衆議院

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第23号 平成27年5月14日(木曜日)

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平成二十七年五月十四日(木曜日)

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  平成二十七年五月十四日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)及び農業協同組合法の一部を改正する法律案(岸本周平君外三名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

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 農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)及び農業協同組合法の一部を改正する法律案(岸本周平君外三名提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案及び岸本周平君外三名提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。農林水産大臣林芳正君。

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案の趣旨につきまして御説明申し上げます。

 政府においては、農林水産業・地域の活力創造プラン等に基づき、需要フロンティアの拡大、需要と供給をつなぐバリューチェーンの構築、生産現場の強化等の農政改革を進めてきたところでありますが、これらの改革が成果を上げるためには、政策を活用する経済主体等が積極的に活動できる環境を整備していくことが必要不可欠であります。

 こうした観点から、平成二十六年六月に閣議決定された規制改革実施計画及び「日本再興戦略」改訂二〇一四を踏まえて、農業協同組合、農業委員会及び農業生産法人に関する制度の一体的な見直しを行うこととしたところであります。

 次に、これらの法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、農業協同組合法の一部改正であります。

 まず、農業協同組合の事業運営原則を明確化し、農業協同組合が事業を行うに当たって農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならないこととするとともに、農畜産物の販売等の事業の的確な遂行により利益を上げ、その利益を事業の成長発展を図るための投資や事業利用分量配当に充てるよう努めなければならないこととしております。

 加えて、自主的組織としての運営を確保する観点から、農業協同組合は、事業を行うに当たって、組合員及び会員に利用を強制してはならないこととしております。

 さらに、農業所得の増大に資する責任ある経営体制の確立を図る観点から、農業協同組合の理事の過半数を、原則として、認定農業者または農産物販売、法人経営に関し実践的な能力を有する者でなければならないこととしております。

 また、農業協同組合及び農業協同組合連合会は、その事業を対象者のニーズに応じて適切に運営する観点から、必要な場合には、その選択により、新設分割や株式会社、一般社団法人、消費生活協同組合及び社会医療法人への組織変更ができることとしております。

 昭和二十九年に農協の経営指導により農協組織を再建するために導入された農業協同組合中央会制度については、これを廃止して自律的な制度に移行することとし、都道府県農業協同組合中央会は農業協同組合連合会に、全国農業協同組合中央会は一般社団法人に、それぞれ移行することができることとしております。

 また、一定規模以上の信用事業を行う農業協同組合等は、今後、安定的に信用事業を継続できるようにするため、公認会計士または監査法人による会計監査を受けなければならないこととしております。

 第二に、農業委員会法の一部改正であります。

 まず、農業委員会の事務として、農地等の利用の最適化の推進に重点を置くことを明確にしております。

 次に、農業委員の選出方法について公選制を廃止し、市町村長が市町村議会の同意を経て任命する方法に改め、農業委員の過半数は、原則として、認定農業者でなければならないこととしております。

 さらに、農地等の利用の最適化を推進するため、農業委員会は、担当区域において農地等の利用の最適化の推進のための活動を行う農地利用最適化推進委員を委嘱することとしております。

 また、都道府県知事または農林水産大臣は、農業委員会相互の連絡調整等の農業委員会の支援業務等を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、都道府県または全国に一つを限って、農業委員会ネットワーク機構として指定できることとしております。

 第三に、農地法の一部改正であります。

 農業の六次産業化を促進する観点から、農地を所有できる法人の要件のうち、役員の農作業従事要件について役員等のうち一人以上の者が農作業に従事すればよいこととするとともに、議決権要件について農業者以外の者の議決権が総議決権の二分の一未満まででよいこととしております。

 このほか、農水産業協同組合貯金保険法及び農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律を改正するとともに、農業倉庫業法を廃止する措置を講ずることとしております。

 以上、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

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議長(大島理森君) 提出者玉木雄一郎君。

    〔玉木雄一郎君登壇〕

玉木雄一郎君 民主党提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案について説明します。

 私は、本年一月十三日、農林水産委員会の閉会中審査で、全国農業協同組合中央会、全中の監査制度をいじることでなぜ農家所得が向上するのかと農林水産大臣に質問しました。あれから四カ月、何度も同じ質問をしてきましたが、今に至るまで一度も明確な答弁はいただいていません。

 また、全中が地域農協の自由な経営を妨げている具体例を示してほしいと質問しても、今に至るまでただの一例も示していただいていません。

 さらに、准組合員は悪だといったステレオタイプの批判のもと、事業をばらばらにしようとする政府・自民党の改革案は、農家の所得向上や経営の安定にはつながらない、組織いじりの、改革のための改革だと断じざるを得ません。

 そこで、我々民主党は、真に農家の所得の向上と経営の安定につながる総合パッケージとして、去る三月二十七日に提出した農業者戸別所得補償法案等に加え、今般、我々の農協法改正案を対案として提出した次第です。

 次に、内容について説明します。

 まず、地域のための農協としての位置づけを明確にする規定を新設いたします。

 我が国の農協は、総合農協として、農業の振興のみならず、金融を初めとしたさまざまなサービスを住民に提供し、地域社会で大きな役割を果たしてきたことは、この議場の皆さんも御存じのとおりです。

 そこで、民主党案では、農業協同組合の行う事業が、住民の生活及び地域社会において重要な役割を果たしていることに鑑み、当該事業を通じて、豊かで住みよい地域社会の実現が図られるよう配慮しなければならない旨の規定を新設しております。このことで、農業者のための農協という役割とともに、地域のための農協という役割を法律上明確に位置づけます。

 また、農協の自主性が真に担保される規定を新設します。中央会の監査があるから地域農協の自主性が奪われているのではありません。時の政府や政権が、中央会や農協を利用して、例えば減反の徹底など、行政の下請をやらせてきたことが、農家の自由な経営を妨げてきた問題の本質です。

 そこで、民主党案では、国及び地方公共団体は、業務運営における組合の自主性を尊重しなければならない旨を法律上明確に規定をいたします。

 さらに、政治的中立性の確保についても規定をします。中央会や農協が特定の政党の立場に立つことは、多様な考えを有する組合員に混乱や分裂をもたらすばかりでなく、組織に対する誤解や偏見を生むおそれがあるからです。

 加えて、現行法では、中央会が組合の定款について模範定款例を定めることができるとされています。例えば、模範定款例が、組合員資格について年間農業従事日数九十日以上と定めていることで、地域の実態に即して、例えば機械化が進んで九十日以上の農業に携われない地域、こういった地域で柔軟に組合員資格を定めることが難しくなっている面もあります。

 そこで、中央会が模範定款例を定めることができる旨の規定を削除し、地域農協が自主的、自律的に正組合員資格を定めることができるようにしています。

 最後に、地域重複農協や都道府県域を超える農協の設立を容易にし、真に農家のメリットにつながる農協を実現するための規定を設けています。

 政府案も、農協の設立要件を緩和するための対応を行っていますが、民主党案では、これらに加え、新設組合がその活動区域を定める場合に、他の組合の活動地域と重複する地域や都道府県域を超える地域を活動区域として定めることができるとの規定を設けます。このことによって、例えば四国全体をカバーするトマトのための農協といったものを設立すること、ミカンのための農協ということを設立することが可能になります。

 以上が、民主党提出法案の内容であります。真に農家と地域のためになる内容となっておりますので、慎重審議をいただきますことをお願い申し上げまして、提案理由の説明といたします。(拍手)

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 農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)及び農業協同組合法の一部を改正する法律案(岸本周平君外三名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。齋藤健君。

    〔齋藤健君登壇〕

齋藤健君 自由民主党の齋藤健です。

 ただいま議題となりました政府提出の農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案について、自由民主党を代表して質問いたします。(拍手)

 今、我が国農業は大きな曲がり角にあります。日本は、既に人口減少社会に突入しているわけですが、これからはさらに急速に人口が減少していくと見込まれています。二〇五〇年には、今より人口が三割も減少するという推計があります。

 人口が減れば、農産物の国内消費も減ります。当然です。今のままの農業を続けていたのでは、じり貧は避けられない。日本の農業は思い切って大きく改革に踏み出さなければならない、そういう瞬間であります。

 一方、日本の農産物の流通だとか加工だとか輸出といった側面に着目すれば、これほど伸び代を感じさせる分野もありません。安倍内閣が農業は成長産業だと言うのは、実はこの点に着目したものだと思います。

 ですが、この伸びる分野には、流通業や製造業など、今まで農業には余り関心のなかった方々が着目をし、既に参入が進んできております。人口減少に耐え、さらに成長産業として我が国農業の地平線を切り開いていくためには、この分野での付加価値をいかに農業の生産サイドに取り込んでいくか、まさにこの一点にかかっていると言っても過言ではありません。

 かかる観点から、安倍政権においては、若者たちが希望を持てる強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村をつくり上げようという明確なビジョンのもと、多くの農政改革に取り組んできました。

 農林水産業・地域の活力創造プランを策定し、また、新しい食料・農業・農村基本計画を決定するなど、需要フロンティアの拡大、需要と供給をつなぐバリューチェーンの構築、生産現場の強化の三本柱から成る産業政策と、多面的機能の維持発揮を柱とする地域政策を車の両輪として組み合わせ、過去の政策を新しい時代にふさわしいものに整理し直し、まさに農政の大改革に取り組んできたと認識をしております。

 しかしながら、農業政策の改革だけでは、実は十分ではありません。農業に携わる方々の意識改革、そして農業者の皆さんと常日ごろ接する関係組織の改革が伴わねば、幾ら農業政策だけをいじっても、効果は限定的にならざるを得ない。つまりは、時代認識を共有した上で、政策の改革と組織の改革と農業者の意識改革の三つが伴わねばならないということであります。

