衆議院

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第17号 平成19年5月9日(水曜日)

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平成十九年五月九日(水曜日)

    午前十時三十四分開議

 出席委員

   委員長 河本 三郎君

   理事 木村  勉君 理事 後藤田正純君

   理事 戸井田とおる君 理事 西村 康稔君

   理事 平井たくや君 理事 泉  健太君

   理事 松原  仁君 理事 田端 正広君

      赤澤 亮正君    遠藤 武彦君

      遠藤 宣彦君    岡下 信子君

      嘉数 知賢君    谷本 龍哉君

      寺田  稔君    土井  亨君

      中森ふくよ君    西本 勝子君

      林田  彪君    松浪 健太君

      村上誠一郎君    市村浩一郎君

      小川 淳也君    小宮山洋子君

      佐々木隆博君    高山 智司君

      横光 克彦君    渡辺  周君

      石井 啓一君    吉井 英勝君

    …………………………………

   国務大臣         大田 弘子君

   内閣府副大臣       大村 秀章君

   法務副大臣        水野 賢一君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   内閣府大臣政務官     谷本 龍哉君

   内閣府大臣政務官     田村耕太郎君

   政府参考人

   (内閣府公共サービス改革推進室長)        中藤  泉君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 後藤  博君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   内閣委員会専門員     堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月九日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     西本 勝子君

  市村浩一郎君     高山 智司君

同日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     木原 誠二君

  高山 智司君     市村浩一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)


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     ――――◇―――――

河本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府公共サービス改革推進室長中藤泉君、法務省大臣官房審議官後藤博君、民事局長寺田逸郎君及び厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤澤亮正君。

赤澤委員 おはようございます。自由民主党の赤澤亮正です。

 本日は、平成十八年七月七日に施行されました競争の導入による公共サービスの改革に関する法律、通称公共サービス改革法、または市場化テスト法とも言われているようでありますけれども、その一部を改正する法律案につきまして、大田大臣、そして中藤改革推進室長に質問する機会をいただき、大変感謝をしております。

 民間にできることは民間にという観点から、国または地方公共団体がみずから実施する公共サービスについて、民間事業者の創意と工夫、これを活用して公共サービスの質の維持向上や経費の節減を図るという公共サービス改革法の趣旨あるいは基本的な制度設計については、だれも異論がないものであると私は思料をしております。

 一方で、このすぐれた制度が十分に活用をされているか、あるいは積極的な活用のためのインセンティブが十分に働いているか、さらには、制度の周知は十分かといった点について若干懸念がありますので、本日は、これらの点について質問をさせていただきたいと思います。

 それでは冒頭、まず大田大臣に、本制度の評価とか、今後の市場化テストの展開、対象業務の拡大に向けた取り組みに関する大臣の御決意についてお伺いをいたします。

大田国務大臣 公共サービス改革法は、公共サービスを常に見直して、国民の立場に立って、良質のサービスをなるべく低廉な価格で提供しようとするものです。今先生御指摘のように、なるべく対象業務を拡大して、この制度の趣旨が生かされるように努めてまいりたいと考えております。

 これを拡大するために、市場化テストの対象業務は、公共サービス改革基本方針を毎年少なくとも一度は見直すということで拡大させていこうと考えております。昨年七月に改革法が施行されまして、秋以降、官民競争入札等監理委員会で精力的に御審議いただきました。そして、昨年末、基本方針改定において対象業務の選定を行いました。検討課題の大きさに比べまして検討期間が限られていたということがございまして、対象業務は十分とは言えませんけれども、一定の成果があったものと考えております。

 今後、積極的に対象業務を拡大するために、監理委員会におきましては、重点検討項目を定めて取り組むとしております。具体的には、次の六つの業務、ハローワーク関連業務、統計調査関連業務、公物管理関連業務、窓口関連業務、徴収関連業務、施設・研修等関連業務、この六つを重点項目として、ことし二月にお示しいただいております。

 政府といたしましては、これらの重点検討項目を中心に、監理委員会の御審議を踏まえて、関係府省との検討を精力的に進めていきたい。その検討結果を夏ごろの基本方針の改定に反映させてまいるつもりでございます。

赤澤委員 ただいま、市場化テストは公共サービスの改革に大変有意義であるということで、今後とも大臣としても積極的な利用拡大を図っていかれるという力強い御決意の開陳があったと理解をいたします。いろいろな御説明をいただきまして、本当にありがとうございます。

 もう一つ、重ねて大臣にお伺いをしたいと思います。

 市場化テストについては、その認知度がまだまだ低いという問題があると認識しておりますが、この点は後ほど質問をさせていただきます。一方、本制度を認知している国民においても、実は市場化テストというのは、官民競争入札を導入するもの、すなわち、公共サービスについて、官と民が対等な立場で競争入札に参加し、質、価格の両面で最もすぐれた者がそのサービスの提供を担う仕組みというのが導入されたと理解しているのが一般的であると思います。

 しかしながら、これまでのところ、公共サービスについて、民と民が競争をする民間競争入札は相当数の業務に導入されています。今大臣が御指摘のあった、監理委員会の重点検討項目にも含まれておりましたけれども、例えば統計調査業務、登記関連業務、国民年金保険料収納事業、これは徴収のことだと思いますが、あとハローワーク関連事業、独立行政法人の業務、窓口関連業務、そして徴収関連業務といったものについて民間競争入札が導入をされています。しかしながら、官と民が競争する官民競争入札については、これまでのところ導入された業務がないというふうに承知をしております。若干、一般のこの制度についての理解と導入や運用の実態が違うかなと思うところであります。

 そこで、お伺いをいたしますけれども、民間競争入札の対象事業は相当程度あるけれども官民競争入札の対象事業はこれまでのところないという状況については、制度設計の問題なのか、それとも制度設計はよかったけれども有効活用されていないということなのか。今後の官民競争入札の活用に関する対応方針も含めて、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

大田国務大臣 先生御指摘のとおり、これまで官民競争入札として選定した事業はございません。

 この法律では、サービスの質の維持向上と経費の削減に資することを目的としておりまして、その手段として、官民競争入札と民間競争入札を並べて規定しております。したがいまして、必ずしも制度設計の問題とは考えておりません。また、民間競争入札であっても、その過程で官がかけているコスト、そういうものがオープンになっておりますので、それなりの意義は十分にあると考えております。

 ただ、今後は、この公共サービス改革法の目的がしっかりと達成されますように、官民競争入札についても積極的に検討してまいりたいと考えております。

赤澤委員 これは若干推測も含まれますけれども、官の側が、やはり自分たちがやりたい仕事はがっちり確保をするということで、一方、もうこれは手放していいかなというものについては市場化テストの対象事業としていくという感じなのかなと。

 本来の趣旨からすれば、本当に官がやるか民がやるかが効率性の点でもいろいろな意味でグレーな部分について積極的に対象事業が出てきて、まさに官と民との間で競争するというのがイギリスとかそういった諸外国の例でもあって、そういった方向で、まさに今大臣がおっしゃったように制度設計はよいということでありますので、今後のまさに官民競争入札の部分の有効活用というのを期待させていただきたいというふうに思うところでございます。

 引き続きまして、制度の趣旨を生かした最大限の活用を目指すという観点から、幾つか質問させていただきたいと思いますが、その前提として、ここでどのような事業が市場化テストの対象事業となるのか、その選定プロセスについて改めてお伺いをしておきたいと思います。

中藤政府参考人 お答えいたします。

 この公共サービス改革法におきましては、国民のため、公共サービスの質の向上、コストの削減をともに実現することを目的とするものでございます。

 このような目的を踏まえまして、官民競争入札等の対象事業の選定につきましては、公共サービス改革基本方針におきまして、毎年、見直しに当たりまして、民間から募集する具体的な提案等を踏まえ、関係省庁間での協議、官民競争入札等監理委員会での審議を経て、閣議決定により行われる仕組みとなっております。また、この基本方針につきましては毎年度見直しをすることとしておりますし、これにより対象事業を逐次追加していくことを予定しております。

 こうした手続を通じまして、本法の目的を着実に実現できるよう、官民競争入札等の対象業務の選定をしっかり進めてまいりたいと考えております。

赤澤委員 それでは、今お伺いをしました選定プロセスを念頭に置いて、今次の改正における追加業務であります登記業務についてお伺いをしていきたいと思います。

 登記簿などの公開に関する業務が今次改正により市場化テストの対象業務とされているというふうに承知しておりますけれども、そのほかの登記業務について、対象とされていない業務はあるのか、ある場合についてはなぜ対象とされていないのか、その辺の理由をお伺いしたいと思います。

中藤政府参考人 お答えいたします。

 今回の法律改正におきましては、今委員御指摘の登記簿等の公開に関する業務、いわゆる乙号業務を行うこととしております。登記事務のうち、このほか甲号事務がございますけれども、それは今回の対象とはしていないところです。

 この理由につきましては、昨年の行政減量・効率化有識者会議の最終取りまとめ、及びそれを受けて閣議決定された「国の行政機関の定員の純減について」、この中で乙号業務について市場化テストを実施するということが明記されたことを受けまして、公共サービス基本方針におきまして、乙号事務のみを市場化テストの対象業務として決定したところでございます。

赤澤委員 いろいろと報道されているところによれば、例えばハローワークの関連事業については民間競争入札の対象になっている、先ほどちょっと御紹介したとおりでありますけれども、その関連事業じゃなくて、ハローワーク事業本体そのものを市場化テストの対象にしたらどうだというような議論もあるように私としては承知をしておりますし、今回の登記業務についても、今対象にはしないということをおっしゃった甲号業務、これについても対象にしていくというような積極的な対応が求められているんじゃないかと私は思うところであります。

