衆議院

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第22号 平成24年5月29日(火曜日)

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平成二十四年五月二十九日(火曜日)

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  平成二十四年五月二十九日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、原子力安全調査委員会設置法案(内閣提出)及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

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 原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、原子力安全調査委員会設置法案(内閣提出)及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案、原子力安全調査委員会設置法案及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに塩崎恭久君外三名提出、原子力規制委員会設置法案について、順次趣旨の説明を求めます。国務大臣細野豪志君。

    〔国務大臣細野豪志君登壇〕

国務大臣(細野豪志君) 原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案、原子力安全調査委員会設置法案及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 昨年三月十一日の東日本大震災によって発生した東京電力福島原子力発電所の事故は、放射性物質の大量放出という事態に至り、発電所周辺の住民を初めとする多くの国民の生活に深刻な影響をもたらしました。その結果、我が国の原子力の安全に関する行政に対する内外の信頼は大きく損なわれました。

 このような事態の再発を防止し、損なわれた信頼を回復するため、原子力の安全に関する行政の体系の再構築は喫緊の課題であります。昨年六月に国際原子力機関に提出した日本政府報告書においても、今回の事故から得られる教訓を踏まえ、原子力安全対策を根本的に見直すことが不可避であるとしているところであります。

 これを受け、八月には、原子力安全規制に関する組織等の改革の基本方針を閣議決定し、原子力安全規制に関する組織と制度の改革を進めることといたしました。また、十二月には、東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会の中間報告も取りまとめられたところです。

 これらにおいて示されている事故の教訓、検証を踏まえれば、原子力安全規制組織及び原子力事業者双方において、職員に求められる専門性を確保するための体系的な取り組みを促していくことが重要であり、これを通じ、それぞれの組織文化を一新する必要があります。もとより困難な課題が山積しておりますが、今後の長い道のりの第一歩を踏み出す必要があります。

 こうした認識のもとで、損なわれた信頼を回復し、原子力の安全に関する行政の機能の強化を図るべく、原子力安全・保安院の原子力安全規制部門を経済産業省から分離するなど、規制と利用の分離を徹底し、原子力の安全の確保に関する事務を一元化するなど、関係する組織を再編するとともに、規制機関としての独立性を確保しつつ、事故発生時における迅速な対応を確保するため、環境省に原子力規制庁を設置し、あわせて原子力の安全の確保に関する規制その他の制度の見直しを行うため、これらの法律案を提出した次第であります。

 まず、原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、環境省設置法等の関係行政機関の組織に関する法律の改正についてであります。

 環境省に、原子力の規制等を行うことにより、原子力の安全の確保を図ることを任務とする外局として原子力規制庁を設置し、これまで原子力の利用の推進を担う組織においてそれぞれ行われてきた安全規制を一元的に所掌するため、関係行政機関の組織に関する法律について、任務、所掌事務の変更等を行うこととしております。

 第二に、原子力基本法の改正についてであります。

 原子力利用における安全の確保は、国際的な動向を踏まえつつ、放射線による有害な影響から人の健康及び環境を保護することを目的として行うことを原子力利用の基本方針とすることとしております。

 第三に、環境基本法等の改正についてであります。

 従来、環境基本法の適用除外とされていた放射性物質による大気の汚染等の防止のための措置について、環境基本法の適用の対象とすることとしております。

 第四に、原子力の安全を確保するための関連法律の改正についてであります。

 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律について、最新の知見を踏まえた基準に許可済みの原子力施設を適合させる制度への転換、重大事故対策の強化及び運転期間の制限等を行うとともに、電気事業法との関係を整理し、発電用原子炉施設の安全規制体系を見直します。

 また、原子力災害対策特別措置法について、原子力災害の予防対策を充実させ、原子力緊急事態が発生した場合に設置する原子力災害対策本部を強化するとともに、原子力緊急事態が解除された後においても事後対策を確実に実施できるようにすることとしております。

 次に、原子力安全調査委員会設置法案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、原子力安全調査委員会の設置、所掌事務、組織等についてであります。

 原子力利用における安全の確保を確実なものとするため、新設する原子力規制庁に原子力安全調査委員会を設置することとしております。

 委員会は、原子力の安全の確保に関する施策等の実施状況や原子力事故等の原因について調査を行い、必要があると認める場合には、環境大臣、原子力規制庁長官、関係行政機関の長に対する勧告等を行うことができることとしております。

 委員は両議院の同意を得て環境大臣が任命することとしております。

 第二に、原子力安全調査委員会が行う原子力事故等調査についてであります。

 原子力事故等が発生した場合に委員会が行う原子力事故等調査に関し、委員会が行うことができる処分や報告書の公表等について定めることとしております。

 次に、地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 原子力安全・保安院の原子力安全規制部門を経済産業省から分離することに伴い、経済産業省が引き続き産業保安部門の事務を担うため、同省に産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署を設置することとしております。

 以上が、二法案及び国会承認を求めるの件の趣旨でございます。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 提出者塩崎恭久君。

    〔塩崎恭久君登壇〕

塩崎恭久君 ただいま議題となりました原子力規制委員会設置法案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び概要を説明いたします。

 昨年三月十一日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故により、極めて多くの方々が、生活基盤を奪われ、困難な避難生活を余儀なくされております。御本人の意思とはかかわりなく、生まれ育った故郷を離れざるを得ない状況に追い込まれた被災者の皆様方、十六万人にも上り、また、環境の放射能汚染による子供たちの健康への影響を懸念している父母の皆様方、風評被害による売り上げの落ち込みなどの悪影響を受けている方々など、今なお多くの国民の皆様方が、事故の傷跡を背負い、不安にさいなまれながら、日々の生活を送られています。

 我が国の原子力規制体制について議論する本通常国会において政治が果たすべき責任は、今回の事故の深い反省に立ち、原点に立ち返って真摯な議論を行い、二度とこのような事故を起こさない、確固たる規制体制を構築することにあります。国会での議論を通じ、真に安心して暮らせる日本をもたらすことこそ、福島の被災者の方々のみならず、国民の皆様方、そして世界の人々に対して、我々国会が果たさなければならない責務だと思います。

 我が国の原子力規制体制を振り返ってみますと、自民党政権のもとで、長らく安全神話に安住し、真の安全文化が育まれない風土が定着していたことを率直に認め、反省せざるを得ません。

 現在、国会の事故調査委員会が原因究明などの調査をされているところでありますが、今回の原発事故の教訓を総括すると、第一に、原子力を推進する経済産業省に規制を担う原子力安全・保安院が属することにより、利益相反が生じ、規制機関の独立性が欠如する中で、安全が軽んじられてきたことが挙げられます。

 第二に、緊急事態の対応において、本来、規制機関に任せておくべき専門技術的な事柄にまで総理などの政治家が介入して、混乱が生じたことであります。

 昨日、国会原子力事故調査委員会において、菅直人前総理の参考人聴取が行われました。素人の総理が、知人の外部有識者を頼りに、生半可な知識で専門家のつもりになって事故収束の現場に介入し、大混乱を起こしたのは明らかであります。このような、いわゆる菅直人リスクは排除されなければなりません。

 第三に、我が国の原子力規制機関に専門的知識を有した人材と能力が欠落していたこと。

 第四に、原子力規制と放射線モニタリングの所管官庁が異なり、SPEEDIの結果を公表する責任者が明確でなく、情報が迅速に国民に提供されないなどの機能不全が生じ、国民を放射線等から守れなかったことなど、規制が一元化されていなかったこと。

 第五に、自然災害と原子力災害との複合災害ともなった今回の原子力災害において、有効な、そして総合的な対応ができる体制ができていなかったことなどが挙げられます。

 野田総理は、昨年九月の国連ハイレベル会合において、規制と利用を切り離すとともに、規制の一元化を図り、原子力発電の安全性を世界最高水準に高めると述べられました。しかしながら、政府提出法案は、野田総理の高い理想を実現するものとは、到底言えません。

 まず、規制機関の独立性に関して、国際原子力機関、IAEAの安全基準では、規制組織の独立性、すなわち、十分な権限、人事及び予算を持った上で、政治状況や経済条件に関する圧力等に左右されず、他省庁から独立した判断と決定が確保され、さらには、独自の他省庁への勧告権を付与すべき旨が定められています。

 しかし、政府提出法案では、規制機関である原子力規制庁は環境省の外局とされ、長官を初めとする人事及び予算は同省の支配下に置かれています。

 また、既に公表された人事政策では、推進官庁へのノーリターンはごく限定的で、このままでは単なる原子力村の環境省への引っ越しとなる可能性大としか言いようがありません。

 また、保障措置や放射線モニタリング、放射性同位元素の規制やテロ対策などは文部科学省の所管のまま残され、何ら一元化されておりません。

 野田総理大臣が国際的な場で発言された、我が国の国際約束ともいうべき内容が全く徹底されていない政府提出法案では、総理みずからがおっしゃった、安全性を世界最高水準に高めることなどは望むべくもないことは明らかであります。

 原発事故を起こした我が国政府が、規制体制の見直し法案を昨年の臨時国会に提出できず、しかも、今回の政府提出法案は、霞が関の組織防衛のための本格的改革なき第二保安院づくりと見られ、これでは、国際社会から、日本は事故から何も学んでいないと批判をされてもいたし方なく、また、福島の被災者の思いを裏切ることになってしまうと言わざるを得ません。

 今回の原発事故の反省に立てば、新しい原子力規制組織は、国際的な規範であるIAEAの安全基準にのっとり、平時、緊急時のいかんを問わず、原子力推進官庁からの独立はもとより、他の省庁や政治から独立していること、権限、人事及び予算の独立性が与えられた、専門技術的な規制が行える規制機関とすべきこと、職員全員にノーリターンルールを適用し、独立性を保ちながら、専任の職員が教育訓練により専門性を磨き、職能に応じたキャリアパスがある人事制度を構築し、世界の規制機関の専門家と共通言語を持ち、伍して議論ができる職員を養成すること、原子力安全委員会、原子力安全・保安院、原子力安全基盤機構という三層構造を一体化により解消し、専門性の高い実効的な規制機関とすることなどを実現した組織とすることが必要であります。

 以上のような独立性を備えた組織体は、我が国の法体制のもとでは、規制組織全体をいわゆる三条委員会とする以外に方法はありません。

 今回の原発事故のような過酷事故を防止することは、我々政治の重要な責任であります。

 次に、この法律案の具体的内容について、概要を御説明申し上げます。

 第一に、原子力規制委員会の組織について定めております。

 規制委員会は、国際基準にかなった、独立性が高い三条委員会とし、規制機関として必要な権限は全て規制委員会に付与いたします。また、その事務局を原子力規制庁と呼ぶことといたします。

 原子力規制委員会は、安全確保に関する専門的知識と経験を有し、人格が高潔である委員長及び委員四人をもって組織し、委員長及び委員は、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命することとし、委員長は認証官といたします。

 さらに、委員長及び委員の任期中の身分保障を定め、政治などの介入を排除いたします。

 また、原子力規制委員会の職員には広く有為な人材を求めるとともに、高度な技術的知見を有する現在の独立行政法人原子力安全基盤機構を規制委員会のもとの規制庁に統合、一体化し、規制機関の専門性を高めることにしております。

 さらに、事務局の全ての職員にノーリターンルールを適用し、経済産業省などの原子力推進官庁はもちろんのこと、規制委員会の関与が不可欠な安全基準のもとで除染や放射性瓦れき処理事業を担う環境省など、原子力安全に関する利益相反が起こり得る省庁との人事交流も戒め、独立性を確保するとともに、専任の職員の教育、育成による専門性の向上を図ることとしています。

 また、出身官庁や関係業界との癒着防止の徹底のため、退職後に出身官庁の関係機関に天下ることの禁止など、再就職についても規制をいたします。

 第二に、同委員会は、平時のみならず、緊急時においても、他の関係政府機関と緊密な連携協力のもと、独立性を確保いたします。

 原発敷地内、すなわちオンサイトにおける原子炉事故の収束のための専門技術的判断については規制委員会が責任を担い、敷地外、すなわちオフサイトの住民避難などの対応については政府が責任を持つという役割分担がなされます。例えば、使用済み燃料プールに自衛隊が放水する必要がある場合は、原子力災害対策本部長、すなわち総理が防衛大臣に対し自衛隊の派遣を要請することになります。

 また、緊急時の際には、迅速かつ適切な対処を可能とするよう、委員長単独で意思決定ができるなどの内部規範を定めることとしております。

 第三に、原子力規制委員会の任務、所掌事務について定めています。

 原子力規制委員会は、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図ることを任務としております。

 この任務を達成するため、これまで経済産業省や文科省に分散していた、原子力安全、保障措置及び核セキュリティーのいわゆるスリーSに関する事務を原子力規制委員会に一元化することとしております。

 また、原子力規制委員会は、その所掌事務に関し、関係行政機関の長に対する独自の勧告権を有することとしております。

 第四に、原子力規制委員会の職員として優秀かつ意欲的な人材を確保するため、高い専門的能力を有する人材にふさわしい処遇の充実、独自財源の確保など、所要の措置を講ずることを「政府の措置等」として定めております。

 第五に、原子炉等規制法の目的規定を改正し、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること」を加えるとともに、同法の許認可権などを原子力規制委員会に一元化することにしております。

 第六に、原子力災害が生じた場合の関係機関の連携協力体制の整備を図るとともに、原子力災害だけ特別とされている現行の制度について、原子力災害であるか自然災害であるかを問わず、全てに共通した災害対策の新しい枠組みを構築するため、大規模災害に対処する政府組織について抜本的な見直しを行うことを「政府の措置等」として政府に求めております。

 第七に、新設する原子力規制委員会について、この法律の施行後三年以内に、国会事故調査委員会の報告書の内容や最新の国際的基準等を踏まえ、内閣府に三条委員会を設置することを含め検討が加えられ、必要な措置が講ぜられるものとしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。

 何とぞ、十分に御審議の上、この法律案にぜひ御賛同いただけますようお願い申し上げたいと思います。(拍手)

     ――――◇―――――

 原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)、原子力安全調査委員会設置法案(内閣提出)及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山花郁夫君。

    〔山花郁夫君登壇〕

山花郁夫君 民主党の山花郁夫でございます。

 ただいま議題となりました原子力安全改革法案並びに原子力安全調査委員会設置法案などにつきまして、民主党・無所属クラブを代表して質問をさせていただきます。(拍手)

 昨年三月十一日に発生した東日本大震災でお亡くなりになられた方々に心より哀悼の意を表しますとともに、三千名を超える行方不明の方々が一刻も早く発見されること、被災により、負傷された方々、心の傷を負われた方々の回復を心よりお祈り申し上げます。

 また、家を失うなどして避難しておられる方々がついの住みかとできる場所で安心して過ごせるよう、与党として全面的に支援してまいります。

 さらに、我が国の内外を問わず、発災直後から、被災地、被災者に対して心温まる人的、物的支援をいただきましたことに感謝を申し上げますとともに、このことを決して忘れることなく後世に語り継ぎたいと思っております。

 被災地に対して政府・与党も懸命に財政的、人的また物的支援を行ってきておりますが、現地はいまだ厳しい状況にあります。政府は、このような認識のもと、被災地域における社会経済の再生及び生活の再建と活力ある日本の再生のため、国の総力を挙げ、東日本大震災からの復旧、そして、将来を見据えた復興へと取り組みを進めていかなければなりません。

 東日本大震災、そして津波に端を発した東京電力福島第一原子力発電所事故では、原子炉が損傷、メルトダウンを起こし、ベント、冷却水漏れ、水素爆発などにより、大量の放射性物質が大気中や水中に放出されてしまいました。そして、多くの住民が避難を余儀なくされ、農林水産業に甚大な被害が生じました。放出された放射性物質による健康への影響などの不安は、今後何十年も続きます。

 このような事態が生じた原因をしっかりと把握、分析をし、そして、その反省の上に立って、二度とこうした事故を起こさないよう、制度を改革しなければなりません。

 原因の詳細は国会や政府の事故調の報告を待たなければなりませんが、本質的な原因として、私は、原子力の関係者の閉じた世界においては、国民の安全よりも原子炉を中心に物事を考える面があったと思っております。これを根本から改め、国民を守ることを何より優先する考え方に立ち、組織の改革、規制の強化等の制度全体を見直す必要があると考えますが、総理の見解を伺います。

 今回のような事故が、規制庁の設置によって回避できるかどうかについてお尋ねいたします。

 東海第二原発については、茨城県が津波の再評価を行い、護岸かさ上げが行われ、大事故を免れることができました。一方、産業技術総合研究所などからさまざまな指摘があり、東京電力みずからも十五メートルを超える津波を想定していたにもかかわらず、津波被害を過小評価して、対策が後手に回り、重大な事故が起こされました。

 規制庁ができた場合、このようなことを防ぐことができるのか、お伺いいたします。

 組織は外からのチェックがなければ内部の論理でよどむというものは、経験則上明らかであります。今回の事故は、安全規制がいわゆる原子力村の論理にゆがめられていたために引き起こされたものと言うことができましょう。利用と規制を分離し、規制機関の独立性を担保することは重要ではありますが、原子力規制機関をあらゆる機関から独立させ自由にしてしまうと、これまで以上に村の論理がまかり通るおそれもあります。

 そうならないためにも、まず一つとして、外部から監視する仕組みを設けること、二つ目に、規制庁を適切な府省のもとに置くこと、三つ目として、透明性を高めること、この三点が重要であると考えます。

 このような観点から、原子力安全調査委員会についてお伺いします。

 法案では、原子力規制庁の規制の独立性を担保する監視機関として原子力安全調査委員会を置くこととしております。監視機関の中立性、独立性、公平性が法案でどこまで担保されているのか、政府の見解を伺います。

 また、原子力規制庁を、独立性や省庁横断的対応という観点からいたしますと、内閣府に置くというのも一つの考え方ではあります。しかし、規制と推進を厳格に分離するという観点からは、環境省に置くべきだとも考えられます。

 政府案では環境省に置くこととしておりますけれども、その意図についてお伺いいたします。

 次に、原子力規制庁が行う各種評価の客観性、信頼性の担保についてお伺いします。

 これまでの原子力行政は、ともすると、専門家の判断が優先され、国民への情報公開が十分ではありませんでした。そのために、事故やトラブル隠し、検査の丸投げ、記録の改ざんなどが明らかになるごとに、信頼性が揺らぐこととなりました。やはり全ての情報を原則として公開し、厳しく国民からの評価がなされる状況をつくるべきであると考えます。

 このような観点から、評価報告書についても、民主党の事前審査で、概要ではなく評価報告書そのものを公表するという修正を行いました。

 透明性確保のための情報公開について、政府の見解をお伺いいたします。

 原子炉水素爆発という危機的な状況において東京電力が福島第一原発からの全面撤退を要請したかどうかということについて、国会事故調でも調査が進められているところでございます。このような緊急事態において、撤退の可否というのは極めて重大な政治判断であると思いますし、そうした決断が必要となる局面というのは想定しておく必要があるでしょう。

 原子力災害対策特別措置法第二十条の、原子力災害対策本部長である内閣総理大臣の指示権、これは、阪神・淡路大震災を教訓とし、災害対策基本法の改正で創設をされた総理指示権の原子力災害対策版であります。危機対策の最後の手段であり、伝家の宝刀として、行使は必要最小限とすべきと思われますが、一刻を争う事態が生じ得る災害対策の現場においても、独立性を強調する余り、全く総理が指示できないとすることは、国家の危機管理上問題となると考えますが、政府の御認識をお伺いします。

