衆議院

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第18号 平成26年4月15日(火曜日)

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平成二十六年四月十五日(火曜日)

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  平成二十六年四月十五日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(笠浩史君外三名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

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 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(笠浩史君外三名提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) 内閣提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案並びに笠浩史君外三名提出、地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。まず、文部科学大臣下村博文君。

    〔国務大臣下村博文君登壇〕

国務大臣(下村博文君) 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 今日、児童生徒等の生命身体や教育を受ける権利を脅かすような重大な事案が生じる中で、地方教育行政における責任の所在が不明確であること、迅速な危機管理対応ができていないこと、民意を反映した地方公共団体の長と教育委員会の連携が十分でないこと等が指摘され、地方教育行政に係る制度の抜本的な改革が不可欠な状況となっております。

 この法律案は、こうした状況に対応するため、教育の政治的中立性、継続性、安定性を確保しつつ、地方教育行政における責任体制の明確化、迅速な危機管理体制の構築、地方公共団体の長と教育委員会との連携の強化を図るとともに、地方に対する国の関与の見直しを図る等の必要な見直しを行うものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について申し上げます。

 第一に、従来の教育委員長と教育長を一本化した新たな教育長を、地方公共団体の長が議会の同意を得て、三年の任期で任命することとし、新たな教育長が、教育委員会の会務を総理し、教育委員会を代表することとしております。

 第二に、地方公共団体の長が、教育、学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱を策定するものとしております。

 また、大綱の策定に関する協議及び教育を行うための諸条件の整備等を図るため重点的に講ずべき施策や、児童生徒等の生命または身体に現に被害が生じ、またはまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合等の緊急の場合に講ずべき措置についての協議を行い、地方公共団体の長と教育委員会の事務の調整を図るため、地方公共団体の長及び教育委員会をもって構成する総合教育会議を設けるものとしております。

 第三に、教育委員会の法令違反や怠りがある場合であって、児童生徒等の生命または身体に現に被害が生じ、またはまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれ、その被害の拡大または発生を防止するため、緊急の必要があり、他の措置によってはその是正を図ることが困難な場合、文部科学大臣は、教育委員会に対し指示できることを明確化することとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

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議長(伊吹文明君) 次に、提出者笠浩史君より趣旨の説明を求めます。

    〔笠浩史君登壇〕

笠浩史君 民主党の笠浩史です。

 ただいま議題となりました地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 教育は、国家百年の計です。人づくりなくして国づくりなしの理念のもと、改革を着実に進めていかなければなりません。

 我が国では、少子高齢化が進展し、人口減少の時代を迎える中、昨今のグローバル化、情報化の流れの中で成長を続けていくためには、未来への投資である教育の充実を図り、持続可能で活力ある社会を構築していく必要があります。

 今、教育現場では、教育格差の問題、いじめ、体罰、暴力行為、不登校など、子供をめぐる多様で複雑な問題が山積をしております。しかし、きめ細やかな対応が必要な問題であっても、現在の教育行政においては、責任の所在が曖昧な実態があります。

 特に、地方自治体においては、教育の予算編成などの教育財政は首長が決め、教育行政については教育委員会が行うといった二元行政の仕組みになっており、こうした仕組みを改善し、最終的な責任を明確にすることが、教育行政に今最も求められております。

 本案は、地方公共団体における教育行政の適正な運営の確保を図るため、教育長、地方公共団体の教育機関及び学校運営協議会、教育監査委員会等の設置その他地方教育行政の組織の改革に関し必要な事項を定めるものであり、その主な内容は、次のとおりであります。

 第一に、地方公共団体における教育行政は、その責任体制を明確にした上で教育の中立性を確保しつつ、公正かつ適正に行うものとする基本理念を定めるとともに、地方公共団体の長は、教育基本法第十七条第一項に規定する基本的な方針を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体の教育の振興に関する総合的な施策の方針を、議会の議決を経て定めることとしております。

 第二に、都道府県及び市町村等に教育長を置くこととし、教育長は、地方公共団体の長が任命することとしております。また、教育長の任期は四年とし、地方公共団体の長は、任期中においてもこれを解職することができることとしております。

 第三に、地方公共団体は、法律で定めるところにより、学校、図書館、博物館、公民館その他の教育機関を設置するほか、条例で、教育に関する専門的、技術的事項の研究または教育関係職員の研修、保健もしくは福利厚生に関する施設その他の必要な教育機関を設置することができることとしております。

 第四に、地方公共団体の長は、当該地方公共団体の規則で定めるところにより、当該地方公共団体の設置する学校のうちその指定する学校の運営に関して協議する機関として、学校運営協議会を置くことができることとしております。

 なお、学校運営協議会については、本案の施行後できるだけ速やかに、その活動の状況等を勘案した上で、原則として地方公共団体の設置する全ての小学校及び中学校に設置することに向けた検討を加え、その結果に基づき必要な措置が講ぜられることとしております。

 第五に、都道府県及び市町村等に、当該地方公共団体の長が処理する学校教育等に関する事務の実施状況に関し必要な評価及び監視等を行う教育監査委員会を置くこととしております。

 第六に、地方公共団体の長が教育に関する事務を行うに当たり、当該地方公共団体が設置する学校における管理運営が主体的に行われるようにするとともに、児童生徒等の生命もしくは身体または教育を受ける権利を保護する必要がある緊急の事態においても適切に対処することができるよう、配慮するものとしております。

 第七に、地方教育行政の組織及び運営に関する法律は、廃止することとしております。

 以上が、本法案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。

 本法案は、教育委員会制度のあり方を昭和三十一年以来、約五十八年ぶりに抜本的に見直す重要なものであります。

 何とぞ、十分御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

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 地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案(笠浩史君外三名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) ただいまの文部科学大臣及び提出者笠浩史君の趣旨の説明に対し質疑の通告がありますので、順次これを行います。まず、萩生田光一君。

    〔萩生田光一君登壇〕

萩生田光一君 自由民主党の萩生田光一です。

 ただいま上程されました地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について、自由民主党を代表して質問いたします。(拍手)

 教育は国家百年の計、人づくりは国づくりと言われています。

 グローバル化の進展などにより世界全体が急速に変化するとともに、著しい少子高齢化社会を迎える我が国にとって、一人一人の子供たちの質を高めていくこと、その人材こそが、国の切り札となる貴重な資源です。教育が我が国の今後を大きく左右することについて、疑いを差し挟む余地はありません。

 安倍総理は、就任以来、教育への並々ならぬ思いから、教育再生を経済再生と並ぶ最重要課題として位置づけ、政府にあっては教育再生実行会議を中心に、党にあっては総裁直属の教育再生実行本部の議論を加速させ、さまざまな改革を着実に実行に移しているところです。

 ことし内閣府が行った社会意識に関する世論調査では、現在の日本の状況について、よい方向に向かっていると思われる分野として教育を挙げた者の割合が、昨年の一〇・九%から一七・二%まで大幅に上昇しています。安倍内閣の教育改革への期待がこれまでになく高まっていることが、はっきりと見てとれます。

 そこで、まず初めに、総理の教育再生に対する決意、今後の改革の方向性についてお伺いいたします。

 今回政府から提出されている法案は、総理が進める教育改革の中心であるとともに、全ての教育改革の基盤である教育行政制度の抜本改革です。

 教育委員会については、これまで、非常勤の教育委員長と常勤職である教育長の責任関係がわかりにくいこと、いじめなどの問題や新型インフルエンザの対応など、危機管理に対して必ずしも迅速に対応できていないこと、地域の民意が十分に反映されていないこと、国が最終的に責任を果たせるようになっていないことなどの課題が長い間指摘をされ、抜本的な解決が求められてきました。

 私自身も、文科大臣政務官時代、政府が危惧をする新型インフルエンザの国内発症の第一例が海外修学旅行帰りの高校生であったことから、その窓口となり、関係教育委員会と連絡をとり、実態把握と感染防止に奔走しましたが、結局のところ、深夜まで直接連絡をとり合ったのは知事や市長とその部局であり、教育委員会は後からその経緯をなぞるような、歯がゆい経験をいたしました。

 そこで、改めて、今回の地方教育行政制度の改革の基本的な考え方について、総理にお伺いいたします。

 責任体制の明確化については、責任の曖昧さの解消が、これまで、地方教育行政上の大きな課題とされてきました。

 改正法案で新教育長に責任者が一本化されることにより、曖昧であった地方教育行政の責任関係が明確になるのか、総理の御見解をお示しください。

 現行制度において教育委員の任期は四年ですが、自民党の提案の段階では、首長のリーダーシップを確保する観点から、新教育長の任期は二年間と示されていました。

 新教育長の任期を三年間とした理由について、文部科学大臣の御見解をお伺いいたします。

 これまで、首長は、選挙により民意を受け、教育に関しても、予算や条例などさまざまな権限がありながら、教育委員会との意思疎通のあり方が一様ではなく、不十分な場合も多かったと思われます。今回提出されている法案は、首長が大綱を定めるとともに、総合教育会議という新たな仕組みを設けることにより、首長が教育に積極的に関与することとなっています。

 そこで、総理にお尋ねいたしますが、今回の改正により、首長が教育行政においてリーダーシップを十分発揮できるような体制が構築されるものとなっているのか、御見解をお聞かせください。

 二元代表制をとる地方公共団体においては、首長とともに、地方議会の果たす役割も大変重要です。

 今回の改正案の党内議論では、そもそも教育委員会を残すか残さないか、残す場合、引き続き執行機関とするか否かが大きな議論となりました。その根底にあったのは、教育の政治的中立性をどう担保するかにあったと思います。

 思想的に偏った首長が教育に政治的暴走をしてきたときのためにも、教育委員会制度の果たしてきた効用の一面は理解しますが、第一義的にそのチェック機能を果たし、バランスを保つのは、本来、地方議会の役割です。

 そこで、今回の改正により、首長は、議会の同意を受けて新教育長を直接任命することとなり、また、従来の規定による罷免権も維持することからも、これまで以上に地方議会が果たすチェック機能が重要と考えますが、新たな教育委員会制度において地方議会に期待される役割について、文部科学大臣の御見解をお伺いいたします。

 改正案では、首長が、教育、学術、文化の振興に関する総合的な施策の大綱を定めることとされています。

 そこで、大綱ではどのような内容を定めることが想定されているのか、文部科学大臣にお伺いいたします。

 首長と教育委員会が協議をする場として総合教育会議を設けることとしたことが、今回の改正の重要なポイントの一つです。

 当時、文科省へ連日のように陳情に見えた教育長さんたちは、施設の老朽化や図書館の蔵書の少なさ、理科の実験室の乏しさなどを競ったように訴えるのですが、中には交付税措置済みのものもたくさんあり、予算編成や執行に十分な権限が発揮できない教育委員会の形骸化も心配されてきました。

 そこで、学校施設の耐震化や自然体験活動の推進など、予算上の措置を必要とし、首長と教育委員会が力を合わせて取り組むべき重要な課題は数多く、総合教育会議における活発な議論が期待をされますが、改めて、総合教育会議の性格と位置づけ、期待される効果について、文部科学大臣のお考えをお示しください。

 また、今回の改正の基本的な考え方を踏まえれば、総合教育会議は、民意を代表する首長がその意向を十分に教育政策に反映させられる場となることが重要と考えます。

 実際、総合教育会議では、幅広く教育行政全般について協議ができることとなるのか、文部科学大臣にお伺いをいたします。

 教育は国の根幹であり、最終的に国が責任をとることができる体系づくりが必要です。もとより地方分権は重要ですが、地方によって教育がばらばらでは、国全体の教育水準の確保や教育を受ける機会の保障はままなりません。とりわけ、いじめなどの問題に際し地方公共団体において適切な措置が講じられないなど、緊急の必要があるときには、国が責任を持ってしっかりと行う必要があります。

 そこで、今回の是正の指示に係る規定の見直しの趣旨について、文部科学大臣にお伺いいたします。

 また、あわせて、教育行政における国と地方のあるべき役割分担について、総理のお考えをお聞かせください。

 民主党及び日本維新の会から提出されている法案について説明がありました。

 日本維新の会では、立党の理念とも言える維新八策の中で、「教職員労働組合の活動の総点検」に言及し、国会においても常々、教職員組合の活動について厳しい質問を投げかけていらっしゃいます。にもかかわらず、その教職員組合を大きな支援団体に持つ民主党と同一の法案をつくられてきたことに、私は、驚きと困惑を感じております。

 今回両党から提出されている法案は、教育委員会を廃止し、教育監査委員会が首長に対して事後的に監査、評価、勧告を行うものであり、例えば首長が教職員組合から支援を受けている場合においては、教職員組合や所属する教職員の活動について、より適正化が進まないこととなる懸念は否めません。

 今後の委員会審議の中で、適正化のための方策や、首長が教職員組合から支援されている場合の対応について、具体的に明らかにされることを強く望みます。

 このたび政府から提出された法案は、新教育長への一本化や総合教育会議の創設など、安倍総理の教育に対する並々ならぬ決意があらわれた、これまでにない抜本改革であります。政府案が成立することによって、首長と教育委員会が一体となり、地方議会がさらに高い使命を果たすことと相まって、各地域で力強い教育再生の取り組みが推進されることを願いつつ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 萩生田光一議員にお答えをいたします。

 教育再生への決意と、改革の方向性についてのお尋ねがありました。

 子供たちには無限の可能性が眠っており、それを引き出す鍵は、教育の再生です。

 山積する課題に正面から取り組み、これからの日本にふさわしい教育体制を構築していくため、教育再生実行会議を設置し、これまで、いじめ問題への対応、教育委員会制度等について提言をいただきました。また、現在、学制の改革について議論していただいているところです。

 これらの提言を踏まえ、今般の改正法案により、責任の所在が曖昧な現行の教育委員会制度を抜本的に改革していくなど、安倍内閣の大きな柱である教育再生に全力で取り組んでまいります。

 地方教育行政制度の改革の基本的な考え方についてお尋ねがありました。

 今回の改正案では、責任の明確化を図るため、従来の教育委員長と教育長を一本化した新教育長を置くとともに、民意を代表した首長と教育委員会との連携の強化を図り、危機管理においても迅速に対応するため、総合教育会議を設置することとし、あわせて、文部科学大臣より、いじめによる自殺等の再発防止のための指示ができることを明確化することとしております。

