衆議院

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第13号 平成26年4月1日(火曜日)

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平成二十六年四月一日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第七号

  平成二十六年四月一日

    午後一時開議

 第一 少年法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 少年法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)及び介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案(中根康浩君外七名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 少年法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) まず、日程第一、少年法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長江崎鐵磨君。

    ―――――――――――――

 少年法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔江崎鐵磨君登壇〕

江崎鐵磨君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、少年審判手続のより一層の適正化を図るため、家庭裁判所の裁量による国選付添人制度及び検察官関与制度の対象事件の範囲を拡大するほか、少年に対する刑事事件における科刑の適正化を図るため、少年に対する不定期刑の長期と短期の上限の引き上げ等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る三月十八日本委員会に付託され、十九日谷垣禎一法務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。

 次いで、二十五日に、民主党・無所属クラブから、少年の刑事事件に関する処分の規定の見直しに係る改正規定を削除することを内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取した後、原案及び修正案を一括して質疑に入り、参考人から意見聴取を行い、同日質疑を終局いたしました。

 二十八日、採決した結果、修正案は賛成少数をもって否決、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告といたします。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、採決をいたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。したがって、本案は委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)及び介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案(中根康浩君外七名提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) それでは、この際、内閣から提出されました地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案と中根康浩君外七名が提出をされました介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案について、順次趣旨の説明を求めます。まず、内閣提出法案につき、厚生労働大臣田村憲久君。

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) このたび政府から提出した地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 高齢化の進展に伴い、慢性的な疾病や複数の疾病を抱える患者の増加が見込まれる中、急性期の医療から在宅医療、介護までの一連のサービスを地域において確保し、患者の早期の社会復帰を進めるとともに、高齢者が住みなれた地域において継続的に生活できるようにしていくことが必要であります。

 このような状況を踏まえ、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、効率的かつ質の高い医療提供体制や、地域包括ケアシステムの構築を通じ、地域における医療、介護の総合的な確保を推進するため、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容について、その概要を説明いたします。

 第一に、都道府県は、厚生労働大臣が策定した基本的な方針を踏まえ、市町村等と連携、共同しながら、新たな基金を活用し、医療・介護サービスの提供体制の総合的、計画的な整備等を推進することといたしております。

 第二に、地域での効率的かつ質の高い医療の確保に向けて、医療機能の分化、連携を推進するため、医療機関が病床の医療機能を都道府県知事に報告することとし、都道府県は、この報告制度等を活用し、各医療機能の必要量等を含む地域の医療提供体制の将来のあるべき姿である地域医療構想を策定することとしております。

 また、医療機関相互の協議の場の設置や都道府県の役割強化など、地域医療構想の実現のための必要な措置を講ずることとしております。

 さらに、医療従事者の確保や医療機関における勤務環境の改善、看護師の研修制度の創設等のチーム医療の推進、医療事故に係る調査の仕組みの創設などにより、医療提供体制の整備を進めていくこととしています。

 第三に、地域包括ケアシステムの構築に向け、介護保険制度において、在宅医療・介護連携の推進、認知症施策の推進、生活支援サービスの充実等の措置を講ずるとともに、予防給付のうち通所介護と訪問介護について、市町村が地域の実情に応じて取り組むことができる地域支援事業に移行するなどの見直しを行うこととしております。

 また、特別養護老人ホームについて、在宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える施設としての機能に重点化することとしております。

 さらに、介護保険制度の持続可能性を高めるため、低所得者の保険料の軽減強化、一定以上の所得を有する者の給付割合の見直し、補足給付の支給要件の見直し等を行うこととしております。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日としております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次に、議員立法提出者中根康浩君。

    〔中根康浩君登壇〕

中根康浩君 民主党の中根康浩です。

 私は、民主党・無所属クラブ、みんなの党、結いの党、日本共産党、生活の党及び社会民主党・市民連合を代表して、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案について、提案の理由及び法案の概要を説明いたします。

 本日、消費税が八%にアップいたしました。にもかかわらず、介護報酬の賃金に関する部分は全く引き上げられないため、介護・障害福祉従事者の賃金は、きょうから実質的に下がることになります。本来、今回の消費税引き上げは社会保障充実のためであったはずなのに、実質賃金が下がるのはおかしいのです。

 安倍総理、何のための消費税引き上げでしょうか。国民との約束をどうして守らないのでしょうか。

 まず、本法案の提案理由の説明です。

 厚生労働省の調査でも、全産業の平均賃金が月額約三十二万五千円であるのに対し、ホームヘルパーは月額約二十一万円、福祉職員は月額約二十二万円にとどまり、月額で数万円から十万円程度も低い水準にあるのが現状です。

 そうしたことも一因となって、介護職、障害福祉職の離職率は高く、介護現場などの人材不足は、ますます深刻なものとなっています。

 また、年間約十万人の労働者が、親の介護等を理由に仕事をやめざるを得ないという現状もあります。介護現場での人材不足は、こうした離職をさらにふやすことになり、労働者の働き方、さらには経済活動への影響は、非常に大きなものになります。

 本法案は、こうした現状を改善すべく、賃金改善のための措置を定めることによって、介護の現場にすぐれた人材を確保し、高齢者等に対する支援の水準の向上を目的とするものであります。

 次に、本法案の概要を説明いたします。

 第一に、都道府県知事は、賃金を改善するための措置を講ずる事業者等に対し、その申請に基づき、助成金を支給することとします。

 支給の対象範囲は、平成二十四年度の介護報酬改定及び障害福祉サービス等の改定により導入された処遇改善加算と同範囲とします。助成金の支給により、一人につき、平均して、一月当たり一万円の賃金の引き上げがなされることを見込んでおります。

 第二に、国は、都道府県に対し、助成金の費用の全額、そして事務の執行に要する費用を交付します。

 第三に、この法律は、制度について見直しが行われ、すぐれた人材の確保に支障がなくなったときは、廃止します。

 第四は、この法案が障害福祉従事者を対象としている理由です。

 これまで、介護と障害福祉は、いつもセットで処遇改善されてきました。ところが、今回、政府は、来年四月の介護報酬の引き上げには言及していますが、障害福祉の報酬引き上げは明言しておりません。

 一般企業と異なり、この分野の収入は国などからの報酬がほとんどで、自助努力で稼ぐことはできないのです。だから、政府の判断で引き上げるほかはないのです。介護と障害福祉をセットで引き上げるのでなければ、昨年成立した障害者差別解消法や批准した国連障害者権利条約の理念にも反するものとなります。

 このような趣旨で、介護と障害福祉をセットで提案いたしました。

 なお、この法律は、公布の日から起算して三カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行といたします。

 以上が、本法案の提案理由及びその概要です。

 大企業には、政府が法人税の減税をしてまで賃上げを要請したり、公共事業をふやすのにもかかわらず、政府自身が決めることができる介護・障害福祉分野の処遇改善を放置しておくことは、許されません。できるはずのことを、なぜ、やろうとしないのでしょうか。

 全ての国民が直面し得る介護や障害福祉分野の仕事は、全ての人の命を、最後の一瞬まで、意味があり、かけがえのない存在として尊厳を守り、輝かせる、非常にとうとい仕事です。一番弱い立場にありながら頑張っている人たちを応援することに消費税が活用されることが、国民の願いではないでしょうか。

 国民の痛みや苦しみ、あるいは喜びを国会全体で受けとめ、全ての国会議員が共有し、誰一人置き去りにせず、みんなで幸せになれる政治の実現を目指すことにおいては、与党の皆さんの思いも同じであると信じております。

 本法案につきまして、党派を超えて全ての議員の皆様方からの御賛同をいただけるものと確信し、私からの提案理由の説明とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

 地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)及び介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案(中根康浩君外七名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) ただいまの二法案の趣旨の説明について質疑の通告がありますので、順次これを行います。まず、とかしきなおみ君。

    〔とかしきなおみ君登壇〕

とかしきなおみ君 自由民主党のとかしきなおみです。

 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案について質問させていただきます。(拍手)

 我が国は、今後さらに高齢化が進行し、今からおよそ十年後の二〇二五年には、三人に一人が六十五歳以上、五人に一人が七十五歳以上、超高齢社会になると見込まれております。

 健康で長生きしたいというのは、多くの人々の願いであろうと思いますし、我が国の健康寿命が、男性七十・六歳、女性七十五・五歳で世界最高レベルであるということは、こうした人々の願いがかなえられた大変すばらしい成果であり、世界に誇るべきことであると思います。

 このように、我が国が世界に誇るべき健康長寿国となることができましたのは、戦後、健康増進や予防医療を推進し、公衆衛生の向上に努めるとともに、国民皆保険制度のもとに、誰もが良質な医療を受けることができる医療制度を整備してきたことによるものであります。

 今回の法案については、今後の高齢化に対応し、我が国の医療、介護の提供体制を改革していくことによって、これまで以上に、国民の皆様がより健康で、生き生きとしながら、住みなれた地域や自宅で暮らし続けていくことができる、そんな社会を実現するためのものであると考えます。

 まず最初に、本法律案によって進めようとする医療と介護の一体的な改革の目的について確認したいと思います。

 二〇二五年に向けた今後の高齢化を見据えると、我が国の医療と介護の提供体制について、急性期を経過した患者の受け皿となる病床が整備されていない、住みなれた地域や自宅での本人や家族の生活を支える在宅医療や介護サービス、生活支援サービスなどが十分に提供されていないという課題が指摘されております。

 現在でも、救急患者の受け入れが十分でない地域もありますし、また、特別養護老人ホームの申込者が全国で五十万人を超える状況にもあります。一方で、なるべく自宅で、自分らしく、家族とともに暮らしたいと考える国民の皆様がたくさんいらっしゃいます。

 現在の我が国の医療・介護サービスの提供体制のままでは、こうした国民の期待に十分対応することができません。

 このため、未来を見詰めて、必要な医療と介護の提供体制の改革を敢然と行わなければなりませんが、重要なことは、地域において、患者や住民を中心として、医療と介護が切れ目なく継続的に提供される体制を構築することではないかと考えています。

 今回の法律案は、医療と介護が一体的に提供される体制を構築するために提案されると考えていますが、この法律案において、医療と介護を一体的に改革しようとするその趣旨をどのように考えているのでしょうか。また、どのようにして一体的な改革を実現しようとするのか、厚生労働大臣にお伺いします。

 次に、医療提供体制の改革の内容についてお伺いします。

 今後の高齢化の進展に伴う医療需要の増加に対応するためには、病床の機能分化、連携を進め、高度急性期から在宅医療まで、患者が状態に見合った病床で適切な医療が受けられる、質の高い効率的な医療提供体制を構築する必要があります。

 こうした改革を実現するため、今回の医療法の改正案が提出されているわけですが、当然ながら、医療法だけではなく、診療報酬が大きな役割を担うことになります。

 医療法による仕組みと診療報酬、この両方で、病床の機能分化、連携、在宅医療の充実を進めていかなければなりませんが、どのようにして進めようと考えているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。

 次に、医師、看護師等の医療従事者の確保対策、チーム医療の推進についてお伺いします。

 今後の高齢化に対応するために、病床の機能分化、連携は大変重要なことですが、地域において、医師、看護師等の医療従事者の確保が喫緊の課題となっています。

 また、医療従事者の確保のみならず、より質の高い医療の提供ということを考えますと、現場で働く多種多様な医療従事者が、それぞれの専門性を発揮しつつ、連携することによって、チーム医療を推進していかなくてはいけません。

 今回の法律案において、どのように医療従事者の確保、チーム医療の推進を図ることとしているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。

 次に、介護サービスの提供体制を論じる上で欠かすことのできない地域包括ケアシステムの構築についてお伺いします。

 多くの高齢者の皆様が、住みなれた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることを望まれています。そのためには、医療、介護、住まい、予防、生活支援が身近な地域で包括的に確保される地域包括ケアシステムの構築が必要不可欠であります。

 その場合には、日本の高齢化の進展状況に地域差があることにも目を向ける必要があります。

 東京都や大阪府、埼玉県などの都市部では、今後、七十五歳以上の人口が急激に増加していきます。他方、町村部では、七十五歳以上の人口の増加は穏やかですが、総人口が着実に減少していきます。また、地域のつながりや、事業者、町内会、ボランティアの活動などにも、地域ごとに相違があります。

 このため、地域包括ケアシステムを構築するためには、全国一律に画一的に設計して実現を目指すのではなく、地域の特性に応じて、地域ごとにオーダーメードでつくり上げていくことが非常に重要であると考えます。

 政府は、この法案を通して、どのように地域包括ケアシステムの構築を図ることとしているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。

 次に、介護保険制度の持続可能性を高める施策についてお伺いします。

 高齢化の進展により、介護費用が増加し、介護保険料の上昇が見込まれています。介護保険制度の創設時には、全国の平均で月額二千九百十一円だった保険料が、現在は約五千円となり、二〇二五年には八千二百円になると見込まれています。

 高齢者や現役世代の生活を維持し、企業の負担を可能な限りふやさないためには、保険料の上昇をできるだけ抑えるためにも、効率的な施策が求められます。

 もちろん、低所得者の方への配慮もあわせて実施する必要があると考えますが、今回の法案では、持続可能な介護保険制度の構築に向けて、どのように取り組むこととしているのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。

 最後に、総理大臣にお伺いします。

 本日四月一日、消費税が五%から八%に引き上げられました。これは、私たち自民党の議員も悩みながら多くの議論を交わしましたが、最終的には、昨年の秋、総理は消費税率の引き上げを決断なされました。

 私は、日本の、世界に例のない高齢化、歴史的に見ても厳しい財政状況、地域や家族の変化を真正面から見据えれば、必要なことであったと思いますが、同時に、社会保障制度の改革や財源確保の必要性について、国民の皆様には丁寧な説明を行うことが大事であると思っています。

