衆議院

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第9号 平成13年4月11日(水曜日)

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平成十三年四月十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 横路 孝弘君

   理事 植竹 繁雄君 理事 小野 晋也君

   理事 阪上 善秀君 理事 横内 正明君

   理事 島   聡君 理事 中沢 健次君

   理事 河合 正智君 理事 塩田  晋君

      岩崎 忠夫君    亀井 久興君

      川崎 二郎君    古賀 正浩君

      谷川 和穗君    近岡理一郎君

      西川 公也君    根本  匠君

      平沢 勝栄君    三ッ林隆志君

      森岡 正宏君    渡辺 具能君

      井上 和雄君    石毛えい子君

      大畠 章宏君    細川 律夫君

      山花 郁夫君    山元  勉君

      太田 昭宏君    松本 善明君

      北川れん子君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 伊吹 文明君

   内閣府副大臣       坂井 隆憲君

   法務副大臣        長勢 甚遠君

   内閣府大臣政務官     西川 公也君

   内閣府大臣政務官     渡辺 具能君

   政府参考人

   (警察庁長官)      田中 節夫君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 上原美都男君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    五十嵐忠行君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    坂東 自朗君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局安

   全衛生部長)       坂本由紀子君

   政府参考人

   (国土交通省自動車交通局

   長)           高橋 朋敬君

   内閣委員会専門員     新倉 紀一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十一日

 辞任         補欠選任

  小西  哲君     森岡 正宏君

同日

 辞任         補欠選任

  森岡 正宏君     小西  哲君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 道路交通法の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)

 自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律案(内閣提出第五一号)

 危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案(細川律夫君外二名提出、衆法第一四号)




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     ――――◇―――――

横路委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、道路交通法の一部を改正する法律案、自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律案及び細川律夫君外二名提出、危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官田中節夫君、警察庁長官官房審議官上原美都男君、警察庁生活安全局長黒澤正和君、警察庁刑事局長五十嵐忠行君、警察庁交通局長坂東自朗君、法務省刑事局長古田佑紀君、厚生労働省労働基準局安全衛生部長坂本由紀子君及び国土交通省自動車交通局長高橋朋敬君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

横路委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

横路委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阪上善秀君。

阪上委員 おはようございます。自民党の阪上善秀でございます。

 政府から提案されております運転代行業に関する法律案について、伊吹国家公安委員長初め政府に対し質問をいたしたいと思います。

 御承知のように、自動車運転代行業は、昭和五十年ごろから、夜間の公共交通機関が十分に整備されておらず、自家用自動車が移動手段として不可欠である地方都市を中心に発達してきた事業であると言われておりまして、諸外国には例を見ない我が国特有の産業ではないかと思っておるところでございます。そして、この運転代行業は、今日に至るまで飲酒運転や過労運転などによる交通事故の防止に一定の役割を果たしてきたのではないかと認識をいたしております。

 しかし、その一方で、運転代行業者による交通事故の発生件数がタクシー事業者に比べると非常に高い水準で推移しているように思われてなりません。これに加えて、運転代行業という事業が主として夜間の繁華街において酔客を相手に行われる事業であるという点に特徴があるところから、一部で暴力団関係者による関与がうわさされており、また、一部の不適切な業者によるタクシー事業に類似する違法行為が行われるなど、さまざまな問題点も指摘されてきたところでございました。

 そこで、警察庁にお伺いをいたしますが、自動車運転代行業の事業者数並びにこれに従事する従業者数、さらにアルバイトの占める割合など運転代行業の実態、それに、代行業者による交通事故数は近年タクシー事業者と比べどのようになっておるのか、お伺いをいたしたいと思います。

坂東政府参考人 自動車運転代行業の業者の実態、さらには代行業者の死亡事故の発生の状況ということについてのお尋ねでございますが、まず、自動車運転代行業の業者数は、平成十二年五月末の数字でございますけれども、二千七百十五業者を把握しているところでございまして、従業員の数は約四万人に上っております。また、従業員のうちアルバイトの占める割合は七割弱、このようになっております。

 次に、交通死亡事故の発生状況についてでございますけれども、過去五年間の自動車運転代行業に係る自動車一億走行キロ当たりの交通死亡事故件数は、タクシー事業者のそれと比べまして二倍から五倍の高い数字で推移しているところでございます。

阪上委員 次に、運転代行業者に関する業界団体についてお伺いをいたしたいと思います。

 現在、主な業界団体として、社団法人全国運転代行協会、いわゆるJDAが設立されているようでございますが、その加入率が十数%と非常に低いというように聞いております。代行業者による交通事故を減らすためにも、また、酔客による交通事故をなくすためにも、会員に対する安全教育等を徹底し、運転代行業界として業務の適正な運営を確保し、また、代行運転の安全を確保するためにも、代行業界の健全な発展を図る必要があると思われるところでございます。

 ところが、今回の改正案によりますと、代行業者には第二種免許の所有者を義務づけるとか損害保険への加入を義務づけるとか、さまざまな負担が課せられることとなっております。さらに、これに加えて業界団体への加入をということになりますと、業界団体への加入に何かメリットがあれば別ですが、余りメリットもないとすればますます業者としての負担が増大する結果となり、中小零細業者の多い代行業界とすれば業界団体への加入をちゅうちょする者もいないとは限らないと思うのでございます。

 そこでお伺いをいたします。なぜこのように組織率が低いのか、行政として今後組織率を高める必要があると考えますが、もしその考えがあるとする場合にどのような指導あるいは取り組みをされるおつもりか、お伺いをいたしたいと思います。

坂東政府参考人 自動車運転代行業の団体についてのお尋ねでございますが、自動車運転代行業の団体といたしましては、警察庁と国土交通省との共管で、社団法人でございますけれども、全国運転代行協会の設立を平成八年の三月一日に許可したところでございますが、委員御指摘のように、平成十二年五月末現在の会員数は四百五十一業者でございまして、組織率は約一七%という率にとどまっているところでございます。この理由は、自動車運転代行業がこれまで何らの規制も受けない自由業であったということ、あるいは全国運転代行協会の知名度が低かったといったことが考えられるんではないかというように考えております。

 この全国運転代行協会というものは、自動車運転代行業の業務の適正な運営というものを確保するために、苦情処理、広報啓発活動等の事業を行っているところでございまして、この本法案の目的を徹底させるためにも、全国運転代行協会の組織率を高め、この協会を通じた業界の健全化を図る必要があるというふうに考えておるところでございます。

 今後は、国土交通省とも連携をいたしまして、安全研修会への講師の派遣などの支援、協力を行うなどして社会法人の行う事業の公益性というものを高めまして、あわせて業者の加入促進というものを図ってまいりたいというふうに考えております。

阪上委員 次に、二種免許の義務づけについてお伺いをいたしたいと思います。

 今回、運転代行業法案と同時に提出をされております道路交通法改正案によりますと、代行運転する自動車を運転する者は第二種免許を持っていなければならないとされております。そして、この第二種免許を義務づけるまでの猶予期間を法律施行後三年を超えない範囲内において政令で定める日までとされております。三年ぐらいの猶予期間を置くことが運転代行業者のために必要と判断されたものと思いますが、法律案の目的でもございます利用者の保護とか交通の安全を迅速に確保するためにも、この措置は早くする必要があるというタクシー業界からの意見もございます。

 警察としては、この点、一年になるか三年なのか、どのくらいの猶予期間をお考えでございましょうか。また、この期間を決定するに当たっていかなる判断基準により決定されようとしておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。

坂東政府参考人 二種免許を義務づけるまでの猶予期間についてのお尋ねでございますけれども、今回の道路交通法の改正の趣旨からは、可能な限り早期に施行することが適当であるとは考えているところでございます。

 しかしながら、第二種免許の取得者は現状では限られた存在でございますし、また、取得する機会というものも限られているところでございます。そこで、現在、第二種免許につきましては、取得機会の拡大とそれから体系的教育の導入といったこの二つの観点から、指定自動車教習所における教習とその技能検定制度を導入することを予定しているところでございます。

 したがいまして、この技能検定制度が導入されまして、各都道府県の指定自動車教習所における第二種免許取得者のための教習が軌道に乗りまして、第二種免許取得者がある程度増加してくると予測されます平成十六年の春ごろまで義務づけを猶予することが適当であるというふうに考えているところでございます。

 政令で施行日を定めるということになっておりますが、この施行日を定めるに当たりましては、以上の考え方を踏まえまして、ほぼ二年後に近い期日を定めることとする方針でございます。

阪上委員 次に、運転代行業の対象となっております自動車の種類についてお伺いをいたしたいと思います。

 今回、運転代行業法案と同時に提案されております道路交通法の改正案によりますと、運転代行業者がその事業を行うに当たって使用する自動車は普通自動車に限るとされております。しかしながら、運転代行を受けるに当たっては多種多様な種類の自動車を運転しなければならない必要があると想定されるところでございます。

 したがって、今後の問題として、代行業の対象となっている自動車の範囲を普通自動車以外にも拡大しておく必要があるのではないかと思いますが、お伺いをいたします。

坂東政府参考人 その前に、先ほどの御質問に対してちょっと訂正をさせていただきたいと思います。

 この第二種免許を義務づけるまでの猶予期間の関係でございますけれども、政令で施行期日を定めるということになっておりまして、その施行期日を定めるに当たりましては、二年後と申しましたけれども、ほぼ三年後に近い期日を定めるという方針でございます。

 それでは、ただいまの御質問にお答えをしたいと思いますが、運転代行業というものは顧客の自動車を運転するものでございまして、それが普通自動車であるかあるいは大型自動車であるかというものは関係ございません。しかし、現実にはそのほとんどが普通自動車でございまして、大型自動車を運転することを業とする実態がほとんど見られないところでございます。

 そこで、第二種免許につきましては、普通第二種免許のみを義務づけることとしております。これが、たまたま大型自動車を運転するような場合にまで大型第二種免許の取得を要求するということは過大な負担と考えられるからでございます。

阪上委員 次に、事故の際の損害賠償措置についてお伺いをいたします。

 今回の法律案第四条によりますと、自動車運転代行業を行う者は都道府県公安委員会の認定を受けなければならないとされております。そして、その認定を受けるための要件の一つとして、運転代行により生じた顧客の損害を賠償するための措置を講じておく義務を課されることになっております。もとより、この措置を講ずることは、代行業者のほとんどが資金力のない中小零細業者によって行われていることを考えますと、利用者の保護につながるものでありますので、妥当な措置と考えるものでございます。

 しかしながら一方、今申し上げましたように、代行業者の大半が中小零細業者であるという実態を考えますとき、果たしてこのような措置を義務づけることが代行業者の経済的負担とならないのだろうかと大変心配をいたしておるところでございます。今回の法律案が、このほかにも、例えば二種免許の所有者の存在を義務づけているとか、代行に随伴する自動車には一定の表示、装置の装着を義務づけておるとか、代行業者側に少なからずとも経済的負担を課しておることを考えますとなおさらでございます。

 したがって、代行業者の中には、当初代行業の認定を受けるために保険に加入したとしても、その保険の更新を怠るとか、途中でその契約を解除してしまうという業者もあらわれないとは限らないと思うのでございます。もちろん、保険の更新を怠ったとすれば、法律案の第七条によって代行業者は認定の取り消しを受けることとなるわけでございますが、私は、代行業者の経済的負担が余りにも大きいと保険切れという事態が予想され、そういたしますと、利用者が事故に遭った場合、救済されない事態の発生も考えられると思うのでございます。

 そこで、代行業者がこの法律上の義務を果たせるように、代行業者側の負担を軽減するための何らかの措置、例えば政府系金融機関からの金融措置などを考えることができるのではないかと思います。もしこうしたことが可能でありますならば、代行業者によってもし利用者が損害をこうむった場合でも十分な補償が受けられ、被害者の救済が可能になると考えるからでございます。

 そこでお伺いをいたしますが、このような代行業者の損害賠償措置を講ずるに当たって、公的支援といいますか、何か政府としてお考えになっておられる案がございましょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 運転代行サービスの利用者の保護を図る上で、保険等によります損害賠償のための措置を講じさせる必要があるというように考えているところであります。この保険についてでありますが、既に多くの自動車運転代行事業者の方々が特段の公的支援を受けずに保険等に加入しておるところでございます。事業の基本でもございますので、自動車運転代行事業者のみずからの御努力で保険に加入していただきたいと考えているところでございます。

 なお、今回の法律の制定によりまして、認定制度の創設とかあるいは二種免許の義務づけなどが行われることになりますが、損保会社におきましても、従来よりも保険などを引き受けやすい環境ができてまいると考えております。

 私どもといたしましても、今回の法律の趣旨などにつきまして、損保会社に対して十分周知いたしたいと思っております。自動車運転代行事業者が保険等に加入しやすくなるような環境整備を図ってまいりたいと考えております。

阪上委員 最後に、伊吹大臣にお伺いをいたします。

 昭和五十年ごろから我が国特有の産業として存在してきましたこの運転代行業についての法律案を今回おまとめになり、国会に提出されたわけでございますが、衷心より敬意を表するものでございます。そして、今お聞きのとおり、代行業者の大半が資金力のない小規模な事業者によって行われているというところでございます。

 伊吹大臣も御承知のように、宅配便、これは昔、急便業というものでございました。関西地区でごく小規模な業者たちによって起こされたものでございますが、今日のように非常に大きな業種として発展をしてまいりました。このような例もあるように、運転代行業も、時代のニーズに合って将来同じようになる可能性もあると私は認識をいたしております。

 そこで、運転代行業というものが今回の法律案によってその社会的地位を認められ、それを利用する人たちが、酔客ばかりでなく、今後、福祉関係の利用など、そのすそ野がますます広がっていくことが想定されるのではないかと思っております。業界の健全化に対する行政の適切な指導監督はもとより、関係する行政機関の側においても緊密な連携を図り、今回の法律案の趣旨を徹底し、交通の安全と利用者の保護を図ることが重要ではないかと思いますが、大臣の感想をお聞かせ願いたいと思います。

 それと、民間の保険よりも、やはり郵政の保険も、単車等々で今回されておりますので、今局長から御答弁いただいたのですが、民間の保険は、入るときは一生懸命やるのですが、払うときは渋るというところが、我々も阪神大震災で認識をいたしておりますので、その辺の幅を持った行政指導もお願いをいたしたいと思っております。一つの例が、我々は経験いたしたのですが、農協の建更共済ですね。非常に査定も緩やかで支払いも早かった。しかし、民間の保険は、査定も厳しく支払いが遅い、なかなか出さないというのが実態ではなかったかと思っております。

 今回のえひめ丸のあのアメリカの原潜事故によりましても、あの十一億の建造費のうち約四億円が郵政の簡保保険から出ておるのであります。そして、行方不明の九人のうち七名が簡保保険に加入をされておりました。この簡保保険というのは、普通の民間会社の保険でしたら遺体が発見されるまでは保険が払われませんけれども、この簡保保険は行方不明のときでも実際に払われるというところでございまして、郵政三事業というのは、私は庶民、大衆の味方の事業ではないかなと思っておるところでございます。

 今回の自民党の総裁の中では、これを民営化すると言っておる方もございますが、これからワンストップステーションという形で、サービスということで、住民票とか印鑑証明が民間でなしに特定郵便局でもされる時代になっておるのに、国民の行政サービスという点から見たら、このような郵政事業民営化と言われる方が総裁になることは、私は不適切ではないかと認識をいたしておるところでございます。大臣の答弁をお願いいたします。

伊吹国務大臣 ここは国会の場でございますから、特定政党の総裁選、党首選のことは、ちょっと答弁をするのは差し控えたいと思います。

 一般論としまして、先ほど来、先生と参考人の間でいろいろやりとりがございましたように、この法律は、基本的にはやはり利用していただく方の安全、そしてその安全を担保するために業者の方々を支えていく、こういう考えでできております。したがいまして、この法律に定義をした運転代行以外に、一般的に、空港へ人を送ってある程度の報酬を得ておられるとか、障害者の方々の運転を代行しておられるという方もいらっしゃるのですね。ただ、それはどの程度かというのは、なかなか把握ができておりません。

 したがいまして、まず今回この法律をお願いいたしまして、そして業者の方も利用者の安全を確保できるような営業形態に、保険の問題も含めて、国土交通省と御相談しながら進めていきながら、さらに先生がおっしゃっているようにすそ野が広がっていくということでありますれば、当然その分野にも将来また国会の御判断をちょうだいするという必要が私はあるのではないかと思いますので、関係省庁と協議をいたしまして、まずこの法律の施行に万全を期して、国民の安全を守ってまいりたいと思っております。

阪上委員 以上で終わります。兵庫第六区、阪上でした。

横路委員長 小野晋也君。

小野委員 今、自由民主党から阪上委員よりの質問がございました。総裁選をめぐりましては私は異論のあるところでございますが、それはそれといたしまして、この自動車運転代行業の業務をめぐる法律案の件につきましては、阪上委員と同じく、乗客そして一般通行者の安全を守る意味において、そしてまた、この業界自身が法的なきちんとした位置づけを得て健全に発展する意味において、非常に重要な法律がこのたびこの委員会に提起された、こういうふうに考えているところでございます。

 そこで、まず第一番目でございますけれども、この運転代行業の定義の問題でございます。

 これは法律の第二条に書かれているものでございますけれども、この運転代行業というのが、これまで自由な営業形態をとっていたものに初めて法的な枠組みを入れるということで、その定義が設けられているところでございますが、それを拝見いたしますと、一つには、「主として、夜間において客に飲食をさせる営業を営む者から酒類の提供を受けて酒気を帯びた状態にある者に代わって自動車を運転する役務を提供するもの」。第二に、「酔客その他の当該役務の提供を受ける者を乗車させるものであること。」第三に、「常態として、当該自動車に当該営業の用に供する自動車が随伴するものであること。」こういうふうに定義づけられているわけでございますけれども、この業態というのが、今までのタクシーの業態とそれから自由営業の業態、この中間に位置するものであって、それぞれ境界領域が存在するものでありますだけに、その境目あたりがどういうふうに判断されるのだろうというような点に、若干のあいまいさを私は感じてならないところがございます。

 そこで、幾つかのケースについて、どう御判断されるかについて御答弁をお願い申し上げたいと思う次第でございます。

 まず第一番目は、飲食街の中に駐車場を有している業者がいたとして、その業者が高額の駐車料金を受け取る。しかし一方、運転代行業務については、料金を全く取らないでその客の自動車を家まで送り届けるというようなサービスを提供した場合に、これが運転代行業の認定を受けていない業者であった場合に、それは刑罰の対象になるのかどうかという点でございますが、いかがでございましょうか。

坂東政府参考人 国会で御審議をいただいております代行業法案の定義は、委員御指摘のとおりでございます。

 そこで、御質問の具体的な事例の場合にどうなるかということでございますが、形式的には無償でございまして、本法案に言う自動車運転代行業ではないかのように見えるところでございますが、実質的にこの役務の提供が有償で行われている限りにおきましては、自動車運転代行業として本法の規制の対象になるというように解されるところでございます。

 いずれにいたしましても、脱法的な行為が行われていると認められる場合におきましては、これを看過することなく、運転代行業の業務の適正化を図ってまいる所存でございます。

小野委員 これは駐車場ということで、一つのわかりやすい事例で御紹介させていただいたのですが、例えば洗車料金というようなことで、お客さんが酒を飲んでいる間に洗車をして、その洗車料金が例えば五千円ぐらいであるというふうな値段を取って、それを送り届けますというような提供の仕方もあるでありましょうし、また、その他何らかのサービスを提供することを装って、実はその実質は運転代行であるというようなケースもあるでありましょうから、その点は十分な御検討をこれから行っていただきますようにお願い申し上げておきたいと思います。

 それから第二点目は、この定義の中に、運転代行業は主として夜間において客に飲食をさせる営業を営む者から酒類の提供を受けて酒気を帯びた状態にある者を乗せて送り届けるというような定義が入っているわけでありますが、それならば、昼間にスポーツをやっていて、そして足の捻挫をしたものだからアクセル、ブレーキが踏み込めなくなった、こいつは困ったということで、運転代行業の認定を受けていない業者にそれを頼んで自宅に自動車と一緒に送り届けてもらった、こういうケースについてはいかが御判断されるものでございましょうか。

坂東政府参考人 この法案では、先ほども委員御指摘のとおり、自動車運転代行業は主として夜間において酔客を対象とするものとされているところでございますが、その一環として行われているものである限りにおきましては、御指摘のような昼間における営業も対象になるものというように解されるものと思います。

小野委員 それでは、第三のケースでございますけれども、飲食店で大体酒類をたしなまれるわけでございましょうけれども、その客が飲食店の人によって送られる、好意によって表面的には送られた形態をとって、そして、その飲食店の人の車に乗せてそのお客が家まで送られる、しかしながら、同時に、そのお客のかぎを同じ系列の業者が預かって、その車を系列の業者が自宅まで送り届けますねと、そしてその車とお客さんを同時に自宅に送り届けることができた、こういうふうなケースについては、これは運転代行業の認定の範囲内に入るのでございましょうか。いかがでございましょうか。

坂東政府参考人 その酒に酔った人を飲食店の方の車に乗せて送る行為というものは、この法律で言う「他人に代わって自動車を運転する」というものではないということから、自動車運転代行業の定義には当たらないというように解釈しているところでございます。

小野委員 少しすき間の部分をねらって、こういう場合どうだというような極端なケースの御指摘を申し上げたのかもしれないのですけれども、新しくこういう定義を行って業態の指定を行った場合には、どうしてもすき間の部分のグレーゾーンというものが残ってしまうという部分があるのは確かなんだろうと思うのですね。

 今、最後の問題等は運転代行業の対象に当たらないということだけれども、しかし、これも、大々的にその飲食業を経営する人がこのコンセプトでやっていく、つまり、車を送り届ける部分の料金を非常に高い料金をいただいてやっていけば、サービスだといいながら、実質的にはその飲食業の部分に利益を与えるような業態の展開も可能になってくるというようなことでございまして、実質的には運転代行業と同じような機能を果たすことになるではないかというような指摘もできる部分があるのだろうと思うのですね。

 ですから、今回こういう形で新しく定義を与えたわけでありますから、実質的に、社会的にこういう場合はどうだということが一つ一つ検討されていきながら具体的にその判断をされていくことになってくるのだろうと思いますが、当面、この法律を施行するに当たって、そのグレーゾーンをできるだけ詰めておくという作業も同時に必要なことなんだろうというような気持ちがいたします。

 そこで、こういう運転代行業について、どういう場合は認定を受けた業者でなければやれないのかというようなことについてのわかりやすいガイドブック的なものも必要だろうというような気持ちがいたしているところでございますが、その御見解はいかがでございましょうか。

坂東政府参考人 この法案は委員御指摘のように新しい法律でございますので、本法の理解を助けるためわかりやすいガイドブックが必要であるということは、私ども同じ考えでございます。

 本法の運用に当たる第一線の警察官などはもとよりでございますが、認定を受けるべき代行業者あるいは代行業を利用される国民の方々が本法の内容を正しく理解されますように、わかりやすい解説の作成といったものを初めとする所要の措置を講じ、本法案が正しく国民の方々に理解されるように、今後国土交通省と一緒になって努めてまいりたいというように考えております。

小野委員 第二の論点に移らせていただきたいと思うわけであります。

 これは阪上委員からも先ほど、業界団体への加入率が低い、この加入を進める上に業界をいかに育成するかという観点を含めた質問がございました。私もこの法律案をずっと読ませていただく中で、規制的手法において、運転代行業はこうせねばならない、そしてそれから外れればこれから罰則が加えられることになりますよというような形の法律になっているわけでございます。しかし、この運転代行業というのも、ある一定の公共性を帯びる業種であるということを考えてまいりました場合に、単に規制においてその枠内におさまることで健全な育成という観点と同時に、より積極的にその業種を育成するための施策というようなものも今後必要になるのではなかろうかというような印象を持った次第でございます。

 例えば、先行する業種といたしましては、この部門ではタクシーのようなものがあるわけでありますが、タクシーの場合には特段の育成的観点からの取り組みというのはなされていないのでございましょうか。そのあたりを含めまして、この運転代行業育成という観点のお取り組みをこれからどうされるのかという点について、御答弁をお願い申し上げたいと思います。

坂東政府参考人 私ども警察庁と国土交通省は、自動車運転代行業の健全化に共同して取り組んでいっているところでございまして、平成七年には違法行為の排除等を内容とする指導方針を策定しております。さらにまた、平成八年以降は、社団法人全国運転代行協会を通じた指導監督の推進などに努めてきているところでございます。

 この法案は、業務の適正な運営を確保し、もって交通の安全と利用者の保護を図るものでございますが、今後は、この法案の趣旨、目的をも踏まえまして、両省庁で協力連携して引き続き業界の指導等に努めてまいりたいというように考えています。

