衆議院

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第17号 平成26年4月11日(金曜日)

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平成二十六年四月十一日(金曜日)

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 議事日程 第十一号

  平成二十六年四月十一日

    午後一時開議

 第一 地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) まず、日程第一、地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長高木陽介君。

    ―――――――――――――

 地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔高木陽介君登壇〕

高木陽介君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、地方公務員について、人事評価制度の導入等により能力及び実績に基づく人事管理の徹底を図るとともに、再就職者による依頼等の規制の導入等により退職管理の適正を確保しようとするものであり、また、特定地方独立行政法人の役職員に対しても、同様の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る四月七日本委員会に付託され、翌八日新藤総務大臣から提案理由の説明を聴取し、昨十日、質疑を行い、討論の後、採決いたしましたところ、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、採決をいたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。したがって、本案は委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) 次に、内閣提出、電気事業法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。経済産業大臣茂木敏充君。

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 東日本大震災以降、我が国が直面している新たなエネルギー制約を克服し、現在及び将来の国民生活に責任あるエネルギー政策を構築するためには、電気の安定供給の確保、電気料金の最大限の抑制、需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大を目的とし、広域系統運用の拡大、小売及び発電の全面自由化、法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保を改革の三本柱とする電力システム改革を着実に実施していくことが極めて重要であります。

 このため、まず、三本柱の一つである広域系統運用の拡大などを実現することによって電気の安定供給の確保に万全を期すとともに、具体的な実施時期を含む電力システム改革の全体像を法律上明らかにする改革プログラムを附則で定めた電気事業法改正法案を昨年の国会に提出し、昨年十一月に成立したところであります。

 今回提出させていただいた本法律案は、改革プログラムに基づき、電気の小売業への参入の全面自由化を平成二十八年を目途に実施するために必要な措置を講ずるものであります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 まず、電気事業法の改正に関するものであります。

 第一に、現行の電気事業法においては、一般電気事業者のみが家庭等に対する電気の供給を行うことが可能とされておりますが、今後は、経済産業大臣の登録を受けた小売電気事業者であれば、家庭等を含めた全ての需要家に対する電気の供給を行うことができることとし、これに伴い、一般電気事業を初めとする現行の電気事業法における事業類型を見直します。

 第二に、小売全面自由化を実施した後も電気の安定供給の確保に万全を期すため、現在の一般電気事業者の送配電部門に当たる一般送配電事業者に対しては、電圧及び周波数を維持する義務、どの小売電気事業者からも電気の供給を受けることができない需要家に対する電気の供給を最終的に保障する義務、離島における需要家が離島以外の地域と同程度の料金水準で電気の供給を受けることを保障する義務などを課すことといたします。

 一方、これらの義務を着実に履行できるよう、一般送配電事業者に対しては、料金制度により、必要な費用を送配電ネットワークの利用料金から回収することを制度的に担保することとしております。

 また、小売電気事業者に対しては、契約により供給する相手方の需要に応ずるために必要な供給力を確保することを義務づけるとともに、我が国全体で供給力が不足すると見込まれる場合に備えて、広域的運営推進機関が、発電設備の建設に係る入札など、発電設備の建設を促進するための業務を行えることといたします。

 第三に、需要家保護を徹底するため、小売電気事業者に対しては、需要家に対する料金その他の供給条件の説明義務などを課すとともに、現在の一般電気事業者の小売部門に対しては、当分の間、経過措置として、料金規制を継続することとしております。

 第四に、小売全面自由化を実施した後は、電力の卸取引の重要性が高まることが想定されることから、卸電力取引所を電気事業法において位置づけるとともに、商品先物取引法を改正し、電力の先物取引に係る制度の整備を行います。

 加えて、電気事業に係る事業類型の見直しに伴い、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法などの関係法律について、所要の改正を行います。

 以上が、本法律案の主旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) ただいまの経済産業大臣の趣旨の説明に対し質疑の通告がありますので、順次これを許します。まず、鈴木淳司君。

    〔鈴木淳司君登壇〕

鈴木淳司君 自由民主党の鈴木淳司です。

 ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党を代表して質問させていただきます。(拍手)

 さて、先般ダボスで行われた世界経済フォーラム年次総会の基調講演で、総理は、電力システム改革の断行を高らかに宣言されました。第二次安倍政権の発足以来、これまでできるはずがないと思われていたさまざまな改革を着実に推進してこられた中で、総理は、その具体の例示として、まず第一に、この電力システム改革を挙げられたわけであります。

 改めて申し上げるまでもなく、今、我が国は、厳しいエネルギー制約に直面しています。

 三・一一の福島第一原発の過酷事故の発生を受けて原子力発電が全て停止をする中、代替火力発電の燃料費の増大、電気料金の上昇、CO2排出量の増加などさまざまな課題が、現実のものとして、この国に重くのしかかっています。

 このような厳しいエネルギー制約のもと、政府・与党として責任あるエネルギー政策を構築すべく、本日午前、第四次エネルギー基本計画が閣議決定されました。東日本大震災以降なかなか取りまとめることができなかった我が国の中長期的なエネルギー政策の方針を定めることができたのは、大きな一歩であると考えます。

 その新エネルギー基本計画においては、従来の基本計画にはなかった経済成長の視点が加えられており、その中で、電気の安定供給の確保、電気料金の最大限の抑制に加えて、需要家の選択肢や事業機会の拡大を目的とする電力システム改革は、成長戦略における大きな柱ともなっております。

 さて、昨年の参議院選挙の際、私は、政調審議会の一員として、政調会長とともに、産業界の皆様に公約の説明をさせていただく機会がございました。

 その際、産業界の皆さんが口をそろえて言われたのは、とにかく安価で安定的な電力供給を保障してほしい、そして、世界の企業と同じ競争条件、すなわち、イコールフッティングを実現してほしいという二点でした。それさえ実現されれば、あとは自分たちで頑張るからというものでありました。

 そこで私が改めて強く感じたのは、我々政治の側の責任とは、あとは自分たちで頑張るからと民間に言ってもらえるだけの環境整備をいかにして実現していくかということでありました。

 その意味では、まさに、この安価で安定的な電力供給の確保は、政治の最も大きな責務の一つと言えるかと思います。

 長らく停滞の続いた我が国の再生をかけて、安倍総理は、今、まさに、その最前線に立ち、さまざまな改革に取り組んでおられるわけでありますが、現下の厳しいエネルギー制約下にあって、今般の電力システム改革を着実に推進し、安価で安定的な電力供給の確保とともに経済成長を実現させていく一連の取り組みについて、改めて、安倍総理の御決意をお聞かせください。

 さて、今回政府から提出された電事法改正案、すなわち、昨年成立した法案に続く、電力システム改革第二弾の法案は、今まで電力会社を選べなかった御家庭や小規模事業者の電力小売市場を自由化し、同時に、安定供給の確保策や需要家の保護策を講ずるものであります。

 しかし、仮にも機能している現在の電力システムを抜本的に見直していく今回の改革においては、個々のプレーヤーが利益の最大化を狙う中で、果たして全体最適が達成できるのかについて、念には念を入れた丁寧な議論が必要だと考えます。

 そこで、全面的な自由化、競争政策の導入と、安価で安定した電力供給の両立の必要性という観点から、以下、政府の考えをお尋ねいたします。

 まず、新エネルギー基本計画に言う重要なベースロード電源たる原子力発電の多くが動いていない現状は、電気の料金の抑制につながる発電の競争が起こりにくい状況にあるのではないかと思われます。代替電源として再生可能エネルギーの最大限の導入拡大を図るにしても、その発電コスト自体はまだまだ高く、変動性の高い電源ゆえに、バックアップ電源のコストが別途かかってしまうという構造にあります。

 重要なベースロード電源の見通しが立たない中、すなわち、需給逼迫化で自由化を行うと、競争が十分に起こらず、電気料金が上がってしまうのではないかという懸念がありますが、この点について、茂木経済産業大臣のお考えをお伺いいたします。

 加えて、自由化によって、万が一にも安定供給が損なわれることがあってはなりません。

 本法案では、安定供給確保の根幹を送配電事業者が担い、需給バランスの維持義務、送電線の建設、保守義務などの責務を負うことになっています。

 ただ、近年、自由化を先行してきた欧米諸国の多くで、市場メカニズムによって果たして十分な供給力が確保されるのかという問題が顕在化をしております。自由競争下においては、電源投資が思うように進まず、将来的な供給予備力が低下をするのではないかという課題であります。

 送配電事業者がいかに義務を負っても、必要な発電能力それ自体がなければ、元も子もありません。

 ここで、茂木経産大臣にお尋ねいたします。

 自由化政策のもとにおいて、安定供給確保のために不可欠な電源投資の確保は、どのように図られていく予定でしょうか。

 また、今回の法案では、小売電気事業者に、みずからの需要に応じた供給力を確保する義務、いわゆる空売り規制を課すこととされています。

 自由化の名のもとに全てを市場機能に委ねてしまうことには、危うさが伴います。新たに電気事業に参入してくる事業者も含めて、電気の供給を担う全ての事業者が、安定供給の確保のためにそれぞれの役割を適切に果たす仕組みとするという観点から、空売り規制は重要な制度であると考えます。

 ただ、電力の安定供給のためには、エリア全体での適正な供給予備率の確保が不可欠であり、小売事業者がみずからの需要に応じて相対の供給力を確保するだけでは不十分です。ならば、このエリア全体での適正な供給予備力の確保の責務は果たして誰が負うのか、茂木大臣にお尋ねをいたします。

 安価で安定した電力の供給は、国民生活や産業活動の上で、最も根幹となる、重要な社会基盤であります。

 一連の電力システム改革の推進の過程で、自由化、競争政策の導入と、安価で安定的な電力供給を両立させることが、我々に課せられた責務であることを改めて確認し、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 鈴木淳司議員にお答えをいたします。

 電力システム改革の着実な推進についてのお尋ねがありました。

 電力システム改革は、新規参入の促進や競争環境の整備により、電力の低廉かつ安定的な供給を一層進めていくものであり、エネルギー制約の克服に向けた改革の中心をなすものであります。

 厳しいエネルギー制約下にあるからこそ、コスト高や供給不安といった課題を解決する、ダイナミックなイノベーションが起こるよう、大胆な改革を着実に実行していく決意であります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 鈴木議員にお答えをいたします。

 私には、三問いただいております。

 最初に、競争が起こらないままの改革で電気料金が上がることはないのかという御確認でありますが、今回の改正電気事業法案においては、競争環境が整うまでは、従来の一般電気事業者に対する料金規制は継続することとしており、重要な御指摘でありますが、御懸念のような事態は生じないものと考えております。

 次に、電源投資の確保についてでありますが、今回の法案においては、小売事業者に供給力の確保義務、すなわち空売り規制を課すことで、小売事業者が販売に必要とする量を確保するために、発電事業者により発電所が建設される仕組みとしております。

 また、広域的運営推進機関にセーフティーネットの役割を果たす発電所の建設者の募集を行わせることで、市場機能や小売事業者への規制だけでは将来的に発電が不足すると見込まれる事態においても、最終的には必ず発電所が建設される仕組みとしております。

 自由化を行った結果として電力の安定供給が損なわれることはあってはならず、安定供給の確保に万全の措置を講じてまいりたいと考えております。

 最後に、エリア全体での適正な供給予備力の確保についてでありますが、今回の法案においては、これまで安定供給を担ってきた一般電気事業者の送配電部門であります一般送配電事業者に対し、エリア全体での適正な供給予備力の確保も含め、電気の安定供給責任を課すこととし、安定供給の確保に万全を期すことといたしたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次の質疑者、田嶋要君。

    〔田嶋要君登壇〕

田嶋要君 民主党の田嶋要でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する法律案について、関連事項を含めて質問いたします。(拍手)

 まず、本日閣議決定されたばかりのエネルギー基本計画についてであります。

 全般を通じての印象は、東日本大震災、レベル7の福島第一原発事故を経験してから初めての基本計画であるにもかかわらず、当然そのことからにじみ出てくるはずの、強い覚悟や危機感、そして方向転換が伝わってきません。