 急速な少子高齢化が進む中で、受益と負担の均衡のとれた持続可能な社会保障制度を確立するためには、制度ごとの見直しにとどまらず、国、都道府県、市町村の役割のあり方の見直しなど、制度横断的な議論が必要です。社会保障制度の改革が、これで終わるわけではありません。

 社会保障制度全体の改革の中で、今回の医療、介護の一体改革をどのように位置づけるお考えなのでしょうか。

 また、総理は、昨年の十一月にカンボジアを訪問された際、日本の協力による国立母子保健センターを訪問され、日本から派遣されて活躍している医師や看護師の方々にもお会いされました。その際、カンボジア王国保健省との医療分野に関する覚書が締結され、医療保険制度に係る経験の共有、医療サービスの強化、先進的な医療機器、医薬品の導入といった分野において両国が相互に協力を行うことが確認されました。

 また、このほかにも、ミャンマー、トルコ、ベトナム、ラオス、バーレーン、トルクメニスタンの六カ国と医療分野に関する覚書が締結されました。

 今後、世界に冠たる日本の医療保険制度、すぐれた医療技術や予防医療を世界に広めていく必要があると考えますが、こうした医療の国際展開や、今後行われる医療保険制度の改革も含めて、我が国の今後の医療制度についてどのような展望を持っておられるのか、また、国際社会に向けてどのように貢献しようとお考えなのか、総理大臣にお伺いして、私の質問を終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) とかしきなおみ議員にお答えをいたします。

 医療、介護の制度改革の位置づけについてお尋ねがありました。

 急速な少子高齢化のもと、世界に冠たる社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくためには、消費税の引き上げにより安定財源を確保しつつ、制度の充実と重点化を同時に行う必要があります。

 特に、医療や介護は、高齢化の進展等に伴い、ニーズの多様化や費用の増大が見込まれます。

 このため、今回の法案では、患者の状態に応じた適切な医療が提供されるよう、医療提供体制の見直しを行うとともに、介護が必要となっても住みなれた地域での暮らしを継続できる体制を整備し、所得の低い方々に配慮しつつ、介護保険の負担のあり方を見直すなどの改革を行うこととしており、受益と負担の均衡のとれた制度としてまいります。

 医療制度の今後の展望と国際社会への貢献についてのお尋ねがありました。

 高齢化の進展等に伴う医療ニーズの増大が見込まれる中、まずは、今回の法案により、効率的かつ質の高い医療提供体制を確保していくとともに、医療保険制度についても、安定的な財政運営を図るため、国民健康保険に対する財政支援の拡充や運営のあり方等、必要な検討を進めてまいります。

 また、今後の医療の展望については、再生医療など先端医療の分野で世界に先駆けた取り組みを進めていくとともに、長年培ってきた日本の経験や知見を生かし、国際貢献を果たしていくことが重要と考えています。

 医療の国際貢献については、先端医療の移転や医薬品、医療機器の供給だけではなく、国民皆保険制度など、制度の整備を含めて、パッケージ輸出で、相手国のニーズに応じた支援を行ってまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) とかしきなおみ議員から、五問御質問をいただきました。

 まず、医療と介護を一体的に改革する趣旨や実現方策についてのお尋ねがございました。

 急速な少子高齢化のもとで、地域で安心して医療や介護サービスを受けられるようにするためには、救急医療などの急性期の医療や急性期後の受け皿病床の整備、退院後の生活を支える在宅医療・介護まで、一連のサービスを総合的に確保する必要がございます。

 このため、今回の法案では、国が医療、介護の総合的な確保のための基本的な方針を作成するとともに、医療、介護の両方を対象とした新たな財政支援制度を創設することとしており、このような取り組みを通じて、効率的かつ質の高い医療提供体制や地域包括ケアシステムを構築することといたしております。

 次に、医療法による仕組みと、診療報酬の連携についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、病床機能報告制度により報告された情報等を活用し、都道府県で、地域に必要な将来の病床数等を地域医療構想として策定するとともに、病床の機能分化、連携や、在宅医療・介護を推進するための基金を都道府県に設けることといたしております。

 また、平成二十六年度診療報酬改定では、七対一入院基本料の要件の見直しや、急性期後の患者の受け皿病床、在宅医療の評価とともに、複数の慢性疾患を持つ患者に対し、継続的かつ全人的な医療を行う主治医機能の評価等に重点的に取り組むことといたしております。

 今回の法案による改革と診療報酬を車の両輪として、医療提供体制の改革を実行してまいります。

 次に、医療従事者の確保と、チーム医療の推進についてのお尋ねがございました。

 地域における医療従事者の確保を着実に実施していくため、今回の法案では、医療確保について、地域医療支援センターが担う機能の法律への位置づけ、医療機関における勤務環境改善の取り組みによる離職防止・定着対策の推進、ナースセンターを活用した看護師等の復職支援の強化等の必要な施策を盛り込んでおります。

 また、効率的かつ質の高い医療の実現に向けて、チーム医療の推進を図るため、医師の判断を待たずに、手順書により、一定の診療の補助を行う看護師に対する研修制度の創設、診療放射線技師、臨床検査技師、歯科衛生士の業務範囲または実務実施体制の見直し等の内容を盛り込んでおります。

 続きまして、地域包括ケアシステムの構築についてのお尋ねがございました。

 地域包括ケアシステムの構築に向けては、人口や高齢化の状況、地域の結びつきの強さ、サービスの整備状況等、地域の実情がさまざまであることから、市町村が医療、介護の専門職などと協働しながら、地域課題を共有し、解決に向け主体的に取り組んでいくことが必要と考えております。

 国といたしましては、市町村の取り組みを最大限支援することが必要と考えており、在宅医療・介護サービスの充実や、多職種が連携する体制の構築など、本法案による制度改正を通じて、効率的かつ質の高い医療・介護サービスが提供されるよう、しっかりと取り組んでまいります。

 次に、持続可能な介護保険制度の構築についてのお尋ねがございました。

 今後のさらなる高齢化の進展に伴い、介護費用の増加が見込まれる中で、保険料の上昇を可能な限り抑え、介護保険制度の持続可能性を高めていくことが必要であります。

 このため、今回の法案では、一定以上の所得のある方の利用者負担を二割とすること、施設入所者への補足給付について、一定額を超える預貯金等のある方を対象外とすることといった給付の重点化、効率化を図るとともに、新たに公費を投入し、所得の低い方々の保険料軽減を強化することといたしております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、次の質疑者、柚木道義君。

    〔柚木道義君登壇〕

柚木道義君 民主党の柚木道義でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、政府提出、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案及び野党六党共同提出、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案に対し、質問をいたします。(拍手)

 まず、政府法案は、十九もの法案を一本化する法案で、大変問題がございます。十五分間の質疑では甚だ不十分ではございますが、きょうは、要支援切りなど、主な論点を安倍総理大臣に対して質問させていただきます。

 答弁によっては再質問をさせていただきますので、総理の誠実な御答弁をお願い申し上げます。

 さて、本日、消費税が上がりました。けさ、買い物をして、私も実感をいたしました。これから、さまざまな場面で国民の皆様も実感をされるわけであります。

 ところがです。

 まず、最初に伺いたいのが、介護・障害福祉職員の実質賃金引き下げについてです。

 毎年十万人もの方が、御家族の介護を理由に離職されております。介護サービスが利用できないと働きたくても働けない多くの現役世代の皆様にとっても、介護マンパワーの確保のため、他の職種より最大十万円も月給が低い処遇の改善なくしては、介護サービスの充実もあり得ません。

 安倍総理は、賃上げを経団連にも要請し、取り組まれましたが、全国の介護・障害福祉職員の皆様は、今回、全く蚊帳の外でありました。物品費の〇・六三%はありますが、人件費への手当てはゼロでございます。政府は、今後十年で百万人の介護職員増員を計画していますが、現状では、とても不可能です。

 総理、私は、この週末も地元の多くの介護職員の皆さんと対話をさせていただきました。

 実は、私の両親も、介護士、看護師として働いております。周りの皆さんは、大変いい方ばかりだそうです。それでも、限界があるんです。

 介護の世界では、寿退社というのは男性の言葉で、結婚を機に、御家族を養えない給料であるため、仕事にやりがいがあってもやむなく転職せざるを得ない方がたくさんおられるんです。

 安倍総理、我々民主党政権の際には、二〇一〇年、一二年、二度の診療報酬改定はいずれもネットプラス、二〇一二年の介護報酬改定も引き上げをし、医療崩壊や介護難民の改善、医療・介護従事者も、この間、百万人の雇用がふえました。

 総理、確かに、来年度介護報酬改定がありますが、なぜ、介護・障害福祉職員は今回置き去りにされてしまったんですか。介護の受け皿なくして働きたくても働けない方が今後も毎年数十万人のペースで出てこられるわけで、これは全世代の問題でございます。

 あれだけ賃上げと言ってきたわけですから、ぜひ、介護・障害福祉職員の処遇改善を、来年度ではなくて、一年前倒しで、今年度からお考えをいただけませんか。総理、お答えください。

 このように、介護・障害福祉職員の処遇改善は、文字どおり、待ったなしなんです。

 そこで、次に、介護・障害福祉従事者人材確保法について、民主党提案者にお尋ねいたします。

 まず、今回、このタイミングで法案提出した趣旨をお聞かせください。

 次に、民主党は、共生社会の理念のもと、社会保障の戦略的強化で、生活不安を解消し、消費や雇用拡大、経済成長につなげる共生社会型成長モデルを実現してまいりますが、本法案が雇用や経済に与える影響につき、提出者から御答弁ください。

 我々民主党も、財政再建や社会保障の持続可能性は当然考えてまいりました。予防や医療・介護連携、在宅の推進、病床再編など、機能分化、連携の強化と適正化の同時達成を目指す内容は、民主党政権下で三党合意したものでもあります。

 しかし、今回の自民党政権の社会保障の充実分は、余りにも少な過ぎます。

 安倍総理、今回、消費税の増収五兆円のうち、社会保障の充実分は幾らで、それは消費税増収分の何%か、また、介護の充実分の予算額は幾らで、それは消費税増収分の何%に当たるか、おのおのお答えください。

 国が財源を抑制した上で、要支援サービスを介護保険から外し市町村移管するいわゆる要支援切りですが、今回のサービス削減は、むしろサービスの利用抑制や介護難民をふやし、介護度が悪化し、財政再建にもマイナス、介護している家族が倒れてしまわれたり、家族介護が理由の離職者がふえてしまったり、ともすれば、孤独死や孤立死、虐待など社会不安の増大につながるおそれがあると、私も、多くの介護現場や利用者の皆さんからお聞きをしております。

 安倍総理、きょうから消費税が上がったのに、なぜ介護サービスを削減するんですか。国民の皆様が納得できる御答弁をお願いいたします。

 公共事業予算が、自民党政権になってから増額されています。

 民主党政権の平成二十四年度当初予算における公共事業予算に対しまして、まず、平成二十五年度当初における公共事業予算と二十四年度補正における公共事業予算の合計金額と比較した場合の増額分をお答えください。次に、二十六年度当初における公共事業予算と二十五年度補正における公共事業予算の合計金額と比較した場合の増額分をお答えください。そして三点目は、その二つを合わせた合計の増額金額について、おのおの御答弁ください。

 私が政府からいただいた資料によれば、社会保障の充実分は五千億円ですが、公共事業の増額分は、自民党政権に戻って、三兆七千億円、つまりは、社会保障の充実分の七倍以上でございます。

 安倍総理、消費税の公共事業への流用はやめてください。これでは、社会保障と税の一体改革ではなくて、公共事業と税の一体改革ではないんですか。

 消費税が上がったのに、新たな無駄遣いの温床として基金事業が問題視されています。

 かつて、塩川財務大臣が、母屋、一般会計ではおかゆ、離れ、特別会計ではすき焼きと言われましたが、基金は、さしずめ、地下室で大宴会といったところで、第二特別会計と化しているのです。つまり、昔特会、今基金という構造ができ上がっているのです。

 以下、具体的に是正策を求めます。

 JEED、高齢・障害・求職者支援機構の短期職業訓練事業予算について。

 二十五年度補正予算で不正入札が明らかになった、JEEDの百四十九億円の短期職業訓練事業予算ですが、官製談合防止法違反の疑いも出ているこのような事業予算は、一旦凍結し、国庫に返納することが、国民への責務ではないですか。総理の見解を求めます。

 基金事業のブラックボックス化が、最近、問題視されています。二十五年度補正と二十六年度予算で、十省庁九十八基金、二兆六千四百億円ございますが、使い切れなくて国庫に返納された基金も、これまで兆円単位でございます。基金の運用益で天下りOBの人件費をふやすために、各省庁が巨額の基金分捕り合戦をしている疑いもございます。

 今回、二十六年度予算で、国で指針を策定し、都道府県ごとに、指針に基づく取り組みを行う医療機関に対する総合的な支援体制を構築するための新たな財政支援制度、九百四億円の基金が計上されており、また、来年度以降で介護基金も計上されると聞きます。

 運用の透明性確保を図り、恣意的な使い道をされないよう、チェックする仕組みが必要ではないですか。このままでは、第二特会になりかねません。

 また、二〇一四年度診療報酬改定ネットマイナス一・二六%分を、医療の新たな財政支援制度、九百四億円で補完するという見方がありますが、損益分岐点ぎりぎりで経営をされている中小の医療機関も多いことを考えれば、本来は、基金事業よりも、まずは控除対象外消費税問題を解決すべきだと考えますが、総理、御答弁ください。

