衆議院

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第7号 平成17年4月6日(水曜日)

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平成十七年四月六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松下 忠洋君

   理事 木村 隆秀君 理事 河本 三郎君

   理事 増田 敏男君 理事 山本  拓君

   理事 宇佐美 登君 理事 須藤  浩君

   理事 玉置 一弥君 理事 田端 正広君

      江渡 聡徳君    大村 秀章君

      奥野 信亮君    川上 義博君

      木村  勉君    小泉 龍司君

      桜井 郁三君    菅原 一秀君

      鈴木 淳司君    土屋 品子君

      西村 康稔君    萩野 浩基君

      早川 忠孝君    宮澤 洋一君

      宮下 一郎君    渡辺 具能君

      稲見 哲男君    岩國 哲人君

      梶原 康弘君    小宮山洋子君

      今野  東君    篠原  孝君

      島田  久君    田嶋  要君

      高井 美穂君    藤田 幸久君

      牧野 聖修君    太田 昭宏君

      吉井 英勝君

    …………………………………

   議員           宮腰 光寛君

   議員           小坂 憲次君

   議員           西川 京子君

   議員           白保 台一君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   内閣府大臣政務官     江渡 聡徳君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   衆議院法制局第四部長   鈴木 正典君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         齊藤  登君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官)          西阪  昇君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           新島 良夫君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局勤労者生活部長)      松井 一實君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       伍藤 忠春君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房政策評価審議官)       佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           高橋 直人君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           染  英昭君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局次長)           山田 修路君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局計画部長)         宮本 敏久君

   内閣委員会専門員     高木 孝雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月六日

 辞任         補欠選任

  大村 秀章君     小泉 龍司君

  佐藤 剛男君     渡辺 具能君

  萩野 浩基君     菅原 一秀君

  早川 忠孝君     宮下 一郎君

  石毛えい子君     岩國 哲人君

  市村浩一郎君     梶原 康弘君

  藤田 一枝君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  小泉 龍司君     大村 秀章君

  菅原 一秀君     萩野 浩基君

  宮下 一郎君     奥野 信亮君

  渡辺 具能君     佐藤 剛男君

  岩國 哲人君     石毛えい子君

  梶原 康弘君     篠原  孝君

  高井 美穂君     稲見 哲男君

同日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     鈴木 淳司君

  稲見 哲男君     藤田 一枝君

  篠原  孝君     田嶋  要君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 淳司君     早川 忠孝君

  田嶋  要君     市村浩一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 食育基本法案(小坂憲次君外五名提出、第百五十九回国会衆法第四九号)


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     ――――◇―――――

松下委員長 これより会議を開きます。

 第百五十九回国会、小坂憲次君外五名提出、食育基本法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案につきましては、第百六十一回国会において既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 食育基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

松下委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府食品安全委員会事務局長齊藤登君、文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官西阪昇君、厚生労働省大臣官房審議官岡島敦子君、新島良夫君、労働基準局勤労者生活部長松井一實君、雇用均等・児童家庭局長伍藤忠春君、農林水産省大臣官房政策評価審議官佐藤正典君、大臣官房審議官高橋直人君、染英昭君、総合食料局次長山田修路君及び農村振興局計画部長宮本敏久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松下委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土屋品子君。

土屋委員 自由民主党の土屋品子です。

 時間がありませんので、早速質問させていただきたいと思います。

 昨今、日本では食を取り巻く環境が本当に悪化している状態でございまして、この法律案でもそのことについてはきちんと書かれているわけでございますけれども、これを何とかするのが政府また議会の責任であると考えております。

 私は、この法案に賛成する立場からいろいろな質問をさせていただきたいと思います。そして、きょうの質問の中で、国民の皆さんに対してしっかりとメッセージを送っていきたいと思います。

 まず初めに、現在、食育に関する関係府省は、農林水産省、文部科学省、厚生労働省、内閣府食品安全委員会と多岐にわたっております。その連携の実態について具体的にお答えをいただきたいと思います。例えば、担当者間の定期的な会合の開催とか施策推進のための連絡会議等、そういうものが存在するのか。食品安全委員会を除いた三省それぞれに御答弁をお願いします。手短によろしくお願いいたします。

西阪政府参考人 お答えいたします。

 文部科学省の取り組みについてお答えさせていただきます。

 各地域において子供に対する食育を推進する上では、学校と地域の生産者、流通関係者が連携することが効果的であり、国におきましても関係府省が適切に連携を図りながら食育を推進することが重要と考えております。

 このため、文部科学省でも関係府省との連携に努めておりまして、例えば平成十二年には当時の文部省、厚生省、農林水産省で食生活指針を策定いたしまして、協力してその普及啓発を図ってきたところでございます。また、農林水産省が提唱し、開催しておりますニッポン食育フェアについて、私どもの給食関係団体が参加しているほか、文部科学省としても出展し、積極的に協力を行っているところでございます。さらに、文部科学省が主催をいたします食に関するシンポジウムについては、農林水産省、厚生労働省の協力を得て実施しているところでございます。

 今後、食育の推進には関係府省の一層の連携が不可欠であると考えられ、本法案の成立により、各府省における食育に関する施策の総合的かつ計画的な推進が図られるものと考えております。

岡島政府参考人 厚生労働省でございます。

 食育の推進に当たりましては、関係府省の連携が非常に重要だというふうに考えております。

 具体的に申し上げますと、食生活指針を平成十二年に文部科学省、農林水産省、厚生労働省で策定し、連携しながら普及啓発を図っているところでございます。またさらに、健康づくりの観点から、何を具体的にどの程度食べたらいいのかということをわかりやすく示すフードガイドをつくろうとしておりまして、現在、農林水産省と連携して検討しているところでございます。さらに、食品の安全に関する情報、意見の交換を行うリスクコミュニケーションの取り組みにつきましても、内閣府食品安全委員会や農林水産省と連携して進めているところでございます。

 また、これらを進めるに当たりまして、担当者レベルでの打ち合わせ、連携ということを常にとっているところでございます。

 今後とも、食育の推進に当たりましては、関係府省と積極的に連携を図って行ってまいりたいと考えております。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども農林水産省といたしましては、日本型食生活の実現、あるいは農林水産物、農業に対する正しい理解の普及、その他、地産地消の推進、こういった観点から、関係府省と連携いたしまして食育の推進に努めているところでございます。

 具体的な連携といたしましては、今厚生労働省からもお答えがございましたが、平成十二年には、当時の文部省、厚生省それから農林水産省で食生活指針を作成いたしまして、食育を推進する一環としてその普及啓発を図ってきたところでございます。さらに、現在、この食生活指針をさらに具体的な行動に結びつけるものとして、厚生労働省と連携いたしまして、適正な食事の摂取量をわかりやすく示したフードガイドを策定中でございます。

 こうした各省との連携をさらに今後とも強化いたしたい。そういった取り組みは、本法案の成立によってさらに強化されるのではないかというふうに私ども期待をいたしております。

土屋委員 今、三省の取り組みについて、平成十二年度から互いにいろいろ情報交換をしながらなさってきているというようなお話を今伺いましたけれども、ここが一番重要な点だと思っております。特に、二省、例えば文部科学省と農林水産省でやっていることが厚生労働省では全くわかっていないとか、また逆もあります。そういうようなことがないように、しっかりやっていただきたいというのが私の願いでございます。

 それから、今、文部科学省の方に食育に関する指針のことをお話しいただきましたけれども、今回、五月に改正学校教育法が可決、成立し、小中学校において栄養教諭を配置することになりました。そのこと自体は大変に高い評価を得ているわけですけれども、現在、学校栄養職員から栄養教諭になるということで、実際にこれは効果が上がるのだろうかという疑問を感じているわけでございます。学校職員を栄養教諭にするための具体的な施策の中で、どのような推進をしていかれるか、御説明いただければと思います。

西阪政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきましたように、さきの通常国会で学校教育法等の一部を改正する法律が成立をいたしまして、この四月から栄養教諭制度が開始されたところでございます。栄養教諭は、学校における食育の推進の中核的な役割を担うものとして制度を創設したものでございます。今後、各地域で実際に栄養教諭が配置されていくとともに、各地域、学校において栄養教諭がその能力を十分に発揮し、学校における食育を推進していくことが期待されるわけでございます。

 このため、文部科学省では、まず、本年度から栄養教諭制度を円滑に実施するために、栄養教諭免許状を有する者を全国で早急に確保することが必要であり、現在の学校栄養職員が円滑に栄養教諭免許状を取得することが重要であると考えております。このため、平成十七年度予算において、現職の学校栄養職員が栄養教諭免許状取得のために必要な科目を各地域で修得できるよう、講習会の開設に必要な経費を計上しているところでございます。

 また、栄養教諭の実際の配置につきましては、これまで文部科学省では、昨年五月の法律の成立、公布以後、栄養教諭制度の意義等について周知に努めているところでありまして、さまざまな会議等において、栄養教諭の配置の重要性の理解を促してきたところでございます。さらに、教職員等の食育に関する啓発を進めるためのシンポジウムや、栄養教諭等の指導力の向上のための研修会の開催を引き続き行うこととしているほか、本年度は、栄養教諭を中心として、食に関する指導を体系的に実施するための指導参考資料を作成、配付することとしております。

 文部科学省としては、これらの取り組みにより、栄養教諭を中心に学校における食育が推進されるよう、今後とも努めてまいりたいと考えております。

土屋委員 少なくとも現状では、この栄養職員、栄養教諭を置くということについては、各都道府県の自主性に頼っている部分が大きいのではないかと感じております。さらに栄養教諭の配置が進むように努力をしていただきたいと思います。

 それから、私自身は栄養士の資格を持っていまして、前から食育の重要性を訴えてきたわけですけれども、学校の教科でない栄養というものを、既存の教科である保健体育や家庭科、それから社会科、理科の一部を融合させてどう授業が展開されていくのかという大きな課題があると思っています。

 そういう中で、文部科学省としては具体的な教案づくりに関与する予定なのかということと、それから省として、実際に現場の栄養職員に参加してもらって具体的な授業へのかかわりというのを検討したことがあるかどうかということをあわせてお伺いしたいと思います。

西阪政府参考人 学校におきます食育につきましては、御指摘いただきましたように、関連の教科で教えるということとともに、学校給食の実施を通じて、あるいは特別活動など総合学習の時間などを通じて、学校教育全体で取り組んでいくというものであるというふうに考えております。

 この中で、栄養教諭はそういう学校全体での食育の推進の中核的な役割を担っていただくということを考えておりまして、今後、各栄養教諭が配置されましたら、各学校においてそのようないい関係、いい体制をつくって推進していただきたいというふうに考えております。そのために、私どもといたしましては、十七年度、食に関する指導を体系的に実施するための指導参考資料を新しく作成して配付したいというふうに考えているところでございます。

土屋委員 それは教案づくりというのではなくて、啓蒙みたいなものでしょうか。

西阪政府参考人 教案づくりにも参考になるようなものということで考えております。

土屋委員 積極的によろしくお願いしたいと思います。

 それでは、今、学校教育の中の栄養教諭についてお伺いしましたけれども、これから食育については、子供たちが小さいころから食育について勉強するだけではなくて、国民的に広げていく中で、農林水産省や厚生労働省がどれだけ独自の施策を展開するかということが非常に大きな課題だろうと思っています。

 そこで、まず厚生労働省に関して、平成十六年度版厚生労働白書において、食育とは食に関する知識と食を選択する力を修得し健全な食生活を営む力を育てるものであり、食の安全確保のみならず心身の健康を確保とありますけれども、現状の取り組みはどうなっているか。また、予防医学としての位置づけや予算措置、特に企業との連携なども推進していくということについてお話を伺いたいと思います。

岡島政府参考人 高齢化の進展あるいは食生活におきます栄養の偏り、不規則な食事等による生活習慣病が増大しておりまして、食育につきましては、生活習慣病の予防という観点からも重要であるというふうに位置づけております。一次予防に重点を置きました健康日本21の推進、あるいは食生活指針の普及啓発に努めるといったことを現在推進しているところでございます。

 具体的に申しますと、地域におきます食生活の改善を推進する食生活改善推進員の活動の支援、ヘルシーメニューの提供に取り組む飲食店への支援、あるいは健康づくりのための食育の効果的な推進を図るための基礎的なデータの収集、つまり国民健康・栄養調査による科学的な根拠の集計、情報提供などを行っております。これら施策に必要な経費として、十七年度には約五億円を計上しているところでございます。

 また、企業への取り組みの推進という観点で申しますと、飲食店のヘルシーメニューの提供などを政策としてはやっておるところでございますが、例えば社員食堂におきまして健康に配慮したメニューの提供を行っているとか、あるいは栄養成分表示の推進に努めているといった事例もございます。

 今後、食育基本法が成立することによりまして、これら関係者の方々の取り組みが一層進むのではないかと期待しているところでございます。

土屋委員 さまざまな取り組みについてお話を伺いましたけれども、予防医学という観点は非常に大事だと思っています。その意味では、予防医学を推進することによりまして、健康保険医療費の削減に貢献できるわけですので、企業などにどんどん取り組みをしていただきたいと思います。

 それから、農林水産省の取り組みに関しましては、食育担当班を設置しているということを伺いまして、本当に感謝するところでございます。最近の食育活動が食糧自給率の向上及び地産地消による農山漁村の活性化などに非常に重きを置いていると思いますけれども、どの程度それが結果として結びついてきているのか。要するに、そういう推進を始めてから今の間、結果が出てきているのかということをお伺いしたいと思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 ここ二、三年、あるいは最近の取り組みということで申し上げれば、平成十五年に、一月を食を考える月間ということで位置づけいたしまして、その間に、食を考える国民フォーラムあるいは食生活や食の安全、安心について直接見る、あるいは触れる、食べる、楽しむということで、ニッポン食育フェアといったような各種のイベントをこの一月の月間中に行っているようなところでございます。こういった活動を通じまして、食あるいは農に対する国民の理解が一歩一歩進んでいるのではないかというふうに考えております。

 それから、地産地消の取り組みにつきましては、これもここ四、五年ぐらいの取り組みかと思いますけれども、学校給食における地場農産物の活用の促進を図る、あるいは、これはもう私どもとしても補助金の中に組み込んでおりますけれども。それから、地域の生産者が地元消費者に直接販売する取り組みなど、各地で自発的な取り組みも見られているところであります。

 ただ、しかしながら、我が国の食糧自給率は、平成十年度以降十五年度まで、カロリーベースで四〇%ということで横ばいの状況になっております。こうした取り組みが、国産の割合が高い米や野菜などの消費の減少を少なくとも緩和しているのではないか。ひいては、そういったことで食糧自給率の維持あるいは農山漁村の活性化に貢献してきたのではないかというふうに私ども考えております。

 いずれにいたしましても、今お話しになった自給率の向上といった問題につきましては、新たな食料・農業・農村基本計画の中で今後の目標を定めまして、今申し上げましたような活動もその中に位置づけて、今後とも発展させていきたいというふうに考えております。

土屋委員 私がちょっと統計を見たところ、地産地消で地域のものを学校給食に使っているということで、この二年間ぐらいの統計でいいますと、ふえている地域というのが何県かしかないかと、ちょっと今手元に資料がないんですけれども、何県かしかなかったように思うんですね。そういう意味では、農業でも、農業をやめていく人も多いし、老齢化している中で、そういうことも影響しているかもしれませんけれども、やはり給食の中に地産地消というのはもっともっと推進していっていただきたいなと思うところでございます。よろしくお願いしたいと思います。

 こういう統計に関しましても、短期的に結論が出るものではなくて、特にこの食育なんというものは、今食育基本法をつくってから、十年、二十年後を見据えないと結果は出ないものであるというのはもう皆さんも周知のことだと思いますので、粘り強く評価と活動を繰り返すことが重要であろうと考えていますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それから、食生活指針については、先ほどフードガイドをつくっていくというお話を伺いましたので、ちょっと省かせていただきます。

 次に、食の安全は、BSE問題を取り上げるまでもなく、すべてに優先する課題であろうと思います。食育を根底から支える基盤とも言えるわけでございまして、法案成立後の食育推進について、食品安全委員会としてどのような取り組みをなさるか、お話を伺いたいと思います。

齊藤政府参考人 先生御指摘のとおり、食品の安全性の確保につきまして、食品安全委員会自体は、食の安全の最も基本となりますリスク評価を中心に行う機関、またあわせてリスクコミュニケーションを行う機関、このように位置づけられておるわけでございます。

 このため、食育との関係につきまして、食品安全委員会といたしましては、食品の安全性の確保に関する情報の提供、それからそれに関する意見交換の促進に従来から努めてきておるところでございますが、今後ともこれを推進してまいりたいというふうに考えております。

 具体的には、委員会を公開で開催しておるわけでございます。このほか消費者、生産者等、幅広い関係者が参加する意見交換会等の開催、それから食の安全ダイヤルというのを設けてございます。これによりまして、直接消費者等からの相談を受ける体制を充実してまいること、また季刊誌やパンフレットの配布、充実、その他ホームページにつきましても、そういうような形で情報提供に引き続き取り組んでまいりたい、このように考えてございます。

土屋委員 食の安全というのは本当に今国民の間で大きな課題でありまして、その点についてやはり危機感を持って、しっかりと引っ張っていっていただきたいと思います。特に、省庁間の連携をするに当たって、どこの省がリーダーシップをとっていくのかということが今わかりにくい状況であろうと思うわけで、そこら辺を食品安全委員会が、安全という意味では取りまとめて引っ張っていくということを期待したいと思います。

 国民運動としては、食育の運動というのは、国民一人一人がみずから食について考え、判断する能力の養成でありまして、まさに人間力の向上であると考えています。ですから、押しつけるのではなくて、自分が選択する能力を持つということが一番大事だと考えておりますので、この点を、今いろいろなパンフレットもつくって啓蒙するということもおっしゃいました。

 私、よく思うのですけれども、いろいろな省庁でいろいろな啓蒙のパンフレットをつくるのですけれども、予算の都合もあるとは思いますけれども、枚数が少ないという現実があると思います。私も、いつぞや、どこかの省で、ちょっと地元に配りたいから、これは啓蒙するのにいいからということでパンフレットをいただこうと思ったら、実は何枚しか刷っていないのでもうありませんということがありました。

 それだったら、省庁をまたいで予算を一つにまとめて、そしてそういう啓蒙活動のパンフレットをつくっていただいて、有効に予算を使っていただけるようにお願いしたいと思います。

 それでは、大変お待たせしましたが、提案者の先生にお願いしたいと思います。

 具体的に、関係省の新規予算措置が少ない中で、フレームだけをつくり、地方自治体や企業団体に丸投げでは困るので、ぜひとも法整備と政策を連動していただきたいと思っております。

 予算措置が伴った施策を打ち出していくべきだと考えていますが、法律制定後に策定されることとなる基本計画の数値目標が具体的にどのような項目となるのか、またその取り扱いとあわせて、提案議員の方にお願いしたいと思います。

宮腰議員 御提案のように、食育基本法が制定されることによりまして、法整備と政策が連動され、予算措置が伴った施策が打ち出されることが期待されております。

 十七年度予算におきましては、文部科学省における食生活学習教材の作成、配付、厚生労働省における国民健康づくり運動の推進、農水省における食や農林水産業における体験活動の推進等の予算措置が講じられておりますが、これらの措置が法制定によりまして一層充実されることを期待いたしております。

 基本計画の数値目標ということでございますが、基本計画におきましては、第十六条第二項第二号におきまして、食育の推進の目標に関する事項が定められることになっております。目標年度の設定や、目標年度における達成目標をどう定めるかということでございますが、とりわけ数値目標につきましては、例えば教育ファームをふやすことや、朝食を食べない欠食児童を減らすこと、それから先ほど委員のお話にもありましたとおり、学校給食における地場産品の使用率の向上等の目標値を設定することが考えられると思います。

土屋委員 どうもありがとうございます。

 今お話しになったのはほんの一部の数値目標だと思いますけれども、柔軟に、いろいろなものが出てきたときに、やはり指標をいろいろな形で書きかえていけるような体制をつくっていただきたいと思います。

 それから次の質問です。これで最後になりますけれども。

 アメリカにおいては、食育が国力を左右するというマクガバン・レポートに基づいて、食育を国策とまで判断し、その政策に力を入れていますが、今回の食育基本法の理念ではここまでの危機感が欠けているのかなというような思いがありますけれども、その辺、そうではないというお答えが出るかどうか。

 食育担当大臣の設置なども考えていらっしゃるということですけれども、各省の所掌範囲をかえってわかりにくくするのではないかと思ったりもしていますが、最大限にその効果を発揮するための効率的な連携や協力体制を明確にする必要があると思っております。どのようなことを想定されているかを伺いたいと思います。

宮腰議員 食の多様化、食品流通のグローバル化などの、近年の食をめぐる環境の変化の中で、委員御指摘のとおり、国民の食生活におきましては、栄養の偏り、不規則な食事等による生活習慣病の増加などの看過できない問題が顕在化しております。今アメリカ等のお話がありましたけれども、アメリカにおいては、学校朝食なども国家政策の一つとして二十数年継続して取り上げているということでございます。

 日本の現在の状況に対応するためには、食育に関する施策について共通の目標を設定するということがまず大切でありまして、その目標のもとで、政府全体の指令取りまとめ役を置くということを通じて、具体的な行動計画を定めていくということが大切だと思います。同時に、各省庁のそれぞれの多様かつ多面的な取り組みの持ち味を十全に生かしながら、しっかりと全体として調和のとれた形で相乗効果を発揮していく、そして食育を国民運動として展開していくということが必要だと思っております。

 このため、本法案におきましては、食育に関する目標を含む施策についての基本的な方針、担当大臣の設置、食育推進基本計画の作成、これを全体として効果的に推進していくための食育推進会議の設置等を行うこととしております。食育担当大臣の設置によりまして、各府省連携を強めることができるものというふうに考えております。

土屋委員 きょういろいろ質問させていただきましたけれども、やはり、どこが取りまとめるのか、だれが取りまとめるのかというのは本当に重要な問題だと思います。そういう意味で、今はっきりと食育担当大臣を設置するということでお答えいただきましたけれども、この大臣の役割は大きいと思います。大変期待しているところでございます。実際に、法律を通しても、いつも各省庁の連携が悪いということが出てきますので、ぜひ、各省の皆様、しっかりと連携をとっていただきたいと思います。

 私自身、先ほども言いましたけれども栄養士でありまして、栄養士の皆さんには大変期待しております。栄養教諭という制度もできて、学校でさらに活躍をしていただくということでは本当にここがかなめになっていくのではないかと思っております。その中で、学校における教育格差が問題とされている中、栄養教諭の個人の能力差によって本当に結果に差が出るということのないように、栄養教諭養成についてはさらにしっかりとということでもう一度お願いをしたいと思います。

 それから、食育ということは、フードセキュリティーとも密接な関係があることは言うまでもないわけですけれども、安全性の確保にばかり目が行きがちですけれども、一方、供給の確保という二面性を持っていることも忘れてはならないと思います。日本のように食糧供給の多くを輸入に頼っている現状からすれば、食育は、個人や地方公共団体がそれぞればらばらに推進しても、解決できない問題が必ず生じると考えております。

 そこで、この法律の制定によって多くの国民の間に共通認識が生まれることを期待し、国はその実態の中から解決すべき問題点を抽出して、ともによりよい解決策を導き出すことが重要であると考えております。そういった面からも、県や市町村における食育推進計画が努力規定であったり、会議の設置が任意であったりするわけですが、ぜひとも、全自治体、国民の参加できる体制をさまざまな機会をとらえて啓蒙していただき、実のあるものとしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

松下委員長 次に、小宮山洋子君。

小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。私は、提出者の方を中心に、なぜこのような基本法が必要なのかという視点から伺っていきたいと思っています。

 基本的には、私たち民主党は、このような形のものは基本法ではないというか、基本法にこういうものをするのはやはり個人の選択の自由とか、一体どこまで法律が縛るのか。確かに食育が必要であるということは、思いは同じだと思うんですけれども、それは個々の政策の推進で十分ではないかという視点から伺っていきたいと思います。

 まず、なぜ基本法なのかということなんですが、最近、何でもかんでも基本法にし過ぎなのではないかというふうに思います。

 ちょっと調べてみましたら、一九四七年の教育基本法から、私も議員になりましてすぐつくることに参画いたしました男女共同参画社会基本法、これが一九九九年、ここまで五十年余りで十六だったんですね、基本法が。ところが、その後の五年で、昨年までの間に十一ふえている。これがこの五年間での十二番目の基本法になるわけなんですが、なぜこれを基本法にしなければいけないのかをまず提出者の方に伺いたいと思います。

小坂議員 小宮山先生にお答え申し上げます。

 先生も……(小宮山(洋)委員「先生じゃなくて」と呼ぶ)では小宮山さんでやらせていただきます。

 小宮山さんも私どもと同じように食育の重要性は認識をしていらっしゃると言っていただいたことは大変ありがたいことだと思っておりますが、何でも基本法にしてしまうのはいかがなものかと。

 確かに、法律はできるだけ少ない方がいいと私どもも思っておりますし、ましてや基本法というような総括的なあるいは理念法のようなものは、なぜつくる必要があるのかと問われますと、私ども、個別の法律はいろいろな国民生活の細部にわたって規定してまいります。しかし、法律が各省にばらばらに設定をされて、そして各省がそれぞれの思いで推進をしてまいりますと、縦割り行政の弊害といいますか、そういった意味で、国民生活の中で一つの方向性が明確になってこないという逆の意味の弊害が出てくる可能性が出てまいります。

 そういった意味で、基本法というものを制定することによって、それぞれの施策を一つの方向性を持って、総合的に、計画的に推進していくという体制が必要だと私どもは考えているわけでございます。

