衆議院

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第24号 平成27年5月15日(金曜日)

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平成二十七年五月十五日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十七号

  平成二十七年五月十五日

    午後一時開議

 第一 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 農林水産省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 農林水産省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 安倍内閣総理大臣の米国公式訪問に関する報告及び質疑

 株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法案(内閣提出)及び郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、防衛省設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。安全保障委員長北村誠吾君。

    ―――――――――――――

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔北村誠吾君登壇〕

北村誠吾君 ただいま議題となりました法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、防衛省の所掌事務をより効果的かつ効率的に遂行し得る体制を整備するため、防衛装備庁の新設、内部部局の所掌事務に関する規定の整備、自衛官定数の変更、航空自衛隊の航空総隊の改編等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る四月十七日本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、同日中谷防衛大臣から提案理由の説明を聴取した後、二十三日から質疑に入り、同日参考人から意見を聴取いたしました。

 五月十四日に質疑を終局したところ、本案に対し、民主党・無所属クラブから、局長等と幕僚長との関係に関する防衛省設置法第十二条の改正について、防衛装備庁長官を加えることを除き、削除することなどを内容とする修正案が提出され、趣旨説明を聴取いたしました。

 次いで、討論の後、採決を行いました結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 農林水産省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第二、農林水産省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長江藤拓君。

    ―――――――――――――

 農林水産省設置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔江藤拓君登壇〕

江藤拓君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、農林水産業の成長産業化に向けて、地域における創意工夫を生かした取り組みを支援するため、農林水産省の地方組織である地方農政局及び北海道農政事務所の見直しを行おうとするものであります。

 本案は、去る五月十二日本委員会に付託され、翌十三日林農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、昨十四日質疑を行いました。質疑終局後、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 内閣総理大臣の発言(米国公式訪問に関する報告)

議長(大島理森君) 内閣総理大臣から、米国公式訪問に関する報告について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣安倍晋三君。

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 私は、四月二十六日から五月三日まで、日本の総理大臣として九年ぶりに米国を公式訪問しました。その概要を御報告いたします。

 ワシントンDCでは、一連の公式行事に出席をし、オバマ大統領と首脳会談を行いました。

 会談では、二国間の取り組みに関して、新ガイドラインのもと、同盟の抑止力、対処力が一層強化されることを確認するとともに、米軍再編を着実に進めていくことで一致しました。

 また、TPPにおける日米間の交渉の前進を歓迎し、日米が交渉全体をリードし、早期妥結に導いていくことで一致しました。

 地域情勢については、日米が中核となり、法の支配に基づく自由で開かれたアジア太平洋地域を維持発展させていくことで一致いたしました。

 また、いかなる一方的な現状変更の試みにも反対することを確認しました。

 さらに、北朝鮮、ウクライナ情勢、イラン等への対応でも連携していくことを改めて確認いたしました。

 気候変動、感染症対策といったグローバルな課題についても連携していくことで一致しました。

 米国議会では、日本の総理大臣として史上初めて、上下両院合同会議で演説を行いました。

 演説では、かつて戦火を交えた日米両国が、戦後、和解を達成して、今や、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値に基づく揺るぎない同盟で結ばれていること、アジア太平洋の平和と繁栄を確保していく上で、日米同盟が今後とも主導的役割を果たしていくこと、二十一世紀において世界が直面するテロ、感染症、気候変動などの諸課題に対し、日米両国が希望の同盟として手を携えて取り組み、世界をよりよい場所にしていくことを内外にアピールすることができたと考えています。

 今回の訪米では、ワシントンDCに加えて、ボストン、サンフランシスコ、ロサンゼルスを訪問しました。

 それぞれの都市において、学生、有識者、企業関係者など幅広い層との交流を行い、政治、経済、文化、教育など広範な分野における日米交流の進展を確認するとともに、将来に向けて一層の協力を推進していくことで一致いたしました。

 また、日米間の重要な紐帯である日系米国人と親しく交流し、関係を一層強化いたしました。

 このように、今回の訪問は非常に有意義な訪問になったと考えています。

 今後とも、オバマ大統領と協力し、日米両国の希望の同盟のもと、アジア太平洋、そして世界の平和と繁栄のために、より一層の貢献を行っていく所存であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 内閣総理大臣の発言(米国公式訪問に関する報告)に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。木原誠二君。

    〔木原誠二君登壇〕

木原誠二君 自由民主党の木原誠二です。

 自由民主党を代表して、先般の安倍総理の米国公式訪問につき、総理に質問をいたします。(拍手)

 今回の総理訪米は、日本国民の一人として、大変誇らしいものでありました。

 思い起こせば、第二次安倍内閣が発足して最初の総理の訪米は二年前の二〇一三年二月、前政権の不安定で、そして稚拙な外交によって損なわれた日米の信頼関係を結び直す大切な第一歩でありました。

 しかし、晩さん会も、そして二人並んでの共同記者会見もなく、オバマ大統領の対応は、ひいき目に見ても決してよいものではありませんでした。国際社会における日本のプレゼンス、日本への信頼感が、三年三カ月の間にそこまで落ち込んでしまったかと落胆を禁じ得ませんでした。

 あれから二年余り。今回のアメリカ側の待遇は、目をみはるものがありました。ボストンでのケリー国務長官私邸での夕食会に始まり、ワシントンでは、オバマ大統領みずからリンカーン記念堂を案内され、日本の総理大臣として初の上下両院合同でのスピーチ、ベイナー下院議長初め何人もの議員がハンカチで涙を拭っていたと聞いております。オバマ大統領主催の晩さん会では、大統領が俳句まで披露をされました。

 わずか二年。積極的平和主義の旗のもとで、地球儀を俯瞰する外交を展開し、欧州、ASEAN、インド、中南米、中近東、アフリカと信頼関係を築き、世界における日本のプレゼンスを引き上げ、日米間の信頼をこつこつと再構築してきた安倍外交のまさに勝利でありました。

 総理は、オバマ大統領、アメリカが見せたこの変化、それはとりもなおさず日米同盟の強化でありますが、二年前との違いをどう感じておられるでしょうか。また、その理由は何だとお考えでしょうか。まず初めにお伺いいたします。

 安倍外交の勝利とともに、この二年間の変化を導いたものに中国の存在があります。

 再び二年前ですが、オバマ大統領がカリフォルニアに招いて、二日間にわたってネクタイを外して会談し、親密さを世界にアピールした相手がいました。中国の習近平国家主席であります。

 あれから二年。空気は一変しています。一つのきっかけは、中国による一方的な防空識別圏の宣言でした。国際社会は、中国の不透明な軍事費拡大、我が国の尖閣諸島に対する東シナ海での挑発的行動、フィリピンやベトナムなどを巻き込んだ南シナ海での一方的な振る舞いに対し、不安を感じています。また、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の存在もあります。

 アメリカが相対的に力を低下させ、各国の力が拮抗し始めた国際社会にあって、こうした国際社会の不安に真っ正面から応えてきたのが、自由、民主主義、法の支配、基本的人権といった普遍的価値を粘り強く、そして毅然と訴えてきた安倍外交であります。

 総理は、今回の訪米で、アメリカの中国に対する見方の変化をどのように感じられたか、また、ガイドライン見直しを初め日米同盟を強化する中で、今後、安倍政権として、アジア太平洋の地域の平和と安定に向けて、とりわけ台頭する中国をいかにルールに基づく国際秩序に取り込んでいかれるおつもりか、総理の御決意を伺います。

 安全保障と並んで、アジア太平洋地域において重要なのが、この地域に、フェアでダイナミックで、そして持続可能な市場をつくり上げていくTPPであります。

 そのTPPについて、今回の首脳会談において、早期妥結に向け、引き続き日米両国が交渉をリードしていくことで一致したと承知をしております。

 そして、総理は、議会演説においても、日米間の交渉について、出口はすぐそこに見えていると力強く述べられており、総理のTPP交渉におけるリーダーシップを高く評価するものであります。

 米国議会のTPAをめぐる審議状況など不透明な面は多々ありますが、改めて、日米交渉の見通し及びTPPの早期妥結へ向けた総理の意気込みをお伺いいたします。

 さて、戦後の日米の歴史は、戦火を交えた両国の和解の歴史でもありました。総理は、ボストンでケネディ・ライブラリーを訪れ、日本との戦いで負傷したケネディ大統領が、アメリカの大統領として初めて日本を訪問しようとしたことに感銘を受けたと述べられました。

 また、総理は、今回の訪米で、ホロコースト記念館など歴史にまつわる記念碑を訪れるなど、歴史に真摯に向き合い、そして乗り越える姿勢を示され、米国内外で高い評価を受けられました。

 訪米を終え、苛烈な時代を乗り越え、和解をするに至った日米の歴史を改めてどう評価されておられますか。

 また、折しも、本年は戦後七十周年の年でもあります。この大切な年をどう迎え、どのように向き合っていかれるか、お考えをお伺いいたします。

 最後に、アメリカを含む国際社会への発信力強化についてお伺いいたします。

 今回、総理が上下両院でアメリカ国民に対して、通訳を介さず、みずから英語で語りかけたことは、極めて有意義でありました。

 また、余り報道されていませんが、総理が今回の訪米で、ジョージタウン大学やマサチューセッツ工科大学というアメリカを代表する大学に日本を学ぶ講座を立ち上げたことは、大きな成果でありました。日系人コミュニティーとの交流も同様であります。

 情報社会にあって、多種多様な手段で絶え間なく日本を発信する、総理は、こうした国際社会への発信力の強化と日本のプレゼンス強化についてどのようにお考えですか、お尋ねいたします。

 かつて我が国は、当時の列強の一つであるイギリスと日英同盟を結び、日露戦争などの危機を乗り越えました。しかし、その後、日英同盟は解消されるに及び、結果として、さきの大戦での悲劇へと進むこととなりました。

 こうした歴史の教訓を思うとき、我が国外交、安全保障の基軸である日米同盟を強化し、両国が希望の同盟として国際社会に責任を果たしていくことの重要性を改めて内外に示した、実に意義深い今回の訪米でありました。

 昨夕閣議決定された平和安全法制が国会に提出され、今後、国会における議論が始まります。我が国そして国際社会の平和と安定のために何をなすべきか、安倍総理訪米の大きな成果を踏まえながら、国民の理解を得られるよう、真摯に議論してまいりたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 木原誠二議員にお答えいたします。

 二年前の訪米と今回の訪米の違いについてお尋ねがありました。

 二年前の訪米は、安倍内閣が発足して一カ月余りの時期に行われ、オバマ大統領との会談を通じ、それまで失われていた日米の信頼のきずなを取り戻し、日米同盟の復活を内外に宣言したという大きな成果を上げました。

 この会談を出発点に、この後の二年間で、オバマ大統領との個人的な信頼関係をさらに深めてきました。そして、日米両国は、安全保障、TPPといった二国間の主要な課題を大きく進展させるとともに、地域情勢やグローバルな課題への対応においても緊密に連携し、日米同盟を着実に強化してきました。

 このような二年間の日米同盟の強化の積み重ねの集大成が、今回の米国公式訪問であります。大きな成果を上げた日米首脳会談や、日本の総理として初めてとなった米議会の上下両院合同会議での演説を通じ、まさに、これから日米の新しい時代がスタートしたと思ってもらえるような訪問になったと考えています。

