衆議院

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第7号 平成27年2月17日(火曜日)

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平成二十七年二月十七日(火曜日)

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 議事日程 第五号

  平成二十七年二月十七日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)


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    午後二時二分開議

議長(町村信孝君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

議長(町村信孝君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。井上義久君。

    〔井上義久君登壇〕

井上義久君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました安倍総理の施政方針演説に対し、総理並びに関係大臣に質問いたします。(拍手)

 安倍内閣が発足して二年、昨年末の衆議院選挙において、公明党は、国民の皆様から多大な御支持をいただき、引き続き、連立与党として国政に携わる重責を担うことになりました。

 日本が直面する課題は山積しています。

 一人一人に成長の恩恵が行き渡る経済の好循環の実現、被災された方々が当たり前の日常生活を取り戻すための東日本大震災からの復興の加速、人口減少・超高齢社会の中で、地域で暮らし、皆で支え合う安心の社会保障の確立、そして、貧困、暴力、戦争、テロのない世界の実現に向けた日本の国際貢献のあり方など、多岐にわたります。

 施政方針演説で総理が述べられたとおり、いずれも困難な道のりですが、私ども公明党も、日本の将来を見据えながら、改革を前に進める決意です。

 また、本年は、戦後七十年、阪神・淡路大震災から二十年の大きな節目に当たり、国内外からの注目も増しています。

 公明党は、今日まで、平和の党として、また大衆の中から生まれた政党として、生活者、とりわけ社会的に弱い立場の人々に寄り添い、政治を前に進めてきました。この政治姿勢は、これからも変わりません。

 最近、社会全体における格差の拡大や貧困の固定化が指摘されています。社会保障の拡充によるセーフティーネットの強化や、正規雇用の拡大、再チャレンジ可能な雇用対策の強化、さらには教育機会の均等など子供の貧困対策の拡充等々、あらゆる施策を通じ、格差、貧困の解消に引き続き取り組む決意です。

 年明けから日本は大きな悲しみに包まれました。

 イスラム国と称するテロ集団による卑劣なテロ行為により、日本人二名が殺害されたことは、まことに痛恨のきわみであり、断じて許すことはできません。衷心より哀悼の意を表するとともに、御家族に心からお悔やみ申し上げます。

 こうした悲劇が繰り返されないよう、国際社会と連携したテロ対策の強化とともに、国内外の日本人の安全確保に万全を期さなければなりません。

 在外公館等を通じた情報収集能力の強化や、在外日本人の安全確保対策、日本人学校等の警備体制強化など、人命を第一に、早急に対策を講じることが求められます。

 また、国内においても、テロリストの入国を阻止する水際対策や、標的となり得る重要施設の警備強化、巧妙化するサイバーテロへの対処能力の向上などの取り組みを急ぐよう強く求めます。

 テロ対策について、総理の答弁を求めます。

 日本経済は、安倍内閣が進めてきた経済政策により、雇用や企業収益を中心に着実に好転してきています。他方、家計は、賃金の上昇が物価上昇に追いつかず、結果、実質賃金が低下、企業でも、特に内需依存型の中小・小規模事業者は、円安による原材料価格の高騰などで苦しんでいます。家計へ、中小企業へ、地方へと経済の好循環を行き渡らせる、これが経済再生をなし遂げるための大きな鍵であり、ことしはその正念場です。

 まず大事なことは、景気回復を確実に家計に波及させることです。そのためにも、昨年に続き、賃金上昇の流れを継続させることが重要です。政労使が一致協力し、企業収益の増加を雇用の拡大、賃金上昇へとつなげるよう強く期待します。

 中小企業の元気が日本の元気です。

 雇用の七割を占める中小企業、小規模事業者の振興、生産性の向上に向けて、人材の確保、育成や、新たな商品、サービスの開発促進、販路の拡大など、戦略的な政策展開が必要です。下請企業に対する取引価格の適正化など、経済界の取り組みも欠かせません。

 来年度税制改正において、大法人を中心に法人実効税率を二・五一%引き下げ、さらに再来年度以降も引き下げ幅を上乗せすることとしています。その財源確保に関連して、外形標準課税の適用対象法人のあり方については、地方経済や企業経営への影響を踏まえて、慎重に対応すべきと考えます。

 また、地方の活性化のためには、地域経済を支えるローカル経済圏に焦点を当てることが必要です。特に、その大半を占める中小のサービス業を中心に、生産性の向上を図っていくことが重要です。

 来年度予算案では、地域の実情に応じたきめ細かな施策が展開できるよう、地方創生に要する経費として約一兆円が地方財政計画に計上されています。これを含め、予算、税制、金融等あらゆる面でローカル経済圏の活性化に取り組むよう求めます。

 また、成長戦略に関し、ロボット技術は、少子高齢社会、働き手の減少などの課題に対して、生産性の向上や人手不足の解消、社会の利便性の向上などに資するものとして、大きな期待が寄せられています。

 とりわけ、今後ますます需要が増大する医療、介護を初め、震災復興や防災、特に道路や橋のメンテナンスなど、製造現場から日常生活のあらゆる場面でロボットの利活用を促すことが重要な鍵になります。

 そのため、政府においては、規制改革やルールづくり、公的機関での先行的な導入など、ロボット革命の実現に向けた政策に取り組むべきと考えます。

 以上、経済再生に向けた施策について、総理の答弁を求めます。

 昨年十二月、政府は、まち・ひと・しごと創生に係る長期ビジョンと総合戦略を策定し、地方創生に向けた本格的な取り組みがスタートしました。

 今後、各自治体が地方人口ビジョンと地方版総合戦略を策定し、地方創生に取り組むことになりますが、大事なことは、担い手である人がかなめであり、中心でなければならないということです。

 そこで、公明党は、本格的な地方創生のスタートに当たり、どこまでも人に視点を置いて、まずは、以下五つの分野に重点的に取り組みたいと考えています。

 第一は、地域しごと支援事業です。

 地域に必要とされる人を還流させるため、地域しごと支援センターを整備し、地域の仕事と生活情報を一体的に提供しながら、魅力ある仕事をつくり、必要な人づくりを進めなければなりません。

 第二は、都市と農村の人の交流事業です。

 公明党は、かねてより、子供の滞在型農山漁村体験教育の取り組みを推進してきました。こうした施策を含め、都市と農村との人の交流を活発化することで、一時滞在から継続的な滞在、場合によっては二地域居住、そして移住、定住へと人の流れが生まれるものと確信します。

 第三は、大学生等の地方定着の推進です。

 それぞれの地域で必要とする人材を確保するため、地方大学などへの進学や地元企業への就職、さらに都市部の大学等から地方企業への就職を促進することが必要です。

 このため、無利子奨学金の地方創生優先枠の設定や、必要に応じ奨学金返済の免除など、大胆な政策を行う必要があります。

 第四は、日本版ネウボラの推進です。

 フィンランドでは、子供、家族のための切れ目のない支援体制、いわゆるネウボラが地域の拠点として整備されています。

 我が国においても、妊娠から子育て期までの包括的な支援として、子育て世代包括支援センターのモデル事業が始まっていますが、これを全国展開すべきと考えます。

 第五は、コンパクト・プラス・ネットワークの推進です。

 富山市などの先駆的事例から学びつつ、既存の施設などを有効活用しながら、医療、福祉、商業等の都市機能を町中に誘導するコンパクトシティーの形成と、地域公共交通ネットワークの再構築を進めるべきです。

 また、中山間地等においては、商店や診療所など、生活サービス施設を一定のエリア内に集め、周辺集落とコミュニティーバスやディマンド交通等のネットワークで結ぶ、多世代交流・多機能型の小さな拠点の形成が、人が暮らす持続可能な地域づくりに不可欠と考えます。

 以上、公明党は、国会議員と地方議員のネットワークを生かし、本格的な地方創生の取り組みを開始してまいります。

 地方創生は、あくまでも地方の自主性が第一です。一方、地方創生を成功させ、よりよいものとしていくためには、国との連携及び国からの支援が不可欠であり、的確な情報支援や人的支援、さらに財政的支援を切れ目なく行っていくことが必要です。

 地方創生の取り組みについて、安倍総理の答弁を求めます。

 地方創生には、地域を支える第一次産業の活性化が重要です。

 農業、農村に関しては、中長期的な方針を定めた食料・農業・農村基本計画が本年三月に改定されます。

 農業、農村の所得をどのように向上させるのか、その道筋をわかりやすく提示すべきです。特に、米政策については、飼料用米の本作化に向け、安心して取り組める位置づけが必要です。

