衆議院

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第8号 平成26年10月28日(火曜日)

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平成二十六年十月二十八日(火曜日)

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  平成二十六年十月二十八日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(伊吹文明君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(伊吹文明君) まず、御紹介を申し上げます。

 ただいまエチオピア連邦民主共和国人民代表議会アバデュラ・ゲメダ議長閣下御一行が外交官傍聴席にお見えになっておりますので、皆様とともに心から歓迎をいたしたいと思います。

    〔起立、拍手〕

     ――――◇―――――

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(伊吹文明君) それでは、この際、内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣塩崎恭久君。

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 労働者派遣制度は、我が国の労働市場の中で、労働力の迅速かつ的確な需給調整を行うという重要な役割を果たしています。

 一方で、業務単位で期間制限を設けている現在の制度はわかりにくいとの指摘もなされており、労使双方にとってわかりやすい制度とするとともに、派遣労働が雇用と使用の分離した形態であることに伴う弊害を防止する必要があります。

 このため、派遣労働を臨時的、一時的な働き方と位置づけることを原則とするとともに、その利用についても、臨時的、一時的なものに限ることを原則とするとの考え方のもとに、新たな期間制限を設けることとするほか、労働者派遣事業の質の向上を図り、派遣労働者のキャリア形成を支援する等の仕組みを設けることで、派遣労働者のより一層の雇用の安定、保護等を図ることとし、この法律案を提出いたします。

 以下、この法律案の主な内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の区別を廃止し、労働者派遣事業を全て許可制とすることとしています。

 第二に、業務単位の期間制限を廃止し、同一の派遣労働者に係る期間制限及び派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの期間制限の二つの期間制限を設けることとしています。また、派遣元事業主は、同一の派遣労働者に係る期間制限の上限に達する見込みがある派遣労働者に対して、雇用の安定を図るための措置を講じなければならないこととしています。

 第三に、派遣元事業主は、派遣労働者に対し、計画的な教育訓練等を実施しなければならないこととするとともに、派遣先は、賃金の情報提供、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用に関して配慮しなければならないこととしております。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、平成二十七年四月一日としています。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(伊吹文明君) ただいまの厚生労働大臣の趣旨の説明に対し質疑の通告がありますので、順次これを行います。まず最初に、松本文明君。

    〔松本文明君登壇〕

松本文明君 自由民主党を代表し、ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 一昨年十二月の発足以来、安倍政権は、日本経済を好転させるための政策を着実に実行し、大きな成果を上げてまいりました。

 今回の法案は、その成果を、働く国民お一人お一人にお届けするための法案であります。また、国民の多様な働き方を保障するための法案でもあります。

 労働者派遣法が昭和六十年に制定されてから、はや三十年の月日が流れました。その間、経済産業構造の変化や働く方々の多様なニーズに対応するために、その都度必要な改正が行われてきたところであります。

 そこで、厚生労働大臣に伺います。

 労働者派遣法が国民の暮らしと経済にどのような役割を担ってきたとお考えか、その評価と、この法律が今後どのような役割を果たすべきとお考えか、国民にわかりやすく御説明を願います。

 成長する強い経済を取り戻して安定雇用を確保する、そして国民の所得をふやすというのが私たちの約束です。経済成長の果実を確実に派遣労働者の皆様に届け、派遣労働者の皆様の暮らしを守るための派遣法でなければなりません。

 そこで、伺います。

 現在の派遣法が抱えている課題は何か、今回の法改正によって、それらの課題をどのように克服されようとしているのか、その趣旨について、厚生労働大臣のわかりやすい説明を求めます。

 労働者派遣法については、以前より、二十六業務による期間制限の区分がわかりにくいとの声が非常に強く、多くありました。わかりにくい制度のもとで、派遣労働者の皆様の権利保護が十分とは言いがたい現状があります。

 二十六業務の制度は、派遣労働者の方々が派遣先で円滑な人間関係を築くことを妨げてきました。派遣労働者の方には決められた業務しかお願いできない、普通の仕事をやってもらうと法律違反になる、そんな派遣先の声を聞いて、これまで多くの派遣労働者の方が肩身の狭い思いをされてきたのであります。

 こうした状況を踏まえ、平成二十四年の改正時には、「いわゆる専門二十六業務に該当するかどうかによって派遣期間の取扱いが大きく変わる現行制度について、派遣労働者や派遣元・派遣先企業に分かりやすい制度となるよう、速やかに見直しの検討を開始すること。」との自民、公明、民主三党共同提出による附帯決議が付されております。今回の改正法案は、この附帯決議の趣旨を踏まえ、業務区分による期間制限を廃止することとしております。

 厚生労働大臣に改めて伺います。

 なぜ期間制限のあり方を見直さなければならなかったのか、わかりやすい説明を求めます。

 今回の法律案で廃止されるこの業務単位の期間制限の趣旨は、派遣先の正社員が派遣社員に置きかえられることを防ぐこと、つまり、派遣社員の保護に優先して正社員の保護を図ることに重きが置かれておりました。しかし、派遣法は正社員を守るためのみの法律であってはなりません。むしろ、派遣労働者を守ることこそがこの法律の使命であります。

 そこで、厚生労働大臣に伺います。

 派遣を続けたい人、正社員になりたい人、希望はさまざまです。それぞれの希望する働き方の実現に向けて、今回の法案ではどのように対応されようとしているのか、お答えください。

 現行法のもとでは、法律上定められた期間制限によって、派遣元と派遣先の契約が終了した時点で、派遣元と派遣労働者の雇用契約までもが終了してしまう、こうしたことが少なくありません。派遣労働者は、いつ雇いどめに遭うかわからない、非常に不安定な状況に置かれています。

 今回の法律案では、法律上定められた期間制限によって、派遣労働者の雇用が脅かされることのないよう、新たに雇用安定措置が派遣元に義務づけられることになっております。これまでにない取り組みであり、派遣労働者の皆さんのためには非常に意義深いものであると考えます。

 この雇用安定措置を導入する意義と、その具体的な内容について、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 最後に、総理に伺います。

 アベノミクスによって始まった経済成長の果実を、働く人々に還元しなくてはなりません。今回の法案は、まさにそのための法案であります。

 しかし、一部では、正社員が全て派遣労働者に置きかわってしまう正社員ゼロ法案であるとか、派遣労働者が生涯派遣に固定化されてしまう生涯派遣法案であるとか、悪意に満ちたデマに基づく大きな誤解があります。

 そうではありません。派遣労働者の雇用の安定と保護を図り、国民の多様な働き方と暮らし方を支えるための重要な法案であります。

 安倍総理、国民に総理から直接御説明をお願いいたします。

 自由民主党は、国民の多様な希望にしっかりと具体的な道筋を示します。お一人お一人に成長の成果を確実にお届けするため、引き続いて全力で取り組んでまいります。

 以上、強い決意を表明し、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 松本文明議員にお答えをいたします。

 派遣労働者の雇用の安定、保護についてのお尋ねがありました。

 今回の改正案は、派遣会社に対し、計画的な教育訓練等を新たに義務づけるなど、派遣労働者のキャリアアップを支援するとともに、派遣期間が満了した場合には、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置を新たに義務づけることにより、派遣労働者の雇用の安定を図るものであります。

 また、派遣先に対しては、正社員化を支援するため、正社員募集情報の提供を義務づけるとともに、派遣先の労働者との均衡待遇の推進に向けた取り組みを求めることとしており、これらの取り組みを通じて、派遣労働者の希望に応じたキャリアアップを支援してまいります。

 このように、今回の改正案は、派遣労働者の一層の雇用の安定、保護等を図り、多様な働き方の実現を目指すものであり、正社員ゼロ法案あるいは生涯派遣法案といったものでは決してありません。

 安倍内閣としては、今回の改正案を通じて、全ての人々が生きがいを持って安心して働くことができる社会を築いてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 松本文明議員にお答え申し上げます。

 まず、労働者派遣の役割についてお尋ねがございました。

 労働者派遣制度は、自己の希望する日時、場所で、みずからの専門的知識等を生かして就業することを希望する労働者側のニーズ、企業内における専門的な知識、技術、経験を必要とする業務等に対応できる人材を迅速的確に確保したい企業側のニーズといった、労働力の需要及び供給の両面における労使双方のニーズに対応して、労働力需給調整システムの一つとしての役割を果たしてまいりました。

 この労働力の迅速的確な需給調整という機能は、今後の我が国の労働市場においても引き続き重要な役割を果たすことが期待されるとともに、安倍内閣の目指す柔軟で多様な働き方を実現するものの一つとしても位置づけられるところでございます。

 今回の改正により、派遣労働者のより一層の雇用の安定と保護を図りつつ、労働者派遣制度が適切に運用されるよう努めてまいります。

 次に、労働者派遣制度の課題及び本法律案での対応についてのお尋ねがございました。

 一般に、労働者派遣については、派遣労働者の雇用の安定やキャリア形成が図られにくいという課題が指摘されているほか、現行の業務単位の期間制限についてはわかりにくいといった問題も指摘されているものと承知をしているところでございます。

 これらの課題を踏まえ、今回の法律案では、労働者派遣事業を全て許可制とし、派遣労働者の安定した雇用継続のための措置とキャリア形成の支援等の仕組みを盛り込むとともに、また、期間制限のあり方を、働く人に着目した、よりわかりやすい制度に見直すことにより、労働者派遣制度についてこれまで指摘されてきた課題に対応しようとするものでございます。

 期間制限の見直しの必要性についてのお尋ねがございました。

 現行制度では、いわゆる専門二十六業務には期間制限がなく、その他の自由化業務には、原則一年、最長三年の期間制限を設定しております。

 この業務単位の期間制限については、専門性が時代とともに変化するため制度が不安定、二十六業務に該当するかどうかがわかりにくい等の課題が指摘されていると認識をしております。

 このため、今回の法律案では、平成二十四年労働者派遣法改正時の国会附帯決議の考え方に基づいて、現行の仕組みを廃止し、業務にかかわらず適用される共通の期間制限を設けることにより、働く人に着目した、よりわかりやすい制度とすることとしております。

 次に、派遣労働者の保護への対応についてのお尋ねがございました。

 派遣労働者については、職業能力形成の機会が乏しいといった課題があり、働く人の希望に応じたキャリアアップを図る環境を整備していくことが重要でございます。

 このため、改正法案では、派遣元に対し、派遣期間等を通じ、計画的な教育訓練、希望者へのキャリアコンサルティングを新たに義務づけることにより、派遣労働者の希望に応じたキャリアアップを支援することとしております。

 これに加え、派遣先においても、派遣労働者への正社員募集に関する情報提供を義務づけ、キャリアアップ助成金の活用等を進めることとしており、正社員を希望する派遣労働者には、派遣先などでの正社員への道が開かれるよう、支援に努めてまいります。

 雇用安定措置の意義と内容についてのお尋ねがございました。

 今回の法律案では、派遣労働への固定化を防止するために、派遣労働を臨時的、一時的な働き方と位置づけることを原則とするとの考えのもと、有期雇用の派遣労働者には、同じ派遣労働者の同じ職場への派遣は三年を上限とする個人単位の期間制限を新たに設定します。

 他方で、期間制限が派遣契約の終了につながり、それが有期雇用の派遣労働者の派遣元との雇用契約の終了にもつながりやすいとの指摘もありますが、期間制限が雇用を不安定にする要因となり得る点について、現行制度ではほとんど対応策が講じられておりません。

 このため、雇用主である派遣元に対して、派遣期間終了後の雇用安定措置を新たに法的に義務づけることとしており、この措置を通じて、派遣労働者の雇用の安定を図ってまいります。

 具体的には、個人単位の期間制限の上限、三年でありますが、これに達する見込みのある派遣労働者に対し、派遣労働者が引き続き就業することを希望する場合には、その雇用の安定を図るため、派遣先への直接雇用の依頼、新たな就業機会の提供、派遣元での無期雇用、その他安定した雇用の継続が確実に図られると認められる措置のうち、いずれかの措置を講ずることを派遣元に義務づけることとしております。(拍手)

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議長(伊吹文明君) 次の質疑者、菊田真紀子君。

    〔菊田真紀子君登壇〕

菊田真紀子君 民主党の菊田真紀子です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案に対して質問いたします。(拍手)

 女性が活躍する社会を売り物にする安倍政権ですが、わずか二カ月足らずで、女性閣僚に次々と問題が発生、小渕優子経済産業大臣と松島みどり法務大臣が同じ日にダブル辞任するという前代未聞の異常事態を招きました。

