衆議院

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第32号 平成28年5月13日(金曜日)

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平成二十八年五月十三日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十二号

  平成二十八年五月十三日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説

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本日の会議に付した案件

 麻生財務大臣の財政についての演説及びこれに対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説

議長(大島理森君) 財務大臣から財政について発言を求められております。これを許します。財務大臣麻生太郎君。

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 今般、平成二十八年熊本地震に対応し必要な財政措置を講ずるため、平成二十八年度補正予算を提出することといたしております。その御審議をお願いするに当たり、補正予算の大要について御説明申し上げます。

 まず、このたびの地震により亡くなられた方々と御遺族に対し、深く哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。

 政府といたしましては、今日まで被災者の捜索救助、生活支援などに全力を挙げて取り組んでまいりました。今後とも、政府の総力を結集し、被災者への支援を初め、被災地域の復旧復興に万全を期してまいります。

 今回の補正予算は、こうした観点から、一層機動的に対応していくためのものであります。

 一般会計補正予算につきましては、住宅の確保や被災者生活再建支援金の支給など、災害救助等関係経費として約八百億円を計上いたしております。また、今後、被災者の方々の事業再建、道路、施設等のインフラの復旧事業や、災害廃棄物処理等を迅速に進めていくための備えとして熊本地震復旧等予備費を七千億円計上いたしております。

 同時に、国債費を約七千八百億円減額することといたしており、これにより、平成二十八年度一般会計予算の総額は、今回の補正前と同じ約九十六兆七千二百億円となっております。

 また、特別会計予算につきましても、所要の補正を行うことといたしております。

 以上、平成二十八年度補正予算の大要について御説明を申し上げました。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願いを申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑

議長(大島理森君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。福島伸享君。

    〔福島伸享君登壇〕

福島伸享君 民進党の福島伸享です。

 私は、民進党・無所属クラブを代表して、政府の財政演説について質問いたします。(拍手)

 二回にわたる大きな地震から約一カ月がたちました。今回の震災によって亡くなられた方々の御冥福を心からお祈りしますとともに、御遺族の皆様に哀悼の意を表します。また、いまだ余震が続き、厳しい環境の中で不安な思いで避難生活を送られている皆様にお見舞いを申し上げます。

 私自身、一期目の与党の議員であった五年前、東日本大震災を地元の水戸市で経験いたしました。挨拶回りの途中に地震に遭遇して、目の前の建物が崩壊して、石の塀が次から次へと倒れていくさまを目にいたしました。余震が続く中で、家族とともに真っ暗で寒い車の中で過ごした、不安で眠れぬ一夜を今でも忘れることができません。

 きょうは、そうした私の経験も踏まえ、被災地の皆さんの思いに寄り添って質問をさせていただきます。

 私たち民進党は、地震発生一時間半後に民進党熊本地方地震災害対策本部を設置し、与党時代の東日本大震災への対応の経験も踏まえて、地元選出議員を初めとする同僚議員たちによる現地の調査を実施し、被災地からの要望を踏まえ、二回にわたって災害対策に関する申し入れを政府に行うなど、岡田代表を先頭に党を挙げて取り組んでまいりました。

 大規模災害対応には与党も野党もありません。一日も早い被災地の復旧復興に向けて、政府の取り組みに全面的に協力してまいりますことを冒頭訴えさせていただきます。

 さて、補正予算に関する質問の前に一点、我が国の尊厳にかかわる重要な報道がなされておりますので、これに関する質問をさせていただきます。

 昨夜、フランス検察当局は、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの招致をめぐり、我が国の招致委員会側から国際陸上競技連盟のラミン・ディアク会長側に合わせて約二・二億円が振り込まれた疑惑について捜査を行っていることを明らかにしました。これが事実であれば、オリンピックの開催そのものを揺るがしかねない重大な問題です。

 私たちは、政府がもっと深刻に受けとめて調査すべきであると考えておりますが、フランス当局のこの動きに対して今後どのように対応するのでしょうか。安倍総理にお伺いいたします。

 それでは、本題に入ります。

 まず第一に、地震の名称についてお伺いいたします。

 東日本大震災は当初、東北沖大地震などと言われていましたが、地震、津波被害が広範囲にわたることが明確になるよう、閣議で東日本大震災と名づけられました。今回も、熊本だけではなく大分県なども大きな被害を受けていますが、熊本地震という名称では、そのような地域が忘れられてしまいがちです。

 一方、特定の地域を名指しすると、大きな被害を受けていない県内の観光地で風評被害が起きて客足が遠のくなど、復興が余計に遅くなるという面もあります。

 こうしたことを考えると、今回の震災をなぜ熊本地震という名称にしたのか。改めて適切な名称を考えて閣議決定すべきなのではないでしょうか。お伺いいたします。

 また、あわせて、既に現に始まっている観光地等での風評被害を払拭するためには、今政府がやっているようなサイトでの情報提供程度の対策では全く不十分です。正確な安全情報を出して、安全宣言を出すなどの対応も必要です。私の地元の茨城県でも、東日本大震災から五年たった今でも、ホテル、旅館等の観光業界は風評被害に苦しんでいます。

 私たちは、被災地の高速道路を一定期間無料にするなどの思い切った対策が必要であると考えますが、このような抜本的な対策を講じる意思がおありなのかどうか、お伺いいたします。

 次に、震災対策の初動についてお伺いいたします。

 今回の地震では、東日本大震災の経験を受けて民主党政権時に改正された石油備蓄法に基づき、震災二日後に迅速に災害時石油供給連携計画を発動してガソリン不足の状況を改善するなど、関係者の御尽力を評価すべきところも多々あります。

 一方、これまでの大震災に匹敵する被害を受けていることが明白であり、蒲島熊本県知事ら、地元から激甚災害の指定を求める悲痛な声が何度も出されていました。

 これまでも、大規模災害の際には、時の政権の政治的リーダーシップで迅速に指定をした例は幾つもあるにもかかわらず、政府は、関係の自治体になるべく早く復旧の見通しを出してもらって数字を積み上げていかなければできないという官僚的なしゃくし定規の答弁を繰り返し、震災から十日以上たった四月二十五日にようやく激甚災害の指定が閣議決定されました。

 よもや、四月二十四日の衆議院補欠選挙の前に安倍総理が被災地を訪問してみて閣議決定するという選挙目当てのパフォーマンスであるとは決して思いたくありませんが、なぜ激甚災害の指定が遅くなったのか、被災地の皆様に御理解いただけるように御答弁ください。

 震災直後に、政府は、河野防災担当大臣から現地の松本副大臣を通じて被災者の屋内退避を強く要請したということですが、これまでの委員会でのやりとりで、大きな雨が降る予測であったので、土砂崩れ等が起きることも注意してそのような要請を行ったと答弁しております。

 一方、熊本県知事は、現場の気持ちをわかっていないと不快感を示されたということですが、東日本大震災を経験した私は、知事のその気持ちはよくわかります。大きな余震が続く中で、家の中や建物の中に戻ろうと思う人などいません。

 総理は、委員会では、自衛隊のテントの準備がどうのこうのと答弁しておりますが、これこそ東京での机上の空論なんです。一回目の地震の二日後にさらに大きな本震が来たことを考えれば、現地の人がこの要請を守っていたらどうなっているのかと、ぞっといたします。

 ここはやはり、国は気象状況等を県に伝える役割にとどめた上で、現場の判断に委ねるべきだったのではありませんか。

 また、現地の状況や雰囲気を東京に伝えるのが、当時現地対策本部長だった松本内閣府副大臣の役割であるはずです。しかしながら、メディアの報道だけでなく、さまざまなルートからも、松本副大臣が役割を適切に果たしていないという話が入ってきています。本来、現地と信頼関係を持つべき現地対策本部長に、このような方をこのたび再び送るのは不適切なのではないでしょうか。

 本震のあったわずか二日後の四月十八日に、TPP特別委員会が開催されました。まだこのときには、多くの方々が崩落した土砂などに生き埋めになり、七十二時間の壁が迫る中で懸命の救助活動が行われており、その審議の場にいた私は、国会が今こんなことをしていていいのかと、じくじたる思いを強く持ちました。

 民進党は、政府が震災対応に全面的に当たるため、委員会の開催は見合わせるべきだと理事会等でも申し入れを行いましたけれども、与党からは、総理みずからがTPPの審議を一歩でも進めたいという強い意向があるので委員会を開かせてほしいということでした。そのTPP審議も、政府からの過剰な情報隠しとずさんな答弁を繰り返したあげく、結局頓挫しております。

 総理は、委員会を行う、行わないは、これはまさに国会でお決めになることでございますと人ごとのように答弁しておられましたけれども、与野党を問わず、総理以外のほとんどの議員たちはTPPの審議を続けるのはおかしいと思っていたんです。

 なぜそうまでして、ただでさえ農業県熊本の皆さんを不安にさせるTPPの審議を進めようとしたのか、被災されている熊本で農林水産業に携わる方にわかりやすく御説明ください。

 今回の地震は農繁期における地震で、農家の皆さんが営農を継続するためにはきめ細かな対応が必要です。

 これまでの大規模災害のときは、災害被害の査定に時間がかかって、一刻も早く営農再開をしたい皆さんを心配させてしまいがちでした。また、農業関連施設というのは残存簿価がないものが多くて、仮に査定を受けたとしても、残存簿価による復旧支援では営農再開ができないことが多々ありました。

 こうしたことにどのように対応するのか、農林水産大臣の答弁を求めます。

 今回提出されている補正予算案にも、看過できない問題があります。

 補正予算案では、災害救助等関係費として七百八十億円、熊本地震復旧等予備費として七千億円の二つの項のみを計上しております。予算総則補正では、「平成二十八年熊本地震による災害に係る復旧に要する経費その他の同災害に係る緊急を要する経費以外には使用しない」とされておりますが、熊本県以外のどこまでの地域がこの補正予算の対象となるのでしょうか。明確な財務大臣の答弁を求めます。