 また、基本計画では食料自給率の目標を設定していますが、実際の自給率と目標が乖離した状況が続いています。

 食料の安定供給は国の重要な責務であり、自給率向上への課題や、緊急時に対応し得る潜在的な供給能力である食料自給力などを明確化し、国民的な議論を深めるべきです。

 農協改革については、JAを初め、合意に向けた関係者の努力に心より敬意を表します。

 農は国の基であり、農業は国民全体で支える必要があります。今般の改革論議を通じて、農業の重要性や農業のあり方、農協の役割などについて、国民的な議論が深まることを期待しています。

 法改正に当たっては、JAの協同組織としての自己改革を妨げることがないように、また農協改革の大きな目的である農業所得の向上や、地域の活性化にどうつなげていくかの視点に立って、農業者の意見も十分に踏まえ、検討すべきです。

 一方で、農業の成長産業化は、農協などの組織の見直しのみで可能となるわけではありません。六次産業化や、女性、若者などの新たな担い手の挑戦を積極的に支援する等、成長へとつなげる施策が重要です。

 林業については、戦後造林した人工林が本格的な利用期を迎えており、国内需要を満たす量の森林資源がその活用を待っています。川上と川中、川下の連携を強化し、国産材の安定的な供給体制を構築すべきです。

 さらに、森林資源の循環利用に向けて、間伐のほか、コスト面からも有効な皆伐・再造林に対する支援策を強化すべきと考えます。

 水産業については、資源管理を適切に推進しつつ、国内消費の喚起と輸出促進に向けた一層の取り組みが求められます。

 本年五月には食をテーマにミラノ万博が開催されますが、この機会を最大限に活用して日本食の魅力を発信し、さらなる輸出拡大につなげるべきです。

 以上、農林水産業の活性化について、総理の答弁を求めます。

 間もなく、東日本大震災の発災から四度目の三・一一を迎えます。

 被災地では、今なお約二十三万人もの方々が仮設住宅等での避難生活を余儀なくされ、厳しい冬を過ごされていることを思うと、まことに胸が痛みます。

 公明党は、引き続き、被災地、被災者に寄り添いながら、党を挙げて、復興の加速化に全力で取り組んでまいります。

 復興のステージは日々変化しています。本格的な復興に向けて、住まいの確保はもとより、雇用の確保やコミュニティーの復活、道路やまちづくり、医療・介護施設等を含めた社会インフラの整備などが欠かせません。

 被災地のニーズの変化に対応した柔軟かつ適切な支援ができるよう、常に課題、問題点を点検し、スピード感を持って対応することが求められます。

 例えば、土地の収用に関しては、今後本格化する復興事業において、事業用地等の収用手続に時間を要することが予想されます。これまでも加速化に向けた措置を講じてきましたが、今後、こうした措置を活用して、用地取得が迅速に進むよう、一層の体制整備に努めるべきです。

 来年度、集中復興期間の最終年度を迎えます。被災地では、おおむね復興期間十年を前提に復興事業が進められており、被災自治体等が安心して復興に取り組めるよう、平成二十八年度以降の財源確保を含めた国の方針を早急に示すべきです。

 また、ことしは国勢調査が行われますが、被災自治体では、避難に伴う一時的な人口減少その他の影響により算定基礎が変わり、普通交付税が減少するのではないかとの懸念があります。被災自治体の実態に即した対応措置を検討すべきではないかと考えます。

 福島では、今なお十二万人もの方々が県内外に避難され、ふるさとへの帰還もままなりません。農林水産物等への風評被害も根強くあります。福島再生に向けては、原発事故の収束、廃炉・汚染水対策、除染、賠償、帰還、健康対策など、山積する課題を着実に前に進めていかなければなりません。

 また、福島県は、原発事故の影響もあり、悲しいことですが、仮設住宅での孤独死など震災関連死が多く起きています。被災者に寄り添い、実情をしっかりと把握し、心のケア、健康対策等を一層強化拡充すべきです。

 政府が提出予定の福島復興再生特別措置法改正案は、住民の方々の帰還を促進するための交付金の創設や、帰還に向けて健康に関する不安等を解消するための相談体制の整備等、支援強化策が盛り込まれており、早期成立が求められます。

 ふるさとに戻り、当たり前の生活を送る。その日を目指し、全ての課題に対して、国が前面に立ち、解決に力を注いでいく、その強い決意と実行が求められます。

 東日本大震災からの復興の加速化、福島の再生について、総理の答弁を求めます。

 来月、被災地宮城で、国連防災世界会議が開催されます。総理も出席の意向を表明されましたが、力強く復興に立ち向かう姿を世界に発信するとともに、我が国のこれまでの経験や知見を世界に発信し、各国の防災機能の向上に寄与する絶好の機会です。

 今回の会議を契機として、関係者の間で、二年に一回程度、世界の防災関係者が集う、仮称世界防災フォーラムを定期的に開催してはどうかとの提案があります。東北仙台をプラットホームとし、世界経済フォーラムであるダボス会議のように仙台会議として定期開催し、日本が世界の防災・減災対策を強力にリードしていく絶好のチャンスと考えますが、総理の見解をお伺いいたします。

 昨年は、記録的な豪雪、たび重なる水害、土砂災害、御嶽山の噴火など自然災害が多発し、我が国が災害多発国であることを改めて認識させられました。

 切迫する南海トラフ巨大地震や首都直下型地震等の自然災害に対して、万全の備えが必要です。

 住宅、建物等の耐震化や、インフラの老朽化対策、長寿命化、避難訓練への支援など、ハード、ソフト総動員の集中的な対策を講じること。さらに、気候変動等に伴う災害の激甚化に対し、浸水想定区域やハザードマップの見直し、雨水対策の強化など、法改正を含めた対策が急がれます。

 また、昨年改正した土砂災害防止法に基づき、土砂災害の警戒区域指定の前提となる基礎調査の加速化支援や、砂防ダムの着実な整備などが重要と考えます。

 太田国土交通大臣の答弁を求めます。

 社会保障と税の一体改革は、消費税率引き上げが延期されたものの、社会保障制度を財政的にも仕組みにおいても安定させるため、着実に進めなければなりません。

 特に、子ども・子育て支援の充実は待ったなしです。四月からスタートする子ども・子育て支援新制度が円滑に施行できるよう万全を期すとともに、特に、賃金の引き上げなど保育士の処遇改善、待機児童解消加速化プラン、放課後子ども総合プランを着実に進めていくことが重要です。

 子ども・子育て支援の取り組みについて、総理の答弁を求めます。

 難病対策は、ことし一月から対象疾患が拡大されましたが、さらにことしの夏には三百疾患へと拡大され、対象の患者数も七十八万人から百五十万人へと倍増されるなど、大きく前進します。

 今後さらに、難病の治療研究を進めるとともに、たとえ難病を発症したとしても、地域の中で尊厳を持って生活ができるよう、総合的な支援体制の確立が求められます。

 難病対策について、総理の答弁を求めます。

 今後の高齢社会の中で、地域における介護や医療等のサービスを一体的に受けられる地域包括ケアシステムの構築が急務となっており、公明党は、地方議員と連携し、地域の実情に応じた地域包括ケアシステムの構築、推進に全力で取り組んでいます。

 課題はさまざまありますが、その中心は介護です。

 特に、介護の現場を支える介護人材の確保及び処遇改善が喫緊の課題です。この点、来年度の介護報酬において、月一万二千円相当の介護職員の処遇改善が盛り込まれたことは、評価をします。

 来年度からの介護報酬の改定率がマイナス二・二七%となりましたが、今後ますます給付費がふえる中で、介護保険制度の持続可能性の観点から、必要なサービスを充実させつつも、適正化を図るべきところは図るというように、給付の重点化、効率化は避けて通れません。

 一方、赤字経営ぎりぎりで、一生懸命に介護サービスを提供してきた小規模事業者などが窮地に立つようなことがあっては、かえって介護提供体制が後退しかねず、適切な対応が必要です。

 今後の介護人材の確保、介護サービスの充実などに向けて、具体的にどのような対策を行っていくのか、総理の答弁を求めます。

 政府は、平成三十年度から国民健康保険の運営主体を市町村から都道府県に移すことを柱とした医療保険制度改革の骨子を決定しました。

 将来にわたって安心の医療が提供でき、世界に誇る国民皆保険が堅持できるよう、国、県、市町村がそれぞれの役割をしっかりと果たしつつ、改革を着実に進めていかなければなりません。

 また、ことし一月から、高額療養費制度が見直され、七十歳未満の中低所得者およそ四千六十万人の負担限度額が引き下げられました。公明党が長年主張してきたことであり、大きな前進です。

