衆議院

メインへスキップ



第6号 平成27年2月16日(月曜日)

会議録本文へ
平成二十七年二月十六日(月曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第四号

  平成二十七年二月十六日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 永年在職の議員河村建夫君、細田博之君、高木義明君、大畠章宏君、赤松広隆君、森英介君、山口俊一君、山本有二君、古屋圭司君、佐田玄一郎君、石原伸晃君及び中谷元君に対し、院議をもって功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)

 国務大臣の演説に対する質疑


このページのトップに戻る

    午後一時二分開議

議長(町村信孝君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 永年在職議員の表彰の件

議長(町村信孝君) お諮りいたします。

 本院議員として在職二十五年に達せられました河村建夫君、細田博之君、高木義明君、大畠章宏君、赤松広隆君、森英介君、山口俊一君、山本有二君、古屋圭司君、佐田玄一郎君、石原伸晃君及び中谷元君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。

 表彰文は議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(町村信孝君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

 これより表彰文を順次朗読いたします。

 議員河村建夫君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員細田博之君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員高木義明君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員大畠章宏君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員赤松広隆君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員森英介君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員山口俊一君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員山本有二君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員古屋圭司君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員佐田玄一郎君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員石原伸晃君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員中谷元君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

 この贈呈方は議長において取り計らいます。

    ―――――――――――――

議長(町村信孝君) この際、ただいま表彰を受けられました議員諸君の登壇を求めます。

    〔被表彰議員登壇、拍手〕

議長(町村信孝君) 表彰を受けられました議員諸君を代表して、河村建夫君から発言を求められております。これを許します。河村建夫君。

河村建夫君 このたび、院議をもちまして永年勤続表彰を受けました河村建夫でございます。

 身に余る光栄であり、平成二年初当選以来、回を重ねること九回、温かく見守り、惜しむことなく支援を寄せてくださった郷里・長州山口県の皆さんを初め、折に触れて叱咤激励を賜った全国各地の方々に深く感謝申し上げます。(拍手)

 受彰者十二人の中で最年長ということで、私が代表して御挨拶をさせていただきますが、党派を超えて、皆気持ちは一つであります。私どもは、とりわけ、二度の政権交代という貴重な体験を通じて、議会制民主政治の真髄を味わい、ひたむきに議員活動に取り組むことができました。これもひとえに先輩、同僚議員各位の御支援のたまものと改めて厚く御礼を申し上げます。

 私が山口県議四期時代以来、政治信条としてまいりましたのは、至誠通天であり、何事にも誠を尽くし、誠心誠意事に当たるということであります。

 おらが大将で知られる田中義一元首相の御子息で、十三期衆議院議員を務められた田中龍夫元文相、通産相は、私が政治上の父とも師とも仰ぐ方であります。

 引退表明される一カ月前、私を伴い、明治維新の志士を輩出した郷里・萩の松下村塾で知られる吉田松陰先生の墓参りをいたしました。言わず語らず、後継者としてのあるべき心構えを示唆されたのであります。「至誠にして動かざるもの未だこれあらざるなり」。松陰語録の白眉であります。

 私は、県会議員の父、教育者の母が協力して萩女子短大を建学した影響もあって、衆院初当選以来、教育改革には心血を注いでまいりました。自民党文教部会長、文科副大臣、衆議院文科委員長などを歴任、第二次小泉内閣で文部科学大臣を拝命いたしました。

 小泉総理から食育重視の教育改革を指示され、それは、学校栄養士が教壇に立ち、食育を教育の一環として扱う栄養教諭制度として実施されております。義務教育改革への河村プランは、教員免許更新制の導入となり、また、教育委員会制度の見直し、小中一貫教育を推進することになりました。

 その後、自民党政務調査会副会長、会長代理を務め、あらゆる分野の政策課題に取り組みました。とりわけ、麻生内閣で官房長官、拉致問題担当大臣を拝命し、内政、外交の全てにわたって、生きた政治の難しさをさまざまに体験いたしました。特に、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射、新型インフルエンザ発生への対応を通じて、危機管理体制を万全にする必要性を身にしみて痛感させられました。

 自民党選対局長、選対委員長として政権奪還の陣頭指揮をとった苦労は、むしろ政治家冥利に尽きるものかもしれません。全国を駆けめぐり、各地域の方々と対話を交わしたおかげで、現在、安倍政権のアベノミクス達成の重い責任を担う自民党地方創生実行統合本部長の使命をつつがなく果たさせていただいております。

 最後に、この二十五年間、私を含め一緒に十二名の永年表彰を受けた議員を支え、苦楽をともにしていただいた御夫人方、傍聴席の我が妻も含めでございますが、有縁の方々に深い感謝の誠をささげ、本日表彰を受けた方々とさらに全力で国家国民のために政治活動に邁進することをここにお誓いし、謝辞とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(町村信孝君) 本日表彰を受けられました他の議員諸君の挨拶につきましては、これを会議録に掲載することといたします。

    ―――――――――――――

    細田 博之君の挨拶

  本日院議をもって永年在職の表彰の栄に浴しますことを感謝いたします。

  二十五年前の平成二年二月十八日の総選挙におきまして初当選して以来、九回の総選挙を勝ち抜いてまいりました。これも地元島根県民の皆様、後援会の皆様の御支援のたまものであり、心より御礼申し上げます。また家族、親類、縁者の皆様に多大なる迷惑をかけてまいりました。感謝とともにお詫び申し上げます。

  私の父細田吉蔵は昭和三十五年に初当選以来、定数五人の島根全県区で十回当選してまいりました。大橋武夫、櫻内義雄、竹下登という偉大な先輩が現職でしたが、四人目の自由民主党議員として当選いたしました。三位ないし五位当選がほとんどでしたが不思議なことに落選は致しませんでした。

  九回目の総選挙ではわずか二百一票差で当選でした。後援会の皆様から強く若返りの要望があり、当時通産省に勤務していた私は、アメリカの首都ワシントンで石油公団事務所長をしておりましたが、私は意を決して帰国後物価対策課長を最後に、昭和六十一年に退官して父の秘書となり、父の最後の選挙を戦いました。島根県全県の後援会の皆様とお目にかかり、全国一の最高齢県であり、過疎と人口減少問題に悩む有権者の皆様が政治に期待する声がいかに大きいか実感いたしました。当時全県には高速道路が存在せず、隠岐の島にはフェリーで三時間近くかかって渡りました。秘書としての四年間は、島根県の素晴らしい点と解決すべき問題点を私に教えてくれました。

  平成二年に初当選の後、二回目の当選時の選挙で自由民主党は敗れて下野し、細川政権が誕生しました。政治改革の嵐が吹き、小選挙区比例代表並立制が実現して今日に至っております。私は以後七回の総選挙を島根第一区で当選しておりますが、途中で三区から二区に定数削減、区割りの変更が行われました。政治改革のための特別委員会で二回生の私は、七会派連立の各党を代表する閣僚一人一人に、質問をしたことを覚えております。「小選挙区制になった場合、七会派の皆さんはどうやって立候補者調整をするのか、二大政党に本当になると思うか。」答えはあいまいで、大きなお世話であるといった答弁がほとんどでした。しかし今日政党が分裂・消滅したり、少数政党ゆえに縮小してゆく現状を見ると政治制度改革の難しさを改めて実感しております。

  この二十五年間は、バブルの崩壊、石油の高騰と下落、近隣諸国の成長、リーマンショック、長期デフレ、財政の悪化と増税問題、社会保障費の増大、大規模災害等々、怒涛のごとき変化であります。

  今後とも我が国がこれらの問題を克服して、平和国家、安定成長・高福祉国家を堅持し、地方創生政策が成功して豊かな地方が実現致しますよう、努力してまいることをお誓いして御礼の御挨拶と致します。

    …………………………………

    高木 義明君の挨拶

  本日、衆議院本会議において永年在職議員の表彰の栄誉を賜りましたことは、この上ない光栄であります。これもひとえに、私を国会へ送っていただき、支えつづけていただいた地元長崎の皆様をはじめ、全国で応援していただいた皆様、先輩、同僚議員の皆様、役所、事務所スタッフの皆様のご指導とご支援のお蔭であり、心より感謝申し上げます。

  顧みれば、私の政治活動は昭和五十年四月、長崎市議会議員から始まりました。エンジニアの私が、はからずも労働組合の先輩、同僚に推され「真面目に働く者が報われる社会」の思いで未知の世界にとび込みました。市議会三期の後、長崎県議会に進み、一期途中で前任の小渕正義先生の後継者として擁立されました。平成二年二月、浅学非才を省みず、「国政刷新、活力長崎」を掲げ、激戦の旧長崎一区で初当選をさせていただきました。以来こん日まで二十五年間、多くの厳しい試練に直面してきました。

  世界では、ドイツ統一、ソ連消滅など東西冷戦構造が崩れ、湾岸戦争、同時多発テロ、EU統合、中国の抬頭など、いずれも、わが国の政治、経済に大きな影響を及ぼしました。

  国内では、バブル崩壊後の混迷、デフレ経済、格差拡大など、少子化、高齢化とあわせて国民の生活に不安を投げかけています。

  一方で、自然災害も多発しました。地元長崎県の雲仙普賢岳火砕流災害や、あの阪神淡路大震災、そして東日本大震災など、あらためて、復興と防災対策に万全を期さねばなりません。

  衆議院では、議院運営委員長、石炭対策特別委員長などを歴任し、微力ながら職責を全うできましたのは、皆様のお力添えの賜物です。

  政治改革の嵐の中で、私の所属政党は民社党から民主党に変りましたが、その目指すものは国民に「信頼される政治」であり、戦後の五十五年体制の打破と、政権交代体制の実現でした。ついに平成二十一年八月の総選挙において、国民の一票による歴史的な政権交代が起こりました。私は平成二十二年九月に文部科学大臣を拝命し「明日の国づくりは、豊かな人づくりから」の実践に取り組むことができました。今後も、未来に向い活力を発揮し、世界の人々に敬愛される日本を創るため、さらなる努力をお誓い申し上げます。

  終りに波乱万丈のわが道を共に歩んでくれた妻恵子と家族に感謝し、御礼の言葉といたします。

    …………………………………

    大畠 章宏君の挨拶

  本日、院議をもって、永年在職表彰の栄誉を賜りました事に対し、厚く御礼申し上げます。すでに旅立たれた皆さんもおられますが、熱心にご指導を頂きました諸先輩、そして、今日までご支援を頂きましたすべての皆さんに感謝申し上げます。さらに、事務所の皆さんや、今は亡き祖父母と教職の道を歩んだ両親、そして兄をはじめ親族や妻孝子そして子供たちにも心から感謝いたします。

  私は、武蔵工業大学院(現東京都市大学院)で機械工学を専攻し、一九七四年に日立製作所に入社し、当時の浜田邦雄原子力設計部長をはじめ多くの諸先輩にご指導を頂きました。さらに、一九七八年には日立労組日立支部の専従執行委員に選出され、当時の鈴木定夫委員長をはじめ多くの皆さんのご指導を頂き、二年後に原子力設計部に復職致しました。その後、働く仲間のみなさんの力強いご推挙を頂き、全ては世のため人のためと一大決心をし、一九八六年十二月十四日投票の茨城県議会議員選挙に挑戦し、当選させて頂き政治の道を歩むことになりました。その後、一九八九年十一月、城地豊司衆議院議員が急逝されたことにより、急遽、後継者として国政に挑戦することとなり、電機連合をはじめ働く仲間の皆さんや市民の皆さんのご支援を頂き、梶山静六先生や塚原俊平先生と共に一九九〇年二月の総選挙で当選させて頂きました。当時、政党は異なりましたが、梶山静六先生には、「情と理」など政治の道を教えて頂きました。

  私は「まじめに働く人が報われる公正な社会」の実現に今日まで全力を尽くして参りました。一九九〇年当時は「政治改革」が主要な政治課題となり、一九九三年の総選挙の結果、非自民の細川連立政権が誕生し、小選挙区比例代表並立制が成立しました。その後、自社さの連立による村山政権が誕生し、一九九五年通商産業政務次官に就任。また、日本国の未来のために、欧米並みに国民の選択により政権交代が出来る国にしなければと、新党を結成する決意を固め、一九九六年九月、鳩山由紀夫さんらとともに民主党を結成。さらに、一九九八年に現在の民主党が結成され、ついに二〇〇九年の総選挙で政権交代を実現することが出来ました。この中で、経済産業大臣、国土交通大臣を拝命しました。特に、二〇一一年三月十一日には、東日本大震災が発生し、国土交通省六万一千人の職員の皆さんと共に力を合わせ「国民の命と暮らしを守る」ため全力を挙げて行動しました。

  今日の世界は、「社会格差と貧困」が世界的社会問題として浮上し、世界各地で紛争とテロ行為が多発しています。このような情勢の中で、「未来への責任」ある政治を実行しなければなりません。現在、将来に対する不安を口にする国民が増えております。日本国の歴史と文化と伝統を踏まえ、報恩感謝の精神で「平和と人とふる里」を大切にする政治を求め、すべての国民が安心して働き、すべての国民が安心して生きられる「共生社会」の実現を目指して全力を挙げることをお誓いし御礼のご挨拶と致します。

    …………………………………

    赤松 広隆君の挨拶

  この度、永年在職議員の表彰を院議をもって御決議を賜り、万感胸に迫る想いであります。この栄誉は偏に長きに亘って私をお育ていただき、御支援を賜った愛知、名古屋の皆様、そして至らぬ私を御教示、御指導くださった先輩、同僚、後援会の皆様のお蔭でございます。心から感謝申し上げます。又、合せて、妻弥生をはじめ子供達、事務所の秘書の諸君にも改めて心から感謝します。

  私の政治の原点は、生まれた時に既に国会議員だった父親の影響もあって、「虐げられた人、悲しみにくれる人が一人でもいる限り、闘いは終らない」であり、「政治は弱い立場の人達の為にこそ、ある」でした。高校、大学を通じての学生運動、勤めてからの労働運動、三十歳で県会議員、四十一歳で国会議員となり、二十五年を経た今も、その考え方や、行動の原点は変わりません。

  この二十五年は、私にとっても、日本の政治にとっても激動の二十五年だったと思います。

  当時、野党第一党だった社会党は、政権政党への脱皮を図るべく、大胆な人事の若返りを図り、一期生だった私を書記長に抜擢。半年後の解散、総選挙では八党会派に依る非自民の連立政権、細川内閣が誕生することとなります。その後、羽田政権、村山自社さ政権と目紛しく政局は動いてゆきましたが、私自身は自らの信念に従い、保守に対抗し得るリベラル勢力の結集をめざして、民主党の結党に参画しました。新生民主党は選挙の度に躍進を続け、二〇〇九年には、私自身の政治家としての夢であり、目標であった本格的な「政権交代」を実現することができたのです。三百八議席、過去最大の議席を獲得したこの歴史的な選挙を党の選対委員長として司ることができた幸せは私にとって最大の栄誉でもありました。その後の鳩山内閣では図らずも農林水産大臣を拝命し、戸別所得補償制度の創設や、まぐろ、IWC、FTA等の国際交渉、口蹄疫の対応など厳しかったけれど、やりがいを持って取組んだことも良き思い出となりました。衆議院にあっても、外務、労働の常任委員長、郵政をはじめ特別委員長も数多く歴任しました。直近のこの二年間は、予想さえしなかった第六十五代衆議院副議長にも就任させていただき、感激でいっぱいです。我が人生に悔いなしです。

  結びにあたり、本日の永年表彰の意味を改めて認識し、政治の原点を忘れず、今後とも尚一層、議会制民主主義の発展に微力を尽すことをお誓いし、謝辞と致します。

    …………………………………

    森  英介君の挨拶

  このたび、院議をもって在職二十五周年の表彰を賜りました。身に余る光栄であり、感無量の思いです。昭和六十三年、衆議院議員であった父の他界に伴い、それまで民間企業の技術者であった私は、一大決心をしてその後継を目指すことにしました。そして、十五年間勤めた会社を辞し、一年半の選挙運動期間を経て、平成二年二月の総選挙で当時の千葉三区で初当選することが出来ました。以来、九期連続当選し、今日を迎えました。ここに至ることが出来ましたのは不敏な私を支えてくださった多くの皆様、とりわけ郷里・房総半島の皆様のご支援のお蔭です。ただただ心より厚く御礼申し上げます。

  長い道のりであったような気もしますし、あっと言う間だったような気もします。その間政府、国会、党の様々な役職を担当させて頂きました。就中、麻生内閣においては法務大臣を拝命しました。人の命や生活に深い関わりを持つ内容の仕事であっただけに日々精魂傾けて職務に取り組みました。何とか大過なく職責を全うすることが出来たときは、本当にホッとしました。我が人生で最も緊張感に満ち、濃密な一年間でした。

  さて、私たちの前途には様々な困難が立ちはだかっています。地球規模で言えば、最大の障壁は、大気中の炭酸ガス濃度の上昇に伴う気候変動の問題と考えます。また、世界人口の増加と消費の増大とが相俟って、エネルギー、食料、および、水の消費量が急増し、いずれ人類の需要を賄えなくなる事態も想定されるようになってきました。他方、我が国では、超高齢化が進み人口減少時代に突入し、経済成長、そして、それを支える労働力、また、社会保障制度の維持が次第に困難になってきました。いずれも解を見出すのが難しい複雑な方程式を解かなければなりません。こうした難問を何としても克服し、持続可能な世界、持続可能な日本を構築することこそがこれからの最大の政治課題と考えます。これらの課題の解決に些かなりとも資することを自らの使命と心得、これからも全力で邁進したいと思います。

  これまでご支援、ご厚情を賜った全ての皆様に深く感謝を捧げますと共に今後ともご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げ、謝辞とさせて頂きます。

    …………………………………

    山口 俊一君の挨拶

  この度、院議をもって永年在職議員の表彰の栄誉を賜り感無量です。心よりお礼申し上げます。

  平成二年二月、旧徳島全県区で初当選させて頂きました。以来、九期連続当選、ここに在職二十五年を迎えることとなりました。その間、御指導頂きました方々、お力添え頂き、又お支え続けて下さった皆様、とりわけ地元徳島の皆様方には心より厚くお礼申し上げます。又、秘書、スタッフの皆様も厳しい政治状況、又は選挙戦を通じて常に支えて頂き、感謝の念に堪えません。そして家族のみんなにも感謝の思いを伝えたいと思います。特に幼い四人の子供達を抱え、孤軍奮闘の連続だった妻洋子には決して頭が上がりません。皆様に心から「ありがとう」と言いたいと思います。