 今回、農協、農業委員会、農業生産法人の見直しを行うことになったのは、この組織面での改革に相当するものと私どもは理解しております。

 まず、農協改革であります。

 農協は、農業者の協同組織であり、農業者が農協を通して農産物を販売したり、生産資材を購入すること等によりメリットを受けられるものでなければなりません。

 六十七年前の農協の設立は、戦後の農業の疲弊と日本の食料危機を克服すること、さらには農地解放の成果の定着を狙いとして、農業者の協同の取り組みを進めてきました。

 その後、六十年前に設立された中央会は、全国各地に多数設立された小規模零細農協の監査と経営改善を狙いとして、役割を果たしてまいりました。

 しかしながら、時代は変わったんです。今や、食料は過剰基調であり、農産物を有利に販売するためには、まず消費者、需要者のニーズに対応した販売努力が不可欠であり、また、国内の食料マーケットが縮小に向かう中で、海外への輸出を視野に入れたり、六次産業化により川下の付加価値を取り込んだりしなければなりません。

 つまりは、今までおつき合いのなかった分野の方々と協力をしながら、付加価値を農業分野に取り込んでいくという、したたかで強い農協に変貌を遂げていかなくてはならない。

 また、農業者も高齢化する一方で、担い手農業者と兼業農家に階層分化するなど、組合員も実に多様化してきています。

 さらには、過疎化が進む中山間地と都市近郊地域では、進む道も大きく異なるでしょう。

 要するに、地域によって農協のやるべき経済事業が非常に多様化しているということであり、こうなると、地域農協が、それぞれの地域の事情に応じて、自由で独自の経済事業を展開することによって可能性を広げていく、そういう環境が何より大事だということになります。

 もちろん、既にこういった努力をされている地域農協もありますが、これをさらに強化し、全面展開していかなくてはならなくなっているということでございます。

 一方、地域農協のあり方が変われば、当然、連合会、中央会のあり方についても所要の見直しが必要になってきます。同時に、農協は、地域社会の安定に貢献し、地域の社会的組織としての役割も果たしており、この点への配慮も欠かせません。

 今回提案されている農協改革案は、このような大きなスケールの中で六十年ぶりに断行されるものであり、単なる組織いじりという批判もあるようですが、理解に苦しみます。

 まず、安倍総理にお伺いいたします。

 総理は、農協改革を断行するとの強い決意を繰り返し表明されていますが、農協改革の狙いと、これにかける思いを改めてお聞かせください。

 次に、この改革を進めていく上で、今回の農協法の改正の一番大事な具体的なポイントは何なのか、農林水産大臣の答弁を求めます。

 特に、農協の監査について、農協監査士による監査から公認会計士による監査への移行がうたわれていますけれども、その狙いと、移行に当たっての配慮についてお伺いをいたします。

 また、今回の農協改革により、農業はどう変わっていくのか、あるいは変わっていくべきなのか、農林水産大臣の答弁を求めます。

 次に、農業委員会と農業生産法人の改革について、時間も限られておりますので、一言だけお伺いいたします。

 この農業委員会と農業生産法人の改革が、これまで政府が進めてきた一連の農政改革の中でどのような意義を持つものとして位置づけられるのか、農林水産大臣の答弁を求めます。

 今回の農協、農業委員会、農業生産法人の改革に当たっては、自由民主党としても丁寧な議論を積み重ねてまいりました。

 昨年六月に改革の基本的方向を定め、本年一月から二月にかけては制度の骨格を決め、それを踏まえて法案の詰めを行ってまいりました。党内の会議では、二時間を優に超える会議だけでも八回開き、正直、途中、激しい意見の対立もありましたが、最終的には、関係者合意のもとに今回の法案の提出にこぎつけました。

 人口減少によるじり貧を回避し、農業を成長産業化していくためには、冒頭申し上げましたように、農政の改革だけではなく、関係組織の改革、そして現場の意識改革と三つそろわなければなりません。

 残された時間は短い。本法案の早期成立により、三つ足をそろえた戦列が一刻も早く構築できますよう心から念願して、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 齋藤健議員にお答えいたします。

 農協改革の狙いについてお尋ねがありました。

 我が国の農業の活性化は待ったなしであり、安倍内閣では、農地集積バンクの創設、輸出促進や六次産業化の推進など、農政全般にわたる抜本的な改革を進めてまいりました。

 さらに、今般、意欲ある農業の担い手がより活躍しやすい環境となるよう、農協、農業委員会、農業生産法人の三つの改革を一体的に行うことといたしました。

 特に、農協改革については、地域農協について、農業者のメリットが最優先されるよう理事の過半数を認定農業者などにする、連合会、中央会について、地域農協をサポートする観点から見直し、全中監査の義務づけも廃止するといった農協システム全体の見直しを行います。

 これにより、意欲ある担い手と地域農協が力を合わせ、創意工夫を発揮して、地域ブランドの確立や海外展開など自由な経済活動を行うことにより、農業者の所得向上に全力投球できるようにしていきます。

 こうした改革を進め、消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていけば、農業の可能性は広がり、若者がみずからの情熱で新たな地平を切り開き、強い農業と美しく活力ある農村を実現できるようになっていくと確信しています。

 今回の農協改革は、岩盤のように六十年間続いてきた制度の見直しであり、強い決意を持って進めてまいりたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 齋藤議員の御質問にお答えいたします。

 農協法改正のポイントについてのお尋ねがありました。

 今回の農協法改正は、地域農協が、農産物販売等を積極的に行い、農業者の所得向上に全力投球できるようにすることが最も重要なポイントであります。

 このため、まず、経営目的を明確化し、農協は、農業所得の増大に最大限配慮し、的確な事業活動で利益を上げ、これを農業者等に還元すること、農業者に選ばれる農協であることを徹底するため、農協は、農業者に事業利用を強制してはならないこと、責任ある経営体制を確立するため、理事の過半数を、原則として、認定農業者や農産物の販売等に実践的能力を有する者とすることなどを規定することとしております。

 また、連合会や中央会は、このような地域農協の自由な経済活動を制約せず、適切なサポートに徹していくこととしております。

 このため、昭和二十九年の導入以来、行政代行的な役割を果たしてきた中央会については、自律的な組織に移行することとし、特に、全国中央会については、業務内容にふさわしい一般社団法人とすることとしております。

 また、全中監査の義務づけについてはこれを廃止し、他の金融機関と同様に公認会計士の会計監査を義務づけることとしており、これにより、信用事業を安定的に継続できるようになるものと考えております。

 全中監査から公認会計士監査への移行に当たっては、適切な移行期間を設けるとともに、政府は、全中において監査に従事していた公認会計士等が設立する監査法人が円滑に業務を行えるようにすること、農協が公認会計士等を確実に選任でき、また、実質的負担が増加しないようにすること等について適切な配慮をすることとしております。

 今回の農協改革が農業にもたらす影響についてのお尋ねがありました。

 農協は、農業者が自主的に設立する組織であり、組合員である農業者と農協の役員、職員が真剣に取り組めば、農協はその力を十分に発揮し、農業所得の向上につなげることができるものと考えております。

 そのためには、農業者や農協の役職員が徹底した話し合いを行い、役員体制をどうするか、販売方式をどうするか、六次産業化や輸出拡大にどう取り組むかなどを検討していく必要があります。

 今回の農協改革は、地方分権の発想に立ち、地域農協がそれぞれの地域の特性を生かして創意工夫しながら、自由に経済活動を行い、農産物の有利販売など、農業者の所得向上に全力投球できるようにすること、連合会や中央会は、地域農協の自由な経済活動を適切にサポートしていくことを基本的な考え方としております。

 今回の農協改革を契機として、地域農協が農産物の販売力強化に全力を挙げていけば、農業を成長産業にしていく可能性は十分にあると考えております。

 農業委員会と農業生産法人の改革の意義についてのお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、農業を成長産業とし、地方創生の核としていくため、六次産業化、輸出の拡大、農地中間管理機構による農地集積などを柱とする農政改革を進めてきたところであり、こうした農政改革が成果を上げるためには、政策面の見直しとあわせて、政策を活用する主体についても見直しが必要であると考えております。

 今回の改革は、農地に関する市町村の独立行政委員会である農業委員会について、農業委員の選出方法の変更や農地利用最適化推進委員の新設等により、担い手への農地利用の集積、集約化等を推進し、生産コストの引き下げや農業所得の増大につながるものであります。

 また、農地を所有することができる法人である農業生産法人について、役員の農作業従事要件や議決権要件を緩和することにより、法人が六次産業化等に取り組む際の障害を取り除き、法人の経営発展を推進していくものであります。

 このように、今回の農業委員会及び農業生産法人の改革は、これまで進めてきた農業の成長産業化をさらに推進していくものであると考えております。

 以上でございます。(拍手)

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議長(大島理森君) 佐々木隆博君。

    〔佐々木隆博君登壇〕

佐々木隆博君 民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました、政府提出、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案、民主党・無所属クラブ提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 さて、皆さん、朝食、何を食べられましたか。昼食、何を食べられましたか。私たちがこれから議論をしようとしている法案は、きょうそしてあしたも、皆さんが安心して食べ、血となり肉となり骨となる、日本の安全で高品質の農産物をいかに守り、いかに育てていくのかという、私たちの暮らしそのものにかかわる極めて重要な法案であります。

 この重要法案の審議を前にして、ここにお集まりの与野党問わず多くの農業県出身議員の方々を代表して、まず一言申し上げたい。

 民主党は、農家の所得向上と営農の継続を確保するため、農業者戸別所得補償制度などの施策を実施することで、集落営農数の増加や過剰作付面積の減少など、着実な成果を上げ、加入者の高い評価を得てきました。

 しかし、将来の見通しもつかない中、戸別所得補償制度の廃止を突然打ち出した結果、米価は史上最悪の下落を記録することとなりました。自民党がどのように農業の活力をそぎ、戦後農政を通じて農家を苦しめ弱体化させていったのか、まさに今見せつけられる日々であります。

 総理、もうあなたに農政を任せることはできません。民主党は、本法案の審議を通じ、農家の皆さんとともにその涙をともにし、受けとめた怒りと嘆きを追及の源泉にし、徹底した審議を行ってまいることをまずもってお約束いたします。

 まず、政府提出の農業協同組合法等の一部を改正する法律案について、お伺いいたします。

 政府・与党が掲げてきた農業所得倍増についてお尋ねいたします。

 自民党では、政権復帰後、平成二十五年十二月に決定された農林水産業・地域の活力創造プラン、昨年六月の日本再興戦略の改訂などにおいて、農業、農村の所得倍増を目指すことが明記されております。