 一方、月をまたぐ治療費は合算できないなど、残された課題もあり、引き続き改善が必要です。

 以上、医療保険制度改革について、総理の答弁を求めます。

 公明党は、これまで、がん対策基本法の制定を初め、がん検診受診率の向上、治療法、緩和ケア、がん登録、がん教育、就労対策などを進め、成果を上げてきております。

 特に、検診受診率は、無料クーポンの導入、コール・リコールの徹底などで、目標の五〇%までもう一歩となっており、さらなるてこ入れが必要です。

 また、がん患者の方の就労に関しては、職場の認識不足などにより、働ける、働き続けたいという希望にもかかわらず離職せざるを得ない環境等があり、支援体制の充実が急務となっています。

 がん教育の全国展開に向けては、医師などの外部講師の活用が不可欠ですが、特に医師の確保が課題であり、関係省庁間での協議による解決が望まれます。

 がん対策基本計画に掲げた種々の目標達成に向けた施策を強力に推進し、国民の皆様が、がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会の構築を目指していくべきと考えますが、がん対策に関する総理の答弁を求めます。

 石油等の資源に乏しい日本にとって、再生可能エネルギーの普及拡大は重要な課題です。

 昨年秋に、再エネ発電事業者から電力会社への電力ネットワークへの接続申し込み量が急増したことにより、電力会社が接続への回答を留保する事態が発生しました。政府は、固定価格買い取り制度の運用を見直しましたが、これにより再生可能エネルギー導入の促進にブレーキがかかることのないよう、適切な運用に努めるべきです。

 電力システム改革は、いよいよ総仕上げの段階です。

 送配電部門を法的に分離し、そのネットワークを電気事業者が公平に利用できることなどを目指した法案が、今国会に提出されます。

 改革に当たっては、電気、電力が国民にとって欠かすことのできない公共財という視点に立ち、安定供給、ユニバーサルサービスの確保に支障を来すことがないよう十分配慮し、ガスシステム、熱事業システムも含めたエネルギー産業全体の改革を実現すべきです。

 さらに、本年十二月に開かれるCOP21において、温室効果ガス削減に向けた新たな実効性ある国際枠組みの合意ができるよう、日本が力を尽くすべきです。そのためにも、まずは、六月のサミットに向けて、野心的な温室効果ガスの削減目標を含む約束草案の検討を進めていくべきと考えます。

 エネルギー政策、環境政策について、総理の答弁を求めます。

 国民の命と平和な暮らしを守ることは政治の責任であり、日本を取り巻く安全保障環境の変化に対応し、国と国民を守る安全保障法制を整備していくことは重要な課題です。

 昨年七月一日、今後の安全保障法制整備に関する基本方針が閣議決定されました。

 法制の整備に当たっては、この閣議決定に明記された、専守防衛を初めとする平和国家としての基本理念や憲法第九条のもとで許容される自衛の措置、さらには同決定を受けて行われた七月十四、十五日の衆参の予算委員会における総理及び内閣法制局長官の答弁に沿って進めるべきと考えます。

 また、安全保障は、国民の理解の上に立って初めて成り立つものであり、国民の十分な理解を得ながら進めることが重要だと考えます。

 安全保障法制の整備に向けた取り組みについて、総理の答弁を求めます。

 本年は、さきの大戦から七十年、核兵器による被爆から七十年の節目を迎えます。この間、憲法の平和主義のもと、戦後一貫して平和国家として歩んできた我が国は、国際社会から高い評価を得ており、こうした姿勢を今後とも堅持しつつ、さらなる信頼構築と国際貢献に努めるべきです。

 中でも、中国、韓国との関係改善を初め、地域の安定と繁栄に積極的な役割を果たしていかなければなりません。

 また、貧困や飢餓、感染症、災害などの脅威から人々を解放する人間の安全保障、さらには地球的な課題である環境保全や軍縮・核不拡散などの分野においても、我が国の経験や技術を生かした取り組みで世界を主導するなど、平和国家としての外交姿勢をより明確に発信すべきと考えます。

 総理の答弁を求めます。

 最後に一言申し上げます。

 人口減少・超高齢社会に直面する日本において、地域が極めて重要となってきます。仕事をする場、生活の場、憩い、コミュニティーの場として、支え合い、助け合いながら協働して健康な日々を送っていく、その基盤が地域です。

 公明党は、健康寿命を延ばすことはもちろんですが、その上で、活動寿命を延ばすことを提案しております。元気に働き、地域への貢献も果たしていく、生涯現役の生きがいにあふれた生活を送る、そうした、人が主役の理想的な地域社会の構築こそが、真の意味の地方創生ではないでしょうか。

 公明党は、国と地方のネットワークを生かし、地方創生、すなわち人が主役の地域社会の構築に全力で取り組んでいくことをお誓い申し上げ、私の代表質問を終わります。

 御清聴、大変ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 井上義久議員にお答えいたします。

 日本人の安全確保に向けた今後のテロ対策についてお尋ねがありました。

 今回の邦人殺害テロ事件やパリの新聞社襲撃事件など、テロ情勢は非常に厳しい状況にあります。今や、全ての国がテロの脅威にさらされる時代となったと言っても過言ではありません。

 こうした厳しい情勢を踏まえ、在外邦人の安全確保については、在外公館と日本人会などで構成する安全対策連絡協議会の活動を促進するとともに、渡航情報などの迅速な提供、日本人学校の警備強化の要請等の諸対策を着実に推進することにより、万全を期してまいります。

 テロの未然防止に万全を期すため、国際社会と緊密に連携し、不穏動向の早期把握に向けた情報収集、分析の強化、テロリストの入国阻止等に向けた関係機関の連携による水際における取り締まりの強化、空港、公共交通機関などの重要施設の警戒警備の徹底などの諸対策に、万全を期してまいります。

 また、サイバーテロについても、さきの国会で成立したサイバーセキュリティ基本法に基づき、サイバーセキュリティーの確保に万全を期してまいります。

 今後も、テロに屈することなく、世界の平和と安定のために積極的に貢献するよう全力で取り組むとともに、テロの未然防止対策に万全を期してまいります。

 政労使の取り組みについてお尋ねがありました。

 一昨年の政労使合意を踏まえた昨年の春闘では、賃上げ率が過去十五年で最高となりました。

 昨年は、総選挙の後、直ちに政労使会議を開催し、私から今春の賃上げをお願いしました。経済界の皆さんには、賃上げに向けた最大限の努力と、原材料費高騰に苦しむ下請企業の価格転嫁といった取り組みに合意していただきました。

 これを受け、経団連は、春闘の基本方針である経労委報告において、雇用の拡大などとあわせて、賃金の引き上げを前向きに検討することが強く期待されるとの、昨年より踏み込んだ方針を表明しました。

 経済の好循環をしっかりと回すことにより、賃上げの流れを、来年の春、再来年の春と続け、全国津々浦々に景気回復の実感をお届けできるよう、全力を尽くしてまいります。

 中小企業の振興と外形標準課税についてお尋ねがありました。

 経済の好循環を全国津々浦々まで届けていくためには、中小・小規模事業者の活力を最大限に発揮していただくことが不可欠です。

 このため、人材確保支援や、ふるさと名物の開発、販路開拓支援、ものづくり・サービス補助金による事業革新支援など、さまざまな施策を展開してまいります。

 また、中小・小規模事業者が原材料価格等の上昇分を適正に取引価格に転嫁できるよう、昨年末の政労使会議で合意しました。

 政府としても、取引価格の適正化に万全を期してまいります。

 来年度税制改正においては、御指摘の外形標準課税の拡大は、資本金一億円以下の中小企業を対象外としております。外形標準課税の適用対象法人のあり方については、地域経済、企業経営への影響も踏まえながら引き続き慎重に検討を行うこととしております。

 ローカル経済圏の活性化についてお尋ねがありました。

 地方創生の取り組みでは、ローカル経済の活性化のため、客観的な地域経済分析に基づき、地域資源を生かし、地域特性に合った産業の育成を図ることとしています。特に、地方経済を活性化させるためには、地域雇用の過半を支えるサービス産業を活性化させ、付加価値の向上を図ることが重要です。

 昨年末に取りまとめた総合戦略でも、サービス産業において若い世代の安定した雇用を創出することを重視して取り組むこととしています。

 今後、地方の活性化に向けた意欲あふれる地方の取り組みに対して、地方財政計画への計上を含めた予算の確保を図ってまいります。また、税制による企業の地方移転の促進、地方への人材還流の推進など、あらゆる方策を使って全力で後押ししていきます。

 ロボット革命の実現に向けた取り組みについてお尋ねがありました。

 米欧を中心に、ITと融合したロボット開発競争が激化する中、我が国のロボット大国としての地位をさらに高めるべく、先般、ロボット新戦略を策定し、今後の具体的な取り組みを取りまとめました。この戦略に基づき、介護や農業、中小企業にまで普及する世界一のロボット活用社会を目指します。

