衆議院

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第9号 平成25年11月8日(金曜日)

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平成二十五年十一月八日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第七号

  平成二十五年十一月八日

    午後一時開議

 第一 国家公務員の配偶者同行休業に関する法律案(内閣提出)

 第二 地方公務員法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 検査官任命につき同意を求めるの件

 総合科学技術会議議員任命につき同意を求めるの件

 食品安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 特定個人情報保護委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 証券取引等監視委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 電気通信紛争処理委員会委員任命につき同意を求めるの件

 電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件

 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件

 中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

 日程第一 国家公務員の配偶者同行休業に関する法律案(内閣提出)

 日程第二 地方公務員法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律案(金子一義君外六名提出)

 独立行政法人原子力安全基盤機構の解散に関する法律案(内閣提出)

 国会職員の配偶者同行休業に関する法律案(議院運営委員長提出)

 衆議院の事務局及び法制局の職員の定員に関する規程の一部を改正する規程案(議院運営委員長提出)

 東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

 国家戦略特別区域法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 検査官任命につき同意を求めるの件

 総合科学技術会議議員任命につき同意を求めるの件

 食品安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 特定個人情報保護委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 証券取引等監視委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 電気通信紛争処理委員会委員任命につき同意を求めるの件

 電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件

 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件

 中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

議長(伊吹文明君) まず、お諮りをいたします。

 内閣から、

 検査官

 総合科学技術会議議員

 食品安全委員会委員

 特定個人情報保護委員会委員長及び同委員

 証券取引等監視委員会委員長及び同委員

 電気通信紛争処理委員会委員

 電波監理審議会委員

 日本放送協会経営委員会委員

 中央更生保護審査会委員

 運輸審議会委員

 運輸安全委員会委員

及び

 公害健康被害補償不服審査会委員に

次の皆さんを任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。

 まず、

 内閣からの申し出中、

 検査官に河戸光彦君を、

 証券取引等監視委員会委員に園マリ君及び吉田正之君を、

 電気通信紛争処理委員会委員に中山隆夫君、荒川薫君、小野武美君、平沢郁子君及び山本和彦君を、

 中央更生保護審査会委員に小川清美君を、

 運輸審議会委員に鷹箸有宇壽君及び河野康子君を、

 運輸安全委員会委員に田村貞雄君、横山茂君、松本陽君、岡村美好君及び富井規雄君を、

 公害健康被害補償不服審査会委員に岡本美保子君を

任命することについて、内閣からの申し出のとおり同意を与えるに御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 全会一致。御異議なしと認めます。したがって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 総合科学技術会議議員に中西宏明君を、

 電波監理審議会委員に前田忠昭君を

任命することについて、内閣の申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 食品安全委員会委員に熊谷進君を、

 特定個人情報保護委員会委員に阿部孝夫君を、

 日本放送協会経営委員会委員に石原進君を

任命することについて、内閣の申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 特定個人情報保護委員会委員長に堀部政男君を、

 同委員に手塚悟君を、

 証券取引等監視委員会委員長に佐渡賢一君を

任命することについて、内閣の申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 日本放送協会経営委員会委員に長谷川三千子君、百田尚樹君及び本田勝彦君を

任命することについて、内閣の申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。(発言する者あり)静粛にしなさい。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 日本放送協会経営委員会委員に中島尚正君を

任命することについて、内閣の申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第一 国家公務員の配偶者同行休業に関する法律案(内閣提出)

 日程第二 地方公務員法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) それでは、議案の審査に入ります。まず、日程第一、国家公務員の配偶者同行休業に関する法律案、日程第二、地方公務員法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長高木陽介君。

    ―――――――――――――

 国家公務員の配偶者同行休業に関する法律案及び同報告書

 地方公務員法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔高木陽介君登壇〕

高木陽介君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、国家公務員の配偶者同行休業に関する法律案は、本年八月八日の人事院の意見の申し出に鑑み、外国で勤務等をする配偶者と生活をともにすることを希望する有為な国家公務員の継続的な勤務を促進するため、一般職の国家公務員について、配偶者同行休業の制度を設けようとするものであります。

 次に、地方公務員法の一部を改正する法律案は、地方公務員について、国家公務員と同様に配偶者同行休業の制度を設けようとするものであります。

 両案は、去る六日本委員会に付託され、昨七日、新藤総務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、これを終局しました。次いで、採決いたしましたところ、両案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) ただいまの両案を一括して採決をいたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 全会一致。異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

あべ俊子君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 金子一義君外六名提出、特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(伊吹文明君) あべ俊子君の動議に御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 御異議なしと認めます。したがって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律案(金子一義君外六名提出)

議長(伊吹文明君) 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長梶山弘志君。

    ―――――――――――――

 特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔梶山弘志君登壇〕

梶山弘志君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。

 本案は、特定地域における輸送需要及び当該地域の状況に応じたタクシー事業の適正化及び活性化を推進するとともに、タクシー事業に係る輸送の安全及び利用者の利便を確保するための措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、国土交通大臣は、タクシー事業が供給過剰である等の地域を特定地域として、供給過剰となるおそれがある等の地域を準特定地域として指定することができることとし、特定地域においては、タクシー事業の新規事業許可及び供給輸送力を増加させる事業計画の変更を禁止すること、また、特定地域の協議会が削減すべき供給輸送力等について定めた特定地域計画について、独占禁止法の適用を除外すること、

 第二に、国土交通大臣は、特定地域内で供給輸送力を削減しない事業者等に対し、営業方法の制限による供給輸送力の削減を命ずることができること、

 第三に、特定地域等では、国土交通大臣が運賃の範囲を指定し、タクシー事業者は、その範囲内で運賃を定め、届け出なければならないこと、

 第四に、タクシーの運転者登録制度を全国に拡大するとともに、一般旅客自動車運送事業者に、運転者の過労運転防止に必要な措置を講じることを義務づけること

などであります。

 本案は、去る十一月一日本委員会に付託され、五日提出者金子一義君から提案理由の説明を聴取し、翌六日質疑に入り、本日、質疑を終了し、採決いたしました結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、採決をいたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

あべ俊子君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、独立行政法人原子力安全基盤機構の解散に関する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(伊吹文明君) あべ俊子君の動議に御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 御異議なしと認めます。したがって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 独立行政法人原子力安全基盤機構の解散に関する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) 独立行政法人原子力安全基盤機構の解散に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。環境委員長伊藤信太郎君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人原子力安全基盤機構の解散に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔伊藤信太郎君登壇〕

伊藤信太郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、原子力規制委員会設置法の規定に基づき、独立行政法人原子力安全基盤機構が行う業務を原子力規制委員会に行わせるため、原子力安全基盤機構を解散し、その事務を国が引き継ぐこと等とするものであります。

 本案は、去る十月三十日本委員会に付託され、十一月一日石原環境大臣から提案理由の説明を聴取した後、同日質疑に入り、本日質疑を終局いたしました。質疑終局後、採決いたしました結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第でございます。

 なお、法案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、採決をいたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

あべ俊子君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 議院運営委員長提出、国会職員の配偶者同行休業に関する法律案及び衆議院の事務局及び法制局の職員の定員に関する規程の一部を改正する規程案の両案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(伊吹文明君) あべ俊子君の動議に御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加をされました。

    ―――――――――――――

 国会職員の配偶者同行休業に関する法律案(議院運営委員長提出)

 衆議院の事務局及び法制局の職員の定員に関する規程の一部を改正する規程案(議院運営委員長提出)

議長(伊吹文明君) 国会職員の配偶者同行休業に関する法律案、衆議院の事務局及び法制局の職員の定員に関する規程の一部を改正する規程案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。議院運営委員長逢沢一郎君。

    ―――――――――――――

 国会職員の配偶者同行休業に関する法律案

 衆議院の事務局及び法制局の職員の定員に関する規程の一部を改正する規程案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔逢沢一郎君登壇〕

逢沢一郎君 ただいま議題となりました両案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、国会職員の配偶者同行休業に関する法律案は、一般職の国家公務員と同様に、外国で勤務等をする配偶者と生活をともにすることを希望する有為な国会職員の継続的な勤務を促進するため、国会職員について配偶者同行休業の制度を設けようとするものであります。

 次に、衆議院の事務局及び法制局の職員の定員に関する規程の一部を改正する規程案は、国会職員の配偶者同行休業に関する法律の制定に伴い、所要の規定の整備を行おうとするものであります。

 本法律案及び規程案は、本日、議院運営委員会において起草し、提出いたしました。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、両案を一括して採決をいたします。

 両案を可決するに御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 全会一致。御異議なしと認めます。したがって、両案とも可決をいたしました。

     ――――◇―――――

あべ俊子君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 災害対策特別委員長提出、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(伊吹文明君) あべ俊子君の動議に御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 御異議なしと認めます。したがって、日程は追加をされました。

    ―――――――――――――

 東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

議長(伊吹文明君) 東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。災害対策特別委員長坂本剛二君。

    ―――――――――――――

 東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔坂本剛二君登壇〕

坂本剛二君 ただいま議題となりました東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。

 南海トラフで発生する大規模な地震による被害については、西日本を中心に、東日本大震災を超える甚大な人的、物的被害が発生し、我が国全体の国民生活、経済活動に極めて深刻な影響が生じる、まさに国難とも言える巨大災害になるおそれがあるものと想定されております。

 このような巨大災害に事前に対処すべく、早急に国が主導して効果的な対策を実施する必要があります。

 本案は、南海トラフ地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護し、南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進を図ろうとするものであり、その主な内容は、

 第一に、法律の題名を南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法に改めること、

 第二に、内閣総理大臣が科学的に想定し得る最大規模の地震を想定して、南海トラフ地震防災対策推進地域を指定すること、

 第三に、推進地域の指定があったときは、中央防災会議は、南海トラフ地震防災対策推進基本計画を作成することとし、指定行政機関の長等は、防災業務計画等において一定の事項について定め、南海トラフ地震防災対策推進計画とすること、

 第四に、内閣総理大臣は、南海トラフ地震防災対策推進地域のうち、津波避難対策を特別に強化すべき地域を、南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域として指定することとし、この指定があったときは、関係市町村長は、都府県知事の意見を聞き、内閣総理大臣の同意を得て、津波避難対策緊急事業計画を作成することができること、

 第五に、津波避難対策緊急事業に要する経費に対する国の負担割合の特例等を設けること、

 第六に、津波避難対策緊急事業計画に基づく集団移転促進事業に係る特例措置を設けること

等であります。

 以上が、本案の提案の趣旨及び主な内容であります。

 本案は、本日の災害対策特別委員会において、内閣の意見を聴取した後、全会一致をもって成案と決定し、これを委員会提出法律案とすることに決したものであります。

 何とぞ議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、採決をいたします。

 本案を可決するに御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 全会一致。御異議なしと認めます。したがって、本案は可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 国家戦略特別区域法案(内閣提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) それでは、この際、内閣提出、国家戦略特別区域法案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣新藤義孝君。

    〔国務大臣新藤義孝君登壇〕

国務大臣(新藤義孝君) このたび政府から提出いたしました国家戦略特別区域法案について、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 我が国が直面する最重点の課題は、我が国経済を中長期的な成長軌道に乗せていくことにあります。そのためには、成長戦略を着実に実施していくことが不可欠であり、我が国を取り巻く国際経済環境の変化に対応して、各政策分野における施策を迅速かつ確実に実施することが重要ですが、とりわけ、国、地方公共団体、民間が三者一体となって取り組むプロジェクトを対象に、大胆な規制改革等を集中的に推進する新たな手法が必要とされております。

 この法律案は、このような観点から、国が、国家戦略特別区域を定めて、規制の特例措置の整備その他必要な施策を総合的かつ集中的に講ずるとともに、地方公共団体及び民間事業者その他の関係者が、国と相互に密接な連携を図りつつ、これらの施策を活用することにより、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の実現を図り、もって我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図ろうとするものでございます。

 次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、政府は、国家戦略特別区域における産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関する施策の総合的かつ集中的な推進を図るため、基本方針を閣議決定により定めるものとしております。

 第二に、国による国家戦略特別区域の指定及び国家戦略特別区域ごとに定められる区域方針についての所要の手続を定めております。

 第三に、国家戦略特別区域ごとに組織される国家戦略特別区域会議、同会議による区域計画の作成及び認定申請、内閣総理大臣による計画の認定等の所要の手続を定めております。