 また、「復旧に要する経費」と「緊急を要する経費」としているのですから、この結果、復興に要する経費というのは対象外なのでしょうか。この点についても明確な答弁をいただきたいと思います。

 今回の補正予算では、復旧に関する事業は、瓦れきの処理も、公共施設の復旧も、農地の復旧も、そのほかのソフト事業も、全て予備費一本で対応するものとされております。

 予備費の支出というのは、事後に国会の承諾を得るだけで、使い道は内閣が裁量を持って行うことができます。万一震災に関係のないものに予算が執行されようとしたとしても、国会はそれを事前にチェックすることができないんです。

 東日本大震災のときは、震災後四十九日目に提出された第一次補正予算、これでは、瓦れきの処理に関する事業費、公共施設の復旧に関する事業費など、それぞれ使用目的ごとに項を分けて計上されていて、それを補完するものとして第二次補正予算で予備費を計上しております。このときにはできたんですから、被害の査定が終わっていないなどというのは言いわけになりません。

 憲法八十三条では、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」とされていて、財政法第三十三条でも、国会の議決を経なければ、各省庁の部局間や項間での移用をできない、そう規定して、財政民主主義を厳格に担保しております。

 国民からいただいた税金を、緊急時対応だからといって国会のチェックや議決を経ずに政府の裁量で行おうとする発想は、震災直後に緊急事態条項を憲法改正で新設することに強い意欲を示したことと同じ発想と言わざるを得ません。全ての復旧予算を何の使途も縛らずに予備費として計上するのは前代未聞のことであり、立憲主義の観点から見てもおかしいのではないでしょうか。

 被災者生活再建支援金補助金として二百一億円が計上されております。私自身の経験でも、市内で全壊したお宅の方は、その後、多くの方が住みなれた土地を離れざるを得ませんでした。家が全壊しても、新しく家を建てるときに三百万円しか支給されず、住宅本体の再建に使えないという現行制度こそが、今も東北の多くの方々が仮設住宅を出られない一つの大きな原因となっているんです。

 こうしたことから、民進党を初めとする野党各党が連携をして、きょうの午前中、この支援金の額を三百万円から五百万円に増額すること等を内容とする被災者生活再建支援法改正案を国会に提出いたしました。

 これから熊本の皆さんが長い間仮設住宅で過ごさざるを得ない、そんな状況にならないように、この法案を与野党一致して成立させることなど、支援金の額を引き上げるべきではないでしょうか。

 また、災害救助制度や被災者生活再建支援制度の地方自治体の負担について、東日本大震災における対応のように、地方自治体がなるべく負担をしなくていいように交付税などで手当てすべきではないでしょうか。

 いずれにいたしましても、私たち民進党は、被災者に寄り添って、必要なことは与党、野党の枠組みを超えて政府に協力してまいりたいと思っております。政府・与党におかれましても、従来の前例や既存の法律の枠組みにとらわれることなく、必要な対策を講じていただきたいと思います。

 その一方で、震災を利用した火事場泥棒的な動きは絶対に許せません。今回の予算の枠組みにも一抹の危うさを感じます。安倍総理におかれましては、震災を政治利用することなく、真摯に被災地、被災者と向き合っていただきますことを求めまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 福島伸享君にお答えをいたします。

 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの招致活動についてお尋ねがありました。

 御指摘の件について、フランスの検察当局が捜査を開始したことは承知しております。政府としても、早急に東京都及びJOCに確認するなど、事実関係の把握に努めてまいります。

 地震の名称と風評被害対策についてお尋ねがありました。

 まず、今般の地震によりお亡くなりになった方々の御冥福を改めてお祈りするとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。

 平成二十八年熊本地震については、通例に従い、今般の地震震源地の地名を冠し、気象庁において命名したものであり、現在のところ、名称を変更する予定はないと承知しています。

 風評被害への対策につきましては、本補正予算において、新たに創設する予備費により、被災地で観光業を営む方々などに対する必要な支援をしっかりと行い、一日も早いなりわいの再建や産業の復興をきめ細やかに後押しできるよう、十二分の備えを整えてまいります。

 激甚災害指定に要した期間についてお尋ねがありました。

 激甚災害の指定は、制度上、被害状況の調査、被害見込み額の算定といった一定の手続を経て行うこととされていますが、私は、発災四日後の段階で、被災自治体に安心して復旧事業を進めていただくため、本院の委員会において、被災者の方々の側に立った気持ちでしっかりと指定させていただきたい、どうか御安心していただきたいと述べたところであります。

 実際に、被害状況の早期把握に向け、国の職員による現地調査、ドローン等の活用による被害状況の把握を行うなど、国が積極的に協力し、早期指定に努め、また、持ち回りで閣議決定を行うなど、政府としては、可能な限り、指定までの時間短縮を図り、迅速に激甚災害の指定を行ったものであります。

 被災者の屋内退避等についてお尋ねがありました。

 発災直後、多くの方々が自宅からの避難を余儀なくされている中、大雨や強風が予想されていたことから、高齢者や乳幼児など配慮が必要な方々を初め、被災された方々が駐車場等の屋外で夜を過ごすことは大変危険であると判断し、住民の命を守るため、被災自治体とともに安全な避難所への避難を呼びかけたところです。

 また、内閣府副大臣、政務官を長とする政府の現地対策本部は、県や市町村と一体となって対応に当たっております。発災直後から現場での応急災害対策に力を尽くしていただいている松本副大臣には、引き続き、被災者の生活再建、被災地の復旧復興に向け、全力で対策に当たっていただきたいと考えています。

 震災後のTPP特委の開催についてお尋ねがありました。

 委員会を行う、行わないは、まさに国会でお決めになることであります。

 熊本地震については、発災当初、私は官邸にとどまり、現場では、昼夜を分かたず、自衛隊、消防、警察、医療部隊の皆様が、救命救助に全力を尽くしていました。TPP特別委員会前日の四月十七日には、被災者生活支援チームを立ち上げておりました。委員会当日は、朝と昼には執務室で、夕刻には非常災害対策本部の会議で、最新の状況について報告を受け、必要な指示を出しております。

 このように政府一丸となって切れ目なく対応する体制を整えていたことから、事態の推移によっては離席するという前提で、国会の求めに応じ、TPP特別委員会の審議に出席したものであります。

 予備費と立憲主義についてお尋ねがありました。

 今般の補正予算は、今なお余震が続く中、一層機動的に復旧復興を進めるため、現時点では個別に内容や予算額を見込みがたい経費について、必要が生じた時点で迅速に支出できるよう、熊本地震復旧等予備費を七千億円計上し、被災地に必要な支援をしっかり行う上での十二分の備えを整えるものであります。

 また、予備費は、憲法第八十七条及び財政法第二十四条で認められた制度であり、立憲主義の観点から問題であるとは考えておりませんが、財政処理についての国会の事前議決の原則の例外であることも踏まえ、適切に執行してまいります。

 具体的には、予算総則で明らかにしているように、今回の予備費は、今般の地震からの復旧に要する経費等以外に使用することはありません。さらに、予備費を使用する際には、憲法や財政法の規定に基づき、個別の経費ごとに金額や理由を明らかにして、閣議等で決定することとなります。その上で、事後とはなりますが、国会の承諾を得ることとされており、そうした中でしっかりと説明責任を果たしてまいります。

 被災者生活再建支援金の増額と地方自治体の負担軽減についてのお尋ねがありました。

 被災者生活再建支援制度は、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた方に対し、全都道府県の相互扶助及び国による財政支援により最大三百万円の支援金を支給するものです。

 被災者生活再建支援金の増額等については、東日本大震災を初め過去の災害の被災者との公平性、他の制度とのバランス、国や都道府県の財政負担などを勘案して慎重に検討すべきものと考えます。

 災害救助費、被災者生活再建支援金の支給については地方負担を軽減する措置がとられることとなりますが、いずれにしても、今後、個別具体的な被害状況を詳細に点検、精査した上で、各自治体の財政状況に丁寧に目配りしながら、財源の手当ても含め、どのような対応が必要となるかをしっかりと検討してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 熊本地震復旧等予備費の対象となります地域、経費の範囲についてのお尋ねがあっております。

 この予備費は、平成二十八年熊本地震による災害に係る復旧に要する経費その他の災害に係る緊急を要する経費以外には使用しないことといたしております。したがって、熊本県以外だからとか復興だからといって、直ちにこの予備費の対象から排除されるわけではありません。熊本地震に関して必要となる経費に限り、しっかりと対応してまいるということであります。

 なお、予備費は国会の事前議決原則の例外であるということもしっかり念頭に置きつつ、被災地の一日も早い復旧復興に向け、この予備費の趣旨に沿った適切な使用に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣森山裕君登壇〕

国務大臣(森山裕君) 福島伸享議員の御質問にお答えいたします。

 災害被害の査定に時間がかかること、農業関連施設は残存簿価がないものやほとんど残っていないものが多いことについてのお尋ねがありました。

 被災をされた農業者の皆様が速やかに営農再開できるよう、農地、農業用施設の災害復旧事業の実施に当たっては、査定前着工制度の活用を図ることにより早期復旧を促進するとともに、応急工事の早期実施を促進するため、地方農政局の農業土木技術者等の現地派遣により県や市町村の活動を支援しております。

 また、共同利用施設の復旧支援については、残存簿価がない場合やほとんど残っていない場合であっても、再取得費の二〇%相当額を上限として災害復旧事業の対象事業費となる仕組みを設けているところであります。

 さらに、災害復旧事業にとどまらず、共同利用施設の再建、修繕が円滑に進むよう、支援策を引き続き検討してまいります。(拍手)

