衆議院

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第6号 平成25年11月1日(金曜日)

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平成二十五年十一月一日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第四号

  平成二十五年十一月一日

    午後一時開議

 第一 消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案(第百八十三回国会、内閣提出)

 第二 自衛隊法の一部を改正する法律案(第百八十三回国会、内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案(第百八十三回国会、内閣提出)

 日程第二 自衛隊法の一部を改正する法律案(第百八十三回国会、内閣提出)

 電気事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案(第百八十三回国会、内閣提出)

議長(伊吹文明君) まず、日程第一、消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。消費者問題に関する特別委員長山本幸三君。

    ―――――――――――――

 消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山本幸三君登壇〕

山本幸三君 ただいま議題となりました法律案につきまして、消費者問題に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害を集団的に回復するため、特定適格消費者団体が被害回復裁判手続を追行することができるよう民事の裁判手続の特例を定めようとするもので、その主な内容は、

 第一に、消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害について、事業者が、これらの消費者に対し、共通する事実上及び法律上の原因に基づき金銭を支払う義務を負うべきことについて、特定適格消費者団体が共通義務確認の訴えを提起することができること、

 第二に、当該特定適格消費者団体は、消費者に対し、共通義務確認訴訟の確定判決の内容等を通知、公告し、共通義務確認の訴えの結果を前提として、個々の消費者から授権を受けて具体的な請求を行い、相手方の認否等により、個々の債権の内容を確定すること、

 第三に、特定適格消費者団体は、相当多数の消費者の債権の実現を保全するため、仮差し押さえ命令の申し立てをすることができること、

 第四に、内閣総理大臣は、消費者契約法上の適格消費者団体の中から一定の要件を満たした団体を、その申請に基づき、特定適格消費者団体として認定することができることとするとともに、その監督等について、所要の規定を設けること

であります。

 本案は、第百八十三回国会に提出され、六月四日の本会議において趣旨説明の聴取及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。

 本委員会では、六月七日森国務大臣から提案理由の説明を聴取し、同月十三日から質疑に入りましたが、その後、今国会まで継続審査となっていたものであります。

 今国会においては、提案理由の説明聴取を省略して審査に入り、十月三十日、参考人からの意見聴取を行い、引き続き、政府に対する質疑を行いました。

 昨三十一日、質疑を終局したところ、郡和子君外十一名から、特定適格消費者団体による権限の濫用を防止するための措置を講じるとともに、同団体に対する支援策を講じること、この法律の施行の状況についての検討の年限を施行後五年から施行後三年に改めること、この法律が適用されない請求に係る金銭の支払い義務に関しては、裁判外紛争解決手続の利用促進等の措置を講じること等を内容とする自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案に係る修正案、三谷英弘君から、共通義務確認訴訟追行の要件の加重等を内容とするみんなの党提案に係る修正案、及び、穀田恵二君から、特定適格消費者団体に対する支援策を講じること等を内容とする日本共産党提案に係る修正案が提出され、それぞれ提出者から趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、討論を省略して採決を行った結果、穀田恵二君提出の修正案及び三谷英弘君提出の修正案はいずれも賛成少数をもって否決され、郡和子君外十一名提出の修正案及び修正部分を除く原案はいずれも全会一致をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、採決をいたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 全会一致。異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 自衛隊法の一部を改正する法律案(第百八十三回国会、内閣提出)

議長(伊吹文明君) 次に、日程第二、自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。安全保障委員長江渡聡徳君。

    ―――――――――――――

 自衛隊法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔江渡聡徳君登壇〕

江渡聡徳君 ただいま議題となりました法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、自衛隊による在外邦人等の輸送について、輸送対象者を拡大し、車両による輸送を可能とする等の所要の改正を行おうとするものであります。

 本案は、第百八十三回国会に提出され、本年五月二十三日、本会議での趣旨説明及び質疑の後、本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、同日小野寺防衛大臣から提案理由の説明を聴取した後、二十八日より質疑に入り、参考人から意見を聴取する等審査を行いましたが、その後、本案は継続審査に付されました。

 今国会におきましては、昨十月三十一日、提案理由の説明の聴取を省略した後、質疑を行いました。質疑終局後、討論を行い、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 起立採決をしますから、席に戻ってください。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

あべ俊子君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、電気事業法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(伊吹文明君) あべ俊子君の動議に御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 電気事業法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) 電気事業法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長富田茂之君。

    ―――――――――――――

 電気事業法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔富田茂之君登壇〕

富田茂之君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本法律案は、東日本大震災の影響による電力需給の逼迫状況を踏まえ、電力システム改革の三本柱の一つである広域系統運用の拡大等を実現することによって電気の安定供給の確保に万全を期すとともに、二〇二〇年までに実施すべき電力システム改革の全体像を法律上明らかにするものであります。

 その主な内容は、電力需給逼迫時に電気事業者に対して電力融通を指示すること等を業務とする広域的運営推進機関を創設すること、並びに、今後における電気の小売業の参入の全面自由化、電気料金の全面自由化及び送配電等業務の中立性確保措置による三段階の電力システム改革の内容、それらの実施時期及び改革を進める上での留意事項等を規定すること等であります。

 本案は、去る十月二十五日本委員会に付託され、三十日に茂木経済産業大臣から提案理由の説明を聴取し、本日、質疑に入り、質疑終局後、討論、採決を行った結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、採決をいたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) 次に、内閣提出、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣田村憲久君。

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) このたび政府から提出した持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 社会保障・税一体改革に関しては、昨年、消費税率の引き上げ等を規定する法律が成立するとともに、社会保障制度改革についても、少子化対策及び公的年金制度改革に関し既に関連法が成立し、加えて、社会保障制度改革の基本的な考え方や社会保障制度改革国民会議の設置等を定めた社会保障制度改革推進法が成立したところであります。

 その後、社会保障制度改革国民会議におけるたび重なる審議を経て本年八月に報告書が取りまとめられたことを踏まえ、社会保障制度改革推進法第四条の規定に基づく法制上の措置として、社会保障制度改革の全体像及び進め方を明らかにするため、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容について、その概要を説明いたします。

 第一に、少子化対策、医療サービスの提供体制や医療保険制度等に係る医療制度、介護保険制度及び公的年金制度の各分野に関し、検討すべき事項、措置を講ずる時期等を定めるとともに、医療制度や介護保険制度については、法律案の提出を目指す時期についても規定するものであります。

 第二に、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るため、内閣に、関係閣僚により構成する社会保障制度改革推進本部を置くとともに、内閣総理大臣が指名する者をもって組織する社会保障制度改革推進会議を置くこととし、その所掌事務、組織等について、それぞれ所要の規定を設けることといたしております。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日としております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) ただいまの厚生労働大臣の趣旨の説明に対し質疑の通告があります。順次これを許します。まず、松本純君。

    〔松本純君登壇〕

松本純君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案、いわゆるプログラム法案について質問いたします。(拍手)

 まず、社会保障制度改革の方向性についてお尋ねいたします。

 我が国の社会保障制度は、多くの国民の支持のもと、高度経済成長期を中心に形成され、国民生活に安心と長寿をもたらしてきたものであります。昭和三十六年には、国民皆保険・皆年金の達成により、全ての国民が公的医療保険や年金による保障を受けられるようになり、その後も、社会保障給付の大幅な充実が図られる中、多くの制度が組み合わさって、日本の社会保障制度は構築されてきました。

 これらの制度は、当時我が国に定着しつつあった長期雇用慣行等を初めとする日本型雇用システムや、女性が専業主婦として家事を担うといったロールモデルに適合したものであったわけでありますが、国際競争の激化や産業構造の変化により、今や、非正規雇用労働者は労働者全体の三分の一以上を占めるに至り、日本型雇用システムは、全ての労働者が享受することのできる仕組みではなくなりつつあります。

 また、女性の社会進出と相まって、専業主婦が育児や介護などの家事を担うというロールモデルも既に限界となっております。

 加えて、世界に類を見ない速度で少子高齢化が進展し、医療技術の急激な高度化等も見られる中、社会保障給付の増加は避けられない状況にあることも鑑みると、現行の社会保障制度を大きく転換していく必要に迫られているところであります。

 昨年夏、三党合意に基づき社会保障制度改革推進法が成立し、同法に規定された社会保障制度改革の基本的な考え方及び基本方針に基づき、社会保障制度改革を議論する場として社会保障制度改革国民会議が設置されました。有識者十五名の参集のもと、計二十回にわたって、多岐にわたり相互に関連する社会保障制度改革についての丁寧な議論が積み重ねられてきたものと承知しております。

 本年八月には、社会保障制度改革国民会議において改革の大きな方向性が示され、その中では二十一世紀日本モデルへの転換などが示されたところですが、こうした報告書の提言をどう受けとめているでしょうか。一体改革担当大臣にお伺いいたします。

 次に、このプログラム法案についてお伺いします。

 本法案は、こうした社会保障制度改革国民会議の報告書を踏まえ、社会保障制度改革推進法の規定による法制上の措置として、少子化、医療、介護、公的年金の分野ごとの改革の検討課題や、必要な措置について講ずる時期、法案の提出目途を明らかにするものとして提出されたものであります。

 このような、政府に対して将来の法案提出義務を課すことを内容とするプログラム的な法律によって、社会保障制度改革の全体像及び進め方を事前に政府提案の法律によって示すことの意義、すなわちこの法律の意義は、どのようなところにあるのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いいたします。

 先月一日、安倍総理は、来年四月より消費税を八%に引き上げることを決断されました。急速な少子高齢化が進む中、社会保障・税一体改革により、財政の健全化と、受益と負担の均衡のとれた持続可能な社会保障制度の確立の、双方の実現を可能とするものであります。この御決断により、これまでは実施が難しかった多くの充実化、安定化の措置が、初めて実現可能となったわけであります。

 本法案にはそうした多くの措置が盛り込まれているものと承知しておりますが、改めて、どのような充実策、安定化策が盛り込まれており、国民の皆様にどのような受益がもたらされることとなるのでしょうか。厚生労働大臣にお尋ねをいたします。

 一方で、社会保障を取り巻く厳しい環境を踏まえると、持続可能な社会保障制度を確立するためには、負担能力に応じた負担を国民の皆様にもお願いしていかなければならないというのも、事実としてあるわけでございます。

 ぜひとも、政府には、世界に誇る社会保障制度の持続性を確保することが、病気や高齢といった、誰しもが出会う可能性のあるリスクを十分に軽減し、望ましい医療・介護サービスの実現等も含め、一人一人の生活に真の安心をもたらすものであること、また、子ども・子育て支援の充実は未来の我が国への投資につながるものであることをしっかりと伝えていただき、国民の皆様の納得を得た改革を進めていただきたいと思います。

 次に、プログラム法に規定する、個人の主体的な健康の維持増進への取り組みの奨励に関して、急激な高齢化等と相まって、がん、糖尿病など生活習慣病に罹患する方の割合も急激に上昇している中、一人一人が疾病予防の重要性を理解し、しっかりと健康づくりに励むよう環境の整備に努めることは、健康寿命の延伸達成に加え、我が国の医療費適正化の観点からも、大切な取り組みであると考えております。

 そこで、まずは、こうした疾病予防、健康増進のための取り組みについて、医療費適正化の観点にも配慮しつつ、今後どのような取り組みを行っていくこととしているのか、こうした取り組みは社会全体の活性化にもつながる重要な取り組みであると考えておりますが、厚生労働大臣のお考えをお伺いいたします。

 この法案において初めて、地域包括ケアシステムという用語が法律上に定義されました。

 超高齢社会を迎え、我が国の医療・介護サービスの提供体制は、国民会議の報告書にもあるとおり、病院完結型から、患者の住みなれた地域や自宅での生活のための医療と介護、さらには住まいや自立した生活の支援までもが切れ目なくつながる地域完結型に変わっていかなければなりません。まさに、そうした理念を具現化するものが、地域包括ケアシステムの構築であります。

