第5号 平成26年2月14日(金曜日)
平成二十六年二月十四日(金曜日)―――――――――――――
平成二十六年二月十四日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名
人事官任命につき同意を求めるの件
総合科学技術会議議員任命につき同意を求めるの件
原子力委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件
衆議院議員選挙区画定審議会委員任命につき同意を求めるの件
情報公開・個人情報保護審査会委員任命につき同意を求めるの件
公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの件
労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
中央社会保険医療協議会公益委員任命につき同意を求めるの件
社会保険審査会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件
運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件
所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方法人税法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議
○議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。
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中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名
○議長(伊吹文明君) 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名を行います。
○あべ俊子君 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名については、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。
○議長(伊吹文明君) あべ俊子君の動議に御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(伊吹文明君) 御異議なしと認めます。したがって、動議のとおり決しました。
議長は、中央選挙管理会委員に橋本文彦君を指名いたします。
また、同予備委員に遠藤乙彦君を指名いたします。
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人事官任命につき同意を求めるの件
総合科学技術会議議員任命につき同意を求めるの件
原子力委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件
衆議院議員選挙区画定審議会委員任命につき同意を求めるの件
情報公開・個人情報保護審査会委員任命につき同意を求めるの件
公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの件
労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
中央社会保険医療協議会公益委員任命につき同意を求めるの件
社会保険審査会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件
運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件
○議長(伊吹文明君) お諮りをいたします。
内閣から、
人事官
総合科学技術会議議員
原子力委員会委員長及び同委員
衆議院議員選挙区画定審議会委員
情報公開・個人情報保護審査会委員
公正取引委員会委員
労働保険審査会委員
中央社会保険医療協議会公益委員
社会保険審査会委員長及び同委員
運輸審議会委員
及び
公害健康被害補償不服審査会委員に
次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。
内閣からの申し出中、
まず、
人事官に立花宏君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、同意を与えることに決しました。
次に、
総合科学技術会議議員に小谷元子君を、
衆議院議員選挙区画定審議会委員に小早川光郎君、川人貞史君、大山礼子君及び宮崎緑君を、
情報公開・個人情報保護審査会委員に椿愼美君及び山田洋君を、
公正取引委員会委員に山本和史君を、
労働保険審査会委員に小賀野晶一君を、
中央社会保険医療協議会公益委員に田辺国昭君を、
社会保険審査会委員長に渡邉等君を、
同委員に宮城準子君を、
運輸審議会委員に根本敏則君を、
公害健康被害補償不服審査会委員に町田和子君を
それぞれ任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに御異議はありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(伊吹文明君) 全会一致。御異議なしと認めます。したがって、いずれも同意を与えることに決まりました。
次に、
総合科学技術会議議員に中西宏明君及び平野俊夫君を、
衆議院議員選挙区画定審議会委員に長谷部恭男君及び久保信保君を
それぞれ任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(伊吹文明君) 起立多数。したがって、いずれも同意を与えることに決しました。
次に、
原子力委員会委員長に岡芳明君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
次に、
原子力委員会委員に中西友子君を、
労働保険審査会委員に木村亨君を
任命することについて、それぞれ申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(伊吹文明君) 起立多数。したがって、いずれも同意を与えることに決まりました。
次に、
原子力委員会委員に阿部信泰君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
次に、
衆議院議員選挙区画定審議会委員に住田裕子君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(伊吹文明君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
次に、
情報公開・個人情報保護審査会委員に南野聡君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(伊吹文明君) 起立多数。したがって、同意を与えることに決まりました。
最後に、
中央社会保険医療協議会公益委員に松原由美君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(伊吹文明君) 起立多数。したがって、同意を与えることに決まりました。
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所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方法人税法案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(伊吹文明君) この際、内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案及び地方法人税法案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣麻生太郎君。
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕
○国務大臣(麻生太郎君) ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案及び地方法人税法案の趣旨を御説明申し上げます。
まず、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げさせていただきます。
本法案は、デフレ不況からの脱却と経済再生、税制抜本改革の着実な実施、震災からの復興支援などの観点から、国税に関し、所要の施策を講ずるものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、デフレ不況からの脱却と経済再生に向け、生産性向上設備投資促進税制の創設、研究開発税制、中小企業投資促進税制及び所得拡大促進税制の拡充、復興特別法人税の廃止、交際費等の損金不算入制度の見直し等を行うことといたしております。
第二に、税制抜本改革を着実に実施するため、給与所得控除の上限の引き下げ、環境性能にすぐれた自動車に対する自動車重量税の軽減措置の拡充等を行うこととしております。
第三に、震災からの復興を支援するため、復興産業集積区域に係る即時償却制度の延長等を行うことといたしております。
このほか、国際課税原則の総合主義から帰属主義への見直し、税理士制度の見直し等を行うとともに、特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の特例等既存の特例について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うことといたしております。
次に、地方法人税法案について、その趣旨を御説明申し上げます。
本法律案は、地方団体の税源の偏在性を是正しその財源の均衡化を図ることを目的として、法人住民税法人税割の税率の引き下げにあわせて地方交付税の財源を確保するための地方法人税を創設するものであります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、地方法人税の納税義務者は、法人税を納める義務がある法人としております。
第二に、課税標準は、各課税事業年度の基準法人税額としております。
第三に、税率は、百分の四・四といたしております。
第四に、申告及び納付は、国に対して、課税事業年度終了日の翌日から二月以内に行わなければならないことといたしております。
その他、還付の手続等及び罰則に関し、法人税法と同様の規定を設けることといたしております。
以上、所得税法等の一部を改正する法律案及び地方法人税法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
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所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方法人税法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(伊吹文明君) 財務大臣からの趣旨の説明に対し質疑の通告がありますので、順次これを許します。まず、越智隆雄君。
〔越智隆雄君登壇〕
○越智隆雄君 自由民主党の越智隆雄でございます。
私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案及び地方法人税法案について、関係大臣に御質問をさせていただきます。(拍手)
一月二十四日に行われた安倍総理の施政方針演説において、企業の収益を雇用の拡大や所得の上昇につなげる、それが消費の増加を通じてさらなる景気回復につながる、経済の好循環なくしてデフレ脱却はありませんとのお話がありました。
現状の経済情勢については、平成二十五年度税制改正を含めた三本の矢の効果もあり、企業の決算発表あるいは決算見通しで過去最高の水準を達成したとの報道に日々接しているところであります。
総理の御指摘のとおり、企業のこうした好決算による収益の改善が、単なる内部留保の増加にとどまることなく、国際競争に打ちかつための戦略的な設備投資や研究開発、あるいは従業員の賃金引き上げに回ることが重要と考えます。そして、これらが消費拡大につながり、さらなる経済成長を導くといった好循環をぜひ実現させていくべきと考えております。
