衆議院

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第5号 平成25年2月5日(火曜日)

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平成二十五年二月五日(火曜日)

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 議事日程 第五号

  平成二十五年二月五日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(伊吹文明君) 麻生財務大臣の財政に関する演説に対する質疑に入ります。岸本周平君。

    〔岸本周平君登壇〕

岸本周平君 民主党の岸本周平です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、平成二十四年度補正予算の財政演説に対して質問をいたします。(拍手)

 まず、安倍新内閣の船出を祝福するとともに、私は、経済財政運営の成功のために、責任野党として、協力すべきは協力したいと思っていることを、ここにお伝えしたいと思います。

 一月二十二日に、政府と日本銀行の政策連携が成立しました。デフレ脱却と経済成長のための共同声明も発表されております。私は、この合意を高く評価したいと思います。

 足元の円安傾向や株価の上昇によって、企業マインドは改善しています。私は、政府、日銀の経済政策運営が効果を発揮し、日本経済が持続的な成長軌道に乗ることを期待しています。

 しかし、その上で、政府が中央銀行の独立性を侵すことがあってはならないということと、金融政策の出口戦略が相当に難しいものであるということは、二点、指摘させてください。

 現行の日銀法は、過剰流動性やバブルにおけるマクロ経済政策の誤りを繰り返さないために、平成九年、戦時立法である昭和十七年制定の旧法を改正したものであります。そのときに、欧米先進国並みに、日本銀行の独立性を強化し、その政策運営の透明性を確保するために、大蔵大臣の総裁罷免権を廃止する一方、政策委員会の議事要旨、議事録の公開等を決定したものであります。

 当時、与野党を巻き込み、長い時間をかけて結論を得るに至った経緯は、安倍総理におかれても十分に認識されておられることと存じます。

 政治と中央銀行の対立の歴史を踏まえ、洋の東西を問わず、先人の知恵として、独立性のルールがつくられてきたものであります。したがって、内外から日本政府が日本銀行の独立性を軽視するような印象を持たれることは、決してあってはなりません。既にGDP比で二四五%の巨額債務残高を抱える日本の国債の信認に、悪い影響を及ぼします。

 中央銀行の独立性に関する安倍総理の御認識をお伺いいたします。

 また、二%の物価目標は、当面、かなり高いハードルであるとの認識がありますから、直ちに金利への影響をもたらすことにはなりません。

 しかし、実際に、アベノミクスが成功し、二%の物価上昇の実現性が高まってくれば、当然、国債の利回りは上昇してまいります。その前に補正予算でのばらまきなどによって財政規律に不安が生じれば、市場は、じりじりと高い金利を要求してまいります。

 国債の利回りが上昇し、国債の価格が下がってきますと、大量の国債を保有している日本の金融機関は含み損を抱えることになります。そして、国債を売却せざるを得なくなります。その際には、国債価格を維持するため、日本銀行は、国債を購入し続けるほかありません。

 しかし、そうなりますと、二%を超えて物価が上昇し始めても、急に金利を上げたり、市場への資金供給を絞り込むなどの金融引き締め策がとれなくなります。インフレファイターたる中央銀行の機能が果たせなくなるのであります。

 一体、この金融政策の出口戦略について、安倍総理はどのようにお考えになっているのでしょうか。物価二%になるまで今の金融緩和策を続けるべきだとお考えでしょうか。

 次に、財政関係についてお尋ねします。

 財政については、二十四年度補正予算など、これから実行していくものでありますから、現時点では、その成果を直ちに評価することはできません。

 しかし、三本の矢の一つとして、機動的な財政政策とおっしゃっています。いかにももっともらしく聞こえますが、実際の予算編成に携わった私自身の経験から申し上げれば、強い懸念を覚えざるを得ません。つまり、機動的という言葉は、何でもありの免罪符になっているからであります。霞が関の実態を知っている私には、残念ながら、信じられないのです。

 昨年十二月二十六日に政権が発足してからわずか三週間程度で、真に効果のある事業を選定することなどできるのでしょうか。二十四年度補正予算の中身は、年度末のどさくさで、枯れ木も山のにぎわいだと感じています。

 二十五年度の当初要求の肩透かしも多く、とにかく最初に金額ありきで、これまで認められなかった予算のオンパレードです。しかも、その財源の主力は借金で、将来世代にツケを回すことになります。

 私自身、予算に携わってきた者として自戒を込めて申し上げれば、日本で財政規律をだめにしている元凶は、補正予算であります。(発言する者あり)

議長(伊吹文明君) 静粛に願います。

岸本周平君(続) 補正予算そのものがだめだと言っているわけではありません。補正予算にはシーリングが適用されないので、今申し上げましたように、当初予算に計上できなかった予算を補正に回すなど、どうしても予算制約が甘くなるからです。

 まして、今回のように十兆円とか二十兆円とかそういうオーダーになりますと、ますます財政規律は低下します。このような追加財政は、国債発行による将来の所得の前借りにすぎないことを、安倍総理はどのようにお考えでしょうか。

 また、年金などの義務的経費を過小見積もりして補正回しにすれば、当初予算の国債発行額を小さく見せることもできます。

 ちなみに、今回の来年度予算のように、経済成長率の過大見積もりをして税収を水増しし、年度途中の補正予算で国債発行をふやす方法も、自民党政権の常套手段であります。まさに、いつか来た道であります。

 九〇年代のバブル崩壊以降、何度となく経済対策が講じられてまいりましたが、経済は依然として低迷しています。残ったのは、将来の子供たちへの借金の山です。

 経済再生、成長戦略、そのための財政措置など、文章では格好いい言葉が並びますが、これまでの経済財政政策の検証や反省なしに同じことを続けても、何が変わるというのでしょうか。

 足元の予算編成だけではなく、日本の財政はさらに深刻さを増しています。

 第一次安倍内閣がつくった平成十九年度の一般会計当初予算、新規国債発行額が幾らだったか、安倍総理は覚えていらっしゃいますか。約二十五兆円でした。しかし、それが、今年度の補正後では、倍以上の、五十二兆円になっています。

 もちろん、我々民主党にも、三年間の政権担当時に借金を拡大させた責任があります。しかし、もとをただせば、長年にわたり借金の山を築いてきた責任は自民党にあります。第二次安倍内閣は、機動的な財政政策の名のもとに、さらに子供たちに借金をツケ回そうとしています。

 私は、景気対策を全く否定しているわけではありません。しかし、さきの緊急経済対策、そして安倍総理の御発言からは、日本の財政の将来、そして、合意もなく負担を押しつけられる子供たちへの真摯な思いが全く感じられないのです。

 昨年末の初閣議で、総理は、今年度補正予算については、公債発行額四十四兆円枠にこだわらず思い切った規模とする、一方、来年度予算については、財政健全化の目標を踏まえたものとするとおっしゃっています。

 例えは悪いですが、医者から減量しなさいと指導されながら、半年後には節制するから、それまでは甘いもの何でも食べてもいいですね、そう言っているようなものであります。それで本当に財政健全化ができるなどと、一体、誰が信じるでしょうか。

 今回の規模の補正予算に匹敵するのは、麻生政権における二十一年度補正予算であります。

 一般会計の歳出は約十五兆円追加され、特別会計の歳出も十兆円超が追加されています。

 この補正予算で大きな問題になったのは、基金です。四十六もの基金がつくられ、約四兆三千億円が計上されました。

 実は、今回の補正予算でも、官民ファンドが幾つもつくられます。ファンドとは、日本語では、基金です。しかも、今回のファンドは、出資金という位置づけです。出資金という名称になった途端、建設公債の対象となるのです。

 リスクをとるのが官民ファンドだと思うのですが、もし失敗して資産がなくなると、借金だけが残ります。道路などのインフラであれば、仮に利用者が少ないとしても、まだ資産が残るので、建設公債で賄うことが正当化できるかもしれません。しかし、出資金は、失敗すれば、消えてなくなります。

 官民ファンドを、出資金、すなわち建設公債で賄うことの妥当性とは何でしょうか。赤字公債で賄うと批判されるので建設公債とする、まやかしではないでしょうか。麻生財務大臣、お答え願います。

 誤解のないように申し上げますが、私は、政府がリスクをとるべきでないと言っているわけではありません。建設公債で賄い、あたかも資産が残るかのように説明することが、国民をだますものではないかと申し上げているのです。失敗して資金が消えた場合、誰が責任をとるのでしょうか。

 安倍総理は、去る一月十一日の記者会見で、予算の中身をガラス張りにして、費用と効果の比較を見えるようにするとおっしゃっています。それなら、ぜひとも、補正予算の各事業の費用対効果の予測を出してください。いかがですか。

 予算審議に当たり、重要な資料です。ばらまきでないことを証明するためのデータです。財務省は、費用対効果を見て予算を査定したはずです。簡単です。事前にデータを出さなければ、評価はできませんし、安倍総理がおっしゃるような、ガラス張りにはなりません。

 また、安倍総理は、同じ記者会見で、財政規律は極めて重要であると認識しており、プライマリーバランスの黒字化を目指す、今後、来年度予算編成について、日本経済再生と中長期的に持続可能な財政措置の双方を実現していく道筋を検討していくと述べておられます。

 一方で、甘利大臣は、中長期の財政目標は参議院選挙が終わるまで当分出さないとおっしゃっています。これは、明らかに総理の発言と矛盾しています。

 安倍総理は、二〇二〇年度までにプライマリーバランスを黒字化するとのこれまでの歴代内閣の目標を捨て去られるのですか。守られるというのであれば、それは達成できるのでしょうか。

 今回の補正予算や来年度予算だけではなく、自民党は、マニフェストでさまざまな施策を約束しています。一体、幾らの追加費用がかかるのでしょうか。マニフェストの約束を実行するために、予算を際限なくふやすのか、財政を再建するのか、一体どちらなんですか。あるいは、選挙対策上、財政目標は、もうおつくりにならないんですか。

 安倍総理は、自民党は変わった、古い自民党の体質はないとおっしゃっていますが、単なるお話ではなく、ぜひともそれを証明していただきたいのです。

 経済成長や財政再建などの実現には、コストや努力が必要です。無駄な公共事業はやめる、道路特定財源は復活しない、TPPや規制改革には歯を食いしばって取り組んでいく、社会保障や医療負担の増加については国民を説得していく、そうでなければ、総理、経済成長や財政再建はできません。

 責任野党を目指す私たちも、反対のための反対はいたしません。どうか、総理、党派を超えてこのような課題に一緒に取り組んでいこうではありませんか。総理のお覚悟をお聞きしたい。

 最後に、さらに具体的な提案を予算委員会で行うことを申し上げて、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 岸本周平議員の御質問にお答えいたします。

 中央銀行の独立性についてお尋ねがございました。

 今回の共同声明では、日本銀行が、みずから二%の物価安定目標を設定し、責任を持ってできるだけ早期に実現することとされております。金融政策の自主性は十分に尊重されていることから、中央銀行の独立性を軽視するようなものではないと考えております。

 金融政策の出口戦略についてお尋ねがございました。

 共同声明において、日本銀行は、二%の物価安定目標のもと、リスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から問題が生じていないかを確認しつつ、金融緩和を推進することとされています。

 このため、物価の安定という中央銀行の任務が果たせなくなるという御批判は当たらないものと思います。

 また、二%の物価安定目標の実現に向けた具体的な金融政策の手法については、政府として、当然、コメントすることは差し控えたいと思います。

 補正予算における財政規律についてのお尋ねがありました。

 当面の経済を強力に押し上げ、将来の成長につながる施策を総動員し、我が国の経済再生を推し進める観点から、大規模な補正予算を編成したところであります。

 他方で、国債発行が将来の負担となるのは御指摘のとおりであり、財政出動をいつまでも続けるわけにはいきません。民間の投資と消費が持続的に拡大する成長戦略を策定し実行していくとともに、財政健全化と日本経済再生の双方を実現する道筋を検討してまいります。

