衆議院

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第36号 平成27年6月30日(火曜日)

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平成二十七年六月三十日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十九号

  平成二十七年六月三十日

    午後一時開議

 第一 貿易保険法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件

 第三 農業協同組合法の一部を改正する法律案(岸本周平君外三名提出)

 第四 農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 貿易保険法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件

 日程第三 農業協同組合法の一部を改正する法律案(岸本周平君外三名提出)

 日程第四 農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 貿易保険法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、貿易保険法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長江田康幸君。

    ―――――――――――――

 貿易保険法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔江田康幸君登壇〕

江田康幸君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、平成二十五年十二月に閣議決定された独立行政法人改革等に関する基本的な方針に基づき、貿易保険制度をより効率的かつ効果的に運営する体制を整備するための措置を講じようとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、独立行政法人日本貿易保険を株式会社日本貿易保険に改め、政府が常時その株式の総数を保有していなければならないこととするとともに、国が保険の引き受け基準を定めるほか、一定の重要案件について、国が株式会社日本貿易保険に対して意見を述べることを可能とすること、

 第二に、貿易再保険特別会計を廃止し、株式会社日本貿易保険に経理を一元化するとともに、保険金の確実な支払いを担保するため、資金調達が困難な場合には、政府が必要な財政上の措置を講じるものとすること

等であります。

 本案は、去る六月十日本委員会に付託され、十二日に宮沢経済産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、十七日に質疑を行い、質疑を終局いたしました。十九日に討論、採決を行った結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件

議長(大島理森君) 日程第二、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長今村雅弘君。

    ―――――――――――――

 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、特定船舶の入港禁止の実施につき承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔今村雅弘君登壇〕

今村雅弘君 ただいま議題となりました承認を求めるの件につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本件は、平成十八年十月十四日から本年四月十三日まで北朝鮮船籍の全ての船舶の入港を禁止することとする閣議決定について、その後の我が国を取り巻く国際情勢に鑑み、本年三月三十一日に入港禁止の期間を平成二十九年四月十三日まで二年延長する変更をしたため、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法第五条第一項の規定に基づき、入港禁止の実施につき国会の承認を求めるものであります。

 本件は、去る六月十八日本委員会に付託され、翌十九日、太田国土交通大臣から提案理由の説明を聴取した後、直ちに討論を行い、採決の結果、全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第三 農業協同組合法の一部を改正する法律案(岸本周平君外三名提出)

 日程第四 農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第三、岸本周平君外三名提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案、日程第四、内閣提出、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長江藤拓君。

    ―――――――――――――

 農業協同組合法の一部を改正する法律案及び同報告書

 農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔江藤拓君登壇〕

江藤拓君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、内閣提出の法律案について申し上げます。

 本案は、最近における農業をめぐる諸情勢の変化等に対応して、農業の成長産業化を図るため、農業協同組合等について、その目的の明確化、事業の執行体制の強化、株式会社等への組織変更を可能とする規定の整備、農業協同組合中央会の廃止等の措置を講ずるとともに、農業委員会の委員の選出方法の公選制から市町村長による任命制への移行、農地を所有できる法人に係る要件の緩和等の措置を講じようとするものであります。

 次に、岸本周平君外三名提出の法律案について申し上げます。

 本案は、最近における農業協同組合等が果たしている役割の変化等に対応して、農業協同組合等の健全な発展を図るため、農業協同組合等が住民の生活及び地域社会において重要な役割を果たしていることを明記するとともに、農業協同組合等の自主性を尊重するための規定、農業協同組合等の政治的中立性に関する規定等を整備しようとするものであります。

 両法律案は、去る五月十四日本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、十九日の委員会において林農林水産大臣及び提出者小山展弘君からそれぞれ提案理由の説明を聴取しました。五月二十一日からは両法律案を一括して議題とし、審査を進め、五月二十七日及び六月十六日には参考人から意見を聴取し、八日には石川県及び山梨県においていわゆる地方公聴会を開催し、二十五日には安倍内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行うなど、慎重かつ熱心に審査を重ね、同日質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、内閣提出の法律案に対し、維新の党より、政府は、この法律に基づく農業協同組合及び農業委員会に関する制度の改革の趣旨及び内容の周知徹底を図るとともに、組合の事業及び組織のあり方についての当該組合の構成員と役職員との徹底した議論並びに農地等の利用の最適化の推進についての農業の担い手を初めとする農業者その他の関係者の間での徹底した議論を促すことにより、これらの関係者の意識の啓発を図り、当該改革の趣旨に沿った自主的な取り組みを促進するものとする規定を追加する修正案が提出され、趣旨の説明を聴取しました。