こうした観点から、所得税法等の一部を改正する法律案において、所得拡大促進税制、設備投資減税、研究開発税制について、まさにこれまでとは次元の異なる措置が講じられておりますが、改めて、麻生財務大臣に、その内容並びに意義についてお伺いいたします。
さらに、思い切った投資によるイノベーションの実現も成長には欠かせません。こうした観点から、民間企業等の資金を活用したベンチャー企業への投資を促進するための措置や、産業の新陳代謝を促すための戦略的、抜本的な事業再編を後押しする措置が講じられております。麻生財務大臣に、その内容並びに狙いについてお伺いをいたします。
中小企業や地域経済についても、ようやく景気回復の好影響が及びつつあると言われ始めておりますが、その実感はいまだ十分浸透していないと思われます。総理が言われるように、アベノミクスの効果を広くあまねく全国民に届けるために、一層の取り組みが必要と考えます。
こうした観点から、中小企業への支援として、今般の所得税法等の一部を改正する法律案において、どのような取り組みが行われているのでしょうか。麻生財務大臣にお伺いをいたします。
その上で、中小企業においては、赤字を抱える企業も多く、必ずしも税制措置での支援だけでは手が届かないことも想定されます。
こうした観点から、政府として、中小企業に対してどのような目配りを行っているのでしょうか。茂木経済産業大臣にお伺いをいたします。
また、今般の改正法案においては、大企業も含めて、飲食費にかかる交際費について、その五〇%までを損金算入可能とする措置が盛り込まれております。大企業の支店、工場は全国に展開されておりますので、こうした措置を契機に、地方での飲食関連の消費が活性化するなど、地域経済も裨益することが期待されるのではないでしょうか。
本措置については、思い切った判断があったと思われます。麻生財務大臣に、本措置についての評価をお伺いいたします。
総理は、施政方針演説において、経済の再生なくして財政再建なし、経済の好循環をつくり上げ、国、地方の基礎的財政収支について、二〇一五年度までに二〇一〇年度に比べ赤字の対GDP比の半減、二〇二〇年度までに黒字化との財政健全化目標の実現を目指しますと、経済再生と財政健全化の両立を力強く宣言されました。
難しい目標ではありますが、我が国の今後百年の行く末を確かなものにするためにも、必ずや達成しなければなりません。総理の強力なリーダーシップのもと、腰を据えてしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
そのためにも、アベノミクスは、これからまだ発展させなければなりません。まずは、この所得税法等の一部を改正する法律案に織り込まれている各種税制措置を含めて、あらゆる政策ツールを総動員して臨み、その上で、成長のエンジンを加速させるため、さらなる取り組みをしていかなければなりません。
そこで、安倍内閣の今後の経済再生と財政健全化の両立に向けた取り組みについて、その方向性や意気込みを甘利経済財政担当大臣にお伺いをいたします。
地方、地域の元気なくして国の元気はないという考え方のもと、偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築を図ることは、極めて重要であると考えます。
今般、地方消費税の税率が引き上げられることを踏まえ、法人住民税法人税割の税率引き下げにあわせて地方交付税の財源を確保するための国税を創設する地方法人税法案について、麻生財務大臣の評価をお伺いいたします。
なお、先ほど申し上げたとおり、所得税法等の一部を改正する法律案では、企業の国際競争力をより高めるための研究開発税制の拡充をうたっております。
一昨年、iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した山中伸弥氏に続いて、ことしに入って、三十歳の若き女性研究者小保方晴子さんが、万能細胞、STAP細胞を世界で初めてつくるという画期的な成果を上げました。
私ども与党は、政府や民間企業の皆様とともに、このような、子供たちに夢を与える研究開発を促進し、元気な日本復活に邁進していくことをお誓い申し上げ、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕
○国務大臣(麻生太郎君) 越智先生から五問いただいております。
所得拡大促進税制などの内容及び意義についてのお尋ねがあっております。
平成二十六年度税制改正におきましては、二十五年度改正で創設をいたしました所得拡大促進税制について、段階的に賃上げをしていく企業を支援する仕組みへと見直す、幅広い事業者、設備を対象とした即時償却などの設備投資減税を創設する、研究開発税制につきましては、二十五年度改正での拡充に続き、研究開発投資の増加を強力に促すよう拡充するなど、思い切った取り組みを行うことといたしております。
最優先課題であるデフレ不況からの脱却に向け、これらの税制を通じて、企業が保有資金を積極的に活用されることを期待いたしております。
次に、ベンチャー企業への投資を促進する税制などの内容及び狙いについてのお尋ねがあっております。
経済の活性化のためには、産業の新陳代謝を促すことが重要な課題であります。
こうした観点から、起業や新たな事業に挑戦しやすい環境を整備するため、企業が、認定を受けたベンチャーファンドを通じてベンチャー企業に出資した場合、その損失リスクに備えるための制度を創設することといたしております。
また、過当競争を解消し、収益力を高めようとする企業の取り組みを支援するため、認定を受けた事業再編について、その損失リスクに備えるための制度を創設することといたしております。
次に、交際費課税の緩和の評価についてお尋ねがありました。
経済の活性化のためには、企業の持つ資金を動かし、消費の拡大につなげていくことが重要と考えております。
今般の交際費課税の緩和は、そうした観点から、大企業も含め飲食のための支出の五〇%を損金算入できることといたしました。これにより、消費が拡大し、料理飲食業、さらには地域経済を含む経済全体が活性化されるものと期待をいたしております。
最後に、地方法人税法案の評価についてのお尋ねがありました。
今般の取り組みは、地方法人課税の偏在是正の観点から、地方消費税率の引き上げを踏まえ、都市に偏りがちな法人住民税の一部を地方法人税として国税化し、その税収全額を地方交付税の原資とするものであります。これにより、地域間の税源の偏在性を是正し、財政力格差の縮小が図られるものと考えております。
以上です。(拍手)
〔国務大臣茂木敏充君登壇〕
○国務大臣(茂木敏充君) 越智議員にお答えをいたします。
中小企業への税制措置以外の支援について御質問をいただきました。
全国三百八十五万の中小企業、中でもその九割を占める小規模事業者は、地域の経済と雇用を支える極めて重要な存在であります。そのため、昨年の小規模企業活性化法に続き、小規模企業振興基本法をこの国会に提出いたします。
さらに、さきの補正予算において、一千四百億円の、ものづくり・商業・サービス革新補助金を措置いたしました。対象分野を商業、サービス業にも拡大し、試作品開発や、生産プロセス、業務プロセスの改善を支援していきます。申請書類も、従来の三分の一に簡素化をいたしました。
また、今月から、中小企業の資金繰りに関連し、個人保証に依存してきた従来の融資慣行を改める、経営者保証に関するガイドラインの運用を開始いたしました。金融庁とも連携しつつ、融資現場の対応を目に見える形で変えてまいりたいと考えております。
こうした政策によりまして、地域の中小企業が活躍できる環境をつくり、経済の好循環を全国各地に浸透させてまいります。(拍手)
〔国務大臣甘利明君登壇〕
○国務大臣(甘利明君) 越智議員からの御質問は、経済再生と財政健全化の両立に向けた取り組みについてでありました。
経済再生につきましては、今回の法案に盛り込まれております設備投資減税、研究開発税制などの思い切った税制措置を含めまして、三本の矢を一体的、強力に推進をし、デフレ脱却と経済成長を目指してまいります。
財政健全化につきましては、中期財政計画に基づきまして、二〇一五年度における基礎的財政収支赤字の対GDP比半減、二〇二〇年度における黒字化の達成を目指してまいります。
経済再生が財政健全化を促し、財政健全化の進展が経済再生の一層の進展に寄与するという好循環を目指しまして、経済再生と財政健全化の双方の実現に取り組んでまいります。(拍手)
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○議長(伊吹文明君) 次の質疑者、松本剛明君。
〔松本剛明君登壇〕
○松本剛明君 民主党の松本剛明です。
民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案及び地方法人税法案について質問をいたします。(拍手)
質問に先立ち、この冬の豪雪災害で亡くなられた方々と御遺族に、深く哀悼の意を表します。また、被害に遭われた方々に、心よりお見舞いを申し上げます。
本日も雪であります。政府には、万全の対策、さらには、現地で対策を担う自治体の財源確保を要請いたします。
さて、税制は、そのあり方次第で経済、産業に大きな影響を与えます。社会の構造の面でも、公平、共生の理念に基づく社会保障や教育などの公の分野、競争による市場の分野の範囲を確定させたり、公の分野における官と民の役割分担に関しても、税制は大きな役割を果たします。そこに、目指す国づくりが見えてくるものだと思っております。
その重要な税制について、一昨年の自民、公明、民主三党の社会保障と税の一体改革の合意から、継続的に協議が行われております。近年、与野党の協議を通して政策が決定をされるケースがふえてきております。建設的で、望ましいことと思っております。
協議を経て進んだものもあります。
住宅分野における消費税率引き上げの影響を緩和する対策として、民主党政権下から検討されてきた、ローン減税、すまい給付金などが実施されます。
平成二十五年度税制改正では、私たちが提案した四点について合意し、今次改正で、交際費課税については拡充が図られました。主に、中小・小規模事業者が担う飲食産業の活性化が期待をされます。また、贈与税の対象範囲の明確化は、対応を進めておられます。
消費税率引き上げに係る転嫁対策は、昨年の国会で、私たちの修正提案を受け入れて法案が成立しました。いよいよ引き上げ本番を迎えるに当たり、確実で実効性のある転嫁対策の遂行を求めます。
本法案について伺ってまいります。
まず、復興特別法人税の前倒し廃止についてです。
これは、平成二十三年十月、民主党政権が、東日本大震災の復興財源を確保するため、法人が負担する法人税、個人が負担する所得税、住民税、たばこ税、地方たばこ税の増税を提案したものであります。
これに対して、自民党は、たばこ税、地方たばこ税の増税に同意をせず、所得税、住民税の上乗せ、所得税増税期間の延長を要求いたしました。私たちは、復興を急ぐ立場からこの要求をのみ、個人の負担を上積みし、期間を十年から二十五年へ延長することで、三党の合意に至りました。大変重い公党間の約束ではないでしょうか。
しかるに、政府からの一方的な通告により、復興特別法人税の廃止が今まさに提案されております。私たちがこれまで何度も申し入れてきたにもかかわらず、この間、何らの実質的な協議はありません。
副総理・財務大臣に伺います。約束をほごにして廃止を決めるに当たり、合意の存在を全くお考えにならなかったのでしょうか。そもそも、三党の協議を政府としてどのように位置づけておられるのか、伺いたいと思います。
復興関連税の心は、復興のために負担を分かち合うことにあります。その中で復興特別法人税だけを廃止すれば、法人の一部、黒字法人だけが、支え合いの輪から抜けることになります。
自民党の主張で上積みされた所得税、住民税の増税は、被災者の方々も含め、国民一人一人が長く負担し続けるものです。これでは、国が一丸となって復興をなし遂げようとする、きずな、連帯の精神に反しませんか。
復興大臣に伺います。どのようにして被災者の皆様に理解いただこうとされておられるのでしょうか。
賃上げにつなげるとの御説明を伺いました。賃上げは望ましいことです。