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議長(大島理森君) 木原稔君。

    〔木原稔君登壇〕

木原稔君 自由民主党の木原稔です。(拍手)

 質問に先立ちまして、平成二十八年熊本地震によりお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りいたします。遺族の皆様方に哀悼の意を表しますとともに、余震が続く中、今もなお不安な日々を送られておられます被害者の方々に心からお見舞いを申し上げます。

 政府におかれては、本震発災翌日の十七日時点で、三万人規模の自衛隊、警察、消防、海上保安庁、医療部隊等を動員し、救命救助活動に全力を挙げていただきました。

 その後には、全国から多くのボランティアの皆様、また各種業界団体の方々にあらゆる分野で御支援を賜っておりますことを、被災した県民の一人として厚く御礼申し上げ、質問に入らせていただきます。

 一連の地震が最初に九州地方を襲ったのは四月十四日の夜、熊本県を中心に益城町で震度七を観測する大変強い揺れでした。さらに、二十八時間後、九州地方は再びマグニチュード七・三の本震に襲われ、益城町や西原村で再び震度七を、私の住む熊本市でも震度六強を記録することになりました。

 本日正午現在で、震度四以上の地震が実に百六回、震度一以上は千四百十四回にも上っており、気象庁は、活発な地震活動は続いているとしています。

 強い余震が断続的に続き、救助や被災者支援のための活動に困難を伴いましたが、この間の政府の対応は、総理のリーダーシップのもと、現場主義とスピード感に裏打ちされたものであったと思います。

 また、現地からの要望を待つのではなく、予備費二十三億円を直ちに活用して、食料、水、生活必需品をプッシュ型で現地に届けていただきました。さらには、国からの応援職員の積極的な派遣など、まさに、できることは何でもやるという姿勢でした。

 その後も、関係省庁で被害状況の把握に努め、四月二十五日には激甚災害の指定を閣議決定しました。近年、災害の終息から激甚災害指定までは平均二十日間かかっていましたが、今回は本震発生からわずか九日後、余震が続く中での早期の対応だったと思います。

 そして、本震発生から二十八日後に提出された本補正予算は、喫緊の課題に対応したものと考えます。

 総理は、四月二十四日に補正予算の編成を指示しましたが、その時点では被害状況が判明せず、当面は当初予算で措置した予備費により対応するとの判断もあり得たと思います。

 そうした中で、前例にないスピードで補正予算を編成し、提出することとしたその思いについて、安倍総理大臣に伺います。

 今回の補正予算の中で、仮設住宅の建設や被災者生活再建支援金に係る国の負担など、被災者支援に要する経費について約八百億円を計上しております。

 急遽の予算編成の過程で、熊本市などでは大変多くの住居に被害が生じており、その全容をいまだ十分に把握できていない中での見積もりとなりましたが、仮に被害が見積もり時点より拡大した場合があったとしても、それに十分に対応できるものでなければなりません。

 本補正予算が今後の被災者支援に十分な対応ができるものとなっているかどうか、麻生財務大臣に伺います。

 今回の補正予算の大きな特徴は、こうした経費以外については、個別に予算を計上するのではなく、熊本地震復旧等予備費として七千億円を計上していることです。

 予備費という仕組みは、国会が政府に対して、ある程度使途を自由に設定することを認めるものであり、全ての歳出を個別に審議する財政民主主義の例外でもあります。

 復旧は復興への第一歩として不可欠なものであり、多岐にわたる課題に迅速に対応していくため、予備費を柔軟に活用していく必要があると考えます。

 熊本地震復旧等予備費を創設することとした理由、及び、これによりどのような使途に活用されていくことが望ましいのか、麻生財務大臣に伺います。

 補正予算により、具体的にどのように復旧を進めていくかが大変重要です。

 まずは、インフラの復旧事業をしっかりと進めていかなければいけません。幸い、九州新幹線は四月二十七日に運転再開、九州自動車道は四月二十九日に全線一般開放となるとともに、五月九日に大分自動車道も全線一般開放となり、大動脈は回復しました。

 しかし、大きな斜面崩壊があった地区においては、地域の基幹道路として物流や観光振興にも重要な役割を担う国道五十七号、国道三百二十五号、阿蘇大橋やJR九州豊肥線などの復旧が課題となっています。

 九州はこれから梅雨の季節に入ることも踏まえ、十分な対策が必要と考えますが、安倍総理大臣に今後のインフラ復旧に向けた取り組みを伺います。

 今回、学校の大半が避難所として、乳幼児から高齢者までさまざまな方々に現在も利用されています。学校施設は、耐震化の成果もあり、被害は最小限におさまりましたが、トイレが洋式化されておらず、高齢者や障害者の方などが困りました。また、真夏や真冬にも学校が避難所となり得ることから、空調設備は必要不可欠だと痛感しました。

 学校施設について、現場の要望に応え復旧するのはもとより、トイレの洋式化や空調設備の設置など、避難所としての機能もしっかりと整備すべきと考えますが、実際に避難所を視察された安倍総理大臣の見解を伺います。

 また、多くの児童生徒が避難所で生活し、強い余震が長期間続く中での心理的な影響ははかり知れないものがあります。スクールカウンセラーの配置等、児童生徒の心のケアをしっかりと取り組むべきと考えます。加えて、被災した児童生徒への学習支援や教育相談のための教員加配も極めて重要です。これらについて、馳文部科学大臣の見解を伺います。

 あわせて、日本のGDPの約九%を占める九州経済を復興させていかなければなりません。

 まず、農林漁業者への復旧支援が重要です。熊本県だけで、地震による農林水産業の被害額は一千億円を超えます。亀裂が走った田畑、被害を受けた畜舎やビニールハウス、圧死した多数の家畜。崩壊した山肌や崩れた防波堤。力強く、意欲にあふれた九州の農林水産業を復興させる第一歩として、被災された農家に寄り添った復旧支援をぜひお願いいたします。

 また、中小企業や小規模事業者も大きな被害を受けております。その影響は、九州各県だけでなく、全国にも及び始めていると聞いております。まずは、金融面を中心として、きめ細やかな復旧支援に全力を尽くしていただきたいと思います。

 九州経済の復活に向けて、農林漁業者や中小企業などの復旧支援にどのように取り組んでいくか、安倍総理大臣に伺います。

 さらに、九州地方の基幹産業である観光業の復興に向けた取り組みも重要です。

 雄大な阿蘇を抱える熊本県側、別府や湯布院などを抱える大分県側でも、旅館、ホテルのキャンセルが多数出ていると報道されております。堅調なインバウンド旅行客の取り込みも失速させてはなりません。国内外に対して、風評被害の払拭に向けた積極的な情報発信を行い、夏休み前までに九州地方の観光業を復活させる必要があります。

 観光振興にどのように取り組んでいくのか、安倍総理大臣に伺います。

 約四百年前に加藤清正によって築城された天下の名城、熊本城、日本三大楼門の一つを持つ阿蘇神社、小泉八雲や夏目漱石が教鞭をとった現在の熊本大学にある五高記念館などは、観光のシンボルだけではなく、県民の心の支えであり誇りです。

 政府としても、文化財保護の観点を含め、復旧に向けてしっかりと支援を行う必要があると考えますが、我が国の歴史が生み出したこうした宝物を取り戻す決意について、安倍総理大臣に伺います。

 今回の補正予算を含め、この地震からの一日も早い復旧、それに続く復興ができるよう、被災された方々の一人一人が笑顔を取り戻し、安心できる暮らしを取り戻すことができるよう、自由民主党は政府としっかりと連携し、全力で取り組んでいくことをお誓い申し上げ、私の代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 木原稔君にお答えをいたします。

 補正予算の編成理由についてお尋ねがありました。

 熊本地震発生直後から、できることは全てやる、その決意のもとで、当初予算の予備費を活用し、全力で取り組んできましたが、四月二十三日に、地震発生後初めて熊本県を訪問した際、すさまじい地震の爪跡を目の当たりにしました。被害の甚大さに加え、避難所暮らしが長引く中で、多くの方が精神的にも肉体的にも厳しい状況に置かれている現実を改めて実感いたしました。

 被災者の皆さんの不安な気持ちに寄り添いながら、今後とも先手先手で、一層機動的な対応を進めていくため、財政面からも万全を期していかなければならない。そうした思いから、直ちに平成二十八年度補正予算を編成することといたしました。

 この補正予算により、被災地に必要な支援をしっかりと行う上での十二分の備えを整えます。本補正予算を早期に成立させていただき、復旧復興を一層加速してまいりたいと考えておりますので、御審議をよろしくお願いいたします。

 今後のインフラ復旧についてお尋ねがありました。

 今回の熊本地震では多くのインフラが被災しており、中でも、南阿蘇村の阿蘇大橋地区では大規模な斜面崩壊が発生し、国道五十七号線や三百二十五号線の阿蘇大橋が通行どめ、JR豊肥線が運転休止となっています。

 当該地区においては、国直轄で崩壊斜面対策を実施するほか、阿蘇大橋についても、国が代行して整備することとしたところです。対策に当たっては、崩壊した斜面の安定化と国道及び鉄道の一体的復旧が必要であり、国の技術力を結集して対応してまいります。

 また、本日から復興法を初めて適用し、国が熊本県や南阿蘇村に代行して、俵山トンネルを含む県道や村道の復旧工事を行ってまいります。

 被災した学校施設の復旧と避難所機能の整備についてのお尋ねがありました。

 先月、被災地を訪問した際、避難所となっている小学校も訪問しました。その際、学校施設は、子供たちの学習、生活の場のみならず、被災時に地域の方々が身を寄せる極めて重要な施設であることを改めて認識いたしました。