 その証拠に、閣議決定される直前の計画案では、原案の序文にあった原発事故への深い反省が、削除されていたと聞きます。

 これは、象徴的な事件です。たまたま先日福島で私が手にした地方紙にも、そのことが、一面トップで大きく掲載されていました。さすがに、内外から厳しい批判を浴びて、土壇場で、最終版には深い反省が再登場したようでありますが、まさに、安倍政権の本音をかいま見たような思いです。安倍内閣の答弁は求めません。

 三・一一という大きな試練は、同時に、それを契機として、エネルギー社会に関するパラダイムシフトを起こしていくスタートラインにもなり得ます。

 二十世紀の後半から、そして二十一世紀に入っても、我が国において、エネルギー消費の拡大と日本経済の成長とは、ほぼ同義、同一でありました。

 しかし、三・一一は、私たちに大きな気づきを与えてくれたのであります。それが、横文字で恐縮ですが、デカップリングという考え方です。

 これからの日本社会は、経済成長は続けながら、技術革新や制度改革によりエネルギー消費は賢く抑制していく、デカップリングを実現していく、そういう方針で取り組んでいく考えはあるでしょうか。安倍総理にお聞きします。

 また、そうしたデカップリングを実現していくためには、電力に関して、ピーク低減対策、すなわちキロワット対策とともに、供給側、需要側、あらゆる方策で、電力消費量、すなわちキロワットアワー全体の削減対策が総動員されなければなりません。

 しかし、それらの取り組みは、安倍内閣では、影が薄くなった感があります。夏も冬も乗り切れていることから、かつての危機感も薄れてしまっている感があります。

 そこで、お尋ねします。

 三・一一前と比較して、我慢の節電には頼らない電力消費量抑制策は具体的にどんな成果を上げてきているのか、また、ピーク低減対策の成果と、それが原発何基分に相当するのか、あわせて茂木経済産業大臣にお願いいたします。

 原発政策についてお尋ねします。

 序文に、この基本計画は玉虫色を旨とすとは明記はされていませんが、安倍内閣の方針は、相変わらず玉虫色です。

 原発依存度について、「可能な限り低減させる」としながら、「確保していく規模を見極める」とも表明しています。あわせ読めば、要するに、原発には今後も過渡的電源以上の役割を担わせ、原発による発電は減らしても決してゼロにはしない、そして、必要なら原発の新増設も行うという方針ですか。

 方針がはっきりしないと、再生可能エネルギーであれ、火力発電であれ、民間投資は二の足を踏みます。安倍総理の明確な御答弁をお願いいたします。

 加えて、ベストミックスの目標をできる限り早く決定するという記述が登場しますが、逃げ水のようなお題目にならないよう、その時期もぜひお示しをください。

 エネルギー社会におけるもう一つのパラダイムシフトは、集中から分散へということです。

 大規模集中型の象徴であった原発が事故を起こし、私たちは社会の脆弱性を悟りました。その解決策の一つとして、大規模集中型の弱点を補完する、小規模分散型の発電への挑戦が、電力システム改革と並行して、今、全国各地に広がっています。

 地域の資源とやる気を生かす。地域に雇用を生み、お金を落とす。そして、一次エネルギーの海外依存度、国富の流出を抑えていく。こうした大きな流れを、立法措置も含めて、国が積極的に後押しすべきと考えますが、総理の御所見をお願いいたします。

 電力システム改革の方向性についてお尋ねします。

 電力システム改革の目的の一つに、電力料金の最大限の抑制ということがありますが、この電力システム改革の結果、全面自由化されることになる電力料金は、自由化前に比較して、確実に安くなるのでしょうか。それとも、全面自由化後に、事業所向けは下がって、一般家庭向けが上がるといった事態も想定されているのでしょうか。もしそうだとすれば、今よりも料金が高くなることも想定される場合に、なぜ、それでも電力システム改革が正当化され得るのか。これは、安倍総理の御答弁をお願いします。

 そして、改めて、電力システム改革を断行することによる、供給側である事業者と、需要側である消費者それぞれへの効果、電力供給のあり方の変化について、その理想形について、あわせてお尋ねをいたします。

 次に、法案の柱の一つである、小売参入の全面自由化についてお尋ねします。

 本改正案は、電力量にして約四〇%に当たる、五十キロワット以下の家庭を中心とする規制部門について、参入の自由化、つまり、地域の一般電気事業者の独占的な供給を解除しようとするものであります。

 一方、五十キロワット以上の需要については既に電力の小売自由化が行われていますが、自由化された部門において、新規参入会社はこれまでに何社で、市場のシェアはどれぐらいか、また、その自由化によって、当該小売市場における電力料金はどのぐらい下がったのか、あるいは上がったのか、そして、今日までの部分自由化の全体的な評価と課題を、茂木大臣にお聞きします。

 また、小売参入の全面自由化をして、既存の一般電気事業者は、スケールメリットも働き、発電コストが低い大規模発電所からの供給が見込まれる一方で、小規模でノウハウが未熟な新規小売事業者は、電力の調達がうまく進まない可能性があると思います。多種多様な小売事業者が育たず、適正な競争環境が確保できなければ、電力システム改革のメリットの一つである、電気料金の低廉化が進みません。

 ガリバーに挑む新規参入を促進するために、適正な競争が行われる環境条件をどのように整備していくお考えか。加えて、法的分離により送配電部門の中立性を一層確保するとされる改革第三段階の前に小売参入の全面自由化をすることは、これまでの部分自由化と同様の課題を生まないか。茂木大臣にお聞きいたします。

 次に、小売全面自由化後の需要家保護のための措置についてお聞きします。

 法案では、経過措置として、一定期間の料金規制を継続することとし、競争が不十分な中で電力料金の自由化を実施した結果、電力料金の引き上げが生じることのないようにするとしています。その解除は、今後、実際に競争が進展しているかを確認した上で行うこととしていますが、その期間の目安は持っているのでしょうか。

 また、電力システム改革の第三弾で小売料金の全面自由化を行うこととしていますが、その時点でも、当該経過措置が残ることはあり得るのでしょうか。

 これらについて、経済産業大臣にお伺いいたします。

 次に、送配電事業についてお伺いします。

 送配電事業者には、需給バランスの維持の義務づけ、送配電網の建設、保守の義務づけ、需要家が誰からも電気の供給を受けられなくなることのないよう、セーフティーネットとして最終的な電気の供給を行う最終保障サービスの義務づけを措置し、その担保として、地域独占と総括原価方式による認可制をとるとしています。

 送配電事業に引き続き総括原価方式が適用されるということは、これまでコスト負担の押しつけ合いなどで遅々として進まなかった全国網のボトルネック、とりわけ、六十ヘルツと五十ヘルツの周波数転換や北本連系はスピードアップを期待いたしますが、最終的に、いつまでに、どれだけの追加的キャパシティーを実現し、ボトルネック解消ができると見込んでいるのでしょうか。

 また、このボトルネックの解消により、発電コストが最も安い供給電力から順番に消費していく、最適な、いわゆるメリットオーダーが全国規模で実現することによって、全国ベースでのコスト削減効果はどの程度と見込んでいるのか、茂木大臣にお伺いします。

 今回の改正案では、需給バランスの維持については専ら送配電事業者に任務を義務づけるとしており、将来的に日本全体で供給量が不足すると見込まれる場合は、セーフティーネットとして、広域的運営推進機関が入札等による発電所建設者の公募を行って電気の供給を確保することとしています。

 他方、その推進機関自体は、昨年成立した電力システム改革法第一段階によって、来年をめどに設立が予定をされています。したがって、設立の当初からこうした権限が推進機関には与えられることになるものと理解してよいのか、茂木大臣にお尋ねします。

 さらに、異なる一次エネルギーによる発電提案が複数入札をされた場合に、エネルギー基本計画にある「可能な限り低減させる」の方針により、原発による提案は、原則として他の提案に劣後させることになるのか、それとも、コスト次第では原発を選ぶことになるのか、経産大臣に御認識をお尋ねし、以上で私の質問を終わりとさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 田嶋要議員にお答えをいたします。

 経済成長と省エネルギーの両立についてのお尋ねがありました。

 石油危機以降、我が国は、エネルギー効率を大幅に改善し、今や世界トップレベルにあります。これまで、経済成長を実現するとともに、特に産業部門ではエネルギー消費を抑制してきており、経済成長と省エネルギーの両立を実現してきました。

 政府としては、今後とも、経済成長を図りつつ、徹底した省エネルギー社会の実現に向けて、さらなる技術革新や制度改革を進めてまいります。

 我が国の中長期的な電源構成についてお尋ねがありました。

 エネルギー政策については、国民生活や経済活動に支障がないよう、責任あるエネルギー政策を構築することが何よりも重要です。

 原発については、安全性の確保を大前提に、徹底した省エネルギー社会の実現と、再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、原発依存度は可能な限り低減するというのが基本方針です。

 しかしながら、電力供給における海外からの化石燃料への依存度が第一次石油ショック当時よりも高くなっているという現実を考えると、そう簡単に、原発はもうやめたというわけにはいきません。

 原発の新増設については、現在のところ、想定しておりません。まずは、エネルギー源の多様化と、既存の原発の再稼働の判断に集中していく考えです。

 原発依存度を含む日本の将来のエネルギーミックスに関しては、新たなエネルギー基本計画を踏まえ、再生可能エネルギーの導入状況、原発再稼働の状況などを見きわめ、できるだけ早くエネルギーのベストミックスの目標を設定していきたいと考えております。

 小規模分散型の電源についてのお尋ねがありました。

 小規模分散型の代表的な電源である、中小規模の太陽光や水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーは、国産エネルギー資源の拡大や地域活性化、産業創出、雇用拡大の観点からも、重要なエネルギー源であると認識しています。

 現在、固定価格買い取り制度により、投資回収に見通しがつくようになったことで、地域において、再生可能エネルギー分野の投資が活性化しつつあると理解しています。

 引き続き、固定価格買い取り制度の安定的かつ着実な運用を行うとともに、予算、税制措置、規制改革などにより、地域資源を活用する小規模分散電源として再生可能エネルギーの導入が拡大するよう、必要な取り組みを行ってまいります。

 電力システム改革による電気料金への影響などについてお尋ねがありました。

 今回の法案では、一般家庭向けの電気料金については、競争が働くまでの間、国の認可等の規制を残すこととしており、事業者向けの料金が下がり、一般家庭向けの料金が上がるような事態は、想定しておりません。

 また、小売全面自由化を実施することにより、これまで一般電気事業者が独占的に電気を供給していた約七・五兆円の電力市場が開放されることから、電力の供給者にとっては大きなビジネスチャンスとなり、消費者は、電力会社や料金メニューなどを自由に選ぶことが可能となります。

 これにより、例えば、ピーク時とピーク時以外の料金に差をつけることで、需給逼迫時に需要家が進んで節電を行うなど、柔軟な電力供給体制の実現が期待されます。

 こうしたダイナミックなイノベーションが起こり、コスト高や供給不安といった課題が解決されることが、一つの理想だと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 田嶋議員にお答えいたします。

 私には、六問の質問をいただきました。

 最初に、電力消費の抑制策の成果についてでありますが、震災後、数値目標つきの節電要請のほかに、省エネに資する先端設備の導入支援や、柔軟な電気料金メニューの導入促進といった、需要面の対策を講じてまいりました。

 これらの成果を我慢の節電か否かで切り分けることは困難な面もありますが、二〇一二年度の電力九社の販売電力量は、震災前に比べ、六%減少しました。さらに、ピーク時の電力については、一〇%減少いたしました。

 これらの数字は、経済動向や天候の影響も含むものであり、単純に成果を確定することはできませんが、一連の需要抑制の努力が確実に定着しているものと考えます。

 なお、ピーク時電力の減少分を他のエネルギー源に置きかえて機械的に試算することも計算上は可能と考えますが、原子力発電は、昼夜を問わず安定的に電力を供給するベースロード電源であり、ピーク時の電力の減少分を単純に原発基数に置きかえることは、さまざまな誤解を招くものと考えます。

