衆議院

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第25号 平成27年5月19日(火曜日)

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平成二十七年五月十九日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十八号

  平成二十七年五月十九日

    午後一時開議

 第一 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 独立行政法人大学評価・学位授与機構法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

 第四 金融商品取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案を審査するため委員四十五人よりなる我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)

 日程第一 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 独立行政法人大学評価・学位授与機構法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

 日程第四 金融商品取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 特別委員会設置の件

議長(大島理森君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。

 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案を審査するため委員四十五人よりなる我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。

 ただいま議決されました特別委員会の委員は追って指名いたします。

     ――――◇―――――

 日程第一 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長奥野信亮君。

    ―――――――――――――

 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔奥野信亮君登壇〕

奥野信亮君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の施行の状況に鑑み、審判に著しい長期間を要する事件等を裁判員制度の対象事件から除外することを可能とする制度を導入するほか、裁判員等選任手続において犯罪被害者の氏名等の情報を保護するための規定等を整備しようとするものであります。

 本案は、去る四月二十日本委員会に付託され、翌二十一日上川法務大臣から提案理由の説明を聴取し、二十二日から質疑に入り、五月十二日及び十三日には参考人から意見を聴取するなど慎重に審査を行いました。

 十五日質疑を終局したところ、本案に対し、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党及び公明党の共同提案により、この法律の施行後三年を経過した場合において、新法の施行の状況等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、裁判員の参加する裁判の制度が我が国の司法制度の基盤としてより重要な役割を果たすものとなるよう、所要の措置を講ずるものとする規定の追加を内容とする修正案が、また、日本共産党から、長期間の審判を要する事件等の裁判員制度の対象事件からの除外に係る改正規定の削除等を内容とする修正案がそれぞれ提出され、提出者から両修正案について趣旨の説明を聴取した後、日本共産党提出の修正案について、内閣の意見を聴取しました。

 次いで、原案及び両修正案を一括して討論を行い、採決した結果、日本共産党提案に係る修正案は賛成少数をもって否決され、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党及び公明党共同提案に係る修正案は全会一致、修正部分を除く原案は賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第二、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長今村雅弘君。

    ―――――――――――――

 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔今村雅弘君登壇〕

今村雅弘君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、九州旅客鉄道株式会社の自主的かつ責任ある経営体制の確立等を図るための措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、九州旅客鉄道株式会社を旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の適用対象から除外すること、

 第二に、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業経営を確保するため、国土交通大臣は、九州旅客鉄道株式会社が事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針を策定し、これに照らして、必要な場合には、勧告、命令などができること、

 第三に、経営安定基金の全額を取り崩し、事業の運営に必要な費用に充てること

などであります。

 本案は、去る五月七日本委員会に付託され、八日太田国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、十三日質疑に入り、十五日、質疑終了後、討論を行い、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 独立行政法人大学評価・学位授与機構法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

議長(大島理森君) 日程第三、独立行政法人大学評価・学位授与機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。文部科学委員長福井照君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人大学評価・学位授与機構法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔福井照君登壇〕

福井照君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文部科学委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、平成二十五年十二月に閣議決定されました独立行政法人改革等に関する基本的な方針を踏まえまして、独立行政法人大学評価・学位授与機構に独立行政法人国立大学財務・経営センターを統合して、大学等の教育研究活動面と経営面の改革の支援を一体的に実施する独立行政法人とし、その名称を独立行政法人大学改革支援・学位授与機構とするものであります。

 本案は、参議院先議に係るもので、去る十二日本委員会に付託され、翌十三日下村文部科学大臣から提案理由の説明を聴取し、十五日質疑を行いました。

 質疑終局後、維新の党より修正案が提出され、趣旨の説明を聴取しました。

 次いで、討論、採決の結果、維新の党提出の修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 金融商品取引法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第四、金融商品取引法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長古川禎久君。

    ―――――――――――――

 金融商品取引法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔古川禎久君登壇〕

古川禎久君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、適格機関投資家等特例業務、いわゆるプロ向けファンドに関する特例制度をめぐる昨今の状況を踏まえ、成長資金の円滑な供給を確保しつつ、投資者の保護を図るため、適格機関投資家等特例業務を行う者について、一定の欠格事由を定め、契約の概要及びリスクを説明するための書面の契約締結前の交付の義務づけ等を行うとともに、業務改善命令、業務停止命令等の監督上の処分を導入する等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る五月十一日当委員会に付託され、十二日麻生国務大臣から提案理由の説明を聴取し、十五日、質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。法務大臣上川陽子君。

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 刑事手続については、近時、捜査、公判が取り調べ及び供述調書に過度に依存している状況にあるとの指摘がなされています。このような状況を改めて、刑事手続を時代に即したより機能的なものとし、国民からの信頼を確保するため、証拠収集手続の適正をより一層担保するとともに、取り調べ以外の証拠収集方法を整備するほか、犯罪被害者を含む刑事手続に関与する国民の負担の軽減や被告人の防御活動への配慮等を通じ、公判審理をより充実したものとすることが喫緊の課題となっています。

 また、国民が安全で安心して暮らせる国であることを実感できる、世界一安全な国日本をつくるという観点からも、その基盤となる刑事手続の機能の強化が求められています。

 そこで、この法律案は、刑事手続における証拠の収集方法の適正化及び多様化並びに公判審理の充実化を図るため、刑事訴訟法、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律、刑法その他の法律を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、取り調べの録音、録画制度の創設であります。

 すなわち、裁判員制度対象事件及びいわゆる検察官独自捜査事件について、逮捕、勾留中に行われた被疑者取り調べまたはいわゆる弁解録取手続の際に作成された供述調書等の任意性が公判において争われたときは、検察官は、原則としてその被疑者取り調べ等を録音、録画した記録媒体の証拠調べを請求しなければならないこととした上で、検察官、検察事務官または司法警察職員が、逮捕または勾留されている被疑者の取り調べ等を行うときは、一定の例外事由に該当する場合を除き、その全過程を録音、録画しておかなければならないこととするものであります。

 第二は、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の創設であります。

 すなわち、一定の財政経済犯罪及び薬物銃器犯罪を対象として、検察官と被疑者、被告人とが、弁護人の同意がある場合に、被疑者、被告人が他人の刑事事件について証拠収集等への協力をし、かつ、検察官がそれを考慮して特定の求刑等をすることを内容とする合意をすることができることとするものであります。

 第三は、犯罪捜査のための通信傍受の対象事件の拡大及び暗号技術を用いる新たな傍受の実施方法の導入であります。

 すなわち、現行法上薬物銃器犯罪等に限定されている対象犯罪に、殺人、略取誘拐、詐欺、窃盗等の罪を追加するとともに、暗号技術を活用することにより、傍受の実施の適正を確保しつつ、通信事業者等の立ち会い、封印を伴うことなく、捜査機関の施設において傍受を実施することができることとするなどの措置を講じるものであります。

 第四は、被疑者国選弁護制度の対象事件の拡大であります。

 すなわち、現行法上、同制度の対象となるのは、死刑または無期もしくは長期三年を超える懲役、禁錮に当たる罪について勾留状が発せられている被疑者であるところ、これを拡大して、勾留状が発せられている全ての被疑者とするものであります。

 第五は、証拠開示制度の拡充であります。

 すなわち、公判前整理手続または期日間整理手続において、検察官請求証拠の開示後、被告人または弁護人から請求があったときは、検察官は、その保管する証拠の一覧表を被告人または弁護人に交付しなければならないとする手続の導入等の措置を講じるものであります。

 第六は、証人等の氏名等の情報を保護するための制度の創設であります。

 すなわち、証人等の氏名等の開示について、証人等の身体または財産に対する加害行為等のおそれがあるときは、防御に実質的な不利益を生じるおそれがある場合を除き、検察官が、弁護人に当該氏名等を開示した上で、これを被告人に知らせてはならない旨の条件を付することができ、特に必要があるときは、弁護人にも開示せず、代替的な呼称等を知らせることができるとする制度等を創設するものであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。盛山正仁君。

    〔盛山正仁君登壇〕

盛山正仁君 自由民主党の盛山正仁です。

 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 我が国の刑事司法制度は、真相の解明を重視するとされるドイツ法の影響を強く受けた旧刑事訴訟法が大正時代に制定され、以後、数十年間の運用がなされました。

 戦後の昭和二十三年になって、適正手続を重視するとされるアメリカ法の考え方を取り込んだ現行の刑事訴訟法が制定されましたが、その運用においては、事案の真相解明を望む事件関係者や一般国民の熱意を背景として、精密かつ詳細に事実を解明することが強く意識されてきました。

 そのため、犯罪の捜査においては、事案の真相を最も知り得る立場にある被疑者の取り調べに力が注がれ、また、取り調べの結果として作成された詳細な供述調書は、公判での事実認定において極めて重要な証拠とされてきました。その結果、我が国の刑事司法は、諸外国に比べ、捜査、公判における取り調べ及び供述調書の比重が非常に高いことがその特徴として指摘されています。

 従来、諸外国と比べて我が国は治安のよい国であると考えられてきました。そこには、現行の刑事司法制度とその運用が一定の寄与をしてきたと考えています。しかし、近時、犯罪情勢やこれを取り巻く社会情勢は大きく変化しています。これに対応するためには、刑事司法制度のあり方もより機能的なものへと変えていかなければなりません。

 その際、まず考慮すべき事項は、刑事司法の目的は何かということであります。私は、適正手続の保障を全うしつつ、事案の真相を明らかにし、適切な処罰を実現すること、これが刑事司法の目的であり、まさに国民が刑事司法に求めていることであると考えています。

 そこで、法務大臣にお尋ねします。

 本法律案は、刑事司法の目的をどのように捉えて立案されたのでしょうか。

 さて、現行の刑事訴訟法が制定されて以降、刑事司法制度の改正は比較的小規模なものにとどまっていました。しかし、約十年前の司法制度改革による裁判員制度等の導入、あるいは種々の具体的事件等を契機として、現在の刑事司法のあり方についての問題点が指摘されるようになってきました。

 本法律案の趣旨は、現在の捜査、公判が取り調べ及び供述調書に過度に依存していることに根源的な問題があるとの認識のもと、そのような状況から脱却し、時代に即した刑事司法制度を構築することであるとされています。

 そこで、法務大臣にお尋ねします。

 現在の捜査、公判が取り調べ及び供述調書に過度に依存しているとされる状況の問題点、つまり、そのような状況から脱却しなければならない理由、そして、そのような状況から脱却するために本法律案が必要とされる理由について明確にしていただくことが重要であると考えます。

 ところで、刑事司法手続は、犯罪事実の解明を行う警察、検察等の捜査機関、これに対する被疑者、被告人及び弁護人、さらには被害者や証人として関与し得る国民などのそれぞれの権利や利害が対立することは必然であると考えられます。そのため、刑事司法の分野は、制度を策定するに当たって、その権利利益の調整を図ることが非常に困難な分野となっています。

 本法律案の具体的制度については、取り調べの録音、録画制度の創設、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の創設、通信傍受の対象事件の拡大などが一般に注目されていますが、それらのみならず、被疑者国選弁護の対象事件の拡大、証拠開示制度の拡充など、被疑者、被告人の権利利益の保護に資するもの、さらには、被害者や証人となった国民の権利利益の保護に資するものなども一体として含まれており、全体として非常にバランスのとれた法律案となっております。