 政府としては、被災した学校施設の早期復旧に向け最大限支援していくとともに、今後とも、避難所としての機能を十分果たされるよう、自治体の要望に応え、トイレの洋式化や空調設備の設置など、防災機能の強化にも取り組んでまいります。

 農林漁業者や中小企業などへの支援についてお尋ねがありました。

 九州の農林水産業は、食料の安定供給や地域経済を支える重要な基幹産業であり、生活基盤の復旧や経営再開への支援は極めて重要であると認識しております。

 このため、農地、農業用水路等の復旧、畜舎、農業用ハウスなど生産施設の再建、修繕、家畜の導入等への支援を行ってまいります。また、災害関連資金の当初五年間の無利子化、畜産経営安定対策の生産者積立金の納付免除など多様な措置を講じております。

 引き続き、被災した農林漁業者の皆様の不安に寄り添いながら、できることは全てやるとの考え方のもと、一日も早く経営の再建ができるよう、きめ細やかな支援を行ってまいります。

 地域の経済と雇用を支える中小企業への支援については、既に政府系金融機関による災害復旧貸し付けや、信用保証協会によるセーフティーネット保証四号等による資金繰り支援などを行っています。

 引き続き、被災中小企業等の声にしっかり耳を傾け、先手先手で対策に取り組んでまいります。

 九州地方の観光振興についてお尋ねがありました。

 今回の地震災害を受け、熊本県や大分県を初め九州地方の広範囲にわたり、多くの宿泊キャンセルが生じております。観光は九州経済にとって大変重要な産業であり、夏の観光シーズンに向け、スピード感を持って観光需要を回復させていく必要があります。

 そのためには、交通機関や観光施設の営業状況など、現地の状況を正確に知っていただくことが何よりも重要であり、引き続き、国内はもとより、海外の観光客へも正確な情報を発信していきます。

 特に、修学旅行については、教育委員会等に対し、風評に惑わされることなく、現地の正確な情報に基づいた対応を依頼したところです。

 また、さらなる観光需要を喚起するため、被災地域を中心とする観光プロモーションについて最大限の支援を行ってまいります。

 さらに、観光事業者への融資、雇用支援など、政府一丸となって九州の観光振興に努めてまいります。

 熊本城など文化財の復旧についてお尋ねがありました。

 今回の地震により、多くの文化財が被害を受けました。特に、四百年にわたって熊本県のシンボルであり、観光の面でも重要な役割を果たしてきた熊本城が大きく傷つき、熊本県の方々はさぞ落胆されたと思います。

 熊本城や阿蘇神社、五高記念館などについては、できることは全てやるとの考え方のもと、早期に修理、復旧できるよう、関係自治体や文化財の所有者の方々のお話も聞きながら、国としてしっかりと支援に取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 被災者支援に要する予算についてお尋ねがあっております。

 今般の補正予算におきましては、住宅の確保や生活再建支援金の支給など、被災者支援に要する経費として七百八十億円を計上いたしております。

 この規模は、応急仮設住宅の提供などについて、現時点で明らかになっている被害に対応するだけではなく、今後、被害が拡大することとなった場合であっても十分に対応できるよう見込んだものであり、これにより、政府としてはしっかりと被災者支援に取り組んでまいりたいと考えております。

 熊本地震復旧等予備費についてお尋ねがあっております。

 これは、今回の地震への対応として、現時点では個別に内容や予算額を見込みがたい経費につきまして、今後必要が生じた時点で迅速に支出ができるよう、新たに創設することとしたものであります。

 この予備費により、道路、施設などのインフラの復旧や事業再建の支援、瓦れき処理を初め、さまざまな事業を迅速にしっかりと実行してまいります。(拍手)

    〔国務大臣馳浩君登壇〕

国務大臣(馳浩君) 木原議員から、児童生徒の心のケアへの取り組み及び教員加配についてお尋ねがありました。

 被災した児童生徒の心のケアを適切に実施できる体制を整えることが必要と考えており、スクールカウンセラー等の追加配置について、被災地域の教育委員会及び臨床心理士会等と連携しながら対応します。

 なお、緊急的にスクールカウンセラーを配置する経費については、現在、被災地域の教育委員会からの要望額を確認しているところですが、全額国庫負担とすることを予定しております。

 教職員定数の加配措置については、緊急の教員加配について、熊本県教育委員会より四十五人、大分県教育委員会より五人分の要望があり、それぞれ要望どおり、加配の内示を行いました。

 被災した子供たちへの教育支援のため、今後も、県の教育委員会からの要望を踏まえながら、追加措置を行ってまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 石田祝稔君。

    〔石田祝稔君登壇〕

石田祝稔君 公明党の石田祝稔です。

 公明党を代表して、このたびの補正予算案に対し、総理並びに関係大臣に質問いたします。(拍手)

 冒頭、この大型連休中、総理は、サミット成功に向けた事前協議等のため、精力的にG7関係国などを訪問し、首脳会談に臨まれました。G7議長国としての総理の行動力に敬意を表したいと思います。

 また、アメリカのオバマ大統領の広島訪問が決まりました。現職のアメリカ大統領としては初の広島訪問であり、核兵器のない世界を目指す国際的な機運を盛り上げる上で極めて重要な、歴史的意義を持つ訪問となります。私自身も、大成功を切に願っております。改めて、総理の御決意をお伺いいたします。

 あすで熊本地震の発災よりちょうど一カ月が経過します。改めて、お亡くなりになられた方々に対して心より哀悼の意を表するとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。また、被災者の救援、救出等に御尽力いただいた自衛隊、警察、消防、関係各位に心から感謝と敬意を表したいと思います。

 相次ぐ余震の影響により、いまだ多くの方々が困難な生活を余儀なくされています。被災地の一日も早い復旧復興に向けて、被災者の生活再建はもとより、社会インフラの復旧、中小企業や小規模事業者の事業再建、観光地の復興等を加速させていくことが極めて重要です。そのためにも、与野党の立場を超えて、補正予算案の速やかな成立と円滑な執行が急務であります。

 また、熊本地震に特化した補正予算は、被災地に対して、これからの復旧復興の財源をしっかり確保していくというメッセージを発することになり、それが被災地の方々の安心感にも直結します。

 熊本地震復旧等予備費を柔軟に活用し、必要なところに迅速に財政支援が行き渡り、復旧復興対策が着実に進むようにしなければなりません。安倍総理の御決意をお伺いいたします。

 それでは、具体的に質問いたします。

 被災地での二次避難所やみなし仮設の確保、応急仮設住宅の建設が始まったものの、全ての被災者が新たな住まいを確保し、安心して生活できるまでにはまだまだ時間が必要です。

 政府は、みなし仮設の確保の規模や応急仮設住宅等の建設計画の見通しなど、工程計画の全体像を早急に明確にした上で、被災者の実情にマッチングさせながら、今後の住まいと生活の安心感につなげていくことが重要です。また、住まいのメンテナンスに係るマンパワーの不足が懸念されます。しかも、これから夏の暑い時期に向けての熱中症対策、特にアリーナなどの避難所等におけるエアコンなどの充実は必須であります。

 一方で、被災者の自宅の留守を狙った空き巣被害も後を絶ちません。許せない、私はそういう思いであります。災害時の窃盗犯罪に対する罰則強化を求める声も寄せられております。被災者の方々が二次避難所等で安心して暮らせるための防犯体制の強化が必要であります。

 さらには、今後の避難生活の長期化に伴い、感染症やプライバシーなどの対策、心のケアの取り組みなど、きめ細やかな対応がますます重要になっています。安倍総理の御決意、御見解を求めます。

 被災者が生活を再建するためのさまざまな支援を受けるためには罹災証明書が必要です。ところが、罹災証明書の交付や認定作業がおくれています。業務に精通した地方自治体職員が被災地に派遣されていますが、マンパワーのさらなる確保が急務となっています。

 また、住宅再建では、被災自治体が独自の支援策を行ってきた過去の実例があります。被災自治体の支援策を国が最大限バックアップしていただきたいと思います。

 さらに、壊れた家の住宅ローンが残り、この先どうしたらいいのかといった相談が寄せられています。先月から、自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインである、被災ローン減免制度の適用が開始されました。この制度の周知徹底とともに、被災者の相談窓口体制の強化も重要になっています。

 一方で、被災者支援の義援金についても課題が浮き彫りになっています。生活保護受給者が受け取る義援金が収入とみなされれば、生活保護費が減額されたり、停止されたりすることもあります。このため、国内外の善意が弱者に行き届きにくくなっているとの指摘の声があります。

 また、被災者に交付されるべき義援金が金融機関などに差し押さえられてしまうことを防ぐため、東日本大震災のときと同様に、特別措置法を早急に策定する必要があります。安倍総理の見解を求めます。

 道路や砂防、港湾施設など社会インフラの復旧事業については、今後の梅雨の到来等を見据えて、土砂災害や落石等の対策も含め、特段の財政支援と技術的支援が急務です。

 特に、地域の基幹道路であり、観光振興に重要な役割を担う国道五十七号線と阿蘇大橋、国道三百二十五号線の早期復旧を国直轄の事業によって進めることが復旧の大きな原動力となります。

 救援物資輸送の生命線である熊本港、八代港の耐震強化岸壁の整備についても、特段の措置を講ずる必要があると考えます。石井国土交通大臣の見解を求めます。

 次に、国や県が指定する熊本城などの重要文化財が大きな被害を受けています。観光振興にとって大きな痛手であり、早期復旧に向け、国の全面的な支援が求められています。

 地震の影響によって、宿泊客のキャンセルが相次ぎ、熊本県、大分県を初め九州全体の観光客が激減するなど、風評被害の拡大も深刻です。

 そのような状況下でも、旅館等は雇用の維持に奮闘しており、雇用調整助成金の要件緩和など、雇用の維持を図るための支援が重要です。

 政府は、地元自治体や関係団体と一体となって、正確かつ積極的な情報発信とともに、九州全体の観光業の早期再建や経営に関する財政的支援など、総合的な再建支援に全力で取り組むべきと考えます。石井国土交通大臣の見解を求めます。