 法改正の影響で見込まれる、要支援切りや介護・障害福祉職員の実質賃下げ、家族による介護の負担の増大などは、社会における女性活用にもマイナスとなります。現在、三百万人もの方が家族の介護をしながら働かれていて、年間十万人もの方が家族介護を理由に離職をされ、その経済損失は一兆円にも上るという試算もございます。

 今回の要支援切りで、働く女性の介護離職がさらにふえるのか、ふえないのか、総理、お答えください。

 今回の法改正で、介護・障害福祉職員は、賃上げではなくて賃下げ、消費税が上がったのに介護サービスはカット、おまけに、家族介護の負担増大で、家族介護で離職者もふえてしまい、女性支援にも逆行することが明らかになってまいりました。

 また、自民党政権に戻ってから、三兆七千億円も公共事業が増額され、今後、消費税が公共事業に流用されかねません。

 安倍総理、これでは、国民の皆様は到底納得できないと思います。

 消費税増額分が、当初の目的であった社会保障充実分に十分に使われていないことに強く抗議をいたしまして、私の代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 柚木道義議員にお答えをいたします。

 介護・障害分野における賃金についてのお尋ねがありました。

 介護や障害福祉の人材確保と処遇改善は、重要な課題であると考えています。

 自公政権下においても、平成二十一年度の介護報酬改定や補正予算において、処遇改善に重点を置いた報酬改定や、さらなる支援を行うための財政措置などを講じてきたところであり、賃金引き下げを放置したとの指摘は当たらないと考えています。

 今後とも、社会保障・税一体改革の中で、必要な財源を確保するなど、さらなる処遇改善に取り組んでまいります。

 消費税増収分の使途と社会保障の充実に関するお尋ねがありました。

 消費税率引き上げによる増収分は、全額、社会保障の充実、安定化に充てることとしています。

 平成二十六年度における消費税増収分の約五兆円は、民主党政権における考え方と同様、まず、基礎年金国庫負担の二分の一への引き上げに約三兆円を充てることとし、残余についても、それ以外の社会保障の安定化と充実に向けることとしております。

 このうち、増収分の約一割に当たる約五千億円を、待機児童の解消など社会保障の充実に充てることとし、その中で、増収分の約〇・一%に当たる四十億円を介護の充実に充てることとしております。

 さらに、今後、消費税収の増加に応じて、社会保障の充実に充てる額を段階的に拡大し、平成二十七年度には、介護保険事業計画の見直しに合わせた本格的な介護サービスの充実などを含め、約一・三五兆円を充て、さらなる社会保障の充実に活用します。

 要支援者の方々へのサービスのあり方についてのお尋ねがありました。

 今回の改正は、従来と同様、介護保険の財源を用いて、要支援の方々に対し、市町村が必要なサービスを効果的かつ効率的に提供できるような仕組みとしていくものであり、サービスの抑制ありきで行うものではありません。

 また、専門的なサービスが必要な方々には、ホームヘルパーなど専門職の方々がサービスを提供し、家事援助などについて、地域のボランティアからも支援を受けられるようにすることで、ケアマネジャーなどの専門職が、要支援の方々の心身の状態に応じ、適切なサービスにつなげていく仕組みとしております。

 さらに、専門職が提供するサービスについては、それにふさわしい単価設定が行われることが必要であり、国としても、円滑な事業実施のためのガイドラインを示すこととしております。

 このため、御指摘のような事態が生じるとは考えておりません。

 今般の改革では、消費税の増収分を活用し、お年寄りが住みなれた地域で暮らしを継続できる体制を整備していくこととしており、国民の皆様には、こうした点について、丁寧に説明してまいります。

 公共事業の予算額についてお尋ねがありました。

 平成二十四年度一般会計当初予算における公共事業関係費は、四兆五千七百三十四億円です。また、平成二十五年度一般会計当初予算と平成二十四年度一般会計補正予算における公共事業関係費を単純に合計した金額は、七兆七千九十六億円、平成二十六年度一般会計予算と平成二十五年度一般会計補正予算における公共事業関係費を単純に合計した金額は、七兆七十七億円です。

 なお、御指摘の比較については、地域自主戦略交付金の廃止や特別会計改革の影響額などがあり、単純な比較は困難であることに加え、民主党政権時代の当初予算のみの公共事業予算の額と、自公政権における補正予算と当初予算を合わせた公共事業予算の額を比べるものであり、このような比較は、意味のある適切なものとは言いがたいと考えています。

 その上で、仮に、お尋ねのとおり、平成二十五年度当初予算と平成二十四年度補正予算の合計額及び平成二十六年度予算と平成二十五年度補正予算の合計額から、平成二十四年度当初予算のみの公共事業関係費の金額を差し引くと、それぞれ、三兆一千三百六十二億円、二兆四千三百四十三億円となっております。

 短期職業訓練事業予算についてお尋ねがありました。

 御指摘の入札問題については、外部の有識者を加えた徹底的な事実関係の調査を厚生労働大臣に指示しており、違法な行為が確認されれば、法に基づき適正に対処すべきと考えます。

 一方で、この事業は、雇用失業情勢が改善傾向にある中で、就業経験の乏しい方々の就職のために短期間の訓練機会を提供するものであり、必要な事業であると考えています。

 厚生労働省において再入札の手続を実施しているところですが、早急な実施に向けた対応が必要と考えています。

 新たな財政支援制度の活用と、医療に係る消費税についてのお尋ねがありました。

 新たな財政支援制度の活用に関しては、事業の公正性や透明性が確保されるよう、国が基本的な方針を示すとともに、都道府県において具体的な事業計画を立てるに当たり、地域の関係者から幅広く意見を聴取する場を設けるなど、適切な仕組みを構築してまいります。

 また、消費税が非課税とされている社会保険診療においては、医療機関等の仕入れに要する消費税の負担については、これまでも診療報酬の改定により手当てを行ってきております。

 本年四月からの消費税率の引き上げにおいても、医療機関等の実態調査に基づき、診療報酬において必要財源を確保するとともに、できるだけ多くの医療機関等に手当てされるよう対応しています。

 なお、税制抜本改革法において、医療に係る課税のあり方については、引き続き検討することとされており、引き続き、与党の議論の状況等を踏まえつつ、検討してまいります。

 要支援者の方々へのサービスのあり方と介護離職の関係についてのお尋ねがありました。

 先ほども申し上げたとおり、今回の改正は、サービスの抑制ありきで行うものではなく、また、ケアマネジャーなどの専門職が、要支援の方々の心身の状態に応じ、適切なサービスにつなげていく仕組みとするほか、国として、円滑な事業実施のためのガイドラインも示すこととしております。

 したがって、御指摘のような事態が生じるとは考えておらず、改革により女性の介護離職がさらにふえるとの見通しは持っておりません。

 以上であります。(拍手)

    〔山井和則君登壇〕

山井和則君 柚木議員の質問に答弁をさせていただきます。

 まず最初に、今、安倍総理は、消費税の増収分の使い道について、民主党と同様の考え方であるということを答弁されましたが、それが違うから、私たちは、問題だというふうに思っているわけであります。

 きょうは、消費税八%にアップの日です。私たち民主党も、苦渋の決断で消費税増税を決断しました。つらい、厳しい議論を経て、社会保障と税の一体改革法を成立させました。

 なぜ、そこまでして消費税増税を決断したのか。その理由は、社会保障の充実と安定化、そして財政再建のためには、消費税増税はやむを得ないと考えたからです。

 しかし、きょう、消費税がアップしましたが、安倍政権になり、当初の理念と大きくかけ離れてしまいました。今年度の消費税増税による増収五兆円に対して、たった五千億円しか充実に使われていません。

 さらに、皮肉なことに、消費税増税の本日審議入りした医療介護推進法案は、一番重要な介護予防の要支援サービスが大幅にカットされ、財政も抑制されるなど、社会保障の切り下げ法案です。

 さらに、この改正では、市町村は、独自の判断で自由に訪問介護や通所介護の単価を引き下げることが可能になり、介護職員の賃金が引き下げられる危険性が高いわけです。

 これでは、消費税増税は社会保障の充実、安定化のためという国民との約束は、守られていません。

 消費税増税をしたことによって介護や社会保障が充実したという納得感が得られなければ、二度と国民は消費税増税に賛成しません。それではだめなのです。

 日本の社会保障と財政再建の未来を考えたときに、今後もさらなる消費税増税の必要性が議論されているにもかかわらず、社会保障の充実を実感できない形で増税が行われることは、国民の消費税への信頼を裏切る行為です。強く抗議をいたします。

 せめて、増税により介護職員や障害福祉職員の賃金がアップして、それにより、介護を必要とする高齢者や障害者が幸せになったということでなければ、増税の意味はありません。

 高齢者は、社会の功労者であります。障害者は、社会の宝であります。消費税増税は、介護を必要とする高齢者や障害者が社会のど真ん中で幸せに暮らしていただくためのものです。

 そのためには、何よりも、高齢者や障害者を介護する職員の方々、つまり、最もとうとい仕事を、一般の仕事よりも月給が十万円近く低い賃金でありながらも献身的に愛を持って働いてくださっている方々の賃金を引き上げることが、必要不可欠です。せめて、増税による実質賃金の引き下げを阻止することが急務です。

 しかし、安倍総理は、一般企業には賃上げを迫りながら、自分が報酬を決められる介護や障害者福祉については、この四月に引き上げをしませんでした。そして、きょうから介護や障害福祉職員の賃金が実質的に下がることを放置しました。

 安倍総理、これは言行不一致であります。

 弱い立場の方々を守り、応援するのが、消費税であるべきです。

 消費税は弱い立場の方々を守る助け合いの税であるという原点に立ち返り、きょう、四月一日の消費税増税を機に、速やかに、介護や障害福祉職員の賃金を上げるこの法案が、与党を含め、超党派の賛同を得て成立することを心より期待し、答弁とさせていただきます。

 ありがとうございます。(発言する者あり)

議長(伊吹文明君) ちょっと皆さん、静かにしてください。

 答弁者は、要点をしっかりと答弁するようにしてください。

    〔大西健介君登壇〕

大西健介君 柚木議員から、本法案と雇用や経済の関係という重要な点について御指摘をいただきました。私からは、その点についてお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、経済との関係でございます。

 GDPの約六割を占めるのは個人消費であります。国民の将来不安を払拭して、貯蓄から消費への転換を促すためには、医療、介護や障害者福祉といった社会保障を安心できるものにすることが不可欠であります。そのための安定財源を確保することが、まさに、社会保障と税の一体改革であったはずであります。

 消費税は上がったけれども、その分、医療や介護はよくなったというのであれば、これはわかります。

 しかし、今回政府が提出した法案は、介護について、給付を抑制して負担をふやす内容であり、加えて、医療の診療報酬は、六年ぶりのマイナス改定となりました。

 これでは、国民は到底納得することはできないというふうに思います。

 この点、我々は、国民の皆様に負担をいただく消費税増税分の財源を介護人材確保のために充てることで、今後、団塊の世代の皆様が高齢者となる時代を迎えて、ふえ続ける介護ニーズに対応した社会基盤の整備を進め、国民の将来不安の払拭に努めてまいりたいと思っております。

 特に、近年、介護離職が社会問題として顕在化をしております。現在でも、親の介護のために辞職や転職を余儀なくされる人々は、毎年十万人にも上っております。その数は、今後もふえ続けていくことが予想されております。

 介護離職者は、四十歳から五十歳代が多く、管理職を初め、企業の中核として活躍をしている人が多くおります。そうした人々が失われることは、企業にとっても死活問題であり、日本経済全体を考えた場合も、経済的な損失は、はかり知れません。

 介護職員の待遇改善を図り、介護人材を確保することは、介護離職を食いとめ、日本経済の成長を持続可能なものとしていく上でも、必要不可欠であります。

 次に、雇用の関係です。

 介護は、他の業種に比べて人手不足が顕著であり、有効求人倍率も、二を超えています。現在でも既に、介護現場は恒常的な人手不足によって疲弊をしており、そのことがさらなる離職者を招くという悪循環となっております。

 介護に人が集まらないのは幾つかの理由がありますが、その最大の問題は、待遇の低さであります。

 安倍首相は、衰退産業から成長産業への失業なき労働移動のために、解雇規制の緩和を進めようとしていますが、的外れです。成長産業が真に魅力的で給料がよければ、解雇しなくても、労働者は自主的に成長産業に移るはずであります。

 今後ますます高まる介護需要を考えれば、介護は成長産業であるはずなのに、人が集まらないのは、給料が安過ぎるからであります。

 成長産業である介護の分野を雇用の受け皿としていくため、介護職の処遇改善を図ることは喫緊の課題であるはずなのに、本日から消費税が上がる中、介護職の実質的な賃金引き下げを放置することは、理解できません。

 以上、安倍政権が目指す持続的な経済成長や成長分野への労働移動を実現する上でも、本法案が必要なことは争いがなく、野党のみならず、与党の賛同も得られるものと確信をしております。

 以上であります。(拍手)

議長(伊吹文明君) 柚木道義君から再質疑の申し出がありますから、あらかじめ申し合わせた持ち時間の範囲内でこれを許します。柚木道義君。

    〔柚木道義君登壇〕

柚木道義君 再質問させていただきます。

 この再質問への御答弁がさらに不十分な場合は、今、持ち時間内にという議長の御指示でございます、再々質問もさせていただきますので、ぜひ、前向きかつ誠実な御答弁をお願いします。

 今回の答弁で、安倍総理が、いかに医療や介護、障害者福祉を軽視していて、また、国民生活や命への想像力を十分にお持ちでないのか、私は、そのように感じざるを得ません。

 安倍総理は、きちんと私の質問にお答えをいただいておりません。

 私は、一年以内に介護・障害福祉職員の処遇改善に取り組むべきだとお聞きをしたんです。いつやるんですか。放置はしていないとか、対応はするとか言われましたが、私は、それを前倒しでやるべきだということを申し上げているんです。

