衆議院

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第44号 平成27年9月3日(木曜日)

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平成二十七年九月三日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第三十六号

  平成二十七年九月三日

    午後一時開議

 第一 個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)

 第二 確定拠出年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第四 投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件

 第五 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第六 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第七 社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第八 琵琶湖の保全及び再生に関する法律案(環境委員長提出)

 第九 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第十 独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 第十一 公認心理師法案(文部科学委員長提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)

 日程第二 確定拠出年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第四 投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第五 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第六 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第七 社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第八 琵琶湖の保全及び再生に関する法律案(環境委員長提出)

 日程第九 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第十 独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 日程第十一 公認心理師法案(文部科学委員長提出)

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院回付)

議長(大島理森君) 日程第一、個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。

    ―――――――――――――

 個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案の参議院回付案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の参議院の修正に同意の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、参議院の修正に同意することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第二 確定拠出年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第二、確定拠出年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長渡辺博道君。

    ―――――――――――――

 確定拠出年金法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔渡辺博道君登壇〕

渡辺博道君 ただいま議題となりました確定拠出年金法等の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、企業年金制度等について、働き方の多様化を初め社会経済構造の変化に対応するとともに、老後に向けた個人の自助努力を行う環境を整備するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、従業員数が百人以下の事業所を対象として、設立手続等を簡素化した簡易型確定拠出年金制度と、事業主による個人型確定拠出年金への掛金の納付制度を創設すること、

 第二に、国民年金の第三号被保険者、企業年金加入者及び公務員等共済加入者について個人型確定拠出年金に加入できるものとすること、

 第三に、確定拠出年金の加入者に対する継続的な投資教育の実施を事業主の努力義務とするとともに、加入者に提示する運用商品数の上限の設定等の措置を講じること

等であります。

 本案は、去る八月三日本委員会に付託され、五日塩崎厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、二十一日から質疑に入り、二十八日質疑を終局いたしました。

 質疑終局後、民主党・無所属クラブより、現行と同様、確定拠出年金における元本確保型商品の選定を義務づけることとする修正案が提出され、趣旨説明を聴取いたしました。

 次いで、原案及び修正案について討論、採決を行った結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第四 投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第五 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第六 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第七 社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件

議長(大島理森君) 日程第三、投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第四、投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第五、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第六、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、日程第七、社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件、右五件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長土屋品子君。

    ―――――――――――――

 投資の促進及び保護に関する日本国とカザフスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウルグアイ東方共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカタール国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 社会保障に関する日本国とルクセンブルク大公国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔土屋品子君登壇〕

土屋品子君 ただいま議題となりました五件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、日・カザフスタン投資協定は、平成二十六年十月二十三日にアスタナにおいて、日・ウクライナ投資協定は、平成二十七年二月五日にキエフにおいて、それぞれ署名されたもので、我が国とカザフスタン及びウクライナとの間で、投資の拡大により経済関係を一層強化するため、投資の許可後の投資家及び投資財産の保護等について定めるものであります。

 次に、日・ウルグアイ投資協定は、平成二十七年一月二十六日にモンテビデオにおいて署名されたもので、我が国とウルグアイとの間で、投資の拡大により経済関係を一層強化するため、投資の許可後の投資家及び投資財産の保護について定めるとともに、投資の許可段階の内国民待遇等についても定めるものであります。

 次に、日・カタール租税協定は、平成二十七年二月二十日に東京において署名されたもので、我が国とカタールとの間で二重課税の回避を目的とした課税権の調整を行うとともに、両国における配当、利子及び使用料に対する源泉地国課税の限度税率等を定めるものであります。

 最後に、日・ルクセンブルク社会保障協定は、平成二十六年十月十日に東京において署名されたもので、我が国とルクセンブルクとの間で年金制度、医療保険制度等に関する法令の適用について調整を行うとともに、両国の年金制度の加入期間を通算すること等について定めるものであります。

 以上五件は、五月二十一日外務委員会に付託され、翌二十二日岸田外務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。去る八月二十八日、質疑を行い、質疑終局後、まず、日・カザフスタン投資協定、日・ウクライナ投資協定、日・ウルグアイ投資協定及び日・カタール租税協定について、討論の後、順次採決を行った結果、四件はいずれも賛成多数をもって承認すべきものと議決し、次に、日・ルクセンブルク社会保障協定について採決を行った結果、本件は全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、日程第三ないし第六の四件を一括して採決いたします。

 四件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、四件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

 次に、日程第七につき採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 日程第八は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第八 琵琶湖の保全及び再生に関する法律案(環境委員長提出)

議長(大島理森君) 日程第八、琵琶湖の保全及び再生に関する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。環境委員長北川知克君。

    ―――――――――――――

 琵琶湖の保全及び再生に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔北川知克君登壇〕

北川知克君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 本案は、国民的資産である琵琶湖を健全で恵み豊かな湖として保全及び再生するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、主務大臣は、琵琶湖の保全及び再生に関し実施すべき施策を推進するため、琵琶湖の保全及び再生に関する基本方針を定めなければならないこと、

 第二に、滋賀県は、同基本方針を勘案して、琵琶湖保全再生施策に関する計画を定めることができること、

 第三に、国は、同計画に基づく事業が円滑に実施されるよう、その実施に要する費用について、必要な財政上の措置を講ずること、

 第四に、主務大臣、関係行政機関の長、関係府県知事及び関係指定都市の長は、琵琶湖保全再生施策の推進に関し必要な事項について協議を行うため、琵琶湖保全再生推進協議会を組織することができること

などであります。

 本案は、去る一日の環境委員会において、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。

 何とぞ速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第九 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第九、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長井上信治君。

    ―――――――――――――

 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔井上信治君登壇〕

井上信治君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、公共施設等運営事業の円滑かつ効率的な遂行を図るため、国の職員が公共施設等の運営等に関する専門的な知識及び技能を必要とする業務に従事するために公共施設等運営権者の職員として在職した後引き続いて国の職員となった場合における退職手当の特例を設ける等の措置を講ずるものであります。

 本案については、去る八月六日本委員会に付託され、翌七日甘利国務大臣から提案理由の説明を聴取し、二十六日仙台空港の視察を行いました。次いで、昨九月二日に質疑を行い、質疑終局後、討論、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第十 独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第十、独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長江藤拓君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔江藤拓君登壇〕

江藤拓君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、農林水産省所管の独立行政法人に係る改革を推進するため、農業・食品産業技術総合研究機構等四法人の統合、水産総合研究センター等二法人の統合、農業者年金基金及び農林漁業信用基金について役職員の秘密保持義務に係る規定の整備等を行おうとするものであります。

 本案は、去る八月二十五日本委員会に付託され、翌二十六日林農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、昨九月二日質疑を行いました。質疑終局後、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 日程第十一は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第十一 公認心理師法案(文部科学委員長提出)

議長(大島理森君) 日程第十一、公認心理師法案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。文部科学委員長福井照君。

    ―――――――――――――

 公認心理師法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔福井照君登壇〕

福井照君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。

 本案は、近時における国民が抱える心の健康の問題等をめぐる状況に鑑み、公認心理師の資格を定めることにより、その業務の適正を図り、もって国民の心の健康の保持増進に寄与しようとするものであり、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、公認心理師とは、登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析等を行うことを業とする者をいうこととしております。

