衆議院

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第10号 平成26年3月25日(火曜日)

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平成二十六年三月二十五日(火曜日)

    ―――――――――――――

  平成二十六年三月二十五日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 健康・医療戦略推進法案(内閣提出)及び独立行政法人日本医療研究開発機構法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

あべ俊子君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(伊吹文明君) あべ俊子君の動議に御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) それでは、関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案、両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長林田彪君。

    ―――――――――――――

 関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔林田彪君登壇〕

林田彪君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案は、最近における内外の経済情勢等に対応するため、少額輸入貨物に対する簡易税率の適用対象額の拡大及び暫定関税率の適用期限の延長等を行うものであります。

 次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案は、国際開発協会の第十七次増資に伴い、同協会に対し、政府は、従来の出資額のほか、三千三百四十二億四千百四万円の範囲内において追加出資することができることとするものであります。

 両案は、去る三月十八日当委員会に付託され、十九日麻生財務大臣から提案理由の説明を聴取し、本日、質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、順次採決いたしましたところ、両案はいずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、両案に対しそれぞれ附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) ただいま委員長より報告のありました両案を一括して採決いたします。

 委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに御異議はありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(伊吹文明君) 御異議なしと認めます。したがって、両案とも委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 健康・医療戦略推進法案(内閣提出)及び独立行政法人日本医療研究開発機構法案(内閣提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) この際、内閣提出、健康・医療戦略推進法案及び独立行政法人日本医療研究開発機構法案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣菅義偉君。

    〔国務大臣菅義偉君登壇〕

国務大臣(菅義偉君) ただいま議題となりました健康・医療戦略推進法案について、その趣旨を御説明いたします。

 国民が健康な生活及び長寿を享受することのできる社会、すなわち健康長寿社会を形成するためには、先端的な科学技術や革新的な医薬品等を用いた世界最高水準の医療の提供に資する医療分野の研究開発とその環境の整備や成果の普及及び健康長寿社会の形成に資する新たな産業活動の創出等を総合的かつ計画的に推進し、これを通じて我が国経済の成長を図ることが重要となっております。

 この法律案は、このような観点から、健康・医療戦略推進本部を内閣に設置するとともに、政府が健康・医療戦略を作成し、これを推進する等の所要の措置を講ずることを目的とするものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 第一に、世界最高水準の医療の提供に資する医療分野の研究開発とその環境の整備や成果の普及のほか、健康長寿社会の形成に資する新たな産業活動の創出等について、基本理念及び国等の責務を定めております。

 第二に、基本的施策として、研究開発の推進及び環境の整備、研究開発の公正かつ適正な実施の確保、研究開発成果の実用化のための審査体制の整備、新産業の創出及び海外展開の促進、教育の振興、人材の確保等を規定いたしております。

 第三に、政府は、基本理念にのっとり、基本的施策を踏まえ、健康・医療戦略を定めるものといたしております。

 第四に、健康・医療戦略の推進体制として、内閣に健康・医療戦略推進本部を設置することとし、内閣総理大臣を本部長とするなど組織、所掌事務等を規定いたしております。

 第五に、健康・医療戦略推進本部は、政府が講ずべき医療分野の研究開発並びにその環境の整備及び成果の普及に関する施策の集中的かつ計画的な推進を図るため、健康・医療戦略に即して、医療分野研究開発推進計画を作成するものとし、同計画は、独立行政法人日本医療研究開発機構が中核的な役割を担うよう作成するものといたしております。

 以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 ただいま議題となりました独立行政法人日本医療研究開発機構法案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、医療分野の研究開発における基礎から実用化までの一貫した研究開発を促進するために、健康・医療戦略推進本部が作成する医療分野研究開発推進計画に基づき、研究機関の能力を活用して行う医療分野の研究開発及びその環境の整備、研究機関における医療分野の研究開発及びその環境の整備の助成等の業務を行う独立行政法人日本医療研究開発機構を新たに設立するためのものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。

 第一に、本独立行政法人の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定めております。

 第二に、本独立行政法人の役員として、理事長、理事及び監事を置くことといたしております。

 第三に、本独立行政法人の主務大臣等について定めるほか、理事長及び監事の任命、中期目標の策定等に当たって、健康・医療戦略推進本部の意見を聞くことといたしております。

 以上のほか、所要の規定の整備を行うことといたしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 健康・医療戦略推進法案(内閣提出)及び独立行政法人日本医療研究開発機構法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) ただいまの国務大臣の趣旨の説明に対し質疑の通告がありますので、順次これを許します。まず、津村啓介君。

    〔津村啓介君登壇〕

津村啓介君 民主党・無所属クラブの津村啓介です。

 私は、ただいま議題となりました健康・医療戦略推進法案及び独立行政法人日本医療研究開発機構法案について質問をいたします。(拍手)

 日本は、科学技術政策において、世界で最も成功した国家の一つであります。とりわけ、戦後の歩みは栄光に満ちています。

 天然資源に恵まれない我が国は、戦前から、教育と科学技術を未来への投資と位置づけ、国運をかけ、官民を挙げて積極的な投資を行ってまいりました。

 一九九〇年代初頭、バブル崩壊と冷戦終結による旧社会主義諸国の低賃金労働者の市場参入により、日本経済がデフレ体質に大きく変容し、失われた二十年が始まると、早くも一九九五年には、議員立法で科学技術基本法を国会に提出、全会一致で成立させております。

 以後、政府は、この基本法に基づき、五年に一度科学技術基本計画を策定し、中長期ビジョンを持って科学技術政策を計画的に遂行してきました。

 二〇〇一年の省庁再編においては、縦割り行政の弊害を打破する観点から、内閣府に総合科学技術会議が設置をされ、科学技術政策の司令塔として、八月の概算要求に先立つ、府省間の事前調整機能も備えたアクションプランを作成し、また、基本計画のPDCAサイクルの管理に当たっております。

 二〇一〇年度からは、総合科学技術会議のイニシアチブのもとで、科学技術研究費補助金、いわゆる科研費の基金化が実施され、事実上の予算の複数年度化によって、年度末の無駄な予算消化や膨大な書類作成がなくなり、現場の研究者にとって、より使い勝手のよい、新しい科学技術予算のあり方を実現いたしました。基金化により、実質的な可処分予算が増加をし、科学技術コミュニティーに広く普及、定着しました。

 そうした取り組みの成果は、さまざまな面で花開いております。

 二十一世紀に入って以降、ノーベル賞自然科学三部門の受賞者は、米国の五十一人が断トツのトップですが、イギリスの十人に続き、日本は九人で、第三位であります。以下、フランス六人、ドイツ五人と続きます。また、論文引用数やサイエンス誌の年間十大ニュースなどでも、日本は世界トップクラスの成果を上げております。