  振り返って見れば、波瀾に満ちた二十五年でした。初当選直後から「政治改革」の嵐が吹き荒れ、議論の末、宮澤内閣不信任案が可決され、自民党は下野しました。そして小選挙区制度が導入をされました。今思い直してみると、結局残ったのは党内の隙間風と、小選挙区制、政治資金の規制強化でした。今の政治状況を見ると、果たしてこれで良かったのか、何やら割り切れぬものを感じます。そして政権復帰に向けて自・社・さ連立政権が発足しました。首班指名選挙では、旧社会党の党首の名前をどうしても書く事が出来ませんでした。尊敬する後藤田正晴先生の的確なアドバイスにも従わず、今となってみれば赤面の思いです。又、所謂「小泉旋風」の中「郵政民営化騒動」もありました。私としては地方に於ける郵便局ネットワークの果たす役割を考えた時、賛成する気にはなれずに「造反」をし、党を離れざるを得なくなりました。その間も、関係議員をはじめ多くの皆様に御指導、お力添えまたお助けを頂きました。本当に有難うございました。その郵政民営化も先般法改正があり、当時私達が懸念していた多くの問題が解消されました。この十年間を考えた時、少し淋しい思いも致します。しかし、多くの友人、同志に助けられながら充実した二十五年でもありました。これまで私は地方の活性化を常に意識しながら様々な課題に取り組んで参りました。そして今、政府与党一丸となって地方創生に向かって歩みを始めつつあります。これまでの全てに感謝をしながら、今後も元気な地方を目指しつつ歩んで参りたいと思います。皆様本当に有難うございました。

    …………………………………

    山本 有二君の挨拶

  この度は、衆議院議員、勤続二十五年表彰の栄誉に預かりましたこと、厚く御礼申し上げます。

  思えば、平成二年二月十八日三十七歳、私は、運に恵まれ偶然にも衆議院議員に初当選を果たすことができました。弁護士のわずかな体験と、県議会の二年間の経験しかありませんでした。しかし、心は国家の改革や、地域高知県の発展を目指し、はやっていました。

  幸い政府では、自治政務次官、法務総括政務次官、財務副大臣、金融担当大臣。

  自民党では、建設部会長、経理局長、財務委員長、副幹事長、国会対策副委員長。

  衆議院においては、法務委員長、経済産業委員長、懲罰委員長、予算委員長を経験させて頂きました。

  いずれも、私にとって身に余る身分地位でありました。

  こうした仕事の数々も、高知県の選挙区の方々のいつも変わらない厚い御支持、友人や家族の理解や、育み。本当に周りの素晴らしい人々に恵まれたことが、何よりのおかげでありました。改めて、厚く感謝御礼申し上げる次第であります。

  本来、引っ込み思案な子供であった私を、活発な人間にしてくれた土佐中学高校の時代、更に、生きる意味や、将来に夢と希望、野心を養ってくれた早稲田大学、その雄弁会。仕事をする社会の一員であることの重要さを痛感した高知弁護士会。地方自治の本旨を教わった高知県議会。

  いずれを振り返っても、運の良さ、人に恵まれ助けていただいた恩に感謝をせざるを得ない気持ちであります。

  特に、両親や親類、家族はもちろんでありますが、竹内和夫という、二十歳の学生時代に出会った郷土の先輩、後に家内となる女性の父親には、言い尽くせない恩義や導きの数々を頂きました。

  二十五年は区切りかもしれません。決して、頂上ではないと思います。もし、ここで総括をするとすれば、「運と人に恵まれた」人生であったであります。

  今後、もし更にこの私に、政治家として、選挙区の皆さんが、活躍の場をお与えくださるならば、これまでの知識経験など、能力の限りを尽くし、全力で取り組み、持てる実力以上の結果を出して参りたいと誓う者であります。

  御支持いただけた皆様へ、感謝の誠を心から捧げ、ご挨拶に代えさせていただきます。

    …………………………………

    古屋 圭司君の挨拶

  平成二年二月に初当選させていただいてから、九回の選挙を勝ち抜かせていただき、このたび在職二十五年の表彰を賜りこの上ない名誉であります。

  初当選の際の選挙は中選挙区制でした。私の選挙区は四人区でトップと次点の差はたったの一万票ほどでした。三位でこの激戦を勝ち抜いた記憶はつい先日のように鮮明に記憶に残っています。初当選後、本会議席はいわゆる一丁目一番地と呼ばれる最前列の議長の真下でした。後ろを振り返ると最後列に中曽根康弘先生や竹下登先生、安倍晋太郎先生など重鎮の先生方が新議員の品定めをすべく腕組みをしながら我々初当選議員を見つめていました。隣席の同僚議員に、「あそこまでたどり着くのは遠い道のりだなあ。」と語り合ったものです。

  九回連続当選ではあったものの、無所属での戦いを強いられた郵政選挙や、野党に転落した平成二十一年選挙では比例復活当選となるなど、決して順風満帆ではなかったのも現実です。

  しかし、平成二十四年総選挙で再び自民党が政権に復帰し、首相と全閣僚が同じ人事の内閣としては戦後最長の六百十七日を記録した第二次安倍内閣のもとで、私は国家公安委員長、初代国土強靱化担当、拉致問題担当、防災担当大臣を拝命し、充実した仕事に取り組ませていただきました。

  初代国土強靱化担当大臣として、国の最上位計画となる「国土強靱化基本計画」を閣議決定することができ、地方創生と両輪でその取り組みがスタートしたことは私にとっても嬉しい限りです。国家公安委員長としては、「真に交通事故防止、取り締まられた側が納得する取り締まりや規制の見直し」や昨年の流行語大賞を受賞した「危険ドラッグ」対策など政治主導での取り組みを推進。拉致問題は解決には至っていませんが、これからが胸突き八丁ではあるものの、北朝鮮との協議のドアをこじ開けることができました。防災担当大臣としても常に危機管理を念頭に「空振りを恐れずに早目の避難勧告」徹底や災害対策基本法の大改正などに取り組みました。今後もこれまでの経験を国家と地域のために尽くしていくことが私の責務です。

  私は初当選以来一貫して、「真の保守主義」を政治理念の柱としてきました。

  このブレない政治姿勢こそが政治家古屋圭司の強みであると改めて今実感しています。ここまでお育ていただいた地元の皆さんに心から感謝申し上げるとともに、苦楽を共にしてきた家族に心から感謝の念を表して御礼のご挨拶とします。

    …………………………………

    佐田玄一郎君の挨拶

  この度の在職二十五年の表彰を賜りまして大変光栄に感じております。

  思えば平成二年初当選の栄誉を得ることができ、以来お陰様で連続九期当選し、選挙区である、ふるさと群馬県のことを思い続け、全力で頑張って参りました。長きにわたり、支え続けて下さった地元群馬の支持者の皆様方のお陰であり、また全国で応援して下さった皆様、事務所の秘書(秘書OB)の皆さん、そして家族、親戚全ての応援して下さった方々に深く、深く感謝申し上げます。

  初めて衆議院選挙へ出馬する時は、畑ちがいの土木技術者という経験が、本当に群馬、選挙区の疑問や期待に応えていけるのか、真の問題意識をもってやっていけるのかという不安と共に、一方では自分がやらなくてはという自負と頑張り抜くぞという思いが混在しておりました。

  東京から百キロメートル圏内のふるさと前橋市をもっと県都にふさわしい群馬の中心に、山紫水明の地、利根沼田を歴史文化と自然の調和のとれた、住みやすい活気あふれる地に、そのためには県民の意見に素直に耳を傾け、その考えを国にしっかりつないで行こうという信念がありました。この気持ちは今も変わっておりません。

  幸いにも厳しい選挙を勝ち抜くことができ、大きな病気にもならずやってこられたのも、繰り返しになりますがお支え戴いてきた皆様方のお陰であります。

  平成七年大蔵政務次官を皮切りに、文部政務次官、総務副大臣、総務委員長、議院運営委員長、平成十八年内閣府行政改革担当大臣として初入閣いたしました。

  党においては筆頭副幹事長として当時の武部幹事長をお支えした記憶もあります。

  中越地震の時は、すぐにヘリコプターに乗り、ふるさと前橋、みなかみの上空を通り新潟に駆け付けた事を思い出します。

  政治は行動であり、困っている人がいればすぐにも行動し、誠意をもって出来る限りの事をやる、そんな思いがあります。

  国の立法府に身を置き、これから最も大切なことは、国民のため、特に困っている方々に視線を向け、法律、制度作りも続けていかなくてはならないということです。私が中心となって策定した石綿健康被害救済法も、今年で適用となった方々が全国で一万人を超えたとの事であります。安心して療養できるよう心より願うところであります。

  また東日本大震災に接しまして、地方をもっと強化しなくてはいけないという思いを強くしております。

  地方自治体、国の出先機関がもっと連携を強化し、出先機関は国の方向をみるのではなく、もっと国、県、基礎自治体が強く広域的に連携協力し、災害を防ぎ、真の地方の活性化を実現していく。そして国の財源や権限も地方に移管して地方分権を進めていくことが大事です。

  今は様々な事が心の中を駆け巡っています。これからも、ふるさとの方々にお支え戴いてきた思いを忘れずに、もっとご恩返しが出来るよう改めて初心に立ち戻って、今後も全力で頑張ってまいります。

  この度は誠にありがとうございました。

    …………………………………

    石原 伸晃君の挨拶

  この度、永年勤続議員として、院議をもって表彰を戴き、誠に身に余る光栄であり、感激にたえません。この光栄は、私をお育ていただいた地元東京杉並の後援者の皆様をはじめ、先輩・同僚の御厚情とご指導、そして労苦をともにした妻里紗、事務所のスタッフのおかげであり、ここに心から感謝致します。

  さて、私が初当選したのは平成二年二月の雪の降る大変寒い選挙でありました。当時は中選挙区制度下で、定数五名の東京第四区でした。自民党には二名の先輩が公認でおり、私は無所属での出馬となりました。結果は第二位で初当選を果たし、その後追加公認となり、自民党代議士として政治家生活をスタートしました。時代はバブル景気の真っ只中、日本の経済はいったいどこまでいくのだろうと不安も感じる状況でした。

  この私の不安はバブルの破裂、即ち銀行、証券会社の破綻という形で表出しました。当時当選二回の私は党の財政部会長として与野党の国会議員の皆様とこの問題の解決にあたりました。金融再生トータルプランを作成し政策新人類という名を戴いたのもこの時であります。

  その後、一度は大臣として国政の中枢に入り、思う存分仕事をしたいと考えるようになりましたが、幸いにして数度閣僚に登用されるなど望んだ以上の仕事の機会を戴いてまいりました。その中で、袖振り合うも多生の縁と申しますが、多くの方々と良縁を得たことが今の私の大きな財産となっております。

  さて、現在我国は少子高齢化、人口減少社会、東日本大震災からの復興、福島原子力災害からの回復と厳しい試練にさらされております。今後私達が為さねばならない改革には、たよるべき先人の教えもなく、大きな困難が予想されますが、逃げて通る訳にはまいりません。日本の技術力、日本人のきめ細やかさ、そして歴史・文化・伝統を源泉として新たなる勇気をもって立ち向かってまいる所存です。

  何卒地元の皆様を始め、先輩・同僚各位の一層の御教導をお願い申し上げ、私の感謝御礼の言葉と致します。

    …………………………………

    中谷  元君の挨拶

  二十五年間、衆議院議員として、国政に参画できましたのも、ひとえに選挙区である高知県の有権者をはじめ全国からご支持を頂いた皆様、同僚の国会議員、衆議院事務局・政府関係機関等多くの皆様のご支援の賜物であり、心から感謝と御礼申し上げます。

  私が当選した平成二年二月十八日の日経平均株価は、三万七千五百二十三円でありました。当時の日本人の多くは、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」「日本は、まだまだいける!」と、世界経済への進出と土地神話、右肩上がりの日本経済を信じていました。しかし、その後、バブル経済が崩壊し、現在でも、その後遺症である長期のデフレ経済に苦しんでいますが、累次の経済対策や社会保障費の増大によって、財政が悪化し、現在、財政再建を目指しています。また、経済の自由化・規制緩和が進み、若者の雇用形態も変化し、国民所得や地方との格差是正も懸案となっています。国会では、多様な両極の国民の意見を反映して、私なりに議会活動を通じて、積極的に関与してきました。

  また、二十五年前に中国の天安門事件、ベルリンの壁の崩壊が起こり、戦後の東西冷戦の終焉をもたらしましたが、その直後にイラクのクウェート進攻やイラクでの湾岸戦争や米国での同時多発テロやISISの日本人殺害テロなどで、国際社会は、新たな脅威への対応に迫られました。また、中国の急速な軍拡や北朝鮮の核ミサイル開発などの東アジア情勢も大きく変化し、「国の防衛や国際安全保障」について、国会で、ある時は政府の考えを説明しながら、安全保障における国策をまとめる役割も果たしてきました。

  私の二十五年間の議員活動の根本は、常に「万機公論に決すべし」という、高知で生まれた「談論風発」の精神を持って臨んできましたが、「とことん議論を尽くせば、お互いの立場が理解しあう答えが生まれる」「とにかく話し合いを続けること。そうすれば、必ず対立は回避できる。」との議会制民主主義による国会の機能は、正に、議論によって、民意を融合させる化学反応を起こす場であると痛感しています。

  「上下議政局、議員ヲ置キ、万機公議ニ決スベキ事。」「自由は土佐の山間より出ず。」明治維新で、愛国公党を結成し、民撰議院の設立を目指して、言論第一と考える自由民権運動を始めたのは、板垣退助をはじめとする土佐の先人達であります。私は、脈々と流れている憲政の祖である高知県から選出された代議士として、この使命を果たすべく、大いに国論を談じ、審議し、採決して、国会が国権の最高機関としての機能を果たすことに努めてきましたが、これからも、次世代の日本がより良いものとなるように、この国会で、その重要な職責を果たしていきたいと思っています。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑

議長(町村信孝君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。岡田克也君。

    〔岡田克也君登壇〕

岡田克也君 民主党代表に新たに就任した岡田克也です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、安倍総理の施政方針演説に対して質問いたします。(拍手)

 まず冒頭、先日のシリアにおける日本人殺害事件によって犠牲となったお二人に衷心より哀悼の誠をささげるとともに、御家族の皆様に対し心からお悔やみを申し上げます。

 質問に先立ち、民主党についてまず一言申し上げます。

 第一に、民主党の立ち位置です。民主党は、生活者、納税者、消費者、そして働く者の立場に立つ政党です。

 第二に、民主党が目指す社会です。多様な価値観や生き方をお互い認めつつ、互いに支え合う共生社会、これが民主党の目指す社会です。

 第三に、これらを実現するために、民主党は既得権と闘う未来志向の改革政党である、そう考えています。

 私は、政治家として、二十数年来変わらず、政権交代ある政治の実現を目指してまいりました。自民党以外にいま一つの政権を担い得る政党が必要である、民主党のためではなく、日本のために民主党を再生しなければならない、それが私の信念です。その信念に基づき、代表として民主党再生の先頭に立ち、全力を尽くす決意です。

 総理の先日の施政方針演説についても、一言感想を申し上げておきます。

 戦後以来の大改革、総理は何度も繰り返されました。しかし、私は、演説を聞いていて、違和感を禁じ得ませんでした。

 改革には痛みが伴います。その痛みについて国民に説明し、説得する、それこそがトップリーダーの役割です。私は、改革の痛みについても、国民に対して、正直に、丁寧に説明してまいりたい。この演説でもそのことを貫きたいと思います。

 さて、まず内政について質問いたします。

 私が最も重要だと考える課題は、経済成長と格差是正の両立です。また、中長期的には、財政健全化と、人口の急激な減少に歯どめをかけることができなければ、日本の将来はありません。いずれも、そのうち何とかなるとの先送りの政治の結果生まれたもので、私たち政治家には大きな反省が必要です。

 しかし、今からでも遅くはありません。私は、政治家の決断によって、これらの難題を必ず乗り越えることができると確信しています。

 こういった問題意識に基づいて、以下、質問をいたします。

 私は、持続的な経済成長のためには、思い切った成長戦略、規制改革によって生産性を高めることが不可欠だと考えています。したがって、いわゆるアベノミクスの三本目の矢である民間投資を喚起する成長戦略は、私の基本的考え方と同じです。

 問題なのは、安倍政権では、法人税減税や、GPIF、年金積立金管理運用独立行政法人による株式投資など、短期的に株価を上げる政策に重点が置かれ、本質的な成長戦略には見るべき実績がないことです。

 そこで、質問します。

 安倍総理は、施政方針演説で、六十年ぶりの農協改革を誇示しました。しかし、農家は、今、米価の大幅下落に苦しんでいます。一体どのようにして、さきの総選挙で自民党が公約した、農業、農村の所得倍増を実現するんでしょうか。重要なのは、農家のための農政改革です。その道筋が全く見えません。総理に具体的な説明を求めます。

 安倍政権の経済政策の最大の問題は、成長の果実をいかに分配するかという視点が全く欠落していることです。

 経済のグローバル化が進む中で、世界の先進国が格差拡大という困難な問題に直面しています。日本も、今や先進国の中で最も格差の大きい国の一つとなっています。

 給与所得者のうち年収二百万円以下の人は一千百二十万人で、全体の四分の一を占めています。相対的貧困率は近年急上昇し、今や過去最悪の一六%にも達しています。特に深刻なのは子供の貧困であり、一人親家庭の子供の貧困率は実に五〇%を超え、OECDの中で最低です。国家として恥ずべきことです。不安定雇用が多い非正規労働者はふえ続け、二千十六万人となり、雇用者全体に占める割合は三八%になっています。いずれも深刻な事態です。

 これをしっかり変えていく。経済成長と格差是正を両立させることで、先進国の中でも格差の小さい、希望の持てる国にする。そのモデルに日本がなる。そのための新しい経済政策を民主党が打ち出していく決意です。

 総理に伺います。

 今、私は、幾つかの格差拡大をあらわす数字を指摘しました。総理は、日本社会の格差が近年拡大しているという事実はお認めになりますか。

 また、総理は、予算委員会で、格差が人々にとって許容の範囲を超えているものなのかどうかということが重要だと答弁されました。総理自身、今の格差が人々の許容範囲を超えていると判断しているのですか。それとも、そうではないのですか。

 全ての議論の前提ですから、それぞれについて、イエスかノーか、はっきりとお答えください。

 格差是正のための具体策として、所得課税、資産課税のさらなる見直しが考えられます。

 現在の所得税の最高税率は、民主党政権時代の三党合意に基づき、本年一月から五%引き上げられ、四五%となりました。しかし、この最高税率は、課税所得四千万円以上のわずか五万人が対象です。あわせて相続税も増税し、適用範囲は死亡者全体の四%から六%台に拡大しましたが、まだ十分とは言えません。所得税のかつての最高税率七五%は極端だとしても、税による再配分機能がかなり低下していることは明らかです。

