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第34号 平成27年6月19日(金曜日)

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平成二十七年六月十九日(金曜日)

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 議事日程 第二十七号

  平成二十七年六月十九日

    午後一時開議

 第一 独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、参議院送付)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、参議院送付)

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案(井坂信彦君外五名提出)


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、参議院送付)

議長(大島理森君) 日程第一、独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長今村雅弘君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔今村雅弘君登壇〕

今村雅弘君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国土交通省所管の独立行政法人に係る改革を推進するために必要な措置を講ずるもので、その主な内容は、

 第一に、国立研究開発法人海上技術安全研究所、国立研究開発法人港湾空港技術研究所及び国立研究開発法人電子航法研究所を統合し、その名称を国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所とすること、

 第二に、独立行政法人海技教育機構及び独立行政法人航海訓練所を統合すること、

 第三に、独立行政法人都市再生機構の業務の実施方法を見直すこと、

 第四に、独立行政法人奄美群島振興開発基金に対する金融庁検査を導入すること

などであります。

 本案は、参議院先議に係るもので、去る六月八日本委員会に付託され、九日太田国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、十二日質疑に入り、十六日、質疑終了後、討論を行い、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

橘慶一郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案、井坂信彦君外五名提出、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案、右両案を一括議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(大島理森君) 橘慶一郎君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、日程は追加されました。(退場する者あり)

    ―――――――――――――

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案(井坂信彦君外五名提出)

議長(大島理森君) 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長渡辺博道君。

    ―――――――――――――

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

 労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔渡辺博道君登壇〕

渡辺博道君 ただいま議題となりました両案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、内閣提出の労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、派遣労働者の一層の雇用の安定、保護等を図るため、特定労働者派遣事業の制度を廃止するとともに、労働者派遣の役務の提供を受ける者の事業所その他派遣就業の場所ごとに派遣可能期間を設ける等の措置を講じようとするものであり、その主な内容は、

 第一に、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の区別を廃止し、労働者派遣事業を全て許可制とすること、

 第二に、労働者派遣の期間について、業務単位の期間制限を廃止し、派遣労働者個人単位の期間制限及び派遣先の事業所単位の期間制限の二つの期間制限を設けること、

 第三に、派遣元事業主は、個人単位の期間制限の上限に達する見込みがある派遣労働者に対して、派遣先への直接雇用の依頼等の雇用の安定を図るための措置を講じなければならないこと、

 第四に、派遣元事業主は、派遣労働者に対し、計画的な教育訓練等の実施や均衡待遇を確保するために考慮した内容についての説明をしなければならないこととするとともに、派遣先は、賃金の情報提供、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用に関して配慮しなければならないこと

等であります。

 次に、井坂信彦君外五名提出の労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案について申し上げます。

 本案は、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにすること等により、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策を重点的に推進しようとするものであります。

 内閣提出の法律案については、去る五月十二日の本会議において趣旨説明が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、十三日塩崎厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、十五日から質疑に入り、二十八日には参考人から意見を聴取いたしました。

 井坂信彦君外五名提出の法律案については、二十六日本委員会に付託され、二十七日提出者井坂信彦君から提案理由の説明を聴取いたしました。

 二十九日からは両案をあわせて議題とし、六月二日には参考人から意見を聴取し、十二日には安倍内閣総理大臣の出席を求め質疑を行いました。

 同日、維新の党より、内閣提出の法律案に対し、労働者の職業生活の全期間にわたるその能力の有効発揮と雇用安定に資する雇用慣行が損なわれるおそれがあると認められるときの検討規定を改め、この法律の施行後速やかに、労働者の解雇に関する法制度等のあり方について抜本的な見直しを行うものとすることを内容とする修正案が提出され、趣旨説明を聴取し、両案及び修正案について質疑を行い、内閣提出の法律案について質疑を終局いたしました。

 本日、内閣提出の法律案の原案及び修正案について討論を行い、採決の結果、維新の党提出の修正案は賛成少数をもって否決され、内閣提出の法律案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 次に、井坂信彦君外五名提出の法律案について質疑を終局したところ、自由民主党、維新の党及び公明党の三会派より、同法律案に対し、派遣労働者について、派遣先に雇用される労働者との間において均等な待遇及び均衡のとれた待遇の実現を図るものとし、三年以内に法制上の措置を含む必要な措置を講ずるものとすること等を内容とする修正案が提出され、趣旨説明を聴取いたしました。