 これら諸制度のうち、一部のみをピックアップして法整備を行うべきとの御意見もあるようです。しかし、私は、本法律案に掲げる諸制度について、これらを一体として法整備を行うことによって、取り調べ及び供述調書に過度に依存している状況を改善し、適正かつ機能的な刑事司法を構築できるという立案の趣旨に賛同しております。

 一体として法整備を行うことこそ、刑事司法に携わる実務家や専門家のみならず、多くの一般の国民からも支持され得るものと私は考えておりますが、この点について、法務大臣の所見をお尋ねします。

 次に、近時の我が国の犯罪情勢に目を向けますと、少子高齢化の進展、世帯規模の縮小、地域とのかかわりの希薄化といった社会構造の変化等により、犯罪抑止等に一定の機能を果たしてきたとされる社会システムの維持が困難となっている状況の中で、国民は、さまざまな犯罪の脅威に直面しています。

 とりわけ、暴力、威力や詐欺的な手法により経済的利益を追求する組織的な犯罪は、健全な経済社会活動をゆがめるとともに、市民の平穏な生活を脅かしています。

 例えば、振り込め詐欺を初めとする特殊詐欺は、平成二十六年の一日当たりの被害額が約一億五千万円に上っています。また、犯罪による子供、女性、高齢者の被害は特に深刻なものとなっています。

 国民が安全で安心して暮らせる社会を実現することは、国家としての最重要課題の一つです。政府が策定した「世界一安全な日本」創造戦略においては、国民が安全で安心して暮らせる国であることを実感できる世界一安全な国日本をつくり上げることを目指すとされています。

 本法律案は、近時の犯罪情勢に対応して、安全、安心な暮らしを実現し得るものとなっているのか、法務大臣にお尋ねします。

 最後の質問です。

 刑事司法は、いわば国民生活の基盤であり、その機能が十全なものとなるよう遅滞なく整備を進め、必要に応じて新たな制度や措置を取り入れていかなければなりません。今回の本法律案は時宜にかなったものであり、また内容においても、時代に即した刑事司法制度の構築を目指すものとなっていると考えております。

 今回の法改正がもたらす刑事司法の将来像、つまり、本法改正の効果について法務大臣がどのように考えているかをお尋ねして、私の質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 盛山正仁議員にお答えを申し上げます。

 まず、刑事司法の目的についてお尋ねがありました。

 刑事司法の目的は、現行の刑事訴訟法第一条に規定されているところであり、端的に申せば、議員御指摘のとおり、適正手続の保障を全うしつつ、事案の真相を明らかにし、適切な処罰を実現することであります。

 これは、本法律案においても全く変わるものではなく、この目的をより一層達成していくために、本法律案を提出したものであります。

 次に、捜査、公判が取り調べ及び供述調書に過度に依存している状態から脱却すべき理由と、そのために本法律案が必要とされる理由についてお尋ねがありました。

 現在の刑事司法は、捜査における事案の解明に当たり、取り調べを過度に重視し、公判立証に当たっても、取り調べを通じて作成した詳細な供述調書を過度に重視する状況にあると指摘されています。

 このような状況は、取り調べによる事案の解明を追求する余り、取り調べにおける手続の適正確保が不十分となる事態を招きかねません。また、公判立証において、供述調書の信用性に関する検討が不十分となり、公判での事実認定を誤らせるおそれがあると考えられます。

 そこで、このような状況を早急に改め、より適正で機能的な刑事司法を実現する必要があります。

 そのためには、捜査における取り調べの比重を下げるため、適正を担保しつつ証拠の収集手段を多様化すること、つまり、証拠収集手段の適正化、多様化と、公判において、より適切な証拠により、当事者間で攻撃防御を尽くして、裁判所による適正な事実認定がなされるようにすること、つまり、公判審理の充実化を図ることが求められます。

 本法律案に掲げる諸制度は、いずれもそのために必要とされるものであります。

 次に、本法律案に掲げる諸制度を一体として整備することが国民から支持され得るかとのお尋ねがありました。

 本法律案は、捜査手続に関するものから公判手続に関するものまでの内容を含んでおり、犯罪事実の解明及び適正な処罰の観点、被疑者、被告人の権利利益の保護の観点、そして被害者、証人となる国民の権利利益の保護の観点、そのいずれにも配慮した、バランスのとれたものとなっています。

 また、本法律案は、法制審議会における議論の結果を踏まえたものであり、同審議会においては、刑事法の実務家や刑事法関係の研究者のみならず、犯罪被害者、無罪判決を受けた方、経済界、労働界、マスコミ関係の方など、多様な立場の方々により審議が行われ、本法律案に掲げる諸制度について、一体として法整備を行うべきことが全会一致により取りまとめられたものであります。

 このことからも、本法律案は、多くの国民から支持され得る内容となっているものと考えています。

 次に、本法律案が安全、安心な暮らしを実現し得るものとなっているかについてお尋ねがありました。

 本法律案には、解明が困難とされる組織的な犯罪等に対処できるよう、一定の捜査手法を整備することが含まれています。

 そして、本法律案の趣旨は、それら捜査手法のみならず、他の諸制度をも含めて一体として法整備を行うことにより、より適正で機能的な刑事司法を実現し、その目的を十分に達成できるようにしようとするものであって、まさに安全、安心な暮らしを実現し得るものと考えています。

 最後に、本法改正がもたらす効果についてお尋ねがありました。

 本法改正により、捜査、公判における取り調べや供述調書の比重が相対的に低くなり、より適切な証拠によって、より適正に事実認定がなされる方向に進んでいくこととなります。

 もとより、そのためには、刑事司法に関係する者に、本法改正の趣旨を踏まえた適正な運用を着実に行っていくことが求められますし、運用状況を踏まえつつ、さらに改善を行っていく必要もあろうかと思いますが、本法改正によって、犯罪情勢や社会情勢の変化に対応しつつ、国民から信頼される、より適正で機能的な刑事司法を構築していくために、大きな一歩が踏み出せるものと確信しています。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 黒岩宇洋君。

    〔黒岩宇洋君登壇〕

黒岩宇洋君 民主党の黒岩宇洋でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について質問させていただきます。(拍手)

 今から四年半前の二〇一〇年九月二十一日が何の日か、御記憶の方はいらっしゃるでしょうか。法務省及び検察は、この日を決して忘れることはできないのです。

 この日は、いわゆる郵便不正事件の村木厚子被告の控訴を検察が断念した日、すなわち村木さんの無罪が確定した日であり、同時に、その日の全国紙朝刊一面トップに、郵便不正事件において大阪地検特捜部の検事が証拠のフロッピーディスクを改ざんしたという前代未聞の大事件が報道された日だったのです。

 そして、その日のうちに大阪地検特捜部の検事は最高検によって逮捕されるという、これも前代未聞の対応がとられた日でもあるのです。そして、たまさか私が法務大臣政務官に就任した日でもありました。

 この年の年末に、当時の検事総長が辞職をされました。在任わずか六カ月での余りにも潔いみずからの進退の決断は、検察よ、生き返れ、検察よ、もう一度よみがえれという思いと、私は深い感慨を持って受けとめた次第です。

 事件後直ちに、法務大臣のもと、外部有識者で組織する検察の在り方検討会議を立ち上げ、翌年三月には報告書をまとめました。この事件、この会議の報告書を契機に、四年がたち、今般提出されたのが、刑事訴訟法等一部改正案でございます。

 当時の担当政務官として、検察の在り方検討会議全てに出席し、また民主党政権時の法務省政務三役で唯一本院に在籍している者として、あの日からの経緯を踏まえながら質問をさせていただきます。

 今改正案は九つの柱から成り立っていますが、余りにも複雑多岐な膨大な制度、内容が積み込まれています。いかに法制審の答申を受けてといえど、制度ごとに分けて提出すれば、制度ごとの賛否が明確になりますし、論点をさらに絞り込めますから、一括審議ではなく、制度ごとに審議すべきと考えますが、法務大臣の御見解を伺います。

 また、一括審議するならば、相当なる時間と慎重な審議が必要と考えますし、法務大臣としても、当然国会に対しその旨を望んでいらっしゃると思いますが、いかがでしょうか。

 刑事司法の根源的な課題は、一人も無辜の者を有罪にしてはいけないという冤罪防止の要請と、真犯人は逃してはならないという真相解明機能の維持向上という要請と、ともすれば二律背反する原則を両立させなければいけないという点にあります。

 証拠改ざん事件発生後、まずは冤罪防止策を講じようというのが当時の法務省の考え方でしたし、国民からの要請でもありました。しかし、その後、可視化によって真相解明機能が低下するのではという懸念も示され、通信傍受の拡大、司法取引やおとり捜査などの新たな捜査手法の必要性も議論され始めました。冤罪防止機能と真相解明機能のバランスを保ついわゆる見合い論です。

 しかし、今回の改正案の要綱には、その見合い論に関する記述も、新たな捜査手法の導入という文言も一切明記されておりません。見合い論なら見合い論として率直な内容を国民に提示し、我が国に司法取引が新たに導入されたり通信傍受の拡大が盛り込まれる旨を国民に説明すれば、今法案がさらに国民の関心、注目を浴び、全国民的な合意を形成しながら議論できるはずであると考えますが、法務大臣の御見解をお伺いいたします。

 私は、検察が平成二十三年四月の法務大臣指示によって可視化の試行を始め、ここまで取り組み、そして、今法案において警察も含め制度化しようとしていることについては相当程度の評価をしております。

 そこで、お聞きしますが、この四年間の可視化実施、試行についての法務大臣としての評価はいかがなものでしょうか。

 法務省に問うたところ、経験を積んだことによって可視化自体になれ、問題はないとの見解でした。大臣も、去る三月二十日、法務委員会での大臣所信に対する質疑で、試行の結果、可視化は全体としては有用性が極めて高い、すなわち、事実認定の立証についても積極的に評価している旨を答弁されていらっしゃいました。

 このことは、当然、真相解明機能が全体として低下しなかったと理解してよろしいのですね。法務大臣、伺います。

 だとすれば、附則九条、三年後の見直し条項に、取り調べの録音、録画等に伴って捜査上の支障そのほかの弊害が生じ得る場合があること等を踏まえと、既に真相解明機能の低下が織り込み済みなのはなぜでしょうか。真相解明機能の低下があったのならば、その低下を示す根拠、何らかのデータはあるのでしょうか。ないのなら、附則九条に、生じ得る場合があることを踏まえと明記することはできないのではないでしょうか。

 真相解明機能の低下がないとすれば、本来の見合い論では新たな捜査手法の導入は必要ないということになりますし、逆に、解明機能が低下したとすれば、今までの取り調べに問題があったということになり、それについても徹底検証の必要性が生じます。法務大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、改正案の各柱、各論について質問いたします。

 まず、一本目の柱、取り調べの録音、録画の導入についてですが、可視化の例外事由として四点挙げられています。そのうち、二号の、被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときとは、また、四号の、被疑者もしくはその親族の身体、財産への加害行為または畏怖、困惑行為がなされるおそれがあるときとの畏怖、困惑とはどのような具体的、客観的基準で判断するのでしょうか。両号ともに、恣意的な運用によって可視化の例外とされない担保はあるのでしょうか。法務大臣、国家公安委員長の御見解を伺います。