 所得課税、資産課税のさらなる課税範囲の拡大や税率の引き上げを検討すべきです。総理の答弁を求めます。

 正規雇用が減り、非正規雇用が増加したことが、格差拡大の大きな要因です。

 非正規雇用が急速に拡大した理由は幾つか考えられますが、正規雇用にかかり、非正規雇用には原則発生しない企業の社会保険料負担は、その大きな要因です。九〇年代以降、健康保険料などの社会保険料を中心とする法定福利費は増加の一途をたどり、企業が正規社員に支払う現金給与総額に対する割合は、今や一五%に上っています。

 正規、非正規という働き方によって企業の負担に大きな差が生じる現在の仕組みを改めるとともに、税と社会保険の役割分担をその根本から見直すことが必要です。総理の答弁を求めます。

 今国会提出予定の労働者派遣法改正案や労働基準法改正案を初めとする雇用規制の緩和は、誤った第三の矢の典型です。

 私が総理の答弁を聞いていて疑問に思うのは、総理には、そもそも、労使関係は対等ではなく、だからこそ労働法制が存在するとの基本認識があるのかということです。そして、とりわけ未組織の非正規労働者は、厳しい環境下で不安定な働き方を余儀なくされる人が多いということを、総理は認識しているのでしょうか。

 結婚、出産を諦めなければいけない若者がたくさんいるという現実を無視し、繰り返します、結婚、出産を諦めなければいけない多くの若者がいるという現実を無視し、多様な働き方という美辞麗句にすりかえることは許されません。総理の答弁を求めます。

 日本の企業経営者は、かつては人を育てることを重視してきました。しかし、バブル崩壊後、人件費削減が重視され、その結果、非正規雇用が拡大しました。今までの自民党政権下での規制緩和も、その後押しをしたことは間違いありません。犠牲になったのは若者たちです。

 人を大切にする経営こそが、日本全体はもちろん、個々の企業の成長にとっても必要であるとの認識を、政府も経営者も共有すべきではないでしょうか。総理の答弁を求めます。

 次に、年金制度について、格差是正の観点から伺います。

 今国会に提出が予定されている年金制度改革法案には、マクロ経済スライドの強化が含まれています。

 マクロ経済スライドは、人口構成の変化の中で年金制度を持続可能とするためのものであり、その必要性については私も十分に認識しています。しかし、それはあくまでも国民の最低生活を保障するという公的年金の機能が維持されることが大前提です。

 厚生労働省が昨年公表した、かなり楽観的な前提に立った年金の将来試算の標準的ケースでも、国民年金、基礎年金の実質的な金額は、現在より三割も低下します。これで老後の生活保障はなされるんでしょうか。

 国民年金、基礎年金に対しても、マクロ経済スライドを将来にわたり機械的に適用することが、年金制度の趣旨からいって、本当に妥当とお考えでしょうか。総理の答弁を求めます。

 民主党政権では、厚生年金で比較的高額な年金を受給している方々に投じられている基礎年金の税金部分を減額する、あるいは、所得税の公的年金等控除を縮減することで財源を確保し、これを低年金者の年金額のかさ上げに充てることを検討していました。

 働く世代の負担能力にも限界がある中、比較的余裕のある高齢者による高齢者間の負担の分かち合いが必要であり、そのことについて率直に説明し、理解を得るための努力が求められると私は考えます。

 比較的余裕があるとはいえ、従来一律に保護すべき弱者とされてきた高齢者の一部の方々に対する年金の削減や負担増について、総理はどうお考えでしょうか。国民に率直に理解を求める覚悟はありますか。答弁を求めます。

 所得の少ない子育て世代の増加が世代を超えた格差の固定化につながる、これが格差問題の中で最も深刻な問題です。あわせて、急激な人口減少を避けるための少子化対策としても、子ども・子育て支援策は極めて重要です。

 従来、年金、医療、介護を社会保障の三事業としてきましたが、民主党政権では、これに子育て支援を加えて四事業とし、消費税を引き上げて確保した財源から七千億円を子育て支援の充実に充てることにしました。しかし、これでも全く不十分です。

 出生率の改善が顕著なフランスやスウェーデンでは、子育て支援を中心とする家族関係社会支出の対GDP比が三%、多くの先進国が二%を超える中、日本では、現状一・三二%にとどまっています。

 厳しい財政事情を乗り越えて、思い切った予算の組み替えが必要不可欠です。総理にその覚悟はあるのか、答弁を求めます。

 民主党政権では、所得税及び住民税の年少扶養控除を廃止し、得られた財源約一・一兆円を子ども手当、現在の児童手当に充てました。所得控除は、所得の多い人にとっては減税のメリットが大きいですが、所得の少ない人にとっては関係ありません。

 格差是正という観点からは、控除から手当へ、さらには、本年十月から始まるマイナンバー制度を活用した給付つき税額控除へというのは、有力な選択肢です。

 この点について、総理は同意されますか。答弁を求めます。

 これに関連し、現在、配偶者控除の廃止について、政府内でも議論が行われていますが、生き方、働き方に中立な税制という観点に加えて、子ども・子育て支援策の財源確保の重要性、緊急性を考えれば、早急に結論を出すべきです。

 総理は、施政方針演説の中で、配偶者控除について言及しませんでした。どうお考えでしょうか。答弁を求めます。

 続いて、中長期的に見た場合、我が国の最大の課題であり、世代間格差是正の観点からも、政治が責任ある対応をすべきと私が考える財政健全化について伺います。

 総理は、今まで、二〇二〇年度プライマリーバランス黒字化に向けた具体的な計画を夏までにまとめると説明してきました。しかし、施政方針演説では、二〇二〇年度の財政健全化目標について堅持すると述べただけで、プライマリーバランス黒字化とは明言しませんでした。

 二〇二〇年度にプライマリーバランスを黒字化するとの目標は、総理において維持されているのか、諦めたのか。総理、明確にお答えください。

 二月十二日の経済財政諮問会議に提出された内閣府の試算では、二〇二〇年度の国、地方のプライマリーバランスは、楽観的な前提を置いた経済再生ケースでも、九・四兆円の赤字となっています。これをどうやって黒字化するのか。

 歳入増、歳出減、いずれも具体化は容易ではありません。残された時間はわずか五年しかありません。今すぐに取りかからなければ間に合いません。補正予算や来年度予算案の歳出の膨張を見ると、総理が本当にプライマリーバランスを黒字化することを考えているのか、大いに疑問です。

 現時点で総理が考えている安定的な歳入増の具体的内容、歳出減の主要項目ごとの見通しについて、基本的な方向性を今国民に説明すべきです。経済財政諮問会議に丸投げは許されません。答弁を求めます。

 総理は、財政健全化の目標達成に向けた具体的な計画を夏までに策定するとしています。しかし、これでは国会で十分な議論の機会がありません。国会開会中のなるべく早い時期に、政府の考える財政健全化計画の考え方、具体的な中身が明らかとなり、それをもとに、与野党を超えて、この困難な財政健全化のための建設的な議論を行う必要があると私は考えます。

 総理にその用意があるのか、答弁を求めます。

 次に、外交、安全保障について伺います。

 まず、外交に関する私の基本的な考え方を二点申し上げます。

 第一に、国民の理解と信頼に支えられた外交です。国民の理解と信頼があって初めて力強い外交が展開できる、これは、民主党政権で私が外務大臣の職にある間、常に考えていたことです。そのためには、情報公開を積極的に行うことや説明責任を尽くすことが、総理や外務大臣には求められます。

 第二に、開かれた国益の実現です。短期的な国益ではなく、平和で豊かな世界、平和で豊かなアジアを実現することで、平和で豊かな日本を実現していく。

 この二つの基本的な考え方のもとで、日本外交は、日米同盟を基軸としつつ、アジアの特に近隣諸国との関係を深め、そして国際社会の平和と繁栄に貢献すべきと私は考えます。

 以下、具体的に質問いたします。

 総理は、積極的平和主義を強調しています。世界やアジアの平和のために日本が積極的に貢献することは非常に大切なことです。

 今までも、日本は、人道支援や途上国の国づくりへの協力、PKO活動などを積極的に展開してきました。他方で、武力行使や武力行使と一体となるような活動とは一線を画してきました。これらのことに対する国際的な評価は非常に高いというのが、私の外務大臣としての実感です。

 しかし、総理が今あえて積極的平和主義を強調するのは、自衛隊を海外でより活用し、従来より一歩踏み込んだ後方支援活動や集団的自衛権行使を念頭に置いているからです。果たして、それは正しい選択なのでしょうか。日本に対する国際的な評価を一変させかねないリスクもあります。

 今まで以上に自衛隊を海外で活用することの必要性について、総理の明快な答弁を求めます。

 そもそも、昨年七月に閣議決定された新三要件は、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に武力行使できるとしています。

 総理が意味するところは、日本の自衛のためにのみ武力行使を認めたものという主張なのかもしれません。他方で、積極的平和主義は、世界やアジアの平和のために日本が貢献するというものです。日本の自衛と世界の平和、目指すものが違うこの二つを一つにしているところに、積極的平和主義の危うさがあるのです。

 この点について、総理の明確な答弁を求めます。

 自衛隊をより海外で積極的に活用すれば、当然、活動する自衛隊員に対するリスクは高まります。国民がテロなどに巻き込まれるリスクも大きくなります。そういったことに対する国としての備え、そして、国民の覚悟を求めることなく、総理の思いが先走りしていることを強く懸念しています。

 これらのリスクに対する総理の国民に対する説明を求めます。

 次に、集団的自衛権を初めとする安保法制について伺います。

 集団的自衛権を限定容認するなどとした昨年七月の閣議決定は、国民の理解も国会での議論もほとんどないままに強行されたものです。一内閣の判断で憲法の重要な解釈を変えたことは、立憲主義に反し、憲政史上の大きな汚点となりました。

 総理には、こういった認識や反省はみじんもないのでしょうか。答弁を求めます。

 内閣法制局長官が国会で答弁したように、我が国自身が武力攻撃を受けていなくても、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状態ということがもし本当にあるのであれば、集団的自衛権か個別的自衛権かはともかくとして、国民の身体、生命、財産を守るために、政府として何もしないわけにはいかないと私も考えます。

 しかし、それが具体的にどのような状況なのか、全く説明がなされていません。

 この国会をごらんになっている国民の皆さんにもわかるように、幾つかの具体例をお示しください。総理の答弁を求めます。

 集団安全保障についても伺います。

 総理は、昨年九月三十日の衆議院本会議の答弁の中で、憲法上、武力行使が許されるのは、あくまで新三要件を満たす場合に限定される、これは集団的自衛権となる場合でも集団安全保障となる場合でも変わらないと述べています。

 これは、新三要件を満たせば、国連安保理決議に基づく集団安全保障措置に我が国が参加し、武力を行使することが憲法上は可能であると答弁したものと理解していいんでしょうか。また、今国会でそのことを可能とする立法措置を考えているのでしょうか。総理の答弁を求めます。

 東日本大震災からの復興について、総理は、高台移転は九割、災害公営住宅は八割の事業がスタートしていると施政方針演説で強調されました。

 しかし、現実には、九万人の皆さんが五度目の冬を仮設住宅で迎え、いつになったら安定した生活ができるのか、不安のままに日々暮らしています。とりわけ福島では、故郷に帰るめどすら立たない多くの人々が今も苦しんでいます。

 耳ざわりのいい数字を強調するだけでなく、本当に被災者に寄り添う気持ちが大切です。総理の答弁を求めます。

 総理は、戦後七十年に当たっての談話を出す意向を示しています。

 戦後五十年の際には、当時の村山総理の談話が閣議決定され、植民地支配と侵略によってアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えたことを認めた上で、痛切な反省と心からのおわびを表明しました。これらの文言は、戦後六十年に閣議決定された小泉総理談話にも引き継がれ、単なるキーワードの域を超えて、日本政府の歴史認識、外交方針として、国内のみならず、国際社会にも広く認知されてきました。

 総理は、今までの言葉を使わなかった、新しい言葉を入れたという細々とした議論にならないよう、七十年は七十年の談話として新たに出したいと発言しましたが、こういった極めて重要な意味を持つ言葉が入るか入らないかということが細々とした議論というのは、到底納得できません。

 先日亡くなったワイツゼッカー元ドイツ大統領は、一九八五年、戦後四十年の連邦議会の演説で、過去に目を閉ざす者は現在に対しても盲目になるという言葉を残しました。

 植民地支配や侵略などの言葉は、七十年談話にも必ず含まれるべきです。その上での未来志向でなければなりません。総理の答弁を求めます。

 戦後七十年に関連して、憲法についても伺います。

 総理は、二〇一三年四月、新聞のインタビューの中で、日本国憲法について、連合国軍総司令部、GHQの、憲法も国際法も全くの素人の人たちがたった八日間でつくり上げた代物だと述べています。

 日本国憲法ができて間もなく七十年、この間、日本国民自身が、あるいは私たちの先輩たちが国会の議論の中で、この日本国憲法を育んできました。

 総理の発言は、日本国総理大臣が、国家の最高法規である日本国憲法をさげすんでいるという誤解を与えかねない重大なものです。私は看過できません。

 総理は、この暴言を撤回すべきです。答弁を求めます。

 選挙制度改革について伺います。

 現在、衆議院の選挙制度改革は、町村議長のもとにある衆議院選挙制度に関する調査会において議論が行われています。政治に対する国民の信頼を取り戻すために、是が非でも次の衆議院総選挙は、定数削減と一票の格差是正を実現した新たな選挙区割りのもとで実現する必要があります。そして、小選挙区の区割りの設定や周知期間を考えると、今国会会期中に調査会の結論をいただき、年内には国会として法改正することが必要です。

 圧倒的多数を持つ与党自民党の総裁でもある安倍総理、この場で、年内の法改正に向けたリーダーシップを国民にお約束いただきたい。総理の責任ある答弁を求めます。

 参議院の選挙制度改革も待ったなしです。

 しかし、来年夏の選挙が目前に迫っているにもかかわらず、各党各会派から成る選挙制度協議会における議論は見通しが立っていません。自民党は、昨年九月、突如議論を白紙に戻してしまいました。そして、いまだにみずからの案を一つにまとめられないありさまです。民主党は、一票の格差を二倍以内とし、定数削減も行う具体案を既に提案済みです。

 来年夏の参議院選挙に間に合わせるためには、今国会中に必要な法改正を行わなければなりません。今以上に国民の政治不信を招きかねない危機的状況です。衆議院、参議院の問題ではありません。国会全体の問題です。

 安倍総理は、施政方針演説で、全ては国民のため、党派の違いを超えて、選挙制度改革、定数削減を実現させようではありませんかと呼びかけました。総理は、呼びかける相手を間違っているんです。総理が呼びかけるべき相手は自民党です。与党自民党の総裁として、安倍総理がリーダーシップを発揮し、自民党内を取りまとめることが先です。

 その覚悟はあるのか、総理の答弁を求めます。

 安倍総理に一つお約束いただきたい。

 党首討論を少なくとも月一回行うことは、昨年五月の与野党七党の国会改革の重要な合意事項です。この約束を守り、党首討論を定例化しようではありませんか。総理の答弁を求めます。

 最後に、私から提案したいと思います。

 予算委員会を初めとする委員会審議では、質疑、すなわち質問に対する答弁をすることが基本であって、総理が反論することは基本的に認められていません。しかし、私は野党第一党の党首ですから、常識の範囲内で総理が反論されることを否定するつもりはありません。ただし、聞かれてもいないことを長々と答弁したりすることはぜひやめていただきたい。

 国会審議は大切です。国民が政治に期待を持てるように、わかりやすく、内容のある、建設的な議論、質疑を行ってまいりましょう。

 本日は基本的なことを伺いました。安倍総理の答弁をもとに、予算委員会、党首討論でさらに具体的な議論を行いたいと考えていることを最後に申し上げ、私の代表質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 岡田克也議員にお答えをいたします。

 農政改革についてお尋ねがありました。

 農業は、日本の美しいふるさとを守ってきた、国の基であります。一方で、我が国の農業の活性化は待ったなしであります。

 農業の成長産業化を図るため、安倍内閣では、農地集積バンクの創設、輸出、六次産業化の推進、米の生産調整の見直しなど、農政改革に力を注いでまいりました。

 さらに、今般、意欲ある農業の担い手が活躍しやすい環境となるよう、農協、農業委員会、農業生産法人の三つの改革を一体的に行います。

 特に農協については、意欲ある担い手と地域農協が力を合わせ、創意工夫を発揮し、ブランド化や海外展開を図っていける体制に移行します。このことにより、農家の所得をふやしてまいります。

 政策を総動員して改革を進め、消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていけば、六次産業化を含めて農業の可能性は広がり、農業、農村全体の所得もふえていくと確信しております。

 格差の現状についてのお尋ねがありました。

 格差に関する指標はさまざまであり、格差が拡大しているかどうかについては一概に申し上げられませんが、例えば、我が国の場合、当初の所得に比較して、税や社会保障による再分配後の所得の格差は、おおむね横ばいで推移しています。

 また、最近の世論調査によると、国民の中流意識は根強く続いており、個人の生活実感において、格差が許容できないほど拡大しているという意識変化は確認されていません。

 いずれにしても、安倍内閣は、経済再生に取り組み、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、子供たちの誰もが、家庭の経済事情に左右されることなく、希望する教育を受けられるようにしてまいります。

 こうした取り組みを通じ、誰にでもチャンスがある、そして頑張れば報われるという社会の実現に向け、尽力してまいります。

 なお、格差の状況については、引き続き幅広く検証してまいります。

 格差是正のための税制上の措置についてお尋ねがありました。

 格差が固定化しない、あるいは許容し得ない格差が生じない社会を構築していくことは、重要な課題であります。

 安倍内閣においては、税制について、再分配機能の回復を図るため、所得税の最高税率引き上げ、給与所得控除の見直し、金融所得課税の見直し、相続税の見直し等を通じ、随時実施してきているところであります。

 税制における再分配機能のあり方については、経済社会の構造変化も踏まえながら、引き続きよく考えてまいります。

 税と社会保障の役割分担などについてお尋ねがありました。

 年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本とし、必要な給付との見合いで、負担能力に応じた保険料負担を行う一方で、保険料に係る国民の負担の適正化に充てるため、公費投入が行われていると考えております。

 三党合意により成立した社会保障制度改革推進法においても、公費等に関するこうした考え方が規定されており、今後ともこれに沿って対応すべきと考えております。

 また、将来の年金や医療に不安を抱えることなく、安心して働くことができるよう、非正規雇用であっても、雇用される方であれば社会保険への加入を促進することが重要であり、平成二十八年十月から実施される短時間労働者への適用拡大について、円滑な施行を図ってまいります。