 選定プロセスについてのお話なども踏まえて、毎年度の民間事業者などからの要望、こういった中で、改めて、乙号業務をできるなら、では次は甲号業務をお願いしたいというような話が出てきたりとか、あるいは官民競争入札等監理委員会、ここで積極的な審議を行っていただく。参議院のこの法案が通ったときの附帯決議にも、官民競争入札等監理委員会では積極的な対応をするというようなことが求められていたと思いますけれども、そういったことも踏まえて、この積極的な審議などを踏まえ、甲号事務についても市場化テストの対象事業として前向きに検討していくといったようなことは必要ではないかなと思いますけれども、その点について御見解をお伺いします。

中藤政府参考人 お答えいたします。

 この公共サービス改革法の運用に当たりましては、政府の政策あるいは方針を十分踏まえつつ、国民のために、限られた財源の中でより良質な公共サービスを実現していく観点から、適切に対応していくことが必要と考えております。

 このため、具体的に何のどの部分を官民競争入札等の対象とするかにつきましては、関係する国の行政機関との協議、さらには今御指摘のございます官民競争入札等監理委員会における審議などを通じ、適切な検討を毎年度行うこととしているところであり、今後ともこのような検討につきまして不断に行ってまいりたいと考えております。

赤澤委員 若干歯切れが悪いような感じもありましたけれども、今後の検討にゆだねるということで、しっかりと対応していただきたいというふうに思います。ただいまお伺いをした登記業務の甲号事務に限らず、本制度の活用範囲を少しでも拡大するということで、引き続きの御努力をお願いしたいというふうに思うところでございます。

 次に、民間事業者の創意工夫の発揮により、公共サービスの維持向上とコスト削減といったものを図るというのが公共サービス改革法の目的となっておりますけれども、民間事業者の創意工夫の具体例としてどのようなものが考えられるか、これをお伺いしたいと思います。

中藤政府参考人 お答えいたします。

 この公共サービス改革法につきましては、昨年、成立、施行されたところでございます。したがいまして、本年度からこの法律に基づく事業が実施されることとなりますので、こうした民間事業者の創意工夫の具体例を順次把握していくことになります。

 ただ、この法律の施行前に、モデル事業というものを幾つか実施しております。例えば、今委員御紹介がありましたハローワーク関連事業につきましては、失業者の方々に対して就職支援を行うキャリア交流プラザ事業、これは十七年度から開始しております。例えば、この中では、平日の開業時間を延長するとともに、土曜日でも事業を行う、そういう利便性に配慮した工夫が見られております。

 以上でございます。

赤澤委員 今御紹介いただいた民間事業者の創意工夫の具体例に当てはまる話かどうかはちょっと私自身わからぬところはありますけれども、若干懸念があるのでお話をさせていただきます。

 公共サービス改革法の第二十七条に、国は公共サービスを実施する民間事業者に対して必要な指示をすることができるということになっております。私自身は、このような指示は、はしの上げ下げも官が指示をするというような、言ってしまえば、かえって民間事業者の創意工夫の障害になりかねない、本制度の趣旨を損なうような事態がないかなと心配をするところでありますけれども、その点についてはどのように考えておられますか。

中藤政府参考人 お答えいたします。

 公共サービス改革法におきましては、第二十七条に規定する国による必要な指示ということがございます。これは、公共サービスの適正かつ確実な実施を確保する観点から、必要最小限のものとして行使されるものであるとともに、仮にこうした指示があった場合には、官民競争入札等委員会による事後的なチェック体制も構築されているところであり、委員御指摘のような状況にならないよう適切な制度運用に努めてまいりたいと考えております。

赤澤委員 ありがとうございました。

 国の指示は本制度の趣旨を損なわないように細心の注意を払って出されるものというふうに理解をいたします。注意喚起をさせていただきましたので、その点、よろしくお願いをしたいと思います。

 次に、本制度の効果に関しては、一番国民の皆様が気にされるところだと思いますけれども、民間事業者が公共サービスを落札した場合に、当該サービスにかかわる組織、定員あるいは予算といったものについてどのように反映されていくのか、お伺いをいたします。

中藤政府参考人 お答えいたします。

 一般的に、民間事業者が落札した場合におきましては、それまで当該業務に従事していた職員あるいはその組織というものは削減、縮減等されるものと考えております。

赤澤委員 では具体的に、今回の登記業務の乙号事務について、これを対象事業とすることでどのように反映されたのか、組織、定員の関係で御説明をいただきたいと思います。

中藤政府参考人 お答えいたします。

 今回のこの登記事項証明書の交付等の証明業務につきまして、昨年六月三十日に閣議決定された「国の行政機関の定員の純減について」の中で、市場化テストを実施し民間委託を行うことにより千百八十一人を削減することと明記されているところでございます。

赤澤委員 千百八十一名ということでありますので、大きな効果があるものと認識をいたします。今後とも、ほかの業務についてもしっかりと、組織、定員あるいは予算に反映をさせていっていただきたいものだと思います。

 次に、本制度の活用に関するインセンティブについてもお伺いをしたいと思います。

 民間事業者が落札をした場合、それまで当該公共サービス業務に従事していた公務員の処遇については、配置転換と新規採用の抑制が基本であるということが示されておりますけれども、この考え方だと、実は、対象事業者の範囲を新規採用抑制で対応できる範囲内にとどめるということで、小規模にならざるを得ないとも考えられます。そういった観点からすれば、対象事業の拡大に向けてのインセンティブが十分に働かないのではないか、こういうふうに思いますけれども、この点についての御見解を伺います。

中藤政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、この官民競争入札等で民間事業者が落札した場合、その業務に従事していた公務員につきましては、配置転換と新規採用の抑制により対応することを基本としております。

 他方、このほかに、業務に従事する公務員の異動の円滑化を図るため、公共サービス改革法第三十一条では、公務員の同意があり、落札事業者が希望する場合には、公務員を退職して官民競争入札等の落札企業に一定期間雇用される、さらに、そうしたサービスに従事した者につきまして、再び公務員として採用される場合におきましては、退職手当の計算方法の特例等を盛り込んでいるということでございます。

赤澤委員 今の法第三十一条の特例というのは、ある意味、この制度を活用していく上でのインセンティブとして働くのではないかという御指摘でありました。そのようになればいいなと私自身も感じるところでありますけれども。

 念のため確認をさせていただきたいのですが、制度を活用するインセンティブとして今の法律の第三十一条が設けられている、そういう御説明が今ありましたけれども、この規定について言うと、若干懸念があるのは、官が、民間事業者が落札した業務を将来的にはそれに従事をしている職員ごと、一たん公務員をやめて公共サービスを実施する民間事業者に転職をされたその元公務員の職員ごと回復をするインセンティブにならないかといったようなことも懸念をいたしますけれども、この点については、どのようにお考えになりますか。

中藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、法第三十一条の退職手当の特例規定につきましては、対象業務に従事する職員の異動の円滑化を図る観点から設けられたものです。

 今委員御指摘の御懸念等も含め、この法三十一条の規定の趣旨を逸脱することがないよう、今後ともこの制度運用に当たっては努めてまいる所存でございます。

赤澤委員 確かに、客観的に見た場合、その制度に込められている趣旨というのはなかなかわからぬところがあって、今おっしゃったような趣旨で十分この制度を活用していただくのは大変効果のあることかなと私自身も思います。

 いろいろな意味で、当初公共サービスであったものを引き受ける民間事業者がそのサービスを十分にやっていく、質が落ちないといった点については本当に大事なポイントでありますので、その辺についてのノウハウを持っていて、引き続きその公共サービスを自分もやっていきたいと思う公務員の方が、スムーズに民間事業者に転職をされて、その当初の立ち上がりの業務を手伝うといったような考え方というのは、私自身は十分にあり得ることかなと思います。

 そういう意味では、平成十八年の九月に内閣府が実施をした公共サービスの改革に関する特別世論調査でも、民間が事業をする場合には質の低下が起きないかというのが非常に懸念点だというようなところが四八・三%の方からの回答の中で出ているということでありますから、今御説明のあった制度というのは一定の意義のあるものかなと私自身考えるところであります。そういった意味で、制度が逆に負のインセンティブに働かないように十分注意しながら、気をつけて運用していただきたいというふうに思うところでございます。

 それでは、今触れたアンケートについて若干御紹介をして、さらに質問をさせていただきたいと思いますけれども、これは、公共サービスの改革に関する特別世論調査というものでありまして、平成十八年九月、内閣府の政府広報室が発表したものであります。

 なかなか関心の高い事項について質問しておりますし、私自身も興味深いなと思って拝見をしておりますけれども、「公共サービスの満足度」の中で「公共サービスの満足していない点」というようなところを見ると、その中に、やはり「民間企業が提供している同種のサービスのほうが質がよい」といったような点とか、今回のこの公共サービス改革法というのは国民から見てもきっと評価されるものだなと思われる、そういうポイントが含まれております。二七・八%の方が「民間企業が提供している同種のサービスのほうが質がよい」というふうに言っているわけであります。

