衆議院

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第25号 平成25年5月17日(金曜日)

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平成二十五年五月十七日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十八号

  平成二十五年五月十七日

    午後一時開議

 第一 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案(内閣提出)

 株式会社海外需要開拓支援機構法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) まず、日程第一として、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長森山裕君。

    ―――――――――――――

 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔森山裕君登壇〕

森山裕君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、我が国森林による二酸化炭素の吸収作用の保全及び強化の重要性に鑑み、森林の間伐等に要する経費に対する交付金の交付、地方債の起債の特例等の支援措置を平成三十二年度まで延長するとともに、成長にすぐれた種苗の母樹の増殖で平成三十二年度までの間に行われるものに関する計画を作成し、都道府県知事による認定を受けた者に対し、林業・木材産業改善資金の償還期間の延長等の支援措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る五月十三日本委員会に付託され、翌十四日林農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、昨十六日質疑を行いました。質疑終局後、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 採決をいたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 全会一致。異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

越智隆雄君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(伊吹文明君) 越智隆雄君の動議に御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 異議なしと認めます。よって、日程を追加いたしました。

    ―――――――――――――

 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長富田茂之君。

    ―――――――――――――

 消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔富田茂之君登壇〕

富田茂之君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本法律案は、平成二十六年四月一日及び平成二十七年十月一日における消費税率の引き上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保するための措置を講じようとするものであり、その主な内容は、

 特定の事業者による消費税の転嫁拒否等の行為を迅速かつ効果的に是正するための制度を創設すること、

 消費税の転嫁を阻害する表示を是正するための制度を創設すること、

 一定の条件のもとで、消費税法の総額表示義務を解除すること、

 一定の要件を満たす消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為について、独占禁止法の適用を除外すること

などであります。

 本案は、去る四月十二日本会議において趣旨の説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、四月十九日に稲田国務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入りました。四月二十四日及び二十六日には参考人から意見を聴取し、昨日五月十六日には、内閣委員会、財務金融委員会及び消費者問題に関する特別委員会との連合審査会を行い、さらに、本日、安倍内閣総理大臣に対する質疑を行うなど、慎重に審査を重ね、質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三会派共同提案により、事業者が禁止されることとなる消費税の転嫁を阻害する表示について、消費税との関連を明示しているものに限られること等その範囲の明確化を図ることを内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、討論、採決を行った結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 討論の通告があります。順次これを許します。木下智彦君。

    〔木下智彦君登壇〕

木下智彦君 日本維新の会、木下智彦です。

 私は、日本維新の会を代表して、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案及びその修正案に反対の立場で討論を行います。(拍手)

 まず、我々日本維新の会は、公正な競争に基づいた経済活動が経済自体の健全な発展につながるとの理念に基づいており、ビジネスシーンにおけるアイデアあふれる商行為までも否定する可能性の高い本法案に反対いたします。

 本法案は、経済産業委員会において合計して約十八時間の審議がされましたが、審議を重ねれば重ねるほど、法案自体の欠陥が浮き彫りになってきました。

 本法案八条の「消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置」の具体例についての質疑において、消費者庁審議官の答弁内容が質疑の経過とともに変化しました。

 これに対して、五月八日に政府公式見解が示されましたが、その内容に関する質疑での担当大臣の答弁が著しく曖昧でありました。

 政府の公式見解は、「「消費税は転嫁しません」、「消費税率上昇分値引きします」、「消費税相当分、次回の購入に利用できるポイントを付与します」等の表示は禁止」「「消費税」といった文言を含まない表現については、宣伝や広告の表示全体から消費税を意味することが客観的に明らかな場合でなければ、禁止される表示には該当しない。 したがって、消費税との関連性がはっきりしない「春の生活応援セール」や、たまたま消費税率の引上げ幅と一致するだけの「三%値下げ」といった表示が行われているだけで、このような宣伝等が禁止されることにはならない」としています。

 この公式見解を見ても、本法案の実効性がないことは明らかです。

 政府は、ビジネスの現場で行われる厳しい価格交渉の実態をきちんと視察、認識されているのでしょうか。余りにも現場の実態とかけ離れた政府の公式見解を見れば、本法案の実効性のなさがはっきりとしたと言わざるを得ません。

 本法案成立後作成される予定になっているガイドラインに関しても、基本的な考え方が整理されていないことが質疑の中で明らかになりました。各委員がさまざまな事例を想定してシミュレーションをしながら質問をしましたが、政府の答弁は曖昧で、一貫性がありませんでした。

 今後ガイドラインの作成が始まると思いますが、ガイドラインの骨格となる基準が曖昧なままでは、とても実効性のあるガイドラインが作成されるとは思えません。市場の実態に即さないガイドラインが運用されれば、市場は混乱し、公正な経済活動自体も阻害され、萎縮する結果となるのではないかと非常に危惧するものであります。

 また、有識者からも、本法案に関する問題点が数多く指摘されております。

 参考人質疑においては、与党側要求の参考人ですら、法案に賛成の態度は示しつつも、その実効性を疑問視する発言が多くありました。

 与党側要求の政府参考人、舟田正之立教大学名誉教授は、こう指摘しております。

 例えば、小売業者が現在税込み百円で売っている商品については、その五%が消費税分であるが、これが八%に引き上げられたとしても、小売値百円を維持するために、納入業者に仕入れ値をその分だけ下げてくれと要求するおそれがある。これでは消費税が本来の仕組みとして転嫁がなされないことになり、本法案三条一号の、消費税の転嫁を拒むことに該当する行為として禁止されるべきである。また、本体について価格交渉し自由に決めることは、市場経済の本質であり、原則として自由である。しかし、このような行為は、従来の価格を据え置くために転嫁を拒否することを意味するから、違法となる。

 以上のような舟田教授の指摘に対しても政府の見解は曖昧で、本法案のたてつけ自体が矛盾に満ちたものだと指摘せざるを得ません。

 また、中小企業、小規模事業者保護の観点から、大規模小売店などへの商品納入に関する価格交渉を行うに当たり、消費税相当分の値下げを強いるような行為を禁止していますが、この納入業者として大規模の納入業者は対象となっておらず、本法案だけでは、大規模小売店が規制を嫌い、大規模の納入業者との取引を優先する結果が考えられ、むしろ、中小企業、小規模事業者が取引の機会を失ってしまう可能性があるのです。

 一方、納入業者側が、消費税分の値下げをするかわりに納入数量を従来より割り増ししてもらうことなどを大規模小売店に提案した場合、商取引上の契約内容では、大規模小売店から要求したものと同一の結果になります。消費税の価格転嫁が適正になされていると明らかに判断できないにもかかわらず、本法案では、納入業者側を取り締まることは想定されていないという問題点もあります。

 さらに、極めて専門性の高い転嫁拒否等の調査に係る業務を行うため新規配置、増員される予定の転嫁対策調査官の大半は三年余りの有期雇用ですが、この人員が問題なく業務を遂行できるのか、極めて疑問が残ります。

 人員は公募で、しかも有期雇用なので、専門性の高い人材が集まるのか不安視されています。また、契約期間が満了した後の就職先の紹介などは一切行わないとのことです。たとえ専門性の高い人材が確保できたとしても、先ほどから指摘している曖昧なガイドラインでは、実効性のある調査が行えるとは到底思えません。また、今回政府が想定しているその転嫁対策調査官の人数は約六百名ですが、その数が適正かどうか、きちんと検討がなされているとも思えません。

 これらの問題点は経済産業委員会での審議でも多く指摘されていますが、本来であれば過去の消費税五%引き上げ時の状況を踏まえて十分に精査しなければならないことが、されていない結果なのです。

 消費税を負担することは、最終需要家となる国民の義務です。また、事業者からきちんと徴税すれば問題はないのです。それらの考え方はそもそも本法案で規定するようなものではなく、消費税の基本的な考え方として明確に国民に示してこなかったこと自体が問題なのです。

 著しく曖昧かつ未整備で問題点解決のめどの立たない本法案には到底賛成できるはずもなく、その内容自体も、安倍総理の掲げる三本目の矢である成長戦略とは全く正反対であります。