 ですから、先生が今御指摘になりましたように、十二番目の基本法とおっしゃるわけでございますが……(小宮山(洋)委員「ここ五年で」と呼ぶ)ええ、ここ五年で。十六足す十二になってしまう、こういう御指摘でございますけれども、法律用語辞典等を引きますと、基本法とは何かといいますと、国政の重要分野について国の政策、制度等の基本方針を明示する法律であって何々基本法という名称を持つものである、いわゆるプログラム規定で構成されるものが多くて、基本法に示された方針に基づいて政策実現のために個別法が制定されることが多い点に特色がある、このような説明がなされております。

 御指摘のような教育基本法、男女共同参画社会あるいは中小企業基本法、障害者基本法等、私ども制定してまいりましたけれども、これらについては、小宮山さんの所属される民主党を初め各党も賛成をされてきたと思うんですね。したがって、その必要性、基本法というものの必要性全体については御理解をいただいている。

 では、なぜ食育に関してまで基本法が必要か、こういうことでございますが、私ども百五十九国会で提案をさせていただいて、そのときに早期成立ができておれば今日より一層推進体制が整ったと思うわけでございますが、その後、農林水産省、厚生省あるいは文部科学省等で個別に施策の推進をしてまいりましたが、やはり予算の面でもなかなか充実しにくい、また連絡会議をやってもこの基本理念がそれぞれの各省で必ずしも完全に一致しているとは言いがたい、こういった面がございますので、私どもとしては、議員立法において基本方針を明確に定めて、一つの方向性を明示する形の中で各省統一的な施策の推進をさせていただきたい、こう考えて、今回基本法という形で提案をさせていただいたところでございます。

小宮山(洋)委員 次に、法制局に伺おうと思いました基本法とはまで今お答えをいただいたかとは思うんですけれども、基本法というのは、憲法と個別法がありまして、それだけでは足りない、その間をつなぐ、国民一般に広げなければいけない理念とか、私は基本法というのはもう少し大事に扱っていくべきものだというふうに思っております。

 それで、法制局に伺いたいんですが、その基本法とはということとあわせて、私どもが男女共同参画基本法を、民主党案をつくるときに、基本法というのは理念法、枠組み法で土台の法案だから事細かいことは書いてはいけないというふうに言われました。ですから、そのときに私どもは労働の分野とか社会制度とか暴力の問題、教育の問題、各分野のことを基本計画の中身として書き込みたかったんですが、書けなかったんですよ。

 ところが、今回のこれを拝見すると、細かいものだらけと言っていいほどに本当に事細かくいろいろ書いてあるのですが、基本法とは何なのか、私がつくるときに伺ったことと何か変わったことがあるのか、それを法制局から伺いたいと思います。

鈴木法制局参事 お答え申し上げます。

 基本法とはどういうものかというお尋ねでございますけれども、基本法といいますのは、国政の重要分野について進めるべき施策の基本的な理念や方針を明らかにするとともに、施策の推進体制等について定めるものでございます。

 本法案におきましても、第一条で、食育に関し基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、食育に関する施策の基本となる事項を定めるというように規定をいたしているところでございます。(小宮山(洋)委員「いや、その細かいことの話を」と呼ぶ)

 それを受けまして、具体的には、第二章で食育を推進するための計画の策定について規定をしております。また、第三章では食育に関する基本的施策についての方針を規定しております。(小宮山(洋)委員「委員長、聞いていることと違います」と呼ぶ)

 その具体的な方針に基づいて、国や地方公共団体が具体的な施策を実施することになるわけでございます。したがいまして、その方針というものは、明確にしかもわかりやすく定めるということが求められてくるわけでございます。

 この法案の立案、作成に当たりましても、できる限り方針を明確に定めるということを旨として法案を作成しているところでございます。

小宮山(洋)委員 私が尋ねたことに答えていただいていないと思うんですが、一九九九年に男女共同参画の基本法をつくるときには、そういう事細かいことは基本法に書くものではないといって書けなかった。それに対して、今回、これだけ細かいことが書けているということは、何か法制局として方針が変わったのですかと伺っているのです。

鈴木法制局参事 お答え申し上げます。

 繰り返しになって恐縮でございますけれども、この法律は、先ほど申し上げましたように……(小宮山(洋)委員「この法律はじゃない、方針を聞いているんだから、この法律のことを聞いているんじゃない」と呼ぶ)国等の施策の基本的な方針を定めているところでございまして、その基本法的な方針を定めるに当たってできるだけ明確に定めるという趣旨から、各種の施策、例えば家庭における食育のあり方、あるいは学校等における食育のあり方、あるいは地域等における食育のあり方について規定をいたしております。

 そのように、明確に定めるという趣旨から、先生は細かいとおっしゃいますけれども、そういったわかりやすい規定ぶりをするということで規定をいたしているところでございます。(発言する者あり)

松下委員長 もう一度、質問者の趣旨にきちっと答える答弁をお願いします。

鈴木法制局参事 お答え申し上げます。

 先生おっしゃいます男女共同参画基本法は、内閣提出の法律でございまして……(小宮山(洋)委員「違う、うちの法律をつくるとき」と呼ぶ)民主党の案でございますか、わかりました。(小宮山(洋)委員「全然わかっていないじゃない」と呼ぶ)

 いずれにいたしましても、基本的な施策の方針を定めるに当たって明確にするという趣旨で規定しているという点は、どの基本法を制定するに当たりましても変わらない姿勢で立案に当たっております。

小宮山(洋)委員 ここであなたとやりとりをしてもかみ合わないと思いますので、このことについては、ちょっと法制局の方の方針を後ほど確認させていただきたいと思います。

 ぜひ理事会の方でお願いをしたいと思います。

松下委員長 委員長が引き取りました。

小宮山(洋)委員 ですから、私としては、そのときと方針が変わったとしか思えないような、私が考えている基本法とは全く違う形というか、基本法のていをなしていないのではないかというように思っております。

 それで、基本法になぜするのかということとあわせまして、やはり、食というのは最も個々人の選択とか自由に任せられるべきもので、法律でこれを規定するというのは非常に問題だというふうに考えております。

 このままでいきますと、プライバシーの領域に一体どこまで法律が踏み込むのか。よく衣食住といいます、これは食ですが、では、医のものもつくるのか住のものもつくるのか、そういうような心配もあるのですけれども、この点についてはどのように提出者はお考えになっていらっしゃいますか。

小坂議員 小宮山さんの御指摘の点は、私も共感をするところが多々あります。というのはどういう点かと申しますと、基本的に、食というのは、動物、人間の基本的な欲求でありますし、生きる上での最も基本的な行為でありますから、こういったものにまで法律が関与する必要はないのではないか、そうは私も思うんですよ。

 しかしながら、今日、社会を見ますと、食の安全という問題も、従来はどれを食べてもそんなにひどいことにはならなかったわけでありますが、O157あるいはBSE、こういった問題が出てまいりまして、目で見てもわからない食の安全という問題がいっぱい出てまいりました。鳥インフルエンザあるいはコイヘルペス、いろいろなものが出てまいりましたね。こういうものも昔はあって、それによって病気になってもわからなかったかもしれないですよ。しかし、最近はそういうことがいろいろわかるようになってまいりました。

 一方で、生活習慣病と言われるような、心臓だとかあるいは糖尿病など、私どもも恐らくその糖尿病の予備軍かもしれませんけれども、こういった人たちがふえてきた。あるいは、朝食を食べないで急いで学校に行くあるいは会社に行くというような形の中で、朝食の欠食というものが自分の習慣となってくるような人々がふえてきた。

 これは、本来、そういうものは自分の勝手でしょうと言われればそのままほっておくということになるわけでありますけれども、しかし、医療費はどんどん増大する一方でありまして、二十四兆円もかかるようになってまいりました。このうちの、生活習慣病と言われるものが全体の六割を占めるようになってきているわけですね。

 こういうような状況を見ますと、やはり、将来にわたって国民が健康で、そして日本の国を支えるに十分な人間力を持った国民を養うためには、食についても基本的な知識を持っていただいて、そしてみずから選択し、行動できるような、そういった力を養う。そういうことを国としてあるいは地方自治体としても援助する、そういった行動が必要になってきたのではないか。

 私どももできればこういった問題は法律にしないで済めばいいと思うわけでありますが、現実のいろいろな顕在化してきた状況は、過度の痩身志向、私どもよく言いますけれども、あなたは大変スマートですねなんて言うと、いや、私は太っていますと。私の方から見たら大変にやせていらっしゃるなと思っても、本人は太っているという意識を持っている。

 あるいは、子供たちにキレやすい子供がふえてくる。これはすべてが栄養の問題ではもちろんございません、いろいろな要因があると思いますけれども、一方ではカルシウム不足が精神的な安定を欠くということにもつながってくるという指摘もあります。

 こういったいろいろな状況を考えると、やはり、人間力を強化するために、こういった食育ということを推進することによって、各省が今まで行ってきた食育活動の中でもこれを総合的に、人間力を養うという基本的な理念のもとにこれを統一して行っていく必要があるのではないか、こういうことが一点でございます。

 それから、先ほど小宮山さんが御指摘をされておりました、基本法というものは余り個別具体的なものを羅列するものではない、これは私もそのとおりだと思うんですよ、私もそうだとは思うんです。しかし、私どもは、それではなぜこんなに具体的な、例えば食育会議についての人数とかそういうことまでもこの法律の中に書いてくるかといいますと、これは議員立法なんですね。閣法で、閣議によって統一された、そういった法律の体系ではないわけでございます。

 したがって、各省が私どもの意図に従ってちゃんと行動していただくためには、やはり、基本法といえども、私どもの理念をしっかりと国や地方公共団体に理解していただいて、その方向に従ってこれを実施していただく、そういう方向性を持ってもらいたいという気持ちが非常に強いわけです。

 ですから、小宮山さんの立場も私はわかるんですね。法制局は、個別具体的なものを余り羅列すると基本法になりませんよ、そう言ったんだろうと思うんです。だけれども、私は、残念ながら、小宮山さんたちが提出された男女共同参画社会法の内容のどこが個別的だと言われて排除されたのか理解しておりませんので申し上げられませんが、私が法制局の人間であったらば、小宮山さんの御指摘の部分も十分に配慮しながら、そういう意味ではそれを入れておいた方がいいですね、多分それぐらいのことは申し上げたかもしれない。そういうふうに、思うところで一致しているところはたくさんあると思います。

小宮山(洋)委員 思いがあふれていらっしゃるのはよくわかるんですが、伺いたい点がたくさんございますので、できればもう少し簡潔にお答えいただけるとありがたいと思います。

 それで先ほど、何か、省庁横断的にできないということはよくわかるんです。ただ、これがなぜ基本法かというと、提出者でいらっしゃる田端さんも一緒に以前つくりましたけれども、環境教育の推進法というのは、各省庁共管で、五つか六つの省庁だったと思いますけれども、これは推進法という形でつくったんですよ。そういう形でも私はでき得るんじゃないかと。これを基本法としたところが、私はどうしても、やはりプライバシーの、個人のところまでずかずかと踏み込むようなことを基本法にするのは何事かという思いがございます。

 先ほど、ねらいをはっきりするために細かく書いたと法制局の方は言われましたけれども、そのねらいがこれを読んではっきりしないんですよ。余りにいろいろなことがたくさん盛り込まれ過ぎている。子供への食の教育、食の安全性、自給率の向上、感謝の心、伝統的食文化の継承、国際貢献などなど、いろいろなものがずうっと盛り込まれて、余りに雑多なものが入り過ぎていまして、私はこれのねらいがどこにあるのかがさっぱりわからないということで、これはちょっと、大分時間も経過しておりますので、法文に沿ってまたこの点は伺っていきたいというふうに思いまして、私の意見を述べるにとどめたいと思います。

 私どもは、これは基本法などというもので縛らなくても、今十分にそれぞれの分野で取り組んでいることを推進すればよいのではないかと思っておりますので、文部科学省は教育をやっていると思います、内閣府は食の安全に努めていると思います、農水省は自給率の向上などをやっていると思います。それぞれにつきまして簡潔に、やっているポイントを御紹介いただければと思います。

松下委員長 簡潔明瞭に答弁をお願いします。

西阪政府参考人 文部科学省では子供たちの食育ということに取り組んでおりまして、学校における食育の推進とともに、家庭における食育の推進ということでございます。

 まず、学校における食育の推進といたしましては、学校での指導計画の作成等に資するため、食に関する指導参考資料の作成、配付、あるいは学校での指導体制を整備するということで、本年四月から開始されております栄養教諭の配置の促進や関係教員の研修会、シンポジウムの実施、また学校給食につきましては、地場産物の活用推進を図るための地場産物活用事例集の作成、配付、あるいは子供の食に関する理解の促進のため、総合的な学習の時間等における農業体験学習の実施の推進などを行っております。

 また、家庭における食育の推進につきましては、食に関する内容を含む家庭教育手帳を作成し、乳幼児や小中学生を持つ全国の親御様に配付しているところでございます。

松下委員長 簡潔に、ピンポイントで。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 食品安全委員会といたしましては、食の安全の観点から、食育に関連し、具体的には、私たちが実施しております、リスク分析の一環として行っております、科学的な観点から実施しているリスク評価の内容等につきまして幅広く国民との間で意思疎通を図る、こういう観点から、まず委員会を公開で開催しておるわけでございます。

 これに加えまして、消費者、生産者等幅広い関係者が参加する意見交換会等の開催、食の安全ダイヤル等による相談体制の充実、季刊誌やパンフレットの配布、その他ホームページの充実を通じた情報提供に取り組んできておるところであり、引き続きこれを充実してまいりたい、このように考えております。

岩永副大臣 お答えいたします。

 農水省としては、今回の食育法を大変ありがたく思っております。と申し上げますのは、今回の食料・農業・農村基本計画の見直しがこの間閣議で決定されて、国会に報告されたわけでございますが、その中で自給率の問題が大変大きな議論になったわけです。そして、自給率を上げるために、生産はもちろんのことでございますが、消費という面で、食生活指針の普及、定着などを通じて栄養バランスの改善を図り、そして食生活の見直しを図る、こういう状況で日本型食生活を推進することがこれからの自給率を上げる。だから、消費と生産のバランスをどう考えていくかというのは、これからの農水省の大きな役割になってくるわけでございます。

 そして、何をやっているかということでございますが、生産者と消費者の交流の促進だとか、地産地消、食文化の継承のための活動だとか、食品の安全性に関する調査取り組み、こういうことをやっております。

 農林水産業や食品産業の体験学習の推進だとか、いろいろ全国的に、地産地消で学校給食などへ直接食材を地域から提供していく、そういう状況の中で食育というものを子供たちに考えていただく、こういう推進などもやっているところでございます。

小宮山(洋)委員 それぞれの省できちんと取り組んでいらっしゃるわけですよね。今副大臣がおっしゃったように、農水省も力を入れてそれに取り組んでおられるわけですよ。だから、それをそれぞれ推進すればいいのであって、何も、消費、生活のバランスというふうなこともおっしゃいましたけれども、そのためにこの基本法をつくるというのが私はどうしてもやはりわかりません。

 確かに、農水省が力を入れていらっしゃることはわかります。法制局も、農水省担当の法制局がこの法案をつくっているということもわかっておりますが、ちょっとそのあたりが私はやはり腑に落ちないということがございます。

 それで、法案の疑問点につきまして、幾つか個別に伺っていきたいと思います。

 大体、皆さんのお手元にはこの法案があると思いますけれども、前文というのが非常に長いですよね。前文というのは、法律の中身をわかりやすくするために前文をつけるのだと私は思っていたんですが、前文を読むに従って、ますますこの法案がわからなくなる。余りにも多くのことが書き過ぎてあるんです、欲張り過ぎです。

 例えばこの中で一つ挙げると、「食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付け」、こういう合意はどこにあるんでしょうか。

 それで、大体この前文で何を言いたかったのか、お答えいただきたいと思います。簡潔明瞭にお願いします。

小坂議員 小宮山先生の御指摘のように簡潔明瞭にお答えしたいのでございますが、食育が非常に、食の栄養面、生活面、あるいは安全面、文化面、環境面、生産、消費と食生活の多面的な分野にわたっておること、また家庭とあるいは学校、保育所、社会、こういったいろいろの場で推進すべきものであること、そういった思いの中でこの前文を、議員立法でございまして、ここの提案者以外にも参画されている関係の方がたくさんおられるわけでございます。私どもの党の中での食育の部会等でも審議をしてまいりましたので、そういった思いが全部ここに込められてまいりまして、前文の部分が非常に長くなってきたというふうに思われるかもしれませんが、それだけ多面的そして多様な場において実施されるべきものだということを説明したくてここに書いてあるわけでございます。

 一言で言えば、先ほど申し上げたように、食に関するリテラシーといいますか、人間力を養って、生きる力をしっかりと確立していきたい。それだけ食の分野にいろいろな状況が、科学的な影響、あるいは経済的な、あるいはグローバルな影響、いろいろなものが絡んできて、今、単純に私どもが食という生命を維持するための行動をとっているにもかかわらず、そこにいろいろな要素が含まれてきちゃったということでありまして、その問題を総合的かつ一つの方針を定めて推進するためにはやはり基本法という形が必要だ。

 先ほどの繰り返しになってしまうとまた長くなりますので省略いたしますが、各省に推進をしてもらっていますけれども、必ずしも予算面で充実しているとは言いがたい。あるいは、農林水産省一つをとっても、いろいろの呼びかけに対して、国民の側からそれを理解して受けとめていただかなければ施策というのは推進できません。その国民側の理解を推進するためには、どうしても基本法のような形で国民全般、各般の、各場においての統一的な行動がどうしても必要だ、こう考えたので基本法という形をとらせていただいた、このように御理解いただきたいと思います。

小宮山(洋)委員 今情熱を込めてお話しになったように、食に関する生きる力、人間力をつけるのだ、それだけ書いていただければまだわかりやすかったかなというふうには思いますけれども、結局、前文がやたら長いということを含めて、もちろんいろいろなことを束ねようとされているのはわかりますけれども、それだけに、ねらいが何なのか、さっぱりこれがわからないということを申し上げておきたいと思います。

 あと、前文の中で、一行目を見ますと、「我が国の発展のためには、子どもたちが健全な心と身体を培い、」ということは、これは何でしょうか。子供たちの健全な心と体を培うのは、国の発展のために培うんでしょうかということ。

 それから、あと、この文章をずっと見ていきますと、「食育を推進することが求められている。」「「食」のあり方を学ぶことが求められている。」「国際的に貢献することにつながることも期待される。」というんですが、だれが求め、期待するのか、その辺の主語と述語の関係もよくわからないので、これは何か訓示がずっと並んでいるという感じで、法文としていかがなものかと思いますが、その点をお答えいただけるでしょうか。

小坂議員 小宮山先生、申しわけないんですが、私が答えると少しずつ長くなってしまうような気がして。できるだけ努めますが。

 子供たちの健全な心と身体を培うのは国の発展のためなのかということでございますが、本法律の第一条において、現在及び将来にわたる健康で文化的な国民の生活と豊かで活力ある社会の実現に寄与することを目的としていると書いてあります。また一方で、第二条におきまして、食育は国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成に資することを旨として行われなければならないとしております。

 また、御指摘の子供の健全な心と身体を培うということにつきましては、子供たちを含めた国民みずからの心身の健康等に資することでありまして、ひいてはそのことが我が国の発展につながる、すなわち国を支える国民の健全な心身、心と体を培うということが国の発展に、これは御理解いただけると思うんですが、資する、こう考えているからそのように表現したわけでございます。

 また、前文に、御指摘のような、求められているあるいは期待されている、この主語はだれなのか。これは、国民全体、日本の国の社会が求め、またそういうことの実現を期待されている、私どもはそう感じているわけでございます。

 これを詳しく申し上げますともう少し長くなりますが、本法案におきましては、食に関する目標を含む施策についての基本的な方針、担当大臣の設置と、それから食育推進基本計画の作成、そしてこれを全体として効果的に推進していくための食育推進会議というものを置くことによって、この基本法というものの実現のための、訓示だけではなくて、具体的に進める体制づくりもここで記述をしているわけでございます。

 これでお答えになっているんでしょうか。

小宮山(洋)委員 何か、答えになっているんでしょうかと私に聞かれても困るんですけれども。だから、国民が求め、期待していると言われるんですけれども、私はそれは余計なお世話だという感じがするんですね。

 それで、もう時間が少なくなってきたので、用意した、条文に沿って全部は伺えないので、ポイントだけ伺っていきたいと思うんですけれども。

 大体、普通私どもが議員立法でつくってきたものは、定義とか基本理念としてうたっているものがもっと明確なのが法文なんだと思っていたんですが、これは括弧してございまして、九条のところに、「基本理念(以下「基本理念」という。)」と、二条から前条の八条までが全部基本理念だと言われるわけですよね。

 確かに幅広いねらいがおありだということはわかるんですが、ここが私はわけのわからないポイントだと思うんですけれども、この二条から八条というのは全部違うことが書いてあるわけですよ。こんなものを並べて、それが基本理念だなどと言っている法律がほかにあるのでしょうかという感じがいたします。

 このあたりで、この法文の形式並びにそのねらいが一体どこにあるのかということを、だからこれもいろいろ全部ございますと言われたのではわからないと言っておりますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。

小坂議員 たびたび恐縮でございます。

 基本理念というか、この基本理念についての箇条書きにしたものが多い基本法というのを、ちょっと例を引いてみました。

 男女共同参画社会基本法、先ほど御指摘にありましたものの閣法部分でございますが、基本理念は第三条から第七条まで全五条あるわけですね。それから、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法、IT基本法でございますが、この場合には第三条から第九条まで全七条を基本理念として掲示をしております。

 私どもの方の今御指摘の部分も同じように、この法律の内容が非常に多面的かつ多様な場に関係するものでございますので、このような条文が各般にわたってしまったという結果でございまして、御理解を賜りたいと思います。

小宮山(洋)委員 ちょっと理解できませんね。というのは、もちろん条文がたくさんあるかどうかを言っているのではなくて、これだけ雑多なものがいろいろ羅列されているようなものがあるのか、私はちょっと、私の勉強が足りないのかもしれませんけれども、ほかでは見たことがございません。そこがそもそも、国民とか企業とか国、地方公共団体、いろいろ責務を課していますが、何の責務がそれぞれに課されているのかさっぱりわからないというのは、そこにもとがあるのだというふうに思っております。

 いろいろ伺いたいのですが、私の時間はあと十五分ですので、伺いたいところからちょっと順番に伺いますので、その順序に沿っていないかもしれません。

 第五条のところに「子どもの食育における保護者、教育関係者等の役割」というのがございまして、父母その他の保護者は、食育について、家庭の重要な役割を認識する、そして子供の教育、保育等を行う者は食育の重要性を自覚すると。認識して自覚をするのはよろしいのですが、それで何を推進する活動に取り組むのでしょうか。ここは文章もおかしいのではないかと思うのですが。

西川(京)議員 小宮山先生、ありがとうございます。たしか少子化社会対策のときにも御一緒に質疑をさせていただきましたけれども。

 確かに、先ほどから小宮山さんがおっしゃっていること、どこまで国がこういう基本法、法律で個人の領域に入っていくのか、その辺は私もかなりあいまいな部分というのはずっと残しているのは事実でございます。

 しかし、今それが、かつての日本の社会であればごく当たり前であったことが、例えば家庭、学校での役割分担というようなことが大変明確に、社会秩序というのがもう少しきちんとしていた時代があったと思うんですね。そういう中で大変、親が親たる義務をどうも果たしていない現実とか、さまざまなそういうものが、今本当に社会現象の中で出てきているのは事実でございます。

 そういう中で、やはりこれをそのまま何もしないでいていいのか、そういう思いは、恐らく小宮山さんも共通の思いはおありだろうと思います。そういう中で、実際に家庭や、教育、保護者が、言うなれば、できればそういうふうにしてほしいなという願いという思いでとらえていただけたらありがたいと思いますけれども、当然その中で、子供の保護者あるいは教育関係者というのが、それぞれの立場で、子供が健全に育つということに関して、それぞれの持ち分をもう少ししっかり自覚してやってほしいという思いで書いた次第でございます。

小宮山(洋)委員 今、提出者の西川議員がおっしゃいましたように、あいまいな部分があるとか、願いとか思いとか、そんなことで基本法をつくっていいんですか。私は非常に疑問に思います。

 十三条に、「国民の責務」とあります。「生涯にわたり健全な食生活の実現に自ら努めるとともに、食育の推進に寄与するよう努めるものとする。」と。ここで言われている健全な食生活というのは一体何なんでしょうか。先ほど農水省の副大臣がおっしゃったように、お米を食べろということですか。ハンバーガーやカップラーメンはいけないということですか。そういうことは個人の選択、自由でしょう。

西川(京)議員 もちろん個人の自由であるというのは基本です。しかし、社会のそういうさまざまないろいろな現象の中で、政府としてあるいは国会議員として、行政として、ある程度のきちんとした目安、方策、それの一つの環境整備ということに努めるのは当然の義務だと私たちは思っております。そういう中で一定の指針を示す、それは大事なことなのではないんでしょうか。

小宮山(洋)委員 環境整備といっても、これはやはり基本法という、私が最初に申し上げているように、基本法というものは重いものだと思っています。その中で、「国民の責務」として、「生涯にわたり健全な食生活の実現に自ら努めるとともに、食育の推進に寄与するよう努めるものとする。」と。これはやはり私は踏み込み過ぎで、余計なお世話という感じが大変いたします。

 そして、十九条に「家庭における食育の推進」というところがありまして、ここらあたりが私は、本当に微に入り細に入り、基本法では細か過ぎると言っているのは、典型はこの十九条にあると思っております。先ほどのような、会議に何人にするなんというのは当然のことなんですよ。

 例えば十九条、これなど読むのも面倒くさいという感じがいたしますけれども、「父母その他の保護者及び子どもの食に対する関心及び理解を深め、健全な食習慣の確立に資するよう、親子で参加する料理教室その他の食事についての望ましい習慣を学びながら食を楽しむ機会の提供、健康美に関する知識の啓発その他の適切な栄養管理に関する知識の普及及び情報の提供、妊産婦に対する栄養指導又は乳幼児をはじめとする子どもを対象とする発達段階に応じた栄養指導その他の家庭における食育の推進を支援するために必要な施策を講ずるものとする。」と。だからそんな、料理教室とか健康美なんということまで、何で基本法でこんなことをやるんですか。