 同じその世論調査の中で今から御質問することに関係する部分というのは、「市場化テストの認知度」という部分であります。

 「市場化テストの認知度」の中の質問事項というのは三つありまして、「「市場化テスト」の名前も仕組みもある程度知っている」、それから「「市場化テスト」の名前は聞いたことがあるが、仕組みは知らない」「「市場化テスト」の名前も仕組みも知らない」ということでありますけれども、順番にそのパーセンテージを申し上げていきますと、「「市場化テスト」の名前も仕組みもある程度知っている」というのはたった三・六%ということであります。「「市場化テスト」の名前は聞いたことがあるが、仕組みは知らない」、これは一〇・三%。両方合わせてもたかだか一三・九%でありまして、ここからわかるように、残りの八六・一%の方たちは「「市場化テスト」の名前も仕組みも知らない」ということであります。

 そこで、最後に大臣にお伺いをしたいと思うんですけれども、市場化テストについては、今のこの特別世論調査からもわかるように、昨年の九月の時点では全く認知度が低いということであります。公共サービスの質の維持向上、それから経費の削減といった本制度の趣旨を最大限生かしていくためには、この制度を十分に周知をして、制度の積極的運用を図っていくべきであるというふうに考えるところでありますけれども、この点についての大臣の御見解と御決意をお伺いしたいと思います。

大田国務大臣 市場化テストの仕組みにつきましては、先生御指摘のように、国民の皆様の中に十分に知れ渡っているとはまだ言えないと考えております。市場化テストという名前自体、少しわかりにくいところがありまして、議論の過程では、もっと別のいい名称はないか、お役所仕事改革法とか、そういう名前にしてはどうかというような議論もあったと記憶しております。なかなかいい名称が見つからないまま、市場化テストという名前で今徐々に知られてきているところだというふうに思います。

 これまでも政府広報ですとかシンポジウムで制度の周知は図ってまいりましたけれども、さらにこの努力をしていかねばならないと考えております。今月から来月にかけて、内閣府の職員が各地に出向いて市場化テストの説明を行うことにしております。

 こういう法の趣旨、制度の周知を図ることとあわせて、何より成功事例をつくっていくということが重要だと考えておりますので、この制度をしっかりと育てて、意義あるものにしていきたいと考えております。御指導をどうぞよろしくお願いいたします。

赤澤委員 私も、冒頭も申し上げましたとおり、民間の活力といいますか、民間事業者の創意と工夫を活用して公共サービスの質の維持向上や経費の節減を図るというこの制度は、大変有意義なものだと思っております。

 それに比べると、周知あるいは認知度については、大臣とも認識を共有しましたとおり、今のところ非常に残念な状態であって、制度についてきちっと周知を図っていかないと、当然、応募は出てこない、最大限の活用もできない、こういうことでありますので、今後とも、今開陳された御決意に従って、政府部内でも全力を挙げてこの制度の周知徹底を図り、それによって適用業務の範囲が拡大をするという方向に行くように、十分お願いをしたいというふうに思います。

 以上で私の質問を終わります。どうもありがとうございました。

河本委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 私は、本籍は法務委員会なんですけれども、今回、登記特別会計といいましょうか、登記事務の市場化テストということで、連合審査を申し入れておったんですけれども、なかなか与党理事にお認めいただけなかったようで、残念だなと思いながら、きょうは出張って質問させていただきます。

 まず、この市場化テストの目的といいますか、これは、やはり民間の活力を入れてコストダウンを図っていこうということだと思うんです。

 まず、法務の方に伺いたいんですけれども、これは登記特別会計ということで、手数料を取って、その利用者負担でやっていくという形で、今までの本当に官が全部やっているのから比べれば、手数料をきちんと取ってその中でやっていくということでいえば、そもそも民間的な要素が随分多かったと思うんです。

 これを見てみると、甲号事務と乙号事務がある。それで、甲号事務の方だけ手数料会計で全部やっていて、乙号事務の方は一般会計から出ているのかと思ったら、どうも区分経理がきちんとされていないんですね。総額千八百億円の登記関連予算のうち、半分が一般会計である。それで、何か甲号事務と乙号事務が三十数%と六十数%の割合になっている。それで、小さい登記所に行くと、ではあの人は一般会計から給料が出ているんですか、それとも特別会計からお給料が出ているんですかと聞くと、いや、両方からです、三十何%と四十何%ですと。随分特殊な会計制度だなと思って、何回聞いてもなかなか理解ができない部分が非常に多いんですね。

 それで、法務省に伺いたいんですけれども、まず、この登記の乙号事務と甲号事務を今までは官の側というか公務員が責任を持ってやっていたということですけれども、なぜ今までこれを法務局が、官の側がやっていたんですか。初めから民間に委託するというんじゃなくて。ただ登記上、見に来てくださいということであれば、初めから民間委託できたんじゃないのかなと思うんです。

 今まで官の側でやっていた理由と、今現在も、公務員の人だけじゃなくてアルバイトの人というんでしょうか、いろいろ民間にアウトソーシングしている部分があると思うんですけれども、そこはどういうふうに切り分けてやっているのか、ちょっと説明してください。

水野副大臣 甲号事務、乙号事務、基本的には官がやっておるわけなんですけれども、官がやっている理由というのは、やはり登記というのは非常に、商業・法人登記にせよ、もしくは不動産登記にせよ、これは国民の経済とかそういうことに対しての、そこに載っていることの正しさが一般に公開されるということが国民の経済活動とかの基盤になるわけでありますし、全国統一的にやっていくとかということも含めて、官がやるにふさわしいことであった。

 しかしながら、乙号事務に関しては、さはさりながら民間と競争するだけの余地というのはあるんじゃないかというのが今回の提案ということになるわけなんですけれども、その辺は、やはり権力性というものが、甲号に比べて乙号はそこら辺はやや薄いだろうということがあると思います。

 あと、今御質問の後段の方で、現状において、委員はアルバイトというような言い方、まあアルバイトという言葉がどうかはわかりませんけれども、確かに、民事法務協会の人たちが法務局などにおいても、これは乙号事務の中のオペレーター業務などについては参加をしているという実態はございます。

高山委員 今副大臣の方から御説明いただいたことで、まず初めの部分で、国がやっていた、それで権力的なというようなお話があったんですけれども、法務局の窓口というのは、物権変動があったかなかったかとか、こういうことに関して何か実質的審査権があるのでしょうか。

寺田政府参考人 今副大臣が申し上げたことをもう少し補足的に説明させていただくことになるんですけれども、不動産登記で申しますと、表示登記と権利の登記がございます。

 権利の登記については、おっしゃるとおり、必ずしも全面的な実質的審査権というのはなくて、出された書面は法律上適正に添付されているかどうかということを中心に審査をいたしますので、これは権力的作用ではあるわけでございますけれども、後で申し上げます公証ということを念頭に置いたことは国が行うということの意義の中心になるというふうに思います。

 ただし、表示登記の審査におきましては、これは、どこにそういう不動産があってどういう内容であるか、例えば建物であると、二階建てであるか、どういう内容であるかということを実質的に審査をいたします。土地の形態についても同様でございます。

高山委員 今局長の方から実質的ということが強調はされましたけれども、それはある意味、土地の形状が合っているかとか、建物が本当に合っているかとかということであって、権利関係に関して実質的な審査権はあるのでしょうか。

寺田政府参考人 これは、法律上決められている審査のやり方というのがあるわけでございまして、その中ではもちろん、ある意味では、それが本当に権利が移転したかどうかということを証明できる書面かどうかということを審査はいたしますが、しかし、書面審査という意味で、本当にその当事者の中に立って、売買が行われたかどうかという審査を行わないという意味では、実質的審査権はございません。

高山委員 それともう一つ、先ほどの副大臣のお話に出てきた民事法務協会というところが今やられているということですけれども、これはまず民間の団体なのかどうかということと、民事法務協会というのはどういった人たちで構成されている団体なのかということ、職員の内容、どういう御出身の方が多いのかとか、そういうことをあわせて御説明ください。

水野副大臣 民事法務協会は財団法人でございますから、そういう意味でいうと公益法人の一種ということになりますけれども、どういう人たちで構成されているかというのは、財団法人民事法務協会については、昭和四十六年に設立をされまして、役員は理事が十五名おりまして、職員は二千七十四名おるということでございます。出身というようなことがございましたけれども、職員数でいうと、法務局出身の人が八百五名、役員兼務の人を合わせると八百八名ということになると理解をしております。

高山委員 役員の割合なんかも、たしかあったと思いますが。

水野副大臣 役員の割合というのは、委員おっしゃるのは出身ということですか。(高山委員「はい」と呼ぶ)役員については、理事十五名、これは会長とか副会長を含むわけですけれども、そのうち、所管する官庁、法務省でございますけれども、出身者は十三名ということでございます。

高山委員 民事法務協会ですけれども、登記所からというか、法務局からのお仕事が非常に多いと思うんですけれども、収入の割合はどのぐらいになっているんでしょうか。

寺田政府参考人 先ほど副大臣から御説明を申し上げましたとおり、法務局の作業のうち、登記簿をコンピューターに移行する作業、それから登記相談業務、謄抄本の作成業務等を請け負っているわけでございます。

 全体といたしましては、コンピューター化移行作業が約百八十億前後、そのほかに、相談業務が十一億、十二億、あるいは謄抄本の作成業務が五十億弱ございます。全体といたしましては、収入の九〇%がこれらの作業による収入でございます。

高山委員 随分何か、民事法務協会というのは、法務局の仕事をほとんど請け負っているような感じがするんですけれども。

 それで、大田大臣にも伺いたいんですけれども、先ほどから登記所、私は、これは形式的審査権しかないんじゃないのかな、物権変動の実質的審査権はないんだろうと思うんですね。そういうことでいうと、例えば、私が携帯電話とかを買いに行ったときに、免許証を見せてくださいだとかありますね。それで、そこの窓口の方が、本当にあなたはこの人ですかとか、本当に住所はこういうふうに変動しているかどうかとか、チェックしないんですよね。大体免許証とかをコピーして終わるというのが普通で、形式的に本人確認をすればいいというようなことでやられていると思うんです。