 また、在特会との親密な関係が問題視されている山谷えり子国家公安委員長、ネオナチ団体代表との関係が海外メディアで報道され物議を醸した高市早苗大臣など、いよいよ安倍政権のメッキは剥がれ、駿馬どころか、馬脚をあらわしました。

 小渕大臣の後任として経済産業大臣に抜てきされた宮沢大臣、私は、あなたが男性だからといって、がっかりしたなどとは申しません。

 しかし、あなたが、口にするのも汚らわしいところに政治資金を支出していたことや、震災後一度も福島を訪れていないこと、そのくせ、東京電力の応援団さながらに、六百株の東電株を保有し、しかも、原発事故後に株を買い増したことなど、あなたの行動には何から何まで驚くばかりであり、経済産業大臣としてふさわしくないと思いますが、御自身はどのように考えますか。大臣の答弁を求めます。

 さらに、宮沢大臣が代表を務める自民党支部が、外国人が過半数の株を保有する企業から、二回にわたって、合計四十万円の寄附を受けていたことが判明しました。言うまでもなく、これは政治資金規正法第二十二条の五に明白に違反する違法献金ではないでしょうか。

 宮沢大臣、事実関係について明確にお答えください。違法であるならば、大臣として責任をとるべきではないでしょうか。

 一昨年十月、我が党の田中元法務大臣の外国人献金に関して、当時の自民党安倍総裁は、国会議員、とりわけ内閣の一員は、外国から絶対に影響を受けてはならない、当然これは辞任を要求しなければならないと述べました。

 安倍総理にお尋ねします。

 よもや、御自身の発言をお忘れではないと思いますが、今回の宮沢大臣の外国人献金問題に関しても、当然同じ対応、すなわち大臣辞任を促すのでしょうね。

 次に、望月環境大臣にお尋ねします。

 望月大臣は、きょう午前零時過ぎ、緊急記者会見を行い、関係する政治団体、望月義夫後援会の政治資金収支報告書に虚偽記載があったことを明らかにしました。後援会が開いた賀詞交歓会などをめぐり、支出は記載したが、収入は記載していないというもので、まさに小渕前経済産業大臣のケースと同じです。

 望月大臣の説明では、後援会の収支ではないのに、誤って支出だけを記載したという話ですが、これには疑問があります。実際には、支出は正しく記載したが、収入を記載しなかったということなのではありませんか。

 また、亡くなった奥様が経理処理をされたとおっしゃっていますが、そうだとすれば、望月義夫後援会の会計責任者は、単なる名義借りだったということではありませんか。当時の経緯も含めて、明確にお答えください。

 また、なぜ午前零時過ぎという深夜に緊急記者会見を行ったのか、これも大きな疑問です。マスコミが一番報道しにくい時間を選び、疑惑をもみ消そうという意図があったのではありませんか。明確にお答えください。

 さらに、女性活躍担当大臣である有村大臣は、脱税企業から献金を受け取っていたことが発覚しています。

 安倍総理が任命した閣僚は、一体全体どうなっているのでしょうか。次から次へと問題が噴出しています。総理自身の任命責任についてどのように考えるか、明確にお答えください。

 安倍総理は、女性が輝く社会を高らかに宣言していますが、派遣労働者の約六割が女性であり、この改正法案が成立すれば、被害を受けるのは女性です。安倍総理は、本当に女性が輝く社会を目指しておられるのか、不思議でなりません。

 さらに、今の日本は、若い人が安定して働き、安心して結婚し家庭を持つことができる社会とは言えません。

 さて、労働者派遣法は、一九八五年の制定以来、一貫して規制緩和の流れで改正が行われてきました。その結果、リーマン・ショックの余波で雇いどめに遭い、仕事も住居も失った派遣労働者や、年越し派遣村が大きな社会問題になりました。わずか五年ほど前の出来事を、総理はもうお忘れでしょうか。

 総務省の労働力調査によれば、二〇一四年八月現在で、正規雇用で働く人は約三千三百万人、非正規雇用は約千九百万人です。三人に一人が非正規雇用で、景気の変動によりいつ解雇されるかわからない不安を抱えながら、必死に働いているのです。

 では、具体的に本法案の問題点について質問します。

 現行法は、二十六業務を除き、派遣先企業が同じ職場で派遣労働者を使える期間を原則一年、最長三年としています。ところが、本法案では、上限を実質撤廃し、派遣元の企業と無期契約している人は期間の制限なし、有期契約の場合は、三年ごとに人を入れかえれば、ずっと派遣を使い続けることができるようにしているのです。常用代替防止の歯どめが今回の法改正によってなくなるので、改正法が施行される来年四月には、正社員の求人が減り、派遣の求人がふえることになります。

 安倍総理は、派遣労働者を使い続ける場合、受け入れ企業は過半数労働組合の意見聴取が必要と答弁されています。しかし、労働組合の組織率が二割程度で、労働組合がない企業も多い上に、単に意見聴取などを行えば、幾ら労働組合が反対しても、それに従う義務はないので、全く歯どめになりません。

 歯どめがないということは、この法案が通れば、生涯派遣の労働者がふえると理解してよろしいでしょうか。総理の答弁を求めます。

 もちろん、多様な働き方を否定するものではありません。派遣として働くことを選択する人、非正規雇用を望む人、それぞれの事情によりさまざまな選択肢があってよいと考えますし、派遣労働そのものを否定するつもりはありません。

 しかしながら、正社員になることを希望しているにもかかわらず、やむを得ず派遣で働かざるを得ない方々、こういう方々が数多くいることについて、総理はどのように考えているでしょうか。

 実際、厚生労働省のインターネット調査の結果によれば、派遣労働者の六割が正社員として働くことを希望しています。安倍総理に見解を伺います。

 先ほど申し述べたとおり、派遣で働く百十六万人のうち約六割が女性です。派遣で働く女性が妊娠、出産すれば、多くの場合、解雇や雇いどめになることを御存じでしょうか。また、派遣で働く女性は、職場でセクハラやパワハラに遭っても、契約打ち切りを恐れて泣き寝入りしてしまうケースが多いのです。

 国立社会保障・人口問題研究所のデータによれば、正社員の女性の育休取得率が約四〇%であるのに対し、パートや派遣社員の女性の育休取得率は四%と、十分の一の低さです。また、無期の雇用契約で、直接雇用の方の結婚率は六九%ですが、派遣労働者は約半分の三〇%台であり、結婚したくてもできない人が数多くいます。

 派遣労働者をふやすような法改正は、安倍政権が目指す少子化対策や若者にとって魅力ある仕事づくりに逆行するのではありませんか。総理の答弁を求めます。

 本法案には、一番肝心の均等待遇の確保が入っていません。ヨーロッパでは、派遣労働は臨時的、一時的なものと位置づけられ、賃金も含め、派遣労働者と正社員との均等待遇、同一労働同一賃金が原則となっています。厚生労働省の調査では、賃金を時給換算で見ると、正社員よりも派遣労働者の方が五百円以上も低くなっています。しかも、派遣労働者の賃金は、幾らキャリア、経験を重ねたとしても、正社員のように上がらないのが実態です。

 今回の法改正は、均等待遇の実効性がなく、世界の常識にも反するため、労働規制緩和に賛成している人たちからも懸念の声が出ています。

 総理は、正社員と派遣労働者の賃金格差をこのまま放置するつもりでしょうか。なぜ、均等待遇の義務化を法案に盛り込まなかったのですか。総理の答弁を求めます。

 次に、派遣労働者のキャリアアップ支援について伺います。

 法案の条文からは、派遣元企業が派遣労働者に対して、具体的にどのような内容のプログラムをどの程度行ったら義務を果たしたことになるのか、全くわかりません。例えば、月に一回、一時間程度パソコン教室や英会話などの教育訓練を行うだけでも、派遣元企業はその義務を果たしたことになるのでしょうか。厚生労働大臣、イエスかノーで明確にお答えください。

 法案の正社員化の促進、雇用安定措置も全く実効性がありません。雇用安定化措置として、派遣期間終了後に派遣元が派遣先への直接雇用を依頼することが想定されていますが、派遣先が簡単に直接雇用するはずがありません。また、派遣元による新たな就業機会の提供についても、派遣元企業が新しい派遣先を紹介するのは本来業務であって、もっともらしく雇用安定措置と位置づけるのは笑止千万ではありませんか。厚生労働大臣の見解を求めます。

 世界の常識に反して、均等待遇が確保されないまま期間制限を事実上撤廃し、派遣をふやすことになる改悪は絶対に阻止しなければなりません。女性が輝く社会どころか、女性を犠牲にし、未来ある若者を使い捨てにする改悪であり、我々民主党は、本法案成立阻止のため渾身の力で闘うことを申し述べ、私の代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 菊田議員の御質問にお答えをいたします。

 宮沢大臣についてのお尋ねがありました。

 宮沢大臣の件については、平成十九年、二十年に、当時宮沢大臣が代表を務めていた政党支部が、日本法人であり、かつ、法人名からは外国人が過半数の株式を保有することはわからず、また、経営者本人と個人的な関係がなく、他の後援者の方の紹介であり、実態を承知していなかったため、誤って寄附を受けていたと……(発言する者あり)

議長(伊吹文明君) ちょっと静かにしてください。答弁が聞こえませんから、静かにしてください。

内閣総理大臣(安倍晋三君)(続) 実態を承知していなかったため、誤って寄附を受けていたと聞いております。

 今般、外国人が過半数の株式を保有することが判明し、速やかに寄附を返金したものと承知しています。

 宮沢大臣には、識見、能力を生かして、引き続き経済産業行政に邁進していただきたいと思います。

 任命責任についてお尋ねがありました。

 政治資金のあり方については、個々の政治家が国民から信頼を得られるよう、みずから襟を正し、説明責任を果たしていかなければなりません。常に国民目線に立ち、不断の努力を行っていくべきものと考えております。

 経済の再生を初め、内外の課題が山積する中、行政に、政治に遅滞をもたらすことのないよう、今後さらに緊張感を持って政権運営に当たってまいります。

 二年前の総選挙で国民の皆様からいただいた負託にしっかりと応えるため、政治を力強く前に進め、国民への責任を果たしていく決意であります。

 この後は、労働者派遣法についての御質問にお答えをさせていただきます。

 派遣受け入れの期間制限についてのお尋ねがありました。

 今回の改正案では、派遣先が一方的に派遣社員の受け入れ期間を延長することがないよう、同じ事業所において、三年を超えて派遣労働者を受け入れようとする場合には、過半数労働組合、または、過半数組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者からの意見聴取を義務づけた上、反対意見が表明された場合には、対応方針を説明する義務を課すこととしております。

 したがって、今回の改正案により生涯派遣の労働者をふやすとの御批判は当たりません。

 正社員を希望する派遣労働者についてお尋ねがありました。

 一般に、派遣労働という働き方には、雇用の安定やキャリア形成が図られにくい面があり、正社員を希望する派遣労働者の方々には、正社員の道が開かれることが重要であると考えています。

 このため、今回の改正案では、派遣会社に対して、計画的な教育訓練等を新たに義務づけるほか、派遣期間が満了した場合には、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置を義務づけるなど、派遣就労への固定化を防ぐための措置を強化することとしています。

 なお、ニーズが多様化している中、みずからの働き方として派遣を積極的に選択するケースもあり、そのような方には待遇の改善等を図ることが重要と考えています。

 労働者派遣法の内容と少子化対策等の関係についてのお尋ねがありました。

 働き方が多様化する中で、派遣という雇用形態を選択する方もあり、育児などで仕事から離れていた方が、職場復帰のステップとして、まず派遣という形で仕事を得る場合もあります。

 他方、派遣労働という働き方には、キャリア形成等の面で課題があることから、今回の改正案により、派遣会社と派遣先の双方において、派遣労働者のキャリアアップの支援や正社員化と均衡待遇を推進する措置等を強化することとしています。

 安倍内閣としては、今回の改正により、子育てを担う世代が生きがいを持ち、安心して働くことができる環境の整備を図ることなどを通じて、子供を持つ方や若者にとって魅力ある仕事づくりに取り組んでまいります。