 毎年のように、物理学賞、医学・生理学賞、化学賞の全ての分野で数多くのノーベル賞受賞候補者の名が挙がり、下馬評が取り沙汰される国は、世界でも数えるほどしかありません。

 科学技術に関する世界最大級の国際会議、STSフォーラムが毎年日本の京都で開催されているのも、関係者の御努力に加え、日本の科学技術に対する海外の信頼の大きさを示すものと言えます。

 日本は、今、厳しい財政制約を抱え、深刻な少子高齢化と人口減少に直面し、ともすれば悲観的な将来像を語る人もふえております。しかし、科学技術の力で、自国のみならず、世界の課題解決に大変大きな貢献をしていることに、私たちはもっと大きな自信を持ってよいと思います。

 こうした日本の輝かしい成功は、二つの要因によっております。

 一つは、旧科学技術庁、そして現在の総合科学技術会議が、さまざまな課題を抱えながらも、一元的な司令塔機能を発揮してきたことであります。

 現在、山本一太科学技術政策担当大臣が、さらに司令塔機能を強化すべく内閣府設置法の改正案を提出されていることは、この観点から、高く評価されるべきであります。

 また、安倍総理の指示により、昨年から、科学技術、知財、IT、海洋、宇宙など、内閣府や内閣官房に乱立している、本部と称する数多くの会議体の連携を深め、司令塔連携・調整会議の開催により、運用面でも司令塔機能の一元化に努めておられることは、画期的なことであります。

 二つ目の要因は、官民を挙げての巨額の研究開発投資です。

 政府の科学技術予算は、過去十年の平均で年間約四・三兆円。防衛費約四・七兆円、公共事業費約五・七兆円に迫る規模であります。

 一九九五年の基本法成立以降、失われた二十年と言われる日本経済の困難な環境の中で、少しずつではありますが、科学技術予算だけは一貫して増額を続けてきたことも、特筆すべきです。歴代政権の英断であります。

 こうした日本の科学技術政策の輝かしい歴史とその特徴を踏まえつつ、以下、本法案について、三つの論点を指摘いたします。

 一つ目のポイントは、総合科学技術会議との機能重複の問題です。

 一方で内閣府設置法の改正を行い、総合科学技術会議の司令塔機能を強化しようとしているにもかかわらず、科学技術政策の一大分野である健康・医療分野を別途このように切り出し、新しい会議体をつくるのは、いかにもちぐはぐではありませんか。

 私は、昨年十一月二十一日、当衆議院本会議において、国家戦略特区法案の賛成討論を行い、この壇上から、安倍総理、頑張ってください、成長戦略をもっと進めてくださいとエールを送らせていただきました。また、安倍内閣の政務三役の皆さんがより強く指導力を発揮していただくために、内閣官房、内閣府の機能見直し、とりわけマネジメント上の工夫を御提案いたしました。

 具体的には、この四月から供用開始される合同庁舎八号館と本府庁舎を活用し、現在五、六カ所に建物が分散をしている科学技術、IT、知財、海洋、宇宙などイノベーション政策の関連部局を、物理的に一つの建物に集約し、統合的な運用を進めること、そして政務三役が定例的に会議を持つことです。

 兼務の多い山本大臣や西村康稔内閣府副大臣とは、内閣委員会でも、さらに敷衍して、具体的な議論をさせていただきました。最近では、自民党内でも、内閣府の機能見直しに向けて議論がスタートしたと仄聞しております。

 ぜひ御注意いただきたいのは、縦割り行政の弊害をなくすという橋本行革の理念は間違っていない、横串官庁としての内閣府及び内閣官房の役割は他の官庁には担えないということであります。

 単なるスリム化で縦割りに戻すのではなく、よりよいマネジメントと効果的な統廃合によって、内閣府の本来の意味での機能強化、縦割り打破を着実に進めていかなければなりません。その上で、総合科学技術会議に屋上屋を重ねる今回の新しい会議体が本当に必要不可欠なものなのか、きちんと議論をすべきであります。

 菅長官、本法案第一条が掲げる、世界最高水準の医療の提供に資する研究開発等により、健康長寿社会の形成に資するとの目的は、崇高であり、すばらしいものです。しかし、なぜ、この司令塔が総合科学技術会議ではだめなのか、せっかく一方で一元化しようとしている司令塔をなぜまた分割し、多元化されるのか、お答えください。

 また、なぜ、本法案を所掌するのが、科学技術政策及び知財、IT、宇宙、海洋などイノベーション関連政策全般を現に担当され、大きな成果を上げられている山本大臣ではなく、ただでさえ御多忙な菅長官なのか、お伺いいたします。

 山本大臣にもお尋ねします。

 なぜ、山本大臣は、この法案の御担当に手を挙げられなかったのでしょうか。大臣肝いりの司令塔連携・調整会議には、この新組織も参加させますか。司令塔機能の強化及び一元化にかける大臣の意気込みを確認させてください。

 二つ目のポイントは、予算です。

 法案では、内閣総理大臣を本部長とする健康・医療戦略推進本部において、推進計画を決定し、省庁横断的な総合調整を行った上で、新たに創設される独法に財源を措置するとなっています。

 その額は、文部科学、厚生労働、経済産業各省から千二百億円を集約すると聞いておりますが、三省からの財源措置を各省縦割りでなく一体的に運用するためにどのような工夫をされるのか、総合調整とは何を指すのか、総合科学技術会議が現に行っているアクションプランとの関係を含め、何が新しいのか、具体的にお聞かせください。

 また、ライフイノベーションの一翼を担う農林水産省がコミットしていないのも不思議です。林大臣に経緯と所見をお伺いいたします。

 成長戦略が玉不足、岩盤規制にドリルの刃が立たないので、実際には、新鮮味の乏しい新たな会議体と独法を新設し、組織いじりで成長戦略のメニューを一つふやしたことにしようとする政権のアリバイづくりの思惑に産業界や経済産業省が一枚かんだだけだと酷評する向きもあります。

 新しい組織が出口志向に偏り、基礎科学の予算削減につながることはないか、菅長官の御見解をお聞かせください。

 三つ目の論点は、本家である米国NIHとの大き過ぎる違いであります。

 安倍総理は、一月の施政方針演説で、日本版NIHを創設します、医療分野の研究開発の司令塔ですと明言されました。

 しかし、今回の新しい独法は、予算規模が二十分の一以下であることや、陣容の薄さ、機能の少なさなど、どこを見ても米国のNIHとは桁違いであり、日本版NIHの名はふさわしくありません。最近では、政府の法案説明資料からもNIHの文字が消えたように思いますが、日本版NIHの創設は諦めたのでしょうか。お伺いいたします。