 なぜならば、消費増税のきょうから、既に実質賃下げは起こっており、人手不足による介護事業所の閉鎖、これは、二〇一三年最新データ、過去最悪です、そして介護職員の離職も、現実に加速しているんです。そして、きょうの消費増税以降、ますます、介護職員の人手不足や事業所の経営難、家族介護を理由とする離職が増大することが想定されているんです。だからお尋ねするんです。

 安倍総理が提唱する賃上げにも逆行するこの介護職員の賃下げ、離職問題への対応として、来年度の介護報酬での処遇改善を待たずして、この一年間の間をつなぐための措置を講ずるべきではありませんか。

 家族介護が行き詰まって無理心中をしてしまったり、孤独死や孤立死に至ったり、介護疲れで家族の方が倒れてしまったり、うつ病になって体調を崩されたり、あるいは、介護の仕事が天職だと思って頑張っているのに、低賃金で家族を養えないと離職する職員の皆さん方が、安心できる、希望を持てる御答弁をお願いいたします。

 もう一点は、社会保障の充実と介護の充実についての答弁がありました。

 そして、私は、消費税が公共事業予算に流用されているものを社会保障の充実の上乗せにということを申し上げました。しかし、これについての御答弁もありませんでした。

 驚いたのは、御答弁の中で、消費税アップで五兆円ふえる税収の中で、社会保障の充実分は五千億円と一〇%しかないのに、さらに、介護の充実分は四十億円と、増収五兆円の中のわずか〇・一%にしかすぎないんですよ。

 政府の皆さんもそれはわかっていて、後ろめたいのか、議員の皆さん、皆さんの部屋にポスターが届いていませんか。四月から消費税八%へアップするという周知ポスターです。ここには、将来は医療、介護、年金と書いていますが、今回の消費税率引き上げ分は全て医療、年金などに充てられますと書いてあって、介護とは一文字も書いていないんですよ。皆さん、部屋に戻ってごらんください。

 我々民主党は、八%段階で、自民党の二倍、最低一兆円を充実に充てるべきだと提案しております。

 先ほどの答弁でも明らかになったように、自民党政権に戻って、公共事業予算が、民主党政権時の三・七兆円も増大しています。おっしゃった趣旨でカウントをしたら、五・五兆円から引いても三・七兆円増大しているんです。

 公共事業の予算増額分の一部を社会保障の充実分に上積みすべきだと思いますが、安倍総理、ぜひ、前向きに御答弁いただけませんか。

 そうでないと、安倍政権は、社会保障の充実より公共事業予算優先で、実際に消費税が公共事業に流用されていくわけですから、これではやはり、社会保障と税の一体改革ではなくて、公共事業と税の一体改革ではありませんか。

 防災や減災も必要ですが、それを含めても、社会保障充実のための消費税がこれだけ公共事業に流用されていくのは大問題です。ぜひ、改めて、消費税の公共事業への流用をやめていただきたい。

 そして、総理、きょう消費税が上がって負担増を実感している国民の皆様が納得できる御答弁をお願い申し上げます。

 以上です。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) まず初めに、この一年間をどうつないでいくのかという御質問でございました。

 我々与党は、何といっても、そのためには財源が必要であります。必要な財源を確保できない中においては、今、質問者が要求したようなことをすぐにやるとお約束することはできないわけであります。

 今後とも、社会保障・税一体改革の中で、必要な財源を確保するなど、さらなる処遇改善に取り組んでいく考えであります。

 そして、次に、社会保障充実費等が少な過ぎるという御質問がございましたが、今後、消費税収の増加に応じて、さらなる社会保障の充実に活用していく考えであります。

 そして、公共事業が多過ぎるという話でございますが、我々は、国民の安全を守る、これは、三・一一の教訓でもあります。今後予想される首都直下型地震、南海トラフ地震に対応し、国民の命を守らなければなりません。そのための予算、そして未来への投資となる予算について、必要な公共事業は、しっかりと今後とも対応していく考えであります。(発言する者あり)

議長(伊吹文明君) 議長から申し上げます。

 答弁席からの不規則発言は慎んでください。

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、次の質疑者、清水鴻一郎君。

    〔清水鴻一郎君登壇〕

清水鴻一郎君 日本維新の会の清水鴻一郎です。

 私は、日本維新の会を代表いたしまして、ただいま議題となりました地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案について質問いたします。(拍手)

 さて、安倍総理におかれましては、持病を克服され、二〇〇六年の第一次安倍内閣のときに提唱された再チャレンジをまさに身をもって実践され、一昨年からの第二次安倍内閣においては強いリーダーシップを発揮されていることに、心から敬意を表するものであります。

 そういう経験をお持ちになる安倍総理ならではの、温かい医療・介護政策に期待するものであります。

 私も、脳神経外科医としての医療提供者としての経験、さらには、私自身が、進行した直腸がんを患い、大手術を受けた患者としての経験をも踏まえ、質問に入らせていただきます。

 まず、最初に申し上げたいのは、今回の法律案は、余りにも多くの項目が詰め込まれて、てんこ盛りになっている点であります。

 例えば、別の法律案として審議すべきと考えられる医療事故に係る調査の仕組み、いわゆる医療版事故調の新設や、後ほど質問いたしますが、制度設計が不十分で検討の余地が大きく残されている補足給付の見直し等が含まれており、全て一括して審議するのが難しい法律案になっていることを指摘させていただきます。

 まず最初に、今回の医療と介護の提供体制の改革の位置づけについてお伺いいたします。

 二〇二五年には、我が国の六十五歳以上の高齢者人口は三千六百六十万人に、七十五歳以上の高齢者人口は二千百八十万人になると見込まれており、二十八年後の二〇四二年には、六十五歳以上人口がピークを迎え、三千八百八十万人にもなると予想をされています。

 これまでも、高齢化に対応するため、社会保障制度の改革が行われてきましたが、二〇二五年まで、残すところ約十年となりました。もう目前に迫ってきており、今回が、医療と介護の提供体制の改革を行う最後のチャンスではないかと思います。

 現在の我が国の医療や介護の提供体制については、診療報酬の七対一入院基本料の急性期病床が三十六万床もある一方で、急性期を経過した患者の受け皿となる病床が整備されていませんし、患者の退院後の生活を支える介護サービスや、介護予防、生活支援サービスは十分ではなく、介護施設やサービスつき高齢者住宅など、高齢者の住まいも不足しています。

 このままでは、二〇二五年の高齢化社会に対応できないことは明白であります。残された時間を考えますと、今回、確実に、医療と介護サービスの提供体制の改革を実施し、しっかりと医療、介護の体制を整備しなければならないと思います。

 そこで、まず、二〇二五年を見据えた医療と介護の改革の必要性とその意義についてどのように考えておられるのか、改めて総理にお伺いいたします。

 次に、長期的なビジョンの必要性についてお伺いいたします。

 今回の法律案では、病床機能報告制度を導入し、医療機関がみずからの病院の機能を都道府県に報告する、そして都道府県は、地域医療構想を策定し、原則として二次医療圏ごとに各機能の将来の必要な病床数を定めて、病床の機能分化、連携を進めていくということになっています。

 このこと自体は、今後の高齢化に対応していくために必要な改革であろうと思いますが、過去を振り返ってみますと、気がかりな点が多々あります。

 過去、二〇〇〇年に介護保険制度がスタートしたとき、要介護高齢者の長期療養の病床として介護療養病床ができました。ところが、それから五年もたたないうちに、医療費適正化を理由に、介護療養病床を廃止し、医療療養病床や老人保健施設等への転換が進められることになりました。それぞれの施設の面積基準も人員配置基準も異なっており、現場には大変な混乱が生じました。

 また、もう一つは、診療報酬の七対一入院基本料の病床です。

 七対一入院基本料は、急性期医療を担う病院を評価しようということで、二〇〇六年の診療報酬改定で導入されたわけですが、政府の予想を超えて、多くの病院が七対一入院基本料を算定するようになり、約三十六万床までふえました。これはふえ過ぎだということで、慌てて、今回の二〇一四年度の診療報酬改定では、七対一入院基本料の病床を削減することにしました。

 このように、短期間の間に国の制度が変わって、現場は非常に混乱をしています。まず、このことをしっかりと反省していただかなければなりません。

 今回、病床の機能分化、連携を推進するということですが、最初に申し上げたように、二〇二五年まであと十年しか残されておらず、今回が、改革の最後のチャンスです。過去の反省を踏まえて、確実に改革を実施していただきたいと思います。

 そのためには、制度がころころころころと変わるのではなく、また、都道府県や市町村に丸投げするのではなく、医療、介護の提供体制のあり方について国が将来展望をしっかり持って、そのもとに改革を進めるべきと考えますが、いかがでしょうか。総理にお伺いいたします。

 次に、在宅医療、在宅介護についてお伺いいたします。

 今回の法案にも、在宅医療の充実、在宅医療と介護の連携の推進という内容が含まれています。医療も介護も、病院から在宅へ、施設から在宅へという方向自体は否定するものではありませんが、在宅医療も在宅介護も、現実は大変厳しいものであります。

 医療提供者の診療所医師は、外来、往診、訪問診療、さらには、二十四時間、夜中もいつ呼ばれるかもしれないストレスにさらされ、長く続けることは不可能です。家族も、短期間は、自分たちの親だからと頑張るのですが、二十四時間、夜中も続く介護に、外出もままならず、疲労こんぱいし、家庭崩壊を来すこともあります。

 どんなに訪問看護師や訪問介護士が来てくれても、在宅医療では、大半の時間は家族が患者さんの急変を心配し、在宅介護では、夜中の排尿介助やおむつ交換で慢性の睡眠不足となり、介護者が体調不良に陥る例もしばしば見受けられます。

 一方、介護施設に入所された高齢者は、最初は自宅に帰りたいとおっしゃる方もいますが、すぐに同世代の方々との交流を楽しまれ、介護スタッフのプロとしての介護やお花見などの外出、お誕生会など、工夫したレクリエーションメニューに、退屈しない楽しい暮らしをされている方が大半であります。

 九十二歳を迎える私の母も、介護度四であります。最近は、認知症の傾向もあります。最初は私も家庭での介護を試みましたが、無理と判断し、現在は老人保健施設に入所をいたしております。自宅では、済まないね、済まないねを連発していた母も、今は、笑顔で同世代の入所者の方と談笑し、時々訪れる私に、反対に、体を大事にしいやと声をかけてくれます。

 在宅医療、在宅介護が最善であるかのような在宅神話にピリオドを打ち、在宅と施設とのベストミックスを追求すべきと考えます。

 在宅医療、在宅介護は、地域や患者、家族の実情に応じて柔軟に進められるべきと考えますが、いかがでしょうか。厚生労働大臣にお伺いいたします。

 次に、施設を含めた、高齢者の住まいについてお伺いいたします。

 先日、特別養護老人ホームの待機者が五十万人以上とのデータが公表されました。この数字は、特養で暮らしたいと考える要介護者がたくさんいることを示しています。

 一方、今般の法案では、その理念として、地域包括ケアシステムの構築が掲げられています。

 確かに、在宅医療や在宅介護、生活支援や介護予防の充実を図り、住みなれた地域でできる限り暮らし続けられるような体制の構築を図ることは重要です。しかし、先ほども申し上げたように、国民の方々の介護ニーズは千差万別で、在宅医療、在宅介護が常に最善の選択肢とは限りません。高齢者の方々の老後の暮らしを支える屋台骨となる高齢者施設サービス、居住系サービスの充実についても、全力で取り組んでいくべきと考えます。

 そこで、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 特別養護老人ホームや認知症グループホーム、サービスつき高齢者住宅の一層の整備が急務であると考えますが、今後、どのように必要な施設を確保するのでしょうか。

 次に、介護保険の補足給付についてお伺いいたします。

 今回の法案では、特別養護老人ホームなどの施設に入所している所得の低い方々に食費や居住費を支給する補足給付の要件を見直すこととされています。具体的には、支給の要否を判断するために、新たに資産を要件とすることが提案されています。

 資産というのは、大きく、預貯金と不動産の二種類があります。今回対象とするのは預貯金だけであり、この制度では、不動産所有者との不公平が生じ、高齢者は預貯金を持たなくなり、モラルの崩壊にもつながりかねません。

 そこで、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 補足給付の見直しは、リバースモーゲージなど、制度設計をしっかりと確立させてから導入すべきと考えますが、いかがでしょうか。

 次に、医療従事者の確保対策、介護人材の確保対策についてお伺いいたします。

 医療も介護も、それを支えるのは人であります。地域医療の現場では、来年の医師や看護師をどう確保するのかということで、自治体の首長や医療機関、介護事業所の経営者たちが本当に頭を悩ませています。

 特に看護師については、今後の高齢化による入院患者の増加を考えますと、その数は圧倒的に不足してくるのではないかと思います。今後の看護師数の需給見通しは、どのようになっているのでしょうか。

 そして、確かな見通しのもとに看護師の確保対策が講じられることが必要と考えます。今回、看護師確保対策を含め、どのような医療従事者確保対策を講じようとしているのでしょうか。

 また、介護業界の離職率は実に二〇%を超えており、介護の現場での人手不足はさらに深刻です。今回の法律案には介護人材確保対策の検討規定が盛り込まれていますが、今後、どのようにして介護人材の確保を図っていくのでしょうか。

 あわせて厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 最後に、消費税増税による増収分を活用して新設された基金についてお伺いいたします。

 本日四月一日に、消費税率が五%から八%に増税されました。この消費税率の増税は、社会保障制度を持続可能なものにすること、さらに、充実を図っていくために、やむを得ないとは思いますが、そう考えますと、今回の基金は、消費税率引き上げによる増収分を用いて社会保障の充実を図るという点で、大きな意味があると思います。