 これら多くの問題点からも、本原案及びその修正案に強く反対の意を示し、私の討論を終わります。(拍手)

議長(伊吹文明君) 大島敦君。

    〔大島敦君登壇〕

大島敦君 民主党・無所属クラブ、大島敦です。

 民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案及びその修正案に賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 現在、厳しい財政制約のもとで、少子高齢化を迎える我が国の社会保障を一層充実させるとともに、重点化を進めるため、消費税率の引き上げを含む新たな御負担を国民の皆様にお願いしています。

 その際、全ての事業者の皆様にも、税率引き上げ分の円滑な価格転嫁のため、システムの改修や値札の張りかえなど、さまざまな御負担をお願いすることとなります。

 政府として、その影響を最小限に抑えるとともに、不当な取引行為を強制されることのないよう、徹底した取引の監視と取り締まりが求められます。

 民主党としても、転嫁対策・価格表示のあり方検討ワーキングチームを設け、二十一に及ぶ関係団体のヒアリングを行うなど、現場に即した議論を行い、昨年五月に、その対策のあり方について考え方をまとめるとともに、政府に、消費税の円滑かつ適正な転嫁等に関する対策推進本部を設置し、昨年十月には、対応に向けた基本方針を取りまとめました。

 このような経緯を踏まえて立法化された本法案については、転嫁カルテルの容認、国民に対する広報の徹底、調査、監視を行うための体制整備など、その趣旨について、意見を異にするものではありません。

 政府においては、本法案成立後、その実効性を確保し、買いたたきや不当な減額要求がなされることのないよう、徹底した体制の確保に努めるよう求めます。

 他方で、民主党政権では検討されていなかった、いわゆる消費税還元セールの禁止を規定した本法案八条の修正に至る経緯について、一言申し添えます。

 そもそも、消費者から預かり、納付する性質の消費税について、それを還元するかのように表示してセールを実施することは、納入業者への不当な減額要求にもつながり、何らかの規制を行う一定の根拠はあります。

 本来、多種多様な販売戦略に対応するためには、価格競争を日々戦っておられる事業者の皆様の御意見を十分お聞きした上で、ガイドラインなどの形式で、ケースに応じた注意事項を事前にお示しすべきでありました。

 しかし、規制範囲がわかりにくい法文だったこともあり、実際に販売に携わっておられる皆様から多くの御指摘を受け、また、委員会審議を通じても十分その範囲が明確にならなかったことは残念です。

 このような混乱が続けば、税の信頼性を損ない、また、事業者の皆様の引き上げに向けた準備にも支障が生じることが懸念されました。そのため私ども民主党が提案いたしました、規制範囲の明確化に向けた修正案について御理解を賜りましたことは、国会がその役割を果たし得たものと考えます。

 政府におかれては、国民や事業者に対し、徹底した広報活動を行うとともに、中小・小規模事業者の皆様の御意見を十分にお聞きし、引き上げに当たっては、不公正な取引が横行することのないよう、法律に規定する規制趣旨の徹底に向け、現場に即した機動的な対応が行われることを前提に、私の討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(伊吹文明君) 次に、三谷英弘君。

    〔三谷英弘君登壇〕

三谷英弘君 みんなの党の三谷英弘です。

 消費税の円滑転嫁法案及び同修正案に対して、みんなの党を代表して、反対の立場で討論を行います。(拍手)

 経済産業委員会内を初めとする一連の質疑において明らかになったことは、この法律には、ほとんど効果が認められないということでした。

 法案の柱の一つは、買いたたきの禁止。

 この法律では、消費税増税分をメーカーや卸に押しつけてはならないとされているものの、消費税の分を負担してほしいからその分仕入れ値を安くしてほしいと直接的に求めない限り、基本的に適用はありません。

 また、法案の二つ目の柱は、広告規制。

 審議の過程で政府内に混乱が生じ、統一的な見解がまとめられるに至りましたが、その内容は、消費税という文言を含まなければ基本的に規制なし。そもそも、価格の据え置き自体は自由に行えることも相まって、ほぼ、ざる法になってしまっています。

 本法案は、自由な経済活動を妨げるもので、ある意味、統制経済を志向するとも言い得るものですが、これだけ意味のないことを行うために、何と、六百人もの体制を組織し、年間三十億、四十億円を投じることになるわけで、これを壮大な無駄と言わずして何と言うのでしょうか。実際、この法律によってどのくらいの効果が得られるか、政府としても把握できておりません。

 その上、この法案によって、一時的に外税方式が復活します。たとえ一つの商品についての価格表示が税込みか否かの区別が明瞭であっても、二つの商品の値段を比べる場合に、一方が内税で一方が外税となれば、値段の比較が大変困難になり、消費者に混乱を来すことは明らかです。

 そもそも、この法律の目的は何かといえば、しっかりと消費税の転嫁を確保して、不当に弱い立場の事業者が消費税の増税分を押しつけられるような事態を避けるため、つまりは、中小企業対策です。

 しかしながら、先ほど述べたように、その効果は極めて薄いわけですから、これだけの人員を割いて、これだけの税金を投入して、かつこれだけの混乱を生じさせるのは、結局、参議院選挙に向けて中小企業対策を行いましたというアリバイづくりを行うものにしかすぎません。今の日本には、そんな選挙対策のために費やす無駄な予算はないはずです。

 労働者の給与が十分に上がる前に消費税の増税をし、それをしっかりと価格へと転嫁すれば、当然ですが、確実に物価が上がり、消費が落ち込んでしまう。このことによって、中小企業が苦しむことは明らかです。

 本当に中小企業の利益を考えるということであれば、消費を落ち込ませないことを最優先にするべきであって、消費税増税に基づいた値上げなど、させない方がよいに決まっています。

 先日の党首討論の際にも、みんなの党の渡辺喜美代表が述べておりました。安倍政権には長期政権の予感すらする、ただ、政策でかじ取りの過ちを犯せば、短命で終わってしまうと。

 その一つが、この消費税の増税の問題です。

 今の日本では、アベノミクスへの期待から、好景気が訪れています。民主党の議員の先生方がいる前で心苦しいですけれども、政権交代が起きたことによって日本の将来に明るい兆しを感じている、そういう有権者も少なくありません。そして、この好景気が続けば、税収がふえ、消費税の増税自体を行う必要性すらなくなるわけです。

 そして、この景気を続けることができるか否かは、来年四月に消費税増税を行うか否かの判断にまさにかかっています。

 だからこそ、お訴えいたします。

 議場の国会議員の先生方のみならず、傍聴席にいらっしゃる有権者の皆様、インターネット中継をごらんになっている有権者の皆様、そして、ここ議場にいらっしゃる国会議員の向こうにいらっしゃる全ての有権者の皆様に、改めて考えていただきたい。

 自由経済を犠牲にしてまで中小企業へのアリバイづくりのための小手先の政策を進めるのにきゅうきゅうとなるべきではありません。せっかく訪れた好景気を犠牲にして消費税の増税そのものをしてしまってよいのかということを、改めて立ちどまって検討していただくことをお願いいたしまして、私の反対討論とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(伊吹文明君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、いわゆる消費税転嫁法案に対する反対討論を行います。(拍手)

 転嫁できない消費税に四半世紀にわたり苦しめられ続けてきた、中小零細業者の悲痛な叫びが聞こえますか。

 二十四年たった今なお、零細な事業者ほど消費税の転嫁ができず、身銭を切った納税を迫られています。転嫁できていなくても赤字事業者であったとしても納税を迫る消費税は、まさに、営業破壊税ともいうべき、弱い者いじめの税金だということを最初に指摘し、以下、法案への反対理由を述べます。

 反対理由の第一は、本法案が、消費税の二段階の大増税を前提としているからです。

 いわゆるアベノミクスのもと、急激な円安と外資の流入によって、輸出大企業を中心に株価と収益が急速に回復しています。しかし、労働者の賃金や下請単価は上がらず、国内設備投資は連続してマイナスが続いています。これらは、日本経済の構造が、自動車産業を初め、海外に生産拠点を張りめぐらした多国籍企業を中心としたものに変化したことを反映したものであり、二〇〇二年から二〇〇七年まで続いた、雇用拡大なき景気回復と似た状態です。仮に、こうした経済情勢のもとで消費税の大増税を強行すれば、雇用の七割を支える中小零細業者の営業は破壊されます。貧困と格差を拡大し、内需を一層冷え込ませることは明白であります。