 多くの農家の皆さんは思ったことでしょう、自分の所得が倍になるんだと。しかし、これは全くのでたらめであります。

 先般の食料・農業・農村基本計画決定に際して示された「農業経営等の展望について」において、倍増の根拠となるデータが公表されました。ここで明らかになったのは、農業所得は一・二倍になり、農村地域の関連所得が三・八倍になることで、二〇二五年度には二〇一三年度比で農業、農村所得が倍増するというものでありました。

 しかし、農村地域の定義がないことから、そもそも、なぜこの金額が農村へ帰属するのか、これまで明確な回答はありませんでした。絵に描いた餅とはこのことであります。

 総理、何よりもまず確認させていただきたい。農業所得が倍になるとの説明は、誇大広告そのものであります。今後は使うべきではないと考えますが、総理の明快な答弁を求めます。

 次に、今後の農政を大きく左右するTPPの交渉状況についてお尋ねいたします。

 TPP交渉において大きなステップとなる日米首脳会談が先ごろ終了いたしました。この間の協議での焦点について、報道で知る程度ではありますが、政府においては、米国産主食用米の輸入量に特別枠を設定し、その量をふやすことを検討しているとのことであります。このままでは、国内では、将来における米の所得補償交付金を廃止、飼料米への交付金をふやし、主食用米の生産を抑えておきながら、海外からの主食用米をふやすようなことになりかねません。

 TPP交渉合意のためなら、日本の農家は家畜の米をつくり、日本の消費者は日本の米ではなくアメリカの米を食べろということでしょうか。

 そもそも、このような交渉がなされること自体、衆参農林水産委員会の行った決議をたがえるものであり、断じて許すことはできません。

 今後のTPP交渉において、衆参決議、そして重要五品目を守り切る、守り切れなければ交渉から脱退すべきと考えますが、総理の答弁を求めます。

 加えて、交渉状況の情報開示についてもお伺いいたします。

 TPP交渉参加国の中には、国会議員に対して、交渉に関する情報を積極的に開示している国もある中、日本ではなお、交渉状況が全くつまびらかになっておりません。

 このような状況を踏まえ、民主党では、維新の党と共同で、TPPなど国民経済に大きな影響を与える通商交渉について国会への情報開示を義務づける法案を先日提出しました。

 このような再三の指摘、またアメリカでの状況を目の当たりにし、西村副大臣も、政治家としての信念から、今回、正直にその必要性を御発言されたものだと考えております。

 ならば、西村副大臣の上司である甘利担当大臣にお伺いいたします。アメリカと同様、国会議員へ交渉文書の開示を認めていただけますね。明快な答弁を求めます。

 農協、農業委員会改革についてお伺いいたします。

 私たち野党の多くは、この代表質問に臨むに当たってもなお、なぜ農協改革が必要なのか、農協を改革すれば、なぜ農家の所得がふえるのか、政府のこれまでの説明に対して全く納得ができておりません。監査権限を分離すれば、中央会制度を廃止すれば、農協の営農指導は充実するのか、全く理解ができません。

 端的にお伺いいたします。農協や農業委員会を改革すれば、政府・与党が目指す農業所得倍増は本当に実現するのか。その因果関係について、総理の明快な答弁を求めます。

 中央会制度についてお伺いいたします。

 農協改革の議論が始まったやさきから再三言われてきたのが、全中が地域農協の自由を奪っているというふれ込みでありました。

 しかし、日本農業新聞が行った農協組合長向けのアンケートにおいては、実に九五%以上の組合長が、中央会制度によって経営の自由を奪われていないと回答しています。民主党でも、複数の農協関係者からヒアリングをいたしましたが、そのような事実は一例も聞くことができませんでした。

 農協が農業の成長を拒んでいる、そのような悪者とのレッテルを張り、戦後農政の失敗を農協だけに押しつけているのが今回の農協改革の実態ではないでしょうか。

 そもそも、何十年にもわたって農政を担ってきたのは誰ですか。自民党の皆さんではないですか。六十年ぶりの改革とうそぶくならば、戦後農政の失敗について、まずみずからの誤りを明確にしてこそ改革の出発点だと考えますが、総理の見解を求めます。

 単位農協の理事資格についてお伺いいたします。

 農協法改正案では、農協理事の過半数を、原則として、認定農業者、農産物販売や経営のプロにすることとしております。なぜこのような規定を設けたのでしょうか。

 食料・農業・農村基本計画では、担い手を、認定農業者、認定新規就農者、集落営農と位置づけています。しかし、認定農業者は、全国で一三・五%しか存在しておりません。そもそも、認定農業者は、農業経営資金借入要件を定めた経営基盤強化法の十二条に、「農業経営改善計画を作成し、これを同意市町村に提出して、当該農業経営改善計画が適当である旨の認定を受けることができる。」と規定されているのみであります。

 政府は、認定農業者に何ら責任を持っていません。農地利用面積でも四九%程度の人々に、何ゆえ政策を限定させようとしているのか、農林水産大臣の答弁を求めます。

 全中の監査権限見直しについてお伺いいたします。

 監査権限の見直しは、農協改革の議論において、最終盤、大きな論点となりました。これまでは、監査権限を見直す理由については、信用事業が大きくなるので、他の金融機関とイコールフッティングではない、内部監査では十分な健全性が確保できないとの批判があったためとされ、民主党政権においても、同様の理由で、見直しの必要性について検討を行ってまいりました。

 しかし、今回の農協改革における監査権限見直しの理由は、農家所得の向上という、これまでの説明とは全く異なるものであります。

 農林水産大臣にお伺いいたします。

 全中の監査権限を見直せばどのように農家所得が向上するのか、その因果関係について明確に御説明ください。

 農業委員会改革についてお伺いいたします。

 長らく優良農地の確保、耕作放棄地の発生防止の中心を担ってきた農業委員会も、今回、戦後最大の体制変更を迫られています。その最たるものが、公選制の廃止であります。

 農業委員は、農地転用という極めて重要な権能を有することから、長らく公選制を維持してきました。今回の公選制廃止の論拠として、その選挙を行った委員会の割合が少ないことが挙げられています。

 しかし、なぜそれが理由になるのでしょうか。地域の農業者が選ぶその制度こそ、農業委員会への信頼を確保し続け、農地転用の公正性を担保してきたのではないでしょうか。

 改めてお伺いいたします。なぜ農業委員会の公選制を廃止する必要があるのか、農林水産大臣の答弁を求めます。

 あわせて、鳴り物入りで始まった農地中間管理機構についてお伺いいたします。

 農地中間管理機構は、総理が進める農政改革の一丁目一番地として、実に四百五十億円の予算を積み上げ、二十三万ヘクタールという高い目標を掲げて事業を行ってまいりました。その成果いかんを検証してまいりましたが、予算の執行率はわずか三・五%、貸し付け面積は調査中を繰り返すばかりで、一部提出のあった貸し付け状況を足し上げても、目標に達しなかったことは明らかであります。

 総理、高らかに宣言して始まった農地中間管理機構は、このままでは失敗に終わるのではないでしょうか。総理の見解を求めます。

 次に、民主党・無所属クラブ提出の農業協同組合法の一部を改正する法律案についてお伺いいたします。

 同法案では、政府案と比較し、監査や中央会制度については大きな変更を加えず、他方、総則に新たな条を設け、地域農協の役割の重要性を位置づけております。その意義を御説明ください。

 さて、安倍総理は、今国会冒頭の施政方針演説において、今回の農協改革を戦後六十年ぶりの大改革、そう言われました。しかし、私たちは、戦後六十年以上にわたり、おごり、うそぶき、おもねり、そして何よりもつまずいてきた自民党農政の失敗を議論し、それを繰り返さないための教訓を得るための好機であると考えております。

 総理、徹底的にやろうではありませんか。皆さんがいかにこれまで農家を欺き、そして今もなお欺こうとしているのか、徹底的に審議で明らかにすることをお約束し、私の質問といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 佐々木隆博議員にお答えをいたします。

 農業、農村の所得倍増についてお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、農業の成長産業化を図るため、農地集積バンクの創設、輸出促進や六次産業化の推進など、生産性や付加価値を向上させ、マーケットを内外に広げる農政改革を進めているところです。

 関係者が一体となって努力を積み重ね、消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていくことができれば、農業、農村全体の所得倍増は十分に実現可能性があると考えております。

 TPP交渉に関する農林水産委員会の決議についてお尋ねがありました。

 TPP交渉については、衆議院、参議院の農林水産委員会の決議をしっかりと受けとめ、いずれ国会で御承認をいただけるような内容の協定を早期に妥結できるよう全力で交渉に当たっているところです。

 こうした中で、交渉からの脱退について言及することは不適切であると考えます。

 農業、農村全体の所得倍増と今回の改革との関係についてお尋ねがありました。

 安倍内閣では、農業の成長産業化を図るため、農地集積バンクの創設、輸出促進や六次産業化の推進など、農政全般にわたる抜本的な改革を進め、さらに、今般、農協、農業委員会、農業生産法人の三つの改革を一体的に行うことといたしました。

 特に、農協改革については、農協システム全体の見直しを行います。

 これにより、意欲ある担い手と地域農協が力を合わせ、創意工夫を発揮して、企業と連携した加工品の開発、地域ブランドの確立、新たな需要を開拓するための輸出への取り組みなど自由な経済活動を行うことにより、農業者の所得向上に全力投球できるようにしていきます。

 こうした改革を進め、消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていけば、農業の可能性は広がり、若者がみずからの情熱で新たな地平を切り開き、強い農業と美しく活力ある農村を実現できるようになっていくと確信しています。

 戦後農政の総括についてお尋ねがありました。

 これまで、農政においては、その時々の課題に対応するため、米の生産調整を初めさまざまな施策を展開し、国民への食料の安定供給等に努めてきましたが、農産物価格の低下等による農業所得の減少、担い手の減少と高齢化の進展、耕作放棄地の増大など、現在の我が国の農業、農村をめぐる状況は厳しいものとなっております。

 その要因として、食生活が変化する中で、米のように需要が減少する作物の生産転換が円滑に進まなかったこと、水田農業などにおける担い手への農地集積のおくれ、農産物価格が低迷する中で、高付加価値化が実現できなかったことなどの事情があったと認識しております。

