平成二十四年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

 平成二十四年度予算において、引き続き東日本大震災からの復興に切れ目なく全力で対応するため、東日本大震災復興特別会計を創設し、必要な予算を計上してまいります。また、日本再生重点化措置を実施し、我が国経済社会の真の再生のために予算を重点配分しているほか、提言型政策仕分け等を予算に適切に反映し、公務部門において徹底した無駄を排除することなどにより、中期財政フレームを遵守しつつ、予算の大胆なめり張りづけを行っています。

 基礎的財政収支対象経費は六十八兆三千八百九十七億円であります。前年度当初予算に比べ、二兆四千七百二十八億円の減少となっております。

 これに国債費二十一兆九千四百四十二億円を合わせた一般会計総額は、前年度当初予算に比べ、二兆七百七十七億円減少の九十兆三千三百三十九億円としております。

 一方、歳入については、租税等の収入は四十二兆三千四百六十億円を見込んでおり、前年度当初予算に比べ、一兆四千百九十億円の増加となっております。その他収入は三兆七千四百三十九億円を見込んでおり、前年度当初予算と比べ、三兆四千四百二十七億円の減少となっております。

 国債費が増加し、税外収入が大幅に減少する中で、歳出歳入両面において最大限の努力を行った結果、新規国債発行額については四十四兆二千四百四十億円となっております。

 震災からの復興については、与野党間の協議を踏まえつつ、復興に係る国の資金の流れの透明化を図るとともに、復興債の償還を適切に管理するため、特別会計法の一部を改正し、東日本大震災復興特別会計を創設することとしております。

 同特別会計においては、歳出について、東日本大震災関係経費三兆二千五百億円、復興債費千二百五十三億円、復興予備費四千億円を計上し、歳入については、復興特別税五千三百五億円、一般会計からの受入金五千五百七億円、その他収入百十八億円、復興公債金二兆六千八百二十三億円を見込んでおります。

 これらの復興予算が円滑、迅速に執行されることは重要であり、財政当局としても、各省庁等の執行状況を注視してまいります。

 主要な経費について申し上げます。

 社会保障関係費については、高齢化等に伴って必要となる年金、医療等の経費について、重点化を図りつつ所要額を確保するとともに、恒久的な子どものための手当への移行を図っております。

 また、経済成長や人材育成、安全・安心社会の実現に資する観点から、ライフイノベーションの一体的推進や在宅医療・介護の推進、新卒大学生の現役就職支援などの施策を充実することとしております。

 基礎年金国庫負担については、歳出予算には国庫負担三六・五%分を計上し、これと、税制抜本改革により確保される財源を充てて償還される交付国債により、国庫負担二分の一を確保することとしました。

 これらの結果、前年度当初予算に比べ、約二兆三千億円の減額となっております。

 文教及び科学振興費については、被災児童生徒への対応に万全を期すほか、きめ細かく質の高い義務教育の実現、スピード感を持った大学改革の推進、大学生向け奨学金や授業料減免の充実を図っております。

 また、原子力関係の既存の予算の大幅な縮減と安全・事故対策等へのシフト、大学等を活用した被災地域経済の再生と、地震、津波への対応の実施、宇宙・海洋分野における予算の重点化、基礎研究の支援の充実などを図っております。

 地方財政については、震災対応に万全を期すほか、地方歳出について国の歳出の取り組みと基調を合わせつつ、前年度に引き続き、地方の財源不足の状況を踏まえた加算を一兆五百億円行うこととしております。

 この結果、一般会計ベースの地方交付税交付金等について、前年度当初予算に比べ千九百五億円減少し、十六兆五千九百四十億円となっておりますが、地方自治体に交付される地方交付税の総額は五年連続で増加し、地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源の総額を適切に確保するなど、引き続き、地方に最大限配慮しております。

 防衛関係費については、防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画を踏まえ、引き続き、防衛力の構造改革を行い、即応性、機動性等を重視した動的防衛力の整備を図るとともに、コスト削減への取り組みなど、経費の合理化、効率化を行っております。

 公共事業関係費については、選択と集中やコスト縮減の徹底を通じて引き続き合理化、効率化を図りつつ、真に必要な社会資本整備等に重点的に予算を配分しております。

 経済協力費については、経費の見直しを行いつつ、我が国の成長にも資する分野等への重点化を進め、ODA全体の事業量の確保を図っております。

 中小企業対策費については、中小企業の活性化を図るため、資金調達の円滑化に関する施策、海外展開支援、研究開発支援等に重点化を行うほか、最低賃金引き上げに向けた中小企業支援にも取り組むこととしております。