 第四に、国家戦略特別区域において講ずる規制の特例措置等の内容について定めております。

 第五に、国家戦略特別区域における施策に関する重要事項について調査審議等を行うため、内閣総理大臣を議長とする国家戦略特別区域諮問会議を内閣府に設置することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに成立いたしますようお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 国家戦略特別区域法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) ただいまの国務大臣の趣旨の説明に対し質疑の通告があります。順次これを許します。まず、平将明君。

    〔平将明君登壇〕

平将明君 自由民主党の平将明です。

 ただいま議題となりました国家戦略特別区域法案について、自由民主党を代表して質問をいたします。(拍手)

 二十年以上続いた経済の低迷は、我が国経済社会に深刻な影響をもたらしておりましたが、昨年の暮れの政権交代以降、デフレマインドを一掃するための大胆な金融政策という第一の矢、そして、湿った経済を発火させるための機動的な財政政策という第二の矢を放ち、消費と企業業績の回復傾向という形を通じて、国民の間に、そして国際社会の間でも、日本経済の先行きに対する期待の灯がともるまでになりました。

 こうした状況で、第三の矢として、六月に、日本再興戦略が打ち出されました。

 第一の矢、第二の矢でつくったデフレ脱却への期待を一時的なものに終わらせないためには、企業に眠る膨大な資金を、将来の価値を生み出す投資へと向かわせる必要があります。民間の投資を引き出す際に何よりも重要となるのが、投資先で民間の創意と工夫が十分に発揮できる仕組みが用意されるのか、これまで規制で縛られていた分野がこれからどう変わるのかという点であります。

 そこで、本法案ですが、国が定める国家戦略特別区域において、大胆な規制改革を総合的かつ集中的に講ずることを目的とし、国、地方公共団体及び民間事業者の三者が一体となって、総理主導で取り組みを推進する枠組みをつくろうとするものであると認識をしております。

 これまで実現できなかった大胆な規制改革、いわゆる岩盤規制と言われるようなものを含め、改革を集中的に推進することにより、経済成長の起爆剤となる、世界で一番ビジネスのしやすい環境を創出しようとするものであり、大いに評価するものであります。

 まず、この法案による規制改革が、民間の投資をどのように引き出して、日本の経済成長にどのようにつながっていくのか、本法案を創設する意義、狙いについて、総理から御説明を願います。

 次に、国家戦略特別区域法案による規制改革の成果について伺います。

 これまで、大胆な規制改革の突破口とする観点から、精力的に規制改革の議論を重ねてきたと伺っております。その結果が、十月一日に閣議決定された「消費税率及び地方消費税率の引上げとそれに伴う対応について」や、十月十八日に日本経済再生本部において決定をされた国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針、さらには、本法案にしっかりと反映をされているものと考えますが、一部報道では、規制改革の措置が不十分といった論調も聞かれます。

 医療、雇用、教育、まちづくり及び農業、各分野において、岩盤規制と言われ、これまで手をつけられずにきた課題に対し、議論の結果、国家戦略特区では、どこまで岩盤に切り込むことができて、どのような規制改革の成果が上がったのか、担当大臣、新藤大臣に御説明を求めます。

 本法案によれば、さまざまな分野にわたる規制改革の内容が盛り込まれており、とりわけ、雇用制度の改革に踏み込んだことは大きく、世界トップレベルの雇用環境の実現に向けた一つの成果として、歓迎すべきことと考えます。

 しかし、一部報道により、解雇特区やブラック企業特区などといった、全く的外れな、あしきレッテルを張られてしまったことは、国民に真意が伝わっておらず、まことに残念な事態でありました。

 当初から政府で議論されていたのは、解雇自由化などといったことではなかったと理解をしています。現行制度のもとでは、解雇条件が不明確で予測可能性を欠くがゆえに、企業は最初から、正社員の採用を控えることになりがちでした。

 今回、雇用ガイドラインを作成し、特区において国、地方、民間が一体となってガイドラインを運用する体制を設けることにしたのは、極めて画期的であり、まさに、雇用の拡大につながるものと考えます。

 ただ、問題は、具体的な制度設計と運用です。

 例えば、雇用ガイドラインの作成について、厚労省など役所任せにしていたのでは、不明確なガイドラインをつくるだけにもなりかねません。雇用条件の明確化と雇用拡大に向けて、どこまで本気で取り組むおつもりか、総理の考えをお伺いいたします。

 次に、大胆な規制改革を実行していくための強力な体制の構築及び総理のリーダーシップについてお伺いいたします。

 精力的な議論の成果として本法案に盛り込まれた規制改革事項は、国家戦略特別区域の指定や区域方針及び計画の作成、内閣総理大臣の認定といった手続を通じ、国家戦略特区において活用されていくことになります。

 規制改革について、スピード感を持って強力に実行し、日本経済を中長期的な成長軌道に乗せていくためには、総理大臣のリーダーシップはもとより、本法案により内閣府に設置をされる国家戦略特別区域諮問会議及び特区ごとに設置をされる国家戦略特別区域会議を、迅速かつ大胆な意思決定のできる体制とすることが肝要と考えます。

 本法案において、迅速かつ大胆な意思決定を行うことのできる体制をどのように構築をし、実際の組織運営に当たって総理がどのようにリーダーシップを発揮していくのか、総理の考えと決意を求めます。

 今回の法案では、いわゆる岩盤規制を含め、従来の総合特区などとはレベルが違う規制改革メニューが提示されていますが、もちろん、これで終わりであってはなりません。次期通常国会、さらに次の会期と、改革メニューの追加を行っていくことが重要と考えます。

 特に、今回の改革メニューで抜けているのは、税制であります。

 八から九月に行われた自治体、民間からの提案募集では、特区において法人税を格段に思い切って引き下げるなどの提案もあったと承知をしています。こうした提案について、次期通常国会で取り上げるためには、年末に向けて、政府・与党内で早急に議論を進める必要があると考えます。

 今後の改革メニューの追加、とりわけ、税制面での特例措置の追加について、総理の見解を伺います。

 次に、国家戦略特別区域法に基づく提案の取り扱いについて伺います。

 国家戦略特区の構想を具体化するに当たり、広く現場から衆知を集め、大胆な規制改革等を実行するプロジェクトを組成するため、政府は、地方公共団体及び民間事業者から提案募集を行ったと伺っております。

 この提案募集により、全体で二百四十二の団体から、百九十七もの、数多くの提案があったと伺っておりますが、一カ月間という短期間での募集にもかかわらずこれだけの提案があったということは、規制改革に対する期待感のあらわれにほかなりません。

 しかしながら、国家戦略特区は、おのずから絞られるものと考えており、これら全ての提案が国家戦略特区として拾い上げられるわけではありません。

 そこで、国家戦略特区に対して応募のあった提案の中に、今回の法案や検討方針に盛り込まれなかったものの、日本の構造改革の推進等に資するような、重要で有効な規制改革の提案がある場合、これらについても、実現に向け、政府として支援できる検討プロセスを設けるべきであると考えます。このことについて、政府としてどのように対応されるのか、御見解を伺います。

 国家戦略特区として取り組みを行う区域及び特区ごとの区域方針が今後決定されていくものと思われます。実行なくして成長なし。本法案を早期に成立させることはもちろんのこと、成立後、速やかに実際の特区ごとの取り組みに着手をし、強力に進めていくことが重要となります。

 最後に、今後の取り組み方針及び総理の決意を伺い、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 平将明議員にお答えをいたします。

 本法案の意義についてお尋ねがありました。

 国家戦略特区により、日本の経済社会の風景を変える大胆な規制・制度改革を実行することで、世界で一番ビジネスのしやすい環境を創出し、民間投資の喚起により、日本経済を停滞から再生へ導くことができると考えています。本法案を早期に成立させていただき、成長戦略の着実な実施につなげていきたいと考えています。

 雇用の規制改革についてのお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、雇用ルールがわかりにくいことが、グローバル企業や新規企業の投資阻害要因になるおそれがあります。

 このため、国が雇用ルールを明確化すべく作成する雇用ガイドラインについては、真に有効なものとなるよう、役所任せにせず、国家戦略特区諮問会議で、有識者等の意見を聞いた上で作成することとしております。

 あわせて、特区内では、企業に対し、地域特性に応じたきめ細かな相談、助言サービスを実施する体制を構築することとしています。

 これらを通じて、企業が投資しやすく、雇用拡大につながるような仕組みとしてまいります。

 実行体制についてのお尋ねがありました。

 法案を成立させていただいた後、速やかに国家戦略特別区域諮問会議を立ち上げ、基本方針の策定、特区の指定等についての議論を開始することとなりますが、この会議の議長は私であり、議長として、リーダーシップを発揮し、国家戦略特区を強力に推進してまいります。

 また、特区ごとに設置する国家戦略特別区域会議においては、国、地方自治体、民間の三者が相互に密接な連携のもとに協議をし、区域計画を作成することとしており、地域の特性に合わせた大胆な意思決定を迅速に行える仕組みとしております。

 改革メニューの追加についてお尋ねがありました。

 法案を成立させていただいた後に、国家戦略特区を具体的に実現していく過程に入りますが、そのとき、民間事業者や地域からの新たな問題提起を通じて、さらなる規制・制度改革の課題が必ずや浮かび上がってくるものと考えます。

 安倍政権の規制・制度改革に終わりはありません。

 引き続き、私が先頭に立ち、世界で一番企業が活躍したい国を目指して、規制改革に加え、税制措置についても、年末の税制大綱の決定に向け、世界で一番ビジネスのしやすい環境の整備のため、成果を出してまいります。

 今後の取り組み方針と決意についてお尋ねがありました。

 まさに、実行なくして成長なしです。まずは、本法案を成立させることに最大限努力していきます。

 法案成立後、私がリーダーシップを持って、速やかに国家戦略特区諮問会議を立ち上げ、基本方針、区域の選定、各特区の区域計画に迅速に取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣新藤義孝君登壇〕

国務大臣(新藤義孝君) 平議員の質問にお答えを申し上げます。

 まず、規制改革の成果についてでございます。

 国家戦略特区制度につきましては、居住環境を含め、世界と戦える国際都市の形成、そして、医療等の国際的イノベーション拠点整備といったような観点から、特例的な措置を組み合わせて講じ、成長の起爆剤とする、世界で一番ビジネスのしやすい環境を整える、これがこの目的でございます。

 十月十八日に、国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針を政府決定したところであり、総理のリーダーシップのもと、これまで突破できなかったような岩盤のような規制について、改革を実施する措置を盛り込むことができたと認識をしております。

 医療、雇用、教育、都市再生・まちづくり、農業、さまざまな活用の、各分野において実行する大胆な規制改革を通して、成長戦略の実現につなげてまいります。

 次に、規制改革の提案についてのお尋ねがございました。

 国家戦略特区の指定の際には、国家戦略として必要な範囲を限定することから、規制改革の提案の全てを国家戦略特区として取り上げることは、困難があると思っております。

 しかしながら、これらの提案には、日本の構造改革の推進等に資するような重要で有効な提案も多数含まれており、こうしたものにつきましては、構造改革特区の提案とみなして、実現していくスキームを国家戦略特区法案にも盛り込んだところでございます。

 このスキームにより、提案された規制改革を円滑に実施するための支援に努めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次の質疑者、近藤洋介君。

    〔近藤洋介君登壇〕

近藤洋介君 民主党の近藤洋介です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました国家戦略特別区域法案について質問をいたします。(拍手)

 本法案は、いわゆるアベノミクス三本の矢の最後の一本、成長戦略の実現の目玉、総理のお言葉をかりれば、成長戦略の一丁目一番地として提出されました。

 特定の地域を指定し、規制改革を柱に、経済社会の構造改革を大胆に進め、産業競争力を高める。また、海外からの投資を呼び込み、国際的な経済活動の拠点をつくる。本法案の第一条には、こうした目的が明記されております。お題目は立派です。

 しかし、その政策の柱となる規制改革について、早くも、安倍政権のやる気のなさ、底の浅さを指摘する声が広がっています。

 今月六日、産業競争力会議の民間議員を務めてきた楽天株式会社の三木谷浩史社長兼会長は、安倍政権の規制緩和策について、時代錯誤も甚だしいと厳しく批判し、同会議の議員を辞職いたしました。国を相手に訴訟することを検討するとも発言されています。