 経済財政政策の検証についてのお尋ねがありました。

 これまでの累次の経済対策は、一定の景気下支え効果はあったと考えていますが、その延長線上にある対応では、経済の再生を進めることはできません。

 このため、私の内閣では、これまでとは次元の違う大胆な政策パッケージとして、先般、日本銀行との共同声明や大規模な補正予算を取りまとめたところであります。

 さらに、今後は、民間の投資と消費を拡大させる成長戦略を策定、実行することで、持続的な経済成長を実現してまいりたいと考えております。

 財政健全化の取り組みについてお尋ねがありました。

 今までどの政党、政権が悪かったと言うつもりは全くありません。これから何をするかが重要なんだろう、このように思うわけであります。

 強い経済の再生なくして、財政の再建も、日本の将来もありません。このため、今年度補正予算は、日本経済再生に向けて、公債発行額四十四兆円にこだわらずに、思い切った規模といたしました。

 来年度予算については、財政健全化目標を踏まえ、国債発行をできる限り抑制することとし、予算概算では、歳出の必要性等について内容を十分に精査し、公債発行額は四十二・九兆円としております。

 今後、社会保障・税一体改革を継続し、中長期的に持続可能な財政の実現を図ってまいります。

 補正予算の費用対効果についてお尋ねがありました。

 今回の補正予算における全ての事業一つ一つについて費用対効果の定量的な予測をお示しすることは困難ではありますが、補正予算の編成に当たっては、効果が高いと考えられる事業を優先して措置したところであります。

 なお、例えば公共事業については、新規採択等に当たり事業評価を行うなどの取り組みを行っており、そうしたことも踏まえながら、今回の補正予算における事業を含めた緊急経済対策の施策について、執行状況や事業の効果等のフォローアップを各省庁においてしっかりと行ってまいりたいと考えております。

 財政健全化目標についてお尋ねがありました。

 強い経済の再生を図りながら財政の再建を進めることが極めて重要であり、二〇一五年度までに国、地方のプライマリーバランスの赤字の対GDP比を二〇一〇年度の水準から半減し、二〇二〇年度までに国、地方のプライマリーバランスを黒字化するとの財政健全化目標を実現する必要があります。

 今後、経済財政諮問会議において、財政健全化と日本経済再生の双方を実現する道筋について、検討を進めてまいります。

 マニフェストの施策及び財政健全化についてのお尋ねがありました。

 御党におかれては、四年間で実施する施策を工程表の形で、毎年捻出する財源とともにマニフェストで示されたと承知しております。

 自民党としては、そのような形ではなく、目指す施策の方向性について、政権公約においてお示しをしてきたところであります。その実現に向けて、しっかりと取り組んでまいります。

 同時に、政府としては、財政健全化目標を踏まえ、来年度予算において公債発行額をできる限り抑制するとともに、社会保障・税一体改革を継続し、中長期的に持続可能な財政の実現を図ってまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣からお答えをいたします。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 官民ファンドについての御質問をいただきました。

 御指摘のファンドは、国が民間では行えないリスクマネーを重点的に供給し、これを呼び水として民間投資を活発化させるため出資金の形で資金を供給しているものであり、国には出資持ち分という資産が生じますことから、建設公債とするのが妥当性があると考えております。

 また、運用に当たりましては、各ファンドなどの責任において、十分な審査体制及びリスク管理体制のもとで、民間主導で投資案件の目ききを行うことといたしております。運用に失敗すれば民間主体も損失をこうむることになりますため、収益性の確保については一定のガバナンスが働くものだと考えております。

 政府としても、出資の実行や決算などさまざまな機会を捉えて、こうした取り組みをしっかりとチェックしてまいりたいと考えております。(拍手)

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議長(伊吹文明君) 野田聖子君。

    〔野田聖子君登壇〕

野田聖子君 自由民主党の野田聖子です。

 私は、自由民主党を代表して、昨日の財政演説、すなわち平成二十四年度補正予算及び平成二十五年度予算、いわゆる十五カ月予算に対して質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ち、アルジェリア人質事件において亡くなられた方々に対し、謹んで哀悼の意を表しますとともに、御家族の皆様に心よりお悔やみを申し上げます。

 二度とこのような悲惨な事件が起こらないように、自民党は、さらなる対策を講じてまいります。

 さて、安倍内閣が発足して一カ月。各マスコミの調査では、内閣支持率は七〇%に届く勢いを見せています。これは国民の、安倍内閣の経済政策への期待であり、しっかりと応えてまいります。

 あわせて、毎日、市場においても、為替や株価などの経済指標において証明されているところです。

 私自身、今回の選挙中、我が党の経済再生の政策は、有権者に対して理解されやすかったと実感しました。恐らく、その理由は、いわゆる官僚の作文ではなく、私たちが野党として、日々、中小企業や小規模事業者などから集めた現場の声そのものだからです。

 そして、安倍政権が発足し、経済対策を含む大型補正予算を編成しました。税制改正を取りまとめ、二十九日には予算概算閣議決定がなされました。

 このようなスピードで予算が編成されたことは、過去に例がなく、まさに安倍内閣の、決める政治の本領発揮というべきものであります。

 我が国が再生するためには、何をおいても東日本の復興です。被災された方々が、確かに復興が進んだと実感してもらえることが肝心です。我が党は、スピード感を持って全力を傾注していく決意です。

 そのために、私たちは、まず、被災されている方々の暮らし、人生の現実を捉え、真に望まれていることを確実に進めることです。たとえ仮設住宅が建設されても、そこに生活するための備品、例えば調味料であったり箸やごみ袋がなければ、暮らしは始まりません。

 復興を進めるには、一つ一つきめ細やかな配慮が必要と考えますが、復興にかける総理の御決意をお伺いいたします。

 総理が最優先課題と位置づけられているのは、経済再生です。世に言われているアベノミクスについてお伺いいたします。

 総理が所信表明で触れられました三本の矢。三本の矢とは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略であります。

 総理御自身は、アベノミクスという言葉は、これまで一度も口にされていません。しかし、マスコミは、この三本の矢を核とした安倍総理の経済政策をアベノミクスと称しているようです。

 第一の矢、大胆な金融政策については、物価目標を二%に設定し、思い切った金融緩和を行うこととしており、政府、日銀は、先月二十二日、デフレ脱却と持続的な経済成長を実現するための政策連携を確認する共同声明を発表したところであります。

 しかし、なぜインフレを目指すのか、物価が安いことにこしたことはないのではないかとの、国民の素朴な意見が聞こえてきます。

 また、専門家と言われる方からは、一度インフレの流れに乗ってしまうと、とめることができず、ハイパーインフレになるおそれがある、あるいは、物価が上昇し、デフレから脱却して景気がよくなったとしても、国民の財布に還元されるまでにはタイムラグがある、消費税も上がることもあり、国民生活が圧迫されることは目に見えているとの意見があります。

 これらは、アベノミクスに死角があるのではないかとの疑念の声であると思います。これらを払拭するために、総理みずから、わかりやすい御説明をお願いいたします。

 第二の矢、機動的な財政政策については、緊急経済対策を柱とした、十兆円を超える史上最大規模の補正予算を打ち出しました。

 ところが、仕事の内容を精査しない政党、マスコミからは、無駄な公共事業のばらまきで、古い自民党に戻ったなどと、相変わらずの反対を表明しています。ちなみに、彼らからは、この補正予算の何が無駄で何がばらまきという、定義も、具体的な事例も、言及がございません。

 この三年余りで急激に体力が減退した今の日本経済にカンフル剤が必要であることは論をまちません。

 雇用をつくること、即効性を考慮すれば、公共事業はこれまでも有効な対策であると考えられてきていますが、それ以上に、笹子トンネル事故を改めて挙げるまでもなく、命を守る公共投資は、やらなければならない国の使命です。

 もちろん、明確に事業の優先順位をつけ、必要不可欠な事業に絞り込み、便乗する不要な事業は絶対に排除しなければなりません。

 あわせて、長期にわたる公共事業費削減により、担い手である地方の建設関係業者は、質、量ともに減少傾向です。地域経済再生のため、彼らがしっかり仕事に取り組める環境整備が重要であります。

 そこで、命を守る公共投資の必要性について、また、景気に及ぼす好影響について、総理のお考えをお伺いいたします。

 一方で、財政悪化の懸念を指摘する声もあります。

 平成二十七年度の国、地方のプライマリーバランス赤字の対GDP比を平成二十二年度の水準に比べて半減し、平成三十二年度までを目途に国、地方のプライマリーバランスを黒字化するとの十年前に約束した財政健全化目標は、極めて厳しい現状であると言わざるを得ません。

 仮にデフォルトということになれば、あっという間に超インフレ、超円安になってしまいます。その危険性について、私たちは、もっと敏感でなければならず、責任を持たなければならないと考えます。

 財政の健全化を目指すと言うのは容易ですが、政府も、私たちも、もう少し真剣に取り組む覚悟が必要であると考えます。先ほど総理大臣からの答弁がございましたが、改めて、財務大臣の御見解、御決意をお示し願います。

 第三の矢、民間投資を喚起する成長戦略についてお伺いいたします。

 機動的な財政政策の第二の矢は、あくまでもカンフル剤であって、決して、これで万全なわけではありません。カンフル剤で取り戻した体力を維持しなければなりません。

 そこで、第三の矢、成長戦略が必要となるわけで、この矢が、経済再生の大きなポイントとなります。

 成長分野における思い切った規制改革や研究開発等に対する税制の優遇措置、人材開発など、広く、国民の英知、あらゆる政策を総動員して臨まなければ、決してなし得るものではありません。

 経済成長を支える柱は、人材です。

 資源が乏しく、急激な人口減少国家に転じた日本にとって、持続的な成長をしていくためには、あらゆる人材の最大限の活用が不可欠です。

 まず、女性について。

 かつてのように、男女平等とか人権の視点ではなく、製造業からサービス業への大幅な転換、供給重視ではなく需要重視の消費者活動など社会構造の大きな変化により、女性を活用した方が企業の効率化、生産性を改善できる時を迎えているのです。

 カルビーの松本会長は、女性の登用を進めるには、経営者、いわゆるトップマネジメントが力ずくで変えるしかないと言っておられます。

 女性の登用について、総理はどのように考えておられるのか、また、今回の補正予算ではどのような対応を行っているのか、お伺いいたします。

 最近は、将来日本で生きることに喜びを見出せず、活躍の場を求め、海外に出ていく若者もふえていると聞きます。未来を切り開いていくためには、元気な若者の力は欠かせません。自民党の再評価の一つに、青年局、若手国会議員の活躍があることは間違いありません。

 補正予算では、若者に対する支援策についても、総理にお伺いいたします。

 麻生政権時代、成長戦略の大黒柱として、FIRST、最先端研究開発プログラムを創設しました。

 これは、日本の科学者トップ三十を選び、複数年にわたり、日本で自由に研究に専念できるための資金であります。そして、その成果物が、これからの日本の成長を促すものとなるはずです。実際に、そのお一人が、ノーベル賞受賞者の山中教授であられます。

 しかし、この資金は、政権交代により、民主党のばらまき政策の穴埋めのために、二千七百億円用意されていたものがわずか一千億円に大幅に減額され、そして、開始時期も大変おくれてしまいました。残念なことであります。

 改めて、国民に夢と希望を与える最先端の研究成果を力強く支えるべきと考えます。

 科学技術政策について、補正予算でどのように対応し、今後どう取り組んでいくのか、総理の考えをお聞かせいただきたいと思います。

 この第三の矢である成長戦略が日本経済再生の鍵となることは、疑う余地はありません。総理には、国民の全ての英知を結集して、不退転の決意で臨まれることを期待いたします。

 ここで、視点を変えて、税制改正に関して、二点お伺いいたします。

 一部の新聞で、自民党、道路特定財源化へとの報道がございました。

 我が党と公明党でまとめた平成二十五年度税制改正大綱には、道路特定財源とは一言も記述されていません。自動車重量税を存続させるに当たって、その課税理由を明確にすべきであるとの指摘であって、道路特定財源導入などは、明らかな新聞の誤報であります。意図的な報道なら、二度とないようにお願いしたいものです。