 この点について、衆法の提出者にも見解を伺います。

 緊急時において、政府のあらゆる組織を動員して対応すべきであるにもかかわらず、東京電力福島原発事故対応においては、現地対策本部に各省から参集すべき要員が集まらなかったり、放射能の拡散を把握しながら円滑に避難を誘導することができなかったりしたことから、広域にわたる避難やモニタリング等が必ずしも円滑に行われなかったことも、反省すべき点であります。民間事故調の報告でも、使用済み燃料プールへの注水作業を例に、「今回、最後の砦は、自衛隊だった」としています。

 こうした緊急時の対応は急にできるものではなく、平時から、権限や役割を明確にし、自治体の首長や自衛隊、警察等と調整し、訓練を重ねておくことが不可欠であります。

 自公案では、担当大臣なしに、本来は原子炉の安全確保を任務とする原子力規制委員会がこれを担うとしており、オフサイト対策として現実に機能するのかどうか、疑問がございます。この点について、政府の見解をお伺いいたします。

 また、あわせて、衆法提出者はいかがお考えか、見解を伺います。

 このような事故が二度と起こらないようにするためには、組織の改革だけではなく、規制、制度の見直しが不可欠であります。民間事故調の報告などで、重大事故を想定した対策が行われていなかったこと、最新の科学的知見を反映して安全性を向上させる仕組みが欠如していたことなどが指摘をされております。

 自公案では、組織の見直しだけで規制強化がなされていないように見受けられますが、政府案における原子炉の規制強化は、事故の再発を防ぐために十分なものかについて伺います。

 また、発電用原子炉の運転期間について、法案では四十年とし、基準に適合している場合は二十年まで延長できることとしています。原発の運転は、四十年が原則なのか、六十年が原則なのか、明確に御答弁願います。

 さて、予算の問題でございます。

 規制庁の予算は電源開発特別会計からとなっており、推進と規制の予算が電源開発特別会計に同居することとなります。このような状態で規制庁の予算が十分確保できるのか、疑念も生ずるところであります。

 まず規制庁の予算を十分に確保した上で、残りを利用側に充てるなどの工夫が必要であると考えますが、いかがでしょうか。

 また、利用側の電源立地対策枠と電源利用対策枠の比率の固定化が既得権益化しているという指摘もあり、見直しが必須であると考えますが、見直しの検討についての御見解もあわせてお伺いいたします。

 悲惨な事故から一年が経過をし、法案が国会に提出されているにもかかわらず、ようやく審議が行われるという状況では、国会の信頼問題にもなりかねません。法案に十分でない点があれば、国会でしっかりと議論をすべきであります。十分な審議を行った上で規制と利用の分離による原子力行政の発足を速やかに行うべきであり、これこそが福島原発事故の教訓を生かす方法であることを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 民主党山花議員の御質問にお答えをいたします。

 原子力安全規制組織、制度の改革についてのお尋ねがございました。

 今般の東京電力福島第一原発事故により、大量の放射性物質が放出され、多くの人々の暮らしに深刻な影響を及ぼしました。利用推進と規制とが同じ組織のもとにあるこれまでの原子力安全行政の信頼は大きく損なわれました。二度とこのような事故を起こさないためには、放射線から人と環境を守るとの理念のもとで、組織と制度の抜本的な改革を行うことが必要です。

 このため、政府提出法案では、放射線による有害な影響から人の健康及び環境を保護することを、原子力安全規制の目的として、原子力基本法に明記することとしました。そして、この理念のもと、規制と利用を分離し、独立性を高める組織の再編、緊急時に政府の総力を結集して俊敏に対応できる体制の構築、重大事故をも想定した安全規制の抜本強化を、一体の改革として行うこととしています。

 国民の不安に応えるためにも、一日も早く、新たな組織のもとで新たな規制、制度と防災体制を整えることが急務であると考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣細野豪志君登壇〕

国務大臣(細野豪志君) 原子力規制庁ができた場合、津波対策を初め、今回のような事故の防止が可能かについて御質問をいただきました。

 御指摘の津波対策も含め、既に運転している原子力施設も含めた安全対策について、新たな技術的知見が得られた場合には、これを取り入れて安全対策に万全を期す必要があることが、今回の原子力事故から得られた教訓であります。

 今回の法改正案では、安全性に係る評価や対策を安全基準として新たに設けた際に、これを、既に許可を受けた原子力施設にも適用して、基準を満たす義務を課す規制強化を盛り込んでおります。

 具体的な基準の内容については、今後、新たな規制機関において、地震、津波対策を初めとして所要の取り組みが規制により求められ、今回のような事故が二度と起きないよう、厳格な基準を設けてまいります。

 原子力安全調査委員会について御質問をいただきました。

 原子力安全調査委員会は、原子力規制庁が客観的、科学的な規制を行うことを担保するため、原子力規制庁の規制の内容をチェックする、重要な役割を担うものです。

 委員会は、科学的かつ公正な判断を行うことができると認められる者のうちから、国会同意を得て任命される委員により構成されます。環境大臣が委員を罷免する場合も国会同意を得なければならないこととしており、人事上の独立性も確保されています。

 また、原子力事業者など原子力安全行政に利害関係を持つと考えられる者については、欠格条項を設け、委員になることができないこととし、中立性、公平性を担保しているところであります。

 環境省に原子力規制庁を設置する理由について御質問をいただきました。

 今回の事故の教訓を踏まえると、独立性の観点からは、規制と利用の分離が最重要です。また、原子力安全規制の目的は、人と環境を守ることです。これは、IAEAの安全基準の冒頭にもうたわれているところであります。

 環境省は、環境の保全を任務とし、今般の原子力事故によって生じた除染などの問題に、先頭に立って取り組んでいます。今般の改革により原子力規制庁を環境省のもとに置くことは、二度とこうした問題を起こさないとの決意を持って原子力安全行政に取り組む上で、大きな意義があると考えます。

 透明性の確保のための情報公開について御質問をいただきました。

 御指摘のとおり、原子力の安全に関する情報は広く公開するとともに、原子力規制庁の意思決定プロセスやその根拠等について、国民から見て、オープンで、透明性のあるものにすべきと認識しています。

 言及をいただいた安全評価の報告内容を公表することについても、今般、民主党内における議論を経て、原子炉等規制法を改正し、原子力事業者がみずから原子力発電所の安全性の向上のための評価結果を公表することとしています。

 こうした情報が多数の目に触れることを通じ、事業者みずからが安全性を向上させる取り組みを進め、全体として原子力安全の水準が高まることを期待しています。

 その他、原子力施設に係る安全審査等、原子力規制庁における意思決定は、主として有権者による議論や意見を踏まえるものとなりますが、こうした意思決定の過程を公開し、国民への透明性を徹底していく必要があると考えております。

 緊急時における総理の指示権について御質問をいただきました。

 原発事故の収束は、まず何よりも、事故の原因者であり、事故が発生した施設について熟知している事業者が責任を持って対応することが必要であり、IAEAの基本安全原則においても、この考え方が基本とされています。

 しかしながら、事業者が必要な対応を適切に行うことができない場合には、政府としても、事業者が的確な判断を行い、必要な対応を円滑に行うよう監視、指示することも必要です。これは、基本的には、原子力安全の専門家が科学的な知見に基づいて客観的に行うべきものです。

 こうした前提に立った上で、国民の安全を守るという観点から、例えば、専門家のその判断が適切なタイミングで行われないような場合に、これを補完するものとして、政府として責任のある対応をとれる仕組みになっているということが必要であります。

 したがって、国としての、危機管理上の最低限の、かつ最後の手段として、本部長たる総理の指示権を残すことが不可欠と考えます。

 もちろん、総理の指示権は、危機対策の最後の手段であり、抑制的になされるべきものであります。原子力災害対策特別措置法第二十条第三項において、総理の指示は、特に必要があると認めるときに、その必要な限度において行うことができるとされており、その趣旨が貫徹されているところであります。

 緊急時のオフサイト対策の体制について御質問をいただきました。

 今般の原子力事故対応の教訓を踏まえると、大規模な原子力事故については、事業者と規制機関のみの対処では限界があることも明らかです。オフサイトの住民の安全確保への対応に、さまざまな省庁、関係機関を含め、政府の総力を結集して俊敏に対応することが不可欠であると言えます。

 これらの諸機関の活動を調整し、対策を推進するためには、内閣一体での行政執行の責任のもとで、迅速な意思決定が行われ、危機管理対応が行われる体制とすることが極めて重要であると考えます。

 このような認識から、合議制の独立行政委員会ではなく、環境省の外局として原子力規制庁を設置する法案を閣議決定し、国会に提出しております。

 原子力規制庁においては、住民避難等の安全確保対策の実務責任者となる原子力地域安全総括官を置くなど、オフサイト対応の体制を充実整備し、平時から実効性の高い訓練等を行って、万全を期したいと考えております。

 原子炉の規制強化の具体的措置について御質問をいただきました。

 政府から提案した法案においては、まず第一に、先般のような重大事故を二度と起こさぬよう、実際に事故で起きた事象にとどまらず、重大事故対策を抜本的に強化することとしています。

 具体的には、事故の発生防止はもちろんのこと、万一事故、故障が起きても放射性物質が異常に放出するような重大事故に発展しないように、多様かつ重層的な対策を安全規制で求めることとしています。

 次に、御指摘のように、最新の科学的知見を規制に反映し、既存の施設に対しても適合を義務づける、いわゆるバックフィットの措置を講じます。

 さらに、運転開始から長期間が経過した原子炉については、原則として運転できない仕組みを設けました。

 これらのほか、事業者みずからが安全性向上に向けて積極的に取り組むことの義務づけ、災害発生時における国民の生命、健康を守るための緊急措置などを盛り込んでいます。

 これらの措置により、事故の再発を防止するとともに、先般の事故への対応にとどまらず、原子炉の安全性を抜本的に強化することになると考えています。

 原発の運転期間の制限についても御質問をいただきました。

 運転期間は、あくまで原則四十年にすることを考えております。しかし、原子炉ごとに事情が異なる上、技術進歩の可能性もあり得ることから、一切の例外を排除するということは適切ではなく、一定の要件を満たし、認可を受けた場合には、一回に限り運転期間の延長が可能な制度としております。

 最後に、原子力規制庁の予算について御質問をいただきました。

 政府提出の法案では、推進側省庁からの独立性を確保しつつ、必要な予算を確保するため、特別会計に関する法律を改正し、エネルギー対策特別会計に、新たな経理区分として、原子力安全規制対策を設けることとしております。

 また、今年度予算においても、これまでの原子力安全規制関連の予算から大幅に増額し、エネルギー対策特別会計の約四百億円を初め、総額約五百億円を確保したところであります。

 東日本大震災の発生を受け、現在、関係省庁が一体となって、ゼロベースでエネルギー政策全体の見直し作業を進めているところであります。この結論も踏まえ、原子力を含むエネルギー関係予算の見直しをさらに進めます。その中で、原子力安全規制等について、必要となる予算をしっかりと確保してまいります。(拍手)

    〔塩崎恭久君登壇〕

塩崎恭久君 民主党の山花議員から、二つ、御質問をいただきました。

 まず、原子力災害対策本部長である内閣総理大臣の指示権につきまして御質問いただいております。

 原子炉規制等に関する判断は高度の専門技術性が求められるものであり、このことは、平時であろうと、緊急時であろうとも、変わるものではありません。したがって、緊急時だからといって、原子炉規制等に関し、専門家ではない原子力災害対策本部長から指示を受けることは適当ではないと思います。これは、緊急時だからといって、病気の診断を医師にかわって内閣総理大臣にしてほしいと思う人がいないのと同じであります。

 そこで、自公案では、原子力規制委員会は、原子力災害が発生した場合でも、平時と同様に独立した役割と責任を持ってオンサイトの専門技術的な事項に係る事務を行うべきであるとの考え方から、原子力災害対策本部長が規制権者に対し指示することができるとする規定を削除したところでございます。

 ただし、その他の点について、原子力災害対策本部が中心となって原子力災害への対処に当たるとする枠組み自体を変更するわけではありません。したがって、例えば、自衛隊による原子炉建屋への放水については、原子力災害対策本部長である総理の派遣要請に基づいて実施をすることになり、国家の危機管理上、問題になることはないと思います。

 なお、原子力災害対策本部と原子力規制委員会との間はもちろんのこと、他の政府各部門との緊密な連携協力は不可欠であります。具体的には、原災本部には副本部長として原子力規制委員会委員長が加わるとともに、原子力規制委員会の職員の原災本部や現地対策本部などへの派遣、情報提供、助言等も想定をしております。

 第二番目の質問でありますが、緊急事態に対する平時からの備えについて御質問をいただきました。

 緊急時において災害応急対策が円滑かつ有効に行われるためには、日ごろからの防災対策に関する理解と習熟、さまざまな事態を想定して明確に目的を定めた上での訓練の実施、原子力事業者、国、地方自治体、関係機関の責任体制や連絡調整の事前準備などが非常に重要でありまして、このことは、今般の原子力事故の教訓でもあります。

 この点、自公案では、政府案と同様に、原子力災害対策特別措置法を改正し、原子力災害対策の円滑な実施を確保するための指針の策定、原子力事業者に対する防災訓練の報告の義務づけ等による原子力災害予防対策の充実等に関する規定を新たに設け、これらの事務を原子力規制委員会に所掌させるとしているところでございます。

 御指摘のように、この事務は、自治体との調整から自衛隊や警察との連携協力に至るまで多岐の分野に及ぶことから、一つの行政機関に委ねることが適当かどうかという議論はあったとしても、担当大臣がいるかどうかでその事務の実施に差異が生ずるわけではないというふうに考えております。

 なお、この点について、自公案では、附則第六条第六項に、「政府は、東日本大震災における原子力発電所の事故を踏まえ、速やかに、原子力災害が発生した場合における国、地方公共団体、原子力事業者等の間及び関係行政機関間のより緊密な連携協力体制を整備するため必要な措置を講ずるもの」と規定しており、緊急時の対策を実効的に機能させるための平時からの備えに関する措置についても言及しておるところでございます。

 以上でございます。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 井上信治君。

    〔井上信治君登壇〕

井上信治君 自由民主党の井上信治です。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、ただいま議題となりました、政府提出、原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案等及び自由民主党、公明党提出、原子力規制委員会設置法案について質問をいたします。(拍手)

 冒頭、政府・与党に対して厳重に抗議をいたします。

 本日の本会議は、我々自民党が与党の国会運営に抗議し退席する中、議運委員長の職権の形で強行にセットされたものです。なぜ、このような強引な手法で本会議を開会しなければならないのか、私には全く理解ができません。

 我々自民党は、前田国土交通大臣、田中防衛大臣は大臣の任に値しないとして、参議院において、全ての野党の賛同を得て問責決議を可決しております。しかし、本日に至るまでの四十日間、野田総理はこの国会の意思を無視し続け、問責大臣はその地位に居座りを決め込んでおります。これは、国会軽視で、決して許すことのできない暴挙であります。

 本来であれば、問責大臣が辞任しない限り、野田政権そのものを認めることができないわけでありますが、野党といえども国民の信頼に応える責務があるとの思いから、我々は、社会保障と税の一体改革に関する特別委員会の審議にも応じております。

 また、本日議題となっております原子力規制組織に関する議論は、国民の間でも重大な関心を集めているテーマでもあります。民主党の、ルール無用、野党の足元を見るようなひきょう千万な国会運営は、決して容認できません。

 しかし、この議論を欠席しては、我々も民主党と同じ無責任政党になってしまう、そんな思いから、我々は、堂々と出席をし、みずからの対案を示し、議論を進めるという判断に至りました。

 原発の再稼働がおくれているのは、原子力規制庁の設置がおくれているからだといって、野党のせいにしたがっている方もいるようです。とんでもない間違いです。

 本来、昨年の臨時国会で提出してくるべきであった法案を、ことしの通常国会までおくらせたのは、政府・与党の怠慢にほかなりません。そうした事態を受けて、我々自民党と公明党は、責任野党として、原子力規制のあるべき姿を示す対案を共同提出したのです。

 原発の再稼働についても、国民の信頼を得るために政府ができることは多くあったはずです。しかし、それを全く実行に移してきませんでした。原発の立地・周辺自治体の新たな関与のあり方についても、政府は今に至るまで何ら明確な方針を示さず、当該自治体は、困惑の中、不安と不満を募らせております。

 信頼を基礎とした政治を進めるためにも、改めて、国民の信を問う解散・総選挙を強く要求いたします。

 さて、本当に信頼することのできる原子力規制組織を、今こそ構築しなければなりません。国民の皆様の不安に対し、今、我々政治がすべきことは、国際基準にのっとった形で、国民の信頼に足る規制組織をつくり上げることです。この問題意識に立脚し、両法案に対し質問をさせていただきます。

 国際原子力機関、IAEAの安全基準では、規制組織の独立性、すなわち、十分な権限、人事及び予算を持った上で、政治状況や経済条件に関する圧力等に左右されず、他省庁から独立した判断と決定が確保され、さらには、独自の他省庁への勧告権を付与すべき旨が定められております。しかし、我が国では、この世界標準が守られておりませんでした。

 これまでの大きな間違いは、原子力を推進する経済産業省の中に、規制役の原子力安全・保安院を置いていたことでした。

 政府案では、原子力規制組織を経済産業省から切り離し、環境省に移すことにしており、一見、推進と規制を分離したように見えます。しかし、真に独立した安全規制が行えるかについては、大いに疑問があります。

 政府案では、原子力規制庁長官についても、官邸や環境大臣の人事権の下に置かれ、環境大臣の部下として、政権の意向やエネルギー政策に影響を受けながら規制を行わざるを得ない体制となっております。

 総理にお伺いします。

 なぜ、事故の反省に立って、本当の意味で独立した機関を設けないのでしょうか。民主党は、二〇〇九年のマニフェスト、インデックスでは、独立性の高い三条委員会としての原子力安全規制委員会を創設する旨を約束しておりました。かつては法案まで提出をされております。なぜ、その方針を翻し、またしてもマニフェスト違反を繰り返すのでしょうか。

 一方、自公案では、独立性の高い三条委員会として原子力規制委員会を置くこととされており、独立した判断と決定が担保されております。さらに、事務組織の職員に対するノーリターンルールの徹底などについても言及されております。これらの考え方について御説明ください。

 三条委員会に対する批判として、緊急時にはやはり政治家が対応すべきだという議論があります。例えば、自衛隊が出動するような事態になったとき、出動指示の判断まで専門家である三条委員会に委ねるわけにはいかない、それはやはり政治家が判断しなければならないといった議論です。しかし、この議論にはそもそも誤解があるように思います。

 原子炉に関する問題が発生したときの対処は、専門家が判断すべき事柄であり、素人の政治家が干渉すべきことではありません。日本では、政治家と専門家の役割分担が不明確で、政治家が専門家の領域に口を出すことが可能となっておりました。ここに今回の事故の教訓の本質があり、国際社会が最も問題視したのも、まさにこの点です。

 IAEAの安全基準や諸外国においては、原子力災害時に、基本的には、原発敷地内、すなわちオンサイトにおける原子炉事故の収束については規制組織が事業者とともに役割を担い、敷地外、すなわちオフサイトの住民の退避などの対応については政府が責任を持つという役割分担が明確になされております。

 昨年の六月に取りまとめられたIAEA国際専門家調査団の報告書では、政府と規制組織の役割と責任は、緊急時においても混同すべきではない旨を厳しく指摘しております。

 なぜ、諸外国では当たり前になされている役割分担が、日本ではできないのでしょうか。なぜ、日本では、素人の総理大臣が規制組織に指示を出すような制度をまたつくらなければならないのでしょうか。細野大臣のお考えをお伺いします。