 その実現のためには、社会保障分野を超え、住まいやまちづくりの分野を初めとするさまざまな行政分野、さらには民間企業やボランティアの方々と、しっかり連携を図る必要があります。

 今回、法律案では、地域包括ケアシステムの構築により、どのような医療提供体制と介護サービスの提供体制を目指し変革していくこととなるのか、改めて厚生労働大臣にお伺いします。

 社会保障制度改革の推進に当たって、今回の法律案では、社会保障制度改革推進会議を設置することとされております。その設置は五年以内とされていますが、有識者の方々にお集まりいただき、どのような議論をしていただくこととしているのか、一体改革担当大臣にお伺いをいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 松本議員からは、四問ほど質問をいただきました。

 まずは、社会保障制度改革のプログラム法案の意義についてのお尋ねでございます。

 このプログラム法案は、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を確立するため、改革に向けた個別の課題について、政府が必ず検討を行うよう法律上の義務を課しておくことで改革の着実な実行を図るとともに、消費税率の引き上げにより国民負担がふえる中で、早期に社会保障制度改革の全体像を示すことで、国民の皆様の納得につなげるためのものであります。

 社会保障制度改革推進法では、社会保障制度改革国民会議における審議の結果等を踏まえ、改革に必要な法制上の措置を講ずるものとされております。国民会議の報告書等を踏まえて提出したこの法案は、改革推進法の規定による法制上の措置として位置づけられておるものであります。

 続きまして、プログラム法案に盛り込まれた社会保障の充実策、安定化策についてのお尋ねでございます。

 今回決定された三%の引き上げ分の消費税収は、全額を社会保障財源化し、制度の充実、安定化に向けることとされております。

 プログラム法案には、基礎年金国庫負担割合の二分の一への引き上げなど、社会保障制度の安定化のほか、社会保障の充実に関する検討項目も多く盛り込んでおります。

 社会保障の充実の具体的な項目といたしましては、まず、少子化対策では、子ども・子育て支援新制度の実施、待機児童解消加速化プランの推進や社会的養護の充実を進めます。

 次に、医療・介護分野では、入院期間の短縮を通じた早期社会復帰の実現や、受け皿となる地域の病床、在宅医療・介護の充実を進めるほか、国保や後期高齢者医療制度、介護保険の低所得者の保険料負担の軽減や、低所得者等に係る高額療養費の上限額の引き下げを図ります。

 加えて、難病、小児慢性特定疾患に係る公平かつ安定的な医療費助成制度を確立し、その対象となる疾患の拡大に取り組んでまいります。

 最後に、公的年金制度については、低所得高齢者等への年金生活者支援給付金の支給や、受給資格期間の短縮を進めてまいります。

 続きまして、疾病予防、健康増進に関する取り組みについてのお尋ねでございます。

 いわゆる団塊の世代が全て七十五歳以上となる二〇二五年に向け、国民の健康寿命が延伸する社会の構築を目指し、ことしが予防元年であるという意気込みで、厚生労働省を挙げて、予防、健康管理に係る取り組みを推進することといたしております。

 このため、八月末に、国民の健康寿命が延伸する社会に向けた予防・健康管理に係る取り組みを発表したところであります。

 具体的には、生活習慣病予防や介護予防の主要な取り組み、後発医薬品の使用促進や重複受診の防止といった医療資源の有効活用に向けた取り組みについて、省内連携して一体的に進めてまいることといたしております。

 最後に、医療・介護サービス提供体制の構築についてのお尋ねがございました。

 高齢者が、住みなれた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援が包括的に確保される地域包括ケアシステムの構築を推進しています。

 また、病床機能の分化、連携を図りつつ、在宅医療や二十四時間対応の訪問サービスの推進、医療と介護の連携強化などを図ることが求められております。

 厚生労働省といたしましても、高度急性期から在宅医療、在宅介護までの一連のサービスを住みなれた地域で効果的で効率的に受けることができるよう、医療・介護サービスの提供体制の改革を進めてまいります。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 社会保障制度改革国民会議の報告書についてお尋ねがありました。

 国民会議は、自民、公明、民主の三党合意に基づき取りまとめられた改革推進法に基づきまして設置をされました会議であり、その報告書は、少子高齢化が進展する中、世界に冠たる日本の社会保障制度を将来世代にしっかりと伝える観点から二十回にわたりまして行われた、有識者による専門的、実証的な議論の成果であると認識をいたしております。

 政府といたしましては、国民会議の報告書に盛り込まれた改革の方向性やスケジュールを踏まえながら、持続可能な社会保障制度の構築に向けて、改革を着実に実現していくことが重要だと考えております。

 次に、社会保障制度改革推進会議での議論の内容についてお尋ねがありました。

 有識者から成る社会保障制度改革推進会議におきましては、まず、本法案に盛り込まれた当面講ずべき改革の進捗状況を把握しながら、いわゆる団塊の世代が全て七十五歳以上となる二〇二五年を展望しつつ、中長期的な改革について総合的に検討をするとともに、総理の諮問に応じまして、必要な改革について調査審議を行うことといたしております。

 この改革推進会議の審議の結果等を踏まえまして、総理及び関係閣僚により構成をされます社会保障制度改革推進本部におきまして対応を検討するなど連携もとりながら、社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することといたしております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次の質疑者、長妻昭君。

    〔長妻昭君登壇〕

長妻昭君 民主党の長妻昭です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました、いわゆる社会保障制度改革プログラム法案について質問をいたします。(拍手)

 この法案は、当初の趣旨とは全くかけ離れてしまいました。

 そもそも、このプログラム法案は、社会保障制度改革推進法という、特に年金と高齢者医療の制度改革を推進することを大きな目的とした法律に基づいています。推進法には、法制上の措置を一年以内にするとの規定がありますが、それは、年金制度や高齢者医療制度の改革を法律としてまとめるように定めたものであります。

 ところが、このプログラム法案には、年金制度改革も高齢者医療制度改革も入っていません。医療、介護に関する個別法案の方針と提出スケジュールなどが規定されているばかりです。

 推進法に基づいて設置された社会保障国民会議の場でも、年金制度そのものの改革が話し合われる場面は、全体のほんの一部しかありませんでした。

 私たちは、年金一元化、最低保障年金という抜本改革案をそのままのまなければだめだと言っているのではありません。

 昨年、自民党は、推進法原案にあった、現行制度を基本としてという条文の削除を民主党と合意して、年金制度改革に踏み込みました。我々の案がだめだというのであれば、政府・自民党の制度改革案を示してほしいと言っているのです。

 お伺いしますが、本当に、今の年金制度や高齢者医療制度を変えなくても将来も役割を果たせるとお考えですか。お答えください。

 例えば年金制度です。

 日本では、会社で働いているのに厚生年金に入ることのできない人が非常に多過ぎます。現行の年金制度は、先進国では考えられないほど漏れの多い制度です。

 厚労省の調査では、会社で働いているものの、ルール上加入できないなどの理由で、厚生年金に入れずに国民年金に加入せざるを得ない人が、主婦を除く国民年金一号被保険者だけで六百万人近くいることが示されました。この中の学生アルバイトを除くと何人になるのか、お示しください。

 また、法律上、厚生年金に加入させなければならないにもかかわらず、加入できない人が推計三百五十万人もいることが、さきの予算委員会で初めて示されました。非常に大きな人数です。これらの対策をお示しください。

 厚労省は、実際に、全体で、どれだけの人が会社で働いているのに厚生年金に入っていないのか、人数も理由もわからないと繰り返していますが、理由のいかんを問わず、会社で働いているのに厚生年金に加入していない人をサンプル調査して、その原因と属性の全体像を把握すべきと考えますが、いかがですか。

 現在、国民年金は、自営業の割合が、家族従事者も含め、二割まで落ち込んでおります。

 国民年金の未納は、自営業者よりも、会社で働いているのに厚生年金に加入できない国民年金被保険者に多く見られます。低所得の、資産もない非正規雇用者等が、自営業のための国民年金に加入せざるを得なくなり、国民年金が、いわば不安定雇用年金となっております。現在でも、国民年金受給者の三四%もの人が、月額四万円未満の受給額です。

 このまま放置すると、将来、低年金・無年金者が急増して、生活保護にどっと流れ込むことになりかねません。今でも、生活保護受給者半分が六十歳以上で、その割合は拡大をしております。

 民主党の年金改革案がだめだというのであれば、政府・与党はこれらの問題をどう解決するのか、ぜひ、制度の改革案を提出願いたい。いかがですか。

 適用拡大を数年かけて数十万人ずつ進めるというような焼け石に水の修正案では、解決できません。

 また、基礎年金の半分には毎年十兆円もの税金の補助が入っていますが、高額所得者には、この部分について、圧縮をお願いする必要があると考えます。

 民主党は、昨年、高額収入者には徐々に基礎年金の税金部分を削減する法案を提出しましたが、自民党の反対で、成立には至りませんでした。政府・与党は、このような考え方も否定するのですか。

 現在の年金制度の受給者を受給額の多い順に十分類した場合、最大と最小の受給額格差は七倍もあります。保険料は支払った分に比例して給付に回す、税金は格差是正に使う、このような保険料と税との役割分担が必要と考えますが、いかがですか。

 世界の年金改革の流れは、三つのポイントがあります。

 一つは、職業によって変わらない制度、二つ目は、最低保障機能がある制度、三つ目は、低賃金の人も保険料を払いやすい制度と持続可能性です。これに少しでも近づく改革案を御提示いただきたい。いかがですか。

 昨年の三党合意のときとはがらりと異なり、消費増税に関連して、公共事業の大幅な増額や法人税の復興増税打ち切りの議論など、大盤振る舞いが目立ちます。民主党政権で設定した年間の国の借金の上限枠も撤廃をされてしまいました。

 そもそも、消費税を一〇%に上げるという厳しいお願いをした理由は、社会保障の充実と、借金の返済を進めて孫子にツケをこれ以上ふやさないためでした。公共事業に使うためではありません。

 本当に社会保障は約束どおり充実できるのでしょうか。幾らを充実に回すのでしょうか。また、二年後の基礎的収支の赤字半減、二〇二〇年の基礎的収支黒字化という借金返済の目標は、約束どおり達成できるのでしょうか。大きな不信感を持っております。いかがですか。達成する道筋をお示しください。

 このプログラム法は、消費税一〇パーを前提とし、一部を社会保障の充実に充てるとしています。しかし、充実の目玉である、社会保障の自己負担全体を合算して一定額で頭打ちにする総合合算制度が、このプログラム法からすっぽり抜け落ちております。いつから実施するのですか。

 仮に消費税一〇パーが先送りされた場合、社会保障の削減と充実がセットのはずですが、削減だけが先行し、充実が先送りされるということが起こり得るのでしょうか。

 二つの保障、安全保障と社会保障は、国家の礎です。安倍内閣は、安全保障に比べ、社会保障を軽視しているようですが、社会保障や人への投資である格差是正策は、決して経済成長のお荷物ではなく、むしろ、結果として経済成長の基盤をつくるものです。

 確かに、社会保障は、国の税金だけで年間一兆円ずつ増加しており、野方図に伸ばすわけにはまいりません。しかし、社会保障を乱暴に切ると、かえってツケが国の財政に回ってまいります。

 一例を挙げます。

 介護の要支援の方々を介護保険の枠外にし、受け皿のないままに地方移管するなど、乱暴な削減が、プログラム法からかいま見えます。

 しかし、民主党の強い要請で政府が初めて明らかにしたように、介護保険全体で、八割もの方が、一次判定で、軽いものも含めて、認知症となっております。要支援と言われる分類の方も、半分が認知症でした。

 介護保険サービスを受けている人のうち、要支援者は、二割、九十万人もいらっしゃいます。乱暴に介護を切ると、予防効果が薄れ、かえって重い介護度に進んでしまいかねません。