 政府には道路特定財源の復活の考えはないと思います。くどいようですが、麻生財務大臣に確認をさせていただきたいと思います。

 消費税の引き上げが来年四月に予定されています。

 消費税引き上げに伴う低所得者対策として、イギリス等で導入されている、食料品などの日用品に対する税率を軽減する制度の導入が必要であるとの議論がなされています。

 我が国においても、さきに取りまとめられた平成二十五年度与党税制大綱において、消費税率の一〇%引き上げ時に軽減税率制度を導入することを目指すとしていますが、政府としては、導入に向けて、どのように議論を進めていくのでしょうか。麻生財務大臣に、政府としての方向性をお聞かせいただきたいと思います。

 我が党は、総選挙の政権公約に掲げたとおり、まず復興、そして、経済の再生、教育の再生、外交の再生、暮らしの再生をなし遂げ、その先にある、強い日本をつくることを目指していきます。

 安倍総理、あなたは、過去に大きな挫折を経験されました。権力の座から離れたあなたへの数多くの国民からの容赦ない言動に、どれだけの苦い涙があったのでしょうか。

 今、それらを乗り越え、まさに再チャレンジのスタートを切られた総理こそが、弱さを知る指導者として、多くの国難とともに生きておられる人々の先頭に立って進まれることを期待し、安倍内閣を全力で支えていくことを誓い、私の質問とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 野田聖子議員にお答えをいたします。

 復興に向けた決意についてのお尋ねがございました。

 復興は、内閣の最重要課題の一つであり、閣僚全員が復興大臣であるとの認識のもと、新しい東北の創造に向けて、全力で取り組んでいく決意であります。

 今年度補正予算及び来年度予算案において、国が前面に立ってきめ細やかに対応できる事業等を盛り込んでおります。これを早期に成立させていただき、その施策を一日も早く被災地にお届けしてまいりたいと考えております。

 被災された方々に、確かに復興が進んだと実感してもらえるよう、被災地の心に寄り添う現場主義で、復興を加速させてまいります。

 安倍政権の経済政策への疑念の声についてのお尋ねがありました。

 政府としては、大胆な金融政策とあわせて、機動的なマクロ経済政策運営、競争力、成長力の強化の取り組みを行い、雇用、所得を拡大させることとしております。これによって、物価だけが上昇し国民生活へ悪影響が及ぶことがないようにしてまいります。

 また、ハイパーインフレについてでありますが、ほとんど起こり得ない不安を喧伝する人たちがいるのは大変残念なことではありますが、しかし、私たちとしては、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを行っていくことで、ハイパーインフレのおそれがあるといった懸念を払拭してまいります。

 いずれにせよ、経済を成長させ、国民を豊かにしていくにはこの道しかないとの確信のもとに、強力に政策を実行してまいります。

 公共投資の必要性や景気に及ぼす影響についてお尋ねがありました。

 公共事業については、国の使命として必要なものは何かという観点も踏まえ、思慮深い議論を行っていくことが重要であると認識をしております。

 こうした認識のもと、老朽化対策や耐震化といった国民の命を守る事業などに重点化した上で、真に必要な社会インフラの整備を着実に進めてまいります。

 また、ニーズが高く、早期執行が可能な事業を速やかに実施することにより、需要の創出を通じた景気浮揚効果が期待されると考えております。

 女性の登用についてのお尋ねがありました。

 女性の力の活用や社会参画の促進が日本の強い経済を取り戻すために不可欠と認識をしております。

 今後、関係者の声を直接お聞きする場を設け、産業競争力会議でも議論を行い、女性の登用等に向けた対応策を検討してまいります。

 今回の補正予算においても、育児等で離職した女性などの再就職支援のための職場実習や、女性の起業、創業支援のための補助金の創設等により、女性の活躍を強力に支援してまいる考えであります。

 今般の補正予算における若者に対する支援策についてお尋ねがございました。

 我が国の未来を切り開くため、活力のある若者を育成することは非常に重要であると考えております。

 このため、今般の補正予算においては、実践的な職業訓練を通じて若者の正規雇用化に取り組む企業を応援する仕組みの創設等を行うことといたしております。

 科学技術政策に関する補正予算での対応及び今後の取り組みについてお尋ねがありました。

 科学技術・イノベーションは日本経済再生の原動力であり、今回の補正予算においても、成長による富の創出を実現するための重要な柱として、多くの関連施策を盛り込んでおります。

 今後とも、科学技術・イノベーション政策は重要な国家戦略であり、総合科学技術会議を司令塔として、世界最高水準の研究開発を強力に推進してまいります。

 野田議員御指摘のように、最先端研究開発支援プログラムについては、民主党政権に交代したときに、およそ半減されました。今回、その中でも、山中教授によって樹立された画期的な成果であるiPS細胞等を用いた再生医療、創薬の研究に関しては、今回の補正予算を含め、今後十年間で千百億円程度を支援することとしております。

 残余の質問につきましては、関係大臣が答弁いたします。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 財政健全化に取り組む覚悟についての御質問を頂戴しました。

 機動的な財政運営を行いつつも、中長期的な財政健全化の取り組みを継続することが重要であって、国、地方のプライマリーバランスにつきましては、平成二十七年度までに赤字の対GDP比を二〇一〇年度、平成二十二年度の水準から半減させ、平成三十二年度までに黒字化するとの財政健全化目標を実現する必要があろうと存じます。

 平成二十五年度予算は、この財政健全化目標を踏まえ、できる限り予算の重点化を行っておるところであります。

 今後、財政健全化目標を達成するための中期財政計画を、年央をめどに作成いたしたいと考えております。

 自動車重量税についての御質問をいただきました。

 自動車重量税は一般財源であり、道路特定財源を復活させるものでは全くありません。

 なお、与党税制改正大綱の記述は、自動車重量税につきまして、課税の考え方がわかりにくくなっているとの御指摘がある中で、課税の考え方を明らかにする趣旨で書かれたものだと承知をいたしておるところです。

 消費税の軽減税率についての御質問をいただきました。

 政府としては、今般の与党税制改正大綱を踏まえ、対象、品目、また財源の確保、インボイス制度、そして中小事業者の業務の負担、そういったことなど、軽減税率導入に当たってさまざまな課題があります。その課題につきまして、与党におきます議論を踏まえながら検討を行っていく必要があろうと考えております。

 また、与党における調査などへの必要な協力は、当然のこととして行ってまいらなければならないものだと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 松野頼久君。

    〔松野頼久君登壇〕

松野頼久君 私は、日本維新の会を代表して、麻生財務大臣の財政演説について質問いたします。(拍手)

 先般の総理所信に対する代表質問において、我が党の平沼国会議員団代表は、日本維新の会は、衆議院における第三党としての責任を自覚し、日本のため、是は是、非は非の基本姿勢で今後の政治に責任を持って対処する、このような旨を申し述べました。

 私たちが政府に対して是々非々で臨むと申し上げているのは、野党の何でも反対という硬直化した対応が政治停滞を招いてきたと考えているからです。

 日本維新の会は、これまでのような硬直化した対応とは一線を画し、国民のためになることには賛成し、おかしなところには断固反対し代替案を提示する、決められる政治をつくり上げたいと考えております。

 さて、安倍総理は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略という三本の矢で経済再生を推し進めると伺いました。

 安倍政権が発足して一カ月。円高や株価低迷の是正が進み、デフレを脱却した経済を実現、競争力が強化されるならば、これは評価に値いたします。

 我々日本維新の会は、制度疲労を来してきた中央集権、官僚統制の国家体制を打破し、明治維新以来百四十年ぶりの統治機構の大転換を実現する改革派保守政党を目指します。

 改革派保守政党とは、日本のよい面を守り、国際社会の中で生き抜いていく国際競争力を持つため、改革を断行する政党という意味であります。

 今回の予算案を見る限り、自民党は、守旧派保守政党のイメージが拭えません。

 中央省庁の仕事を根本から見直し、国の役割を外交、安全保障、危機管理、マクロ経済政策に絞り込み、国の機能を強化する一方で、地方に権限と財源を移譲し、近い将来、道州制に移行するのが、日本維新の会のビジョンであります。

 自民、公明両党で道州制基本法を取りまとめられていると伺っておりますが、ぜひとも、早期に成立させようではありませんか。この件について、総理にお伺いいたします。

 さて、バブル崩壊以降のいわゆる失われた二十年間、日本の政治は向かうべき方向を見失ってしまいました。

 二〇一一年のOECD報告によれば、森林を除く国土面積当たりの道路密度は一〇・三三%と、日本の道路密度は二位のベルギーを大きく引き離して世界第一位であり、この上、さらに道路をつくっても、企業も国民も喜ぶ時代は終わりました。

 社会は成熟し、価値観も多様化し、地域の実情によって、国民が求めるものが異なるようになってまいりました。かわって、地域のことはそれぞれの地域の実情に応じて地域が決めるという、地方分権を求める声が高まってまいりました。

 にもかかわらず、今回の補正予算と来年度予算案では、公共事業の増額へと、ひた走りに走っています。

 道路の維持補修や防災対策は、事業実施による新たな経済効果や利便性を生む効果に乏しく、将来にわたる経済波及効果は不十分であります。

 防災対策やインフラ整備の必要性は認めますが、地域の実情を踏まえないままに突貫工事でつくられた経済対策は、十兆円ありきで関係省庁に積み上げさせたものであり、地域の実情を踏まえない、ずさんな内容と言わざるを得ません。

 次年度繰り越しを前提とした補正予算は、来年度当初予算の見ばえをよくする前倒しであり、粉飾予算と言っても過言ではありません。

 特定業界団体へのばらまきを何の展望もなく続ける旧態依然とした利益誘導政治が復活したとしか言いようがありません。大きなツケを子や孫の世代に回すだけであります。

 そこで、高度成長期における公共事業の経済波及効果と、今回の補正予算における維持補修や防災対策を中心とした公共事業の経済波及効果との違いについて、どのようにお考えなのか、総理にお伺いをいたします。

 財政規律の観点からも、一般会計ベースの補正後予算額は百兆円を超えるとともに、年金特例公債を含めた公債金は五十兆円を突破しており、財政規律を無視した、公共事業のばらまき予算であると断じざるを得ません。

 このばらまきのために、今回の安倍政権の補正予算と二十五年度当初予算を合わせて四十八兆円の国債を新たに発行することになりますが、こうした財政運営が将来の負担をふやすことについて、どのようにお考えなのか、総理にお伺いをいたします。

 次に、地域の元気臨時交付金についての質問です。

 この交付金は、建設国債を財源とし、ハード事業だけが対象となっています。しかし、地方からは、むしろITや教育などのソフト事業に使いたいとの要望が強くあります。地域の実情に応じ地域が決められるようにしなければ、効果的な経済政策にはなりません。

 現に、過去の麻生政権では、ハード事業だけではなく、ソフト事業にも柔軟に対応できる地域活性化・経済危機対策臨時交付金を創設した実績もあります。

 まさに、先ほどから述べているとおり、既に時代は全国津々浦々同じものを求めてはおらず、地域のことは地域の実情に応じて地域が主体的に決められるようにしなければ、とてもではありませんが、効果的な経済対策になりません。

 そこで、地域の元気臨時交付金の設計に当たり、地方がハードにしか使えない交付金とした理由を、総理にお尋ねいたします。

 また、地方公共団体の裏負担八割を補助する仕組みが導入されていますが、来年度当初予算に計上すれば裏負担五割となる事業が、補正予算に計上すれば一割で済むのは、明らかにこれは不公平であり、地域における事業執行において大きな混乱を招きます。

 地域の元気臨時交付金制度が大きな混乱をもたらすおそれがあることに対して、どのように対処されるおつもりなのか、総理にお伺いをいたします。

 もう一点、重要な問題は、一括交付金の廃止であります。

 安倍政権は、地方自治体に相談することなく、平成二十五年度当初予算における一括交付金の廃止を決めました。

 一括交付金は、地方の自由裁量を広げた制度であります。手続が煩雑で、交付総額が削減される問題もありました。しかし、省庁の縦割りを超える、一歩前進した仕組みであったと思います。

