衆議院

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第4号 平成24年11月8日(木曜日)

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平成二十四年十一月八日(木曜日)

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  平成二十四年十一月八日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣城島光力君。

    〔国務大臣城島光力君登壇〕

国務大臣(城島光力君) ただいま議題となりました財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 平成二十四年度の一般会計歳入予算の約四割を占める財源を確保するための特例公債の発行に係る法律案については、さきの第百八十回国会に提出いたしましたが、審議未了のまま廃案となり、依然として特例公債金を歳入として見込めない状況が続いております。

 こうした中、政府は、去る九月七日に「九月以降の一般会計予算の執行について」を閣議決定し、関連法令の規定や国民生活、経済活動への影響を踏まえつつ、可能な限り予算の執行を後ろ倒しすることとしておりますが、こうした措置が長期化する場合は、さまざまな分野で悪影響が生じるおそれも否定できません。

 現下の厳しい財政状況においては、特例公債なくして財政運営を行うことは極めて困難であり、一刻も早くその発行等を認めていただくよう、改めて本法律案を提出することとしたものであります。

 以下、本法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、平成二十四年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定等による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で公債を発行することができることとしております。

 第二に、租税収入等の実績に応じて、特例公債の発行額をできる限り縮減するため、平成二十五年六月三十日まで特例公債の発行を行うことができることとし、あわせて、同年四月一日以後発行される特例公債に係る収入は、平成二十四年度所属の歳入とすること等としております。

 第三に、平成二十四年度及び平成二十五年度において、基礎年金の国庫負担の追加に伴い見込まれる費用の財源を確保するため、公債を発行することができることとし、その償還及び平成二十六年度以降の利子の支払いに要する費用の財源は、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律の施行により増加する消費税の収入をもって充て、これを平成四十五年度までの間に償還すること等としております。

 以上、財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。

 以上でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。中野寛成君。

    〔中野寛成君登壇〕

中野寛成君 私は、民主党・無所属クラブ・国民新党を代表し、財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案について質問を行います。(拍手)

 まず、その前に一つ総理にお尋ねをいたします。

 昨日、米国大統領に民主党のバラク・オバマ氏が再選されました。その鍵は雇用と社会保障であったと考えます。また、解散も総辞職もない、しかし、上下両院のねじれの中で経済と財政の再建に挑むオバマ大統領の二期目のスタートに対し、野田総理の格別の思いもまたあろうかと思います。所感を伺いたいと思います。

 さて、与野党関係各位の御尽力によって、本日ここに特例公債法案の審議が始められたこと、御同慶の至りであります。同時に、本日、私は、この特例公債法案について代表質問を行うに当たって、若干の感慨を覚えております。

 顧みれば、私が初めてこの本会議場で代表質問に立ったのは昭和五十二年三月四日、十一月四日ではありません、三月四日、議題はまさに昭和五十二年度の公債の発行の特例に関する法律案でありました。

 当時は、石油危機を背景として経済が停滞し、景気回復のために各種の追加財政需要がある一方で財源不足に陥ったことから、異例の事態へ対処するためとして、昭和五十年度に初めて特例公債法が成立をいたしました。

 しかし、一向に事態は改善されず、昭和五十二年度に三度目の公債発行となったため、国民には大きな不安、不信が広がっておりました。私は、そうした状況の中で質問に立ったのでありました。

 あれから三十五年、残念ながら日本の財政状況はますます悪化し、特例公債の発行なしには成り立たない状況に至っております。公債依存から脱却し財政再建を図るべしとの長期的な目標は当然ではありますが、まずは国民の生活を守るために、特例公債法案の成立は不可欠となりました。

 それゆえ、予算と表裏一体である特例公債法案は、予算の成立に合わせて成立させることが望ましいことは言うまでもありません。たとえどの党が政権を担おうとも、特例公債法抜きで予算の執行はできません。予算の円滑な執行が困難となれば、経済活動に大きな影響を与え、国民生活の安定が確保できなくなります。

 これから私は総理を初め関係閣僚に質問をしてまいります。

 予算成立から既に七カ月が過ぎようとする今日までこの特例公債法案を成立させられなかったことは、我が政府・与党の責任のみならず、国会、政治の怠慢とのそしりを免れません。一刻も早くこの法案の成立を図ることこそが、政治の責任であり、国家国民のために与野党を超えた責務であると考えます。

 さて、野田総理におかれては、アジア欧州会合への出席、お疲れさまでした。また、先月はIMF・世界銀行年次総会が四十八年ぶりに日本で開催され、さらに九月には国連総会への出席など、重要な国際会議への出席が続く中で、日本としては、震災からの復興と社会保障と税の一体改革の断行を実現し、引き続き国際社会の中で重要な役割を担っていくのだというメッセージを発信してこられました。

 総理は、世界が昨今の日本の状況をどう見ているのか、また、日本に求められている役割とは何か、改めて痛感するところがあるはずであります。総理の御見解、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

 さて、特例公債法案が未成立な状態のもとで、九月から予算の執行抑制が行われております。このため、今月二日に予定されていた地方交付税の交付が先送りされ、多くの自治体においては、短期借り入れを行わざるを得ない状況に陥っております。

 そこで、財務大臣、現在行われている執行抑制によって、国民生活にはどのような影響が生じているのでしょうか。具体的にお聞かせ願います。

 また、あわせて樽床総務大臣、地方六団体は、先月三十日に執行抑制に対する共同声明を出して強い危機感を表明しておりましたが、これが現実のものとなった今、ぜひ、地方の現状について、その一端をお聞かせいただきたいと思います。

 また、万が一今月中に特例公債法案が成立しなかった場合には、十二月にも国債発行が停止すると言われております。こうした事態は、金融市場の混乱を引き起こし、日本の国際的な信用の低下を招くものであり、金融関係者を中心に強い危機感が表明されております。つまり、特例公債法案は、財源確保の観点から必要であるだけでなく、金融市場の安定、日本への信用といった観点からも極めて重要な法案であります。

 こうした問題はこれまで余り指摘されてきませんでしたが、前原経済財政担当大臣、特例公債法案が成立しなかった場合の金融面を中心とした我が国経済への影響について、わかりやすく御説明願います。

 そもそも、我が国の国債は発行額と残高のいずれもが莫大であり、それ自体が懸念材料であったにもかかわらず、近年では、特例公債法案の成立をめぐる与野党の駆け引きが政治的リスクとして受けとめられつつあります。

 G20の声明では、欧州の債務危機への対応がおくれる可能性、米国の潜在的かつ急激な財政の引き締めに続いて、日本の本年度予算の財源確保の可否が世界経済への下方リスクとして指摘されました。また、IMFのラガルド専務理事も、日本と米国については政策をめぐる不確実性の打開が重要課題であるとの見解を示したと報じられております。

 特例公債法案が政治的リスクとして受けとめられることで世界経済にどのような影響をもたらすのか、先週のG20における国際社会の議論を踏まえて、財務大臣の見解をお伺いします。

 繰り返しになりますが、我が国の財政運営は、赤字国債抜きではもはや不可能であります。そして、予算執行がとまれば、我が国経済や国民生活のみならず、世界経済へも大きな影響を及ぼすことになります。ねじれ国会のもと、毎年特例公債法をめぐって与野党が対立することは、このような多大なる影響を及ぼします。

 このような状況を回避するため、先般、野田総理は、予算と特例公債法案を一体的に処理するためのルールづくりを提案されました。これを受けて、現在、民主党から野党に対して、特例公債法の扱いの協議を提案しているところでもあります。

 具体的には、特例公債法案を多年度化し、例えば、財政健全化に向けた一里塚となっている二〇一五年度まで特例公債の発行権能を付与する法案などが検討対象になると思います。これは、民主党として、将来ともに特例公債法案を政局に巻き込むことはないという意思表示でもあります。

 野党の皆様にも積極的に協議に応じていただきたいと存じますが、この際、改めて財務大臣の御見解を伺っておきたいと存じます。

 私は、国際社会と日本の現状を見るとき、政争に明け暮れしている場合ではないと思います。

 まして、あえて私見を申し上げれば、内閣不信任決議を経ずして行われるいわゆる憲法七条解散は、私は今なお憲法違反だと考えております。

 衆議院議員は、国民によって与えられた四年間の任期を使命感を持って全うし、その責任を果たすべきだと信じます。そうでなければ、日本政治は、衆参のねじれの中で、世界に恥ずべき総理の一年交代がこれからも続くことになりかねません。

 さて、この法案の重要性については、今さら私が申し上げるまでもありません。万が一本法案が成立しなければ、社会保障の給付などがストップしかねません。日本版財政の崖が、先行き不透明となっている世界経済を暗闇にしかねません。議会が十分な議論を行うことは当然でありますが、その上で速やかに結論を出すことが、より一層重要であります。

 私は、今改めて、日本の国会、そして与野党の良心を信じたいと思います。

 最後に、政府・与党の度量と野党の良識が相まって日本の議会制民主政治が正しく成熟していくことを祈ってやみません。

 特例公債法案の速やかな成立を切に願いつつ、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 民主党を代表しての中野寛成議員の御質問にお答えをしてまいります。

 三十年を超える長い国会議員活動を踏まえての万感の思いを込めた御質問、ありがとうございました。

 まず、オバマ米国大統領再選の受けとめについてのお尋ねがございました。

 六日に行われた米国大統領選挙の結果、オバマ大統領が再選されたことを受け、早速私から、再選を心からお祝いする旨のメッセージをお送りさせていただきました。

 日米同盟は我が国の外交、安全保障の基軸であり、東アジアの安全保障環境が厳しさを増す中、その重要性は増しています。

 オバマ大統領との間では、安全保障、経済、文化・人的交流を中心に、幅広い分野で日米同盟の深化、発展を一層推進していくことで一致しております。その一環として、四月の私の訪米時には、日米共同声明を発表し、日米両国があらゆる能力を駆使しながら役割と責任を果たしていくことを確認しています。

 引き続き、オバマ大統領との間で日米同盟を発展させていく考えであります。

 また、中野議員御指摘のとおり、社会保障改革や財政健全化と経済成長の両立などの課題は両国に共通するものであり、これらの課題についても大統領と協力して取り組んでいく所存でございます。

 続いて、世界が日本に求める役割についてのお尋ねがございました。

 さまざまな国際会議への言及をいただきましたが、まさに今般、私は、ラオスで開催されたアジア欧州首脳会合に出席をし、アジア、欧州の首脳が一堂に会して経済財政問題など共通の関心事項について議論する中で、私から、これらの課題に対する日本の取り組みや貢献について紹介をいたしました。

 かつて、海外からは、決めるべきことを決めないで先送りをすることが日本の政治の象徴であるとの批判も受けましたが、決めるときに決める政治を行い、国際社会の共通の課題に対して範を示すことが、日本に求められる役割であると考えます。

 我が国がさきの国会で社会保障・税の一体改革関連法を成立させたことは、財政健全化と経済成長の両立という共通の課題を抱える国際社会に対する大きなメッセージになったものと確信をいたします。

 また、さきの震災で得た知見や教訓を国際社会と共有し、先頭に立って、国際的な原子力安全の向上や自然災害に負けない強靱な社会の構築をともに目指すことも、日本に求められている貢献の一つです。

 同時に、我が国は、震災に際して百六十以上の国・地域、四十以上の国際機関から支援をいただきましたが、その背景には、我が国のこれまでの国際的な取り組みに対する評価があるものと考えます。

 今後とも、内向きになることなく、国際社会の平和と繁栄の維持強化に向けて、必要な貢献を続けてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣城島光力君登壇〕

国務大臣(城島光力君) 中野議員からは三問御質問いただいたと思います。

 まず一点目、執行抑制の影響についての御質問をいただきました。

 現在取り組んでいる予算執行抑制においては、生活保護等の社会保障給付に要する経費や安全保障、治安関係の経費などは例外扱いといたしており、国民生活や経済活動に直接大きな影響を与えるものではないと考えております。

 ただし、法案成立がおくれ、このまま執行抑制が長期化すれば、予定されている事業が滞るなど、国民生活のさまざまな分野で重大な影響が生じることにもなりかねず、また、現在例外としている経費を含め、さらなる執行抑制についても考えざるを得なくなると思います。

 国民生活や経済活動への悪影響を回避するためには、一刻も早く予算を本格的に執行できる体制とすることが必要であり、法案の早期成立に向け、議員各位の御理解をいただくべく全力を尽くしてまいります。