 最後に、私から、新しい組織の果たすべき機能として、二点提案させていただきます。

 一つは、本家のNIHが有する情報公開と情報共有、リスクアセスメントの体制を日本でも整備すべきという点です。

 巨額の研究開発投資を続けていくためには、国民による理解とチェックが必要です。これら科学技術コミュニケーションを新しい独法が担うべきとの考え方について、菅長官の御見解を伺います。

 二つ目は、健康長寿社会の実現に際し、多様な生き方が認められる社会を築くことの重要性です。

 例えば、今、与野党で議論が活発になりつつある尊厳死の問題について、政府のコミットが見えません。いかがお考えですか。

 その他、先端医療技術に関する法的、倫理的、社会的な課題について対話の仕組みをつくることが必要と考えます。御所見をお聞かせください。

 科学技術政策は、超党派で取り組むべきテーマです。輝かしい日本の科学技術を将来にわたる日本国民の財産として守り、強化し、世界と人類への貢献を続けていくことは、我が国日本の誇りであります。

 本法案の審議をきっかけとした、本会議及び委員会での有意義な議論により、日本の科学技術政策にまた一つ新しい希望が加わることを期待して、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣菅義偉君登壇〕

国務大臣(菅義偉君) 司令塔としての総合科学技術会議との関係についてお尋ねがありました。

 世界に先駆けて超高齢化社会を迎える我が国にとって、医療分野の研究開発を戦略的に推進することは、極めて重要な課題であります。その一層の充実強化を図る必要があるというふうに考えております。

 このため、特に健康・医療分野について、内閣に司令塔となる健康・医療戦略推進本部を新たに設置するとともに、同本部の戦略に基づいて、基礎から実用化までの切れ目のない研究管理・支援の実務を担う独立行政法人日本医療研究開発機構を設立することによって、本部と機構とが一体となって、医療分野の研究開発を戦略的に推進することといたしました。

 いずれにしても、健康・医療戦略推進本部と総合科学技術会議が相互に密接に連携協力を図りつつ、科学技術・イノベーション政策の推進に全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。

 本法案の所掌が私である理由についてお尋ねがありました。

 医療分野の新たな研究開発や医療の国際展開等を推進するための体制の構築は、文部科学省、厚生労働省、そして経済産業省など各省にまたがっており、これら関係府省が一体となって戦略的に取り組む必要があることから、内閣の調整役を担う内閣官房を統括する立場であります私みずからが担当することとしたものであります。

 引き続き、府省横断型の強力な実施体制の構築に向けて取り組んでまいります。

 三省から成る財源措置を各省縦割りでなく一体的に運用するための工夫についてお尋ねがありました。

 総合科学技術会議は、科学技術・イノベーション政策全般に係る基本的な方針を定めることとしており、その方針とも整合性を図りながら、健康・医療戦略推進本部は、医療分野の研究開発に関して医療分野研究開発推進計画を作成し、これにのっとって、本部が総合的な予算の要求配分調整を実施することで、各省間の施策の統一、連携を図ることといたしております。

 具体的には、本部がまとめた方針に基づいて各省が医療分野の研究開発関連予算の要求を行うなど、予算要求の段階から、関係各省と具体的な内容について調整をして、一体的な予算要求を行うことといたしております。

 あわせて、こうした予算を日本医療研究開発機構に基本的に集約をして、基礎から実用化までの切れ目のない支援を行うなど、本部と機構が一体となって、医療分野の研究開発を戦略的、総合的に推進してまいります。

 基礎科学の予算削減につながることがないか、政府の考えについてお尋ねがありました。

 今般、機構に集約するのは、国がトップダウンで戦略的に行う、医療分野の研究開発に係る予算であります。

 一方、将来における学術的な新知見やイノベーションの芽を絶え間なく育んでいくためには、研究者の自由な発想に基づくボトムアップ型の基礎研究も重要と承知しております。文部科学省の科学研究費助成事業についても、必要な予算の確保を図っているところであります。

 新たに創設する医療分野の研究開発体制の名称の政府の考え方についてお尋ねがありました。

 今般御審議をお願いしている二法案の閣議決定により、健康・医療戦略推進本部と日本医療研究開発機構という名称を定めたため、日本版NIHという呼称は用いなくなったのであります。

 日本版NIHの創設は諦めたのかというお尋ねでありましたが、私が取りまとめた骨子に基づいて、昨年の六月に閣議決定をした日本再興戦略に医療分野の研究開発の司令塔機能の創設について定め、その内容を着実にこの二法案に盛り込んで今国会に提出をしているものでありますので、当初の構想と変わるものではありません。

 いわゆる科学技術コミュニケーションについてお尋ねがありました。

 健康・医療戦略推進法では、第十五条において、基本施策として、教育の振興等を規定しており、その中では、国は、国民の理解と関心を深めるべく、教育及び学習の振興、広報活動の充実などの必要施策を講ずるものといたしております。

 これを踏まえて、新たに設置される独立行政法人日本医療研究開発機構においても、その業務の実施に当たり、国民の理解と関心を深めるために、広報活動の展開等の具体的取り組みについて、必要な対応を図っていきたいと考えております。

 先端医療技術に関する課題への対応の仕組みについてお尋ねがありました。

 先端医療技術に関する倫理的、社会的課題については、これまでも政府として、国民の理解を得ながら、個別の課題に応じて、必要な施策を講じてきました。

 今後も、先端医療技術の推進に際しては、必要に応じて国民への情報提供や公開の場での議論等を経て対応するとともに、日本医療研究開発機構においても、関係各省と連携をして、国民の理解を得ながら研究を推進してまいりたいと考えております。

 また、尊厳死の問題に関しては、人生の最終段階では患者本人の意思決定を基本とした医療が重要であると考えております。国民からの意見や検討会の議論を踏まえて、終末期医療の決定プロセスに関するガイドラインを策定し、その普及に努めているところであります。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣山本一太君登壇〕

国務大臣(山本一太君) 津村議員から、総合科学技術会議の司令塔機能強化等についてのお尋ねがありました。

 我が国の科学技術・イノベーション政策の司令塔である総合科学技術会議の機能強化のため、府省横断型の研究開発等を推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)に係る予算を初めて内閣府に計上するとともに、同プログラムを実施するため、内閣府設置法の一部改正法案を今国会に提出しているところでございます。

 また、昨年来、私のもとで、所管する各司令塔を集め、相互の連携調整を推進するための会議を開催しており、内閣官房健康・医療戦略室は、オブザーバーとして参加をいただいております。

