衆議院

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第9号 平成14年11月20日(水曜日)

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平成十四年十一月二十日(水曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 佐々木秀典君
   理事 逢沢 一郎君 理事 青山  丘君
   理事 渡辺 博道君 理事 伊藤 忠治君
   理事 細野 豪志君 理事 河合 正智君
   理事 西村 眞悟君
      大村 秀章君    奥山 茂彦君
      嘉数 知賢君    金子 恭之君
      亀井 久興君    木村 隆秀君
      小西  理君    菅  義偉君
      高橋 一郎君    谷川 和穗君
      近岡理一郎君    林 省之介君
      石毛えい子君    岩國 哲人君
      大畠 章宏君    松本 剛明君
      山花 郁夫君    山元  勉君
      横路 孝弘君    太田 昭宏君
      児玉 健次君    吉井 英勝君
      北川れん子君    重野 安正君
    …………………………………
   国務大臣         鴻池 祥肇君
   財務副大臣        谷口 隆義君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   国土交通副大臣      吉村剛太郎君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君
   政府参考人
   (内閣府大臣官房審議官) 加藤 裕己君
   政府参考人
   (内閣府国民生活局長)  永谷 安賢君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局審議官
   )            三國谷勝範君
   政府参考人
   (法務省大臣官房審議官) 原田 晃治君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (厚生労働省職業安定局次
   長)           三沢  孝君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局次
   長)           北原 悦男君
   政府参考人
   (国土交通省道路局長)  佐藤 信秋君
   政府参考人
   (国土交通省自動車交通局
   長)           丸山  博君
   政府参考人
   (国土交通省港湾局長)  金澤  寛君
   政府参考人
   (環境省大臣官房廃棄物・
   リサイクル対策部長)   飯島  孝君
   内閣委員会専門員     小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十日
 辞任         補欠選任
  谷本 龍哉君     小西  理君
  岩國 哲人君     松本 剛明君
  吉井 英勝君     児玉 健次君
  北川れん子君     重野 安正君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     谷本 龍哉君
  松本 剛明君     岩國 哲人君
  児玉 健次君     吉井 英勝君
  重野 安正君     北川れん子君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 構造改革特別区域法案(内閣提出第六九号)


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     ――――◇―――――
佐々木委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、構造改革特別区域法案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官中城吉郎君、内閣府大臣官房審議官加藤裕己君、内閣府国民生活局長永谷安賢君、金融庁総務企画局審議官三國谷勝範君、法務省大臣官房審議官原田晃治君、文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、厚生労働省職業安定局次長三沢孝君、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君、厚生労働省老健局長中村秀一君、農林水産省農村振興局次長北原悦男君、国土交通省道路局長佐藤信秋君、国土交通省自動車交通局長丸山博君、国土交通省港湾局長金澤寛君及び環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長飯島孝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
佐々木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大畠章宏君。
大畠委員 おはようございます。民主党の大畠章宏でございます。
 きょうは、構造改革特別区域法案について質問をさせていただきます。
 これまで鴻池大臣と委員とのやりとりをいろいろ私も後ろで拝聴させていただきましたが、この法律案にかける大臣の意気込みというのが大変伝わってまいりまして、この法律案というものが、地域社会にとって、今地域の方では経済的にも大変疲弊しておりますが、大きく期待の持てる法律案になるのじゃないかということが、大臣の答弁姿勢を見ておりましてもひしひしと伝わってまいりますし、また、大臣の言動を聞いておりましても、その情熱というものを理解するところでございます。
 言ってみますと、従来型の、国が補助金を出して地域を何とかしようとか、そういうことの法律とは大きく趣を異にしておりまして、この法律案の趣旨の資料等を見ましても、地方公共団体や民間事業者の知恵と工夫の競争による活性化、自助と自立の精神による地域独自の計画を可能な限り幅広い規制緩和を行って実現させるという発想に基づいた法律案と私自身も受けとめておりまして、多分この発想は、地方自治体も、あるいはこれからどうやってこの日本の中で生きていこうかと苦心惨たんしている民間事業者にとっても歓迎する内容ではないかという感じを私自身受けております。
 私ども民主党も、結党以来、情報公開と地方分権が日本のこの閉塞感にさいなまれている社会というものを切り開く一つの道筋になるのじゃないかということで努力をしてきたところでありますが、そういう観点からこの法律案について質問をさせていただきたいと考えるわけであります。
 根本論議でありますが、基本的なことは大臣にお伺いし、あと少し細かなことは関係者の皆さんにお話をいただきたいと思います。
 まず、憲法十四条には法のもとの平等という大原則があるわけでありますが、どうもこの法律案を適用した場合には、この法のもとの平等とは異なって地域間格差ができてしまうのじゃないかという実感を持つわけであります。まず、鴻池大臣として、憲法十四条とこの法律案との関係についてどういう見解を持っておられるか、最初にお伺いしたいと思います。
鴻池国務大臣 おはようございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 前段に、大畠委員より御激励をいただき、また深い御理解をいただきながら本委員会で質疑を行っていただけるというのは大変ありがたく存じております。どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 ただいまの御質問でございますが、この法案は、規制は全国一律でなければならないという従来の発想から、地域の特性に応じてさまざまな規制のあり方があるという発想の転換を図ったものでありまして、地域の実態に合わせた規制改革を通じて、それぞれの地域が知恵と工夫の競争による活性化を目指すことで全国に多様な構造改革特区を実現して、全国規模の規制改革の突破口にしよう、こういうところであります。
 その際に、地域の特性に応じて異なる規制の特例を設けることについて、個々の規制について規定する法律の目的に照らし合理的な説明が可能であれば、法のもとの平等の問題は生じないものと考えておるところでありまして、また、今回の制度においては、すべての地方公共団体が地域特性に応じた計画の作成、申請を行うことができる機会があるものであります。
大畠委員 基本的な御認識は今伺ったところでありますが、もう一つ、実はこれまで、地方自治体にいろいろお話を聞いてきたのですが、従来こういう投げかけというのはないんですね。国の方でまず大枠を決めて、この中でやれるものを考えて持ってこい、補助金も出しましょう、法律で特例措置をやりましょう、それに地方自治体がどう応ずるかということを検討してやってきたのがこれまででありますが、とにかく何か考えてこい、その考えてきたものに特例措置というものを講じてやるから、それがやれるようにしてあげるからという投げかけに対して、非常に戸惑いを覚えている地方自治体も多いんですね。補助金が出ないあるいは助成金が出ないからこれはやってもしようがないのじゃないかという発想の自治体もあるのですが、今のところ、二百から四百ぐらい、大変多くの自治体がいろいろな発想を持ってやっている。私は、これは非常に画期的なことじゃないかという理解をしているところであります。
 ただ、その一方で、一つの考え方として、地域間格差が生じてしまうのじゃないか、地域間競争というものを是認することになるのではないか。そしてまた、そこでパイロットプラントとしてやった場合には全国に展開するんだというこの法律案の方向性というのは見えるわけでありますが、地域間格差というものが生ずること、あるいは地域間競争というものをどう受けとめられているのか、そしてこれをベースとして全国展開をするということになると思いますが、この三つの視点について、鴻池大臣の基本的な御認識を改めてお伺いしたいと思います。
鴻池国務大臣 これにつきましては、もう既に委員、深い御理解をちょうだいしているところでございますけれども、この制度というものが、地方の工夫、熱意が自発的に、特区構想というもの、制度というものを通じて、突破口として一カ所で燃え上がっていただく、これに大いに期待をするところでありまして、地域間格差というよりも、競争を大いにやっていただくべきではないかというふうに思っております。そして、この構想が実現することによって地域の工夫が実現すること、できないことをできるだけできるようにするというのが我々の役目でございますが、これをもってできたということになって成功すれば、隣の町にあるいは隣の山に飛び火していく、そしてこれが全国的に燎原の火のごとく燃え盛っていくということに大いに私は期待をしたいと思っているところであります。
大畠委員 地方自治体の自立といいますか、地方自治体というわけですから、そういう意味では、そういう発想に基づいて、首長も議員もあるいは住民の人も、自分の町をどうするかということを基本的に考えてやっていくというのが自治体というものだと思うんですが、従来は、残念ながら、厳しい校則のもとで高校生活とか中学校生活をやっていると同じように、服装はこうしなさい、靴はこうしなさい、言葉遣いはこうしなさい、朝来たらこうしなさいと、もう朝から晩まで規則に縛られてやっていた感じがするんですね。それになれてしまったものですから、なかなか自分で新たな発想で考えようということすらやめてしまっていたという自治体があるのでありましょう。したがって、今回のこの特区構想については、非常に革新的な自治体は積極的にやるし、そうでないところは、一体何をやったらいいのかなと非常に戸惑っているという話も聞きました。
 いずれにしても、今回の法律が、地域の自発性あるいは特性を生かして何か自分たちで考えていこう、国の助成とかそういうものに頼らないで、何とか地域は地域で考えていこうという、この発想の発端になればという思いを持っているわけであります。
 そこで、ちょっと、大臣にはしばらく聞いておいていただきたいんですが、地域の実態を踏まえて、具体的な御質問を何点かさせていただきたいと思うんです。
 まず最初に、雇用問題について、この特区がどういう形で生かせるかということを少し考えてみたいと思うんです。
 実は、雇用問題というのは、大臣も御存じのとおり、今、五・四%という大変多くの人々が失業状態にございます。総理は、倒産しても構わないんだ、失業率が多くなるというのは構造改革が進んだ証拠じゃないかという、国民に対して非常に冷たい発言をされているようにも受けとめるところでありますが、実際問題、私の地元の高萩市というところがあるんですが、六月三十日に一つの企業が自己破産しまして、千三百人、管理職も従業員もなく全員解雇という事態に遭うておりまして、ハローワークにたくさんの方が今押しかけているんですね。しかし、ハローワークは土日は休み、五時で終わり、そういう中で何とか自分の次の生活の糧を探そうとして努力しているんですが、なかなか見つからない。
 そういう状況の中で、きょう、厚生労働省が、かつて三%の失業率の時代から今日の五・四%の時代に突入してどういうふうに対応を変えたのかということもお伺いしようかと思っていますが、ちょっとそこら辺、厚生労働省の方でも、この大量失業時代あるいは大失業時代に対応する、変化に対応することができていないんじゃないかということを私自身感じておりまして、このことは、また別の機会に厚生労働省の方にその対応策をさらに検討するように要請していきたいと思うんですが、まず、その中でも、ハローワークの職員の対応が不親切じゃないかという意見がたくさん寄せられています。
 例えば、これは、労働組合のアンケート結果、連合が全国のハローワークでの失業者の方とか求職者の方から聞き取り調査したという概要の資料を私がいただきましたけれども、例えば、対応がいいところもあるというんですね。いいところもあるけれども、一般的にどうも対応が冷たいんじゃないかと。ハローワークが込んでいて情報もとれず、就職活動もできない。あるいは、ハローワークのサービス向上をしてほしい、相談時間が足りない。ハローワークの人々が大変だ、人手不足じゃないのか、もっと大量失業時代に応じた、厚生労働省としてのハローワークの充実をしてほしいとか、これは三十歳代の女性の方。あるいは、ハローワークの窓口に本日初めて来たが、非常に役所的で驚いた、もっとサービスという観点からの改善を望むという、三十歳代の東京の男性の方。日本国籍だが、外国人のため、ハローワークの人も対応が悪い、初めから外国人はだめなような対応の人が多いという、元民間の社員の方、四十歳等々、ハローワークの対応がどうも親身になっていないんじゃないか。あるいは、ハローワークは親身になって聞いてくれることが少ないし、民間の職業紹介所は、ただ仕事をお金もうけのために紹介するだけで条件面が悪いところが多いというお話とか、ハローワークも、求人受け付けするとき、もう少しきちんと、年齢にしても、免許資格がある、なし、どうもよくわからない人が多い、もっとまじめにやってほしいとか、ハローワークの時間延長の問題、土日の営業もしてほしいとか、たくさん、そういうハローワークに関する利用者の方の意見があるわけであります。
 そこで、一つお伺いしたいことは、ハローワークというところしか公的な職業のあっせんというものができないのか。厚生労働省の方でもいろいろ考えて、県段階でも、自治体段階でもそういうハローワークでの仕事のあっせんができるように検討したいというような話も伺っておるわけでありますけれども、最初に、県など自治体が職業あっせんをすることが可能になるような検討を今しているのかどうか、いつぐらいからそういうことができるのか、まずこの件からお伺いしたいと思います。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御承知のことだと思いますけれども、国の行う職業紹介事業につきましては、地方分権推進委員会における議論あるいは勧告、それから、平成十年五月に出されました地方分権推進計画を受けまして地方事務官制を廃止した際に、雇用対策法におきまして、国と地方公共団体の役割分担を規定しているところでございます。これによりますと、地方公共団体が職業紹介を行うことにつきましては、二重行政等の問題があるというふうなことから、現在のところ、地方公共団体は許可の対象としていないということでございます。
 ただ、このような中で、先般、十月三十日でございますけれども、地方分権改革推進会議が取りまとめました最終報告におきまして、「高齢者、障害者などを対象とした地域性の強い施策を展開する上で必要な職業紹介については、国と地方の二重行政となることのないよう配慮をしながら、都道府県も一定の役割が担うことができる方向で検討を行い、平成十四年度中に結論を得る。」こういうふうな御指摘をいただいたところでございます。
 厚生労働省といたしましては、これを踏まえまして、地方公共団体が住民に身近な行政施策を実施する上で附帯的に必要となる職業紹介、これを行う場合には必要な範囲で職業紹介を行えるようにする方向で、現在、その具体的な範囲、あるいは地方公共団体が職業紹介事業を行う際の要件などにつきまして、次期通常国会への法案提出を目途に検討を進めているところでございます。
大畠委員 今、次期通常国会でそういう法律案の改正を行いたいという話でありますが、私は、今のお答えの中で、行政の一元化というものは確かに一つの考え方かもしれませんが、とにかくハローワークにたくさんお客さんが詰めかけていて入れない、利用者がたくさんいて困っているというときに、これは一元化だからといって済ませるものではないんですね。
 大臣からも先ほど、競争問題がありましたが、行政間の競争があったって私はおかしくないと思うんですよ。だから、先ほどの、ハローワークの人は何かまじめじゃないんじゃないかと。もちろん、まじめな人もいるんですよ。一生懸命やる人もいる、あるいはそうでない人もいる、たくさんの人がいるんだけれども、やはりハローワークとして、それだけ三%時代から五・四%という大変な、多くの失業者の方が出ているわけですから、やはりそれは、単に一元化で行政の二重はまずいんじゃないかという発想だけじゃなくて、お客さんがたくさんいれば店舗をふやす。店舗同士で何も競い合うことはないけれども、お客さんに見合って店舗はふやさないと、これだけですからという話にならないと私は思うんですね。
 ですから、次回の通常国会で法律改正するということでありますから、それは大きく国民の期待にこたえるような形の法律案になるように、ぜひお願いしたいと思います。
 それから、特区という話になるかどうかわかりませんが、今聞いていますと、大臣、一人三十分しか端末は使えないというんですね。コンピューターがあるんですよ。そこで、年齢はとか、どういう職種ですか、月給はどのくらいもらいたいですか、こういうものを入れてぽんとやると、どこどこの企業とか何か出てくるんですが、どれがいいかな、こうやるんですね。三十分というのはすぐ過ぎちゃう。そうすると、次の人がたくさん待っていますから移らなきゃならない。
 こういうふうな話なんで、例えば、小泉総理も、たしか二〇〇五年ぐらいまでに、二〇〇四年でしたか、世界最速の、最高のインターネット情報通信社会をつくりたいというときに、端末がハローワークにしか置いていないで一人三十分しか使えないというのは、これは全くおかしな話であります。
 こういう時代だから、端末は何もハローワークに置く必要はないんで、端末だけでも、例えば行政のところも随分インターネット化していますから、市役所のロビーに置くとか市役所の一部に置くとか、ラインをつないでそこでも見られるとか、そういうふうに臨機応変にやらないと、とてもじゃないけれども、現状、来年の通常国会で成立しても、多分四月以降になるのかな、あるいは成立してから三カ月とか何か過ぎてからという話になるでしょう。
 ですから、年末年始、これは非常に企業倒産がふえると思いますね。そうすると、そういう悠長なことをやって待っていられないので、例えば、非常に多くの失業者が集中する、あるいは大きな企業が倒産したというところは特別に指定して、法律改正しなくても、その地域については市町村の役場のある一室で端末を引いてそこでも見られるとか、申しわけないんですが、行政マンというのは国民に対する最大のサービス機関のメンバーなんですよ。そうであれば、やはり土曜、日曜も出てお客さんに対応する。お客さんが減って困っている商店街がたくさんある中で、たくさんお客さんが詰めかけても土日店を閉めているなんというのは、私は何かおかしい感じがするんですね。
 ですから、この特区構想に合うか合わないかはよく私も理解できないところがあるんですが、そういう大きな企業が倒産したり、その地域にたくさんの失業者があふれている場合には、土日もハローワークを開きましょう、あるいは、市町村での行政のところにも端末を引いてそれでも見られるようにしましょうとか、何かそういう臨機応変の措置があってもしかるべきだと私は思うんですが、この営業時間の延長の問題と土日営業のハローワークの問題、これはどういうふうに今厚生労働省としては考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 先生の御質問、二点あったんじゃないかと思います。インターネットの活用の問題と、それからハローワークの開庁時間の延長の問題、二点だと思います。
 それで、インターネットの利用の問題でございますけれども、現在、私どもハローワークの有する求人、これについては、ハローワークインターネットサービスというもので全国に提供をいたしております。
 現在のところ、インターネットで提供する情報が件数としては四十六万件余りありまして、一日のアクセス件数が十二万件ぐらいある。これは非常に利用は進んでいるんですけれども、ただ、問題が一つございます。と申しますのは、現在、ハローワークで見られる情報については、求人企業名が載っていない。だから、どういう会社が募集しているかというのがわからないというような状況になっています。
 そういうことで、利用者からもこの点についてはぜひ改善してほしいと強い要望がございますものですから、私どもとしても、できる限り早期にインターネットで求人企業名まで公開して、求人企業名を公開するということになりますと、全国至るところで、求職者の方は自宅においてインターネットを通じていながらにして全国の状況がわかる、こういうふうな状況になると思います。できるだけ早急にこれは進めていきたい、こういうことを考えています。
 次に、二番目の開庁時間の延長の問題でございますけれども、これも、我々いろいろ研究いたしまして、最近の情勢を踏まえまして、平日時間外とか土曜日においても開庁するように努力しております。現在、十二都道府県労働局の十九の拠点、例えば新宿の安定所等がございますけれども、土曜日とか平日の時間外の延長、これを行っています。
 私どもとしては、こういうふうにハローワークの平日時間外とか土曜閉庁といった開庁時間の延長につきましては、地域の利用者のニーズに応じて実施してきております。したがいまして、今後とも、このような対応をとることによって、求職者の方の再就職の促進に努めていきたい、こう考えている次第でございます。
大畠委員 今、二つのお答えをいただきました。
 一つは、コンピューターの問題については、企業名が載っていなければ、これはやはり何だかわからないですね。A社とかB社というんじゃ何だかわからない。それではオープンにしていますよという話にならないので、早急にという話がありましたが、早急にというのはいつまでですか。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 今、いろいろ関係方面と調整をしておりますけれども、来年早々にでもできるように努力していきたいと思っております。
大畠委員 来年早々というのはいつですか。
三沢政府参考人 そこまで具体的にまだ省内で大臣とも十分打ち合わせをしておりませんけれども、一月には実施できるように努力していきたいと思っています。
大畠委員 これは、私はある人から言われて、これは誤解しないでいただきたいんだけれども、全く失業する可能性がゼロな人が失業者と相対しているから、結局、失業者のつらさをわからないんじゃないか。
 できるだけ早く、来年一月という話でありますが、こういうものはスピードなんですよ、スピード。そういうスピードを持って決断したり実行しないと、よく言われますが、それはもうこの社会の中では多分ダウンをしますよ、そういう組織体は。ところが、行政体というのはダウンしない、倒産しない、それは単一、それしかないから。
 だから、例えば年末商戦でも、デパートがなぜ時間延長してお客さんにサービスするのか、あるいは土日もなしにサービスするのか。それは、お客さんが詰めかけるからなんです。そういう状態があれば当然、臨機応変に、土日も営業します、時間延長して夜八時までやりますとか、そのくらいまでやってもらわないと困りますし、今、そういう土日営業と時間延長については臨機応変に、その地域によって実態に応じてやっているという話でありますが、これはよく調べてもらいたいと思うんですね。
 具体的な形でいえば、高萩のハローワークは一体、土日も営業しているのか、あるいは時間延長もしているのか。きょうは聞いてもわからないでしょうけれども、とにかく、そういう大きな企業が倒産したりなんかしたところは、ぜひ臨機応変に、お客さんがいる限り、できるだけ、夜八時までやりなさいとか、従業員の人も大変ですよ、大変ですが、それはそういう仕事なんだから、ぜひ実態に即応した形でやってもらいたいということが一つのお願い。