 反対理由の第二は、消費税の転嫁を阻害する最大の要因である、大企業と中小企業の圧倒的な力の差を背景とした下請いじめ構造を何ら改善するものではないからです。

 本法案により是正されるのは、消費税分の価格への転嫁を拒否したという、形式的、表面的な事例にすぎません。

 しかし、実際の事業者間取引では、消費税分も含めたコストダウン要請が、重層的な下請構造の下位に行くほど、苛烈に押しつけられているのです。

 経済産業委員会の参考人質疑でも、不当な買いたたきなのか自由な価格交渉なのかを判断するのは非常に困難だとの指摘がありました。独禁法により優越的地位の濫用は禁止されていますが、これまでに買いたたきを理由とした摘発例はわずか一件。下請法でも一件にすぎません。下請いじめ構造そのものにメスを入れることなしには、横行する買いたたきに対し実効ある措置がとれないばかりか、かえって下請いじめを潜在化、巧妙化させることにもなりかねません。

 反対理由の第三は、下請いじめ構造の是正がないままで、消費税還元セール等の宣伝、広告を禁止するという、筋違いの規制を行っているからです。

 景品表示法のガイドラインにより、消費税分値引き等の宣伝は既に禁止をされ、これまでも公正取引委員会が改善指導を行ってきたではありませんか。

 ところが、消費者担当大臣は、私の質問に対し、現行制度の執行状況について何の検証も行っていないことを認めながら、反省もなく、開き直りました。さらに、規制され得る宣伝の文言について、担当審議官が答弁内容を変更した問題でも、わかりやすく言い直しただけだと、言い逃れを繰り返すばかりです。全くもって無責任な態度だと言わざるを得ません。

 最後に、中小企業の営業も国民生活も底なしの泥沼に突き落とす消費税の大増税はきっぱり中止することを求め、反対討論を終わります。(拍手)

議長(伊吹文明君) 村上史好君。

    〔村上史好君登壇〕

村上史好君 私は、生活の党を代表して、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案並びに三党提出の修正案に反対の立場から討論いたします。(拍手)

 我が党は、前提となる消費税増税に終始一貫反対の立場です。当然、本法案及び修正案についても反対をいたします。

 現在、アベノミクスは、気分先行で株価上昇が進み、ムードは盛り上がっておりますけれども、第三の矢と言われる成長戦略は、まだ出ておりません。

 当然のことながら、デフレ不況からの脱却も未達成であれば、肝心の国民所得、賃金の上昇もないまま、円安による生活必需品の物価高が生活を圧迫しているのが実態であり、国民に、本当に雇用が安定して賃金が上昇するのだろうか、何よりも社会保障改革は一体どうなったのかと、疑心と不安が渦巻いています。

 安倍総理は、ことしの四―六期のさまざまな経済指標を得て消費税増税を決めると言われています。どの指標を見ようとされているのでしょうか。GDP、個人消費、物価、金利、株価や為替などなどありますけれども、やはり大事なのは、先行する数字ではなく、国民生活の実態が、特に、賃金が上がり可処分所得がふえるということにならなければ、消費税増税のタイミングではないと思います。富の分配が確実に行われる実態があらわれてこそ初めて、増税の議論が成り立つのではないでしょうか。

 同時に、本法案の主役である中小零細企業は、我が国の企業の九九・七%を占め、雇用の約七割を支える、極めて重要な存在です。この中小零細企業にとっても、消費税増税は死活問題に直結します。増税のタイミングは、国民生活と同様に、経営の好転や利益の増加が実際に起こるかどうかが問題であります。

 心にゆとりがない、経営にゆとりがない。しわ寄せやいじめが起こります。だから、心や経営が明るくなることが先なのです。対処療法ばかり考えて、根治させることを忘れてはなりません。

 小さな悪は、いつでも存在をします。ですから、不断の監視、取り締まりが必要で、独禁法、公取をもっと活用することによって、自由な経済活動を阻害してまでこのような大きな騒ぎをする必要は全くないということを訴えたいと思います。

 しかし、政府、財務省がやろうとしていることは、とにもかくにも消費税増税を実行する、そして、平成九年のときの経験があるので、増税をしたらしっかりと税収だけは確保する、そのためには、消費税がちゃんと転嫁をされて、間違っても税収が値切られることだけは避けたい、それが本音です。

 つまり、政府や財務省は、増税をすること、増税によってふえるべき税収を確実に確保することだけを優先しているのではないでしょうか。そこには、国民生活や企業の経営など、みじんもありません。だから、社会保障改革は後回し、消費税増税だけが先行する、本末転倒とはまさにこのことです。

 政治にとって大切なことは何なのか。今、国民は何を求めているのか。国民の目は、既に、次の成長戦略に向けられています。どのような実効性のあるものが出てくるのか。本当に所得の増加につながるのか。

 事と次第によっては、政府主導によって目いっぱい膨れ上がった大きな期待が落胆や絶望に変わってしまい、残るのは消費税増税だけ、そして、中小零細企業はさらに厳しい経営を迫られ、国民には、苦しい生活状況やさまざまな格差だけが残ってしまう結果になります。

 そのようなことにならないように、安倍政権に強く警告を申し上げ、反対討論といたします。(拍手)

議長(伊吹文明君) 以上をもって討論は終局をいたしました。

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 採決をいたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決をいたしました。

     ――――◇―――――

 株式会社海外需要開拓支援機構法案(内閣提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) 次に、内閣提出、株式会社海外需要開拓支援機構法案について、趣旨の説明を求めます。経済産業大臣茂木敏充君。

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 株式会社海外需要開拓支援機構法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 今後、我が国が経済の持続的成長を実現していくためには、著しい経済成長を背景として需要を拡大させる新興国を初めとする諸外国の旺盛な外需を獲得していくことが必要となっております。

 我が国の生活文化の中で生まれたコンテンツ、ファッション、日本食、地域産品、観光サービス等は、海外において高い人気を博しているものの、具体的な海外展開が進まないため、収益に結びついていないのが現状です。

 一方で、諸外国は官民を挙げて文化産業の海外展開を支援しており、我が国としても、これを強力に支援することが重要です。

 株式会社海外需要開拓支援機構は、こうした状況を打開するため、民間資金や外部人材を最大限活用し、官主導ではなく、民間主導で投資案件の目ききを行い、民間の投資を促す呼び水となる資金供給を行うものであります。この機構による出資その他の支援を通じ、我が国の生活文化の特色を生かした魅力ある商品等の海外における需要の開拓を行う事業活動等の促進を図ることを目的として、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 本法律案は、株式会社である海外需要開拓支援機構について、会社法に定められていない特別な規定等を整備するものであります。

 第一に、機構の設立等に関するものです。

 機構は、経済産業大臣の認可により一を限って設立される株式会社とし、政府は、機構に対し出資することができるとするとともに、常時、機構の発行済み株式総数の二分の一以上を保有することとしております。

 第二に、機構の組織に関するものです。

 支援の対象となる事業者や支援内容、株式や債権の処分等の決定を客観的、中立的に行うため、機構に海外需要開拓委員会を置くこととしております。

 第三に、機構の業務に関するものです。

 機構は、出資や、資金の貸し付け、専門家の派遣や助言等の業務を営み、経済産業大臣が定める支援基準に従って、支援の対象となる事業者や支援の内容を決定することとしております。また、機構は、平成四十六年三月三十一日までに、保有する全ての株式や債権の処分等を行うように努め、業務の完了により解散することとしております。

 第四に、機構の財務及び会計に関するものであります。

 政府は、機構の社債や資金の借り入れに係る債務について保証することができることとしております。

 第五に、機構の監督等に関するものです。

 経済産業大臣は、機構の役員の選任や予算の認可のほか、必要な監督を行うこととしております。また、機構に対し、報告の徴収、立入検査等を行うことができる旨の規定、機構の役職員等による贈収賄や秘密漏えいに対する罰則規定等を措置しております。