 他方、自公案については、三条委員会だからといって、緊急時にありとあらゆることを三条委員会が管轄するわけではありません。緊急時においても、三条委員会の役割は、あくまでオンサイトにおける専門技術的な事項のみです。自衛隊の出動指示といったことは、原子力災害対策本部のもとで政治家が判断する仕組みになっているのではないでしょうか。

 例えば、使用済み燃料プールに自衛隊が放水する必要が生じた場合に、三条委員会が指示をするようなことにはなっていないと思いますが、この点、法案提出者から改めて御説明をください。

 また、三条委員会に対する誤解として、細野大臣がしばしば口にする、三条委員会は合議体であるから緊急時の迅速な意思決定には向かないというものもあります。この誤解についても、法案提出者から御説明いただければと思います。

 もう一つの問題は、規制が一元化されていなかったことです。

 今回の原発事故では、SPEEDIの試算結果が迅速に公表されなかったことが問題となりました。これは、放射線モニタリングは文部科学省、原子力安全規制は保安院、原子力安全委員会などと、所管がばらばらに分断され、役割分担が不明確で、一貫した責任体制がなかったことに問題がありました。

 平和利用の観点から把握しておかなければならないプルトニウムについても、我が国が保有する約半分が文部科学省の傘下の機関にあると言われております。同省が規制法のもとで行っている保障措置は、原子力規制委員会に移管し、一元的に規制されることが望ましいことは言うまでもありません。

 総理御自身も、昨年九月の国連ハイレベル会合において、規制の一元化を図ると明言されたはずです。

 しかし、政府案では、文部科学省の放射性同位元素の規制とテロ対策、保障措置、環境モニタリングのうち、モニタリングの司令塔機能のみを原子力規制庁に移管することとされ、全く一元化は実現されておりません。文部科学省の強い抵抗があったとも聞いておりますが、なぜ、総理御自身のいわば国際約束とも言える一元化を実行しないのでしょうか。

 一方、自公案では、放射線モニタリングや保障措置を含め、徹底した一元化がなされているように思われますが、その考え方を御説明ください。

 最後に、人材の問題です。

 これまでの原子力安全・保安院や原子力安全委員会では、本当の意味で専門的知見を持った人材が不足しておりました。

 その大きな要因は、やはり、規制組織の位置づけだったと思います。独立性もなく、経済産業省の一部局として人事ローテーションがなされるような組織では、本当に能力と志を持った人材が集まり、育つわけがありません。

 政府案では、こうした問題意識が全く欠落しており、いわば従来の霞が関の論理で、故意に放置されていると言わざるを得ません。ノーリターンルールも、その霞が関の抵抗に屈し、全くの骨抜きとなっております。

 なぜ、わざわざ環境省の中に第二保安院をつくるようなことをするのでしょうか。そんな組織に優秀な人材を集めることは難しいと考えますが、総理の御見解を伺います。

 一方、自公案では、人事交流や退職後の天下り禁止及び今後の原子力規制の根幹を担う人材の育成、養成、訓練などについて、どのような措置、準備をしているのでしょうか。

 法案の附則において、「専門的な知識及び経験を要する職務と責任に応じ、資格等の取得の状況も考慮した給与の体系の整備その他の処遇の充実を図る」とありますが、これらの規定に関する考え方についても御説明ください。

 以上、国民が見守る中、十分な審議が尽くされ、国民の安全と将来を担うにふさわしい原子力規制組織が誕生することを切に願い、質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 自民党井上信治議員の御質問にお答えをいたします。

 まず、原子力安全規制組織の独立性についてのお尋ねがございました。

 今回の事故の教訓を踏まえて、大規模な原子力事故に際して、緊急対応を責任を持って行うためには、内閣から独立した合議制の委員会形式ではなく、内閣の責任のもとで、迅速な意思決定が行われる組織形態が適切であります。

 このような認識に立って、政府提出法案では、環境省の外局として原子力規制庁を設置することとしています。

 民主党政策集インデックス二〇〇九には、三条委員会を設置するとの記述がありますが、今般の政府提出法案は、党の政策を現実の大災害の経験と教訓から発展させ、危機管理対応を強化したものであります。

 IAEAの国際基準は、安全関連の意思決定において規制機関が実効的に独立していること、また、不当な影響を及ぼす可能性のある組織と機能面で分離されていることを求めています。

 政府提出法案では、規制と利用の分離の観点から、原子力安全・保安院の原子力安全規制部門を経済産業省から分離するとともに、政治的影響からの独立を担保するため、原子炉等の規制に係る権限を、法律上、原子力規制庁長官に委任し、独立して判断を行える仕組みとしています。

 さらに、国会同意人事の委員によって構成される原子力安全調査委員会が原子力規制庁の規制の内容をチェックすることにより、その独立性を担保することとしています。

 これらの措置により、IAEAの国際基準が求める独立性を十分確保していると考えますが、独立性の確保のあり方については、今後、国会での御審議の中でしっかりと議論していきたいと考えております。

 次に、規制の一元化についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、試験研究用の原子炉も含め、原子力の安全規制については全て一元化することとしています。加えて、放射線審議会や核セキュリティー対策など、原子力規制の一層の向上に寄与することが期待できるものについても、原子力規制庁に一元化します。

 また、放射線モニタリングについては、原子力規制庁が司令塔機能を担い、関係省庁においてそれぞれの行政目的に沿って実施しているモニタリングを総合調整することとしています。

 一方、核不拡散の保障措置に関する業務や、放射性同位元素の規制については、原子力の安全規制とは異なる等の理由から、今回の法案においては、原子力規制庁に移管する業務には含めなかったものであります。

 いずれにしても、原子力規制庁が担うべき業務については、今回の事故の検証結果や、今後の原子力政策及びエネルギー政策の見直しの結果等を踏まえ、改めて検討してまいります。

 次に、ノーリターンルールについてのお尋ねがございました。

 原子力規制庁の人事については、指定職は例外なく、また、課長クラスも原則として推進側の府省へは戻らない、ノーリターン人事とすることとしております。

 しかしながら、原子力規制庁の立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンとしてしまいますと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念され、円滑な業務実施が困難となると考えられます。

 他方、優秀な人材にとって魅力ある組織となるためにも、原子力規制庁の中で専門性を持った職員を育てていくことは重要であり、長期的観点から、適性のある職員の採用と適材適所の配置をしつつ、将来の管理職や幹部となる人材も含め、職員をしっかりと育成してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣細野豪志君登壇〕

国務大臣(細野豪志君) 緊急時対応の各組織の役割分担について御質問をいただきました。

 緊急時の原子炉鎮圧については、事業者が第一義的に責任を持ち、規制機関は、科学的知見に基づく客観的判断から、事業者の対策に対する指導助言、さらには必要な指示を行うことが基本と考えております。

 そうした前提に立った上で、国民の安全を守るという観点から、例えば、国家的危機となるような重大事故が発生をした場合、規制機関による事業者への指示等が適切なタイミングで行われないような場合に、原子力災害対策本部長たる総理が、政府としての責任ある対応をとれる仕組みとなっていることが不可欠であります。

 今回の事故では、オンサイトからの撤退が検討されました。井上議員の御質問は、いわば、国家の命運を誰に託すかということだと私は考えます。

 総理の指示権は抑制的に行使される必要があります。しかし、国としての、危機管理上の最低限の、かつ最後の手段としては、不可欠な存在であると考えております。(拍手)

    〔吉野正芳君登壇〕

吉野正芳君 自民党井上信治議員の御質問にお答えいたします。

 まず、IAEAの安全基準に照らした規制組織の独立性についてのお尋ねがございました。

 従前の原子力規制組織については、原子力発電の推進を担う経済産業省と、その規制を担う原子力安全・保安院とが一体となっていたため、独立した規制上の判断と決定が担保されず、安全規制がゆがめられる事態が生じておりました。

 自公案では、原子力規制組織を、独立行政委員会、すなわち、いわゆる三条委員会として設置することとし、委員長及び委員は、人格が高潔であって専門的知識及び経験を有する者のうちから国会同意を得て任命されること、法定の欠格事由に該当しない限り罷免されないこと、職権の独立行使が確保されること等を明記しているところであります。これにより、十分な権限、人事及び予算が担保された上で、原子力事業者のみならず、他の行政機関や政治部門からも独立して職権を行使することができると考えます。

 この点、政府案は、環境省の外局として原子力規制庁を設置するものであり、長官人事について、閣議決定を経た上で環境大臣により任免されることになり、政治的影響を受けるなど、独立した規制上の判断と決定が担保されていないと言わざるを得ません。

 また、原子力規制委員会の独立性を確保する上で、原子力安全規制に係る事務組織の職員が、経済産業省等の原子力推進官庁や原子力事業者に属する者から、組織を超えてその人間関係に基づく影響を受けることのないよう、制度的に担保することが重要であります。

 そのための措置が、いわゆるノーリターンルールの設定であります。

 政府の方針では、指定職と政令職が対象とされていますが、政令職の場合は例外が認められ、結局、ノーリターンルールが実質的に適用されるのは指定職の七名だけと聞いております。ノーリターンルールを実効的に機能させるためには、これでは不十分であり、幹部職員のみを対象とするのではなく、末端の職員についても全て対象に含めるのが適当です。

 あわせて、自公案においては、原子力規制庁の職員の職務執行の公正さに対する国民の疑惑または不信を招くような再就職についても規制することとしております。

 このことにより、他省庁の組織の論理に左右されず、原子力利用における安全確保に取り組む原子力規制組織が形づくられることになると考えられます。

 次に、緊急時における原子力規制委員会と原子力災害対策本部の役割分担や、合議体である三条委員会が緊急時に意思決定を行うことについてのお尋ねがございました。

 原子力災害が発生した場合に、原子力災害対策本部が中心となってその対処に当たるとする点においては、自公案と政府案とに差異はございません。

 自公案では、原子力災害対策本部は、原子力施設外、すなわちオフサイトに関する事項全般についてその事務を遂行するほか、原子力施設内、すなわちオンサイトに関する事項であっても、例えば、自衛隊の派遣要請や関係機関への支援要請について、原子力規制委員会と緊密な連携を図った上で、その事務を行うこととなります。

 他方、原子力規制委員会は、原子力災害時にも、平時と同様に、独立した役割と責任を持って、オンサイトの専門技術的な事項に係る事務を行うこととなります。

 その上で、両者の緊密な連携協力が不可欠なため、原子力災害対策副本部長として原子力規制委員会委員長が加わるとともに、原子力規制庁の職員の派遣も想定されております。

 したがって、先ほどの御質問にありました、自衛隊による使用済み燃料プールへの放水の対応などは、原子力規制委員会が指示するなどということはなく、原子力災害対策本部が、原子力規制委員会と緊密な連携を図った上で行うこととなります。

 また、原子力規制委員会が緊急時に意思決定を行うことについての御疑念については、原子力規制委員会は合議によってその意思を決定するものであるから、迅速性を欠き、実効的な対応ができないのではないかということであるかと思われます。

 米国では、スリーマイル原発事故の反省から、緊急時には、NRC委員長が単独でNRCの権限を行使することができるとする制度改正が行われたと承知をしております。

 こうしたことも勘案し、自公案では、緊急時も迅速かつ適切な対処ができるよう、さまざまな事態を想定した上で、委員長等が一堂に会する必要のない会議運営方法その他行動規範を内容とする内部指針をあらかじめ定め、これを適正に運用する旨を明記しているところであります。

 次に、放射線モニタリングや保障措置を含めた一元化についてのお尋ねがございました。

 まず、放射線モニタリングに関し、政府案においては、緊急時の放射線モニタリングと平時の放射線モニタリングの司令塔機能を、原子力規制庁が所管することとされております。

 しかし、緊急時において放射線モニタリングを迅速かつ的確に行うためには、平時より放射線モニタリングを行い、データ等の蓄積とその傾向の把握を行う必要があります。このため、平時の放射線モニタリングと緊急時の放射線モニタリングとを切り離すことはできず、緊急時の放射線モニタリングと平時の放射線モニタリングの司令塔機能だけを一元化しても、有効に機能はいたしません。

 そこで、自公案においては、平時の放射線モニタリングについても、その司令塔機能だけではなく、実施も含め、原子力規制委員会に一元化したところであります。

 また、保障措置に関し、保障措置とは、核物質が平和目的だけに利用され、核兵器等に転用されないことを担保するために行われる検認活動のことであります。原子力利用の安全の確保という観点から、また、政府による意図的な転用を防止するという意味からも、原子力事業者や政府等からの独立性が確保された上で実施されるべきものであると考えます。

 また、原子力安全、保障措置及び核セキュリティーのいわゆるスリーSに関する事務については、原子炉等規制法や放射線障害防止法を中核とする法体系のもとで取り組まれてきたもので、かつ、二〇〇八年の洞爺湖サミットにおいて、原子力基盤整備に当たってのスリーSの確保の重要性が福田総理によって提唱されたという経緯もございます。

 そこで、自公案では、保障措置についても原子力規制委員会に移管し、一元的に取り組む体制を構築したところでございます。(拍手)

    〔柴山昌彦君登壇〕

柴山昌彦君 私からは、今後の原子力規制の根幹を担う人材の育成、養成、訓練等についてお答えいたします。

 原子力利用に関する国際的な動向に精通するとともに高い専門知識を有する優秀かつ意欲的な人材を養成し、継続的に確保することは、原子力規制の質的向上を図る上で、極めて重要であると認識しております。そのためには、政権の思惑や、経済、エネルギー政策や与党の政治圧力などから完全に独立し、原子力の安全性に対し科学的、客観的に責任を持つ体制として、原子力規制組織を構成する必要があります。

 諸外国では、アメリカNRC、フランスASN、イギリスONRなど、いずれも独立組織であり、許認可や検査をみずから行い得る権限を有しています。また、これらの規制組織は、高い専門性を有し、原子力の専門家の職場として高い評価を得ており、国民からも、その規制行政に関し、相当の信頼と権威を得ています。

 こうした体制を確保するためには、他省庁の組織の論理に左右されず、原子力利用における安全の確保に、使命感を持って、長期的に貢献する専門人材を育て上げる制度を確立する必要があります。

 その重要な要素の一つが、ノーリターンルールの徹底であります。

 その上で、自公案では、原子力規制庁の職員に関し、一、給与その他の処遇の充実、二、国の内外の専門家の積極的な登用、三、国際機関や大学等との人材交流の実施、四、研修体制の整備等について、政府に必要な措置をとるよう義務づける規定を設けたところであります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 佐藤茂樹君。

    〔佐藤茂樹君登壇〕

佐藤茂樹君 公明党の佐藤茂樹でございます。

 ただいま議題となりました政府提出の原子力組織及び制度改革の環境省設置法改正案等並びに自民党、公明党提出の原子力規制委員会設置法案について、公明党を代表して質問いたします。(拍手)

 質問に入る前に、一言申し上げたい。

 私は、本法案の重要性は十分認識しておりますが、問責大臣の処理を放置したまま、職権で本会議を開催して議事を進行しようとする、傲慢な与党の姿勢は容認できません。冒頭、まず、政府・与党に強く抗議し、猛省を促すものであります。

 法案の質問に先立ちまして、最近明らかになった原子力委員会の問題について、政府の姿勢をお尋ねします。

 国の原子力政策の基本を決める役割を担ってきた原子力委員会が、あろうことか、核燃料サイクル政策の見直しに当たって、経済産業省や文部科学省や電気事業者ら推進側だけを集めた非公式な会合を二十回以上も重ね、報告案の原案を配付して意見を聞いていたことが明らかになりました。原子力委員会への信用を根本から揺さぶる事態です。原子力委員会は、経緯と事実を明らかにし、姿勢を正すべきです。

 中立公正であるべき政策決定が、非公式な秘密会議の議論に影響されることがあってはなりません。政府は、事態を深刻に受けとめるべきです。電力会社から原子力委員会事務局への出向を取りやめる程度の対策で事を済ますのではなくて、政府として、これまでの議論も不正な点がないか検証するなどの、徹底した実態の解明を急ぐべきです。その結果によって、責任の所在を明確にし、組織のあり方も根本的に改めるべきです。総理の明確な答弁を求めます。

 さて、公明党は、東京電力福島第一原発事故を直視し、今こそ本格的に、原発に依存しない、安全、安心エネルギー社会への移行に取り組むべきと考えています。

 そのためには、思い切った省エネの推進、再生可能エネルギーの導入、化石燃料利用の高効率化を推進し、原発の新たな着工を認めず、段階的に原発を縮小していくべきです。

 その上で、既存の原発については、科学的、客観的な規制を実施し、安全性を確保していかなければなりません。そのために、原子力規制組織のあり方が極めて重要になってきます。

 公明党は、規制組織には独立性、中立性、専門性、強い規制権限が必要であり、内閣から独立した地位が与えられている、独立行政委員会として設置すべきと主張してきました。

 この点において、自由民主党と見解を同じくし、原子力規制委員会設置法案を共同提出したところです。

 以下、法案の内容について、六点にわたってお尋ねいたします。

 第一にお伺いしたいことは、組織改革の最大の眼目である、規制組織の独立性の問題です。

 政府案では、原発の推進を担ってきた経済産業省からの独立性を確保するため、環境省に原子力規制庁を設置するとしています。

 しかし、環境省は、内閣の統括のもとに一体として行政機能を発揮することが求められている、国の行政機関です。環境大臣は、原子力規制庁への指揮命令権を持ち、規制庁の長官を任命します。この枠組みの中で、規制庁は、予算、人事面を含め独立性を保ち、政府の思惑に影響されない科学的、客観的な判断を下せるのでしょうか。

 IAEAの安全基準においては、政府は、規制機関が、その安全関連の意思決定において実効的に独立していることを確実なものとしなければならない、あるいは、政府は、規制機関が不当な圧力または制約なしでその機能を完遂することができることを確実なものとしなければならないと指摘しています。

 このIAEAの安全基準から見れば、政府案の規制庁は、独立性の点では甚だ不十分であると言わざるを得ません。

 政府は、なぜ、かつて民主党が主張していた三条委員会のような独立性の高い規制組織とせず、環境省の外局として規制庁を設置することにしたのか、総理の答弁を求めます。

 一方、自公案では、経済産業省だけでなく、環境省を含む他の政府組織からの規制組織の独立性を強調しています。

 すなわち、現行の原子力安全委員会及び原子力安全・保安院等の所掌事務を引き継ぐ原子力規制委員会を環境省に設置し、同委員会の事務を処理させるために、事務局として原子力規制庁を設置することとしております。そして、この規制委員会は、独立性の高い三条委員会とし、委員長及び委員は独立してその職権を行うことを明記しております。

 このように高い独立性を持った自公案の規制委員会の設置こそが、原子力の安全の確保には不可欠です。

 ただし、三条委員会の設置が望ましいとしても、環境省の外局とすることには疑問が残ります。公明党内においても、本来、規制委員会は、人事院並みの内閣の所轄とするか、公正取引委員会並みに、内閣府に置き、総理の所轄とすることが望ましいという議論がありました。

 そこで、自公案提案者に、発足時に規制委員会を環境省に設置するとした理由、そして規制委員会と環境省との関係、三年後の見直しの方向性について、考えをお伺いします。

 第二に、原子力規制の一元化による機能向上についてお伺いします。

 政府案では、テロ対策などのセキュリティー規制、放射線規制は規制庁に一元化するものの、放射線の日常的モニタリングや、核不拡散のための保障措置は現状のままとなっています。