 第二に、公認心理師として必要な知識及び技能について、主務大臣が一定の受験資格を有する者に対して試験を実施することとしております。

 なお、主務大臣については、文部科学大臣及び厚生労働大臣としております。

 第三に、公認心理師においては、信用失墜行為を禁止し、及び秘密保持義務を課するとともに、業務を行うに当たっては、医師、教員その他の関係者との連携を保たなければならず、心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治医があるときは、その指示を受けなければならないこととしております。

 以上が、本案の提案の趣旨及び主な内容であります。

 本案は、昨二日、文部科学委員会において、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。法務大臣上川陽子君。

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 技能実習制度は、開発途上地域等への技能等の移転を図り、その経済発展を担う人づくりに協力することを目的とする制度として、我が国の国際貢献において重要な役割を果たしていますが、一方で、同制度に関しては、制度の趣旨を理解せず、国内の人手不足を補う安価な労働力の確保策として使われており、その結果、労働関係法令の違反や人権侵害が生じている等の指摘があり、指摘されている問題点の改善を行い、制度の趣旨に沿った運用の確保を図る必要があります。また、こうした制度の適正化を前提に、この制度の活用を促進するため、制度の拡充を図ることも求められております。

 そこで、技能実習を実施する実習実施者やその実施を監理する監理団体に対し必要な規制を設け、管理監督体制を強化するとともに、技能実習生の保護に係る措置等を定め、あわせて優良な実習実施者や監理団体に対してはより高度な技能実習の実施を可能とするため、本法律案を提出した次第であります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一に、技能実習の基本理念及び関係者の責務を定めるとともに、技能実習に関し基本方針を策定することとしております。

 第二に、実習実施者が、技能実習生ごとに、かつ、技能実習の段階ごとに作成する技能実習計画について、主務大臣の認定を受ける仕組みを設けた上、修得した技能等の評価を行うこととすること等により、制度の趣旨に沿った運用の確保を図ることとしております。

 第三に、実習実施者及び監理団体が、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護について重要な役割を果たすことに鑑み、実施の届け出及び監理団体の許可の制度を設けるとともに、これらの者に対する主務大臣の立入検査、改善命令、許可取り消し等の権限を定め、技能実習制度の適正化を図ることとしております。

 第四に、技能実習生に対する人権侵害行為等について、禁止規定を設け、違反に対する所要の罰則を規定すること等により、技能実習生の保護を図ることとしております。

 第五に、外国人技能実習機構を認可法人として新設する枠組みを設け、技能実習計画の認定及び監理団体の許可に関する事務、実習実施者及び監理団体に対する実地検査、技能実習生に対する相談及び援助等を行わせることとしております。

 第六に、制度拡充の一環として、現在技能実習は二段階となっていますが、新たに第三段階を設け、第二段階の目標を達成した者は、この第三段階に進み、優良な実習実施者及び監理団体のもとで、より高度な技能実習を行うことを可能にすることとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 最後に、この法律案の施行期日は、平成二十八年三月三十一日までの間において政令で定める日としておりますが、外国人技能実習機構の設置等に関する規定については、公布の日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。鈴木貴子君。

    〔鈴木貴子君登壇〕

鈴木貴子君 民主党の鈴木貴子です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案について質問をさせていただきます。(拍手)

 改めて今回の法案名に目を向けると、技能実習の適正な実施と並んで、技能実習生の保護に関するとなっています。この名称こそ、本制度の運用と本来目指す目的とがいかにかけ離れたものであったのか、端的に示しているのではないでしょうか。

 しかしながら、法案が提出されたからには、指摘される問題点に与野党を超えて真摯に向き合い、制度の創設以来積み上がってきた課題や問題点をこれ以上放置することなく解決していくとの思いで質問をさせていただきます。

 まず、本法案の立法趣旨を改めて確認させていただきます。

 提案理由では、技能実習制度は、開発途上地域等への技能等の移転を図り、その経済発展を担う人づくりに協力することを目的とする制度であることを確認し、この制度が我が国の国際貢献において重要な役割を果たしていることを評価しています。

 しかし、それに続けて、同制度に関しては、制度の趣旨を理解せず、国内の人手不足を補う安価な労働力の確保策として使われており、その結果、労働関係法令の違反や人権侵害が生じている等の指摘がありと、本来の趣旨に沿わない実態についてみずから指摘をしています。この指摘は真っ当です。

 しかし、この記述では、問題を、制度利用者もしくは団体の理解不足に責任の所在を転嫁している感が否めません。

 平成五年に制度がスタートしてから二十年以上がたっており、こうした制度の悪用を放置してきたことを政府みずからがまずは素直に認めること、そして、反省することが必要ではないでしょうか。法務大臣、厚生労働大臣の見解を伺います。

 提案理由説明では、こうした制度の適正化を前提に、この制度の活用を促進するため、制度の拡充を図ると書かれています。あくまで前提条件は適正化です。国際社会に貢献するという大義のためにも、拡充策は制度の適正化が着実となってから施行すべきであると考えますが、厚生労働大臣の見解を伺います。

 「日本再興戦略」改訂二〇一四では、外国人材の活用の項で、多様な価値観や経験、技術を持った海外からの人材が日本でその能力を発揮してもらいやすくすることが重要とし、その対応策として、技能実習制度を拡充することとしています。

 二〇一五年改訂版では、外国人材の活躍強化と名を変えた上で、技能実習の対象職種の追加を表明されています。

 技能実習制度から安価な労働力確保というイメージを拭いたいのか、政府も外国人材の活用から活躍に微修正をされておりますが、今回、新たに対象となることが検討されている介護は、まさに今、国内における人材不足が問題となっています。

 また、去年四月には、東京オリンピックが開かれる二〇二〇年度までの時限措置として、人手不足などの影響から入札不調が相次ぐ建設業において即戦力となり得る外国人材の活用促進を図ることを取りまとめました。

 そこで、厚生労働大臣にお尋ねをします。

 外国人技能実習制度の目的は労働力の確保ではないといまだに、いや、これでも言い切るのか、それとも、実のところは労働力の確保策と見ているのか、正直にお答えください。

 また、「日本再興戦略」改訂二〇一五で、介護などを新たに対象とした理由もお答えください。

 説得力のある説明がなければ、既に指摘されている安価な労働力の確保とも見えるこの拡充政策は、国際社会から利己的と批判され、安倍政権が目指す世界から信頼される国、これからほど遠いものになるのではないでしょうか。

 私も介護施設の皆さんから、募集しても集まらない、現場の負担はピークに来ている、利用者さんにも迷惑がかかっている、そういった窮状をよく耳にするものです。特に、介護の分野では時に命や尊厳にも密接にかかわることから、労働力の確保は死活問題であり、早急に対応が必要です。

 しかし、労働力不足の解消は、制度の趣旨を踏み越え技能実習の名目で対応するのではなく、また、発展途上国から訪れる実習生の弱い立場を利用するのではなく、正面から議論をしていくべきです。

 例えば、さきに挙げた人材難の要因の一つとされる介護職員の賃金は、平均月額二十二万円です。全産業平均よりも十万円も低いとされています。高齢化社会の中で確実に需要がふえると見越される介護職員の抜本的な処遇や待遇の改善がまずは先だと考えますが、厚生労働大臣の見解を求めます。