 次に、二本目の柱、合意制度等の導入について質問いたします。

 この合意制度という名称は余りにも国民にわかりづらいのではないのでしょうか。この制度は、ある事件の被疑者、被告人が別件の他人の犯罪事実を明らかにすることによって検察官が不起訴や減軽等をする旨の合意ができるというものですが、これは米国で言えば明らかに、司法取引の一類型、捜査、公判別件協力型と呼ばれるものです。合意制度では、法律の専門家以外の方にはほとんど意味がわからないはずです。

 国民が制度を明確にイメージできるためにも、法案要綱では日本版司法取引との名称を使うべきではないでしょうか。法務大臣の御見解を伺います。

 また、合意においては弁護人の同意が条件であるから虚偽の供述は抑制されるとの説明ですが、被疑者、被告人は弁護人のクライアントであります。弁護人もクライアントの利益を望むでしょう。

 また、虚偽供述に対する処罰規定があったとしても、自己の利益のために虚偽の供述を行い他人に不利益を生じさせる、いわゆる引き込みの危険性があるのではないでしょうか。

 司法取引のもう一つの類型、自己の罪状について供述することによって自己の減軽等と取引をする自己負罪型司法取引ではなく、他人に不利益を生じさせかねない捜査、公判別件協力型から導入したことも合点がいきません。

 米国では、引き込みによる冤罪または可罰の事例がありますが、我が国での司法取引制度導入によって新たな冤罪を生む可能性が高まるとしたら、冤罪続出法案とも呼ばれかねず、大きな問題です。法務大臣の御見解を伺います。

 次に、刑事免責制度について質問いたします。

 この名称も国民には大変わかりづらいと感じます。免責とありますから、何か責任を免れてメリットがあるかのような響きです。しかし、この制度は、公判における証人は、刑訴法百四十六条によって、本来自己に不利益な事項については証言を拒否できるのに、裁判所の決定で不利益証言に対する刑事的免責を与える条件のもと、自己に不利益な事項を含め証言を義務づけするという制度であります。制度名を不利益証言義務づけ制度とした方が国民にわかりやすいと考えますが、法務大臣の御見解を伺います。

 憲法三十八条には、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」とあります。この不利益は刑事的な不利益を指すとの判例が下されていますが、証人は本来、刑事的に限定されていようと、自己に不利益な証言を拒否する権利があるわけです。しかし、その権利が裁判所による決定という権力作用で剥奪され、いかに刑事免責されるといえども、自己の犯罪などを証言すればそれが社会に公表されるわけですから、明らかに社会的には自己に不利益となるわけです。

 証人にとっては人権侵害の危険すら大きいと考えますが、法務大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、三本目の柱である、通信傍受の合理化、効率化についてお聞きいたします。

 現行の薬物犯罪や銃器犯罪など四類型の対象犯罪から、さらに新たに二十二もの対象犯罪が加えられました。一定の組織による犯罪という要件の網が新たにかけられましたけれども、対象犯罪は、殺人のほかに傷害や窃盗など、認知件数が相当見込まれる犯罪までもが含まれています。にもかかわらず、通信傍受の拡大という文言が一切要綱には記されていないのが不思議です。

 この対象犯罪の大幅な拡大でどれほど通信傍受の実施件数が増加すると予測されるのでしょうか。国家公安委員長にお伺いいたします。

 また、大幅な増加によって国民のプライバシー権侵害の増大の危険性についてはいかがお考えでしょうか。法務大臣の御見解を伺います。

 本改正案の九本の柱のうち、結局、代表質問においては三本の柱までしか聞くことができませんでした。余りにも改正内容が複雑多岐で膨大過ぎる証左であります。

 最後に、あくまでも真に国民のための刑事司法制度の確立、あくまでも真に国民のための刑事訴訟法等の改正を議論すべく、徹底した慎重審議を強く強く要請申し上げまして、私の代表質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 黒岩宇洋議員にお答え申し上げます。

 まず、本法律案に掲げる諸制度を一括審議することの適否及び審議のあり方についてお尋ねがありました。

 現在の刑事司法は、捜査における事案の解明に当たり、取り調べを過度に重視し、公判立証に当たっても、取り調べを通じて作成した詳細な供述調書を過度に重視する状況にあると指摘されています。本法律案は、このような状況を改めるため、証拠収集手段の適正化と公判審理の充実化を図るものであります。

 本法律案に掲げる諸制度は、それぞれがこの目的のために必要なものであり、それら全てが一体として刑事司法制度に取り入れられることによってこそ、取り調べ及び供述調書に過度に依存した状況が改められ、より適正で機能的な刑事司法制度を構築することができると考えています。

 したがって、本法律案に掲げる諸制度につきましては、一括して御審議いただく必要があり、充実した御審議の上で、本法律案をできる限り早期に成立させていただきたいと考えております。

 次に、本法律案といわゆる見合い論との関係についてお尋ねがありました。

 本法律案における合意制度の導入や通信傍受法の改正は、取り調べの録音、録画制度の導入によって取り調べの機能が損なわれることを前提に、その損なわれた機能を補うための見合いとして行うというものではありません。

 本法律案の趣旨は、さきに申したとおり、現在の捜査、公判の取り調べ及び供述調書に過度に依存している状況を改めるため、証拠収集手段の適正化、多様化と公判審理の充実化を図ることにあります。

 合意制度の導入や通信傍受法の改正は証拠収集手続の適正化、多様化を図るものであり、これらが他の諸制度と一体として刑事司法制度に取り入れられることによってこそ、取り調べ及び供述調書に過度に依存した状況が改められると考えているところです。

 もとより、刑事司法制度のあり方は国民生活の基盤であり、本法律案については、国民の皆様に十分に御理解いただけるよう、国会審議を通じて丁寧な御説明を行っていくことが重要であると考えています。

 次に、取り調べの録音、録画の試行による取り調べの機能への影響についてお尋ねがありました。

 これまでの検察における取り調べの録音、録画の試行の検証結果によりますと、取り調べの録音、録画には、被疑者の供述の任意性等の的確な立証判断に資する、取り調べの適正な実施に資するなどの有用性が認められる一方で、取り調べの録音、録画によって被疑者が十分な供述をしづらくなり、取り調べや捜査の機能に支障が生じる場合があるなどの問題点もあるものと考えております。

 本法律案における録音、録画制度は、このような有用性を生かしつつ、取り調べの機能等に支障が生じないようにバランスをとるという考え方に立って立案したところでございます。

 次に、取り調べの録音、録画が取り調べの機能に影響するという根拠、及びこれまでの取り調べに問題はなかったのかについてお尋ねがありました。

 まず、取り調べの録音、録画が取り調べの機能に与える影響については、平成二十四年七月に公表された、検察における取り調べの録音、録画の検証結果においても、例えば、録音、録画をされると、取り調べにおける発言が逐一記録され、後の公判で自己に不利益な証拠として用いられるおそれがあるとして、被疑者が録音、録画を拒否した事例や、録音、録画をしていない取り調べでは、犯行に関連する女性との交友関係について供述していた被疑者が、録音、録画のもとでは、その点を繰り返し質問されても供述を拒み、録音、録画のもとでは全てを正直に話せないと申し立てた事例などが報告されています。

 このような事例により、取り調べの録音、録画が被疑者の心理に与える影響等によって、被疑者が十分な供述をしづらくなる場合があることは実証的に確認されているものと考えております。

 また、取り調べの録音、録画の影響により被疑者が十分な供述をしづらくなる場合があるからといって、これまでの取り調べに一般的に問題があったことにはならないことから、御指摘のような検証を行う必要はないものと考えております。

 次に、取り調べの録音、録画義務の例外事由の判断のあり方及び適正な運用の担保についてお尋ねがありました。

 まず、本法律案の刑事訴訟法第三百一条の二第四項第二号については、例外事由を判断する事情を、被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動に限定しており、あくまでも、外部にあらわれた被疑者の言動によって、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないかどうかが判断されることになります。

 また、本法律案の刑事訴訟法第三百一条の二第四項第四号については、犯罪の性質、関係者の言動、被疑者がその構成員である団体の性格その他の事情によって、畏怖、困惑行為がなされるおそれがあるかどうかを判断することになります。

 そして、畏怖、困惑行為の内容は、そのおそれがあるがゆえに、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないこととなる程度のものに限られることになると考えております。

 例外事由の運用において、捜査機関が例外事由に当たると判断して録音、録画をしなかった場合に、公判で例外事由の存否が問題となったときは、裁判所による審査の対象となり、捜査機関側の責任で例外事由を立証する必要があります。

 そのため、捜査機関としては、例外事由を十分に立証できる見込みがない限り、例外事由に当たると判断して録音、録画をしないことはできないと考えられ、例外事由が恣意的に運用される余地はないものと考えております。

 次に、いわゆる合意制度の名称についてお尋ねがありました。

 この制度は、一定の財政経済犯罪と薬物銃器犯罪について、検察官と被疑者、被告人とが、弁護人の同意のもとで、被疑者、被告人が、共犯者等の他人の刑事事件の解明に資する供述をしたり、証拠物を提出するなどの協力行為をし、検察官が、被疑者、被告人の事件において、その協力行為を被疑者、被告人に有利に考慮して、一定の軽い求刑をしたり不起訴処分にするなどの取り扱いをすることを内容とする合意をすることができるとするものであります。すなわち、その骨格は、被疑者、被告人による証拠収集等への協力と、検察官による訴追とに関して合意をするという点にあります。

 そこで、本法律案においては、この制度について規定する章の名称を証拠収集等への協力及び訴追に関する合意とし、これを法律案の要綱でも使用しているものであり、制度の内容を端的にあらわし、国民が明確なイメージを持てるものになっていると考えています。

 次に、いわゆる合意制度に関し、無関係の第三者を巻き込むことにより、冤罪を生じる危険があるのではないかとのお尋ねがありました。

 お尋ねの点については、そのようなことが生じないように、制度上、次のような手当てをしているところであります。

 すなわち、合意の成立に至る過程には弁護人が必ず関与することとしています。また、合意に基づく供述が他人の公判で証拠として用いられるときは、合意内容が裁判所において必ずオープンにされ、その供述の信用性が厳しく吟味されることとなります。そのため、検察官としても、十分な裏づけ証拠があるなど、裁判でも十分に信用される場合でない限り、合意に基づく供述を証拠として使うことはできないと考えられます。さらに、合意をした者が捜査機関に対して虚偽の供述等をした場合には処罰の対象となります。

 したがって、合意制度は、虚偽の供述により第三者を巻き込むおそれに適切に対処できるものになっていると考えています。

 次に、いわゆる刑事免責制度の名称についてお尋ねがありました。

 この制度は、裁判所の決定により、証言及びこれに基づいて得られた証拠が証人自身の刑事事件において不利益な証拠とされないという免責を付与することによって、証人の自己負罪拒否特権の対象とならないようにする制度であります。

 本法律案においては、この制度についての名称を規定してはいませんが、証人の刑事事件に関して免責を付与することが制度の根幹であるので、法律案の要綱において刑事免責制度という名称を用いているものであり、制度の内容を端的にあらわしていると考えています。