 このように教育委員会制度を抜本的に改革することにより、教育再生の基盤が築かれるものと考えております。

 地方教育行政の責任関係の明確化についてのお尋ねがありました。

 従来、合議制の執行機関である教育委員会、その代表者である教育委員長、事務の統括者である教育長の間での責任の所在が曖昧であるとの指摘がなされていました。

 改正案では、教育委員長と教育長が一本化した新教育長を置くことにより、この課題が解消し、教育行政の責任が明確になると考えています。

 今回の改正による、地方教育行政における首長の関与についてのお尋ねがありました。

 本改正案は、首長が教育行政に連帯して責任を果たせる体制とするため、首長が新教育長を直接任命等することとするほか、首長が招集する総合教育会議における議論を踏まえ、教育振興に関する施策の大綱を策定することとしております。

 これらにより、地方教育行政において、首長がリーダーシップを発揮できるようになるものと考えております。

 教育行政における国と地方の役割分担についてのお尋ねがありました。

 教育行政に関しては、地方自治体は、地域の実情に応じて実際に教育を実施する役割と責任を担う一方、国は、全国的な教育制度の構築及び基準の設定、教育条件の整備等の役割と責任を担うべきものと考えております。

 安倍内閣としては、全ての子供たちに世界トップレベルの学力と規範意識を身につける機会を保障することを目指しており、こうした国と地方との適切な役割分担及び相互の協力のもとで、しっかりと取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣下村博文君登壇〕

国務大臣(下村博文君) 萩生田議員から、六つの質問がありました。

 最初に、新教育長の任期を三年間とした理由についてのお尋ねがありました。

 首長の四年の任期より一年短くすることで、首長の任期中に少なくとも一回はみずからが教育長を任命できること、任期が四年の教育委員よりも短い任期とすることで、教育委員及び議会によるチェック機能を強化できること、計画性を持って一定の仕事をやり遂げるためには三年は必要と考えられることから、新教育長の任期を三年とするものであります。

 次に、地方議会に期待される役割についてのお尋ねがありましたが、今回の改正案においては、任期三年の新たな教育長を、議会の同意を得て首長が任命することとしております。これにより、議会において、従来以上に職責が重くなる新教育長の資質、能力をより丁寧にチェックすることが期待されており、新教育長の任命の責任の一端を担っていただくことになると考えます。

 また、既に現行法においても、教育委員会の事務の管理及び執行状況に関する点検・評価報告書の議会への提出が規定されており、これらの機会を通じて議会のチェック機能を十分発揮していくことが重要であると考えます。

 次に、大綱の内容についてのお尋ねでありますが、大綱は、当該地方公共団体の教育の振興に関する総合的な施策について、地域の実情に応じて、その目標や施策の根本となる方針を定めるものであります。

 この大綱は、教育基本法に基づき策定された国の教育振興基本計画の基本的な方針を参酌して策定するものであり、詳細な施策まで定めることは想定しておりません。

 大綱が対象とする期間については、首長の任期が四年であることや国の教育振興基本計画の対象期間が五年であることに鑑み、四、五年程度のものとして定めることを想定しております。

 次に、総合教育会議の性格と位置づけ、期待される効果についてのお尋ねでありますが、総合教育会議は、首長と教育委員会という執行機関同士の協議及び調整の場という位置づけのものであります。

 現行制度においても、首長は、予算の編成、執行権限や条例の提出権を通じて教育行政に大きな役割を担っている一方、首長と教育委員会の意思疎通が十分でないため、それぞれの役割を十分に果たすことができていないという指摘があります。

 このため、総合教育会議の設置により、首長と教育委員会が相互の連携を図りつつ、より一層民意を反映した教育行政の推進が期待をされます。

 次に、総合教育会議における協議内容についてのお尋ねでありますが、総合教育会議においては、大綱の策定、教育を行うための諸条件の整備その他の地域の実情に応じた教育、学術及び文化の振興を図るため重点的に講ずべき教育施策、児童生徒等の生命または身体に現に被害が生じ、またはまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合等の緊急の場合に講ずべき措置について、協議し、調整を行うものとしております。

 総合教育会議においては、教育委員会の権限に属する事務のうち、予算の調製、執行や条例提案などの首長の権限に係る事項について調整を行うとともに、その他の事項についても協議を行うことができるものであります。

 次に、是正の指示に係る規定の見直しについてのお尋ねでありますが、現行の指示に関する規定は、平成十九年改正において、いじめによる自殺等の事案において教育委員会の対応が不適切な場合に、文部科学大臣が教育委員会に対して是正の指示ができるよう設けられた規定であります。

 しかしながら、現行規定では、いじめにより児童生徒等が自殺してしまった後の再発防止のためには発動できないのではないかという疑義があることから、事件発生後においても、同種の事件の再発防止のために指示ができることを明確にするための法改正を行うものであります。

 以上であります。(拍手)

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議長(伊吹文明君) 次の質疑者、菊田真紀子君。

    〔菊田真紀子君登壇〕

菊田真紀子君 民主党の菊田真紀子です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました地方教育行政改革に関する民主党、日本維新の会の改正案、そして政府提出の改正案について質問いたします。(拍手)

 全ての子供たちが心身ともに健全に成長すること、しっかりとした教育を受けられるようにすることは、世界の最優先課題と言っても過言ではありません。国連がミレニアム開発目標において初等教育の完全普及を掲げているのも、教育なくして国の発展はあり得ないという国際的な確信のあらわれでありましょう。

 日本の発展にとっても教育が最重要課題であることは、言をまちません。

 教育において大切なことは幾つもありますが、私は、権力から自由であることの重要性を強調したい。歴史に学べば、学校など教育現場が、政治的影響や圧力を受けたり、時の政権によるプロパガンダの場となってはなりません。私は、特に歴史認識との関係において、安倍政権の対応に疑念を有するものであります。

 文部科学省は、教科書検定基準を改正し、小中高校の社会科教科書において、閣議決定その他の方法で示された政府の統一的な見解がある場合、それに基づく記述をするよう定めました。

 我が国の領土、領海についての正しい理解は大変重要です。私は、この改正によって、子供たちが適切な学びと認識を持つことを期待します。

 同時に、国家として大切なことに、歴史認識があります。

 戦後日本の平和主義は、さきの大戦がもたらした惨劇に謙虚かつ真摯に向き合うことを出発点としています。そして、こうした認識を集大成したものが、村山内閣総理大臣談話でありました。この談話は、平成七年八月十五日、終戦五十周年の機会に閣議決定されています。

 ところが、去る二月二十一日、文部科学委員会における私の質問に対し、下村文部科学大臣は、村山談話は閣議決定を経ておらず、政府の統一的な見解に当たらないと答弁しました。三月二十六日には、同じく文部科学委員会の質疑の中で、再び同じ答弁をされました。

 その後、四月九日の同委員会において、下村大臣はみずからの発言を訂正されましたが、本当に事実誤認だったのでしょうか。教科書検定に影響を与える政治的意図は全くなかったのでしょうか。

 中国や韓国など近隣諸国だけでなく、国際社会が安倍政権の歴史認識に対して重大な関心を寄せているというのに、閣議決定の有無も確かめないずさんな答弁を繰り返したことは摩訶不思議であり、改めて下村大臣の答弁を求めます。

 村山談話について、安倍総理は、この談話に示されている認識を共有し、安倍内閣として継承する旨繰り返し答弁されています。

 村山談話が、閣議決定を経た政府の統一的な見解である以上、教科書にきちんと記述し、子供たちに適切な歴史認識を教えることは極めて重要だと思いますが、安倍総理も同じ考えでしょうか。明快な所見を求めます。

 民主党政権はさまざま批判を受けましたが、しかし、人への投資を重視し、予算構造を大変革させたことは、胸を張りたいと思います。厳しい国家財政の中、文部科学省の予算については、平成二十一年度から平成二十四年度の間に六・七%増額いたしました。

 まず、安倍総理にお尋ねいたします。

 民主党政権から自公政権にかわって、公共事業予算は気前よく大幅に増額されていますが、他方、先進諸国において極めて低い水準である我が国の教育予算を今後どのように増額していくつもりか、教育のどの分野に予算投入が必要と考えられるか、さらに、家庭環境や地域間による教育格差の拡大をどのように認識され、その是正にどう取り組まれるのか、安倍総理の答弁を求めます。

 安倍総理は、二〇一二年の自民党総裁選の公開討論会で、教育委員会は諮問機関にし、首長は教育委員会と相談しながら実行していく、責任が明確になり、民意との関係もはっきりすると明言されました。

 下村大臣に至っては、著書「下村博文の教育立国論」の中で、文部科学省、都道府県の教育委員会、市町村の教育委員会、学校現場、この四つを、無責任四重構造になっていると指摘し、教育委員会は廃止、学校現場が責任を持つと述べていたと記憶していますが、間違いありませんか。

 中教審の答申においても、最終的な権限を教育委員会から首長に移し、事務執行の責任者を、首長が任命する教育長とする提言が示されていたはずです。

 総理や文部科学大臣のこうした強い意向と約束が、なぜ政府案に実現されていないのか、安倍総理、下村大臣は、御自身の言動に関してどのように説明をし、責任を果たすのか、それぞれお答えいただきたいと思います。

 今回の教育委員会制度改革は、教育委員の公募制を廃止したときから、およそ六十年ぶりの改革であります。

 二〇一一年、いじめを受けて自殺した大津市の男児中学生の問題で、大津市の教育委員会は主体的に原因究明や再発防止に取り組まず、教育委員会に対する不信感や教育委員会制度のあり方を問う声が高まりました。

 大津市の越直美市長は、当時を振り返って、遺族から市が訴えを起こされても市の教育委員会からまともな報告がなかった、生徒が自殺という深刻な問題が起きたのに説明責任を果たさない姿に驚愕したと報道で語っています。

 私は、この教育改革が目指すべきは、一つは、責任の所在を明確にして、直面するさまざまな問題にすぐ対応できる執行と有効なチェックができるよう、体制を抜本的に改めること、そしてもう一つは、教育の向上のための現場主義の推進にあると考えます。

 ところが、政府案では、結局、教育委員会をそのまま残し、現在の教育委員長と教育長を一本化して新教育長を置くことになっています。機能不全ではないかと指摘されている教育委員会を残したまま、果たして六十年ぶりの教育改革と胸を張れるのでしょうか。

 なぜ教育委員会を存続させるのか、下村大臣から明快に御答弁をいただきたいと思います。

 また、新教育長の任期について、中教審の答申では四年とされていたはずですが、自民党は二年を提案し、公明党は四年と主張、結果として三年で決まったようですが、これは、両者のちょうど間をとった政治的妥協なのでしょうか。新教育長の任期についても、下村大臣にお伺いします。

 教育委員会を残したまま新たに設置されるのが、総合教育会議なる組織です。

 いじめのような重大事案が起こったとき、責任を負うのが、首長なのか教育委員会なのか、それとも総合教育会議なのか、わかりません。屋上屋を重ねたあげく、三者のたらい回しになってしまうのではないかと懸念します。また、首長と教育委員会が意見対立するような事態を招いたとき、どちらに決定権があるのでしょうか。首長と教育委員会の権限の分担が極めて不明瞭です。さらに、総合教育会議の議事録は公開を義務づけないなど、相変わらずの閉鎖性にも疑問を持ちます。下村大臣に見解を求めます。

 また、政府案は、改正案の趣旨として、教育の政治的中立性を確保することを挙げています。

 しかし、教育委員会を存続させることで文科省のひもを担保し、新教育長を置くことで首長部局の顔も立てるという、まさに妥協の産物のように思えてなりません。文科省による国家統制を残したまま、外部監査と学校現場の尊重という手段を欠いた、首長権限の中途半端な強化になっています。

 民主党と日本維新の会の改革案は、きっぱりと教育委員会を廃止し、選挙で選ばれた首長に権限と責任を一元化します。一方で、首長が独善的なやり方で教育現場を混乱させることがないように、外部監査機関を設けます。そして、学校現場における学校運営協議会を充実させることで、保護者や住民が直接首長をチェックし、議会も首長の施策を監視することとしており、我々の改正案の方が教育の中立性を担保できると考えます。

 責任ある執行とチェック、現場主義の意義を唱えていたはずの文科大臣に明快な答弁を求めます。

 次に、議員立法について質問いたします。

 民主党、日本維新の会の共同提出案は、国による最終責任を前提とし、教育における分権を進め、首長を地方教育行政の責任者としています。その上で、教育の中立性を確保するための教育監査委員会を設置、現場主義の観点から、学校のことは学校で決める学校運営協議会を充実させるものです。

 安倍政権が推し進める教育改革とは全く異なり、ボトムアップで地方教育行政を抜本的に改革するものと考えますが、発議者から、今回の立法の趣旨と政府案との違いについて御説明いただきたいと思います。

 教育現場には、いじめ、不登校、暴力行為、体罰、学力格差の拡大、子供の貧困など、複雑で多様な問題が山積しています。こうした問題に対し、現在の教育委員会制度を中心とした地方教育行政が適切な役割を果たせていないとの指摘があります。

 今回提出された議員立法では、こうした課題をどのように改善する仕組みとなっているのでしょうか。発議者より御説明をお願いします。

 これまで幾つか指摘してきたとおり、現行の政府案は、思い切った教育改革とは言えず、妥協の産物のようなものばかりで、およそ六十年ぶりの教育委員会改革にふさわしい内容とは言えません。ぜひ、政府案とともに、我々議員立法法案についても徹底審議していただき、よりよい内容になることを期待して、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 菊田真紀子議員にお答えをいたします。

 村山談話を教科書に記述することについてお尋ねがありました。

 歴史認識については、安倍内閣としても、これまでの歴代内閣の立場を引き継ぐ考えです。

 教科書については、改正教育基本法の趣旨を踏まえた、バランスのとれた教科書で子供たちが学べるようにするとの観点から、先般、教科書検定基準を見直し、閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解がある場合には、それに基づいた記述がされていることを求める旨の規定を盛り込んだところであります。

 教科書の検定に当たっては、教科書発行者が申請した内容について、教科書検定基準に基づき、適切に行ってまいります。

 教育予算の充実と教育格差の是正についてのお尋ねがありました。

 教育を通じて、我が国の未来を切り開く人材の育成に積極的に取り組むことが極めて重要と考えており、二十六年度予算においても、予算全体のめり張りの中で教育再生に資する施策に重点化し、必要な予算を措置したところであります。

 特に、教育の機会均等は大変重要であり、二十六年度予算においても、高校無償化制度に所得制限を導入し、それによる財源で低所得者層への支援等を充実するほか、幼児教育に係る保護者負担の軽減、大学等における無利子奨学金の拡充などにより家庭の教育費負担の軽減を図るなど、教育格差が生じないよう、関係施策を着実に実施してまいります。

