衆議院

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第19号 平成24年5月10日(木曜日)

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平成二十四年五月十日(木曜日)

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  平成二十四年五月十日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 子ども・子育て支援法案(内閣提出)、総合こども園法案(内閣提出)及び子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

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 子ども・子育て支援法案(内閣提出)、総合こども園法案(内閣提出)及び子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案及び子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣小宮山洋子さん。

    〔国務大臣小宮山洋子君登壇〕

国務大臣(小宮山洋子君) 子ども・子育て支援法案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、その趣旨を説明いたします。

 子供は、社会の希望、未来をつくる力であり、安心して子供を産み育てることのできる社会の実現は、社会全体で取り組まなければならない最重要の課題の一つです。

 現在、子供や子育てをめぐる環境の現実は厳しく、核家族化や地域のつながりの希薄化によって、子育てに不安や孤立感を感じる家庭は少なくありません。また、多くの待機児童が生じている地域もあることや、本格的な人口減少社会が到来したことからも、国や地域を挙げて子ども・子育てへの支援を強化していかなければなりません。

 全ての子供に良質な生育環境を保障し、子ども・子育て家庭を社会全体で支援するため、幼保一体化を含め、子ども・子育て支援関連の制度、財源を一元化して新しい仕組みを構築し、質の高い学校教育、保育の一体的な提供、保育の量的拡大、家庭での養育支援の充実を図ることが求められています。

 子ども・子育て支援法案は、こうした状況に基づいて、現在の子ども・子育て支援対策を再編成し、市町村が制度を実施し、国と都道府県が重層的に支える一元的な制度を構築するために提出しました。

 この法律案の主な内容は、次のとおりです。

 第一に、市町村は、子ども・子育て支援給付と地域子ども・子育て支援事業を総合的かつ計画的に行うことにし、国と都道府県は、給付と事業が適正かつ円滑に行われるよう必要な各般の措置を講じなければならないことにしています。

 第二に、子ども・子育て支援給付は、子供のための現金給付と子供のための教育・保育給付とします。

 子供のための現金給付は児童手当の支給とし、子供のための教育・保育給付は、こども園給付費、地域型保育給付費等の支給とします。

 給付を受けようとする保護者は、市町村に対し、支給認定を申請し、その認定を受けることにしています。

 第三に、内閣総理大臣は、子ども・子育て支援のための施策を総合的に推進するための基本指針を定めることにし、市町村と都道府県は、国の定める基本指針に即して教育、保育の提供体制の確保等に関する計画を定めることにしています。

 第四に、子供のための教育・保育給付と地域子ども・子育て支援事業に要する費用は、市町村が支弁することを基本とし、国と都道府県は、交付金の交付等の措置を講ずることにしています。

 第五に、内閣府に、この法律の施行に関する重要事項を調査審議するため、子ども・子育て会議を置くことにしています。

 また、市町村と都道府県は、子ども・子育て支援に関する施策の実施状況を調査審議する等のため、審議会その他の合議制の機関を置くことができることにしています。

 以上が、子ども・子育て支援法案の趣旨です。

 次に、総合こども園法案について、その趣旨を説明いたします。

 この法律案は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う上で幼児期の教育と保育が重要であることから、小学校就学前の子供に対する教育と保育を一体的に行うとともに、保護者に対する子育て支援を行うことを目的とする総合こども園の設置と運営に関し必要な事項を定めることにより、小学校就学前の子供に対する教育と保育、保護者に対する子育ての支援の総合的な提供を図るために提出しました。

 この法律案の主な内容は、次のとおりです。

 第一に、総合こども園では、学校としての教育と児童福祉施設としての保育、保護者に対する子育て支援事業の相互の有機的な連携を図りつつ、教育と保育を行うことにしています。

 第二に、総合こども園は、国、地方公共団体、学校法人と社会福祉法人のほか、公共性等を担保するための一定の要件に適合する法人が設置できることその他の総合こども園の設置と運営等に関して必要な事項を定めることにしています。

 以上が、総合こども園法案の趣旨です。

 最後に、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、その趣旨を説明いたします。

 この法律案は、子ども・子育て支援法と総合こども園法の施行に伴い、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律を廃止するほか、児童福祉法など五十六の関係法律について規定の整備等を行うとともに、所要の経過措置を定めるために提出しました。

 以上、三つの法案の趣旨について説明いたしました。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。(拍手)

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 子ども・子育て支援法案(内閣提出)、総合こども園法案(内閣提出)及び子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。泉健太君。

    〔泉健太君登壇〕

泉健太君 民主党の泉健太です。

 民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました子ども・子育て三法案について質問いたします。(拍手)

 この子ども・子育て三法案は、各界当事者の意見と英知の結晶であります。

 今日まで、政府には、二年にわたりワーキングチームが設置され、全国組織の幼稚園団体、保育三団体を初め多くの専門家と子育て関係者の皆様が一堂に会し、子育て環境の改善を、全ての子供に質の高い教育、保育をとの思い一つに議論を続けてこられました。

 当然ながら、現在の子育て環境とその抱えている課題について、認識や進むべき方向性は共有されてきました。この議場におられる多くの各党の議員の皆様も、現状の認識は一緒だと思うのです。

 また、これまで、日本の子育て支援は、時代の変化、社会の変化、そして国民意識の変化に対応し切れてこなかった、このことも皆様一緒ではないでしょうか。

 例えば、今回、社会保障と税の一体改革の中に子ども・子育て政策が位置づけられ、従来の整備予算に加え、新たに七千億円の財源確保が予定されています。このことは、長年の各党の努力によるものであって、子ども・子育て関係者が一様に喜んでいる画期的なことであります。

 まず、総理、社会保障に子育て支援を位置づけた意味、そして財源確保への決意、また、法案成立に向けた総理の決意をお聞かせください。

 現在、平成二十二年に閣議決定された子ども・子育てビジョンに基づき、保育所を大幅に増設しています。昨年だけで保育所は三百カ所以上ふえ、過去最高の二万三千三百八十五カ所にふえていますが、今回の新制度では、認可施設の整備を加速させつつも、それだけにとらわれず、地域の事情に柔軟かつ機動的に対応できるよう、株式会社など多様な主体に、一定の条件のもとで参入を認めることとしています。

 実は、これは、自公政権時代の二〇〇八年、社会保障国民会議最終報告の「民間活力を活用する観点からの多様な提供主体の参入」という記述が下地となっており、また、公明党が二〇一〇年発表した新しい福祉社会ビジョンの中での「効率的な経営で良質なサービスを提供するNPOや株式会社などの参入を進める」、この記述とも方向性を一にしているものです。

 現状認識が同じであれば、実は、対策の方向性もそう変わるものではありません。ぜひとも、当事者の目で御議論をいただいた各界の皆様の御努力が成果物となるように、どうか各党の皆様に御理解いただき、本三法案の成立を願うものであります。

 小宮山大臣、与野党を超えた方向性であることを御理解いただきつつ、多様な主体の参入には、過当競争、そして質の低下、あるいは撤退などの懸念の声もあります。これらにどんな対策を講じるのか、お答えください。

 ちなみに、この多様な主体の参入、都市部以外の地域からは、全国で株式会社などが参入して地域保育が崩壊するのではないかとの懸念も聞こえます。私は、全国約千四百の待機児童のいない自治体では新規事業者のやみくもな参入が認められないようになっているというふうに理解していますが、小宮山大臣、いかがでしょうか。

 次に、待機児童問題です。

 先ほどの保育所増設の大半は待機児童の多い都市部の新規立地、そして、それには自治体も国も事業者も今精いっぱい頑張って努力を続けておりますが、待機児童の数は微減という状況です。

 共働きの一般化、そして、都市への人口集中による待機児童増に対して保育所増設が追いつかない、これが現状です。もっと予算を確保して都市部に保育所をつくれと、誰もが考えつくような主張を続ける専門家もいますけれども、待機児童問題は、もはや、そんな簡単な問題ではありません。

 人と建物が集中する都市部においては、地価も高く、適地も少なく、新規立地そのものが難しい。また、適地を見つけ、予算を投じ、ようやく建設した自治体にはさらに子育て世帯が集中をする、その自治体の待機児童が一向に減らないという逃げ水現象が起こっているため、自治体もかなり苦慮しているというのが現状であります。

 そこで、新しい制度では、基準を満たす全国の小規模保育、家庭的保育などを地域型保育事業に位置づけ、公的保育の枠組みに追加をしました。

 総理、実は、身近なところでいえば、議員会館の中の保育所も都の認証保育です。国費は入っていません。私は、可能な限り、認可外や自治体独自の認証保育、そして事業所内保育所などについて、国の支援で質と量の底上げを図るべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 皆さん、女性の就労が日本の成長を支えるという時代、潜在ニーズも視野に入れた計画をつくって、男女ともに結婚、出産と仕事を両立できる国にして、若者の晩婚化そして晩産化、少子化傾向に歯どめをかけようではありませんか。

 次に、市町村の役割について伺います。

 新制度への懸念の声には、児童福祉法二十四条の義務が弱まる、けしからぬというのがあります。しかし、これは解釈の誤りです。新制度では、保育の確保の措置、そして情報提供、権利保障、利用支援、支援を要する子供への措置などを講じなければならないとされています。

 総理、直接契約制度においても、市町村は、現行どおり、子育て拠点の紹介やあっせん、そして、待機児童がある場合の利用調整、また、障害児などの入所措置、これを行いますね。

 これまでの児童福祉法二十四条でも我が国には残念なことに多くの待機児童が存在をしてきたのであって、建前ばかりを振りかざして新制度を批判するより、もっと現実に目を向けて、現状を改善していくことの方が大事なのです。新制度は、市町村がニーズ調査と計画策定を行うことで、保育需要を把握して、さらに保育の提供を促進しようとしているのです。

 保育料の直接徴収については、未納に対する対応や、所得、家庭環境による入園の選別の懸念が聞こえます。既に導入されている幼稚園や都の認証保育では直接徴収や契約トラブルの報告は少ないようですが、この点について、小宮山大臣、お答えください。

 続いて、幼保一体化施設としての総合こども園について伺います。

 従来の保育所が、総合こども園に移行し、教育施設としても明確に位置づけられることは、大きな前進です。

 今回、幼稚園は、ゼロ―二歳保育の全面義務化は制度移行への負担が大きいとのことに配慮して、総合こども園移行を義務化せず、インセンティブで移行を促すとしました。もちろん、従来の認定こども園については、総合こども園への円滑な移行を予定しています。

 幼保一体化は世界の潮流です。幼稚園団体、保育園団体も、これまでも幼保一体化の研究を続けてきていて、その基本的な方向性は一致していますが、幼保一体化は戦前からの歴史的懸案事項であるために、二年にわたるぎりぎりの協議の中で、ワーキングチームのさまざまな当事者の合意として、今回、総合こども園に到達したのです。これは画期的な進展であって、私は強く尊重するべきことだと思います。

 専門家の中には、待機児童対策なら、全部の幼稚園にゼロ―二歳保育を義務化すべきだという声もあります。しかし、この協議の経過を御理解いただければ、きっと現段階での最善の策であるということを御認識いただけると思うのです。

 小宮山大臣、この点、どのように議論されたのか、お答えください。

 質のよい教育と保育を全ての子供に、母親の就労の有無によって園を移らなくてもよい制度を、小学校への全ての子供の円滑な接続を、それらのためにも、幼保一体化の推進は非常に重要なのです。

 今、幼稚園受難の時代です。午後の預かり保育にも懸命に取り組んでいても、認可保育所は満員なのに幼稚園は定員割れ、全国で起こっている現象です。園児数は最盛期の三分の二、地方の園は次々閉園し、今、年百園ペースで減少しています。全国二割の自治体では、幼稚園そのものがもうありません。

 保育所が長蛇の列の中で、日本の幼児教育に接する親子が減り続けている。この現実に目を向けましょう。教育課程はもちろん、教諭の待遇、そしてPTA組織など、幼児教育の長所は数多くあるんです。相互の長所を取り入れた総合こども園への移行によって、教育、保育、さらには親学も含めて、これまで以上に多くの親子に提供し、広げていこうではありませんか。

 さて、小宮山大臣、関心の高い、新たな教諭資格とはどのようなものになるのか、お答えください。

 そして、平野大臣にお伺いします。

 総合こども園は福祉施設と教育施設の位置づけを持つとされていますが、そのことは、今後、小中高大などの学校への株式会社参入につながっていくのか。私はそうではないと理解をしていますが、明快な答弁をお願いいたします。

 現在の認定こども園、設置件数は、当初目標の半分以下、九百十一カ所にとどまっております。総合こども園への移行にも、さまざまな経費負担、そして事務負担、保護者への説明が伴うでしょう。やはり、確実かつ具体的にインセンティブをつけなければ、移行は進みません。

 総理、総合こども園制度発足への思いとともに、どのようなインセンティブを考えているのか、あわせてお答えください。

 最後に、二つ伺います。

 一つは、放課後児童クラブ制度の充実です。小一の壁のみならず、小四の壁の解消を望む声、そして質的基準の設定を求める全国の声、これは、各党や超党派の議連からも訴えてまいりました。それにどう応えようとしているのか。

 そして、もう一つは、新たに国に設置される、各界の代表者がこの制度のPDCAサイクルを担う子ども・子育て会議。この会議体にはどんな権限が付与されるのか。

 この二つ、小宮山大臣、お答えください。

 以上、さまざまな点について質問いたしました。この議場に集う私たちは、常に、子供や、子育てをする人の目線に立って、子供を安心して産み育てられる社会の実現のために政策を進めてきました。当然ながら、これまでの政策は民主党だけが進めてきたのではありません。さまざまな制度の充実や改革の提言は、歴代政権の曲折と労苦の中で積み重ねられてきたものであって、この子ども・子育て三法案もその流れにあるものです。

 日本の成長を支えるには少子化の克服が急務です。私は、そのためには、今を生きる国民の結婚、出産と育児を支援する、これが何より大事だと思っています。少なくとも私らのころは手当や施設がなくてもちゃんと育てた、これは確かにそうですが、その過去の経験、過去の家族像、過去の地域像あるいは精神論を今の若い世代にただ求めても、これは何の解決にもなりません。

 子供を産み育てたいという今の国民の願いを支える仕組みを具体的かつ迅速に政策にして推進することが今ほど必要とされているときはないと思います。ぜひ、皆さん、反対、賛成という二元対立を超えて、すぐに賛成、反対と言わずに、じっくりじっくりと協議をして、各党の皆様の御議論を通じる中で、この法案のよい形での成立というものを心から願っております。私は、一国民として、そして子育て中の父親としても、強くそれを願うのです。日本の子育て支援を皆さんと一層前に進めようではありませんか。

 以上、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 民主党泉健太議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まず最初に、社会保障に子育て支援を位置づけた意味、財源確保、法案成立に向けた決意についてのお尋ねがございました。

 一体改革では、未来への投資を強化することにより全世代対応型の社会保障制度の実現を目指すこととしており、子ども・子育て支援に消費税財源を向けることは、人生前半の社会保障を強化する意味があると考えます。

 子ども・子育て新システムには、税制抜本改革による財源により〇・七兆円程度を確保することとしており、今後、さまざまな政策の見直しを行う中で、さらなる財源確保ができないか検討を行うこととしていますが、政府として、財源確保のため、最大限努力を行っていきたいと考えております。

 新システムの制度設計については、一昨年六月に子ども・子育て新システムの基本制度案要綱を策定した後、関係者が広く参画するワーキングチームを、約一年半、三十五回にわたって開催し、丁寧に議論を重ねた成果として取りまとめた、まさに、議員御指摘のとおり、英知の結晶と呼べるものであります。法案について国会での精力的な議論をお願いし、本法案の一刻も早い成立に全力を尽くす所存でございます。