 農林水産業の再建支援も急務になっています。農林水産業の生産者が経営再開に希望を持てるよう、農地、林地、漁港、農林水産業に係る施設等の早期復旧支援が必要です。

 また、圧死した家畜の出荷遅延や廃棄となった農林水産物等に対する支援、経営の継続が困難な農林漁業者に対して、経営再建に向けた特別の支援措置とともに、随時支援策の強化が必要です。森山農林水産大臣の見解を求めます。

 一方、熊本県内では、事業存続の瀬戸際にある中小企業、小規模事業者が数多くあります。マンパワーを含めた相談体制強化など、きめ細やかな対応が急務です。

 また、既存の債務に対しては、特に公的金融機関が率先して柔軟な対応を図り、事業の再開や継続するための資金繰りのため、低利融資の充実や信用保証の拡大などの検討も求められています。

 さらには、支援メニューの周知徹底など、情報提供の強化も重要です。林経済産業大臣の見解を求めます。

 このたびの地震によって、被災自治体の財政状況は危機的な状況です。被災自治体が安心感を持って復旧復興に取り組むためには、自治体の負担を軽減し、国が前面に立った継続的な支援とともに、財政負担等に係る特別の立法措置が必要です。

 仮に、今回の補正予算や平成二十八年度当初予算予備費等で十分な財政支援確保ができない場合は、さらなる追加措置の検討が必要と考えます。安倍総理の見解を求めます。

 最後になりますけれども、一言申し上げます。

 熊本地震発災直後から、我が党は、国会議員、地方議員が一丸となって、被災地を駆け回り、被災者一人一人の声に耳を傾けてきました。被災者を誰一人取り残さないとの決意のもと、どこまでも被災者に寄り添った復旧復興対策を行うことをお誓いし、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 石田祝稔議員にお答えをいたします。

 G7伊勢志摩サミット及びオバマ大統領の広島訪問についてお尋ねがありました。

 先般、欧州を訪問し、G7サミットに出席する各国首脳と広範な議論をしてまいりました。

 サミットでは、現下の世界経済の情勢を踏まえた対応策が最大のテーマとなります。首脳間でさらに議論を深め、世界経済の持続的な成長に寄与すべく、G7として明確な力強いメッセージを出していきたいと考えています。

 また、テロ、難民問題、保健、女性活躍、インフラ投資など、幅広い問題についても討議をする予定であります。

 オバマ大統領の広島訪問については、心からこれを歓迎します。この訪問を、七十年前の原爆投下によって犠牲となられた全ての犠牲者の方々を日米でともに追悼する機会としたいと思います。

 日本は、唯一の戦争被爆国として、二度とあの悲惨な体験を、世界のどこであっても再び繰り返させてはならない、この思いで核兵器の廃絶を一貫して訴えてまいりました。

 今回、オバマ大統領が広島を訪問し、被爆の実相に触れ、その思いを世界に向けて発信することは、核兵器のない世界に向けて大きな力になると信じます。そして、その世界を実現するために、オバマ大統領とともに全力を尽くしてまいります。

 被災地の一日も早い復旧復興に向けた取り組みについてお尋ねがありました。

 被災地では、いまだに多くの方々が避難所生活を余儀なくされています。被災者の皆さんの不安な気持ちを胸に刻み、安心できる住まいの確保、道路や橋といったインフラの復旧、中小企業、農林漁業や観光業を営む方々のなりわいの復興などの取り組みを加速化させていく必要があります。

 今般の補正予算は、こうした観点から十二分の備えを整えるものであり、被災地に安心して復旧復興に向けて歩んでいただきたいと考えております。本補正予算を早期に成立いただけるよう、しっかり取り組んでまいります。

 その上で、熊本地震復旧等予備費を柔軟かつ迅速に活用し、被災された皆様が一日も早く笑顔を取り戻すことができるよう、全力を尽くしてまいります。

 住まいの確保ときめ細かな被災者支援策についてお尋ねがありました。

 住まいの確保については、被災されて自宅に帰ることが困難な方々の、住みなれた土地を離れたくないといった思いにもしっかり寄り添いながら、公的な住まいや民間賃貸住宅の提供、仮設住宅の建設など、被災自治体による住まいの整備の取り組みを、職員を派遣するなど全面的に支援し、対応に万全を期してまいります。

 避難所等において、被災された方々が安心して過ごせるよう、エアコンや扇風機等の設置による熱中症対策、被災者の手洗い励行や避難所のトイレの清潔保持などによる感染予防策の徹底、精神医療機関との連携や適切な精神医療の提供による被災者の心のケア、間仕切りの設置等によるプライバシーの確保、警戒パトロールの強化等による防犯対策など、被災自治体と一体となって、被災された方々に寄り添ったきめ細やかな支援策に取り組んでまいります。

 被災者の生活再建支援についてお尋ねがありました。

 罹災証明書の交付、被災家屋の被害認定等については、事務に係る応援職員として、国の職員五十名に加え、全国各地の自治体から六百名近い職員が被災自治体に派遣されています。引き続き、必要なマンパワーを総動員し、機動的かつ柔軟な対応の加速化を図ってまいります。

 御指摘の債務整理に関するガイドラインについては、被災された方々への一層の周知を図るとともに、金融機関の窓口において相談への適切な対応が行われるよう、引き続き金融機関に促してまいります。

 義援金は、国民の皆様からの善意により寄せられているものであり、被災された方々への支援、被災地の復興に資するよう、できるだけ有効に活用されるべきであると考えております。

 生活保護制度においても、義援金を住居の補修、家具、家電などの購入等、生活の再建に充てる場合には、その金額を収入認定しないこととしており、被災自治体に対して引き続き丁寧に周知してまいります。

 お尋ねのような課題があることは承知していますが、被災者の生活再建に資するよう、個別の相談にきめ細かく対応しながら、まずは義援金の円滑かつ迅速な交付に努めてまいります。

 熊本地震に対する財政措置についてお尋ねがありました。

 本日国会に提出させていただいた平成二十八年度補正予算は、住居の確保や被災者生活再建支援金など、被災者支援に要する経費七百八十億円を計上するとともに、熊本地震復旧等予備費七千億円を創設し、道路、施設等のインフラ復旧、事業再建の支援、瓦れき処理などを迅速に進めていくための十二分の備えを整えるものです。

 さらなる財政措置についてのお尋ねですが、まずは、今般の補正予算等により、当面の復旧対策に万全を期すこととしております。その上で、個別具体的な被害状況や必要となる復旧事業等の内容を詳細に点検、精査した上で、各自治体の財政状況に丁寧に目配りしながら、財政面での手当ても含め、どのような対応が必要となるかをしっかりと検討してまいります。

 被災された方々が笑顔を取り戻し、安心して暮らせるその日まで、できることは全てやる、そうした決意で今後もしっかりと取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣石井啓一君登壇〕

国務大臣(石井啓一君) 社会インフラの復旧についてお尋ねがありました。

 今回の熊本地震では多くのインフラが被災しておりまして、その被害規模に鑑み、激甚災害に指定し、補助率のかさ上げ措置により、地方自治体の財政負担の軽減措置を図ることといたしました。また、梅雨期を見据え、土砂災害等の二次災害に備えた技術的支援を講じているところであります。

 特に被害の大きかった南阿蘇村の阿蘇大橋地区では、大規模な斜面崩壊の発生に伴い、国道五十七号や国道三百二十五号の阿蘇大橋が通行どめとなっております。

 当該地区におきましては、国直轄で崩壊斜面対策を実施するほか、阿蘇大橋につきましても、国が代行して整備することとしたところであります。対策に当たっては、崩壊した斜面の安定化と国道の一体的復旧が必要であり、国の技術力を結集して対応してまいります。

 また、本日から復興法を初めて適用し、国が熊本県や南阿蘇村に代行して、俵山トンネルを含む県道や村道の復旧工事を行ってまいります。

 熊本港、八代港の耐震強化岸壁につきましては、救援物資輸送の生命線であることから早期の整備が重要と考えており、国直轄で今年度より調査に着手をいたします。

 国土交通省としては、引き続き、全力でインフラの早期復旧に努めてまいります。

 九州の観光業の再建についてお尋ねがありました。

 今回の地震災害を受け、熊本県や大分県を初め九州地方の広範囲にわたり、多くの宿泊キャンセルが生じております。観光客が減少する中でも頑張って営業を続けておられる観光関係の皆様のためにも、夏の観光シーズンに向け、スピード感を持って観光需要を回復させていく必要があります。

 そのためには、交通機関や観光施設の営業状況など、現地の状況を正確に知っていただくことが何よりも重要であり、引き続き、国内はもとより、海外の観光客へ正確な情報を発信してまいります。

 特に、修学旅行については、文部科学省を通じ、教育委員会等に対し、風評に惑わされることなく、現地の正確な情報に基づいた対応を依頼したところであります。

 また、さらなる観光需要を喚起するため、被災地域を中心とする観光プロモーションをしっかりと行ってまいります。

 さらに、被災地において影響を受けている宿泊業者などに対しましては、施設復旧のための融資、従業員の雇用を守るための支援措置など、関係省庁と連携して、再建支援に全力で取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣森山裕君登壇〕