 それから、ホームページのお話は、一月から使えるようにしたいというようなお話でございますから、やれるんだったら、年内に対応策はやってくださいよ、これは。それがどのくらいの家族や人々を救うかもしれないんだから。あなたは失業する可能性ゼロ、だからそういう悠長な話をしているんだけれども、十二月、どうやって正月を迎えるか、本当に苦労している人がいるんですよ。三百六十万ですか、七十万ですか、これは大変なことですよ。それも三十代、四十代、五十代、いろいろいるでしょう。ローンを抱えた人もいるでしょう。私も常磐線を利用していますが、よく常磐線がとまるんですよ。人身事故だというんですよ。経済的な理由で自殺する人が年間一万人と言われています。
 そんなことを考えたら、来年早々とかなんかじゃなくて、十二月末までに対応をして、一月一日からはオープンできるようにしますとか、大臣と相談しないとなんて、こういうのは大臣と相談しなくたってできる話でしょう。労働大臣が非常に理解があるから多分大丈夫だと思うんだけれども、そこで難しい話だったら鴻池大臣に相談してみなさい。鴻池さんだったら、よしやろう、すぐやろう、こうなりますよ。労働大臣だって、いや、早々でいいよなんという話にならないから。あの方も非常に人間味あふれる人ですから。
 だから、事務方がやる気になればいいんだ。よし、あしたまでにこれだけやろうとか、今月中にこれをやろうとか目標を決めて、パソコンの問題、ぜひ解決していただきたいと思いますが、再度、これは一月一日から使えるように、どうですか、そこら辺の気構えでやってくださいよ。もう一度答弁をお願いします。
三沢政府参考人 お答え申し上げます。
 先生の御要望の趣旨を十分踏まえて対応したいと思っておりますけれども、一月一日からの実施というのはなかなか難しいというふうに思っておりますので、一月中にはぜひやりたいと思っています。よろしくお願いを申し上げます。
大畠委員 一月一日からは難しいと。一月二日からでもいいですが、とにかく一日でも早くやってください。それで多くの人が助かるかもしれないし、命が助かるかもしれないんだから、そのくらいの気構えで、一月中というのですから、一月三十一日までにやってもらえると思うんですが、ぜひそれを前倒しでできるように御努力をお願いします。
 それからもう一つ。仕事を求めても、企業だって苦しいんですよ。ですから、求人を募集したくてもなかなか募集できないということもあるんですね。そういうときには、今NPO法の改正案が議員立法として準備をされているところでありますが、このNPO法について、NPO法人として登録をして、それから、基本的に大変なのはNPOの財政なんですね。そういうことから、認定NPO法人になりたいというところが出ているんだけれども、これが申請したうちの〇・五%とかそこら辺しか認定されないという、非常にハードルが高いんですね。今回、五分野、議員立法で追加されますが、これは認定要件とはちょっと違う分野なんですね。
 そこで、もう一つの質問でありますが、失業者が急に増大したというところだけでも認定NPO法人になるためのハードルを低くして、できるだけそういう人々を吸収できるようなことも考えるべきだと私は思うんでありますが、NPOの認定法人になるための要件緩和特別区域、そういう発想に対しての御見解をお伺いします。
永谷政府参考人 NPO法人に対して税制上の優遇措置を与える要件を緩和しろという御指摘であります。
 これも先生御案内のとおり、今現在、全体でNPO法人が八千七百近くある中で、去年の十月以降、この認定NPO法人、ある特定の要件を満足しているNPO法人に対して税制上の優遇措置を設置するということでやっているんですけれども、その認定された法人というのは九法人にとどまっています。まさに、そこにうかがわれますように、非常に使いにくいとか、あるいは要件が厳し過ぎるんじゃないかという御指摘、御非難があるということは我々承知しております。
 それで、これからの日本の経済社会というのを考えた場合に、NPOというのが活発に活動して、まさにかゆいところに手が届くようなサービスを供給していくというのが懐の深い経済社会を構築していく上でも非常に重要な課題じゃないかなと思っておりまして、そういう意味で、先ほど先生おっしゃいましたように、NPOの財政的な基盤をどういうふうにサポートしていくかというのは非常に重要な課題であると私ども認識しております。
 それで、少し具体的に申し上げますと、今いろいろなNPO団体が税制改正に対していろいろな要望を出しておられます。そういうのを私ども一応踏まえた形で、財務省に対して十五年度の税制改正要望、要求をさせていただいているところであります。
 その中で、パブリックサポートテストというんですけれども、あるNPOが世の中全体のどのくらいの支持を受けているかというところで税制上の優遇措置を付与するかどうかを決めるというのが一つの仕掛けになっているんですけれども、トータルの収入に占める寄附金の割合というのが三分の一以上でないとだめとかいうような仕切りがある。そこが三分の一というのがいかにも厳し過ぎるんじゃないかというような実態があるということでありますので、そこの部分をどういうふうに緩和していくのか。
 あるいは、広域性の要件と言っていますけれども、複数の市区町村にまたがって活動をしていななきゃ優遇措置を与えないとかいうような、そういうふうな決まりになっています。そういう部分というのも、本当に実態に即したときにもう少し緩和できないのかどうか。
 あるいは、業務運営の要件、情報公開というのをきちっとやってみんなの目でチェックしていくというのが基本的なスタンスなんですけれども、そういうところで必要以上に過重な負担をしているんじゃないかとか、そういうような問題もあると思いますので、そういうような部分をまさに税制改正要求ということでやっているということであります。
 そういうことで、先生、特区という形でおっしゃいましたけれども、今既に要求しておりまして、これは全国ベースでできるんであればそっちの方がより望ましいということであろうと思います。
 それから、もう一点だけ付言して申し上げますと、先ほど申し上げましたように、八千七百もある、非常にたくさんNPO法人ができているんですね。御案内のとおり、今のNPO法というのは、まさに書類さえきちっと出せば、すぐだれでも法人格が取れるという性質のものであります。したがいまして、これだけ数がふえればふえるほど質的には劣化していくというのが世の中の常のようであります。
 私ども、法人格付与という実務をやらせていただいてよく思うんですけれども、どうしてこれがNPO法人なのかなといつも疑問に思うような部分も結構ありまして、余り行政がぐだぐだ口出しをしないような形で、まさに玉石混交の石の部分を極力少なくしていくメカニズムというのをどういうふうに組み込んでいくかというのが新しく課題になりつつあるんじゃないかな、そういう認識もさせていただいているところであります。
大畠委員 今回の法律案、特区の問題については税制関係には絡まない話ということでありますから、今の私の質問はなじまないのかもしれませんが、実は、NPOの関係の団体からもいろいろお話を伺いました。
 今、パブリックサポートテストの三分の一というものを五分の一にするという話もございました。しかし、いただいたこの報告書の中では、パブリックサポートテストの三分の一を五分の一にしたくらいでは効果なしという意見があります。どういうことかというと、申請しても九六%がパスできない、例えば十分の一にしても九三・五%の法人がパスできないというのが現状であると。したがって、申請したうちの半分ぐらいがパスできるように、例えば、分母の総収入金額から特定非営利活動の事業費を控除するとか、三千円未満の寄附金を分母、分子に算入できるようにするとか、社員からの会費を寄附金として分子に算入できるようにするとか、行政からの補助金を分母、分子に算入できるようにする、あるいは基準限度額の計算を総収入額の二%にする、公益法人からの助成金を全額分子に算入できるようにする、こういうことも含めて対象としてほしいという要請が来ております。
 さらに、実態として、私も伺いましたが、NPO法人おおぞら、このNPO法人の方の収支計算書でありますけれども、収入が九百五十万円、支出が九百五十万ですが、収入九百五十万に対して、法人税六十万、事業税十三万六千九百円、県民税五万円、市民税八万六千五百円、八十七万五千四百円の税金をやはり払わなきゃならないんですね。非常に重いですよ、これは。
 だから、こういうことも含めて、先ほど八千七百法人という話がありましたが、アメリカでは六百万団体で一千万人の雇用をしていますよね。ですから、今のこの大量失業時代にNPO法をというわけではありませんが、大変な人を吸収するかもしれないものなんですが、どうも財政的に回らなくなっているんですね。
 もちろん、暴力団とかそういうのが混入することは排除しなければなりませんが、先ほどの私が申し上げた条件は、こういうものを緩和したとしても、暴力団が参入したときには別な形でチェックすればいいわけですから、もうちょっと間口を広げて、改革特区についても大いにやりなさいというのが改革特区の方針なんですが、このNPOについても、大いにやりなさい、自立してやりなさいというならば、こういうところももうちょっと使い勝手がいい形のものにしていくことが必要だと思いますので、この件を来年の通常国会にかけて、ぜひ税制も含めて検討していただくよう要請しておきます。
 それではその次に、リサイクル特区の質問をさせていただきます。
 これまで私自身も、家電リサイクル法ですとか紙のリサイクル、自動車のリサイクル、ペットボトルのリサイクル、いろいろなものに関心を持ち、その法律の制定にも努力してきたところでありますが、おおよそ、自動車のリサイクル法ができて、大体の製品に対する法律の整備ができたのかなと思うんですが、実際にその法律を使って再生資源の生産工場をつくろうというときに、なかなかできないんですね。
 そこで、一つのアイデアでありますけれども、リサイクル関係の工場、これは廃棄物処理とは違うんですね、資源を集めて新たに使えるようにしよう、そういう工場の集積特区というものを考えてはどうかということを提案したいわけでありますが、そのリサイクル特区について、どういう見識といいますか見解を今持っているか、お伺いしたいと思います。
飯島政府参考人 廃棄物のリサイクルなど廃棄物処理に関する特区制度につきましては、環境省の立場といたしまして、まず、廃棄物はある一定の地域を決めてもその地域を超えて移動するということと、それから、一たん不適正な処理が行われますと、それをもとに戻す原状回復に多額の費用を要する、これは香川県の豊島の例がいい例だと思います、さらに、きちんとした規制をすることで住民の信頼を確保することにつながるということから、環境保全の立場とリサイクルの推進が両立しなければいけないというふうに考えております。
 現在のこの構造改革特区制度でございますが、これは、地方公共団体の発意を生かしまして実験的に行っていくという意味で非常に私どもも重要な課題と思っておりまして、先ほど申し上げました環境の保全を確保するという条件のもとに廃棄物リサイクル施設の設置許可を不要とするような制度が現在廃棄物処理法にございます。環境大臣が申請を受けて認定いたしますと、都道府県等の一つ一つの許可が不要になる制度がございます。これを拡充していきたいと思っております。
 具体的には、これまで、例えば廃タイヤをセメントのキルンに入れて、そしてセメントの原料として使うとか、あるいは肉骨粉も実はそれでセメントの原料として使って認定しているわけでございます。さらに、これからは恐らく、廃プラスチックを高炉とかあるいはコークス炉の還元剤に使っていく、こういったものも御提案をいただいておりまして、こういったものを実験的に改革をしていけないかということで、現在の構造改革特区推進のためのプログラムにきちんと位置づけておりまして、先生御指摘の点につきましても、地方公共団体から申請がございますれば、それに沿って検討させていただきたいと思います。
大畠委員 具体的な提案も私の手元にちょっと届いているものもありますが、いずれにしても、各種の制約というのがどうしてもありましてなかなか進まないという話も聞いておりますが、今お話がありましたように、提案があればぜひそれが実現しやすいように、これは地域の住民の皆さんの理解も得ながらいくというのが大前提になりますが、その他の法律的な制約があるのであれば少し外してあげて、いずれにしても、毎日毎日私たちは廃棄物を出しているわけですから、それが、燃やしてしまうのか、それとも再生して資源として活用するのかという意味になりますが、従来、往々にしてほとんど捨てていたんですが、それを何とか再利用しようというので、先ほど言いましたように、紙とかペットボトルとか家電品、自動車、これからパソコン等も問題になってくるでしょう、そういうものを集積して再利用することができる、そういうところができるようにぜひさらに環境省としても努力していただきたいということを要請しておきます。
 それから、具体的な話を四つほど申し上げますので、こういうことが可能かどうか、あるいは検討していただきたいというお話になると思いますが、一つは高速道路の利用であります。
 高速道路がありますと必ず取りつけ道路というのがあるんですね。その取りつけ道路が国道と市町村道といいますか県道等を縦断している場合に、そういう道路をできれば使わせてほしいという要請もございます。しかし、制約があってなかなか難しいんだというのでこれまで断念していたことがあるんですが、新たに取りつけ道路の横に道路をつくるというのもばかげた話ですから、できれば取りつけ道路を、高速道路用の進入のための取りつけ道路ですが、一般車も通してくれないかという要請があるわけでありますが、そういうことは可能なのかというのが一つ。
 それから、高速道路が町の中を走っているんですが、今、定期券というのは余り使えないんですね。ところが、ある渋滞、あるというのは具体的に言うと私の住んでいる日立市なんかは、高速道路が走っているんですが、なかなか最近予算がなくて道路整備がまだ進んでいないところがあるんですね。しかし、高速道路を一区間だけ、町の郊外から町の中心部までの一区間だけ通勤等に使うことができれば、市中の道路の混雑緩和に非常につながる。しかし、そこのところを普通にやりますとやはり高いんですね。ですから通勤なんかに使えません、遅刻しそうになったりなんかというときには使うことがあるかもしれないけれども。ですから、そういうところを例えば定期券等でワン区間だけ、町の中の交通の渋滞対策が進むまでと言ってもいいかもしれませんが、いずれにしても、定期券なんかで通行できるようにしてもらえないかというようなお話も出ておりますが、そういうことは可能かどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
佐藤政府参考人 二つ御質問をいただきました。
 一つ目は、先生、具体的には多分日立北インターチェンジのお話かと思います。これは、インターチェンジから県道に一たん接続し、さらに国道の六号までタッチして、こういうことであります。県道と国道六号を渡る交通が使えないか、こういう御議論であります。
 物理的には、上り下りのアクセスを新たに増設する必要がある。それからさらに、今、高速道路の取りつけ道路として費用も管理も高速道路の方でやっておりますから、この点について、実際やるとすれば、管理をどちらがやるか、あるいは管理がえ、そして買い取るというような動作が必要になろうかと思います。そういう意味では、いずれにしましても、新たにつくる出入り口と申しますか、ランプと、それから本体の買い取りといいますか、そういう点について道路管理者同士がお話し合いをする必要もあるし、費用負担をどうするか、こういう問題がございます。
 やれないわけではございませんが、そういう話し合いを詰めなきゃいけない、こういう問題がございます。これは、県道管理者である県と、それから高速道路の管理者である現在の日本道路公団と、そうした点から詰める必要がある、そういうふうに考えております。
 それから二つ目の、これは具体的には日立南太田と日立北の間の常磐道、これを朝晩定期券を使用できないか、かなり割引をしてほしい、こういうお話だと思います。
 これも、いろいろな観点から、地元でいろいろ検討したり実行したりしている例がありまして、例えば秋田自動車道などでは、沿線自治体の一定の協力で、実質三〇%割引となるような区間限定の回数券を発行するとか、いろいろな工夫をやっておる、こういうことであります。
 日立市内の国道六号は二車線で三万六千台という大変な混雑を長いこと続けておりまして、そういう意味では私どもとしてもいろいろ工夫する必要があるだろう、こう思っております。
 実は、国土交通省といたしましては、沿道環境の改善であるとか、今のお話のような渋滞の緩和であるとか、こういう面から、多様で弾力的な料金政策というものをみんなで参加して社会実験的にやっていこうということで、来年度そんな概算要求も出させていただいているところであります。そういう意味では、地元の自治体と、これも協力し合いながら、どういうことができるか検討してまいりたいと思っております。
大畠委員 佐藤道路局長から、詳細にわたる、私の質問よりも詳しく説明していただきまして大変ありがとうございます。
 道路というのはだれのものかというと、決して道路の所有者のものではない、やはり国民のものだということでは、今佐藤道路局長からお話がありましたように、できるだけ地域でよく話をして、地域の方々の利便性を増すような形でぜひやってもらいたいと思いますし、そういうことをすることによって道路が生きますし、また高速道路の利用者もふえて、日本道路公団もさまざまな課題を抱えていますが、やはり地域に貢献してこそ初めて道路ですから、そういう意味では、さらに地元の方と調整して実現するようにぜひ御努力いただきたいということを申し上げておきます。
 今の御回答は、私の質問に対しては、検討して地域の方で調整すればできないことはないという回答だったと思いますが、さらに地元の方と話をしながら、私もそういうことが実現できるように努力してまいりますので、よろしくお願いします。
 さて、その次は、今度は港特区といいますか、港がたくさんあるんですが、実は、福岡の方では二十四時間ハブ港というものができたということを聞いております。これも非常にいいことでありますが、いろいろな制約上から、港の二十四時間営業、あるいは安価な荷揚げ、そして輸送ということが、日本独特の慣習や規制でなかなか難しいというお話も聞いております。
 この二十四時間ハブ港を実現しようとする場合には、今どんな制約があって、特区との関係ではどういう理解をしたらいいのかということについてお伺いします。
金澤政府参考人 お答えをいたします。
 先生の御質問の趣旨は、二十四時間ハブ港湾、二十四時間の運営をするについてどういう制約があるかという御質問と、特区制度の関係ということでございますけれども、二十四時間、三百六十五日運営していくということが、港湾の国際競争力をつけていくという意味で大変重要なことだと思っておりまして、例えば、我が国の競争相手といいますとあれですが、諸外国において主要な港湾はそういう状況になっております。
 我が国の港におきましても、二十四時間の運営につきましては、実は、港湾の運送事業をやっておられます業界の方々が非常に努力をしていただきまして、昨年度末に労使間の協定ができまして、二十四時間、三百六十四日でございます、正月は休みということになっておりますが、そういう運営をやるようにしようということになりました。非常に大きく進歩したと思っております。
 それからもう一つは、やはり行政手続の問題がございまして、通関手続でございますとかそういうことがございますが、それにつきましても関係省庁におきまして御努力いただいておりまして、日本の主要な港において、特に特区との関係もございますけれども、こういう二十四時間対応ができるように努力をしていただくというふうに私聞いております。大きくそういう方向に向けて進歩しているというふうに思っております。
 まだまだ幾つかの課題がございます。例えば、料金が高いとか割り増し料金を取られるとか、利用者の方々からは幾つかのそういう課題を聞いておりますので、それは各省合わせまして努力していきたいと思っております。
 それから、今回の特区制度で私どもで港湾法の改正を提案させていただいておりますけれども、その内容につきましては、むしろ二十四時間対応ということよりも、港の現下の非常に厳しい財政状況下で我が国の港湾の国際競争力をつけていく、そういう意味におきまして、いわば施設の整備というハードの対策のみならず、これも必要なんですが、国や地方公共団体が整備いたしました公共埠頭、とりわけ公共コンテナターミナルにつきまして、既存ストックを有効に活用して、そういう観点からの民間企業の経営能力というものを活用いたしまして運営の効率化を図っていきたい。そういうソフト面での施策の推進というのが非常に重要性を増している、そういう認識のもとに港湾法の改正案を出させていただいております。
 このためには、民間の経営能力を活用して、国や地方が整備した公共コンテナターミナルの効率的な運営、ひいては港湾の国際競争力というものを実現するために、特区内の重要港湾でございますが、それにおきまして公共コンテナターミナルの一体的な運営、効率的な運営、そういう事業を行おうといたします民間企業、そのうち、港湾管理者が公告とか縦覧等の手続をいたしまして、公共性を担保するという意味もございますので、そういう手続をきちっとやりまして、一定の要件に該当するものとして認めました民間企業に対しまして、いわゆる行政財産でございます公共コンテナターミナルを、従来は短期間の使用許可ということで利用していただいていたわけですが、これを一体的、かつ、長期的に貸し付けをすることができる、そういう港湾法等の特別措置を特区法案に織り込んだところでございます。
 そうすることによりましてかなり効率的で合理的で競争力のある港ができてくるだろう、そういうことと、二十四時間対応とか三百六十五日対応、これらをあわせましてソフト、ハード対策を今後とも進めてまいりたい、かように思っております。ひとつよろしくお願い申し上げます。
大畠委員 あと、時間が少し迫ってまいりましたので、二つ続けて御質問をさせていただきます。一つは農業の問題、そしてもう一つは幼稚園の問題であります。
 まず、農家がなかなか稲作関係では食べていけなくなってしまったということなんですが、自然環境はすばらしいものがありますね。それから農家でも、大きな家等々でほかの人に宿泊してもらうこともできるということなので、農家の民宿経営という特区といいますか、この地域はそういうことにして、非常に過疎化が進むところはそういうふうにしたらどうかという一つの発想がありますが、この件についてはどういう御見解を持っているのか。
 もう一つは、保育園なんですが、子供たちが減ってきたという意味では、幼稚園は文部省、保育園は厚生労働省というので、省間の壁があるようでありますが、幼稚園と保育園と例えば老人ホーム、ここら辺は老人ホームは非常にふえてきているのですが、ここら辺の三つを一つに経営することができると非常にいいなという声もあるのですが、この点についての御見解を伺いたいと思います。
北原政府参考人 お答え申し上げます。
 農村の振興と地域経済の活性化を図っていくためには、農業の振興はもとよりですが、多様な地域の資源を活用しまして、地場産業の振興ですとか、都市と農山漁村との交流の推進などによりまして、多様な就業機会を確保していくことが重要であるというふうに考えております。
 具体的には、地場産業の振興の観点からは、加工施設や直売施設など農産物の付加価値の向上と販路の拡大を図るための施設のほか、木工ですとか炭焼き、陶芸、織物などの地域資源や伝統文化を活用した産業の振興のための施設の整備のための支援施策を展開しているところでございます。
 それから、先生からも御指摘がありました、農家民宿などを活用しました都市と農山漁村の交流の推進の観点からは、都市住民の多様なニーズに応じました農林漁業体験の受け入れ情報や地域特産物の情報など農山漁村に関します情報の提供につきまして、また、農家民宿の経営者に対する研修会の開催などの開業のための支援、さらには、美しい自然環境や農村景観などの地域資源を活用しました交流施設の整備などの施策の展開を図っているところでございます。
 今後とも、こうした各般の施策の推進によりまして農村における就業機会の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。
佐々木委員長 時間が来ていますから、簡単に。
岩田政府参考人 まず、幼稚園、保育所、特別養護老人ホームの経営主体のルールがどうなっているかということについて御説明させていただきます。
 幼稚園については、国、地方公共団体、学校法人、社会福祉法人がその経営主体になれるということでございますが、社会福祉法人については、保育所を経営している社会福祉法人に限定されております。保育所については、数年前規制緩和を行いまして、経営主体については何ら制限がございません。特別養護老人ホームについては、地方公共団体、社会福祉法人のいずれかということになっております。したがいまして、社会福祉法人でありますと、幼稚園と保育所と老人ホーム、三つを同一の経営主体が経営することが可能であるということでございます。
大畠委員 ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で大畠君の質疑は終了いたしました。