 一括交付金の予算枠を中央省庁が決めてしまう今の制度の弊害を改め、税源そのものを地方に移管する方向に制度を進化させるべきだと考えますが、これは日本維新の会の基本的な考え方であります。

 ところが、政府・与党は、一括交付金を廃止し、省庁縦割りのひもつき補助金に戻してしまいました。税源移譲一つに及び腰では、本格的な道州制、分権改革は、到底、実現不可能であります。

 日本維新の会は、特定業界にしがらみがなく、霞が関にも何の遠慮もない、真の改革を進めることのできる政党であります。政府・与党が及び腰ならば、真の地方分権改革を行うことができるのは我々しかいないと、意を強くいたしました。

 そこで、省庁縦割りのひもつき補助金に戻すのではなく、地方への税源移譲へとさらなる駒を進めるべきと考えますが、総理のお考えをお尋ねいたします。

 次に、補正予算の財源について質問いたします。

 今回の補正予算で一番の問題は、復興のための予算や財源が被災地以外に流用されている実態があるのではないかということであります。

 復興予算が被災地の復旧復興の目的以外に流用された問題は、昨年十一月十三日の予算委員会において既に取り上げましたが、今回の補正予算においても、流用が繰り返されているのではありませんか。

 例えば、今回の補正予算において前年度剰余金の受け入れが行われていますが、復興財源確保法附則第十六条では、復興債の償還財源が確保される場合、復興特別税の負担の軽減を図ることとされています。にもかかわらず、剰余金を一般会計に戻して補正予算に充てることは、補正予算の水増し流用と断じざるを得ません。

 なぜ、剰余金を一般会計に戻して補正予算に充てたのか、また、附則の第十六条にのっとり、復興特別税を減税するつもりはありませんか。総理のお考えをお尋ねいたします。

 与党自民党の平成二十五年度税制改正大綱においては、自動車重量税の税収については、道路の維持管理、更新等のための財源として位置づけとして、道路特定財源をあたかも復活させるものとも受け取れる記述がなされています。

 これに対して、安倍総理が、道路特定財源を復活させるものではない旨の答弁をしたことで、政府の見解が一応示されました。

 しかし、同大綱では、自動車ユーザーに還元されるものであることを明らかにする方向で見直しを行うと文言が続いています。大綱を読む限り、特定財源化すると理解されても仕方がないのではないでしょうか。

 そこで、政府・与党は、自動車重量税の税収は自動車ユーザーに還元されるものであることをどのような方策で明らかにしようとしているのか、また、それらの方策は一般財源という位置づけと矛盾するものとはならないのか、具体的かつ明確な答弁をお願いいたします。

 我々日本維新の会は、現金主義、単式簿記による公会計制度を発生主義、複式簿記に改め、バランスシートなど予定財務諸表を作成し開示するという、予算編成の仕組みを大改革する法案を準備しています。

 国家財政をコントロールする、国家経営を客観的な数字に基づいて行うことこそ、危機的状況にある日本の財政運営にとって不可欠だと考えます。

 イギリスやニュージーランドを初めとする公会計制度の改革の先進国では、既に、予算ベースでの発生主義、複式簿記による財務情報の作成、開示が実現をしています。

 デフレからの脱却、景気回復を目指す財政政策を実現するとともに、金融政策の効果を織り込んだマクロ経済政策を総合的に行っていくためにも、予算ベース、決算ベース双方で、我が国の公会計制度を発生主義、複式簿記に改めるべきと考えます。

 国家財政健全化のために避けて通ることのできない公会計制度改革を断行する意思があるのかないのか、このことを総理にお尋ねいたします。

 最後に、我々日本維新の会は、昨年十月に結党し、十二月の最初の衆議院選挙において、比例区で千二百万票、議席数で五十四議席を獲得いたしました。

 この得票を与えていただいた国民の皆様に、この場をおかりいたしまして御礼を申し上げるとともに、この期待に応えるべく、国会の活動をしてまいることをお約束いたします。

 この補正予算の成立は、上昇基調にある株価や景気、そして地方の予算執行に対して影響を与えることは確実であります。

 我々日本維新の会は、この予算案の中に含まれている問題点をしっかり議論する時間を確保した上で、いたずらに時間を引き延ばすことなく、賛否を決めて、成立に協力をしていくつもりであります。

 ですから、政府も、委員会審議を通じて野党の意見に耳を傾け、今までのように一行も変えないという姿勢ではなく、変えられるものは柔軟に変えていく姿勢で臨んでいただくことを期待いたします。

 政府・与党、野党ともに決められる政治の実現を提案させていただいて、私の代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 松野頼久議員にお答えをいたします。

 道州制についてのお尋ねがありました。

 道州制の導入は、地域経済の活性化や行政の効率化などを目指し、国のあり方を根底から見直す大きな改革であります。

 御指摘の道州制基本法については、早期の制定を目指し、与党において議論が行われています。今後、政府としても、連携を深め、取り組んでまいります。

 公共事業の効果についてお尋ねがありました。

 今回の補正予算における維持補修や防災対策を中心とした公共事業も、高度成長期における公共事業と同様、事業の実施により政府みずから需要を創出することによる経済波及効果が見込まれます。

 なお、維持補修や防災対策は、高度成長期における高速道路や港湾整備等のように経済活動の効率化が図られるという効果とは異なるものの、国民の生命や財産が守られるという重要な効果を有するものであると考えております。

 財政運営についてお尋ねがありました。

 当面の経済を強力に押し上げ、将来の成長につながる施策を総動員し、我が国の経済再生を推し進める観点から、大規模な補正予算を編成したところであります。

 他方で、国債発行が将来の負担となるのは御指摘のとおりであり、財政出動をいつまでも続けるわけにはいきません。民間の投資と消費が持続的に拡大する成長戦略を策定し実行していくとともに、財政健全化と日本経済再生の双方を実現する道筋を検討してまいります。

 地域の元気臨時交付金制度についてお尋ねがありました。

 地域の元気臨時交付金は、経済対策における追加公共投資の地方負担が大規模であること等に鑑み、地方の資金調達に配慮し、経済対策の迅速かつ円滑な実施を図るために交付されるものであります。

 こうした趣旨から、本交付金は、建設公債発行対象経費とされ、また、補正予算に限り措置したものであり、地方において適切に運用されることにより、円滑な事業執行が図られると考えております。

 一括交付金の廃止と地方への税源移譲についてのお尋ねがありました。

 地域自主戦略交付金については、地方から、窓口の一元化や手続の簡素化、総額の確保などの課題が指摘されていたことから、本交付金を廃止し、各省庁の交付金等に移行いたしました。

 地方が、みずからの発想で、特色を持った地方、地域づくりができるよう、国から地方への権限、財源等の移譲を促進するなど、地方分権改革を推進します。また、その基盤となる地方税の充実に努めてまいります。

 復興予算の財源についてお尋ねがありました。

 復興関連予算につきましては、流用等の批判を招くことがないよう、使途の厳格化を行ってまいります。

 御指摘の剰余金は、復興特会が存在しなかった二十三年度の一般会計決算において生じたものについて、一般会計から復興特会に繰り入れるものであり、補正予算の水増しとの批判は当たらないと考えています。

 剰余金を税負担の軽減に用いるべきとの点については、先般の復興推進会議において、追加の事業規模が少なくとも六兆円程度と見込まれたことを勘案すれば、まずは、被災地における予算確保に関する不安を払拭するための財源として活用すべきと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 自動車重量税についての御質問をいただきました。

 自動車重量税は一般財源であり、道路特定財源を復活するものでは全くありません。

 与党税制改正大綱の記述は、自動車重量税について、課税の考え方がわかりにくくなっているとの御指摘がある中で、課税の考え方を明らかにする趣旨で書かれたものだと承知をいたしております。

 その具体化について、今後、与党の検討状況を踏まえて検討していきたいと考えております。

 国の公会計制度の改革についての御質問を頂戴しました。

 国の予算、決算につきましては、国会による財政の確実なコントロールや、国民にとってのわかりやすさという観点から、確定性、客観性、そして透明性にすぐれた現金主義が適切であり、御提案のように、発生主義、複式簿記に改めることにつきましては、慎重な検討が必要であろうと考えております。

 なお、発生主義、複式簿記は、企業の期間損益等を適切に測定するために有効な会計手法であります。これと同様の手法で国の財政状況を把握し、開示することも、参考情報として極めて重要だろうと考えております。

 こうした観点から、平成十五年度決算より、毎年、国の財務書類を作成、公表しておりますのは御存じのとおりで、引き続き、その有効活用に取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 上田勇君。

    〔上田勇君登壇〕

上田勇君 公明党の上田勇です。

 公明党を代表して、平成二十四年度補正予算に関し、安倍総理並びに関係閣僚に質問をいたします。(拍手)

 安倍内閣は、昨年末に発足して以来一カ月半の間、日本経済の再生を最優先課題と位置づけ、迅速かつ適切に対応してまいりました。これに対して、国民からは高い期待が寄せられていることを実感しています。そうした期待が、株式や為替市場に反映しているものと受けとめております。

 安倍総理は、経済再生の基本方針として、第一に大胆な金融政策、第二に機動的な財政政策、第三に民間投資を喚起する成長戦略の、三本の矢を打ち出しています。

 これは、今日の我が国経済の抱えている短期的、中長期的な課題を的確に捉えて、それに対する有効な対策を講じるものであると評価をしています。また、かねてから私が提案してきた政策とも軌を一にするものと受けとめています。

 当面の最大の課題は、大幅な需給ギャップに起因するデフレです。それに対しては、思い切った金融緩和と、それと協調した需要創出のための積極的かつ効率的な財政出動が必要であります。

 第一の矢である金融政策については、一月二十二日に、政府、日銀の政策連携に関する共同声明が発表されました。日本銀行は、物価安定の目標を、消費者物価の前年比上昇率を二%とし、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指すとなっています。

 二%の目標は、我が国が長期化しているデフレから確実に脱却するために必要な水準であり、また、諸外国の例から見ても、適切な目標だと考えています。

 しかし、我が国の物価上昇率は、長年にわたり、原油や穀物市況が高騰した二〇〇八年を除いては、おおむね一%未満で推移をしてきました。この目標の実現性に疑問の声があるのも事実であります。

 そこで、目標の妥当性について、総理の御見解をお伺いします。

 また、目標を達成していくためには、日本銀行ともさらに協調しつつ、的確な財政政策、金融政策を実施していく必要がありますが、今後いかなる方策を講じていくのか、お考えを伺います。

 第二の矢である機動的な財政政策を実現するものが、緊急経済対策に基づく本補正予算であります。財政支出十・三兆円の大規模な補正予算は、現在の日本経済の需要不足を考えれば必要な措置であり、内容的にも適切なものだと考えています。

 本補正予算は、復興・防災、成長による富の創出、暮らしの安心・地域活性化の三本の柱から構成をされています。

 本補正予算には、東日本大震災の復興を促進するため、一・四兆円の復興特別会計への繰り入れが計上されています。

 震災発生から間もなく二年が経過をしようとしておりますが、復興がなかなか進んでいないのが現実であります。復興の加速化こそ、喫緊の課題であります。総理の御決意をお伺いします。

 福島県は、原子力発電所事故のため、復旧復興にとりわけ障害も多く、難航しています。これまで、国の出先機関の縦割りの弊害によって、地域の要望に迅速的確に対応できてこなかった反省も踏まえて、今月一日に、復興庁福島復興局、環境省環境再生事務所、原子力災害現地対策本部の国の現場の三機関を一元化し、福島復興再生総局が発足をしました。