 エネルギー対策費については、東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえ、原子力安全対策や電力供給不足への対応等に重点化を図っております。

 農林水産関係予算については、我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画に基づき、競争力・体質強化を図り、若者が担う農業を目指し、農地の集約化、若者の新規就農を進め、六次産業化を初め、若者が魅力を感じ、安心して創意工夫を生かせる農業への改革を推進することとしております。

 治安関係予算については、安全で安心して暮らせる社会の実現に向け、災害等における警察活動基盤の整備や再犯防止に向けた取り組みなどの施策を充実することとしております。

 国家公務員の人件費は、東日本大震災の復旧復興に係る増員には適切に配慮しつつ、全省庁を挙げて厳格な定員管理に取り組むこととしており、前年度当初予算と比べ六百六十一億円の減少となる、五兆九百四十四億円となっております。

 平成二十四年度財政投融資計画については、引き続き、対象事業の重点化、効率化を図りつつ、日本再生の基本戦略等を踏まえ、東日本大震災からの復興及び日本再生、成長力強化に積極的に対応することとし、計画の規模は十七兆六千四百八十二億円となっております。

 復興債、財投債及び借換債を含めた国債発行総額については、百七十四兆二千三百十三億円と、四年連続で前年度当初に比べ増額となりました。国債残高が多額に上る中、財政規律を維持して市場の信認を確保するとともに、市場との緊密な対話に基づき、そのニーズ、動向等を踏まえた発行を行うなど、国債管理政策を適切に運営してまいります。

 平成二十四年度税制改正においては、成長戦略に資する税制措置、税制の公平性確保と課税の適正化、平成二十三年度税制改正の積み残し事項の取り扱いなど、特に喫緊の対応を要する税制改正を行うこととしております。

 具体的には、車体課税の見直し、研究開発税制の上乗せ特例の延長、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の拡充、延長、給与所得控除の上限の設定など、所要の措置を講ずることとしております。

 次に、平成二十三年度第四次補正予算の大要について申し述べます。

 まず、歳出面においては、災害対策費等の義務的経費等の追加を行っております。また、高齢者医療、子育て、福祉等関係経費や中小企業金融関係経費等のその他の経費や地方交付税交付金を計上する一方、国債費の不用など、既定経費の減額を行うこととしております。

 歳入面においては、税収及び税外収入の増加等を見込んでおります。

 これらの結果、平成二十三年度一般会計第四次補正後予算の総額は、一般会計第三次補正後予算に対し歳入歳出とも一兆一千百十八億円増加し、百七兆五千百五億円となります。

 また、特別会計予算についても所要の補正を行うこととしております。

 以上、財政政策等の基本的考え方と平成二十四年度予算及び平成二十三年度第四次補正予算の大要について御説明申し上げました。

 我が国経済社会の再生に向けた諸施策が平成二十四年度当初から直ちに実施されるためには、平成二十四年度予算を今年度内に成立させることが必要不可欠であります。関係法律案とともに、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

 さまざまな苦難を乗り越え、日本が新しい第一歩を踏み出すためにも、経済成長と財政再建の両立を図り、日本経済を再生させていかなければなりません。引き続き震災からの復興に全力を尽くすとともに、若人からお年寄りまで、全ての人が将来の明るい展望を見出せる国家を実現すべく、社会保障と税の一体改革を初めとする諸般の課題に、全身全霊をささげ、取り組んでまいります。国民各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手)

議長(横路孝弘君) 財務大臣から、発言を訂正したいとのことであります。これを許します。財務大臣安住淳君。

    〔国務大臣安住淳君登壇〕

国務大臣(安住淳君) 失礼しました。

 私、二〇一四年四月に八%のところを、二〇一四年八月に八%と読み間違えました。おわびをして、訂正いたします。

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 国務大臣古川元久君。

    〔国務大臣古川元久君登壇〕

国務大臣(古川元久君) 経済財政政策を担当する内閣府特命担当大臣として、その所信を申し上げます。

 東日本大震災と原発事故から十カ月余りがたちました。改めて、この震災で亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

 この間に被災地の方々が復旧復興に注いできた御努力と、それを支えてきた国民の皆様の折れない心ときずなの強さには、国民の一人として深い感動を禁じ得ません。日本再生に向けて被災地の復旧復興を強力に推進するとともに、新成長戦略の実行を加速し、日本経済を再び力強い成長軌道に乗せていくという、経済財政政策を担当する大臣として、私に課された重い責務に全力で取り組んでまいります。