 次に、現在の自由化部門の市場の状況と、これまでの部分自由化の評価と課題についてでありますが、本年四月一日時点の新規参入者である特定規模電気事業者は百九十二社、市場シェアは、自由化された需要の約三・五%であります。

 また、電気料金は、部分自由化により一七%程度低下しましたが、震災後は上昇に転じております。

 全体として、一般電気事業者による地域を超えた直接的な競争がほとんど生じておらず、十分な競争を促すにはさらに大胆な改革が必要と考え、今回の法案を提出したところであります。

 続いて、新規参入の促進と競争環境の整備についてでありますが、電力システム改革においては、広域系統運用の拡大、発電、小売の全面自由化、送配電部門の一層の中立化、卸電力市場の活性化といった取り組みを順次進めていくこととしており、これらが相まって、適正な競争環境が生み出されるものと考えております。

 小売全面自由化に先立って、適正な競争環境が整備されるよう、現在、卸電力市場の活性化やスマートメーターの導入促進等に着手しているところであります。

 次に、経過措置として継続する料金規制の期間について御質問をいただきました。

 料金規制の撤廃時期は、昨年成立した第一弾改正法のプログラム規定において、法的分離の実現と同時か、それ以降とされており、今後の競争環境の状況を踏まえて判断をしてまいります。

 適正な競争環境が整っていない場合には、電力システム改革の第三段階後も、一定期間、この経過措置が残ることはあり得ると考えております。

 続いて、全国送電網のボトルネック解消のための追加的な容量確保と、広域メリットオーダーによるコスト削減効果について御質問をいただきました。

 周波数変換設備は、二〇二〇年度末までに、現在の百二十万キロワットから二百十万キロワットに、北本連系線は、二〇一八年度末までに、六十万キロワットから九十万キロワットに増強することとなっております。

 さらなる増強の必要性につきましては、今後、広域的運営推進機関が中心となって検討していくこととなります。

 また、全国レベルで低廉な電源から順に利用するいわゆる広域メリットオーダーが実現した場合には、燃料費等のコストを年間一千七百億円程度削減できると試算をいたしております。

 最後に、広域的運営推進機関による電源建設者の募集についてでありますが、御指摘のとおり、広域的運営推進機関は来年をめどに設立することとしておりますが、電源建設者を募集する業務は、小売全面自由化の実施と同時、すなわち、平成二十八年をめどに開始することとなります。

 また、広域的運営推進機関が電源建設者を募集するに当たっては、電力需給の状況に応じて、例えば、ピーク電源やベースロード電源といった、立地地点やコスト以外の公募の要件も課すことを想定いたしております。

 現時点においては、特定の種類の電源が適用対象から排除されているものではないと認識をいたしておりますが、詳細につきましては今後検討してまいりたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次に、木下智彦君。

    〔木下智彦君登壇〕

木下智彦君 日本維新の会、木下智彦です。

 私は、日本維新の会を代表して、ただいま議題に上がりました政府提出の電気事業法等の一部を改正する法律案について質問を行います。(拍手)

 まず初めに、本日閣議決定された第四次エネルギー基本計画について一言申し上げます。

 今回の電気事業法等の一部を改正する法律案を審議する上で、政府が震災後のエネルギー政策を再構築するための指針とするとうたうこのエネルギー基本計画の内容を十分に踏まえた議論が展開されることは、必要不可欠です。

 当初、昨年末には閣議決定がなされると言われていたエネルギー基本計画は、年を越し、二月に行われた東京都知事選の時期での閣議決定は避けられ、その後も、与党内での調整に時間がかかり、本日まで閣議決定が先送りされてきました。

 エネルギーをめぐる環境は、あの痛ましい災害に見舞われた三年前の東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故を初めとして、国内外で大きく変化しました。それにより、我が国のエネルギー政策は大規模な調整を求められる事態に直面することとなったことで、それまで描いてきたエネルギー戦略を白紙から見直したわけですから、議論に時間がかかったことについては、理解はできます。

 しかしながら、エネルギー基本計画と密接にかかわる今回の本法案を、閣議決定と同日にこの本会議場をもって審議をスタートさせるのは、余りに拙速だと言わざるを得ません。強く抗議をいたします。

 今後、経済産業委員会を中心に審議が展開されるものと思われますが、このエネルギー基本計画も含め、ぜひとも、十分な審議時間を確保し、熟議がなされることを要望いたします。

 その上で、政府が示すべきエネルギー政策を念頭に置いて、今回の質問をさせていただきます。

 最初に、政府の考えるエネルギーのベストミックスについて質問いたします。

 今回の第四次エネルギー基本計画には、エネルギー政策の基本的視点として、安定供給、コスト低減、環境負荷低減、安全性の四項目が示され、各エネルギー源の強みが生き、弱みが補完される、強靱で、現実的かつ多層的な供給構造を実現するとうたっています。

 しかしながら、各エネルギー源のベストミックスについては、数字をもって示されておりません。これでは、幾ら、エネルギー基本計画で電力需要に対応した電源構成を分析しても、具体的な目標を定めたとは言えず、このままでは絵に描いた餅になりかねません。

 本法案では、政府が掲げる電力システム改革における小売参入の全面自由化が主な目的となっており、今まで一部が自由化されていた発電部門も含め、新規事業者の参入機会をより促進するものと期待したいところではありますが、政府が具体的な数値をもって示さない、もしくは示せないことで、事業者が、将来性のある、いわば事業性の高い発電方法が何であるのかを判断できず、高いリスクを感じて参入を断念することもあり得ると考えられ、その意味でも、早期の指針が示されるべきではないでしょうか。

 そこで、総理にお伺いします。

 政府は、電源構成についてのベストミックスの目標をできる限り早く決定するとしていますが、それはいつごろになるのか、検討の進捗状況もあわせてお答えいただきたいと思います。

 また、このベストミックスを考える上で最大の論点となる、脱原発依存のロードマップについて質問します。

 今回のエネルギー基本計画には、冒頭、原発依存を可能な限り低減する、東京電力福島第一原発の事故で被災された方々の心の痛みにしっかりと向き合い、寄り添い、福島の復興再生を全力でなし遂げるという趣旨が書かれています。

 原子力発電の位置づけについては、「優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」、原子力発電の依存度については、「省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」と表記されています。

 非常に抽象的な書き方ですが、原子力発電の依存度を可能な限り低減させるためには、現実的に実行可能なロードマップを作成し、それをきちんと提示し、明確な目標を掲げることが重要だと考えます。

 また、ロードマップを示さないうちに各地の原子力発電所を再稼働させるのは、幾ら世界で最も厳しい水準の規制基準をクリアしたといえど、全体的な計画ができていない状態で個別に判断することとなり、なし崩し的に、無計画な再稼働を容認してしまうことになるのです。

 これでは、その先にあるべき理想的なロードマップの作成にまで大きな影響を与えてしまうことが懸念されるのです。この状態では、再稼働については、多数の国民には理解していただけないのではないでしょうか。

 政府は、原子力発電の依存度低減のためのロードマップの作成に着手しているのか、作成しているのならいつ発表する予定なのか、安倍総理、お答えください。

 次に、電気事業の小売参入の全面自由化についてお伺いします。

 本法案においては、現在、地域独占の一般電気事業者にしか認められていない、一般家庭を初めとした全需要家への電気の供給を自由化することが一つの目的だと承知しておりますが、その際には、現行の一般電気事業者と新規参入事業者が公正な条件のもとで市場が自由化されることが重要だと考えます。

 一方、本法案において、小売全面自由化後の需要家保護のための経過措置として一定期間料金規制を継続し、競争が不十分な中で電気料金の自由化を実施することによって電気料金が結果的に引き上がることがないようにするとなっていますが、果たして、この状態で小売の全面自由化と言っていいのでしょうか。

 また、これが自由化のための経過措置であるとした場合、その経過措置の解除については実際に競争が進展しているか確認した上で行うとなっているが、このような、価格が一定の状態で、何をもって競争が行われると言うのでしょうか。また、どのようになったときが解除のタイミングとお考えなのでしょうか。茂木大臣、具体的なケースをもって、明確な御答弁をお願いします。

 また、本法案において、現行の地域独占を行っている一般電気事業者は、発電事業、送配電事業、小売電気事業の三事業を兼業することとなり、現行の体制と同様な状態です。この状態でありながら、送配電事業にかかわる事業は、電気の安定供給を維持することを目的に総括原価方式を維持することになるとされており、その送配電にかかわる託送料を小売電気事業者から収受し、小売電気事業者は需要家から収受することとなっています。

 しかし、既存の独占的な一般電気事業者の法的分離も視野に入れたとしても、実質的にこの三事業が切り離されない現行の一般電気事業者が発電事業と送配電事業を行った場合、果たして、送配電にかかわるコストを発電にかかわるコストと明確に区別して公正に総括原価として算出して、新規参入も含めた小売事業者に請求すると言えるのでしょうか。実際には発電にかかわるコストとすべきものを意図的に配送電コストと見せたとしても、第三者が正確に判断することはできるのでしょうか。

 これが恣意的に行われれば、ほかの発電事業者の価格競争力を奪うおそれがあり、自由な市場の形成を阻害する要因となり得るのです。政府として、これらに対する防止策を講ずるべきと考えますが、具体的な対策があるのか、茂木大臣にお聞きします。

 次に、スマートメーターの導入についてお聞きいたします。

 電力システム改革を推進するためのインフラとして、政府は、本法案とは別ではありますが、二〇二〇年代の早期に全世帯、全工場にスマートメーターを導入する、これを目標に掲げております。それが実現すれば、電力を使用する約八千万の企業や家庭でスマートメーターによる自動検針が可能になり、三十分単位の電力使用量に合わせた柔軟な料金設定などが実現する可能性があり、需要家は、電気を選べる自由を獲得し、大きなメリットとなります。

 昨年九月、経産省により開催されたスマートメーター制度検討会で、同デバイスの導入状況が報告されました。それによると、契約電力が五百キロワット以上の特別高圧・高圧大口の利用者に対しては、その八割で設置が完了していて自動検針を実施済みですが、一方で、電力使用量の少ない高圧小口や低圧の利用者には、二%しか設置されていません。

 沖縄を除く九地域で導入が完了するのは、今から十年はかかり、二〇二三から二六年とされており、政府の目標である二〇二〇年代の早期からは、若干おくれる状況にあると言われています。政府が掲げる目標に対して、電力会社の対応が追いついていないのが現状なのです。

 電気の小売料金の全面自由化を実現するためには、スマートメーターの早期全面導入は不可欠です。しかし、現在、この規格、仕様、さらには導入までさえも主導的に行っているのは、地域独占状態にある現行の電気事業者です。

 本来、電気を売る電気事業者が、電気をより多く、高い値段で売ろうとするのは、悲しいかな、当然の道理です。これらの電気事業者が、電気を少なく、安く使用することを目的とするスマートメーターを本気で早期に開発導入することを期待すること自体が間違っていると言わざるを得ないのです。

 この状態を解決するには、現行の地域独占状態の電気事業者に開発導入を委ねるのではなく、早期に規格をオープン化して、広く一般の知恵を活用したさまざまなサービスや新たな事業が生み出されることを期待すべきと考えますが、茂木大臣、政府のお考えについてお聞かせください。

 続いて、電力会社の一般担保つき社債についてお伺いします。

 電力会社による社債は、発電所などの電力事業の全資産を担保にした、一般担保つき社債と呼ばれ、基本的には、通常の融資や電力会社が起こした事故による被害者への賠償金などよりも優先して返済される仕組みとなっています。

 東京電力は、平成二十六年一月の新・総合特別事業計画において、一般担保つき社債の取り扱いについては、今後新規に契約される融資に関しては、できるだけ早く一般担保つき社債形式によらないこととすること、一般担保総量が毎年度継続的に減少していく運用とすることという方針が示されましたが、一般担保つき社債がゼロにならない限り、新規参入事業者と公正な条件で自由競争がなされるとは言えません。