 次いで、両法律案及び修正案について一括して討論を行い、順次採決いたしましたところ、まず、岸本周平君外三名提出の法律案につきましては、賛成少数をもって否決すべきものと議決した次第であります。次に、内閣提出の法律案につきましては、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、修正議決すべきものと議決した次第であります。

 なお、内閣提出の法律案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 討論の通告があります。順次これを許します。佐々木隆博君。

    〔佐々木隆博君登壇〕

佐々木隆博君 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました、政府提出、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案について反対、民主党・無所属クラブ提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案について賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 まず、冒頭、本議案の討論に入る前に一言申し上げます。

 去る二十五日、安倍総理に近いと言われる自民党の有志議員による会合で、言論、報道の自由をじゅうりんし、沖縄県民の尊厳を踏みにじる多数の暴言があったことが明らかになりました。この驚くべき暴言の数々に対し、私は、断固たる抗議の意を表明するものであります。

 民主主義国家のあり方を根底から否定するような発言が立法府の一員から発せられ、しかもその場に政府高官が同席したことを看過するわけにはまいりません。問題となった会合関係者の役職停止や厳重注意で済まされる問題ではないのです。自民党総裁である安倍総理みずからが猛省し、真摯に謝罪することを強く求めます。

 さて、本年二月十二日、総理は所信表明演説で、「強い農業をつくるための改革、農家の所得をふやすための改革を進める」、「六十年ぶりの農協改革を断行します。」と高らかに宣言されました。しかし、政権の規制改革の象徴として提出された法案は、誰のための改革、何のための改革なのか、二カ月に及ぶ議論を通じても、ついに明らかにはなりませんでした。

 一昨年の安倍政権発足以降、全く根拠のない農業戸別所得補償制度の廃止、全く実績の上がっていない農地中間管理機構の創設、国会決議を無視し続けるTPP交渉など、自民党お得意の猫の目農政が復活し、史上最悪の、米価が急落に追い込まれるなど、農業の現場は混乱と疲弊が続いています。

 今、農協改革に求められているのは、農業再生、地域再生に向けて、この難局をともに手を携え、知恵を絞り、乗り越えていくため、地域のための農協を法律で明確化することこそ必要なのです。そのため、民主党・無所属クラブ提出の法案は、極めて時宜を得たものであり、与野党の垣根を越えて賛同すべき法案であると考えます。

 他方、政府提出法案は空理空論、絵そらごとにほかなりません。農協法が改正されることにより、なぜ強い農業がつくれるのか、なぜ農家の所得がふえるのか、二十数時間に及ぶ質疑、地方公聴会でもなお、与党の皆さんも含めて納得できないまま、本日を迎えることになっております。

 三度の参考人質疑と二カ所で実施した地方公聴会で意見陳述された農協関係者全員が、農協改革は必要だが、全く焦点がずれている、地域インフラとしての農協を無視していると厳しく指摘し、陳述した四人中三人の学識経験者は、改革の理念がない、協同組合の本質をゆがめるものと断罪しています。

 また、ICA、国際協同組合同盟は、日本の農協と家族農業を脅かす提案と懸念を表明しています。

 具体的には、中央会制度の廃止について、農協改革の端緒をつくった規制改革会議は、再三、単協の経営の自由の尊重を主張してきました。このような指摘は、どのような事実に基づくものでしょうか。

 日本農業新聞が行ったアンケートにおいては、実に九五%以上の組合長が、中央会制度によって経営の自由化を奪われてはいないと回答し、委員会で示された裏づけも、わずか数例の発言にすぎませんでした。

 なぜこの程度の理由で中央会制度を廃止するのか。全く詭弁以外の何物でもありません。自民党農政の失敗を転嫁するためには制度廃止もいとわない。これを責任転嫁と言わずして何と言えましょうか。

 次に、農業所得増大への最大限の配慮を記した第七条第二項の新設についてであります。

 この条文どおり、正組合員ばかりの職能組合への純化を突き進み、農協経営において重要な地位を占めてきた准組合員の事業利用を規制することとなれば、既に地域において当然のように提供されているサービスが、ある日突然縮小されることとなり、地域住民の生活に支障が出ることは明白であります。