 本法案を策定するに当たり、最初の原動力となったのは産業競争力会議です。三木谷氏は、この会議で、規制改革の推進を主張する中心メンバーであり、ある意味で、本法案の生みの親とも言えます。

 閣議決定をされた翌日に、三木谷氏のような応援団から、政権が、痛烈に批判をされ、三くだり半を突きつけられた事態を招いたことについて、安倍総理、どのように受けとめておられますか。お答えください。

 また、三木谷氏が問題視している薬事法改正の政府方針について、総理は、考え直し、方針変更を関係閣僚に指示するお考えはありますか。お答えください。

 次に、法案の内容について質問いたします。

 安倍総理、総理は、ことしのAPECの場において、本法案を念頭に、岩盤規制を打ち破ると、大見えをお切りになりました。異次元の金融緩和を実現した安倍政権です。私も、野党の立場とはいえ、多少期待をいたしました。

 ところが、本法案の提出を受け、残念ながら、失望いたしました。規制緩和の具体策が、余りに小粒、余りに貧弱であるからであります。(発言する者あり)

議長(伊吹文明君) 少し、不規則発言をしている諸君、静かにしてください。

近藤洋介君(続) 本法案には、特区で規制緩和する項目が列挙されております。検討項目を除き即実施するとした項目のうち、法律事項は七項目です。

 問題は、内容です。国際イベントなどで道路を使いやすくするための特例、賃貸住宅を宿泊施設にできる特例、容積率の緩和、農業生産法人の要件の限定的な緩和、高度医療の病床規制の緩和などです。

 意味のない緩和とは言いません。私も、民主党政権時代に、規制緩和にはかかわりました。大なり小なり、改革には抵抗はつきものです。各省と折衝された事務方の努力は多とします。しかし、本法案で示された項目のどこに岩盤があったのでしょうか。大山鳴動すれどネズミ一匹とは、まさにこの法案であります。

 総理がおっしゃる、岩盤を打ち破るとは、この程度の認識ですか。反論があれば、伺います。

 我が国で特区制度が創設されたのは、十一年前の二〇〇二年、小泉内閣時代であります。民間企業や地方公共団体、NPOの活動を妨げているような国の規制について、地域限定で規制を改革し、地域の活動を推進する目的でありました。

 構造改革特区として、これまで千二百七件の特区計画が認定されております。地域限定で改革を進め、霞が関の規制を突破する特区の手法は、小泉改革の成果でありました。

 民主党政権では、特区制度をさらに発展させました。

 産業競争力を高める国際戦略特区と地域活性化特区の二種類の総合特区を創設。規制改革に加えて、金融や予算、税などの政策資源を集中する仕組みを設けました。(発言する者あり)よくお聞きください。

 国と地方自治体、そして事業の実施主体による協議の場となる協議会も設けました。さらに、国の政省令で定めた規制や制度を地方自治体の条例で変えることができるようにしたなど、地域の、現場の発想や知恵を最大限に生かす画期的な制度を導入したのです。小泉特区を引き継ぎながら、大きく発展させたのです。

 総理、本法案で示したこの程度の規制見直しのため、新たな新法をつくる必要があるのですか。既成の制度の活用で十分ではないでしょうか。

 規制改革なら構造改革特区、規制、税制、金融など総合改革を実現するなら、総合特区制度または国際戦略特区を活用すれば実現可能と考えますが、いかがですか。

 意地を張らずに、よいものはよいと、広い度量を持った方が行政の効率も上がると思いますが、いかがですか。

 新藤担当大臣に伺います。

 今後、この国家戦略特区の制度を用いて、さらなる規制改革に取り組むお考えはありますか。だとすれば、本法案で示された貧弱な規制見直しの項目を、早急に再検討を加え、拡充すべきであります。来年の通常国会にも改正案を提出し、項目をふやし、深掘りすべきと考えますが、いかがですか。お答えください。

 規制改革を担当する稲田国務大臣に伺います。

 本法案では、国家戦略特別区域諮問会議を設置することとなっております。安倍政権において規制改革会議も立ち上げられています。どのように連携していくのか。

 例えば、規制改革会議で取り上げられていない改革が、各所からの提案から国家戦略特別区域諮問会議でいきなり決定されることもあるのか。それなら、規制改革会議とは一体何なのか。規制改革担当大臣の見解を伺います。

 これまでの特区法と本法案の最大の相違点は、改革の基本的な内容を政府が決める、首相が議長を務める諮問会議で決める、すなわち、トップダウンの方式を採用している点にあります。

 特区の名称も、国家戦略を掲げています。国家の戦略とは、重たい言葉です。しかし、本法案で示された内容に、産業の競争力を強化するための、世界から技術、人材を呼び込む国際都市を築くための戦略が示されているのか甚だ疑問です。

 本法案では、目標として、国際ビジネス拠点の形成、医療等の国際的なイノベーション拠点の形成、革新的な農業等の産業拠点の形成の三つを掲げています。しかし、この三分野とも、法案には、政府の国家戦略は一切見えていません。

 例えば、農業分野であります。

 農業委員会と市町村の事務分担の見直し、古い民家の活用のための建築基準法の適用除外、農家レストランの設置要件の緩和、先ほども申し上げました農業生産法人要件のごく一部の緩和、さらには、補助の拡大とも言える、これはほとんど規制改革とは言えません、農業への信用保証制度の適用が、法案並びに政府の説明資料に記載されています。

 安倍総理、これら規制見直しが無駄とは言いません。しかし、これらの規制見直しを有機的に結びつける国家戦略があるのでしょうか。また、個別の政策を進めた結果としての具体的な戦略目標をお持ちなのでしょうか。

 この国家戦略特区なるもので、一定の期間内に特区内の農業生産高や農業所得が大幅にふえる道筋を示すべきであります。全国のモデルケースになる高付加価値農業の姿、競争力の高い農業の姿を示すべきでありますが、いかがですか。本法案の国家戦略特区が実現した場合の農業分野の姿、すなわち、国家の戦略をお示しください。

 国家戦略が示せないならば、この法案は看板に偽りありであります。今からでも遅くありません。法案の名称から国家戦略を外し、安倍内閣直轄特区とでも変更すべきであります。いかがですか。総理、お答えください。

 民主党政権で進めた総合特区制度に盛り込んだ支援策の中で、残念ながら、機能していないものもあります。それは、税の支援策です。

 総合特区では、税制上の支援措置として、所得控除を講じました。しかし、財務省との協議の中で、専ら特区内で事業を実施する法人を対象としたため、現状で、対象となった法人がありません。ある意味で、最大の岩盤は、税制、財務省でありました。

 本法案では、税制措置は、今後協議されるとなっております。新しい特区では、総合特区制度での支援措置を超える税制措置のメニューは出るのでしょうか。また、いわゆる専ら規定は、外れる方向で調整が進んでいるのでしょうか。担当の新藤大臣、そして、査定側の麻生財務大臣の見解を伺います。

 安倍首相に伺います。

 本法案の議論の中で、解雇特区の構想が一旦浮上しました。世論の、そして我々民主党の反発を受け、事実上の解雇特区については断念した内容の法案となりました。賢明な御判断であります。

 しかし、法案には盛り込まれませんでしたが、これからもこの議論は進めていかれるのですか。この国を、いつでも首にできる国にする意欲を持ち続けるのですか。なぜ、新しい特区の中で、解雇の判例を示した雇用ガイドラインが必要なのか、総理、その真意をお答えください。

 総理、経済の成長をもたらすのは、雇用の成長しかありません。一人一人が働き手として成長し、国全体としても、働き手の質が高くなることでしか経済は成長しないのです。少子高齢化が急速に進んでいる日本において、成長の鍵は、一人一人が働き手として成長できているか、そして、それを支える社会となっているかに尽きます。

 我々民主党は、政権を預かった際に、この経済政策の考え方を、居場所と出番と表現しました。人を大切にする政治、とりわけ、次の世代のための政治を掲げてまいりました。数々の雇用政策を実行し、社会の安定と安心を確保するために、税と社会保障の一体改革関連法案に取り組みました。

 安倍総理、今の日本に必要なのは、底上げ政策です。底上げを図ることで、格差による階級の断絶をなくすべきです。世代間、地域の格差をなくすべきであります。

 現場でも、経営者と働く仲間の一体感を強め、一定の価値観を共有し、一丸となって企業や地域社会を盛り上げる仕組みが必要です。松下幸之助翁や本田宗一郎氏の言葉を出すまでもなく、日本の強さは、人を大切にするチームワークにあるのです。

 総理、意味のある経済成長を実現したいのならば、浅はかな人切り、切り捨て政策を改め、雇用の成長に軸足を置く底上げ政策に転換すべきと考えますが、いかがですか。

 以上、本法案の課題の一部、アベノミクスの危うさのごく一部を指摘いたしました。

 民主党は、今後も、責任政党として、建設的な提案、政策論議を深めることをお約束して、私の代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 近藤洋介議員にお答えをいたします。

 政府の規制緩和策に対する御批判についてのお尋ねがありました。

 政府の規制緩和策について、さまざまな御意見、御批判があることは承知をしております。

 安倍内閣の成長戦略の目指すところは、強い経済を再生するため、企業の競争力強化を図り、それによる企業収益の増加を、若者、女性を初め頑張る人たちの雇用拡大、収入増加につなげることであり、そのためには、成長を阻む規制、障害を取り除いていくことが極めて重要であります。

 このため、十月一日に決定した成長戦略の当面の実行方針に基づき、国家戦略特区や企業実証特例制度の創設などにより、地域単位、企業単位、全国単位の三層構造で、引き続き規制制度改革を推進してまいります。

 薬事法改正の方針についてのお尋ねがありました。

 一般用医薬品のインターネット販売については、本年六月に閣議決定した日本再興戦略において、消費者の安全性を確保しつつ、適切なルールのもとで一般用医薬品についてインターネット販売を認める、ただし、スイッチ直後品目及び劇薬指定品目については、医療用に準じた形での慎重な販売や使用を促すための仕組みについて、医学、薬学等の専門家による検討を行い、その結論を得て所要の制度的な措置を講ずるとの方針を明記しています。

 御指摘の薬事法の改正については、こうした方針に沿って、現在、政府部内で準備を進めているところであり、早期に成案を得て、今国会に提出してまいりたいと考えています。

 国家戦略特区の規制の特例措置についてのお尋ねがありました。

 国家戦略特区は、日本の社会の風景を変える大胆な規制・制度改革を実行することで成長戦略を実現しようとするものであります。産業競争力会議の場などを通じ、私自身が、直接関係大臣に対し、改革を実現する方向で検討するよう指示を行うなど、リーダーシップを発揮し、医療、雇用、教育、まちづくり及び農業等の各分野において、これまで突破できなかった改革事項を盛り込みました。

 安倍政権の改革に終わりはありません。改革の実行に向けた挑戦は、まだまだ続いてまいります。

 国家戦略特区と従来の特区制度等との違いについてのお尋ねがありました。

 従来の特区制度は、地域の発意に基づき、地方公共団体による申請を国が認めて特区を指定する制度であり、いわば、地方の要望に応えるという枠組みとなっています。

 これに対し、国家戦略特区は、従来のように地方公共団体の提案に対しマル・バツをつけるのではなく、民間、地方公共団体と国が一体となって取り組むべきプロジェクトを形成し、国がみずから主導して大胆な規制改革を実現するものです。

 構造改革特区については、個別の規制改革事項を措置しているため、改革の効果が限定的になる面があります。

 これに対し、国家戦略特区においては、国が先導するプロジェクト単位で、必要な規制改革をパッケージで措置することとしています。

 また、総合特区については、地域の指定を行ってから、当該地域の提案を受けて規制の特例措置等を調整するスキームとなっています。このため、規制改革の実現には、多大な労力と時間を要します。

 これに対し、国家戦略特区においては、国家戦略にふさわしいプロジェクトに、必要な規制改革のパッケージを事前に用意した上で、地域を指定し、国、地方公共団体、民間事業者が一体となって推進することとしています。こうした取り組みにより、より確実、かつ強力にプロジェクトを推進することが可能となるものと認識しております。

