衆議院

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第8号 平成14年11月19日(火曜日)

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平成十四年十一月十九日(火曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 佐々木秀典君
   理事 逢沢 一郎君 理事 青山  丘君
   理事 小野 晋也君 理事 渡辺 博道君
   理事 伊藤 忠治君 理事 細野 豪志君
   理事 河合 正智君 理事 西村 眞悟君
      奥山 茂彦君    金子 恭之君
      亀井 久興君    木村 隆秀君
      下地 幹郎君    菅  義偉君
      高橋 一郎君    谷川 和穗君
      谷畑  孝君    近岡理一郎君
      林 省之介君    松島みどり君
      吉野 正芳君    井上 和雄君
      石毛えい子君    岩國 哲人君
      大畠 章宏君    山花 郁夫君
      山元  勉君    横路 孝弘君
      赤松 正雄君    吉井 英勝君
      北川れん子君
    …………………………………
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   参考人
   (政策研究大学院大学教授
   )            福井 秀夫君
   参考人
   (北九州市長)      末吉 興一君
   参考人
   (日本総研調査部長)   高橋  進君
   参考人
   (オリックス株式会社代表
   取締役会長)       宮内 義彦君
   内閣委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月十九日
 辞任         補欠選任
  大村 秀章君     下地 幹郎君
  嘉数 知賢君     松島みどり君
  谷本 龍哉君     吉野 正芳君
  大畠 章宏君     井上 和雄君
  太田 昭宏君     赤松 正雄君
同日
 辞任         補欠選任
  下地 幹郎君     大村 秀章君
  松島みどり君     谷畑  孝君
  吉野 正芳君     谷本 龍哉君
  井上 和雄君     大畠 章宏君
  赤松 正雄君     太田 昭宏君
同日
 辞任         補欠選任
  谷畑  孝君     嘉数 知賢君
    ―――――――――――――
十一月十八日
 透明で民主的な公務員制度改革の実現に関する請願(菅直人君紹介)(第一七一号)
 同(木下厚君紹介)(第一七二号)
 同(黄川田徹君紹介)(第一七三号)
 同(中津川博郷君紹介)(第一七四号)
 同(松沢成文君紹介)(第一七五号)
 同(三井辨雄君紹介)(第一七六号)
 同(山元勉君紹介)(第一七七号)
 同(小林守君紹介)(第一八七号)
 同(津川祥吾君紹介)(第一八八号)
 同(永田寿康君紹介)(第一八九号)
 同(山谷えり子君紹介)(第一九〇号)
 同(山元勉君紹介)(第一九一号)
 同(横路孝弘君紹介)(第一九二号)
 同(家西悟君紹介)(第二〇三号)
 同(小林守君紹介)(第二〇四号)
 同(今野東君紹介)(第二〇五号)
 同(西村眞悟君紹介)(第二〇六号)
 同(山元勉君紹介)(第二〇七号)
 同(赤松広隆君紹介)(第二三一号)
 同(伊藤忠治君紹介)(第二三二号)
 同(石井一君紹介)(第二三三号)
 同(中沢健次君紹介)(第二三四号)
 同(保坂展人君紹介)(第二三五号)
 同(細野豪志君紹介)(第二三六号)
 同(山元勉君紹介)(第二三七号)
 同(山口わか子君紹介)(第二五六号)
 同(池田元久君紹介)(第二六九号)
 同(石原健太郎君紹介)(第二七〇号)
 同(小泉俊明君紹介)(第二七一号)
 同(鉢呂吉雄君紹介)(第二七二号)
 同(原口一博君紹介)(第二七三号)
 同(中川智子君紹介)(第二九一号)
 同(中野寛成君紹介)(第二九二号)
 同(山内功君紹介)(第二九三号)
 同(山岡賢次君紹介)(第二九四号)
 同(塩田晋君紹介)(第二九八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 構造改革特別区域法案(内閣提出第六九号)


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     ――――◇―――――
佐々木委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、構造改革特別区域法案を議題といたします。
 本案審査のため、本日、参考人として、政策研究大学院大学教授福井秀夫君、北九州市長末吉興一君、日本総研調査部長高橋進君、オリックス株式会社代表取締役会長宮内義彦君、以上四名の方々に御意見を承ることにいたしております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 福井参考人、末吉参考人、高橋参考人、宮内参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度、恐縮ですが、委員長の許可を得て御発言くださいますようにお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承をお願いいたします。
 それでは、福井参考人にお願いを申し上げます。
福井参考人 おはようございます。福井でございます。本日意見を述べる機会を与えていただきまして、まことにありがとうございました。
 まず、私のお話の第一は、法案の評価でございます。
 私自身、専門委員として参画してまいりました総合規制改革会議で、いわゆる特区構想については、法的、政策的な検討を積み重ねてまいりました。このたび、これらの提言の基本的な趣旨がほぼそのまま体現される法案として結実したことは画期的でありまして、早期の成立に期待しているところでございます。
 法案の特徴の第一は、自治体、民間主導であることであります。規制改革項目や制度の構造を初め、自治体からの多数の建設的な提案を踏まえて、総合規制改革会議や内閣府の特区推進室で国の規制を乗り越える内容を盛り込めるように立案されたものであり、かつてのパイロット自治体などと異なりまして、国の裁量による恩恵措置という側面が希薄となっております。
 第二は、特例を総理大臣の認定により一括処理する通則法の形式が採用されたことであります。規制所管官庁の意向で特例がゆがむことがないように、裁量が統制されております。
 第三は、異なる理由で異なる規制を異なる地域に適用するということを正面から認めて、規制の画一性を打破する重要な先例の役割を果たすことであります。
 また、制定過程では、例えば総合規制改革会議の意見交換では、関係省庁や団体とのやりとりが議事録公開されるなど、情報公開の徹底や透明性の確保に十分に配慮されたものとなったことも評価できると思われます。最終的に良識ある判断で各省庁と決着した事項についても、こういったプロセスが大きく影響していると考えております。
 しかし一方、特区対象規制として、例えば学校や病院への株式会社の参入は、自治体からの要望が強かったにもかかわらず、所管省や関係団体の強い反対のために見送られる結果となりました。これらの実現という課題が依然残されていると考えます。
 大きな二つ目、社会的規制と経済的規制は異ならないということであります。
 およそ規制には、市場の失敗を補完するという具体的な論拠が必要とされています。ところが日本では、単に公共公益性といった抽象的で検証不能の論拠によって、むしろ民間の営みを窒息させかねない有害な規制が正当化されていることが多く見受けられます。
 規制には、過剰な介入、不要な介入、必要であるにもかかわらず不介入といった政府の失敗も広く見られるところであります。規制を所管する中央官庁では、国民の被雇用者であるにもかかわらず、温情主義や愚民観で無知蒙昧な大衆を善導するという意識が依然まさっております。また、規制には、現実問題、保護される業界の権益が守られるという機能が伴うことから、各種圧力団体やその影響力が及びやすい関係省庁では、既得権益を守るために規制改革に抵抗する傾向が不可避的に発生します。
 規制改革とは、すなわち政府の失敗の是正であって、生産者の観点のみならず、薄く広がっているがゆえにその利害を政治的に結集しにくい一般消費者の視点で国民経済的利得を増大させていくという視点が必要不可欠と思われます。
 一部には、社会的規制と経済的規制というレッテルを規制に張って、前者の改革は慎重であるべきという見解もありますが、妥当ではありません。安全、環境、健康などは、規制が問答無用に正当化されがちな社会的規制の領域とも言われます。しかし、これらは、生命、身体などのみならず、経済活動にも確実に影響します。反面、土地利用や産業の規制でも、医療や教育施設の立地を直接作用することも可能であり、結局、これらを截然と分離することは論理的に不可能であります。
 規制の評価は、規制によりもたらされる社会経済的な便益と、一方で発生する社会経済的費用とを公正かつ実証的に比較し、規制の合理性を検証していくという以外に評価の方法はあり得ません。健康や安全を名目として、その内実はギルドの既得権温存に資するという規制も枚挙にいとまがありません。
 大きな三つ目に、規制改革の社会実験に不合理はないということでございます。
 現存する規制の多くは、導入の際に必ずしも精緻で実証的な検証プロセスを経ておりません。それでも一たん制度化されると、それらを撤廃や緩和することは至難のわざとなります。規制の利益を持つ集団は、レントシーキング、すなわち私的利益追求の動機づけを表面上は押し隠しつつ、公共公益性をにしきの御旗として、規制の効用を過大に、費用を過小に主張する傾向が見られます。規制改革の結果、社会的に弊害が生じないという証拠がないから改革には反対であるという旨の反論も多く見られます。
 特区構想は、このような主張に対する対応として考案されたものであります。全国一律で改革するにはリスクが大きいというのであれば、地域を限定して行うのであれば、万が一弊害が生じても、その被害は限定的なものにとどまります。全国拡大のための実証的データも得られます。規制改革かあるいは規制護持かという、どちらに分があるのかを社会実験によって確かめることができるのであります。
 ところが、現在なお特区に反対する勢力からは、一国に複数制度が併存することは許されず、規制は全国画一でなければならないという主張も見られます。この主張は、改革のためのデータがないと批判する一方、データを得ようとする試みは反対というものでありますが、それにもかかわらず、自分たちの利害に合致することがわかって自分たち自身が全国画一での制度改正を提案する気になりさえすれば、データなどなくても好きなように制度を変えてよいという主張に等しいわけであります。論理的に矛盾し、倫理的に羞恥心の欠落した見解というほかありません。
 大きな四つ目、特区構想の法的論拠であります。
 特区構想に先行して、都市再生特別措置法の特別地区では、既存の建築規制を適用除外として、自由度の高い土地利用が可能とされました。この際の法的な論拠は、第一に、地区内で建築に関する外部不経済、すなわち他人に対する迷惑が完結していることであります。第二に、土地利用が地域事情で規定される以上、異なるものに異なる規律を当てはめることには不合理がないということであります。したがって、この二つの基準を満たす以上、都市以外の分野についてもこういった特例を構築することは法的に可能であります。
 しかし、逆に、これらのいずれかを満たさない場合でありましても、外部不経済の流出について何らかの代替措置によって歯どめがかけられており、その社会的費用が小さい場合には個別に特例を認めることは可能であろうし、また、地域事情によらない規制であったとしても、規制の趣旨にかんがみ、そこで懸念される事項について個別に周知徹底措置、自己責任でのリスクの引き受けなどの代替措置が講じられているのであれば、第三者が当事者の意思に反する規制を強制すべきいわれはありません。
 米国では、連邦憲法が広く州の自治権それから立法権を承認しております。州法が連邦法に抵触しない限り、市民生活の根幹的な事項も州法が規律しています。裁判制度、法曹資格なども州ごとに異なり、例えば自動車運転免許も、州を越えて移動すると取り直しになるといったぐあいです。契約法や不法行為法、死刑の有無、麻薬の合法非合法などを含む刑事法まで州により異なります。
 日本は独自の条例制定権の範囲は狭く、法律事項は自治体の条例への委任が不可能でありまして、自治体の立法権には米国の州と異なり大きな制約が憲法上存在します。しかし、逆に言えば、日本でも、国の法律によるのであれば、平等原則、経済的、精神的自由権などの憲法的価値に具体的に抵触しない限り、地域ごとに規制を異にすることはもともと憲法自身が想定していることであります。憲法は、国法自体が全国一律で画一的であるべきことを要請してはおりません。
 例えば、株式会社による農地保有を禁止している趣旨は、投機的土地保有の抑制であるとされます。しかし、株式会社が投機に走りやすく、個人農家がその逆であるという命題が成り立つでしょうか。本来、転売などによる農地の荒廃を防ぐのであれば、農地の保有主体を規制するのは的外れでありまして、厳格な土地利用規制によって宅地転用を禁止するといった措置が筋であります。
 特区ではこのような代替措置を前提として、株式会社の農地保有を正面から認めるべきと考えます。そうすれば、株式会社が現実にかくも悪行の限りを尽くすのであるか否かは一目瞭然となると思われます。賃貸にとどまる今回の法案はいまだ不十分と評価せざるを得ません。
 大きな五つ目は、特区構想の今後の改善課題であります。
 特区構想の立案過程において、教育、医療、農業などの一部分野の関係省庁で、いわば株式会社性悪説とでも評すべき偏狭な排除論が見られたことは遺憾であります。株式会社のこれら分野への参入は、多くの自治体から熱心な要望が寄せられたのみならず、現実に資金調達手段の多様化が可能になること、すぐれた人材の確保が容易になること、規模の拡大や関連分野の統合が容易になることなどによって、多彩で質の高い安価なサービスを消費者本位で実現していくための決め手ともなり得ます。
 例えば、学校教育法では、学校は、国、自治体、学校法人しか設置できない旨規定しています。株式会社に認めない理由は、教育への再投資ができないこと、株主の意向による教育の安易な変更が生じること、事業の安定性、継続性が確保できない危険があることとされております。また、公金などを公の支配に属しない慈善、教育もしくは博愛の事業に支出してはならないとする憲法八十九条の制約によって、株式会社への私学助成には疑義があるという指摘もございます。
 学校法人でさえあれば利潤動機がなく、事業の継続性や教育への再投資が確保され続けるという命題が虚構であることは酒田短期大学や帝京大学の例が実証していると思われます。反面、株式会社に先験的に事業の安易な変更や安定性の欠落が生じやすいと言うこともできません。本来、組織形態のいかんを問わず、教育事業に必要とされる規律であれば、組織に対してではなく、行為そのものに対して課するのが筋であります。
 株主への配当が教育外への資金の流出であるという批判もありますが、株式発行が資金調達手段であるということを理解しないものでありまして、そうであれば、今の学校法人に許されている借り入れについても金利の支払いを禁じるのでなければつじつまが合いません。学校法人役員報酬への利潤分配は内部留保であって正当だけれども、株主への配当は不当だという倫理観も理解に苦しみます。
 また、憲法八十九条の目的の解釈には、公費の乱用防止、事業の自主性の確保、宗教的中立性の確保という三つの説があります。しかし、慈善、教育、博愛以外の事業であれば、憲法がむだ遣いや自主性の喪失を許容していると想定するのは荒唐無稽であります。自主性確保のために厳格な監督が必要という命題は論理矛盾でありますし、憲法が権力の干渉排除を意図しながら、公の支配という形式さえ整えれば政府の干渉を正当化できるようになるなどというてんまつは異常でもあります。憲法八十九条に、宗教的中立性の確保以外の目的を想定することは、解釈論として破綻しています。したがって、公の支配の内容も、宗教的中立性の監督にとどまることも明白であります。
 教育機関のきめ細かい対応を促して保護者や生徒の選択肢を豊かにするためにも、少なくとも特区において学校法人の扱いと対等の助成や税制優遇を行うことを前提として、株式会社による学校経営を早急に認めるべきと考えます。
 医療や農業についても、基本的構図は同様であります。(拍手)
佐々木委員長 ありがとうございました。
 次に、末吉参考人にお願いいたします。
末吉参考人 おはようございます。北九州市長の末吉でございます。
 私は、地域がこの特区について申請をするという、そういう地方の立場、取り組んできた立場から御意見を申し上げたいと思います。
 まず第一点として、この特区に取り組むに至った理由を少し述べさせていただきたいと思います。
 私は、就任は昭和六十二年にいたしましたが、当時は、北九州市は鉄冷えということで衰退の町でございました。再生するために長期計画をつくりました。これはルネッサンス構想という名目でございますが、つくりました。そのでき上がり、二〇〇五年を目標の計画といたしました。この策定に当たりましては、アジアに近い地理的優位性、これが一つであります。それから、一九〇一年に官営八幡製鉄所ができて以来受け継がれた物づくりにこだわって、長期、短期、両方の視点を持ったいわゆる都市再生に取り組んでまいったところでございます。
 先ほど申しました二〇〇五年が構想完了の予定でありますが、現在、長期的に取り組んできた主なプロジェクトが立ち上がり、形をあらわしてきております。
 具体的に少し述べますと、初めて港湾整備にPFI事業を導入いたしました。これは運営まで担当するということで、国際競争力のある港としたいというところであります。
 また、環境が注目されていない時代から、公害克服の経験を生かしまして、リサイクル産業の育成に取り組んでまいりました。現在、日本最大のエコタウンが形成されつつございます。国外にも環境技術移転ということを実施し、海外での環境ニーズの把握もしてまいりました。
 また、工業都市として栄えたというこの百年間、重厚長大で栄えた町でございますが、そういうことから、水道とか発電等、企業活動を支えるユーティリティーというのが大量に供給できる、十分ストックがあるという点であります。
 これは、北九州市が日本で初めて取り組んだプロジェクト、あるいは社会的なストックを活用し、中国が現在世界の工場として日本の空洞化が進む中で、物づくりの発祥の地として何とか日本の産業の空洞化をとめたい、そして広大な埋立地を含めて、特区に取り組むことにして日本産業の空洞化をとめたい、日本産業再生ということにしたい、こういうことがこの特区について取り組んできた最大の理由であります。