 こういう業務は、やはり公務員の方じゃないと安心して任せられないということなんでしょうか。それとも、今回の市場化テスト法案の趣旨のように、民間の人でも別にもともとできるんじゃないのというような話なのか。ちょっとまず大田大臣に、市場化テストをする前ではありますけれども、市場化テストというのはコストダウンが目的だと思うんですけれども、コストダウンを仮にしなくても、別に民間の人でもできますよね、形式的審査権だけですから。できるんじゃないかなと私はちょっと思ったんですけれども、それはどうですか。

大田国務大臣 政府の責任のもとにおいて行わなくてはならない業務であっても、それの実施に当たっては必ずしも公務員でなくてもよい、実施に当たっては民間が行ってもよいという業務はあるんだろうというふうに思います。それを市場化テストの対象業務として、官民競争入札等監理委員会と各府省の議論の中でそういう対象業務を選定して実施していく。この際のポイントは、先生おっしゃる、必ずしもコストダウンだけではなくて、より質のいいサービス、民間の創意工夫を生かして、より質の高いサービスを低廉なコストで提供する。それが市場化テスト業務に当たるかどうかは、不断の見直しの中で選定してまいりたいと考えております。

高山委員 やっぱりなという感じなんです。コストダウンだけじゃなくて、より質の高いと。またいろいろな条件がついてくると、だんだんだんだん、これはやはりどこしかできないとかいうことになるんじゃないのかなと私はちょっと思ったもので、懸念があったので聞いたんです。

 そこで伺いたいんですけれども、登記の乙号事務を市場化テストするに当たって、これは一般競争入札とかそういう形をとるんでしょうか。どういう入札のイメージなのかというのが全然ちょっと明らかにならないものですから、そこを教えていただきたいんですね。

 というのは、これは十九年度からもうやられるわけですよね。だから、そろそろ準備して、大体予算規模このぐらいですよと。これは常識的な意見だと思うんです、一年後のことですから、予算規模このぐらいです、大体こういう基準に基づいて仕事を出しますから入札してくださいね、こういう条件を今のうちから出していかないと、官製談合をする暇もないですよね、そんなに早く、基準を出されて二週間後に入札ということでは。

 だから、大体こういう基準が今決められていると思うんですけれども、それを教えてください。

大田国務大臣 実施スケジュールですけれども、公共サービス改革基本方針におきまして、「十九年度中に、登記情報システム及び地図情報システムが導入されている登記所の一部を対象に、官民競争入札又は民間競争入札を実施し、二十年度から落札者による事業を実施する。」というふうになっております。この法案成立後、この基本方針に規定されております実施スケジュールを踏まえて入札を実施し、その結果に基づいて業務が実施されます。

 具体的に申し上げますと、本業務を所管する法務省が監理委員会の関与のもとで入札に係る手続等を定めた実施要項を作成いたします。この要項に基づいて官民競争入札もしくは民間競争入札を実施しまして落札者を決定いたします。そして、落札者が事業を実施するという流れになります。

高山委員 そうしますと、一番初めの素案といいますか、基準となるのはやはり法務省の方でつくられるということですけれども、これは法務省の方に伺いたいんですけれども、こういう質だけは落とせない、登記乙号事務を適切にやるためにこれは譲れない一線があるというのは、どういう基準なんでしょうか。

 そうじゃなければ、私の浅はかな考えであれば、もうこれはただ後ろから何か情報をコピーとって出すだけであれば、だれにでもできちゃう仕事じゃないかというふうに思う人もいると思うので、これは譲れない、こういう、こういう、こういう基準があるんだというのがあれば教えてください。

寺田政府参考人 この種の事務にとっては特有的なことでございますけれども、まず、情報を正確にお出ししなきゃいけませんので、誤りがあってはならない、そういう体制をつくらなきゃいけないわけでございます。と同時に、証明書は、会社の登記においても、あるいは不動産登記においても、個人情報が大いに含まれますので、そういう個人情報の管理についても十分に行っていただけるような体制をとっていただく必要がある、そういうようなところが中心になるわけでございます。

高山委員 これは大田大臣にも、今のを聞いていた印象で伺いたいんですけれども、これは携帯電話を販売したりだとか、銀行の預金通帳をつくったりだとか、こういうこととどこが違うんでしょうか。今言われただけだと違いがよくわからないので。

大田国務大臣 国民の権利を設定するというところで登記所があるわけですので……(高山委員「いやいや、実質的審査権ありませんから。形式的審査権だけですから」と呼ぶ)ただ、抵当権の設定ですとかそういうものを扱う、国民の権利あるいは事業を行う権利に直接かかわる仕事をしている登記所の事務であるという点で、携帯電話とやや異なるかと考えます。

高山委員 「経済財政諮問会議の戦い」を書かれた方にしては随分官僚側に理解を示しているなという印象を思いましたけれども。

 いや、登記のことももちろん権利にかかわることで大事だけれども、銀行口座をつくったり、携帯電話を買うときに自分の個人情報を出したり、これは全部大事なことだと思うんですね。だから個人情報保護法だとかいろいろな法律があって、官民共同でやられているわけですよね。官がやった方がより信頼感が増すんだというのであれば、では、郵便局の職員の人もみんな公務員の方がいいなということに当然なってくると思うんです。

 仕事の特質として、なぜ今まで官がやらなければいけなかったのか、そこはいろいろな経緯があるように聞いたんですけれども、私が今法務省に聞いているのは、法務省の方で素案をつくるわけですよね。仕事が確実だとか、あるいは個人情報の保護ということだけであれば、物すごく参入してくるところが多い感じがするんですけれども、何かほかに特別な基準というのは要らないんですか。そういうことだけで十分できることなんでしょうか。

寺田政府参考人 高山委員の方から、本質的な要請というのは何かということで、この証明書の確実性を損なわないというようなことを申し上げたわけでありますけれども、より具体的に申し上げますと、不動産にしても会社の登記にいたしましても、それぞれ、会社法制あるいは不動産の売買、抵当権というようなものの全体の法律体系の中で、どういう証明を欲しているのかというような意味がわからないと、的確な証明書をお出しできないようなところにもなるわけでございますので、当然のことながら、この仕事特有の問題としては、もちろん不動産登記あるいは商業登記、法人登記への知識というようなことも要求されるわけでありますし、ほかにもさまざまな知識というものが要求されることは確かでございます。

 ただ、それを抽象的に申し上げれば、要するに、先ほど申し上げたように、この証明書の正確性というものが担保できるような体制というのが必要だ、こういうことになるわけでございます。

高山委員 今ぐらいの基準であれば、随分応募をしてくるところは多いんじゃないのかなという気が私はするんですけれども。

 まず初めに聞きたいのは、この市場化テスト、これは官民の競争だということなんですけれども、法務局そのものもこの入札には応募するんでしょうか。

水野副大臣 これは、官民競争入札という場合と、民間だけでの入札ということもあり得るわけなんでしょうけれども、要するに、まさに官の側が応じるのかということでいうと、これはちょっと断言的には言えない。これは、登記所というものは五百幾つかあるわけですし、その規模等々もありますけれども、当面においては、今現在想定しているものとしては、民間業者の中での競争ということで、官が入らないというのが当面の、最初の入っていくところではそうだろうなというふうに思っておりますけれども、では、未来永劫絶対ないかというと、これは断定的には言えないというところでございます。

高山委員 今の副大臣の答弁は、未来永劫までは私は言いませんけれども、来年ですよね、十九年度ですから。十九年度は、では官は応札しないということですか。

水野副大臣 想定しがたいというふうに考えております。

高山委員 もう一つ伺いたいんですけれども、先ほど民事局長からの答弁で、専門的な知識があるですとか、抵当権の何かとかいろいろな説明がありましたけれども、今実際、民事法務協会というところが、これは民間なのか何なのかよくわかりませんけれども、仕事をしているわけです。いろいろあまた民間団体いる中で、今法務局の仕事を民事法務協会というこの民間団体にお願いしている理由は何ですか。

寺田政府参考人 やはり登記についての知識、あるいは法務局のほかの仕事もそうでございますけれども、そういう専門性というのがまず一番大きいところだろうと思います。

 これは、先ほど法務局の出身者が非常に多い団体だと申し上げましたけれども、役員というよりはむしろ現場の作業をしておられる方、登記の移行作業、コンピューターへの移行作業をしている人、そういう人は、当然登記簿の読み方がわからないとそういう移行作業の核心部分というのがわからないわけでございますので、そういう意味で民事法務協会にお願いをしてきたわけでございます。

 ただ、これからは、しかしそういう知識というのはあくまで知識でございますので、もちろん一般的にそういう知識が普及するということも私ども十分に想定しているわけでございまして、何も民事法務協会でなければ今後やっていけないというようには思っておりません。

高山委員 今の局長の御答弁は、登記のコンピューター化の移行業務はそういう専門知識が要るので、民事法務協会に委託されていたということですけれども、まずお答えいただきたいのは、登記のコンピューター化の移行作業がいつ終わるのかということと、民事法務協会の中で登記の移行作業に携わっていない職員の方も大勢いらっしゃると思うんですけれども、なぜその人たちが登記所の中で働くことになったのか、それを教えてください。

