衆議院

メインへスキップ



第16号 平成27年4月16日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十七年四月十六日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十一号

  平成二十七年四月十六日

    午後一時開議

 第一 都市農業振興基本法案(参議院提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 都市農業振興基本法案(参議院提出)

 電気事業法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


このページのトップに戻る

    午後一時二分開議

副議長(川端達夫君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 都市農業振興基本法案(参議院提出)

副議長(川端達夫君) 日程第一、都市農業振興基本法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長江藤拓君。

    ―――――――――――――

 都市農業振興基本法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔江藤拓君登壇〕

江藤拓君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、都市農業の安定的な継続を図るとともに、都市農業の有する機能の適切かつ十分な発揮を通じて良好な都市環境の形成に資するため、都市農業の振興に関し、基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定めること等により、都市農業の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進しようとするものであります。

 本案は、参議院提出に係るもので、去る九日本委員会に付託されました。委員会におきましては、昨十五日、山田参議院農林水産委員長から提案理由の説明を聴取した後、直ちに採決いたしました結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(川端達夫君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 電気事業法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明

副議長(川端達夫君) この際、内閣提出、電気事業法等の一部を改正する等の法律案について、趣旨の説明を求めます。経済産業大臣宮沢洋一君。

    〔国務大臣宮沢洋一君登壇〕

国務大臣(宮沢洋一君) ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する等の法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 東日本大震災を契機として、戦後六十年以上続いてきたエネルギーの供給体制を抜本的に見直し、国家戦略として責任あるエネルギー政策を構築することが求められております。低廉で安定的なエネルギー供給を確保し、国の成長を支えるのはもちろんのこと、成長戦略の観点から、エネルギー産業を国の成長をリードする産業へと発展させることが重要であります。

 このため、まずは電力システム改革をその重要な柱と位置づけ、改革を段階的に進めるための法案を順次提出してまいりました。改革の第一段階である広域系統運用の拡大を実現するとともに、電力システム改革の全体像を明らかにする改革プログラムを定めた電気事業法改正法が一昨年の十一月に成立し、続いて、改革の第二段階である小売及び発電の全面自由化を実施するための電気事業法等改正法が昨年六月に成立したところであります。

 この歩みをとめることなく、三段階から成る電力システム改革の総仕上げである法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保を実施するのにあわせて、ガスや熱供給についても、小売の全面自由化などの制度改革を一体的に進めることで、これまで縦割りであった市場の垣根を取り払い、ダイナミックなイノベーションが生まれる総合的なエネルギー市場をつくり上げるため、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 まず、電気事業法の改正に関するものであります。

 第一に、一般送配電事業者及び送電事業者について、小売電気事業及び発電事業との兼業を原則として禁止することによる法的分離を平成三十二年四月一日から実施します。あわせて、適正な競争関係を損なうことのないよう、グループ内での人事、会計などについて適切な行為規制を措置します。

 第二に、現在の一般電気事業者に対して経過措置として課される小売料金規制について、競争の進展状況を確認した上で、供給区域ごとに経過措置を解除することができる制度とします。

 第三に、適正な競争関係を確保するため、現在の一般電気事業者に認められている一般担保つき社債の発行の特例を廃止します。ただし、足元の資金調達環境を考慮し、法的分離の実施から五年間に限り、送配電事業や発電事業を営む会社などが一般担保つき社債を発行できる措置を講じます。あわせて、株式会社日本政策投資銀行などによる電気事業者への貸付金に係る一般担保制度も廃止します。

 次に、ガス事業法の改正です。

 第一に、平成二十九年を目途に、ガスの小売業への参入を全面自由化します。登録を受けた事業者であれば、家庭を含む全ての需要家に対してガスの供給を行うことができることとし、これに伴い、ガス事業の類型を見直します。あわせて、LNG基地の第三者利用を促す措置を講じます。

 第二に、ガス導管網の整備を促進するため、一般ガス導管事業については地域独占と料金規制を維持し、導管の建設や保守の着実な実施を確保します。また、全ての導管事業者に導管の相互接続に係る努力義務を課すとともに、国が事業者間の接続に係る協議を命令し、裁定することができる制度を創設します。

 第三に、需要家保護を徹底するため、ガス小売事業者に契約条件の説明義務などを課すとともに、競争が不十分な地域では、現在の一般ガス事業者に対し、経過措置として小売料金規制を継続いたします。また、保安の確保に万全を期すため、ガス導管事業者に導管網の保安や需要家保有の内管の点検を義務づけ、ガス小売事業者には消費機器の調査などを義務づけます。

 第四に、導管部門の一層の中立化を図るため、一定規模以上のガス導管事業者について、ガス小売事業及びガス製造事業との兼業を禁止することによる法的分離を平成三十四年四月一日から実施します。あわせて、適正な競争関係を損なうことのないよう、電気事業法と同様、適切な行為規制を措置します。

 次に、熱供給事業法については、現在許可制とされている参入規制を登録制とし、料金規制や供給義務を撤廃した上で、需要家保護を徹底すべく、熱供給事業者に契約条件の説明義務を課すなどの措置を講じます。

 最後に、これらの改革により自由化される市場が適切に機能するよう、独立性と高度の専門性を有する電力・ガス取引監視等委員会を経済産業省に設置し、電力、ガス及び熱供給の取引の監視や、送配電事業及びガス導管事業の行為規制などを適切に実施してまいります。

 このほか、ガス事業に係る事業類型の見直しなどに伴い、関係法律について所要の改正を行うとともに、一連の改革について各段階で検証を行い、課題を克服しながら進めていく旨を附則に規定します。

 以上が、本法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 電気事業法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

副議長(川端達夫君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。田中良生君。

    〔田中良生君登壇〕

田中良生君 自由民主党の田中良生です。

 ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する等の法律案につきまして、自由民主党を代表して質問させていただきます。(拍手)

 まず冒頭、今回のエネルギーシステム改革の目的について、改めてお伺いいたします。

 今回政府から提出されました法案は、戦後六十年以上続いてきたエネルギー供給体制を抜本的に見直し、国家戦略として、責任あるエネルギー政策を構築するものであります。

 現在のエネルギー供給体制は、電力やガスなどの普及がまだ十分ではなかった戦後につくられたもので、安定供給を支え、我が国経済の高度成長に貢献してまいりました。

 が、しかし、電気やガス、熱供給について、それぞれの法律による事業規制により、エネルギー企業間の競争が十分に働かない状態になっており、コスト削減のインセンティブが十分確保されるものになっているとは言いがたいものであります。

 東日本大震災での経験を踏まえると、こうしたエネルギー供給に係る規制、まさに岩盤規制を改革し、エネルギー企業間の競争の活性化を促す、そして、低廉で安定的なエネルギー供給を確保し、エネルギー産業を我が国の成長産業へと発展させることが急務であります。

 こうした規制を改革するこの法案は、安倍総理がおっしゃる改革断行国会の象徴ともいうべき法案の一つではないかと思います。この改革に取り組む総理の御決意をお伺いいたします。

 次に、この改革により、これまでの新規参入規制によって、商品やサービスの選択の余地が奪われてきたエネルギー産業においては、縦割り型の構造を持つ市場を統合された市場構造へと転換することにより、エネルギー関係企業が、それぞれの強みを基礎として、効率性や付加価値の高いサービス競争をしつつ、お互いが新たな需要獲得に切磋琢磨するような、新たな成長戦略を築き上げることが可能になります。

 また、一つの電力会社や都市ガス会社が、さまざまなエネルギー供給サービスを担う総合エネルギー企業へと発展、成長していくことが期待され、事業の多角化による企業の稼ぐ力の向上や、各社、各分野で重複して維持、運用してきたインフラの集約化なども可能になります。

 我が国経済にとって非常に重要な施策となる今回のエネルギーシステム改革に取り組まれる宮沢大臣に、その決意をお伺いいたします。

 また、エネルギーシステム改革については、アメリカやヨーロッパ各国を初め諸外国でも既に行われてきているところであります。

 そうした諸外国では、例えば、電力システム改革を行った結果、電気料金が上昇した事例や、送配電設備の保有者と系統運用者の連携が不十分で大停電を起こした事例等があると聞きますが、今回のシステム改革の目的でもある安定供給の確保や料金の抑制という観点からも、我が国においては、同様のことを決して起こしてはなりません。

 こうした諸外国における弊害の事例を踏まえ、我が国のエネルギーシステム改革ではどのように対応されようとしているのでしょうか。宮沢大臣にお伺いいたします。

 そして、今回の法案では、電気事業法を改正するとともに、ガス事業法についても改正をいたします。

 昨年実施した電気事業法改正と同様に、都市ガスの小売参入の全面自由化を実施することなどに加え、ガス導管網の整備を促進するための制度創設や、大手都市ガス会社に対する導管部門の法的分離の実施など、その改正の内容は多岐にわたります。

 こうした今回のガス事業法の改正により、我が国のガス事業制度はどのように変わっていくのか、また、国民にどのような影響があるのか、宮沢大臣にお伺いいたします。

 さて、都市ガスの需要家は、東京、名古屋、大阪の三大都市圏に集中し、これまでの都市ガスの部分自由化による新規参入も、そうしたところに集中しているのが実情であろうかと思います。

 今回のガス事業法改正においては、ガス導管部門の中立性を確保することで、都市ガス市場における公平公正な競争環境を整備し、より一層の新規参入を促すこととしています。

 そして、そのための法的分離の実施対象は、現在三大都市圏において事業を営む東京ガス、東邦ガス、大阪ガスの三社に限定されております。

 こうした中、今回のガスシステム改革のメリットは、都市部のみの限定的なものとなり、地方にはメリットがないのではないかという懸念の声も聞こえてまいります。

 そもそも、今回の改革に当たっては、全国に二百社以上ある都市ガス事業者の大半を占める地方の中小の都市ガス事業者の意見や声を十分に聞かれた上で対応されているのでしょうか。宮沢大臣にお伺いをいたします。

 最後に、今回のエネルギーシステムの改革により、ダイナミックなイノベーションを創発し、我が国の成長をリードするエネルギー産業を創出することこそが、産業界や消費者の利益の向上につながり、ひいてはエネルギーのベストミックスに大きく寄与するものと考えます。これこそが我々に課せられた最大の責務であることを改めて確認し、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 田中良生議員にお答えをいたします。