 以上が、本法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 株式会社海外需要開拓支援機構法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告がありますので、順次これを許します。まず、岸本周平君。

    〔岸本周平君登壇〕

岸本周平君 民主党の岸本周平です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました株式会社海外需要開拓支援機構法案について質問をいたします。(拍手)

 戦後、日本が培ってきた製造業を中心としたメード・イン・ジャパンの産業基盤は、今も日本経済の足腰であり、さらなる規制改革によってその競争力を強化することは、産業政策の基本であります。

 他方で、日本でしか発想し得ないクリエーティビティーに根差し、海外から高い評価を受けるクール・ジャパンを推進するコンテンツ産業は、新たな日本経済の担い手であります。

 私は、二〇〇一年に初代の経済産業省メディア・コンテンツ課長に就任し、クール・ジャパンの先鞭をつけようとする事業者とともに、海外に足を運び、汗を流し、海賊版の撲滅やマーケティング活動など、ともに市場を拡大していく仕事をしてまいりました。

 一方、民主党政権時代におきましても、クール・ジャパンの重要性を認識し、二〇一〇年六月に取りまとめた新成長戦略を受け、クール・ジャパン官民有識者会議を設立いたしました。そこで、二〇二〇年までに世界で十兆円規模の市場規模まで拡大させる目標を設定いたしました。また、新たに経産省内にクリエイティブ産業課を設置するなど、体制を強化してまいりました。

 今回、政府より提出されております株式会社海外需要開拓支援機構法案は、民主党政権下におけるこのような取り組みをさらに進めるため、クール・ジャパン官民有識者会議中間取りまとめで指摘のありました、新たなインキュベーション仕組みづくりをもとに構想されたものであります。

 また、私自身、昨年は、経済産業大臣政務官として、クール・ジャパン官民有識者会議と連携しながら、このクール・ジャパンを推進してまいりました。

 与野党、立場は変わりましたが、最も本法案を支持し、応援したいと思っている政治家の一人であると自負しております。したがって、海外需要開拓支援機構、いわゆるクール・ジャパン推進機構を成功させたいという熱い思いから、いささか辛口の質問をさせていただくことをお許し願いたいと存じます。

 まず最初に、政府がファンドを組成してリスクをとることが可能かどうか、考えていきたいと思います。

 これまで、産業投資特別会計の出資金によって、さまざまなファンドを通じたリスクマネー供給が行われてまいりました。さて、親方日の丸とやゆされたこれらのファンドは、成功したでしょうか。

 例えば、新エネルギー・産業技術総合開発機構には、これまで七百四十二億円の出資がなされましたが、これまでのところ、回収額は四千四百万円にすぎません。情報通信機構は、七百十六億円の出資で回収額二億四千万円。医薬基盤研究所は、三百五十四億円の出資で回収額七百五十万円。農業・食品産業技術総合研究機構は、三百五十一億円の出資で、回収額は何と三百万円であります。

 これらは現在まだある独立法人ですが、さすがに失敗が大き過ぎて、出資金を償却し、すなわち、損切りをして廃止された団体があります。

 基盤技術研究促進センターは廃止されました。その損失額は二千六百八十四億円に上っております。情報処理推進機構の損失額は三百七十七億円、情報処理振興事業協会の損失額は百四十二億円、その他の廃止された十法人の損失額は計三百八十三億円であります。

 すなわち、天下りの官僚の皆さんが何十年とかかわって、失敗の山が積み上がったわけであります。結局、親方日の丸の官がリスクをとっても、失敗するだけだということが明らかになったわけであります。

 国の財政が逼迫する中で、五百億円の政府の出資で新たに民間会社を設立することが、本当に正しいことなのかどうか。政府を頼ることで、モラルハザードとなるだけではないでしょうか。

 その上で、クール・ジャパンを応援する立場に立つとしても、ここで民間事業者こそがリスクをとらなければ、成功の保証はないと思います。政府が呼び水として五百億円のリスクマネーを提供するならば、民間サイドもせめて同額を出して会社をつくっていただかなければ、真剣なビジネスにはなりません。

 これまでの民間サイドからの出資額の見込み、そして、新たに民間会社を設立するべき意義、その必要性、さらには波及効果の大きさについて、経済産業大臣のお考えをお伺いします。

 あわせて、他の官民ファンドとの関係についてお尋ねします。

 政府では、二〇〇九年から、産業投資特別会計出資二千六百六十億円と、民間からの出資も受け、官民ファンドとして産業革新機構を設立しております。同機構は、国内の企業及び個人が保有するコンテンツの海外展開を支援する、株式会社オールニッポン・エンタテインメントワークスに対し、既に六十億円の出資を行っております。

 同社は、本法案による機構とも同様の目的を担っておりますが、産業革新機構の業務との役割分担をどのようにお考えでしょうか。屋上屋を重ねているのではありませんか。経済産業大臣の御見解をお伺いいたします。

 そこで、いわゆるクール・ジャパン推進機構の設立に合理性があるとした場合、私の経験からすれば、このようなコンテンツ系のファンドは、人材が全てであります。しかし、本当の目ききができて、的確なファンドのマネジメントができる人材を果たして採用できるのでしょうか。

 既に、多くの民間企業は、自力で、あるいは合弁で、リスクをとって、アジアを中心に世界に進出をしております。

 例えば、吉本興業は、十数年前から、韓国や台湾に現地法人を設立しています。そして、ファンダンゴ・コリアなどインターネットテレビのビジネスモデルを確立し、利益を上げています。上海メディアグループとの合弁会社による放送番組の制作を開始しました。また、金門島での日本産品の物販事業も実施予定であります。台湾の衛星放送、東風衛視にも事業参入をしております。まさに、クール・ジャパン推進機構のモデルそのものであります。

 民間で成功している優秀な人材が、政府の息のかかった半官半民のファンドに来てくれるでしょうか。利益相反を防止しつつ、このような目きき人材を確保していくために、現時点でどのような課題を想定され、解決についてどのような方策をお持ちか、経済産業大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、機構の支援基準についてお伺いいたします。

 本法案第一条では、その支援対象について、我が国の生活文化の特色を生かした魅力ある商品または役務を規定しております。その上で、その具体的な支援基準については、第二十三条において、経済産業大臣が、機構の事業活動の支援の対象となる事業者及び事業活動の内容を決定するに当たって従うべき基準を定めることとされております。

 先ほど申し上げましたとおり、政府出資五百億円に匹敵するような民間からの出資を求めるに当たって、一定の考えを明確に示す必要があります。現時点で、機構が想定する支援の対象はどのようなものがあるとお考えか、経済産業大臣の答弁を求めます。

 先般、予算委員会で、麻生財務大臣に対しまして、官民ファンドを通じたリスクマネー供給に関して、失敗した場合の責任は誰がとるのかと質問をさせていただきました。麻生財務大臣からは、基本的には主務大臣が責任をとるべきだとの御答弁をいただきました。

 しかし、主務大臣が、五年も十年も、ファンドがリクープするまで在任することはまれであります。官僚もそうですが、頻繁に人事異動が行われます。やはり、責任は当該機構の経営陣がとるような信賞必罰のガバナンスが必要だと考えますが、経済産業大臣の御見解をお伺いします。

 次に、支援体制の整備についてお伺いします。

 クリエーティブ産業だけではなくて、およそ中小企業の海外展開を支援していくためには、単純な資金需要に応じるだけではなく、市場調査、商品の試作あるいは販路開拓など、さまざまな場面で、直接、専門家による支援が重要な役割を担っていきます。

 本法案によって設立される機構は、その意味で、支援の中核を担うわけですけれども、ほかの施策、ほかの支援機関との有機的な連携が欠かせません。

 中小企業の海外展開支援を推進するため、どのような体制を整備されるお考えか、経済産業大臣に答弁を求めます。

 本法案に基づく機構の支援は、海外展開のできる強いコンテンツが対象となります。しかし、強いコンテンツを生み出し、海外展開をなし遂げるための第一歩は、何より、日本国内に確かな足場を築くことであります。