 総裁選挙の公開討論会における私の発言に関してお尋ねがありました。

 御指摘の公開討論会においては、教育行政の責任の明確化を図るべきとの観点から、教育長を責任者とし、教育委員会を諮問機関とすることも一つの方法であるとの趣旨を述べたものであります。

 今回の改革案は、教育再生実行会議や中央教育審議会、与党におけるさまざまな議論を経て、現行の教育委員長と教育長を一本化した新たな職として置くことにより、教育行政の責任の明確化を図るとともに、民意を代表する首長が連帯して教育行政に責任を果たす体制を構築したものであり、私の述べた趣旨に沿った改革を行うものであります。

 民主党政権は、政権を担っていた三年間、教育改革に何をやったのでしょうか。政治とは、少しでも理想に近づく努力ではないでしょうか。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣下村博文君登壇〕

国務大臣(下村博文君) 菊田議員から、六つの質問がありました。

 最初に、村山内閣総理大臣談話の閣議決定に関する答弁についてのお尋ねがありました。

 本年二月二十一日及び三月二十六日の衆議院文部科学委員会において、教科書検定基準において規定する「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解」に関し、村山内閣総理大臣談話は閣議決定されていない旨の発言をいたしましたが、これは事実誤認でありました。

 村山内閣総理大臣談話は、平成七年八月十五日に閣議決定の上、発表されたものであり、教科書検定基準において規定する「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解」に該当するものであります。

 このことについては、四月九日の衆議院文部科学委員会において、答弁を訂正し、おわび申し上げたところであります。

 この誤りは、意図的なものではなく、村山内閣総理大臣談話の閣議決定の有無に係る事実確認の不足により生じたものでございますが、今後、このようなことがないよう十分留意してまいります。

 次に、私の著書における記述についてのお尋ねでありますが、著書における、教育委員会を廃止との記述は、責任と権限の不明確さという教育委員会制度の課題を解決するためには抜本的な改革が必要であるとの趣旨を記述したものであります。

 今回の改革案は、教育再生実行会議や中央教育審議会、与党協議におけるさまざまな議論を経てまとめられたものであり、教育の政治的中立性、継続性、安定性を確保するため、教育委員会を執行機関と残しつつ、教育委員長と教育長を一本化した新教育長を置くことにより、教育行政の第一義的な責任者を明確化する、民意を代表する首長が、総合教育会議の設置や大綱の策定を通じて、教育行政に連帯して責任を果たすこととしております。

 本改正案により、地方教育行政の権限と責任を明確化し、全国どこでも責任ある体制を築くことが可能となり、教育委員会制度の抜本的な改革がなされると考えております。

 次に、教育委員会制度の存続の意義についてのお尋ねでありますが、多数の者に対して強い影響力を持ち得る教育に、一党一派に偏した政治的主義主張が持ち込まれてはならず、教育の政治的中立性を確保する必要があると考えております。

 このため、今回の法案においては、教育委員会を引き続き執行機関とした上で、責任の明確化や首長との連携強化等を図ろうとするものであります。

 また、機能不全との御指摘については、教育長が教育委員会の代表者となることにより、教育委員会への適切な情報提供や会議の招集が可能となると考えており、引き続き、教育委員会の活性化を図ってまいります。

 次に、教育長の任期についてのお尋ねでありますが、首長の任期四年より一年短くすることで、首長の任期中、少なくとも一回はみずからが教育長を任命できること、教育長の権限が大きくなることを踏まえ、教育委員よりも任期を短くすることで、委員によるチェック機能と議会同意によるチェック機能を強化できること、計画性を持って一定の仕事をやり遂げるためには三年は必要と考えられることから任期を三年とするものであり、政治的妥協という御指摘は当たらないものと考えます。

 次に、総合教育会議の最終決定者及び会議の議事録の公開についてのお尋ねでありますが、総合教育会議は、首長と教育委員会が相互の連携を図りつつ、より一層民意を反映した教育行政を推進していくために設置するものであり、屋上屋という批判は当たらないものと考えております。

 総合教育会議は、首長と教育委員会という執行機関同士が、協議し、調整を図るものであり、両者の調整がついた事項については、それぞれの結果を尊重して事務を執行するものであります。

 なお、総合教育会議は原則公開としておりますが、全ての自治体に対し議事録の作成、公表を義務づけることは、特に事務局の人員が少ない市町村において過大な事務負担となると考えられるため、努力義務にとどめたところであります。

 次に、外部監査と学校現場の尊重についてのお尋ねがありました。

 教育行政のチェック機能については、本来、地方議会がその役割を担うことが期待されているものであります。

 この点については、現行法においても、教育委員会は、みずからの活動状況の点検、評価を毎年行い、その報告書を議会に提出し、公表することとされております。

 さらに、改正案においては、教育委員会会議の議事録について作成、公表を努力義務とするとともに、首長が設ける総合教育会議についても原則公開し、議事録の作成、公表を努力義務とすることを盛り込んでおります。

 また、学校現場の自主性を高めるため、コミュニティースクールの拡大、教員公募制など教職員の配置に対する校長の意向の反映、学校の提案による予算など学校裁量予算の導入など、学校の裁量を拡大する取り組みを推進しているところであります。

 以上であります。(拍手)

    〔笠浩史君登壇〕

笠浩史君 菊田議員にお答え申し上げます。

 今回の立法の趣旨及び政府案との違いに関する御質問をいただきました。

 まず、今回の立法の趣旨についてお答えいたします。

 教育で一番肝心なのは、一人一人の子供を育み、学びを保障し、守ることであります。現在の教育行政では、重大な問題が起きた場合に子供たちを守り切れない事態が発生をしております。

 なぜそのような事態が発生しているのかといえば、現在の地方教育行政の仕組みが、迅速かつ責任を持って対応できるシステムとなっていないためであり、今回の立法の趣旨は、このような事態の発生を防止することにあります。

 すなわち、この法律案は、地方公共団体における教育行政について、その責任体制を明確にした上で教育の中立性を確保しつつ、公正かつ適正に行うために、地方教育行政の組織の改革に関し必要な事項を定めるものであります。

 具体的には、教育委員会制度を廃止し、教育行政における責任を首長のもとに一元化すること、教育行政に対する評価・監視機能を確保するため、教育監査委員会を設置し、また、首長による教育の振興に関する総合的な施策の方針の策定に議会の議決を経なければならないものとすることという二点を柱として、学校運営協議会の活用や学校管理運営に関する配慮の規定等を整備しているものであります。

 次に、政府案との違いについてお答えいたします。

 政府案は、教育委員会制度を残し、教育委員会と首長の地方教育行政における権限分配に変更を加えないまま、総合教育会議の設置、首長による大綱の策定、国の地方公共団体への関与の見直し等を定めていると承知をしております。

 一方、この法律案は、地方教育行政の責任を首長のもとに一元化することにより、その責任の所在を明らかにし、教育行政に対する評価・監視機能を確保するため、教育監査委員会を設置し、また、首長による教育の振興に関する総合的な施策の方針の策定に議会の議決を経なければならないものとしております。

 このように、政府案では、地方教育行政の責任の所在が首長にあるのか教育委員会にあるのか不明確なままでありますが、私どもの法律案では、地方教育行政の責任の所在は首長に一元化されており、地方教育行政の責任の所在について大きく異なっていると考えております。(拍手)

    〔吉田泉君登壇〕

吉田泉君 地方教育行政における課題を改善する仕組みに関する御質問をいただきました。

 現在の地方教育行政については、責任の所在が曖昧であり、迅速な処理ができず、外部の目も声も届きにくく、結果として、なれ合い、事なかれ主義、隠蔽体質がまかり通っているとの指摘がございます。

 こうした指摘がなされる原因は、今の地方教育行政の課題に対して、地方教育行政の仕組みが、迅速かつ責任を持って対応できるシステムとなっていないためであります。

 そこで、この法律案では、首長に地方教育行政の責任を一元化し、民意に敏感である首長が、議会のチェックを受けつつ、教育監査委員会という首長から独立した専門的な機関による評価と監視のもとで地方教育行政の課題に取り組む仕組みとしたところでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次の質疑者、田沼隆志君。

    〔田沼隆志君登壇〕

田沼隆志君 日本維新の会の田沼隆志です。

 ただいま議題となりました、政府提出、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案、略称政府案、及び、日本維新の会、民主党共同提出、地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案、略称野党案について、日本維新の会を代表して、法案に沿って質問いたします。(拍手)

 私は、日本再生のためには教育委員会改革をどうしてもやらなければならないという信念のもとに、衆議院議員になりました。このためになりました。

 全国の大半の教育委員会では、審議が形骸化しています。

 私のライフワークである、国を愛する心を育む教科書採択も、そのプロセスは前例踏襲化している。改善したくても、責任と権限がよくわからず、議会からも首長からも、ほとんど何もできない。千葉市議会議員であった私は、この現実に衝撃を受けました。

 そして、いじめや体罰を苦に若者がみずからの命を絶つという悲しい事件が続出しました。それへの対応も全くもって同じで、機動的対処ができないどころか、自殺といじめの因果関係は不明などと責任逃れ、問題先送り、果ては隠蔽までありました。これが繰り返されてきた。

 これはもう完全に制度疲労です。このような制度が続いていては、先人や子孫、亡くなった子供たちや御遺族に申しわけない。その思いで質問します。

 問題の本質は、責任と権限の所在が曖昧ということです。

 この制度設計がおかしいと、どうしても無責任体質となる。責任を明確化し、それに伴う権限を一体で付与し、きちんとそれを第三者が監視する、そういう統治機構に改めなくてはなりません。

 しかし、さまざまな紆余曲折を経て提出された政府案は、何とも中途半端、曖昧です。政府が宣伝するような抜本改革とは、とてもとても見えないんです。与党内で妥協に妥協を重ねた結果、改革の効果が極めて疑わしいものになってしまいました。大変残念です。恐らく、総理や下村大臣、心ある与党の皆さんも、同感ではないでしょうか。

 我が党は、決定できる、責任のとれる統治機構を、結党以来理念に掲げ、当初から教育委員会廃止を掲げてきました。

 独立した行政委員会である教育委員会を廃止し、首長のもとに教育部局を移管させ、ガバナンスを明確にする。責任を果たせないときは、選挙によって首長を落とせる、つまり、民意を示せる。この責任の明確化によってこそ、現行制度の問題点を打破できると考えるわけであります。

 今回、多くの皆さんの御尽力のもと、民主党、日本維新の会共同で、この要旨を踏まえた野党案を提出できたことは、喜びであります。名づけるならば、責任明確化法。政府案と比べ、はるかに抜本的な改革が提案できていると感じます。

 以下、政府案と野党案を対比させつつ、お尋ねいたします。

 今回の改正で最も大切なのは、責任の明確化です。

 政府案では、教育委員長と教育長を統合し、教育委員会の中での最高責任者は、教育長として明確化されました。これは、前進だと評価いたします。

 しかし、首長と教育委員会との分断は残ったままです。ゆえに、両者が参加する総合教育会議が新たに設置されました。

 しかし、これが曖昧です。総合教育会議での最終決定権者がわかりません。会議を主宰する首長なのか、それとも教育委員会の最高責任者である教育長なのか、ここの規定がない。どちらが上位なのか、あるいは対等なのかが、わかりません。

 最終決定権者について、安倍総理、明確にお答えください。

 ここが曖昧だと、責任は明確化できません。

 例えば、首長と教育委員会との協議が調わない場合、首長は大綱を策定できないのでしょうか。また、教育委員会が同意していない内容を大綱に盛り込めるのでしょうか。これらの点が不明確なままでは、教育行政に混乱を招き、住民がその被害者となります。

 大阪府と市では、教育行政基本条例が制定されています。これは、首長が教育委員会と協議して教育目標を決定する、首長と委員会で意見が一致しない場合は、委員会の反対意見を付して、首長の教育目標を議会に提出するということで、議論は尽くしますが、最終決定権者は首長であることを明記しています。

 大阪府では、この条例案は、大阪維新の会と公明党、自民党の賛成多数で可決をしております。

 このように、最終決定権者を明確にすることが、責任の明確化には絶対に必要です。それが政府案では曖昧である。

 首長と教育委員会との協議が調わない場合、誰が、どのような手続で決定を下すのでしょうか。また、教育委員会が同意していない内容を大綱に盛り込めるのか。安倍総理にお尋ねいたします。

 対して、野党案は、教育委員会を廃止し、首長のもとに教育長並びに教育部局全体が置かれ、教育長は首長の指揮監督のもとで事務をつかさどると、極めてシンプルで、明確であります。このように設計した狙いについて、提出者にお尋ねをいたします。

 政府案と野党案の最大の違いは、執行機関が、教育委員会のままなのか、それとも首長に移るかという点です。

 ここでどうしても触れておきたいのが、滋賀県大津市でのいじめ自殺事件の御遺族からいただいた手紙です。下村大臣のもとにも届いていると思います。それにはるる、現行教育委員会制度の問題点が実体験に基づき述べられていました。

 教育委員会の暴走を誰も抑止できない、制度疲労が極限まで来ている、教育行政に民意が反映されない現行制度は危険だ、教育委員会を訴えたいと何度も思ったけれども、法制度上、訴訟当事者は首長なんです、だからそれはできない、矛盾を痛感したという切々とした訴えがあり、最後には、執行機関が教育委員会のままの与党案では極めて不十分というふうに結論づけております。私も、全く同じ思いであります。

 そこで、下村大臣にお尋ねします。

 御遺族のこの手紙、その内容をどう受けとめられたでしょうか。政府案はその思いに十分応えられるとお考えでしょうか。お答えいただきたいと思います。

 また、野党案提出者にも、同じく、この手紙の内容についての御所感をお尋ねいたします。

 政府案でもう一つ大きな欠陥を感じるのは、教育長の解職規定です。

 責任を明確化するならば、当然、果たせないときには責任をとらせて、ある意味、首にする、その規定が不可欠です。

 政府案では、教育長の地位、権限は強大化する。大津市の事件をめぐる隠蔽等の問題を見ても、教育長を、住民の負託を受けた首長による民主的統制の下に置くということが必須であります。

 政府案では、罷免については第七条に規定されていますけれども、これは、今の教育委員に対する規定と変更はないんですね。だから、極めて限定的にしか罷免できないんです。ほぼ無理と思っています。

