衆議院

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第1号 平成26年1月24日(金曜日)

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平成二十六年一月二十四日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第一号

  平成二十六年一月二十四日

    正午開議

 第一 議席の指定

    …………………………………

  一 国務大臣の演説

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 議席の指定

 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災害対策特別委員会、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会、沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会、青少年問題の総合的な対策を確立するため委員二十五人よりなる青少年問題に関する特別委員会、北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会、消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる消費者問題に関する特別委員会、科学技術、イノベーション推進の総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる科学技術・イノベーション推進特別委員会、東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十五人よりなる東日本大震災復興特別委員会及び原子力に関する諸問題を調査するため委員四十人よりなる原子力問題調査特別委員会を設置するの件(議長発議)

 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等の諸問題を調査するため委員四十五人よりなる海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)

 安倍内閣総理大臣の施政方針に関する演説

 岸田外務大臣の外交に関する演説

 麻生財務大臣の財政に関する演説

 甘利国務大臣の経済に関する演説


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    午後零時二分開議

議長(伊吹文明君) 同僚の皆さん、本日、第百八十六回国会が召集をされました。

 これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 議席の指定

議長(伊吹文明君) まず、日程第一、議席の指定を行います。

 衆議院規則第十四条により、皆さんの議席は、議長において、ただいまの仮議席のとおり指定をいたします。

     ――――◇―――――

議長(伊吹文明君) この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。

 第百三番、近畿選挙区選出議員、清水鴻一郎君。

    〔清水鴻一郎君起立、拍手〕

     ――――◇―――――

 特別委員会設置の件

議長(伊吹文明君) 次に、特別委員会の設置につきお諮りをいたします。

 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災害対策特別委員会

 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会

 沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会

 青少年問題の総合的な対策を確立するため委員二十五人よりなる青少年問題に関する特別委員会

 北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会

 消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる消費者問題に関する特別委員会

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策を樹立するため委員四十人よりなる科学技術・イノベーション推進特別委員会

 東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十五人よりなる東日本大震災復興特別委員会

及び

 原子力に関する諸問題を調査するため委員四十人よりなる原子力問題調査特別委員会

を設置いたしたいと存じます。これに御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 全会一致。御異議なしと認めます。したがって、そのとおり決まりました。

 次に、海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等の諸問題を調査するため委員四十五人よりなる海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。

 ただいま議決をされました十特別委員会の委員は追って指名をいたします。

     ――――◇―――――

議長(伊吹文明君) この際、暫時休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二分開議

議長(伊吹文明君) 休憩前に引き続き会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説

議長(伊吹文明君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、財務大臣から財政に関する演説、甘利国務大臣から経済に関する演説のため、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。

 まず、内閣総理大臣安倍晋三君。

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) まず、冒頭、海上自衛隊輸送艦「おおすみ」と小型船の衝突事故について、亡くなられた方の御冥福をお祈りし、また、お見舞いを申し上げます。徹底した原因究明と再発防止に全力を挙げてまいります。

 何事も、達成するまでは不可能に思えるものである。

 ネルソン・マンデラ元大統領の偉大な足跡は、私たちを勇気づけてくれます。誰もが不可能だと諦めかけていたアパルトヘイトの撤廃を、その不屈の精神でなし遂げました。

 不可能だと諦める心を打ち捨て、わずかでも可能性を信じて行動を起こす。一人一人が自信を持ってそれぞれの持ち場で頑張ることが、世の中を変える大きな力となると信じます。

 かつて、日本は、東京五輪の一九六四年を目指し、大きく生まれ変わりました。新幹線、首都高速、ごみのない美しい町並み。

 やれば、できる。

 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック。その舞台は東京にとどまらず、北海道から沖縄まで、日本全体の祭典であります。二〇二〇年、そしてその先の未来を見据えながら、日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけとしなければなりません。

 その思いを胸に、日本の中に眠るありとあらゆる可能性を開花させることが、安倍内閣の新たな国づくりです。

 創造と可能性の地。二〇二〇年には、新たな東北の姿を世界に向けて発信しましょう。

 福島沖で運転を始めた浮体式洋上風力発電、宮城の大規模ハウスで栽培された甘いイチゴ、震災で多くが失われた東北を、世界最先端の新しい技術が芽吹く先駆けの地としてまいります。

 三月末までに、岩手と宮城で瓦れきの処理が終了します。作付を再開した水田、水揚げに沸く漁港、家族の笑顔であふれる公営住宅。

 一年半前、見通しすらなかった高台移転や災害公営住宅の建設は、六割を超える事業がスタートしました。来年三月までに、二百地区に及ぶ高台移転と一万戸を超える住宅の工事が完了する見込みです。

 やれば、できる。

 住まいの復興工程表を着実に実行し、一日も早い住まいの再建を進めてまいります。

 福島の皆さんにも一日も早くふるさとに戻っていただきたい。除染や健康不安対策の強化に加え、使い勝手のよい交付金を新たに創設し、産業や生活インフラの再生を後押しします。新しい場所で生活を始める皆さんにも十分な賠償を行い、コミュニティーを支える拠点の整備を支援してまいります。

 東京電力福島第一原発の廃炉・汚染水対策について万全を期すため、東京電力任せとすることなく、国も前面に立って、予防的、重層的な対策を進めてまいります。

 力強いアーチ姿の永代橋。関東大震災から三年後、海外の最新工法を取り入れて建設されました。コストがかさむなどの反対を押し切って導入された当時最先端の技術は、その後全国に広まり、日本の橋梁技術を大きく発展させました。

 間もなく、三度目の三月十一日を迎えます。

 復興は、新たなものをつくり出し、新たな可能性に挑戦するチャンスでもあります。日本ならできるはず、その確固たる自信を持って、新たな創造と可能性の地としての東北を、皆さん、ともにつくり上げようではありませんか。

 日本経済も、三本の矢によって、長く続いたデフレで失われた自信を取り戻しつつあります。

 四四半期連続でプラス成長。GDP五百兆円の回復も視野に入ってきました。

 リーマン・ショック後〇・四二倍まで落ち込んだ有効求人倍率は、六年一カ月ぶりに一倍を回復。冬のボーナスは、連合の調査によると、平均で、一年前より三万九千円ふえました。

 北海道から沖縄まで全ての地域で、一年前と比べ、消費が拡大しています。中小企業の景況感も、先月、製造業で六年ぶり、非製造業で二十一年十カ月ぶりにプラスに転じました。

 景気回復の裾野は着実に広がっています。

 改めて申し上げます。

 この道しかない。皆さん、ともにこの道を進んでいこうではありませんか。

 企業の収益を雇用の拡大や所得の上昇につなげる。それが、消費の増加を通じて、さらなる景気回復につながる。経済の好循環なくして、デフレ脱却はありません。

 政府、労働界、経済界が、一致協力して、賃金の上昇、非正規雇用労働者のキャリアアップなど具体的な取り組みを進めていく。政労使で、その認識を共有いたしました。

 経済再生に向けたチーム・ジャパン。みんなで頑張れば必ず実現できる。その自信を持って、政府も、規制改革を初め成長戦略を進化させ、力強く踏み出します。

 国家戦略特区が、三月中に具体的な地域を指定し、動き出します。容積率規制や病床規制など、長年実現しなかった規制緩和を行います。

 企業実証特例制度も、今月からスタート。フロンティアに挑む企業には、あらゆる障害を取り除き、チャンスを広げます。

 設備投資減税や研究開発減税も拡充し、チャレンジ精神を持って新たな市場に踏み出す企業を応援してまいります。

 利益を従業員に還元する企業を応援する税制を拡充します。復興財源を確保した上で、来年度から、復興特別法人税を廃止し、法人実効税率を二・四%引き下げます。

 キャリアアップ助成金を拡充し、正規雇用労働者へのステップアップを促進してまいります。

 この国会に問われているのは、経済の好循環の実現です。景気回復の実感を全国津々浦々にまで、皆さん、届けようではありませんか。

 四月から消費税率が上がりますが、万全の転嫁対策を講ずることに加え、経済対策により持続的な経済成長を確保してまいります。

 五兆五千億円に上る今年度補正予算の財源は、税収の上振れなど、この一年間の成長の果実です。国債の追加発行は行いません。

 来年度予算でも、基礎的財政収支が、中期財政計画の目標を大きく上回る、五兆二千億円改善します。

 経済の再生なくして財政再建なし。経済の好循環をつくり上げ、国、地方の基礎的財政収支について、二〇一五年度までに二〇一〇年度に比べ赤字の対GDP比の半減、二〇二〇年度までに黒字化との財政健全化目標の実現を目指します。