 G20における特例公債法案に関する議論についての御質問をいただきました。

 特例公債法案の成立がおくれる場合、現在の執行抑制においても、十一月末には一般会計の歳出の財源がほぼ枯渇する見通しであります。また、十二月以降の利付国債の市中発行に支障が生じ、国債需給バランスが崩れて市場が不安定化したり、内外投資家から国の資金調達が不安定とみなされるおそれもあります。世界経済において大きな地位を占める我が国においてこのようなリスクが顕在化すれば、世界経済にも一定の影響を及ぼすことが懸念されます。

 特例公債法案をめぐる問題が世界経済の直面するリスクの一つであるという見方は、十月のIMFの世界経済見通しやIMFCのコミュニケにおいても既に指摘されており、さらに、先日私も出席いたしました十一月四日、五日のG20のコミュニケにおいても同様の言及がなされております。こうした国際社会の懸念も踏まえ、国会での特例公債法案の速やかな成立が必要と考えております。

 予算と特例公債法案を一体的に処理するためのルールづくりについての御質問をいただきました。

 過日、十月十九日の党首会談において、野田総理の方から、法案の本則を修正し、多年度にわたる特例公債の発行を可能とする案、あるいは、来年度にそのような法案を提出することを法案の附則に規定する案、さらには、予算と特例公債法案を一体的に処理することについて与野党間で覚書を交わす案について、提案がなされたところであります。

 このうち、法案の本則を修正する場合は、現行の財政健全化目標を踏まえ、議員御指摘のように、二〇一五年度までにわたり特例公債の発行を認めることも考えられるものと認識しております。

 ねじれ国会において安定的な財政運営が可能となるようなルールが整備されることは大変意義あることであり、与野党間で胸襟を開いて議論を進め、解決策を見出していただくことを強く期待しております。(拍手)

    〔国務大臣樽床伸二君登壇〕

国務大臣(樽床伸二君) 中野議員から、地方交付税の交付の先送りによる地方への影響についてお尋ねがございました。

 地方交付税の九月分の交付につきましては、道府県分については月割り三カ月に分けて交付をしたことから、これにより生じました資金不足に対処するため、金融機関からの一時借り入れ等を行った団体が多数あると承知をいたしております。

 また、地方団体からは、地方交付税の交付が遅滞することは国民生活に極めて重大な影響を及ぼすことになりかねないと強く懸念する声が上がっております。

 政府といたしましては、現在見合わせております十一月分の地方交付税の交付が速やかに行えるよう、特例公債法案の早期成立に向け最大限努力してまいります。

 よろしくお願いいたします。(拍手)

    〔国務大臣前原誠司君登壇〕

国務大臣(前原誠司君) 中野寛成先生にお答えをいたします。

 特例公債法案が成立しない場合に、金融面を中心にした我が国経済への影響についてお尋ねがございました。

 仮に今国会で特例公債法案の成立がおくれ、国債発行が休止した場合には、国債需給バランスが崩れて国債市場が不安定化するおそれがあるほか、国の安定的な資金調達に対する信頼が失われれば、中長期的な金利コストの増大を招くおそれがあるなど、我が国の金融市場への影響が懸念されております。

 また、仮にそのような状況が続くようなことがあれば、さらなる執行抑制の対応が必要となり、国民生活、経済活動のさまざまな分野に悪影響を及ぼすことにもなりかねません。

 我が国の景気は、このところ弱目の動きとなっており、先行きの不透明感も高まっている中で、当面の経済財政運営の観点からは、特例公債法案の速やかな成立が極めて重要でございます。

 特例公債法案を早期に成立させて財政執行面での不安を払拭し、しっかりと予算を執行していく中で、デフレからの早期脱却と経済活性化に向けて取り組んでまいります。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 竹本直一君。

    〔竹本直一君登壇〕

竹本直一君 自由民主党の竹本直一でございます。

 私は、自民党・無所属の会を代表して、ただいま議題となりました財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案について、総理大臣に質問いたします。(拍手)

 まず、政府の姿勢について申し上げます。

 私たちは、民主党代表選挙、自民党総裁選挙が終わった直後から、政府・与党に対しまして、早く臨時国会を開催し、本法案を早急に審議するよう提案してまいりました。しかし、政府・与党は、問題閣僚が追及されることをおそれて、十月の終わりまで国会の開会を先延ばしにいたしました。

 さらに、国会開会後速やかに予算委員会を開催し、議論しなければならない。これは予算に関する法律であります。ところが、与党がかたくなに予算委員会の開催を拒んでいるため、本日まで予算委員会が開催されない異常事態に陥っております。

 しかしながら、私たち自由民主党は、国民生活に直結する本法案の重要性に鑑み、やむを得ず審議に応ずることを決定いたしました。

 全てのものから逃げる民主党の姿勢にまず強く抗議をいたしたい、このように思います。

 次に、この公債発行特例法案が再提出されるに至った経緯に触れないわけにはまいりません。

 さきの通常国会において、公債発行特例法案は、会期延長後の八月二十八日、我が党が欠席する中、与党による強行採決によって参議院に送付され、参議院においては委員会に付託されることもなく、会期終了とともに廃案となりました。

 野田総理は、衆参両院で与野党の賛同を得られるような環境整備に努めていきたいと三月時点で述べておられたわけです。三月と八月では、成立の見込みがないという状況に何の変化もないわけであります。しかしながら、採決を強行してきたのであります。

 このような与党の独善的で横暴な国会運営に対し、強く抗議するものであります。

 また、総理が環境整備に努めるとしたあの三月から、はや七カ月余りを経過いたしましたけれども、この間、新たな提案や与野党協議の申し入れは全くなく、民主党は与党としての努力を全くしていないと言わざるを得ません。

 総理は、野党の賛同を得られるような環境整備として一体何を想定し、何を具体的にやったのか、御説明をいただきたい。

 我々は、昨年度の公債発行特例法案には賛成いたしました。その理由は、昨年八月の自民、公明、民主による三党協議の結果、膨張した歳出の見直しについて、平成二十三年度における歳出の削減及び平成二十四年度予算の編成プロセスなどに当たり誠実に対処することが確認されたからであります。

 しかし、その後の民主党の対応は不誠実きわまりないものでありました。今年度予算において高速道路無料化こそ計上しなかったものの、児童手当の名称を子どものための手当にしようとしたり、高校無償化については、政策効果の検証をもとに必要な見直しを検討すると言っておりましたけれども、それが、検証すらしていなかったというありさまです。

 このように、ばらまき政策を見直すとした三党合意は、今年度予算において民主党によりほごにされ、公党間の信頼関係が著しく損なわれました。

 ばらまき政策が見直されなかった今年度の予算については多くの問題点があることから、我が党は、予算審議に際し、撤回のうえ編成替えを求める動議を提出し、予算の出し直しを主張いたしました。しかし、政府・民主党は、我々の主張には一顧だにせず、予算を原案どおり成立させたのです。

 我が党の主張は無視し、予算の手直しをすることもせず、ただ時間がたったので公債発行特例法案の成立に御協力くださいというのは、余りにも筋が通りません。昨年八月の三党合意は一体何だったのか。まさに、喉元過ぎれば熱さを忘れるということじゃないでしょうか。

 総理は、ばらまき政策により膨張した今年度予算の歳出を減額するつもりはないのですか。公債発行特例法案の成立を期すというのであれば、まず政権与党が責任を持って与野党合意のための案を提示すべきであると考えますが、総理の御認識をお伺いしたいと思います。

 公債発行特例法案は、予算の財源を裏づけるためのものであり、本来、予算と一体のものであります。今年度予算は、憲法上規定された衆議院の優越により成立いたしましたけれども、歳入が確保されていなければ、予算に計上されたとおりの執行はできないのであります。このことを、政権与党であればもっと真剣に考えるべきです。

 自公政権では、同時に成立するように最大限の努力を我々はしてまいりました。民主党政権においては、そのような真摯で責任感ある態度が見られないのです。予算だけ通して、公債発行特例法案が野党に人質にとられているかのような言動は、政権与党として余りにも無責任であります。

 さきの国会において、成立の見込みがないにもかかわらず衆議院での採決を強行した意図は、一体何だったのでしょうか。総理は、予算と公債発行特例法案との関係をどのように考えておられたのか、伺いたいと思います。

 また、総理は、十月十九日に行われた自民、公明、民主の三党党首会談において、来年度以降の予算と公債発行法を一体的に成立させるルールづくりを提案されました。その目的や具体的な案についても、ぜひ御説明をお願いしたいと思います。

 今回の公債発行特例法案は、特例公債の発行権限を政府に付与するだけでなく、平成二十四年度及び二十五年度の基礎年金の国庫負担の追加に見込まれる費用の財源について、年金特例公債の発行を可能とする規定も盛り込まれております。平成二十四年度の発行見込み額は二・六兆円とされておりますけれども、この額は、今後提出される補正予算で規定されるとされております。

 総理にあっては、本法律案と一体のはずの補正予算はいつ提出する予定なのか、伺います。あわせて、補正予算の内容は年金特例公債だけなのか、それとも、報道されている経済対策をも含むものなのか、内容についての現段階でのお考えを説明してください。

 年金特例公債の元利償還は、税制抜本改革法の施行による平成二十六年度以降の消費税の増収分を財源として、平成四十五年度までに行うこととされております。社会保障と税の一体改革において、消費税率の引き上げについては、民主党所属議員の中にも反対された方々が、鳩山元総理を筆頭にいらっしゃいます。この方々は、消費税の増税により償還される年金特例公債の発行を容認されるのでしょうか。

 国民の生活が第一は、このことを理由として、先国会では反対されました。

 鳩山元総理は、今回の賛否はどうするんでしょうか。公債発行特例法案に賛成することと消費税率引き上げ法案に反対したこととの整合性はどう説明するつもりなのでしょうか。

 野田総理は、公債発行特例法案の採決で民主党から反対や棄権が出ないと断言できますか。いかがですか。

 そもそも、総理は離党者が相次ぐ党内ばらばらの民主党をまとめ切れているのか疑問です。総理は、政府・与党の連携と内閣機能の強化のためと称して、十月一日に内閣改造に踏み切りましたが、論功行賞や離党予備軍の行動を抑える狙いではないかとの指摘がなされております。

 案の定、田中けいしゅう前法務大臣は、暴力団関係者との交際や外国人献金問題、そしてその追及を恐れて国会審議を逃げ回るという憲法違反にも類する行為により、就任からわずか三週間余りで辞任いたしました。総理の任命責任が厳しく問われるのが当然と考えますけれども、総理はどのように考えておられるのでしょうか。

 また、衆議院の過半数割れまであと何人と連日報道されておりますけれども、与党一丸となって国民のための国政を推進していけるとお考えなのか、総理の所見と認識をお聞きしたいと思います。

 次に、予算の執行抑制についてであります。

 政府は、公債発行特例法案が成立しないままでは、十一月末にも財源が枯渇するとしています。歳出の抑制によって、既に地方自治体の中には、金融機関からの借り入れで利払いの負担増が発生する可能性が出てきております。地方自治体からは強い批判の声が上がっているんです。この金利負担は政府で後ほど穴埋めする方針と伝えられていますけれども、政府の対応方針を伺いたいと思います。

 政権与党としてこのような事態を招いた責任は、この法案を成立させるための知恵を持たず、環境整備を怠り続けた政府・与党側にあるということは明白であると思いますが、総理はどう考えているんでしょうか。お伺いしたいと思います。

 日本経済の減速が懸念される昨今、政府は、十月二十六日に経済対策第一弾として、四千二百億円規模の財政支出を閣議決定いたしました。問題なのはその財源です。国会を通さず閣議決定で使える今年度予算の予備費を使うというのであります。

 内閣府の試算では、この対策によるGDPの押し上げ効果は〇・一%にすぎません。一方では、予算の執行抑制を行い、地方交付税の支払いを延期し、地方自治体はまさに兵糧攻めに遭っているんです。予算執行抑制ではなく、この予備費を地方自治体のために使うべきではないのでしょうか。

 地方自治体を苦しめる一方で、効果のない、たった〇・一%といったような経済対策にこの貴重なお金を使っていいのでしょうか。一体何のための経済対策なのか、総理の御説明をお願いしたいと思います。

 八月八日の自民、公明、民主の三党党首会談で野田総理が述べた、近いうちに国民に信を問うとの言葉について、御自身でどのように認識されていますか。

 野田総理が政治生命をかけるとした社会保障と税の一体改革関連法案が成立した暁には近いうちに解散するということを、我が党の谷垣前総裁に約束したわけです。このことは国民に対する約束であります。この約束をなぜ守らないのですか。近いうちというのは一体いつなのですか。この国民との約束を一体いつ果たすのか、明確にお答えをお願いしたいと思います。