 こうした状況を一つ一つ克服し、我が国の農業の活性化を図っていくことは待ったなしの課題であり、安倍内閣では農政改革を進めているところであります。

 農地集積バンクについてお尋ねがありました。

 我が国の農業を成長産業としていくためには、担い手への農地の集積、集約化が重要であります。

 このため、担い手への集積、集約化を進める究極の手段として、昨年、全都道府県で農地集積バンクを整備したところですが、初年度ということもあり、積極的に動いている県がある一方で、全ての都道府県で必ずしも軌道に乗っている状況ではありません。

 今後、本年三月末の初年度データを踏まえて、検証、評価を行い、改善策を講じ、農地集積を一層加速化していくこととしております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 佐々木議員の質問にお答えいたします。

 農協の理事要件についてのお尋ねがありました。

 我が国農業を安定的に発展させ、国民に対する食料の安定供給を確保していくためには、効率的かつ安定的な農業経営が生産の相当部分を担う農業構造を構築することが重要であり、この方向は食料・農業・農村基本法にも明記をされておるところでございます。

 また、本年三月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画でも、効率的かつ安定的な農業経営を目指して経営の改善に取り組む認定農業者を中心に、担い手として位置づけたところであり、これらの経営体に、経営所得安定対策や融資、税制等の政策を集中していくこととしております。

 農協が地域の農業者と力を合わせて、創意工夫しながら、農業所得の増大に向けて適切に事業運営を行っていくためには、このように、農業に積極的に取り組んでいる認定農業者等の意見が農協運営に的確に反映されることが重要であると考えております。

 こうした観点から、理事の過半数は、原則として、認定農業者または農産物販売や経営のプロとすることを求めることとしております。

 全中の監査権限見直しと農家所得の向上の関係についてお尋ねがありました。

 今回の農協改革は、地域農協が自立して自由に経済活動を行い、農産物の有利販売など、農業者の所得向上に全力投球できるようにすることを中心に据えて、農協システム全体の見直しを行うこととしております。

 昭和二十九年に導入された特別認可法人である中央会についても、地域農協の自由な経済活動を適切にサポートするという観点から、自律的な新たな制度に移行することとしております。

 こうした中で、全中監査の義務づけを廃止し、他の金融機関と同様に、監査法人等の会計監査を義務づけることといたしました。これにより、農協は信用事業を安定的に継続できるようになるものと考えております。

 また、監査を含めた中央会制度を見直すことで、地域農協の役員が従来以上に経営者としての責任を自覚して、農業者のメリットを大きくするよう、創意工夫して取り組んでいただくことを期待しているところです。

 こうした農協改革と、農林水産業・地域の活力創造プランに基づく各種の政策が連動することによって、農業の成長産業化に道筋がつき、農家の所得向上につながるものと考えております。

 農業委員の公選制の廃止についてのお尋ねがありました。

 農業委員会は、農地に関する市町村の独立行政委員会であり、担い手への農地利用の集積、集約化、新規参入の促進、耕作放棄地の発生防止、解消など、地域農業の発展を積極的に進めていくことが期待されております。

 一方で、農業委員会の活動状況については、地域によって区々であり、平成二十四年に実施したアンケート調査によれば、農業委員会の活動を評価している農業者は三割にすぎず、農地集積などの農家への働きかけが形式的である、遊休農地等の是正措置を講じないなど、農業委員会の活動は、農業者から余り評価されているとは言いがたい状況も見られるところであります。

 これは、農業委員の四割が兼業農家であり、担い手など農業経営に真剣に取り組んでいる方が主体となっていないことに起因する面があると考えております。

 これらを踏まえ、今回の法案では、適切な人物が確実に農業委員に就任するようにするため、公選制から市町村長の選任制に改めることとしているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) TPP交渉における国会への情報提供についてのお尋ねがありました。

 そもそも、TPPは、交渉中の情報が外部に漏れないようにするという厳しい保秘契約に各国が合意しているものであります。現時点で、TPP参加国の中で、米国のように議員へ協定案文、いわゆるテキストを開示している国がほかにあるとの情報には接しておりません。

 米国の連邦議員には守秘義務がありまして、違反した場合には刑事罰の対象となり得ると認識をしております。また、米国においては、外国との通商を規制する権限が憲法上連邦議会にあることから、我が国とは制度が大きく異なるところであります。そのため、我が国において米国と同様の開示を行うことは困難であります。

 いずれにせよ、政府としては、これまでも国会等で丁寧な説明を心がけてきたところでありますが、秘密保持の制約のもとで、TPP交渉の現状等について今後も丁寧に説明をしていく考えであります。情報提供のあり方についてどのような工夫ができるのか、各国の状況も踏まえながらさらに検討をしてまいります。(拍手)

    〔岸本周平君登壇〕

岸本周平君 佐々木隆博議員の質問にお答えいたします。

 まず、監査権限の見直しに関しましては、直接農家所得の向上につながるものではありません。ただいまの林農水大臣の答弁でも全く明らかになりませんでした。

 そして、中央会制度の見直しに関しましては、中央会が単位農協の自由を縛っている、政府は何度もそのように改革の必要性を訴えてまいりましたが、私どもは、ならば、その事例を示してほしいと何度も農水省に求めましたが、結局、そのような事例は一例も報告されませんでした。いたずらに組織いじりをすることで、改革しているポーズをとっているにすぎません。

 何より、政府の農協改革案の問題は、新自由主義的な考え方に基づいて、いわゆる一億総株式会社化を図るところにあります。規制をなくし、効率を追求すべき分野があることは当然でありますし、大いに賛成であります。

 しかし、例えば、教育や医療、福祉、なかんずく農業の分野は、何でもかんでも株式会社化をして、効率の追求のみを行うべきではありません。市場の暴走をとめ、所得や資産の格差拡大に歯どめをかけるためにも、協同組合やNPO、NGOなどのいわゆる中間団体の活動が今こそ求められています。

 私たちは、いま一度、協同組合としての農協の位置づけを明らかにしています。その論議の中で明らかになったのは、医療や福祉あるいは町おこしなど、時代や地域のニーズに合わせ、地域社会において農協が重要な役割を果たしているという実態でありました。

 そのため、私どもは、農協法の総則を改正し、これまでの農家のための農協に加え、地域のための農協という役割についても法律で明確に位置づけることをいたしました。地域に着目したとき、農業者でない准組合員も組合の正当な一員と位置づけることが可能になります。

 また、協同組合の運営は、本来、組合員の自治に委ねられるべきものであります。行政が過度に関与したり、その改革が政府・与党の力任せに行われることともなれば、協同組合の本旨がゆがめられることになりかねません。

 そのため、私どもは、国や地方自治体に組合の自主性の尊重を求めるとともに、組合側にも政治的中立性の確保を求める条文を制定しております。

 さらに、農協そのものにも自己改革をしていただかなければなりません。

 そのため、都道府県の区域を超える農協や、同じ地域内でも複数の農協の設立を可能にする確認規定を置きました。

 民主党としては、ただいま申し上げましたような本法案と、既に提出済みの農業者戸別所得補償法案及びふるさと維持三法案とあわせ、農家の所得向上と、営農を継続する体制の構築、日本の伝統文化を継承する国の礎としての農村振興に取り組んでまいりたいと考えております。

 以上です。(拍手)

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議長(大島理森君) 村岡敏英君。

    〔村岡敏英君登壇〕

村岡敏英君 維新の党、村岡敏英でございます。

 会派を代表して、ただいま議題となりました農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案について質問させていただきます。(拍手)

 我が国の農業には、解決しなければならない問題が、大きく言って三つあります。農産物産出額の減少、輸出額の小ささ、目指す農業が不明確という問題です。

 これら農業衰退の大きな要因となっているのは、稲作に農林水産省の予算の三分の一を使いながら、稲作の問題を解決できていないことではないでしょうか。

 生産調整しているのに輸入したり、輸出を促進させようとしているのに生産調整を強化したり、普通の経済政策では理解できない政策がとられています。農家を保護するためと言っていますが、当の農家は保護されているとは思っていません。それは、これまでの農政が、猫の目農政となり、将来の農業の姿を描いてこなかったことに問題があると思います。

 生産調整は、米価を維持するための政策でしたが、需給動向と比べて価格が相対的に高くなるために、米の消費は減少し、米が余るとさらに減反するの繰り返しでした。

 結果、生産調整本来の機能がなくなり、米価下落と生産調整強化の不毛なイタチごっこを続けてきたのです。しかも、余ったら輸出ではなく、余ったら生産調整という発想が続いています。さらに、集落全員参加型の一律生産調整、全国一律の農業政策は、生産性の高い農家にも低い農家にも同じ割合の減反を強い、適地適産を考えずにやってまいりました。

 このような稲作政策は、特に生産性の高い農家のやる気をそぎ、生産調整による生産縮小をもたらしただけではなく、米制度を非常に複雑にし、さらに米以外の農業政策をこれに従属させて、農家の皆さんでさえわかりにくい複雑な制度にしてしまったのです。

 安倍総理には、経営マインドを持った農家を育てて、農村社会の発展、農業を成長産業にしようという意気込みは感じています。しかし、米問題の解決に本格的に取り組まなければ日本の農業は再生しません。

 米政策の改革はどのようにお進めのつもりなのか、総理にお伺いしたい、このように思います。

 昨年、総理は、生産調整廃止の方針を打ち出しました。政府の方で生産量を決めるのではなく、農家がみずからの経営判断で何をどれくらい作付するかを決め、政府は情報だけを提供するというものでありました。

 これまでは、生産調整として、野菜やソバ、飼料作物、大豆、麦、いろいろなものに転作することを奨励してきました。昨年、同じような誘導を飼料米に対していたしました。飼料米の生産に高い補助金をつけたのです。数量払いを導入し、十アール当たり最大十万五千円、平成二十五年産の飼料米の実績は十一万五千トン、助成額百七十四億円に上ります。

 農家の皆さんは、この飼料米政策が続くのかどうか心配いたしています。主食用米から飼料米へ、食料自給率を上げ、食料安保に資するという方針は、これからも揺らぐことのない政策なのか、安倍総理にお伺いいたします。