 組織を統合するだけではなくて、事務事業の実施に当たっても、縦割りの弊害を除いて、横断的に復興に取り組んでいく必要があると考えています。

 復興総局を設置したことによって今後どのような効果が期待できるのか、総理に御所見を伺います。

 本補正予算には、防災・減災対策を柱とする公共事業費が多く盛り込まれています。現在の経済情勢を考えるときに、効果の早期発現と最大化が重要であると考えます。

 そのためには、真に国民のニーズが高く、効果が大きく、しかも早く実施できる事業に重点化をすることが重要だと考えます。

 例えば、相当な日を要する用地取得や、補償を極力必要としない事業を選ぶべきではないかと考えます。

 大都市などの橋梁、トンネル、上下水道などのインフラは、整備後、相当な年月が経過をしており、災害時などの安全性に不安が高まっています。この際、緊急に総点検を行い、必要な整備を実施する必要があります。また、学校や病院などの、災害時に大きな役割を担う施設の耐震化や安全性向上も、急を要する分野であります。総理並びに国土交通大臣の御見解をお伺いします。

 事前防災のためのインフラ整備においては、地震等大規模な災害発生時を想定して、避難、救助等の計画を立てて、それに沿って、優先度の高い事業から実施をしていくことが重要だと考えます。

 例えば、幹線道路が安全になったとはいっても、そこから消防署や病院などへの進入路が確保できていない、救援物資を搬入する港湾施設は改良されたものの、橋が通行できずに輸送路が寸断される、そういった事態はあってはならないことだと考えます。せっかく多額の公共投資を行っても、肝心のときに効果が発揮されなくなってしまいます。

 自治体において、縦割りの発想を超えて、被害を最小限に抑えることを目的とした、総合的な防災、減災のためのインフラ整備計画を早急に立てるべきであり、国としても支援をしていくべきだと考えます。

 時間も財源も限られています。そうした計画に沿って、事業の優先順位をつけて、計画的に実施をしていく必要があると考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。

 また、厳しい情勢が続いている地域経済を下支えしていくためには、中小企業の活性化が必要不可欠であります。公共事業が増額はされても、恩恵を受けるのは大手企業だけだとの声も聞かれます。

 事業の選定や発注方法において、中小企業の受注機会が十分確保されるよう、特段の配慮を要望いたしますが、総理並びに国土交通大臣のお考えを伺います。

 公共事業の早期執行を確実にするため、執行状況を常に掌握して、進捗がおくれている事業については、予算の組み替えなど、適宜見直しを行っていくべきだと考えます。また、かりそめにも、無駄と受けとめられるような緊急度の低い事業が実施されることは、絶対にあってはならないことであります。

 国会として、事業の内容を、また執行状況をモニターしていくことも重要であり、そのために、適切な情報を提供していただくことを要請いたします。総理及び財務大臣のお考えをお伺いします。

 本補正予算の二本目の柱が、成長による富の創出であります。

 成長分野の市場拡大、先端設備導入を支援するため、さまざまな、いわゆる官民ファンドが創設されることになっています。民間による投資の呼び水効果を狙って公的資金を投入する意図は理解します。

 しかし、政府が過剰に関与することによって、かえって民間の創意工夫が損なわれてしまうことを懸念します。これまでも、さまざまな施策が講じられてきたものの、なかなか期待どおりの効果が上がりませんでした。

 その原因の一つが、チャレンジ精神や柔軟な発想が足りない官が主導して施策が実施されたことにあったのではないかと思われます。

 リスクをとって事業を担う者が主体とならなければ、新たな産業の創出、成長分野の発展にはつながらないと思います。主役は民間であり、政府はあくまでサポート役に徹する、そうした基本的な姿勢が必要だと考えます。総理の御見解をお伺いいたします。

 また、中小・小規模企業による試作、開発等の支援や事業再生支援など、中小・小規模企業に重点を置いた施策が計上されている点は評価をいたします。

 しかし、これまでの施策の実施に当たっては、補助や融資等の要件が細か過ぎて使い勝手が悪過ぎる、提出書類が多く煩雑過ぎるという声もたびたび耳にしてまいりました。結果的に、斬新なアイデアや高い技術力を持つ中小企業等の潜在能力が十分に発揮されていないのではないかと懸念されます。

 施策の効果を高め、効率的に実施をしていくためにも、要件の弾力化、手続の簡素化等の見直しに努めていく必要があると考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。

 本補正予算の三本目の柱が、暮らしの安心・地域活性化であります。

 この中には、待機児童解消のための保育士の確保や保育施設の整備など、安心こども基金を積み増す経費が計上されています。

 少子化による人口減少は、我が国の将来の経済社会の活力や安定を維持向上していく上で、大きな障害となりかねない状況にあります。

 これからの我が国の社会保障政策においては、少子化対策、子育て支援が極めて重要な分野だと考えており、本補正予算において関係施策が盛り込まれていることは、内閣として積極的に取り組んでいく姿勢を示すものと評価をいたします。

 少子化問題及びそれに対する施策に関する総理の基本的なお考えをお伺いいたします。

 また、高齢者医療の負担軽減措置として、七十歳から七十四歳までの窓口負担の軽減措置を延長するための経費約二千億円が計上されています。

 今後、この措置のあり方については、世代間の公平や高齢者に与える影響等について、低所得者対策等とあわせて引き続き検討し、早期に結論を得るとされています。検討に当たっては、高齢者の不安が過大となることがないよう、十分な配慮が必要だと考えます。

 今後の検討のスケジュールも含めて、厚生労働大臣のお考えをお伺いいたします。

 次に、財政の健全化について質問いたします。

 本補正予算は、経済の現状を考えたときに、必要な財政出動を行うものではありますけれども、その財源を賄うために、公債金五・二兆円を増額することになっています。

 我が国の財政の厳しさは周知のとおりであり、いつまでも現状を放置しておくことは、我が国の財政に対する信認が損なわれるおそれがあります。第一に安定した経済成長、第二に恒常的な歳出の抑制、削減、第三に歳入の確保、この三つをバランスよく進めていく必要があります。

 新年度予算では、過去三年間続いていた、公債金が税収を上回るという異常な事態を脱し、プライマリーバランスも約一・七兆円改善するなど、健全化の方向に動き出しました。しかし、まだまだ道のりは遠いと言わざるを得ません。

 今後の財政健全化に向けての考えを、総理並びに財務大臣にお尋ねいたします。

 我が国経済は、新政権の誕生に伴って、明るい兆しが生まれつつあります。しかし、これはあくまで新政権の経済政策に対する期待感であって、実体経済は依然として厳しいのが現実であります。また、世界経済の動向もまだまだ不透明であります。

 本格的な経済再生を確実にしていくためには、今後とも、政策を総動員して機動的に対応していく必要があります。その手始めとなるのが本補正予算であります。

 できるだけ早く成立させて、施策を速やかに実施に移していくことが必要であることをお訴えし、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 上田勇議員にお答えをいたします。

 金融政策及び財政政策についてのお尋ねがありました。

 共同声明において、日本銀行がみずから二%の物価目標を設定したところであり、政府としては、日本銀行が責任を持ってできるだけ早期にこれを実現することを期待しております。

 同時に、政府としては、デフレ脱却と経済再生に向けて、競争力、成長力強化に向けた取り組みを具体化し、緊急経済対策を着実に実行することとしており、その裏づけとなる補正予算の早期成立をお願いしているところであります。

 復興に向けた決意についてお尋ねがありました。

 復興は、内閣の最重要課題の一つであり、閣僚全員が復興大臣であるとの認識のもと、新しい東北の創造に向けて、全力で取り組む決意であります。

 私は、就任後、直ちに総点検の指示を出し、先日、第一に司令塔たる復興庁の体制の見直し、第二に復興予算に関するフレームの見直し、第三に復興の加速化の具体化、推進、特に既存施策の手が及んでいない部分の解消等を決定しております。

 これらを踏まえて、今年度補正予算案に加え、来年度予算案において、必要な予算を計上しております。

 公明党の御協力のもと、これら予算の早急な成立に努め、着実に実施することにより、現場主義で被災地の復興を加速してまいります。

 福島復興再生総局についてお尋ねがありました。

 福島復興再生総局は、行政の縦割りを排し、現場主義を貫くことで、福島の復興に関する政府の体制を大転換するものとして設置をいたしました。

 復興大臣の陣頭指揮のもと、復興庁の事務方トップクラスが福島に常駐し、現地の三つの組織を一体運用してまいります。

 これにより、さまざまな課題に対し、被災地の実態に合わせて現地で即断即決することを可能とし、福島の再生を必ずや加速させてまいります。

 公共事業の重点化についてお尋ねがありました。

 今般の補正予算では、公共事業について、防災・減災対策である既存インフラの老朽化対策や耐震化対策など、国民の生活を守る事業、成長や地域活性化を促す事業などに重点化したところであります。

 特に、御指摘のインフラの点検、学校、病院などの施設の耐震化といった、国民のニーズや緊急性が高い事業を速やかに実施したいと考えております。

 総合的な防災、減災のためのインフラ整備についてお尋ねがありました。

 多様な災害が頻発する我が国において、災害に強い国土を構築し、国民の生命と財産を守ることは、極めて重要であると認識をしております。

 こうした認識に立って、防災、減災のためのインフラ整備については、今回創設する防災・安全交付金により地方公共団体の取り組みを支援しながら、地域防災計画等を考慮して、優先度の高い事業を計画的かつ着実に推進してまいります。

 公共事業における中小企業の受注機会の確保についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、中小企業の受注機会を確保することは、極めて重要であると認識をしております。

 そのため、地域の中小企業が入札に参加できる工事の範囲の拡大など、受注機会の確保に向けた取り組みを進めてまいります。

 公共事業等の早期執行についてのお尋ねがありました。

 公共事業等については、経済への効果が一日も早く発揮されるよう、予算の早期執行に万全を期す必要があります。

 このため、公共事業の入札に関する手続の簡素化や、公共事業の発注予定や契約の結果の公表など、情報を公開しつつ、早期執行に向けた取り組みを進めてまいります。

 官民ファンドの民間との役割分担についてのお尋ねがありました。

 日本の豊富な民間資金、多様な人材、すぐれた技術力などの潜在力を最大限に引き出し、成長による富の創出を実現するためには、民間投資の喚起を図っていくためのリスクマネーの供給を行っていくことが必要であります。

 政府としては、民間だけではリスクが高いため十分に対応できない分野についてリスクマネーを供給しますが、その際には、投資案件の目ききについて民間の知見を最大限活用するなど、民間のサポート役に徹することとしております。

 中小企業、小規模事業者の手続の簡素化についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、補助や融資等を受ける中小企業、小規模事業者の立場に立って、手続の簡素化等について、運用の不断の見直しを行ってまいります。

 また、これに加えて、個々に丁寧な相談対応を行うことで、中小企業、小規模事業者向けの施策を効果的、効率的に実施してまいります。

 少子化問題及びそれに対する施策についてのお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、我が国における少子化の進展は、国民生活に深刻かつ多大な影響をもたらすものと認識しております。

 今回の補正予算では、待機児童の解消に向けた保育士の人材確保等のため、安心こども基金の積み増し、延長などを盛り込んでおり、国の未来を担う子供を育てやすい国づくりを目指した取り組みを進めてまいります。

 財政健全化に向けた取り組みについてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、強い経済の再生を図りながら財政の再建を進めることは、極めて重要であります。

 財政健全化目標を踏まえ、来年度予算において公債発行額をできる限り抑制するとともに、社会保障・税一体改革を継続し、中長期的に持続可能な財政の実現を図ってまいります。

 今後、経済財政諮問会議において、財政健全化と日本経済再生の双方を実現する道筋について検討を進めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣太田昭宏君登壇〕

国務大臣(太田昭宏君) 公共事業の重点化及びインフラの老朽化対策、防災・減災対策の緊急的な実施についてお尋ねをいただきました。

 大規模災害の懸念、インフラの老朽化の進行の中で、国土のメンテナンスの観点から、国民の命と暮らしを守るインフラの老朽化対策、防災・減災対策が喫緊の課題となっております。