 対象職種に介護を加えるのは、日本の介護技術を海外でも生かしてもらうためともし言うのであれば、日本語の習得が前提の国内への受け入れではなく、指導者を技能移転先、つまりは送り出し国地域に派遣する方がよっぽど国際貢献においては効果的であり、また効率的ではないか、このように考えますが、厚生労働大臣の見解を求めます。

 労働力不足の根本的な解決がなければ、技能実習の名のもとでの労働力確保はなくなりません。国内対策を講じ、また、送り出し国がどのような技術を取得したいのかというニーズに照らし、技能実習を本来の趣旨に沿った制度につくり直すべきではないでしょうか。厚生労働大臣の見解を求めます。

 さて、制度の趣旨をいま一度考えるべきは、受け入れ国である日本だけでなく、それは送り出し国も同様です。

 実習生帰国後のフォローアップ調査の回収率がわずか一〇%ということも指摘せざるを得ませんが、そのわずかな回答の中にも、注視すべき課題、そしてまた送り出し国が抱える厳しい現状というものが見えてきます。

 本制度のどのようなところを評価するのかという問いでは、日本企業が誇るべき特質である高度な技能、品質管理、生産管理や安全管理を評価するという回答が四割。これは、日本でためたお金と答えた六割の声を下回る評価です。高度な技能移転と言えない実態に、制度としての適正の欠如が見えます。

 国際貢献というならば、いかにきめ細かな教育をしていくのか、実習そのものの質へと目を向けていくべきではないでしょうか。

 質の向上を図りつつ、延長ありきではなく、技術移転の推進に資する適切な実習期間を考えるべきだと思いますが、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

 技能移転を着実なものとする目的、そして送り出し機関による不当な金銭の徴収などをなくすためには、送り出し国との協力のもと、水際対策も必要です。

 しかし、今回の法案では、二国間協定に関する規定すら触れられていません。二国間協定の締結を明確に打ち出すべきではないでしょうか。法務大臣とともに、対外交渉を担う外務大臣に見解を伺います。

 次に、新たに設立を目指すとする外国人技能実習機構についてお尋ねします。

 年間五万人程度の実習生がおり、人数分の実習計画の認定、全国に三万二千ある監理団体と実習事業所の検査、個別の相談や援助、そしてまた言葉の壁もあるでしょう。業務は複雑かつ膨大です。

 今では世界から人身取引とまで酷評されているこの実習制度の現状を改めるには、本部に八十名、そしてまた地方に二百五十名という体制ではいささか心もとないと思いますが、円滑かつ実効性を伴った管理運営をどのように考えているか、厚生労働大臣にお尋ねをいたします。

 次に、人権及び待遇に係る違反の実態、そして解決のための提言をさせていただきます。

 全国の労働基準監督署が平成二十五年に実習実施機関二千三百十八事業所に対し監督指導を行ったところ、約八割が、安全衛生関係、労働時間、賃金不払いなどの労働関係法令違反が指摘をされています。

 こうした実情からも、実習実施機関も届け出制ではなく、監理団体同様に許可制にすべきと考えますが、厚生労働大臣、いかがでしょうか。

 また、人権や処遇に関して実習生から不適正事例が申告された場合には、強制帰国やさらなる不当な扱いから守るためにも、実習先の変更など、実習が継続できるよう保障する制度を設けるべきだと考えます。法務大臣にお尋ねをいたします。

 また、実習生に支払われる賃金も大きな問題です。

 ある調査では、ベトナムからの実習生がふえている中、実習の前後では、日本によい印象を持つ人が四割も減ったというデータがあります。その大きな理由として、安い給料が挙げられています。

 現行制度でも、日本人が従事する場合の報酬と同等額以上とされています。が、しかし、その実態は、国内の人手不足を補う安価な労働力の確保策として使われてと提案説明でもあるように、最低賃金レベルです。

 適正な評価のもとに賃金が支払われることを担保するため、日本人労働者に支払われる賃金額を提示し、賃金設定の客観的な説明義務を課すこと、また、日本人労働者と同等額を確保すべきと法案で明記してはいかがでしょうか。厚生労働大臣にお尋ねをします。

 結びに。

 労働は、商品にあらず。今から七十一年前に採択された、ILO、国際労働機関の基本理念であるフィラデルフィア宣言の一節です。

 それは、労働があたかも商品であるかのように、時に使いたいときに使われ、切りたいときに切られ、消耗させられていったという反省があるからです。

 どんな時代にも、誇りと尊厳が伴わない労働には、その職種にも、文化にも、社会にも、国家にも、その先に繁栄はありません。

 技能実習生は、安価な労働力にあらず。

 国内外からの厳しい声をしっかりと受けとめ、日本が世界の中で裸の王様にならないように、現実に目を向け、声なき声に耳を傾けながら、真摯な審議をしていくことを皆様に呼びかけさせていただき、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 鈴木貴子議員にお答えいたします。

 まず、技能実習制度の理解についてお尋ねがありました。

 技能実習制度は、開発途上地域等への技能等の移転を図り、その経済発展を担う人づくりに協力することを目的とする制度として、我が国の国際貢献として重要な役割を果たしていると考えております。

 ただ、一部で、制度の趣旨が労働力の確保策と誤解され、法令違反等の問題事案が生じているのも事実であり、この点を捉えて、制度自体を批判する御意見がございます。

 そこで、これまでも、通達や省令を見直すことによって不正行為対策を随時強化してきており、さらに、平成二十一年には、研修生、技能実習生の保護の強化を図るため、一年目から雇用契約の締結を義務づけることにより、技能実習の全期間にわたり労働関係法令による保護が及ぶようにするなどの改正を行うとともに、不正行為の明確化等を行いました。

 このように、制度開始以来これまで、不適正な運用を是正すべく、随時見直しを行ってまいりました。

 次に、送り出し国との取り決めについてお尋ねがありました。

 送り出し機関による不当な金銭の徴収などをなくすために、取り決めを作成して送り出し国政府の協力を得ることが重要なのは御指摘のとおりであり、本法案の成立後、速やかに、取り決め作成に向けた交渉を開始してまいりたいと考えております。

 本法案では、外国の送り出し機関は主務省令で定める要件に適合するものと規定しており、主務省令を定める際には、その要件の一つとして、取り決めが作成されている送り出し国については、取り決めに基づき送り出し国政府が適正なものとして認定した機関でなければならない旨を規定する方向で考えています。

 最後に、実習の継続を確保する制度についてお尋ねがありました。

 技能実習生が人権侵害などの不当な扱いを受けており、同じ受け入れ先で技能実習を続けることが適当でない場合に、転籍の支援をするなどして技能実習を続けられるように配慮する必要があることは当然です。

 本法案では、主務大臣や外国人技能実習機構は、技能実習生の保護等のため必要な援助等を行う旨の規定を設けており、御指摘の場合については、新制度では、この規定に基づいて、技能実習の継続を図るため、実習先の変更の支援等を行うこととしております。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 鈴木貴子議員にお答えを申し上げます。