 農業分野の姿などの国家戦略特区の戦略性についてお尋ねがありました。

 国家戦略特区は、居住環境を含め、世界と戦える国際都市の形成、農業も含めた産業の国際競争力強化といった国家戦略的観点から、これまで進展が見られなかった規制改革をパッケージで実現するものです。また、国家戦略特区は、日本再興戦略に掲げられた各成果目標に貢献するものと考えております。

 農業についての改革も、これまで手のつかなかった規制改革に踏み込めたと認識しており、六次産業化の推進などの成果目標に貢献するものです。

 他方、農業、農村の所得の向上については、国家戦略特区における取り組みのみで実現するものではなく、六次産業化の推進や農林水産物の輸出促進による高付加価値化を図るとともに、農地集積バンクによる農業の構造改革をしっかりと進め、コストの削減、生産性の向上をあわせて図るなど、施策を総動員することによって目指してまいります。

 国家戦略特区の名称を変更すべきではないかとのお尋ねがありました。

 本法案は、居住環境を含め、世界と戦える国際都市の形成、医療等の国際的イノベーションの拠点整備といった、国家戦略にふさわしいプロジェクトに必要な規制改革をパッケージで措置するものであり、まさに国家戦略特区という名前がふさわしい、こう考えております。

 雇用改革についてのお尋ねがありました。

 安倍内閣の基本方針は、成熟産業から成長産業への失業なき労働移動を実現することです。

 国家戦略特区に関するこれまでの政府の検討は、雇用ルールがわかりにくいことがグローバル企業や新規事業の投資や雇用の阻害要因にならないようにすることでした。このため、今回、雇用ガイドラインをつくることとしました。

 一時、解雇特区などという事実誤認のレッテル張りが行われましたが、そもそも、そのような考えは、もともと存在しませんでした。

 大事なことは、雇用条件を明確化することで雇用の拡大を図ることです。今後とも、若者、女性を含め、頑張る人たちの雇用の拡大を目指してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣新藤義孝君登壇〕

国務大臣(新藤義孝君) 近藤洋介君より、三点のお尋ねをいただきました。

 まず、規制改革事項の項目に関してでございます。

 国家戦略特区は、日本の経済社会の風景を変える大胆な規制・制度改革を実行することで成長戦略を実現しようとするものでございます。

 今回措置した規制改革事項は、地方公共団体や民間事業者から応募のあった提案をもとに、これまで実現できなかった規制改革事項について、分野を絞り込んで検討させていただきました。

 総理のリーダーシップのもとで、甘利大臣ほか関係大臣の御協力をいただき、医療、雇用、教育、まちづくり及び農業等の各分野において、これまで突破できなかった岩盤のような規制の改革事項を新たに盛り込むことができたと認識をしております。

 次に、規制改革に対する今後の取り組みについてでございます。

 法案が成立した後に、国家戦略特区を具体的に実現していく過程に入りますが、そのとき、さらなる規制・制度改革の課題が必ずや浮かび上がってくると考えているわけです。世界で一番ビジネスのしやすい環境を目指して、今後も、規制・制度改革に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

 そして最後に、税制措置でございます。

 国家戦略特区の税制措置については、日本再興戦略において、「大胆な規制・制度改革を行い、こうした制度設計に応じた税制措置を検討の上、必要な措置を講ずる」としております。

 八月十二日から一カ月間、地方公共団体や民間事業者に対して、国家戦略特区に関する提案募集を実施いたしました。地方公共団体や民間事業者からの御提案をいただきまして、まずは、規制改革等の実現に取り組むため、この国会に国家戦略特区法案を提出したわけでございます。

 税制措置につきましては、年末の税制大綱の決定に向けて作業を急ぎ、世界で一番ビジネスのしやすい環境の整備に向けて、成果を出してまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣稲田朋美君登壇〕

国務大臣(稲田朋美君) 国家戦略特別区域諮問会議と規制改革会議の関係についてお尋ねがありました。

 規制改革会議では、全国に推進すべき規制改革事項を検討対象とし、改革に取り組んでいます。他方、国家戦略特区は、規制改革の実験の場として突破口を開くことを目的とし、特定区域のみの規制改革を推進するものであり、必要に応じ、連携することといたしております。

 国家戦略特区諮問会議の意見を聞いて決定される規制改革事項は、まずは特区内で特例を認めるものであり、全国展開を図るためには、課題が存在する場合もあるものと考えます。早期に全国展開を図ることが望ましいものについては、規制改革会議の立場から必要な検討を行い、望ましい改革が実現できるよう、精力的に取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 国家戦略特区にかかわる税制についてのお尋ねがあっておりました、お忘れかと思いますが。

 国家戦略特区につきましては、大胆な規制・制度改革を行い、こうした制度設計に応じて必要な税制を検討することといたしております。まずは、内閣官房を中心に要望の具体化を図っていただき、その内容を精査の上、税制の検討を進めてまいりたいと存じます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、次の質疑者、阪口直人君。

    〔阪口直人君登壇〕

阪口直人君 日本維新の会の阪口直人です。

 ただいま議題になりました国家戦略特区法案について、日本維新の会を代表して、質問をさせていただきます。(拍手)

 本題に入る前に、安倍総理にお尋ねをいたします。

 今回の国会は、成長戦略実行国会だと総理自身が命名をされています。ところが、前回の産業競争力強化法案の審議の際は、総理は、トルコに外遊されていて、答弁の場にいらっしゃいませんでした。

 自民党は、野党のとき、徹底的に首脳外交を阻止する戦略をとられていましたが、私たち日本維新の会は、首脳外交の価値を認め、総理が年間百日は海外出張できるような国会改革を掲げ、その実現を、今後も真剣に目指してまいります。

 しかし、総理自身が力を入れているはずの、本来は重要広範である重要な国会審議が総理がいらっしゃらない中でなされるのであれば、国会軽視に力をかしてしまうことになるのではないかと、私たちは、正直、はしごを外された思いであります。

 この点を総理はどのように受けとめていただいているのか、まずは御自身の言葉で答えていただきたいと思います。

 安倍総理の経済政策の三本目の矢である成長戦略において、国家戦略特区は、まさに切り札と言えるでしょう。

 世界で一番ビジネスのしやすい環境を実現するため、まず特区の中で大胆な規制の撤廃を行う発想は、私たちも共有をしており、大阪府、大阪市は、政府に先回りをして、具体的な数々の提案を行ってまいりました。

 しかし、実際に提出された法案の中身を見て、がっかりしました。産業競争力会議での議論と比べると、岩盤規制を打ち破る気概が全く感じられない内容になってしまったこと、残念でなりません。

 安倍総理は、十月二十一日の衆議院予算委員会で、国家戦略特区に関して、特区ごとに具体的な計画を決める統合推進本部の意思決定には関係大臣を加えない方針を明らかにされました。統合推進本部のメンバーは、国家戦略特区担当大臣と関係地方公共団体の長、民間事業者の三者で組織する方向で検討しているとし、具体的な事業の推進のために必要な協議には関係大臣の参加を認めるが、意思決定には加えない方向で検討しているとおっしゃっています。抵抗する大臣がいては骨抜きになるから構成を見直したのでしょうか。

 では、安倍総理は、そもそも、なぜそのような抵抗勢力予備軍を閣僚に任命したのか。抵抗するような人が閣僚なら、更迭をし、成長戦略実行内閣に改造して改革をやり切るのが、本当の実行力、首相としてのリーダーシップではないでしょうか。いかがでしょうか。

 さて、世界銀行が百八十五の国・地域を対象に企業の活動状況を調査した年次報告書「ビジネス環境の現状」のランクでは、二〇一三年は、日本は二十四位。昨年の二十位から、下がっています。韓国は八位、マレーシアは十四位、タイが十八位で、アジアの新興国にもリードを許しています。起業のしやすさは百十四位、税制度が百二十七位と、大変に厳しい評価です。世界で一番ビジネスがしやすい国どころか、世界で二十位にも入っていないのが現実です。だから、突破力を伴った改革が必要なんです。

 外国企業が日本を敬遠するのは、ビジネスコストの高さ、規制、行政手続の煩雑さ、医療機関や子供の教育の問題などが挙げられています。

 世界を取り込むためには、大胆な規制緩和が必要です。二十四位から一位を目指すわけですから、国家戦略特区が本当に機能し、成果を上げるため、これまでとは異次元の挑戦により既得権を打破しなくてはなりません。その覚悟とリーダーシップがあるのか、世界が安倍総理に注目しています。

 ところが、さまざまな既得権を持つ業界団体に支援を受けた議員で、自民党は今、まさに膨れ上がっています。その存在こそが最大の抵抗勢力にならないように、既得権の岩盤のような壁を突破しなければいけない。自民党をぶっ壊す覚悟で取り組む必要があります。総理の率直な思い、そして覚悟を問いたい。

 多くの外国人投資家は、雇用規制の緩和こそが成長戦略を機能させる鍵と見ています。

 大阪府と大阪市は、チャレンジ特区を提案。大阪の御堂筋エリアを対象に、能力主義、競争主義に果敢にチャレンジする企業が集まる条件を整備するため、労働法制の緩和を求めてきました。能力主義、競争主義を前面に打ち出して、一定の報酬以上の労働者には労働法制を適用しない、そんな画期的な制度です。

 企業と労働者の関係で見ると、労働者は弱い立場です。日本全体の制度としては、労働者を守っていく法制度は絶対に必要です。これは強調しておきたい。

 しかし、十分な能力と一定以上の収入があり、リスクはあっても自分の能力と可能性を最大限伸ばしたい、情熱を持った人々を応援する環境はつくれないものでしょうか。そんな人たちがビジネスの世界で能力を発揮すれば、多くの利益をもたらす存在になれる可能性が高まります。

 同じ考えに立ち、能力と夢を持って日本を目指す外国人にも門戸を開く、そういう環境を推進するのが、国家戦略特区のあるべき姿ではないでしょうか。

 資本、人材を呼び込むためには、また、成長に向けて活発な民間活動をサポートするためには、規制緩和とともに、これまでにない規模での税制改革が必要です。国家戦略特区法案において最も大きな問題は、税制改革に踏み込めていない点。これは致命的です。

 例えば、大阪府と大阪市においては、国際総合戦略特区において、新たに進出した企業の地方税をゼロにしています。国も、こうした取り組みに連動させて、特区内での法人税を大幅に下げるべきです。総理のリーダーシップを発揮して、何としても、特区における税制の抜本改革を進めていただきたい。

 海外から注目されている金融改革も、先送りにされました。

 政府はアジアナンバーワンの金融センターをうたいながら、実際には、シンガポールや香港に大きくおくれをとっています。海外の金融機関がアジア本社を東京からシンガポールや香港に移す例も相次いでいます。

 株式上場にかかる金融取引税をゼロにするなどの抜本的な見直しや、有価証券報告書や監査報告書も英語のみによる行政手続を可能にするなどの環境整備を進めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 特区は、あくまで、限定した地域や分野での取り組みです。日本全体が経済的に成長していくためには、国家戦略特区での経験、学びを、将来は日本全体に広げ、日本の真の経済成長につながる一歩としてほしいと思います。

 一方で、私たちは、格差の解消という課題とも向き合わなくてはなりません。

 デフレ下で経済成長自体が難しいときは、まずは生産性の高いところに投資した方が経済効率性は高くなりますが、だからこそ、地域格差、経済格差の問題を解決する意思を特区の理念にも反映させていただきたい。

 国家戦略特区は、日本の中にシンガポールや香港をつくる、過酷な国際競争に勝ち切る都市をつくることが目的と解釈していますが、私は、経済の効率性を追求するとともに、人間の幸せを追求するための新しい挑戦をする場でもあってほしいと思います。

 例えば、社会をよくするための事業を行う社会起業家、すなわちソーシャルアントレプレナーを応援する特区にしませんか。利益を最大化する、それだけではなくて、社会への貢献を最大化しようと考える企業、いわゆる公益資本主義を実践する企業を応援する特区というコンセプトを追求する、そんな挑戦の場でもあってほしい。

 社会貢献を目的とする営利企業に対する優遇税制のあり方は、今、米国では大きな議論になっています。日本でも、特区で実験的に導入することから始めてはいかがでしょうか。

 また、非営利の社会貢献活動を行うNPOに対しては、特区において控除額を特別大きくすることで活動を後押しする、こんな制度をつくってはいかがでしょうか。

 米国のオバマ大統領は、大学を卒業した後、三年間、シカゴ南部の貧困地域で、弱い立場の人々の自立を支援する地域活動家として働きました。このような経験を踏まえて、社会活動家を支援する意思を育んだと言われています。