 次に、西村眞悟君。
西村委員 自由党の西村でございます。
 質問の順番をちょっと変えて、六番の方に申しておった質問から始めます。
 先ほどの大畠議員も冒頭に大臣の熱意を評価しておられまして、私も評価しております。しかしながら、方向がゾーンから外れておれば、熱意を持ってバットを振っても大いなるファウルになるわけであります。私ども、やはり大臣に熱意を持ってホームランゾーンに打ち込んでいただきたい、その立場から質問させていただきます。
 まず、我々が熱意を持って決断する以上、ホームランゾーンにボールをぶち込むべきだという思いで出した法案がございまして、第百五十三回国会に民間の事業活動の規制の廃止等に関する法律案というものを提出させていただいておりますが、これについて大臣の所感を概略いただきたいなと思うわけでございます。
 まず、この法律はこういう理念に立脚しております。民間の経済活動が自由に公正な競争のもとに行われ、かつ、何人にも開放されるべきである、この理念が我々の今申し上げた法案の前提にあるわけですが、この理念については大臣とも認識をともにすると思うのですが、いかがでございますか。
鴻池国務大臣 西村委員のただいまの構想と申しますか理念につきましては、今回の特区構想と全く同じものと考えておりますし、私、個人的にもそのように思っております。
西村委員 この理念は何のためにあるかと申しますと、民間の経済活動における自由な競争を促進し、もって経済の活性化を図り、もって我が国の経済の発展に寄与する、この目的のもとにこの理念が前提としてあるという認識ですが、今御賛同いただいた理念は、もって我が国経済の発展に寄与するものであるということについての大臣の御確認をお願いいたします。
鴻池国務大臣 理念を同じくするものと申し上げました。
 これは、経済のみならず、社会全般、あるいは文化、あるいは教育、あるいは医療、農業、こういった分野についても活性化を生んでいくものと信じながら、これを推進しているところでございます。
西村委員 しかれども、国家、社会には一定の規制が必要であります。国の規制については、国民の健康の保持、犯罪の防止、災害の防止、その他国民生活の安全の確保、環境の保全等の観点からの規制が必要である、これは大臣も共通だと思いますが、いかがでございましょうか。
鴻池国務大臣 共通であります。
西村委員 しからば、そこで、我々の決断はこういうことでございます。よって、今必要である規制を除き、現在、民間事業活動に係る規制は三年以内に廃止する。それは別表に掲げる法律に定める規制である。
 その別表には百七十の法律を列挙しておりますが、これらにはすべて、今必要な規制以外の民間の事業活動に関する規制がございます。これを廃止しようという法律でありますが、第一の法律は担保附社債信託法、これは明治三十八年の法律でございます。二番目は明治四十一年。三番目は運河法、大正二年。四番目は農業倉庫業法、大正六年。古い順番から始まって、最後の百七十番目は電気通信役務利用放送法、平成十三年の法律でございます。
 このやり方、熱意を持ってバットを振りかざして我が国経済の発展に寄与することを目的として打ち込む、この方向性は我が国に必要であるかどうかという点については大臣はいかがでございますか。
鴻池国務大臣 思いは同じと何度も申し上げておるとおりでございます。しかし、我が国にかぶさっておる規制、よりよき規制、あしき規制、古き規制、いろいろな歴史あるいはそれなりの理屈、理論というものもあることも事実でございます。そこで、改革なくして成長なしという小泉総理の発想のもとに今すべて規制を改革してしまう、規制を外してしまうということは無理であるならば、今回の特区という一つの構想をもって、できるものから、できるだけから、あるいはできないものはどうしたらできるか、こういう考え方を下敷きにいたしまして進んでおるところでございます。
 御党の提案をされておりますものについてはすべてを精査いたしておるわけではございませんが、百七十本すべて規制を外せということにつきましては、今いささか無理があるのではないかと思っておるところであります。
西村委員 それは、理想、理念はよく共通しておる、理念が目的とするところもわかる、しかし、百七十本すべてに規制を解除する、必要な規制を残してというものは無理である、しからば、無理であればいかにするか、政府が出している本法案にしかずということの御意見だと思います。
 さて、昨日の参考人質疑でもこの点が明らかになりました。何が無理であるのかということについて聞きますが、昨日の参考人の一人は、アメリカの事例と中国の事例、そしてまたイタリアの事例も少々出しまして、アメリカはシリコンバレー等々で明らかなように、非常に地方に活性化した拠点が生まれていき、もって国家経済全体の活性化を導いておる。そして他方、中国は社会主義パラダイムの行き詰まりから、特別区の構想を持ってその特別区で非常な繁栄を得ておる。アメリカは特別区の構想を実現したわけではない。
 大臣は、我が国のモデルには、アメリカまたは中世の都市を活性化していったイタリアのモデルがふさわしいのか、中国モデルがふさわしいのであろうか、都市の活性化はいずれのモデルが我が国にふさわしいのかと思われておりますか。
鴻池国務大臣 それぞれの国の成功例、失敗例というものも十分勉強をしなければならないと存じております。そういった中で、どの国のが我が国に適しておるかという御質問でございますけれども、我が国のいわゆる規制の歴史というものを十分考えながら、我が国独自の方法で進めていくことが正しかろうと思っております。
西村委員 特区の構想というものは大臣の先ほどの御答弁でも明らかであると私は思います。全面的、一律に必要なものを切って捨ててしまうというのは我が国の規制の実態から無理なんだ、しかしそれでは行き詰まりがあるから、一地域に特区をつくってそれがうまくいけば全国に展開すればいいんだ、そのやり方で政府は行くということでありましょうが、中国の社会主義パラダイムが行き詰まっているという意味とは別に、我が国も何かに行き詰まっているんだろう。
 しかしながら、行き詰まっているのは中国と共通でも、中国の特別区を全国展開すれば中国共産主義政権の正当性が終えんする。しかし、我が国の特別区構想を成功せしめて全国展開すれば、先ほど自由党の法律の目的を申し上げたように、経済全体が活性化して我が国政党制の正当性が高まる。この意味では、我々は、共産主義、社会主義パラダイムに生きてきた国家ではありませんから、自由なアメリカとかイタリアと共通なんだろう。
 しからば聞きますが、なぜ社会主義パラダイムのごとき強固な障害が、アメリカのように、またイタリアのように全国一律に規制を廃止する我が国にあるんだろうか。政治家の結論としては、それがあって、それが除去することができるならば除去する決断をすればいい、除去できなければ、どういう理由でそれが除去できなくて、お日さんが東から西に沈むように我が国には宿命的につきまとうものであるのかということを国民に説明することも必要だ、こういうふうに思うんです。
 端的にお聞きしますが、何かが行き詰まっておるというならば、我が国の何が行き詰まっておるんですか。抽象的な御質問で申しわけございませんが、何か中国のような特別区をつくらないかない、全体の何かのパラダイムが行き詰まっておるのかどうかでございます。
鴻池国務大臣 委員おっしゃるように、我が国は、幸いなことに自由主義経済機構というものを選択してここまで発展をいたしました。この発展の過程で、やはり官が主導をして規制をつくりながらこの日本の国を引っ張ってきた、そういう大変効果のある制度もございました。
 しかし、ここに参りまして、ここ十年来と申しますか、極めて厳しい経済状況、あるいは経済以外の分野におきましても極めて閉塞感というものがこの日本国内に漂っているということは国民多くの考えであろうかと思います。この閉塞感というものをどうすればよいか、よりよき形で自由主義経済、日本の敗戦以来、ここまで持ってきた規制というものをどこではがしていくか、どこで変えていくかという非常に大きな分岐点に到達していると思います。
 そこで、何度もお話を申し上げますように、御党の規制すべてを改革せよということはただいまのところ難しいのではないか、このように思うわけでありますので、そこで特区という構想が出ました。
 それでは具体的には何かという御質問でございますけれども、例えば、営々として農業に従事してこられた農民の皆さん方のいわゆる権利とか農業に対する思いとか、こういったものを一挙に切り崩していくということはこの日本の穏やかな発展の中でいかがなものか、こういう感覚の役所もこれあり、しかし、これは一挙にやるべきだという考え方もこれあり、そのはざまの中に特区構想というのがあるということを御理解をちょうだいしたいと思います。
西村委員 その点は私もよくわかります。
 それで、昨日の参考人質疑で、宮内参考人がまことに参考人にふさわしいことを陳述してくれましたが、それはこういうことでありました。
 この特区構想、例えば今例に挙げられた農業の問題、また医療の問題、教育の問題については、行政組織に問いかけて、行政組織から回答を得てこの構想をつくってきた、ゼロ回答のところもあった、つまり、医療とか教育はゼロ回答であったみたいな発言をされております。正確に申しますと、医療、教育はゼロ回答であった、福祉、農業は一歩動いた、こういうことでございます。
 もう一つ言われたのは、総理が規制改革解除を言っても事務が動かない状態が続いた、それで、この規制緩和は遅々として進まずではなくて、だけれども、遅々として進んでいるんだ、こういうことを言っておったんですな。
 これは、手法として、この法案は、行政組織に問いを出して、これは可能か可能でないか行政組織から回答を得て、ゼロ回答であったものは踏み込まない、福祉、農業は一歩動いた、医療、教育はゼロ回答。その行政組織からの回答があったのか、ゼロかというふうなことで、体系的ではなくてこの法案の特区のいろいろな内容が生まれてきたわけですか。これは法案作成に当たっての状況ですが、大臣でも担当の方でも、お願いしたいんですが。
鴻池国務大臣 きのうの宮内参考人の御意見を踏まえての御質問でございますけれども、私が就任をいたしまして、いよいよこの法案を作成するという状況の折に、総理から、できないということを理由にしないでいただきたい、実現するためにはどうすればいいかという方向で検討するようにという発言、指示がございました。そして、それぞれの大臣は最大限の指導力を発揮していただきたいんだという旨のお話もございました。
 こういう中にあって、このプランができ、そして法案の段階に入っておるわけでございますけれども、先ほど、私もいささか申し上げましたように、激変というものを避けたいという意向、これも一考すべきところではなかろうかと思います。激変をさせなければならないところもございますけれども。今回のこの提案募集というのは、第一次であります。七月にこの構想ができ、八月三十日をもって締め切りとさせていただいた四百二十六の提案。これを、第二次募集として、一月十五日を締め切りとして募集をさせていただいているところでございますので、今回はこの方向、そして次回は次なる方向、第三次はその次なる次なる次なる方向で進んでいくものと思っておりますし、私が在任している期間は何度でも、この難しい、先行実施すべき問題については進めていきたい、このように覚悟を新たにいたしておるところであります。
西村委員 激変というものがいろいろな方向があって、悪い方向へ激変するとか、不便な方向に激変するというのではなくて、例えば、前も例に挙げましたように、人民服が解除になって、あしたから、特に女性が、色とりどりの服を着てもいいんだと。これは激変ですが、明るくなる。冬のどんよりした空から一挙に春が来れば、木々が潤い、新緑が芽を吹き、ぱっと明るくなる。これは激変ですけれども、明るくなる。
 今私が質問させていただいたのは、行政組織との連携のもとで徐々に徐々に特区をつくっていくということでありますが、このやり口、手法はよくわかりますが、私は、総理が言っても事務が動かない状態だったんだという宮内さんの、十年にわたって規制緩和のことを手がけておられるらしいですが、その言に深くうなずいたわけであります。民主主義の民意の付与という正当性を持っている最高者が申しても動かない組織とは何であろうか。この組織こそ、社会主義パラダイムズの行き詰まりと同じような行き詰まりを来しているんではないか。そうでなければ特区構想が出てくる前提がないわけであります。それは、我が国政治、国民から信託を受けて政治的決断をすべきものが、手法が、従来型の手法というか、間違っているんじゃないかな。
 ここで申し上げますと、前、山田方谷という方が、「それ、よく天下のことを制する者は、事の外に立って、事の内に屈せず」と。したがって、官僚組織のいろいろな長年の業務の慣例、思惑、それに一々配慮しておる、つまり、事の内に立てばそのことに屈してしまう。神経ずたずたになって十年議論しても結論が出ない。すべからく、事の外に立つべきではないか、事の外に立って、自分はそのしがらみから離れて決断をすべきことではないかな、こういうふうに思うわけでありますが、まあこれは私の意見として、つい最近めぐり会った方谷の「理財論」を読んでおると、ああそうか、今の日本と同じだなと思うんですね。事の内に立って、事の内に屈してしまう。例えば、不良債権ばかりを追いかけて不良債権処理だ処理だといっていたら、内に屈してしまって、ついに不良債権を、キツネが自分のしっぽを追いかけるようになってしまうんじゃないか、こういうことであります。これを本法案審議の最中に読んで思い当たったから、大臣にこの言葉をお伝えしておきます。
 次に、質問の第一項目に戻りますが、昨日の参考人の意見でもありました。それで、本法案審議の過程でも、なぜ株式会社が医療に携わってはならぬのかという意見もありました。根本は、法人というものに関する我が国の規制が少々おかしくなっているんだ、時代の進展に合わないんだというふうに思います。
 これはどういうことかといいますと、百年以上にわたって、民法三十四条が、自然人以外に権利の主体がある、これは法人だ、その法人のうち、教育や慈善等々、今で言う社会福祉等々に携わるものは公益法人として役所の許可を受ける、これが公益法人だ、公のために有益なことをする公益法人だ。そのほかは営利法人だ。これは商法でやるという建前であります。最近、これだけでは処理し切れませんので、先ほども話題になっておりました非営利法人法、そして、まだそれでも処理でき切れませんので、中間法人法というものができて、公益法人、営利法人では法人化できないものに法人格を与えるという道をつくっていっているわけです。そのうちに、その他の法人法ということができて、今申し上げた法人成りを可能にする法律では法人になれない人間の財産や人間の集団も法人になるかもしれません。
 ここらで、この百年続いた公益法人という制度、営利法人という制度を一度見直すべきではないのかな、こう思うわけです。なぜなら、出発点でお上が公益だと決めれば一貫して終生公益で、例えば、ブリキの仏像を一千万で売っても、そしてめちゃくちゃなぜいたくな生活をしてもこれは公益法人だ、これはおかしいだろう。片や、営利法人と言われる株式会社は、金をもうける、みずからもうけるわけですね。みずから得た金銭を例えば養老院経営のために投入する、これは株式会社でも可能であって、そして、現実にそれをしている株式会社もおる。これは、営利法人ではなくて、やっていることは公益ではないのか。
 こういうことを見ますれば、出発点においては公益も営利もないんだ。それが、現実に法人格を取得して活動しているこの活動の内容が公益であるか営利であるかはある。したがって、活動の実質に即して公益法人に付与されていた特権等々を与えてしかるべきではないのか。このように考えますと、出発点で公益法人とされた法人で、公益の特典を与えるべきではない法人が日本ではわんさといる。
 こういうふうな前提を抜きにして、医療には営利法人はタッチさせないんだという議論をやっていること自体が笑止である、前提が狂っておるという感じがいたしますが、ぼちぼち本法案の審議をきっかけとして、大臣におかれましても、法人制度の見直し、幾らでも言いますが、出発点でお上が公益と決めて公益の特典を与えれば、いかなる営利を営もうとも、いかなるぜいたくをしようとも、それは公益法人としての特典を享受し続けるという現在の法人制度は不合理だということを思いますが、大臣の御所感をお願いいたします。
鴻池国務大臣 西村委員の御発言、それぞれごもっともと言えば、それじゃ自由党に入ってこいよと言われるかもしれませんけれども、ごもっともなことばかりだと思っております。
 不条理な法人というものも確かに、私は町で、民間としておりましたときにもそのような思いでございました。そういう中で、医療だけの問題ではなく、いろいろなところで反対意見は、おっしゃるように、株式会社悪者論というものが随分横行をいたしております。しかし、これは、税金を使う法人から見れば、この特区の構想でもって株式会社がよりよき税金を払う法人になるということは国益にかなう、このように存じております。
西村委員 今大臣、非常にいい発想のもとの言葉を使われたと思いますね。
 我々はよき納税者を育てねばならない。地方自治でもそうでありまして、地方自治の目的、教育の目的は何だ、よき納税者を我が国に育てる。この特区の構想もそうなんですね。先日来、よき納税者を育てると。その観点から、教育、そして国家に必要な治安の維持等々に力を注ぐことが、ひいては、長期的に見れば国家の財政を均衡さす方向に行くんだというのが、外に立ちて内に屈することなかれ、この考え方なのであります。
 大臣も御指摘されたように、我々は、よき納税者を育てることが、結局、国家の財政においても、長期的に財政の窮乏を救うことになるという前提で、長期的な視点に立ってやらねばならないと思うわけでございます。
 法人についての抜本的改革の時期が来ているということも御認識をいただいた上で、我々自由党は、残念ながらこの法案には賛同しかねる。つまり、先ほど申し上げたような法案を出しておりますから。そういう立場でございますが、多数でこの法案は通っていくということで、一つだけ最後に、今申し上げた教育の問題、よき納税者をつくる、よき愛国者をつくる、このよき愛国者にしてよき納税者が結局おるかおらないかが、今小泉さんが盛んに構造改革だ、不良債権処理だとやっているこの問題を雲散霧消するように解消していくわけですな。
 この特区法案が通れば、教育に関してどうなるんだろうか。今の教育は、大臣、極めていびつな地域があってだれも手がつけられない。教育委員会がその都道府県、市町村の教育を握っておるわけですね。
 しかもまた、教員の人事については、ある一定の組織、私から見れば偏向した組織が教員の人事を握っておる。そこでどういう教育が行われておるのかといえば、大阪近辺では、小学校四年生の歴史の時間に、あなたたちのおじいさん、おばあさんは中国に悪いことをしたので、これから中国の方に起立して向き直ってごめんなさいと申しましょうということで、生徒全体を立たせて、中国の方を向いてごめんなさいとやっておる。
 それから、日本の国旗を掲揚することがだめであるという活動を教師があおって、事もあろうに小学生にやらせておる。
 また、知人が遭遇した事例ですが、中学生ですが、一カ月だけ担任が出てきたけれども、あと十一カ月は登校拒否になって担任が出てこない。しかれども、十一カ月の間、その担任を交代せしめて新しい担任が来たかといったら、全く来ない、これが現状であります。
 そこで、この特区ができれば、この都道府県の、先ほどの「理財論」の中にもあった、文教廃れという状態、文教が廃れた状態は、いかにその特区ほどに改善される可能性があるのかということについて御答弁をいただきたいと思います。
矢野政府参考人 お答えします。
 今回の特区構想におきましては、文部科学省といたしましては、地方公共団体からの提案をもとにいたしまして、教育分野における構造改革の推進等に資するものといたしまして、例えば、幼稚園の入園年齢制限の緩和でございますとか、不登校児童生徒を対象とした新しいタイプの学校づくり、あるいは学習指導要領の弾力化など、十五項目の特例措置を講ずることといたしたところでございます。
 ただ、このような特区構想によって、あるいは特区におけるこのような措置によって、今日教育現場や教育行政が抱えておりますもろもろの課題や問題にすべてこたえられるというものではもちろんないわけでございます。そうではありますけれども、個々の特区がねらいとしております趣旨、目的、このことにつきましては、例えば、不登校対策のための新しいタイプの学校づくりのための特区一つを取り上げてみましても、少なくとも不登校対策というその点に限ってみれば、これは大きな効果が期待できるものでございまして、私どもといたしましては、今回の特区制度等を活用しながら、各地域において創意工夫を凝らした取り組みが行われることによりまして、地域の実情に応じた教育改革の推進が図られるものというふうに考えているところでございます。
 また、委員、そのこととあわせまして、現在、学校におきます管理運営上の不適正なケース、例えば人事管理の問題でございますとか、あるいは教育指導面のいろいろな問題、そうした学校の管理運営上不適正な事例があるといったことについての御指摘があるわけでございますが、御指摘のようなケースに見られます不適正な学校運営、私どももこれまでもそうした事例については必要な指導をしてまいってきているところでございますが、これは、特区であると否とにかかわらず、全国どの地域においても許されることではないわけでございます。
 そういう意味で、私どもといたしましては、法令にのっとりまして是正、改善がなされなきゃならない、そういう問題、課題であるというふうに認識をいたしているところでございまして、そういう意味で、私どもとしては、今御指摘のようなケースにつきましては、今申し上げたようなものとして今後とも対処していかなければならない、かように考えているところでございます。
西村委員 局長の御答弁のとおり、特区であると否とを問わず許すべからざることでありますが、まさにそれが我々の身近で起こっているということでございます。
 さて、大臣におかれては、今経済活性化のための特区の議論をしております。しかし、そのすべては、結局、この国を愛するよき納税者を育てるシステムがなければ、すべてが絵にかいたもちに帰するということでございますので、今局長の御答弁にありました教育の問題に関しても、重大な関心を持っていただいて、本法案がよりよき実施に向けられるように御努力を、これから大臣の御努力が始まると思いますが、よろしくお願いいたします。
 時間を余しましたが、これで質問を終わります。ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で西村眞悟君の質疑は終了いたしました。
 午後一時から委員会を再開することとして、この際、休憩いたします。
    午前十一時四十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。横路孝弘君。
横路委員 私は、最初に、具体論について、今回の特区において実施できる特例措置の別表一の番号の一二〇六、「NPOによるボランティア輸送において、有償運送を可能化」というこのテーマについてお尋ねをしていきたいというように思います。
 この問題は、随分長い間いろいろと我が国の中でも議論しているわけでございますが、背景にあるのは、やはり移動困難者が非常にふえているということであります。前の運輸省時代、平成十一年ですが、スペシャル・トランスポート・サービス、STSの報告書というのが出ていまして、その中にも、身体障害者二百九十三万のうち六十万人が歩行が困難である、介護を要する寝たきりの高齢者が二百五十四万人いる、その他、単独で移動困難な人がこれからどんどんふえていくだろうというように、ふえていっています。と同時に、そういう障害を持った人たちが外に出る機会も非常にふえてきています。積極的に活動の範囲も広がっていっています。
 しかしながら、残念ながら、やはり車いすなど障害者の人への乗車拒否といったことなど、ドア・ツー・ドアのサービスということになりますと、供給力が非常に不十分あるいは不適切というような状況にございまして、NPOによる移動サービスというのは、そういうことを背景にしてだんだん全国に広がってきているわけですね。こういう現状というものをどのように認識されておられるのか、吉村副大臣から。
吉村副大臣 委員がおっしゃいましたように、現在は、高齢者また身障者の輸送は、民間業者による福祉タクシー、また、地方公共団体が福祉行政の一環として公的な輸送サービスを行っておりますが、それに加えて、今おっしゃいましたようなNPOがその役割を担っているのも事実でございます。
 住みよい地域づくりということでNPOの方々が、そういう高齢者それから身障者の移動、輸送について協力をされるというこのボランティア精神というのは、これは住みよい地域づくり、ほのぼのとした心が通い合う地域づくりという面では大変有意義だ、このように私も認識をしておるところでございます。
 ただ、車を使った移動また介助等につきましては、どうしても事故ともまた背中合わせであるという点も否定できないものがございまして、一定の要件を満たし、いわゆる運行の安全性、また利用者の利便、利益等々を相検討して、これからは前向きで検討も進めていきたい、このように思っております。
横路委員 スペシャル・トランスポート・サービスというのは、福祉型の交通サービスでございまして、公共交通機関があっても利用できない、困難を伴う人々の交通手段としての、ある意味では特別な交通という意味で言われているわけでございますが、ドア・ツー・ドアというのをベースにして、最近はリフトつきの巡回バスとか、いろいろな手段、方法があるわけでございます。