 派遣労働者の賃金格差と均等待遇についてお尋ねがありました。

 同一労働をしていれば同一賃金が保障されるという仕組みをつくっていくことは、一つの重要な考え方であると思います。

 他方、能力や責任の大きさなどさまざまな要素を考慮して労働者の処遇が決定されることが一般的である我が国の労働市場においては、すぐさまこうした仕組みを導入するには、乗り越えるべき課題があります。

 また、派遣労働者の場合、派遣先のどの労働者と比較するかといった課題もあります。

 このため、まずは個々の事情に応じた均衡待遇を推進していくことが重要であると認識しており、今回の改正案において、賃金等の面で派遣先の責任を強化するなど、均衡待遇を一層推進することとしております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 菊田議員から二問頂戴をいたしました。

 キャリアアップ措置についてのお尋ねがありました。

 労働者派遣法改正法案では、派遣労働者のキャリアアップに向けて、派遣会社の雇用責任を強化するため、派遣会社に対して、計画的な教育訓練、希望者へのキャリアコンサルティングを新たに法的に義務づけることにしています。

 この趣旨に鑑みれば、派遣会社が策定した教育訓練計画が法の趣旨に沿ったものかどうかは、その派遣会社における派遣労働者のキャリアアップに資するかどうかを個別の事案ごとに判断する必要があるため、お尋ねの例示のみをもって、派遣会社がキャリアアップ措置の義務を履行したか否かを判断することは困難であると考えております。

 次に、雇用安定措置の実効性についてのお尋ねがございました。

 個人単位の期間制限の上限に達する見込みのある派遣労働者に対し、派遣労働者が引き続き就業することを希望する場合には、その雇用の安定を図るため、派遣先への直接雇用の依頼、新たな就業機会の提供、派遣元での無期雇用、その他安定した雇用の継続が確実に図られると認められる措置のうち、いずれかの措置を講ずることを派遣会社に義務づけることとしています。

 これらの措置は、今回新たに法的に義務化されたものであり、例えば、派遣先への直接雇用を依頼した場合であって雇用に至らなかったときは、それ以外の措置を講ずるなど、派遣期間満了時に継続して就業することを希望する労働者には、新たな就業機会が提供されることとなるため、雇用安定措置の実効性がないとの御指摘は当たらないものと考えております。(拍手)

    〔国務大臣宮沢洋一君登壇〕

国務大臣(宮沢洋一君) 私の政治資金等についてお尋ねがありました。

 御指摘の支出については、政治資金として認められるわけがなく、極めて不適切であったと考えています。その店に行った者には厳重に注意し、既に弁済させました。速やかに収支報告書の修正を行います。

 東京電力株の保有について、震災前の平成二十二年十二月に、五百八十八株から六百株へのいわゆる端株の調整を行いました。既に発表しておりますが、取引の時期の記載について資産等報告書に誤りがあったので、早急に訂正いたします。

 その上で、全ての大臣は、在任期間中は、あらかじめ、大臣等規範に定められているルールにのっとり、株取引を自粛し、保有株式は信託銀行に信託することになっています。私もこれに従って、東京電力株について、既に二十七日月曜日に信託の手続を終えております。

 株式を保有していることで、大臣としての政策判断を曲げることはあり得ません。

 また、在任期間が終わった後については、福島の復興に役立てるため、保有している東京電力株を処分し、全額寄附する考えであります。

 また、福島に訪問していないとの御指摘もありましたが、私は、震災以降、復興基本法の自民党の責任者の一人として、復興庁を創設するきっかけをつくった一人であります。関係方面との調整ができれば、経産大臣としての最初の訪問先として、来月一日土曜日にも福島にお伺いしたいと考えています。

 私が外国人が過半数株を保有する企業から献金を受けていたことについてお尋ねがありました。

 先週末、私が過去代表を務めていた政党支部が平成十九年と二十年に寄附を受けた企業一社が、外国人が過半数の株式を保有する企業に該当する可能性があることがわかりました。事務所としては、当時、当該企業が日本の企業であり問題ないとの認識でしたが、念のため、当該企業に直接照会したところ、外国人の持ち株比率が過半数を超えることが判明しました。

 今回の調査の中で判明するまで、外国人が過半数の株式を保有する会社であると気づきませんでした。法人名からはそれとわからず、経営者本人と面識もなかったため、外国人が過半数株を保有する会社であることを予見できなかったものであります。

 事実が判明した後すぐに、計四十万円の寄附を直ちに返金するように指示し、先週土曜日に返金を完了いたしました。

 私としては、引き続き、経済産業大臣として業務に全力を尽くしてまいります。(拍手)

    〔国務大臣望月義夫君登壇〕

国務大臣(望月義夫君) 菊田議員の質問にお答えしたいと思います。

 私の関係団体につき、複数のマスコミの方々から御質問を受けたことから、事務所で精査し、精査を終えた二十二時に会見の申し入れを行ったところ、二時間の準備時間を置くとの記者会とのルールがあり、二十四時からの会見となったところです。私としては、少しでも早くお知らせした方がよいと考えたところですが、結果としてこのような時間帯になったことは申しわけなかったと思っております。

 賀詞交歓会については、実行委員会形式で行われ、一人二千円で千八百名程度の方々が参加しており、収支ほぼ過不足ない状態で運営されているとのことであります。後援会の事業ではなく、実行委員会の事業であることから、支出は正しく記載したが、収入を記載しなかったとの御指摘は当たらないと考えております。

 後援会の経理の実務は妻が見ておりました。なお、会計責任者については、収支報告書を確認した上で判を押しておりますが、本件を重く受けとめ、昨日辞任するとの申し出がございました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(伊吹文明君) それでは、次の質疑者、柿沢未途君。

    〔柿沢未途君登壇〕

柿沢未途君 維新の党を代表して、労働者派遣法改正案に対し質問します。(拍手)

 本法案の審議入りは、当初は二十一日と言われていましたが、ここまでおくれました。複数の閣僚が辞任したのが一つの原因です。それについて、安倍総理はどう思っておられますか。

 みずからの任命責任についてお認めになられていますが、責任というのは、何らかの責任をとるときに口にする言葉です。女性の活躍の象徴として異例の抜てきをされたのは、安倍総理御自身であります。任命責任をどうとられますか。お伺いします。

 そもそも、閣僚起用前のいわゆる身体検査をどのように行われたんですか。第一次内閣で痛い目に遭ったのに、調べればすぐにわかるはずの小渕経産大臣のずさんな収支報告書をまんまとスルーしています。内閣改造に当たって何も調べなかったんでしょうか。昨夜遅くは、望月環境大臣の収支報告書の話も出てきました。

 今後も、収支報告書の不適正は出てくるのではないですか。それとも、このようなケースはもう出てこないと断言されますか。任命権者である安倍総理の見解をお聞かせください。

 さて、派遣法改正案です。

 派遣は、同じ職場で働く正社員に比べて、最長三年までしか継続的に働ける見通しがなく、それだけ高いリスクにさらされていると言えます。ならば、派遣は、同じ仕事なら、安定している正社員に比べてリスクに応じた高い給与を支払われるのが当然ですが、現状は全くその逆で、正社員の方がはるかに好待遇になっています。これでは、派遣は、安価な使い捨ての労働力扱いされていると言わざるを得ないではありませんか。なぜ、このようになっているんですか。

 安定して好待遇の正社員がいて、不安定で、なおかつ待遇の低い派遣や非正規がいる。これでは、一級市民と二級市民のような階層制の身分社会になってしまいます。この現状を変えるべきという問題意識は、安倍総理にありますか。

 このような階層化した現状があるにもかかわらず、なぜ、派遣で働くことをみずからの意思で選択する人がいるんでしょうか。

 厚労省の調査でも、派遣で働き続けたいという人が四三%、正社員になりたいという人が四三%、ちょうど半々になっています。なぜ、多くの人が、不安定で待遇も低い派遣をあえて続けたいと希望するのか。

 それは、正社員は責任も大きいし残業もしなくてはいけない、ワーク・ライフ・バランスを犠牲にしなくてはいけない、それなら、待遇は低くても、契約どおりに定時に帰れる派遣の方がいい、そう思われているからでありませんか。

 正社員のサービス残業は、今も横行しています。厚労省及び総務省の調査をもとに、正社員のサービス残業の実態を計算すると、年三百時間以上。肌感覚では、もっと多いようにも感じます。

 三六協定なんて誰も知らないでしょうという経営者の言葉が大問題になりましたが、この三六協定すら結ばずに時間外労働を強いているブラック企業がそこらじゅうにあり、労働基準監督署はほとんど有効に取り締まれていない、これが実情ではないでしょうか。労働基準法百十九条には、懲役刑を含む罰則がありますが、事実上、懲役刑は抜かずの剣となっています。

 一方、アメリカでは、賃金不払いは、労働者一人につき一万ドルの罰金、そして倍額の賃金の支払い、それを経営者ではなく直属の上司が支払う決まりになっています。これでは、上司は、うかうかブラック労働を部下に命じられなくなります。労働者保護が弱いと言われているアメリカでも、ブラック企業のような労働市場への不正参加は許さないのです。

 平気でサービス残業を求められるような正社員の働き方を是正するために、より実効性ある規制や罰則の強化が必要であり、いかなる労働法制の改革も、それが手始めでなければいけないと考えますが、安倍総理の見解を伺います。

 残業実態や有休取得実績の開示の義務づけも必要だと思います。

 会社四季報で有名な東洋経済に、就活生のための会社情報を集めた就職四季報というのがあります。労働者を大切にする会社かそうでないかを見るにはこの本が一番と言われて、ページをめくってみました。

 分厚い冊子には、残業時間と支給額、有休消化年平均、三年後新卒定着率といった回答データが会社別に掲載されています。いずれも、ブラック企業を見分ける目安とされているデータです。

 これらのデータについて無回答としている会社もありますが、みずから把握しているはずの残業時間や有休取得日数といったデータを積極的に開示しない事実そのものが、どのような働き方を社員にさせているかということを示唆するものともなっています。

 これらのデータの罰則つきの開示義務を課したらどうかと考えますが、見解をお伺いいたします。

 二〇一三年の総務省の労働力調査によると、正規雇用は三千二百九十四万人と四十六万人減る一方で、パート、アルバイト、派遣、契約社員といった非正規は、九十三万人増の一千九百六万人となっています。特に女性では、正規雇用が千二十七万人、非正規が一千二百九十六万人と、正規、非正規が逆転しています。もはや、どちらが正規でどちらが非正規という物の言い方自体が成り立たなくなっています。

 それよりも重要なのは、雇用形態にかかわらず、同一労働同一賃金の原則を徹底し、そして、正規と非正規の二分法をなくしていくことではないでしょうか。我が党の基本政策でも、同一労働同一条件の徹底により、正規と非正規の垣根を解消すると掲げております。

 そこで、今回の派遣法改正案を見ると、派遣先の正社員と比べた待遇の均衡を図るための配慮規定が置かれているだけで、非正規雇用を理由とした不合理な待遇の差を禁じている労働契約法やパート労働法と比べると、見劣りがするものとなっています。

 欧州、ヨーロッパの主要国では、EUの指令に基づいて、派遣労働者に対しても、直接雇用された場合と同等の労働条件を保障する均等待遇になっています。なぜ今回の派遣法改正は、同一労働同一賃金、そして均等待遇を実現する内容になっていないんですか。

 私たちは、同一労働同一賃金推進法案を議員立法として近日中に国会に提出する予定です。正規か非正規かといった雇用形態にかかわらず、職務内容に応じた待遇を得られ、そして希望する雇用形態への就労のチャンスが開かれ、みずからの選択でキャリアプランを形成できることを内容とするもので、そのために、現状の待遇格差の実態調査を国に義務づけ、派遣労働者の派遣先の正社員との均等待遇については、一年以内の法制上の措置を求めています。

 やっている仕事は同じなのに、正社員は一級労働者、派遣、非正規は二級労働者、このようなイコールフッティングを欠いたゆがんだ現状を正し、同一労働同一賃金を実現していくために、安倍総理にも、ぜひこの同一労働同一賃金推進法案に御賛同いただきたいと思いますが、見解をお伺いいたします。

 我が国の雇用労働制度の問題は、新卒で正社員になれたかなれなかったかで人生が半ば決まってしまうところにあると私は思います。同じ仕事をしていても、年功賃金カーブによる昇給のある職能給では、同じ会社に長く勤続するのがメリットになり、逆に、一旦ドロップアウトしてしまうと、なかなかそこに入っていけません。それが労働移動をためらう障壁ともなっています。