 国家戦略特区は、一部の地域、一部のエリートや、強い立場の人たちだけが恩恵を受けるものであってはなりません。全ての人々に希望を与える制度になるように、グランドデザインを練り直し、より志の高いものにしていく、そんな視点も織り込み、人々に元気を与える特区を与野党を超えてつくり上げる意思を改めてお伝えし、質問を終えます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 阪口直人議員にお答えをいたします。

 秋の出張と今回の審議についてお尋ねがありました。

 トルコは、G20などのメンバーであるのみならず、アジアとヨーロッパをつなぐ、我が国にとって戦略上極めて重要な国です。

 今回の出張は、日・トルコ九十周年の記念日に、日本の技術でアジアとヨーロッパをつなぐ海峡地下鉄の開通式にエルドアン首相とともに出席しました。その機会に首脳会談を行い、深い信頼関係を築くことができ、大きな成果を上げられたと思っています。

 日本維新の会におかれましては、国益を踏まえた国会改革を進めようとされている姿勢に対して心から敬意を表するとともに、今回の出張についても、改めて御理解をいただきたいと思います。国会が期待し国益に資する国会改革の実現に向けて、引き続き御尽力をいただきたい、このように思う次第でございます。

 私のリーダーシップについてお尋ねがありました。

 まず、安倍政権には、抵抗大臣はおりません。

 これまでも、産業競争力会議の場などを通じ、私自身が、直接、関係大臣に対し、改革を実現する方向で検討するよう指示を行って、リーダーシップを発揮してきました。この結果、今回、医療、雇用、教育、まちづくり、農業等の各分野において、これまで突破できなかった改革事項を盛り込みました。

 安倍政権の改革に終わりはありません。改革の実行に向けた挑戦は、まだまだ続きます。

 国家戦略特区への覚悟についてのお尋ねがありました。

 法案を成立させた後に、速やかに国家戦略特別区域諮問会議を立ち上げ、基本方針の策定、特区の指定等についての議論を開始することとなりますが、この会議の議長は私であり、議長として、リーダーシップを発揮し、国家戦略特区を強力に推進してまいります。

 また、国家戦略特区を具体的に実現していく過程に入りますが、そのとき、さらなる規制・制度改革の課題が必ずや浮かび上がってくると考えます。引き続き、私が先頭に立って、世界で一番企業が活躍しやすい国を目指して、規制・制度改革に積極的に取り組んでまいります。

 能力と夢がある内外の人を応援する環境の整備についてお尋ねがありました。

 国家戦略特区は、居住環境を含め、世界と戦える国際都市の形成、国際的イノベーション拠点の整備といった観点から、世界で一番ビジネスがしやすい環境をつくることを目指すものです。このためには、能力と夢を持った内外の人材が活躍することが不可欠です。

 このため、本法案においては、例えば、有期雇用の特例については、柔軟で多様な働き方が可能となるよう、全国規模の規制改革を行うこととしています。

 あわせて、外国医師の診察の解禁、容積率の緩和、公立学校運営の民間開放など、内外の意欲と能力のある人材を引きつけるような環境整備を図ってまいります。

 次に、特区に関する税制についてのお尋ねがありました。

 地方公共団体や民間事業者からの提案を受け、規制改革に加え、税制措置についても、年末の税制大綱の決定に向け、世界で一番ビジネスしやすい環境の整備のため、成果を出してまいります。

 国家戦略特区における金融分野などの環境整備についてお尋ねがありました。

 国家戦略特区制度については、日本の経済社会の風景を変える大胆な規制・制度改革を実行していくための突破口として、居住環境を含め、世界と戦える国際都市の形成といった観点から、特例的な措置を組み合わせて講じ、世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出するものです。このビジネスには、金融分野も排除されておりません。

 本法案が成立した後、国家戦略特区を具体的に実現していく過程において、御指摘のあった規制改革事項も含め、さらなる規制・制度改革の課題が浮かび上がってくるものと考えています。

 安倍政権の規制・制度改革に終わりはありません。引き続き、私が先頭に立って、世界で一番ビジネスがしやすい環境をつくってまいります。

 国家戦略特区の全国への影響や全国展開についてのお尋ねがありました。

 国家戦略特区は、これまで全国的には実現できなかった大胆な規制改革について、特区において集中的な取り組みを行うものです。

 国家戦略特区は、大都市のみならず、地方も視野に入れた、全国的な視野に立って、日本経済再生につながるプロジェクトの推進を図るものです。この国家戦略特区における取り組みがリーディングプロジェクトとなり、日本経済全体が再生することで、ひいては、地方を含めた日本全体の発展にもつながるものと考えています。

 また、国家戦略特区において措置された規制改革事項は、その効果を定期的に評価することにより、将来的に全国展開することも想定しているところであります。

 国家戦略特区の恩恵が、経済格差として一部地域や人に偏るとのお尋ねがありました。

 国家戦略特区における取り組みがリーディングプロジェクトとなり、日本経済全体の再生にもつながることで、地域格差や経済格差の問題解決にも資するものと考えています。国家戦略特区の経済成長の成果を全国隅々にまで行き渡らせられるように努めてまいります。

 政府としては、今回提案している法案が最善のものと考えておりますが、よりよいものにするための御提案があるのであれば、国会審議の中で建設的な議論をしていただくことを期待しております。

 次に、社会貢献活動を行う企業やNPOに対する税制優遇のあり方についてのお尋ねがありました。

 地方公共団体や民間事業者からの提案を受け、規制改革に加え、税制措置についても、年末の税制大綱の決定に向け、世界で一番ビジネスしやすい環境の整備のため、成果を出してまいります。

 以上であります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、高木美智代さん。

    〔高木美智代君登壇〕

高木美智代君 公明党の高木美智代です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました国家戦略特別区域法案について質問いたします。(拍手)

 ことしのプロ野球日本シリーズにおいて、楽天イーグルスが初優勝を遂げ、東北が歓喜に包まれました。先の見えない避難生活を送る方たちからも、久しぶりに大きな希望をもらった、うれしくて震えも涙もとまらないなどの声が相次ぎ、東北の方たちのはじける笑顔を見た私も、胸が熱くなりました。

 見せましょう、野球の底力をと呼びかけた結果は、まさにスポーツの持つ力を満天下に示し、東北の方たちの心をかたいきずなで結びました。

 スポーツといえば、二〇二〇年、東京で、日本で、オリンピック、パラリンピックが開催されます。

 本法案は、七年後のオリンピックの開催を追い風に、日本の経済社会の風景を変える、世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出するとの総理の御決意を示すものであると認識しております。

 今こそ、二〇二〇年、さらには、その先の未来に向かって、オール・ジャパンで力強い成長戦略を実現していくことが重要であると考えます。

 安倍内閣発足以降、経済は明らかに好転しつつありますが、これからが重要です。

 デフレ脱却と経済再生の道筋を確かなものにする、そして景気回復の恩恵を、家計へ、中小企業へ、地方へと、つなげていかなければなりません。

 先日、三回目の政労使会議が開かれましたが、企業収益を確実に賃金上昇に反映させるということについて、協議の進捗状況を含め、足元の経済の好循環実現に向けた総理の御決意を伺います。

 こうした足元の経済成長とともに、中長期の視点が欠かせません。そうした観点からすれば、本法案による国家戦略特区の創設は、日本経済の再生に向けた柱の一つであり、大胆な規制・制度改革を実行する突破口として、第三の矢である、民間投資を喚起する成長戦略を効果あらしめるための大きな一歩であると、評価いたします。

 その制度設計に当たっては、国家戦略という名にふさわしい、より効果が発揮できる、充実した制度とすることが肝要と考えます。

 本法案が日本経済再生に大きな力を発揮することができるかどうか、総理の御認識を伺います。

 以下、法案に沿って質問いたします。

 本法案において、内閣府に内閣総理大臣を議長とする国家戦略特区諮問会議を置くこととされ、会議の構成員には、内閣総理大臣が任命する民間有識者が含まれております。

 特区の推進に当たり、民間のすぐれた識見を活用することに、異論はありません。しかし、マクロ経済政策等大きなテーマを扱う経済財政諮問会議とは異なり、国家戦略特区諮問会議では、各特区の個別の案件も議論されることとなります。

 民間有識者が、個別の特区の具体のメニューについて、特定の者の意見を押し込もうとする、あるいは抑え込もうとするといったことは起きないでしょうか。一抹の不安を覚えます。

 言うまでもなく、会議の運営が特定の利害に誘導されるようなことがあってはならず、公平性、中立性を確保するために政府は万全の対策を講じることが必要と考えますが、新藤担当大臣の御見解を伺います。

 本法案に基づく対象区域については、規制改革事項等から見て、いわゆる大都市部になることがおおよそ想定されますが、日本全体によい影響が及ぶことが大切です。

 人、物、金が大都市部に集中し、地方との格差拡大、さらには、東日本大震災からの復興が置き去りにされるのではないかとの不安の声も聞かれます。

 総理は、こうした声にどのように対応されるおつもりなのか、御見解と御決意を伺います。

 あわせて、対象区域の指定に当たっての基本的考え方について、新藤大臣に伺います。

 次に、国家戦略特別区域計画の作成について伺います。

 国家戦略特区の成否は、特区ごとの国家戦略特別区域会議において、国、地方、民間の三者が一体となって議論し、その区域において真に必要な内容を特区計画に盛り込むことができるかどうかが大きな要素になります。

 計画の作成に当たっては、国が主導して特区を推進するとはいえ、特区内の住民や事業者が積極的に参画してこそプロジェクトは成功します。地方自治の尊重、地方分権の推進の観点からも、地域の実情に精通している特区内の地方公共団体の長が、責任ある立場として特区会議に参加することが不可欠ではないでしょうか。

 特区計画の作成に当たっては、関係する地方公共団体の貴重な意見がきちんと反映されるよう本法案において措置すべきと考えますが、新藤大臣の見解を伺います。

 今後、それぞれの特区における取り組みが進捗、具体化していく過程において、さらなる取り組みの推進のため新たに措置すべき規制改革事項が浮き彫りになることが想定されます。その中には、これまでの議論では出てこなかった、全く新しい観点からの規制改革が必要となる可能性もあります。

 規制改革に終わりはありません。

 特区ごとに設置される特区会議において、国、地方、民間の三者が一体となって協議した結果、新たな規制改革事項の必要性が共有されたということであれば、その事実は非常に重いものであると考えます。

 このような場合の対応、また、今回、協議がまとまらなかった項目や、盛り込まれなかった全国の自治体からの提案の取り扱い、さらには、本法第五条第七項に基づく新たな提案の募集について、新藤大臣のお考えを伺います。

 次に、関係大臣の関与について伺います。

 特区の円滑な推進のためには、いたずらに関係大臣と対峙する構図をつくるのではなく、関係大臣による適切な関与を認め、政府一体となって推進する体制を構築することが重要であると考えます。

 本法案において、政府一体となって特区を推進する体制についてどのように措置するのか、新藤大臣の見解を求めます。

 本法案による特区は、これまでの地域特区と対比して、企業に特例の恩恵を与える企業特区とも言われておりますが、大企業のみならず、中小企業への支援も盛り込まれるべきであると我が党は強く主張してまいりました。また、ベンチャー企業や女性、若者等の起業・創業支援も必要と考えます。

 総理がこれまで主張してこられたように、とりわけ女性の活用が急務であり、特区内においても、女性の起業・創業支援、管理職登用など、女性の一層の活躍の場の整備に取り組むべきと考えます。そのために実現されるべきはワーク・ライフ・バランスであり、それこそグローバルスタンダードと言えます。総理の御決意を伺います。

 特区という試みは、大胆な規制改革の実行を伴うものであり、その意味ではチャレンジングなものでありますが、新たな一歩を踏み出さなければイノベーションは生まれません。中長期的な見通しを持ちつつ、目標及びその達成に向けた工程表を設定した上で、取り組みの実施状況の評価、検証を行い、必要に応じて見直すなど、PDCA方式による進捗管理を適切に行うことが肝要と考えます。