 米国の対中観と我が国の対中政策についてお尋ねがありました。

 台頭する中国とどう向き合うかにつき、日米間で率直な意見交換を行うことは重要であり、さきの日米首脳会談においても、アジアの地域情勢について議論する中で、中国についても意見交換を行いました。

 米国は、平和的で豊かで安定的で、国際社会の責任ある一員として貢献する中国の台頭を歓迎するが、同時に、中国によるいかなる一方的な現状変更の試みにも反対するとの立場であり、これは従来から一貫していると認識しています。

 我が国も、こうした立場を米国と共有しており、さきの日米首脳会談で確認したとおり、日米が中核となり、アジア太平洋を法の支配に基づく自由で開かれた地域として維持発展させ、そこに中国を迎え入れていくべく、引き続き各国と連携していく考えであります。

 先般、ジャカルタでの日中首脳会談においては、習近平主席との間で、戦略的互恵関係の推進により地域や世界の安定と繁栄のために貢献していくことの必要性について一致いたしました。

 今後とも、日中間の戦略的互恵関係の推進に努めるとともに、米国と連携しつつ、アジア太平洋地域の平和と繁栄の維持発展に取り組んでいく決意であります。

 TPPについてお尋ねがありました。

 TPPは、成長著しいアジア太平洋に、人、物、資本が自由に行き交う大きな一つの経済圏を構築する野心的な試みです。

 今回のオバマ大統領との首脳会談の際にも、日米間の残された課題について大きな進展があったことを歓迎し、TPP交渉の最終局面を主導するために、早期かつ成功裏の妥結に向けてともに取り組むことを確認しました。引き続き、TPP協定の早期妥結に向けて、日米両国がリーダーシップを発揮して取り組んでまいります。

 戦後の日米の歴史の評価と戦後七十年についてお尋ねがありました。

 かつて戦火を交えた日米両国は、戦後、和解を達成し、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値のきずなで結ばれる強固な同盟国となり、七十年にわたって、ともにアジア太平洋や世界の平和と安定に貢献してきたと高く評価しています。

 安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えであります。戦後七十年の談話は、それを前提として作成するものであります。

 その上で、新たな談話の内容については、さきの大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後、日本として、アジア太平洋地域や世界のためにさらにどのような貢献を果たしていくべきか、次の八十年、九十年、百年に向けて、日本はどのような国になることを目指しているのかといった点について、世界に発信できるようなものを英知を結集して考え、書き込んでいく考えであります。

 国際社会への発信力の強化と日本のプレゼンス強化についてお尋ねがありました。

 世界の情報量が飛躍的に増大し、情報伝達のあり方もますます多様化する中で、日本の立場や日本の魅力について国際社会の理解を増進するためには、対外発信を抜本的に強化していくことが必要です。

 私自身、あらゆる機会に対外的な発信に努め、訪米の際にも、米国議会における演説のほか、ボストン、サンフランシスコ、ロサンゼルスにおいて大学や企業への訪問等を積極的に行い、日本の考えをアピールしました。

 各地の代表的な大学に日本を学ぶ講座を立ち上げることや、日系人コミュニティーとの交流なども最大限に活用しつつ、今後とも、戦略的かつ効果的な対外発信に努めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 近藤昭一君。

    〔近藤昭一君登壇〕

近藤昭一君 私は、民主党・無所属クラブを代表し、また、昨日、戦争法案とも言われる安保法制がわずか十数分で閣議決定されたことに不安を持つ多くの声を受けとめ、ただいま議題となりました安倍総理大臣の訪米報告について質問を行います。(拍手)

 今回の訪米で安倍総理は、日本の総理大臣としては初めて、米議会上下両院合同会議において演説をされました。演説では、日米関係を希望の同盟と呼び、アメリカと日本、力を合わせ、世界をもっとはるかによい場所にしていこうと述べ、日米関係の蜜月ぶりを強くアピールしようとする意図のものでした。

 しかしながら、その内容は全般的に前のめりの演説内容であった感が否めません。とりわけ、今回の安全保障法制について、戦後初めての大改革です、この夏までに成就させますと約束をしたことは、前のめり、上滑りの最たるものであります。

 言うまでもなく、その時点においては、安全保障法制について閣議決定もされておらず、条文の内容も明らかにされておりませんでした。我が国の国会に対して法案の内容についてきちんとした説明がなされていないにもかかわらず、外国の議会においてその成立について約束するなど、言語道断、見当違いも甚だしいものではありませんか。

 安倍総理の視線は一体どこを向いておられるのか。我が国の国権の最高機関である国会を飛び越えて、遠く海の外を向いておられるようにしか思えません。日本の総理大臣としてののりを完全に越えてしまったと言わざるを得ません。

 なぜ外国の議会でこのような約束をされたのか。安倍総理は、三回の選挙で公約として約束してきたとおっしゃいますが、私が選挙を通じていただいた声は、その方向を危ぶむ声であり、世論調査においてもその懸念があらわされています。その経緯を含め、きちんとした説明を求めます。

 また、総理は、演説において、国際協調主義に基づく積極的平和主義という言葉を用い、日本の将来を導く旗印になると言われました。しかしながら、総理の言われる積極的平和主義という言葉に、私を含め多くの国民は言い知れぬ違和感と不安を感じています。

 軍事力で威圧をし、紛争が起これば武力で対処するのではなく、紛争の原因をなくす最大の努力をしようとするのが日本国憲法の立場であります。飢餓、貧困、人権侵害、差別、環境破壊といった構造的暴力をなくし、平和的に生存する世界をつくり出すために積極的な役割を果たすことこそ、日本が行うべき具体的な真の平和主義であり、平和創造だと考えます。

 なお、演説では、歴史認識について、さきの大戦における痛切な反省を胸に歩みを刻み、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目を背けてはならないと述べる一方で、従来の村山談話や小泉談話等で用いられた侵略やおわびという文言については、結局用いられることはありませんでした。

 私は、苦しみを与えた事実を認識してそれを反省することと、当事者に向かってそれをおわびすることは異なることだと考えます。反省を胸に刻むだけでは、気持ちやメッセージは伝わりません。このことについての総理の御見解をお尋ねします。

 また、今夏に予定されている戦後七十周年談話においても同様に、侵略やおわびという言葉を使うおつもりはないのか、お尋ねをいたします。明快にお答えいただきたいと思います。

 さて、今回の訪米にて安倍総理は、日本国内にて議論や理解が十分に整っていない事柄について、米国に無責任な約束をし、過剰な期待を抱かせてしまったのではないかと危惧しております。

 そのさらなる例が、今回の総理訪米に先立ち合意された日米ガイドラインについてであります。新日米ガイドラインにおいては、日米両国は、アジア太平洋地域及びこれを超えた地域の平和、安全、安定のために主導的役割を果たすとされました。

 しかしながら、我が国の自衛隊は、装備や人員、予算等の点で、これらに対応できるだけの余力といったものを持ち合わせているのでありましょうか。PKOだけでも相当な負担となっている現状に加え、グローバルな他国軍支援など、全世界的に自衛隊の活動範囲を展開することは行うべきことなのでしょうか。また、果たして、現実的にどこまで可能なのでありましょうか。

 我が国の領土、領海を守る任務をおろそかにするわけにはまいりません。過剰な期待を米国に抱かせることは禁物だと考えますが、このことについて総理の見解をお伺いいたします。

 一方、日米関係を支える沖縄が直面する苦難について、総理はどれほどの決意を持って、今回の訪米で米国に実態を伝えようとしたのか、その姿勢に関して私は疑問を感じます。

 総理の御祖父であられる岸信介総理大臣は、五十八年前の訪米時において、沖縄返還問題について、米側に対し、すぐにでも返還してくれと国民感情を代表して強く主張したとみずから語っておられました。

 一方で、安倍総理は、今回の日米首脳会談において、沖縄における基地負担に苦しむ沖縄県民の感情を米国側にどこまで切実かつ真摯に説明をされたのでしょうか。今回の日米首脳会談において、沖縄の基地負担軽減について米側とどのようなやりとりがあったのか、普天間飛行場の五年以内の運用停止の件も含め、具体的に説明願います。

 核兵器不拡散条約、NPTに関する日米共同声明では、日本と米国は、核兵器のない世界の平和と安全の追求及びNPTへのコミットメントを再確認することが示されるとともに、広島及び長崎の被爆七十年において、我々は、核兵器の使用の壊滅的で非人道的な結末を思い起こすと明記されました。

 我が国は、唯一の被爆国として、核軍縮や不拡散について、米国とともに世界の先頭に立って取り組みを続けなければなりません。このことについて、改めて総理の決意をお尋ねいたします。

 今回発表された日米共同ビジョン声明では、かつての敵対国が不動の同盟国となり、和解の力を示す規範となっていると記されました。

 日米関係は、日本外交の基軸であり、今後もこれまで以上にますます深化、発展させていかなければなりません。ただし、今回の安倍総理の米国訪問では、軍事的協力の側面ばかりが強調された感が否めません。

 その一方で、かつて敵対または植民地支配の対象となったアジア諸国の中には、依然として、我が国と必ずしも良好な関係とは言いがたい面も残されています。日米共同ビジョン声明にあるように、世界に和解の力を示す模範となり得るのであれば、米国と同様に、これらアジア諸国とも不動の友好関係を築く必要があると私は考えますが、このことについて、最後に総理のお考えをお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 近藤議員にお答えをいたします。

 米議会での私の演説における平和安全法制の成立時期に関する発言内容についてお尋ねがありました。

 今般、米国上下両院の合同会議における演説で、平和安全法制の成立をこの夏までにと申し上げ、私の決意をお示ししました。

 これは初めて申し上げたものではなく、昨年来、記者会見や国会答弁の中で、今通常国会での成立を図るとの私の決意を繰り返し申し上げています。

 そもそも、平和安全法制の整備は、平成二十四年の総選挙以来、これまで三回の選挙で常に公約に掲げ、一貫して訴えてきた課題であります。

 特に、さきの総選挙では、昨年七月一日の閣議決定に基づき、法制を速やかに整備することを明確に公約として掲げ、国民の皆様の審判を受けました。

 法整備の方針を閣議決定した上で、選挙において速やかに整備することを公約した以上、選挙直後の今通常国会においてその実現を図ることは、当然のことであります。

 このため、昨年十二月二十四日、総選挙の結果を受けて発足した第三次安倍内閣の組閣に当たっての記者会見において、平和安全法制は、通常国会において成立を図る旨申し上げ、国民の皆様に私の決意をお示ししました。そして、本年二月の衆議院本会議においても、二度にわたり、今国会における成立を図る旨答弁をしております。

 米議会での演説においても、改めてこのような私の決意を申し上げたものであります。平和安全法制について、戦争法案とか無責任なレッテルを張るのではなく、中身のある議論をしていきたいと思います。