 ただし、国民の皆様に御負担をいただく消費税を活用する以上、特定の事業者や特定の事業にだけ使われるということがあってはなりません。公平公正に、そして、真に地域の医療と介護の確保に資する事業に使われる必要がありますが、法律案上、また運用上、これが実現できる仕組みになっているのでしょうか。

 また、この基金は、二〇一四年度は医療分野が対象ということですが、二〇一五年度には介護分野にも使うことができるようにするとともに、二〇二五年に向けた医療と介護の改革を確実に実施するためには、さらに、今後、基金の拡充が必要ではないかと思います。そのための財源をしっかりと確保し、医療と介護の改革を進めていただきたいと思います。

 基金の意義や、その拡充に向けた方針について、総理にお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 清水鴻一郎議員にお答えをいたします。

 医療、介護の改革の必要性と意義についてお尋ねがありました。

 急速な少子高齢化のもとで、地域で安心して医療や介護サービスを受けられるようにするためには、救急医療などの急性期の医療から、退院後の生活を支える在宅医療・介護まで、一連のサービスを総合的に整備することが必要です。

 このため、今回の法案では、患者の状態に応じた適切な医療が提供されるよう、医療提供体制の見直しを行うとともに、介護が必要となっても住みなれた地域での暮らしを継続できる体制を整備することとしており、いわゆる団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年を見据え、医療、介護の一体的な改革を進めてまいります。

 将来展望を持って医療、介護の改革を進めるべきとのお尋ねがありました。

 二〇二五年を見据え、一貫した方針のもとで、医療、介護の一体的な改革を確実に進めていかなければなりません。

 そのため、今回の法案では、国が、将来を展望しながら、都道府県において医療、介護の提供体制を整備する上での基本的な方針をお示しし、この方針に沿って、地域の実情も踏まえながら、財政支援制度を創設することとしております。

 こうした枠組みのもとで、二〇二五年に向けて、しっかりと改革を進めていくことができるよう、国としても、都道府県や市町村に対して必要な支援を行ってまいります。

 基金の意義や活用の仕組み、拡充に向けた方針についてのお尋ねがありました。

 本日から消費税率が上がりますが、今回の法案で都道府県に創設する基金は、その増収分を活用して、急性期の後の受け皿となる病床の整備など医療提供体制の整備や、在宅医療や介護サービスの充実、医療や介護の人材の確保などを支援することにより、地域で安心して医療や介護が受けられる体制を整備していく上で、重要な役割を果たすものであります。

 また、基金を活用していく上で、事業の公正性や透明性が確保されるよう、国が基本的な方針を示すとともに、都道府県において具体的な事業計画を立てるに当たり、地域の関係者から幅広く意見を聴取する場を設けるなど、適切な仕組みを構築してまいります。

 また、この基金は、消費税の増収分を活用し、平成二十六年度は、まず医療を対象とし、平成二十七年度以降は、介護も対象となりますが、社会保障と税の一体改革の中で、必要な対応を検討してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 清水鴻一郎議員から、五問御質問をいただきました。

 まず、在宅医療・介護の進め方についてお尋ねがありました。

 在宅医療・介護については、地域の状況や患者、家族の実情を踏まえて進めることが重要であると考えております。

 このため、今回の法案では、より現場に近い都道府県や市町村が中心となって、関係者の意見を聞きながら、地域における在宅医療・介護の総合的な確保のための事業の実施計画を策定することにより、それぞれの地域の実情に合った在宅医療・介護の提供体制の構築を目指すことといたしております。

 また、同法案では、新たな財政支援制度を創設することとしており、これを柔軟に活用しながら、地域の実情等を踏まえた在宅医療・介護の確保に努めてまいります。

 続きまして、特別養護老人ホームなどの施設の確保についてのお尋ねがございました。

 高齢者が、可能な限り住みなれた地域で安心して暮らすことができるよう、地域包括ケアシステムの構築に向け、住まいが基盤となって、必要に応じて医療や介護などが受けられる環境を整えることは重要な課題であります。

 厚生労働省といたしましては、在宅サービスの充実に取り組むだけではなく、特別養護老人ホームや認知症高齢者グループホームなどの整備を進めるとともに、国土交通省と連携して、サービスつき高齢者向け住宅の供給を促進するなどにより、それぞれの地域のニーズに応じて住まいが供給されるよう努めてまいります。

 また、特別養護老人ホームについては、入所の必要性の高い方々が多数存在していることを踏まえ、今回の法案では、中重度の要介護者を支える施設としての機能に重点化することといたしております。

 次に、補足給付の資産勘案についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、介護施設での食費や居住費を補助する補足給付について、在宅で生活する方との公平性を確保する観点から、資産を勘案することといたしております。

 不動産については、直ちに現金化して活用することが難しいため、昨年、審議会において、これを担保とした貸し付けを行う仕組みを検討しましたが、貸し付けの対象者や不動産の評価方法、業務を受託する機関の確保などの実務・体制面での課題があることから、まずは、一定額を超える預貯金を保有している方々を給付の対象外とすることといたしております。

 不動産の勘案についても、引き続き、実現に向けた検討を行ってまいります。

 次に、看護師を初めとする医療従事者の確保対策についてのお尋ねがございました。

 団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年に必要な医療・介護サービスの確保を図るためには、約二百万人の看護職員が必要と推計されております。

 このため、今回の法案には、医療機関における勤務環境改善の取り組みによる離職防止・定着対策の推進、離職した看護師等を把握できる仕組みの導入などナースセンターを活用した復職支援の促進のほか、医師確保のため、地域医療支援センターが担う機能の法律への位置づけなどの内容を盛り込んでおります。

 最後に、介護人材の確保についてのお尋ねがございました。

 高齢化の進展に伴う介護のニーズに対応していく上で、今後さらに百万人の介護人材が必要と推計されております。

 このような中、労働力人口の減少に加え、経済状況の好転による他業種への流出の懸念が高まっており、介護人材確保が一層厳しさを増すことに、強い危機感を持っております。

 このため、介護のイメージアップによる若年層へのアピール等の参入促進、キャリアパスの確立等の資質の向上、介護職員の処遇改善等の環境改善などの必要な施策を講じてきたところであり、今後とも、介護は価値ある仕事であるという意識の醸成とともに、事業主や自治体と十分に連携しながら、あらゆる施策を総動員して介護人材の確保に努めてまいります。

 以上でございます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、古屋範子君。

    〔古屋範子君登壇〕

古屋範子君 公明党の古屋範子です。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案について、安倍総理並びに厚生労働大臣に質問いたします。(拍手)

 この医療・介護総合推進法案は、団塊の世代が全て七十五歳以上になる二〇二五年に向けて、高齢化のさらなる進展で増大する医療・介護給付費の抑制を図る一方、在宅医療・介護サービスを手厚くし、高齢になっても住みなれた地域で必要な支援を受けられる、地域包括ケアシステムを構築することが重要な柱となっております。

 高齢化の進展の中で、医療、介護の改革は喫緊の課題であります。医療、介護を一体的に捉え、両者の連携により国民の生活を支える仕組みを構築することが必要であり、そのための内容を一括した法律案として提出されたことは、極めて意義があることと考えます。

 しかし、一方で、懸念や不安の声もあるのは事実です。

 課題は山積していますが、そうした声に真摯に耳を傾け、国民に安心してもらえるよう、政府には、より丁寧な説明が求められています。

 初めに、本法案の意義について、安倍総理にお伺いいたします。

 次に、地域包括ケアシステムについてお伺いいたします。

 先月二十五日、特別養護老人ホーム、いわゆる特養への入居待ちの高齢者が昨年の秋時点で約五十二万四千人に上ることが、厚生労働省の調査結果で明らかになりました。四年前に実施された調査よりも十万人もふえたとのことです。

 待機者のうち、入居の必要性が高いとされる、在宅で要介護三以上の高齢者は、約十五万三千人に及びました。深刻な実態を考えると、医療と介護が一体となって、施設から在宅へとの流れを進めなくてはなりません。

 こうした観点から、地域包括ケアシステムの構築は、政治の重大な責務でもあります。特に認知症の高齢者は、現在四百万人を超え、さらにふえることが予想されています。その対策は待ったなしです。

 公明党は、地域包括ケアシステムの構築に向けて、昨年十二月、党内に地域包括ケアシステム推進本部を立ち上げ、全国約三千人の地方議員と連携して、それぞれの地域の実情に即した地域包括ケアの姿を模索しながら、関係者との意見交換を行っています。

 また、移動本部も実施し、介護予防や、医療と介護の連携を築いてきた地域へも出向き、モデルとなる事例を学び、発信しています。

 公明党は、今後、強力なネットワーク力を生かし、党として調査で得た課題や対応策などを取りまとめてまいります。

 一方、政府においては、地域包括ケアシステムに先進的に取り組んでいる事例の調査を行い、その結果をまとめたと聞いています。まず、これを有効活用すべきと考えます。

 安倍総理に、本法案の柱である地域包括ケアシステム構築への御決意をお伺いいたします。

 地域における効率的な医療提供体制の確保も大きな課題です。

 現在、病床数に偏りがある背景として、病気になった直後に手厚く治療する急性期向けのベッド数は多いものの、病状が安定した後、回復期の患者向けベッドが少ないことが挙げられます。

 そのために、本法案では、地域のニーズに合わせて医療の提供体制を整備する権限を都道府県に付与し、都道府県が、域内のベッドの必要量などを示す、地域医療構想を策定することとなっています。それを踏まえて、都道府県は、病院関係者も交えた協議会を開催し、各病院のベッド数などを決めることとしています。

 重症者向けのベッドが多い現状を改め、病状が落ちついた患者向けのベッドやリハビリ施設をふやす、そうなれば、施設から在宅へという大きな流れができると期待されます。

 その際、医療機関の理解や同意を得ることが大変に重要になると思われます。そのために、都道府県は、医療機関に対して丁寧な説明が必要です。

 今後、政府としても、医療機関への理解と協力をどのように進めようと考えているのか、また、在宅医療、訪問看護等、在宅医療・介護連携をどう図っていこうとされているのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 地域の実情に合った医療体制を構築するため、四月の消費税増税分で生まれる財源などから、都道府県が使える約九百億円の基金が創設されたことは、率直に評価したいと思います。この基金を活用し、療養型ベッドなど施設整備や、地域で働く医師や看護師育成などスタッフ確保に使えると想定しています。

 都道府県には、地域の実情や必要な事業を分析した上で、効果的な基金活用が求められます。

 国としては、基金活用を都道府県に任せるのではなく、しっかりとバックアップしていただきたいと、強く要望いたします。

 あわせて、公的医療機関だけでなく、真に必要な地域医療に幅広く活用すべきと考えますが、厚生労働大臣の御所見をお伺いいたします。

 地域包括ケアシステムの構築に向け、高齢者に寄り添った制度にすることが何より大切と考えます。

 本法案では、介護の保険料について、低所得者の負担軽減措置を講ずる旨を規定していますが、厚生労働大臣に、低所得者の保険料軽減の拡充の意義について伺います。

 また、介護の必要度が比較的低い要支援一、二の介護保険サービスの一部を、全国一律から市町村事業に移行することとしています。

 この見直し案に対し、各地の要支援者から、事業の移行により地域格差が生じるのではないか、今までと同じようなサービスが受けられるかどうか不安だといった内容の声が上がっています。つまり、市町村事業に移行することで、要支援者の切り捨てにつながりかねないとの懸念が広がっていると言えます。

 政府の説明では、基本的に現行制度を念頭に置いた基準を検討として、現行のサービスを維持することとしています。

 そこで、市町村事業に移行することでサービスの低下はないのか、また、地域格差の解消をどのように担保するのか、厚生労働大臣にお伺いします。

 地域包括ケアシステムの構築の実現には、医師や看護師など医療人材とともに、介護人材の確保が喫緊の課題です。それができなければ、地域包括ケアシステムは、絵に描いた餅になるおそれがあります。

 特に介護職員について言えば、二〇一二年度の推計値で百四十九万人いるとされていますが、二〇二五年には、最大で、百万人増の二百四十九万人が必要とされています。

 今後、労働人口が徐々に減る状況の中で、介護人材の確保は簡単ではありません。

 これまでも、公明党の主張で、介護職員処遇改善交付金などが創設され、一定の処遇改善が行われてきたのは事実です。しかし、給与やキャリアアップなどの点で、さらなる改善が必要です。

 繰り返しになりますが、人材確保、処遇改善は、地域包括ケアシステムを構築する上で重要な鍵を握っています。

 最後に、人材の確保と処遇の改善に向けた総理の御所見をお伺いし、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 古屋範子議員にお答えいたします。

 本法案の意義についてのお尋ねがありました。

 急速な少子高齢化のもとで、地域で安心して医療や介護サービスを受けられるようにするためには、救急医療などの急性期の医療から、退院後の生活を支える在宅医療・介護まで、一連のサービスを総合的に整備することが必要です。

 このため、今回の法案では、患者の状態に応じた適切な医療が提供されるよう、医療提供体制の見直しを行うとともに、介護が必要となっても住みなれた地域での暮らしを継続できる体制を整備することとしており、医療、介護の双方のサービスを対象とする新たな財政支援制度を設けるなどの取り組みを行うこととしております。

 改革の実施に当たっては、国民の皆様にその意義や効果を丁寧に説明しながら進めてまいります。

 地域包括ケアシステムについてお尋ねがありました。

 医療や介護が必要な状態になっても、できるだけ住みなれた地域や自宅で生活を続け、安心して自分らしく生きたいというのが国民のニーズであり、それにしっかりと応えていかなければならないと考えています。