寺田政府参考人 まず、登記のコンピューターへの移行作業は、基本的には十九年度末で終わるわけでございます。ただ、それ以後、地図の問題はございますけれども、本体の方はそういうスケジュールでございます。

 先ほども申しましたように、登記の移行作業のほかに、相談業務と謄抄本の作成業務等がございます。これらはいずれも、多くは乙号事務にかかわることでございますけれども、これらは、今まで非常に経験を有してこれらについての知識が非常に深い職員というのがおりますので、民事法務協会というのは、私どもはそれなりに、こういう業務をしていただくにはふさわしいということで、信用している組織として考えているわけでございます。

 ただ、これは、先ほども申しましたように、そういう職員でなければ今後もいけないかというと、そういうことではございません。

高山委員 もう一回法務省の方に聞いて、次に大田大臣に聞きますけれども、すると、今の民事法務協会、相談業務ですとか今回の乙号事務ですね、専門性が高く、知識もあるのでお願いしているということですけれども、その職員の皆さんたちが専門性が高いのは、天下り先だからですか。

寺田政府参考人 これは天下りということがどういうことかにもよるわけでございますけれども、現状では、民事法務協会にそういう職員が非常に多くおいでになって、私どもとしては、そういう環境のもとでは民事法務協会にお願いするのが最も適切だということで、これまで契約をしてきたわけでございます。

 ただ、今後は、何度も申し上げますが、そういう環境が独占的にといいますか、排他的にあるということはもちろん限らないわけでございますので、幅広く考えていきたいと考えております。

高山委員 大田大臣に伺います。

 この市場化テストということですが、官民の場合もある、民民の場合もあるということでしたけれども、官の側は今回は応札しないということですけれども、この民間といった中に、この民事法務協会、財団法人で公益法人ということですけれども、こういうのは入るんですか。

大田国務大臣 公共サービス改革法の入札条件を満たす限りにおいて、いかなる団体も入札に参加することができます。したがいまして、この民事法務協会も、この入札条件を満たす限り、他の団体同様に入札に参加することができます。

高山委員 余りはきはきと答弁されても、がっかりするだけなんですけれども。

 今の話ですと、入札条件を満たす限り、民事法務協会も入れるんだと。入札条件はだれがつくるんでしたっけ。法務省が素案をつくるんですよね。それで、法務省の方で今いろいろ、なぜ民事法務協会に乙号事務を委託しているんですかと聞いたら、知識、専門性等々あり、ふさわしいので委託していたということなわけですね。

 今度は法務省の方にも、法務副大臣に伺いたいんですけれども、今まで民事法務協会が非常に知識や経験が豊かということで委託してきたということは合理性もあったと私は思うんですね。それで、今度新しく市場化テストということで、いろいろ基準をつくられると思うんですけれども、今の局長答弁だけだと、どうも私は、コンプライアンス意識があるだとか、きちんと仕事ができるとか、個人情報をきちんとできるとか、その程度のことであって、特別、法律の知識だとか何とか今そういう話は出てきませんでした。

 今度新しく市場化テストの基準を、法務省の方で素案をつくられるときに、また新たに、何かあたかも民事法務協会しか落札できないような感じの、こういう専門性が要るんだとか、法律の知識がとかということにやはりなるんでしょうか。それとも、それは先ほどの局長答弁のような非常にフラットなものだけが基準となるのでしょうか。どちらですか。

水野副大臣 競争入札をやっていくに当たって、実施要項で資格を設定していくことになるんでしょうけれども、そのときに、基本的な考え方としては、多くの業者、これはもちろん今委員が問題にしている民事法務協会をとりたてて外す理由というのはないわけですけれども、民事法務協会も含まれ得るわけでしょうが、それ以外にも、いろいろな工夫をしながら多くの事業者が入札に参加できるということは、競争をするという上で当然のことだと思っておりますので、民事法務協会だけが入れるような、事実上入れるような、そういう要件の設定の仕方というのはふさわしくないというふうに考えております。

高山委員 大田大臣にも伺いますけれども、法務省の方で素案をつくられる、それで決定していくわけですけれども、時期的な、カレンダー的なことを教えていただきたいんですけれども、大体これは六月ぐらいにこうだとか、八月ぐらいにこうだとか、それはどういうスケジュールになるか。もう来年のことなので、ちょっと教えてください。

大田国務大臣 素案は法務省がつくりますが、監理委員会がしっかりと関与いたします。何より、国民の立場に立って、サービスの質と低廉な価格が確保される、そのために公正中立な入札が行われるというのが市場化テストの命ですので、その点はしっかりと確保されるように、実施要項の作成、入札実施の周知を行う必要があります。

 スケジュールに関しましては、この法案が成立後、速やかに基本方針を策定いたします。そして、ことし夏ごろまでに検討していきたいと考えております。

高山委員 今の話ですと、では夏ごろに入札があるというようなイメージでよろしいんですか。それとも、秋、年末ぐらいになるんでしょうか。いつごろ入札があるのかなと思ったものですから、ちょっとそれを教えていただけますか。

大田国務大臣 法案成立後、実施要項の策定、それから実際の入札を行いますので、具体的に何月ごろということは今の時点で申し上げられませんが、速やかに実施していきたいと考えております。

高山委員 いや、これは来年のことなんですよね。来年のことなので、この法案が通る前に、法案成立ありがとうございましたというペーパーを配れとは言いませんけれども、法案が成立した場合にはこういう手順でやっていくんだ、大体このぐらいの予算規模だということを下準備しておかないと、民間の方は、しかも新たに参入してくる方は、では一体、どういう条件の人を集めたり、どういう訓練を施せばいいのかということがわからないので、事実上、来年の、十九年度の応札ができないんじゃないのかな。時期が後になればなるほど、既存のいろいろな知識を持っていたり、既にもう仕事をしているところが有利になりはしないかなというふうに思う国民が多いと思うんですね。

 ですから、何のための市場化テストなのか。結論先にありきなんじゃないかというふうに国民に思われないようにぜひやっていただきたいなと思うんですけれども、今時間が来たので、終わります。

河本委員長 次に、泉健太君。

泉委員 民主党の泉健太でございます。

 引き続き、市場化テスト法について質問させていただきます。

 我々は、この市場化テストの趣旨そのものには賛同するというか、期待をしてこの市場化テスト法を見守ってきたわけですが、残念ながら我々が望むような、恐らくそれは与党議員の中でも、望むような市場化テスト法になっているんだろうか、市場化テストが進んでいるんだろうかというところは、各種報道で見られるとおり、残念でならないという結果があるかというふうに思います。

 例えば、地方公共団体あるいは民間からの要望に対する各省庁の抵抗、その結果の市場化テストの対象事業の数、この状況について、大臣、今どういう御認識を持っておられるか、まずお伺いをしたいと思います。

大田国務大臣 先生御指摘のように、数の面からいって、まだ決して十分とは思っておりません。

 ただ、昨年七月に法案が成立いたしましてから、秋に、官民競争入札等監理委員会の精力的な御審議で、対象事業を拡大してまいりました。限られた期間であったという条件を考えますと、一定の成果は得られたと考えております。これをさらに、対象事業の拡大に向けて努力してまいりたいと存じます。

泉委員 それは、もちろん零点ではないと思います。一定の成果はあったと思います。

 もう一度、大臣に具体的な数字をお伺いしたいんですが、幾つの市場化テストの要望が上がり、そのうち何件が今回というかこれまで対象事業となったのか、その実数を教えてください。――では、またそれはちょっと後ほどということにしまして、今回、なぜ法務局の乙号事務のみの市場化テスト法の改正ということになったのか、それを教えていただきたいと思います。

水野副大臣 法務省の乙号事務だけというんじゃなくて、ほかの部分が対象にならなかったことというのはちょっと所管じゃないと思うんですが、乙号事務が対象になったということでいえば、乙号事務というのは、法務局の登記関係の仕事の中では権力的作用というのが比較的薄いといいましょうか、登記事項証明書などを交付したり、もしくは、そうしたものを閲覧したりというようなことが中心でございますので、そういう意味においては、民間事業者も参入し得る。また、その中で、参入をしていろいろと競争原理を働かせた方が、より簡素で効率的な政府をつくるということに資するんではないのかな。強いて言えば、法務局関係の人員削減とかコスト削減とか、そういうようなものに資することがあるというふうに考えるから、その部分はふさわしいと我々は考えているところでございます。

泉委員 済みません、やはりこの質問は大田大臣のお答えいただくべきことなのかなと思います。

 なぜ、今回この乙号事務のみの法案審議ということになったのか、それをお答えいただきたいと思います。

大田国務大臣 特例として法律改正が必要なものについて法改正を行って基本方針につけ加えていくということになっております。

 そのときに、今回の登記所に関する乙号事務につきましては、不動産登記法第九条、それから商業登記法第四条で、登記官が取り扱うこととされております。ここに、乙号事務に市場化テストを導入するに当たりましては法改正が必要であるということで、この業務が法改正を要する業務である。他の業務は法改正を必要としないものがございますけれども、この業務につきましては法改正が必要であるということで、法案の御審議をお願いしております。

泉委員 いや、それは当然のことでありまして、そういうことじゃなくて、何でここに来たんだと言われて車で来たという答え方じゃなくて、理由を聞いているわけでして、先ほどの件数というのはわかりますか、それもあわせて。

 では、ちょっとまず件数を。

中藤政府参考人 お答えいたします。

 昨年、法律が公布され施行されました後、民間等から要望を聞いております。その際、寄せられた意見につきましては、全体で百九十三件。ただ、重複分がありますので、これを整理いたしますと百二十五件。その後、何分、年末までにやらないといけないということなので、ある程度要望が多かった分野等を抽出いたしまして、最終的に基本方針の別表というものが昨年末閣議決定されていますが、二十七事項掲載し、今後推進していくこととしております。