 続いて、認可外保育所などについて、質と量の底上げを図るべきとの御質問をいただきました。

 新システムでは、自治体独自の認証保育所などの認可外保育施設も、客観的な指定基準を満たすことで国による財政支援を受けることができるようになります。また、小規模な保育や家庭的保育、居宅訪問型保育、事業所内保育については、従来、国の恒久的な財政保障の対象となっておりませんでしたが、今回、新たに地域型保育事業という仕組みを設け、基準を満たすことで国による財政支援を受けることができるようにしました。

 こうした基準は、現在の基準を基礎に、今後策定してまいります。保育の質を確保することを前提に、可能な限り多くの施設が指定基準を満たすことができるよう、国としても支援をし、保育需要に応えてまいります。

 次に、新システムにおける市町村による利用支援についてのお尋ねがございました。

 新システムでは、市町村は、管内の施設や事業者の情報を整理し、子育て家庭に広く情報提供し、相談に対応することにしています。

 その上で、待機児童が発生している場合には、保護者からの利用希望を受けて、市町村が利用可能な施設や事業者をあっせんするなどの利用調整を行うことにしています。

 また、特別な支援が必要な障害を持つ子供など、必要な場合には、市町村が、施設や事業者のあっせんに加えて、施設等に受け入れていただくよう要請することにしています。

 さらに、施設や事業者に対しては、応諾義務を課して、正当な理由なく入所を拒否することができない仕組みにしています。

 こうした仕組みにより、市町村が確実に利用者を支援し保育の保障などに関する中心的な役割を果たし、すき間のない公的保育が提供されていくことになります。

 次に、総合こども園についてのお尋ねがございました。

 総合こども園は、人格形成の基礎を培う上で幼児期の教育及び保育が重要であることを踏まえ、これらを一体的に提供する施設として新たに創設するものであります。

 法案では、保育所は原則として全て総合こども園に移行します。一方、幼稚園については、待機児童の状況が地域によってさまざまであるため、移行するかどうかは各市町村や各園で判断していただくことになります。その際、調理室の設置支援、ゼロ歳から二歳児の保育に関する経費を見込んだこども園給付の単価設定などのインセンティブを設け、円滑な移行を促進していく考えであります。

 総合こども園により、質の高い幼児期の学校教育、保育の一体提供を図ってまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣小宮山洋子君登壇〕

国務大臣(小宮山洋子君) 泉議員から、七問、質問いただきました。

 まず、多様な事業主体の参入についてですが、新システムでは、多様な事業主体の参入に当たり、質の確保のための客観的基準を満たすことを求めています。また、参入後も、市町村が報告徴収、立入検査等の指導監督を行い、質の確保された事業運営を確保します。また、保護者が子供にとって最善の選択を行えるよう、情報開示を義務づけます。

 こども園給付の給付額は、公定価格によって定めます。保護者負担の額も、各市町村が定めることが基本なので、価格競争による質の低下は発生しない仕組みになっています。

 施設等が撤退する際には、三カ月以上前に予告しなければなりません。また、既に利用している子供がほかの施設等で継続的に利用できるよう、施設、事業者は調整しなければならないことにしています。

 こうした取り組みを通じて、質の確保された学校教育、保育が確実に提供される仕組みにしています。

 待機児童のいない地域での新規事業者の参入についてですが、新システムでは、保育の需要がある地域で機動的に質の確保された保育の量的拡充を図るため、全ての市町村が子ども・子育て支援事業計画を策定し、地域の保育需要に応えられるよう計画的な整備に取り組むこと、指定制度を導入して、多様な主体が参入できる仕組みにすることにしています。

 その際、市町村は、事業計画での需要見込み量を超えた供給となる場合には、こども園の新規指定を行わないことができることにしています。そのため、地域の需要を超えてやみくもに新規事業者が参入するような事態は生じないと考えています。

 保育料の直接徴収についてですが、新システムでは、利用者と事業者が契約を結び保育の提供を受ける仕組みになり、利用者が事業者に対して利用者負担を支払うことになります。利用者負担額は、応能負担を基本として、滞納が発生しにくい仕組みにしていますが、それでも滞納が発生した場合、保育の提供体制に悪影響を及ぼす可能性があります。

 そのため、新システムでは、保育料の滞納が発生した場合、安定的な制度運営に悪影響が生じないよう、市町村が施設や事業者にかわって保育料を確実に徴収する仕組みを創設しています。

 さらに、施設や事業者に対しては、応諾義務を課して、正当な理由なく入所を拒否することができない仕組みにしています。

 このように、新システムでは、御懸念のような事態が生じない仕組みにしてあります。

 待機児童対策のため、幼稚園にゼロ歳から二歳の保育を義務化すべきとの声に関する議論についてですが、子ども・子育て新システムでの幼保一体化については、おととしの六月に子ども・子育て新システムの基本制度案要綱を策定した後、関係者が広く参画するワーキングチームを開催し、およそ一年半、丁寧に議論を重ね、そのあり方を取りまとめました。

 新システムの幼保一体化では、こども園給付の創設を初めとする給付の一体化に加え、施設の一体化として、法律上の学校と児童福祉施設の両方の性格をあわせ持つ総合こども園を創設し、質の高い幼児期の学校教育、保育の一体的提供を図ることにしています。これに基づき、満三歳以上の幼児を対象とする保育所については、一定期間後、全て総合こども園に移行させます。また、幼稚園についても、総合こども園への移行を政策的に誘導することにしています。

 御指摘のような声があることは認識しています。待機児童の状況や学校教育、保育に対するニーズは地域によってさまざまであることから、幼稚園にゼロから二歳児の保育を一律に義務づけることはしません。先行して幼稚園を活用した待機児童対策を行っている市町村の取り組みなどを参考にして、市町村が計画を立て、総合こども園、幼稚園、保育所、新たに創設する多様で柔軟な地域型保育事業等を組み合わせて、学校教育、保育の提供体制を整備し、給付、事業を計画的に実施できる仕組みにすることにしています。

 総合こども園の新たな教諭資格についてですが、総合こども園は、質の高い幼児期の学校教育を全ての子供に保障するため、幼児期の学校教育、保育を一体的に提供する施設として創設するものです。

 総合こども園には、園児の教育、保育を行う中心的な職員として、保育教諭を置きます。保育教諭は、幼稚園教諭の普通免許状と保育士資格をあわせ持つことを原則にしています。これにより、幼保それぞれの長所を生かした質の高い教育、保育が実現できると考えています。

 なお、現在、片方の免許、資格だけを持つ人が引き続き保育教諭として勤務できる五年間の経過措置や、両資格をあわせ持つことを促進する取り組み等により、新制度が円滑に実施できるよう配慮していきます。

 放課後児童クラブの制度の充実についてですが、児童福祉法上、四年生以上も含む全ての小学生が対象となることを明確にするとともに、一定の質を確保するため、職員の資格や員数などの基準について、国が定める基準により、市町村が定める仕組みにします。

 また、子ども・子育て支援法に基づき、市町村が地域のニーズを把握して策定する市町村子ども・子育て支援事業計画に従って事業を実施する仕組みにすることにより、現行制度よりも、質、量ともに改善を図っていきます。

 子ども・子育て会議についてですが、子ども・子育て会議は、子ども・子育て支援に係る給付、事業を子供や保護者のニーズに即したものとするため、子供の保護者、地方自治体、事業主、労働者、子育て支援従事者、学識経験者等の多様なステークホルダーが子育て支援の政策プロセスに参画、関与できる仕組みとして設置するものです。

 子ども・子育て会議は、国の基本指針や、給付費の水準、指定こども園や指定地域型保育事業等に関する国の基準の調査審議と答申などを行うことを法律で規定しています。

 また、子ども・子育て支援法に基づく施策の実施状況を調査審議し、必要があると認めるときは内閣総理大臣その他の関係各大臣に意見を述べる権限があり、給付、事業が真に子育て支援として効果的で効率的に行われているかどうかや、事業主等が拠出する財源がきちんと使われているかどうか等について点検、評価を行っていくことにしています。

 このような役割、権限を持つ子ども・子育て会議を活用することにより、子供や保護者のニーズを的確に施策に反映していきます。(拍手)

    〔国務大臣平野博文君登壇〕

国務大臣(平野博文君) 泉健太議員から、株式会社の学校への参入の懸念についてのお尋ねがございました。

 総合こども園につきましては、現在、株式会社の参入が認められている保育所が原則として全て総合こども園に移行する、こういうことになっております。また、待機児童の解消のための量的拡大という強い社会的要請を踏まえ、一定の要件を満たした株式会社の参入を認めることとしておりますが、これは、児童福祉施設としての性格に基づくものでございます。

 したがいまして、この取り扱いにつきましては、総合こども園固有の極めて特殊な要請によるものであり、総合こども園に株式会社が参入することが、学校教育法を設置根拠としている幼稚園から大学までの他の学校種に波及することはございません。

 以上でございます。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 野田聖子さん。

    〔野田聖子君登壇〕

野田聖子君 自由民主党の野田聖子です。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、子ども・子育て関連三法案につきまして質問いたします。(拍手)

 それに先立ち、民主党は、小沢元代表の党員資格の停止を解除いたしました。総理は、民主党の代表として、まさか当然とお考えではありませんね。どういう判断でなされたのか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

 さて、本題に戻ります。

 私は、平成五年の総選挙で初当選し、ことしで国会議員として二十年目を迎えようとしております。そして、本日、初めて衆議院本会議場において代表質問の機会を頂戴しました。

 そもそも、国会議員を志した理由の一つは、少子化対策の取り組みでした。私は、初当選のとき、女性議員の大先輩である森山真弓先生から、次のようなお話をお聞きしました。それは、戦後の日本の大目標は、この国を少子高齢化することだったということです。つまり、当時は、平均寿命は現在より短く、子供たちはベビーブームで多くなり過ぎたことから、安定した国家運営のために、少子高齢化を目標としたのであります。

 その結果は、現在、世界に冠たる長寿国になったこと、世界に類を見ないスピードで少子化が進んでいることから、大成功であったと言えるでしょう。

 しかし、急激な変化により、生産労働人口の減少に伴う経済社会の衰退等さまざまな問題が生じてきており、私は、それを是正することが日本の政治に課せられた重大な使命であると考えています。

 日本の少子化は、田中角栄氏が首相に就任した翌年の昭和四十八年から始まり、それから既に四十年近く経過いたしました。しかし、そのころ、少子化は全く問題にされませんでした。

 昭和四十八年から少子化が始まっていたのに、なぜ、その後、長い間問題にされなかったのか。その理由は、高度経済成長期にあった日本では、日本人の寿命が年々延びて、少子化が始まったにもかかわらず、人口がふえ続けていたからです。子供の数の減少は国家基盤に影響しないという判断があったのでしょうか。

 出産や子育てに関する政策に重点が置かれることなく、気がつくと、平成元年に、合計特殊出生率は一・五七となりました。ここに至ってようやく、少子化は日本の社会が直面する長期的な大問題とされ、政府もこの問題に正面から取り組むことになったのです。

 その後、多くの政策が打ち出されてきましたが、少子化傾向に歯どめがかからず、平成十七年、ついに少子化による人口減少が始まりました。

 さきの総選挙で、当時の与党自民党は敗北を喫し、政権を明け渡すことになりました。その原因の一つには、やはり、少子化を克服できなかったという結果責任もあったのではないかと思います。

 当時野党であった民主党は、そのマニフェストで、子供一人当たりに毎月二万六千円を支給すると約束しました。しかし、そのための財源の確保についてはマニフェストには何ら明示されていませんでしたが、民主党は、あたかも、どの政策よりも少子化対策を最優先するというイメージを若い有権者に投げかけたのです。私も、候補者の一人、そして少子化対策をライフワークにしている議員としては、その強烈なメッセージに圧倒され、むしろ、うらやましく思いました。

 日本の抱えている問題の根源にあるものは、高齢化問題ではありません。高齢者を支える現役世代の減少、将来の現役世代である子供が生まれないこと、それらが全てです。であるならば、民主党政権において、抜本的に予算を含めて大きく少子化対策の充実強化に政治がかじを切るならば、敗北もやむなしの心境でした。

 しかし、民主党政権は、ことごとくみずからのマニフェストをほごにし、私だけではなく、国民、とりわけ、これからの日本を背負う若い人たちを裏切りました。

 子ども手当は、その恒久的な財源の確保が困難となり、結論から言うと、廃止です。毎月二万六千円の手当が廃止されても、ここにいる皆さんには痛くもかゆくもない話でしょう。しかも、約束した二万六千円満額が支払われたわけではありませんでしたが、既に支給されていた家庭にとっては、給料を減額されるのと同様の負荷がかかるのです。これによって若者世帯の生活設計を狂わせた罪は重いと断ぜざるを得ません。

 ただでさえ政治不信が叫ばれる昨今、政権政党である民主党が次世代を担う有権者に甘言を弄し裏切ったことは、さらなる政治に対する不信感をつくり出すこととなり、その罪はとてつもなく重いものです。

 野田総理にお聞きします。

 まやかしの少子化対策を掲げたことで国民の政治不信を加速させたことに対しての謝罪はありませんか。

 選挙の際に、単なる票集めのマニフェストを作成し、それに少子化対策を利用した民主党が、今さら、総合こども園を初めとした絵そらごとのようなメニューを掲げてみせても、有権者は全く信用することができないし、少子化問題に対して見識がない人たちによるこれらの政策をたとえ実行したところで、これからの日本を担う若者世代は救われません。

 与党であった自民党が残念ながら結果を出せなかった原因は、少子化という国家の社会保障システムを崩壊させる問題の解決に、子育て支援だけを、厚生労働省の狭い枠の中だけで取り組んできたことにあったのだと思っています。

 少子化対策とは、今後結婚し家庭を持つことになる若者世代が、将来に不安を感じずに子供を産み育てようと思える社会を構築することではないでしょうか。つまり、単に子ども・子育て支援にとどまらず、若者支援、結婚、出産、子育て、教育を通じ、男性、女性の働き方、再チャレンジできるセーフティーネットや医療、健康等に至るまで、一つの成長戦略のパッケージとして示す必要があるということです。

 これまでの少子化対策においては、子育て以前の問題についての支援策が乏しいことがこの国の抱える根本的な問題であり、これらの解決なくして、現状では若い人たちの夢をかなえることは不可能です。

 残念ながら、今回の子ども・子育て新システムも、子育て支援、それだけに終始しております。民主党政権は、これまでの少子化対策における問題点等を踏まえて、少子化がもたらす多くの問題について真剣に取り組んできたと言えるのでしょうか。

 小宮山大臣にお聞きします。

 少子化問題のそもそもの根本的な原因は何であるとお考えでしょうか。また、子ども・子育て新システムは、その原因を取り除くことが可能な制度設計となっているか、お答えください。

 民主党政権における歴代の少子化対策担当大臣の任命にも、民主党政権の子供や少子化対策を軽視していることが明確にあらわれています。

 現在、少子化対策担当大臣は小宮山大臣が兼務されることになりました。驚くべきことに、これで政権発足から何と九人目の大臣となります。少子化に消極的という批判のあった自民党ですら、担当大臣がこのようにころころかわったことはありません。

 かつて、野党民主党は、与党自民党の総理が一年ほどで交代せざるを得なかったことを批判し続けました。現在、政権与党となって三年目、既に三人の方が総理を務めておられます。野党時代の発言を撤回すべきではないかと思います。