 労働法制と非正規労働者についてのお尋ねがありました。

 労働法制は、労使の交渉力の違いを踏まえ、立場の弱い労働者が劣悪な環境で働くことのないよう保護する観点から、契約自由の原則を修正しているものと認識しています。

 非正規雇用労働者には、能力開発の機会が少ない、賃金が低いといった課題があるため、キャリアアップや処遇改善に向けた取り組みを進めていくことが重要であり、キャリアアップ助成金の拡充などの支援を図るとともに、希望する方には正社員への転換を推進してまいります。

 また、未来を担う若者が能力を十分発揮できるよう、その雇用対策を強化します。

 安倍内閣としては、ワーク・ライフ・バランスの観点から、働き過ぎを是正するとともに、多様で柔軟な働き方を進め、働く方の個々の状況に応じ、あらゆる人が生きがいを持って創造性を発揮できる環境をつくってまいります。

 人を大切にする経営についてお尋ねがありました。

 人を大切にする我が国の人事・雇用管理のすぐれた点を失うことなく、国民が働きながら幸せを実感し、企業の収益を伸ばし、さらには働く方々にその成果が還元されるよう、経済の好循環を全国津々浦々に拡大してまいります。

 非正規雇用については、景気が回復し、雇用が増加する過程において、パートで短時間働く人などがふえたためその数は増加しておりますが、一方で、ここが大切なところですから、非正規雇用者の中で、正規の職につきたくても不本意ながら非正規の職についている人の割合は、このところ低下しています。この点は特に強調しておきたいと思います。

 こうした働き方を進め、非正規雇用労働者について、キャリアアップや処遇改善に向けた取り組みを進めていくことが重要であり、政労使合意も踏まえ、能力開発のため、キャリアアップ助成金の活用などを図ってまいります。

 年金のマクロ経済スライドについてお尋ねがありました。

 マクロ経済スライドは、平成十六年の改革により、将来世代の負担を過重にしないため、将来の保険料水準を固定し、その範囲内で給付水準を調整する仕組みとして導入されたものであります。こうした仕組みは、基礎年金を含め、公的年金制度全体に共通する考え方であります。

 なお、社会保障・税一体改革において、医療や介護の保険料負担軽減や、低所得で低年金の高齢者に対する福祉的な給付金など、社会保障全体を通じて低所得者対策の強化を図ることとしています。

 高齢者による負担の分かち合いについてお尋ねがありました。

 一昨年の社会保障制度改革国民会議では、全世代型の社会保障への転換を目指し、年齢別から負担能力別に負担のあり方を切りかえ、高齢者にも負担能力に応じた貢献を求めることが必要であると提言されています。

 こうした議論を踏まえ、医療や介護など社会保障制度全体を通じ、低所得者に配慮を行う一方で、高齢者でも経済力のある方には、それに見合った負担を求める取り組みを進めているところです。

 なお、高所得者の年金給付のあり方については、国民会議において、高齢世代内の再分配機能を強化する観点から、年金制度だけではなく、税制や他の社会保障制度の負担など、さまざまな方法を検討すべきと提言されており、これを踏まえて考えるべき問題と認識しております。

 少子化対策予算についてお尋ねがありました。

 少子化は、我が国の社会経済の根幹を揺るがしかねないとの危機意識のもと、安倍内閣では、子供への資源配分を大胆に拡充することとしています。

 来年度予算では、消費税率一〇%への引き上げは延期しましたが、子ども・子育て支援新制度を予定どおり四月から実施することとし、待機児童の解消等に向けた量の拡充や、保育士の処遇改善等の質の改善のための財源を確保することとしています。

 さらに、諸外国の経験も参考にしながら、財源を確保した上で、子供への資源配分を大胆に拡充することが必要であると考えています。

 今後とも、より効率的かつ集中的な少子化対策に取り組んでまいります。

 給付つき税額控除と配偶者控除についてお尋ねがありました。

 お尋ねの給付つき税額控除については、低所得者に絞った効率的な支援が可能となるとの議論がある一方で、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等の課題があるものと承知しています。

 いずれにせよ、経済社会の構造変化に対応して税制のあり方を検討していくことは必要であると考えています。

 また、配偶者控除については、昨年十一月の政府税制調査会の論点整理において、家族のあり方や働き方に関する国民の価値観に深くかかわることから、今後、幅広く丁寧な国民的議論が必要とされています。

 今後、政府税制調査会や与党税制調査会において議論を行った上で、国民的議論を行いながら判断していくべき問題であると考えています。

 財政健全化についてのお尋ねがありました。

 安倍内閣としては、経済再生と財政健全化の両立を目指しています。

 二〇二〇年度までに、国、地方を合わせ基礎的財政収支を黒字化するという財政健全化目標はしっかりと堅持し、その目標に向け、デフレから脱却し、経済再生により税収をふやす、無駄削減など徹底した行財政改革もしっかりとやるなど、歳出歳入両面にわたり取り組んでまいります。

 社会保障についても、効率化、合理化や重点化を進めてまいります。

 本年夏までに、目標達成に向けた具体的な計画を策定いたします。

 今まで以上に自衛隊を活用することの必要性についてお尋ねがありました。

 今日、国際社会における軍事力の役割は多様化しており、紛争の抑止、対処にとどまらず、紛争予防から復興支援、さらには人道支援、災害救援、海賊対処などの分野において重要な役割を果たすようになっています。

 このような中、自衛隊は、高い能力と揺るぎない使命感、そして献身的な努力で、日本の平和を守り、世界の平和に貢献してきました。

 安全保障環境の激変により、もはやどの国も、一国のみで平和を守ることはできません。国際社会もまた、我が国がその国力にふさわしい形で一層積極的な役割を果たすことを期待しています。

 いかなる事態においても国民の命と幸せな暮らしを守り抜く、また国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献していく、そのため、自衛隊にはより一層の役割を担ってもらう必要があります。そう確信しております。

 先般の閣議決定と積極的平和主義についてお尋ねがありました。

 シリアでの邦人テロ事件やパリの新聞社襲撃事件など、世界に広がるテロの脅威、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散、サイバー攻撃など、今や脅威は、容易に国境を越えてやってくる時代になりました。

 もはや、どの国も、一国のみで自国の平和と安全を守ることはできません。自国の平和と安全を守るためには、アジア太平洋地域、さらには世界の平和と安定を確保することが必要であります。

 先般の閣議決定の目的はただ一つ、国民の命と幸せな暮らしを守り抜くことであります。そして、国民の命と幸せな暮らしをより確かなものにしていくために、地域や世界の平和と安定の確保に、我が国はより一層積極的に貢献していきます。このような能動的な平和外交が積極的平和主義であります。

 したがって、先般の閣議決定と積極的平和主義について、目指すものが違うこの二つを一つにしているといった御指摘は全く当たりません。

 自衛隊の積極的な活用によるリスクについてお尋ねがありました。

 今後とも、国民の命と幸せな暮らしを守るという自衛隊員の任務には何ら変更はなく、自衛隊員が海外で我が国の安全と無関係な戦争に参加することは断じてありません。

 国際社会の平和と安定への貢献に当たっては、これまで同様、安全を確保しつつ行うことは言うまでもありません。

 また、もはやどの国も、テロの脅威から安全な国はありません。政府としては、テロの未然防止に万全を期すため、国際社会と密接に、緊密に連携し、諸対策を推進してまいります。

 我が国としては、テロに屈することなく、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、国際社会の一員として、地域や世界の平和と安定のために積極的に貢献してまいります。

 安全保障法制に関する閣議決定と立憲主義との関係についてお尋ねがありました。

 昨年七月の閣議決定は、国民の命と幸せな暮らしを守るため、必要最小限度の自衛の措置が許されるという、従来の憲法解釈の基本的考え方を変えるものではありません。したがって、憲法の規範性を何ら変更するものではなく、立憲主義に反するものではありません。

 また、閣議決定だけで自衛隊が行動できるようになるわけではなく、根拠となる法律が必要です。閣議決定は、あくまでも法整備のための基本方針であり、これに基づいて、現在、法案の準備を進めています。

 引き続き、国民の皆様のさらなる御理解を得る努力を続けながら、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする安全保障法制の整備を進めてまいります。

 新三要件を満たす状況について具体例を示すべきとお尋ねがありました。

 新三要件における、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合とは、他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでは、すなわち、その状況のもと、武力を用いた対処をしなければ、国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということをいうものと考えています。

 いかなる状況がこれに該当するかは、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断することとなるため、一概にお答えすることは困難ですが、例えば、具体的に次のようなものが考えられます。

 一つ目は、邦人輸送中の米軍船舶の防護です。

 例えば、我が国近隣で武力攻撃が発生し、米国船舶は公海上で武力攻撃を受けている、攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない、このような状況においては、取り残されている多数の在留邦人を我が国に輸送することが急務となります。

 そのような中、在留邦人を乗せた米国船舶が武力攻撃を受ける明白な危険がある場合は、状況を総合的に判断して、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況に当たり得ると考えられます。

 二つ目は、ホルムズ海峡での機雷敷設です。

 海洋国家である我が国にとっては、国民生活に不可欠な資源や食料等を輸送する船舶の安全確保は極めて重要です。我が国が輸入する原油の約八割、天然ガスの二割強はホルムズ海峡を通過しており、ホルムズ海峡はエネルギー安全保障の観点から極めて重要な輸送経路となっています。

 仮に、この海峡の地域で武力紛争が発生し、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合には、かつての石油ショックを上回るほどに世界経済は大混乱に陥り、我が国に深刻なエネルギー危機が発生し得ます。

 我が国に石油備蓄は約六カ月ありますが、機雷が除去をされなければ危険はなくなりません。石油供給が回復せず、我が国の国民生活に死活的な影響が生じるような場合には、状況を総合的に判断して、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況に当たり得ると考えられます。

 新三要件と集団安全保障措置との関係及び今後の法整備についてのお尋ねがありました。

 憲法上、武力行使が許されるのは、あくまで先般の閣議決定にある新三要件を満たす場合に限られます。

 例えば、我が国に対する武力攻撃が発生した場合、自衛隊は、個別的自衛権に基づき、武力を行使して自衛の措置をとることとなります。その後で、国連安保理が、日本を助けるため、武力行使を容認する決議を採択し、国際法上の武力行使の根拠が国連安保理決議に基づく集団安全保障措置になったとしても、我が国に対する武力攻撃が続いている限り、自衛隊が活動をやめることはありません。

 同様に、新三要件を満たしている場合に、我が国が集団的自衛権の行使に当たる武力の行使を行っている際、国連安保理が武力の行使を容認する決議を採択し、国際法上の武力行使の根拠が国連安保理決議に基づく集団安全保障措置になったとしても、新三要件を満たしている限り、自衛隊が活動をとめることはありません。

 政府としては、閣議決定で示された基本方針のもとで、新三要件を満たす場合にのみ、憲法上認められる自衛のための措置についての立法措置を含め、切れ目のない安全保障体制の整備を進めてまいります。

 東日本大震災からの復興についてお尋ねがありました。

 避難者の数は、当初の四十七万人から二十三万人に減少しましたが、いまだ多くの方が仮設住宅におられるという厳しい状況にあることも事実であります。住宅再建の工事を急ぐとともに、町のにぎわいを戻すための産業、なりわいの再生、被災者の心身のケアにも力を入れているところであります。

 私は、内閣発足以来、合計二十一回にわたり被災地を訪問してまいりました。一昨日も、岩手県と宮城県を訪問し、被災者の方々の不安の声や何を必要とされているかといったことについてしっかりとお話を伺ってまいりました。

 今後とも、被災者の方々に寄り添い、一日も早く安心して暮らすことができるよう全力を尽くしてまいります。

 戦後七十年の談話についてお尋ねがありました。

 安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えであります。戦後七十年の談話は、それを前提として作成するものであります。

 談話の内容については、さきの大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後、日本として、アジア太平洋地域や世界のために、さらにどのような貢献を果たしていくのか、次の八十年、九十年、百年に向けて日本はどのような国になっていくのかについて、世界に発信できるようなものを英知を結集して考え、新たな談話に書き込んでいく考えであります。

 いずれにせよ、具体的内容は、今後、有識者の御意見を伺いながら、政府として検討していきます。

 日本国憲法についてお尋ねがありました。

 現行憲法は帝国議会において議決されたものであり、安倍内閣においても、憲法を厳に遵守しております。

 御指摘の私の言葉は、現行憲法については、戦後の占領下において、その原案が連合国軍総司令部によって短期間に作成されたものであるとの事実を述べたものにすぎず、御指摘は全く当たらないと考えています。

 選挙制度改革についてお尋ねがありました。

 選挙制度の改革は、議会政治の根幹にかかわる重要な課題であることから、小さな政党も含め、各党各会派が真摯に議論を行うことが重要です。

 衆議院については、現在、議長のもとに設置された第三者機関においてさまざまな議論が行われております。大切なことは、各党各会派がその答申に従うことであると考えています。

 参議院については、現在、議員による協議機関でさまざまな議論が行われているところであり、私からも、党に対し、早期にしっかりと議論を進めるように指示をしております。

 いずれにせよ、各党各会派において建設的な議論が進められ、早期に結論を得ることによって、国民の負託にしっかりと応えていくべきものと考えております。

 党首討論についてお尋ねがありました。

 国民が政治に期待を持てるよう、建設的な議論を行っていこうとの御提案には大賛成であります。

 ただ、そのためには、国民に対して、それぞれが異なる政策の選択肢を提示していくことが不可欠であります。国会の具体的な運営は国会でお決めいただきたいと思いますが、ぜひ、具体的な政策の違いを国民の前で明らかにしながら、正々堂々の議論を行わせていただきたい、このように考えております。

 最後となりましたが、岡田克也議員の新代表就任、心からお祝いを申し上げます。国会で建設的な議論を行うことができるよう、リーダーシップを発揮されることを期待しております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(町村信孝君) 谷垣禎一君。

    〔谷垣禎一君登壇〕

谷垣禎一君 私は、自由民主党を代表して、安倍内閣総理大臣の施政方針演説に対し質問いたします。(拍手)

 先般、イスラム国を自称するテロ集団、ISILにより殺害された湯川遥菜さん、後藤健二さんのお二人に心から哀悼の意を表しますとともに、御家族に心からお悔やみ申し上げます。

 本院も、日本国民の総意として、テロ行為に対する非難決議をいたしました。ISILの残虐な卑劣きわまりないテロ行為は、言語道断の許しがたい暴挙であり、断固非難するものであります。

 お二人の速やかな解放に向けて、政府はあらゆる手段を講じて努力されたものと承知しております。また、ヨルダンを初めとする関係各国の協力に深く感謝の意を表明するものであります。

 今後、海外の在留邦人の安全確保や、我が国在外公館による情報収集、分析の強化、国内における出入国時の水際対策や交通機関の警備等のテロ対策を徹底し、国民の安全に万全を期すように努めていかなければなりません。

 あわせて、決して日本がテロに屈することなく、国際社会とともに、中東を含む世界の平和と安定のために貢献し、憎しみの連鎖を断ち切る努力をとどめてはなりません。

 改めて、総理の決意を伺います。

 さて、昨年、総理は、経済再生と財政健全化の両立を実現するため、まずは国民全体の所得を押し上げ、地方経済にも景気回復の効果を十分に波及させていくことで消費税率引き上げに向けた環境を整えていくために、消費税一〇%への引き上げを一年半延期することを決断されました。同時に、国民経済にとって重い決断をする以上、速やかに国民の信を問うべきであると判断され、解散・総選挙を断行しました。

 我が党は、「景気回復、この道しかない。」ことを掲げ、安倍政権二年間でのアベノミクスの実績と、経済の好循環の流れをとどめることなく全国津々浦々へ広げ、国民生活を豊かにしていくことを選挙戦で訴えました。

 その結果、我が党は二百九十一議席を獲得、公明党と合わせて与党で三分の二を超える議席を確保し、前回の政権奪還選挙と遜色ない結果を残しました。特に、前回初当選議員の再選率が極めて高かったことにより、過去数回の選挙で続いた、大量当選、大量落選といういわゆる振り子現象に終止符を打つことができました。これはまさに、安定した政治を望んだ国民の意思が示された結果であると考えます。

 我々政府・与党は、この結果を真摯に受けとめ、選挙で国民にお約束したことを着実に実行していかなければなりません。

 改めて、総理に、総選挙結果を踏まえた今後の決意を伺います。

 一月十七日に、阪神・淡路大震災から二十年を迎えました。

 町のインフラも復旧しましたが、我々は、阪神・淡路大震災の記憶を風化させることなく、大震災から得た教訓や経験を生かし、これからの災害対策、国土強靱化に取り組んでいかなければなりません。

 また、三月十一日には、東日本大震災の発生から四年の歳月が過ぎることになります。

 総理は、被災地の心に寄り添う現場主義の方針で、最重要課題として、政府一丸となって復興を推し進めてこられました。

 しかしながら、この間、津波被災地域を中心に復興の道筋が見えつつある一方で、今なお、約二十三万人もの方々が仮設住宅等で避難生活を送っています。また、福島県の原子力事故災害被災地域については、ようやく本格復旧に入れる見通しが出てきたところです。

 折しも、二十七年度は、復興期間十年の前半五年、いわゆる集中復興期間の最後の年度に当たります。

 この大切な一年間を通じ、いかにして、被災地の方々の暮らしに安心を取り戻し、なりわい、産業を再生させ、新たな希望に満ちた東北につなげていかれるのか、総理のお考えと決意を伺います。

 十五年も続いたデフレからの脱却を図るため、総理は、就任以来、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を三本の矢とするアベノミクスによって、日本経済再生に取り組んでこられました。

 その結果、日本経済は自力で回復軌道に乗る環境が整い、株価は上昇し、企業は新たな投資資金を得て、個人消費も拡大しました。

 同時に進んだ円安により、輸出拡大と国内設備投資増への期待が高まり、有効求人倍率は二十二年ぶりの高水準、名目雇用者報酬が高い伸びとなるとともに、企業の経常利益は過去最高水準、倒産件数は二十四年ぶりの低水準等、経済は着実に上向いています。

 きょう発表されました十月―十二月期のGDPは、名目年率プラス四・五%、実質二・二%という高い伸びが示されております。

 総理みずからが経済界に対して賃上げを要請する等、政府の本気の取り組みが経済を後押ししていることも疑いありません。

 こうしたアベノミクスの恩恵は、大都市や大企業のみならず、中小・小規模事業者や地方にも届き始めており、成果が徐々にあらわれていますが、さらに、経済の好循環をより確かなものとし、景気回復の実感を全国津々浦々に行き渡らせ、日本経済、地域経済を再生していかなければなりません。