 米国議会での演説における歴史認識と戦後七十年の談話についてお尋ねがありました。

 米国議会での演説では、第二次世界大戦において犠牲となった米国の方々に対して哀悼の意を表し、戦後の日本が、さきの大戦に対する痛切な反省を胸に歩んできたこと、また、みずからの行いがアジア諸国に苦しみを与えた事実から目を背けてはならないことなどを明確に述べ、議場から満場の拍手をいただき、私の気持ちやメッセージは十分に伝わったと考えています。

 戦後七十年の談話については、安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えであります。戦後七十年の談話は、それを前提として作成するものであります。

 現在、二十一世紀構想懇談会において、歴史や政治に造詣の深い学者、言論界、ビジネス界など幅広い分野のさまざまな世代の方々に、二十一世紀の世界のあり方、その中で日本が果たすべき役割等について大いに議論していただいています。新たな談話については、同懇談会におけるさまざまな御意見を伺った上で検討してまいります。

 国際的な活動に係る自衛隊の能力についてお尋ねがありました。

 我が国の防衛力のあり方に関する指針である防衛計画の大綱において、アジア太平洋地域の安定化及びグローバルな安全保障環境の改善は、防衛力の果たすべき役割として位置づけられており、自衛隊はそのために必要な能力の整備を行ってきています。

 他方、実際に自衛隊を派遣するに当たっては、我が国の国益はもちろん、自衛隊の能力も踏まえて、我が国として主体的に判断することは当然のことであります。

 新ガイドラインにおいても、日米両国は、おのおのの判断に基づき、国際的な活動に参加する旨が明記されており、この点について、日米に認識のそごはありません。したがって、過剰な期待を米国に与えるとの御指摘は、全く当たりません。

 日米首脳会談における沖縄の負担軽減に関するやりとりについてお尋ねがありました。

 首脳会談においては、オバマ大統領に対し、沖縄県外でのオスプレイの訓練増加、嘉手納以南の土地の返還等、沖縄の負担軽減は日本政府の優先課題である、環境補足協定も早期に署名したい、引き続き、米側の協力を得ながら、日本政府として沖縄の負担軽減に全力で取り組んでいくとの考えを伝え、米国の協力を要請しました。

 普天間飛行場の辺野古移設については、先般の翁長知事との会談で承った辺野古移設に反対するとのお考えもオバマ大統領に話した上で、辺野古移設が唯一の解決策との政府の立場は揺るぎなく、沖縄の理解を得るべく対話を継続するとの考えを伝えました。

 普天間飛行場の五年以内の運用停止については、首脳会談の前日に行われた2プラス2会合において、岸田外務大臣からケリー国務長官に対し、日本政府の考えをお伝えした旨説明しました。

 これに対し、オバマ大統領から、沖縄の負担軽減について引き続き協力していく旨の発言がありました。

 核軍縮・不拡散に関する我が国の取り組みについてお尋ねがありました。

 先般の日米首脳会談に際しては、核兵器不拡散条約、NPTについて共同声明を発出し、核軍縮・不拡散分野における日米間の協力関係を確認しました。

 我が国は、世界で唯一の戦争被爆国として、米国とも協力しながら、核兵器のない世界の実現に向け、国際社会の取り組みを主導してまいる所存であります。

 アジア諸国との友好関係についてお尋ねがありました。

 私は、総理に就任して一年以内にASEAN十カ国を全て歴訪し、その年の年末には日・ASEAN特別首脳会議を東京で開催し、ASEAN各国との友好協力関係を発展させてきております。

 私は、中国、韓国との関係も改善したいと考えています。

 中国とは、昨年十一月のAPECでの首脳会談、去る四月のバンドン六十周年会議での習近平主席との二度目の首脳会談を通じ、戦略的互恵関係の考え方の上に関係が改善されてきています。

 韓国とは、三月に日中韓の外相会合が開催され、その直後に、シンガポールでリー・クアンユー元首相の国葬が開催された際、私から朴槿恵大統領に対し、日中韓三カ国のサミットにつなげていきたい旨お伝えしています。

 両国とも、隣国ゆえに難しい問題がありますが、だからこそ、前提条件をつけずに、首脳レベルでも率直に話し合うべきであり、私の対話のドアは常にオープンであります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 柿沢未途君。

    〔柿沢未途君登壇〕

柿沢未途君 安倍総理の訪米報告について御質問いたします。(拍手)

 日米関係は、世界において最も重要な二国間関係である、そして、それは他に例を見ない。かつてのマンスフィールド大使の言葉を再確認する総理訪米となりました。

 オバマ大統領との共同記者会見、そして、連邦議会における安倍総理のスピーチ、いろいろと内外のコメントはあるでしょうが、しかし、戦後七十年、アジアと世界のパワーバランスが大きく変動するこの時代の局面の中、日米両国が互いを不動の同盟国であると再確認できたことの意義は、私たちの立場からも、まずは率直に認めるべきものと思います。

 その上で、質問をさせていただきます。

 今回、日米防衛協力の指針、いわゆるガイドラインが十八年ぶりに改定をされました。安倍総理は、これを歴史的文書と呼びました。私もそうだと思います。

 安保法制に関して、よく切れ目のないと表現をされますが、日米同盟のグローバルな性質を強調して、米軍、自衛隊が共同して、事態対処のために世界的な規模で切れ目なく行動する、つまり、このガイドラインに基づけば自衛隊が地球の裏側まで出ていける、こんな書きぶりとなっているからであります。

 これまでのガイドラインとそれを受けた周辺事態法では、日米安保条約の効果的な運用に寄与するとの目的が明記をされ、したがって、日米安保条約六条の極東が基本的な適用範囲とみなされてきました。これを裏づけるように、小渕総理は、一九九九年の国会答弁で、中東、インド洋、ましてや地球の裏側は考えられないと説明をされておられます。

 日米防衛協力の地理的限定について一線を引いたかつての小渕総理の答弁を引き継ぐのかどうか。

 そして、専守防衛を国是としてきた日本の防衛、安全保障のあり方と、今回のガイドラインとの整合性について、安倍総理の御所見をお伺いします。

 加えて、日本以外の国に対する武力攻撃への対処の項目では、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、国民の生命財産、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態、つまり、いわゆる新三要件を満たせば、自国に対する武力攻撃がなくても自衛隊の武力行使を可能とする文言が書かれております。

 さらに、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態、いわゆる重要影響事態、そして、アジア太平洋及びこれを超えた地域の平和と安全のための国際的な活動における協力においては、日本政府と自衛隊が後方支援を担い得るものとされています。

 ガイドラインの英文を見ますと、この後方支援はロジスティクスサポートとなっており、安全保障の世界では、一般的に、これは兵たんと訳される言葉であると思います。

 兵たんという言葉を日本の辞書でひもとくと、軍事装備の調達、補給、整備、修理及び人員、装備の輸送、展開、管理運用の総合的な軍事業務とされており、つまり、直接の戦闘行為を除くほとんどの軍事業務をカバーする用語であります。ガイドラインの「後方支援」も括弧書きで、補給、整備、輸送、施設及び衛生を含むが、これに限らないと書かれており、兵たんと同じ意味に見えます。後方支援と兵たんに違いがあるのかないのか、お伺いいたします。

 戦史家のマーチン・ファン・クレフェルトは、戦争という仕事の十分の九までは兵たんだと語っております。そして、敵の兵たん線を絶つのは戦争勝利の要諦だと言われます。つまり、活動領域は後方であったとしても、兵たん業務に当たっている部隊は、直接の攻撃対象として狙われる可能性が高いのです。そして、そのロジスティクスに自衛隊を派遣すると今回のガイドラインには書いてあるのであります。

 自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加することは決してないと安倍総理は繰り返しておられますが、ほとんど戦地に出すのと変わらないような危険かつ重大な任務をアメリカに対して約束してしまっているのではありませんか。

 私は、一概にそれが悪いと言うつもりはありません。それ相応の覚悟を持つ必要があると言いたいのです。

 同盟国であるアメリカを初め、他の国々と責任を分かち合いながら、平和と安全のために求められる協力や貢献を果たすのが、避けるべきでない日本の役割となるときもあるでしょう。となれば、派遣されることになる自衛隊も、みずからの命の危険を伴うリスク、海外の任地において武器使用に及び、他国民を殺傷するような選択をとらざるを得ない場面に直面するリスクも今までより高まるでしょう。また、自国が攻撃されてもいないのに自衛隊を派遣すれば、それにより相手国から敵国とみなされて、日本国内を含め攻撃を受ける、そうしたリスクも高まるでしょう。

 それらのリスクを認めた上で、しかし、日本と世界のために必要なのが今回の安保法制だと真っ正面から説くべきなのではないでしょうか。安倍総理にその覚悟をお聞きしておきたいと思います。

 国内世論の十分な理解と後押しのない中で、自国の軍隊や部隊を海外に派遣するのは、派遣された軍隊や部隊を不幸にし、目的達成をも危うくする。ベトナム戦争でもイラク戦争でも見られた歴史の教訓であると思います。

 その意味で、自衛隊を今までより積極的に海外に派遣できる法的基盤をつくり上げる今回の安保法制を成立させるに当たっては、国民の幅広い理解と支持を取りつけることが欠かせません。国民の多数の理解や支持の得られていない中で、時間が来たからといって、国会での審議を打ち切って、与党単独で採決が行われるようなことがあってはならないと思います。見解をお伺いいたします。

 自国の国会で法案審議する前に、ガイドラインを日米間で合意をして、事実上、安保法制の中身を後に引けない形で確定してしまう。順序が逆だと言わざるを得ません。しかも、この夏までに成立と、期限まで切ってしまいました。

 安倍総理は、国内で何度も言ってきたみずからの決意をアメリカで語ったまでだと説明していますけれども、だとすると、今後の国会の審議状況いかんによっては、この夏までの期限は絶対的なものではないという認識でよろしいですね。アメリカとの関係においてもそれでよいのかどうか、お伺いをいたします。

 アメリカのいわゆるリバランスに徹頭徹尾の支持を表明されましたが、沖縄の普天間基地の辺野古移設問題をめぐっては、日本政府と移設反対を掲げる沖縄県の翁長知事との間で法的措置の応酬が繰り広げられて、極めて険悪な状況となっています。私たちの多くが日米安保協力を考える際に依拠してきた識者の一人であるハーバード大学のジョセフ・ナイ教授までが、個人的見解としつつも、沖縄の人々の支持が得られないならば、辺野古移設を再検討しなければならないと口にするようになりました。

 普天間基地返還合意をなし遂げた橋本龍太郎総理がそうであったように、総理みずからが沖縄に出向き、知事とも県民とも膝詰めで話し合って、解決策を見出していくべきと考えます。

 安倍総理御自身の早期の沖縄訪問についてお伺いをいたします。

 今回の日米首脳会談の影の主役と評されてきたのが中国です。経済的にも軍事的にも中国が台頭し、アジアと世界にとっていよいよ存在感を増している中、中国が国際社会のルールにのっとった責任あるステークホルダーとして行動するよう促し、二国間関係を含めてどのように関係を構築していくのかは、日米共通の課題であります。

 この日米両国が、中国主導で設立されるAIIB、アジアインフラ投資銀行に参加しない二国となりました。日米が運営の中心を担っているADB、アジア開発銀行について、新興国の発言権が小さい、融資枠も百三十六億ドルと、八千億ドルになると言われるアジアのインフラ需要に比べて小さいといった不満が、中国をAIIB設立に向かわせたとも言われます。