 次いで、原案及び修正案について採決の結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 両案につき討論の通告があります。順次これを許します。松田直久君。

    〔松田直久君登壇〕

松田直久君 維新の党の松田直久です。

 私は、維新の党を代表し、政府提出の労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案に反対をし、我が党提出の労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案、いわゆる同一労働同一賃金法案に賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 我が国の経済が成熟する中、労働市場の実態も国民の意識も大きく変わってきました。派遣労働者の中にも、今のまま派遣で働きたいという方と、本当は正社員で働きたいという方がおられます。

 労働者派遣法は、国民がライフスタイルに合わせた働き方を選択ができ、しかも、派遣社員と正社員との間で均等な待遇がなされる方向に改正するべきです。国民の働き方について選択肢をふやすためには、規制緩和も必要です。一方で、同一労働に同一賃金が支払われるためには、国による一定の方向づけが必要です。また、多様な働き方を選びやすくするため、法制度はなるべくわかりやすいものであるべきです。

 政府案は、専門二十六業務と自由化業務を一本化するなど、複雑な現行制度をシンプルにまとめようとするものです。もともと、今回の法改正の一つの契機は、専門二十六業種と自由化業務の区別が曖昧であったことにあります。このため、平成二十四年成立の現行法には、業種の区別についてわかりやすい制度となるよう、附帯決議も付されていたところであります。今回の政府案は、専門二十六業務とその他業務の区別を撤廃することで、この問題を解決しようとしています。

 そのため、以下に述べるように、多くの問題点や矛盾を生じる法改正となっています。

 まず、派遣の期間制限の問題です。

 今回の法改正では、派遣先企業は労働組合等の意見を聞けば、同じ業務に六年でも九年でも派遣労働者を使えるようになります。一方で、新たに設けられた個人単位の期間制限で、有期雇用の派遣労働者は、三年ごとに必ず職場をかわらなければいけません。これまで期間制限のなかった専門二十六業務の派遣労働者でも、三年で別の部署か別の会社に再度派遣されることになります。

 つまり、企業にとっては期間制限撤廃という規制緩和になり、現在の専門二十六業務の派遣労働者にとっては、三年の期間制限導入という規制強化になります。これでは、この法案のせいで派遣切りに遭うのではという不安が広がるのも道理です。専門二十六業務の派遣労働者は、比較的高賃金で長期間働くことができます。こうしたタイプの派遣労働者について、規制強化で期間を制限する必要はないはずです。

 派遣は臨時的、一時的なものであるという原則をわざわざ法律に追加しながら、企業は事実上何年でも派遣労働者を受け入れ続けられる改正を行うことも大きな矛盾です。

 受け入れ期間を延長する際には、過半数組合の意見聴取が義務づけられます。しかし、平成十五年改正の実績を見れば、意見聴取で反対意見が出る割合はわずか一・二%、反対意見が出ても期間延長ができる仕組みになっていますから、全く歯どめにならないことは明らかです。本法改正は、派遣の雇用枠が一方的にふえる内容となっています。

 また、政府案は、いずれは正社員になりたいと思いつつ、やむを得ず派遣で働いている方にとっても不十分な内容であります。

 松下電器の創業者、松下幸之助氏は、松下電器は何をつくっているのかと聞かれたら、松下電器は人をつくる会社です、あわせて電気製品もつくっていますと答えていたそうです。松下は、経営の根幹は人であるという信念のもと、思い切って仕事を任せることで人を育ててきました。我が国を代表する経営者から見て、今回の政府案は人を育てるに十分な法律と見えるでしょうか。政府案での有期雇用派遣労働者への雇用安定措置は十分なものでしょうか。残念ながら、私は十分と言えないと考えます。

 例えば、派遣先企業への直接雇用の依頼については、派遣元業者へのメリットに乏しく、派遣先も簡単に受け入れず、実効性が疑問です。また、新たな派遣先の提供という措置は、もともと派遣元業者の本来業務で、新たな措置と呼べない、いわば当たり前の行為です。そのほか、派遣元での無期雇用や雇用安定に資する教育訓練も、いずれも実効性が低く、長期雇用につながるものとは決して考えられません。