 今もお話がありましたように、現状は、例えば介護タクシーとか福祉タクシーとかあるわけでございますが、これも最近はふえてきていますものの、介護タクシーでいうと車両数が大体最近の数字で全国で千百九両、福祉タクシーが二千三百三十九、地方自治体の福祉輸送、八十条許可のものが二百二十三。この移送サービスをNPOとして実施している市民団体や社会福祉法人がございますけれども、その車両数が三千五百台ということで、ここのウエートが非常に高いわけでございます。やはりこれがなければ、ほとんどこういう人々の要望にこたえることができない。なおかつ、今でも需要の方があって供給が不十分という状況にあるわけでございます。
 しかし、だんだん、世界的には一九六〇年代ぐらいから、自治体やボランティア団体などが中心になってアメリカとか北欧などを中心にずっと広がってきまして、七〇年代にはもうかなり一般化してきているんですね。法律なども制定されてきています。日本も随分長い歴史は持っていますけれども、最近になって非常に広がりを持ってきているわけでございまして、先日も、これは国土交通省からもいろいろとバックアップいただいたんですが、身障者の世界大会、DPIの世界大会というのが札幌で開催されまして、そのときも、全国から移送サービスを行っているNPOの人たちが大変協力をしてくれまして、非常にスムーズに運営ができた、移送も十分にできたというように評価をいただいております。
 こうした市民団体における移送サービスというもの、これから福祉も、特に施設福祉から地域福祉へということで、地域の中でできるだけ人々が一緒に生活していこう、そうしますと、やはり地域の中における交通手段をどうするかとか、いろいろな問題が問題になってくるわけですね。
 そうすると、これからの方向性というのは、介護保険などもそれをベースにしていますが、公的なセクター、自治体が中心、それから、もちろん民間の供給、民間セクター、それから市民、NPOのような市民セクター、こういう市民セクターや民間セクターや公的セクターがいわばネットワークを組んで役割分担をしていくという仕組みがなければいけない。つまり、地域福祉といった場合には、やはりそのシステムがどうしても必要になってくるわけですね。
 そうすると、この移送の面でいいますと、これからも、ただ単に今事業者の方が不十分だから、それを補うものとして存在しているということ以上に、これからの地域におけるあり方として、NPOの果たす役割というのは非常に大きいと思うんですね。
 これは副大臣、どのようにお考えでしょうか。
吉村副大臣 おっしゃいましたように、また現実の問題として、NPOが果たしておる役割というのは、もう既に現在でもかなり大きなものがある、このように思っております。
 ただ、これが、民間業者はいわゆる利益団体でございまして、NPOというのは非営利団体、当然でございまして、その立脚する立場が違っております。一方では、営利団体についてはかなりの要件をつけております。車台数の確保とか、運行管理とか、また、事故が起きたときの損害賠償とか、そういう要件をつけております。
 ただ、そのとおりにNPOにもそういう一定の要件を課するというのがいかがなものかと、いろいろと検討もしておりますが、御存じのように、札幌において実証実験をこの九月と十一月にやりまして、その実証実験の結果といいますのが、もう間もなく出てこようかと思っております。
 そういう実験その他もろもろの意見を勘案しながら、この問題については、やはりNPO団体がこういう福祉に貢献するという形と同時に、その気持ち、先ほどから申しましたように、住みよい、ほのぼのとした地域という面からも非常に有意義だ、このように思っておりますので、今後さらに、実験結果などを踏まえながら検討していきたい、このように思っております。
横路委員 鴻池大臣にちょっとお尋ねしたいんですけれども、今回の場合、主に民間セクターをいかに活性化するかということも非常に大きな一つの目的になっていますが、同時に、NPO、市民セクターをどうやって活性化するかということで、NPOに関する特区も随分いろいろ出てきているんですけれども、これからの日本社会の中で、やはりNPO、市民団体による非営利団体のさまざまな活動というのが、多分、経済の面でも雇用の面でも、もうアメリカあたりですと相当大きなウエートを持ってきています。これからはそれをどうやって育てていくのかということで、午前中も税制面の議論がございましたけれども、大変大事なことだというように思いますが、大臣、いかがですか。
鴻池国務大臣 委員の御主張のとおりだと思っております。官から民へ、そして民からNGOを初めそれぞれの自由濶達な諸団体にその力が移行していくことが、活力の一つの大きなもとになると思っております。
横路委員 この問題は、法律的に言いますと、NPOの移送サービスというのは、利用者からの料金を取るとすれば、ガソリン代もやはり料金のうちに入るという解釈があるようでございますが、やはり本来は免許を受けなければいけないわけですね。
 しかし、そうはいっても、やはり現状は現状で、希望者はたくさんいるけれども供給力がないということの中で、役所の方も何とかその状況を認めていこうということで、障害者のグループの人などから金沢方式と言われていますけれども、金沢において、これは道路運送法八十条一項の解釈としてですか、社会福祉協議会に委託をして行うということを認められましたね。これは道路運送法八十条の解釈で認めたんですね、この金沢のやり方は。
丸山政府参考人 法律の解釈の細かい話でございますので、私の方からお答えをさせていただきます。
 ただいま先生から御指摘ございましたように、道路運送法の八十条によりまして、自家用自動車を有償で使用することが例外的に認められておりまして、今先生から御指摘があった話は、例えば自治体などが社会福祉協議会等に行わせる福祉輸送について例外的に認めておるものがございます。そのほか、例えば、バスがなくなったところの代替バスを地方公共団体が行う場合でありますとか、あるいは学校の生徒を運ぶ場合などにつきまして、公共の福祉を確保するとか、やむを得ない場合に限りまして認めることとしております。
 御指摘ございましたように、NPOなどによりますボランティア輸送につきましても八十条の許可を与えるべきではないかという議論があることは私どもも承知しておりまして、先ほど来申し上げておりますが、札幌におきます実証実験の結果を踏まえまして、一般の利用者が安心して利用できるということと安全をどう調和させるかということを勘案しながら、今後、NPOのボランティア輸送につきましては、その法的な扱いを検討してまいりたいというふうに思っております。
横路委員 これは自治体の方でやっている福祉輸送、八十条許可というのは結構ありまして、私の調べでは百二十五の自治体が既に行っているということなんですが、この委託先は、初めは社会福祉協議会が多かったんですが、最近はNPO法人も委託先になっていますね。
丸山政府参考人 御指摘のとおり、NPO法人がなっておるものもございますが、その裏打ちとしまして、地方自治体が、例えば事故があったときとか、そういうときに十分な賠償能力を持つとか、そういうものがあるということを条件に私どもは認めておるものでございます。
横路委員 この金沢などの内容を見ますと、委託する内容としては、例えば金沢市が金沢市の社会福祉協議会に委託した場合ですが、車両の管理とか、利用者や運転協力者の募集管理とか、運行管理、事業実施にかかわる事務といった点を市の方が委託したことになっています。その結果、運行車両台数を三台持って、利用の対象は会員制になります。それはもちろん限定するわけですね。そして、運転するボランティアの資格は、普通免許三年以上で安全な運転ができる人ということで認めているわけでございます。
 こういう形で今まで各自治体の方でやっている事業に対しては認めてきているんだと思うんですが、それでよろしゅうございますね。
丸山政府参考人 先生御指摘のとおりでございまして、自治体が直接やらなくても、福祉協議会などが自治体と一体となって一定の要件を設けまして、万が一の事故の場合の対応でございますとか、そういうものがしっかりしているものにつきましては認めておるということでございます。
横路委員 事故のことを心配されたと思うんですが、初めのうちといいますか、ほとんどは、車は市のものだ、名義が市の所有ということだったわけですが、しかし、なかなか市の方も、車を取得するというのも大変ですから、では民間団体が持っている車両も使っていいじゃないかということになって、最近、島根県の三隅町の方で、NPO法人に町が委託して始める移送サービスについて、そのNPOの所有している車両について認めたというケースがあるというように新聞で報道されていますが、これも間違いございませんね。
丸山政府参考人 ただいま御指摘になったことにつきましては、事実でございます。
横路委員 事故のことはみんなやはりそれぞれ非常に気を使っておりまして、例えばDPIに参加した全国からの各ボランティアの車両も、車両はすべて対人の無制限、対物も一千万、搭乗も一千万以上の任意保険にみんな入っている。それから、もちろん運転する人もいろいろなトレーニングを受けているわけでございますが、そこで、具体的には、タクシー業界だけじゃ全然サービス提供できませんから、こうやってどんどん広がっていって、それを国土交通省の方も認めてきている、こういう経過がございます。これは、それぞれいろいろな努力を現場でしながら、しかし積み重ねられてきているわけですね。
 そこで一つ。今、民間の障害者グループの人たちを含めまして、例えば、東京ハンディキャブ連絡会中心に、移送サービス協議会というのが熱心にいろいろとこの福祉の移送サービスについて議論してきておりまして、国土交通省や厚生労働省とも話し合いが行われてきたわけですが、民間のこのグループは法制化への検討をして、法制化の草案などもできているわけでございます。今、道路運送法という営利事業法で市民活動を縛るのがいいのかどうか、あるいは、やはり新しい法体系をつくったらいいんじゃないかということで、皆さんの方のスペシャル・トランスポート・サービスに関する調査研究というのが平成十一年、もう既に三年前にやっておられて、世界がどうなっているのか、国内における実証実験もやりました。
 ここで一つ、これは指摘だけですけれども、結構先進国は、障害者の人の基本的人権を守るという立場から、法律でちゃんと推進体制について位置づけている。つまり、福祉交通サービスとしてのドア・ツー・ドア、STSの運営について、具体的な主体と水準を明確に法律で義務づけているよ、ところが日本にはそれがありませんねということで、これは、そこまで検討するとまでは書いてありませんが、しかし、そういう実態があるわけですから、これはやはり法制化する、そしてしっかり位置づけるということが大事じゃないかと思いますが、これはいかがお考えですか。
吉村副大臣 先ほど申しましたように、札幌における実証実験その他、今委員おっしゃった外国の事例等々を踏まえて、これから大いに検討していきたい、このように思っております。
横路委員 その法律化の前に、ではガイドラインをつくろうかということで、そのガイドラインについては検討してきていると思うんですけれども、これはいつめどなんですか、もう大分作業は詰まっているというふうに聞いていますけれども。
丸山政府参考人 札幌の実証実験の検討を踏まえまして、その検討を今年度中にやりたいと私どもは考えております。それを受けまして、それから外国の事例でございますとか、十一年に行いました、今先生御指摘になりました調査研究なども踏まえまして、それから、民間の非営利団体のガイドラインも提案されておりますので、それを踏まえまして、道路運送法の中でどういうふうに位置づけるのかということを検討してまいりたいと思っております。
横路委員 そうすると、新しい法律をつくるんじゃなくて道路運送法の中で検討するということなんですが、そこで、ちょっと特区についてお伺いしますが、今回のこのNPOによるボランティア輸送において有償運送可能かということでやられようとしているこの特区は、何を目的とされているものですか。
丸山政府参考人 基本的には、札幌で実証実験を行っておりますことに対しまして、前倒しで特区で実施できないかという問題意識で実施したいというふうに思っております。したがいまして、全国で本格実施をする前に、三カ月程度の先行実施ということで考えております。
 ただ、その条件といたしまして、安全の問題でございますとか、それから地方公共団体が一定以上の責任を持つとか、そういう一定の条件でしっかりした管理を行う、それから、問題点が出てきたら直ちに関係者などに報告をさせるというような体制をつくった上で、先行的に特区で、NPOによりますボランティア輸送で有償運送を可能化するようなことをやっていきたいというふうに思っています。
横路委員 この特区構想について、業界団体の方から国土交通省に何か申し入れがあるようですが、どんな意見が来ているんですか。
丸山政府参考人 これはいろいろな意見がございまして、道路運送法の八十条の自家用自動車の有償の許可でやるべきだという議論と、それから有償で人を運ぶ以上は四条の許可をとってやるべきだというような意見と、両方ございます。
横路委員 大臣、副大臣、この特区構想についてタクシーの業界から反対の意見が出ているんです。一つは、四条でちゃんと運送事業としてやれと。そうすると、要件が厳しくなりますよね。それからもう一つは、八十条で、これは従来、地方自治体に認めて、地方自治体は社協やあるいはNPO法人にも委託している。この委託しているケースは、今までは運転手は一種でいいよという形でやっているんです。ただ、その申し入れは二種免許でやりなさいというような話が中心になっているんですね。
 私は、特区のここを見て不思議に思うのは、道路運送法四条と八十条第一項というのが、講じられる特例措置にかかわる根拠条項ということになっていますが、ある意味でいうと、もう既に国土交通省の方は八十条第一項の解釈としてやってきているわけですよ。最近業界団体が第四条ということを持ち出していて、何かそれをまたもう一度特別に中心にして考えようというんじゃ、今までやってきたことからさらに新しいことをやるというのではなくて、むしろ何か戻ってしまうお話じゃないですか、これは。
 私はこれを見てびっくりしたんですけれども、特に、一体これは何が目的なのか。今までやってきたことよりもむしろ後退している話がこの特区構想になっているわけでして、大臣、特区というのは、ともかく規制改革を行って、少し全国でやるにはいろいろと議論もあるから、この地域で社会的に、一つの実験というか、やってみましょうという話なんでしょう。
 ところが、今までやってきた実績よりも後退する話が特区構想に出てきているんですね、この問題でいいますと。これだったら、今まで各自治体でやってきて、何が問題かというのははっきりしていますよ。何も改めてやる必要は全くないんで、わざわざ道路運送法の四条まで持ち出してやるというのはどういうことなんですか。この中身がちょっとよくわからないんです。何か新しいことをやるといって、新しい要素が何もないんです。現実に今までやってきているんですから。そうじゃないですか。これはどこか新しいところはありますか。
丸山政府参考人 別表の中にございます千二百六番のNPOのボランティア輸送において有償運送を可能化するというところで、法令が二つ、道路運送法四条と八十条と書いてございますが、これはあくまでも有償運送を行う場合に関係する法律の条文が四条と八十条と二つあるということで、四条を使うとか八十条を使うとかいうことを申し上げているつもりではないというふうに思っております。
横路委員 いや、それにしても、今までやっている実績と比べてどこが新しいんですか。どこが前に進むんですか。
丸山政府参考人 今まで、NPOがボランティア輸送をやる場合につきましては、自治体がその後ろ盾となって、ある意味で安全ですとか運行を担保するということを条件にしております。
 今度の特区におきましては、NPOがボランティアを行うということに着目いたしまして、そのための条件はどういうことをしたらいいかというところで、後退をしているわけではなくて、NPOを正面に出しているというふうに私どもは考えております。
横路委員 ただしかし、これをやる事業の要件としては、地方公共団体が一定以上責任を有する体制になっていることなどの条件を満たすことと書いていて、これは従来と何も変わりないんじゃないですか。
丸山政府参考人 従来は、地方公共団体が必ずその後ろ盾となって、安全ですとか運行管理を担保するということでやったわけでございますけれども、今般の特区の中におきまして、その地方公共団体の役割を、後退させると言っては非常に語弊がございますけれども、NPOとどういう関係をつくっていって、NPOが一番前に出てやっていくためにはどういう体制にすればいいかということで、従来よりは前に出ているというふうに私ども思っております。
横路委員 ガイドラインをつくるということで検討されているということですが、これはいつ、来年度ぐらいを目標に、めどにしてやっておられるんですか。
丸山政府参考人 特区の中で先行的にやるというふうに言っておりますけれども、そのための法律的な検討を、先ほど申し上げましたように、札幌の実証実験の結果が今年度中に取りまとまりますので、その後、来年度中に法的な枠組みにつきましてまとめていきたいというふうに思っております。
横路委員 これは法的な枠組みになるんですか。さっきのお話だと、八十条の解釈、公共の福祉云々というところで今までやってきたわけでしょう。何かさらにそれを、どういう枠組みをつくろうとするんですか。それは法律じゃなくてつくるんですか、法律でつくるんですか。
丸山政府参考人 現在、道路運送法の八十条によって行われておりますので、それを中心にしまして、どういう形でボランティア輸送に法的な取り扱いをすべきかを検討していきたいというふうに思っております。その場合の根拠条文としましては、道路運送法の八十条と四条、この二つということでございまして、現在行われておりますNPOの活動の結果を踏まえて、なおかつ、一般の利用者が安心して御利用できるようにするためにはどうしたらいいかという法的な取り扱いを考えていきたいというふうに思っております。
横路委員 そうすると、四条を適用するおつもりなんですか。四条を適用されたら、もう全然、物すごい後退ですよ。
丸山政府参考人 実際、八十条によって今行われているということと、それから実証実験の結果を踏まえて、法的な取り扱いを検討していきたいというふうに思っております。四条を適用するとかということで、あらかじめ決めた上で検討を進めているわけではございません。
横路委員 いや、つまり、業界団体から四条を適用しろと言われているわけでしょう。新しい枠組みをつくるといって、先ほどは何か道路運送法の八十条の解釈のところでやるというようなお話のようにちょっと承っていましたが、また今道路運送法四条の話が出てきますから、四条が出てきたら、これはもう全然、物すごい、今まで積み重ねてきた、それは現場で、障害を持っている人も、それから皆さん方の役所の一線の人々も苦労しながら、何とかいろいろと認めてきたわけですよ。
 これは長い歴史があって、実績もあるわけでしょう。それを後退させて、何か、交通関係の新聞を見ていると、随分業界団体からいろいろと要請、陳情が行っているようです。しかし、この特区の趣旨からいったら、そんなことは許される話じゃないんですよ。むしろ積極的に、先ほども言ったように、これから地域福祉の中で、NPOをどうやってより育てていって、どうやってその役割、ウエートを高めていくのかということが経済的にも雇用的にも社会的にも非常に大きな問題になっているときに、そんな発言じゃちょっと困りますね、これは。もう一度、ちょっとしっかり答弁していただきたい。
丸山政府参考人 先ほど来副大臣の方からもるる申し上げておりますけれども、私どもは、これからの高齢化社会に備えて、NPOなりが福祉輸送の部分について活躍をしていただくということを前向きにとらえた上で申し上げているつもりでございます。決して後退させるとか、そういう方向で物を申し上げているつもりではございません。
 ただ、来年度中に結論を出しますが、その結論を出すに当たりまして、札幌において行っております実証実験の結果でございますとか、これまで行われてきた実績を踏まえて検討していきたいということを申し上げておるわけでございます。
 繰り返しになって恐縮でございますが、後退させるつもりで検討するというつもりは毛頭ございませんので。
横路委員 東京ハンディキャブ連絡会というところでガイドラインについての提案をしているんです。また、この提案をベースにして彼らの中でも議論しているところです。
 例えば、非営利団体であるということですね。それから、対象、利用者というのはやはり限定されなきゃいけませんから、障害者や高齢者などの移動困難者であるということ。それから、やはり会員制か登録制をとるべきであるということですね。それから、福祉車両を使用していること、ここは中では議論があるようですが。それからあと、必要な訓練を受けたコーディネーターをちゃんと置くということ。それから、運転者はもちろん必要な講習を受けているということですね。しかし、二種ということになると、ほとんどのボランティアの活動というのはできなくなりますから、今既に一種で認めておられるわけですから、一種でと。あと、必要な保険にちゃんと入っているということなどが必要だと思うんですね。ですから、みんなそれぞれ非常に気を使ってやっていますから、そういう点では、どうも一種、二種というところが業界との関連では問題になっているようですが、二種だといっても、最近、むしろタクシーの事故なんというのはふえていますからね。
 そういうようなこともございますので、今、例えばこの東京ハンディキャブ連絡会が提起したようなガイドラインなどについても、今までやってきたNPO、それから参加してきた障害の人々、こういう人々の意見を十分しっかり聞かれてガイドラインをつくっていただきたい。今まで実績を積み重ねたより先に進まなかったら、特区でやって現状よりも後退したなんという話になったら、これはもう物笑いの種ですよ。ですから、ここはひとつ、ガイドラインについて今私が申し上げたようなことをしっかり聞いてもらいたいということ。
 それから、大臣も、この特区について、どうもいろいろとやはりあちこちからの圧力などあってうまく進むかどうか心配な点もありますから、しっかり見ていっていただきたいということでお答えをいただければと思います。
 最初、副大臣から。
吉村副大臣 局長の方からもるる御説明しましたように、この問題については、ボランティア、NPOの方々の参加といいますか協力といいますものについては、前向きのスタンスで検討していきたい、このように思っております。ただ、先ほど申しましたように、検討する土台として、札幌におきます実証実験、また、外国の事例等々を参考にしながら検討していきたい、このように思っております。
 要は、一番大切なのは、いいことですが、事故がまず起こらないということはやはり一方では念頭に置くべきではないかな、このようにも思っております。
鴻池国務大臣 本件につきましても、国土交通省にとりましては、随分お骨折りをいただきながら前に向いて進んでおると解釈をいたしておりますが、委員御指摘のごときところもあるということもあぶり出てきている部分がございます。これは、この件だけではなく、いろいろなところから出てきております。
 それは、御指摘のとおり、業界団体の強い主張等もこれありと私も理解もいたしておりますけれども、この特区の構想というものは、何度も申し上げておりますように、今までどうにもならなかったような分野においてぜひとも先行させて特区を推進させていくというところに、この法案の、あるいはこの構想の値打ちがあるということを決して私どもは忘れないようにしていかなければならないと思いをいたしておるところであります。
横路委員 もちろん、事業者の方のサービス提供、その供給力が高まるということは、これは大変大事なことなんですね。最近少しずつ介護タクシーなどを資格を持ってやるところが出てきて、そんな意味では、それぐらい需要はこれからむしろどんどん拡大していく分野でございまして、これはすみ分けはできるというように考えていますので、NPOだめよということじゃなくて、一緒に、いかにいい移動サービスを提供できるかという考え方に立って進めていただきたいと思うんです。
 それで、札幌における実証実験ですが、これをやられて、従来も、スペシャル・トランスポート・サービスの調査研究を見ますと、何カ所か地域でやはりいろいろな事業を行っているわけですね。その結果も資料として出ていますが、今度の場合の目的というのは特にどういう点にあるのか、それから、そこからどういうことが得られるのか。これは、一般のタクシー事業者とボランティア団体とある意味では協力をして行ったというケースでございまして、私も、これは地元でございますので、参加している人をそれぞれよく存じ上げていますので、いろいろなお話を聞いていますけれども、皆さんとしてはどんなぐあいに今のところお考えになっているのか。
丸山政府参考人 実は、私も先般札幌に伺わせていただきまして、STSサービスのボランティアの実証実験がどういうふうに行われているか、見てまいりました。