 つまり、単独の人件費ではどうしてもアジアにはかないませんが、雇用の拡大のために、過去の企業誘致で学んだことあるいは経験したこと、とりわけ企業誘致に失敗した経験、これらを踏まえまして何とかこれを克服する道がないかということで取り組んでまいりました。平成十一年度ぐらいから勉強を続けてまいりました。
 まさに、進出をしようという企業は多種多様でございます。これらを勉強する中で、地方への権限移譲、しかも包括的な移譲が必要なこと、それから何といっても、企業進出に当たって返事を早くすること、これも重要な要素であると実感をしてまいりました。この内容は、この委員会で審議されております特区制度と方向は同じであると考えておるところであります。
 それから二点目が、北九州市が国際物流特区ということでもう申請をしておりますけれども、この内容について少し御説明を申し上げたいと思います。
 北九州市は、今お手元に配付している絵がございますが、絵で示すとおり、我が国では西端に位置しておりますし、東アジアで見ますと、東京と上海のちょうど真ん中に位置しております。今後は、この環黄海、黄海圏に属する貨物量が伸びることが予想されております。これは、日本海を通過する北米航路の方が従来の太平洋航路よりも二日間短縮されるということであります。
 それから、今後貨物の量がふえるのは、アジアで大量に発生する貨物の量を早く欧州に運ぶ、これで船が大型化をしてきております。つまり、パナマ運河を通過できない大きな船が使われるようになりました。現在、世界で二百隻ぐらい、今後さらに二百隻ぐらい、五万トン級の船が建築されるというふうに伺っております。
 事実、その航路上に位置する釜山でございますが、大水深港湾の整備によりましてコンテナ取扱量が爆発的に伸びております。現在、世界三位の取扱量を誇っております。北九州市は、釜山の対岸で、距離にしてわずか二百キロ、インフラ整備をし、コストの低廉化を図り、トータルサービスで国際競争力のある港を実現すれば、環黄海のハブの港になる可能性の高い港であります。
 船が大型化してそのようにルートが変わりますと、朝鮮半島の南端か九州の北部かというのがいい地理にあることだけはおわかりになると思います。
 そのために、地方でできる取り組みとして、我が国初めてのPFIによる港湾整備、運営等でコストを下げようとしております。また、通関、検疫の二十四時間化を実現するなど、規制緩和でソフトを充実することが必要であります。
 それから、港の点ともう一つ、産業立地の優位性でございますが、市内にはナホトカ号の廃油を処理した企業がございます。そのように、環境産業の集積によりまして廃棄物処理の新規投資コストが不要な地域であります。
 そのほか、先ほど申しました水とか電気等ユーティリティーが整っておりますが、これは何といっても目的別で整備されております。現状の法制度では相互に融通がききにくいという点がございます。これを規制緩和することによってアジア並みのコストになる可能性がございます。
 それから埋立地ですが、明治以来、自社工場用地として埋め立ててまいりましたが、現在の産業構造に合わせて他社へリースするようなことができないか。それと同時に、臨海部の立地規制を緩和することで企業の初期投資、操業開始のスピードを上げることになる。
 このような総合的な取り組みでトータルコストを下げて、人件費では競争がなかなかできないけれども、アジアにおける魅力的なものができるのではないか、こういうことでございます。
 名称は国際物流特区として申請をしておりますけれども、私どもの地域の希望にとりましては、外国に行く企業をどうしてもここでとめたい、産業再生にしたい、それを物流特区とあわせながらやっていきたいということで考えてまいったことであります。したがいまして、名称は正直この名称じゃなきゃならぬというふうには思っておりませんが、地域として、中国に進出する企業を、地元の技術力はあるわけですから、できる限りコストの面で抑える、対抗力があるようにしたいと思っておるところであります。
 それから三点目に、特区に期待する効果であります。
 特区制度は、北九州市が取り組んでまいりました主要プロジェクトの効果を拡大、または効果を早くすることができるということを考えております。この効果の一つとして、韓国・釜山に流れている物の流れを我が国に変えることが期待されます。それからもう一つ、高コスト構造を是正するために、物づくりが日本に残り、産業が活性する、こういう一つの成功事例を示したいと思っております。また、構造改革特区の実現によりまして、我が国が、構造改革が進展していくとともに地方での経済活性化が期待されるわけであります。
 このように、タイムリーに特区が実現をし、特区制度に基づいて今進出をしようとしている、関心を示しておる企業の雇用をこの際一挙にと思っております。私どもは、向こう五年間に約一万人の雇用創出も夢ではないというふうに地域では考えておるところであります。
 このように、特区は厳しい経済情勢による閉塞感を地方みずから打開していく起爆剤となる、そのように信じております。同時に、地方主体でありますから、オーダーメード型というよりも、実情に合った対応ができると期待をしております。
 それからもう一点、これは地方自治の立場からいいますと、何といいましても、地方が計画をつくるわけでありますから、地方自治の政策立案能力を高めるということになると期待をしております。何といいましても、一たんある規制について違うことを勉強して提案するわけでありますから、地方におけるこの政策立案能力の高まりが地方自治の進展を図ることにつながるのではないかと思っております。
 四つ目でありますが、特区を推進するために要望しておきたいこと、主張しておきたいことを少し申し上げたいと思います。
 企業誘致を行っておりますが、特区法が可決されまして地域指定が受けられるといたしましても、大体、私どもの感じでは半年ぐらいかかるのではないかと実は思います。配付資料には本市の企業誘致から学んだことを記載しております。この中にもっと早く結論を出せという企業があるのは事実であります。
 北九州市が企業誘致から学んだこと、とりわけ外国の企業の方々の判断は早いんです。手続で半年、一年かかるのはもうだめだ、三カ月ならいいけれどもということがあります。スピードが要請されます。
 これは、「北九州市がこれまで経験した外国企業立地の失敗事例」と書いてあるんです。この失敗事例を見ますと、これを何とかするために規制緩和でできるものはないかという点で勉強し始めたと先ほど申し上げましたが、その点であります。
 例えば、一にあります「パワー半導体製造会社(USA)」と書いてありますが、これは港湾区域でありましたから土地利用を変更しなきゃなりません。この土地を、平常手続でいきますと早くて半年、普通なら一年と言いましたら、それだけで対象から外れることになりました。こういうことを考えますと、半年という時間は大変貴重であります。そこで、免許を出すときに予備免許というのがありますが、予備免許みたいなのが何か先行的にいただけないものだろうかという点を実務的に思っております。
 それから、企業からの要望の多い外国人の雇用についてでございますが、今回の特区法案には反映しておりません。引き続き国で検討されることになっておる規制緩和項目ではございますが、この辺も地方自治の責任で対応できるような仕組みに任せていただけないだろうか。
 また、それからもう一点、企業誘致を行う上で、現在提出をしております規制緩和項目以外のものが出てくる可能性があります。私どもは、勉強した限り、これをお願いしますということで項目を出しました。ほぼ半分近くぐらいが、まあいいでしょう、こういうことになっておりますけれども、それ以外に出てくる可能性があります。そうなった場合の適否の判断が迅速に返ってくるような法の仕組みあるいは組織体制、運用にしていただければと願う次第であります。
 いずれにいたしましても、この特区の仕組みといいますのは地方自治体の責任にもかかってまいります。そういう意味では新しいアプローチだと思います。外国の特区制度に比べますと、税金は免除しない、公共投資はしないということでありますけれども、規制緩和だけでどこまでやれるかという実現に向かって個別には取り組んでみたいと思っておりますが、限定的に考えずに、地元として考えて、企業が行おうとしたときにはひとつトータルで考えていく仕組み、運用にしていただけないだろうか。まだ事例は出ておりませんけれども、そのような予感がいたしますので、ぜひそういう意味での御理解をいただければと願っておる次第であります。
 以上であります。(拍手)
佐々木委員長 ありがとうございました。
 次に、高橋参考人にお願いいたします。
高橋参考人 おはようございます。日本総研の高橋でございます。
 本日は、発言させていただくチャンスをいただきまして、大変ありがとうございます。私からは、主として経済的観点からということで発言させていただきたいと思います。
 まず、足元、その特区の構想につきまして、私はやはり地方経済の再生という観点で考えさせていただきたいと思います。
 かつて、地方経済というものは、円高がずっと続く中で産業の空洞化を経験したわけでございますけれども、私、今地方経済というのは、新たに三つの観点から空洞化に再び直面しているという気がいたします。
 その第一は、最近になりまして、また日本企業のアジア進出の動きが非常に活発化しております。これは、単に円という要因だけではなくて、やはりアジアにおける分業構造というのが大きく変わってきているというところに大きな原因があると思います。そういう中で、大企業の場合にはアジアに進出してまいりますけれども、中小企業の場合には、一緒にアジアについていくか、それとも死かというような選択を迫られるケースが出てきている、これが第一点でございます。
 第二点は、日本全土で交通や通信網の発達、これが進むことによっていろいろなメリットも出ておりますが、同時に、デメリットと申すべきかもしれませんけれども、首都圏あるいは地方圏の中で一極への集中が進んでいるということでございまして、これが地方経済が空洞化していく二つ目のポイントでございます。
 それから三つ目のポイントは、ここ数年でございますけれども、公共事業の削減に伴いまして、ある意味では地方経済にとって最後のよりどころともいうべき資金源が断たれつつあるということではないかと思います。
 この三つの現象が重なって、今、私は、地方経済が新たな空洞化、疲弊の危機に瀕しているというふうに思います。そして、こうした現象というのは、どちらかといえばもう不可逆的でございまして、今後さらに深刻化していくということではないかと思います。こういう中でどうやって地方経済を疲弊のふちから救うかということが必要だというふうに考えております。
 こうした流れをとめるためには、地方経済が過度の中央への依存を是正していく、そして自立的な経済圏を地方自身がつくり上げていくということ以外に答えはないんではないかというふうに思います。
 そういう中で、今度出ました特区構想が、こうした沈滞する地方経済にとりまして、閉塞状況の打破、あるいは地方経済だけではなくて日本経済全体の閉塞状況の打破になる、そういうふうに私は考えておりますが、特区設置の意義としまして大きくは二つのことが考えられるんではないかという気がいたします。
 まず第一は、地方経済再生の切り札としての期待でございます。
 先ほども、地方経済が置かれている状況については申し上げましたけれども、これからこの特区の構想がうまく進んでいけば地方が自立的な経済圏を形成することができるわけでございまして、それによって空洞化の流れというのがようやくとまるんではないかということが期待されます。
 地方が自立していくためには、中央依存を排する一方で、地方の独自性あるいは個性というものをフルに発揮していくということが必要でございます。このことは、地方経済が再生していくということだけではなくて、そのプロセスでは、地方の社会そのものが再生していくということにつながるというふうに信じております。
 他国の例ではございますけれども、最近、イタリアが非常に日本で注目されております。スローフードなどと言われておりますけれども、イタリアの持っておりますスローソサエティー的な性格、地方都市から非常にユニークで世界的な規模の企業が立ち上がってくる、生まれてくるというのは、やはりその地方独自の文化なり風土というものが生かされて、それがその企業経営の中に生かされて世界で活躍する、そういう構図なんではないかと思います。これですべてを語れるわけではございませんが、私は、そういった生き方というのはある意味で日本で必要なのではないかというふうに思います。
 特区構想の意義の第二点でございますが、これは、我が国経済全体で見ましたときのマクロ経済効果ということでございます。これにつきましては、三点にポイントは集約できるかというふうに思います。
 まず第一点でございますが、特区をつくることで地方経済の中で選択と集中が起きるわけでございまして、このことは、地方の中で資源の再配分あるいは地方の中での競争あるいは地方間での競争、これが促進されるということになりますので、資源の効率的な配分ということにさらに資するのではないかという気がいたします。
 二つ目のポイントとしては、特区の中に限らず日本全国で見た場合に、特区の構想が進んでいけば、当然のことながら、どこにいる民間企業であっても、あそこに投資してみたいという形で投資意欲が高まるということでございます。
 今、日本経済にとりまして最大の課題というのは、企業にとって期待成長率が低下してしまって新たな投資意欲がわいてこないということかと思います。したがいまして、特定の特区に投資をしたいということであっても、これはマクロ経済で考えていきますと、企業部門全体の投資意欲を引き上げるということにつながっていくかと思いますので、私は、国全体の産業の再生、都市の活発化ということに当然資するという気がいたします。
 ポイントの三つ目でございますけれども、これはよく言われることでございますけれども、特区が成功すれば、当然のことながら規制改革、これの突破口になってこれが全国に波及していく、そういう効果でございます。私は、この三つのことがマクロ経済全体としても言えるんではないかという気がいたします。
 それから、こうした特区の例というのは諸外国にたくさんあるわけでございますが、本日は、私からは二つの例を申し上げたいと思います。
 一つは、最近のアメリカの事例でございます。アメリカは特区をつくったわけではございませんけれども、九〇年代のアメリカの経済の再生ということを振り返ってみますと、地方都市の発展というのが極めて大きな役割を果たしたというふうに思います。八〇年代に非常にアメリカの主要都市でのコストが上がっていく、そういう中で、企業が高コストを逃れて地方都市に移転していったわけでございますけれども、そういう中でシリコンバレーが余りにも有名でございますが、それ以外にもテキサスですとかいろいろなところで、地方都市で、例えばITなどが活性化していって、そして地方都市の雇用がふえていった、これがアメリカ経済全体の再生につながっていったということが言えるんではないかと思います。
 なぜアメリカで地方都市が再生したのかという要因を探ってみますと、一つは明らかにコスト面の低さということでございますし、もう一つは、地域によって産学協同、これが非常にうまくいったというようなことが言われているわけでございますけれども、アメリカの場合には、もともと特区をつくるまでもなく、地方で再生のメカニズムが動くような機運があったということが指摘できるんではないかと思います。
 例の二つ目が中国でございます。中国の経済特区でございますけれども、もともと中国は、七〇年代に社会主義経済体制、経済のパラダイムそのものが行き詰まるという中で特区という手段を活用したわけでございます。当然、今日本で考えられております特区と当時この中国の経済特区に与えられた優遇措置、これは異なっておるわけでございますけれども、それにしても、中国にとりましては経済体制を変えるという壮大な実験でございました。
 まさに今の中国経済の状況を見てみますとこれに成功したわけでございますけれども、中国で今何が起きているかということで改めて振り返ってみますと、皆さんもよく御承知のとおりでございますが、一つは、社会主義経済から市場経済への体制移行に成功した、そのきっかけに特区がなったわけでございます。
 第二に、当時は、もともとは広東省でございましたけれども、地域の特性を顕在化させて広東省が発展する、そういう中でほかの省が我も我もという形で同じような構想を進めていって地域間の競争が活発化していったということが挙げられると思います。
 そして、もう一つのポイントとしまして、今や広東は、あるいはシンセン地区はITで世界的に産業の集積した基地というふうに言われておりますが、これなどは、特定産業の集積がまさにこういうところで進んでいく、そういうきっかけになった。これは中国の産業の発展にとりまして極めてエポックメーキングなことであったというふうに理解しております。
 今、私、アメリカと中国の例を申し上げましたけれども、それぞれ国によって違いますので一律のことは申し上げられませんが、私は、今の日本というのは、まさに中国の二十年前の状況に匹敵するような、そういうインパクトのある措置が必要な局面に来ているんではないかというふうに理解しております。
 続きまして、大きな三番目のポイントとしまして、今回の特区法案につきまして私なりに考えているところを申し上げさせていただきたいと思います。大きくは三点ございます。
 一つは、今回の特区の設置に伴います規制の緩和ということでございます。
 総論として申し上げますと、規制緩和は私はまだまだ進める余地があるんではないかというふうに思います。とりわけその対象となる規制項目については、さらに拡大の余地があると思料しております。
 先ほど福井参考人の方からもお話がございましたけれども、私、基本的にこの規制緩和ということにつきましては、過去十年の間に、経済的な規制については、例えば参入障壁の撤廃であるとかかなり進んだというふうに理解しております。今や、規制緩和、改革といったときに大きなポイントとなりますのは、やはり文書に書かれていない規制、それからもう一つが社会的な規制と便宜的に分類されるものではないかというふうに思います。
 今回も、農業、医療、教育、こういった分野で規制の緩和の是非が議論となって、結果的に自治体の要望が十分に生かされていなかった、そういう状況であったと伺っております。
 私は、こういう事態を打破するためには、例えば総合規制改革会議で集中的にこういった分野について討議をしてみる、あるいは首相の判断でもって突破していくというようなことも含めまして、特区で適用すべきものとして集中的に検討する、あるいはむしろ全国一律でこういったことを認めていくという観点から検討する、ある意味でねじの巻き直しが必要なんではないかというふうに考えております。あるいは、全く別の観点になりますが、こういった議論が分かれるものについて、例えば特区の中で住民の同意が成立するかどうか、そういったことを判断基準にしていくというのも一つの解決策ではないかという気がいたします。
 今、社会的規制のことについて申し上げましたが、それ以外についても、緩和の対象となった規制項目が九十三件と伺っておりますので、総論的には、比較的限定的な回答しかまだ出ていないのかな、第二次、第三次の緩和というところに期待させていただきたいところでございます。