 しかしながら、首長が教育長を自由に、制限なく解職できるようにしないと、もし教育長が首長の教育方針に従わなくなった場合は、どうなるのでしょうか。教育行政が混乱して、子供たち、保護者、市民が被害をこうむることになるのではないでしょうか。

 さきの議員の方で、首長の暴走を懸念している方もいましたけれども、逆に、もし教育長が暴走したら、首長が教育長を解職することができなくて誰が責任をとれるのでしょうか。

 教育長の解職規定をもっと踏み込んだものとすべきではないでしょうか。安倍総理の見解を伺います。

 関連して、やはり中途半端、いかにも妥協の産物に見えるのが、三年という教育長の任期であります。

 首長の任期は四年なのに、一度選び直す機会をつくるという狙いのようでございますけれども、そのような中途半端なら、罷免規定を初めからきちんと強化しておいて、四年間やってもらった方がいいんじゃないでしょうか。首長任期と同じ四年でなく、例えば半分の二年という区切りをそろえるでもなくて、三年という長さの理由が、よくわからない。どうにも、小手先のテクニックというか、妥協の産物そのものに見えます。

 なぜ、教育長の任期を中途半端な三年と定めたのか、先ほどの下村大臣の答弁でもよくわかりませんでした。改めて安倍総理にお尋ねいたします。

 また、三年という中途半端な任期でいくなら、せめて例外として、任命した首長の残り任期を超えないように規定すべきと考えます。なぜなら、次の首長が来たときに、次の教育長を選任できるように担保すべきだからであります。これについても、安倍総理の見解を伺います。

 対して、野党案では、首長を教育行政の最終責任者と明確化し、教育長に対しては、第七条において、「地方公共団体の長は、任期中においてもこれを解職することができる。」と、罷免規定も明確であります。また、その任期についても、シンプルに、首長と同じ四年とされております。その狙いについて、提出者にお尋ねいたします。

 次に、チェック機能についてお尋ねします。

 どちらの法案も、責任明確化、首長権限の強化をうたう以上、それを評価、監視する機能が一体で整備されなければなりません。

 野党案は、より明確に、首長への権限と責任を一元化しておりますけれども、教育行政へのチェック機能についてはどうでしょうか。

 教育監査委員会を設置し、また、首長が定める教育振興の方針を議会が議決するという重層的なチェック体制のようでありますけれども、それぞれの狙いについて、提出者にお尋ねをいたします。

 対して、政府案は、チェック機能が見当たりません。教育委員会に対し、教育長は執行状況を報告する義務があるとのことですけれども、現行制度は既にほとんど近似した状態であり、この程度で教育委員によるチェック機能が本当に高められるのか、極めて疑問であります。

 そもそも、教育委員も、教育長とともに教育委員会の決定について共同責任を負う立場ですから、第三者的なチェックができるはずがないのではないでしょうか。

 政府案では、教育行政へのチェック機能をどう強化するのかがわかりません。安倍総理の御見解をお伺いいたします。

 次に、緊急事態への対処でございます。

 政府案では、総合教育会議という会議体で、しかも、非常勤メンバーが多数なのに、緊急措置を協議するとなっています。

 これは、会議体ですから、迅速性に欠けるのではないでしょうか。日常的に情報に接している部署でなければ、非常事態への迅速な対処は不可能ではないでしょうか。安倍総理にお尋ねいたします。

 対して、野党案では、緊急事態への対処はどのように想定しているのか、提出者にお伺いいたします。

 次に、指導行政についてお尋ねいたします。

 現行教育委員会制度の中で最も問題なことの一つは、責任が曖昧な指導行政です。端的には、大阪市立桜宮高校体罰事件の事例が示しております。

 市の教育委員会の指導主事が、生徒への聞き取り調査を校長に求めたんですね。ですが、校長は、声を荒げて拒否したんです。このときに、指導主事よりも校長先生の方が先輩だったこともありまして、指導主事は引き下がってしまったんですね。

 つまり、指導行政の問題とは、このときの二人のやりとりは一体何だったのかということです。職務命令なのか、指導なのか、それとも助言なのか、どちらが責任者なのかがはっきりしないんです。

 この問題性については、全国一律の問題でありまして、平成十年の中教審の答申「今後の地方教育行政の在り方について」という中でも、同じ問題が指摘されております。しかし、政府案では、このことは全く触れられておりません。

 安倍総理に、この問題についての見解をお伺いいたします。

 対して、野党案では、学校の主体的運営を配慮というふうにありますけれども、その狙いについて、提出者にお尋ねをいたします。

 最後に、改めてお尋ねいたします。

 安倍総理は、熱心に教育再生実行会議にも参加、主導されておりました。その第四回定例会にて、首長がこういう教育をしたいと有権者に問い、同意を得ても実行できないというのはおかしいのではないかというのが素朴な疑問ですというふうに総理は発言をされておられます。

 今回の政府案は、その疑問に十分応えていると考えるでしょうか。私には、どうしても、安倍総理の思いに沿っているとは思えません。

 政府案は、首長の関与が弱過ぎる。責任明確化とはとても言えない。ここまで妥協してしまって、本当に戦後レジームの脱却は果たせるのでしょうか。総理の素直な思いをお聞かせください。

 また、日本維新の会の法案提出者は、首長経験者が複数おられます。この点についての見解を伺います。

 以上、教育再生を願う余り、政府案の妥協的部分には厳しい指摘も重なってしまいましたけれども、批判を目的とはしておりません。

 我が日本維新の会は、是々非々路線のもと、正しい改革はどんどん政権を牽引するということを使命としています。教育委員会改革が必要な点では一致をしており、やり方に違いがあるだけであります。我々は、必要な修正協議にも応じます。

 多くの与野党がともに合意できる、そして、党利党略を超えられる、真に日本の戦後教育を抜本改革できる、そのような改革となることを心から祈念し、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 田沼隆志議員にお答えをいたします。

 総合教育会議の最終決定権者及び大綱の記載内容についてのお尋ねがありました。

 総合教育会議は、どちらかが決定権者というものではなく、首長と教育委員会という執行機関同士が、協議し、調整を図りつつ、より一層民意を反映した教育行政を推進していくことを目的としています。

 これにより、民意を代表する首長が教育行政に連帯して責任を果たせる体制を構築することができると考えております。

 一方、大綱については、首長が策定権者とされております。その際には、教育行政に混乱が生じないようにするためにも、教育委員会との間で、十分に協議し、調整を尽くした上で策定することが重要であると考えております。

 教育長の罷免事由と、教育長の任期についてのお尋ねがありました。

 新制度における教育長は、教育委員会の構成員であり、かつ代表者として、首長が、議会同意を得て任命するものです。

 地方公共団体に置かれているさまざまな委員会の委員の罷免については、首長から独立して委員会を設置した趣旨に鑑み、身分保障という観点から要件が限定されており、教育委員会の構成員となった新教育長の罷免についても、同様の要件とするものであります。

 一方、首長の任期中に少なくとも一回はみずからが教育長を任命することを可能とするとともに、議会によるチェック機能を強化するため、首長の任期四年よりも短い三年とすることとしております。

 また、教育長の任期を三年としつつ、任命した首長の残りの任期を超えないこととすることは、教育行政の継続性、安定性の確保という観点から、適切でないと考えております。

 教育行政へのチェック機能についてお尋ねがありました。

 教育行政へのチェック機能については、まずは、地方議会がその役割を担うことが期待されているものであります。

 今回の改正案は、首長が教育長を任命、罷免する際には議会同意を得ることとしており、議会において、教育長の資質、能力を三年ごとに丁寧にチェックすることとしております。

 また、教育委員会に関しても、現在、みずから活動状況の点検、評価を行い、報告書を議会に提出することなどとしておりますが、改正案においては、さらに、教育委員の側からも会議の招集を求めることができることや、教育委員会から委任された事務について教育長は報告をしなければならないことを規定しております。これらを通じて、教育行政へのチェック機能の強化を図ってまいります。

 緊急事態への対処についてお尋ねがありました。

 改正案では、教育委員長と教育長を一本化し、常勤の教育長が緊急事態に迅速に対応できる体制を構築することとしております。また、総合教育会議については、首長が随時招集することができることとしております。さらに、非常勤の教育委員に対しては、教育委員会事務局から日常的に情報提供が行われております。

 このようなことから、緊急事態が生じた場合にも、柔軟で迅速な対応が行えるものと考えております。

 指導行政についてお尋ねがありました。

 教育行政においては、学校現場の自主性を生かした活動を専門的な観点から支援することが重要ですが、その際、学校が従うべき指示、命令とそれ以外の指導、助言とを明確に区分することが必要です。

 その上で、法令違反や危機管理が求められるような場合には、教育委員会は、現行の法令に基づき、設置者として学校を管理する権限を行使し、毅然として、明確な指示、命令を行うことが重要であり、そうした趣旨の徹底を図ってまいります。

 首長の教育行政への関与についてのお尋ねがありました。

 今回の改正案は、首長が教育行政の大綱を策定するとともに、首長が招集する総合教育会議を設置すること等により、民意を代表する首長が教育行政に連帯して責任を果たせる体制を構築するものであり、教育再生の一層の推進に資するものと考えます。

 なお、御党の提出された対案の取り扱いについては、国会において御議論いただくものと承知しておりますが、いずれにせよ、教育行政については、子供たちのためにどのような体制を構築していくかという観点から議論を行っていきたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣下村博文君登壇〕

国務大臣(下村博文君) 田沼議員から一問、大津市における自殺事件の御遺族からの意見書についてのお尋ねがありました。

 教育委員会制度については、これまで、責任の所在の不明確さ、審議の形骸化、危機管理能力の不足などの課題が指摘されてきたところでありますが、御遺族の意見書を拝見し、教育行政においては、民意を代表する首長との連携の強化が非常に重要であると受けとめたところであります。

 今回の改正案においては、教育の政治的中立性、継続性、安定性を確保するため、教育委員会を執行機関として残しつつ、民意を代表する首長との連携を強化するため、首長が、総合教育会議を設置し、教育の振興に関する大綱を策定することとしております。

 特に、緊急時には、総合教育会議において、講ずべき措置について首長と教育委員会が協議を行うこととしており、迅速かつ適切な対応がなされるものと考えております。

 以上です。(拍手)

    〔中田宏君登壇〕

中田宏君 田沼議員にお答えを申し上げます。

 教育長は首長の指揮監督のもとに事務をつかさどる、こういうふうにした理由に関する御質問をいただきました。

 この法律案を提案した理由は、地方教育行政における責任体制を確立する必要があるということに尽きております。そして、ここで言う責任というのは、顔が見えない組織体ではなくて、顔の見える人物がしっかりと責任を持つということを、しっかりと私たちはこの法改正においてわきまえなければなりません。

 現在の地方教育行政は、地方教育行政の最終責任者が誰であるかが明確でないという構造的な問題を抱えております。

 具体的には、現在、地方教育行政のトップは教育委員会とされているものの、教育委員会は非常勤の委員の合議体でありまして、実際に日々の実務を取り仕切るのは、教育委員会が教育委員の中から任命し、教育委員会の指揮監督のもとに置かれる、常勤の教育長であります。

 このような仕組みのもとに、これまでも、問題が起きても実質的な責任の所在が明らかにならない、そうした事態が散見をされているわけであります。

 このような無責任体制から脱却をし、地方教育行政における責任体制を確立するために、教育行政の最終責任を首長に一元化し、その首長の指揮監督のもとで教育長が教育に関する事務をつかさどるものとしたものであります。

 大津市いじめ事件の御遺族の手紙に関する御質問をいただきました。

 このお手紙は、私もいただき、一字一句全て拝読をいたしました。本当に胸詰まる思いで読みましたけれども、ここでは、首長が責任をしっかりと持つという仕組みを構築すべきであるというふうにこの御遺族は述べているわけであります。

 私も首長を経験しましたけれども、首長が責任を有していない、そして教育行政を引っ張れない、こうした問題が間違いなく存在をしています。

 大津市の事件もそうでしたけれども、日ごろは教育の中立性をメディアもそして世論も説く割には、大津市のときには、首長が出てきて涙ながらに謝罪をしても、それは出過ぎたまねだと言う人は誰もいないわけであります。こうした矛盾ということを私たちはよく考えなければなりません。

 大津市いじめ事件の御遺族からの手紙にあるような現行教育委員会制度に関する体験は、まさに、地方教育行政の最終責任者が誰であるかが明確でないという、現行教育委員会制度の構造的な問題が原因であると考えられます。

 こうした現行の教育委員会制度の構造的な問題から生じる不幸、これは二度と発生させないという思いから、地方教育行政の抜本的な改革を志したところであります。

 すなわち、教育委員会制度を廃止し、首長を教育行政の責任者とすることとし、教育行政に対する評価・監視機能を確保するため、教育監査委員会を設置し、また、首長による教育の振興に関する総合的な施策の方針の策定に議会の議決を経なければならないというふうにしているものであります。

 教育長の任期を四年とした理由に関する御質問をいただきました。

 教育長は、首長の補助機関であり、首長の指揮監督のもとで教育に関する事務をつかさどるものであり、首長がこれを任命することといたしております。

 したがって、教育長は、首長が在籍している間、首長の意向に沿って一定の成果を出すことが期待されるものであることから、首長と同じ四年の任期を設けるものとしたものであります。

 また、教育長が首長の指示に従わない、こういう場合も想定をされるわけでありますが、教育長は任期中においても解職を可能とし、新たに首長の意向に沿って職務に当たる者を任命することを可能としているところであります。

 教育監査委員会を設置すること、教育の振興に関する総合的な施策の方針の策定について議会の議決を必要とすること、それぞれの理由に関する御質問をいただきました。

 まず、教育監査委員会でありますが、地方公共団体の長が処理する学校教育等に関する事務の実施状況に関し必要な評価及び監視を行う、地方公共団体の長から独立した専門的な機関であります。すなわち、首長による学校教育等に関する事務が適切に行われ、望ましい成果を上げているか評価を行うとともに、常時これを監視する仕組みとすることによって、事後的に首長による地方教育行政の運営に対するチェック機能を確保する仕組みとなっております。

 次に、首長が定める教育の振興に関する総合的な施策の方針の策定について議会の議決を要求した趣旨でありますけれども、これは、首長が行う地方教育行政の運営の基礎となる方針について、多様な民意を反映する場である議会によるチェックが適切に行われることを確保するところにあります。