 政府案の最大の問題点は、派遣労働者について、低賃金、低待遇が続くのではないかという点です。

 パートや契約社員については、正規労働との均等・均衡待遇が法律に明記されていますが、派遣法改正案では均衡の配慮義務という非常に低いレベルの対応にとどまっています。派遣元業者には派遣労働者の職務、能力、経験を勘案して賃金を決定する配慮義務があるだけで、派遣先企業には派遣先の労働者の賃金情報を提供する配慮義務があるだけです。

 私たち維新の党は、派遣労働者も正社員と同じ仕事をしたら同じ賃金が得られるという同一労働同一賃金を実現すべきと考えています。この考え方に基づき、昨年秋の臨時国会でも今国会でも、議員立法を提出し、本会議と委員会で再三質疑をしてまいりました。これに対し、政府は、日本の労働慣行を理由に、一貫してこの考え方に慎重な姿勢を続けてきました。

 勤続年数等で賃金が決まる日本の雇用慣行に課題があることは、多くの国民が実感し、政府も答弁で認めているところです。ワーク・ライフ・バランスをとりつつ労働生産性を上げることが我が国に求められている今日、職務で賃金が決まるジョブ型雇用を広め、多様な働き方を認めるべきです。ジョブ型雇用契約の推進も含め、具体的な解決策を実行することで、日本でも派遣労働者を含めた同一労働同一賃金を実現すべきです。

 維新提出の同一労働同一賃金が成立すれば、企業は必ずしも安くない派遣を乱用しなくなるでしょう。企業は、同じ賃金なら派遣にこだわる理由が減り、いずれ正社員で働きたい人たちにとって選択肢が実際にふえる可能性が出てきます。高賃金ならば、望んで派遣を続ける労働者もふえ、雇用安定措置について細かい義務を派遣元業者に課す必要も乏しくなるでしょう。

 今般、我が党の同一労働同一賃金法案につき、自民党、公明党と修正協議の上、共同で提出することになりました。この修正は、我が党にとって完全に満足のいく内容ではありませんが、派遣労働者の待遇について「均等」の文言が初めて入ることもあり、改革を一歩でも進めるために、維新の党案を修正した法案を提出することといたしました。

 しかし、たとえ同一労働同一賃金が本当に実現するとしても、専門二十六業務の期間制限の問題は解決できません。三年しか働けないという規制強化がされることは、その仕事を続けたい派遣労働者の権利を奪い、派遣先にとっても有能な専門労働者を失うことになります。

 大きな意味で、我が国の発展ある将来につながらないと考えます。我が党が同一労働同一賃金法案を提出しつつ、それでもなお、政府案にどうしても賛成できないゆえんであります。

議長(大島理森君) 松田君、時間が来ております。

松田直久君(続) 以上、政府案に対する反対の討論及び我が党提出の同一労働同一賃金法案への賛成討論といたします。(拍手)

議長(大島理森君) とかしきなおみ君。

    〔とかしきなおみ君登壇〕

とかしきなおみ君 自由民主党のとかしきなおみです。

 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となっております労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 労働者派遣については、働く方にとって、希望する職種や勤務時間の条件を満たす企業へ入職しやすく、ワーク・ライフ・バランスが図りやすいこと、また、企業にとって、必要な労働力を迅速に確保できることなどから、労使双方にニーズがあり、我が国労働市場で重要な役割を果たしてまいりました。

 一方で、現在の労働者派遣制度には幾つか課題が存在します。

 まず、業務により全く異なる期間制限が設けられ、非常にわかりにくい制度となっております。また、派遣労働は雇用の安定性やキャリア形成に不安があるとの指摘がなされております。さらに、そもそも派遣労働は、派遣先の正社員との常用代替を防止するため、臨時的、一時的なものとしてきましたが、これは引き続き維持していかなければなりません。

 こうした課題を克服すること、つまり、正社員を希望する派遣労働者にはその道をしっかり開くとともに、派遣労働を積極的に選択している派遣労働者には待遇の改善等を図ることこそが重要であります。

 そこで、今回の改正案では、第一に、事業所単位と労働者個人単位の二つの期間制限への見直し、第二に、雇用安定措置やキャリアアップ措置の創設、均衡待遇の推進、第三に、労働者派遣事業の許可制への一本化などを盛り込んでおり、今回の見直しは、さまざまな課題に対応するものであり、望ましいものであると考えております。