 なお、タクシーにつきましては、中小企業一般に対する税制優遇措置等の適用を受けている場合があるものというように私ども承知しているところでございます。

小野委員 それでは、第三の論点でございます。

 これは、この法文の第三条の四にかかわるものでございましょうけれども、暴力団の排除規定でございますね。それを読ませていただきますと、「集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」、これについてはこの認定の対象外にしていこうというような法律の構成になっているわけでございますけれども、これは具体的にはどういう形でこの認定といいましょうか、暴力団に相当する経営者であるというようなことを決定されることになるのでございましょうか、その点をお尋ねいたします。

坂東政府参考人 この代行業法案というものをつくった一つの目的も、委員御指摘のように、やはり暴力団の関与があるということで、暴力団をこの業界から排除をしなきゃいけないという趣旨でつくったということもございます。

 そこで、具体的に、では、暴力団を排除する規定はあるけれども、排除する方法はどうかということでございますけれども、暴力団関係者であるか否かにつきましては、具体的には、申請を受けた都道府県公安委員会が、申請者からの誓約あるいは他の行政機関への照会等から総合的に判断して、その申請者が暴力団関係者に該当するかどうかということを判断するというようにしております。

小野委員 今局長御指摘のとおり、私どもも、この業種の中にはかなり暴力団関係者が入っているというような情報をお伺いすることがございます。この点につきましては、公安委員会においての認定ということになるようでございますから、ぜひ情報をやりとりし合っていただいて、適正な運営が行われますように希望をさせていただきます。

 そして同時に、この暴力団問題というものは、国民の生活上の不安を増し加える、また経済活動にも非常にいびつなものを生み育ててくるというような形で、国民社会生活上にいろいろな影響を及ぼしているということはもう既にいろいろな場面で指摘をされているとおりでございます。警察におきましても、暴力団新法等の制定を通して、いろいろな暴力団撲滅の取り組みを進めてきておられるわけでございますが、現実にいろいろな取り組みを進めていかれる中に実効は上がってきているのでございましょうか。

 先ほど来指摘させていただいたように、非常にこの問題もグレーゾーンの多い問題なんですね。暴力団であるということが一般の市民や民間事業者には全くわからない。しかし、暴力団を排除しろと言われる。ならば、どう判断したらいいのかということを警察に照会しても、これが暴力団該当者であるかどうかというのは示唆していただけない。ということになると、なかなかその実効を上げるということが難しい部分があるような気持ちがするのですね。

 現実に、警察の把握の中で、この暴力団の撲滅ということについてどういう成果がこれまで上がってきたのか、この点についての御答弁をお願い申し上げたいと思います。

坂東政府参考人 暴力団対策の実効性についてのお尋ねでございますが、警察におきましては、暴力団を解散、壊滅に追い込むために、総力を挙げて、暴力団犯罪の取り締まり、暴力団対策法の効果的な運用、さらには暴力団排除活動の推進、この三本を柱とした暴力団総合対策というものを推進しているところでございます。

 この結果、暴力団構成員及び準構成員についてでございますけれども、暴力団対策法施行時の平成三年末、これは約九万一千人でございましたけれども、平成十二年末には八万三千六百人というふうに減少しております。うち暴力団構成員につきましては、平成三年には約六万三千八百人でございましたけれども、平成十二年末には四万三千四百人に減少するなどの効果を上げているところでございます。

小野委員 この点につきましては、きょうはメーンのテーマでございませんから、改めて取り上げさせていただこうと思います。

 それから、第四の論点でございますが、これは自動車安全運転センター中央研修所の問題でございます。

 私ども、代行業者の方からも聞いておりますと、自分たちでも自主的に安全を守るために先ほど申しました安全運転センター中央研修所に社員等を送り込んで、そしてそこで研修を行わせて、そこでの認定証というのでしょうか、修了証というのでしょうか、こういうものをいただいているんだというような話があって、自主的にそういう取り組みをされるのは非常に結構なことだということを感じたわけでございますが、そこで行われております研修の内容、そして代行業者における実績というのがどういう形になっているのかということについて、御答弁をいただければ幸いでございます。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、運転代行業の運転代行をする運転者につきましては、平成八年度から社団法人全国運転代行協会の助成によりまして、自動車安全運転センターが代行運転者の知識とかさらには技能の向上を目的とした安全運転研修というものを実施しているところでございまして、その実施状況は、昨年度は実施はされませんでしたけれども、平成八年度から十一年度までに延べ七回で百十九人に対して実施されているところでございます。

 今後も、この自動車安全運転センターの研修につきましては、受講希望があるということもございますので、本法施行後におきましても、カリキュラム、内容を充実させるなどいたしまして、運転代行業等を行う運転者にさらに役立つ研修が行えるように、自動車安全運転センターを指導してまいりたいというふうに考えております。

小野委員 今局長から御答弁ありましたとおり、自動車運転代行業が法的にきちんと認定されるということになりますと、ある意味で政府自身も運転代行業の安全確保ということに責任の一端を担っていくという位置づけになってくるんだろうと私は思います。そうしたときに、二種免許の義務化という形でその安全性というのを担保するという部分は非常に大事な視点でありますが、同時に、やはりそれ以上のまた指導という面も求められてくる場面もあるだろうという気がするわけでございます。

 私も、これは業界の皆さん方の御意向がどういう形になっているのかよくわかりませんので、そのあたりで一方的にこういうことをしたらいいという提案のできる内容ではもちろんございませんが、正規にこれで社会的な認知を受ける団体になり、その中で社会的な公共性を帯びてやっていかれる団体になってくるわけでございますから、さらなる安全確保のためにこのような安全運転センター等が活用されることについては、今御答弁ありましたけれども、皆さん方の中でも御検討いただいて、業界と御協議の上で研修を進めていただきますことを希望させていただきたいと思っております。

 それから、第五の論点に移らせていただきますけれども、これはこの法文上でいきますと第十一条の問題ないし第十五条の問題になってくるわけでございますけれども、自動車運転代行業の約款と料金の掲示の問題ないしは説明責任の問題でございます。

 これも、公共性を帯びるという話を今申し上げてまいりましたけれども、公平、公正なサービス、適正なサービスを提供する上には料金というものがお客様にきちんと明示されるものでなくてはならないというのは、一つの前提条件だろうと思います。

 それと同時に、事故等は幾ら注意をしても起こり得るわけでございますから、そういうものが起こった場合にどういうふうにその後の対処がなされるかということについても、これはやはり、契約としてお客様にもきちんと知っておいていただくということがこういう業務を進めていく上にぜひとも必要なことだろうというふうに思うわけでございまして、この法文によりますと、営業所において利用者に見やすいように料金を掲示しなければならないというのが十一条にありまして、それから第十五条の方には、役務の内容の確認ということについて、利用者に条件等も含めてきちんと説明をしなきゃならない、こういうふうな文章になっております。

 ならば、これは具体的にはどういう形でなされることになるのでございましょうか。例えばその約款、料金等についても、営業所にかけてあるといっても、タクシーの場合でしたらまだ営業所まで歩いていってそこから利用されるお客さんがおられるかもしれませんが、代行業の場合は、営業所に足で歩いていってそこから利用する方はほとんどおられないわけですね。

 ということになると、現実的には、違う形できちんとその条件を示すことをしなければお客様は理解することができないというような状況におかれていることを考えますと、何らかの配慮が必要だろうというふうに感ずるところでございまして、お考えいかがか、お尋ねをさせていただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 今回の法律案では、利用者の保護を図るという観点から、料金及び約款につきましては営業所に掲示する、つまり公示することになりますが、これを義務づけておるところでございます。

 さらに、実際に業務を行う際には、その掲示した料金について利用者に説明し、またその説明に基づいて料金を収受させることにいたしております。また、約款につきましても、その際、その概要を説明することを義務づけることといたしております。このやり方につきましては、書面等できちっと説明するというようなことを検討いたしたいと思っております。

 このようなことによりまして利用者が料金及び約款の内容を理解することができることになるように措置してまいりたいと思っております。

小野委員 こういう形で、繰り返しになるわけでございますが、社会的認知を受けて自動車運転代行業というものが公共性をより高めてこれから運営されていくということになってくるわけでございまして、さらにその進行状況をお見守りいただきながら、打つべき手があればまた打っていただくというようなことで運転代行業の健全な育成にさらに御尽力いただきますこと、心から伊吹大臣初め皆様にお願いをさせていただいて、質問を終えさせていただきたいと思います。

横路委員長 島聡君。

島委員 民主党の島聡でございます。

 今、自民党のお二人の質問者、総裁選について触れられました。私どもはそういうものには浮き足立たず、きちんと法律についての審議を民主党としてさせていただくことを最初に申し上げますが、この内閣委員会の五人の大臣のうちお二人が候補だそうでございます。その意味では内閣委員会は登竜門かなと思っておりますので、伊吹大臣にも、最初に今回の道交法の一部を改正する法律案について質問させていただくのですが、党首討論的な質問をひとつさせていただきます。

 今回、警察庁の道交法改正試案にあった危険運転致死傷罪が、創設方針が先送りされました。臨時国会でもし出てきたら九カ月、先の、次の通常国会だったら一年間になるわけですが、もし一年間先送りされたことによって、その間に交通事故でお亡くなりになる方、何人ですか。予測としては、今までの平均値からすると何人ぐらいになると思いますか。

坂東政府参考人 政府におきましては、三月に第七次の交通安全基本計画というものを策定したところでございますが、その計画による将来の交通事故発生予測ということによりますと、具体的な数字というものは忘れましたけれども、政府というものが適切な交通諸対策を打たない限りにおきましては、やはり交通事故というものは増加するであろうというように、計画策定に当たって事故発生予測というのをしているところでございます。

島委員 党首討論に出ると多分こういう質問がぽっと出ますから、それぐらいの数字は押さえておいていただきたいと思うのです。

 予測ですからいろいろな推計でございますが、大体一年ですと、今平均して一万人弱の交通事故でお亡くなりの方がいらっしゃるわけであります。そうなりますと、一カ月大体八百人ぐらい、一日で二十七人から八人の方というのが平均値になります。

 つまり、先送りをすることによってそれだけの方がお亡くなりになって、その中で本当に危険運転によって死に至る方が多く、立法府としてこれを安易に先送りしたことは、私は極めて深刻に受けとめるべきだと思いますし、今私どもが、危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案というのを提出いたしております。これは、危険な運転による死に至るような事故を防ぐためには、今申し上げたように、先送りするとそれだけの方が今までのトレンドでいけばなるわけですから、一刻も早くすべきだというふうに考えておるわけでございます。

 伊吹大臣にお伺いしますが、今回、危険運転致死傷罪、いわゆる新聞によると先送りされた。一般的には、前、我が党の山花議員も聞かれたそうでございますけれども、法務省と警察庁とのいろいろな調整があったとか、そういうことがあるわけでありますが、そういうものを乗り越えて、危険運転致死傷罪、これからできるだけ早く創設すべきと考えますが、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 まず、島先生から党首討論的質問ということでございますが、先生は党首討論的質問をされる資質は十分おありでございますけれども、私の場合は、ちょっとそこまでまだまだ人間的にも立派な域に達しておりませんので、担当大臣として御答弁させていただきます。

 まず、党首討論で大切なことは、官僚が知っているような小さな統計数字や予測数字をぺらぺらとしゃべることではないと私は思います。むしろ、お互いの政党の持っている理念を闘い合わせて、それによって現状をどう判断していくかということでしょうから、今の御質問も、私は、民主党としては大変一つの理念を持った御質問だと思います。

 そこで、確かに私たちは、交通行政を預かっている立場としては、できるだけ厳罰をもって今のようなケースに臨んで、そしてこれを抑えていきたいという考えが今もございます。したがって、原案としてはそういうものを入れながらパブリックコメントにかけたということは、これはもう御承知のとおりです。

 しかし同時に、我が国はいろいろな法体系で動いている法治国家でございますから、その中で、今までの危険運転によってお亡くなりになった方に対する原因をつくった者は、業務上過失致死ということで今まで裁かれているということは御承知のとおりです。

 したがって、法体系としてのバランスをある程度とらなければならない。つまり、自動車、危険運転ということに着目をして、それで死に至らしめた者と、その他、業務の中で同じように不注意、それからその他、酒を飲んで自分の自己抑止力を失っていて自動車以外の状態でそういう罪を犯した人との間のバランスということも、これは確かに、その法律を所管している、刑法を所管している法務省の立場ということも私は理解してやらなければいけないと思うのですね。

 そこで、先生がおっしゃったように、従来のような、法制審にかけて、一年も二年もかけて悠長な議論をしていてもらいながら法体系法体系と言われるのは私たちとしては困る。したがって、私から法務大臣にもこの点を強く申し上げて、できるだけ早くこの話はまとめてもらって、今回の国会に出せないということであれば臨時国会に必ず出してもらいたいということにしておりますので、そのような、結局バランスの問題でございますから、先生の危険運転によって被害を受けられた方に対する政治家としてのお気持ちは、私どももそれを共有いたしておりますので、決してお考えに反対するものではございません。

島委員 党首討論論争ではないので。ただ、申し上げておきますが、サッチャーの党首討論に対する言葉がありました。党首討論というのはガバナビリティーを問われるものである、それは、小さな地方病院で起きたことから、それから極めて具体的な数字から、そしてまた理念から、そのすべてを押さえてないとガバナビリティーというのが問われるのであるという言葉がございますので、それだけは申し上げておきたいと思います。

 今お話をいただきましたように、できるだけ早くこれは、私どもも今、危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案というのを出しております。

 きのうインターネットで、千葉県の井上保孝さん、郁美さんという方、御存じだと思います。お子様が一昨年十一月に東名高速でお二人お亡くなりになった方でございますが、その方がインターネットを通じていろいろな署名運動を展開されております。御自身ではホームページを開いておりませんので、私たちの趣旨に賛同される方はそれに署名のページを載せてくださいという形で署名運動をされている次第でございます。

 そこに克明に、例えば二月十二日に、御報告とお知らせをさせていただきます、法務大臣に十万名分の署名を二月九日に出しました、法務大臣から、免許を所有する大多数の国民にかかわる法改正なので、道交法ではなく、基本法の改正、あるいは傷害致死罪と考え方が近い、特別立法などで対処したい、そのためには法制審議会にかけないとならず、早くても来年一月からの通常国会に法案を出すことになろう等々の答えがあった、そして、警察庁発表が、危険運転致死傷罪が見送りになったというような報告がされております。

 「被害者の声」でございますが、同じように十九歳でお亡くなりになった方、鈴木共子さんという方が詩をそのホームページで出されております。

  あの日から

  空腹感が無くなった

  明日のためにと

  無理矢理

  押し込んだ米つぶは

  ざらざらと

  砂の味がする

そういう詩を載せておられます。

 ぜひとも議員各位におかれましては、私どもが出しております危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案、一刻も早くこれは立法府の責務として成立させるべき法案だと思いますので、積極的な御議論を賜りたいと思う次第でございます。

 この法案に関しましては、細川議員、山花議員等がまたされると思いますので、私の方は、今回の道交法の一部を改正する法律案についてのほかの条文についてお尋ねをしたいと思います。

 まず、九十三条についてお尋ねをします。

 今回の九十三条の二で、免許証の電磁的方法による記録というのがなされました。公安委員会は、内閣府令で定めるところにより、免許証に電磁的方法により記録することができるとあります。

 私は、これからの時代、当然電磁的記録をしていろいろな形で行政の効率化を進めることが重要なことであると思っています。ただ、個人情報保護法案のときも申し上げましたが、今まではいわゆるプライバシーというものが有名人だけでよかった。だけれども、個人の多くの情報が集中してそれが大量に高速に処理されるようになると、新しい考え方が出てくる。大量な情報を迅速に処理することができるようになると、それに基づいていろいろな個人情報を、いわゆる商業的にも、あるいはいろいろな管理の形でも利用できることがあるわけであります。

 今回、免許証の電磁的方法による記録の整理、免許保有者は七千五百万人に近いと言われておりますが、これだけ大量のデータが情報として蓄積される。いわゆる個人情報の保護というものをどのようにお考えなのか。まずこれは大臣、最初に基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 免許証にかかわらず、個人の情報というものは、IC化されていようとそうでなかろうと、本来、公益のために開示を求められる以外には、これは当然守秘されるものであると思っております。

島委員 これからはちょっと技術的なことになりますので、政府参考人の方で結構ですが、いわゆるこういうコンピューターで処理された場合に、ネットで結ばれることが多くなります。そうしますと、これは新しい脆弱性というものが生まれてきます。

 それには三つポイントがありまして、機密性が守られているかどうか。機密性というのは、いわゆるシステム上の情報を不適切な人間には絶対に見せないこと。これは二つあります。それを実際に運用する、例えばいわゆる警察庁関係者の方が不適切にそれをさわる場合もあります。それからさらには、ネットを使って不正なアクセスをしてそれを使う人も出てきます。まず、この機密性に関して、この電磁記録が処理された場合にどのように守ろうとしているかという点が一点。

 次に、完全性というのがあります。完全性というのは、インターネットの情報が完全な形で保たれているか。システム上の情報が完全に保たれているかどうかです。つまり、例えば免許において、どこまでデータを蓄積するか知りませんが、例えば島聡なら島聡がそれまでどういうような交通違反をしたかということを、不正にアクセスをして書きかえることができることもあり得るわけです。そういう完全性をどのように保護しようとしているか。

 そして、可用性というのがあります。いわゆるネット内、システム内に保存されている、そういうコンピューターが麻痺しないようにしなくてはいけません。不正なアクセスが大量になった場合に麻痺する場合もあります。

 そのような三つの点についてどのように対処しようとしているかについて、お聞かせ願いたいと思います。

坂東政府参考人 このICカード、免許証に電磁的方法により記録される個人情報につきましては、本人が開示しない意思を有するのであれば、交通違反取り締まり等に警察官が本人確認を行う場合等の正当な理由がある場合を除き保護されるべきもの、そのように考えております。その管理の方法あるいは運用の方法は、今後、使い勝手なども含めまして、技術的な面でとるべき措置について検討する所存でございます。

 なお、現在も運転免許証には違反歴等は記載されておりませんので、今回も、ICカード化するといいましても、現在免許証に記載されているあるいは表示されているもの以外は入れるということにしていませんので、ICカード化されたとしても、免許証には違反歴といったものは入らないということになるつもりです。

島委員 今の私の質問に答えては、今から検討するということですか。

坂東政府参考人 具体的に、実際に現場でICカード化された免許証が出るまでにはなお少し時間がかかると思いますので、その間に委員御指摘のような点も踏まえていろいろと検討を重ねてまいりたいというふうに考えております。

島委員 今回の法案のように、道交法の一部を改正する法律案で、割とこの九十三条というのは見逃されがちでありますが、今申し上げましたように、新しい脆弱性というのが出てくるわけであります。

 当然、これはICカード化されるまではもう少し時間があるということは事前にお聞きいたしておりました。その意味では、当然それよりも、こういうのができるということに対して、私のようにそれほどネット、コンピューターに詳しくない人間、少しかじっただけの人間でもこういうようなことを考えるわけですから、もっと考える人がたくさんいますので、十分に危機管理をしていただきたい。特に、危機管理を担当する公安委員会、警察庁がそれをやられたということになると、本当に冗談にもなりませんので、ぜひともきちんと対応をしていただきたいと思う次第でございます。

 同じ流れに従いまして、今回の道交法で問題になっている危険運転等が見送られたというのは、刑法二百十一条、業務上過失致死傷罪というのがある。これは明治時代に制定されたものだと聞いております。いわゆる時の流れに法律がなかなか追いついていかない。よくある話でございますが、それと同じことがネット関係のリアルとバーチャルという世界にございます。

 ここに私のクレジットカードがございます。このクレジットカードを私の家、私の事務所に入り込んで盗んだら、恐らく窃盗罪、刑法二百三十五条、十年以下の懲役という形に私はなると思います。

 ところが、ハッカーというのがおりまして、クレジット会社、通販会社のサーバーに入りまして、クレジットカードの情報、具体的に言うとIDとパスワードを盗んだ場合には、これは恐らく不正アクセス禁止法でしょうから、一年以下の懲役または五十万円以下の罰金という形になると思います。

 カードを盗んだだけですと、名前がうまく書かれていなかったりなんかしますと使えません。お金の実際の動きはないわけです。ところが、IDとパスワードだけをとりますと、実際にお金は動いた形をとり、物はとれます。実際上はその方が被害は大きいと思うわけでありますが、どうも時代に合わなくて、不正アクセス禁止法の方が極めて刑が低くなっていると思うわけであります。

 したがって、不正アクセス禁止法について、もう既に時代に合わなくなっていると思うわけですが、大臣、どうお考えになりますか。

伊吹国務大臣 今御指摘のようなお話を伺っていると、まことに私はそのとおりだと思います。

 問題は、法律改正をする場合は、そのような事案というものが、社会の秩序を乱すために、検挙数その他どの程度出てきているのか、これをやはりにらみながら、私は、必要なことがあるのならば、先生がおっしゃっているとおり、明らかに今の窃盗罪、それから実質的に窃盗罪以上の金品を引き出すというようなことが起こるわけですから、その間の量刑のアンバランスについては、警察当局はもちろんですけれども、この法律を所管している旧郵政省、今の総務省、それから経済産業省とお話し合いをしなければならないと思っております。

島委員 今大臣おっしゃったように、所管官庁がまたがるものでございますから、できる限り早く、政治の流れの中で、あるいは内閣府という流れの中で議論をしていっていただきたいと思う次第であります。

 道交法の百九条の二及び三の関係についてお尋ねをします。

 百九条の三というのは、要するに、特定交通情報提供というものを、簡単に言えば交通情報を民間事業者にもある程度与えるというふうに理解しております。百九条の三の二項に、国家公安委員会は、特定交通情報提供事業を行う者が正確かつ適切でない交通情報を提供することにより道路における交通の危険または混雑を生じさせたと認めるときは、その者に対し、正確かつ適切な実施のために必要な措置をとるべきことを勧告することができるとあります。勧告することができるというのはいいのですが、これは具体的に申し上げますと、私は、これができますと、また新しい脆弱性ができると思うのです。

 民間の機関が交通情報を提供する。そうすると、その民間の情報機関に何者かが不正なアクセスをしてくる。不正なアクセスをしてきて、例えばここが交通渋滞が起きているよとうその交通情報を流す、そうするとそこをみんな通らなくなるとか、あるいは、こっちは通っています、もう渋滞が起きているのに、ここは全然渋滞が起きていませんよということを流す、そうするとそこにみんなが出ていく。車を誘導することができるようになるわけであります。そういうことを考えていった場合に、これは実は、極めてサイバーテロ的なことが十分できると私は思っています。

 サイバーテロ、いろいろな定義があると思います。きのう警察庁の警察白書を見ていましたら、ハイテク犯罪とかサイバーテロとか書いてあって、どういう定義の違いかわかりませんが、本質的な差は余りないと私は思っています。ナショナルセキュリティーにかかわるほどのコンピューターシステムに対する攻撃というのがサイバーテロであって、これは特に交通インフラにかかわることもありますので、こういうことが起こり得ることがあります。

 今申し上げたような百九条の三関係、特定交通情報提供事業を行う者が提供事業をするという場合において、このサイバーテロに関する新たな脆弱性に対してどのような対策を練るということをお考えでしょうか。

伊吹国務大臣 詳細は参考人からお答えすると思いますが、世の中何事も進歩に伴う欠陥というものは出てくるわけで、自動車がなければ自動車事故というのは起こらないのですが、だからといって自動車が必要でないかというと、そうではない。だから、今おっしゃったようなことは、我が国が便利になり、そして交通量をコントロールしていく上で避けられないものとして、付随して出てくる脆弱性ということです。

 したがって、今もう実は、都道府県警察と日本道路交通情報センターとの間にはファイアウオールというものをつくらせているわけです。また、民間業者とこのセンターとの間を結ぶ回線についても同様の指導をしているわけなんですけれども、おっしゃっているような危険が可能性としては当然否定できないわけです。

 私たちも、便利になったことに伴う脆弱性というものは、特にそれが、今先生が御指摘になったように、日本の車社会を大混乱させて社会秩序を奪うという目的に使われる可能性は否定できないわけですから、この法律を通していただきましたら、改正案の中に含まれている国家公安委員会の立場を十分考えて、そのあたりの指導や方策をさらに充実したいと思っております。

坂東政府参考人 もう大臣の方から御答弁させていただいたとおりでございまして、現在、交通の情報の流れとしては、大臣から申しましたように、警察から情報センター、情報センターから民間業者、そして今後は民間業者から一般の道路利用者という形で情報が流れていくということになると思います。警察と情報センターの間、あるいは情報センターと民間の間におきましてはファイアウオール等を整備して、そういったセキュリティー対策というものを講じているところでございますが、今後、民間がネットワーク等を通じて道路利用者に情報を提供していくといったことが非常に多くなってこようと思います。