 我が国においても、同一労働同一賃金が原則として成り立っていれば、同一の職業能力を持つ人が離職して別の会社に移っても、原則として同一の条件で処遇されますから、労働移動による本人の不利益は生じなくなります。このような形での労働市場の流動化は、働く人に多様な就業のチャンスを与えるものと言え、私も賛成です。

 ただし、それを実現するには、同じ会社にいれば、職業能力にかかわらず昇給していく年功賃金の職能給体系を見直す必要があります。安倍総理もしばしばそれに言及しておられますが、日本型と言われる賃金体系のどこをどのように見直していくべきと考えているのですか。

 安倍総理は、九月二十九日に官邸で開かれたいわゆる政労使会議において、年功序列の賃金体系を見直し、労働生産性に見合った賃金体系に移行することが大切だと語っておられます。しかし、それなら、民間会社をあれこれ言う前に、公務員の人事給与体系を見直す必要があるのではないですか。

 各省の局長や審議官の入省年次を一覧にしてみれば、いまだに年功序列の人事を行っていることは明らかではありませんか。一般職の能力・業績評価についても、S評価、A評価、B評価と五段階の上三つで九九・四%を占めていて、やや劣る、劣るのC、Dの評価はたったの〇・六%です。結果、年功序列で仲よく昇進し、給与も上がっていく仕組みが守られています。

 民間会社の年功賃金を言う前に、自分のところの公務員制度改革の仕事から始めたらいかがですか。お伺いいたします。

 労働市場の流動化には賛成ですが、労働市場の流動化と称して、ただ単に解雇規制を緩めるだけの改革を行うのであれば、それは労働者の立場を弱くするだけで、首切りしやすくなる会社側に都合のいい改革と言わざるを得ません。労働移動によって労働者に不利益の生じないような、労働と雇用に関する総合的な制度改革が同時に必要であります。

 労働市場の流動化を進めながら、若年層の失業率を劇的に低下させた国に、北欧のデンマークがあります。二〇一三年の失業率で見ると、デンマークは、超好景気のドイツを除き、ヨーロッパで最も失業率の低い国の一つです。

 柔軟性をあらわすフレキシビリティーと、保障をあらわすセキュリティーを合わせた造語であるフレキシキュリティーという名で知られるデンマークの積極的労働市場政策は、今やEU全体の雇用労働政策のモデルとなっています。これはどのような政策でしょうか。

 デンマークは解雇が容易と言われ、一年間に労働者の三五%が離職しますが、解雇のような非自発的離職は多く見積もっても一〇%で、二〇%程度は、転職や職業訓練等によるキャリアアップを目的とした自発的離職です。衰退産業から自発的に離職し、必要なスキルを職業訓練で身につけて、成長産業への労働移動を果たすという労働市場の流動化の理想的なケースが実現しているんです。

 解雇、離職は容易、しかし、手厚い失業給付がある、そして、行き届いた職業訓練で再就職も容易、こういう黄金の三角形が成り立つには、安心して離職してスキルアップを目指せるだけの失業給付と職業訓練というセーフティーネットを用意する必要があります。

 デンマークは、失業した場合でも、労働所得の最大で九〇%を二年間にわたり労働者に保障しております。この間に職業訓練を受け、職探しをするのです。我が国は、九十日から最長でも一年未満、そして、給付水準は原則として賃金の五割から八割となっており、手厚さにおいて違いがあります。

 我が国の労働保険財政の現状では無理だとの声がここから聞こえてきますけれども、しかし、失業給付を賄う労働保険特別会計雇用勘定は、今や六兆円もの積立金が積み上がっていて、失業給付の水準を段階的にかさ上げする余裕は、現状あるはずであります。

 今後の労働法制の見直しを視野に入れたときに、現状の失業給付の期間、水準で十分なものと考えているのか、安倍総理の見解を伺います。

 デンマークでは、政労使の三者で決められた、今後の雇用ニーズに合った職業訓練プログラムを原則無償で受けられます。結果、デンマークは、OECD加盟国で、成人が職業訓練を受ける率が最も高い国となっています。

 他方、我が国では、いわゆる雇用保険二事業の効果の乏しさが長らく指摘され、その廃止も議論の俎上に上ってきました。衰退産業に補助金を払って雇用維持をさせるような雇用調整助成金のあり方は、ようやく労働移動支援へと大きく転換されつつありますが、これまでも効果が疑問視されてきた公的職業訓練については、雇用・能力開発機構が看板をかけかえた高齢・障害・求職者雇用支援機構が性懲りもなく厚労省と癒着して、できレースで事業の委託を受けている実態が明らかになるなど、実施機関や実施手法のあり方を含め、成長産業への労働移動に真に資するものとして、全面的に転換を図っていかなければなりません。安倍総理の見解をお伺いいたします。

 以上で、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 柿沢議員にお答えをいたします。

 法案の審議入りがおくれたことと、私の任命責任についてお尋ねがありました。

 二人の閣僚が交代する事態を招いたことについて、国民の皆様に対し、大変申しわけなく感じております。任命したのは私であり、任命責任は私にあります。

 経済の再生を初め、内外の課題が山積する中、行政に、政治に遅滞をもたらすことのないよう、今後さらに緊張感を持って政権運営に当たってまいります。

 二年前の総選挙で国民の皆様からいただいた負託にしっかりと応えるため、政治を力強く前に進め、国民への責任を果たしていく決意であります。

 政治資金収支報告書の問題につき、お尋ねがありました。

 政治資金については、個々の政治家がみずから説明責任を果たしていくべきものと考えます。国民の信頼なくして政治は成り立ちません。今後とも、政治資金のあり方については、法律にのっとって適正に処理すべきことはもちろん、内閣、与党、野党にかかわらず、一人一人の政治家が国民の信頼を得られるよう、みずから襟を正していかなければならないと考えております。

 派遣労働者の処遇についてお尋ねがありました。

 我が国の賃金制度については、職務内容のほか、能力や責任の大きさなどさまざまな要素を考慮して決定されるという実態が広くあり、このように考慮された結果として、一般に正社員の賃金が相対的に高いものになっていると考えられていると承知しています。

 今回の改正案では、派遣労働者について、派遣先から派遣会社に賃金水準等の情報を提供し、派遣会社では、均衡待遇を確保するために考慮した内容を本人に説明するといった仕組み等を新たに設けることにより、均衡待遇を強化することとしています。

 これらの措置を通じて、派遣労働者の待遇の改善を図ってまいります。

 正規と非正規の待遇格差についてお尋ねがありました。

 非正規雇用については、正規雇用に比べて賃金が低い、能力開発の機会が少ないといった課題があり、その処遇の差を改善し、全ての人々が生きがいを持って働くことができるようにすることが重要と考えております。

 このため、今回の改正案による計画的な教育訓練等の仕組みや、キャリアアップ助成金などの支援により、正社員を希望する方々について、正社員への転換を推進するとともに、非正規雇用を選択している方々については、処遇の改善を進めてまいります。

 同時に、多様な働き方へのニーズに対応することも必要であり、一級市民、二級市民といった決めつけは不適切であると考えます。

 賃金不払い残業への対応についてのお尋ねがありました。

 過重な労働や若者の使い捨てが疑われる企業等は、社会的に大きな問題であると考えています。

 このため、本年十一月、賃金不払い残業や過重労働などに対し重点的な監督指導を実施するなど、企業への監督指導等の強化を図るとともに、法に違反するものには厳正に対処することとしています。

 また、働き過ぎの改善に向けて、長時間労働抑制策、有給休暇の取得促進策等について、関係審議会等で検討しているところであります。

 これらを通じ、企業による労働基準法等の遵守や労働時間法制の見直しにしっかりと取り組んでまいります。

 同一労働同一賃金についてお尋ねがありました。

 同一労働をしていれば同一賃金が保障されるという仕組みをつくっていくことは、一つの重要な考え方であると思います。

 他方、能力や責任の大きさなどさまざまな要素を考慮して労働者の処遇が決定されることが一般的である我が国の労働市場においては、すぐさまこうした仕組みを導入することには、乗り越えるべき課題があります。

 また、派遣労働者の場合、派遣先のどの労働者と比較するかといった課題もあります。

 このため、まずは個々の事情に応じた均衡待遇を推進していくことが重要であると認識しており、今回の改正案について、賃金等の面で派遣先の責任を強化するなど、均衡待遇を一層推進することとしております。

 お尋ねの議員立法が提出された場合の取り扱いについては、国会の会派間で決められるものと考えております。

 賃金体系の見直しについてお尋ねがありました。

 三本の矢の政策によって動き始めた経済の好循環を拡大するためには、賃金の水準と体系の両方の議論が必要と考えます。

 賃金体系については、個別の労使交渉で決められるべきものと考えておりますが、年功だけでなく、さまざまな観点も考慮して決定されることが望ましいと考えています。

 その上で、子育て世代や非正規労働者の処遇改善、これらとかかわる労働生産性に見合った賃金体系への移行といった大きな方向性については、政労使で共通認識を醸成したいと考えています。

 公務員制度の改革についてお尋ねがありました。

 今般の公務員制度改革により、適格性審査と任免協議の二つのプロセスから成る幹部人事の一元管理制度が導入され、内閣全体として戦略的な人事配置を実現できるようになりました。

 こうした制度をしっかりと運用することにより、能力・実績主義を踏まえた、採用年次等にとらわれない人事が推進されるものと考えております。

 失業給付の期間と水準に関するお尋ねがありました。

 失業給付については、失業中の生活の安定や早期の再就職に向けた支援が適切に図られるよう、その水準等を決定しています。

 その中で、求職者の実情に応じ、公共職業訓練を受けた期間にも給付を行うほか、二十八年度末までの間、暫定的に、就職が困難な方について給付期間を延長するなど、求職者の状況に応じた措置を講じているところです。

 失業給付の水準等の決定に当たっては、今後とも、雇用失業情勢や受給者の就職状況、再就職時の賃金等も踏まえ、適切に対応してまいります。

 公的職業訓練のあり方についてのお尋ねがありました。

 求職中の方を対象とした公的職業訓練については、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構や都道府県だけではなく、その八割以上を民間教育訓練機関が実施しており、医療、介護などの成長分野も含め、地域や産業界のニーズに対応した職業訓練を提供しているところです。

 また、公的職業訓練は、受講した方の就職率がおおむね八割となるなど、早期再就職に成果を上げています。

 政府としては、今後とも、産学官が連携し、地域や産業界のニーズに応じた訓練コースを開発するなど、効果的な職業訓練の実施に努めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 柿沢議員から一問頂戴をいたしました。

 時間外労働や年次有給休暇のデータについて、企業に開示義務を課すことについてのお尋ねでございます。

 時間外労働の時間や年次有給休暇の取得日数等は、労働条件の中でも、職業の選択に当たって求職者が特に関心を持つ事項であり、そうした観点から、例えば前年度の所定外労働時間の実績や有給休暇の実績などを開示する企業を若者応援企業として、ハローワーク等において積極的に魅力を発信し、若者とのマッチングを支援しております。

 一方、これらのデータの開示義務を一律に課すことについては、個々の企業の経営権とのバランスにも配慮し、慎重に検討する必要があると考えております。

 なお、長時間労働対策を強力に展開するため、厚生労働省に、私自身を本部長といたします長時間労働削減推進本部を設置し、企業に対する監督指導の強化など、働き過ぎ防止に省を挙げて取り組んでいるところでございます。

 さらに、長時間労働抑制策や年次有給休暇の取得促進策等について、現在、労使の代表が参画する労働政策審議会で検討を進めており、次期通常国会をめどに、所要の法的措置を講じてまいりたいと考えております。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、中野洋昌君。

    〔中野洋昌君登壇〕

中野洋昌君 公明党の中野洋昌です。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして質問いたします。(拍手)

 少子高齢化、人口減少が進む日本社会において、この難局を打破していくためには、これからの日本の未来を担う若い世代が希望を持って働ける環境を整えることが何よりも重要であります。

 しかし、長引くデフレ不況の中、全ての世代において、ここ二十年の間に非正規雇用労働者の割合が増加するなど、労働環境が悪化しつつあります。

 このため、私ども公明党青年委員会は、昨年、ワーク・ライフ・バランスに関するアンケート調査を行うとともに、本年、全国五十カ所以上で青年層を対象とする青年市民相談会を開催、八百名を超える方から直接現場の生の声をお伺いし、それを青年政策アクションプランという形で取りまとめ、政府に申し入れを行ったところです。