 改革に取り組む決意についてのお尋ねがありました。

 電力システム改革を最後までやり遂げるとともに、ガス事業でも小売を全面自由化し、エネルギー分野の岩盤規制改革を断行します。

 エネルギー市場の垣根を越えた改革を一体的に進め、革新的な技術の導入や異なるサービスの融合など、ダイナミックなイノベーションを生み出すとともに、エネルギー選択の自由度の拡大や料金の最大限の抑制を実現し、我が国の成長につなげていく決意であります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣宮沢洋一君登壇〕

国務大臣(宮沢洋一君) 田中議員にお答えいたします。

 エネルギーシステム改革への決意についてお尋ねがありました。

 今般の改革においては、電気、ガス、熱供給を一体的に改革してまいります。これにより、これまで縦割りだったエネルギー市場の垣根を越えて、エネルギー間の相互参入や異業種からの新規参入、また電力会社とガス会社の連携といった企業間の連携などが進むことが期待されております。

 競争的でダイナミックなエネルギー市場をつくり上げることで、消費者が価格やサービス面でのメリットを享受できるようにするとともに、我が国の産業競争力の強化に資するエネルギー産業の発展へとつなげてまいります。

 諸外国の改革を踏まえた対応についてお尋ねがありました。

 今回の改革においては、例えば、自由化と同時に料金規制を撤廃したことにより価格が上昇した事例を踏まえ、競争の状況を見きわめた上で料金規制を撤廃することとしたこと、また、事業者間の連携不足により供給トラブルを招いた事例を踏まえ、緊急時対応のための事業者間の連携ルールを策定することとしたことなど、諸外国の改革の経験を十分踏まえた制度設計を行っております。

 ガスシステム改革の国民への影響などについてお尋ねがありました。

 今般のガスシステム改革は、第一に小売参入の全面自由化、第二にガス導管網の整備促進、第三に需要家保護と保安確保、第四に大手三社の導管部門の法的分離の実施の四つを柱としております。

 ガスと電力の改革を一体的に進めることで、家庭に届けられる全てのエネルギーを消費者が選べることとなり、電気とガスのセット販売など、多様で魅力的なサービスが消費者に提案されることを期待しております。

 ガスシステム改革による地方への影響についてお尋ねがありました。

 ガスシステム改革を議論した審議会では、大手のみならず、地方の中小都市ガス会社、LPガス会社、電力会社など幅広い事業者から丁寧にヒアリングを行いました。全面自由化に反対を表明した事業者はなく、地方の実情に即したサービスを提供できるようになる点で、改革を積極的に受けとめる意見も提出されました。

 この改革により、地方におけるガスの利用者の方々にも多様で魅力的なサービスが提供され、地方経済の活性化に資することを期待しております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 田嶋要君。

    〔田嶋要君登壇〕

田嶋要君 民主党の田嶋要です。

 民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する等の法律案について質問いたします。(拍手)

 除染、廃炉、汚染水。あれから四年、今なお福島では、見えない敵、放射能との闘いが続いています。他方、福島から遠く離れたここ永田町では、もう一つの見えない敵、事故の風化との闘いが始まっています。

 福島の再生なくして日本の再生なし、これが安倍政権の福島向けのリップサービスでないことを信じたい。しかし、原発の安全神話を生み、大きく育んできた自民党権力は、事故直後のあの恐怖と緊張の肌感覚を十分に持たず、その後再び権力の座に戻った。この空白こそが、安倍政権をちゅうちょなく、そして罪悪感なく、原発へと急速に回帰させている決定的な要因だと指摘せざるを得ません。

 総理、目先の経済性、損得勘定のみに目を奪われるのでなく、五十年、百年後にはこういうエネルギー環境社会にしたいというビジョンを示し、その道筋を明らかにする重い責任があると考えますが、総理の御所見をお聞かせください。

 確かに、電力システム改革の第一、第二ステップに私たちは賛成しました。しかし、安倍内閣のビジョンなき改革手法、そして、改革の大前提となる、政府としてのエネルギーミックスに関する考え方がいまだ公表されていないこと自体、全くもって理解に苦しむところであります。

 いつか来た道をこの道しかないと思い込むことで、エネルギーの分野でも、もう一度大きな悲劇へと国民を導いているのではないかとさえ感じます。

 総理、原発事故により、今なお人が住めなくなっている福島の土地がどれだけの広さなのか、いまだ故郷に戻れない方々が何人おいでか、そして、仮設住宅にはどれだけの方がお残りか、正しく認識をされているのでしょうか。お答えください。

 その一方で、国民向けには、あたかも安倍政権は原発を最大限減らすことを本気で目指しているかのようなメッセージ。しかし、原発が今後も重要なベースロード電源ならば、なぜ依存度を最大限下げなければならないのでしょうか。安全性を大前提であるならば、本音と建前を使い分けず、例えば、フランスに倣って五割の目標と正直に表明してはいかがですか。総理の明快な答弁をいただきます。

 そもそも、ベースロード電源とは何なのか。石炭火力発電は、トータル発電コストで見ればLNG火力と今でもほぼ同じ。しかも、二〇一四年のIEA報告によれば、将来的にLNG価格は横ばいで安定、他方、石炭価格は三割以上も上昇すると予測されています。にもかかわらず、なぜ石炭はベースロード、LNGはミドル電源という位置づけなのか。経産大臣、御説明願います。

 その石炭火力発電及び石油火力発電についてお尋ねします。

 二〇一二年にはわずか四基と経産省から報告を受けていた石炭火力発電の新規計画が、今や実に四十三基に上ります。一方、欧米では、石炭火力発電の新規計画に高いハードルを設け始めました。

 日本の石炭火力発電技術は、いまだに発電効率の低い途上国の石炭火力発電所の置きかえにはすぐれた選択肢であっても、大幅な温室効果ガス削減を求められている先進国で今後何十年と動かすことは、将来の事業リスクが極めて大きいと考えます。仮に、温室効果ガスの抑制が義務づけられれば、莫大な追加費用が必要になり、発電コストが上昇し、発電事業者はもちろんのこと、日本経済に大きな打撃を与えるのではないでしょうか。

 また、我が国では、調整電源としての石油火力発電の割合が諸外国と比べても突出しています。その依存度を他の先進国並みに引き下げていくことも喫緊の課題と考えます。この二点、経産大臣から御答弁を求めます。

 安倍総理は、昨年の本会議で、省エネについて、「我が国は、エネルギー効率を大幅に改善し、今や世界トップレベルにあります。」との旧態依然の認識を示されました。世界トップになったのは九〇年ころ、そこで足踏みをしているのが過去二十年余りの日本ではないですか。技術の進展や生産設備の老朽化などで、今や省エネではヨーロッパに抜かれつつあるのが現状ではないですか。総理の御認識を正していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。

 総理、私も一足先に、昨年完成したコマツの粟津工場を視察させていただきました。コマツのような先進的な取り組みを日本の当たり前にするには、例えば、大企業では省エネ努力を点数化、中小企業では省エネ改修への融資を拡大するなど、国が省エネ努力を強い危機感で後押しする政策が今こそ必要と考えますが、総理のお考えをお聞かせください。

 また、省エネを徹底していくためには、安倍政権になってやめてしまった数値目標つきの節電の取り組みを再開すべきと考えます。景気への悪影響を心配されているかもしれませんが、少なくとも、省エネ推進余地の大きな家計部門への動機づけはやめるべきではありません。あわせて見解をお伺いいたします。

 続いて、再生可能エネルギー導入拡大策についてお尋ねします。

 経産大臣、系統運用ルールの見直し、廃炉原発送電網の活用、さらにネガワット取引などのディマンドレスポンスによる需要コントロールを、一体どこまで今回見込んでエネルギーミックスの検討を行っているのでしょうか。

 欧州諸国は、再エネの導入に関して野心的な目標を掲げております。例えば、現在の再エネ割合が我が国と近いイギリスでも、二〇二〇年、今からわずか五年後に三一%との目標を掲げています。

 そこで総理に伺いますが、民主党政権時代の革新的エネルギー・環境戦略では、二〇三〇年の再エネ導入目標は三千億キロワットアワーとしておりました。現政権の目標においても、この値を下回ることはないことを確認させていただければと思います。

 電力システム改革による自由化後、消費者が電力会社を選択するには、価格以外の情報開示が不可欠です。ドイツでは、電力会社から届く精算書に、その電力会社の化石燃料、原子力、再エネの比率と国内平均との比較、一キロワット時当たりのCO2の排出量、核廃棄物量などの表示が義務づけられています。

 日本でも同様の表示義務づけが必須であると考えますが、経産大臣の見解をお伺いします。

 続いて、発送電分離についてお尋ねいたします。

 国民が主役となるエネルギー改革のための発送電分離の手法にはさまざまな意見があり、電力システム改革第一弾の附則における改革プログラムでは、「必要に応じて、中立性確保措置を機能分離によって実施することを検討するものとする。」とされております。

 何をどのように検討し、結果として、機能分離とせず法的分離としたのでしょうか。経産大臣の答弁を求めます。

 次に、電力産業で働く人々にとっての憲法上規定された労働基本権についてであります。

 争議行為の禁止を定める、いわゆるスト規制法については、衆参の附帯決議などで、自由な競争の促進を第一義とする電力システム改革の趣旨と整合性を図る観点から、再検討を行うものとなっていたにもかかわらず、本年二月の厚生労働省の部会において、全く前進せず。今後、再検討すべきとありますが、今回の改革によって、何がどうなったらスト規制法廃止という明確な基準はあるのか、御説明ください。

 また、そもそも、既に労働関係調整法の公益事業規制がある中で、さらに電力分野のみに規制を設けている根拠はないと考えます。総理の答弁を求めます。

 電力の国際連系線について質問いたします。

 昨年五月の経済産業委員会で、安倍総理に私から御提案をしたところ、選択肢として排除しない、多面的かつ十分な検討が必要との御答弁をいただいておりました。では、その後の検討状況について御説明ください。

