衆議院

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第23号 平成26年5月13日(火曜日)

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平成二十六年五月十三日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十六号

  平成二十六年五月十三日

    午後一時開議

 第一 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 保険業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 保険業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 保険業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(伊吹文明君) まず、日程第一、金融商品取引法等の一部を改正する法律案、日程第二、保険業法等の一部を改正する法律案、両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長林田彪君。

    ―――――――――――――

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 保険業法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔林田彪君登壇〕

林田彪君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、金融商品取引法等の一部を改正する法律案は、我が国の金融資本市場について総合的な魅力を高めるため、インターネットを通じて多数の者から少額ずつ資金を集める仕組み、いわゆる投資型クラウドファンディングを取り扱う金融商品取引業者に係る規制の整備、上場企業に係る開示規制の見直し、ファンドの販売を行う金融商品取引業者に係る規制の強化等の措置を講ずるものであります。

 次に、保険業法等の一部を改正する法律案は、保険募集の形態の多様化が進展している状況等を踏まえ、保険募集の基本的ルールとして、顧客の意向把握義務及び顧客に対する情報提供義務を導入するとともに、保険募集人に対して、業務の規模、特性に応じた体制整備を義務づける等の措置を講ずるものであります。

 両案は、去る四月二十三日当委員会に付託され、二十五日麻生国務大臣から提案理由の説明を聴取し、五月九日、質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、順次採決いたしましたところ、両案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、金融商品取引法等の一部を改正する法律案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) ただいま委員長より報告がありました二案を一括して採決をいたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(伊吹文明君) 起立多数。したがって、両案とも委員長報告のとおり可決をいたしました。

     ――――◇―――――

 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) この際、内閣提出、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。農林水産大臣林芳正君。

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案の趣旨につきまして御説明申し上げます。

 我が国の農林水産業、農山漁村を取り巻く環境は厳しさを増しており、これを克服し、本来の活力を取り戻すために、攻めの農林水産業を展開することが喫緊の課題となっております。

 農山漁村地域には、長年培われた特別の生産方法などにより、高い品質と評価を獲得するに至った産品が多く存在しますが、これまで、その価値を有する産品の品質を評価し、地域共有の知的財産として保護する制度が存在していなかったところであります。

 一方、国際的には、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定、いわゆるWTO協定の一部をなす、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定に基づき、品質、社会的評価その他の確立した特性と産地が結びついている産品について、その名称を知的財産として保護することを内容とする地理的表示保護制度が確立しており、多くの諸外国において導入されているところです。

 このため、地域で育まれた伝統と特性を有する農林水産物、食品のうち、品質等の特性が産地と結びついており、その結びつきを特定できるような名称が付されているものについて、その名称を地理的表示として国に登録し、知的財産として保護する制度を創設することにより、生産業者の利益の保護を図り、もって農林水産業及びその関連産業の発展に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的として、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、地理的表示等の登録であります。

 農林水産物、食品のうち、特定の地域で生産され、品質その他の特性が生産地に主として帰せられるものを特定農林水産物等と位置づけ、その生産者の団体であって、生産行程や品質の管理を行う十分な能力を有するものが、特定農林水産物等の生産の方法等を定めた明細書を作成した上で、特定農林水産物等の名称である地理的表示等の登録を農林水産大臣に申請することができることとしております。

 農林水産大臣は、この申請の概要を公示し、第三者からの意見の提出を受け付けるとともに、学識経験者の意見を聴取した上で、登録の可否を判断することとしております。

 第二に、特定農林水産物等の名称の保護であります。

 登録を受けた生産者団体の構成員は、明細書に沿って生産した特定農林水産物等またはその包装等について、地理的表示を付することができることとしております。また、生産者団体の構成員が地理的表示を付するときは、登録された地理的表示であることを示す標章をあわせて付するものとしております。これらの場合を除いては、何人も、農林水産物、食品またはその包装等に地理的表示または標章を付することはできないこととしております。

 農林水産大臣は、これらの規制に違反した者に対し、地理的表示もしくは標章またはこれらと類似する表示もしくは標章の除去を命ずることができることとし、その命令に違反した者に対しては、刑事罰を科することとしております。

 以上、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) 農林水産大臣の趣旨の説明に対し質疑の通告がありますので、順次これを行います。まず、鷲尾英一郎君。

    〔鷲尾英一郎君登壇〕

鷲尾英一郎君 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 ただいま議題となりました特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案について、民主党・無所属クラブを代表し、質問いたします。(拍手)

 昨年十二月、我が民主党政権下において申請した和食がユネスコの無形文化遺産に登録されるなど、日本の食、そしてそれを支える農林水産物への評価は、国際的にも極めて高く維持されてきております。その背景には、各地域の生産者の皆様が、長年、試行錯誤を重ねながら、その土地ごとの風土に根差した生産方式を模索する中で、さまざまな工夫が蓄積、改良されてきたことが大きな要因になっていると考えております。

 このような地域ブランドを官民が一体となって育てていくことは、単に国内における農林水産物の高付加価値化につながるだけでなく、日本産品の高い品質、高い安全性を諸外国に発信していくことともなります。

 これらの取り組みは、農林水産業のみにとどまらず、食品加工業、観光産業などをも巻き込む成長戦略の重要な柱であり、民主党においても、政権担当期間中、さまざまな取り組みをしてまいりました。

 特に、本法案の規定する地理的表示の保護については、平成二十二年三月三十日に閣議決定いたしました食料・農業・農村基本計画において、決められた産地で生産され、指定された品種、生産方法、生産期間等が適切に管理された農林水産物に対する表示である地理的表示を支える仕組みの検討を盛り込み、翌年決定した、我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画やその取組方針において、地理的表示の保護制度を導入するため、平成二十三年度中に有識者等による研究会を立ち上げることを明記いたしました。