西川(京)議員 もちろんこれは一つの例示でありまして、そこに必ず行ってくれと言っているわけではないわけでございまして、あくまでもこれは特定の価値観を国民に押しつけるようなことは毛頭ございません。

 そういう中で、やはりこういうメニューがあると、今現実に、そういうアンバランスな食生活をしている子供たちや若い人が大変ふえている現実が目の当たりにあるわけですね。そういう中で、できれば家庭、学校教育の場、そういうところでこういうことにお互いにもうちょっと積極的にかかわる中で、健全な生活を営めるような体づくり、心の健康性、そういうものについてこういうメニューをそろえますよ、そういう程度と考えていただけたらいいと思います。

小宮山(洋)委員 だんだん私は怒りたくなってしまって聞いているんですけれども、先ほどから申し上げているように、そういうメニューを提示するものが基本法なんですか。やはりこれは国会議員として、基本法というものをもっと私は大事に考えてほしいというふうに思うんですね。そんな思いや願いやメニューを出すものが基本法だったら、何でもかんでも基本法になってしまうじゃないですか。そういう意味で、私どもは、こういうことを基本法にするのは個人の領域に踏み込み過ぎだというふうに思っております。

 それで、あと七分ほどございますので、では、ちょっと途中飛ばしましたけれども、例えば食品の安全性、これは非常に大切なことだと思いますが、第八条にあるような食の知識を国民が持つということ以上に、これは政府の責任ですよね、当然。BSEの対策とか遺伝子組み換えの食品など、これへの対応などもEUなどに比べると非常に日本はおくれている。そういうことがまず第一にあるので、国民にこの基本法で安全性、食の知識を持つことを言うというのは、何か私は後先逆なのではないかと思うんですけれども、その点はいかがですか。

西川(京)議員 もちろん、御指摘のように、BSE、遺伝子組み換えなど、近年大変さまざまな食品の安全の問題等が出ておりまして、これは当然政府の責任において解決していかなければいけないことだと思っております。もちろん、食品安全基本法、食品衛生法その他関係法令で当然それには対処しているものでございます。ですから、食品の安全その他を全部国民の側で対処しろよと言っているわけでは当然ございません。

 そういう中で、やはりさまざまな情報の提供その他をある程度きめ細かくしていかないと、消費者自身がそういうものに対する判断力をぜひ養っていただきたい。この食品の安全性というものは、つくる側だけが頑張ってもだめであって、当然それを選ぶ消費者の方も賢くなっていただかなければいけない、そういう中での環境整備という点について提示したものでございます。

小宮山(洋)委員 その食の安全については、消費者は非常に今勉強もしていますし、いろいろと非常に敏感に反応をしているんだと思います。ですから、政府の方もBSEの対策でいろいろと苦慮もされているし、いろいろなことがあるのだと思っていますので、私はこれは国民に言う前にやはり政府の方のしっかりした責任が先だと思っていますので、ここについても余りこういう書き方をするのは好ましくないのではないかというふうに思っております。

 それから、十四条のところに、政府が講じる必要な法制上または財政上の措置というのがございますが、これだけ多くの分野にわたって、一体何の法制上、財政上の措置をこれからとるんですか。農水省にもっと予算がつくための法案じゃないかなどと言っている声も聞いたりいたしましたけれども、これはどういう意味がございますか。

西川(京)議員 もちろん、これからさまざまな必要な法制がまだ出てくる可能性はあるわけで、その一つの根拠法としてこの基本法は必要だろうと私は思っております。

 そして、財政上の措置としては、例えば平成十七年度の予算として、食品安全委員会におけるリスクコミュニケーションの実施、あるいは厚生労働省の国民健康づくり運動、農水省の体験活動の推進等に予算が講じられておりますが、今後さらに、個別のさまざまな活動に対して予算を配慮していければと思っております。

小宮山(洋)委員 一貫して基本法をもっと大事に考えるべきだということを申し上げておりますが、各省庁が予算をとりやすくするためのような基本法というのは、私は納得いたしかねます。

 それで、あと内閣府設置法の一部改正ということで、会議をそこにつくる。先ほどおっしゃった、その人数も定めてございますけれども、大体、今、内閣府にある会議の中で、年に一回しか開かれないとか一回も開かれないとか、つくったはいいものの動いていないものがたくさんあると思いますが、これは実際に動かすための例えば専門委員会をつくるとか、そんな工夫はされているんですか。

宮腰議員 ほかの会議についてはよくわかりませんけれども、食育推進会議につきましては、いわゆる諮問機関的な審議会という位置づけではなくて、閣僚と有識者から成る会議体として特別の機関という形で位置づけを行っているところでございます。

 食育推進基本計画の作成及びその実施を推進するとともに、食育の推進に関する重要事項についての審議及びその施策の実施を推進するということで、学識経験者と申しましても、いろいろな方面、分野の方々に入っていただいて、できる限り食育を国民運動として展開するという趣旨のもとにしっかりとした議論をしていただくということでございますから、回数はできる限り多い方が望ましいと私自身は思っております。

小宮山(洋)委員 ちょうどあと持ち時間が二分ほどになりましたが、私は、このような食育基本法は要らない、つくることの方が、個人のプライバシーの領域に踏み込むことになって、害の方が大きいというふうに考えております。

 先ほど各省に伺いましたような個別の対応で十分だと思いますし、ここにこれだけ並べられているのに欠けている視点といたしましては、家族で食卓を囲むということが私は非常に大事なことだと思っていまして、今の働き方、例えば本当の意味のワークシェアリングをきちんとして、子育て中の、これは母親だけではなくて父親も、必要なときには短い勤務時間で帰れるとか。

 ですから、これはやはり、同じ価値の仕事をしたら同じだけの報酬があるというような法整備をした上で、女性も男性もさまざまな柔軟な働き方がライフスタイルに合わせてできる、そのことによって食卓を家族で囲むということが、今の子供の問題なども含めて非常に大事な視点だと思いますのに、これだけ雑多なものだと先ほどから酷評をさせていただいておりますが、その中にそれが入っていないというのもまた足りない面なのかなという感じがいたしております。

 ですから、やはり、再三申し上げましたように、私は、基本法というものはもっと大事に考えるべきであって、このような個人の領域に踏み込むようなものをつくることは害が多いということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

松下委員長 次に、高井美穂君。

 着席のまま質疑されることを許可しますので、どうぞ。

高井委員 民主党の高井美穂です。ちょうど妊娠七カ月になりまして、座ったままで質疑をさせていただきます。ありがとうございます。

 私も、引き続き食育基本法について、法案について何点かと、具体的な取り組みについてお伺いしていきたいと思います。おなかの中の赤ちゃんがちょうど一キロちょっとになりますので、多分聞いております、みずからのことにかかわることですし。私も、この間、文部科学委員会の方でも学校給食の件に関してなど取り組んでまいりましたので、その点からもお伺いしたいというふうに思っています。

 そして、今回の法案、私も趣旨はよくわかります。ただ、議員としてまだ短い期間しか務めておりませんけれども、基本法として法律までつくる必要があるのかどうか、よくよく考えて質問をつくってまいりました。法律というのは、やはり社会の中での必要最低限のルールであって、訓示のような法案をつくることよりも、やはり現場を変えていく具体的な取り組みが本当に大事だというふうに感じています。

 そもそも、やはり我が国の食行政については、先ほど来さまざまな、BSEの問題等、指摘が出ましたけれども、矛盾が多くて、やはり消費者が健全で安全な食生活を送る上で、その前提となる環境が整備されているとはとても言いがたい状況にあるのではないかと懸念いたします。消費者の選択に係るこの環境整備にこそ国が取り組むべきであるというふうに思います。その点からも、具体的な質問の方に入らせていただきたいというふうに思います。

 まず、なぜ食生活がこれほどまで激変してきたかということについてお伺いしたいんですけれども、自給率がどんどん下がっていて今四〇%になっているというふうにお聞きをしています。その点からすると、政府のこれまでの取り組みに問題や責任はないのか、提案者としてどういう現状の御認識でおられるのか、御意見をお伺いしたいというふうに思います。

小坂議員 高井さんの御質問にお答えしたいと思いますが、まずもって、妊娠という大変体に負担のある状態の中でこのように質問をされることに心から敬意を表し、また安産を心からお祈り申し上げております。

 なぜ食生活がこのように変化をして、そして自給率が下がってきたのかということでございますけれども、食糧自給率の低下は、生産が需要者のニーズなどに十分対応し切れなかった、したがって外国から輸入をしたり、あるいはいろいろそれを補う形で行動が、パターンが変わった、こういうことが影響していると思いますし、長期的に見れば、経済成長に伴います所得の伸び等を背景といたしまして、米の消費が減少する一方で、畜産物や油脂の消費が増加するなど、食生活が大きな変化を来している、パターンが変化してきた、これが自給率に大きく影響を及ぼしてきたと思っております。

 これに関して、政府の方では、消費面ではフードガイドなどを策定しわかりやすく実践的な食育を進めておりますし、また生産面では経営感覚にすぐれた担い手を育成確保して需要に即した生産を進めるという活動をいたしておりますし、また重点的に取り組むべき事項を明確化して施策を推進している、こういうようなことを内閣はやっているというふうに私どもは聞いておりますし、理解をしておるわけでございます。

 このような意味で、自給率の向上が迅速に着実に実施されるようにするためには、関係者が各省にわたって一体的に取り組む、一つの方向性を持って総合的、計画的に取り組むことが必要だ、そう考えて私どもは基本法というものを出して、各省庁にコンダクターのような意味合いの、統一性を要求しよう、こう考えたわけでございます。

高井委員 私も、実は先般、農水省の方からもいただきましたその食料自給率と食品安全保障という資料の中で、自給率がほぼ一貫して低下傾向にあって、先進国中最も低い水準となっていると。そのデータの中でも、昭和四十年と平成十四年と比べて、油脂が倍以上になり、また米の消費量が半分になり、肉類が二倍以上になっているというデータの中で、国策の失敗というか、やはり大きく転換しなくてはならないというふうな思いは、本当に同じように持ってまいりました。

 特に、今回の法案の中の第七条に「農山漁村の活性化と我が国の食料自給率の向上に資するよう、推進されなければならない。」というふうに書いてありますけれども、食育によって今までの農業政策の失敗を挽回する意図が込められているような感じがいたしまして、食育を推進して、伝統食や地産地消を振興すれば、確かに自然と自給率は高まるとは思いますけれども、あえてこのように書き込まなければならない趣旨というのは、やはりそういう反省も込めてあるんでしょうか。

小坂議員 高井さんにお答え申し上げます。

 私も議員でございますから、政府ではございませんので、そういう意味で、政府の失敗を弁護する必要は全くないと思うので。そういう意味では、長い農政の中でいろいろな問題があったことは事実であろうと思います。

 ですから、そういったものを回復するためにこの食育基本法が少しでも役立ってくれれば、むしろそれは私ども議員としてはいいことだと思ったんですね。そういう中で、高井さんも、この食育を推進すれば自給率の向上に役立つんではないか、そういう面もあることは認めるというふうにおっしゃっていただいた、まさにその点だと思うんです。

 私どもは、こういった総合的に推進する意味で、いろいろな、生産者面の意識が変わる。また需要者のニーズというものが生産者に伝わることによって、有機農法が推進され、あるいは安全な食品を生産することが消費者に付加価値を持って受け入れてもらえる。こういうふうに考えればそっちを推進してまいりますし、また輸入農産物の害というものがわかればそれを避けて国産品を推奨するということになってまいります。

 そういう意味で、これが自給率向上に役立ってもらうことを私どもも期待しておりますし、それによる生産者の意識改革、また消費者の意識改革が推進される、そういう総合的なことをやるために基本法が必要だ。これは農林水産省だけの活動ではだめでございますし、文部科学省だけの活動でもだめでございます。厚生労働省だけでもだめだということで、私ども、基本法というコンダクターをここに登場させることによって総合的な推進が可能である、こう理解しているところでございます。

高井委員 私も、議員になって初めてその縦割り行政というのがどういうものなのかというのをしみじみ感じるケースを少し垣間見るようになりまして、本当にそのお気持ちはよくわかるんですけれども、では現場の方に反映されるように、個々具体的な質問にまた入っていきたいというふうに思っています。

 この第二十七条に、食育推進会議は委員二十五名で組織するというふうにありますけれども、どのような分野から選ぶ御予定なのか、また消費者団体等も入れる予定なのか、教えていただきたいと思います。

宮腰議員 食育推進会議は食育推進基本計画の作成及びその実施を推進するとともに、食育の推進に関する重要事項についての審議及びその施策の実施を推進するため、総理を会長に、委員二十五人以内をもって構成される特別の会議という位置づけであります。

 具体的な閣僚数と有識者数の内訳、あるいはだれを有識者として任命するかにつきましては、法施行後、会長たる総理が決定するということになりますけれども、有識者につきましては、法案の基本的施策として規定されております内容、つまり、第一に、家庭、学校、保育所等における食育の推進、第二に、地域における食生活の改善のための取り組みの推進、第三に、食育推進運動の展開、第四に、生産者と消費者との交流の促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化等、第五に、食文化の継承のための活動への支援等、第六に、食品の安全性、栄養その他の食生活に関する調査、研究、情報の提供及び国際交流の推進について十分な知識と経験を有する者のうちから任命されることになるわけであります。個々の任命に関しましては、今申し上げた基本的施策についてどのような知識、経験を有しておられるかを総合的に勘案して決定されることとなるものと考えております。

高井委員 ぜひとも、その有識者の中にも、消費者団体の意見やいろいろなところの意見を反映していただきたい、そういう団体の方も入れるようにお願いしたいというふうに思っています。

 この第十六条にある、政府が作成する食育基本計画にまたどのような中身を盛り込む御予定なのかお聞きしたいと思います。各省が今まで既に実施している施策がいろいろあると先ほどの質問にも出ておりましたけれども、その施策等を踏襲するだけのものにはならないか。

 それから、都道府県や市町村も食育推進計画を作成しなければならないというふうに十七条、十八条に引き続きありますけれども、地域により食環境というのはかなり異なるはずですので、自主的な取り組みを促進するものであるように配慮していただきたいというふうに思います。

 自治体が、計画書をつくるということに余りにも労力を割き過ぎて現場の方がおろそかになるというようなことも、この間、いろいろな中央集権的な仕組みの中で、計画書やいろいろな報告書を出すのに自治体の方もひいひい言っているという話もいろいろなところでお聞きしますので、ぜひとも配慮していただきたいと思います。

宮腰議員 先ほどの消費者代表を入れるかどうかにつきましては、基本的には、恐らくその方向でいくものというふうに考えているということを申し添えさせていただきたいと思います。

 それから、今ほどの御質問でございますが、基本計画の内容につきましては、第十六条第二項各号に掲げられている事項でありまして、第一号「食育の推進に関する施策についての基本的な方針」、それから第二号「食育の推進の目標に関する事項」、この二つと、あと第三号であります。

 この第二号の「食育の推進の目標に関する事項」、これは達成目標及び目標年度の設定等であります。数値目標につきましては先ほど御答弁で申し上げましたけれども、例えば教育ファームをふやすこと、それから朝食を食べない欠食児童を減らすこと、それから学校給食における地場産品の使用率の向上等の目標値を設定することなどが考えられております。

 第三号は、「国民等の行う自発的な食育推進活動等の総合的な促進に関する事項」でありますが、具体的には、国民運動のネットワークづくりでありますとか、食育推進月間の設定などということになろうかと思います。

 このように、食育に関する施策につきまして具体的な行動計画を定め、各府省それぞれの多様かつ多面的な取り組みの持ち味を十分に生かしながら、全体として調和のとれた形で相乗効果を発揮していくことを期待いたしております。

 それから、地方公共団体の取り組みということにつきましては、重荷にならないようにということでございますけれども、これは、地域の責務ということにつきましても、地域の特性に応じた自主的な施策の策定、実施を明示しておりまして、都道府県あるいは市町村の計画の策定につきましても、地方の自主性を尊重して、努力規定といたしているところでございます。

高井委員 ありがとうございます。

 やはり、自主的な、自発的な取り組みでないと、ずっと継続していかないというふうに思います。もう既にいろいろな地域が自主的な取り組みをなさっているケースも、私もいろいろなところからお聞きしておりまして、そのようなケースもぜひ促すような形で進めていっていただきたいというふうに思っています。

 次は、学校給食の方の質問に移りたいと思うんですけれども、私は今まで学校給食という、特に義務教育の段階では九割以上の子供たちが食べる給食という場所が、本当に子供の健康を考えて伝統食を取り入れるような努力をしてきたのか疑問であります。

 パン給食が中心でありまして、このような食育基本法の趣旨からすると伝統的な米飯給食の方がずっと合致すると思うんですが、現実的に今学校給食の現場で行われていることは、パン、油脂が多い給食が多いというふうに感じております。今まで給食の現場においてこれを実践するという姿勢が足りなかったんではないかと思いますが、いかがでしょうか。

西阪政府参考人 学校給食は、先生御指摘のように、バランスのとれた食事を提供することによりまして望ましい食習慣を形成するとともに、友人と楽しく会食しながら食事のマナーを身につけたり、食事の準備や片づけなどの作業を通じまして共同、協調の精神を身につけさせるなど、学校における食育を推進する上で大きな役割を果たしていると考えております。

 近年におきましては、学校給食において地場産物を活用することは、地場、地域の産業や文化への関心、農業等に従事している方々への感謝の気持ちを持たせることなど、教育的効果があるというふうに考えております。また、地域の伝統食を取り入れることは、地域や地域の食文化などを児童生徒に理解させるなどの教育的効果があると考えております。

 私ども、これまでも、学校給食指導の手引や関係の通知におきまして、学校給食の充実、地場産物や郷土食の導入について工夫するよう指導しているほか、児童生徒用の食生活学習教材において地域農産物を活用した郷土料理等を取り上げるなどの普及啓発に取り組んできたところでございます。さらに今後、教師用に地場産物活用事例集を作成し、各学校に配付することとしております。

 今後とも、このような取り組みを通じて、地産地消や郷土食の導入の推進も含めて、学校給食が一層充実するよう努めてまいりたいと考えております。

高井委員 学校給食は、やはり最高の食現場の場所だと思うんですね。それで、現実的に、今までパン給食を中心にやってきて油が多かったという中で、この法案の趣旨に従って地産地消の伝統的な食生活の給食を実現させたいというお気持ちはわかるんですけれども、今までの給食行政について、本当に間違っていなかったのかというか、本当に大きく転換させようという方向で何年か前から考えてこられたのか、そのような認識をお伺いしたいというふうに思います。

西阪政府参考人 学校給食につきましては、戦後の発足の際にパンを中心として発足したという経緯がございましたが、昭和五十一年に米飯の導入ということを制度的にいたしまして、最近につきましては、御指摘いただきました地場産物や郷土食の導入ということにつきまして、私どもも、できるだけそのように取り組んでいただくよう、先ほど申し上げましたように児童生徒の食生活の学習教材、これは平成十三年度から取り組んでおります。

 また、先ほど申し上げましたように、地場産物の活用事例集を作成して今後各学校に配付していきたいというふうに思っておりまして、私どもも、できるだけ地域の特色を生かした学校給食ということにそれぞれ取り組んでいただきたいということを考えております。

高井委員 昭和二十九年の学校給食法がつくられた当時というのは、アメリカの輸入小麦、余剰農産物を処理するという意味合いがすごく強かったんではないかというふうに思います。

 文部科学省もお認めになっておられると思いますけれども、そのときと状況が随分変わっておりますし、それによって子供たちの健康状態、栄養状態、まあ大人もそうですけれども、非常に変わってきたという現実がある中で、ぜひともその点は反省して見直していただきたいというふうに思っています。

 人間の食習慣というのは大体八歳までに決まるというふうに言われています。味覚形成期というのは幼児期から小学校期で、御飯中心の食生活に、健康な食生活に変えることが一番簡単な健康への近道だというふうに思います。油も少なくてカロリーも低いし、成人病の予防にもなる、かむ力もつく。地域でとれたもので安心でありますし、自給率も上がるという、いろいろなプラスの面があるわけですから、ぜひとも学校給食の現場で、日本の今までの伝統食、世界じゅうで見直されている日本の食事というものを取り入れる方向で、これは今後も強く進めていただきたいというふうに思います。

 それで、私が少し民間のアンケート等で調べた結果によりますと、学校給食に地産地消を取り入れることの課題として、難しい理由として栄養士さんの何人かが挙げるのは、やはり地元産だけでは十分に品ぞろえができないということや、また食材の規格がそろわない、価格が高い、生産者団体が協力的でないとか、地元にどういう農産物があるのかわからない、どうやったら地元産を使えるのかわからないというような項目が挙げられていまして、食材の量とか品ぞろえとかがネックになっていて、生産者の方の側のアプローチも、対応の方の弱さも指摘されているところです。

 地元農産物等を安定的に購入できる仕組みづくりが大事だろうというふうに思うんですけれども、この第二十三条に掲げるような、農林水産物の生産された地域内の学校給食等における利用その他地域における消費の促進というふうに書いておりますけれども、このための具体策というか、お考えになっておりますでしょうか。ぜひとも、生産者と消費者の連携を促す、地域を巻き込んだ取り組みにするために、各省とも連携していただきたいというふうに思うんですが、もし具体的な取り組みとしてお考えがあったらお願いをいたします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘の法案の第二十三条、御指摘のあった部分は、学校給食などにおける利用その他のその地域内における消費の促進ということで、これは、私どもは地産地消ということで受けとめておりますけれども、学校給食というものは、子供たちの食生活の中で大変重要な役割を果たしているというふうにもちろん考えております。特に最近は、子供たちが食べる場面とそれから生産する場面の距離感というのは地元でもかなり広がっているというふうに私どもも聞いておるところでございまして、そういった学校給食の中で地産地消の取り組みを進めていくということは、お子さん方の食あるいは農に対する理解を深めるという意味で大変重要だと思っております。

 私ども、その具体的な取り組みといたしましては、今お話がありましたように、例えば生産サイド、あるいは学校サイドから見てもそういった問題があるのでしょうけれども、決められた納入日とかあるいは量に応じるのが大変だ、そういった課題があるというふうに確かに聞いております。そこで、地域の生産者あるいは食材納入業者などによる協力体制の構築などについて、予算措置を講じて支援を行っているところでございます。

 これは例でございますが、こうした支援を受けまして、徳島県の海部町というところでは、生産者が構成員となっております村づくり推進委員会を軸に、町役場が連絡役になりまして、翌月に収穫可能な野菜を考慮して献立を作成する、こういったような取り組みが行われているというふうに聞いております。こういった地産地消の取り組みをさらに進める中で、全国的にも展開をしてまいりたいというふうに考えております。

小坂議員 一言、提案者の方からも申し上げたいと存じます。

 高井さんのただいまの御意見は、私どもが考えていることとまさに同じでございまして、大変すばらしいことを言っていただきました。私どもも、農林水産省を初め各省に、そういった意味で、地産地消の給食の推進と日本型の食事の推進、おっしゃったような八歳までに味覚が形成される、また食習慣が形成されていく、そのことに私どもも配慮して、この食育基本法が成立したならば、あるいはこの問題を横にのけても、ともかく先生がおっしゃったことに私は大賛成でございまして、そういう意味で、御意向を体して、私どもも学校現場にそういうことがより一層実現されるように努力をいたしたい、このように思っております。

高井委員 でき得ることならば、こういう食育基本法までつくらなくても、現場でもっともっとうまくいっていればここまで自給率も下がらなかったでしょうし、もう少し早くこういう取り組みがなされていればと、遅きに失したぐらいの感では思うんですが、現場の皆さんがそれぞれに前向きに取り組んでいってくださるということで評価したいというふうに思っています。

 先ほど土屋議員からも質問がございましたけれども、学校栄養職員が教諭になられて、昨年法案が通ってからの学校栄養教諭の配置状況もお伺いしたいと思います。

 実は、私も文部科学委員会の方でこの件について質問をいたしまして、予算措置等大変ハードルが高いのではないかというふうな懸念もありました。学校栄養教諭の皆さんにとって過重な負担にならないかとかいう疑問も出されたわけです。十七年の四月から実地ということでありますが、今のところ、実地への配置状況等がおわかりになりましたら教えていただきたいというふうに思います。

西阪政府参考人 この四月から栄養教諭制度が開始されたわけでございますが、今後、大学において栄養教諭が養成されていくということでございますが、当面は現在の学校栄養職員が必要な単位を取って栄養教諭になるということでございまして、そのための講習会を十七年度には全都道府県で開始するように予算を計上しているところでございます。

 今後、そのような形で各都道府県で配置されていくものと思っておりますが、それを先取りした形でこの四月から、福井県と高知県におきまして栄養教諭の配置が開始されたところでございまして、さらに幾つかの自治体におきまして、平成十七年度内の配置に向けて取り組んでいるというふうに聞いております。他の多くの自治体におきましては、平成十八年度配置に向けて検討しているというふうに聞いているところでございます。

 私ども、できるだけ栄養教諭制度の一層の周知等を図りつつ、配置促進のため取り組んでいきたいと考えております。

高井委員 私も、高知県はお隣の県でございますし、熱心な教育長さんや熱心な栄養士さんとかがいらっしゃれば、前向きに進んでいるというケースも何件かお伺いしております。

 学校給食のもう一つの大きな問題点として、やはり、昭和二十九年当時の学校給食法がつくられたときの栄養所要量の基準に非常にとらわれて、何せとりあえず栄養素が足りれば、牛乳と御飯が一緒でそれにまた洋食がついたりデザートがついたり、カロリーや栄養素を満たすということに余りにもこだわり過ぎて、無国籍の献立になり過ぎてきたケースが多いのではないかと、さまざまな給食を調べて思いました。