 日本の電力鎖国状態からの卒業には、夏冬や一日の需要ピークのずれを生かした電力の相互融通という実務上の意義以上に、他国との信頼関係を醸成する新たな種をまく狙いもあります。民間任せではなく、国家プロジェクトとして取り組むに値すると考えますが、総理の御見解をお聞かせください。

 ガスシステム改革について伺います。

 現在、ガス市場への新規参入率は一二%、対する電力市場への参入率は四・二%と、その差は明らかであります。また、電力会社は、みずからの電力事業のために、既にガス会社を上回るLNG量を扱っており、比較的容易にガス事業に参入できますが、ガス会社は、発電事業に必要な大きな追加設備投資などを要することから、電力事業への参入は容易ではありません。

 この実態について、総理の率直な感想をお聞かせください。

 その上で、ガスと電力の産業構造の違いを踏まえた制度設計を行っていく必要があると考えますが、御見解をお聞かせください。

 続いて、天然ガスの利用拡大について質問いたします。

 天然ガスの利用拡大は、そもそものガスシステム改革の目的の一つであったと認識しておりますが、今回の法案の中に具体的な記述は見当たりません。

 民主党では、革新的エネルギー・環境戦略において、天然ガスの利用拡大に向け、二〇三〇年のコージェネレーション導入目標を一千五百億キロワットアワーとしているところです。

 コージェネレーションについて高い目標を掲げるべきと考えますが、総理は、導入目標、普及促進策についてどのようにお考えか、お答えください。

 最後に、附則中の検証規定について伺います。

 今回の法律案では、電気、ガスともに、需給状況などについて検証を行い、必要な措置を講じることとなっておりますが、具体的にどのような体制で実効性ある検証が行われるのでしょうか。

 また、事業者側からは、検証結果によっては、法的分離の実施時期の延長もあり得るものとの見解が示されていますが、検証結果によっては制度改正をどこまで見直すことがあるのか、総理、御説明ください。

 震災後、再生可能エネルギーによる電力供給が急速に拡大し、今やその設備容量は三千五百万キロワットにも上ります。民主党は、安定的な電力供給を実現していくには、今回の電力システム改革に加え、災害にも強く、環境にも優しい分散型エネルギー社会の実現が不可欠だと考えます。

 地方分権とは、権限と財源と電源の移譲による地方再生。地域のお金が地域で回る。地域に雇用も創出できる。都市部でも農村部でも、まさに分散型エネルギーが豊かな地域を創造していく原動力になります。

 私たちは、今国会に分散型エネルギー社会推進四法案を提出する予定であり、省エネ、再エネ、熱利用を一体的に推進してまいります。

 ぜひ、政府においても、我が国の未来を切り開く、この考え方を積極的に取り入れていただくことをお願い申し上げ、質問といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 田嶋要議員にお答えいたします。

 エネルギー環境社会のビジョンについてのお尋ねがありました。

 エネルギー政策を推進していく上で、福島第一原発事故への深い反省を踏まえ、原子力の利用については、いかなる事情より安全性を最優先することは当然であります。

 この安全確保に加え、安定供給、コスト低減、温暖化対策を基本に、中長期のエネルギー需給構造を視野に入れ、今後取り組むべき政策課題と、長期的、総合的かつ計画的なエネルギー政策の方針を、エネルギー基本計画として閣議決定しました。このエネルギー基本計画に沿って、責任のあるエネルギー政策を推進してまいります。

 福島県の原子力災害の影響についてお尋ねがありました。

 福島第一原発事故による避難指示が現在も継続している地域の面積は、約千平方キロメートルとなっています。また、避難指示により故郷に戻れない方々は約八万人、こうした方々を含めた福島県全体の避難者数は約十二万人となっています。福島県から避難した方のうち、借り上げ住宅への入居者も含む応急仮設住宅へ入居している方の入居者数は約十万人となっています。

 福島の一日も早い復興、再生に向け、国が前面に立ち、被災者の方々の心に寄り添いながら、今後とも全力を挙げて取り組んでまいります。

 原発の位置づけについてお尋ねがありました。

 原発依存度は可能な限り低減するというのが基本方針です。他方、原子力は、運転コストが低廉で、変動も少なく、運転時の温室効果ガスの排出がゼロであることから、安全性の確保を大前提に、重要なベースロード電源と位置づけています。ベースロード電源とは電源の特性に着目したものであり、依存度を低減させても何ら変わるものではないことから、両者は矛盾しません。

 原発を含む各電源の比率については、こうした考え方のもと、審議会による専門家の議論を踏まえて、政府として適切に判断していきたいと考えております。

 我が国の省エネルギーの国際的な位置づけについてお尋ねがありました。

 産業構造や気候等が異なる欧州との単純な比較は難しいものの、我が国は、九〇年以後も省エネ努力を続け、現時点でも、欧州主要国と比べても遜色のない世界トップレベルのエネルギー効率を維持していると認識しています。

 他方、これで満足するものではなく、徹底した省エネルギー社会の実現に向けて取り組みを加速してまいります。

 事業者に対する省エネ対策についてお尋ねがありました。

 一定規模以上のエネルギーを使用している事業者に対しては、省エネ法に基づき、エネルギー使用実績を把握するとともに、適切なエネルギー管理を実施するよう求めています。

 また、中小企業に対しては、省エネ設備投資を促すため、平成二十六年度補正予算において低利融資制度や設備投資補助金を措置するなど、きめ細かな支援を実施しているところです。

 省エネルギーの推進は、エネルギーの需給の安定化、事業者のエネルギーコスト削減に直結し、我が国の経済成長の点からも重要であり、政府としても引き続きしっかりと取り組みを進めてまいります。

 家庭部門の省エネについてお尋ねがありました。

 政府としては、家電製品の省エネ水準を消費者にわかりやすく伝えるための表示制度や、電力会社から顧客の電力の使用状況を情報提供する仕組みの導入等の措置を講じ、家庭部門における省エネに向けた動機づけを図るべく、積極的に取り組んでいるところです。

 なお、御指摘の数値目標つきの節電要請については、あくまでも電力需要が増大する夏、冬の電力需給を安定化することを目的に行われてきたものです。この目的に照らして、不必要であるにもかかわらず電力の需要家に負担を与えるのは、適切でないと考えます。

 再生可能エネルギーの導入目標についてお尋ねがありました。

 再生可能エネルギーについては、最大限の導入を進めていくことが政府の基本方針です。

 その導入水準については、エネルギー基本計画において、これまでのエネルギー基本計画を踏まえて示した水準をさらに上回る水準の導入を目指し、ベストミックスの検討に当たっては、これを踏まえることとしています。

 再生可能エネルギーの導入を含む具体的なエネルギーミックスの検討に当たっては、この方針に沿って取りまとめてまいります。

 いわゆるスト規制法についてのお尋ねがありました。

 電気事業については、過去の大規模なストの経緯や、他のインフラを支える重要なインフラであるといった重要性、特殊性に鑑み、国民経済、国民生活に支障が生じないよう、労働関係調整法の規定に加え、正当でない争議行為の未然防止を図る観点から、スト規制法により、電気の正常な供給を停止するなどの行為が禁じられているところです。

 スト規制法のあり方については、厚生労働省の労働政策審議会で議論された結果、電力需給が逼迫し、供給への不安が残っている、電力システム改革の進展と影響は不透明であることから、現時点では存続することでやむを得ないとされました。

 政府としては、スト規制法のあり方について、電力システム改革の進展状況とそれによる業者間の競争環境、労使関係、業務への影響等を十分に検証した上で、今後さらに検討していく必要があると考えています。

 国際連系線についてお尋ねがありました。

 一般論として、国際関係において、隣国との相互依存が高まることは、信頼関係の醸成に一定の寄与をすることは考えられます。

 他方で、国際連系線を通じて電力供給の一部を海外に依存する場合には、外交政策の課題に加え、相手国の政策変更による供給途絶などの懸念や、相手国の緊急時における電力確保や大規模停電の影響が伝播するおそれがあるなど、安定供給上の課題があります。

 したがって、国際連系線については多面的かつ十分な検討が必要であるとの認識に変わりはありません。

 電力、ガスの相互参入と、産業構造を踏まえた制度設計の必要性についてお尋ねがありました。

 既存の電力会社が老朽火力発電所を多く抱える中で、ガス会社は最新鋭のガス火力発電所を活用して参入できるという面もあります。競争上の優位性は一概には言えないものと考えています。

 電気とガスとでは、会社の規模やネットワークの整備状況などに違いがあることから、今回の法案においては、電気については、沖縄電力を除く全ての一般電気事業者を法的分離の対象とする一方、ガスでは、法的分離の対象事業者を、一定規模以上の導管を維持、運用する者に限定している、ガスについては、導管の整備を促すべく、事業者間の導管の接続の協議について国が命令や裁定をできる制度を創設するなど、電気とガスの産業構造の違いを踏まえた制度設計としています。

 天然ガスの利用拡大についてお尋ねがありました。

 今回の法案では、小売を全面自由化するとともに、ガス導管の整備を促進する制度を創設します。新たな事業者の参入や都市ガスの普及により、利用者に多様で魅力的なサービスが各地域で提供されれば、エネファームへの補助などのコージェネレーションシステムの導入支援と相まって、天然ガスの利用拡大につながることが期待されます。

 なお、コージェネレーションの導入水準を含む具体的なエネルギーミックスについては、審議会において専門家による議論がなされているところです。

 検証規定についてお尋ねがありました。

 この改革は、これまで長年続いてきた仕組みを変えるという大変難しい改革であるからこそ、さまざまな課題を検証し、克服しながら進めていく必要があると考えています。

 検証の体制については、審議会などの場で専門家等の知見をいただきながら行うことが考えられますが、具体的には今後検討してまいります。

 課題や懸念があれば、その解消に全力を尽くし、困難を乗り越えていくべきであり、課題があるから法的分離を実施しない、先送りするということではありません。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣宮沢洋一君登壇〕

国務大臣(宮沢洋一君) 田嶋議員にお答えいたします。

 石炭、LNG火力の位置づけについてお尋ねがありました。

 ベースロード電源とは、コストが低廉で、安定的に発電することができ、昼夜を問わず継続的に稼働できる電源のことと整理されており、具体的には、我が国では、原子力、石炭、一般水力、地熱をベースロード電源と位置づけております。