 二月二十五日の予算委員会で、私は、生産調整という政策は、まさに資本主義の経済政策と反対の方向に行ってしまった、他の先進諸国は、生産技術や機械化によって農産物が多く収穫できたら、他国に輸出してさらに生産を伸ばしてきた、これからは日本も輸出に力を入れるのですかと聞きました。

 総理は、これに対しまして、価格を維持するために減反という政策をとってきたが、これが限界、かつ、生産者に対してマイナスだった、ヨーロッパの国々も、食料自給率、自給力を回復するにおいては、得意なものをたくさんつくって輸出した、日本のおいしい米も輸出に力を入れていきたいとお答えいただきました。

 飼料米へのシフトや水田フル活用は国内需要を考えての政策だと思います。海外戦略として、米の輸出政策、農業の成長産業化という観点から力を入れていく方向であると理解してよろしいでしょうか。安倍総理にお伺いいたします。

 TPPについてもお伺いいたします。

 TPPの交渉次第では、これまで審議してきた農地の大規模化、飼料用米へのシフト、これから審議しようとしている農協法等の改正も農業改革も、大きく方向性が変わる可能性があります。

 維新の党は、日本が国益を守りつつ、経済貿易連携を主導し、外需を取り込む自由貿易圏を拡大することについては、安倍内閣と同じ方向を目指しています。しかし、TPPについては情報公開が全くなされていません。

 先日、維新の党は、民主党と共同で、TPP交渉の進捗状況を政府が国会に報告することを義務づける議員立法を提出しました。政府が国会決議を無視した形で妥結することのないよう、きちんと国内での議論も踏まえて、国益にかなうよう慎重に交渉に臨んでいただきたいと考えてのことです。

 五月に入って、TPPに関する情報公開についての報道が流れました。

 内閣府の西村副大臣が、TPPの交渉内容を記した文書を国会議員が閲覧することを認める方向で調整したいという発言をしたのです。しかしながら、すぐにこれを撤回しました。昨日の農水委員会でその真意をただしましたが、明確な御説明はいただけませんでした。

 TPPは極めて大きな自由貿易協定です。この交渉内容を日本の議会が全く知らないまま政府がサインをしてしまったら、議会としての責任が果たせません。

 甘利大臣にお伺いします。

 アメリカの国会議員は交渉内容にアクセスができるのに、日本の国会には開示することができない。これはどのような根拠があるのでしょうか。

 米国では情報漏えいに刑事罰があり、議員資格の剥奪もあるが、日本ではそういうことはできないとの発言もありましたが、我が国の国会には秘密会の制度があり、秘密を漏らした場合、議員資格剥奪を含めた懲罰も可能であります。日米の違いは余りないと思われます。

 国会は国権の最高機関です。内閣が条約を締結するのにも、国会の承認が不可欠です。今後、国会に対して情報公開をするおつもりがあるのか、あるとすれば、どういう仕組みで、どういう進め方をしていくのか、具体的に教えていただきたいと思います。

 今、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案が提出され、農協が大きく変わろうとしています。

 農業協同組合は、組合員及び会員のための最大の奉仕をすることを目的とし、農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならないこと、農産物の販売等の事業の的確な遂行により高い収益性を実現することを明文化し、組合の事業運営原則を明確に打ち出しました。

 また、組合は、事業を行うに当たって、組合員に利用を強制してはならないこと、理事の過半数を、原則として、認定農業者または農産物販売、法人経営に関して実践的能力を有する者でなければならないこととしています。

 これらの改正点は、会計監査人の設置とともに、農協を事業運営に向けさせようとするものです。全中や全農のグリップを外すと、単協の手腕が問われることになります。株式会社化したり、子会社化したり、営農に向くのかどうか、どういうビジョンを持って進んでいくのか、単協が自主性を持ってやっていくことができる環境になっているのか、それが問われます。

 安倍総理大臣、林大臣にお伺いします。

 農協が変わらない限り、農業の成長産業化も望めないというお考えなのでしょうか。農協が農業者と徹底した話を行い、成長産業化の道筋をつけていきたいという林大臣の御発言もあり、農協と農家の自助努力の発揮に期待するということですが、今回の農協法の改正は、具体的にどのような面で、農業の成長化、所得倍増に資するのでしょうか。

 農地法の改正については、農地を所有できる法人の要件を緩和し、六次産業化等を通じた経営発展を促進するとしています。

 これは、農業へ企業の参入を促進するものであると私も期待しております。企業の参入が農業にとって大切なのは、そこにフードチェーンがつくられるからであります。農産物の生産から、加工、流通、販売までが農村でできるようになれば、安倍総理のおっしゃるように、農村の所得倍増の実現も視野に入ってきます。

 例えば、ワイン業者がブドウ畑を所有するのは、欧米では、良質なワインを生産する一つの条件となっています。

 しかしながら、日本では、企業参入について、企業に土地を所有させることが、イコール農業者の排除のように思っているところがあります。

 これについては、企業も、農業地帯に入ったら、その地域に合わせて地域の人たちと一緒にやらなければ、農業はできません。ですから、企業が農業集落に入っていくときは新入社員であるというような気持ちを持って、そして、農業者の方は、企業の経営ノウハウを学ぶ気持ちを持ってしっかり連携することができれば、六次産業化も進んでいくのではないでしょうか。

 土地を所有させないという法律がどうしても、一方で、農業者が企業を排除しよう、他方で、企業者も農業地帯に入っていくのを阻害されていると感じてしまう。もちろん、勝手に宅地化したり、耕作放棄地にしたりすることは規制をかけなければいけません。しかし、企業参入を、企業と農業がうまく連携していくというイメージを打ち出すことによって、攻めの農業、将来の農業の成長につながると思いますが、安倍総理はどうお考えでしょうか。

 終わりになりますが、秋田県には、明治時代から伝わる種苗交換会というものがあります。明治十一年、第一回の会議の推進役となったのが、秋田の老農、農聖と称される石川理紀之助さんです。

 彼のよく知られた名言を御紹介いたします。寝ていて人を起こすことなかれ。

 石川理紀之助さんが借金地獄にあえぐ村を見事に再生したのは、決して彼一人の偉業ではありません。彼が村人と一緒に働いたからこそ、村人もついてきてくれたのです。そして、この名言は、単に、みずから率先すべきという意味だけではありません。彼は、毎朝三時にかけ板を打って村人たちを起こし、農業に専念させましたが、彼がかけ板を打っていたのは、その村の人々だけではなく、そこから五百里離れた人々にも、また五百年後に生まれる人々にも聞こえるように打っているのだと言っていたそうです。

 農業改革は、これまでの改革に比べて大変厳しい道のりになると思います。その大改革を本気で断行していくのであれば、非常に強い決意と、寝ていて人を起こすことなかれという精神が必要ではないでしょうか。

 そして、この農業改革は、五百年後に生まれる日本人にも、農業者にも聞こえるような農業改革をしていこうじゃありませんか。

 規制改革会議の委員も務められた宮城大学の大泉一貫名誉教授は、著書「希望の日本農業論」の中で、農業を成長産業にし、農業の雇用力を増加させるためには、衰退を助長してきた戦前から続くアンシャンレジームの打破を目指して、法制度改革に結びつけることが重要ですと述べられています。自民党政権がつくり上げた戦後レジームを、農業システムを、自民党安倍政権がみずからの手で大改革することができるかどうかが問われています。

 我々維新の党は、これまでの選挙目当ての農業政策に決別し、現場とともに農業の大改革を目指す、その決意であります。農業の成長産業化で農村に新たな人々の参入を呼び起こし、あの明治維新、産業革命と同じように田園からの産業革命を起こす。日本の将来はふるさとの再生にあり、ふるさとの再生は農業の再生にある。これからの農水委員会でも、この強い意思を持って審議してまいります。

 今国会の会期中には、我々も田園からの産業革命、農業の再生の法案をしっかり会期中に出す決意であります。これを述べまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 村岡敏英議員にお答えをいたします。

 米政策の改革と飼料用米についてお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、農業の成長産業化を図るため、輸出促進や六次産業化の推進による付加価値の向上、リース方式を活用した農地集積による生産性の向上などに精力的に取り組んでおります。

 その上で、四十年以上続いてきた米の生産調整を見直し、農業者がマーケットを見ながらみずからの経営判断で作物をつくれるようにするとともに、需要のある麦、大豆、飼料用米の生産振興を図ることによって農地のフル活用を図り、食料自給率と食料自給力を向上させ、食料安全保障に資することとしてまいります。

 これらの施策は、先般閣議決定した食料・農業・農村基本計画にも位置づけており、今後、これらを着実に実行することによって、生産現場での混乱を招くことなく、農業構造の改革と強い農業の実現を図っていきたいと考えております。

 米の輸出についてお尋ねがありました。

 農業の成長産業化を図っていくためには、農産物の輸出促進を図っていくことが必要と考えています。

 農林水産物・食品の輸出実績は、昨年、過去最高を更新し六千百億円となり、この政権になってから二年間で三六%ふえています。米についても、輸出量がこの二年間で一〇五%ふえ、四千五百トンとなっております。

 米の輸出促進については、昨年十一月に輸出促進に取り組む全国団体を立ち上げ、統一のロゴマークの作成、日本酒等の加工品も含めた一体的なPRなどを進めているところであり、今後とも、しっかりと米の輸出に力を入れてまいりたいと考えています。

 農協改革による農業の成長産業化についてのお尋ねがありました。

 我が国の農業は、まだまだ可能性を秘めています。

 例えば、農林水産物・食品の輸出実績は、昨年、過去最高の六千百億円となるなど、我が国の安全でおいしい農産物は、国内の消費者はもとより、世界の人々にも評価されております。

 今般の農協改革では、意欲ある担い手と地域農協が力を合わせ、創意工夫を発揮して、地域ブランドの確立や海外展開など自由な経済活動を行うことにより、農業者の所得向上に全力投球できるようにしてまいります。

 こうした改革を進め、消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていけば、農業の可能性は広がり、若者がみずからの情熱で新たな地平を切り開き、強い農業と美しく活力ある農村を実現できるようになっていくと確信しています。

 農業への企業参入についてお尋ねがありました。

 農業の成長産業化を図るためには、意欲のある担い手が活躍しやすい環境を整備していくことが重要です。

 企業参入については、平成二十一年のリース方式の全面解禁により、株式会社のままでも自由に参入できることとなっており、農地集積バンクとの組み合わせによって、さらに効率的に農業経営を展開できるようになっていきます。