 先生御指摘のとおり、私どもは、事業者とボランティア団体を敵対的なものであるというふうには全然とらえておりません。今回の実験におきましても、ボランティアがどういうふうに、福祉輸送といいますか、そういうものの中に入ってこれるか、すみ分けと先ほど先生おっしゃいましたけれども、おのおの得意分野を生かしてどういうふうな形でやっていけるだろうか。今回の実証実験の一番大きな目的といいますのは、ボランティア等を活用することはどういうふうにしてやっていけばいいかということに主眼を置いて私どもは実証実験をやっておる、そこが大きな眼目でございます。
横路委員 STSの方とタクシー事業者との連携、選択肢が広がるという点が、一つ利用者サイドからいうと、時間と、あるいはなかなか車が見つからない、しかしこういう仕事があるといっていらいらするようなことがやはり軽減されたということ。それから、利用者というのは、ドライバーを固定する、つまり決まった人にやってもらうということで、障害に合った介助を望んでいるんですね。そんな意味では、STSのサイドもケア講習をやはり定期的に行う必要があるなということを参加者は言っております。
 それから、障害の内容とか家屋だとか、利用者の個人的な情報の把握ということがやはり大切だなということでは、そういうコーディネーターの育成ということも必要になってくる。ここでは、配車の予約センターはタクシー会社の方で受け取ってやったんですね。そんな意味で、一緒に協力してやってみて、まだまだ初めてのことですから問題がなかったわけじゃないけれども、しかし、やはりやってよかったという意見でございます。
 私は、経済特区においては、将来的な形として、まず、このSTSを社会サービスとしてしっかり位置づけるということと、ケアや安全講習などの育成もこういうNPOの人に対しても非常に必要ですから、それをやはり進めていくことが必要だというように思いますし、タクシーの事業者とSTSの共通の配車センターなども必要かなと。何か名古屋では、事業者の方は三社ぐらい参加していて、市民団体の方が受けて、そして車の手配をする、そこで手に余るときといいますか、いっぱいでだめなときはNPOの方の車を配車するというようなことなどをやっているところもあるようでして、やはり広がっていくに従っていろいろな工夫が各地域の中で生まれていると思うんですね。
 ですから、そこのところを考えてやっていただければと思いますし、これからは、利用者の負担の問題とか、あるいはボランティア団体の活動の支援だとか、いろいろな問題が起きてくると思いますが、経済特区の中でぜひそういった将来の、このスペシャル・トランスポート・サービスを社会サービスとしてしっかり位置づけるというところを目標にしてぜひ進めていただきたい。それはもちろん国土交通省ばかりじゃなくて、厚生労働省なども非常に大きな役割を果たすところでございますが、きょうは時間がありませんのでそちらの方は呼んでいません。
 そんな意味で、この特区、今までいろいろな議論をし、実績もあります。ぜひそれをさらにもう一歩広げて、ガイドラインでしっかりするのか、新しい法制度の枠をつくるのか、それをして、障害者、それからこれからふえてくる高齢者で移動困難な人に対してもっとサービスを提供していくという体制の充実にひとつ努力をしていただきたいというように思います。
 これで国土交通省の関係は結構でございます。
 あと、法律に即して、ちょっと今度は各論から総論の方にお伺いします、もう余り時間もなくなってまいりましたので。
 この特区というのは、一つは地方の主体性というものを大事にする、地方の自助と自立性ということで、いわば地方分権の確立という方向性の中に位置づけられるのかなというように思いますが、しかし、別表で示されているように、幾つかのケースというのはこういうケースと具体的に示されているわけですよね。ある意味でメニューが提示されている。これから市町村は選ぶわけです。もちろん、出したものの中から選ばれているということはありますけれども。
 その前に、総合規制改革会議のことしの七月二十三日の「「規制改革特区」の実現に向けて」ということの中でも構想例が示されているわけですね。いわば、メニューを提示して地方がそれを選択する。いや、そのメニューは地方から聞いたんだよ、いろいろと事前に調査した結果なんですよといっても、やはり、メニューを提示して、そして地方が選択をするというやり方じゃないのかな。
 進展の遅い分野の改革を地域の自発性を最大限尊重する中で進めるために導入したと。つまり、なかなか進まないから、地方にちょっと応援してくれという、やや自分たちの責任放棄、他人任せというところがあるんじゃないですか。これはやはり従来と同じような、メニューを提示して選択するという話であって、言われるほど地方に本当の主体性があるのかなと、この法律は後で中身をちょっと議論しますが、思いますが、いかがですか。
鴻池国務大臣 ただいまの委員の御指摘は、私の知る限り当たらないものと思っております。七月に構想ができて八月三十日に締め切った。私が担当大臣になりましたのが九月三十日でございます。しかし、その間の過程において、国の方から提案メニューを見せてそれを選んでいただくようなことがあったとは聞いておりませんし、一月十五日締め切りの第二次提案募集に関しましても、これは私は最初から当然かかわっているわけでございますけれども、一切そういうことはございません。
横路委員 いや、実際に総合規制改革会議、七月二十三日にその構想例というのを示しているんです、七月の段階で、こういうケースがありますよと。
 地域経済の発展ということがかなりこの特区の大きな要素になっていますよね。今、では、日本の経済の中でどういうところにニーズがあって、どういう分野が伸びているのかというと、九〇年代のアメリカもそうなんですけれども、サービス業なんですね。それは主に個人に対するサービスと事業所に対するサービスなんです。大体この二つに関連しているのは非常に伸びています。
 例えば事業所に対するサービスでいうと、人材派遣とか人材養成といったような事業がアメリカでも日本でも伸びていっています。それから、IT関連のビジネスサービスというようなさまざまなサービスというのはやはり伸びていっている。個人に対する分野としては、例えば健康とか保健に関連する分野、それから福祉に関する分野、それからあとはレジャーとか文化とか教養とか、いろいろなそういう生活関連のサービスの分野というのが非常に伸びているんですね。
 ところが、意外と、この特区の自治体側のケースを見ていますと、地域の経済を振興していくために本当に必要な、今、そういう意味でいうとニーズがあって伸びる要素のあるそういう分野での緩和の話というのは余りないんですね、この中に、生活サービスという分野は。なぜないのかなと見ますと、先ほど言いました規制改革会議の方に余り事例として挙がっていないからじゃないかなと。本当に七月に示されているんですよ、いろいろなこういうケースがありますよといって。それは何かといったら、自分たちがやりたいものをそこに書いているわけですよ。
 ですから、本当ならば、もう少しこれから生活やサービスに関する分野、これが多分ニーズとしてあって、例えば保育サービスみたいなものをもっと簡便に提供できるようにどうするかとかいうような分野というのは、多分地域経済の発展にもつながっていくんじゃないかというように思うんですが、いかがですか。
中城政府参考人 お答え申し上げます。
 八月三十日に地方公共団体等の提案を締め切ったわけでございますけれども、その中で、二百四十九の地方公共団体、民間企業から四百二十六件の提案がございました。その中にはもちろん、研究開発とか農業関係、産業再生関連もございますけれども、生活サービス関連では提案数は四十六ございました。先生御指摘のような行政コストを削減して住民サービスを向上させるもの、それからベッドタウンなんかにおける幼保の一体化といったようなこと、そういったような生活サービス関連の提案もございますし、また教育関連なども四十四件ということでございますので、必ずしも生産関係のものだけというわけではないと理解しております。
横路委員 あと、地方の主体性、自主性といいますか、先ほど議論したように、やはり関係各省との関係もいろいろございます。
 一つは、この認定について、内閣総理大臣が認定するわけですが、関係行政機関の長の同意を得なければいけないとなっています。だから不同意ということもあるわけですよね。そうすると、総理大臣が認定しようといったものを、関係する行政の長が不同意という仕組みというのもこれはどういう構造なのかな。かなり内閣府と関係の行政機関との間にいろいろな議論があったんだろうとは思いますけれども。
 つまり、認定をしようとするときに関係大臣に聞くというわけですから、その前の申請があった段階でこれはだめよと外されたものはそれはそれで終わってしまうわけですよね。総理大臣がこれはいいなということで考えた場合に、関係する行政の長に聞いて、長の方はしかし不同意する権限を持っているというのも、これは内閣の構成上いかがかなという点が一つ。時間がありませんから。
 それからもう一つは、各地方公共団体は、認定の申請に当たって、いろいろな規定の解釈について行政機関に対してその確認を求めることができるという規定があります。そうすると、特区でもいろいろな省庁に関連するような問題があったときに、地方公共団体の方が関係省庁と、調整というか交渉というか、それをやらざるを得なくなるんじゃないか。
 こういうのは地方自治体で仕事をしたことのある者みんな経験している話でして、例えば港湾に関連するようなものになれば、昔でいうと運輸省とそれから建設省の話で、道路が通っていれば、その間の調整というのは、地方自治体の方があっち行ってこっち行ってとやっているわけですよ。この規定を見ていると、今回のこの法律も同じような構造になっているんじゃないか。そういうのは全部内閣府の方でやってくれるんですか、申請すれば、あとは全部。
 その二点についてちょっと。
中城政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、認定につきましては、構造改革特区計画の認定の手続といたしましては、地方公共団体から申請があった特区計画が認定基準に適合すると認められた場合には内閣総理大臣が認定をするわけでございますけれども、その場合、個別規制の特例につきまして、特例を受けることの必要性及び要件適合性というものにつきましては、各地方公共団体の判断が尊重されるということになっておりまして、要件に適合していれば、関係行政機関の長は原則として同意するというものでございます。
 また、ノーアクションレターに関連しまして、地方公共団体が国に対して法令の解釈を求めることができるという規定はございますけれども、この認定に関する申請それから認定手続といったようなものは、すべて内閣で一元化して行うことにしております。
横路委員 時間が来たので、終わります。
佐々木委員長 以上で横路君の質疑は終了いたしました。
 次に、石毛えい子君。
石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。
 構造改革特別区域法案に関しまして、まず最初に、鴻池大臣に、この特別区域の位置づけと申しましょうか、あるいは意味というような点でお尋ねしたいと思います。
 法第一条の「目的」、改めてここで繰り返すまでもございませんけれども、規制を緩和することによりまして地域の活性化をし、もって国民生活の向上、国民経済の発展に寄与するということで、地域の活性化が国民生活、国民経済ということで、地域とマクロと申しましょうか、そういう関係を目的としてうたってございます。そしてまた、大臣も、これまでのこの委員会の質疑におきます御答弁で、特区での成果が全国的展開に至るように構想を法案自体がしているというような御答弁をされていらっしゃいます。
 そこで、そのことに関してお尋ねをしたいと思うわけですけれども、その前に一点、確認をさせていただきたいという意味での質問でございますが、これは十五の法律の特例措置、あるいは特別措置をした政省令に基づく事業として要件が決まっているわけでございますけれども、この要件に合致をすれば、地方公共団体が申請した特区の認定というのは自動的に認定をされるのかどうかということをまず確認させていただきたいと思います。
鴻池国務大臣 先ほどの横路委員の最後の方の御質問とも同質の御質問のように承るわけでございますけれども、内閣総理大臣が、ただいま委員御指摘のように、地方公共団体から申請されました計画の認定を行う際には、個別規制の特例について関係行政機関の長の同意を得ることといたしておりますけれども、規制の特例を受けることの必要性及び要件適合性については、各地方公共団体の判断が尊重され、要件に適合しておれば、関係行政機関の長は原則として同意するものであるということの御確認だと思いますので、そのとおりでございます。
石毛委員 私は、横路委員が御指摘されましたとおり、内閣総理大臣と各行政機関の長との間でどういう合意形成がなされるかというのは大変重要な論点だと思いますけれども、そのことはおきまして、要件に合致していれば特区の申請認定が自動的になされるということは、その限りで中央省庁の裁量を排除している、あるいは特区認定にかかわって、例えばの話でございますが、議員が関与するというようなことを排除するという意味で、大変重要なポイントになる点だというふうに認識をしております。
 次の質問でございますけれども、大臣がこれまでしばしば御答弁なさっていらっしゃいます全国展開に関して、個別の特区の認定、そしてそこで特別事業が実施されて、そして何らかの成果が上がる、あるいはもしかしたら失敗ということになるのかもしれませんけれども、ともあれ一定の事業実績に基づきまして、それから後それをどのように普遍化していくのか、全国展開していくのかという、その仕組みと申しましょうか、それについては必ずしもこの法案は明文化していないというふうに私は認識しておりますけれども、特別事業の実績評価あるいは特区としての評価、その評価ということをどのような機関がどのような内容や基準を設定して展開するのか、そしてそれをどのように全国展開に結びつけていくのかという、その一連の仕組みについてお伺いしたいと思います。
鴻池国務大臣 十月十一日に構造改革特区推進本部におきまして決定をされました構造改革特区推進のためのプログラム、ここにおいて、この法案を成立していただきました後、一年以内に構造改革特区において実施される規制の特例措置の効果、影響等を評価するための体制を定める、このようにしておるわけでございまして、この法案が成立をいたしまして、その直後から、どのような形で効果とか影響というものを評価する体制をつくっていくかということに着手をしなければならないと思っております。
 そういうことでございますので、基本方針において定めて、ただいまの委員の御質問は適切に対処できるものと存じております。
    〔委員長退席、細野委員長代理着席〕
石毛委員 認定されて事業を行ってということでございますから、一年以内にその体制をつくるということでも遅くはないのかなというふうに承りましたけれども、その評価をする機関、エージェンシー、組織といいますか、それはどういう構想をお持ちかというようなことは少し御披瀝いただけますでしょうか。
鴻池国務大臣 結論から申し上げまして、今のところ固まった構想は持ち合わせておりません。この法案を成立させていただきまして、すぐさまそういう構想の準備に取りかかりたい、このように考えております。
石毛委員 私は、詳しい内容を私自身が構想したというわけではございませんけれども、その評価をするということに関しましては、価値中立性と申しましょうか、第三者性と申しましょうか、そうした要件が大変重要だと思いますけれども、その点に関しまして大臣の御認識をお伺いしたいと思います。
鴻池国務大臣 ただいまの委員の御提案も十分参考にさせていただきたいと思います。
石毛委員 よろしくお願いいたします。
 そこで、もう一点要請、御要望申し上げたいのですけれども、私は、やはり特区の活動が、国民生活の向上、国民経済、ナショナルに結びつくということが大変重要だと思いますし、それから、評価をどのようにするかというそのことが、システムを実効性を持たせるためには大変重要な仕掛けと申しましょうか、仕組みだというふうに認識します。そのことをこの法律の中に明文化すべきだというふうに私自身は考えるわけでございますけれども、大臣の御所見はいかがでございましょうか。
鴻池国務大臣 ただいまの御提案でございますけれども、法案の第三十六条第一項において、関係行政機関の長は、規制の特例措置の適用状況について、定期的に調査を行い、その結果を構造改革特別区域推進本部に報告することとされております。また、法案第三十六条二項におきましても、この調査結果や地方公共団体等の意見を踏まえ、必要な措置を講じる、こういうこととなっております。さらに、法案第三条に基づいて閣議決定される構造改革特別区域基本方針において、関係行政機関の長からの報告も踏まえ、特区において規制改革の評価方法等について定める予定でございます。
 こうした規定によりまして、御指摘、御提案の点は原案で明確になっておると考えます。
石毛委員 関係行政機関の長の意見を聴取するとか、調査をするとか、あるいは評価方法について定めるということは、ただいま大臣の御答弁をお伺いしました限りでの私の受けとめ方とすれば、システムを動かす要素につきましては御説明いただいたというように思いますけれども、それを全国展開していくための、もう一つステップアップしたといいますか、次元の異なった点については、私は十分に御答弁いただいたというふうには思えなかったわけでございますけれども、これは私の方の受けとめ方、意見というふうに申し上げさせていただきたいと思います。
 それで、大変恐縮なのですが、質問通告をしていない問題をちょっとお尋ねしたいんですけれども、可能な質問でございますので、御答弁をお願いしたいと思います。御答弁いただけなければ、それはそれで、質問通告をしていませんので了としなければならないのかもしれませんけれども。
 実はもう一点、この法案全体につきまして気になりましたのは、地方公共団体が特区についての認定申請を行うわけですけれども、その認定申請を行う前段で、特別区域計画案を作成する際に、特別区で事業を実施する主体から意見を聞くという規定はございます。それから、特定事業実施者、つまり、規制の特例措置に基づいてこれこれこうした事業をしたいというふうに希望する民間事業者の方というふうになりますでしょうか、その特定事業実施者の計画作成への提案というのも法案の中に認められておりますけれども、これをとらえますと、地方公共団体と実施主体ないしは計画策定への特別事業者というこの関係で、その周囲と申しましょうか、その事業を実施することによりまして、その事業の実施地域、あるいは当該の特区、あるいは、もっと広く言えば自治体になるかもしれませんけれども、さまざまな影響が出てくることが考えられると思います。
 一、二考えます点を挙げますと、例えば、この特区の特別事業には、新しく国が補助金等を支出するということはないわけですけれども、自治体が自主財源を使うということになるということもあるでしょうし、それから、事柄によっては、その事業の実施が周辺住民の方に何らかの影響を及ぼすということもあるかもしれません。廃棄物の取り扱いの問題などにつきましてあるかもしれないし、そのほかのことも考えられると思います。
 そうしますと、地方公共団体が特区の申請をするときに、もう一つその前提として大変重要な論点というのは、そこに暮らす自治体の住民が、自分たちの生活あるいは経済に影響を及ぼしてくるやもしれない案件と、自治体が認定申請をするということに関して知っていて合意をする、サインを持つということが、これは地方自治体の立場からいっても大変重要なポイントになるかと思いますけれども、この法案ないしはこれから作成される政令などにおきまして、何らかの形で住民にそのことを知らせるという方法は講じられるというふうになっているのかどうか、その点を確認させていただきたいということです。済みません、質問通告しておりませんで。
中城政府参考人 お答え申し上げます。
 法案においては、先生御指摘のように、各地方自治体、地方公共団体が計画を作成するに当たっては、特定事業の実施主体から意見を聞いたり、民間事業者からの提案を受けたりすることになっております。計画の内容が地域住民の意見を十分に反映したものになることが望ましいわけではございますけれども、具体的にどのような方法で住民の意見を聞くかということは、各地方公共団体の判断によるということでございます。
石毛委員 私は、その点はとても重要なポイントになると思います。特区で特別事業が始まって、そして、ある時期姿が見え出してから、住民の方たちが、自分たちは知らなかった、まして、何も影響のないことだったらとにかく、もしかしたら影響があるかもしれないようなことを後になって気がついて、何か意見を言ってもそれはもう遅いわけですから、何らかの形で、私は、どの方法がベターなのか、ベストなのかと言うほど今ここで意見を申し上げられませんけれども、例えば地方自治体の議会で認定申請を報告するとか、いろいろな方法があると思いますけれども、そこのあたり、自治体の判断に任せるということでよろしいのかどうか、もう一度御答弁いただければと思います。
中城政府参考人 この特区構想というのは、地方公共団体の自発性を最大限尊重するという観点でございますので、計画の内容に応じて当該地方公共団体がみずからの判断で設定するということでございますので、そうした目安を国が示すということはしないということでございます。
石毛委員 大臣も、ぜひこのことに関して御所見をお伺いさせてください。
鴻池国務大臣 ただいま室長の方から御答弁申し上げたのと全く変わりません。そのとおりだと思います。
 それで、きのうの参考人でお越しになりました北九州市長の御発言を一部拝聴させていただきましたけれども、あの方の御答弁というか、意見開陳の中にも触れておられたと思うんですけれども、十分なる議会との対話、あるいは住民との対話、あるいは提案者との対話というものが行き届いておるというふうなお話でございました。まさに、地方公共団体のそれぞれの市町村長というのは、そういう立場で、随分いい意味での御苦労をなさってその立場におられるというふうに私は思っておりますので、国からそういう指示、あるいはそういう提案と申しますか、そういったことは必要はなかろう、私はこのように考えております。
石毛委員 北九州市長の参考人としての御意見は、案件が非常に多岐な内容にわたっていること、それから、地域総体としての、ある意味での関係事業者の皆様の合意形成が必要だということ等々、幾つかのそうした合意形成をなされるという要件があったというふうに私はきのう承りました。
 この特区の認定要件に関する規制の特例措置というのは、これから自治体がどういう組み合わせで特区の申請をしていくかということともかかわると思いますけれども、かなりシンプルなと言っては少し語弊を招くかもしれませんけれども、案件といいますのは、あるいは要件は組み合わせが非常に多様だと思いますので、私は、必ずしも北九州市長がなされましたようなことがどこの自治体におきましてもなされるというふうに言えないと思います。
 むしろ、きのうの参考人の御意見では、たしか高橋参考人が、住民の合意がやはり前提ではないか、そうした御意見をお述べになられたと記憶をしておりますけれども、私は、そのことは非常に大事だと。そのことを決めていくということは何も地方自治体を規制するわけではありませんし、地方公共団体はそこに暮らす住民の公共団体であるわけですから、私は、やはり大臣の御見解、全部北九州市長がなされましたようにいけばいいですけれども、そうとは限らないわけですから、ぜひこの点につきましては御認識いただきたいというふうに申し上げさせてください。
 それでは、次の質問に移ります。
 この法案は、一面で、地方分権の推進に寄与するのか、あるいは場合によっては拮抗するようになるのか、大変微妙なバランスの上に成り立っているというような思いもいたしますので、そのことに関連しまして、幼稚園と保育所の関係からお尋ねをしたいと思います。
 法案では、学校教育法の特例といたしまして、幼稚園の規制緩和を打ち出しております。二歳の子供が入れるようにするとか、あるいは幼稚園という施設に保育所に該当する子供が入れるようにするというような形で、幼稚園側の規制の特例措置を設けておりますけれども、一方、内閣府のホームページからいろいろと発表されておりますデータなどを拝見しますと、保育所側からの、あるいは幼稚園と保育所の関係として、規制の見直しといいましょうか、そうした要請がかなり出ているように私はこの資料からとらえました。それは、幼稚園と保育所の統一的運営ですとか施設の一体化あるいは両施設の連携といったような提案で、繰り返しますけれども、保育所を含んだ規制改革の提起がなされております。ところが、あらわれましたこちらの法案の中で提起されましたのは、学校教育法の特例措置ということで幼稚園側の規制緩和が出されている、こういう関係になっております。
 そこで、きょうは岩田厚生労働省雇用均等・児童家庭局長にお見えいただいておりますので、この保育所側からの規制の見直しということにつきまして、厚生労働省としてはどのような御見解を持っていらっしゃるのか、そのことにつきましてお尋ねいたします。
岩田政府参考人 保育所と幼稚園につきましては、その地域地域あるいはその御家庭御家庭がさまざまなニーズを持っておりますので、そのニーズにどういう形で対応することが現実的かということではないかというふうに思います。
 私どもは、保育所と幼稚園はそれぞれ異なる機能を持っておりますので、それぞれの制度の中で充実されるということがまず大事だというふうに思いますし、それに加えて、地域の実情に応じて設置や運営が弾力的にできるようにということで、二つの施設が、制度の一体化というよりも、実質的に一体的に運営できるようなやり方を考えるということが現実的ではないかというふうに考えているわけでございます。