他方、財務大臣は、記者会見で、ここは自由主義経済で、人件費に回すかは政府の関与する話ではない、復興特別所得税が二十五年かかっているのに法人だけでは、人件費に回るとの保証がなければ世間的に通らないといった趣旨の御発言をされておられます。正論であります。
なぜ、一転して、法人税と賃上げを結びつけることになったのでしょうか。伺いたいと思います。
また、これにより賃上げが進んだとしても、対象は黒字法人に限られます。景気牽引役の支援策も必要でありますが、同時に、景気の裾野を地方、中小企業や家計に広げる景気拡大促進策も重要であります。中小企業を応援しつつ最低賃金を引き上げる政策は、今次減税額よりずっと少ない金額で実現可能です。
このような視点からいろいろ検討されなかったのでしょうか。財務大臣に伺いたいと思います。
自動車関連諸税について伺います。
そもそも、道路特定財源が廃止されて課税の根拠を失っていること、消費税との二重課税の問題があることなどを踏まえれば、車体課税の抜本的な見直しは必須であります。しかも、四月には消費税が八%になります。景気拡大促進の面からも、過重な自動車ユーザーの負担を軽減すべきであり、私たちは、自動車取得税の廃止、自動車重量税の上乗せの廃止などを訴え、抜本改革法七条も、これを念頭に制定いたしました。
しかし、今回の政府提案は、軽自動車の増税まで含まれており、私たちが目指す方向とは逆行しております。
どう考えてこのような提案に至ったのか、財務大臣及び総務大臣の御説明を求めます。
自動車は、我が国の基幹産業であります。今後、新たな分野の成長も期待されますが、物づくり、その代表である自動車が産業、雇用の柱であることは変わりません。
しかし、国内の自動車市場は、登録車で、ピーク時の六百万台近くから、現在三百万台余りと、縮小の一途をたどっています。好調と言われる軽自動車と合わせても、三百万台近い減少です。
国内市場の縮小は、国内生産にもはね返ってまいります。その広がりに鑑みれば、経済にも多大な影響があります。また、自動車は、地方において欠かせない移動手段であり、地方の活性化、景気拡大促進の観点からも、支援すべきところではないでしょうか。
経済産業大臣に伺います。消費税率引き上げ、軽自動車増税による市場への影響をどう見積もっておられるでしょうか。定量的な見通しを伺いたいと存じます。
私は、普通車は実質的に減税されずに引き続き伸び悩み、軽自動車は増税されて減少する、結局、市場が縮小することを危惧しております。
逆進性対策について伺います。
八%引き上げの条件であった簡素な給付措置が補正予算に盛り込まれました。かねて私たちが求めていたものですが、決定が遅く、検討されるべき立法措置の裏づけがなく、対象者の申請を待つ仕組みとなりました。
申請漏れが懸念されます。適切に実行されるように対応していただきたい。財務大臣、そして実施に当たる自治体を所管する総務大臣の所見を求めます。
また、恒久的な逆進性対策として与党が進める複数税率には、大きな課題があります。
低所得者対策であるのに、かえって、購買力の高い高額所得者の方が負担軽減額が大きくなります。そして、所要財源は、食料品を対象とするだけでも消費税一%分と想定され、莫大なものになります。
複数税率の財源のために、さらなる消費税率引き上げを行うことがあるのでしょうか。財務大臣の御見解をいただきたいと思います。
複数税率は、ほかにも、対象品目の選定が利権に結びつきやすい、事業者の事務負担が大きいといった問題が指摘されております。そのことを理解されておられるのか、導入時期については、税率一〇%時、このように表現をされ、引き上げるときとも一〇%の間とも読める、そういう内容になっております。
抜本改革法七条では、給付つき税額控除と複数税率の両策を検討することになっております。どちらにも利点、難点があるからですが、与党においては、前者についての検討が見られません。私たちが提案をする給付つき税額控除も検討されるべきと考えますが、財務大臣の御所見を伺います。
給与所得控除について伺います。
私たちも、所得再配分の観点から給与所得控除の見直しを認めていますが、同時に、これを実額控除に近づけるために特定支出控除を拡大することが肝要と申し上げ、三党の合意で、平成二十五年度税制改正法の附則百八条に反映されました。
ところが、政府は、今回、控除上限の引き下げだけを提案されております。
合意の趣旨に立ち返った提案に改めるべきと考えますが、財務大臣のお考えを伺いたく思います。
また、この附則には、大学に対するものも含め、寄附金に係る税制の検討が定められていますが、政府提案では何ら措置が講じられておりません。これらについて、財務大臣に、今後の方針を伺いたく思います。
地方法人税に関連して伺います。
現段階では、交付税制度による財源配分に意義を認めるところでありますが、昨年のように、交付税を自治体に対する政策強制の手段に使うことは認められません。
総務大臣は、地方交付税を国のものとお考えでいらっしゃるのか、基本的な御認識を伺いたいと思います。また、今後の地域主権、地方分権の推進についての御見解を求めます。
抜本改革法七条に示された課題は、ほかにもまだ多く残っております。
例えば、医療に係る控除対象外消費税の問題についても検討を急ぐべきです。
私は、介護分野も含めて消費課税のあり方を見直すべきと考えますが、財務大臣の所見を伺いたいと思います。
最後に、消費税率一〇%への引き上げについて伺います。
財政再建はいまだ途上との認識は共有をしている、こう思っておりますが、巷間、さまざまなことも言われております。
財務大臣は、予定どおり一〇%に引き上げるというお考えでよろしいでしょうか。承っておきたいと思います。
私たちは、国民の皆様に負担をお願いする税という難しい問題について、正面から取り組み、また、与野党間を含め、真摯に協議をし、議論をしてまいりました。これからもその姿勢は変わらないことを申し上げ、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕
○国務大臣(麻生太郎君) 松本先生から、十一問頂戴しております。
復興特別法人税の前倒し廃止と三党協議の関係についてのお尋ねがあっております。
復興財源を確保するために復興特別法人税を創設することについて、民主党、自民党、公明党の三党で合意がなされたことは承知をいたしております。
他方で、今回の復興特別法人税の前倒し廃止は、与党の御判断も踏まえつつ、平成二十四年度の決算剰余金の一部を活用して復興財源を確保した上で、足元の経済成長を賃金の上昇につなげるきっかけとするため、政府として決定したものであります。
三党協議は政党間の協議であることから、その位置づけ等につきまして政府として言及することは差し控えさせていただきたいと存じます。
復興特別法人税の前倒し廃止と賃上げの関係についてのお尋ねがありました。
私が昨年九月の記者会見で申し上げましたのは、復興特別法人税の一年間前倒しの廃止について理解を得るためには、廃止した場合には賃上げに回るということがしっかりと説明できる必要があるという趣旨であります。
その点、賃金の引き上げにつきましては、政労使会議の場などにおきまして、政府から経済団体、業界団体に対して賃上げなどを広く働きかけを行い、こうした要請を踏まえ、経団連より、賃金の引き上げを通じて一刻も早い経済の好循環が実現するよう貢献していくとお話があり、また、連合より、二〇一四年度の賃金決定に当たっては、月例賃金の引き上げと格差是正、底上げにこだわった要求、交渉を行うとの表明がなされております。
これを踏まえ、復興特別法人税を一年前倒しして廃止するということにいたしたところであります。
中小企業や最低賃金の引き上げなどについてのお尋ねがありました。
今回の税制改正では、企業の積極的な賃上げを促すため、所得拡大促進税制の拡充や復興特別法人税の一年前倒しでの廃止など、思い切った税制改革というものを行うことといたしております。法人税納税企業のほとんどは中小企業でありますことから、これらの税制改正の効果は、中小企業にも広く及ぶと考えております。中小企業、約九八%であります。
これらに加え、二十五年度補正予算及び二十六年度予算案におきましては、地域の成長力の底上げなどを図る社会資本などの総合的整備、中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業、また農地集約化事業など、中小企業支援、地域経済活性化のための施策を手当ていたしております。
また、最低賃金におきましても、本年度、全国平均で十五円の引き上げが行われたところでもあります。
このように、賃上げを含む経済の好循環実現に万全を期すため、税制、予算、雇用政策など、さまざまな手段を総動員して対応しているところであります。
車体課税についてのお尋ねがありました。
税制抜本改革法第七条では、安定的な財源を確保した上で車体課税の見直しを行うとされております。また、消費税率引き上げの前後における駆け込み需要、反動減の緩和も視野に入れる必要があろうと存じます。
こうした点も踏まえ、国税である自動車重量税につきましては、エコカー減税を拡充するとともに、その財源の確保及び一層のグリーン化などの観点から、経年車に対する課税の見直しを行うこととしたものであります。
簡素な給付措置の適切な実行についてのお尋ねがありました。
簡素な給付措置につきましては、給付金の対象となる方々から着実に申請していただけるよう、制度の周知広報を行っていくことが重要と考えております。
このため、先日成立をいたしました平成二十五年度補正予算案において、厚生労働省や地方自治体が行いますコールセンターの設置や新聞、テレビ広告などのために必要な経費を盛り込んだところでもあります。
このような広報を効果的に組み合わせることで、給付金の対象となる方々に着実に制度の周知がされるよう、現在、厚生労働省において、実施に当たる地方自治体の意見も十分に伺いながら準備を進めているところと承知をいたしております。
軽減税率導入と、その財源についてのお尋ねがありました。
軽減税率につきましては、平成二十六年度与党税制改正大綱におきまして、具体的な安定財源の確保や対象品目の選定、また、区分経理などのための制度整備といった課題が示されておりまして、引き続き、与党税制協議会において検討がなされるものと承知をいたしております。
政府としては、これを踏まえた与党における検討を見守ってまいりたいと考えております。
給付つき税額控除についてのお尋ねがありました。
給付つき税額控除につきましては、昨年二月の三党合意において、低所得者対策については引き続き協議を行うとされており、三党におけます協議や、また議論、与党におけます軽減税率に関する検討の状況を踏まえながら、必要な検討を行っていかなければならないと考えております。
給与所得控除についてのお尋ねもありました。
給与所得控除につきましては、税制抜本改革法において検討課題と位置づけられていたところであります。
今般の改正では、法の趣旨に沿って検討を行った結果、中長期的には主要国並みの控除水準とすべく見直しが必要との観点に立ち、当面、給与収入一千万超の高所得者の給与所得について、給与所得控除を見直すこととしたところであります。
なお、お尋ねの特定支出控除につきましては、平成二十五年分の所得税から特定支出の範囲の拡充などが行われておりますが、御指摘の附則におきまして、「平成二十六年度中に財源も含め検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずる」とされていることを踏まえ、検討を進めてまいりたいと考えております。
寄附金税制についてのお尋ねがありました。
寄附金控除につきましては、御指摘の附則に沿って検討を行いましたが、所得控除による対応を基本としている所得税において税額控除を適用する場合の対象範囲の論点について、まずは基本的な考え方を整理する必要があると判断したところであります。
今後、早期に具体的な結論を得るとした与党大綱の方針も踏まえつつ、望ましい寄附金税制のあり方について総合的に判断してまいりたいと考えております。
医療及び介護に係る控除対象外消費税についてのお尋ねがありました。
消費税が非課税とされております社会保険診療や介護サービスにつきましては、医療品などを購入する際に支払う消費税分は、診療報酬及び介護報酬により手当てされてきているところであります。