 それからもう一つのポイントとしましては、やはり企業にとって不便であるあるいは煩雑である、そういった規制を企業の側から情報を集めて緩和構想の中に盛り込んでいくというのも、そういった観点というのも必要なんではないかということでございます。
 それから、私見として申し上げたい二つ目のポイントが、国の財政支援あるいは国と地方との関係ということでございます。
 従来の地域振興策と今回大きく変わっておりますことは、やはり国と地方との関係ということだと思います。私は、地方自治体の主体的な取り組みが特区成功のかぎだというふうに信じておりますので、したがって、中央政府からの安易な財政支援、あるいは地方自治体から申請がない地域で特区をつくるというようなことについては、賛成しかねる次第でございます。
 それでも、各自治体で財源の手当てが必要だという場合には、私は、特区をつくるからということではなくて、むしろ、地方自治体の自主財源の拡充という形でこれに対処していく、いわば地方分権の流れの中で検討すべきことなのではないかというふうに思います。ただし、地方から要望が上がってきておりますものの中で、国として全国的視野で実施できるようなものもあるのではないか、こういうものについては、私は、国の予算を積極的につけていくということも一法ではないかというふうに考えております。
 最後の、私見のポイント、三つ目でございますけれども、特区を設置することの効果の評価ということについてでございます。
 法案では、特区実施後の定期調査、これにつきまして、これが関係行政機関にゆだねられているということでございますけれども、やはり、各規制項目についてもともと省庁の見解によってかなりばらつきがあるということを考えてみますと、こういった効果の評価ということについても、各省庁がやった場合に、私は、調査結果にバイアスがかかるおそれがあるのではないかという気がいたします。
 したがいまして、規制緩和効果の計測であるとか、あるいは特区の設置効果、こういったことにつきましては、当然慎重な評価というものが必要になるわけでございますが、私は、第三者機関を設置して評価をするというのも一つの方法なのではないかというふうに考えておる次第でございます。
 以上三点、私見ということで私なりの考えを申し上げました。以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
佐々木委員長 ありがとうございました。
 次に、宮内参考人にお願いいたします。
宮内参考人 ただいま御紹介いただきましたオリックスの会長を務めております宮内でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 昨年の四月から政府の総合規制改革会議の議長を務めさせていただいております。この構造改革特区につきましては、私どもの総合規制改革会議が、ことしの春に、世の中で初めてこの構想を打ち出させていただきまして、規制改革を推進するための最重要テーマとして検討を続けてまいりました。本日は、そういたしました経緯もございましてお呼びいただいたものと理解しておりますので、総合規制改革会議の活動状況などを踏まえまして御説明をさせていただきたい、このように思っております。
 私どもは本年四月に、本年度の規制改革会議の重点検討テーマの一つといたしまして、規制改革特区的手法の検討というものを掲げました。我々の委員の一人でございます日本経済研究センター理事長の八代委員を主査といたしまして、規制改革特区ワーキンググループを設置いたしまして、積極的な検討を続けてまいりました。そして、七月二十三日の本年度の中間取りまとめというものにおきまして、特区制度の創設を提言いたしました。
 この基本理念といたしましては、財政措置は講じないこと、可能な限り幅広い規制の特例を対象とすること、あるいは、法律の形式につきましては、申請、認定等の法的手続を内閣に一元化いたしまして、各省ではなく、内閣主導で特区を認定する通則法を制定しよう、こういうことを盛り込みました積極的な提言をさせていただいたと存じております。
 その後、七月に内閣官房に設置されました構造改革特区推進本部や構造改革特区推進室を中心といたしまして、この中間取りまとめの提言内容を実現する方向で大変御努力をしていただいたと思います。また、自治体もこの構想に大変御熱心でございまして、数多くの要望、すなわち二百四十九の自治体等から四百二十六もの構想が寄せられた、このように聞いております。
 私どもの会議も、内閣官房とあわせまして、この秋は、特区制度の対象とすべき規制をできるだけ幅広いものとするため、医師会あるいは全中を初めとする関係団体、関係各省との本格的な折衝、調整にも当たらせていただきました。
 私どもの基本スタンスのポイントは一つでございます。それは、地方自治体から提案のあったすべての規制改革項目につきまして、関係各省に対しまして、それを全国規模でやるか、あるいは特区でやるのかといった形のいわゆる二者択一の選択を迫るということでございました。
 これに対しまして関係各省庁からは、この規制は特区ではなくむしろ全国一律に進めるべき、こういう説明をいただくことが多かったのでございますが、その場合には、全国的にやるのであれば、やはり年限を決めていただくということも必要でございますので、例えば二年以内というように、その実施時期とか措置内容を具体的に確約していただく、こういう作業を進めてまいりました。
 このような結果、現在の構造改革特別区域法案の中身は、我々会議の提言が相当程度反映された、このように考えております。具体的には、本特区制度の対象となる規制改革事項が九十三件、また、これにあわせまして全国ベースで進みました規制改革事項も百十一件、すなわち、これを合計いたしますと二百件以上の規制改革事項が、言うならば、半年弱という非常に短い期間で前に進んだということはできるわけでございます。これは、これまでの規制改革をやってまいりました過程、歴史の中で、大変画期的と申しますか、速いスピードで動いた初めての事例ではないかというふうに思うわけでございます。
 このように、相当程度評価できる構造改革特区法案ではございますが、しかしながら、そうは申しましても、本日、これから申し上げます数点につきましては、やはり私個人といたしましては不満も残るということも事実でございます。それらの点につきまして、少し触れさせていただければというふうに存じます。
 そもそも、私どもが特区という構想を打ち出しました最大の理由は、なかなか実効のスピードが上がらない規制改革を推進するための突破口として、区域を定めてやろう、こういう考えが出てきたわけでございます。
 私自身、ちょっと私ごとでございますが、当会議の前身でございます行政改革委員会の規制緩和小委員会あるいは行政改革推進本部の規制改革委員会の時代から通算いたしまして、政府の規制改革に携わりまして実はもう八年といいますか、これで八年でございますが、その前身からも含めますと十年ぐらいお役目をちょうだいしておりますが、この間を振り返りましてそれ以前と現在を比べますと、幅広い分野で相当数の重要な規制改革が進展した、こういう評価はできることは事実だと思います。
 しかしながら、これを世界の先進諸国と比べますと、世界の中で我々はどういう位置にあるかということで考えてみますと、まだまだ取り組みがおくれており、もっとスピードを上げるということがやはり日本の経済の活性化には不可欠だ、私はこのように思っております。
 したがいまして、私自身、日本の規制改革に対します評価といたしましては、遅々として進んでいるというふうにしか申し上げられないという感じがしております。
 特に大きな問題といたしましては、これまで公的主体が中心に、かたく大きな制度をつくり上げてまいったというのが日本の現状でございますけれども、その分野での規制改革が大きな壁に阻まれて、ほとんど進展が見られませんでした。それらの分野を私どもは官製市場というふうに呼んでおります。その象徴的な存在が、医療、福祉、教育、農業などの分野でございます。特区と並ぶ本年度の総合規制改革会議の重点分野の一つに、この官製市場の見直しということを掲げております。
 こうした状況を何とか打破し、改革の突破口を開いてスピードアップを図れないか、そういう中から出てまいりました構想が特区構想でございます。
 本年七月の当会議が中間取りまとめで提言いたしました特区構想における基本理念、規制改革特区の目的の内容を引用させていただきたいと思います。
  我が国においては、近年、規制改革を通じた経済活性化が急務となっているにもかかわらず、様々な事情により、規制改革の早急な実現が妨げられている場合も多い。
  規制改革の早期実施のためには、これまでのような全国一律の実施にこだわらず、特定地域に限定して、その特性に注目した規制改革を実施することにより、全国的な規制改革につなげ、我が国全体の経済活性化を図ることを目的とする「規制改革特区」制度を創設することが、極めて重要である。
このようになっております。
 繰り返しますが、特区制度の最大の目的は、全国レベルでは最も難しい規制改革、特に官製市場の全面開放をこれによって実現できないかということでございます。
 象徴的に申しますと、例えば、医療、福祉、教育、農業の各分野におきます企業といいますか株式会社参入の問題でございます。国などの公的関与の強い市場、すなわち、国、地方自治体、特殊法人、そして医療法人、社会福祉法人、学校法人などの非営利法人が独占しております官製市場を変えていく。本来の健全な市場経済に持っていかなければ、我が国において新たなビジネスと多くの雇用が生まれてこない、このように思っております。
 こうした官から民への事業移管を総合的、包括的に進めるための手段にはいろいろな方法がございます。小泉総理も最も御熱心にやっておられます特殊法人の民営化というのもその一つでございますが、民営化以外にも、PFIあるいは民間委託、アウトソーシング、あるいは企業、株式会社等の民間参入などの有効な手段がございます。
 御承知のとおり、これは八〇年代にサッチャー政権が英国を復活させたときの手法でございます。これが我が国でうまくいくかどうかは、日本が本当の意味で効率的な資本主義国家となれるかどうかというものの試金石と言えると思います。この中でも、医療、福祉、教育、農業分野における株式会社の参入はシンボル的な存在と思います。
 この問題につきまして、昨年、私が経済財政諮問会議に出席いたしました際、総理からも、これを規制改革の目玉にする、こういう心強い発言がございました。その後、しかしながら、関係各省などの抵抗によりまして、本件はなかなか推進いたしません。総理が言っても事務が動かないという国は大変私は珍しいと思うわけでございますけれども、要するに、今回の法案についても、私どもの不満の最大のところはそこにございます。
 四分野のうち、福祉、農業は、今回の法案で一歩前進を見ました。福祉につきましては、特別養護老人ホームの建設、運営にPFIや公設民営方式を活用いたしまして、株式会社が参入できるということになりました。農業につきましても、農地を保有することはできないものの、株式会社が農業経営を行うことが相当程度容易になりました。少し穴があいたという感じでございます。
 しかしながら、医療、教育の両分野につきましては、関係省庁側の回答は全くゼロ回答でございます。来年一月中旬までの地方自治体や民間からの第二次提案募集を受けまして、本法案も次期通常国会におきまして再度見直しをされるというふうに確信しておりますが、とにかく、いち早くこの両分野における企業、株式会社参入を解禁すべきだと私は思います。
 関係省庁の主張するのは、医療も教育も、高い公益性を持つ、これらのサービスのいわゆる特殊性でございます。しかしながら、こうした公益性ということがある、これは事実そうでございますが、それにいたしましても、サービスを提供する、供給する主体の経営形態について、事前の制限を設けるのではなく、むしろ情報公開、第三者評価といった仕組みを初めとする事後チェック、この体制の整備により対応することは十分可能でございます。
 現在、社会の多様化する消費型、生活型ニーズに対応していくには、むしろ、株式会社という経営形態の有するメリット、すなわち、資金調達の円滑化、経営の近代化、効率化、投資家からのチェック体制、こういうところに着目いたしまして、これらの分野につきましても、企業、株式会社の参入を促進し、質のよいサービスを幅広く提供していくことが早急に必要だと思います。
 私どもの主張は、いずれの分野におきましても株式会社による参入を可能とするという趣旨でございまして、当然のことながら、これまでの運営主体が株式会社化されることを強制するというようなことは全く考えておりません。あくまで多様な経営主体を認めるべきであるということを主張し、それが結果的にサービスの向上と雇用の拡大につながるというふうに考えているわけでございます。
 いずれにいたしましても、総合規制改革会議、あるいは私個人といたしましても、この企業の参入問題、株式会社の参入問題を初めといたします官製市場改革を実現するために、引き続き本特区制度を最大限活用するとともに、今後も必要な改定を通じ、より実効性の高い仕組みにしていくことが重要だというふうに認識しております。
 繰り返しになりますが、来年一月中旬までの第二次提案募集を受けまして、本法案も次期通常国会におきまして、医療、教育分野での株式会社参入の点につきまして再度見直しをされるものと私は確信しておりますし、そうあるべきだというふうに考えております。こうした望ましい特区制度の構築に向けまして、私どもの会議も今後とも引き続き最大限の協力あるいは提案をさせていただきたい、このように思っている次第でございます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
佐々木委員長 ありがとうございました。
 以上で各参考人からの意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 これより参考人各位に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細野豪志君。
細野委員 参考人の皆さん、おはようございます。
 きょうは、本当に皆さん、大変お忙しいところ、貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。
 本法案は、衆議院の当委員会に付託をされましたのが先週でございまして、一週間質疑を続けてまいりまして、きょうはちょうど中盤戦ということになろうかというふうに思います。皆さんの御意見を参考にさせていただいて、まだまだ質疑時間は残っておりますので、十分な質疑をして、私どもとしては理想の案というのをつくり上げたいということを考えております。
 早速、質問に入らせていただきたいというふうに思います。
 四人の皆さん、それぞれ特区については推進をしていこうという立場から陳述をいただいたというふうに考えております。その中でも、今回いろいろ話題になりました福祉、農業、医療、教育の分野についても言及をいただいた方がいらっしゃいます。福祉と農業の分野はまあまあ前に行ったんだけれども、残念ながら医療と教育の部分は前に今のところ進まなかったというお話がございました。
 まず、この部分、宮内参考人の方に、なぜ農業と福祉の分野は進んで、一方で医療と教育の分野は進まなかったのか。官僚の抵抗があったのか、もしくは大臣のそれぞれ所管の方の指導力がなかったのか、その原因と、ではそれをどう変えていくのか。制度の仕組みの側で規制緩和の分野にずっと取り組んでこられていますので、政府の側の対応について少し御意見をいただければというふうに思うのです。
    〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕
宮内参考人 物事を進めていく場合に、私どもは、所管する官庁と折衝をいたしまして、官庁にはおのおの関連する団体があるということで、二重の交渉のようなわけでございますけれども、その後ろのところは、官庁を抜いてまた直接お話しすることもございます。
 そういう意味で、今、四つの分野のうち二つが少し進んだ、あとの二つは全く進まない、この差は何かという御質問かと思いますけれども、この差は、やはり後ろに控えている関連する諸団体の力の強さといいますか、そういうものに左右されているというふうに推察いたします。
 それからもう一つ、特に教育分野については、そうしたら後ろにそういう関係団体の強いのがいるのかといいますと、それは、そういう団体でなく、やはり教育界というものの考えを関係省庁が非常に強く感じて、言うならば省庁側の反対が強いというふうな、私の受け取る感じといたしましてはそういうところでございます。
 それで、そうしたらそれだけ抵抗するだけの十分な理由があるのかということでございます。私どもといたしまして実はこれはもう何年来同じ議論を進めているわけでございまして、例えば医療については、生命にかかわる医療に営利を目的とする企業の参入はなじまないというような論理でございますけれども、その論理でいきますと、よく薬をお飲みになるな、あるいは、命にかかわる交通機関は国営でないといけないのかというような議論になってしまって、全く私どもとしては議論にならないというふうに思っているわけでございますけれども、まあ力の差というふうに思っております。
細野委員 最後の、力の差というところにすべてが集約されているのかなという感じがいたしますけれども、大変参考になった御意見でございました。
 続きまして、福井参考人にお伺いをしたいんですが、さすがに福井参考人はこの分野についてのオピニオンリーダーで、今まで引っ張ってこられただけあって、非常に説得力のある解説だったなというふうに思っております。
 一点だけ私が確認させていただきたいのは、確かに民間主導で、地方主導で、今までの、単に予算をばらまくだけ、制度の切り売りをするだけの地方活性化とは少し趣が違うんだというお話がございました。ただ、私どもの方が今この問題を考えるときにどうしてもひっかかりますのは、結局、最終的に規制緩和をしていくかどうかという許認可は中央が持っているわけですね。あくまでこれは中央であって、最終的に地方に分権されたわけでは決してないわけです。
 しかも、もう一つ申し上げると、ではその一方で、規制緩和がある地域でなされました、それが全国に展開するという保証も、この法文を見る限りは必ずしも保証されていない。
 このことを勘案すると、確かに今までと趣は異なるけれども、これが果たして利権にならないという保証はないのではないかという懸念を私ども持っておるんですが、その懸念について、積極的にこういう部分で解決ができるんだというところがお考えとしておありであれば教えていただけますでしょうか。
福井参考人 利権になるかならないかという点でございますね。
細野委員 利権にならないようになっていますかということと、もしそういう懸念があるとすればどうすれば解決するかということについて、御示唆をいただきたいと思います。