 そのための経済対策が、先般成立した補正予算や二十七年度予算にも措置されています。まずは、補正予算を早期に執行し、効果を最大限発現させていかなければなりません。

 改めて、経済再生に向けた総理の決意を伺います。

 安倍内閣の課題として、総理は地方創生を掲げられています。

 我が国は、世界に先駆けて人口減少・超高齢社会を迎え、今後東京への一極集中がますます進んでいくのではないかとの予測が、地方にさらに大きな不安を与えています。地方創生とは、まさにこの問題に対する答えを見出すことであります。

 昨年末、まち・ひと・しごと創生長期ビジョンが閣議決定され、日本の人口の現状と将来の姿、並びに今後目指すべき将来の方向が示されました。これを実現するため、今後五カ年の目標や施策の基本的な方向、具体的な施策を提示する、まち・ひと・しごと創生総合戦略が閣議決定されております。

 本年を地方創生元年と位置づけ、国、地方が連携し、知恵を絞って地方創生実現に動き出さなければなりません。

 どうやって地方に若者の雇用を創出するのか、地方へ新しい人の流れをつくるのか。若い世代の結婚、子育ての希望を実現し、出生率を向上させるために何をするべきなのか。時代に合った地域をどうやってつくるのか。国がこれらの課題にどのように向き合っていくのか、地方は総理に大きな期待を寄せております。

 地域に埋もれた資源を最大限に生かし、地域の知恵を最大限に活用することが、今般の地方創生の鍵となります。国と地方が、国民とともに、基本認識を共有しながら総力を挙げて取り組むことが、地方創生には最も重要であると考えますが、総理に決意を伺います。

 総理は、経済再生と財政健全化の両立を実現することに強い決意を示されています。その決意は、二十七年度予算でも顕著であります。

 新規国債発行額は前年度から四・四兆円程度の大幅な減額となり、公債依存度は三八・三%と二十一年度予算以来の三〇%台に低下しました。この結果、国、地方を合わせた基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランスの赤字を二〇一〇年度比で半減するという目標は達成できる見込みであります。

 今後は、二〇二〇年までの黒字化達成と債務残高の対GDP比の安定的な引き下げに向け、将来にわたる財政の信認を確保するためにも、歳出の徹底的な削減や抑制等にさらに取り組まなければなりません。

 社会保障制度も聖域ではありません。

 二十七年度予算においては、社会保障の充実に重点が置かれ、消費税率八%引き上げの増収額八・二兆円を基礎年金国庫負担割合二分の一の財源に充てることはもとより、待機児童の解消や女性が働く環境の整備、子ども・子育て支援、医療従事者確保、介護職員の処遇改善といった社会保障制度の充実、改善に充てております。

 その一方で、介護報酬の引き下げにより介護給付費全体の増加を抑えることで介護保険料の上昇を抑制することや、生活保護の適正化を行う等、社会保障の自然増を見直しております。

 二十七年度予算では、国債の利払いや債務償還費を除いた政策経費で歳出割合が最も大きいのは社会保障費の三二・七%であり、この割合は増加傾向にある一方、それ以外の地方交付税交付金一六・一%、公共事業六・二%、文教・科学振興五・六%、防衛五・二%等は、総じて見れば、減少または横ばい傾向にあり、効率化されております。

 つまり、毎年ふえる社会保障費をどのように抑制していくのかが、財政健全化を図るためには重要であることは明らかであります。

 毎年ふえる社会保障費を抑制しつつ、持続可能な社会保障制度を確立していくためには、サービスの質を確保、向上しながら、給付の重点化、効率化を進めることが何よりも重要であります。都道府県を中心とする医療提供体制改革、医療費、薬剤費適正化の一層の推進、年齢にかかわらず負担の公平化を図る見直し等、課題は多いと考えます。

 医療・介護分野を成長産業の柱に発展させていくとともに、現役世代、さらには将来世代が過重な負担から解き放たれるために改革を不断に進めていくことが、財政健全化に資するとともに、あすの我が国の活力のために重要と考えます。

 我が党も、稲田政務調査会長のもとに財政再建に関する特命委員会を設置し、六月にも考え方を取りまとめる予定であります。政府は、今夏までに財政健全化計画を策定するとしていますが、計画の早期策定と社会保障制度改革に向けた総理の決意を伺います。

 また、財政健全化と持続可能な社会保障制度の確立には、消費税率の引き上げが必要不可欠であります。アベノミクスの成功を確かなものとし、消費税率引き上げに向けた環境を整え、一年半後の平成二十九年四月に消費税率一〇%引き上げを確実に実施するという、総理の決意も伺います。

 全ての女性が輝く社会の実現は、安倍内閣の重要課題の一つであります。

 女性の置かれている状況はさまざまであり、直面している課題は多岐にわたります。女性の希望に応え、多様な生き方ができるような環境を整えていくことで、全ての女性が日々の暮らしに生きがいや充実感を持って家庭、地域、職場で輝くことができる社会が実現します。

 しかしながら、このような社会づくりは、女性だけが変わればできるのではなく、男性の意識変化がなければ実現不可能であります。男性が変わるからこそ女性が活躍できる社会が実現するのであり、まず先に変わるべきは男性であるということを男性は理解しなければなりません。

 男女ともに、従来の価値観を脱却した新たなライフスタイルの構築が、女性活躍を推進していくためには必要と考えますが、総理の御見解を伺います。

 総理は、今国会を改革断行国会と位置づけ、規制改革の実現に大変強い意欲を示されています。

 規制改革は、アベノミクス三本目の矢である成長戦略を担う看板政策であります。規制改革によって、民間の創意工夫を拒む壁を取り除くことで、新規事業参入を促進させ、イノベーションを喚起し、国民の潜在的需要を開花させていくことは極めて重要な課題であります。

 規制改革の中でも、医療、雇用、農業、エネルギー分野の改革は喫緊の課題です。

 しかしながら、国民には、何のための改革なのか、十分に理解されていないのが現状であり、誤解も生まれております。何が問題で、どこを改革すればどのような成果に変わる、そのことを丁寧に説明しなければ、国民に理解を得ることは困難であり、改革も実現いたしません。

 与党としても、説明責任を果たすつもりでおりますが、政府においても、国民が納得できるような説明をお願いするものであります。

 改革実現に向けた意義と総理の決意を伺うとともに、以下、具体的に規制改革についてお聞きしますので、その改革の中身と意義について御説明願います。

 少子高齢化に直面する我が国が、病気や介護を予防し、健康を維持して長生きしたいとの国民のニーズに応え、世界に先駆けて健康長寿社会を実現するためには、健康・医療分野での規制改革を進め、ヘルスケア分野を成長産業へと育成していくことが極めて重要であります。

 昨年十一月の再生医療実用化の規制緩和により、再生医療薬が世界で最も早く実用化できるようになり、国内企業に加え、海外のバイオベンチャーの日本への進出が相次いでおります。経済産業省の試算では、国内の再生医療市場の規模は、二〇二〇年には九百五十億円、二〇三〇年には一兆円に拡大するとしています。

 また、今国会で、患者からの申し出を起点として、国内未承認医薬品等を迅速に保険外併用療養として使用できるよう、患者申し出療養(仮称)を創設し、患者の治療の選択肢を拡大する法案の提出を準備しておりますが、これが実現すれば、我が国の医療は世界最先端の水準に高まることも夢ではありません。

 規制改革を通じて、総理は我が国の医療にどのような未来を描かれているのか、お伺いします。

 成長戦略として、働き方改革の実現や、外部労働市場の活性化による失業なき労働移動の実現等、雇用制度改革を掲げています。

 今回、政府は、働き過ぎを防止し、多様なライフスタイルを可能とするワーク・ライフ・バランスを実現するため、一般の勤労者を対象とする、使用者への年休取得の義務づけや、一定の年収条件や特定の高度な専門業務者を対象とした、時間ではなく成果で評価される制度への改革、子育て中の勤労者が働きやすくなるようなフレックスタイム制の改善等、労働時間法制の改正準備を進めています。

 これらの中で特に、成果で評価される制度改革については、おのおのの専門技能や技術、創意工夫によって成果を出せば、時間にとらわれることなく従来と同じ賃金がもらえるようにすることで、働く時間を自由に決めることができるという、柔軟で効率的な働き方を促すことが目的です。

 政府のもう一つの制度改革として、労働者派遣法改正案があります。これは、正社員を望む方にはその道が開かれるよう支援し、派遣という働き方を望まれる方には待遇の改善を図る等、労働者のニーズに応えて多様な働き方の実現を目指すものです。

 国民に誤解をされることなく、安心して働いていただくためには、これらの改革の内容を丁寧に説明する必要がありますが、これらの雇用制度改革を通じて、どのような経済社会、国民生活を目指しているのか、総理の御見解を伺います。

 日本の農業は、農業従事者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の拡大、農業総産出額の減少等、多くの問題を抱えています。

 そのような問題を解決し、農業が成長産業となるために、これまで安倍内閣として、四十年以上続いた米の生産調整を見直し、農業者がマーケットを見ながら、みずからの経営判断で作物がつくれるような環境整備や、農地中間管理機構の整備で農地の集積、集約化を図り、農業経営の法人化や青年の就農を促進する等の改革に取り組んできました。

 その結果、異業種企業の農業関連ビジネスへの参入が増加し、農林水産物、食品の輸出額が過去最高になる等、農業の成長産業化の実現に向けた動きが始まっております。

 今回、政府は、全国農業協同組合中央会を、農協法に基づく特別認可法人から一般社団法人に転換し、また、地域農協には公認会計士による監査を義務づけることなどを柱とした農協改革案を取りまとめました。

 この改革は、まさに、農業者と直接接する地域農協が、国内外での農産物販売等に全力を挙げ、農業者の所得向上を図るために、創意工夫をもって自由に経済活動を行える環境を整備することを目的としたものであります。

 誰のための改革なのか、単なる農協潰しだという御批判もありましたが、あくまで、農業者や地域農協が主役となり、農業を発展させていくための改革であり、そのことを御理解いただければ、誤解や批判も理解と支持に必ず変わるはずであります。

 さらに、農業の発展は、中山間地域の維持発展においても重要であり、地方創生にも資するものであります。

 農業改革の意義と実現に向けた総理の決意を伺います。

 エネルギー分野においては、広域系統運用の拡大、小売参入の全面自由化、送配電部門の法的分離と小売料金規制の撤廃という三段階の電力システム改革のうち、今国会では、第三弾の法案を提出すべく準備が進められています。電力システムの抜本改革により、自分で電力会社を選べ、どのような電気を使うかも決められるようになる等、生活や電力利用が一新されます。

 また、再生可能エネルギーや水素燃料などの次世代自動車、省エネ家電の普及が促されることで、これまでなかった新しい産業や雇用を生み出すことにもつながります。

 また、ガス事業においても、今国会で、ガスの全面自由化に向けたガスシステム改革関連法案の提出も検討されています。

 規制改革を新たな成長に結びつけることは大切ですが、一方で、国民生活と経済、産業を守るためには、電力やガス等のエネルギーの安定供給が極めて重要であり、改革を進めるに当たっては、十分な検証を行いながら、安定的で社会負担の少ないエネルギー供給の制度設計を進めていくべきであります。

 エネルギー改革に向けた総理の御決意を伺います。

 総理は、子供の将来が、その生まれ育った環境によって左右されることのないよう、子供の貧困対策に重点を置いておられます。

 昨年八月には、「子供の貧困対策に関する大綱について」を閣議決定し、子供の貧困率だけではなくて、教育や就職の状況、子供を支援する施策の状況等、子供の貧困に関する二十五の指標を掲げ、その改善に向けた重点施策を取りまとめました。こうした子供の貧困対策に力を入れる総理の姿勢を高く評価いたします。

 こうした対策のためには、民主党政権時に実施された子ども手当のようなばらまきではなく、子供たちのさまざまな生き方や学び方に対応した支援や教育に直結する政策を実施していくことが必要であります。

 また、子供が生きる上で、命を大切にする心や他人への思いやり、善悪の判断等の規範意識をしっかり身につけられるような教育環境を、学校と家庭、地域社会を通じて整えていくことも重要であります。

 総理は、昨年、学校を不登校になった子供たちが通うフリースクールや中学校の夜間教室を視察する等、これまで日の当たることがなかった教育現場にも足を運び、昨今の教育問題に真正面から取り組まれております。

 改めて、教育再生に向けた総理の決意を伺います。

 本年は、戦後七十年の節目となる年であり、総理は談話を出されると表明しておられます。

 この新たな談話について、総理は、記者会見等で、村山総理談話を初め歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として今後も引き継ぐとともに、さきの大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後日本としてアジア太平洋地域や世界のためにどのような貢献を果たしていくのか、世界に発信できるようなものを英知を結集して書き込んでいくと述べられております。

 この総理の考えに対し、過去の総理談話に使用されてきたキーワードの継承を焦点にした論争が展開されておりますが、一番重要なのは、談話に込められる総理のメッセージのはずであります。

 改めて、戦後七十年談話に当たっての総理の思いを伺います。

 政府は、昨年七月一日、新たな安全保障法制整備のための基本方針を閣議決定いたしました。

 我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、あらゆる事態に対して国民の命と幸せな暮らしを断固として守り抜くため、切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を速やかに整備することが必要不可欠であります。

 言うまでもなく、いかなる紛争も、力ではなく、第一義的には国際法に基づき外交的に解決すべきであり、戦後日本の一貫した平和国家としての歩みは、今後も何ら変わることはありません。

 一方で、平素から必要な安全保障法制の整備を行い、かつ、米国を初めとする同盟国、友好国との連携を強化することにより、我が国の抑止力を高め、紛争を未然に防ぐ環境を整えていかなければなりません。

 先般の閣議決定の大きな柱は三点あります。

 第一に、武力攻撃に至らない侵害、すなわち離島に武装集団が上陸したケースなど、平時とも有事とも言えない、いわゆるグレーゾーンへの対処です。

 第二は、自衛隊による国際協力等であり、例えば、他国軍隊への支援活動、PKOでの任務遂行やいわゆる駆けつけ警護に伴う武器使用、在外邦人救出を初め領域国の同意に基づく警察的活動の実施が挙げられます。

 そして第三が、武力の行使に当たり得る活動であり、これには、国際法上、集団的自衛権が根拠となる場合も含まれるとしています。

 閣議決定から半年が経過しましたが、いまだに報道では集団的自衛権という言葉が大きくひとり歩きしております。一部では、将来的には徴兵制が導入されるという、事実とかけ離れた論議すらなされていることもあり、国民の間に誤解や漠然とした不安が根強く存在していることも否めません。

 自衛隊の全ての活動は法律に規定する範囲の中で実施されることから、先般の閣議決定に基づき自衛隊が実際の活動を直ちに行い得ることはなく、政府において必要な法案の準備が整い次第、与党協議を経て、国会に提出されるものと承知しております。

 したがって、与党協議や国会における与野党の論戦等を通じて、改めて政府は丁寧な説明を行い、国民の誤解や不安を払拭することが不可欠であります。

 一方で、我が国をめぐる情勢は日々刻々と変化しており、国民の命と幸せな暮らしを断固として守り抜くためには、一刻も早く必要な法案を成立させることが求められます。

 そこで、改めて総理に、今般の安全保障法制の整備の意義、早期成立に向けた意気込みについて伺います。

 昨年、日朝両政府は、拉致被害者や拉致の可能性がある特定失踪者、戦後に現在の北朝鮮に残された日本人ら、全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施することに合意しました。北朝鮮が特別調査委員会を立ち上げ、第一回目の調査報告が来ることになっていましたが、現在まで何ら報告が来ない状況が続いていることは大変遺憾であります。

 拉致が発生してから四十年近くがたち、拉致被害者の御家族も高齢となり時間も限られつつある中で、政府は、一日も早い拉致問題の解決、被害者の帰国に向けて、引き続き全力で取り組まれると思いますが、総理の決意をお聞かせください。

 我が党は、本年、結党六十周年を迎えます。結党以来、憲法改正を党是として、数次にわたり憲法草案の策定を重ね、平成二十四年には日本国憲法改正草案を発表しております。

 これまで衆参両院の憲法審査会の場においては、各党が憲法に対する考え方を明確に示しつつ論点を整理してまいりましたが、最初の憲法改正においては、衆参両院の憲法審査会での議論をさらに積み重ねることで、国民の間に憲法改正の機運を醸成し、理解を深めてもらい、確実に改正が実現できる環境を整備していくことが、何よりも重要と考えます。

 改正に向けた総理の決意を伺います。

 さきの総選挙で、我が党は、国民の皆様から二回続けて安定多数をいただくことができました。二度の政権交代を経験し、多くの国民は、政治は安定しなければならないと強く感じておられるのではないかと思います。そして、多数を得た今、これまで実現し得なかった大きな仕事ができる環境が整っているのも事実であります。

 その上で大切なことは、この数におごることなく、多様な意見を吸収し、健全な民主主義を育てていくことであります。議論をおろそかにせず、物事を丁寧に進めていかなければなりません。

 実るほどこうべを垂れる稲穂かな。我が党が政権を奪還して二年。多数を得た今こそ、この言葉をかみしめる必要があると思います。

 自由民主党は、世界の中で輝く日本をつくるため、国際競争力を上げ、日本全体のパイをふやし、国民一人一人を強く、豊かにしていく決意であります。

 安倍総理を先頭に、我が国の潜在能力を信じ、国民からいただいた負託に応えるよう頑張ろうではありませんか。

 総力を結集し、最大の力を発揮していくことをお約束し、私の質問とさせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 谷垣禎一議員にお答えいたします。

 テロ対策及び国際社会のテロとの闘いにおける我が国の貢献についてお尋ねがありました。

 政府としては、テロの防止に万全を期すため、国際社会と緊密に連携し、不穏動向の早期把握に向けた情報収集、分析の強化、海外に渡航、滞在する邦人の安全の確保に向けた迅速な情報提供の徹底、テロリストの入国阻止等に向けた関係機関の連携による水際における取り締まりの強化、空港、公共交通機関などの重要施設の警戒警備の徹底などの諸対策を一層強力に推進してまいります。

 国際社会によるテロとの闘いの中において、我が国がテロに屈することは断じてありません。私が中東訪問で発表した人道支援策は、その地域で、住むところがなく、日々寒さに震えながら飢えや病気に苦しむ一千万人以上の避難民や子供たちに食糧や医療物資などを届けるための、命をつなぐ支援です。

 我が国は、最前線で過激主義と対峙している穏健イスラム諸国を支援するため、食糧、医療などの人道支援をさらに拡充し、テロと闘う国際社会において、日本としての責任を毅然として果たしていく所存です。