 このため、国土交通省関係の補正予算においては、これら対策への対応を最重要分野として位置づけております。

 具体的には、全てのインフラの安全性の徹底調査、総点検、老朽化対策の推進に当たり必要な予算を計上するとともに、地方が自主的に行う防災・安全対策を重点的に支援する交付金の創設を盛り込んでおります。

 国土交通省といたしましては、事業の早期の効果発現のため、補正予算成立後の速やかな執行に向け、最大限努力してまいりたいと考えております。

 公共事業における中小企業の受注機会の確保についてお尋ねをいただきました。

 近年の建設投資の減少に伴い、地域で重要な役割を担う中小建設企業が極めて疲弊している状態にありますが、社会資本の維持管理や地域経済の活性化、雇用確保の上で、その役割の維持は重要な課題と認識をしております。

 今般の補正予算においては、インフラの点検、調査や老朽化対策、防災・減災対策などを重点的に実施することとしております。それらの事業の的確な実施のためには、地域の実情に精通している地元企業の活躍が必要と考えております。

 そのためにも、地元企業の受注機会が確保されるよう、入札契約手続においても配慮してまいります。

 また、補正予算の執行に当たって発注ロットを大型化する場合にも、地元中小企業の受注機会の確保に配慮してまいります。

 こうした取り組みにより、補正予算の迅速な執行とあわせて、地域を支える中小建設企業の支援に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 公共事業の執行状況についての御質問をいただきました。

 今回の補正予算につきましては、経済への効果が一日も早くあらわれますよう、速やかに成立をさせていただき、執行されることが一番重要と考えております。

 今回の補正予算における事業を含めた緊急経済対策の中身につきましては、執行状況や事業の効果などについて政府としてはしっかりフォローアップをすることとしており、わかりやすい情報開示に努めてまいりたいと考えております。

 今後の財政健全化に向けた見解についての御質問をいただきました。

 御指摘のとおり、強い経済の再生を図りながら財政の再建を進めることが、極めて重要であろうと考えております。

 大型補正を編成する一方で、平成二十五年度予算は、財政健全化目標を踏まえて、できる限り重点化を行い、四年ぶりに税収が公債金を上回る状況を回復するなど、引き締まった予算としております。

 さらに、社会保障・税一体改革を進め、社会保障の安定財源を確保し、中長期的に持続可能な財政の実現を図ってまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 七十歳から七十四歳までの医療費窓口負担についての御質問をいただきました。

 これに関しましては、社会保障審議会や与党から、世代間公平の観点から、本来の二割負担に戻すべきだという意見をいただく一方、高齢者への多大なる影響から、慎重に検討すべきであるというような御意見もいただいております。

 このような中で、今回の補正予算は、スピード感を持って短期間に決定をする必要があり、この七十歳から七十四歳の医療費窓口負担に関しましては、責任を持って検討すべき課題であると考え、今般、当面の間、一割負担を継続することといたしました。

 今後、高齢者や関係者の方々の御理解を得られるよう、特に配慮を要する低所得者対策、これをあわせて引き続き検討し、早期に結論を得るように努力をしてまいりたいというふうに思います。(拍手)

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副議長(赤松広隆君) 山内康一君。

    〔山内康一君登壇〕

山内康一君 みんなの党の山内康一です。

 みんなの党を代表して質問します。(拍手)

 安倍政権の経済政策の三本柱、大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略のうち、大胆な金融緩和は、みんなの党の主張に近く、ぜひ実行していただきたいと思います。

 まず、日銀総裁人事に関し質問します。

 安倍総理は、我が党渡辺代表の質問に対し、次期日銀総裁として、金融政策に関する私の考え方に理解をいただき、確固たる決意と能力でこの課題に取り組んでいく方とお答えになりました。安倍総理のおっしゃる私の考え方について、より詳しくお聞かせください。

 そして、ぜひとも、財務省の圧力などには屈せず、安倍総理自身の意思を貫き、適切な方を選んでいただくようにお願い申し上げます。

 他方、残りの二本の柱、機動的な財政政策と成長戦略の中身を見ると、公共事業や補助金のばらまき、官民ファンドという名の役所の権益拡大が含まれ、賛同できない部分も多くあります。

 第一に、防災や減災の美名のもとに、不要不急の旧来型の公共事業も紛れ込んだ大盤振る舞いになっている点は、賛同できません。

 公共事業による需要増加策は、一時的な効果しかありません。非効率な公共事業で無駄なインフラをふやせば、後々の維持・更新投資がさらにふえ、将来世代の負担をふやします。建設費で将来世代にツケを回し、維持管理・更新投資でさらに将来世代の負担を重くする、そんな公共事業のばらまきは、もうやめるべきです。

 公共事業に関しては、新規投資は後回しにして、震災復興と維持補修・更新投資を優先するという方向性を明確にすべきではないでしょうか。

 無駄な公共事業を生んできたのは、政治家の利益誘導と役所のお手盛りのBバイC計算です。

 選挙対策のばらまきという批判を避けるために、新規に建設する案件については、予想される費用対効果を第三者機関が検証する仕組みが必要ではないでしょうか。

 第二に、政府による市場への過剰な介入も賛同できません。

 各省庁の官民ファンドと呼ばれる基金に補正予算で多額の予算がついていますが、全体像が見えにくく、不透明な印象を受けます。今回、補正予算では、全省庁で一体何件の官民ファンドが対象となり、総額でどれだけの予算が投入されるのでしょうか。

 今回の補正予算では、長期資金を供給する財政融資と長期リスクマネーを供給する産業投資を行うための八千八十七億円の財政投融資計画の追加が含まれます。

 リスクマネーを供給して企業に投資する場合、失敗して損失が出れば税金の無駄遣いです。成功してリターンがあった場合も、民業圧迫の批判は避けられず、市場をゆがめます。

 市場は失敗することもあり、時には政府の介入も必要ですが、これだけ大規模な財政投融資や官民ファンドへの多額の予算投入は、過剰介入ではないでしょうか。

 官民ファンドの背景には、霞が関の官僚の方が民間の企業家よりもすぐれているという、官尊民卑的な隠れた前提があります。

 エルピーダメモリの経営破綻のような失敗もありました。にもかかわらず、官民ファンドに多額の税金を投入するのはなぜですか。

 麻生政権時代にも、さまざまな基金に予算が投入されました。そのときの基金の中には、余り活用されず、緊急経済対策として効果がなかったと言われているものもあります。

 麻生財務大臣は、麻生政権時の各種基金の実績をどう評価されますか。どのような反省や教訓を得られたのでしょうか。

 官民ファンドへの天下りや現役出向をさせない制限を設けるのでしょうか。それとも、天下りや現役出向を許すのでしょうか。

 また、官民ファンドが失敗したときの責任は誰がとるのでしょうか。責任の所在をどのように明確化するのでしょうか。官民ファンドを監視する仕組みについてお尋ねします。

 今回、補正予算と来年度予算を合わせて、十五カ月予算と呼ばれています。しかし、もう二月です。今後の衆参予算委員会での審議日程を考えれば、補正予算が成立するのは二月下旬になるでしょう。実際には、十五カ月予算というよりも、二月下旬か三月からスタートする、十三カ月予算と呼ぶ方が実態に近いです。

 つまり、わずか一カ月ちょっとしかない二十四年度中に十兆円を使うということです。一カ月で十兆円という乱暴な予算執行をすれば、税金の無駄遣いを生じやすくなり、事業の執行が雑になります。

 こんな窮屈な補正予算を組むぐらいなら、二十五年度本予算に入れた方がよいものも多いでしょう。

 本当は十三カ月予算なのに、十五カ月予算という誤解を招く表現で粉飾ぎみの補正予算を組むのは、財政規律を緩めることになり、邪道ではないでしょうか。二十五年度予算を小さく見せるために、無理な補正予算にはなっていないでしょうか。

 甘利経済再生大臣は、成長戦略の柱の一つを新ターゲティングポリシーとし、昔の通産省のような発想に基づく産業政策を重視されています。

 政府が有望な産業の育成にかかわり、国費で特定の産業や企業を育成するというのは、発展途上国的な発想、あるいは社会主義計画経済的な発想です。

 終戦直後や明治時代ならわかりますが、二十一世紀の日本でこのようなターゲティングポリシーを復活させる理由がわかりません。

 そもそも、官僚が、民間企業を指導監督し、利益を出せるのでしょうか。企業経営が得意な官僚がいたら、役所をやめて民間で起業したらよいと思います。

 企業経営の経験のない官僚の方が民間の経営者よりもよい判断ができるという発想は、傲慢な、官尊民卑の発想です。かつて流行した第三セクターでは、役所の無責任体質と経験不足により、失敗した例が大半でした。

 今回の新ターゲティングポリシーも、同じように、官の肥大化を招き、税金の無駄遣いを生むだけです。時代錯誤の政策はやめるべきではないでしょうか。ターゲティングポリシーではなく、規制改革やTPP参加こそ、成長戦略の柱にすべきです。

 安倍総理には、官僚機構や党内の抵抗勢力と闘い、思い切って規制改革やTPP参加を実現していただきたいと思います。

 安倍政権の予算や経済政策を見ると、自民党らしい、公共事業や補助金のばらまきという、古い利益誘導が復活しています。同時に、官民ファンドや新ターゲティングポリシー、あるいは、消費税増税時に導入される軽減税率といった、新しい利益誘導の道具が出てきています。

 どの品目を軽減税率の対象にするかという線引きは、族議員や役所にとって新たな利権になります。官民ファンド、新ターゲティングポリシー、軽減税率と、まさに利益誘導政治のイノベーションです。

 今回の予算は、古い利益誘導と新しい利益誘導のハイブリッドです。

 新旧の利益誘導は、特定の地域や産業だけが利益を受け、役所の裁量を拡大するという点で、共通しています。国民全体の犠牲のもとに一部の人たちだけが利益を受ける政治では、失われた二十年から脱却できません。利益誘導政治を続ければ、どれだけ増税しても間に合いません。

 被災地の復興や老朽化したインフラの更新を除き、大型の公共事業は抑制すべきです。民間主導の経済成長と不況期の経済的弱者対策には、公共事業や補助金のばらまきよりも、投資減税や法人税減税、給付を中心とした景気対策が有効です。

 公共事業のばらまきは、一時的な効果しか期待できず、地方の活性化につながらないことは、九〇年代の経験から明らかです。

 日ごろ厳しい金庫番の財務省が大盤振る舞いを許したのは、ことし四月から六月の経済成長率を押し上げたいという思惑でしょう。その時期の経済成長率を高くすることが消費税率引き上げの前提となっているから、財務省もばらまき予算を認めたのでしょう。

 しかし、人口減少の日本で、ばらまきは許されません。ばらまきを許容して大きな政府へ突き進めば、借金だけがふえ、不健全な経済構造は手つかずのままです。

 官民ファンドや新ターゲティングポリシーのような官尊民卑的、社会主義的な政策には、とても賛同できません。

 安倍総理は保守主義者だと言われております。

 一般的に、経済における保守主義とは、市場の機能を重視し、政府の役割を最小化する考え方です。国民と企業の自助努力と創意工夫を信頼し、政府が余計な介入をしないことが、経済の保守主義です。国家の介入の多い官僚統制的な経済政策は、むしろ左翼政権のやることです。

 安倍政権の経済政策は、保守主義の王道から外れているのではないでしょうか。総理の御見解を伺います。

 安倍総理が、第一次安倍政権のころのように、規制改革や公務員制度改革といった真っ当な政策にかじを切っていただくことを切に願い、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 山内康一議員にお答えをいたします。

 次期日本銀行総裁に求める金融政策に関する私の考え方についてお尋ねがありました。

 次期日銀総裁に求める金融政策に関する私の考え方とは、デフレ脱却に向け、二%の物価安定目標のもと、その早期実現を目指して大胆な金融緩和を推進することであります。

 公共投資の方向性についてお尋ねがありました。

 公共事業イコール無駄遣いあるいは悪であるという単純なレッテル張りからは卒業して、そして公共事業については、思慮深い議論を進めていかなければならないと考えております。