 この法律案は、地方教育行政の責任を首長のもとに一元化することによって、その責任の所在を明らかにしたものでありますが、他方で、首長の権限の行使の適正を担保する、こうした観点から、教育行政に対する評価・監視機能を確保するため、事後的なチェック機関である教育監査委員会を設置するとともに、首長による教育の振興に関する総合的な施策の方針の策定に、あらかじめ、これは議会の議決を経なければならないとすることによって、首長に対するチェックが重層的に行われる仕組みといたしております。

 残余の質問については、同僚議員よりお答え申し上げます。(拍手)

    〔鈴木望君登壇〕

鈴木望君 緊急事態への対応に関する御質問をいただきました。

 これまでの事例を見る限り、学校現場でいわゆる緊急事態が起こったような場合には、学校と教育委員会が被害を実際よりも小さく見せようとしたり、あるいは、教育委員会、教育委員会事務局との情報のやりとりに時間を要したりして、結果として、適切な対応ができていなかったということも多々あったのではないかと考えております。

 当然のことながら、いわゆる緊急事態においては、児童生徒等のことが第一に考えられるべきであります。

 そこで、今回の法律案においては、第六十三条で、「地方公共団体の長が教育に関する事務を行うに当たっては、」「児童、生徒等の生命若しくは身体又は教育を受ける権利を保護する必要がある緊急の事態においても適切に対処することができるよう、配慮するものとする。」旨の規定を置いております。

 これは、学校において、教育事務の管理運営は、原則的に学校が主体的に行うべきと考えておりますが、緊急事態においては、首長は、児童生徒等の保護のことを第一に考えて対処すべきという趣旨を明確にしたものであります。

 具体的には、首長が教育長らに対し、例えば、学校の管理運営に関する権限、人事に関する権限等を委任することにより、教育長らがより適切に緊急事態に対処することができるようにすることも考えられるところであります。

 学校の主体的運営に配慮すると規定した理由に関する御質問をいただきました。

 現行の教育委員会制度のもとでは、地方教育行政の運営のあらゆる場面において誰が責任を負っているかが不明確となり、その結果として、何か問題が起こった場合であっても誰も責任をとらないといった事態が引き起こされることが問題であります。

 そこで、本案では、学校の日常的な管理運営については、その責任を明確にする観点から、学校においてその管理運営が主体的に行われるようにするよう配慮する旨の規定を置いたところであります。

 教育の現場は、学校であります。具体的には、学校の教育課程の管理、施設及び設備の管理、教職員の職務上の監督その他当該学校の管理運営に関する事務が校長の責任のもとで行われるようにすることを考えております。

 首長の関与、責任の明確化に関する御質問をいただきました。

 維新の提案者である中田議員も私も、首長経験者であります。首長経験者の思いを言わせていただければ、住民の皆さんは、教育について、首長は権限があるはずだ、首長はもっと教育をよくするよう努力すべきだと思っております。

 私も、学級崩壊など問題を抱える先生の配転を市民である保護者の方々に訴えられ、制度上できない理由を説明するのに苦労した経験がございます。

 地方行政は、国政に比べ、ずっと住民に近い存在であり、住民の最も大きな関心事は、我が子の教育であります。

 維新・民主党案のように、議会のチェックと教育監査委員会の二重のチェックをかけた上で、住民の最も大きな関心事である教育について、首長に権限をきちんと与え、その責任を明確にすることが、日本の教育の発展に大きく寄与するものと確信するものであります。

 本法案で、首長のもとに教育行政の責任を一元化した趣旨は、教育行政を首長の思いのままに任せようとしたものではありません。

 民意で選ばれた首長が教育行政の責任を負う、合議体である教育委員会ではなく、顔の見える首長を教育行政の責任主体とする、その点が、教育行政の責任の所在が曖昧なままの、中途半端に教育委員会を残す政府案と異なることであることを、ぜひ御理解いただきたいと思います。

 以上です。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、稲津久君。

    〔稲津久君登壇〕

稲津久君 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 本改正案の審議に当たり、今私たちが改めて確認すべきは、特に義務教育課程における教育の目的は、何よりも子供の幸福を大前提としなくてはならないということだと考えます。

 私たち公明党は、これまで一貫して、教育は子供たち一人一人の幸福が第一との視点で、さまざまな課題に取り組んでまいりました。

 子供たちが、未来を目指し、豊かな人間性を養いながら、明るく元気に育つ中で教育の機会を得られることこそが、本来あるべき姿の教育の目的ではないでしょうか。

 しかしながら、学校などの教育現場や子供たちを取り巻く環境は厳しさを増してきており、いじめや不登校の増加、さらには、自殺等の悲劇も後を絶たず、現実として、子供の幸福を大前提にした本来あるべき姿の教育の目的が、十分に果たされているとは言えない状況にあります。

 とりわけ、現行の教育委員会制度は、いじめや体罰などの学校での事件をきっかけに、責任の不明確さや審議の形骸化が指摘されており、見直しが必要です。

 その上で、見直しに当たっては、これまで現行制度が果たしてきた役割や、制度が導入された意義、背景を確認し、教育の政治的中立性、継続性、安定性を十分に担保した上で、児童生徒の生命や身体の保護を要するときには迅速に意思決定できる、機動性を持ち、責任の所在が明確な体制に改めるべきと考えます。

 そこで、以下、伺います。

 現行の教育委員会制度について、総理は、これまでの国会答弁でも、責任の不明確さを指摘しています。

 教育行政の執行機関として合議制の教育委員会があり、その代表者が教育委員長、事務局を統括するのが教育長となっていることにより、責任者が教育委員長なのか教育長なのかわかりにくく、責任の所在が不明確であるとの認識だと思います。

 そもそも、教育委員会制度は、戦前の中央集権的な教育行政への反省から、地方の教育行政においては、公選制の教育委員会制度として一九四八年に導入されました。その後、公選を通じて教育委員会に政治的対立が持ち込まれるなどの理由により、首長による任命制に変更になるものの、教育委員会制度は、これまで一貫して、教育の政治的中立性や継続性、安定性の確保に大きな役割を果たしてきました。

 これまで六十六年間にわたり施行されてきた教育委員会制度の役割について、総理の所見を伺います。

 本改正案の具体的内容について、順次お伺いします。

 まず、教育行政の責任を明確化するために新設される、教育委員長と教育長を一本化した新たな教育長についてです。

 改正案の第四条には、「教育長は、」「教育行政に関し識見を有するもののうちから、地方公共団体の長が、議会の同意を得て、任命する」とあります。現行法では、教育委員会の委員のうちから教育委員会が任命するものとされていたものを、本改正案において、首長が直接任命することにした意義について、総理にお伺いします。

 教育行政の責任体制を明確にするため、従来の教育長と教育委員長を一体化する新たな教育長を置き、そのリーダーシップを強化することとなる反面、教育委員会には、教育長の事務執行の適正を確保する役割が、これまで以上に求められます。

 委員定数三分の一以上による会議招集請求、及び教育委員会会議の議事録作成とその公表の努力義務規定、また、委任事務、代理事務の管理及び執行状況の教育委員会報告義務が、教育委員会による教育長の監視機能を強化する仕組みとして盛り込まれたことは、評価をいたします。

 その上で、教育長は教育委員から会議招集請求された場合には遅滞なく招集しなければならないとありますが、招集の期限について、具体的にどの程度を想定しているのか。また、事務負担が過重となる小規模自治体を除いて、教育委員会が議事録の作成、公表をするような運用を担保すべきではないか。さらに、委任事務の教育委員会報告は、教育委員会規則において、監視を適正に行うことができるような、報告の時期や、対象となる事項について定めるとともに、教育委員会の求めに応じても報告する旨について定めるような運用を担保すべきじゃないか。文部科学大臣にお伺いします。

 今回の制度改正による新教育長は、教育行政の責任が明確化するとともに、権限も確実に強くなることとなります。

 人選基準である「教育行政に関し識見を有するもの」とは、どのような人選を想定するのか、具体的なキャリアや人物像をお示し願いますとともに、役割と権限が増す新教育長には、リーダーとしての資質を向上してもらうためにも研修プログラム等を導入すべきじゃないかと考えますが、文部科学大臣の見解をお伺いします。

 次に、教育委員の役割についてです。

 中教審答申では、「単に一般的な識見があるというだけではなく、教育に深い関心と熱意を有する人物が登用される必要がある」とした上で、「専門家を含めて任命することも審議を活性化するために有効と考えられる」とあります。

 ここで問題になってくるのは、現在の制度は、教育の専門家や行政官ではない、住民の代表である教育委員が、専門的な行政官で構成される事務局を指揮監督する、レーマンコントロールの考え方に立っているということです。

 専門家の視点を入れようとした場合、レーマンコントロールをどう担保していくのか、総理の考えをお伺いします。

 服務等の規定に「児童、生徒等の教育を受ける権利の保障に万全を期して当該地方公共団体の教育行政の運営が行われるよう意を用いなければならない」とあります。このような規定が設けられた理由及び趣旨について、文部科学大臣にお尋ねします。

 本改正案における大きなポイントの一つに、首長と教育委員会で構成する総合教育会議の創設があります。全ての自治体に必置義務とされる総合教育会議創設の意義について、総理にお伺いします。

 総合教育会議では、大綱の策定、教育条件の整備等重点的に講ずべき施策、緊急の場合に講ずべき措置について協議、調整を行うとあります。

 この協議と調整とはどういう趣旨か、具体的にどのような事項が法律上の協議、調整の対象となるのか、お答えをください。

 その上で、協議、調整事項の中には、教科書採択や学校の教育課程の編成、個別の教職員人事など、特に政治的中立性や継続性、安定性を担保する必要がある教育委員会の専権事項は含まれないと認識していますが、文部科学大臣の答弁を求めます。

 あわせて、緊急の場合に講ずべき措置における「緊急の場合」とはどのような場合を想定しているのかについても、お答えをください。

 大綱の策定権限は首長が有することになりますが、大綱に記載する事項の具体的イメージはどのようなものか、また、現行法の教育委員会と首長の権限配分を超えて首長が教育委員会の意に反して大綱を策定することを可能にしたものではないとの認識で間違いはないか、さらに、大綱策定が義務規定とされている一方で教育基本法では地方の教育振興基本計画は努力義務規定とされていることとの関係をどう整理するのか、文部科学大臣にお尋ねをします。

 以上、質問をしてまいりましたが、今回の改正の大きな鍵を握るのは、高い意欲と能力を持った教育長や教育委員の人材確保をどう図っていくのかという、人の問題になると考えます。

 そして、私たちが改めて考えなくてはならないのは、全ての教育関係者が子供にとって最適な教育条件を整えること、そのために役に立ち、機能する組織になっているかどうかという視点とともに、教育は国民の義務であり、国家百年の大計であるということを全ての国民が共有し、次代を担う子供たちのために力を尽くすことであることを訴え、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 稲津久議員にお答えをいたします。

 教育委員会制度の果たしてきた役割についてお尋ねがありました。

 現在の教育委員会制度は、制度の発足以来、教育の政治的中立性、継続性、安定性の確保を制度的に担保するとともに、地域の多様な視点を反映する観点からも重要な役割を果たしてきました。

 一方で、今般、いじめ等の重大な事案が生じる中で、責任の所在の不明確さ、危機管理能力の不足などの課題が顕在化しており、抜本的な改革が必要と考えております。

 首長による新教育長の任命についてのお尋ねがありました。

 新教育長については、首長が直接任命することにより、首長の任命責任が明確になると考えております。また、任命に当たっては議会同意を要することから、議会による教育長の資質、能力のチェック機能の強化に資するものと考えております。

 教育委員会制度におけるレーマンコントロールの担保についてのお尋ねがありました。

 教育委員会における審議を活性化するためには、教育に関する高度な知見を有する方の選任など、人選の工夫を一層進めることが重要であります。

 一方、教育の専門家ではない一般の住民の意向を教育行政に反映していくという、いわゆるレーマンコントロールの考え方は重要です。

 委員の職業等に偏りが生じないよう配慮するとの現行法の規定は維持することとしており、今後とも、地域住民や保護者等が幅広く教育委員として選任されるよう促してまいります。

 総合教育会議の意義についてのお尋ねがありました。

 教育行政については、首長と教育委員会の意思疎通が十分でないため、地域の教育の課題やあるべき姿を共有できていないという指摘があります。

 こうしたことから、今回の改正案においては、首長と教育委員会が相互の連携を図りつつ、より一層民意を反映した教育行政を推進していくため、総合教育会議を設置することとしたものです。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣下村博文君登壇〕

国務大臣(下村博文君) 稲津議員から、七つの質問がありました。

 最初に、教育委員会による教育長のチェック機能についてのお尋ねがありました。

 新教育長の権限が現在よりも大きくなることに伴い、これに対する適正なチェック機能の強化を図ることが必要であります。

 こうした観点から、教育長は、委員の定数の三分の一以上から請求された場合には、遅滞なく、会議を招集しなければならないこととしておりますが、この場合、一般には、定例の会議の開催日よりも早い時期が想定されるものと考えております。

 また、教育委員会会議の議事録について、その作成及び公表を努力義務としておりますが、住民への説明責任を果たすため、可能な限り作成し、公表するよう、各教育委員会に対し指導してまいります。

 さらに、教育長から教育委員会に対する委任事務の執行状況について、どのような形で報告をさせることとするかは、地域の実情に応じ、各教育委員会が、その規則において、チェック機能を十分に発揮できるよう適切に定めるべきものと考えております。

 次に、新教育長の人選基準及び資質の向上についてのお尋ねでありますが、新しい教育長は、教育行政に大きな権限と責任を有することから、適任者の任命とその資質の向上は、極めて重要であります。

 このため、新しい教育長については、教育行政に識見があるものを法律上の任命の要件としておりますが、これは、教育委員会事務局や教職員の出身者だけでなく、教育行政を行うに当たり必要な資質を備えていれば、幅広く該当するものと考えております。

 また、教育長のリーダーとしての資質や能力を高めるための方策としては、現在、市町村の教育長を対象とした研修会を実施しておりますが、今後、国、都道府県、大学等による研修のプログラムについて充実を図ってまいります。

 次に、教育長及び教育委員の服務等の規定についてのお尋ねでありますが、深刻ないじめや体罰の問題など、児童生徒等の教育を受ける権利にかかわる問題が発生していることを踏まえ、教育長及び教育委員は、教育を受ける権利の保障に万全を期して教育行政を運営する必要がある旨を法律に明記することとしたものであり、教育長及び教育委員の職務遂行に当たっての留意事項について訓示的に規定したものであります。