 民主党は、マニフェスト二〇〇九で、月額二万六千円の子ども手当、高校無償化、農業者戸別所得補償制度を初めとするばらまき政策を実現するための財源として、国の予算を組み替え、無駄の削減によって十六・八兆円を生み出すとして政権を獲得したのです。その政権交代から三年余り経過しましたが、結局、無駄の削減でばらまき政策を実現するための財源は出てこなかったのです。

 他方、消費税の増税についてはマニフェストには記載はなく、選挙期間中の発言でも、消費税は上げませんと言ってきたんです。やると言ったことをやらないで、やらないとわざわざ言ったことをやっています。

 そもそも、野田総理は、選挙期間中、マニフェストについて、これは野田総理が言われた言葉でありますけれども、書いてあることは命がけで実行する、書いていないことはやらないんです、それがルールですと。立派な言葉です。講演でされておったんです。だからこそ、国民は、マニフェストを信じて民主党に政権を託したのではありませんか。

 そのマニフェストが実現不可能であることが明確になり、やらないと公言してきた消費税率引き上げ法が成立するに至った現在、一日も早く、国民に対して、これでよいでしょうかという問いかけをする必要が絶対にあります。なぜならば、国民には違うことを言ってきたわけですから。しかし、考え方を変えました、だから、考えたんですけれども、これでいいでしょうかということを国民に問うことは当然であります。

 マニフェストを下敷きにした二十四年度予算を数の力で押し通しておいて、その歳入の約四割を占める赤字国債を発行する裏づけである公債発行特例法案も無条件に通せというのは、今に至っては道理が通りません。

 十月十九日の三党党首会談において、総理は、だらだらと政権の延命を図るつもりはないとも発言されておられます。もはや来年度予算の編成を民主党政権に委ねるなどあってはならないことであります。

 社会保障・税の一体改革関連法案の成立後近いうちに解散し、総選挙を行うとした野田総理、まさに今が決断のときです。命をかけてやり抜くとした社会保障と税の一体改革をあなたはやり抜いたではありませんか。立派なことです。総理に残されたやるべきことは、あと一つしかありません。それは一日も早い解散なんですよ。

 こんな立派なことをした総理大臣が、後世、うそをつき続けた総理大臣として歴史に名を残すなどということは、むしろ考えない方がいいのではないでしょうか。そういう意味で、野田総理には、もはや後戻りのための黄金の橋はないと私は考えます。

 一日も早い解散です。そして、歴史に、うそをつかなかった、約束を守った総理大臣だという名を残してください。それこそ、あなたのためにもなります、国民のためにもなります。

 ぜひ一日も早い解散を最後に切に要望して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 自民党竹本議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まず最初に、法案成立に向けた環境整備についてのお尋ねがございました。

 特例公債法案について、本年三月の段階では、野党各党の御理解をいただける道を与野党協議などにおいて時間をかけて模索をするため、予算を参議院に送付いたしました。その後、八月下旬に至り、通常国会会期内の成立を期すとの国会運営上の判断により、衆議院において採決が行われたものと承知をしておりますが、結果的に法案が廃案となったことは大変残念であったと受けとめております。

 こうした中で、政府としては、御党を初めとする野党の皆様方の御理解をいただくよう、さきの通常国会での三党合意を踏まえ、御党の御主張を取り入れる形で年金特例公債に係る法案修正を行い、また、さまざまな機会を捉えて政党間の協議をお願いし、先般の党首会談においては、私から予算と一体となった特例公債法案を処理するルールづくりを提案するなど、さまざまな努力を行ってきており、引き続き、法案の成立に向けて全力で取り組んでまいります。

 次は、今年度予算の減額等についての御質問をいただきました。

 昨年八月九日の三党間の確認書を踏まえ、高校無償化及び農業戸別所得補償については、実務者協議が行われましたものの三党間で合意に至りませんでしたが、高速道路無料化や子ども手当の見直しなど与野党間で意見の一致を見たものについては、政府として誠実に対応してきたところであります。

 予算の見直しについては、引き続き、二十五年度予算における対応を含め、与野党間での御議論の結果を踏まえ、適切に対応していきたいと考えております。

 一方で、現下の厳しい財政事情にあっては、いかなる政権であっても特例公債なしで財政を運営することはできず、一刻も早い法案成立が求められます。与野党での胸襟を開いた議論をお願いいたします。

 次に、予算と特例公債法案の関係についての御質問をいただきました。

 特例公債法案については、先ほど申し上げましたとおり、ねじれ国会のもとで法案の成立を期すため、前国会におけるその時々の情勢を踏まえ、その取り扱いを判断してまいりました。

 ただ、御指摘のとおり、予算と特例公債法案とは、本来は一体的に処理すべきものであります。毎年の特例公債法案を政治的な駆け引きの材料としてしまう悪弊は断ち切らなければなりません。

 さきの党首会談においては、このための具体的な方策として、私より、法案の本則を修正し、多年度にわたる特例公債の発行を可能とする案、来年度にそのような法案を提出することを法案の附則に規定する案、予算と特例公債法案を一体的に処理することについて与野党間で覚書を交わす案を提案したところであります。

 このうち、法案の本則を修正する場合には、現行の財政健全化目標を踏まえ、例えば平成二十七年度、二〇一五年度までにわたり特例公債の発行を認めるような修正を行うことなどが考えられます。

 こうした案も含め、引き続き、与野党間で議論を重ね、解決策を見出していただくよう、御党の御協力を改めてお願いいたします。

 次に、補正予算についてのお尋ねがございました。

 補正予算の編成については、年金特例公債に係る当初予算の補正を含めて年度内にいずれにせよ行う必要がありますが、その時期や具体的な内容については、特例公債法案の審議状況や、遅くとも今月中をめどに決定することとしています経済対策の内容を踏まえた上で、財源を含めて検討してまいります。その際には、ぜひとも御党にもお知恵をおかりしたいと考えております。

 次に、特例公債法案、閣僚人事、与党の体制に関するお尋ねがございました。

 いかなる政権であっても、特例公債なしで今の財政を運営することはできません。既に地方財政などでも執行抑制が余儀なくされており、このままでは、国民生活にも重大な支障が生じ、経済再生の足を引っ張りかねません。民主党議員が一丸となって特例公債法案の成立を期すことは当然であります。

 閣僚人事は内閣の機能強化のために行ったものですが、任命した閣僚が職務を全うできない例があったことは遺憾であり、内閣全体として、職責を果たし、職務遂行に邁進をいたします。

 民主党を離党した議員が存在することは事実でありますが、民主党の方針に何ら揺るぎはありません。政権与党として国政を担い、国民に対する責任を果たす決意を、議員団としてかたく意思統一をしております。

 次に、予算執行抑制に伴う金利負担などについてのお尋ねがございました。

 地方交付税については、道府県の九月交付分を月割り交付としましたが、これに伴う一時借り入れ等に係る金利負担については、道府県の財政運営に支障が生じないよう、国において必要な配慮を行ってまいります。

 このまま予算執行抑制が続けば幅広い分野に重大な支障が生じかねないことから、法案を一日でも早く成立していただけるよう政府として最大限努力をしてまいる所存であり、これにより責任を果たしてまいりたいと考えております。

 次に、地方交付税の支払い延期と経済対策における予備費の使用についてのお尋ねがございました。

 地方交付税については、十一月に入っても特例公債法案が成立していないという異例の状況において、やむを得ない措置として、当面は暫定的に交付を見合わせることとし、特例公債法案の帰趨を踏まえた上で対応することとしているものであります。

 一方、先般閣議決定した予備費の使用は、現下の経済情勢も踏まえ、経済対策の第一弾として、執行抑制を行っている経費と比べても緊要性の高い施策を措置したものであります。引き続き、遅くとも今月中をめどに決定する経済対策を速やかに実施することにより、切れ目ない政策対応を行ってまいりたいと考えています。

 最後に、一日も早い解散をという御要望をいただきました。

 十月十九日の三党党首会談において、近いうちに国民の信を問うと申し上げた意味は大きい、自分も責任を重く受けとめており、それを踏まえ、環境整備をした上で判断したい、そこは自分を信じてほしいというお話をさせていただきました。これは、特定の時期を明示しない中でのぎりぎりの言及だと考えております。

 そして、環境整備の中でもとりわけ急がなければいけないテーマとして、特例公債法案、一票の格差、定数削減の問題、社会保障国民会議のことを挙げさせていただいております。

 そのときにおいてきちっと自分の判断をしていきたいと考えておりますことにいささかも変更はありません。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 牧義夫君。

    〔牧義夫君登壇〕

牧義夫君 国民の生活が第一の牧義夫です。

 国民の生活が第一・新党きづなを代表して、特例公債法案について質問いたします。(拍手)

 本論に入る前に、まず、野田政権の国会に対する、ひいては国民に対する不誠実な対応について、二点、抗議を申し上げなければなりません。

 一点目は、この臨時国会が始まり、問責を受けた参議院はともかくとして、衆議院においては代表質問も終わり、既に一週間が経過をいたしておりますが、この間、政府・与党は、予算委員会の開催をかたくなに拒み続けているということであります。

 外交日程を終えた総理があたかも好意で党首討論を呼びかけるかのような体裁をとっておりますが、予算委員会に関しては、野党全会派からの再三の要請があるにもかかわらず、このまま、すっとぼけて、やり過ごせるとでも思っているのでしょうか。少なくとも、きょうの時点で予算委員会開催の確約もないまま議運委員長や財金委員長の職権でこの特例公債法案の審議日程を詰めてきた事実は否めません。その不誠実な対応に、まずは強く抗議するものであります。

 そもそも、予算委員会は、国会が始まって各委員会における法案審議が始まる前に、黙っていても、当たり前のこととしてと言ってもいいぐらい、いわば自動的に開催されてきたのが、これまでのよき先例であります。

 今国会は何のために召集されたのか、この国会で国民生活のため何が議論されなければならないのか、その論点を整理するためにも一日も早い予算委員会開催が求められていたにもかかわらず、残念ながら、与党国対は逃げの一手でありました。

 総理の閣僚の任命責任なども含め、政権そのもののさまざまな末期症状が露呈することを恐れてと言われてもいたし方ないと思いますが、これは質問ではありませんが、特に弁明されたければ、何なりと申し開きをされたらいいと思います。

 二点目は、国民生活を盾に国会運営を行っているということでございます。

 この法案が、政争の具となっている現状、とりわけ、衆議院解散をめぐる駆け引き材料になっていることについては、与野党双方に責任があると率直に申し上げた上で、あえて申し上げなければならないことは、それにしても、本当に、国民にそして地方に犠牲を強いてまで、悪いのは野党の方だと言わんばかりの子供じみた嫌がらせを強行する政権のたちの悪さです。

 後で質問させていただきますが、この間の地方交付税の執行停止などの措置による地方の行政サービス、地域経済への影響は甚大なものであるということ、そして、何よりも、その第一義的な責任は政権与党にあるということを忘れてはなりません。

 シリアの内戦で、アサド政権が空爆を避けるために人間の盾を使っているとの国連機関の報告がありましたが、一連の交付税執行停止は、経済的な人間の盾であり、悪質さにおいては何ら変わらない行為だと言わざるを得ません。

 さて、言うまでもなく、特例公債法案は、既に成立した予算と一体の関連法案であります。したがって、今ここで質問をしている私自身、平成二十四年度予算成立の時点では与党の一員でありましたから、本来であればこの関連法案にも賛成すべきところだと思われるかもしれませんが、しかしながら、予算成立時と現在提出されている法案には決定的な違いがあることを申しておかなければなりません。

 それは、今回の特例公債法案には、将来の消費税増税分を担保とする年金特例公債の発行が含まれているということであります。消費増税廃止を求める我々の立場からは賛成しかねることは言うまでもありませんが、つけ加えて申し上げれば、これは、既に成立した予算と一体の関連法案ではないということで、単なる民自公三党協議の妥協の産物だということです。

 そこで、私どもとしては、この法案原案から、増税分を担保とする年金特例公債の発行に関する条文を削除することを提起させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 そもそも、経済情勢次第で実際に消費増税できるかどうかも不透明であって、このような不確実なものを国民年金国庫負担の重要な財源の担保とすることには大きなリスクが伴うと思われます。総理の見解を求めたいと思います。