 平成二十四年三月には、農林水産省に地理的表示保護制度研究会を設置し、同年八月まで、計五回の検討を重ね、日本における制度導入を目指した骨子案を作成いたしました。

 その後、残念ながら政権交代がなされましたが、本日の法案審議を迎えることとなり、安倍政権においても、民主党政権における検討経過をおおむね引き継いでいただいたものと理解しております。

 その上で、当時の議論を踏まえつつ、より実効性の高い制度を実現するため、法案の骨格や周辺の諸制度について質問いたしたいと思います。

 まず、第三者機関によるチェック体制についてお伺いいたします。

 本法案では、生産者団体の構成員たる生産業者が行う生産が、登録された明細書に適合して行われるようにするため、生産者団体が必要な指導、検査を行い、農林水産大臣は、生産者団体が適正に品質確認を行える団体であるかをチェックする仕組みとなっております。

 他方、本法案の土台となった地理的表示保護制度研究会報告書骨子案においては、「国又は国が認証した第三者機関が生産者における品質管理の状況を確認する」と記載され、第三者機関の役割が位置づけられており、地理的表示の保護が確立されたEUにおいても、独立した第三者機関に権限の委任を行うことで、より適正なチェックがなされているものと承知しております。

 本法案において、なぜ、生産者団体に品質確認を行わせ、国が生産者団体を監督する仕組みとなったのか、第三者機関のチェックは必要ではないのか、林農林水産大臣の答弁を求めます。

 次に、本法案が規定する保護の対象についてお伺いいたします。

 既に農林水産物の地理的表示の保護が確立しているEUでは、その保護対象として、品質等と地理的環境とのつながりが強い原産地呼称保護(PDO)と、生産行程のいずれかがその地域で行われている地理的表示保護(PGI)とに分けて、保護が行われております。

 本法案の土台となった地理的表示保護制度研究会報告書骨子案では、その点の検討がなされた上で、日本においては、シンプルで使いやすく、わかりやすく、我が国の実情にあった制度とすべきとの考え方が示され、制度を一本化した上で、生産、加工、調製の全てを特定の地域内で実施する地理的表示保護対象産品については、特別に表彰するなどの仕組みを設けることを検討すべきと記載されております。

 本法案では、農林水産物等の生産、加工、調製を行う地域についての明確な要件は設けられておらず、生産行程のいずれかがその地域で行われていれば足りる、EUにおけるPGIと同様の制度を導入しようとするものと思われますが、このような仕組みとした理由を、まずお伺いいたします。

 また、今後の課題ではありますが、生産、加工、調製について一貫して限定した地域で行っているような製品については、国内外の市場において、より高い競争力を得るためにも、EUと同様の制度設計とするなど、重層的な制度のあり方への発展も考えられると思いますが、林農林水産大臣のお考えをお聞かせください。

 近接する諸制度との関係性についてお伺いいたします。

 地域と密着した製品の知的財産権保護については、本法案で導入を予定している地理的表示の保護とは別に、既にさまざまな制度が実施されております。

 まず、平成十七年の商標法一部改正により、事業協同組合や農業協同組合が地域ブランドの商品について商標を取得することのできる地域団体商標制度が導入され、既に五百件以上が登録をされております。

 しかし、申請資料の作成が難しく、商品の品質の維持が必ずしも十分に担保されているとは言えないなど、まだまだ課題があるとの指摘が見受けられます。

 また、各自治体で、独自に、特色ある農林水産物の認証や登録制度を行っている地域もあります。

 保護される範囲や権利を侵害された場合の対抗手段など、生産者の希望に応じて選択性が増すことは有用な面もありますが、単にさまざまな制度が並列することともなれば、地域で日々商品の生産、加工に努力される方々が混乱することともなりかねません。

 今後、地域ブランドを保護するために、さまざまな制度を有機的に結びつけ、よりわかりやすい制度設計への再整理も必要ではないかと考えます。

 地域団体商標制度と本法案で導入しようとする地理的表示保護制度との違いは何か、また、今後の各制度の再整理について、林農林水産大臣のお考えをお聞かせください。

 次に、法案成立後の実効性を高めるため、国がなすべき施策についてお伺いします。

 本法案の目的は、一義的には、農林水産物の地域ブランドをどのように保護していくかにありますが、長期的な視点に立てば、その地域ブランドを冠した商品が国内外で高い競争力を得ることができるよう、各種支援策を講じる必要があります。そのためには、発展途上の地域ブランドの芽を見つけ、育て、国内外に発信していくことも、官民一体となって行われなければなりません。

 民主党政権においても、農林水産業の六次産業化を目指し、成長戦略の中に位置づける中で、地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出を支援する六次産業化・地産地消法の施行や、官民共同出資の農林漁業成長産業化ファンドの創設などを進め、消費動向の潮流を子細に読み解きつつ、その流れの行き先に応じた、戦略的な農林水産物の生産、加工も可能になってきていると考えております。

 これまでの政策の実施状況に鑑みると同時に、今後、本法案で導入を予定している施策を踏まえ、中長期的な農林水産物の地域ブランド育成策について、政府としてどのような取り組みが必要であるとお考えか、林農林水産大臣の答弁を求めます。

 あわせて、農林水産物及び食品に対する安全、安心の確保、及び、海外輸出戦略と模倣品対策についてお伺いいたします。

 民主党政権においては、平成二十四年七月に閣議決定した日本再生戦略において、二〇二〇年度までに農林水産物、食品の輸出額を一兆円水準まで引き上げることを目標とし、安倍政権において平成二十五年六月に閣議決定した日本再興戦略においても、同様の目標を立てておられると理解しております。