 質疑においては、与党議員からも、規制を導入すれば、農家所得向上を目指すことと逆行し、農家も農協も成り立たないとの指摘が出たほどであります。農協の理念をねじ曲げ、それこそ経営の自由を奪う法改正が、なぜ改革と言えるのでしょうか。

 農業協同組合の理事を認定農業者などに限定する改革も、何ら現場の声を踏まえたものではありません。国が意思決定体の構成割合を押しつけるようなことは、協同組合の理念を踏みにじるものであります。

 地方公聴会でも指摘のあったように、地域の農業者を分断するようなことは、やる気のある農業者が理事に就任できない事態を引き起こしかねません。地方創生を掲げながら、その担い手のありようを法律で押しつけるのが今般の改革の実態なのであります。

 農業委員会の公選制の廃止も極めて大きな問題であります。農地の公共性に鑑み、その集約や権利移動を決定する農業委員は、長年、公選により選出されてまいりました。しかし、政府は突然、公選制の廃止を打ち出し、その補完的な役割という理由で農地利用最適化推進委員なる新たな役職が創設されました。農業委員との役割分担も明確でなく、農地中間管理機構も全く実績が上がらない中、何ゆえ農地にこだわり先鋭化するのか、疑問は払拭できておりません。

 日本の農業基本法のもとになったと言われるドイツでは、一九七〇年前後に、家族経営と社会補完型農政に転換しました。その理念は、「誰にも機会を」と「農業を万人のために」であり、協同組合の「一人は万人のために、万人は一人のために」として、その理念は受け継がれているのであります。

 農業は、農村全体として所得をどう向上させるか、新規就農者をどう確保するか、農産物のブランド力をどう強化するかなど、抜本的な議論が必要であります。そして、将来も見据え、与野党の区別なく、農業者が安心して営農を継続できる政策の確立が求められています。

 私どもも、農業戸別所得補償法案やふるさと維持三法案を提出し、各党の皆さんに議論を呼びかけてまいりました。しかし、そのような議論がなされないまま、農協を改革すれば農業が強くなるという到底理解できない説明が長々と展開されてまいりました。政権のアピールのためだけの法案に大変貴重な国会での議論を割かれ、国政を担う者として恥ずかしい思いであります。

 以上申し上げましたように、政府提出法案は全く立法事実を欠くものであり、何ら賛成できる余地はなく、断固反対であることを申し述べ、私の討論といたします。(拍手)

議長(大島理森君) 加藤寛治君。

    〔加藤寛治君登壇〕

加藤寛治君 自由民主党の加藤寛治でございます。

 自民党を代表いたしまして、政府提出の法案について賛成、民主党提出の法案について反対の立場から討論を行います。(拍手)

 今回の政府法案は、これまで安倍内閣において進めてきた農政改革の一環として、農業者を初め、地域農業を盛り上げていこうとする個人、団体などさまざまな方々が、創意工夫しながら、自由に活動できる環境を整備するものであります。

 農協も農業委員会も、いかにすばらしい制度であっても、常に改善を積み重ねなければ、実態と合わなくなってくるのは当然であり、今回の政府法案は、経済社会の変化に的確に対応できるようにしようとするものであります。

 まずは、農協について。

 私自身、平成七年から国会に参画するまで、JAの組合長等を務めてまいりましたが、今の全中を頂点とする上意下達のピラミッド形の組織のままではいけないとの思いを抱き続けてまいりました。

 今回の改革は、農業者の協同組合であるという農協の原点に立ち返り、農業所得の増大に全力投球できるようにするための改革であります。したがって、農協の役職員が担い手を初めとする農業者と徹底した話し合いを行い、農産物をいかに有利に販売していくかということを最重点に置いて改革を進めることが最も重要であります。

 政府法案は、地域農協の自己改革を促す観点から、責任ある経営体制を確立するための理事構成の見直しや、農業所得の増大に最大限配慮するという事業運営の原則の明確化を行い、また、連合会や中央会についても、地域農協の自己改革を適切にサポートできるような組織体制に移行することができることとしております。

 次に、農業委員会について。

 農業委員会は、市町村の独立行政委員会であり、その主たる使命は、担い手への農地集積、集約化の促進や、耕作放棄地の発生防止、解消といった農地利用の最適化の促進であります。