 さきの予算委員会でも、八人目の中川大臣について質問した折には、野田総理みずから、文部科学大臣も務められ、子育ての問題について、特に少子化の問題は強い関心を持っておられた、兼任であっても力を発揮していただける経験と識見を持っている、そして、ぜひ中川大臣にはしばらくじっくりと仕事をしていただきたいと思いますと言われました。これは、ことし二月二十二日の答弁です。

 野田総理のおっしゃるじっくりというのは、二カ月程度ということでしょうか。そして、その間、中川大臣は担当大臣としての責務をしっかり果たせたのでしょうか。

 ましてや、ことしに入ってからは四人目の大臣です。カレンダーのように一カ月ごとに大臣がかわっているのです。これが民主党の政治主導の形なのか。総理のお考えをお聞かせください。

 また、今回新たに任命された小宮山大臣は、厚生労働大臣を兼務されておられます。少子化対策に精通されているとのことですが、厚生労働省の所管事項でもある少子化対策を今回わざわざ内閣府の所掌とされたそもそもの経緯を考えれば、この人事は適任と言えるのでしょうか。

 幼保一体化に係る保育所を所掌する厚生労働大臣と少子化担当大臣の兼務の是非について、野田総理にお尋ねします。

 ところで、平成二十四年度当初予算、一般会計の社会保障関係のお金を、ざっくりと高齢者向けと子供向けに分けるとします。高齢者には十五兆一千三百億円、子供には二兆二百二十一億円となります。比率でいうと、約一七%対二%ということです。

 現在、日本の抱えている諸問題の抜本的な解決に向けて今やるべきことは、この比率をしっかり見直し、少子化問題の解決は将来の国の土台づくりと政治判断した上で、高齢者問題と同等の費用を先行投資するべきであり、現在行われている議論のように、高齢者がふえたから、その分を消費税で賄い、ついでに少子化対策にも使うという後ろ向きの発想をきっぱりと捨て去るべきだと思います。小宮山大臣の見解をお答えください。

 民主党のマニフェスト二〇〇九では、「縦割り行政になっている子どもに関する施策を一本化し、質の高い保育の環境を整備する」とされ、その具体策として、子ども家庭省の設置を検討するとあります。

 しかしながら、今回の新システムには、省庁再編の際、実現を目指すとされており、事実上、マニフェストはここでもほごにされています。

 昨年の大震災、一日でも早く日本を復興させるために、復興庁ができました。それよりもはるか前に、民主党の皆さんは、少子化は大変深刻だ、厚生労働省だけでは到底無理だから、しっかりとした少子化対策ができる役所をつくると国民に訴え、約束したのではないですか。復興庁はできたのに、なぜ子ども家庭省はつくれないのですか。

 子供を社会で育てるということが、民主党のスローガンです。

 野田総理にいま一度お尋ねしたい。

 子供は、主として親が育てるのでしょうか、社会が育てるのでしょうか。お答えください。

 今、一歳過ぎの子供を持つ母になった私には、この民主党のスローガンに対して大いに違和感があります。やはり、自民党の綱領にあるように、他人任せにするのではなく、基本的には自助、つまり、みずからがみずからの家族、家庭を守れる人々を大切にしたい、そう私は考えます。

 小宮山大臣にお聞きします。

 家庭にはさまざまな形態があり、その家庭のそれぞれの事情で苦労している部分に応じる形で優しくバックアップできる国が、本来、親である私たちが望んでいることではないでしょうか。いたずらに、えたいの知れない総合こども園を全国にばらまくことではないように思えるのです。この点について、小宮山大臣の考えを示してください。

 あわせて、子育て支援等の少子化対策は、社会保障のメニューの一つではなく、むしろ社会保障を安定させる担保として別枠で議論すべきだと思いますが、いかがでしょうか。小宮山大臣、お答えください。

 今、一年の育児休暇が取得可能であっても、一歳児からでは保育所に入れないからということで、泣く泣くゼロ歳児から子供を預ける親がふえていますが、施設に子供を入れて働かせるのではなく、本来なら、せめてこの一年は、父親、母親が家庭できちんと子育てができるような環境を整えることが必要であり、日々変化する子供の成長に無上の喜びを得るべきところです。残念ながら、民主党にはそういう当たり前の感性を見出すことができないのです。

 最後に、妻であり母であり、あらゆる面で機能不全に陥っていた英国をたたき直すべく強力なリーダーシップを発揮した、英国史上初の女性首相、鉄の女と言われたマーガレット・サッチャーさんの映画がアカデミー賞を受賞して話題になりました。

 彼女の言葉である、私たち政治家は後戻りしてはならない、立ちどまった姿を世間にさらすことも許されない、前に進んだときこそ未来が約束されるとの言葉を、単に、認定こども園は自民党政権がつくったという理由だけで否定し、かつ、旧来型の政策から脱皮できない野田総理に届けるとともに、私の好きな言葉で、言ってほしいことがあれば男に頼みなさい、でも、やってほしいことがあるときは女に頼みなさいを、小宮山大臣、あなたが賢明な女性であるなら、今やるべきことは一刻も早くこの法案を取り下げることであるとお伝え申し上げます。

 自民党は、厳しい審判を経て、親が子供を産み育てる中で幸せを実感できるような国づくりを、これまでの反省を踏まえて改めて取り組むことを繰り返しお約束申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 自民党野田聖子議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まず、冒頭、小沢議員の民主党党員資格についてのお尋ねがございました。

 これについては、先般の一審における無罪判決を受けまして、五月七日の民主党の役員会、そして五月八日火曜日の民主党常任幹事会という所要の手続を踏みながら、党員資格停止の解除について決定をしたところでございます。

 党のいわゆる意思決定機関、所要の手続を踏んだ決定でございますので、党の代表である私も含め、全ての議員がその結果を尊重すべきであると考えております。

 次に、子ども手当に関する御質問をいただきました。

 子ども手当は、野田議員御指摘のとおり、マニフェストどおりにはなってはおりませんけれども、御党の御協力もあり、新しい児童手当として恒久化され、従前に比べれば相当な拡充となっていることは厳然たる事実であります。

 給付の水準が当初どおりではなくなった要因は、東日本大震災からの復旧復興の財源を確保するためであり、また、自民、公明、民主による三党合意を踏まえた結果であります。

 さらに申し上げれば、マニフェスト全体に関して、財源確保に関する見通しが甘かったことも率直に認め、国民の皆様に真摯におわびをしております。

 ただし、新しい児童手当が質、量的に大幅に拡充されたこと、それが制度として恒久化されたこと、また、保育サービスなど、いわゆる現物サービスの拡充が打ち出されていることなどを勘案すれば、チルドレンファーストの理念が政策領域において相当確立しつつあることは、これもまた事実と考えます。

 政権与党として、現実の政治、国民の生活に責任を負っており、政府の政策は、状況の変化の中で、国民の皆様の声をお伺いしながら、優先順位を適切に判断していくことが必要と考えております。そして、政策の優先順位についての判断については、最終的には、次期選挙において国民の皆様が審判するものと考えております。

 次に、少子化対策担当大臣の交代についての御質問をいただきました。

 閣僚の任命については、その時々の状況を踏まえて適材適所の考え方から行っておりますが、今般の少子化対策担当大臣の人事は、特別委員会における一体改革関連法案の取り扱いが決められていく中で、今後の法案審議等を考慮し、必要な配置がえとして行ったものであります。

 中川前大臣についても、任期中には、子ども・子育て関連法案の閣議決定から国会提出まで精力的に仕事をされ、実績を残されたと考えております。

 次に、厚生労働大臣と少子化対策担当大臣の兼務の是非についての御質問をいただきました。

 内閣府の業務が増加している一方で、法律上、閣僚の数は限られているため、一部の閣僚については兼務とせざるを得ない状況にあります。

 私から、少子化対策を担当する内閣府特命担当大臣として小宮山大臣に指示した職務は、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案等の早期成立を図り、子供を安心して産み育てられる社会づくりを進めることであります。小宮山大臣は、党時代から少子化対策に取り組んでおり、また、今回の法案についても厚生労働大臣としてかかわってきたことから、適任と判断をいたしました。

 なお、人事に当たっては、内閣府特命担当大臣として内閣府の事務を行うという点は不変であるとともに、私から文部科学大臣に対して、十分連携協力して法案審議に臨むよう、特に指示をしております。

 今回、厚生労働大臣が兼務する形になったことが、少子化対策を、縦割りを排して内閣全体で推進するために内閣府の業務としたという経緯にもとるものとは思っておりません。

 次に、子ども家庭省についてのお尋ねがございました。

 子ども家庭省の創設については、幅広い議論が必要であり、将来的に省庁再編の際に実現を目指すこととしますが、まずは、新システム発足時に、内閣府にその基盤となる組織を設けることとしたいと考えております。

 具体的には、御審議いただいている関連整備法案の中で、内閣府特命担当大臣を本部長とし、子ども・子育て支援法と総合こども園法に基づく事務に加え、必要な総合調整を行う新たな組織である子ども・子育て本部を内閣府に設置することとしております。

 次に、子供を育てることに関する御質問をいただきました。

 子供は、親、保護者が育むということが私は基本だというふうに思います。しかしながら、近年の家族構成の変化、地域のつながりの希薄化、あるいは雇用が不安定な中で推移してきているなど、社会情勢の変化において、社会全体で子育てをしっかりと支えていくシステムを構築していくということも、時代の要請、社会の役割であると考えます。

 したがって、子供は親が育てるのか、社会が育てるのかという二者択一で捉えるのではなくて、家庭を中心に、子供たちが安定して成長できるよう、次の世代を担う子供たちを社会全体で全面的に支える環境を整えることが重要であると考えているところでございます。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣小宮山洋子君登壇〕

国務大臣(小宮山洋子君) 野田議員からの御質問、まず、少子化の原因と子ども・子育て新システムについてですが、少子化の主な原因は、結婚や出産、子育ての希望がかなわず、未婚化や晩婚化と、夫婦が持つ子供の数の減少が進んでいることだと考えます。

 この背景は、核家族化や地域のつながりの希薄化などによる家庭の養育力の低下、子育て中の孤立感や負担感が大きいこと、また、家庭生活との両立が困難な職場のあり方、結婚や家族に関する意識の変化など、さまざまであると考えます。

 子ども・子育て新システムは、子供を産み育てたいという個人の希望がかなうよう、国や地域を挙げて子育てをサポートする仕組みで、少子化問題の解決にも大きく貢献できるものだと考えています。

 少子化対策と消費税増税との関係ですが、一体改革では、子ども・子育て支援などを中心に未来への投資を強化することによって、全世代対応型の社会保障制度の実現を目指しています。

 このため、消費税の充当先をこれまでの高齢者三経費から子育ての分野にも広げ、社会保障四経費として消費税を社会保障財源化することにしています。消費税の充当先がこれまでの高齢者三経費から社会保障四経費として子育ての分野に広がることは、大きな意義があると考えています。

 国がそれぞれの家庭の事情に応じてバックアップすることを親は望んでいるとの御指摘についてですが、子ども・子育て支援法の中でも、「父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有する」としています。子育てを他人任せにするというものではありません。

 子ども・子育て新システムは、こうした基本認識に立って子ども・子育てを社会全体で支援するもので、子育て家庭が、そのニーズに応じて、多様なメニューの中から利用できる施設や事業を選び、必要な支援を受けることができるように、子ども・子育てに関する制度、財源、給付についての包括的、一元的な制度の構築を目指すものです。

 少子化対策の位置づけについてですが、一体改革では、今申し上げたように、消費税の充当先を高齢者三経費から子育ての分野にも広げて、社会保障四経費として税を社会保障財源化することにしています。

 おっしゃるように、子ども・子育て支援が充実することによって、持ちたい人が安心して子供を産み育てられるようになる、そのことによって、その結果として社会保障の担い手がふえるということではあるかと思いますが、そういう意味で関連をしているというふうに考えています。

 子ども・子育て支援は、未来への投資であり、日本の社会全体で取り組まなければならない最重要課題であると考えています。

 そして、最後におっしゃいました、私が今やるべきこと、これは、子供たちのためにこの法案を少しでも早く成立させることだと考えています。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 馳浩君。

    〔馳浩君登壇〕

馳浩君 自由民主党の馳浩です。

 本日は、自由民主党・無所属の会を代表し、政府が提出した子ども・子育て新システムに関する三法案について質問をいたします。答弁が足らざる場合は、再質問をいたします。(拍手)

 まず、野田総理に伺います。

 今回の関連三法案を提出する議論のスタート地点は、平成二十一年八月総選挙の政権交代マニフェストでしょうか。それとも、その半年前、平成二十一年三月三十一日に小渕優子少子化担当大臣のもとで政府が発表した、今後の認定こども園制度の在り方についてでしょうか。お答えください。

 本来ならば、財政機能回復のための一体改革なのに、どうしてこのような新システムの法案が提出されるに至ったのか、その政策立案の原点が何なのかが問題となります。ましてや、新システムの条件として、消費税増税を財源とすることになっております。

 この法案のベースとなる理念は、どう見ても小渕報告にあります。

 「縦割り行政になっている子どもに関する施策を一本化し、質の高い保育の環境を整備する」とマニフェストでうたいながら、結局、出てきた案は三本化。議論の末、結局、小渕報告をなぞるような制度になってしまったのはどうしてでしょうか。総理、明確にお答えください。

 次に、平野文部科学大臣と小宮山厚生労働大臣に質問します。

 この法案を提出するに当たり、中央教育審議会や社会保障審議会に諮問をしたのでしょうか。審議会の審議や両審議会の合同検討会はどの程度行ったのでしょうか。もし、していないとするならば、それはどうしてですか。

 学校教育法の体系や児童福祉法の体系に踏み込む、大きな制度改正です。両審議会での十分な審議と情報公開のプロセスを経ることが必要であると思いますが、いかがでしょうか。

 続いて、小宮山大臣に伺います。

 認定こども園法案の附則では、五年後の見直し規定がありました。法律に基づいての見直しや検証や分析を行ったのでしょうか。その見直しを行ったのならば、どこに問題点があったのでしょうか。

 ちなみに、平成二十三年度から二十四年度にかけて、認定こども園の設置数は七百六十二カ所から九百十一カ所へと着実に伸びております。

 法律に基づく五年後の見直しをし、その結果に基づいて認定こども園制度の簡素化と改善をし拡充すれば、それでいいだけではありませんか。小宮山大臣の答弁を求めます。

 続けて伺います。

 二年前、小宮山大臣は、幼児教育団体の代表者に対して、認定こども園のことを盲腸と表現されました。その盲腸に極めて近い内容の法案を提出されています。

 小宮山大臣は、認定こども園と総合こども園の違いをどのように考えているのか、その認識を伺います。

 続いて、平野大臣に伺います。

 小学校就学前の子供には、どのような幼児教育が必要であり、どのような施設、設備、環境が必要なのかの議論を文部科学省は行ったのでしょうか。お答えください。

 続けて伺います。

 平成十八年に教育基本法が全面改正され、翌年の学校教育法の改正で、幼稚園が学校教育体系の一番最初に組み込まれました。今回の法改正では、その経緯や意義を踏まえているのでしょうか。

 続いて、小宮山大臣に伺います。

 安心こども基金を、幼稚園でも活用しやすい仕組みとしたり、市町村の財政負担を軽減したりすることによって、認定こども園の設置数は今後とも伸びる傾向にあるのではないでしょうか。複雑な新システムを新規につくるよりも、既存の施策を改善し充実する方が待機児童の解消は進むと思いますが、いかがでしょうか。

 続けて伺います。

 総合こども園の入所年齢は満三歳からです。したがって、ゼロ、一、二歳の乳幼児は入所義務がありません。しかし、待機児童の八割は、このゼロ、一、二歳の乳幼児です。これで本当に待機児童を減らすための制度になっているのでしょうか。もし、総合こども園が待機児童解消対策ではないのならば、その設置目的は何なのでしょうか。答弁を求めます。