 競争的共存でAIIBのガバナンス改革を促していくためにも、日米両国が協調してADBの存在感が増すような体制強化を進めていく必要があると思いますが、御所見をお伺いいたします。

 また、中国は、チベット、ウイグルにおける民族弾圧、ノーベル平和賞受賞者劉暁波氏初め民主活動家の不当拘禁、警察当局による拷問等、国際社会では受け入れられない自由や人権の抑圧の問題を数多く抱えております。

 安倍総理の連邦議会スピーチにあるように、法の支配、人権、そして自由をたっとぶ、価値観をともにする民主主義大国である日米両国が、中国のこうした問題について是正を積極的に働きかけていくべきと考えますが、見解をお伺いして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 柿沢未途議員にお答えいたします。

 周辺事態法の地理的範囲及び専守防衛と新ガイドラインの整合性についてお尋ねがありました。

 政府は、従来から、現行の周辺事態法が定める周辺事態とは、地理的概念ではなく、事態の性質に着目した概念であって、軍事的な観点を初めとする種々の観点から見て、我が国の平和及び安全に重要な影響を及ぼすか否かを、その時点の状況を総合的に見た上で判断することとなると説明してきております。

 その上で、周辺事態法制定時においては、当時の安全保障環境に照らして、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態が生起する地域にはおのずと限界があり、御指摘のような地域で生起することは、現実の問題として想定されないとしてきました。

 しかしながら、その後の安全保障環境の変化を踏まえると、これらの地域についても、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態が生起し得る地域からあらかじめ排除することは困難と考えています。

 我が国の防衛の基本的な方針である専守防衛については、政府としてこれを維持することに変わりはなく、新ガイドラインにおいても、日本の行動及び活動は、専守防衛等の日本の基本的な方針に従って行われる旨を明記しているところであります。

 日米新ガイドラインにおける支援活動についてお尋ねがありました。

 後方支援のため自衛隊が活動をするに当たっては、危険を回避して活動の安全を確保すべきことは当然であり、これは同時に、支援活動を適切に行うためにも必要なことであります。

 このため、部隊の安全が確保できないような場所で活動を行うことはなく、また、万が一、自衛隊が活動している場所やその近傍で戦闘行為が発生した場合などには、直ちに活動を一時休止または中断するなどして安全を確保します。武器を使って反撃しながら支援を継続するようなことはありません。

 今回の平和安全法制は、このような考え方を前提としたものとなっています。

 自衛隊の活動が、憲法及び関係する法令に従う必要があることは日米共通の理解であり、このことは新ガイドラインにも明記されています。

 さらに、日米両国は、おのおのの判断に基づき国際的な活動に参加する旨も明記されています。

 また、新ガイドラインは日米両政府の意図を表明した文書であり、いずれの政府にも、立法上、予算上、行政上その他の措置を義務づけるものではなく、法的な権利または義務を生じさせるものでもありません。

 したがって、ほとんど戦地に出すのと変わらないような危険かつ重大な任務を米国に対し約束してしまっているとの御指摘は、全くこれは当たりません。

 平和安全法制の整備によるリスクについてお尋ねがありました。

 今回の法整備の目的は、あらゆる事態から国民の命と平和な暮らしを守ることであります。これは政府の大きな責任です。

 そして、自衛隊員の任務は、国民の命と平和な暮らしを守ることであり、今後とも、この任務には変わりはありません。

 有事はもとより、災害派遣やPKOなど、これまでの任務も命がけであり、自衛隊員は今でも、これ以上はないリスクを負っています。

 それゆえ、自衛隊員は、みずから志願し、危険を顧みず職務を完遂することを宣誓したプロフェッショナルとして、日々、高度の専門知識を養い、厳しい訓練を繰り返し行うことで、危険な任務遂行のリスクを可能な限り軽減してきました。これは、平和安全法制においても全く変わるものではありません。

 もとより、自衛隊が活動する際には、隊員の安全を確保すべきことは当然のことであります。今回の法制においても、例えば後方支援を行う場合には、部隊の安全が確保できない場所で活動を行うことはなく、万が一危険が生じた場合には、業務を中止し、あるいは退避すべきことなど、明確な仕組みを設けることにより自衛隊員の安全に十分配慮しています。

 また、今回の法整備により、日米同盟を強化するとともに、域内外のパートナーとの信頼及び協力関係を深め、その上で、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とすることによって、紛争を未然に防ぐ力、つまり抑止力を一層高めることができます。これにより、紛争は予防され、日本が攻撃を受けるリスクは一層なくなっていくと考えています。

 平和安全法制の国会審議についてお尋ねがありました。

 国民の命と平和な暮らしを守ることは、政府の最も重要な責務であります。我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、国民の命と平和な暮らしを守り抜くためには、あらゆる事態を想定し、切れ目のない備えを行う平和安全法制の整備が不可欠であります。

 もとより、安全保障政策の推進には国民の皆様の理解と支持が不可欠です。国民の皆様に法制の全体像をお示しするため、昨日、関連法案を一括して閣議決定したところであります。

 法案の国会審議のあり方については、国会が御判断される事柄であり、政府として申し上げることは差し控えたいと思います。

 政府としては、多くの国民の皆様、そして与党のみならず野党の皆様に法案の趣旨を御理解いただき、幅広い御支持が得られるよう、わかりやすく丁寧な説明を心がけてまいります。

 米議会での私の演説における平和安全法制に関する発言についてお尋ねがありました。

 今般、米国上下両院の合同会議における演説で、平和安全法制の成立をこの夏までにと申し上げ、私の決意をお示ししました。

 そもそも、平和安全法制の整備は、平成二十四年の総選挙以来、これまで三回の選挙で常に公約に掲げ、一貫して訴えてきた課題であります。

 特に、さきの総選挙では、昨年七月一日の閣議決定に基づき、平和安全法制を速やかに整備することを明確に公約として掲げ、国民の皆様の審判を受けました。

 法整備の方針を閣議決定した上で、選挙において速やかに整備することを公約した以上、選挙直後の今通常国会においてその実現を図ることは、当然のことであります。

 国会審議のあり方については、国会が御判断される事柄であり、政府として申し上げることは差し控えますが、私は、今国会において成立を図るとの決意のもと、審議に臨んでまいります。

 法制の整備については、言うまでもなく、我が国の主体的な取り組みであります。

 米国との関係については、オバマ大統領にも、法制の整備につき精力的に作業中であることを説明し、大統領からは、日本の取り組みに対する支持が述べられたところであります。

 今後も、米国を初めとする各国に対し、透明性を持って丁寧に説明をしてまいります。

 私自身の沖縄訪問についてお尋ねがありました。

 普天間の固定化は絶対に避けなければなりません。これが大前提であります。かつ、政府と地元の皆様との共通認識であると考えます。

 沖縄の皆様の願いを現実のものとするため、引き続き、普天間の一日も早い全面返還に全力を尽くし、目に見える負担軽減を一つ一つ実現してまいります。

 先日は、翁長知事にお会いし、率直な話し合いをしました。

 引き続き、私を含め、政府のあらゆるレベルにおいて、沖縄の現地で、また東京において、地元の皆様の率直な御意見に耳を傾け、丁寧な説明に努め、対話を行いつつ、負担軽減のため、さまざまな取り組みについて連携を深めてまいります。

 ADBの体制強化についてのお尋ねがありました。

 アジアの開発資金ニーズは膨大であり、そのニーズに応えるために、ADBはさまざまな改革を進めています。

 具体的には、融資能力の最大五割の拡大、融資における民間セクター支援の拡大、案件承認の手続の迅速化に向けた取り組みを行っています。

 日本としては、ADBの主要出資国である米国とも緊密に連携して、こうしたADBの取り組みを強力に支援していく所存です。

 なお、AIIBについては、日本としては、公正なガバナンス、特に理事会による個別案件の審査、承認、債務の持続可能性や環境、社会に対する影響への配慮の確保がしっかりと確保されることが重要と考えており、今後とも、米国を初めとする関係国と協力しつつ、引き続き中国とも対話を行ってまいります。

 中国の人権問題についてお尋ねがありました。

 政府としては、中国においても、国際社会における普遍的価値である人権及び基本的自由が保障されることが重要と考えており、中国の人権状況についても、関心を持って注視しております。

 我が国は、中国との間で人権対話を行っており、米国等も同様の対話を行っていると承知しております。

 今後とも、米国を初めとする関心国の動きも踏まえながら、中国との対話を重ね、我が国の関心事項を伝えていきたいと思います。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣中谷元君登壇〕

国務大臣(中谷元君) 柿沢議員にお答えいたします。

 ガイドラインにおける後方支援と兵たんの違いについてお尋ねがありました。

 一般的に、ガイドラインにおいて後方支援とされているものと同じような文脈において兵たんとの用語を用いる場合があることは承知していますが、一九七八年及び一九九七年のガイドラインにおいて後方支援という表現を使用してきており、これらも踏まえ、新ガイドラインにおいても、後方支援との表現を用いたものでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 岡本三成君。

    〔岡本三成君登壇〕

岡本三成君 皆さん、こんにちは。公明党の岡本三成です。

 私は、公明党を代表いたしまして、安倍総理の米国公式訪問について質問させていただきます。(拍手)

 今回の総理訪米は、戦後七十年という大きな節目の年に実現。両国が悲惨な戦争を乗り越え、世界の平和と発展に向けて新たな協力関係を確認し合った点で、大きな意義があったと考えます。

 また、日本の総理として初めての上下両院合同議会での演説は、冒頭のユーモアのセンスがすばらしく、深夜のテレビを見ながら、私の顔も自然と笑顔になっていました。さらに、総理の口から、七十年前熾烈に戦い合った敵は、心の紐帯が結ぶ友になりました、これを歴史の奇跡と呼ばずして、何をそう呼ぶべきでしょうとの発言を聞いたときには、私自身もスタンディングオベーションを送りたい気持ちになりました。

 実は、私も、総理訪米直後に渡米をいたしましたので、今回の総理訪米に対する高い評価を、さまざまな方々から直接伺う機会がありました。そのような経験も踏まえながら、以下、質問させていただきます。

 私は、総理訪米のキーワードは、希望の同盟、そして積極的平和主義であったと考えています。

 その上で、二つの重要な政治的な柱があったと感じています。一つ目の柱は、日米同盟の新たな役割を確認した点です。

 冷戦終結後、平和への期待とは裏腹に、世界では今も地域紛争やテロなどが頻発、また、このアジア地域においても不安定な環境が顕著になっています。こうした中、いわゆるガイドラインが改定され、日本の安全保障がより強化されました。

 ただ、今回の安保法制の見直しの内容が、総理の議会演説や首脳会談を通じて、米国の議員や国民に正確に理解されていないのではないかと危惧しています。

 例えば、集団的自衛権の行使はあくまでも、日本国民を守るため、武力行使以外ほかに適当な手段がない場合にのみ行われるものであります。つまり、他国に対する武力攻撃が発生した場合が契機とはなるものの、あくまでも自衛の措置としてのみ武力行使が許容されます。