福井参考人 まず、最終的に中央で許認可が律せられるという点、確かにそのとおりでございまして、規制改革の流れで特区は出てきておりますが、もう一つ別のテーマとして、中央から地方へという地方分権によって、そもそもの許認可やあるいは補助金の交付といった権限がもともと地方にもっと移るべきであるという流れが引き続き並行して進められていくべきものだろうと思います。
 それから二つ目の、全国展開に本当につながるのかどうかということでございますけれども、やはり、特区でもし先例ができて、それが非常にうまく機能しているということでありますと、それは大変大きな広告塔になり得るわけであります。そうしますと、そういったものについて全国でやるべきかどうかということは、おのずと国民の目にも明らかになっていくように思われます。
 また、利権ということでございますけれども、こういった制度は、やはり一種の圧力団体や利益団体やそこと利害を一致させる関係省庁という、非常に強固なとりでがございますので、そことの攻防で、先ほど宮内議長からもお話がありましたように、具体的な論理をもっと詰めていくことによって世論が喚起されるということが今後の展開に重要だと考えます。
細野委員 確かに福井参考人おっしゃるように、一つの地域でうまくいけば、同じようなことをやりたいという自治体がほかに出てきて、そういう提案が出てきて全国的に広がっていくという可能性はあると思うんですね。
 ただ、論理上は、やはり全国展開を前提にする規制緩和という流れがあるのであれば、法案にきちっとその部分を見直し条項として書いておいて、サンセット的な条項になるのか、書き方は非常に微妙な問題があると思いますが、その部分に関して、この法案に関しては一応大臣の見解は委員会では示されているけれども、法文としてはちょっと不備があるのではないかというふうに私は感じておるんですが、この見解に対しては、福井参考人、どのようなお考えをお持ちでしょうか。
福井参考人 法案の立案過程、お察しのとおり、大変激しい攻防がございましたのでこのような書き方になっておりますが、御指摘の御提案に私も全く賛成でございます。
 本来、全国展開になじむような評価が得られたのであればそれを全国展開するということが条文に書けるのであれば、それは大変望ましいことだと考えております。
細野委員 全く同じ質問を宮内参考人にも伺いたいんですが、この全国展開についてきちっと法案に書くべきではないかという提案について、どのようにお考えになりますか。
宮内参考人 私個人としては、そういう法案になってくれるということは非常に好ましいと思いますけれども、過去の規制改革に携わってまいりました経験から申しますと、この特区制度というのを持ち込めるのがぎりぎりの現在のところであって、確かに理想型として申し上げることはたくさんございますけれども、先ほど申し上げましたように、半年ばかりでよくここまで来たなと、私が言ってしまうといけないのかもわかりませんけれども、そういう意味ではよく進んだなということでございます。
 法案の内容につきましていろいろの考えがあることはよくわかるわけでございますけれども、とりあえず今の法案、通則法でつくり、さらに今後のものを埋め込んでいく。そして何よりも、法案の考え方はいろいろございますけれども、実際特区でやってみて、医療なら医療の特区があって、そこで高度医療、最新医療がやれる、ここはすばらしいということになると、どんどんそこは集積が深まっていく。どうしてほかでできないんだというような雰囲気、そういうものが出てくれば特区という必要はないんじゃないか。全部これを全国的にやれるようにすべきだということで、法律の書き方はともかくといたしまして、そういうふうになっていってほしい。
 そのためには、非常に差別化のできるいわゆる特徴のある特区ですね、ちょっとだけ規制改革したような特区じゃ意味がない、大幅に全国と違うというような特区ができればと、そのような観点もあるというふうに思っております。
細野委員 どうもありがとうございました。
 少し論点を変えまして、続いて高橋参考人にお伺いをしたいというふうに思います。
 経済の専門家でいらっしゃる高橋参考人の方から、大変積極的な評価のお話がございました。マクロ的に見ると構造改革特区ができることは全体としてのパイの拡大になるのではないかというお話、私も基本的には賛成でございます。
 ただ、これはそれぞれの特区のあり方によって、若干ミクロ的な部分でいうと議論が変わってくるのじゃないかという気がするのです。
 具体的に申し上げますと、例えば北九州市さんの方がやられている国際港湾をより門戸を開いていこうという話であれば、そこを拠点にそれこそ港湾の荷がふえて、日本がそういう意味での競争力が上がってくるという可能性がございます。これはマクロ的にも大変効果があると思うんですが、例えばお隣の佐賀県の鳥栖市などでは、九州の物流特区というのをつくろうという話になっているんですね。九州で荷物が動くのを、その場所にできるだけ荷物を集めましょう、そのための規制緩和をやりましょうという話になっている。
 この話は、確かに鳥栖市においては大きなメリットがあるのだけれども、九州の他の物流の拠点にとっては、自分のところが中継点になりたいというところにとっては、こちらに荷物が回ってこない。ミクロ的な面でいうと、ゼロサムでやっているところでは、それこそ一部に荷物が偏ってほかのところにやってこないというような例は、これだけではなく、この特区を見ているとかなり私は感じる部分がございます。
 このミクロ的なマイナス面においてどのようなお考えを高橋参考人が持っていらっしゃるか、まず御紹介いただきたいんです。
高橋参考人 私は、むしろ従来型の地域振興策の方が、安易にそういう振興地域をつくっていくという可能性が強かったんではないか。むしろ特区をつくることによって、各地域が自己責任になりますから、お隣に非常に強い地域があって、そこが物流地区をつくろうとしているときに、では自分のところも、私のところもといってつくった場合には、これは当然、フィージビリティーが低くなるわけでございまして、その場合には、結局、その地域が自己責任が徹底されていないという形になるかと思いますので、私は、そういう意味で、特区をつくることでむしろ地域が責任ある競争をするようになるんではないか。そういう観点から、市場メカニズムを経済の中に導入していくということで完結するということで、私はむしろよろしいんではないかというふうに思います。
 それから、やはりもう一つ、特区をつくることの意義というのは、特区がなければもともと企業は投資をしなかっただろう、ところが、特区をつくることで企業のマインドが変わって投資をする。この部分は全くゼロサムではなくて、プラスサムでございますので、私はその効果というのを強調させていただきたいというふうに思います。
細野委員 高橋参考人の前段のお話というのは、あくまで、権限が地方にある場合なら通用する話だと思うんですね、競争し合うと。でも、今回の法案はそうなっていないわけです。あくまで権限を持っているのは中央である。初めに出てきたところに許認可が出るかもしれないけれども、二番せんじ、三番せんじではちょっと待ってくれということもあるかもしれないですね。そういう部分では、私は、これは何らかの工夫が必要だと思うんです。
 許認可を出すときに、では、それについてどこが客観的にどういう評価をするのか。また、冒頭私申し上げましたけれども、そこでうまくいったら必ず一年以内にこれは全国展開をしていくんだ、そういう部分の工夫がないと、今高橋参考人がおっしゃった部分での、ミクロの部分での格差というのは、地方で決められないわけですから、依然として残ると考えますが、そのことについての御見解を伺えないでしょうか。
高橋参考人 やはり競争社会のメリットというのは創業者利得ということだと思いますので、いち早く物を考えて提案した、それを中央政府がほかの思惑なしに、可能であればできるだけ認めていくというシステムが私は必要だと思います。ただし、そこで成功が見えてきたときに、今度はほかの地域が似たようなことをやろうとしたときに、やはり遅滞なく認められる、これはあくまでも自己責任の世界ですけれども、そういうシステムが必要だと思います。
 したがいまして、先ほども、ほかの地域に広げる手続についての御議論がございましたけれども、私は、一つの地域で認められた後、ほかの地域が認められるかどうかということについて、検討が半永久化してしまうとか固定化されてしまうというおそれというのはやはりあるかと思いますので、理想的には、その地域での成功ができるだけ公正に外に伝えられると同時に、次のところが出てきたときにはできるだけ早く認められる、そういう体制をつくることが必要だと思います。
細野委員 最後になりましたが、末吉参考人に伺いたいんです。
 ちょっと意地悪な質問になって恐縮なんですけれども、北九州市さんの場合は、先ほど御説明いただいた国際物流特区と、もう一つロケーション特区というのを出されていますね。
 ロケーション特区というのは、映画のロケなどを撮る場合に、道路の使用許可なんかがなかなかおりないものですから、実は今全国に広がってきておりまして、フィルム・コミッションという組織があります。そういう組織が動きやすくするような特区をやろうという話なんですが、非常におもしろいアイデアだと思うんですね。
 ただ、北九州市が一番初めに認められてロケがいっぱい来ました。では、ほかの場所が出てくることは、それこそ競争相手がふえることになるわけですね。そのことに関して末吉参考人のお考えとして、自分のところに出してもらってほかのところに全面展開することに対して、これは物流特区についても同じことが若干言えるかと思うんですけれども、どういう感覚をお持ちなのか、そこを率直に御意見をお伺いしたいというふうに思います。
末吉参考人 フィルム・コミッションの点について御質問いただきましたが、北九州の場合、物をつくる町で働く場所でありまして、よそからここに泊まりで来るような町ではないということで、町を変えたいということで、要は宣伝をしてもらわなければ困る、全国に市を売り出すためにはどうすればいいかということで、映画のみならず、テレビとかそういうことの誘致を一生懸命やってきました。そのときのノウハウといいますか、いろいろな意味で、おっしゃるように、例えば一つの許可をもらうにしても、道路と公園と川では管理者が違いますからなかなかできませんでしたので、そういうことをやってまいりました。
 そこで、どこも同じではないかという点でありますが、例えばフィルム・コミッションでいいますと、北九州の場合、どこをとったって山紫水明ということはあり得ないわけです。逆に言いますと、ロケにしろ、それにふさわしいものしかあり得ないわけですから、これは地域差があるのではないでしょうか。一つがあるから全部そこで独占をするということはあり得ないと思います。それぞれ個性のある部分が出てしかるべきではないか。
 ただし、そんなに余計に出るかというのを、率直に言って、二百も四百も特区構想が出てくるとは正直に私は思いませんでしたけれども、そこの点は、あっちが行くならこっちも行けという全国の、どう言えばいいでしょうか、何かそういうふうに乗っているような気もしないでもありません。
 私は、何といいましても地域特性のあるものを強調していけば、あとはコストで、おさまるところにはおさまるのではないか。ゼロサムにならぬようにぜひしなければならぬというふうには考えております。新しく興るところでこの制度を使うべきであるというふうに思います。
細野委員 それでは最後、もう一問、末吉参考人にお伺いしたいんです。
 今回のこの特区構想を見ていまして、非常に練られた特区構想と、いや、これは何か思いつきでだれかが書いたんじゃないかなという特区構想、結構、玉石混交でございまして、これは各地方自治体に私もいつか確認をしてみたいなと思っているんですが、北九州市の場合は、この特区を出す場合にどういう手続をとられましたか。議会の方にかけられたのか、もしくは市長の指示のもとに市役所の中でおつくりになったのか。また、住民に対するこの部分に関する理解の促進ですね。その辺についてどういう手続を今までとられてきているか、この点をお伺いしたいと思います。
末吉参考人 当然ですが、一つの国の施策がとられようとするときにも、地域でも、その問題に対してどう対応するかというのが関心になります。そのためには、例えば特区でいいますと、この特区について勉強したいといえば、特区に関する予算を組まなければなりません。予算のときに議会でちゃんと説明はいたします。そういう手続はとっておりますが、今回、新しく特区にするに当たっての手続があれば、それはちゃんととります。
 同時に、響灘のように大きな国際物流特区というときには、当然ですが、地域におきまして政治課題になります、議論する課題になります。当然ですが、期待もありますし不安もあります。そこの部分は、いわゆる市の議会と市長を含めて市の執行部との間でいろいろな意見の交換というのは日常さまざまございます。あわせて、当該関係住民のところには説明もございます。これは、市の中で、何も特区だけということじゃなくて、国政の中でのいろいろな対応があったときとほぼ同じ対応でやってきております。特に違和感はありません。
細野委員 地方で独自のルールができる場合は、普通、条例という形をとるわけですね。市民にも非常に見やすいわけです。
 ただ、特区の場合は国が決めてしまうものですから、そこについて地方がどれぐらいの議論をしているのかというのはなかなか見えにくいところがございまして、でき上がったときには、その部分について十分配慮をいただいて市民の理解を得られる努力をしていただきたいな、このことを最後に申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
伊藤(忠)委員長代理 河合正智君。
河合委員 公明党の河合正智でございます。
 本日は、まことに御多忙のところ、しかも急な日程でございましたところ、参考人各位におかれましてはこのように御出席賜りまして、心から感謝申し上げます。
 私は、まず最初に、この問題につきまして衆議院の本会議で小泉総理に所信をお伺いしたことでございますが、まことに総論の中の総論でございますけれども、宮内会長に同じ質問をさせていただきたいと思います。
 それは、私の問題提起は、日本におきます規制改革というのは、一九七〇年代のオイルショックに始まります各国の財政の悪化、それからグローバリズムといったところから、また、新保守主義と言われておりますフリードマンに代表されます学説、そしてレーガノミックス、サッチャーイズムといった小さな政府を目指してきた政策によって、しかも、日本においてはそれが外圧という形でもたらされましたけれども、先ほど宮内会長がおっしゃいましたように、十年携わって一向に進まない、むしろこの特区構想というのはその突破口だという御指摘のように、日本という国は規制大国であって、最も成功した社会主義経済国だと言われている。そういう中にありまして聖域なき構造改革を掲げている小泉内閣の支持率が圧倒的に高い原因というのは、私はそこにあるというふうに考えておりまして、この特区構想というのは、総理みずからリーダーシップをとって思い切って行っていただきたいことを要望したわけでございます。
 しかし、支持率が高い反面、国民はその先の将来像について不安を持っているということも否定できないのではないかと私は思います。
 それは、具体的には、例えば市場原理主義的な弱肉強食。原理主義というのはやはり不安と差別を社会にもたらしますが、ヨーロッパの場合におきましては、人々こそがヨーロッパの資産であるというリスボン宣言に代表されますように、そういう市場原理というものはむしろ社会的な目的のために活用していくという立場をとっておりまして、市場原理の原理主義とはかなり異なった考え方でございますけれども、宮内会長が総合規制改革会議の議長として進めてこられた経験を踏まえまして、その先にある日本の像というものを示しながらこれを進めていくということが国民に安心をもたらす一番大事な点ではないかと私は考えますが、いかがでございましょうか。
宮内参考人 大変根源的な御質問をちょうだいしたと思います。私の能力を超えると思いますが。
 私は、市場原理というものは、先生のおっしゃったように、弱肉強食というふうには考えておりません。市場原理といいますのは、優勝劣敗だというふうに思っております。すぐれた者が勝ち、劣った者が敗れる。そして、すぐれた者と劣った者とはだれが決めるのかといいますと、これは消費者、あるいはサービス、物の買い手が、自分の気に入ったものはすぐれものを求める、すぐれていないものは求めないということが一つ一つの経済取引に行われるのが市場原理ということでございます。
 したがいまして、提供する側は、買い手に何とか気に入っていただくものをつくりたい、買い手に気に入ったサービスをしたいということで、買い手に対して競争するわけであります。強い者が弱い者を食うのでは全然ございません。すぐれたものを出した人が勝ち、すぐれたものを出せない人が去っていく。したがいまして、結果的に何が起こるかというと、そういう原理で経済取引が行われておりますと、すぐれたということは付加価値が高いということでございますから、この取引の連鎖は一つの経済のパイを大きくしていく。
 市場原理というのはすぐれた者が常に残っていくというシステムですから、パイが大きくなる。全体のパイを大きくするというのが私は市場原理だと思います。そういう経済システムを早くつくらないと、統制経済あるいは官製経済という、パイが小さくなるということでございましたら、どんなに頑張ってもこれはパイの奪い合いであり、いい社会はできない。
 私は、経済は社会に奉仕するものだと思っております。したがいまして、経済のファンクションは、まずパイを大きくして豊かな社会をつくる。そして、豊かな社会は、この中に本当に敗退して弱者も出てくる、余り豊かになり過ぎたら不公正感も出てくる。そういう中で政治の力で豊かになったところの矛盾を解決していただく、そういうことでよい社会ができるというふうに思っているわけでございます。
 社会主義あるいは統制経済のようにパイの小さくなる経済、今の日本はパイが小さくなる、その中からは何も生まれてこない、社会がよくなる要素はないんじゃないか。したがいまして、経済活動における規制改革というのは、決して弱肉強食というような嫌な社会をつくるのではなく、経済活動においてすぐれた者がどんどん社会の中で評価される。劣った人は、だめでしたね、また別なことをやりなさいということで、そういう取引連鎖をつくることによってパイを大きくする。そして、あとは、社会をどう変えていくかというのは、まさに政治の場で御検討いただくことじゃないのか、私自身はそんなことを考えております。
河合委員 大変にありがとうございます。
 では、末吉参考人にお伺いさせていただきます。
 北九州市長には、私は二年前にESCAPの会議で環境総括政務次官として参加させていただきましたときに、ある意味で北九州市の取り組みについて感動を覚えた記憶がございますが、きょうまた、この特区につきましてもかなり綿密な積み上げをされてきているというお話を伺いまして感動いたしました。
 そこでお伺いさせていただきますけれども、権限の移譲ということについて最終的に要望されているわけでございます。これは現下の状況を踏まえた上でおっしゃっているんだと思いますけれども、財源を伴わないで果たして今構想されていることができるのかどうかということでございますが、いかがでございましょうか。