 このため、規制改革やルールづくりによるロボットバリアフリー社会の実現を目指すとともに、福島にロボット実証区域を設けるなど、環境整備に努めてまいります。

 地方創生に向けた決意についてお尋ねがありました。

 地方創生では、人が生きがいを持って生活し、この地域に住んでよかったと実感できる地域社会づくりを目指すことが必要です。

 このため、地域にやりがいのある仕事をつくることが必要であり、地域産業にとって必要な人材を大都市圏で掘り起こし、定着を後押ししてまいります。

 また、大学生等の地方定着を促進するため、大学進学時の奨学金の返済を免除する等の新たな仕組みをつくってまいります。

 子供が地方に滞在して農業等を体験するプログラムなど、都市と農村との人の交流も推進してまいります。

 さらに、安心して暮らせるまちづくりのため、妊娠期から子育て期にわたるまで、ワンストップの相談拠点として、子育て世代包括支援センターを全国で整備していきます。

 生活に必要なサービスを町中に誘導し、都市と周辺部を公共交通等のネットワークで結ぶ、コンパクトシティーの形成も推進してまいります。

 こうした施策を活用し、地方の取り組みに対し、予算、税制、人材、情報等、あらゆる方策を使って、切れ目のない支援を行ってまいります。

 農林水産業の活性化についてお尋ねがありました。

 農林水産業は、日本の美しいふるさとを守ってきた国の基であり、一方、我が国の農林水産業の活性化は待ったなしであります。

 農業の成長産業化を図るため、安倍内閣では、農地集積バンクによる農地集積、輸出促進、六次産業化の推進、意欲ある担い手の育成確保などに力を注いできました。

 加えて、米の生産調整を見直す中で、需要のある飼料用米等の生産を振興することによって、農地のフル活用を図り、食料自給率と食料自給力の維持向上をあわせ図っていくこととしております。

 さらに、今般、意欲ある農業の担い手が活躍しやすい環境となるよう、農協、農業委員会、農業生産法人の三つの改革を一体的に行います。

 特に、農協改革については、意欲ある担い手と地域農協が力を合わせ、創意工夫を発揮して、ブランド化そして海外展開など自由な経済活動を行うことにより、農業者の所得向上に全力投球できるようにします。

 政策を総動員して改革を進め、消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていけば、六次産業化を含めて農業の可能性は広がり、農業、農村全体の所得もふえていくと確信しております。

 また、林業については、国産材の安定供給体制の構築、再造林の推進などによる適切な森林整備などにより、林業の成長産業化を図ってまいります。

 さらに、水産業については、水産資源の持続的利用のための適切な資源管理などにより、水産日本の復活を目指します。

 また、ミラノ万博における日本食の魅力の発信なども通じ、輸出体制の強化を図ってまいります。

 今後とも、地方経済の中核をなす農林水産業の振興に努め、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村を実現してまいります。

 東日本大震災からの復興の加速化についてお尋ねがありました。

 被災地の住宅再建については、用地取得や施工確保などに対する累次の加速化策により、今や高台移転は九割、災害公営住宅では八割で事業が始まっています。

 用地取得をさらに迅速に進めるため、今後とも、国の職員を現地に派遣するなど、きめ細やかに実務を支援してまいります。

 平成二十七年度予算においても、復興の加速化を最重要課題の一つとして重点化しており、まずは、この予算の成立に全力を尽くします。

 集中復興期間が終わっても、我々は決してとまりません。平成二十八年度以降についても、被災者の方々の心に寄り添い、しっかりと対応してまいります。

 地方交付税は、全国どのような地域であっても一定水準の行政を確保するための財源を保障する、大変重要なものと考えます。

 東日本大震災の被災自治体の普通交付税の算定に当たっては、行政運営の状況や今後の国勢調査の結果も踏まえ、御懸念のように、算定基準が変わることで被災自治体の財政運営に支障が生じないよう、政府としてしっかり検討してまいります。

 福島の復興に向けた取り組みについてお尋ねがありました。

 福島の復興及び再生に向け、被災者の方々の心に寄り添い、国も前面に立って廃炉・汚染水対策を行うとともに、除染、賠償、被災者の見守り強化等を推進しているところです。

 特に、避難生活の長期化により、不安を抱かれたり、生きがいや希望を持てないといった、健康面や心のケアが極めて重要です。このため、見守り活動を推進する相談員や巡回指導を行う保健師の確保、そして被災者の生きがいづくりの支援に力を入れて取り組んでいきます。

 他方で、今後、住民の方々の帰還を促進するため、環境整備を加速化することも大変重要であると考えます。

 福島県からの要望も踏まえ、帰還促進のための交付金の創設、避難者に対する相談体制の整備等を内容とする福島復興再生特別措置法の改正法案を、本日閣議決定し、国会に提出いたします。

 本改正法案は、福島の復興及び再生の加速に不可欠であり、早期の成立に向け、議員各位におかれましても御協力よろしくお願いを申し上げます。

 我が国の防災・減災対策の国際社会への発信についてお尋ねがありました。

 幾多の大規模災害を乗り越えてきた我が国の防災の知見や技術、そして被災地の復興状況を世界に発信し、世界の防災・減災対策をリードしていく取り組みは非常に重要であると考えます。

 国連防災世界会議後、防災の主流化を定着させるため、引き続き我が国が国際社会に対してどのような貢献ができるかについては、御提案も踏まえながら、よく検討してまいりたいと考えております。

 子ども・子育て支援についてお尋ねがありました。

 消費税率一〇%への引き上げは十八カ月延期しましたが、四月から子ども・子育て支援新制度は予定どおり実施します。

 このため、来年度予算案においては、待機児童の解消に全力を挙げるとともに、放課後児童クラブの拡大を着実に進めていくなど、量の拡充に取り組みます。

 また、保育士の配置や処遇改善等の質の改善に必要な財源も確保し、新制度の円滑な施行に万全を期してまいります。

 今後とも、子育て支援の質、量のさらなる充実を図るため、必要な財源の確保についてしっかりと対応してまいります。

 難病対策についてお尋ねがありました。

 難病に苦しむ方々の視点に立って政策を進めていくことは、私のライフワークと考えております。

 難病対策については、難病の克服を目指すとともに、患者の社会参加を支援し、地域で尊厳を持って生きられる共生社会を実現することを基本理念としています。

 これを充実強化するための新法が本年一月に施行され、医療費助成の対象疾病を五十六疾病から百十疾病に、さらに本年七月を目指し、約三百疾病に拡大することとしています。

 また、症例数が少なく研究が進みにくい疾病について、データを集約し、調査研究を進めているところです。

 さらに、適切な診断、治療を受けられるよう、拠点病院の整備など医療体制の確保を図るとともに、難病相談・支援センターなどを通じ、相談支援の充実を図ることとしています。

 こういった支援を総合的に進めるため、難病法に基づく基本方針を策定し、基本理念に即した施策の実施に力を尽くしてまいります。

 介護報酬改定についてお尋ねがありました。

 高齢者が大きく増加する中、介護保険制度の持続可能性を確保しつつ適切なサービスと人材を確保することは、重要な課題です。

 このため、今回の改定では、全体として事業者の安定的な経営に必要な収支差が残るようにしつつ適正化を図るとともに、最重要の課題である介護職員の確保を図るため、他の報酬とは別枠で、一人当たり月額一万二千円相当の処遇改善を実現するための加算を設ける、中重度の要介護者や認知症高齢者を受け入れた場合等にきめ細かく加算する、小規模な地域密着型サービスなどは高い報酬を設定するなど、質の高いサービスを提供する事業者には手厚い報酬が支払われることとしています。

 また、これにより、高齢者の保険料の上昇を抑制し、利用者負担を軽減できると見込んでいます。

 さらに、平成二十七年度からは、都道府県に設置した基金に約七百億円を充て、介護施設等の整備や介護人材の確保に向けた取り組みを一層推進し、国民が安心して介護サービスを利用できる体制を構築してまいります。

 医療保険制度改革についてお尋ねがありました。

 急速な少子高齢化のもとでも国民皆保険を堅持していくため、今国会に医療保険制度改革を行うための法案を提出します。

 具体的には、国民健康保険への財政支援を拡充することとあわせ、その財政運営を市町村から都道府県に移行し、国民皆保険の基盤を強化することとしています。また、予防、健康づくりの推進、医療費適正化計画の見直しなど、制度の充実と重点化、効率化を進めてまいります。