 しかし、米国のメディアでは、この点への言及はほとんどありません。また、私が直接話をした下院議員も、このことを全く認識されていませんでした。お互いの期待値の違いが、いずれ信頼関係を損ねるようなことになってはいけません。必要であれば、再度米国と内容の確認を徹底していただきたく、総理の所感をお伺いいたします。

 また、新ガイドラインには、日本が、世界の平和と安全のため、米国と協力をして、主導的役割を果たすことが明記されています。しかしながら、日本では、日米防衛協力が、日本周辺から全世界へと歯どめなく拡大し、戦争に巻き込まれる危険性が高まるのではないかとの懸念が一部にあります。

 公明党は、国際社会の平和維持に対する貢献において、自衛隊の海外派遣三原則、すなわち、国際法上の正当性の確保、国民の理解と国会の関与など民主的統制、さらに自衛隊員の安全確保の三点を主張してまいりました。今回の安保法制にはこの三点が明確に盛り込まれており、無制限に自衛隊が海外に派遣されないように歯どめをかけることができました。総理に、この点に関する御評価をお伺いいたします。

 同時に、より重要なことは、今後、丁寧な国会論議を行い、国民の皆さんにしっかりと御理解をいただき、心から御納得いただく政府・与党の努力だというふうに考えます。今後の法案審議に臨むに当たり、総理の基本的な姿勢をお伺いいたします。

 二点目の柱は、歴史認識であります。

 総理は、米国議会での演説で、過去の戦争に関し、侵略やおわびという言葉をお使いになりませんでした。しかし、そのかわりに、戦後の日本は、さきの大戦に対する痛切な反省を胸に歩みを刻みました、みずからの行いがアジア諸国民に苦しみを与えた事実から目を背けてはならない、これらの点についての思いは歴代首相と全く変わるものではありませんと、謝罪の気持ちを表現されました。

 これに対し、総理の思いとは裏腹に、残念ながら、米国のメディアでは、謝罪は十分なものではなかったと報じられています。その結果、アメリカの国民も、そのような認識を持っているおそれがあります。また、中国や韓国では、侵略の歴史や慰安婦問題への謝罪の言葉を盛り込まなかったなどの批判が出ていることも事実です。さらには、イギリスやオーストラリアのメディアでも厳しい評価となってしまっております。

 外交は、諸外国にどのように味方をつくっていくかという闘いであります。したがいまして、国際社会全体がどのように評価するかが重要です。その意味で、歴史認識の発信の仕方については今後改善の余地があるのではないかと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 総理は、スマートパワーという戦略を御存じだと思います。これは、知日派として著名なジョセフ・ナイ教授が訴えている概念です。軍事力を中心としたハードパワーに非軍事のソフトパワーをうまく組み合わせて最高の結果を得ようとする戦略であります。

 今回の安保法制により、ハードパワーの強化が図られます。次は、いよいよ、日本が得意とするソフトパワーを駆使するときであります。

 近年、世界各地で大規模化している自然災害、環境問題、難民支援等々、いわゆる人間の安全保障の核心部分で、日本がイニシアチブをとって一層の貢献を果たすことが重要だと考えます。それこそがソフトパワーです。

 これら人間の安全保障に対する我が国の今後の取り組みについて、総理の御見解をお伺いいたします。

 また、今回の首脳会談では、NPT、核拡散防止条約に関する共同声明が出されました。唯一の被爆国である我が国と最も多くの核を保有する米国の首脳が、核兵器の非人道性に言及しつつ、核軍縮・不拡散への姿勢を発信したその意義は、大変に評価が大きいというふうに認識をしております。この道もまた、日本らしい積極的平和主義の形ではないでしょうか。

 今後も核兵器廃絶の加速化を積極的にリードする努力が必要だと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 今回、総理は、西海岸も訪問されました。日本の総理が米国の地方都市を本格的に訪問したのは何と九年ぶり。カリフォルニア州は、日系人が四十万人と全米で最も集中し、多くの日系企業も進出。今回の総理訪問を現地の方々は心から喜んでいらっしゃいました。

 総理は、スタンフォード大学での講演において、今後五年間で日本のベンチャー企業二百社のシリコンバレー進出を促進するプロジェクトを発表されました。加えて、若手起業家を派遣する人材交流や民間交流を進めるためのイベント開催など、希望あふれる政策を約束されました。

 今後、希望の同盟をより強固なものにするためには、未来を担う青年世代の交流が何よりも大切です。そのためには、対象を起業家に限定することなく、学生、NGO、公務員など、さまざまな分野での青年交流を後押しすべきだと考えます。なぜならば、それは積極的平和主義の柱そのものだからです。

 希望の未来を開くのは、いつの時代も青年の熱と力です。最後に、青年交流の支援拡大に対する総理の御決意を伺い、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 岡本三成議員にお答えをいたします。

 平和安全法制に関する米国議員や米国民の理解についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、集団的自衛権の行使は、あくまでも日本国民を守るためのものであります。これは、新たな日米ガイドラインの中にもはっきりと書き込んであり、日本と米国の共通の認識であります。

 平和安全法制は、日米同盟を一層堅固にし、日米間の信頼の強化にもつながるものであります。今般の訪米では、議会演説においてこの旨を申し上げました。

 日米首脳会談におきましても、平和安全法制について精力的に作業中であることを説明し、オバマ大統領からは、日本の取り組みに対する支持が述べられたところであります。

 今後とも、米国を初めとする各国に対し、透明性を持って丁寧な説明に努めてまいります。

 自衛隊の海外派遣に係る三つの方針についてお尋ねがありました。

 自民党と公明党は、強固な連立のもと、これまでも徹底的に話し合い、大きな結果を残してまいりました。今回の与党協議においても、二十五回にも及ぶ徹底的な議論を行い、政府に対して法律案の方向性を示していただきました。

 特に、三月の与党合意においては、自衛隊の海外における活動の参加に当たって、第一に、自衛隊が参加し、実施する活動が国際法上の正当性を有すること、第二に、国民の理解が得られるよう、国会の関与等の民主的統制が適切に確保されること、第三に、参加する自衛隊員の安全の確保のための必要な措置を定めることという三つの方針を確立し、そのもとに適切な判断を行うとの具体的な方向性を示していただきました。

 政府としては、この方向性に即して法案作成作業を行い、全ての方針が法案の中に忠実に、かつ明確に盛り込まれたものと考えています。

 平和安全法制に三つの方針を盛り込むことにより、自衛隊の海外での活動が適切に行えるものであることが内外に一層明確となり、同時に、我が国として適切な判断を行うことが可能となったものと考えています。

 平和安全法制の法案審議に臨む姿勢についてお尋ねがありました。

 国民の命と平和な暮らしを守ることは、政府の最も重要な責務であります。我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、国民の命と平和な暮らしを守り抜くためには、あらゆる事態を想定し、切れ目のない備えを行う平和安全法制の整備が不可欠であります。

 もとより、安全保障政策の推進には、国民の皆様の理解と支持が不可欠であります。そのため、国民の皆様に法制の全体像をお示しするため、昨日、関連法案を一括して閣議決定したところであります。

 国会審議に当たっては、多くの国民の皆様にその趣旨を御理解いただき、幅広い御支持が得られるよう、わかりやすく丁寧な説明を心がけてまいります。

 米国議会での演説における歴史認識についてお尋ねがありました。

 米国議会での演説では、第二次世界大戦において犠牲となった米国の方々に対して哀悼の意を表明し、戦後の日本がさきの大戦に対する痛切な反省を胸に歩んできたこと、また、みずからの行いがアジア諸国に苦しみを与えた事実から目を背けてはならないことなどを明確に述べ、議場から満場の拍手をいただき、私の気持ちやメッセージは議会に対しては十分に伝わったのではないかと考えています。

 戦後七十年の間、日本は、自由で、民主的で、人権を守り、法の支配をたっとぶ国家をつくり上げ、アジアや世界の友人たちの平和と発展のためにできる限りの貢献を行ってきました。この平和国家としての歩みは、これからも決して変わりません。このことを今後とも国際社会に対し明確に、そしてわかりやすくアピールしていく所存でございます。

 核軍縮・不拡散に関する我が国の取り組みについてお尋ねがありました。

 先般の日米首脳会談に際して、NPTについて核兵器使用の壊滅的で非人道的な結末に言及し、核軍縮・不拡散分野における日米間の緊密な協力を確認する共同声明を発出できたことは大きな成果でありました。

 我が国は、世界で唯一の戦争被爆国として、米国とも協力しながら、核兵器のない世界の実現に向け、引き続き国際社会の取り組みを主導してまいる所存であります。

 人間の安全保障に対する我が国の今後の取り組みについてお尋ねがありました。

 米国議会での演説で、私は、人間の安全保障を確かにしなくてはならないというのが日本の不動の信念である、人間一人一人に教育の機会を保障し、医療を提供し、自立する機会を与えなければならない、女性の人権が侵されない世の中を実現しなくてはならないと訴えてまいりました。

 先般閣議決定した開発協力大綱においても、人間の安全保障の推進を基本方針の一つとしています。

 政府としては、御指摘のあった防災、環境問題、難民支援等を含め、引き続き人間の安全保障を外交の重要な柱として積極的に推進していく考えであります。

 日米間の青少年交流の重要性についてお尋ねがありました。

 日米間の幅広い人的交流、特に未来を担う青少年交流は、日米同盟を支える重要な柱であります。

 このような認識のもと、日米両国による学生、研究者及び議員間交流の増加に向けた取り組みなど、人的交流を引き続き強化していくことを、首脳会談の終了後に発出したファクトシートにおいて発表しました。

 また、日本政府として、人的交流のさらなる強化を目指し、青少年交流を含む取り組みを行う、未来へのカケハシ・イニシアティブを発表しました。

 日米の希望の同盟をより強固なものとするため、今後とも、青少年交流を初めとする人的交流の拡大に努めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表し、総理の訪米報告に対し質問します。(拍手)

 政府が昨日閣議決定した平和安全法制なるものは、アメリカが世界で行う戦争に際して、いつでもどこでもどんな戦争でも自衛隊が参戦するためのものであり、憲法をじゅうりんする、まさに戦争法案です。直ちに撤回すべきであります。

 総理は、米議会での演説で、法案をこの夏までに成就させると述べました。閣議決定も国会提出も、ましてや審議もしていない法案の成立を米議会で誓約したのであります。国民主権と議会制民主主義を真っ向から否定するものであり、断じて容認できません。

 総理は、昨日の記者会見で、もう二度と戦争の惨禍を繰り返してはならない、この不戦の誓いを将来にわたって守り続けていくと述べました。

 村山談話以降歴代政府が示してきた、植民地支配と侵略がアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えたことへの言及をしないのはなぜですか。

 戦後の日本は、侵略戦争への反省の上に立って、政府の行為によって再び戦争の惨禍を起こさないことを世界に誓い、再出発しました。戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を憲法九条に明記し、徹底した非軍事、平和主義を定めたのであります。同盟の抑止力、対処力を強化することは、これに真っ向から反するものではありませんか。