 独立行政法人の効率化、公務員制度改革を初め、行政改革にもしっかりと取り組んでまいります。

 社会保障関係費が初めて三十兆円を突破しました。少子高齢化のもと、受益と負担の均衡がとれた制度へと、社会保障改革を不断に進めます。

 ジェネリック医薬品の普及を拡大します。生活習慣病の予防、健康管理なども進め、毎年一兆円以上ふえる医療費の適正化を図ってまいります。

 その上で、消費税率引き上げによる税収は、全額、社会保障の充実、安定化に充てます。世界に冠たる国民皆保険、皆年金をしっかり次世代に引き渡してまいります。

 年金財政を安定させ、将来にわたって安心できる年金制度を確立します。

 所得が低い世帯の介護保険や国民健康保険などの保険料を軽減します。地域において、お年寄りの皆さんが必要としている、在宅での医療・介護サービスなどを充実してまいります。

 全世代型の社会保障を目指し、子ども・子育て支援を充実します。この国から待機児童をなくすため、来年度までに二十万人分、二〇一七年度までに四十万人分の保育の受け皿を整備してまいります。

 昨年一人の女の子から届いた手紙を、私は今も忘れません。

 今は中学生となった愛ちゃんは、生まれつき小腸が機能しない難病で、幼いころから普通の食事はしたことがありません。

 iPS細胞の研究への期待を込め、手紙は、こう結ばれていました。「治療法が見つかれば、とっても未来が明るいです。そして、何でも食べられるようになりたいです。」

 この小さな声に応え、未来への希望をつくるのは、政治の仕事です。難病から回復して総理大臣となった私には、天命とも呼ぶべき責任があると考えます。

 小児慢性特定疾患を含む難病対策を大胆に強化します。医療費助成の対象を、子供は六百疾患、大人は三百疾患へと大幅に拡大。難病の治療法や新薬開発のための研究も、これまで以上に加速してまいります。

 病院を見舞った私に、愛ちゃんがかわいらしい絵をくれました。「私は絵を描くのが好きで、将来、絵本作家になって、たくさんの子供を笑顔にしたいと思っています。」

 難病の皆さんが、将来に夢を抱き、その実現に向けて頑張ることができる社会をつくりたい。私は、心からそう願います。

 二〇二〇年のパラリンピック。日本は、障害者の皆さんにとって、世界で最も生き生きと生活できる国にならねばなりません。

 難病や障害のある皆さんの誰もが生きがいを持って働ける環境をつくる。その特性に応じて、職業訓練を初め、きめ細やかな支援体制を整え、就労のチャンスを拡大してまいります。

 元気で経験豊富な高齢者もたくさんいます。あらゆる人が、社会で活躍し、その可能性を発揮できるチャンスをつくる。そうすれば、少子高齢化のもとでも、日本は力強く成長できるはずです。

 全ての女性が活躍できる社会をつくる。これは、安倍内閣の成長戦略の中核です。

 仕事と子育てが両立しやすい環境をつくります。小一の壁を突き破るべく、第一次内閣で始めた放課後子どもプランを着実に実施してまいります。

 家族のきずなを大切にしつつ、男性の育児参加を促します。育休給付を、半年間五〇%から六七%に引き上げ、夫婦で半年ずつ取得すれば一年間割り増し給付が受けられるようにします。

 子育てに専念したい方には最大三年育休の選択肢を認めるよう経済界に要請しました。政府も、休業中のキャリアアップ訓練を支援します。一年半でも二年でも子育てした後は、職場に復帰してほしいと願います。

 子育ての経験を生かし、二十億円の市場を開拓した女性がいます。子育ても一つのキャリア。家庭に専念してきた皆さんにも、その経験を社会で生かしてほしい。インターンシップや起業を支援します。

 女性を積極的に登用します。

 二〇二〇年には、あらゆる分野で指導的地位の三割以上が女性となる社会を目指します。そのための情報公開を進めてまいります。まず隗より始めよ。国家公務員の採用は、再来年度から、全体で三割以上を女性にいたします。

 全ての女性が、生き方に自信と誇りを持ち、持てる可能性を開花させる。女性が輝く日本を、皆さん、ともにつくり上げようではありませんか。

 若者たちには無限の可能性が眠っています。それを引き出す鍵は、教育の再生です。

 いじめで悩む子供たちを守るのは、大人の責任です。教育現場の問題に的確で速やかな対応を行えるよう、責任の所在が曖昧な現行の教育委員会制度を抜本的に改革します。

 公共の精神や豊かな人間性を培うため、道徳を特別の教科として位置づけることとし、教員養成など準備を進めてまいります。

 全ての子供たちに必要な学力を保障するのも公教育の重要な役割です。幼児教育の無償化を段階的に進めます。教科書の改善に向けた取り組みを進めてまいります。

 世界一の読解力。十五歳の子供たちを対象とした国際的な学力調査で、日本の学力が過去最高となりました。改正教育基本法のもと、全国学力テストを受けてきた世代です。第一次内閣以来の公教育の再生が、確実に成果を上げています。

 やれば、できる。

 二〇二〇年を目標に、中学校で英語を使って授業するなど、英語教育を強化します。目指すは、コミュニケーションがとれる使える英語を身につけること。来年度から試験的に開始します。

 日本人は、もっと自信を持って、自分の意見を言うべきだ。立命館アジア太平洋大学で、ミャンマーからの留学生ミンさんがこう語ってくれました。

 教授も学生も、半分近くが外国籍。文化の異なる人々との生活は、日本の若者たちにすばらしい刺激となっています。

 二〇二〇年を目標に、外国人留学生の受け入れ数を、二倍以上の三十万人へと拡大してまいります。

 国立の八大学では、今後三年間で外国人教員を倍増します。

 外国人教員の積極採用、英語による授業の充実、国際スタンダードであるTOEFLを卒業の条件とするなど、グローバル化に向けた改革を断行する大学を支援してまいります。

 意欲と能力のある全ての若者に留学機会を実現します。学生の経済的負担を軽減する仕組みをつくり、二〇二〇年に向けて、日本人の海外留学の倍増を目指します。

 可能性に満ちた若者たちを、グローバルな舞台で活躍できる人材へと育んでまいります。

 世界に目を向けることで、日本の中に眠るさまざまな可能性に改めて気づかされます。オープンな世界は、日本が成長する大きなチャンスです。

 急成長する新興国では、道路も鉄道も必要です。水道や電気のインフラを整え、災害に強い都市開発が課題です。アジアでは、二〇二〇年までに八兆ドルものインフラ投資が見込まれています。

 その世界のニーズに応える力が日本にはあります。

 エネルギー不足や公害などの問題に取り組んできた経験があります。高い環境技術は、世界の温暖化対策にも貢献できるはずです。長年培ってきた経験や技術を、世界と、惜しむことなく、共有してまいります。

 インフラ輸出機構を創設します。

 交通や都市開発といった分野で海外市場に飛び込む事業者を支援し、官民一体となって成約につなげます。十兆円のインフラ売り上げを、二〇二〇年までに、三倍の三十兆円まで拡大してまいります。

 昨年、シンガポールで、日本専門チャンネル、ハロー・ジャパンが開局。インドネシアでは、仮面ライダーが子供たちのヒーローに加わりました。

 日本のコンテンツやファッション、文化芸術、伝統の強みに、世界が注目しています。ここにも可能性があります。クールジャパン機構を活用し、コンテンツの海外展開や地域ならではの産品の海外売り込みなどを支援してまいります。