 次に、いわゆる刑事免責制度について、証人に社会的な不利益をこうむらせるのではないかとのお尋ねがありました。

 憲法第三十八条第一項が保障する自己負罪拒否特権の対象は、証人が刑事上の責任を問われるおそれのある事項とされており、一般的に、証人は、証言により社会的な不利益をこうむるおそれがあったとしても、当該証言により刑事上の責任を問われるおそれがない限り、自己負罪拒否特権に基づいて証言を拒絶することができません。

 そのため、刑事免責制度により証言を義務づけられた際に、証言により社会的な不利益をこうむるおそれがあったとしても、当該証人を現行制度における一般の証人より不利益な立場に置くものではなく、刑事免責制度は、証人の人権を侵害するような制度ではないと考えています。

 最後に、通信傍受の対象犯罪の拡大により、国民のプライバシー侵害が増大するのではないかとのお尋ねがありました。

 本法律案における通信傍受法の改正による対象犯罪の拡大は、通信傍受の運用状況や現時点における犯罪情勢、捜査の実情等を踏まえ、現に一般国民にとって重大な脅威となり、社会問題化している犯罪であって、通信傍受の対象とすることが必要不可欠なものを対象犯罪に追加するものであります。

 そして、新たに追加する対象犯罪には、現行通信傍受法の厳格な要件に加えて、組織的な犯罪に適切に対処するという通信傍受法の趣旨を全うするため、一定の組織性の要件を設け、それをも満たす場合でなければ傍受令状が発付されないこととしております。

 実際にも、これらの厳格な要件を満たす事案は組織的な犯罪に限られることとなることから、一般の国民のプライバシーが不当に制約されるといった懸念はないものと考えております。(拍手)

    〔国務大臣山谷えり子君登壇〕

国務大臣(山谷えり子君) 黒岩宇洋議員より、取り調べの録音、録画制度の例外規定の運用についてお尋ねがありました。

 録音、録画制度については、取り調べで供述が得られなくなり、事案の真相解明に支障が生じることがないようにするとの観点も重要であり、原則、全過程の録音、録画を義務づけるとしても、一定の範囲で例外を設けることは必要であると認識しております。

 例外事由の判断のあり方については、法務大臣からお答えがあったとおりでありますが、例外に当たるとして録音、録画をしなかった場合には、その判断は、後に裁判において争われ得ること、その場合には、捜査機関側の責任で例外事由の該当性を立証する必要があることなどから、捜査段階において例外規定が恣意的に運用されることはないと考えております。

 次に、法改正後の通信傍受件数の予測についてお尋ねがありました。

 今回の改正法案においては、通信傍受の対象犯罪として、一定の組織性を有することを要件として加重した上で、振り込め詐欺や組織窃盗、暴力団等の犯罪組織による殺傷事犯等、社会問題化している犯罪を新たに追加することとしております。

 この対象犯罪の拡大等により、通信傍受の実施件数は一定程度増加することが予測されますが、どの程度増加することになるかについては、当該罪名に係る事件がどの程度発生し、そのうち組織的に行われる事案がどの程度あるか、通信傍受の要件を満たすことの疎明が可能な程度に捜査が進展する事案がどの程度あるか、通信傍受の実施に必要な体制をどの程度とることができるかなどのさまざまな事情に左右されることから、現時点で具体的にお答えすることは困難と考えております。(拍手)

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議長(大島理森君) 井出庸生君。

    〔井出庸生君登壇〕

井出庸生君 維新の党、信州長野の井出庸生です。

 党を代表して、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ち、おととい五月十七日に行われた大阪都構想住民投票について、〇・八ポイントという僅差ながらも反対多数となり、史上初の挑戦とも言える地域発の統治機構改革を実現することはできませんでした。

 まだまだ力不足。しかし、硬直化した官僚主義と既得権益の厚い壁を打ち破って、納税者のための政治を実現してほしいという熱い思いと、我々に寄せられる強い民意を確認することもできました。

 維新の党は、改革のスピリットを持ち続け、みずからイノベーションをしながら、不撓不屈の精神で一丸となって歩んでいくことを宣言いたします。国民の皆様、各党各会派の皆様、どうぞ引き続きよろしくお願いをいたします。

 さて、本法案ですが、残念ながら、取り調べ可視化わずか三%、にもかかわらず司法取引導入、さらに通信傍受大幅拡大法案と言わざるを得ません。

 厚生労働省事務次官の村木厚子さんが逮捕され、無罪となった事件で、真実と異なる供述を部下から引き出した密室の強引な取り調べと、人質司法とも呼ばれる捜査側の意向の大きく働く長期間の被疑者、被告の勾留、そして証拠の改ざん。この事件によって、日本の刑事捜査は一からの出直し、いや、ゼロからの再スタートを迫られたはずでした。

 この事件だけではありません。

 古くは大正時代、無実の強盗殺人の罪を他人の虚偽供述によって負わされ、二十一年間の拘留、五十年を経てようやく無罪となった吉田巌窟王事件を初め、最近でも、先日、十二人の無罪となった人たちに賠償判決の出た志布志事件、再審無罪となった足利事件、布川事件、そして再審決定した袴田事件など、日本の刑事捜査の問題を見直す根本解決の手段の一つが、この取り調べの可視化だったはずです。

 それが、可視化は裁判員対象事件と検察の独自捜査事件、全刑事事件のわずか三%に限定をされ、刑事事件の第一次捜査権を持ち、事件の趨勢を決めると言ってもいい警察捜査の可視化に大きな前進が全くなかったことは、極めて残念であります。

 まず、法案の取り調べ可視化について、警察サイド、国家公安委員長に伺います。

 警察が長年取り調べ可視化について抵抗してきた理由は、主に三つあります。

 抵抗する理由の第一は、組織の規模、扱う事件の多さです。各都道府県警察本部や警察署など、重大事件を取り調べる施設は全国に一千二百あり、録画機器は一体約百万円、全ての施設に十分な機器を設置するのは相当の予算が伴うと言われています。

 抵抗する理由の第二は、警察の扱う事件はほぼ全てが検察庁に送致され、検察の独自事件のように一つの組織では完結をしない、別組織のチェックが働くから問題ないという主張です。

 そして、抵抗する理由の第三、これは検察も言い続けてきた最大の抵抗理由でもありますが、取り調べをカメラで録画、録音すると、捜査員と被疑者の信頼関係が築けない、緊張して話ができなくなるなど、取り調べに支障が出るという主張です。

 抵抗理由の第三について、地下鉄サリン事件の話をさせていただきます。

 地下鉄サリン事件では、オウム真理教の信者ら百九十二人が逮捕され、その全ての被告人に判決が出ております。歴史上まれに見る重大な犯罪でしたが、全てを法の裁きにかけたことは、法治国家として誇るべきことだと思います。

 この地下鉄サリン事件は、捜査開始直後、被疑者の多くがマインドコントロールされていたこともあり、皆取り調べに口を閉ざし、捜査が行き詰まったときがありました。

 地下鉄にサリンをまいた実行犯の一人、林郁夫受刑者も、逮捕直後、口を閉ざしていました。このとき、林受刑者を取り調べ、サリンをまきましたと全面自供に導き、この事件全体の捜査を大きく進展させ、今も語り継がれている元捜査員がいます。

 当時、警部補として林受刑者の取り調べを担当した稲冨功さんは、林受刑者が医師だったため、林受刑者のことを先生と呼び、上司から叱責されても先生と呼び続けたエピソードで有名です。

 私は、昨日、稲冨さんにお会いしてきました。

 稲冨さんは、取り調べの全事件、全面的な可視化に大賛成で、可視化は、被疑者だけでなく、取り調べに当たる刑事の仕事ぶりを裁判で客観的に見てもらう、また、取り調べ段階でも、状況の説明を求める上司に説明がしやすくなるなど、刑事を守ることにもなるとお話しくださいました。

 私が、カメラで取り調べを撮影すれば、被疑者と刑事の信頼関係が築けないのではないかと聞いたところ、被疑者が刑事を信頼することは真実を話す一つの理由にすぎない、そもそも刑事は、被疑者を信頼することよりも、真実を引き出すために、被疑者の性格、様子をつぶさに分析し、心理学的なアプローチなどあらゆる手を尽くすことが大切だと強調されました。

 稲冨さんが林受刑者のことを先生と呼び続けたのは、決して稲冨さんが優しいからだとか林受刑者に信頼してもらうためではなく、林受刑者の発言や様子、医師としての倫理観などを分析した上で、真相を引き出すために行った冷静な取り調べだったのです。

 そこで、そもそも警察組織として、捜査員が被疑者から真実の自供を引き出す、例えば心理学的な研究や研修を実施してきているのか、信頼関係という抽象的な言葉で取り調べの科学的な研究を怠ってこなかったのか、その取り組みを伺います。

 取り調べ可視化が必要とされたのは、そもそも、捜査側の意に沿った供述を認めさせる強引な取り調べが問題となったからであり、そのような取り調べには到底信頼関係があるとは思えず、可視化に抵抗する理由に被疑者との信頼関係を挙げることは筋違いであると考えますが、いかがでしょうか。

 可視化をすると取り調べが緊張してしまうというのであれば、全ての捜査員にICレコーダーを貸与して、録音だけすればよいと提案をいたしますが、いかがでしょうか。

 ICレコーダーを使った録音だけを実施する場合、緊張感の緩和に加え、さらに予算が抑えられると思います。ICレコーダーは現在二千円台から多数あり、全捜査員の分をそろえたとしてもコストが改善されると思いますが、見解を伺います。

 さらに、ICレコーダーを使った録音の一番のメリットは、捜査員が全員ICレコーダーを持つことで、全ての事件の取り調べ、参考人の調べ、現場の聞き込みなどを記録できる大きな可能性があることです。

 現在の法案では、取り調べ室にカメラを隠した物々しい黒い箱が置かれて、緊張しやすい状態をみずからつくった上で、わずか三%の事件しか可視化されません。

 そうではなくて、できるだけ多くの事件を記録しておくという、いざというときの備え、つまり、裁判で供述の任意性が争われたときのために、多くの事件を全面的に記録する意識がなければなりません。

 捜査員が、いつでもどこでも、大事だと思った取り調べや参考人聴取、聞き込みなどを広く録音できる制度を構築することこそが本質だと考えますが、いかがでしょうか。

 このことは、裁判になったときに、警察や検察、捜査側にも大きなメリットをもたらすことを強調しておきます。

 現在、裁判所側は、捜査段階の供述の任意性が裁判で争われた場合、客観的に録音、録画されたものを必ずと言っていいほど見るようになっています。

 最高裁判所刑事局は、去年三月の法制審議会特別部会で次のように話しています。以下、要点を紹介します。

 任意性立証のために最も適した証拠が取り調べの録音、録画の記録媒体であるということについては、おおむね共通認識が得られてきている。最終的には、録音、録画媒体がない場合には、その取り調べで得られた供述の証拠能力に関し、証拠調べを請求する側に現在よりも重い立証上の責任が負わされるという運用に恐らくなっていくのだろうと思う。この点は、録音、録画義務が課されていない事件についても、被疑者の供述が鍵となる事件においては、リスクの意味合いという意味では同様のことが言えるのではないかというふうに考えていると。