 私は、日本経済が直面する諸課題を克服するためには、社会のあらゆる場面でイノベーションを実現し、成長力を高めることが必要不可欠だと考えます。かつて、ソニーの井深大氏が、企業にとって重要なのは発明より革新なのだと語ったように、イノベーションは、単なる新製品、新技術の開発にとどまらず、これまでの延長線上や従来の枠にとらわれない、自由で新しい発想や創意工夫により、非連続な発展を実現することです。

 こうしたイノベーションは、しばしば、異なる考え方や文化が出会い、融合し、あるいは相克するプロセスの中で生まれてきます。例えば、我が国が主要な貿易相手国と高いレベルの経済連携を強力に推進して人や物や資金の交流を強化することは、イノベーションを喚起することにもつながります。

 また、南北に細長い国土の多様性と、各地で活躍する中小企業の厚みは、日本の強みであり、そこにイノベーションの種が潜んでいます。こうした種を育て、イノベーションという形で開花させるため、例えば、五年間法人税を無税とする復興特区や、地域を区切って思い切った規制緩和を行う総合特区の創設などの取り組みを行ってまいりました。

 今後とも、こうした特区制度などを最大限活用し、地域の創意工夫を促し、創業や起業、そして事業の再生、再編などを通じて、地域におけるイノベーションの実現を目指してまいります。

 特に私がイノベーションを実現する主役として期待しているのが、若い世代の人たちです。

 私たちの先人は、奇跡と言われた戦後復興をなし遂げました。それは、イノベーションに次ぐイノベーションの結果であったと言っても過言ではありません。若い世代の皆さんには、先輩たちに負けないチャレンジ精神を発揮して、イノベーションを実現してもらいたいと思います。

 私は、人材育成や創業、起業への支援、また、失敗してもやり直すことのできる環境の整備により、若い皆さんの自由で柔軟な発想を生かした新たなチャレンジを強力に後押ししてまいります。

 近江商人の三方よしの精神や、渋沢栄一の「論語と算盤」という考え方が、我が国の企業に高い倫理性を持たせ、社会との共存を前提とし、持続的成長を可能とする企業文化を根づかせてきました。シュンペーターの言う創造的破壊だけがイノベーションではありません。私は、こうした先人に学び、日本のよさを生かした発展的創造としてのイノベーションを実現していきたいと考えています。

 こうした基本姿勢のもと、以下、当面の経済財政運営、中長期の経済成長と財政健全化への取り組み、そして、新しい成長に向けた取り組みの三つに分けて、今後の重点課題を申し述べます。

 まず、当面の経済財政運営としては、日本経済の再生に向けて、円高への対応を含めた景気の下振れ回避、デフレからの脱却に全力で取り組んでまいります。

 我が国の景気は、大震災の影響により依然として厳しい状況にあるものの、緩やかに持ち直しています。しかし、欧州政府債務危機を主因とする金融市場の動揺など、我が国経済を取り巻く環境は予断を許しません。警戒感を持って、しっかりと注視し、対応していくことが必要です。

 そこで、政府は、大震災からの復興に全力を尽くすとともに、欧州政府債務危機等による景気の先行きリスクを踏まえ、円高への総合的対応策及び平成二十三年度第三次、第四次補正予算の迅速かつ着実な実行等により、景気の下振れ回避に万全を期します。同時に、平成二十四年度予算の執行等を通じて日本経済の再生に取り組み、中長期的に持続的な経済成長につなげてまいります。

 また、デフレ脱却に断固として取り組み、全力を挙げて円高とデフレの悪循環を防いでまいります。

 政府と日本銀行は、一体となって、速やかに安定的な物価上昇を実現することを目指して取り組んでいくことが極めて重要との認識で一致しています。日本銀行に対しては、政府とのさらなる緊密な情報交換、連携のもと、適切かつ果断な金融政策運営を期待します。

 これらを踏まえ、本日閣議決定した政府経済見通しでは、我が国経済は、当面、復興施策の推進によって需要の発現と雇用の創出が見込まれることから、平成二十四年度の国内総生産の実質成長率を二・二%程度、名目成長率を二・〇%程度と見込んでおります。

 中長期的には、日本再生のため、経済成長と財政健全化を両立させる経済財政運営を実現し、経済の土台を立て直さなければなりません。

 当面、復興需要が見込まれる中で、今後、民需主導の持続的な経済成長への円滑な移行を図り、イノベーションを中核としつつ、新たな国際分業、人材育成、若者や女性、高齢者等の就労促進などを進めて、二〇一一年度から二〇二〇年度までの平均で、名目成長率三%程度、実質成長率二%程度を政策努力の目標として取り組んでまいります。