 現に、法改正前の約五倍のペースで参入が進んでおり、農業界、産業界が連携して前向きに推進していける状況になっています。

 さらに、今回の改革では、農地を所有できる法人の要件について、六次産業化等を行いやすくするため、役員要件及び議決権要件の見直しを行うこととしております。

 こうした改革を行うことで、若者が自分たちの情熱や能力によって新しい地平を切り開いていけるようにしていきたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 村岡議員の御質問にお答えいたします。

 今回の農協法の改正と農業の成長産業化の関係についてのお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、農業を成長産業とし、地方創生の核としていくため、農林水産業・地域の活力創造プランに基づき、六次産業化による高付加価値化、海外マーケットも視野に入れた需要の開拓、農地集積バンクによる担い手農業者への農地集積などを柱とする農政改革を進めてきたところです。

 こうした農政改革が成果を上げるためには、政策面の見直しとあわせて、農業者を初めとする経済主体が、政策も活用しながら自由に経営を展開できる環境を整えていくことが必要不可欠です。

 地域農協は、農業者が自律的に設立した協同組織であり、農業者にとって最も身近な経済主体です。

 ここが、地域の農業者と力を合わせて、農産物の有利販売等に創意工夫を生かして積極的に取り組めば、農業を成長産業にしていく可能性は十分あると考えております。

 このため、今回の改革は、地方分権の発想に立ちまして、地域農協が、それぞれの地域の特性を生かして創意工夫しながら自由に経済活動を行い、農産物の有利販売など、農業者の所得向上に全力投球できるようにすること、連合会や中央会は地域農協の自由な経済活動を適切にサポートしていくことを基本的な考え方としています。

 こうした農協改革と政策の見直しとが連動することによって、農業の成長産業化の道筋がつくものと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) TPP交渉における国会への情報提供についてのお尋ねがありました。

 先ほども答弁いたしましたとおり、TPPは、厳しい保秘契約にサインをした後に入会が認められるものでありまして、現時点では、TPP参加国の中で米国のように議員へテキストを開示している国がほかにあるとの情報には接しておりません。

 米国の連邦議員には守秘義務があり、違反した場合には刑事罰の対象となり得ると認識をいたしております。また、米国においては、外国との通商を規制する権限が憲法上連邦議会にあることから、我が国とは憲法上の制度が大きく異なるところであります。そのため、我が国において米国と同様の開示を行うことは困難であります。

 いずれにせよ、政府としては、秘密保持の制約のもとで、TPP交渉の現状等について今後も丁寧に説明をしていく考えであります。情報提供のあり方についてどのような工夫ができるのか、各国の状況も踏まえながらさらに検討をしてまいりたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 稲津久君。

    〔稲津久君登壇〕

稲津久君 公明党の稲津久でございます。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案について質問をいたします。(拍手)

 まず、農協法の改正についてです。

 同法第一条には、「この法律は、農業者の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与することを目的とする。」とあります。

 このことからすると、まさに本改正案は、農業者や農業団体のみならず国民経済に直接影響を与えることを意味するものであり、だからこそ、広範な議論とともに、我が国の社会情勢にどのような影響を与えるのか、将来を見据えた取り組みが必要であると考えます。

 また、本改正案は、農業の成長産業化を目指して、農業所得の向上や地域の活性化をどう図るかが目的ですが、現下の農業情勢を踏まえると、これは単に農協等の組織の見直しで可能になるものではないと考えます。

 総理も、さきの施政方針演説で、農家の視点に立った農政改革として、強い農業をつくるための改革、農家の所得を増すための改革を進めると述べました。

 そこで、本改正案がどのように農業の成長産業化や農家所得の向上に資するのか、安倍総理にお尋ねをいたします。

 次に、攻めの農政との関連性について伺います。

 林農林水産大臣は、平成二十四年十二月の政権交代後、農林水産大臣に就任され、攻めの農林水産業の推進に向けた検討を進め、農林水産業・地域の活力創造プランをまとめるなど、積極的に農林水産業の成長産業化に向けた政策実現に取り組まれてきました。

 今般、第一次林農林水産大臣時代には重点化されていなかった農協法等の改正が出され、審議されることになりますが、農協法等の改正がどのように攻めの農政につながるのか、農林水産大臣の答弁を求めます。

 あわせて、林大臣は、さきの所信表明において、第一に攻めの農林水産業の実行を挙げられ、その取り組みとして、需要フロンティアの拡大、需要と供給をつなぐバリューチェーンの構築、生産現場の強化を述べられました。このことと本改正案との整合性についてどう考えるのか、農林水産大臣の見解を伺います。

 JA綱領の前文では、農業と地域社会に根差した組織として社会的役割を果たすと宣言しているように、農協の役割は、農業生産力や農家所得の向上であることは当然として、農村の暮らし、環境、食料など、広い意味で消費者や地域住民とも密接にかかわってきます。そこに、農協と一般の株式会社等との大きな違いがあります。

 農協は、営みが農地や農村地域とかかわっていることにより、おのずと地域社会と密接に結びついてきます。また、総合事業を通じて地域のライフラインを担い、協同の力で豊かな暮らしを支える地域社会の実現に貢献していることも事実です。

 こうした農協の農村地域に果たしている役割について、どのような認識をお持ちなのか、総理にお尋ねいたします。

 農協は、農業者の職能組合でありますが、農村地域における公共的組織として事業展開をしており、地域のインフラに必要なサービスを提供しています。このような中で、員外利用規制や准組合員の事業利用について、今後一定のルールを導入することは必要としても、現実に即した方向性が不可欠ではないでしょうか。

 単位農協や准組合員の意見、ニーズを反映しながら時間をかけて検討すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 次に、中央会制度について伺います。

 まず、監査制度についてですが、これまで中央会による監査は、単位農協の事業の企画立案、他業種との連携、経営のアドバイス機能を強化してきた面があります。一方で、公認会計士の監査は、監査報告書の作成により、財務諸表の内容が適正かどうかの意見表明です。

 今回の改正後は、経営の詳細、アドバイスなどのいわゆる業務監査は誰が担うのでしょうか。また、監査費用も含めて農協の負担が増すのではないかといった懸念にどうお答えするのか、総理にお伺いします。

 公明党は、中央会の一般社団法人への移行について、十分な移行期間の確保を求めてまいりました。

 本改正案によると、全国中央会は、平成三十一年九月末までに、会員の意思の代表、会員相互の総合調整などを行う一般社団法人に移行することになります。条文では、社員である組合の意見を代表すること、または社員である組合相互間の総合調整を行うことを主たる目的とする一般社団法人となることになっています。

 この主たる目的ではなく従たる目的として、例えば経営相談など他の業務を行うことは可能なのかどうか、農林水産大臣の所見を伺います。

 次に、農業委員会制度について伺います。

 農業委員会は、制度発足以来、幾度かの改正を行ってきましたが、根幹として重要視されてきたのは、農業者の公的な代表として、農業、農村の振興のために農業者が自主的に考え、決定し、実践する取り組みであり、この基本的な理念は今後も変わらないものであると考えます。

 とりわけ、昨今の重要課題である土地利用型農業の構造改革は、農地中間管理機構を活用した担い手への農地の集積や遊休農地の解消を通じて農業、農村の維持発展を図るもので、そのために農業委員会の果たすべき役割は一層大きなものになっています。

 農業委員会は、行政の執行機関としての業務と同時に、農業者の代表機関としての業務を担っています。農業委員会制度に基づく建議等は、代表機関としての取り組みであり、農業生産法人制度や農業者年金制度、認定農業者制度の創設など、これまでも主要な農業政策の確立に重要な役割を果たしてきました。

 本改正案では、建議を規定しないこととする一方で、具体的な意見を提案しなければならないとしていますが、この変更が農業委員会の活動へどう影響するのか、総理の見解を伺います。

 次に、農業委員の能力向上についてお伺いします。

 本改正案は、農業委員会の組織について、委員の過半を認定農業者とし、農地利用最適化推進委員への業務の委嘱を行うことができる等の制度上の改正が主なものですが、能力向上のための研修の機会の確保や情報の掌握など、委員会自体の強化を図ることも重要であると考えます。

 事務局も含め、今後どう対応する方向なのか、農林水産大臣にお伺いします。

 最後に、厚生連についてお伺いします。

 本改正案によると、病院等を設置する厚生連について、その選択により、社会医療法人に組織変更できる規定を置くとしています。

 確かに、社会医療法人の場合、非課税措置を受けられることになりますが、救急医療や僻地医療などの不採算医療を担うことが社会医療法人の要件であり、このことは毎年の監査報告で認定されることになります。条件を満たせない場合は、当然一般の医療法人となり、一括課税の対象となることから、決してハードルは低くないと考えます。

 必要な場合には地方公共団体等からの適切な支援を受け、医療サービスを安定的に提供すべきであると考えますが、社会医療法人移行の必要性について農林水産大臣の見解をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 稲津久議員にお答えをいたします。

 農業の成長産業化や農家所得の向上との関係についてお尋ねがありました。

 安倍内閣では、農業の成長産業化を図るため、農地集積バンクの創設、輸出促進や六次産業化の推進など、農政全般にわたる抜本的な改革を進め、さらに、今般、農協、農業委員会、農業生産法人の三つの改革を一体的に行うことといたしました。

 特に、農協改革については、農協システム全体の見直しを行い、これにより、意欲ある担い手と地域農協が力を合わせ、創意工夫を発揮して、企業と連携した加工品の開発、地域ブランドの確立、新たな需要を開拓するための輸出への取り組みなど自由な経済活動を行うことにより、農業者の所得向上に全力投球できるようにしていきます。

 こうした改革を進め、消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていけば、十分開花していなかった潜在力が引き出されて農家の所得もふえ、若者がみずからの情熱で新たな地平を切り開き、強い農業と美しく活力ある農村を実現できるようになっていくと確信しています。

 農協が農村地域において果たしている役割についてお尋ねがありました。

 我が国には、自立自助を基本としながら、誰かが困っていればみんなでこれを助けるという共助の精神が生きています。

 農協は、こうした助け合いの理念のもとに設立された農業者の協同組合であり、農業者が農産物の販売や生産資材の購入などを共同で行うことで農業者がメリットを受けるのがその中心的な役割です。