 今回の法案を受けて、保護育成が図られる特定農林水産物等についても、今後、海外輸出戦略の中核として国を挙げて支援することが必要であることは、言うまでもありません。その際、世界標準あるいは世界に先んじた農林水産物、食品の品質確保と、それを担保する取り組みが求められます。

 遺伝子組み換え作物やネオニコチノイド系農薬等の影響に対する内外の関心は高く、さまざまな技術革新は、恩恵を与える一方、その影響については、さまざまな議論を喚起しています。

 いかに我が国が内外の関心に対処していくか、最新の知見を取り入れつつ、調査研究を積極的に行う必要があり、農林水産省を初め、関係する諸官庁が連携することが不可欠と考えます。林農林水産大臣及び関係する石原環境大臣、森消費者担当大臣に答弁を求めます。

 他方で、年間約一千億円を超えるとも言われる海外における模倣品被害の中で、食品は第四位の被害が報告されており、輸出拡大を進めていくためには、並行して、模倣品被害をどのように抑え込んでいくかも、重要な課題となります。

 今後の輸出拡大と模倣品対策の進め方について、林農林水産大臣の見解を求めます。

 東日本大震災の発災によって、日本の農林水産物は極めて強い逆風にさらされました。しかし、冒頭申し上げましたように、日本が長年培ってきた、消費者の安全を第一に考え、真摯に農林水産物と向き合う姿勢が高く評価され、官民一体となって風評被害を払拭しつつあるものと考えております。

 一時の日本食ブームではなく、世界における食材のトップクオリティーはメード・イン・ジャパンであるということを盤石にするために、与野党なく一致結束して取り組む必要があるということを申し添え、私の質問といたします。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 鷲尾議員の御質問にお答えいたします。

 地理的表示産品の品質確認の主体についてのお尋ねがありました。

 我が国の地域ブランド産品の中には、生産者団体がみずから品質基準を取り決め、品質管理を行うことでブランド価値を高めているものも多く見受けられます。

 また、地理的表示の登録を受けた産品は、その生産方法や特性が産地と結びついている必要があることから、その品質管理については、生産者団体みずからが最も知見を有していると考えております。

 このような実態を踏まえ、生産者団体が品質管理を行うとともに、国がその品質管理の体制をチェックすることにより、産品の品質が公的に保証されるような仕組みとしたところであります。

 本法案による制度の仕組みと、今後のあり方についてのお尋ねがありました。

 本制度の設計に当たっては、まず、我が国になじみのない制度であることを踏まえ、シンプルな内容とする観点から、EUのような複層的な構造とはせず、そして、幅広い生産者が利用できる制度とするため、その産品の生産、加工、調製のいずれかがその地域で行われていれば足りる制度としたところであります。

 本制度の今後のあり方については、登録の動向などの施行状況を踏まえて検討してまいりたいと思っております。

 本法案による地理的表示保護制度と地域団体商標との違い、また、関連制度との再整理についてのお尋ねがありました。

 本法案による制度は、地域団体商標制度と比較して、地域の特性と結びついた一定の品質基準を満たした産品だけが表示を使用できること、表示の使用が特定の団体及びその構成員に限定されないこと、不正表示への対応を国が行うことといった点が大きく異なっております。

 このため、例えば、ブランド産品の名称を、地域の共有財産と位置づける場合には地理的表示保護制度が、特定の団体が名称を独占することになじむ場合は地域団体商標制度がそれぞれ有効であるなど、それぞれの地域のブランド戦略に応じて選択できるようにしておくことが重要だというふうに考えております。

 中長期的な地域ブランドの育成策についてのお尋ねがありました。

 我が国には、地域で長年培われた特別の生産方法や、気候風土、土壌などの生産地域の特性により、高い品質と評価を獲得するに至った地域ブランド産品が多く存在しているところであります。

 本法案は、その品質やブランド価値を公的に保護する制度を創設するものでありますが、これとあわせて、戦略的な知的財産の活用のためのマニュアルの作成や人材の育成等を進めることにしております。

 これらの総合的な取り組みにより、ブランドの価値を守り、すぐれた産品に高い付加価値をつけて販売できるような基盤を整備してまいります。

 農林水産物、食品の安全、安心の確保についてのお尋ねがありました。

 国民の食の安全を確保することは、国の最も重要な責務の一つと認識しております。

 御指摘の、遺伝子組み換え作物や農薬の安全の確保についても、科学的な見地から対応することが重要であることから、関係省庁とも連携して、広く内外の最新のデータを収集し、施策に反映させていくことが重要であると認識しております。

 今後の輸出拡大と模倣品対策の進め方についてのお尋ねがありました。

 海外における農林水産物、食品の模倣品への対策については、平成二十一年から、地方公共団体、農林水産業関係団体、弁理士、弁護士等による団体を組織して、海外商標出願の共同監視、偽装品に対する海外現地調査等の取り組みを行っているところです。

 これらの模倣品対策を着実に講ずるとともに、本制度による地理的表示とマークを活用することにより、我が国農林水産物、食品の輸出の拡大につなげていく考えであります。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣石原伸晃君登壇〕

国務大臣(石原伸晃君) 鷲尾議員にお答え申し上げます。

 農薬等の影響に関する調査研究と省庁間の連携についてのお尋ねでございました。

 遺伝子組み換え作物の生物多様性への影響や、ネオニコチノイド系農薬についてのミツバチ等への影響に関しては、懸念の声があることは十分に承知をしているところでございます。