 高額療養費制度については、負担の公平等を図る観点から、ことし一月、所得の低い方々の自己負担限度額を引き下げたところです。

 受益と負担の均衡がとれた医療保険制度となるよう、引き続き必要な見直しについて検討してまいります。

 がん対策についてお尋ねがありました。

 がん対策については、第一次安倍内閣において初めて策定したがん対策推進基本計画に基づき、総合的な取り組みを進めているところであります。

 このうち、がん検診については、着実に受診率が向上しており、五〇%の目標達成に向けてさらに取り組みを進めてまいります。

 また、がん診療連携拠点病院における専門的な就労相談など、就労支援に取り組んでいるところであります。

 がん教育については、医師やがん経験者といった外部人材の活用など、全国展開に向けて検討を進めてまいります。

 がんによる死亡を減少させ、がん患者の方々が安心して暮らせるよう、基本計画の目標達成に向けて対策をしっかりと進めてまいります。

 エネルギー政策についてのお尋ねがありました。

 今回の固定価格買い取り制度の運用見直しは、電力系統への接続申し込み量が急増する中で、電力会社が停電を起こすことなく再生可能エネルギーを最大限受け入れられるためのものであり、引き続き適切な運用に努めてまいります。

 電力システム改革については、安定供給やユニバーサルサービスの確保に万全の備えをしながら、着実に進めてまいります。また、ガスや熱供給の分野の改革も一体的に進め、競争的でダイナミックなエネルギー市場をつくり上げてまいります。

 温室効果ガス削減についてお尋ねがありました。

 温室効果ガスの削減については、COP21において、全ての国が参加する公平かつ実効的な国際枠組みを構築することが必要です。

 世界の温暖化対策をリードすることを目指して、COP21に向け、温室効果ガスの排出について、新しい削減目標と具体的な行動計画をできるだけ早期に策定いたします。

 安全保障法制の整備についてお尋ねがありました。

 我が国を取り巻く安全保障環境は激変しており、もはやどの国も、一国のみで平和を守ることはできません。

 いかなる事態にあっても、国民の命と幸せな暮らしは断固として守り抜く、そして国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献していく必要があります。

 安全保障に想定外は許されません。グレーゾーン事態から集団的自衛権にかかわる事態まで、あらゆる事態に切れ目のない対応ができる安全保障法制の整備が不可欠です。

 先般の閣議決定は、集団的自衛権の行使一般を認めたものではありません。憲法第九条のもとで許されるのは、あくまでも国民の命と幸せな暮らしを守るための必要最小限度の自衛の措置だけです。

 日本国憲法の基本理念である平和主義は、今後とも守り抜いていきます。平和国家としての歩みはより確固たるものにしなければならない、このことは閣議決定にはっきりと明記しています。

 また、我が国防衛の基本方針である専守防衛には、何ら変更はありません。

 これらのことは、昨年七月の衆議院及び参議院の予算委員会を含め、政府側から御答弁申し上げているとおりであり、政府の一貫した考え方であります。

 引き続き、公明党を初め与党としっかりと御相談をしながら、万全の法案準備を進めてまいります。今後とも、国民の皆様のさらなる御理解を得る努力を続けながら、今国会における成立を図ってまいります。

 平和国家としての外交姿勢についてお尋ねがありました。

 我が国は、戦後、自由で民主的な国をつくり、地域や世界の平和と発展に貢献し、平和国家としての道を歩んでまいりました。これからも、この平和国家としての歩みは決して変わることはありません。

 中国とは、北京での日中首脳会談で戦略的互恵関係の原則を確認し、関係改善に向けて大きな一歩を踏み出しました。今後、さまざまなレベルで対話を深めながら、大局的な観点から、安定的な友好関係を発展させ、国際社会の期待に応えてまいります。

 韓国は、最も重要な隣国です。日韓国交正常化五十周年を迎え、関係改善に向けて話し合いを積み重ねてまいります。

 日韓間には難しい問題がありますが、だからこそ、前提条件をつけずに首脳レベルでも率直に話し合うべきです。私の対話のドアは常にオープンであります。

 人間の安全保障は、人間一人一人に焦点を当て、その保護と能力強化を通じ、人々が持つ豊かな可能性を実現させることを目指す理念です。

 政府としては、人間の安全保障を外交の重要な柱として、引き続き積極的に推進してまいります。

 軍縮・不拡散の分野では、世界で唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け、国際社会の核軍縮・不拡散に関する取り組みを積極的に主導してまいります。

 我が国は、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、地域や世界の平和と繁栄のために、より一層積極的に貢献していく考えであります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣太田昭宏君登壇〕

国務大臣(太田昭宏君) 防災・減災対策の重要性についてお尋ねがございました。

 多発する自然災害に対して、防災・減災、老朽化対策、メンテナンス、耐震化等を一層強化してまいります。

 特に近年、雨の降り方が局地化し、集中化し、激甚化しており、ハード、ソフト両面から対策を進めていく必要があります。

 具体的には、観測体制の強化とわかりやすい情報提供、河川改修や砂防堰堤等の計画的な整備、関係機関が事前にとるべき行動を時系列で示すタイムラインの策定、これらを推進してまいります。

 また、浸水に対する避難体制の充実等を図るため、水防法等を改正する法案を今国会に提出する予定であります。

 さらに、土砂災害につきましては、昨年改正した土砂災害防止法に基づきまして、危険箇所の基礎調査をおおむね五年程度で完了させることを目標とし、都道府県への支援を強化してまいります。

 防災・減災対策は緊要の課題であり、ハード、ソフト両面にわたる対策を総動員して取り組んでまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。(拍手)

 この間、ISを名乗る過激武装組織によって二人の日本人の命が奪われるという事態が起こりました。残虐で卑劣なテロ行為を断固糾弾するとともに、御家族に心からの哀悼の意を表します。

 ISへの対応で今求められているのは、国際社会が一致結束して、一連の国連安保理決議に基づき、外国人戦闘員の参加を阻止し、資金源を断ち、テロ組織を武装解除と解体に追い込んでいくことであります。

 この点で、国連の潘基文事務総長が、あらゆる対テロ行動は国際人権法・人道法と合致したものでなければならないと述べていることは重要であります。相手が最も野蛮で無法な組織であるからこそ、国際社会の側が、国連中心に、国際法、国際人道法を厳格に守って行動することが何よりも重要であり、そういう態度を堅持することこそ、テロ組織を追い詰めていく一番の力になると考えます。総理の見解を求めます。

 こうした悲劇を繰り返さないためにも、この間の日本外交の対応について冷静な検証が必要です。私は、三つの問題点を指摘しなければなりません。

 第一は、総理が、テロに屈するの一言で、冷静な検証を拒否する態度をとっていることです。

 国会質疑で、我が党議員が総理の中東歴訪での言動を指摘し、そういう言動をとれば二人の日本人に危険が及ぶかもしれないという認識があったのかとただしました。総理は、質問に答えず、そういう質問をすること自体がテロに屈することになると答弁しました。テロに屈するの一言で、異論を封じ、冷静な検証を拒否するという態度でいいのか。私は、こうした態度を改めることを強く求めます。

 二人の日本人が拘束されてから今日に至るまでの政府の対応について、国民に納得のいく説明を行うとともに、検証にとって必要不可欠な情報を公開することを強く求めるものです。

 第二に、総理は、米軍が行っているISへの空爆への支援について、政策的にはやらないとしながら、憲法上は可能だと述べました。さらに、日本人人質事件と絡めて、このように海外で邦人が危害に遭ったとき、その邦人を救出するため自衛隊が持てる能力を十分に生かすことはできない、そうした法制も含めて法整備を進めると述べました。

 しかし、そもそも救出作戦とは、相手を制圧する軍事作戦です。それは、人質の命も、自衛隊員の命も危険にさらすことになります。自衛隊がそうした作戦を行うことは、憲法違反の武力行使に当たることは明白ではありませんか。今回の事件を機に海外で戦争する国づくりを進めるなどということは、断じて許されるものではありません。

 第三に、ISのような過激武装組織がどうして生まれたか。

 そのきっかけとなったのが、二〇〇一年、米国が開始したアフガニスタン報復戦争でした。テロへの対抗を名目にした戦争は、テロを根絶するどころか、その温床を広げる結果となりました。さらに、二〇〇三年のイラク侵略戦争は、地獄の門を開き、泥沼の内戦を引き起こしました。

 これらの戦争が引き起こした混乱の中から、モンスターのようなテロ組織が生まれ、勢力を拡大していったのであります。それは、マレーシアのナジブ首相が、一人の悪魔を攻撃して、より大きな悪魔があらわれたと批判しているとおりであります。

 戦争でテロはなくせない、法と理性に基づく世界の一致結束した行動によってこそテロは根絶できる、これこそ真の歴史的教訓ではないでしょうか。

 アフガン、イラク戦争に日本政府は支持を与え、自衛隊を派遣しました。世界から無法なテロを一掃するためにも、アフガン、イラク戦争と日本政府の対応についての真摯な歴史的検証を行うべきではないでしょうか。