 成長センターであるアジア太平洋に一つの経済圏をつくる。TPPは、大きなチャンスであり、まさに国家百年の計です。

 企業活動の国境をなくす。関税だけでなく、知的財産、投資、政府調達など、野心的なテーマについて厳しい交渉を続けています。

 同盟国でもあり経済大国でもある米国とともに、交渉をリードし、攻めるべきは攻め、守るべきは守るとの原則のもと、国益にかなう最善の判断をしてまいります。

 アジアと日本をつなぐゲートウエー、それは沖縄です。

 舟楫をもって万国の津梁となし、万国津梁の鐘にはこう刻まれています。古来、沖縄の人々は、自由な海を駆け回り、アジアのかけ橋となってきました。

 そして、今、自由な空を舞台に、沖縄が二十一世紀のアジアのかけ橋となるときです。

 アジアとの物流のハブであり、観光客を迎える玄関口として、那覇空港第二滑走路は、日本の成長のために不可欠です。予定を前倒しし、今月から着工いたしました。工期を短縮し、二〇一九年度末に供用を開始します。

 高い出生率、豊富な若年労働力など、成長の可能性が満ちあふれる沖縄は、二十一世紀の成長モデル。二〇二一年度まで毎年三千億円台の予算を確保し、沖縄の成長を後押ししてまいります。

 沖縄科学技術大学院大学には、世界じゅうから、卓越した教授陣と学生たちが集まります。さらなる拡充に取り組み、沖縄の地に世界一のイノベーション拠点をつくり上げてまいります。

 ITやロボットには、競争力を劇的に伸ばす力があります。メタンハイドレートは、日本を資源大国に変えるかもしれません。海洋や宇宙、加速器技術への挑戦は、未来を切り開きます。イノベーションによって日本に新たな可能性をつくり出す気概が必要です。

 世界じゅうから超一流の研究者を集めるため、研究者の処遇など世界最高の環境を整えた、新たな研究開発法人制度をつくります。経済社会を一変させる挑戦的な研究開発を大胆に支援します。年度にとらわれない予算執行を可能とし、長期にわたる、腰を据えた研究が行える環境を保障します。

 日本を、世界で最もイノベーションに適した国としてまいります。

 世界シェア三割。誰にもまねのできない薄いメッキをつくるイノベーションは、墨田区にある従業員九人の町工場から生まれました。日本のイノベーションを支えてきたのは、大企業の厳しい要求に高い技術力で応える、こうした中小・小規模事業者の底力です。

 ものづくり補助金を大胆に拡充します。物づくりのための設備だけではなく、新たな商業、サービスを展開するための設備に対する投資も支援してまいります。あわせて、個人保証偏重の慣行も改めてまいります。

 ソニーもホンダも、ベンチャー精神あふれる小規模事業者からスタートしました。小規模事業者がどんどん活躍できる環境をつくるための基本法を制定し、小規模事業者支援に本腰を入れて乗り出します。

 iPS細胞を初め再生医療、創薬の分野で、日本は強みを持っています。しかし、未踏の技術開発には、リスクも高く、民間企業は二の足を踏みがちです。

 日本版NIHを創設します。医療分野の研究開発の司令塔です。

 難病など不治の病に対し、官民一体で基礎研究から実用化まで一貫して取り組み、革新的な治療法、医薬品、医療機器を世界に先駆けて生み出してまいります。

 電力システム改革を前進させ、電気の小売を全面自由化します。

 全ての消費者が自由に電力会社を選びます。ベンチャー意欲の高い皆さんに参入してもらい、コスト高、供給不安といった課題を解決する、ダイナミックなイノベーションを起こしてほしいと願います。

 これまでのエネルギー戦略をゼロベースで見直し、国民生活と経済活動を支える、責任あるエネルギー政策を構築します。

 原子力規制委員会が定めた世界で最も厳しい水準の安全規制を満たさない限り、原発の再稼働はありません。徹底した省エネルギー社会の実現と、再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、原発依存度は、可能な限り低減させてまいります。

 さて、ことしは、地方の活性化が安倍内閣にとって最重要のテーマです。地方が持つ大いなる可能性を開花させてまいります。

 地方経済の中核は農林水産業です。おいしくて安全な日本の農水産物は、世界じゅうどこでも大人気。必ずや世界に羽ばたけるはずです。

 農地集積バンクが動き出します。

 農地を集約し、生産現場の構造改革を進めます。さらに、四十年以上続いてきた米の生産調整を見直します。いわゆる減反を廃止します。需要のある作物を振興し、農地のフル活用を図ります。

 規模拡大に伴って負担が増す水路や農道など多面的機能の維持のため、新たに日本型直接支払いを創設します。農地の規模拡大を後押しし、美しいふるさとを守ります。

 経営マインドを持ったやる気ある担い手が、あすの農業を切り開きます。彼らが安心と希望を持って活躍できる環境を整えることこそ、農業、農村全体の所得倍増を実現する道だと信じます。農林水産業を、若者に魅力のある、地方の農山漁村を支える成長産業とするため、食料・農業・農村基本計画を見直し、農政の大改革を進めてまいります。

 人口減少が進む中においても、元気な地方をつくる。これは、大いなる挑戦であります。

 自主性と自立性を高めることで、個性豊かな地方が生まれます。一次内閣で始めた第二次地方分権改革の集大成として、地方に対する権限移譲や規制緩和を進めます。

 行政サービスの質と量を確保するため、人口二十万人以上の地方中枢拠点都市と周辺市町村が柔軟に連携する、新たな広域連携の制度をつくります。中心市街地に生活機能を集約し、あわせて地方の公共交通を再生することにより、町全体の活性化につなげてまいります。

 中山間地や離島といった地方にお住まいの皆さんが、伝統あるふるさとを守り、美しい日本を支えています。

 活力あるふるさとの再生こそが、日本の元気につながります。こうした地域で、都道府県が福祉やインフラの維持などを支援できる仕組みを整えます。都市に偏りがちな地方法人税収を再分配する仕組みをつくり、過疎に直面する地方においても財源を確保してまいります。

 地方には、特色ある産品や、伝統、観光資源などの地域資源があります。そこに成長の可能性があります。地域資源を生かして新たなビジネスにつなげようとする中小・小規模事業者を応援します。

 昨年、外国人観光客一千万人目標を達成いたしました。

 北海道や沖縄では、昨年夏、外国人宿泊者が八割もふえました。観光立国は、地方にとって絶好のチャンスです。タイからの観光客は、昨年夏、ビザを免除したところ、前年比でほぼ倍増です。

 やれば、できる。

 次は二千万人の高みを目指し、外国人旅行者に不便な規制や障害を徹底的に洗い出します。フランスには、毎年八千万人の外国人観光客が訪れます。日本にもできるはずです。二〇二〇年に向かって、目標を実現すべく努力を重ねてまいります。

 日本人のサービスは世界一、一千万人目としてタイから来日したパパンさんの言葉です。日本のおもてなしの心は、外国の皆さんにも伝わっています。

 昨年は、富士山や和食がユネスコの世界遺産に登録されました。日本ブランドは、海外から高い信頼を得ています。観光立国を進め、活力に満ちあふれる地方を、皆さん、つくり上げようではありませんか。

 そのブランドが揺らぎかねない事態が起きています。ホテルなどで表示と異なる食材が使用されていた偽装問題については、不正表示への監視指導体制を強化します。

 悪質商法による高齢者被害の防止にも取り組み、消費者の安全、安心を確保してまいります。

 日本を世界一安全な国にしていかなければなりません。

 近年多発するストーカー事案には、警察や婦人相談所などが連携して被害者の安全を守る体制を整え、加害者の再犯防止対策も実施します。社会を脅かす暴力団やテロ、サイバー空間の脅威への対策も進め、良好な治安を確保してまいります。

 昨年は、自然災害により、大きな被害が相次いで発生しました。災害から人命を守り、社会の機能を維持するため、危機管理を徹底するとともに、大規模建築物の耐震改修や、治水対策、避難計画の作成や防災教育など、ハードとソフトの両面から、事前防災、減災、老朽化対策に取り組み、優先順位をつけながら国土強靱化を進めます。

 伊豆大島への災害派遣。活動中に御位牌を発見した自衛隊員は、泥をみずからの水筒の水で洗い、きれいに拭き取りました。

 その様子をテレビで見た方から、自衛隊に手紙が寄せられました。「本当に涙が出ました。あの過酷な条件の中で自衛隊員の心の優しさに感動しました。」その手紙は、こう続きます。「私はもう八十歳になりますが、戦争を知っている世代としては最後の世代ではなかろうかと思います。このようにたくましく、また、心優しい自衛隊員がおられる日本は安心です。」