泉委員 もう一回、大臣にお伺いしますが、百九十三件の要望があり、整理をすると百二十五件、そして二十七事項が現在ということであります。点数でいうと何点でしょうか。

大田国務大臣 法案成立後、限られた時間の中で、官民競争入札等監理委員会が精力的に審議して、これだけの事業が成立したわけで、点数について何点ということは言いがたいんですけれども、スタートとしては、私は一定の成果があったと考えております。これを拡大すべく、努力してまいりたいと存じます。

泉委員 本来のこの市場化テストの趣旨というものをよく徹底していただくことが必要かと思います。

 ちょっと私、もう少し中身を勉強したいわけですけれども、いろいろな民間委託は、この市場化テスト法を通さずとも各省庁でされていることが多いと思うわけですね。例えば警察庁なんかでいうと、昨年の六月の一日からですか、駐車違反の指定機関が民間で取り締まりというか、標章を張るという行為ができるようになったわけですけれども、そういうものが市場化テストを経ずに民間で行われるということの理由。そして、今回対象事業になったものは市場化テストとして行われる、その峻別の仕方というのはどういう理由に基づくものなんでしょうか。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

大田国務大臣 通常の民間委託と市場化テストの違いといたしまして、市場化テストの場合は、その事業を指揮を受けずに包括的に、業者が自律的に行うということがございます。今回の乙号事務につきましても、包括的に、受託した事業者が自律的に事業を行うことができるようになります。包括的に事業者が創意工夫を生かすために、通常の民間委託よりも選定手続は厳しく、透明性を高め、なおかつ事業に対して厳しい事後的な監視が行われるということになっております。

泉委員 包括的に委託をされることによる効果というものはどんなものが考えられるんでしょうか。

大田国務大臣 事業者が、みずからの創意工夫で、なるべく効率的に質の高いサービスを行うようにするということがございます。例えば営業時間を考えるですとか、あるいは求人事業ですと、なるべく求人を掘り起こすような努力をするといったことを、指揮を受けるのではなく自発的に、自律的に行うという効果がございます。

泉委員 そこで、いよいよ今回の乙号事務の中に入るわけですが、民間へとか、官から民へという抽象論ではなくて、先ほど高山委員からもお話がありましたけれども、しっかりと具体論、現場の状況を見て大臣にもぜひお答えをいただきたいというふうに思うわけです。

 先ほどから、乙号事務が民間委託というふうに言われていますけれども、実際に果たしてどんな入札になるんだろうかということは、入札だから、それはそのときにならないとわかりませんという建前はそれでいいでしょう。建前はそれで結構です。しかし、実態上、先ほど水野副大臣からは、国は今回は入札には参加をしない、想定しがたいというような答弁をいただきました。

 きょう、私、資料を一枚皆さんにお配りさせていただいています。今回の法律で最も基礎的に政府が我々に配ってくださいました資料、法案のポンチ絵と言われるものですが、そこに、一番衝撃的にぎざぎざの吹き出しの中に、官民競争入札オア民間競争入札というふうに衝撃的に書いてあるわけですね。その官民競争入札は、もう既に想定されていないということですけれども、この図からすると、何か随分と派手派手しく書いている割には、あっさりと官の方は入札に応じないんだなというような状況だと思うんです。

 大田大臣、官民競争入札はほぼないという先ほどの法務副大臣の答弁を聞かれて、どう思われますか。

大田国務大臣 今回は、法務省の検討の上、民間競争入札ということになりますけれども、今後、さらに官民競争入札の可能性を探っていきたいと考えております。

泉委員 職員を減らしますよね。乙号事務から手を引きますよね。今後、本当に考えるんですか、官民競争入札を。どうやって法務局が、法務省というか国がこの入札に参加するわけですか、今後。考えていけるんですか、そんなこと。

水野副大臣 これは、先ほど想定しがたいと言ったのは、委員も十分御理解していらっしゃると思いますけれども、未来永劫想定しないという意味ではなくて、まず行われるところにおいてということです。

 委員御指摘のように、法務局のこの関係の人数というのは確かに減らす、千百人余り減らしていくという方向性があるわけですから、そういうものに従事する人間というのは確かに減っていくというのはそのとおりなんですが、ただ、これは、全国に広げていくに当たって、登記所の規模とかもいろいろな規模のものがありますので、そういう中で、では絶対ないか、官が応札することが全くないかというと、そうも言えない。そこはいろいろなケース・バイ・ケースのことがあり得るということでございます。

泉委員 いや、それが先ほど私が言った、抽象論、建前論の話と実態、まさか副大臣も本当にそれがあるなんて思っておられないと思いますよ、私も。そのお顔を見ればそれはよくわかりますけれども。

 そもそも、皆さんもう御存じのとおり、その図でいくところの登記業務の乙号事務というのは、これは民事法務協会が既に行っていることですよね、いわゆる登記所の中で。民事法務協会というのは、登記所のほとんどどこにも入っているわけですよね。既に入札でその事業を行っているところもあるわけです。そうなると、既に民事法務協会さんが乙号事務にも携わっている、オペレーター業務とか受付とかされているということであります。

 それを切り離して、民間に委託しようというか入札にかけようというときに、もう一回官が入っていこうとするというのが全く現実的に見えてこないんですね。本当に官が入札に参加するなんということが想定されるんだろうか。されるのであれば、どんなモデルケースがあるのか、ちょっとこれをぜひ教えていただきたいと思います。

後藤政府参考人 経緯を御説明させていただきます。

 法務局は全国に五百五十庁ほどございますが、市場化テストの対象としては、二十年度から順次これを対象としていくことと考えております。したがいまして、最初の年は官民あるいは民間を選ぶ、その次の年にどうするということは、これは官民競争入札等監理委員会とよく御相談した上で決定していくべきものになると思います。そういった意味で、今後、官民競争入札が行われる可能性があるということを申し上げているのでございます。

泉委員 だから、モデルケースはどんなものが想定されますかということを聞きたいんですよ。その建前はよくわかりました。それは何だってそうです。僕だって、あした死ぬかもしれませんよ、それは。何だって不可能はないかもしれませんよ。そういう話じゃなくて、今からこうやって入札にかけようとしているものを、官がもう一回その入札に参加するということは、どうやって想定されるわけですか。どんなケースが想定されるんですか。

後藤政府参考人 私どもで、仮に官民入札があるとすれば、それは、来年度、一部の登記所について行いますが、その次の年にはさらに規模を広げて多くの庁で市場化テストを実施する、その翌年はさらに広げて市場化テストを実施するということになります。

 規模を広げていきますと、最初の年は都市部の、かなり規模の大きなところを対象として入札を行いますので、民間の事業者の方がかなり容易に入ってこられるだろう、こういうふうに思っておりますが、法務局は全国津々浦々ございますので、地方に行きますと、そういう民間の事業者が本当に入ってこられるかどうかはわからないというところもございます。そういうところについては、事情によっては官民競争入札という形で、それは、一たん民間に行ったものを官がとるということではなくて、そこについて実施をする最初の段階で官民競争入札を実施することがあり得る、そういうことを申し上げているのでございます。

泉委員 大田大臣、御存じだと思いますけれども、平成十九年度から実施される対象事業概要の中で求人開拓事業がありますね。これは、青森と福岡はたしか入札がうまくいきましたけれども、北海道、高知、長崎は入札不調でしたよね。これは、国は入札に参加されていますか。

大田国務大臣 参加されていません。

泉委員 そうですよね。結局、入札不調で国みずからが実施ということになるわけですが、先ほど審議官がおっしゃられたことは、地方で民が入らないようなところだったら、官民競争入札という形で官が入札に応じるかもしれませんと。これは競争ですか。民が入らないようなケースを、官が入札に応じたから官民競争入札ができましたというふうに言えますか。

大田国務大臣 入札不調だった結果として官が入ってくるというのは競争入札ではございません。

 この入札不調につきましては、どういう理由で入札不調になったのか、今、業者にヒアリングしながら一生懸命調べております。例えば、このとき、三つの事業の市場化テストを行いました。人材銀行、キャリア交流プラザ、それから求人開拓事業、三つやりましたために、相手の事業者がばらけたということがございますし、これが単年度の事業であったために、民間企業からしますと、なかなか入札に応じにくいというような点も考えられると思っております。

 このように、どういう理由で入札不調になったかという実態をしっかりと把握いたしまして、今後こういうことがないように、そのときは、最初からしっかりと官民競争入札ということも選択肢に加えてやっていきたいというふうに考えております。

泉委員 それはわかりました。

 そうすると、もう一度もとに戻りますけれども、さっき審議官がおっしゃった、地方で民間が参入しないようなところに官として入札に参加することがありますと。これはいわゆる官民競争入札なんでしょうか。

大田国務大臣 今の、入札不調が起こりました北海道旭川、高知中央、長崎県……(泉委員「そのことじゃない、今私が言った話を言ってください」と呼ぶ)こういうところも、モデル事業のときはしっかりと民間の入札があり、成功しております。したがって、この地域は民間がなさそうだということはないんだろうと思います。どの地域でも、官と民がそれぞれ、業者の応札がある限り、官と民の競争が行われれば、それは官民競争入札になり得ます。