 以上三点について、総理の見解を求めるものであります。

 暮らしと経済の問題について質問いたします。

 安倍政権の経済政策の根本は、大企業がもうかれば、その恩恵がいずれ庶民の暮らしに回るというものです。

 しかし、現実はどうでしょう。円安と株高によって、大企業は空前のもうけを上げ、内部留保は二百八十五兆円に達しました。所得が十億円を超える富裕層は、一年間で二・二倍に急増しました。しかし、働く人の実質賃金は十八カ月連続マイナス、年収二百万円以下の働く貧困層と言われる方々は史上最多の一千百二十万人に達しました。

 総理、あなたの経済政策の根本が誤りだったこと、もたらしたものは格差拡大だけだったことは、事実が証明しているじゃありませんか。答弁を求めます。

 日本共産党は、三つの点で経済政策の抜本的転換を提起するものです。

 第一は、消費税増税路線からの転換であります。

 日本経済は、昨年四月の消費税増税によって深刻な危機に陥っています。経済の六割を占める個人消費は、昨年一年間、過去二十年間で最大の落ち込みになりました。とても暮らしが成り立たない、商売が立ち行かないという怨嗟の声が広がっております。

 内閣府が一月に発表したミニ経済白書は、消費税率引き上げによる物価上昇は実質所得の減少をもたらし、将来にわたって個人消費を抑制する効果を持つと認めました。

 総理、今日の景気悪化の原因が消費税増税にあること、増税による個人消費の抑制は一時のものではなく長期にわたるという認識はありますか。

 総理は、一〇%への増税を二年後に必ず実施するとしています。しかし、消費税増税は必ず景気を壊します。一九九七年の五%への増税は大不況の引き金を引きました。昨年の八%への増税も景気悪化の引き金を引きました。二度も失敗しているのに、三度目で景気が悪くならないとどうして言えるのですか。はっきりとした答弁を求めます。

 日本共産党は、消費税に頼らない別の道として、富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革で財源をつくる、大企業の内部留保を活用し、国民の所得をふやす経済改革で税収をふやす、この二つの政策をあわせて実施することで、社会保障充実と財政再建のための財源を確保することを提案しております。

 消費税一〇%は中止し、破綻した消費税頼みの道から転換すべきではありませんか。答弁を求めます。

 第二は、社会保障費の自然増削減路線からの転換であります。

 社会保障のためと言って消費税増税を強行しながら、来年度政府予算案は、社会保障費の自然増削減路線を復活させ、介護、年金、医療、生活保護など、あらゆる分野で社会保障の切り捨てを進めるものとなっています。

 政府予算案には、介護報酬二・二七%引き下げ、過去最大規模の削減が盛り込まれています。

 今、介護の現場は、深刻な人手不足にあえいでいます。東京都高齢者福祉施設協議会が昨年十二月に行った調査によりますと、都内の約半数の特養ホームで職員が定数に満たない状況です。低賃金のために職員が集まらない。職員が足らないため、部屋はあいているが新規入居者は受け入れられない、施設の一部を閉鎖している、ショートステイの受け入れをやめたなどの事態が起こっております。

 総理、介護報酬の引き下げが現場の危機に拍車をかけることは明瞭ではありませんか。

 政府は、介護職員に対して処遇改善加算をすると言います。しかし、加算も含めた事業者への報酬全体を大幅に引き下げて、どうして介護職員の待遇改善ができますか。

 介護難民を激増させる介護報酬削減は中止すべきであります。

 来年度予算案は、福祉の費用を削りに削りながら、空前のもうけを上げている大企業に、二年間で一・六兆円もの大減税をばらまこうとしています。

 しかし、幾ら大企業に減税しても、賃上げや設備投資に回らず、内部留保が積み上がるだけで、何の効果もない。これは、この間の経過でも明らかではありませんか。社会保障費の自然増削減路線は中止し、大企業にばらまく金があるならば、社会保障にこそ使うべきです。答弁を求めます。

 第三は、雇用のルール破壊を許さず、人間らしく働けるルールをつくることです。

 総理は、日本を世界で一番企業が活躍しやすい国にする、その邪魔となる岩盤規制を打破するとして、雇用に関する二つの重大法案、労働者派遣法改悪法案、残業代ゼロ法案を提出しようとしています。

 しかし、日本の雇用のルールの現状は、岩盤というべきものでしょうか。派遣、パートなど、非正規雇用が全体の四割近くにまで広がっています。異常な長時間労働、サービス残業、ブラック企業が横行し、過労死、過労自殺がこの十五年間で四倍近くに増加しています。最低賃金が余りにも低く、懸命に働いても貧困から抜け出せません。岩盤どころか、働く人を守るルールが余りにない。ずぶずぶの軟弱地盤というのが現状ではありませんか。

 労働者派遣法改悪法案は、同じ仕事での派遣受け入れは原則一年、最大三年という期間制限を撤廃し、三年ごとに派遣労働者を入れかえれば、同じ仕事で無期限に派遣労働者を使い続けることができるようにするものです。こんな大改悪がやられれば、正社員から派遣への大量の置きかえが進むことは明瞭ではありませんか。

 残業代ゼロ法案は、一定の年収を超えた労働者には、時間外労働協定、残業の上限を決める労使の協定を結ばなくてもよいし、残業代を払わなくてもよいとするものです。

 しかし、大体、現状はどうか。日本経団連、経済同友会の役員企業の時間外労働協定を調べたところ、何と三十五社中二十八社で、過労死ラインとされる月八十時間以上の時間外労働協定を結んでいます。

 総理は、この現状をどう考えますか。ただでさえ過労死ラインを超える異常な長時間労働を強制している財界、大企業にこんな法律を与えたら、過労死がいよいよ蔓延することは火を見るよりも明らかではありませんか。

 安倍政権が提出しようとしている雇用に関する二つの重大法案は、ただでさえずぶずぶの軟弱地盤の現状を底なし沼へと悪化させる歴史的大改悪です。国会提出を断念することを強く求めます。

 日本共産党は、次の三点で、人間らしく働ける雇用のルールをつくることを提案いたします。

 一つは、派遣労働を臨時的、一時的業務に厳しく限定する派遣法抜本改正を行い、均等待遇のルールをつくり、非正規から正社員への流れをつくることです。

 二つは、サービス残業、ブラック企業をなくし、残業は月四十五時間までと定めた大臣告示を法律化し、異常な長時間労働を正すことです。

 三つは、中小企業支援の抜本的強化と一体に、最低賃金を時給千円以上に引き上げるとともに、地域間格差を是正し、全国一律最低賃金制を確立することであります。

 以上三点について、総理の答弁を求めます。

 集団的自衛権行使容認の閣議決定を具体化する法整備にかかわって、二点に絞って質問します。

 第一は、米軍等を自衛隊が支援する恒久法をつくると伝えられていることについてです。

 我が党の国会論戦を通じて、アフガン、イラク戦争のような戦争をアメリカが引き起こした際に、自衛隊が従来の戦闘地域まで行って軍事支援を行うことになる、相手から攻撃されたら武器の使用をすることになる、そのことを総理は認めました。これを具体化するのが恒久法ではありませんか。米軍と自衛隊が肩を並べて戦争をするための法整備ではありませんか。

 第二は、総理が、国会質疑の中で、米国等が先制攻撃を行った場合でも集団的自衛権の発動はあり得るのかと問われて、日本が武力行使をするのは新三要件を満たすか否かの中で判断すると述べ、発動を否定しなかったことについてです。

 先制攻撃は国際法違反の侵略行為です。そして、米国がベトナム戦争、イラク戦争など先制攻撃を繰り返してきたことは、紛れもない歴史的事実です。

 総理、米国が違法な先制攻撃を行った場合でも、新三要件を満たしていると判断すれば集団的自衛権を発動するというのですか。そうであるならば、集団的自衛でなく、集団的侵略そのものではありませんか。明確な答弁を求めます。

 日本共産党は、憲法違反の閣議決定を撤回し、閣議決定を具体化する一切の法改悪の作業を即時中止することを強く求めるものであります。

 沖縄名護市辺野古への米軍新基地建設について質問いたします。

 昨年、沖縄県民は、県知事選挙、総選挙で、新基地建設反対のオール沖縄の意思を、疑いようのない明確さで示しました。

 総理は、選挙結果を真摯に受けとめると述べました。しかし、やっていることはどうでしょう。

 翁長知事との対話を拒否する。沖縄振興予算を一方的に減額する。住民の抗議行動を暴力的に排除して海上作業を再開する。県民がどんな審判を下そうと聞く耳を持たず、新基地建設に突き進む。こんな野蛮な強権政治は民主主義の国では絶対に許されないと考えますが、いかがですか。