 自衛隊は、何物にもかえがたい国民の信頼をかち得ています。黙々と任務を果たす彼らは、私の誇りです。

 海を挟んだ隣国フィリピンの台風被害でも、千二百人規模の自衛隊員が緊急支援を行いました。

 避難する方々を乗せたC130輸送機は、マニラ到着とともに、乗客の大きな拍手に包まれました。サンキュー、サンキュー、子供たちは何度もそう言いながら、隊員たちに握手を求めてきたそうです。

 日本の自衛隊を、日本だけでなく、世界が頼りにしています。世界のコンテナの二割が通過するアデン湾でも、海賊対処行動に当たる自衛隊、海上保安庁は、世界から高い評価を受けています。

 ことしは、ODA六十周年。日本は、戦後間もないころから、世界に支援の手を差し伸べてきました。医療・保健分野などで生活水準の向上にも貢献してきました。女性の活躍を初め人間の安全保障への取り組みを、先頭に立って進めています。

 シリアでは、化学兵器の廃棄に協力しています。イランの核問題では、平和的解決に向けた独自の働きかけを行っています。

 こうした活動の全てが、世界の平和と安定に貢献します。これが積極的平和主義です。我が国初の国家安全保障戦略を貫く基本思想です。その司令塔が国家安全保障会議です。

 戦後六十八年間守り続けてきた我が国の平和国家としての歩みは、今後とも変わることはありません。

 集団的自衛権や集団安全保障などについては、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の報告を踏まえ、対応を検討してまいります。

 先月東京で開催した日・ASEAN特別首脳会議では、多くの国々から積極的平和主義について支持を得ました。ASEANは、繁栄のパートナーであるとともに、平和と安定のパートナーです。

 中国が、一方的に防空識別区を設定しました。尖閣諸島周辺では、領海侵入が繰り返されています。力による現状変更の試みは、決して受け入れることはできません。引き続き、毅然かつ冷静に対応してまいります。

 新たな防衛大綱のもと、南西地域を初め、我が国周辺の広い海、そして空において、安全を確保するため、防衛態勢を強化してまいります。

 自由な海や空がなければ、人々が行き交い、活発な貿易は期待できません。民主的な空気が、人々の可能性を開花させ、イノベーションを生み出します。

 私は、自由や民主主義、人権、法の支配の原則こそが世界に繁栄をもたらす基盤であると信じます。日本が、そして世界がこれからも成長していくために、こうした基本的な価値を共有する国々と連携を深めてまいります。

 その基軸が日米同盟であることは、言うまでもありません。

 世界の市民同胞の皆さん、米国があなたのために何をするかを問うのではなく、我々が人類の自由のために一緒に何ができるかを問うてほしい。昨年着任されたキャロライン・ケネディ米国大使の父、ケネディ元大統領は、就任に当たって世界にこう呼びかけました。

 半世紀以上を経て、日本はこの呼びかけに応えたい。国際協調主義に基づく積極的平和主義のもと、日本は、米国と手を携え、世界の平和と安定のために、より一層積極的な役割を果たしてまいります。

 在日米軍再編については、抑止力を維持しつつ、基地負担の軽減に向けて、全力で進めてまいります。

 特に、学校や住宅に近く、市街地の真ん中にある普天間飛行場については、名護市辺野古沖の埋立申請が承認されたことを受け、速やかな返還に向けて取り組みます。同時に、移設までの間の危険性除去が極めて重要な課題であり、オスプレイの訓練移転など、沖縄県外における努力を十二分に行います。

 沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、できることは全て行うとの姿勢で取り組んでまいります。

 さて、総理就任から一年ほどで、十五回海外に出かけ、三十カ国を訪問し、延べ百五十回以上の首脳会談を行いました。

 ロシアのプーチン大統領とは四度首脳会談を行い、外務・防衛閣僚協議も開催されました。個人的な信頼関係のもとで、安全保障、経済を初めとする協力を進めるとともに、平和条約締結に向けた交渉にしっかりと取り組み、アジア太平洋地域のパートナーとしてふさわしい関係を構築してまいります。

 トルコのエルドアン首相とは、三度の首脳会談を通じ、地下鉄、橋などの交通システム、原子力、科学技術分野における人材育成など、多岐にわたる協力で合意し、戦略的パートナーシップは着実に前進しています。

 直接会って信頼関係を築きながら、一つ一つ前に進む。いかなる課題があっても、首脳同士が膝詰めで話をすることで物事が大きく動く。昨年は、トップ外交の重要性を改めて実感しました。

 ことしも、地球儀を俯瞰する視点で、戦略的なトップ外交を展開してまいります。

 中国とは、残念ながら、いまだに首脳会談が実現していません。しかし、私の対話のドアは常にオープンであります。課題が解決されない限り対話をしないという姿勢ではなく、課題があるからこそ対話をすべきです。

 日本と中国は、切っても切れない関係。戦略的互恵関係の原点に立ち戻るよう求めるとともに、関係改善に向け、努力を重ねてまいります。

 韓国は、基本的な価値や利益を共有する、最も重要な隣国です。日韓の良好な関係は、両国のみならず、東アジアの平和と繁栄にとって不可欠であり、大局的な観点から協力関係の構築に努めてまいります。

 北朝鮮には、拉致、核、ミサイルの諸懸案の包括的な解決に向けて具体的な行動をとるよう、強く求めます。

 拉致問題については、全ての拉致被害者の御家族が御自身の手で肉親を抱き締める日が訪れるまで、私の使命は終わりません。北朝鮮に対話と圧力の方針を貫き、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引き渡しの三点に向けて、全力を尽くしてまいります。

 今月、アフリカ三カ国を訪問しました。力強く成長するアフリカは、日本外交の新たなフロンティアです。日本は、インフラ、人材育成といった分野で、アフリカの人々のため、一層の貢献をしてまいります。

 アフリカの人々のため、八十七年前、アフリカに渡った一人の日本人がいました。野口英世博士です。

 志を得ざれば再びこの地を踏まず。ふるさと福島から世界に羽ばたき、黄熱病研究のため、周囲の反対を押し切ってガーナに渡り、そして、その地で黄熱病により殉職。人生の最期の瞬間まで医学に対する熱い初心を貫きました。

 我々が国会議員となったのも、志を得るため。この国をよくしたい、国民のために力を尽くしたいとの思いからであったはずです。

 改めて申し上げます。

 全ては国家国民のため、互いに寛容の心を持って、建設的な議論を行い、結果を出していくことが、私たち国会議員に課せられた使命であります。一年前、私は、この場所でこう申し上げました。

 今や、自由民主党と公明党による連立与党は、衆参両院で多数を持っております。しかし、私の信念は、今なお変わることはありません。

 私たち連立与党は、政策の実現を目指す責任野党とは、柔軟かつ真摯に政策協議を行ってまいります。そうした努力を積み重ねることで、定数削減を含む選挙制度改革も、国会改革も、そして憲法改正も、必ずや前に進んでいくことができると信じております。

 皆さん、ぜひとも、国会議員となったときの熱い初心を思い出していただき、建設的な議論を行っていこうではありませんか。最後にこうお願いして、私の施政方針演説といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

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議長(伊吹文明君) 次に、外交演説。

 外務大臣岸田文雄君。

    〔国務大臣岸田文雄君登壇〕

国務大臣(岸田文雄君) 第百八十六回国会の開会に当たり、外交の基本方針について所信を申し述べます。

 この一年間で、国際社会における我が国への期待は確実に高まっています。自由、民主主義、基本的人権のみならず、法の支配を重視し、アジア太平洋地域はもとより、中東、アフリカ、欧州、中南米に至るまで、世界全体の平和と繁栄の実現のためひたむきに努力するという我が国の姿勢に対し国際社会の支持が着実に広がっていることを、外務大臣として世界各国を訪問する中で、強く実感いたしました。