 そういう考え方のもとで、文部科学省との間で連携のためのさまざまな取り組みをこれまでしてまいりまして、例えば、施設のハード面ですけれども、両方の施設を共用化できるということにいたしております。また、施設の職員の資格については、今年度から保育士と幼稚園の教諭の両方の資格を一度に取りやすくするように、保育所の方の保育士の養成課程の見直しを行ったところでございます。また、保育所は保育に欠けるという条件に合致するお子さんだけを預かるということが原則でございますが、保育に欠けないお子さんについても、一時保育ということで御家庭のニーズには対応しているということでございます。
 そういう考え方に基づいてこれまでやってまいりましたけれども、今般の特区の議論、地方分権の議論も参考にさせていただきまして、今後の取り組みについてですけれども、一つは、保育士と幼稚園の教諭の両方の資格について、現に幼稚園の教諭の資格を持っている方が追加的に保育士の資格を取りやすくするように、この方策について、十五年度中には結論が得られるように、専門家の御意見も聞いて検討したいというふうに思っております。
 また、全国で多数、保育所と幼稚園の一体的な運営にさまざまな工夫をされて取り組んでこられている自治体が出てきておりますので、そういった具体的な事例を収集し、関係者にそれを紹介していくということもやってまいりたいというふうに思っております。
 今後とも、御家庭の多様な保育ニーズ、幼児教育のニーズに対応し、そして地域の実情に応じて弾力的な設置、運営ができますように、文部科学省と連携強化をさらに進める方向の検討は進めたいというふうに考えております。
    〔細野委員長代理退席、委員長着席〕
石毛委員 私は、今の局長の御答弁の中で、大分実態として進んでいる部分につきましては、例えば施設の共用化ですとか、それから資格の内容の共通化と申しましょうか、そういうところにつきましては御答弁いただいたと思いますし、それは、進んでいるところではもうかなりの程度実現してきているというふうに私自身はとらえておりますけれども、保育行政の中で一番ポイントになる点の一つだと思いますけれども、例の、保育に欠けるという、そこのところだというふうに思うのです。
 そのことに関しましては、局長の御答弁は一時保育という御答弁で、現場でもこれをどういうふうに扱うかというのはかなり苦労されているところだと思うんですよね。やはり毎日毎日通えるようにするためにどういう手だてがあるか、そういう苦労をされているところがたくさんあるというふうに私は思っております。
 それから、障害を持つお子さんなどの場合には、そのお子さんの子育てでお母さんが働けないでいるという場合が多くて、この場合は、欠けるという観点を、親の労働とか親の病気とかということだけではなくて、子供の成長環境、子供の関係性からとらえるべきだというふうなことを随分議論してきている経過がもう既にあると思います。
 そして、つけ加えますけれども、欠けるという要件につきまして、内閣府のホームページで明らかにされております、自治体からの要望を踏まえて今後引き続き検討を要するものという分類の中に入所要件の緩和というようなことが掲示されておりますけれども、もう少しそのあたり、保育に欠ける要件の緩和ということに関しまして、踏み込んだ御答弁をいただけたらと思います。
岩田政府参考人 保育に欠けるというのはどういう状態の子供かということでございますが、両親が働いている、あるいは片親の家庭でその親が働いているということは当然でございますけれども、それ以外にも、例えば母親が病気で育てることができないとか、就職のために求職活動をしている、あるいは教育訓練を受けている、そういったような状態も広く保育に欠ける状態であるということで、入所の対象として認めているわけでございます。
 そうではない状態の御家庭でどういうニーズがあるかというと、臨時的なニーズといいましょうか、親が病気になる、入院する、あるいは慶弔的な行事がある、さらには保育疲れといいましょうか、ちょっと息抜きをしないと育児が続かないといったような状況、そういうニーズだと思うんですね。そういう御家庭に対しては、先ほど申し上げましたような一時保育という形で受け入れを進めるということにいたしております。
 これは、まだそういう受け入れ体制がすべての保育所でできているわけではございませんで、今まさに新エンゼルプランに基づきまして、設置箇所数を定めて一時保育の普及を図っているところでございます。
 保育に欠けるという条件を除くということになるとどういうことになるかということでございますけれども、今と同じような非常に手厚い補助基準で国として補助することができるかどうかということもございますし、また、今は、全国を見ますと、国としての非常に重要な課題は、待機児童が集積している地域が多うございますから、待機児童の解消のために、待機児童ゼロ作戦ということで今年度から三年間取り組むことといたしておりますので、そういうところに財政を重点的に使うべきではないかというような判断もございますので、当面は、一時保育を多くの保育所で実施できるような体制を整備するというのが課題ではないかというふうに認識しております。
石毛委員 保育行政というのは非常に難しいといいますか、大変だというふうに私も認識をしております。各年度、保育所の設置箇所数をふやしても、それとほぼパラレルな関係で待機児童がふえていて、そしてその待機児童がどこかで安全な、安心な環境で育っていればいいですけれども、そこからドロップアウトした環境の中で、例えば、一昨年でしたでしょうか、神奈川県の大和市でいわゆるベビーホテルで子供が虐待死に至るというようなことも起こりましたし、それから、今各地で本当に間欠的に起こってきていることで、やはり無認可のといいましょうか、未認可の保育所で乳児の方が命を失われている。それは突然死というような、記録的対応はそうされているかもしれませんけれども、そうしたことが際限なく期間を置きながら起こっている。
 そうすると、今までと同じような方法で認可の保育所を、保育に欠ける子、そこを弾力的運用ということで今対応しているわけですけれども、これを何年繰り返していっても、今の状況というのは抜本的に変わるということはなかなか難しいのではないか。
 そこで、これは私が考えるところでございますけれども、思い切って、地方公共団体が地域に暮らす子供たちの安心できる安全な生育に責任を持つということを明確にして、どういう保育の形態をとっていくかということは、まさに地域のニーズに応じて多様な形態があってしかるべきなのではないかというふうに考える。つまり、幼稚園、保育所、そこの間に起こってくるいろいろな課題を弾力的運用ということで、後追い的という表現は厚生省の側からすれば納得しかねるかもしれませんけれども、後追い的に埋めていくというよりは、考え方を転換して、地方公共団体がその地域に必要な保育施策をいろいろな形でとっていくという、そうした仕組みを変えるべき時期にもう来ているのではないか。
 そういうような発想の一つの大変現実的な発想例とすれば、例えば、私の知っている方たちが地域で、保育に欠けるとか欠けないとか、幼稚園とか保育所とかということではなくて、一緒に育ちたい、育てたいという方たちのお子さんを託されて、子どもミニデイサービスというようなことをワーカーズコレクティブというような形でやっているということもあるわけです。
 保育というのは、今までも欠けるがずっと続いていた時代には共同保育という形もありましたし、それから、今私が御紹介したような形もある。いろいろな形があって、それを中央省庁は幼稚園と保育所という角度からだけとらえているという、そこの矛盾が修復できないほどの状況に来ているというふうに私は認識するわけです。
 繰り返しますけれども、幾ら保育所をふやしても待機児童が減っていかないと、結局、形態の違いはどうあれ、皆保育という形を実現していかなければ、保育所ニーズあるいは保育ニーズにこたえるというのは難しいだろうというふうに私自身は考えるわけです。
 その考え方から申し上げますと、思い切って、幼稚園、保育所を含んで、地域で十全の子育てをするためにはどうしたらいいかという、そうした子育ち、子育て支援特区というようなものを考えた方が、幼稚園の規制緩和、保育所の規制緩和というよりは本質的な論点が見えてくるのではないかというふうに私自身は考えるわけですけれども、局長のお考えはいかがでいらっしゃいますか。
岩田政府参考人 まず、待機児童を解消するためには国の基準に基づく認可保育所の増設だけでは対応できないんではないかという冒頭の委員のお話は、そのとおりだというふうに思います。
 私どもも、文部科学省その他と力を合わせながら、保育所の整備とあわせて、例えば、国の補助金はつかないけれども、自治体がさまざまな基準でやっておられる単独の事業ですとか、御家庭でお子さんを少人数預かるという保育ママの制度ですとか、あるいは逆に幼稚園の方で放課後預かり保育というのをやっておられる幼稚園がふえてきましたので、そういうサービスの拡大ですとか、さまざまな対応によって取り組まなければ解決をしない、その点については委員がおっしゃるとおりだというふうに思います。
 特区の問題につきましては、保育所でもない、あるいは幼稚園でもない、その融合型の新しいタイプの子供のための施設というのは特に規制があるわけではございませんで、自治体がそういう仕組みをつくりたいというふうに思われれば、国の補助金と切り離して考えればそれは可能なわけでございまして、今回の特区の構想は特別な補助金を前提としないということもございましたので、そういうこともあって一つは議論にはのらなかったんではないかというふうに思っております。
 それはさておきましても、どういう形で全国の保育の質を維持するか、そして必要な地域ではサービス量をどういう形で供給するかということを考えた場合には、やはり国が一定の基準を設けて、設備整備費ですとか運営費を手当てをいたしまして安定的な財源を確保できるということが今の保育対策としては大変重要ではないかというふうに考えております。
石毛委員 もう時間がありませんので、私の方の考え方だけ申し上げさせていただきます。
 就学前の子供が育つということに関しまして、今、たくさんのメニューがあり、それに一つ一つ、いわゆるひもつき補助金と申しますけれども、補助金がつけられていて、それに規定されて自治体は施策を行うというふうになっておりますけれども、私は、思い切って、仮称ですが、子育ち、子育て助成金というような形で一括して財源を地方自治体、基礎自治体に移譲して、そして、どのような保育形態をとるかということは地方自治体が住民参加のもとに自己決定していくというふうに転換をすべき時期をもう迎えているというふうに私自身は考えていますということを申し上げさせていただきたいと思います。
 学校教育法の幼稚園の特例措置ということだけにとどまっておりますと、もしかしたら、地方分権をこの面で阻害するといいますか、おくらせるということになりかねないのではないか、そういう危惧も持っていますということを指摘させてください。
 残りました時間で、大変恐縮ですが、大急ぎでお願いいたします。
 老人福祉法の特例措置も今回の法案の中にはございます。都道府県老人福祉計画における特別養護老人ホーム不足地域でPFI方式による特別養護老人ホームの設置、これを特区として、申請があれば認定する、こういう規定でございますけれども、私は、福祉行政の計画行政というその点と、それから特区という考え方がどのような関係に立つのかということは、これから、医療における営利法人の参入ですとか、もしかしたら老人福祉法の中でも今後どのような主張が出てくるかというようなこともあると思いますので、大変重要なポイントだと思いますので、現時点で厚生労働省はどのようにお考えになっていらっしゃるか、その点をお聞かせください。
佐々木委員長 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
中村政府参考人 老人福祉計画などの計画と今度の特区の関係ということでございますが、私どもは、地方自治体が、市町村があるいは都道府県が老人福祉計画をつくっておりますので、これが優先する、その補う形で、特区ということでさまざまな事業をこの計画と調和がとれた形で進めていただくというふうに考えております。ですから、計画がメーンで特区の方は手段というふうに考えております。
石毛委員 終わります。ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で石毛君の質疑は終了いたしました。
 次に、児玉健次君。
児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
 現在、日本の社会の各分野でさまざまな矛盾が露呈されているし、そして、日本社会が深刻な状況に直面している、そういうふうに私どもは考えています。この状況で大胆な改革が必要だという点は論をまちません。今回提起されているこの法案が、改革といってもさまざまありますが、国民の期待に沿った方向の改革になろうとしているか、それとも、改革への国民の期待をそらし、改革とは逆の方向に道を開くものになろうとしているか、そこのところが厳しく問われていると思います。そういった立場で、ここでは、法案の十三条と十一条を取り上げて、なるべく具体的に質問をしたい、こういうふうに思います。
 今度の法案の十三条を拝見すると、例えば、「産業を担う人材の育成、国際理解の促進等」、「等」とありますね。ある地域に外国の方が多く居住されているとすれば、そこでの外国語教育、それに必要な教師の市町村での任用ということが出てくるだろうし、そして、地域産業との関係で、その地域産業を前進させるのにふさわしい人材が教師として登場してくる、これは私は考えられることだと思うんです。肝心な点は、市町村が父母、住民の願いにこたえる方向でどう進んでいくか、それを国がどのようにサポートしていくか、この点だと考えます。
 今、少人数学級を求める国民の声、これは全国に広がっています。急速に広がっていますね。今年度、十六の県で少人数学級編制が導入されて、それ以外に学級編制を弾力化しようとしている道府県が六つ、両者合わせて、四十七都道府県の約二分の一に近づいています。
 市町村独自の取り組みを含めて、それをしっかり支えている道府県の取り組み、これらは、少人数学級を実現する動きとして今後ますます加速していくだろう、私はそう見ています。この動きを文部科学省はどのように受けとめていらっしゃるか、河村副大臣のお答えをいただきたい。
河村副大臣 児玉委員今御指摘の、少人数学級に対するそれぞれの地域での声、私も現実に、PTAの皆さんであるとか、いろいろなところへ参りますと、多人数教育のよさも認めながらも、これほど複雑多様な価値観の中で、子供たちの個性をしっかり引き伸ばすためには、やはり個人それぞれに合った教育が必要であるという声が高まっておることは承知をいたしております。
 まず、その前提には、やはり先生方の取り組みというのも非常に必要になってまいりました。そこで、一遍に三十人学級というわけにいきませんので、私は、前回の総括政務次官それから副大臣のときに特に提言をしたのでありますが、子供の数が減るので先生の数も減少するのが当たり前だという財務当局の考えだけは、これはやはり文部科学省としては押しとどめてもらわなきゃいかぬということで、先生の定数確保について最大の努力を払うということをやってまいりました。
 その結果、少人数学級を必要とする低学年であるとか、中学の理科あるいは英語とか、やはり学力とかそういうことにかなり差がつきやすいといいますか、そういうクラスも出てきた、そういうところへ対応するチームティーチングをもっとふやすとか、あるいは、そこについては少人数学級でやるとか、弾力的な取り組みができるようにやってきたわけでございます。
 これをさらに進めていく必要があろうと私は思っておりますし、政治家として申し上げるなら、三十人学級ということを野党は言われますが、私は、本来的には二十人学級ぐらいが理想ではないかと個人としては思っておるんです。そこへ近づける努力をどういうふうに今していくかということでありましょう。しかし、一方では、二十人学級だけで、全部それでいいかというと、時には四十人に一つにして切磋琢磨する教科も必要になってまいりますから、その辺の、弾力的に先を見通しながら、教員の質を上げると同時に、いわゆる教員の数を確保するということについては、これからも文部科学省としては最大の努力を払っていかなきゃいかぬ、このように考えております。
児玉委員 鴻池大臣に伺いたいんですが、十一月八日、衆議院本会議で私たちの吉井英勝議員が代表質問しました。小泉首相は、この法案に関するさまざまな説明をなさったけれども、その説明の中の一部でこう言われた。全国的な規制改革の実施が、さまざまな事情により進展が遅い分野があるのが現状です、地域の特性に応じた規制改革を実施するのがこの法案の目的だと。
 そこで、言いたいんですが、一学級四十人というのは、これは国の規制ですね。その規制を乗り越えて、全国の都道府県の二分の一近くが少人数学級に既に着手をしている。この分野は、国民がまさに希望する方向での改革が進んでいる有力な例ではないか、そう考えるのですが、大臣、どうですか。
鴻池国務大臣 ただいま河村副大臣が、副大臣のお立場としてお答えになりました。また、個人的な所見を申されました。私も、それに同調する意見を持っております。
 今までの教育の分野というのは、供給者側と言うと表現がおかしゅうございますけれども、そちらの方が随分強く出てきて、矢印の方向がこっちの方へ向いている、こんな感じでございますが、これからの我々の社会というのは、そろそろ、受ける生徒の方の、受けさす保護者の方の、そういう彼らのニーズというものを大切にしていく必要がある。教育の分野でもそのように思っております。
児玉委員 そこで、この十三条ですが、教職員の任用、法律では職員の任用という言葉を使っていますが、子供の教育に責任を負う教師が、市町村の臨時職員ではなく正規の教職員として任用されると、明らかにそこに道が開かれます。そして、これは、教育基本法第六条で明記されている、「教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。」ということからして当然のことだと私は考えます。
 そこで、具体的に伺いたいんですが、河村副大臣、狭い学校に県職員としての教師と市町村職員としての教師がともに存在するということになるでしょう。そうなった場合に、各種の研究会への参加だとか、そして県、他の市町村との人事交流、これらはどうなっていくでしょうか。
河村副大臣 今回のケースは、特区を特例的にまず導入しようということであったわけでございます。
 児玉委員御指摘のような状況が現実にあるわけでございます。現時点では、本来、任命権者である市町村の教育委員会が研修を行うことが原則になっておるわけでございますが、実態として、県の県費負担教員、そういう方々との合同研修等については、これは当然参加をすることは可能だし、またあり得るべきだし、またやらなきゃいけないことも当然あるだろうと思っておりますが、あと人事等ということになってくると、現時点では、特区の中でのという発想でございまして、それを超えてという発想は今のところしておりません。
 しかし、将来にずっとわたって、これは特区の特例の形で、その地域に特性があって認めておりますから、その枠の中でという思いでおりますので、研修等々については合同的なもので参加可能でありましょうが、人事ということになりますと現時点ではそれは想定されていない、こういう答弁になるわけであります。
児玉委員 では、そのことは今後の議論にしておきたい、こう思いますね。
 市町村が市町村の責任で教職員を採用していく、任用していくということになる。明年度の予算概算要求で、教職員一人当たりの予算単価は幾らになっているでしょうか。
河村副大臣 義務教育費国庫負担金の平成十五年度概算要求における教職員一人当たりの予算単価は、四百三十一万でございます。これは、二分の一国庫負担ベースという計算をいたしております。
児玉委員 そうなりますと、都道府県が負担する給与、その他の給与に対する分がありますね。そこに対して、国がある財政的な支援をしないわけですから、今副大臣がおっしゃった四百三十万というのは二分の一ベースですから、だから、任用する市町村にとっては八百六十万円の財政的な負担になる、こう理解していいですか、どうですか。
河村副大臣 今回の特区法における市町村における教員の採用については、あくまでも自己負担ということになっておりますから、御指摘のとおりの数字になると思います。
児玉委員 義務教育費国庫負担法第一条、これはなかなか重要な法律だし、久しぶりに第一条を読み直してみて、やはりある種の感慨を持ちました。こう書いてある。「義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図る」。言うまでもなく、この背景には憲法と教育基本法がありますね。水準の維持向上を図ると。ここで言う国の負担、そしてそれの具体的なあらわれである負担金と、現在さまざまに論議されてごったまぜにされている国の補助金、この相違点はどこにあるんでしょうか。副大臣、お願いします。
河村副大臣 一般には、国庫負担金そして国庫補助金は、地方に対して一定の行政水準の維持とか、あるいは特定の施策の奨励のために出されておるものでございます。
 両者の違いについては、まず、国庫負担金は、今御指摘をなさいましたが、国に一定の義務もしくは責任のある事務について義務的に負担する納付金であるという考え方でございます。地方公共団体が法律に基づいて実施しなければならない事務で、かつ国と地方公共団体相互の利害に関係ある事務のうち、その円滑な運営を期するために、なお、国が進んで経費を負担する必要があるものなどを負担金とするということが地方財政法の第十条にうたってございます。
 したがって、国がどうしてもこれはやらなきゃいけない、今の義務教育のレベルを維持するとか、これは国も責任があることだ、地方もやらなきゃいけないことで、しかしこれは国の方も進んで経費を負担する必要があるからということになっておるわけであります。
 一方、国庫補助金の方でございますが、これは、特定の事務を補助するために交付される、奨励それから助成的な給付金、こういうことになっておりまして、財政上特別の必要があると認めるとき、これも地財法の第十六条にあります。だから、財政上特別の必要があると認める、あるいは奨励の意味で補助をいたしましょうというもので、義務的になるかどうかの違いがここにはっきりあらわれておるというふうに思っております。
 特に、義務教育については、法令に基づいて実施しなければならない事務ということでありますから、先ほど御指摘がありました憲法あるいは教育基本法の要請、そういうものから、全国的な機会均等を守る、あるいは水準を守っていくという意味で、義務教育費国庫負担制度がこれまでも堅持されてきた、このように理解いたしております。
児玉委員 よくわかりました。
 地財法の第十条でずっと列挙していますけれども、その冒頭のところに「義務教育職員の給与に要する経費」というふうに書いてありますね。その点、私は非常に重要だと思う。
 そこで、議論を進めますが、現在、少人数学級を進めている自治体はどんな努力をしているか。大臣、私が今ここで紹介したいと思うのは、本来、国と市町村との間で結ばれるべき相互関係、支援関係、それが今ありませんから、県と市町村との間ではさまざまな努力がされている。そこを幾つか紹介したいと思うんです。
 その一つは福島県です。今年度から、小学校一年、中学校一年で三十人学級を既に実施しました。そして、その結果、小学校では百六十八学級がふえて、常勤講師が百六十八人採用された。中学校では百五十一学級がふえて、常勤講師二百四十一人が採用された。これに要する経費は市町村が負担していません。福島県がすべて県費で負担していますね。その結果、どんなことになっているか。授業参観した母親の率直な感想です。先生の目が届いていると思いました、和気あいあいと、アトホームな感じがしますと。
 山形県はどうか。先日、私、行ってまいりました。小学校一―三年で三十三人学級を実施しています。知事の発意によって県政の最重点施策として、九十三学級、九十三人の増は、これまたすべて県費負担です。
 鳥取県はどうか。これはかなり工夫をしていますね。先日、私は知事に会った。鳥取県では、小学校の一、二年生、三十人学級が二十六市町村で実施されて、八十二学級ふえました。それで、本年度の小学校教員の採用は三十人の予定だったんだけれども、今のようなことをやった結果、四十三人に正規の採用をふやして、明年は採用が倍加されるだろうと。講師については二百五人が採用された。
 その財源をどこから出したか。知事によれば、随分激しい議論があった。激しい議論の結果、県職員の給与が五%カットされる。そして一方、学級増となる市町村からは、配置された教員一人について二百万円の協力金が県に出される。協力金という形にしたんです。さっき河村副大臣のお話のように、八百六十万必要なんですから、二百万を協力金として出してもらう。そういう形で行われているんですね。
 これらの三つの県の担当者と、私の部屋で何回か、問い合わせをしたりしましたが、その中の一人はこう言った。県が給与を負担しないで市町村が単独で教員の独自の任用を行えるところは恐らくないのではないか、こう述べました。
 私は、文部科学省に求めたいんです。今私は三つだけを例示的に挙げましたが、政府としても、これらの県の真剣な努力に対して謙虚に学ぶべきではないかと思うんですが、副大臣、どうですか。