 過酷な長時間労働で苦しんでいる方、安い賃金で将来に希望が持てない方、こうした声に応え、頑張る人が報われる社会を実現していくためには、デフレを脱却し、着実な経済成長を実現させるとともに、働き方を改革し、若者が生き生きと働ける環境をつくっていくことが何よりも必要であります。

 本改正案は、従来届け出制であった特定労働者派遣事業を廃止し、許可制に一本化するとともに、派遣元事業主へのキャリアアップ措置の義務づけ、派遣期間の上限に達した労働者に対する雇用安定措置の義務づけを行うなど、派遣労働者のキャリアアップを促進するものである一方で、過半数組合等の意見聴取を要件に、派遣労働者を交代させることで、三年以上継続して派遣労働者を受け入れることが可能となっているなど、労働者派遣事業の規制緩和であるとの指摘もあるところです。

 そこで、本法案の狙いは何なのか、この改正により、派遣労働者の置かれる環境はどのように変わるのか、派遣労働者の処遇改善は図られることとなるのか、総理、ぜひ国民にわかりやすい形で御説明をいただきたいと思います。

 次に、派遣労働における基本的な考え方について質問いたします。

 働く人それぞれのニーズに合った多様な働き方は必要ではありますが、希望する方については、直接・無期雇用の正社員として働けるようにすることが、より安定的で望ましいことであると考えます。今までも、雇用政策全体の中で、派遣労働はあくまで臨時的、一時的な働き方であるとの位置づけがなされてきておりました。

 そこで、質問ですが、今回の改正を受け、雇用政策全体の中で、派遣労働はどのように位置づけられることとなるのでしょうか。

 また、今までは、派遣労働においては常用代替の防止という考え方が取り入れられておりました。今回の改正においては、無期雇用の派遣労働者については期間制限を設けないこととし、それ以外の派遣労働者については、派遣先事業所単位での期間制限を、過半数組合等の意見聴取により、三年以上に延長することが可能になっています。

 常用代替防止の考え方は維持されているのか、また、常用代替防止を図るための手続の実効性はいかに担保されているのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 次に、キャリアアップについて質問いたします。

 総務省の調べによると、いわゆる不本意非正規の方の割合は派遣社員で特に高く、約四割の方が、できれば正社員として働きたいと考えているとの結果が出ております。これからの労働政策は、こうした方がキャリアアップできるような支援を行うことが何よりも重要であると考えます。このため、今般の改正案において、派遣元事業主に計画的な教育訓練の実施を義務づけたことは大きな意義があると考えます。

 しかし、こうしたキャリアアップ措置が実効性を伴わない形式的なものであっては意味がありません。このため、キャリアアップ措置については、どの程度効果があったのかを把握し、その実効性を担保する措置をとる必要があると考えます。

 あわせて、キャリアアップ助成金の拡充など、派遣労働者を初めとした非正規雇用労働者を人材育成し、正社員化する企業に対する支援を拡充していただきたいと考えますが、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 次に、処遇の改善について質問いたします。

 雇用環境の改善のためには、経済成長を実現させ、その成果が賃金に反映されていく好循環の実現を図る必要があると考えております。

 連合の発表した資料によりますと、二〇一四年春闘の結果として、非正規雇用労働者についても時給で十二円の賃上げがなされたとのことですが、雇用者全体の約四割弱がこうした非正規雇用労働者であることを考えると、派遣労働者を含め、非正規雇用労働者の処遇の改善を図っていくことは極めて重要であると考えます。

 労働者派遣における均等・均衡待遇を含め、これらの労働者の処遇の改善を図っていくため、政労使会議の活用を初め、政府としてしっかりと取り組みを進めていっていただきたいと考えますが、総理の答弁を求めます。

 最後に、総合的な若者の雇用対策について質問いたします。

 近年、若者の使い捨てが疑われる企業というものが話題になっております。政府としても、監督指導の強化など、対応を図っていただいておりますが、ますます数が減っていく若者を社会全体として育てていく方向へと大きな転換を図る必要があります。

 国、地方自治体、産業界、労働界、教育界などが、それぞれ責任を持って、若者の就労やキャリアアップを支えていくべきであり、そのためには、若者雇用に対する総合的な対策を早期に法制化していくことが必要です。また、どの企業が若者を応援しているのかがわかるよう、情報開示を推進するとともに、こうした企業に対する支援も強化していく必要があります。

 仕事と生活が調和したワーク・ライフ・バランスの実現に向け、長時間労働を是正する働き方改革、有給休暇の取得を促進する休み方改革も進めていく必要があります。

 こうした、若者雇用に関する総合的な取り組み、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取り組みについて、今後どのように進めていかれるのか、総理の御決意を伺い、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 中野洋昌議員にお答えをいたします。

 労働者派遣法改正案の趣旨についてのお尋ねがありました。

 今回の改正案は、みずからの働き方として派遣を積極的に選択している派遣労働者については、その待遇の改善等を図るとともに、正社員を希望する派遣労働者については、正社員への道が開かれるようにするものであります。

 具体的には、派遣会社への計画的な教育訓練の義務づけ等により、キャリアアップを支援するとともに、派遣会社、派遣先の双方に対し、派遣先労働者との均衡待遇の推進に向けた取り組みを求めて処遇の改善を図り、また、派遣会社に対し、派遣期間が満了した場合に、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置を新たに義務づけること等により、雇用の安定を図ることとしております。

 これらの措置を通じ、全ての人々が生きがいを持って安心して働くことができる社会を築いてまいります。

 非正規雇用労働者の処遇改善についてお尋ねがありました。

 非正規雇用については、正規雇用に比べて賃金が低い、能力開発の機会が少ないといった課題があり、雇用形態の実情に応じ、待遇の改善を推進していくことが重要であります。

 このため、今回の改正法案では、派遣労働者について、派遣先から派遣会社に賃金水準等の情報を提供し、派遣会社では、均衡待遇を確保するために考慮した内容を本人に説明するといった仕組み等を新たに設けることにより、均衡待遇を強化するとともに、派遣会社での計画的な教育訓練の義務づけや、キャリアアップ助成金の活用等により、正社員を希望する派遣労働者について、正社員への道が開かれるよう支援することとしております。

 また、政労使会議でも、非正規雇用労働者の処遇改善について共通認識を醸成する等の取り組みを進めているところです。

 これらを通じ、全ての人々が生きがいを持って安心して働くことができる社会を築いてまいります。

 若者の雇用、労働環境についてのお尋ねがありました。

 若者は、我が国の将来を担う重要な人材であり、その可能性を最大限発揮できる環境を整備していくことが重要であります。

 このため、若者の安定就労やフリーター等の正規雇用に向けた取り組みを進めるとともに、総合的な若者雇用対策について、法的整備を含め検討し、次期通常国会への法案提出を目指してまいります。

 また、働き過ぎの改善に向け、企業に対する監督指導等の強化を図るとともに、長時間労働の抑制、有給休暇の取得促進策等について関係審議会等で検討中であり、多様で柔軟な働き方の推進とあわせ、ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組んでまいります。

 これらの取り組みを通じ、若者が将来に夢や希望を抱き、チャレンジできるようにしてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 中野洋昌議員から、三点御質問を頂戴いたしました。

 派遣労働の位置づけについてのお尋ねがまずございました。

 現行制度では、業務による区分に基づき、二十六業務以外の業務に係る労働者派遣については、臨時的、一時的な業務に限ることとして、期間制限を設けてきました。

 今回の改正案では、業務にかかわらず、派遣労働を臨時的、一時的なものと位置づけることを原則とし、新たに、個人単位の期間制限と事業所単位の期間制限という二つの期間制限を設けることとしております。

 二点目は、常用代替防止についてのお尋ねでございました。

 派遣先と労働者の間に雇用関係がない派遣労働については、派遣先において、正社員から派遣労働者への置きかえを防ぐことが課題とされてまいりました。

 今回の労働者派遣法改正案においても、このような常用代替防止という考え方を維持することとしております。

 具体的には、同じ事業所における継続的な派遣労働者の受け入れについて、三年という期間制限を課し、三年を超えて派遣労働者を受け入れようとする場合には、過半数労働組合等からの意見聴取を義務づけることとしております。さらに、過半数組合等が反対意見を表明した場合には、派遣先に対応方針等を説明する義務を新たに課すことで、常用代替防止を図るための手続の実効性を担保することとしております。

 三点目は、派遣労働者を初めとする非正規雇用労働者のキャリアアップについてでございました。

 今回の改正法案では、派遣会社に対し、キャリアコンサルティングや計画的な教育訓練を新たに義務づけることとしております。こうしたキャリアアップ措置の効果については、施行後の状況を勘案しながら、実効性の担保等についても十分留意をしてまいります。

 これに加え、派遣労働者の正社員化や人材育成を推し進めるキャリアアップ助成金の拡充に向けて検討を進めており、非正規雇用労働者の正社員化や人材育成に取り組む企業に対する支援を一層推進してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、宮沢隆仁君。

    〔宮沢隆仁君登壇〕

宮沢隆仁君 内閣提出の労働者派遣法改正法案に関し、次世代の党を代表して質問いたします。(拍手)

 法案の質問に先立ち、通告はしていませんが、安倍総理の御所見を伺いたいことがあります。

 私たち次世代の党は、国政に係る重要な審議を進めるべきと考え、疑惑を持たれた大臣らについては、政治倫理審査会等でみずから説明するべきと考えます。

 疑惑を持たれた大臣については、安倍総理から、政倫審への申し出を指示、指導すべきと思いますが、安倍総理の御所見をお伺いできれば幸いであります。

 それでは、質問に入ります。

 今や、労働者派遣制度は、労働力需給調整システムとして社会に定着しています。国内における五千二百万人を超える雇用者のうち、約三分の一を非正規雇用労働者が占め、その大半はパート、アルバイトなどの直接雇用の労働者で占められており、間接雇用である派遣労働者は、平成二十五年で百十六万人、その割合は、雇用者の二・二%、非正規雇用労働者の六・一%にとどまっています。

 派遣労働者がふえることは悪であるかのような意見もありますが、労働に対する価値観はさまざまであり、派遣という働き方を選択する人々もいるはずです。さらに、会社の人事管理手法は、それぞれの会社によって異なり、景気にも左右されます。

 このような状況の中、国家として、何のために派遣労働を認めるのか、労働市場政策として派遣労働をどのように位置づけるのか、派遣労働の基本哲学をお尋ねします。

 過去、労働者派遣法は、社会情勢の変化に応じて規制強化と規制緩和の間を揺れ動くことから、政権交代を象徴する法律でありました。

 改正案は、常用代替防止目的を基本的に維持することを強調していますが、その実質的内容は、派遣先の直用労働者の利益を重視する規制から、派遣労働者個人の就労条件に着目した労働法的な規制へと、基本思想の転換があると言えます。

 労働条件の価値判断については、原則として、主たる当事者である派遣労働者及び派遣先直用労働者の選択に委ねるべきであって、国家が一律硬直的な規制を課すような事柄ではないと思われます。

 以上の点を踏まえ、このたびの労働者派遣法改正案が、規制強化を目指す法案であるのか、規制緩和を目指す法案であるのか、同法改正に当たっての基本的考え方をお尋ねします。

 次に、同一労働同一賃金制度についてお尋ねします。

 ILO百七十五号条約など国際的基準では、同一労働同一賃金という原則があり、派遣労働者の賃金等の待遇を確保するための仕組みとして欧州で採用されています。我が国においても、派遣労働の普及に伴い、同一労働同一賃金制度を導入すべきという意見があります。

 確かに、欧州諸国では企業を超えた職種別賃金が普及しているのに対して、我が国では確立されておらず、正規雇用労働者の待遇は、企業の内部労働市場で決定されています。それも、勤続年数に応じて熟練度や能力、責任が高まるという仮定に基づく年功序列的な職能資格給が一般的です。

 一方、派遣労働者は外部労働市場における賃金を反映して待遇が決定されることが多いことから、原則として職務内容とその成果に基づく職務給に転換することにより、待遇の改善を図るべきと考えます。

 例えば、手術という職務内容が同一の労働の場合、研修医とベテラン外科医の間で成果に差があるならば、職務内容とその成果に基づく職務給に転換することによって、真の意味での同一労働同一賃金制度を実現することができます。