 一方、我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しています。

 本年も、日米同盟の強化、近隣諸国との協力関係の重視、そして日本経済の再生に資する経済外交の強化といった三本柱を軸とした外交を引き続き強力に推進し、国益の増進に全力を尽くします。また、グローバルな課題への貢献を通じた世界全体の利益の増進のため、一層積極的に取り組みます。

 来年は、戦後七十周年を迎えます。

 我が国が戦後守り続けてきた自由、民主主義、人権、法の支配は、国民に深く浸透し、国家の根本を支える柱となっています。近隣諸国との間で歴史認識をめぐる議論がありますが、日本政府の歴史認識に変わりはありません。また、平和国家としての歩みは、今後も堅持していきます。こうした基本的立場について、各国に丁寧に説明していく考えです。

 国際的にも、来年は、開発課題、気候変動、軍縮、防災等、さまざまな分野で重要な節目の年となります。

 国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、世界の平和、安定及び繁栄に、外交力を最大限活用して、これまで以上に積極的に貢献してまいります。

 国家安全保障会議という司令塔のもとで、国家安全保障戦略に基づき、積極的平和主義を推進し、アジア太平洋地域及び国際社会における日本外交の存在感を力強く示してまいります。

 この一年、地球儀を俯瞰する外交を展開する中で、ASEANを初めとするアジア太平洋諸国、ロシア、欧州、中南米、中東、アフリカ等との関係強化に努めてまいりました。

 アジア太平洋地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、日本外交の基軸たる日米同盟の重要性は一層高まっています。

 安倍政権発足以来、日米間の頻繁な要人往来を通じて具体的な成果を得ています。今後も、日本外交の第一の柱として、日米同盟をあらゆる分野で強化してまいります。

 安全保障分野においては、昨年のいわゆる2プラス2の成果に沿って、日米防衛協力のための指針の見直しを初め、安全保障、防衛協力を確実に進め、抑止力を一層向上させます。

 また、在日米軍再編を現行の日米合意に従って進めながら、沖縄の負担軽減のため、できることは全て行うとの方針で全力で取り組みます。

 特に普天間飛行場については、その危険性の除去が極めて重要な課題であるとの認識のもと、一日も早い移設に向けて政府として取り組んでまいります。

 第二の柱は、近隣諸国との協力関係の重視です。

 中国とは、国交正常化以来四十年以上にわたり、隣国同士、あらゆる分野で関係強化に努めてきました。中国の平和的な発展は、我が国にとって利益であり、チャンスです。日中関係は最も重要な二国間関係の一つであり、両国は、地域と国際社会の平和と安定のために責任を共有しています。日中両国、そして地域の利益のためにも、戦略的互恵関係の原点に立ち戻り、関係改善を図ってまいります。

 一方、中国の軍事力強化に関する透明性の向上を求めるとともに、中国公船による尖閣諸島沖領海内への侵入や、中国による東シナ海防空識別区の設定などの、力を背景とした一方的な現状変更の試みについては、我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜くとの決意のもと、引き続き、毅然かつ冷静に取り組みます。

 最も重要な隣国である韓国との関係強化は、地域の平和と繁栄の確保という両国の共通の利益にとって不可欠であり、安倍政権の優先事項です。引き続き、さまざまなレベルで意思疎通を積み重ねるとともに、冷静に問題に対処し、相互に敬意を払い、大局的観点から、来年の国交正常化五十周年にふさわしい、未来志向で重層的な協力関係を構築すべく、粘り強く取り組みます。

 日韓間の貿易・投資や、第三国における日韓企業間の協力の推進など、経済関係も一層強化していきます。

 我が国の固有の領土である竹島については、引き続き、我が国の主張をしっかりと伝え、粘り強く対応します。

 日・ASEAN友好協力四十周年を迎えた昨年、日・ASEAN関係は大きく発展しました。安倍総理大臣はASEAN全加盟国を訪問し、私も全加盟国の外相と会談し、十二月には東京で成功裏に特別首脳会議を開催いたしました。この成果の上に、本年の議長国であるミャンマーを初めとするASEAN各国との協力関係をさらに強化いたします。

 さらに、インド及びオーストラリアなどと、安全保障、経済等、さまざまな分野で協力を深化させるとともに、モンゴル、太平洋島嶼国との関係も強化いたします。

 こうした近隣諸国との関係とあわせ、本年最初の訪問国となったスペイン、フランスを含む欧州や中南米との協力を推進し、これら地域との対話の枠組みも積極的に活用します。

 昨年四月、安倍総理大臣は、十年ぶりにロシアを公式訪問し、それ以降、半年で四度の首脳会談を重ね、十一月には史上初となる2プラス2の開催をするなど、日ロ関係全体を底上げし、今後への弾みと方向性を示すことができました。

 ロシアとは、地域のパートナーとしての関係を発展させるべく、首脳レベルを初めとした政治対話を進め、安全保障、経済等、あらゆる分野での協力の進展を図ります。

 最大の懸案である北方領土問題については、両国の立場に依然大きな隔たりがありますが、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく、粘り強く交渉に取り組みます。

 北朝鮮の動向については、引き続き、情報収集と分析に努め、対応に万全を期します。北朝鮮による核・ミサイル開発の継続は、地域と国際社会全体の平和と安全に対する重大な脅威です。関係国と連携しつつ、北朝鮮に対し、国連安保理決議及び六者会合共同声明に基づく具体的行動を引き続き強く求めます。

 我が国としては、対話と圧力の方針のもと、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けて取り組みます。拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ないとの方針のもと、国際社会とも協力しつつ、現政権下での完全解決に全力を尽くします。

 第三の柱は、日本経済の再生に資する経済外交の強化です。

 昨年末に私を本部長として立ち上げた日本企業支援推進本部のもとで、トップセールスを含め、日本企業の海外展開支援を一層強力に進めます。ODAを活用したインフラシステム輸出も推進します。海外における日本人と日本企業の安全対策の強化にも引き続き取り組みます。

 また、国益にかなった高いレベルの経済連携を戦略的かつスピード感を持って推進し、TPP交渉については、引き続き早期妥結に向けて取り組みます。日本産品の海外への普及促進や、風評被害対策にも注力します。

 さらに、エネルギー、鉱物資源、食料等の安定的な確保のため、資源外交を強化します。

 また、WTOやAPEC、G8、G20などを活用し、経済分野での国際的ルールの整備と実施に積極的に取り組みます。我が国のOECD加盟五十周年となる本年、閣僚理事会の議長国としての役割を果たします。

 また、グローバルな課題についても、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、一層の貢献を果たします。

 まず、唯一の戦争被爆国として、核兵器不拡散条約を基礎とした国際的な核軍縮・不拡散体制の維持強化に貢献するとともに、現実的で実践的な取り組みを積み重ね、核兵器のない世界に向け、国際社会の取り組みを主導いたします。この関連で、四月に広島で軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)外相会合を開催いたします。

 また、国際的な原子力安全の強化にも引き続き取り組みます。

 イランの核問題については、包括的解決のための最終的な合意の形成とその実施に向けて、国際社会と連携しつつ、イランとの伝統的友好関係に基づく働きかけを継続いたします。

 次に、女性が輝く社会の実現は、世界共通の課題です。

 昨年九月、国連総会において表明した我が国の支援策は、国際社会から高く評価されています。女性の力を十分に引き出し、世界に活力をもたらすべく、国際社会との協力や途上国支援を強化します。

 また、女性・平和・安全保障に関する行動計画を、市民社会の方々とともに策定しています。

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、ハーグ条約が間もなく我が国について発効することを踏まえ、条約の適切な実施に取り組みます。

 ODA六十周年に当たる本年、積極的平和主義の立場から、ODAを一層戦略的に展開します。

 ミレニアム開発目標の達成や、人間の安全保障を指導理念とする、効果的な、ポスト二〇一五年開発アジェンダの構築を目指します。特に、国際保健外交戦略に基づき、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを推進いたします。

 我が国は、昨年のフィリピン台風被害に対し、過去最大規模の自衛隊派遣等の支援を行ってきていますが、災害救援・防災分野の国際協力を推進し、来年三月に仙台市で開催する国連防災世界会議につなげてまいります。