 続けて伺います。

 現在、幼稚園での預かり保育を実施しておりますが、保育所運営費と比べて極めてわずかな公費のみに頼っており、財政的な不安が大きい中、不安定な運営を強いられています。まずは預かり保育の拡充、規模拡大に取り組めば、待機児童の解消はかなり進むと考えますが、いかがでしょうか。

 続いて、平野大臣と小宮山大臣に伺います。

 施設の指定制導入により、利潤を追求することを目的とする株式会社が、適合法人として、教育と保育を行うことを目的とする総合こども園に参入することを認めることは、教育の質を向上させるという我が国の教育行政の根本的な転換を意味すると思います。また、保育を金もうけの場にするのかとの保育関係者の不信は根強いものがあります。児童福祉の後退になりかねないという不信感があります。

 構造改革特区での株式会社立学校についても、文部科学省によって、経営の悪化による撤退など、多くの問題点が指摘されています。その問題点を放置したまま株式会社を参入させることの経緯を教えてください。

 また、無認可保育所の管理不足事故は、いたいけな子供の命を脅かす事態を招いており、保育への株式会社の参入は慎重であるべきです。

 両大臣の説明を求めます。

 続いて、平野大臣に伺います。

 教育基本法第十条は、家庭教育として、「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする」とし、第二項では、「国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない」とあります。

 このたびの子ども・子育て支援法、総合こども園法では、こうした教育基本法における学校教育と家庭教育の考え方を前提としているのでしょうか。本来家庭教育で担うべき教育的役割を、総合こども園で肩がわりするような構図にはなっていないでしょうか。平野大臣の明確な答弁を求めます。

 さらに、平野大臣に伺います。

 総合こども園は、学校としての性格を有するとされる以上、学校としての最低基準である現行の幼稚園設置基準を満たす施設が認可基準とされるべきことは当然と考えます。

 しかしながら、基本制度とりまとめでは、既に認可を受けている施設からの移行については基準の特例が設けられ、現行の幼稚園、保育所の基準の低い方へと誘導しているように見受けられました。

 学校教育機能部分に関する設置基準は現行よりも教育の質を向上せしめるものとすべきであり、特に運動場の必置義務については十分満たされるべきと考えますが、いかがでしょうか。答弁を求めます。

 続いて、小宮山大臣に伺います。

 子ども・子育て支援法において、こども園給付は、機関補助ではなく個人給付とされ、施設が代理受領するとされています。

 なぜ、機関補助とせず、個人給付の法定代理受領という複雑な仕組みとする必要があるのでしょうか。個人給付とした理由を教えてください。

 続けて伺います。

 現行の保育所は、市町村による措置義務がありますから、正当な理由がない限り、入所を拒めません。ところが、私立幼稚園は、建学の精神があり、経営者側の方針によって入園が選抜されることがあります。この根本的に異なる二つの保育と教育とを折衷させる総合こども園という案は、そもそも無理があるのではありませんか。

 したがって、五年経過した認定こども園制度の見直しをして、今までの運営状況を見て、知見をもとに制度の簡素化や拡充をした方がよいと申し上げております。小宮山大臣と私の認識にどれほどの差があるのか、教えてください。

 小坂憲次元文部科学大臣は、認定こども園制度を法制化したときの大臣です。そのときの国会答弁で、実施に際しては、行政の窓口も、手続の書類も、経理も、お金の出し方も簡素化し、ワンストップサービスで一元化した方がよいという趣旨の答弁を繰り返しておりました。私は、当時の副大臣として、そばで聞いておりました。

 ところが、法律が成立してからの都道府県や市町村の現場の対応は、小坂大臣の意向には沿わないものとなっていますし、設置数も当初の期待を裏切っております。ここに、立法府の議論と、行政府の現場業務との乖離を見た思いがします。どうして大臣の意向が現場に反映されなかったのだろうかと私も反省をしておりますし、霞が関の読みが甘かったのかもしれません。

 野田総理、立法府で制度をいじれば全てが解決するものではありません。現場のニーズに応える制度論こそ必要だと思いませんか。

 総合こども園に使うお金があるならば、保育士や幼稚園教諭の処遇改善をする方がよっぽど現場の士気が高まるし、教職員の定数改善や研修充実こそが切望という現場の声があります。そういう声は野田総理にも届いておりませんか。見解を伺います。

 続いて、小宮山大臣に伺います。

 新システムでは、保護者と施設が直接公的契約を結びます。市町村の保育の実施義務がなくなります。保育に対する公的な責任が大幅に後退します。当然、質の低下が憂慮されています。

 結果として、本当に保育の必要な子供や、障害児や被虐待児などが排除されるおそれがあります。これでよいのでしょうか。小宮山大臣の認識を伺います。

 続いて、野田総理に伺います。

 新システムは、働く親の子育て支援に重点化されており、専業主婦の存在をないがしろにするような印象を与えます。働く親と子育てに専念する親と対立するものではなく、双方を適切に評価し、双方に配慮した施策とすべきと考えますが、いかがでしょうか。明確な答弁を求めます。

 続いて、小宮山大臣に伺います。

 自由民主党は、幼児教育を国策とし、全ての子供に良質な幼児教育を提供する必要があると考えます。子供の置かれた状況による格差を設けるべきではないと考えますが、大臣の見解を伺います。

 最後に、野田総理に国家観と家族観を伺います。

 恋愛し、結婚し、妊娠し、出産し、育児や家事をするというのは、男性と女性、父親と母親にとって極めて私的な選択であり、共同作業でもあります。家族とは、自然発生的にでき上がるものではなく、お互いに努力をしてつくり上げるものです。その営みあってこそ、国家の伝統と歴史と文化が継承され、経済や地域社会が発展する礎がつくられることを考えれば、保育と教育は、極めて神聖なる、公的な営みとも言いかえることができます。

 家族という私的な空間と、国家という極めて公的な役割を税と法律で結びつけるのが、永田町の政治的使命でもあります。個人の尊厳や人権や倫理観を尊重しながらも、家庭の子育てを、いかに政府や地域社会や地方自治体や企業が側面から支援するかが課題です。

 国民全体、とりわけ若い御両親や子供たちの視点となって、実りの多い法案審議をすべきであることを自由民主党の意見として申し上げ、野田総理の国家観、家族観を伺い、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 自民党馳浩議員から、私には四問の御質問をいただきました。

 まず、子ども・子育て新システムの原点についてのお尋ねがございました。

 子ども・子育て支援については、これまで、平成十九年十二月、自公政権下での「子どもと家族を応援する日本」重点戦略で、次世代育成支援に関連する現物給付を体系的、普遍的に提供する包括的な支援の仕組みの構築がうたわれ、その後、平成二十年十一月の社会保障国民会議報告では、保育の質、量の抜本的拡充を図るための新たな体系の構築が必要不可欠とされておりました。

 今般提案している子ども・子育て新システムは、民主党〇九マニフェスト以前からのこうした提言や、御指摘がございました小渕担当大臣のもとでの取り組みの方向性をも踏まえたものであります。

 また、今回の一体改革では、未来への投資を強化することにより、全世代対応型の社会保障制度の実現を目指し、消費税の充当先をこれまでの高齢者三経費から子育ての分野にも広げ、社会保障四経費として消費税を社会保障財源化することにしています。

 このように、新システムは、自公政権以来の議論を尊重しつつ、新たな視点からの検証を加えたものであり、政権や党派を超えて共有、御理解いただけるものと認識をしております。

 続いて、処遇改善など、現場のニーズに応える制度論についてのお尋ねがございました。

 新システムにおいては、質の高い幼児期の学校教育、保育を全ての子供に保障することを目指しており、質の向上の観点からも、保育等にかかわる職員の処遇の改善が必要だと考えております。

 こうした質の改善については、国、地方を通じた恒久的な財源を確保しながら、優先順位をつけて実現を図っていきたいと考えており、その際には、子育て支援にかかわる当事者の声にしっかりと耳を傾け、現場のニーズにお応えをしていきたいと考えております。

 続いて、働く親と子育てに専念する親の双方への支援についてのお尋ねがございました。

 新システムは、チルドレンファーストの理念に立って、全ての子供が尊重され、その育ちがひとしく確実に保障されるよう、子ども・子育てに関連する制度、財源、給付についての包括的、一元的な制度の構築を目指すものでございます。

 具体的には、地域の実情に合った支援の提供、総合こども園の創設などによる質の高い学校教育、保育の一体的提供、保育の量的拡充、地域の子育て支援の充実などの取り組みを盛り込んでおります。

 これらを総合的に進めることで、働きながら子育てをされている保護者、御家庭で子育てに専念されている保護者のいずれについても適切な支援が行えるものと考えております。

 次に、国家観と家族観についてのお尋ねがございました。

 私が目指す国づくりの基本は、きょうよりもあしたがより豊かで幸せになれるという希望を誰もが持つことができる社会をつくることであります。高度経済成長期とその後の失われた二十年という停滞を経て、そのような希望を持ちにくい社会になってしまったというふうに思います。

 少子高齢化という避けられない社会環境の変化や、現代という新しい時代の文脈に即した形で、誰もが希望を持てる社会をつくり上げ、それを将来の世代に引き継いでいくことこそ政治の使命であると考えております。

 国づくりの根本にあるのは、人づくりであり、子育てや教育の問題であると考えています。教育のあり方や、公的セクターが家族をいかにサポートしていくかという問題は、政治における極めて重要な課題だと思います。

 家族観について申し上げれば、家族や子育てのあり方が過去の時代と大きく変わっていると思います。かつては、家族で担ってきた役割を社会全体で担うことが求められている、あるいは、母親に求められてきた役割を行政が力を合わせて担うことが求められているのだというふうに思います。

 それにもかかわらず、こうした変化への政策的な対応が後手後手に回ってきたのが近年の状況であります。待機児童の問題はまさにその象徴であり、今回提出した子ども・子育て三法案は、このような現在の家族のあり方に即した、新しい制度的な対応だと考えます。

 馳議員が最後におっしゃいましたけれども、自由民主党の意見として、国民全体、とりわけ若い御両親や子供たちの視点となって実り多い法案審議をすべきという御指摘は、まさにそのとおりだと思います。

 ぜひとも、我が国の将来のため、子ども・子育て三法案を含め、一体改革についての建設的な御議論をお願いして、答弁とさせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣小宮山洋子君登壇〕

国務大臣(小宮山洋子君) 馳議員から、まず、厚生労働大臣に対して、一問、御質問いただきました。

 子ども・子育て新システム関連三法案の社会保障審議会での審議についてですが、社会保障審議会児童部会で、平成二十二年二月十七日、平成二十三年十月三十一日の二回、社会保障審議会で、平成二十三年八月二十九日、平成二十四年一月三十日の二回、内閣府に設置された子ども・子育て新システム検討会議ワーキングチームでの検討状況などを御報告し、審議をしていただきました。

 なお、社会保障審議会と社会保障審議会児童部会は、一般傍聴が可能で、議事録も公開しています。

 次に、少子化対策担当大臣として、十問、御質問いただきました。

 まず、認定こども園の見直しや検証についてですが、認定こども園は、幼稚園制度及び保育所の制度を基礎とした上で、幼児期の学校教育及び保育を一体的に提供する幼保一体化の先駆的取り組みであり、施設を利用している保護者や認定を受けた施設から高く評価されています。

 そのあり方については、制度施行後、認定こども園制度の在り方に関する検討会や子ども・子育て新システムの検討会議で、関係者からヒアリングも行い、議論を重ねてきました。

 認定こども園での課題としては、財政支援が不十分であること、幼稚園と保育所の制度を前提としているため二重行政であることなどが挙げられています。

 今回の法案では、こうした課題に対応するため、こども園給付や総合こども園制度の創設により、財政措置や、二重行政の解消を図ることにしています。

 認定こども園と総合こども園の違いについてですが、認定こども園は、幼稚園と保育所の制度が前提であるため、認可や財政支援で二重行政となっているという課題が指摘されていました。総合こども園は、これまでの認定こども園の成果を生かしつつ、こうした課題に対応した仕組みと考えています。

 既存の認定こども園の改善によって待機児童解消をすべきではという御指摘ですけれども、認定こども園は、幼保一体化の先駆的な取り組みだという認識を持っています。一方で、幼稚園と保育所の制度が前提となっているため、施設や会計に関して別々の制度が適用されるといった二重行政の課題があるということ、また、安心こども基金による財政支援が不十分であることが指摘されています。

 こうしたことにより認定こども園の設置数が伸び悩んでいることから、制度の見直しを行い、認定こども園制度をさらに発展させた形で、総合こども園制度に移行することにしました。

 同時に、御指摘の待機児童の問題に対応するため、市町村新システム事業計画の策定による地域の保育需要の把握と計画的な整備、指定制度の導入による多様な主体の参入、地域型保育給付の創設による小規模保育事業等の多様な保育事業の推進などに取り組み、こうしたことによって待機児童の解消を加速していきたいと考えています。

 総合こども園の待機児童対策としての効果と設置目的についてですが、その目的は、もちろん、待機児童の解消もありますけれども、総合こども園は、質の高い学校教育、保育と家庭での養育支援を一体的に提供する施設として創設するという目的がございます。

 御指摘のとおり、待機児童のおよそ八割が三歳未満の子供ですが、待機児童の状況や学校教育、保育に対するニーズは地域によってさまざまです。

 このため、総合こども園に、ゼロ歳から二歳児の受け入れを全国一律に義務づけるということはしていませんが、調理室の設置支援や、ゼロ歳から二歳児に対する経費を見込んだ単価設定などのインセンティブを付与することなどによって、地域の実情に応じて、待機児童が多いゼロ歳から二歳児の受け入れが進むようにしていきたいと考えています。

 これに加えて、子ども・子育て新システムでは、保育に関する仕組みを変えることで、保育需要があるところで機動的に質の確保された保育の量的拡充を図ることができるようにしています。

 具体的には、市町村子ども・子育て支援事業計画の策定、指定制度の導入、地域型保育給付の創設による多様な保育の推進など、新たな仕組みを導入して、待機児童の確実な解消を目指していきます。

 幼稚園の預かり保育の拡充についてですが、幼稚園の預かり保育は共働き家庭の子供を一定程度受け入れているので、預かり保育の拡充は、三歳以上の子供の待機児童対策として有効な手段の一つだと考えています。

 一方で、現在の預かり保育は、待機児童の八〇%を占める三歳未満の子供を対象としていないこと、担当する職員に保育士資格が必要とされていないこと、私学助成による助成額等も長時間の保育を前提とした水準でないことなど、待機児童対策として活用する上では課題もあります。

 子ども・子育て新システムでは、幼稚園の総合こども園への移行を促進することによって、三歳未満の子供の受け入れも可能とし、幼稚園教諭の免許と保育士資格の両方を持つ保育教諭が担当することにし、現在の預かり保育を利用している三歳以上の子供も含め、保育の必要性の認定を受けることで保育にかかる費用に応じたこども園給付が支給されるなど、現在の制度の課題を解決して、待機児童の解消を一層促進していきます。

 保育への株式会社参入への懸念についてですが、保育をするときに、子供の安全、これは最も大切なことなので、これまでも、認可施設、認可外施設を問わず、保育施設で発生した重大な事故の状況を把握し、事故防止のための措置をとってきました。

 平成十二年度から保育への株式会社の参入は可能になっていますが、その際も、認可基準を満たすことはもとより、設置者について適正に審査を行うよう求めてきました。

 新システムでも株式会社の参入を認めることにしていますが、質の確保のための客観的基準を満たした施設のみを指定し、指定については五年ごとの更新制とし、定期的なチェックを行うほか、市町村による報告徴収、立入検査等の指導監督を実施する、また、質にかかわる情報開示を義務づけるなど、質の確保のための仕組みを設けます。