 しかしながら、一方で、クリエーティブ関連産業の多くは中小企業であります。これらの企業の多くは、それぞれの強みを持ちつつも、さまざまな業種間での連携をうまく行うことができず、新たな商品、サービス開発がなかなか進みにくいのが現状であります。

 例えば、アニメプロダクションのように、取引先の大手企業から優越的地位の濫用に近い扱いを受けてきた中小企業者もたくさんあります。その結果、この分野におきましては、既にアニメや映像のプロダクションは下請代金支払遅延等防止法の対象に指定されていますけれども、今後、国内における関連中小企業への支援をどのように進めていかれるのか、経済産業大臣のお考えをお伺いいたします。

 クール・ジャパンの推進は、単なる産業政策にとどまりません。新たな日本文化や流行の発信、海外における日本理解の一助ともなります。ソフトパワー外交の基盤とも言えます。

 そのパイオニアとなる本機構が、その役割を十二分に発揮することができるよう、政府においてもあらゆる政策資源を投入するよう強く求めるとともに、茂木経産大臣に対して心よりエールを送って、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) クール・ジャパンをこれまで積極的に推進してこられた岸本議員から、七問の御質問をいただきました。

 第一に、機構設立の意義、必要性、支援の波及効果、民間出資の見込みについてでありますが、例えば、御指摘いただいたコンテンツ分野では、日本のコンテンツの国内市場は米国に次いで世界第二位ですが、輸出比率は、米国に比べ圧倒的に低い状況です。

 コンテンツだけではなく、ファッションなど、アジアで人気の高い日本の商品、サービスは多数存在しますが、そのポテンシャルを発揮できないなど、海外の需要を十分に取り込めておりません。

 これは、中小企業を含め、日本企業が、これらの商品、サービスの新たな海外展開を実施しようとしても、その足がかりとすべき拠点がないこと、海外展開の経験や人材、情報の不足などの理由により、企業が投資をちゅうちょする例が多く、これまで、実績となる事例に乏しいことが背景にあります。

 このため、まずは政府が、呼び水となる資金を出資等により提供することにより、民間の自立的なビジネスを支援していくことが必要と判断し、本法律案を提出したものであります。

 なお、民間出資については、百億円を第一段階のめどとして、民間からの出資を募ることとしています。ただし、これはあくまで一つのめどであり、事業が進展していく中で、さらなる出資を呼びかけてまいりたいと考えております。

 次に、産業革新機構との役割分担についてでありますが、議員御指摘の産業革新機構については、オープンイノベーションを通じた生産性向上等を目指す事業活動の支援を目的としており、成長性、革新性等の支援基準を満たす事業の支援を行うこととしております。

 他方、クール・ジャパン推進機構については、革新性というより、日本の魅力の発信や生活文化の特色を生かした需要獲得が見込まれる事業で、収益性が一定程度見込まれるとともに、単なる海外展開にとどまらず、他企業や他産業の波及効果が見込まれる事業に出資することを想定しており、両機構の果たす役割は異なるものと考えております。

 次に、人材確保の課題と解決策についてですが、機構を担う民間人材については、機構は、官民からの出資を預かり、投資を行うことから、その経営陣には、クール・ジャパン政策及びクール・ジャパンビジネスに対する十分な理解と、すぐれた企業経営の資質を有する人材が望ましいと考えております。

 また、経営陣以外の人材には、現地マーケットに通じた、事業を見きわめる能力や、冷静な投資判断を行う能力などが求められます。

 こういった能力を有する優秀な人材を確保する上では、報酬の水準や、純粋民間ファンドとのルールの違い等が課題と考えております。

 これらを踏まえ、適切な処遇を行うとともに、国ができる限り介入を行わないよう、機構の詳細設計を検討してまいります。

 次に、クール・ジャパン支援機構が想定する支援対象についてですが、まず、日本の魅力の発信や生活文化の特色を生かした商品、サービスの需要獲得といった政策的意義、また、収益性、そして、他企業や他産業への波及効果等を基準にしていくこととしています。

 現時点で想定している具体例としては、現地の放送枠を買い取り、それをジャパン・チャンネルという形で使うなど、海外において日本のコンテンツを配信し、あわせて関連商品を販売する事業などを想定しております。

 次に、クール・ジャパン推進機構のガバナンスについてでありますが、同機構は、民間のノウハウを活用するという設立趣旨に鑑み、株式会社として設立し、国の関与を最低限のものとすることを基本としております。

 特に、個別の投資事業の判断については、民間人を中心とする機構の経営陣が行う形としております。

 その上で、現地マーケットに通じ事業を見きわめる機能と、冷静な投資判断を行う機能をバランスよく機能させることとし、最終的に、政府が定める支援基準に基づき社外取締役等から構成される海外需要開拓委員会が投資決定を行うことにより、機構のガバナンスを機能させることとしております。

 こうした中で、もし仮に、機構が経営に失敗し、多額の損失をこうむった場合、経営陣は株主総会で経営責任を問われることとなり、経営陣の選任、再任等の是非が議論されることとなります。

 国としては、本法案に基づき、取締役及び監査役の選任等の認可や、毎年の事業の実績の評価等を行うことで、機構の経営に対する適切な監督を行い、機構の経営に問題が生じないよう、責任を持って、必要な対応を行ってまいります。

 次に、中小企業の海外展開の支援についてでありますが、議員御指摘のとおり、中小企業の海外展開の支援に当たっては、資金面のみならず、市場調査や販路開拓などにおいて、関係機関との連携が不可欠であります。

 例えば、これまでも、平成二十四年度補正予算において、中小企業基盤整備機構により、現地の市場調査に対して支援を行い、進出後に現地で直面する労務や知財等の課題に対してジェトロがアドバイスをするといった連携を行ってきたところです。

 また、平成二十五年度予算においても、海外バイヤー向け国内展示会の出展支援、商談機会の提供、現地安定操業支援などを行うこととしております。

 さらに、資金面では、日本政策金融公庫により、中小企業の海外展開に必要な資金の融資等を行っております。

 最後に、クリエーティブ産業を支える中小企業の支援についてですが、クリエーティブ産業が海外で展開していくためには、議員御指摘のとおり、国内において適正な競争環境が整備され、中小事業者やクリエーターに適正な収益が還元されることが重要と考えております。

 例えば、アニメーションの制作業界では、多くの中小企業が活躍しているため、ことし四月に、アニメーションの制作を委託する親事業者と下請事業者との間の公正な取引を促進し、下請事業者の利益の保護を図るためのガイドラインを策定したところであります。

 また、それ以外の分野についても、下請代金支払遅延等防止法が遵守されるよう注視をしてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次に、今井雅人君。

    〔今井雅人君登壇〕

今井雅人君 私は、日本維新の会を代表して、ただいま議題となりました株式会社海外需要開拓支援機構法案、通称クール・ジャパン推進機構法案について質問いたします。(拍手)

 先月、ユネスコの諮問機関であるICOMOSは、富士山を世界文化遺産に登録するように勧告したことを発表しました。鎌倉が登録しないように勧告されたことは大変残念ではありますが、日本の象徴とも言える富士山が世界遺産に登録されるということは、日本人として大変誇りに感じるところです。

 また、二〇〇七年に初めて東京のレストランガイドを発行したミシュランは、本家のパリよりも多くの星を東京に付与するほど、日本の食に対する世界での評価は高まっております。和のおもてなしの心は、日本を訪れる人々の心を魅了してやみません。

 そのほかにも、日本は、世界に誇れる文化を数え切れないほど持っていることは、衆目の一致するところであります。

 こうした文化を商品やサービスとして産業化し、旺盛な需要が期待される新興国などの世界市場を獲得するための海外展開や観光等の促進によって国際競争力の向上や雇用の創出を狙う政府の戦略は、大きな方向性としては間違っていないと思います。