例えば、社会保険診療につきましては、本年四月からの消費税率の引き上げにおいて、医療機関などの実態調査に基づきまして、診療報酬において必要財源を確保するとともに、できるだけ多くの医療機関に手当てされるよう対応することといたしております。
いずれにいたしましても、税制抜本改革法において、医療に係る課税のあり方については引き続き検討を行うとされておりまして、引き続き、与党の議論の状況などを踏まえつつ検討してまいりたいと考えております。
最後になりましたが、消費税の一〇%への引き上げについてのお尋ねがありました。
消費税の一〇%への引き上げにつきましては、税制抜本改革法にのっとりまして、附則十八条等々、経済状況などを総合的に勘案しながら、本年中に適切に判断していくことになるものと考えております。
以上であります。(拍手)
〔国務大臣新藤義孝君登壇〕
○国務大臣(新藤義孝君) 松本議員から、三点のお尋ねをいただきました。
まず、車体課税の見直しに当たっての基本的考えについてのお尋ねであります。
車体課税については、消費税率引き上げの前後における駆け込み需要、反動減の緩和も視野に入れ、税制抜本改革法第七条の規定に基づき、国及び地方を通じた関連税制のあり方の見直しを行い、安定的な財源を確保した上で、地方財政にも配慮をしつつ、簡素化、負担の軽減、グリーン化を図る観点から見直しを行ったものであります。
具体的には、消費税率引き上げに伴う負担軽減の観点からの自動車取得税の税率の引き下げ、自動車税におけるグリーン化特例の重点化、拡充を行うとともに、自動車取得税廃止後の代替財源確保の一環として、車体課税の不均衡の是正を行う等の観点から軽自動車税の見直しを行うこととしたものでございます。
次に、簡素な給付措置についてのお尋ねでございます。
簡素な給付措置の実施業務については厚生労働省が担当しておりますが、給付金の対象となる方々が着実に申請していただけるよう、政府としてさまざまな周知広報を予定しております。
また、厚生労働省においては、実施に当たる地方団体の意見も十分に伺いながら、効率的な事業の実施に向け準備を進めているところであり、総務省としても協力してまいりたいと思っております。
最後に、地方交付税に対する基本的認識及び今後の地方分権の推進についてのお尋ねをいただきました。
地方交付税は、団体間の財源の不均衡を調整し、全ての地方団体が一定の水準を維持し得るよう財源を保障する見地から、国税として国がかわって徴収し、一定の合理的な基準によって再配分する、いわば国が地方にかわって徴収する地方税、こういう性格を有しており、地方の固有財源である、このように考えております。
また、個性を生かし、自立した地方をつくる地方分権改革は、日本経済の成長の果実を全国津々浦々まで届け地方を元気にするために不可欠であります。国から地方及び都道府県から指定都市への事務、権限の移譲等についての第四次一括法案の今国会への提出を初め、新たな局面を迎える地方分権改革を力強く推進してまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣茂木敏充君登壇〕
○国務大臣(茂木敏充君) 松本議員にお答えをいたします。
まず、消費税率引き上げによる影響については、日本自動車工業会において、国内需要が五十八万台減少するという試算をしております。
ただし、この試算には、自動車取得税についての軽減措置や、自動車重量税や自動車税に関するエコカー減税のグリーン化措置の拡充等の今回の税制改正措置で講じられている反動減対策の効果は織り込まれておりません。政府としては、これらの措置が消費税引き上げの影響緩和に大きな効果を発揮するものと考えております。
次に、軽自動車税についてでありますが、税率の引き上げ対象は、平成二十七年度以降に取得する新車に限定し、実際に増税されるのは平成二十八年度以降となります。あわせて、環境性能の高い軽自動車への軽減措置についても検討を行うこととしております。
政府としては、この軽減措置の具体的な内容を検討するに当たり、議員御懸念の、国内経済、市場への影響、軽自動車が地方における生活の足として果たす役割などを踏まえ、しっかりと対応してまいります。(拍手)
〔国務大臣根本匠君登壇〕
○国務大臣(根本匠君) 復興特別法人税の廃止についての御質問をいただきました。
復興特別法人税の一年前倒しでの廃止については、足元の経済成長を賃金上昇につなげること、復興特別法人税の前倒し廃止の見合い分〇・八兆円を一般会計から復興特別会計に繰り入れ、二十五兆円程度の復興財源を確実に確保することを被災者の皆様にお示しし、御理解を求めていくことが重要です。
こうした考え方のもと、政府としては、被災地において説明会を開催し、二十五兆円程度の財源をしっかり確保することを御説明し、被災者の皆様に御理解を求めてきたところです。(拍手)
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○議長(伊吹文明君) 次の質疑者、田沼隆志君。
〔田沼隆志君登壇〕
○田沼隆志君 日本維新の会の田沼隆志です。
私は、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案並びに地方法人税法案につきまして、日本維新の会を代表して質問をいたします。(拍手)
私にとりまして、初めての本会議場での質問になります。関係各位の御配慮に心より感謝申し上げます。
私が政治を志した原点は、鹿児島県の知覧特攻平和会館で、実物の特攻隊の遺書に感激をしたことであります。多くの若者たちのとうとい犠牲の上に今日の繁栄がある、そのことを私は片時も忘れたことはありません。英霊に恥ずかしくない、自立した立派な国をつくる、その思いで、本日は質問させていただきます。
初めに、消費税です。
本年四月、消費税が増税されます。
我々日本維新の会は、小さな政府、強く賢い中央政府をつくり上げるため、民間にできることは民間に、地方にできることは地方に任せるべきと考えております。
大阪都構想を初めとする都市再生、そしてその最終形としての道州制に移行するという統治機構の大改革を実現するためにも、消費税を全額地方税化するとともに、地方交付税にかわる新たな財政調整制度として、地方共有税を創設すべきと考えております。
今回の税制改正では、地方法人税が創設されますが、これは、地方税を国税にするもので、地方分権の原則に逆行していると言えます。当局の説明では、この税は一般会計を介することなく直接地方交付税特会に入る、ゆえに地方財源の地盤固めであるとのことでしたけれども、なぜ、相変わらず交付税ばかりにこだわるのでしょうか。
国が地方にお金を配る今の地方交付税制度では、地方の自立は難しい。自治体の努力が報われない仕組みになっているからです。安定財源の消費税を地方に移譲して、同時に交付税を減額するというのが、地方分権の王道ではないでしょうか。
これに関して安倍総理は、先日、消費税を全額地方に移管するのであれば、社会保障について地方に大きな責任を担っていただく必要がありますが、これは結果的に大きな地域間格差を生じさせることにもなりかねないことから、極めて慎重な検討が必要と考えておりますとの答弁でありました。
では、実際に地域間格差は生じるのでしょうか。どれぐらいの格差となるのでしょうか。何かしら具体的な検討はされて、その上での結論なのでしょうか。全く検討の結果が見えない。なぜ地方税化に反対なのか、その理由がはっきりしません。
新藤大臣、ぜひ、明確な御答弁をお願いいたします。
次に、軽減税率についてです。
先日の代表質問で我が党の松野頼久幹事長がこの件を質問し、安倍総理からは、与党税制協議会の検討を見守ってまいりたいとの答弁でありました。しかし、その中身がよくわからない。
昨年末に与党がまとめた税制改正大綱には、軽減税率について、先ほどもありました、一〇%時に導入とありましたけれども、これは、一〇%の引き上げ時を指しているのか、そうでないのか、どちらでしょうか。
自民党さんは、時期は未定だと言われていました。公明党さんは、当然、引き上げ時も含むと。どうやら、大きく見解も違うようです。導入時期が決まらないまま軽減税率の議論を続けていては、事務負担がふえる事業者も、いつまでも不安定な境遇に置かれ続けることになりかねません。
しかも、今回、必要な財源を確保し、国民の理解を得た上でと、かなり導入には厳しい条件までついております。これは、場合によっては、軽減税率の導入自体がなされない可能性さえ感じさせます。
実際、経済界でも、少なくとも一〇%の段階では単一税率を維持すべきだという声もありますし、私たち維新の会も、簡素な税制を理念としておりますので、複数税率化に伴う官民税務の膨張、複雑化には非常に懸念をするところであります。
麻生大臣、この軽減税率導入は本当にやるんでしょうか。やるなら、いつやるのでしょうか。導入するのは政府なんですから、先ほどの御答弁であったような、与党協議を見守りますじゃなくて、主体的な御答弁をぜひお願いいたします。
次に、インボイスについてです。
仮に軽減税率を導入するとしても、インボイス制度のない導入には、私たち維新の会は断固反対です。
これも、総理は、与党における検討を見守るという答弁でございました。でも、インボイスは世界標準です。取引の透明化のためにも、インボイス制度なしは考えられません。
消費税は、徴収漏れの大きい税です。平成二十四年度の新規発生滞納額は五千九百三十五億円ですが、そのうち、消費税は三千百八十億円、五三・六%を占めている。過去の滞納額の推移を見ても、滞納がふえたのは消費税の引き上げ時であります。
徴収漏れが大きいまま、増税して税収を上げようというのは、ある意味、穴のあいたバケツに水をくむようなものではないでしょうか。徴収漏れ対策としても、インボイス制度の導入を優先して進めるべきと考えます。
インボイス制度導入について、麻生大臣のお考えをお尋ねいたします。こちらも、与党の検討を見守るというような、ある意味、他人事のような答弁というのはぜひ御遠慮をお願いいたしたいと思います。
次に、法人税の引き下げについてです。
安倍総理は、この引き下げについては、日ごろから強い意欲を示されております。一月二十二日のダボス会議でも、法人課税について、国際相場に照らして競争的なものにしなければならないという国際公約をされました。
私たち維新の会も、国家国民のために、この法人税の引き下げは必要だと考えております。ぜひ応援いたしたいと思います。
しかし、やはりこの与党税制大綱では、引き続き検討だけで、方向性もない、いつまでに検討するかの期限もない。これでは、総理が訴えてきた、世界で一番企業が活躍しやすい国というふうに世界からはとてもみなされないんじゃないでしょうか。なぜ何もしないのか。
先日の代表質問において、総理は、本年、さらなる法人税改革に着手いたしますと、少し踏み込んだ答弁をいただきました。
そこで、お尋ねいたします。
具体的には、いつ、どのような改革を行うのでしょうか。もちろん、そのときに実効税率を下げる方向なのは明白と思いますが、その下げ幅はどれぐらいのものを想定しているのか、お答えください。
また、その下げ幅は、経済財政諮問会議の議員が言うような、一〇%程度なのかをお答えいただければと思います。
また、時期として、本年というふうにも総理は言っておりますが、甘利大臣、報道によりますと、骨太方針をまとめる六月ぐらいまでに一定方向を打ち出すという報道がありました。その方向で間違いないのかも含めて、甘利大臣に御答弁をお願いいたします。
この法人税引き下げに関しては、甘利大臣は、法人税減税は企業の競争力、そして賃上げに対する体力をつける、経済の好循環にもよいということで、非常に前向きに述べられておりますが、それに対して、麻生財務大臣は、この引き下げに対して、各国間の法人税引き下げ競争は通貨安競争をやるのと似たようなことになりかねないとか、実効税率の引き下げについても、そんなに簡単にはいかないというような慎重な姿勢を崩しておりません。
これは、両大臣で引き下げに関して随分見解の相違があるように見える。大げさに言えば、閣内不一致の感すらあります。
そこで、麻生大臣、そして甘利大臣、お二人にお聞きします。
法人税の実効税率の引き下げは必要ですか、必要じゃないですか。御自身の見解を明確に御答弁願います。
そのときに、課税ベースの拡大の議論もしなければなりません。