 今般の補正予算では、いわゆるばらまきではなく、公共事業について、復興・防災対策を初め、トンネル、橋梁といった既存のインフラの老朽化対策や耐震化対策など、国民の生活を守る事業や、成長や地域活性化を促す事業に重点化をいたしました。

 新規に建設する公共事業における第三者機関による検証の仕組みについてお尋ねがありました。

 公共事業については、費用と効果が見えるよう、新規に事業に着手する際には、事業評価を行っております。

 直轄事業の評価に当たっては、学識経験者等から成る第三者機関による審議を行うとともに、その審議過程及び結果の公表を行っており、補助事業についても、第三者機関による審議が行われるよう地方公共団体に要請してまいります。

 官民ファンドへの天下りと現役出向についてのお尋ねがありました。

 国家公務員の再就職に関しては、再就職等監視委員会による監視のもと、国家公務員法に基づく再就職規制を厳格に運用し、天下りを根絶してまいります。

 また、独立行政法人等への現役出向については、大臣の任命権に基づいて行われるものであり、現役の公務員の専門的知識を活用すべく、適切に実施してまいります。

 官民ファンドの責任体制等についてお尋ねがありました。

 各ファンド等の責任において、十分な審査体制及びリスク管理体制のもとで、民間主導で投資案件の目ききを行うとともに、出資後は、出資先企業の経営支援やモニタリングなど、各ファンド等の特徴を生かした収益性確保やリスク管理を図ることとしています。

 また、各ファンド等が投資、支援する企業等に対しては、民間出資、融資も最大限活用されることにより、収益性の確保について一定のガバナンスが働くものと考えられます。

 政府としても、出資の実行や決算などさまざまな機会を捉え、こうした取り組みをしっかりとチェックしてまいります。

 成長戦略についてお尋ねがありました。

 成長戦略の策定に当たっては、山内議員御指摘のように、戦略産業分野を特定するものではなく、幾つかの将来のあるべき社会像を戦略目標として特定しています。例えば、健康に長生きできる社会の構築、クリーンかつ経済的なエネルギーの実現などです。

 その上で、戦略目標実現のために、コア技術への研究開発投資、規制改革、関連投資の促進などの政策資源を一気通貫で投入するためのロードマップを策定してまいります。

 この中でも、とりわけ規制改革は、経済活性化、民需主導の経済成長を実現する重要な手段であると考えており、大胆な改革を推進してまいります。

 安倍政権の経済政策についてのお尋ねがありました。

 私が経済の再生を目指すのは、自助努力により頑張る人がきちんと報われるという、社会の信頼の基盤を守っていくためであります。

 長引くデフレの脱却に向けて、次元を超えた政策パッケージが必要であり、このため、大胆な金融緩和及び大規模な補正予算を取りまとめたところでありますが、こうした財政出動はいつまでも続けることはできません。

 このため、市場経済のもとで、国民や企業の自助努力と創意工夫を通じて民間の投資と消費が持続的に拡大するようにすることが必要であり、今後、こうした観点から、成長戦略を策定、実行してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 官民ファンドに係る補正予算額についての御質問をいただきました。

 官民ファンドが何を指すのかは必ずしも定かではなく、補正予算の対象件数や予算総額については確たることは申し上げられませんが、他方で、補正予算におきましては、市場へのリスクマネー供給の拡大のため、官と民からの出資によるファンド組成への支援を計上いたしておるところです。

 具体的には、一般会計から、耐震・環境性能を有する良質な不動産形成のための官民ファンドの創設三百五十億円、企業再生支援機構からの改組を予定しております地域経済活性化支援機構への出資に三十億円を措置することといたしております。

 加えて、財政投融資特別会計投資勘定から、一般会計からの繰り入れなどを原資として、農林漁業成長産業化支援機構に百億円の出資を行うことといたしております。

 また、これに加えて、民間出資、融資の呼び水効果を期待いたしましたリスクマネーを供給して、一般会計から一千八百億円を、実用化に向けた官民共同研究の推進のための大学への出資等を行うこととともに、財政投融資特別会計投資勘定から五つの機関に対して合計三千九百五十九億円の出資などを行うことといたしております。

 次に、今回の補正予算における財政投融資の追加などについての御質問をいただきました。

 今回の補正予算は、財政投融資の仕組みを活用して、民間では十分行えない長期リスクマネーなどを重点的に供給し、当初計画十七兆六千億円に〇・八兆円を追加いたしております。

 これを呼び水として、日本の豊富な民間資金、多様な人材、すぐれた技術力など、民間の潜在力を最大限引き出すことを意図したものであり、市場への過剰介入という御批判は当たらないと考えております。

 官民ファンドの審査体制についての御質問をいただきました。

 個別の投資・支援案件の決定などに当たりましては、各ファンドなどが、十分な審査体制及びリスク管理体制のもと、民間の目ききや外部の知見を最大限活用することとされております。

 市場へのリスクマネー供給や、それを呼び水とした民間の出資、融資の促進が喫緊の課題でありまして、そのために、こうしたファンドなどの活用は有効な手段だと考えております。

 補正予算についての御質問もありました。

 今回の補正予算につきましては、円高、デフレ不況からの脱却が喫緊の課題となっております中、当面の経済を強力に押し上げ、将来の成長につながる施策を総動員する観点から、思い切った規模といたしております。

 その中身につきましては、公共投資の中でも、道路の老朽化対策など、ニーズが高く、かつ早期に執行が可能な事業、また、電気自動車のインフラ整備など早期の市場拡大につながる施策など、経済再生のために早急に効果を発揮させる必要のある施策も盛り込んであり、粉飾ぎみの補正予算であるとの御指摘は当たらないものと考えております。(拍手)

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副議長(赤松広隆君) 佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、財政演説に対し質問します。(拍手)

 安倍総理は、所信表明で、経済の再生を最大かつ喫緊の課題と位置づけました。それを達成するため、二%の物価上昇目標の実現を日銀に迫り、大企業に対して手厚い財政支援を行い、公共事業を大規模に展開しようとしております。

 アベノミクスなどと持ち上げる議論もありますが、それで本当に暮らしがよくなるのか、国民の中に不安が広がっております。

 具体的にお聞きをいたします。

 第一は、デフレについてであります。

 安倍総理は、デフレからの脱却を掲げていますが、デフレとは何でしょう。政府は、消費者物価が連続して下がることと定義していますが、なぜ物価が下がり続けたのでしょうか。

 最大の要因は、内需の落ち込み、とりわけ、GDPの六割を占める家計消費が落ち込んだことにあります。総理はどのように認識しているでしょうか。

 なぜそうなったのか。

 一つは、賃金が大幅に低下したからです。この十年間で、雇用者所得は二十二兆円も減りました。

 政府が労働法制の規制緩和で非正規雇用をふやしたこと、多国籍企業、大企業の海外進出で産業の空洞化をもたらしたことが、全体として、失業、雇用不安、低賃金を広げたのであります。

 他方で、資本金十億円以上の大企業には、二百六十兆円もの内部留保がため込まれました。このゆがみこそ、正すべきではありませんか。

 それだけではありません。社会保障の連続改悪が国民の所得を奪いました。小泉、安倍内閣の七年間で、国民負担を十三兆円もふやしたのであります。総理にその認識はありますか。

 その上、昨年の民自公三党合意による税・社会保障一体改革によって、今後、消費税の大増税、医療、年金、介護などで、合わせて二十兆円もの国民負担をふやそうとしているのであります。

 国家公務員給与の大幅引き下げが、地方公務員ばかりか民間企業の賃下げのてことなり、さらに生活保護までカットしようとしています。

 こうなれば、可処分所得を落ち込ませ、デフレ不況を一層加速させることになるのは明らかではありませんか。

 総理は、このデフレをつくったみずからの責任を自覚し、これまでの政策を根本的に改めるべきであります。答弁を求めます。

 第二は、インフレターゲットについてです。

 安倍総理は、経済財政諮問会議で、二%という目標に向けて大胆な金融緩和を日銀は責任を持ってやってくださいと強い調子で求め、諮問会議で毎回チェックするなどと言っているようでありますが、デフレ脱却の責任を日銀に押しつけ、インフレをあおるのは、本末転倒ではありませんか。

 インフレーションとは、通貨価値の下落に伴う名目的物価上昇であります。国民の所得を奪ったままでインフレが進めば、どうなるでしょうか。

 日銀の生活意識に関するアンケート調査によると、八割の国民が、物価が上がることに否定的であります。雇用や賃金の改善なしに物価だけが上がることに不安を覚えるからであります。総理は、この声をどう受けとめますか。

 インフレターゲットはどの国でもやっていると言いますが、全く違います。他の国では、激しいインフレを抑えるために物価安定目標を定めたことはあっても、デフレ脱却のためにインフレターゲットを掲げた国は一つもないのではありませんか。財務大臣の答弁を求めます。

 第三は、財政出動との関係です。

 安倍総理は、財源がないなら輪転機を回して日銀券を印刷すればよいと発言しましたが、とんでもないことであります。

 公共事業の拡大で増発した大量の建設国債を、今後、日銀に直接引き受けさせるつもりでしょうか。

 歴史を振り返れば、戦争中、政府が日銀を支配下に置いて、軍備調達の資金を無制限に供給させた深刻な前例があります。その結果、激しいインフレを引き起こし、国民生活をどん底に突き落としました。その轍を踏んではなりません。

 安倍内閣は、補正予算と来年度予算を合わせて十五カ月予算と位置づけており、補正予算での国債の追加発行は五・二兆円に上ります。年度途中における国債の追加発行は三年ぶりであります。

 今年度の新規国債発行額は、実に五十兆円を上回ることになります。その規模は、大企業向けの成長力強化策や大型公共事業によって膨らんでおります。

 補正予算に自衛隊の正面装備として六百五億円を盛り込んだことも、異様であります。

 その一方で、来年度予算では、財政規律を重視するという口実で、社会保障の一層の削減を進めようとしているのではありませんか。

 誰のための、何のための十五カ月予算なのでしょうか。

 デフレからの脱却というなら、庶民の懐を暖める政策に転換しなければなりません。家計消費がふえれば、内需が拡大し、デフレ克服への道も開かれるのであります。

 今必要なのは、消費税増税の中止など、国民の所得を奪うあらゆる政策を直ちに取りやめること、財界、大企業の身勝手なリストラ、賃下げを許さず、内部留保を労働者、下請企業に還元し、不当なため込みを許さない政治を実現することであります。

 日本共産党は、そのために全力を挙げることを表明し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 佐々木憲昭議員の質問にお答えいたします。

 デフレの定義とその要因についてお尋ねがございました。

 デフレとは、持続的な物価下落と定義しております。

 我が国経済は、長期にわたり、需要が弱い中で、企業などによる、日本経済の将来に対する成長期待の低下やデフレ予想の固定化もあって、デフレが継続してきたと考えております。

 社会保障・税一体改革等の改革とデフレについてお尋ねがありました。

 社会保障・税一体改革は、少子高齢化が進展する中で、給付と負担のバランスを図ろうとするものであり、持続可能な社会保障制度の構築のために必要な改革であります。

 国家公務員の給与削減については、我が国の厳しい財政状況及び東日本大震災に対処するものであり、また、地方公務員の給与削減により、防災・減災事業や地域経済の活性化に対応することとしております。

 今回の生活扶助基準の見直しについては、生活保護を受給されていない方との均衡を考慮しつつ、社会保障審議会における検証結果や物価の変動を勘案し、適正化を図ることとしたものであります。

 これらの必要な施策を進めるとともに、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢で、長引くデフレから脱却して経済を再生させ、雇用や所得の拡大につなげることを目指してまいります。

 デフレ脱却の政策についてお尋ねがありました。

 これまでの延長線上にある対応では、デフレから抜け出すことはできないと考えております。このため、先ほど申し上げたとおり、金融政策、財政政策、成長戦略の三本の矢で、経済を再生させ、雇用や所得の拡大につなげることを目指してまいります。