 今後は、今は栄養が足りないということよりもむしろ栄養過多の方が問題になっているくらいですし、偏りというふうなものが問題になっておりますし、もう少し、本当に、かつての日本の伝統食なり、きょうは洋食なら洋食というふうにきちんと献立として成っているものを子供たちの場所でも食べさせてあげてほしいというふうに考えています。

 家庭の食事に踏み込むのは本当に難しいと私は思いますし、どこまでするべきかというのには大いに懸念があるんですが、給食という現場は公的なところがするわけですし、我々政治の場でも、改善しやすい大事なところであるというふうに思います。学校栄養教諭の役割がますます大事になると思いますので、ますますその支援の方をよろしくお願いしたいというふうに感じています。

 この教諭制度の趣旨どおり、専門性を生かして学校の内外を通じて食に関するコーディネーターとして、学校や地域、家庭の連携、調整のかなめとして活躍していただきたいと思いますので、過重労働ということに気をつけて省側の支援をしっかりしていただきたいと思いますが、どうぞ文部科学省の方、よろしくお願いします。

西阪政府参考人 栄養教諭につきましては、職務といたしまして、学校給食の管理とともに食に関する指導を行うということで、児童生徒に対する個別相談、指導を初め、各教科における指導のほか、食に関する指導を効果的に進めるため、学校の教職員や保護者、地域の関係機関等の連携、調整を行う、先生に御指摘いただきましたように、食に関するコーディネーターとしての役割を果たしていくということが期待されているわけでございます。

 これまでの学校栄養職員の学校給食の管理以外に、食に関するこのような指導ということが入ってまいりますので、御指摘いただきましたように、栄養教諭が過重労働にならないようにすることが必要であるというふうに考えております。

 このため、献立のデータベース化やコンピューターによる物資管理などの情報化の推進というのが一つございまして、こういうことによりまして学校給食の管理業務の一層の効率化を図ることによりまして、食に関する指導のために必要な時間を十分確保できるよう工夫することや、今後、栄養教諭が配置された後の学校における全校的な協力体制の充実ということが大切であると考えておりまして、このような指導、普及啓発ということに取り組んでいきたいというふうに考えております。

高井委員 ありがとうございました。

 続いて、第十二条についてお伺いしたいというふうに思います。

 外食や弁当とか総菜等の比率が高まっていまして、食事の外部化は、供給ベースでは今四四%に達しているというふうなデータを農水省の方からもいただきました。外食産業や食品メーカーなどが食育について理解を深めて、安全や健康に資する食品を提供する努力をするというのは大事なことであるというふうに思います。

 この第十二条の趣旨は、「食品の製造、加工、流通、販売又は食事の提供を行う事業者及びその組織する団体は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、自主的かつ積極的に食育の推進に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する食育の推進に関する施策その他の食育の推進に関する活動に協力するよう努めるもの」というふうに書いてありますけれども、こうした事業活動に対して、推進会議の方から、もしくはまた各省の方から働きかけを行うという趣旨なんでしょうか。法案ができることによってどのような効果的なアプローチが行われるのか、教えていただきたいと思います。

岡島政府参考人 先生御指摘のとおり、例えば昼食で外食を利用する人が二十から四十歳代の男性では半数を超えるなど、外食や中食を利用する人が大変増大しております。そういう意味からいいますと、外食や中食などの食品産業の関係者の方も食育に対する理解を深めて取り組んでいただきたいというふうに考えております。

 厚生労働省におきましては、現在、ヘルシーメニューの提供に取り組む飲食店への支援などを行っております。また、何をどれだけ食べたらよいかということをわかりやすく示したフードガイドの検討会を農林水産省と共同して開催いたしておりまして、現在検討しているところでございますが、その検討に当たりましては、外食、中食関係の方あるいは流通関係の方にもお入りいただいているところでございます。

 今後、この食育基本法が成立することによりまして、例えばフードガイド、現在は仮称でございますが、これができた場合に、その普及啓発あるいは活用につきまして食品産業の関係者の方々が積極的に取り組んでくださるように、より積極的、自主的に食育の推進に努めていただくことになるのではないかということを期待しているところでございます。

高井委員 これは各省の取り組みに任せるということなんですね。推進会議の方から何か働きかけをするとか、そういう計画等はまだございませんね。

宮腰議員 基本的には各省を通じてということになろうかと思いますけれども、食育を国民運動にという形で、そういう考え方のもとでつくられる食育推進会議でありますから、総理が会長ということでありますので、総理みずからの言葉で、外食、中食の皆さん方にみずから呼びかけていただくということもあり得るのではないかなというふうに思っております。

 先生御指摘のとおり、外食、中食の比重というのはどんどん高まってきておりまして、ここの部分で食育をどう進めることができるかというのは食育基本法案の一つの大きなねらいでもありますから、今おっしゃったことはやはり極めて大切なことだというふうに思っておりまして、食育推進会議におきましても、そういう方々も含めて、食育を推進していくという観点から委員の構成なども考えられるべきものではないかというふうに思っております。

高井委員 私はまだ政治経験が浅いもので、その基本法というのがどこまで本当に現場の具体策に資するものなのかよくわからないのです。推進法であればどう違うのか。本当に基本法というのを定めただけで役に立たないものになってしまえばそれは残念なことですし、それがまた、推進法であっても基本法であっても大して役割が変わらないということであれば、先ほど来質問があったように推進法でいいのではないかというふうな気もしておりますが、具体的に現場の施策は引き続き前向きに進めてくださるということは、この法案ができようとできまいと変わらないだろうというふうには感じています。さまざまな省庁が連携して、取り組みを引き続きお願いしたいというふうに思います。

 そして、もう一つ質問したいんですけれども、今現状、多くの家庭では、やはり食事は女性がつくっているのが多いだろうというふうに思います。家庭における食育というふうに言えば言うほど、働く母親だったり、また専業主婦のお母さんであっても、大変育児に悩んでいる人は多うございます。女性にプレッシャーがかかって、また核家族や独身の方は非常に子供を持ちにくくなるような傾向になってしまうのではないか、考え過ぎかもしれませんが、そういう懸念も持ってしまいます。

 最近では、諸外国の少子化対策の例に倣って、ワーク・ライフ・バランスという観点から、働き方自身を見直す、働き方全体、企業のあり方も見直す中で、男性も女性も料理や食事の時間をゆっくり持つというゆとりのある生活を送ることが大事であるというふうな話がいろいろなところから聞こえてまいりますけれども、社会のあり方、働き方そのものを見直していこうという問題意識はこの法案の中にもあるんでしょうか。提案者の方からもお答えをいただきたいと思いますし、厚生労働省としても、そのような取り組みに対してはどういうふうにお考えになっているか、教えていただきたいと思います。

西川(京)議員 ありがとうございます。

 もちろん、これは前文にも国民の一人一人が食の大事さを認識するということはうたっているわけでございまして、女性に過重な負担がかかるようなこと、これは毛頭私たちも思うところではございません。みんながむしろ逆に余りにもそういう認識がなさ過ぎる現状を憂えてのことだと解していただきたいと思います。そういう中で、お互いにそれぞれ、女性だけが食の要するに提供者ではない、そういう考えももちろんみんなが学んでいかなければいけないということは当然この前文にもうたってあると思います。

 ただ、根本的な、基本的な認識として、私はやはり、人間がこの世に生まれた最初の食はお乳だと思っておりますので、そういう意味での女性が根本的なところできちんとした認識を持つ、そのことは本当に大事なことだ、それは言うまでもないことですが、申し上げておきたいと思います。

 そういう中で、具体的にこの問題意識はこの法案の中に盛り込まれているのかという御指摘もありましたけれども、それは前文の中ににじませているつもりでございます。

伍藤政府参考人 食育といったようなことを社会に根づかせていくために社会全体のゆとりを取り戻す必要があるのではないか、こういう御趣旨だろうと思いますが、そういう認識は私どもも同じくするものであるというふうに思っております。

 具体的に、先ほど言及がありましたように、昨年末に、少子化対策という観点から、子ども・子育て応援プランというような包括的なプランを取りまとめましたが、この中においても、仕事と家庭の両立という観点からのいろいろな施策を盛り込んでおります。

 そういったことを具体的に各企業に取り組んでいただくということで、この四月から、今始まったばかりでありますが、行動計画を具体的に提出していただいておるということでありまして、こういった企業の行動計画の中で、具体的な、育児休業あるいは時間短縮、そういったいろいろな措置を各企業に講じていただくように今努力をしていただいておるところでございます。

 それから、あわせて、今まで労働時間の短縮ということで時短促進法というものがございましたが、これもできるだけ個々の労働者の生活にふさわしいものに変えていく、そういった内容の改正法案を今国会に提出しておるところでございまして、そういったいろいろなもろもろの措置を講じて、全体としてバランスのとれた生活あるいは働き方というものの実現に取り組んでいきたいというふうに考えております。

高井委員 私も、上の子がやっともうすぐ三歳になりますし、働く母親としても、自分の子は自分で守りたいという思いは本当に強く持っています。大変多くの母親の皆さんがやはり自覚をしておると思いますし、父親の皆さんでも自覚しておる方も多いと思います。

 だからこそ、一人一人の自主性を一番大事にしながら、できるだけ子供の健康に資するようにということで、国が、また政府ができることとして学校給食を見直してほしいというつもりで、またその働き方全体を見直してほしいというつもりできょうは御質問を申し上げました。

 もう時間がございませんので最後になりますけれども、重ねて、伝統給食のよさというのを本当に最後に一言申し上げたいというふうに思います。

 何よりも、やはり伝統食、米飯中心の給食であり、御飯とおかずという野菜がたくさんとれるメニューというのは健康にいい、カロリーが低くて成人病予防にもなる、歯にもいいということと、あと、やはり味覚形成期の大事な時期に、まさにこの法案にあるとおり、地域の多様性と豊かな味覚と文化の薫りあふれる日本の食ということを学ぶ場として、学校給食の現場は最適であるというふうに思います。

 それから、三つ目のポイントとして、やはり安心である、安全である。BSEの問題、輸入小麦の問題、食品添加物の問題等が今言われる中で、やはり地産地消のものが身近にある中で安全であるケースが多いということで安心して食べられる。それがひいては食糧自給率の向上につながる。

 最後にもう一つ、プラスもう一つの観点として、環境への負担が軽いということであります。この間、この二十年ぐらいで合成洗剤の使用が百倍になったというデータもありまして、要するに、油物が多いとどうしても洗剤をたくさんつけて洗わなければいけない。

 それを伝統食にすれば、私などもそうなんですけれども、朝御飯はおみそ汁と御飯とお魚ぐらいであれば、水でさっとスポンジで洗えば、さっと落ちる。本当に環境への負担とかいろいろなことを考えてプラスの面が多いと思います。ぜひとも、文科省だけではなく各省が取り組んで米飯給食を進めていただけるように、現場での実践をしていただけるようにお願いしたいと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。御協力ありがとうございました。

松下委員長 次に、岩國哲人君。

岩國委員 岩國哲人でございます。民主党・無所属クラブを代表して、食育基本法について質問させていただきます。

 私は海外にも長く住んでおりまして、いろいろな国の食べ物、飲み物、多様な食材あるいは食べ方、飲み方、そしてその味に接してきました。二人の娘をイギリスとフランスとアメリカと日本と四つの国で育てて、給食の実態にも私は接してきた経験があります。また、出雲市という、農業の原点と言われる自治体の市長を務めて、農業の供給基地、そして生産面からも農業が今どのような状況に置かれているか、それも経験いたしました。農村の実情も、そして典型的な消費地と言われる東京、横浜、ニューヨーク、ロンドン、パリ、世界のそういう大都市の中で、消費地の実態も私は見ることもできました。

 今の農業が大変苦しんでいるということは皆さん御存じのとおりでありますけれども、そうした地方の農業を推進するために、私は、東京、福岡、大阪、名古屋、いろいろな市場へ朝早く出かけていって、そういった農産物の売り込みにも努力してまいりました。そこから学び取ったことも非常にたくさんございました。

 私自身は小学校二年生からずっと農業をやっておりました。父を亡くしましたから、母を助けて、キュウリ、ナスビ、トマト、カボチャ、大根をつくり、芋を植え、麦を植え、麦踏みをし、麦刈りをし、ありとあらゆるものをつくっておりました。高校三年、大学へ入るまで私は農業をやっておりました。私はそのことを今でも誇りに思い、そして神様は貴重な体験をさせてくれたと思って感謝しております。

 選挙区の中で、世田谷でも横浜でもそうですけれども、私は商店街の中を歩くことが好きでした。商店街には、酒屋さん、本屋さん、八百屋さん、いろいろな古い商店があります。私はそういう屋のつくところが大変好きでした。だから今でも屋党と言われております。私は屋党と言われることを嫌に思ったことはありません。八百屋が好きだ、本屋が好きだ、酒屋さんが好きだ、そういう屋のつくところを愛すること。そして、特に八百屋の前では、私がつくっておった昔の仲間が、そこから私に声をかけてくれるような気がしたものです。そういう思いを私はこれからも大切にしたいと思います。

 そういう経験を踏まえて、けさから食育、食育という言葉が飛び交っておりますが、当然のことでありますけれども。私にはどうもこの言葉がなじめないんですね。現に提案者の一人である小坂議員のホームページを見ましても、教育について熱心に書いておられますけれども、食育についてはどこにも書いていないんですね。

 そして、私自身もこの言葉を使ったことはありませんでした。普通、私の頭には、ショクイクというと職業の職、職業教育の方の職育、これの方が、今の日本の社会と日本の青少年に必要なのは食べ物の教育訓練ではなくて、私は、ミスマッチ、あるいはニート、フリーターと言われる日本の現状を踏まえれば、今、日本の社会、日本の青少年がこの国会に、日本の政府に期待しているのは、食べ物の教育訓練ではなくて職業の教育訓練だと思うんです。

 その証拠に、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、どこを見ても食べ物に関しての法律をつくっているところはありません。どこの国が食べ方について、そんな法律までつくっていますか。どこの国も忙しい。どこの国も経済の問題に対応している。食べ方の法律をつくるよりは、青少年に職業を与えること、希望を与えること、それがよい社会人になるための第一歩だということを世界の政治家は知っています。私は日本の政治家として恥ずかしいと思います。

 職業能力開発促進法というのが十分な力を発揮していないのであるならば、むしろその法律を抜本的に改革して、そして職育基本法、私のショクはあくまでも職業の職です。職業を与えるからこそ、安心して生活をし、いい家庭をつくり、いいお母さんがそこから誕生し、いいお母さんがいい子供をつくる、これが日本の社会の伝統だったんじゃありませんか。私は日本の伝統を破壊するようなこういう法律には、たとえ基本法だろうと推進法だろうと反対いたします。

 御所感があれば、小坂議員、おっしゃってください。

小坂議員 岩國さんがよろしいですか、岩國議員と申し上げたら、先生と申し上げたら、余りよくわからないんですが、岩國さんは昔から存じ上げておりますので、友情を込めて岩國さんと申し上げたいと思います。

 岩國さんの御指摘でございますが、まず第一に、私のホームページには食育の記述がございますし、この食育基本法に関する資料は全部PDFのファイルで載っておりますので御参照いただければと思います。

 そういう中で、岩國さんがおっしゃる職業教育。この問題をここで議論すると食育基本法の審議になりませんので、御指摘の趣旨というのは私も理解をいたします。しかし同時に、世界のどこにこの食育基本法があるかといえば、確かにございませんが、私どもが食育基本法を提案して、そしてこの活動によって正しい食生活、それからそのリズム、また各般にわたっての、分野にわたっての総合的、計画的な食の問題に対処する施策の推進ということが実施されれば、これをやはり手本として、各国において同じような食に関する法律がより一層推進されることは、私どもも期待をいたしておりますし、そういう法律になるように、この部分を実施過程において努力していきたい、このように思っているところでございます。

 ただ、岩國さんも食育ということについての必要性そのものは、若干であっても御理解をいただいているんだろうと思うんですね。要するに、食に関するリテラシーが必要な時代になってきた。すなわち、BSEだとかO157とか、いろいろな形での食の安全性というものが非常に社会の各般にわたって問題になってきている。それから、過度の痩身志向だとか、あるいは欠食ということによる子供の生活パターンの乱れといったようなもの、これによるいろいろな副次的な影響、学力の低下まで言われるような統計もありますけれども、そういったことに対して問題意識をお持ちいただいていることはあるんだろうと思うんです。

 この辺についても御意見を賜れればありがたいと思いますが、私どもは質問をする立場でございませんので、私どもとしてはそういうことを御理解いただいているということを期待いたしたいと存じます。

岩國委員 食育というものの大切さを私は否定するわけではありません。昔から衣食住と言われて、食事は人生にとって、人間にとって大変大切なものだという認識は私も十分持っております。しかし、それを教育の中に位置づけるということに関しては、非常に私は違和感を感ずるんです。

 日本の伝統というものからこの問題を考えてみた場合に、例えば、日本人の場合には趣味とか習い事に道という名前をつけて、お花でも華道という、書を書くことも書道という、お茶の習い事をすれば茶道という。私は、これは日本の文化の非常にすぐれた点だと思うんですね。民間の、学校で習わないことでも、一人一人こつこつと、先輩あるいは師匠を見つけては、自分の人生、人格を磨くために、道という名前をつけて、華道、茶道あるいは書道。しかし、食べ物が大切であっても、食道という言葉を私は聞いたことがないんです。

 カルチャー教室、たくさんの広告が出てきます。このカルチャー教室も非常に盛んになっておりますけれども、水泳教室、ヨガ教室あるいは料理教室というのはありますけれども、食教室というのは聞いたことがないんです。食というのは、教えるもの、学ぶものというよりも、家庭の中でお母さんからしっかりと、小さいとき、ゼロ歳のときから身につけるもの、それが私は食ではないかと思うんです。

 私は、こういうものは法律にはなじまないから、食育という概念は肯定するとしても、食育法と「法」をつけることに抵抗を感じるわけです。これは国家権力や政府や国会議員がやることではない、そういう思いがあります。

 例えば、西洋文化の発祥の地と言えば、まずイタリアでしょう。イタリアではどのように言われているか。イタリア人の一番の情熱、人生で一番楽しみを覚える、自由に楽しめるというのは、アモーレ、カンターレ、マンジャーレ、この三つですね。小坂先生もヨーロッパに取材されましたから、よく御存じと思います。アモーレ、カンターレ、マンジャーレ、愛して、歌って、食べて、これが人生の一番の楽しみだと思っているんです。裏返して言えば、この三つの分野だけはどんな国家権力者も介入したことがないんです。また、介入しようとしない分野なんですね、アモーレ、カンターレ、マンジャーレは。シーザーも介入しませんでした。ネロも介入しませんでした。ローマ法王も介入しませんでした。

 一般庶民は、この三つだけは、権力とか政治と無縁の、自分たちのものとしてとっておいてほしい、それが一般大衆の願いじゃありませんか。これが私は日本の常識、世界の常識だと思うんです。法律の好きなドイツでさえもこんな法律はつくっていません。職業訓練法はつくっても、食べ方の訓練法、教育法はつくっていないんです。

 こういう食べるということは、常に権力に一番遠い位置に存在するからこそ、みんな味がわかるんです。食べ物を権力者のそばに持っていかれる、食べること、食べ方さえも権力、法律、制度の中に取り込まれる、それでは味が悪くなると思います。

 食は広州にあり。広州というのは、御存じのように中国の国家権力から一番遠いところにあります。日本でも、浪花の食い倒れと言われます。浪花の人、大阪の人は、食べることを非常に楽しんできました。それはどこにあるか。江戸でもなければ京都でもない、出雲でもない、奈良でもない、常に国家権力が存在しなかったところに食文化が一番発達しているんです。

 そういう権力と食ということを考えれば、私は、安易にこういう基本法だとか推進法だとか、国会の中で法律や制度をつくって介入すべきものじゃないと思います。私は、食こそ自由で民主、自由民主党の名前そのものに一番合っているのは、法律や制度から解き放すことが皆さんのおやりになることではないかと思います。そういう食に対して権力が介入する、それを食権介入と言うんです。そういうことをやってはならないと私は思います。

 私は、頭が古いのかもしれません。しかし、いろいろな国を見て、いろいろな国の人たちの食べ方を、そして子供の育て方をずっと見てきて、私は非常にこの法律には違和感を感じる、そのことを申し上げます。

 子供が悪いのは学校のせいだ、社会が悪いからだ。本当は悪いのはその子供であり、その親なんです。自分の体が悪い、小坂先生も先ほど糖尿の心配があるとおっしゃいました。しかし、やれ糖尿病だ、血圧が高い、自分の体が悪いのは親のせいだ、小泉さんのせいだ、すぐに社会のせいや小泉さんのせいにしてしまう。これも私は悪い風潮だと思うのです。悪いのは本人なんです。

 こういう食育法があったら、小坂先生は糖尿病にならなかったか。私は、やはりおなりになったと思うんです。あれだけ飲んだり食ったりを楽しんでおられるわけですから。食育法と全然関係がない、個人の生き方の問題なんですね。悪いのは自分の暮らし方、つき合い方、そういう方にとっては、この食育法があってもなくてもほとんど関係はない。自分が自分の健康には責任を持つ、これこそ私は一番大切なことじゃないかと思うんです。

 そして、この法律の中には、地産地消、宮腰先生のホームページものぞかせていただきました。この食育法については情熱を傾けていろいろと書いていらっしゃいますけれども、どうも目立つのは地産地消、農業、農村の活性化。つまり、胃袋よりも財布の方に私は重点があるような気がするのです。つまり、今までの農政の失敗というものを、こういう厚化粧のこの新法で目先をかわそう、こういう思いが私はしてなりません。

 まず、宮腰議員にお伺いいたします。

 国民の関心事の中で、今、年金とかあるいは景気対策が関心事の一位、二位に来ますけれども、この食育法については関心事はどれぐらいなんでしょうか。上から何番目ですか。郵政改革、よくて八番、十二番目が郵政改革、こういうものを今一生懸命政府はおやりになろうとしているわけですけれども、この食育法、食育ということについては、国民の関心事、そういう世論調査の中で何番目ぐらいだという認識を持っておられますか。

宮腰議員 関心が何番目かということにつきましては、ちょっとよくわからないわけですけれども、食育は極めて範囲の広い分野だと思っておりまして、例えば食の安全、安心ということについては、国民の関心は相当高いのではないかというふうに思っております。あるいは、子供のアトピーですとか、そういうものについても相当関心が高いんじゃないかなというふうに思っておりまして、一言で食育に対する関心はどの程度かということになりますと、ちょっと範囲が広くてなかなか答えようがないなというような気がいたしております。

 ただし、安全、安心については、それから自給率の問題については、相当関心が高いのではないかというふうに思います。

岩國委員 私は、教育について関心が、大体、時には四番、時には六番ということはありますけれども、経済問題の次に、教育については非常に関心が高い。それは、教育の中の胃袋の問題ではなくて、頭とハートのことをお母さんたちは心配しているんです。ですから、教育についてもっとよくしてほしい、教育をしっかりやってほしいという願いは、胃袋の中身の話ではなくて、心の問題、そして知能の問題、それを今の教育改革の中では非常に心配していらっしゃる。ですから、小坂先生のホームページの最初の教育改革の中にも、そのことはしっかりと書いてありますよ。私は、それがごく一般的な国民の関心事の順位づけだと思うんです。

 これは、私はもう十番目よりもっと下、むしろ私がさっき言いました職業教育をしっかりとやってミスマッチを少なくしてほしい、胃袋を広げるよりも職場を広げてほしい、これが私は親の願いではないかと思います。胃袋を広げるよりも職場を広げて、そして青少年にもっと希望を与えてほしい。その職育だったら、国民の関心事としては私は相当ランキングは上がると思います。

 次にお伺いいたしますけれども、農業との関連において、身土不二という言葉がありますね。これについて、西川委員はどういうふうにお考えになりますか。

西川(京)議員 身土不二、もうまさに字があらわしているとおり、人と土は一体である、その地域のものを本当に自然な形で体に取り入れていけば立派な人間が育つ、そういう考え方なんだろうと思っております。

岩國委員 別に知能テストをやっているわけじゃありませんけれども、宮腰議員、地産地消ということを大変強調しておられますけれども、この食育法と地産地消との関連度はどういうふうに考えていらっしゃいますか。簡潔にお答えいただきます。

宮腰議員 本法律案におきましては地産地消という言葉をそのまま使ってはおりませんけれども、法律案にその思想はあらわれているというふうに思っております。例えば、第二十三条の「農林水産物の生産された地域内の学校給食等における利用その他のその地域内における消費の促進、」という表現は地産地消の思想を法律的に表現したものであるというふうに考えております。

岩國委員 戦後間もないころ、我々が小学校のころですけれども、こうした地産地消という言葉はほとんど聞かれませんでした。

 宮腰議員はまだそのころはお生まれになっていなかっただろうと思いますけれども、そのころ我々が学校で教えられたのは、松下委員長さんは少しは関係あるかもしれませんけれども、要するに学校教育は終戦とともにがらっと変わって、そして子供たちの給食のあり方から食べ方からがらがら変わっていったんですね。

 アメリカの言葉だからと言われて英語をどんどん勉強させられました。アメリカの文化だからといってアメリカの映画をどんどん見させられたんです。そして、アメリカのスポーツだからといって一生懸命野球をやりました。アメリカ人はパンを食べている、だからパンを食べなさい、パンを食べたら頭がよくなると言われて一生懸命パンを食べたけれども、食べた割には頭はよくならなかった。

 地産地消どころか、一番遠いアメリカのもの、アメリカの食糧に依存している。しかし、アメリカの食べ物を食べてきたからといって、当時小学生、中学生だった子供たちがそれで体を悪くしたか、体格を悪くしたか。私は、それほど大きな影響はなかったんじゃないかと思うんです。

 もちろん、私は市長として、地産地消、身土不二という言葉を大切にしてきました。それは、本当の科学的な意味というよりも、私は、ある意味では政治的な意味で、行政的な意味で、地方の農業を大切にしたいという願いの方が先立って、率直に申し上げれば、子供たちの胃袋に本当にそれがいいかどうかという科学的な裏づけもなしに、地元の空気と地元の土と水でできたもの、それに一番体がなじむんだ、そういう意味で私は身土不二も使いました。