泉委員 ちょっとよくわからない。

 審議官、いいですか、地方で規模が小さいところだと民間が入札されない可能性が高いところはある、結果的に官のみが入らざるを得ないというケースがあると。これは、確かに形は官民競争入札だと思うんです。ただ、実態上、それが目に見えているところは幾つもありますよという、現場というか、やはり役所の実務を担当されている方の答弁ですよ。

 その辺を踏まえて、実際的には官しか入札しないところというのは幾つも出てくるんじゃないですか、それをいわゆる官民競争入札と呼んでいいんですかということを聞いているんです。

大田国務大臣 官しか入札しないところでは官民競争入札は行われません。官民競争入札には、それはなりません。

 しかし、先ほど申し上げたかったのは、今回入札不調になったところでも民間事業者の希望はあったわけで、モデル事業のときはうまくいっております。したがって、いろいろな地域で本当の意味の官民競争入札を行う可能性というのはあるんだと考えております。

泉委員 官のみが入札する場合は官民競争入札にはならない。では、入札は成立をしないということになるわけですか、官のみが入札をした場合というのは。

大田国務大臣 そこは、しっかりと入札が行われるような設計を行わないと、入札にはなりません。

泉委員 今の答弁はそのまま受け取っておきますけれども。

 さらに、同じくこの絵の中で、民間競争入札ということが書いてあります。これももちろん、どの事業者も参入することはできると言ってしまえばそれまでですが、今回、実際上、想定をされる団体、事業者、これはどのようなものがあるんでしょうか。

水野副大臣 実際にこの乙号事務の入札に対して参加する可能性のある民間事業者ということで、要件などについては先ほど来いろいろありましたが、具体的な名前でいえば、財団法人民事法務協会は、今までの委託の経験などがありますから、可能性としては応札してくるところとしてあり得るでしょうし、昨年、公共サービス改革の基本方針策定に当たって民間事業者から意見聴取の手続を実施いたしましたけれども、そのときに関心を寄せていたものとしては、登記事項証明書の取得代行業者とか人材派遣会社などがこの問題に、乙号事務の市場化テストに関心を寄せていた様子でございました。

泉委員 その証明書取得代行業者ですか、それも、実は役所の方からもそのお話を聞いたんですけれども、それを踏まえて私もインターネットなんかでその文字を入力して調べてみたんですが、出てこないんですね。行政書士さんとかがいろいろな書類の申請を代行したり、取得を代行したりということのケースはあるんですが、そういう業者というのは、例えばある程度大きい会社で何社あってとか、業界的には副大臣はつかまれていますか。

後藤政府参考人 私どもで数等の正確な把握はしておりませんけれども、登記所のそばにそういう事業者の方が会社を構えられて、一般の方からそちらに申し込みをされて登記事項証明書の取得を代行する、そういう事業は行われているものと承知しております。

泉委員 結論を言ってしまえば、実態上は、やはり民事法務協会さんがこの登記の業界ではかなり大きなシェアをこれまでも持ってきたというのは、大臣、この際よくよく御理解をいただきたいと思います。

 具体的に言いますと、先ほども高山委員から話がありましたけれども、この民事法務協会というのは毎年約二百億円を超える業務委託を登記特会から受けていますね。さらに言えば、事業収入の九割以上がこの特会からの収入だということですね。一つの財団法人の収入の九割が特会からの収入である。

 先ほどは、公益法人だ、そして入札要件にかなえばすべてそれは民間団体とみなすと。それは、入札における民間団体かどうかという観点からいえばそうでしょうが、しかし事業収入の九割を国の特会の予算の中から得ているという状況を考えたとき、そしてまた職員の数、これも、平成十七年度でいくと法務局の退職者の数が二百九十九名ですね。よかったら数字を覚えておいてください、二百九十九名。そのうち百四十二名がこの民事法務協会に入られている。

 先ほど審議官からお話がありましたが、確かに、天下りという表現がよいかといえば、私はそうじゃないものもあるような気はします。現場で一生懸命働いてきた方が、引き続き似たような現場で、同じ専門性を有して働かれるという趣旨、それは、これまでの社会でいえばよくわかるでしょう。

 しかし、もしかすれば、この今回の法案というのは、いわゆる法務省の定員削減に伴う、もっと言えば各省庁、行政改革に伴って、また国のお財布からつくられた財団法人に職員が横流しされているんじゃないか。これは、職員の方にすればいい迷惑かもしれませんが、実態上は、政府定員を減らすために、横にある箱にただ定員を移しかえをしているんじゃないかと言われても不思議はないんじゃないでしょうか。大臣、どうでしょう。

大田国務大臣 入札に当たりましては、低いコストでよりよいサービスが提供されるというのが市場化テストの趣旨ですので、透明、公正な入札というのは必ず守っていかなくてはいけないことだと思います。

 民事法務協会も入札には参加できますけれども、そこを含めてなるべく多くの民間事業者が出てくるように実施要項をつくり、周知徹底をさせていきたいと考えております。

泉委員 もう一回、大臣に聞きます。

 事業収入の九割以上を特会の受託業務が占めているという状態、これについてはどういうふうに御認識を持たれますか。

大田国務大臣 それについては、これまでの事業の形態などいろいろな事情があったんだろうというふうに思いますが、少なくとも市場化テストに関しましては、民事法務協会を含めて多数の事業者の中で入札が行われるように努力していきたいと思います。

泉委員 水野副大臣か審議官の方にお伺いをしたいんですが、今回、この登記特会そのものは、オンライン化を進めていくという過程での必要経費をずっと挙げてきたわけですけれども、その中で、インターネット登記情報提供サービスというものを充実させるために、ためにというか、電気通信回線による登記情報の提供に関する法律というものをつくりまして、民事法務協会が指定法人になっているわけですね。

 全国で一つ、全国に一を限って、このインターネット登記情報提供サービス、登記情報提供業務を行う者として法務大臣が指定することができるというふうになっているわけですが、こういうことも、では今後、今は一つの法人に限って独占でこの民事法務協会が行っているわけですが、これもやはり何かしら見直しというのを行っていくべきなんでしょうか。

 副大臣、いかがお考えでしょうか。

水野副大臣 そういう形で指定法人になっている、法制度のもとでそうなっているわけなんでしょうけれども、そこら辺については、そういう法的根拠もあるわけでしょうから、法的見直しなどについては、いろいろと、国会等の議論ということも踏まえつつ、多種多様に検討するべき課題だというふうに考えております。

泉委員 私は、この法案を審議する前は、もっと優しくというか、もちろん我々基本的に賛成の立場ですから、審議に挑もうと思って勉強したんですが、ちょっと、今見ていただいた数字のとおり、九割の話ですとか、ほぼ半分の職員さんが法務局から民事法務協会に再就職されているという状況にかんがみると、確かに先ほどは、これからはそういう知識を広げていって、知識ですから、いろいろな方々にも開放されていくんですという話がありましたが、道路公団ファミリー企業、これを見ていただいてもわかるとおり、では、民事法務協会が独占がなくなりましたといって、職員さんが三つ四つぐらいの組織に分かれて就職をして、同じような組織がまた四つぐらいできて、トップにはみんなまた法務省の出身者が入る、これまた、まだまだ全く改革とは言えないんじゃないのかなという気がいたします。

 その意味では、もちろん、この民事法務協会というところがこれまで登記業務に関して取り組んできた社会的な使命、役割というのは大きいとは思いますけれども、やはり今回の官民競争入札、民間競争入札というふうにこのポンチ絵でうたっている状況はありながら、実際には、ことしから実は、これもおもしろいんですが、市場化テスト法というのは市場化をテストする法律ですね、にもかかわらず、その市場化テスト法の試し、試行として、これは法務省の方でされているのかもしれませんが、十庁でたしか既に包括委託の試行をされているはずですね。

 市場化テストの前テストをやっている、これまた不思議な気がしてならないわけですが、そういうことも含めて、しかも、その十の試行されているものは、全部入札でされました、この包括業務の入札をしました。すべて受けたのは民事法務協会です、すべて民事法務協会です。この状態をどう考えるか。そういうことで考えると、競争入札というのが形だけにならないのかなということの不安を申し上げたいと思います。

 終わります。

西村(康)委員長代理 午後一時十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十七分開議

河本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。泉健太君。

泉委員 済みません、午前中に引き続き、再度質問をさせていただきます。

 改めて、午前中にお配りしたペーパーをお持ちでしょうか。これが今回の法改正の一番基礎的な資料になるわけですけれども、午前中は、官民競争入札と民間競争入札が、民事法務協会という存在が余りにも大きくて、実際には競争入札にならないんじゃないかということを指摘させていただきました。

 そして、もう一つ市場化テストの本来の目的である、サービスの質の維持向上ということ、そして経費の削減、これがやはりどの市場化テストの中でもうたわれているわけですが、果たして今回の乙号事務の件がそれに当たるのかということを、ぜひ大臣、御認識をいただきたいと思いまして、残余の質問をさせていただきます。

 まず、サービスの質の維持向上、今回の乙号事務の場合だと、どういうものが想定されるでしょうか。

大田国務大臣 乙号事務は、登記事項証明書等の交付あるいは閲覧ですので、ここがより迅速に、スムーズになされるということが重要な質だと考えております。

泉委員 審議官にお伺いをしたいんですが、現在五百五十ですか、登記所、法務局の数、これの中で、民事法務協会が全く入っていないところというのはどれぐらいあるんでしょうか。