 石炭については、エネルギー基本計画において、安定供給性や経済性にすぐれた重要なベースロード電源として位置づけられており、エネルギーセキュリティーの向上やエネルギーコストの削減の観点から、高効率発電技術の有効利用などにより、環境負荷を低減しつつ活用していくことが重要であります。

 他方、天然ガスは、ベースロード電源として位置づけている電源と比較して、コストが高い一方、電力需要の変動に応じた出力変動ができることから、ミドル電源として位置づけております。

 石炭火力に対する温室効果ガスの抑制に関する影響についてお尋ねがありました。

 温室効果ガスの抑制については、現在、目標設定をめぐる議論が行われているところであり、また、その上で国際交渉に臨むこととなることから、現時点で、仮定を前提とした質問にお答えすることは困難です。

 その上で、石炭については、エネルギー基本計画において、安定供給性や経済性にすぐれた重要なベースロード電源として位置づけられており、高効率発電技術の有効利用等により環境負荷を低減しつつ活用していくことが重要であります。

 温室効果ガスの抑制に関しては、本年三月から、電力業界全体の自主的な枠組みの構築に向けた議論が開始されていると承知しており、経済産業省として、エネルギー政策の検討を踏まえた地球温暖化対策の計画目標の策定と整合的な形で、電力業界全体の自主的な枠組みが構築されるよう、引き続き促していく所存であります。

 石油火力への依存度についてお尋ねがありました。

 石油については、LNGや石炭などと比較すると、燃料費が高く、発電量当たりのCO2の排出量も石炭に次いで高いというデメリットがある一方、出力の調整が容易であることに加え、燃料の長期貯蔵性などにすぐれていることから、ピーク電源として一定の機能を担う電源であると考えております。

 石油火力の発電量の比率は、震災後の原発の停止に伴い、震災前の六%、二〇一〇年度から、一三%、二〇一三年度に上昇しており、過度な依存度の低減を図る必要があります。

 この観点から、LNG火力や石炭火力について高効率化や導入促進を進めるべく、政府として必要な対策を講じているところです。

 再生可能エネルギーの導入拡大策についてのお尋ねがありました。

 地域間連系線のさらなる活用については、本年四月一日に広域的運営推進機関が発足し、新たな地域間連系線の利用ルールのもと、より柔軟な運用を目指してまいります。

 また、原発の廃炉に伴い送変電設備に空き容量が生じた場合の活用方法については、送変電設備の維持や改修に要する費用を誰が負担するのかといった課題や、需要の増減やエリア内の他の電源の発電能力等さまざまな要素を考慮した上で、有効活用の余地があるものについては適切に活用してまいります。

 さらに、ネガワット取引を初めとするディマンドレスポンスは、需要をコントロールし、より効率的なエネルギー需要の実現を目指す取り組みとして重要であり、その普及拡大に向けた環境整備や実証実験を実施しています。

 いずれにせよ、エネルギーミックスについては、引き続き、審議会において専門家による議論を深めているところであり、再生可能エネルギーについても、その最大限の導入を旨として、国民負担の抑制と両立する形で導入水準を検討することとしております。

 需要家への料金以外の情報開示義務についてお尋ねがございました。

 海外において、情報開示の内容は国や州によって異なると承知しており、我が国でも、審議会などでの議論において、電源構成の開示を義務づけるべきとの意見と、法的に規制せずに、電源構成を消費者にアピールしたい事業者の創意工夫に委ねるべきとの両方の意見があったところです。

 昨年成立した第二弾の改正電気事業法において、小売電気事業者に対し、消費者への説明義務を課しており、御指摘の電源構成などの開示のあり方も含め、今後、小売電気事業者に説明させるべき具体的内容について検討してまいります。

 機能分離の検討についてお尋ねがありました。

 第一弾改正法の附則第十一条第二項においては、法的分離の実施に向けた検討の過程でその実施を困難にする新たな課題が生じた場合には、必要に応じて、中立性確保措置を機能強化によって実施することを検討するものとすると規定しております。

 この規定は、法的分離に係る詳細な検討を行っていく上で、当初想定できなかった新たな課題に直面した場合に備えたものでしたが、これまでの検討の中ではそうした課題が生じなかったため、今般、法的分離を実施する法案を提出したところです。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 鈴木義弘君。

    〔鈴木義弘君登壇〕

鈴木義弘君 維新の党、鈴木義弘です。

 ただいま提案されました電気事業法等の一部を改正する等の法律案について、維新の党を代表して質問いたします。(拍手)

 政府は、二〇三〇年までの温暖化ガス排出量を二〇一三年度比で二〇%前後削減する新たな目標を打ち出す方向で調整に入り、六月上旬にドイツで開く主要七カ国の首脳会議で表明する見通し。再生可能エネルギーの導入拡大や原子力発電所の稼働を前提として、電源構成と温暖化対策の国際交渉での欧米の動向を踏まえ、実現可能な目標として国際社会に示すとのことです。

 仄聞すると、削減目標を大きく左右する二〇三〇年時点の望ましい電源構成について、経産省は、CO2を排出しない再生可能エネルギー、太陽光や風力などの普及拡大で、現状の一〇%から二〇三〇年に二三から二五%前後に拡大し、原子力の比率も二割を確保する方向で調整している。一方、CO2を大量に排出する石炭、液化天然ガス、石油の火力発電は五割半ばほどと、現状の約九割から大幅に減る見通し。国内の森林による吸収量が伸びないとすると、温暖化ガスの削減は二〇一三年比で一〇%台となる。これに省エネ対策の効果などを上乗せし、二〇%削減を目指す。

 当初は、削減目標の基準年を米国と同じ二〇〇五年で検討していた。しかし、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い、全国の原発が停止するという特殊な環境にあることから、より近い統計値がある二〇一三年を採用する。米国の目標は二〇〇五年比二六から二八%削減、EUは一九九〇年比四〇%削減。関係者によると、これらを二〇一三年度比に直すと、米国は二割減、EUは三割減となり、日本が示す二〇%前後の目標と接近する。

 温暖化問題は、過去に大量のCO2を排出してきた先進国の責任が重いとされ、新枠組みが合意に至るには欧米並みの負担が必要とされています。経産省と環境省は、二〇一三年を軸に各国の目標を比較検証することも検討しており、今後は、国際社会で理解が得られるかが焦点となるとのことであります。

 総理は、第一次安倍内閣の二〇〇七年に、二〇五〇年までに世界の排出量を半減するとの長期目標を示して、国際的な議論を主導しました。経済成長と国際交渉への貢献、地球環境への配慮という観点から、削減目標でさらなる上積みが可能か、関係各省で詰めると言われていますが、まず初めに疑問が湧きます。

 安倍総理が主導して掲げた、二〇五〇年でCO2を五〇%削減することはもうやめたということでしょうか。さらに、電源構成の指針が示されるのがことしの秋と伺っています。なぜこの時期に原発の再稼働を前提にした割合が出てくるのか、疑問でなりません。

 維新の党は、原発の再稼働に当たって、国、地域、事業者の権限と責任を明確化し、再稼働の決定プロセスを透明化するための原発再稼働責任法の骨子案を取りまとめ、法案提出を準備しています。

 世界じゅうで、日本が原発の事故で廃炉に向けた取り組み、また、原発が再稼働するのに時間がかかっているのは十分御理解いただけているものと考えますが、なぜ廃炉や再稼働の道筋が整っていない中でこのような数字が出てくるのか、お尋ねします。

 そもそも、ベストミックスを提示する際に、国民の意見を聞く場がないのでしょうか。太陽光や風力でつくる再生可能エネルギー、化石燃料での発電、廃炉や最終処分場の道筋も決まっていない原子力での電気がよいのか、それぞれに見合う価格も提示して選択をしてもらう制度があってもよいと思いますが、お尋ねいたします。

 また、今までのエネルギー供給は、一方的な需要者側の要求に応えての政策の推進であったと考えます。しかし、これからは、限られたエネルギーであることを国民に示すべきであると考えますが、いかがでしょうか。

 エネルギー源を海外に依存している我が国では、今後も、為替や原油価格の動向で、国民生活に大きな影響を及ぼすことが考えられます。国内で供給可能なエネルギーの依存度を上げていくように考えるのが国の役目ではないでしょうか。今後のベストミックスの方向性についてお尋ねいたします。

 平成二十五年の電力システム改革専門委員会報告書の基本方針では、諸外国の経験は、短期的な電気料金抑制を目的とした料金規制が、不十分な制度設計とも相まって、電力供給不安に直結することがあることを示しており、電力システム改革は、さまざまな構造的な電力コスト上昇圧力がある中にあって、安定供給を確保しつつ、電気料金上昇を短期的にも中長期的にも最大抑制することを目指すものであるということであります。

 今回の送配電部門の法的分離をうたった第三段階目の法改正で電気料金が安くなるのでしょうか。今回の法改正で誰にメリットがあるのでしょうか。新規参入業者ですか、既存の電力事業者ですか、国ですか、利用者である国民ですか。

 そもそも、通信事業を自由化する際に改正した電気通信事業法第一条には、「その公正な競争を促進することにより、電気通信役務の円滑な提供を確保するとともにその利用者の利益を保護し、もつて電気通信の健全な発達及び国民の利便の確保を図り、公共の福祉を増進することを目的とする。」と、競争を促すことが目的としてうたわれています。

 自由化を進めるに当たり、電気事業法の改正を行おうとしているはずなのに、競争を促す文言が見当たりません。なぜなのでしょうか。伺います。

 電力中央研究所から、発送電分離に関する最近のレビューと報告書が提出され、発送電分離のメリット、デメリットについて詳細に述べています。

 発送電分離のメリット、デメリットの検証を、まさか関係する経産省や電力関係者に行わせる考えではないでしょうね。

 また、現在の検証結果を今後の法律改正後にどのように取り組んでいかれるのか、国民にどう説明していく考えなのか、お尋ねいたします。

 従来は、電力会社が発電した電力を中心に、電力会社みずからが需要家に販売してきました。

 二〇〇〇年から始まった小売の一部自由化によって、電力会社でなくても企業向けに販売できるようになったものの、小売事業者には、売るための電力を十分に確保できない構造的な問題が残っています。