 地産地消は、地元のお百姓さんが日本の農政のいろいろな欠陥、そしてぬくもりのない日本の農政の中で苦しんでおられるから、私は、地産地消ということで、地元のものを給食に使うようにしました。給食に使う地元の食品率を高めるように、各品目別に調査させて、それをすべて上位に上げていくように。

 かなりの項目は成功しましたけれども、失敗したものもありました。キュウリ、ナスビは出雲でたくさんとれていると思ったら、キュウリは福岡から、ナスビは広島から。私は、よくスーパーや八百屋さんに行って、いつも袋の裏側を見ていました。このナスビはどこから来たのか、このキュウリはどこから来たのか。それでいつも私は考えていたんです。地元のものが非常に少ない。

 結局、価格競争力で、安定的に、そして量を確保するような体制にほとんどの農村はもうなっておらないんですね。農村と私は言いましたけれども、もう村そのものがなくなってきました。全国で六万あった村が、今はわずか二百十三しかありませんよ。村が一つもない県がある。村のない、ノー村。村がゼロ、ノー村と言われる県が十二ぐらいに広がっているんです。村が一つもない県が出てきています。

 そういう現状で、地産地消というのを実験し、やってみて、努力して、教育委員会も協力し、地元の人も協力しました。しかし、これは大変難しいことだなと思いました。そして、そういう農家の所得を保障するというよりは、むしろ私は農家を苦しめることに気がついたんです。

 例えばニンジンにしても、給食センターが使っている学校給食のための機械は、給食センターにお入りになったらおわかりですけれども、あれは大量生産をやっている大型生産地の大型のニンジンしかその機械に合わないようにできているんですね。つまり、地元のやや小粒で、少しねじれて、しかし味は本当にいいんです、質も恐らく私はそっちがいいと思います、にもかかわらず給食センターの機械がそれをもう受け付けない。給食センターの機械というのは、外国から来るもの、あるいは国内でも大型生産地の野菜しかその基準に合わないようになっていますから、結果的には、そこでも私の計画、努力は失敗いたしました。

 そういった点から、私は、この食育法に、地産地消、そして農業に対するそういう大きな経済的支援になるということは期待できないんじゃないかと思うんですけれども、私の意見が間違っているかどうか、御意見があればおっしゃってください。

宮腰議員 地産地消というのは、私は、この食育基本法においては、やはり人間力を養っていくという観点から取り上げているわけだと思っております。単に地場でとれたものを地場で消費するということではなしに、やはり地場でどういう方々が汗を流してつくったか、あるいはどういう流通経路を経て、そして調理をされる方がどういうふうに調理をして自分たちの口に入るか、その生産現場も見、あるいは流通現場なり調理現場も見、その大切さを理解するというのが何よりも大切なのではないかなというふうに思っております。

 最近の地産地消というのは、食の安全、安心、あるいは食品の偽装表示などから、やはり国民はあるいは消費者は生産者の顔が見えるようなものを求めてきている、あるいは流通経路も明確にわかる、生産履歴もわかるというものを求めてきている。そういう大きな流れの中で、地産地消というのが、これまでもあったわけでありますけれども、これからも消費者のニーズとして定着をしていくのではないか。

 学校給食における地産地消については、先生がおっしゃったようにカットは大きなものしか対応できないということで、これはやはり包丁を握る調理師さんの理解も要る。以前、私が県議をやっておりましたときに、指曲がり症が出てきている、何とかならぬか、こういうような議論がありました。これは組合さんの方からもそういう議論がありましたけれども、やはり調理師さんも、現場で働く方も、地元でとれた、本当に正体のはっきりした、あるいは減農薬でつくっているとかこういう努力をしているという顔の見えるような野菜を子供たちに食べさせたいというような気持ちも持っていただくというのが大事なのではないかなと思っております。

 都会でもといいますか、埼玉県でも、これは埼玉県の農畜産物が給食にたくさん使われている。埼玉県の学校給食会で一生懸命やっている方のお話もお聞きしましたけれども、米だとか大豆だとかそういうものばかりではなくて、野菜、畜産、果物、ありとあらゆる地域のものを一生懸命子供たちに提供している。

 地場産品を提供するとなると、やはり価格も上がる。あるいは、農家の方々の協力があればできる限り低い価格でということもありますが、いろいろな方々の努力が相まって、相乗効果でもってようやく学校給食での地産地消が進むということだと思っておりまして、この法案は必ずしも金の面ということではないとらえ方をしているということを御理解いただきたいと思います。

松下委員長 簡潔にお願いします。

小坂議員 端的にお答えしたいと思うんですが、先ほど岩國さんの方から海外における法律的に食について関与したものはないというお話がございましたけれども、アメリカにおいて、自民党の食育調査会でいろいろな調査をしたりヒアリングをしたときに提出されている資料の中を見てまいりましたけれども、そういう中に、米国人のための食事ガイドラインというものを、連邦農務省が給食用に提供するものの中でそういった指導要領を出しておりまして、これは五年ごとに農務省と保健省が作成して改定をしておるわけですけれども、こういった指針が出ている。あるいは、チームニュートリションというような形で農務省が推進する食の教育活動、こういったものも行われておりますし、挙げてまいりますと、イギリスにもドイツにもフランスにも、この食育に類似するものはいろいろございます。

 ですから、岩國さんも海外生活から大分たっていらっしゃると思うし、私も同じように海外生活からもう二十年ぐらい間があいているわけで、海外においてのこういった食育活動、あるいは食に関するいろいろな問題意識というものは、やはり我が国と同じように高まっているということがあることだけここで指摘をしておきたいと思います。

岩國委員 私もそれはもちろん調べてみました。しかし、法律の、ローではなくて、今おっしゃったのはガイドラインという形でもって発表されている。そして、いろいろな関係先にそれが流されているんですね。

 私は、ガイドラインでそれは結構だと思います。一つの、どういうものをめどにすればいいのか、あるいはよりどころにすればいいのか、そういうときにはそのガイドラインは私は非常に有効だと思います。しかし、法律というのは、みんなを規制し、あるいは時には罰することもしなければならない、それが我々の法律であって、私は、そのガイドラインで一番現実的な対応が十分できているんじゃないか、そのように思います。

 それから、宮腰委員からこういった地産地消という発想、あるいは食育法というものが実行されるようになればと、埼玉県の例をお挙げになりました。しかし、埼玉県と富山県は違うんです、埼玉県と島根県も違うんですね。つまり、大消費地の、人口がたくさんすぐそばにある、そういうところは、そういう大型、そして給食を対象にして頭に入れた農業というのはやりやすいところなんです。しかし、それは富山県ではできません、島根県でもできません。今困っている、そういう農業の農村地帯は、依然として、東京の隣に引っ越してこない限り、今おっしゃったような埼玉県のようなわけにはちょっといかないというふうに思います。

 次の質問に移ります。

 学校給食法、これはちょうど満五十年を迎えたわけですけれども、この五十年間の実績を踏まえて、非常に、所期の目的を達しているかどうか、学校給食法は今後も廃止せずこれからも続けていくつもりなのか、あるいはむしろ抜本的に拡充しなければならないと思っておられるか、端的にお答えいただけませんか。

松下委員長 簡潔明瞭に。

西阪政府参考人 学校給食法につきましては、戦後、学校給食を再開するということで制定されたものでございまして、今日まで我が国の学校給食の推進ということに大きな役割を果たしてきたというふうに考えているところでございます。途中、先ほども御議論がございましたが、米飯給食を正式に導入するとかということで、給食制度の見直しということも含めながら今日までやってきたところでございます。

 私どもといたしましては、学校給食の一層の充実ということで、学校給食法の趣旨にのっとって、今後とも充実に努めていきたいというふうに考えているところでございます。

岩國委員 この学校給食というのは、私は日本の食生活の改善に大変大きな影響を与え、そして、大変大きなプラス効果があったと高く評価しています。

 五十年間に幾らのお金がこれに使われましたか。国によって、地方自治体によって、そして家庭が食材は負担していますね。国と地方自治体とそして家庭の負担はそれぞれ幾らだったのか。五十年間全部足し算することが難しいのであれば、一番新しい年において数字でお答えください。三つの数字だけ。

西阪政府参考人 お尋ねの点でございますが、私ども文部科学省の学校給食関係のまず予算ということでございますが、昭和二十九年度、学校給食法を制定いたしまして発足した当初でございますが、予算額が七千二百万円でございました。年々充実をいたしてきておりまして、例えば昭和六十年度ごろには約二千万、失礼いたしました、二百億の予算額ということになってございます。近年、いろいろな制度の見直しということもございまして、平成十七年度の文部科学省の学校給食予算につきましては、三十一億という額になってございます。

 地方公共団体すべての学校給食に要する費用につきましては、私ども、現状、把握している資料がございません。また、各家庭の学校給食費ということでございますが、一食当たり、現在の学校給食費につきましては、小学校の低学年では二百二十八円、中学校では二百六十五円というような状況でございます。

岩國委員 そうした、国が食育ということを大切にするならば、二百億円はなぜ一番近年において三十億円に激減しておるのか、この辺も私は問題だと思うのです。子供の教育のためにそれほど大切であれば、そして、子供の胃袋、体のことをそれほど心配するのであれば、文部科学省が幾らそれにお金をかけているか。二百億と二千万円と、けたを間違えるような頭も私は問題だと思いますけれども、数字そのものが三十億円に激減していてだれ一人驚いた顔をして答弁されないというところも問題だと思います。三位一体の改革と小泉さんがおっしゃっていることとこれは大いに関係があると思います。なぜ三十億円に激減してしまったのか、地方自治体に幾ら押しつけたのか、家庭に幾ら押しつけたのか。

 これだけ小坂先生を初め皆さんがこの食育法が日本の将来のために大切なんだと言うのであれば、給食事業というものがどれぐらいお金をかけて運営されてきているのか、その数字がないというのはおかしいんじゃありませんか。どなたか提案者の中から説明していただけますか。

 給食事業というのは、この食育法が成立しようとしなかろうと、成立すればなおさらのこと学校給食は大きな役割を、食育法の実施の中のエースは学校給食だと私は思います。子供を教育し、学校給食という事業は、経済規模で幾らのお金がかかっているものなのか、国と地方自治体とそして家庭とがそれぞれどういう比率でそれを負担し、これからも行われていくことになるのか、お答えください。

西阪政府参考人 地方公共団体の学校給食にかかわる予算につきましては、私ども数字を把握してございません。先ほど、学校給食に関する文部科学省の予算につきましては、施設あるいは学校の給食費、それらもろもろでございまして、それぞれの状況に応じて所要額を計上しているという状況でございます。

岩國委員 私は、こういうことは問題だと思うんですね。財政再建ということをうたう小泉政権が、財政再建の道半ばにしてこの新しい法律をつくって、この新しい法律のために幾らお金がかかるかという試算さえもだれ一人していないとすれば、大変問題ですよ。しかも、学校給食は、去年から始まったんじゃなくて、五十年前から始まっている。そして、この五十年間の間に、昭和二十九年に学校給食法はできました。実質的に完全給食は法律ができる二年前の、たしか二十七年から全国的に実施されたのですね。二十七年当時の中学校三年生は、今六十五歳を迎えていますよ。六十五歳は、娘さんがいて、その娘さんがまたお子さんがいて、親子三代、日本の給食制度を体験してきた、そういう親子三世代のところはたくさんあって、私はその教育効果、そして日本の食改善効果というのは絶大なものがあったと思います。

 そういう思いがあるから、私は今さらこんなものつくらぬでもいいという気持ちにつながってくるわけですけれども。しかし、そういう立派な制度を運営してこられて、国のお役人は国の負担しているものしか私たちは計算したことありません、地方自治体は島根県庁が払う分だけしか計算したことはありません、あとは家庭に押しつけ。これはちょっとおかしいのではありませんか。

 これから学校給食の制度、食育ということがこんなに大切なら、中身を変えて、もっとグレードアップして、そして最小のコストで最大の効果を生むような方向に持っていこうとするならば、今だれが幾らお金を払っているかという計算ぐらいちゃんとしてこの法律をここへ持ってこなければ、我々に対して失礼ではありませんか。そういう数字的なものが何にもなしに我々にこれを審議しろとおっしゃるのですか。小坂委員、お答えください。

 まず、日本の食生活というのは国民経済統計の中でどれぐらい占めているのか、衣食住と言われる中で。住宅に関しては統計があります。衣類についても皆さんが買っておられるでしょう。食というのは、国民経済の中で、個人消費の中で、どれだけのウエートを占めているものなのか、日本人の食生活たるものは。お答えください。

 そして二番目に、この学校給食という事業が幾らお金がかかっているのか、官民合わせて。その二つをしっかりと教えていただかなければ、我々はこの基本法に賛成するわけにはもちろんいかないわけです。この法律をつくったために、幾らお金がかかっていくのか、あるいはお金のかかり方が少なくなっていくのか、それを審議するのが国会ではありませんか。

小坂議員 岩國さんの御質問ではございますけれども、私どもがこの食育基本法を推進していきたいと考えているのは、先ほど申し上げましたように、今日生じている食に関する各分野における問題点の総合的、計画的な解消のために、こういった法律が必要であろう、それはすなわち、各省がばらばらに施策を推進したり、あるいは消費者、生産者、あるいは学校、保育所、そういった場において、それぞれアイデアを個別に出してやることよりも、それぞれの分野に共通の指針というものを出すことによって、それを総合的に推進したいという気持ちから、みんなの意思を統一して、この法律という形をつくり上げてきたわけであります。

 ただいま御質問いただきました、食というものが一体国民の中に、エンゲル指数ではございませんけれども、どのくらいの金額を占めているかということを私がお答えしなければ、この法律を出すのは失礼だと言われることは、それは岩國さんらしからぬ御質問だと思うのですね。これは私と立場を入れかえてみれば、恐らく私がそういう御質問を申し上げたら、いや、それは私がそこでお答えする問題ではなくて、それは本来それぞれの省庁がやっていなければいけない問題、そういう意味では私も共通でございまして、学校の給食がどのくらい学校の負担あるいは父兄の負担あるいは地域の負担、こういうふうになっているか分析していないのは、これはやはり学校給食を推進する立場の役所としては不届きではないかということについては私も同様の感覚を持ちますけれども、しかしながら、それがすなわち、この法律を提出することが、私どもが提案することが失礼だというのは少し言い過ぎではないか、このようには考えますが。

岩國委員 私はこの場で急に聞いたんではなくて、質問も予告もしてあります。私は関係省庁に二回も聞いています。この霞が関の中をぐるぐる走り回って、そんな国民統計が出ていないなんてことはおかしいではありませんか。衣食住と言われる国民の基本的な三つのコスト、生活コスト、暮らしのコストについて、そういう統計さえもなくて、どれだけの、例えば農業生産額というのは宮腰さんだったら持っていらっしゃるでしょう。農業生産額は毎年毎年だんだん減っていく、これに少し元気を与えなければいかぬ、だから農業に対する補助金はたくさんたくさんつけてあるわけです。

 同じように、食産業というものは、国民は一体、財布の中から食べ物のために幾ら使っているのかということは、この食育法の一番大切なことだと思うんです。お金のことは全部忘れて食べ物のことだけ考えなさい、こんな政治家、こんな政府はどこにありますか。国民がみんな考えるのは、いいか悪いかよりも、お金が高いか安いか、お母さんたちは一生懸命メニューで考えているんですよ。それが庶民の心でしょう。

 とするならば、食育法の中で、経済的な、コスト的な感覚は全然なくて、とにかく値段のいかんにかかわらず払いなさいよというふうな感覚で、これが提案されているとすれば、おかしい。

 二番目に、私はこの質問に備えて、国民所得統計、国民消費統計の中で食というものがどれだけウエートを占めているものなのか、それがこの食育法によって、さらに少ないコストでより大きな効果を生むような方向に持っていこうとしておられるのかどうか、そういうことも確かめたくて、私は事前に二回も数字を求めたではありませんか。それでさえも出てこないということは、これは恐らく審議が終わっても、どこからも出てこない。

 つまり、財政再建と言いながら、結局はお金がかかれば地方自治体に、あるいはもっとお金がかかればお父さん、お母さんに押しつける、そういうふうな責任の押しつけみたいなものが根底にあってこの新しい法律ができるとすれば、なおさら賛成するわけには私はいかないと思います。

 次に、質問を変えて、食産業の中で、中食産業、外食産業、この食育法がそういう業界に対してどういう影響を与えるのか、それは調査されたことはありますか。お答えください。

小坂議員 まだこの法律が実施されているわけではございませんから、調査と言われても、この効果ということを実際に調査することはできないわけでありますけれども、現在、飲食店というのは七十九万五千店あるわけですね。その中の、一般飲食店と言われるものが四十四万八千、食堂と言われるものが八万ちょっとですか。そういうような中で、外食産業、中食産業と言われるものにどういう影響が与えられるか。

 私どもは、家庭と同じように外食、中食産業が食育というものを意識するようになれば、例えば、例でいえば、メニューにどのくらいのカロリーのものがある、あるいはそのメニューの中に地域の農産物をどれだけ使っている、あるいはそのメニューの中に材料はどういう、国産の食物である、こういうような記述もふえるようになると思うのですね。国民の意識がそのようになってくれば、そういうものを求めますから、そういうものが記述されている、例えばカロリーを書いてあるのは、今や議員の食堂でも書いてあるようになりましたけれども、まだまだ書いていないところが多い。こういうものを書くことによってお客がふえるということを意識するようになれば、当然みんながそれに倣ってくる。したがって、啓発活動が普及につながって、そして全体的に環境が整ってくる、こういう効果を生んでくることを期待もいたしておりますし、そういうふうになるだろうということを想定いたしております。

岩國委員 法律が成立していないから、実施されていないから影響は調べておりませんと小坂先生がおっしゃいましたけれども、影響の調査というのは、この法律を実施したらどういう影響が出るかということを調査するのであって、やってから調査というのは、私はおかしいと思うのですね。やはりこの法律は、中食産業、外食産業の人たちからも歓迎されているのか、あるいはこういうことをやられたら、台所中心の食生活へ帰っていって、中食、外食には大変なマイナス影響が出ている、そういう声でも出ているのか、そういう業界の意見もしっかり聞いた上でこの法律をおつくりになったかどうかということを確かめたかったわけです。

 次に、質問を変えます。

 この食育基本法の中で、十七条第一項、十七条の第二項、十八条の第一項、十八条の第二項、これは、都道府県や市町村のやることをここで義務づけていますね、「努めなければならない。」というのは、この表現は命令形でしょう、「努めなければならない。」というのは。そうじゃありませんか。努めなくてもよろしいというのならいいですよ。努めるようにしなさい。義務というか目標というか、私は、地方分権の時代、地方でできるものは地方でやれ、こうおっしゃっているときに、こういうことを中央政府が、都道府県はこうしなさい、それから市町村はこうしなさい、あれこれ口出しするというのは、地方分権の時代におかしいんではないか、そのように思います。

 タイミングが余りにも悪過ぎますよ。どんどん地方に仕事をさせるというときに、地方の発想で地方の実情に応じたようなことを地方の自治体がやりなさいという時代を我々は迎えているわけですから、その地方分権の時代につくる最初の法律の中に、こうやって、やれ都道府県は、やれ市町村は、こういうことはおかしいと思います。何か御意見があればおっしゃってください。

小坂議員 この点については、私どもも岩國さんと全く同じ考え方でございます。ですから、ここにありますように、市町村あるいは都道府県の食育推進計画は、つくらなければならないとは言っておりません、努めなければならないと申し上げているわけであります。これは、それぞれの事情がありますし、地方自治の問題でございますから、自治体の自発的な判断にゆだねることが適当だ、このように考えて努力規定にしておりまして、義務規定にしているわけではございませんので、その辺、御理解を賜りたいと思います。

岩國委員 努力規定であって義務規定ではないという御説明をいただきましたけれども、私は、努力だろうと義務だろうと、これは小さな親切、大きなお世話だと思うんですね、こういうことを法律の条文の中に書くこと自体が。書かなければそういうところはやらないのかという、地方に対する不信が根底にあるんじゃないですか。地方の知事であれば、地方の市長であれば、当然、住民の健康を願い、子供たちの健全な発達を願っておる。願わない市長や知事はいないはずですよ。国だけがこんなことを考えているんだ。少しばかりあなたたちは意識が低いから、レベルが低いから、ここまで書き込んでやらないと一生懸命努力しないんじゃないのという時代ではなくなったということから、私はこういう条文にはとりわけ反対いたします。

 次に、この食育基本法の中には、農山漁村の共生あるいは対流を進め、この対流という言葉がちょっとわからないんですけれども。一般には交流を進めということになっているのが、これはなぜか共生、対流というのが書いてありますけれども、それはどちらでも結構ですけれども、農山漁村というのがもう今ほとんどなくなっているんですね。

 ですから、むしろ、こういう食育基本法がやらなきゃいけないことは、村を復活させることだと思うんですよ、村こそ農業の原点。日本のための健全な安心できる食べ物をつくってくる生産基地は、市ではなく、町ではなく、村だと思うんです。だからこそ農村という言葉がある、だからこそ魚をとる漁村という言葉がある。その言葉が今だんだん死語になりつつあるでしょう。六万あったのが今二百十三しかないんですから。ことし、一挙に減っていきましたよ、村というものが。私は、村があって、そこで新鮮な野菜がとれて、新鮮なお米がとれて、そういうところを子供たちに身近なところで見せること、その方が私は大切ではないかと思います。

 松下委員長も、農業振興には大変御熱心に、私は何度も御意見を伺ったことがありますけれども。宮腰議員、何か御意見があれば。先ほども地産地消というお言葉がありました。しかし、埼玉県の話だけではなくて、富山県、島根県も視野に入れて、さっきまで萩野先生がそこに座っておられましたけれども、そういう今までの生産拠点であった伝統的な農村をどういうふうに振興させる、この食育基本法は本当にそれに効果があるのか、あるいはそこは一層寂れていくことになるのか、どうぞお答えください。

宮腰議員 行政体としての村の数は、確かに平成の大合併によりまして激減をする。富山県でも、現在残っているのは一つだけであります。しかし、農村集落や漁村集落というのは、また別の観点から考えていく必要があるというふうに思います。日本の村の原点、これは集落でありますし、日本の心のふるさとでもある、日本社会の原点であるというふうに思っております。

 今度、松下委員長が自民党の農業基本政策小委員長としてお取りまとめになった基本計画、その中にも、集落機能の維持のために、それだけではありませんけれども、集落営農を全国的にきちっと進めていく必要がある、これはなぜか。これは、単に経営体としてだけではなくて、日本の社会の原点である集落をしっかり守っていくという観点からの位置づけあるいは基本的な政策だろうというふうに思っております。

 この食育基本法におきましては、第二十四条に、「食文化の継承のための活動への支援等」というところで、「伝統的な行事や作法と結びついた食文化、地域の特色ある食文化等我が国の伝統のある優れた食文化の継承を推進するため、」云々というような条文になっておりますけれども、やはり例えば地域のお祭りだとかということになりますと、その地域の伝統的な食べ物というのと一体になっているものでありまして、地域の食文化を守っていくということは、最終的には農村集落あるいは漁村集落を維持していくということに必ずつながるものというふうに考えております。

岩國委員 この食育基本法案の概要ということで、このイメージ図が我々のところに配られてきておるわけですけれども、この中で左の方に「食を大切にする心の欠如」、こういった指摘があります。この「食を大切にする心の欠如」は、私は、今までの政府の農業政策、全体的な経済運営の中で村がなくなっていた。むしろ、「食を大切にする心の欠如」というのは、裏返せば、今までの自民党政府によって「村を大切にする心が欠如」しておったから、子供たちには、自分たちが食べるものは八百屋でつくられている、八百屋には成田空港、関西空港からやってくるぐらいなことですよ。

 そうじゃなくて、周りにたっぷりと農地が残され、今は耕作放棄地というのはどんどんふえているでしょう。長野県でももう十何パーセント、一〇%を超えてしまいました。全国平均では、もう八%の農地が既に耕作放棄地。そういうところを見ている子供たちは、心が荒れていくと私は思います。

 「食を大切にする心の欠如」、裏返せば、村を大切にする、そういう農業にいそしんでいる集落をしっかりと残していく、これが日本の原点。これが私たちの健康を支えてくれる、そこからおいしいもの、安心した食物は出てくるんだということをしっかりやることが、こういう法律の一つや二つをつくるよりもずっと私は意味がある、そのように思います。

 それから、学校給食のあり方について。

 私は、先ほど、どういう点についてこれから反省し、改善しなければならないかと。この食育基本法のように、食育についてこれからまたさらに次の新しい時代に入っていくとするならば、学校給食法というものも、運営も、仕組みも、法律も本当は変えていかなきゃならぬはずでしょう。五十年の実績があればなおさらのこと、もっと自信を持って。

 学校給食といっても、小坂先生が滞在されたころのヨーロッパとはある程度また違っているかもしれませんけれども、公立の学校と私立の学校では、日本でももちろん違います。私が見てきたのは、主にアメリカ、フランス、それからイギリス。そういったような学校では、主に私立のところがそういう食育と皆さんがおっしゃることに熱心だったんですね。

 イギリスの学校では、先頭に並んだ子供は、一回分もらったら、後ろにもう一回並ぼうとしても、先生が絶対にそれは認めないんです。それぐらい、一回分は一回分。だれも、体の大きい子も小さい子も。

 パリの小学校は全然違うんです。大きい子は、先頭に並んで、食べ終わったらまた行列の後ろに並んで、また二回目ももらっている。先生はそれを全然だめとは言わないんです。それぐらいフランスでは自分の食べることは自分に任せる。まだ大人ではない子供にさえも、食べたいだけ食べさせる。それは子供の責任、学校の責任というよりも。

 先生は何をしているか。先生はワインを飲んでいますよ。学校の中で、事もあろうに。それが教育なんです。大人だから、先生はワインを飲んでいる。僕たちは子供だから、ワインを飲んではならない。