 介護するために職をやめざるを得ない介護離職は、現在、年間十万人もおり、年々増加の傾向にあります。団塊の世代全員が七十五歳以上になる二〇二五年に向かって、介護離職が急増しかねません。

 例えば、大手商社丸紅の社内アンケートによると、二〇一一年時点で、四十代、五十代で介護をしている社員が一一%、しかし、二〇一六年には八四%もの人が介護をする可能性があると回答しております。

 現在、働きながら介護をしているのは二百九十一万人で、介護をしている人五百五十七万人の半分以上が職を持っております。介護を乱暴に切って、第一線で働く人の介護離職がふえれば、短期的に介護財政は助かっても、安倍総理のおっしゃる成長戦略には大きなマイナスです。いかがお考えですか。

 負担増をお願いする際にも、丁寧な議論と手法が必要です。

 余裕のある人がそうでない人を支える、この考え方は、現役だけで高齢者を支え切れない今、必要です。

 しかし、本当に余裕のある人は誰なのか、この深い議論が政府に欠けています。単純に収入や資産だけで判断するのではなく、その人が持ち家か賃貸か、扶養者はいるかどうか、本人の健康状態など、幾つかの条件を勘案する必要があるのではないでしょうか。いかがお考えですか。

 また、国民負担率を乱暴に抑えると、かえって国民全体の負担は上がってしまうという事実にも目配りをするべきであります。

 国民負担率は、税と保険料の国民所得に対する割合であり、これを乱暴に抑えれば、かえって窓口負担や自己負担、家族の負担等の全体の国民負担が増加して、格差が拡大しかねません。どうお考えですか。お答えください。

 そもそも、日本のような国民負担率という概念は、海外では一般的ではありません。社会保障給付費に自己負担が入っていないというのも、国民に誤解を与えます。

 政府は、社会保障削減方針に関しては、どの指標を目標としているのですか。かつては、財政赤字を含む潜在的国民負担率を五〇パーを超えないとしていましたが、今後、給付費のGDP比を抑えようとしているのか、国民負担率を抑えようとしているのか、どのような指標に基づく基本方針を持っているのですか。お尋ねします。

 本来は、自己負担や家族の負担、介護離職、育児のための離職であるM字カーブ問題なども含めた、金に換算できない、国民全体の負担率を考えるべきではないでしょうか。いかがですか。

 日本が弱い分野で、最も力を入れなければならないのが、医療、介護の予防です。

 予防を徹底させれば、社会保障全体の供給量が抑制され、国民の本当の負担も抑えられます。特に、田村厚労大臣が立案した、医療、介護の予防による二〇二五年五兆円削減プランの中身と意気込みをお聞かせください。

 最後に、今、深刻なのは、格差の拡大だと考えます。

 世界の格差・貧困問題がテロの温床を広げ、日本の格差・貧困問題が、社会を不安定化して、経済成長の基盤も損ないつつあると考えております。

 格差を示すジニ係数も悪化し、相対的貧困率は、先進国で、米国に次いで二番目に高くなりました。

 特に、子供の格差が深刻です。現在生活保護を受ける子供四人に一人が、大人になっても生活保護から抜けられません。新しい貧困層とでもいうべき階層ができつつあります。

 親の年収による学歴格差についても、年収四百万円以下では、大学進学三割、年収一千万円以上であれば、大学進学六割です。非正規雇用者も二千万人となり、正社員との結婚格差も二・五倍まで広がりました。

 我々は、格差が小さく、全ての人に居場所と出番のある社会、ともに生きる社会を目指していますが、今の政府はどのような社会を目指しているのか、明確ではありません。特に、日本の格差の深刻さについては、どのような認識をお持ちですか。

 地縁、血縁、社縁が薄れ、孤立化が進む今、地域になじみのある中学校の学区ごとに、医療、介護、保育、教育、町会、ボランティアなどが連携して、見守りのネットワーク、つまり、新しい地縁を下から目線でつくる必要があると考えます。現在の地域包括ケアを拡充する概念です。いかがお考えですか。

 デフレ脱却は最重要課題であることは間違いありませんが、安倍内閣は、バブルを生み出す超金融緩和、短期的利益志向、雇用の規制緩和など、アメリカ型資本主義をまっしぐらになぞっているように見えます。

 意図したか意図せざるかは別にして、内閣支持率が株価と連動した内閣となり、株価維持を重視する安倍総理は、証券会社の部長のようなマインドになっているのではないでしょうか。

 日本が目指す日本型資本主義は、バブルや格差を拡大させるアメリカ型というよりも、GDPにあらわれない価値を重視し、長期的利益や安定雇用を目指すヨーロッパ型資本主義を参考にするべきではないでしょうか。

 バブルを起こさない成長を志向し、所得再分配や安心提供による消費拡大を狙う、ボトムアップ型の経済再生を目指すべきです。

 日本は、死ぬときに一番貯金を持っている国で、老後の不安が消費を抑制しております。また、所得再分配政策が消費を喚起するのは、低所得者ほど所得を消費に回す、限界消費性向が高いからです。

 政府・与党は、安倍総理が目指す、世界一企業が活躍しやすい国、その先にある、高齢者人口が最大になる三十年後を見据えた社会像をお示し願いたい。三十年後に向けて、政府はどんな社会を目指すのですか。お答えください。

 それぞれの政党が、あるべき社会像を提言、議論し、競い合うことが、国益にかなうことだと考えます。我々民主党は、その議論をリードして、目指すべき社会像、少子高齢社会に対応する日本モデルを確立すべく取り組んでまいります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 長妻議員からは、十四問ほど御質問をいただきました。

 まず、年金制度や高齢者医療制度の改革についてのお尋ねがありました。

 年金制度については、人口構造や経済社会構造の変化に対応するため、定期的に財政検証を行うことで長期的に持続可能な運営を担保する仕組みとなっており、この認識は、昨年の社会保障・税一体改革の審議の過程で御党と共有できたものと考えております。

 また、本年八月に取りまとめられた社会保障制度改革国民会議の報告では、現時点において、自営業者を含めた所得比例型の年金制度に必要となる、正確で公平な所得捕捉などの条件は整っていない状況にあること、また、被用者保険の適用拡大などの課題は、所得比例年金に一元化していく立場からも通らなければならないステップであることから、まず、どのような制度体系を目指そうとも、必要となる課題の解決を進めるべきであるという提言がされております。

 このような認識に立ち、本法案においても、短時間労働者のさらなる適用拡大などの今後の検討課題を明記したところであります。

 さらに、後期高齢者医療制度については、社会保障制度改革国民会議の報告にあるとおり、十分定着していると認識しており、現行制度を基本としつつ、必要な改善を行っていくことといたしております。

 本法案では、この考え方に立って、高齢者医療制度のあり方について、医療保険制度改正の実施状況等を踏まえ、必要に応じ、見直しに向けた検討を行うとされており、関係方面の意見も勘案しながら、持続可能な医療保険制度の構築に向けて検討を行っていきたいと考えております。

 続きまして、会社等で働いている国民年金第一号被保険者の人数についてのお尋ねがございました。

 平成二十三年国民年金被保険者実態調査では、国民年金第一号被保険者のうち、常用雇用労働者が約百二十六万人、臨時、パートの労働者が約四百六十七万人、合計すると約五百九十三万人となっております。このうち学生アルバイトを除いた人数については、把握しておりません。

 続きまして、厚生年金の適用漏れ対策についてお尋ねがありました。

 御指摘の数字は、みんなの党の試算である一千万人が過大であることを指摘するため、同党の試算に即して計算した場合であっても一千万人にはならないことを示したものであり、厚生労働省として厚生年金の適用漏れの人数を示したものではありません。

 厚生年金の適用促進については、法人登記簿や雇用保険のデータを活用して、適用漏れのおそれのある事業所の確実な把握に努めるとともに、現在、社会保障審議会に設置した専門委員会において、適用促進等についての検討を進めているところであります。

 続きまして、厚生年金に加入していない方のサンプル調査についてお尋ねがありました。

 会社で働いているのに厚生年金に加入していない理由としては、パートやアルバイトで短時間しか働いていない場合や、その会社が厚生年金の適用を受けない小規模な個人事業所である場合などのほか、本来会社として厚生年金に入るべきであるにもかかわらず、事業主が社会保険料の負担を免れたいとの理由、あるいは単に加入義務の知識が不十分であるなどの理由によって、厚生年金に入っていないという加入漏れの場合があると考えられます。

 問題なのは、本来会社として厚生年金に入るべきであるにもかかわらず入っていない場合ですが、その数は、設立または廃止により、常に変動するものであります。また、実際に事業所の調査を行って初めて把握できるものであることから、厚生労働省といたしましては、お尋ねのようなサンプル調査ではなく、厚生年金に加入していない事業所に対する加入勧奨や調査などに積極的に取り組み、適用促進に努めてまいりたいと考えております。

 次に、非正規雇用者が厚生年金に加入できないことの懸念についてのお尋ねをいただきました。

 昨年の社会保障・税一体改革において、三党合意に基づき、短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大を行うとともに、低所得かつ低年金の高齢者に対する福祉的な給付金制度を創設するなど、働き方の多様化等に対応してセーフティーネットを強化する一定の対応を講じたところであります。

 厚生年金の適用拡大に関しては、中小事業主の負担や雇用に及ぼす影響も考慮する必要があることから、一定程度の拡大にとどめる形となりましたが、引き続き適用拡大を進めていく方向性は三党で共有されていると考えております。

 一体改革関連法の附則や本法案にも適用拡大の必要性は明記されているところであり、これらの規定に基づいて検討を進めてまいります。

 次に、高所得者に対する年金給付のあり方と、税財源の役割についてのお尋ねがございました。

 高所得者に対する年金給付のあり方については、社会保障制度改革国民会議でも議論が行われ、高齢世代内の再分配を強化する観点からの検討が必要であること、その手段は、年金制度だけではなく、税制や他の社会保障制度における負担などの対応も含むさまざまな方法を検討すべきであることが提言されており、この方向性に沿って検討すべきものと考えております。

 保険料と税との役割分担については、国民会議の報告書でも触れられているように、無職者や低所得者も保険に加入できるよう保険料の負担水準を引き下げるために、社会保険制度に公費投入が行われていると考えております。

 その一方で、被用者年金制度においては、給与に応じた保険料負担を行い、定額の基礎年金給付が保障されるように、保険料財源においても一定の垂直的な再分配機能が果たされる仕組みになっております。

 この問題については、昨年三党で合意の末成立した社会保障制度改革推進法においても、社会保険への税の投入については、社会保険料に係る国民の負担の適正化に充てることを基本とすべきと規定されており、これに沿って対応をすべきと考えております。

 次に、世界の年金制度の潮流と我が国の年金制度改革についてのお尋ねがありました。

 年金制度について、自営業者をどのように取り扱うかは、OECD諸国で見ても、雇用労働者と同一の制度に加入する仕組みの国もあれば、別建ての制度を設けている国、我が国のように職業にかかわりなく加入する基礎的な年金制度のみに加入する国など、さまざまであると承知をいたしております。

 我が国においても、国民年金創設以来、自営業者を含めた所得比例の年金制度についての議論は行われてまいりましたが、国民会議の報告書にも言及されているとおり、正確で公平な所得捕捉等の条件は整っておらず、現時点における政策選択としては、現実的な制約下で実行可能な制度構築を図る観点から行われなければならないと考えております。

 国民会議の報告書では、条件が満たされた際に初めて可能になる将来の議論で対立して改革が進まないことは、国民にとって望ましいものではないことや、厚生年金の適用拡大などの課題は、所得比例年金に一元化していく立場からも通らなければならないステップであることが示されております。