 小売に参入した新電力の販売量は、全体の二%程度にしかすぎません。新電力にとっては、必要なときに必要な量を調達できる取引所の存在は大きな意味があります。

 二〇〇三年に創設された日本卸電力取引所では、先渡し市場とスポット市場の二種類を運営しており、二〇一二年からは、一般企業の自家発電設備による電力を取り扱う新市場も始まりました。この取引所が取り扱う電力を拡充できれば、小売事業者が臨機応変に調達量をふやして、顧客層を広げることが可能になります。

 そのためには、現在よりも柔軟性のある取引の方法が求められますし、あわせて、取引に参加できるメンバーを拡大することも必要となるのではないでしょうか。

 また、大口事業者には一定の義務を課すことも必要ではないですか。日本卸電力取引所の取引拡大や市場の流通性の確保が、今後の電力自由化による電気料金価格の低廉化に寄与すると考えるが、現状の評価と、国としての方策と支援をお尋ねいたします。

 現状でも、電力会社の送配電網を使って、事業者が企業向けの高圧電力を販売しています。今後は、家庭向けの低圧を含めて、幅広く電力会社の送配電網を利用できるようになりますが、発電事業者が利用する際に支払う接続料金の設定方法を、発送電分離の後は、電力会社から独立した送配電事業者が単価を決めることになり、不当に高い料金を発電事業者から徴収することのないような制度が重要であります。

 託送料金の算定は総括原価方式を採用し、電源開発促進税や、原子力発電にかかわる使用済み燃料再処理費などを加えることができる制度となっています。こうした原価の積み上げが適正かどうかを含めて、送配電事業者による託送料金を届け出制から認可制に変更することが検討されていますが、送配電事業者に総括原価方式をいつまで認めるのでしょうか。

 また、発電事業者においては、料金規制の経過措置を解除することが可能としていますが、何をもって解除の条件とするのか。

 送配電事業は、ますます公共性が高まる事業と考えられます。託送料金が適正か、事業者努力を最大限発揮しているのか、誰がチェックをし、是正させるのか、お尋ねいたします。

 さらに、この法律案は、発電と送配電を法的分離で別会社にします。しかし、送配電事業者が地域独占形態をとるし、発電会社と資本関係も認める体制整備にほかなりません。

 また、新規参入する発電会社も対象とはなりますが、発電会社、送配電会社の両社を傘下に置く持ち株会社を対象に、五年間一般担保つき社債の発行を認めます。しかし、原子力リスクを抱える電気事業者は、原発事故の影響で、一般担保つき社債の発行を認めなければ、資金調達が困難になるからとしか思えません。

 多くの国民が望まない原子力発電を、あえて国が後押しし続けるつもりなのでしょうか。お伺いいたします。

 送配電は、本来であれば、独立性の高い事業者が一括運営管理すべきものと考えますが、御所見を伺います。

 次に、ガス事業法の一部を改正する等の法律案について伺います。

 今回の法改正で、家庭向けの都市ガスも新規参入が認められ、家庭用でも価格競争が始まります。ガスの小売自由化が進めば、価格の引き下げが進み、電気とも競争が激しくなります。ガス事業法の改正はガス料金の引き下げにつながるのか、さらに、電気料金の引き下げに寄与するのか、伺います。

 大手都市ガス会社が独占しているガス供給管の開放は確実に担保されるのか、お伺いいたします。

 各家庭に設置しているガスメーターを顧客が自由にかえられるのですか。今までの商習慣では、建設時に配管設備の工事が行われ、ユーザーである買い主とガス供給会社が直接契約する形態になっていません。誰がどのようにこの商習慣を変えるのか、お伺いいたします。

 また、都市ガスの供給区域を広げようとすれば、LPG、プロパン事業者との競合が避けられません。中小零細業者はどうやって生き残っていけばよいのか、お尋ねいたします。

 次に、熱供給事業法を改正する法律案について伺います。

 この法律案では、料金規制や供給義務等の規制を撤廃するとありますが、エアコンやガスストーブなど、他の熱源に容易に切りかえることができない需要家が存在することを踏まえて、熱供給事業者に対して、料金規制や供給義務等の規制を経過措置として存続させるとあります。

 経過期限が切れて撤廃後に、熱源代替できない需要家の使用料が高騰しないか、さらに、既存の熱供給事業者を電気とガス事業者に取ってかわらせる目的なのか、伺います。

 最後に、経済産業省設置法等の一部を改正する法律案について伺います。

 欧州諸国では、エネルギー規制機関は、国家行政組織から影響を受けない独立性が必要とされ、EU指令でも、行政からの独立が義務化されています。

 活発なエネルギー取引が行われる英国とドイツでは、ガス・電力市場管理局が独立規制機関として設置され、大幅な権限委譲が行われています。しかし、フランスでは、規制機関への権限委譲が限定的であったとの指摘があり、英独に比べて自由な市場取引は限定的となっているとのことであります。

 電力・ガス取引監視等委員会を設立し、従来にない権限を有する最も強い八条委員会とするとありますが、従来にない権限とは、最も強いとは何を意味するのか。そもそも、八条委員会より独立性の高い三条委員会にして、新たな規制監視機関は既存の行政組織から独立し、権限を大幅に委譲することが重要なのではないでしょうか。

 国が行いたいのは、電力事業の民間開放による自由化の促進、その結果起こる料金の低廉化による産業や生活コストの縮減によって生み出される製造業の競争力強化、それがまさしく日本の未来につながるエネルギー改革を行っていくためではないでしょうか。伺います。

 以上で質問を終了します。御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 鈴木義弘議員にお答えをいたします。

 温室効果ガス削減目標についてお尋ねがありました。

 政府として、御指摘のような温室効果ガス削減目標を打ち出す方向を決めた事実はありません。

 また、二〇五〇年までに世界全体の温室効果ガスの排出量を半減するという目標は不変です。

 世界の温暖化対策をリードすることを目指して、COP21に向け、温室効果ガスの排出について、新しい二〇二〇年以降の削減目標と具体的な行動計画をできるだけ早期に策定いたします。

 エネルギーミックスに対する国民の関与のあり方についてお尋ねがありました。

 エネルギーミックスに関し、国民各層に多様な意見があることは承知しています。

 そのため、エネルギーミックスの検討に際しては、国民からの意見の常時募集や各地域におけるシンポジウムの開催などを通じ、国民の意見を伺っているところです。

 そのような取り組みを通じて寄せられた国民からの意見を参考にしつつ、電源ごとのコストの検討結果もお示しした上で、丁寧に検討を進め、現実的かつバランスのとれたエネルギーミックスを取りまとめることとしております。

 エネルギーに関する広報についてのお尋ねがありました。

 議員御指摘のとおり、国民各層に我が国が直面しているエネルギー制約を御理解いただき、需要家側でエネルギー需要を抑制していただくことがますます重要になっております。

 政府としては、こうした事情を国民各層に理解していただくため、エネルギーに関する広報やエネルギー教育を通じたコミュニケーションに一層取り組んでまいります。

 今後のベストミックスの方向性についてお尋ねがありました。

 安全確保を前提として、安定供給、コスト削減、温暖化対策を基本に、各エネルギー源の特性やバランスを十分に考慮しつつ、現実的かつバランスのとれたエネルギーミックスを取りまとめてまいります。

 御指摘のとおり、安定供給の観点からは、エネルギー自給率を確保することは重要です。具体的なエネルギーミックスについては、専門家による審議会の議論を見た上で、政府として適切に判断していきたいと考えております。

 今回の法改正のメリットについてお尋ねがありました。

 今回の法案は、安定供給の確保、電気料金の最大限の抑制、需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大という三つの目的から成る電力システム改革の総仕上げであり、この改革を断行した暁には、国民の皆様にも、新規参入者を含め、エネルギービジネスを手がけるさまざまな事業者にもメリットがあると考えております。

 電気事業法での競争を促す文言についてお尋ねがありました。

 電力システム改革については、昨年の通常国会において、電気の小売分野の競争促進のため、小売全面自由化を行う改正電気事業法が成立したところです。また、今回の法案では、送配電部門の中立性を一層確保することにより、小売電気事業者や発電事業者の競争を促進するための法的分離を措置しております。

 こうした競争を促す措置は、電気事業法の法目的に既に規定されている電気事業の健全な発達を実践するために講じているものであり、法文上、改めて競争の促進を明記する必要はありません。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣宮沢洋一君登壇〕

国務大臣(宮沢洋一君) 鈴木議員にお答えいたします。

 発送電分離のメリット、デメリットの検証についてお尋ねがありました。

 今回の法案においては、発送電分離の実施前及び実施後に、法施行の状況等について政府として検証を行うこととしています。

 具体的には、電気事業法を所管する経済産業大臣のもとで、審議会などの場で、専門家や消費者代表などによって検証を行うことなどが考えられますが、検証の具体的な方法については、今後検討してまいります。

 検証を行った結果、課題や懸念があれば、それを解消するための環境整備に全力を尽くし、困難を乗り越えていくべきであり、課題があるから法的分離を実施しない、先送りするということではありません。

 いずれにせよ、検証を行うに当たっては、透明性の高い議論を行うことが必要であり、国民の皆様にもわかりやすい形で進めてまいります。

 卸電力取引所についてのお尋ねがありました。

 卸電力取引所の取引量は、現在、日本全体の需要の一%強にとどまっており、競争的な電力市場を実現するためには、取引所における取引のさらなる活性化が必要です。

 現在、既存の電力会社が余剰電力を卸電力取引所で売電する取り組みを行っており、国として、その状況のモニタリングを実施するとともに、来年を目途に、スポット市場の土曜日、日曜日開場を行うなど、さらに柔軟な取引を可能としてまいります。

 卸電力取引所については、来年を目途に、法律に基づき国の監督を受ける法人となる予定であり、取引参加者の拡大も含め、さらなる活性化策について、今後検討してまいります。

 なお、今後、市場活性化の十分な進展が見込まれない場合には、制度的措置を伴う市場活性化策を検討することとしております。

 託送料金などについてお尋ねがありました。

 昨年成立した第二弾の改正電気事業法においては、送配電事業者に送配電網の建設、保守を確実に行わせることにより電気の安定供給を確保し、また、公平性、透明性を一層確保する観点から、託送料金については、これまでの届け出制から認可制に移行させ、総括原価方式による料金規制の対象とすることとしています。