 これに対し、自公案では、これらを規制委員会に一元化することとしています。

 政府の原子力事故再発防止顧問会議の提言では、政府案の新たなモニタリング体制について、規制庁が司令塔機能を担うこととなるが、実施機能については十分に移管されず、実施部門が司令塔の指示のもとで実効的に機能するか懸念が示されていると述べ、政府案に懸念を示しています。

 この提言を踏まえれば、放射線モニタリングについても、司令塔、実施機能ともに一元化する自公案の方に妥当性があると考えます。

 また、アメリカやフランスでは、保障措置、セキュリティー規制、安全規制が一体的に扱われています。

 政府並びに自公案提案者は、一元化についてそれぞれどのような判断をしたのか、考え方をお伺いします。

 第三に、規制組織の中立性についてお伺いします。

 規制組織の業務は、ゆめゆめ事業者を初め利害関係者の意向に左右されるものであってはならず、科学的、客観的な知見に基づいた中立的なものでなければなりません。

 冒頭に原子力委員会の問題について指摘しましたが、それ以外にも、政府にかかわる原子力専門家の中に、寄附金や研究費の名目で、業界との間で多額の金銭授受が行われていた問題も明らかになりました。

 今回の法案で、こうした状況を一新し、どのように規制組織の中立性を確保しようとしているのか、総理の答弁を求めます。

 また、自公案では、規制委員会に高い独立性を与えており、中立性が一段と重要になってきます。自公案提案者は、規制委員長、委員の人事を含め、どのように中立性を確保する考えか、お伺いします。

 第四に、規制組織職員の中立性や専門性の確保方策について質問します。

 自公案では、独立行政法人原子力安全基盤機構における専門知識の蓄積を十分活用することを目指し、同機構の職員を基本的に原子力規制庁の相当の職員とすることを定めています。

 その上で、規制庁の職員は、幹部職員のみならず、それ以外の職員についても、利用推進側の行政組織への配置転換を基本的に認めないこととするとともに、職務執行の公正さに対する国民の疑惑を招くような再就職を規制することを求めています。

 一方、政府案は、安全基盤機構との一体化は構想されていません。

 そして、各省から規制庁に移った職員のうち、指定職七人については、利用推進側の府省には復帰させないノーリターンルールを適用し、課長クラス十二人については原則としてノーリターンとするが、一般職員については適用しないとしております。

 しかし、規制庁の定員四百八十名のうち、最大でわずか十九名程度にノーリターンルールを適用するという方針では、到底、規制庁は、推進側の経済産業省等の影響力から独立した組織にはなり得ないのではないでしょうか。

 私は、中立性、専門性を持った規制庁を構築するために、原子力安全基盤機構との一体化を図るとともに、職員のノーリターンルールを徹底すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 第五に、政府案では、世界最高水準の規制を導入するとして、最新の知見を既存施設にも反映するバックフィット制度を導入するとともに、発電用原子炉について、四十年運転制限制を導入しています。

 四十年制限制については、原発の老朽化対策として評価する意見がある反面、四十年まで安心という保証はどこにもないと危惧する声もあります。また、例外として二十年を超えない範囲で運転延長を認める例外規定を設けたことについても、四十年制限制がなし崩しになるのではないかと懸念する声があります。

 安全性の面から見て、発電用原子炉の運転を四十年で制限する根拠は何なのか、また、二十年を限度とする運転延長を認める例外規定を設けられたのはなぜなのか、総理の科学的根拠に基づく合理的な答弁を求めます。

 第六に、緊急時対応と規制組織の役割について質問します。

 政府事故調や民間事故調の報告書を読むと、政府首脳が、原子力災害対策における役割分担に十分な認識がないまま原子炉の鎮圧にのめり込み、本来政府が最大に力を注ぐべき住民の避難に瑕疵があったのではないかという疑いが浮かび上がってきます。

 その一方で、官邸の原子炉鎮圧に対する助言は、ほとんどの場合、効果を上げていないことが報告されています。特に民間事故調は、官邸の現場介入が事故対応に無用な混乱をもたらしたと強調しています。やはり、緊急時における各機関の役割分担を明確にしておくことが重要です。

 ところが、政府案においては、規制庁が総理の指揮する原災本部の事務局となり、政府全体での対応の中心とするとしております。これは、政府と規制機関の役割を混然一体とし、事業者の責任範囲に介入し、無用の混乱や事態の拡大を招きかねない体制と危惧します。

 政府は、何が緊急時における規制組織の役割と考えるか、また、総理や政府が原子炉鎮圧について介入する是非についてどう考えるか、お伺いをいたします。

 この点について、自公案では、総理が原子炉災害防止のための事業者への命令を指示する権限を認めていません。そして、発電所内における専門技術的な事項に関しては、規制委員会が原子炉等規制法上の監督官庁として権限を行使することを明確にしています。

 自公案提案者は、何を緊急時における規制組織の役割と考えるか、また、地震等との複合災害をも考慮した防災体制はどう構築するか、見解を伺います。

 最後に、ことし三月、原子力安全委員会は、原発の安全に関する安全設計審査、耐震設計審査、防災の三つの指針の改定案をまとめました。しかし、この見直し案も、新たな規制組織の発足を待って、たなざらしにされています。

 このような状態で、どうして原発の再稼働について国民の理解が得られるでしょうか。しっかりとした規制組織を、慎重な議論の上、できるだけ速やかに発足させ、新しい安全基準を策定して、原子力の安全の確保を図っていくべきであると訴え、私の質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 公明党佐藤茂樹議員の御質問にお答えをいたします。

 まず、原子力委員会のあり方などについてお尋ねがございました。

 原子力委員会の原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会において、核燃料サイクルの選択肢の定量評価を行ったところであり、コストや廃棄物量などのデータ提供等を受けるため、事業者を含めた関係者を集めた会合を開いたと承知をしております。

 同小委員会の報告書は、小委員会の場で委員の意見を踏まえて取りまとめられており、一部報道にあるような、事業者の意見を受けての書きかえ等の事実関係はないと承知しておりますが、国民に疑念を招くとすれば問題だと考えております。

 原子力行政の遂行に当たっては、国民の信頼確保が必要であり、今後、このような疑念を招くことがないよう、当該小委員会の運営のあり方の見直しも含め、十二分に留意して対応してまいりたいと考えております。

 次に、原子力安全規制組織の独立性についてのお尋ねがございました。

 今般の事故対応の反省点を踏まえるならば、大規模な原子力事故に際しては、政府の総力を結集して俊敏に対応することが何よりも重要であります。そのための組織としては、内閣から独立した合議制の委員会形式ではなく、内閣の責任のもとで、迅速な意思決定が行われ、適切に危機管理対応が行われる組織が適切であると考えます。

 このような認識に立って、政府提出法案では、環境省の外局として原子力規制庁を設置することとしております。

 規制組織の独立性の観点からは、規制と利用の分離が最重要であります。

 政府提出法案では、原子力安全・保安院の原子力安全規制部門を経済産業省から分離することにより、これを徹底することとしています。また、原子炉等の規制に係る権限は、法律上、原子力規制庁長官に委任することにより、独立して判断を行える仕組みとしています。さらに、国会同意人事の委員によって構成される原子力安全調査委員会が原子力規制庁の規制の内容をチェックすることにより、その独立性を担保することにしています。

 これらの措置により、IAEAの国際基準が求める独立性を十分確保していると考えますが、独立性の確保のあり方については、今後、国会での御審議の中でしっかりと議論をしていきたいと考えております。

 次に、規制組織の中立性についてお尋ねがございました。

 産学連携は、研究成果を上げ、これを実社会で利用することを進めるために有効であり、大学等の専門家と民間企業等が連携協力することは、本来、奨励されるべきものであります。他方、佐藤議員が御指摘のように、大学等の専門家が原子力安全の規制の許認可等に関与する場合、規制対象となる事業者との関係で利益相反が生じず、中立的立場で参加することは重要であります。

 このため、政府が提出している法案においては、原子力規制庁の原子力安全調査委員会の委員に係る要件を法定しています。これに加え、原子炉等規制法に基づく許認可等に当たって意見を聞く審査専門委員についても、利益相反について厳格なルールを設定し、中立性を確保する必要があると考えております。

 次に、ノーリターンルール等について御質問がございました。

 原子力規制庁の人事については、指定職は例外なく、また、課長クラスも原則として推進側の府省へは戻らない、ノーリターン人事とすることとしております。

 しかしながら、原子力規制庁の立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンとしてしまいますと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念され、円滑な業務実施が困難となると考えられます。

 他方、原子力規制庁の中で専門性を持った職員を育てていくことは重要であり、長期的観点から、適性のある職員の採用と適材適所の配置をしつつ、将来の管理職や幹部となる人材も含め、職員をしっかりと育成してまいります。

 また、原子力安全基盤機構との一体化については、行政組織の肥大化を招くこと、公務員制度の枠内では独立行政法人と比べて柔軟な人事管理が難しいことなどの課題について、慎重な検討が必要であると考えております。

 次に、原発の運転期間についてのお尋ねがございました。

 一般的に、設備、機器等は、使用年数の経過に従って、経年劣化等によりその安全上のリスクが増大することから、こうしたリスクを低減するため、発電用原子炉の運転期間を制限することとしています。

 運転期間の年限に関しては、原子炉設置許可の審査に際して、重要な設備、機器等に係る設計上の評価が運転開始後四十年の使用を想定して行われていることが多いことを考慮し、原則四十年としています。

 なお、米国でも、四十年で運転認可を更新する制度を採用しています。

 また、個々のプラントごとに施設の状況が異なることも踏まえ、運転期間の例外を一切排除するのではなく、一定の要件を満たして認可を受けた場合には、運転期間の延長を可能とする余地も残しております。ただし、最新の技術的な知見を踏まえた技術基準を満たすことが求められることから、実際に延長が認められるのは例外的な場合に限られると考えております。

 最後に、緊急時における対応についてのお尋ねがございました。

 緊急時における原子力規制組織の役割は二つに大別され、その一つは、事業者のオンサイトでの原子炉事故鎮圧対応の監督や支援、もう一つは、原子力災害対策本部の事務局として、政府全体のオフサイト対策を支えることと認識をしております。

 特に、緊急時の原子炉鎮圧の対応については、事業者が一義的に責任を持ち、規制機関は、科学的知見に基づき、事業者の対策に対する指導助言、さらには必要な指示を行うことが基本と考えております。

 そうした前提に立った上で、国民の安全を守るという観点から、例えば、規制機関による事業者への指示等が適切なタイミングで行われないような場合に、原子力災害対策本部長たる総理が、政府として責任のある対応をとれる仕組みとなっていることが必要であります。

 したがって、国としての、危機管理上最低限の、かつ最後の手段であり、抑制的に行使されるものとして、本部長たる総理の指示権が存在することが不可欠と考えております。

 残余の質問については、関係大臣が答弁をいたします。(拍手)

    〔国務大臣細野豪志君登壇〕

国務大臣(細野豪志君) 原子力に関する事務の一元化について御質問をいただきました。

 今回の法案では、原子力の安全規制については、全て一元化することとしています。加えて、放射線審議会など放射線防護に関する業務のうち、原子力規制の一層の向上に寄与することが期待されるものについては、原子力規制庁に一元化することとしております。

 また、放射線モニタリングについては、今回の事故の反省を踏まえて、原子力規制庁がモニタリングの司令塔機能を担い、関係省庁においてそれぞれの行政目的に沿って実施しているモニタリングを原子力規制庁が総合調整することとしております。

 一方、核不拡散の保障措置に関する業務につきましては、原子力発電所の安全規制そのものではないこともあり、検討課題として、今年末まで協議を継続することとしているところであります。

 いずれにしても、原子力規制庁が担うべき業務については、昨年八月時点の閣議決定において示されているとおり、今回の事故の検証結果や、今後の原子力政策及びエネルギー政策の見直しの結果等を踏まえて、改めて検討してまいりたいと考えております。(拍手)

    〔江田康幸君登壇〕

江田康幸君 公明党の佐藤茂樹議員の御質問にお答えいたします。

 まず、原子力規制委員会を環境省に設置することとした理由、原子力規制委員会と環境省との関係、また、三年後の見直しの方向性について御質問をいただきました。

 原子力規制委員会を環境省に設置することとした理由につきましては、政府がこれまで原子力安全規制のための新組織を環境省に設置するということで準備を進めてきたという事実を踏まえ、自公案でも、原子力規制委員会を環境省に設置することとしたところでございます。

 もっとも、原子力安全規制に係る事務に関しましては、例えば、核物質の防護に係る事務が我が国の安全保障にかかわるものであるなど、広範な分野にわたる政策課題への対応が必要になります。

 この点を踏まえますと、現時点においても、内閣府に原子力規制委員会を設置する方が適当ではないかとの考えもあり、今後、この法律の施行状況、国会事故調査委員会の報告書の内容等を踏まえて、三年以内に組織のあり方について検討がなされる際に、内閣府に原子力規制委員会を設置するという案も含めて御検討いただきたいと思っております。

 なお、原子力規制委員会と環境省との関係につきましては、原子力規制委員会を三条委員会として設置することとし、委員長等の身分保障や、職権の独立行使を明確に定めていることから、原子力規制委員会が行う業務に対し環境大臣の影響が及ぶようなことはありません。

 次に、保障措置や放射線モニタリングに関する一元化について御質問をいただきました。

 まず、保障措置についてでございますが、保障措置とは、核物質が平和目的だけに利用され、核兵器に転用されないことを担保するために行われる検認活動のことであり、原子力利用の安全の確保という観点から、また、政府による意図的な転用を防止するという意味からも、原子力事業者や政府等からの独立性が確保された上で実施されるべきものでなければなりません。

 次に、放射線モニタリングについてですが、政府案では、緊急時の放射線モニタリングの実施と平時の放射線モニタリングの司令塔機能のみを、原子力規制庁が所管することとされております。

 しかし、緊急時において放射線モニタリングを迅速かつ的確に行うためには、平時より放射線モニタリングを行い、データ等の蓄積とその傾向の把握を行う必要があるのであって、両者を切り離しては有効に機能しないのではないかと考えております。

 原子力安全、保障措置、核セキュリティーのいわゆるスリーSに関する業務については、原子炉等規制法や放射線障害防止法を中核とする法体系のもとで取り組まれてきたもので、かつ、二〇〇八年の洞爺湖サミットにおいて、原子力基盤整備に当たってのスリーSの確保の重要性が提唱されたという経緯もございます。

 そこで、自公案では、保障措置や放射線モニタリングについても原子力規制委員会に移管し、一元的に取り組む体制を構築するとしたところであります。

 次に、原子力規制委員会の委員長及び委員の任命について御質問をいただきました。

 御指摘されたように、原子力規制委員会の委員長及び委員については、中立公正の立場から、みずからの専門知識、経験のみに基づき、独立した規制上の決定と判断ができる者でなければなりませんし、また、今般の原子力事故を受けて、原子力利用における安全の確保が喫緊の課題であり、国民からも強く望まれている中で、人格の高潔性や高い使命感が求められております。

 このようなことを踏まえますと、政府も、適切な判断のもとに、原子力規制委員会委員長及び委員の人選案を提示することになると思われますし、また、その場合には、この同意人事案件が政争の具となり、委員長や委員ポストが空白になるようなことは考えられず、国会においても適切な判断がなされるものと確信しているところであります。

 次に、緊急時における原子力規制委員会及び原子力災害対策本部との役割分担について御質問をいただきました。

 原子力災害が発生した場合に、原子力災害対策本部が中心となってその対処に当たるとする点においては、政府案も自公案も差異はございません。

 自公案では、原子力災害対策本部は、オフサイトに関する事項全般について、その事務を遂行するほか、オンサイトに関する事項であっても、例えば、自衛隊の派遣要請や関係機関への支援要請についても、原子力規制委員会と密接な連携を図った上で、その事務を行うこととなります。

 他方、原子力規制委員会は、原子力災害時にも、平時と同様に、独立した役割と責任を持って、オンサイトの専門技術的な事項に係る事務を行うことになります。

 具体的に申し上げますと、原子力発電所で事故が発生した場合、原子力事業者が応急措置を講ずる第一義的な責任がございますが、原子力規制委員会は、緊急の必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、災害防止のための必要な措置を講ずることを命ずることができます。この点について、原子力災害対策本部長である内閣総理大臣から指示を受けることはございません。

 もちろん、原子力規制委員会は、オフサイトに関する事項についても、原子力災害対策本部に対し、専門技術的な知見や情報を提供することとなります。

 これらのことは、IAEA安全基準に定める、規制機関は、政府と管轄当局に対して助言をし、専門的役務を提供するとの規定の趣旨に合致するものであると考えております。

 その上で、両者の緊密な連携協力は不可欠なため、原子力災害対策副本部長として原子力規制委員会委員長が加わるとともに、その職員の派遣も想定されているところでございます。

 最後に、地震や津波との複合災害も考慮した防災体制のあり方について御質問をいただきました。

 今般の原子力事故に際しては、複合災害ということもあり、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力災害対策本部や、災害対策基本法に基づく災害対策本部など、さまざまな組織が創設され、指揮命令系統の混乱が生じたものと認識しております。

 また、現行の法体系においては、災害のうち、原子力災害だけ特別な対策の制度が設けられておりますが、そもそも、被害の拡大防止や住民避難など、災害時において政府が講ずべき措置の基本は同じである以上、原子力災害であるか自然災害であるかにかかわらず、災害全てに共通した対策の枠組みと、災害発生時には、人的、物的体制を直ちに整え、包括的かつ一貫した指揮命令のもとに対策に当たる組織を構築すべきではないかと考えております。

 もっとも、原子力災害への対処に関しては、原子力の専門技術的な知識、経験が必要となることから、原子力規制委員会が必要な知見や情報を提供する体制が不可欠であることは言うまでもありません。

 なお、米国では、国土安全保障省のもとに連邦緊急事態管理庁、FEMAが設置され、あらゆる災害に対応することとされております。このような組織や制度も参考とすべきではないかと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 吉井英勝君。

    〔吉井英勝君登壇〕

吉井英勝君 私は、日本共産党を代表して、政府提出の原子力規制組織関連法案及び自公両党提出の法案について質問します。(拍手)

 法案は、昨年三月十一日の東京電力福島第一原発事故を受けて提案されてきたものであります。

 原発・エネルギー政策を考える際、忘れてならないことは、いまだ事故の収束が見えない中で不安な日々を送る被害者の方々のことであります。被害の補償と復旧復興がはかどらず、避難者と被災者の暮らしと権利の回復は進んでおりません。

 事故が浮き彫りにしたものは、東電初め電力業界と歴代政府が原発安全神話に浸り、原子炉メーカー、鉄鋼、ゼネコン、メガバンクなど財界中枢が築いてきた、原発利益共同体ともいうべき構造の根本的な問題です。

 加害者である東京電力初め利益共同体の責任をどのように果たさせるのか、まず、総理の基本的な見解を聞くものであります。

 原発事故を受けて根本的に見直すべきは、単に原子力規制行政だけではありません。戦後の原子力政策及びエネルギー政策に係る法体系の全体であります。

 そこで、法案について、三つの角度から質問します。

 第一は、原子力利用の推進と規制の分離、独立性の問題です。

 もともと、一九九九年のジェー・シー・オー事故の後、十一月に、日本共産党は、原発の推進機関と規制機関とは完全に分離しなければならないと指摘しました。これは、国際的に、我が国も締結した原子力の安全に関する条約でもうたわれているものであります。規制機関については、その任務を遂行するため、権限、財源、人的資源を与え、十分な体制を確立することを求めてきました。

 ところが、自公政権は、事もあろうに、原発推進の経済産業省のもとに原子力安全・保安院を置いたのであります。この致命的な誤りが、今回の事故に結びついたのではありませんか。両案提案者に問うものであります。