 本法案に掲げた検討課題はこのような位置づけであることについて、御理解をいただきたいと思います。

 次に、社会保障の充実についてお尋ねがございました。

 消費税率の引き上げによる増収分については、全額を社会保障財源化することといたしており、その旨は消費税法にも明記されております。

 税制抜本改革法に従って消費税率が一〇%に引き上げられ、増収分が満年度化した場合、五%引き上げ分の十四兆円程度のうち、基礎年金国庫負担二分の一への引き上げの三兆円程度を含め、四%程度を社会保障の安定化に、一%程度の二・八兆円程度を社会保障の充実にそれぞれ向けることといたしております。

 次に、総合合算制度についてお尋ねがございました。

 総合合算制度につきましては、税制抜本改革法において既に検討規定が設けられていることから、プログラム法案に新たに規定は置いておりません。

 税制抜本改革法の規定に基づき、社会保障・税番号制度の本格的な稼働、定着を前提に、所得や資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含め、さまざまな角度から総合的に、導入について検討を行ってまいります。

 次に、社会保障の充実の進め方についてのお尋ねがございました。

 この法案に基づく社会保障の充実のうち、社会保障四経費に係るものについては、税制抜本改革法の施行により増加する消費税収入と、制度の重点化、効率化により必要な財源を確保しつつ、講ずることといたしております。

 個別の措置の実施スケジュールについては、今後、個別具体的に検討する必要がございますが、いずれにしても、急速な少子高齢化が進行する中、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を確立するために、制度の充実と重点化、効率化を同時に進め、世代間、世代内の公平性を確保してまいります。

 次に、介護保険の見直しについてお尋ねがございました。

 介護保険制度の見直しについては、予防給付の地域支援事業への移行、特別養護老人ホームの入所者の重点化、相対的に所得の高い方の二割負担などが検討事項とされておりますが、これは、効果的、効率的なサービス提供を実現しつつ、制度の持続可能性を高めていくことを目的といたしております。

 現在、社会保障審議会介護保険部会において、こうした事項について御議論をいただいているところであり、その議論を踏まえた上で、持続可能で安心できる介護保険制度を構築してまいりたいと考えております。

 続きまして、疾病予防、健康増進に関する取り組みについてのお尋ねがございました。

 いわゆる団塊の世代の全てが七十五歳以上となる二〇二五年に向け、国民の健康寿命が延伸する社会の構築を目指し、ことしが予防元年であるという意気込みで、厚生労働省を挙げて、予防、健康管理に係る取り組みを推進することといたしております。

 このため、八月末に、国民の健康寿命が延伸する社会に向けた予防・健康管理に係る取り組みを発表したところであります。

 具体的には、生活習慣病予防や介護予防の主要な取り組み、また、後発医薬品の使用促進や重複受診の防止といった、医療資源の有効活用に向けた取り組みにつきまして、省内連携して一体的に進めることとしております。

 これらの取り組みの推進により、二〇二五年に全体でおおむね五兆円規模の効果を期待いたしております。

 第十三問目であります。格差についてのお尋ねでございました。

 政府としては、頑張った人が報われる活力ある社会をつくるため、自助自立を第一に、共助、そして公助を組み合わせ、弱い立場の人にはしっかりと援助の手を差し伸べることが必要であると考えております。

 高齢化の進展や世帯人数の縮小などにより、再分配前の所得格差は拡大傾向にあるものの、社会保障や税による再分配後の状況は、近年、ほぼ横ばいで推移していると認識をいたしております。

 今後とも、格差拡大を防ぐ観点から、成長分野で求められる人材の育成、求職者支援制度などによる効果的な就労支援を実施するとともに、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大や生活困窮者対策の充実など、社会保障の機能強化によるセーフティーネットの拡充を図ってまいります。

 最後の御質問であります。見守りネットワークについてお尋ねがありました。

 住みなれた地域で自分らしい暮らしを続けられる仕組みを構築するため、地域包括ケアシステムの実現を推進しております。地域の多様な分野の関係者が協働し、高齢者や子供などを見守るなど、支援が必要な方に対する、地域の実情に応じた取り組みが行われております。

 このような取り組みも参考にしつつ、地域包括ケアシステムの実現に向け、引き続き新たな地域づくりを進めてまいります。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 長妻議員から、三点の質問がありました。

 まず、財政健全化目標の達成に向けた道筋についてのお尋ねであります。

 今般の社会保障・税一体改革におきましては、消費税率引き上げ分は、全額、社会保障の充実、安定化に充てられます。

 経済政策パッケージは、競争力強化策や復興、防災・安全対策などに重点化をし、経済の好循環をつくっていくものでありまして、経済成長を通じて税収を増加させてまいります。

 こうした取り組みとともに、国、地方の基礎的財政収支の改善につきましては、中期財政計画にのっとってまいります。

 二〇一五年度までに二〇一〇年度に比べ赤字の対GDP比を半減するために、経済再生と財政健全化の両立を図る観点から、今後二年間、国の一般会計の基礎的財政収支を少なくとも四兆円程度ずつ改善してまいります。

 二〇二〇年度の黒字化に向けましては、一般会計上の基礎的財政収支を黒字化させることを基本としますが、具体的には、二〇一五年度の予算等を踏まえまして経済、財政を展望し、その後の五年間について、さらに具体的道筋を描いてまいります。

 次に、目指すべき日本型資本主義についてお尋ねがありました。

 安倍内閣といたしましては、短期的な投機に走るのではなく、長期的な投資をより重視する市場経済システムを確立し、イノベーションが連続的に起きる経済を目指してまいります。

 このために、経済財政諮問会議のもとに専門調査会を設置し、こうした実体経済主導の持続可能な市場経済システムの姿について議論を行っているところであります。

 企業が多様なステークホルダーとの結びつきを重視していくもとで、中長期的な投資やイノベーションが進み、質の高い雇用が増加する新しい成長が実現するよう、経済運営を図ってまいります。

 最後に、高齢人口が最大になる三十年後の社会像についてのお尋ねであります。

 我々が目指すべき姿は、人口減少と高齢化が進展する中にあっても、グローバル化に対応しつつ、強い日本、強い経済を実現することを通じて、全ての人々が生まれた喜びと誇りを持てる国をつくることであります。

 このため、世界で一番企業が活躍しやすい国を目指すとともに、健康長寿、生涯現役社会を構築し、高齢者を含めた全員参加型社会を実現してまいります。

 また、医療・介護保険、公的年金につきまして、受益と負担の均衡がとれた制度へと具体的な改革を進め、高齢者の方々が安心して暮らせる社会を構築してまいります。

 これらによりまして、我が国の経済社会が再び希望と活力を取り戻すことを目指してまいります。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 国民負担率の水準に関するお尋ねがありました。

 国民負担率につきましては、経済財政運営において、国民の活力を損なうことのないようにすることを念頭に置きつつも、少子高齢化が進展する中、社会保障制度の持続可能性を確保するという観点から、自己負担のあり方も考慮しつつ、受益に応じた負担を国民にお願いしていくことを通じて、その水準が決まっていくものと考えております。

 社会保障費の削減方針に関するお尋ねもありました。

 政府は、国、地方を合わせた基礎的財政収支につきまして、財政健全化目標を設定いたしております。

 その上で、本年八月には、中期財政計画を策定し、平成二十六年度及び二十七年度の各年度において、国の一般会計の基礎的財政収支を少なくとも四兆円程度ずつ改善するとの具体的な道筋を定めております。

 こうした目標に沿って、社会保障費も聖域とはせず見直し、自然増を含め、合理化、効率化に最大限取り組んでいく必要があると考えております。

 金銭に換算できない国民負担に関するお尋ねがありました。

 社会保障など、国民の受益と負担のあり方を議論していく際には、幅広い観点から検討を加えていくことも必要なことと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次の質疑者、足立康史君。

    〔足立康史君登壇〕

足立康史君 日本維新の会の足立康史です。

 私は、政府提出の持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案について、日本維新の会を代表して質問を行います。(拍手)

 今回の社会保障制度改革は、昨年六月の民自公の三党合意が出発点となりました。私は、民主党も含めたこれら三党のことを、常々、社会保障制度改革国民会議にちなんで、国民会議派と呼んでいるのですが、今回の比較的穏健な社会保障制度の見直し案は、いわば国民会議派の政策、そう呼んでも間違いではないでしょう。

 私は、プログラム法案の内容に入る前に、この国民会議派による社会保障制度の見直しに今や正統性なしという観点から、一つの事実を紹介いたしたいと存じます。

 それは、昨年十二月の総選挙で、国民会議派は敗北を喫したという事実です。

 日本維新の会とみんなの党という改革政党が躍進し、その合計議席が七十二まで大きく飛躍する一方、三党合意がなされた昨年の六月時点で衆院の実に九〇%を占めていた国民会議派は、八〇%を割るところまで勢力を減らしました。

 総選挙で敗北を喫した勢力の一部が、多数をいいことにその政策を実現したとしても、近い将来、必ずそのひずみが顕在化をし、再度の政権交代の引き金になると、ここに予言をしておきたいと存じます。

 そもそも、社会保障政策には予見可能性が特に重要であり、その政策の枠組みが政権の移動とともに変動したり、あるいは負担や給付のレベルが大きく変化したのでは、とても国民の信頼を得ることはできません。

 国民会議は、そうした観点から当時の与野党の合意形成を図るための仕組みだったわけですが、昨年の十二月の総選挙を経て、その国民会議の正統性は既に失われていると断じざるを得ません。この点について、社会保障・税一体改革担当大臣の見解を求めます。

 さらに、社会保障プログラム法案は、昨年八月に成立をした社会保障改革推進法に規定する法制上の措置に値しません。

 仮に、近い将来の政権入りをうかがう日本維新の会も賛成できる内容なのであれば、その賛否を国会の場で明らかにしておくということは、社会保障政策の安定性という観点から意味のあることではありますが、単に与党である自公だけでこの法案を成立させるのであれば、その効果は閣議決定とほとんど違いがありませんし、逆にその政策の不安定性を国民に印象づけるだけであると、ここに明確に指摘をしておきたいと存じます。

 次に、消費増税との関連でありますが、日本維新の会は、社会保障の抜本改革など、構造改革なき消費増税には反対である、こう明確に宣言をいたします。

 なぜ社会保障の抜本改革が不可欠なのか、その理由は三点あります。

 第一は、世代間格差の拡大であります。

 政府・与党も、全世代型とか、年齢から能力へと銘打って、受益と負担の見直しに言及、問題の所在は認識しているようでありますが、今回のプログラム法案に盛り込まれている方針は、単なるびほう策ばかり、スローガン倒れも甚だしいと言わざるを得ません。

 社会保障等の受益と負担の世代間格差が一世帯当たり一億円にも達している状況を放置すれば、社会保障制度の信認が崩壊の一途をたどるのは明らかであります。

 全世代型の趣旨がプログラム法案にどう反映しているのか、具体的な数字を用いて示すことができますか。

 いわゆる年金の積立方式についても、少なくとも検討はすべきではないでしょうか。高校授業料の無償化に所得制限を入れるのであれば、基礎年金における高所得高齢者の払い戻し制度、いわゆるクローバックについても、即時に導入をすべきではないでしょうか。

 第二に、子ども・子育て政策の扱いも問題であります。

 政府・与党は、全世代型の一環として、子ども・子育て支援新制度を打ち立てていますが、あくまでも消費増税が前提となっているために、いわば、子供施策を増税の人質にとっているようなものであります。

 政府は、税収のいかんにかかわらず、子供政策の優先順位を引き上げる覚悟がありますか。少子化担当大臣に伺います。

 医療保険の窓口負担についても、なぜ、乳幼児は二割負担で、高齢者は一割負担などということが容認されますか。投票率の高い高齢者は、投票できない乳幼児よりも大事ということでしょうか。政府の明確な答弁を求めます。

 第三は、無年金、低年金の問題であります。

 民主党政権には問題も多く、だからこそ、政権が改めて自民党、公明党に戻ったわけでありますが、民主党の問題提起それ自体には、正しいものも多くありました。その最大の問題提起の一つが、無年金、低年金問題であります。