 今後、託送料金の適正化については、電力・ガス取引監視等委員会の意見も踏まえながら、経済産業大臣が確認し、適正でないと判断される場合には、変更認可申請命令などの是正措置を講じてまいります。

 また、御指摘の発電事業者に対する料金規制はありませんが、今回の法案においては、小売全面自由化後、旧一般電気事業者に経過措置として課す小売料金規制を競争の状況に応じ解除することを可能にしております。

 実際に、この小売料金規制を解除するに当たっては、新規参入の状況、既存の電力会社間の競争の状況、自由料金メニューを選択する消費者の割合などを踏まえ、競争の進展状況を慎重に見きわめてまいります。

 一般担保に関する経過措置と送配電事業運営のあり方についてお尋ねがありました。

 今回の法案は、一般担保つき社債の発行を経過措置として認めることとしていますが、これは安定供給に必要な資金調達に支障が生じないようにすると同時に、社債市場の混乱回避を目的として講じるものであり、そもそも、原子力発電事業の観点から講じるものではありません。

 次に、送配電事業の運営については、御指摘のとおり、その中立性、独立性を高めることが重要です。このため、今回の法案では、法的分離を求めるとともに、適切な行為規制を課すこととしています。これにより、資本関係を認める中でも、その中立性、独立性確保は十分図られると考えております。

 ガス事業法の改正による電気料金やガス料金の引き下げについてお尋ねがありました。

 昨年成立した第二弾の改正電気事業法と同様に、今回のガス事業法改正においては、これまでの地域独占や総括原価方式を見直し、小売全面自由化を実施することとしており、今回の法案は、このような措置を講ずることで総合エネルギー市場の創設を目指すものです。

 御指摘の電気料金やガス料金は、資源価格の動向や再生可能エネルギー賦課金の設定など、さまざまな要因の影響を受けますが、この改革を推進することにより、電力会社やガス会社の相互参入などが進み、料金水準が最大限抑制されることを目指してまいります。

 ガス供給管の開放についてお尋ねがありました。

 今回の法案において、小売を全面自由化するに当たり、ガスメーターを含めたガス管は、全ての小売事業者が公平に利用できるよう、ガス導管事業者に託送供給義務を課すこととしています。これにより、利用者は、ガスメーターや供給管を入れかえずに小売事業者を変更することが可能となります。

 加えて、ガス管利用のさらなる公平性確保を図るため、一定規模以上の導管網を有するガス導管事業者については、導管部門の法的分離を行うこととしております。

 プロパン事業者との競合についてお尋ねがありました。

 都市ガスは、一定の需要がある地域にガス導管網を整備してガスを供給する事業であり、都市ガスとLPガスは、それぞれの特性を生かし、人口密度など各地の状況に応じて供給されてきました。

 中小零細のLPガス販売事業者については、地域に密着した事業で培った信用を生かし、これまで以上に魅力的なサービスやビジネスモデルを提案することにより、利用者から選択されるとともに、地域経済の活性化に貢献していくことが期待されております。

 熱供給事業法の改正についてお尋ねがありました。

 今回の法案においては、需要家が熱供給にかわる熱源機器を選択することが困難であることなどにより、熱料金が高騰するおそれがある場合には、料金の認可等の規制を継続することとしております。

 また、この改正により、技術革新が進む中、需要家が、既存の熱供給事業者はもちろんのこと、それ以外も含め、さまざまな事業者が提供するサービスの中から、そのニーズに沿ったサービスを選択できるようになることを期待しております。

 電力・ガス取引監視等委員会についてお尋ねがありました。

 今般創設する委員会が、従来にない権限を有する最も強い八条委員会であると位置づけているのは、これまでの八条委員会には前例のない権限として、事業者に対して、直接、業務改善勧告を行うことができるほか、あっせん、仲裁といった、監視にとどまらない業務を行うことができるからであります。

 仮に、この委員会を三条委員会とし、エネルギー政策の枠組みから離れて市場の監視や料金の規制を行う仕組みとすることは、責任あるエネルギー政策として安定供給確保や再生可能エネルギーの普及などを進めるという観点から適当ではないと考えているため、経済産業大臣直属の八条委員会としております。

 また、本委員会は、個々の職務遂行について委員が独立して判断を行うことを法律上明記するなど、極めて強い独立性を有し、事業者に対する業務改善勧告を行う権限を有するなど、市場の監視などを行うのに必要な権限を備えていると考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 國重徹君。

    〔國重徹君登壇〕

國重徹君 公明党の國重徹でございます。

 公明党を代表し、ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する等の法律案につきまして、安倍内閣総理大臣及び宮沢経済産業大臣に質問をいたします。(拍手)

 三段階の電力システム改革の総仕上げとなる本法案。電気事業法の改正とあわせて、ガス事業法及び熱供給事業法についても改正を行うことによって、エネルギー市場における参入障壁を取り払い、総合エネルギー市場の創出を実現することとされております。

 一昨年六月に閣議決定された日本再興戦略において、エネルギー産業を育て世界市場を獲得するとの目標が掲げられ、エネルギー関連市場について、二〇二〇年に約二十六兆円の内外の市場を獲得するとの具体的な数値目標も定められました。

 我が国の成長戦略を進める上では、エネルギー分野においても、海外市場の獲得を目指し、意欲的に世界市場に打って出ていくことが重要です。そのためにも、今回の電力、ガス、熱を一体としたシステム改革によって総合エネルギー市場の創出を実現することは、非常に意義のあるものと評価をしております。

 一方で、我が国のエネルギー情勢については、東日本大震災直後の需給逼迫状況からは改善しているものの、今なお厳しい状況にあります。

 化石燃料の輸入量の急増は、過去最大の貿易赤字を発生させ、電気料金は、東日本大震災以降、家庭用で約二割、産業用で約三割の値上げがなされ、国民生活、産業活動の大きな負担となっております。

 再生可能エネルギーの導入は進んでおりますが、昨年の接続保留問題に加え、太陽光発電への偏重や、電気料金に上乗せされている賦課金の高騰等の課題も生じております。

 また、電力、ガスに先立って既に自由化されているガソリンの供給については、地方を中心に一日に約四軒のペースでガソリンスタンドが閉店している状況にあり、ガソリンスタンド過疎地の発生が社会問題となっております。

 このような中、我が国のエネルギー政策は、安全性を大前提に、エネルギーの安定供給を第一に、経済性の向上、環境への適合といったスリーEプラスSを着実に達成していくことが特に望まれていると言えます。

 以上を踏まえまして、まず、総合エネルギー市場における競争の活性化という点について伺います。

 最近でこそ、石油や天然ガスを初めとするエネルギーの輸入単価は下がってきておりますが、安定して安価なエネルギーの確保が構造的に担保できている状況とはまだまだ言えないものと思われます。本年に至ってもなお、電力会社によっては需要家に対する節電協力を要請しており、厳しいエネルギー需給状況が続いているのが現実です。

 今回の改正によって、エネルギーの自由化や総合エネルギー市場の形成に向けた基盤整備がなされても、電力やガス等の調達元が限られ、しかも高どまりしている状況の中では、市場に多数の者が参加し、競争が活性化されるのかという疑問も残ります。

 そこで、改正後における競争の活性化の実現の見通しについて、安倍内閣総理大臣の御認識を伺います。

 次に、総合エネルギー企業による海外展開について伺います。

 我が国のエネルギー企業が海外において市場を獲得していくとの成長戦略には大きな期待を寄せるものではありますが、欧米を初め海外では、我が国に先駆けて自由化されたエネルギー市場の中で、少数の大企業が盤石なシェアを獲得しております。

 この状況の中で、これから形成される我が国の総合エネルギー企業が海外市場に参入しても、実際の市場の獲得につながるのかという点については疑問もございます。

 こういった点を踏まえ、何らかの政府の支援が必要であると考えますが、政府における支援措置のあり方、また、我が国のエネルギー企業による世界市場でのシェアの獲得の見通しについて、安倍内閣総理大臣の御見解を伺います。

 これまで地域における住民生活のエネルギー供給事業に役立ってきたのが、中小規模の事業者や、今回の改正対象とはなっていないものの、東日本大震災の例にも見られるとおり、防災あるいは復興に大変大きな役割を果たしてきた、地域密着の事業を行っているLPガス事業者です。

 一方、総合エネルギー市場では、スケールメリットや統合効果により、少数の大企業による寡占状態になる懸念があると思われます。

 今後も、中小規模の事業者やLPガス事業者が、それぞれの特性を生かし、地域に密着したエネルギー供給を行っていくことが重要だと考えますが、この点について、宮沢経済産業大臣の御見解を伺います。

 次に、今回のエネルギーシステム改革による需要家への影響について伺います。

 欧米では、我が国に先駆けて、電力、ガス等のエネルギー分野について自由化が進められてきましたが、電気料金、ガス料金の推移を見ると、必ずしも自由化後に料金水準が低下しているとは言えないものと思われます。

 もちろん、税金や再生可能エネルギー固定価格買い取り制度における賦課金等の影響もありますので、必ずしも自由化による料金抑制効果が否定されるものではありません。

 しかし、各国の自由化の時期と料金の推移に照らし、我が国においても自由化によって料金が上昇することを懸念する声があるのも事実でございます。

 特に、我が国では、エネルギー供給の輸入依存度が極めて高い中、小売の自由化による各社の競争努力の中で、料金が低減する余地はさほど多くないとも思われます。

 そこで、自由化後の料金水準の見通しについて宮沢経済産業大臣の御認識を伺うとともに、料金の上昇を回避し、今回のエネルギーシステム改革の目的の一つである料金の最大限の抑制を実現するために総合的な対策が必要と考えますが、政府として、法改正を含め、今後どのような措置を講じるお考えなのか、宮沢経済産業大臣の答弁を求めます。

 また、先ほど、既に自由化されているガソリン事業では、ガソリンスタンド過疎地の発生が社会問題になっていると申し上げました。これと同様に、今回のエネルギーシステム改革によって、地域に密着したエネルギー企業の衰退や地域間での格差拡大が生じ、適正な料金でのエネルギー供給が受けられない需要家が発生するようなことがあってはなりません。