 また、委員会での審議においては、参考人質疑を二回行うとともに、総理にも何度も御出席いただき、質疑を行いました。過去の改正法案より多くの審議時間を確保しており、丁寧な委員会運営が行われたと思っております。

 むしろ、本法案の審議において、一部の野党の皆様に、大声で不規則発言を繰り返すといった、委員会運営を混乱させる行動が目立ったことが残念でなりません。あげく、審議を阻止するために委員長に暴力を振るい、委員長が負傷するという事件が起こりました。

 このような野蛮な振る舞いは、言語道断、民主主義国家の一員として到底許されるものではありません。また、さらに、このような振る舞いを正当化するような発言が見受けられましたことについて、私は、同じ議会人として大変悲しい思いをいたしました。

 民主党の皆様に対しては猛省を求めますと申し上げたかったのですが、議場におられず、まことに残念であります。

 これから日本が目指すべきものは、国民一人一人が、希望に応じた働き方を選択でき、十分な待遇を受けられる社会の実現であり、今回の改正案はまさにそれに資するものであると強調しておきます。

 また、本法案とともに審議が進められました労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案につきましては、修正の上、賛成いたします。

 以上、賛成討論を終わります。ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました労働者派遣法改正案について、断固反対の立場から討論を行います。(拍手)

 もともと本法案は、昨年二度も廃案になったものであり、本来提出すべきではありませんでした。委員会審議では、冒頭から政府答弁の混乱や訂正が相次ぎ、本日、六回目の委員長職権という異常な委員会運営に終始しました。審議が尽くされたとは到底言えず、強く抗議するものです。

 審議入りを前に、いわゆる十・一問題が表面化しました。十月一日施行の労働契約みなし制度について、大量の派遣労働者が失業、訴訟が乱発するおそれなど、何が何でも本法案を九月一日施行で成立させ、みなし効果をなきものにしたいという、経済界の思惑をあからさまに正当化した資料であります。それも、相手によって説明を使い分けるという悪質さで、国会審議を形骸化しました。このことだけを見ても、本法案は廃案にするべきです。

 さらに、本法案によってみなし制度の効果が極めて限定的になるにもかかわらず、期間制限に抵触する場合における派遣先の直接雇用申し込み義務を、みなし制度の施行を理由に削除したことは重大です。

 そもそも、職業安定法四十四条は労働者供給事業を禁止しており、政府自身も、労働者派遣は、臨時的、一時的業務に限る、常用雇用の代替であってはならないと説明してきました。本法案は、この大原則を根底から覆すものであり、到底容認できません。

 今回の改定では、事業所の派遣受け入れ期間は三年としますが、過半数労働組合等から意見を聞きさえすれば、際限なく延長できます。個人単位の期間制限も、三年を上限とするものの、課をかえればずっと使い続けられます。さらに、派遣元で無期雇用であれば、期間制限は一切適用されません。これでは、正社員から派遣労働への置きかえが大規模に進むことは明らかです。

 重大なのは、個人単位の期間制限は、派遣法が禁止する特定目的行為につながるおそれがあることです。

 政府は、三年ごとに課をかえることでキャリアを見詰め直すと説明してきましたが、そのためには、派遣先が派遣社員を指定、選別せざるを得ないのは自明のことです。派遣先と派遣労働者との雇用関係が生じたに等しく、このような特定目的行為は派遣法の根幹に触れるものです。

 塩崎大臣も、労働者派遣制度が労働者供給事業の禁止の例外としている趣旨からも、特定目的行為の禁止は重要な考え方と認めています。まさに法案の欠陥であり、断じて認めることはできません。

 また、派遣労働者のキャリアアップ措置と雇用安定措置は、いずれも実効性がなく、正社員になれる保証はありません。多くの派遣労働者がキャリアを持ちながら雇用の調整弁として首を切られていることは、質疑でも参考人質疑でも告発されてきました。それどころか、専門二十六業務を廃止することで三年後の雇いどめが表面化したのに対して政府が全く無策であることは、厳しく指摘したいと思います。