 この最後のリスクという言葉は、捜査機関がリスクを負うという意味です。取り調べの可視化は、もはや捜査機関の主張を裁判所で認めてもらうために不可欠なのであります。

 一次捜査を担当する警察は特に、この裁判所の見解を真摯に踏まえ、幅広く録音する意識が必要だと思いますが、この裁判所の見解について所感を伺います。

 警察段階での自白が事件を決することが多いにもかかわらず、録画をしていませんでした、検事さんの調べにお任せします、そんな事件が九七%もあれば、現場で汗をかいている警察職員二十五万人の努力を裁判の場で無にすることにならないのか、見解を伺います。

 抵抗理由の二つ目に、検察によって警察段階の供述をチェックされると言っておりますが、刑訴法上、検察の取り調べ権限と供述調書の証拠能力は同じとされております。警察と検察の捜査で可視化に差をつけるようなこの法案は、警察が、検察と同等の捜査権限をみずから放棄することに等しいと思えますが、それでよろしいのでしょうか。

 ここからは法務大臣に伺います。

 さきに挙げた裁判所の見解からすると、可視化に例外化が広く設定されているこの法案では、裁判を進める上で検察側に不利が生じると考えますが、いかがでしょうか。

 供述の信用性が争われるケースは、裁判員裁判事件だと六十件に一件の割合、その他の事件は六百件に一件だからという理由で全事件可視化に反対する意見がありますが、捜査側にもメリットのある可視化を罪の重い裁判員事件に限定することは、罪の重さによって立証の方法にあらかじめ差をつけることになり、被疑者、被告に対し公平公正な立証が尽くされる制度ではないと考えますが、いかがでしょうか。

 裁判員裁判という罪の重い犯罪に可視化を限定するのではなくて、供述の争いが生じる可能性の高い否認事件に対し、できるだけ広く録音を実施するべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 平成二十三年の一年間、刑事第一審、地裁における判決言い渡し人員の総数は五万七千九百六十八名、そのうち、否認事件の件数は四千七百三十四名、八・二%だったと法務省は話していますが、五千件程度を録音だけするというのであれば十分可能と考えますが、やりませんか。

 録音を否認事件に拡大するべきだと提案をすれば、いつ否認を始めるのか、否認の程度もわからないなどとおっしゃいますが、少なくとも、否認に転じたら録音を始めるというだけでも、裁判で供述の任意性を証明する一端になるし、十分対応可能と考えますが、いかがでしょうか。

 そもそも、裁判員裁判の対象事件は、国民の関心が高く社会的に重大な事件であり、一方、無実が推定される被告人にとっては、痴漢のような冤罪も仕事や人間関係を失う重大なものですから、裁判員裁判事件のみ可視化の対象とすることは、冤罪の防止という可視化の社会的要請を果たせないと考えますが、いかがでしょうか。

 法案の附則に三年後に見直す規定がありますが、法制審の特別部会で委員だった村木厚子さんや、痴漢事件をテーマに冤罪を世の中に問うた映画監督周防正行さんは、可視化のさらなる拡大のための第一歩として、今回の案を不満ながら了承したと言われております。

 今後の可視化対象の拡大を、見直し規定よりも強く、法律で確約、明文化するべきではないでしょうか。

 次に、合意制度等の導入、いわゆる司法取引について。

 本法案では、司法取引の真実性を担保するため、虚偽供述をした被告人を処罰する規定が新たに盛り込まれました。

 現在は、裁判に出廷した証人に対する偽証罪しかありませんが、二〇一三年は、偽証罪が適用された件数は百三十八件。このうち起訴された件数は何件でしょうか。

 また、この百三十八件のうち、検察側がみずからの主張を補強するために請求した証人が偽証をし、検察がこれを起訴した件数と、全体に占める割合がどれだけあるか、お答えください。

 検察側証人が偽証罪に問われてきたかどうかは、今後、司法取引で、被告人や証人が検察に沿う虚偽の証言や供述をした場合に、検察が新しい処罰規定を使う意欲が本当にあるのかという根本的な問題にかかわります。

 裁判所も、法制審の議論で、実効性としてはいささか足りないと思わざるを得ないと、この点を意見しております。

 検察が、検察側証人の偽証をどれだけ立件してきたのか、過去を詳細に分析し、今後の法務委員会で明らかにするよう求めますが、説明するおつもりがあるかないか、伺います。

 司法取引を裁判所は疑いを持って見ております。捜査側にとっても、リスクの高い捜査手法と言えます。

 去年六月、新時代の刑事司法制度特別部会では、裁判所側から、裁判実務では、類型的にこの種の供述は警戒すべきものと考えられてきた、こういう形で証人が出てきた場合には、その証人の信用性には、最初から少なくともある種の疑問符といいますか、留保というものを持ってその証言を聞くということになるとの発言もあります。

 この裁判所の発言を踏まえれば、司法取引の場面を可視化することは絶対に必要であって、検察が主体的にセットをしていく協議の場とやらを可視化することは一〇〇%可能であると考えますが、可視化するおつもりはありますでしょうか。

 通信傍受については、聞きたいことが多々ありますが、きょうは後の質問者にお譲りをいたします。

 最後に、保釈の考慮事情の明確化について。

 村木さんは、検事から、私の仕事はあなたの供述を変えさせることだと言われたと話しております。真実を守り通した結果、百六十一日間も勾留されました。

 一方、元部下は、検察の意向に沿う供述をし、起訴後すぐに釈放されています。この供述によって、村木さんは逮捕されたのです。

 捜査側の立証趣旨を認め、立証趣旨に合った供述をしなければ保釈はない、そう言われた冤罪の被害者や被告の例は多数あり、いわゆる人質司法と呼ばれてきたことは、多くの人が知るところであり、改善が求められますが、本法案はこうした問題解決につながるのか否か、見解を伺います。

 本日は、二十問、本法案の数多き問題点のほんの一端を伺ったにすぎません。今後の徹底審議をお誓いして、終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 井出庸生議員にお答え申し上げます。

 まず、取り調べの録音、録画制度の例外事由を設けることによる供述の任意性立証への影響についてお尋ねがありました。

 本制度においては、原則として取り調べの全過程の録音、録画を義務づけつつ、一定の例外事由を設けることとしています。

 本制度については、被疑者の供述の任意性の立証、判断に資するという観点だけではなく、録音、録画により、取り調べで供述が得られなくなり、真犯人の検挙、処罰ができなくなることがないようにするとの観点も重要であり、一定の例外事由を設けることは不可欠であると考えております。

 もとより、このような例外事由を設けることが、直ちに、公判立証上、検察側に不利になるものではないと考えております。

 次に、本法律案における取り調べの録音、録画制度の対象事件の範囲の適否についてお尋ねがありました。

 本制度におきましては、裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件を対象とすることとしています。

 これは、全ての事件を一律に本制度の対象とすることは、その必要性や現実性に疑問がある上、本制度は、捜査機関に、これまでにない新たな義務を課するもので、捜査への影響を懸念する意見もあることなどから、録音、録画の必要性が最も高い類型の事件を対象としたものであり、合理的なものであると考えております。

 検察においては、運用による取り調べの録音、録画を拡大しており、本制度の対象事件以外の事件においても、被疑者の供述が立証上重要であるものなどについては必要な録音、録画が行われ、供述の任意性について、録音、録画記録による的確な立証がなされることになると考えています。

 次に、否認事件を取り調べの録音、録画制度の対象とすべきではないかとのお尋ねがありました。

 本制度は、捜査機関に取り調べの録音、録画を義務づけることなどを内容とするものであることから、対象事件の範囲を、法律により、厳密かつ明確な形で画する必要があります。

 しかし、例えば、被疑者が被疑事実を全体的に認めつつも、一部について異なる供述をしていたり、被疑者が、外形的な被疑事実は認めつつ、動機等について、他の関係証拠から認められる事実関係と異なる供述をしている場合などもあり、否認事件かどうかを法律上明確に定めることは困難です。

 したがって、否認事件を法制度の対象事件とすることは相当でないと考えております。

 もっとも、検察においては、本制度の対象とならない事件についても、運用による取り調べの録音、録画を積極的に実施しており、否認事件を含め、被疑者の供述が立証上重要であるものなどについては、必要な録音、録画が行われることになると考えております。

 次に、事件数の観点からは、否認事件を取り調べの録音、録画制度の対象とできるのではないかとのお尋ねがありました。

 先ほど述べた理由から、法律上の制度として、否認事件を本制度の対象とすることは相当ではないと考えております。

 次に、否認に転じた以降の取り調べを取り調べの録音、録画制度の対象とすることについてお尋ねがありました。

 先ほど述べたのと同様の理由から、被疑者が否認に転じた場合を、法律により、厳密かつ明確に定めることは困難であり、法律上の制度として、御指摘のような範囲の取り調べを本制度の対象とすることは相当でないと考えております。

 次に、取り調べの録音、録画制度の対象事件の範囲が狭く、制度の要請を果たせないのではないかとお尋ねがありました。

 本制度の対象事件は、制度の対象とならない事件についても、検察等の運用による取り調べの録音、録画が行われることをもあわせ考慮した上で、法律上の制度としては、取り調べの録音、録画の必要性が最も高いと考えられる類型の事件としたものであります。

 本制度の対象とならない事件につきましても、被疑者の供述が立証上重要であるものなどについては、検察の運用において、必要な録音、録画が行われることになるため、御懸念は当たらないものと考えております。

 次に、取り調べの録音、録画制度の対象事件の今後の拡大についてお尋ねがありました。

 本制度については、本法律案の附則第九条において、施行後三年が経過した後に必要な見直しを行う旨の、いわゆる検討条項を設けております。

 もっとも、本制度はこれまでにない新しい制度であり、その効果や課題については、実際に制度を運用してみなければわからないところが少なくないことなどから、現段階で、対象事件のあり方を含め、見直しの方向性について定めることとはしておらず、捜査機関の運用によるものを含め、取り調べの録音、録画の実施状況等を勘案しつつ、制度の趣旨等を十分に踏まえた検討を行うことが重要であると考えています。

 次に、平成二十五年において、偽証罪により起訴された件数についてお尋ねがありました。

 平成二十五年の検察庁における偽証罪による処理人員の総数は百三十八人であるところ、そのうちの起訴人員は合計九人であると承知しております。

 次に、検察官請求の証人が偽証をしたとして検察が起訴した件数、及びそれが全体に占める割合についてお尋ねがありました。

 法務省においては、お尋ねのような観点での統計的な把握をしておらず、お答えをすることは困難であります。

 次に、検察官請求証人に係る偽証事件の立件状況に関する分析、説明についてお尋ねがありました。

 その分析のためには、基本的に、個別事件の記録の精査を要するとともに、それでも把握できない事柄もあり得ることから、どの範囲で分析等を行うことができるかについては、検討を要するものと考えています。

 次に、いわゆる合意制度に関し、協議の過程の録音、録画を義務づけるべきではないかとのお尋ねがありました。

 協議は、合意に向けた交渉としての性格を有するものであり、仮に、その過程について録音、録画を義務づけた場合には、自由な協議が大きく阻害されることになると考えられます。

 また、合意に基づく供述が他人の公判で証拠として用いられるときは、合意内容が裁判所において必ずオープンにされ、その信用性が厳しく吟味される仕組みとするなどの制度的な手当てをしております。