 環境省としては、引き続き、遺伝子組み換え作物や農薬による生物多様性への影響に関する調査研究を推進し、関係府省と連携して必要な対策に取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣森まさこ君登壇〕

国務大臣(森まさこ君) 食品の安全確保についてのお尋ねがありました。

 食品の安全確保については、国の最も重要な責務の一つであり、国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識のもと、最新の科学的知見に基づき、必要な措置を講じています。

 食品安全担当大臣としては、今後とも、関係省庁とも連携しつつ、食品の安全を確保し、国民の健康をしっかり守ってまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 次の質疑者、鈴木義弘君。

    〔鈴木義弘君登壇〕

鈴木義弘君 日本維新の会、鈴木義弘です。

 ただいま提案されました法律案について、日本維新の会を代表いたしまして質問いたします。(拍手)

 昨年十二月、ユネスコ無形文化遺産に和食が登録されたのは、先ほど質問がありましたとおりであります。

 「日本の食文化 その伝承と食の教育」では、次のように定義されています。一、主食と副食の分離、二、一汁三菜の食膳形式、三、自然を生かした調理、四、発酵食品の発達、五、食生活に対する態度。

 しかし、現代の私たちの食生活はどうでしょうか。西洋化が進み、パン食当たり前、動物性たんぱく質や脂肪のとり過ぎで、メタボや生活習慣病の国民が年々増加しているというデータもあります。逆の見方をすれば、無形文化遺産として登録をしなければならないほど食生活が変わってしまったということです。

 一方、「伝統野菜、地域耕す」と題した新聞の記事が目に入りました。時代とともに忘れ去られた伝統野菜を復権させようとする動きが活発になっている。青森県八戸市は、絶滅の危機にあった糠塚きゅうりの生産を後押しする取り組みを二月に開始。山形県や長野県では、需要拡大に向けて情報発信を強化する。生産者の高齢化が進み、種存続への危機感が強まっているほか、独自の食文化を地域おこしの起爆剤にしようとする狙いもあるというものです。

 戦後、私たちの先人は、栄養状態が極端に悪く、とにかくおなかいっぱい御飯が食べたいと、仕事をし、食料の増産に突き進んできました。そのため、大量生産、大量消費、大量廃棄の時代が今日まで長く続き、バブル崩壊以降も、もとの価値観に戻ることはできなく、対外的な経済力により、海外からさまざまな食材が手に入り、私たちの胃袋を満たしてくれる時代が続いてまいりました。

 さらに、安く大量につくって供給することに力点が長らく置かれ、農林水産物も、国際競争の中で翻弄され続けてきました。

 今まさに、その競争の視点とは違う取り組みとして、伝統野菜、すなわち、地域風土に合った特産と言われているものを見直し、オンリーワンの青果物を育成することが、競争に勝ち抜くアイテムになると考えられるようになってまいりました。

 そこで、今回、おくればせながら、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案が提出されました。

 この法律の趣旨では、原産地表示、地理的表示も、知的財産の一部に位置づけられています。

 知的財産とは、本質的に、合理的な独占形態を実現するための一手法であると定義されています。

 今回提出された地理的表示の保護法と、現在既に法制化されている法律との関連の中で、疑問点を指摘していきたいと思います。

 まず初めに、知的財産の訴訟について、国内的には、迅速性や、判決の正確性や信頼性に対する問題点の指摘はなく、運用されているとお聞きします。

 その中でも、二〇〇五年に知的財産高等裁判所が設置されました。現在までの約十年間、審決取り消し訴訟が行われた事例がどのくらいなのか、専門性の高いものとそれ以外のものの峻別を明確にしているのか、お尋ねいたします。

 さらに、知的財産専門の裁判を扱うところと、それに係る技術的専門性を兼ね備えた人材を育成し、裁判に当たらせるような制度の確立を検討する考えがあるのか、お尋ねいたします。

 一方では、隣の中国や韓国はいまだに模倣品が横行しているのが、たまにマスコミで報道されます。アジアの模倣品の流通状況の資料に目をやると、いまだに、中国、韓国、台湾で製造されたものがアジアで販売、提供され、知的財産権を取得している企業は被害を受けています。

 日本では知財の訴訟制度が高度化しているとはいえ、対外的には、周知しているとはとても思えません。他方、シンガポールでは、知財ハブ構想を立ち上げ、アジアの知財の中心にしようという話も聞いております。国内で幾ら法整備を進めても、近隣国で模倣品が多く流通するようでは、知的財産の考え方すら崩壊しかねません。

 模倣被害の被害件数や額は示されていますが、被害額を回収できたのでしょうか。取り締まりの状況、相手国に対する対応をお尋ねいたします。

 地理的表示保護をすることで農業の六次産業化が促進されると言われていますが、加工度が上がれば上がるほど地域との結びつきは薄れていくし、加工度が上がれば逆に市場性が上がると言われています。この矛盾で、どうして六次産業化が進むのかわかりません。

 海外では模倣品がつくられています。法律の制度の運用は農林水産省が行うのでしょうが、損害賠償の申請や取り締まりは誰が行うのでしょうか。本場は日本であっても第三者が他国で商標登録をして権利をとってしまっている事例が一時期問題になりましたが、地理的表示の保護制度では、国が責任を持って相手国に対応するということでよろしいのでしょうか。お尋ねいたします。

 また、我が国の知財紛争解決制度の情報発信と、アジアの新興国において、日本の企業が国内で知財権の取得ができるのと同じように、各国への支援や環境の整備に取り組みを実施していることは承知していますが、実態は、縦割り行政で支援が進められていて、特許庁の所管する権利化の過程に特化するばかりで、知的財産権に係る紛争解決、法執行の中核を担う裁判所の手続整備や能力強化を対象としないものが大半と言われています。