 そういうことで、委員御指摘のような点も踏まえまして、今回の道路交通法の改正にも盛り込んでいるところでございますが、国家公安委員会が交通情報の提供に関する指針というものを定めるということにしておりますので、この指針の内容につきまして現在、昨年の十二月からでございますが、産官学が共同して、今後の民間の事業展開を見据えたネットワークセキュリティー対策といったもののあり方も含めていろいろと検討しているところでございます。

島委員 今大臣おっしゃったように、私は最初に申し上げたように、個人情報もきちんと電磁化することも賛成ですし、この問題についてもそれは時代の流れだということは思っているのです。ただ、国会議員を含めて、私はそれほど自分ではネット関係に詳しいと思っていないのですが、詳しい方だというふうに恐らく思われている、それが問題だと思っているのです。

 例えば、私の子供は今小学校四年生ですけれども、もう子供が自分でインターネットにつないで、チャットといって自分でおしゃべりしています。それまで小学校四年生が平気でやっています。そうしたら、その小学校四年生の子の家にみんな友達が遊びに来て、それを見ておもしろいからということで急にそれがはやり出したのです。

 何を申し上げたいかというと、すごい勢いでそういう世界は進歩しているというわけなんです。道交法を議論するとき、特定交通情報提供事業とかそういうことには頭がいくわけでありますが、その反面、新しい脆弱性が生まれているということに対しては余り、これから検討しますとか、これから多分審議会みたいなものをつくってやるとか、そういう話では恐らく脆弱性がさらに倍加されるだろう。一番怖いのは愉快犯でやってくることでありまして、それを妨げるためにも、十分それは審議をした上でこういう法案を出していただきたいということなんですね。

 これから申し上げることは技術的な話なので、いかに今、日本のそういうサイバーテロ対策というものが余りうまくいっていないかということを大臣にも知っていただくために、ちょっと質問をさせていただきます。

 この三月三十一日に韓国から、サイバーテロとまでは言いませんけれども、歴史教科書の問題をめぐるホームページにみんなでアクセスしましょう、たくさんアクセスしてホームページにみんながアクセスできないようにしましょう、具体的には文部科学省のホームページとか新しい歴史教科書をつくる会のホームページとか、そういうものに全員でどんどんアクセスしましょう。たしか、三月三十一日の朝九時から午後九時までだったというふうに思います。

 私も、そういうホームページで韓国からそういうことがあったと聞いたので、自分なりに夜ホームページに一回アクセスしてみました、文部科学省に。そうしたら、九時ぐらいまでやはりつながりにくくなっていた。これはさっき言うところの可用性が麻痺しているわけであります。

 韓国からそういうことがあったということをどのように把握し、どのようなものであったというふうに分析をされておられますか。

伊吹国務大臣 事実関係は刑事局長から参考人としてお話をさせますが、このことについて、これは率直に言うと、例えば人間が背広を着ている、背広の形は決まっているけれども、人間がだんだん太ってきたような場合にこの背広に入り切れない、だから背広が悪いのか太った人間が悪いのかという話によく似た話なんですよ。

 犯罪構成も非常にこれは難しいと私は思います。つまり、犯罪的に言えばこれは一種の業務妨害に当たると思うのですけれども、それでは、キャパシティー以上のアクセスがあったのが、だれかの呼びかけですべて行われたのか、島先生が興味を持っておやりになったのも一つ入っていてその全体をフローオーバーしてしまったのか。あるいは今、韓国というお話がありましたけれども、韓国の方からアクセスしたのも、だれかが組織的に呼びかけたことによってアクセスした人なのか、自分の意思でアクセスしたのか、その辺が非常に難しいと私は思うのです。

 ただ、私が外務省と国際刑事機構を通じてお話をした方がいいよと言ったことは、内容のよしあしにかかわらず、この教科書問題についてはいろいろな考えがあるだろうと思います。しかし、お互いに韓国も日本も法治国家である限り、業務妨害罪というものは韓国の中にある、日本の中にあるということであれば、その事実関係だけは、自分の気に入らないことだからといって相手を陥れるということではこれは一種のテロ国家、法治国家としての体をなさないので、内容のことは別にして、そのことだけはお互いにきちっと確認しておいてくれ、こういうことだけは申し上げてございます。

五十嵐政府参考人 お尋ねの件につきましては、先ほども委員の方から話がありましたけれども、日本国内の特定サイトのホームページに対しまして韓国内において一斉攻撃を呼びかけるメールなどが広まりまして、三月三十一日の午前九時ころから、対象とされたサイトのホームページに対するアクセスが急増した結果、それぞれ断続的に閲覧がしにくい状態となったというものでございます。

 一般的にシステムへの攻撃のやり方として、先ほど先生言っておられましたように、不正アクセスして中に侵入してデータを改ざんする、プログラムを改ざんするということでシステムをつぶしちゃう、これが一つであります。もう一つは、中には侵入しないけれども、一斉にアクセスする。例えば回線が混雑して、いわゆるトラフィックがふえてなかなかアクセスしにくい、あるいはコンピューターに負荷がかかり過ぎて処理ができないというようなことで同じように機能しなくなるということがあるわけであります。

 今回の事案につきましては、一般にはDDoS、いわゆるDDoS攻撃というのですけれども……(島委員「DoS」と呼ぶ)DoSですね。DoS攻撃、これは一般的には一つのコンピューターから一つの対象に、こういうことなのですけれども、DDoSといいますと、いろいろなコンピューターを、呼びかけもあるでしょうし、プログラムあるいはソフトを使って一斉に働きかけてやるという攻撃もあるのですけれども、今回の攻撃の仕方というのは、要するに後で言うように、いろいろなコンピューターに動員をかけてといいますか、呼びかけをするとかあるいはプログラムを使ってやる、後の方のDDoS攻撃の可能性が高いのじゃないか、このように思っています。

島委員 DDoS、ディストリビューティド・ディナイアル・サービス・アタックですけれども、そういう分配された攻撃の場合には、日本語だと分散型サービスというのですか、数十台のコンピューターに対して攻撃用のソフトを忍び込ませてしまう、そしてその上で、これはゾンビコンピューターというのですけれども、そのゾンビがざっとやるということになってくると、本当に一種の組織的な動きになってくると思うのですね。

 ここで申し上げたいことは、要するに、そういうことが簡単にできるグローバルな社会というのが今の時代だということなんですね。今、太ったのが悪いのか背広を着ているのが悪いのかといって、私の家内は太ったおまえが悪いと私に言いますが、当然成長する。太ったというよりも成長していくということなんでしょう、時代というのは。それで、ローマにお住まいの塩野七生さんが、これは憲法の話ですけれども、憲法調査会がローマに行ったときに、ローマ人というのは自分の体に法律を合わせるようにするという話をされたそうであります。同じように日本というのも、やはり自分の体というか、あるいは時代が変わってきたので法律を合わせていく、かなり迅速にやっていかなくてはいけない問題であると私は思っています。

 同じような質問ですが、二〇〇〇年一月、ちょうど二〇〇〇年問題で各省庁がいろいろと対策をとったときに、中央省庁のホームページに書き込みがされました。警察庁はされなかったということで、よかったなと思っておりますが、そのとき、今後捜査はグローバルに、今大臣も、いろいろな形で国際的な協力という話もされました。国際的な協力はどうなっているかということをお聞きしたいと思っています。

 つまり、このときのハッカーというのは日本の大学のコンピューターを使ったということで、結構ショックを受けましたけれども、アメリカのサーバーも利用していましたが、どうも中国内のサーバー経由だったというところまでわかっている。国内のサーバー管理者には令状をとったと聞いています。そして、海外のサーバー管理者に捜査協力を依頼した。結局、中国とかそういうところのサーバーの足取りが消えて、現在は個人が特定されていない。

 個人が特定されていないという状況であるということは、これからも特定できないのかと思ったら、愉快犯が出る可能性もある。もちろん、一番問題は、例えばいわゆる国家的なスパイがやったりすることの方が非常に重要であります。そしてまた、ある意味でテロリストが使うことも物すごく重要な話であります。そしてまた、さらに愉快犯があるかもしれない。

 という意味では、今回この中央省庁ホームページ、中国以降足取りが消えてしまったというふうに私は理解していますが、それが事実かどうか、そしてまた今後どのような捜査体制をしこうとしているか、お尋ねしたいと思います。

五十嵐政府参考人 その前に、先生、さっきのDDoS攻撃の関係ですけれども、一つはコンピューターを動員してソフトを使うというのがある。それから人に呼びかける。これも同じような範疇でDDoS攻撃。どちらかということについては、まだ事実関係は確認されておりません。ただ、パターンとしてはそういうパターンの可能性がある、こういうことでございます。

 それから、今の件ですけれども、お尋ねの事件は、昨年一月下旬から二月の下旬にかけて中央省庁等のホームページが十八回にわたりまして何者かに不正に侵入され、その内容が改ざんされるなどの被害を受けたものでございます。

 警視庁等の関係府県警察では、電子計算機損壊等業務妨害容疑事件などとして、被害に遭ったそれぞれのサーバーコンピューター内のハードディスクの提出を受けまして、ログなどの解析や内容の分析等を行ってきたところでございます。また、外国の捜査機関の協力も得ましてアクセスルートの追跡を行ってきたところでありますが、被害を受けたサーバーとかあるいは経由してきたサーバーにログが記録、保存されていないということなどから、捜査は事実上困難、それ以上進んでいないという状況にございます。

 なお、この種事件の対策についてですが、ハイテク犯罪の捜査には、コンピューターネットワーク上のサーバーを管理するプロバイダーなどとの連携や国際的な捜査協力が必要であることから、警察といたしましては、国内のプロバイダーなどに対しましてハイテク犯罪捜査への協力を要請するとともに、海外の捜査機関とも緊密な連携の確保を図っているところでございます。

島委員 平成十二年二月に出されました警察庁情報セキュリティ政策大系というのを事前に拝見しました。サイバーテロの未然防止を図るとともに、サイバーテロが発生した場合に的確に対処するために、サイバーテロを敢行するおそれのある国内外のテロ組織等に関する情報収集や民間重要分野等の管理者と、今おっしゃったことだと思いますが、連携強化をする。長官官房参事官の設置とかサイバーテロ対策ユニットの充実強化がされるということは事前にお聞きしました。ただ、具体的に聞くと、それほど胸を張れるようなものではないなという感じもしております。

 それで、この道路交通法一部改正の法律、きょう私が申し上げました九十三条及び百九条の三関係がきちんと施行されるということが、さっき何度も申し上げましたように、新しい脆弱性というのができてくることだと思っています。

 サイバー攻撃、先ほど申し上げましたが、外国のスパイとかテロリストとか犯罪者、これも徹底してやる必要もあるでしょう。そしてまた、クラッカーなどの愉快犯も出てくる。セキュリティ政策大系はつくってあるということは聞いておりますが、例えばアメリカなんというのは、クリントン大統領が、一九九九年ですけれども、サイバー部隊構想を出して、その対策費のみで十四億六千万ドルだそうであります。日本の場合は、きちんとした数字ではありませんが、不正アクセス関係で大体三十億ぐらいじゃないかと言う人もいます。

 そういう意味では、この道路交通法が改正されて、今言ったような七千五百万の個人情報がされ、さらに道路情報が提供されるという事態になっているときには、同時に、情報セキュリティ政策大系を超えた形で、より進化させた形できちんとセキュリティー対策をした上で実行していただくべきだということを主張しまして、質問を終わります。ありがとうございました。

横路委員長 石毛えい子さん。

石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。私は、本日は、道路交通法の一部を改正する法律案に含まれております免許の欠格事由として障害を規定していること、このことに関して質問をいたしたいと存じます。

 最初の質問でございますけれども、この障害にかかわる欠格条項の見直しにつきましては、御案内のとおり、旧総理府の障害者施策推進本部が九九年の八月に方針を出しております。そうした方針をベースに置きながら、各省庁それぞれかかわります欠格条項の見直しを進めて、今回、国家公安委員会から見直しの法案の提出がされたと理解をいたしますけれども、ちょっと念のために触れさせていただきます。

 これまでの法律では、八十八条で「免許を与えない。」ということで、「精神病者、知的障害者、てんかん病者、目が見えない者、耳が聞こえない者又は口がきけない者」を規定し、改正法案では、九十条の「免許の拒否等」ということで、「次に掲げる病気にかかつている者」ということで、「幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定める」「発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定める」あるいは「自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定める」というふうに変わっております。

 この変わり方については、考え方はいろいろあると思いますけれども、まず、公安委員会委員長にお尋ねをさせていただきたいと思いますが、警察庁といたしまして旧総理府の見直し決定を踏まえましてどのようなお考えをお持ちでいらっしゃるか、その点をお聞かせいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 実は、私も地元の身体障害者団体連合会の会長をボランティアでやっておりますので、このことについては大変関心を持っております。

 旧総理府の先生御指摘のものに従いながら今回改正をやったわけでありますけれども、同時に、警察としては、交通の安全、そしてそれによる事故、死傷者ができるだけ出ないようにするという、これは当然の責任を一方で持っているわけでございますから、これを公益という表現をすれば、その公益と障害のある者もない者もお互いに法律上できるだけ平等であるという共生社会との理念を調和させながら今回つくったということでございます。

 したがって、法律上、つまり、国権の最高機関である国会の意思として排除をするのではなくて、その人たちも受ける権利はある、受けたけれども、結局、試験のプロセスにおいて免許を差し上げるということが大勢の方に結果的に御迷惑をかけるという場合には、やはり少し我慢していただくという部分が一つございます。

 それから、実は、法律あるいは政令である程度はっきりと書いておかないと、かえって、排除するときに、行政当局の恣意によって範囲が拡大されて排除をされるということが困る場合のみ限定的に書いたということなんです。

 ですから、あと、一つ一つの幻覚の症状とか精神障害の問題とか、これから先生お尋ねになるんじゃないかと思いますから、おのおの具体例に沿ってお答えをしたいと思いますが、大体、共生社会の基本原則にのっとりながら公益を守っていくために最小限の我慢をしていただくという考えでつくったということです。

石毛委員 公安委員長御答弁くださいました、交通の安全を確保する、事故を防ぐというような公益と、それからどなたも平等に、この内容に関しましては運転免許ですけれども、それを持つ機会を保障される、あるいは実質的に適格であれば持つことができるという、その共生社会との調和という総論的な御見解は私も同感でございます。

 ただ、公安委員長も御指摘くださいましたように、その調和がどういう内容をもって実現されるかというところで、いろいろと丁寧な議論の積み上げが必要なのだというふうに私は理解をしております。その点を申し上げまして、次の質問に移りたいと思います。

 今回、規定ぶりが変わったわけでございますけれども、こういうふうに規定が変わりまして、実質、障害者の方が免許を取得になるというそのことにつきましてはどういうふうに理解をしたらよろしいでしょうか。書きぶりが変わってもほとんど取れる人はふえないんじゃないかというような思いもなきにしもあらずというような、そういうことを申し上げれば質問の趣旨が御理解いただけるかと思いますけれども、そこの点を明らかにしていただければと思います。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、現行法では、精神病者、知的障害者、てんかん病者、目が見えない者、耳が聞こえない者、口がきけない者及び一定以上の身体の障害のある者については免許を与えないということにされているところでございます。

 今回の改正の結果、どのぐらいの方がという形で、ボリュームで、数でどのぐらいの方が取れるような形になるのかということをお示しすることはできないんですけれども、どういった方が取れるようになるかということについて、少し平たく御説明したいと思いますが、一つは、口がきけない方につきましては免許を受けることができることとなるということが言えると思います。

 それから、知的障害者または身体的な障害のある方は、運転免許試験に合格すれば免許を受けることができることとなるということが言えると思います。

 それから三つ目でございますけれども、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気につきましては、政令で具体的な基準を定める考えでございますが、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがなくなったと認められるような事情がある場合などにおきましては免許を受けることができるようになる、こういったことでございます。

石毛委員 何か余りよくわからない、具体的にどんなふうに変わっていくのかというイメージが。

 どうなんでしょう。口がきけない方と申しますと、例えば、耳が聞こえないことに伴って言葉を発することができないとか難しい方もいらっしゃるでしょうし、それから中途失聴で聞こえなくなって、その方は口がきけるわけですけれども、口がきけない方というのは具体的にはどういう方を指すんですか。

坂東政府参考人 そういった口がきけなくなった原因のいかんを問わず、やはり口がきけない方ということでございまして、要は、法律は、事故が起こった場合におきましては、やはり救護措置とかあるいは警察官等へ連絡しなきゃいけないということになっておりますので、どうしてもやはりそういったことが、運転をしている場合におきましては事故というものは想定せざるを得ないということから、こういった要件を現行法では加えていたものでございます。

 ただ、やはり、最近の科学技術等の進歩によりまして、実際に他の手段でそういった事故状況というようなものも必要な場合におきましては警察官等に連絡することができるようになるだろうということでございますから、口がきけない方というこの要件につきましては、先ほど申しましたように、免許を受けることができるようになるということでございます。

石毛委員 余り具体的なイメージがわかない部分がありますけれども、次の質問に移ります。

 施行規則に絡まって少し具体的な話をお伺いしたいんですけれども、免許に関する適性といいますか、欠格であるかどうかの判断というのは、法律で規定している部分と、それから具体的には省令で規定している部分がございます。

 道路交通法施行規則の二十三条「適性試験」というところですけれども、聴力というところで、補聴器により補われた聴力が十メートルの距離で九十デシベルの警音器の音が聞こえるものであること、こういう条件がございます。

 それぞれここには、色彩識別能力ですとか視力ですとか運動能力とか規定されておりまして、書きぶりが理解をする上で少しずつ違っているような思いもして私はこれを読んだんですけれども、この聴力に関しまして、十メートルの距離で九十デシベルの警音器の音が聞こえなければ運転免許の適性試験には当てはまらないということになるわけですけれども、この規定はどういう理由でされているのでしょうか。合理性をお尋ねしたいということなんですが。

坂東政府参考人 聴力につきましては、委員御指摘のように、適性試験の合格基準は、「一〇メートルの距離で、九〇デシベルの警音器の音がきこえるものであること。」というふうにされているところでございます。我々も、道路交通法の場におきましても、音というものを発していろいろと交通危険を避けるとかいうようなことの規定ぶりがございますから、やはり音が聞こえないとそういった危険回避行動等がとれないといったこともございまして、こういった要件というのを決めたわけでございます。

 警音器の音の大きさにつきましては、道路運送車両の保安基準第四十三条三項におきまして、「自動車の前方七メートルの位置において百十二デシベル以下九十三デシベル以上」というようにされているところでございますので、こういった基準も踏まえまして聴力についての適性試験の合格基準を定めたものでございます。

石毛委員 それは、今の七メートル前でですか、百十二デシベルから九十三の範囲でおさめたものを前提にして九十デシベルで決めたという御説明では、なぜ免許の適性にこの九十デシベル、十メートルのところで響く音が聞こえなければいけないかという御答弁をいただいたというふうには私は思えないのですけれども。その次には、ではなぜ九十三から百十二デシベルなんですかという質問になっていって、これは堂々めぐりの話になってしまいますが、なぜそれだけ聞こえなければ免許を持つこととして合理性がないというふうに判断されているのかということをお教えいただきたい。

坂東政府参考人 先ほど申しましたように、保安基準というものはそういった書きぶり、規定ぶりになっているということでございますが、当然ながら、警音器の音というものはそういうものでございますけれども、それを聞いて、そして運転者がどういうように行動するか、そういった判断から道路交通法では規定をしているということでございまして、自動車の一般的な警音器の音を認知することが自動車の安全な運転を行う上で必要であるということから、一応そういった保安基準というものを参考にしながら道路交通法で決めたというものでございます。

石毛委員 大事な点だと思いますので、少し議論をさせていただきたいというふうに思います。

 私のところに聴覚障害をお持ちの方からメールをいただいております。音が聞こえなくても、例えば後ろとか前とかから救急車が来るというようなときであれば赤色灯で認知ができる、それから左右であれば当然わかる、そういうようなことで、音が聞こえなくても、安全を確保するための代替的な能力の発揮といいましょうか、そういうことがある、そういう意味だと思いますけれども、それから、もし危険なことがあればそのほかの車がいろいろと様子を提供するでしょうから、そういうことからも判断できるというような意見が寄せられていて、聴覚障害の方がどれだけの聴力を持っているかということだけで適性であるかどうかを唯一の判断基準にするということはやはり困るというような御意見なんです。

 それから、これは現実にはよくある話だと思いますけれども、例えば、とてもロックミュージックの好きな方が車の窓を閉め切って高いボリュームで音楽を聞いていれば、実際問題とすれば十メートル離れたところで音を聞くというようなことはしていない、できない。

 だから、九十デシベルというそのこと一つをどう判断するかをめぐってもいろいろな角度があって、究極的に安全運転と結びつける場合には、もっといろいろな要素を加味しながら、先ほど、口がきけない方というのは他の手段で事故状況を言うことができるのでという御回答をいただきましたけれども、例えば、今のこの話ですと、他の手段を用いて危険の察知ができたりあるいは安全運転が可能であれば、聴力は聞きにくくてもあるいは聞こえなくても免許取得ということはあり得るというような、そういう解釈があっていいんだというふうに思うわけです。

 一律にシングルイシューだけで事を判断するというのでは、むしろ、免許証を持ってもらうためにいろいろな考え方をとり、いろいろなサポートをしていく、そういう前進する方向性と、それから与えないためにラインを引いてしまうという、それはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、何かその政策としての方向性が私に言わせていただければ違うのではないか、そういう思いがするんですけれども、何か御感想ございますでしょうか。

伊吹国務大臣 これは先生、一番最初に私が申し上げた、できるだけ交通事故によって一般の方々の生活、生命等が侵されないように守っていくという公益と障害のある方の個人の人権とのバランスの問題だと思うんですね。

 今のようなケースも、先生がおっしゃったような場合には、例えば、救急車が動いてきた場合にはピポピポは聞こえなくても赤色灯の点滅で判断できるという場合も、そういうケースにはございましょう。しかし、遮断機のない警報音だけの踏切があった場合に、認識ができなくて結果的に事故が起こったという場合には、これは、免許をもらっておられる限りは御本人には何の過失も実はないわけですよ。身体上の障害からそういうことになるわけですね。しかし、ロックミュージックを聞いて、がんがん音を立てて警報音を聞かずにやった場合には、この人は当然刑法上の処罰を受けますよ、それだけの注意義務を怠っているわけですから。

 ですから、やはり、そういう法体系の中で、私は今回、自分もそういう立場のボランティアの仕事をしているだけに、できるだけ先生がおっしゃっているようにぜい肉をそぎ落として、ここだけは大多数の方の交通安全を守っていただくためにお許しを願えないかという範囲で抑えておりますので、おのおの人権と公益のバランスの、先生のお考えあるいは一般のまた別の政治家の考え、政党の理念の立て方によって、人権を重視する政党と公益を重視する政党とかいろいろあると思うのですけれども、ここは国民の合意は得られるのではないか、私どもはそういうふうに考えて実はつくったわけです。

石毛委員 公安委員長のお考えも承りましたけれども、もう一度私の方からも申し上げさせていただきたいと思います。確かに、法律は一つの法律だけで機能するわけではございませんし、いろいろな関係の法律が相互に絡み合ってということもあろうかとも思います。ですけれども、あえて私からもまた申し上げさせていただきたいのです。

 私も、今回、障害と欠格事由を問い直すというのは、本当に歴史的に、それこそ二十一世紀が始まったこの時点で記念すべきとても大きな法改正だというふうに思いますので、あとう限り人権の保障というそこの点を大事にして考えていきたいという思い、これは公安委員長も同じだと思います。

 そういうようなこともありまして、いろいろな資料などを見ておりますと、もしかしたら警察庁はもうごらんになっていらっしゃるのでしょうけれども、アジア太平洋障害者の十年推進地域会議というようなところでは、障害と欠格事由のことに関しまして、諸外国に調査のアンケートを発しております。

 そのアンケートで、例えば、運転免許ですと、聾者への自動車運転免許は、少なくともオランダ、イギリス、ドイツ、恐らくEU諸国で認められているとか、それから具体的にイギリスの実例になりますと、聞く能力について報告する必要はありませんというような回答をいただいておりましたり、それから、聞く能力を補完する意味で、オランダでは車にギアをチェンジするタイミングを知るためにタコメーターをつけさせていますというような、そういう回答。

 それから、一九九九年のカリフォルニア・ドライバーハンドブックという、これは運転免許を取る各自動車局で無料配付されている冊子ですけれども、この中にも、聴力に関しましては文書が出されていまして、聾者または聴力に問題のある運転者は適応できます、見る習慣に頼って学習できるからです、右のバックミラーは助けとなりますというような、こういう書きぶりにもなっているわけです。

 ですから、国際化の時代でもございますし、それぞれの国でさまざまな方が運転をされるという状況が国際的にあるわけですので、ただいま私が、その一端だけ、わかる範囲で紹介させていただきましたけれども、よく御検討いただきまして、施行規則を定めていくときなどは、ぜひ、当事者の方、当該の皆さんの御意見も受けとめていただきまして、具体的に法令に反映するような仕組みをお考えいただきたいというふうに思います。