 したがって、協議の過程の録音、録画を義務づけることは適当ではなく、また、必要ではないと考えております。

 最後に、本法律案が人質司法と呼ばれる問題の解決に資するものかとのお尋ねがありました。

 保釈の運用について、御指摘のような批判があることも承知しておりますが、一般論としては、裁判所において、刑事訴訟法の規定に基づき、事案の内容や証拠関係等の具体的な事情に応じて適切に判断されているものと承知をしております。

 本法律案による刑事訴訟法第九十条の改正は、現在の運用についての特定の事実認識を前提とするものではなく、裁量保釈の判断に当たって考慮すべき事情について、実務上確立している解釈を明記し、法文上明確化するものですが、そのことにより、保釈の適正な運用にも資するものと考えております。(拍手)

    〔国務大臣山谷えり子君登壇〕

国務大臣(山谷えり子君) 井出庸生議員にお答えいたします。

 警察における取り調べに関する心理学的な研究、研修等についてお尋ねがありました。

 警察では、警察大学校に設置された取調べ技術総合研究・研修センター等において、心理学的知見に基づく取り調べ技術習得のための教育訓練を全国において実践させるため、各都道府県警察の取り調べ指導担当者等に対し、心理学的知見を取り入れて取り調べに関する教育を行うとともに、取り調べ技術のさらなる体系化及びその習得のための教育訓練の方法に関する調査研究も行っているところであります。

 次に、取り調べにおける捜査員と被疑者との信頼関係についてお尋ねがありました。

 取り調べにおいて、不当に誘導を行ったり、供述を強要してはならないことは言うまでもありませんが、適切な取り調べを行う中で、被疑者と信頼関係を形成して真実の供述を得ることは重要であると考えております。

 取り調べの録音、録画の制度化に当たっては、このような観点も踏まえ、取り調べや捜査の機能を損なわないように留意することが重要であると考えます。

 次に、取り調べで緊張してしまうのであれば、取り調べの緊張を回避するため、ICレコーダーを用いて録音のみを行えばよいのではないかとのお尋ねがありました。

 被疑者取り調べについては、録音、録画には、任意性の立証に有効な面がある一方で、被疑者から供述が得られにくくなるなどの側面があるものと認識しており、全過程について録音、録画を義務づける制度を設ける場合には、対象は、録音、録画の必要性が類型的に高い裁判員裁判対象事件に限るべきであると考えております。

 また、捜査機関には、必要に応じて、取り調べの状況が録音、録画された媒体を用いて被疑者の供述の任意性を立証することが求められるところ、取り調べの録音、録画においては、ICレコーダーではなく、その記録の正確性や改ざんの防止を十分に担保するための機能を備え、記録の内容をめぐる裁判での争いが生じにくい機器を用いることにより、録音及び録画を同時に行う必要があるものと考えております。

 次に、取り調べでICレコーダーを用いれば予算が抑えられるのではないかとのお尋ねがありました。

 取り調べの録音、録画のための機器の整備に当たっては、制度の持続可能性を確保するため、可能な限りコストを抑えることが望ましいことは御指摘のとおりでありますが、一方で、先ほど申し上げたとおり、記録の正確性や改ざんの防止を担保する必要があり、その機能を備えた機器の整備に一定のコストが必要になることはやむを得ないものと考えております。

 次に、捜査員が常に取り調べや事情聴取を録音することができるようにするべきである旨のお尋ねがありました。

 被疑者取り調べについては、録音、録画には任意性の立証に有効な面がある一方で、被疑者から供述が得られにくくなるなどの側面があるものと認識しており、全過程について録音、録画を義務づける制度を設ける場合には、対象は、録音、録画の必要性が類型的に高い裁判員裁判対象事件に限るべきであると考えております。

 また、参考人の取り調べについては、参考人の捜査段階における供述は原則として公判では証拠とならず、公判での証言が原則となること、供述を録音することにより参考人から協力を得られにくくなることもあることなどから、その録音の実施については慎重に検討する必要があると考えております。

 次に、録音、録画に関する裁判所の見解への所感についてお尋ねがありました。

 取り調べの録音、録画には、被疑者の供述の任意性の立証に資するという側面がある一方で、被疑者から供述が得られにくくなるなどの側面があるものと認識しております。

 したがって、録音、録画制度は、その有用性を生かしつつ、一方で、取り調べや捜査の機能を損なわない、バランスのとれたものとする必要があり、制度の対象事件は裁判員裁判対象事件とすることが適当と考えております。

 次に、警察における取り調べの録音、録画のあり方についてお尋ねがありました。

 警察には、社会に不安を与える犯罪の検挙、立件等を通じ、安全、安心を求める国民の期待に応えるという責務があります。

 こうした観点から、取り調べを通じて事案の真相を明らかにすることは極めて重要であり、録音、録画制度については、取り調べや捜査の機能を損なわないよう、類型的にその必要性が高い裁判員裁判対象事件を対象とすることが適当であると考えており、このことは警察捜査の的確な遂行にも資するものと考えております。

 最後に、警察と検察における録音、録画義務の対象範囲の違いについてお尋ねがありました。

 検察官独自捜査事件が録音、録画義務の対象とされているのは、被疑者が異なる捜査機関の取り調べを受ける機会がないなどの事件の性質を理由とするものであると承知しており、取り調べの主体が検察官か警察官かで区別するものではありません。

 したがって、被疑者の取り調べに係る権限や調書の証拠能力について検察官と警察官とで同一の扱いをしている刑事訴訟法の規定と特に矛盾したものではないと考えております。(拍手)

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議長(大島理森君) 遠山清彦君。

    〔遠山清彦君登壇〕

遠山清彦君 公明党の遠山清彦でございます。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に関し、質問させていただきます。(拍手)

 今回の法改正は、時代に即した新たな刑事司法制度の構築を目的としたものであり、とりわけ我が国の刑事司法制度において大きな位置を占める取り調べ及び供述調書への過度の依存からの脱却を目指した初めての改正という意味で、極めて重要な法改正と考えます。

 しかし、この法改正の背景には日本の刑事司法制度に対する国民の信頼が揺らいできた事実があることを政府及び裁判所は率直に認めなければなりません。

 平成十九年の志布志事件と富山氷見事件の無罪判決、平成二十二年の足利事件の再審無罪判決や郵便不正事件の厚労省元局長無罪判決、平成二十五年のPC遠隔操作事件における四人の誤認逮捕等々、これらの事例を通して、被疑者に虚偽の自白をさせた捜査手法や、検察官による証拠捏造、犯人隠避、あるいは不十分な事前証拠開示などの問題が浮き彫りになりました。これらの諸問題を解決できなければ、刑事司法制度に対する国民の信頼を回復することはできません。

 上川法務大臣におかれましては、冤罪や誤判事件を徹底して防止する、そういう強い決意を持って今回の法改正に臨んでいただきたい、さらに、運用面も含めた刑事司法制度の改革を強力に推進していただきたい、このことをまず冒頭申し上げ、以下、具体的な改正事項について質問をさせていただきます。

 本改正案では、取り調べの可視化、すなわち、録音、録画制度の創設が規定されております。これは、長年公明党が導入を求めてきた制度であり、法律の中で明確化されることは画期的なことであります。

 しかし、その一方で、対象が裁判員制度対象事件と検察官独自捜査事件のみに限定されており、身柄が拘束される全事件の数%にすぎないという問題が指摘をされております。この対象範囲では、過去の冤罪事件の一部は対象外となってしまいます。

 なぜ今回このような限定を行ったのか、法務大臣の明快な説明を求めます。また、あわせて、将来的に可視化の対象事件を拡大する意向があるのかどうか、伺います。

 この取り調べの録音、録画義務には、被疑者が録音、録画を拒否していて、録音、録画のもとでは十分な供述ができない場合など、例外事由が四つ設けられております。捜査機関がこの例外規定を恣意的に運用した場合、不当に録音、録画義務を免れ、可視化制度の形骸化を招く危険性があります。

 なぜこのような例外事由を設けたのか、また、捜査機関による恣意的運用の余地が本当にないのか、法務大臣の所見を求めます。

 次に、合意制度の導入について伺います。

 この制度は、被疑者、被告人が一定の財政経済関係犯罪や薬物銃器犯罪などに関する他人の犯罪事実について知識を有すると認められ得る場合、本人の不起訴、公訴取り消しなどの便宜と引きかえに、その他人の犯罪事実について供述調書作成に応じ、あるいは公判で供述することに合意する手続です。

 この手続には弁護人が一貫して関与することが定められておりますが、被疑者、被告人が自分の貢献をより大きく見せかけようと考え、他人の犯罪についてうその供述をするおそれが指摘されております。また、当該罪に全く無関係の第三者を引っ張り込む危険も指摘されております。

 誰人も、他人の虚偽供述によって裁かれることがあってはならないと考えます。今回導入される合意制度が、このようないわゆる巻き込み、引き込みの危険に適切に対処できる仕組みになっているのかどうか、法務大臣の明快な答弁を求めます。

 本改正案には、通信傍受の対象犯罪の拡大も盛り込まれております。これまで対象としてきた薬物犯罪、銃器犯罪等に加え、殺人、監禁、誘拐、強盗、詐欺、児童ポルノ関係犯罪なども通信傍受の対象とする内容です。

 警察庁の発表によりますと、オレオレ詐欺等を含むいわゆる特殊詐欺全体による被害は、昨年過去最悪を更新し、被害額は総額五百五十九・四億円、認知件数は一万三千三百七十一件に上りました。また、児童ポルノ事件の被害者も、まことに遺憾ながら、昨年過去最悪を更新し、七百四十六人、そのうち、小学生以下は百三十八人に上っております。

 これら社会問題化している犯罪に対応するために、裁判官が発付する傍受令状に基づいて捜査機関が通信傍受を行うことには国民からも一定の理解が得られると考えますが、一方で、恣意的な運用により国民のプライバシー等が不当に侵害されることは絶対にあってはなりません。

 これまで十五年間適正に実施されてきた通信傍受の実績も踏まえ、また、新たに改正案に追加された結合体の要件も念頭に、今後の適正な運用のあり方についての法務大臣の決意を伺います。

 また、通信傍受の対象犯罪が追加されたことにより、今後の実施事件数の増加が見込まれますが、件数増加に伴い、通信事業者には、それに対応できる体制の整備が求められます。新たに導入される一時的保存の方法による傍受についても、要員確保や施設保全等の面において、さらに負担が増大する可能性があります。

 これらの通信事業者の負担増について、政府として何らかの支援策を検討しているのか、あわせて伺います。

 冒頭に言及した郵便不正事件で被告人とされ、最終的に無罪判決を受けた村木厚子現厚生労働事務次官は、法律専門誌に寄せた手記にこう書いております。

 勾留生活は、精神面を含め体調の維持が難しく、裁判の前から罰を受けている状況であり、また、弁護人と自由に連絡ができない等防御面で被告人を極めて不利な状況に置いている、こうしたこともよく考慮して勾留を考えてほしい。

 これは、私は、非常に重たい言葉だと思いました。

 その意味で、本改正案の刑事訴訟法第九十条に裁量保釈の判断に当たっての考慮事情を明記したことは、一定の評価をしております。

 ただし、この考慮事情は、改正前の現行法の解釈上定着していたものを明記したにすぎないという指摘もあり、もしそうであるならば、改正後も勾留の運用に変化が見られない可能性があります。

 時に人質司法とさえ呼ばれ、非難の対象になってきた勾留の運用については、今回の改正を契機として抜本的に改善していくべきであると考えますが、法務大臣の見解を求めます。