 我が国では、勤続年数、潜在能力、責任の度合いなどを勘案した年功序列的な職能資格給がこれまで広く採用されてきましたが、職務内容とその成果を客観的に測定する具体的方法論が確立されている以上、原則として職務給に転換し、派遣労働者も含め、真の意味での同一労働同一賃金制度を実現すべきと考えます。

 次に、技術者派遣事業の人材サービス市場における業界再編による影響についてお尋ねします。

 一般労働者派遣には、一事業所当たり、基準資産二千万円以上、事業資金千五百万円以上といった許可規定があります。

 新制度では、労働者の安定雇用を重視し、無期雇用の派遣技術者は三年の期間制限を受けないといった優遇措置を設け、無期雇用の派遣技術者を多く抱える企業を優良事業者とみなす傾向が強まる傾向にあります。

 特定労働者派遣の廃止に伴う許可制への一本化により、派遣業界への規制強化となり、企業が受け入れている技術者の派遣元が事業を継続できなくなることによる弊害が懸念されますが、どのようにお考えでしょうか。

 以上、私の質問はこれで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 宮沢隆仁議員にお答えをいたします。

 政治資金については、個々の政治家がみずから説明責任を果たしていくべきものと考えております。

 派遣労働の基本哲学についてお尋ねがありました。

 労働者派遣制度は、みずからの知識等を生かし、希望する時間や場所で就業したい労働者側のニーズと、人材を迅速的確に確保したい企業側のニーズといった労使双方のニーズに対応し、労働力需給調整システムの一つとして役割を果たしてきました。こうした機能は、今後の我が国の労働市場においても重要な役割を果たすことが期待されます。

 他方、雇用の安定やキャリア形成が図られにくいという課題があることから、今回の改正案では、派遣会社に計画的な教育訓練を義務づけること等により、派遣労働者のキャリアアップを支援することとしています。

 これらの措置を通じ、派遣労働者の一層の雇用の安定と保護を図りつつ、労働者派遣制度が適切に運用されるよう努めてまいります。

 労働者派遣法改正の考え方についてのお尋ねがありました。

 今回の改正案は、派遣会社に対し、計画的な教育訓練を新たに義務づけるなど、派遣労働者のキャリアアップを支援するとともに、派遣期間が満了した場合には、雇用安定措置を義務づけることにより、派遣労働者の雇用の安定を図るものであります。

 また、派遣先に対し、賃金等の面で責任を強化すること等により、派遣先の労働者との均衡待遇の推進等を図ることとしております。

 今回の改正案は、規制緩和や規制強化自体を目的として行うものではなく、派遣労働者のキャリアアップの支援や雇用の安定等を図ることを目的として、必要な制度の見直しを行うものであります。

 同一労働同一賃金についてお尋ねがありました。

 同一労働をしていれば同一賃金が保障されるという仕組みをつくっていくことは、一つの重要な考え方であると考えています。

 他方、能力や責任の大きさなどさまざまな要素を考慮して労働者の処遇が決定されることが一般的である我が国の労働市場においては、すぐさまこうした仕組みを導入するには、乗り越えるべき課題があります。

 また、派遣労働者の場合、派遣先のどの労働者と比較するかといった課題もあります。

 このため、まずは個々の事情に応じた均衡待遇を推進していくことが重要であると認識しており、今回の改正案において、賃金等の面で派遣先の責任を強化するなど、均衡待遇を一層推進することとしております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 宮沢議員から二問いただいたと思います。

 特定労働者派遣事業を廃止し、一律許可制となることについてのお尋ねでございます。

 特定労働者派遣事業の中には有期雇用の者が多く含まれていることや、一般労働者派遣事業と比較して行政処分の件数が多いこと等の問題があることから、今回の法律案では、全ての派遣事業を許可制とすることとしたところでございます。

 他方、円滑な移行を図るために三年の経過措置を設けるとともに、小規模派遣元事業主に対しては暫定的な配慮措置を設けることとしております。

 行政としても、円滑な移行が図られるよう、丁寧な相談等の支援を行うこととしてまいります。

 派遣会社の集約化による技術者単価上昇の懸念についてのお尋ねがございました。

 今回の法律案においては、有期雇用の者が多く含まれているような事業運営に問題のある一部の特定労働者派遣事業については、許可要件を満たせず、その結果、派遣会社の集約化は進む可能性はあるものと考えております。

 一方で、無期雇用の機会を拡大させた派遣会社は、より安定して働けるようになることから優秀な派遣労働者を集めることができるようになり、その結果、技術者単価、ひいては技術者の賃金も上昇する可能性はあるものの、長期的には、派遣先及び派遣会社はともにその事業に好影響があるものと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、中島克仁君。

    〔中島克仁君登壇〕

中島克仁君 みんなの党の中島克仁です。

 私は、みんなの党を代表して、ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 みんなの党は、雇用の多様性を確保することを掲げており、我が党が目指す雇用のあるべき姿は、国民一人一人がみずからのライフステージに合わせて働き方を選べる雇用制度の構築です。

 そういった観点から、本法案に対して我々は真摯に向き合い、丁寧に議論するつもりでありますが、二閣僚の辞任に伴う厚生労働委員長の突然の交代、審議日程のおくれに、政府がこの重要な法案に対して真剣に取り組もうとしているのか、甚だ疑問であります。

 一連の経緯に抗議をし、質問に入ります。

 我が国において、労働力の供給構造が大きく変わり、全員参加型の社会を実現していくことが、経済的、また個人の自己実現といった観点からも重要となる中で、派遣労働についても、もはや、非正規という言葉で一くくりに捉えて規制していくのでは、現状にそぐわなくなってきております。

 肝心なことは、正社員になりたい方については、そうなれるように支援する、あわせて、派遣という雇用形態で働く方についても、より安定的に働き続けられる道が開かれ、適切な処遇とキャリアアップの機会が得られるようにすることです。

 そのためには、雇用形態の分野でも、既得権益を見直し、より公平でフラットな労働市場を目指していく努力が必要であります。

 今回の労働者派遣法の改正が、雇用政策全体の中でどのような位置づけを持ち、これからの日本の雇用のあり方をどうしようとしているのか、派遣労働を望む人にとってよりよい制度になるのかどうか、総理が描く雇用のグランドデザインをお示しいただくとともに、派遣労働の方向性についてお尋ねをいたします。

 派遣労働は、間接雇用であるために、直接雇用の非正規労働者と比較して、雇用の不安定さは構造的な問題であるとも言えます。逆に、雇用の安定性を強調すると、需給調整機能を弱めることにもなり、矛盾が生じます。

 労働者派遣制度という需給調整機能にすぐれた制度と派遣労働者の雇用の安定を今回の改正案でどのようにバランスをとっているのか、厚生労働大臣にお尋ねをいたします。

 また、今回の改正の趣旨は、派遣労働の固定化や常用代替が進むことなく、多様な働き方の中でその選択肢がふえるという理解でよいのかどうか、厚生労働大臣の御見解をお尋ねいたします。

 同時に、多様な働き方が認められたとしても、そこに賃金や待遇の格差が生じることは決して是とはいたしません。正社員と同等の職務をこなす派遣社員には、同一価値労働同一待遇の原則が適用されなければなりません。

 今回の改正では、派遣元は、均衡を考慮した待遇の確保の際に配慮した内容を本人の求めに応じて説明する義務が追加されますが、これで本当に十分なのか、厚生労働大臣にお尋ねをいたします。

 また、派遣先の労働者と派遣労働者の均等待遇を目指すという観点から、今回の改正案ではどのようなメカニズムを組み込もうとしているのか、派遣元、派遣先それぞれに課そうとする義務内容について説明を求めます。

 派遣労働のみならず、いわゆる非正規雇用、さらには正規雇用の方々においても、同一労働同一賃金の確立がされているとは言えない状況です。ブラック企業対策においても重要な観点です。

 正規、非正規にかかわらず、労働市場における同一労働同一賃金原則の確立、実現の必要性について、総理の見解を求めます。

 派遣労働者を含め、いわゆる非正規労働者については、事業主による能力開発の機会付与が正社員と比べて少なく、その是正に取り組むことが必要です。派遣労働者がその能力を武器に、希望すれば正社員として活躍していく、そうしたダイナミックな労働市場を構築するためには、国による能力開発支援が不可欠です。

 今回の改正で、国としてどれだけの能力開発支援を行うつもりなのか、総理にお尋ねをいたします。

 最後に、労働者派遣の期間制限の見直しとともに、正社員化の促進措置についてお尋ねをいたします。

 現行制度では、労働者派遣の期間について、業務ごとに、原則一年、最長三年の制限を設けております。

 派遣労働がそのバランスの支点をどこに見出すかについては、労働市場の現状、将来を見据えた上で、その都度検討していく必要があり、派遣労働者の方が、みずからの希望に応じ、そのいずれをも追求できるような制度を構築することを目指すべきと考えます。

 そこで、派遣先の組織ごとに、派遣労働者単位で三年間の期間制限とする、無期雇用の派遣労働者については期間制限の対象外とするという新たな期間制限措置について、現行制度との比較において、派遣労働者としての、より安定的な雇用機会や能力発揮に資する内容となっているとお考えなのか、厚生労働大臣の明確な答弁を求めます。

 また、正社員として働きたいという声に十分応える内容となっているかも、重要な点です。

 期間制限に達した派遣労働者の方について、改正案に盛り込まれている、派遣先への直接雇用の依頼、新たな派遣先の提供、それも、現在よりも悪条件の派遣先を提供されても義務を果たしたことになるのかなどが懸念されるところです。

 この不安を取り除くどのような雇用安定措置を設けようと考えているのか、明確な説明を求め、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 中島克仁議員にお答えをいたします。

 雇用政策と派遣労働の方向性についてお尋ねがありました。

 安倍内閣では、一人一人がそれぞれのライフスタイルや希望に応じ社会で活躍の場を見出せるよう、柔軟で多様な働き方が可能となることを目指しており、労働者派遣制度の見直しも、その実現に向けた重要な取り組みの一つと考えています。

 このため、今般の改正案においては、みずからの働き方として派遣を積極的に選択している派遣労働者については、その待遇の改善等を図るとともに、正社員を希望する派遣労働者については、正社員への道が開かれるようにすることにより、全ての人が生きがいを持って安心して働くことができる社会を築いてまいります。

 同一労働同一賃金についてお尋ねがありました。

 同一労働をしていれば同一賃金が保障されるという仕組みをつくっていくことは、一つの重要な考え方であると考えています。

 他方、能力や責任の大きさなどさまざまな要素を考慮して労働者の処遇が決定されることが一般的である我が国の労働市場においては、すぐさまこうした仕組みを導入することは、乗り越えるべき課題があります。

 また、派遣労働者の場合、派遣先のどの労働者と比較するかといった問題もあります。

 このため、まずは個々の事情に応じた均衡待遇を推進していくことが重要であると認識しており、今回の改正案において、賃金等の面で派遣先の責任を強化するなど、均衡待遇を一層推進することとしております。

 能力開発支援についてお尋ねがありました。

 派遣労働者については、職業能力形成の機会が乏しいといった課題があります。働く人の希望に応じたキャリアアップを図る環境を整備していくことが重要であると考えます。

 このため、改正案では、派遣会社に対し、派遣期間等を通じ、計画的な教育訓練や希望者へのキャリアコンサルティングを新たに義務づけること等により、派遣労働者のキャリアアップを支援することとしています。

 これに加え、キャリアアップ助成金等の支援により、正社員を希望する方については、正社員への道が開かれるよう支援に努めてまいります。

 これらの措置を通じて、派遣労働者の能力開発支援を図ることにより、全ての人々が生きがいを持って安心して働くことができる社会を築いてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 中島克仁議員から六問頂戴をいたしました。

 まず、労働者派遣の需給調整機能と雇用の安定のバランスについてのお尋ねでございます。

 労働者派遣制度については、労働力の迅速かつ的確な需給調整という機能を担ってきた一方で、派遣労働者の雇用の安定が図られにくいという課題が指摘されてまいりました。

 今回の改正では、派遣期間の制限を、働く人に着目した、よりわかりやすい仕組みとすることにより、需給調整機能としての役割を発揮させつつ、派遣期間が満了した場合には、正社員になったり、別の会社等で働き続けることができるようにする措置を新たに義務づけることにより、派遣労働者の雇用の安定を図ることといたしております。

 今回の法律案の趣旨についてのお尋ねがございました。

 今回の法律案においては、働く人に着目した、よりわかりやすい制度にするため、これまでの業務単位の期間制限を、個人単位の期間制限及び派遣先の事業所単位の期間制限の二つに見直すことで、派遣労働への固定化と常用代替の防止を図ることとしております。