 これだけ問題が深刻化し、改善の兆しが見えない中で、プログラム法案に無年金、低年金の問題への抜本対策がないというのは容認できません。無年金、低年金の問題に対する抜本対策を検討すべきではないですか。

 こうした深刻な問題を放置したままの増税に、さすがの政府・与党も負い目があるのか、安倍首相は、十月一日の記者会見で、消費税収は社会保障にしか使いませんと明言し、今回の増税が社会保障目的であることを強調しています。しかし、お金に色はない中で、このフレーズにどういう積極的な意味がありますか。

 幾ら全額社会保障の財源に使うといっても、増税額と同じ金額を、国土強靱化の名のもとに、経済効果が少ない従来型の公共事業やばらまき政策に投入しているようでは、八%や一〇%の増税など焼け石に水であり、何のための増税かと国民が不審に思うのも当然ではないでしょうか。

 そもそも、今回のプログラム法案の前提になっている社会保障制度改革推進法には、年金と医療及び介護においては、社会保険制度を基本とする旨が明記されています。

 そうであれば、増税をする前に、保険制度の負担と給付の抜本見直しを行うのが先ではないでしょうか。取りやすいところから取るという安易な姿勢で、本当にこの日本の社会保障制度を守っていくことができるのでしょうか。

 自民党政権は、一貫して税財源の投入を拡大してきた張本人であり、当事者に政策転換が困難なことは理解をいたしますが、そうであれば、社会保険制度が基本などと空虚な方針は、国民の前ではっきりと撤回をされたらいかがでしょうか。

 日本維新の会は、社会保障財源は原則社会保険料で賄うべきと考えており、平成二十五年度予算案の審議においても、医療の被用者保険から国庫を引き揚げることを前提とした医療保険の一元化を含む予算修正案を六十年ぶりに国会に提出いたしました。

 政府・与党も、仮にも保険制度を維持するというのであれば、その覚悟の片りんだけでも、この国会で国民に対して示すべきではないでしょうか。

 最後に、成長戦略との関連であります。

 現政権も前政権も、医療や介護といったヘルスケア分野が次代の日本の繁栄を築いていくための重要な成長分野であると打ち出していますが、政府から出てくるものは空虚なビジョンばかりです。

 私は、ひとりよがりの成長戦略などなくても、次の二つについて政府が明確な方針を打ち出せば、この分野は大きく成長し、国民の生活を豊かに潤していくと考えています。

 第一は、医療の情報化であります。

 日本の医療は、言うまでもなく、皆保険制度であり、この制度のもと、レセプトのみならず、DPCデータや電子カルテなどを通じて蓄積されるビッグデータを活用すれば、世界のどの国でもまねのできない形で医療の質を高めていくことができます。

 そのためには、いわゆるマイナンバー制度の実施に合わせて、統合した形で医療等の情報化を進めていくことが、投資の効率性から見ても有効ではないでしょうか。情報化は、医療制度改革のセンターピンであり、政府の明確な方針を求めます。

 もう一つは、医療法人の経営の適正化であります。

 まだ広くは知られていませんが、この日本に存在する各種法人の中で、いまだに会計基準が整備されていないのは医療法人だけ。会計基準というのは、経営に客観性を与えるための枠組みであると同時に、課税所得の算定の基礎にもなるものであります。中小企業庁が取り組んできた中小企業の会計に関する研究会などもしっかり勉強していただいて、厚労省が主導して取り組むべきであります。

 特に、医療の場合、八五%は保険料を含めた公費で賄われているわけであり、利害関係者である納税者に対し十分な情報提供を行うという観点から、公開会社並みの情報開示を求めるべきではないでしょうか。

 会計基準なき公費の投入は、いわば、パッキンなき蛇口から水を流し続けているようなものであると指摘をし、政府の明確な関与を求めます。

 私は、冒頭、社会保障政策には予見可能性が特に重要であると指摘をいたしました。つまり、社会保障政策は、政権交代に対し、ロバスト、すなわち強靱でなければならないのです。国土の強靱化も重要でありますが、社会保障の強靱化も劣らず重要であります。

 こうした観点から、日本維新の会は、社会保障調査会を設置し、次期総選挙に向けて、政権を担うに足る政策案と政党ガバナンスを磨き上げていく所存であります。

 皆さん、国民会議派と改革派、維新派との闘いは、まだ始まったばかりであります。日本維新の会の同志を初め、改革派の皆様の奮起と団結をお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 足立議員からは、八問ほど質問をいただきました。

 まず初めに、全世代型の社会保障への転換とクローバック制度についてのお尋ねがありました。

 社会保障の受益と負担の世代間格差について御指摘をいただいたわけでありますけれども、社会保障制度改革国民会議の報告にも示されているように、社会保障は、子供による親の私的扶養の社会化であり、社会保障が世代間格差をつくり出しているわけではありません。

 加えて、高齢世代への給付は、現役世代による親の扶養や介護の負担軽減の側面も持っており、世代間の格差については、少子高齢化により増加する現役世代の私的な負担が軽減されることもあわせて評価するべきであると考えております。

 世代間の不公平の主張の背景には、我が国の社会保障が、給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心で、若い世代に社会保障のメリットが感じられにくいところがあるというふうに考えております。

 このような点も踏まえ、今後、税制抜本改革法に従って消費税率が一〇%に引き上げられ、増収分が満年度化した場合には、社会保障の充実に向けられる二・八兆円程度のうち、四分の一に当たる〇・七兆円程度を子ども・子育て支援に充てることといたしております。

 高所得者に対する年金給付のあり方については、社会保障制度改革国民会議でも議論が行われ、高齢世代内の再分配を強化する観点からの検討が必要であること、その手段は、年金制度だけではなく、税制や他の社会保障制度における負担などの対応を含むさまざまな方法を検討すべきであることが提言されており、この方向性に従って検討すべきであるものと考えております。

 次に、医療保険の窓口負担についてのお尋ねがございました。

 高齢者の患者負担については、加齢に伴い、所得は低くなる一方、医療費は特に高くなることから、こうした特性を十分に考慮する必要があり、他方で、世代間の負担の公平といった観点も踏まえる必要があります。

 このため、現行制度では、高い所得を有する方は現役世代と同じ三割負担としつつ、それ以外は、七十五歳以上は一割負担、七十歳から七十四歳は二割負担であるものの、現在まで一割負担といたしております。

 また、乳幼児期の自己負担については、乳幼児期は医療費が高いことや、少子化対策の観点から、義務教育就学前の乳幼児の自己負担を二割としております。

 予算措置により一割としている、七十から七十四歳の患者負担につきましては、社会保障制度改革国民会議の報告書では、世代間の公平を図る観点からやめるべき、低所得者の負担に配慮しつつ、新たに七十歳になった者から段階的に進めるとされています。

 高齢者が安心して医療を受けられるよう、特に配慮を要する低所得者対策とあわせて検討を行い、できる限り早く実施すべく、来年度の予算編成過程で検討してまいります。

 次に、年金制度の積立方式への移行についてのお尋ねがありました。

 現行の年金制度は、賦課方式を基本としつつも、一定の積立金を保有しており、これにより、少子高齢化の進んだ将来の保険料負担の緩和と平準化が図られております。現行制度は、こうした積立金を保有するメリットも生かした財政運営を行っております。

 完全な積立方式への移行については、いわゆる二重の負担が特定の世代に生じるなど、さまざまな課題があります。また、国民会議報告書でも触れられているとおり、積立方式への移行が世代間格差などの人口構造の変化による問題を自動的に解決するわけではないことは、国際的な年金議論における共通認識となっており、今後の改革議論もこの考え方に立脚すべきであると考えております。

 なお、本法案では、年金制度に関し、世代間や世代内の公平性を確保する観点から、高所得者の年金給付のあり方や公的年金等控除を含めた年金課税のあり方の見直しについて検討することと明記しているところであります。

 次に、無年金、低年金問題への対策についてのお尋ねがありました。

 昨年の社会保障・税一体改革において、無年金、低年金問題に対しては、受給資格期間の短縮、非正規労働者に対する厚生年金の適用拡大、低所得かつ低年金の高齢者に対する福祉的な給付金制度の創設など、負担に応じた給付という社会保障制度の枠組みの中で、とり得る対策を講じたところであります。

 さらに、無年金、低年金の発生を防止する観点から、保険料の収納対策を強化することも重要であります。

 先般、年金保険料の徴収体制の強化等について、内閣官房副長官と関係省庁政務官による検討の結果、論点整理が取りまとめられたところであります。この方向性に従って、現在、厚生労働省において、専門委員会を立ち上げ、具体的な検討を進めており、可能なものから速やかに実施してまいりたいと考えております。

 次に、社会保険制度についてお尋ねがありました。

 社会保険方式は、保険料を支払った人にその見返りとして受給権を保障する仕組みであり、給付と負担の関係が、税と比較して明確であるという特徴があります。

 我が国が世界に誇る国民皆保険・皆年金の仕組みは、老後の生活や病気といった重大なリスクに対して、保険というリスク分散の考えに立つことで、一定の困窮者だけでなく、国民全体に対する普遍的な制度として実現したものと考えております。

 今後とも、社会保障制度改革推進法の趣旨に従って、年金、医療、介護は社会保険方式を基本としつつ、低所得者の保険料軽減等に対し適切な公費投入を行うことにより、持続可能な社会保障制度の確立を目指してまいります。

 次に、医療保険制度の財源についてのお尋ねがございました。

 日本の医療保険制度は、社会保険方式のもと、低所得者などの保険料が高くなり過ぎないようにするとともに、制度を持続可能なものとするため、社会保険料を基本としつつ、税負担による公費財源も組み合わせて成り立っております。

 被用者保険の分野においても、中小企業のサラリーマンを対象としている協会けんぽは、大企業中心の健保組合と比べ財政基盤が脆弱であることから、給付費の一部を国庫が補助しております。

 この国庫補助の廃止は、現時点では考えていませんが、改正健康保険法の附則では、協会けんぽの国庫補助のあり方についての検討規定が盛り込まれており、これに従って検討をしていくことになると考えております。

 次に、医療の情報化についてお尋ねがございました。

 医療サービスの維持向上や医療資源の有効活用のための手段として、医療分野で情報化を推進していくことは大変重要であると考えております。

 このため、患者の診療情報を地域の医療機関の間で共有する取り組みの普及、展開や、レセプトや特定健診情報の全国規模のデータベースを活用した分析、研究の推進、さらに、保険者等によるデータに基づく保健指導や健康づくりなどの取り組みを着実に進めてまいりたいと考えております。

 さらに、医療情報に番号制度を導入することについては、まずは、平成二十八年一月から施行される社会保障・税番号制度の定着を図ることが必要と考えております。

 その上で、医療情報の保護と利活用を図るために必要な措置や国民的理解の醸成といった、導入に向けての環境づくりのための具体的な方策について検討をしてまいります。

 最後の質問でございます。医療法人の経営についてお尋ねがございました。

 医療法人会計基準については、四病院団体協議会を中心に、具体的な会計処理の方法等に係る検討が進められており、年内に取りまとめられるという方向性を聞いております。

 厚生労働省といたしましては、経営の安全性、透明性を確保し、納税者を含めた関係者への十分な情報提供を行うという観点からも、この会計基準が早急に策定されることが重要であると考えております。その取りまとめをしっかり支援するとともに、策定され次第、これを活用して、積極的な情報開示が図られるよう努めてまいります。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 政権交代と国民会議の正統性についてのお尋ねであります。

 社会保障・税一体改革につきましては、自民、公明、民主の三党で進めてきた経緯がございまして、国民会議につきましても、三党合意に基づき取りまとめられました改革推進法に基づき設置をされたものであり、今回の法案は、この国民会議の審議の結果等を踏まえて取りまとめたものであります。