 これに対し、政府としてどのような対策を講じるのか、宮沢経済産業大臣の答弁を求めます。

 結びに、エネルギーは、あらゆる経済産業の血液であり、国民生活の根幹をなしております。今回の改正によって、エネルギー分野での成長戦略が達成されるとともに、エネルギーの供給について真に需要家の利益が図られるようになることを望みまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 國重徹議員にお答えをいたします。

 エネルギー市場における競争の活性化の実現の見通しについてお尋ねがありました。

 競争的なエネルギー市場を目指す政府の方針を踏まえ、製鉄会社や石油会社などによる発電所建設や、ガスと電力の業種を超えた小売の相互乗り入れなど、既にさまざまな計画が動き始めています。

 また、今回の提出法案では、送配電部門、ガス導管部門の分離や、LNG基地の第三者利用の促進を措置しており、加えて、発電余力の売買による卸電力市場の活性化や、スマートメーターの導入等の取り組みについても進めることで、市場競争の活性化を進めてまいります。

 総合エネルギー企業の海外展開と政府の支援についてお尋ねがありました。

 我が国の産業は、エネルギーを効率的に活用するための技術やノウハウを蓄積しているにもかかわらず、それらを総合化して国際展開することが少なかったのは事実であります。

 今後は、こうした技術やノウハウを統合化して、世界市場を目指して、高効率火力発電やスマートコミュニティー等のインフラ輸出という形で、トップセールスや金融支援を初め、あらゆる施策を総動員し、官民一体で進めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣宮沢洋一君登壇〕

国務大臣(宮沢洋一君) 國重議員にお答えいたします。

 中小規模の都市ガス事業者とLPガス事業者についてお尋ねがありました。

 今回の改正により、小売が全面自由化され、総括原価方式に基づく規制料金によらないサービスの提供が可能となります。それによって、既存の都市ガス事業者やLPガス事業者などの新規参入者は、需要家のニーズに応じたきめ細かなサービスや、他のエネルギーサービスと組み合わせた事業を柔軟に展開することができるようになります。

 中小都市ガス事業者やLPガス事業者においては、地元に密着した事業で培った信用を生かし、これまで以上に魅力的なサービスやビジネスモデルを提案するなど、引き続き地域経済の活性化に貢献することが期待されます。

 料金水準の見通しと、その最大限の抑制のための対策についてお尋ねがありました。

 電気やガスの料金水準については、資源価格の動向や再生可能エネルギー賦課金の設定など、さまざまな要因の影響を受けますが、システム改革においては、第一に、これまでの地域独占や総括原価方式を見直すことによって高コスト構造を改善すること、第二に、新規参入者が参入しやすい環境を整備し、コスト競争力のある事業者の参入を促進することなどを通じて、電気やガスの料金を最大限抑制することを目指すこととしております。

 また、今回の法案では、一般家庭向けの電気やガスの料金については、競争が十分であると確認されるまで、国の認可等の規制を残すこととしております。規制料金より高い料金での新規参入というのは考えにくく、その観点からも、自由化が原因となって料金がどんどん上がるなどということはないと認識しております。

 さらに、電気やガスの料金に占める原燃料費の割合が大きいことに鑑み、資源外交などにより、北米からのシェールガス、LNG輸入の実現などを通じて、供給源の多角化などにも取り組んでまいります。

 過疎地における需要家への対応などについてお尋ねがありました。

 今回の法案においては、送電網や導管網の維持、運用を行う一般送配電事業者や一般ガス導管事業者に対し、現在の供給区域における小売事業者の破綻や撤退といった事態に備えた最終保障サービスの提供を義務づけることとしております。

 また、一般家庭向けの電気やガスの料金については、競争が十分であると確認されるまで国の認可等の規制を残すこととしており、御懸念のような事態は生じないと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 藤野保史君。

    〔藤野保史君登壇〕

藤野保史君 私は、日本共産党を代表して、電気事業法等改正案について質問します。(拍手)

 まず冒頭に、一昨日、福井地裁が高浜原発の運転差しとめを命じる画期的な仮処分決定を行いました。政府は、新規制基準は世界最高水準と繰り返してきましたが、今回の決定は、新規制基準は緩やかに過ぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない、新規制基準は合理性を欠くものであると断じています。

 これは、基準を満たせば再稼働という政府の再稼働プロセスを根底から覆すものです。にもかかわらず、再稼働を粛々と進めるなど、断じて許されません。

 総理、この決定を重く受けとめ、全国の原発再稼働を断念すべきではありませんか。答弁を求めます。

 次に、法律についてお聞きします。

 本法案は、一昨年来の電力システム改革、電気事業法改正の総仕上げであるとともに、都市ガス及び熱供給事業の全面自由化を行うものです。

 総理、そもそも、電力システム改革の原点は何でしょうか。それは、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故によって、戦後の発送電一貫、地域独占の九電力供給体制の根本的な転換が求められたことであります。

 福島の現実は、この原点を私たちに問い続けております。未曽有の事故から四年がたつというのに、いまだに原発事故は収束しておらず、事故原因の究明はされておりません。

 私は、たびたび福島を訪れ、地元の皆さんから直接お話を伺ってきました。今なお十一万人以上もの方々が困難な避難生活を強いられています。汚染水や労災事故など、事態はむしろ悪化しています。今総理がやるべきことは、この深刻な状況をそのままにして原発の再稼働や輸出を進めることではなく、事故の収束と原因究明に全力を傾けることではありませんか。

 しかも、政府は、東電やメガバンクを救済する一方で、被害者への賠償を冷たく打ち切ろうとしています。こんな理不尽は断じて認められません。現実に被害が継続している以上、賠償を打ち切るなどもってのほかであります。完全な賠償を強く求めます。

 東電の当事者能力のなさは、先日発覚したK排水路の汚染水漏えいの隠蔽問題で改めて浮き彫りになりました。政府は、福島の事故の収束さえできない東電に柏崎刈羽原発の再稼働を認めようというのですか。

 原賠支援機構法に基づく新・総合特別事業計画は、この東電とメガバンクの救済のために実に九兆円以上もの国費を投入するものですが、この間の経緯を見れば、同計画の破綻は明らかです。計画を根本的に見直し、東電の破綻処理と一時国有化を行い、大株主とメガバンクの責任を問うべきです。

 政府は、エネルギー基本計画で、原発を重要なベースロード電源と位置づけ、原発依存に回帰しようとしております。日本経団連などは、原発比率を二五%以上にすべきと提案しています。しかし、これに対しては、経産省の有識者会合でも、福島の事故がなかったかのような議論だと厳しい批判の声が上がっています。

 総理、あなたも経団連と同じ程度の原発比率を目指すつもりですか。明確な答弁を求めます。

 本法案の附則は、原子力政策の変更で電力会社の経営が悪化した場合には、政府が必要な措置を講じるとしております。

 例えば、イギリス流の原発版固定価格買い取り制度、電力会社の責任範囲や賠償額を限定する原子力損害賠償法の見直し、廃炉コストの託送料金への転嫁、原子力事業者への債務保証などを検討しています。

 なぜ、全面自由化といいながら、原発をこれだけ優遇するのか。これは、電力会社、原子炉メーカー、ゼネコン、メガバンクなど、原発利益共同体の強い要求に応えたからではありませんか。

 一方で、政府は、再生可能エネルギーに対しては冷たい姿勢をとり続けています。環境省が、二〇三〇年までに再生可能エネルギーを最大三五%までふやせると試算しているのに、経産省は、二〇%台と過小に見込んでいます。

 また、経産省は、動いていない原発による発電量を空押さえまでして、電力系統への再生可能エネルギー接続量を小さくしようとしています。これは、再生可能エネルギーによる電力の優先接続を定めた固定価格買い取り法の趣旨に反するものであり、直ちにやめるべきです。

 昨年四月のエネルギー基本計画では、東芝・ウェスチングハウス、日立・ゼネラルエレクトリック連合、三菱重工という原子力分野における日米の一体的な体制を維持強化するとしています。これが、総理が原発再稼働と輸出に固執する大もとにあるのではないですか。

 現行の日米原子力協定の期限切れは二〇一八年です。完全に行き詰まっている核燃料サイクルの再処理路線や、高レベル放射性廃棄物最終処分問題などについて、どのような対応を考えているのか、答弁を求めます。

 本法案は、電気、ガスなどの市場を全面自由化し、十兆円を超える巨大市場をつくり、総合的なエネルギー市場を目指すとしております。問題は、この市場が一体誰のためのものかという点であります。

 都市ガスと電力は、既に小売の部分自由化が進められ、現在では両市場とも六割以上が自由市場となっています。電力市場は、地域独占の大手のガリバー九社が圧倒的な支配力を有しているのに対して、ガス市場は、都市ガスに従事する二百六社の大半が中小業者であり、LPガス販売には二万社以上が従事し、競い合っています。

 二つの市場の全面自由化で垣根を取り払えばどうなるのか。圧倒的な資本力を持つ電力大手、石油元売、総合商社、外資などがMアンドAを繰り広げ、競争どころか、かえって寡占化が進み、規制なき独占が生まれるのではありませんか。巨大企業のための市場づくりが、総理、あなたの言う成長戦略なのですか。

 今最も急がれるガス改革は、天然ガスシフトへの思い切った転換です。天然ガスは温暖化対策としても有効であり、石炭火力発電の大規模な新増設は直ちに凍結すべきです。

 LNG基地の揚げ地別価格の大きな格差構造にメスを入れるなど、低廉な天然ガスをどう確保するのか、ガス導管網の全国的配備をどう進めるのか、答弁を求めます。

 私は、先月末、東京電力本社にある中央給電指令所を視察してまいりました。電力需給システムの中枢をこの目で見て、電力サービスが重要な公共インフラであることを強く感じました。

 電気・ガス料金は、国民の生活に直結する重要な公共料金です。先行した欧米の経験を見ても、自由化したから電気・ガス料金が下がったという事実はありません。

 政府は、自由化で料金メニューが選択できると言いますが、問題はその中身です。

 三・一一以後の情報公開で、電力の自由化部門と規制部門の部門別収支が明らかになり、家計など小口部門の利益が大企業など大口部門を支えている構図がはっきりしました。

 今必要なのは、こうした情報開示をさらに強化することです。重要な公共料金である電気・ガス料金について、消費者、国民の知る権利を具体化する制度設計を検討するべきではありませんか。