 しかし、成長戦略の王道は、税制面の支援や貿易の自由化、規制緩和によって企業の活力を引き出すことであり、国が産業育成を主導するのは限定的にすべきというのが、我が党の基本的な姿勢であります。

 そこで、クール・ジャパンへの国の関与のあり方を初め、本機構、さらにはいわゆる官民ファンドについて、順次質問いたします。

 まず、その表題についてです。

 政府は、日本文化を世界に展開するこの戦略をクール・ジャパン戦略と命名しています。

 我々の文化は、言語とともに育まれてきたことは言うまでもありません。日本の文化を世界に広げる戦略であるとするならば、なぜ、わざわざ片仮名語を使用する必要があるのでしょうか。世界には、すき焼き、すしなど、日本文化と言語が一体となって普及しております。その戦略自体を日本語で命名せず、片仮名語を使っているのは、保守を自負する安倍政権らしくないと思いますが、政府の御見解をお聞かせください。

 次に、クール・ジャパンの定義についてお伺いします。

 クール・ジャパンに関連する産業分野は、明確には定義づけされておりません。定義を明確にしないことで異業種間の連携を促進しやすいという意見もあるとは思いますが、何も定義されていなければ、過去の年金福祉施設やグリーンピア事業の例のように、拡大解釈によって、何でも投資対象となってしまいます。

 リスクマネーを具体的な定義もないままに供給することは、単なる無駄の温床を再現することになりかねないと考えますが、政府の見解を伺います。

 次に、本法案によって設置される、いわゆる官民ファンドに関してお伺いいたします。

 我々日本維新の会は、国の関与を少なくした小さな政府を目指しており、それは、民間の力や市場経済社会を信頼して、競争や成長のための環境づくりに徹するというものであります。

 クールジャパン推進会議のポップカルチャー分科会が取りまとめた提言においても、政府主導ではなくてみんなで参加となっており、これらは一般的な見方ではないでしょうか。

 国は、税制や規制緩和、為替相場など、マクロ経済の環境を整えることで民間の経済活動を支えるべきであり、必要以上のことをやり過ぎるべきではないと考えますが、なぜ国が官民ファンドをつくる必要があるのか、政府の見解を伺います。

 一方で、海外でのビジネス展開において、国がやるべきことは確かにあります。それは、官民ファンドをつくってリスクマネーを供給することではなく、現地の情報やノウハウの集積、政府間交渉等による相手国の規制や著作権保護、すなわち、カントリーリスクへの対応であります。

 そして、海外で戦える人材を育てる、あるいは、今現在頑張っている民間の活動を阻害しないということが、一番の振興策であります。

 既に海外展開を推進している企業や、サポートしているファンドなどを、規模の大小や形態で区別することなく支援する方がより効果的と考えますが、政府の見解を伺います。

 確かに、コンテンツ制作や地域産品などにかかわる企業の多くは、中小企業、小規模事業者であり、海外展開に際し、マンパワーや資金面で十分な備えができていないところがあることは事実です。

 しかし、既に中小企業等の海外展開に関しては、中小企業基盤整備機構や日本貿易振興機構が、国内外の見本市の開催や出展の支援、海外の市場動向等の情報提供を、また金融面では、日本政策金融公庫が、海外展開に必要な資金の融資等を行っております。

 このように、既存の機関だけで支援が一通りそろっている状況において、新たな機構を設立する政策的な必要があるのか、政府の見解を伺います。

 産業競争力会議において、民間金融機関出身の民間議員が、クール・ジャパンの将来性を評価し、官民ファンドを設立することを提言しています。しかし、もし民間金融機関が将来性を感じる分野であれば、なぜ、官に頼らず、みずからリスクマネーを提供しないのでしょうか。

 金融機関の大きな役割の一つは、資金提供により企業を支援し、経済を活性化させることにあります。そうした役割を持つ金融機関が将来性を評価しているのであれば、本来の金融機関の役割を果たすのが、あるべき姿です。それを官に任せるということは、この分野の将来性に疑問を持っているととられても仕方ありません。

 仮に、民間金融機関に目きき能力がないというのが原因であるとするならば、新しく設立されるこの機構にそれができるのでしょうか。

 これらの点についての政府の見解を伺います。

 次に、本機構、そして官民ファンドの問題点を申し述べます。

 過去の官民ファンドの例を見ると、制度設計が完全に固まる前に国会の承認を得る形となっており、最終的な制度については、国会の議論に付されないままとなっているケースが多く存在します。

 ファンドの詳細を詰めるためにも国会のコミットが必要という説明を耳にいたしますが、そうであれば、一旦承認した後、ファンドの最終的な制度設計を見た段階で、当初の計画から大きく外れていると国会が判断した場合、予算の支出を留保できるよう法案に盛り込むことによって、官民ファンドがより成功に近づくものと考えます。

 このような提案についての政府の見解を伺います。

 これまで、民間に出資した場合、投資先の全ての情報を出せないとの説明がありましたが、投資先の財務諸表等を開示することは、予算を決定した国会に対する最低限の責務ではないでしょうか。

 十五年、二十年たった時点で、事業は赤字続きであり、最終的な国民負担はこれぐらいになりますというのは、余りにも無責任であり、原資が公的資金である以上、国民への説明責任を果たすべきであり、民間ファンドと同様、投資案件の選定基準などを開示すべきであります。

 また、政策目的と合わない案件への投資といった暴走が起きないようにすることも重要であります。

 運用状況をチェックするためにも、投資先の財務諸表等を定期的に国会に開示すべきと考えます。投資先が民間企業であっても、財務諸表等の開示を投資条件としておけば可能であると思いますが、政府の見解を伺います。

 官民ファンドが効率的に機能するためには、資本主義の補完という役割に徹すること、すなわち、問題企業の救済や延命が目的の社会政策ではないということを明確にすること、市場原理をゆがめるような介入行為は最小限にすることであり、それができるかどうかは組織のガバナンスにかかっております。

 また、官民ファンドをつくることによって、政策の実行や税金の使い道についての権限と責任が曖昧になってしまうのではないかとの懸念もあります。

 特に、本機構は、アーリーステージから資金を投入するケースが多くなり、結果が出るまでに、十五年、二十年と長期にわたるものと想定されます。その場合、事業がうまくいかなかったときの責任、それだけたてば、官僚も政治家も入れかわっていることでしょうから、その際の責任の所在をどこに求めることになるのでしょうか。日本社会の抱える本質的な問題、すなわち、権限と責任が曖昧なことによる無責任体質、本ファンドもその典型例になってしまうのではないかと大変危惧しております。

 過去の公的資金を投入した投資を振り返れば、基礎的な技術研究への出融資を目的として一九八五年に設立された特別認可法人基盤技術研究促進センターが、支援した技術の製品化や特許料収入が想定どおりに得られず、二千六百八十四億円の欠損金を出して解散した例もあります。

 最長二十年という期間の中で、投資が失敗したときの責任は誰にあるのか、政府の見解を伺います。

 また、基盤技術研究促進センターの最後の理事長は、元国土庁の審議官であったと聞き及んでおります。

 本機構には天下りをさせないということでありますが、いずれ、それもなし崩しとなり、運用の責任もうやむやになる、それが過去と同様に繰り返されるのではないかと懸念しておりますが、政府の見解を伺います。

 また、官民ファンドとなっておりますが、官と民間の出資比率はバランスがとれているのか、甚だ疑問であります。

 本機構について、平成二十五年度予算では五百億円が計上されておりますが、そもそもの概算要求は四百億円であり、査定で百億円増額された理由について、まず伺います。

 また、政府が五百億の出資を予定しているのに対して、民間の出資額は幾らと見込んでいるのでしょうか。明確にお答えください。その上で、果たしてそれは妥当な水準なのかについてもお伺いいたします。

 同じ官民ファンドである産業革新機構においても、九割以上が国の出資となっており、官民ファンドといいながら、実質的には官主導ファンドとなっております。

 今回のファンドも、官民ファンドとして、官民それぞれの出資額の割合は妥当なものなのか、政府の見解を伺います。また、予定どおりに民間出資額を確保できる見通しがあるかについても、あわせてお答えください。