 技能実習制度の悪用を放置してきたのではないかとのお尋ねがございました。

 技能実習制度については、必要に応じ随時見直しを行ってきたところでございますが、平成二十一年の出入国管理法改正後もなお法令違反等が発生していることを踏まえ、管理監督体制の強化などを図るため、今国会にこの法案を提出したところでございます。

 技能実習制度の拡充策についてのお尋ねがございました。

 優良な受け入れ機関に限って実習期間の延長などの拡充を認めることは、技能実習の適正な実施へのインセンティブを高めることにもなることから、制度運用の適正化を図るのと同時に、制度拡充の方策を講じるのが相当と考えております。

 外国人技能実習制度の目的についてのお尋ねがございました。

 技能実習制度は、人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力を推進することを目的とする制度であり、技能実習が労働力の需給の調整の手段として行われてはならないことは、本法案において明確に規定してございます。

 対象職種の選定理由についてのお尋ねがございました。

 技能実習の職種は、単純作業ではない、送り出し国のニーズに合致する、実習成果が評価できるといった要件を満たしたものを追加しております。

 なお、介護の対象職種追加については、介護サービスの特性に基づく要請に対応できる具体的な制度設計を進めつつ、この法案に基づく制度の詳細が確定した段階で、介護サービスの特性に基づく要請に対応できることを確認の上、新制度の施行と同時に職種追加を行うという手順で検討を進めてまいります。

 介護人材確保対策についてのお尋ねがございました。

 今後、必要な介護人材を確保するには、国内人材の確保対策の充実を図ることが重要であり、介護職員処遇改善加算や地域医療介護総合確保基金の活用などあらゆる施策を総動員し、総合的、計画的に取り組んでまいります。

 介護の技能移転の方法についてのお尋ねがございました。

 指導者を海外に派遣するという考え方もありますが、技能実習制度は、OJTを通じて技能を移転するものであり、日本の介護施設で、他のスタッフとチームで介護を行うことで、効果的に日本の介護を学ぶことができると考えております。

 技能実習制度の本来の趣旨に沿った見直しについてのお尋ねがございました。

 技能実習制度は、国内の労働力確保を目的とするものではなく、技能等の開発途上国等への移転を図り、経済発展を担う人づくりに協力することを目的とする制度であり、この法案では、その趣旨徹底の観点から、技能実習計画の認定において相手側のニーズも確認する制度としております。

 技能実習の質の確保及び送り出し国のニーズへの対応についてのお尋ねがございました。

 この法案は、実習生ごとに到達目標や実習内容を記載した技能実習計画の認定を行い、質の確保を図るものでございます。

 また、送り出し国のニーズを踏まえ、対象職種を設定するとともに、近年の技能等の高度化に伴う実習期間の延長を図るものでございます。

 外国人技能実習機構の体制についてのお尋ねがございました。

 機構の組織体制は、監理団体や実習実施者の数や地域バランス等に鑑み、技能実習計画の認定、実習実施者、監理団体に対する実地検査等の業務量に適切に対応できるものと考えております。

 実習実施者を許可制にすべきとのお尋ねがございました。

 本法案による改正後の技能実習制度においては、実習生ごとに計画の認定を受けること、監理団体の監理のもとに実習が実施されること、労働関係法令の直接の規制が及ぶことなどから、実習実施者に対しては届け出制にしております。

 実習生の賃金についてのお尋ねがございました。

 本法案におきましては、技能実習計画の認定基準として、技能実習生の待遇が主務省令で定める基準に適合していることを規定し、具体的には、省令で、日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であることを定める予定です。その上で、実習実施者に同等性の要件の説明責任を課し、実効性を担保する予定でございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣岸田文雄君登壇〕

国務大臣(岸田文雄君) 外国人技能実習制度に係る二国間協定について御質問がありました。

 技能実習制度については、技能移転による国際貢献という制度本来の趣旨、目的と実態との間に乖離があるとして、国内外からさまざまな指摘や懸念が表明されていたところ、技能実習制度の見直しに関する法務省・厚労省合同有識者懇談会報告書において、不適正な送り出し機関を排除するため、送り出し国との間での取り決めの作成の必要性が指摘をされています。

 本法案は、技能実習について基本となる国内制度を定めるものであり、御指摘の二国間の文書あるいは取り決めについては、これから交渉していくものです。

 政府としては、当該報告書の内容を踏まえ、取り決めの作成に向けて鋭意交渉し、制度の適正化に努めていく所存です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 重徳和彦君。

    〔重徳和彦君登壇〕

重徳和彦君 私は、維新の党を代表して、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案について質問をさせていただきます。(拍手)

 近年、外国人技能実習生の受け入れ先からの失踪者の数が著しくふえています。法務省の調査によれば、平成二十二年から二十六年までの五年間で、千二百八十二人から四千八百五十一人と、四倍近くになっています。

 より高い賃金を求めてという理由が圧倒的に多いようですが、さらに詳細な原因を見ていけば、実習生が事前に聞いていた話と受け入れ先での労働条件が違っていたケースもあれば、入国してからよりよい条件の仕事があると知ったケース、さらには受け入れ先が労働法規違反の形で就労させているケースもあると思われます。

 法務省では、不法滞在、不法就労状態になった実習生を摘発した段階で聞き取り調査を行っているとのことですが、原因の分析が不十分であり、これでは今回示された対策が十分とは言い切れないと考えますが、いかがでしょうか。より詳細な調査を行い、実態を正確に把握する努力がもっと必要ではありませんか。

 また、技能実習生の中には、難民認定を申請して就労可能なステータスを取得し、受け入れ先から失踪するケースもあると聞きます。こんな抜け道のような方法があるのは、制度の不備と言うほかありません。

 難民認定の申請制度のあり方について、どのように認識されておられますか。

 そもそも現行制度は、それまで研修生、技能実習生を実質的に低賃金労働者として扱うなどの問題を解消するため、平成二十一年の改正により、新たな在留資格として技能実習を設け、受け入れ先との雇用契約の締結を義務づけることによって、労働関係法令の保護が受けられることとしたものです。

 しかし、受け入れ先の半数が従業員数十人未満であるといった実態は変わりなく、技能実習生の多くがこうした小規模な受け入れ先で、繊維・衣服、機械・金属、農業、食料品製造の分野の非熟練労働に従事していると指摘されています。

 こうした中で、時間外労働の割り増し賃金額が法定額未満しか支給されない事例、妊娠した場合に帰国する旨定めた保証書に基づいて非人道的な扱いで帰国させられた事例、養鶏場の集卵機での死亡事故などの事例も発生しており、人権諸条約の国際機関からの勧告や米国国務省の人身取引報告書などにおいて、我が国に対する批判が集まっています。

 平成二十一年の前回の法改正が、技能実習制度の抱える構造的問題を解決するものではないことは当時から認識されており、衆参の法務委員会の附帯決議において、「制度の在り方の抜本的な見直しについて、できるだけ速やかに結論を得るよう、外国人研修生・技能実習生の保護、我が国の産業構造等の観点から、総合的な検討を行うこと。」とされました。

 今回の改正では、監督の強化策や人権侵害等の予防や保護のための規定は盛り込んでいるものの、労働者たる技能実習生の立場の強化、被害に遭った技能実習生がみずから保護を求めて改善や救済を求める仕組みも不十分であり、構造的な問題に踏み込めていません。