 局長、まず御答弁いただきまして、公安委員長、ぜひいい御答弁を下さい。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、聴力に関しましては、欧米諸国におきましては、普通自動車あるいは自動二輪車の運転に必要な免許を受けようとする場合におきましては、聴力が一定以上であるといったことが運転免許の要件とされていないというところでございます。ただ、大型免許とかあるいはバス免許等を受けようとする場合におきましては、聴力が一定以上あることが免許の要件とされていることが多いというように聞いております。

 そこで、御案内のように、免許制度というのは国によってかなり違います。例えば日本におきましては、私ども日本国内の普通免許では、外国で大型自動車と言っている車両総重量八トン未満までの車は運転することができるというふうにされているというような違いもございます。

 それからまた、当然ながら、交通事情あるいは道路事情というのは各国においてそれぞれ違うところがございまして、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、我が日本におきましては、結構踏切が多いとかあるいは道路構造的にも見通しの悪いカーブが多いといったようなこともございますので、現時点におきましては、直ちに、聴力が一定以上であることを免許の要件としないとすることは困難であるというように考えておるところでございますが、今後、仮に聴力の要件を先ほど申しました免許の種別ごとに異なるものとした場合等を含めまして、聴力と自動車等の運転との関係につきましてはさまざまな角度から検討を行っていきたいというように考えております。

伊吹国務大臣 政治家として、法案を提出した我々の理念としては、日本という今の国の現状において、大多数の人の生命や交通の安全を守っていかないといけないというところでは、これがぎりぎりだと実は私自身は思っているのです。

 しかし、万一先生がおっしゃったような条件緩和をした結果事故が起こったりなんかした場合には、実は私も京都の障害者団体ともいろいろ話をしたのですけれども、その場合に、団体としては、社会的に大変つらい思いをまたかぶるという部分もあるのですね。

 だから、私は、少し道路の状況とか何かを見ながら、基本的にはこれは共生社会の原則に一歩踏み出しているということは先生も認めていただいているわけですから、できるだけ、免許をお取りになった方も、自分の障害のために事故を起こさないという確信が持てるような状況になったときに、またそういう状況をつくるように、これは道路の問題も含めて党派を超えて努力をして、そのときには先生の御希望に沿えるように私も努力はしたいと思います。

石毛委員 公安委員長に御答弁いただきましたけれども、私の手元には、全日本聾唖者連盟から警察庁長官あてに、道路交通法施行規則第二十三条も改正しというような要請書も提出されて、それぞれ個別の団体それから連盟、お考え、ニュアンスの違いもないことはないのではないかと思いますけれども、先ほど局長が、例えば八トン未満は普通免許というような状況もありという御答弁でしたけれども、今公安委員長もお触れくださいましたように、安全性の確保を前提にして、個別に免許付与を実現するとしたらどういう方向で一つ一つ物事を整理していったらいいかという、その丁寧な作業が恐らく必要なんだろうというふうに、この件に関しては違いはないのだと思います。

 そういうようなことも含みまして、これから具体的に細目は省令で決めていくということになりますでしょうから、ぜひとも丁寧な作業をお願いしたいというふうに思います。この省令がそのまま生きていくということはないと思う。法律が変われば、ここに病気の種類も入れていかなければいけないでしょうから、必ず省令は動かしていくということになりますでしょうから、ぜひそう要望したいと思います。

 次の質問でございますけれども、同じような趣旨の質問を少し違った角度からということになりますでしょうか。

 今、肢体不自由をお持ちの方の免許取得は随分進んでいますし、実際に運転なさっている方もたくさんおられます。私の知人もたくさん運転されております。二十年ぐらい前でしたでしょうか、肢体不自由の方が運転免許を取れるようにということで訴訟を起こされた、荒木訴訟だったと思いますが、障害をお持ちの方が免許を持たれるようになる大変画期的な、歴史的な訴訟だったというふうに、私、この法案を読んでいてふと思い出したのです。

 肢体不自由の方が免許をお取りになるということと、それからハンドルを改造するとかブレーキをどうするとか、自動車を具体的に改造しなければならないんだと思いますが、お一人の肢体不自由の方と一台の車のその具体的な改造のマッチングといいましょうか対応といいましょうか、それはどんなふうに進められているのでしょうか。

坂東政府参考人 例えば警視庁の場合でございますけれども、肢体不自由な方が免許を受けたいというように来られた場合におきましては、運転免許センター等に相談所というのがございますので、そこでいろいろと御相談をしていただく。そして、実際に身体不自由の方々が運転をされるようなシミュレーター的なものがございますので、それにとりあえず乗っていただく。そして、例えばどういうようなところを補わなければいけないとかいったようなことを、警視庁の運転免許センターの職員がいろいろとその方々にアドバイスをして、こういった形の改造を加えたらよろしいですよといったことを御指導して、その方はそういった改造車を持ち込んで練習をされて、そして技能試験等々に合格すれば運転免許を与えているといったようなことで、かなりきめ細かな指導というのがされているように私は伺っております。

石毛委員 この規則の二十三条ですけれども、運動能力というところでは、最初の項目が、「自動車等の運転に支障を及ぼすおそれのある四肢又は体幹の障害がないこと。」ということで、この支障を及ぼすおそれのあるというこのことが、自動車の方が改造されて、あと、その改造された自動車を使って運転する技術が適切であれば合格するということになるわけですね。それから、その二項めのところは、「補助手段を講ずることにより自動車等の運転に支障を及ぼす」と、補助手段を講ずるというのが入っているのですね。これは恐らく何度も改正されてきて、変えられてきてこういうふうになったのだと思うのです。

 私、ちょっとしつこくて恐縮ですけれども、聴力のところだって、「補聴器により」ということを書くだけではなくて、例えば道路状況その他その他、何を書くかは検討がありますけれども、その総合的な判断により危険が察知できるときはというような書きぶりの規定だってあり得るんだと思います。それぞれみんな変わってきているんだと思いますので、ぜひともそういう丁寧な対応を、先ほどに重ねて恐縮ですけれども、お願いをいたします。

 それからもう一点、次の質問でお尋ねしたいのですけれども、今、運転免許センターがシミュレーション台を用意して具体的な自動車改造についてアドバイスをされているという御答弁でしたね。それは大変感銘を受けて伺ったわけですけれども、そのほかに、障害と免許にかかわりましてどんな相談が今までなされてきているか、そのことをお尋ねしたいと思います。

坂東政府参考人 先ほど申しましたように、やはり各都道府県公安委員会というんでしょうか、警察の中にはそういった方々の相談窓口というのを設けているところでございまして、例えば、心身に障害がある方から、運転免許が取得できるのか、あるいは自分の所有する車両で試験を受け合格した場合にその免許にどのような条件が付されることになるのかとか、あるいは、免許取得後に障害の程度が悪化した、それで更新が来た、その更新に当たって新たな条件を付されることがあるのかとか、あるいは付与された条件を解除または変更してほしい等々のさまざまな相談を受けているところでございます。中には、てんかん病者と診断されたが免許を取得できるのかといったような相談もあるというように伺っているところでございます。

 ちなみに、平成十二年度、昨年度の適性相談の状況でございますけれども、全国では約二万二千件近くの御相談を受けているところでございます。

 警察といたしましては、今後とも、こうした相談に対しまして、適切に助言等、対応できるようにしたいというように考えているところでございます。

石毛委員 今の局長の御答弁は、私は、失礼ですが、御答弁いただいたことにならないんだと思います。

 やはり、この道路交通法の改正法案の内容といたしまして、欠格条項をどのように取り扱っていくかということは大変重要な中身であるということは論をまたないんだというふうに思います。それで、私は、肢体不自由の方がシミュレーション台まで入れて運転免許を取れるように推進してこられたというのは、それぞれの都道府県の公安委員会のやはり大変な御努力があってそういう取れる方向性を実現されてこられたんだというふうに、むしろ評価をさせていただくわけなんですけれども、であるとすれば、ほかの障害に関しましても、それぞれの免許センターに具体的にどのような相談がされて、それに対してどういう見解をお持ちになられて、そして今回の改正法案の中身としてはこういう規定のしぶりにした、こういう御説明があってしかるべきだというふうに私は思うわけです。もし、今の局長の御答弁が欠格条項に関する改正法案が規定される一端の理由であるとするならば、理由にはならないんだと思いますけれども、であるとするならば、私は、それは大変誠実性を欠くといいますか、そういうふうに思わざるを得ません。

 やはり、具体的にどんなことに困っていらっしゃってどういうふうに変えられる可能性があるのか、あるいは確実性があるのか、そういうことが見えてくるのは相談の場面でありますでしょうし、あるいはそれぞれの当事者の団体の代表の方の御意見でありますでしょうし、あるいは医師等、関連の方の御意見でありますでしょうし、あるいは、交通に大変精通しておられる、あるいは事故等に対処する経験も長く持っておられる警察の方の対応もあるんだと思います。総合的な角度から判断されなければならないと思いますけれども、その判断の一つとしてどういう相談が具体的にあったかということはもう少しきちっとキャッチされているものと私は思っておりますので、もう一度御答弁をお願いしたいと思います。

坂東政府参考人 先ほど、平成十二年度には二万二千件弱の適性相談があったというようにお答えいたしましたが、内訳といたしましては、運動能力に関するものが約一万四千件弱、聴力に関するものが約二千三百、それから視力に関するものが二千百強、その他が一千件弱ということになっております。

 御案内のように、現行法では、身体系の障害をお持ちの方は、先ほど委員御指摘のような形で、いろいろな補助装置とか器具とかがあるということで、そういうものと一体となって安全に運転ができるとすれば免許を与えているという制度をとっておりますが、そういう精神系というのでしょうか、そういうものは今御指摘のように現在の法律では欠格事由として免許を受けられないということになっておったということもございますので、そういった意味からはこういった相談に来られる方というものはやはり少なくなっているのではないか、このように考えているところでございます。

石毛委員 それでは、聴力とか視力に関しても相談の件数がそれぞれ二千三百件、二千百件という大変大きい人数の御相談があるという事実を確認させていただきたいと思いますし、それから、どういう内容の相談で、それは免許の取得に結びついていくとすればどういう改善をしていったらいいのかというような分析をなさって、ぜひともいい方向へ省令の決定というようなところで生かしていっていただきたいというふうに私は要望をいたします。

 次の質問の時間がなくなってしまったのですけれども、今回の法改正に関しまして、確かに障害者であるという規定は変えておりますけれども、病気を規定しているという意味では、必ずしも障害者であることを規定していないというふうには読み切れないといいますか、「病気にかかつている者」という、この中身を読むとそのままどういう障害をお持ちであるかということが浮かび上がってくる、こういう書き方になっているというふうに私は理解しているのです。

 こういう書き方について、例えば総務省の方針では、必ずしも病気を挙げているのではなくて、心身の故障のため業務に支障があると認められる、こういう書き方もあります。ですから、心身の故障のため運転に支障があると認められる者という書き方でもよかったのではないか、こういう理解も成り立つと思いますけれども、もう時間が来てしまいましたので、簡単に御答弁をいただきまして、また質問の継続をさせていただきたいと思いますが、お願いいたします。

坂東政府参考人 先ほどの御答弁で、視力関係の適性相談があるいは二千百と言ったかもわかりませんけれども、これは五千百でございます。

 それから、この改正案の書きぶりでございますけれども、この改正案では処分の対象となる病気の属性というものを法律で規定しているところでございますが、この理由は、どのような場合に免許を与えないなどの処分を行うかにつきましては、やはり国民の権利義務に直接影響を及ぼすことということから、その要件はできるだけ法律で明らかにする必要があるだろうというふうに判断して、こういった書きぶりにしているところでございます。

石毛委員 この件に関しましては引き続き質疑をさせていただきますということを述べさせていただきまして、終わります。ありがとうございました。

横路委員長 細川律夫君。

細川委員 民主党の細川でございます。

 私は、主として運転代行業の適正化法案についてお伺いをいたします。

 運転代行業につきましては、これまで規制はされておりませんでした。今回一応の法的な位置づけが行われましたことについては、評価をいたしたいと思います。しかし、全体的な内容を見ますと、運転代行業を業として認めるというよりも、代行業の悪質な部分を取り締まる法案の色合いが強いように思われます。

 法の目的からいたしましても、例えばタクシーやバスの事業を取り扱っております道路運送法、これでは、第一条の「目的」には、「道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより、道路運送の利用者の利益を保護するとともに、道路運送の総合的な発達を図り、もつて公共の福祉を増進することを目的とする。」こういうふうになっております。ところが、今度のこの法案につきましては、第一条の「目的」で、「この法律は、」「自動車運転代行業の業務の適正な運営を確保し、もって交通の安全及び利用者の保護を図ることを目的とする。」

 この目的におきましても、道路運送法、タクシー及びハイヤーの事業につきましては道路運送の発達というのが目的に書かれておりますけれども、この代行業適正化法案にはそれに当たるあれがございません。かわりに、交通の安全というのが入っているわけでございます。一口に申し上げれば、道路運送法は事業の発達を目的とする事業法であるのに対して、本法案は交通安全、利用者保護のための法案だというふうに言えると思います。

 道路運送法は国土交通省の所管でございますけれども、今度のこの法案につきましては国家公安委員会と国土交通省の共管であるというところから見ましても、今度のこの法案が交通安全対策に重点が置かれているということがわかろうかと思います。

 そこで、お聞きをいたしますけれども、今度のこの法案をいわゆる事業法としなかったのはどういう理由なのか、まずお聞かせをいただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 自動車運転代行業につきましては、従来から警察庁と国土交通省とでさまざまな指導を行ってきたところでございますけれども、運転代行業におきましては、交通事故の発生とか、タクシー事業類似行為でありますとか、保険契約の未締結といったような問題がございまして、これにつきましては既存の法令で対処することが難しいというような考えに至りまして、一定の事業規制を行うというふうにいたすものでございます。

 この事業規制につきまして、今回の法律は適正化法という形をとっておりますけれども、これは、本法案の趣旨が、今申し上げましたような自動車運転代行業の問題点を是正するために必要となる最低限の事項につきまして規制をして交通の安全と利用者の保護を図るということにあるからでございます。

細川委員 事業法でないということにつきましては、これからいろいろなところで問題点が出てくるというふうに思いますので、また後で質問をしたいと思います。

 この法案を見てみますと、どうも法案の対象自体が、一体、運転代行業全体を網羅しているような、そういう法案であるかどうかということについて大変疑問でございます。

 これは先ほど小野委員の方からも質問がございまして、あるいは繰り返しになるかもわかりませんけれども、まず、この法案の定義といいますか、自動車運転代行業の定義を見てみますと、まず第二条の一で、主として夜間における酔客にかわって自動車を運転する役務を提供するものであるということになっております。また、第二条の三では、当該自動車に当該営業の用に供する自動車が随伴をするものであるということが要件になっております。さらには、道交法の改正案で、自動車運転代行業を営む者による役務の対象となっている自動車については、これは普通乗用自動車、こういうふうに限られております。

 そこで、こういうふうな定義になっておりますので、それでは一体、本法案の対象になるのかどうなのかということで具体的にちょっとお聞きをいたします。先ほどのあれでは主として夜間におけるというふうになっておりますけれども、それでは、昼間例えば結婚式で酒を飲んだ者の依頼があって運転を代行する場合にはこの代行業の対象になるのかならないのか、まずお答えいただきたい。

坂東政府参考人 昼間結婚式で酒を飲んだ方の依頼で運転の代行をする場合どうかというお尋ねでございますが、その業者が主として夜間において酔客を対象に行われる営業の一環として行われているものであれば、本法の規制の対象になるというように解されると思います。

細川委員 それでは、主として夜間に行われている業者でない場合、昼間だけをやっているというような業者の場合には対象にならない、こういうことになるわけですね。そうしますと、「主として、」ということでなっていますが、そこがあいまいで、結局、昼間だけやっている代行業のあれには適用されないという、法律的にはそういう問題があるということですね。

 それから、では二番目としてお聞きしますけれども、例えば観光都市などにお客が車で来たといたします。そこで、その人から夜の例えば飲食とかあるいは市内観光を頼まれて、旅館からぐるっと回って観光して酒も飲んで、そして帰ってくるまでの間の代行を頼んだ場合には、これは本法案が適用されるかどうか。

坂東政府参考人 多分、お尋ねのケースでは、ホテルから出てホテルに帰ってくるということでございますので、随伴車両なしで運転代行をしているんではないか、このように考えます。この法律ではやはり随伴車両というものが代行業の要件、定義の一つになっておりますので、随伴する自動車がないということから、一般的に言って本法の規制の対象とはならないんではないかというふうに解しているところであります。

細川委員 それは、いわゆる運転の代行をすることについては同じだけれども、随伴車がついているということがこの代行業の定義の中に入っているわけですから、だから対象にならない、こういうことになるわけですね。だから、同じようなことをやっていながら、対象になる場合と対象にならない場合が出てくるということだと思います。

 それから、もう一つお聞きをいたします。これは普通乗用車に限定をしているということからお聞きをいたしますが、例えばホテルの送迎用の運転手が酒を飲んだということで、それで大型バスの運転を頼まれて代行運転をする場合、この場合は対象になるのかどうか、お聞かせを願います。

坂東政府参考人 先生御指摘のような形では、観念的には考えられると思いますが、実態としてはそういった現実がそれほど多くあるとは考えられないところでございますけれども、仮に、運転者がこれに乗車をしており、かつ随伴する自動車があるといったような場合におきましては、運転代行業の定義に含まれるものというふうに解するところでございます。

細川委員 含まれるということでございますけれども、その場合は、普通の乗用車の場合には二種免許が必要なわけですね。これが大型のバスだったら、大型の一種でなくて大型の二種は必要ですか、必要じゃないですか。

坂東政府参考人 今回の道路交通法では、代行業の場合、普通自動車ということで二種免というような形の規定にしていますので、バスの場合におきましては大型一種免許でいいということになるということであります。

細川委員 そういうように普通乗用車の場合には二種免許、大型のバスの場合には二種免許は必要ない、こういうことで、そもそも今回の法案の対象となるものが、先ほど申し上げましたように、主として夜間における酔客にかわってということ、それから随伴車を必要とするということ、それから普通乗用車に限っているというようなことは、いろいろな矛盾が出てくるわけです。そういうことが法律としてあっていいのかどうなのか。

 これは混乱をしてはいけないと思いますので、今後、この代行業全体の業務を対象として、これからどういうふうに発展していくか、いろいろあろうかと思いますけれども、これは見直すというようなこともあるのかどうなのか。公安委員長、いかがでしょうか。

伊吹国務大臣 先ほど、小野先生からも同じような御質問がずっとございまして、実は、この法案の原案を私のところへ持ってきましたときも、このように限定する必要があるのかなということを私も実は率直に言って考えました。

 それで、しかし、先生は法律家だからよく御存じだと思いますが、立法政策としては同様なことはたくさんあるわけですね。学校があり、予備校があり、予備校までは法律の対象になっているけれども、家庭教師は対象になっていませんよね。家庭教師と予備校の間のグレーゾーンというのは必ずございます、人数によって。保育所と無届け保育所、それから業としてだけれども知人の者を預かっておられる方がおられます。しかし、法律でカバーされているのは、大部分は実態として社会に存在を認められているものを対象としてやっている。

 したがって、先生がおっしゃるように、私はもう少し範囲を広くしてもいいのではないかと実は最初思ったのですよ。思ったのだけれども、そのものを社会的な存在である業として把握するというのは非常に少ないというか難しいというか、観念的にはあってもどうなのだろうかというようなことがございましたので、今回、法律の規定としては、主として、夜間に、酔客を、随伴のというのは、立法論としてはかなり苦しい定義をしたということは先生が御指摘のとおりだと私は思います。

 それで、今後、例えば空港へ行くから送っていってくれとか、自分は障害を持っているからどうしてくれとか、そういうケース、多々これから、高齢化社会だからお年寄りについてのそういうサービスをどうするかとか、これは公安委員会でもいろいろ、先生と同じような御意見が出たのです。

 ですから、今回はまず実態として一番大きなもので、公共に御迷惑をかけないように規制をしていかなければならないものを拾いましたけれども、今後御指摘のようなものがたくさん出てくれば、当然利用者の立場を考えて、法律の中へ拾っていくという作業は今後も注意深くやらせていただきたいと思います。

細川委員 わかりました。では、よろしくお願いする次第でございます。

 次に移りますが、この法案ができた背景には、代行業者の一部には白タク行為のようなものを行っているものがありまして、そのような悪質業者を取り締まる、規制をする必要があったというふうに聞いております。この法案でそういうことが規制できる、あるいはそういう白タク行為がやまればそれにこしたことはないのですけれども、必ずしもこの世界、なかなか簡単にはいかないのではないかというふうに思っています。

 特に、AB間輸送というのが以前から言われております。これは、スナックならスナックに飲みに行くのに、車を駐車場にとめてスナックで飲む、それで、スナックから業者の方に連絡をして、そして随伴車がスナックまで来る、スナックでお客を乗せて駐車場まで行ってそこから帰る、こういうスナックから駐車場までの間、これをAB間輸送というのですけれども、この間、随伴車に乗せることは、これは違法なわけですね。だけれども、これがもう頻繁に行われておる。

 これは、なかなか取り締まりの実態というのもよくわからないようなのですけれども、こういうものに今までは一体どういうふうにして取り締まりに臨んできたのか。また、この法律ができて、ではこれからAB間輸送などの白タクにどう対応をされていくのか。そこらあたりどういうふうに考えておるのか、お答えいただきたいと思います。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、いわゆるタクシー業類似行為、いわゆる白タク行為というものは、運送秩序を乱す、それだけではなくて乗客の安全面でも問題があるということもございますので、国土交通省等関係機関と連携を密にして、違法行為に対しましては取り締まりを行ってきたところでございます。

 今回御提出しております本法案では、自動車運転代行業の業務の適正な運営を確保し、もって交通の安全と利用者の保護を図ることを目的として、適正な業者に対する認定、違法行為等が認められる場合の認定の取り消し、指示、営業停止命令等の行政処分というものを国家公安委員会あるいは国土交通大臣の権限において規定しているところでございますので、こういった諸権限等も活用しながら、委員御指摘のような白タク行為というものについても是正するような方向で対処していきたいというふうに考えているところでございます。

細川委員 AB間輸送を初めとして代行業におけるいわゆる白タク行為を防止するためには、非常にいい方法があるのですよ。それは、随伴車という車が、これは本来、代行運転自動車を運転する人とそれからその随伴車を運転する、この二人が乗るわけですね。どんな場合でもこの二人なのですよ。白タクをやる場合には、その車に三人乗ったり四人乗ったりしてやるわけですね。そうすると、その随伴車というものを二人乗りしかできないような形にすれば白タクは絶対できない。これはツーシーター車というふうに呼んでいるようなのですけれども、既に地方によっては、代行業者が率先してそういう車にしているようなところもあるようなのです。

 だから、白タク行為を阻止するというか、させないためには、こういうツーシーター車というのを随伴車に、もうそういうふうに決めてしまう、そういうふうにしろということにすれば、白タク行為は余り心配することはないのではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、随伴自動車をいわゆるツーシーター車に限るということは、随伴自動車によるタクシー事業類似行為をあおる程度というものを抑制する効果はあるとは我々も考えます。

 ただ、利用客が一名である場合などにおきましては、ツーシーターに限ってもやはりタクシー類似行為は行われる。つまり、お客が一名の場合ですね。代行運転をしてもらいたいというような形で代行業者に頼む、代行業者は、そのお客さんの車に乗る場合はいいわけですが、先生御指摘のように、お客さんの車に乗り込まずに業者の車に乗せるということですね。そういった場合に、お客が一人であれば当然ながら隣に乗れるわけですので、つまり随伴車がツーシーターになってもそれほど大きな効果はないのではないかといったようなこと等、それから業者に対してかなり大きな負担をかけるといったようなこともございまして、義務づけになじまないだろうということで、今回の法律には盛り込んでいないというところでございます。

細川委員 いや、お客が一人で、随伴車にお客を乗せるということは、これはもう禁止されているわけでしょう。絶対にこれはできないわけでしょう、道路運送法に違反するわけですから。

 そうではなくて、あからさまにいろいろ、AB間輸送もありますし、そうではなくて、いわゆる随伴車が勝手に一人だけお客を乗せてばあっと行くのがいろいろあるのですよ。そういうのはツーシーターにすれば全部阻止できるのではないですかということです。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、ツーシーターというものは、つまり運転者以外は一人しか乗せられない車であるということだと思うんですけれども、したがいまして、お客が一人であった場合におきましては、当然ながらその随伴車両に乗れる、つまり、タクシー類似行為等も行われるということでございますので、そういった場合の類似行為を抑止する効果というものはそれほど大きくないのではないかということでございます。