 犯罪被害者や証人の保護を強化する措置の導入について伺います。

 本改正案では、証人が加害行為等を受けるおそれがある場合、ビデオリンク方式による証人尋問の拡充を図るとともに、その氏名や住居を被告人に不開示にする条件を付したり、特に必要な場合、弁護人にも知らせず代替的な呼称や連絡先を開示することを可能とし、また、裁判所の決定により、公開の法廷で証人の氏名等を明らかにしないことを認める措置を導入しております。

 これらの措置は、証人となる国民がより安心して刑事裁判に協力できることにつながる観点から、高く評価いたします。

 一方、起訴状の公訴事実の記載における被害者の氏名等の秘匿については、法律で規定されておらず、運用に委ねられております。

 この点に関し、運用によって本当に被害者の保護を十分に図ることができるのか、法務大臣の答弁を求めます。

 最後に、繰り返しとなりますが、今回の法改正を通じ、真に国民から信頼を得られる新たな刑事司法制度の構築のために、法務省を初め、政府、裁判所を挙げて取り組むよう切にお願いを申し上げ、私の代表質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 遠山清彦議員にお答え申し上げます。

 まず、本法律案における取り調べの録音、録画制度の対象事件の趣旨及び将来の拡大についてお尋ねがありました。

 本制度においては、裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件を対象としています。

 これは、本制度が捜査機関にこれまでにない新たな義務を課すものであり、捜査への影響を懸念する意見もあることなどから、本制度の対象とならない事件についても検察等の運用による取り調べの録音、録画が行われることをもあわせ考慮した上で、法律上の制度としては、取り調べの録音、録画の必要性が最も高いと考えられる類型の事件としたものであります。

 検察においては、運用による取り調べの録音、録画を拡大し、本制度の対象とならない事件についても取り調べの録音、録画に積極的に取り組んでおり、制度と運用をあわせて見ると、相当程度の割合の事件で取り調べの録音、録画が行われることになるものと考えております。

 また、本法律案の附則において、施行後三年が経過した後に必要な見直しを置く旨の、いわゆる検討条項を設けております。

 対象事件のあり方を含め、現段階で見直しの方向性を定めているものではありませんが、本制度の施行状況や捜査機関の運用による取り調べの録音、録画の実施状況等を勘案しつつ、制度の趣旨等を十分に踏まえた検討を行うことが重要であると考えています。

 次に、取り調べの録音、録画制度の例外事由の趣旨及びそれが恣意的に運用されるおそれについてお尋ねがありました。

 本制度においては、原則として取り調べの全過程の録音、録画を義務づけつつ、御指摘のとおり、録音、録画の拒否等の被疑者の言動により、録音、録画をすると被疑者が十分に供述できないと認められる場合などを例外事由としています。

 本制度については、録音、録画をすることにより、取り調べで供述が得られなくなり、真犯人の検挙、処罰ができなくなることがないようにするとの観点も重要であり、このような例外事由を設けることは不可欠であると考えております。

 例外事由の運用において、捜査機関が例外事由に当たると判断して録音、録画をしなかった場合に、公判で例外事由の存否が問題となったときは、裁判所による審査の対象となり、捜査機関側の責任で例外事由を立証する必要がございます。

 そのため、捜査機関としては、例外事由を十分に立証できる見込みがない限り、例外事由に当たると判断して録音、録画をしないことはできないと考えられ、例外事由が恣意的に運用される余地はないものと考えております。

 次に、いわゆる合意制度に関し、虚偽の供述による引っ張り込みの危険についてお尋ねがございました。

 この制度につきましては、お尋ねのように、被疑者、被告人が虚偽の供述をして第三者を引っ張り込むおそれがあるとの指摘がありますが、そのようなことが生じないように、制度上、次のような手当てをしているところであります。

 すなわち、合意の成立に至る過程には弁護人が必ず関与することとしています。また、合意に基づく供述が他人の公判で証拠として用いられるときは、合意内容が裁判所において必ずオープンにされ、その供述の信用性が厳しく吟味されることとなります。そのため、検察官としても、十分な裏づけ証拠があるなど、裁判でも十分に信用される場合でない限り、合意に基づく供述を証拠として使うことはできないと考えられます。さらに、合意をした者が捜査機関に対して虚偽の供述等をした場合には処罰の対象となります。

 したがって、合意制度は、虚偽の供述により第三者を引っ張り込むおそれに適切に対処できるものになっているものと考えます。

 次に、今後の通信傍受の適正な運用のあり方についてお尋ねがございました。

 捜査機関においては、通信傍受法施行後、法が定める厳格な要件と手続に従い、適正に通信傍受を実施してきたものと認識しています。

 本法律案の通信傍受法の改正案においては、新たに追加する対象犯罪について、現行法の厳格な要件に加えて、一定の組織性の要件を課すこととしているほか、通信傍受の手続の合理化、効率化として、立会人を置くことにかえて、暗号技術等を活用することにより、現行法と同様に手続の適正を確保することとしています。

 このように、通信傍受法の改正案におきましても、適正確保のための措置が十分とられており、今後も、法が定める厳格な要件と手続を厳守した適正な運用が行われることとなると考えております。

 次に、通信傍受法改正による通信事業者の負担増についてお尋ねがございました。

 本法律案の通信傍受法の改正案においては、通信傍受の手続の合理化、効率化として新たな通信傍受の実施の手続を導入するものであり、これにより、立会人や傍受の実施場所の確保等の通信事業者の負担軽減が図られるものと考えております。

 その具体的な実施に当たっても、対象犯罪の拡大により傍受の実施件数がふえ得ることも踏まえながら、通信事業者の負担を必要最小限のものとするよう、これまで同様に、通信事業者等と十分に協議をし、その負担に配慮していくこととなるものと考えております。

 次に、勾留の運用を改善すべきではないかとのお尋ねがございました。

 勾留の運用につきましては、御指摘のような批判があることも承知しておりますが、一般論としては、裁判所において、刑事訴訟法の規定に基づき、事案の内容や証拠関係等の具体的な実情に応じて適切に判断されているものと承知しております。

 本法律案による刑事訴訟法第九十条の改正は、現在の運用についての特定の事実認識を前提とするものではなく、裁量保釈の判断に当たって考慮すべき事情について、実務上確立している解釈を明記し、法文上明確化するものですが、そのことにより、勾留の適正な運用にも資するものと考えております。

 最後に、起訴状の公訴事実の記載において被害者の氏名等を秘匿する運用についてお尋ねがございました。

 被害者保護のために、刑事手続において、その氏名等の情報が適切に保護されるようにすることは重要なことであると認識をしております。

 検察当局においては、現行法のもとでも、審判の対象を特定するとともに、被告人に防御の範囲を示すという趣旨を害しない範囲で、被害者保護の観点から、個別事案の内容に応じて、起訴状において被害者の氏名等を秘匿する運用を行うなど、被害者保護に努めているものと承知をしております。

 もっとも、このような運用の事例が集積されている段階にはないため、その集積を待って、法整備の要否を含め、十分な検討をする必要があるものと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 清水忠史君。

    〔清水忠史君登壇〕

清水忠史君 私は、日本共産党を代表して、刑事訴訟法等一部改正案について質問いたします。(拍手)

 そもそも、今回の刑事司法改革の契機は、いわゆる村木事件を初め、次々と明らかになった、足利事件、布川事件、氷見事件、志布志事件、東電OL事件などの冤罪事件の根絶だったはずであります。

 日本の刑事司法に対する国民の不信はきわまり、冤罪を生み出してきた構造的な問題にメスを入れることが迫られています。国民が求めてきたのは、取り調べの全面可視化、証拠の全面開示制度の導入、代用監獄制度の廃止、自白の強要や人質司法の根絶など、抜本的な改革であります。

 ところが、本法案は、取り調べの可視化や証拠開示は極めて限定的なものにとどめる一方、捜査機関による盗聴の自由を拡大し、司法取引制度を盛り込んでいます。こうした捜査機関の権限拡大は、刑事司法改革の本来の目的とは正反対のものであり、新たな冤罪を生み出すことにつながり、その危険性は極めて重大であります。

 第一に、盗聴法の拡大についてです。

 憲法二十一条は、「通信の秘密は、これを侵してはならない。」と定めています。会話やメールを警察が勝手に傍受することは、この規定に反するものであります。

 一九八六年、警察によって行われた我が党の緒方靖夫国際部長宅盗聴事件で、裁判所は、盗聴の性格を次のように断じました。

 盗聴は、その性質上、盗聴されている側においては、盗聴されていることが認識できず、したがって、盗聴された通話の内容や、盗聴されたことによる被害を具体的に把握し、特定することが極めて困難であるから、それゆえに、誰との、何どき、いかなる内容の通話が盗聴されたかを知ることもできない被害者にとって、その精神的苦痛は甚大である。

 上川法務大臣、盗聴、つまり盗み聞きが、通信の秘密を初め、基本的人権と私生活の平穏を侵すという認識がありますか。答弁を求めます。

 現行盗聴法は、一九九九年に強行成立させられましたが、対象犯罪を広範に定めた政府原案は、三度の国会にわたって国民の厳しい批判にさらされ、最終的に与党は、対象犯罪について、集団密航、薬物、銃器、組織的殺人の四類型に限定する修正を余儀なくされたものであります。その修正の趣旨は、盗聴を組織的犯罪集団に限定するというものだったのではありませんか。

 ところが、本法案は、窃盗や強盗、詐欺、恐喝など、一般の刑法犯にまで広範囲に拡大することとしています。これは、盗聴を日常的な捜査手法とし、大規模な盗聴に道を開くものではありませんか。

 政府は、これらの拡大した犯罪についても、組織性を要件としていると言いますが、法案は、二人の共犯であっても、あらかじめの役割の分担について意思を通じるなら、盗聴の対象としているのではありませんか。

 政府は、振り込め詐欺などに対応するためだと言いますが、それらの犯罪グループは、一度使った携帯電話や銀行口座は二度と使わないのが実態です。

 法務大臣、盗聴によってこれらの犯罪組織を摘発できるとする具体的な根拠をお示しください。

 次に、通信事業者の常時立ち会いをなくすという問題についてです。

 現行法にある、警察の通信傍受の際のNTTなどの通信事業者の常時立ち会いもまた、政府原案への国民的批判のもと、与党の修正によって生まれた規定でした。

 法務大臣、その趣旨は、通信傍受の実施の適正を確保するためだったはずではありませんか。

 ところが、法案は、この規定をなくし、立会人にかえて、電磁的な暗号で適正を確保するとしています。しかし、そうしたシステムは、現在どこにも存在しません。結局、法成立後、システムの開発も運用も、全て警察に委ねられることになりませんか。

 立会人による心理的抑制が働かず、時間的、場所的制約も外して、警察が存分に盗聴できるようになれば、通信の秘密はさらに侵されることになりませんか。

 この間、衆参の法務委員会での我が党の質問に、警察庁は、電子メールやフェイスブック、ツイッター、LINEなどについても通信傍受が可能だと答弁しました。

 山谷国家公安委員長、現行法でもメールやSNSの通信傍受ができるということを一体どれだけの国民が理解していると認識していますか。

 その上に、本法案によって、その対象犯罪を拡大し、常時立ち会いをなくしてしまえば、スマホやパソコンを利用した国民のコミュニケーションは、文字どおり、丸裸にされるのではありませんか。答弁を求めます。