 このように、三党で進めてきた経緯につきましては引き続き尊重する必要があり、その基本的な枠組みは大事にする必要があると考えております。

 また、社会保障・税一体改革の推進につきましては、御党も含め、各党の御理解をいただけるよう努力をしてまいります。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣森まさこ君登壇〕

国務大臣(森まさこ君) 子ども・子育て支援についてのお尋ねがありました。

 安倍内閣では、子供を産み育てやすい国づくりを進めることを内閣の基本方針に定めており、また、今般提出した法案についても、「少子化対策を全ての世代に夢や希望を与える日本社会の未来への投資であると認識し、幅広い観点からこれを講ずる」としています。

 子育て支援の充実を含めた少子化対策の推進は我が国の最重要課題の一つであり、早ければ、平成二十七年四月からの子ども・子育て支援新制度の施行に向けた着実な取り組みを進めるとともに、新制度の施行を待たずに、待機児童解消加速化プランの取り組みを推進しているところであり、引き続き、担当大臣として、子ども・子育て支援の充実にしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 古屋範子君。

    〔古屋範子君登壇〕

古屋範子君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案について質問いたします。(拍手)

 社会保障と税の一体改革は、当時与党であった民主党、そして自民党、公明党の三党がその必要性を共有し、修正協議を経て、昨年、税制抜本改革法、年金改革関連法、子ども・子育て改革関連法が成立し、改革が動き出しました。

 あわせて、議員立法として、社会保障制度改革推進法が成立。同法に基づいて設置された社会保障制度改革国民会議における精力的な議論の結果、本年八月に、社会保障改革の道筋としての報告書が取りまとめられました。議題となっているプログラム法案は、同報告書をベースにしつつ、今後進めるべき改革の方向性と実施時期等を明確にしたものであり、着実に改革を前に進める上で極めて重要な法律であります。

 逆に言えば、本法案の成立とそれに基づく改革が実行に移されなければ、社会保障と税の一体改革は完結しません。

 本プログラム法案の意義について、甘利一体改革担当大臣の答弁を求めます。

 消費税の財源は、税制抜本改革法において、現行地方消費税分を除き、年金、医療、介護、子育て支援等の社会保障に全て充てられることとなっています。また、引き上げ分のうち、消費税一%相当分は社会保障の充実に、残り四%は基礎年金国庫負担割合二分の一への恒久的な引き上げなどを含めた社会保障の安定化に充てられることが確認されています。

 社会保障の充実については、政府によれば、満年度ベースで、合計二・八兆円程度となっています。

 うち、子ども・子育て支援で〇・七兆円程度、年金で〇・六兆円程度が充当されることが、関連法の成立等で確定しています。

 また、医療・介護分野は一・五兆円程度ですが、どのような施策の充実を検討しているのか、厚生労働大臣、わかりやすく説明をしてください。

 以下、法案に基づき、ポイントを絞って質問します。

 法案では、自助自立という視点が明文化され、そのための環境整備に努める旨が規定されています。

 みずからが働いてみずからを支える自助はもちろん基本として重要ですが、自助自立を強調することで共助、公助が相対的に縮小するのではないかとの懸念もあります。

 自助、共助、公助のあり方を含めた社会保障のあるべき姿について、一体改革担当大臣の答弁を求めます。

 法案では、講ずべき社会保障制度改革の検討項目と実施時期及び法案の国会提出時期のめどが明記をされています。

 今後、医療や介護、難病対策などの個別施策の改革の具体的な内容が検討され、工程表に沿って具体化されることになりますが、財源の確保も含め、工程表どおり確実に実行に移していくべきと考えますが、一体改革担当大臣の決意を求めます。

 ちょうど一カ月前、総理は、消費税率八%への引き上げを決定しました。同時に、簡素な給付措置を初めとする低所得者対策等も決めましたが、これらは一時的な措置であり、他方で、社会保障制度における恒久的な低所得者対策も重要です。

 法案には、国保や後期高齢者医療及び介護の保険料について低所得者の負担軽減措置を講じる旨を規定していますが、社会保障の充実における低所得者対策について、田村厚生労働大臣の答弁を求めます。

 法案では、新たに、総理を本部長とする社会保障制度改革推進本部と有識者等から構成をされる社会保障制度改革推進会議を設置することとしています。

 特に、推進会議は、従来の国民会議の後継組織として、改革の進捗状況を把握し、さらに、二〇二五年を見据えて総合的に検討するとしていますが、この趣旨は、本法案による対応以後の制度改革について議論を行うということでしょうか。推進本部との位置づけの違いも含め、一体改革担当大臣の答弁を求めます。

 医療及び介護について伺います。

 日本の医療制度は、世界に誇る皆保険制度を含め、世界的に高い水準にあるものの、一方、現場では、救急医療のあり方、医師、看護師等のマンパワーの不足、特に地方での医師不足など、課題は多岐にわたります。

 特に、少子高齢化の進展による医療ニーズの変化と医療提供体制のミスマッチが解消できなければ、国民医療を守れないだけではなく、医療全体の非効率化をさらに拡大させてしまいます。介護との連携を含めた抜本的な改革が不可欠です。

 医療改革は、平成三十年の次期医療計画を待つことなく改革を急ぐべきと考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 また、皆保険を支える医療保険財政基盤の安定化、特に、国民健康保険の改革は避けられません。公費による支援を拡充しつつ、財政運営を都道府県化していく等の改革の方向性に沿い、見直しを進めていくべきです。

 しかし、公費の投入が少ない、都道府県への運営移行によって域内の保険料が統一されれば保険料が上昇する市町村が生じるなど、懸念の声も上がっております。

 いずれにしても、今後の地方自治に重要な影響を及ぼす改革であることから、国保の担い手である地方自治体と十分に協議を行って進めることが重要と考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 あわせて、保険料の賦課徴収、保健事業の実施等における都道府県と市町村との役割分担についての見解もお聞かせください。

 被用者保険である協会けんぽも、財政的には極めて厳しい状況にあります。改正健康保険法附則、すなわち、協会けんぽの国庫補助率の見直しの検討規定も踏まえつつ、適切な対応が必要と考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 医療制度改革と介護保険制度の見直しは、地域における医療と介護の連携が強く求められている中で、一体不可分であります。中でも、地域包括ケアシステムの確立が極めて重要となってきますが、法案にあるとおり、地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住みなれた地域で、その有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるようにすることが欠かせません。

 地方自治体はもとより、患者や要介護者、家族の意思を尊重した環境づくりが重要と考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 関連して、認知症対策については、地域における早期診断、治療、ケア、相談など、総合的な支援体制の充実を図るべきであり、特に、認知症デイサービスやショートステイの充実、訪問看護の強化など、地域ケアの充実が必要と考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 子ども・子育て支援については、総理のリーダーシップもあり、待機児童解消加速化プランを初め、前倒しで整備が進んでおり、高く評価します。今後、追加の財源も含め、地方自治体など関係者との調整を進めながら準備に万全を期すよう、強く求めます。森少子化担当大臣の答弁を求めます。

 次世代育成支援対策推進法は、次世代育成支援のための行動計画の策定を義務づけることにより、ワーク・ライフ・バランス、仕事と子育ての両立に一定の成果を上げてきました。しかし、他方で、認定取得のインセンティブ・メリットに乏しく、広がりに欠ける面があることも否めません。

 今後の法律延長の検討に当たり、例えば、同法に基づく企業への税制優遇制度の拡充などを検討すべきと考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 そのほか、難病対策について、公平かつ安定的な制度が確立する方向で抜本改革がなされることは、高く評価をいたします。

 最後に、一言申し上げます。

 将来の子供たちに安心の社会保障制度を残していくことが私たちの使命です。

 特に、今般のプログラム法案は、自民、公明、民主の三党合意で策定した改革推進法に基づき設置された国民会議の審議の結果等を踏まえて取りまとめたものです。また、先般、引き続き、当面の社会保障制度の充実のあり方について、三党で協議することにもなりました。

 こうした経緯に鑑み、ぜひ、民主党には、真摯な議論の上、本法案に賛成され、ともに国民に対する責任を果たしていかれるよう強く要望し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 四点の御質問であります。

 まず、本法案の意義についてのお尋ねがありました。

 社会保障・税一体改革につきましては、自民、公明、民主の三党で進めてきた経緯がありまして、今回提出をいたしました法案につきましても、三党で取りまとめた社会保障制度改革推進法や、それに基づき設置をされました社会保障制度改革国民会議の審議の結果等を踏まえて取りまとめられたものであります。

 この法案は、今回の消費税率引き上げによりまして必要な財源を確保しつつ実施する社会保障制度改革の全体像や進め方を明らかにし、受益と負担の均衡がとれた持続可能な制度を確立するためのものでありまして、社会保障・税一体改革を推進する上で、重要な法案であります。

 次に、自助、共助、公助のあり方を含めた社会保障のあるべき姿についてのお尋ねであります。

 社会保障におきまして、共助と公助がセーフティーネットとしてしっかりと役割を果たすためにも、自助自立を基本とすることが大事だと思います。その上で、共助と公助を組み合わせ、弱い立場の人にはしっかりと援助の手を差し伸べることが重要であります。

 こうした考え方のもとに、少子高齢化の進展、雇用慣行や家族形態の変化など、社会経済情勢の変化に応じて、自助、共助及び公助を最も適切に組み合わせながら、受益と負担の均衡がとれた持続的な社会保障制度を確立することが重要だと考えております。

 次に、社会保障制度改革の着実な実施についてお尋ねがありました。

 受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度を確立するためには、必要な財源を確保しつつ、今回の法案に盛り込まれた改革の全体像及び進め方に基づき、改革を着実に実現していくことが重要であると考えております。

 このために、本法案では、総理及び関係閣僚により構成をされる社会保障制度改革推進本部を内閣に設置いたしまして、総理のリーダーシップのもと、改革を総合的かつ計画的に推進するための取り組みやフォローアップを行うなど、改革を着実に進めることといたしております。

 最後に、社会保障制度改革推進会議の設置の趣旨についてお尋ねがありました。

 内閣に設置をすることとしている、有識者から成る社会保障制度改革推進会議におきましては、本法案に盛り込まれた当面講ずべき改革の進捗状況を把握しながら、いわゆる団塊の世代が全て七十五歳以上となる二〇二五年を展望しつつ、中長期的な改革について総合的に検討することとしております。

 また、総理及び関係閣僚により構成をされる社会保障制度改革推進本部におきましては、当面講ずるべき改革を円滑に推進するとともに、改革推進会議の審議の結果等を踏まえて対応を検討するなど連携もとりながら、社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することといたしております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 古屋範子議員からは、八問ほど頂戴いたしました。

 まず、医療・介護分野の充実策についてのお尋ねでございますけれども、税制抜本改革法に沿って消費税率が一〇%に引き上げられ、増収分が満年度化した場合、五%引き上げ分の十四兆円程度のうち、二・八兆円程度を社会保障の充実に向けることといたしております。

 医療・介護分野については、このうち一・五兆円程度を充てることといたしておるわけでありますけれども、病床機能の分化、連携による、入院期間の短縮を通じた早期社会復帰の実現や、受け皿となる地域の病床、在宅医療、介護の充実を進めるほか、国保や後期高齢者医療制度、介護保険の低所得者などの保険料負担の軽減や、低所得者等に係る高額療養費の上限額の引き下げを図ります。

 また、難病、小児慢性特定疾患に係る公平かつ安定的な医療費助成制度を確立し、その対象となる疾患の拡大に取り組んでまいります。

 次に、低所得者対策についてお尋ねがございました。

 プログラム法案の中で、特に低所得者対策を念頭に置いたものとして、国保や後期高齢者医療の低所得者の保険料負担の軽減、介護保険の第一号被保険者の保険料負担に係る低所得者の負担の軽減、さらには、低所得者等に係る高額療養費の上限額の引き下げ、低所得高齢者等への年金生活者支援給付金の支給などがあります。重複したところは、お許しをいただきたいと思います。