 政府案は、この誤りを認めず、肝心の権限、人材、財源の独立性の原則が守られておりません。法案で、権限のある原子力規制庁を置くとしている環境省は、原発推進の一翼を担ってきたではありませんか。

 環境省は、これまで、原発立地アセスメントでノーを言ったことは一度もありません。そればかりか、二〇〇九年、九州電力川内原発のアセスメント発表時に、当時の環境大臣は、地球温暖化対策のために原発を推進すると記者会見で明言しました。政府の温暖化対策基本計画でも、今国会に提出している地球温暖化対策基本法案でも、原発推進を法文上に明記しています。

 もし、環境省が原発推進機関でなく規制機関であるというのなら、以上の三点を反省し、少なくとも地球温対法案は撤回するか修正しなければなりません。明確な答弁を求めます。

 民主党は、二〇〇二年と二〇〇三年に、日本共産党、社民党と三党共同提案で、独立性の強い、旧国家行政組織法の第三条委員会として、原子力安全規制委員会法案を提出しました。政権につくと、独立性の強い公正取引委員会型の規制機関とすることをやめてしまったのは一体なぜなのか、明らかにしていただきたいと思います。

 人材の独立性という点ではどうか。

 原子力規制組織の職員には、経産省、文科省などの職員を充てると言われています。規制組織には、推進組織の全ての職員を戻さない、いわゆるノーリターンルールを徹底することが必要です。

 また、原子力委員会、原子力安全委員会事務局には、電力、原子力産業など民間企業からの在籍出向が常態化し、原発関係大企業の霞が関出張所となっています。総理、法案は、これを改めるものになっていないのではありませんか。

 しかも、最近明らかになった原子力委員会と原発関係業界の勉強会と称する秘密会合は、核燃料リサイクルの中止、見直しや、使用済み燃料の処理処分問題を業界に有利に修正しようとするものであり、断じて許せません。事の経緯と真相をどのように明らかにするのか、総理としてはっきり答弁されたいと思います。

 財源面の独立性はどうか。

 エネルギー特別会計の電源開発促進勘定に名前だけの安全規制対策を設けても、原発推進を目的とする電源開発促進税を財源としていることに手をつけないのでは、規制のための財源とはならないのではありませんか。答弁を求めるものであります。

 環境基本法を一部改正して、これまで放射性物質による汚染について対象外としていたものを環境基本法の中に入れることにしたのは、当然のことであります。

 しかし、政府は、放射性物質の海洋投棄についてはロンドン条約によって禁止されているのに、昨年、東京電力の低レベルと称する大量の放射性物質である汚染水を海洋投棄しても、ロンドン条約違反に当たらないと強弁してきました。これからもこの立場をとるのですか。はっきり答えていただきたい。

 また、深刻な湖沼や太平洋岸の海底にたまっている放射性物質による水質汚染についてどう対処するのか、明確にお答えいただきたいと思います。

 第二は、事故原因を教訓とする原子炉規制の問題です。

 現在、国会事故調査委員会が福島原発の事故原因の究明と検証作業を行っていますが、東京電力会長や当時の政権中枢に対する調査の途上にあり、新しい事実とともに新たな疑問も生まれています。

 事故の直接の原因となった地震による外部電源の喪失、これを受けて、全国の原発の送電鉄塔の倒壊と、その受電施設の耐震チェック及び耐震基準を一体どうするのですか。

 東電内部でも原発敷地内の南側で押し波による十五・七メートルの波高を想定しながら、なぜ津波対策をとらなかったのか、安全よりコスト優先があったのではないのか、また、全国の原発の引き波の想定値の見直しと取水口の位置をいつまでに改善させるのか、はっきりお答えいただきたいと思います。

 日本原子力研究所を初め内外の専門家が、全電源喪失や水素爆発など、今回の問題となった事例について、一九八〇年代後半には研究を進めていました。政府及び東電は、これらの知見に耳を傾けず、なぜ過酷事故対策をとらなかったのですか。

 事故後の対応の誤りはどこにあったのか。

 現場で直ちに炉心を冷却水の上に出させないためにベントと海水注入など、なぜ収束に必要な対策がおくれてしまったのか、原子力災害特措法、原子炉規制法など法律上の権限がどう行使され、あるいは行使されなかったのか、この間の経緯を全て明らかにしていただきたいと思います。総理の答弁を求めます。

 さらに、福島第一原発四号機の使用済み核燃料プールの耐震強度の解析によって、マグニチュード幾ら、震度幾らの地震にまで耐えられることになっているのか、解析手法と安全評価を伺います。

 今回、新たな知見を既存施設にさかのぼって適用するバックフィット制度を設けるのは当然ですが、福島原発事故で既に明らかになった知見を電力会社に直ちに実行させることができないのは、一体なぜなんですか。これすらなしに再稼働などというのは、論外であります。

 運転期間四十年を原則としつつ、さらに二十年、都合六十年の運転も可能としていますが、総理、これは、老朽化原発の半永久的稼働を認めるものではありませんか。

 福島事故の最大の教訓の一つは、事業者任せの安全評価や自主検査が問題であったのに、法案では、規制緩和はそのままにして、事業者による安全評価を明記しています。これは、事故の教訓に逆行するものではありませんか。明瞭な答弁を求めます。

 新たな、原発の個々の特定機器の個別審査を省略する、型式証明を導入するとしています。この制度の趣旨は何か。アメリカでは最短でも申請から四十八カ月の時間をかけていますが、この規制法案には期間の定めがありません。原発輸出のための大量生産を狙ったものではありませんか。仮に事故の際は、申請者の製造者責任はどう問われるのでしょうか。明らかにしていただきたいと思います。

 第三は、原子力基本法の改正問題です。

 政府案では、原子力基本法第二条の基本方針で、わざわざ「国際的動向を踏まえつつ」放射線対策を行うとしたのはなぜですか。ICRP、国際放射線防護委員会の人体への線量基準は、内部被曝を軽視するものだとして、欧州初め内外で厳しく批判されていますが、これをどう踏まえるのですか。答弁を求めます。

 一九五五年に制定された原子力基本法は、原子力の利用は平和の目的に限り、自主、民主、公開のいわゆる原子力平和利用三原則をうたいながら、同時にその一方で、日米協定によってアメリカから濃縮ウランの購入を義務づけられ、核兵器保有国であるアメリカが推し進める、アトムズ・フォー・ピースから始まった核の商業利用を通じた世界支配体制に組まれたものです。そのため、日本共産党は原子力基本法に反対しました。

 以来、三・一一までの五十年余り、一貫して、日米同盟、日米原子力協定のもとで、対米従属的なエネルギー政策が進められてきたのであります。福島原発事故を経験した今こそ、この体制の根幹からの見直しが必要なのであります。総理の見解を求めます。

 今回、自公両党が提案する原子力基本法改正案で、原子力利用の目的について、「我が国の安全保障に資する」こととしたのはなぜですか。提案者にその意図と理由の説明を求めます。

 この問題は、背後にある日米同盟を抜きにして考えることはできません。東芝、ウェスチングハウス、日立製作所、三菱重工業、ゼネラル・エレクトリックなど日米原発利益共同体は、世界の原発市場の制覇を狙う戦略を進めています。今、野田内閣の進める原発輸出戦略は、このことと軌を一にしたものではありませんか。

 さきの日米首脳会談において、総理は原子力のハイレベル二国間委員会を設置しましたが、この委員会の目的、任務、狙いは何なのか、答弁を求めます。

 かつて、一九七八年に、オーストリアでは、完成したばかりのツベンテンドルフ原発を稼働するか否かの国民投票を行い、その結果、原発を選ばない道を進みました。日本は逆に、原発推進に暴走し、年間発電電力量の三割を原発で賄うという異常なエネルギー需給構造にしてしまいました。同じ道を進んだドイツは、福島事故の後、二〇二二年までに原発をゼロにすることを決定しました。

 日本共産党は、今こそ原発ゼロの日本への政治決断を行い、地域の特性に合った再生可能エネルギー、自然エネルギーの爆発的普及に力を尽くし、その仕事を地域の農林漁業や中小企業に回すことで地域経済の再生と雇用を確保し、エネルギーの面でも地域経済の面でも、原発に依存しない、持続可能な将来への道筋を選択すべきだと考えております。総理の決断を求めるものであります。

 また、原子力の規制機関は、原発ゼロへの道に沿って、廃炉、使用済み核燃料処理までの全体を展望した研究開発と技術力でもって規制に取り組むべきものであります。

 最後に、私は、ウラン型から始まった原発をゼロに、使用済み燃料から生まれる核兵器の原料となるプルトニウムを持たない世界を目指すことを訴え、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 共産党吉井議員から、十六問、御質問をいただきました。順次お答えをいたします。

 まず、東京電力福島原発事故の責任についてお尋ねがございました。

 原子力損害賠償法は、被害者の迅速かつ適切な保護を図る観点から、原子力事業者に賠償責任を集中させることとしており、東京電力が一義的に責任を負うこととなっています。政府としては、原子力損害賠償支援機構法を整備し、被災者に対して万全の救済が図られるよう対策を講じています。

 他方で、原子炉メーカーなど産業界を含めた関係者においても、一丸となって、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉や除染といった今後の課題に対し、積極的な協力を続けていただきたいと考えております。

 次に、原子力利用の推進と規制の分離、独立性の問題についてのお尋ねがございました。

 二〇〇〇年の省庁再編に際しては、原子力安全行政について責任ある遂行体制を整備する観点から、エネルギー政策としての一体性を確保しつつ、安全規制行政と振興行政とを組織的に分離するため、資源エネルギー庁に特別の機関として原子力安全・保安院を新設いたしました。

 こうした組織体制と事故との関係については、政府事故調等において調査が行われておりますが、政府としては、今回の事故の反省を踏まえ、規制当局と推進当局との組織的な分離の徹底を速やかに実現するべく、原子力規制庁の設立を図ることとしたものであります。

 次に、原子力規制組織と地球温暖化対策に関するお尋ねがございました。

 環境省は、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの導入促進などを中心として、地球温暖化対策を総合的に実施してきております。また、原子力事故により生じた放射性物質による汚染は究極の環境問題であり、環境省は先頭に立って除染等に取り組んでいるところであります。

 原子力規制庁については、二度と事故を起こさないとの決意を持って原子力規制行政に取り組む観点から、これまで原発を中核的に推進してきた経済産業省等から原子力安全規制当局を分離し、環境保全を任務とする環境省に置くことは、規制と推進の分離の観点からも、大きな意義があると考えております。

 また、今後の地球温暖化対策については、エネルギー・環境会議を中心に、エネルギー政策と表裏一体で検討しており、今後、選択肢を提示し、国民的議論を経て、今夏を目途に決定することとしております。検討に当たっては、原発依存度を中長期的に低減することを旨として、省エネルギーや再生可能エネルギーの推進等を図ることとしています。

 地球温暖化対策基本法案に関しては、引き続き、国会にて御議論いただきたいと考えています。

 次に、三条委員会としない理由についてのお尋ねがございました。

 今回の事故の教訓を踏まえて、大規模な原子力事故に際して緊急対応を責任を持って行うためには、内閣から独立した合議制の委員会形式ではなく、内閣の責任のもとで、迅速な意思決定が行われる組織形態が適切であります。

 このような認識に立って、政府提出法案では、環境省の外局として原子力規制庁を設置することとしています。

 民主党は、かつて、原子力規制組織として三条委員会を設置するとの政策を掲げていましたが、今般の政府提出法案は、党の政策を現実の大災害の経験と教訓から発展させ、危機管理対応を強化したものでございます。

 次に、ノーリターンルールと民間企業からの出向者についてのお尋ねがございました。

 原子力規制庁の人事については、指定職は例外なく、また、課長クラスも原則として推進側の府省へは戻らない、ノーリターン人事とすることとしています。

 しかしながら、原子力規制庁の立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンとしてしまいますと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念をされ、円滑な業務実施が困難となると考えられます。

 他方、原子力規制庁の中で専門性を持った職員を育てていくことは重要であり、長期的観点から、適性のある職員の採用と適材適所の配置をしつつ、将来の管理職や幹部となる人材も含め、職員をしっかりと育成してまいります。

 また、原子力規制庁においては、規制対象となる事業者の従業員が一定期間後にもとの企業に復職することを前提とする、いわゆる在籍出向の職員としては受け入れない方針であり、この運用を徹底してまいります。

 次に、原子力委員会と関係業界との会合についてお尋ねがございました。

 原子力委員会の原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会において、核燃料サイクルの選択肢の定量評価を行ったところであり、コストや廃棄物量などのデータ提供等を受けるため、事業者を含めた関係者を集めた会合を開いたものであり、業界に有利に修正するためのものではないと承知をしています。

 しかしながら、原子力行政の遂行に当たっては、国民の信頼確保が必要であり、会合の運営に際しては、疑念を招くことがないよう、当該小委員会の運営のあり方の見直しも含め、十二分に留意をして対応してまいります。

 次に、財源面の独立性についてお尋ねがございました。

 政府提出の法案において、特別会計に関する法律を改正し、推進側省庁からの独立性を確保しつつ、必要な予算を確保するため、原子力安全規制対策という区分を設けることとしております。この区分に計上される予算については、原子力規制庁から環境省を通じて財政当局に要求することとしており、実質的にも、推進省庁からの独立性が確保されることとなっています。

 次に、放射性物質の海洋投棄とロンドン議定書との関係についてのお尋ねがございました。

 御指摘のロンドン議定書は、陸上で発生した廃棄物等を船舶等から海洋へ処分する行為等を規制する条約であり、昨年の原発施設からの放射性排水の海洋への放出は、同議定書の対象とはならないものと認識をしています。

 他方、低レベルとはいえ、放射性物質を含んだ水を放出させざるを得なかったことは大変残念であり、政府としては、再度の海洋放出を防ぐために万全を期すとともに、我が国によるさまざまな対応について、近隣国に対する丁寧な説明や国際社会に対する情報提供に引き続き努めてまいります。

 次は、送電鉄塔の耐震性、津波対策についてお尋ねがございました。

 先般の東日本大震災の際、東京電力福島第一原子力発電所では、地震による近傍の盛り土の崩壊に伴う送電鉄塔の倒壊等により、全電源喪失状態に陥りました。

 外部電源については、昨年四月に複数ルート回線の確保などについて事業者に指示し、六月までに確認をしています。

 送電鉄塔の強度については、四十メートル毎秒の風圧荷重等に耐える設計であれば、今回の東京電力福島第一原発を襲った地震動よりも大きな地震動に耐えられることを確認しています。

 津波対策については、東京電力福島第一原発を襲ったような津波を想定し、対策を講じられなかったことは事実であり、政府としても重く受けとめなければならないと考えています。

 今回の東京電力福島第一原発の事故において、想定を九・四メートル上回る津波に襲われたことを踏まえ、それと同程度の津波により全交流電源喪失に至ったとしても炉心損傷に至らない対策を、緊急安全対策等により講じています。

 これに加え、今後、専門家の意見を聴取しながら、今回の知見も踏まえ、津波対策全般に関して検討を進め、引き波を含め、津波の評価を適切に実施し、極力早期に適切な対応をとるよう取り組んでまいりたいと考えています。

 次に、シビアアクシデント対策と再稼働の是非についてのお尋ねがございました。

 政府としては、これまで、東京電力福島第一原発の事故のようなシビアアクシデントが起き得ることの認識や、国際的な動向を迅速に取り入れる姿勢が欠けていたことなどの問題があったと考えています。

 このような問題は大きな反省点ですが、今般の事故対応においては、実際、ベント及び海水注入について、原子炉等規制法第六十四条第三項の規定に基づき、当時の海江田経産大臣から措置命令を実施するなど、法的権限を行使したところであります。これに関連して、政府事故調や国会事故調等にて検証がなされるものと承知をしています。

 東京電力福島第一原発四号機の使用済み燃料プールの耐震安全性については、これまでに、水素爆発による損傷状況等を模擬した上で評価を実施し、東日本大震災と同程度の震度六強の地震が発生しても、評価上は耐震余裕があることを専門家の方々にも確認いただいており、さらに、念のために使用済み燃料プール底部の補強工事を実施するなど、安全性の向上に努めてきております。

 これまで事故の検証を行った結果、事故原因及び事象の進展に関して、基本的な理解が得られていると考えます。

 得られた知見のうち、直ちに実施すべき緊急安全対策などについては、事業者にその実施を指示し、既に対応済みです。一方、今後原子力安全規制に反映すべき事項については、新たな規制組織のもとで実施されるものと考えます。

 再起動に関しましては、政府としては、これまで約一年間にわたり専門家による検討を踏まえ積み重ねてきた知見や対策を、国民の目から見てわかりやすく整理したものとして、原子力発電所の再起動に当たっての安全性の判断基準を取りまとめました。

 この判断基準は、今回の原発事故と同様の事故を起こさないための対策の実施を、現行法体系のもとで追加的な法規制として求めると同時に、今回の事故に関する現時点での最大限の知見を反映し、法規制化を待つことなく、それらを先取りして、高いレベルの安全性の実現に向けた取り組みを求めるものであります。

 定期検査で停止中の原子力発電所の再起動については、安全性の確保が大前提です。再起動を判断するに当たっては、こうした判断基準に照らして、安全性を厳格に確認してまいります。

 次に、原子力発電所の運転期間及び事業者による安全評価と事故の教訓との関係についてのお尋ねがございました。

 運転期間の制度は、原子炉の運転を四十年または六十年間認めるものではなく、今回提出している法案による規制強化が施行されますと、最新の技術的知見を踏まえた技術基準に適合していない原子炉は、四十年以内であっても運転をすることができなくなります。

 次に、先般の事故の教訓として、重大事故への対策が事業者の自主的取り組みに委ねられ、事業者も、安全基準さえ守ればよいとして、新知見を踏まえた自主的な安全対策に消極的だったという点が挙げられます。

 本法案においては、重大事故対策を事業者に義務づけるとともに、国が定める安全基準を超えて、みずから安全性向上に向けた取り組みを行うよう義務づけます。

 こうした規制強化に伴い、国が行う検査についても実効性が上がるよう、検査官の育成も含め、対応を強化してまいります。

 型式認証制度についてのお尋ねがございました。

 安全性を向上させる対策の中には、各地の原子力発電所で共通の機器等の導入が必要となる場合があります。今般導入する型式認証制度は、複数の施設で共通的に導入が可能な設備について、その導入に係る原子炉設置者の許認可取得をそれぞれ個別に行うのではなく、あらかじめ認証しておくことにより、手続に要する時間などを軽減し、安全性向上に資する設備の導入を加速しようとする趣旨のものです。

 したがって、御指摘の米国における原子炉全体としての型式を認証する仕組みとは、当面念頭に置いている対象が異なり、審査期間などを一概に比較することはできません。

 なお、型式認証を受けた製造者等に対する報告徴収や立入検査を行い、該当する機器の健全性等を確認するとともに、仮にこうした検査などを忌避した場合には、型式の認証を取り消すことができる仕組みとしています。

 また、万一、型式認証を受けた機器等に起因して事故が発生した場合、製造者等に対して罰則規定等はないものの、原子力発電所における事故の責任は一義的に事業者がとることとなっており、責任の所在が曖昧になることはありません。

 次に、原子力基本法の基本方針についてのお尋ねがございました。

 今般の事故を踏まえ、我が国の原子力利用の基本方針については、これまで以上に安全の確保を重視したものとする必要があります。その際、安全の確保の内容を具体化するに当たっては、IAEAを含む国際機関の考え方や、諸外国の原子力安全確保のあり方の動向を踏まえ、国際基準にも合致したものとする必要があると考えたものです。