 国家公安委員長、改めて伺いたい。

 緒方靖夫宅盗聴事件は、裁判所も、警察による極めて重大な違法行為と断罪した、明白な権力犯罪です。その断罪の後に至っても、警察は、盗聴は過去も今後も行うことはないと強弁してきました。

 このような態度は、決して許されるものではありません。警察は、盗聴という違法行為を行ったことを認め、謝罪すべきであります。

 このように、何の反省も謝罪もなく、盗聴の事実さえ認めない警察に、これ以上の盗聴の自由を与えることがいかに危険なものであるかという認識はないのですか。答弁を求めます。

 第二に、司法取引制度についてです。

 この制度は、他人の刑事事件につながる供述と引きかえに、例えば不起訴にするといった取引を犯罪捜査に導入するものです。これは、みずからの罪を軽くしたいとの心理から、無実の他人を引っ張り込む危険が極めて大きいのではありませんか。そのことが新たな冤罪を引き起こすことになるのではありませんか。答弁を求めます。

 第三に、取り調べの可視化についてです。

 本法案が可視化の対象とする事件は、裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件に限られ、全刑事事件のわずか三%にしかすぎません。加えて、被疑者が十分な供述をすることができないと認めるときは録音、録画しなくてもよいなどという例外規定を設け、その判断は捜査機関に委ねられています。これでは、可視化のいいとこ取りが可能となり、逆に冤罪を生み出すことになるのではありませんか。

 取り調べの可視化は、憲法三十八条一項の黙秘権を制度的に保障するものであると考えるべきです。そうである以上、可視化の対象犯罪を限定するのではなく、全ての事件を対象とし、全過程で行うようにすることが当然ではありませんか。

 このように、本法案は、単なる一部可視化法案というようなものではありません。捜査機関の年来の要求である、使い勝手のよい盗聴や司法取引の導入を図るものです。これを許すなら、特定秘密保護法による独立共謀罪や、執拗に狙われてきた共謀罪の創設と相まって、我が国を監視、密告の社会につくりかえることになります。このようなことは断じて認めることはできません。

 以上、指摘し、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 清水忠史議員にお答え申し上げます。

 まず、通信傍受が基本的人権を侵すものではないかとのお尋ねがありました。

 通信の当事者のいずれの同意も得ないで通信を傍受することは、通信の秘密、私生活の自由を制約するものでありますが、通信傍受法に基づく通信傍受は、厳格な要件、手続のもとでのみ認められるものであって、通信当事者の通信の秘密、私生活の自由を不当に制約するものではなく、憲法上許されるものであります。

 次に、現行の通信傍受法の対象犯罪が四罪種に限定された趣旨についてお尋ねがございました。

 その趣旨については、通信傍受が、憲法の保障する通信の秘密を制約するものであるほか、我が国で初めて行われるものであることに鑑み、対象犯罪については、平穏な社会生活を守るために通信傍受が捜査手法として必要不可欠と考えられる最小限度の組織的な犯罪に限定することとしたなどと説明をされているものと承知をしております。

 次に、通信傍受の対象犯罪の拡大により、大規模な通信傍受に道を開くのではないかとのお尋ねがございました。

 通信傍受法の改正による対象犯罪の拡大は、通信傍受の運用状況や現時点における犯罪情勢、捜査の実情等を踏まえ、現に一般国民にとって重大な脅威となり、社会問題化している犯罪であって、通信傍受の対象とすることが必要不可欠なものを対象犯罪に追加するものであります。

 そして、新たに追加する対象犯罪については、現行通信傍受法の厳格な要件に加えて、組織的な犯罪に適切に対処するという通信傍受法の趣旨を全うするため、一定の組織性の要件を設け、それをも満たす場合でなければ傍受令状が発付されないこととしております。

 実際にも、これらの厳格な要件を満たす事案は組織的な犯罪に限られることとなることから、御懸念は当たらないものと考えております。

 次に、二人の共犯事件であっても通信傍受の対象となるのではないかとのお尋ねがございました。

 確かに、通信傍受法の要件の上からは、二人の共犯事件が傍受の対象となることもあり得ます。しかしながら、先ほどもお答え申し上げたとおり、実際に通信傍受の厳格な要件を満たす事案は組織的な犯罪に限定されることとなると考えております。

 次に、通信傍受法の改正により振り込め詐欺等を摘発できるとする根拠についてお尋ねがございました。

 いわゆる振り込め詐欺を初めとする組織的な犯罪の事案では、首謀者を含む共犯者間における犯行の謀議、指示、報告その他の連絡が携帯電話等の通信手段を用いて行われる場合が多く、背後関係を含めて事案の解明を図る上で、こうした犯罪関連通信を傍受して客観的証拠を収集することは極めて有効であると言えます。

 なお、こうした組織的な犯罪においては、一度使った携帯電話を二度と使わないといった御指摘は必ずしも当たらないと考えております。

 次に、立会人の常時立ち会いが義務づけられた趣旨についてのお尋ねがございました。

 その趣旨につきましては、通信傍受に対する国民の心配を払拭するため、常時立会人を置くことによって、公平公正に通信傍受が行われていることを担保することとしたなどと説明されているものと承知をしております。

 次に、新たに導入する通信傍受の手続において用いる機器の開発も運用も警察に委ねられるのではないかとのお尋ねがございました。

 本法律案では、立会人を立ち会わせた場合と同様の通信傍受の適正を確保するために用いる機器として、特定電子計算機が具備すべき機能を詳細に定めることとしております。そして、特定電子計算機を用いる通信傍受を実施するに際しては、当該特定電子計算機が本法律案の定める機能を有しているかどうかについて、傍受令状の請求を受けた裁判官の審判を受けることとなります。

 したがって、特定電子計算機の開発及び運用を警察が行おうとしても、本法律案に基づく傍受が実施される際には、法定の機能を有するものが使用されることが確保されることとなります。

 次に、新たに導入する立会人を置かずに通信傍受を行う手続により、さらに通信の秘密が侵害されるのではないかとのお尋ねがございました。

 新たに導入する特定電子計算機を用いる通信傍受では、捜査官が傍受または再生をした通信は、全て、特定電子計算機により、改変不可能な形で自動的に記録媒体に記録をされ、裁判官に提出されます。そして、この記録媒体を通じて、捜査官がどのような傍受を行ったかが全て明らかとなりますから、仮に違法な傍受を行っても発覚を免れないということになります。

 このような仕組みにより、立会人がいる場合と同様に傍受の手続の適正が担保されることから、御懸念は当たらないと考えております。

 次に、通信傍受法の改正により、スマートフォン等を利用した一般国民のコミュニケーションの秘密が保てなくなるのではないかとのお尋ねがございました。

 さきにお答え申しておりますとおり、対象犯罪を拡大しても、実際に通信傍受の厳格な要件を満たす事案は組織的な犯罪に限られることになることから、一般の国民の日常の通信が広く傍受の対象となるといった懸念はないものと考えております。

 また、新たに導入する特定電子計算機を用いる通信傍受においても、立会人がいる場合と同様に手続の適正を担保することができることから、不適正な傍受が行われるのではないかといった御懸念は当たらないものと考えております。

 次に、通信傍受が適正に行われない懸念についてお尋ねがありました。

 現行の通信傍受法における通信傍受は、極めて厳格な要件のもとで、裁判官の発する令状に基づいて行い、傍受の実施中、常に第三者が立ち会うほか、傍受した通信は全て記録され、封印されて裁判官が保管し、関係者に不服申し立て等が認められているなど、制度的な適正確保のための措置がとられております。

 また、本法律案において新たに導入する特定電子計算機を用いる通信傍受においては、立会人を置くことにかえて、暗号技術等を活用することにより、現行法と同様に手続の適正を確保することとしております。

 捜査機関においては、今後とも、当然、このような法で定める厳格な要件と手続を厳守した適正な運用を行うこととなると考えております。

 次に、いわゆる合意制度に関し、無実の他人を引っ張り込むことにより冤罪を引き起こす危険があるのではないかとのお尋ねがございました。

 お尋ねの点については、そのようなことが生じないように、制度上、次のような手当てをしているところでございます。

 すなわち、合意の成立に至る過程には弁護人が必ず関与することとしています。また、合意に基づく供述が他人の公判で証拠として用いられるときは、合意内容が裁判所において必ずオープンにされ、その供述の信用性が厳しく吟味されることとなります。さらに、合意をした者が捜査機関に対して虚偽の供述等をした場合には処罰の対象となります。

 したがって、合意制度は、虚偽の供述により第三者を巻き込むおそれに適切に対処できるものになっていると考えています。

 次に、取り調べの録音、録画制度の対象事件及び例外事由の運用についてお尋ねがありました。

 本法律案においては、取り調べの録音、録画の必要性が最も高いと考えられる類型の事件である裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件を対象として、原則として取り調べの全過程の録音、録画を義務づけた上で、取り調べや捜査の機能に支障を生じないようにする観点から、一定の例外事由を設けることとしております。

 公判で例外事由の存否が問題となったときは、裁判所による審査の対象となり、捜査機関側の責任で例外事由を立証する必要があります。

 そのため、捜査機関としては、例外事由を十分に立証できる見込みがない限り、例外事由に当たると判断して録音、録画をしないことはできず、恣意的に運用される余地はないことから、御懸念は当たらないと考えております。

 最後に、全ての事件で取り調べの全過程の録音、録画を行うべきではないかとのお尋ねがありました。

 本制度は、御指摘のような被疑者の憲法上の権利に由来するものではなく、供述の任意性の的確な立証を担保するとともに、取り調べの適正な実施に資するという政策的見地から導入するものであります。

 そして、本制度の対象事件や例外の範囲は、録音、録画の必要性だけではなく、それによる弊害をも考慮し、適切なバランスのもとで決定すべきものであって、御指摘のように全ての事件を対象として例外なく取り調べの全過程の録音、録画を義務づけることは相当ではないと考えております。(拍手)

    〔国務大臣山谷えり子君登壇〕

国務大臣(山谷えり子君) 清水忠史議員より、現行法における通信傍受の対象の通信手段についてお尋ねがありました。

 通信傍受法上の通信は、電話その他の電気通信であって、その伝送路の全部もしくは一部が有線であるものとされており、御指摘の通信手段についても、通信傍受法における通信に該当するということは、文理上、明確になっているところです。また、この点につきましては、これまでの国会の御議論においても明らかにさせていただいております。

 いずれにいたしましても、警察としては、通信傍受の適正な実施に努めることにより、国民の御理解を得てまいりたいと考えております。

 いわゆる緒方宅事件についてのお尋ねがありました。

 国賠訴訟の控訴審判決では、警察官である個人三名がいずれも県の職務として行ったものと推認することができると判示していますが、組織的犯行と断定した判決ではなかったと承知しています。

 いずれにせよ、警察としては、違法な通信の傍受は過去にも行っておらず、今後も行うことはないと承知しており、引き続きしっかりと指導をしてまいります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       法務大臣    上川 陽子君

       文部科学大臣  下村 博文君

       国土交通大臣  太田 昭宏君

       国務大臣    麻生 太郎君

       国務大臣    山谷えり子君

 出席副大臣

       法務副大臣   葉梨 康弘君


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