 今後とも、司令塔間の連携強化に努めてまいります。

 なお、本法案については、内閣官房長官のもとで検討が行われてきており、総合科学技術会議を担当する私としては、必要な連携と協力に努めてきたところでございます。

 津村議員の御激励を受けまして、連携強化についてはしっかりと今後とも頑張ってまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 津村議員の御質問にお答えいたします。

 健康・医療戦略推進本部への参加についてのお尋ねがありました。

 独立行政法人日本医療研究開発機構におきましては、医療分野の研究開発、その環境整備などを行うこととしていると承知しており、農林水産省は、この機構に対して予算措置等は講じておりません。

 一方、医療面だけでなく、食にかかわる健康分野を扱う健康・医療戦略推進本部については、私自身も、昨年八月に同本部が設置されて以降、全ての会合に参画をしているところでございます。

 農林水産省では、総合科学技術会議が進める戦略的イノベーション創造プログラムに参画しまして、食品の持つ機能性の解明に関する研究などに取り組んでいるところであり、農業や食品産業など、食の観点から、本部における推進計画の策定に積極的に関与していきたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次の質疑者、浦野靖人君。

    〔浦野靖人君登壇〕

浦野靖人君 日本維新の会の浦野靖人です。

 日本維新の会を代表し、ただいま議題となりました健康・医療戦略推進法案、独立行政法人日本医療研究開発機構法案について質問をいたします。(拍手)

 一昨年、京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞に関してノーベル生理学・医学賞を受賞いたしました。この偉大な研究成果は、我が国発の革新的な技術として、今後の臨床研究等を通じ、病気で苦しむ患者の新たな治療法や新薬の開発につながることが大いに期待されています。

 安倍総理は、ことしの一月二十四日の施政方針演説で、日本版NIHを創設します、医療分野の研究開発の司令塔です、難病など不治の病に対し、官民一体で基礎研究から実用化まで一貫して取り組み、革新的な治療法、医薬品、医療機器を世界に先駆けて生み出してまいりますと発言されました。iPS細胞に続き、我が国発の革新的な技術の創出に向けた積極的な取り組み姿勢がうかがえます。

 両法律案は、この発言を具現化するものとして、また、昨年六月に策定した健康・医療戦略の目的に即した医療分野の研究開発を促進することで健康長寿社会と経済成長の実現を図るものとして国会に提出されたと受けとめております。

 日本維新の会といたしましても、そのような基本的な方向性は高く評価できるものと考えております。

 ただ、このような目標の達成に向けた政府の取り組みは、果たして十分と言えるのか、懸念を抱く声も聞かれるところであります。

 以下、そのような観点からお伺いします。

 我が国においては、欧米主要国に比べて、医薬品、医療機器等の研究開発がなかなか進まない状況があります。これは、リスクを避ける風土が土台にあることに加えて、臨床研究や治験実施体制の整備のおくれ、薬事承認審査体制のおくれなどに起因すると言われております。さらに、研究開発の拠点が分散しているため、研究開発の戦略の共有や資源の集約ができていないことも課題とされています。

 このような課題を克服するには、司令塔的役割を担う機関の創設、研究開発拠点の整備が必要であると考えます。

 今回、日本医療研究開発機構が創設されることにより、研究開発の拠点整備はどのように進み、医薬品、医療機器等の国際競争力はどのように強化されるのか、オール・ジャパンとしての取り組みにかける政府の考えを改めてお聞かせください。

 また、このような取り組みにより生み出された研究の成果を早期に実用化に結びつけていくことが必要であると考えております。

 昨年の臨時国会で薬事法等の一部を改正する法律が成立し、医薬品、医療機器等の安全かつ迅速な提供の確保を図るための所要の措置が講じられました。これにより、薬事承認審査に係る期間の短縮が図られると期待されています。

 しかし、いまだ解決すべき課題は残されております。

 欧米の主要国では、創薬、医療機器開発等の基礎研究を実用化していく段階で、ベンチャー企業が大きな役割を果たしています。これに対し、我が国においては、リスクマネーの供給や人材の不足を初め、ベンチャー企業の育つ環境は十分でないと指摘されています。

 研究成果の実用化の鍵となるベンチャー企業の支援、育成等に対する政府の基本認識と具体的な取り組みについて、お聞かせください。

 政府レベルで研究開発の拠点整備や環境整備を進め、研究開発にすぐれた企業等を誘致する国際間の競争が激化しています。

 我が国においても、能力の高い企業や研究者の流出を防ぎながら、共同研究等により、海外のすぐれた知識を戦略的かつ積極的に取り入れていく必要があります。そのような取り組みとともに、国内企業がおくれをとっている原因を分析し、研究開発能力を高めていくことは、必要不可欠であります。

 今後の研究開発拠点の整備では、我が国の産業構造を踏まえ、高度な物づくり技術を有する国内の中小企業等が率先して参入するような措置を講じていくべきと考えますが、政府の見解をお伺いいたします。

 医療分野の研究費については、これまで、文部科学、厚生労働、経済産業などの各省に分散されていました。今回、各省に計上されていた医療分野の研究開発関連予算を一元化するとともに、司令塔機能の発揮に必要な予算を確保し、戦略的、重点的な予算配分を行うこととしております。

 このような、省庁の縦割りの弊害を排し、一括して管理することによって効率的に研究費を配分することは、高く評価いたします。

 他方で、医療分野の研究開発関連予算を一括して管理し、個別の研究テーマの選定、研究の進捗管理、事後評価などの業務を行う日本医療研究開発機構は、大変大きな影響力を持つこととなります。

 言うまでもなく、医療は、国民の生命と健康に深くかかわる分野であります。その範囲は、主要な疾患別の領域から見ても、がん、難病、認知症、感染症、生活習慣病、精神疾患など、広範囲にわたります。また、医薬品、医療機器等に関連する分野は多数に及びます。

 このような特徴のある医療分野では、研究費の配分、すなわち研究の領域やテーマの選定が、将来の患者の治療や生活に影響を与える可能性は大であります。今後、大きな影響力を持つこととなる日本医療研究開発機構において、研究テーマの選定等に当たっては、これまで以上に公平性、公正性が確保されなければなりません。

 研究テーマ等は誰がどのように決めるのか、公平性、公正性を確保するための体制、手続等はどうなっているのか、お伺いをいたします。

 また、研究費の効率的、重点的な配分等を目指す余り、実用化に近い研究ばかりに目を奪われ、基礎研究がおろそかになるのではないかとの懸念も聞かれます。

 基礎研究分野の研究費を減らすことはないのか、基礎研究の重要性をどのように認識しているのか、改めて政府の見解をお伺いいたします。

 日本医療研究開発機構の対象経費、すなわち、機構が所管する研究費の総額は、平成二十六年度予算で一千二百億円に上ると承知しています。厳しい財政状況の中で、前年度と比較すると約二割増しになっていることは、評価いたします。