 総理は、普天間移設は負担軽減になると繰り返しています。しかし、辺野古の米軍新基地は、普天間基地の単なる移設などという生易しいものではありません。

 第一に、滑走路は、普天間基地では一本ですが、新基地では千八百メートルの滑走路が二本になります。

 第二に、新基地には、三百メートル近い岸壁が建設され、四万トンを超える強襲揚陸艦が接岸できるようになり、空と海からの、海兵隊の一大出撃拠点がつくられます。

 第三に、新基地には、普天間基地にはない広大な弾薬搭載エリアが建設されます。

 第四に、新基地は、キャンプ・シュワブ、辺野古弾薬庫と一体運用され、その面積は普天間基地の約五倍に上ります。

 第五に、さらに、キャンプ・ハンセン、高江など北部訓練場、伊江島飛行場などとも連動して、海兵隊の基地機能は飛躍的に強化することになります。

 そして第六は、耐用年数は二百年、二十二世紀どころか二十三世紀まで沖縄を基地の鎖で縛りつけることになります。

 総理、このどこが負担軽減ですか。老朽化した普天間基地にかえて、大幅に基地強化され、半永久的に使用できる最新鋭の巨大基地をつくる、これが今進められていることの正体ではありませんか。

 総理が選挙結果を真摯に受けとめるというなら、新基地建設を直ちに断念すべきであります。普天間基地の無条件撤去を求めて、米国政府と交渉すべきであります。答弁を求めます。

 ことしは、戦後七十年の節目の年です。

 総理が発表するとしている戦後七十年談話に、内外から懸念と批判が広がっています。

 総理は、村山談話について、全体として引き継ぐと言います。しかし、一月二十五日のNHKインタビューで、その核心的内容、植民地支配と侵略への痛切な反省と心からのおわびというキーワードを引き継ぐのかと問われ、最後まで、引き継ぐとは言わず、さらに、キーワードを同じように使うことではないのかと問われて、そういうことではないと明言しました。

 これは、村山談話の一番の核心的内容を曖昧にし、事実上否定する姿勢をあからさまにした、極めて重大な発言です。このような立場に立った談話ならば、百害あって一利なしと言わなければなりません。

 日本共産党は、この節目の年が日本とアジア諸国との和解と友好に向かう年となるために、日本の政治がとるべき五つの基本姿勢を提唱するものです。

 第一は、村山談話、河野談話の核心的内容を継承し、談話の精神にふさわしい行動をとり、談話を否定する動きに対してきっぱり反論することであります。

 第二は、日本軍慰安婦問題について、被害者への謝罪と賠償など、人間としての尊厳が回復される解決に踏み出すことであります。

 第三は、国政の場にある政治家が靖国神社を参拝することは、侵略戦争肯定の意思表示を意味するものであり、少なくとも首相や閣僚による靖国参拝は行わないことを日本の政治のルールとして確立することであります。

 第四は、民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶するために、立法措置を含めて、政治が断固たる立場に立つことであります。

 そして第五は、村山談話、河野談話で政府が表明してきた過去の誤りへの反省の立場を、学校の教科書に誠実かつ真剣に反映させる努力をすることであります。

 以上五点について、総理の見解を問うものであります。

 日本共産党は、侵略戦争と植民地支配に命がけで反対を貫いてきた党として、戦後七十年のことしが日本とアジア諸国との心通う友好に向かう年となるように、全力を挙げて奮闘する決意を表明して、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 志位和夫議員にお答えをいたします。

 ISILへの対応についてお尋ねがありました。

 国際社会は、一致団結してISILと闘う決意を鮮明にしており、国連安保理は、ISILを非難し、資金の提供、武器の供与、戦闘員の移動、身代金の支払い等を禁じる決議を累次にわたって採択してきています。

 我が国としても、ISILに関連する国連安保理決議を厳格に履行するとともに、どれだけ時間がかかろうとも、国際社会と連携して、邦人テロ殺害事件の犯人を追い詰めて、法の裁きにかけると強く決意しています。

 同時に、食糧、医療などの人道支援を拡充し、テロと闘う国際社会において、日本としての責務を毅然として果たしてまいります。

 邦人殺害テロ事件に関する検証についてお尋ねがありました。

 テロ対策については不断の見直しが必要であり、今回の事件の対応については、先日立ち上げた検証委員会のもと、現在、政府部内において検証作業を進めているところです。

 検証結果をどのような形でお示しするかについては、今後委員会において議論することとなりますが、インテリジェンスや諸外国との関係などを考慮しつつ、今後のテロ対策に資するものについては積極的に公表してまいります。

 自衛隊による在外邦人の救出についてお尋ねがありました。

 今や、海外に住む日本人は百五十万人、さらに年間千八百万人の日本人が海外に出かけていく時代です。これら邦人が危機にさらされたとき、その救出について対応できるようにすることは、国として当然の責務であります。法制度の不備により邦人の命を守れないということはあってはなりません。

 このため、政府としては、領域国の受け入れ同意があることを前提に、自衛隊による邦人救出を行い得るよう法整備を行ってまいります。

 もとより、このような自衛隊の活動は、武力の行使を伴うものではありません。海外の厳しい環境下でも自己完結的に活動することができる、他の組織にはない自衛隊の特性や能力を活用するものであり、あくまでも警察的な活動の範囲内で行うものです。

 邦人の命を守るための活動であり、自衛隊員の安全確保に配慮することも当然です。

 海外で戦争する国づくりを進めるとの御指摘は、全く当たりません。

 テロ根絶に向けた取り組みについてお尋ねがありました。

 国際社会は、累次にわたる国連安保理決議の採択等を通じ、一致団結してテロと闘う決意を鮮明にしています。

 我が国としても、食糧、医療といった人道支援の拡充を通じ、テロと闘う国際社会において、日本としての責任を毅然として果たしていく考えです。

 なお、自衛隊によるイラクでの人道復興支援活動、インド洋での給油活動については、国会においても御承認いただいた適切な活動であったと考えております。

 安倍内閣の経済政策についてお尋ねがありました。

 安倍内閣が目指しているのは、いわゆるトリクルダウンではなく、経済の好循環の実現であり、地方経済の底上げです。このため、政労使による賃上げ、設備投資の促進や下請企業への転嫁などの取り組みや、地方創生などにも取り組んでいるところです。

 また、雇用環境については、二年連続で最低賃金の大幅引き上げを実施し、パートタイム労働者について正社員との均衡待遇を推進してまいりました。さらに、政労使会議の合意において、非正規雇用労働者のキャリアアップや処遇改善に向けた取り組みを今後も進めていくこととしています。

 そして、経済再生に取り組み、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、子供たちの誰もが家庭の経済事情に左右されることなく希望する教育を受けられるようにしてまいります。

 こうした取り組みを通じ、誰にでもチャンスがある、そして頑張れば報われるという社会の実現に向け、尽力してまいります。

 なお、格差に関する指標はさまざまであり、格差が拡大しているかどうかについては一概に申し上げられませんが、例えば、我が国の場合、当初の所得に比較して、税や社会保障による再分配後の所得の格差はおおむね横ばいで推移しています。

 消費税率引き上げについてお尋ねがありました。

 三本の矢の政策により、有効求人倍率が二十二年ぶりの高水準となるなど、経済の好循環は確実に生まれ始めています。まさに事実が証明していると言えます。

 他方、昨年四月の消費税率引き上げが個人消費に影響を及ぼしたのも事実であり、アベノミクスの成功を確かなものとするため、一〇%への引き上げを十八カ月延期することとしました。

 社会保障を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、我が国の信認を確保するため、平成二十九年四月の一〇%への引き上げについては確実に実施します。

 昨日公表されたGDP速報では、三四半期ぶりに実質GDPが前期比プラス成長となり、また二四半期連続で個人消費がプラスとなり、雇用・所得環境の改善を背景に、消費は緩やかに回復することが期待されます。

 こうした動きを確かなものとするため、三本の矢の政策をさらに前に進め、経済再生と財政健全化の両立を目指してまいります。

 なお、社会保障制度の財源としては、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定していること、勤労世代など特定の者への負担が集中しないことから、消費税がふさわしいと考えております。

 介護報酬改定についてお尋ねがありました。

 高齢者が大きく増加する中、介護保険制度の持続可能性を確保しつつ、適切なサービスと人材を確保することは重要な課題です。

 このため、今回の改定では、全体として、事業者の安定的な経営に必要な収支差が残るようにしつつ適正化を図るとともに、最重要の課題である介護職員の確保を図るため、他の報酬とは別枠で、一人当たり月額一万二千円相当の処遇改善を実現するための加算を設ける、中重度の要介護者や認知症高齢者を受け入れた場合等にきめ細かく加算する、小規模な地域密着型サービスなどは高い報酬を設定するなど、質の高いサービスを提供する事業者には手厚い報酬が支払われることとなります。