 放射線防護の考え方については、国際的にも幅広い議論があることは承知しています。これらの議論の動向も把握しながら、安全の確保を行っていくべきと考えています。

 原子力に係るエネルギー政策見直しについての御質問をいただきました。

 もとより、我が国の原子力政策は、原子力基本法の原子力平和利用三原則の堅持のもと、進められてきているところであります。また、日本はみずからウラン濃縮を実施するなど、御指摘のような対米従属的なエネルギー政策を進めてきたとの指摘は当たらないと考えております。

 いずれにせよ、今後のエネルギー政策のあり方については、昨年の東京電力福島第一原発の事故を踏まえ、現在、エネルギー・環境会議において抜本的な見直しを行っているところであります。

 次に、原発輸出及び民生用原子力協力に関する日米二国間委員会についてのお尋ねがございました。

 原子力協力に関しては、昨年の原発事故を踏まえ、事故の経験と教訓を世界と共有することが重要であり、これにより国際的な原子力安全の向上に貢献していくことは、我が国が果たすべき責務と考えます。この観点から、諸外国が希望する場合には、相手国の事情を見きわめつつ、核不拡散、平和的利用等を確保しながら、相手国に高い水準の安全性を有する技術を提供し、原子力協力を行っていくことには基本的な意義があるものと考えます。

 我が国が原子力協力をするに当たっては、こうした観点に立ち、各国それぞれのケースに応じて判断しており、その意味で、御指摘のように、世界の原発市場の制覇を狙って無制限に原発輸出を進めているわけではありません。

 また、民生用原子力協力に関する日米二国間委員会は、廃炉、除染といった事故対応のほか、原子力安全や核セキュリティーに関する日米間の意見交換、研究開発交流の調整の場として設置するものであり、委員会の活動を通じて、こうした分野での日米間の協力を強化していく考えであります。

 最後に、持続可能なエネルギー政策についてのお尋ねがございました。

 再生可能エネルギーについては、七月一日の固定価格買い取り制度の施行を控え、調達価格の案を公表したところであります。これを受け、市場では現在さまざまな事業化プランが検討されており、政府の試算では、本年度だけでも、二百五十万キロワットの再生可能エネルギーの導入拡大が進むところと期待しています。

 また、政府としては、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギーの導入を促進し、農山漁村の活性化を図るため、今国会に、農山漁村における再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律案を提出したところであり、審議をお願いしているところであります。

 導入拡大が進めば、太陽光の設置工事といった市場はもとより、山間部における未利用の森林資源や水利資源の活用、さらには太陽光パネルや風力発電機の製造市場なども拡大し、地域経済の再生や雇用の拡大にも貢献することが期待されます。

 このため、政府としても、固定価格買い取り制度や、審議をお願いしている法案に加えて、立地に関する規制の見直しや研究開発支援など、考えられる政策を総動員して再生可能エネルギーの導入拡大に取り組んでまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をいたします。(拍手)

    〔国務大臣細野豪志君登壇〕

国務大臣(細野豪志君) 湖沼や太平洋岸の海底の放射性物質による水質汚濁についてお尋ねがございました。

 陸地から放射性物質が河川、湖沼、海域に流出し、水底の土が汚染されていることについては、重要な問題と認識をしております。

 放射性物質による汚染の対処につきましては、まずは、人の健康の保護の観点から、子供の生活環境を中心とし、住宅等の生活圏を優先的に除染を実施することが重要だと考えているところであります。

 水底の土の放射性物質については、雨により陸地から放射性物質が流入するのは避けがたいこと、水底の土の放射性物質は常に移動することから、まずは陸地の除染を着実に実施するとともに、水環境のモニタリングを継続し、環境中の放射性物質の動態解明を進めることが重要であると考えております。

 このため、当面は、放射性物質の拡散の有無及び汚染状況について把握をするため、必要なモニタリングに努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣枝野幸男君登壇〕

国務大臣(枝野幸男君) まず、私から、得られた知見の反映に関する御質問に対して御答弁申し上げます。

 今般の事故の原因については、政府の事故調査・検証委員会から中間報告が出ております。また、原子力安全・保安院に四つの意見聴取会を設置し、外部の専門家も加わっていただいた上で、公開のもとに、詳細な調査、検証を行ってまいりました。

 これらを通じて得られた知見のうち、直ちに実施すべき緊急安全対策やシビアアクシデント対策などについては、事業者にその実施を指示し、既に対応がとられているところであります。

 一方、今後の原子力安全規制に反映すべき事項については、新たな安全規制体制のもとで実施されるものと考えておりますが、こうした法規制化を待つことなく、これを先取りして、高いレベルの安全性の実現に向けた取り組みを求めているところであります。

 こうした考え方のもと、原子力発電所の再起動に当たっての安全性の判断基準を取りまとめたところでありまして、この判断基準は、政府として、これまで約一年間にわたり専門家による検討を踏まえ積み重ねてきた知見や対策を、国民の皆さんの目から見てわかりやすく整理したものであります。

 定期検査で停止中の原子力発電所の再起動につきましては、安全性の確保が大前提であり、これを判断するに当たっては、こうした判断基準に照らして安全性を厳格に確認してまいります。

 次に、原発輸出戦略に関する御質問にお答えをいたします。

 政府としては、今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、事故の経験と教訓を世界と共有することが重要であり、これにより国際的な原子力安全の向上に貢献していくことは、我が国が果たすべき責務と考えております。

 この観点から、諸外国が希望する場合には、相手国の事情も見きわめつつ、核不拡散、平和利用等を確保しながら、相手国に高い水準の安全性を有するものを提供するなど、原子力協力を行っていくことには基本的な意義があると考えておりまして、日米の二国間関係においても同様な考え方に立っているところでございまして、御指摘のようなことは当たらないと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔江田康幸君登壇〕

江田康幸君 共産党の吉井英勝議員の質問にお答えいたします。

 まず、原子力規制組織の独立性について御質問がございました。

 現行の原子力規制組織の抱える問題が今般の原子力事故にどのような影響を与えたかについては、現在、国会事故調査委員会において調査中であり、詳細については、来月にも予定される報告書を待ちたいと思います。

 もっとも、御指摘のように、従前の原子力規制組織については、原子力発電の推進を担う経済産業省と、その規制を担う原子力安全・保安院とが一体となっていたため、独立した規制上の判断と決定が担保されず、安全規制がゆがめられる事態が生じていました。また、IAEA等の国際基準から見ましても、原子力の推進を担う機関と、その規制を担う機関は、明確に分離されるべきことは明らかであります。この点につきましては、我々も反省しなければならないところであります。

 だからこそ、この反省を踏まえ、自公案では、原子力規制組織を、独立行政委員会、すなわち、いわゆる三条委員会として設置することとし、十分な権限、人事及び予算が担保された上で、原子力事業者のみならず、ほかの行政機関や政治部門からも独立して職権を行使できることとしたところでございます。

 次に、原子力基本法において、原子力利用の目的に「我が国の安全保障に資する」ことを規定した理由について御質問をいただきました。

 原子力利用における安全の確保に関する規制については、原子炉等規制法に詳細が定められておりますが、原子炉等規制法には、原子力施設及び輸送時における核物質の防護に関する規定が置かれております。また、核燃料物質等に係る技術は軍事転用が可能な技術であることから、これを防止するための保障措置に関する規定も置かれております。

 これらの措置は我が国の安全保障にかかわるものであることから、自公案では、原子炉等規制法及び原子力基本法において、その究極的な目的として、「我が国の安全保障に資する」を明記するとしたところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 斎藤やすのり君。

    〔斎藤やすのり君登壇〕

斎藤やすのり君 新党きづなの斎藤やすのりでございます。(拍手)

 昨日、福島県の浪江町で、一時帰宅し、行方不明になっていたスーパーの経営者の方が首をつって死亡しているのが見つかりました。周囲の方には、生きていても仕方がないということを話して、睡眠剤を服用していたといいます。

 昨年六月には、相馬市で酪農を営んでいた方が作業小屋で自殺して、男性の牛小屋の黒板には、原発さえなければという言葉が書かれていました。

 被災地を歩きますと、よく、原発さえなければという言葉を聞きます。

 飯舘村の世帯数は、震災後、倍増しました。避難で家族がばらばらになってしまったからです。福島県内では離婚もふえています。県外に避難している家族が、戻るか戻らないかでけんかになっています。

 家、仕事、家族、先祖が大切に耕した土地、落ちついた生活が、一度の事故で台なしになってしまうのが原発です。津波や地震の被害は復旧できますけれども、原発の災害は未来をも奪ってしまいます。一度事故が起きれば、取り返しのつかないことになってしまいます。

 ですから、今、国民は、二度と事故を繰り返してほしくない、事故を起こしてはいけないという、これが共通の願いでございまして、この願いをきちんとかなえるのが新しい規制庁の使命であると考えます。

 しかし、残念ながら、今回の原子力の安全規制に関する新組織の政府案は、次の福島が日本を滅ぼす、次に事故が起きれば日本に住めなくなるという危機感に欠けていると言わざるを得ません。

 原子力規制組織を三条委員会方式に変えると言っていたのは、従来の民主党の主張でございます。ところが、今回の政府案では、あっさり撤回しております。三条委員会では危機のときに対応できないというのが政府の考えのようです。

 しかし、なぜ、今回の福島事故で被害が拡大してしまったのか。原発には素人の政治家が、間違った政治主導をしてしまったからではないでしょうか。

 国会の事故調査委員会は、二月に参考人として招かれた米国の原子力規制委員会、NRCのリチャード・メザーブ元委員長が、昨年の原発事故の際、原子炉から気体を出すベントを当時の総理大臣が指示したことに、米国では考えられないことだ、大統領が決めることではない、米国では、電力会社が決めて、NRCが許可をする、日本は政治家の方が知識があるのかもしれないと皮肉を込めて言っております。

 また、SPEEDIの情報を公開せずに、多くの福島の子供たちを被曝させてしまいました。

 このように政治が間違ったかじ取りをして被害が広がったことを考えれば、政府案はもっと独立性を持った規制機関にするべきなのではないでしょうか。

 また、時の政府や環境大臣が偏ったエネルギー政策を推進した場合に、いわゆる原子力村の住人である人材の重用なども考えられるのではないか。政府の見解を求めます。

 原子力規制庁の人事についてお伺いします。

 今回、政府案では、環境省の外局として、組織体制五百人、五百億円の予算規模で原子力規制庁を設置すると言っています。しかし、環境省の外局とはいっても、職員の四分の三が保安院からで、あとは原子力安全委員会と文科省のスタッフです。組織にいる人間が同じであれば何も変わらないのではないかという懸念があります。今回の福島原発事故のいわば戦犯をそのままスライドさせて、だめなものはだめと言える体制づくりができるのでしょうか。

 規制する側は電力会社の技術者と同じぐらいの知識を持った人材でないと、誤りは指摘できません。今までの保安院は、申請内容をうのみするばかりでございました。

 事故後、保安院は第一原発で情報収集に当たらなければいけなかったのにもかかわらず、七人の保安検査官は、情報を集めるどころか、いち早くどこかに行ってしまったといいます。

 規制庁を形だけ引き剥がしても、それを構成する中身の職員の質が変わらないのならば、単なる看板のつけかえにしかなりません。原発推進の立場をとってこなかった専門家を配置させることなど、抜本的な中身改革、人材の独立性の確保は考えておられるのでしょうか。

 また、出身官庁から出向した場合に、もとに戻らないノーリターンルールを運用するとの話ですけれども、これは先ほど質問もありましたけれども、その対象、そして人数、具体的なルールを教えていただけないでしょうか。

 今回、我が党から提出者への質問通告はいたしませんでしたけれども、現時点では、規制庁の独立性の確保などについて、提出者案の方がより評価に値するものであると申し添えさせていただきます。

 さて、ここで、大飯原発再稼働のことを聞きます。

 大飯原発の事故対策は、万全とは言いがたい状況でございます。防潮堤を海面から八メートルの高さにかさ上げする工事をしなければいけませんが、完成は来年度。また、大飯原発は、ストレステストに水素対策が評価されていません。この原発は、加圧水型で、容器内で水素爆発が起こり得る原発です。また、今回、福島原発で現場作業を支えた免震重要棟が大飯原発にはありません。完成は四年後です。

 もう一つ心配なのが、災害想定が不完全であるということです。

 大地震の痕跡や言い伝えは、古文書や神社、仏閣に残ります。仙台には、海岸から三キロの場所に津波が到達したことが名前の由来になっている浪分神社というのがあります。今回、東北で津波の被害が拡大したのは、こうした神社や古文書に載っていた災害の痕跡を無視した防災計画があったからでございます。

 実は、大飯原発のある若狭湾の海沿い、高さ三十メートルの場所に波せき地蔵という地蔵があります。西暦七〇一年、大宝年間に若狭湾に巨大津波が押し寄せたことからできた地蔵だと言われております。

 大飯原発では、一五八六年の天正地震のボーリング調査はされていますが、それより古い調査はされていません。もう想定外は許すことはできないです。

 大飯原発の再稼働は、福島事故前の基準やこれまでの対策を整理しただけのもので判断するのではなく、福島事故後の安全基準を新しい原子力規制機関でつくり直し、その安全基準に基づいた新たなストレステストを実施するべきだと考えますが、総理の見解をお伺いします。

 危機管理体制を万全にしないで、再稼働ありきでこれを動かすことに国民は大変今不安を覚えております。政治のプロセスに怒りさえ覚えております。

 原発事故は、広範囲で事故の被害のリスクが生じます。炉の安全だけではなくて、住民の安全をきちんと確保しなければいけません。原発から百キロ程度の住民の安全確保が必要です。再稼働には、広域の自治体との安全協定を締結し、そして、再稼働への同意をとることが必要なのではないでしょうか。総理の見解を求めます。

 今回の大飯原発再稼働は、安全性も、政治的正当性も、著しく欠けています。それでも大飯原発を再稼働させるのか、ゴーサインを出すのか、ゴーサインをいつ出すのか、総理の見解をお伺いいたします。

 報道によると、関電は、ことし三月十五日の週の供給力、これは二千二百四十四万キロワット、需要は二千四百五十九万キロワットと、二百十五万キロワット足りないと予測していました。三月十五日の週です。しかし、実際は、供給力が二千六百六十三万キロワット、ピーク需要は二千二百五万キロワット、逆に四百万キロワット余ったんです。

 百歩譲って、需要予測を誤るのはある程度理解できますが、自分たちがどれほど発電できるかを四百万キロワットも違うというのは、あり得ないのではないでしょうか。需要を過大に、そして供給を過小に見積もって、電力が足りないから原発を動かせというやり方に疑問を覚えます。

 きょうの不安定な天気にもあるように、ことしは、上空の寒気が南下する傾向が強かったり、それから、赤道付近の海面水温も一昨年のような猛暑になるリスクは少なく、必要性という観点から見ましても、大飯原発再稼働には疑問を持たざるを得ないと、気象予報士の立場から申し添えます。

 今回の政府案では、運転期間は原則四十年と明記され、例外規定として、二十年以内で一度に限り運転の延長を許可することができると明記されています。福島原発事故があったにもかかわらず、二十年も延びた根拠は何なのでしょうか。

 世界で最も長く稼働している原発は、四十五年の英国オールドベリー原発でございます。米国にも、世界にも、いまだ五十年以上稼働した原発はありません。米国では、コストが見合わなくなった四十年以上稼働した原発は、大半が運転をとめているはずです。

 寿命の根拠、この四十年という根拠が明確でない上に、技術への過信、おごりが呼び起こした福島原発の事故がこれだけたくさんの方を不幸に陥れているのに、そこから学ばずに、さらに例外規定を設けて運転延長を設けるのはなぜでしょうか。電力が足りないから、コストがかかるからということよりも、事故が起きたわけですから、事故の前以上に安全面を重視しなければならないのではないでしょうか。

 昨年の秋、飯舘村に行きました。青空に映える紅葉、そして、たわわに実ったダイダイ色の柿の風景は、まさに日本の原風景でした。しかし、そこには、人がいなくなり、柿の実は収穫されずごろごろと道を転がり、何よりも、空気、水、大地、森、これが汚染されているんです。先人たちが守ってきた景観、そして、数百年にわたって耕しつくってきた肥沃な土地、地域の文化や伝統、全てが、三・一一以降の原発災害で、あっという間に台なしになりました。

 飯舘村の多くの方は、自然を恐れ、自然に感謝し、自然の恵みを自然の秩序を壊さないようにいただき、つつましやかに生活していました。

 今回の原発災害は、技術への過信が生んだ災害です。人間のおごりが、たくさんの恩恵を与えてくれた自然を汚してしまいました。日本では、大地、水、植物、あらゆるものに神が宿っているという宗教観がありますから、そういう意味では、今回の原発災害は、神への冒涜、罰当たりと言っても過言ではありません。

 野田総理は、福島の惨状を見て、原発のあり方についてどう考えておられるのでしょうか。二十年後の日本の原発は、エネルギー供給のどれぐらいの割合で、どのようなポジションにあるのか。過渡期のエネルギーとして捉えているのか、それとも主電源として捉えているのか。この国のリーダーとして、総理の原発への考え方をお聞かせください。

 被災地では、多くの方が、原発に不安を抱き、再稼働に反対しています。共同通信の世論調査では、定期検査で停止中の原発について、再稼働することに反対が五六・三%。これは地域に温度差があります。我が東北地方では、七二%、七割が反対しています。多くの方が、放射能におびえながら、子育てをし、食事をしている現状があります。放射能が原因で一家がばらばらになってしまっている家族もあります。原発事故のせいで人生がおかしくなってしまったという方がたくさんいます。

 被災地東北の、原発はやめてくれという声にどう応えていただけますでしょうか。

 日本は、地震・火山大国です。世界のマグニチュード六以上の地震の二割が日本で発生しています。津波というのは、英語でもツナミです。日本で津波災害が多いからです。全世界四百以上の稼働中の原発のうち、地震危険地帯に設置されている原発は五十六基。そのうち、海岸から一マイル未満にあって、地震にも津波にも弱い原発は三十九基。この三十九基のうちの九割超の三十五基が日本にあります。

 日本は、原発設置にはもともと向いておりません。福島の原発事故がありました。事故の検証もされていません。向いていないだけではなく、原発を再稼働させる資格も現段階ではないと言わざるを得ません。

 今我が国がやるべきことは、徹底的な福島原発事故の検証とその情報公開、そして、既存の原子力規制当局が機能しなかったことで原発事故が発生し、誤った政治主導で原発事故が拡大した反省に立って、原発村から距離を置いた独立性の高い三条委員会としての規制庁を設置すること、そして、日本の財産である自然を生かしたエネルギーの爆発的普及を促進させ、脱原発を実行することであるということを訴えまして、私の質問を終わりにさせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 新党きづな、斎藤議員の御質問にお答えいたします。

 まず最初に、原発の新しい安全基準、ストレステストの新機関での実施についてのお尋ねがございました。

 今回の事故から徹底的に教訓を引き出し、新しい規制機関において新たな安全基準を作成した上で、それらに照らして原子力発電所の安全性を確認する必要があることは事実であります。他方、今回のような事故を二度と繰り返さないため、新たな安全規制が施行されるまでにおいても、原子力安全に係る信頼性向上に継続して取り組んでいくことが必要です。

 これまで、政府としては、安全性について、緊急安全対策やその効果を確認するストレステストなど、約一年をかけて、IAEAや原子力安全委員会を含めた専門家の意見をお伺いしながら、四十回以上にわたる公開の議論を通じて得られた対策や知見を積み上げてまいりました。