 しかしながら、現在の農業委員会は、地域によって相当の差はありますが、総じて言えば、農業者から十分な評価を受けているとは言いがたい状況にあります。

 政府法案は、農業委員の選出方法を、公選制から、市町村議会の承認を得て、市町村長の選任制に改め、各地域における農地利用の最適化を行う農地利用最適化推進委員を新設するものであり、この改革によって、農業委員会がその主たる使命をよりよく果たせるようになるものと考えております。

 最後に、農業生産法人について。

 政府法案は、農地を所有できる法人である農業生産法人の要件について、法人が六次産業化等を図り、経営を発展させようとする場合の障害を取り除く等の観点から、役員の農作業従事要件や構成員要件の見直しを行うこととしております。

 一方で、民主党の農業協同組合法の改正案は、そもそもの問題設定から、我々とは決定的に異なっております。

 農業者の世代交代が進む中で、農産物販売や生産資材調達における農協のシェアは低下の一途をたどっており、大多数の農業者から、販売力の強化や資材価格の引き下げを強く求める声が出ています。したがって、農業のために真剣に取り組む農協にするにはどうするかというのが最大のポイントであります。

 そうした状況にもかかわらず、民主党は、農協は、農業ではなく、それ以外の地域貢献を優先すべきとの全く逆のメッセージを発しております。日本農業に対する危機意識を完全に欠いていると言わざるを得ません。

 これまでかんかんがくがくの議論があり、紆余曲折を経てきた農協改革、農業委員会改革については、今や議論を終えて実行に移すべきときであります。

 政府法案が、あらゆる農業者、農業関係者にとって農業の将来を真剣に考える契機となることを強く期待して、私の討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) 斉藤和子君。

    〔斉藤和子君登壇〕

斉藤和子君 私は、日本共産党を代表して、農協法等の改正案に反対の討論を行います。(拍手)

 本法案は、安倍総理主導のもと、農業を企業のもうけの場に開放するため、邪魔になる農協や農業委員会の解体に道を開くものです。農協を岩盤規制の象徴として描き出し、六十年間続いてきた制度に穴をあけるとしていることは、とんでもありません。政府が本当に農業の再生を願うなら、再生産可能な価格保障を実現し、歯どめなき農産物の輸入拡大路線こそ見直すべきです。

 以下、具体的な反対理由を述べます。

 協同組合は、自主自立が基本であり、理事の資格の導入などの改革案を政府や規制改革会議が押しつけるものではないということです。JA全中がみずからまとめた自主改革案こそ尊重すべきです。

 参考人質疑などでも、本改正案への積極的な賛成の声は聞かれず、現場の意見が反映されていない、改革の的がずれているなどの批判の声が相次ぎました。

 国際協同組合同盟理事会は、日本の農協運動の結束を解体する法改正に大きな懸念を表明し、日本の農協が農業者や地域社会に提供しているサービスを縮小し、最終的には国民経済にとって逆効果となるだろうと厳しく批判しています。

 この改革は、農業者を置き去りにしているものであり、認めることはできません。

 また、本改正案は、これまで家族農業と地域社会を支えてきた総合農協の役割を否定するものです。

 本改正案の特徴の一つは、農協の目的として、営利の追求を強調していることです。株式会社化の導入で、営利が優先され、今赤字となっている営農指導や地域のインフラなど、農家や地域に必要不可欠なものさえ切り捨てられかねません。農外企業の横暴に協同して立ち向かう農協の目的と性格を否定して、どうして農業者を守れるのでしょうか。

 さらに、JA全中の監査指導権限を奪うことや、信用、共済事業の分離、准組合員の利用制限などを狙っていることは許されません。

 もう一つ重大な問題は、農業委員会の公選制を廃止し、農地の番人としての農業委員会制度を骨抜きにし、農地への企業参入を促進することです。

 農地は、単なる土地ではありません。先祖代々その土地を耕し、土をつくり引き継いできたものだからこそ、農民の農地に対する思いは特別なものがあります。

 農地の権利の移動や転用にかかわる農業委員会は、農業者がみずから代表者を選ぶことで、農家から信頼され、農地の守り手として役割を発揮することができたのです。それを市町村長の任命制に変えて、これで本当に農地を守ることができるのかと不安の声が出るのは当然です。