 現在、企業としての体力が衰える各電力会社が安定的に電力供給を行えるための措置であることには一定の理解が示せたとしても、このように、被害者救済にも優先し、電力自由化も妨げる仕組みとして、一体、いつまで、既存の独占的電気事業者にのみこの一般担保つき社債の起債を認めるつもりなのですか。茂木大臣、政府の御見解をお聞かせください。

 本法案の目的でもある電力システム改革は、我が国の電気事業のあり方を根底から大きく変えるものであり、関連する既得権益化したさまざまな力からの抵抗は、すさまじいものであります。

 この力に打ちかち、我が国の全ての国民が豊かな生活を享受できることを切に願い、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 木下智彦議員にお答えをいたします。

 原子力発電の依存度低減とベストミックスについてのお尋ねがありました。

 エネルギー政策については、国民生活や経済活動に支障がないよう、責任あるエネルギー政策を構築することが、何より重要です。

 原発については、安全性の確保を大前提に、徹底した省エネルギー社会の実現と、再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、原発依存度は可能な限り低減するというのが基本方針です。

 原発依存度を含む日本の将来のエネルギーミックスに関しては、新たなエネルギー基本計画を踏まえ、再生可能エネルギーの導入状況、原発再稼働の状況などを見きわめ、できるだけ早くエネルギーのベストミックスの目標を設定していきたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 木下議員にお答えをいたします。

 私には、四問のお尋ねがございました。

 最初に、規制料金の撤廃についてでありますが、今回の法案は、小売参入の全面自由化を行うものでありますが、料金規制を撤廃するまでの間も、小売参入の自由化で競争が促進されること、既存の電力会社も、規制料金は残すものの、需要家にとってメリットのある自由な料金メニューもつくれるようにすることによって、経過措置の期間においても競争の効果が期待できるものと考えております。

 料金規制の撤廃時期については、今後の競争環境の状況を踏まえることになりますが、具体的なケースということで申し上げれば、例えば、新規参入の状況、既存事業者間の競争の状況、規制料金ではなく自由料金を選択している需要家の割合がどれくらいになるか、こういった勘案すべき対象項目がある、そのように考えているところであります。

 次に、託送料金のチェックのあり方についてでありますが、現行法上、託送料金は届け出制ですが、不適切な託送料金の設定が行われないよう、今回の法案においては、託送料金の値上げについて認可制を導入しておりまして、送配電部門のコストを厳正に査定してまいりたいと考えております。

 続いて、スマートメーターの仕様などについて御質問をいただきました。

 スマートメーターの仕様については、電力会社以外の関係事業者も参加する検討会において、基本的要件を取りまとめました。この結果を踏まえ、既に東京電力においては、広く国内外から意見を募集し、スマートメーターの仕様を決定いたしております。

 その他の電力会社も、スマートメーターの仕様の共通化や公開、調達に当たっての一般競争入札の実施を表明しております。

 独自仕様ではなく、国際標準に準拠した仕様により、競争を通じて、より低コストでスマートメーターの調達が行われるよう、引き続き、しっかり対応してまいります。

 なお、スマートメーターの導入計画につきましては、東京電力管内では二〇二〇年度末まで、日本全体では二〇二四年度末までに、すなわち、二〇二〇年代の早期にスマートメーターの導入を完了する計画となっております。

 最後に、一般担保について御質問いただきました。

 今回の法案では、現在の一般電気事業者に引き続き一般担保つき社債の発行を認めることとしておりますが、その後、法的分離を規定する第三弾改正に際して、電力の安定供給に必要となる資金の調達に支障を来さないようにする観点に加え、事業者間の適正な競争関係を確保するという観点も含め、一般担保のあり方についてゼロベースで検討していくことといたしております。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、江田康幸君。

    〔江田康幸君登壇〕

江田康幸君 公明党の江田康幸です。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する法律案について、安倍総理大臣並びに茂木経済産業大臣に質問をいたします。(拍手)

 東日本大震災から三年、本日、我が国の中長期的なエネルギー政策の指針となる、新たなエネルギー基本計画が閣議決定されました。

 基本計画にもあるとおり、東電福島第一原発事故で被災された方々の心の痛みにしっかりと向き合い、寄り添い、福島の復興再生を全力でなし遂げるとともに、原発の依存度を可能な限り低減させることをエネルギー政策再構築の出発点とすべきであります。

 公明党は、国民生活への影響を考慮しつつ、原発依存度を可能な限り低減させるため、省エネルギーとともに、再生可能エネルギーの数値目標を基本計画に盛り込むよう強く訴えてまいりました。

 この結果、再生可能エネルギーについては、これまでの計画を踏まえて示した水準をさらに上回る水準の導入を目指すこと、また、再生可能エネルギー拡大の司令塔として関係閣僚会議を創設し、所管省庁の連携を強化することが盛り込まれました。

 与党プロセスを通じて、基本計画は、公明党が目指すエネルギー政策に沿った内容になったと考えております。あとは、政府が、本気で、本計画に沿ったエネルギー政策を着実に実行することであります。総理の決意をお聞かせください。

 総理は、ことしの施政方針演説においても、電力システム改革について触れられており、今般の小売の全面自由化によって、ベンチャー意欲の高い皆さんに参入してもらい、ダイナミックなイノベーションを起こしてほしいと述べられております。

 昨年の電力システムに関する改革方針の閣議決定、臨時国会での電力システム改革の第一弾法の成立、そして、今回、与党の審議を経て、小売の全面自由化を実施するための本法案が国会に提出されたことを踏まえ、多くの新しい企業が電気事業への参入の意思を表明しております。安倍政権の成長戦略を進めていくためにも、この流れを決してとめてはならないと考えております。

 改めて、成長戦略において電力システム改革が果たす役割について、総理に伺います。

 それでは、本法案の重要項目について質問をさせていただきます。

 まずは、電力システム改革の目的の一つである、電気の安定供給について伺います。

 御承知のとおり、電力は、社会インフラの基盤であり、我々の生活に欠かせないものであります。

 今回の自由化によって、地方、特に山間部や離島に住んでいる人にとっては、安定した電気の供給が受けられなくなるのではないかという懸念があるかと思います。この点に関して、今回の法案では、送配電事業者が、離島の安定供給について最終責任を負う形になっていると認識しております。

 山間部や離島などの特定の地域において安定供給に支障が生じたりすることのないよう、今後、具体的にどのような措置を講ずることとしているのか、経済産業大臣に伺います。

 次に、電力システム改革の目的の一つである、電気料金の最大限の抑制について伺います。

 電気料金の抑制を達成するためには、従来の高コスト構造の要因であった総括原価方式の撤廃、地域独占の解消だけでなく、新規参入者の促進策を図ることが必要であると考えます。

 さらには、需要側の消費パターンを変化させるディマンドレスポンスの拡大、昼は高く、夜は安いといったピークシフト料金などの多彩な料金メニューの普及、広域連系の拡大による安い電源の活用を進めていくべきであると考えます。

 既に、北九州市における実証実験において、需給状況の変化に応じて電気料金を日々変動させ、節電行動を促すことで、ピーク時における電力需要を二割、そして電気料金を三割削減できるという結果も出ております。

 経済産業大臣、これらについて、どのようにお考えでしょうか。

 また、過去の自由化におきましては、新規参入者の参画が少なく、自由市場の三・五%しか新規参入が進んでおりません。

 この教訓を踏まえ、実質的な競争を促し、電気料金を抑制していくためには、現状、全体の一%にも満たない取引量にとどまっている卸市場の取引を活性化するなど、抜本的な取り組みを行うことが必要不可欠と考えます。経済産業大臣の所見をお伺いいたします。

 続けて、電力システム改革の目的の一つである、電気の需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大についてお伺いします。

 震災以降、環境に優しい電気が買いたいなど、電気の買い方の選択肢に関してさまざまなニーズが生まれてきております。

 このような需要家のニーズに応じたさまざまなメニューをつくるためには、スマートメーターの導入が不可欠であります。ただ、残念ながら、電力会社が現在提出しているスマートメーターの導入計画では、二〇一六年に開始される小売全面自由化に間に合うものになっておりません。

 そこで、経済産業大臣に伺います。

 電力会社に計画の前倒しを求めるとともに、例えば、新しい電力会社や新しいメニューを選びたいという需要家に優先的にスマートメーターを設置するなどの措置が必要と考えますが、いかがでしょうか。

 ここで、再生可能エネルギーの導入拡大について伺います。

 冒頭でも申し上げましたとおり、再生可能エネルギーの大幅な導入拡大が、新たなエネルギー基本計画においても最重要課題と位置づけられております。

 一昨年からスタートした固定価格買い取り制度により、再生可能エネルギーの導入量は約三割増加してきており、引き続き、この制度を維持強化していくことが重要であると考えます。

 また、再生可能エネルギーの発電コストを引き下げるため、最先端技術の研究開発を推進していくことも重要です。

 島国である我が国は、浮体式洋上風力発電について高いポテンシャルを有しており、現在、福島県沖や、長崎県の五島列島沖でも実証実験が行われているところでございます。

 また、今後の有力なエネルギーの一つとして考えられる水素エネルギーについては、エネファーム、燃料電池自動車など、日本が高い技術力を有する分野であり、福岡では、産学官連携のもと、最先端の次世代燃料電池の開発や水素タウンの実証事業が進められております。

 これらの高いポテンシャルを有している再生可能エネルギーの導入拡大を進めていくためには、固定価格買い取り制度の着実な運用と維持強化、さらに、再生可能エネルギーの技術開発を車の両輪として進めていくべきだと考えます。このことについて、どのようにお考えか、経済産業大臣にお伺いします。

 さらに、再生可能エネルギーの導入拡大のためには、送電網の整備が必要不可欠であります。

 北海道や東北地方の一部は風力発電のポテンシャルが大きい地域でありますが、十分な送電網が存在しないため、そのポテンシャルを十分に発揮できておりません。このような課題を克服するために、政府は、北海道において送電網整備実証事業を開始したと認識しております。

 このように、一般電気事業者任せでは進んでこなかったこれらの再生可能エネルギーの導入に向けた送配電網整備については、今後設立される広域的運営推進機関や政府が前面に立って推進していくべきだと考えますが、経済産業大臣、いかがでしょうか。

 最後に、電力システム改革第三段階までの着実な実施に向けての総理の決意についてお伺いをいたします。

 電力システム改革は、広域系統運用の拡大、今般の電力小売の全面自由化、そして発送電分離の三つをなし遂げて初めて効果が上がるものであります。

 今回の第二弾による小売の全面自由化のみではなく、発送電分離を行う第三弾までなし遂げなければ、意味がありません。まだまだ道半ばであります。

 公明党は、昨年の参院選の公約でも、三段階全ての改革を遂行することを約束しております。

 改めて、この大改革をやり遂げるための総理の決意についてお伺いし、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 江田康幸議員にお答えをいたします。

 エネルギー基本計画の実行についてのお尋ねがありました。

 エネルギー基本計画については、公明党の皆様に大変建設的な御議論をいただき、与党において丁寧に議論を進めていただきました。その結果、しっかりとしたエネルギー政策の方向性を示すことができました。

 今後、本計画で示した方針を踏まえて、国民生活や経済活動に支障がないよう、責任あるエネルギー政策の推進に全力を挙げて取り組んでまいります。

 成長戦略において電力システム改革が果たす役割についてお尋ねがありました。

 経済再生に向けては、デフレからの脱却を進めるとともに、規制改革などを通じ、成長分野の可能性を引き出すことが必要です。

 日本再興戦略においては、エネルギー産業を育て世界市場を獲得するという観点や、電力・エネルギー制約を克服するという観点から、電力システム改革を重要な柱として位置づけています。