 確かに、予算をふやすことが直ちに研究開発の成果につながるものではありません。しかし、研究開発に係る予算をしっかり確保していくことは、研究者の開発意欲を引き上げるばかりではなく、国としての施策への取り組み姿勢を内外に示すことにつながります。継続的な予算の確保に向けた政府の考えをお聞かせください。

 医療分野の研究開発の能力を高めていくには、研究者の育成も欠かせない事柄です。最先端の医療技術を担う人材の育成、独創的ですぐれた研究者の養成等について、政府の取り組み状況をお伺いいたします。

 また、すぐれた研究者ほど他の研究機関に引き抜かれるということが想定されます。

 近年、政府レベルで研究開発に係る環境整備を進める国がふえ、競争が激化してきています。優秀な研究者ほど海外からの引き合いも多いと聞きます。優秀な研究者の国外への流出そのものも問題ですが、研究費の取り扱いや知的財産の帰属の問題も生じます。

 そのような研究者の流動化の問題に対する政府の取り組みをお聞かせ願います。

 医療分野の研究開発力を高めていくには、効率的、効果的に情報の収集、分析、活用を行うことが必要不可欠です。

 しかし、我が国において、医療情報の収集、蓄積は図られてきているものの、これらに関する情報を開示し、共有し、活用する状況にはほど遠い状況にあるのではないかとの指摘もなされています。他方で、遺伝子を含む医療情報の活用に当たっては、収集方法やセキュリティーに問題があるとの意見も聞かれます。

 研究目的での医療情報の第三者提供に関して、政府の現状認識、今後の取り組み方針についてお伺いをいたします。

 医療分野の研究開発が進み、最先端の医療技術等が実際の医療の現場で使用され、世界最高水準の医療を国民が受けられるようになることが期待されています。

 しかし、最先端の医療技術や高価な医薬品を全ての国民が同じように受けられるようになれば、現在の医療保険制度の枠組みの中では、負担の限界を超えてしまうおそれがあります。

 日本維新の会は、真の弱者を徹底的に支援することを社会保障の基本としております。そして、医療保険について、現行の公的保険の範囲を見直し、混合診療の完全解禁を訴えてきました。

 今回の医療分野の研究開発の促進にあわせ、最先端の医療技術等の保険適用の仕組みを見直す必要があると考えますが、政府の見解をお伺いいたします。

 研究費の不正使用や研究上の不正行為が少なからず発生しています。研究にかかわる不正事案は、我が国の研究に対する信頼を揺るがし、科学技術の進歩を大きく阻害するものと考えます。

 研究機関における不正防止のための管理体制の構築が必要と思いますが、政府の取り組み状況についてお伺いいたします。

 また、ノバルティスファーマ株式会社が販売する降圧剤バルサルタンに係る臨床研究について、不正が疑われる事案が問題となりました。政府においては、再発防止に向けた検討を行っていると承知をしております。

 新聞報道では、日本学術会議の分科会において、研究不正の監視や防止をする機能を日本医療研究開発機構に持たせるよう求めることを含めた提言をまとめたとしています。また、大規模な臨床試験では、官民でプールした資金をもとに、研究者を公募、審査する公的制度を確立すべきと明記したと報じられています。

 これらも踏まえ、政府としての再発防止策の検討状況、臨床研究に対する信頼回復に向けた取り組み内容等についてお伺いをいたします。

 今回、独立行政法人日本医療研究開発機構を新たに創設することとしております。

 一方で、安倍内閣は、独立行政法人改革に取り組む方針を示しています。新たに独立行政法人を創設することに対しては、厚生労働省所管の二つの独立行政法人を統合することで、法人の数をふやさないと説明をしています。この点については、単なる数合わせと批判されても仕方がないのではないかと思われます。

 新たに独立行政法人を創設するのであれば、その必然性をしっかり明示すべきと考えます。単なる数合わせとならない独立行政法人改革に挑む政府の考えを、改めて確認させてください。

 今回の両法律案が、健康長寿社会と経済成長の実現を図るものとなることを期待しながら、関係する省庁が複数にまたがることから、委員会で幅広く充実した審査を確保することを含め、しっかりと検証していくことが必要であることを申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 浦野議員から、三問御質問をいただきました。

 まず、研究目的での医療情報の活用等についてのお尋ねがございました。

 医療分野の情報の取り扱いについては、個人情報保護法や各種指針等に定めているように、第三者提供を行う場合には、原則として患者本人の同意を得ることとするなど、個人情報の保護に十分留意する必要があるというふうに考えております。

 一方で、研究開発の促進のために医療情報の利活用を推進していくことも重要だと考えており、今後とも、必要なルールの整備を行うなど、関係省庁と密に連携を図りつつ、医療分野の情報化に取り組んでまいります。

 次に、最先端の医療技術に対する保険適用についてのお尋ねがございました。

 我が国の医療保険制度においては、必要かつ適切な医療は基本的に保険診療で確保するという国民皆保険の理念を基本として、安全性、有効性等が確認された医療を保険適用しております。

 その上で、現在、保険が適用されていないものの、将来的な保険収載を目指す高度な医療等については、安全性、有効性を確認する一定のルールのもとで、保険外併用療養費制度として、保険診療との併用を認めております。

 厚生労働省といたしましては、国民皆保険を守るため、いわゆる混合診療を全面的に解禁すべきでないと考えております。

 また、費用のかかる高度な医療技術が増加することによる医療保険財政への影響等に関しては、新しい医療技術の費用対効果の評価のあり方について、現在、中央社会保険医療協議会において議論を行っているところでございます。

 次に、臨床研究に係る再発防止策の検討状況や、信頼回復に向けた取り組みについてのお尋ねがございました。

 厚生労働省においては、ノバルティスファーマ株式会社が販売する高血圧症治療薬に関する臨床研究事案を受け、昨年八月に検討会を立ち上げ、再発防止策や信頼回復について議論し、十月に中間取りまとめを行いました。

 現在、この中間取りまとめを踏まえ、臨床研究に関する倫理指針の見直しを行っており、この中で、倫理審査委員会の機能強化や、データ改ざん防止体制の構築など、研究の質の確保の観点からも検討を行っております。