 このたびの国家戦略特区において、どのようにPDCA方式を確立していこうとしているのか、新藤大臣の御見解を伺います。

 あわせて、これまでの構造改革特区など、政府が進めてきた特区制度における効果等の検証作業も重要と考えますが、答弁を求めます。

 アメリカ・コロンビア大学のノーベル賞経済学者であるジョセフ・スティグリッツ教授は、先日のNHKのインタビューで、アベノミクスへの期待について、構造改革も大事だが、単純に、金融政策だけ、財政政策だけ、構造改革だけという政策は過去のものだ、同時に実行する包括的な政策が必要です、女性が働きやすい職場をつくり、経済のグローバル化を進めること、安倍総理がそうした前向きな構造改革を実行することを期待していると述べております。

 今後、特区の取り組みを推進していくことにより日本経済を再生に力強く導こうとする総理の御決意を最後に伺い、私の質問とさせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 高木美智代議員にお答えいたします。

 経済の好循環実現に関するお尋ねがありました。

 デフレ脱却と経済再生のためには、賃金上昇を伴う好循環を実現していくことが重要であり、政労使会議において、これに向けた共通認識の醸成を目指して取り組んでおります。

 これまで、経済界から、企業収益の改善を雇用の創出と賃金の引き上げにつなげていくことが重要である、あるいは、業績の改善を報酬の形で還元することを検討したい、そして、報酬に関しては従来の定期昇給を中心とした賃金の態様を見直すことも含めて検討するなどといった、心強い発言をいただいているところであります。

 経済成長を早期に賃金上昇や雇用拡大につなげ、全国津々浦々まで景気回復の実感を得られるよう、引き続き取り組んでまいります。

 国家戦略特区の意義、効果等についてお尋ねがありました。

 国家戦略特区は、大胆な規制改革等を実現するための突破口として、居住環境を含め、世界と戦える国際都市の形成、医療等の国際的イノベーション拠点整備といった観点から、特例的な措置を組み合わせて講じるものです。

 これにより、世界で一番ビジネスのしやすい環境を目指し、国、地方、民間が三者一体となって取り組むプロジェクトの推進により、民間投資の喚起を通じ、日本経済を停滞から再生へ導くことができると考えております。

 大都市と地方の格差拡大の不安についてお尋ねがありました。

 国家戦略特区は、大都市のみならず、地方も視野に入れた全国的な視点に立って、日本経済再生につながるプロジェクトの推進を図るものです。この国家戦略特区における取り組みがリーディングプロジェクトとなり、日本経済全体が再生することで、ひいては、地方を含めた日本全体の発展にもつながるものと考えております。

 また、従来の特区制度やその他の施策を着実に進めるなど、地域活性化施策を全国各地で積極的に展開し、全国隅々にまで成長の成果を行き渡らせてまいります。

 次に、中小企業、ベンチャー企業、女性、若者への配慮についてお尋ねがありました。

 国家戦略特区のプロジェクトは、国、地方自治体、民間が三者一体となって推進するものであり、大企業に限らず、中小企業や女性、若者にも広く参加いただきたいと考えています。

 ベンチャー企業や中小企業も含め、規制の特例措置等による投資を促すとともに、女性、若者を含め、頑張る人たちの活躍の場や雇用の拡大を目指して取り組んでまいります。

 いずれにせよ、私は、女性が輝く社会の実現を最も重要なテーマの一つと位置づけております。この法案に限らず、これからも、女性の起業支援、管理職登用などに全力で取り組んでまいります。

 最後に、国家戦略特区の取り組みにより日本経済を再生に力強く導く決意についてのお尋ねがありました。

 高木議員御指摘のように、金融政策、財政政策、成長戦略の三本の矢を同時に包括的に進め、女性が輝く社会の実現や、経済のグローバル化に打ちかっていく、前向きな改革の実行が重要です。国家戦略特区は、まさに、この前向きな改革のかなめです。

 実行なくして成長なし。本法案を成立させ、実行に移すことで、世界で一番ビジネスがしやすい環境を実現し、日本経済の再生につなげてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣新藤義孝君登壇〕

国務大臣(新藤義孝君) 高木美智代議員から、六点お尋ねをいただきました。

 まず、諮問会議の運営についてでございます。

 御指摘のとおり、国家戦略特区諮問会議の運営に当たりましては、公平性、中立性を確保することが重要であることは言うまでもございません。

 このため、国家戦略特区諮問会議につきましては、その運営に当たり、構成員である民間有識者が、仮に会議の調査審議事項につき特別の利害関係を有するときには、当該事項について調査審議に関与することができないようにしたいと考えております。

 この趣旨については、国家戦略特区基本方針に記載をするとともに、具体的な運営方法について、会議の運営規則等で明確化をしてまいります。

 また、会議について、議事要旨の公表及び一定期間経過後の議事録の公表を行うことにより、調査審議の透明性を高めることとします。

 いずれにしても、国家戦略特区諮問会議の公平性、中立性が確保されるよう、万全の対策を講じてまいりたいと考えております。

 次に、対象地域の指定でございます。

 この基本的考え方についてでございますが、具体的な地域の指定については、法案成立後に立ち上がる国家戦略特区諮問会議において、国、地方、民間が一体となって取り組む、我が国経済にインパクトのあるプロジェクトについて検討し、それを実施するのにふさわしい区域の選定に入っていくということになります。

 特区の指定箇所数は、国家戦略として必要な範囲に限定することとしておりますが、いずれにせよ、特区諮問会議において検討をさせていただきます。

 次に、特区計画の作成についてのお尋ねでございます。

 国家戦略特区は、国、地方、民間の各主体が三者一体となって取り組むプロジェクトを推進するものでございます。

 御指摘のとおり、プロジェクトの推進には、地域における行政を自立的かつ総合的に実施する役割を広く担っている地方公共団体の主体的な参画が不可欠だと考えております。

 本法案においては、区域計画は、国家戦略特区担当大臣、関係地方公共団体の長、民間事業者の三者が相互に密接な連携のもとに協議した上で、合意して作成することとしているため、関係地方公共団体の意見は十分反映されるものと考えております。

 いずれにしても、地方自治体とよく連携をし、取り組んでまいります。

 次に、新たな規制改革事項についてのお尋ねでございます。

 国家戦略特区につきましては、八月十二日から一カ月間、提案募集を行いまして、二百四十二の団体、そのうち地方公共団体は六十一でございましたが、この二百四十二の団体から提案がございました。

 国家戦略として必要な範囲を限定することから、規制改革の提案の全てを国家戦略特区として取り上げることは困難でございます。しかしながら、これらの提案には、日本の構造改革の推進等に資するような、重要で有効な提案も多数含まれており、こうしたものについては、構造改革特区の提案とみなして、実現していくスキームをこの国家戦略特区法案の中に盛り込んでございます。

 また、本法案が成立した後に、国家戦略特区を具体的に実現していく過程に入りますが、そのときに、民間事業者や地域からの新たな問題提起を通じて、さらなる規制・制度改革の課題が必ず浮かび上がってくる、このように考えております。

 法の第五条第七項に基づく提案募集につきましては、そのような状況をしっかりと見きわめまして、適切な時期に行っていきたいと考えています。取り入れるべき提案があれば、その実現に向けて取り組んでまいりたいと思います。

 議員が御指摘のとおり、規制改革に終わりはないとの認識に立ちまして、国家戦略特区の推進に取り組んでまいります。

 次に、関係大臣の関与についてのお尋ねでございます。

 特区を政府一体となって推進する体制を構築することが重要であるとの御指摘は、そのとおりでございます。

 このため、国家戦略特区制度では、特区に関する政府全体の方針を定める基本方針を閣議決定により策定する、特区の指定は政令により行うこととしており、いずれも政府全体の意思として決定を行うことにしております。

 さらに、基本方針にのっとって作成される区域計画については、認定の際、専門的な立場から事業が本法の規定に合致しているかどうかを判断するため、計画に記載された事業及び規制の特例措置を所管している関係大臣の同意を得ることとしております。

 また、国家戦略特区諮問会議及び国家戦略特区会議は、プロジェクトを進めていく上で、専門的な立場である関係大臣の意見を聞くことが必要となった場合には、関係大臣を構成員として、意見を聞くことができるとしております。

 いずれにしても、政府一体となって国家戦略特区を推進してまいりたいと思います。

 最後の御質問でございます。特区の評価のあり方について。

 議員が御指摘をいただきましたように、国家戦略特区を指定したことで終わりではなく、国家戦略特区におけるプロジェクトの円滑な実施は、日本経済の再生を実現することにつながっていく、そうしたプロジェクトの効果を最大限に発揮するためには、PDCA方式による進捗管理を適切に行うことが重要である、このように考えているわけです。

 このため、国家戦略特区ごとに国家戦略特区会議が国家戦略特区計画を定期的に評価をして、そしてその結果を内閣総理大臣に報告することとしておりまして、これにより、適切にプロジェクトの評価を実施し、必要な見直しを加えていくことで、国家戦略特区について最大の成果が上がるように努めてまいりたいと考えております。

 また、構造改革特区、総合特区につきましては、毎年、外部の専門家を含めた評価を実施しておりまして、引き続き、着実に検証を進めてまいりたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、大熊利昭君。

    〔大熊利昭君登壇〕

大熊利昭君 みんなの党の大熊利昭です。

 私は、みんなの党を代表して、ただいま議題となりました国家戦略特区法案について質問をします。(拍手)

 本法案の目的は、我が国を取り巻く国際経済環境の変化その他の経済社会情勢の変化に対応して、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図るために、経済社会の構造改革を重点的に推進するとされています。

 そうであれば、経済社会では核となるプレーヤーである企業の構造にもメスを入れなければならないはずです。

 日本は、資本主義の国であるはずです。ならば、その構造の根幹にある資本そのものの競争力を高めなければならないはずです。

 しかし、現実には、国際競争のフロントにいるはずの日本の上場企業の自己資本利益率や総資産利益率は、諸外国と比べ、著しく低いままです。このことは、日本の上場会社の経営者は、全体として、世界の経営者と比べ、著しく資本を無駄にし続けているということを意味しています。

 これらを高めるために、何よりも、経営者の競争力を全体として高めなければならないはずです。質の高い経営者がいて初めて、各種の規制改革が生きるのです。そのためには、社外取締役の義務化や株式持ち合い構造の転換など、経営者の新陳代謝を促すような環境整備を進める必要があると思いますが、総理の御所見を求めます。

 その意味では、国家戦略特区支援利子補給金の支給は、本来、その企業や事業の加重平均資本コストを考慮すれば、現在価値マイナスの事業でも投資実行してしまうといった誤った経営判断を誘発する可能性があり、そのことから、短期的にはプラスでも、中長期的には資本の競争力を逆に弱めることになります。この点につき、御所見を求めます。

 さらに、この利子補給金制度の決定プロセスが、まことに不透明です。ワーキンググループの八田座長も、これまで全く議論されていない制度が突然加えられることは、不適切なデュープロセスであり、政治的要望により加えられたのではないかとしています。誰の、どのような要望だったか、御答弁をお願いします。

 次に、この法律によって、どの分野が、いつまでに、どのくらい国際競争力が強化されるかについて、国際的な市場シェアの向上など、具体的な数値目標は定めているのですか。説明を求めます。

 国家戦略特区は、総合特区等と異なる側面を強く打ち出すべきだと考えます。その観点から、国家戦略特別区域計画の作成においては参加者全員の合意を法律要件とすることは、意思決定をおくらせることになりませんか。答弁を求めます。

 医療分野について伺います。

 外国人医師が、その自国民に限らず外国人一般に対して診療を行うことを認めるとあります。このことは一定の前進ではありますが、なぜ日本人はその対象に入っていないのですか。日本人は日本人の診察を受けるだけでよいというのでは、理由になりません。医師会の強力な反対でできなかったのですか。明快な答弁を求めます。

 雇用条件の明確化について伺います。

 特区ごとに設置する統合推進本部のもとで、企業の雇用管理や労働契約事項が雇用ガイドラインに沿っているか助言、相談する雇用労働相談センターの設置について、なぜ法案に明記しなかったのですか。また、雇用ガイドラインの策定には、特区諮問会議が関与すべきではないですか。説明を求めます。