 今般の法改正により、電力の小売を自由化し、ダイナミックなエネルギー市場をつくってまいります。

 電力システム改革の遂行についてのお尋ねがありました。

 エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築していかなければなりません。

 そのためには、三段階の電力システム改革を断行することが必要です。昨年、電気事業法の改正で定めた改革プログラムに基づき、発送電の分離等もしっかりと実行してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 江田議員にお答えをいたします。

 私には、六問いただきました。

 最初に、山間部や離島への電力の安定供給についてでありますが、今回の法案では、送配電線の整備コストの高い山間部でも、送配電網が確実に維持され、安定供給が実現されるよう、送配電部門については、料金制度により投資回収を保障する仕組みとしております。また、発電コストが高い離島であっても、離島以外の地域と同程度の料金での安定供給を一般送配電事業者に義務づけることといたしております。

 次に、新規参入の促進と多様な料金メニューの普及等によります電気料金の抑制について質問をいただきました。

 電気料金の最大限の抑制のためには、新規参入の促進や、既に北九州等で実証実験も行いました多様な料金メニューの普及、広域的に低廉な電源の活用を図ることが必要という点は、まさに、議員御指摘のとおりであります。

 このため、今回の法改正で、電気の小売業への参入を自由化し、あわせて、電力会社の切りかえ方法などについて消費者への適切な情報提供を行います。また、小売全面自由化により、多様な料金メニューの設定を可能とするほか、広域的な系統運用の拡大等によりまして、全国レベルの低廉な電源の活用を図ってまいります。

 続いて、実質的な競争の促進と卸取引活性化についてでありますが、今回の改革が実質的な競争の拡大につながるよう、電力システム改革の一環として、発電余力の売買による卸電力市場の活性化とその実施状況のモニタリング、スマートメーターの導入等による、需要家が電力会社や料金メニューを選択しやすくするための基盤整備といった取り組みを、あわせてしっかりと行ってまいります。

 続いて、スマートメーターの導入計画について御質問をいただきました。

 スマートメーターについては、関係する事業者が参加する検討会において、導入加速化に向けた検討を行い、ことし三月、全ての電力会社が、従来の導入計画を前倒しすることを表明いたしました。東京電力管内では二〇二〇年度末まで、日本全体では二〇二四年度末までに導入を完了する計画となっております。

 また、各電力会社は、委員御指摘のように、小売全面自由化の実施時点において、新しい電力会社や新しいメニューを選びたいという需要家に対して、スマートメーターへの交換を遅滞なく行うことを表明いたしております。

 次に、公明党が強力に推し進めてこられた、再生可能エネルギーの導入拡大について御質問をいただきました。

 再生可能エネルギーは、国産エネルギー資源の拡大、地域活性化にも資する分散型エネルギーの普及、そして、低炭素社会の創出に加え、関連産業の創出、拡大という成長戦略の観点からも、極めて重要であります。

 御指摘のとおり、再生可能エネルギーの導入拡大に向けて、投資回収に見通しをつける固定価格買い取り制度の適切な運用を進めていくとともに、車の両輪のもう一方として、低コスト化、高効率化に向けた研究開発、浮体式洋上風力発電の実証研究、燃料電池の高性能化、低コスト化など先端の技術開発等、技術開発の面からも、再生可能エネルギーの導入拡大への取り組みをしっかりと進めてまいります。

 最後に、再生可能エネルギーの導入に向けた送電網の整備についてでありますが、我が国では、風況がよく、大規模な風力発電の立地が可能な場所が北海道や東北に偏っていることから、こうした地域と消費地を結ぶ送配電網の強化が不可欠であり、まずは、北海道、東北における送電網の整備実証に対して、予算措置による支援を実施しております。

 本日閣議決定いたしましたエネルギー基本計画においても、政府が示す方針や広域的運営推進機関が策定する計画に基づき、地域間連系線等の送電インフラの増強を進めることを明記したところであり、国としても、送電網の整備にしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、三谷英弘君。

    〔三谷英弘君登壇〕

三谷英弘君 みんなの党の三谷英弘です。

 私は、みんなの党を代表して、ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 日本に初めての電力会社が誕生したのは明治十六年。そこから、日本全体の工業化が進展するにつれ、一時は八百社を超える電力会社が存在していたと言われています。

 しかしながら、その後、第二次世界大戦を控え、国家として戦時体制を整える中で、昭和十三年、国家総動員法と同時に電力管理法が施行され、国内全ての電力施設を国が接収し、一つの会社のもとでの発送電一元統制化が行われ、全国九ブロック体制がしかれました。

 今のいわゆる九電力体制は、占領時代をかいくぐり、当時の体制が事実上現在に引き継がれたものにほかなりません。

 このような、第二次世界大戦によって生まれ、今なお残る日本のゆがみ、中央集権体制を打破すること、我々みんなの党は、このことは、当たり前の自由社会の構築のために不可欠だと考えています。その意味でも、電力システム改革は断行せねばならず、この改革を道半ばで終わらせることは、絶対に避けなければなりません。

 そこで、まず、総理に伺います。

 本法案は、電力の自由化に向けた三段階の法律のうち、二段階目の法案です。電力自由化に向けてさまざまな障害があることが容易に予想される中、電力自由化を完成させる時期と電力自由化の全工程を進める覚悟についてお答えください。

 以下、電力自由化を実効あらしめるために考えるべき論点を中心に質問させていただきます。

 まず、本法案で認められる、小売の自由化について伺います。

 電力の小売に関して、単に一般の事業者に門戸を開放したからといって、それによって本当の意味での小売の自由化が進むわけではありません。

 新規の電力の小売業者が消費者に選んでもらうためには、新規参入業者に何らかの武器が必要です。通信の自由化の場合と同じように、新規参入業者が安い電力を消費者に供給できるかが一つの焦点になります。

 この点、競争によって小売価格を下げるためには卸電力市場の活性化が望まれますが、具体的にどのような発電コストの電力が市場に出てくるかは、わかりません。

 既存の電気事業者が発電コストの低い電力の供給を独占する一方で、高い電力ばかりが卸電力市場に出てくるのでは、安い電力を消費者に供給させるということはできない。小売の自由化は、絵に描いた餅で終わってしまいます。この結果を避けるための方策を持っておられるか、まず伺います。

 また、小売事業者においては、消費者保護の観点からも小売業者は電力を確保すべしという供給力確保義務規制が課せられているのは当然です。しかし、必ず特定の発電事業者との関係が必要だということになれば、新規の参入障壁になることも自明の理です。

 そこで、供給力確保義務としては、どの程度のものを想定されているのか、伺います。

 次に、小売業者と消費者との関係です。

 小売への参入が自由化されても、現実問題として、消費者が簡単に小売業者を乗りかえられる仕組みがなければ、競争は進みません。

 そこで、消費者が小売業者を簡単に比較するための情報開示や、乗りかえに必要な手続や時間を減らす工夫が必要です。消費者の利便性を高めるため、どのような工夫が必要と考えられるか、茂木大臣のお考えをお聞かせください。

 送配電事業の料金については、地域独占と料金規制を行って、サービスの安定性を確保することになっています。これは、離島などのユニバーサルサービスや、インフラの建設、保守管理を考えれば、必要です。

 とはいえ、総括原価方式だからといって、無駄にコストを積み上げて、料金が割高になるようでは困ります。送配電事業についても、コスト意識が働くよう、料金が適正かどうかをチェックする仕組みが不可欠だと考えますが、そのための体制をどうするか、政府の方針を伺います。

 最後に、本日閣議決定されましたエネルギー基本計画について質問します。

 電力自由化を通じた脱原発の実現を図るみんなの党としては、原発が重要なベースロード電源と位置づけられたことを含め、残念に思う点は多々ございます。

 が、それはともかく、二月の政府案提示から今回の決定まで十分な時間があったにもかかわらず、今回の計画では、将来的な原発の比率や再生可能エネルギーの比率について数値目標は明示されず、踏み込み不足の感は否めません。

 なぜこれらの数値目標を明記できなかったのか、お答えください。

 現在、我が国の再生可能エネルギーの導入は、太陽光発電に大きく偏っています。しかし、世界有数の資源量を持つ地熱発電、大規模発電が可能な洋上風力、新技術の開発が進むバイオ燃料など、太陽光以外にも推進すべきものが多くあります。

 再生可能エネルギーの中でも、一つに偏らず、ベストミックスを追求していくべきだと考えます。供給源の多様化について、政府の取り組みをお教えください。

 改めて言うまでもなく、みんなの党は、保守の政党です。しかし、保守ということは、変革をしないということではありません。常に、ダイナミックに移り変わる世の中にあって、守るべきものは何かを考えるとき、我々は、先祖の思いの中にその答えは書いてあると信じています。

 電力の自由化についても、しっかりと先祖の思いに耳を傾けて、変革を恐れることなく、全力で取り組んでまいりたいと考えています。

 以上で質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 三谷英弘議員にお答えをいたします。

 電力の自由化についてお尋ねがありました。

 電力システム改革については、昨年四月に閣議決定した政府の改革方針及びさきの臨時国会で成立した第一段階の法律の改革プログラムに基づき、遅くとも、二〇二〇年、東京でオリンピック・パラリンピックの選手たちが競い合うころには改革を完了する決意です。

 そのため、来年も、第三段階の改革の実現のため必要な法案を提出することを目指すことを含め、改革プログラムとして示された内容を、可能なものから速やかに実行してまいります。

 卸電力市場の活性化と競争の促進策についてのお尋ねがありました。

 これまでの部分自由化では競争や参入が必ずしも活発に行われてこなかったことを踏まえ、今回の改革が実質的な競争の拡大につながるよう、参入しやすい電力市場を整備することが重要です。

 このため、まずは、卸電力市場の活性化に向けて、既存の電力会社による卸電力取引所の活用状況について、高い電力ばかりが出されているのかも含め、政府として、継続的なモニタリングを行っていくほか、スマートメーターの早期導入により需要家の選択を容易にするなど、新規参入と競争を促すための環境整備に取り組んでまいります。

 我が国の中長期的な電源構成についてのお尋ねがありました。

 エネルギー政策については、国民生活や経済活動に支障がないよう、責任あるエネルギー政策を構築することが何より重要です。

 今回のエネルギー基本計画では、各エネルギー源の特性を明確にするとともに、それらを電源として使用する際の特徴を整理しております。

 具体的には、エネルギー源ごとに、その特性を踏まえ、ベースロード電源、ミドル電源、ピーク電源に、明確に区分しました。

 その上で、原発依存度や再生可能エネルギーの導入比率を含めた日本の将来のエネルギーミックスに関しては、新たなエネルギー基本計画を踏まえ、再生可能エネルギーの導入状況、原発再稼働の状況などを見きわめていく必要があることから、今回は数値を示しておりませんが、できるだけ早くエネルギーのベストミックスの目標を設定していきたいと考えております。

 再生可能エネルギーの供給源の多様化についてのお尋ねがありました。

 現在、水力を除いた再生可能エネルギーの導入量の九割以上が太陽光に集中していますが、これは、風力や地熱など他の再生可能エネルギーの開発期間が、最低でも数年かかることが背景です。風力や地熱など、他の再生可能エネルギーは、現在、多くの事業が計画段階にあり、今後、着実に導入が進んでいくと考えています。

 政府としては、風力や地熱等の導入も加速させるため、固定価格買い取り制度の適切な運用に加え、送電インフラの整備や、規制改革、技術開発などに取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 三谷議員にお答えをいたします。

 最初に、小売電気事業者に対する供給力確保義務についてでありますが、新規の参入障壁にならないようにしてまいります。

 今回の法案によりまして、小売電気事業者に確保を求める供給力は、みずから電源を保有する以外にも、他の発電事業者との契約による電源の確保や、卸電力取引所からの調達も、その確実性がある限り認める予定でありまして、参入の妨げとならない、過度な規制とはならないと考えております。

 続いて、消費者が小売電気事業者を選びやすくするための工夫についてでありますが、今回の法案においては、小売電気事業者に対して、消費者への契約条件の説明義務や、消費者からの苦情や問い合わせへの対応義務を課すことにより、消費者が電力会社や料金プランを選択するに当たって必要な情報を得られる仕組みとしています。