 仮に増税できない経済情勢だった場合、財源の穴はどうやって埋めるおつもりなのでしょうか。具体的にお答えをいただきたいと思います。

 次に、予算執行を抑制することによる影響について意見を申し上げ、政府の姿勢について問いただしたいと思います。

 一言で言えば、財政法の硬直的な運用で国民生活に多大なダメージを与えるのか、それとも、柔軟な運用で国民生活への影響を回避するのか、このどちらを選択するのかということであります。

 国庫の資金繰りについては、財政法及び予算総則に基づいて二十兆円を限度に財務省証券の発行が可能であるとよく言われます。これに対し、政府は、特例公債法案の成立が見込めない場合に特例公債金収入を財源とする財務省証券を発行することは財政法に反するという趣旨の閣議決定を行っておりますが、自縄自縛とは、まさにこのことではないでしょうか。

 それでは、お聞きしますが、この特例公債法という予算と不可分な財源法案が成立しないなどということを、仮にでも、政府は想定しているのでしょうか。成立は単に時間の問題であって、成立を見込むことができない事態などは本当は全く想定していないというのが本音ではないのでしょうか。正直にお答えください。

 地方公共団体の中には、積立金などを担保に金融機関からの一時的な借り入れを行っているところもあります。地方に余計な負担を強いる前に、まず国としてやるべきことがあると思いますが、打つ手はもう全て打ったと言い切れますか。お答えをいただきたいと思います。

 地方交付税の執行停止に伴う影響について、政府の見解を求めます。

 時系列的に追っていくと、九月七日閣議決定の「九月以降の一般会計予算の執行について」では、道府県分の九月交付分を分割交付とし、市町村分は抑制せずでした。十月三十日、財務大臣が、十一月分の地方交付税の交付を市町村分も含め当面見送る旨を表明、これに対し、地方六団体が、執行抑制の影響が市町村に及ぶ事態となれば、財政力や資金調達力が弱い団体が多数を占めることから、その影響はさらに深刻なものになることは避けられないと共同声明を発表しております。

 九月の執行抑制策発表の時点では、十一月分の交付税の取り扱いについても、同様の、道府県のみを対象とした抑制を続けるものとして試算を行い、たしか、その時点で、財源が枯渇するのは十一月末と聞いたように記憶をいたしておりますが、今回、市町村への交付税を抑制の対象にしたのは何ゆえなのでしょうか。この間、予期せぬ出費があったのでしょうか。それとも、この法案がひょっとしたら今国会で通らないのではと懸念されているのでしょうか。お答えをいただきたく思います。

 地方公共団体が、実際、どのような影響をこうむっているのか、政府の認識をただしたいと思います。

 まずは、九月分の地方交付税の支給のおくれによって住民サービスなどに与えている具体的な影響について、政府の把握状況をお知らせください。

 十一月分については、法案が成立しない場合、道府県、市町村分ともに地方交付税の支給を当面見合わせるとしておりますが、これによる住民に対する具体的な影響についてどのようにイメージされているのか、わかりやすくお答えください。

 また、想定されるそれらのことに対して、政府としてどのような対処を考えられているのか、その方針をお示しいただけますようお願いいたします。

 次に、九月分の地方交付税の支給のおくれにより生じた資金不足への対処のため金融機関から一時的な借り入れを行っている地方公共団体があることは先ほど触れましたが、実際、これらの借り入れがどれだけの金額に上るのか、その把握状況についてお知らせいただきたいと思います。

 十一月分については、本当に支給を当面見合わせる事態となった場合、この影響による地方公共団体の借り入れ及び借り入れにより発生する金利の見積もりを政府として把握しておく必要があると思いますが、いかがお考えでしょうか。お答えください。

 また、念のためお伺いしますが、発生した金利の負担はどこがするのでしょうか。国がすると言うのかもしれませんけれども、結局は国民が負担をするんだということを、正直に、誠意を持ってお答えいただきたいと思います。

 ここで、もしかして今国会における予算委員会がついぞ開かれることなく会期末を迎えるか、あるいは衆議院解散という事態も十分想定されますから、特例公債のこの法案に関連して、今のうちにどうしても聞いておきたい消費増税についての質問を、幾つかのポイントに絞ってさせていただきたいと思います。

 まず、今回の消費税増税は、財政再建のための増税なのか、社会保障制度の維持充実のための増税なのか、あるいは、その他の目的も想定しているのか、お答えください。

 今回の特例公債法案もそうですが、社会保障・税の一体改革も、いわゆる三党合意によって中身が大幅に変容していると思われます。将来のあるべき社会保障制度についてはいまだ見ぬ国民会議なるものに委ねてしまった以上、一体改革なる表現も改めるべきだと思いますが、いかがですか。

 五%の増税による十三・五兆円の負担増は、国民一人当たり年間十万円強の負担増という計算になりますが、総理は、先日のこの本会議における代表質問に対する答弁の中で、増税分は全て国民に還元するとおっしゃっておられました。

 しかし、内閣府の試算によれば、消費税率五%の引き上げによって改善する財政収支は対GDP比で一・四%、昨年一一年の名目GDPを基準にすると六・五兆円にしかなりません。全て国民に還元するとおっしゃるのであれば、六・五兆円でどのようにして国民に十三・五兆円分の福利をもたらすのか、わかりやすくお答えをいただきたいと思います。

 最後に、総理が本当に本気で我が国の財政が危機的状況にあるとお考えなのか、政府の負債と資産のバランスなど直近のデータに基づいた説得力あるお話をお聞かせいただき、私の質問とさせていただきたいと思います。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 牧議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まず最初に、今国会の状況に関するお尋ねがございました。

 今国会が始まるに当たり、私が所信で申し上げたことは、党派対立が繰り返され、大局よりも政局ばかりを優先してしまう政治をやめ、あすへの責任を果たすための建設的な議論の場にしようということでございました。ぜひとも、与野党が一致協力して国民の期待に応えていただきたいと考えております。

 なお、委員会の開催など国会の運営につきましては、各党各会派で御議論の上、お決めいただきたいと考えます。

 閣僚人事については、任命した閣僚が職務を全うできない例があったことは遺憾であり、内閣全体としてその職務を果たすことにより、政権としての責任を果たしてまいりたいと考えます。

 特例公債法案の一日も早い成立、一票の格差是正と定数削減の実現など、ぜひとも、実りある国会としていただきたいと考えております。

 次に、年金特例公債についての御質問をいただきました。

 年金財政の安定のため、基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げる必要がありますが、その財源を赤字国債に依存し、将来世代に負担を先送りすることは適当でなく、消費税率引き上げにより安定財源を確保した上で対応することとしております。

 また、消費税率引き上げまでの平成二十四年度及び平成二十五年度においても、基礎年金の国庫負担割合を二分の一とする必要があります。

 このため、今回の特例公債法案では、さきの通常国会における野党の御提案も踏まえ、消費税率引き上げ分を償還財源とする年金特例公債を発行することとしているものであり、これは必要な規定であると考えております。

 政府としては、社会保障のための安定財源である消費税率の引き上げを行うためにも、経済の再生に全力を尽くしてまいります。

 ただし、仮に消費税率引き上げを停止することとなる場合は、年金特例公債の償還を含めた社会保障の充実、安定化の財源をどのように確保するかについて、その時点において厳しい検討、判断が必要になると考えております。

 財務省証券の発行についてのお尋ねがございました。

 特例公債法案の成立が見込めない場合に、特例公債金を償還財源とする財務省証券を発行することは、財政法上、許容されないものと考えております。それにもかかわらず、政府独自の判断により特例公債法案の成立を前提として財務省証券を発行することは、むしろ、立法府を軽視するものであり、行政府ののりを越えるものと考えております。

 いかなる政権であっても、特例公債なしで今の財政を運営することはできず、既に地方予算などで執行抑制が余儀なくされております。特例公債法案を一刻も早く成立させることが政治の責任であると考えており、引き続き全力で取り組んでまいります。

 次に、地方交付税の執行抑制についての御質問をいただきました。

 九月七日に予算執行抑制の方針を決定した際に、十一月末には支出累計額が歳出上限に近づき、一般会計の歳出に充てられる財源がほぼ枯渇するとの見込みを公表しましたが、現時点でも、同様に見込んでおります。

 なお、その際、地方交付税の九月交付分のうち、道府県分について九月から十一月の月払いとしましたが、十一月交付分の扱いは決めておりませんでした。

 政府は、特例公債法案の早期成立に向けて全力で取り組んでおりますが、十一月に入っても法案が成立していない現状では、予算執行を慎重に行っていかざるを得ません。

 この一環として、法律において十一月中に交付するとされている地方交付税についても、日付までは決まっていないことから、当面は、十一月という月内において暫定的に交付を見合わせているところであり、執行抑制については、特例公債法案の帰趨を踏まえつつ対応することとしております。

 次に、執行抑制の影響についてのお尋ねがございました。

 道府県分の九月交付分については月割り交付としたところですが、各地方団体においては、基本的に、行政サービスに支障が生じないよう、一時借り入れなどの資金繰り対策を講じることにより、適切に対応いただいているものと承知をしています。

 十一月分については、当面交付を見合わせていますが、地方団体からは、交付の遅滞が国民生活に影響を及ぼしかねないことを懸念する意見も寄せられており、政府としては、特例公債法案を一日でも早く成立していただくよう最大限努力をしてまいります。

 次に、執行抑制に伴う地方団体の借り入れ等についてお尋ねがございました。

 地方交付税については、道府県の九月交付分を九月から十一月にかけて月割りの交付としましたが、これに伴い、その間に道府県が行った一時借り入れによる金利負担は、現時点で把握している限りでは、約五千七百万円と承知をしています。

 また、月割り交付としたことに伴う一時借り入れ等に係る金利負担については、道府県の財政運営に支障が生じないよう、国において必要な配慮を行うこととしております。

 十一月交付分については、当面交付を見合わせているところですが、引き続き、各地方団体の資金繰りの状況に留意をしてまいります。

 次に、一体改革の目的等についてのお尋ねがございました。

 今回の一体改革は、子ども・子育て支援の充実や、現行の年金制度の改善といった社会保障改革を行うとともに、社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成のための第一歩を踏み出すものであり、一体改革の名に値するものと考えております。

 社会保障に対する揺るぎない安心感を示すためにも、早急に国民会議を立ち上げるなど、三党合意を基礎に、残された課題について、さらに議論を進め、一つ一つ道筋をつけてまいります。

 次に、消費税率の引き上げと財政収支の改善に関するお尋ねがございました。

 今回引き上げられる五%分の消費税収十三・五兆円は、国、地方における社会保障の充実や、消費税率引き上げに伴う社会保障支出の増などにも向けられるため、国の財政収支が十三・五兆円分改善するわけではありません。

 先日の代表質問において申し上げたとおり、今回の一体改革では、引き上げ分の消費税収十三・五兆円については、その全額を社会保障財源化し、全て国民に還元することとしております。

 次に、我が国の財政状況についてのお尋ねがございました。

 我が国の財政は、債務残高対GDP比が、総債務ベースで見ても、金融資産を控除した純債務ベースで見ても、主要先進国中最悪であるなど、国際的に見ても厳しい状況になっております。

 また、平成二十二年度の国の財務書類によれば、国には六百二十五兆円の資産がありますが、それでも四百十八兆円もの負債超過となっており、しかも、この資産には、直ちに売却して債務の償還や利払いに充てることができないものも多いことに留意する必要があります。

 これらを踏まえれば、我が国財政は決して楽観視できる状況になく、国債市場の環境が安定している今のうちに、財政健全化に一刻も早く取り組むことが必要と考えております。

 以上です。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 竹内譲君。

    〔竹内譲君登壇〕

竹内譲君 公明党の竹内譲でございます。

 公明党を代表いたしまして、特例公債法案について質問をいたします。(拍手)

 特例公債法案は、国家財政、経済にかかわる最重要法案であります。

 通常国会では、衆議院の財務金融委員会において、与野党が党利党略を超えて、国家の大局を見据え、お互いの信頼関係を築きつつ審議を重ねてまいりました。ところが、前国会の最終盤において、突然降って湧いたように、与党は、採決を強行、可決いたしました。

 この政府・与党の暴挙により、与野党の信頼関係が崩壊し、特例公債法案は、参議院では廃案となりました。同法案の廃案は、予算の廃案と同じであり、内閣不信任に匹敵します。極めて無責任であり、政権を担っているという自覚が余りにもなさ過ぎる行動でありました。