 私の地元岐阜県にも、すばらしい観光資源、食、伝統芸能など、誇るべき日本文化がたくさんあります。皆様の御地元も同様だと思います。それぞれが、日本に対する誇りもお持ちのことだと思います。それを海外に広く知らしめ、日本文化を世界に普及させたい気持ちは、私も含め、皆同じであります。

 しかし、その一方で、我々は、国民の大切な税金をお預かりしている身でもあります。税金の使い道には責任を持つ責務があります。

 国は、これまで、税金の使途につき、責任感の欠如とも思える判断を繰り返し、その結果、巨額の財政赤字を膨らませてきました。本法案に限らず、この過去の反省を肝に銘じながら国政を担っていく必要があることを強く主張し、私の代表質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 今井議員から、合計十一問、細かく分けますと十五項目の御質問をいただきました。

 最初に、日本文化を世界に展開する戦略の名称には、クール・ジャパンという片仮名語ではなく日本語を使うべきとの御指摘ですが、クール・ジャパン戦略は、日本の魅力を海外の人々に伝え、それを産業につなげることを目的として推進をしているものです。

 このため、その名称についても、わかりやすく、一般によく使われていることが重要であると考え、クール・ジャパンという言葉を用いたものであります。

 御指摘のとおり、クール・ジャパン戦略は、日本文化など、日本の魅力を世界に広げる戦略ですので、今後、戦略を推進していく上では、海外の方々に日本の魅力が正しく伝わるよう、個々の施策等につき適切な表現を選んでまいりたいと考えております。

 次に、クール・ジャパンの定義を明確にしないままリスクマネー供給を行うと無駄の温床になるのではないかとの御指摘ですが、我が国が誇る生活文化を背景としたすぐれた商品やサービスの形態は多様であり、また、海外においてどのような商品やサービスが日本の魅力として受け入れられるかについては、進出国の文化、宗教、価値観や各種の制度等により事情が異なります。流行も目まぐるしく変化するものであることから、国がクール・ジャパンを一律に定義し、機構の支援対象をあらかじめ限定することは、今後のポテンシャルの取り込みの観点からも、必ずしも適切ではないと考えております。

 次に、国が官民ファンドをつくることの必要性についてでありますが、日本企業がコンテンツやファッションなどの商品、サービスの新たな海外展開を実施しようとしても、その足がかりとすべき拠点がないこと、海外展開の経験や人材、情報の不足などの理由により、企業が投資をちゅうちょする例が多く、これまで、実績となる事例に乏しい状況です。

 このため、事業モデルが描けず、民間金融機関による資金供給も十分でなく、そのポテンシャルを十分発揮できていません。

 このため、まずは政府が、呼び水となる資金を出資等により提供することにより、民間の自立的なビジネスを支援していくことが必要と判断し、本法案を提出したものであります。

 なお、機構の運営については、官主導ではなく民間主導で行うことを基本とし、機構の存続期間についても、二十年といった限定的なものとしております。

 次に、既に海外展開している企業への支援についてでありますが、議員御指摘のとおり、既に海外展開している企業等に対する支援については、これら企業が現地で既に有している販路や人材を活用できることから、効果的だと考えております。クール・ジャパン戦略でも、こうした企業等に対して、引き続き、資金面やビジネス展開への助言等の経営面から支援してまいります。

 他方、海外展開をまだ行っていない企業の中にもすぐれた企業は数多くあり、これらの企業の取り組みをクール・ジャパン推進機構により支援することで、全体として、より効果的にクール・ジャパンを推進することができると考えております。

 次に、新たに機構を設立する必要性についてでありますが、中小企業基盤整備機構は、中小企業を主な支援対象とする民間ファンドに対する出資を行うこととしており、個別事業に対する出資は行っておりません。

 また、ジェトロは、日本企業の海外展開に際しての情報提供や見本市の開催といった事業展開の側面支援を行っておりますが、出資機能を有しておりません。

 一方、日本政策金融公庫等の既設の機関の機能を拡充するとしても、これまでと異なる機能や人材を持つ組織を既設の機関の中に立ち上げることになり、組織の複雑化や、その結果としての意思決定のおくれ等の懸念があり、適当とは考えられません。

 このため、クール・ジャパン推進を機動的に行うために、新たにクール・ジャパン推進機構を設立することが適当と判断したものであります。

 次に、民間の金融機関によるリスクマネーの供給についてでありますが、アジア等の新興市場を獲得していくことは、我が国にとって有望な成長分野でありますが、多くの民間企業にとっては、短期的に収益を上げることに注力しがちであり、ターゲットがどうしても国内市場中心になっているのが現状であります。

 このため、政府が、呼び水となる出資等の長期的資金を供給することにより、新規分野への進出を目指す民間のビジネスを支援していくことが必要と判断し、本法案を提出したものであります。

 次に、機構の制度設計に関する国会の確認についてでありますが、クール・ジャパン推進機構は、本法案に基づき設立されるものであり、機構の組織や事業内容が本法案の趣旨を大きく外れることはあり得ません。

 その上で、定款や事業計画書を踏まえた会社設立の認可や、取締役及び監査役の選任等の認可などにより国としてのチェック機能を果たすほか、機構の設立後についても、事業年度ごとに業務の実績に対して評価を行うこととしております。

 こうした仕組みを通じて、機構の組織体制や業務運営を政府として適切にチェックをしてまいります。

 次に、投資案件の選定基準及び機構の運営状況のチェックについてですが、国は、機構が投資判断を行うに当たって従うべきガイドラインとしての支援基準を策定、公表するほか、機構の経営状況について、可能な限り情報を開示し、政府としてもチェックをしてまいります。

 他方で、機構が出資する個別事業の経営状況まで全てつまびらかにすれば、出資先企業を、他の企業との競争上、不利な状況に置くおそれが生じるほか、機構から支援を受ける事業の組成にも悪影響を及ぼしかねません。その結果として、機構の経営にも悪影響を及ぼすおそれがあることも考慮し、慎重に対応する必要があると考えております。

 機構の投資が失敗した場合の責任についての御質問をいただきました。

 機構は、民間のノウハウを活用するという設立趣旨に鑑み、株式会社として設立し、国は、機構の運用について最低限の関与を行うにとどめることとしております。

 株式会社の業務運営上の経営判断や意思決定は、所有と経営の分離の原則のもと、企業経営陣が適切に行うものであります。

 したがって、機構の投資についても、民間人を中心とした経営陣のもとで適切に判断されるべきものと認識しております。具体的には、社外取締役等から構成されている海外需要開拓委員会が、取締役会からの委任を受けて、個別の投資や保有株式の売却等の決定を行います。

 こうした中で、もし仮に、経営に失敗して機構が多額の損失をこうむった場合、経営陣は株主総会で経営責任が問われることとなり、経営陣の責任、選任、再任等の是非が議論されることとなります。

 次に、機構の役員への公務員天下りについてでありますが、機構の取締役等の人事については、機構が適材適所の観点から実施するものでありますが、取締役の選任等については経済産業大臣の認可に係らしめており、私としても、民間人材を基本に適切な人選がなされるよう、しっかりと確認をしてまいりたいと考えております。

 最後に、機構への出資の増額理由と、民間出資金額の見込みについてでありますが、概算要求後において、事業規模の拡大が見込まれたことから、五百億円に増額要求を行ったところであります。

 なお、民間出資については、百億円を第一段階のめどとして、民間から出資を募ることとしております。ただし、これはあくまで一つのめどであり、事業が進展していく中で、さらなる出資を呼びかけてまいりたいと考えております。

 以上、十五項目、十一問、お答えをさせていただきました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 井出庸生君。

    〔井出庸生君登壇〕

井出庸生君 みんなの党、信州長野の井出庸生です。

 みんなの党を代表して、ただいま議題となりました株式会社海外需要開拓支援機構法案、通称クール・ジャパン推進機構法案について質問をいたします。(拍手)

 茂木経済産業大臣に答弁を求めておりますが、この本会議も、また委員会も、そして分科会も、国会の議論はひとしく重いものであります。きょうは、大臣御自身、最後まで質問を聞いた上で御答弁をいただくことを強く求めます。