 政府は、平成二十一年の衆参両院の附帯決議をどう受けとめ、今回の法案においてどう対応したのか、明確な答弁を求めます。

 技能実習生は、実習実施予定の機関を特定した上で在留資格が与えられる仕組みであり、原則として職場移転の自由がありません。このため、実習生は、受け入れ先での労働条件に問題があっても、事実上、他の職場に転職することは困難です。

 また、仮に、受け入れ先の不正行為などを告発することができたとしても、次の受け入れ先が見つからない限り、実習自体の継続が困難になる、すなわち在留資格が失われる可能性があります。このため、技能実習生は受け入れ先との間で対等な労使関係を持つことが困難であり、構造的に、受け入れ先と技能実習生の関係は、支配従属的となってしまうのです。

 本年一月三十日発表の法務省・厚生労働省合同有識者懇談会報告書には、「技能実習二号を修了して、技能実習三号に移行する際に、適切な時期に、実習生本人が希望し、計画的・段階的な技能等の修得が担保されると認められる場合には、他の実習実施機関での実習を認めることとすべき」と指摘されています。

 この報告書に沿って、技能実習生による実習先の選択を可能とすべきと考えますが、どうお考えでしょうか。

 本法案では、新たに認可法人外国人技能実習機構を創設し、技能実習計画の認定、実習実施者、監理団体への報告の求めと実地検査、監理団体の許可に関する調査、技能実習生に対する相談、援助等を行うこととされています。

 しかし、冒頭の実習生の失踪の問題で指摘したとおり、実習生が置かれる環境は受け入れ先ごとにさまざまであり、それぞれに応じたきめ細かい対応が求められます。

 外国人技能実習機構は、全国千八百以上の監理団体、三万以上の実習実施機関、十七万人の実習生がいる中で、十分な対応が可能なのでしょうか。どのような体制で臨もうとしているのか、具体的に御答弁を願います。

 本法案では、実習監理者等に対する禁止事項として、技能実習生の意思に反して技能実習を強制すること、契約の不履行について違約金や損害賠償契約をすること、貯蓄の契約や貯蓄金を管理する契約をすること、旅券または在留カードを保管すること、外出その他の私生活の自由を不当に制限することを禁止しています。そして、これらに違反する事実がある場合には、実習生が申告することができることとしています。

 しかし、実習生自身が、実習監理者等にこうした禁止事項があることや、実習生側からの申告制度があることを知らなければ、十分な保護とは言えません。

 実習生側にも計画の内容、実習監理者等の禁止事項の内容や趣旨を知らせ、実習生が有する権利についても理解させた上で実習に入ることを法律上義務づけるべきではありませんか。

 受け入れ先での実習が不当である場合、外国人技能実習機構に相談窓口としての実効性ある機能や権限を持たせることは重要です。

 有識者懇談会報告書にも、「技能実習生にとって利用しやすい通報相談窓口機能の充実・強化を行うべきであり、その際には、不適正な受入れを行っている実習実施機関から他の機関へ転籍できる柔軟な仕組みを構築しなければならないと考える。」とされています。

 実習生に何の落ち度もなく、専ら受け入れ先や監理団体に問題があるような場合、機構が、実習生に他の監理団体を紹介したり、受け入れ先を変更させた上で実習を継続させる機能や権限を持たせるべきと考えますが、どうお考えでしょうか。

 また、これにより、認定や許可、検査といった上から監督する仕組みだけでなく、いわば民間同士の競争的な環境をつくることが可能となります。

 不適正な労働条件に対し実習生がきちんと声を上げられる環境を整えることによって、悪質な監理団体や受け入れ先が淘汰され、良質なもののみが残るメカニズムを目指すべきと考えますが、いかがでしょうか。

 平成二十一年改正により、保証金徴収や違約金契約が禁止されたものの、依然として、送り出し機関が事務所手続や日本語教育、研修費、受け入れ側との調整などの名目で技能実習生から費用徴収しているという指摘が後を絶ちません。

 現行では、これらを防ぐため、入管当局では、技能実習生の在留資格証明書の申請に当たり、送り出し機関と監理団体との間の契約書に保証金等の徴収の禁止が明記されていることを確認するとともに、入国後に実習生からの聴取によって確認していると伺っています。

 しかし、海外にある送り出し機関に対し、入管当局が直接調査することはできず、問い合わせ程度にとどまっているのが実情です。

 そこで、政府は、送り出し国の当局との間で二国間の取り決めを締結し、当局に送り出し機関の適格性を審査する仕組みをつくってもらい、不正があれば排除することを想定していると伺っています。しかし、本法案では、この点については何も定められておりません。

 送り出し機関に保証金の徴収などの不適正な行為があったときは、当該機関の業務を停止することを義務づける内容を盛り込んだ政府間取り決めを締結するよう具体的に法律で義務づけるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

 次に、法案二十八条二項は、監理団体が徴収する費用として、監理事業に通常必要となる経費等を勘案して主務省令で定める適正な種類及び額の監理費を徴収することができることとされていますが、本法案によって監理団体はさまざまな制度上の義務づけがふえ、ただでさえコストがかさむようになり、ひいては実習生の賃金に転嫁される懸念があります。

 監理団体が徴収できる監理費は、最低限必要な経費に限定すべきであり、監理団体の高額な役員報酬などに充てられるものであってはならないことを確認したいのですが、いかがでしょうか。

 次に、介護分野への拡大についてです。

 昨年閣議決定された「日本再興戦略」改訂二〇一四を受けた、本年二月四日厚労省外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会中間まとめによると、外国人技能実習制度において介護職種の受け入れを進めることが提言されています。

 しかし、物づくりなど他分野で実績があるからといって、全ての監理団体において介護職種を認めると、介護技術が担保されないまま技能実習生を介護現場に送り込んでしまい、サービスを受ける高齢者との間で深刻なトラブルが生じる可能性があります。

 諸外国では、徹底した衛生管理や介護概念が国民の中に必ずしも浸透しておらず、基本的な生活習慣や介護知識を身につける必要もあります。

 介護職種は、一定の日本語能力、対人関係スキル、介護技術が求められるため、介護職に精通した監理団体に限定すべきではないでしょうか。

 また、受け入れる実習生の対象をより限定することも必要と考えます。母国において一定以上の能力、経験が担保されている人材に限定して受け入れることによって、現場の混乱を極力回避し、かつ、帰国後に母国で指導的役割を果たすという制度本来の趣旨に照らしても、重要なことではないかと考えます。

 介護職への技能実習生については、例えば看護師資格を持った人に限定するなど、対象者を制限することも必要ではないでしょうか。

 技能実習生も、EPAの場合と同様、介護福祉士資格を取得すれば引き続き在留資格が得られるのかどうかなど、不明な点も残されています。

 EPAにおける在留資格との整合性はどうなっているのでしょうか。明確に御答弁願います。

 介護分野で来日する実習生については、来日時にN4、日本語検定四級資格が条件となっています。この資格は母国で三百時間の講習を受けることが必要ですが、この講習が本来想定されるN4資格のレベルに到達していることを担保するには、講習を実施する教育訓練機関の質も問わなければなりません。

 母国でN4を取得するための教育訓練機関を政府が公認したものに限定するなどの担保が必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