 公立学校の運営の民間開放について伺います。

 法案では、公設民営の解禁が可能かどうかについて、今後検討を加えるとされています。しかし、平成二十五年十月十八日の日本経済再生本部決定では、公立学校運営の民間開放、学校の公設民営等を可能とすることと明言されており、そこから大幅に後退しています。決定どおり、公設民営の解禁を法案に明記しなかったのはなぜですか。理由の説明を求めます。

 建築基準法の特例措置について伺います。

 特区においては、都市計画で定められた容積率を緩和するとありますが、同時に建ぺい率を見直すことをしないのはなぜですか。同時に建ぺい率も緩和することで、より広い居住空間を得ることができ、都心居住が促進されるのではありませんか。

 土地区画整理法及び都市計画法について伺います。

 二〇二〇年の東京オリンピック開催を控え、まちづくりのあり方を見直すことは極めて重要です。国、地方、民間による区域会議では、都市開発に関する規制が国よりも地方の方が厳しい場合、必要な区域計画の策定ができず、国家戦略特区の機能が十分に果たされないおそれはありませんか。

 国家戦略特区では、地方の規制と国の規制のうち、どちらか、より緩和された基準に合わせるという考えはありませんか。そして、既存の都市計画手続について、標準処理期間を法律に明記すべきではありませんか。答弁を求めます。

 農業について伺います。

 農業への信用保証制度の適用とありますが、農業の信用リスクをどのようにして計量するのですか。猛暑や大雨等の未曽有の気象現象が頻発する昨今、その非期待損失を算出する手法は確立しているのですか。現状のスキームのように、国や都道府県等の地方自治体が信用保証協会の損失を穴埋めすることになりませんか。

 安倍内閣には、骨太で強靱な三本目の矢を期待して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 大熊利昭議員にお答えをいたします。

 経営者の新陳代謝を促すような環境整備についてのお尋ねがありました。

 日本の産業の再興のためには、前向きな企業経営者の取り組みを後押しし、攻めの企業経営を促していくことが重要です。そのためには、コーポレートガバナンスの強化を図っていくことが重要であり、社外取締役の活用を促進するための措置、機関投資家に企業との建設的な対話を促すための原則、いわゆる日本版スチュワードシップ・コードの策定等の環境整備を進めてまいります。

 国家戦略特区制度における利子補給制度についてのお尋ねがありました。

 我が国の成長のためには、新たな成長分野を切り開く先駆的な研究開発や革新的な事業が必要です。利子補給制度では、そのような事業を実施するベンチャー企業等の資金調達を支援することにより、イノベーションの連鎖が生まれ、中長期的な産業の競争力の強化につながると考えております。

 このため、ワーキンググループの報告に加え、政府として利子補給制度が有効であると判断し、導入を決定したものであります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣新藤義孝君登壇〕

国務大臣(新藤義孝君) 大熊利昭君から、五点御質問をいただいております。

 まず、この数値目標についてのお尋ねでございます。

 日本経済再生のための第三の矢である日本再興戦略では、達成すべき成果目標、KPIと呼んでおりますが、このKPIが定められており、日本再興戦略の重要な柱の一つとして位置づけられている国家戦略特区は、その達成目標に資するよう推進してまいりたいと考えております。

 国家戦略特区は、特区が指定され、特区ごとの事業の実施計画である国家戦略特区計画が作成され、具体化されることになりますけれども、この計画の作成に当たっては、プロジェクトの実施が特区に及ぼす経済的、社会的効果を記載することとしております。

 その経済的、社会的効果の検証については、国家戦略特区会議が国家戦略特区計画を定期的に評価し、その結果を内閣総理大臣に報告することになっておりまして、適切にプロジェクトの評価を実施し、必要な見直しを加えていくことで、国家戦略特区についての最大の成果が上がるように努めてまいります。

 次に、国家戦略特区計画についてのお尋ねでございます。

 国家戦略特区は、従来のように、地方公共団体の提案に対しマル・バツをつけるのではなく、民間、地方公共団体と国が一体となって取り組むべきプロジェクトを形成し、国がみずから主導して、大胆な規制改革等により、その実現を図る、こういう構成にさせていただいております。

 このため、国家戦略特区における具体的な事業の実施計画である国家戦略特別区域計画の作成に当たっては、プロジェクトの実施に主体的にかかわる三者が、その合意を得るために相互に密接な連携のもとに協議をし、作成することになっているわけでございます。

 区域計画の作成に当たりましては、特区会議において国みずから計画を推進する立場に立って積極的に関与することで、迅速的な意思決定に努めてまいります。

 次に、建築基準法上の特例でございます。

 建築基準法の容積率の特例は、職住近接の環境整備を促進するため、区域計画で定めた事業実施区域において、計画で定める容積率の最高限度内で住宅を建築できるようにするものでございます。

 本特例は、事業者などからの提案等を踏まえ、職住近接の促進と、良好な市街地環境の形成を図るため、一定の空地を敷地内に有する住宅を対象として適用するものであります。

 したがって、建ぺい率の緩和を同時に行うものではありませんが、容積率の緩和により、土地の有効高度利用を促し、居住空間の確保や都心居住の促進が図られるものと考えております。

 なお、本法案では、あわせて、区域計画に記載をして内閣総理大臣の認定を受けることにより、都市計画の決定または変更がなされたものとみなすことになる、ワンストップ処理の特例を置いています。この特例の活用により、国家戦略特区会議において合意することにより、建ぺい率について、都市計画を変更して緩和することも可能になっております。

 次に、都市開発に関する規制についてのお尋ねであります。

 本法案で措置された都市計画法等の特例を活用する際には、区域計画に記載する都市計画の内容について、国家戦略特区会議において、国家戦略特区担当大臣、関係地方公共団体の長及び民間事業者の三者が密接な連携のもとで協議をして、そして合意が形成されるものであり、その中から適切な結論が出されるものと考えています。

 都市計画に要する期間を一律に法定することは困難でございますが、国、地方、民間の三者が参画する国家戦略特区会議においてワンストップ処理が可能となることで、都市計画決定の迅速化に資するものと考えております。国家戦略特区会議の構成員として、国家戦略特区計画を推進する立場から、迅速な計画策定に努めてまいります。

 最後に、農業への信用保証制度の適用に係る制度設計についてのお尋ねでございます。

 今般、日本経済再生本部が決定した国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針に盛り込まれたとおり、国家戦略特区において、商工業とともに行う農業について、信用保証協会の保証を付与することを可能とすることとしています。これにより、農業における民間金融機関からの資金調達の円滑化が一層図られるものと考えています。

 具体的な制度設計は今後検討していくことになりますけれども、農業の信用リスクの計量方法については、従来から農業向けの融資を行っている日本政策金融公庫等の公的金融機関の制度を参考にするなど、合理的な制度設計となるようにしてまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 大熊議員から、二問質問をいただきました。

 まず一問目は、外国医師に係る二国間協定の取り扱いについてのお尋ねでございます。

 世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出するため、外国人が安心して医療を受けられる環境を整備する観点から、外国医師に係る二国間協定について、国家戦略特区内に限定して、人数枠の拡大、外国人一般に対する診療を認めること等の対応を行うことといたしております。

 その際、外国医師の診療対象に日本人を加えなくても、外国人一般に対する診療を認めることで、例えば、英語圏から来るビジネスマンが、英語の細かいニュアンスまでわかる英語圏の外国医師を受診することが可能となり、世界で一番ビジネスをしやすい環境の創出という今回の措置の目的を十分に果たすことができると考えたものであります。

 続きまして、雇用労働相談センターの法案での取り扱い等についてお尋ねをいただきました。

 雇用労働相談センターが国家戦略特区において実施する事業主に対する支援策の内容については、十月十八日に日本経済再生本部で決定した方針に基づき、法案の第三十六条で規定いたしております。

 センターの支援策の具体的内容は、特区ごとに設置する統合推進本部の意見を踏まえつつ、企業の要請に応じ、その雇用管理や労働契約事項が、裁判例を分析、類型化した雇用ガイドラインに従っているかどうかなど、具体的事例に即した相談、助言サービスを事前段階から実施していくというものであります。

 また、雇用ガイドラインについては、法案の第三十六条第二項において、国家戦略特区諮問会議の意見を聞いて作成することを規定いたしております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣下村博文君登壇〕

国務大臣(下村博文君) 大熊議員から、公立学校の運営の民間開放についてお尋ねがありました。

 国家戦略特区の趣旨を踏まえ、公立学校で多様な教育を提供する観点から、公立学校の管理を民間に委託することを可能とすることは、大変重要であると認識しております。

 公立学校の運営の民間開放については、本法案の附則において、公立学校の管理を民間に委託することを可能とするため、その具体的な方策について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずると規定しており、公設民営を可能とする方針を明らかにした上で、そのための具体的検討に取り組み、必要な措置を講ずることを定めており、日本経済再生本部決定から後退したとは考えておりません。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表して、国家戦略特別区域法案について質問いたします。(拍手)

 安倍内閣は、日本再興のために法案を出したと言いますが、その内容は、特定区域を指定し、トップダウン方式で、大企業のための規制緩和と優遇税制を実施するものであります。

 なぜこのような法案を提出したのか。

 アベノミクス特区をつくるべきだと提唱した産業競争力会議委員の竹中平蔵氏は、こう述べています。岩盤規制を打破していかなければ、特に雇用分野は、残念ながら全く前進が見られないと、労働者保護法制をやり玉に上げました。

 なぜそんなことを言うのか。竹中氏は、人材派遣会社の取締役会長だからではないでしょうか。人材派遣ビジネスで利益を上げる上で邪魔な労働法制を、意のままに変えたいからであります。意図が見え見えではありませんか。自分の企業の利益に直結する規制緩和さえ進めば、それによって被害が広がろうがどうなろうがお構いなしという姿勢であります。到底容認できるものではありません。

 具体的に伺います。

 第一は、戦略特区諮問会議についてであります。

 この特区諮問会議は、経済財政諮問会議と同等の強い権限を持つ会議であり、その構成メンバーは、総理が指名し、半分は民間有識者とされています。その民間有識者は、企業側の利益代表であります。これは、企業利益に直結する規制緩和をトップダウンで進める体制づくりではありませんか。

 関係閣僚は、どのような位置づけなのでしょうか。臨時に呼ばれて意見を言うだけではないでしょうか。

 規制緩和を進めることを多数の議員によって決められたら、ブレーキのない、規制緩和暴走機関にならざるを得ないではありませんか。

 第二は、規制緩和の内容を誰が提案するのかということであります。

 既に、規制緩和について、事前の提案募集に二百四十二団体から百九十七件の応募があったと言われますが、そのほとんどは企業側からの提案ではありませんか。それに基づいて、都市再生・まちづくり、雇用、医療など、六分野の規制緩和を進めようとしているのであります。

 重大なのは、内容の一部が非公開とされ、国民に隠されていることであります。なぜ隠すのでしょうか。提案した企業だけがぼろもうけを上げるという事実を知られたくないから、隠すのではありませんか。全ての情報を国民に公開すべきではありませんか。

 第三は、悪影響を受ける人々の問題であります。

 戦略特区で実行されるプロジェクトや規制緩和によって、環境破壊、労働条件の悪化、医療被害、他事業者の経営悪化など、影響を受ける可能性のある住民の意見はどう扱われるのでしょうか。意見を反映する道筋はあるのでしょうか。法案のどこを読んでも見当たらないのではありませんか。これでは、悪影響を受ける国民の声を無視し、被害を放置することになりませんか。

 最後に、この法律では、総理の言う失われた二十年間は、克服できるどころか、一層深刻な格差と、経済の低迷をもたらすことになりはしないかという点であります。

 これまでの規制緩和によって、九〇年代からこれまでに、非正規労働者が八百八十一万人から二千四十三万人にふえ、正規労働者の平均年収は、四百四十六万円から三百七十七万円へと減少しました。また、長時間過密労働と過労死という深刻な社会問題を引き起こしたのであります。

 その一方で、大企業が、多国籍企業化して世界で利益を上げながら、内部留保額を史上空前の二百七十兆円に積み上げ、国内経済を空洞化させているのであります。

 この法案によって規制緩和が進めば、格差と貧困を一層加速することになるのではありませんか。明確な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 佐々木憲昭議員にお答えをいたします。

 雇用分野の規制改革についてお尋ねがありました。

 本法案における雇用分野の規制改革は、新規開業直後の企業及びグローバル企業等が、優秀な人材を確保し、従業員が意欲と能力を発揮できる環境を整備するために行うものです。