 特に、金融政策については、共同声明にあるように、日本銀行が、みずから設定した二%の物価安定目標について、責任を持ってできるだけ早期に実現することを期待しております。

 デフレ脱却の責任についてお尋ねがありました。

 長引くデフレからの脱却に向け、大胆な金融政策が必要であると考えており、日本銀行においては、共同声明にあるように、二%の物価安定目標の実現を目指して、責任を持って大胆な金融緩和を推進することを期待しております。

 国民所得の増加を伴わないインフレ、物価上昇に対する国民の御不安についてお尋ねがありました。

 日本銀行による大胆な金融緩和に加えて、政府としても、機動的なマクロ経済政策運営を行うとともに、競争力、成長力の強化に向けた成長戦略を実行することとしております。

 また、企業の収益力向上の成果が適切に労働者にも分配されることが重要であり、このため、平成二十五年度税制改正において、企業による給与等支給の増加を促進する税制措置を創設したところであります。

 こうした取り組みによって、雇用や所得の拡大を伴う景気回復を目指してまいります。

 建設国債の日本銀行による直接引き受けについてのお尋ねがありました。

 日本銀行による国債の直接引き受けについては、財政規律が失われるものであり、財政法で禁止されており、そうしたことを求めることは考えておりません。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) インフレターゲットについての御質問を頂戴しました。

 御指摘のとおり、諸外国において、デフレからの脱却のためにインフレターゲットを設定した、もしくは掲げた例を承知しておりません。同時に、デフレは、戦後六十七年間、一回もやった経験がどの国もありませんので、その点は、ある程度やむを得ぬところだと思っております。

 ただし、インフレターゲット自体は、近年、諸外国でも広く用いられている政策手法であります。

 日銀が、二%の物価安定目標を設定し、その早期実現を目指すことを明確にコミットするということは、これは、固定化したデフレ予想というものを払拭し、日本経済がデフレから脱却する上で有意義な方法であろうと高く評価をいたしておるところです。

 補正予算と来年度予算についての御質問をいただきました。

 今回の補正予算では、公共投資の中でも、道路の老朽化対策など、ニーズが高く、早急に執行可能な工事に重点を置き、中小企業、小規模事業者への資金繰り支援などに取り組んでおるところであり、大企業向けの施策や大型公共事業によって膨らんでいるとの御指摘は当たらないと考えております。

 また、自衛隊につきましては、防災、減災や国民生活の安心の観点から、災害対処能力の向上のための経費を計上していると考えております。

 来年度予算では、生活保護の適正化などを行っておりますが、社会保障関係費全体では増加をいたしており、社会保障削減との御指摘は当たらないと考えております。

 また、いわゆる十五カ月予算の考え方で一体的に編成をした補正予算と来年度予算は、日本経済と国民生活のために極めて重要なものと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 畑浩治君。

    〔畑浩治君登壇〕

畑浩治君 生活の党の畑浩治でございます。

 本日は、生活の党を代表いたしまして、財政演説に対して質問をいたします。(拍手)

 日銀との共同声明による物価上昇率目標の導入など、金融緩和の動きによるインフレ期待により、実体経済回復の前に、既に、円安により配合飼料価格や燃料価格が上がるなど、物価上昇があらわれています。

 個人所得の上昇がなければデフレ脱却にはならず、所得が上がらない中で物価だけが上がる最悪の事態も懸念するわけでございます。そして、地方の中小企業、農林水産業者、生活者といった厳しい立場にある人へのしわ寄せが懸念されます。

 このままでは、金融緩和を優先する余り、円安の投機を生み、生活者を犠牲にしてその富を奪うことになりかねず、ゆゆしき現状であります。いわゆるアベノミクスがアベノリスクになりかねません。

 私は、順序としては、まずは、財政政策によって有効需要を喚起し、金融がフォローしていく、こういう順序で政策を行うべきだと考えます。

 まず、この政策遂行の手順と、今申し上げた個人所得の向上対策、そして中小企業や農林水産業者に対する対策をどのように考えているか、伺います。

 そして、今回の経済対策の公共事業の重点であります、老朽化したインフラ整備を含む社会資本整備については、短期間の効果を狙った場当たり的なものではなく、中長期的にわたり、本予算も含め、腰を据えて取り組むべき課題であります。

 これまで、公共事業費については、短期間に無理に積み増しをして、その後に、その反動で急激に減らすことの繰り返しがあったと思います。このことが、公共事業の経済効果に対する不信を買うことになってしまったと私は思っております。

 そもそも、この分野は、中長期的観点から、持続可能で、国土政策的に適切な公共投資の水準を考えて行うべきものであって、この水準をどの程度とお考えか、伺いたいと思います。

 そして、経済対策は、シロアリやハゲタカに餌を与えるものになってはなりません。財政資金が的確に使われるようなチェックシステムが必要であります。

 公共事業については、その必要性にもかかわらず、自民党政権時代の不透明なやり方のために、公共事業そのものが悪と見られかねないことになっている。このことは、不幸なことだと私自身は思っております。

 ただし、費用便益比、いわゆるBバイCによる一律の基準で、地方が真に必要としているインフラ整備が実現できなくなるようなことは避けなければなりません。

 では、必要なチェックシステムとは何なのか。

 これは、採択基準の一律化ではなく、手続の明確化、透明化によるべきだと考えます。

 すなわち、防災効果あるいは地域経済振興効果など、投資の多様な効果を踏まえつつ、真に必要な事業を選択するための透明で厳格な手続のルールをつくることが合理的であります。

 そのために、事業実施基本法制の整備も含めて行うべきだと思います。また、その際、評価、分析と責任の所在のあり方を明確化すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 予算については、地方における使途の自由度の高さ、これが非常に重要であります。しかし、現状は、補助金はもちろんですが、交付金でさえも、手続が煩雑で、使途が限定されているという声が圧倒的であります。復興交付金でさえ事前調整がなされているという運用の実態があるほどであります。

 被災地の復興が遅いと言われる大きな原因の一つは、被災地の議員から申し上げますと、復興の進捗に応じて各段階でその都度柔軟に使える財政制度が十分ではないこと、制度間の縦割りによる財政支出の違いによって、住民調整が困難であることにあります。

 また、地域に必要な経済対策は、耐震改修等の政府が進めようとしているメニューだけではありません。例えば、ある自治体からは、早期執行が可能なものであるが、廃校の解体撤去をしたい、しかし、そのような費用に使えるものはないという声も聞きました。

 地域の実情と必要性に応じた使い方ができる予算をつくることこそが、最大の経済対策だと私は思います。

 そのような観点から考えますと、平成二十五年度の予算案で、地域自主戦略交付金を廃止して、ひもつき補助金が復活することは、地方にとっては後退と言わざるを得ません。

 ひもつき補助金は、陳情する自治体との間に上下関係が生まれ、族議員の関与も生まれました。一括交付金は、そのような余地をできるだけ減らして、地方が自由に使えるような交付金を目指したものであります。復興交付金も、まだまだ不十分とはいえ、その延長線上にあります。

 この改革が、多くの不備はあったにせよ、地方がみずから重点に据える事業を進めやすくしたのは事実です。私は、これが後退し、箇所づけがよみがえり、族議員がはびこる古い自民党への先祖返りとなることを危惧いたします。

 今後、地方が目指す地域づくりを自主的に進め、安定した財源につながる地方財政制度の必要性について、どのように認識して、その改革を進めていこうとお考えか、伺います。

 最後になりますが、予算がつけられれば、復興はそれで加速するというものではありません。この視点が足りないと思います。

 平成二十三年度の決算では、復興予算十四・九兆円のうち、使われたのは、全体の六割の約九兆円にとどまりました。

 それは、人材や資材の問題もありますけれども、実は、規制の問題が大きいのです。

 まちづくり等の復興整備事業の許認可等の手続の一元化は図られたのですが、中身です。保安林解除、農地転用、埋蔵文化財調査などの基準自体は、ほぼ平時と同じなのです。

 また、まちづくりの加速のためには、所有者不明土地等に関する特別措置や土地収用の迅速化等といった、平時とは異なる規制のあり方が必要であります。

 今後、復興の加速といった観点からは、単なる手続や窓口のワンストップを超えた、内容面の大胆な改革が必要と考えますが、いかがでしょうか。

 経済対策は、しっかりと国民の生活の向上に結びつくものであることが必要です。一部の大企業やお金持ちの人たちだけのものであってはいけません。

 私たちは、中小企業や庶民の生活を守る党として、この予算が本当にそのようなものであるか、しっかりとチェックしてまいることを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 畑浩治議員の質問にお答えをいたします。

 政策遂行の手順と個人所得向上、中小企業等に対する対策についてお尋ねがありました。

 大胆な金融政策、機動的な財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略という三本の矢を一体として実行し、日本経済の再生を図ってまいります。

 この中で、御指摘の点については、緊急経済対策において、企業による雇用、労働分配を拡大するための税制措置、中小企業や小規模事業者への支援、攻めの農林水産業を推進するための施策等を講じることとしております。

 こうした取り組みにより、個人所得が向上し、中小企業や農林漁業者を取り巻く事業環境も改善していくと期待をしております。

 適切な公共投資の水準についてお尋ねがございました。

 社会資本整備は、その整備及び効果が長期間にわたるものであることから、中長期的な観点から進めることが極めて重要であります。

 御指摘のような公共投資の額の水準は、現時点でお示しすることは困難でありますが、今後五年間のあり方を示した社会資本整備重点計画において、整備により達成される成果を目標水準として示しており、その達成に向けた取り組みを進めてまいります。

 公共事業の採択における手続についてお尋ねがありました。

 公共事業については、費用と効果が見えるよう、行政機関が行う政策の評価に関する法律に基づき、新規に事業に着手する際には事業評価を行っております。

 その際、直轄事業については、地域経済への効果等も含めた総合的な評価を行い、第三者機関による審議を経て、評価結果及び責任者を公表する等、透明で厳格な手続を踏んでおります。

 補助事業についても、直轄事業と同様に、適切な手続が行われるよう、地方公共団体に要請してまいります。

 地方財政制度についてお尋ねがありました。

 地方の元気なくして国の元気はありません。地方が、みずからの発想で、特色を持った地域づくりを推進し、安定的に財政運営を行うことができるよう、必要な一般財源総額を適切に確保する必要があります。

 地域自主戦略交付金については、地方から、窓口の一元化や手続の簡素化、総額の確保などの課題が指摘されていたことから、本交付金を廃止し、各省庁の交付金等に移行しました。

 今後とも、地方税について、税源の偏在性が少なく、税収が安定的な地方税体系を構築するとともに、地方交付税については、財源調整機能と財源保障機能が適切に発揮されるよう取り組んでまいります。

 復興の加速といった観点から、土地に関する対応についてお尋ねがありました。

 農地転用、保安林解除、埋蔵文化財調査については、津波被災地域での規制の大幅な緩和、書類の簡素化等を行い、手続の迅速化に取り組んでおります。

 所有者不明の土地に関する対応については、職員が不足している自治体への支援強化のほか、土地収用手続について、事業を緊急に施行していく必要があることを踏まえ、個別事業に即して、審査の簡素化や自治体へのきめ細かなノウハウの提供など、柔軟な対応を進めてまいります。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣     新藤 義孝君

       法務大臣     谷垣 禎一君

       外務大臣     岸田 文雄君

       文部科学大臣   下村 博文君

       厚生労働大臣   田村 憲久君

       農林水産大臣   林  芳正君

       経済産業大臣   茂木 敏充君

       国土交通大臣   太田 昭宏君

       環境大臣     石原 伸晃君

       防衛大臣     小野寺五典君

       国務大臣     甘利  明君

       国務大臣     稲田 朋美君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     根本  匠君

       国務大臣     古屋 圭司君

       国務大臣     森 まさこ君

       国務大臣     山本 一太君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

       財務副大臣    山口 俊一君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  山本 庸幸君


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