 また、攻めの地球温暖化外交戦略のもと、気候変動の新たな国際枠組みの構築に向け、途上国支援等を効果的に活用しつつ、国際的議論を主導いたします。

 国際的重要性を増すアフリカに対しては、安倍総理大臣のアフリカ訪問も踏まえ、昨年のTICAD5で表明した支援策を着実に実施し、ウイン・ウインのパートナーシップ構築を目指します。

 我が国は、開かれ安定した海洋の発展と公海における上空飛行の自由の確保に向け、主導的な役割を果たします。

 また、組織犯罪対策を含む国際テロ対策を強化するとともに、宇宙やサイバー空間における法の支配の確立に向け、国際的な規範づくりを推進いたします。

 我が国は、南スーダンを含め、国連平和維持活動(PKO)にさらに貢献し、要員派遣や人材育成などを通じて、平和維持、平和構築を推進いたします。

 シリア情勢の改善に向け、先般出席したジュネーブ2を通じた取り組みや、人道支援、化学兵器廃棄に向けた協力を通じて、可能な限り貢献を行います。また、アフガニスタンについて、これまでに表明した支援を着実に実施いたします。

 中東和平プロセスについては、平和と繁栄の回廊構想などを通じ、和平交渉を後押ししていきます。

 国連創設七十周年となる来年を見据え、二〇一五年安保理非常任理事国選挙に万全を期すとともに、安保理改革を早期に実現し、我が国も常任理事国として貢献していきたいと考えます。国連などの国際機関の日本人職員の増強にも取り組みます。

 また、国際社会での我が国の存在感を一層高め、信頼される日本の姿がさらに理解されるよう、我が国の立場や考え方を戦略的に対外発信するとともに、和食を含む文化の発信や、若者を初めとする人的交流、日本語の普及の促進などを通じて、ソフトパワーのさらなる充実を図ります。

 昨年の訪日外国人数は、政府目標の一千万人を上回り、過去最高を記録しました。ビザ緩和などの措置を通じて、観光立国推進に取り組みます。

 さらに、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック東京大会の成功に向け、スポーツを通じた国際貢献策を着実に実施するなど、外務省としても最大限取り組んでまいります。

 このように多岐にわたる外交課題に適切に対処するため、外交実施体制を含む我が国の総合的な外交力を引き続き強化していきます。

 戦後の我が国の平和国家としての歩みは、国際社会における高い評価と尊敬をかち得てきました。こうした歩みを堅持しつつ、今後は、国際協調主義に基づく積極的平和主義のもと、平和で繁栄した世界の実現に向け、我が国ならではの貢献を一切惜しみません。

 私は、そのことが我が国の立場に対する理解を一層深め、国際社会からの信頼をさらに揺るぎないものにすると確信をしております。今後も、我が国を守り、世界の平和と繁栄を実現するための外交を全力で推進してまいります。

 議員各位、そして国民の皆様の御支援と御協力を心よりお願いいたします。(拍手)

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議長(伊吹文明君) 次に、財政演説。

 財務大臣麻生太郎君。

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 平成二十五年度補正予算及び平成二十六年度予算の御審議に当たり、財政政策等の基本的な考えについて所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明させていただきます。

 発足から一年、第二次安倍内閣におきましては、デフレ不況からの早期脱却と経済再生を図るため、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢を一体として強力に推進してまいりました。その政策の効果もあって、実質GDPが四四半期連続でプラス成長になり、物価についても底がたく推移するなど、日本経済は着実に上向いております。

 まずは、このような景気回復に向けた動きやデフレ不況からの脱却への期待を確実な成長軌道につなげていく必要があろうと存じます。

 このため、第三の矢である日本再興戦略の実行を加速、強化してまいります。同時に、政府、経営者、労働者が、経済の好循環実現に向けた政労使会議における取りまとめに基づいて、それぞれの役割を果たしつつ、互いに連携して取り組みを進めてまいります。

 これにより、企業収益の拡大を賃金上昇、雇用・投資拡大につなげ、消費拡大や投資の増加を通じてさらなる企業収益の拡大を促すという経済の好循環を実現することが重要であろうと存じます。

 これらの取り組みにより、保険料収入や税収の基盤でもある強い経済を取り戻し、あわせて、消費税率を引き上げることにより、社会保障の安定財源を確保しつつ、持続可能な社会保障制度を構築し、次世代に引き継いでいきます。

 本年四月に実施する消費税率の引き上げに際しましては、反動減を緩和して景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の経済の成長力の底上げと好循環の実現を図り、持続的な経済成長につなげるための施策を講じます。

 具体的には、昨年十月一日に閣議決定をいたしました経済政策パッケージに基づき、好循環実現のための経済対策及び平成二十五年度補正予算の概算を決定いたしました。平成二十六年度予算、税制改正とあわせ、消費税率引き上げによる影響を緩和するための取り組みを、転嫁対策とともに着実に進めてまいります。

 日本銀行が現在取り組んでおります金融緩和を円滑に進めるため、また、今後、民需主導の持続的な経済成長を実現する上でも、日本の財政に対する信認を維持することは重要であります。

 一方、日本の財政状況は、デフレ不況や少子高齢化等の要因によって悪化が続いてまいりました。それに加えて、リーマン・ショック後の経済危機への対応などにより、近年さらに悪化が進み、歴史的に見ても、諸外国との比較においても、極めて厳しい状況にあります。

 財政への信認を確保することで人々の将来への不安を払拭し、持続的な経済成長につなげていく必要があります。

 こうした点を踏まえ、政府としては、国、地方を合わせた基礎的財政収支につきまして、二〇一五年度までに赤字の対GDP比を二〇一〇年度の水準から半減、二〇二〇年度までに黒字化するという財政健全化目標を掲げております。今後、これらの目標を着実に達成していくために、引き続き税収を拡大させるとともに、各年度継続して歳出を効率化していく必要があろうと存じます。

 こうした考え方のもと、中期財政計画に沿って、今後とも、歳出歳入両面において最大限の努力を行ってまいります。

 次に、好循環実現のための経済対策等を実施するために今国会に提出をいたしました平成二十五年度補正予算の大要について申し述べます。

 好循環実現のための経済対策につきましては、一般会計において、総額で五兆四千七百四十四億円の財政支出を行うこととしております。その内容としては、競争力強化策に係る経費に一兆三千九百八十億円、女性・若者・高齢者・障害者向け施策に係る経費に三千五億円、防災・安全対策の加速に係る経費に一兆一千九百五十八億円、低所得者・子育て世帯への影響緩和、駆け込み需要及び反動減の緩和に係る経費に六千四百九十三億円、東日本大震災復興特別会計への繰り入れとして一兆九千三百八億円を計上いたしております。

 そのほか、地方交付税交付金として一兆一千六百八億円、国際分担金などのその他の経費として三千六百三十六億円を計上しております。

 これらの歳出を賄うため、歳出面におきましては、既定経費を一兆五千三百三十四億円減額することとしており、歳入面におきましては、税収で二兆二千五百八十億円、税外収入で三千六百九十四億円の増収を見込むほか、前年度剰余金を二兆八千三百八十一億円計上しております。これらにより、国債の追加発行をせずに、経済対策等の財源を確保することといたしております。

 こうした結果、平成二十五年度一般会計予算の総額は、歳入歳出ともに当初予算から五兆四千六百五十四億円増加し、九十八兆七百七十億円となります。

 また、特別会計予算等につきましても所要の補正を行うことといたしております。

 平成二十五年度財政投融資計画につきましては、好循環実現のための経済対策を踏まえ、総額一千三百八億円を追加しております。

 続いて、平成二十六年度予算及び税制改正の大要を御説明申し上げます。

 平成二十六年度予算は、デフレ不況からの脱却、経済再生と財政健全化をあわせて目指す予算であり、平成二十五年度補正予算と一体として、日本の競争力の強化につながる未来への投資や、生活の基盤を守る暮らしの安全、安心といった事項に予算を重点化させていただいております。

 また、社会保障・税一体改革を実現する最初の予算でもあり、消費税増収分を活用し、社会保障の充実と安定化を図ります。

 基礎的財政収支対象経費は七十二兆六千百二十一億円であり、これに国債費二十三兆二千七百二億円を合わせた一般会計総額は、九十五兆八千八百二十三億円となっております。

 一方、歳入につきましては、租税等の収入は五十兆十億円、その他収入は四兆六千三百十三億円を見込んでおります。また、公債金は四十一兆二千五百億円となっており、前年度当初予算に対し、一兆六千十億円の減額を行っております。