 こうしたことによって、質の確保された学校教育、保育が確実に提供される仕組みにしていきたいと考えています。

 こども園給付を個人給付とした理由ですが、全ての子供が尊重され、その育ちがひとしく確実に保障されるためには、施設側の制度の縦割りの視点で考えるのではなく、利用者の側の制度横断的な視点、すなわち子供本位の視点で考えることが必要です。

 このため、既存の幼稚園や保育所の縦割りの制度を再構築して双方にまたがる包括的な制度に改めるとともに、利用者の受給権に着目して個人給付の仕組みを導入することにしました。

 個人給付の仕組みでは、子供一人一人について、受給資格や必要性の確認、認定が行われることになります。そして、これを通じて把握された地域の学校教育、保育のニーズに応えられる体制を確保することにより、全ての子供に対して、それぞれのニーズに応じた学校教育、保育を確実に保障していきます。

 総合こども園の創設についてですが、新システムでは、認定こども園制度についても検証を重ねた上で、その課題を解消し、幼児期の学校教育、保育を一体的に提供する施設として、総合こども園を創設することにしています。

 総合こども園は、認定こども園の、全ての子供に質の高い幼児期の学校教育及び保育を一体的に提供するという趣旨をしっかりと引き継ぐものだと考えています。

 直接契約の導入に伴う懸念ですが、新システムでは、市町村は、管内の施設や事業者の情報を整理し、子育て家庭に広く情報提供し、相談に対応するなど、利用者を支援します。

 また、待機児童が発生しているような場合には、保護者が市町村に利用希望を提出し、市町村が利用可能な施設や事業者をあっせんします。

 さらに、障害児等の特別な支援が必要な子供などに対しては、市町村が利用可能な施設や事業者のあっせんや利用の要請を行うとともに、虐待のおそれがある場合などには、利用の勧奨や入所の措置を行う仕組みにしています。

 施設や事業者に対しては、応諾義務を課して、正当な理由なく入所を拒否することができない仕組みにしています。

 このように、新システムでは、市町村が確実に利用者を支援するとともに、御懸念のような事態が生じない仕組みにしています。

 幼児教育について、子供の置かれた状況による格差を設けるべきではないとの御指摘についてですが、新システムでは、地域での学校教育、保育の計画的整備や、総合こども園の創設等により、親の働き方など、子供の置かれた状況にかかわらず、質の確保された学校教育、保育を全ての子供に保障することにしています。

 全ての子供に良質な幼児教育を提供するという点について、目指す方向性は同じだと考えています。(拍手)

    〔国務大臣平野博文君登壇〕

国務大臣(平野博文君) 馳議員の方から、六つの御質問をいただきました。

 まず最初に、中教審における審議についてのお尋ねがございました。

 子ども・子育て新システムは、省庁横断的な課題であるため、その検討に当たりましては、内閣府に設置されました子ども・子育て新システム検討会議ワーキングチームにおいて議論が行われてまいりました。

 その検討過程で、ワーキングチームの検討状況を中教審の初等中等教育分科会に説明し、教育の観点から八回にわたり御議論をいただき、その結果をワーキングチームの方に報告してきたところでございます。

 また、この会議は、原則公開、議事録も公表しているところでございます。

 次に、小学校就学前の子供に必要な幼児教育についてのお尋ねでございます。

 現在、幼稚園においては、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児の健やかな成長のために適切な環境を整え、その心身の発達を助長するため、まず、教育内容の基準としての幼稚園教育要領と、施設や設備等の基準としての幼稚園設置基準に基づいた教育が行われております。

 子ども・子育て新システムにおいて新たに創設する総合こども園においても、現在の幼稚園教育と同様の目的や目標に基づき、学校としての基準と児童福祉施設としての基準をあわせ持つ基準を適用し、質の高い学校教育、保育を保障することとしております。

 総合こども園の基準の具体的内容につきましては省令などで定めることとしており、法案成立後、子ども・子育て会議の意見を聞きながら、制度の施行までに検討をしてまいるところでございます。

 三点目、教育基本法、学校教育法との関係についてのお尋ねでございます。

 御指摘のとおり、平成十八年の教育基本法の改正において、幼児期の教育が生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることを新たに規定し、これを踏まえた学校教育法の改正において、幼稚園を学校教育体系の最初に位置づけるとともに、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものであることを明確化したところでございます。

 子ども・子育て新システムは、こうした現行の教育基本法、学校教育法の考え方を踏まえて、総合こども園の創設により、親の働き方にかかわらず学校教育を受ける機会を保障するなど、教育の観点からも子ども・子育て支援を充実させるものでございます。

 次に、総合こども園の株式会社の参入についてのお尋ねでございます。

 御指摘の、特区による株式会社立学校において学校運営や教育活動に不適切な事例があったことは承知いたしております。この点については、今後、特例措置の評価を通じて適切に対処してまいります。

 総合こども園につきましては、現在、株式会社の参入が認められている保育所が原則として全て総合こども園に移行する、待機児童解消のための量的拡大という強い社会的要請に基づいて、一定の要件を満たした株式会社の参入を認めるものでありますが、これは、児童福祉施設としての性格を有する総合こども園固有の、極めて特殊な要請によるものであります。

 この場合でも、学校教育を担うにふさわしい公共性、永続性、確実性を担保することは極めて重要であることから、総合こども園への株式会社参入に当たっては、参入段階、運営段階、撤退段階において厳しい規制を課すこととしています。

 これらを厳正に運用することにより、営利追求のために、総合こども園の運営がゆがめられ、教育の質の低下が起こることのないように、また、園児に悪影響が及ぶことのないようにしていきたいと考えているところでございます。

 次に、教育基本法における学校教育と家庭教育の考え方についてのお尋ねでございます。

 子ども・子育て支援法案の第二条において、子ども・子育て支援は、親その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有する、親が第一義的責任を有するという基本的認識のもとに、家庭、学校、地域、職域その他社会のあらゆる分野においての構成員が、おのおのの役割を果たすとともに、相互に協力して行わなければならないと基本理念が規定されています。

 教育基本法第十条においては、父母が子供の教育に第一義的責任を有するものとしております。新システムにおいても、同様の考え方を前提としているところでございます。

 総合こども園の創設を含む新システムは、このような前提に立ちつつ、かつては家族や地域が担っていただいた子育てに関する支え合いの機能が低下していることを踏まえ、こうした子ども・子育てを支える社会の機能を新しい形で再生させることとしているものであります。家庭教育の役割を肩がわりするものではございません。

 最後に、運動場の必置義務についてのお尋ねでございます。

 運動場につきましては、重要な指摘であり、学校教育の質を担保する観点から、各施設に置くことが望ましいと考えております。

 主務省令で定めることになっておるわけでありますが、総合こども園の基準の具体的な内容については、法案成立後、子ども・子育て会議の意見を踏まえながら、制度の施行までに検討をしてまいります。

 以上でございます。(拍手)

議長(横路孝弘君) 馳浩君から再質疑の申し出がございます。残り時間がわずかでございますから、簡単にお願いをいたしたいと思います。馳浩君。

    〔馳浩君登壇〕

馳浩君 認定こども園法案の附則に基づく五年後の見直しについての答弁が不十分でありました。

 先ほど小宮山大臣が申されましたが、実は、既に三年後の見直しで、小渕報告にはこうあるんですよ。財政支援の充実、二重行政の解消、教育と保育の総合的な提供の推進、家庭や地域の子育て支援機能の強化、質の維持向上への対応と。

 既に三年目にここまでの見直しがあって、さらに、法律に基づいては、五年後に見直しをして、それを踏まえて対応しましょうと法律上はなっていたのに、大臣の答弁は、財政支援が不十分である、二重行政であること、この点しかお触れになりませんでした。

 ここで私が心配するのは、幼児教育団体の要望に対して、小宮山大臣が盲腸という発言をされたことに全て尽きるのではないかなというふうに思っております。何をもって認定こども園に対してそういう表現をされたのか。言葉を大切にする小宮山大臣ならば、非常に配慮に欠けていたなと私は思いますし、気をつけていただきたいと思います。

 そもそも、認定こども園という制度を、昨年からことしにかけても百五十カ所以上伸びてきているわけでありますから、この問題をもうちょっと掘り下げて議論を進めていく。野田総理も、小渕報告も踏まえて民主党政権のこの法案をまとめられたというのでありますから、そういう同じような土俵に立つ努力をしなければいけないのではありませんか。

 だから、五年後の見直しについて、もっと真摯に御答弁をいただきたいというのが私の質問であります。

 以上、終わります。(拍手)

    〔国務大臣小宮山洋子君登壇〕

国務大臣(小宮山洋子君) 小渕報告の中で、三年目の見直しで、私が先ほど申し上げたような幾つかの課題があるということは既に指摘をされ、その解決に向けて取り組んできたということは承知をしております。

 ただ、その後も、先ほど申し上げたように、認定こども園制度の在り方に関する検討会ですとか、子ども・子育て新システムの検討会議、私も当時副大臣としてかなりの部分に参加していますけれども、その中でも見直しをいろいろと検討する中で、やはり今の制度のままで幾ら見直しても、例えば、認定こども園の中の保育園型の子供については厚生労働省に請求をする、幼稚園型の子供については文部科学省に請求をするというような二重行政の中では、九百カ所余りにふえてはいますが、目標の二千カ所のまだ半分に満たないということもあって、それは今回抜本的に改革をして、もちろん、認定こども園のよかった部分は踏襲をしながら、さらに制度を改正する。

 総合こども園制度にすることによって一元化を図ることによって、そうしたよい面も生かしながら、新たに学校教育、保育の質のよいものを全ての子供に提供する形にしたいとしているところでございます。

 そして、先ほどから、私が盲腸という発言をしたという点ですけれども、私も、そういう発言をしたのであれば、本当にそれは失礼なことなので、おわびを申し上げたいと思います。

 ただ、そのことが、議事録が残っているような公式の場ではなくて、私が副大臣をしているときにおいでになって会話をしている中で私がそういう発言をしたとおっしゃっているということでございまして、私はそういうふうな失礼な意図で申し上げたつもりはございませんが、そのことが関係者の方に不快な思いをさせたということであれば、心からおわびを申し上げます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 池坊保子君。

    〔池坊保子君登壇〕

池坊保子君 公明党の池坊保子でございます。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました子ども・子育て新システム関連三法案について、野田総理に質問を行います。(拍手)

 まず、本法案の審議を進めるに当たり、一番大切なことは何か、そのことを冒頭確認させていただきたいと思います。

 今般の子ども・子育て新システムの導入が真に子供の幸福の実現に資するものか否か、この視点に立って全ての制度設計がなされるべきであると考えています。

 私たち公明党は、結党以来、未来の宝である子供たちの幸せや子育ての安心が最大限に尊重される社会の構築を目指し、児童手当、育児休業給付を初めとし、子育て支援の充実に取り組んできました。

 政府・与党の子ども・子育て新システムに関する基本とりまとめには、子供の最善の利益を考慮するとの理念が掲げられ、また、今般提出された同法案の提出理由には「一人一人の子どもが健やかに成長することができる社会の実現に寄与するため」と明記されております。

 しかしながら、中身を精査してみると、私が五年前に文部科学副大臣のときに成立させた認定こども園の延長線上にあり、わざわざ、現場の声を無視して、施設類型の多元化や所管官庁の三元化などの複雑でわかりづらい制度設計の新法をつくる必要は全くなかったのです。

 マニフェストの子ども手当が児童手当の拡充に終わったように、この制度も、現行の認定こども園制度の、先ほど小宮山大臣がおっしゃったように、二重行政解消や財政的担保を行うなどの発展的な改正を図った方が、よりシンプルでよかったのではないかと思います。よもや、前政権の仕組みだから否定するなどという狭いお考えではないと信じたいと私は思います。

 日本を支える子供にとって極めて重要な制度設計と考えておりますので、私は、総理の誠実で丁寧な御答弁をお願いしたいと思います。

 総理に、自公政権下で創設した認定こども園について伺いたいと思います。

 幼保一元化、一体化は、これまでの政権が長年にわたり課題としてきたテーマです。保護者の就労の状況などにかかわらず幼児教育や保育の機会を提供するための方策として、既に自公政権下で認定こども園制度を創設しています。

 認定こども園制度は、役割や歴史的な経緯の異なる幼稚園と保育所のよいところを組み合わせ、それぞれの地域の幼児教育、保育の中核としての機能を果たしており、保護者の評価も非常に高いのです。

 政府案では、この認定こども園制度を廃止して、新たに、幼稚園と保育所を一体化した総合こども園制度を創設することとしていますが、わずか五年余りの間に制度の大幅な変更を行うものであることを考えると、関係者が苦労に苦労を重ねて軌道に乗せてきた認定こども園制度の実績や課題をきちんと検証した上での提案でなければなりません。

 もちろん、盲腸なんてとんでもない無見識だと私は申し上げたいのです。それは、非公式であろうが、どんなときにも、そんな気持ちを持ってこの新制度をおつくりになってはならないと私は思っております。

 人間の営みは積み重ねが大事なのです。誠実な総括がなされた上での新法とは到底思われません。

 政府においては、認定こども園制度の実績や課題をどのように評価しているのか、また、それを新システムでどのように生かしていこうとしているのか、総理の御見解をお伺いいたします。

 次に、幼児教育、保育の質の向上のためにしっかりと恒久的財源が担保されるのかを伺います。

 この法律は、財源なくしては絵に描いた餅でしかありません。今回の新システムにより、質、量の両面から子ども・子育て支援を充実するためには、財源の確保が不可欠です。新システムにおいては、保育の量的拡充と、職員配置の充実などの質の改善を合わせて、二〇一五年度に一兆円超程度の追加所要額を見込んでいると聞いております。

 税制改革で七千億円を確保するとしても、さらに新システムの運営には三千億円超が必要となりますが、当てのない三千億円、その確保がきちんとできるのでしょうか。どこから手当てなさるのか、総理にきっちりとお答えいただきたいと思います。

 子ども・子育て新システムでは、児童福祉法第二十四条が改正され、これまで市町村に課せられていた保育の実施義務がなくなります。これに伴い、さまざまな懸念の声が現場から起こってきております。

 これまでは市町村が施設を探してくれていたが、これからは保護者が幾つもの施設を回らなければならず、時間に余裕のない保護者には大きな負担となるのではないか。障害を持つなど特別な支援が必要な子供について、これまでは市町村が責任を持って入所施設を探してくれていたが、これからは、保護者が自力で探さなければならなくなる上、こども園の側も手のかかる子供の入所を拒否するのではないか、結局、立場の弱い子供にしわ寄せが生じるということにならないか。

 公明党は、子供こそ主役との理念に基づき、かけがえのない子供たちを最優先する社会づくりを目指しています。今紹介しました不安、懸念が現実のものとなることは許されません。

 施設が不足する場合には市町村があっせんされるとされておりますが、一方で、施設が足りずあっせんされない場合、市町村に責任があるのですか。誰が責任をとるのかを明確にお答えください。市町村が実施義務を行ってこそ、きめ細やかなケアができていたのです。

 これらの不安、懸念について、政府としてはどのような対策を立てられるおつもりか、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

 質の確保についてお伺いいたします。

 学校教育や保育の質の確保、向上がこの法律によって本当に図られると総理はお考えですか。

 公明党は、新しい社会福祉ビジョンにおいて、国や地方自治体が子供の福祉に責任を持つ社会への転換を図るべきであると主張してきており、このために、ハードのみならずソフト面での質の向上を担保しつつ、真に子供の福祉に資する制度の計画的な実現を目指してきたところです。