末吉参考人 まず一つは権限移譲でありますが、権限移譲といった場合に、私はよく外国に出かけます。その場合、外国の市長に会いますと、とりわけ中国とかアメリカですけれども、いろいろなことがありますと、おれに任せろと言うんですね。私が責任を持つから、おたくにいる企業、ここに来てくださいと明瞭に発言します。では、北九州、この特区の場合に、特区の制度ができましたから私に任せなさいと言える仕組みになっているかというと、そこの部分はまだパーフェクトじゃないと思います。
 したがって、先ほども申し上げましたけれども、特区の指定に本当にされるのかという信頼が必要なんです。したがって、先ほど仮免許とか予備免許を申し上げたのはそういうことなので、だから、そういう自分に任せろというのができなければ、少なくとも、国がこういう制度で認めてくれる、天気予報で言うと、七、八割は当たるよ、こういうぐあいになりますと、ないよりも相当力がある。そういう意味で、とにかく力を、少し権限をくれませんかという点であります。
 それから、財源の点ですけれども、外国と比較しますと、そこの首長は、税金はまけますよとか、もう積極的に言うわけです。そういう免税しますということは全くここから外れております。
 企業が進出をするときにどういう立場になるかというと、いろいろな要素の上に、総合コストに、もう少しここの部分をやってくれたら日本に行ってもいいよというところがあります。そのときに、財源といわゆる減税みたいなことをここでもう一押ししてくれれば出るよといったときにどう判断するかといったときに、それはだめですと言ったときには成就しないわけですから、できたらそこが欲しいなと思いますが、今の法案はそうなっておりません。
 では、そこの部分はそれで全部あきらめるかというのじゃなくて、可能な限り今の中でやるだけは努力はいたしますが、具体的な判断になったときには、それくらい少し窓口は緩目にしてもらえませんかねというのが率直な気持ちです。
河合委員 全く、すべての立場をわきまえた上で非常に抑制的に御発言されておりますが、その意を酌んで私たちも頑張りたいと思います。
 福井参考人にお伺いさせていただきます。
 アメリカの州法が非常に参考になるという、しかも、私たちが聞いておりまして、論理的に、まことに説得力がある説明でございますけれども、御案内のように、日本は中央集権システム、アメリカの場合は連邦制でございますから、州法という、州がステーツ、国。したがって、さっき参考人がおっしゃいましたように、立法権も持っている、それから課税権も持っておりますから、当然、税制、財政についての自由な権限のもとで州間競争をさせていると思います。
 ところが、日本で規制緩和だけでそれをなし遂げようとしますと、自治体は、先ほどの北九州市長さんのように物すごいジレンマに陥ると思います。とりあえずは規制緩和で特区をやっていくんだという反面、私はその辺に日本と全く正反対の、中央集権システムである日本の場合にはそのジレンマがあると思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
福井参考人 おっしゃるとおりでございまして、日本は基本的には連邦制をとっていない、アメリカは連邦制をとっているということに伴って、自治体の立法権あるいは課税権には大きな制約があるということは御指摘のとおりでございます。
 ただ、今回の規制改革の特例という観点から日米の制度的比較を行いますと、基本的に、日本国憲法はアメリカの連邦憲法と基本的人権に関する部分の規律はほとんど同様でございます。経済的自由、精神的自由、法のもとの平等といった人権規定に関して、ほとんど同様でございます。これは歴史的沿革からもそのようになっています。
 そういたしますと、規制改革で非常に重要なことは、例えば、ある地域だけほかの地域と扱いを異にすることが法のもとの平等に反するのかどうかということが大変重要になります。また、ある規制を改革することがだれかの基本的人権を損なう可能性があるのかないのか、こういうことが非常に根源的には重要になるわけでございます。
 そう考えますと、憲法のこういう根源的部分については日米において大きな差異がないといたしますと、ある規制の規律のされ方が地域によって異なるということについて、アメリカが州ごとにそのような差異を許容しているのであれば、日本でも、どの法律やどの法令でやるかはともかくとして、ある地域と別の地域とが別の、例えばアメリカで州法ごとに違いがあるようなことがアメリカ連邦憲法のもとで合憲とされているような違いであれば、日本においても合憲と考える余地がある、これがこの特区の法的整理の出発点でございました。
 ところが、まさにそのときにおっしゃるように、日本ではそれを自治体立法でやろうとすると大きな限界がある。そこで、苦肉の策ということでもありますが、国法でその違いを正面から認めるのであれば可能になるということで、憲法論をクリアしたということがございます。
 したがって、もちろん自治体立法権の範囲内のことであればどんどん条例でできるわけでございますが、どうしても自治体立法権の範囲を超えられないようなことについてある地域の特例を認める必要性が高いというような場合には、この特区のような形で国法そのもので、ただし、自治体の意向をよく聴取しながら決めていくというのは、一つのあり得る解決策ではないかと考えております。
河合委員 大変ありがとうございます。
 高橋参考人にお伺いさせていただきます。
 具体論で非常に興味深い御提言をされているわけでございますが、首都機能移転、これは日本の国会の中におきましても非常に議論が閉塞状況にございます。高橋参考人は、むしろ各特区が名乗りを上げて、首都機能移転の候補地として名乗り上げるから自分のところに来てください、こういうことをしたらいかがかという御提案かと思いますけれども、日本の行き詰まっております一番のネックは、首都機能の一括移転という条文じゃないかと私は思います。
 スウェーデン、それからイギリスのサッチャー政権のときに行いました分権的首都機能移転でございますと、これは、先ほど参考人がおっしゃいました地域の活性化、地方経済の活性化に非常に役立ったという実証がございますけれども、この一括移転か分権的移転かということについて、高橋参考人は御意見の中で特に御見解がございましたらお示しいただきたいと存じます。
高橋参考人 私は、法律の専門家ではございませんので、首都機能といった場合にどこまで何を含めるべきかということについては、正確には申し上げられません。
 ただし、首都機能といった場合にはさまざまな機能があると思います。私がそのときに念頭に置きましたのは国際政治都市ということでございまして、例えば、国際機関を誘致してきてそれをある都市に集中的に置く、例えばスイスあたりのジュネーブのようなイメージを持っております。まずこれが一つの例ではございますけれども、必ずしも国会そのものを移転するという議論だけではなくて、首都の持っておりますさまざまな機能というのを分解してみて、そのうちの一部を移してみるという議論は考えられるのではないか。
 そのときに、例えばこういう機能を移したいということで一定の条件を定めまして、各地域が条件に沿う形でコンペを行う、そして一番優秀な案を出したところにその機能を移してみる。これが結局、今閉塞状況とおっしゃいましたけれども、首都機能移転の是非を別としまして、それを移すことによって分権化も進みますし、それから地域の活性化にもつながるということで、一挙両得なのではないかということで、そういう御提言を申し上げた次第でございます。
河合委員 先ほど高橋参考人の陳述の中にございましたけれども、評価をどのようにして、そしてそれをどのように全国的に展開していくかということについては評価という点が大事だという御指摘がございましたが、この点につきまして宮内参考人にお伺いさせていただきます。
 議長として取りまとめいただきました中に、市場競争の徹底のための監視機構の整備、特に公正取引委員会の機能を強化する、専門の市場監視機構を設置する、それから農協など公的関与の強い分野への競争政策の適用を強化するとございますが、特に私が今申し上げました三点につきまして、御意見を賜れればと存じます。
宮内参考人 規制改革という形でいわゆる経済活動をどんどん市場経済の中へ入れていくということは、結局、市場というものが非常にしっかりしたものでないといけないというのはもう前提でございます。荒れた市場、あるいは怪しげな市場という中で経済活動を行われるということは、これは厳に避けないといけない。そういう形になっている市場経済も世界の中でいろいろあると思います。
 そういう意味で、やはり規制をなくしていく、なければいい、自由に好き勝手にやれというようなことは全く意図しておりませんで、それとともに、市場をきっちりしたものにつくる、そういう意味で競争政策といたしましては厳しいものがないといけない。そういう意味で、日本の競争政策につきましても、やはり総合規制改革会議といたしましては、もっと強化して、もっとすばらしい市場で切磋琢磨し、優勝劣敗、いいものを提供する経済にしていきたいということでございます。
 そういう中で、競争政策の一番の番人といたしましては、独占禁止法というような法律、あるいは組織といたしましては、競争政策全般を見る公正取引委員会というのが一番大きな担い手だと思います。そういう意味で、公正取引委員会の力は今十分なのかどうかというような意味では、私どもの考え方といたしましては、もっと力を持って市場監視をしていただいた方がいい。
 それからまた、その他、市場全般でなしに、例えば情報通信市場だとか、エネルギー市場だとか、証券市場だとか、金融市場だとか、いろいろな市場があるわけでありまして、経済活動の中で大きな市場につきましては、その市場ごとにしっかりとした監視機能が必要なんだろう。それにつきましても、今、日本で十分かと言われますと、まだ十分ではない。独立性についても問題もありますし、機能についても十分与えられていないし、組織としての力もまだないのではないか。
 そういう意味で、私は、規制改革と競争政策の確立、市場監視機能をつくり上げるということは一体になる動きだ、このように思っております。
河合委員 大変にありがとうございました。
伊藤(忠)委員長代理 西村眞悟君。
西村委員 自由党の西村でございます。よろしくお願いいたします。
 本日の各参考人の御意見の中で一番印象に残ったのが、宮内参考人の、総理が言っても事務が動かない、福祉、農業は一歩動いた、医療、教育はゼロ回答であった、遅々として進んでいるという言葉でございましたけれども、これはある意味では異常性を示しておるのでありまして、革命前のアンシャンレジームを表現されたと言ってもいいわけでございます。
 経営者の観点から、このような組織にあって、このような組織にお伺いを立てておれば会社はつぶれるということをお考えになれば、今回のこの法案の出来るプロセスは、相談すべきでない相手に相談して回答を得た上で作成した法案である。つまり、私が申し上げたいのは、このような官僚組織に関与させておればこの規制緩和は不可能である、もっとひどく言えば、このような官僚組織に回答を出させて規制緩和特区を考えておれば、いずれ、会社がつぶれるよりも先に国がつぶれますぞというふうに思うんです。
 この十年間携わっておられて、経営者としてはやるべきプロセスではないことを国に関してはやっておられるのではないかというふうに思いますが、御感想はいかがでございますか。
宮内参考人 大変つらい御質問をちょうだいいたしましたけれども、企業の経営者という立場で言いますと、やはり、下手をするとつぶれるという常に瀬戸際感で事業を運営していく。まさに、下手をするとつぶれるわけでございます。
 これに対して、国といいますものは、企業のように、つぶれるか、あるいはいい業績を上げるかという二者択一の問題を取り扱っているのではなく、国というのはやはり、社会の運営という非常に幅広いものの中で国の中の経済活動というのがあるんだろうな、したがって、やり方は違うんだろうなと自分で納得をさせながらやってまいったというのが実態でございます。
 したがいまして、そういう意味では経営者としては違うなと思うところがございますけれども、こうしてお役目をいただいている限り、この社会システムの中でできるところはどこかということを探ってまいったわけでございます。
 官僚がやらないということもございますが、実は官僚の中でも何とかやりたいという人もたくさんおられますし、我々の力になってくれる方もたくさんいるわけですけれども、いかんせん、彼らも後ろの業界というものとのはざまにありまして、それを動かせない。
 本当にもう、いろいろなパワーのバランスの中であるべき方向に動かしていくというこの日本社会のかたさといいますか重厚さといいますか、何十年ぶりの改革というようなことがいろいろなところであるようなフレキシビリティーのなさということを痛感しながら、それでも、やはり少しでも世界の趨勢の中におくれないようにするというのが、私なんかの、企業人として与えられた職務を務める者の、言うならば哲学といいますか、そういう思いでしか参加できない。
 そういう意味では、やはりこの大きな筋書きをつくるというのは政治しかないというふうに思っておりますので、政治の場でやはり構造改革を進めていただくということが日本が二十一世紀脱落しないもう最大の道ではないか、そのように思ったりしております。
西村委員 むしろ総理に聞くべき質問でありました。みずからが申しても事務が動かない現状を見て、総理は何を決断すべきなのか、どういうプロセスをとって民主主義の議会において信を問うべきであったのかということでございます。
 会社が倒産すれば、競売等々で有用なものは他で生きるわけでございますが、国が崩壊すればどうなるかというイメージを我々は持っておらずして議論しているわけでありますが、例えば、ある一瞬から治安が崩壊するとか、自殺者が、今でも一日百名おりますが、これが増大していくとかいうことでございましょう。さはさりながら、断ずるに当たって断ぜざればかえってその乱を受く、こういう、近い将来想像できない乱を受くということは明らかであります。
 質問を続けます。高橋参考人にお伺いしますが、先ほど、アメリカと中国を対比されて、アメリカは特区はつくらずやっている、中国は共産主義体制だから特区をつくる。また、イタリアも、私も興味あるところですが、地方都市の再生について独自の風土と歴史において再生してきたということを触れられました。
 しかれども、我が国は、アメリカ、イタリアに似た自由市場、自由主義の体制でありながら、特区の道を行っておるわけであります。我が国に特区がふさわしいのか、アメリカ、イタリア式の道がふさわしいのか、いずれがふさわしいと参考人としてお考えでありましょうか。
高橋参考人 それはもう明らかに、特区の形態ではなく、全国一律に規制緩和をしていく、あるいは改革していくというのが理想的な姿だと思います。
 中国で経済特区という考え方をとらざるを得なかったのは、基本的に、やはり社会主義経済体制というのを全体としてはまだ壊す準備ができていなかった、そういう中で、広東省といういわば田舎であれば、そういう実験をとりあえずやったとしても国全体の損失は小さいだろうということで結局始まったのがきっかけだというふうに聞いております。
 したがいまして、本来であれば本丸のところを攻めていくというのが筋だろうと思いますけれども、過去十年、二十年にわたってその闘いを続けてきて、なかなかうまくいかない、そういう中で特区という形で突破口を見つけていく、そういう意味で私は前向きに評価させていただきたいというふうに思います。
西村委員 今の高橋参考人の御意見を前提にして、次に、末吉参考人に御質問いたします。
 宮内参考人、高橋参考人、それぞれおっしゃったことは、我が国には泣く子と地頭がまだおるんだ、泣く子と地頭がおるからこうならざるを得ないんだ、こういうことでありますが、しかしながら、発展途上国型の経済から、経済政策においてももはや成熟経済に達した我が国において、今こそ、発展途上国型の経済においては内実が我々に見えなかった憲法にある地方自治の本旨という言葉に初めて我々は内実を与えて、アメリカ式であれイタリア式であれの地方自治の真の本旨を開拓すべきときではないかと私は思っておりますが、経験のあられる末吉参考人はいかがお考えですか。
末吉参考人 地方自治の本旨というのは、憲法にも書いてあります。本旨ということで、私どもも勉強もしてきましたし、その内容は存じております。
 では、それが具体的にどのような仕組みで一番実力を発揮できるか、これが昨今問われている問題ではないかと思います。とにかく、閉塞感があるところをどこから破っていくかというのが、例えば規制緩和につきましても、一大ポイントだろうと思います。
 そういう意味からいたしますと、本来、規制ですから、法律に基づいて、あるいは法律規則、あるいは慣習、あるいは通達等に基づいてたくさんの規制と思われるものがございます。これをどのようにしていくかといった場合に、今回のとられた措置で一番地方自治体にとりましてはありがたいことといいますか、これから地方自治を実力をつけていくために一番すばらしいと思いますのは、地方に自分でその案をつくれというわけで、これを持ってこいという話でありますから、ここの部分は実力をつける一大チャンスではないかと思います。
 例えば、地方がみずから考えてこいといった場合に一番思い出しますのは、竹下内閣のときに一億円配りまして、それぞれ自主性で考えてこいと。そのときに、大部分の公共団体は何と言ったかというと、使い方のモデルを示せと言ったんです、何か標準パターンはないかと。今まではずっとそれをやってきたわけです。絶対ないと言ったときに、二度も三度も念を押して、本当にないかと。そして、大きい市町村も小さい市町村も一億円でした。それはいろいろな新聞で話題を呼んだことがあります。金貨を掘ったとか温泉を掘ったとか言われますけれども、地方で、戦後で、地方自治本旨といいながら自分の足で各市町村が考える一回目はあそこだったのではないかと私は思います。
 今回、この特区で四百ばかり出てきたという。私はこんなに出てくるとは正直思いませんでした、公共団体にとっては競争相手が多くなるわけですから。かといって、これは一つのとり方によりますと、自分で考えて、大体よそがやると似たようなところはやりますけれども、それ以外で自分で考えた点が出てくるということは、そういう意味では一つ大きく勉強といいますか、具体的な練習をする機会になるのではないかと。
 そして、規制ですから、いろいろな理由はあるんです。そこのところ、どこに行くかといったら、各省じゃないところに持っていくという仕組みは、そういう意味では、地方にとりましては、おのずと勉強し、自分の足で立ち、自分の頭で考える、この段階に入るためのいい材料ではないか。地方自治にとりましては、そういう意味では評価すべきではないかと思います。それは遅いよと言われるかもしれませんが、そういうふうに私自身は今考えております。