 これらの取り組みをしっかりと推進することで、国民が安心できる社会保障制度を構築してまいります。

 次に、医療改革についてお尋ねをいただきました。

 少子高齢化の進展に伴う疾病構造の変化に対応し、住みなれた地域で、必要な医療・介護サービスを受けながら、継続して生活を送ることができる環境の整備が必要となってきております。

 本法案においても、地域の医療ニーズに対応するため、病床機能の分化、連携を通じた医療提供体制の改革と地域包括ケアシステムの構築を一体的に行うこと、地域における医療従事者の確保や勤務環境の改善を講じることについて検討する旨が規定されております。

 本法案の規定に基づき、医療提供体制の改革については、次期通常国会に必要な法案を提出できるよう、検討を進めておるところでございます。

 次に、国民健康保険の保険者、運営等のあり方についてのお尋ねがありました。

 国民健康保険については、財政支援の充実等により、財政上の構造的な問題を解決することとした上で、財政運営を初めとして都道府県が担うことを基本としつつ、保険料の賦課徴収、保健事業の実施等に関する市町村の役割が積極的に果たされるよう、都道府県そして市町村との適切な役割分担について検討をしてまいります。

 国民健康保険の保険者、運営等のあり方は、地方自治に重要な影響を及ぼすものであり、今後、保険料設定のあり方も含め、地方団体と十分に協議を行い、御意見を伺いながら対応してまいりたいと考えております。

 続きまして、協会けんぽの国庫補助率についてのお尋ねがございました。

 協会けんぽは、みずからは健康保険組合の設立が困難である中小零細企業の労働者とその家族が加入できるよう設立された保険者であり、その財政基盤の安定化は重要な課題でございます。

 このため、協会けんぽへの財政支援については、前通常国会で成立した健康保険法等の一部を改正する法律により、国庫補助率を一三%から一六・四%に引き上げる等の措置を講じたところでございます。同法の附則において、今後の協会けんぽへの国庫補助のあり方についての検討規定が盛り込まれており、これに沿って社会保障審議会医療保険部会等においても検討していくことになると考えております。

 次に、地域包括ケアシステムの構築についてお尋ねがございました。

 国民の多くは在宅での介護を希望し、また、ひとり暮らし高齢者や認知症高齢者等が増加する中で、在宅医療・介護を充実させ、地域包括ケアシステムの構築を推進することが重要でございます。

 このため、在宅の重度の要介護高齢者も含め、高齢者ができ得る限り地域で暮らし続けられるよう、病床機能の分化、連携を図りつつ、在宅医療や二十四時間対応のサービスの推進、医療、介護連携の強化などを図ることが必要であり、厚生労働省といたしましても、国民の期待に応えられるよう、取り組みを進めてまいりたいと考えております。

 次に、認知症施策についてお尋ねがございました。

 認知症施策の推進に当たっては、早期診断、治療、ケア、相談など、総合的な支援体制が重要と考えております。

 このため、厚生労働省では、認知症の方ができる限り住みなれた地域のよい環境で安心して暮らし続けることができるよう、認知症初期集中支援チームの創設による早期支援や、また、地域での生活を支えるためのさまざまな在宅サービスの充実などを盛り込んだ認知症施策推進五カ年計画を策定しており、今後とも、同計画の着実な推進に努めてまいりたいと考えております。

 最後に、次世代育成支援対策推進法に基づく企業への税制優遇制度についてのお尋ねがございました。

 次世代育成支援対策推進法の延長につきましては、本年十月一日に決定した、成長戦略の当面の実行方針を受け、次期通常国会への改正法案提出を目指し、十月より、労働政策審議会で議論を開始したところでございます。

 御指摘のとおり、現在、次世代育成支援対策推進法に基づく認定制度に対する税制上の優遇措置があり、これは平成二十五年度までの措置とされているところでありますが、引き続き、税制上の優遇措置を活用しながら、仕事と家庭の両立を支援する環境を整備していく必要があると考えており、平成二十六年度税制改正要望を行っているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣森まさこ君登壇〕

国務大臣(森まさこ君) 子ども・子育て支援についてのお尋ねがありました。

 昨年八月に成立した子ども・子育て関連三法に基づき、早ければ平成二十七年四月からの本格施行に向けて、現在、子ども・子育て支援新制度の実施に必要な各種基準などについて、鋭意検討、準備を進めております。

 また、政府では、待機児童の解消に向けて、新制度の施行を待たず、待機児童解消加速化プランの取り組みを推進しているところです。

 これらに必要な財源については、追加財源を含め、しっかりと確保できるよう取り組んでまいります。

 また、新制度の円滑な実施に向けて、子ども・子育て会議等において、地方自治体を初め関係者の御意見を丁寧に伺いつつ、十分に調整を図りながら、地域の多様なニーズに応えて、子育て支援が充実していくよう万全を期してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 中島克仁君。

    〔中島克仁君登壇〕

中島克仁君 みんなの党の中島克仁です。

 私は、みんなの党を代表いたしまして、ただいま議題となりました、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案について質問をいたします。(拍手)

 本法律案は、我が国が、人類史上経験をしたことのない未曽有の超高齢化社会、人口減少社会を急速に迎えつつある中で、少子化、医療制度、介護保険制度、公的年金制度について、受益と負担の均衡を図り、持続可能な社会保障制度を確立するため、改革の検討項目、改革の実施時期を明らかにすることを目的としております。

 一方で、年々膨れ上がる社会保障費に対して、現在の制度維持のために、政府は、来年四月からの消費税増税を決めました。

 我が党も、社会保障制度の抜本的な見直しが必要だという認識ですが、増税の前に、また、増税による税収を当て込んだ社会保障改革をやる前に、やるべきことがあると訴えております。

 やるべきことの第一は、歳入庁設置により、徴収漏れの防止と、収入の増加、給付と負担の適正化を図ることであります。

 社会保障の重要な財源である保険料収入については、不公平の是正もなされず、徴収の非効率も放置されたままです。厚生年金の加入漏れや保険料収入の徴収漏れは、十兆円にも上ります。歳入庁を設置して是正をすれば、増税の必要はありませんし、国民の利便性向上や行財政改革にもつながります。

 そこで、厚生年金の徴収漏れ対策、また、歳入庁設置についての厚生労働大臣のお考えをお聞かせください。

 政府の論点整理では、歳入庁設置にはさまざまな問題があるとされておりますが、既に歳入庁を導入している諸外国の実態を調査されたのでしょうか。その上で、メリット、デメリットを整理されたらいかがでしょうか。担当大臣のお考えをお聞きします。

 第二に、岩盤規制の一部である医療・介護分野の改革です。長きにわたりその制度構造の中核をなしてきた組織の改革が必要だと考えます。

 国民会議の提言の中に、医療法人、社会福祉法人制度の見直しが指摘をされておりましたが、本法律案には盛り込まれておりません。岩盤規制に風穴をあけるだけではなく、ぶち壊し、構造的欠陥を見直す必要があると考えますが、厚生労働大臣のお考えをお聞かせください。

 第三に、将来世代の負担をはかるための世代会計を示し、実態を国民に示すべきだと考えます。

 現行の年金制度は明らかに公平性に欠けており、将来世代への負担軽減は、我々に課された使命とも言えます。将来ビジョンを示し、世代間格差是正のための制度設計を示すことが重要だと考えます。

 みんなの党は、積立方式での世代間格差是正を訴えております。現在の賦課方式から積立方式への移行には課題があることは承知の上で、だからこそ、早急に取りかからなければならない問題だと思いますが、厚生労働大臣のお考えをお聞かせください。

 法案の内容についても、具体性、現実性に欠ける部分が見受けられます。

 例えば、要支援の、介護保険からの切り離しです。

 介護保険創設時、福祉資源の地域間格差がある中で、介護体制を平等にしていくことも目的とされておりました。要支援を介護保険から切り離す案に対して、地域間格差をどう評価し、実施体制をどう構築していくのか、厚生労働大臣にお尋ねをいたします。

 介護保険財政が厳しくなるからといって、要支援を介護保険から切り離し、地域に委ねるのは、介護認定審査の地域間格差が問題とされている中で、余りに無責任です。まずは、介護認定審査の適正化がなされるように、見直すことが先ではないでしょうか。厚生労働大臣のお考えをお聞かせください。

 医療と介護の連携により、住みなれた地域、住みなれた自宅で最期を迎えることを理想として、地域包括ケアシステムの構築と在宅医療を充実していくとされておりますが、多くの地域で、介護体制が整えられない家庭環境がふえております。理想と現実のギャップをどのように整合性をとろうとしているのか、厚生労働大臣にお尋ねいたします。

 総理は、今国会を成長戦略実現国会と位置づけ、さまざまな戦略を掲げております。その中に医療・健康分野を挙げておりますが、過去の政権においても、医療や介護が成長分野として挙げられております。しかし、実際には、成長産業として成り立っておりません。これは、何が原因だと考えますか。また、できなかった原因を検証して、今度は絶対になし遂げられますか。厚生労働大臣にお伺いいたします。

 総理の言葉をかりれば、今までも同じような成長戦略はありました、違いは、実行が伴うかどうか、もはや作文には意味はないとのことですが、作文とはならない根拠を、大臣に、明確にお示ししていただきたいと思います。

 現在の年齢人口構成を見れば、今後数十年間、社会保障は、今までの制度設計では成り立たないことは明白です。しっかりとしたビジョンを描き、構造を抜本的に改革していかなければ、持続可能な社会保障制度などつくり得ません。

 本法律案からは、改革の全体像など見出せませんし、改革にかける魂も感じられません。消費税増税を正当化するためのアリバイ法案のようにも見えます。

 現状の延長線上で対症療法的な改革を行っても、意味はありません。まずは、徹底した無駄の削減、岩盤を打ち破って、規制改革を進め、地域の資源を最大限活用することが肝要だと考えます。

 社会保障制度の根本、つまり、制度設計の前提である設計思想を抜本的に見直すお考えがおありなのか、厚生労働大臣にお聞きをして、私からの質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 中島克仁議員からは八問御質問をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、厚生年金の徴収漏れ対策と歳入庁設置についてのお尋ねがございました。

 厚生年金の適用促進については、現在、法人登記簿や雇用保険のデータを活用して、適用漏れのおそれのある事業所の確実な把握に努め、把握した事業所に対する加入勧奨や調査などに積極的に取り組むとともに、社会保障審議会に設置した専門委員会において検討を進めております。

 また、歳入庁の設置については、本年八月に、内閣官房副長官と関係省庁政務官による検討チームにおいて、論点整理が取りまとめられました。

 その中で、年金保険料の納付率向上等のためには、保険料徴収の基本的な考え方を整理し、必要な対策を講ずることが重要であり、組織を統合して歳入庁を創設すれば問題が解決するものではないと整理されたと承知をいたしております。

 次に、医療法人制度と社会福祉法人制度の見直しについてお尋ねがございました。

 両法人制度に関しては、本法案の第四条第四項第一号において、病床機能の分化、連携等を推進する観点から、医療法人間の合併及び権利の移転に関する制度等の見直しについて検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされております。

 このため、両法人制度について、それぞれ、有識者等から成る検討会を設置して、必要な検討を進めてまいります。

 次に、年金制度の積立方式への移行による世代間格差の是正についてのお尋ねがございました。

 現行の年金制度は、賦課方式を基本としつつも、一定の積立金を保有しており、これにより、少子高齢化が進んだ将来の保険料負担の緩和と平準化が図られております。現行制度は、こうした積立金を保有するメリットも生かした財政運営を行っております。

 完全な積立方式への移行については、いわゆる二重の負担が特定の世代に生じるなど、さまざまな課題があります。また、国民会議報告書でも触れられているとおり、積立方式への移行が世代間格差などの人口構造の変化による問題を自動的に解決するわけではないことは、国際的な年金議論における共通認識となっており、今後の改革議論もこの考え方に立脚すべきと考えております。