 また、派遣元に派遣労働者の希望を踏まえたキャリアコンサルティングや計画的な教育訓練の実施が新たに義務づけられるほか、派遣先も正社員化推進措置を講ずることとなります。

 そのため、派遣労働を積極的に選択している者については待遇の改善等が図られるとともに、正社員を希望する者については正社員への道が開かれるようになることから、多様な働き方の選択肢の増加に資するものと考えております。

 次に、均衡待遇の推進についてのお尋ねがございました。

 職務に対応した賃金体系が普及しておらず、能力、責任や配置転換の範囲などの要素によって賃金が決定される職能給が一般的である我が国の労働市場においては、すぐさま均等待遇の仕組みを導入するには、乗り越えるべき課題がございます。

 そのため、まずは個々の事情に応じた均衡待遇を推進していくことが重要であると認識しており、今回の労働者派遣法改正により、派遣元に対して、均衡待遇の確保の際に考慮した内容の説明を義務づけるほか、派遣先には、新たに、賃金水準に関する情報提供、教育訓練、福利厚生施設等の利用に関する配慮義務を設けること等により、派遣労働者と派遣先の労働者との均衡待遇をより一層強化しております。

 次に、法案において派遣元及び派遣先に課される義務についてのお尋ねがございました。

 我が国の労働市場においては、直ちに均等待遇の仕組みを導入することは困難であることから、まずは個々の事情に応じた均衡待遇を推進していくことが重要であるとの認識を持っており、今回の労働者派遣法改正により、派遣先に対して、賃金水準に関する情報提供、教育訓練、福利厚生施設の利用に関し配慮義務を新たに設けるとともに、派遣元に対して、派遣労働者の求めに応じて、均衡待遇確保の際に考慮した内容の説明を新たに義務づけることとしております。

 これらの措置を通じて、派遣労働者の処遇の改善が図られるよう努力してまいりたいと思います。

 次に、新たな期間制限の効果についてのお尋ねがありました。

 今回の法律案では、働く人に着目した、よりわかりやすい制度にするため、有期雇用の派遣労働者については、同一の職場への派遣に三年の期間制限を設けることで、派遣労働への固定化の防止を図るとともに、期間制限の上限に達する時点で派遣会社に雇用安定化措置を実施することを新たに法的に義務づけることとしております。

 一方で、無期雇用の派遣労働者は、有期雇用に比べ雇用が安定しており、キャリアアップが比較的図られやすいことから、期間制限の対象から除外しております。

 また、有期雇用、無期雇用を問わず、派遣会社には、計画的な教育訓練や、派遣労働者の希望に応じたキャリアコンサルティングの実施といったキャリアアップ措置を新たに法的に義務づけることとしており、能力開発にも資するものであると考えております。

 次に、雇用安定措置についてのお尋ねがございました。

 今回の改正により派遣会社に新たに義務づけられる雇用安定措置の趣旨は、派遣労働者個人単位の期間制限が派遣労働者の就業の機会に悪影響を与えないようにするというものでございます。

 どのような雇用安定措置をとるかについては、対象となる派遣労働者のそれ以前の就業条件等を踏まえ、合理的なものとなるよう、雇用責任を有する派遣会社において適切に判断していただくものでございます。

 このような合理的な理由もなく、単に現在よりも条件の劣る派遣先を提供した場合には、雇用安定措置を履行したとは認められません。

 厚生労働省としては、制度の周知や指導監督の実施などを通じて、雇用安定措置の実効性の確保に万全を期してまいりたいと思います。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次の質疑者、高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、労働者派遣法改正案に対し、質問します。(拍手)

 安倍総理は、所信表明演説で、大胆な規制改革なくして成長戦略の成功はありませんと述べ、雇用を、医療や農業と並べて、岩盤のようにかたい規制と強調しました。

 その成長戦略では、失業なき労働移動や、多様な正社員、いわゆる残業代ゼロ制度と呼ぶべき新たな労働時間制度など、労働法制の緩和が検討されています。

 岩盤どころか、そもそも日本は、一日八時間労働を定めたILO第一号条約を初め、労働時間に関する十八本のILO条約を批准すらしていません。

 安倍総理が目指す、世界で一番企業が活動しやすい国とは、今以上に労働者が大切にされない国なのではありませんか。

 職業安定法四十四条は、労働者供給事業を禁止しています。中間搾取を禁止する労働基準法第六条と相まって、間接雇用を禁止し、直接雇用を原則としているのです。それは、戦前の人夫供給業のような中間搾取や強制労働を許さないための規定であり、戦後の労働法の出発点であります。

 一九八五年の労働者派遣法成立の際、我が党は、この直接雇用の原則に風穴をあけるものと厳しく批判しました。しかし、政府は、常用代替を防止するため、業務や期間を限定した上で、労働者供給事業の一部をあくまでも例外的に認めるものと説明してきました。総理にこうした認識はありますか。

 派遣法は、一九九九年に原則自由化、二〇〇三年に製造業派遣解禁、専門二十六業務の期間制限廃止など、たび重なる規制緩和の歴史をたどります。

 二〇〇八年のリーマン・ショックでは、派遣労働は、真っ先に首を切られる究極の不安定雇用であることが明らかになりました。

 その後、民主党政権が誕生し、労働者派遣法は、初めて規制強化に踏み出すかに見えました。しかし、二〇一二年、現行法成立時には、自公両党の修正を受け入れ、骨抜きにした上、唯一残った直接雇用申し込みみなし規定は、いまだ施行されないまま、今回の改正案によって葬り去られようとしているのです。

 今回の法案の最大の問題点は、従来政府が述べてきた臨時的、一時的という派遣労働の原則を覆すものだということです。

 派遣元に無期雇用されていれば、期間制限をなくすと言います。

 派遣先の仕事がなくなれば、契約解除という形で、紙切れ一枚で解雇される。まるで物のように使い捨てられるのが派遣労働の本質です。二〇〇八年、派遣切りが横行した際には、解雇された派遣労働者の九割が無期雇用派遣でした。これでも、派遣元に無期雇用されていれば雇用が安定していると言えるのですか。

 法案は、専門二十六業務を廃止するとしています。

 専門二十六業務の優先雇用義務は、三年を超えて働いていれば、派遣先の業務を十分こなせる能力があると認められ、直接雇用で雇用の安定を図るというものでした。しかし、この規定は二〇一二年改正で削除され、本法案にもありません。

 専門業務といいながら、一般業務と変わらない仕事をさせて期間制限を免れていた実態が数多くありました。この現状を追認するということですか。今後は専門業務を区別しないというなら、これまで専門業務として三年を超えて働いてきた派遣労働者は、派遣先に優先的に雇用されるべきではありませんか。答弁を求めます。

 事業所の派遣受け入れ可能期間は三年としますが、過半数労働組合等からの意見聴取をすれば、際限なく延長できます。

 労働組合がある事業所は、二割未満にすぎません。労働組合のかわりに過半数代表者が選挙で選出されているのは一割にも届かず、四割近くが会社の指名や親睦会の代表というのが実態です。これで歯どめになるでしょうか。

 さらに、派遣労働者個人の期間制限は、同じ職場で働ける期間を三年とするものの、別の課に移せば同じ派遣労働者を使うことができます。これは常用代替そのものです。

 総理は、生涯派遣との批判はレッテル張りだと答弁されましたが、まさに生涯派遣そのものではありませんか。

 次に、総理は、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップを支援すると強調しますが、いずれも配慮義務、努力義務にとどまり、実効性は期待できません。派遣労働者の雇用主は派遣元であり、派遣先は派遣労働者を特定できないはずです。

 ところが、今回、派遣先が派遣労働者の働きぶりなどの情報を派遣元に提供するとの規定が盛り込まれました。これは、派遣先による人事評価であり、労働者を選別することも可能になるのではありませんか。結局、正社員化どころか、有能で安上がりの派遣労働者をずっと使いたい使用者側の身勝手な論理にほかなりません。

 課題とされてきた均等待遇原則の明記は、今回も盛り込まれませんでした。派遣制度を持つヨーロッパ諸国は、均等待遇が当たり前の原則です。

 総理は女性の活躍を叫んでいますが、やるべきことは、有期でもパートでも、女性がみずからに最もふさわしい働き方を選び取れるよう、均等待遇原則、派遣先の団体交渉応諾義務など、派遣労働者の保護を強化する規定を法定化することであります。

 今、労働者派遣法の改正を初めとする労働法制の改悪に反対する地方議会の意見書が三百七十六にも達するなど、雇用のルール守れの声が大きく広がっています。

 労働法制は、人間らしい働き方を保障するための最低限のルールです。労働者に生涯派遣を押しつけ、不安定雇用と貧困を広げる派遣法改悪案は廃案しかありません。

 以上で質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 高橋千鶴子議員にお答えをいたします。

 成長戦略における労働法制等の見直しについてのお尋ねがありました。

 現在進めている雇用、労働に関する改革については、いずれも、個人がその能力を発揮し、経済成長の担い手として活躍できるようにすることを目指して取り組んでいくこととしています。

 安倍内閣としては、全ての人々が生きがいを持って働くことができる環境をつくっていくという一貫した方針のもと、これらの取り組みを進めているところであり、今以上に労働者が大切にされない国になるとの御指摘は当たりません。

 労働者派遣法と労働者供給事業禁止の原則との関係についてのお尋ねがありました。

 我が国の労働者派遣制度は、昭和六十年、職業安定法で禁止されている労働者供給事業から分離する形で、常用労働者との代替のおそれが少ない業務に限り、制度化されたものです。

 労働者派遣法の制定以来、こうした考え方は維持されており、今回の改正案においても、同じ事業所における継続的な派遣労働者の受け入れについて、三年という期間制限を課すこととし、三年を超えて派遣労働者を受け入れようとする場合には、過半数労働組合等からの意見聴取を義務づけることにより、派遣先で正社員が派遣労働者に代替されることを防ぐこととしています。

 無期雇用の派遣労働者の雇用についてお尋ねがありました。

 無期雇用の派遣労働者は、有期雇用のように雇いどめの対象とならないことから、有期雇用に比べて雇用が安定していると言えます。

 また、今回の改正案では、無期雇用の派遣労働者について、長期的なキャリア形成を視野に入れた計画的な教育訓練等を義務づけるほか、派遣会社が派遣契約の終了のみをもって解雇することがないよう許可基準に示すこととしており、これらにより、雇用の安定を図ることとしております。

 なお、厚生労働省の調査によれば、平成二十年において、解雇された派遣労働者の多くは有期雇用であったと認識しております。

 専門業務に従事する派遣労働者についてのお尋ねがありました。

 今回の改正案では、わかりやすい制度にする観点から、派遣受け入れ期間に関する現行の制限を見直し、全ての業務を対象として、派遣労働者ごとの個人単位で、同じ職場への派遣は三年を上限とするなどの期間制限を新たに課すこととしています。

 この見直しにより、現行では制限対象外とされる二十六業務が新たに制限対象となりますが、個々の労働者の雇用が途切れないよう、派遣会社に対して新たに雇用安定措置を義務づけることとしています。

 さらに、今後、期間制限を超えて派遣労働者を受け入れる派遣先については、派遣労働者に労働契約の申し込みをしたものとみなすこととしており、これにより、派遣労働者の保護はより強化されることになります。

 派遣労働者個人の期間制限についてお尋ねがありました。

 一般に、派遣労働という働き方には、雇用の安定やキャリア形成が図られにくい面があり、働く人の希望に応じ、正社員化を含むキャリアアップを図ることが重要であると考えています。

 このため、今回の改正案では、派遣会社に対し、計画的な教育訓練等を新たに義務づけるほか、派遣期間が満了した場合の雇用安定措置を義務づけるなど、派遣就労への固定化を防ぐための措置を強化するとともに、派遣先に対しても、派遣労働者への正社員募集情報の提供を義務づけることとしています。

 これに加え、派遣先において派遣労働者を正社員として雇用する場合のキャリアアップ助成金の活用等を進めることとしています。

 これらの取り組みは、正社員を希望している派遣労働者について正社員への道が開かれるようにするものであり、生涯派遣との御指摘は当たりません。

 派遣労働者の保護についてお尋ねがありました。

 同一労働をしていれば同一賃金が保障されるという仕組みをつくっていくことは、一つの重要な考え方であると考えています。

 他方、能力や責任の大きさなどさまざまな要素を考慮して労働者の処遇が決定されることが一般的である我が国の労働市場においては、すぐさまこうした仕組みを導入するには、乗り越えるべき課題があります。