今三割しか払っていない課税ベースの拡大は、不可欠な議論。冷戦後の欧州諸国で法人税の引き下げ競争が起きたときに、表面税率が二〇パー近く下がったにもかかわらず法人税収が増加したという法人税パラドックスがよく言われますけれども、その要因の一つが、この課税ベースの拡大でありました。麻生財務大臣もよく、代替財源確保が必要だと言われていますけれども、そのためにも、この検討は不可欠と思います。
この改革は、各分野との利害調整も必要となります、払っていない人に払ってもらうという話ですから。となると、非常に覚悟が必要となる改革であり、まさに既得権と闘う改革。私たち維新の会としても、ぜひ踏み込むべきと考えます。
そのときに、まず、既得権の塊と言われる租税特別措置の抜本的な整理統合が必要ではないでしょうか。
きのう開かれた政府税調でも、この縮小を検討するということですけれども、実際、総務省の行政評価局提出の平成二十五年租税特別措置等に係る政策評価の点検結果によると、二百二十四件の租税評価のうち、百八十件が、有効性、つまり費用対効果の説明が不十分、要は、効果があるかどうかわからないということなんですね。この傾向は前からそうなんです、二十三年、二十四年も。つまり、総務省は、租特に関して、そのほとんどは疑問だと言っているわけです。
財務省の麻生大臣も、有効性が乏しく、廃止する方がいいと思った例も幾つかあるというふうに、租特の廃止縮小も検討しているという答弁も先日されています。
利用実績を見ても、租特、平成二十四年で見ると、約百三十種類のうちの四割を超える六十種類で利用が十社以下という報道がありました。これは、実質的に不要な租特も相当多いのではないでしょうか。
この現状を、非常にゆゆしき事態と考えます。租特の抜本的な整理統合が必要ではないか。麻生大臣、新藤大臣、それぞれお答えをお願いいたします。
この課税ベースの拡大を検討するときに、赤字を次年度以降の黒字から差し引ける、欠損金の繰越控除の見直しも議論に上がるはずです。麻生大臣も、この繰越控除制度の縮小を検討している事実はない、政府税調で検討してもらいたいということですけれども、どうも、そのやる気があるのかないのかがよくわかりません。
課税ベースの拡大議論においては、欠損金繰越控除制度の見直しを含むのか含まないのか、明確にお答えください。
また、課税ベースの拡大においては、宗教法人、そして社会福祉法人への適正な課税も、議論の必要があると思います。巨額の内部留保を言われる法人もあると聞いています。これについても取り組むのかどうかを、あわせてお答えください。
それから、所得拡大促進税制、設備投資減税についてお尋ねします。
私は、二十代のころ、経営コンサルタントをしておりました。そこでの経験を踏まえますと、この税制には、素朴な疑問がどうしても残ります。
設備投資促進減税により、投資を進めると、当然ながら企業の生産性は上がります。生産性が上がれば、効率化ですから、多くの場合、人件費が減るインセンティブになるわけですね。
一方では設備投資をふやす税制誘導をしていくんですけれども、もう一方では総人件費をふやす税制誘導をするというのは、ある意味矛盾しているんじゃないでしょうか。本当に、人件費増、つまり所得拡大というのは可能なんでしょうか。
企業は、余剰資金ができたとき、設備投資と賃金増、どちらに回すかといえば、大抵の場合は、まず設備投資に回すと思いますよ。生産性向上が、やはりさらなる売り上げ増につながります。賃金増はコストの増であって、企業は経営判断として、固定費である人件費を積極的にふやすはずはないからです。ましてや、生産性が向上すれば、人件費はむしろ減らしたくなるはず。
本当に賃金増はこの税制で実現可能なんでしょうか。具体的に見越せているのでしょうか。
政府は、この所得拡大促進税制の拡充で、初年度千三百五十億、平年度千六十億円の減税効果を見込んでいます。この積算根拠はどんなものでしょうか。賃金の増加というのは、全体としてどれぐらいの総額を見込んでいるんでしょうか。わかりませんでは済みません。お尋ねいたします。
この税制も一例ですけれども、どうにも、今回の税制改正は、投資促進税制、研究開発税制、事業再編税制など、従来型の政策減税が目立つ。しかし、国際競争力の強化を考えたときに、こういった個別の複雑な特例制度をふやすということよりも、法人実効税率の引き下げの方が不可欠ではないでしょうか。これは、どちらに重きを置いているんでしょうか。
そもそも、財務省は、法人税減税よりも政策減税の方が効果が大きいというふうに考えている節も感じます。でも、政策減税は、これまで我が国は何度もいろいろなものをやってきているわけです。それに対する効果の検証は行ってきたんでしょうか。それなくしてまた追加的な政策減税を行っても、どうにも前例踏襲感が残る。効果が見えません。
麻生財務大臣、法人税減税と政策減税、どちらに重きを置くのでしょうか。政策減税の方が効果が大きいという根拠は何かあるのでしょうか。お示しください。
最後に、地方関連でございます。
国税である法人税率の引き下げは当然ですけれども、地方独自財源である法人住民税、それから法人事業税、固定資産税等についても、当然議論をしなければなりません。
我々維新の会は、これら地方財源のことを国が一方的に決定しているという現状には、反対です。地方が独自にみずからの判断で引き下げに取り組むことが促されるべきであります。
ところが、大阪で、特区内で地方税ゼロを決断したのにもかかわらず、国は、その減税分を課税対象にして、せっかくの地方の取り組みを減殺してしまった。この地方の取り組みを、促すどころか、逆に、阻害しているのではないでしょうか。
この点を一月二十八日の代表質問で我が党の松野幹事長が質問しましたけれども、安倍総理は、いわゆる特区とは別に、地方団体が自主的に地方税減免措置を行う場合との関係の整理など、種々の論点があると承知しておりますと、これは、半分他人事に聞こえる答弁でございました。
では、お尋ねします。種々の論点について、現在、誰が、どのように検討を進めて、いつ解決しようとしているのか。それとも、何も検討していないのか。明確な答弁をお願いします。
以上、全て批判ではございません。私たちも、必要なことは、ぜひ応援をいたしたい。しかし、足らないところは、やはり毅然と指摘をしなければなりません。与党の方も、ぜひ、疑問があるときは黙らないでいただきたい。
真に、国力を高めて、日本が世界に冠たる地位で存続できる税制改正となることを願いまして、私の代表質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕
○国務大臣(麻生太郎君) 十問頂戴をいたしました。
消費税の軽減税率についてのお尋ねがあっております。
軽減税率につきましては、平成二十六年度与党税制改正大綱において、対象品目の選定や、区分経理等のための制度整備、具体的な安定財源の手当てといった課題が示されており、お尋ねの軽減税率の導入時期を含め、引き続き、与党税制協議会において検討がなされるものと承知をいたしております。
こうした課題につきましては、政治的な判断が不可欠な事項も多いことから、政府として、与党の御議論に沿って、必要な対応を行ってまいりたいと考えております。
インボイス制度の導入についてのお尋ねがありました。
消費税におきましては、複数税率のもとで、事業者が適正に仕入れ税額の計算を行うためには、適用税率と税額が記載をされた、いわゆるインボイスが必要となると承知いたしております。
いずれにせよ、軽減税率につきましては、お尋ねのインボイス制度といった区分経理などのための制度の整備のほか、対象品目の選定、また、具体的な安定財源の手当てなどの課題が多くあり、政治的な判断が必要な事項も多いことから、政府として、与党の御議論に沿って、必要な対応を行ってまいりたいと考えております。
法人税改革の方向性、そして法人実効税率の引き下げ幅について、二つ御質問をいただきました。
法人課税の改革につきましては、昨日の政府税制調査会において、今後、ディスカッショングループを設置し、専門的な観点から、法人実効税率のあり方、課税ベースのあり方、政策効果の検証、そして他の税目との関係など、検討を行っていくこととされたところであります。
したがって、いつ、どのような改革を行うかについて、現時点でお答えをすることは困難であります。
法人実効税率の引き下げに対する考えについてのお尋ねがありました。
法人課税の改革につきましては、先日総理も御答弁をされたように、産業政策も含めた大きな議論を行い、グローバル経済の中での競争力も考えながら検討を進めていく必要があろうかと考えております。
こうした観点も踏まえ、政府税制調査会において専門的見地からの検討を進めていくという点につきましては、関係閣僚間で意見が一致しているものと考えております。
租税特別措置の整理合理化についてのお尋ねもありました。
租特につきましては、その制度趣旨、適用実績や政策効果などを検証しつつ、不断の見直しを行っていく必要があるものと考えております。
なお、適用実態調査において適用件数が少ないことが明らかとなった租特の中には、想定している適用件数がもともと少ないものなども含まれている点には、留意が必要と考えております。
課税ベース拡大の具体策についてのお尋ねもありました。
法人課税の改革に関しましては、今後、政府税制調査会において、専門的な観点から、課税ベースのあり方を含めて、議論を行っていくことといたしております。その際には、公平、中立、簡素な税制の提案などの観点から幅広く議論をいただくことを期待いたしており、あらかじめ検討の範囲を決め打ちするようなことを考えているわけではありません。
所得拡大促進税制の減収見込み額の積算根拠についてのお尋ねがありました。
所得拡大促進税制の拡充による減収見込み額は、過去の実績などをもとに、人件費ベースで四五%の企業が税制の適用要件に該当し、それらの企業の人件費合計の伸び率を七・一%などと推計した上で、その適用対象となります企業の人件費増加額五・二兆円に一〇%の税額控除割合を適用することなどにより積算したものであります。
法人実効税率の引き下げと政策税制についてお尋ねがありました。
今般の税制改正におきましては、企業の成長に向けた投資を促すため、生産性の向上につながる設備投資を促すための税制の創設、研究開発投資を促進するための研究開発税制の拡充、事業再編を促進するための税制の創設などの、いわゆる政策減税を行うことといたしております。
これらを積極的に活用していただくことにより、企業の収益力の向上につながっていくものと期待をいたしております。
今後の法人課税の改革につきましては、政府税制調査会において、専門的な観点から、御指摘のような国際競争力の強化の視点も含め、各税制の政策効果の検証も行いつつ、どのような法人課税が適切なのか、検討を行っていくことといたしております。
最後に、特区内の税制についてのお尋ねがありました。
地方税減免に際して、国税の調整を行うことについては、いわゆる特区とは別に、地方団体が自主的に地方税の減免を行う場合との関係の整理など、種々の論点があります。こうした対応を行うことについては、慎重な検討が必要ではないかと考えております。
いずれにいたしましても、新たな税制については、今後、区域を指定し、事業内容が具体化した後に、まずは所管官庁において政策効果や特区内外への影響などを検証することが不可欠ではないかと考えております。(拍手)
〔国務大臣甘利明君登壇〕
○国務大臣(甘利明君) 田沼議員から、三点の御質問がありました。
まず、法人実効税率の引き下げの方向を骨太の方針までに打ち出すのかとのお尋ねであります。
日本経済の活性化のためには、産業構造も含めた大きな議論を行い、グローバル経済の中での競争等も考えながら法人課税のあり方を検討していくことは、重要であると考えております。
先般の経済財政諮問会議におきまして、総理から、法人実効税率の引き下げを行った国で税収が伸びているのか検証を行う必要があるとの御指示がありました。今後、こうした検証を行いながら、与党や政府税制調査会とも連携をしつつ、法人課税のあり方につきまして、検討を進めてまいります。
骨太の方針までに方向を打ち出すのかにつきましては、こうした検討状況を踏まえまして判断することになると考えております。
次に、法人実効税率の引き下げについてのお尋ねであります。
グローバル経済の中での競争力の観点から、世界で最もビジネスがしやすい環境を整えることによりまして、海外及び国内の企業が日本への投資をふやし、強い経済成長の好循環を取り戻すことが重要と考えております。