 これにより、企業にとっては、成長の起爆剤となる、世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出するとともに、若者、女性を含め、頑張る人たちの雇用の拡大を目指して取り組んでまいります。

 検討の過程での各委員の御発言の意図について、臆測でコメントすることは適切でないと考えております。

 国家戦略特区諮問会議の民間有識者の選定についてお尋ねがありました。

 本法案においては、国家戦略特別区域諮問会議の民間議員は、経済社会の構造改革の推進による産業の国際競争力の強化または国際的な経済活動の拠点の形成に関しすぐれた識見を有する者のうちから、私が任命することにしております。

 仮に、議員が直接の利害関係を有すると考えられる議題が上がる場合には、当該議員が審議に参加しないようにできる仕組みとしたいと思います。

 このように、会議の運営については、中立性、公平性を担保するため、万全の対策を講じてまいります。

 国家戦略特区諮問会議の関係閣僚の位置づけについてお尋ねがありました。

 国家戦略特区諮問会議に特定の規制に関係する議案が上がる場合には、当該規制の所管大臣を臨時に議員として参加させることができることとしております。

 また、区域計画の認定に当たっては、関係大臣の同意を得なければならないとしております。

 いずれにせよ、政府としては、関係大臣の意見を十分に尊重しながら、政府一体となって国家戦略特区を強力に進めてまいりたいと考えております。

 国家戦略特区諮問会議の役割についてお尋ねがありました。

 国家戦略特区諮問会議の役割は、例えば、具体的な事業を記載している区域計画の認定について言えば、内閣総理大臣の求めに応じて審議を行い、意見を述べることです。最終的に区域計画は内閣総理大臣の認定により定められますが、その際に関係大臣の同意を得ることを必要としています。

 以上のことから、御指摘のようなことは当たらないと考えます。

 規制改革の提案主体についてお尋ねがありました。

 国家戦略特区に関する提案募集に応募のあった二百四十二の団体のうち、地方公共団体が六十一団体を占めるなど、企業以外からも多数の提案をいただいております。

 提案の公開についてお尋ねがありました。

 企業からの提案につきましては、営業上の秘密等を理由に非公開の希望がない限り、公開しております。

 政府としては、最大限の情報公開に努めています。

 住民の意見の反映や悪影響の可能性についてお尋ねがありました。

 国家戦略特区会議には、必ず関係地方公共団体の長が構成員となり、具体的事業を記載した区域計画の作成に当たっては、関係地方公共団体の長の同意を必要としています。したがって、関係地方公共団体の長が、住民の声を十分に勘案して判断されるものと考えます。

 また、区域計画については、認定までの段階において、関係大臣の同意を必要としており、悪影響がないように事業を実施してまいります。

 大企業と労働者の格差についてのお尋ねがありました。

 私は、企業と労働者を、対立するものと位置づけておりません。これまでの賃金や投資の低迷は、長引くデフレによるところが大きいと考えています。

 私の成長戦略の目指すところは、企業の競争力強化や投資の拡大を図り、それによる企業収益の増加を、頑張る人たちの雇用の拡大や収入増加につなげることであります。この法案は、まさに、この好循環をつくり出す起爆剤になるものです。

 あわせて、企業収益の増加がいち早く雇用の拡大や賃金の上昇につながるように、政労使などの場を通じて、共通認識を醸成しているところであります。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、畑浩治君。

    〔畑浩治君登壇〕

畑浩治君 生活の党の畑浩治でございます。

 生活の党を代表して、ただいま議題となりました国家戦略特別区域法案に対して質問をいたします。(拍手)

 国民生活の向上に結びつく適切な規制改革を推進することは当然のことであります。ただし、これまで十五年を超えるデフレの原因は、国内の需要が乏しかったこと、すなわち、供給力に比して需要が少ないというデフレギャップにありました。国内需要を高めることこそ必要であります。

 一方、特区は、構造改革の手段であり、規制を緩和、撤廃して競争を促進し、供給能力を強化する施策であります。現に、この間、構造改革特区及び総合特区施策が講じられてきましたが、経済成長及びデフレ脱却に役立ったという事実はありません。

 今回の国家戦略特区は、これまでの特区施策の効果をどのように検証した上でのことか、お答えください。

 あわせて、総合特区制度において、国際戦略総合特区があり、この特区制度により、本法案の狙いとするものは達成できると思われますが、これによらず、国家戦略特区という新たな特区制度を構築しようとする理由をお答えください。

 私は、特区をつくり外国の投資を呼び込み、グローバルな大都市の国際競争力を高めなければ日本が立ち行かない、東京を強くしなければ日本がだめになるという発想には、強く違和感を感じています。

 そのような発想は、発展途上国型経済の発想であります。一部の大都市はよくなるかもしれませんが、そこだけが成長しても、その効果は地方に及ばずに、都市と地方の格差が開くことが危惧されます。むしろ、地域の発想を生かした、地域底上げ型の政策が必要だと考えますが、いかがでしょうか。

 本特区関連法案等に盛り込まれる規制の特例措置の内容に鑑みれば、今後さらに抜本的な規制改革を推進する観点から、新たな募集を行い、新たな規制の特例措置を講じていく必要がある場合も想定されます。その可能性が高いと思います。

 しかしながら、本法案第五条第七項には、内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、提案の募集を行うものとすると規定してあるのみであり、提案に対する応答義務の規定はありません。

 今後、新たな規制緩和の特例措置を積極的に講じていくべきであり、どのような方針のもとで提案募集を行い、どのような検討体制のもとで、さらなる規制緩和を講じていこうとお考えか、伺います。

 さらに、国家戦略特区制度で行われる施策については、その効果を検証しつつ、全国的に広げて行われるべきものもあると思われます。本制度で実施された施策を全国的な一般制度として広げるお考えはありますか。

 そもそも、国家的に必要な規制改革であれば、国家戦略特区という形ではなく、全国的な規制改革を当初から行う仕組みを構築すべきだと考えます。このことが、日本全体の発展という面では効果的であるとともに、地方が大都市圏と競争上不利となることを防ぐことにもなります。この点、いかがお考えでしょうか。

 本法案において、国家戦略特区の進め方のスキームの適正さにおいて、かなり疑念の残る部分があります。それは、国家戦略特別区域諮問会議において、議員として民間有識者が入ることになっている点と、国家戦略特別区域会議において、内閣総理大臣が選定した民間事業者が入ることになっている点です。

 もとより、民間有識者等の意見を聞くことは必要なことでありますが、この有識者や事業者が、日ごろ主張しているみずからの事業分野に係る規制緩和を提案してみずから審議するという、自作自演ともいうべき事態が発生しかねません。派遣業を行う者が労働者派遣規制の規制緩和の議論に参画するとか、解雇規制に係る規制緩和の議論に経営者団体の者が参画するような場合であります。

 このような者が、自分の関係する分野について規制緩和の議論、提案を行うとすれば、利益誘導ともなりかねません。このような、自己の利害に関係する場合には、そのような民間有識者、民間事業者を選定すべきではないと考えます。その選定方針について、本法案上、どのように規定され、担保されているのか、お伺いいたします。

 我々は、国民生活の向上に資する規制改革は適切に推進していくべきだという立場に立っております。本法案がそのようなものとなっているかどうか、慎重かつ厳密に審議していくことを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 畑浩治議員にお答えをいたします。

 これまでの特区制度の効果の検証についてお尋ねがありました。

 従来の特区制度は、地域の発意に基づき、地方公共団体による申請を国が認めて特区を指定する制度であり、いわば地方の要望に応えるという枠組みとなっています。

 これに対し、国家戦略特区は、従来のように、地方公共団体の提案に対しマル・バツをつけるのではなく、民間、地方公共団体と国が一体となって取り組むべきプロジェクトを形成し、国がみずから主導して大胆な規制改革を実現するものです。

 構造改革特区については、個別の規制改革事項を措置しているため、改革の効果が限定的になる面があります。これに対し、国家戦略特区においては、国が先導するプロジェクト単位で、必要な規制改革をパッケージで措置することとしています。

 また、総合特区については、地域の指定を行ってから、当該地域の提案を受けて、規制の特例措置等を調整するスキームとなっています。このため、規制改革の実現には多大な労力と時間を要します。

 これに対し、国家戦略特区においては、国家戦略にふさわしいプロジェクトに必要な規制改革のパッケージを事前に用意した上で、地域を指定し、国、地方自治体、民間事業者が密接に連携をとって区域計画を策定することとしています。こうした取り組みにより、より確実かつ強力にプロジェクトを推進することが可能となるものと認識しています。

 国家戦略特区の推進により、都市と地域の格差が開くのではないかとのお尋ねがありました。

 国家戦略特区における取り組みがリーディングプロジェクトとなり、日本経済全体が再生することで、地方を含めた日本全体の発展につながります。

 あわせて、従来の特区制度やその他の地域活性化策を全国各地で積極的に展開し、全国隅々まで成長の成果を行き渡らせてまいります。

 提案募集についてお尋ねがありました。

 法案が成立した後に、国家戦略特区を具体的に実現していく過程に入りますが、そのとき、民間事業者や地域からの新たな問題提示を通じて、さらなる規制・制度改革の課題が必ず浮かび上がってくるものと考えております。

 提案募集については、そのような状況をしっかりと見きわめ、適切な時期に行っていきたいと考えており、国家戦略特区諮問会議も活用して検討した上で、政府として、取り入れるべき提案があれば、実現に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

 国家戦略特区で行われる施策の全国的な展開についてお尋ねがありました。

 国家戦略特区において措置された規制改革事項は、その効果を定期的に評価することにより、将来的に全国展開することも想定しているところであります。

 地方への配慮についてお尋ねがありました。

 国家戦略特区は、これまで全国的には実現できなかった大胆な規制改革について、特区において集中的な取り組みを行うものであります。

 国家戦略特区は、大都市のみならず、地方も視野に入れた全国的な視点に立って、日本経済再生につながるプロジェクトの推進を図るものです。この国家戦略特区における取り組みがリーディングプロジェクトとなり、日本経済全体が再生することで、ひいては、地方を含めた日本全体の発展にもつながるものと考えています。

 あわせて、従来の特区制度やその他の地域活性化策を全国各地で積極的に展開し、全国隅々にまで成長の成果を行き渡らせてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣新藤義孝君登壇〕

国務大臣(新藤義孝君) 畑浩治議員から、民間有識者及び民間事業者の選定方針についてのお尋ねをいただきました。

 国家戦略特区諮問会議の民間議員につきましては、本法案におきまして、経済社会の構造改革の推進による産業の国際競争力の強化または国際的な経済活動の拠点の形成に関しすぐれた識見を有する方のうちから、内閣総理大臣が任命することにしております。

 国家戦略特区諮問会議の構成員である民間有識者が、仮に会議の調査審議事項につき特別の利害関係を有するときには、会議の運営に当たり、当該事項について調査審議に関与することができないようにしたい、このように考えております。

 この趣旨については、国家戦略特区基本方針に記載をするとともに、具体的な運営方法について、会議の運営規則等で明確化することで担保をしてまいりたいと考えます。

 また、国家戦略特区会議においては、実際に現場で事業を行う民間事業者にも参加いただくことが重要でございます。特区において特定事業を実施すると見込まれる者が会議の構成員となる必要があると考えているわけであります。

 これにより、国家戦略特区担当大臣、関係地方公共団体の長及び民間事業者が三者一体となって強力にプロジェクトを推進する体制が整い、三者が密接な連携のもとに協議を進めることにより、国家戦略特区の推進を図っていけることになる、こういうことでございます。

 なお、国家戦略特区会議における民間事業者からの構成員については、国家戦略特区の目的に貢献するという観点から、内閣総理大臣が選定することとし、その具体的な手続については、今後、検討の上、政令で定めてまいります。

 以上です。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣

       国務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣

       国務大臣     新藤 義孝君

       法務大臣     谷垣 禎一君

       文部科学大臣   下村 博文君

       厚生労働大臣   田村 憲久君

       国土交通大臣   太田 昭宏君

       環境大臣     石原 伸晃君

       国務大臣     甘利  明君

       国務大臣     稲田 朋美君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     古屋 圭司君

       国務大臣     森 まさこ君

       国務大臣     山本 一太君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

       内閣府副大臣   関口 昌一君


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