 次に、総合教育会議における協議、調整についてのお尋ねでありますが、総合教育会議においては、大綱の策定、教育を行うための諸条件の整備その他の地域の実情に応じた教育、学術及び文化の振興を図るため重点的に講ずべき教育施策、児童生徒等の生命または身体に現に被害が生じ、またはまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合等の緊急の場合に講ずべき措置について、協議し、調整を行うものとしております。

 この場合において、調整とは、教育委員会の権限に属する事務について、予算の調製、執行や、条例提案などの首長の権限と調和を図ることが必要な場合に用いており、協議は、それ以外の場合で、自由な意見交換として行われるものとして整理しているところであります。

 なお、教科書の採択や個別の教職員の人事などの特に政治的中立性の要請が高い事項については、教育委員会制度を設けた趣旨に鑑み、協議の議題として取り上げるべきではないと考えております。

 次に、改正法案第一条の四項第一項第二号の「緊急の場合」についてのお尋ねでありますが、児童生徒等の生命または身体に現に被害が生じ、もしくはまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合とは、例えば、いじめ問題により児童生徒の自殺事象が発生した場合、通学路で交通事故死が発生した後の再発防止を行う必要がある場合などを想定しております。

 また、「等の緊急の場合」とは、児童生徒等の生命または身体の保護に類するような緊急事態を想定しており、例えば、災害の発生により、生命または身体の被害は発生していないが、校舎の倒壊などの被害が生じている場合、災害発生時の避難先での児童生徒等の授業を受ける体制や生活支援体制を緊急に構築する必要がある場合、犯罪の多発により図書館等の社会教育施設において職員や一般利用者の生命または身体に被害が生ずるおそれがある場合等を想定しております。

 次に、大綱と教育振興基本計画の関係についてのお尋ねでありますが、大綱とは、当該地方公共団体の教育の振興に関する総合的な施策について、その目標や施策の根本となる方針を定めるものであり、国の教育振興基本計画の基本的な方針を参酌して策定するものとしております。

 大綱に定める具体的な事項としては、例えば、目標年度までに全学校の耐震化を完了すること、学校の統廃合を推進すること、少人数学級を推進することなどが考えられます。

 一方、教育基本法第十七条第一項においては、政府は、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策等について基本的な計画を定めることとされ、同条第二項において、地方公共団体は、国の計画を参酌し、地方の計画を定める努力義務が規定されております。

 改正案における大綱は、国の計画の基本的な方針を参酌して策定することが義務とされているものでありますが、詳細な施策の策定は、そこまで求めるものではないということから、両者は矛盾しないものと考えております。

 最後に、首長による大綱の策定権限についてのお尋ねでありますが、大綱は、首長が定めるものとされておりますが、教育委員会と十分に協議し、調整を尽くした上で策定することが肝要であります。

 なお、教育委員会と調整がつかない事項を首長が大綱に記載した場合、権限を持つ教育委員会が執行しない事項を記載することとなり、そのような記載は意味がないものであるため、こうしたことのないよう、十分な協議、調整が必要と考えます。

 以上です。(拍手)

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副議長(赤松広隆君) 次に、柏倉祐司君。

    〔柏倉祐司君登壇〕

柏倉祐司君 みんなの党の柏倉祐司です。

 みんなの党を代表して、ただいま議題となりました地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に関する質問をさせていただきます。(拍手)

 英国の元首相トニー・ブレアは、英国には三つの課題がある、それは教育、教育、教育だと語りました。教育こそ国の土台であり、教育なくして国の未来はないとの彼の哲学を端的に表現したものです。

 安倍政権においても、アベノミクス三本の矢に並んで、教育再生は、重要かつ喫緊の課題と位置づけられています。

 そして、本法の契機となった大津いじめ事件が提示をした、教育現場の責任はどこにあるのかとの問いに明快に答えを示すためにも、本法には、教育理念と問題解決方法が同時に反映をされなくてはいけません。

 そこで、今回は、先に教育のあり方を、後段で実際的な運用方法について質問をさせていただきます。

 まず、教師の質的向上を図るための施策についてお伺いいたします。

 教育は、子供たちに未来を与える、国、地域の共同作業です。

 学力向上等の具体的な目標を掲げながらも、指導者のさまざまな理念、価値観、歴史観が絡み合い、地域地域、現場現場でその実際は多様です。しかし、共通していることは、子供と直接に接するのは現場の教師であり、全ての制度、方針、教材も、現場の教師を通して子供たちに示され、教えられるということです。

 現場の責任は首長にあるのか、教育長にあるのかの議論と並行して、いかに教師の質的充実を図るのかを議論すべきと考えます。

 例えば、インターン制度や、実績による昇給・昇進制度などです。

 教師は、大学を卒業してすぐに教育現場に配属されます。多くの純粋かつ情熱的な教師たちも、学校以外の現場を知らなくては、教育経験と反比例をして、視野が狭くなり、幅広い価値観を許容できなくなるおそれがあります。社会人経験を積むことがキャリアアップにつながるような教員採用制度の構築が急務です。

 また、日ごろから努力を惜しまず、子供からも、教員からも、父兄からも信頼と高い評価をかち得ている能力の高い教師がモチベーションを保てるような処遇方法も考えねばなりません。

 教師といえども人間です。個々の生活や人生プランもあり、現状の年功序列や学閥主義の前に、やる気をなくし、事なかれ主義に流れてしまうおそれがあります。すばらしい教師が報われる昇給・昇進制度が必要です。

 教師のインターンシップ導入と、教師の実績による昇給制度に関する総理の御所見をお伺いいたします。

 次に、家庭と学校の役割についてお伺いします。

 近年、共働き世帯がふえ、親と子供が接する機会が減少しています。そうした世相を背景にして、教育における家庭の役割の縮小化、相対的な学校の役割の肥大化が進展しております。

 時代のニーズに合わせて家庭と学校の連携を図ることも大切ですが、やはり、家庭で学ぶべきことは家庭で学んでもらう、しつけるということが、幼少期における人間形成には極めて大切です。こうしたことが再び全家庭で行われる家庭の再生も、教育再生と並行して進めていかなくてはいけません。

 御飯の食べ方を家庭科で教えることがあるようですが、それが教師の仕事でしょうか。町でのマナー、ルールを守ること、友達を大切にすること、うそをつかないことなどを、道徳の教材に記載し教えることのみで、本当に体得できるのでしょうか。私は道徳教育を推進すべきと考えますが、全ての常識、道徳、基本的所作は、やはり家庭で最初に教えるべきであると考えます。

 現在、いわゆるモンスターペアレンツとされる、理不尽な要求をしてくる親たちへの対応や、給食のアレルギー問題、いじめなどの校内事件・事故予防にも、教師たちは想像以上に労力を傾注しています。要求されることが多過ぎると、全てが事後的対応となり、さらに、そのパフォーマンスも低下します。

 教師に全てを期待するのではなく、一般常識をまず家庭で伝える、教える、実践する、家庭の再生が必要ではないでしょうか。

 家庭の役割とは何か、学校の役割は何か、そして、家庭の役割をどのように全うさせるのか、総理の御見解を伺います。

 次に、教育現場の責任の所在、及び地域特性を加味した柔軟な当該制度の運用について質問いたします。

 いじめによる自殺など重大事案が生じる中で顕在化した現行の教育委員会制度の課題として、責任の所在の不明確さ、危機管理能力の欠如が指摘されました。

 本法律案では、教育委員長と教育長を一本化し、新たな責任者として新教育長を置き、合議体である教育委員会も含めて執行責任が新教育長にあることを明確化しました。

 では、実際にいじめが起こったときには、いじめの現場対応、司法対応の責任が新教育長に集約されるのでしょうか。文部科学大臣の御見解を伺います。

 また、いじめの緊急対応に関しては、首長が主宰する総合教育会議で話し合うこととしています。

 緊急対応に効果がない場合、または明らかな不備があった場合、その責任は、総合教育会議の主宰者である首長にあるのか、執行責任者である新教育長にあるのか、文部科学大臣の御見解を伺います。

 今回の法改正で全国一律に当該制度が適用されるわけですが、地域によっては、既に独自の改革を進め、一定の効果を上げているところもあります。

 教育委員会事務局と首長の事前協議で全てを決し、教育委員会はその決定を追認するだけという形骸化に危機感を覚え、国に先行して教育改革を進めている福岡県春日市のような自治体には、特段の配慮が必要ではないでしょうか。

 もちろん、客観的な評価は必要ですが、その取り組みが継続に値すると判断される自治体に関しては、どちらの制度を選んでもよいという選択権を与えるなど、柔軟な対応も必要であると考えますが、文部科学大臣の御所見を伺います。

 教育は、国の関与が主であるべきところと地域の関与が主であるべきところとに分けることができます。地域主権を重視するみんなの党は、地域の実情に合った問題解決型の教育改革を行うべきであると考えています。

 それには、制度設計以上に、地域独自の取り組みによる、委員や職員の意識改革が必要ではないでしょうか。過度なレーマンコントロールを排しつつ、地域の意思や工夫を反映する教育制度を第一に求めるべきであることを最後に申し上げて、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 柏倉祐司議員にお答えをいたします。

 教員の資質向上を図るための施策についてお尋ねがありました。

 多くの都道府県等において、社会人としての経験を評価する特別の採用選考や、教員を民間企業等へ派遣する研修等が行われております。また、各都道府県等において、能力や実績に係る評価結果を人事や給与等に反映するなどの取り組みが進められております。

 政府としては、今後とも、教員の資質や士気の向上を図るため、こうした都道府県等の取り組みを促してまいります。

 教育における家庭と学校の役割についてお尋ねがありました。

 子供の教育については、父母等の保護者が第一義的責任を有するものであり、家庭教育は、基本的な生活習慣の習得、自立心の育成、心身の調和のとれた発達などに重要な役割を担っているものです。

 学校においては、子供の心身の発達に応じて体系的に教育が行われるものですが、その際、家庭との連携が重要であると考えます。

 政府としては、保護者向けの講演や交流会の実施など、家庭教育に対する支援を行っており、今後とも、家庭と学校の連携により、子供たちの健全な育成が図られるよう取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣下村博文君登壇〕

国務大臣(下村博文君) 柏倉議員から、三つの質問がありました。

 最初に、いじめの現場対応、司法対応の責任についてのお尋ねがありました。

 今回の法案では、教育委員長と教育長を一本化した新たな職として教育長を置くことにしており、責任の明確化を図るものであります。したがって、いじめによる自殺等の問題が生じた場合に、まずは教育長が一元的に学校現場に対して指示等を行うものであります。

 司法対応については、損害賠償訴訟においては、財務の統一的な処理等の観点から、原則として、首長が当該地方公共団体を代表するものであり、行政処分の取り消し等を求める行政事件訴訟においては、教育委員会が当該地方公共団体を代表するものでありますが、実務上は教育長が責任を持って対応することとなると考えます。

 次に、総合教育会議に基づく緊急の対応の責任者のお尋ねでありますが、学校におけるいじめ問題については、学校を管理する教育長が責任を持って対応すべきでありますが、首長は、民意を反映する観点から、いじめについても総合教育会議で協議できることとしたものであります。

 次に、自治体独自の制度についてのお尋ねでありますが、どの地域においても、責任ある地方教育行政を構築する観点からは、統一的な教育行政の仕組みであることが必要であり、こうした考えから、今回の改正案においては、全国全ての地方公共団体において同様の仕組みとしております。

 なお、春日市の取り組みについては、現行制度において推進されているものであり、法改正後においても各自治体が独自の工夫により改革に取り組むことは、意義あることと考えます。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、井出庸生君。

    〔井出庸生君登壇〕

井出庸生君 結いの党、信州長野の井出庸生です。

 ただいま議題となりました地方教育行政法の一部を改正する法案(以下、政府・与党案と呼ぶ)及び地方教育行政の組織の改革による地方教育行政の適正な運営の確保に関する法案(以下、民主・維新案と呼ぶ)について、順次質問をいたします。(拍手)

 教育委員会制度改革は、安倍総理の掲げる教育再生の最重要テーマの一つと受けとめています。

 昨年三月、文部科学委員会で、私は、教育再生という言葉の意味、意図するところについて、下村文部科学大臣に質問しました。

 下村大臣は、次のように答弁されました。

 「第一次安倍内閣では、」「教育基本法を改正するとともに、教育再生会議から教育改革の諸方策についての提言もいただきましたが、残念ながら、その後の教育において個々の一人一人の能力を社会の中で生かし切ることが必ずしも実現していない、そういう現実社会があるというふうに思います。 このため、全ての意思ある者がその能力に応じた教育機会を得られ、持てる能力を最大限に伸長し、自己実現を図り、幸福な人生が送れるよう、そういう環境をつくるということ、またそのための教育を行う。その教育が行われていないということで、それを行うことこそが教育再生である」との答弁でした。

 この答弁を踏まえて、安倍総理に伺います。

 下村大臣が指摘したように、第一次安倍政権以降、個々の一人一人の能力を社会の中で生かし切ることが必ずしも実現していないという事例は、どのようなものがあったのか。反省すべき施策があったのか。お答えください。

 また、教育再生とともに自由民主党がおととしの衆議院選挙の公約で掲げた「教育を、取り戻す。」というキャッチフレーズについて、一体何から教育を取り戻すのか、お示しください。

 さて、教育委員会制度改革議論の大きなきっかけとなったのが、平成二十四年七月、滋賀県大津市で中学二年生がいじめを苦に自殺したことが、報道で明らかになったことでした。生徒が亡くなったのはその前の年だったにもかかわらず、真摯な対応がされてこなかったことに対し、教育委員会や学校、役所は一体何をやっていたのかということが問われました。

 また、一般的に、教育現場での諸問題が、学校、教育委員会、役所の間でたらい回しされる実態があることも、多くの人が感じてきたところだと思います。

 したがって、改革を進める際には、責任の所在を明確化することが求められます。

 政府・与党案は、教育委員会を権限のある執行機関として残したものの、教育委員会の責任者だった教育委員長を廃止し、首長に近い教育長を教育委員会の責任者に一本化したほか、首長と教育委員会による総合教育会議を新設して、大綱を決めるとしています。

 教育委員会を残しながら、首長、教育長、総合教育会議の権限が事実上大きくなる。一体、どこが教育の責任を担っていくのか。首長と教育委員会の距離が近くなり過ぎて、大津のいじめ事件が問いかけた、責任の所在の明確化という問題提起に応えていないと思いますが、総理の考えを伺います。