 さきの総選挙結果を踏まえた今後の決意についてお尋ねがありました。

 さきの総選挙において、私たちは、この道しかないと訴えてまいりました。そして、再び連立与党で三分の二を上回る議席をいただけたことは、引き続きこの道を真っすぐ進んでいけと、国民の皆様から力強く背中を押していただけたものと考えております。

 信任という大きな力を得て、選挙で国民の皆様にお約束をした政策を一つ一つ確実に実現してまいります。国民の負託に応えるため、全力を尽くしてまいる所存でございます。

 同時に、三分の二という議席の重さをかみしめ、今後、国民からより一層厳しい目線が私たちに注がれることを強く意識しなければなりません。私たちが数におごり、謙虚さを失うことがあれば、国民の支持は一瞬にして失われてしまうでしょう。

 これまで以上に緊張感を持ち、政府・与党が一丸となって政権運営に当たっていく考えでございます。

 東日本大震災からの復興についてお尋ねがありました。

 復興の加速化は、安倍政権の最重要課題です。

 例えば、被災地での住宅再建は、累次の加速化策により進展し、高台移転は九割、災害公営住宅は八割の事業が始まっております。

 平成二十七年度予算においても、復興の加速化に重点化しております。

 具体的には、住宅再建と復興まちづくり、町のにぎわいを取り戻すための産業、なりわいの再生、被災者の心身のケアなど、復興を進める上でのさまざまな課題に対応することとしております。

 まずは、この予算の成立に全力を尽くしてまいります。

 被災地の復興なくして日本の再生なし。

 閣僚全員が復興大臣であるとの意識を全閣僚で共有し、集中復興期間の最終年度である二十七年度までに復興を最大限加速させるよう、引き続き、全力で取り組んでまいります。

 経済再生に向けた決意についてお尋ねがありました。

 この二年間、全力で射込んできた三本の矢の経済政策により、御指摘のとおり、確実に経済の好循環が生まれ始めています。

 他方、昨年四月の消費税率引き上げ等の影響で個人消費等に弱さが見られ、景気の回復の実感が地方に暮らす方々や中小・小規模事業者の方々に届いていないのも事実であります。

 ただ、足元では、街角の景況感が多くの地域で改善するなど景気回復の兆しも見られており、こうした兆しを景気回復の確かな実感につなげるため、今般、個人消費のてこ入れと地方経済の底上げを図る力強い経済対策を策定し、これを実行するための平成二十六年度補正予算が成立いたしました。

 本補正予算を迅速かつ着実に実行し、景気回復の実感を全国津々浦々に届けてまいります。

 地方創生の決意についてお尋ねがありました。

 地方創生は、地域に眠るさまざまな資源や可能性を最大限に開花させ、若者を引きつける、個性あふれる地方をつくり上げる取り組みであり、国と地方が総力を挙げて緊急に取り組むべき課題であります。

 やる気のある地方の創意工夫を全力で応援する、この方針に基づき、雇用の創出、人の移住、定住、安心して暮らせるまちづくりの実現を目指した地方の取り組みを支援してまいります。

 昨年末に取りまとめた総合戦略に基づき、意欲あふれる地方の取り組みに対し、予算、税制、人材等のあらゆる方策を使って全力で後押ししてまいります。

 財政健全化と社会保障制度改革、消費税率引き上げに向けた決意についてお尋ねがありました。

 二〇二〇年度の財政健全化目標はしっかりと堅持し、その目標達成に向け、デフレから脱却し、経済再生により税収をふやす、無駄削減など徹底した行財政改革もしっかりやるなど、歳出歳入両面にわたり取り組んでまいります。本年夏までに、目標達成に向けた具体的な計画を策定いたします。

 また、世界に冠たる社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくため、社会保障改革プログラム法に沿って、受益と負担の均衡がとれた制度へと不断に改革を進めます。

 その上で、我が国の社会保障制度や財政に対しての信認を確保するためにも、平成二十九年四月の消費税率一〇%への引き上げについては、景気判断条項を付すことなく、確実に実施します。そして、賃上げの流れを来年の春、再来年の春と続け、景気回復の温かい風を全国津々浦々まで届けてまいります。

 これらの取り組みによって、経済再生と財政再建、社会保障改革の三つを同時に達成してまいります。

 女性活躍推進についてお尋ねがありました。

 全ての女性が輝く社会を実現するには、仕事と生活の調和を目指すなど、男性を含めた社会の意識改革が不可欠であります。

 安倍内閣では、男性の家事、育児への参加を促進するため、これまで、育児休業給付の実質八割までの引き上げなど、取り組みを進めてまいりました。さらに、長時間労働の抑制や、年次有給休暇を確実に取得できるような仕組みづくりなど、働き方改革を進め、新たなライフスタイルの構築により女性が生き生きと活躍できる社会の実現を目指してまいります。

 規制改革実現に向けた意義と決意についてお尋ねがありました。

 戦後七十年を迎え、国際情勢や我が国の経済社会構造が大きく変化する中、これからも日本の大切な文化や伝統を守り、世界の中心で輝く国にしていくためには、勇気を持って改革していかなければなりません。大胆な規制改革によって、民間のダイナミックな創意工夫の中から多様性あふれる新たなビジネスが生まれる、これは私の成長戦略の鍵です。改革のための改革は厳に慎まなければなりません。

 これまで、できるはずがないとされてきた多くの改革を次々と決断してきました。例えば、約六十年間独占が続いてきた電力小売市場の完全自由化、六十年ぶりの農協の抜本改革、患者本位で治療の選択肢を拡大する新たな制度の導入などです。

 今通常国会を改革断行国会と位置づけ、農業、雇用、医療、エネルギーなど、岩盤のようにかたい規制に対し、強い決意を持って改革を断行してまいります。あわせて、改革の意義を国民の皆様に丁寧に説明してまいります。

 医療分野の規制改革についてお尋ねがありました。

 iPS細胞等を用いた再生医療等製品については、昨年十一月、その特性を踏まえて新たな制度を施行し、条件や期限を付して早期に承認することを可能とし、より早く患者にお届けできるようにしました。

 また、患者からの申し出を起点として、世界最先端の医療について、安全性、有効性を確認しつつ、身近な医療機関で迅速に受けられる患者申し出療養を創設することとし、必要な法案を今国会に提出します。

 こうした規制改革の取り組みを通じ、医療関連分野を経済成長の活力とし、また、困難な病気と闘う患者の皆さんの思いに応える患者本位の医療を実現してまいります。

 雇用制度改革についてお尋ねがありました。

 政府が検討を進めている労働時間制度の見直しは、ワーク・ライフ・バランスの観点から、働き過ぎを是正するとともに、多様で柔軟な働き方を進めるものです。

 このため、企業に対し、働く人の意見を聞いて休暇を指定することの義務づけや、働く時間を調整し、より柔軟な働き方を可能とするフレックスタイム制の見直し、グローバルに活躍する高度専門職として働く人について、時間でなく成果で評価する新たな制度の導入などを検討しています。

 また、提出を予定している労働者派遣法改正案においては、正社員を希望する派遣労働者について、正社員への道が開けるようにするとともに、みずからの働き方として派遣を積極的に選択している方については、待遇の改善を図ることとしています。

 安倍内閣としては、これらの雇用制度改革を通じ、働きたいと希望するあらゆる人が、ワーク・ライフ・バランスを確保しながら、生きがいを持って社会で活躍の場を見出すことのできる社会を目指してまいります。

 農業改革についてお尋ねがありました。

 農業は、日本の美しいふるさとを守ってきた国の基であり、一方で、我が国の農業の活性化は待ったなしです。

 農業の成長産業化を図るため、安倍内閣では、農地集積バンクの創設、輸出、六次産業化の推進、米の生産調整の見直しなど、農政改革に力を注いできました。

 さらに、今般、意欲ある農業の担い手が活躍しやすい環境となるよう、農協、農業委員会、農業生産法人の三つの改革を一体的に行います。

 特に農協改革については、意欲ある担い手と地域農協が力を合わせ、創意工夫を発揮して、ブランド化や海外展開など、自由な経済活動を行うことにより、農業者の所得向上に全力投球できるようにします。

 政策を総動員して改革を進め、消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていけば、地域における農業の可能性は広がり、農家の所得もふえていきます。強い農業と美しく活力ある農村を実現できると確信しております。

 エネルギー改革についてお尋ねがありました。

 エネルギーの安定供給、エネルギーコスト低減の観点も含め、責任あるエネルギー政策を構築していかなければなりません。

 そのため、最終段階に入った電力システム改革をやり遂げるとともに、ガス事業でも小売を全面自由化し、あらゆる参入障壁を取り除いてまいります。

 同時に、この改革は、これまで長年続いてきた仕組みを変えるという大変難しい改革であるからこそ、さまざまな課題を検証し、克服しながら進めていくことが必要です。

 国民生活や日本経済の生命線である、低廉で安定したエネルギー供給を実現するため、万全の準備を行いながら、競争的でダイナミックなエネルギー市場をつくり上げてまいります。

 教育再生への決意についてお尋ねがありました。

 子供たちの誰もが、自信を持って学び、成長できる環境をつくる、これは私たち大人の責任です。

 いじめなどで学校に行けなくなっている子供たちがいます。その現実から、私たちは目を背けてはいけません。そのような思いから、昨年、都内のフリースクールを視察しました。

 そこには、困難を乗り越え、将来に向かって、夢を持ち、頑張る子供たちの姿がありました。さまざまな生き方、学び方があることを、私は、これからも全国の子供たちに伝えていきたいと思います。

 また、子供の貧困は、頑張れば報われるという真っ当な社会の根幹にかかわる深刻な問題です。子供たちの未来が、家庭の経済事情によって左右されるようなことがあってはなりません。

 このため、フリースクールなどでの学びの支援や、小中一貫校の設立、道徳教育の充実、幼児教育、高校、大学での教育費負担の軽減などに取り組んでまいります。

 子供たちには無限の可能性が眠っており、それを引き出す鍵は教育の再生です。誰にでもチャンスがある、そしてみんなが夢に向かって進んでいける社会をつくるため、引き続き、教育再生に全力で取り組んでまいります。

 戦後七十年の談話についてお尋ねがありました。

 安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えであります。戦後七十年の談話は、それを前提として作成するものです。

 談話の内容については、さきの大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後日本としてアジア太平洋地域や世界のためにさらにどのような貢献を果たしていくのか、次の八十年、九十年、百年に向けて日本はどのような国になっていくのかについて、世界に発信できるようなものを英知を結集して考え、新たな談話に書き込んでいく考えです。

 まずは、有識者会議を早期に立ち上げ、二十一世紀の世界のあり方、その中で日本が果たすべき役割等について大いに議論していただき、政府として検討していきたいと考えております。

 安全保障法制の整備についてお尋ねがありました。

 我が国を取り巻く安全保障環境は大きく激変しております。もはや、どの国も一国のみで平和を守ることはできません。いかなる事態にあっても国民の命と幸せな暮らしは断固として守り抜く、そして、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献していく必要があります。

 安全保障に想定外は許されません。グレーゾーン事態から集団的自衛権にかかわる事態まで、あらゆる事態に切れ目のない対応ができる安全保障法制の整備が不可欠です。

 ただし、海外派兵は一般に許されないという従来からの原則は一切変わりません。また、徴兵制は明確な憲法違反であり、いかなる場合であっても導入する余地はありません。

 引き続き、与党と御相談しながら万全の法案準備を進めるとともに、国民の皆様の御理解を得る努力を続け、今国会における成立を図ってまいります。

 拉致問題についてお尋ねがありました。

 拉致問題は、安倍内閣の最重要課題です。

 御指摘のとおり、被害者の御家族も御高齢になられ、一刻も早い解決が求められています。

 政府としては、引き続き、北朝鮮が調査を迅速に行い、その結果を速やかに、かつ正直に通報することを強く求めています。

 御家族がみずからの手で被害者を抱き締める日が訪れるまで、私の使命は終わりません。全ての拉致被害者の帰国に向けて、対話と圧力、行動対行動の原則を貫き、全力を尽くしてまいります。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 自由民主党は、立党以来、憲法改正を主張しており、三年前、まさに当時の谷垣総裁のもとで憲法改正草案を発表し、二十一世紀にふさわしい、あるべき憲法の姿を広く国民に示し、憲法改正を正面から訴えてまいりました。

 今後、憲法審査会などの場においてしっかりとした議論を行うことにより、新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、国民的な議論をさらに深めてまいりたいと考えております。

 この議論の深まりを踏まえて、私としては、しっかりと、着実に憲法改正に取り組んでまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 江田憲司君。

    〔江田憲司君登壇〕

江田憲司君 維新の党代表、江田憲司でございます。(拍手)

 シリアにおける邦人拘束事件は、悲しいことに、最悪の結果となりました。亡くなられたお二人の御冥福をお祈りし、御家族の皆様に衷心よりお悔やみを申し上げます。

 こうした残虐非道な蛮行を断じて許すわけにはいきません。テロにも絶対に屈してはいけません。

 しかし、政治は結果責任です。今回、なぜ人質の救出ができなかったのか。安倍総理には、虚心坦懐に一連の対応を検証し、国会に報告されることを求めます。政府は身内だけで検証作業を開始したようですが、重要なことは、第三者による客観的な検証です。そして、それを今後のテロ対策に生かしていくことです。

 さて、安倍総理、今、日本に一番求められているものは何でしょうか。それは、新陳代謝、イノベーションです。

 古い細胞を排出して新しい細胞をつくる、そうして人間の体も成長していきます。国も同じです。非効率な産業分野から、人、物、金を新しいフロンティア、成長分野にシフトさせていく、これこそが国の新陳代謝、イノベーションです。そうすれば、少子高齢社会の重圧と国際大競争時代の荒波にさらされている日本の将来を必ず切り開いていくことができるでしょう。

 そして、それを担うのが、民間の活力と地域の底力なんです。だからこそ、大胆な規制改革を断行し、わざわざ民間活力をそいでいる手かせ足かせ、官僚統制を取り払い、その能力を最大限に発揮させる、さらには、基礎自治体、市区町村に徹底的に権限、財源を国から移譲し、地域のことは地域で決める、そして、地域の強みを見出し、その可能性を伸ばしていく。

 維新の党は、こうした新陳代謝、イノベーションを、利権圧力団体、既得権益に一切依存しない、全くしがらみのない立場から断行してまいります。

 この維新の大改革は、しかし、あの冷たい改革と言われた小泉改革とは違います。経済政策では、確かに市場主義、自由主義を基本としますが、社会政策では、その負の側面に配慮し、失業者の発生や格差拡大には手厚いセーフティーネットを張ります。

 例えば、衰退産業には市場から退出をしていただきますが、そこから出た失業者には、北欧諸国で行われているような職業訓練、次の就業機会の確保などの施策を講じます。低所得者向けには、給付つき税額控除や生活保護と基礎年金などをシームレスにつなぐ最低所得保障の制度導入も目指します。

 こうした維新の考え方をベースに、アベノミクスを検証してまいります。大事なことは、景気が本格的に回復し、現実に給料が上がり、国民生活が安定していくことです。

 アベノミクス、その方向性自体には、維新の党は賛成です。しかし、考えてみれば、それは、これまで歴代政権などが取り組んできた政策を一つのパッケージにまとめたという意味はあるものの、その政策自体に新味はありません。

 唯一ありそうなのが、第一の矢、大胆な金融緩和、物価安定目標の設定ですが、これも、安倍政権が誕生する三年以上も前、みんなの党が結成されたときのマニフェストに書かれていたことです。旧日本維新の会も掲げました。当時は、珍説、奇説の類いと批判されたものですが、それを安倍総理が採用された。その結果、株価も上がり、円高も是正され、失業率も下がった。そこは率直に評価したいと思います。

 しかし、この金融緩和は、カンフル剤でしかありません。何本も打つものではありませんし、打っても、その効果は減殺されていきます。問題の根本的解決にもつながらない。昨年秋の二本目のカンフル剤は、増税失敗の影響緩和というやむを得ない事情はあったものの、今後、三本、四本と打っていくと、副作用、弊害も出てきます。

 総理、こうした金融緩和が行き過ぎた場合の弊害を具体的にどう認識されていますか。

 デフレ脱却、本格的な景気回復には、お金だけではなく、物、サービス、すなわち実体経済を動かしていく必要があります。金融緩和というカンフル剤で一時的に体はしゃきっとしますが、体質改善は、手術をしなければ実現できません。その意味で、第二、第三の矢が重要となってきます。

 その第二の矢、機動的な財政政策は、当たり前の政策です。しかし、残念ながら、この第二の矢は、あらぬ方向に飛んでしまった。そう、端的に言えば、公共事業のばらまきに堕してしまったんです。

 ここ数年、決算ベースで、公共事業は、例年の二倍、年十兆円にまで膨れ上がっています。しかし、そのうち二から四兆円を使い残している。一体、何のための消費増税だったんでしょうか。余りのばらまきに消化不良を起こしている公共事業に頼っていても、景気浮揚は望めません。政府は、表向き認めていませんが、やはり国土強靱化と称して、十年間で二百兆円もの公共事業をばらまくんじゃありませんか。

 総理、経済最優先とおっしゃるなら、もっと国民の懐を暖める政策、家計を潤す分配政策が必要不可欠でしょう。

 あれだけ我々が警告したのに、昨年四月、消費増税を断行し、国民経済の六割を占める消費が落ち込んでしまった。せっかく、それまではデフレからの脱却が進みつつあったのに、今や、直近の統計で、デフレギャップは十五兆円にまで拡大してしまいました。

 これを埋めなければならないのに、来年度予算、補正予算とも、消費を喚起する政策、予算が余りにも少ない。

 例えば、本予算では、低所得者に六千円、子供一人当たり三千円を給付することになっていますが、この予算額がたったの二千三百億円。補正予算で講じた、商品券などを交付する二千五百億円を合わせても、五千億円程度でしかありません。商品券の効果も、過去の地域振興券の例からして乏しい。

 加えて、増税先送りを口実に、七百九十万人の低年金生活者への月五千円の給付金や保険料納付期間を二十五年から十年に短縮する措置は見送られました。公共事業に何兆円も余らせる余裕があるのなら、なぜ、これら見送り分、せいぜい二千億円程度の財源が捻出できなかったのでしょうか。

 ここは思い切って、三・五兆円の補正予算全額を消費喚起策に充てるぐらいの大胆さがあってもよかった。

 例えば、商品券ではなく、使途限定の保育バウチャーを子育て世帯に、福祉バウチャーをお年寄りに直接交付する。そして、そのバウチャーを持って利用者が施設を選べるようにすれば、事業者間の競争で、サービスの質も向上する。一挙両得です。総理、いかがでしょうか。