 総理は、米議会での演説で、戦後世界の平和と安全はアメリカのリーダーシップなくしてあり得なかったと述べ、日本がアメリカとの同盟を選択したことを高く評価しました。

 しかし、ベトナム戦争やイラク戦争を初め、世界の紛争に軍事介入し、国連憲章に基づく平和秩序を揺るがしてきたのが、戦後のアメリカのリーダーシップなるものの実態ではありませんか。

 歴代自民党政府は、そのアメリカにつき従い、米軍に基地を提供し、自衛隊を海外に派兵して、戦争に協力、加担してきたのではありませんか。

 そもそも、憲法九条があるもとで自衛隊が創設されたのは、日本の再軍備を求めるアメリカの対日要求があったからにほかなりません。

 朝鮮戦争の勃発を契機として、朝鮮半島に出動した米軍の空白を埋めるためとして、マッカーサーの指令によって警察予備隊が創設され、保安隊を経て、一九五四年、自衛隊は発足しました。その後の自衛隊の育成、増強は、米軍の任務を肩がわりし、補完する形で進められてきたのであります。

 歴代政府は、自衛隊の違憲性を言い繕うために、自衛のための必要最小限度の実力組織は憲法に違反しないと弁明してきました。

 ところが、九〇年代以降、アメリカの新たな要求につき従って、ペルシャ湾への掃海艇派遣を皮切りに、インド洋でアフガニスタンへの空爆を行う米軍艦船への給油支援を行い、戦地イラクで軍事掃討作戦を行う武装米兵を輸送し、無法な戦争と占領に加担したのであります。

 これが、戦後の日米軍事同盟の歴史ではありませんか。この事実から目を背けてはなりません。

 今回、日米両政府が合意した新たな防衛協力の指針、ガイドラインは、日米軍事同盟を、日本防衛はおろか、従来の周辺事態を大きく踏み越えて、文字どおり地球規模に拡大するものです。

 政府全体にわたる同盟調整メカニズムを通じて、平時から有事に至るあらゆる段階で、日米が政策面、運用面での調整を行い、共同計画を策定するとしています。

 これはまさに、いつでもどこでもアメリカの戦争に日本が参戦、加担することを取り決めたものではありませんか。

 国会の承認も審議もなく、現行安保条約の内容を大きく踏み越える軍事協力の拡大を、なぜ政府が勝手に取り決めることができるのですか。

 米軍が陸海空に続く戦場に位置づける宇宙、サイバー空間、さらには、武器輸出での日米協力まで盛り込んでいることも、日米安保の重大な拡大であります。

 国民にどう説明するのですか。明確な答弁を求めます。

 政府は、今、従来の時限立法にかえて、米軍を初めとする多国籍軍支援の恒久法をつくろうとしています。これまで許されないとしてきた戦闘地域での軍事支援、治安維持活動、さらには機雷掃海などの海外での武力行使にまで公然と踏み込もうとしています。

 こうした日米軍事同盟の強化のために、従来の憲法解釈をことごとく捨て去ろうとしているのであります。戦後、歴代自民党政権が推し進めてきた米軍戦争支援国家づくりの集大成ともいうべきものであり、断じて容認できません。

 さらに、沖縄の米軍基地問題について、総理はオバマ大統領に、沖縄県の翁長知事が反対していることを伝えた上で、辺野古が唯一の解決策との政府の立場は揺るぎないと強調しました。

 これは、沖縄県民がどれだけ反対しようとも新基地建設を強行する決意を示したものではありませんか。沖縄県民の意思よりも日米合意を優先する対米従属の姿勢そのものであります。

 日米共同声明は、日本における安定的で長期的な米軍のプレゼンスに言及しています。

 戦後七十年を経て、辺野古に新たな基地を建設し、未来永劫沖縄を米軍基地に縛りつけようとすることは、到底許すことはできません。

 きょう五月十五日、沖縄が本土に復帰して四十三年を迎えました。

 復帰に当たって県民が願ったのは、基地のない平和で豊かな沖縄でした。政府がやるべきことは、占領下の土地強奪によってつくられた米軍基地の縮小、撤去であります。

 新基地建設を断念し、普天間基地を直ちに無条件で閉鎖、撤去することを要求し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 赤嶺政賢議員にお答えいたします。

 昨日閣議決定した平和安全法制や、米議会での私の演説における法制の成立時期に関する発言内容についてお尋ねがありました。

 今般、米国上下両院の合同会議における演説で、平和安全法制の成立をこの夏までにと申し上げ、私の決意をお示ししました。これは初めて申し上げたものではなく、昨年来、記者会見や国会答弁の中で、今通常国会での成立を図るとの私の決意を繰り返し申し上げています。

 そもそも、平和安全法制の整備は、平成二十四年の総選挙以来、これまで三回の選挙で常に公約に掲げ、一貫して訴えてきた課題です。

 特に、さきの総選挙では、昨年七月一日の閣議決定に基づき、法制を速やかに整備することを明確に公約として掲げ、国民の皆様の審判を受けました。法整備の方針を閣議決定した上で、選挙において速やかに整備することを公約した以上、選挙直後の今通常国会においてその実現を図ることは当然のことであります。

 このため、昨年十二月二十四日、総選挙の結果を受けて発足した第三次安倍内閣の組閣に当たっての記者会見において、平和安全法制は通常国会において成立を図る旨申し上げ、国民の皆様に私の決意をお示ししました。

 本年二月の衆議院本会議においても、二度にわたり、今国会における成立を図る旨答弁をしております。

 米議会での演説において、改めて、このような私の決意を申し上げたものであります。国民主権と議会制民主主義を否定するとの指摘は全く当たりません。

 また、今般の平和安全法制の目的は、あらゆる事態から国民の命と平和な暮らしを守ることであり、アメリカの戦争にいつでもどこでも参戦するためとか、戦争法案などという指摘は、無責任な、根拠のないレッテル張りであり、全くの誤りであります。

 戦争の惨禍についてのお尋ねがありました。

 安倍内閣として、侵略や植民地支配を否定したことは一度もありません。

 安倍内閣は、これまで繰り返し国会で申し上げてきたとおり、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでまいります。

 平和主義と日米同盟の抑止力、対処力の強化についてお尋ねがありました。

 平和国家としての日本の歩みは、これからも決して変わることはありません。二度と戦争の惨禍を繰り返してはなりません。この不戦の誓いを将来にわたって守り続けていきます。

 そして、国民の命と平和な暮らしを守り抜く、日本と世界の平和と安全をより確かなものとする、そのための法案が、昨日閣議決定した平和安全法制であります。

 平和安全法制により、日米同盟の抑止力、対処力は一層強化されることとなります。もし日本が危険にさらされたときには日米同盟が完全に機能する、そのことを世界に発信することによって、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていくと考えます。

 戦後世界における米国のリーダーシップと日米同盟についてお尋ねがありました。

 米国は、戦後、西側世界の盟主としてリーダーシップを発揮し、一貫して世界に貢献してきました。

 日本は、その主体的判断に基づき、日米安保条約を堅持しており、日米同盟は、アジア太平洋地域と世界の平和と繁栄に貢献し続けてきています。

 自衛隊の国外派遣は、我が国自身の主体的な取り組みとして、法令に従って国会の御承認も得て行ってきたものであり、国際社会からも高い評価を得ています。

 日本が、米国に従って自衛隊を海外に派遣し、戦争に協力、加担してきたとの御指摘は、全く当たりません。

 我が国による自衛隊の国外派遣と日米同盟の歴史についてお尋ねがありました。

 自衛隊の国外派遣は、我が国自身の主体的な取り組みとして、法令に従って国会の御承認を得て行ってきたものであり、国際社会からも高い評価を得ております。

 したがって、我が国が米国の要求に従って自衛隊を派遣し、日米同盟が他国を紛争に巻き込んできたとの御指摘は、全く当たりません。

 我が国は、引き続き、自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する同盟国である米国とも連携しつつ、アジア太平洋や世界の平和と繁栄を確保する上で、主導的な役割を果たしてまいります。

 日米新ガイドラインについてお尋ねがありました。

 新ガイドラインにおいては、その中核的役割である我が国の平和と安全の確保のほか、これまでの日米協力の進展を踏まえ、新たな戦略的分野である宇宙やサイバー空間での協力についても記述しています。また、協力の実効性をより一層高めるため、装備、技術面を初めとする各種分野でも協力を進めることとしています。

 他方、新ガイドラインは、日米両政府の意図を表明した文書であり、いずれの政府にも、立法上、予算上、行政上その他の措置を義務づけるものではなく、法的な権利または義務を生じさせるものでもありません。また、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利及び義務を変更するものでもありません。

 このような新ガイドラインの性格も踏まえれば、新ガイドラインは、国会承認の対象となるものではありません。

 また、御指摘の同盟調整メカニズムや共同計画の策定が、アメリカの戦争に日本が参戦、加担することを取り決めたものとの御指摘は、全く当たりません。

 自衛隊の派遣については、我が国として、憲法及び法令に従い、みずからの国益に照らして主体的に判断してまいります。

 いわゆる恒久法などの法整備及び憲法解釈等についてお尋ねがありました。

 昨年七月の閣議決定は、安全保障環境の大きな変化を踏まえ、昭和四十七年の政府見解の基本的な論理の枠内で導き出されたものであり、憲法解釈としての論理的整合性と法的安定性は維持されています。また、そもそも、昭和四十七年の政府見解は、砂川事件の最高裁判決の考え方と軌を一にするものであります。

 今般の平和安全法制では、具体的な必要性が発生してから改めて立法措置を行うのではなく、自衛隊の活動の前提となる法的根拠をあらかじめ定めておくこととしています。

 また、現に戦闘行為を行っている現場では後方支援を行わないなど、武力の行使との一体化を回避するための厳格な枠組みを設けており、現実の安全保障環境に即した合理的な仕組みとなるものと考えています。

 さらに、我が国が武力の行使を行い得るのはあくまでも新三要件を満たす場合に限られ、これは憲法上の明確かつ厳格な歯どめとなっています。

 このように、今般の平和安全法制の整備は、これまでの憲法解釈の基本的な論理の枠内のものであり、御指摘は全く当たりません。

 日米首脳会談における普天間飛行場の辺野古移設に関するやりとりについてお尋ねがありました。

 最も大切なことは、住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間の固定化は絶対に避けなければならないということであります。これが大前提であり、かつ政府と地元の皆様との共通認識であると考えています。

 辺野古への移設は、米軍の抑止力維持と普天間の危険性除去を考え合わせたとき、唯一の解決策であり、この考え方に変わりはありません。

 こうした考え方を踏まえ、首脳会談においては、オバマ大統領に対し、先般の翁長知事との会談で承った、辺野古移設に反対するとのお考えもお話しした上で、辺野古移設が唯一の解決策との政府の立場は揺るぎなく、沖縄の理解を得るべく、対話を継続する旨をお伝えしたものであります。

 したがって、対米従属姿勢との御指摘は当たりません。

 沖縄の米軍基地の整理縮小及び普天間の辺野古への移設についてお尋ねがありました。

 日本の国土面積の一%に満たない沖縄県内に、今なお、全国の約七四%の米軍専用施設・区域が集中している状況を、極めて重く受けとめています。

 このため、政府としては、人口が集中する嘉手納以南の土地の返還や在沖縄海兵隊のおよそ半分に相当する約九千人のグアム等への移転などを進めることにより、沖縄の施設・区域の整理縮小に全力で取り組んでいるところであり、既に、西普天間住宅地区の返還などを実現しています。