 こうしたさまざまな対策を適切に実施してきた原子力発電所は、今回の事故と同程度の地震、津波に対応できるものとなり、安全水準は大幅に引き上がると考えています。

 現在、再起動を判断する際の条件として実施しているストレステストは、こうした対策がとられた施設が現時点でどの程度の安全裕度を有するか、確認するために行っているものであり、適切なものと考えております。

 次に、自治体の同意や原発事故の原因と再稼働についての御質問をいただきました。

 原発事故の原因については、政府事故調査・検証委員会や保安院の意見聴取会、民間独立検証委員会による事故検証を通じて、基本的な共通理解が得られたと考えています。

 また、政府事故調査・検証委員会等における検討を踏まえ、現在知り得る限りの知見は全て判断基準に反映しており、判断基準を満たす原子炉は、今回の事故のような地震、津波に襲われても燃料損傷に至ることがない、十分な安全性が確保されます。大飯発電所三、四号機については、四大臣として、この判断基準を満たしていることを確認いたしました。

 立地自治体以外の電力消費地などに対しても、政府としての考え方を御説明し、一定の理解を求めていくことが必要であると考えており、再起動ありきではなく、あくまで安全性の確認を大前提としている政府の姿勢をしっかりとお伝えし、理解を求めていくことは重要であると考えております。このような努力をしつつ、再起動については、最終的に政府として責任を持って判断してまいります。

 次に、原子力発電所の再稼働及び今後の原発のあり方についてのお尋ねがございました。

 中長期的には、原子力への依存度を最大限引き下げていくという方向を目指すべきと考えています。政府としては、今後、国民が安心できる中長期的エネルギー構成を目指し、幅広く国民各層の御意見をお伺いしながら、ことしの夏をめどに新しい戦略と計画を取りまとめてまいります。

 また、事故の教訓を踏まえ、二度とこのような事態が起こることのないよう、独立性の高い新たな規制組織の設置や安全規制の抜本強化が必要です。この安全規制改革の一日も早い実現に向け、国会での建設的な御審議をいただきたいと考えております。

 他方、これまで電力供給の約三割を担ってきた原子力を直ちにとめてしまっては、現実の日本経済、国民生活は成り立ちません。このため、安全性や必要性が確認された原子力発電所については、立地自治体を初めとする関係自治体の御理解を得つつ、政府として再稼働についての判断を行ってまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣細野豪志君登壇〕

国務大臣(細野豪志君) 規制組織の独立性について御質問をいただきました。

 政府提出法案では、原子炉等の規制に係る権限は、法律上、原子力規制庁長官に委任することとしており、推進組織からの独立性の確保はもちろん、政治からも独立して、原子炉の安全規制に係る判断を行える仕組みとしております。

 他方、大規模な原子力事故に際して緊急対応を責任を持って行うためには、内閣から独立した合議制の委員会形式ではなく、内閣の責任のもとで、迅速な意思決定が行われる組織形態が適切です。

 このような認識に立って、政府提出法案では、環境省の外局として原子力規制庁を設置することとしております。

 なお、政府案では、国会同意人事の委員によって構成される原子力安全調査委員会が原子力規制庁の規制についてチェックし、仮に問題がある場合には委員会が勧告等を行うことによって是正を促す仕組みとしており、原子力規制庁の規制が不当な影響によってゆがめられることは排除されているというふうに考えております。

 次に、原子力規制庁の人事について御質問をいただきました。

 原子力規制庁の人事については、指定職七名は例外なく、また、課長級十二名も原則として推進側の府省へは戻らない、ノーリターンルールを採用することとしております。

 しかしながら、過去の業務経験により制約を設けたり、原子力規制庁の立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンとしてしまうと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念され、円滑な業務実施が困難になると考えられます。

 このため、当面は原子力安全規制を担う府省からの出向を求めざるを得ませんが、原子力規制庁発足に当たっては、民間や研究機関などからの専門的知見、経験を持った人材の登用、職員への行動規範の周知や研修、訓練の徹底により、問題意識と能力の面で従来に増して水準の高い規制組織となるよう努めてまいります。

 最後に、原発の運転期間の延長について御質問をいただきました。

 運転期間の年限については、経年劣化等による一般的な安全上のリスクを低減するため、発電用原子炉の運転期間を原則四十年に制限することとしております。

 一方で、個々のプラントごとに施設の状況は異なることから、運転期間の例外を一切排除するのではなく、一定の要件を満たして認可を受けた場合には、運転期間の延長を可能とする余地も残すこととしています。ただし、運転期間を延長するには、長期間の運転に伴い生ずる劣化の状況を踏まえ、延長とする期間において安全性を確保するための基準を満たすことが求められることから、実際に延長が認められるのは例外的な場合に限られると考えているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 服部良一君。

    〔服部良一君登壇〕

服部良一君 皆さん、最後の質問、社民党の服部良一です。

 社会民主党・市民連合を代表して、政府提出、原子力規制制度改革法案等及び自民、公明両党提出の原子力規制委員会設置法案に対して質問をいたします。(拍手)

 冒頭、両法案の付託先が環境委員会になったことに抗議します。

 社民党など八党は、連名で、東日本大震災復興特別委員会での審議を要請してきました。原子力規制行政の見直しは、三・一一の反省、教訓を踏まえた、復興に不可欠の柱であり、かつ、今後の日本経済社会に大きくかかわる国民的関心事です。

 また、政府案は、新組織の設立にとどまらず、原子炉等規制法、原子力災害対策特別措置法など十七本の法律改正にかかわり、規制のあり方、内容も総合的に見直そうとするものです。平時の規制だけでなく、原子力防災、緊急時対応も重要なポイントであり、国だけでなく、地方自治体との強いかかわりがあります。

 このような日本の将来にかかわる法案こそ、全会派が正式に参加する場で徹底審議し、全会派による修正協議を経て国民的合意をつくるのが重要です。

 そもそも、総理、原子力規制行政見直しの歴史的意義をどのように認識されているのですか。総理の言葉でお答えください。そして、総理としては、本国会でどのような審議を期待されていますか。

 さて、両法案は、原子力の利用と規制を分離することが目的です。社民党は、新たな原子力規制組織を三条委員会とすることが、独立性と権限という点で望ましいと考えます。政府は、三条委員会は危機対応の面で問題があると指摘しますが、重要なのは、指揮系統と判断基準、責任の所在が明確となっていることであり、三・一一の反省、教訓を踏まえて機能する仕組みを整備し、政治と一線を画した制度設計とすることです。総理、いかがですか。

 もちろん、形だけを整えても意味がありません。独立性や中立性が阻害されず、法律上の権限が適正に行使されるための実質的な裏づけが必要です。その点、両法案ともに、方針や基準の立案、個別の審査や評価がどのような場、手続で行われるのかが、必ずしも明らかではありません。これらを、どこで、誰が行うのか、細野大臣及び提出者より、具体的に御説明ください。

 この間、二〇〇六年の耐震設計審査指針改定時に保安院が安全委員会に旧指針でも安全と表明するよう求めた事件を初め、防災指針、シビアアクシデント対策、スマトラ沖津波を受けた溢水勉強会など、保安院や事業者が安全対策や原子力防災の見直し、強化の先送りを図ってきた事実が次々と明らかになっています。原子力委員会のいわゆる秘密会議や事務局体制、民間出向問題も、原子力村の閉鎖性と癒着の象徴です。疑惑を招いて遺憾という言葉だけでは済みません。

 立派な組織をつくっても、非公式の場で物事が決まったり、不当な影響力が行使されたりするのであれば意味がありません。アメリカNRC、原子力規制委員会では、委員が三人以上集まれば、公式の委員会となり、記録に残されています。三・一一直後の膨大な記録も公開されました。

 新たな規制組織は、透明性を徹底的に確保すべきであり、非公式な会議や接触は原則禁止とすべきです。情報収集の必要性はあったとしても、その場合も、会議や接触の事実を即座に公表し、資料や議事録も公開すべきです。

 以上の提案について、細野大臣及び提出者は、どう受けとめられますか。

 政府案の安全調査委員会委員であれ、自公案の規制委員会委員であれ、その職に誰がつくのかが重要です。独立性を実質的に確保するためには、兼職制限だけでは不十分であり、経歴制限や厳格な利益相反排除が必要です。また、保安院や安全委員会の委員や有識者について、これまでさまざまな利益相反の疑いが指摘されてきましたが、自己申告制と個人情報保護が壁となって、検証が阻まれてきました。申告情報の開示や、中立的な第三者が経歴や利益相反について判断する仕組みが不可欠です。さらに、審査専門委員や各種の外部委員も当然対象とすべきです。

 これらの中立性確保策につき、細野大臣及び提出者の見解をお尋ねいたします。

 実効性が問われるのはノーリターンルールも同様です。

 細野大臣は課長級以上に原則適用すると表明されましたが、実務者も大事です。全職員を対象とすること、中途採用者や技術参与らも例外としないこと、民間出向は禁止すること、当然ながら、天下りは排除することが必要です。そして、抜け道を塞ぐために、ノーリターンルールを明文化し、監視の仕組みを設けるべきです。

 これらの提案について、細野大臣及び提出者より、明確に御回答願います。

 次に、規制の中身の関係です。

 まず、提出者にお伺いしますが、自公案には、政府案の原子炉等規制法等改正案など、規制内容に係る事項が入っておりませんが、いかなる立場で審議に臨まれるのか。すなわち、規制内容に係る政府案を、そのまま、あるいは条件つきで受け入れられるのか、全て新たな規制委員会が考えるべきこととするのか、明確にしてください。

 実効性のある規制の中身について、以下、具体的に伺います。

 原子力安全委員会の安全審査指針類及びその見直しに係る中間取りまとめと、新規制組織が定める各種安全基準との関係につき、細野大臣及び提出者は、どう想定されているでしょうか。

 政府案に盛り込まれたバックフィット、つまり、最新の基準を既存の原発に適用する仕組みは、新たな規制体系において不可欠ですが、運転停止命令等は、「できる」規定となっている等、運用ルールが明確ではありません。四大臣会合でまとめられた再稼働基準三のように、猶予期間を設けるのであれば、骨抜きです。

 バックフィットの完全義務化と厳格な適用が必要であり、細野大臣にはその運用ルールについて、提出者にはバックフィットに対する考え方について、伺います。

 社民党は、国会及び政府事故調の最終報告を初めとする福島第一原発事故の検証を踏まえて新たな安全基準が策定され、対策が完了することなしに再稼働はあり得ないと訴えてきました。保安院、安全委員会が信頼を失墜し、安全審査指針類の明白な瑕疵が認識され、バックフィットが導入されようというのに、現時点で再稼働判断をするのは、明白な論理矛盾です。

 あたかも規制庁が発足したら再稼働できるかのような議論もありますが、新組織のもとで事故検証を踏まえた新たな基準が策定されていない以上、再稼働に向けた手続は中断すべきです。総理、提出者、双方の見解をお示しください。

 政府案では、原子力発電所の四十年運転制限が盛り込まれています。

 まず、総理、既に四十年を経過した敦賀原発一号と美浜原発一号、ことし七月に四十年を迎える美浜原発二号は、即時廃炉にすべきではないですか。お答えください。

 美浜二号については、保安院が高経年化技術評価を進めていますが、総理、当然中止すべきだと考えますが、いかがですか。

 運転制限については、政府案では最長二十年の例外的延長規定がありますが、これは削除すべきです。そもそも四十年の妥当性も問われるべきであり、例えば、設計寿命とされる三十年とする案も含め、検討すべきです。

 延長規定の削除及び四十年の再検討につき、細野大臣及び提出者の見解を求めます。

 ここで、総理に、脱原発依存、エネルギー政策転換への決意について、改めてお聞きします。福島第一原発事故の深刻な被害に苦しんでいる方々に響く言葉でお答えください。

 私は、電力需給の検証データや省エネ、需要管理、デマンドレスポンスなどの具体的提案を見て、この夏を第一歩として、原発なしでも電気が賄える、すなわち、原発を、ベース電源ではなく、当面バックアップと位置づけ、最終的に原発ゼロにできる道筋が見えてきたと考えます。安全対策や防災強化のコスト、廃炉後の地域づくりといった観点からは、原子炉の仕分けをすべきときです。

 社民党は、脱原発アクションプログラムで、老朽炉三炉に加えて、被災地東北の全ての原発、危険なマーク1タイプの原子炉、浜岡など地震、津波の危険が特に高い立地の原発を廃炉とし、新増設は中止することを提言しております。

 総理に、これらの具体的な原発版仕分けへの見解を伺うとともに、決断を求めます。

 さらに、脱原発依存の前提、「もんじゅ」や再処理施設のトラブルの歴史、高レベル廃棄物の処分問題、コストなど数々の判断材料を踏まえれば、「もんじゅ」廃炉、使用済み燃料の全面直接処分、核燃料サイクルからの完全撤退が合理的な選択肢であると考えますが、総理、いかがですか。国民的議論と逃げずに、まずは総理自身のお考えをお示しください。

 両法案では、公開性、透明性、市民参加について、必ずしも明確になっておりません。傍聴やパブリックコメントも必要ですが、一方通行ではなく、例えば双方向の対話フォーラムなど、より実質的に市民に開かれ、その意見が反映される仕組みを構築することが必要であります。細野大臣及び提出者より、具体案をお示しください。

 次に、原子力防災について、細野大臣に、三点、お伺いします。

 原子力安全委員会が三月に取りまとめた防災指針の見直しについて、改定スケジュールを明確にお示しください。

 防災指針改定については、PAZ及びUPZの運用基準、オフサイトセンター、被曝医療、沃素剤事前配布など、多くの重要課題が積み残しとなっています。これらについて、具体的に、いつ結論を得、改定するのでしょうか。

 班目安全委員長らが認めているとおり、現行指針には明白な瑕疵があります。実質的に無効化した現行指針と見直し案とが併存している今、事故があった場合に大混乱が生じることは明らかです。

 再稼働前に、防災指針の完全改定、地域防災計画改定、そして、ハード、ソフト両面での整備が完了している必要があると考えますが、異論はありませんね。

 加えて、社民党が再三追及してきましたが、大飯原発で過酷事故が起きた場合の放射能拡散予測を滋賀県が再三要望しているにもかかわらず、SPEEDIの試算結果が提供されていません。それどころか、いまだに試算に着手さえされておりません。

 平野文科大臣、滋賀県は、よく御存じのように、大飯からわずか十数キロです。近畿一千四百五十万人の生命の水源、琵琶湖のある滋賀県に、なぜ、提供もせず、試算さえもしないのですか。この場で、すぐ出すと、明確にお約束ください。

 同時に、細野大臣、防災指針改定を前提とした地域防災計画改定を自治体に要請されている立場として、文科省の対応はおかしいと思いませんか。

 最後に、国会事故調との関係について伺います。

 なぜ最終報告を待たずに法案が出されているのかという黒川委員長の痛烈な批判は、真摯に受けとめるべきです。総理の御認識を伺います。

 とはいえ、だらだらと保安院と安全委員会が存続する現状は望ましくありません。新規制組織の発足が先行する場合でも、事故調最終報告の反映を確約し、そのスケジュールを明示することが必要です。

 一方、事故調の提言への対応が決まるまでは、規制庁の仕事は、停止中の原発の安全確保に必要な事項等、最低限の対応にとどめるべきです。

 以上、事故調との関係につき、細野大臣と提出者は、どうお考えですか。

 規制庁であれ、規制委員会であれ、適正な運営を外部から監視し評価するシステムが欠かせません。加えて、賠償を初め事故処理は、今後何十年にもわたる長期的なプロセスであり、何らかの監視機能が必要です。

 そこで、提案いたしますが、国会事故調の後継組織を設け、原子力規制行政の監視・評価機能をあわせ持たせてはいかがでしょう。

 総理と提出者の御所見を求めるとともに、同僚議員に検討をお呼びかけし、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 社民党服部議員の御質問にお答えいたします。

 まず第一に、原子力規制行政見直しの歴史的意義についてのお尋ねがございました。

 今般の原子力規制組織等の見直しは、東京電力福島第一原発の事故の反省の上に立ち、放射線の有害な影響から人と環境を守るという観点からそのあり方を全般的に見直すものとして、大きな意義があります。

 具体的には、原子力安全規制と利用の分離、原子力安全関係業務の一元化、環境省のもとでの原子力規制庁の設置に加え、放射性物質による大気汚染等の防止措置の環境基本法への追加等の見直しを盛り込んでいます。

 審議につきましては、議員提案も提出されていますが、新しい原子力規制組織を早期に発足させる必要があるという点については、考え方は共有されていると考えています。一日も早く新しい規制組織と制度を導入できるよう、国会において建設的な議論を進めていただくことを期待します。

 なお、国会における議論の進め方については、国会において適切に御判断いただいているものと承知をしております。

 次に、事故の反省、教訓を踏まえた制度設計についての御質問をいただきました。

 今般の事故における政府の危機管理対応の反省、教訓として、政府内の指揮系統、中央と現地対策本部との役割分担、関係省庁の責任関係などがあらかじめ整理できておらず、混乱が生じたり、対応が不十分であったりしたものと認識をしています。

 このため、政府提出法案に基づく原子力防災の危機管理体制については、原子炉等規制法に基づく事故そのものの収束への対応は基本的に原子力規制庁が助言、指示するなどして行うことや、モニタリングの司令塔や被災者の健康管理は環境省が担うことなど、緊急時の対策の責任を明確化することとしています。

 また、避難や食品摂取制限等の実施基準は原子力災害対策指針に規定するなど、判断基準や行動手順についても、マニュアルの改定などにより準備をする考えであります。

 他方、政治的配慮への御懸念については、こうした緊急時の対応についても目を光らせ、環境大臣などに勧告等を行う権限を付与することで、規制組織等を監視する原子力安全調査委員会が対応することと考えております。

 次に、再起動の判断についてのお尋ねがございました。

 原子力発電所の再起動については、安全性の確保が大前提であります。これまでの政府事故調査委員会や保安院の意見聴取会、民間独立検証委員会による事故検証等を通じて、事故原因については基本的な共通理解が得られたと考えています。

 政府としては、昨年三月以降、緊急安全対策等の対策を指示、確認するとともに、昨年七月にはストレステストの実施を指示し、専門家やIAEAにより、慎重に確認してまいりました。また、事故検証により得られた知見を踏まえ、新たな規制の方向性として、三十の対策を取りまとめたところです。

 先般、四大臣会合で取りまとめた原子力発電所の再起動に当たっての安全性の判断基準は、こうした積み重ねを、国民の目から見てわかりやすく整理したものです。この判断基準は、今回の事故のような地震、津波に襲われても燃料損傷には至らない十分な安全性が確保されていることを求めており、大飯原子力発電所三、四号機については判断基準を満たしていることを確認しています。

 次に、原子力発電所の廃炉及び高経年化技術評価についてのお尋ねがございました。

 高経年化した原子力発電所等については、厳しい規制のもと、安全を確保した上で運転することが求められますが、安全が確保できなくなったものは廃炉となります。また、運転年数の原則四十年制限等が盛り込まれた改正法が成立した場合には、こうしたルールに基づいて、個々に、廃炉すべきかどうか、判断がなされることになります。

 いずれにしても、こうした改正法が成立し、運用が開始されるまでは、高経年化した原子力発電所等の安全性を確保するためにも、現行制度の枠組みのもとで粛々と安全性の評価を行うことが必要と考えています。

 次に、原発の廃炉及び新増設についての御質問をいただきました。

 高経年化した原子力発電所等については、厳しい規制のもと、安全を確保した上で運転することが求められますが、安全が確保できなくなったものは廃炉となります。

 また、原発の新増設については、現状では困難な状況に置かれていると考えています。他方、建設中の原発等については、進捗状況もさまざまであり、立地地域の方々の御意見も踏まえながら、個別の事案に応じて検討していく必要があると考えています。