 にもかかわらず、政府・与党は、この臨時国会において、何の反省もなく、全く同じ法案を閣議決定し、国会に提出されました。驚くべき傲慢さであります。我々野党を見下しているのでしょうか。また、特例公債法案がいまだに成立しないのは全て野党の責任だと言うつもりでしょうか。

 そもそも、法案を成立させる責任は政府・与党にあるはずです。我々は、借金の前に、まず放漫財政を改めるべきという、当然の道理を申し上げているのです。

 なぜ、前国会で廃案となった法案を、一字一句変えることなく、そのまま国会に提出されるのか、まず、総理の答弁を求めます。

 言われるまでもなく、特例公債法案は、政局で処理すべきものではありません。あくまでも、政策の問題として考えるべきであります。

 公明党は、民主党政権の三年間の予算歳出総額の平均と、自公政権時代のそれとを比較した結果、民主党政権になってから、ばらまきのマニフェストを初め、水膨れの歳出構造になっていると分析しています。この水膨れ構造にメスを入れることなく赤字国債を垂れ流すことは、国民に対して無責任であります。

 例えば、企業経営者が放漫経営の末に巨額の約束手形を振り出したとしましょう。その手形の期日が迫っているからといって、果たして銀行が、当然のように手形を全額決済してくれるでしょうか。銀行は、必ず、経営合理化計画などを出させて、企業の抜本改革を明らかにせよと要求するはずです。また、経営責任を追及するとともに、大規模なリストラに着手、実行することが常識です。

 国家財政でも同じです。

 ばらまきの放漫財政の結果、自公政権のときよりも年間の赤字国債発行額がふえてしまった。野党として、少しでも発行額が少なくなるように、歳出の削減や財政改革を要求するのは当然の責務であります。我々は、この道理を申し上げているのであって、この法案を政治的な駆け引きの材料にしているのではないのです。むしろ、そういう悪弊にのめり込んでいたのは、野党時代の民主党だったのではないでしょうか。

 今回も、特例公債法案を人質にして解散を迫る野党が悪いなどと政府・与党が考えているとしたら、全く心得違いも甚だしく、政権を担っているという自覚がないと言わざるを得ません。まずは、政府が、水膨れの歳出構造を改め、減額補正などの手段を提示し、本法案が速やかに成立するように努力するのが正しい方策であると考えます。総理の見解を求めます。

 次に、社会保障制度改革国民会議の設置。これは早急に立ち上げる必要があり、この点については、三党間でも合意しています。そのための今国会での手順やスケジュールをどのように考えているのか、総理にお尋ねします。

 第三に、尖閣諸島をめぐる日中問題について質問いたします。

 このたびの日中関係の悪化は、政府・民主党の外交が、これまでの歴史に学ばず、思慮不足で、いかに未熟であるかを露呈したと言わざるを得ません。

 尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本の固有の領土でありますが、近年の中国が不法、非礼な対応をしていることも事実であります。

 しかしながら、それ以上に問題なのは、それを許してきた政府・民主党外交の驚くべき稚拙さであります。

 はるか半世紀も前の、まだ米ソ冷戦状態の時代から、アジアの平和と繁栄のために日中国交回復をなし遂げようと、どれほど多くの先人たちが努力をなされてきたことか、多くの民主党の諸君はほとんど御存じないと思います。

 自民党や公明党の大先輩たちは、日中国交正常化の井戸を黙々と掘ってこられました。その結果、中国は日本に対する巨額の戦後賠償請求権を放棄することが周恩来と公明党との間で確認され、それを受けて、当時の自民党の田中角栄総理や大平外相の御尽力により、日中国交正常化が実現したのであります。

 このたび、政府は、尖閣三島の国有化をわずか二カ月ほどで決定してしまいました。

 日中の半世紀にわたる友好関係や経済関係にどのような影響を及ぼすか、考えなかったのでしょうか。相当の反発があることは容易に想像できたのではないですか。中国側への説明や、米国を初めとする国際社会への根回しは、不十分だったのではないでしょうか。野田総理と胡錦濤国家主席が立ち話で済ませるような内容でしょうか。恐らく、前東京都知事にあおられ、選挙対策的に、国民受けを狙って決めたのでしょう。政府の外交は、浅薄であると言われても仕方がありません。

 尖閣三島の国有化の狙い、中国との交渉経緯とその内容について、詳しい答弁を求めます。

 尖閣三島周辺では、中国の領海侵犯も相次いでおり、このまま放置すればいかなる事態が生じるか、わかりません。また、経済に及ぼす影響も極めて大きく、深刻な不況をもたらしかねません。

 政府としては、今後の日中関係をどのように打開していくつもりか。現在、外務省の事務方が調整しているそうでありますが、このような大事な問題を官僚主導に任せてどうするのですか。これこそ、政治家が前面に出て、政治主導で解決すべき問題であります。

 民主党の政治主導は、一体どこへ行ったのでしょうか。総理の明快な答弁を求めます。

 最後に、田中眞紀子文部科学大臣が、来春開校予定だった三大学を当初不認可とした問題についてお尋ねします。

 田中文科大臣は、その後、世論やマスコミから批判を浴びると、くるくると発言を変え、国会で厳しい追及を受けて、ようやく認可すると発言いたしましたが、これでは大臣としての適性を著しく欠くと言わざるを得ません。

 そもそも、必要な要件を満たしていれば認めることが認可の基本であります。今回の不認可は、これまで積み上げられたルールを無視するもので、明らかに違法であります。ルールに従って準備をしてきた大学関係者や応募しようとしていた学生に著しい不利益を与えるもので、政府の判断としては妥当性を欠きます。

 その後、田中文科大臣は、さすがにまずいと思われたのか、新たにつくる設置認可基準で新設可否を含めて改めて判断するなどと述べました。しかし、今から新しい基準をつくるなどというのは論外であります。これこそルール違反です。大学の募集事務や受験生のことを考えれば、そのような形で判断の誤りの体裁を取り繕うのは間違っています。

 少子化などにより大学経営が悪化している現状は理解できますが、設置認可の仕組み全体の問題と、これまで文科省の言うとおり着々と準備をしてきた個別の認可の問題とは、切り離して対応すべきであります。

 田中文科大臣は、六日の閣議後の記者会見で、驚くべきことに、不認可の方針を事前に首相や首相官邸側に伝えていたと述べています。しかも、その際に、官房長官は、そうしたことは大変結構で、私もかねがねそう思っていましたと答えたとのこと、首相からはそのまま推し進めてくださいとの答えをじかにいただいたことを明らかにしています。これは極めて深刻な問題です。今さら認可するなどと言っても、免責されるものではありません。

 私は、前代未聞の大混乱を招いた田中文科大臣の責任は極めて大きいと思います。同時に、田中文科大臣の判断を是とした野田総理や藤村官房長官の責任も重大です。野田総理は、どのように責任をとるおつもりですか。お答えください。

 いずれにしても、もはや、政府・民主党には全く政権担当能力がないことが内外に明らかになりました。野田総理は、三つの懸案事項を処理すべく、党内を早急にまとめるべきであります。

 野党の方針は明らかです。むしろ、民主党内がまとまれば、三つの課題はたちどころに解決されます。そして、約束どおり、直ちに解散・総選挙に踏み切るべきであります。

 総理は、これまで、我々野党をだましてこられました。しかし、国民を欺くことはできません。国民は見抜いています。正心誠意が総理のモットーであります。近いうちに解散するとしたみずからの発言について、国民に対して正心誠意の答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 公明党竹内議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まず、特例公債法案の再提出についてのお尋ねがございました。

 特例公債法案については、さきの通常国会において、通常国会会期内の成立を期すとの国会運営上の判断により、八月下旬に衆議院で採決が行われたものと承知しておりますが、結果的に廃案となったことは大変残念であったと受けとめております。

 特例公債なしで今の財政を運営することはできないことから、今国会において同じ法案を再提出しましたが、今後、国会において御議論をいただきたいと考えております。

 次に、法案成立に向けた政府の努力についてのお尋ねがございました。

 政府・与党の責任として、特例公債法案の一刻も早い成立を目指しているところであり、引き続き、ねじれ国会のもとで、御党を初めとする野党の皆様方の御理解をいただけるよう努力をしてまいります。

 その中で、御指摘の予算の見直しについては、二十五年度予算における対応を含め、与野党間での御議論の結果を踏まえ、適切に対応したいと考えております。

 厳しい財政状況のもと、いかなる政権であれ、特例公債なしに財政運営はできません。特例公債法案を政治的な駆け引きの材料としてしまう悪弊を断ち切るべく、与野党間で胸襟を開いて議論を進め、解決策を見出すことができるよう、御党の御協力をお願いいたします。

 次に、社会保障制度改革国民会議についての御質問をいただきました。

 国民会議は来年八月二十一日までの期限となっており、既にカウントダウンは始まっております。このため、公党間の約束である三党合意を基礎に、社会保障の残された課題について議論が進められるよう、早急に立ち上げる必要があります。

 これまでもお願いをしてきたところですが、一日も早く議論が開始できるよう、委員の人選を含め、国民会議の立ち上げに向けて、重ねて御協力をお願いいたします。

 次に、国による尖閣諸島の取得、保有と、中国との交渉経緯等についてのお尋ねがございました。

 尖閣諸島が我が国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も疑いのないところであり、現に我が国はこれを有効に支配しています。したがって、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題は存在しません。

 先般の尖閣三島の政府による取得、保有は、今般、所有者が売却する意向を示したことを受け、尖閣諸島の長期にわたる平穏かつ安定的な維持管理を図る観点から、速やかにこれらの島々の所有権を取得することとしたものですが、我が国国内における土地の所有権の移転であり、本来、他の国・地域との間で何ら問題を惹起すべきものではありません。

 ただし、我が国として、尖閣諸島をめぐる事態が日中関係の大局に影響を与えることは望んでおらず、大局的観点から、中国との関係を細心の注意をもって処理するべく、中国に対して事前に必要な説明を実施してまいりました。

 したがって、APEC首脳会議の際の日中首脳間の立ち話だけで中国との関係を済ませたとの捉え方は、事実に反するものであり、そのような見方が一部にあることは、まことに残念であります。

 また、尖閣諸島に関する我が国の基本的な立場及び今般の取得、保有に関する考え方については、米国を含む国際社会の正しい理解を得るべく、引き続き情報発信を強化していく考えであります。

 次に、尖閣諸島をめぐっての日中関係や、政治主導についてのお尋ねがございました。

 尖閣諸島をめぐり日中関係が難しい状況にあることは大変残念ですが、日中関係は我が国にとっても最も重要な二国間関係の一つであり、日中両国は、アジア太平洋地域及び世界の平和と発展に大きな責任を負っています。我が国としては、日中関係の大局を見失うことなく、冷静に対応していく考えであり、中国との間で、さまざまな形で意思疎通を維持強化してまいります。

 以上の点については、関係省庁から適時適切な報告を受けつつ、私及び関係閣僚が一体となって、引き続き取り組んでまいります。

 次に、大学の設置認可をめぐる問題の責任についてのお尋ねがございました。

 御指摘の大学の設置認可に関しては、教育行政を所管する文部科学省において判断されるべきものであり、文部科学省においては、国会での審議等を踏まえ、本日、三大学について認可を行ったところであります。さらに、今後、設置認可の仕組みを見直す方針であると承知をしております。

 閣僚からの報告内容等について個別に申し上げることは差し控えますが、設置認可の見直しなどを通じて大学の質の向上を図っていくことは重要な課題であると考えており、政府としては、このような取り組みを通じ、今後とも、社会の期待に応える教育改革の推進に取り組むことで、しっかりと責任を果たしてまいります。

 最後に、解散についてのお尋ねがございました。

 十月十九日の三党党首会談において、近いうちに国民の信を問うと申し上げた意味は大きく、自分も責任を重く受けとめており、それを踏まえ、環境整備をした上で判断をしたい、そこは自分を信じてほしいというお話をさせていただきました。これは、特定の時期を明示しない中でのぎりぎりの言及だと考えております。

 そして、環境整備の中でも、とりわけ急がなければいけないテーマとして、特例公債法案、一票の格差、定数削減の問題、社会保障国民会議のことを挙げさせていただいております。

 そのときにおいてきちっと自分の判断をしていきたいと考えておりますことにいささかも変更はございません。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、平成二十四年度における公債発行の特例に関する法律案に対し、質問します。(拍手)