 しかしながら、政府案については、関係者から、新たな仕組みのもとでは学校教育や保育の質が低下するのではないかという不安の声が聞かれるところであり、こうした懸念を払拭できるような、子供の最善の利益を踏まえた、真に国民の幸福につながるような仕組みになっているかが懸念材料です。

 質の確保にとって最も重要な、職員の配置基準や処遇の改善はどう図られるのでしょうか。総理の御見解をお伺いしたいと思います。

 また、学校としての位置づけを有する総合こども園について、株式会社の参入を認めたことについて懸念の声が上がります。

 安易な事業からの撤退や、営利主義による人件費の圧迫が起こらないと言えるのでしょうか。企業の他の分野における経理とこども園の経理を、本当に明確に区分できるのでしょうか。

 大切な子供を預かっている立場から、教育の質の低下を初めとする、総合こども園に株式会社が参入することへの懸念について、どのように対応されるのか、総理の御答弁をお伺いいたします。しっかりとお答えいただきたいと思います。

 子ども・子育て新システムでは、幼保一体化により保育の量的拡充を図ることで待機児童を解消していくとしています。中でも、新たに創設される総合こども園は、全ての子供に対して質の高い学校教育と保育を制度的に保障するものとして、その役割が期待されています。

 しかし、幼保一体化といっても、幼稚園が全て総合こども園に移行するわけではないし、総合こども園は待機児童の多い三歳未満児の受け入れを義務づけないこととしていますが、総理、御存じですか、待機児童の八割が三歳未満である現状を考えたとき、新システムでは待機児童の解消は期待できません。

 まず、保育所は、一定期間が経過した後に原則として全て総合こども園に移行することが義務づけられていますが、一方で、幼稚園については、そのような義務は課せられていません。

 また、総合こども園では、満三歳未満の子供の受け入れが義務づけられておりません。これは幼稚園からの移行に配慮したのかもしれませんが、これでは、幼稚園から総合こども園に移行を進めるとしても、待機児童の解消には結びつかないのです。

 そもそも、待機児童を解消するのであれば、現行の制度のもとで、都市部など待機児童の多い地域を対象に集中的な対策を講じることで、より迅速に対応できるのではないかと考えます。

 新システムの導入によって待機児童の解消を図ろうというからには、現行と比べ、どのように解消が進むのか、納得できる説明が必要です。待機児童解消について、総理から、私が納得いくようにお答えいただきたいと思います。

 新システムでは施設類型がばらばらで非常にわかりづらいという指摘があります。

 政府案を見ますと、一、総合こども園になるもの、二、三歳未満の児童に限った保育園として残るもの、三、認可外保育施設のうち、基準を満たして指定を受けるもの、四、幼稚園の中でも新システムの指定を受けるもの、五、指定を受けないものと、これまでの保育所と幼稚園が五つの類型の施設に分かれています。皆様方もおわかりにならないのではないかと思います。このような形は非常にばらばらで複雑であり、保護者の方にもわかりにくい仕組みになっております。

 新システムでこのように多くの施設類型が存在することで、果たして利用者が円滑に利用できる仕組みになるのか、もっと利用者にわかりやすい仕組みにするために知恵を絞るべきだと私は考えますが、総理はいかがお考えでしょうか。

 施設型のこども園だけでなく、小規模な保育や家庭的保育など、地域の実情に合った保育の整備が急務と考えますが、新システムではどう取り組むおつもりですか。

 公明党では、地域で支える協働型福祉社会を提唱し、子育てについても、一人一人のニーズに合った、分かち合い、支え合う、協働型のきめ細やかなサービスの仕組みをつくり、それぞれの地域の実情に合った給付を実現することを目指しています。

 大都市では、いわゆる施設型のこども園の整備には限界があります。また、逆に子供の数が減っている地域においては、今までの幼稚園、保育所を維持することすら困難なところも出てくると思います。

 こうした、一見相反する保育ニーズに応えるには、拠点となる施設のみならず、地域の実情に応じた、小規模できめ細やかな保育の整備が必要だと考えています。

 子ども・子育て新システムが、こうした地域のきめ細やかな取り組みを後押しするものでなければ、真に子ども・子育てのためを考えた制度とは言えません。

 そこでお尋ねいたします。

 総理は、小規模な保育や家庭的保育など、地域の実情に合った保育サービスの充実について、今回の子ども・子育て新システムではどのように取り組むおつもりか、お答えください。

 以上、本法案の課題と論点について伺いましたが、冒頭私が申し上げたとおり、子ども・子育て支援施策の実施に当たっては、どこまでも子供の幸福という視点を出発点に制度設計すべきであるにもかかわらず、政府・与党は、社会保障と税の一体改革における消費税引き上げの理由づけとして、若者世代の理解を得るためにこの新システムが利用され、議論が矮小化されることを私は大変危惧しております。

 子育て支援の充実は国を挙げて最優先で取り組むべき課題であり、特に子供の成長と発達に大きな影響を及ぼす幼児教育、保育の重要性に鑑み、本法案については、十分な、誠実で真摯な審議を尽くし、決して、拙速な結論は避けるべきであるということを私は強く強く政府の方々に申し上げたいと思いますとともに、私は、日本の未来に期待しております。二十一世紀の日本を支えるのはこれからの子供です。前政権がしたことを全て否定するような狭量な精神はお捨てになって、先を歩む人間としての正しい姿勢を見せていただくことを強く願い、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 公明党を代表しての池坊保子議員の御質問にお答えをさせていただきます。

 まず最初に、認定こども園の実績や評価についてのお尋ねがございました。

 認定こども園制度は、幼稚園及び保育所の制度を基礎とした上で、幼児期の学校教育と保育を一体的に提供する施設として、幼保一体化の先駆的な取り組みであり、創設以降の実績を見ると、利用している保護者や認定を受けた施設から高く評価をされています。

 このため、子ども・子育て新システムでは、認定こども園の、全ての子供に質の高い幼児期の学校教育及び保育を一体的に提供するという趣旨をしっかりと引き継ぎ、その上で、残された課題に対応するため、二重行政の解消や財政措置に関する公平性の確保などを実現したいと考えております。

 新システムにおいても、認定こども園といったこれまでの先駆的な取り組みの成果を生かしながら、さらに制度の充実を図ってまいりたいと考えております。

 次に、一兆円超の財源確保についてのお尋ねがございました。

 新システムに要する経費については、一兆円超程度と見込んでおり、税制抜本改革による財源により、〇・七兆円程度を確保することにしております。

 今後、さまざまな政策の見直しを行う中で、さらに財源確保について検討を行っていくことにしており、政府として、財源確保のため、最大限努力をしてまいりたいと考えております。

 次に、保育に関する市町村の責務についての御質問をいただきました。

 新システムでは、市町村を中心として、子ども・子育て支援法と改正児童福祉法の二法により、全ての子供の健やかな育ちを重層的に保障していくことにしております。

 具体的には、子ども・子育て支援法では、全ての市町村による計画的な学校教育、保育の基盤整備や、個人給付の実施、公的契約に基づく利用手続、利用支援を行うことなどを規定し、確実な給付の保障を図ります。

 また、改正児童福祉法第二十四条では、市町村は、保育を必要とする全ての子供に対し、必要な保育を確保する措置を講じなければならないことにしております。

 このように、二法が相まって、施設が足りなくなるような状況が生じることのないよう市町村に取り組んでいただくとともに、国としても、市町村に対する必要な支援に全力を尽くすことで、関係する皆様の不安や懸念の解消に取り組んでまいります。

 次に、学校教育や保育の質の確保、向上についてのお尋ねがございました。

 本年三月に少子化社会対策会議で決定した子ども・子育て新システムに関する基本制度では、保育等の量的拡充とあわせて、質の改善に必要な事項について、税制抜本改革による財源を基本としつつ、必要に応じ、それ以外の財源も含め、国、地方を通じた恒久的な財源を確保しながら実施することにしています。

 池坊議員御指摘のような職員配置の充実や職員の処遇改善等については、今回の法律による新システムを実施していく中で、優先順位をつけながら実現を図っていきたいと考えております。

 次に、総合こども園への株式会社参入についてのお尋ねがございました。

 総合こども園については、現在、株式会社の参入が認められている保育所が原則として全て総合こども園に移行すること、待機児童の解消のための量的拡大という強い社会的要請があることを踏まえ、一定の要件を満たした株式会社等の参入も認めるものであります。これは、児童福祉施設としての性格に基づく総合こども園固有の要請によるものであります。

 一方、総合こども園については、公教育としての継続性、安定性、公共性等の確保が必要なことから、区分経理や、資金流出の制限、撤退段階の認可制など、参入、運営、撤退の各段階で厳しい規制を課しました。これを厳正に運用することにより、営利追求のために、総合こども園の運営や地域の学校教育、保育の提供体制がゆがめられることのないよう、制度設計を行ったところであります。

 続いて、待機児童の解消についてのお尋ねがございました。

 現行制度については、潜在的なニーズの把握ができていないことや、公費による支援先が限定的であるなどのために、その枠内では、御指摘のような工夫を行ったとしても、待機児童の解消など、現在の保育をめぐる課題に対応することには限界があると考えております。

 このため、新システムでは、地域住民にとって身近な市町村に、就学前の子供に対する学校教育、保育、子育て支援の権限と財源を集約して、地域のニーズ把握と計画的基盤整備を一元的に実施する体制を整備いたします。

 また、指定制度を導入し、質の確保された認可外保育施設や小規模保育も含め、多様な事業主体の参入による保育の量的拡大を図ることとしております。

 さらに、総合こども園制度を創設することで、幼稚園の協力を得て保育需要に対応することにいたしました。

 これらにより、需要がある地域で機動的に質の確保された保育の量的拡充を図り、速やかに待機児童を解消していきたいと考えております。わかりやすい説明でありますか。

 次に、多くの施設類型が存在することについての御質問がございました。

 新システムにおいては、学校教育、保育に対する地域のニーズがさまざまであることから、市町村が地域の実情に応じて施設を計画的に整備することができる仕組みとしています。このため施設類型が多様になりますが、その上で、こども園給付等の創設により給付の一体化を図るとともに、権限や責任は、地方では市町村に、国では内閣府に寄せて一元的な制度運営を行うなど、できる限り利用者にわかりやすい仕組みづくりを心がけさせていただきました。

 今後、保護者の方々や子育て支援の当事者に、多様な施設類型を設けた趣旨や利点を含め、新制度について広く御理解をいただけるよう、わかりやすい広報や説明に努力をいたしますが、ただいまいただいた御意見、御指摘も踏まえながら、本格施行に当たってはさらに工夫を重ねてまいりたいと考えております。

 最後に、地域の実情に応じた多様な保育の整備についてのお尋ねがございました。

 新システムでは、待ったなしの課題である都市部の待機児童対策とともに、人口減少地域での保育機能の確保も目的としております。

 このため、定員が少ないなどの理由でこれまで財政支援の対象となっていなかった事業であっても、客観的な基準を満たした小規模保育や家庭的保育などについては、新たに創設する地域型保育給付として必要な支援を行い、地域の実情に合った多様な保育の充実に取り組んでまいります。

 以上で答弁とさせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、子ども・子育て新システム三法案について質問します。(拍手)

 民主党は、〇九年総選挙で、チルドレンファーストを掲げて政権交代を実現しました。その中心施策だった子ども手当は、一度も完成形を見ないまま、児童手当に戻りました。私は、増税だけが残ったと、この壇上で討論を行ったばかりであります。

 子供政策にとって大事なことは、国連子どもの権利条約がうたっている子供の最善の利益を実現することです。この理念は、保育所保育指針の中でも「入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない」と明記をされています。

 総理、子ども・子育て新システムは、こうした最善の利益に沿うものと言えるのですか。答弁を求めます。

 子ども・子育て新システムの原型は、自民・公明政権時代から検討されてきた保育制度改革であります。これは、営利企業の参入を広げる保育の市場化と、保育も金次第という世界に変えてしまおうというものです。子供の最善の利益とは全く相入れない制度だと言わなければなりません。

 第一に、新システムは待機児童の解消策になるかという点です。

 保育所が見つからず仕事をやめた、二人目を産むのを諦めたなど、子育て中の親たちが悲痛な声を上げています。

 昨年四月一日現在、保育所を利用している児童は二百十二万人です。加えて、認可外保育施設に入所している児童は十八万六千人もおり、どちらも年々ふえ続けています。待機児童は、依然として二万六千人います。

 少子化が叫ばれながら、保育所の待機児童が解消しない原因を総理はどのように認識していますか。

 待機児童ゼロ作戦から十年、民間保育所は三千百九十二カ所ふえましたが、そのうち三分の二以上は、公立保育所の看板が民営に置きかわっただけです。その上、〇五年の調査では、約十六万人も定員を上回って児童を受け入れていました。つまりは、保育所をつくるのではなく、民営化や要件緩和でしのいできたのが実態です。

 国が、公立保育所の建設費補助をやめ、運営費も一般財源化するなど、公的保育から手を引いてきた責任を認めますか。答弁を求めます。

 新システムでは、市町村が保育のニーズを把握するといいますが、待機という概念がなくなるだけで、実態は変わりません。

 政府は、待機児童数を把握しますか。実態を把握し、その解決のために、必要な認可保育所をつくるべきです。明確にお答えください。

 第二に、公的保育の実施責任についてです。

 現行の児童福祉法第二十四条は、市町村に保育の直接的な実施義務を明記しています。改正案は、これを削除し、必要な保育を確保するための措置を講じなければならないとしました。

 政府は、市町村の役割は後退しないと説明していますが、では、何が違うのか、なぜ削除するのか、答弁を求めます。

 新設される総合こども園には、待機児童の八割を占める三歳未満児の受け入れを義務づけていません。幼保一体化したからといって、単純に待機児童が解消するわけではないのです。

 三歳未満児の受け入れを表明している幼稚園がどのくらいあるのですか。

 政府は、この間、新システムへの反対や懸念の声に押されて、保育の質は落とさないと繰り返し説明しています。しかし、保育の供給が需要に追いつかなければ、どうなりますか。雑居ビルの狭い部屋などを利用した小規模保育でも、どんどん認めていかざるを得なくなるのではありませんか。

 今でさえ詰め込みなのに、基準を自治体の条例に委ね、引き下げることは、断じて認められません。答弁を求めます。

 第三に、保育が介護保険のような制度になるということです。

 保護者は、保育の必要度について、市町村から認定を受けなければなりません。しかし、認定を受けただけでは入所決定とはなりません。保育所と直接契約を結ぶ必要があるのです。

 介護保険では、要介護度によって利用時間の限度が決められ、これを上回れば自己負担、あるいは、利用料を払えなければ、枠があっても使えないという問題があります。

 保育の場合は、短時間と長時間という二つのタイプしかありません。では、短時間と長時間、どこで区切るのですか。

 例えば、パート労働者が短時間と認定された場合、通勤時間などで利用時間をはみ出す場合はどのようになるのか、具体的にお答えください。

 負担についてはどうでしょうか。

 保育料は、現行制度と同様に応能負担だといいます。しかし、パートの給料が全部保育料で消える、こんな悲鳴が上がるほど、保育料は高過ぎます。児童手当が一万円、三歳未満児は一万五千円ですが、もともと三歳未満児の方が保育料も高いのです。ほとんどの世帯が、児童手当から保育料が天引きされ、不足分の請求書が届くだけではありませんか。これでは、子供を産み育てる希望が持てません。

 保育料負担をどうするのか、伺います。

 優先入所が必要な場合、市町村があっせんするといいますが、確実に入所できる担保がありますか。それどころか、保護者は、所得や障害、虐待など、優先入所が必要な事情を書いた認定証を持って、保育所をみずから回らなければなりません。