 知財ハブ構想を立ち上げているシンガポールでは、司法省が中心に、知的財産権の権利化過程と裁判所などでの紛争解決、法執行とを一体的に政策立案しているとお聞きしますが、我が国は、今回の地理的表示の法案でも、知財権の一部に位置づけられているのにもかかわらず、所管が農林水産省となっています。これで、模倣品をつくり続けている国と対峙できるのでしょうか。お尋ねいたします。

 日本においては、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の第二十一条では、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法または商標法による権利の行使として認められる行為は、独禁法の適用除外と定められています。

 しかし、著作権法等による権利の行使と見られるような行為であっても、競争秩序に与える影響を勘案して、知的財産保護制度の趣旨を逸脱し、または同制度の目的に反すると認められるような場合まで、同条で言う権利の行使と認められる行為とは評価されない場合があるとの判断をしています。

 公正取引委員会が示した判断で、今回の地理的表示として農林水産物を保護することは、該当しないということでしょうか。これに抵触するおそれのあるものは保護の対象にならないのか、お尋ねいたします。

 日本弁理士会では、商標の定義について、次のような提案を行っています。

 他の産業財産権法と比較しても、特許法、実用新案法、意匠法は、その保護対象の本質をそれぞれ定義規定において特定しているのに対し、商標法では、商標の本質である識別性がその定義に含まれていない。これは、産業財産権法全体から見ても整合性に欠けていると言わざるを得ない。

 国際的にも、TRIPs協定や多くの国や地域において商標の定義としてその本質的機能である自他商品役務の識別性を含めており、日本の商標法のように、識別性を定義に含めず保護対象を限定列挙している規定は、見当たらない。

 識別性を定義すれば、現実の商標と法文上の商標との乖離を解消することができ、保護対象が法文上明確になり、立体商標制度の導入、新しいタイプの商標の保護対象への追加など、必要が出てきてから初めて個別具体的に商標を定義することなく、多様化している保護対象にも柔軟に対処可能となる。さらに、国際的にも調和がとれた規定となる。

 こういうものです。

 識別性の定義の明確化をする考えはあるのか、お尋ねいたします。

 地理的表示の国際的保護に関して最も多くの議論を呼ぶものの一つになっているのが、普通名称化の問題と言われています。普通名称化されたかどうかの判断は商標法の原則に従って行われ、商標制度には、既に商標登録されている呼称も含めて、商標の普通名称化を防ぐことができないと言われています。

 訴訟を起こすのにも多額の費用がかかりますが、今回の法律に基づいて国がどこまで登録者のサポートをするのか、お尋ねいたします。

 我が国においては、包括した法整備、法律ごとにばらばらに所管する監督官庁に対して、知財を国家戦略の位置づけとするならば、所管庁を一つにする考えがおありか。

 今回提出された農林水産省において、農林水産物、食品に係る地理的表示の保護の対象は農林水産物等に限定されており、あらゆる産品やサービスを対象とすることができません。地理的表示のさらなる積極的保護が望まれる中で、他の産品やサービスに対象を広げていく考えがおありか、お尋ねいたします。

 さらに、同会は、商標権の問題を提起しています。

 使用により識別力を獲得した商標については、一度登録されてしまうと、その後は、使用、不使用にかかわらず、不使用取り消し審判等が提起されない限り、商標権が存続してしまう。

 国際的に見ても、米国、EU、イギリス、ドイツ、フランスなど多くの国が、登録後に識別力を喪失した商標登録を無効、取り消す制度を採用している。登録後に普通名称化した商標の取り消し、無効制度を設けていない国は、中国と我が国のみであります。

 したがって、事後的に識別力を喪失した登録商標の取り消し、無効審判制度の創設が望まれる。

 こう指摘していますが、政府はどのようにお考えか、お尋ねいたします。

 また、地理的表示の保護の法律と商標法との調整規定を設けるべきと考えますが、お尋ねいたします。

 さらにです。

 国際商標登録出願の手続、審査に相当の時間を要するため、通常の出願商標の登録後に国際商標登録出願が登録になる、いわゆるマドプロサブマリンの問題が指摘されています。

 日本以外に登録後異議制度を導入している国は、全体の一割にすぎません。TPPでは、出願商標に対する登録異議申し立ての機会と登録商標に対する取り消し請求の機会を設けることが義務づけられています。したがって、登録後異議制度を採用している我が国の商標制度がTPPの要請に合致するか否かは、疑問であります。

 一旦設定登録という行政処分がなされた商標登録に対し登録異議申し立てがあったとしても、朝令暮改のごとく、その判断を覆すことが困難なことは理解できるところであるので、より妥当な判断がなされるためにも、設定登録の前に登録異議申し立てが望まれる。

 また、商標権の異議申し立て制度は、中国や韓国では商標権設定登録前、我が国では商標権設定登録後。査定系審査の処理期間は、我が国の特許が約十六カ月、意匠、商標が約七カ月。中国では、専利が約十二カ月、商標は明らかでありません。韓国では、特許が約十カ月、意匠、商標が約七カ月と、違いがあります。中国では期間がはっきりしない。

 こう指摘もされています。

 商標権登録後異議制度と地理的表示の保護も、同じように、登録前に変更して知財の保護に当たるべきと考えますが、我が国の対応をお尋ねいたします。

 一度商標登録をしてしまうと、申請人の申し出がない限り、今の制度では、ほとんど取り消しになりません。不使用商標が極めて多いのが、我が国の商標制度の現状です。

 このような不使用登録商標が多数現存することは、第三者による商標選択の自由を阻害するものと考えます。

 商標法第五十条第一項に基づく取り消し審判の請求件数は、ここ数年、一千五百件程度で、取り消し率は約八〇%です。しかし、不使用取り消し審判によって取り消される不使用登録商標は、登録件数の〇・一%程度にすぎません。