 この結果、国の一般会計における基礎的財政収支につきましては、中期財政計画における平成二十六年度及び平成二十七年度の各年度四兆円程度改善との目標を大きく上回る、五兆二千四百七億円の改善を実現いたしております。

 次に、主要な経費について申し述べます。

 社会保障関係費につきましては、消費税増収分を活用し、社会保障の充実を行います。

 具体的には、国分の消費税収の使途が高齢者三経費から社会保障四経費に拡大されることにあわせ、待機児童解消加速化プランによる保育の受け皿拡大や、難病の対象疾患の拡充など、若者、女性、現役世代も受益を実感できる内容を実施いたします。

 また、診療報酬改定に際しては、薬価について、薬価調査の結果を踏まえた上で市場実勢価格を反映し、新たな国民の負担の増加を避けつつ、地域医療向けの補助金の創設とあわせ、医療提供体制の改革を推進してまいります。

 文教及び科学振興費につきましては、将来を担う人材を養成するためのグローバルな人材育成や大学改革等を推進するとともに、奨学金等の就学支援、いじめ問題対応等の施策を充実することといたしております。

 また、科学技術関係予算につきましては、総合科学技術会議が司令塔機能強化のためみずから予算の重点配分を行う仕組みを創設するとともに、日本版NIH創設に向けて、医療分野の研究開発関連予算を充実することといたしております。

 地方財政につきましては、地方の税収増を反映して地方交付税交付金等を縮減しつつ、地方の安定的な財政運営に必要な地方税、地方交付税等の地方の一般財源の総額について、社会保障の充実分等を増額し、地方に最大限配慮をいたしております。

 防衛関係費につきましては、新たに策定された防衛大綱及び中期防衛力整備計画に沿って、周辺海空域における警戒監視能力の強化、島嶼部に対する危機対応能力の強化等を図る観点から、昨年度に引き続き、充実を図ることといたしております。

 公共事業関係費につきましては、引き続き投資の重点化、効率化を図りつつ、国民の命と暮らしを守るインフラ老朽化対策や、南海トラフ地震等に備えた防災・減災対策等の課題に対応するため、真に必要な社会資本整備等に取り組むことといたしております。

 経済協力費につきましては、日本企業の海外展開支援を初め、日本の持続的な成長にもつながる分野等への重点化を進めつつ、ODA全体の事業量の確保を図ってまいります。

 中小企業対策費につきましては、物づくり技術の研究開発等への支援を充実させるほか、中小企業の資金繰り対策や消費税の転嫁対策にも万全を期することといたしております。

 エネルギー対策費につきましては、国内資源の開発及び海外資源の権益確保、省エネルギーの推進及び再生可能エネルギーの導入拡大に向けた支援に重点化しているほか、原子力規制、防災対策を推進し、原子力損害賠償支援機構へ資金交付等も行うことといたしております。

 農林水産関係予算につきましては、農林水産業の競争力強化を推進するため、経営所得安定対策を見直すとともに、農地中間管理機構を通じた担い手への農地集積・集約の加速化、六次産業化や輸出拡大の推進等を図ることといたしております。

 治安関係予算につきましては、安全で安心して暮らせる社会の実現に向けて、警察活動基盤の充実や再犯防止対策の充実等を図ることといたしております。

 国家公務員の人件費につきましては、給与の特例減額が終了する一方で、現行計画の目標を大幅に上回る合理化等による定員純減や退職手当の引き下げ等を的確に予算に反映しております。

 なお、震災からの復興につきましては、平成二十五年度補正予算とあわせて、被災地の復旧復興の加速に全力で取り組んでいくことといたしております。このため、平成二十六年度東日本大震災復興特別会計において、歳出につきましては、東日本大震災復興経費二兆九千五百四十三億円、復興債費九百二十一億円、復興加速化・福島再生予備費六千億円を計上し、歳入につきましては、復興特別税七千三百八十一億円、一般会計からの受入金七千三十億円、その他収入六百六十億円、復興公債金二兆一千三百九十三億円を見込んでおります。

 平成二十六年度財政投融資計画につきましては、デフレ不況からの脱却、経済再生に向けて、長期リスクマネー等を呼び水として供給し、民間投資の活性化、経営改善に取り組む中小企業等の支援、日本企業の海外展開支援、インフラ輸出、資源確保等に的確に対応するために、計画規模は十六兆一千八百億円となっております。

 借換債等を含む国債発行総額につきましては、百八十一兆五千三百八十八億円と、過去最大となりました。国債発行総額及び国債残高が多額に上る中、財政規律を維持し、市場の信認を確保するとともに、市場との緊密な対話に基づき、そのニーズ、動向等を踏まえた発行を行うなど、国債管理政策を適切に運営してまいります。

 平成二十六年度税制改正におきましては、デフレ不況からの脱却、経済再生に向けた税制上の対応、税制抜本改革の着実な実施、震災からの復興支援のための税制上の対応等を行うことといたしております。

 具体的には、設備投資の促進、研究開発投資の促進、所得や消費の拡大に関し、次元の異なる税制上の対応を講じたいと存じます。

 こうした観点から、生産性向上設備投資促進税制の創設、中小企業投資促進税制の拡充、研究開発税制の拡充、所得拡大促進税制の拡充、復興特別法人税の一年前倒し廃止、交際費課税の緩和を行います。このほか、給与所得控除の見直し、地方法人課税の偏在是正のための取り組み、車体課税の見直し等を行うことといたしております。

 以上、財政政策の基本的な考え方と、平成二十五年度補正予算及び平成二十六年度予算の大要について御説明を申し上げました。

 デフレ不況からの脱却と経済再生への道筋を確かなものとするために、これらの予算の一刻も早い成立が必要であります。何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願いを申し上げる次第です。

 失われた二十年と呼ばれる長い停滞の中、デフレ不況の影響もあり、先の見えなかった日本に、ようやく明るい兆しが見えてきたと存じます。

 本年は、デフレ不況からの脱却を実現し、足元の景気回復を持続的な経済成長につなげ、財政健全化に向けて着実な一歩を踏み出す上で重要な一年であります。

 少子高齢化やグローバル化等の構造変化に真に対応するための経済基盤を構築し、日本の底力を引き出すことで、デフレ不況からの脱却、経済再生と財政健全化の好循環を実現できるよう、全力で取り組んでまいります。

 国民各位の御理解と御尽力を切にお願い申し上げます。(拍手)

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議長(伊吹文明君) それでは、経済演説。

 国務大臣甘利明君。

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 経済財政政策を担当する内閣府特命担当大臣として、その所信を申し述べます。

 長引くデフレからの早期脱却と経済再生を図るため、安倍内閣では、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢を一体として強力に推進してきました。

 その効果もあって、実質GDPが四四半期連続でプラス成長となり、有効求人倍率が約六年ぶりに一倍を回復するなど、日本経済は力強さを取り戻しつつあります。政権発足時と比べると、中小企業を含めて業況は幅広く改善をし、全ての地域で景況が改善をしています。

 物価動向は、もはやデフレ状況ではありません。デフレ脱却に向けて着実に前進をしております。

 このように、アベノミクスの開始から一年たち、日本経済は閉塞を脱し、明るさが広がっています。これをさらに広げ、経済の好循環を実現するのが、二年目の課題であります。

 本日閣議決定をした政府経済見通しでは、平成二十六年度の日本経済について、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減には留意が必要でありますが、各施策の推進等により、年度を通して見れば、前年度に引き続き、堅調な内需に支えられた景気回復が見込まれ、経済の好循環が徐々に実現していくと考えられます。経済成長率は、実質で一・四%程度、名目で三・三%程度と見込んでおります。

 本年四月に実施をする消費税率引き上げに際しては、駆け込み需要とその反動減を緩和し、景気の下振れリスクに対応するとともに、その後の成長力底上げと好循環実現を図りつつ、持続的な経済成長につなげていくため、昨年十二月に閣議決定をした好循環実現のための経済対策を含め、経済政策パッケージを着実に実行していく必要があります。