 本法案は、昨年廃案になった政府案に与党修正を盛り込んで再提出されました。しかし、参考人からも指摘されたように、臨時的、一時的原則を法定する一方で、事実上期間制限がなくなる、派遣労働者がふえれば速やかに見直しを行うなど、相反した内容で、極めて矛盾した法案になっています。このような法案は廃案にするほかありません。

 最後に。二〇〇八年秋からのリーマン・ショックをきっかけに、派遣労働が究極の不安定雇用であることが浮き彫りになりました。全国一の派遣切りが集中した愛知派遣村の当事者たちは、当時、今の法律があったら自分は正社員になれたと訴えています。派遣労働者を紙切れ一枚で寒空へ放り出したあのときの教訓から、初めて派遣労働者の保護へと踏み出したはずであります。あの原点に、今こそ立ち返るべきです。

 戦後労働法制の根幹を崩す本法案の廃案を重ねて求めて、反対の討論といたします。(拍手)

議長(大島理森君) 輿水恵一君。

    〔輿水恵一君登壇〕

輿水恵一君 公明党の輿水恵一でございます。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案に賛成の立場で討論を行います。(拍手)

 日本は今、世界でも類を見ない少子高齢化と人口減少が進行している中、経済や社会の持続と成長のための改革は待ったなしであります。働きたいと希望する全ての人がその能力を生かしていくために、多様な働き方ができる社会を構築しなくてはなりません。

 本法律案は、派遣労働者が正社員を希望するなら、キャリアアップ支援等によって正社員への道を開き、一方、派遣という形態を選択するのであれば、労働者としてその権利が十分に守られるようにするものであります。まさに、労働者保護の観点から、派遣労働者の雇用安定と正社員化に向けた大きな一歩であると評価をいたします。

 以下、本法律案の主な賛成理由を述べます。

 第一に、今回の改正では、教育訓練を受けにくくキャリア形成がされにくい派遣労働者に対して、キャリアアップ措置が義務化される点であります。具体的には、派遣元に対し、計画的な教育訓練やキャリアコンサルティングを義務づけ、さらに派遣先においても業務遂行に必要な教育訓練を行うなど、派遣労働者の職業能力の向上のための取り組みが強化されます。

 第二に、派遣事業を全て許可制にしていく点であります。許可取り消しを含めた厳格な制度に変更する中で、キャリア形成支援制度を派遣会社の許可、更新要件とすることにより、全ての派遣会社が計画的に人材育成を実施することになり、派遣労働者の職業能力の開発という点において大きな改革がなされるものであります。

 第三に、派遣は臨時的、一時的という考えのもとで法律の運用を行うことになり、望まない形での派遣への固定化の防止が図られる点であります。三年ごとの節目節目で派遣労働者の雇用安定のための措置を派遣元に義務づけ、現行の派遣先で自分の能力を存分に発揮する道に進むのか、新しい職場で自分に合った仕事を探し続けるのかなど、一人一人が自身のキャリアを考えながらの職業能力の開発が期待されるものであります。

 第四に、専門的業務である二十六業務を廃して、全ての業種に一律に期間制限を設ける点であります。これにより、派遣期間規制が見直され、事業主、労働者双方にとってわかりやすい制度になります。

 第五に、法案の附則において、我が党の主張を踏まえ修正が加えられ、均等・均衡待遇について検討するため、調査研究その他の必要な措置を講ずると明記されました。今後、しっかりと調査研究を進めることで、我が国が目指すべき労働市場、雇用制度を議論する契機になることと期待するものであります。

 以上、主な賛成理由であります。

 なお、三党から提出された労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案に関しては、自民党、公明党、維新の党で修正協議を行い、修正されたことを踏まえ、賛成をいたします。

 今回の労働者派遣法の改正が、派遣元と派遣先が連携して、個々の派遣労働者の意欲や希望などを丁寧にくみ上げながら教育訓練による業務範囲の見直しなどを進め、一人一人の可能性を引き出し、個々の能力を高めることにつながるように、そしてより付加価値の高い業務、そしてより賃金の高い職域に、さらに、希望する場合は正規雇用としてより安定した就労への道筋をつけることにつながるよう、的確に法律を運用していただくことを期待し、私の賛成討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、井坂信彦君外五名提出、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       厚生労働大臣  塩崎 恭久君

       国土交通大臣  太田 昭宏君


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