 この実態から、不使用取り消し審判の利用が促進され、不使用登録商標の減少が図られるような方策をお考えなのか、お尋ねいたします。

 以上で質問を終わりにいたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 鈴木議員の御質問にお答えいたします。

 海外における模倣品への対策についてのお尋ねがありました。

 本制度は、地理的表示に係る国内法制度の整備を行うものであり、本制度による登録を受けたとしても、直ちに、他国において、その地理的表示が保護されるものではありません。

 地理的表示の登録を受けた産品には、地理的表示のマークを貼付すべきこととしており、このマークを主要な輸出先国で商標登録することにより、輸出先国においても我が国の真正な特産品であることが明示され、差別化が図られることとなります。

 独占禁止法の適用除外規定との関係についてお尋ねがありました。

 本法案により創設しようとするいわゆる地理的表示制度は、地域ブランド産品について、その特性を有する産品の品質を審査し、地域共有の財産として保護するものであり、特定の者に排他的な権利の行使を認めようとするものではありません。

 このため、著作権や特許権等の排他的な権利の行使を認める知的財産権とは異なり、独占禁止法の適用除外規定の対象となるものではありません。

 普通名称化の防止についてのお尋ねがありました。

 地理的表示の登録の効果として、生産地との結びつきが認められない模倣品については、地理的表示の使用が禁じられることになるため、登録された名称が登録後にその地域との結びつきを失って普通名称化する余地は乏しいものと考えております。

 国としては、登録を受けた地理的表示が普通名称化することのないよう、違反事例について、責任を持って取り締まりを行うこととしております。

 地理的表示保護法案と商標法との調整規定についてのお尋ねがありました。

 今般の法律案では、議員御指摘のとおり、商標法との調整規定を設けております。

 具体的には、商標が先行して登録されていた場合、商標権者から承諾を受けた場合等を除いて、その登録商標と同一または類似の地理的表示は、登録できないこととしております。

 一方、地理的表示が先行して登録されていた場合、後続の商標については、地理的表示としての基準を満たさない限り、その地理的表示と同一または類似の表示を付することができないこととしております。

 登録前の異議申し立て手続についてのお尋ねがありました。

 本制度による登録の申請があった場合、登録前に申請内容を公示し、第三者からの異議申し立てを受け付けることとしております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 鈴木義弘議員にお答え申し上げます。

 まず、二〇〇五年に設置された知的財産高等裁判所において、現在までの約十年間、審決取り消し訴訟が行われた事例がどのくらいなのか、専門性の高いものとそれ以外のものの峻別を明確化しているのかについてお尋ねがありました。

 知財高裁においては、平成十七年四月から平成二十五年十二月までの間に、約四千件の審決取り消し訴訟が提起されているものと承知しております。

 審決取り消し訴訟については、特許、実用新案、商標、意匠といった権利の種類や専門性の高低にかかわらず、知財高裁が専属管轄を有しています。

 また、知財高裁内において、専門性の高低による明確な区別はないものと承知しておりますが、特許及び実用新案といった技術的事項が問題となる事件では、当該技術分野の専門的知識を有する裁判所調査官が原則として全件に関与しているほか、専門性の特に高い事件では、各専門分野の第一人者である専門委員が手続に関与することがあると承知しております。

 次に、知的財産専門の裁判を扱うところとそれに係る技術的専門性を兼ね備えた人材を育成して裁判に当たらせるような制度の確立を検討する考えがあるかについてお尋ねがございました。

 議員から御指摘をいただいた、知財訴訟を担当する者として、技術的専門性を備えた者を育成することの必要性に関しましては、裁判所において、知財訴訟に関する専門的知見の習得、深化に向けた裁判官の研修が行われてきたものと承知しており、今後も、裁判官の専門的知見の習得、深化に向けた適切な方策をとっていくものと承知しております。

 また、知財訴訟については、必要に応じて、裁判所調査官によるサポートや、特定の分野について最先端の知識を有する専門家を専門委員として活用することも可能であり、このような現行の制度と異なる新たな仕組みを設けることよりも、まずは、現行の制度を引き続き適切に運用していくことが重要であると認識しております。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 鈴木議員にお答えをいたします。

 最初に、我が国企業の海外における模倣品被害額の回収状況と、相手国政府に対する取り締まり強化への対応についてでありますが、我が国企業の海外における模倣品被害については、アンケート調査等により把握に努めておりますが、その全容であったり回収状況は、その性格から、把握が困難な状況であります。

 しかしながら、中国を初めとする新興国での模倣品被害は、我が国企業の新たな製品開発の意欲を減退させる重大な問題であることから、政府としても、その対策に積極的に取り組んでいるところであります。

 具体的には、中国や東南アジア、中東などの国・地域に対して、知的財産の保護に積極的な民間団体や外務省、農林水産省等とも連携をして、官民合同ミッションを派遣し、法制度、運用の改善や取り締まり強化などを働きかけるとともに、にせものを見分ける能力を高めるための真贋判定セミナーの開催を通じて、各国の取り締まり機関への研修などの協力を実施いたしております。

 次に、商標の定義として識別性を明確にすることについてでありますが、現在、商標法における商標の定義としては、自己の商品と他人の商品を区別できるといういわゆる識別性は明記されておりませんが、商標法には、別途、ありふれた名称等は登録を受けることができないとの規定があるため、実際の登録審査においては、識別性の有無が精査をされ、識別性のない商標は登録されないこととなっております。