 また、普天間飛行場の移設について、最も大切なことは、住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間の固定化は絶対に避けなければならないということであります。

 辺野古への移設により、普天間は全面返還されます。辺野古の、皆様の願いを現実のものとするため一日も早い返還を実現する、これがこの問題の原点であると考えます。

 したがって、辺野古移設が沖縄を米軍基地に縛りつけるとの指摘は全く当たりません。

 抑止力を維持しながら、目に見える形で負担軽減を図っていく、この二つの両立を図ることは難しい課題ではありますが、だからこそ、これを実現するために力を尽くすことが政治の責任だと考えています。

 政府としては、引き続き、安全確保に留意しつつ、辺野古への移設事業を進め、普天間の一日も早い返還を必ずや実現することが重要であると考えております。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

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 株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法案(内閣提出)及び郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法案及び郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。総務大臣高市早苗君。

    〔国務大臣高市早苗君登壇〕

国務大臣(高市早苗君) 株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法案及び郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。

 まず、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 電気通信事業、放送事業及び郵便事業に係る海外市場はアジアを中心として成長を続けてきており、今後の海外需要の拡大が見込まれております。我が国経済の持続的な成長のためには、そのような海外における新たな事業機会を捉え、国内需要と共通する潜在的な海外需要を積極的に開拓することで、我が国の事業者の収益性の向上を図る必要があります。

 しかし、海外において電気通信事業、放送事業または郵便事業を営むに当たっては、規制分野であるがゆえの政治リスクやそれに伴う需要リスクの影響が大きく、民間だけでは参入が進みづらい状況にあります。

 このような背景を踏まえ、我が国の強みを生かして海外において電気通信事業、放送事業または郵便事業を行う者を支援するため、本法律案を提案することとした次第であります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、海外において電気通信事業、放送事業もしくは郵便事業またはこれらの関連事業を行う者を支援するため、総務大臣の認可により、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構を設立することとしております。政府は、常時、機構の発行済み株式総数の二分の一以上を保有することとしております。

 第二に、機構の支援の対象となる事業者及び支援内容並びに株式または債券の処分等の決定を客観的、中立的に行うため、機構に海外通信・放送・郵便事業委員会を置くこととしております。

 第三に、機構は、総務大臣の認可を受け、出資、資金の貸し付け、専門家の派遣または助言等の業務を営むこととしております。

 第四に、政府は、機構の社債や資金の借り入れに係る債務について保証をすることができることとしております。

 以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 続きまして、郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 郵便・信書便分野における規制の合理化を図るため、郵便及び信書便に関する料金の届け出手続を緩和するとともに、特定信書便役務の範囲を拡大し、特定信書便役務に係る信書便約款の認可手続を簡素化する必要があります。

 次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、郵便に関する料金の届け出手続に関し、郵便事業の収入に与える影響が軽微な料金のうち総務省令で定める料金について、事前届け出制を改め、事後届け出制とするとともに、一般信書便役務に関する料金の届け出手続に関し、あわせて手続の緩和を図ることとしております。

 第二に、特定信書便役務の範囲に関し、大きさ及び料金の要件を見直し、長さ、幅及び厚さの合計が七十三センチメートルを超える信書便物を送達する信書便の役務及びその料金の額が八百円を下回らない範囲内において総務省令で定める額を超える信書便の役務を特定信書便役務とすることとしております。

 第三に、総務大臣が標準信書便約款を定めて公示した場合におきまして、特定信書便事業者が、標準信書便約款と同一の信書便約款を定めたときは、その信書便約款については、総務大臣による認可を受けたものとみなすことにより、特定信書便役務に係る信書便約款の認可手続を簡素化することとしております。

 以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 なお、この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法案及び郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)

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 株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法案(内閣提出)及び郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。武正公一君。

    〔武正公一君登壇〕

武正公一君 民主党、武正公一です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構法案及び郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律案につき、質問をいたします。(拍手)

 昨日の安全保障法制の閣議決定、そしてきょうの国会提出、これは、昨年七月一日、集団的自衛権行使容認へ憲法解釈を変更して行われたものです。そもそも、一内閣が恣意的にみずからの内閣に都合のいいように憲法解釈を変更することは、独裁国家でなければ起こり得ないことが起きていると言わざるを得ません。

 NHKアーカイブスでは五月十日に、「戦後七十年 日本人はなぜ戦争へと向かったのか メディアと民衆」の番組を再放送いたしました。NHKラジオ放送がナチス・ヒトラー、ゲッペルス宣伝大臣の方法をまねて国民を戦争に駆り立てたことをNHKによって検証された番組です。

 このように、放送と政治、テレビと政治をめぐる関係について、まず菅官房長官に伺います。

 三月二十七日夜、テレビ朝日系列「報道ステーション」で古賀茂明氏が、菅官房長官を初め官邸の皆さんからバッシング、非難あるいは圧力を受けてきたというようなことを言っております。

 三月三十日、官房長官からは、事実無根、また、放送法という法律があるので、テレビ局がどう対応するか、しばらく見守りたいという記者会見がありましたが、改めて、官邸からバッシング、非難あるいは圧力、これを加えたのでしょうか、伺います。

 また、放送法という法律があるので、テレビ局がどう対応するか、しばらく見守りたいと菅官房長官が言ったということですが、この放送法という法律があるのでというのはどういう意味ですか。免許の停波という意味での放送法という言及ではないということでよろしいでしょうか。

 例えば、安保法制の審議時間、これについては十分時間をとる必要があります。なぜでしょう。それは、安全保障の議論は、専門用語が飛び交い、また、その安全保障技術の検証には時間を要するからです。特に、国民主権のもと、国民への説明責任を果たすことが欠かせません。そのとき、メディア、とりわけ放送の果たす役割は大きいと考えます。

 いたずらに政府・与党が放送や報道に圧力を加えていると受けとめられることは、こうした安保法制の審議、そして国民の理解への阻害要因になりかねません。

 改めて、官邸からの放送、報道への圧力はかけていない、かけないということを、放送法一条の放送の自律独立の担保という観点から官房長官に確認をいたします。いかがでしょうか。

 郵政民営化法改正から丸三年、施行から二年半が経過いたしました。

 平成二十三年八月から、民主党、自民党、公明党で郵政三党協議会を立ち上げ、十二回の開催を通じ、平成二十四年三月、政府提出の郵政改革法案を取り下げ、私が筆頭提出者として郵政民営化法改正案提出となり、衆参両院の審議を経て、三年前の四月二十七日に成立を見ました。

 与野党で合意をし、法改正ができたのは、行き過ぎた民営化の見直しを求める動きが、四年前の震災復興財源として日本郵政株式売却益を見込むことが背中を押したと考えます。

 あわせて、国民の生活の利便性に欠かせない郵政事業を、郵便、貯金、簡易保険を一体として捉え、ユニバーサルサービスを守ることを基本に民営化を進めることに停滞は許されないとする与野党並びに郵政関係者の強い熱意と取り組みがあったからです。

 同年十月一日、五社体制が四社体制に見直された日本郵政グループの経営状況をどう判断しているのか、総務大臣に伺います。

 連結決算は、経常収益が減少し、経常費用を削減することにより経常利益を確保するという縮小均衡に陥っています。郵便等引受物数等については、平成二十三年度から三年度は横ばいながら、平成十三年度からは三割減です。ゆうちょ銀行の預貯金残高は近年横ばい。しかしこれも、ピーク時からは百兆円近く減少する一方、他の民間金融機関は百三十兆円以上増加しております。かんぽ生命は、総保有契約数は過去十年で半減、新契約数は緩やかな回復となっています。

 日本郵政グループ各社は、預け入れ限度額や簡保の加入限度額の引き上げを求めていますが、その見通しについて、総務大臣、金融担当大臣に伺います。

 民主党政権時代も、預け入れ限度額二千万円へ、簡易保険の受け入れ限度額二千五百万円への引き上げを談話で発表した経緯もあります。しかし、国会状況のもと、議論が進まないまま、その後、民間金融機関からの懸念もあり、民営化法改正附帯決議では、当分の間引き上げないといたしました。

 一方、日本郵政株を上場して売却益を復興財源に四兆円充てることについては、昨年末に、この秋の日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の同時上場、売却方針が、日本郵政グループが財務省と協議の上、発表に至りました。

 法案審議時に日本郵政の売却が念頭にありましたが、なぜ三社同時となったのか、財務大臣に伺います。

 また、ユニバーサルサービス確保のもと、市場価値を上げるために、市場が受け入れるビジネスモデルをどのようにつくろうとしてきたのか、また、しているのか、総務大臣に伺います。

 次に、海外通信・放送・郵便事業支援機構の運営についてお聞きします。

 支援機構は、海外において、民主党政権下からも取り組んできた地デジ放送日本方式も含め、通信、放送、郵便事業を行う日本の現地事業体に対し、出資を初め、相手国政府との交渉、専門家の派遣など、事業への参画や運営支援を行うこととしています。

 これらを行うためには、現地の政治情勢や社会状況を熟知し、また技術ノウハウも熟知する専門家の活躍が重要な位置づけを占めます。

 そうした人材の確保を、支援機構は官民どの分野から準備し、どのような身分で派遣するのでしょうか。

 派遣する専門家の確保と派遣実施の方法について、また、機構の役割を二十年と区切ったことについて、総務大臣にお聞きいたします。

 支援基準について伺います。

 この支援機構が支援の対象となる事業者や事業内容を決定するに当たって従うべき支援基準を総務大臣が定めることとしています。また、その支援基準に従って機構が支援内容を決定するためには、あらかじめ総務大臣の認可を受けることとされており、総務大臣の判断が大変重要なものとなっています。

 支援基準の策定と支援内容の決定の認可が公正に行われるための客観的指標、担保が肝心となりますが、総務大臣の所見を伺います。

 次に、他の政府出資支援組織との関係について伺います。

 今回の海外通信・放送・郵便事業支援機構のように、海外展開する企業を支援する官民ファンドはほかにも存在します。交通や都市開発の事業者の海外展開を支援する株式会社海外交通・都市開発事業支援機構があります。

 出資支援としては、日本企業による機械設備や船舶等の輸出に対する支援及び日本企業の海外でのインフラ事業参加への支援を業務の一つとするJBIC、株式会社国際協力銀行があります。さらに、開発途上地域への支援を行うJICA、独立行政法人国際協力機構なども存在しています。

 今回、この新しい機構を動かすに当たり、既存の支援機構とはどのようにすみ分け、あるいは連携していくのか。今回、何ゆえに、通信、放送、郵便の三分野に限った支援機構を改めて設置するに至ったのか、総務大臣に伺います。

 特に財務大臣には、過去、JICA、独立行政法人国際協力機構の海外投資が失敗した検証と、二〇一一年から再開に至って、どのような再発防止策を講じているのかを伺います。