 また、消費者が小売電気事業者を変更する場合の手続を全国で標準化するなど、消費者が契約の切りかえやプランの変更を容易に行うことができる環境整備にも努めてまいります。

 最後に、送配電事業の料金についてでありますが、今回の法案においては、託送料金の値上げは認可制とし、行政として厳正な査定を行うことといたしております。一方で、値下げについては、届け出制とすることで、送配電事業者に、コストを削減し、値下げを行うインセンティブを付与する仕組みといたしております。

 さらに、こうした託送料金規制などを厳格に行うための、独立性と高度な専門性を有する新たな規制組織を自由化に先立って設立することを想定いたしております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、小池政就君。

    〔小池政就君登壇〕

小池政就君 結いの党の小池政就です。

 前回から約四年を経てようやく決定されたエネルギー基本計画と、昨年に続く電気事業法等の一部を改正する法律案について、結いの党を代表して質問いたします。(拍手)

 まずは、電事法からです。

 法案関係資料を渡された際に驚いたのは、約七百ページにもなる分厚さでありました。しかし、意を決して中身を読み進めていくうちにさらに驚いたのは、その内容の薄さでありました。

 大半は、事業者の定義の変更に伴う機械的な改正であり、肝心の電力自由化の詳細設計については、条文上ほとんど明確化されておらず、別途省令等で定めるとのことであります。政権発足以来常々感じてきた国会軽視という思いを感じさせるものでもあります。

 しかし、六十年ぶりの電力市場改革を国民生活に資するよう徹底的に進めるためにも、明確にお示しいただきたい点があります。

 例えば、原子力発電との関係であります。

 原発は、エネルギー基本計画においても、ベースロード電源とされ、参考資料には、その定義として、発電コストが低廉で昼夜を問わず安定的に稼働できる電源と記されております。

 これまで、事故が起きなくても、たびたび停止し、その安定性には疑義が残るとともに、低廉であるとする発電コストも検証が必要でありますが、政府のとおりであるとするのであれば、十分な競争力を有していることでもあり、今後進められる電力自由化、発送電分離に伴い、電源三法交付金等による立地自治体や原子力発電事業への支援は、見直すべきではないでしょうか。

 また、今回の電力自由化においては、その意に反し、規制なき独占、供給不足による価格の高騰というリスクも内包しており、競争環境の整備を通した新規参入の促進は最重要課題であります。

 しかし、当初予定されていた非対称規制としての一般電気事業者への価格規制はいつの間にか失われつつあり、規模の小さな事業者に負担の大きいインバランス料金制度を置き、資金調達を有利にする一般担保つき社債の発行も既存の一般電気事業者には認め続ける中で、果たして新規参入が進むと考えるのでしょうか。

 また、地域に関係なく価格競争力の高い電源から選択できるようにして日本全体の発電コストを抑制する仕組みを構築する、いわゆる広域メリットオーダーの実現による調達コスト削減には、送配電網の整備を進める広域的運営推進機関と卸取引市場の役割が重要でありますが、両者とも未発達であり、今後、どのようにその役割を実現していくのでしょうか。

 自由化の際の安定供給も重要です。

 今回の市場設計では、発電予備力確保の義務づけがない中で、最終的な供給義務のある送配電事業者はどのようにして安定供給を実現するのか不明であり、方針をお示しください。

 そして、昨年もこの場にて指摘し、この組織のあり方こそが電力自由化の結果を左右するという電力市場の独立規制組織については、本来、中身の議論を始めるべき時期ではありますが、現状、影も形もないところであり、その内容と設置予定について、改めて説明を求めます。

 次に、エネルギー基本計画について質問します。

 計画には、原子力規制委員会の世界最高の規制基準に適合すると認められた場合は原発の再稼働を進めるとあります。しかし、米国でもスリーマイル島の事故を機に事業者と地域自治体双方に義務づけた避難計画の作成や審査体制の整備、また、賠償のスキームやその基軸となる国際的にも特異な原賠法の見直し等、本来起こるはずがないとしていた事故を経験した今、なすべきことは、まだあるのではないでしょうか。

 また、計画では、核燃料サイクル政策の推進と、堂々とうたっております。

 既に、国内外に約四十四トンもの多量のプルトニウムを保有している中、原子力委員会の評価でも、直接処分に比べ、経済性は低く、安全性もほぼ同程度、核不拡散及び核管理のリスクは高くなると指摘され、そのメリットも不明確な核燃料サイクル政策は、見直すべきではないでしょうか。全ては原発がふえていくという前提に立った構造からの脱却が求められています。

 そして、今国会では、海外へ向けてもかじが切られ、衆議院でも、ちょうど一週間前に、自民党、公明党、また民主党の賛成により、日本が原発輸出に向け、失望する被災地の人々をも乗せて、再び動き出しました。

 私も外務委員会での最後の質疑に立ちましたが、幾つかの懸念は、払拭されることはありませんでした。

 その中で、あえて一点、再確認いたします。

 トルコとの原子力協定における核物質の濃縮、再処理に関する改正の手続には、当然、国権の最高機関である国会での承認を必要とすると理解しますが、それでよろしいのでしょうか。トルコからの依頼で含めたが、改正はあり得ないとの答弁でなく、国として締結した協定に明記された条項を説明する義務が政府にはあるはずです。総理の答弁を求めます。

 懸念の一因は、核兵器の不拡散や核物質の管理についての国際的な取り決めの実効性にもあります。現在の核物質の国際管理体制は、十分と言えるのでしょうか。

 最後に。

 総理が成長戦略の柱と位置づける原発輸出は、果たして、国際的な廃炉事業やスマートシティー市場に比べても、将来の可能性は大きいのでしょうか。福島第一原発の事故後、楽観視されていたその国際市場の見通しは、年を追うごとに下方修正され、推進派だった各国の政治状況も変化しつつあります。

 日本は、国内の廃炉対策や自由化を徹底し、国外に着実に広がる廃炉やスマートシティーの国際市場の開拓に全力を傾注すべきではないでしょうか。

 私たちは、国内外で新たに変遷するエネルギーの世界の入り口にいます。

 今の決断が歴史をつくり、歴史に未来は縛られます。内外にわたる日本の歴史を背負いながら今の政策決定を行わなければならない総理が、一番よくわかっているはずです。

 これまで来た道を見詰めて、戻るのでなく、前を向き、新たな未来を開拓していく我々の責務を訴え、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 小池政就議員にお答えをいたします。

 避難計画や規制基準への審査体制の整備、賠償スキームについてお尋ねがありました。

 原子力発電については、安全性を最優先し、原子力規制委員会により、世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められない限り、再稼働はありません。

 あわせて、関係自治体の避難計画の策定、充実に対する支援、原子力規制委員会の審査体制の強化、被害者救済や事故収束について、国が前面に出て、果たすべき役割を果たしていきます。

 核燃料サイクル政策についてお尋ねがありました。

 核燃料サイクルについては、資源の有効活用、高レベル放射性廃棄物の減容化や有害度の低減などの意義があります。

 他方、六ケ所再処理工場の竣工遅延や、「もんじゅ」のトラブルなどが続いてきました。このような現状を真摯に受けとめ、直面する問題を一つ一つ解決していかなければなりません。

 その上で、核燃料サイクルについて、これまでの経緯等も十分に考慮し、引き続き、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、推進してまいります。

 また、核不拡散に貢献し、国際的な理解を得るためにも、利用目的のないプルトニウムを持たないとの原則を堅持してまいります。

 トルコとの原子力協定における核物質の濃縮及び再処理に関する改正の手続についてのお尋ねがありました。

 日・トルコ原子力協定においては、この協定が改正手続に従って改正されない限り、核物質の濃縮、再処理の技術を相手国に移転することはできない旨を定めております。そして、我が国としては、この規定について、改正を行う考えはありません。

 そもそも、我が国としては、日・トルコ原子力協定の対象となる核物質のトルコ国内における濃縮、再処理を認めるつもりはありません。

 その上で、一般論として申し上げると、国会の承認を求める条約を改正する場合には、その改正内容にもよりますが、国会の承認を得ることが、通常、必要になると考えます。

 核物質の国際管理体制についてのお尋ねがありました。

 核物質の国際管理は、これまで、多層的な枠組みに基づいて実施されてきております。

 国際原子力機関、IAEAは、原子力の平和的利用の促進や軍事的利用への転用の防止を目的に、核物質に対する検査を実施してきています。原子力供給国グループは、核兵器拡散の防止を目的に、原子力関連の資機材や技術の輸出に関して、守るべき指針を定めています。核セキュリティーサミットでは、核テロ対策に関して、首脳レベルで議論し、各国の取り組みや国際協力を進めてきております。

 このような核物質の国際管理を強化するため、我が国は、これまで、国際機関や各国との協力を進めてまいりました。

 我が国としては、今後とも、これらの取り組みを通じて、核物質の国際管理体制の強化に、引き続き貢献してまいります。

 原発輸出の将来性についてお尋ねがありました。

 原発輸出につきましては、市場としての将来性とは別に、東京電力福島第一原子力発電所事故の経験と教訓を世界に共有することにより世界の原子力安全の向上に貢献していくことは、我が国の責務であると考えております。私も数多くの首脳と会談してきましたが、日本の原子力発電の安全性や信頼性に対する期待は極めて高いと実感しております。

 こうした相手国の意向や事情を踏まえつつ、対応してまいります。

 なお、原発と廃炉事業やスマートシティーとの国際的な市場の可能性の比較につきましては、各国の規制制度等の前提条件により値が大きく変動するため、将来性を一概に判断することは困難であります。

 廃炉につきましては、日本における経験を国際的に共有することで、海外における安全な廃炉に最大限貢献してまいりたいと思います。

 スマートコミュニティーの国際市場の開拓は、我が国の成長戦略としても重要です。政府としても、日本企業による海外展開をしっかり支援してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 小池議員にお答えをいたします。

 五問いただきました。内容の濃い答弁に努めたいと思います。

 最初に、電源三法や電源開発促進税等の見直しについてでありますが、エネルギーの特性を考えると、あらゆる面ですぐれたエネルギー源はなく、現実的かつバランスのとれたエネルギー需給構造をつくっていくことが必要であります。

 原子力、水力、地熱発電等については、エネルギー需給構造の安定性に寄与する一方、自由化後も、自治体など関係者の理解を得ながら発電用施設の運転の円滑化等を図る必要性が高いことから、引き続き、電源三法に基づき、電源開発促進税を財源として、適切な措置を継続していく必要があると考えております。

 次に、新規参入の促進について御質問いただきました。

 広域系統運用の拡大、送配電部門の一層の中立化、卸電力市場の活性化といった取り組みを順次進めることで、新規参入を促進してまいります。

 なお、御指摘の点につきましては、まず、既存の電力会社の規制料金は、当面残ります。

 また、送配電事業者が小売電気事業者等の供給の過不足を補う際の料金でありますインバランス料金は、需給バランスの維持や事業者間の公平性を確保する観点から、既存の事業者と新規参入者のいずれもが負担するものであります。

 さらに、一般担保のあり方につきましては、法的分離を規定する第三弾改正に際して、ゼロベースで検討していくことといたしております。

 続いて、広域メリットオーダーの実現についてでありますが、広域メリットオーダーを実現するため、発電分野における参入規制をなくし、多様な電源の活用を可能とし、さらに、卸電力市場の活性化により、全国レベルでの低廉な電源を活用しやすくしてまいります。

 また、このように全国レベルでの取引を進めるためには、地域間連系線の容量が十分でないなどの課題に対応することが必要であり、広域的運営推進機関を中心に、地域間連系線等の広域的な送電インフラの増強や、その運用の柔軟化といった取り組みを、しっかりと進めてまいります。

 安定供給の実現について御質問をいただきました。

 今回の法案においては、一般送配電事業者に、その供給区域における安定供給の義務を課すことといたしております。

 このため、一般送配電事業者は、安定供給を維持するために必要な電気を発電事業者との契約等により確保するとともに、これらの発電設備に対して電気のたき増しなどの指令を行うことにより、安定供給義務を果たすこととなります。