国務大臣(森山裕君) 石田祝稔議員の御質問にお答えいたします。

 農林水産業の再建支援についてのお尋ねがありました。

 五月二日、五月六日と二回にわたって現地に入り、今回の熊本地震が農林水産業に大きな被害を与えている現状を目の当たりにしました。

 こうした広範かつ甚大な被害が生じている中にあっても、この困難を必死に乗り越えようとしておられる被災された農林漁業者の皆さんから直接話を伺うことができました。

 このため、被災をされた農林漁業者の皆さんが一日も早く経営の再建ができるよう、激甚災害の指定により、農地、農業用水路や治山施設、漁港等の復旧事業の補助率をかさ上げしました。

 また、九日に発表した第一弾の被災農林漁業者への支援対策により、畜舎、農業用ハウスなど生産施設の再建、修繕への支援、災害関連資金の当初五年間の無利子化など多様な措置を既に講じたところでございます。

 廃棄となった農林水産物等の対価に対する直接の補填は難しいと考えておりますが、集荷施設など共同利用施設の整備、作付の転換を行う際の種苗や種子の購入等への支援についても早急に検討してまいります。

 今後とも、被災された農林漁業者の皆さんの不安に寄り添い、熊本県知事から話のあった創造的な復興を支援していくため、柔軟に状況に応じた対策を検討するほか、スピード感のある復旧復興をサポートするためにも、専門技術職員を本省や全国の出先機関から派遣し応援するなど、きめ細かな支援を行うことにより、農林水産業の復旧復興に全力で取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣林幹雄君登壇〕

国務大臣(林幹雄君) 被災された中小企業の支援についてお尋ねがありました。

 相談体制の強化については、震災直後に政府系金融機関等に特別相談窓口を設置し、四千件近くの経営相談に応じてきました。

 既存の債務に対しては、政府系金融機関が率先して返済猶予やそのための手続の迅速化などに取り組んでいます。

 資金繰り支援については、通常の保証とは別枠で借入額の一〇〇%を保証するセーフティーネット保証四号などを速やかに発動しております。

 情報提供につきましては、被災中小企業向けガイドブックを作成して現地で配布し、中小企業の応援サイト、ミラサポなどを通じて周知を図っています。

 今後は、平成二十八年度補正予算案に計上されている熊本地震復旧等予備費を活用し、中小企業の金融支援、工場、商店、旅館などの設備、施設の復旧支援などについて、被害の状況を踏まえ、早急に検討してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 真島省三君。

    〔真島省三君登壇〕

真島省三君 質問に先立ち、熊本地震で亡くなられた方々の御冥福をお祈りし、御家族の皆様に謹んでお悔やみを申し上げます。また、被災された全ての皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。(拍手)

 熊本地震の被災地では、地震活動の活発な状態が続き、日に日に被害が拡大しております。地震発生後一カ月を経過してなお、出口の見えない避難生活が続き、被災者の方々に身体的、精神的なストレスを蓄積させております。

 日本共産党は、四月十四日当日、直ちに熊本地震対策本部を立ち上げました。翌十五日には被災地に入り、以後、被災の実情と被災者の声を直接見聞きして、緊急に解決すべき具体的課題について政府の対応を求め、三次にわたる申し入れも行ってまいりました。

 総理は、四月三十日の政府非常災害対策本部で、いかなる必要な支援もちゅうちょしないでほしい、前例にとらわれてはならない、現場のさまざまなニーズをしっかりと把握しながら、迅速かつきめ細やかな支援を充実してほしいと述べました。しかし、被災者や避難所の生活環境の実態と総理の指示とのギャップは大きいと言わなければなりません。

 まず、依然として喫緊の課題である被災者の劣悪な生活環境の改善の問題です。

 被災者の皆さん、被災自治体やボランティアの方々から、プライバシーの確保や栄養バランスのとれた食事の確保、社会的弱者への配慮などに加えて、被災地はこれから蒸し暑く、梅雨を迎える中で、さらなる生活環境の改善、熱中症や感染症、食中毒の予防対策など、切実な要望が寄せられています。

 内閣府が地震発生直後の四月十五日に出した「避難所などの生活環境の整備等について」とする通知は、避難所の生活環境の改善を求めておりましたが、現場では、一カ月経てもなお実現していないではないですか。

 総理が四月十七日の政府非常災害対策本部で言われた、支援は一人一人の手元に届かなければ全く意味はないとの言明は、実行されていないではないですか。

 指定避難所以外で避難生活を続けている被災者の実情を、政府はどうつかんでいますか。

 多くの被災者が、自動車やテント、損壊した自宅での避難生活を強いられています。地震で助かった命を関連死などで失わせてはなりません。一人一人の被災者の実情と要望に応じた迅速かつきめ細やかな支援を、政府はどう実行するのですか。

 次に、仮設住宅の問題です。

 今回の地震により、熊本県で判明しているだけで七万五千棟を超える住宅が、全壊、半壊、一部損壊などの被害を受け、大量の仮設住宅の建設が急がれます。

 益城町の西村博則町長は、被災しながらも、このまま益城町に住みたいという方が多い、仮設住宅の建設に向けた支援をお願いしたいと訴えておられました。この声にどう応えますか。

 仮設住宅の建設に当たっては、地域のコミュニティーの維持が重視されるべきです。生まれ育った町を離れたくないという一人一人の被災者の願いに寄り添って、被災自治体を支えるべきです。

 木造仮設住宅は、プレハブ仮設に比べ、費用が安く、断熱、防音にすぐれ、恒久住宅への転用も可能です。熊本県は森林県であり、八代市は畳の材料であるイグサの産地です。木材や畳材などの県産材を多用すれば、復興にもつながります。

 熊本県は、地元の工務店や全国木造建設事業組合と、木造仮設住宅を建設する災害協定を締結しています。政府として、木造仮設住宅の建設をどう支援しますか。

 住宅の再建なしに生活の再建と地域の復興はありません。被災した住宅の再建を後押しするためには、被災者生活再建支援金の支給額を現行の三百万円から五百万円に引き上げることを、今こそ決断すべきです。

 被災者生活再建支援法による支援は、全壊と大規模半壊は対象になりますが、半壊では何の支援もありません。半壊を対象にすべきです。

 住宅やマンションの一部損壊の場合も、支援金が全くありません。一部損壊の住宅や被災マンションの修繕を進めるため、耐震強化のための助成制度や住宅リフォーム制度など、現行制度の拡充を速やかに決断すべきです。

 総理、こうした住宅再建への支援の拡充こそ、被災者生活再建支援法の目的に沿うものであり、あなたの言う、前例にとらわれない、現場のニーズをつかんだ支援のあり方ではありませんか。答弁を求めます。

 生活の再建のためには、被災者の負担を少しでも軽くしなければなりません。ローンの取り立てのために義援金が差し押さえられるようなことがあってはなりません。直ちに禁止をすべきです。義援金が収入として認定され、生活保護費が減らされたり、とめられたりすることも問題です。生活再建の命綱を断つ、こんな理不尽なことは直ちに改めるべきです。

 雇用と中小企業の問題です。

 既に、被災により休廃業に追い込まれる中小企業も生まれています。観光業を含む中小企業等への影響は、九州全域に及んでいます。現地の状況は深刻です。

 宇城民主商工会の皆さんからお話を伺いました。自宅、事務所、倉庫が半壊したというアルミ建材販売業の方、工場の機械が倒れ、必死で起こしたが、月末の支払いが心配という自動車修理工場の方、工場の土間に五センチくらいの亀裂が入ったという鉄工所の方、お酒のボトルが割れ、クロスや床はぼろぼろになったというスナックの経営者の方など、本当に切実です。

 ほとんどの小規模事業者が既に債務を抱えております。長引く不況で、税金さえも分納、延納している事業者も少なくありません。なりわいの再建のためには、壊れた工場や店舗の再建と修繕、事業再開に必要な設備や商売道具の購入などへの直接支援がどうしても必要です。答弁を求めます。

 震災を理由とした事業縮小で、解雇や自宅待機を求められた労働者の相談が殺到しております。中小企業の経営者は、何としても再開して雇用を守りたいと頑張っています。被災による休業でも受給できる失業給付の特例や、雇用調整助成金の大胆で機動的な活用、復興事業を就労支援として行う緊急雇用対策などを直ちに実行することを求めます。

 熊本県を初め被災自治体からは、十分の一が地元負担という激甚災害制度では、町や村の年間予算全部を注ぎ込んでも復興できないという切実な声が上がっています。特別法を制定するなど、被災自治体の財政負担を実質ゼロにすることが求められております。

 以上、総理の明確な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 真島議員にお答えをいたします。

 被災者の生活環境の改善と実情把握についてお尋ねがありました。

 今般の地震により、多くの方々が自宅を失い、地震が相次ぐ中で避難所等において不安で不自由な生活を余儀なくされています。今後、暑さが増し、梅雨を迎える中で、被災された方々に、できる限り良好な生活環境のもと、安心して生活していただくために、熱中症や感染症、食中毒等への対策に万全を期してまいります。

 同時に、よりきめ細やかな支援を行うため、民間企業の御協力を得て導入した情報集約システムやSNS等を活用し、ボランティアの方々とも連携するなどして、避難所以外の駐車場などに避難されている方々を含め、お一人お一人のニーズをより正確に把握するよう努めているところであります。

 引き続き、被災自治体と一体となって、一日も早い生活再建、中小企業や農家の方々のなりわいの復興、被災地の復旧復興に向けて、被災者の方々の生活環境の改善を初め、迅速かつきめ細やかな支援策を講じてまいります。

 仮設住宅の建設支援についてお尋ねがありました。

 今般の地震により、多くの方々が自宅を失い、地震が相次ぐ中で避難所において不自由で不安な生活を余儀なくされています。こうした方々に一日も早く安心して生活できる住まいに入居していただくことが極めて重要であると認識しております。

 そのため、民間賃貸住宅や公的な住まいを確保するとともに、建設型の仮設住宅についても十市町村において千戸を超える建設を現在急ピッチで進めておりますが、その際、地域の実情に応じた対応を促しており、例えば、西原村においては地元の木材を活用した仕様が採用されているところであります。