 皆さんも御承知のように、フランスというのは食事のときにワインがなくちゃいけないのに、昼間ワインを飲んではいけないという規則がある学校だったら、先生は恐らくそこへ就職しないでしょう。子供たちに小さいときから、大人だからワインを飲んでもいい、子供は飲んではいけないんだと。それは、法律に書いてあるからじゃなくて、社会の規律、そして社会の常識がそういうことをさせているんです。

 だからこそ、日本も大人の国になったんだったら、私は、こういう食育基本法というのは要らない法律。そして、学校給食法、あるいはその他の、食品衛生法、食品安全基本法、今ある法律をそれぞれ改良しながら、それで十分ではないか、そのように思います。屋上屋を重ねるようなこういう基本法は、私は不要だということを申し上げて、私の持ち時間が終わりましたので質問を終わります。

 ありがとうございました。

松下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

松下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、この基本法の基本理念の方向というものは、基本的に同意できるものだというふうに考えております。名前が基本法であれ推進法であれ何であれ、しかし、相当真剣に法案を生かす具体的取り組みをやらなかったら、法律はつくっても、ほとんど紙くず同然になってしまうということになりますから、そこは非常に大事なところだというふうに思っているんです。

 法案作成が現実の施策を伴うものとなるかどうかという、このところからまず伺います。

 財政的裏づけの問題なんですが、実は国会図書館の方の「調査と情報」にまとめたもので、昨年四月の号で「欧米の食育事情」というのがありました。諸外国の財政負担というのを紹介しているんですね。

 アメリカでは、学校給食事業として、連邦予算規模で、学校昼食プログラムに、昼飯ですよ、六十億二千万ドル、だから大体六千億円を超えるんですね。学校の朝食プログラム、朝御飯の方で十五億四千百万ドル。これはいずれも二〇〇二年度の話ですが、合わせると、大体日本円に合わせて七千六百億円を超える予算が学校給食として組まれているんですね。これは連邦予算としての話です。

 目的は、児童生徒に対して栄養ある食事を摂取する機会を与えること。ここにはアメリカ流の、余剰農産物を連邦農務省が給食用に買い入れることにより農産物価格と農家所得の保障をすることということもあるわけですが、やはりそれだけ出しているんですね。

 けさの議論を聞いておりましても、日本の学校給食の予算はどうなっているんだと。大体、朝伺っておりましても、二〇〇三年度の予算額で百十七億九千五百万ほどですね。昨年度、二〇〇四年度で百七億八千八百万。今年度予算額は三十一億二千五百万。

 これ、三位一体改革で削ったというんですが、学校給食の予算は、アメリカ並みにいけば物すごくふやさなければいかぬのですが、三位一体といっても、削ったものがそのまま削ったままというわけに本来いかないと思うんですね。

 ここは政府参考人に伺っておきますが、学校給食予算で、三位一体で消したものを何か別な費目をつけて組んでいるんですか、それとも、完全に削りっ放しなのかどうか。あわせて、給食の食材に、地域の生鮮野菜等の購入に出している補助金があれば伺っておきたいと思います。

西阪政府参考人 御指摘がございましたように、平成十七年度の予算におきましては、三位一体改革におきまして、要保護、準要保護児童生徒援助費補助金のうち、準要保護者に対する学校給食費の国庫補助制度を廃止いたしたところでございます。この分につきましては、地方公共団体への税源移譲で対応するということでございます。

 先ほどございました具体的な補助金、国の補助ということにつきましては、ございません。

吉井委員 だから、もともと別の費目で補助はないんです。税源移譲という話ですが、これは、これにかわる交付金でつけたものも、税源移譲したものを足しても、なおかつ三千億以上は消えているんですよ、国庫補助負担金から。だから、もともとこれは消えてしまっている。

 地方交付税の方も、ことしは去年並みという話だけれども、もともと昨年の年度末に、一兆円プラスになる分を昨年度に入れないで、本当はことし、交付税はマイナス、昨年に比べて一兆円減なんだけれども、そこへすっと滑り込ませてプラス・マイナス・ゼロにしたというだけの話ですから、特に税源措置をしたということはないんです。

 つまり、アメリカが七千六百億円超えるほど学校給食で出している。日本も、本来はそれに近づけて、もっと努力するならばわかるんですけれども、減っているというのが実態なんです。

 食育基本法というのを今度つくるということですが、食育というんだったら、私は、学校給食を授業の一部と位置づけて、現在、大体全国の半分ぐらいが大型弁当工場に変わっているんですね。もともと学校で単独調理だったのが弁当工場に変わっているんですよ。弁当工場から給食を届けるというのは、コンビニ弁当もえろう変わらへんわけですよ。そういう給食になっているんですね。だから、やはり各学校に調理室があって、調理員や栄養士さん、食育担当の教員などがいて、食材の段階から栄養面、安全面、農漁業とのかかわり、調理実習、食生活全般に至るまで、丁寧に学んで体験していくということが大事だと思うんです。

 それからまた、地域の伝統とか食文化を考えるならば、アメリカの給食事業並みに、地域の農産物の買い上げなど、そういうことが大事だと思うんですね。そうすると、この基本法で取り組んでいこうというのならば、それに見合った予算保障というものをどう進めていくかということがやはりあわせて考えられないと、本当にこれはただの紙くずになりますから、その点提案者としてどうお考えかを伺います。

西川(京)議員 吉井先生、大変前向きな、私たちにはお励ましともとれる御意見をいただきまして、ありがとうございます。おおむね先生のおっしゃっていること、私も大賛成でございます。

 今まさに、私たちが子供のころは、給食はたしかやはり各学校別にありまして、地域の知っている友達のお母さんたちが一生懸命つくっていた姿なんかが見えておりまして、大変つくる人と食べる子供たちとが近かったという印象があります。

 もちろん、効率的なつくり方、いろいろな事情があって先ほど先生が御指摘されたような状況になりつつあるわけですが、私もやはり、本当に食育ということを考えるのであれば、家庭と学校教育と両輪となって、きめ細かな食生活ということを確立していかなければいけないと思っておりますので、財政的に許されるならばそういう方向に、大工場のような、そこから学校に配付するのでなくて、個別にというのができ得れば望みたいなという気持ちは個人的には持っております。

 そういう中で、大変恐縮ですが、学校の給食の予算が実際には去年は少々減ってしまった、その現実がありますので、今後一層私たちも、この法案をつくった者として、責任を持って、少しでも充実に向けた予算獲得に頑張りたいと思っております。

吉井委員 これは本当に、まず、こういう法律を考えるときには、いろいろな基本法が最近めったやたらとと言ったら表現きついかもしれませんが、たくさん出てきているんですけれども、しかし、財政的な予算措置、その保障を含めてやろうということを考えて進めていかないと、これは本当に法律はできたが何にもならないということになることを考えなきゃいかぬと思っているんです。

 次に、八条や二十五条一項にかかわって、食品の安全性の問題ですね、これにかかわって幾つか伺いたいと思います。

 消費者というのは、幾ら食の安全を考えても、その食品が安全かどうかはなかなかわからないんです。自己責任原則だなどと言われても、そもそも情報が圧倒的に不足しているんです。私は、食育ということを考えるならば、国会議員も東京にいるときは、時間のある日などは自炊して自分の食をどうきちんと立てるかを考えた方がいいと思うんです。

 そうなりますと、食材を買い求めに行きますね。行ったらわかりますが、安全かどうかほとんどわからないんです、売っているものは。野菜にしても、私もかつて農家から畑を借りてやったことありますけれども、本当に安全なものをつくるのは大変ですよ。大体、牛ふん、馬ふんの堆肥化したものをもらってきて、いい土壌をつくって、キュウリにしてもトマトにしてもナスにしても、育てていると、夏場はとにかく朝と夕刻には水をしっかりやらなきゃいけないし、夏場は肥えた土地ほど物すごく雑草が繁茂しますから、それを殺虫剤使わない、農薬使わないでやるとなると、草引きをやるわけですから、安心、安全なものを手に入れようと思ったらどれぐらいコストがかかるかというのは、実際やってみないとわからないんですね。ところが、現実、買いに行ったって情報がないんですよ。

 そういう中で、例えば、BSEについて今問題になっていますが、日本だったら、すべての牛に生まれたときから個体票をつけて管理して、全頭検査でBSE汚染されていないことを確認した、もちろん特定危険部位を除去してですが、安全確認済みの牛肉として市場に出ているわけですね。

 昨年、政府の方は、アメリカ産の牛肉の輸入を約束してきていますが、これは、個体管理もなくて全頭検査もしていないアメリカ産の安全未確認の輸入牛肉と区別するには、どないして区別するかということが問題になってくるんですね。

 やはり、そもそも安全未確認のものは流通させない、これが一番の基本なんですよ。幾ら食育だと叫んでみても、食育を仮に受けたとしても、安全確認できていないものが流通していて、どれが本当に国産の安全確認済みの牛肉かがわからなかったら、これは安全、安心の食生活というのはできないんですよ。

 ですから、そういう点では、ここは政府参考人にまず伺っておきますが、農水省は、食育基本法の八条にあるように、食品の安全、安心が食生活の基礎だとうたっていますが、個体管理もできていない、全頭検査もしていないアメリカからの安全未確認の輸入牛肉、これを確認済みのものと混合して流通させると、これは消費者を混乱させるばかりになってしまうと思うんですね。そのような混合流通、消費者を混乱させるようなことはしないと、きちんとされるのかどうかを伺います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、日本におきます国内のBSE対策につきましては、その安全対策につきましては、その基本骨格といたしましては、先ほど先生からお話がございましたように、特定危険部位をすべての牛から除去する、それから、すべての牛につきまして、屠畜場で屠畜される牛については全頭について検査をするというのが今対策の骨格になっているところでございます。

 これにつきましては、特定危険部位の除去につきましては変更なしということで今後まいりますが、検査の方につきましては、昨年の九月に食品安全委員会の方から、月齢二十カ月以下のものについて、これまで累積三百五十万頭を屠畜してきたわけでございますけれども、その中からはBSE感染牛は確認されていないということで、そういったことも今後のBSE対策の中で十分考慮に入れるべきだ、そういう中間まとめという形でのお話を伺いまして、その後、昨年十月に私どもと厚生労働省の方でこの検査月齢の引き上げについて諮問した。

 それにつきまして、先月三月三十一日に、食品安全委員会の方から、その全頭検査の見直し、二十月齢以下の牛については検査をやめることについて、リスクの程度においてはその変化というのは非常に小さいということで答申案が出されたわけでございまして、現在それにパブリックコメントを受けている最中でございますが、その基本骨格について、二十月齢以下のものについては今後変更をするという方向での答申をいただいた、そういうことについての私どもの方向性については一応リスクの評価をいただいたということでございます。

 アメリカとの関係におきましては、日米局長級協議におきまして、今後、輸入再開の枠組みにつきまして、特定危険部位をすべての牛から除去すること、それから二十月齢以下と証明される牛の肉であること、こういったことを輸入再開条件の枠組みの基本といたしまして今後はやっていこうという点につきまして認識の共有をいたしておるところでございます。

 そうしますと、今後、国内措置について食品安全委員会の正式な答申をいただく、その後、米国産牛肉の輸入再開について、今度改めて厚生労働省と私どもで輸入条件の設定について食品安全委員会に諮問をするということになるかと思いますけれども、その基本骨格といたしましては、先ほど申し上げましたように、特定危険部位の全頭からの除去、それから、検査については二十月齢以下は今後国内についてはやめるということでございますので、アメリカにつきまして、済みません、先ほどちょっと言い間違えたかもしれませんけれども、二十カ月月齢以下と証明される牛からの肉、それだけを輸入するということでございますけれども、そういった方向での輸入条件の設定ということになろうかと思います。

 そういったことで、輸入されるアメリカからの肉と、それから今後の見直された後の国内産の牛のBSEのそれぞれのリスクについて、そんなに差がないのか、差がないかどうか、そういった点について改めて食品安全委員会に諮問するという格好になろうかと思います。

 これは諮問して、食品安全委員会での検討が当然なされるわけでございますけれども、その中でリスクにおいてもし大差がないというお答えであれば、そういった米国産の牛肉について課す輸入条件と、今後の見直し後の国産のBSE対策のなされた牛についてのリスクの程度というのは、これはリスクの程度において差はそれほどないということであれば、輸入再開後に国産牛肉と輸入牛肉との間で安全性に差が生じるといったことは多分ないだろうということでございます。

 そういったことで、今後とも私ども、同等の措置を求めていきますし、そういったリスクにおいて差がないということであれば、国内において混乱が生じるということはないのではなかろうかというふうに考えております。

吉井委員 まず、二十一カ月月齢未満の牛ですね。二十一カ月齢のものについても、異常プリオンを発見する可能性というのは、これは感度の高い技術の開発進歩によって、もっと、二十カ月齢未満でも発見されていくという可能性はどんどん進んでいきます。ですから、月齢ということを問題にするというのは余り意味がないんですよ。

 そもそも、BSE感染というのは、牛が食べたときから実は感染が始まっているんですね。これが体内で移動し蓄積していく、プリオン蓄積の経過についてはほとんどわかっていないというのは専門家のたたき台の中でもはっきり示しているところですね。

 これまで特定危険部位とされたところについても、これは拡大してきて、末梢神経や炎症を起こした腎臓でも異常プリオンが見つかってくるなど、現在の知見で大丈夫だどうだと決めつけるんじゃなくて、やはりこれは、牛が食べたときから感染は進んでいくわけなんですから、そういう点では、月齢で線引きをするということはほとんど意味がない、このことをしっかり踏まえておかないと、これは全くお話にならないことだと思います。

 今おっしゃったところでは、食品健康影響評価案の公表で、要するに全年齢から二十一カ月以上に変更ということです。しかし、これは、案としてまとめて、とりあえず案が出されて意見を求めているというところですが、これについても、これは科学者の一致した見解ではないと思うんですね。別の意見もあるんでしょう。その点だけ、別の意見もあるかどうかだけ伺っておきます。

松下委員長 簡潔明瞭にお答えください。

高橋政府参考人 食品安全委員会の先日の答申案の中で、二点の批判的意見があったということについて留意すべきである、そういうような記載があるということは承知をしております。

 ただ、これはもちろん食品安全委員会の中でのお話でございますので、私どもお答えする立場にございませんが、そういったものを含めて最終的にはおまとめがされたというふうに理解をしております。

吉井委員 ですから、専門家の中で意見がちゃんとあるんですよ。多数決で食の安全というのが生み出されたらとんでもない話だと思うんですよ。食の安全、安心というのは多数決で決まる話じゃないんです、食品の基本というのはやはり食品の安心、安全が保障されるということですから。

 そういう点では、提案者の方に伺っておきますが、今、全頭検査を実施しているからこそ、しかも、個体識別の、生まれたときからちゃんと個体票をつけてすべての牛を全頭管理して、全頭検査して危険部位を除去して、だからこそ安全、安心が確保されて、肉に対する国民の物すごく沸騰しておった不安が鎮静化してきておると思うんですね。これをゆがめてしまうと、これは幾ら食育だ何だということを言ったって、そもそも根本の食の安全、安心が失われることになると思うんですね。提案者に伺っておきます。

宮腰議員 食品の安全、安心は、健全な食生活の基礎であるというふうに認識をいたしております。

 全頭検査の問題でございますが、特定危険部位の除去、これが安全の確保、全頭検査につきましては、これは感染経路を見つけ出すといったことと、異常プリオンがどの段階で発見できるのかといったようなこと、それから実際に……(発言する者あり)わかりました。

 とにかく、全頭検査につきましては、これは、どうされるかにつきましては科学的な知見のもとで食品安全委員会が御判断されるということだろうと思っております。

吉井委員 ですから、専門家はプリオン蓄積の経過についてはほとんどわかっていないと言っているんです。わかっていないんです。特定危険部位といっても、これは技術が進歩していきますからだんだんよくわかってくるんです。それに伴って、末梢神経から、炎症を起こしている腎臓から新たに見つかって、広がっていくという状況なんですよ。ですから、そういう中で、今の知見で簡単に、しかも、この委員会などで多数決をとって決めるような話じゃないということだけ、重ねて申し上げておきます。

 政府参考人に伺っておきますが、全頭検査を緩和せよという声が食の安全、安心を求めている消費者の中から出ていれば聞かせてください。出ていますか、そういう声は。

高橋政府参考人 BSEの国内対策につきましては、昨年夏から、私ども、それから厚生労働省、食品安全委員会……(吉井委員「消費者の中から声が出ているかということです」と呼ぶ)各省庁で連携してリスクコミュニケーションをやって、そのリスクコミュニケーションの中で、消費者の方、生産者の方、あるいは食品関係事業者の方々にお集まりいただいていろいろ意見を聞いております。

 その中では、今お尋ねの件でございますが、消費者の中からも、科学的知見に基づいて、安全性が確認されるのであれば、全頭検査を見直してもいいのではないかというような意見ももちろん出ております。

吉井委員 普通の消費者の中でそんな声は全然出ていないんですよ。大体、食の安心、安全を求めているのに、何で全頭検査をやめてくれと言うんですか。そんな声はないんですよ。農水省の方が何かもう全頭検査を緩和したいというふうな立場で物を考えたり言い出したりしたら、これはこの法律が幾らできたって、本当にとんでもないことになりますよ。

 私は、この点は提案者の方にも伺っておきますが、やはり提案者としては、食の安心、安全が食生活の基礎だということをこの法律でうたっているわけです。しかも、専門家の意見ももちろん大事なんですけれども、科学的解明というのは簡単にいかないというのが科学者の意見なんですよ、異常プリオンについてまだよくわかっていないと。そういう中で、何人かの方の多数決で安全というのを決められるような話じゃないんです。

 ですから、こういう点では、全頭検査を緩和せよなどという立場に立ってしまったら、これは法律の趣旨からも反してしまうと思うんですね。そこのところは提案者としてどうお考えか、伺っておきます。

宮腰議員 全頭検査を緩和せよということをこの法律で申し上げているわけでは全くありません。

 先ほども申し上げましたけれども、食の安全、安心に関する施策につきましては、食品安全基本法がある、食品衛生法がある、きちっとした個別法があるわけでありますから、特に、食品安全委員会をわざわざつくったという意味は、これは、科学者がしっかりとした知見に基づいて御判断をされる、それに従って行政の方はリスク管理を行うということだと思っております。

 しかし、この食育基本法が担っている部分というのは、いわば特定の安全、安心の確保という分野ではなくて、どちらかと申しますと、一般的な安全教育の部分、これのリスクコミュニケーションを担っているわけでありまして、これでもって全頭検査をやめるとかいったようなことには全くならないということを申し上げておきたいと思います。

吉井委員 せっかく食の安全、安心が食生活の基礎だと言いながら、そこのところで逃げてしまったら、あなたは与党として、政府の立場をいろいろおもんぱかってもごもごと言われるのはわかるけれども、法律をつくるときは、やはり法の趣旨の中できちっと考えるべきだというふうに私は思います。

 それで、さっき農水省は、何か、消費者の中に、一人だか二人だか知らないが、あるというお話ですが、消費者全体の中でどうなんですか、それが圧倒的な大きな声なんですか。

高橋政府参考人 私自身も、BSE関係のリスクコミュニケーション、もう十回以上行ったかと思いますが、現場では、集まっていらっしゃる方に、一般的には五十人から百人ぐらいいらっしゃいますけれども、アンケートをとって、賛成ですか、反対ですか、そういうマル・バツとか、賛否の調査はいたしておりません。

 したがいまして、何人あるいは何%いたかということについてはお答え申し上げられませんけれども、例えば、五十人いらっしゃって一人か二人というような数字ではないような印象を私は持っております。(吉井委員「比率としてはどうなの」と呼ぶ)ですから、賛否をとるとか、そういったことはやっておりませんので、数字としていかほどかということは申し上げられませんけれども、例えば五十人ぐらいいるような場所で、その場所で一人か二人ぐらいの話かというと、そういうような印象を私は受けていないということを申し上げております。

吉井委員 消費者の立場に立つ人たちから私は伺っていますが、圧倒的多数の声は、全頭検査緩和せよという声なんか出ていませんよ。出ているんですか。

高橋政府参考人 全体の中で、全頭検査につきまして緩和がいいか、あるいは全頭検査継続するべきか、これはもちろん、全頭検査継続すべきという意見が多数であることは、それは間違いないと思います。

吉井委員 最初からそれを言うておいたらいいんよ。

 それで、だから、提案者には、やはり消費者のことを考えて、食の安心、安全、食育ということを考えるんですから、その立場に立って提案者としても物を言ってもらわないと、何か政府の立場に立ってもごもごとやり出すと、これは法の立法趣旨そのものがおかしくなってくると私は思うんです。

 そのことを申し上げまして、あと一分ほどですから、食糧自給率の向上問題について、これは政府参考人に伺ってから提案者にと思っているんですが、一緒に聞いておきます。

 これまで、食料・農業・農村基本計画では、二〇一〇年までに自給率を四五%に引き上げるということにしていたんですが、今回、新しい基本計画では、四五%にするのは二〇一五年、つまり、五年先送りなんですね。何で先送りするのかということを伺います。

 それから、時間が近づいていますから提案者にあわせて聞いておきますけれども、地産地消の推進、食育の推進というのは当然だと私は思っているんですが、食糧自給率の向上の責任を消費者にもかぶせるような感じで物を言っては、これは間違いだと思うんですね。

 見直さなきゃならぬのは、やはり国内の多くの生産者に打撃を与えている輸入農産物の野放しと、それから生産や価格を市場任せにしてきているこの政策、そこをきちんとしないと、それをそのままにしておいて国内の農産物の生産量がふえるとか、こういうことにつながらない。

 だから、自給率というのは国内生産がふえないと向上しないと思うんですが、食育は自給率向上に結びつくとするその考え方の根拠、それを政府参考人と提案者に伺って、時間が迫ってまいりましたので終わります。

山田政府参考人 お答えいたします。

 食料・農業・農村基本計画、これは先生御案内のとおり、おおむね五年ごとに見直すこととなっております。今般、平成十二年に策定をした前回の基本計画を見直すということにしたわけでございますが、前回の基本計画では、食糧自給率は、今お話がありましたように、カロリーベースで四五%を目標としておりました。これを達成するための前提といたしまして、米の消費量の維持、あるいは需要に即した生産の拡大といったことを前提としておりました。

 しかしながら、米の消費で見ますと依然減少が続いているということ、また、飼料あるいは原料の多くを輸入に依存しております畜産物ですとか油脂の消費が増加をするということ、また農業生産は総じて減少しているというようなことなど、前回の自給率目標が前提としていた状況とかなり姿が変わってきているという状況にございます。

 こうした状況を踏まえまして、今般、新たな食糧自給率目標の設定に当たりましては、生産、消費の両面において課題の解決のための重点的に取り組む事項を明確化するということ、また、これによって実現可能な生産と消費の水準を踏まえて、改めて平成二十七年度の自給率目標をカロリーベースで四五%ということで設定をしたところでございます。

 今般の施策の推進に当たりましては、やはり、これまで十分でなかった点がございます。行程管理が適切に行われていなかったのではないかといったこともございますし、あるいは、施策の評価に伴って施策の改善が十分に行われていなかったのではないかというようなこともございますので、これについては、行程管理をしっかりやっていく、また、施策の評価を行って施策の改善を翌年以降の施策に反映させるというようなことで、自給率の向上が早期にできますように努めていく所存でございます。

松下委員長 簡潔にお願いします。

小坂議員 吉井先生、最初の方におっしゃったように、学校給食においても地産地消を推進する効果があるというふうにおっしゃっていただきました。

 地産地消を初めといたしまして、消費者が賢い知識を持ち、そして食に対する選択を的確に行うことによりまして、輸入農産物と地元農産物及び国内農産物の差というものが認識されるようになってまいります。また、国内農産物に対する志向が高まってくると考えておりまして、こういった各般にわたる施策を、この食育基本法のもとに食育運動、国民運動として推進することによりまして、食糧自給率が向上してくるという効果があらわれると思っているところでございます。

 まだ、周辺も含めてもう少したくさん御説明を申し上げたいんですが、時間の都合もあって簡潔にということでございますので、先生が御指摘のような意味も含めまして、食糧自給率の向上に資するものと考えているところでございます。

吉井委員 残りは次回に回します。終わります。

松下委員長 次に、島田久君。

島田委員 民主党・無所属クラブの島田久であります。できるだけ重複を避けさせていただきたいと思いますけれども、重複するかもしれませんけれども、お許し願いたいと思っております。

 幾分、直接的な法律とのかかわりはないかと思いますけれども、しかし、先ほども質問がありましたように、基本法という場合の法律のあり方などについての質問を最初にさせていただきたいと思います。

 立法に携わる実務家の中には、近代的な意味でも、法律とは必要最小限のルールであり、最後のとりでだ、はしの上げ下げといった私的な日常生活や個人的な徳目の領域まで踏み込むのは特異ではないかといった指摘があります。

 私もそんな思いもするんですけれども、そのことを考慮し、本法案をよく読むと、法律というよりは、何か訓示的な印象を強く受けるわけであります。近年成立した法律や準備されている法律を見ると、個人の領域に踏み込む傾向が目立って多いようであります。

 私はこれらのことを考えてみますと、国民の責務や努力規定を書き込む例がふえている一方、少子化社会基本法では、私たちは、安心して子供を生み、育てることができる社会の実現に努める。消費者基本法では、私たちは、賢い消費者になるよう努めなければならない。また、健康増進法では、生涯にわたって、健康の増進に努めなければならない。

 こんなぐあいですけれども、そもそも、刑法の犯罪は罰しますとか、道路交通法の車は左を走れなどといったように、ともかく、決めておかなければならない、みんなが困ってしまうようなことについて定めることが本来の法律の一般的な概念であるような気がするんですけれども、提案者はどんなお考えでしょうか、お伺いいたします。