 この点は、裁判実務においても確立されており、法実務上は、識別性は、登録できる商標の事実上の要件となっております。

 識別性を定義に明文化することについては、これまで産業構造審議会においても議論されてきておりますが、商標の定義そのものの見直しについては、これまで長年をかけて確立されてきたこれまでの判例との整合性のある見直しを行わなければならないとの観点も含め、検討してまいります。

 次に、識別性がなくなった登録商標の取り消し制度を導入すべきとの御指摘でありますが、商標法には、一般名称化している商標については権利行使ができないとの規定がありますが、これに加え、当該商標の登録を取り消す制度を導入するか否かについては、産業構造審議会において、中小企業が有する登録商標を大手の同業他社が申し合わせて使用することにより一般名称化し、その上で取り消し請求を行うといった使い方がなされるのではないかとの懸念、意見もあったことから、継続審議とされており、引き続き、中小企業を含めた制度利用者への影響や海外での制度の運用状況も踏まえ、検討してまいりたいと考えております。

 次に、異議申し立てを商標登録後から登録前に変更すべきとの指摘でありますが、我が国も、かつては、欧米と同様、商標登録前の異議申し立てを認める制度でありましたが、迅速な権利付与を求める声が高まったことから、平成八年に、商標登録後に異議申し立てを受け付ける制度に変更した経緯がございます。

 現在は、審査方法の改善により迅速な権利付与が可能となったことから、商標登録前の異議申し立てを可能とする制度に戻すか否か、最近の産業界のニーズや制度の国際的動向を踏まえながら、検討してまいります。

 最後に、不使用登録商標を減らすための方策についてでありますが、使用されていない登録商標により他者の商標の登録が阻害されることがないように、政府としては、これまでも、不使用商標の取り消しを請求できる要件を緩和し、取り消し審判制度の活用を容易にする措置をとってまいりました。

 また、商標の使用意思について審査時に出願人に確認するといった仕組みを導入するなど、不使用商標の減少に取り組んでおります。

 今後とも、産業界等の意見を踏まえながら、不使用商標の取り消し審判制度の一層の周知を行い、この制度の利用促進を図ってまいります。(拍手)

    〔国務大臣山本一太君登壇〕

国務大臣(山本一太君) 鈴木議員から、模倣品対策の観点も踏まえた本地理的表示保護制度の所管官庁についてお尋ねがありました。

 本制度は、農林水産物等に係る地理的表示保護について規定するものであるが、同様の取り組みで先行するEUを見ると、フランスにおいては農業省が、イタリアにおいては農業食料森林政策省が制度を所管しているところであり、我が国においても同様に、農林水産物等に関する制度を専門とする農林水産省において所管することが適当と考えております。

 なお、模倣品対策については、世界最高水準の知財立国の実現を目指し、昨年六月に知財本部が策定した知的財産政策ビジョン等においても重点施策として取り上げられており、具体的な取り組みとして、官民一体となった相手国政府等への働きかけ、模倣品を容認しないための国民の意識啓発の強化等を、政府全体として推進しているところです。

 引き続き知財本部の司令塔機能をしっかりと発揮していくことで、各省庁との連携を図りつつ、関連施策を適切に推進してまいります。

 次に、知財制度の所管官庁の一元化及び地理的表示保護制度の対象の拡大についてお尋ねがありました。

 知財制度の所管官庁の一元化に関してですが、特許等の産業財産権については経済産業省、著作権については文部科学省といったように、それぞれの制度の専門性に鑑み、引き続き各省庁において制度を所管することが望ましいと考えております。

 一方で、知財を国家戦略として捉え、政府としての総合的な取り組みを推進していく観点から、知財本部の司令塔機能をしっかりと発揮していくことで、各省庁との連携を図りつつ、関連施策を適切に推進してまいります。

 次に、地理的表示保護制度の対象の拡大に関してですが、制度の導入に関する要望、諸外国における状況を勘案すれば、現状では、農林水産物等を対象とすることは適当と考えます。

 一方で、今後、どのような産品やサービスについて制度を導入する必要性や可能性があるかについては、諸外国の状況も勘案しつつ、まずは、各産品やサービスの所管官庁の方で御検討いただくべきものと考えます。

 地域の特産品等の有するブランド力を知的財産として適切に保護することは、我が国の経済成長につながる重要な取り組みと認識しておりまして、知財本部として、状況を見守りつつ、各省庁との連携を図り、関連施策を適切に推進してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) 小宮山泰子君。

    〔小宮山泰子君登壇〕

小宮山泰子君 生活の党、小宮山泰子でございます。

 ただいま議題となりました法律案に対し、生活の党を代表して質問いたします。(拍手)

 本法案は、特定の場所、地域または国を生産地とし、品質、社会的評価などの特性が生産地と結びついている特定農林水産物等について、名称における地理的表示の保護を行うものです。

 法律案の第一条では、特定農林水産物等の生産業者の利益の保護を図ることを通じて、産業の発展と需要者の利益保護も目的とされています。

 一九九四年にTRIPs協定が締結されて以来、EUを中心として地理的表示の保護が進む中、日本では、酒類への対応は行われるものの、農林水産物等の名称保護は十分ではありませんでした。

 この法律を提出された目的と、日本の農林水産業を取り巻く現状認識について、まずは農林水産大臣に伺います。

 先日、日本創成会議の人口減少問題検討分科会の試算結果、二〇四〇年に、若年女性の流出により全国八百九十六市区町村が消滅の危機に直面するという、衝撃的な内容が発表されました。