 最後に、非熟練労働者の受け入れ制度の検討について質問いたします。

 これからの日本社会は、労働人口の減少により、各種業界における現場の人手不足が構造的に続くことが避けられません。このため、私は、まずは日本人の少子化傾向に歯どめをかけることに全力を挙げるべきと考えており、誰もが子供を産みたい、育てたいと思える温かい地域社会づくり、少子化ならぬ増子化政策に取り組むことが最優先と考えています。

 しかし、現実には、労働力不足は深刻化する一方であり、新たな外国人労働者受け入れ制度の検討は不可避とする声があります。

 今後、正面から非熟練労働者を受け入れる制度をつくる場合、無限定に受け入れるのではなく、諸外国で採用されている労働市場テストの導入など、人数、範囲、期間等を限定的なものとして、国内労働市場との調整を図る手段の検討等を行った上で、受け入れの業種、人数等を決める方法はあり得るとする意見もあります。

 今後の労働人口を補うため、こうした非熟練労働者の受け入れの議論は避けられないと考えますが、政府として、他国の例も踏まえて、どのような方向性を考えているのか、お尋ねをいたします。

 労働力が減り行く日本において、今後、多くの国民のコンセンサスと国際的な理解のもとで我が国の永続的な発展を支える制度をつくり上げていくことが私たち国会議員の重要な役割であることを改めて申し述べまして、私の質問を終わります。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 重徳和彦議員にお答え申し上げます。

 まず、技能実習生の失踪に対する調査分析と対策についてお尋ねがありました。

 これまでの調査では、多数の者について、技能実習意欲が低く、より高い賃金を求めて失踪したことが判明しておりますが、そのような者への対策のみならず、本法案には技能実習生からの相談の受け付け体制の整備などを盛り込んでおり、受け入れ機関における不適正な処遇を理由に失踪することのないように対策を講じています。

 御指摘の、より正確な実態把握については、引き続き努力をしてまいります。

 次に、難民認定申請制度のあり方についてお尋ねがありました。

 難民認定制度が技能実習先を逃亡した者などによって濫用され、かつその数が急激に増加する傾向にあることは、難民認定制度の趣旨のみならず、技能実習制度の趣旨をも損なうものであると認識しています。

 そこで、真に庇護を求める難民認定申請者の地位や生活の安定に十分に配慮した上で、濫用者に就労目的での申請を断念させて帰国を促すため、濫用者が就労できないようにしたり、明らかに難民の要件に該当しない事案の処理を迅速化するための仕組みを検討するなど、その濫用を防止し、真に庇護を求める者を迅速かつ確実に保護するための難民認定制度の運用の見直しを進めているところでございます。

 次に、平成二十一年の入管法改正における附帯決議への対応に関するお尋ねがありました。

 今回の技能実習法案は、まさに御指摘の附帯決議をも踏まえ、制度の趣旨に沿った適正な運用がなされるよう、制度のあり方について抜本的な見直しを行うものです。

 特に、附帯決議で指摘されている技能実習生の保護については、罰則等を設けるほか、技能実習計画の認定手続の中で賃金の適正さなどもしっかり見ていく仕組みとしております。

 さらに、実習実施者や監理団体に法令違反があったことを技能実習生が主務大臣に申告した場合における、これを理由とする不利益な取り扱いに対する罰則も定め、みずから救済を求める機会の担保を図っているところです。

 次に、技能実習生による実習先の選択についてお尋ねがありました。

 新制度で創設される技能実習三号は、一定程度の基礎を身につけた後の応用段階であり、監理団体や実習実施者も優良な機関に限られ、移籍先でも適切かつ効果的な技能実習が担保されると考えられることから、技能実習二号から三号に進む段階で、実習生本人の希望を聞いて実習先の変更を認める仕組みとしたいと考えています。

 次に、外国人技能実習機構の体制についてお尋ねがありました。

 同機構の組織体制については、本部のほかに全国十三カ所の地方事務所を設置することとし、本部に約八十名、地方事務所に約二百五十名の総勢三百三十名程度の体制を確保したいと考えております。同体制については、地域のバランスや想定される業務量等に鑑み設定したものであり、その業務量に対応できるものと考えております。

 次に、技能実習生に技能実習計画の内容等を実施開始前に周知することについてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、技能実習計画の内容や監理団体等の禁止行為の内容、さらには技能実習生の権利について、技能実習生に理解させることは重要であると認識しております。

 このため、現行制度においても、技能実習生を募集する段階で、現地の送り出し機関や現地に赴いた監理団体から、労働条件などを明示し合意に至る過程で、技能実習の内容も含めて技能実習生に伝え、労働条件を理解したことを文書をもって確認しています。このほか、人権侵害行為を受けた場合の法的保護に必要な情報等についての講習を入国後に実施することとしております。

 新制度においては、技能実習計画の認定や入国後の講習の実施について法律上新たに明記しており、今後は新たな法的枠組みの中で、引き続き、こうした取り組みを継続し、技能実習生が理解した上で実習に取り組めるよう適切に対応してまいります。

 次に、不当な扱いを受けるなどした技能実習生の転籍についてお尋ねがありました。

 本法案では、外国人技能実習機構が行うべき業務の一つとして、技能実習生の保護等のため、技能実習生からの相談に応じ、必要な援助等を行うことを掲げています。

 そして、この援助の中には、不当な扱いがあったような場合の転籍支援の業務も含まれており、御指摘のとおり、外国人技能実習機構にその機能を担わせることとしております。

 次に、悪質な監理団体や受け入れ企業が淘汰される仕組みについてお尋ねがありました。

 本法案においては、監理団体や実習実施者に法令違反があったことを技能実習生が主務大臣に申告した場合における、これを理由とする不利益な取り扱いに対する罰則を設けております。

 また、制度の管理運用機関として外国人技能実習機構を創設し、機構の業務として技能実習生からの相談に応じることを規定しております。

 そして、主務大臣や機構は、本法案に定められた権限を用いて事実関係の調査を行い、主務大臣は、その結果を踏まえ、改善命令、監理団体の許可の取り消し、技能実習計画の認定の取り消し等の措置をとることができるものとしており、御指摘のように悪質な監理団体等が排除される仕組みとしております。

 次に、政府間取り決めを作成することを法案で定めるべきではないかとのお尋ねがありました。

 不適正な送り出し機関を排除するために取り決めを作成して送り出し国政府の協力を得ることが重要なのは御指摘のとおりであり、本法案の成立後、速やかに、取り決め作成に向けた交渉を開始してまいりたいと考えております。

 本法案では、外国の送り出し機関は、主務省令で定める要件に適合するものと規定しており、主務省令を定める際には、その要件の一つとして、取り決めが作成されている送り出し国については、取り決めに基づき送り出し国政府が適正なものとして認定した機関でなければならない旨を規定する方向で考えております。

 次に、監理団体が実習実施者から徴収できる監理費についてお尋ねがありました。

 現行制度において、監理団体は、営利を目的としない団体でありますが、あっせん、監査、講習等に要する実費について、実習実施機関から監理費として徴収することができるものとされております。

 新制度においても、このような仕組みは変わるものではなく、御指摘の本法案の条項及び主務省令において、現在の運用も踏まえ、適正な実費徴収となるように定めてまいりたいと考えております。