 最後に、新たな規制組織について御質問をいただきました。

 電力システム改革を進める中で政府が監督等を適切に行うためには、電気事業に係る規制をつかさどる行政機関のあり方を見直し、その機能を一層高めることが必要であります。

 具体的には、自由化された市場の監視、託送料金規制の厳格な実施などに万全を期すため、行政による監視機能を一層高めるべく、独立性と高度な専門性を有する組織とすることが重要と考えております。

 今後、当該組織の具体的な権限、機能、組織設計等について詳細な検討を行い、改革プログラムに基づき、二〇一五年を目途に新たな規制組織に移行させるべく、必要な準備を進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣下村博文君登壇〕

国務大臣(下村博文君) 小池議員から、原賠法の見直しについてお尋ねがありました。

 福島第一原発事故への対応では、昨年末の福島復興に係る閣議決定等も踏まえ、国がしっかりと前面に出て、果たすべき責任を果たし、被害者の救済及び事故収束に万全を期すこととしております。

 また、これまでも、原子力損害賠償紛争解決センターの整備や時効特例法の制定などの所要の措置を行ってまいりました。

 万が一、再稼働後に原子力事故が発生した場合には、現行の原子力損害賠償法等の制度のもとで、賠償の迅速かつ適切な実施がなされることとなっており、国としても、果たすべき役割をしっかりと果たしてまいります。(拍手)

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副議長(赤松広隆君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、電気事業法等改正案について質問します。(拍手)

 本法案による電力システム改革の直接の契機は、三年前の東電福島第一原発事故です。

 大量の放射性物質がまき散らされ、福島県では、東京二十三区の倍の広さの地域が無人の地とされ、今なお、十四万人もの方々が避難生活を強いられています。このことを抜きに、エネルギー政策の議論は成り立ちません。

 以下、三つの角度から伺います。

 第一に、本日閣議決定したエネルギー基本計画です。

 計画は、原発を、安くて、安定供給でき、温暖化ガスを出さない、重要なベースロード電源として活用するとしています。

 総理、福島原発事故は、賠償から廃炉まで含めると、コストが幾らかかるかわかりません。これで、どうして原発コストが安いと言えますか。稼働率ゼロでも、安定供給だと言うのですか。放射能汚染の現実を踏まえてなお、温暖化対策になるから環境にいいとでも言うのですか。核のごみは、どうするのですか。エネルギー基本計画は撤回をすべきであります。

 総理は、選挙の公約で、原子力に依存しない社会の構築を明言されました。原発を、いつまでに、どこまで減らすのか、数値目標をなぜ示さないのですか。

 基本計画は、原子力初めエネルギー分野における日米の一体的体制を基調にしています。現在、GE、日立、東芝、ウェスチングハウス、三菱重工業の原発メーカー五社を中核とするいわば日米原発利益共同体が、世界の原発市場の四割近くを占めています。日米同盟を基礎としたトルコなどへの原発輸出は、これまでの資機材輸出から原子炉本体のプラント輸出をもくろむ原子力産業界、財界の思惑に沿うものです。

 特に、NPT非加盟国で核兵器を保有するインドとの原子力協定交渉は、私が二月の予算委員会で明らかにしたように、まやかしの軍民分離計画のもとで行われています。唯一の被爆国で、原発事故を経験した日本が絶対にやってはならないことであり、直ちにやめるべきです。

 第二に、福島復興指針と、東電の新しい総合特別事業計画、いわゆる東電再建計画の問題です。

 この中には、柏崎刈羽原発をことし七月から順次再稼働する計画が織り込まれています。総理は、世界で最も厳しい水準の新規制基準によって安全性が確認された原発は再稼働させるとしています。

 しかし、新規制基準は、事故原因の解明と検証を行わずに作成されたものです。原子力規制委員長は、規制基準の適合性確認が規制委員会の役割であって、絶対安全は言えないとしています。

 総理があくまで世界で最も厳しい水準の安全規制だと強弁するなら、その理由、根拠を明確に示してください。

 国は、地方自治体に避難計画の策定を押しつけていますが、そもそも、高齢者、障害者などは避難が困難です。多くの人々に無用の被曝を強いた福島原発事故の悲劇を繰り返してはなりません。

 国土面積が狭く、人口の多い日本では、原発の立地そのものが不可能ではありませんか。再稼働など論外であります。

 再建計画では、国が前に出るとして、原賠機構を通じた東電への支援枠を五兆円から九兆円に引き上げ、さらに、税金投入の仕組みもつくりました。福島復興を名目に、原発事故被害者を分断し、切り捨てる一方で、国民負担によって東電とメガバンクを救済するなど、断じて許されません。

 問題の根本には、東電を絶対潰さないとした、原賠機構のスキームがあります。しかし、東電に汚染水対策でも当事者能力がないことは明白であり、東電任せにせず、国が前に出るのは当然です。

 しかし、その実施主体と、誰が費用負担をするかは、厳密に区別すべきです。まず、大株主やメガバンクなど利害関係者の責任と負担が問われなければなりません。また、原発を推進してきた国の責任と反省なしに、無原則な国費投入など認められません。

 原賠機構法を見直し、事実上債務超過の東電を破綻処理して一時的に国有化することを、電力システム改革と一体に行うべきです。答弁を求めます。

 第三に、本法案についてです。

 法案では、電気の小売参入を全面自由化して、消費者の選択肢を拡大するとしています。その肝になるのは、多種多様な再生可能エネルギー発電をいかに爆発的に普及するかにあります。そのためにも、再エネ電源ごとの明確な数値目標と具体策を示すべきではありませんか。

 固定価格買い取り制度により電力会社には接続義務が課されていますが、接続拒否事例が相次いでいます。地域独占の一般送配電事業者には、より強い責務を負わせるべきです。あわせて、欧州のような、再エネの優先給電の仕組みを盛り込むべきではありませんか。

 託送料金の認可手続に先立つ公聴会を廃止しようとしていることも問題です。

 電気料金は、公共料金でもあり、原価の透明性の確保が必要です。総括原価のブラックボックスに光を当ててきた公聴会の廃止は、電気代の見える化を求める国民の要求に反します。大規模な電気事業者に対する原価情報の開示等、情報公開を一層進める仕組みを講じるべきではありませんか。

 最後に。

 今求められているのは、原発のような大規模集中型ではなく、再生可能エネルギーを初めとする小規模分散・地域経済循環型電力システムです。そのためにも、電力独占への民主的規制と国民的監視を強める電力事業体制の民主的改革、電力民主化が必要です。

 原発ゼロへ向かう電力改革を強く求め、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 塩川鉄也議員にお答えをいたします。

 原発のコストや、環境への影響についてのお尋ねがありました。

 原発のコストについては、東日本大震災後に行った試算では、原発の事故対応費用や使用済み核燃料の処理コストも含めた上で、石炭火力、LNG火力や再生可能エネルギーと比較して、必ずしも高くないとされています。

 今回のエネルギー基本計画では、原子力については、すぐれた安定供給性と記載されていますが、これは、稼働した場合の原子力のエネルギーとしての特性を示したものであり、実際に稼働するかどうかについては、原子力規制委員会の科学的、技術的な安全審査を経て、個別に判断されることとなります。

 また、運転時に、二酸化炭素の排出がなく、他の電源と比べても温室効果ガスの排出が少ないため、再生可能エネルギーと同じく、低炭素なエネルギー源としています。

 高レベル放射性廃棄物の最終処分については、これまでのやり方を見直し、責任を持って最終処分場を確保すべく、国が前面に立って取り組みを進めてまいります。

 原発の低減と数値目標についてお尋ねがありました。

 原発については、安全性の確保を大前提に、徹底した省エネルギー社会の実現と、再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、原発依存度は可能な限り低減するというのが基本方針です。これは、これまでの自民党の公約を踏まえた、一貫した方針です。

 原発依存度を含む日本の将来のエネルギーミックスに関しては、再生可能エネルギーの導入状況、原発再稼働の状況などを見きわめていく必要があることから、今回は数値を示しておりませんが、できるだけ早くエネルギーのベストミックスの目標を設定していきたいと考えております。

 原発輸出とインドとの原子力協定交渉についてお尋ねがありました。

 東京電力福島第一原発事故の経験と教訓を世界に共有することにより世界の原子力安全の向上に貢献していくことは、我が国の責務であると考えております。私も数多くの首脳と会談してきましたが、日本の原子力発電の安全性や信頼性に対する期待は極めて高いと実感しております。

 原発輸出については、こうした相手国の意向や事情を踏まえつつ、対応してまいります。

 また、インドとの原子力協力については、インドはNPTを締結しておらず、政府としても、国際的な核不拡散体制を損なうことになってはならないと考えます。

 他方、原子力関連技術等の輸出管理の指針を定める原子力供給国グループは、インドとの原子力協力を可能とする決定を行っています。この決定の前提である核実験モラトリアムの継続、原子力施設の軍民分離等のインドによる約束と行動は、インドとの原子力協力の当然の前提であることを、インド政府との間で確認しております。

 インドは、この約束を着実に実施してきており、軍民分離計画に従って、これまで、二十の原子力施設を民生用としてIAEAに申告していると承知しています。

 新規制基準についてお尋ねがありました。

 新規制基準については、原子力規制委員会において、国会事故調などにより明らかにされた情報を踏まえ、米国を初め海外の規制基準も確認しながら、我が国の自然条件の厳しさ等も勘案した上で、世界で最も厳しい水準の規制基準を策定したところです。

 新基準では、福島第一原発の事故の教訓を踏まえ、地震や津波に耐える性能の強化に加え、巨大地震や大津波により万一過酷事故が発生した場合にも対処できる十分な対策を取り入れています。

 原発の立地についてお尋ねがありました。

 原子力発電所の立地の可否については、独立した原子力規制委員会が、世界で最も厳しい水準の新規制基準に基づき、最新の科学的知見に照らして、科学的、技術的に審査を行います。

 なお、地域の防災計画や避難計画は、地域の実情に精通した県や市町村が災害対策基本法に基づき作成することとなっておりますが、政府としても、要援護者の方の避難のため、病院や屋内退避施設の放射線防護対策への財政的支援や、県、市町村、病院等の関係者が、避難先、移送手段などの確保のための調整を行うことができる、ネットワーク組織づくりの支援に取り組んでいます。

 引き続き、政府を挙げて、自治体を力強く支え、地域の防災・避難計画の充実に向けて、しっかりと取り組んでまいります。

 東電への資金支援についてのお尋ねがありました。

 福島の再生には、廃炉・汚染水対策のほか、賠償や除染など、十分な資金的手当てなくしては進まない事情が多いために、国と東電の役割分担を明確化することが不可欠であります。

 昨年末の閣議決定は、こうした観点から、賠償等を着実に実施し、東電改革を通じて、国民負担を抑制しつつ、福島復興の加速を推進するものです。東電や金融機関を救済することが目的ではありませんし、無原則な国費投入でもありません。

 株主や金融機関については、無配当の継続や、与信維持に当たり担保を外していくことなど、適切に責任を求めていきます。

 東電を破綻処理し、一時国有化することについては、賠償、廃炉への悪影響、電力の安定供給を直ちに確保できないおそれがあるため、適切ではないと考えています。

 再生可能エネルギーについてお尋ねがありました。

 再生可能エネルギーの普及は、エネルギー安全保障の強化、低炭素社会の創出に加え、新しいエネルギー関連の産業創出、雇用拡大の観点からも重要です。

 そのため、固定価格買い取り制度の着実な運用に加え、送電インフラの整備や、規制改革、技術開発など、再生可能エネルギーの最大限の導入に向け、必要な施策を総動員してまいります。

 また、再生可能エネルギーの目標を含む日本の将来のエネルギーミックスに関しては、再生可能エネルギーの導入状況、原発再稼働の状況などを見きわめ、できるだけ早くエネルギーのベストミックスの目標を設定していきたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 塩川議員にお答えをいたします。