 今回提出された法案は、さきの通常国会で廃案となったものでありまして、全く同じ内容であり、そのまま出し直したものであります。

 なぜこうなったのか。通常国会の最終段階で、与野党合意のないまま与党民主党が衆議院で一方的に法案採決を強行したため、参議院で審議未了、廃案となったからであります。

 政府・民主党の強引な議会運営は重大な禍根を残しました。野田総理はこの点をどのように反省しているのでしょうか。答弁を求めます。

 臨時国会が開かれると、自民、公明両党は、公債特例法案の審議を衆議院の解散日程を明示することと絡ませる挙に出ました。これに対して野田内閣は、本来地方の自主財源である地方交付税を出し渋るなど、国民生活を支える財源を人質にとる作戦に出たのであります。

 公債特例法案をこのように政局の駆け引きの道具として使うということは、あってはならないことであります。

 民自公を除く野党八党は、十一月一日、公債特例法案は政局の駆け引きの道具にすることなく、手順を踏んで十分な審議を行うことを与党民主党に強く求めてきたところであります。

 もとをただすと、八月に行われた三党合意で、野田総理が自民、公明両党首に近いうちに信を問うと約束し、それと引きかえに消費税増税法案への賛成を引き出したことが発端でありました。

 民自公三党は、密室協議で消費税大増税法案を強行した、いわば増税仲間であります。その仲間同士で、解散の時期を言え、言わないと不毛な内輪もめをしているのであります。野田総理は、この事態を招いた責任をどのように認識しているのでしょうか。

 公債特例法案の内容について質問します。

 この法案は、今年度予算の財源を確保するためのものであり、予算と一体のものであります。

 野田内閣による今年度予算は、消費税増税を前提としており、さらに、年金支給額の削減、子ども手当の削減など、社会保障の連続改悪を進めるものとなっております。

 国民の多くが、生活を切り詰め、将来不安を抱えているとき、野田内閣は、二〇一五年までに約二十兆円もの新たな負担を庶民に押しつけようとしているのであります。

 国民の暮らしも、経済も、財政も破壊する道に踏み出す予算となっており、賛成できないのは当然であります。

 さらに、中止を公約した八ツ場ダムの復活を初め、東京外郭環状道路などの無駄な大型開発を次々と復活させ、重大な欠陥が指摘され完成もしていないF35を次期戦闘機として買い入れるために総額一・六兆円も費やすなど、税金の無駄遣いを広げるものとなっています。

 また、富裕層や大企業には減税の大盤振る舞いが行われております。年間一・七兆円もの新たな減税を実施した上、さらに法人税の減税を目指しているのであります。

 もともと税制法案の原案にあったささやかな富裕層への増税も、三党合意で削除されました。これが来年度税制改正で復活する方向は、今のところ見えておりません。低所得者対策も、検討するというかけ声だけで、具体的な内容が全く見えません。一体どうするつもりでしょうか。

 これらの課題を棚上げして無慈悲に消費税の大増税だけを国民に押しつけることは、絶対に許されません。

 総理は、国民に対しては負担増、大企業に対しては減税、こういうやり方を不公平だと感じないのでしょうか。

 このような予算を支えるために多額の赤字国債を発行することは、到底許されるものではありません。

 社会保障の財源は、消費税増税に頼るのでなく、証券優遇税制の廃止などによる所得税の累進性強化、大企業を優遇する不公平税制の是正、大型開発や軍事費などの歳出の無駄にメスを入れることなどによって確保すべきであります。こうしてこそ、大企業が内部にため込んだ約二百六十兆円もの内部留保を国民に還元する道が開けるのであります。

 この際、旧態依然とした大企業中心の成長戦略、TPP参加、こういう危険な道を転換し、GDPの半分以上を占める家計消費の拡大を中心とする国民本位の経済発展に軌道を切りかえるべきではありませんか。

 この際、復興予算の流用問題についてもただしておきたい。

 復興予算に被災地の復興と関係のないものが含まれるなど、言語道断であります。

 そもそも復興予算の財源はどこから出るのか。

 来年一月から二十五年間にわたって所得税の付加税率が二・一%引き上げられ、住民税も増税となります。

 その一方、法人税は、ことしから四・五%という大幅な引き下げを行いました。大企業には三年間の時限的付加税を課すだけで、その後は減税が続くのであります。

 みんなで負担すると言いながら、大企業には減税、庶民には増税を押しつける仕組みとなっているのです。

 その上、大企業には、減税だけでなく、復興の名で財源をばらまいております。例えば、立地補助金の八割が大企業に渡っているのであります。しかも、これらの大企業は、大規模なリストラを進め、被災地からも雇用を奪っているではありませんか。

 また、国民の過半数が原発ゼロを求めているもとで、事もあろうに原発輸出に向けた調査等委託費を盛り込んでいることは重大です。原発被災者の賠償もまともにやらず、外国に原発を輸出するためにお金を使う、こんなことは絶対に許されることではありません。

 被災地では、地盤のかさ上げや防災集団移転を初め事業所や住宅の再建など、被災者が切実に望む対策はほとんど進んでいないのです。

 復興予算は、東日本大震災、原子力災害による被災者の生活となりわいの再建、被災地の復興以外には絶対に使ってはなりません。

 最後に、公債特例法案の内閣修正についてただしておきたい。

 民主、自民、公明の三党合意に基づき法案の内閣修正が行われましたが、これは、本年度分の基礎年金国庫負担を二分の一に引き上げるための財源を、当初案の交付国債から、つなぎ国債、すなわち年金特例国債に変えるというものであります。

 そのような修正をしても、償還財源に消費税増税分を充てることに何ら変わりはないではありませんか。答弁を求めます。

 そもそも、基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げるためと称して、所得税、住民税の定率減税廃止と老年者控除、公的年金等控除の見直し、廃止が行われたのではなかったでしょうか。当時の与党である自民党・公明党税制改正大綱等には、このことが明記されていたのであります。

 それを実施しておきながら、さらに消費税増税を財源に充てるというのは、基礎年金の国庫負担引き上げを口実に、国民の懐から二回も取り上げることになるではありませんか。総理は、この二重取りが当然だというのでしょうか。明確な答弁を求めます。

 今、野田内閣がなすべきことは、予算委員会を速やかに開き、国政の基本問題について争点を明らかにし、速やかに解散・総選挙を行うことであります。

 このことを強く求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 共産党佐々木議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まず、特例公債法案の取り扱いについてのお尋ねがございました。

 さきの通常国会においては、特例公債法案の会期内の成立を期すとの国会運営上の判断により、八月下旬に衆議院において採決が行われたものと承知しておりますが、結果的に法案が廃案となったことは大変残念であったと受けとめております。

 今国会で速やかに法案を成立させることが政治の責任であると考えており、政府としても全力で取り組んでまいります。

 続いて、国会の状況に関するお尋ねがございました。

 今臨時国会の意義については、さきの共産党志位委員長との党首会談でも明確に申し上げております。そして、喫緊の課題解決の重要性に鑑みても、与野党で成案を得ることができるものと確信をしています。

 民意を問うことについての私の発言は一貫しており、いささかのぶれもありません。

 そして、さきの通常国会における民主、自民、公明による三党合意は、現在と将来の社会保障に関する国民への約束であり、大変重いものであると受けとめており、政府としても誠実に対応してまいりたいと存じます。

 また、御指摘の特例公債法案については、政局の駆け引きに使うなどということがあってはならないことは言うまでもありません。

 党首会談において、志位委員長からは、共産党は審議拒否をすることなく積極的に議論に参加する旨のお話もいただいております。

 今臨時国会のテーマに基づき、建設的な御議論をお願いしたいと考えます。

 次に、富裕層への増税と低所得者対策についてのお尋ねがございました。

 さきの通常国会においては、三党協議の結果、所得税、資産税について、具体案についてさらに議論を尽くす必要があることから、税制抜本改革法案の規定を修正したものの、見直しの方向性については三党で合意に至り、格差の是正などの観点から、所得税の最高税率の引き上げや相続税の税率構造の見直しなどについて規定しております。

 政府としては、これらに基づき、来年度税制改正においてしっかり検討してまいります。

 また、証券優遇税制についても、税制抜本改革法の規定を踏まえ、平成二十六年一月から確実に二〇%の本則税率とする方針です。

 他方、法人税については、平成二十三年度税制改正において実効税率を引き下げましたが、これは、我が国企業の国際競争力の向上や雇用と国内投資の拡大を図るため必要な措置と考えております。

 今回の一体改革は、社会保障の安定財源確保のため、待ったなしの課題です。所得の低い方々への配慮について、三党での議論も踏まえて検討しつつ、一体改革をしっかりと前に進めてまいります。

 次に、経済政策についてのお尋ねがございました。

 日本経済の再生に道筋をつけ、雇用と暮らしに安心感をもたらすことは、私の内閣が取り組むべき現下の最大の課題です。

 その際、企業活力は経済成長のエンジンであります。とりわけ、中小企業の活性化は特に重要であり、本年七月に閣議決定した日本再生戦略においても、中小企業の活用を大きな柱として位置づけているところです。

 また、経済の成長のためには、世界の需要を取り込むことが重要であります。FTAAPを実現するため、国益の確保を大前提として、守るべきものは守りながら、TPPと日中韓FTA、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を同時並行的に推進します。

 同時に、消費の活性化も重要であり、日本再生戦略においても、若者雇用戦略の推進や女性の活躍促進を通じた分厚い中間層の復活を目指すとともに、観光需要の喚起や消費者の安心確保といった取り組みを推し進めているところであります。

 次に、被災地の復旧復興のための施策とその財源のための税制措置についてのお尋ねがございました。

 被災地の復旧復興は内閣の最重要課題であり、被災された中小企業を支援するグループ補助金等に五千億円程度措置するなど、中小企業向けの支援策も積極的に講じております。

 こうした施策に加え、サプライチェーンの維持強化を通じて被災地の復興を進めていくため、国内立地補助金を措置してきたところであり、あわせて、各種の雇用創出事業も進めています。

 また、復旧復興のための税制措置については、個人のみならず企業にも、復興特別法人税として三年間で約二・四兆円の御負担をいただくこととしています。

 次に、復興予算における原発輸出の調査に関する御質問をいただきました。

 復興の基本方針において、政府は、被災地域の企業に経済効果が及ぶインフラシステムの輸出促進を推進することとしており、原発輸出は、関連機器等の被災地域からの調達割合が高いことから、被災地域の企業に高い経済効果が及ぶものと認識をし、平成二十三年度第三次補正予算に計上しています。

 また、昨年の原発事故の経験と教訓を世界と共有することにより世界の原子力安全の向上に貢献していくことは、我が国が果たすべき責務であると考えています。

 なお、原発事故の被害者に対する賠償に万全を期すことは当然のことであり、今後とも、迅速、公正、適正な賠償がなされるよう、政府として必要な取り組みを進めてまいります。

 次に、年金特例公債についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、さきの通常国会における野党の御提案も踏まえ、年金交付国債にかえて年金特例公債を発行することとしておりますが、消費税率引き上げ分を償還財源とする点に変わりがないことは、御指摘のとおりであります。

 年金財政の安定のためには、基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げる必要がありますが、その財源を赤字国債に依存し、将来世代に負担を先送りすることは適当ではなく、消費税率引き上げにより確保される財源を活用して対応することが必要だと考えております。

 最後に、基礎年金国庫負担と消費増税についてのお尋ねがございました。

 御指摘の定率減税廃止や年金課税見直しによる増収分は、各年度の予算編成過程において、当時の与党における議論も経て、しかるべく基礎年金国庫負担割合の引き上げに充てられ、結果として、基礎年金国庫負担割合は、従前の三分の一から、平成十九年度までに三六・五%まで引き上げられたものと承知をしています。

 今回の一体改革においては、消費税率の引き上げによる増収分を財源として、国庫負担割合を三六・五%から二分の一に引き上げるものであり、二重取りとの御批判は当たらないものと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 中島隆利君。

    〔中島隆利君登壇〕

中島隆利君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となりました財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案に対し、質問をいたします。(拍手)

 私たち社民党は、生活再建施策の推進や国民生活の混乱の回避、緊急の景気対策などの観点から、特例公債の発行そのものを否定するものではありません。

 しかし、法案が早く成立するように努力し、地方財政や国民生活に影響が出ないように手だてを講じる責任は政府・与党にあります。その努力をせず、国民生活へのしわ寄せが出るから早く法案を通してほしいというのは、虫がよ過ぎます。

 前国会の最終盤、民主党は、委員会設定や法案の審議、採決を強行し、野党の賛同を得られる見通しもないまま参院に送りました。こうした強引、乱暴な運営によって、法案が廃案になったのです。地方や国民に迷惑をかけているのは、与党の稚拙な国会運営が招いた結果です。