このような観点から、与党及び政府税調とも連携しつつ、法人実効税率のあり方について、検討を進めてまいります。
大げさに言えば閣内不一致の感があるとの御指摘でありますが、大げさであります。
最後に、賃金の上昇についてのお尋ねがありました。
経済の好循環を実現するためには、企業収益の拡大を賃金上昇や雇用拡大につなげることが重要であります。
政労使会議におきましては、企業収益の拡大を賃金上昇につなげていくといった共通認識に至り、好循環実現に向けた確固たる土台を築くことができたと考えております。
また、経団連が公表しました経労委報告では、拡大した収益を、設備投資だけではなく、雇用拡大、賃金引き上げに振り向けていくことを検討するとの言及がありまして、既に経済界から、賃上げに向けた具体的な動きも出てきております。
今後は、労使の間でこれらを踏まえた真摯な議論が行われ、賃金上昇が幅広く実現するものと期待をしております。
なお、政府経済見通しにおきましては、こうした政策の推進等もありまして、平成二十六年度の雇用者報酬は、二・〇%程度の増加になると見込んでおります。
以上です。(拍手)
〔国務大臣新藤義孝君登壇〕
○国務大臣(新藤義孝君) 三点のお尋ねをいただいております。
まず、消費税の地方税化についてのお尋ねであります。
社会保障財源化されている消費税について、これを全額地方税化するのであれば、社会保障について地方に大きな責任を担っていただく必要があります。
地方消費税は、他の税目に比べ地域間の偏在が小さい税目でありますが、それでも、都道府県ごとの人口一人当たり税収額の最大値と最小値の間では、一・八倍の格差がございます。
このため、社会保障の財源にこうした地域間の財政力格差がそのまま反映されれば、社会保障の水準に大きな地域間格差を生じさせることにもなりかねないことから、極めて慎重な検討が必要と認識をしております。
次に、租税特別措置に係る政策評価の点検についてお尋ねをいただきました。
御指摘の点検結果は、各府省が租税特別措置の要望の際に行った政策評価について、十分かどうか総務省が点検し、税制改正作業の参考に提供したものであります。したがって、御指摘の点から、直接、租税特別措置の整理統合の結論に至るものではありませんが、不十分な分析、説明がいまだに多い現状の改善、評価の質の向上に取り組んでまいりたい、このように考えております。
最後に、地方税の課税の仕組みについてのお尋ねであります。
地方税については、国が、地方税法等により、課税の基本的な仕組みを定めております。
これは、第一に、国と地方との間の適正な税源の配分を図って租税体系を組み立て、地方団体の課税権を保障する必要があること、第二に、国民の租税負担が過大とならないよう、各地方団体の住民の租税負担の均衡を図り、地方団体間における地方税の課税権の調整をする必要があることによるものであります。
また、地方団体間や住民間の税負担の公平性や均衡を確保するためには、固定資産評価基準など課税に当たっての全国統一の技術的な基準を定めることも必要である、このように考えております。(拍手)
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○議長(伊吹文明君) 次の質疑者、竹内譲君。
〔竹内譲君登壇〕
○竹内譲君 所得税法等の一部を改正する法律案について、公明党を代表して質問をいたします。(拍手)
まず、世界の経済情勢についてお伺いします。
米国連邦準備制度理事会、FRBは、昨年十二月十八日、量的金融緩和政策第三弾、QE3の縮小を本年一月から開始することを決めました。しかし、ことしに入ってから、世界経済を牽引してきた新興国で株価や通貨が落ち込み、先進国の株価急落を招いております。その最大の原因が、米国の量的緩和の縮小と見られています。
量的緩和縮小は、米国経済が回復に向かっているからだとされていますが、米国の家計はなお巨額の債務残高を抱えており、実質個人消費の伸びはリーマン・ショック前の水準に届かず、また、パートタイムで就労する労働者や職探しを諦めた人も含む広義の失業率は、一三%近いとの指摘もあります。
今後の米国経済の動向と、それが日本経済に及ぼす影響についてどう考えるべきか。
また、間もなくG20がシドニーで開催され、米国の金融政策と新興国市場の問題も主要テーマの一つになる模様です。
私は、円滑な金融正常化を探る必要があると考えますが、日本としてはこのG20にどのような方針で臨むのか、麻生財務大臣、お答えください。
日中間の貿易額は、依然として高い水準で推移していますが、日本の貿易赤字額は、年間五兆円強に拡大しています。
他方、中国の経済成長率にも陰りが見え始めており、かつ、影の銀行、シャドーバンキングという金融システムリスクを抱えていると言われています。
安倍総理は、年初から、中東、アフリカ、インドなどを歴訪されていますが、私も、新年早々、山口代表等とともにインドを訪問いたしました。
驚くべき活力に満ちたインドは、近年高い成長を続けているため、十数年後には中国と並ぶ大国に発展するとの分析もあります。そのため、日本企業の進出も年々ふえてきております。私は、日本が新たな世界的視野で経済外交を進めていく必要性を痛感した次第です。
中国、インドなどの新興国経済の動向と、それが日本経済に及ぼす影響をどう見るべきか、また、インドを初め新興国、途上国とは、経済のみならず、環境、教育、文化などの連携を一層推進すべきと考えますが、岸田外務大臣の答弁を求めます。
さて、日本経済の最大の課題は、四月に実施が予定されている消費税増税を乗り越えてデフレから脱却できるかであります。
これは容易なことではありません。しかし、それを実現するためには、三本の矢の政策効果による企業収益の拡大が速やかに賃金上昇や雇用拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じてさらなる企業収益の拡大に結びつくという経済の好循環をつくり出すことが必要です。
こうした認識のもと、政労使の三者が、これまで五回にわたり、真摯な議論を重ねてこられました。この政労使会議で昨年十二月にまとめられた「経済の好循環実現に向けた取組」は、日本経済にとって最も重要な四本柱ともいうべき方針を明らかにしています。
すなわち、一、賃金上昇に向けた取り組み、二、中小企業、小規模事業者に関する取り組み、三、非正規雇用労働者のキャリアアップ、処遇改善に向けた取り組み、四、生産性の向上と人材育成に向けた取り組みであります。
この政労使会議は、異例のことですが、しかし、これは、長年停滞した日本経済を活性化するために、やむにやまれぬ行動であったと言わねばなりません。
今回で一区切りついたという認識かもしれませんが、これを言いっ放しで終わらせるのではなく、掲げられた課題について、政府、企業、労働側がどのように実現していくのか、きちんとフォローアップをしていく必要があるのではないでしょうか。合意文書にも、「今後、それぞれが具体的な取組を進めるとともに、その成果を確認する」とあります。
政府として、今後も、引き続き、定期協議会、あるいはテーマごとの協議会などによりフォローアップ体制を整えるべきであると思いますが、甘利経済財政政策担当大臣の答弁を求めます。
平成二十六年度税制改正においては、産業競争力の強化や生産性向上の観点から、種々の対策が拡充強化されています。これらは、特に、消費税引き上げによる景気の腰折れを防ぐとともに、成長戦略を後押ししていくためにも、極めて重要な施策であります。
まず、これらの税制導入による経済効果として、どれだけ成長率を押し上げるのか、さらには、雇用拡大等にどの程度つながるのか、麻生財務大臣の答弁を求めます。
また、麻生大臣肝いりの、大企業、中小企業を問わず飲食のための支出の五〇%を損金算入できる交際費課税の見直し案や、中小企業の投資活性化策など、ユニークで効果の高い施策も盛り込まれています。
ところが、問題は、これらが現場の経営者などに意外に知られていないことです。さらなる周知徹底によって国民の期待を高める必要があります。麻生大臣の答弁を求めます。
結びに、先般、租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書が国会に提出されました。この報告書によると、適用件数がゼロもしくは極めて限定されているものも数多く散見されます。実態調査の結果について、どのように評価し、また、これをどのように活用していくのか、麻生財務大臣にお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕
○国務大臣(麻生太郎君) 五問頂戴しております。
今後の米国経済の動向と日本経済に対する影響についてのお尋ねがあっております。
米国経済は、二〇一三年の第四・四半期の実質GDPの成長率が前期比三・二%となるなど、緩やかに回復。また、先行きについても、緩やかな回復が続くと見込まれております。ただし、金融緩和の縮小などによる影響に留意する必要があろうと考えております。
足元の日本経済も緩やかな回復はしておりますが、米国を含め中国等海外景気の下振れは、引き続き、日本の景気を下押しするリスクと考えられており、その動向については、今後とも注意をしてまいりたいと考えております。
G20におけるテーマ及び日本の方針についてのお尋ねがあっております。
来週末シドニーで開催されますG20では、御指摘のとおり、米国の金融政策と新興国市場の問題についても議論が行われるものと見込まれております。現時点で議論の内容について言及することは差し控えさせていただきますが、御指摘の問題は、世界経済が直面する重要な課題の一つであると認識をいたしております。
G20で有意義な議論が行われ、世界経済の安定的な成長につながりますよう、日本としても積極的に議論に参加、貢献をしてまいりたいと考えております。
二十六年度税制改正の経済への影響についてのお尋ねがあっておりました。
二十六年度税制改正におきましては、生産性の向上につながる設備投資減税、交際費課税の緩和、所得拡大促進税制の拡充、復興特別法人税の一年前倒しでの廃止などを実施することといたしております。
これらの税制改正は、デフレ不況からの脱却、経済再生の実現を目指す施策の一環として実施するものであり、他の施策と相まって経済の好循環を実現していくことが期待されておるところであります。
税制改正単独の経済効果を見込んではおりませんけれども、政府経済見通しにおきましては、税制改正による影響を織り込んだ上で、二十六年度の実質成長率は一・四%、名目成長率は三・三%、失業率は三・七%と見込んでおります。
最後に、租税特別措置の適用実態調査の活用についてのお尋ねがありました。
租税特別措置の適用実態調査は、極めて有用な情報でありまして、租特の見直しに当たっての一つの参考指標となります。その上で、それぞれの租特を取り巻く経済、社会、地域などの状況や、今後の見通しなど、さまざまな要素を総合的に勘案していくことが重要と考えております。
なお、御指摘のような適用件数の少ない租特の中には、想定していた適用件数がもともと少ないものも含まれておりますので、留意を必要とすると考えております。(拍手)
〔国務大臣岸田文雄君登壇〕
○国務大臣(岸田文雄君) 新興国経済の動向とその影響、そして新興国、途上国との連携についてお尋ねがありました。
新興国経済の成長に伴い、貿易や投資を通じてこれらの国々と経済面での結びつきが深まっており、我が国経済に及ぼす影響も含め、新興国の経済の動向を注視しております。
中国は、世界第二位の経済大国であり、日中間の経済関係は、貿易、投資の両面で緊密かつ相互依存的です。
また、インドは、近年若干の伸び悩み感があるとはいえ、依然として約五%の経済成長を遂げているなど、日本企業にとって非常に有望な市場であると考えております。
これらの新興国については、その国際社会における影響力を踏まえ、政治、経済のみならず、御指摘の環境、教育、文化を含む幅広い分野での連携を推進していきたいと考えております。
また、その他の開発途上国についても、ODAも活用しつつ、二国間、多国間の双方の文脈で、御指摘の分野を含む幅広い分野で連携を図っております。(拍手)
〔国務大臣甘利明君登壇〕
○国務大臣(甘利明君) 政労使会議の今後のフォローアップ体制についてのお尋ねがありました。
政労使会議は、昨年九月から、五回にわたりまして開催をし、賃金の上昇や、中小企業、小規模事業者に関する取り組み、非正規労働者の処遇改善など、幅広いテーマにつきまして、政労使の三者が、好循環実現に向けて取り組むべき内容について、共通の認識に至りました。