 構造的にそういった二人しか乗れないという構造のものと、それから、実際に四人なり五人乗れる車の後部座席を形上は乗れないようにして運用しているというケースもあるようでございますから、そういった場合におきましては、やはり脱法行為が行われる可能性がある。そういった場合におきましては……(細川委員「検討してもらえばいいですから」と呼ぶ)わかりました。失礼します。

細川委員 こういう白タク行為を防止するために、ツーシーター車が、現実にもう既にやっておるところもあるようですから、これはぜひ検討していただいて、それを普及させるとか、いろいろ行政的にもやっていただけたらというふうに思います。

 そこで、この代行業の関係では、いろいろなトラブルが顧客との間で起こることが、これまでもあったし、これからもあるのではないか。それは料金についてなんですけれども、料金についてトラブルをきちんと未然に防ぐ、そのためには料金が一体どうなっているのかということをよく顧客にも知っていてもらわなきゃいかぬと思うんです。

 それが、どうも今度の法案では、営業所に利用者の見やすいようなところに掲示をするというだけになっているわけなんです。だけれども、顧客が営業所に行くということは余りないと思うんですね。だから、なかなか徹底するということは難しいんじゃないか。これは、類似のタクシー業者なんかから比べますと、その徹底については非常に小さい規制になっているというふうに思われます。

 そこで、この代行業の適正化を図る上には、料金の透明化というものがもう欠くべからざる要因だというふうに私は考えますので、せめて事前に料金の届け出制のようなものをしたらどうかというふうに考えるんですけれども、これはいかがでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 自動車運転代行業は、主として夜間の繁華街で、限られた時間、限られた場所でサービスが行われているわけでございまして、利用者の時間や場所を問わず、だれが利用しても利用者利便等が確保される必要があるいわゆる公共交通機関と事情が違っているのではないかなというふうに思いますので、事前に料金をチェックするまでの必要性はないんじゃないか、こう思っております。

 しかし、先生がおっしゃったように、料金の透明性を確保することは必要と考えておりますので、今回の法律案では、料金を定めて、まず営業所において掲示し、公示するということを義務づけまして、実際に業務を行う際には、その掲示した料金について利用者に説明をし、その説明に基づいて料金を収受させる。その場合、書面等できちっと説明させるということを検討したいと思っておりますが、そういったことによって透明性を確保するということはやっていきたいと思っております。

細川委員 その料金で、夜のお酒を飲んだ人たちが相手で、いろいろトラブルも起こるかと思います。料金だけではないと思いますけれども、そういうトラブルが起こった場合の苦情処理について、実はこの法案には何も書いてないといいますか、規定がないわけなんですね。

 タクシーなんかについてのいろいろな苦情処理については、東京とか大阪なんかには近代化センターがあったり、あるいは地方にそれぞれの業者の方たちが集まったいろいろな会がありまして、そういうところで苦情処理をされているということなんです。そうしますと、この代行業の場合には統一的な業界団体がないというのは、先ほどの私の前のいろいろな方の答弁からもございましたけれども、それでは、苦情処理について、そういう処理をする機関は必要なのかどうかということをどのように考えているのか、そしてその苦情処理をどういうふうにしていくのか、そこのあたりは一体どういうふうに考えておられるのか、お聞かせください。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 今回の法律におきまして、自動車運転代行事業者に利用者の苦情に対する適切な対応をさせることをねらいとしまして、苦情処理簿を備えつけさせまして必要な事項を記載させるということにいたしております。事業者にそういうものを備えつけさせることを義務づけさせておりますので、そこに、どのような苦情があってどのように処理したかということを記載することになります。それを、後日の監査その他でもって状況を把握することができるということになります。

 今後の話になろうかと思うのですが、自動車運転代行業界が業界団体におきまして苦情の処理などの業務の適正化のための活動を自主的かつ積極的に行っていくということは大事だと思います。先生が御指摘のような近代化センターのような形で業界団体として取り組んでいくということについては、大変大事なことだと思っております。

 しかしながら、先生今御指摘されましたように、唯一の公益法人でございます社団法人全国運転代行協会、これもまだ規模が小そうございます。幅広い活動を行える状況にはございませんので、当面は、国土交通省の地方支分部局や都道府県警察、あるいは業界団体と緊密に連携をとりながらこの苦情処理問題に適切に対応していくことが必要だというふうに思っております。

細川委員 苦情処理のことで今お答えのあったのは、業者に苦情処理簿をつくらせて、苦情があった場合は処理簿に記入させて、後でそれを見る、こんなのは余り役に立たないと僕は思いますね。まず書かないんじゃないですか、業者の人は。

 それから、業界が自主的にということで、今ちょっと業界の方もいろいろ分かれていてちょっと無理だということですね。そうしますと、最後に言われた地方運輸部局ですか、そこで苦情が来たらそれを受ける、こういうふうに聞いてよろしいんですか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 私どもの地方の支分部局もそうですが、都道府県警察にも苦情は参るでしょうし、業界団体も苦情を聞くことになるでしょうから、その三者がよく緊密に連絡をとりながら苦情処理に対する適切な対応をしていきたい、こう思っております。もちろん、私どもの支分部局でもきちっと対応していきたい、こう思っております。

細川委員 抽象的な答えなのでちょっとよくわかりませんが、例えば警察あるいは国土交通省の地方運輸局ですか、そういうところに苦情が来る。苦情が来たときに、それに窓口で対応するときに、やはり料金表がどうなっておるかとか、そういうのがわからないとちょっと対応できないんじゃないかというような気もするんです。だから、私はさっき、届け出制にしておいた方がいいんじゃないかという話をしたんですよ。料金をたくさん取られた、高く取られたという苦情が来たとしても、そのときに、いや、料金表はこうなっておるというような、そこで対応できるような、何にもなければ、ただ聞きおくになっちゃうんじゃないかと思うんですよ。ということで、私の方は、そういう事前の届け出制も必要じゃないかということを申し上げた次第でございます。

 苦情処理機関については、今お話がありましたように、ぜひ警察と国土交通省の地方の局とよく相談をして、苦情に対応できるような何らかの措置をひとつ具体的によろしくお願いしたいと思います。

伊吹国務大臣 この法律は、目的に書いてあるとおり、やはり利用者の安全ということで立法したわけでございますから、先生の御指摘はごもっともでございます。

 ですから、まず法律が通りますれば、国土交通省と警察において、できるだけ業界団体はやはり一つであった方がいいと私は思います。それから、各業者からはあらかじめやはり料金を掲示している料金表のようなものは警察や運輸当局においてきちっととっておく。そして、実際は、運輸局といってもこれはあれでしょうから、結局は交番、駐在所へいろいろ苦情が来るというのは多いと思いますので、そういうときに、もうあらかじめ料金表をとっておいて、そして悪質なものについてはお互いに相談しながらきちっと指導をやっていくというような体制を、この法案をお認めいただいた暁に、施行までの期間に準備させるようにいたします。

細川委員 では、よろしくお願いをいたします。

 次に、これはタクシーなんかの業界でも、最近、日雇いのアルバイトの運転手がいろいろ問題になっているわけなんですけれども、この業界の性格からしまして、何といっても安全性が非常に大事であります。そういう意味では労働時間なんかについての管理などが欠かせないわけなんです。それはタクシー業、それから代行業も同じだろうというふうに思います。

 例えば、今回の改正で代行業の運転手に二種免許が義務づけられるというようなことになりますと、タクシーと代行を兼業するような乗務員もあるいは出てくるかもわからない。そういうような場合も含めまして、運転者の選任に当たって、例えば日雇いあるいは日雇いに近いアルバイト、これは実態はアルバイトが非常に多いようでありますけれども、昼間働いて、夜またアルバイトでやるというようなことによって過労による事故だとかいうようなことも十分考えられるわけでありますから、そういうようなことがないように、労働時間とかあるいは適正な管理について事業者の責任というのを明確にすることがぜひとも必要だというふうに考えますけれども、この点はいかがでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 タクシーの場合につきましては、利用者がいつどこで利用する場合であっても輸送の安全とか利用者利便が確保されなければいけないという要請がございますので、過労防止のための乗務時間等の規制を設けているとか、事業者が運転者に対して十分な指導を行えるようにするために日雇い運転者等の乗務を禁止するというようなことになっているわけでございます。

 これに対しまして、自動車運転代行業につきましては、需要のある時間帯や場所が限られているということもございまして、乗務時間等の規制や日雇い運転者等の乗務禁止まで行う必要はないのではないか、こう考えております。

 なお、今回の法律案では、すべての事業者に安全運転管理者の選任を義務づけておりまして、また、運転者に対して一定の指導の義務づけも行っておりますので、交通の安全の確保や利用者の保護が図られるように、そういう観点から措置しているところでございます。

細川委員 深夜の特定の時間帯というようなときに仕事が多いということは、それはもちろんそうです。しかし、お客を運ぶということについては、これはお客の安全ということを最大の目的にいろいろ事業をやっていただかなければなりませんから、そういう意味では、私はこういう面、非常に大事だと思いますから、ひとつ検討もしていただきたいと思います。

 それでは、最後になりますが、従業員の管理あるいは運行の管理の問題などについてお聞きをいたします。

 ハイヤーとかあるいはタクシーの事業者につきましては、これは道路運送法におきまして、運行の安全の確保、そのために運行管理者、こういうものを置かなければいけない、こういうことになっております。この運行管理者というのは、試験もあって、いわゆる権限もあり、義務もあり、いろいろ責任も重い人なんです。

 ところが、運転代行業においては、この法案では、そういう運行管理者ではなくて、安全運転管理者、これを認定の際に記載をする、こういうことになっておりまして、どうも私は、そういう意味では、この運転代行業で今度二種免許を必要とするというように、安全上の管理については非常に強く規制をしているわけなんですけれども、当然運行の管理についてもハイヤー、タクシー並みの運行管理者というものを置かなければいけないのではないかというように思います。

 その点についてどのようにお考えなのかお聞きをして、私の質問を終わりたいと思います。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、今回の法案では、自動車運転代行業者に安全運転管理者を選任させまして必要な権限を与える。そして、自動車運転代行業の特性というものを踏まえまして、一つは、営業所ごとにこれを選任させ、そのことによりまして代行運転自動車を運転する場合の安全管理を行わせる、それから二つ目として、客待ちのための駐停車違反を行わせないための運行計画を作成させる、こういった業務などを行わせることとしているところでございます。

 議員お尋ねの運行管理者でございますけれども、運行管理者は、旅客運送事業として必要となる運行記録計の管理とかあるいは運行表の作成等の業務を行っている者でございますが、自動車運転代行業は、先ほども申しましたように、あくまでも運転の役務を提供するものであるといったことから、運行管理者の行うようなこういった業務まで行う必要はないということで、安全運転管理者を義務づけたというところでございます。

細川委員 これで終わりたいと思いますが、私もまだ質問が残っております。後、審議も続くようでありますから、残りの分はまた後で質問させていただくということで、終わりにいたします。ありがとうございました。

横路委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

横路委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山花郁夫君。

山花委員 民主党の山花郁夫でございます。私は、主として道路交通法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、百一条の二の二という改正案についてお尋ねいたします。

 今回の改正案によって、優良運転者についてでありますけれども、住所地以外の都道府県公安委員会を経由して更新の申請ができるようになりました。このことは歓迎すべきことだと思うわけであります。

 自分も、東京都の調布市に住んでいるのでありますが、免許の更新に行きますと、京王線に乗って十数分、多磨霊園という駅に行って、そこからさらにバスに乗ってということで、かなり公安委員会が遠いところにあります。私ごとで恐縮ですが、一月十八日の生まれなものですから、どうも、誕生日の前一カ月ということになると年末年始ということになっておりまして、今までちょっと苦労しておりました。今回の改正案によって後一カ月ということで、この点も歓迎するところでありますけれども、ただ、まだまだ運転免許の更新をする場所というところが少ないような気がいたします。

 午前中、阪上委員より、郵便局でという話もあったようでありますけれども、フィリピンなんかですと、確かに、郵便局に行って免許の更新ができたりとか、場合によってはパスポートがとれたりとか、そういうふうになっているようであります。各国によって事情が違うことは承知いたしております。行政のサービスをする機関がもともと少なかったから、どうしても便宜上そういうところを利用したりであるとか、そういう国も多数あることは承知した上で申し上げるわけであります。

 今後、行政のワンストップサービスという議論もあるわけですけれども、こういった観点からすると、より多くのところで更新ができるということが望ましいと思うわけでありますが、特に優良運転者について、更新地の拡大であるとかそういったことについて現在どういう取り組みをされているのか、あるいは今後どういった取り組みをされるおつもりなのかということについてお答え願います。

伊吹国務大臣 先生御承知のとおり、従来は三年というものが基本になっておりましたのですが、今回はできるだけ支障のない範囲で五年というものを基準にいたしておりますから、優良運転者の方のメリットというのは従来に比べると少ないわけですね、更新期間が一般の方と同じということですから。ですから、通勤圏が広くなったりしたので、他県の窓口に申し出ても優良運転者にはやれるというような措置はとったわけですが、私は、もう少し流れを見ながら、例えば五年としているものを、優良な運転者に対しては長くとってもいいのじゃないかとか、今回の改正をやってみて、そして少し様子を見させていただきたいと思うのです。

 そもそも論からいきますと、これは便利であるにこしたことはございません。しかし同時に、便利を追求する余り、免許の更新における、一種の運転の身体的な条件だとかその他が確実に確保されているかという確認とか、交通法規に対する知識を全く忘れておられないかとか、それもやはり必要なことなんですね。だから、石毛先生が午前中に御質問になったように、個人の権利と公益をどうバランスするかというのと同じように、若干の不便は忍んでいただいても事故が非常に少ない社会をつくるのか、便利だけれども、事故が多いとは言いませんけれども、その辺が余り徹底してない社会をつくるのか、これは国民の選択の問題だと思います。

 それから、いろいろ便利にすれば、当然人員もたくさん要ります。施設も要りますから、便利になれば便利になっただけの便利料という形での国民負担をやはり覚悟していただかないとできないわけで、その辺の議論を別々にはできないと私は思います。民主党さんもそういうところはよく考えていただいている政党だろうと私は思いますので、そういう前提に立って、優良運転の方を、今回の法改正の後、実態を見ながら次にどういう優遇をしていくかということは大きな課題であろうと思っています。

山花委員 今のお話も理解できるところであります。ただ、利便性の点で申し上げますと、現在の、安全運転の教育をしながらというところで多少置きかえられるところもあるのではないかなと思っているところがあるわけであります。

 例えば、免許の更新の際に要求される適性検査の結果を記載した書面というのは、近くで病院に先に行ってもらっておいて、結果的には更新地に行かなければいけないのだけれども、それをとりあえず出す。実際、運転免許の更新をされた方はわかると思うのですけれども、列をつくっていて、そのために結構待ち時間が長かったりとかありますから、そういう形で今後配慮をしていただければなと思います。これは意見として申し上げておきます。

 それでは、ちょっと論点をほかのことに移したいと思います。この道路交通法の関係で、交通違反に関してお尋ねいたします。自動車等による業務上過失致死あるいは重過失致死傷事件の起訴率という問題についてであります。

 八五年が大体七〇%より上の形で起訴されておりました。交通業過、交通事犯を伴う業務上過失ですが、八五年の七三%程度だったのが、翌年五七・七に落ち、平成三年には二〇%台、現在は一一%前後というところで推移をしているわけであります。八五年以降、急速に全体の起訴率、これはあくまでも全体のということでありますが、これが低下しているわけでありますが、どうしてこういうことになってきたのかということについてお尋ねいたします。

古田政府参考人 ただいまお尋ねの点につきましては、これは、主として業務上過失傷害事件についての起訴率が低下したことによるものでございます。

 この理由は、業務上過失傷害事件の中には被害が軽微なものが非常に多い実態がございまして、被害者もあえて処罰を望まないというふうなケースも多々あるわけでございます。

 一方で、現在、自動車というのはいわばもう国民の足になっているわけでございまして、通常は善良な市民生活を送っておられる皆様がたまたま起こすというケースも非常に多いわけで、そういうことを考えますと、被害者も処罰を望まないような軽微な業務上過失傷害事件についてまで一々これに刑罰を科して国民に前科を与えてしまう、こういうようなことは刑事政策上どうも適切を欠くというふうな考えなどから、軽微な事故についての起訴率が下がってきたということでございます。

山花委員 全体の率が下がっているのは主に軽微な事件についてだというお話でしたけれども、特に九二年の四月に反則金を引き上げた、今回の改正ではなくて、その前の改正だと思いますが、道交法の改正が施行されたのをきっかけに、これは当時の報道などで、公式な見解ではないのかもしれませんけれども、東京地検が起訴基準の変更に踏み切ったというふうな報道がなされております。

 その中身というものは、被害者のけがというものが二週間から三週間程度であるということ、加害者に飲酒運転や赤信号の無視など悪質な法令違反がないということ、当事者同士で示談が成立しているなど、こういう条件がそろえば原則として起訴猶予処分にするものだというふうに言われておりますけれども、これは九二年のころの話でありますから、当時の報道によりますと、全国に先駆け東京地検がというような形でありました。

 現在、全国的にもおおむねこのような形で運用がなされていると理解してよろしいのでしょうか。

古田政府参考人 実際に個別の事件につきまして起訴をするかしないかということについて、一律にその判断を拘束するようなそういうものはなくて、これはやはり個々具体的な事件によることではございますが、一般的に申し上げますと、過失の態様とか被害の程度、それから被害感情、それと今御指摘がありましたような悪質な交通法規違反があるかどうか、こういうふうなものを総合考慮した上で、けがの程度が軽微で態様も悪質ではないというふうなたぐいの事件につきましては、過失が認められる場合であっても不起訴になるということが多いという実情でございます。

山花委員 先ほど来、八五年以降の話でも、被害者が望まないようなケースにまで起訴してというのはどうかというお話がありましたし、今の九二年以降の話でも、被害者の感情も配慮した上で総合的に考慮してというようなお話だったわけでありますけれども、この被害感情というのはぜひ重視していただきたいと思う次第であります。

 ここに本をきょう持ってきているのです。市販の本ですが、例えば岩波新書で「交通死」という本がございます。二木雄策さん、外朋子さんという娘さんを亡くされた方が、これは被害者の立場から書かれた本であります。あと、ちくま新書から「クルマが優しくなるために」という、杉田聡さんという方が、これは被害者の立場からというよりも研究者の立場から書かれているのですが、このお二人とも同様の指摘がされているのは、八五年以降、この方たちの言葉をかりると、寛刑化という言葉を使っておりますが、こういうことをやった結果として例えば刑の抑止力、法の抑止力を失わせたのではないかとか、そういったような指摘があるわけです。

 これは法務副大臣にお尋ねいたしますが、これに対してどのような所感をお持ちでしょうか。

長勢副大臣 今御指摘のように、起訴率が低下をしてきておるというのは今刑事局長から御答弁申し上げたとおりでございまして、被害の傷害の程度が大変軽微であるとか特段の悪質性もないとか、また被害者も特に処罰を望まない、こういうような事案について一律に前科を与えるというようなことはいかがなものか、また、その処理も大変手間がかかるわけでございますので、こういう観点から方針をつくってきておるわけでございます。しかし一方で、重大ないし悪質な事案については厳正にやっていくということも重要な方針としておるわけでございます。

 したがいまして、我々としては、全体としての起訴率が低下をしたということによって法の抑止効果が直ちに低下をするということは起きていないのではないか、これからも悪質、重大なものについては厳正にやっていかなければならない、むしろ、過失事件でございますから、そういう事故が起きないように悪質な交通違反の取り締まりを強化するとかこういうことも大事じゃないかな、このように思っております。

山花委員 先ほど刑事局長からも、全体の起訴率が下がっているのは軽微な業過が下がっているからだというお話がありましたけれども、死亡事故が起きている場合に限定して、つまり、重大な結果が生じている場合に限定してお話を伺いたいと思うのです。

 今法務副大臣からも、いや、悪質なものについては厳正にというお話がございましたけれども、こういった死亡事故についてですが、死亡事故の場合、そうすると起訴率は決して下がっていない、あるいはほかの刑法犯と対比してどの程度のことなのかということについて、お答え願います。

古田政府参考人 いわゆる業務上過失致死事件につきましては、起訴率は大体六〇%から七〇%の間を推移しておりまして、これが顕著に下がったとかそういうことはございません。ほかの刑法犯との比較、これはもう罪種ごとでないと本当は正確には出てこないと思いますが、トータルでいいますと、業過致死以外の普通一般的な刑法犯の起訴率はおおむね五〇%前後という状況でございます。

山花委員 一般の刑法犯が五〇%前後ということで、六〇から七〇%については業務上過失致死事件が起訴されているということであるとすると、かなり高い率で起訴されているのかなという気もいたします。

 ただ、白書とかを拝見させていただいてもちょっとわからないのは、裏を返せば三〇%前後の人は起訴されていないということになるわけでありまして、素朴な法感情からいたしますと、被害者が亡くなられているのに三割の人が起訴されていないというのはちょっと不可解な気がするのですが、その辺の事情について御説明願います。

古田政府参考人 委員御案内のとおり、こういう事故が起きますと、警察御当局では当然捜査をされるわけで、捜査をされた結果、犯罪が成立するかどうかにかかわらずこれはすべて検察官に送致をしなければならないということになっているわけでございます。

 したがいまして、検察官が送致を受けた業務上過失致死事件の中でも、やはり被疑者に過失が認められなかったというふうなケースももちろんございますし、あるいは、過失が仮にあったとしても、むしろ被害者側の過失が大きくて被疑者側の過失は非常に小さいというふうなケースなどもあるわけでございます。そのほかにも、例えば、家族を乗せて車を運転している際に、たまたま運転を誤って家族を死亡させてしまったというふうなケースなど、いろいろなケースがございまして、一律にすべて、犯罪の成立が認められるにもかかわらず不起訴にしているというわけでもございませんし、事故の態様もさまざまでございます。

 そういうものを除いた、これは起訴して処罰すべきだと考えられているものが、先ほど申し上げましたように大体六〇%から七〇%、昨年ですと約六七%ぐらいということでございます。

山花委員 そういたしましたら、ちょっと論点を変えまして、警察の方に、交通局長にお伺いします。

 交通事故が発生したという場合に、事件ですから、まず警官などが現場に到着して、その時点でどっちが加害者かわからないのかもしれませんが、加害者、被害者から事情を聞くであるとか、あるいはケースによってはそのまま捜査に移行するとか、そういうことがあろうかと思いますけれども、特に、被害者の観点から見た場合でありますが、その時点での交通事故の被害者というのは、大概自分がそういう目に遭うとは思いもよらないわけでありまして、その時点では、今から何をしていいのかとかこれからどうなるのだということについて、大変情報が枯渇しているものと考えられます。

 そこで、事故の直後に被害者と直接接しているのは警察官というケースがほとんどでありましょうから、そういった際に、事故後の手続等についての何らかのケアというか情報提供などをしているのだと思いますが、そういったことについての現在の取り組みということについてお聞かせ願いたいと思います。

坂東政府参考人 犯罪被害者対策につきましては、警察といたしましても非常に力を入れて対策を実施しているところでございまして、交通事故の被害者につきましても、私どもとしても委員御指摘のような形でいろいろな被害者対策を講じているところでございます。

 その被害者に対する情報の提供ということでございますけれども、今後どういった手続で進んでいくかとかいったような諸手続を書いた説明書、あるいは損害賠償というのはどういう形になるのかとか、あるいは相談窓口というのはどういうところにあるのかとかいったようなものを盛り込んだパンフレット等を事故直後に被害者の方にお渡しするということで、そういった意味での被害者対策も講じている。あるいは、それ以外にも、やはり捜査情報等の情報提供も行うといったようなこともしているところでございます。

山花委員 パンフレットなどをお渡しされているということですけれども、ぜひそういったことを徹底していただきたいということをお願いいたします。

 長勢法務副大臣にお尋ねいたしますが、今まで交通事犯についていろいろとお尋ねしてまいりました。現在、交通事故があって、それが死傷の結果を伴う場合には、道路交通法違反ということとともに業務上過失致死傷の形で処断されていると思います。

 ところで、この業務上過失致死傷罪という刑法の二百十一条の規定でありますけれども、この規定が制定された明治四十一年、四十年のころなんでありますけれども、そのころ、日本全国における自動車の保有車両というのは大体二十台ぐらいだったと言われております。もともと二百十一条の対象というのは、当時新しく起きてきていた重工業とか化学薬品工業とか医療行為などに対するものを想定されていたと言われているわけであります。これが交通犯罪に適用されるようになったのは、懲役刑が選択刑としてあるからというような事情もあったのだと思いますが、恐らく本来の立法目的に二十数台しかない車をターゲットにはしていなかったと思うのであります。

 このように、交通事犯を業務上過失致死傷で処断していることはもともと理論的には不自然ではないかと思うのでありますが、この点についてどのような御所見をお持ちでしょうか。