 本経済対策は、競争力強化策や、女性・若者・高齢者・障害者向け施策、復興、防災・安全対策の加速等を内容とし、その規模は、国費五・五兆円程度、事業規模十八・六兆円程度となっております。

 本経済対策の効果が的確に発現をし、消費税率引き上げに伴う反動減に適切に対応できるよう、迅速に対策の具体化を図るとともに、各施策の進捗状況などを調査し、適切に公表をしてまいります。

 企業収益の拡大が速やかに賃金上昇や雇用拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じてさらなる企業収益の拡大に結びつくという経済の好循環を実現するため、所得拡大促進税制の拡充や、復興特別法人税の一年前倒しでの廃止といった思い切った税制措置を決定するとともに、賃上げする中小企業、小規模事業者への補助金の優先配分等の施策を講じてまいります。

 政労使会議において、好循環実現に向けて経済界、労働界、そして政府が行うべき取り組みを共通認識として取りまとめたところであり、その環境整備に引き続き全力で取り組み、成果をしっかりと確認してまいります。

 日本銀行は、昨年四月、二%の物価安定目標を、二年程度の期間を念頭に、できるだけ早期に実現するため、量的・質的金融緩和を導入し、現在、これを推進しております。政府としては、日本銀行がこの目標をできるだけ早期に実現することを期待いたします。

 こうしたアベノミクスの効果が地域の隅々まで及ぶようにするため、オリンピック開催決定を契機にした地域活性化、地域産業の集積促進といった課題等に関係省庁が連携して重点的に取り組む必要があります。あわせて、地域の課題解決や活性化の重要な担い手であるNPOやソーシャルビジネス等の育成などを通じて、活力あふれる共助社会づくりを進めてまいります。

 安倍政権の成長戦略は進化する成長戦略であり、策定がゴールではなく、スタートであります。日本経済にあらわれた回復の動きを持続的な経済成長につなげていくため、引き続き、成長戦略を強力に推進してまいります。

 まずは、昨年策定をした日本再興戦略の各施策の実行に全力を挙げます。

 さきの臨時国会では、成長戦略実行国会として、産業競争力強化法、国家戦略特区法等の画期的な法律が成立をいたしました。三月に国家戦略特区の具体的な地域を決定するなど、これらの法律をしっかり実行に移してまいります。また、産業競争力の強化に関する実行計画を閣議決定し、日本再興戦略の各施策の確実な実行に取り組んでまいります。

 また、年央の成長戦略改訂を目指し、先般、成長戦略進化のための今後の検討方針を産業競争力会議において取りまとめたところであります。本方針を踏まえ、雇用・人材、農業、医療・介護といった分野のさらなる構造改革に取り組み、日本に眠る潜在力を最大限引き出します。

 特に、日本が、世界を変えるようなイノベーションを生み出す国となるよう、科学技術の司令塔機能を確立し、研究成果を産業につなげていくための取り組みを進めます。

 女性の活躍は、成長戦略の大きな柱であります。我が国最大の潜在力である女性の力を最大限引き出すため、施策を総動員してまいります。

 さらに、民間投資の喚起による成長力強化を実現するため、PPP・PFIの抜本改革に向けたアクションプランの着実な推進とともに、民間資金等活用事業推進機構の適切な運営の確保及び密接な連携を図ってまいります。

 TPPは、アジア太平洋地域において、普遍的価値を共有する国々と二十一世紀型の新たな経済統合ルールを構築する野心的な試みであり、この地域の成長の起爆剤になると同時に、人々の暮らしを豊かにするものであります。

 昨年十二月にシンガポールで開催をされた閣僚会合では、妥結には至りませんでしたが、残された主要課題の大部分について、交渉妥結へ向け実質的な進展がありました。

 我が国としては、各国とともに、交渉の早期妥結へ向けて努力をし、国益をしっかりと最終的な成果に反映すべく、引き続き全力を挙げて交渉に取り組んでまいります。

 これらの施策とあわせて、経済再生が財政健全化を促し、財政健全化の進展が経済再生の一段の進展に寄与するという好循環を目指し、経済再生と財政健全化の双方の実現に取り組んでまいります。

 来年度予算案につきましては、経済成長に伴う税収の自然増や歳出の効率化により、公債発行額を前年度より減額し、国の一般会計の基礎的財政収支の赤字については、中期財政計画において掲げた目標を上回る改善額を実現しております。

 こうした歳出歳入両面での取り組みの継続により、国、地方を合わせた基礎的財政収支について、二〇一五年度までに二〇一〇年度に比べ赤字の対GDP比を半減し、二〇二〇年度までに黒字化、その後の債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指すとの財政健全化目標の実現を目指します。

 今後の半世紀、世界経済や人口など、日本を取り巻く環境には大きな変化が予想されます。こうした中で、世界経済に占める日本経済の規模が縮小していくという見方もあります。しかしながら、こうした姿を政策努力や人々の意志によって大きく変える、すなわち、未来を選択することが求められています。

 アベノミクスによって生じた景気回復の動きを確実なものとし、我が国の中長期的発展につなげていくためには、人口減少など今後の構造変化を見据えつつ、二〇二〇年ころまでに重点的かつ分野横断的に取り組むべき課題を抽出し、その課題克服に向け包括的に取り組みを進めていくことが重要です。

 このため、「選択する未来」委員会を設置し、具体的な取り組みを二〇二〇年に向けて進めていくための議論を行ってまいります。

 今後、本委員会の議論を踏まえ、日本経済が抱える中長期的課題を明らかにしつつ、年央の骨太方針取りまとめに向け、経済財政諮問会議において、引き続き、デフレ脱却・経済再生と財政健全化の好循環実現のための道筋について検討を進めてまいります。

 少子高齢化が進展する中で、社会保障の充実、安定化と財政健全化を同時に達成する観点から、社会保障・税一体改革に取り組む必要があります。

 昨年、社会保障制度改革国民会議の議論等を踏まえ、社会保障制度改革の全体像と進め方を示した法律が成立をいたしました。この法律に基づき、今後、必要な法案を国会に提出するとともに、関係閣僚から成る改革推進本部や、有識者から成る改革推進会議を設置し、改革を着実に推進してまいります。

 第二次安倍内閣が発足をして一年がたちました。この間、日本経済は力強さを取り戻しつつありますが、先般のダボス会議において示されたアベノミクスへの大きな期待に応えるためには、より一層取り組みを強化する必要性を実感いたしました。

 昨年十二月、私は、早期の舌がんで入院をし、多くの皆様に御迷惑をおかけいたしました。幸い、短期間で公務に復帰をすることができました。

 盲腸の手術すらしたことのない私にとって極めてつらい経験でありましたが、同時に、多くの人に支えられていることを痛感いたしました。立ちどまって感謝をする機会が与えられたのだと思います。今後私がなすべきことは、さらなる努力、精進を通じて、今までに倍する貢献を国家国民のためになすことであると決意をいたしました。

 今後とも、安倍総理のリーダーシップのもと、好循環実現国会の審議を通じて迅速かつ着実に施策を実行し、女性や若者を初め、頑張る人たちの雇用を拡大し、経済成長の成果を国民一人一人が実感できるよう、全力を尽くしてまいります。

 国民の皆様と議員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

あべ俊子君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来る二十八日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。

議長(伊吹文明君) あべ俊子君の動議に御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 御異議なしと認めます。したがって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  安倍 晋三君

       財務大臣    麻生 太郎君

       総務大臣    新藤 義孝君

       法務大臣    谷垣 禎一君

       外務大臣    岸田 文雄君

       文部科学大臣  下村 博文君

       厚生労働大臣  田村 憲久君

       農林水産大臣  林  芳正君

       経済産業大臣  茂木 敏充君

       国土交通大臣  太田 昭宏君

       環境大臣    石原 伸晃君

       防衛大臣    小野寺五典君

       国務大臣    甘利  明君

       国務大臣    稲田 朋美君

       国務大臣    菅  義偉君

       国務大臣    根本  匠君

       国務大臣    古屋 圭司君

       国務大臣    森 まさこ君

       国務大臣    山本 一太君


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