 本法案は、完全実施によって、料金規制や公聴会を廃止するとしています。これは、電力・ガス取引のブラックボックス化を一層広げるものです。

 新設される電力・ガス取引等監視委員会は、電気・ガス料金を引き下げる権限を持っているのでしょうか。そもそも、なぜ経産大臣のもとに置くのですか。独立性の強い三条委員会とすべきではありませんか。答弁を求めます。

 最後に、今こそ三・一一事故の原点に立ち返り、原発ゼロに向けて、発送電の完全な所有権分離と送電網の公的管理、大規模集中システムから小規模分散・地域経済循環型システムに転換すべきです。そのためにも、エネルギーを消費者、国民の手に取り戻す、エネルギーシステムの民主的改革がどうしても必要です。

 大企業が利益を独占する道ではなく、国民のためのエネルギーの民主的改革こそ進むべき道であることを強く訴えて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 藤野保史議員にお答えをいたします。

 原発再稼働についてお尋ねがありました。

 高浜原発に係る仮処分決定について、国は当事者ではなく、また、あくまでも仮の処分であることから、当事者である事業者の今後の対応を注視していきます。

 その上で申し上げれば、新規制基準は緩やかに過ぎ、合理性を欠くといった福井地裁の仮処分決定の内容については、田中規制委員長から、その判断の前提となる幾つかの点で事実誤認があり、新規制基準や審査内容が十分に理解されていないのではないかとの明快な見解が示されています。

 また、原子力規制委員会として、福井地裁の仮処分決定によって新規制基準を見直す必要性はないとの考えであると承知しています。

 いずれにせよ、原発については、いかなる事情よりも安全性を最優先することとし、原子力規制委員会が科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発について、その判断を尊重し、再稼働を進めていくのが政府の一貫した方針であります。

 原発事故の収束と原因究明についてのお尋ねがありました。

 世界にも前例のない廃炉・汚染水対策については、技術的難易度が高い取り組みへの財政措置を行うなど、東電任せにせず、国も前面に立って取り組んでいます。

 福島原発事故の原因究明は、国として継続的に取り組むことが重要です。これまでに、国会、政府の事故調査委員会において事故の検証が行われ、報告書が取りまとめられています。さらに、独立した原子力規制委員会が昨年十月に中間報告書を取りまとめるなど、事故原因の技術的解明を進めており、今後も中長期にわたって継続的に取り組んでまいります。

 原子力損害賠償についてお尋ねがありました。

 今後の営業損害の賠償については、東京電力が資源エネルギー庁とともに検討を進めていると承知しております。地元の関係する方々の御意見をよくお聞きして、被害者に寄り添った対応を行うことが重要であると考えています。

 東電についてお尋ねがありました。

 原発の再稼働については、原子力規制委員会が世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発について、地元の理解を得ながら再稼働を進めていくのが一貫した政府の方針であります。

 東京電力は、福島第一原発の炉の設置者であり、現場に精通し、これまでさまざまな作業に取り組んできていることから、廃炉の実施主体としての責任を引き続きしっかり果たすべきと考えております。

 その上で、御指摘のように、新・総合特別事業計画を抜本的に見直し、東電を破綻処理し、一時国有化することについては、被害者の方々の賠償や、現場で困難な事故収束作業に必死で当たっている関係企業の取引債権が十分支払いできないおそれ、直ちに東電と同等の電力供給を行える体制を確保できなくなるおそれ、海外からの電力調達や権益確保に支障が生じるおそれがあり、福島の再生、エネルギーの安定供給の観点から、適当ではないと考えています。

 また、金融機関に対しては一般担保が付されている私募債方式の縮小、株主に対しては無配当の継続などの形で、協力、責任を求めております。

 将来の原発比率についてお尋ねがありました。

 安全確保を前提として、安定供給、コスト低減、温暖化対策を基本に、各エネルギー源の特性やバランスを十分に配慮しつつ、現実的かつバランスのとれたエネルギーミックスを取りまとめてまいります。

 原発比率を含む具体的な各電源の比率については、審議会において、専門家による議論がなされているところです。審議会による議論を見た上で、政府として適切に判断していきたいと考えております。

 原発に関する制度の検討についてお尋ねがありました。

 エネルギーの特性を考えると、安定供給、コスト、環境負荷、安全性といったあらゆる面ですぐれたエネルギー源はないため、国としては、各エネルギー源の強みが生き、全体として弱みが補完される、柔軟かつ多層的な供給構造を構築する必要があります。

 このため、単に市場に任せるのではなく、原子力に限らず、それぞれ必要な政策措置を講じていかなければなりません。

 こうした考え方のもと、自由化され競争が進展した中での原子力事業の課題やその対応策について、審議会等において幅広い御意見を伺いながら検討を行っているところであり、原発を優遇するとの御指摘は当たりません。

 再生可能エネルギーについてお尋ねがありました。

 政府としましては、徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入を進めつつ、原発依存度を可能な限り低減させるという基本方針に変わりはありません。

 こうした方針のもと、再生可能エネルギーの具体的な導入比率を含むエネルギーミックスについては、現在、専門家による具体的な議論を進めているところです。

 また、固定価格買い取り制度では、二十年間など長期間にわたる電力の買い取りを保証することから、審議会における接続可能量の検証に当たっては、原子力も含め、ベースロード電源の長期的な稼働計画を前提としているものと承知しています。

 したがって、空押さえとの指摘は当たらず、固定価格買い取り制度の趣旨に反するものではないと考えています。

 核燃料サイクルと最終処分等についてのお尋ねがありました。

 日米は、パートナーとして、原子力の平和利用、核不拡散、核セキュリティー確保などを国際的に確保しながら原子力を利用する体制を強化するための重要な役割を担っていると認識しております。

 他方、原発の再稼働については、安全性の確保を大前提として、我が国の国民生活や産業活動、中小・小規模事業者を守るとともに、温室効果ガスを抑制する観点から、また、原発輸出については、福島第一原発の事故の教訓を生かして世界の原子力安全の向上に貢献する観点から重要であると考えており、日米関係のために進めているわけではありません。

 核燃料サイクルについては、六ケ所再処理工場の竣工遅延や「もんじゅ」のトラブルなどが続いてきましたが、このような現状を真摯に受けとめ、問題点を明らかにした上で、直面する問題を一つ一つ解決してまいります。

 高レベル放射性廃棄物の最終処分場については、しっかり確保することが政治の責任です。これまでのやり方を見直して、科学的根拠に基づき国から適地を提示するなど、国が前面に立って取り組みを進めてまいります。

 寡占化への懸念についてお尋ねがありました。

 低廉で安定的なエネルギーの供給を実現するためには、既存事業者や新規参入者、大手や中小といった区別を問わず、活発な競争が行われることが重要です。既に、営業力に強みのあるLPガス会社による電力販売への参入や、地域の事業者によるエネルギーの地産地消への取り組みなど、さまざまな計画が動き始めています。

 したがって、改革により、圧倒的な資本力を持つ事業者ばかり優位であると一概には言えないと考えております。

 また、今回の法案では、規制なき独占に陥ることのないよう、市場監視を行う電力・ガス取引監視等委員会を創設するとともに、競争が十分であると確認されるまで、一般家庭向けの電気、ガスの料金について規制を残すこととしています。

 エネルギー市場の垣根を越える一体的な改革により、ダイナミックなイノベーションを生み出し、エネルギー選択の自由度の拡大や料金の最大限の抑制を実現し、我が国の成長につなげていく決意です。

 低廉な天然ガスの確保、ガス導管の整備及び石炭火力発電についてお尋ねがありました。

 LNG基地の揚げ地別に価格が異なるのは、契約時の市場環境や購入量の違いなどによるものと考えられます。

 低廉な天然ガスの調達に向けては、米国からのシェールガス、LNG輸入の実現や、上流権益の確保等を通じた供給源の多角化、消費国間の連携強化等を通じた買い主側の交渉力の強化に取り組んでいます。

 ガス導管の整備については、今回の法案において、国が導管整備に係る事業者間の協議を命令、裁定できる制度などを創設します。

 なお、石炭火力発電は、安定供給や経済性にすぐれた重要なベースロード電源であり、高効率発電技術の有効利用等により、環境負荷を低減しつつ活用していくこととしています。

 電気・ガス料金に関する情報開示の強化についてのお尋ねがありました。

 電気、ガスの一般家庭向けなどの小売料金については、競争が十分であると確認されるまでの間、経過措置として料金規制が講じられることから、その認可に係る審査過程を通じて情報開示が実施されます。

 御指摘のあった電力の規制料金と自由料金の部門別の収支も、小売料金規制が残る間、引き続き公表されます。

 小売料金規制の撤廃後は、引き続き厳格な市場監視を行うとともに、消費者の立場からどのような情報開示を求めるか、検討してまいります。

 電力・ガス取引監視等委員会についてのお尋ねがありました。

 まず、今般の一連の改革によって、自由な競争が促され、電気・ガス料金の抑制効果が働くことが期待されます。委員会は、こうした競争が行われているかを厳しく監視してまいります。

 また、託送料金や経過措置期間中の小売料金といった規制料金については、委員会が厳格な審査を行い、その審査結果を踏まえて、経済産業大臣が料金の認可を行う仕組みとしています。

 なお、この委員会を三条委員会とし、エネルギー政策の枠組みから離れて市場の監視や料金の規制を行う仕組みとすることは、責任あるエネルギー政策として安定供給確保や再生可能エネルギーの普及などを進めるという観点から、適当ではありません。このため、経済産業大臣直属の八条委員会としています。

 他方で、個々の職務遂行について委員が独立して判断を行うことを法律上明らかにするほか、事業者に対する業務改善勧告の権限を単独で行使できるなど、独立性が十分に確保された組織としています。

 以上であります。(拍手)

副議長(川端達夫君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(川端達夫君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       農林水産大臣   林  芳正君

       経済産業大臣   宮沢 洋一君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

       経済産業副大臣  山際大志郎君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.