 また、教育委員会を残したのであれば、なぜ、教育委員会そのものの改革、例えば常勤委員をふやすなどの方策をとらなかったのか。教育委員会をさらに形骸化させることになるのではないか。総理の答弁を求めます。

 いじめで子供が命を絶つような重大事案が起こり、教育委員会が調査をするときに、首長に近い教育長の責任で調査がされれば、首長は、その調査結果を客観的な目で検証できるのか。また、調査が不十分であった場合に、再調査を決断できるのか。

 首長と教育委員会が混然一体化することで、子供の命に係る重大事案があったときにチェックが働かなくなるのではないかと懸念しますが、下村大臣の考えを伺います。

 また、平時においても、これまで教育委員長が、首長と一線を画した立場で教育委員会の責任者となってきましたが、教育委員長がいなくなり、首長と教育長が総合教育会議などで示す考えに、平の教育委員の意見が聞き入れられるのか。平時においてもチェック機能がなくなると思いますが、下村大臣の見解を求めます。

 次に、総合教育会議について。

 総合教育会議は、大綱の策定のほか、教育条件の整備等重点的に講ずべき施策について協議、調整を行うともありますが、教科書採択や教職員人事といった教育委員会の専権事項についても協議や意見交換がされるとの見方があります。

 総合教育会議で教科書採択、教職員人事の方針が事実上決まり、教育委員会は、もはや完全な追認機関になりかねないと懸念しますが、総理、いかがでしょうか。

 さて、もう一つの論点である、教育の中立性について伺います。

 教育の中立性、政治的中立性は、不偏不党性の保持、一党一派に偏らないことであり、人格形成途上の児童生徒にとって重要なことだと、先月十九日の文部科学委員会で下村大臣は答弁をされています。

 この政治的中立性という言葉は、今国会で、公共放送をテーマに大きな議論となりました。公共放送のトップが軽々しく私見を発言することが許されないということは、御本人が発言のほとんどを取り消したことからも明らかです。

 そこで、首長の教育への関与が強まれば、特に、異なる複数の見解が存在する物事については、その多様性を認め、多角的な、バランスのとれた教育を行う寛容さが求められると思います。ある夕刊紙に連日ひどいことを言われても、一向に気にいたしませんと発言された寛大な安倍総理に、教育への関与が強まる首長に求められる資質について所見を伺います。

 最後に、民主・維新案について。

 民主・維新案は、教育委員会を廃止し、責任の所在を明確化したことは、思い切った改革と評価します。

 そして、教育の中立性を担保するため、教育監査委員会を設けています。

 教育監査委員会が、首長部局から独立性を担保して機能するのであれば、首長と教育委員会が混然一体となって監視役を失った政府・与党案よりも、中立的な立場から意見が出されるものと期待します。

 監査については、特に、いじめのような重大事案があったときの対応の検証、また、大きな政策決定がされた後は、必ず監査をするよう提案します。

 しかし、この法案には、監査を、いつ、どのようなときに行うかが、書いてありません。

 都道府県で行政を監視している監査委員のように、どのようなときに監査を行うか法律に明記するべきと考えますが、いかがでしょうか。

 また、教育監査委員会の事務局を、首長の下の教育部局と一体化させるのか否か。すなわち、どのように独立性を保つのか。加えて、監査に必要な調査権限がどの程度与えられるのか。提出者の答弁を求めます。

 結いの党は、教育に関する権限を市町村や学校現場へ移管し、学校運営を多様化することを政策に掲げています。

 教育において、地域や学校の主体性を認め、いざというときには毅然と対応する寛容な責任体制のあり方をどう構築するかという視点で議論を進めていくことを申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 井出庸生議員の質問にお答えいたします。

 教育再生についてお尋ねがありました。

 第一次安倍内閣以降も、例えば、いじめや体罰など、教育現場を取り巻く課題が相次ぎ、また、それらの課題に対し、現行の教育委員会制度のもとで迅速に対処できていなかった事例がありました。

 政府としては、これらの課題に正面から取り組み、全ての子供たちに世界トップレベルの学力と規範意識を身につける機会を保障することを目指し、教育再生に全力を尽くしており、こうしたことをもって、教育を取り戻すと申し上げているところであります。

 教育の責任の所在の明確化と、教育委員会の改革についてお尋ねがありました。

 改正案においては、現行の教育委員長と教育長を一本化した新教育長を新たな職として置くことにより、教育行政の責任の明確化を図っており、いじめ事件の発生などの緊急時においても、責任ある、迅速かつ適切な対応が可能となると考えております。

 御指摘の、教育委員会そのものの改革については、常勤の教育長が教育委員会の代表者となることで、教育委員への迅速な情報提供や会議の招集が可能となり、教育委員会の活性化に資することとなると考えております。

 なお、常勤の教育委員については、委員の多様性の確保などの観点から、改正案には盛り込んでおりません。

 教育委員会と総合教育会議の関係についてお尋ねがありました。

 総合教育会議は、首長と教育委員会が相互の連携を図りつつ、より一層民意を反映した教育行政を推進していくことを目的としています。

 総合教育会議では、大綱や教育条件整備などの重点的に講ずべき施策等について、首長と教育委員会という執行機関同士が、公開の場において、十分に協議し、整備を行うこととしているものですが、教科書の採択や個別の教職員の人事などについては、最終的な決定権限は教育委員会にあり、御指摘は当たらないものと考えています。

 首長に求められる資質についてお尋ねがありました。

 首長は、教育行政のみならず、地方公共団体全体を統括する立場であり、幅広い住民の意思を反映して行政を行っていくことが期待されていると考えます。

 今回の改正案では、総合教育会議の設置や大綱の策定を通じて、首長が連帯して教育行政に責任を果たせる体制を構築することとしていますが、首長には、教育内容が中立公正であることに意を用いていく姿勢が期待されると考えます。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣下村博文君登壇〕

国務大臣(下村博文君) 井出議員から、二つの質問がありました。

 最初に、いじめ等の重大事案の際のチェック機能についてお尋ねがありました。

 児童生徒等の身体または生命に係る緊急の場合には、まず、教育長が迅速に対応し、必要に応じ、総合教育会議において首長と教育委員会が対応方針を協議することとなります。

 さらには、首長は、必要に応じ、いじめ防止対策推進法に基づく再調査を行うことができるものであり、今回の改正においても、法律に基づく首長と教育委員会の役割分担のもと、それぞれの権限の行使が適切に行われるものと考えております。

 次に、教育委員によるチェック機能についてのお尋ねでありますが、今回の改正案においては総合教育会議が設けられることとなりますが、総合教育会議は、首長と執行機関としての教育委員会が正規の構成員となり、教育長のほか全ての教育委員が出席することが原則となると考えております。

 また、引き続き教育委員会を執行機関として残すこととしていることから、合議体で意思決定を行うものであり、教育長以外の意見を反映した教育行政の運営が図られるものと考えております。

 今回の改正案では、教育委員のチェック機能を強化する観点から、教育長の任期を三年としているほか、教育委員の側からの会議の招集の請求や、教育委員会から教育長に委任した事務の管理及び執行の状況の報告をしなければならないことを規定しております。

 そのほか、透明性の向上を図り、住民によるチェック機能を強化する観点から、教育委員会会議の議事録の作成及び公表の努力義務を規定しているところであります。

 以上であります。(拍手)

    〔笠浩史君登壇〕

笠浩史君 井出庸生議員にお答えいたします。

 教育監査委員会に関する御質問をいただきました。

 まず、教育監査委員会がどのようなときに監査を行うのかを法律上明記すべきではないかという御質問についてお答えいたします。

 教育監査委員会は、地方公共団体の長が処理する学校教育等に関する事務の実施状況に関し必要な評価及び監視を行う、地方公共団体の長から独立した専門的な機関という位置づけです。

 そして、教育監査委員会の行う評価及び監視とは、地方公共団体の長が処理する学校教育等に関する事務の実施状況に関し、その事務が適切に行われ、望ましい成果を上げているか評価を行うとともに、常時これを監視することであります。

 教育監査委員会がどのようなときに評価及び監視を行うべきかについては、法律上明記していませんが、これは、教育監査委員会が、地方公共団体の長が処理する学校教育等に関する事務の実施状況に関し、常に監視し、適宜適切にその評価を行うことを想定していることによるものであります。

 議員御指摘の、いじめのような重大事案があったときや大きな政策決定がされた後には、当該教育監査委員会において、重大事案への対応の検証や地方公共団体の長の政策決定についての評価がなされるものと考えています。

 次に、教育監査委員会の事務局を、首長のもとの教育部局と一体化させるのか否か、すなわち、どのように独立性を保つのかとの御質問についてお答えいたします。

 教育監査委員会は、地方公共団体の長が処理する学校教育等に関する事務の実施状況に関し必要な評価及び監視を行う、地方公共団体の長から独立した専門的な機関という位置づけであります。

 この法律案の第四十七条において、教育監査委員会に事務局を置くこととしていますが、教育監査委員会と一体のものである事務局は、このような教育監査委員会の位置づけからして、地方公共団体の長から独立してその事務の処理を行うものです。

 ゆえに、教育監査委員会に置かれる事務局と、地方公共団体の長のもとの教育部局が、一体となることはないことになります。(拍手)

    〔中田宏君登壇〕

中田宏君 続けて、井出庸生議員にお答え申し上げます。

 教育監査委員会について、監査に必要な調査権限はどの程度与えられるのかという御質問をいただきました。

 この法律案の第三十三条に、教育監査委員会の権限として、資料の提出の要求等に関する規定が置かれております。

 すなわち、教育監査委員会は、地方公共団体の長に対し資料の提出及び説明を求め、またはその業務について実地に調査することができること、教育監査委員会は、公私の団体その他の関係者に対し、必要な資料の提出に関し、協力を求めることができることとされております。

 教育監査委員会においては、このような権限を適切に行使することにより、地方公共団体の長が処理する学校教育等に関する事務の評価及び監視を実効的に行うことができるものと考えております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、宮本岳志君。

    〔宮本岳志君登壇〕

宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、地方教育行政法改正案について、安倍総理並びに下村文部科学大臣に質問いたします。(拍手)

 本法案は、教育委員会を首長の支配のもとに置こうとするものであります。

 法案では、現在の教育委員長と教育長を一本化し、首長が、直接、教育長を任命するとしています。教育委員会から、教育長の任命権も、教育長を指揮監督する権限も奪うものであります。

 では、その教育長を、一体誰が監督するのですか。

 さらに、本法案は、首長が招集権限を持ち、首長と教育委員会で組織される総合教育会議を設置し、首長が教育の振興に関する大綱を策定するとしています。

 大綱は、国の教育振興基本計画の基本的な方針を参酌して定めるといいますが、それは、結局、国の方針どおりに策定せよということではありませんか。また、愛国心教育を推進するなど、教育の内容に踏み込んで首長が策定することも可能なのではありませんか。

 教育委員会は、協議するだけで、首長が定める大綱に従わなければならないのではありませんか。これでは、教育委員会は、まさに形だけになり、首長が直接教育に介入することを容認し、教育の政治的中立性を脅かすことになるのではありませんか。

 憲法が保障する教育の自由と自主性を侵害するものであり、断じて容認することはできません。

 既に、地方では、首長による教育への政治介入が問題になっております。

 大阪市では、橋下徹市長が全職員に対する違法な思想調査を行おうとしましたが、市教育委員会が否決し、学校現場を守りました。島根県松江市では、教育長が漫画「はだしのゲン」を学校図書館から撤去させたとき、教育委員会がその決定を取り消しております。これらは、教育委員会が首長から独立した意思決定機関だからこそできたのです。

 また、全国学力テストをめぐって、平均点を上げるため管理職がカンニングさせる、テスト対策を優先して文化祭など大切な活動を短縮するなどの弊害が生まれています。にもかかわらず、一部の首長は、平均点での学校ランキングや平均点下位校の校長名の公表など、もっと競争せよとあおっています。

 教育委員会を首長のもとに置けば、不当な政治介入をとめることができなくなるばかりか、一層政治介入が助長されるのではありませんか。

 そもそも、戦後の教育委員会制度は、公選された教育委員が保護者や住民の意見を聞きながらその自治体の教育のあり方を決めるという、民主的な制度として出発しました。それは、戦前の教育が、政治権力に支配され、お国のために血を流せと子供たちに教えた、痛苦の反省の上に立ったものにほかなりません。

 しかし、一九五六年には、公選制は廃止され、この地教行法が、国会に警官隊まで導入して、強行されたのであります。

 それから五十八年、教育委員会の形骸化が進み、事務局が実権を握り、硬直的で閉鎖的な体質が広がってきたのです。

 私たちは、現在の教育委員会は、少なからず問題を抱えていると考えます。教育委員会は、地方の教育行政の意思決定を行う住民代表の合議体としての役割が十分に発揮できておらず、教育委員会事務局の独走や事なかれ主義が問題を引き起こしています。

 その背景には、歴代の自民党政権が、日の丸・君が代、全国学力テストなど、国の方針どおりの教育を学校現場に押しつけるために、教育委員会事務局を通じて教育委員会の自主性を奪ってきたことがあります。その結果、子供や保護者、住民ではなく、文部科学省ばかりを見る教育委員会になってしまったのではありませんか。答弁を求めます。

 例えば、大津市のいじめ自殺事件では、いじめの隠蔽を行ったのは教育委員会事務局でした。第三者調査委員会の報告書は、住民代表の教育委員たちが蚊帳の外に置かれていた経過を指摘し、今重要なことは、教育長以下の事務局の独走をチェックすることであり、その一翼を担う存在としての教育委員の存在は決して小さいものではないと指摘しています。

 また、教育委員が、よく学校を回り、子供の様子や先生の話を聞き、施策に反映させているところなど、各地でさまざまな努力も行われております。

 求められるのは、住民代表である教育委員会の、機能と役割を強める方向での改革です。首長の権限を強化する本法案は、取り組む方向が逆ではありませんか。答弁を求めます。

 総理は、教育基本法の改悪に続き、今回、本法案で教育委員会の独立性を奪い去って、一体何を進めようというのか。その狙いは、一層露骨な、競争教育の推進と、歴史を偽る愛国心教育だと言わなければなりません。

 総理は、侵略戦争への反省を、自虐的と非難し、太平洋戦争をアジア解放のための戦争などと教える特異な教科書を賛美し、その採択を求めてきました。下村博文文科大臣の沖縄県竹富町への是正要求は、その端的な例であります。