 また、現下の欧州政府債務危機を踏まえれば、財政健全化の取り組みは待ったなしです。

 このため、社会保障と税の一体改革については、年初に取りまとめた社会保障・税一体改革素案に基づき、着実に取り組んでまいります。

 本日、こうした政策運営のもとで経済や財政が中長期的にどのような姿となっていくかを展望し、政策方針を検証するため、中長期の経済や財政の姿を示す試算を公表しました。今後、いわゆる官庁エコノミストなどの人材育成を進めるとともに、政策の客観性、透明性を高める多様な分析や試算を公表するなど、政策立案のイノベーションも進めてまいります。

 このような取り組みを通じて、車の両輪である経済成長と財政健全化を同時に推進し、両立を実現してまいります。

 社会保障・税一体改革素案で示した道筋に沿って財政健全化を着実に進めるためにも、これから二年間は、日本経済の再生に専念し、成長力を強化しなければなりません。

 私は、昨年十二月に閣議決定した日本再生の基本戦略で提示した、経済連携の推進と世界の成長力の取り込みなどによるさらなる成長力強化、分厚い中間層の復活、世界における日本のプレゼンス強化などに、イノベーションを軸にして、全力で取り組んでまいります。

 また、エネルギーの安定供給は、日本経済再生の前提条件であると同時に、将来のエネルギー供給のあり方を見据えたものである必要があります。

 原発への依存度を中期的に下げていく中で、イノベーションの実現によって、温暖化対策にもつながる再生可能エネルギーや、蓄電池等の普及・促進による省エネ、創エネ、蓄エネの推進に全力で取り組みます。

 このような考え方のもと、日本再生の基本戦略の具体化等を進め、本年半ばごろを目途に、日本再生戦略を策定してまいります。また、希望と誇りのある日本を取り戻すため、切り開いていくべき新たなフロンティアを提示し、我が国が中長期的に目指すべき方向性を、野田内閣の国家ビジョンとして取りまとめてまいります。

 これまで、我が国は、何度も国難というべき状況に直面し、そのたびにそれを克服してきました。我々日本人の精神構造は柔構造です。しなっても、折れることなくもとに戻る。そして、もとに戻ったときには、苦難を経験した分、以前よりさらに強くなっているのです。まさに今、私たちは、日本という国の底力を世界に示す好機にあると言えるのではないでしょうか。

 しかし、そのためには、自分たちのこと以上に、次世代のことを考える姿勢が必要だと思います。

 終戦連絡中央事務局次長としてGHQとの折衝に当たった白洲次郎氏は、国民に呼びかける形で次のように書き残しています。「恐らく吾々の余生の間には、大した好い日も見ずに終るだろう。それ程事態は深刻で、前途は荊の道である。然し吾々が招いたこの失敗を、何分の一でも取りかえして吾々の子供、吾々の孫に引継ぐべき責任と義務を私は感じる」。

 白洲次郎氏のこの言葉に象徴されるような思いを当時の日本人は共有していたからこそ、戦後復興はなし遂げられたのです。

 かつて、アメリカのケネディ大統領は、大統領就任演説で、国家があなたのために何をしてくれるのかではなく、あなたが国家のために何ができるのかを問おうではないかと国民に語りかけました。私は、今、国民の皆様に、自分のために何ができるかではなく、次世代のために何ができるかを問おうではないかと訴えかけたいと思います。

 私自身、次世代の人たちが、日本で生まれたこと、そして日本人であることに誇りと自信を持つことができる社会をつくるため、日本経済再生へ向けて、全力でみずからに課された職責に邁進することをお誓い申し上げて、私の所信の表明とさせていただきます。(拍手)

     ――――◇―――――

太田和美君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来る二十六日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。

議長(横路孝弘君) 太田和美さんの動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  野田 佳彦君

       総務大臣    川端 達夫君

       法務大臣    小川 敏夫君

       外務大臣    玄葉光一郎君

       財務大臣    安住  淳君

       文部科学大臣  平野 博文君

       厚生労働大臣  小宮山洋子君

       農林水産大臣  鹿野 道彦君

       経済産業大臣  枝野 幸男君

       国土交通大臣  前田 武志君

       環境大臣    細野 豪志君

       防衛大臣    田中 直紀君

       国務大臣    岡田 克也君

       国務大臣    自見庄三郎君

       国務大臣    平野 達男君

       国務大臣    藤村  修君

       国務大臣    古川 元久君

       国務大臣    松原  仁君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.