 保護者が保育所を選ぶのではなく、逆に保育所から選ばれる側になるのではありませんか。お答えください。

 第四に、保育の市場化についてです。

 新システムは、株式会社を初めとする多様な事業者の参入を認め、株式配当も認めます。公定価格であるこども園給付から利益を出そうと思えば、人件費を削るか、保育の質を落とす以外にありません。逆に、特色のある保育、教育と称して、高い利用料を上乗せすることも可能です。

 営利企業と子供の豊かな育ちを支える保育とは絶対に相入れないと思いますが、見解を伺います。

 第五に、総合こども園は、全ての三歳以上児に質の高い学校教育を提供することとされました。

 保育所は、もともと、保育指針により、養護と教育の要素を兼ね備えています。それを、あえて学校教育を義務づけるのはなぜでしょうか。法的拘束力を持つ質の高い学校教育とは、どのようなものですか。

 幼児期という、体も心もつくられていく大切な時期にどういう保育、教育を保障するのかについては、幼稚園、保育所ともに積み上げてきた歴史と経験を尊重し、専門的、国際的な知見も踏まえて検討するべきであります。余りに拙速な幼保一体化は、子供の将来に大きな禍根を残しかねません。答弁を求めます。

 最後に、新システム三法案は、消費税増税がスタートしなければ施行されません。

 今日、子育て世代の貧困率は一二・七%、母子家庭では四八%にも及びます。子育ての充実策に充てるといいながら、生活に追われる子育て世代に増税が直撃するというのでは、少子化に拍車をかけることになりかねません。

 子育ての安心と希望を奪いながら大増税を押しつけることは許されないことを指摘し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 共産党の高橋議員の御質問にお答えいたします。

 まず、子供の最善の利益についてのお尋ねがございました。

 子供の育ちや子育てをめぐる環境は、近年の核家族化や地域のつながりの希薄化、雇用や将来への不安の高まりにより、厳しい状況にあると認識をしております。子ども・子育て新システムは、こうした現状を踏まえ、チルドレンファーストの理念に立つものであります。

 新システムの実現により、地域の実情に沿った学校教育、保育の整備や、幼児期における質の高い学校教育、保育の一体的提供、地域の子育て支援の充実など、子供の最善の利益の実現に向けた取り組みが総合的に進むものと考えております。

 次に、待機児童が解消しない原因及び公立保育所の一般財源化についてのお尋ねがございました。

 待機児童の解消は喫緊の課題であると認識をしていますが、現行の制度のままでは、認可には裁量があり、認可施設には一定の規模を必要とするなど、機動的な対応に限界があること、潜在的なニーズを含め、地域の保育ニーズを把握する仕組みになっていないことなどから、対応が困難であると考えております。

 このため、新システムでは、指定制度の導入により、保育の需要がある地域で機動的に保育の量的拡充を可能とすることで、速やかに待機児童の解消を図ってまいります。

 また、公立保育所の運営費等は税源移譲と一体で一般財源化されていますが、その管理運営は、各市町村が責任を持って対応していると考えております。

 次に、株式会社の保育への参入についての御質問をいただきました。

 新システムでは、株式会社を初めとする多様な事業主体の参入を認めるに当たり、質の確保のための客観的基準を満たすことを求めています。また、参入後も、市町村が報告徴収、立入検査等の指導監督を行います。

 また、教育、保育の質に直接かかわる職員の経験年数、勤続年数などの事項について、保護者が子供にとって最善の選択を行えるよう、情報開示を義務づけます。

 利用料の上乗せ徴収については、国において実費徴収の上限額に関する基準を定めるほか、実費徴収以外の上乗せ徴収を認めるに当たっては、低所得者については免除することなどを要件とする予定であります。

 これらの取り組みにより、多様な事業主体により、質の確保された学校教育、保育が確実に提供される仕組みとしてまいります。

 幼保一体化についてのお尋ねがございました。

 新システムにおける幼保一体化については、学校教育、保育のニーズが地域によってさまざまであることを踏まえ、市町村が、総合こども園、幼稚園、保育所を含めた学校教育、保育の提供体制を地域の実情に沿って計画的に整備できる仕組みとしています。これにより、全ての子供に質の高い幼児期の学校教育と保育を保障することを目指しています。

 また、新システムの制度設計については、一昨年六月に基本制度案要綱を策定した後、関係者が広く参画するワーキングチームを三十五回にもわたって開催し、利用者、事業者、自治体、経済界など、さまざまな声をヒアリングしながら、丁寧に議論を重ねて取りまとめたものであります。したがって、拙速との御批判は当たらないと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣平野博文君登壇〕

国務大臣(平野博文君) 高橋議員から、二つの質問をいただきました。

 最初に、三歳未満児の受け入れを表明している幼稚園についてのお尋ねでございます。

 三歳未満児の受け入れを表明している幼稚園数については承知はいたしておりませんが、調理室の設置支援や、三歳未満児の受け入れに要する経費を見込んだ単価設定など、インセンティブを付与することにより、地域の実情に応じて、待機児童が多い三歳未満児の受け入れが進むように取り組んでまいります。

 次に、質の高い学校教育についてのお尋ねでございます。

 これまで、保育所におきましても、幼稚園教育要領との整合性が確保された保育所保育指針に基づき、教育の質の向上に取り組んできたものと承知をいたしております。

 総合こども園は、学校としての法的位置づけを持ち、幼稚園と同様、幼児の心身の発達を助長し、小学校教育との円滑な接続が必要であるということを法律で明記いたしております。

 新システムにおきましては、小学校就学前の全ての子供に質の高い幼児期の学校教育を保障する観点から、原則として全ての保育所が一定期間内に総合こども園に移行することとしております。

 このことによって、制度的に、幼稚園教諭免許を持つ職員を置くこと、職員の研修を充実すること、学校教育の理念や教育内容、特徴などの情報開示や、教育内容の改善のための自己評価を行うことなど、義務づけられることにより、さらなる幼児教育の質の確保、向上が図られるものと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣小宮山洋子君登壇〕

国務大臣(小宮山洋子君) 高橋議員からの、まず、待機児童の把握と保育の量的拡充についてですが、子ども・子育て新システムでは、保育の需要がある地域で機動的に保育の量的拡充を図るため、全ての市町村が子ども・子育て支援事業計画を策定し、潜在的ニーズを含め、地域の保育需要に応えられるよう計画的な整備に取り組むこと、指定制度の導入により多様な主体が参入できる仕組みにすること、総合こども園制度の創設により、幼稚園の協力を得て保育需要に対応すること、地域型保育給付の創設により、小規模保育事業など多様な保育事業を推進することにしています。こうしたことにより、待機児童の解消に向けた取り組みを進めていくことにしています。

 国としては、各市町村が策定する事業計画を通じて保育のニーズを把握し、市町村が円滑に保育の体制整備を進めることができるよう、しっかり支援していきます。

 児童福祉法第二十四条の改正についてですが、現行の児童福祉法第二十四条は、市町村による保育の直接実施を規定しています。しかし、現在の規定のままでは、保育の必要性と保育所への入所の可否を同時に判断するにとどまり、潜在的なニーズを含め、地域の保育ニーズを把握する仕組みではないこと、都市部での待機児童対策にも、人口減少地域での保育の確保対策にも、対応が不十分であることなどの問題があると考えています。

 そのため、制度全般の見直しを行い、個人給付であるこども園給付等を創設し、保育が必要な子供が保育を受ける権利を保障する、全ての市町村が子ども・子育て支援事業計画を策定し、潜在的ニーズを含め、地域の保育ニーズを確実に把握する、そうしたニーズに応えるよう、指定制度を導入し、多様な主体が参入できる仕組みにすることにしています。

 こうした措置を規定する子ども・子育て支援法と改正児童福祉法第二十四条とが相まって、市町村が保育の保障に関する中心的な役割を担うことにしています。

 保育の質の確保についてですが、こども園、地域型保育の指定基準は、現在の基準をもとに、国で基礎となる基準を定め、それに基づき、市町村が条例で基準を定めることにしています。その際、国は、幅広い関係者で構成される子ども・子育て会議の意見を伺いつつ、質の確保に努めていきます。

 また、新システムでは、税制抜本改革による財源を基本としつつ、必要に応じて、それ以外の財源を含め、国、地方を通じた恒久的な財源を確保しながら、待機児童の解消などのために保育の量的拡充を図るとともに、職員配置基準の改善を初めとする保育等の質の改善を行っていくことにしています。

 長時間利用と短時間利用の認定についてですが、長時間利用の認定は主としてフルタイムの利用を想定し、短時間利用の認定は主としてパートタイム就労の場合を想定しています。

 具体的な認定時間の区分は、保育所等の運営の実態や、保護者の通勤時間などを含む保護者の就労状況の実態に合わせて、子ども・子育て新システムの本格施行に向けて具体的に検討していきます。

 保護者の利用者負担の額についてですが、現在の保育制度では、国が定める額をもとに、市町村が家計の状況等を勘案して利用者負担額を定めていますが、新システムでも、同様に、市町村が定めることになります。

 国が定める利用者負担の水準は、応能負担の考え方に基づき、現在の利用者負担の水準を基本に、所得階層ごと、認定時間、利用時間の長短の区分ごとに負担を設定します。具体的な水準は、子ども・子育て新システムの本格施行に向けて検討していきます。

 障害児や虐待の疑いのある子供などの入所についてですが、新システムでは、市町村は、管内の施設や事業者の情報を整理し、子育て家庭に広く情報提供し、相談に応じることにしています。

 また、市町村が、障害児等の特別な支援が必要な子供など、優先的な入所が必要な場合には、利用可能な施設や事業者のあっせんや、施設等に対する利用の要請を行うことにしています。虐待のおそれがある場合などには、保護者に対する利用の勧奨や入所の措置を行う仕組みにしています。

 さらに、施設や事業者に対しては、応諾義務を課して、正当な理由なく入所を拒否することができない仕組みにしています。

 このように、新システムでは、御懸念のような事態が生じないよう、市町村が確実に利用者を支援する仕組みにしています。(拍手)

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副議長(衛藤征士郎君) 渡辺義彦君。

    〔渡辺義彦君登壇〕

渡辺義彦君 新党きづなの渡辺義彦であります。

 私は、新党きづなを代表いたしまして、子ども・子育て三法案につきまして御質問をさせていただきます。(拍手)

 まず、冒頭から恐縮でございますが、総理、あなたは、国民に対して常に不誠実な対応をとってきたと御自身でお感じになっておられませんでしょうか。

 突然のTPP参加表明や八ツ場ダムの建設工事再開はもちろんのこと、先般の予算委員会において、私が自衛隊の敵地攻撃能力について質問した際、攻撃は米国がやってくれるので、我が国が攻撃能力を保有することも現時点では考えていないと断言されました。

 言いかえれば、自分で自国民を守る気持ちはないと言っているのに等しく、他国に国防を委ね、国家も国民の生命財産をも守る気概や姿勢をあらわせない。このことは、主権を有する国を統治する最高責任者として、まことに不誠実であります。

 我が国において、重要なパートナー、同盟国でありますアメリカにおんぶにだっこだけでは、いつまでたっても、公平公正、そして対等な関係を求められず、沖縄の基地問題も、解決どころか、沖縄県民の負担が長引くだけではないでしょうか。

 とはいえ、本年、サンフランシスコ講和条約締結から六十年目を迎えました。しかし、日本の独立が回復して六十年たった今も、近年でいえば、郵政民営化、保険の自由化、労働者派遣法改正による日本の雇用制度の崩壊など、我が国の進路は外圧によってその方向が大きくゆがめられてきたように感じてなりません。

 消費税増税やTPP参加などの問題は、オバマ大統領の輸出と雇用を拡大するという方針を、我が国の国情を鑑みず、米国の手助けを優先する姿勢そのものではないでしょうか。

 大震災によって新たな復旧復興に立ち向かわなければならない今このときに、新自由主義に再度かじを切ることは許せませんし、内容も曖昧なまま、急ぎ増税ありきの社会保障と税一体改革法案に、新党きづなは、断固反対であります。

 逆立ちしても鼻血も出なくなるまで議論もしないと豪語しておられました菅前総理が前回の参議院選挙で国民にノーを突きつけられました消費税の問題を引き継がれた野田総理、あなたも、財務大臣から総理になられた前任者同様、政権交代時から財務副大臣、財務大臣と歴任される中で、ピノキオのように自分が人形だという自覚のないままに、財務省の操り人形になられたのではないでしょうか。童話の中では、ピノキオはうそをついたら鼻が伸びました。総理の鼻は大丈夫でしょうか。

 選挙期間中、書いてあることは命がけで実行する、書いていないことはやらないんです、それがルールですと自分で言っておきながら、書いていないどころか、三党連立政権合意書に「負託された政権担当期間中において、歳出の見直し等の努力を最大限行い、税率引き上げは行わない」と明言されている約束をほごにして、約束違反そのものではないでしょうか。総理、まだ鼻は伸びませんでしょうか。

 三月二十三日、本議場で、我が党の小林議員が、さきの総選挙で子供をベビーカーに乗せた多くのお母さん方が投票所へ足を運んでいる光景を忘れることができないと述べました。

 子供一人当たり月二万六千円の子ども手当を掲げたのは、子供は国の宝で、子ども・子育てについては社会全体で支えていくという理念があったからだと理解しております。多くの国民が、この思い、理念に賛同していただきました。

 ところが、当初約束した支給額から遠のく一方、結局、子ども手当と抱き合わせとなりました年少扶養控除が廃止となり、実質増税となりました。

 にもかかわらず、今回、社会保障・税一体改革関連法に子ども手当の流れをくむ子ども・子育て支援法を組み入れてきた政府の行為は、国民の信頼を損なうだけではなく、子ども手当に期待していたお母さん方を初め多くの国民に対する背信行為であると断ぜざるを得ません。

 なぜなら、子ども・子育て支援法に規定された支援給付の財源は社会保障・税一体改革関連法によるものであり、支援給付を実現させるには同関連法の成立が必要不可欠だからであります。平たく言えば、消費税増税を認めなければ子ども・子育て支援給付もありませんと言うに等しく、子供を人質にとって増税を要求しているとやゆされても、否定しがたいのではないでしょうか。

 予算の組み替えを初め、公務員改革を含め行財政改革の努力なく、これは選挙で公約、約束したことであります、このことなく、国民とのきずななど、およそ築けるわけはありません。

 こういった政府の背信行為を、国民に、どう説明し、御納得いただくのか、総理に御答弁を求めます。

 次に、小宮山厚生労働大臣にお尋ねいたします。

 小宮山大臣も、野田総理と同じく、子ども・子育て支援を人質にとって消費税増税を行うべきだとお考えですか。

 また、現在、専業主婦は第三号被保険者として年金保険料の納付を免除されています。これは、子育てをするお母さん方にとって大変ありがたい制度であります。

 小宮山大臣は、この保険料免除制度について、おかしな仕組みだと考えておられるというのは本当でしょうか。加えて、配偶者控除も廃止すべきとお考えなのでしょうか。

 小宮山大臣は、熱心なジェンダーフリー論者で、男女雇用機会均等を強く推進しておられる方だと理解しております。今さら私が述べることもなく、配偶者控除を受けるために年収が百三万円以上にならないように意識しながら働く人が多いのが現状であります。

 恐らく、小宮山大臣のお考えとしては、こういった所得制限が女性の社会進出を妨げる要因だということなのでしょうが、果たして、全ての母親が、幼い子供を保育所に預けて働くべきなのでしょうか。