長勢副大臣 最近、悪質、重大な交通事故による死傷ということに対する刑罰のあり方ということについて、被害者を含めて、一般的に少しおかしいのではないかという議論がたくさんあるわけでございます。したがいまして、交通事犯についての刑法上の取り扱いについて見直しをしなきゃならぬという考え方で、今調査等も進め、早急に対応を考えたいというふうに作業をさせていただいておるところでございます。

 ただ、これは、刑法上の問題と道路交通に関するルールを守るという問題とは、もちろんつながる問題でございますけれども、法の考え方の思想が違いますので、やはり一応理論的に分けて議論すべきことであろう、このように思っております。

山花委員 今回のこの道交法の改正によりまして反則金の引き上げということが盛り込まれておりますが、その対象となっているものの一つに過労運転というものがございます。六月以下というものを一年以下にするというのが入っているわけです。

 そこで、道路交通法の第六十六条を見ますと、「何人も、前条第一項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。」とあるわけでありますけれども、薬物の影響その他ということだと割とわかるのですが、過労というのがちょっとわかりづらいような気がいたします。日常的な語感からいたしますとかなり疲れているというだけで、例えば、車を運転しているときにかなり疲れている様子だったらお巡りさんにおいおいと言われるようにも読めるのですが、これは一体どういう形で解釈されて運用されているのでしょうか。交通局長、お願いします。

坂東政府参考人 このたびの改正道路交通法案によりまして、悪質な運転行為の罰則、反則金ではございませんで、罰則を引き上げるということにしておりまして、その一つに過労運転というのがございます。

 通称過労運転と呼んでおりますけれども、これは、過労とかあるいは病気などによりまして正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転する行為ということでございまして、この典型がいわゆる居眠り運転だと思いますけれども、ただ、居眠りがあったからといって直ちに過労運転であるといったような形で認定してはおりませんでして、事案ごとに、具体的に、あるいは客観的事実に照らしまして認定を行っているというところでございます。

 具体的に申しますと、交通事故が発生したその捜査の現場におきまして、連続して運転した時間がどのぐらいであったのかとか、あるいは業務上拘束されている時間がどのぐらいであったのかとか、あるいはその間に休息時間をどのぐらいとったのか、あるいは何回とったのかといったようなことを総合的に判断いたしまして、過労等による居眠り運転が原因であると認められた場合におきましては、その運転行為を過労運転違反といったような形で認定しているところでございます。

山花委員 ぜひその点は厳格な運用をお願いいたしたいと思います。

 最後に、道交法についての規制一般についてちょっとお話を伺いたいと思います。

 どうも道路交通法というのは余り、守らなければいけないという意識が薄い法律の一つではなかろうかと思います。町中で走っていても、法定速度を守っているとどんどん抜かれたりとか、かえって交通の妨げになるんじゃないかと思うようなケースもないわけではありません。

 私も、最近は余り運転しなくなったのでありますけれども、大学時代京都におりまして、伊吹国家公安委員長のポスターは当時からよく拝見させていただいておりましたが、そのころはバイクもよく運転していたのでありますけれども、京都にせよ東京にせよ、車等を使っていて非常に思うことでありますが、スピード違反についても、例えば五キロ超ぐらいとか、十キロになるとちょっとどうかと思いますが、一般道でもそれぐらいで走っている車の方がむしろ多いように見受けられるケースもあります。

 これについてなんですけれども、例えば免許の反則の点数なんか見ると、大体十五キロ以下とそれから上で細かく刻んでいったりしておりますけれども、実際、十五キロ以下というか、十キロ程度オーバーしても余り捕まるケースがないような印象があります。ただ、実際はちょっとどうかわかりませんけれども。

 何を言いたいかというと、例えば一キロでもオーバーすればすぐすべからく捕まえてしまえということを申し上げているわけではありませんで、本当に取り締まらなければいけないぐらいのスピードのところまでは制限速度を、例えば、どう見たって六十キロぐらい出して走っても安全なようなところが何か五十キロ制限ということになっていたりというケースも見られますし、かえって法定速度を低く抑えていることによって現実には守りにくいようなスピードになっていて、それがかえって規範意識を麻痺させているのではないかというような印象を持っております。

 また、駐車禁止についても同様でありまして、大体、これは法の規定というよりも実際の運用の問題なんでしょうけれども、町中は、見ているとすべからく駐車禁止のエリアのように思われるわけであります。決して揚げ足取りをしようとするわけではありませんが、例えば、三車線あるところで、かつて駐車禁止だったところがパーキングメーターをつけて駐車できるようになっていたりするんですけれども、もともと駐車禁止の趣旨がそこに車をとめるから危ないということであったんだとすると、パーキングメーターをつけようが危ないものは危ないんだと思うわけであります。

 そうだとすると、本来は規制すべきじゃないところも規制してしまっているのではないかというような印象を持っているのであります。これは運用の問題ですから、もう少し合理的な規制ということを考えてもいいのではないかと思うのですが、この点についてどのようにお考えなのか、あるいはどのような取り組みをされているのか、お答え願いたいと思います。

坂東政府参考人 交通規制は、委員御指摘のとおり、現在の道路あるいは交通の実態等に照らして、やはり合理的でかつ適正に行われるべきものというように私どもも考えているところでございます。

 したがいまして、例えば速度規制につきましては、道路構造あるいは交通事故の発生状況あるいは沿道環境等の諸条件というものを勘案して決めているところでございますけれども、当然ながらこういった諸条件というものもやはり変わってまいりますので、そういった変わった状況に見合ったような形の交通規制が行われるように、随時速度規制につきましても見直しを行うように、指導しているところでございます。

 また、駐車規制につきましても、道路構造とかあるいは地域の交通実態等を勘案しながら、幹線道路など特に必要がある区間については駐車禁止規制を強化する一方で、特定の時間帯とかあるいは特定の曜日に駐車需要が減少する地域では駐車禁止規制を解除するといったようなことも行っておりますし、あるいはまた、都市部の商業地域等で短時間駐車需要が多い路線では、パーキングメーターとかあるいはパーキングチケットといったものを設置して時間制限駐車区間規制というものを実施するなどして、都市全体の交通を大きくとらえた上でいかに駐車規制があるべきかということで、きめ細かな交通規制を実施しているところでございます。

 今後とも引き続き、合理的かつ適正な交通規制となるように警察としては努めてまいる所存でございます。

山花委員 ぜひその点、努力を今後とも引き続きお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

横路委員長 井上和雄君。

井上(和)委員 民主党の井上和雄です。

 本日は、道交法関係の法案の審査ということで、私、交通安全対策に関して政府にお伺いしたいと思います。

 現在、春の交通安全週間の真っ最中ということでございます。私もけさ、この委員会、朝九時ということでしたから、もう八時ごろ出勤したわけですけれども、横断歩道のところでお巡りさんが立っていらっしゃいまして、御苦労さまですという声をかけさせていただきました。

 地下鉄で出勤しているんですけれども、地下鉄の中で、本当にちょうどラッシュアワーの時間でしたから、もう満員電車の中で押しつぶされながら、手持ちぶさたに車内の広告というのを眺めていたんですね。そうしましたら、こういう広告が見つかりました。

 これは、日本自動車工業会というのが出していたものなんですが、交通事故はすぐそばにある、決して他人事ではありません、そういうスローガンで書いてありました。平成十二年の交通事故による負傷者数は百十五万人、大都市の人口に匹敵しますというふうに言って、都市の人口が書いてあったんです。川崎市の人口が百二十四万人、広島市の人口が百十二万人、交通事故の負傷者数が百十五万人ですから、つまり広島市の人口より多い人が交通事故によって負傷しているという実態をこの広告によって宣伝しているんですね。

 私、これを見て、ちょうどこの内閣委員会で交通安全の問題をきょう質問しようと思ったものですから、これはもうぜひ委員の皆さんに認識していただくべき問題じゃないかなと思いまして、この場でちょっと御紹介させていただきました。

 それで、交通安全対策というのは、これは今警察庁長官いらっしゃっていただいていますけれども、警察だけの問題じゃないし、とにかく国全体として取り上げていかなきゃいけない。そして、地方公共団体の役割も非常に重要だし、国民一人一人が本当に真剣に、交通事故の恐ろしさ、どうやって交通事故が起こらないようにするかということを日ごろの生活で考えていかなければならない大事な問題だと思います。

 私、この内閣委員となって、交通事故の問題、交通安全対策というものに取り組むときに考えましたのは、やはり十年ぐらいで国家目標として交通事故を半減する、交通事故の死亡者の数を半減するというような目標をきちっと立てて、それに取り組むべきじゃないかというふうに思っていたんです。もしそんなことを言ったら、おまえ何にも知らない一年生だからそんなこと言えるんだというふうに先輩から言われちゃうかななんというふうにも思っておったんですね。

 ところが、日本の国というのはやはり大したものだと思ったんですけれども、まさしく過去に交通事故の死傷者数を半減させたという事実があるんですね。昭和四十五年に一万六千七百六十五人死者がいた。それが第一次交通安全計画が始まったところなんですが、余りに死傷者が多いということで、それを半減させるということで目標を立てて、第二次交通安全計画、ちょうど約九年後の昭和五十四年にはそれが八千四百六十六人、五十五年には八千七百六十人、つまり十年前の一万六千人が八千人というふうに半減しているわけですね。これはやはり日本の国として大変な功績を上げたと私は言えると思うのです。

 そういう意味で、今本当に悲惨な交通事故をいかに減らすかということを、とにかく国全体として、またやはり立法府でも取り組んでいかなきゃいけないというふうに思います。

 そういう観点からきょうちょっと質問をさせていただくのですが、前回の内閣委員会で、私、官房長官に、各自治体における交通安全対策というものは非常に重要だということを申し上げたんですね。そして、交通安全対策基本法の中に、「市町村交通安全対策会議を置くことができる。」というふうにあるので、とにかくこの市町村交通安全対策会議というものを、置くことができるだから別に置いても置かなくてもいいということではなくて、やはり日本全体の三千三百ある自治体全部にこういう対策会議をきちっと置いて、交通安全関係に関する条例もつくって交通安全に取り組むようにやってくださいというお願いをいたしました。

 その後、官房長官が一体どういうような指示をされて、私がお願いしたことが具体的にどういうふうに進んでいるか、坂井内閣府副大臣にお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。

坂井副大臣 去る三月二十八日にこの内閣委員会において委員より官房長官に対していろいろ御質疑があったことは、私もよく官房長官からお聞きしまして、その中でどういう対応をとるかということですぐ協議したわけであります。

 まさに先生は内閣委員会への所属の希望が、このときの委員会でもお話がありましたけれども、交通事故対策だということで、その御努力に心からの敬意を表したいと思います。

 交通安全対策、そういう意味では我々としても極めて重要な問題であるということで、地方公共団体も大きな役割を果たしている、また果たしてもらわなければいけない、そういうふうに認識しております。

 地方公共団体における交通安全対策会議の設置状況については、委員御指摘のとおり、三月二十八日の御質問の中では平成八年十二月末現在で千二百八十四市町村だったのですが、そういう市町村の実態等を含めてまた取り組まないといけないということで、現在、都道府県、政令指定都市に対して調査を行っているところです。

 具体的に申しますと、四月六日の事務連絡で、交通安全対策会議の設置、交通安全計画等の制定及び交通安全関係条例の制定状況調査についてということで、各県、政令指定都市に対して調査依頼をしているところです。できるだけ速やかに実態の把握にまず努めていきたいと思っております。

井上(和)委員 どうもありがとうございます。まさしく今、第七次交通安全基本計画というものができたときですから、各自治体においてもこういう計画をつくってもらいたいのですね。

 それで、交通安全対策基本法第二十条に、中央交通安全対策会議というのは、所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、都道府県及び市町村交通安全対策会議に必要な勧告をすることができるとあるのですよ。つまり各自治体で交通事故がよく起こっているとかいろいろな問題があったら、中央交通安全対策会議として、もっとちゃんとやれと言うことができるというふうに私はこの条文を解釈しているのですね。ところが、その安全対策会議がなければ何もできませんから、そういう意味で、ぜひ私がお願いしたことを、今御答弁ありましたからやってくださっていると思うのですが、なるべく速急にお願いいたします。そしてまた中央交通安全対策会議もどしどし勧告すべきだと思うのですけれども、そのことに関しては後でお伺いいたします。

 それで、中央交通安全対策会議が本当に機能しているのかどうかというのはちょっと私興味がありまして、一応、会長は内閣総理大臣というふうになっています。そして交通安全基本計画を作成して実施するということなのですけれども、内閣総理大臣はお忙しいですから会議にもなかなか出席できないだろうし、だから、この会議が本当に機能しているのかなということで、特に第六次交通安全基本計画中の過去五年間に一体この対策会議が何回開かれているのか知りたいのですが、教えていただけますか。

坂井副大臣 中央交通安全対策会議は、交通安全対策基本法第十五条に基づき、内閣総理大臣を会長として、関係行政機関の長を委員として組織されていることは委員御指摘のとおりでございます。

 平成八年以降、同会議は、平成八年三月十二日及び平成十三年三月十六日の合計二回の開催ということでございます。これは、基本的に基本計画をつくるときにということでございますので、この二回開催したということであります。ただ、中央交通安全対策会議は、五年間を対象期間とする交通安全基本計画の作成を主要任務とするものでありますから、回数としてはそういうことでありますし、また基本的には、基本計画の作成のときに開催することが適切であるというふうに考えているわけであります。

 ただ、同会議には、専門の事項を調査するために専門委員会を置くことができるとされておりますので、最近では平成十二年二月からことしの二月にかけて、五回にわたって専門委員会の会議も開催したところです。

 今後とも、第七次交通安全基本計画に基づいて、関係方面とも連携を図りながら、各般の施策を強力に推進していきたいと思っております。

井上(和)委員 坂井副大臣、交通安全対策基本法の第十四条には、中央交通安全対策会議は、交通安全基本計画を作成し、及びその実施を推進することとあるんですよ。今のお話だと五年間に二回しか会議をやっていないということは、要するに、作成していて、実施を推進する方はどうなっているのでしょうかね。

 ちょっと私はそのことで伊吹国家公安委員長の御意見を伺いたいのですが、会長が内閣総理大臣だと、やはりなかなか機能しないと思うんですよ。例えば、もし伊吹大臣が国家公安委員長として会長代理という形で交通安全対策会議を仕切っていらしたら、過去、もっともっと交通事故が少なくとも大臣がいらしたときに減ったのじゃないかと思うんですけれども、どう思いますか。

伊吹国務大臣 会議の開催はただいま坂井副大臣がお答えしたとおりだと思うのですが、実は、私も当然そのメンバーでございます。

 私が森内閣の閣僚になりましてからは、会長である森総理は交通安全ということに実は大変熱心におやりになりまして、私の記憶だけでも、私は十二月五日に閣僚の任命を受けましたが、すぐに私に、暴走族の高速道路でのばっこを何とかできないのかというお話をされまして、先生御承知かもわかりませんが、年末に、実は暴走行為をする前に予防的にこれを取り締まったわけです。これはかなり決心が要ったわけですね。暴走行為をしない者の人権だとか行動の自由はどうだという批判が必ず国会で出てくるのじゃないかと実は私は思ったのですが、各党御理解いただいて、比較的それはそのまま。その後、この交通安全基本計画の策定がございまして、先週の土曜日でございましたですか、築地小学校で交通安全週間の大会があって、森さんはそこへ行っていろいろ御自身も、その被害、交通安全の計画、つまり死傷者を減らしていくとか、そのために会長として大変御努力をなすっております。

 ですから、先生おっしゃったように、時々中間的な報告を聴取すると同時に、会議という形にとらわれる必要はないと私は思うのですが、会長のリーダーシップ、実はこれは官房長官という、各省の調整の上に立っているものですから、内閣総理大臣、官房長官が主体的にやっておりますけれども、私も遠慮せずにいろいろ申し上げて、先生の御趣旨に沿うようにみんながその実施をメンバーとしてチェックをしていく、それで、何か足らざるところがあれば、閣僚懇談会なんかでも私は時々そういうことを申し上げているのですが、よく心得てやらせていただきます。

井上(和)委員 少なくとも、五年間に二回しか会議がなかったということは、これはやはり政府として怠慢だったと言われてもしようがないと思いますよ、大臣。だから、だれが今度の首相になるかわかりませんが、やはり一年に一回ぐらいは、総理が出られなかったら代理で国家公安委員長でもいいですし、官房長官でも官房長官代理でもいいのですから、そういう方にやっていただいて、この計画が推進されているかということをきちっとチェックすべきだと思いますね。

 今は政府の方だけなんですが、実は私、国会はどうなっているかということをちょっと調べましたら、国会もやはりこの件に関しては大分怠慢ですね、委員長に質問するわけにはいかないのですけれども。

 国会の状況を調べましたら、昭和四十二年から平成八年までは交通安全対策特別委員会というのがあったわけですね。これで取り組んできた。参議院の方でも平成六年までは同じようなものがあったのですね。ところが、もうそれがなくなってしまった。そしてまた地方行政委員会で交通安全関係の質問をした方も、平成十一年にチャイルドシートの法律の改正があって、そのときには結構質問された方がいたのですけれども、その後十三年までの二年間、公明党の若松議員が一回質問されただけで、国会でも一回しか質問されていないという状況なわけです。これは、五年間に五万人の方が亡くなっているわけですね、そういう死亡者を減らすということに国会としてまともに取り組んでなかった、こういうふうに国民から言われても私はしようがないと思います。

 そういう意味で、ぜひ委員長並びに理事の方に、余りいらっしゃらない、お休みになっている方もいらっしゃいますが、第六次交通安全基本計画というのはちょうど終わったわけですね。どうもその目的達成することはできなかったという反省材料もあるので、この反省会というのをぜひ内閣委員会が中心になって私はやるべきだと思うのですよ。これは小委員会とかどんな形でもいいと思います。なかなか特別委員会とかそういうのは難しいですから、任意参加の会合でもいいと思うのです。しかし、過去五年間に五万人近い方が亡くなったという事実を重く受けとめて、内閣委員会としてもしっかりとこういった問題に取り組むという姿勢を国民に見せることが大事だと思いますので、ぜひ、委員長及び理事の方の御検討をお願いいたします。

 きょうは警察庁長官にもいらしていただいているので、長官にお伺いいたします。

 警察と各自治体との連携というのはどうなっているのかということに関してお伺いしたいのですね。一応、都道府県の交通安全対策会議では県警の本部長及び警視総監がメンバーになっていらっしゃるということなんですが、どうなんでしょうか。

田中政府参考人 交通安全対策につきましては、先ほどからも委員の御質問にございましたように、国民の皆さん一人一人が自分のものとしてお考えいただくというのが何よりも大事でございます。しかし、そのように国民の皆様に意識づけをするということにつきましては、警察のみならず、地方公共団体の責務も重要であるというふうに認識しておりまして、私どもは、地域住民の安全の確保のために、警察そして地方公共団体との連携が不可欠であるというふうに認識をしております。

 私どもといたしましても、地方公共団体と共同いたしまして交通安全活動に取り組んでおりますほか、交通事故の発生状況等に関します情報の提供、あるいは安全教育に対します支援、協力を行いますなど、地方公共団体の行う交通安全対策が的確かつ円滑に実施されますよう、その連携を強化しているところでございまして、今後ともこの連携の強化にさらに努めてまいりたいと考えておるところでございます。

井上(和)委員 田中長官、それではちょっとお伺いしたいのですが、田中長官も当然警察の署長をやっていらしたこともあると思いますし、県警本部長もやっていらしたと思うのです。署長のときに、どこで署長をやっていらしたか私は存じ上げませんけれども、各自治体で行った交通安全対策会議に出席されたことはございますか。

田中政府参考人 お答えいたします。

 私は、神奈川県の横浜市で昭和四十六年に警察署長を一年半ばかりやらせていただきました。現場に行きますと、もちろん犯罪の防止とかあるいは犯罪の検挙というのは大変重要な警察の仕事でありますけれども、現場の感覚からいたしますと、警察署長の仕事の半分以上が交通安全、交通事故防止の問題でございます。

 今お話しのように、対策会議に出たかどうかにつきましては記憶がございませんけれども、区長さん初め区の関係の方々と一緒に街頭に出て安全面のいろいろな広報活動をしたりとか、あるいは区が主催しますところの会議に出席したという記憶がございます。

井上(和)委員 田中長官のことですから、きっと一生懸命やられていたと思うのですけれども、交通安全対策会議というものが長官の記憶に残っていないということは、それだけまだ存在意義が薄い状態なんじゃないかなと思うのですね。長官みずから今おっしゃったように、交通の問題は警察だけの問題じゃないですし、国民一人一人が取り組まなければいけない、自治体の議員とか首長も一生懸命やらなければいけない問題なので、そういう意味できちっとした枠組みが私は大事だと思うのですよ。

 坂東交通局長、いかがですか。同じ質問です。

坂東政府参考人 私も委員の御指摘と同感でございます。やはり自治体と特に私ども警察との連携というのは非常に重要であるというように考えまして、昨年の九月か十月だったと思いますけれども、初めての試みといたしまして、私ども、旧総務庁と一緒になりまして、自治体の課長と私ども県警の課長とを集めまして、とにかく、第六次五カ年計画の最終年である、その政府目標を達成するにはいかにあるべきかというようなことを協議し、かつ、県レベル、市町村レベルで、同じような形で警察と自治体が協力してやってくれということで指示をしたところでございます。

 各県警におきましては、そういった方向で自治体の方々と協力をして、結果、残念ながら政府目標の達成はできませんでしたけれども、それなりの成果を挙げてきたところではないか、そのように考えておるところでございます。

井上(和)委員 質問は、坂東局長が警察署長のときに、交通安全対策会議というものに出席して首長さんと一緒にやったかどうかということなんです。

坂東政府参考人 残念ながら、私は、警察署長という経験はございませんでしたけれども、県警の交通の担当課長というのを経験させていただきました。その折には、ただいま申し上げましたような形で、県の関係者の方あるいは市の関係者の方々といろいろな形で、交通安全というものはいかにあるべきか、あるいはどのような形で対処すべきかということで協力した記憶がございます。

井上(和)委員 こういうことをお伺いしたのは、基本的に、地域の、特に自治体の市長さんとか町長さん、そういう方を動機づけさせて予算をつけてもらうとか教育委員会に働きかけて子供たちの協力を得るとか、そういう地域ぐるみの取り組みは大事だと思うのですね。

 そういう意味で、ぜひ、先ほど内閣府の方にもお願いしましたけれども、そういう地域できちっと取り組むという出発の第一歩として安全対策会議をきちっとやる。国の方でやってなかったという実情がありますから、まして、なかなか現場の方でやってなかったのじゃないかと思うのですけれども、それをきちっとやっていただきたいということで私は申し上げたのです。

 先ほど取り締まりの話が出ましたから、余り時間がなくなってきましたので、一点、私は長官にお伺いしたいのです。

 一昨年の東名高速で井上御夫妻のお子さんが亡くなった事件で、私も何回も井上さんとお会いしていろいろなお話を伺いました。私、思ったのは、ああいった暴走車に近いような車を取り締まるのは普通のパトカーじゃ無理じゃないか、やはりヘリコプターを飛ばしておいて発見するのが一番効率的だと思うのですけれども、日本の場合はヘリコプターを使ってそういう取り締まりを余りやっていないようなんですが、ヘリコプターの使用に関してはどういうふうに御見解をお持ちですか。

田中政府参考人 警察活動におきますところのヘリコプターの活用というのは大変大きな柱の一つでございまして、近時、ヘリコプターを活用して、いろいろな面での警察活動に利用しておるところでございます。

 今、高速道路におきますところの事故あるいは取り締まりにつきましてヘリコプターを使ったらどうかというお話でございます。高速道路におきますところの交通取り締まりにヘリコプターを使うというのは大変有効であるということは言われておりまして、現実に、地上のパトカーと連携した暴走族の取り締まりあるいは通行帯違反取り締まり等に活用して成果を挙げております。

 今後とも、取り締まり活動に当たりまして、ヘリコプターの活用の範囲、あるいは具体的にどういうようなやり方でヘリコプターをもっと活用するかということにつきましてはさらに検討を重ねてまいりたい、かように考えているところでございます。

井上(和)委員 先ほど申し上げた東名の事故の場合は、私もテレビで見ていたのですけれども、暴走車がいるということを通報された方がいるのですね。警察もそれによってパトカーを走らせたけれども、結局見つからなかったかどうかしちゃったということで、本来は救えるべき命を、はっきり言って警察の不手際によってみすみす見殺しにしたという状況だと思います。

 そういう意味で、高速道路での取り締まりにはやはりヘリコプターをきちっと使うようなことを考えてやるべきじゃないかと思います。国民の生命財産を守るというのが警察の大事なあれですし、もしそれでお金がかかるのだったら、国もきちっと出すべきだと思います。