西村委員 山田方谷という私が尊敬する方が、物事の解決は外に立ちて内に屈することなかれ、こう有名な言葉があるんですが、今参考人の皆さんの御意見を聞いておりますと、内、つまり泣く子と地頭があって、そして自分で考えろと言われれば直ちには考えられない地方の状態があって、これを前提にして話しておられるんですが、これは、今北朝鮮の問題でちょっと話題になるマインドコントロールの手法なんですね。
 人間というのは、十年、二十年、その環境の中におれば、それが世界だと感じる。その環境にならしておいて普通のことをすれば、非常にありがたいと思う。ひどいことを、拉致してきた人間を監禁状態に二十年置いてピョンヤンで住まわせれば、首領様のおかげだと思う。今参考人が言われたのは、何か首領様のおかげでいろいろありがたいとおっしゃっているようなことで、憲法は本来そういう地方自治ではだめだということを言っておるのではないかなと思うんですが、御意見があれば。――いいですか。次に行きます。
 福井参考人にお伺いいたしますが、株式会社に関して非常に本質的なことに触れられたと思うんですね。私は、見るに、これは、権利の主体たる自然人と、もう一つ、我々の社会生活に不可欠な権利の主体たる法人、これを我々はもうぼつぼつ、明治以来百年にわたる民法の原則から脱却しなければならないのではないか。
 つまり、公益法人というものは、出発点において官が何をするのかということを精査して、これは公益であるということで出発させるならば、以後何をしても公益である、その恩典を受ける。片や営利というものがある。営利は営利から出発しておるので、その得た金を公益に使おうが何に使おうが、営利は営利である。片方は公益で出発する。信仰だと称して妙なものを一千万で売りつけても、公益は公益であると。
 こういう、何か出発点とやっている実態が分離して、やっている実態はどうでもいいんだ、出発点で営利だ、公益だと分けてしまうんだ、分けるのは官僚だということになっておるんですが、もうぼつぼつ、やっている実態が何か、そしてチェック機能はあるのか、そしてこれは合理的に動くのかという組織の観点から我が国法人制度全体を見直すべき時期に来て、これが密接にこの法案とも関連していると思うんですが、いかがでございますか。
福井参考人 御指摘の点、公益法人の点でございますが、全くおっしゃるとおりだと思います。
 この現在の特区制度についても、例えば学校法人とか医療法人は極めて崇高な存在であって、こういった法人に任せておけば営利追求で消費者無視のことはしないに決まっているという、非常におめでたい前提が制度の中に内在しております。片や、株式会社はほうっておくと、医は算術で、営利事業のために患者の命をないがしろにして悪いことをするに決まっているという、また一方でこういう前提も内在しているわけでございます。
 これも御指摘のレッテル張りのまさに愚の典型でございまして、ある属性やある組織が一律に悪いに違いないとかいいに違いないという思考様式は極めて貧困であると思います。丸山真男氏がかつて喝破した「である」論理の典型でございまして、やはり基本的に「する」論理で物事を律するということが現代社会では何よりも必要だと思います。
 そういう意味で、法人の種類が何であるかということではなくて、例えば医療にしても、教育にしても、公益法人にしても、その団体がどういう事業をやるのか、収益事業をやるのか、あるいは非営利事業をやるのかといったことに着目して規律すべきでありますし、また、学校や医療ということであれば、それが教育を受ける保護者や生徒のためになることをやるようにしているのかどうか、あるいはやらないように規律をすべきかどうか、こういう観点で議論すべきでありまして、およそ何とか法人は全部非課税で何をやってもよい、およそ何とか株式会社はそもそも事業に参入させないというような考え方は、近代国家ではもうあり得ない考え方だと考えます。
 そういう意味では、法人全体にこのような機能主義的な考え方をもたらして、公益法人も含めて抜本的変革が必要だと考えます。
    〔伊藤(忠)委員長代理退席、細野委員長代理着席〕
西村委員 先生の今のお答えが議事録に残ることは非常に意義があることだと私は考えています。
 さて、私は、先ほどからの私の質問の角度からも明らかなとおり、我々はなぜ、絶滅寸前のアンモナイトのような複雑化した本法案を、それも官僚組織から回答があるのかないのかの弁別によって複雑化していく法案を審議しなければならないのかという、事大的な、そしてアンシャンレジーム的な問題意識を持っておるんです。
 規制緩和に関しての大道、論理的順序を全参考人について最後に一言だけお聞きします。
 規制緩和が主題でありますから、結局、地方自治の本旨という一つの価値を前提にして、全国一律、有用な規制と無用な規制をまず分別する。無用な規制は排除する。さて、有用な規制だと判断された規制の中で、全国一律が必要な規制と地方地方の特色、個性によって変わってもよい規制を分別する。そして、後者の地方の特色に応じて変わることが妥当である規制について、本法案の特区を設けるとか、アメリカ流では特区が必要でなく、地方自治の本旨によって地方自治に任す。こういう順序が必要であるにもかかわらず、本法案の前提は、まず第一の有用な規制か無用な規制かという選別のリーダーシップがない。リーダーシップがないから、すべて私から見て、例えばいわゆる社会保険労務士の業務範囲など、全国一律が必要な規制をこの特区というものに流し込んで、極めて体系的な、わけのわからない法律ができているのではないか。
 全参考人はこれからのことについて期待されておりますが、現に我々が審議しているこの法案については、論理的に極めて整合性がないというふうに私は思いますが、簡単に御意見をお伺いできますでしょうか。
細野委員長代理 時間がございませんので、手短にお願いいたします。
福井参考人 分別をしてその規制の種類によって分けていく、その際にリーダーシップが必要だということは、まさにそのとおりだと思います。
末吉参考人 規制はいろいろな種類の規制がございます。地域にとりましてどういう選択をするかというのが公共団体に与えられた一つの責任でもありますし、義務でもありますし、仕事でもあります。その部分を見分けながら、地域の実情に即した判断をすべきであると私自身は考えております。
高橋参考人 私は、規制改革に限らず、すべての日本の構造改革というのが、そういうもともと論理的な思考がないままに行き当たりばったりに行われているという気がいたします。その点については、イギリスなどの改革に比べて非常に不十分で、それがゆえに改革が進まないという気がしております。
 しかしながら、ここに至ってはどこかで突破口を見つけるしかないというところまで、私は頭の中を切りかえざるを得なくなっております。
宮内参考人 特区構想というのは、やはり全国で規制改革すべきだけれども先行してやる、そういうことで、ワンクッション置いて全国にこれを広げていこうというのが目的でございます。したがいまして、このワンクッションをやむを得ない一つの過程というふうに考えますと、私はこれも一つの前進だという考えもできると思います。
西村委員 ありがとうございました。
細野委員長代理 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 きょうは、参考人の皆さんには、大変お忙しいところをありがとうございます。
 私は、先の質問者の方がいろいろな角度から質問をしておられますので、大型プロジェクトと特区とのかかわりとか、こういうふうな角度から少し、最初に末吉参考人の方に伺っていきたいと思います。
 先ほどの意見陳述の中でも、「企業誘致から学んだこと」ということについての資料と陳述がありました。北九州市は、私もかつてFAZ法の関係で調査に寄せていただいたときなど、それぞれ区ごとに特性が違うということもありますし、それからまた、別な角度から見ますと、新日鉄の撤退など非常に大きな変化があったということも私も存じ上げておりますが、その新日鉄は北九州から、私は大阪なんですが、堺泉北コンビナートへ進出し、やがて堺泉北コンビナートからは完全に高炉の火は消えて鹿島へ移っていくというふうに次々と移っていきました。
 電機産業にしてもIT産業にしても、今海外移転がどんどん進んでいるときですが、企業は国を選ぶということで、これは宮内参考人らが参加された規制改革の委員会で、たしか以前、「光り輝く国をめざして」というのを、教科書的なのをまとめられましたが、あの中でそのことを言われておりましたが、大企業の方は都合のいいときはやってくる、しかし状況が変われば地域から出ていったり海外移転をする。地域の人たちは、しかし簡単には海外へは移れるわけじゃありません。
 そういう点では、さっき企業誘致から学んだことというお話があったんですが、この企業誘致主義から地元の企業の力を引き出すような内発的発展につながる産業の振興へとやはり発想を変えていくということが非常に大事な時代になってきているんじゃないかと思いますが、この点について、最初伺いたいと思います。
末吉参考人 重厚長大の町、いわゆる二次産業のウエートが大変多かった町であることは吉井議員も御理解、御了解していただいているところでございます。
 そこで、これを構造的に変えるのはどうすればいいかというのは、長期計画の中で計画を定めて進んでおります。そこの部分で、企業誘致よりも新しい地場産業を起こすべきではないかというお尋ねだと思います。それも必要だと思っております。決してそれをないがしろにしているわけではありません。
 そこで、その特区ということで企業をということになりますと、北九州市は広大な土地を持っておるわけでありますし、コストが安ければ、外国に立地する物づくり、日本の物づくりが全部外国に行くんではないかと空洞化を皆さん心配していますし、私どももそれを大変懸念をしております。そういうことからしますと、ただコストということで外国に行くことを、どのように総体的なコストを下げることによって引きとめるかというのも一つ大きな政策だと私は考えております。したがって、新しく企業を育成するというのも必要でありますが、よそに行くのをとめるというのも私はぜひ必要だと思っております。
 したがいまして、誘致という言葉をもう少し適切に言いますと、新しい産業を起こす、特区によって新しい産業が起こる可能性があります。これは、今までにない部分の規制緩和をされますとその可能性がありますし、その照会等も現在ございますが、そういうことからしますと、新しくつくり出すこと、同時によそに行くものを一生懸命とめて、北九州で一番今必要なのは地域経済の伸展、とりあえず雇用数を拡大することが大きな仕事でございますので、そこの部分で取り組んでおります。
 もう一度申し上げますが、新しい地元企業を育成するということは、あわせて並行的に取り組んでおるところであります。
吉井委員 FAZ法で調査に寄せていただいたときにそうだったんですが、北九州輸入促進センター、KIPROがFAZの指定地域、いわば特区として、そこは保税地域の部分を含んだりとかいろいろあったわけですが、具体的な施設としては、アジア太平洋インポートマート、AIM、それから北九州倉庫なんかの管理運営をやっていたかと思いますが、実は、FAZの施設というのは全国で次々破綻をしたというのが実態です。私の方の大阪でも、アジア貿易センター、世界貿易センター、ATC、WTCは、これは大失敗という状況にあります。AIMは、たしかヤオハンが破綻して、米国の大型店コスコが辞退して、四階、五階、テナント料をかなり下げて大塚家具を入れたりしてはおられるんですが、輸入関連企業の進出はほとんど見られない。単年度赤字が二億六千万で累積赤字が十七億になり、完全な破綻状態に今なっていると思うんですが、それはATC、WTCも同様です。
 そういう中で、市が税金投入しなければKIPROは完全に破産状態ということですが、やはり、規制緩和をやり、FAZ法もつくり、それでやって失敗した経験とか教訓を生かすということが、やはりこれは全国的に大事だと思っているんです。それはつまり見通しの問題でもあるかと思うんです。
 特区と結びついた響灘ハブポート計画、先ほどもお話伺っていて思ったんですが、全国二十三カ所を指定すると言われるうちの一つなんですね、このハブポートという考え方は。しかし、博多も長崎も新潟も、それから福岡と熊本とのちょうど間の大牟田なんかも、先ほどの円と同じように、大牟田は九州のへそだと自分でおっしゃっておられるわけで、それぞれに円を描くわけですね。それぞれ自分の市を中心に円を描いて、みんなが自分のところはハブポートを設けたら中心だということで競い合う。その競い合いは、それはそれでいいのかもしれませんが、そういう競争をしながら、今たしか北九州のこの響灘で考えておられるところはコンテナ取扱量が四十一万TEUだったと思いますが、それを二〇一〇年、三倍の百五十万TEUにするという計画なんですが、ただ、博多と門司港を合わせると今百万TEUなんですね。
 それぞれのところが、我こそはハブポートということでいきますと、まず、よそでハブポート計画を指定しない、北部九州のコンテナの、ほとんどすべてと言ったら言い過ぎかもしれませんが、かなりのものが響灘に来るということが前提にならないと、これはなかなかこういうことがうまくいくのかということが出てくると思うんですね。
 ですから、そういう点では、今度の特区と結びついたこの計画について、響灘ハブポートについての見通しをどういうふうに持っておられるのか、これを伺いたいと思います。
末吉参考人 まず、響灘ハブポートの考えですが、これは北九州市の港湾計画であります。国は、日本におきまして四つの中枢港湾をということで重点投資をするという方針を決めました。その中にこの港が入っている。したがいまして、これからは全国均一ではないという前提で進んでおります。
 それからもう一つ、先ほども御説明申し上げましたが、この構想の中には、船が大型化してきているという現実の事情、したがって、水深が十五メーターないし、できれば十六メーター。したがって、大型化してくる場合に、荷物としてどこでオペレートするかという大きな視点がぜひ必要です。そういう意味では、響灘の新しくできる港は水深が深いところがございますし、投資効果としては大変すばらしい状況、客観的な状況をそろえております。
 そこで、あとは何かといいますと、国際的な競争の中でこの港をどのようにするかでありますから、国際競争、一番の競争相手というのは朝鮮半島の南端の港であります。そことのコスト競争になってくるわけであります。したがって、コスト競争によりましてコストが安くなれば荷物が集まる、これは当然の理由でありますから、そういうことを一生懸命やっていく港として、まずそれが前提で一つあります。
 それができた後に、今度は背後地の利用を、規制緩和によって雇用をふやし、ここで新しく企業を誘致することによって雇用をふやしていこう、あわせてそういう政策をとっていこうという点であります。
 そこで、今言う投資でございますが、この投資の方法は、PFI方式ということで現在取り組んでおるところです。したがいまして、国の金よりも民間投資ということを中心にした政策に基づいて取り組んでおります。
吉井委員 水深十五メーター、十六メーターというのは、今全国各地で始まっているのですね。実際に、それで四百億、六百億という金をかけた港湾があちこちで、ほとんど船が来なくて釣り堀状態というところもふえている時代ですから、この激しい状況の中で、やはりきちんとした見通しをどう立てるかということが大事なときであろうと思いますし、私なんか大阪の方のATC、WTC、やはりこれも見通しの失敗なんですね。ですから、見通しをどうつけるかということが、今度のこの特区と結びついたプロジェクトを考えるときにも非常に大事じゃないかというふうに思っているのです。
 本会議で質問しましたときに、私、三河港の例を挙げたのですが、小泉総理は、要するに、さっき宮内参考人もおっしゃいましたが、従来型の財政措置は講じないというのが今度の考え方で、そうすると、例えば、先ほどの絵を見ておりましても、北九州の計画の中には、海上に新北九州空港、これは北九州地域の住民、二百万人ぐらいの人が福岡空港を使わないで全員が使ったとしても、五百万人という期待利用者数になかなか及ばない四割という状態ですし、実は関西空港、私は大阪ですからよくわかるのですが、予定の利用者数にならないで、日本経団連からも二期工事見直しの意見書が出てきているという状況です。
 空港関連で造成したりんくうタウン、いわゆる前島建設事業は今大きな赤字を抱えていますし、そこにつくったゲートタワービルというのは、ゲートにならず、片側だけで、片側もテナントが入らないということで今困っているという状態なんですが、近くに、産業と結びついた泉佐野テクノポリス構想を進めたのですが、これも完全に破産しました。
 ですから、特区の名で大型プロジェクトを進めて財政破綻を深めるという問題について、これまでたしか北九州市は市債残高が、十年間で、三千百七十八億円から、今、一兆一千六百四十四億円へ、大体三・七倍ぐらいにふえてきていると思うのですが、いろいろな方式を組み合わせるにしても、借金がどんどんかさんできますと、市の財政も大変になるわけですし、地方自治体財政ということを考えても、大型プロジェクトと特区と結びつけて考えていくときに、そこのところをどういうふうな見通しを立てるかということが非常にこれまた大事な点だと思うのです。ここを伺っておきたいと思います。
末吉参考人 現在の起債残高一兆二千億と言われましたが、十三年度決算でほぼそれくらいあります。その一兆二千億のうち四割が公営企業、あるいは特別会計のところであります。いわゆる公営企業会計と下水道を含めて、料金で、別会計でしているところであります。したがって、そのうちの七千億ぐらいが、今、北九州の一般会計のいわゆる市起債残高であります。そのうちのほぼ半分ぐらいは、御存じのように国の交付税措置が認められているものでございまして、市全体の、本当の一般会計における起債残高は三千五、六百億程度だったと理解をしております。
 これは、市民百万人いますから、一人当たりにしますと三十五、六万になるのでしょうか。大都市の中では起債残高としては一番少ないのではないかとさえ思います。かといって、起債をそれだけ伸ばせというのではありません。それぞれ借金はふやさないことも必要ですし、また、将来的に必要な施設につきましては、現世代のみならず、後の世代の方に負担していただくというのも必要であります。
 したがいまして、これは毎年毎年予算編成の中で議論になるところでありますが、市の財政の健全化ということは、当然ですが頭の真ん中に置いて、検討しながら市政を進めております。
 それで、今言われました、地域にとりまして新しい大きなプロジェクトをとるときに、今後といいますか、特区との関係で、将来の見通しをしっかりして取り組むべきだという御指摘は、全くそのとおりであります。したがいまして、これは、これからいろいろな計画を進めるに当たってぜひ必要な点であります。
 同時に、昨今でありますと、公共事業に対しては大変事業量も少なくなっておりますし、選択の視点というものもぜひ取り組まなければなりませんし、そこの部分のところは当然です。これは市議会の中での議論の要点になりますけれども、そこの点は市長として頭の中に置き、留意をしながら進めていっているところであります。特区をやったから財政破綻になったと言われないようにしていきたいと思っております。