 次に、介護福祉士資格を取得した技能実習生の在留についてお尋ねがありました。

 技能実習の対象職種に介護が加わった場合の受け入れは、我が国の技能等を修得し、これを母国に移転することを目的とするものですから、技能実習期間の終了後も引き続き我が国に在留して介護の業務に従事するということは想定されません。

 これに対し、EPAに基づく受け入れは、二国間の経済連携の強化の観点から、資格取得後の介護福祉士としての就労も含めて特例的に認めるものであり、引き続き在留できるかどうかの相違は、それぞれの制度の趣旨、目的の違いからくるものです。

 最後に、非熟練労働者の受け入れの検討についてお尋ねがありました。

 御指摘の、専門的、技術的分野とは評価されない分野の外国人の受け入れについては、ニーズの把握や受け入れが与える経済的効果の検証はもちろんのこと、社会的コスト、受け入れによる産業構造への影響、治安など、幅広い観点からの検討を国民的コンセンサスを踏まえつつ行う必要があります。

 そこで、今後の外国人の受け入れについては、諸外国の制度や状況について把握し、国民の声を積極的に聴取することとあわせ、政府全体で検討していく必要があると考えております。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 重徳和彦議員にお答え申し上げます。

 介護職種に関する監理団体についてのお尋ねがございました。

 技能実習制度に介護職種を追加する場合には、介護サービスの特性を考慮しつつ、監理団体における介護に関する一定の知見や十分な監理体制をいかに担保すべきかといった観点から、具体的な制度設計を進めてまいります。

 介護の技能実習生の対象についてのお尋ねがございました。

 技能実習制度においては、技能実習生の入国に際し、母国で同種の業務経験を有することや、帰国後に修得した技能等を要する業務への従事が予定されていることが要件とされており、介護職種を追加する場合において、どのような方がこの要件に当てはまるかについては、具体的な制度設計の中で適切に検討してまいります。

 介護職種における日本語能力についてのお尋ねがございました。

 技能実習制度に介護職種を追加する場合、いわゆるN4については、講習により取得できるものではなく、独立行政法人国際交流基金等が実施する日本語能力試験の合格により認定されることから、その水準は客観的に担保されることとなると考えます。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 畑野君枝君。

    〔畑野君枝君登壇〕

畑野君枝君 私は、日本共産党を代表して、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案について、関係大臣に質問します。(拍手)

 外国人技能実習制度は、技能移転と国際貢献を名目としながら、その実態は、低賃金、単純労働力の受け入れであるという構造的矛盾を抱えたまま、深刻な人権侵害を生み出し続けてきました。

 政府が適正や保護を言うのなら、この構造的矛盾を解決しなければなりません。厚生労働大臣にその認識はありますか。

 もともと外国人の就労を原則認めない政府のもとで、この制度は、外国人研修制度として制度化された当初から、研修とは名ばかりの外国人労働力の供給手段とされ、強制労働、低賃金、残業手当不払い、ピンはね、強制貯金、パスポート取り上げ、高額の保証金や違約金、強制帰国、セクハラと性的暴行など、数々の人権侵害が続発し、重大問題となってきました。

 厚生労働、法務両大臣は、その実態をどのように把握していますか。答弁を求めます。

 こうした外国人実習生の実態に対して、日本弁護士連合会は、人権侵害は構造的問題に起因するとして、その早急な廃止を求めています。

 国連自由権規約委員会は、性的虐待、労働に関する死亡、強制労働を指摘し、米国務省は、労働搾取や人身売買への懸念を表明するなど、国連人権機関、国際社会から国際人権規約に違反していると指摘され続けていることについて、どのようにお考えですか。

 なぜこのようなことが起きるのでしょうか。

 その大きな原因に、悪質ブローカーによる研修生ビジネス、国際人身売買と呼ばれてきた実態があります。中国やベトナム、フィリピンなどの十代、二十代の外国人労働者が、母国での貧困、生活苦のもとで、家族への仕送りができると、日本への憧れを持って来日する。その思いを食い物にする悪質ブローカーが横行してきたのに、政府はその根絶のための対策をとってきたとは言えません。

 大臣は、このブローカー行為の実態をどのように把握していますか。母国の送り出し機関による高額な保証金や違約金を取るなどの悪質な行為をどのように規制するのですか。本法案の人権侵害の禁止規定や罰則は、母国の送り出し機関やブローカーに適用されるのですか。答弁を求めます。

 二〇一〇年の入管法改正により、それまでの研修を技能実習にかえて労働関係法令を適用するとともに、監理団体を設けました。しかし、技能実習生をめぐる悪質な人権侵害の状況は引き続き深刻です。

 法務大臣、実習生の失踪件数は、二〇一〇年の一千二百八十二人から二〇一四年には四千八百五十一人と四倍にふえ、過去最高となっているのが実態ではありませんか。

 あるベトナム人技能実習生は、日本で働けば月給二十万円から三十万円、一日八時間、週五日勤務で土日は休み、寮ありと聞き、仲介会社に約百五十万円を支払い来日しましたが、毎日早朝六時から深夜二時まで働き、休みはなし、寮は農機具の保管場所で、家賃として月額二万円が給料から天引きされ、手元には六万円程度しか残らない、それでも可能な限り三万円から四万円を母国に仕送りする生活が七カ月続いて、頑張ったが、疲れてしまい、逃げ出したというのです。

 先日NHKが報道した女性の外国人技能実習生は、会社の寮の一部屋に五人の実習生が押し込められ、手取り十万円から家賃四万円を引かれる。その上、二年間は外泊の自由がない。本人は、監禁だと訴えていました。

 この深刻な実態を法案は解決できるのですか。両大臣の明確な答弁を求めます。

 法案は、外国人技能実習機構を新設し、実習生受け入れ企業やその企業を監理する団体への監督を強化するとしています。しかし、この機構には、報告、実地検査などの権限しかありません。強制的立ち入り権限を持たずに、どうして十分な監視、監督ができるのでしょうか。

 また、法案は、技能実習三号を新設し、受け入れ企業や監理団体が優良と認められれば合計五年間の実習を可能にするとしていますが、企業が優良というのは、どのような調査に基づき、何を基準に判断するのですか。

 実習期間の三年から五年への延長、受け入れ人数枠の拡大、対象職種の拡大は、技能実習制度の持つ深刻な問題を拡大するだけではありませんか。答弁を求めます。

 最後に、安倍内閣の日本再興戦略のもとで進められている外国人労働力の受け入れ拡大の問題です。

 本年四月から、オリンピックや震災復興の建設需要に対応する緊急措置と称して、建設分野で三年の技能実習終了後に二年ないし三年間、建設労働に従事することができる制度を発足させました。また、介護分野にも技能実習制度を拡大し、入管法改正で介護の在留資格を新設しようとしています。さらには、国家戦略特区における外国人家事支援の実施も検討されています。

 財界の要求に従ったこれらの外国人労働力の受け入れ拡大は、低賃金と劣悪な労働条件を一層深刻にするものではありませんか。

 以上、政府の明確な答弁を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 畑野君枝議員にお答えを申し上げます。

 技能実習制度の趣旨と実態との関係についてのお尋ねがございました。

 技能実習制度については、技能移転による国際貢献を目的とするものでありますが、一部においてこの趣旨を逸脱している事例が見られることは認識をしており、こうした事実に対処するため、この法案を提出したものでございます。