 侵略戦争美化と愛国心教育など、安倍政権が狙うゆがんだ教育を、首長のトップダウンを利用しながら、各地に広げようとしているのではありませんか。答弁を求めます。

 最後に、そもそも、教育とは、子供のための、社会全体の営みであります。政治が何よりも行うべきことは、教育条件の整備によって、子供の学ぶ権利を保障することであり、政治が教育内容に介入、支配するなどということは、決してあってはなりません。このことを強調して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 宮本岳志議員にお答えをいたします。

 教育の政治的中立性についてお尋ねがありました。

 今回の改正案では、首長と教育委員会が相互の連携を図りつつ、より一層民意を反映した教育行政を一体的に推進していくため、総合教育会議を設置するなどの改革を行うと同時に、教育の政治的中立性、継続性、安定性を確保するため、教育委員会を執行機関として残し、教育委員会の職務権限は変更しないこととしております。

 したがって、教育の政治的中立性に関する御懸念は当たらないものと考えます。

 教育委員会の自主性についてお尋ねがありました。

 教育委員会の自主性は、現場の創意工夫に基づく教育行政の推進は、重要であると考えております。

 今回の改正案においては、教育委員会を引き続き執行機関とするとともに、地域の民意を代表する首長が教育行政に連帯して責任を果たせるような体制を構築することとしており、今後とも、多様な地域の意向を反映した教育行政が行われることを期待しております。

 なお、これまで、政府としては、教育行政に関し、国と地方の役割分担に基づき、適切に対応を行ってきたものと考えております。

 教育行政への首長の関与の強化についてお尋ねがありました。

 今回の改正案は、民意を代表する首長と教育委員会が相互の連携を図りつつ、総合教育会議での協議や大綱の策定等を通じ、より一層民意を反映した教育行政の推進を図ろうとするものです。

 また、教育委員の職業等に偏りが生じないよう配慮するとの現行法の規定を維持しつつ、教育委員長と教育長を一本化した新教育長が、緊急の場合に教育委員会の招集を迅速かつ適切に行うことができるようにする等により、教育委員会の機能の強化が図られるものと考えております。

 今回の法案と、政府の意向についてお尋ねがありました。

 安倍内閣として、侵略を否定したことは一度もありません。

 歴史認識については、我が国は、かつて、多くの国々、とりわけ、アジア、中国等の人々に対して多大な損害と苦痛を与えてきました。その認識においては、安倍内閣としても同じであり、これまでの歴代内閣の立場を引き継ぐ考えです。

 今回の改正案は、その地域の民意を代表する首長と教育委員会が連携を図り、より一層民意を反映した教育行政の推進を目指すものであり、首長のトップダウンを利用しながら国の意向を各地に広げようとしているとの指摘は当たりません。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣下村博文君登壇〕

国務大臣(下村博文君) 宮本議員から、六つの質問がありました。

 最初に、教育長の監督についてお尋ねがありました。

 教育長は、首長が議会の同意を得て任命、罷免することとしており、議会において、従来以上に職責が重くなる新教育長の資質、能力がチェックされることとなります。

 また、新教育長は、教育委員会の構成員でもあって、合議体の意思決定に基づき事務を執行する立場にあり、合議体の意思決定に反する事務執行を行うことはできないものと考えられます。

 次に、国の方針どおりに大綱を策定するのではないかとのお尋ねでありますが、教育行政は、国と地方との適切な役割分担のもとに行われるべきものとされていることに鑑み、国の教育振興基本計画に明記された大きな方向性を参考にすることが望ましいことから、国の教育振興基本計画の基本的な方針を参酌することとしたものであります。

 他方、参酌とは、参考にするという意味であり、また、教育の課題は地域によってさまざまであることを踏まえ、地域の実情に応じ策定することとしており、必ずしも国の方針どおりに大綱を定めなければならないということではありません。

 次に、大綱の内容についてのお尋ねでありますが、大綱は、当該地方公共団体の教育の振興に関する総合的な施策について、地域の実情に応じて、その目標や施策の根本となる方針を定めるものでありますが、教育委員会が適切と判断した場合においては、教育内容にかかわる事項を記載することが妨げられるものではありません。

 次に、教育委員会は大綱に従わなければならないのではないかとのお尋ねでありますが、大綱は、首長が定めるものとされていますが、教育委員会と十分に協議し、調整を尽くした上で策定することが肝要です。仮に、十分な協議、調整がなされないまま首長が大綱に記載した場合、当該事項の執行については、執行機関である教育委員会が判断することとなるものであります。

 次に、首長による政治介入についてのお尋ねがありました。

 もとより、予算等の権限を有する首長は、日ごろから教育政策について教育委員会としっかり協議し、調整を行い、方向性を定めていくことが重要であります。

 今回の法案では、教育委員会を執行機関として残し、教育委員会の職務権限は変更しないこととした上で、総合教育会議という公開の場において、地域の民意を代表する首長が教育委員会と協議し、調整が行われることとなります。

 その場合においても、最終的な決定権限は教育委員会に留保されており、御指摘の、首長の政治介入が助長されるという御懸念は、当たらないものと考えます。

 次に、教育委員会の自主性についてお尋ねがありました。

 教育活動を充実するには、教育委員会の自主性や現場の創意工夫を生かす教育が展開されることが重要でありますが、同時に、国としては、全国的な教育水準の維持向上や教育の機会均等の観点からさまざまな施策を実施することが重要であると考えております。

 教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力のもと進めることが重要であり、地方公共団体においては、国の施策も参考にしつつ、地域の多様な意向が反映されるよう、教育委員会の活性化を図ることが必要であります。

 今後、より一層、地域の多様な意向が反映されるよう、コミュニティースクール等の関係者が教育委員として選任されるよう、人選の工夫を促してまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、青木愛さん。

    〔青木愛君登壇〕

青木愛君 生活の党の青木愛です。

 私は、生活の党を代表いたしまして、ただいま議題となりました地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案に対して質問をいたします。(拍手)

 今回の法律改正の端緒は、平成二十三年十月に発生いたしました、滋賀県大津市の中学生がいじめを苦に自殺した事件を契機といたしております。

 このたび政府から提出をされました地教行法改正案は、中教審の答申によるいわゆるA案、B案を受け、その後与党内で修正された後の案だと伺っています。

 この最終的に取りまとめられました政府から提出された改正案に対しまして、かねてより、戦後レジームからの脱却を掲げ、戦後教育の改革の必要性を主張しておられる安倍総理の率直な評価と改正に対する意欲について、今後の審査の冒頭に当たり、まずお伺いをさせていただきます。

 御承知のように、戦前の教育システムは、国定教科書に象徴されるように、文部省が教育内容を統制する、中央集権的なものでありました。

 この教育システムが日本人を軍国主義に走らせたとして、昭和二十三年に教育委員会法が制定され、各自治体に独立した教育委員会を設置して、教育行政の地方分権を図りました。

 その後、昭和三十一年には、教育委員会の根拠法が、現行の、地方教育行政の組織及び運営に関する法律へと変わり、教育委員会制度は、六十年以上にわたって我が国の地方教育行政の根幹を担う制度として確立されてきました。

 しかし、近年においては、多様化する教育への要望に十分に応え切れていない、教育行政に関する権限と責任の所在が不明確である、審議が形骸化しているなどの課題が指摘をされてきました。

 このような指摘に対しては、平成十三年に、教育における住民自治の強化の観点から、教育委員の中に保護者が含まれるよう努めるなど、教育委員の構成の多様化や、教育委員会会議の原則公開に関する法改正が行われました。

 また、平成十九年には、いじめ自殺事案や高等学校での必修であります世界史の未履修問題などをめぐって、教育行政における責任の所在が議論となり、国や教育委員会の責任の明確化のための法改正が行われました。

 このほかにも、適宜、教育委員会制度の充実という観点から法改正が行われてきました。

 しかし、再び、大津市のいじめによる自殺事件が起こってしまい、教育委員会の不適切な対応が明るみになりました。

 これまでの一連の法改正について、政府はその効果などについてどのように検証を行っているのか、まずお伺いをいたします。

 今回、法改正を行って、これまでの教育委員会と首長の関係を見直し、教育委員長については、教育長との一元化を図ることとされております。

 先ほど述べてまいりましたこれまでの教育委員会制度の法改正におきましては、教育委員会制度の充実の観点からさまざまな事項について改正されてきましたが、今回のように、首長と教育委員会の関係のあり方にまで踏み込んだ理由と、地方教育行政に対する首長の関与を強化することによって現状の課題がどのように解消されると確信しておられるのか、お伺いをいたします。

 また、今回の法改正によって、地方教育行政への首長の意向の関与が強まることとなりますが、首長は、選挙を経る政治家であります。したがって、これまで教育委員会制度においてその理念、根幹の原則とされてきた政治的中立性、継続性、安定性が損なわれるおそれがありますが、これまでの教育委員会制度を中心とした地方教育行政制度の理念が間違っていたという御判断になるのでしょうか。今後の地方教育行政制度の理念を変えるお考えなのか、お伺いをさせていただきます。

 地方教育行政への首長の関与の強化とともに、今回の法改正では、国、すなわち文部科学大臣による地方公共団体の教育委員会への指示の規定が見直されることとなっています。

 さきにこの規定を創設した平成十九年改正時にも議論されましたように、地方公共団体の自治事務への国の関与は、原則としてするべきではなく、例外としても、最小限なものとするべきとございました。この点について、今回の規定の見直しにおいてはどのように考慮をされているのか、お伺いをいたします。

 私たち生活の党は、むしろ、国と地方がお互いに責任を押しつけ合う無責任体制こそが教育問題の根底にあると判断をし、義務教育の最終責任は国が負うよう法制度として明確にすべきと考えてまいりました。それは、教育のかなめである教師が、責任回避のための事なかれ主義に陥ることなく、教育者として、萎縮することなく子供たちの教育に向き合えるよう、特別職の国家公務員としての身分保障を十分にすべきだということを主眼にいたしております。

 そして、教育のカリキュラムは、全国一律ではなく、基礎学力については日本人全体のレベルの維持を中央政府が図るとしても、どのような教育内容にカリキュラムを組むかは、各地域に任せた方がよいと考えております。

 最終的には、権限を地域におろし、各学校が、自主、自律性を持って、保護者や地域住民と協力しつつ、創意工夫を凝らし、地域の文化に根差した、独自性のある教育活動を行っていくことが望ましいと考えます。そのような教育環境から、みずから学び、みずから考える、多様な、そして自立した日本人が育っていくものと考えるからです。

 私たち生活の党は、今後の地方教育行政のあり方として、教育の地方分権化を一層推進し、国は、地方が行う自主的かつ主体的な施策に配慮、支援するべきであり、決して国による地方の教育への関与強化がなされることのないよう主張して、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 青木愛議員にお答えをいたします。

 改正案に対する評価と、改正に対する意欲についてお尋ねがありました。

 我が国の地方教育行政制度は、これまで約六十年にわたって政治的中立性等の確保に重要な役割を果たしてきましたが、いじめ等の重大な事案が生じる中で、責任の所在の不明確さ、危機管理能力の不足などの課題が顕在化しております。

 今回の改正案は、政治的中立性、継続性、安定性を確保しつつ、教育行政における責任体制の明確化、迅速な危機管理体制の構築、地域の民意を代表する首長と教育委員会との連携の強化を行うものです。

 今回の改正により、教育委員会制度の抜本的な改革が図られ、安倍内閣の大きな柱である教育再生の基盤が築かれるものと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣下村博文君登壇〕

国務大臣(下村博文君) 青木議員から、四つの質問がありました。

 最初に、現行法に関するこれまでの改正の効果の検証についてお尋ねがありました。

 現行法に関し、これまで、平成十三年の改正においては、教育委員に保護者を含めることを努力義務とし、平成十九年の改正においては、重要な事項については教育長に委任できないこととし、合議制の教育委員会がみずから責任を持って管理、執行する、さらには、住民への説明責任を果たすため、みずからの活動状況の点検、評価を行い、その報告書を議会に提出し、公表する、そして、教育委員に保護者を含めることについて義務化するなどの改正が行われたところであります。

 その結果、教育委員会の点検、評価を議会に対して書面で提出するだけでなく、本会議、委員会等で説明または審議している教育委員会が、都道府県、指定都市で五六・七%、市町村で四六%となっており、また、教育委員会会議開催前の事前の資料配付を行っている教育委員会が、都道府県、指定都市で九四%、市町村で六五・二%、教育委員における保護者委員の占める割合が、都道府県で二六・七%、市町村で二九・九%となるなど、教育委員会の審議の活性化等の努力が行われてきているものと承知をしております。

 次に、首長の関与の強化についてお尋ねがありました。

 現在の教育委員会制度については、直接選挙で選ばれる首長との意思疎通、連携に課題があり、地域住民の意向を十分に反映していないという課題があると認識しております。

 こうしたことから、改正案においては、一つは、首長が、現行の教育長と教育委員長を一本化した新教育長を直接任命、罷免する、二つに、首長が招集する総合教育会議を設置する、三つに、首長による大綱の策定を義務化するなどを要件としております。

 これらにより、首長と教育委員会が相互の連携を図りつつ、より一層民意を反映した教育行政を推進していくことを期待しております。

 次に、地方教育行政制度の理念についてお尋ねがありました。

 今回の改正案は、教育の政治的中立性、継続性、安定性を確保しつつ、地方教育行政における責任の明確化、迅速な危機管理体制の構築、首長との連携の強化を図るとともに、地方に対する国の関与の見直しを図るものであります。

 その中で、教育委員会は執行機関として残すとともに、教育委員会の職務権限は変更しないこととしております。

 あわせて、教育委員の職業等に偏りが生じないよう配慮するとの現行法の規定も維持しており、教育の専門家ではない一般の住民の意向を教育行政に反映していくという、いわゆるレーマンコントロールの考え方を引き続き維持しているところであります。

 次に、地方公共団体の自治事務への国の関与についてお尋ねがありましたが、今回の改正は、大津市における自殺事案の際に、現行規定では、当該自殺した後の再発防止のためには文部科学大臣による指示を発動できないのではないかとの疑義が生じたことから、事件発生後においても、再発防止のための指示ができることを明確化するためのものであります。

 自治事務に関する国の指示は、抑制的に発動すべきものであり、地方公共団体の自主性を前提としつつ、子供の生命身体を保護するために必要がある場合には、最終的に国が責任を果たすことが重要であると考えております。

 以上であります。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       文部科学大臣   下村 博文君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

       文部科学副大臣  西川 京子君


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