 このため、身近な地域で、安心して住み続けることができる住まいを確保し、医療や介護サービスはもとより、介護予防など、自立に向けたさまざまな支援を受けられることが必要です。

 地域包括ケアシステムの推進に党を挙げて取り組まれている御党ともよく連携しながら、市町村の取り組みの参考となるような事例を提供していくなど、地域包括ケアシステムを全国に広げていくため、しっかり取り組んでまいります。

 介護人材の確保と処遇改善についてお尋ねがありました。

 地域包括ケアシステムを構築するためには、介護の人材確保や処遇改善は重要な課題と考えています。

 介護人材については、自公政権において、平成二十一年度の介護報酬改定や補正予算において、処遇改善のための取り組みを行ってきました。さらに、キャリアアップの支援等による人材の定着と資質の向上などの取り組みも進めてきたところです。

 今後とも、社会保障・税一体改革の中で、必要な財源を確保し、さらなる処遇改善に取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 古屋議員からは、四問ほど御質問をいただきました。

 まず、医療機関の理解と協力、在宅医療・介護の連携についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、病床機能報告制度の創設や地域医療構想の策定を定めるとともに、都道府県に協議の場を設置し、医療機関相互で協議を行うなど医療機関の理解と協力を得ながら、医療機能の分化、連携に取り組むことといたしております。

 また、在宅医療・介護の連携に関しては、医療、介護を総合的に確保するための基本的な方針に即して都道府県や市町村が実施計画を作成するとともに、市町村が行う地域支援事業に在宅医療・介護連携の推進に係る事業を位置づけることとしており、これらの取り組みを通じて、在宅医療・介護の連携を進めてまいります。

 続きまして、基金の活用についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、国が定める医療と介護の総合確保方針において、公正性や透明性の確保を初めとした基本的な事項を定めること、都道府県が基金に係る計画を作成するときは、あらかじめ、関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるように努めることを定めております。

 さらに、交付要綱において、官民に公平に配分することや、官民を問わない幅広い地域の関係者から意見を聴取することなどを交付の条件として示すこととしており、これらの措置により、地域で適切に活用されるようにしたいと考えております。

 次に、介護保険料の低所得者軽減についてのお尋ねがございました。

 今後さらに高齢化が進展することに伴い、介護費用の増加と保険料負担水準の上昇は避けられないと見込まれております。

 こうした中、所得の低い方々の保険料を引き続き負担可能な水準にする必要がありますが、現在の制度で保険料を軽減した場合、その軽減分は低所得者以外の被保険者が負担することとなるため、その負担増には限界があるところであります。

 このため、今回の法案では、公費を投入して低所得者の保険料を軽減する新たな仕組みを制度化することとしております。

 最後に、予防給付の地域支援事業への移行についてのお尋ねがございました。

 予防給付の見直しについては、市町村を中心とした支え合いの体制づくりを推進し、訪問介護等の既存のサービスから、住民が担い手として参加する取り組みまで、さまざまなニーズに対応した多様な主体による多様なサービスの提供を目指しております。

 その中では、地域包括支援センター等が利用者の意向や状態像等を踏まえて行うケアマネジメントにより、適切なサービス利用が推進されます。

 今回の見直し後の市町村による事業の財源構成は、予防給付と同様とするとともに、一号被保険者の所得水準を勘案した財政調整の仕組みを予防給付と同様に設けるなど、市町村財政を支援します。

 また、生活支援サービスの基盤整備への財政支援、国によるガイドラインの策定など、市町村の取り組みを最大限支援してまいります。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、中島克仁君。

    〔中島克仁君登壇〕

中島克仁君 みんなの党の中島克仁です。

 私は、みんなの党を代表いたしまして、ただいま議題となりました地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案について質問をいたします。(拍手)

 まず、今回の法律案の内容ですが、医療、介護、さらに医療事故調の創設、特定行為にかかわる看護師研修制度など、性質の異なる分野の法改正を一つの法案にまとめて審議することに、強く違和感を覚えます。

 持続可能な社会保障を確立するといって消費税増税をしているのに、国民生活に密着した医療、介護の問題を丁寧な議論の場を持たずに進めようとすることに、とても社会保障の充実に真剣に取り組んでいるとは思えません。昨年のプログラム法案の審議で、一つ一つについては閣法で丁寧に審議するということで、強行採決で審議を打ち切ったのではないですか。

 都合の悪い法案は一つにまとめてしまう今回のやり方に対して、抗議をいたします。

 今回、なぜこのような乱暴な法案となってしまったのか、その経緯を御説明いただくとともに、安倍総理は、このようなやり方を容認しているのでしょうか。総理の明確な答弁を求めます。

 今回の法律案の趣旨に、地域包括ケアシステムを構築し、地域における医療及び介護の総合的な確保を目指すとされております。

 地域包括ケアの構築のためには、疾病の有無、種類にかかわらず、加齢による身体機能の低下から介護が必要になるという視点が重要だと考えます。そのような観点から、高齢者医療制度と介護保険の一元化について、総理の御見解をお尋ねいたします。

 大学病院などの高度医療を提供する医療機関と診療所との外来受診を適正化するために、欧州のように、一次医療を担う家庭医の普及が大きな鍵となると考えます。家庭医制度を取り入れることについて、総理の御見解をお尋ねいたします。

 また、保険診療と保険外診療の適切な組み合わせの範囲を拡大させることは、高齢化社会で確実に需要がふえる医療・介護サービス産業の発展を目指す、成長戦略の大きな柱となります。保険診療と自由診療を併用する混合診療の全面解禁に向けて、総理の御見解をお尋ねいたします。

 高齢化社会の問題解決として、地域包括ケアシステムの確立を掲げていることは評価をいたしますが、そのためには、患者さんのフリーアクセスや医師の開業自由原則など、日本の医療市場の改革が必要です。

 先ほど挙げた、高齢者医療と介護保険の一元化、家庭医制度導入、混合診療の全面解禁は、地域包括ケアの充実、医療費の適正化、患者ニーズの観点からも大変重要です。

 そのいずれにも反対の姿勢を見せる日本医師会。この医師会の構造的問題を放置したままで地域包括ケアの充実など、あり得ないと考えます。岩盤規制の代表格である医師会の構造的問題を認識されておるのでしょうか。総理の御見解をお尋ねいたします。

 総理は、特区を足がかりに医療・介護分野の岩盤規制を打ち破り、規制改革を実行していくと、力強く宣言しておられます。医療・介護分野における岩盤規制を打ち破る総理の決意を、改めてお尋ねいたします。

 次に、介護保険関係について質問いたします。

 在宅医療・介護連携の推進など地域支援事業の充実とあわせ、予防給付を地域支援事業に移行していくとされております。

 かねてから指摘しているように、介護認定には地域間格差があり、政府も、そのことは認め、今後取り組むとされておりますが、一次判定を全国共通の専用ソフトで実施しているにもかかわらず、なぜ地域間格差が生じてしまうのか、原因について論点整理ができているのでしょうか。

 介護認定審査の地域間格差について、何が原因で、今後、格差是正のために具体的にどう取り組むおつもりなのか、厚生労働大臣にお尋ねいたします。

 また、特養入所要件を要介護三以上として、中重度の要介護者に重点化するとされておりますが、介護度とは無関係に、ひとり暮らしの方や経済的に苦しい方など、環境面において整備が難しい方が本来適用になるのではないでしょうか。

 私は、在宅医療に医師として長く従事してまいりました。介護度が重いから特養に入所するといった単純なものでないことは明らかです。現在でも優先入所の基準が定められているにもかかわらず、なぜ慌ててこのような線引きをしなければならないのか、厚生労働大臣の御見解をお尋ねいたします。

 このようなことが効率化、公平化というのであれば、とても現場の意見を取り入れたとは言えません。このような場当たり的な改革を行う前に、社会福祉法人の抜本的改革が必要なのではないでしょうか。

 介護保険の導入により、従来の社会福祉法人の役割は変化しました。国民の皆さんに不安を与える前に、社会福祉法人のあり方そのものを見直し、サービス提供側の公平性をつくり上げることが先だと考えます。

 社会福祉法人改革に踏み込み、介護における経営主体間のイコールフッティングの確立に取り組むつもりがあるのか、総理の御見解をお尋ねいたします。

 最後に、子供貧困対策についてお尋ねをいたします。

 一人親世帯の増加、雇用状況の悪化などを背景に子供の貧困率が増加していることが問題視され、昨年、全党一致で、子ども貧困対策法が成立、本年一月、施行されました。支援策の大綱をつくり、各都道府県が具体的な支援の計画を作成、実施していくことになっているはずです。

 しかし、二月には開かれる予定であった閣僚会議は、いまだ開かれず、四月になっても、その予定さえ決まっておりません。

 まさに、きょうから消費税増税され、子供たちが置かれた状況が日々深刻さを増していく中で、一刻も早く対策を講じなければなりません。総理出席閣僚会議を一体いつ開くのか、この場ではっきりお答えいただきたいと思います。

 さらに、大綱の作成、来年度の概算要求には大綱を反映させた内容を盛り込むことを確約していただくとともに、総理には、届かない声に耳を澄まし、心の叫びに応えていただきたい。

 貧困の連鎖を断ち切るための総理の御決意をお尋ねして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 中島克仁議員にお答えをいたします。

 本法案の構成についてのお尋ねがありました。

 急速な少子高齢化のもとで、地域で安心して医療や介護サービスを受けられるようにするためには、急性期の医療から在宅医療・介護まで、一連のサービスを総合的に整備することが必要です。

 今回の法案は、こうした観点から、患者の状態に応じた適切な医療が提供されるよう、医療提供体制の見直しを行うとともに、介護が必要となっても住みなれた地域での暮らしを継続できる体制を整備することとしており、医療、介護の双方のサービスを対象とする新たな財政支援制度を設けるなどの取り組みを行うこととしております。

 御指摘のあった医療事故調査制度や看護師の研修制度については、医療に対する信頼が高まるとともに、安心して医療を提供できる環境の整備が促進され、将来の医療従事者の確保にもつながっていく、また、在宅医療を支える看護師の確保、養成が図られることになると考えています。

 今回の法律案は多くの内容を含んでおりますが、いずれも、医療、介護の基盤整備のために必要な内容であり、早期の法案成立に向け、政府として丁寧に説明したいと考えております。

 高齢者医療と介護保険の一元化についてのお尋ねがありました。

 高齢者は医療と介護の両方を必要とすることが多く、地域で安心して生活を続けるためには、急性期の医療から在宅医療・介護まで、一連のサービスを総合的に整備することが必要です。

 今回の法案では、新たな財政支援措置も講じつつ、都道府県等におけるこうした医療、介護の提供体制の整備を支援することとしています。

 なお、保険制度としての高齢者医療制度と介護保険制度を一元化することについては、保険者や被保険者の範囲、財源構成などが異なっていることから、困難な課題が多いと考えています。

 いわゆる混合診療の全面解禁など医療・介護分野における規制改革や、日本医師会に対する認識についてのお尋ねがありました。

 全ての国民が一定の自己負担でどこでも安心して必要な医療を受けられる我が国の国民皆保険は、世界に誇れる制度であり、次世代にしっかりと受け渡していかなければならないと考えています。

 保険診療と自由診療を併用する混合診療の全面解禁をとの御指摘ですが、現在でも、先端的な医療を迅速に受けられるよう、保険の対象となっていない医療技術等について、安全性が確認されれば保険診療と併用できる保険外併用療養費制度があります。

 今後、困難な病気と闘う患者が未承認の医薬品等を迅速に使用できるようにする等の観点から、保険外併用療養費制度のさらなる改善に取り組んでまいります。

 こうした取り組みも含め、成長戦略を迅速かつ確実に実施していくためには、医療、介護の分野でも、適切な規制の見直しやイノベーションを促進していくことが重要です。

 このため、国家戦略特区も活用しながら、今後二年間を集中期間として、幅広い分野の岩盤規制に検討を加えて、規制改革の突破口を開いていきます。

 御指摘の日本医師会は、地域医療を支える団体としての立場から規制改革についての意見をお持ちであることは認識しておりますが、さまざまな関係者としっかり議論をしながら、より実効ある改革となるよう、今後とも、しっかりと規制改革に取り組んでまいります。

 社会福祉法人改革についてお尋ねがありました。

 社会福祉法人制度のあり方については、現在、規制改革会議及び厚生労働省の検討会において、介護における経営主体間のイコールフッティングの観点も踏まえ、財務諸表等の公表による法人の透明性の確保や、評議員会の設置などガバナンスの強化、非営利法人として税制優遇措置等を受けていることを踏まえ、低所得者や重度介護者への重点的な対応を強化することなど、精力的に議論が進められていると聞いています。

 政府としては、これらの議論を踏まえ、さまざまな経営主体が利用者の立場に立ってサービスの質や多様性を競いつつ、その中で、社会福祉法人においては、社会福祉の主たる担い手として、その役割を一層果たすよう、必要な改革を行ってまいります。

 子供の貧困対策についてお尋ねがありました。

 子供の将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、子供の健やかな育成のために必要な環境整備、教育の機会均等を図る子供の貧困対策は極めて重要です。

 私が会長である子どもの貧困対策会議については、四月上旬に開催すべく準備を進めているところです。

 政府としては、来年度の概算要求も視野に入れつつ、大綱の策定に向けて検討を進め、子供の貧困対策の推進にしっかりと取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 中島議員にお答えをいたします。

 外来受診の適正化や家庭医制度の導入についてのお尋ねがございました。

 患者の病状に応じて必要な医療を確保する観点から、医療機関の外来の機能分化をさらに推進することは重要であります。

 このため、平成二十六年度診療報酬改定において、中小病院や診療所の医師の主治医機能を評価するとともに、新たに設置する基金を活用して、いわゆるかかりつけ医の普及定着を推進することとしており、こうした取り組みを通じて、外来の機能分化を推進していきます。