 技能実習制度に対する人権侵害行為との指摘への認識についてのお尋ねがございました。

 技能実習制度は、一部において制度の趣旨を逸脱した運用によって人権侵害行為等の問題事案が生じ、これにより国内外から批判を受けていると承知をしております。そこで、制度の適正化を図るため、本法案を提出いたしたところでございます。

 ブローカー行為の実態や保証金等の徴収の規制についてのお尋ねがございました。

 実習生から保証金の徴収や不法就労の助長などを行う悪質な機関が存在することは承知をしております。新制度においては、送り出し国と国レベルの取り決めを作成し、相互に密接に協力、連携しつつ、不適正な送り出し機関の排除等に取り組んでまいります。

 人権侵害の禁止規定等の外国への適用についてお尋ねがございました。

 外国の送り出し機関による保証金の徴収などについては、現行制度と同様に、新制度でも禁止いたします。罰則は外国での行為には直接執行できないことから、実効的な取り締まりには、二国間の取り決めを作成して送り出し国の政府の協力を得ることが重要と考えております。

 実習生の待遇に関する深刻な実態についてのお尋ねがございました。

 この法案では、労働関係法令などに関し不正な行為などが発生した場合、技能実習計画の認定を取り消し、実習の継続や新規受け入れを認めないこととするほか、外出の不当な制限などの人権侵害については、罰則をもって禁止をしております。

 外国人技能実習機構の監視、監督権限の実効性についてのお尋ねがございました。

 機構には実地検査などの権限が法律上与えられており、仮にこれを拒んだ場合には、新たな計画の認定を行わないほか、既に認定した計画についても必要に応じ取り消しを行うことになるため、この枠組みには十分な実効性が確保されていると考えております。

 優良と判断する基準についてのお尋ねがございました。

 本法案では、受け入れ企業や監理団体について、それぞれ求められる能力が高い水準を満たすものについて優良と認めることとしており、具体的には、適切な相談指導体制の整備、実習生の技能評価試験での一定の合格率等の意見が法務省・厚生労働省合同有識者懇談会において出されていることを踏まえ、今後検討することとしております。

 技能実習制度の拡充についてのお尋ねがございました。

 実習期間の延長などの技能実習制度の拡充については、優良な受け入れ機関に限って認めるものであることから、技能実習の適正な実施へのインセンティブが高まり、制度本来の趣旨に沿った運用に資するものと考えております。

 外国人の受け入れ拡大に伴う労働条件の低下についてのお尋ねがございました。

 外国の方々についても、日本人と同様労働関係法令が適用され、日本人の報酬と同等額以上の報酬を受けることを入管法の上陸許可の要件としており、厚生労働省としては、引き続き適正な労働条件の確保や雇用管理の改善に努めてまいります。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 畑野君枝議員にお答え申し上げます。

 まず、技能実習制度における人権侵害行為の発生の実態及びそれに対する国際社会などからの指摘に対する認識についてお尋ねがありました。

 技能実習制度は、一部で制度の趣旨が労働力の確保策と誤解をされ、法令違反等の問題事案が生じているのも事実であり、この点を捉えて、制度自体を批判する御意見がございます。そこで、制度の適正化を図るため、本法案を提出したものでございます。

 次に、ブローカー行為の実態をどのように把握しているのかについてお尋ねがありました。

 過去の入国管理局による摘発事例では、ブローカーが失踪した技能実習生に不法就労先をあっせんしていた事例も少なくなく、中には、来日後に不法就労先をブローカーがあっせんすることを前提として技能実習生として入国したとする者もいたことが判明をしています。

 こうした事例に対して、入国管理局としては、関係機関と連携の上、厳格に対応してきたところです。

 次に、送り出し機関による悪質な行為に対する規制についてのお尋ねがありました。

 新制度のもとでは、監理団体は送り出し機関から、実習実施者は技能実習生から、保証金徴収や違約金の約束がないことを確認しなければならないこととし、確認がとれない場合は技能実習を認めないこととすることなどを考えています。

 さらに、送り出し国との間で取り決めを作成し、送り出し国政府の協力を得て不適正な送り出し機関を排除する仕組みとしたいと考えております。

 次に、人権侵害禁止規定や罰則の適用対象についてお尋ねがありました。

 外国の機関やブローカーは、こうした規定の対象ではありません。これは、外国で活動するこれらの者については、罰則等の適用よりも、むしろ、不適正な送り出し機関等が関与している場合には技能実習生の受け入れを認めないなど、不適正な者を制度から締め出していく方が実効性があると考えられることによるものです。

 次に、技能実習生の失踪者が増加していることについてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、失踪者が増加していることについては、法務省としても重く受けとめているところであります。

 失踪の理由にはさまざまなものがあるところ、いずれにしても、本法案においては、技能実習生に対する人権侵害行為の禁止規定や罰則を設けること等としており、受け入れ機関における不適正な処遇を理由に失踪することのないような仕組みとし、技能実習が適正に行われるよう取り組んでまいりたいと考えています。

 次に、深刻な実態を本法案によってどう解決するのかについてお尋ねがありました。

 本法案のもとでは、契約と実態のそごが認められる場合や技能実習生の待遇が明らかに不適当な場合には、技能実習計画を認定せず、また、事後的にこれらが判明した場合には、改善命令や技能実習計画の取り消し等の措置をとることができます。さらに、技能実習生の私生活上の自由の制限に対しては、禁止規定及び罰則を定めています。

 次に、外国人技能実習機構の監視、監督権限の実効性についてのお尋ねがありました。

 新たに設立する機構には、実地検査などの権限が法律上与えられており、仮にこれが拒まれた場合には、技能実習計画の認定基準への適合が判断できないため、罰則はありませんが、新たな計画の認定を行わないこととなります。また、必要に応じ、主務大臣がその職員に立入検査を行わせることができるので、この枠組みにおいて十分な実効性が確保されると考えております。

 次に、受け入れ企業や監理団体を優良と判断する基準等についてのお尋ねがありました。

 本法案では、優良な受け入れ企業や監理団体の基準については、技能等を修得させる能力や実習状況の監査を遂行する能力が高い水準を満たすものとして主務省令で定めることとしており、法務省・厚生労働省合同有識者懇談会において、優良と判断する基準の例として、適切な相談指導体制の整備、実習生の技能評価試験での一定の合格率等の意見が出されていることを踏まえ、検討することとしています。

 最後に、技能実習制度の拡充についてお尋ねがありました。

 実習期間の延長及び受け入れ人数枠の拡大については、優良な受け入れ機関に限って認めるものであることから、技能実習の適正な実施へのインセンティブが高まるものであり、また、対象職種の拡大については、送り出し国のニーズや公的評価システムの存在等を考慮して行うものであり、いずれも制度本来の趣旨に沿った措置であると考えております。

 以上です。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       法務大臣    上川 陽子君

       外務大臣    岸田 文雄君

       文部科学大臣  下村 博文君

       厚生労働大臣  塩崎 恭久君

       農林水産大臣  林  芳正君

       環境大臣    望月 義夫君

       国務大臣    甘利  明君

       国務大臣    山口 俊一君

 出席副大臣

       法務副大臣   葉梨 康弘君


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