 また、中間取りまとめの中で、臨床研究の信頼回復のための法制度の必要性についても検討するよう指摘があったことから、海外での規制状況なども十分に調査した上で、本年秋を目途に検討を行うべく、検討会の立ち上げに向けた準備を進めております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣菅義偉君登壇〕

国務大臣(菅義偉君) 医療分野の研究開発に関する政府の取り組みについてお尋ねがありました。

 国民が健康な生活及び長寿を享受することのできる社会を形成するためには、医療分野の研究開発を戦略的に推進し、世界最高水準の医療を実現するとともに、健康、医療に係る産業を育成していくことが極めて重要であると考えています。

 このため、総理を本部長とする健康・医療戦略推進本部のもとに、日本医療研究開発機構が、すぐれた実績を有する我が国の大学、研究機関等で行う研究開発に対し、基礎から実用化まで切れ目のない支援を行うこととしており、これによって、革新的な医薬品が世界に先駆けて実用化をされて、我が国の医療関連産業の国際競争力の向上に寄与するものと考えております。

 日本医療研究開発機構における研究テーマの選定に係る体制、手続等についてお尋ねがありました。

 がんや難病など、どの研究領域に重点的に配分を行うか等の資源配分の基本的な方針については、内閣に置かれる健康・医療戦略推進本部が有識者の意見も聞きながら決定するものとされております。

 その方針を踏まえて、個別の研究費については、日本医療研究開発機構において、本部が作成する医療分野研究開発推進計画に基づいて、同機構に置かれる研究マネジメントに秀でたプログラムディレクターのもとで、専門家の評価も得ながら、具体の研究テーマ等を決定し、配分していく考えであります。

 継続的な医療分野の研究開発関連予算の確保に向けた政府の考えについてお尋ねがありました。

 平成二十六年度予算において、機構への集約対象となる予算として、御指摘の約一千二百億円のほかに、医療分野の研究開発関連の調整費百七十五億円を加え、対前年度比約四割増の約一千四百億円を確保するなど、施策の充実強化に努めてまいります。

 今後とも、医療分野の研究開発を着実に推進するために、引き続き、必要な予算の確保に向けて、しっかりと取り組んでまいります。

 最先端の医療技術を担う人材の育成や、独創的ですぐれた研究者の養成等についてお尋ねがありました。

 医療分野の研究開発力を高めるために、大学の医学部、大学院を一貫した研究医の育成や、多分野連携、産学連携によるメディカルイノベーション推進人材育成に取り組む大学への支援を行っているところであります。こうした取り組みを通じて、引き続き、医療分野の人材育成に積極的に取り組んでまいります。

 研究者の流動化の問題について、政府の取り組みについてお尋ねがありました。

 世界的にすぐれた人材の獲得競争が激化する中、第一線級の研究者の多くは国や機関を超えた移動が常識となっており、我が国としても、独創的な研究成果を生み出す、世界第一級の人材の確保に努めることが重要であると考えています。

 政府として、安倍総理が施政方針の中で掲げるように、我が国を世界で最もイノベーションに適した国とするために、イノベーション創出の基盤となる人材育成や基礎研究の推進、新たな研究開発法人制度の創設による研究者の処遇改善など世界最高の研究環境の整備、国際的な頭脳循環ネットワークを形成するための優秀な外国人研究者の受け入れ促進等によって、世界じゅうから超一流の研究者を獲得するための取り組みに、しっかりと対応してまいります。

 独立行政法人改革についてお尋ねがありました。

 我が国が医療分野の研究開発を戦略的に推進していくためには、専門的知見を有する組織により、大学、研究機関に対して、基礎から実用化まで切れ目のない支援を一体的に行う必要があり、そのため、医療分野の研究開発に特化した独立行政法人を新たに設立し、質の高い支援体制を構築するものとしております。

 独立行政法人改革は、制度本来の趣旨にのっとって、政策実施機能の向上と官のスリム化を図るために、制度と組織の両面にわたり抜本的な見直しを行うこととしており、今国会に関連の法案を提出することといたしております。

 この改革による組織の見直しについては、単なる数合わせではなくて、真に法人の政策実施機能の強化に資する統廃合等を実施することといたしております。

 医薬基盤研究所と国立健康・栄養研究所の統合も、両法人が有する医薬品と食品、栄養に関する専門性の融合が図られ、生活習慣病分野の研究の促進が期待できることから、実施をすることといたしております。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 浦野議員にお答えをいたします。

 私には、二問です。

 最初に、医薬品、医療機器の研究開発成果の実用化を担うベンチャー企業の支援、育成についてでありますが、医薬品等の研究開発において、基礎研究から実用化に至るまでには、研究開発成果が効率的に事業化につながらない、いわゆる死の谷が存在すると言われております。これに対し、米国等では、ベンチャー企業が基礎研究を実用化につなぐ重要な役割を果たしていることは、議員御指摘のとおりであります。

 これに対し、我が国では、ベンチャー企業に対する資金供給が十分ではなく、結果として、ベンチャー企業がリスクの高い研究開発に積極的に取り組めていないのが現状であります。

 このため、これまでも産業革新機構や中小企業基盤整備機構を通じてリスクマネー供給を行ってきたところでありますが、さらに、医薬品や医療機器を含めた健康・医療分野における資金面での支援を強化する観点から、二十五年度の補正予算において、産業革新機構及び中小企業基盤整備機構に対して、それぞれ、二百億円、十億円の、追加的な出資を手当てしたところであります。

 これらの措置を通じて、医薬品や医療機器等の分野におけるベンチャー企業への資金供給を促し、研究成果の実用化を実現してまいります。

 次に、高度な物づくり技術を有する中小企業等の活用についてでありますが、議員御指摘のとおり、医療分野の研究開発に、高度な物づくり技術を持つ我が国中小企業、小規模事業者の力を活用することは、極めて重要であります。

 この観点から、経済産業省では、平成二十年度から三年間、全国三十カ所の産学連携の研究開発拠点を整備していく中で、中小企業、小規模事業者も参加する形での医療分野の研究開発拠点についても、大阪大学における最先端医療イノベーションセンターを初め、十四カ所で整備をしてまいりました。

 これに加え、福島振興の観点から、福島県内に医薬品、医療機器等の研究開発拠点を整備すべく、取り組みを進めております。

 また、医療機関と連携した中小企業、小規模事業者による医療機器開発に対する支援を実施しております。

 本事業は、日本医療研究開発機構発足後に同機構に引き継がれる予定であり、物づくり中小企業等も参加した医療機器分野等の研究開発拠点の整備にもつながっていくものと考えております。(拍手)