 なお、一〇%消費増税先送りの際、一七年四月からの増税は景気条項なしで必ず実施とされたのはいただけません。

 総理は、今国会でも、経済は生き物であり、計画経済のようにがちがちに固めていくと、結果、かえって悪くなることもあると述べられました。全くそのとおりですよ。財政運営も、時々の状況変化に応じて、適時適切に経営判断するのが基本です。

 維新の党も、将来の増税を否定するものではありませんが、これでは、昨年の増税失敗の反省が全くありません。御再考ください。

 そして、アベノミクスの一番の問題が、成長戦略、第三の矢が飛んでいないことです。

 維新の党は、その一丁目一番地が規制改革と地域主権改革、分権改革だと位置づけています。そう、安倍総理もおっしゃったように、これはもう、要は、やるかやらないか、行動なんですよ。しかし、これまでの自民党政権でできなかったことが、どうして安倍政権ならできるのか、ここがポイントです。

 規制で守られた人たちから票や金をもらい、中央集権のもとで甘い汁を吸ってきた官僚に支えられている自民党に、本当に規制改革や地域主権改革ができるのか。これは、人間の本性、人間社会の根源的な問題にもかかわるところです。

 だからこそ、ここに維新の党ありなんです。古いしがらみや既得権益から全く無縁の維新の党だからできる本当の改革、実のある改革、それが規制改革であり、地域主権改革なんです。

 安倍総理のおっしゃるとおり、単なる批判の応酬からは何も生まれません。維新の党は、しっかり対案を示しながら総理の言う改革についてただしてまいりますが、それにしても、総理、戦後以来の大改革とは、大見えを切られたものです。

 戦後の改革とは、戦争放棄、国民主権の確立、教育の民主化、農地解放、財閥解体といった、国の形を根底から変える改革でした。残念ながら、総理の改革は、とてもその域には達していない。はっきり最初に申し上げておきます。

 さて、規制改革です。農業や医療、福祉、電力、エネルギーといった日本の将来を切り開く成長分野ほど、規制でがんじがらめ。この民間活力をそぐ手かせ足かせを外していかなければなりません。

 まずは、農業改革、農協改革です。

 維新の党は、農業は守るが農協は守らない。農業を輸出成長産業にする、そのために頑張る農家、特に専業、主業農家は支援する。これが基本的な方針です。

 今、JA全中の監査権の廃止ばかりがクローズアップされていますが、この程度の組織いじりのどこが農政の大改革なのか。大改革とおっしゃるのなら、実際に農業の将来を切り開いていけるだけの中身がなければ意味がないでしょう。

 全中の監査権を廃止しても、それをそのまま監査法人に衣がえし、身内のお手盛り、なれ合い監査は続けるんでしょう。監査権は総合調整権と名前を変え、かえって全中は何でもできるようになる。そして、自民党の選挙マシン、都道府県の中央会には手をつけず、見事に温存です。こうしたいつもながらの自民党のお家芸、看板のかけかえやお化粧直しで、日本の農業の危機的状況が打開できようはずがありません。

 地域の農協の創意工夫が重要だと言うなら、同じ地域に第二農協、第三農協の設立を促し、競争させた方がはるかに効果的でしょう。あえてよそ者を入れる、異業種連携、融合から新しい知恵は生まれてくるんですから、農業生産法人の要件緩和はもちろんのこと、株式会社にも農地所有を認める。お年寄りや若者も、最近は地方に行って農業をしたいという人もふえているんですから、どんどん受け入れる。これは農家の担い手不足解消にもなります。

 そのためには、地の人で固めてよそ者を入れたがらない農業委員会の改組も必要です。農業委員会は別名転用委員会とも言われ、その転用期待が農地の集約、大規模化が進まない阻害要因にもなっています。こうした、いわば平成の農地解放を断行すべきだと考えますが、総理の見解を求めます。

 農協改革を言うなら、今やメガバンク並みになった金融部門を農協から分離し、金融庁の監督下に置いて、他の金融機関との公正な競争を促すべきでしょう。JAバンクや共済による収益が農協の本来事業を支えているという構図は、あたかも民営化前の郵政三事業と同じです。

 さらに言えば、農協の正組合員四百六十一万人より准組合員、非農家五百三十六万人の方が多いという現状は、どう考えても法の趣旨を逸脱しています。

 独禁法の適用除外や税の優遇も、農協が農業者の協同組織だからこそであり、准組合員の利用制限も含め、その抜本的な是正策は避けて通れないでしょう。総理、それとも、農協や自民党内の抵抗勢力を恐れて手をつけませんか。

 また、政府は食料自給率の向上を目指しているんですから、減反も本当に廃止して、米をどんどんつくればいいじゃありませんか。政府は減反廃止を言いますが、その実は、形を変えた減反政策の継続、名ばかり廃止です。

 確かに、国が音頭をとって生産目標を配分する制度は一八年度に廃止されますが、米以外の作物に転作する奨励金を増額して、実際には米の減反を促す。こうした需給調整で米の値段を高どまりさせて農家の所得を維持する、いや、補助金、税金でふやす。損をするのは高い米を買わされる国民、消費者という、いつもながらの図式です。

 日本の米はおいしくて安全、海外でも飛ぶように売れています。減反という需給調整を本当になくせば、米の値段はさらに下がり、もっと輸出できるようになるでしょう。

 ただ、その分だけ農家の所得は下がる、そこは税金で一時的に直接支払いをしてもいい。頑張る農家は支援する、欧米では当たり前のことです。そして、七七八%もの関税は段階的に廃止をしていく。

 総理、この数十年間、日本の農業は、ウルグアイ・ラウンド対策費で六兆円の税金をばらまいても、米に異常な高関税をかけても、衰退の一途をたどってきました。その間、岩手県分の農地が失われ、滋賀県分の耕作放棄地がふえた。そして、農家の平均年齢は、今や六十六歳です。このまま自民党の保護農政を続けていたら、確実に日本の農業は壊滅してしまいます。

 総理、発想を抜本的に転換して、維新の党が提案をする真の農政の大改革を断行して、ともに日本の農業の将来を切り開いていこうじゃありませんか。

 電力の自由化も重要です。

 発送電を分離して送電線を自由に使わせる。そうすれば、電力分野にさまざまな会社が参入してきます。欧州のように消費者が電力会社を選べるようになる。そして、競争で電気料金も下がっていくことでしょう。

 さきの原発事故から得られた教訓は、計画停電が不可避であったように、原発のような大規模集中電源が電力の安定供給にはかえって資さないということでした。原発の安全神話が崩れたと同時に、安定供給神話も崩れたんです。

 これからは、地域分散型の小規模電源こそが、いざというときのリスクを分散し、電力の安定供給を担っていく。そのためにも、可及的速やかに発送電の分離を進めなければなりません。

 また、都会に比べて地方に行くほど、風力や太陽光のポテンシャルがある。太陽光パネルを置ける土地もあるし、海岸線を中心に風が強い。それを活用して地産地消の電力会社が雨後のタケノコのようにできれば、そこに雇用が生まれ、給料が払われ、税収が上がり、地域おこしにもなります。そう、地域創生のためにも電力自由化が不可欠なんです。

 そこで、総理に伺います。

 報道では、二〇二〇年に発送電を分離し、その方式は持ち株会社方式と伝えられていますが、事実でしょうか。送電線を電力会社から分離しても、相変わらずその影響下にある方式では、こうした新規参入が十分に行われません。欧州のような所有権分離が理想ですが、それが私的財産権の関係で難しいなら、米国のように、少なくとも送電部門を公正中立な独立系統運用機関に任せる方式を採用すべきではないですか。

 維新の党は、こうした電力の自由化を進めていけば、もう安くもない安全でもない原発は自然に市場で淘汰されると考えています。いわゆる原発フェードアウトです。

 総理は、米国エネルギー省の公式データでは、原発は既に、太陽光を除き一番高い電源だということを御存じですか。原発が九・六一セント・パー・キロワットアワーであるのに対し、最新鋭の天然ガス火力が六・四四セント、温暖化対策にもなるCO2貯留型の天然ガス火力でも九・一三セントです。以下、風力八・〇三セント、水力八・四五、石炭火力九・五六セントです。

 日本の原発が安いとされてきたのは、本来算入すべきコストを算入してこなかったからです。総理、それでも原発は他の電源に比べて安いと強弁されますか。そうなら、米国エネルギー省のデータをどう理解されてのことですか。

 総理は、原発依存度を可能な限り低減させるとしながら、原発は重要なベースロード電源とも位置づける。矛盾していませんか。原発の再稼働に向けた手続を着々と進めておられるようですが、原子力規制委員長ですら、基準への適合は審査したが、安全だとは言わないとしている川内原発を初め、どうして急いで既存原発を動かすのですか。三十キロ圏内の地元同意はとれたのですか。避難計画は万全ですか。核のごみの最終処分場は決まったのですか。安全だという責任は最終的に誰が負うのですか。それぞれお答えください。

 次に、雇用法制です。

 働く者のライフスタイルや意識の変化などに応じて働き方の多様性を認めていく、経済の新陳代謝を促すために雇用の流動性を高めていくという基本的方向には、維新の党は賛成です。しかし、一方、それは、働く者の立場を守る、しっかりとしたセーフティーネットを張る、そうした仕組みづくりと表裏一体だと考えています。

 政府は、時間ではなく成果に賃金を払う脱時間給の導入を柱とする労働基準法の改正案を今国会に提出されるようですが、そうなら、一方で、長時間労働、過労死を防ぐ対策も欠かせません。また、労働力人口が二〇三〇年には今より九百万人減少するという中で、労働生産性を高める努力も必要不可欠です。

 日本の賃金体系は、ざっくりと言えば、基本給は年功給、残業代は時間給というものですが、こうした働き過ぎ防止という観点、少子化時代の労働生産性向上という観点からの雇用法制のあり方について、総理の所見を伺います。

 また、労働者派遣法改正案については、働く者が望む限り、派遣も含めて働き方の選択肢が広がるのはいいことですが、重要なのは、いわゆる正規と非正規の間に、賃金、待遇の面で大きな格差があることです。

 維新の党は、さきの臨時国会に同一労働同一賃金を定める法案を提出しましたが、総理のお考えを伺います。

 維新の党が目指すもう一つの新陳代謝、イノベーションには、地域主権改革、市区町村に徹底的に権限、財源を移譲する道州制の導入があります。これこそが、中央集権体制を打破する、戦後以来の、いや、明治維新以来の大改革です。そして、その象徴的なプロジェクトが大阪都構想なのです。

 安倍総理は、この構想について、二重行政の解消と住民自治の拡充という目的は重要、政府としては、住民投票で実施の意思が示された場合には、必要な手続を進めていくとされています。

 総理、引き続きこの移行プロセスに賛同していただけますね。

 大阪都構想には、東京と大阪、その二大エンジンで日本の成長を引っ張っていく、東京一極集中の是正と日本の新たな成長像を示すという意義もあります。五特別区には、東京二十三区以上の中核市並みの権限、財源が与えられます。

 また、大阪都構想には、民間でできることは民間にという方針もあります。その一環として、大阪市では、地下鉄、バス、上下水道等の民営化を進めようとしていますが、大阪市議会、自民党の反対で実現していません。公共施設の民間による運営は、安倍総理の成長戦略の大きな柱の一つでしょう。

 そこで伺いますが、地下鉄は民営化しても施設自体は残るので、地方自治法二百四十四条の二第二項の特別決議を要する施設の廃止には当たらないと解しますが、いかがですか。当たるのであれば、通常決議で民営化できる法改正を求めます。

 安倍政権になって、こうした地域主権改革に消極的なのが残念でなりません。自民党が野党時代に策定した道州制基本法案は先送りされ、道州制特区に指定された北海道に移譲された権限は、商工会議所定款の一部変更認可や鳥獣保護法の麻酔薬使用許可といった瑣末なものばかり。政府が先月閣議決定した地方分権改革の対応方針も、全く不十分です。総理の反論を聞かせてください。

 あの大震災から四年近くがたちました。しかし、いまだ二十三万人の方々が避難生活を余儀なくされ、復興事業もまだまだ途上です。来年度は集中復興期間の最終年であり、道州制特区推進法の見直しも予定されています。この集中復興期間を延長するとともに、東北地方も道州制特区に指定し、権限や財源をおろして、被災地のことは被災地が決める、復興の加速化を図るべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 原発事故も収束にはほど遠い状況です。政府は、廃炉や汚染水対策、損害賠償、汚染土壌の除去、処分等で前面に立つ、責任を持つとしてきましたが、被災地の方々は決してそうは受けとめておりません。それぞれの問題について、国として、どう前面に立ち、責任を持っていくのか、お答えください。

 信なくば立たず。全ての政策の前提は、国民の政治への信頼です。増税で国民の負担を求めるなら、年々増加する社会保障費の抑制を初め歳出削減を断行していくなら、なおさらのこと、国会議員が率先して身を切る覚悟を示さなくてはなりません。

 維新の党は、議員定数や給与の三割カット、文書通信交通滞在費の使途公開法案を国会に提出しております。安倍総理にも累次、その身を切る覚悟をお聞きしてまいりましたが、それは議会でお決めになることと繰り返され、自民党総裁としての指導力を発揮されてこられませんでした。

 しかし、大阪ではどうでしょうか。橋下徹さんが大阪府知事になり、府議会で大阪維新の会が過半数を占めた途端、府議会議員の定数は百九から八十八に二割削減、給与も三割カットですよ。その後、橋下さんが大阪市長になると、市長給与も四割カット、何千万円という退職金もとうとうゼロにした。総理、これが政治ではありませんか。

 維新の党は、こうした、大阪でできたこと、やれたことを国政でもやりたい。行政のトップをとり、議会で過半数をとれば、安倍さん、やればできるんですよ。今、あなたが総理であり、自民党総裁じゃありませんか。そして、衆参とも与党が圧倒的多数を占めているじゃありませんか。

 総理、おっしゃるとおり、やるかやらないか、行動あるのみなんですよ。やりませんか。それは国会でお決めになること、都合のいいときだけ少数会派も含めて民主的に決めるべきという相変わらずの御答弁なら、もう要りません。

 維新の党は、国会議員の給与三割カットに賛同が得られないなら、国会議員の給与を自主的に返納できる法案を提出いたします。

 現在は、公職選挙法により、給与の国庫返納は違法寄附に当たります。それを閣僚の給与返上と同じように適法にする。総理、あくまでも議員個人の判断による自主返納です。この程度のことは、自民党総裁として自民党に指示していただけませんか。

 さらに、維新の党は、先般、自主的に文書通信交通滞在費の使途公開を党のホームページ上で行いました。国会議員一人当たり月百万円、年千二百万円もの税金が、使途公開も領収書添付もなく使われています。国会議員の第二の給料と言われるゆえんです。

 あの号泣県議の政務活動費の不正使用が暴かれたのも、その使い道の公開があったからこそでしょう。どこの会社でも経費は領収書つきで請求、こんなことは世間の常識です。

 総理、さきの選挙戦中の討論番組でも、公開に全党、反対はなかったじゃありませんか。公明党の山口代表も、議院運営委員会の場で検討しようとおっしゃった。反対する理由はないでしょう。やりましょう。できないのなら、総理、国会議員である御自身、また内閣の閣僚だけでも文書通信交通滞在費の公開をされてはいかがですか。

 総理、要は、やるかやらないかですよ。はっきり答弁してください。

 大阪市では、天下り先だった外郭団体を七十二団体から十八団体に減らしました。外郭団体への天下りも千四百八十七人から七百三十九人に半減しました。しかし、国では天下りが続々復活しています。

 特に、安倍政権になって、完全民営化が予定される政府系金融機関のトップへの天下りが顕著です。日本政策金融公庫や国際協力銀行の総裁には財務省OBが、商工組合中央金庫社長には経産省OBが、民間人にかわってつきました。日本政策投資銀行も、今は副社長が財務省OBであり、いずれ社長昇格でしょうか。政投銀、商工中金の完全民営化の時期は既に二度も先送りされており、これでは改革路線の後退が心配です。

 総理、安倍政権下で、天下りの禁止を含む公務員制度改革は一体どこに行ったんでしょうか。

 国民は、増税で苦しみ、社会保障費の抑制や負担増で痛みを分かち合っているというのに、国会議員の給与は月額二十六万円、年間四百二十一万円もアップ、国家公務員の総人件費も五百十億円増、これではとても政治への信頼回復など望めません。

 最後に、安全保障法制、集団的自衛権について一言します。

 この問題についての維新の党の立場は明快です。昨年九月の結党時にまとめた統一見解どおり、我が国と密接な関係にある他国に対する攻撃の結果、我が国に戦火が及ぶ蓋然性が相当に高く、国民がこうむることとなる犠牲も深刻なものになる場合には、憲法上、自衛権行使は可能というものです。

 近時の武器技術の飛躍的進展などに応じて、通常兵器しかなかった時代に比べて、個別的自衛権と集団的自衛権という概念自体が相対化してきました。

 国際法が御専門の中谷和弘東大大学院教授も「自衛権の現代的展開」という本の中で、日本を守るために派遣された公海上にある米国艦船が攻撃を受けた場合、有事における海上交通の安全確保と外国船舶、発射直後の上昇段階にある弾道ミサイルの送撃という例を挙げられ、こうした集団的自衛権の外縁を個別的自衛権として位置づける可能性は排除されないとしておられます。まさに我が意を得たりです。

 今後、安全保障に係る法案が提出されれば、この相対化された個別的自衛権と集団的自衛権、その外縁が重なり合う部分で認める、その範囲内でしっかり歯どめをかけ、国民の皆さんの不安を払拭するという方針で対処してまいります。

 そこで、総理に伺います。

 昨年七月の衆参予算委員会で、国民の権利が根底から覆される明白な危険とはとの問いに、国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であり、また、あくまで自国防衛であり、他国防衛自体を目的とするものではないとの答弁がありましたが、この政府答弁を、総理は踏襲され、どう自衛隊法や武力攻撃事態法などの改正案に反映、明記されるおつもりですか。

 さらに、さきの閣議決定を受けて、恒久的な自衛隊の海外派遣、後方支援に関する法案を提出されるお考えがあるかどうか、その際、いわゆる周辺事態法はどう扱われるおつもりか、お伺いをいたします。

 最後に、こうした重大な憲法解釈は、政治家や官僚に任せるのではなく、憲法裁判所を設置して司法の判断で最終的な決着を図るべきと考えますが、総理が目指す憲法改正の折に入れるお考えはありますか。

 維新の党も、憲法も不磨の大典ではなく、時代の要請に応じて適時適切に改正していくのは当然だと考えていますが、その際、我々が求めている統治機構改憲、すなわち、衆参統合による一院制、首相公選制についての見解もあわせお伺いをいたします。