 均衡ある地域の発展には、地方分権の推進とともに、各地域の特性を生かす産業が重要であると考えます。

 地理的表示の保護は、類似産品との比較で価格上昇効果があるだけでなく、原料、材料として用いた場合の農業の六次産業化の促進への期待や、地域に根差した産物がその地域での生産継続につながることにより、当該地域の雇用確保や、伝統文化の継承、維持、そして、輸出市場においてもブランド品として有利となる等の効果があると、EUなどの導入例から指摘されています。

 法律成立後に、どのような農林水産物等の区分において、何件ほどの登録数を見込まれているのか、さらに、それらが農林水産業及びその関連産業の発展に寄与することで期待される経済効果の規模をどのように見込んでいるのか、お答えください。

 法案第十一条により、農林水産大臣は、登録の可否について学識経験者からの意見を聞かなければならないこととされています。学識経験者は、必要があると認められたときには、登録申請団体や意見書の提出者その他の関係者から意見を聞くことができるとされています。

 農林水産大臣は、学識経験者からの意見を聞くことは義務づけられてはいるものの、当事者からの意見を聞くことができる等の規定は設けられておりません。

 それぞれの地域の特色と歴史ある農林水産物等の生産に携わる方々の現場の声をしっかりと受けとめて、応援していただけるような法制であるべきだと考えます。

 登録の可否について判断する材料として、必要に応じて、当事者の方々からもヒアリングをしたり、申請内容について相談に乗り、サポートすることは、農林水産行政の所管をしている立場として当然行われるべきものと考えますが、大臣の御見解をお聞かせください。

 EUでは、登録された農林水産物等についての特性や生産方法などが示された明細書が明確に定められ、公示されていること、及び、その明細書に即して正しく生産されているかなどについて、公的機関または独立した第三者機関が確認する体制をとっており、信頼性を高める上で重要な役割を果たしていると聞いております。生産者の利益、さらには消費者の利益にもつながっております。

 本法案では、明細書に適合した生産が行われるために必要な指導、検査その他の行程の管理は登録生産者団体が行うため、EUに比べ独立性が低くなるとの指摘もあります。

 第三者機関としていない理由について、農林水産大臣より御見解をお伺いいたします。

 近年、食品偽装等も問題となりましたが、今後、どのように消費者の不利益につなげない体制の確立について取り組むのか、消費者行政における対応について、消費者担当大臣にお伺いいたします。

 農林水産物等の名称の保護制度が整えられることが、各地に根差した産品を中心にした経済循環の活性化に資するものであることを期待しつつ、質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 小宮山議員の御質問にお答えいたします。

 本法の提出に至った現状認識についてのお尋ねがありました。

 我が国には、地域で長年培われた特別の生産方法や、気候風土、土壌などの生産地の特性により、高い品質と評価を獲得するに至った地域ブランド産品が数多く存在しているところであります。

 これらの地域ブランド産品の価値を公的に保護することで、生産者にとっては、生産物の品質に見合った利益を得られるようにするとともに、消費者にとっても、品質の高い商品を容易に選択できるようにするという観点から、本法案を提出したところでございます。

 地理的表示の登録見込み件数と経済効果についてのお尋ねがありました。

 地理的表示の登録については、地域の生産者の発意による申請に基づくことから、現段階において、その具体的な区分や件数、登録に伴う経済効果の規模を予測することは困難であります。

 本制度によって、地域のブランド産品が適切に保護され、品質に見合った価格での取引や、生産地における雇用の確保など、そのもたらす効果が十分に発揮されるように努めてまいります。

 登録の審査時点における生産者団体への意見聴取についてのお尋ねがありました。

 登録に当たり、申請書の審査の過程において、必要に応じ、申請書の内容の事実関係などについて申請者から話を直接聞くことになる、こういうふうに考えております。

 なお、法第二十四条に基づく報告徴収と立入検査は強制的なものでありまして、御指摘のような場合に用いることは想定をしておりません。

 地理的表示産品の品質確認の主体についてのお尋ねがありました。

 我が国の地域ブランド産品の中には、生産者団体がみずから品質基準を取り決め、品質管理を行うことでブランド価値を高めているものも多く見受けられます。

 また、地理的表示の登録を受けた産品は、その生産方法や特性が産地と結びついている必要があることから、その品質管理については、生産者団体みずからが最も知見を有していると考えております。

 このような実態を踏まえまして、生産者団体が品質管理を行うとともに、国がその品質管理の体制をチェックすることにより、産品の品質が公的に保証されるような仕組みとしたところであります。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣森まさこ君登壇〕

国務大臣(森まさこ君) 小宮山議員にお答えいたします。

 食品表示等問題に対する体制確立に向けた取り組みについてお尋ねがありました。

 今般の食品表示等問題に対しては、景品表示法を厳正に執行するとともに、同法のガイドラインを作成、公表するなど、事業者における表示の適正化にも努めているところでありますが、国及び都道府県の不当表示等に対する監視指導体制をより強化し、一層有効に対処するため、今国会に不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律案を提出し、御議論いただいているところです。

 さらに、やり得を剥奪し、不当表示への抑止力を高める仕組みとして、景品表示法への課徴金制度の導入を検討しております。

 これらの取り組みを通じ、消費者への不利益につなげない体制を確立してまいります。(拍手)

議長(伊吹文明君) 以上をもって、予定されておりました質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(伊吹文明君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       法務大臣     谷垣 禎一君

       農林水産大臣   林  芳正君

       経済産業大臣   茂木 敏充君

       環境大臣     石原 伸晃君

       国務大臣     麻生 太郎君

       国務大臣     森 まさこ君

       国務大臣     山本 一太君

 出席副大臣

       農林水産副大臣  江藤  拓君


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