    〔委員長退席、増田委員長代理着席〕

小坂議員 島田委員の御質問にお答えしたいと思うんですが、委員は、ガーデニングをされる等の御趣味をお持ちでございまして、食に対して、また農産物に対しての理解は大変幅広いものがおありだというふうに認識をいたしております。また、法律に対しての議員としてのあり方を御示唆いただくようなことで教えていただいておるわけでございます。

 なぜ基本法という形にするかということも踏まえて御答弁をさせていただきますと、刑法のように罪は罰するよとか、車は左を走れとか、そういう、だれもがこれを守らないと日常の生活が規律されない、国民がひとしく生活を安定的にあるいは平和に享受することができないという場合に、法律は確かに必要でございます。そういう法律はだれもが法律らしいなと思うことも事実でございます。

 しかしながら、一方では、では、それ以外のことは法律に書かないでいいのかというと、世の中の移り変わり、あるいは国を取り巻く環境、生活のパターンの変化、趣味とか嗜好の多様性とか、いろいろなものが影響してまいりまして、国民それぞれが思い思いの自立した生活を行う上で、より広範な意味で一つの規律を持たなきゃならない場合も出てまいります。

 私どもが提案した基本法は、そういう中にあって、食育という問題がそれぞれの分野で認識をされ始めまして、そして農林水産省あるいは文部科学省、厚生労働省等でそれぞれ個々の取り組みも進んでまいっております。そういう中で、それぞれの現場における政府としてのあり方、またそれを受けとめる消費者としての姿勢、また消費者としての思い、それから教育の現場にある方々あるいは栄養士さんたちを初めとして、今日の食に対してのいろいろな御意見をお持ちの方々の御意見、そういったものを、私ども、食育調査会という場を通じまして、党の方においても長年、平成十四年からヒアリングを通じていろいろな方の御意見を伺ってまいりました。

 そういう中で、一つの基本法という形で総合的にかつ計画的に食育を進めていくことが必要だ、こう考えまして、きょうの御質問の中にも、なぜ基本法か、基本法という名前が最近多いんじゃないか、こういう御指摘もあったわけでございますが、やはり重ねて、この問題について、食育問題について基本法という対応でこれに取り組ませていただきたい、このように考えているところでございまして、御理解を賜りたいと存じます。

島田委員 この法案の中で食育の定義がどうも不明確であるような気がするんですね。食の安全や食糧自給の問題等の解決策として食育を当てるのは、私としては短絡的であるような気がしてならないんですけれども、本法案のような法理をつくる前に、個別の政策で解決を図るべきことが多くあると指摘する専門家の方もおられるわけですね。

 それから、本案の目的は、農林漁業の活性化、第二十三条ともあるが、そのようなことは食育基本法の目的としては果たしてどうなのか。

 現状の食育と称する取り組みに関しても、幅があり過ぎて、広くいろいろな雑多な印象が含まれ過ぎているような気がしてならないんですけれども、食の教育等の各分野で関係者ごとに思いあるいは思考が相当違うような見方もある。

 そういう中で、食育ということの一本化をして、それを一つの国民運動として発展させようとする場合に、やはりその運動に取り組むそれぞれの食育とは何かということについて、ばらばらではなくて、共通の認識を持っていかなければならないと思うんですけれども、それらの必要性についてどんなお考えでしょうか。お伺いいたします。

小坂議員 先生の御指摘もよくわかるんですね。私ども、できれば、簡潔に前文で理念を指摘して、条文としても一条ぐらいで理念、食育とはという定義の条文をつくって明確にしたいという思いはあります。

 しかしながら、この食育という言葉、日本古来の言葉ではなくて、日本の教育の分野におきましては、知育、体育、徳育という三つについては共通の認識がありますけれども、食育という新しい言葉についての統一した認識がなかなかございません。

 したがって、私どもは、非常に幅の広い分野でございますけれども、栄養面、すなわち栄養のバランスがちゃんととれている食事を考えているかとか、欠食、朝食は要らないとか、あるいは孤食をするというような子供たちがふえているとか、そういった生活面、あるいは安全面、BSEとかO157とか、あるいは最近いろいろな指摘がされている分野の食に対する残留農薬等のいろいろな安全の問題、それから文化面、地域の食文化というものが地域文化を支えている、日本古来の食文化を、伝統文化を支えているということは非常に大きなものがあるわけでございます。

 また、環境面というのは、例えば有機農法によって土壌の汚染を防ぐとか、いろいろな意味の環境に配慮した農業という面、あるいは農業のあり方についても環境負荷を減らすような形、あるいは食生活全体においても、ひどい場合には全体の三割以上のものが食べ残されているという状況にあるわけでございます。そういったようなものが環境負荷を増加しているという点もあります。

 それから生産、消費面において、これは生産者が消費者の動向というものを敏感に察知していただければいいわけですけれども、その生産者に、消費者として、やはり安全な食物が欲しいんだ、そしてまた栄養価のバランスがあるもの、見てくればかりじゃなくて、たとえ形が悪くても自然にマッチした食というものを提供してほしいという要望もあります。

 そういった各般の食に関する多面的な要望というものを、要望といいますか、ニーズを把握して、そして食育運動という中でそれに取り組んでいきたい。また、その運動を展開する場も、家庭だけではなくて学校、あるいは保育所、あるいは社会、それぞれの場において一つの統一した方向性を持ってやっていけば、家庭で欠けているものを学校で補うことができる、あるいは保育所で補うことができる。あるいは、社会教育の場でそれを推進することによって家庭と社会がマッチした、あるいは地域社会の中における農業者と生活者との間のバランスもとれてくるとか、そういった全般的な、有機的な結合によって、この運動を効率的に推進することができるだろう、そういうことを考えて、理念をかなり幅広くとっているわけです。

 その幅広くとったものが、全体が食育ですよということを説明するために、このような長い文章にもなってしまいますし、条文の数もふえてしまうというようなことでございまして、できれば簡潔にしたいという気持ちはあるものの、このような形になったことを御理解いただきたいと存じます。

島田委員 それでは、今提案者の御説明があったことを理解しながら、今までそういう考え方に基づいて運動なり推進したものがあるかといいますと、国民の食生活の戦後の栄養改善運動ではキッチンカーが全国を走り回り、また栄養不足から過剰に転じてからの減塩や一日三十食品の勧め、さらには日本型食生活、食生活指針等々、食生活にかかわる運動は戦後いろいろ続けられてきていたわけであります。その運動の中には、一定の科学的な栄養学的基準のもとに国民を啓蒙する国民運動というのが行われてきたわけであります。

 今回の、さまざまな経験を通じて食に関する知識と食を選択する力を習得し、健康な食生活を実践することができる人間を育てるということで、家庭、学校、保育所、地域等を中心に国民運動を推進しようというこの食育基本法が今審議されるところでありますけれども、提案者は、今まで戦後における食生活の改善など、いろいろな運動が行われてきていますけれども、それらの意義についてどう考えているかを御説明願いたいと思います。

西川(京)議員 今先生おっしゃったように、今までもそれぞれの分野でいろいろな食育に近い運動がやられてきたわけで、それはそれで、それなりの効果はあったと思っております。

 ただ、いかんせん、最近の社会のさまざまな分野に起こっている、主に子供たち、若い人たちに見られるような、偏った食生活とか、食事を食べてこない子供たちとか、本当に目に見えてそういうものが目立ってきたという社会現象は事実だと思うんですね。

 そういうものを考えたときに、やはり今までのやり方だけでは、もうちょっと総合的にそういうものを全部きちんと精査した上で、より効果的なやり方というような方向があるのではないか、そういう意味での一つの総合調整機能というような思いも込めてこの基本法をつくったという面があると思います。私たちはそういう思いでこの法案を提出した次第でございます。

島田委員 それで、今の御答弁の、各省がたくさんの推進計画というのを今までも、戦後六十年、食生活に困る時代から、いろいろな改善運動とか、指針だとか、推進運動とか、行われてきたわけでありますけれども、そういうことを検証しながら、今度の食育基本法の中で特に意義として位置づけられる特徴的なものはどういうところなんでしょうか。

西川(京)議員 今回、やはり当然今までやってきたことをもっときちんと見直せ、そういう御趣旨なんだろうと思うんですね。そういう意味では、今回、食育推進会議におきましても、総合的に計画的な推進を図るための食育推進基本計画というものを作成することに決まっておりまして、そういう意味で、もう一回、徹底的なきちんとした検証の上に、より効果的な推進を図る、そういう思いを持っております。

島田委員 今御説明のように、各省ごとに、文科省、厚労省、農水省、内閣府などを中心に幅広くいろいろなことが、政府として、全体として、二〇〇〇年には「食生活指針の推進について」を閣議決定し、食生活指針等の普及、定着及び消費者の食生活改善への取り組みを促すため、民間団体等の自主的な活動とも連携しながら、国民的な運動を展開してきたというようなことで、いろいろ積み上げてきたわけであります。

 必ずしも、今お話しのような中で、現在提案されているこの法案の提案者としては、それらの意見というものをどんな形で、時代の変化、流れというものはわかりながらも、実際上、今まで各省がいろいろな角度で行われてきた運動体あるいは推進、指針とかというものに対して、やはり検証しながら、将来に向かっての、あるいはこの食育基本法の中にどう位置づけられるかということについては、私ども、多くの疑問と、従来の運動推進方を検証しながらそれをより一層具体的に進めていけばいいのではないかという考えも幾分あるものですから、その辺についてもう一度お考えを御説明ください。

西川(京)議員 割合繰り返しになると思いますが、恐縮でございますけれども、私も実は、各分野でそれぞれ今までいろいろとやってきたじゃないか、そういう御発言はよくわかるのですね。しかし、現実にそれぞれの分野で割合具体的な話がいろいろと政策が行われてきたわけですが、実を言うと、日本人の生活の仕方自体、考え方自体が大きく変わってしまっている社会現象というのがあると思うんですね。

 そういう中で、もちろん国が個人のいろいろな考え方や生活の仕方に細々と介入するつもりは毛頭ないのですが、しかし翻って、やはりもうちょっと規則的なきちんとした食生活なりしつけなり、そういうものがばらばら壊れていってしまっているような今の現実を考えますと、もう一回基本に返って、根本的なところで、食べるということは実は子供にとっては本当は一番大事な部分だろう。私は個人的には、母親の仕事などは、朝きちんと起きて、御飯をつくって食べさせてあげて、行ってらっしゃいと言ったら半分ぐらい済んでいるのではないかと思うぐらいの思いでおります。

 そういう中で、日本人の子育ての中でのそういう考え方がいろいろな多様性が出てきた。そういう中で、やはり個別の具体的なプログラムだけをただやっていても余り顕著な効果が上がらない、そういうこともあると思うんですね。ですから、そういうところをやはり総合的にもうちょっと検証した上で、お互いに連動しながらより効果的な効果が得られる、そういうものを目指しております。

島田委員 少し具体的にお伺いしますけれども、子供の料理教室や農場で体験学習、あるいは食べる力をつけるプログラム、食は身近な問題だけに、それだけに個人に対する考え方の違いというもの、それからこの法案の中で位置づけられている最大の食育の場であるはずの学校の、先ほどもお話があったように学校給食など、現場で、現実には栄養士が不足であったり、食育に対する具体的な学校教育の中における指導なり、保育園の中では幾分食育ということについての概念規定をしながら、指針をつくりながら進められているのですけれども、まだまだ学校教育の中では食育ということについての理解度というのはほとんどないと言っていいくらいではないかなと思うんですけれども、その辺の現状についてどんな改善をしていったらいいとお考えでしょうか。

西川(京)議員 食育に関する具体的な政策については、農水省、文科省、厚生省、それぞれ具体的な政策を展開しているところでありますけれども、今回の食育推進基本計画によりまして、より具体的な政策を反映させていきたい、それを大きな国民運動につなげていけたら、そういう思いでおります。

島田委員 今まで私が法案を全部読んでみたり、自分なりの経験の中から考えてみますと、家庭におけるしつけに類する事柄が基本になっているのではないだろうか。あるいは、食育という言葉から発する印象は、何か個々の人間性というものを軽んじているような感じがしてならないのですね。

 やはり、食というのは人間の本来の営みであり、法律で規定して、岩國委員から、あるいは私ども民主党の各委員からの質問等の中にもあるように、本来の基本的な考え方というものは食生活の改善という規定であるべきであるし、さらに生活習慣の改善やあるいは体力増進で健康な日常生活を確立することが私は重要だと思うんですね。そういう中で、今の社会の大きな変化の中における社会の環境を整備することが、今、政府なり、私どもが議論しているこういう中に問われているような気がするのであります。

 そこで、文科省にお伺いしますけれども、まず、最近児童生徒の体力が物すごく低下をしている。これが、学力の低下はもちろんでありますけれども、体力の減退ということについての、何といいますか、私どもは危機感を持っているのですね。

 例えば、小学校で四十人学級で、鉄棒につかまれる、懸垂をやれということじゃなくてつかまることだけが、大体三人ぐらいから五人ぐらいの間、つかまるだけと言われるような傾向にあるんですね。そして、学校に本当に鉄棒があるんではないか、カリキュラム上においてはやはりなければならない規定があって、だけれども現実に、それは昔と時代の変化があるとはいえ、学校の中に、子供たちが鉄棒なり、そういう中で本当の意味で体力を鍛えようという、あるいは、カリキュラム上はちゃんと規定されているんですね、だけれども現実にはどんどん体力が減退をしているというふうにいろいろなデータが出ているわけですね。その辺に対する考え方はいかがでしょうか。

西阪政府参考人 文部科学省で毎年実施しております体力・運動能力調査というのがございまして、昭和三十九年に調査を開始いたしまして、昭和五十年ごろまでは一貫して向上傾向にございました。昭和五十年ごろから昭和六十年ごろまでは大体同じような状況、停滞状況でございまして、昭和六十年ごろから先生御指摘のように低下傾向が続いているという状況でございます。

 このような子供の体力低下の原因ということにつきましては、体力、運動能力というようなものに関する国民意識の点、あるいは都市化や生活の利便化等生活環境が変化してきている点、あるいは睡眠ですとか食生活など子供の生活習慣の乱れなど、さまざまな要因が絡み合って、結果として子供の体を動かす機会が減少しているというようなことが指摘をされておるところでございます。

島田委員 資料をいただいた中で、この食生活とも関係する肥満児というのが、今、各学校でどうしたらいいかということが相当大きな問題になっているわけでありますけれども、文科省としてその辺のことについて、例えば食生活とのかかわり合いについて何らかの実態調査をしたことがあるのでしょうか。

西阪政府参考人 文部科学省といたしまして、現状の子供たちの体力、運動能力の低下と食生活の乱れの関係につきまして具体的な調査ということは、現状のところ、したものはございません。

 ただ、成長期にある子供にとりましては、健全な食生活を営むということは、体力、運動能力の向上を含め、健康な心身をはぐくむために欠かせないものと考えております。

 私どもといたしましては、学校給食での指導を含めて、子供たちの食生活の充実改善ということに努力していきたいというふうに考えております。

島田委員 私も少し、私学の経営者なものですから、肥満児の問題、あるいは食生活の問題なり、現状における学校教育におけるこれらの問題について関心を持ちながら、だけれども、法律で規制をしてというよりも、ある概念が明確性がない中で個々の指導というものをしていくということについては大きな疑問を持っている。特に、もっと学校教育の中で具体的なものが実践されていかなければ本来の姿になっていかないような気がしてならないんですけれども、それらのことを考えてみますと、やはり学校における今までの自主的な取り組み、特に体験学習を進める上でも、いろいろな障害が現状においてはあるわけですね。

 例えば、田植えなどをするといっても、ゴム手袋をはめて田植えをしなければならない。ヒルにかまれる、マムシにかまれるというような体験学習指導というものが現実に先生に、体験学習でやらなきゃいけない、地元の人から地域の開放のためにぜひその地域の中でやってほしいという地域の提案があっても、なかなかその学校の壁というものがあって、具体的に体験学習というものがなかなか進まない状況にあるんです。

 これらのことを考えて、例えば食育という場合に、基本的な食に対する体験学習を進めていかなきゃならない、そういう大きな現状における壁が、具体的な法律でこういう基本法をつくらなければという以前に、やはりここにもっと学校教育なら学校教育の中、それぞれの現場の中でもっときちっと取り組んでいかなければならないような課題がたくさんあるような気がするんです。

 その辺のことに対して提案者の方に、これはちょっと通告していなかったかもしれませんけれども、これは基本的な考え方でありますから、その辺はどうお考えでしょうか。

小坂議員 島田委員はそういう学校経営の経験もお持ちでございますし、そういう中での現場の悩みというものを十分に御理解をいただいているところでございます。

 そういう点から、食育の理念はそれなりに理解する部分もあるし、また、それを進めるのも、そういうことをやりたいんならやってもよかろう、しかしながら学校現場としてそれを受ける体制としてはいろいろな問題があるよ、今、農業体験をさせようと思っても、手袋をしないといけないとか、けがをしたら困るとか、全部学校の責任になってしまう。こういうことでは本当に実践をしようと思ってもなかなかうまく進まないということにもなると思います。その辺は地域の理解と、やはり家庭の理解というものが必要なんだと思うのですね。

 やはり泥に直接肌が触れて、そして、土の感触を手で、そのぬくもりも、それから、汚いと感じる子もいるし、また、おもしろいと感じる子も、いろいろな感触を持つでしょうけれども、じかに泥に手を突っ込むことの、その人間としての感触をそれぞれに体験してもらうことが目標ですから、そういう中から、その土によって育つもの、その土がカドミウムで汚染されたとかいろいろな土であっては困るわけです。

 そういう意味で、しっかりと堆肥が、先ほど岩國先生も農業の体験者としてのお話もありましたけれども、そういう土づくりから始まる農業というものを実体験としていろいろな意味で体験してもらうことが私どもは必要だと思っておりますが、それが、教育の現場でやろうと思っても、家庭が受け入れない、あるいは地域社会が受け入れない、これでは困るわけです。

 まさに総合的に、各分野における方々が、なるほど、食育というのは、そういう意味で体験的学習も含める中から農業を理解し、また、その農業、農産物の安全性というものが土からも、そしてまたつくり方からも、あるいは、輸入農産物との違いというのは、地域で見ることのできる農業というものの信頼関係からも生まれてくるんだということを理解していただければ、まさに私どもの食育運動の目標とするところがそこにあるわけでございますので、それが、人間がそういうものを判別する力にもなり、また生きる力にもなってくるし、精神をまた豊かにする力にもなってくる。

 そういったものの思いを全部込めたものですから、こういう形になっておりまして、先生の質問通告にないけれどもとおっしゃることに特に私どもとしてお答えしたいことは、まさに、各分野、現場、社会、みんなの理解によってこれは推進できる。したがって、今度教育現場でやろうとしても、そういうものを理解する人がふえてくるように、そういうふうになるように私どもはこの基本法でやっていきたいという考えを持っていることをお伝えしたいと思います。

島田委員 食育という概念から考えて、今提案者が御説明のように、学校教育の中でも、幅広くそういう食育という概念というものが具体的に実施をされていくという道がまだまだ遠い、具体的に積み上げていくには、その壁の方が大きい。

 本来なら、もっと文科省なりが学校教育に対する、食育という言葉が出てきているのは、保育指針の中に推進計画研究会とか何かで出ているようでありますけれども、学校教育の中で具体的にそれでは実施をしていく中でどうあるべきかということについて、ほとんど進まない。先ほどもお話があったような、例えば料理の教育観にとらえられる、これは今まで、男女関係なく家庭学習もしていかなきゃならないという面から考えても、なかなかそういう面で具体的に進んでいかないというのが実情だと思うんです。

 そういう面について、今度の法案提案者として、具体的にそういうことを一つ一つクリアしていかなきゃならないと思うんですけれども、その辺のことについてどんなお考えをお持ちでしょうか。

宮腰議員 食育基本法には、第十四条に「食育の推進に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。」と書いておりますが、この中の一つに、もう既にこの四月一日から施行されましたけれども、学校栄養教諭の制度ができることになりました。

 これまで、学校栄養士さんは、教育の現場といいますか、教室に入って指導をするときには、校長の許可をもらった上で二十分までといったような制限などがありましたし、あるいは、学校栄養士さんは体験学習などの指導などもなかなか難しいという状況にあったわけでありますけれども、これからは、学校の教室の現場に入って食育の指導ができるということでありますし、また体験学習も進めていく主体になれるということであります。

 現場でどうやっていくかということについて、これまではやはりなかなか大きな制限があったということでありますけれども、学校栄養教諭という仕組みができ、あるいはこの食育基本法という裏づけの法律ができれば、現場で子供たちをしっかりと指導していっていただけるというシステムになるのではないか、そのことを強く期待をいたしております。

島田委員 その期待度は、私ども、本当の面で、実際上そういうふうに進んでほしい。

 ただ、やはりこれは、五日制が実施されてからは、どちらかといったらしつけの問題は家庭である。今まで、どちらかといったら学校教育の中である程度しつけの問題等もきちっと教えていかなきゃならぬという側面が、どちらかというと家庭、しつけのことですから本来家庭で教えていかなきゃならない側面が多いと思うんですけれども、しかし、今の社会状況の中からいけば、学校教育制度の中にきちっと位置づけてとらえて、進めていかなきゃならない。

 だけれども、まだ栄養士そのものの制度ができたばかりでありますし、もう一つは、今度、保育園と幼稚園、その総合施設ができるということでこれから進められるようでありますけれども、しかし、その現実は、何か規制緩和という中で、あるいは、調理場、調理室というようなところを、どちらかといったらこの総合施設をつくる中では削減というのが前面に出てきて、今提案者が考えているような、本来の食育という方向性がやはり明確にどうも位置づけられないのではないかなという気がしてならないんですね。

 基本法といって法律を明記する以上、やはりこれから、今基本的に本来の大きな流れとして進めようとされている、特に保育園の方は、そういう面では食育指針というようなものを立てられておりますし、あるいはもう来年度からモデル施設をつくって現実に進めていくという状況に入っている中ですから、現状、もうその辺の指針が明確に出ていなきゃならぬと思うんですね。

 提案者の御答弁でもいいし、あるいは厚労省で、何か突然で申しわけありませんけれども、重要な問題でありますから、あるいは提案者の方で、ぜひ御答弁願えればと思います。

白保議員 今の件につきましては、まさに昨年の三月に示された保育所における食育に関する指針、これを踏まえて適切に今推進をされつつある、こういうふうに承知しておりますけれども、こうした食育を通じて、子供たちの健全育成に加えて、離乳食やアレルギー児用の食事など、個々の子供たちの状況に応じたきめ細かな、細やかな対応、あるいは長時間保育等、多様な保育ニーズへの対応等を図る観点からも、保育所に設置するとされている調理室は重要な役割を果たしていくだろう、こういうふうに考えています。

島田委員 総合施設の中で、調理室の施設も今まではきちっとした基準を定めて設置しなきゃならない、こうなっていたけれども、今度の総合施設の中では緩和されて、民間委託なり、あるいは何か自由になるというような、あるいは削減するという方向にあるというような一般的な、あるいは保育園の施設の関係者の人がそういうことをよく訴えられるんですけれども、その辺のことについては、この食育という基本法を進める観点からいけば、削減なり、あるいは、調理室というものは保育の中で重要な位置を占める。だけれども、これは何も食育基本法を通さなければそのことが実現しないわけではないんですけれども、やはりこういう基本法を制定する状況の中では、それらのことについてどう基本的に考えているかということについてもお伺いをしていきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

伍藤政府参考人 総合施設についてのお尋ねでありますから、まず私の方から現状を御説明いたしたいと思います。

 いわゆる幼保一元化あるいは規制改革というような観点から、保育所の調理室は必ずしも必要ではないのではないかという議論が行われていることも事実でありますし、それがさらに、総合施設にそういった議論が持ち込まれておることも事実でございます。

 ただ、私どもは、これまでも保育所において、食育のみならず、いろいろなアレルギー症状の子供にどう対応するか、そういった観点から、保育所の調理室は重要な役割を果たしてきたというふうに思っておりますし、これから幼稚園と一元化をして実施しようとしております総合施設についても、昨年の末に、検討会において報告が取りまとめられておりますが、その中でも、調理室について特に言及をしておりまして、「経営の効率性のみを重視するのではなく、次代を担う子どもの健やかな育ちを中心においた上で、地域の実情に応じ、かつ地域の創意工夫が発揮できるよう、柔軟な対応が可能なものとすることが必要」、こういったふうな記述がされておるところでございまして、そういった重要性については十分検討会でも言及しておりますし、私どもも認識をしているつもりであります。

 これを踏まえて、今年度、モデル事業をこれから一年かけて実施をいたしますが、そういうところでも、こういったいろいろな施設の配置がどうあるべきかといったことにも十分留意をしながら、このモデル事業を実施していきたいというふうに考えております。

島田委員 食育の中で、食品の安全という問題も避けて通れない重要な問題だと思うんですね。そういう中で、最近、種がほとんど、海外で八割、二割ぐらいの国内の種がJAなどでも販売されているんですね。

 それらのことを考えてみたりすると、海外の食品安全情報をこの中で提供するというようなことを書かれておりますけれども、しかし、O157のときの食中毒も、もしかしたらアメリカから輸入された種によって原因があるのではないかということも言われているわけですね。

 ですから、そういう面で、食品の安全という問題に対して情報を的確に提供するという場合に、これらの情報というものを的確に、あるいは科学的にそういうことについて分析をした上で消費者にきちっと提供するということの重要性というものは、今、やはり私どもも含めて問われているというふうに思われるんですけれども、それらの情報を提供するという場合に、どんな形で、あるいは科学的にどういう形で分析をして、その機関がどういう形で行われるというふうに考えておられるんでしょうか。

宮腰議員 基本法の第二十五条第一項、第二項におきまして、安全性に関する情報の提供、あるいは海外における食品の安全性、栄養、食習慣等の食生活に関する情報の収集等々につきまして記述をさせていただいております。

 従来、食品安全委員会におきまして、BSEやリステリア菌など国外において発生した食品の安全性に関する重要な事例については、ホームページ等を通じて国民に広く情報の提供が行われておりますし、厚生労働省におきましても、国外の情報等に基づきまして、検査の強化、必要な措置が講じられております。