 一方、実際上、地域のインフラとしての側面を持っているのも事実です。

 このため、今回の法案では、組合員でない地域住民に対しても円滑にサービスを提供していく上で必要な場合には、農協の選択により、組織の一部を株式会社や生協に転換したりできるようにすることとしております。

 員外利用や准組合員制度の見直しについてお尋ねがありました。

 農協はあくまで農業者の協同組織であり、正組合員である農業者のメリット拡大を最優先させるべきと考えております。

 農協には、一定の組合員以外の利用があり、また、准組合員が正組合員を上回っているところもありますが、それによって正組合員である農業者へのサービスがおろそかになってはならないと考えます。

 一方で、農協は、過疎化、高齢化等が進行する農村社会において、地域のインフラとしての側面を持っているのも事実です。

 こうしたことを踏まえ、今回の法案では、准組合員の利用規制について、五年間、正組合員と准組合員ごとの利用量や地域におけるサービスの状況を把握し、現場の実態を踏まえ、今回の農協改革の成果も見きわめた上で、結論を得ることとしているところです。

 改正後の監査のあり方についてのお尋ねがありました。

 今回の改正では、全中監査の義務づけの廃止により、地域農協の役員が従来以上に経営者としての責任を自覚し、農家所得の向上に創意工夫して取り組むことを期待するものです。

 これにより、会計監査以外のいわゆる業務監査については一般の企業等と同様に任意となり、必要な場合には、地域農協がそれぞれのニーズに応じて自由に選ぶことになります。

 また、公認会計士による会計監査への移行に当たっては、政府として、地域農協の実質的な負担が増加することがないよう、円滑な移行に向けて適切な配慮をしていくこととしております。

 農業委員会の建議についてお尋ねがありました。

 今回の改正では、農業委員会の委員の選出を公選制から市町村長の選任制に改め、地域の担い手がリードし、耕作放棄地の解消、農地の集積を一層加速することといたしました。

 その際、農業委員会が農地利用の最適化に集中できるよう、建議を法定業務から削除することとしています。

 また、農地に関する制度、施策を現場の実態に即したものとなるよう、農業委員会が必要と考える場合には、具体的な改善意見を提出しなければならないこととしました。

 これらの改正により、若者が自分たちの情熱や能力によって新しい地平を切り開いていけるようにしていきたいと考えています。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 稲津議員の御質問にお答えいたします。

 今回の政府の農協改革案と攻めの農政との関係についてのお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、農業を成長産業とし、地方創生の核としていくため、農林水産業・地域の活力創造プランに基づき、六次産業化による高付加価値化、海外マーケットも視野に入れた需要の開拓、農地集積バンクによる担い手農業者への農地集積などを柱とする農政改革を進めてきたところであります。

 こうした農政改革が成果を上げるためには、農業者を初めとする経済主体が、政策も活用しながら自由に経営を展開できる環境を整えていくことが必要不可欠であります。

 地域農協は、農業者が自律的に設立した協同組織であり、農業者にとって最も身近な経済主体であります。ここが、地域の農業者と力を合わせて、農産物の有利販売等に創意工夫を生かして積極的に取り組めば、農業を成長産業にしていく可能性は十分あると考えております。

 このため、今回の改革は、地方分権の発想に立ち、地域農協が、それぞれの地域の特性を生かして創意工夫しながら自由に経済活動を行い、農産物の有利販売など、農業者の所得向上に全力投球できるようにすること、連合会や中央会は地域農協の自由な経済活動を適切にサポートしていくことを基本的な考え方としております。

 こうした農協改革と政策の見直しとが連動することによって、農業の成長産業化の道筋がつくものと考えております。

 今回の政府案と攻めの農政の中で取り組んでいる各種政策との関係についてのお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、農業を成長産業とし、地方創生の核としていくため、農林水産業・地域の活力創造プランに基づき、需要フロンティアの拡大、需要と供給をつなぐバリューチェーンの構築、生産現場の強化を産業政策の柱とする農政改革を進めております。

 需要フロンティアを拡大するには、高機能食品や薬用作物などの新たな国内ニーズに対応し、また、輸出を拡大していく必要がありますし、バリューチェーンを構築するためには、販売、加工への進出などの六次産業化を進めていく必要があります。

 また、生産現場を強化するには、担い手の育成、確保、担い手を軸とした地域農業を確立していく必要があります。

 こうした政策が成果を上げるためには、経済主体が、政策の方向性を共有し、政策も活用しながら、積極的に経済活動を展開していくことが必要不可欠です。

 このため、今般の農協改革では、地域農協が、地域農業の担い手の意向を踏まえて、六次産業化や輸出拡大、担い手の育成、確保などに積極的に取り組める環境を整備することとしております。

 一般社団法人に移行後の全国中央会の業務についてのお尋ねがありました。

 今回の農協改革により、全国中央会は、従来の特別認可法人から自律的な組織である一般社団法人に移行することとなっており、強制力のある業務はできなくなります。

 全国中央会の一般社団法人への移行に当たっては、社員である組合の意見を代表すること、社員である組合相互間の総合調整を行うことを主たる目的とすることが組織変更の際の要件とされていますが、強制力のない業務であれば、従たる目的として行うことは可能であります。

 農業委員の能力向上についてのお尋ねがありました。

 今般の法案では、農業委員会が、その主たる使命である農地利用の最適化をよりよく果たせるよう、農業委員の選出方法を公選制から市町村長の選任制に改めるなどの改正を行うこととしております。

 また、農業委員会の業務を支援する組織として、全国及び各都道府県に一つずつ農業委員会ネットワーク機構を整備し、本機構が農業委員に対する講習や研修を行うこととしているほか、さらに事務局についても、農業委員会は、専任の職員の配置及び養成その他の措置を講じ、知識及び経験を有する職員の確保及び資質の向上を図るように努めなければならないものとし、この場合、市町村は、必要な協力をするように努めなければならないことを明記いたしました。

 これらを踏まえ、各農業委員会の強化を図ることができるよう、国としても、農業委員会や農業委員会ネットワーク機構に対して必要な支援を行っていくこととしております。

 厚生連の社会医療法人移行の必要性についてのお尋ねがありました。

 厚生連は、農村地域における医療の担い手として、重要な役割を果たしてきております。今後、厚生連が地域に必要な医療サービスを提供していく上で、地域によっては農協法上の員外利用規制が制約となる場合も考えられることから、今回の農協改革法案では、社会医療法人への組織変更ができるように手当てをしております。

 社会医療法人に組織変更するかどうかは、あくまで厚生連の選択であり、各厚生連において適切に判断していただきたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 畠山和也君。

    〔畠山和也君登壇〕

畠山和也君 私は、日本共産党を代表し、農協法等の一部改正案について質問いたします。(拍手)

 総理は、施政方針演説で、農業人口の減少や高齢化といった農家の現状を指摘し、強い農業をつくる、農家の所得をふやすために農政の大改革が必要だと述べました。しかし、なぜ農家が苦しんでいるかの原因や、本来国が責任を果たすべき国民への食料の安定供給についての言及は、全くありませんでした。

 日本の農業は、工業製品の輸出拡大を進めて多国籍大企業の利益を優先する歴代政権のもと、農産物の輸入自由化が推進され、国内農産物の価格低下が押しつけられてきました。その結果、日本は世界有数の農産物輸入国となり、食料自給率も三九%まで低下しました。

 さらに、昨年の米価下落に追い打ちをかける交付金削減や、急激な円安による飼料高騰に消費税増税も重なり、規模の大小を問わず多くの農家が、このままでは農業を続けられないと悲鳴を上げました。

 まともに生計が立てられない状況に農業を追いやってきたのは、このような自民党農政ではありませんか。そうした認識と反省は総理にはありませんか。

 総理は、先日の米国議会での演説で、TPPには、単なる経済的利益を超えた、長期的な、安全保障上の大きな意義があると述べました。

 農家がこれだけ苦しんでいるときに、関税撤廃が原則のTPPを結び、どうして農家の所得をふやすことになるのですか。総理の言う安全保障上の意義とは何か、具体的にお答えください。

 また、総理は、通商に関する権限を持つ米国議会に向かって、TPPを一緒になし遂げようと呼びかけた後、農協改革について触れています。それはなぜですか。農協がTPPに反対しているからなのですか。

 総理は、ガット農業交渉のころ農業の開放に反対の立場をとった自身の行為を、血気盛んな若手議員だったと述べました。

 ところが、ウルグアイ・ラウンド合意を受け入れた細川内閣に対して、当時、自民党はこの本会議場で、米について、ミニマムアクセスの受け入れで輸入量が年々拡大されることになれば、全国の稲作農家及び畜産・畑作農家全てが崩壊に向かって進むと批判しました。これは間違いだったと言うのですか。

 オバマ大統領は、TPP早期妥結の重要性について、我々がルールをつくらなければ中国がアジアでルールを確立してしまうと述べました。軍事的にも経済的にもアジアでの影響力を強めたいアメリカのために、なぜ日本の食料主権、経済主権を脅かすTPPを推し進めなければならないのですか。答弁を求めます。

 日本の農業に必要なことは、TPP受け入れと一体に家族経営と農協を潰す農協改革ではありません。農産物の輸入自由化路線を転換し、再生産可能な価格保障と所得補償で、日本の農家の多数を占める家族経営を支えていくことです。

 今も、多くの農家が必死に農地を守り、農村を守っています。それができたのは、戦後の民主的改革の中で、営農と生活を守るためにつくられた農業協同組合をよりどころに、協同の力で家族経営の農家が農業生産を担ってきたからです。

 日本の農協は、国際協同組合同盟、ICAからも、六十年にわたり日本経済におけるビジネスモデルの多様化に多大な貢献を果たしてきたと高く評価されています。

 政府自身、国際協同組合年の二〇一二年に、協同組合の価値と原則の尊重を掲げていたではありませんか。

 今必要なことは、こうした協同組合の価値と原則を最大限尊重し、地域における協同の力を発揮できる環境を整備することではありませんか。政府自身も価値と原則を尊重するとした協同組合の仕組みをどのように総理は認識しているのですか。