 両親が共働きをしなければ生活ができない家庭が多いのが今の子育て世代の現状でありますが、実際、子供を十分に構い育てられるのは専業主婦であり、幼い子供は母親に育てられていくのが一番よいことは明らかであります。少子高齢化が進む中、このような子育て家族を支え、支援していく制度や手当が求められているのではないでしょうか。

 小さいときから両親とかかわる時間がほとんどなく、手厚いとはいえ保育士さんに育てられた子供たちを多く世に送り出す社会を政府はお望みなのでしょうか。総理と小宮山大臣にお伺いをいたします。

 もしそれが政府の子育て支援の考え方ならば、それは間違っていると指摘せざるを得ません。新党きづなは、親と子の親愛のきずなを大切にした子育て支援策の検討を強く訴えます。

 配偶者控除並びに第三号被保険者制度の廃止を訴えている小宮山大臣は、どうやら、専業主婦というもの自体なくして、女性も全て社会に出て自立するべきだと考えているように思えますが、それが大臣の本意でありますか。御答弁を求めます。

 次に、総合こども園法案であります。

 こども園は、本来、行政改革の一環に位置づけるものであり、消費税増税の問題とは全く別に議論するものであると我が党は考えます。

 実際、私があのあたりに議席をいただいておりましたころ、待機児童の減少や所管省庁の調整などに活発な議論がなされてきましたが、もちろん、このときは、消費税増税の話など、話題になっておりませんでした。

 今回、消費税増税の一部を財源に、利用者補助や施設の拡充に充てるとの理由で関連法案に組み込まれたわけですが、それは筋が違うのではないでしょうか。

 いつから幼保一体化の話が増税と絡み合うようになったのか、また、増税法案が不成立の場合に、幼保一体化について断念するということなのでしょうか。大臣に答弁を求めます。

 私たち新党きづなメンバーは、消費税引き上げの前にやることがあるという考えを一にして結集いたしました。行く行く消費税を上げることも必要なときが来るかもしれません。それは、我々新党きづなも理解をしております。

副議長(衛藤征士郎君) 渡辺君、なるべく簡単に願います。

渡辺義彦君(続) しつこいようですが、税金を上げる前にやるべきことがあるはずだということを強く訴えて、私の質問を終わらせていただきます。

 延長しましたこと、おわび申し上げます。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 渡辺議員からいろいろ御指摘いただきましたけれども、質問は、私に二つでございました。

 まず、子ども・子育て支援法と消費税増税についてお尋ねがございました。

 一体改革では、少子高齢化などの社会状況の変化を踏まえ、社会保障制度について、給付面で子ども・子育て支援などを中心に未来への投資という性格を強めることで、全世代対応型に改革することを目指しています。このため、消費税の充当先をこれまでの高齢者三経費から子育ての分野にも広げ、社会保障四経費として消費税を社会保障財源化することにしています。

 子ども・子育て新システムに消費税財源を向けることは、社会保障の安定財源を確保する中にあって、人生前半の社会保障を強化するものであり、社会全体で子供と子育てを応援していく、子供を大切にする社会をつくることであります。御指摘のような政府の背信行為では全くありません。

 次に、子供を育てることに関する御質問をいただきました。

 子供は、親、保護者が育むということが基本だと思います。その子育てに関して、社会が応援をすることと、議員御指摘の他人に育てられるとおっしゃる概念は、どうしてそう短絡的に結びつくかわかりません。全く異なるものでございます。

 近年の家族構成の変化、地域のつながりの希薄化、あるいは雇用が不安定な中で推移してきているなど、社会情勢の変化において、社会全体で子育てをしっかりと支えていくシステムを構築していくことも、時代の要請、社会の役割であります。

 したがって、子供は親が育てるのか、社会が育てるのかという二者択一で捉えるのではなく、家庭を中心に、子供たちが安定して成長できるよう、次の世代を担う子供たちを社会全体で全面的に支える環境を整えることが重要であると考えます。

 残余の質問については、関係大臣が答弁をいたします。(拍手)

    〔国務大臣小宮山洋子君登壇〕

国務大臣(小宮山洋子君) 渡辺議員からの、子ども・子育て支援法と消費税増税との関係についてですが、一体改革では、子ども・子育て支援などを中心に未来への投資を強化することにより、全世代対応型の社会保障制度の実現を目指しています。

 このため、消費税の充当先をこれまでの高齢者三経費から子育ての分野にも広げ、社会保障四経費として税を社会保障財源化することにしています。

 子ども・子育て新システムに消費税財源を充てることは、人生前半の社会保障を強化する、今回の改革の柱だと考えています。

 第三号被保険者制度のあり方についてですが、第三号被保険者制度については、所得のない専業主婦にも将来の年金を確保するという目的から導入されましたが、保険料を負担せずに基礎年金を受けられることから、保険料を負担している単身女性や自営業の妻などと比較して不公平ではないかということがかねてから指摘されています。

 社会保障・税一体改革大綱では、第三号被保険者制度について、不公平感を解消するための方策について引き続き検討することとされていますので、これに基づいて検討を続けていきます。

 幼い子供を持つ母親の働き方についてですが、現在、若い世代の多くが将来家庭を持つことを望み、二人以上の子供を希望していますが、若い人たちは、将来の生活に現実には不安を抱いて、結婚や出産に関する希望がかなえられていません。

 子供を産み育てるという若い世代の希望を実現する社会を築くということが大切です。このため、仕事と生活と子育ての調和を図りながら、総合的な子育て支援策を推進します。

 なお、社会保障・税一体改革大綱では、今後の配偶者控除のあり方に関して、「配偶者控除を巡る様々な議論、課税単位の議論、社会経済状況の変化等を踏まえながら、配偶者控除については、引き続き検討する」こととされています。

 そして、それぞれのライフスタイルの選択に中立で公平な制度をつくるということが今目的としていることで、専業主婦を否定しているわけでは全くございません。そしてまた、もう一言つけ加えれば、仕事をしながら子育てをしっかりしている人もいるということは御認識をいただきたいと思っています。

 幼保一体化と増税との関係についてですが、子ども・子育て新システムは、保育等の量的拡充とあわせて、優先順位をつけながら、質の改善に必要な事項を実施することにしています。そのためには、国、地方を通じた恒久的な財源の確保が必要です。

 そのため、昨年の六月には、政府・与党社会保障改革検討本部で決定された社会保障・税一体改革成案で、税制抜本改革によって財源を措置することを前提としています。

 新システムの実現は社会保障と税の一体改革の一丁目一番地であり、国民の御理解をいただき、税制抜本改革関連法案とともに関連法案を成立させられるよう、全力を尽くしていきます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 重野安正君。

    〔重野安正君登壇〕

重野安正君 社会民主党・市民連合を代表して、子ども・子育て新システム関連法案に対する質問を行います。(拍手)

 まず第一に、野田総理に質問します。

 子供は、社会の希望であり、未来をつくる力である。政府は、子ども・子育て新システムに関する議論の中で、この文言を繰り返してまいりました。しかし、提出された関連法案が、果たしてそれを忠実に体現する内容になっているのでしょうか。

 消費増税のバスに乗りおくれるなとばかりに強引に進められる大規模な制度転換に、保護者、保育所、幼稚園の職員や経営者、自治体関係者、研究者らが不安を募らせていることを御存じでしょうか。

 総理、新システムの真の目的は何か、国民にわかるように説明を願います。

 二番目に、小宮山大臣に尋ねますが、政府が目指す幼保一体化とは何ですか。逆に、複雑化、多元化してしまっているのではないでしょうか。

 政府は、保育所、幼稚園、認定こども園、認定外施設の四つに分類されますが、新システムでは、ゼロ歳からの総合こども園、三歳からの総合こども園、指定こども園、小規模保育所等の地域型保育、乳児保育所、従来と同じ幼稚園と、六つ以上に分かれます。さらに、上乗せ料金を徴収できる園、私学助成が受けられる園に分かれ、学校教育法、児童福祉法、総合こども園法と、法的な位置づけも園によって異なることになります。

 これが果たして保護者にとってわかりやすい制度と言えるのか。また、厚労省と文科省の縦割りの弊害によって、逆に多元化してしまったのではないか。その点についての答弁を求めます。

 三つ目、日本の認可保育所の設置基準は、OECD諸国の中で極めて低い水準です。さらに、この間の規制緩和によって、質は低下し、しわ寄せは子供たちがこうむっています。

 指定制度の客観的基準は、何をベースに、どの部署で、どのように設定されるのか、伺います。

 また、こども園は急増したが職員が不足したということになれば、職員配置基準の引き下げにつながりかねません。

 人材の養成、労働条件の確保について、どのような対策を考えているのか、答弁を求めます。

 四つ目、児童福祉法二十四条の変更について。

 本法案で一番の懸念は、児童福祉法で明記されている国と自治体による保育の実施責任を変更することです。新システムによって、自治体の役割は、保育の必要性の認定、入園先のあっせん、調整となります。

 自治体の保育の実施責任、児童福祉の観点が後退しかねないことについて、政府の見解を求めます。

 五つ目、消費税との関係について。

 次に、岡田副総理に尋ねますが、新システムの財源は、消費増税分で〇・七兆円、さらに、税制抜本改革以外の財源も含めて一兆円超程度の措置を今後検討するとしています。

 一兆円は、潜在的な待機児童、こども園の基準をどこまで勘案して算出されているのか、その点について明らかにしていただきたい。また、残り〇・三兆円をどのように確保するのか、この点についても明らかにしていただきたい。

 六つ目、保育の産業化、市場化が強まること、子ども・子育て包括交付金への疑問、公立施設の減少が加速すること、学校教育と保育の区別、子供の年齢による画一的な線引きなど、本法案の問題は多岐にわたります。

 新システムによって一番影響を受けるのは子供たちです。行政、大人の都合で子供の育つ環境がゆがめられてはなりません。

 国連子どもの権利条約の基本原則である子供の最善の利益を常に念頭に置き、拙速な結論を急ぐべきではないと考えますが、この点についての総理の見解を尋ね、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 社民党重野議員の御質問にお答えをいたします。

 まず、新システムの目的についての御質問をいただきました。

 近年、核家族化、地域のつながりの希薄化、雇用や将来の生活への不安など、子供の育ちや子育てをめぐる環境の現実は厳しいものがあります。

 子ども・子育て新システムは、こうした現状を踏まえ、御指摘の、子供は、社会の希望であり、未来をつくる力であるとの認識のもと、チルドレンファーストの理念に立つものであります。

 その上で、子供の最善の利益を考慮し、幼児期の学校教育や保育のさらなる充実向上を図り、あわせて、全ての子供が尊重され、その育ちがひとしく確実に保障されるよう、子ども・子育てに関連する制度、財源、給付について、包括的、一元的な制度の構築を目指すものであります。

 新システムの目的や内容については、わかりやすい広報や説明を積極的に実施することにより、子育てを行う保護者の方々や子育て支援の当事者に広く御理解いただけるよう努力してまいります。

 次に、本法案に関する結論の出し方についての御質問をいただきました。

 新システムの制度設計については、一昨年六月に基本制度案要綱を策定した後、子育て当事者を含めた関係者が広く参画するワーキングチームを三十五回にもわたって開催し、利用者、事業者、自治体、経済界など、さまざまな声をヒアリングしながら、約一年半、丁寧に議論を重ね、そのあり方を取りまとめたものであります。

 御指摘の、子供の最善の利益実現のためにも、国会での精力的な御議論をお願いし、本法案の一刻も早い成立に全力を尽くしていきたいと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣小宮山洋子君登壇〕

国務大臣(小宮山洋子君) 重野議員から、三問、御質問をいただきました。

 幼保一体化についてですが、待機児童の状況や学校教育、保育に対するニーズは地域によってさまざまです。

 そのため、子ども・子育て新システムでは、市町村が計画を立て、利用者のニーズに対応した多様な施設、事業を組み合わせて、学校教育、保育の提供体制を整備し、給付、事業を計画的に実施できる仕組みにしています。

 その上で、給付の一体化を行い、学校教育、保育に係る財政措置を一体化したこども園給付を創設し、二重行政の解消と財政支援の充実を図ることにしています。

 また、施設の一体化を行い、法律上の学校と児童福祉施設の両方の性格をあわせ持つ総合こども園を創設し、質の高い幼児期の学校教育、保育の一体的提供を図ることにしています。

 内閣府特命担当大臣を本部長とする子ども・子育て本部を創設し、総合こども園だけでなく、幼稚園、保育所に関しても対外的な窓口機能を一元化するなど、地方自治体や保護者の方々にとってわかりやすい仕組みになるようにしていきます。

 指定基準の認定と保育士の人材確保、労働条件の確保についてですが、こども園、地域型保育の指定基準は、今後、子ども・子育て施策の中核的役割を担うことになる内閣府を中心に、現在の基準を基礎として策定します。その際、幅広い関係者で構成される子ども・子育て会議の意見を伺いながら、質の確保に努めていきます。

 また、保育の量的拡充を進めていくには、保育士の人材確保は極めて重要です。

 このため、実際に就労する保育士が増加するよう、保育士資格を持ちながら保育に従事していない、いわゆる潜在保育士の再就職支援による就労促進、認可外保育施設での勤務経験を受験資格として認めるなど、保育士試験の受験機会の増加といった取り組みを推進していきます。

 さらに、人材の確保とともに、職場への定着を図るため、職員のキャリアアップや処遇の改善を含め保育の質をさらに改善することについても、恒久的な財源を確保しつつ、優先順位をつけながら実施していきます。

 こうした取り組みを通じて、保育士の確保と職場への定着を図り、保育の量的拡充を着実に進めていきます。

 児童福祉法第二十四条の改正についてですが、子ども・子育て新システムでは、実施主体である市町村を中心として、子ども・子育て支援法と改正児童福祉法の二つの法により、全ての子供の健やかな育ちを重層的に保障していくことにしています。

 具体的には、子ども・子育て支援法では、全ての市町村による計画的な学校教育、保育の基盤整備、個人給付の実施、公的契約に基づく利用手続、利用支援などを規定し、確実な給付の保障を図ります。

 また、改正児童福祉法第二十四条では、市町村は、保育を必要とする全ての子供に対し、必要な保育を確保する措置を講じなければならないことにしています。あわせて、虐待のおそれがある場合など特別な支援が必要な子供について、市町村は、利用の勧奨や入所の措置を行うことになります。

 したがって、御懸念のように、市町村の責任や児童福祉の観点を後退させるものではありません。(拍手)

    〔国務大臣岡田克也君登壇〕

国務大臣(岡田克也君) 幼児教育、保育の質の向上のための恒久財源についての御質問がございました。

 御指摘のように、子ども・子育て新システムによる幼児教育、保育の量と質の充実のため、今回の税制抜本改革による財源で、〇・七兆円程度を確保することとしております。うち、量の拡充で〇・四兆円、質の充実で〇・三兆円程度を考えているところであります。

 保育等の量の拡充としては、潜在的な保育ニーズも含めた待機児童の解消を踏まえた子ども・子育てビジョンをもとに、必要となる費用を見込んでおります。

 質の改善としては、職員配置基準の改善などが考えられております。例えば、幼稚園によるゼロから二歳児保育への参入促進、そして、三歳児を中心とした配置基準の改善などであります。具体的な内容につきましては、優先順位をつけながら、地域の実態なども踏まえて、今後検討していきたいと考えております。

 なお、残りの〇・三兆円分については、今後、さまざまな政策の見直しを行う中で財源を確保することとしているところでございます。

 以上です。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   野田 佳彦君

       文部科学大臣   平野 博文君

       厚生労働大臣  

       国務大臣     小宮山洋子君

       国務大臣     岡田 克也君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  齋藤  勁君

       内閣府副大臣   後藤  斎君


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