 同時に、野田総理が命をかけるとした社会保障と税の一体改革の問題です。

 本法案が成立しなければ歳入欠陥になることは火を見るより明らかなところ、総理は、あすの消費税の増税を優先させ、今日の歳入を脇に追いやったのです。

 政府・与党としてこうした対応を猛省すべきであり、公債特例法案の成立がおくれ、異例の予算執行抑制に至ったことの責任についてどのように認識されているのか、総理にお伺いします。

 二〇一二年度予算は、一般会計のうち四〇%を超える部分を赤字国債で賄う異常な構造となっています。特に、所得税の占めるウエートがこんなに低い先進国はありません。

 税収の調達力の回復、向上のために、所得税、法人税、資産課税における不公平税制の是正を行うべきであると考えますが、総理の見解はいかがですか。

 また、復興予算の流用、転用問題に見られるように、予算の無駄遣いが数多く見受けられます。大型公共事業や防衛関係費、原発関係予算などの抜本的な見直しに向けた総理のお考えをお伺いします。

 政府は、九月に戦後初の予算執行の抑制を決定し、道府県向けの地方交付税の交付を抑制しました。十月には、追加措置として、市町村向けも含め、十一月分の地方交付税の交付の先送りも決定しました。

 道府県の多くが、金融機関からの一時借り入れや地方債の前倒し発行、基金の繰りかえ使用などで財源を短期的に調達することになりました。財政力や資金調達力が弱い団体が多数を占めている市町村に執行抑制の影響が及ぶのは必定です。

 こうした地方の肩がわり分については、国がきちんと補填すべきと考えますが、総務大臣、いかがですか。

 次に、城島財務大臣に年金特例公債についてお伺いします。

 二〇一二年度と二〇一三年度分の基礎年金の国庫負担の追加に伴い見込まれる費用の財源として、もともとは年金交付国債が財源として考えられていましたが、年金特例公債というつなぎ国債に変更されました。

 まず、年金交付国債と年金特例公債はどう違うのか、説明を求めます。

 年金特例公債、借換債は、国債とみなさないとの規定を設けて、他の赤字国債や建設国債と別枠とされています。しかし、二〇一二年度予算の一般会計の国債発行額を約四十四兆円以下に抑えるという財政健全化目標は事実上守れなかったことを意味すると考えますが、いかがお考えですか。

 また、年金特例公債は、償還、利子の支払いの財源について、消費税率引き上げで増加する消費税の収入で賄うことになっています。消費税増税がさまざまな条件を満たさず、予定どおりに行われない場合、どのように対応する考えなのか、お聞かせください。

 そもそも、二〇一一年度第四次補正の財源二・五兆円を二〇一二年度の歳入に繰り越して年金財源に回せば、年金交付国債も年金特例公債も不要であったと考えています。なぜそうした手法をとらなかったのですか。

 特例公債の発行は二〇一二年度分だけなのに、年金国庫負担二分の一の財源については二〇一三年度分まで合わせて年金特例公債に依存することをこの法律案で決めてしまうのはなぜですか。

 以上、明確にお答えください。

 最後に、総理、条件整備を理由とせず、速やかに解散を決断し、国民の信を問うよう強く訴え、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 社民党中島議員の御質問にお答えをしてまいります。

 まず、予算執行抑制に関する責任についてのお尋ねがございました。

 さきの通常国会においては、社会保障・税一体改革関連法案の成立に全力で取り組むとともに、予算の裏づけとなる特例公債法案についても、野党各党の御理解をいただくよう努めてまいりました。

 八月下旬の段階で、通常国会の会期内に法案を成立させるための国会運営上の判断により、衆議院において採決が行われたものと承知しておりますが、結果的に法案が廃案となり、地方予算などで執行抑制を余儀なくされたことは大変残念であったと受けとめております。

 今国会で速やかに法案を成立させることが政治の責任であると考えており、政府としても全力で取り組んでまいります。

 次に、所得税、法人税、資産課税における不公平税制の是正についてのお尋ねがございました。

 前国会で成立した税制抜本改革法は、格差の是正などの観点から、所得税の最高税率の引き上げや相続税の税率構造の見直しなどについて規定しており、これに基づき、来年度税制改正においてしっかりと検討してまいります。

 また、証券優遇税制についても、税制抜本改革法の規定を踏まえ、平成二十六年一月から確実に二〇%の本則税率とする方針です。

 他方、法人税については、平成二十三年度税制改正において実効税率を引き下げましたが、これは、我が国企業の国際競争力の向上や雇用と国内投資の拡大を図るため必要な措置と考えております。

 最後に、大型公共事業などの予算の見直しについての御質問をいただきました。

 御指摘の大型公共事業については、予算編成過程で事業内容を精査し、設計、工事の段階でもコスト縮減を徹底することで効率化を図っております。

 防衛関係費については、厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、動的防衛力を構築しつつ、選択と集中を図るとともに、一括調達など効率的な調達方式の推進等によるコスト削減を図っております。

 原子力関係予算については、さきの原発事故を踏まえて、廃炉に向けた研究開発などに必要な経費に重点化して計上しております。

 政府としては、予算の無駄の排除には引き続き不断に取り組んでいくこととしており、これら経費についても、今後の予算編成等において一層の精査を行ってまいります。

 また、平成二十五年度における復興関係予算については、被災地の復旧復興が最優先との考え方のもと、被災地が真に必要とする予算はしっかりと手当てしつつ、それ以外については厳しく絞り込んでまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣樽床伸二君登壇〕

国務大臣(樽床伸二君) 中島議員から、執行抑制に伴う金利負担の補填についてお尋ねがございました。

 地方交付税につきましては、道府県の九月交付分を月割りで三月にわたりまして交付することといたしましたが、これに伴う一時借り入れ等に係る金利負担につきましては、国において財政措置を講ずることにより、道府県の財政運営に支障が出ないようにしたいと考えております。

 十一月の交付分につきましては、当面交付を見合わせているところでありますが、政府としては、特例公債法案が一日でも早く成立し、速やかに交付できるよう最大限努力してまいります。

 よろしくお願いします。(拍手)

    〔国務大臣城島光力君登壇〕

国務大臣(城島光力君) 中島隆利議員から御質問をいただきました。

 まず、年金交付国債と年金特例公債についての御質問でございます。

 年金交付国債と年金特例公債は、いずれも基礎年金国庫負担を二分の一とするために発行し、平成二十六年度から実施する消費税率引き上げ分を償還財源とするものであります。

 一方、年金交付国債は、平成二十六年度以降に年金財政に対して現金を繰り入れていくことを約束するための手法であったのに対し、年金特例公債は、平成二十四年度及び二十五年度において、年金財政に現金を繰り入れるための財源を調達するために発行するものであるといった点が異なっております。

 次に、年金特例公債等と新規公債発行額四十四兆円との関係についての御質問がございました。

 御指摘の年金特例公債及び借換債については、定率繰り入れの対象外とするために、特例公債法案第三条において、国債とみなさないと規定しているものであります。

 平成二十四年度予算における新規公債発行額については、中期財政フレームにおいて、約四十四兆円を上回らないこととしていますが、これは、財政に対する市場からの信認を確保するため、償還財源が担保されないまま発行される公債を対象に一定の歯どめをかけているものであります。

 年金特例公債については、法律上、消費税率引き上げにより償還財源を担保した上で発行されるものであることから、中期財政フレームにおいても、新規公債発行額の四十四兆円枠の対象外としており、当該財政規律との関係で問題はないものと考えております。

 次に、年金特例公債の償還についての御質問がございました。

 消費税率引き上げに当たっては、税制抜本改革法において、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、所要の措置を講ずる旨の規定が置かれております。当該規定に基づく措置を講ずる場合でも、その内容は、税率引き上げを停止するかも含め、そのときの政権において、経済、財政の状況等を踏まえて適切に判断されるべきものであると考えております。

 仮に消費税率引き上げを停止することになる場合は、年金特例公債の償還も含めた社会保障の充実、安定化の財源をどのように確保するかについて、その時点で検討されることになると考えております。

 次に、年金国庫負担金についての御質問をいただきました。

 二〇一一年度第四次補正については、景気の下振れの回避を行う観点等から、義務的経費を含め、必要性、緊急性の高い追加財政需要に対応したものであります。

 一方、年金財政の安定のためには、消費税率引き上げにより財源が確保されるまでの間も基礎年金国庫負担割合を二分の一とする必要があることから、消費税率引き上げ分を償還財源とする年金特例公債を発行することとし、特例公債法案に所要の規定を整備しているものであります。

 次に、年金特例公債の発行期間についての御質問をいただきました。

 年金財政の安定のため、平成二十六年度からの消費税率引き上げにより安定財源を確保した上で、基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げることとしております。

 その上で、消費税率引き上げまでの間の平成二十四年度及び二十五年度においても国庫負担割合を二分の一とする必要があることから、さきの通常国会における野党の御提案も踏まえ、消費税率引き上げ分を償還財源とする年金特例公債を発行して対応することとし、今回の法案において、両年度分を一括して規定することとしているものであります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 杉本かずみ君。

    〔杉本かずみ君登壇〕

杉本かずみ君 みんなの党となりました、国会で働く、衆議院の杉本かずみです。

 初めて登壇の機会を賜りました。まことにありがとうございます。(拍手)

 去る十月二十九日の臨時会開会式で、天皇陛下の御臨席を仰ぎました。私は、その当日、中央広間の銅像のない台座の上に、りりしい松の盆栽を見つけました。ふだんは何もない台座の上に、私どもに対して、しっかり働きなさいと語っているようでした。

 さて、政治とは生活であると田中角栄元総理は言われました。生存権と財産権を守ることを英国のジョン・ロックは政治の要諦としました。

 私は、政治とは、政策の実行であると理解しています。政策本位、政策第一、政策の優先順位、アジェンダを掲げるのは私どもみんなの党ですが、政策とその実行が大切なことは、全議員共通の認識と拝察いたします。そして、それを成就するのが政治家の本懐ではないでしょうか。

 そこで、野田総理に確認させていただきたいのです。

 政策の優先順位のイの一番は、東日本大震災からの復旧復興と福島第一原発の収束ではなかったでしょうか。そして、第二に、税金の無駄遣いをとめることではなかったでしょうか。政治家と役人がまず身を削る、みずから襟を正す改革です。そして、最後に、その足らず前を税でお願いするという順序ではなかったでしょうか。

 みんなの党は、増税の前にやるべきことがあると訴えています。

 私は、さきの消費税法案に賛成をしましたが、賛成の意図は、政策の優先順位が守られること、すなわち、第一に、東日本大震災からの復興復旧と原発事故の収束、第二に、税金の無駄遣いと徹底して戦い、とめること、その上で、第三の、財政再建の必要性からの増税であったわけです。

 また、当時の与党執行部の方々は、せめて同時並行で衆議院の一票の格差是正と定数削減法案を超特急で審議し、可決するという条件提示をされました。しかし、結局、御高承のとおりです。私としては、白票を投じたことを悔いております。

 ひっきょう、順番は逆転して、一、二、三の政策の優先順位が守られず、消費税のみが一番となって先行実施されるのではないでしょうか。また、日本国民お一人お一人に増税までしてお願いした復興予算の目的外転用も明らかとなり、看過できない状況です。総理は、このことに対し、どういう答えを持っておられますか。

 政治家の言葉、言霊には真実が必要です。そして、有言実行があって初めて国民の皆様からの信が得られるのではないでしょうか。

 去る七月十九日木曜日の朝の参議院第一委員会室に、社会保障と税の一体改革法案審議前の野田総理を訪ね、私は、脱原発などを求める手紙をお渡ししました。

 総理は、当日、その夜に、八時過ぎに私の携帯に直接電話をくださり、二〇三〇年の原発エネルギーの比率は一五%もない、二〇から二五%ももちろんない、将来は必ずゼロ%の脱原発にしなければならないと、熱く語ってくださいました。

 しかし、核燃料サイクル事業は継続され、大間原発は建設再開をされております。白と黒の中間色の回答で脱原発を語り、デフレ脱却と、名目と実質の経済成長の数値を努力目標に掲げるだけで、国民の皆様の信頼を得られると総理はお思いでしょうか。