河村副大臣 先ほどちょっと御答弁申し上げましたが、文部科学省としても、いろいろなお取り組みができるようにということで、教員の定数改善等についても、こうした財政難のときに最大努力をして、少なくとも現行の先生の数は減らさないような努力をしてまいりまして、その結果、少人数学級等もできるようになったわけでございます。
 今回の特区の例は、またさらにどうしても必要な市町村が特区を申請されて認められたらという特別の例でございますが、総体的に、今児玉委員御指摘のような、各地域においてお取り組みをいただいている。県によっては、まさに全県的な取り組みにもしたいというような動きもあるようでございます。そういうことは大いに結構なことだと私は思っておりますし、これを国がどのような形で今後支援していくかということは、優秀な教員をいかにたくさん確保するかということにまずはかかってきておる、こう思っておるわけでございます。
 こうした中で、財政上の問題等々もあって、我々としては最大努力して地方の取り組みを支援したい、こう思っておるところでございます。なかなか一度にどんとというわけにいかない現状があることも御理解を賜りたいと思っておりますが、方向としては、今、各県がお取り組みをいただいておられる御努力に対して、敬意とともに、支援をしたい、こういう気持ちを持っておるところでございます。
児玉委員 気持ちはよくわかるんですが、それが具体化される必要があると思うんですね。
 それで、先ほどの、ある県の幹部の方の、県が給与を負担しないで市町村が単独に任用できるところはないのではないか、この県のところを国と置きかえたら、この十三条の意味が非常によくわかるんです。
 もし、それらの動きを真摯にごらんになって、そして何らかの支援をしようとなさるのであれば、この十三条の中で、市町村が任用する教師について、「市町村立学校職員給与負担法第一条の規定は、適用しない。」とわざわざ特例を設けて国の負担を免れる、これは問題だと思いますね。こういう特例こそあってはならない。どうですか。
河村副大臣 今回の特区につきまして、いわゆる標準法を超えてといいますか、それを下回って特別にやるケースでございますから、これについては国の負担はできませんという前提に立ってお進めいただきたいということになっておるわけでございます。
 それは、財政的なものが全部伴えば、どんどんいいことは進めていただくにこしたことはございませんが、今回の特区の考え方も、それぞれ市町村の自発的な、自立的なお取り組みに対して規制緩和をしていこうという方向の基本的な認識もあって、財政的な支援はできないケースでも、しかし規制緩和をすればやれるんだということについては認めていこうではないかという全体的な流れの中で今回の特区を認めたわけでございますので、市町村立学校職員給与負担法第一条の規定、国が支援をする、二分の一を負担する、これがございますが、これは適用しないという前提に立っての特区であるということであるわけでございます。
児玉委員 先ほど副大臣自身おっしゃった国の負担金、それの持っている意味の大きさというのはありますよ。どうしても私には、わざわざ、「市町村立学校職員給与負担法第一条の規定は、適用しない。」こう言わなきゃいけないというのが理解できませんね。
 現在どんな状況にあるか、この点は、ある意味では文部科学省の皆さんと私は一部共通の認識に立ちます。それは、義務教育費国庫負担制度の見直し、そして義務教育費国庫負担金の一般財源化、この議論が進むとき特徴的なのは、負担金と補助金の根本的な違いを故意に混同させてしまって、そして進めようとする。そういうとき、市町村立学校職員給与負担法にこの法律で持ち込まれようとしている特例が、今の企図、今の動きに道を開いて拍車をかけることにつながらないか、私はそのことを危惧するのですが、どうですか。
河村副大臣 児玉委員御指摘の点は私どもとしても心しなきゃならない面であろうと思いますが、今回、第一条の規定を適用しないといったことが、続いて、では補助金ならどうかとか、あるいは交付税でどうであろうかということになって、いずれ国庫負担金というのはなし崩しになっていくのではないかということでありますが、それは、今回の特区はあくまでも国の支援を得ないでやれるケースだということでありますから、法律の完成を期すためには当然これが入っていきませんと特例にならないわけであります。
 そういう意味でありまして、我々としては、今持っております国庫負担金の制度を堅持していくという方針がこれによって揺らぐとは考えておりません。
児玉委員 議論は事実に即してやらなきゃいけない。
 ことしの十月三十一日、経済財政諮問会議に、遠山臨時議員が提出した資料があります。その資料の中で、いわゆる骨太計画、そちらの側からどんな提言がなされたか。「市町村費による教職員配置(平成十四年度から実施)」、こういう提案をしてくる。それに対して遠山臨時議員はどう言っているか。「実施に向け検討 市町村の権限と責任を拡大する観点から、新たに市町村費により都道府県の定める定数を超えて教職員を配置できるようにする方向で検討。 まず、構造改革特区の枠組みの中で先行的に制度化。」と書いているじゃないですか。私の危惧は思い込みじゃありませんよ。「構造改革特区の枠組みの中で先行的に制度化」、これで義務教育に対する国庫負担制度が守れるだろうか、私はそう思う。どうですか。
河村副大臣 児玉委員御指摘のように、こういうものがずっと広がっていけば、いずれ、地元で全額持つような形になっていって、国の責任の部分がなくなっていくではないかという御指摘だろうと思います。
 この取り組みについては、私は、地域それぞれの市町村の権限、責任、地方分権、いろいろな角度から見て、一定の基準は国がきちっと持ちます、しかし、それぞれの地域の特性において、あるいは教育環境、いろいろな面において、その基準を超えていろいろな取り組みをされることについては、これは奨励をしていきたい、しかし、基本ベースは堅持いたしましょう。
 今回、財政諮問会議で非常に議論になったところでありまして、国も地方へ全部任せたらどうだ、その方が本来の地方分権だという議論があったわけでありますが、遠山大臣も、そのことについては、しかし、それをやった場合には必ず教育の標準というものは非常なばらつきもできてくるだろうということから、これはやはり国として責任がある、憲法の精神からいっても義務教育の水準を保つという国の責任は果たしていかなきゃいけない、その証がこの国庫負担金にあるんだということを強く訴えて今日来ておるわけでございます。
 ただ、個々の取り組みに対する御努力をいただく、そういうものを超えてさらにおやりになりたいということについては、今この特区のケースもございますが、その動きを奨励しながら、また今後、全国的な制度化はどうだということに進んでいくだろう、こう私も思うわけでございますが、当然、市町村費負担教職員の処遇のあり方とか、あるいは県費負担教職員と市町村の負担職員が混在することによる学校運営のあり方だとか、この特区でおやりになっていることによっていろいろな問題が出てくるだろう。そういうことが想定されますので、当面は、都道府県、市町村、教育関係者、そういう方々の意見も聞いていきながら今後のあり方については検討をしていきたい。
 この問題について、文部科学省としても、地方分権会議がおっしゃることについて全部後ろ向きではなく、前向きに取り組むべきことは取り組みますよという意味を込めて、遠山大臣が、地方分権推進会議等で提言の形をとったというふうに私は聞いておるところでございます。
児玉委員 この点は私は、文部科学省に、義務教育費国庫負担の根本を絶対に譲ってはならない、その点で、遠山さんの、まず構造改革特区云々という言い方は極めて危険である。
 しかもそれが、この十一月十四日に発表された教育基本法についての中間報告ですね、その中に教育振興基本計画についていろいろ列挙された部分があって、その中に何と書いてあるか。「義務教育費国庫負担制度の見直し」「公立学校の教員給与制度の見直し」と書き込まれている。だから、冒頭私が言った、改革と言いつつ実際は国民の期待に反する方向に道を開く、そういう危険性を持っているということは、私はまず強く指摘しておきたいんです。
 次に、先ほど石毛議員が議論なさった幼稚園における新しい問題、その点について若干触れたいと思います。
 今度は第十一条、幼稚園の入園について、現在満三歳としている学校教育法を変更して満二歳児の入園を可能にする、こういう中身になっています。
 いろいろ書いてはある。幼稚園設置基準第四条、学級編制について、「学級は、学年の初めの日の前日において同じ年齢にある幼児で編制することを原則とする。」こう明記されていますね。そうであれば、二歳児を入園させる場合の学級編制は、二歳児のクラスを新たに設ける、こういうふうになると思うんですが、いかがですか。
河村副大臣 まだ入園したときは二歳児で新年度を迎えるわけで、そのうちに、その年度内に三歳児になられるということでありますから、それは私は入園者の数にもよるだろうと思いますから、二歳児の方が二十人も三十人も入園されるということになれば、やはりそれはそこでやらにゃいかぬ。しかし、そういう特例を設けた、それがそんなに出なかった場合には三歳児のクラスと一緒でも、その辺は、もちろんそこの園でいろいろ自主的に御判断をいただくことだろうと思いますが、一クラス特にやるか、あるいはやれないかということについては、私はその園で御判断をいただいて、よい教育、保育をやっていただくことになるんではないだろうか、こう思っております。
児玉委員 それでは成り行き任せということになりはしないかと思いますね。
 それで、幼稚園設置基準では、学級規模において、学級三十五人以下となっています。幼児教育では、五歳児であっても三十五人は多過ぎるという意見が非常に強くて、文部科学省に対して全国の教育委員会から、幼稚園の学級編制基準及び教員配置の基準について改善してほしい、こういう要望が随分出ている。副大臣もよく御存じだと思います。
 そこで言いたいんですが、今、二歳児のクラス、数の多少によってそれぞれ独自に判断されることになるのではないかと。これでは、私は、この後の事態について国として責任を負えるのかというふうに考えますね。
 ちょっと厚生労働省の岩田局長にお伺いしたいんですけれども、二歳児と三歳児の発達段階の特徴というのはどんなものでしょうか。端的に御説明いただきたいと思います。
岩田政府参考人 保育所保育指針の中で、子供の年齢別発達の特徴を挙げております。運動機能ですとか、他人とのかかわり、社会性とか、言葉などの自己表現能力について書いてございます。
 どの程度詳しく御紹介していいかよくわかりませんが、最も保育所の生活に関係するところは、運動機能といいましょうか、三歳児になれば基本的な運動機能は一応育ちまして、食事ですとか排せつなど、かなり自立して自分でできるようになる。二歳でも、もちろん歩行の機能は一段と進みまして、走る、跳ぶなどの基本的な運動機能が伸びてくる段階ではございますけれども、必ずしもまだ身の回りのことをすべて自分でできるという段階ではない、こういうふうに理解しております。
児玉委員 同僚の議員にも私、言いたいんだけれども、皆さんのお孫さんのことを思い出してほしいんですね。一歳から二歳、二歳から三歳、その変化というのはドラスチックですね。五歳と六歳の違いより、はるかにその変化はドラスチックです。
 それで、そのことがあるから、保育所では、ゼロ歳児について子供三人に保育士一人、満一歳から満三歳未満は六対一、満三歳から満四歳未満児については二十対一。これは子供の発達段階に応じて、これでも不十分ですが、ともかく保育所についてはそのように設定されていて、実際の保育園の努力で、この教職員の配置はさらに手厚くしてあります。
 そういう中で、満二歳の子供を今度受け入れる、そうなった場合に、三十五人に幼稚園教諭一人という、これをそのままにしていいのかどうかというのがこの法案第十一条の持っている最大の問題点だ、私はそう考えます。
 幼稚園の文書をいろいろ拝見したんですが、幼稚園教育要領は、年齢については触れてありません。三歳から五歳まで一括してさまざまに述べてあるけれども、その中でたった一カ所、「特に、三歳児の入園については、家庭との連携を緊密にし、生活のリズムや安全面に十分配慮すること。」こう書いてありますね。なぜここについてはこのように特記したんでしょうか。河村副大臣、いかがですか。
河村副大臣 幼稚園の場合には、三歳児から入園ということになっておりまして、今までと環境もがらっと変わってくるわけですね、今までうちにいたのが外で。したがいまして、その変化に子供がついていけないとかいろいろなことが想定される。当然、家庭との連携をしっかりとりながら、できるだけ早く親離れをさせないかぬという点もありましょうが、そこは十分な連携のもとで、急な子供の変化を、やはり幼稚園側も親からよく聞いておかなきゃいけないという問題もあろうと思いますので、特にその辺を喚起したものだ、こういうふうに思います。
児玉委員 それは当然の配慮だと思いますね。そうであれば、二歳児についてはさらに手厚い、懇ろな配慮が必要ではないでしょうか。それを、ここで言う第十一条、「幼児の数が減少し又は幼児が他の幼児と共に活動する機会が減少したことその他の事情により」と言って、そして二歳児を受け入れることがある。しかし、それについて、三歳児についてこういう、たった一カ所特記しなければならないその必要性は今副大臣のお話からも明らかですけれども、なおさら二歳児についてはその配慮が手厚くなければならないし、そしてさまざまなそれをサポートする幼稚園の体制についての改善が必要ではないか。私は、これはごく普通の考えだと思うんですが、どうでしょう。
河村副大臣 児玉委員が御指摘の点は、私も同感に思います。
 今回特区でそういうことをやろう、そのうちの地域的な問題もございまして、そうせざるを得ない状況下にあるような地域について考えていこうということでありますから、二歳児がどの程度そこへお入りになるかということも考えなきゃなりません。
 今既にやっておりますが、チーム保育ということもやっております。園側としてもそういう配慮をして取り組みませんと、実際問題として、子供を預かっていただいてもやっていけなくなりますから、当然園側としてはそういう対応をなさるであろう、こう私も期待をいたしておりますし、少しでも余裕のある先生方はそこへ、特に入ってこられた当初は相当な配慮をして、注意をして、その預かっていただいた二歳児についてはそういう配慮が必要である、私はこれは当然のことであろうというふうに思います。
児玉委員 まさしく配慮が必要だけれども、しかし、残念ながら、ここからはその配慮がうかがえない。この問題については、現場の状況を知り尽くしている幼稚園の教職員の方々、教職員団体や幼児教育の専門家の方たち、そういう方たちの意見をよく聞いて、協議しながら進めるべきだと思うが、いかがですか。
河村副大臣 今回、特区といえども初めての試みでございますから、当然、そういう協議会等々を設けていただいて、そういう方々の意見を聞きながら進めていただくということは必要なことであろうというふうに思います。
児玉委員 岩田局長に伺いたいんですが、先ほどあなたの石毛議員に対する御答弁の中で、幼稚園と保育所が一緒になって子供たちを養護していく問題についての話がありました。
 今回、省令改正で幼稚園と保育所の一体的運用、合同クラスが可能になる。私たちは、いわゆる幼保の一元化というのは一つの重要な検討課題だと考えています。しかし、今議論してきたように、幼稚園、保育所それぞれに、目的や職員の配置基準について、施設についても基準があり、格差があります。このことについて積極的な改善が必要だと私は思いますね。
 そこで、厚生労働省として、一体的運用といったときに、保育所在籍の児童が幼稚園において保育される。保育所、幼稚園の保育者の配置基準はどのように考えたらいいのか。そして、保育所としてのその子供に対する保育責任については、必要な幾つかの事柄が担保されるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
岩田政府参考人 乳幼児期の子供は、心身の発育、発達が著しい時期でもございますし、保育所の子供は生活の大半の時間をそこで過ごすということでありますので、十分に監護の行き届いた環境で保育を行うべきであるというふうに考えております。
 今お尋ねの幼稚園の子供と保育所の子供を合同で保育、教育するというケースについてでございますけれども、保育所に在籍をしている児童について見れば、保育所についての最低基準がございますので、例えば職員の資格ですとか職員の数ですとか、そういったものを満たす状況の中で合同で行われる必要があるというふうに思っております。
 したがいまして、地方公共団体でこういう特例措置が適用される場合についてどういうふうに考えるかというような点についても、文部科学省の方とよく御相談しながら、保育所の在籍の子供が十分な処遇が受けられるようにということで留意してまいりたいと思います。
児玉委員 まさに保育所の子供が保育される子供として十分な処遇が受けられなければならない、そうだと思います。
 私は、この点で最後に言いたいんですけれども、幼稚園の学級規模、三十五人に一人、これを改善することなくこの十一条で、満二歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから特別区域内の幼稚園に入園することができると。これでは現場でさまざまな困難が生まれるし、その困難を何とか少ないものにしようとすれば、自治体や園が経済的負担をすることになりますし、職員の努力は大変なことになるし、そして子供の保育、養育にとっても好ましくない。このままでは現場に混乱を持ち込むことになるから、私は安易な導入はすべきでない、こう考えますね。
 幼稚園の職員配置基準、これをこのことを契機に見直す、それが必要だと思うのですが、いかがでしょうか。
河村副大臣 委員の御指摘の点は私も理解をするものでありますが、今回の特区のケースにおいては、少子化とか過疎化により幼児数が急に減ったとか、あるいは都市化、核家族化とかいろいろな問題から、同年齢の幼児が活動する機会が減少しているというような、園児、幼児の社会性を涵養することが困難になっている地域に、幼稚園、保育所等を一緒にやれるようにしよう、あるいは、まだ二歳であるけれども、そういう子供たちも預かってやろうということになってきたわけでございまして、当然、いろいろな御指摘の点は十分踏まえて、幼稚園を設置する地方公共団体あるいは学校法人、そこは責任を持って、幼稚園児、保育所児のいわゆる保育、教育、そういうものが低下しないように最大の努力をしてもらわなきゃなりませんし、文部科学省としても、地方公共団体等に対しても、幼児教育の振興の観点から、必要な助言、指導もしていかなきゃなりません。
 また、あるいは私立については私学助成の考え方、特にそういう地域、そういうことについては特別な配慮をするとか、あるいは総務省に対して地方交付税の、加配と言ったらあれかもしれませんが、そういう配慮をして地方交付税をする。あるいは特別交付税制度もございますが、そういう配慮というのは、特に幼児期の一番大事なときでありますから、十分な配慮をしながらこの特区に対しては対応していく。
 これがうまくいくとなれば、これは今後ともまさに全国的な取り組みにもなっていくだろう。特区でやる以上は、当然それが全国的にもできるんだという前提で取り組むべき課題だろう、私はこう認識いたしておりますので、児玉委員御指摘の点は十分配慮して対応していかなきゃいかぬ、このように考えます。
児玉委員 さて、残されている時間、鴻池大臣と、やはり改革の問題です。
 今私は、十一条、十三条、教育を例示的に取り扱いましたが、国民の期待にこたえる改革というのはやはり気宇壮大でなきゃならぬ、そう思いますね。そういう点で、私自身が時々思い出して学ばなきゃいけないと思っているのは、私が言うと意外だと思われるかもしれないけれども、アメリカで進められた教育改革です。
 一九九八年の一月に、当時のクリントン大統領、一般教書演説の中で彼はこう言った。私は、昨年、というのは九七年の一般教書演説です、昨年、教育は我々の最優先の政策でなければならないと提起した。すべての親は教育をよくするかぎを承知している。そのかぎは、いい教師と小さなクラスである。グッドティーチャーズ・アンド・スモールクラシーズと言っています。
 そして、それに続けて彼はこう言った。アメリカの予算によって資格を有する十万人の教師を採用して、アメリカ全土で小学校の一、二、三学年のクラスを平均十八人に減らすことを国民に約束する。そして、それが実現されつつあって、しかもフォローアップされている。クラスサイズの縮小が効果があることが実証された。こういう報告書ですね。
 この改革も、結局、市町村にその財政的な負担はゆだねるという形で進んだんではだめですね。好ましい改革、私たちはそれを民主的改革と言うけれども、そこに向けて思い切った国の負担が必要だ。それを、このアメリカの九八年の一般教書の中から一つの哲学としてもつかむべきだと思うんです。大臣、どうですか。
鴻池国務大臣 意外とアメリカの例を先生がお出しになりましたので、まさに驚いておるところでございます。
 アメリカは、すべからく自由主義国家でございます。日本も自由主義国家を基調といたしておりますけれども、それぞれのお考え方というものも、耳を傾け、あるいはうなずきといったところも大変多いところであります。
 そういった中で、私はやはり、先ほど申し上げましたように、教育を受ける側、保護者も生徒も、そのニーズというもの、あるいは選択というものを自由にすべきだと思います。そういう意味で、いわゆる少人数の学校というものも大切だというニーズにもこたえる必要があると思いますし、また、私どものときは随分子供が多うございましたから、五十人ぐらいの学級でございました。しかし、そこに大変な問題が起きたとは私の記憶には残っておりません。そういったことも構わぬという方もおられると思います。そういった中で、私は、教育というものが十分に、柔軟に対応していくべきだと思います。
 なお、今回の構造改革特区につきましては、国が財政措置をするという考えはございません。
児玉委員 それでは改革は進まないという点を述べて、終わります。
佐々木委員長 以上で児玉君の質疑は終わりました。
 次に、重野安正君。
重野委員 社会民主党の重野安正です。
 議題となっております構造改革特区法案について、幾つか基本的問題を中心に質問したいと思います。
 改革なくして成長なし、これは総理の言葉でありますが、構造改革特区なる言葉が流布され始めたのはつい最近のことと私は認識しています。それがこうして法案化される現状を見ますと、まさに悍馬無人の野を行く、そういう感がするわけであります。ところが、肝心の国民の理解といえば、まさに私は、そっちのけというのが実態ではないでしょうか。
 そこで聞きますが、確かに、法案の第二条でこの言葉の定義をしておられますけれども、これはあくまでも法律上のことでありまして、まず、経済的定義について大臣の説明をお聞きいたします。
鴻池国務大臣 構造改革特区とは、地方公共団体が当該地域の活性化を図るために自発的に設置する区域であって、その地域の特性に応じた規制の特例措置を講ずる事業を行うものと定義づけられております。
 構造改革特区を推進することの経済的効果につきましては、特定地域における構造改革の成功事例を示すことにより、全国的な規制改革を加速させ、我が国全体の経済を活性化させることにあります。また、地域特性が顕在化して、その特性に応じた産業の集積や新規産業の創出等により地域経済を活性化させることと承知をいたしております。
重野委員 大臣の今の説明は、さきに公表されております経済財政白書の中に言われている内容だと思うんです。
 それでは、お聞きいたしますけれども、経済財政白書の二百一ページ、「コラム」と称しまして、構造改革特区についての囲み欄がございます。これは一体何ですか。同じページの「規制改革の推」の部分で、一、二行これに触れただけであります。その「コラム」という欄にさらっと書いて、本文には一、二行。これが国民に対する特区の説明ですか、こういうふうに言いたくなるわけですね。これでこの法案の経済的意義づけについて説明したと言えるんですか、こう思わざるを得ないんですが、大臣の見解をお聞きします。
鴻池国務大臣 今委員御指摘のように、説明不足であったということは、私もそのように思っております。
 ただ、時間的な問題、七月にこの目的、目標が決まり、そして八月三十日で締め切って提案を受け付けて、四百二十六件の提案が出てきた。そして、本日に至ります法案審議をちょうだいいたしておるこのスピードを考えれば、これも説明不足の中では大変よく進んでおるという評価を、内部の者が大変恐縮でありますが、思っております。というのは、私は途中から乗ったものでありますから、そういう表現をお許しいただきたいと思います。
 ただ、これで終わるわけではなく、なお第二弾として、一月十五日を締め切りで第二回の地方なり民間なりの提案募集をいたしておるところでありまして、特に民間からの提案というのは極めて少のうございます。そこで、就任をいたしました私といたしましては、これから時間のある限りPR、これに努めたいと思いますし、過日のこの審議の中でも岩國委員からの御指摘もございました、外国企業はいかがなものかといったようなことにつきましても精力的に取り組んでまいりたい、このように思っております。