今後は、政労使それぞれが、この共通認識に沿って、経済の好循環実現に向けた具体的な取り組みを着実に進めていくことが重要であります。
共通認識におきましては、それぞれの取り組みの成果を確認することとしておりまして、その具体的な方法については、今後、関係者との議論も踏まえながら、例えば、経済財政諮問会議の場などの活用を検討してまいります。
以上です。(拍手)
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○議長(伊吹文明君) 次の質疑者、小池政就君。
〔小池政就君登壇〕
○小池政就君 結いの党の小池政就です。
結いの党を代表し、所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)
今回の税制改正でも明らかなのは、アベノミクスの根底に流れる、企業業績が上がれば個人の給与も上がるという理論であります。
しかし、必ずしもその因果関係は直線的ではなく、特に所定内給与との相関は曖昧です。一九九〇年代中ごろからその傾向は強く、企業業績が改善した昨年も、所定外給与が増加する一方で、一人当たりの所定内給与は、非正規雇用の割合の上昇等により低下しました。
加えて、将来不安による内部留保の積み上げのみならず、グローバリゼーションによる賃金の平準化や、株主利益を重視する企業の傾向にも影響しています。
その観点からいえば、GDPの六割を占める消費を支え、一方で増税にも直接影響を受ける個人への直線的な施策も考慮すべきです。
例えば、復興特別法人税の引き下げにより一部の黒字企業に恩恵が特定していますが、全体の七割を超す赤字企業で働く従業員にも、より効果のある復興特別所得税・住民税の引き下げを同様に考慮すべきだったのではないでしょうか。今後も復興費の流用が続き、不用額が積み上がるならば、被災地の皆さんも納得するはずです。
また、企業に交際費の非課税措置をするように、現在一%にも満たない個人しか利用できない特定支出控除のさらなる拡充等、ほかにも可能な施策はあったのではないでしょうか。
肝心の企業に対しても、設備投資等を促すのならば、税制や補助金によるあめだけでもなく、ましてや、耐震等のさらなる規制強化でむちのように強制的にでもなく、将来、市場の拡大を期待できるよう、既得権益を打破し新規参入を促す抜本的な規制緩和や空洞化の是正に向けた開放政策を、まずは示す必要があるのではないでしょうか。
また、市場を落胆させた成長戦略の中で目玉となった国家戦略特区についても、結果として小規模の税額控除にとどまっていますが、法人税を免除するゼロ特区まで構想した当初の政権の意向を十分反映していると言えるのでしょうか。そこには、復権しつつある自民党税制調査会とのあつれきがかいま見えます。
かつての古い自民党政治の象徴たる利益誘導策としての租税特別措置は一兆円近くあり、その適用状況の報告書の作成、提出が義務づけられていますが、検証、報告されたものをどのように生かしているのか、回答を求めます。
偏った特定の業種に、しかも一部は戦後すぐからという長きにわたり個々に行う租税特別措置はそもそも整理統合し、課税ベースを拡大した上で実効税率を引き下げるべきではないでしょうか。
今回の税制改正全体としては、意義や性質の異なるもので帳尻を合わせようとした結果、論理が曖昧になっています。例えば、自動車取得税をなくすから軽自動車税を上げる、しかも、他方で温暖化対策と言っておきながら、こちらでは燃費性能のよい新車を対象にする等。
場当たり的な継ぎはぎでなく、各税目の意義や経済への波及効果及び全体の整合性を踏まえた取り組みが必要ではないでしょうか。
今回の補正予算にも見られるように、歳出をふやすのはためらわず、かわりにどこか別の歳出を減らすということも一切考慮しない一方で、税制では、ある項目の税源が少しでも削られれば全く違う項目をかさ上げしようとする姿勢は、ちぐはぐにも見えます。
公平性についても課題が残ります。
歳入庁については、政府は論点整理をしたと言いますが、公務員がふえる、人件費がふえる等、一方的に決めつけ、意義の理解も、マイナンバー制度を踏まえた検討も結論も不十分であり、これで、徴収体制の強化や納税者の利便性の向上等、本来得られる利益を本当に放棄するのでしょうか。
また、電子商取引事業への消費税が非課税である点について、昨年六月に私が主意書にて確認した際には、検討するとの答弁でしたが、本年四月より民間の同業への圧力も大きくなっていく中で、早急に対応を行うべきです。
結びに、私たちは、増税より経済成長をという方針から、この春からの消費増税には反対しつつも、本日降り注ぐ大雪のように景気を冷え込ますことのないよう、以上の点を指摘し、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕
○国務大臣(麻生太郎君) 最初に、先ほど竹内議員からの質問に対しての答弁漏れがありましたので、訂正をさせていただきたいと存じます。
第四番目の、交際費課税の緩和や中小企業の投資活性化策の周知についてのお尋ねがあっております。
御指摘のように、今般の税制改正におきまして、消費の拡大を図るため、交際費課税につきまして、大企業も含めて飲食費の五〇%を損金算入できるよう見直し、中小企業の投資を促進する税制につきまして、税額控除率の引き上げや即時償却の導入を盛り込むなど、思い切った対応を行っているところでもあります。
このような税制を多くの方々に使っていただけますよう、税制改正のパンフレットやその活用、また、地方での説明会の開催等を通じて、しっかり周知徹底してまいりたいと考えております。
小池先生から、六問いただいております。
復興所得税の引き下げなど、個人向けの施策についてのお尋ねがあっております。
復興特別所得税の税率を引き下げれば個人の可処分所得の増加につながるものの、所得、消費の持続的拡大による好循環を実現するためには、企業の積極的な賃上げを促し、企業収益の拡大を個人の所得や消費の拡大につなげるという総合的な取り組みの方がより効果的と考え、そのきっかけとなるよう、復興特別法人税の前倒し廃止を決めたものであります。
また、今般の好循環のための経済対策では、個人に対して、簡素な給付措置や住宅ローン減税の拡充なども実施することといたしております。
なお、特定支出控除につきましては、平成二十四年度の税制改正において特定支出の範囲の拡充などを行ったところでもあり、平成二十五年度分の所得税から適用されております。
次に、租税特別措置と法人実効税率の引き下げについてお尋ねがありました。
今般の税制改正におきましては、幅広い企業の成長に向けた投資を促すため、生産性の向上につながる設備投資を促すための税制の創設、研究開発投資を促進するための研究開発税制の拡充、事業再編を促進するための税制の創設などを行うことといたしております。これらを積極的に活用することにより、多くの企業において収益力を向上していただきたいものだと、期待をいたしております。
今後の法人課税の改革につきましては、政府税制調査会において、専門的な観点から、各税制の政策効果の検証も行いつつ、どのような法人課税が適切なのか、検討を行っていくことといたしております。
二十六年度税制改正が場当たり的ではないかとのお尋ねがありました。
今回の税制改正は、デフレ不況からの脱却、経済再生に向けて、企業収益を投資や消費の拡大、賃上げにつなげることを後押しする、税制抜本改革を着実に実行していくとの一貫した考えに沿ってまとめたものであります。
具体的には、企業の設備投資、研究開発投資、交際費を通じた消費、賃上げを促す次元の異なる制度改正を行っているほか、税制抜本改革法に沿って、給与所得控除の上限の引き下げ、地方法人課税の偏在是正、自動車重量税のグリーン化などを実施することといたしております。
このように、二十六年度改正は明確な考え方に沿って取り組んだものであることを、ぜひ御理解しておいていただければと考えております。
歳入庁についてのお尋ねもあっておりました。
御指摘の、政府の検討チームによる論点整理におきましては、社会保障・税番号制度による情報の効率的、効果的な活用が国民年金の納付率向上や利便性向上に役立つとした上で、歳入庁を創設すれば問題が解決するものではないというように指摘されたものと承知をいたしております。
今後は、この論点整理などに示された方向に沿って、厚生年金の適用事業所の把握促進のために、国税庁の保有する必要な法人情報を提供する、番号制度の導入を一つの契機として、添付書類の簡略化など、国民の利便性向上策について検討するなど、現在の体制のもと、社会保険料の徴収強化への協力や利便性向上に努めてまいりたいと考えております。
最後に、国境を越えた役務の提供などに対する消費税についてのお尋ねがありました。
国境を越えた役務の提供などに対する消費税の課税のあり方につきましては、平成二十六年度与党税制改正大綱に沿って、国際機関や欧州諸国における対応状況などを踏まえ、平成二十七年度税制改正に向けて、検討を深めていきたいと考えております。
以上です。(拍手)
〔国務大臣甘利明君登壇〕
○国務大臣(甘利明君) 企業の設備投資や新規参入を促すための規制緩和等の取り組みについてのお尋ねであります。
まず、新規参入を促す規制改革につきましては、昨年六月の成長戦略の策定以降、できるはずがないとされてきた多くの改革を実現してまいりました。
具体的には、電力市場の自由化に向けた改革、あるいは、再生医療を産業化するための改革などの取り組みであります。
また、民間企業の投資を後押しするための施策といたしまして、昨年十二月に成立をしました産業競争力強化法に基づき、先端設備への投資や収益力の向上に向けた事業再編を促進するための税制措置、企業が萎縮せずにフロンティアにチャレンジするためのグレーゾーン解消制度や企業実証特例制度の創設などを講じてきております。
さらに、新興国等の成長を最大限取り込み、日本市場に投資を呼び込むために、経済連携協定の締結や国家戦略特区を通じた規制・制度改革など、海外からの投資環境の整備に努めてまいります。
以上です。(拍手)
〔国務大臣新藤義孝君登壇〕
○国務大臣(新藤義孝君) 国家戦略特区の税制についてのお尋ねをいただきました。
国家戦略特区に係る税制については、日本再興戦略を踏まえ、世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくることを目指して、国家戦略特区の区域や具体的な事業の内容が決まっていない中で、民間企業、地方公共団体等から応募のあった提案をもとに、民間投資を促進する観点から、共通して提案の多かった項目を中心に、積極的に検討を行ったところであります。
その結果、平成二十六年度改正においては、即時償却を含む設備投資減税、研究開発税制の特例、固定資産税の特例など、従来の特区の税制では認められていない大胆な施策を講ずることといたしました。
今後、国家戦略特区の税制については、特区が指定をされ、事業の内容が具体化した後に、国家戦略特区を推進する観点から、引き続き検討してまいりたいと考えております。(拍手)
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○議長(伊吹文明君) それでは、佐々木憲昭君。
〔佐々木憲昭君登壇〕
○佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、国税法案について質問します。(拍手)
まず、消費税増税についてです。
日本共産党は、四月からの消費税増税の中止を安倍内閣に強く求めるものであります。
消費税増税による反動減を緩和すると称して政府が提案した内容を見ると、その大半は法人税減税により大企業を支援するものとなっており、低所得者や中小企業・業者を直接支援するものはほとんどなく、スズメの涙ではありませんか。
例えば、低所得者である住民税非課税世帯に対し、簡素な給付措置として一万円を給付したり、年金受給の高齢者に五千円加算する制度を設けるとしています。しかし、その対象は、一年半の食料品にかかる消費税増税分のみではありませんか。
電気やガスなどの公共料金、病院までの交通費、子供がいれば文房具や本、衣服など、さまざまな消費に消費税がかかるのであります。その増税分は、自分で負担しろということなのでしょうか。