 また、派遣労働者の場合、派遣先のどの労働者と比較するかといった課題もあります。

 このため、まずは個々の事情に応じた均衡待遇を推進していくことが重要であると認識しており、今回の改正案において、賃金等の面で派遣先の責任を強化するなど、均衡待遇を一層推進することとしております。

 また、派遣先の団体交渉応諾義務については、一律に定めるのではなく、個別の事案ごとに判断されるべきものと考えております。

 安倍内閣としては、今回の改正により、全ての人々が生きがいを持って安心して働くことができる社会を築いてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 高橋千鶴子議員にお答えをいたします。

 まず、過半数労働組合等からの意見聴取の実効性についてのお尋ねがございました。

 今回の改正案では、過半数組合がない事業所においては、派遣先は、労働者の過半数を代表する者を選出し、その者に対して意見聴取を行うこととしております。

 この過半数代表者は、管理監督者以外の者とし、投票、挙手等の民主的な方法による手続によって選出された者とすること等により、過半数代表者に対する意見聴取の透明性等を担保することとしております。

 また、意見聴取に際しては、反対意見に対して対応方針を説明すること、意見聴取の記録を事業所内に周知等すること等を派遣先に新たに法的に義務づけることとしており、これらにより、意見聴取の実効性が確保できるものと考えております。

 次に、派遣先による情報提供についてのお尋ねがございました。

 今回の改正によりまして、派遣労働者の希望に応じたキャリアアップを図ることができる環境を整備するため、派遣元事業主にキャリアアップ措置を義務づけることとしております。

 これらの措置が適切に講じられるようにするため、派遣先は、派遣元事業主の求めに応じ、派遣労働者の業務の遂行状況等の情報提供に努めることとしているものであり、特定目的行為に当たるものではなく、また、派遣先が人事評価を行うことにもなりません。

 特定目的行為については、現在も認められておらず、改正後も同様に対応してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 次に、玉城デニー君。

    〔玉城デニー君登壇〕

玉城デニー君 生活の党の玉城デニーです。

 私は、ただいま提案のありました同法律案について、生活の党を代表して質問いたします。(拍手)

 内閣府が本年二月に発表している報告によりますと、現在の我が国における総人口は、二〇一二年の一億二千七百五十二万人をピークに減少が続くとされ、それに合わせた合計特殊出生率は、二〇一二年で一・四一です。二〇三〇年に合計特殊出生率が二・一程度に回復した場合においてもこのまま人口減少が続くとする推計が載っています。少子化対策が急務であり、人口減少に対応した経済社会づくりが必要との記述もされています。

 総務省が作成した生産年齢人口と高齢化のグラフを見ても、十五歳から六十四歳までの生産年齢人口の割合は大幅に減少する一方で、ゼロ歳から十四歳人口は、二〇四〇年ごろには約一千万人、人口全体の六%弱となり、減少傾向は、全体の人口減少に比例して緩やかに下がり続けていくと推計されています。さらに、二〇六〇年には六十五歳以上人口が全体の四〇%に達すると記述され、少子化と超高齢社会の将来不安は、どのデータを見ても、簡単に払拭できる状況ではないことが明らかとなっています。

 冒頭でも紹介した、人口減少に対応した経済社会づくりへの根本的な対策とは、安定した収入があって将来への人生設計が描けることであり、最小限の社会基盤である家庭が営めることにあるのではないでしょうか。

 安定雇用、安定収入という就労環境が整っていることは当然として、さらに、技術、能力に応じた高い収入、希望するキャリアへの可能なステップアップなどを働きながら実感できているならば、結婚も希望できる人生設計への期待が湧き、子供を産んで育てるという社会基盤の最小限の形が、それぞれに望まれるように実現できるのです。

 今回の改正法だけでなく、労働法制全体の改善は、誰のために、何のためにという根本的な目的、目標を明確にすることが重要であり、少子化に歯どめをかける手段にしていくべきです。

 このような生活者の視点を踏まえつつ、質問をさせていただきます。

 今回提出されたいわゆる労働者派遣法改正案は、まず、働く労働者側のどのような立場や視点に立って行われるものであるか、働く側の環境をどのように安定させることになるのか、そして、深刻な状況にある我が国の少子化対策へどのように貢献しようとするものであるか、安倍総理の見解を伺います。

 今回の法案では、派遣労働者が派遣先の同じ職場で働ける期間を三年までとする個人単位の期間制限が設けられました。

 そもそも派遣労働は、臨時的、一時的、専門的な働き方として定められたものですが、今回の改正案では、そこで雇用する人、派遣される労働者を入れかえれば、さらに三年間の派遣労働者を受け入れることが可能となっています。

 この点を見る限り、本改正法案は、働く側の利点ではなく、むしろ使用する側に雇用調整がききやすくなるとしか思えません。その派遣先では、人さえかえれば永続的に派遣労働を受け入れられることになるので、使う側にとって実に都合のいい条件が与えられてしまうのではありませんか。見解を伺います。

 法案では、これまで三年を超える派遣が可能だった特定二十六業種についても、その特例を廃止して、他の業種と同様に三年間の期限をつけることになっています。

 その廃止する理由として、わかりにくい等の課題があることと、かなり抽象的な理由を挙げていますが、なぜ当初は二十六業種を特例としたのか、そして、その特例二十六業種を改正法案でなぜ期間制限なしの特例を廃止することにしたのか、説明をお願いいたします。

 この特例二十六業種にある、期間制限なしとする長期にわたって働けるシステムこそ、働く側にとっての基本的な安定的雇用環境なのであり、その職場におけるさまざまな経験則の積み重ねや、専門分野のさらなる能力の向上にみずから取り組むといった努力姿勢などを鑑みれば、派遣先企業へ貢献する上でも、十分に有意義な雇用条件となっていたはずです。

 しかし、どの業種も一切区分せず一律に派遣期限を設定するということは、専門的あるいは相当に高い技術を有する労働者にとっては、雇用環境の悪化でしかありません。通訳やプログラミングなどの高い技能を持っていても、処遇改善につながるどころか、安心して働けないということになってしまったら、全体のモチベーションが低下するだけでなく、専門的技術者の教育、育成、人材確保など、将来へわたるさまざまな政策の取り組みへも大きな影響を及ぼしかねません。

 そのような影響や懸念をどのように捉えているのか、見解を伺います。

 そして、この改正法案のどの部分において同一労働同一賃金の原則、均等待遇の原則の実効性を担保しているのか、明確にお答えいただきたいと思います。

 持続的な経済成長を実現するためには、国内総生産の六割を占める個人消費をいかに高めるかが鍵となります。そのためには、安定した雇用の拡大によって国民所得をふやしていく必要があります。

 しかし、安倍政権は、既に四割近い非正規雇用をさらに増大させようとしており、国民の雇用不安の拡大、所得の減少、生活の不安定を広げ、内需をますます冷え込ませ、成長実現どころではないというのが実態です。

 現下の経済問題を解決するには、安倍政権が推進しようとする非正規社員をふやす政策を抜本的に改めることです。

 我が国における深刻な少子化を救うための政治手段とは、社会へ貢献するために、安心して働き、愛情を持って家族を養い、みずからも生きがいを持って目標高く成長しようとするお一人お一人の国民を、真剣に、温かく支えていく政策に求められているのではないでしょうか。

 そのための一助となるべく、生活の党は、今般、雇用安定化対策本部を設置いたしました。労働者の生活を守るための取り組みや非正規雇用の正規化推進に向けても、野党各党の協力をお願いし、その取り組みに全力を注いでいくことを申し上げ、私の質問を終わります。

 ニフェーデービタン。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 玉城デニー議員にお答えをいたします。

 労働者派遣法改正の意義についてお尋ねがありました。

 安倍内閣としては、みずからの働き方として派遣を積極的に選択している派遣労働者については、その待遇の改善等を図るとともに、正社員を希望する派遣労働者については、正社員への道が開かれるようにすることが重要と考えています。

 このため、今回の改正案により、派遣会社と派遣先の双方において、派遣労働者のキャリアアップの支援や、正社員化と均衡待遇を推進する措置等を強化することとしています。

 安倍内閣としては、育児などで仕事から離れていた方が職場復帰のステップとして派遣を選択される場合を含め、子育てを担う世代が、生きがいを持ち、安心して働くことができる環境の整備を図ること等を通じて、少子化対策にも取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 玉城デニー議員にお答えを申し上げます。

 まず第一に、派遣先において、永続的に派遣労働が受け入れられるおそれについてのお尋ねがございました。

 派遣労働は、派遣先が雇用主責任を負わずに労働力を利用でき、派遣先の常用労働者との代替が進みやすい傾向にあるため、常用代替の防止を図る必要があります。

 現行制度では、自由化業務に期間制限を設けることで常用代替の防止を図っていますが、今回の法律案では、この業務単位の期間制限を廃止し、個人単位へと見直すとともに、派遣労働者個人の交代により派遣の受け入れが続けられることとなるため、同じ事業所での派遣労働者の受け入れを原則三年までとするものでございます。

 さらに、三年を超えて派遣労働者を受け入れようとする場合には、過半数労働組合等からの意見聴取を新たに法的に義務づけ、現場をよく知る労使の判断に委ねることにより、派遣先の正社員を派遣労働者に置きかえることに一定の歯どめがかかる効果があるものと考えております。

 次に、専門二十六業務の廃止についてのお尋ねがございました。

 現行制度では、専門的な知識や特別な雇用管理が必要な二十六業務につきまして、常用代替のおそれが少ないとの考えから、期間制限の対象外としてきました。

 しかしながら、この業務単位の期間制限については、専門性が時代とともに変化するため制度が不安定である、二十六業務に該当するかどうかわかりにくい等の課題が指摘されていると認識しております。

 このため、今回の法律案では、平成二十四年労働者派遣法改正時の国会附帯決議の考え方に基づき、現行の仕組みを廃止し、業務にかかわらず適用される共通の期間制限を設けることにより、働く人に着目した、よりわかりやすい制度とすることとしております。

 次に、専門二十六業務の廃止による影響についてのお尋ねがございました。

 現行の業務単位の期間制限につきましては、専門技術者等を長期的に育成していくことが可能であるものの、専門性が時代とともに変化するため制度が不安定である等の課題が指摘されていると認識しております。

 また、いわゆる専門二十六業務に該当する派遣労働者であっても、有期雇用派遣労働者が相当な割合存在しており、専門二十六業務であっても、雇用の安定が課題となっております。

 次に、法案における均等待遇等の担保についてのお尋ねがございました。

 職務に対応した賃金体系が普及しておらず、能力、責任や配置転換の範囲などの要素によって賃金が決定される職能給が一般的である我が国の労働市場においては、すぐさま同一労働同一賃金や均等待遇の仕組みを導入するには、乗り越えるべき課題がございます。

 そのため、まずは個々の事情に応じた均衡待遇を推進していくことが重要であると認識しており、今回の労働者派遣法改正により、派遣先に対して、賃金水準に関する情報提供、教育訓練、福利厚生施設の利用に関し配慮義務を設けるとともに、派遣元に対して、派遣労働者の求めに応じて、均衡待遇確保の際に考慮した内容の説明を義務づけることとしております。

 これらの措置を通じて、派遣労働者の処遇の改善が図られるよう努めてまいりたいと考えております。(拍手)

副議長(赤松広隆君) 大臣から、補足答弁をしたい旨の申し出があります。これを許可いたします。

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 大変失礼いたしました。

 三問目で、二十六業務の廃止による影響についてのお尋ねについて、もう少し言い足さなければいけなかったところがございましたので、言い足させていただきたいと思います。

 足す部分は、このため、今回の法律案では、働く人に着目した、よりわかりやすい期間制限に見直すとともに、無期雇用の派遣労働者を期間制限の対象外とすること等により、専門二十六業務であるかどうかにかかわらず、安定した雇用のもとに、キャリアアップ措置を講じて、長期的な観点に立った人材の育成を図ることが可能となると考えております。

 大変失礼いたしました。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       厚生労働大臣   塩崎 恭久君

       経済産業大臣   宮沢 洋一君

       環境大臣     望月 義夫君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

       厚生労働副大臣  山本 香苗君


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