吉井委員 交付税というのはもともと地方の固有財源ですからね。ですから、本来、国の方が借金返しに使いなさいなどというふうにしたら、国の方が大きな誤りを犯すことになるので、一般財源全体の中で非常に大きな比率になっているということは今のお話を伺ってよくわかりました。
 それで、先ほどのAIMへの大塚家具の誘致など、本当に地元福岡の地場産業、地域経済の発展につながるかどうかという検討がFAZのときになされたのかどうか。今度の特区を考えるときにも、その考え方というのは、引き継がれる点では大事な点があるんじゃないかなというふうに思っているのです。
 市長さん御承知のように、福岡県といえば大川の家具は日本一の産地ですし、広島の府中とか静岡よりもはるかに多いところなんですが、その福岡なら、本当は、輸入家具の大型店を誘致するよりは、地元の福岡の家具がどれだけ売り上げを伸ばしていくかとか、そのことを通じて、新しいデザインとかあるいは新しい技術の開発とか、そしてそういうことを通じて、新しい分野に大川の家具産業が発展し、展開し、参入していく、そういう可能性をどういうふうに支援していくかということが大事じゃないかと思うのです。
 この点では、冒頭、企業誘致についての話もいたしましたが、やはりこれからの時代、特区のいかんにかかわらず、今、大商社の開発輸入で福岡もみんな農家は困っているわけですが、近郊農業の支援とか、中小企業の新製品開発とか経営支援とか、零細小売商店を高齢化社会を支えることのできる町の大事なインフラとして発展させ、そのことを通じて商店街の活性化を実現していくことなど、これまでの失敗の教訓から、それを生かして、規制緩和とか大規模開発とか企業誘致万能主義から、地域経済の内発的発展に目を向けた、そういう方向へ進めていくということが、私は、全国の地方自治体でやはり非常に大事な視点になってくるんじゃないかと思っているんです。
 このことを重ねてお伺いしたいのと、時間が迫ってまいりましたから、ほかの皆さんには時間がなくて大変申しわけないんですが、宮内参考人に、九〇年代初めに規制緩和特別委員会の審議がありました。私も委員で、たしか宮内参考人にも来ていただいたと思うんですが、当時、規制緩和をやれば、価格破壊が進み、消費者利益につながり、経済活性化につながるという、ちょっと短絡ぎみに整理しての話ですが、しかし、価格破壊のために、リストラ、海外移転で雇用が失われ、所得が減少し、売り上げが落ち込み、価格は破壊しても売り上げが落ちて、経済活性化どころかデフレスパイラル、こういう問題も出てきました。
 だから、やはり、古い、実態に合わない規制を撤廃、廃止するのは当たり前なんですけれども、人間の知恵で生み出した必要なルールや規制は守るのは当然ですし、ヨーロッパに比べておくれている規制というのは新しくつくるということも考えなきゃいけないと思うんですね。
 当時、私は、規制緩和すればすべてよしとする万能主義というのは、当時のオウム真理教のマインドコントロールにかかったような状態じゃないかということを言ったりしましたが、市場の機能や役割をきちんと評価しているんですが、規制緩和について、やはり、さめた目で見るといいますか、きちっとさめた目で考えていくということが大事じゃないかというふうに思っているんです。
 この点は、宮内参考人、時間が参りましたので、簡潔で結構ですから、お二人の参考人からお伺いしたいと思います。
末吉参考人 大川家具というのは筑後地区でありまして、北部九州、北九州からやや距離が離れておりますけれども、何といいましても、地元の企業が規制緩和によって外国から材料を入れ、そこでつくってもう一遍出すという仕組みは、当然考えられるシナリオであります。したがって、そういう勉強会も着手したことがございます。そういうわけで、規制緩和の、具体的にそういう民間企業が出てきますれば、その余地があるということだけは御理解ください。また、それだけの努力を地元としてしてまいった歴史を持っております。
 今後とも、物流特区、規制緩和によりまして、地元の企業と何か一緒になってやるような仕組みは、企業次第では可能性がありますので、地元の企業育成として、北九州市内のみならず、福岡県のところの中にありましても努力はいたします。
    〔細野委員長代理退席、委員長着席〕
宮内参考人 私は、経済活動における規制というものにつきましては、繰り返し申し上げておりますように、やはり緩和をするということが経済の活性化につながると思っております。
 そういう意味で、ここ十年ばかりやってまいりましたけれども、規制が十分緩和して本当の市場がつくられたという状況にはまだまだ来ていない。まだ一万一千件余りの規制がある、許認可があるというような状況でございますので、そういう意味では、規制改革の結果を国民が享受する段階にまだ来ていないんじゃないか。
 そして、もちろん、その中で矛盾が出るということは当然でございます。そこのところをやはり社会的な目でチェックをしていただくということと相まって、経済活動のパイが大きくなり、でこぼこが直る、そういう相互作用じゃないかと思っております。
吉井委員 他のお二人に質問できなかったことを大変申しわけなかったと思います。
 どうもありがとうございました。終わります。
佐々木委員長 次に、北川れん子君。
北川委員 社民党・市民連合の北川れん子といいます。
 本日は、四人の参考人にお越しいただきまして、本当にありがとうございました。
 いろいろ各委員との質疑も聞かせていただいていて、私は、何か四人の皆様それぞれが、ちょっと中途半端やなと、どこか心の底で思っていらっしゃるんじゃないのかなというのを感じた次第であるわけです。
 高橋参考人にお伺いしていて感じたのは、一番悩んでいらっしゃって、だけれども再生のために必要と、あるところで見切りをつけて特区を受け入れていこうと御自分の中に決められたときがあったのではないかなというのを、少し聞かせていただいて思ったんですけれども、きょうのお話の中に、効果の評価においては第三者機関が必要ではないかと思っているというお話がありました。それと同時に、特に、なかなか変えていきにくい分野、多分、農業、医療、教育とおっしゃったように思うんですが、そこには最高権限の首相の判断、個人の独自の判断ですね、その人が突破することも必要ではないかと。
 私が聞いておりまして、両極端の御意見を披露されたと思うし、今、両極端なことが必要なのかなという気もしたものですから、この点において、この二つをもう少し詳しく高橋参考人のお言葉で聞かせていただきたいと思うんです。
高橋参考人 私は、いつも改革を考えるときに念頭に置きますのがイギリスの改革でございまして、イギリスの改革というのは、なぜ改革をすべきなのか、どういう手段でやるべきなのか、そういうことについて、時間軸まで含めて一つずつ改革を進めていった、結果として改革が進んだということではないかと思います。
 それに比べますと、日本の場合には、原理原則がはっきりしていないがゆえになかなか改革が進まない。もちろん、その背景には、当然、業界団体だとかそういうところの圧力ということがあるんだと思いますけれども、いずれにしても、なかなか本質的な議論に至らないままに議論が続いていて、時間ばかりがどんどん失われていくというのがこれまでの姿ではなかったかと思います。
 したがいまして、失われた十年が既にあるわけでございますので、私は、失われた二十年にならないためには、議論ばかりしていてもしようがない、そういう意味で、できることからどんどんやっていくという意味で、特区についても賛成させていただきたいというふうに思います。
 ただし、一方で、体系的に規制改革なりすべての改革を進めていくということも必要でございますので、それを進めるための努力というのは政治としてやるべきである。したがいまして、政治のリーダーシップが発揮できる場合には、そういう体系的な取り組みというのも同時にやっていただきたいというふうに思います。そういう意味で、私は、今の小泉内閣にそういうリーダーシップの発揮というのを同時に期待したい、そういうことでその二つに分かれているということでございます。
 現実の判断としてはいたし方ないと思いますが、常に理想的な改革に戻っていく努力というのを政治としてはすべきじゃないのかというふうに考えておる次第でございます。
北川委員 小泉首相への期待感もあるということでお話しいただいたんですが、きょうの主張の中には入れていらっしゃらなかったんですけれども、高橋参考人が以前述べていらっしゃる主張という中に、特区構想と並んで注目すべきは、各地で見られる地域通貨、エコマネーの導入やNPOの活動の活発化であるというふうにお書きになっているんですね。
 私自身は、特区というような言葉よりは、高橋参考人が書かれたここにすごい関心を持った次第なんですけれども、特区とこの構想、地域通貨やNPOの活用は並立するのか、同時に使うことができるのか、その辺をどう思っていらっしゃるのかを教えていただきたいと思います。
高橋参考人 私は、並立できると思います。
 プロジェクト、ハード物を整備していくという形の特区のつくり方もあると思いますし、社会そのものを変えていく、そのことを目的とする特区というのもあるかと思います。そういう意味で、NPOだとかエコマネーというものを地域の中でより拡大していく、そのことを目的とする特区というのもつくってもいいんではないかというふうに思います。
 私は、そういうやり方と、それからプロジェクト主体、ハード物主体の特区と、両方があっていいんではないかというふうに思います。おのずと、どちらが二十一世紀の社会、経済に合うかということが成果として見えてくるんではないかというふうに思いますけれども、今、決めつけでどちらかというふうにやる必要はない、二つの道があってよろしいんではないかというふうに思います。
北川委員 そうなりますと、やはりお金ですね。お金の問題を一極集中で管理、掌握したい、税金を取り立てることに関しても、一分たりとも見逃すことなくやりたいというのが国というものの意思であると思います。そういう強固な意思の中に、地域通貨、そういうものが入る余地が今の日本の社会の中にある、希望を持てるんだということを高橋参考人は思っていらっしゃるがゆえに並立できるということをおっしゃっているのか。
 また、高橋参考人の周りの方や男社会で生きていらっしゃる中に、そういうものを柔軟に受け入れる発想というものは、ああ、高橋君、僕もそう思っていたという回答がよく返ってくるのか、もしくは、ええ、そんなとっぴなことをというふうな回答がリアクションとして返ってくるのか、その御経験はいかがなんでしょうか。
高橋参考人 そもそも、特区の考え方の中に国と地方との関係というのが潜在的に入っているように思います。地方分権を進めていくもう一つのテーマというのが、要するに財政的な制約がある、こういう中で地方の金をあてにしない特区というものをつくろうということでございますので、NPOだとかエコマネーということと何ら矛盾しないという感じが私はいたします。
 NPO、エコマネーというのは、地域あるいは国の中に財政的な制約が出てきている中で行政の拡大があてにできない、したがってそれをコミュニティーの中で埋め合わせていこうという考え方だと思います。したがいまして、公助の世界から自助の世界、この両極端ではなくて、真ん中にコミュニティーをつくっていく、共助の世界というものをつくっていくという考え方だと思いますので、私は、そういう限りにおいて、考え方としては特区と底流では矛盾しないのではないかというふうに考えております。
 それから、NPOとかエコマネーということにつきましては、私は男性、女性は全く関係ないというふうに思いますけれども、今、多分皆様が思っていらっしゃる以上に、エコマネーとかという発想あるいはNPOという発想はむしろ男性の間で広がっているのではないか。
 例えば、サラリーマンにとりましてリストラに遭うということは非常にきついことでございますけれども、でもリストラに遭ったがゆえに社会に目を向けることができた、社会に目を向けて自分がボランティア活動をやってみたら今までの生き方がいかに貧しかったかということに気がついたというような例というのは多々あるわけでございまして、私はむしろ男性に目覚めていただきたいというふうに思いますけれども。
北川委員 そこで、きょうは鴻池大臣、ここにいらっしゃらないんですけれども、鴻池大臣と議論をしていると、オンリーワンでありながら燎原の火のごとく広がっていってほしいということを言われているわけなんですけれども、どちらかというと、全国的に規制緩和をするべきものは早くやっちゃおうというのがきょうの四人の参考人の通底している問題であると思うんです。
 高橋参考人にあえてお聞きしたいんですけれども、ではそういうふうに地方が権限移譲、それから通貨の考え方に関しても柔軟に持った場合、国はオンリーワンとして何をするべきなのか。国の機能が減少するのはそれがゆえに当たり前になっていくと思うんですが、国の機能として一番残るものは何だというふうに思っていらっしゃるんでしょうか。
高橋参考人 現時点で、私は、これとこれとこれが国に残るべきものだという定義ははっきり持っておりませんけれども、今国が持っているものでかなりの部分というのは地方に分権化し、かつ地方からマーケットあるいは住民に分権できるのではないかというふうに考えております。
 とりわけ二十一世紀の社会を考えましたときに、高齢化社会が進む中で、やはり社会保障の問題というのが非常に大きくなっていく。年金、医療、介護、看護、福祉、こういったところが大きくなってくるかと思います。その担い手は、私は現場の担い手はもう国ではなくて地方だというふうに思いますので、そういう限りにおいて地方に分権化していく。あるいは、地方でも財政制約がありますから、それを住民におろしていく、マーケットにおろしていくということが日本にとっては必然的な動き、望ましい動きではないかというふうに思います。
 したがいまして、新たな担い手、受け皿となるのがNPOでありボランティア活動であり、それからエコマネーという形だと思います。国がカバーできない分野について住民あるいはコミュニティーがカバーしていくという形、これが望ましい二十一世紀の社会だ、私はそういう価値観を持っております。
北川委員 国が保護したり支援するのではなくて、逆に言えば市民や地方が国を支援する、そういう時代が来たんだということをお話しいただいたんですが、次に末吉参考人にお伺いしたいんです。
 末吉参考人は、市長になられる前は行政の前線で働いていらっしゃったという経歴を見させていただいたんです。「前例がない、予算がない、法令がないを理由に、思考や行動を止めるな」というのを語録の中に書いていらっしゃるんですけれども、今、市長という立場で、行政に特区や、真ん中に国とかという機関を置かないで早く認めてほしい、スピーディーに判断を下すことをやってほしいんだということをおっしゃったんですけれども、では、もし逆の立場で、今末吉参考人が行政の前線に立つ、一番問題がなかなかいかないといった医療とか教育の前線に立つ行政マンだとしたら、どういう説得でもって、その市長にだめなんだと言うときに、どういう言葉遣いをしてなだめさすというのか。
 立場が言葉をつくっていくと思うんですが、市長は今逆の立場で、行政を突破しようというお言葉を言われると思うんですが、その辺を御自身の中でどう役割を演じてこられているのか、教えていただきたいと思うんです。
末吉参考人 十数年政治家ですから、もう官僚のときの気持ちは、発想はほとんど捨てております。そこのところは御理解いただかないと、よく官僚出身だから発想まで官僚的だと言われるのが、正直に一番つらいところであります。したがいまして、私自身は官僚のときと違うつもりで動いてきておるのです。
 そこで、今のお尋ねですが、守る側にあったらどういうことを言うかと言われることだろうと思いますが、恐らく、時代の流れを感じ取ってやはり行動すべきということを私は言うと思います。私、官僚時代でもそんなにごちごちではなかったような気持ちは自分で持っておりますので、この質問には大変答えづらいんです。
 よく、官僚出身だから手がたいと言われたときはいい評価だろうと思いますが、官僚出身だからなかなか物を変え切らぬと言われるとつらい立場なんです。したがいまして、私自身としては、市長に就任した以上はそういう気持ちで取り組んでおりますし、その中には違和感は私自身はありません。そのことだけはお伝えしておきます。
 ありがとうございました。
北川委員 すごく明快にお答えいただいて、ありがとうございます。
 実は、私は北九州の構想に関心を持っています。というのは、私は尼崎で、規模はすごく小さいんですが、似たような時代変遷と立場を与えられている地域から立候補したということにおいてなんですが、先ほどのお話の中に、一万人の雇用創出を考えているという言葉、そして、人件費の面からいくとアジアには到底太刀打ちはできないんだというお話の中に、最後の方に外国人労働者の問題を少し触れられたと思うんですが、外国人労働者の問題にどういう構想をお持ちなのかを教えていただきたいと思うんです。
末吉参考人 北九州で特区構想、規制緩和だけでどこまでできるかということをぎりぎりいっぱいやってみようというのが発想の原点です。
 そうしますと、企業の方々に聞きますと、何で外国に行くの、ここにとまってよということになりますと、いろいろ理由を言われるわけです。少なくとも外国でできるコストの二倍くらいまでは日本にいてもいいとかいう具体的な事例もあるんです。そこで、そのときにこの企業が全部中国に行ってしまえば、北九州に企業は一つも残らぬわけですよね。したがって、ここに残ってもらうためには、企業としては人件費を安く上げたいというのがあります。したがって、全部とは言わぬけれども、三分の一ぐらいは外国の人を雇えませんかと、この特区に限って言えば。あるいはまた、土地の利用として、今まで港湾区域では宿舎とか建てられないようになっています。それを取って建てられるようにしてくださればというのがあります。
 したがって、そういうトータルのところで考えた場合に、きょうお配りした資料の中に、例えば外国がこれまで来なかったというところの中に、四番目のツーバイフォー建築材料会社、カナダとありますが、例えば、外国から材料が来てここで組み立てようというときに、ここのところに外国人建築技術者はだめです、日本の大工さんを使ってください、そういうことになります。そうしますと、仮にそこに建てるだけの最初のところですから、別にここで仕事をしようというところではないわけですから、例えばそれもいけませんかとか、そういう具体的なことがたくさん出てくるわけです。
 現在の場合は、外国人雇用については一律に大変厳しい条件がついています。だから、一律にそんなことを言わないで、こういうときもいけませんかねということは少し、申請するときに持っていきますから、そこでちょっと大目に、大目にというとなんですけれども、弾力的に見てくれませんかねというので、そういう意味で申し上げたんです。
 だから、企業が決心をするとき、いろいろなマターがあるんですよね。法律だけではなくて、取り扱いとか、あるいは日本の企業に、ここに来ても日本の入札になかなか入れてもらえないとか、そういうのもあります。したがって、それさえできれば行きますというときには、それなりのことを考えなきゃいけない。