 まず、原発輸出について、原子力産業界、財界の思惑ではないかという御質問でありますが、海外では、電力の安定供給やコストの観点から、原発計画を進めている国、検討している国も数多くあります。その際、単に建設するだけではなく、オペレーションのノウハウや関連する人材育成のニーズも高く、我が国への大きな期待があります。

 原発輸出は、こうした相手国の意向や事情を踏まえつつ行うものであり、原子力産業界や財界の思惑という御指摘は、全く当たりません。

 次に、一般送配電事業者の再生可能エネルギーの接続義務についてでありますが、現行制度上、再生可能エネルギーの発電事業者からの接続の申し込みに対し、一般電気事業者は、法令上認められている技術的に不可能なケースを除き、必ずこれに応じることが義務づけられております。

 今回の電気事業法の改正後も、同様の義務を一般送配電事業者に課すこととしており、円滑に系統への接続がなされるよう、固定価格買い取り制度の安定的かつ適切な運用に努めてまいります。

 次に、再生可能エネルギーの優先給電についてでありますが、現行の固定価格買い取り制度のもとでも、再生可能エネルギーを受け入れるに当たり、一般電気事業者は、みずから保有する火力等を抑制してでも再生可能エネルギーを優先的に受け入れるよう、優先給電が義務づけられています。

 今回の電気事業法改正後も、引き続き、この優先給電を維持することとし、再生可能エネルギーの導入が最大限進むよう、固定価格買い取り制度の安定的かつ適切な運用に努めてまいります。

 最後に、託送料金に関する公聴会の開催と、原価情報の開示についてでありますが、今回の法案においては、これまで届け出制であった託送料金について、公平性及び透明性を高めるために、値上げについては認可制としており、料金認可の審査過程を通じて、原価に関する情報が広く国民に開示されることになると考えております。

 また、現在の一般電気事業者の小売料金については、当分の間、経過措置として料金規制が講じられることから、同様に、審査過程を通じて情報の公開が行われることとなります。

 小売料金規制の撤廃後、事業者に対し、利用者の立場からどのような情報の開示を求めるかは、今後、しっかりと検討してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、村上史好君。

    〔村上史好君登壇〕

村上史好君 生活の党の村上史好でございます。

 私は、ただいま議題となりました電気事業法の一部を改正する法律案について、生活の党を代表して質問をいたします。(拍手)

 我が国の電力システム改革は、言うまでもなく、東日本大震災に伴う原子力発電所の事故を契機に、従来の電力システムの限界が露呈したことから、国民に開かれた電力システムのもとで、事業者や需要家、消費者の選択や競争を通じ、創意工夫によって安定的な電力供給を実現しようとするものであります。

 本改正案は、これまでの電気事業者の類型を見直すことによって、一般電気事業者にしか認められていなかった家庭への電力供給についても自由化し、小売への新規事業者の参入を促し、今後の電力市場における競争原理の導入と電力の安定供給の両立を図ろうとするものであります。

 電力システム改革についての我が党の考え方、方向性は、発送電分離を完全に行い、原発に依存しない電力供給体制を確立することです。そして、それによって、公正な競争を促し、地域分散型、ネットワーク型のエネルギー地域主権を実現するというものであります。

 そのような認識のもとで、以下の質問をさせていただきます。

 まず初めに、安倍総理にお伺いをいたします。

 中長期的なエネルギーのあり方を示すエネルギー基本計画の閣議決定がきょうなされましたが、安倍政権が発足をして一年四カ月の間、国民生活や産業活動などの基盤となるエネルギーの全体像が提示されないままでありました。

 なぜ、エネルギー基本計画がここまでおくれてしまったのか、その理由をお伺いをいたします。

 また、ようやく出されたこのエネルギー基本計画には、将来の各電源をそれぞれどの程度活用していくのかという具体的な電源構成については、全く示されておりません。

 広域メリットオーダーを実現するためには、将来の地域ごとの電源構成について明確な見通しが必要であり、そのためにも、我が国の長期的な電源構成を示す必要があります。いつ示されるのか、お答えをください。

 この際、核燃料サイクルの行方について、総理に伺います。

 先般の核セキュリティーサミットにおいて、安倍総理は、日本が保有する高濃度の核物質を米国に引き渡すことを日米共同宣言で合意をされました。この合意はいかなる判断によるものなのか、合意の内容とその理由について御説明をください。

 次に、茂木大臣に伺います。

 現時点で、昨年の法改正の広域的運営推進機関は、いまだ発足をしておりません。また、第三段階の改革にかかわる法案提出の平成二十七年には、小売業への参入の全面自由化は実施されていないと見られます。

 この点を踏まえれば、三年連続で矢継ぎ早に法改正を行うという一連の電力システム改革は、やや拙速な感が否めません。

 なぜ三年連続で法改正を行う必要があるのか、それぞれの内容及び目標時期の設定の妥当性について、政府の考え方を伺います。

 本改正案では、小売電気事業者に対して、需要に応じた供給力の確保を義務づけている一方、供給予備力については義務づけされておりません。参入障壁への配慮とのことですが、そのために、一般送配電事業者によるしわ取りの量がこれまでよりも増加する可能性があります。これで電力の安定供給が万全となるのでしょうか。御説明をください。

 あわせて、電力システム改革専門委員会報告書の、供給予備力を小売電気事業者に義務づけるという方向性を変更した経緯についても御説明をください。

 需要家への電力の供給責任は、送配電会社が負うこととされています。発電会社と分離をされた送配電会社がどのようにして供給責任を果たしていけるのか、御説明をお願いします。

 小売業への参入の全面自由化によるさまざまな料金プランが提示されることとなるでしょう。

 その際、需要家、消費者が不利になるような問題が生じないようにする必要があります。需要家、消費者がみずからの利害に一致した料金プランを容易に選択できるような制度設計の構築について、政府の考え方をお伺いいたします。

 また、契約の切りかえやプランの変更についても、消費者保護の観点からも、事業者任せではなく、支援策を講じていく必要があると考えますが、政府のお考えをお聞かせください。

 卸電力取引所の活用とはどういうことか、御説明をお願いします。

 あわせて、過剰な投機の対象として捉えられ、その目的がゆがめられることにならないのか、その点についてお答えをお願いします。

 今後、第三段階で、地域独占に続き、総括原価方式が廃止される一方で、過酷事故が起きた際の賠償、除染、廃炉に莫大な債務が課せられるリスクがあります。この問題を担保する新しいモデルが必要になるのではないでしょうか。

 この点、政府としてのお考えをお尋ねして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 村上史好議員にお答えをいたします。

 エネルギー基本計画の策定時期についてお尋ねがありました。

 エネルギー基本計画については、国民生活と経済活動に直結する重要な問題であるため、いつまでという期限を区切るのではなく、丁寧なプロセスを経た上で閣議決定すると申し上げてまいりました。したがって、基本計画の策定がおくれたとは考えておりません。

 今後、本計画で示した方針を踏まえて、責任あるエネルギー政策を推進してまいります。

 我が国の中長期的な電源構成についてお尋ねがありました。

 エネルギー政策については、国民生活や経済活動に支障がないよう、責任あるエネルギー政策を構築することが何よりも重要です。

 電源構成を含めた日本の将来のエネルギーミックスに関しては、新たなエネルギー基本計画を踏まえ、再生可能エネルギーの導入状況、原発の再稼働の状況などを見きわめ、できるだけ早くエネルギーのベストミックスの目標を設定していきたいと考えております。

 核燃料サイクルと核セキュリティーサミットについてお尋ねがありました。

 核燃料サイクルについては、資源の有効活用、高レベル放射性廃棄物の減容化や有害度の低減などの意義があります。

 他方、六ケ所再処理工場の竣工遅延や、「もんじゅ」のトラブルなどが続いてきました。このような現状を真摯に受けとめ、直面する問題を一つ一つ解決していかなければなりません。

 その上で、核燃料サイクルについて、これまでの経緯等も十分に考慮し、引き続き、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、推進してまいります。

 また、核セキュリティーサミットの際には、高速炉臨界実験装置にある高濃縮ウランとプルトニウムを全量撤去の上、米国に移送し処分すること等に日米間で合意しました。これは、核テロ対策の強化と研究開発の推進を両立させることを目的として合意したものです。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 村上議員にお答えをいたします。

 私には、七分で六問のお尋ねをいただきました。

 最初に、三年連続で法改正を行うことについてでありますが、大胆な改革を現実的なスケジュールで進めるため、さきの臨時国会で成立した改正電気事業法の附則において、今回の電力システム改革に関する三段階の改革プログラムを規定いたしております。

 改革を進めるに当たっては、既存事業者や新規事業者において、新しい制度のもとで事業を行うための準備作業が必要です。

 このため、改革の全体像に加え、三段階の改革について、関連法案の提出時期とその実施時期といったスケジュールをあらかじめ法律で示した上で、具体的に法改正を行うことで、事業者の予見性を高め、準備作業を加速することが、大胆かつ着実な改革につながると考えております。

 次に、小売電気事業者の供給予備力の確保義務についてでありますが、今回の法案では、小売電気事業者に対して、空売り規制を課し、みずからの顧客の需要に応ずるために必要な供給力を確保しなければならない義務を課しており、御指摘の専門委員会の方針を変更したわけではありません。

 また、今回の法案では、小売電気事業者に対する義務づけに加え、一般送配電事業者に対して、各小売電気事業者の供給力確保の状況を踏まえ、エリア全体の需給バランスを維持する義務を課しており、これらの措置により、安定供給に支障は生じないと考えております。

 続いて、発電会社から分離された送配電会社の供給責任の果たし方についての御質問でありますが、今回の法案においては、一般送配電事業者に、その供給区域における安定供給の義務を課すことといたしております。

 このため、一般送配電事業者は、安定供給を維持するために必要な電気を発電事業者との契約等により確保するとともに、これらの発電設備に対して電気のたき増しなどの指示を行うことにより、安定供給義務を果たすこととなります。

 続いて、需要家による料金プランの選択についてでありますが、今回の法案においては、小売電気事業者に対して、消費者への契約条件の説明義務、契約締結後の契約書面交付義務、需要家からの苦情や問い合わせへの対応義務を課すことで、需要家が電力会社や料金プランを選択しやすい仕組みとしております。

 あわせて、需要家が小売電気事業者を変更する場合の手続を全国で標準化するなど、需要家が契約の切りかえやプランの変更を容易に行えることができる環境整備にも努めてまいります。

 さらに、卸電力取引所の活用についてでありますが、卸電力取引所の活用は、全国レベルで低廉な電源を活用することや、新規参入者が電気を容易に調達することを可能とするものであり、安定供給や電気料金の抑制に寄与すると考えております。

 また、今回の法案では、卸電力取引所を法定化し、不正取引の防止や、市場監視、取引所の適切性確保について、国の関与を可能とすることとしております。これらの取り組みを通じて、公正な市場と適切な価格形成を実現してまいります。

 最後に、地域独占、総括原価が廃止される中における賠償、除染、廃炉に関する対応についてお答えをいたします。

 原発について、仮に事故が発生した場合には、原子力損害賠償法に基づき、原子力事業者が原子力損害の賠償責任を負うことになっております。

 また、福島第一原発事故後には、原子力損害賠償支援機構法を制定し、賠償が円滑に行われるよう支援することとしました。

 さらに、今国会に、原子力賠償支援機構に事故炉の廃炉支援業務等を追加する法案を提出し、国が前面に立って、より着実に廃炉を進められるよう、支援体制を強化することとしております。

 こうした取り組みによって、万が一再稼働後に事故が発生した場合についても賠償、除染、廃炉が着実に実施されることになっておりますが、賠償機構法の附則で定められた制度の見直しについても、できるだけ早期に、必要な措置の検討を進めてまいります。

 以上、答弁とさせていただきます。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       総務大臣     新藤 義孝君

       文部科学大臣   下村 博文君

       経済産業大臣   茂木 敏充君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

       経済産業副大臣  赤羽 一嘉君


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