    〔国務大臣山本一太君登壇〕

国務大臣(山本一太君) 浦野議員から、基礎研究の重要性の認識についてのお尋ねがありました。

 基礎研究は、人類の新たな知の資産を創出するとともに、世界共通の課題を克服する鍵となるものであり、独創的で多様な基礎研究の推進は、世界で最もイノベーションに適した国づくりに不可欠なものであると認識しております。

 このため、科学技術イノベーション総合戦略においても、イノベーションの担い手の活躍の場となる大学や研究機関において独創的で多様な世界トップレベルの基礎研究の推進を国として一層強化することが必要であるとするなど、基礎研究の推進を図ることとしています。

 基礎研究分野の研究費については、所要経費の確保に努めるとともに、競争的資金の使い勝手の改善や制度の再構築に取り組むこととしております。

 研究不正の防止のための管理体制の構築についてのお尋ねがありました。

 科学研究は、研究者が高い倫理のもと公正に行うべきものであることから、不正が行われた場合は、その責任は、一義的には研究者が負うべきものだと考えております。

 一方、不正の再発防止や原因の究明等の観点から、例えば、研究機関内にコンプライアンス推進担当責任者を配置し、責任の範囲を明確化するなど、不正が生じないようなガバナンス体制を強化することも重要と考えております。

 政府においては、これまで、総合科学技術会議が示した方針に基づき、関係各省において不正防止の指針を整備するなど対応してきたところですが、今後は、各府省に対し、研究機関における組織的な取り組みを強化するなど、不正防止に向けた対応を促してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、浜地雅一君。

    〔浜地雅一君登壇〕

浜地雅一君 公明党の浜地雅一です。

 公明党を代表し、ただいま議題となりました、健康・医療戦略推進法案、及び独立行政法人日本医療研究開発機構法案、いわゆる日本版NIH法案について、菅官房長官に質問をいたします。(拍手)

 まず、この法案の必要性についてお聞きいたします。

 日本の健康・医療分野の研究開発の司令塔機能を果たす日本版NIH構想の発表以来、その動向が注目されてまいりました。

 実は、私の父親も、加齢黄斑変性と腎臓疾患による透析治療に苦しんでおりまして、日本の医療研究がスピード感を持って推進されることを望む国民の一人でもあります。

 これまで厚生労働省を初め文部科学省、経済産業省など各省でばらばらだった予算を一本化し、医療産業の競争力強化に取り組むことが狙いである日本版NIHの実現によって、医療分野における基礎研究から医薬品、医療技術の実用化まで、切れ目のない支援が可能になると期待をされております。

 これまで、日本の研究開発は、基礎研究は文科省、人を対象とした臨床試験、治験は厚労省、医薬品をつくるための製造過程は経産省と、各工程における所管が縦割りになっており、効果的な予算配分ができなかった。この点が改善されることを、まず、高く評価したいと思います。

 我が国は、iPS細胞の研究の成果を発表した山中伸弥京都大学教授がノーベル賞を受賞したように、基礎研究の分野では、世界でもトップレベルであります。

 しかし、それを具体化するための臨床・実用化分野では、世界におくれをとっているのが現状です。つまり、創薬や医療機器の安全性、有効性を調べる臨床応用には、この基礎研究の成果が十分に生かされていない。

 各省に分散する研究開発を集約して、効率よく進める環境をつくり、研究成果を早期の新薬開発や医療機器の実用化につなげることが強く求められています。

 以上の点を踏まえ、今までの我が国の医療研究のやり方のどこに問題があったのか、また、日本版NIHができれば、今後どのように改善されるのか、お答えください。

 次に、日本版NIHを日本独自のものとして具体的にどのように育てていくのか、日本版の意義を伺います。

 よく比較に出されるアメリカのNIHは、百年を超える歴史と伝統のある世界有数の医学、生物学の研究拠点です。そこには疾患別に二十七の研究施設が設置され、約六千人の研究者を抱える、年間予算も三兆円に上る大組織です。日本がこれから予定する規模と比べると、予算や従事する人の数には格段の差があると言われています。

 しかし、私は、日本とアメリカでは国民性や社会構造が異なることから、一概にこの批判は当たらないと考えております。むしろ、国民皆保険制度を有する我が国においては、国民が医療サービスを安価で受けられる環境があるため、アメリカ等に比べ、開発された医療技術の需要は格段に高く、十分にその発展性の余地があると考えております。

 アメリカ以外に目を向けても、アジアでは、中国を初め、シンガポールや台湾、韓国などが台頭し、医療研究分野は激しい競争にさらされております。

 しかし、世界最速のスピードで超高齢化社会を迎える我が国こそが、世界の先頭に立ってこの分野を推進すべきです。

 例えば、高齢化に伴い我が国の認知症患者の割合は急増しており、最新の統計では、罹患者が四百万人以上いるとの数字が出ております。予備群を含めると、その数は、さらに大きくふえます。仮に認知症患者が一割減れば、将来的な医療・介護費用は年間五千億円削減できるとの試算があり、健康寿命が延びることで、労働人口の増加にもつながります。

 また、日本人の死亡原因の一位であるがんや、これから積極的に保険適用の対象が拡大される難病対策も、我が国が先頭に立って取り組むべき大きなテーマです。

 そこで、我が国独自のNIHの具体的な姿をどのように考えるか、アメリカなどとはどのように違うのか、具体的なイメージを提示してください。

 次に、研究者の自由な発意による研究の成果を戦略的に集約する方法についてお尋ねいたします。

 各省ばらばらの予算を一本化し、医療産業の競争力強化に取り組むことが今回の改革の眼目ですが、一方で、新しい独立行政法人が一元的に管理する予算からは、文科省の基礎研究分野である科学研究費補助金が除かれております。

 基礎研究は研究者の自由な発意によるボトムアップ型の提案が大切であるとの説明は理解できますが、ボトムアップ型の自由な発意による基礎研究と、トップダウンで戦略的、統一的に予算管理をしていくことは、一見矛盾するようにも感じます。

 戦略的、統一的に医療分野を発展させるためには、基礎研究分野の予算管理権限も新しい独立行政法人に移行させるべきではないかとの指摘もございます。

 そこで、なぜ文科省に科学研究費補助金の管理権限を留保したのか、その理由をお示しいただくとともに、研究者が自由に発掘したシーズ、つまり研究の種を、どのようにして戦略的、統一的なシームレス、つまり集約化、実用化に移行させるのか、そのためのスキームをお示しください。

 日本版NIHの成功の鍵は、人材の確保である。これが最重要課題であると言っても過言ではないと思っております。

 司令塔部分の健康・医療推進本部には医療関連の有識者を集めた専門調査会を置き、専門的見地から助言を行うことが予定されております。

 しかし、実際のオペレーションの現場において適切な監督、助言が行われることが重要ではないでしょうか。現場で監督、助言を行うプログラムディレクターやプログラムオフィサーの存在が大きいと私は思います。