 なお、お尋ねの家庭医制度が、フリーアクセスの制限を意味するのであれば、医療提供体制の根幹にかかわる問題であり、慎重な検討が必要であると考えております。

 要介護認定についてのお尋ねがありました。

 一般的には、加齢とともに介護ニーズが高まることから、高齢化率の高い地域の方が、要介護認定率が高い傾向にあります。また、社会参加の状況や介護予防活動の取り組み状況等、その地域の実情により、地域ごとの認定率に一定の差異が生じることはやむを得ないものと考えております。

 一方で、要介護認定制度は、全国一律の基準に基づき公平公正に運用される必要があるため、認定調査員に対する研修を行うなど、今後とも、適正な要介護認定制度の運営に努めてまいります。

 特別養護老人ホームの機能の重点化についてのお尋ねがございました。

 特別養護老人ホームの入所申込者の状況調査によれば、入所申込者数は約五十二・四万人、そのうち、在宅で要介護四または五の方は約八・七万人と、要介護度の高い方を含め、入所を望む要介護者が多数存在することが改めて確認されたところであります。

 現在は、自治体の定める入所指針に従い、要介護度やまた家族の状況等を勘案して各施設が入所の判断を行っておりますが、各施設や地域ごとの運用に差があり、重度の要介護者が依然として入所できていない状況が見受けられます。

 こうした状況を踏まえ、特別養護老人ホームについては、限られた資源の中で、より入所の必要性の高い方が入所しやすくなるよう、中重度の要介護高齢者を支える施設としての機能に重点化を図ることが必要と考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、青柳陽一郎君。

    〔青柳陽一郎君登壇〕

青柳陽一郎君 結いの党の青柳陽一郎です。

 私は、結いの党を代表し、地域医療及び介護の総合的な確保を推進する法律案につき総理に、また、介護・障害福祉従事者の人材確保法案について法案提出者に、それぞれ質問いたします。(拍手)

 初めに、医療における規制改革について伺います。

 政府の規制改革会議は、混合診療の容認を六月の答申案に盛り込むことを目指しているとされますが、厚生労働大臣はそれに難色を示していると聞きます。

 安倍総理は、国内外で、みずからを医療などの岩盤規制を打ち破るドリルに例えておられますが、混合診療解禁について、総理の御決意を伺いたいと思います。

 次に、社会福祉法人改革について伺います。

 今回の地域支援事業を初め、今後は、地域の医療・介護サービスをNPOや民間企業など多様な担い手が提供していく流れとなっています。

 しかし、既に地域の医療・介護サービスを担っている社会福祉法人には、法人税、消費税、固定資産税、不動産取得税、市民税、県民税など、各種の非課税措置や、補助金などの優遇措置があり、この市場にNPOや民間企業が新規参入を試みても、公平公正な競争が行われるとは言いがたい状況であります。

 規制改革会議でも、社会福祉法人の優遇見直しが議論されていましたが、NPOや民間企業と社会福祉法人が公平公正なサービス競争を行うための社会福祉法人制度についてどのようにお考えか、総理の御見解を伺います。

 次に、医療従事者の役割分担について伺います。

 本法案には、特定行為に係る看護師の研修制度が含まれておりますが、もともとは、看護師の権限を拡大して、医師の負担や医療費を削減する狙いがあったものと思います。

 アメリカの上級看護職、ナースプラクティショナーのように、初期症状の診断、処方、投薬などの一部を看護師が行える制度が有効だと考えますが、今回の研修制度ではこうした趣旨が不十分ではないかと思いますが、厚生労働大臣の御見解を伺います。

 次に、機能別病床の需給バランスと診療報酬制度について伺います。

 そもそも、急性期、回復期、慢性期の病床数について、政府は現状の需給ギャップを把握していないとのことであります。

 現状の診療報酬制度では、急性期病床が増加するインセンティブが働いていますが、このまま病床の機能分化を進めて、将来の地域の医療需要に合致するのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 次に、介護予防給付、介護予防事業の予防効果について伺います。

 本法案では、訪問介護と通所介護を地域支援事業に移行することとしていますが、市町村主導で担い手を多様化して事業実施のコストを削減するといった発想ではなく、要介護度の進行を抑え、高齢者のQOLを高めつつ、介護費用全体を抑える、攻めの投資と考えるべきです。

 実際のところ、訪問介護と通所介護を市町村の事業に回すことによるコスト削減効果は大きくないと聞きますが、肝心の予防効果は増進するのか。また、介護予防の効果測定を政府として行うべきではないか。大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、介護保険全般について、要介護度の進行を抑えるインセンティブについて伺います。

 介護サービス事業者から話を伺うと、利用者の要介護度の進行を抑えようと手間暇をかけた事業者は介護報酬がふえず、利用者の要介護度が進行するのを半ば放置した方が介護報酬はふえていくという制度の矛盾があります。

 事業者が予防や介護によって要介護度の進行を抑えるという本来の役割にインセンティブが働くような制度にすべきと考えますが、大臣の御見解をお伺いいたします。

 地域医療介護総合法について最後の質問になりますが、法案提出のあり方について苦言を呈します。

 今回のように内容が多岐にわたり、法律も、新法、医療法、介護保険法と、それぞれ独立して法案提出すべきものに加えて、保健師助産師看護師法、歯科衛生士法などの各法律をまとめ、一括審議ではなく、一本化して法案提出をするというこのようなやり方について、適正と言えるのか、総理の御見解を伺いたいと思います。

 次に、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法について、本法案の取りまとめに尽力した法案提出者の井坂信彦議員にお伺いいたします。

 まず、本法案の必要性について、具体的なデータをお示しいただき、その上で、介護福祉人材を確保するためには、賃金アップだけでなく、介護福祉従事者が将来のキャリアパスに展望を持てるようにするということが大切だと考えますが、議員の御見解をお伺いいたします。

 最後に、本法案は、ややもすると、大きな政府を志向する、ばらまきに見えかねない側面があると思いますが、自由主義を旨とする結いの党にあって、本法案の党内取りまとめを担った井坂議員の法案成立にかける思いをお伺いし、両法案に対する質疑といたします。

 どうもありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 青柳陽一郎議員にお答えいたします。

 いわゆる混合診療についてお尋ねがありました。

 全ての国民が一定の自己負担でどこでも安心して必要な医療を受けられる我が国の国民皆保険は、世界に誇れる制度であり、次世代にしっかりと受け渡していかなければならないと考えています。

 先端的な医療を迅速に受けられるよう、保険の対象となっていない医療技術等についても、安全性、有効性が確認されれば保険診療と併用できる制度があります。この仕組みについては、昨年、抗がん剤について、より迅速に審査が行われるよう見直しをしたところであります。

 他方、規制改革会議からは、困難な病気と闘う患者が希望する治療の選択肢を拡大できるようにする制度の提案があったところであります。

 今後、困難な病気と闘う患者が、未承認の医薬品等を迅速に使用できるようにする等の観点から、保険外併用療養費制度のさらなる改善について検討してまいります。

 社会福祉法人改革についてお尋ねがありました。

 社会福祉法人制度のあり方については、現在、規制改革会議及び厚生労働省の検討会において、介護における経営主体間のイコールフッティングの観点も踏まえ、財務諸表等の公表による法人の透明性の確保や、評議員会の設置などガバナンスの強化、非営利法人として税制優遇措置等を受けていることを踏まえ、低所得者や重度介護者への重点的な対応を強化することなど、精力的に議論が進められていると聞いています。

 政府としては、これらの議論を踏まえ、さまざまな経営主体が利用者の立場に立ってサービスの質や多様性を競いつつ、その中で、社会福祉法人においては、社会福祉の主たる担い手として、その役割を一層果たすよう、必要な改革を行ってまいります。

 一本化して法案提出した過去の事例についてのお尋ねがありました。

 医療、介護の分野では、今回のような改正法案は例がありませんが、急速な少子高齢化のもとで、地域で安心して医療や介護サービスを受けられるようにするためには、急性期の医療から在宅医療・介護まで、一連のサービスを総合的に整備することが必要であります。

 今回の法案は、こうした観点から、患者の状態に応じた適切な医療が提供されるよう、医療提供体制の見直しを行うとともに、介護が必要となっても住みなれた地域での暮らしを継続できる体制を整備することとしており、医療、介護の双方のサービスを対象とする新たな財政支援制度を設けるなどの取り組みを行うこととしております。

 また、御指摘の保健師助産師看護師法や歯科衛生士法の改正は、さまざまな医療職種の専門性を生かし、互いに連携、補完し合うチーム医療を推進するもので、効率的で質の高い医療の実現につながるものであります。

 今回の法律案は多くの内容を含んでおりますが、いずれも医療、介護の基盤整備のために必要な内容であり、早期の法案成立に向け、政府として丁寧に御説明したいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 青柳議員からは、四問ほど御質問をいただきました。

 まず、特定行為に係る看護師の研修制度についてのお尋ねでございます。

 今回の法案で創設する研修制度は、看護師が、医師の判断を待たずに、手順書に基づいて一定の診療の補助を行うことを可能とするもので、これを普及することは、医師の負担軽減につながると考えております。

 医師の指示を受けずに看護師が独立して一定の医行為を行うナースプラクティショナーについては、我が国の医療従事者の教育体系のあり方等にもかかわるもので、慎重な検討が必要と考えますが、今回の研修制度を活用することにより、医療現場でのチーム医療を推進してまいります。

 次に、医療機関の機能分化や地域の将来需要への対応についてお尋ねがございました。

 今回の法案では、各医療機関が病棟ごとに提供する医療の機能を都道府県に報告する制度を設けるとともに、都道府県は、医療機関の現状や地域の医療需要の将来推計等を踏まえ、地域医療構想を策定し、地域医療構想に基づき都道府県が行う医療提供体制の改革を進めるため、新たな財政支援措置を設けるなどの取り組みを行うことといたしております。

 また、本年四月からの診療報酬改定においては、急性期病床の要件を厳格化するとともに、急性期後の患者を受け入れ、在宅復帰に取り組む病院を重点的に評価するなどの見直しを行っており、今回の法案と相まって、医療機関の機能分化を進めてまいります。

 こうした取り組みにより、地域の将来需要に対応した医療提供体制が構築されるよう取り組んでまいります。

 次に、介護予防の効果についてのお尋ねがございました。

 介護予防の推進のためには、市町村が中心となって、高齢者が積極的に参加できる多様な通いの場を充実させるとともに、要介護状態になっても、生きがい、役割を持って生活できる地域の実現を目指すことが重要であります。

 一部の市町村では、住民が主体となって行う介護予防活動を広く展開することにより、要介護認定率の伸びが抑制されるという効果も出てきております。このような取り組み事例を全国へ拡大するため、地域別の取り組み状況等をデータベース化し、各市町村が活用できるようにしてまいります。

 最後に、要介護度改善への報酬上の評価についてのお尋ねがございました。

 要介護度を改善させた事業所に対する介護報酬上のインセンティブにつきましては、現在、一部のサービスには導入されておりますが、報酬額によっては利用者の選別が生じるおそれがあるなどの課題もあり、今後の検討課題と考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔井坂信彦君登壇〕

井坂信彦君 結いの党の井坂信彦です。

 青柳議員から、二点の質問をいただきました。

 介護・障害福祉人材確保法に関して、まずは、具体的なデータからお答えをいたします。

 ことしの二月の二十日の第六回社会福祉法人の在り方検討会の資料によりますと、介護職員の離職率は、二三・四%で、全産業平均一一・五%の二倍に上る、また、介護職員の有効求人倍率は、一・八二で、同じく、全産業平均〇・九三の二倍に上るということであります。データの面から見ても、介護の現場は明らかな人手不足であると考えます。

 その結果、家族を介護するために仕事をやめた人、離職者は、平成二十四年度の就業構造基本調査によりますと、五年間で四十八万七千人、うち女性が三十八万九千人ということでありますから、安倍政権の、女性の力を生かすという方針を大きく妨げる数字ともなっています。

 その上で、介護の職場に人が集まらない理由です。

 賃金だけでなく、キャリアパスなど、将来展望も理由としてあるだろうという御指摘でありますが、介護労働安定センターの平成二十四年度の介護労働実態調査によりますと、不満の第一位は、仕事の内容の割に賃金が低い、四三・三%、二位が、人手が足りない、三位が、有給休暇がとりにくい、こういう順序となっています。このことから、まずは賃金アップが最も効果的と考えている次第です。

 一方で、キャリアパスなど、将来展望ももちろん大事なことであります。この点については、事前に各党の御意見を伺う中で、本法案の第三条に、介護・障害福祉従事者の職責に応じた処遇の体系として、追加をさせていただいているところです。

 次に、本法案が、大きな政府のばらまきになりはしないか、この懸念に応え、法案成立にかける思いを述べよとの御質問をいただきました。

 結いの党は、自由経済を重視する政党であります。私も、市場メカニズムを最大限に生かす、民間でできることは民間で、こういう考え方の持ち主であります。

 一方で、昨年末の結党の際に、基本理念に、「「政治は社会的弱者のためにある」を旨とする。」この一行をつけ加えました。

 議場におられる全ての皆様にとって、言わずもがな、当たり前のことでありましょう。民間にできることは民間で、この裏には、民間にできないことは政治が責任を持ってやるという決意が必要だと考えています。

 離職率も求人倍率もほかの産業の二倍、そして、その理由の第一位が、賃金ということになっています。しかも、賃金決定には市場メカニズムが働かないとなれば、本件こそ、まさに政治が解決するべき問題ではないかと考える次第です。