 一言、私個人のアメリカでの経験を申し上げますと、私はアメリカに何年か住んでいたのですけれども、一度、スピード違反で捕まったことがあるのですね。これは、割と広い道でずっと走っていて、町に入ったのです。町に入ると、普通のところでは五十マイルぐらいの制限速度だったのが、急に三十マイルに下がるわけですね。そこのところでパトカーが待っていて、私、わからなくて、そのままぱっと入ってしまったら、何かレーダーみたいなものですぐ捕まったのです。何だろうと思ったらパトカーのお巡りさんに捕まって、罰金を大分取られた覚えがあるのですね。そういった意味で、取り締まりもすごく機動的です。

 そしてまた、高速道路におきましても、車線もたくさんあるということもあるかもしれないのですが、日曜日なんか、走っていても、ハイウエーパトロールがところどころ走っていて、よく捕まえているのですよ。日本の場合はそういうことがほとんどないですね。ほとんど見ないですよ。覆面パトカーで捕まっているというのも余り見ないですね。

 確かに、日本の場合、高速道路も車線数が少ないし、捕まえるのは非常に難しい状況にあるのかもしれないんですけれども、今、大型トラックの起こす事故も非常に多くなっていますから、こういった取り締まりに関しては警察はどういうふうに考えているのでしょうか。

坂東政府参考人 高速道路の事故でございますけれども、最高速度違反に起因する事故が非常に多いというところもございますので、警察といたしましては、高速道路上での速度違反の取り締まりにも力を入れているところでございまして、例えば、昨年一年間でございますけれども、速度超過の違反取り締まり件数は約三十六万九千件というところでございます。

 今後とも、自動取り締まり装置を大いに活用したり、あるいはパトカー等による追尾、そういったことによりまして、事故が多発しているところにおきましては速度違反に重点的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

井上(和)委員 あと、つい最近、週刊誌で、高速道路のパーキングエリアでお酒をたくさん飲んで、そしてまた運転しているということがかなり大きく報道されていたのですけれども、酒酔いの取り締まりはどうでしょうか。

坂東政府参考人 そういった報道も受けまして、全国各警察の支援をいただきまして一斉の取り締まりを実施したところでございます。その結果でございますけれども、飲酒運転二十六件、全国で検挙しているところでございます。

井上(和)委員 それは、もうこれでやめてしまうんですか。一回だけなんですか。今後とも継続してやっていかれるのでしょうか。

 そして、週刊誌によると、取り締まりがあると、それを無線でほかのトラックに知らせて、ほかのトラックはみんな途中の出口でおりてしまうとか、そういうことも報道されています。そういうことに対する対策はどうでしょうか。

坂東政府参考人 もちろん、先ほど申しましたように、高速道路上における速度違反による事故とか飲酒運転事故というものが起きていますので、当然ながら、これは一斉取り締まりで終わるというべきものではございません。やはり年間を通じてやっていかなければいけない事項だというように考えております。ちなみに、昨年中の高速道路上での飲酒の取り締まりの件数でございますけれども、四千六百二十八件でございます。

 なお、先ほどの一斉取り締まりの飲酒の件数でございますけれども、これは六十二件でございますので、訂正させていただきます。

井上(和)委員 では、終わります。

横路委員長 松本善明君。

松本(善)委員 最初に、交通安全基本計画について伺いたいと思います。

 今もお話がありましたが、やはり中央交通安全対策会議は、総理大臣が会長をやって関係閣僚が集まってやる、警察だけにこの問題を任すわけにいかないという、本来そういう性質のものだろう。きょうは副大臣がお見えですけれども、いろいろな事情でそういうことになったのですが、本来ならばやはり、たくさんの国民の命が失われたり負傷したりしているのに、こういうところで、場合によっては総理大臣がお見えになるとか、せめて官房長官が来られるとか、そういうような形で交通安全の問題を深く論議するというようなことをしないといけないのではないか。そういうことについては後でまた理事会でも委員長にも御相談申し上げたいというふうに思いますが、きょうは副大臣に伺いたいと思います。

 昨年の道路交通事故の死者は、警察庁の調査では九千六十六人、厚生省の統計では一万三千人ぐらいになっているようですが、五年ぶりに増加をいたしました。負傷者は百十五万五千六百九十七人と史上最大の件数になっています。事故件数も九十三万千九百三十四件と過去最高になりました。第六次交通安全基本計画、九六年度から二〇〇〇年度までの計画ですが、これは二〇〇〇年の死者数九千人以下を目標としたわけですが、達成に至らなかった。

 この目標を達成できなかった原因を、どういうふうに中央交通安全対策会議では分析をしているのでしょうか。

坂井副大臣 第六次交通安全基本計画は、各般の交通安全対策を鋭意推進した結果、期間内の年間の交通事故死者数は約千六百人減少したわけであって、一定の成果を上げることができたとは考えております。

 ただ、平成十一年の死者数が九千六人、十二年の死者数は九千六十六人と先生御指摘のとおりで、平成十二年までに九千人以下とすることを目指すという目標を達成できなかったことは大変に遺憾に思っております。また、平成十二年の負傷者数も先ほど御指摘のように約百十六万人で、交通事故件数約九十三万件とともに過去最高を記録し、極めて深刻な状況にあるものと認識をしているところであります。

 交通事故自身は、運転ミスなどの人的要件だけではなくて、車両の構造や性能あるいは交通環境という要素が複雑に重なり合って発生するものであるために、目標を達成できなかった理由が何かと言われても、一概に特定することは難しいわけでありますが、運転免許保有者数、車両保有台数、自動車走行台キロ等の増加に見られるような道路交通自身の量的な拡大というものと、交通死亡事故の当事者となる比率の高い高齢者人口の増加というふうな質的な変化が影響しているものと思っております。

 政府としても、今後とも、第七次交通安全基本計画に基づいて、関係各方面と連携を図りながら、高齢者の交通安全対策の推進、シートベルト及びチャイルドシートの着用の徹底など、交通事故死者数を減少させるための各般の施策を強力に推進してまいる所存です。

 きょうは官房長官は見えておりませんが、官房長官にもよくきょうの御意見もまたお伝えして、誠意を持って取り組んでいきたいと思っております。

松本(善)委員 官房長官も本会議で、期間内に千六百人減少したというようなことを言われたのですけれども、私は、それは報告されるのはいいけれども、その程度ではやはりいけないのではないだろうか。ここ十年で見ますと、事故件数及び死傷者数は一・三倍に増加をしています。近年一貫して増加をしておりまして、死傷者は、九八年には二十八年ぶりに過去最悪の記録を更新している。いわば新たな交通戦争と言ってもいいような状態になっている。それに対して、どうもやはり認識が甘いんじゃないか。私は、中央交通安全対策会議が真剣な検討をされるべきであるということを指摘して、次の質問に移ろうと思います。

 次に、事業用貨物運送にかかわる交通事故防止について伺います。

 警察庁に伺いますが、最近のトラックを中心とした事業用貨物運送の交通事故の推移と特徴をどういうふうに見ているか、御報告をいただきたい。

坂東政府参考人 お答えいたします。

 平成十二年中の事業用貨物自動車の交通事故の発生件数でございますが、三万七千七件でございまして、平成十一年と比べますと三千八百四十三件、率にいたしまして一一・六%増加しているということでございます。平成八年以降は、増減を繰り返しながらも増加傾向にあるといった状況でございます。

 それから、平成十二年中の事業用貨物自動車の交通事故の特徴でございますが、これは他の車種に比べまして死亡事故率が非常に高いということが言えるかと思います。それからもう一つは、一万台当たりの死亡事故件数が多いといったような特徴がございます。

松本(善)委員 今御報告があっただけでも、やはり事業用貨物の事故というのは非常に大きいし、重要だと思います。車両が大型だけに重大事故につながる。東名の事故に見られるように、常習飲酒運転による悪質運転手への重罰化というのは当然だと私ども考えておりますけれども、この件については改めて質疑の機会もあると思うので、また質疑をしたいと思います。

 ただ、重罰化だけでは不十分だというふうに思うんですね。貨物運送事故対策は、荷主との取引の状況でありますとか運送事業者の問題、労働環境問題など、その背景にまで踏み込んだ再発防止策がどうしても必要だと思います。最近の事業用貨物運送は、宅急便に見られるように、便利になった反面、運送の効率化、特にスピード化が業界に求められているということで、その負担が労働者に強いられる実態がありますし、景気低迷による輸送需要の伸び悩みなどで過当競争なども交通事故増加に反映しているということが推測できます。

 国土交通省の自動車交通局長に伺いますが、貨物運送事業を所管する立場から、これらの交通事故の状況、また、過積載だとか過労などの違反行為の状況などをどういうふうに把握しているか、お答えいただきたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる青ナンバーの車の御指摘のような違反の件数につきまして、十一年度の数字を今持っておりますが、過積載の防止違反で千七百四十七件、それから過労防止違反、これが二百七十四件というふうに把握しております。

 私どもとしては、輸送の安全を確保するとともに、トラック事業が健全に発展していくということをあわせまして、過積載、過労運転の防止が極めて大事だというふうに思っております。したがいまして、こういった違反行為に対しましては、特に悪質な事業者に対する重点的な監査を実施いたしております。また、各県単位にございますトラック事業の適正化事業実施機関、県のトラック協会が指定されておりますが、この活用などによりましてトラック事業者の指導を行ってまいりますし、また、事柄によりまして行政処分をもって対応するというふうに取り組んでいるところでございます。

松本(善)委員 旧運輸省は昨年の二月八日に、自動車交通局長名で荷主関係団体に、「トラック運送事業者の過積載違反等の防止に関する協力依頼について」という通達を出しております。その後もさまざまな通達を事業者に出しておりますが、交通事故の増加と荷主との関係をどういうふうに把握をして通達を荷主団体に出したのか、その状況をお話しいただきたい。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 一般にトラック事業者は荷主に対して弱い立場にあると考えられますので、荷主側に対しても、過積載、過労運転防止ということについて理解あるいは協力を求めていくことも大切だと思っています。

 このために、平成九年の四月から、トラック運送事業者に対しまして行政処分を行います際にあわせまして、その運行に関係いたします荷主に対して、事実に対して説明をし、協力要請だとか、場合によっては警告書を出すということをやって理解と協力を求めてまいったところでありますが、さらに荷主業界全体に対しまして、九十七団体でございますが、理解と協力を得る必要があるということから、昨年の二月八日に文書によりまして要請をさせていただいたところでございます。その後も、トラック事業適正化事業実施機関、県のトラック協会でございますが、その実施する荷主懇談会等を通じまして、過積載防止違反については荷主にも責任が及ぶんだといったようなことを周知徹底する等の啓蒙活動もあわせて行ってきているところでございます。

松本(善)委員 荷主と交通事故との関係は、今もおっしゃったように不可分の関係。協力依頼という通達だけで実効が伴うかどうかというのはもちろん疑問だと思うんです。通達を出してもう一年を過ぎたわけですが、事の性質上、のんびりしていられる問題ではないと思います。

 その後のフォローと実効性、どういうふうに通達を出してからの現状把握をしていらっしゃるか、また今後の対策はどういうふうに考えていらっしゃるか、お答えいただきたい。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 昨年の二月八日に文書による要請をお願いしました後、先ほども御答弁申し上げましたけれども、地域に密着するという意味において、県単位にございますトラック事業の適正化事業実施機関というものを通じまして荷主懇談会を開催させていただいておりまして、その場におきまして、荷主さん、事業者、それぞれが違反行為をした場合にどういうことになるかについてよく周知徹底をするということで、啓蒙活動をさらにさせていただいております。そういうことの積み重ねが一つ大事だと思っておりますので、それを現在までやってきております。

 今後でございますけれども、もちろん私どもだけではできるわけじゃございませんので、関係省庁とかあるいは団体とも協力しながらさらに広報活動その他に努めて、荷主とトラック事業者の適正な関係ということで確保ができるように努力してまいりたい、こう思っております。

松本(善)委員 次に、労働条件との関係であります。

 運輸交通業の労働環境というのは大変悪いというのが定評であります。運輸交通業関係の労働実態は、労働基準法や改善基準から見てどういうふうになっているか、他の業種と比べた場合にどうかということを厚生労働省安全衛生部長に。

坂本政府参考人 バス、タクシー、トラック事業等の道路運送事業における労働時間は、他産業に比較して極めて長いものになっております。先生御指摘の改善基準告示の違反状況につきましても、トラック関係では、監督指導を実施したもののうちの約五六%に改善基準告示違反が見られた状況にございます。

 この改善基準と申しますのは、平成元年に、バス、タクシー、トラック事業等の労働時間等が長いということにかんがみまして、労働基準法に基づく法定労働時間等に加えまして、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準として大臣告示として発出をしたものでございます。この中では、拘束時間でありますとか運転時間について種々規定をいたしております。

 厚生労働省といたしましては、この基準に基づいた監督指導を今後とも行い、自動車運転者の労働時間の適正化を行いたいと考えております。

松本(善)委員 基準法違反についてはどうですか。そして、それは他の分野と比べてどうなっていますか。

坂本政府参考人 労働基準法につきましては、労働時間だけ取り出した違反状況のデータが、大変恐縮ですが、集計できておらない状況でございます。したがいまして、労働基準法違反のデータは、運輸交通業につきましては七〇%の違反でございますが、これは労働時間のほかの就業規則等の違反も含めたものになっております。

松本(善)委員 私の方で調べた範囲では、一般貨物トラック関係が平成十一年、七二・九%、製造業が六六・七%、鉱業六一・二%、建設業五一・八%、商業六三・九%、金融・広告業六五・一%等々、やはり運輸交通業での労働基準法違反というのは非常に高いのですね。それは改善基準からだけ見てもそうでしょうけれども、高い。

 それで、運送事業関係の交通事故は仕事中の事故で、労働災害でもある。厚生労働省に聞きますけれども、全国の労災死亡者の中で占める陸上貨物事業関係者の労災はどのくらいありますか。

坂本政府参考人 平成十二年における陸上貨物運送事業における労働災害は、速報値でございますが、休業四日以上の死傷者数が一万二千八百三十一人、死亡者数が二百七十五人となっております。全産業に占める割合は、休業四日以上の死傷者数で見ますと一〇・九%、死亡者数で見ると一四・五%となっております。

松本(善)委員 全国の労災死亡者数のうち約三〇%に当たる六百八人が道路交通事故で、そのうち二百五人が陸上貨物運送事業関係者で、労働災害は全体の一〇%を占めるというふうに私ども思っていますが、どうでしょうか。

坂本政府参考人 平成十二年の労働災害の数字をこの三月七日までの集計でまとめたものにつきましては、先ほど申し上げたところでありますが、陸上貨物運送事業につきましては合計で二百七十五人、そのうち交通事故によるものが百九十六人であります。全産業では、千九百三人の死亡者数のうち交通事故によるものが五百九十人となっております。

松本(善)委員 やはり、いつの統計を見ても非常に高いものがあると思います。

 それで、昨年の十一月二十一日付で大阪労働局長が荷主関係団体にあてた「トラック運送事業の交通労働災害防止のための協力要請について」という通達では、次のように言っています。

  交通労働死亡災害の多くは、発生時間が深夜時間帯であること、事故の型が運転中の追突及び激突であることから、深夜運行、到着時刻指定、天候などの労働環境や労働条件からもたらされる疲労の蓄積や睡眠不足などが発生原因の一つとなっていると考えられるところです。

  労働災害防止は事業者の責務でありますが、特に、トラック運送事業における交通労働災害防止には、荷主の発注条件が労働環境や労働条件に大きく影響を与えております。

として、荷主の方々が無理な発注条件、過積載だとかスピード違反を前提とした到着時間の指定、荒天候無視等、こういうことを提示することがないよう、御理解、御協力をというふうにしています。

 大阪だけに限らず、全国的にも運送事業の労働条件と交通事故は不可分の関係にあると思いますが、その点については厚生労働省はどう認識し、そしてどういう対策をとっているのですか。

坂本政府参考人 先生御指摘のように、交通労働災害の防止は全国的な課題であると認識をいたしております。大阪労働局で発出をした文書以外にも、全国の都道府県労働局におきまして、同様の荷主に対する文書要請を行っておりますほか、荷主団体等に対する集団指導等も行っておるところでございます。

 そのほか、平成六年二月に、交通労働災害防止のための管理体制の確立、あるいは適正な労働時間等の管理、荷の適正な積載、適正な走行管理等を内容といたしました交通労働災害防止のためのガイドラインを策定し、その徹底を図っておるところでございます。

 厚生労働省といたしましては、今申し上げましたガイドラインの徹底を図りますとともに、都道府県労働局等を通じまして荷主、事業者等への協力要請等を行うこと等を通じまして、交通労働災害の防止に努めてまいりたいと考えております。

松本(善)委員 次は警察庁に聞きますが、今紹介した通達でも、「特に、トラック運送事業における交通労働災害防止には、荷主の発注条件が労働環境や労働条件に大きく影響を与えております。」こう触れておりますように、荷主の発注条件が労働条件に影響を与えていることを指摘しております。

 運転手は、使用者や荷主から無理な着時間を指定されてもなかなか拒否できないという弱い立場にある、これはもうだれが考えてもわかると思います。道交法では、過積載では使用者責任と荷主責任を追及し、罰則を設けておりますけれども、過労やスピード違反では使用者責任までで、荷主までは罰則がかかっておりません。今日の事故の増加とその実態を踏まえますと、道交法でも過労やスピード違反でも荷主責任に罰則を科すようにすべきではないかというふうに考えていますが、どうでしょうか。

坂東政府参考人 委員御指摘のように、過積につきましては、荷主等の責任を追及できるような規定というものを道路交通法の中で設けているところでございます。そこでさらに加えて、最高速度違反とかあるいは過労とかいうものに対する荷主等の責任が問えないかという御質問でございますけれども、過積とそれから速度等を比べますと、過積の場合におきましては、やはり荷主が過積となるような積み荷を引き渡し、あるいはその結果過積載が行われているといったようなこと、結構あると思いますけれども、片や速度違反等の場合におきましては、道路の状況とかあるいは休憩の状況等、いろいろな要因が介在してくるということもございますので、やはり荷主の行為とそれから運転者の違反行為との関係がより間接的であるのではないかというように考えているところでございます。

 警察といたしましては、今後の最高速度違反等の実態を踏まえまして、こうした違反行為の効果的な抑止のための方策につきまして引き続き検討してまいりたいと考えております。

松本(善)委員 伊吹大臣に今のことをやはり政治家として聞きたいのです。

 今のお話がありましたけれども、荷主の方で到着時間を決めるということになると、やはり、どうしても過労であるとかスピード違反だとかしなければならない場合であっても労働者に命令するということがあり得ると思うのですね。やはり、いろいろ拒否できないというのが普通の状況だと思います。それで大きな事故を起こした場合に、労働者だけが問題になるとかというふうになったのでは、やはり本当に安全対策にならないのではないか。全体として今の事故が非常に重大化しているので罰則を重くしようという、こういう動きがあるのは当然なんですけれども、それを労働者でありますとかあるいは事業主だけで終わらせないで、やはり荷主にもその責任を負わせるということをしないと万全の体制にならないんじゃないか。

 今、一応、警察庁の方では検討するということも最後には言いましたけれども、私は、やはりしっかりとその辺を考えませんと、ただ重罰化だけで事が解決するわけではないというふうに思いますので、国家公安委員長の御意見を伺いたいと思います。

伊吹国務大臣 国家公安委員長という立場よりも、閣僚の一人としてお答えした方が適当だと思います。

 ただいま参考人である警察庁の交通局長が申しましたように、その因果関係は種々だろうと思います。しかし、先生がおっしゃっていたようなことに起因するものを私は否定するものではございません。

 したがって、先ほど来厚生労働省や国土交通省からもお答えしておるように、労災の実態、その原因が一体どこにあったのか、それから先ほど国土交通省から参考意見を申し上げたような荷主に対しての要請、そういうものをもろもろ、十分見きわめて、先生がおっしゃったようなことがほぼ大きな事故や違反の原因である、つまり、いついつまでに持っていかなければならないから自分はスピードを出しちゃったとか、夜も労働基準法を超えて仕事をしなければ仕事がもらえないんだという原因がほとんどであるということがはっきりすれば、先生がおっしゃっているような法改正をしてもいいと私は思っております。

松本(善)委員 これは中央交通安全対策会議のメンバーでもある伊吹大臣、会議でも検討されたいと思うんですが、私は、それは一つ一つの事故について言うならば、いろいろな事情があり得ると思うんですね。ですけれども、こういうことがあり得る場合にはやはり荷主についての責任も問われることがあるぞという構え方が大事ではないかということを申し上げて、お答えになられるならば。

伊吹国務大臣 先生のおっしゃっていることはよくわかります。しかし、一般にそのようなものが原因の大宗を占めておるような場合は、また、それを私が確認した上でそういうことがあれば、先生の御意見を尊重したいと思いますので、私がもう無条件に先生の御意見に賛同したというような記事にまたならないように、ひとつよろしくお願いいたします。

松本(善)委員 私どもも、やはり貨物自動車、トラック関係の労働者やいろいろなことの状況を調べて質問をしております。どうぞお調べになって、やはり十分検討されたいというふうに思います。

 過労運転の防止とも関係をいたしますトラックの運転手の仮眠、睡眠施設の問題でありますが、最近は、大型トラックの運転席の後ろに横になれる設備が附帯している車がある。そのために、運転手がトラック内の施設で睡眠をとらされている事例がふえている。そこで、改めて睡眠施設の規定について国土交通省に確認をしたいんですが、わかりやすくするために具体的な事例で質問をいたします。

 トラック内に休息する設備があるトラックで、運転手が一人で三日間の長距離運転に出かけた場合、運転手が夜睡眠する施設は、疲労をとるということでは、トラックの設備では過酷であるし、疲労は回復しない。普通のビジネスホテルとか旅館など通常の宿泊施設が必要だと思いますが、どうでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 貨物運送事業者につきましては、貨物自動車運送事業法と貨物自動車運送事業輸送安全規則に基づきまして、運転者の適切な勤務時間とか乗務時間の設定など、運転者の過労運転を防止するために必要な措置を講じなければならないというふうになっております。このため、勤務が終了した後の休息のための時間が十分確保されるように運転者の勤務時間及び乗務時間を定めるように、事業者に対して指導しているところでございます。

 この休息のとり方でありますが、先生御指摘がございましたように、トラック内で睡眠させる、仮眠させるといったことを睡眠に必要な施設というふうに扱うことは適当ではないというふうに思います。

 今後の貨物自動車運送事業者に対する安全対策を強化するという視点から、先ほど申しました貨物自動車運送事業輸送安全規則、この改正を今考えていますが、この中で、運転者の乗務及び勤務につきまして、国土交通大臣が定める乗務時間等に関する基準を遵守しなければいけないことといたしまして、これは二・九通達を踏まえたものでございますが、その中で御指摘の点についてもその取り扱いを明確にしていきたいというふうに思っております。

松本(善)委員 要するに、トラックの中で寝かせるというようなことはさせないということで検討するということですか。もう一回、ちょっと。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げましたように、休息のとり方につきまして、トラックの中を睡眠に必要な施設に取り扱うというようなこと、それは適当ではないという視点で取り扱いを明確にするということです。

松本(善)委員 しつこいようだが、やらないんですね。

高橋政府参考人 はい。

松本(善)委員 それはもう、通常の宿泊施設でやるというのは当然のことだと思いますが、トラックの設備に泊めるような事業者はやはり厳しく指導すべきだと思うんですね。国土交通省は、労働時間、安全規則などを制度的にも見直して指導を強化すべきだ。今いろいろ検討されているようですが、そうすべきではないでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げましたように、安全規則、つまり省令を今改正いたすことにいたしておりまして、パブリックコメントも求めているところでございますが、そういう中で安全輸送という視点から必要な規定の見直しとかいったことにも取り組んでおりますので、今日の事態を踏まえまして積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

松本(善)委員 欠格条項の問題について警察庁に質問します。

 道交法の免許の欠格条項の問題ですが、精神病者、精神薄弱者、てんかん病者、目が見えない者、耳が聞こえない者、口がきけない者等の条文を削除したこと、これは障害者の社会参加を阻む要因を除くという点で一歩前進だというふうに思います。

 しかし、改正案は、新たに免許を拒否、取り消し、停止できる要件として「イ 幻覚の症状を伴う精神病であつて政令で定めるもの」「ロ 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて政令で定めるもの」「ハ イ又はロに掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの」という条文を加えた。これは事実上、てんかんなどの病名や疾患名を特定するものになっているんではないかと思いますが、どう考えますか。

坂東政府参考人 今回の改正案は委員御指摘のような形で改正をしたいということでございますが、そこで規定しているものは、いわゆる病気の属性というものを法律で書いたというところでございます。

松本(善)委員 この特性というのはてんかんということになりませんかというんですよ。

坂東政府参考人 具体的な病名は、そこに書いていますように、この法律が通りますと、この法律を受けまして政令で定めるという形になります。

松本(善)委員 この方々というのは差別に対して非常に神経質になっているのですよ。やはり、先ほども質問がかなりやられて、傍聴もたくさんの方がしておられましたけれども、その気持ちを察して可能な限りのことをしなければならない。