 政府としては、引き続き、被災されて自宅に帰ることが困難な方々の、住みなれた土地を離れたくないといった思いにもしっかり寄り添いながら、被災自治体による住まいの整備の取り組みを全面的に支援し、対応に万全を期してまいります。

 被災者生活再建支援法による支援等についてお尋ねがありました。

 被災者生活再建支援制度は、自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた方に対し、自立した生活再建を支援し、被災地の速やかな復興に資することを目的とした制度であることから、住家に全壊や大規模半壊等の重大な被害を受けた世帯に限って支援の対象とし、最大三百万円の支給を行うものであります。

 このような制度の趣旨からすれば、支給対象の拡大や支給額の引き上げについては、東日本大震災を初め過去の災害の被災者との公平性、他の制度とのバランス、国や都道府県の財政負担などを勘案して慎重に検討すべきものと考えます。

 他方、住宅に半壊の被害を受け、みずからの資力では応急修理ができない方に対しては、災害救助法に基づく応急修理の支援が行われます。また、一部損壊の住宅等については、耐震性等を向上させる改修を行う際に、社会資本整備総合交付金等により必要な支援が行われます。

 政府としては、引き続き、被災自治体と一体となって、被災者の方々の住まいの確保を初め、迅速かつきめ細やかな支援策を講じてまいります。

 義援金の取り扱いについてお尋ねがありました。

 義援金は、国民の皆様からの善意により寄せられるものであり、被災された方々への支援、被災地の復旧復興に資するよう、できるだけ有効に活用されるべきものであると考えており、まずは義援金の円滑かつ迅速な交付に努めてまいります。

 生活保護制度においても、義援金を住居の補修、家具、家電などの購入等、生活の再建に充てる場合には、その金額を収入認定しないこととしており、被災自治体に対して引き続き丁寧に周知してまいります。

 被災中小企業への直接支援についてお尋ねがありました。

 中小企業への支援については、既に政府系金融機関による災害復旧貸し付けや、信用保証協会によるセーフティーネット保証四号等による資金繰り支援などを行っています。

 平成二十八年度補正予算案には七千億円の予備費を盛り込んでおり、これを活用して、工場、商店、旅館など、設備、施設の復旧への直接支援などについて、被害の状況を踏まえて検討してまいります。

 雇用対策についてお尋ねがありました。

 震災によって事業の縮小を余儀なくされた事業者の方々がなりわいをもとどおりに再開できるその日まで、そこで働く方々に希望を持ち続けていただきたいと考えています。

 このため、事業所の被災により休業となり賃金を受けられない場合にも、失業給付を支給する雇用保険の特例を行うとともに、雇用調整助成金についても休業手当に対する助成率の引き上げなどの特例措置を講じます。

 御指摘の緊急雇用対策については、熊本地震の雇用への影響などをしっかり把握し、まずは雇用を守るため、ハローワークにおける全国ネットワークを生かした職業相談、職業紹介の実施など、全力で取り組んでまいります。

 地元自治体の負担についてお尋ねがありました。

 復旧事業における地方負担については、御指摘の激甚災害指定をしたことにより、補助率かさ上げで地方負担を軽減することに加え、その地方負担分についても手厚い地方財政措置を行っており、実質的な地方公共団体の負担は相当程度軽減されていると承知しております。

 それに加え、財政面での支援として、今般の補正予算等により、当面の復旧対策に万全を期すこととしております。

 その上で、個別具体的な被害状況や必要となる復旧事業等の内容を詳細に点検、精査した上で、各自治体の財政状況に丁寧に目配りしながら、財政面での手当ても含め、どのような対応が必要となるかをしっかりと検討してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 河野正美君。

    〔河野正美君登壇〕

河野正美君 おおさか維新の会の河野正美です。

 ただいま議題となりました平成二十八年度補正予算案につき、質問をいたします。(拍手)

 冒頭、このたびの熊本地震により被災され亡くなられた方々に、衷心より哀悼の意を表します。また、被災された全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げ、一日も早い回復を祈念申し上げます。

 私どもおおさか維新の会は、安倍総理に対し、四月二十日に熊本大地震からの復興に関する緊急提言、四月二十六日に平成二十八年度補正予算に関する提言を提出いたしました。

 本日は、この二つの提言と私が現地から得た情報に基づいて質問をさせていただきます。

 まず、今なお行方不明の方が一名いらっしゃると聞いております。一刻も早い発見と救出を求めます。

 自然災害の多い我が国では、災害のたびに、自然からの教訓を学び、政府の対応を改善していくべきです。ところが、阪神・淡路大震災、東日本大震災、今回の熊本地震において、初動段階で同じ問題が繰り返し発生しています。支援の規模が不十分なことや、物資の分配に時間がかかることなどの問題は、残念ながら、またしても発生をしております。

 我が党は、四月二十日に、初動対応を早急に改善すべきことを官邸に申し入れいたしました。水、食料、トイレ、電話、通信、おむつや生理用品等、人間が生きていく上で最低限必要となる物資等について、発災後一週間以内に、被災者が人間として生きていく最低限の物資等を確保することを国の指針として定めるべきではないでしょうか。今回の反省点も踏まえて、安倍総理の見解を伺います。

 我が党がこの提言を行って三週間余りがたった現在でも、現地では、トイレさえまともに使えない場所があります。

 上水道は一応の復旧、下水も処理能力が確保されたとのことです。しかし、これは本管についてのみで、建物の敷地内への引き込み線が復旧せず、結局は病院のトイレが使えない、こんな声を聞いております。

 上下水道の各家庭や事業所等までの復旧を早急に進めるべきと考えますが、河野防災担当大臣に現状認識と今後の見通しをお伺いいたします。

 過去の大震災同様、今回の大地震でも、被災者は劣悪な環境での耐乏生活を強いられています。

 我々は、過去の経験に学び、災害時に被災地での避難所を強化するというこれまでの発想からの脱却を図るべきです。移送を希望する被災者は、できる限り安全で物資も豊富な場所に速やかに移送すべきです。

 今回の大地震について言えば、近隣のホテル、旅館などの宿泊施設の室数は、福岡、佐賀、鹿児島の三県の合計で約八万四千室あります。宿泊施設と旅客にも理解と協力を求め、これらの施設を可能な限り有効活用すべきです。

 被災者の速やかな移送という新たな防災政策につき、安倍総理の見解を伺います。

 なお、被災病院の入院患者は、おおむね無事に転院できたようでありますが、一方で、被災病院は、患者ゼロ、すなわち収入がゼロとなり、一定数の医療専門職の雇用の確保が大きな負担となります。この点の対応につき、塩崎厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 今回の地震では、長期間にわたって極めて多くの余震が続いております。被災者のメンタルヘルスには特段の配慮が必要と考えますが、政府はどのような対策を検討、実施予定なのか、塩崎厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 また、生活保護を受けている被災者の方が全国からの善意の義援金を受け取った場合、義援金が一部でも収入とみなされれば、生活保護費が減額されたり停止されたりするという問題も指摘されております。この問題への対応についても、塩崎厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 今回の補正予算の財源は、予備費のほか、国債の利払い減少分を利用するとのことですが、それだけで十分な財源が確保できるか、まだわかりません。

 東日本大震災のときには、議員歳費と公務員給与の削減が行われました。今回も同じ手法をとるべきではないでしょうか。災害の規模は違っても、多数の避難者の生活を守るために、身を切る改革を実践すべきではないでしょうか。

 我が党は、そのような考え方のもとに、東日本大震災のときと同じく、議員歳費の二割分を被災自治体に寄附することといたしました。

 このような大震災では、復興増税のような国民負担を求める前に、まずは議員歳費と公務員給与を削減すべきではないか、総理にお伺いをいたします。

 熊本大地震によって、九州の観光業、農業は大打撃を受けています。さらに、大手製造業各社の先端的な工場の多くが停止し、サプライチェーンが断たれるなど、日本経済全体への影響も甚大になるおそれがあります。

 こうした状況に鑑み、消費税増税は延期すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 次に、住宅支援のあり方について伺います。

 いずれ取り壊す仮設住宅を地面がひび割れて危険が伴う現地に建設する方法から、安全な近隣での民間の空き家借り上げに切りかえ、そのための十分な予算措置を国として行うべきではないでしょうか。

 実際、今なお続いている余震を恐れて、車中泊されている方も少なくありません。その方々の生活の場を確保するためにも、民間の空き家借り上げを急ぐべきです。福岡県、鹿児島県、佐賀県の近隣自治体には、合計で二十四万二千戸の空き家があり、有効活用の余地があります。

 仮設住宅建設から近隣での民間の空き家借り上げへの政策転換につき、総理の見解をお伺いいたします。

 また、被災地では、住人不在の家屋を狙った窃盗事件が発生し、避難生活を送る方々をさらに苦しめています。災害で苦労されている方々を狙い、さらなる困難に陥れる、このような災害時の窃盗については、より重い刑罰をもって対処すべきではないでしょうか。

 避難所や野外での生活が続く中で、性犯罪への不安も高まっていると聞いております。被災地の安心できる暮らしを確保するための対策は喫緊の課題です。

 災害時の治安確保対策と重罰化について、河野国家公安委員会委員長の見解をお伺いいたします。

 最後に、予算執行体制についてお伺いいたします。

 被災地のニーズは、時々刻々と変わっていきます。国がこれを捉え切れないため、必要なところには全く足りない一方で、巨額の無駄も生じています。これは、東日本大震災でも学んだ苦い教訓であります。

 何が必要かを迅速的確に把握できるのは、国ではなく、自治体です。大災害時には、都道府県知事に復興に関する権限を時限的に与え、国の出先機関への指示、命令を可能にすべきではないでしょうか。また、一括交付金の形で財源の手当てを行うべきではないでしょうか。総理に御見解を伺います。