 したがって、実際の現場においては、医療分野の専門家に限らず、例えば、特許やIT関連、起業化の方法を知る多様な人材を集めることが大切ではないでしょうか。医療分野以外の有能な経験者を採用すべきと考えますが、その予定があるのか、お伺いをいたします。

 理化学研究所がイギリスのネイチャー誌に発表したSTAP細胞の論文に疑義が生じてしまいました。期待が大きかっただけに、仮に不正が事実であれば、大変に残念に思います。

 研究の公正性を担保すること、これが重要であり、不正を厳しく監視する必要があると考えますが、新しい独立行政法人においては、チェック体制、監視体制をどのように考えているのか、お答えください。

 安倍政権では、健康・医療分野の推進を日本再興戦略の目玉の一つとして位置づけられました。

 海外では、新しい医療技術は、大学などから出て、それをベンチャー企業が投資、実用化し、企業が販売するというパターンになっており、十分な資金供給環境が整っております。

 しかし、日本では、実用化を担うベンチャー企業が十分に成長していないのが実情です。また、製薬会社等の企業も、実用化には莫大な資金と時間がかかることなどから、リスクを恐れて、なかなかこの分野に大量の資金を思い切って投資ができない。結果、日本発の基礎研究の成果は、海外製薬メーカーが実用化し、日本に逆輸入されているというのが今の現状です。医薬品及び医療機器は輸入超過の状態にあり、その額は、年間二兆円にも上っております。

 そこで、NIHを使って、どう医薬品、医療機器分野を成長産業としていくのか、成長戦略の観点から捉えたNIHの意義や、有効な投資市場を育てる方策をどう考えるのか、お答えください。

 最後に、国民の健康・医療政策を最重要課題としてこれまで取り組んできた公明党の一員として、日本の健康・医療分野の英知が世界を牽引し、真の成長産業に発展することで、その恩恵を受ける患者の皆様が安心して生活できる環境が早期に整備されるよう、切に願います。

 また、介護まで含めた健康・医療分野に従事する人々が自信を持って業務に邁進できる日本を目指すことを決意し、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣菅義偉君登壇〕

国務大臣(菅義偉君) 我が国の医療分野の研究開発の課題と対応についてお尋ねがありました。

 これまで我が国が実施する医療分野の研究開発は、各省及びその所管する独立行政法人等においてそれぞれが支援をしているために、基礎から実用化までの切れ目のない支援が十分にできておらず、すぐれた基礎研究のシーズが必ずしも実用化に結びついていないとの問題が指摘をされてきたところであります。

 このため、内閣に、司令塔となる健康・医療戦略本部を設けるとともに、そのもとに、国が研究費の配分機能等を集約する日本医療研究開発機構を設置することとしたものであります。これによって、基礎から実用化まで切れ目のない研究支援が可能となるなど、医療分野の研究開発が戦略的に推進されることができるというふうに考えております。

 日本医療研究開発機構の組織及び機能と米国のNIHとの違いについてお尋ねがありました。

 米国の国立衛生研究所は、研究領域ごとに分権化された二十七の独立した研究所等で構成をされ、各研究所がみずから研究開発を実施するとともに、研究費の配分等を行っているというふうに認識をいたしております。

 一方、我が国における研究開発推進体制を考えるに当たっては、我が国の実情も十分勘案したものとする必要があります。

 日本医療研究開発機構は、米国とは異なり、医療の研究領域間の連携を十分に図ることで一体的な運営を行う組織として、また、自前の研究所を持たず、研究費の配分、研究管理・支援等に特化した法人としたものであります。

 文部科学省の科学研究費助成事業について日本医療研究開発機構へ集約しなかった理由、及び基礎研究の成果を機構へ移行するスキームについてお尋ねがありました。

 日本医療研究開発機構が集約して配分する予算は、国が定めた戦略に基づくトップダウンの研究を行うために、研究者や研究機関に配分される研究費等に係るものであります。

 一方、将来にわたる科学技術的新知見やイノベーションの芽を絶え間なく育んでいくためには、文部科学省の科学研究費助成事業のような、研究者の自由な発想に基づくボトムアップ型の基礎研究も重要であるために、機構への集約の対象とせず、引き続き日本学術振興会を通じて配分することといたしました。

 なお、科学研究費助成事業の成果のうち、すぐれたものについては、日本学術振興会等から機構に円滑に移行して、実用化に向けた支援につなげていくことにいたしております。

 日本医療研究開発機構における医療分野以外の有能な経験者の確保に向けた政府の考えについてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、基礎研究の成果を実用化につなげるためには、知的財産の管理や成果の実用化等に関して専門的な知見を有する多様な人材を確保することが極めて重要だと考えています。

 このため、来年四月の設立に向けて、日本医療研究開発機構において医療分野以外の専門的な知見を有する人材が確保することができるよう、今後、しっかり努めてまいります。

 日本医療研究開発機構における研究不正のチェック機能に関する政府の考え方についてお尋ねがありました。

 革新的な医療技術の実用化等に向けた取り組みを進めていくために、研究不正により我が国の研究の信頼性が低下するような事態は看過できないというふうに考えております。各省と連携をして、その対応にしっかり取り組んでまいります。

 御指摘の日本医療研究開発機構においても、みずからが配分する研究費により実施される研究に対して、専門の部署を置き、公正かつ適正な実施の確保を図ってまいりたいと考えております。

 また、こうした取り組みを通じて、蓄積されるノウハウを政府全体の不正防止策にも活用できるのではないかと考えております。

 医療分野の研究開発に関する政府の取り組みについてお尋ねがありました。

 医薬品、医療機器を含む医療分野の研究開発については、健康・医療戦略推進本部のもとに、この医療研究開発機構が、専門的な知見を有する者による基礎から実用化までの切れ目のない支援を行うこととしており、基礎研究の成果をいち早く実用化につなげる体制整備を進めることによって、革新的な医薬品を世界に先駆け開発し、提供することを目指してまいります。

 これらの成果をいち早く世界に輸出し、世界で拡大するこのマーケットを獲得することで、我が国の医療関連産業の成長等に寄与するものと考えています。

 以上です。(拍手)

議長(伊吹文明君) 以上をもって、本日予定されておりました質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(伊吹文明君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       財務大臣    麻生 太郎君

       厚生労働大臣  田村 憲久君

       農林水産大臣  林  芳正君

       経済産業大臣  茂木 敏充君

       国務大臣    菅  義偉君

       国務大臣    山本 一太君


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