 また、原発を含む今後のエネルギー政策については、中長期的には、原子力への依存度を最大限引き下げていくという方向を目指すべきと考えています。今後、国民が安心できる中長期的なエネルギー構成を目指し、幅広く国民各層の御意見をお伺いしながら、ことしの夏をめどに新しい戦略と計画を取りまとめてまいります。

 いずれにせよ、原子力発電所については安全の確保が最優先であり、御指摘の提言にある原子力発電所も含め、こうした確認を厳格に行ってまいりたいと思います。

 次に、「もんじゅ」と核燃料サイクルについてのお尋ねがございました。

 現在、昨年末にエネルギー・環境会議で決定した基本方針を踏まえ、核燃料サイクル政策を含む原子力政策の徹底検証を行う中で、原子力委員会において、核燃料サイクル政策の選択肢の提示に向けた検討を進めています。その際、再処理方針に限らず、高速増殖炉「もんじゅ」や直接処分も含め、幅広く議論をいただいています。

 その上で、原子力委員会等の検討を踏まえ、原子力を含む中長期的なエネルギー構成や核燃料サイクルのあり方について、本年夏の革新的エネルギー・環境戦略等の策定に向けて、経済性や国際的な視点等も含め、エネルギー・環境会議等の場でしっかりと議論を進めてまいります。

 次に、国会事故調との関係についてのお尋ねがございました。

 東電福島第一原発の事故により、原子力安全行政の信頼は大きく損なわれました。原子炉は、稼働か否かにかかわらず、常にしっかりした安全規制が必要であり、国民の不安に応えるためには、新たな組織のもとで、一日も早く、放射線から人と環境を守る規制、制度と防災体制を整えることが急務です。

 もとより、立法府において設置された国会事故調査委員会の重要性は言をまたず、そこで事故の総括を通じてまとめられる提言を踏まえて、政府においてさらなる検討を行わなければならないと認識しています。

 昨年八月の閣議決定においても、当面の見直しを行った後により広範な検討を行うこととしており、今後、国会事故調の提言等を含めて、新組織が担うべき業務のあり方や、より実効的で強力な安全規制組織のあり方について、平成二十四年末を目途に成案を得るべく取り組んでまいります。

 最後に、原子力規制行政の監視、評価機能についてのお尋ねがございました。

 今般のような原子力事故は、二度と起こしてはなりません。そのためにも、御指摘のとおり、規制機関から一歩離れた中立的な立場から原子力安全規制行政のあり方を監視、評価する機能は極めて重要と考えております。政府提出法案においては、原子力規制庁とは別に原子力安全調査委員会を設置し、規制行政の有効性の監視、原子力事故の原因調査等の役割を担わせることとしているのは、そうした認識に基づくものであります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣細野豪志君登壇〕

国務大臣(細野豪志君) 服部議員から、十一問、御質問をいただきました。

 まず、方針の策定、個別の審査等の手続について御質問をいただきました。

 安全性の判断やその基準の策定などに当たっては、科学的な知見に基づく合理性、客観性が重要であることは言うまでもありませんが、より幅広い知見を集約するため、規制組織外の有識者による調査審議や意見の聴取を行うことも不可欠であります。こうした外部有識者の知見も活用し、規制組織自身が、安全に係る基準の策定、個々の許認可等に係る審査を行い、最終的な安全性の判断をすることが基本となります。

 こうした考え方から、政府提出法案では、原子力規制庁に原子力に関する高度な専門的、技術的知見を有する審査専門委員を置き、原子炉の設置許可等の処分を行おうとする際にはあらかじめ審査専門委員の意見を聞くことを明記し、手続を明確化しているところであります。

 次に、透明性の確保、情報公開について質問をいただきました。

 御指摘いただきましたとおり、新たな規制組織の透明性の確保は最も重要な課題であり、原子力規制庁の意思決定プロセスは、国民から見て透明性のあるものとすべきと認識しております。

 具体的には、原子力施設に係る安全審査、種々の安全基準の策定等について、できるだけそのプロセスを公開していくルールを設定する必要があると考えております。

 今後、米国の原子力規制委員会の例なども参考にしつつ、記録のとり方や公開のあり方について、対象範囲、手法などについて検討を行ってまいります。

 次に、外部の有識者の中立性の確保について御質問をいただきました。

 御指摘のように、大学等に籍を置く専門家などの有識者が原子力安全の規制の許認可等に関与する場合、規制対象となる事業者との関係で利益相反が生じず、中立的な立場で参画することが重要です。

 このため、政府が提出している法案においては、原子力規制庁の原子力安全調査委員会の委員に係る要件を法定化しています。それに加えまして、原子炉等規制法に基づく許認可等に当たって意見を聞く審査専門委員についても、利益相反について厳格なルールを設定し、中立性を確保する必要があると考えております。

 次に、ノーリターンルール、民間企業からの出向等について御質問をいただきました。

 原子力規制庁の人事については、指定職は例外なく、また、課長クラスも原則として推進側の府省へは戻れない、ノーリターン人事とすることとしております。

 しかしながら、原子力規制庁の立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンとしてしまうと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念され、円滑な業務実施が困難であると考えられます。

 他方、原子力規制庁の中で専門性を持った職員を育てていくことが重要であり、長期的な観点から、適性のある職員の採用と適材適所の配置をしつつ、将来の管理職や幹部となる人材を含め、職員をしっかりと育成してまいります。

 また、原子力規制庁においては、規制対象となる事業者への職員の出向は行わず、その事業者の従業員が一定期間後にもとの企業に復職することを前提として出向することも受け入れない方針であります。その運用を徹底してまいります。

 天下りの排除については、原子力規制庁においても、ルールにのっとって適切に対応してまいります。

 次に、原子力安全委員会の安全審査指針類及びその見直しの中間取りまとめと、新規制組織が定める各種安全基準との関係について御質問をいただきました。

 今般の事故の教訓等を踏まえ、原子力安全委員会においては安全審査指針類に反映させるべき事項について、また、原子力安全・保安院においては今般の事故の技術的知見について、それぞれ中間的な取りまとめがなされております。新たな安全規制基準については、こうした検討の結果等を踏まえて、新たな原子力安全規制組織においてその詳細を検討していくこととなります。

 次に、バックフィットの運用ルールについて御質問をいただきました。

 最新の技術的知見を規制に取り入れ、既に運転している原子力施設にも適用していくことは、今般の事故の教訓を踏まえた安全規制強化の根幹です。

 このいわゆるバックフィットの運用に当たっては、適用される個々の対策の特性に応じた適切なルールを設定することが必要です。

 例えば、今回の法改正に伴う安全対策の強化策の中には、施設の設計思想の大幅な見直し等を伴うものもあり、ただ単に対応のみを急がせると、設計や工事に不備が生じ、実効的に施設の安全性を向上させることができなくなる可能性もあります。こうした点も踏まえて、一定の準備期間や対応措置期間を含めた運用ルールが必要であります。

 また、一たび適用されることになれば、バックフィットの適用で要求した基準を満たせない原子力施設に対しては運転の停止や許認可取り消しといった強制措置があり、必要な安全対策を厳格に義務づけていくこととなります。

 次に、運転期間の制限に係る延長について御質問をいただきました。

 運転期間の年限を原則四十年としているのは、原子炉設置許可の審査に関して、必要な設備、機器等に係る設計上の評価が運転開始後四十年の使用を想定して行われていることが多いことを考慮したものです。

 また、個々のプラントごとに施設の状況が異なることも踏まえ、運転期間の例外を一切排除するのではなく、一定の要件を満たして認可を受けた場合には、運転期間の延長を可能とする余地も残しています。ただし、最新の技術的知見を踏まえた基準を満たすことが求められることから、実際の延長が認められるのは例外的な場合に限られると考えております。

 なお、運転期間の制限制度は、原子炉の運転を四十年間認めるのではなく、今回提出している法案による規制強化が施行されますと、最新の技術的知見を踏まえた技術基準に適合していない原子炉は、四十年以内であっても運転をすることができなくなるということをあわせて申し上げたいと思います。

 次に、公開性、透明性、市民参加について御質問をいただきました。

 御指摘のとおり、原子力の安全に関する情報は広く公開するとともに、原子力規制庁の意思決定プロセスやその根拠等について、国民から見て、オープンで、透明性のあるものとすべきと認識しております。

 したがって、原子力施設に係る安全審査等、原子力規制庁における意思決定は、主として有識者による議論や意見を踏まえたものとなりますが、こうした意思決定の過程を公開していく考えです。また、有識者のみならず、市民との対話、情報共有の機会を設け、国民各層の声を直接に聞くような広聴活動にも注力してまいります。

 次に、防災指針の見直しについて御質問をいただきました。

 防災指針については、今般提出している法案において、原子力災害対策指針として新たに法定化することとしており、その内容につきましては、本年三月の原子力安全委員会の中間取りまとめを踏まえて本法案の施行の段階で告示するなど、順次反映していくこととしたいと考えております。

 とりわけ、UPZやPAZ、オフサイトセンターについては、地域防災対策の見直しを進める上で極めて重要な事項でありますので、本法案施行直後の告示に反映をする考えであります。

 他方、被曝医療等、引き続き専門的、技術的な検討を要するものにつきましては、関係府省で可能な限り早期に結論を得るべく検討を進め、原子力規制庁に引き継いで、その結果を原子力災害対策指針に順次反映していく予定としております。

 なお、防災対策については、これで全て完了というものではありません。いわゆる安全神話に陥らず、不断の向上を図っていくことが重要であり、防災指針や地域防災計画等についても継続的に見直しを図っていく所存であります。

 次に、SPEEDIの試算結果の自治体への提供について御質問をいただきました。

 今回の事故の教訓を踏まえた防災対策については、新たな体制のもとで、防災対策の強化に向けて、現在、関係省庁や自治体など関係機関と具体的な検討、準備を進めているところであります。

 一方、原子力防災の見直しは寸断なく進めていくものであることから、現行の体制においても可能な限り準備を進めていくことが重要であると考えます。

 このため、御指摘のSPEEDIの試算結果の提供に係る要望につきましては、法律案の成立後、できるだけ早い段階で準備を整えて対応できるよう、私としても最大限協力していきたいと考えております。

 最後に、国会事故調との関係について御質問をいただきました。

 立法府において設置された国会事故調査委員会の重要性は言をまたず、そこで事故の総括を通じてまとめられる提言を踏まえて、政府においてもさらなる検討を行わなければならないと認識しております。

 昨年八月の閣議決定でも、当面の見直しを行った後により広範な検討を行うこととしておりまして、今後、国会事故調査委員会の提言等を含めて、新組織が担うべき業務のあり方や、より実効的で強力な安全規制組織のあり方について、平成二十四年末を目途に成案を得るべく取り組んでいくこととしております。

 いずれにしても、原子炉は、稼働か否かにかかわらず、常にしっかりとした安全規制が必要であり、一日も早く、新たな組織のもとで、放射線から人と環境を守る規制と防災体制の強化を実現することが必要と考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣平野博文君登壇〕

国務大臣(平野博文君) 服部議員から、滋賀県へのSPEEDIの試算結果の提供についてのお尋ねがございました。

 文部科学省におきましては、これまで、従来のEPZに係る十九道府県につきましては、各都道府県の要望に応えたSPEEDIの試算の実施及びその結果の提供を行ってまいりました。その結果につきましても、文部科学省のウエブサイトにおいて公開しているところでございます。

 先ほどの細野大臣からの御答弁と多少ダブりますが、政府といたしましては、原子力規制庁の設置等に係る関連法案の成立後、速やかに、原子力安全委員会が本年三月に取りまとめました防災指針の見直しに関する考え方を踏まえて、新たに原子力災害対策指針を定める、こういうことにいたしております。

 本方針を踏まえて、UPZの設置に伴う滋賀県へのSPEEDIの試算結果の提供を含め、やるべきであると考えております。

 文科省としましては、これまで、関係地方公共団体との間で、計算条件についての調整など、可能な準備については前倒しして取り組んできたところでございますから、滋賀県の要望につきましても、新たな指針を踏まえ、速やかに対応してまいる所存でございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔柴山昌彦君登壇〕

柴山昌彦君 社会民主党服部良一議員からの御質問に、政府案との対比を意識してお答えいたします。

 まず、法律上の権限の行使について御質問をいただきました。

 原子力規制委員会は合議制の機関として組織されますので、原子炉の安全基準の策定、原子炉の基準適合審査やその評価等を初めとする原子力規制委員会の意思決定は、全て、原子力規制委員会の合議によりなされることとなります。

 原子炉施設の安全審査に用いる指針の策定を例に具体的に申し上げますと、この指針の整備に当たっては、原子炉安全専門委員会の専門部会において、最新の科学的知見の進展に応じ、逐次見直しのための検討が行われることになり、その検討の結果が、原子力規制委員会の決定により指針として策定され、適用されることとなります。

 このような指針の策定等に関するプロセスは、現行制度の運用を踏襲したものとなっているところであります。

 次に、情報公開について御質問をいただきました。

 今般の原子力事故を受けて新たに創設される原子力規制機関は、原子力利用における安全の確保に関し、国民の不安を払拭し、その信頼に応えるものとして組織されなければならないことは申し上げるまでもありません。

 その意味で、原子力規制委員会において、透明性を確保し、国民への説明責任を全うすることが重要であり、規制情報、委員会議事録等については、原子力利用における安全の確保の観点から判断される例外的事項を除き、できる限り公開していくという方向で検討されるべきものと考えております。

 次に、委員の中立性確保策について御質問をいただきました。

 自公案では、原子力規制委員会の委員長及び委員については、利益相反を排除するという観点から、原子炉等規制法等の規制対象者はこれにつくことができないこととされております。そして、これらの者の任命に当たっては、両議院の同意を必要とすることとされております。

 したがって、まずは、適切な人事案が政府から示された上で、しっかりと国会において判断が行われることが期待されるところであります。

 なお、原子力規制委員会の審査会等の委員については、法律上は欠格事由を明記しているわけではございませんが、原子力規制委員会の委員長及び委員に関する欠格事由の考え方等を踏まえ、適切に下位法令や運用において制約が設けられるものと考えております。

 次に、ノーリターンルールについてのお尋ねがございました。

 原子力規制委員会の独立性を確保する上で、原子力安全規制に係る事務組織の職員が、経済産業省等の原子力推進官庁や原子力事業者に属する者から、組織を超えてその人間関係に基づく影響を受けることのないよう、制度的に担保することが重要であります。

 そのための措置が、ノーリターンルールの設定であります。

 政府の方針では指定職と政令職が対象とされていますが、先ほど来お話があるとおり、政令職の場合は例外が認められ、結局、ノーリターンルールがきちんと適用されるのは指定職の七名だけと聞いております。総理からは、立ち上げにおける限界などというお話もありましたけれども、ノーリターンルールを実効的に機能させるためにはこれでは到底不十分でございまして、幹部職員のみを対象とするのではなく、末端の職員についても全て対象に含めるのが適当です。

 あわせて、自公案においては、原子力規制庁の職員の職務執行の公正さに対する国民の疑惑または不信を招くような再就職についても規制することとしております。

 このことにより、他省庁の組織の論理に左右されず、原子力利用における安全確保に取り組む原子力規制組織が形づくられることとなると考えます。

 次に、原子炉等規制法の厳格化に対する自公案の考え方についてのお尋ねがございました。

 この点につきましては、自公案は、原子力規制に係る組織論を中心に関係法律の整備を行ったものであります。このため、自公案では規制の内容に係る事項について言及がされておりませんけれども、このことは、このような措置が必要ないということを意味しているわけではございません。

 これらの事項については、原子力規制を独立かつ一元的に行う組織として原子力規制委員会が創設されることを前提に、今後の審議を通じて、必要な事項については盛り込むということも考えられます。

 次に、原子力安全委員会の安全審査指針類及びその見直しに係る中間取りまとめと、新規制組織が定める各種安全基準との関係についてのお尋ねがございました。

 各種安全基準は、客観的な科学的知見に基づき、新規制組織の判断において今後新たに定められるものと考えられます。他方、安全審査指針類の見直しに係る中間取りまとめを拝見した限りにおいては、IAEAの安全基準や最新の科学的知見を取り込んだものとなっており、これについては一定の評価ができるものと思われます。

 したがって、新規制組織においては、安全審査指針類の見直しに係る中間取りまとめの内容等を踏まえて各種安全基準を策定することになるのではないかと思っております。

 次に、バックフィットに対する考え方についてのお尋ねがございました。

 バックフィットについては、最新の科学的知見をアップデートしていくというものであって、原子力利用における安全の確保という観点からは適切な規制であり、今後の審議を通じて、私どもの案に盛り込むことも考えられます。

 次に、事故検証を踏まえた新たな基準がない以上、再稼働に向けた手続は中断すべきではないかとのお尋ねがございました。

 そもそも、安全基準は、科学的知見に基づくものであり、どの組織が策定したとしても、これが科学的知見に適合していれば直ちに適用させるべきものであるとは考えられます。

 しかしながら、今般の原子力事故を受けて、原子力利用における安全の確保に関しては、国民の不安を払拭し、その信頼に応えるものとすることが何よりも重要となっております。

 このことを踏まえますと、新たな原子力規制組織のもとで新たな基準が定められるのが望ましいと考えます。

 次に、原発の四十年運転規制について御質問いただきました。

 原発の運転制限については、政府から、四十年ならば四十年とする合理的根拠、例外事由等を明確に示していただいた上で議論を尽くしていきたいと思っております。

 次に、原子力安全規制に係る公開性、透明性、市民参加について御質問いただきました。

 今般の原子力事故を受けて、原子力利用における安全の確保に関しては、国民の不安を払拭し、その信頼に応えることが何よりも重要となっております。そのためには、原子力安全規制に係る公開性、透明性を確保することは欠かせません。先ほど申し上げた、情報公開の徹底、パブリックコメントなどの活用が図られることを期待しております。

 次に、国会事故調査委員会との関係について御質問をいただきました。

 国会事故調査委員会の報告書は六月にも提出されることとなっていると聞いています。しかし、現行体制の問題として既に明らかになっている事項も少なくなく、これらに早急に対処し、原子力利用における安全の確保を強固なものとし、国民の不安を取り除くことは、政治の務めであると考えております。

 そこで、現時点で考えられ得るベストの案を法案として提出することとし、原子力規制委員会をひとまず立ち上げて運用させた上で、三年以内に、原子力事故調査委員会の報告の内容等を踏まえた組織のあり方の見直しを行うという整理をしているところであります。

 最後に、外部からの監視、評価システムについて御質問いただきました。

 原子力規制委員会は、それ自体、三条委員会として設置され、委員長及び委員の職権の独立の行使が認められる以上、その職務執行をチェックするための特別の第三者機関を新たに設ける必要は乏しいと思われます。

 また、原子力事故の原因究明につきましては、たとえ法律上の規定がなくとも、原子力規制委員会が行うことができるのは当然であります。

 また、第三者的な観点から、より客観的で公正中立な調査が必要ということであれば、国会事故調査委員会のような組織を別途設けることも考えられます。

 したがって、国会事故調査委員会の後継組織を現時点で恒久的なものとして設ける必要はないと考えております。

 以上でございます。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   野田 佳彦君

       文部科学大臣   平野 博文君

       経済産業大臣   枝野 幸男君

       環境大臣

       国務大臣     細野 豪志君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  齋藤  勁君

       内閣府副大臣   中塚 一宏君


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