 法案では、現行法第八条の、組合の事業が営利目的であってはならないとの規定を削除します。なぜ、株式会社とは異なる協同組合の性格を根本的に変えてしまうようなことをするのですか。明確にお答えください。

 全中監査を廃止することも重大です。

 約七百の総合農協は、農産物の販売や購買といった経済事業と、信用、共済事業をあわせて行っています。全中監査で会計監査と業務監査を一体に監査してきたからこそ、農協経営の健全性が保たれ、農家の支えとなってきたと政府も認めてきたはずです。

 これを廃止し、営利企業のための公認会計士監査となれば、不採算部門の経済事業はどうなるのですか。結局、切り捨てられることになるのではありませんか。

 そもそも、総合農協から信用と共済を分離せよと要求しているのはアメリカの経済界です。その要求に従って、全中監査の廃止も一つのてことして、農協系金融をアメリカ企業に開放しようということではありませんか。

 次に、農協の役員構成についてです。

 法案では、理事の過半を、認定農業者か、法人の経営に関して実践的な能力を有する者としています。

 今でも、株式会社は農地を借りて認定農業者になることができます。それに加えて法人経営に関する者が理事になれるとすれば、本業が農業とは無関係な者が理事の過半数を占めることも可能となるのではありませんか。本来地域に根差したはずの農協を営利最優先の経営に変えようというのですか。

 准組合員の利用規制について、五年間の調査結果を踏まえ結論を得るとしましたが、規制改革会議などからは、規制すべきとの要求が強く出されています。しかし、准組合員は農協事業の日常的な利用者です。規制が必要な不都合があるのですか。調査結果を踏まえ、利用規制を行わないという判断もあるのですか。明確な答弁を求めます。

 農業委員会の公選制を廃止して市町村長の任命制とすることも問題です。

 農業委員会は、地域の農地の守り手として、区域内に住所があり、一定の農地につき耕作の業務を営む者とされてきました。それをなぜ、その地域に住所がなくても、農業に従事していなくても農業委員に任命できるようにするのですか。それでどうして農地の守り手としての職責が果たせるというのですか。

 また、法案は、農地を取得できる農業生産法人の要件を大幅に緩和し、構成員の半分未満まで農業者以外でもよいとし、役員のうち一人でも農作業に従事していれば要件を満たすとしています。なぜこうした要件緩和を行うのですか。

 規制改革会議などの議論では、農地は集落のものという考えを乗り越えるべきと、あけすけに語られています。

 農地は、地域の農家が自主的に管理し、土地改良を重ねて生産力を上げ、代々引き継いできたものです。愛着ある農地を営利企業の新たなもうけのために差し出せとばかりに、農業委員会を変え、農業生産法人の要件緩和を進めるやり方で、食料の安定供給を保障し、日本の美しい農村の風景を守ることができるのでしょうか。明確にお答えください。

 今、世界では、規模拡大、企業参入という農業の効率化ではなく、家族農業の持つ多様な価値とそれを支える協同組合の大切さに改めて注目が集まっています。

 総理は、予算委員会での私の質問に、家族経営を大切にしてきたのは自民党という自負があると強弁しました。その言葉が真実であるなら、この法案を撤回し、家族経営を基本にした多様な農家や生産組織などが展望を持って生産できる環境をつくるべきです。

 何より、日本農業を一層窮地に追いやるTPP交渉から直ちに撤退すべきであることを強調し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 畠山和也議員にお答えをいたします。

 これまでの農政の総括についてお尋ねがありました。

 これまで、農政においては、その時々の課題に対応するため、米の生産調整を初めさまざまな施策を展開し、国民への食料の安定供給等に努めてきましたが、農産物価格の低下等による農業所得の減少、担い手の減少と高齢化の進展、耕作放棄地の増大など、現在の我が国の農業、農村をめぐる状況は厳しいものとなっております。

 その要因として、食生活が変化する中で、米のように需要が減少する作物の生産転換が円滑に進まなかったこと、水田農業などにおける担い手への農地集積のおくれ、農産物価格が低迷する中で、高付加価値化が実現できなかったことなどの事情があったと認識しております。

 こうした状況を一つ一つ克服し、我が国の農業の活性化を図っていくことは待ったなしの課題であり、安倍内閣では農政改革を進めているところであります。

 TPPの意義についてお尋ねがありました。

 我が国の同盟国である米国や自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々とともに新たなルールをつくり上げ、こうした国々と経済的相互依存関係を深めていくことは、我が国の安全保障にも、また、この地域の安定にも資する戦略的意義を有しています。

 また、成長著しいアジア太平洋地域の市場を取り込むことで、六次産業化など抜本的な農政改革と相まって、農業にとっても発展の機会が広がると考えています。

 いずれにせよ、農産物について、衆議院、参議院の農林水産委員会の決議をしっかりと受けとめ、国益にかなう最善の道を追求してまいります。

 米国議会演説においてTPPの次に農協改革に触れた理由についてお尋ねがありました。

 御指摘の、TPPに続く演説部分は、日本の農業を守っていくためには、今、農政の大改革に踏み出さなければならない、その決意を申し上げたものであり、農協改革だけを論じたものではありません。さらに、コーポレートガバナンスの強化、医療、エネルギー分野での岩盤規制打破、女性が輝く社会づくりなど、強い日本の実現に向かって、我が国は諸改革を大胆に進めていかなければならないとの考えを示したものであります。

 したがって、農協がTPPに反対しているからといった御指摘は全く当たりません。

 ガット・ウルグアイ・ラウンド合意時の自民党の対応についてお尋ねがありました。

 ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉当時、私は、日本の農業を守りたいとの思いから、国会前で農業の開放に反対する自民党の抗議活動に加わりました。

 一方で、農業をめぐる現状は、農業従事者は高齢化し、農業生産額は減少するなど、その活性化は待ったなしの課題であり、今、日本の農業は変わらなければなりません。これはTPPその他の国際交渉いかんにかかわらないことであり、安倍内閣では農政改革を進めているところです。

 TPP交渉推進の目的についてお尋ねがありました。

 TPPは、成長著しいアジア太平洋地域に人、物、資本が自由に行き交う大きな一つの経済圏を構築する野心的な試みであって、地域の発展にも、そして日本の成長、発展にも大きく寄与すると確信しています。

 我が国としては、こうした観点から、国益にかなう最善の道を追求しており、米軍のためにTPPを推進しているという御指摘は当たりません。

 協同組合の価値と原則の尊重についてお尋ねがありました。

 今回の農協改革は、農業者の協同組合である地域農協がその価値を最大限発揮できるよう、その自己改革の枠組みを明確にするものです。これは、国際協同組合同盟の声明にある協同組合原則にも合致するものと考えております。

 現行農協法第八条の削除についてお尋ねがありました。

 第八条の「営利を目的としてその事業を行つてはならない。」との規定は、農協が、農産物を有利に販売し、利益を上げることを禁止しているとの誤解を招いていることから、今回削除することとします。

 なお、この規定を削除しても、出資配当の上限があり、株式会社のように出資配当を目的として事業を行うことはできないので、農協の性格が変わるとの指摘は、これも当たりません。

 全中監査の廃止についてお尋ねがありました。

 今回の改正において、全中監査の義務づけを廃止し、公認会計士監査を義務づけました。これは、農協が今後も引き続き信用事業を安定的に行うに当たり、他の金融機関とのイコールフッティングを図るためのものであります。

 したがって、今回の改革が農協系金融をアメリカ企業に開放するためのものとの指摘は、全く当てはまりません。

 農協の理事要件についてお尋ねがありました。

 地域農協が、農業者と力を合わせ、創意工夫しながら農業所得の増大に向けて事業運営を行っていくためには、農業に積極的に取り組んでいる担い手農業者の意見が農協運営に的確に反映されることが重要です。

 こうした観点から、今回の農協改革では、地域農協の理事の過半数は原則として認定農業者などとすることを求めるものであり、営利最優先の経営へ変えることを目的としているといった御指摘は、これも全く当たりません。

 准組合員の利用規制についてお尋ねがありました。

 農協はあくまで農業者の協同組織であり、准組合員へのサービスのため、正組合員である農業者へのサービスがおろそかになってはなりません。

 一方で、農協は、過疎化、高齢化等が進行する農村社会において、実際上、地域のインフラとしての側面を持っているのも事実です。

 こうしたことを踏まえ、今回の法案では、准組合員の利用規制について、五年間、正組合員と准組合員ごとの利用量や地域におけるサービスの状況を把握し、今回の農協改革の成果も見きわめた上で、結論を得ることとしたものであります。

 農業委員の選任のあり方についてお尋ねがありました。

 農業委員会は、担い手への農地集積、集約化等を積極的に進めていくことが期待されています。

 一方で、その活動状況は地域によってさまざまであり、農家への働きかけが形式的など、必ずしも農家に評価されているとは言いがたい状況も見られます。

 こうしたことを踏まえ、農業委員会の委員に適切な人物が確実に就任するようにするため、公選制から市町村長の選任制に改めることとしているところです。これにより、若者が自分たちの情熱や能力によって新しい地平を切り開いていけるようにしていきたいと考えています。

 農業生産法人の要件緩和についてお尋ねがありました。

 農業の成長産業化を図るためには、意欲のある担い手が活躍しやすい環境を整備していくことが重要です。

 農地を所有できる農業生産法人については、役員や議決権についての現行の要件がネックとなって、六次産業化など経営の発展に必ずしも対応できない面があります。

 このため、今回の改革では、農業生産法人が六次産業化を行いやすくするため、役員要件及び議決権要件の見直しを行うこととしております。

 農業委員会と農業生産法人の改革の意義についてのお尋ねがありました。

 今回の改革は、農業委員会による担い手への農地利用の集積、集約化等の推進を通じ、生産コストの引き下げや農業所得の増大にもつながるものであります。また、農業生産法人が六次産業化に取り組みやすくなり、法人の経営発展が図られていくものであります。

 このように、今回の改革は、農業の成長産業化を推進していくものであり、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村の実現に資するものであると考えております。

 以上であります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       農林水産大臣   林  芳正君

       国務大臣     甘利  明君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

       農林水産副大臣  小泉 昭男君


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