 日本の、海外での評判の高い税関業務については、多くの海外からの研修生を受け入れています。郵便貯金についても同様であり、新興国のインフラ整備のためには欠かせないノウハウがあると考えますが、この支援機構に郵便貯金業務も加えることについての御所見を総務大臣に伺います。

 次に、郵便法及び民間事業者による信書の送達に関する法律の一部を改正する法律案に関連してお聞きをいたします。

 安倍内閣が進める規制緩和議論の一つとして、規制改革会議において特定信書便の業務範囲の見直しが取り上げられ、総務省情報通信審議会でユニバーサルサービス確保方策と特定信書便の業務範囲の見直しとして議論されてきた経過にあり、本法律案は、その一部、特定信書便の業務範囲の見直しのみを先行して法案化したものであります。

 郵便事業におけるユニバーサルサービスは、国民、利用者があまねく公平に享受できるインフラであり、国民生活に極めて重要なものとして、郵政民営化法において、日本郵政グループに、郵便に加えて貯金及び保険のユニバーサルサービスを提供する責務を課しており、そのため、株主たる国としても、確保のための措置を講じる必要があるものと考えます。

 法案策定の議論では、業務範囲の見直しがユニバーサルサービス確保に与える影響を、日本郵便株式会社の収益全体と比べて少ないとして、支障がないとの説明がされていますが、売上高利益率から見れば決して少ない額ではなく、ユニバーサルサービス確保への影響を懸念する声があります。

 本法案がユニバーサルサービスに与える影響について、総務大臣にお聞きをいたします。

 信書の取り扱いについては、通信の秘密と信書送達のユニバーサルサービス確保のため、一定のルールが必要と考えますが、総務大臣の見解を伺います。

 また、本法案は、特定信書便の業務範囲の見直しを行うものでありますが、ユニバーサルサービスが今後も安定的に提供されるためには、業務範囲のさらなる拡大が軽々に行われることのないように一定の歯どめをかけるべきと言われますが、総務大臣の見解を伺います。

 ユニバーサルサービス確保の重要性から、総務省情報通信審議会においてユニバーサルサービス確保方策が議論されておりますが、取りまとめには一定の時間を要するものと想定され、本法案による規制緩和の方向性のみが先行することになります。

 ユニバーサルサービスをきちんと確保していく方策についても、政府の責任として明確に示すべきと考えますが、重ねて総務大臣の見解を伺います。

 郵便事業、信書便事業は、国が国民に保障すべき重要なユニバーサルサービスです。このサービス水準を堅持していく仕組みと民間によるさまざまなサービスを工夫する視点の両面が国民生活の向上に重要な視点であることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣高市早苗君登壇〕

国務大臣(高市早苗君) 武正議員からは、十一点お尋ねがございました。

 まず、日本郵政グループの経営状況についてお尋ねがありました。

 日本郵便の郵便引受物数は減少しておりますが、荷物の取扱物数は増加しております。ゆうちょ銀行の貯金残高は、近年は微増です。かんぽ生命保険の保険保有契約件数は減少しておりますが、新契約件数は増加しております。

 日本郵政グループは、グループの収益力の多角化、強化、経営の効率化等を進めているところですが、郵政民営化を推進する上で重要な上場に向けて、一層の取り組みをすることが必要であると考えております。

 次に、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の限度額の見直しについてのお尋ねがありました。

 限度額の見直しについては、利用者の利便性や企業価値の向上という観点からは一定のメリットがある一方、平成二十四年の郵政民営化法改正法案に対する附帯決議では、「当面は引き上げないこと」とされています。

 私といたしましては、このような事情を踏まえつつ、さまざまな御意見も伺いながら、限度額のあり方について考えてまいります。

 次に、日本郵政グループのビジネスモデルについてお尋ねがありました。

 日本郵政グループは、ユニバーサルサービスの責務を遂行すること、上場を見据えグループ企業価値を向上させることなどを中期的なグループ経営方針とした中期経営計画を本年四月に発表し、そのビジネスモデルを示していると認識しています。

 私としましては、日本郵政グループが市場で高く評価されるよう、企業価値を向上させ、国民の皆様に民営化の成果を実感していただける経営を行うことを期待しております。

 次に、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構における専門家及び存続期間についてお尋ねがありました。

 本機構は、通信、放送、郵便分野の規制の専門家や技術者、金融、会計、財務の専門家等を機構からまたは関係事業者等から派遣することを想定しております。

 また、存続期間につきましては、海外における通信、放送、郵便事業が軌道に乗り、投資の回収が見込める期間がおおむね十年から十五年であるということを踏まえ、既存の官民ファンドの例も参考に、二十年としております。

 次に、支援基準の策定や支援決定の認可についてお尋ねがございました。

 支援基準については、法案成立後に策定するものですが、既存の官民ファンドなどを参考に、支援対象となる事業者が満たすべき基準、支援に当たり機構が従うべき基準などを規定する予定です。

 また、支援決定の認可に当たっては、支援基準に沿った決定が行われているかを判断し、総務大臣として公平公正に認可してまいります。

 次に、既存の官民ファンドや公的金融機関とのすみ分け、連携及び通信、放送、郵便の三分野に限った支援機構とした経緯についてお尋ねがございました。

 本機構は、既存の官民ファンドとは政策目的や支援の対象分野が異なるものですが、必要に応じ、情報共有、連携を行ってまいります。

 また、本機構は、融資を中心とするJBICや開発協力を行うJICAなどの公的機関による支援のみでは十分な実施が困難なプロジェクトを支援するため、設立を目指しているものですが、それらの機関とは必要に応じ連携してまいります。

 さらに、通信、放送、郵便分野は、アジアを中心に世界市場の拡大が見込まれておりますが、規制分野であり、政治的影響を受けやすいなどのリスクが高いことから、特に支援が必要と考え、本機構を設立するものです。

 次に、本機構の支援対象に郵便貯金業務を加えることについてお尋ねがありました。

 現時点では、本機構の支援対象分野として、我が国の事業者から海外展開の動きとして伺っております電気通信事業、放送事業及び郵便事業を考えております。

 御指摘の郵便貯金につきましては、現時点では支援対象としては想定していませんが、将来的な課題として認識しております。

 次に、特定信書便事業の業務範囲の見直しがユニバーサルサービスに与える影響についてお尋ねがありました。

 今回の特定信書便事業の拡大範囲において日本郵便が得ている収入は約八十九億円であり、郵便収入全体の約〇・七%にとどまること、また、特定信書便事業者は新たな需要の掘り起こしに取り組む意向を示しており、必ずしも日本郵便の現在の収入がそのまま特定信書便事業者に移行することにはならないと考えられることから、郵便のユニバーサルサービスの提供確保には支障を与えないと判断しています。

 次に、信書の取り扱いのルールについてお尋ねがありました。

 信書の取り扱いについては、武正議員御指摘のとおり、通信の秘密とユニバーサルサービス確保の観点から、一定のルールが必要です。

 このため、信書の送達は、郵便法と信書便法において、日本郵便及び総務大臣の許可を受けた信書便事業者のみにその事業の実施を認めるなど、必要な規定が設けられています。

 次に、特定信書便事業の業務範囲のさらなる拡大についてお尋ねがありました。

 特定信書便事業の業務範囲は、信書便法上、法律で直接具体的に規定をしており、仮に将来さらなる拡大を行う場合には、郵便のユニバーサルサービスに与える影響を検証した上で、改めて国会に法律案を提出し、御審議をお願いすることになるものです。

 最後に、ユニバーサルサービスの確保方策についてお尋ねがありました。

 郵政事業のユニバーサルサービスの確保方策については、平成二十五年十月に情報通信審議会へ諮問し、現在、将来にわたって安定的にユニバーサルサービスを確保するためにはどのような方策が必要かを審議していただいており、本年夏ごろを目途に答申を取りまとめていただく予定です。

 総務省といたしましては、この答申を受け、諸外国の確保方策なども参考にして、国民の暮らしを支えるユニバーサルサービスの確保に向けて必要な取り組みを進めていく所存であります。(拍手)

    〔国務大臣菅義偉君登壇〕

国務大臣(菅義偉君) テレビ朝日の「報道ステーション」におけるゲストコメンテーターの発言に関するお尋ねがございました。

 御指摘の官邸からのバッシングということについては、私の会見でも申し上げたとおり、そのような事実は全くございませんし、テレビ朝日の社長におかれても、記者会見で、圧力めいたことは一切ないと話されたものと承知をしております。

 放送法という法律がありますので、こう申し上げましたのは、放送事業者は、放送法の規定に基づいて、放送番組の編集を自主的な規律に基づいて行われている、さらに、その第四条の規定によって、放送番組の編集は、政治的に公平であること、報道は事実を曲げないですることといった原則に従って行うこととされており、放送事業者においてはそうした原則に基づいて適切に対応することになっている、そのことを述べたものであり、御指摘の停波について述べたものでは全くありません。

 放送の自律独立の担保についてお尋ねがありました。

 放送法第一条においては、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること。」と規定をされております。

 政府としては、これを尊重することは当然のことであり、御指摘の、圧力をかけるようなことは一切ございません。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の限度額についてのお尋ねがあっております。

 ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の限度額の水準につきましては、郵政民営化法において、他の金融機関などとの間の競争関係に影響を及ぼす事情、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の経営状況などを勘案することが求められておりますのは御存じのとおりです。

 また、平成二十四年の郵政民営化法改正時の附帯決議におきましても、本法の施行により直ちに勘案すべき事情が変わるわけではないことから、当面は引き上げないとされております。

 限度額の規制のあり方につきましては、こうした郵政民営化法の趣旨や附帯決議の内容に沿って考えてまいりたいと考えております。

 日本郵政グループの三社同時上場についてのお尋ねもあっております。

 郵政民営化法においては、親会社である日本郵政の株式、子会社である金融二社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命ですが、金融二社の株式の双方について、日本郵政株式の政府保有義務分を除き、できる限り早期に処分することといたしております。

 こうした中、昨年選定した主幹事証券会社の知見も踏まえ、日本郵政とも協議をし、日本郵政株式の早期処分義務を果たし早期に復興財源に充てるという観点、日本郵政の保有する金融二社株を同時に上場することによって、市場が評価するこれら二社の株式価値を日本郵政の株式価格に透明性を持って反映させるという観点などを総合的に勘案し、三社同時上場が適当との結論に至ったものであります。

 国際協力機構、JICAの海外投融資についてのお尋ねもあっております。

 JICAの海外投融資につきましては、平成十三年に、近年実績は少なく、政策的必要性が乏しくなっているとの認識のもと、廃止をされております。

 その後、産業界から再開の要望が多く寄せられたことを受け、まず、平成二十三年にパイロット案件を実施した上で、平成二十四年に本格的に再開することといたしております。

 再開に際しましては、過去の教訓も生かし、リスク管理手法の高度化などを通じ、リスク審査、管理体制を強化する、案件に対する退出計画をあらかじめ作成する、途上国政府側からの案件への支援を可能な限り確保するといった対応をとっておるところであります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣

       国務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣     高市 早苗君

       農林水産大臣   林  芳正君

       防衛大臣     中谷  元君

       国務大臣     菅  義偉君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  加藤 勝信君

       総務副大臣    西銘恒三郎君


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