 クール・ジャパン推進機構法案については、懸念と期待の両方を感じております。

 まず、懸念ですが、海外展開を希望する事業会社に出資をするクール・ジャパン推進機構は、マイナスの見方をすれば、官民ファンドの創設であり、官民ファンドには、役所の水膨れ、天下りの温床になるとの指摘が常にあります。第三セクターという言葉に象徴されるように、この手の話は官がやってもうまくいかないと、多くの失敗があったことも事実です。

 こうした指摘は経済産業省も十分承知をされているとのことで、このクール・ジャパン推進機構は、株式会社の形をとり、役員から社員まで、全て民間人を起用するとの説明を受けました。オール民間人を貫くことができるのかどうか、大臣の見解を伺います。

 天下りや官僚の現役出向が議論となるたびに、適材適所、その出自は問わない、また、天下りには厳しい姿勢で臨むという言葉がこれまで何度も言われてまいりましたが、このクール・ジャパンという言葉は、さかのぼれば、第一次安倍内閣のときに生まれた言葉と聞いており、もちろん、今の安倍内閣にとっても大きな事業だと考えております。

 さらに言えば、この事業は、国が民間の呼び水になるためのものであり、民間主導だと、経済産業省から強い決意をこれまで何度も説明を受けてまいりました。

 このことを徹底するために、まさに人事が重要であり、この法案に、民間人で構成をするとの趣旨の一文を明記するべきだと考えますが、大臣の答弁を求めます。

 経済産業省が描いているクール・ジャパン、海外市場獲得戦略の全体像によれば、第一に日本ブームの創出、第二に海外現地で稼ぐ、そして第三に海外からの旅行者を呼び込むという、三つの段階があると聞いております。

 その中で、今回の法案で推進機構が出資を想定している、海外にファッションモールを建設するなどの大型事業を行う場合、そもそも、力のある大企業に頼らざるを得ない。大企業に出資をし、事業を展開させていく、悪く言えば丸投げをするような形となってしまえば、経済成長、雇用の創出、特に地域の活性化といった、経済産業省が掲げる目的を達することはできないのではないかと懸念をしております。

 小さな事業会社でも一流の商品をつくっているところにこそ光を当て、地域の活性化による日本経済の底上げ、日本の高品質な商品が世界に広く浸透することと考えますが、こうした対象事業会社への考え方について、大臣の考えるところ、目的を伺います。

 出資の対象となる事業会社には、推進機構からの出資とは別に、その会社が独自に民間からの出資を受けるよう、努力義務を設けるとも聞いております。なぜ、努力義務であって義務ではないのですかとお尋ねをしたところ、政府がリスクをとらなくなるから努力義務にとどめたという説明もいただきました。

 しかしながら、将来的に事業が波に乗って、民間主導、自立した運営を促していくためには、義務として明記するべきではないかと考えますが、大臣の答弁を求めます。

 また、一流の商品をつくっている小さな企業には、創意工夫と、厳しい競争を生き抜いてきた力があります。自立という言葉こそ、そうした企業の強みであると考えます。

 そうした企業が海外展開をしていくためには、安易な出資よりも、コンサルティング、情報提供、情報交換の場が大切だと考えますが、大臣の考えを伺います。

 経済産業省では、過去二年にわたって、海外で、テストマーケティング、見本市のような催しを開催してきたと聞いております。このテストマーケティングの結果として得られたものと、そこから、今回、推進機構による出資を始めていくことの裏づけ、根拠となる成果があったのか、答弁を求めます。

 この法案では、設立する推進機構を、おおむね二十年程度の存続期間としております。一般的なファンドからすれば、二十年は長過ぎるという指摘もあります。その二十年の理由を聞けば、大型投資案件への対応を見据えている、そういったことだと聞いております。

 しかしながら、推進機構の現段階での構想を聞けば、組織の規模も数十人から始めていくなど、人事を初め、まさに手探りの状態からスタートを切る中で、この二十年という長い期間を設定すること、明記することが適切なのかどうか、大臣の見解を求めます。

 私たちみんなの党は、民間にできることは民間に、特に経済成長においては、まさに民間主導を結党以来訴えてまいりました。私もまた、民間が自由に活動できるためのバックアップをすることこそが政治の役割であると考えてまいりました。

 クール・ジャパンは、報道でよくされているアニメだけではなく、農産物、B級グルメといった食分野、漆器、鉄器などの伝統工芸品、ファッション、また、結婚式、旅館などの細やかなサービス、おもてなしなど、日本が誇るさまざまなものを海外に展開し、経済成長につなげるという点で、私は大きな期待をしております。

 私が、昨年十二月、初登院の際に着た信州上田の上田つむぎも、この本会議場にとどまらず、世界に羽ばたいてほしいと願っております。

 私たちは、クール・ジャパンと呼ばれる日本の宝を応援したい。だからこそ、そうした未来ある分野に旧来の官民ファンドという手法がとられること、その設計や人事に大きな懸念を持っております。そうした懸念は、今回、経済産業省もお持ちだと聞いております。

 大きな期待を持っているからこそ、今後、徹底した議論を尽くさせていただくことを申し上げ、私からの質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 井出議員にお答えをいたします。

 最初に、機構は全て民間人で構成すること、また、その旨法案に明記すべきとの御指摘でありますが、機構の運営については、官主導ではなく、民間人材を中心として民間主導で行うことを基本としております。

 ただし、機構が業務遂行上必要と判断した人材を柔軟に採用するための自由度を確保することが重要であることから、法律においてあらかじめ機構の人事に制限を設けることは妥当ではない、そのように考えております。

 次に、出資対象の選定の考え方についてでありますが、御指摘のとおり、中小企業や小規模事業者の中にも、海外展開の可能性を秘めたすぐれた商品、サービスを持つ企業は数多く存在いたします。

 機構の支援対象の選定に当たっては、大企業や中小企業といった企業の規模ではなく、事業の収益性や関連産業への波及効果など、事業の性質を精査し、決定されるべきものと考えております。

 次に、機構の出資対象となる事業会社への民間出資の義務化についてですが、議員御指摘のとおり、本来は、民間により自律的に資金提供が行われることが望ましいことから、事業会社は民間から出資を幅広く受けることが重要であります。

 しかし、機構が出資する事業会社は、それぞれの事業ごとの性質やリスクも異なるものであるため、政府が事業会社に対し一律に民間出資の受け入れを義務化することは、結果として、機構の運営の自由度や事業会社の発展可能性を損なうことになります。

 このため、民間出資をさらに促す一方で、一律の民間出資を義務化することは望ましくはないと考えております。

 次に、出資よりも、コンサルティング等の支援を必要とする企業もあるのではないかという御指摘でありますが、議員御指摘のように、今回設立するクール・ジャパン推進機構においては、資金提供にあわせて、海外展開の経験や現地の市場に通じた専門人材による助言等の経営支援も行ってまいります。

 次に、これまで実施してきたテストマーケティングの結果と機構設立の根拠となる成果についてでありますが、これまで二年間の事業者による市場調査やテストマーケティング等の支援の結果、広範囲で展開が可能となるすぐれた販路や人脈、進出国における商慣行などのビジネスのノウハウ等の成果が得られるとともに、途上国における出店規制などの参入の障壁となる規制が明らかになってきております。

 これまでは事業の早期段階を支援する施策にとどまっていたところでありますが、今回、本格的な事業展開を支援するため、本法案を提出したところであります。

 最後に、機構の存続期間を二十年とすることの妥当性についてでありますが、機構の投資案件として、例えば、海外でのショッピングモールなど不動産の取得を伴うものも想定されますが、民間で行われているこうした事業は、収益を出し始めるまでの期間が二十年から二十五年程度と長期間にわたるケースが多くあります。こういった事例も参考にして、機構の存続期間としては、二十年と設定したものであります。

議長(伊吹文明君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(伊吹文明君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       農林水産大臣   林  芳正君

       経済産業大臣   茂木 敏充君

       国務大臣     稲田 朋美君

 出席副大臣

       経済産業副大臣  菅原 一秀君


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