 さらに、平成二十七年度からは、都道府県に設置した基金に約七百億円を充て、介護施設等の整備や介護人材の確保に向けた取り組みを一層推進することとしており、これらにより、介護職員の処遇改善は確実に実施されると考えています。

 したがって、介護難民を引き起こすようなものではないと考えています。

 法人税改革と社会保障費についてお尋ねがありました。

 今般の法人税改革は、経済の好循環の定着化に向けて、企業が収益力を高め、より積極的に賃上げ等に取り組むよう促す観点から行うものです。

 一方、急速に少子高齢化が進む中、社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡していくため、誰もが安心できる持続可能な社会保障制度の確立を図ることが必要です。

 このため、消費税率の一〇%への引き上げを延期する中でも、子育て支援、医療、介護など社会保障の充実については、可能な限り予定どおり実施しつつ、重点化、効率化も同時に進めてまいります。

 雇用ルールなどについてのお尋ねがありました。

 私は、今通常国会を改革断行国会と位置づけ、農業、雇用、医療、エネルギーなど、岩盤のようにかたい規制に対して、強い決意を持って改革を断行してまいります。

 その中で、働き過ぎの是正や労働者の処遇の改善は重要な課題と認識しています。

 働き過ぎの是正を図るため、賃金不払い残業や過重労働等が疑われる企業に対し、重点的な監督指導を行っているところです。また、本年一月からは、長時間残業に関する監督指導の徹底を図ってまいります。さらに、企業が自主的に労働環境の改善に取り組むよう、その促進に努めています。

 その上で、検討を進めている労働時間制度の見直しにおいては、中小企業における時間外労働への割り増し賃金率を引き上げ、時間でなく成果で評価する新たな制度について、対象者の健康が損なわれることのないよう、企業に対し、一定の休日を必ず与えるなどの措置を求めるなどの方針であり、過労死が蔓延するといったことは考えられません。

 提出を予定している労働者派遣法改正法案では、派遣先事業所での継続的な派遣労働者の受け入れについて、三年という期間制限を課した上で、延長する場合には過半数組合等からの意見聴取を義務づけるとともに、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップを支援していくこととしており、正社員から派遣への置きかえを進めるものではありません。

 また、全国一律の最低賃金制は、地域間の経済事情等を考慮すれば困難であり、二年連続で大幅に引き上げた最低賃金について、中小企業等への支援を図りつつ、引き上げに努めてまいります。

 安倍内閣としては、あらゆる人がワーク・ライフ・バランスを確保しながら生きがいを持って活躍の場を見出すことのできる社会を目指してまいります。

 恒久法に関するお尋ねがありました。

 御指摘の、戦闘地域まで行って軍事支援を行うとの御趣旨は定かではありませんが、先般の閣議決定においては、今後、我が国が行う支援活動は、現に戦闘行為を行っている現場では実施しないこととしています。

 万が一、状況の変化により、自衛隊が活動している場所が現に戦闘行為を行っている現場となる場合には、直ちに活動を休止または中断することになります。武器を使って反撃しながら支援を継続するようなことはありません。

 自衛隊の派遣については、我が国として、みずからの国益に照らして主体的に判断するものであり、また、我が国の平和及び安全の確保や国際社会の平和と安定への貢献とおよそ関係なく自衛隊を派遣することはあり得ません。

 まして、米軍と自衛隊が肩を並べて戦争をするための法整備ではないかなどという議論は、全く根拠のないものです。

 政府としては、安全保障法制の整備に当たっては、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とすることが重要であると考えており、引き続き、与党と御相談しながら万全の法案準備を進めてまいります。

 先制攻撃と新三要件についてお尋ねがありました。

 憲法上、武力の行使が許されるのは、あくまで先般の閣議決定にある新三要件を満たす場合に限られ、我が国または我が国と密接な関係にある他国に対して武力攻撃が発生したことを前提としています。

 いかなる場合に新三要件を満たすことになるかは、個別具体的な状況に照らして、総合的、客観的に判断されることとなります。

 いずれにせよ、昨年七月の閣議決定は、国民の命と幸せな暮らしを守るため、必要最小限度の自衛の措置が許されるという、従来の憲法解釈の基本的考え方を変えるものではありません。

 政府としては、閣議決定で示された基本方針のもと、切れ目のない安全保障法制の整備を進めてまいります。

 普天間の辺野古移設についてお尋ねがありました。

 最も大切なことは、住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間の固定化は絶対に避けなければならないということであります。これが大前提であり、かつ政府と地元の皆様との共通認識であると思います。

 辺野古への移設は、米軍の抑止力の維持と普天間の危険性除去をあわせたとき、唯一の解決策であります。この考え方に変わりはありません。

 辺野古の埋立面積は普天間飛行場の三分の一以下であり、滑走路も大幅に短縮されます。滑走路が二本になるのは、地元の要望を踏まえ、離陸、着陸のいずれの飛行経路も海上になるよう、V字形に配置するためのものであります。これにより、騒音も大幅に軽減されます。

 岸壁の整備については、滑走路の短縮により、故障した航空機を搬出する輸送機が着陸できなくなるため、かわりに運搬船が接岸できるようにするためのものであります。強襲揚陸艦の運用を前提とするものでは全くありません。

 また、現在の弾薬の保管、搭載に係る機能の移設に当たっては、辺野古にある既存の弾薬庫を活用しつつ、効率的に整備します。

 普天間の有する三つの機能のうち、辺野古に移るのはオスプレイなどの運用機能のみです。空中給油機は、既に全機、山口県岩国基地へ移りました。緊急時の航空機受け入れ機能も本土へ移します。また、オスプレイについては、県外訓練等を着実に進めてまいります。

 負担軽減に取り組む政府の姿勢が民主主義に反するとは考えておらず、基地機能強化とか巨大基地建設との御指摘は全く当たりません。

 引き続き、現行の日米合意に従い、沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら、移設を進めてまいります。

 村山談話、河野談話についてお尋ねがありました。

 安倍内閣としては、村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えであります。

 河野官房長官談話についても、既に繰り返し述べているとおり、安倍内閣として、これを見直すことは考えていません。

 慰安婦問題についてのお尋ねがありました。

 慰安婦問題については、これまで累次の機会に申し上げてきたとおり、筆舌に尽くしがたい、つらい思いをされた方々のことを思い、非常に心が痛みます。この点についての思いは、私も歴代総理と変わりません。

 同時に、私としては、この問題を政治問題、外交問題化させるべきではないと考えています。

 これまでの歴史の中では多くの戦争があり、その中で女性の人権が侵害されてきました。二十一世紀こそ人権侵害のない世紀にすることが大切であり、日本としても全力を尽くしていく考えであります。

 靖国参拝についてお尋ねがありました。

 私は、靖国神社を参拝し、国のために戦い、とうとい命を犠牲にした方々に対して、尊崇の念を表し、みたま安かれと御冥福をお祈りすることは、国のリーダーとして当然のことであり、世界共通のリーダーの姿だと考えています。

 また、閣僚が私人として参拝するかどうかについては、もとより自由であると考えております。

 ヘイトスピーチについてのお尋ねがありました。

 一部の国、民族を排除しようという行動のあることは極めて残念であり、あってはならないことと考えています。

 いわゆるヘイトスピーチと言われる行動に対する立法措置については、各党における検討や国民的な議論の深まりを踏まえ、考えてまいります。

 今後とも、一人一人の人権が尊重される、豊かで安心できる成熟した社会を実現するため、教育や啓発の充実に努めてまいります。

 村山談話、河野談話と教科書についてのお尋ねがありました。

 教科書にどのような事項を取り上げ、どのように記述するかは、教育基本法や学校教育法、学習指導要領等に基づき教科書発行者が判断するものであり、教科書検定では、教科書発行者が申請した内容について、教科書検定基準に基づき検定がなされるものであります。

 今後とも、教育基本法の趣旨を踏まえ、バランスよく記載された教科書を用いながら、我が国の歴史について子供たちがしっかりと理解を深めていくことができるよう取り組んでまいります。(拍手)

副議長(川端達夫君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(川端達夫君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣     高市 早苗君

       法務大臣     上川 陽子君

       外務大臣     岸田 文雄君

       文部科学大臣   下村 博文君

       厚生労働大臣   塩崎 恭久君

       農林水産大臣   西川 公也君

       経済産業大臣   宮沢 洋一君

       国土交通大臣   太田 昭宏君

       環境大臣     望月 義夫君

       防衛大臣     中谷  元君

       国務大臣     甘利  明君

       国務大臣     有村 治子君

       国務大臣     石破  茂君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     竹下  亘君

       国務大臣     山口 俊一君

       国務大臣     山谷えり子君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  横畠 裕介君


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