 水がない、食べ物が足りない、トイレが使えない、二十一年前の阪神・淡路大震災、五年前の東日本大震災と同じ光景をテレビやインターネットが伝えております。

 政府が過去の震災に学び、私どもおおさか維新の会の提言を真摯に受けとめていただくこと、そして、被災者の一日も早い生活再建と、ふるさと九州及び日本経済の再生を期待し、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 河野正美議員にお答えをいたします。

 物資等の確保についてお尋ねがありました。

 政府においては、発災直後から、被災自治体と一体となって、水や食料などの生活必需品はもとより、簡易トイレや医薬品等の必要な生活物資を確保し、それらが被災者一人一人の手元に迅速かつ確実に行き届くよう、民間の配送業者の協力も得ながら、総力を挙げて取り組んでまいりました。

 プッシュ型の物資の送付に引き続き、時々刻々と変化する被災地のニーズの迅速な把握によるプル型への転換、自衛隊等による機動的な輸送等、今回実践した経験や工夫した点等も踏まえ、政府としては、今後とも、災害発生時の物資の確保、提供について万全を期してまいります。

 ホテル、旅館等の宿泊施設の有効活用についてのお尋ねがありました。

 今般の地震により、多くの方々が自宅を失い、地震が相次ぐ中で避難所等において不安で不自由な生活を余儀なくされています。こうした方々に、できるだけ早く、安心して生活できる場所に移っていただくことが極めて重要であると認識しています。

 そのため、発災直後から、熊本県を初めとする九州各県の宿泊施設業者等の御協力を得て、ホテルや旅館等の空き室を最大限活用し、既に千五百名近くの被災された方々に避難所等から移っていただいています。

 政府としては、引き続き、被災されて自宅に帰ることが困難な方々の、住みなれた土地を離れたくないといった思いにもしっかり寄り添いながら、ホテルや旅館等の二次避難所の提供や、住まいの整備の取り組みを全面的に支援し、対応に万全を期してまいります。

 議員の歳費及び公務員給与の削減により、災害対応の財源を確保すべきではないかとのお尋ねがありました。

 政府としては、被災された方々の一日も早い生活やなりわいの再建、被災地の復旧復興に向けて、先手先手で、迅速かつきめ細やかな支援策をしっかりと講じてまいります。そのために必要となる財政面での支援についても、今般の補正予算等により、当面の復旧対策に万全を期すこととしております。

 その中で、まずは、個別具体的な被害状況や必要となる復旧事業等の内容を詳細に点検、精査した上で、各自治体の財政状況に丁寧に目配りしながら、財政面での手当ても含め、どのような対応が必要となるかをしっかりと検討してまいります。

 熊本地震と消費税率引き上げについてのお尋ねがありました。

 熊本地震発生から一カ月近くがたち、被災地ではインフラの復旧も進んできていますが、いまだに多くの方々が避難所生活を余儀なくされています。

 政府としては、一日も早い生活再建、中小企業や農業の方々のなりわいの復興、被災地の復旧復興に向けて、先手先手で、できることは全てやるとの方針のもと、最優先で取り組んでまいります。これに向け、二十八年度補正予算の早期成立と迅速な執行が重要であり、速やかな御審議をお願いいたします。

 来年四月の消費税率一〇%への引き上げは、社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たし、国の信認を確保するためのものであり、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、予定どおり引き上げていくという従来の方針に変わりはありません。いずれにせよ、適時適切に判断してまいります。

 住宅支援のあり方についてのお尋ねがありました。

 今般の地震により、多くの方々が自宅を失い、地震が相次ぐ中で、避難所等において不安で不自由な生活を余儀なくされています。こうした方々に、一日も早く、安心して生活できる住まいに入居していただくことが極めて重要であると認識しております。

 そのため、建設型の仮設住宅の建設を急ピッチで進めると同時に、全国で一万戸を超える公営住宅、熊本県内で借り上げ型の仮設住宅として活用可能な民間賃貸住宅を、業界の協力を得て、既に二千戸以上確保し、順次入居していただいております。さらに、現在、被災者のニーズとのマッチング、罹災証明事務を早めるなど、入居の迅速化に全力を挙げて取り組んでおります。

 政府としては、引き続き、被災されて自宅に帰ることが困難な方々の、住みなれた土地を離れたくないといった思いにもしっかり寄り添いながら、被災自治体による住まいの整備の取り組みを全面的に支援し、対応に万全を期してまいります。

 大災害時の国と都道府県のあり方及び財源についてのお尋ねがありました。

 被災された方々の生活やなりわいの再建、被災地の復旧復興を一日も早く実現するためには、現場主義を徹底し、被災自治体と一体となって、時々刻々と変化する被災地の多様なニーズを的確に把握した上で、先手先手で、機動的かつ柔軟に対応することが重要であると認識しています。

 そのため、政府としては、発災以来、現地対策本部を設置し、県を初め被災自治体と緊密に連携して、被災された方々の置かれている状況等を的確に把握するとともに、各種応急災害対策、災害者生活支援策に全力を尽くしてまいりました。

 財政面での支援についても、今般の補正予算等により、当面の復旧対策に万全を期すこととしております。

 その中で、個別具体的な被害状況や必要となる復旧事業等の内容を詳細に点検、精査した上で、各自治体の財政状況に丁寧に目配りしながら、財政面での手当ても含め、どのような対応が必要となるかをしっかりと検討してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 上下水道の復旧についてお尋ねがございました。

 上水道の本管については、本日朝七時現在で九九・八%が復旧し、下水道の本管についても、四月二十七日までに応急的な点検、復旧を完了し、通水、処理機能を確保しております。

 一方で、御指摘のとおり、本管から建物の敷地内への給排水管が復旧していないため、いまだ上下水道を使用できない御家庭等があることは認識しております。

 今回の地震のように給排水管の破損件数が多い場合、その早期復旧のためには、地元事業者だけでなく、ほかの地域からの応援が重要となります。

 そのため、国の職員が被災自治体を個別訪問し、支援要請を聞き取るとともに、関係団体に対し、自治体の技術職員や管工事業者の派遣を要請したところです。

 災害救助法による半壊世帯に対する応急修理や、各種施設の災害復旧費補助金等によって、被災された方々が一日も早く日常生活を取り戻せるよう、被災自治体と一体となって、できる限りの支援策を迅速かつきめ細やかに講じてまいりたいと考えております。

 災害時の治安確保対策と窃盗の重罰化についてお尋ねがありました。

 被災者を狙った犯行は、極めて卑劣で許しがたいものであります。警察においては、これまで、熊本県警察や他の都道府県警察から派遣された応援部隊が、警戒パトロールの強化、貴重品の適切な管理、保管の呼びかけ等による被害防止のための注意喚起、被疑者の早期検挙に向けた取り締まりの強化などの取り組みを講じているとの報告を受けております。

 また、被災地帯で不安な生活を強いられている方々の安全、安心の確保は極めて重要な課題であり、災害時の窃盗の重罰化につきましても、さまざまな観点から活発な議論が行われることを期待しております。

 いずれにしましても、引き続き、被災地域の治安確保のための取り組みが進められるよう、警察を指導してまいります。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 河野正美議員にお答え申し上げます。

 被災病院における雇用維持についてのお尋ねがございました。

 被災地では、病院を含め、事業所の被災により操業が停止するなど、雇用への影響が懸念されております。

 このため、雇用調整助成金の要件緩和を既に実施しているほか、事業所の被災により労働者が一時的に離職したり休業をした場合にも失業給付の対象とする雇用保険の特例措置を実施しているところでございます。

 被災医療機関の一日も早い機能回復と医療従事者の確保とともに、被災した地域の患者に継続的な医療の提供が図られるよう、施設等の復旧支援、雇用調整助成金の御案内、各種特例の事業主への周知、丁寧な相談、地域における診療確保の支援をしっかりと行ってまいります。

 被災された方々のメンタルヘルス対策についてのお尋ねがございました。

 被災された方々へのメンタル面でのケアは重要な課題であると認識をしております。

 現在、保健師等が避難所、公園、駐車場等を巡回して避難者の支援に当たるとともに、精神科の医師等から構成される災害派遣精神医療チーム、DPATを派遣し、避難所等におけるニーズの把握と専門的な心のケアを行っております。

 被災地の方々が一日でも早く安心した生活を送ることができるよう、引き続き心のケア対策にしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 生活保護における義援金の取り扱いについてのお尋ねがございました。

 生活保護制度は、利用できる資産、能力その他あらゆるものを活用することが前提であることから、収入があった場合には、原則として、その分保護費を減額し、保護の停止または廃止になる場合もあります。

 このため、義援金を一律全額収入認定しない取り扱いとすることは困難ではございますが、義援金を住居の補修、生活用品、家具、家電などの生活の再建に充てられる場合には、その金額を収入認定しないこととしております。

 こうした取り扱いについて、被災自治体において適切に運用していただけるよう、丁寧に周知をしてまいります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣     高市 早苗君

       法務大臣     岩城 光英君

       外務大臣     岸田 文雄君

       文部科学大臣   馳   浩君

       厚生労働大臣   塩崎 恭久君

       農林水産大臣   森山  裕君

       経済産業大臣   林  幹雄君

       国土交通大臣   石井 啓一君

       環境大臣     丸川 珠代君

       防衛大臣     中谷  元君

       国務大臣     石破  茂君

       国務大臣     石原 伸晃君

       国務大臣     遠藤 利明君

       国務大臣     加藤 勝信君

       国務大臣     河野 太郎君

       国務大臣     島尻安伊子君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     高木  毅君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  萩生田光一君

       財務副大臣    坂井  学君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  横畠 裕介君


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