 なお、本法案では、年金制度に関し、世代間や世代内の公平性を確保する観点から、高所得者の年金給付のあり方や公的年金等控除を含めた年金課税のあり方の見直しについて検討することを明記しているところでございます。

 次に、要支援者への支援の見直しについてお尋ねがございました。

 現在、社会保障審議会で御議論いただいている要支援者への支援の見直しについては、見直し後も、介護保険制度の中で、既存の予防給付と同様の財源構成により、多様なサービスを提供することが可能と考えております。

 また、市町村が、住民主体の地域づくりを通じて、介護予防や生活支援サービスの充実を図ることが重要と考えており、厚生労働省としましても、事業実施の基盤づくりの支援やガイドラインの策定などに取り組んでまいりたいと考えております。

 次に、要介護認定審査についてのお尋ねがございました。

 要介護認定制度は、高齢者の状態像や生活環境、さらに、実際に提供されるサービス実態を適切に反映して運用することが必要であります。その時々の状況を踏まえ、必要に応じて見直しを検討することとしており、平成二十一年度には、自治体間の要介護認定のばらつきを減少させるための見直しを行ったところでございます。

 全国一律の基準に基づき、公平公正に運用されるよう、認定調査員に対する研修等を行っているところであり、今後とも、高齢者が安心して必要なサービスを受けられるよう、適切な要介護認定の実施に努めてまいりたいと考えております。

 次に、地域包括ケアシステムの構築等についてお尋ねがございました。

 ひとり暮らし高齢者や認知症高齢者が増加する中、在宅医療・介護を充実させ、地域包括ケアシステムの構築を推進することが大変重要であると考えております。

 具体的には、家族がいてもいなくても、在宅の重度の要介護高齢者も含め、高齢者ができる限り住みなれた地域で暮らし続けられるよう、特に、二十四時間対応サービスの普及の促進、医療、介護連携の強化、生活支援、介護予防、また、認知症施策の推進に取り組んでまいりたいと考えております。

 次に、健康・医療分野における成長戦略についてお尋ねがございました。

 健康・医療分野は、雇用誘発効果の比較的高い分野であり、六月に閣議決定された日本再興戦略でも、重要なテーマの一つと位置づけられております。

 このため、厚生労働省では、これまでの成長戦略よりもさらにスピード感を持って、効果的な予防サービスや健康管理の充実、医療イノベーションの推進に向けた取り組みを進めてまいります。

 具体的には、先進医療の拡大に向けた評価の迅速化や、薬事法等改正法案や再生医療等安全性確保法案の提出などの取り組みを進めてまいり、引き続き、実効ある施策の具体化を進めてまいります。

 最後の質問でございます。

 社会保障制度における規制改革等を通じた抜本改革についてお尋ねがございました。

 安倍政権では、まず、経済の再生に重点的に取り組み、成長による富の創出を図ることとしておりますけれども、景気をよくすることは、持続可能な社会保障制度の構築にもつながってまいります。

 厚生労働省といたしましても、社会保障の充実、安定化とあわせた重点化、効率化を進めるだけではなく、必要な規制の見直しやイノベーションの推進等を通じて、医療・健康分野の成長戦略の実現に向けた取り組みを進めるなど、経済の再生に資する取り組みにも全力を尽くすことにより、持続可能な社会保障制度の構築を図ってまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 歳入庁についてのお尋ねであります。

 年金保険料の徴収体制強化等につきましては、昨年成立しました税制抜本改革法を受け、内閣官房副長官及び関係省庁政務官による検討が進められ、諸外国における年金保険料の徴収体制についても議論をした上で、先般、論点整理が取りまとめられたところであります。

 この論点整理におきましては、歳入庁に関するさまざまな問題点が指摘されるとともに、年金保険料の納付率向上等のためには、保険料徴収の基本的な考え方を整理し、必要な対策を講ずることが重要であり、組織を統合して歳入庁を創設すれば問題が解決するものではないと指摘をされております。

 現在、論点整理に示された方向性に沿いまして、厚生労働省において、年金保険料の徴収体制強化等に関する専門委員会を立ち上げて議論を行うなど、さらに検討が進められており、可能なものから速やかに実施をしてまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、青木愛さん。

    〔青木愛君登壇〕

青木愛君 生活の党の青木愛でございます。

 私は、生活の党を代表いたしまして、ただいま議題となりました、いわゆる社会保障制度改革プログラム法案について質問をいたします。(拍手)

 まず、安倍内閣の基本的方向性についてお伺いをいたします。

 安倍総理が強く関心を抱いておられる憲法改正や集団的自衛権、また特定秘密保護法などの中身を見ますと、国民の権利を縮小し、国家の権力を強化する方向に向かっているような印象を受けます。

 例えば、憲法改正自民党草案では、基本的人権の意義を明記した第九十七条を削除し、国民の権利及び義務に言及した第十二条や第二十一条では、秩序や公益を優先し、国民の基本的人権を制約する旨が追加されています。また、特定秘密保護法案では、国民の知る権利が大きく制約を受ける危険性もあります。

 安倍内閣は、まず強い国家があり、その下に国民があると考えておられるのか、あるいは、国民を第一とし、国民のために国家があると考えておられるのか。国家と国民との基本的な関係についてお聞きかせください。

 冒頭この質問をいたしましたのは、議題となりましたプログラム法案には、至るところで国民軽視の発想が見られるからです。

 最も見過ごせない部分は、第二条の、自助自立のための環境整備等に努めるとの規定であります。しかも、この考え方は、法案全体に貫かれています。

 社会保障は、自助、共助、公助の組み合わせであり、自助のための環境整備に努めるのは結構なことであります。

 しかし、本法案では、あえて自助に係る規定を設け、それを強調し、公助、すなわち、社会保障の国の責任を大きく後退させています。社会保障のために消費税増税を強行しながら、社会保障から国が逃げ、個人や家族の自助自立に押しつけているように思えてなりません。

 高齢化が進み、ひとり暮らしもふえる中で、自助が衰退していくのは当たり前であり、自助自立が難しい時代だからこそ、そうした流れに沿った、国民の皆様が安心できる制度改革が求められているのではないでしょうか。

 安倍内閣の考える社会保障制度は、高齢者の切り捨てと思えてなりませんが、自助自立を殊のほか強調された理由を御答弁ください。

 希望と安心のある長寿社会ビジョンを提示せず、景気が本格的に回復しない状態で消費税を増税すると、景気は必ず落ち込みます。特に、景気回復がおくれている地域経済や、所得がふえず、円安で物価や電気代などの値上げラッシュに苦しむ家計には、深刻な影響を与えます。

 消費が落ち込んで景気が腰折れするその対策として、安倍内閣は、総額六兆円規模の経済対策を実施し、増税の影響を和らげようとしています。しかし、経済対策の主たる対象は黒字の企業であり、厳しい環境下に置かれている中小零細企業には、ほとんど恩恵がありません。

 家計に対しては、住宅ローン減税の延長、拡充や、住民税を納めていない世帯を対象に一人当たり一万円の一時金の支給が検討されていますが、企業減税と比べると、大きく見劣りがいたします。

 ここにも、国民軽視、大企業優先の考えが色濃く反映をいたしています。

 このように、安倍内閣は、国家や大企業に対しては積極的に手を打っていますが、一般国民に対しては、消費税増税と社会保障削減にひたすら邁進しているように思えてなりません。こうした懸念について、安倍内閣としてのお考えをお伺いいたします。

 最後に、長寿社会における社会保障制度のあり方についてお伺いをいたします。

 これまで、長年にわたり、社会保障制度改革を審議してきました。社会保障と税の一体改革では、社会保障制度改革議論をきちんと進めるということが消費税率引き上げの前提となっていたにもかかわらず、少子化対策も、医療も、介護も、年金も、抜本的な改革ビジョンが打ち出されておりません。政治や行政の、身を切る努力はどこへ行ってしまったのでしょうか。

 それでいて、消費税増税については確実に進みました。財源に焦点を当てて社会保障制度改革を論じると、日本のような超高齢化社会では、どうしても、消費税増税と社会保障削減という、誰も歓迎しない、後ろ向きの結論しか出てきません。

 高齢者は自助自立で生きなさいと冷たく突き放すのではなくて、高齢者がいつまでも健康で生きがいを持って社会参加する、そうした長寿社会の実現を目指すべきであると考えます。健康な高齢者の社会参加は、必然的に医療費や介護費用の削減につながるばかりか、高齢者は納税者にもなります。

 そのような長寿社会を実現し、支えるための税負担であれば、国民の多くが支持すると考えます。その実現のヒントは、日本に点在する長寿地域にあります。

 財政のみに視点を合わせた従来の発想をやめ、高齢者の、健康と、生きがいと、社会参加に視点を合わせた社会改革を目指すべきであると考えます。

 これに関する政府の御見解をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 青木愛議員からは、三問ほど質問を頂戴しました。

 まず、国家と国民との関係についてお尋ねがございました。

 安倍内閣では、強い日本をつくるのは、ほかの誰でもなく、私たち自身であると考えております。

 急速な少子高齢化が進行する中、世界に誇る我が国の社会保障制度を次世代に安定的に引き渡していくためには、保険料収入や税収の基盤となる、強い経済を取り戻さなければなりません。男性も女性も、老いも若きも、誰にでもチャンスのある、頑張る人が報われる社会を目指すことを基本に、社会保障政策の推進に努めてまいります。

 次に、自助自立を強調する理由についてお尋ねがありました。

 頑張った人が報われる活力ある社会をつくっていくためにも、自助自立を第一に、共助と公助を組み合わせ、弱い立場の人にはしっかりと援助の手を差し伸べることが必要と考えております。

 法案の中でも自助自立の環境整備を規定したのは、高齢者も、健康で、希望する方は働くことができ、持てる力を最大限発揮できるような社会こそが活力ある長寿社会につながるとの考えに基づくものであり、決して高齢者の切り捨てなどではありません。

 もちろん、社会保障の機能強化もあわせて行うことにより、高齢者の方々が安心して暮らすことのできる社会を構築してまいります。

 最後の質問は、高齢者の社会参加についてのお尋ねでございました。

 人口減少社会の中で、高齢者が、積極的に社会参加、就労、起業など活発に活動し、社会の支え手になっていくことが重要であると考えております。特に団塊の世代が、会社を退職し、地域に戻ってくる中で、介護、生活支援、子育て、農業など、さまざまな分野での活躍の場をつくることが求められております。

 このため、体操教室など住民主体の通いの場の充実、高齢者がみずから介護予防教室の担い手となることの支援など、市町村が中心となった地域づくりを推進し、高齢者が役割を持って生き生きと活躍できる社会の構築を支援してまいります。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 消費税率引き上げ等に対する懸念についてのお尋ねがあっております。

 経済の再生を達成するためには、企業収益が改善し、それが個人の所得、そして消費の拡大につながっていく、自律的な好循環をつくり上げていく必要があります。

 このような観点から、今回の経済政策パッケージにおいては、投資減税、また政労使の連携による賃上げへの取り組み、そして中小企業への投資補助金を含む新たな経済対策など、中小企業にも配慮しつつ、未来への投資として、賃金上昇と雇用拡大などの実現に効果を発揮し、持続的な経済成長につながる施策を盛り込んでおります。

 また、消費税率引き上げによる財源は、社会保障の充実、安定化のために使い、国民生活に還元されるものであります。

 さらに、消費税率引き上げに伴う個人の負担軽減策として、簡素な給付措置などにより、家計へも十分に配慮しているところであります。

 こうしたことから、国民軽視、大企業優遇との指摘は、当たっていないと思います。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       財務大臣     麻生 太郎君

       厚生労働大臣   田村 憲久君

       経済産業大臣   茂木 敏充君

       防衛大臣     小野寺五典君

       国務大臣     甘利  明君

       国務大臣     森 まさこ君

 出席副大臣

       厚生労働副大臣  土屋 品子君


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