 とにかく、具体的な積み上げで、地域において一点突破といいますか、実例をつくって、何かそういうことの役目ができればなと思っています。
北川委員 また具体的なものを出される折があるように今お伺いしましたので、ぜひ関心を持って見させていただきたいと思います。
 あと、残りの時間は、全参考人に、この特区の失敗と成功の見きわめを御自身はどこに置いていらっしゃるかというのを御披露いただけたらありがたいので、お一人ずつ、その失敗と成功の見きわめをお教えいただきたいと思います。
佐々木委員長 北川君、時間が来ているようですから、簡単なお答えしかいただけないと思いますから。
 参考人、恐縮ですが、簡単にお願いいたします。
宮内参考人 成功というのは、結局、これは非常にいいではないか、どうして全国でやらないんだ、全国で早くやってほしい、そういう動きが出てきたら、これは全国に先駆けたという意味で成功だと思います。失敗という意味では、どこからもそういう声が出てこなかったということではないか。したがいまして、思い切った特区の内容であれば、先行して成功する例が非常に多いというのが私の感じでございます。
高橋参考人 私は、やはり雇用の拡大というのは一つの目安になるのではないかというふうに思います。物づくりが今、日本の危機が叫ばれる中で、製造業の雇用というのはどうしても減ってまいりますので、一方でいろいろな形の特区ができて、そこで雇用がふえていけば、私はそれは一つのメルクマールになるのではないかというふうに思います。
末吉参考人 私も雇用と思っていました。雇用であります。同時に、雇用と投資額です。逆に言いますと、特区の申請をするときに、地域としてそういう計画をつくります、何人ぐらい、どれくらいの投資規模で、どういう業種ということをつくります。その目標を掲げた計画が達成できるかどうかです。
福井参考人 全国展開にどれぐらいつなげられるかということが一つの成功の目安。もう一つは、この特区のメニューで、できるだけ本質的なものがもっと取り込まれて拡大していくということだと思います。
北川委員 どうもありがとうございました。
佐々木委員長 次に、小野晋也君。
小野委員 きょうは、参考人の先生方におかれましては、長時間の御陳述、本当にありがとうございました。
 いよいよ最終質問ということになりましたものですから、その最終質問者の責任として、当法案に対する御見解をお伺いしておきたいと思っております。
 私自身は、この法案は総合規制改革会議の意を体して法案化されたものでありますし、将来にわたりましても非常に柔軟性の高い仕組みにつくっておりまして、皆さん方の意に沿う法案に仕上がっているというふうに理解しているものでございますが、現時点においての法案として、修正をかける必要性があるや否や、修正をかけるとすればどういう点にそういうものを望みたいというような御意向がもしございましたら、その点、各参考人からお伺いしたいと思います。
福井参考人 仕組みにおいては、現時点ではベストの案の一つだと思います。ただし、先ほども申し上げましたように、規制の改革項目としてはまだまだ拡大が必要だと思います。
末吉参考人 地方にありましては、具体的なプロジェクトを中心に考えてまいりました。したがって、教育とか農業とか、そこまでまだ勉強が至っておりません。北九州で今申請をしたことだけ勉強しておりましたので、制度全般のところは、どこを修正していいかどうかという点をはっきり述べるまで、不勉強だということは正直に申し上げます。
 同時にもう一つ、一番大事なことは、この特区のところでどれだけ成果が上がるかということであります。規制緩和という、一律じゃなくて個別に風穴をあけるというスタイルにつきましては、私は大変すばらしい制度だと思います。つくった以上は、そこの部分で、突破口でどこまでうまくいくのか。これはほかならぬ、国のみならず地方自治体にとりましても大変大きな試練だと思っております。そのように理解しております。
佐々木委員長 なお、高橋参考人は御都合で退席されました。恐縮ですけれども、御了承ください。
宮内参考人 やはり法律は、ベストを求めていくといろいろ議論が出ると思いますけれども、審議いたしました期間からきょうに至るまでにこれだけのものができたということでは、私は非常にすぐれた法律ではないかというふうに思っております。体系としては極めてすぐれている。
 しかも、追加の申し込みについて、また別表の改正といいますか、そういう形で幅広に次のものを含んでいける。そういう意味では、期間それから内容ともすぐれており、やはり特区を実行するためには早くこれを実施段階に持っていくということが今一番求められていることではないか、私はこのように思っております。
小野委員 参考人諸氏から非常に前向きのお話をいただきましたことに深く感謝を申し上げたいと思います。
 あと、若干の時間が残りますので、この法案に関連しまして、基本的な問題点について、少し極端なことも含めまして、参考人の皆さん方にお尋ねをさせていただきたいと思うわけでございます。
 まず、宮内参考人からお尋ねさせていただきたいと思うわけでありますが、現代の社会の問題として、先ほど来の質問の中にもございましたけれども、弱肉強食主義の自由経済というものを至上価値としてみなすことについての疑問というのが呈されているところがございます。私どもも、現代の経済を見ておりました場合に、企業の価値というもの、また経営者の能力というものが、極端に言うと一株当たりの利益がどのくらいあらわれているかというようなものに大体今収れんしつつあるような気持ちがいたしますが、この一つの価値観に基づく物差しでこの競争というものが判断されるということに対しては、非常に危うさを感ずるところがあるわけですね。
 以前、宮内参考人が自由民主党の会合に御出席されたときに、私からも非常に端的に、失礼なお話だったかもしれないですけれどもお話をさせていただいたのは、この世の中で強い者が勝ち残るという論理だけでいくならば、アフリカのサバンナに行けば百獣の王はライオンだから、ライオンだけが生き残るような世界が生まれてくるというのが常態になっているはずではないだろうか。しかしながら、そのサバンナに行けば、サイだってカバだってハイエナだって、いろいろな動物がたくさん一緒にそこにすんでいることを思えば、自然界のルールというのは、一対一の争いは確かに弱肉強食の現象を呈しますけれども、より大きく見ると、調和的なものをきちんと組み込んでいるということがあるのではなかろうか。社会の中にその調和性というものをきちんとシステムとして入れた上での競争条件を持たないと、これは非常に極端な社会をつくって破綻に至るのではないかという懸念を表明したことがございました。
 残念ながら、そのときに余り的確な御返答をいただけなかった、まあ時間の関係もあったんですけれども、そんな気持ちがいたしますので、ちょっと改めまして、この点をお尋ねしたいと思います。
宮内参考人 先ほども申し上げましたように、私は、競争というのは弱肉強食とは思っておりません。そうでなく、すぐれた人が世の中から受け入れられ、劣った者はやはり経済活動から去るしかない。
 したがいまして、弱肉強食でございますと、大企業が中小企業を食うということでございますけれども、市場経済は全然そうじゃございません。企業の規模というのは全く関係ない。社会に受け入れられるものをつくり、提供したところが社会から評価され、そしてその結果として利益が出てくる。利益が出ない企業というのは、社会から評価されないものしか提供できていない。そういう考え方でいきますと、結果的に利益で見るという考え方は決して間違っていないと私は思います。
 したがいまして、弱肉強食というように考えられるのは、何か強い者が不公正なことで弱い者を食うということでございますけれども、今の経済社会をごらんいただきますと、全くそうはなっていない。私どもの会社でも、お客さんが喜ぶものを提供しなければ、買っていただけなければつぶれるんですね。買っていただくには、おまえ、買えといって強制はできないわけです。お客さんがこれはいいと思って買っていただく、それだけの値打ちのあるものを出さないといけない。値打ちのあるものを企業が提供することによって経済は伸びるわけです。したがいまして、すぐれたものが残っていく、すぐれないものが去らざるを得ないということは、経済活動として、私は、これが一番全体のパイを大きくする。経済活動でございます。
 しかし、経済というのは社会に奉仕するためにあるわけでございますから、その経済活動で大きくなったパイ、豊かになった経済を用いてどのような社会をつくっていくかというのは、これは社会の皆様、政治が決めていくことだと思います。我々経済人は、経済活動でできるだけ豊かなものをつくっていこうという努力をしているわけで、そのためには規制改革をしていただかないとすぐれたものが残れないんですね。規制で統制されたり、やっちゃいけない、これは国がやりますということでやれない。もっと豊かな経済をつくるシステムに参加させていただきたい、こういうことが私ども経済人の願いではないかと思います。
小野委員 自由な競争が何より大事だという観点で非常に熱弁をお振るいいただいたわけでありますが、もう一点、宮内参考人に、その先の話としてやらせていただきたいと思いますのは、最近、自由というものが金科玉条となってしまって、自由といえば当然そこには社会的に義務が伴うという認識は私どもございますが、義務の観点が抜け落ち始めているような気がしてならないんですね。権利ということをいった場合に、ではそれに対する責任というものが伴うのかというと、それも非常にあいまいになってきている。
 例えば、端的な事例で申し上げますと、国際的に活躍される投資家たちの振る舞いでございますけれども、彼らは非常に多額のお金を特定の企業、また特定の国家目指して投入していきますね。その企業や国というのを非常に水膨れしたような状況をつくり上げておいて、それで一気にその資金を今度は抜き取るようなことを平気でやるところがございますね。数年前のアジアの金融危機の問題というのは、そういう状況が提示された結果だと私どもは理解しているんです。
 そうした場合に、投資活動は自由だというのは、確かにこれは国際的に一つのルールとして、金科玉条として語られているわけでありますが、しかし、その自由の結果として企業が倒産をしたり、その先に失業者があらわれてきたり、自殺する方だってあらわれてくる。こう言うと、こちらの席に私は座った方がいいのかもしれないけれども、そういうような状況を見てきましたときに、投資家は、それだけ社会的に大きな影響力を持つのならば、当然ながら、投資活動の自由ということにとどまるのではなくて、その先にどういう社会的な影響を及ぼすかということについて責任をきちんと明確にして持つべきではなかろうかという思いがしてならないんですね。
 つまり、私は、自由という形での規制緩和を進められることについては、これは反対いたしません。しかしながら、自由ということを語った分に相当する責任とか義務、これをバランスよく伴ってやっていかないと社会は決してうまくいかないということにそろそろ気づいてこのシステムをつくり上げるべきだというふうに主張し始めているのでございますが、いかがでございましょうか。
宮内参考人 延々と議論になってしまったらあれでございますけれども。
 私は、企業活動は、やはり自己責任で企業活動をやっているわけでございます。それで、投資活動をするということは、やはり投資をすることによってより効果あるリターンをもらわないといけない。したがいまして、投資をする方は真剣でございます。もし投資をしてうまくいかなかったらこれは損失をこうむるということで、投資の専門家というのが生まれてきているわけでございます。したがいまして、自己責任で動くもの。
 そして、日本の一番の悲劇は、海外から全然投資してくれないということでございます。投資残高でいいますと、日本へ海外から来る投資が一といたしますと、日本から海外へ出る投資がたしか六とか七とかという、世界じゅうでこれほどインとアウトとアンバランスになっている国はございません。日本には外国から投資をしてくれない。それほど、日本へお金を持っていって、いいリターンがあるとだれも思ってくれていない。日本人もそう思わないから七倍外国へ出す。これが日本の経済活動の一番の悲劇でございます。外国からもっと日本へ投資しよう、日本へ投資するとよく頑張ってやってくれるぞ、アメリカへ投資するより、イギリスへ投資するより、中国に投資するよりいいぞと思ってくれないといけないのにそうなっていないということが、日本が衰退し、日本人が日本を見捨ててどんどん海外へ行ってしまう、こういうことでございます。
 したがいまして、我々は日本がもっと、外国が彼らの大きなお金を進んで持ってきてくれる国になってほしいし、外国人が日本でもっと住みたいと思う国になってくれる、そういうことが一番重要だ、ちょっとお説と違いますが、私自身はそのように思っております。
小野委員 宮内さんが最後に言われましたように、私はちょっと見解の違うところがございますが、この議論はちょっときょうの時間には無理でございますので、このあたりにさせていただいて、続きまして、福井参考人にお尋ねさせていただきたいと思うわけでございます。
 先ほど冒頭の御陳述の中で、社会的規制と経済的規制というのは、これは区別されるべきものではなくて、むしろ一体のものとして考えるべきであるというような趣旨のお話がございました。
 そこで、ちょっとお尋ねしたいなと思いましたのは、カジノの解禁の問題というのが最近この特区問題で出されてまいりました。さらにこれを敷衍して考えてまいりますならば、売春防止法の問題だとか麻薬取締法、こういうふうな問題、これは、世界的に見ればそれが許可されている国もあるわけでありまして、我々は通常的にこれは社会的規制だというふうに認識しているものでございますが、このようなものは特区の中において認められるべきものなのかどうか、こういうあたりの御見解を通して、いい規制と悪い規制というのが世の中にあり得るのかどうか。また、今回の特区法案の中において、やはりある一定の制限をかけた規制緩和ということにならざるを得ないのかどうか。このあたり、ちょっと抽象的な御質問で申しわけないんですが、御答弁をいただければありがたいと思います。
福井参考人 特に、御指摘いただきましたカジノの件につきましては、総合規制改革会議の内部でもかなり激論がございました。カジノについては、ワーキングなどの中でも、認めてもいいというような意見もございましたし、私も実は、個人的にはカジノであればあり得るのかなとは思っておりました。ただ、整理といたしまして、やはり刑事法についてこれを個別に抜くというのは日本ではまだ時期尚早ではないだろうかという意見が大勢を占めまして、今回は刑事法については特区の対象から抜いている。したがって、麻薬、売春等についても除かれているということがございます。
 ただ、これは先験的にそもそも特区になじまないということではございませんで、やはり日本の社会実態を踏まえたものでありますし、アメリカなどの判断では、州ごとに、例えば麻薬を禁止するかどうかというときに、日本のように非常に情緒的な判断ではなく、非常にプラグマティックな判断をしております。具体的には、麻薬が禁止されると麻薬の価格は上がるわけですね。そうすると、高い麻薬を買おうとして麻薬中毒患者が簡単に殺人、強盗をしたりということで、麻薬患者による被害者がふえるという社会的コストがあります。それを見きわめて解禁すべきかあるいは禁止すべきかというようなことを立法当局が決めるという、非常に政策的判断の中にも費用対便益がまじっております。
 そういうふうに考えれば、日本でも万が一似たような前提が出たときに、これを特区としてやるかどうかということは、遠い将来の課題としてはあり得るかと思いますが、現時点ではそこまで熟していないということだったと思います。
小野委員 重ねて福井参考人にお尋ねしたいと思うのでありますが、この特区は、先ほど来の皆さんの御陳述を拝聴しておりますと、規制緩和というキーワードを使って御説明されたわけでありますが、私は、規制強化もあり得るのがこの特区の特徴になり得るのではないかという気がしてならないんですね。
 例えば、マスコミ報道の問題等を見ておりました場合に、これが非常にその地域の子供たちに対して有害であるというふうに判断される場合、全国的には報道の自由ということが金科玉条でありまして、何ら規制をかけられないけれども、地域の中においては子供の将来の育成を考えればこれはむしろ強化すべきであると考えるような地方自治体が出てきても不思議ではないと思うんですが、こういう見解に対してどういう御意見をお持ちになりますでしょうか。
福井参考人 規制改革特区で想定されておりますのはあくまでも改革でございまして、一般的には緩和やあるいは撤廃が多くなるとは思いますけれども、ある側面で強化が伴うということはもちろんあり得ると思います。
 特に、先ほども申し上げましたが、例えば農地などですと、本来、農地の生産力確保ということですと、むしろ転用制限を厳しくするというような代替措置とセットで、そのかわり、例えば株式会社のような主体でも参入できる余地を与える、こういうふうな強化と緩和のバランスといったような組み合わせもあり得るかと思います。
小野委員 では、最後に末吉参考人にお尋ねしたいと思います。
 地域における新しい取り組みを通しての地方自治体自身の力の強化、つまり、自治体職員自身の企画力また運営力を強めるという方向にこれが向かうという御評価、私も非常に賛成でございます。
 この地方の政策実現能力を高めるということについて、私は、以前にストックオプション的制度というものを提案したことがあったんですね。
 つまり、みずからが企画をつくる、そしてそれを実現してその後その運営をしていった中において当初想定した以上の大きな効果を地方自治体職員の皆さんの努力によってなし遂げることができたということならば、それに与えた補助金について、また地方交付税の形で何かの対応をする。つまり、うまい成果を出せば地方自治体には御褒美がやってくる、こういうような制度を国としてモデル的につくってみてはどうかという提案をしたわけですね。
 ちょっと、これだけで話はわかりますか。御見解、いかがでございましょうか。
末吉参考人 そういう御褒美が来ればうれしいと思いますし、ありがたいと思いますが、その目的のためにやるというよりも、何といいましても職員のモラールをどのように上げていくか、維持するかということが一番大事ではないかと思います。
 そのためには、地域のためにどれだけ役に立つのか、立っているのかという実感を、上から下まで同じように認識を持たせること、大変難しゅうございますが、それに尽きるのではないか。まず第一にそうではないかと思います。
小野委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
佐々木委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の皆さんには、貴重な御意見を長時間にわたってちょうだいいたしまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時一分散会


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