 人、物、金、すなわち、人事、資源、財源、それに権限の的確な運用が政治の要諦ではないでしょうか。総理はどうお考えですか。

 財源に関して言えば、出るを制して入るをはかるがそもそもではないでしょうか。この点について総理の御見解を求めます。

 本予算と今次法案の同時採決を提唱する発言を聞くことがあります。しかし、この法案の審議については、まさしく特例法としての必然の深さを観じることが必要ではないでしょうか。

 今の日本人一人一人は、給料の二倍のぜいたくな暮らしになれ親しんでいます。古事記編さん一千三百年の本年に、日本人の精神性を象徴する三種の神器にあらわされる、清き心、明き心、素直な心を回復し、去華就実に徹し、また、二宮尊徳に象徴される、勤勉を復活させていくときが来ているのではないでしょうか。

 欲しいものを渡す政治から、必要なものだけ渡す政治に方向転換するときが来ていると感じますが、総理はどうお考えでしょうか。それが、千年に一度と言われる東日本大震災、そして二度の被爆の上に原発事故にも遭遇してしまった日本国と日本国民への、戒め、教訓なのではないでしょうか。

 我々政治家は、どれだけ東日本大震災や原発事故の被災者のお心を共有しているでしょうか。主客一如となっているでしょうか。哀れみや同情では、共有、一如とは言えません。被災者と寝食をともにしてこそではないでしょうか。

 原発政策を推進したのも、政治の責任であります。原発事故を起こしたのも、政治の責任であります。

副議長(衛藤征士郎君) 杉本君、なるべく簡潔に願います。

杉本かずみ君(続) いまだに原発事故を収束できずに、他の原発を再稼働、建設を継続するのも、政治の責任です。

 結びに、国会事故調提言五の二の4にあるように、規制委員会人事の国会承認はもとより、透明性の高い選考過程とその開示、そして、その説明責任を果たしていただくことを凄烈に求めます。そのことを経て初めて、国際的に、また、日本国民の皆様から信頼を取り戻すことができます。

 私、杉本かずみは、主客一如の政治を熱烈に総理に求めて、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 杉本議員から七問の御質問がありました。ただ、特例公債がないので当惑をしております。

 まず、政治家の政策実行についてのお尋ねがございました。

 政治家たるもの、実現を目指し、有権者に約束した政策を実行することが本分であることは、言うまでもありません。

 今臨時国会においても、特例公債法案を初め、解決するべき課題は山積しております。そして、現下の状況においては、政府・与党のみならず、与野党が協力しなければ解決し得ないことも現実です。先送りではなく、今やるべきことは今解決しなければなりません。それこそが、与野党を通じる政治家の本懐と理解しております。みんなの党杉本議員の御協力を願う次第であります。

 次に、内閣の政策の優先順位についてのお尋ねがございました。

 東日本大震災からの復旧復興と原発事故への対応は、今後とも私の内閣の最重要な課題であり、政府一丸となって取り組んでまいります。

 また、税金の無駄遣いの排除についても、これまでも、事業仕分け、提言型政策仕分けなどを通じ最大限取り組んでおり、今後とも、不断に努力してまいります。

 他方で、社会保障の安定財源確保と財政健全化を同時に達成するための社会保障と税の一体改革も、待ったなしの課題であり、震災からの復興や行政改革の取り組みと並行して、しっかりと前に進めていかなければなりません。

 何が先ということではなく、これらの困難な課題を、いずれも先送りすることなく、全力を尽くして取り組んでまいります。

 次に、原発政策と経済成長についてのお尋ねがございました。

 原発事故を経験し、国民の多くは、原発に依存しない社会の実現を望むようになりました。

 こうした国民の声を踏まえ、革新的エネルギー・環境戦略においては、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入することとしています。

 同時に、核燃料サイクルについては、政府としては、核不拡散や原子力の平和利用という国際的な責務を果たしながら、関係自治体との約束を重く受けとめて再処理事業に取り組まなければならないと考えており、従来どおり進めていくこととしています。

 大間原発については、既に原子炉の設置許可及び工事計画認可が行われており、それを前提に事業者が建設再開を判断したものであります。今後は、原子力規制委員会が独立の立場から安全性を確認していくことになります。

 長年続けられてきた原発推進政策を変えることは、決して容易なことではありません。それでも、困難な課題から逃げずに、原発に依存しない社会の実現に向けて、大きく政策を転換し、果敢に挑戦をしてまいります。

 また、経済成長については、単に目標を掲げるだけではなく、本年七月に閣議決定した日本再生戦略に基づき、グリーン、ライフ、農林漁業の重点三分野と中小企業の活用に政策資源を重点投入していきます。

 次に、政治の要諦についての御質問がございました。

 政治における要諦についての御質問がありましたが、議員の御意見は承りました。政府として、人事、資源、財源という御指摘は、大変重要なことであり、心してまいりたいと考えております。

 政権運営における政治家、官僚の一致協力と適材適所の人事、また与野党の協力、そして国家百年の計に基づく子育て、教育、人材育成、財政健全化と的確な予算編成など、特段の留意を払いつつ、内閣の使命を果たしてまいります。

 次に、特例公債法案にかかわる質問であります。

 我が国財政は、一般会計予算の約四割を特例公債に依存するなど、非常に厳しい状況にあり、歳出歳入両面での改革を進め、財政健全化を図ることは喫緊の課題であると認識をしています。

 こうした中、特例公債法案を毎年度国会で御審議いただくことで、政府として、財政運営に当たって一層の緊張感を持つという意義があるものと考えています。

 一方、最近は、毎年の特例公債法案が政治的な駆け引きの材料となり、本年度は、既に地方予算などで執行抑制が余儀なくされております。

 こうした事態を繰り返さないためには、予算と一体となって特例公債法案を処理するルールづくりが必要であると考えており、財政規律を緩ませないという観点も含めて、与野党間で胸襟を開いて議論を進め、解決策を見出していただきたいと考えております。

 次に、日本人の精神性についての御質問をいただきました。

 議員の御指摘は、私なりに感じるところがないわけではありませんが、この場で国民の心のありようまで論じることは控えさせていただきます。

 ただ、一点だけ申し上げれば、日本国民の勤勉性は、今でも海外から高く評価されており、私自身も、我が国最大の強みの一つであると考えております。

 政治の大きな責務の一つは、この極めて勤勉な国民の皆様がその能力を十分に発揮できるように、さまざまな形で居場所と出番を提供することであると考えております。

 最後に、震災、原発事故の被災者への支援のあり方などについての御質問でございます。

 議員御指摘のように、政治は、方向転換するときが来ており、また、既に方向転換しているとも言えます。高度成長やその余力で次々と社会資本を整備し社会保障を充実させてきた時代は終わりを告げ、真に必要な行政サービスを真に必要な人に届けることの重要性が増しています。しかも、これを実現することさえ、現状維持では困難です。私が社会保障・税の一体改革に政治生命を賭して取り組んだ背景には、このような我が国の現状があります。

 大震災の復興、福島の再生に向けて、政府としては、できる限り被災者の立場に立ち、被災者の皆様に寄り添う支援を旨として取り組んできたところでありますが、御指摘を踏まえ、さらに、きめ細やかでスピード感のある支援を行えるよう、全力で取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 松浪健太君。

    〔松浪健太君登壇〕

松浪健太君 私は、日本維新の会を代表して、特例公債法案について質問します。(拍手)

 国民の目から見れば、現在の国会は異常です。特例公債法案は、本来の法の趣旨とは遠く離れ、政争の具となり、ついには、地方自治体への交付税凍結に至りました。国政政党の駆け引きのツケを地方が支払うのは理不尽です。

 国民生活に悪影響が出始めた以上、日本維新の会は、与野党の立場を超えて、特例公債法案に賛成します。

 しかし、法案に賛成するとはいえ、国民生活より解散先送りを優先してきた政府・民主党の姿勢に賛同するわけではありません。

 特例公債法案は、前国会では、会期末間際に参議院に送付され、廃案となりました。喫緊の課題であるにもかかわらず、臨時国会が開かれたのは、例年よりも一カ月以上おくれた十月二十九日でした。その結果、今回の地方交付税交付金の支出凍結に至りました。

 十一月に予算ベースで特例公債法案が成立していなかったことは、過去にはありません。赤字国債が発行できないことを理由に交付税が執行停止されることも初めてです。国民生活よりも解散先送りを優先した責任は重いのです。

 今回、交付税の支払いが滞ったために、地方にしわ寄せが起きています。道府県が既に五千億円以上の余計な借り入れを行ったとの報道もありました。

 道府県、市町村を含めて、こうした余計な借り入れは現状でどれぐらいに上ると把握しているのか、お答えください。

 また、この余計な借り入れに伴う利息負担については、後日に国が全額を財政措置するそうですが、まさに無駄遣いです。その財源はどこから出てくるのか、また、この支出についてどのように考えているのか、あわせて伺います。

 さらに、府県によっては、金融機関からの借り入れではなく、基金などから一時的に繰りかえを行っています。繰りかえを行わなければ得られた運用見込み益については、地方が損失をこうむることになります。国は、この損失についてはどのような対応をするか、伺います。

 また、この地方が得られたであろう運用見込み益を国が穴埋めしなければ、国政における与野党の駆け引きのツケを結局は地方が支払うことになります。国政のツケを地方が払うことがあってもいいものか、総理に伺います。

 さらに、国債価格の見通しについて質問します。

 今国会中に法案が成立しない場合、一時的に国債が発行されない期間が生じたり、年度末に大量の国債を一気に消化せねばならない事態もあり得ます。こうした状況に陥った場合、その後の国債価格の動向や危険性をどのように予測しているのか、お答えください。

 言うまでもなく、特例公債法案は前年度中に成立しておくべきものです。東日本大震災で被害を受けた市町村で復興に向けた仕事が山積する中、国の勝手で余計な資金繰りの負担をかけるに至っては、もはや国会の恥であります。

 特例公債法案の成立が、法律の趣旨とは無関係に、解散を延ばすため、あるいは解散をさせるためという政治の都合に左右される姿は、国民の政治不信を深めるだけです。国民生活を人質にとって、党利党略に走る姿を国民に見せるのは、もうやめにしましょう。

 国民が求めているのは、十分に法案を審議し、賛否を明確に決定していく、決められる国会です。

 最後に、決められる政治の実現を訴え、日本維新の会を代表しての質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇〕

内閣総理大臣(野田佳彦君) 日本維新の会松浪議員から、私には一問御質問がございました。

 予算執行抑制に伴う金利負担についてのお尋ねでございます。

 地方交付税については、道府県の九月交付分を月割り交付としましたが、これに伴う一時借り入れ等に係る金利負担については、道府県の財政運営に支障が生じないよう、国において必要な配慮を行うこととしております。

 さらに、御指摘の基金などからの繰りかえの状況を含め、実際にどのような影響が生じたかをよく見きわめた上で、具体的な方策を検討してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣樽床伸二君登壇〕

国務大臣(樽床伸二君) 松浪議員から、執行抑制に伴う地方団体の借り入れ等についてお尋ねがございました。

 地方交付税につきましては、道府県の九月交付分を九月から十一月について三カ月の月割りの交付といたしましたが、それに伴って道府県が行いました一時借り入れにつきましては、現時点で把握している限りでは、各道府県のピーク時の借入額を単純に合計した額は約六千三百億円であり、また、金利負担は約五千七百万円と承知をしております。

 また、基金等の運用方法につきましては、各団体においてさまざまの状況でありまして、よく実態を把握した上で適切に対処してまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣城島光力君登壇〕

国務大臣(城島光力君) 私には一問御質問をいただきました。

 特例公債法案が成立しない場合の国債価格の動向や危険性についての御質問をいただきました。

 特例公債法案の成立が遅延し、利付国債の市中発行が休止に至った場合、法案成立後の発行再開時には、毎月の国債発行額を増額させる必要がございます。

 このような事態に対し、市場関係者からは、休止時に一旦価格が上昇した後、発行再開時には国債価格が急落する可能性がある、あるいは、政治リスクを契機とした国債格下げの可能性が高まる、あるいは、安定した発行ができなくなることにより、国債市場に対する信認の喪失につながり、中長期的な金利コストの増大を招くおそれがある、さらには、国債のみならず日本企業の資金調達コストにも影響を及ぼす可能性があるなどの意見が聞かれております。

 このような市場関係者の見方が現実のものとなった場合、国債発行コストの増大を通じて国民負担を増加させるとともに、日本経済全体に影響を及ぼすと懸念しております。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   野田 佳彦君

       総務大臣     樽床 伸二君

       財務大臣     城島 光力君

       国務大臣     前原 誠司君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  齋藤  勁君

       財務副大臣    武正 公一君


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