重野委員 大臣、率直にお認めになるわけですけれども、それはそれとして、私はそれではやはり困ると思うんですね。小泉内閣にとってこの政策は、総理自身も売りの政策というふうな認識はあると思うんですね。そういう極めて重要なものが、そういう粗削りな形で国民の前にきょう法案として出されて、今いみじくも民間のこれに対するアプローチというのはまだまだ不十分という、そのことが端的に示していると思うんですね。非常に成熟せぬままに国会に提案をしてきたというそしりは免れない。その点は、厳しく指摘をしておかなければならぬと思うんです。
 しかし、法案が出されている以上は、その法案について我々は審議はしなければならぬ、このように思います。
 そこで、この構造特区と構造改革との関係であります。
 経済財政白書によりますと、構造改革の結果潜在成長率がどれほど高まるかについて、昨年の平成十三年度年次経済財政報告で分析したとしまして、それによりますと、現在一%程度の潜在成長率を中長期的に二%程度に引き上げることが可能であると考えられる、このように記しておりますが、この内容は現在も政府として間違いない、そういうふうに言えるのかどうなのか、これをお聞かせください。
    〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕
加藤政府参考人 御指摘のように、昨年の経済財政白書では、九〇年代の低成長の継続による資本ストックの伸びの鈍化や全要素生産性の伸びの鈍化の結果、我が国の潜在成長率は、八〇年代の四%ぐらいから直近では一%に下がったというふうに分析しております。
 同時に、構造改革を行い、労働力、経営資源、資本など、我が国が有する資源を低成長分野から高成長分野に移動するとともに、新技術の開発や利用によって全要素生産性を高めれば、二%程度の潜在成長は可能と言っています。
 十三年度白書で分析しましたように、不良債権問題の解決、公共工事の効率性の確保、九〇年代に低下した非製造業の生産性の伸びを回復するための政策、女性や高齢者の社会参加が進むような改革の進展と新規雇用の創出、企業の過剰債務問題の解決によって産業が再生し、十分な資本ストックの伸びが確保されるなどの構造改革が進展すれば、中長期的に二%の潜在成長が達成可能と考えております。
重野委員 それでは、今の答弁をそのように確認いたしますが、現在も、そういうこの年次経済財政報告に盛られている同じ考えというのであれば、三条に定める構造改革特別区域基本方針では、この潜在成長率の押し上げについての寄与率、これはどの程度見込んでおられるのか、お聞かせください。
加藤政府参考人 具体的な寄与率を計算していませんけれども、今現在、労働生産性、全要素生産性の伸びはほぼゼロでございますので、それが〇・五に増加すると考えておりますから、その大部分はそういった構造改革によって達成されるものと考えております。
    〔伊藤(忠)委員長代理退席、細野委員長代理着席〕
重野委員 今の問題は、四条の二についても言えることであります。自治体が作成いたします構造改革特別区域計画では、その区域に及ぼす経済的、社会的効果を定めるとされております。この場合、社会的効果を示すにはさまざまな方法がありますが、経済的効果については当然一定の数値が示される必要があると言えます。
 そこで、具体的にどのような数値設定となりますか、お聞かせください。
鴻池国務大臣 計画の認定基準につきましては、数値を明記せよといったところはございません。委員御存じのように、いろいろな分野で種々の提案がなされておるわけでございますので、これを一定の数値であらわすことは極めて困難であると思います。
重野委員 そうであったときに、それでは、やったさまざまの取り組み、事業ですね、それがどうプラスになったのか、そういう測定はなさらないんですか。
鴻池国務大臣 測定の前に、この特区構想について多くの御理解をいただきながら第一回の提案が採用、認定をされるということになりますと、いわゆる特区制度全体の経済的な、社会的な普及効果というものが私はあらわれてくると思います。それは、民間参入が今まで限定をされていた分野につきましても、規制改革を行うことによって民間事業者の新規参入等が進んでくる、これはイコール経済の活性化につながる。あるいは、地域の特性に応じた規制改革を行うことによりまして、地域特性を生かした産業の集積、これによって地域経済を活性化することができるのではないか。それのよりよき方向が、何度も私が申し上げておりますように、よい意味で飛び火をしていく、全国に広がっていくということでの効果というものが見込めるわけでございますけれども、一概に、いろいろな提案がございますので、先ほど申し上げました数値での評価というものはなかなか難しいところでございます。
 ただ、この法案を御審議いただきまして成立をちょうだいしました後、一年の間に、その評価というものをどのようにしていくべきか、こういうシステムを考えていくということもこの法律の中に書かせていただいておるわけであります。
重野委員 やはり、取り組んだ事業がどういう具体的な成果を上げたのか、そういうものが数字でもって示されるということは、その事業をその後発展させていく、中には途中でもう撤退をするということも出てくるかもしれませんが、そういう判断の基準というか、そういう上においてもこの数値設定というのは非常に大事である。今、大臣の答弁の中で、その時間帯があるわけですけれども、その中でこの点についてはきっちり浸透させていくということが大事だと思うんですが、再度答弁をお願いいたします。
鴻池国務大臣 ただいま申し上げました、一年以内にその評価をするそういうシステムをつくり上げなければならないと思います。委員御指摘のように、数値であらわれる要素のあるものにつきましては御提案を十分配慮したいと思います。ただ、教育とか福祉の分野ではなかなか数値というのは難しいと思いますので、このあたりもひとつ御理解のほどお願いを申し上げたいと思います。
    〔細野委員長代理退席、委員長着席〕
重野委員 それでは、次に進みます。
 法案の一条と四条の性格についてお伺いいたします。
 「地方公共団体の自発性を最大限に尊重した構造改革特別区域を設定」、一条にそのように定めております。これを読む限り、あたかも自治体の自発性に基づくものであるかのような体裁をとっているわけですが、ところが、四条に言うところの、内閣総理大臣の構造改革特別区域計画の認定を得なければ、特別区域は区域たり得ない仕組みとなっているわけですね。
 この仕組みは、過去にさかのぼってみますと、例えば新産業都市だとかテクノポリス構想であるとか、あるいはパイロット自治体のように、府県を経由していく必要のあるなしの違いはあるようです、今回の場合は。しかし基本的には中央政府の認定という、これは従来型のシステムと同じではないか、私はそのように理解をするんですが、そのことと一条に言う「地方公共団体の自発性を最大限に尊重」、このことはどう両立するのか、こういう疑問を持つんですが、大臣の見解を伺います。
鴻池国務大臣 ただいま委員が例にとって出されましたテクノポリス制度は、これも十分御高承のとおりでありますが、都道府県からの申請に基づき主務大臣が承認を行うものである、こういうことでございます。また、パイロット自治体制度は、市町村が都道府県との事前協議を経た上で国に協議を行い、各省庁が回答を行うものである、こういうことでございまして、このたびのこの制度につきましては、全国的な規制改革が進展しない分野等の現状を踏まえて、法令で定められた全国的な規制についての特例を、経済的効果等を総合的に勘案した上で地域を限って認めるものであります。したがって、制度上、その適用に当たっては国による認定の仕組みが必要と相なります。
 一方、特区計画は、あくまで地方公共団体がそれぞれの地域特性に応じ自発的に立案するものであり、このような趣旨を最大限尊重すべく、関係大臣は、法令上の要件に適合した場合、裁量の余地なく同意する等、国の関与は極めて限定的なものであるということも御承知賜りたいと思います。
 よって、内閣総理大臣の認定と地方公共団体の自発性は、相矛盾することなく両立しているものと考えます。
重野委員 さらに四条についてお聞きしたいんですが、四条の四では、「特定事業を実施しようとする者は、当該特定事業を実施しようとする地域をその区域に含む地方公共団体に対し、当該特定事業をその内容とする構造改革特別区域計画の案の作成についての提案をすることができる。」このように書いているわけです。
 つまり、特定事業をしようとする者は、構造改革特別区域の自治体に案の作成を提案することができるわけでありまして、このことは、単に案の作成にとどまらず、事業の実施主体になる可能性は極めて高い、このように思うわけです。というよりも、事業の実施主体となることをいわゆる民間がねらう、そのために案の作成を提案する、そのように言った方が実態に近いのではないか、このように私は思うんです。
 当然、案の作成、提案、採択、議会承認、申請という一連の手続過程において自治体の自律機能が問われるわけでありますが、この構造改革特区計画、それ自体が中央からの財政支援なしで行われることを前提としている以上、計画案と金とが一体となった提案、これはどのようにチェックし、公正さを保つのか、そのことが重要な課題と考えるわけです。
 具体的チェックシステムについて四条の六だけで果たして十分なのか、場合によっては自治体は民間事業者のトンネル機関となりかねない、こういうおそれを抱くわけですが、大臣の見解をお聞かせください。
鴻池国務大臣 自治体が民間のトンネルになるんではないかという御指摘でございますけれども、そういう事態にならないということを申し上げたいと思います。
 この特区計画というものは、地方公共団体みずからの判断に基づき、その地域の活性化を図るものとして策定をされているということが一つでございます。また、法案第四条第四項につきましても、民間事業者等の提案を受けて計画を作成するかどうかというのは地方公共団体の判断によるものでありまして、それゆえに、地方公共団体が民間事業者等の提案を受け入れなかった場合にその理由等を通知する旨の規定も設けているところでございます。
 財源の問題のお話がございました。
 この特区計画は、基本方針にまず適合するものであること、そして特区において適切な経済的、社会的効果を及ぼすものであること、円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであるという基準に照らして妥当なものかという観点から認定をする、こういうことでありまして、財源の問題や民間事業者との関係につきましては、計画が円滑かつ確実に実施されるのかという観点から総合的に評価していくこととなり、実行が無理な計画が認定されたり、第四条第六項により添付された民間事業者の意見のみで認定されるようなことはございません。
重野委員 大臣のそういう答弁を受けとめて、ただ、私が懸念していることというのは、これは忘れてはならぬことだと思うんです。いよいよこれが実際にスタートするまでの時間がありますが、今私が持っている懸念がそれまでに払拭できるように、またその経過を正確に報告していただきたいと要望しておきたいと思います。
 次に十条でありますが、十条では、「内閣総理大臣及び関係行政機関の長は、」「必要な助言その他の援助を行うように努めなければならない。」このようになっていますが、この場合の「必要な助言その他の援助」とは具体的に何を指しているのか、説明をお願いしたい。
中城政府参考人 お答え申し上げます。
 認定を受けました地方公共団体が構造改革特別区域の計画を円滑かつ確実に実施することができるように、内閣総理大臣及び関係行政機関の長が行う、計画実施に関する技術的なアドバイスや必要な情報提供ということでございます。
重野委員 確認しますが、技術的なアドバイス、必要な助言。技術的なアドバイスといっても、それは、今既に各自治体からいろいろなプランが出されていますね。非常に多岐にわたりますね。あるいは助言にしても、そういう自治体の期待にかなう助言、それはもう三百六十度、さまざまな助言をしなければなりませんが、そういう助言をするときの一つの基本的な立場というのか、これ以上のことはやってはいけない、これ以下でやってはならないとか、そういうものというのは既に準備されているんですか。
中城政府参考人 あくまで、計画が円滑また確実に実行される、そういう観点からのアドバイスということでございます。
重野委員 今度のこの事業は、財政支援は一切ない、そして直接総理大臣に認可申請ができる。そういうふうに見ていくと、何も小泉内閣の大きな売りの政策というふうには、それほどに言うほどのものなのかなというふうな感じがしないでもないわけですね。
 特に、財政支援はないということですから、四章に、学校教育法の特例、職業安定法の特例、市町村立学校職員給与負担法の特例と、いろいろな特例が、数えたら十四か十五あるんですね。そういういろいろな特例措置を実施する場合、その事業は、よく単独事業か補助事業かというふうな分類があるんですけれども、今回のこの法律に基づき自治体が行う事業というのは、そういう整理をすると、自治体がやる場合は自治体の単独事業、民間がやる場合は民間事業ということでそれは民間の事業者の負担、こういうふうになるんだなというふうに推測するんですが、そういう推測でいいんでしょうか。
木村大臣政務官 大変先生地方の実情に詳しくて、地方への負担が、民間への負担がこれによってかかるんじゃないかという御懸念ではないだろうかと思います。
 もう先生御承知のように、この法案ができます過程の中で、経済を活性化させるために、それを阻害している規制をどのように見直していくかというのがそもそも原点でございます。ただ、全国一律にある規制を一度に見直し、また撤廃していくということは非常に時間もかかるし難しいので、地域の実情に合って地域で許されるものから徐々にやっていこうというのがそのスタートでございます。そんなことから、今回の法案の中には、財政的な措置を特別に講じないということが設けられたわけでございます。
 ただ、これまでも予算の中でいろいろな補助制度やらいろいろな枠組みがあるわけでございますので、それらを有効的に使う、またある意味ではそれらを集中してその事業成功のために使っていくということは当然考えられることでございまして、そうあることを期待しているわけでございます。
 今回の法案では、そういう枠組みを有効に使うことによって、地域の、地方の創意工夫をいかに発揮していただいて知恵を出していただけるかというところが大変重要なところになってくるのではないかと思っております。
重野委員 確認いたしますけれども、この事業で別に新たな補助制度をつくるということは考えていないけれども、しかし、この事業を計画し実行する過程において、既存のいろいろな制度がありますね、既存の制度をそれぞれ継ぎ足しをしながらやるというふうな理解でいいんですか。
木村大臣政務官 先生のおっしゃるとおりだと思います。
重野委員 それじゃ、次に進みますが、これに若干かかわりもあるんですが、かつて地域振興策の一つに新産業都市建設事業及び工業整備特別地域整備事業というのがありました。
 私の出身であります大分県も、広大な埋め立てをしまして、今多くの企業が立地をしておりますが、この事業費は、私の調査ですからもしかして若干間違いがあるかもしれませんけれども、一九六五年度から二〇〇〇年度まで、府県で総事業費約十七兆八千億円、市町村で、これも一部データ不足があるかもしれませんが、約十六兆八千億円、こういうふうになっています。これに対する同期間内の自治体負担額は、府県で五兆六千億、市町村で六兆八千億、もちろんこれ以外に、府県に対しては新産都債であるとかあるいは利子補給分があるわけでございます。相当な財政措置が行われたことは、このことでも明らかでございます。
 私の大分県を調べてみましても、一九六四年度から一九九五年度までの事業投資額約二兆八千億、そのうち、国庫負担分が約六千二百億、二二・四%、県の負担が四千七百億円、一七・一%、市町村の負担が四千五百億円、一六・五%、相当な額に上っているわけです。生活関連の整備状況からしますと、大体目標の九〇%台前半ということで今推移をしておるところでございます。こういうふうに、この間においては財政上の支援措置があったわけであります。
 そうすると、財政上の支援措置は先ほど政務官に確認いたしましたが、しかも地方財政は極めて窮乏化している今日でありまして、この私の調べ、この中にも事業をずっと列挙していますが、そういう事業が本当にやれるのかなというふうに私は素朴に心配するのであります。この点についてはいかがでしょうか。
鴻池国務大臣 財政措置につきましては、先ほど木村政務官の答弁のとおりでございます。
 御心配の向きもわからぬでもないという表現は大変失礼かもしれませんけれども、とにかくやってみなければわからぬ部分がたくさんございます。しかし、これをやりたいという地方の情熱というものをこの特区構想は受けとめておるということでございますので、従来型の財政措置を講ずることなく、地域の活性化につながるアイデアというものが地方公共団体からも多く出されているということもございます。
重野委員 私も、長い間地方自治体に関係してきた立場でありまして、この事業が結果として地方自治体にとっては大変な重い荷物になったというふうになりはしないかという心配があるから、くどいようにそのことを申しているわけです。
 資料によりますと、地方公共団体からの構造改革特区構想の提案概要、これを読ませていただきました。これを見ましても、実にさまざまな計画というかプランが示されているわけですよ。
 この中で、この新しい構造改革特区という特例、あるいは新たな枠組みを講じなければ、これでなければネットにかからないというような事業が全部なのか。あるいは、精査していけば今ある制度の組み合わせによってできるものもあるだろうと思うんですね。そこら辺はどのように精選をされておるのか、お聞かせください。
鴻池国務大臣 現行制度で対応可能というものも大変多くございます。これについて、現行制度で対応可能だといいながらも、なかなか可能でないという、きのうの宮内参考人の、遅々として進む、こういうような部分も確かにあろうかと思いますけれども、これは我々が担当をいたしております責任として、十分ウオッチングをしていかなければならないと思いますし、先ほど申し上げました第二次募集の中身におきましても、こういう点を十分検証していきたい、このように思っております。
重野委員 今大臣もお認めになりましたように、現行法令の範囲内でできるものもある。だけれども、自治体が、この中にたくさんの事業が上がっていますね、この上がってくる、あるいは要望してくるというその理由はどこにあるのか。そういうふうなことを要望している自治体の側のバックグラウンド、その背後にある、あるいはそういうことを言わせしめる状況というものをどう見るかというのは、私は非常に大事な点ではないかというふうに思うわけです。
 私は、国がやるんですから、やはりその制度に対する自治体の側の信頼度というのは高いと思いますね。だから、国のやる事業だから、それに乗っていけばいろいろな意味でお金をあるいは財源を引き出すことができるんじゃないか、そういう思いというのが私はやはり本音としてあるんじゃないかというような気がするんですよ。そういう実態認識を私は、全部とは言えませんが、かなりの部分持たざるを得ないと思うんですが、大臣、その点についてはどのように受けとめますか。
鴻池国務大臣 繰り返しの答弁でございますけれども、この特区構想というものは、従来型の財政措置はとらないということで、私どもとすれば周知徹底をさせていただいておるつもりであります。
重野委員 それでは、ちょっと視点を変えて、財源の問題について入っていきたいと思うんです。
 今年度の現時点での税収の落ち込み、私の認識としては約三兆円程度落ち込むというふうに聞いておりますが、この点、そういうことでいいんですか。
谷口副大臣 重野先生のお尋ねでございますが、土台となります十三年度の税収減が一兆七千億あるわけでございます。それに十四年度の還付金の増加が五千億ほどございまして、今現在、大体二兆二千億程度の減収の予定であります。
 先日、七―九のQEが発表されまして、これは七―九、〇・七%のプラスだったということでありますけれども、それにつけ加えて、各企業の中間決算の状況を考えながら、この十一月の下旬に税収見通しが出るわけですが、塩川大臣は塩川大臣の感覚として今二兆七千億から八千億程度の減収かなというようなことをおっしゃっておるわけですが、いずれにいたしましても、二兆円を上回る税収減ということで、これは十一月の下旬に発表される予定でございます。
重野委員 今の説明、推計ですが、そういう数字が報告されました。当然、地方税も、法人二税の影響は大きいわけでございまして、まして一年おくれであらわれる地方税の税収減は地方財政に深刻な影響を与えると思います。こうした税収の大幅な減が、いわゆる三十兆円の国債発行枠に総理もずっと固執をしておりますが、この三十兆円の国債発行枠に固執すべきでないというふうに私たちは考えております。
 私がここで質問するのはそのことではなくて、構造改革と称して、結果的に経済の縮小均衡に走ったという結果になっているわけですね。現下の深刻な不況を克服する一つの手だてとしていわゆる経済特区法案というものが考えられたと言っても、あながち的外れではないと私は認識しています。問題は、この策がどれほど今日的状況の打開に寄与するのかという点です。我々は、その前に、社会的、経済的安全ネット、落ちこぼれないようにネットをしっかり張ることが大事だというふうに今主張し続けているわけですけれども、そういう点も含めて、私は、この際、自治体に財源と権限を思い切って付与する、そういう意味での構造改革、そのことが今、喫緊の課題として求められているのではないかと思うのですが、その点について、大臣の見解、認識をお聞かせください。
鴻池国務大臣 同じ答弁で恐縮でございますが、特区制度は、あくまで地方や民間が自発的に計画を立案して、それぞれの地域の特性に応じて規制の特例を導入するものでございまして、いわゆる財源のことに関しましては、従来型の措置は講じないということにいたしておるところでございます。
重野委員 大臣のそういう答弁が、この主体を担う自治体あるいは民間の活力をそぐことのないように私は祈っておかなければならぬのかなと思っています。
 本当に今、自治体は大変です。我々長い間自治体で働いた者からすれば、国の政策をいわゆる自治体の対応として背負わされてずっと言うとおりにやってきた。気がついたら、もう私の自治体も県債発行残高が一兆円間近というような大変な財政状況にあるわけですね。だから、そういう自治体であるから、今回のこの法案が地方自治体にとって、自由になるのか、あるいはきっかけをつくってくれるのか、私は期待は大きいと思うんですよ。
 今の答弁を聞いておると、既存の政策、制度を組み合わせてつくり上げていくんですよという先ほどの政務官の答弁もありましたけれども、やはり今、この国はかつて経験したことのない本当に危機に置かれている。そのときに地方自治体がどういう役割あるいは仕事をするのかという、呼び水になるようなものに仕上げていかないと問題がある、私はそういう危惧の念を持っていますが、大臣どうですか。
鴻池国務大臣 大いなる期待をするという委員の御指摘を含めた御意見に大変ありがたいものを感じております。
 これにつきましては、やはり税を使う主体から税を払う主体を多くつくり上げていく、これによって、あすの財政難には対処できないかもしれませんが、あさっての財政に寄与していく、税収に寄与していく、民間の活力を十分取り入れるというところに私は主眼点を置いているところでございますので、どうぞ深い御理解をいただきまして、この法案の成立に御支援を賜りたいと思います。
重野委員 大臣、この法案に大いなる賛成をしたんじゃないんですよ。地方自治体の市町村長さん、県知事さんは、今このときに、自治体が、どういう浮上の策を国が示すのかという意味で期待をしている。この法案に私が大いなる期待をしているわけじゃない。そういう点についてはちょっと誤解せぬように。
鴻池国務大臣 そういった誤解ではございません。賛否はそれぞれの政党の御意見であろうかと存じます。
 ただ、地方自治体も国がこういうことをやるということを期待しているということにつきましては、この特区構想は逆でありまして、地方公共団体また民間がどのような提案を国にぶつけてくるか、それによって我々がどのようにできないものを規制緩和していくか、これが非常に大事なところであるということも申し添えたいと思います。
重野委員 もう時間もないようですが、最後に、この法案の今後の扱いについて聞いておきたいのです。
 まず、七条の一で、内閣総理大臣は実施の状況について報告を求めることができる云々、こういうふうになっております。そして同条の二では、関係行政機関の長は特例措置の適用の状況について報告を求めることができる、このように規定をしております。これら規定は、毎年毎年こういうことをやるというふうなことなんですか。その点については。
中城政府参考人 お答え申し上げます。
 七条の規定は、内閣総理大臣または関係行政機関の長が計画の実施の状況あるいは規制の特例措置の適用の状況について、計画の進捗状況を踏まえまして、必要に応じてその状況を適宜把握する、そういうことができるようにするための規定でございまして、定期的に実施するということは想定しておりません。
重野委員 時間が来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。
佐々木委員長 以上で重野君の質疑は終了いたしました。
 次回は、明二十一日木曜日午前九時十分理事会、午前九時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時十五分散会


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