 偉大なことをなし遂げる人は、常に大胆な冒険者である。その著書「法の精神」で立憲主義、権力分立論を唱え、フランス革命やアメリカの独立にも大きな影響を与えたフランスの思想家モンテスキューの言葉です。後に、ナポレオンも、チャンスをもたらしてくれるのは冒険であると述べています。

 そう、今、この日本に求められているのは新陳代謝、イノベーション、そして欠けているのは、それを実現するためのベンチャースピリット、冒険者精神ではないでしょうか。

 官僚や官僚に操られた政治家にこの国を委ねれば、何か新しいことにチャレンジしようとしても問題点ばかりが頭に浮かび、石橋をたたいても渡らない。それでは、この日本の危機的状況を打開し、将来を切り開いていくことはできません。

 失敗を恐れず、果敢に挑戦する。最初からできないとは言わず、どうしたらできるかを考える。今の日本に必要なことではないでしょうか。

 そのベンチャースピリット、冒険者精神を体現しているのが、我が維新の党、ジャパン・イノベーション・パーティーなんです。

 自民党や民主党という大政党に入って、一段一段、安全に階段を上っていくのも人生でしょう。しかし、まず、その冒険者精神でベンチャー政党、維新の党を立ち上げ、それを大きくしていく、その夢と喜びを国民の皆さん、同僚議員と分かち合いながら、やがて、晴れて維新の党が上場をなし遂げたとき、初めて日本の政治が変わる、まさしく戦後以来の大改革が実現するのだと確信をしております。

 真の改革政党維新の党への国民の皆さんの御理解と御支援を心からお願いを申し上げます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 江田憲司議員にお答えをいたします。

 邦人殺害テロ事件に関する検証についてお尋ねがありました。

 邦人殺害テロ事件では、事件発生以来、政府はあらゆる手段を尽くしてまいりましたが、日本人がテロの犠牲になったことは痛恨のきわみであります。衷心より哀悼の誠をささげるとともに、御家族に心からお悔やみを申し上げます。

 テロ対策については不断の見直しが必要であり、今回の事件に対する対応については、先日立ち上げた検証委員会のもと、有識者の方々からの御意見も聴取して、最終的に検証結果を取りまとめたいと考えております。

 検証結果をどのような形でお示しするかについては、今後委員会において議論することとなりますが、インテリジェンスや諸外国との関係などを考慮しつつ、今後のテロ対策に資するよう公表してまいります。

 金融緩和についてお尋ねがありました。

 安倍内閣は、十五年以上続くデフレから脱却するため、三本の矢の政策を進めてきました。

 日本銀行は、二%の物価安定目標を掲げ、大胆な金融緩和を実施してきましたが、こうした取り組みは、固定化したデフレマインドを払拭し、経済の好循環を後押ししてきたものと考えます。政府としては、日本銀行が今後とも二%の物価安定目標の達成に向けて大胆な金融緩和を着実に推進していくことを期待しています。

 なお、金融緩和が行き過ぎた場合の弊害との御懸念について御質問がありましたが、具体的な金融政策の手法については、日本銀行に委ねております。日本銀行においては、経済・物価情勢について、上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うこととしており、市場とのコミュニケーションを適切に図りつつ、適切な対応をとられることを期待しています。

 公共事業についてお尋ねがありました。

 年度末に補正予算が成立する場合など、補正予算に計上された公共事業関係費の多くが結果的に翌年度に繰り越されることもありますが、これらについては、翌年度において適切な執行に努めているところであります。

 また、平成二十七年度の公共事業関係費においては、昨年の広島における土砂災害などを受け、事前防災・減災対策等への重点化を図っており、ばらまきとの指摘は当たりません。

 なお、国土強靱化については、公共事業の額ありきではなく、二百兆円といった額を決定したという事実もありません。

 低年金生活者への給付金等についてのお尋ねがありました。

 御指摘の年金関係の措置は、消費税増収分を活用した社会保障の充実の中で実施することとしています。

 平成二十七年度予算では、消費税増収分を活用した社会保障の充実について、限られた財源の中、施策の優先順位をつけ、子ども・子育て支援新制度の予定どおりの施行などを優先的に実施してまいります。また、低年金生活者への給付金や、受給資格期間の短縮については、法律の規定どおり、安定財源が確保される消費税率一〇%への引き上げ時に実施することとしております。

 補正予算とバウチャー制度についてお尋ねがありました。

 平成二十六年度補正予算は、個人消費のてこ入れと地方経済の底上げを図り、力強い経済対策を実行するためのものです。

 このため、交付金を創設し、例えば、プレミアム商品券の発行や子供の多い御家庭の支援など、地方自治体の創意工夫で実施する消費喚起策や生活支援策を後押しすることとしております。

 また、このほか、仕事づくりなど、地方が直面する人口減、高齢化といった課題への対応を通じた地域の活性化、災害復旧などの緊急対応や復興の加速化といった点にも重点を置いて取りまとめたものです。

 したがって、補正予算全額を消費喚起策に充てることは適切でないと考えています。

 また、保育や福祉といった分野においては、子ども・子育て支援新制度を導入し、多様なサービスについて、質を確保した上で、利用者が選択できるよう取り組んでいるところです。

 なお、いわゆるバウチャー制度については、利用者の選択の幅を広げるといった効果が考えられる一方、サービスの質の確保等に留意する必要があると考えております。

 消費税率一〇%への引き上げについてのお尋ねがありました。

 平成二十九年四月の消費税率一〇%への引き上げについては、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会からの国の信認を確保するため、景気判断条項を付すことなく、確実に実施いたします。

 そうした経済状況をつくり出すという決意のもと、三本の矢の政策をさらに前に進め、経済再生と財政健全化の両立を目指してまいります。

 農業分野の規制改革、構造改革についてお尋ねがありました。

 我が国の農業の活性化は待ったなしの課題であり、農業の成長産業化を図るため、意欲のある農業の担い手が活躍しやすい環境を整備していくことが重要です。

 同じ地域に複数の農協を設立することについては、平成十三年の農協法改正により可能となっており、これまでの申請は全て認可されています。

 農業への企業参入については、平成二十一年のリースの解禁で、株式会社のままでも自由に参入することとなっており、農地集積バンクとの組み合わせによって、さらに効率的に農業経営を展開できるようになっています。

 さらに、今回の改革で、農業委員会については、公選制を市町村長の選任制に改め、農業者以外の中立の立場で公正に判断できる者を必ず選任します。

 農地を所有できる法人である農業生産法人については、販売や加工の拡充といった六次産業化等を行いやすくするため、役員要件及び議決権要件の見直しを行います。

 こうした改革を一体的に行うことで、若い農業者や新規就農者が自分たちの情熱や能力によって新しい地平を切り開いていけるようにしていきたいと考えています。

 農協改革についてお尋ねがありました。

 農業の可能性を引き出すため、農業者と地域農協が主役となった農協改革を行います。

 信用事業を行う農協については、金融庁の監督下にもありますが、さらに、今回、他の金融機関と同様に、公認会計士による監査を義務づけます。

 また、農協はあくまで農業者の協同組織であり、農業者のメリットの拡大が最優先されるよう、理事の過半数を認定農業者にするなど、農協システム全体について見直しを行います。

 こうした改革を進め、地域農協が自由な経済活動を行うことにより、農業者の所得向上に全力投球できるようにしてまいります。

 米の生産調整の見直し、いわゆる減反の廃止についてお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、農業の成長産業化を図るため、輸出促進や六次産業化の推進による付加価値の向上、リース方式を活用した農地集積による生産性の向上などに精力的に取り組んでおります。

 その上で、四十年以上続いた米の生産調整を見直し、農業者がマーケットを見ながらみずからの経営判断で作物をつくれるようにするとともに、需要のある麦、大豆、飼料用米の生産振興を図ることによって農地のフル活用を図り、食料自給率と食料自給力の向上をあわせて図っていくこととしております。

 これらの施策を着実に実行することによって、生産現場での混乱を招くことなく、農業構造の改革と強い農業の実現を図っていきたいと考えております。

 発送電分離の方式についてお尋ねがありました。

 所有権分離の方式は、財産権や資金調達の面で課題があることから、電力システム改革の最終段階として、送配電部門を発電や小売とは別の会社とする法的分離の方式により発送電分離を行います。

 法的分離は、米国で採用されている送配電ネットワークの運用を中立機関に任せる方式と比べ、独立性が明確であり、送配電ネットワークの運用と保守を一体的に行えるという点で優位であると考えております。

 法的分離とあわせて人事や会計面での規制を行うことにより、誰もが公平に送配電ネットワークにアクセスできるようにすることで、遅くとも二〇二〇年ごろには、我が国の電力市場を完全に競争的な市場へと変えていきます。

 原発の発電コストと原発の位置づけについてお尋ねがありました。

 御指摘の米国を含め、海外の電源コストと日本における電源コストを単純に比較することは適切ではありません。例えば、日本において、シェールガスが大量に生産される米国のような低価格で燃料を調達できるわけではありません。

 ベースロード電源とは、電源の特性に着目したものであるため、依存度を低減させても何ら変わるものではなく、両者は矛盾しません。

 原子力は、運転コストが低廉で、変動も少なく、運転時の温室効果ガスの排出がゼロであることから、安全性の確保を大前提に、重要なベースロード電源と位置づけています。

 原発再稼働についてのお尋ねがありました。

 原子力規制委員会が世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発については、その科学的、技術的な判断を尊重し、再稼働を進めてまいります。

 その際、地元の理解を得ることは大切であり、立地自治体など関係者とコミュニケーションをとりつつ、適切に対応してまいります。

 川内地域の避難計画を初めとする緊急時の対応体制は、関係省庁、鹿児島県、関係市町が参加したワーキングチームで、IAEAの国際基準などに沿った具体的かつ合理的なものになっていることを確認し、私が議長を務める原子力防災会議において、国として了承しました。川内地域以外の地域についても、順次同様の取り組みを進めていく方針です。原子力災害に対する備えに完璧や終わりはありませんので、継続的に内容の充実強化に努めてまいります。

 高レベル放射性廃棄物の最終処分場については、原発の再稼働の有無にかかわらず、しっかり確保することが政治の責任です。これまでのやり方を見直し、科学的根拠に基づき国から適地を提示するなど、国が前面に立って取り組みを進めてまいります。

 労働時間法制についてお尋ねがありました。

 労働時間制度の見直しは、ワーク・ライフ・バランスの観点から、働き過ぎを是正するとともに、多様で柔軟な働き方を進めるものです。働き過ぎの是正については、企業に対し、働く人の意見を聞いて休暇を指定することの義務づけを行うことなどを検討しています。

 また、グローバルに活躍する高度専門職として働く人について、時間でなく成果で評価する新たな制度を導入し、労働生産性の向上を図ってまいります。

 同一労働に対し同一賃金が支払われるという仕組みをつくっていくことは、一つの重要な考え方と認識しています。しかし、ある時点で仕事が同じであったとしても、さまざまな仕事を経験し責任を負っている労働者と経験の浅い労働者との間で賃金を同一にすることについて、直ちに広い理解を得ることは難しいものと考えています。

 このため、非正規雇用労働者について、まずは多様な雇用形態に応じた均衡待遇を推進していくことが重要であり、処遇の差の改善を図ってまいります。

 大阪都構想についてお尋ねがありました。

 いわゆる大阪都構想は、二重行政の解消と住民自治の拡充を図ろうとするものであり、その目的は重要であると認識しています。政府としては、住民投票において実施の意思が示された場合には、必要な手続を粛々と進めてまいります。

 地下鉄の民営化及び特別多数議決についてのお尋ねがありました。

 地方公共団体が運営する地下鉄は、条例により公の施設とされ、その民営化は公の施設の廃止に該当するものと承知しております。また、当該地下鉄が特に重要な公の施設として条例で定められている場合には、その廃止に当たって、議会の三分の二以上の賛成による特別多数議決が必要となります。

 何が特に重要な公の施設に当たるかは地方自治体により決められますが、地方自治法に定める特別多数議決制度自体の見直しについては、公の施設の利用者である住民の権利を尊重する観点から、地方自治体の意見等を踏まえた十分な検討が必要であると考えます。

 道州制及び地方分権改革についてお尋ねがありました。

 道州制の導入は、地域経済の活性化などを目指し、国と地方のあり方を根底から見直す大きな改革です。

 現在、与党において、道州制の議論を前に進めるべく、精力的に検討が重ねられてきており、政府としても連携を深め取り組んでまいります。

 また、地方分権改革については、今般、長年地方からの実現要望が非常に強かった農地転用許可権限の移譲を初め、地域に密着した数多くの課題を一つ一つ解消し、地方六団体からも高い評価をいただいたところであります。

 今後とも、地方の熱意と現場の生の声を真摯に受けとめ、やる気のある地方を応援する地方分権改革を着実かつ強力に進めてまいります。

 被災地の再生加速についてお尋ねがありました。

 これまで、被災者の方々が一日も早く安心して暮らすことができるよう、住宅再建や産業、なりわいの再生などに全力で取り組んできました。平成二十七年度予算においても、復興の加速化を最重要課題の一つとして重点化しています。まずは、この成立に全力を尽くします。

 集中復興期間が終わっても、我々は決してとまりません。平成二十八年度以降についても、被災者の方々の心に寄り添い、しっかりと対応してまいります。

 また、東北地方も道州制特区に加えるべきとの御提案について申し上げれば、復興は住民に身近な市町村が中心となって取り組むものであり、国は、被災自治体の具体的な要望を伺いつつ、財政や人材、ノウハウ等の面から、責任を持って支援をしているところです。こうした体制のもとで、現地の御要望にきめ細かく応えてまいります。

 原発事故の収束対策についてお尋ねがありました。

 福島第一原発については、汚染水対策を含めた、廃炉、賠償、除染など課題は山積しており、今なお厳しい避難生活を強いられている被災者の方々のことを思うと、収束という言葉を使う状況にないと考えています。

 世界にも前例のない廃炉・汚染水対策については、技術的難易度が高い取り組みへの財政措置を行う等、東電任せにせず、国も前面に立って取り組んでいます。

 また、福島の復興の加速化に向け、賠償、除染、中間貯蔵施設の事業及び資金負担の両面で国と東電の役割分担を明らかにし、国費の投入を決めております。

 除染土壌等の中間貯蔵施設については、地元から建設を受け入れていただき、現在、搬入の受け入れのお願いをしています。引き続き、除去土壌等の早期搬出に向けて、地権者の皆様への丁寧な説明と施設整備に政府全体で全力で取り組みます。

 議員定数、議員歳費及び文書通信交通滞在費についてのお尋ねがありました。

 選挙制度改革については、現在、衆参両院においてそれぞれ、第三者機関、議員による協議機関でさまざまな議論が行われていると承知しております。

 議員の定数に関する問題は、議会政治の根幹にかかわる重要な問題であり、各党各会派が正面からこの問題に向き合い、政治の責任において国民の負託にしっかりと応えてまいるべきものと考えております。

 議員歳費及び政治活動の諸経費については、議員の政治活動、すなわち民主主義の根幹にかかわる重要な課題であり、その削減や公開のルール化については、数で押し切るべきものではなく、各党各会派で議論を深めていくべき課題であると考えております。

 なお、閣僚の給与につきましては、昨年四月、特例による減額がなくなって以降も、引き続き、それぞれそれに相当する額、閣僚は二割、私は三割を国庫に返納しております。

 天下りを含む公務員制度改革についてのお尋ねがありました。

 国家公務員の再就職に関して問題なのは、官民の癒着につながりかねない公務員OBの口ききや、予算、権限を背景とした再就職のあっせん等の不適切な行為であります。

 このため、平成十九年の国家公務員法改正により、各府省による再就職あっせんの禁止等の厳格な規制を導入するとともに、監視体制として再就職等監視委員会を設立したところであります。

 政府としては、再就職等監視委員会による厳格な監視のもと、こうした不適切な行為を厳格に規制しているところであり、今後とも、こうした取り組みにより、再就職に関する国民の疑念を払拭してまいります。

 なお、国家公務員制度改革については、昨年の国家公務員法等の一部改正により、内閣人事局の設置や幹部職員人事の一元管理等、政府としての総合的人材戦略を確立するための制度改革を行っているところであります。

 新三要件における国民の権利が根底から覆される明白な危険との要件、自衛隊法や武力攻撃事態法との関係についてのお尋ねがありました。

 安全保障法制の整備に関しては、さきの閣議決定に基づき、現在、政府部内で精力的に準備を進めているところであります。

 具体的な法整備の内容は検討中ですが、閣議決定に記載された新三要件は、憲法上許容される武力の行使の要件そのものであるため、自衛隊の行動の法的根拠となる自衛隊法等の中でその趣旨を過不足なく規定するべきものと考えています。

 自衛隊の海外派遣、後方支援に関する法案の提出及び周辺事態法の扱いについてお尋ねがありました。

 政府としては、安全保障法制の整備に当たっては、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とすることが重要であると考えており、将来、具体的なニーズが発生してから改めて立法措置を行うという考え方はとりません。

 御指摘の周辺事態法の扱いも含め、具体的な法整備の内容は現在検討中です。

 いずれにせよ、これらの点については、与党協議においても議論がなされるものと承知しており、与党間でしっかり議論していただきたいと考えています。

 憲法裁判所についてお尋ねがありました。

 憲法裁判所を設置し、具体的な訴訟事件を離れて抽象的な憲法判断の権能を付与すべきとの御提案は、非常に大きな問題であり、各党各会派で広く御議論いただいた上、国民的な議論を深めていくことが必要と考えます。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 自由民主党は、立党以来、憲法改正を主張しており、既に憲法改正草案を発表していますが、統治機構に関することは、それぞれの個別の課題ごとにさらに議論を尽くす必要があることから、草案では、大幅な改正を行うこととはされておりません。

 一院制、首相公選制など御指摘の問題は、今後、各党各会派で幅広く御議論いただいた上、国民的な議論をさらに深めてまいりたいと考えております。(拍手)

     ――――◇―――――

橘慶一郎君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明十七日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(川端達夫君) 橘慶一郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(川端達夫君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣     高市 早苗君

       法務大臣     上川 陽子君

       外務大臣     岸田 文雄君

       文部科学大臣   下村 博文君

       厚生労働大臣   塩崎 恭久君

       農林水産大臣   西川 公也君

       経済産業大臣   宮沢 洋一君

       国土交通大臣   太田 昭宏君

       環境大臣     望月 義夫君

       防衛大臣     中谷  元君

       国務大臣     甘利  明君

       国務大臣     有村 治子君

       国務大臣     石破  茂君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     竹下  亘君

       国務大臣     山口 俊一君

       国務大臣     山谷えり子君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  横畠 裕介君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.