 私は、交通の安全のために何らかのきちっとしたあれはしなければならぬと思っているのですよ。しかし、運転免許取得の基準は、病気や機能障害ではなくて、その人の能力などが運転業務の遂行に適しているのかどうかということで判断されるべきだと思います。病気や機能障害で欠格とすることは、安全運転に支障のない幻覚や意識障害発作があることも無視されてしまいかねない。病気であっても運転ができる、そういう性質の病気もあるわけなんですね。

 障害者等の社会参加を目的とした政府の障害者施策推進本部決定の趣旨は、免許や資格について、障害名や病気を特定せずに、能力などが業務遂行に適しているのか否かで判断する基準を設けることがその趣旨だと思います。そうだとすれば、自動車の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるものというような程度で十分ではないかというふうに思いますが、どうですか。

坂東政府参考人 おおよそどのような場合に国民に対して処分を行うかにつきましては、その権利義務に直接影響を及ぼすということから、処分理由を法律で明らかにする必要があろうかと考えています。特に、私どもが所管しています運転免許行政というものは、御案内のように、七千四百万人、つまり皆免許と言われているようにほとんどの方が運転免許を取っている、そういった大量行政でございますので、どのような場合に免許を与えてどのような場合に免許を与えないかについての要件を法律に規定する必要性が非常に高いというふうに考えているところでございます。

 御指摘のように、拒否事由あるいは取り消し事由として、仮に、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある症状として政令で定めるものといったような形で規定した場合におきましては、具体的にどのような場合に免許の拒否等の処分を行うかについて、必ずしも法律上明らかではないのじゃないかというふうに考えています。

 そしてまた、私どもは、今回の改正におきまして、知的障害者、つまりこれは現在免許の欠格事由ということになっているわけでございますが、知的障害につきましては、免許の欠格事由から削除し、かつ、拒否とか取り消しの対象としないというふうにしておりますけれども、こういったものが含まれる可能性もある。さらにはまた、身体的能力といったものにつきましても、今回は拒否対象ともしないというふうに考えておりますけれども、こういった身体能力につきましても含まれることになりまして、やはり、規定がかなりあいまいになるのではないかというように考えているところでございます。

 他方、今回の改正案におきましては、現在、一定の病気にかかっている場合であれば一律に免許を与えないこととしているのを改めまして、処分の対象となる病気の属性というものを法律で明確に規定した上で、一律に道を閉ざすのではなくて、政令で定める基準に従いまして免許の拒否やあるいは取り消し等の処分を行うことができることとしています。これは、逆に言いますと、危険性が低いと認められる一定の事情がある場合には免許は与えるというような形でございますので、こういったことを御理解いただきたいと思います。

松本(善)委員 最後に、伊吹大臣に、中央交通安全対策会議のメンバーの閣僚として、今の話ですが、午前中の議論をよく聞いておりました。

 私どもも、交通の安全を確保するということと、それから障害者の皆さん方の要望とのバランスといいますか、それは必要だというふうに思うのですよ。だけれども、できるならば、障害者の要望が入れられて、しかも交通の安全が確保できる、そういう規定の仕方があり得ると思うのですよ。

 それは、いろいろ工夫されてきていることはもう間違いないと思います。そういう点では一歩前進だと思います。だけれども、せっかくやるのなら、もう一歩努力をして、そして障害者の皆さん方が社会参加できる、しかも交通の安全が確保できる、その工夫をやはりもう少しやるべきではないだろうか。その努力について大臣の見解を伺いたいと思います。

伊吹国務大臣 先生の、身体の障害はもちろんですが、精神障害、知的発達障害を持たれる方々に対する温かいお気持ちは、全く私も共有いたしております。

 午前中、石毛先生からも同じようなお尋ねがございまして、これから政令を書く段階で、各障害団体の方も含めまして、どういう形がいいのかということはよく御相談させていただきたいと思います。

 ただ、先ほど参考人が申しましたように、これはある意味では共同参加の権利を公益のために制限する行為をするわけですから、あいまいな形で法律、つまり立法府のお許しをいただいて、その後政令で行政府の形としてこれを決めていくというよりも、私は、やはりはっきりとしておいた方がむしろいいんじゃないかなという気もいたします。

 ここのところは、お互いの持っている法律に対する判断の異なるところかもわかりませんけれども、お互いに、石毛先生も、先生も、私も、同じような気持ちをもって、この政令のつくり方については工夫をさせていただきたいと思います。

松本(善)委員 私は、そう違いはないので、やはり工夫の、知恵の働かしどころではないかということを申し上げて、終わりたいと思います。

横路委員長 塩田晋君。

塩田委員 自由党の塩田晋でございます。

 まず最初に、伊吹国家公安委員長に、交通警察行政の基本は何かということについてお伺いいたします。

 最大、最高の行政の目標というのは、やはり交通の安全の確保であり、また交通の円滑化、これを促進することである、このように思うわけでございますが、中でも交通死傷者が大変な人数であるわけですね。これを皆無にしていく、これは最大の目標でなければならないと思っておりますし、また、交通にかかわる犯罪等が現にあるわけでございますが、これをいかにしてなくしていくか、ここに尽きるんじゃないかと私は思うのでございます。

 そういった観点から、今国会に提出されております二つの閣法、道交法の改正と運転代行業法の新設、新法でございますね、この二つが今審議の対象になっておるわけでございますが、今申し上げました警察行政の基本、目標からいって、この二法はどのようにそれを具体化するものであるかということについて、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

 この法案の中では、運転者の負担軽減といったことも入っておるわけですね。免許の有効期間の三年から五年への延長とか、あるいは更新期間の誕生日を挟んでの二カ月への延長、こういうことも入っておりますし、その他いろいろな緩和の措置も行われる条項が入っておるわけですね。そういったこととかみ合わせましてどのようにこの法案を考えておられるのか、御説明をいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 交通の取り締まり、治安に限定をする前に、警察というものの基本的に課されている仕事というのは、やはり、日本の社会秩序を守って国民に安心した暮らしをしていただく、この一点に私は尽きると思います。そのために憲法に保障されている国民の諸権利を制限するという公権力を与えられているわけでございますから。

 交通の分野でいえば、やはり、先生が先ほど来おっしゃっている、交通秩序を守って、そしてできるだけ交通被害が出ないようにしていく。しかし同時に、その中で、国民の権利を抑制するということによってその公益を守っていこうとするときに、権利の抑制、あるいはもっと簡単に言えば国民の便利さとか暮らしやすさというのはできるだけ制限しない形で秩序が守られれば一番よろしいわけですから、そういう意味で、いろいろ前回の法改正以降見きわめて、五年にしても大丈夫じゃないか、少しIT化だとかIC化というものが進んできたりすれば誕生日一カ月じゃなくて二カ月にしてもまあ何とかいけるんじゃないかとか、こういうところはできるだけ便宜を国民の皆さんに図れるようにした。

 しかし一方で、そのことによって安全とか社会秩序が乱されると困りますので、そこのところは罰則の強化等も行っておりますし、同時に、運転代行業においては二種免許を義務づけるとか、特に酒酔いの、酔客の方々のためのお仕事で、これは結局酔っぱらい運転を、まあ、言えば抑えているわけですが、それと、今度は酔っぱらい運転の罰則の強化というのを道交法に盛り込んでおりますので、あれやこれやいろいろ考えまして、可能な限り便宜を図りつつ交通秩序を守っていくためにこの二法をお願いしたい、こういうことでございます。

塩田委員 悪質、危険な運転をなくしていくというその目的のために罰則を強化していく。余りにも今まで軽過ぎるんじゃないか、こういう世論もあり、被害者からの訴えもあるという中でこれが強化された法案であるということは理解できますが、罰則につきまして、この法案の罰則の強化はまだ手ぬるいんじゃないかという意見もあるわけですね。

 そこでお伺いしたいんですけれども、外国の罰則の例、これも研究されて出された結論かと思います。また、刑法の全体的な横並びの罰則、量刑の検討が行われて、またいずれ抜本的な改正が行われるという段階ではないかと思うんですが、その中でこの法案が出てきたと思いますが、外国等について調査をされたその状況について御説明いただきます。

坂東政府参考人 悪質、危険な運転行為というように言われております違反の外国の事例、主にフランスとアメリカを例にとって御回答したいと思います。

 例えば救護義務違反、いわゆるひき逃げでございますけれども、これに対する罰則でございますが、フランスでは二年以下の拘禁もしくは二十万フラン、日本円に換算いたしますと約三百四十万円程度になるんじゃないかと思いますが、二十万フラン以下の罰金ということになっております。それから、アメリカの統一車両法典では、ひき逃げに対する罰則は、三十日以上一年以下の禁錮もしくは百ドル以上五千ドル以下の罰金またはこれらを併科するということになっています。

 次は飲酒運転に対する罰則でございますが、フランスでは二年以下の拘禁もしくは三万フラン、約五十一万円以下の罰金または併科。それから、アメリカの統一車両法典では、これは飲酒でございますが、初犯の場合十日以上一年以下の禁錮もしくは百ドル以上一千ドル以下の罰金またはこれを併科ということにされております。

 それから、次は無免許運転に対する罰則でございますが、フランスでは初犯の場合が日本円にいたしまして約十七万円、一万フラン以下の罰金ということになっております。それから、アメリカの統一車両法典では、初犯の場合でございますが、二百ドル以下の罰金、このようにされております。

 以上でございます。

塩田委員 我が国の場合は、三年を五年とか、あるいは二年を三年とか、今回の法律案で改正されるということですが、他の刑法との関係等で特別法で罰則を設けるべきだという考え方がありますけれども、これについてはいかがお考えですか。

坂東政府参考人 今申しましたような救護義務違反とかそれから飲酒運転というもの、さらには無免許運転というもの、これは道路交通法の規範に違反するものでございますから、現在はやはりこの罰則につきましては道路交通法で規定しているというところでございますが、ただいま委員御指摘の点は、こういった悪質な運転行為が起因して起こした死亡事故あるいは重傷事故、そういうものに対していかに制裁を加えていくか、そういうあり方につきましては、やはり刑法とかあるいはそういったものと道交法との調整を図っていく必要があるというように我々は承知しているところでございます。

塩田委員 今回の道路交通法改正では、悪質、危険運転行為罰則の強化の中に過労運転がありますね。この過労運転については、他の悪質、危険な運転行為と若干性質が違うんではないか。また、場合によっては、疲れ切っているけれども業務命令で使用者から指示されれば動かざるを得なかったという場合もあり得るでしょうし、いろいろな態様があると思うんですね、単に過労といいましても。そういったことについてはどういうふうに考慮されましたか。

坂東政府参考人 御指摘のいわゆる過労運転でございますけれども、この過労運転と言われているものの中には、過労とか病気とかいろいろなことによって正常な運転ができないおそれがある状態で車両を運転する行為というものを指すということになります。したがって、正常な運転ができないおそれがある状態という面では、これはやはり酒酔い運転等とも共通しているところでございますから、今回の改正案におきましては、過労運転に対する罰則につきましても、そういった危険性にかんがみまして同じような引き上げをしたいということで改正案を提出しているところでございます。

塩田委員 次に、日本の運転免許証を取り消されたりあるいは外国で初めて免許を取ったという者が、我が国の免許の再取得をしにくいというか、それを嫌って一年ごとに外国へ行って免許を取って帰ってきて、いわゆる国際運転免許証を持って運転をしておる、そのような人が事故を起こす例もかなり多いというふうに、もちろんそうですね、日本の基準に合わないから外国へ行って取ってくるわけですから。そういった事象がありますけれども、これについてはどのように対策を講じておられるか、お伺いしたいと思います。

坂東政府参考人 委員御指摘の国際運転免許証を取って脱法的に我が国で運転する者に対しましては、今回の法改正にもその防止対策案を盛り込んでいるところでございまして、国際運転免許証を所持する者は、我が国に上陸した日から起算して一年間、その国際運転免許証で運転できることとされている自動車等を運転することができるというふうにされているところでございます。つまり、国際免許証で日本に入ってきた場合においては、一年間はその国際運転免許証で運転できるということでございますが、これは、主として旅行者や短期滞在者の利便を図る観点から、道路交通法に関する条約に沿って設けられた制度でございます。

 しかしながら、委員御指摘のように、最近、運転免許証を取り消された日本人を初め、我が国に長期滞在している者が、我が国の運転免許を取得せずに、外国で取得した国際運転免許証によって運転を行い、さらに、我が国に上陸後一年近く経過した時点で短期間また我が国から出国して、国際運転免許証を再び取って、そして再び入国して我が国で継続して運転を行うといった事例が見られて、こういった者による違反や事故も発生しているところでございます。

 そこで、今回の改正におきましては、このような国際運転免許制度の趣旨を逸脱する事案を防止するために、我が国に住所を有する者等が、住民基本台帳に記録され、あるいは外国人登録がなされた状態で我が国から出国し、ごく短期間のうちに帰国した場合においては、その帰国の日を国際運転免許証による運転可能期間の起算日とはしないというような形で、こういった逸脱の事案を防止したいというものでございます。

塩田委員 今の例は、最近特にふえているというふうに思われるのですね。出入国管理等、法務省と連携をとって、常習者がいるわけですね。それを何らかの形で抑えるという措置をもっと強力にする必要があるのじゃないかと思いますが、いかがですか。

坂東政府参考人 先ほど答弁いたしましたように、外国に行って免許を取って、そして国際運転免許証に切りかえて、その国際運転免許証で日本で運転する、そしてその国際運転免許証が切れそうになると再度外国に行って、そしてまた国際運転免許証を取って帰ってくるという事例が許される現行制度であったということでございます。今回の改正案では、そういったことは許されないような形で改正したということでございますので、私どもは、この法改正をお通しいただきますと、この改正によりましてそういった脱法的な行為というものは防止されるのではないか、このように考えているところでございます。

塩田委員 次に、自動車運転代行業法案についてお伺いいたします。

 交通安全を図るという面から今回のこの新しい業法ができたわけですが、どこがその目的を達成するために新しく法案化された、立法化しようとしているかということ、そのあたりを御説明いただきたいと思います。特に、運転代行業の関係は零細な業者が多いわけですね。それで、事故率も非常に高いということが一つの根拠になったかと思うのですが、これはこの法律をもってどこでどういうふうに対策ができるのか、御説明いただきたいと思います。

坂東政府参考人 運転代行業は、夜間の繁華街という限られた場所あるいは限られた時間において、かつ酔客という限られた対象を求めて行われるといったようなことから、その営業目的のために、事業者が運転者に対しまして最高速度違反とかあるいは駐車違反などをすることを下命し、あるいは容認するなどの実態があるということでございますので、こういったことに関しましては、速度違反あるいは駐車違反等に対する下命容認行為を禁止するといったような規定を設ける。

 さらには、交通死亡事故の発生率が非常に高い。過去五年間の自動車一億走行キロ当たりの交通死亡事故件数というものは、タクシー事業の二倍強から五倍強で推移してきているといったような事情もございますので、運転者に対して日常の指導監督が行われる営業所ごとに安全運転管理者を選任させるといったような規定も今回盛り込んでいるところでございます。

 こういった規定を初め、今回いろいろなそのほかの安全対策等に関する規定も盛り込んでおりますので、こういったものを活用し、かつ業者を適正に指導しながら、今現在あるような問題点というものをできるだけ解消して、業が適正化されるように努力をしていきたいというふうに考えております。

塩田委員 そういった観点から今回の新法が出てきたことは理解できるわけでございますが、今まで十数年にわたり、現に相当な業者によって、また運転する人たちによってこの仕事が行われてきた。それは一種免許で済んだわけですね。それを今回二種免許にしなければならない。すればどういう効果があるか。ちょっときつ過ぎるのじゃないか、余りにも激変じゃないかという意見もあるわけでございますが、これについてはいかがお考えですか。

坂東政府参考人 自動車代行業を利用される利用者の方々の声といたしましても、やはり代行運転をする運転者というものが、先ほども申しましたような形で、速度違反をするとか、あるいは駐車違反をするとか、運転が乱暴であるとか、乗っている利用客のことを考えていないとかいったような声が非常に寄せられているというところもございますので、客を乗せて運転するということではタクシーともう全く同じということでございますから、今回は、お客さんの車を代行して運転する運転者に対しては二種免が必要だというような規制を設けたというところでございます。

塩田委員 一種免許でやってこられた従来の運転代行業の従事者、この人たちについてはかなり厳しい条件を付して研修なり訓練をしているんじゃないかと思うんですが、二種免許に切りかえた場合はこれはもうしないのでありますか。どうですか。

坂東政府参考人 先ほども申しましたように、今回の改正案におきましては、お客さんの車を代行して運転する運転者に対しましては第二種免許を取っていただきたいということで改正するということでございますが、当然ながら、この二種免許を取る段階でいろいろな形で練習が行われ、あるいは教習が行われて最終的に試験に合格するということになって、安全にお客さんを運ぶという運転が非常に向上することは向上すると思いますけれども、当然ながら、やはり私どもは免許というものだけで安全が図られるというふうには考えておりません。既に取っている運転者に対しましてもやはり各種の安全教育というものは必要だと思いますので、もちろん、だから自主的にというところもあろうかと思いますけれども、二種免許が義務づけられるとしても、できればやはりそういった意味でのいろいろな講習とかあるいは練習とかいったものには励んでいただきたいというふうに考えております。

塩田委員 そうしますと、自主的な研修あるいは練習といったものは引き続いて行われるということでございますね。

坂東政府参考人 私どもは、自動車安全運転センターというところがございまして、茨城の方では中央研修所というのがございますが、既に代行業者の方々も運転者をこういったセンターに研修によこしていただいているところでございますので、今後ともそういったセンターを含めていろいろなところでの教習というものは続いていくのではないか、あるいは逆に私どもはそうしてほしいという希望を持っているところでございます。

塩田委員 研修等によって安全性を高めたり、あるいは技能を高めていくということは非常に安全性の上からもいいことだと思うんですが、これはあくまでも自主的な研修であって、義務づけはないわけですね。

 先ほど出ましたように、この業界というのは四団体あって、しかも組織率が非常に低いということですから、自主的にやるとしても、団体がしっかりして組織率が高ければこれはカバーできると思うんですけれども、今のような状況では自主的にやるといってもなかなか団体としては実効が上がるかどうか。今までやっているところはやっているけれども、やっていないところはやっていないという状況ですから、その辺は今後団体の育成も含めましてこの問題は考えていただきたい、このように要望いたします。

 それから、料金の問題ですが、我々としては公共料金的な公定料金をつくることについては反対であります。できるだけ自由経済、競争に任せた市場原理でこういった問題が自主的に関係者によって解決されていくということを望んでおるわけでございますから、公定料金を設定することについては反対でございます。

 しかし、片や、料金は全く自由だ、関係当事者が話し合って決めるんだ、こういう原則、それを我々は原則として堅持はしていきたいのですけれども、この種の問題はかなりトラブルが発生するのではないかと思いますね。料金は幾ら高くても、極端に言いますと幾ら安くても、契約ができれば問題ないんだということになりますね。幾ら高くても幾ら低くてもいいということだと、やはり利用者についても業者についても不便が起こるのではないか。一定の目安といいますか、標準とまではいかなくても、ある一定の、まあこれぐらいの幅のものが望ましいとか、何かよるべき、どういう料金がいいでしょうかと聞かれた場合に、まあこれぐらいが世間相場ですといったことが示される何かがあった方がいいんじゃないか。トラブルの発生とか、あるいはいろいろな事故が起こることを考えますと、料金について全くフリーでいろいろな問題が起こるよりは、そういったものをある程度示すことがあっていいんではないかと思いますけれども、これについて、これは運輸省ですか、どのようにお考えですか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 自動車運転代行業というのは、主として夜間の繁華街という限られた時間、場所において行われるものでございます。利用者の時間や場所を問わず、だれが利用しても利用者利便等が確保されるような公共交通機関とは事情が違っているというふうに思っているわけです。したがって、料金についてもおのずから競争原理の世界で数字が決まっていくのではないか、こう思っております。私どもも状況は把握したいとは思っておりますが、このような状況でございますので、料金が高いとか安いとかといった水準についてまで行政が関与することはいかがなものかな、こう考えているところでございます。

 しかしながら、自動車運転代行業が、今申し上げましたように夜間の繁華街等で酔客を相手にするものでございますから、料金を明示していないことによってトラブルが発生するおそれもあるというふうに考えているところでございます。

 このため、料金の透明性を確保するということは大変大事だと思っておりまして、今回の法律案では、料金を定めて営業所において掲示して公示していただくということを義務づけまして、実際に業務を行う際には、その掲示した料金について利用者に説明をして、その説明に基づいて料金を収受するというふうな仕組みにしているところでございます。

塩田委員 今御説明ありましたのは、事業所において料金を掲示するということですね。酔っぱらっていますから、事業所でそれを見る機会もないでしょうし、言った言わないのことになる可能性もあるし、また悪質な場合は、安い料金で言いながら、何かかんかまた条件つけてべらぼうな料金を吹っかけるということもなきにしもあらず。いろいろなことを考えますと、やはりある程度、掲示板じゃなしに、チラシのようなもの、それを最低限配って示す必要、幾ら酔っぱらっても、後で酔いがさめたらポケットから出してわかるという、あるいは、何かのはっきりとした、契約になるわけですから、契約取り消し問題も消費者契約法にもあるわけで、どういうふうにこれをトラブルがなくなるように、適正というか正常な形で契約が行われ、支払いが行われるかですね。

 これについて、今事務所に掲示をしますということを言われましたが、これは、法令上の措置としては、政令とか省令とかあるいは通達か何か、どういう形で考えておられるわけですか。今私も追加して申し上げたチラシを使う、そういったものを含めてそれを担保する手段、これをどういう形で措置されるかをお伺いいたします。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 料金につきまして、営業所で掲示する以外にも、実際に業務を行う際にその掲示した料金を説明いたしますが、その際に、約款の中身も実は説明することを義務づけることになっておりますが、それを一種の書面のような形で、こういう条件でお引き受けしますといったようなことでそのサービスの提供条件がはっきりわかるようにするということを考えていきたいと思っております。

塩田委員 考えはいいのですけれども、先ほどお聞きしましたのは、政令でやるのか省令でやるのか、通達あるいは準則等を示してやるのか、どういう措置をされるかということをお伺いしたわけです。

高橋政府参考人 省令でそれを固めたいと思っております。

塩田委員 最後に、一問お伺いいたします。

 損害賠償措置を自動車運転代行業者に義務づけるという件に関してでございますが、保険契約の締結を義務づけるということを業者に対してされますよね。それはそれなりにいいことだと思うのです。コストはかなりかかるでしょうけれども、いいことだと思いますが、片や、特に同じような業務をやるタクシー業者については、これは義務づけられているとは思うのですが、現に保険に入っていないで、問題が起こったときに措置をするといったお金をプールしましてそういう有事に備えておられる、こういうことも聞くのですが、それでは不均衡ではないか。

 代行業者には完全に義務づけて、タクシー業者は必ずしもそうでないという例があるというのですけれども、その辺はいかがでしょうか。

高橋政府参考人 運転代行業の業務によって生じました損害の賠償につきまして、原因が運転代行事業者にある場合には、利用者の負担ではなく、その事業者の保険によって賠償措置が行われることが適当だということで、今回付保義務を課しているわけでございます。

 タクシーにつきましては、事業参入の免許の審査の際に必要な損害賠償額を保障できる保険に入っているかどうかを要件としておりますので、そういう意味では利用者の保護はチェックできていると思います。

 それから、一部大手の事業者でございますが、非常に車両台数が多いということで、全体として損害賠償責任に応じられるような形になっているところについては、例外的ですけれども保険に入っていない業者がございますが、基本的には、免許の際には保険を義務づけているということになっております。

塩田委員 大手のタクシー業者については、保険には必ずしも入っていない事実があるということを認められたわけですね。

 そこで、新しく免許を出されるときは保険に入っているかどうかを厳密にチェックして、新しいものについては全部入っているということのように聞いておりますが、従来から免許を持っているもの、かなり大手のところでも保険に入っていない、それはそのままで今後ともその状況を維持していかれるかどうか、お考えをお聞きいたします。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 今新規免許にかかわるものについては保険に入っていることを確認するということになっておりますので、現在のことではございませんけれども、昔に免許を取った大きな事業者につきましては、車両数が大変大きいということで自分自身で保険を掛けているような性格を持っているものですから、それについては例外的にそういう措置をとっているところがあるということでございます。(塩田委員「これからはどうするか」と呼ぶ)新規免許というような事態についてそのような指導をしておるわけでございますので、今後新免にかかわるものについてはそのようにしていきたいと思っております。

塩田委員 いろいろ実態がよくわかりました。

 大臣、これは不公平ではないかという意見もちまたにはあるわけでございますので、そういった点を含めて、また御検討をいただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

横路委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十六分散会




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