消費税の納税義務が課されている中小企業・業者の場合も深刻です。
町の小売店は、増税分を転嫁すればお客さんが減って経営が成り立たない、転嫁しなければ身銭を切ることになり暮らしが成り立たないと言っております。
このような悲痛な叫びを上げている中小業者に対し、一体どのような対策があるのでしょうか。経営が続けられなければ廃業せよというのでしょうか。
次に、軽自動車の増税についてであります。
政府は、購入時に払う自動車取得税を縮減、廃止するという方針を決めました。しかし、その財源を賄うため、軽自動車やバイクの軽自動車税を増税しようとしております。
国内の自動車販売台数が伸び悩む中、軽自動車は急速に販売台数を拡大させておりますが、これは、長引く景気低迷のため軽自動車に乗りかえてしのいできた、庶民の自衛策でもあります。公共交通機関が衰退した地域では、軽自動車が唯一の交通手段であり、軽トラックも含め、二台、三台と所有している家庭も少なくありません。消費税増税の上に軽自動車税を増税するというのは、まさに二重の弱い者いじめではありませんか。
その一方、力のある大企業に対して、二重、三重の減税策を実施しようとしているのであります。
例えば、復興特別法人税は、もともと企業の税負担がふえないように設計されており、その前倒し廃止により、恒久的に法人税減税が実施されるのであります。
復興のためと称して、国民からは二十五年間延々と復興特別所得税・住民税の上乗せで八兆円も取り上げながら、大企業には同じ期間に二十兆円もの減税を行うというのは、余りにも不公平ではありませんか。
交際費非課税を拡大することも問題です。
国税庁の統計では、企業数のわずか〇・九%にすぎない大企業が、交際費全体の二〇%以上を占めているのではありませんか。
投資促進を口実とした減税も、大企業に集中します。
額の大きいものは、設備投資促進税制の創設と研究開発税制の上乗せ措置の拡充であります。その実態は、今国会に提出された租税特別措置の適用実態調査報告書によれば、上位企業に減税の恩恵が集中していることは明らかではありませんか。
もともと七割を占める赤字企業には、一切減税はありません。国民には増税ばかりであります。一部の大企業に減税が集中するのは、税の公平性をゆがめ、格差を一層拡大するものではありませんか。
法人税を減税すればそのうち労働者に回るだろうというトリクルダウンの考え方は、破綻しているのではありませんか。
日本経済を裾野から支えるため、税の不公平を正し、国民本位の税制政策に転換すべきであります。このことを求めて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕
○国務大臣(麻生太郎君) 最初に、おわびを申し上げて、小池先生の質問の第二問になります。
租税特別措置の実態についてのお尋ねというのがあっておりますけれども、この点につきまして答弁を漏らしておりますので、今、おわびの上、ここでもう一回読ませていただきたいと存じます。
租特の適用実態調査は、有用な情報であり、租特の見直しに当たっての一つの参考指標といたしておるところです。その上で、租特を取り巻く経済、社会、地域などの状況や今後の見通しなど、さまざまな要素を総合的に勘案することが重要と考えております。
例えば、今回の税制改正におきましては、適用件数が少なかった租特のうち、企業立地に係る集積区域における資産の特別償却制度について廃止するとした一方、沖縄の金融業務特区における認定法人の所得控除につきましては、沖縄振興の重要性に鑑み、抜本的に拡充、改組することといたしたところであります。
佐々木憲昭先生からの御質問にお答えを申し上げます。
消費税引き上げに伴う反動減対策についてのお尋ねがあっております。
二十六年度税制改正におきましては、生産性の向上につながる設備投資減税、交際費課税の緩和、所得拡大促進税制の拡充、復興特別法人税の一年前倒しでの廃止など、企業行動を促すための税制を決定いたしたところであります。
これらは、企業の収益力を高めるとともに、足元及び将来の企業収益の改善を、個人の所得の拡大、そして消費の拡大につなげるという経済の好循環の実現を目指すために行うものであります。
すなわち、個人にも企業にもよい影響を波及させることが狙いであり、大企業のみ支援するものとの御指摘は、適切ではないと考えております。
また、所得の低い方々に対しては、消費税率の引き上げによる影響を十分に緩和するため簡素な給付措置を講ずることとしているほか、中小企業に対しては、税制上の対応に加え、資金繰りの支援などの施策を実施することといたしております。
次に、消費税の転嫁対策などについてのお尋ねがありました。
消費税率の引き上げに際し、中小事業者の方々が転嫁しやすい環境を整備することは、重要な課題であります。
このため、政府としては、消費税率の引き上げ分が全額社会保障財源として国民の皆様に還元されることを御理解いただけるよう、消費税を御負担いただく国民の皆様に対し積極的な広報に取り組むこととしておりますとともに、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保するため、転嫁対策特別措置法により、事業者や事業者団体の方々が転嫁カルテルなどを結ぶことを認められるようにしたところ。
今後も、政府一丸となって、万全の転嫁対策を講じてまいりたいと考えております。
また、小売店を含めた中小企業の体質強化の観点から、平成二十五年度税制改正において、商業、サービス業の設備投資を促す税制を創設するとともに、平成二十五年度補正予算において、ものづくり・商業・サービス革新補助金を設けるなどの対策も講じているところであります。
交際費課税の緩和についてのお尋ねがありました。
経済の活性化のためには、企業の持つ資金を動かし、消費の拡大につなげていくことが極めて重要であります。
このため、今般の税制改正におきましては、大企業も含めて飲食費の五〇%を損金算入できるよう、交際費課税を緩和することといたしております。
これにより、消費が拡大し、料理飲食業、さらには、地域経済を含む経済全体が活性化されるものと期待をしており、御指摘のような、大企業とそれ以外といった対立軸で見ることは、適切さを欠いていると存じます。
政策税制の恩恵が大企業に集中しているのではないかとのお尋ねもあっておりました。
今般の税制改正につきましては、減税が適用される企業の賃上げや投資の拡大を通じて、経済全体が活性化されることを期待するものであります。
また、中小企業に対しては、これまでも特段の配慮を行ってきております。
例えば、研究開発税制において、中小企業に対しては大企業の税額控除割合よりも高い一二%とする特例を講じ、適用件数でも全体の約七割が中小企業であること、中小企業のみを対象とした、軽減税率の特例や、少額減価償却資産を取得した場合の損金算入の特例を講じていること、新設される生産性向上設備等投資促進税制におきましては、中小企業は対象設備の範囲を広げ要件の緩和を行うことなどから、減税の恩恵が大企業に集中しているとの批判は当たらないと考えております。
一部の大企業に減税が集中するのは不公平ではないかとのお尋ねもあっておりました。
日本経済の再生のためには、デフレ不況からの脱却に向けて、企業の資金を動かし、経済全体の好循環を実現していくことが重要と認識をいたしております。
こうした認識に立って、今般の税制改正におきましては、賃上げを行う企業を支援する所得拡大促進税制の拡充などを行うことといたしており、減税が適用される企業の賃上げなどを通じて、経済全体が活性化されることを期待いたしております。
また、従来から、中小企業には税制面でも特段の配慮を行ってきたところではありますが、今般の税制改正におきましても、中小企業の投資を促す制度の拡充についても、しっかりと取り組んでいるところであります。
法人税減税についてお尋ねがありました。
足元の企業収益を家計の所得向上につなげ、経済の好循環をつくっていくことは、重要な課題であります。
このため、政労使会議の場などにおいて、政府から、経済団体、業界団体に対して、賃上げや取引先企業の支援などを広く働きかけたところ、こうした要請を踏まえ、経団連より、賃金の引き上げを通じて一刻も早い経済の好循環を実現するよう貢献していく、また、連合より、二〇一四年度の賃金決定に当たっては、月例賃金の引き上げと格差是正、底上げにこだわった要求、交渉を行うとの表明がなされたところでもあります。
これを踏まえ、賃上げのきっかけとするため、復興特別法人税を一年前倒しで廃止することといたしました。所得拡大促進税制の拡充などの他の施策とあわせ、この減税が企業による賃上げにつながっていくことを期待いたしております。
以上です。(拍手)
〔国務大臣田村憲久君登壇〕
○国務大臣(田村憲久君) 佐々木議員から、消費税の引き上げに際しての簡素な給付措置についてのお尋ねがございました。
簡素な給付措置は、税制抜本改革法に基づき、消費税率の引き上げに際し、低所得者に与える負担の影響に鑑み、一体改革の枠組みの中で講じる社会保障の充実のための措置とあわせ、低所得者に対する適切な配慮を行うため、臨時的、暫定的な措置として実施するものであります。
具体的には、所得の少ない家計ほど生活に必要不可欠な食料品の消費支出の割合が高いことを踏まえ、平成二十七年九月までを対象に、消費税率の引き上げによる一年半分の食料品の支出額の増加分を参考に、一人当たり一万円の給付を行うことといたしており、低所得者の方々への影響を緩和することができるものと考えております。
さらに、老齢基礎年金や児童扶養手当などを受給している方々には、一人当たり五千円の加算措置を行うことといたしております。
このほか、社会保障と税の一体改革の取り組みとして、国民健康保険や後期高齢者医療の保険料に係る低所得者の負担の軽減、介護保険の第一号被保険者の保険料に係る低所得者の負担の軽減などの取り組みも推進することといたしております。
厚生労働省としては、簡素な給付措置が低所得者の方々に着実に支給されるよう、支給事務の実施に取り組んでまいりたいと考えております。
以上です。(拍手)
〔国務大臣新藤義孝君登壇〕
○国務大臣(新藤義孝君) 軽自動車税の見直しについてお尋ねがありました。
軽自動車税の見直しは、自動車関連税制において、自動車取得税廃止やその代替財源等が大きな課題であったところ、車体課税の不均衡の是正を検討すべきという地方財政審議会の検討会報告書や地方団体の要望等も踏まえ、与党税制調査会における議論を経て決定されたものであります。
今回の見直しは、軽四輪車に係る新税率適用を平成二十七年四月以降に取得される新車からとするなど、負担に配慮した措置を講じた上で行われるものであり、また、自動車取得税において軽自動車に係る税率の引き下げを行うなど、軽自動車のユーザーにさまざまな形で配慮がなされたものとなっていると考えております。(拍手)
○議長(伊吹文明君) 議長から申し上げます。
財務大臣から、答弁を補足したいとの申し出があります。今後このようなことがないことを前提に、これを許します。財務大臣麻生太郎君。
〔国務大臣麻生太郎君登壇〕
○国務大臣(麻生太郎君) たびたび恐縮です。
大企業への減税と復興特別所得税についてのお尋ねがあっておりました。
先ほども申し上げましたとおり、今般の税制改正は、企業の収益力を高めるとともに、足元及び将来の企業収益の改善を個人の所得の拡大、そして消費の拡大につなげるという経済の好循環の実現を目指すために行うものであります。
すなわち、個人にも企業にもよい影響を波及させることが狙いであり、両者を対立させるような捉え方は、適切ではないと考えております。(拍手)
○議長(伊吹文明君) 以上をもって、予定されておりました質疑は終了いたしました。
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○議長(伊吹文明君) 本日は、これにて散会いたします。
午後三時十三分散会
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出席国務大臣
財務大臣 麻生 太郎君
総務大臣
国務大臣 新藤 義孝君
外務大臣 岸田 文雄君
厚生労働大臣 田村 憲久君
経済産業大臣 茂木 敏充君
国土交通大臣 太田 昭宏君
環境大臣 石原 伸晃君
国務大臣 甘利 明君
国務大臣 稲田 朋美君
国務大臣 菅 義偉君
国務大臣 根本 匠君
国務大臣 山本 一太君
出席副大臣
財務副大臣 古川 禎久君