 さらに、農業、農村の全般的な問題について意見する権利を奪い、農地利用に関するものに限定することは、農業委員会を形骸化するものです。

 加えて、農地法を一部改正し、農地所有の法人の要件緩和を進めることは、企業による農業や農地への参入をさらに進めるものであり、許すことはできません。

 今、TPP交渉が重大な局面を迎えています。多くの農家が不安を強めているときに、農家の声を束ねTPP反対を訴えてきた農協組織の解体を進めることは重大です。協同組合の自主性を奪い、家族経営を基本にしている日本の農業と農村の将来に重大な禍根を残す、農業組織の解体ともいうべき本法案を廃案にすることを求めて、反対討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) 横山博幸君。

    〔横山博幸君登壇〕

横山博幸君 維新の党、横山博幸です。

 維新の党を代表して、ただいま上程されました政府提出の農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案及び維新の党提出の修正案について、賛成の立場から討論をさせていただきます。(拍手)

 今回の改正は、農協、農業委員会、農業生産法人の見直しという農業の組織面の改革を行うことによって、昨年から進められている農業の大改革を推し進めようとするものであります。

 我々維新の党は、TPP交渉に参加し、自由貿易体制を発展させることが必要だと主張しており、日本の農業が成長産業へと成長することは、TPPへの参加いかんにかかわらず、大変重要なことだと考えております。

 まず、維新の党の基本的な考え方である、農業が成長産業へ向かう七つの視点を述べさせていただきます。

 一つ目は、日本のすばらしい食文化を、世界市場を見据えて、輸出産業とすることであります。

 二つ目は、全国一律の農業政策を、きめ細かな気候や土壌や生産技術に鑑みて、適地適産の政策を打ち立てること。

 三つ目は、企業参入により、経営感覚を持つこと。

 四つ目は、若者にとって魅力ある産業にすること。

 五つ目は、農協の機能を進化させること。

 六つ目は、観光産業との融合であります。

 最後の七つ目に、忘れてはならないのが、日本の環境を維持するために、中山間地の農業は環境保全として考えるべきであることであります。

 以上七つの視点から考えると、今回の法案では、農協の機能を進化させ、経営感覚を持たせるという点では評価をすることができます。

 一方、現状の課題として、例えば、飼料用米の増産を積極的に進めておりますが、これを全国一律で進めているがゆえに、ひずみも生じております。

 飼料メーカーの工場のない地域、あるいは飼料米の需要のない地域であれば、流通経費をかけて他の地域に飼料米を運ばなければならなくなります。あるいは、倉庫で飼料米を保管せざるを得なくなります。その結果、飼料米のコストが上がってしまい、肝心な畜産農家が買えなくなるなど、いろいろなふぐあいが起きると想定できます。

 したがって、失政を防ぐには、やはり、全国一律ではなくて、四十七都道府県における適地適産を考えた農業対策を実施していかなければなりません。

 また、農地中間管理機構の創設についても課題があります。

 これは、農業の担い手への農地集積と集約化によって農業構造の改革と生産コストの削減を推進するためのものであり、具体的には、現状で担い手の利用面積が農地全体の約五割となっているのを、今後十年間で八割へと高めるように農地集積を推進するというものであります。

 しかし、創設から一年たっても、いまだうまく進んではおりません。農業者の数も減ってきております。

 現状の農業政策では、農業の将来像をどのように描いているのかが見えてこないのは明らかであります。農家のためにも、十年後、二十年後の農業の将来像をしっかり描いていかなければなりません。

 こうした視点で見ますと、政府提出の法律案では、まだ成長への歯車が不十分な点があります。

 維新の党は、企業との連携や農産物の輸出を促進し、改革に向けてアクセルを踏み込むためにも、今後ともたゆまぬ提案をしていきたいと考えており、農業の大改革を推進する原動力となることをまず強調しておきたいと思います。

 さて、現在の農業はどういう環境にあるのか、いま一度思い起こしてみたいと思います。

 一九九〇年には、十一兆五千億の農産物の産出額がありました。しかしながら、今では大きく減額し、八兆円程度となっております。特に、日本が一番大切にしてきた米の生産が三兆円以上も減少しております。