 食育基本法において、「国及び地方公共団体は、」ということで記述をさせていただいているわけでございますが、今後も食品安全委員会や厚生労働省等関係府省が連携して、国民に向けた必要な情報の提供等をしっかりと行っていくべきものというふうに考えております。

増田委員長代理 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

増田委員長代理 速記を起こしてください。

 島田久君。

島田委員 内閣総理大臣を長とする食育推進会議を置くとなっていますけれども、推進会議の構成の内容と、推進会議とはどういう役割を果たすのかを御説明願いたいと思います。

宮腰議員 食育推進会議におきましては、食育推進基本計画を作成し、その実施を推進すること、そのほかに「食育の推進に関する重要事項について審議し、及び食育の推進に関する施策の実施を推進すること。」としております。

 メンバー、組織でございますが、「会長及び委員二十五人以内をもって組織する。」としておりまして、「会長は、内閣総理大臣をもって充てる。」ことにしております。

 委員二十五人以内というその内容につきましては、具体的な閣僚数と有識者数の内訳、だれを有識者として任命するかにつきましては、法施行後、会長たる総理が決定することになりますけれども、有識者につきましては、法案の基本的施策として規定されております、先ほど高井先生のときに項目を六つほど申し上げたわけでありますが、それらについて十分な知識と経験を有する者のうちから任命されるということになると存じます。

島田委員 食育運動を国民運動的に進めていく、そして今御説明のような推進会議を設けていく、そういう場合に、国民の中から参加する、例えば消費者代表あるいは農業生産者の代表などやはり国民運動をという、それらのいろいろな多様性を求めていく場合について、何としてもそれらの代表も委員の中に含むということに対して、ある程度の規定なり保障があるべきだと思うんですけれども、その辺はどうお考えでしょうか。

宮腰議員 個々の任免に関しましては、今ほど申し上げました基本的施策についてどのような知識経験を有しておられるかということを総合的に勘案して決定されることになるものと考えております。今ほど、消費者の代表ですとかいうお話がありましたけれども、消費者、生産者あるいはいろいろな場面で食育に専門知識を持っておいでになる方々等々が恐らくは選任されるものというふうに思っております。

島田委員 恐らくという場合に、基本法ですから、委員のメンバーに対するある程度明確な位置づけなり、あるいは提案者の方で国民的な大運動を進めていくという基本方針があられるわけですから、やはり何らかの、消費者なりあるいは生産者なり、それらの学識経験者というものに対する明確な位置づけを保障すべきだと思うんですけれども、もう一度御答弁願えますでしょうか。

宮腰議員 どのようなメンバーを選ぶかということについて、これは提案者の方から明確にこういう人とこういう人と言うわけにはなかなかいきませんが、その中で、六項目ほど基本的な施策として挙げておりますので、それについて十分な知識経験を有する方々の中から選んでいただきたいということははっきり申し上げたいと思います。

島田委員 第九条に、各省の役割分担の明確化と協力の明記や、政策対応事業の効果など実証状況を検証し、見直すなどの規定も必要になってくるんではないかなと思うんですね。それと同時に、国会に対してでも、例えばきちっとした報告を提出しなければならないと私は思うんです。それらの報告について義務づけが必要だと考えるんですけれども、その辺はどうお考えでしょうか。

宮腰議員 第九条におきまして、国は、「食育に関する基本理念にのっとり、食育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。」と規定をしておりますけれども、これは第二条から第八条にわたります非常に広範な食育に関する基本理念を実現するために、食育基本計画の策定という手法で関連施策を総合的かつ計画的に推進することとしたものでありまして、御指摘のように、各府省の役割分担や連携協力のあり方、各種施策の効果、検証のあり方などを含め、食育基本計画の中で具体化することとしておりますので、基本法としての規定ぶりは法案で十分ではないかというふうに考えております。

 また、基本計画を作成した際の総理大臣への報告に関する規定につきましては、交通安全対策基本法の立法例を参考にさせていただいて規定したものであります。

 国会に対する報告につきましては、基本法第十五条に基づき、食育の推進に関して講じた施策に関する報告書、いわゆる白書を毎年提出するということで足りるものではないかというふうに考えております。

島田委員 白書という形で国会に対する義務ができ得るというお考えのようでありますけれども、しかし、国会に対して、白書という形でなくて報告書という形できちっと承認をするという形の義務づけも、重要なことでありますから必要と思うんですけれども、その辺の基本的な考え方はどうお考えでしょうか。

宮腰議員 例えば、交通安全対策基本法では、第二十二条におきまして、中央交通安全対策会議は、交通安全基本計画を作成しなければならないということと、第三項で、中央交通安全対策会議は、第一項の規定により交通安全基本計画を作成したときは、速やかに、これを内閣総理大臣に報告し、並びに指定行政機関の長、指定行政機関が委員会である場合にあっては、指定行政機関云々、及び都道府県知事に通知するとともに、その旨を公表しなければならないということになっておりまして、これにつきましては、国会に対する報告ということにつきましては、白書は、交通安全対策基本法につきましては、これは規定されていないというふうな感じであります。

 食育の推進に関して講じた施策に関する報告書、いわゆる白書、これで十分ではないかと私どもは思っておりまして、書面でと、具体的な中身についてしっかりと白書で提出をしていただくというふうなことで十分ではないかと思っております。

島田委員 それはなぜかといいますと、やはり各省相当またがっていますので、その意思というものを統一してきた何らかの部署ができるわけではないのではないかと思うんです。そういう面ではやはり統一した報告書を、白書というのはある意味では任意的な形だと思われるんですけれども、各省がまたがっていますので、それをある程度一体的に統一をして国会に対して報告をするということの規制あるいは義務、責務という面で、国会に報告をきちっとするということは重要だと思うんですけれども、その面をもう一度御答弁願いたいと思います。

宮腰議員 各府省にまたがっているということは先生御指摘のとおりでございますが、内閣府に食育担当の特命担当大臣を置くということになっておりまして、その特命担当大臣が白書を取りまとめてしっかりと報告をするということになっておりまして、各省ばらばらということでは、これは法律の趣旨にも反するということでありますから、特命大臣がしっかりと、基本計画の取りまとめ、あるいは白書の提出、報告書の提出ということで、これで十分足りるのではないかというふうに思っております。

島田委員 今の点は、今後のいろいろな、各省ばらばらにまたがっている場合に、ただ白書という形で、特命大臣が置かれるわけですから、国会にきちっとした報告を提出されることを要望しまして、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

増田委員長代理 次に、牧野聖修君。

牧野委員 民主党の牧野聖修です。本日のしんがりを務めることに相なりました。

 大勢の皆さんが真剣に高いレベルでの論戦を展開していただいておりますし、私も、途中出たり入ったりしたこともございますので、もしかしたら重複することがあろうかと思いますが、その点と、そして、ためにせんがための議論も中にはありますけれども、お許しをいただきまして、真摯に論戦にお答えをしていただきたい、そういうふうに思います。

 私が最初に食育という言葉に触れたのは、記憶でいきますと、二年ほど前のたしか秋の臨時国会のどなたかの質問に対して、小泉総理の答弁の中で、知育、体育、徳育もあるけれども食育もあるという言葉が突然出てまいりまして、私はそのときに非常に奇異に感じました。

 それで、すぐに部屋へ帰りましてから辞典を調べてみましたら、載っておりませんでした。それから、神保町によく行きますので、神田の神保町の三省堂で幾つか辞典を調べてみましたところ、食育という言葉はどこにもありませんでした。情操育という言葉は確かにあったんですけれども、食育という言葉はなかった。

 だから私は、当時その時点では辞典に載っていないような言葉を用いて、それが後の国策の一つの重要な柱になっていくということに本当に驚きを禁じ得ない状況なんですけれども、考えてみると、知育、徳育、体育は、我々が本当に神に召されてたった一度の人生、人間としてこの世に生まれてきた、人生を全うするために必要な三要素と言われているものですね。武道では心技体になりますよ。そのものと食育というのは、レベルが違う、次元の違う価値体系じゃないかなと思っていますが、まずその点について、もしかしたら皆さんの方はもう論議し尽くしていることかもしれませんが、改めてお答えをいただきたいと思います。

小坂議員 牧野委員にお答えをしたいと思うんですが、確かに食育という言葉は、今まで教育の現場では、知育、体育そして徳育、こういう言葉はずっと使われてまいりました。しかし、食育という言葉は聞いたことがない。

 確かに、総理の答弁でお聞きになったということでございますが、骨太の方針二〇〇二ですね、「関係府省は、健康に対する食の重要性に鑑み、いわゆる「食育」を充実する。」という記述があったり、あるいは二〇〇三年のやはり骨太の方針の中でも「人間力を養う柱となるとともに、食の安全・安心確保の基礎となる「食育」を関係行政機関等の連携の下、全国的に展開する。」あるいは二〇〇四年の同じく骨太の方針でも「「食育」を推進するため、関係行政機関等が連携し、指導の充実、国民的な運動の展開等に取り組む。」とありますように、私どもにとりましては、政府・与党という関係の中だけではなくて、一般に、食品産業の皆さんあるいは農業者の皆さんの中でも、私はたまたま機会が多かったのかもしれません、食育という言葉を聞いてまいりました。

 私ども自由民主党におきましては、平成十四年の十一月に自由民主党の政務調査会に食育調査会というものが設置されまして、これは、武部勤元農林水産大臣が会長となりまして、これまで平成十五年の予算要求において、食育推進に向けた重点施策の要請を行うとともに、食品にかかわる大学教授あるいはジャーナリスト、作家、あるいは有識者、実際の現場における実践者である農業者、あるいは学校給食関係者、栄養士、保育園長、食品産業関係者、NPOの代表の方々等々からヒアリングをずっと行ってまいりました。

 そういうことで、これはまだ聞きなれない方も多いと思うんですね。主婦の方でも、食育という言葉を申し上げれば、恐らく半分の方は、何か聞いたような気はするけれども内容については全くわからないわとか、あるいは、食育というのはこれから学校の中でも、食べることについてもいろいろな不安が出てきたから教えたりするんでしょうというようなぐらいまでは、レベルが上がってきていると思います。

 これからおいおい、国民運動等展開する中で、皆さんにもこの意義また意味をよく理解していただくように努めたいと思っております。

牧野委員 今度の食育基本法を読んでみますと、食育というのが知育、体育、徳育の下支えになるようなそういう価値体系としてさらに広めていくんだというのは読み取れたから、そのことは一つ納得するにいたしましても、私は木造住宅、杉、ヒノキのことを研究したり活動しているんですが、宮大工だとかたくみは、人間の健康と精神状態、人格形成には住まいというのは非常に大きなウエートを持っている、もしかすると食べ物よりもさらに重要でないかということをよく言うんですよ。

 それから、高名なデザイナーに言わせると、衣、衣食住の衣ですね、これも、着るもの、素材、デザイン、それからそのときのTPOに合わせた衣、そのことによって人間の精神状態にいろいろな影響を与えている、だからこれはもう大切なことだ、こう言いますね。

 それから、布団屋さんが、一日八時間、一日の三分の一は寝るということの中で過ごすわけですね。これは非常に、衣食住と同等な重要な価値がある、大切なことなんだ、おろそかにできません、こう言いますね。

 そうすると、皆さん、食育が終わったら、衣育とか住育とか寝育とやるんですか。その点について御答弁ください。

小坂議員 食というのは、人間の基本的な行動で、生きるための行動でもございますし、それを今さら、教育現場、あるいは国が法律をつくって推進する必要はないのではないかという御指摘は、本日も質問者の方々から幾たびか御指摘のあったところでございます。

 また同じ回答になって恐縮でございますけれども、今までは、食の安全についても、BSEやO157の問題が出るまでは余り問題になっておりませんでした。それが国民の非常に身近な問題になってまいりました。また、痩身志向というようなものも、過度な痩身志向には至らないのが従来でございましたが、今は、低体重と言われるような、平均体重からすれば少ない女性に聞いても、自分はまだ太っていると思われるような、そういう傾向になってまいりまして、これが健康を害するような状況にもなってまいりました。欠食あるいは孤食、こういったことが、いろいろな面で、教育面でも影響が出てきております。

 そういった国民の健全な、あるいは健康な暮らしをむしばんでまいるような食に関する問題が指摘をされるに至りまして、私どもとしては、やはりこの問題に対処するには、各分野に総合的かつ計画的に対処していくことが必要だ、こう考えてこの食育の問題に取り組むことにいたしました。

 したがって、これからこの問題を、食育を中心にやってまいりますが、確かにおっしゃるとおり、衣食住すべて、人間の生きるための必要な事項でございます。しかしながら、衣については、これはまだそういった意味の指摘もありませんし、住に対しても、そういう認識はいろいろあって、その対策はとられておりますが、まだ基本法をつくるような必要性は認識しておりませんので、当面、食育しか考えておりません。

    〔増田委員長代理退席、委員長着席〕

牧野委員 本体について質問をこれから始めたいと思いますが、この基本法の条文それから資料を読ませていただきますと、現状認識と現状分析はよくできていると思いますよ、正直言って。栄養の偏りとか不規則な食事とか、それから肥満の増加、生活習慣病の増大、食品の安全性、信頼性の問題とか、食糧の自給率の低下等、伝統的食文化の喪失、こういうことが書いてあるわけです。

 一番私が提案者に聞きたいのは、栄養の偏りとか不規則な食事とか、例えば肥満が増大した、この原因をどのように究明されてきたかということなんですよ。

 では、一つだけまず、例で、肥満の増加の原因というのは一体どのように考えておられるか、お答えいただけますか。

宮腰議員 肥満の増加につきましては、食生活の変化が一番大きな原因ではないかというふうに考えております。昭和三十年代の食生活に比べまして、三要素のバランスが随分崩れてきたというふうなことが言われておりますし、あるいは肉、油脂等の摂取がふえまして、逆に野菜などは、そんなに特別減っているというわけではありませんが、バランスの崩れというのがあって、肉だとか油脂の増加に準じて野菜等もふえてくればこれはよかったんですけれども、バランスの崩れというのが肥満の一番大きな原因ではないかというふうに思っております。

牧野委員 それでは、続けて、不規則な食事の原因はどういうふうに考えておられますか。

西川(京)議員 大変これは、日本人の生活態度そのものの変化に大きな理由があると思うんですね。今まで、日が上ったら働き、日が落ちて暗くなったら寝るという、それこそ人類古来からやってきたものに比べて、非常に電気を多く使いながら夜遅くまで仕事なり娯楽なりが出てくるような、あるいはIT社会の中でのそういう生活、そういうものが今までの三度三度をきちんとする生活習慣の乱れの中で大きく食い込んできた、そういう日本人の生活形態自体が変化したためだろうと思います。

牧野委員 何で生活様式が変わったのか、そのことをどういうふうに考えているかを聞きたいんですよ。変わってきたのは、それは現状認識なんですよ。なぜ変わったのか、それを私は聞いておる。

西川(京)議員 経済発展は非常に大きな原因でしょうね。要するに、これはいろいろなそれぞれの考え方があると思いますが、非常に禁欲的な清貧な生活、晴耕雨読というか、そういうものが基盤にあった生活から、だんだん豊かになっていくと、人間、どうしても物質主義、ある程度物を豊かにする、そういうものに価値観が変化していく、そういう人間の価値観の変化というのが大きいと思います。

牧野委員 日本人が価値観を変えざるを得ない、そういう大きな原因があったと私は思っているんですよ。だから、食生活からふだんの生活が変わらざるを得なかったわけですよ。その原因を突きとめていますかということを聞いているんです。何だと思いますか。

西川(京)議員 原因を突きとめているまで、私もそこまで言い切れるかどうかはわかりませんが、私なりの考え方を申し上げたいと思いますが、これは当然、日本人の戦争を境にした生き方の価値観の変化だ、私はそう思っています。

牧野委員 戦後の食糧難の時代からずっとやっていくと、三段階か四段階ぐらい変化はあると思うんですが、今この食育基本法を出さざるを得ないような状況まで変わってきた、その原因は一体何かなと私は考えますと、一つには、やはり産業構造の大きな変化と雇用の状況、これが大きく変わってきたというのと、もう一つは、流通形態が大きく変わった、この二つが食生活のあり方を大きく変化させた要因だと思っているんですよ。

 不規則な食事という問題を考えてみると、みんな日本人は、朝、家族一緒に御飯を食べたい、夕げも一緒に食べたいと思っているんですよ。ところが、今の雇用状況、労働条件、そういう中で家族が一緒に食事ができない状態になっているんですね。そうでしょう。お母さんは子供の面倒を見られない状態になっている。昔は、朝、お弁当をつくればそれでよかったかもしれないけれども、そのお弁当もつくれない状態で、お小遣いを渡してコンビニで買わせる状態ですね、そういうふうに大きく変化してきているんですよ。その中で不規則な食事とか、あるいは肥満とか、いろいろな問題が出てきているんですよ。

 だから、そのことをしっかり究明しないと、現状認識と分析だけはしっかりできているけれども、それらに対する原因究明をしっかりやらなければ、後の対策ができないんじゃないかと私は思うんですよ。だから、その点はどういうふうに考えていますか。

西川(京)議員 先生のおっしゃること、同感する部分もあります。

 私、これはやはり、まさにこれこそ社会の要請か個人の判断かという問題も大きくかかわってくると思うんですね。特に、お母さんが子供の面倒を見られないというお話がありましたが、これはまさに女性の職場進出、女性が外に働きに出るという問題と深くかかわっていると思います。

 この問題は本当に、よく最近言われることが、自己実現という意味で、単に経済的な理由だけではなくて、女性が働きたいという要望が強い、そういうものの中で、職業と子育て、家庭、家事との両立ということが一番の課題になっているわけですが、その辺のところが、では、どこまで国が踏み込んであれをすればいいのか。個人の判断でそういうものを選んでいる場合もあるし、それから、社会的な、経済的な状況の中で働かざるを得ないという状況もあります。ですから、これは、労働環境を整備するということはもちろん一番大事なことで、一つの有効な解決の手段だろうと思います。

 正直申し上げて、先ほど小宮山議員がちょっと一言おっしゃいましたが、みんなで食卓を囲むような生活が本来、人間の一番当たり前の生活だろう、私もそう思っています。ですから、夜遅くまで残業しなきゃいけない労働形態、それは当然考えなきゃいけないと思いますが、ただ、そこにおいて、今の社会の構造変化がすべて原因だというふうに決めつけるのはちょっと問題であろうと思いますし、個人の一つの生き方という面にもかかわってくることだろうと思います。

牧野委員 法案提出者ですから、その辺のことはもっと深く考えて法案を出していただかなければいけないなと思っているんですよ。

 時間も、クエスチョンタイムも始まりますので、なるべく早くやってみたいなと思っているんですけれども、この法案の一番まずいところは、私は、今言ったように、現状認識と分析はできているけれども、原因究明がなされていない、しっかりとした追求がなされていない。だから、この基本法をつくってから、提出者は何をしたいのかというのが見えてこないんですよ。

 ただ、私が書いてある文を読む限り感じるのは、BSEやO157や偽装表示の問題も四ページのところに触れられていますけれども、それを読んでみると、BSEやO157や偽装表示があったこと、そのことをどうして原因を究明して対策をとるかということには何ら触れていなくて、どちらかというと、消費者の過剰反応という風評被害の方が発生した、これは食に対する知識の欠如だというふうな書き方になっているんですね。

 そうすると、抜本対策よりも、この現象をとらえて、原因究明しないで、消費者をもう一度勉強させて、知識を多くふやせばこの問題が抜本的に解決できるというふうな組み立てになっている、それじゃ間違いですよ。

 それから、もう一点言っておきますよ。食に関する知識と食を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育について云々かんぬんと書いてある。

 では、消費者は一体選択権がありますか。店に行ったときに、店に並んでいるものしか、その中からしか買うことができないんですよ、ふだんの生活の中では。本当に安心かどうか、安全かどうか、そこまで徹底的に調べてやれるという選択権はないんです。売られているものの中から買うんですよ。だからこれは、私は、言葉だけは躍っているけれども、実際にはうそだと思うんです。

 だから、この法案をずっと読んでいくと、皆さんの言いたいことは、突き詰めていくと、抜本的な解決というのはなしにして、消費者をもう一度教育し直す、そのことに特化しているようにこの文は読めるんですね。どうですか、その点については。

西川(京)議員 先生の御指摘の抜本的解決ということは、はっきり申し上げれば、もちろんこの食育基本法案をつくったからできるはずはありませんが、まさに抜本的解決ということに対応する答えとしては、あらゆる分野のあらゆる政策をしなければできない、私はそう思います。

 その中で、少しでもその解決の方向に向かって、現状のさまざまな食の乱れから出るあらゆる矛盾に対しての対応策として、こういうやり方があるだろう、今、ただしそれが個別に、みんなばらばらでやられている中で、少しでも抜本的対策に近づけたいという思いで、総合的調整を図るための基本法だ、そういうふうに解釈しております。

牧野委員 提出者がそういう答弁をしたらだめですよ。やはり最後まで責任を持って答弁する、そういう姿勢でこの委員会には臨んでもらいたいと私は思いますね。

 それで、皆さんが一つ忘れているのは、重要な欠陥がある。学校教育の場と家庭と地域、それを国と県が責任を持って指導していくという骨組みになっている。ここに企業が抜けているんですよ。学校教育でとか家庭でとかというのは水際なんですよ。水際の対策なんですよ。どちらかというと、企業の責任を明確にして、企業の協力をしっかりさせなければ、食の問題は解決しないんですよ。そのことがどこにもないじゃないですか。どうですか。

宮腰議員 国、地方公共団体の責務、そのほかに教育関係者等及び農林漁業者等の責務、そして第十二条に食品関連事業者等の責務を明記いたしまして、一般的な企業ということではなくて、食品関連事業者等という形で責務を規定いたしております。

牧野委員 私も読んでみたら、企業のことについて触れてあったのは、今答弁された一点だけだね。あと、ほかにはどこにもない。どこにもないですよ、私は何回も読んだけれども。学校の現場も家庭の現場も、それから地域が一体どれだけの主体性を持ってこの問題に取り組んでいけるかというのは疑問ですね。ただ、これも、どちらかというと幻想に近い、それを位置づけてやっているというところに大きな問題がある。

 それからもう一つ、消費者を教育すれば、レベルアップして、それでもって食の問題を解決するようなそういう錯覚に陥っている。

 でも、一番私が言いたいのは、人間個人としてはいろいろな感覚を持っても、企業人になると、企業の論理は違うんですよ。みんなそうですよ。自分では食のいろいろなことについて勉強して、いい食生活をしたいと思っていても、企業の論理は違うんですよ。それに対する触れ方がこの中にはほとんどないね。ただ一行、それがあるだけです。それでは、私に言わせれば絵にかいたぼたもちだね。

 最初に、現状認識と現状分析は立派にできているけれども、それに対する原因究明と対応策の中で大きな要素が欠落していると言わざるを得ないね。どうですか、その点については。

宮腰議員 一行とおっしゃいましたけれども、二十二条におきましても食育推進運動の展開ということで、食品関連事業者とその他の事業者もしくはその組織する団体云々と、事業者のほかに、消費生活の安定及び向上等のための活動を行う民間の団体が自発的に行う食育の推進に関する活動ということで規定をさせていただいております。

 先生おっしゃったように、食品関連事業者の果たす役割というのは極めて大きい。もう既に外食、中食で大きなシェアを持っておいでになる。その食品関連事業者の中でも、既にイオンを初めとして食育に企業ぐるみで取り組んでおいでになる企業もあるということでありまして、こういうところの力もやはりしっかりと国民運動の一つに位置づけて、食品事業者の食育に対する役割もしっかりと果たしていただくように努力していかなければいけないと思います。

牧野委員 私の言いたいことと全く反対の解決策を考えているね。

 今、食が乱れて、肥満とか偏りとかそういうものがここまで蔓延してしまったその大きな原因はどこかというと、チェーンストア協会にある。コンビニエンスストアにあるんですよ。そのことを見きわめないで、そこの力をかりたらまたよくなるなんてことを思っていたら大間違いだね。コンビニエンスストアとか大型スーパーは、人件費を削減しているから、お金を払うところ一カ所でしか店員さんと話をしない。コンビニエンスなんかは、お金さえ払えばだれでも何でも売るんですよ。

 昔ながらの商店街とか地域のコミュニティーの中で育っている店は、そんなものを食べ過ぎちゃいけないよとか、さっきも買いに来たけれども夜遅くはだめだよとか、そういうコミュニティーの中で初めて食文化というのは保たれていくんですよ。ところが、チェーンストア協会とコンビニエンスストアは売ればいいんですよ。

 だから、私が言いたいのは、この前の地域再生法のときも言ったんだけれども、生産者がつくったものを、農業にしても水産にしても、それはもともとはどっちかというと自然のものだから、僕は全体的にいいものが多いと思います、中には健康によくないものもたまにはあるけれども。ところが、加工されて並んできたときには、売れればいいというのが前面に出てきているから、使ってはいけないそういう添加物は使わないけれども、それ以外なら何でも使って売れればいいという状況で来たからこそ、しかも、やはり家庭が、雇用の環境の劣悪化の中で子供がそういう中に投げ出されて、しかも、お金さえあれば何でも食べられる、そういう流通環境の中で、こういう食が乱れることがずっと起こってきたんですよ。だから、そのことを本当に直さない限り、食の文化をもう一度立て直すことはできない。

 それからもう一つ。だから、家庭で、地域で、学校でというのは、これは水際、最後のところでこれを押しとどめようという発想なんですよ。根本的な解決というものをもっと図るべきだと思います。

 食育基本法を議員の皆さんが提案されるなら、目的とするところは、勉強しなくても、注意しなくても、日本人がこの国内で食べるものは全部安心だ、そういう環境とかそういうことを進めていくのが政治の役割じゃないですか。そのことを声を大にして訴えまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

松下委員長 次回は、来る八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十一分散会


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