 この議場にいる誰もが、突然の事故や病気で障害を持つ可能性がある。また、年を重ねれば、介護が必要にもなりましょう。

 社会的弱者とは、決して特定の人を指すのではなく、誰もが、人生の一時期、社会的弱者になり得るという前提で、それを社会全体で支えようというのが介護や福祉の制度です。

 今後、百万人の人材確保が必要となる中で、この問題は、党派を超えた、日本の課題です。

 政治とは、価値観であり、価値観は、行動にあらわれます。数多くの問題を抱える中ではありますが、この問題の優先順位をどこまで上げていけるのか、本法案の審議を通じて、皆様と結論が出せれば幸いです。

 本法案を本会議の議題として取り上げていただき、このような場を下さった議場の全ての皆様に心よりの感謝を申し上げまして、私の答弁といたします。

 本当に、どうもありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、高橋千鶴子さん。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、医療・介護の総合確保法案について質問します。(拍手)

 きょう四月一日、消費税が十七年ぶりに増税されます。社会保障改悪とあわせ、史上空前の十兆円もの負担増となり、国民生活にはかり知れない打撃を与えるもので、強く抗議します。

 本法案は、効率的かつ質の高い医療提供体制や、地域包括ケアシステムの構築を通じ、地域における医療、介護の総合的な確保を推進するとしています。

 一九七四年から、寝たきりゼロを目指し、予防、介護、医療、生活と住まいのサービスを総合的に取り組んだ広島県御調町が地域包括ケアの原点とされていますが、本法案は似て非なるものです。

 地元で子供が産めない、妊婦健診に通うのも片道二時間など、地域医療は壊れています。片や、特養ホームの待機者は五十二万人を超え、あちらこちらと行き先を探しているのが現実ではありませんか。

 総理は、こうした現状をどう認識していますか。成長戦略で描く医療、介護は打開策になるのですか。お答えください。

 二〇一一年版厚労白書は、国民皆保険について、日本の医療はフリーアクセスであり、誰もが安心して医療を受けることができる医療制度を実現し、世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成したと述べています。

 法案は、国民は、医療に関する選択を適切に行い、医療を適切に受けなければならないとしていますが、つまりは、フリーアクセス、皆保険ではないということですか。総理の答弁を求めます。

 以下、法案の中身について質問します。

 まず、医療法について。

 地域医療構想の策定に当たっては、医療関係者等との協議の場を設け、都道府県知事は、療養病床及び一般病床の数が基準病床数を超えている場合、民間医療機関に対し、病床数削減の措置を要請、勧告することができるとしています。

 どのような医療機関が対象なのか、その勧告などに従わない場合はどのような措置をとるのか、お答えください。

 一方、公立病院は、医療圏の病床数削減の調整弁とされるのでしょうか。不採算医療、地域医療を担ってきた自治体病院の意義と、本法案における位置づけについて、総務大臣にお伺いします。

 今般の診療報酬改定では、現在の高度急性期三十六万床を、二〇一四年度から二年間で九万床削減し、最終的に十八万床とする方針が示されました。

 医師不足のため病棟を閉鎖している地域もありますが、稼働していない病床は、ばっさり削減するのですか。入院した途端に次の入院先をどうするか悩まなければならないのが現実です。後方支援がないままの追い出しになりませんか。お答えください。

 次に、介護保険制度は、その受け皿となるのでしょうか。

 現在、特養ホームに入所している要介護一、二の高齢者の六割は、その理由が、介護者不在、介護困難、住居問題となっています。法案では、介護度三以上に入所が制限されますが、これでは、特養ホームの入所を待っている五十二万人の三人に一人は、待機者にさえなれません。病床削減の受け皿づくりとコスト削減のために、高齢者が行き場を失うことがあってはなりません。

 特養の抜本的増設、低所得高齢者の住宅問題の解決、地域での暮らしを支える多様な介護基盤の充実こそが必要ではないですか。

 いわゆる介護予防についてです。

 要支援者の六割が利用する訪問介護、通所介護を、介護給付から切り離し、地域支援事業に移行させます。

 要支援者は、軽度者ではありません。精神疾患、認知症、がんの末期患者等、専門的な支援が必要な高齢者も多数います。

 介護ヘルパーは、利用者と時間をかけて関係をつくり、ともに料理などをして、その人らしい生活を支えるとともに、関係機関と連携しながら、利用者の状態変化にも早期に対応ができます。重度化を防ぎ、尊厳を保ち、本当の意味での自立した生活の維持に、大きな役割を果たしているのです。

 このようなヘルパーの役割、専門性を、どう評価していますか。初期の段階での手厚い支援こそ重要と考えますが、見解を伺います。

 利用料二割負担の導入は、介護保険部会でも、基準の二百八十万円は低過ぎるとの批判が出されました。年収二百八十万円ぎりぎりの層など、利用抑制が進むのではありませんか。利用料二倍化は、きっぱりやめるべきです。

 第三に、医療、介護の担い手の問題です。

 看護師は、二百万人必要とされています。最も手厚いとされる七対一基準でさえ、業務に追われ、余裕はないというのが現場の声です。七対一基準病床の削減によって看護師配置を後退させてはならないと考えますが、見解を伺います。

 さらに、特定行為を指定し、医行為を看護師に移すことは、医師、看護師確保の抜本対策にならないばかりか、安全を脅かすことにもなりかねません。

 介護従事者は、全産業者平均の六、七割にとどまる給与水準、高い離職率など、慢性的な人手不足が続いています。社会的に評価され、安心して働き続けられるよう、劣悪な待遇を一刻も早く改善すべきです。

 利用者負担に結びつかない形で平均一万円の賃上げを求めた六野党提案は最低限実施すべきと考えますが、答弁を求めます。

 最後に。

 介護保険制度開始から十四年、老老介護、介護心中など、介護の社会化の理想とはほど遠く、制度からはじき出され、無料・低額宿泊所等を漂流している高齢者が社会問題となっています。十万人を超す介護離職、十代、二十代の青年までが、家族介護のために学業や就職を諦めている実態もあります。

 今問われているのは、社会を支える世代が、介護に追われ、未来が閉ざされることがないよう、公的介護制度を抜本的に充実させることです。それこそが本物の好循環ではありませんか。

 総理の見解を伺って、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 高橋千鶴子議員にお答えをいたします。

 地域における医療・介護ニーズの認識と対応に関するお尋ねがありました。

 急速な少子高齢化のもと、地域によっては産婦人科医の不足や特別養護老人ホームへの入所待機等の課題があることは認識しています。

 今回の法案は、こうしたニーズに対応し、地域で医療や介護を安心して受けられるようにするため、救急医療などの急性期の医療から、退院後の生活を支える在宅医療・介護まで、一連のサービスを総合的に整備することとしており、そのための新たな財政支援制度も創設することとしております。

 さらに、成長戦略や健康・医療戦略で描く先端医療の分野での取り組み等は、地域医療の確保に向けた取り組みとあわせて、国民に質の高い医療を提供することにつながると考えています。

 医療のフリーアクセス等についてお尋ねがありました。

 今回の法案では、各医療機関において、急性期、慢性期、回復期など、どのような医療機能を提供しているかについて、都道府県に報告する仕組みを創設することとしています。

 御指摘の法案の規定は、こうした情報に基づき、患者の方々にその状態に合った医療機関を適切に利用していただき、医療機能の分化を進め、良質かつ適切な医療の効率的な提供をしていくという趣旨を明らかにするものです。

 政府としては、こうした取り組みを含め、世界に冠たる社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくための改革を進めることとしており、我が国の医療の根幹である国民皆保険、フリーアクセスを変えるものではありません。

 公的介護制度の抜本的な充実についてお尋ねがありました。

 今回の法案においては、介護保険制度について、受益と負担の均衡を図り、制度の持続可能性を高めつつ、介護が必要となっても住みなれた地域での暮らしを継続できる体制を整備することで、必要な方には適切な介護サービスの提供の確保を図ることとしております。

 この改革は、社会を支える世代の、仕事と介護の両立などにも資するものと考えています。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 高橋議員からは、八問ほど御質問をいただきました。

 まず、病床数削減の要請や勧告についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、病院関係者等による協議によって地域医療構想を達成していくこととしており、また、こうした協議を踏まえつつ、都道府県知事は、医療審議会の意見を聞いて、過剰な医療機能への転換の中止の要請、命令や、稼働していない病床の削減要請等ができることといたしております。

 また、医療機関がこれらの都道府県知事の要請に従わない場合には、都道府県知事は勧告を行い、その勧告や命令にも従わない場合には、医療機関名の公表等の措置を行うことができることといたしております。

 続きまして、診療報酬改定による急性期病床の見直しについてのお尋ねでございました。

 今後の高齢化の進展に伴う医療ニーズの増加に対応するため、急性期から回復期、慢性期、在宅医療まで、患者の状態に応じた適切な医療を受けられるよう、病床の機能分化と連携を進める必要があります。

 このため、平成二十六年度診療報酬改定においては、急性期医療を担う七対一入院基本料について、患者の重症度や医療と看護の必要性を十分踏まえた要件に見直すとともに、急性期後の患者の受け入れや、在宅復帰への取り組み等の評価を充実したところであります。

 これらの見直しにより、急性期後の受け皿となる病床の充実を促しているところであり、今回の診療報酬改定は、稼働していない病床の削減や後方支援のないままの患者の追い出しにつながるものではないと考えております。

 特別養護老人ホームなどの多様な介護基盤の充実についてのお尋ねがございました。

 地域包括ケアシステムの構築に向け、住まいが基盤となって、必要な医療や介護などが受けられる環境を整えることが重要であります。

 厚生労働省といたしましては、在宅サービスの充実に取り組むだけではなく、特別養護老人ホームやサービスつき高齢者向け住宅等の整備を促進するとともに、軽費老人ホーム等の活用や空き家等を活用した低廉な家賃の住まいの確保と生活支援をあわせた取り組みを推進するなど、高齢者のニーズに応じた多様な住まいの確保に努めてまいります。

 また、特別養護老人ホームについては、入所の必要性の高い方々に対応するため、今回の法案では、中重度の要介護者を支える施設としての機能に重点化することといたしております。

 予防給付の見直しについてのお尋ねがございました。

 要支援の方々の状態像や置かれている環境はさまざまであるため、ケアマネジメントを通じて、ホームヘルパー等による専門的なサービスを必要とする人には専門的なサービスの提供につなげていくことを考えております。

 一方、軽度の方々の多様な生活上の困り事については、自分の力を最大限に生かしていただきながら支援を受けられるよう、高齢者も支援の担い手となった支え合いのサービスを充実していくことが重要と考えており、そのための基盤整備に努めてまいります。

 続きまして、介護保険の利用者負担についてのお尋ねがございました。

 今後、介護費用の増大が見込まれる中、保険料の上昇を可能な限り抑え、介護保険制度の持続可能性を高めるとともに、高齢者世代における世代内の負担の公平化を図っていくことが必要であります。

 このため、これまで一律一割であった利用者負担について、一定以上の所得のある方は二割とすることといたしております。

 その基準については、高齢者の消費支出等を考慮して、負担可能と考えられる被保険者の上位二割を基本とし、また、利用者負担の月額上限額は基本的に据え置くこととしていることから、必要なサービスの抑制にはつながらないと考えております。

 次に、七対一病床の看護師配置についてのお尋ねがございました。

 急性期医療を担う七対一病床については、必ずしも急性期の患者を受け入れていない病床もあると指摘されている一方で、急性期後の病床は十分でなく、高齢社会に対応した病床構成となっていないのが現状であります。

 このため、平成二十六年度診療報酬改定においては、七対一入院基本料について、急性期の患者に対応する病床の評価となるよう、患者の重症度や医療と看護の必要性を十分に踏まえた要件に見直すとともに、急性期後の患者の受け入れや在宅復帰への取り組みなどの評価を充実したところであります。

 また、これまでも、病床の機能に応じて、夜間の看護職員や看護補助者の配置の評価を行ってきたところであり、引き続き、看護職員の負担軽減に努めてまいります。

 次に、看護師の特定行為についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、在宅医療等の推進を図るため、看護師が、診療の補助のうち、一定の行為を手順書により行う場合には、研修を義務づけることとしています。これにより、標準化された研修が行われ、医療安全に資するとともに、医師の判断を待つ必要がなくなる面があることから、医師の負担軽減にもつながると考えております。

 最後に、介護職員の処遇改善についてのお尋ねがございました。

 御党などが提出した法案については、今後、国会において御議論がなされるものと考えておりますが、厚生労働省といたしましては、介護職員の処遇改善は人材確保の上で重要な課題であると認識いたしておりますが、今回提出された法案は、財源の確保策が明らかとなっていないなどの点で問題があると考えております。

 処遇改善は、サービスの対価を報酬という形で支払うという本来の制度の仕組みを踏まえれば、報酬の改定で行うのが適当であり、厚生労働省といたしましては、平成二十七年度の介護報酬改定に向けて、今後、社会保障・税一体改革の中で、必要な財源を確保し、さらなる処遇改善に取り組むなど、必要な人材を安定的に確保していきたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣新藤義孝君登壇〕

国務大臣(新藤義孝君) 高橋議員から、本法案における自治体病院の意義と位置づけについてお尋ねがありました。

 自治体病院は、民間病院の立地が困難である僻地等における医療や、救急、周産期、災害などの不採算・特殊部門に係る医療などを提供する役目を担っており、今後も、こうした役割を適切に果たしていくことが必要と考えております。

 本法案は、自治体病院だけではなく、民間病院、国立病院機構などあらゆる設立主体の病院が、医療機能のあり方を検討し、連携協力して地域における効率的で質の高い医療提供体制の構築を目指すものと認識しております。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       総務大臣     新藤 義孝君

       法務大臣     谷垣 禎一君

       厚生労働大臣   田村 憲久君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

       厚生労働副大臣  土屋 品子君


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