 日本は、米の価格を維持するために、需要と供給のバランスを鑑みて、減反及び生産調整の政策をとってきました。減反開始は一九七〇年でありましたが、現実には、その翌年から一九七四年にかけて約七百四十万トンの米余りが生じ、さらに、一九七九年から一九八三年にかけて約六百万トンの米余りが生じました。これらの過剰米に対し、驚くべきことに、三兆円余りもの税金をかけて処理せざるを得なくなるという結果に追い込まれました。

 さらには、WTOでミニマムアクセス米を輸入することとし、それに対する対策で、実に六兆円を上回る税金投入を余儀なくされてしまいました。

 この間の政府の農業政策では、転作作物への推進、土地改良による基盤整備、融資や助成措置などを行ってまいりましたが、それにもかかわらず、農家の所得は下がり続けてきました。一九七〇年代には五兆円を超えていた米の生産農業所得は、二〇一一年には約三・二兆円まで下がりました。

 一方、若者離れも進んでおります。現在の平均年齢は六十五歳以上であり、六十五歳未満の男子のいる専業農家はわずか七%であります。

 まさに、現在の日本の農業は厳しい状況にあり、このままいけば日本から農業が消えてしまうとも言える大変な岐路に立たされているのであります。

 もちろん、維新の党は、自立する国家という基本方針を実現するためにも、農業が大変大切な位置を占めていると強く認識をしております。今こそ、日本の食文化を守る農業を産業として再生していかなければなりません。

 では、なぜ、過去に毎年二兆円以上の予算をかけながら、農業が魅力ある成長産業にならなかったのでしょうか。

 日本は、一九七〇年代、生産技術や農業機械の開発によって飛躍的に農業生産高がふえていく中、日本の一番の強みである米について、国内市場だけに視点を当て、減反政策に踏み切ったのであります。そのため、結果的に、農業は、日本市場内で独自の方向性を持った、国内だけしか見られない産業になってしまいました。成長を目指す産業であったなら、当然、世界市場を見据えた農業政策を展開しなければなりませんが、過去の政策は、世界市場で結果的におくれをとってしまったのであります。

 昨年来、農地中間管理機構が創設されて、経営所得安定対策の見直し、水田フル活用と米政策の見直し、日本型直接支払い制度の創設など、安倍政権としても重要政策の大転換の方針が示されました。しかし、農業者の間では、この農業政策もいつまで続くのかという不安と不信が大きく広がっております。

 今回の改正は、農協に対して変革を求めるものであります。農協は、農業者の協同組織であり、農協を通じて農産物を販売したり、生産資材を購入したりすることなどにより、農業者がメリットを受けられるものでなければなりません。

 農協の設立は六十七年前でありますが、当時は戦争直後であり、疲弊した農業の立て直しと食料危機を脱すること、さらに農地解放を定着させることを狙いとしておりました。その七年後に設立された中央会は、全国各地に多数設立された小規模零細農協の監査と経営改善の役割を果たしてまいりました。

 しかしながら、六十年を経過して、農協を取り巻く状況は大きく変化いたしました。国内の食料マーケットが縮小に向かう中で、海外への輸出を視野に入れたり、六次産業化により川下の付加価値を取り込んだりしなければなりません。

 農産物を有利に販売するためには、まず、消費者、需要者のニーズに対応したマーケットイン型の農業経営と、フードバリューチェーンを構築するといった販売努力が不可欠であります。まさに、賢く、したたかで、柔軟力を持った強い農協に変貌を遂げていただく必要があります。

 また、過疎化が進む中山間地と都市近郊地域では、方向性も大きく異なります。つまるところ、農協のやるべき経済事業が地域によって非常に多様化しているということであり、地域農協がそれぞれの地域の実情に応じて自由で独自の経済事業を展開することにより可能性を広げていく、そうした環境が何より大切だと考えております。

議長(大島理森君) 横山君、時間が来ております。

横山博幸君(続) はい。

 我々維新の党は、農業の成長産業化で農村に新たな人材や企業の参入を呼び起こし、ふるさとの再生の目標を掲げ、農業の発展なくして日本の将来はあり得ないとの強い意思を持ち、改革を進めることを確約し、維新の党を代表しての横山博幸の賛成討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、日程第三、岸本周平君外三名提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は否決であります。この際、原案について採決いたします。

 本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立少数。よって、本案は否決されました。

 次に、日程第四、内閣提出、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       農林水産大臣  林  芳正君

       経済産業大臣  宮沢 洋一君

       国土交通大臣  太田 昭宏君


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