後藤政府参考人 すべての乙号業務を登記所職員が処理している庁は、二百六十三庁でございます。

泉委員 そうすると、半分のところでは既に民事法務協会が入られているということになるわけですね。

 私たちの地元の京都でも、既に、例えば京都局本局ということでいうと、先ほど言った、ことしから包括的民間委託の試行がされていまして、不動産登記部門及び法人登記部門が包括的委託の試行庁となり、現在二十三名の職員が業務に当たっています。ただ、それ以前から、既に民事法務協会は京都の中で仕事をされてきたわけですね。

 官僚の皆さんから事前にレクをいただくと、例えば、この紙に書いてある「サービスの質の維持・向上」というのは、何で民間に委託するのかといえば、それは、官が思いつかないような発想をすることも含めて、大胆な業務の見直しができるから民に任せるんだというお話でした。

 ただ、ここでもう一回振り返っていただきたいんですが、先ほど言いました、法務局の職員を退職した人の半分が民事法務協会に入っている。そして、民事法務協会には八百人を超える元法務局の職員さんがおられます。そして職場の実態。各登記所は、民事法務協会と法務局の職員が一緒に仕事をしているケースがほとんどですね、これまでの全国各地の登記所を見ると。

 そう考えると、今、民間委託をして民事法務協会がそれに落札をして、仕切りを、いろいろと事務所のレイアウトを変えるそうです。そういう変化はあるでしょうけれども、そこで新しい発想が出てくるということであれば、これまでも、民事法務協会の方で独自の取り組みとして幾らでも新しい発想が出てきたでしょうし、大胆な見直しもできたと思うんですね。

 人は同じなんです。恐らく実態上、落札する人も同じなんです、これから行われる今回の市場化テストということに関して言えば。新しい民間が入るかもしれないと言ってしまえばそれまでだけれども、実態上は民事法務協会の存在がかなり大きいという中で、果たして本当に、サービスの質の維持向上ということで書いてありますけれども、それができるんだったら今までもやってこれたんじゃないかというふうに思うわけですが、今まで以上の何か大胆な発想が出てくるんでしょうか。

大田国務大臣 午前中に御紹介いただきました、試行的にやったときに、すべて民事法務協会が落札、手を挙げたというお話がございましたけれども、その原因がどこにあったのか、これからもしっかり調べて、なるべく多くの事業者が入札に参加するような実施要項にしていきたいというふうに思っております。一定のコストのもとで、それはなるべく低いコストのもとでよりよいサービスを提供するというのが市場化テストの目的ですので、あくまでそれが達成できるように、先生の御疑念が実際のものとならないように今後も実施をしていきたいというふうに考えます。

泉委員 これはもう、疑念というか、恐らくこれから予想される事実というふうに私は認識をしております。

 その意味で、もう少し民事法務協会について、審議官、ちょっと教えていただきたいんですが、よく指摘をされるように、剰余金がこの協会にはあるということが言われております。その民事法務協会の剰余金、もし額がわかればお願いいたします。わからなければわからないと答えてください。

後藤政府参考人 申しわけありません、突然のお尋ねでございますので、今手元にはございません。(発言する者あり)

泉委員 今、平井委員からも、六十億ぐらいじゃないかと、これは退職金の積み立て等でそういう話もありますし、かなりの額の剰余金がございます。

 これも我が党の参議院議員の尾立議員が、以前、質問主意書で内閣に対して、こういった団体が多額の剰余金を抱えている中で、しかも特会からの事業収入が九割、しかもそこに多くの職員が再就職をしている、この実態はどう考えてもおかしいんじゃないかということで質問主意書で出したところ、内閣からの答えが、国の法律で、一つの特定の団体から、今回でいうとこの民事法務協会から、特会の方が寄附を受けるということはできないことになっている、昭和二十三年ぐらいの政府の取り決めか何かでそうなっているという見解が返ってまいりました。

 しかし、それを考えるのであれば、その二十三年につくった法律の是非も問わなければならないんですけれども、やはり私たちは、これだけ国との関与がかなり密接な民事法務協会については、幾ら民間、財団法人とはいえ、その規模なり財務諸表さまざまは、しっかりとチェックをしていく必要があるんじゃないのかな、あるいは国がある程度、枠をはめていく必要があるんじゃないのかなという気がしてなりません。

 その意味で、これからこの民事法務協会、例えば私が民事法務協会とこれもインターネットで検索をしてみたら、何とホームページがないんですね、びっくりしたんですけれども。ありますか。たしか、登記情報サービスの提供のホームページの中に民事法務協会の概要というのが書いてありましたが、それ以外、単独で、ごめんなさい、ありますか。普通、インターネットで検索すると絶対出てくるんですけれども、トップページにも出てこなかったのか、そうすると私の間違いかもしれません。ちょっとそういう意味で、情報がすぐに出てこなかったということで、なかなか不透明な感じをしております。

 そういうことからも、このサービスの質の向上、維持というところや、経費の節減というところも、今のままいくと、入札になったからといって、これまでもやってきた民事法務協会が急に中身ががらっと変わるともこれはなかなか思えないというような状況でございます。

 そして、この十の今試行をされているところも、事務所のレイアウトを大胆に変えましてとかと一つ一つ説明が書いてあるんですね。そんなことにお金をかけていていいんだろうか。この窓口は民事法務協会が行っておりますとかとパネルをつくって置いたりしているわけですが、皆さんも運転免許試験場なんかにも行かれたことがあると思いますけれども、それが交通安全協会がやっていようが警察がやっていようが、民事法務協会がやっていようが職員がやっていようが関係ないです。カウンターの向こう側にいる人がだれであろうが、一般市民、利用者は全く関係ないんです。

 そのことをよく考えていただいて、どこに本当に必要なお金を使おうとしているのかというのをぜひ認識していただきたいなというふうに思います。

 大臣、最後の質問です。

 国が昨年の十二月に出しました基本方針、公共サービス改革基本方針、お持ちですか、それの九ページに、「国の行政機関等が自ら実施することとなった場合における公共サービスの実施等」ということで、官民競争入札で国が落札した場合というところがあるんですね。上から十行目ぐらいのところですけれども、そこに、「なお、国の行政機関等が、自らの提案に従って対象公共サービスを実施できないことが明らかになった場合等は、民間事業者による対象公共サービスの実施の場合に準じて、新たな民間競争入札の実施等必要な措置を講ずる。」とわざわざ書いてあるんですね。これは、民間競争入札の場合は、民間がもし事業を行えなかった場合にはなんということは書かれていないわけです。

 官が落札しておいて事業を行えないことが明らかになった場合には、もう一回再入札をする措置を講ずると。何じゃこりゃというふうに思うんですね。落札した以上は責任を持ってやるのが当たり前じゃないかと思うんですが、なぜこんな規定が入っているのか。そもそもやる気があるのかというふうに疑わざるを得ないわけですが、この理由を最後に教えていただいて、私の質問を終わりたいと思います。

中藤政府参考人 今御指摘の点、国の行政機関がみずからの提案に従って公共サービスの実施ができないことが明らかな場合には、民間事業者による対象公共サービスの実施の場合に準じて、新たな民間競争入札の実施等必要な措置を講ずる、これはまさに、官が独自に、みずからの提案というものを出されて、それができないということであれば、新たな民間競争入札を行うと……(泉委員「できないことがおかしい。提案したことができないというのはどういうことですか」と呼ぶ)お答えいたします。提案したものが仮にできないのであれば、このような措置をとるということであり、本来的には、それはきちっと官が提案した線に沿って行われるのが原則であります。

河本委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

河本委員長 速記を起こして。

 泉君。

泉委員 もう一回聞きます。

 これは政府がつくった中身ですから、その理由だけお答えいただきたいんですね。今九ページの話をしましたが、七ページに戻ると、「対象公共サービスの実施等」ということで、最初は民間業者の落札の場合における公共サービスの実施というものが来ています。ここには、もし民間業者ができなかったら再入札を行うなんということは書いていないですよね。一方で、国が落札した場合、国がみずからの提案に従って対象公共サービスを実施できないことが明らかになった場合等は新たな民間競争入札の実施等必要な措置を講ずると。

 やはりこれはやる気が問われませんか。国が提案をしておいて、国がですよ、先ほどから法務局の正しさとか確実さとか、権利があるから、だからそれを正しく行使するのは国なんだとかいう話の中で、国が提案しているサービスを、できないことをあらかじめ想定してこの文章があるというのは、到底僕は理解できないんです。これはどういうことですか。

中藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、民間の事業者が民間の提案でできない場合には、契約の解除、そういった必要な措置がとられるわけです。

 したがいまして、官民イコールフッティングの観点から、仮に国の行政機関がみずからの提案に従ってそれができないということであれば、それは新たな民間競争入札の実施、そういった措置を講ずるということです。

 ただ、これは、なおという念のための規定でございます。

 以上でございます。

泉委員 国は、少なくともやはり信頼される存在として、国がみずから提案したことを、悪い事業であればそれは撤回すればいいわけですけれども、入札において国が提案したことができないというケースは、一応想定ということで書かれたということは今ので理解をしましたが、これはあってはならないことだというふうに思っております。その点はよくよく心して、一番恐れるのは、やはり入札の形骸化ですよね。官はとりあえず提案をして入札の体をなしたけれども、実際にはそれは全く実現性のない提案で落札が行われていたということがあってはならないというふうに思いますので、その点を指摘して、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、市村浩一郎君。

 申し合わせの時間内で質疑をしてください。

市村委員 民主党の市村です。質問させていただきます。

 まず、ちょっと具体的な質問から入っていくことにします。

 この四月から実施される予定の求人開拓事業というものがあると思いますけれども、この求人開拓事業について、実は落札企業が決まらなかったというケースが三件あったというふうにお伺いしていますが、その状況をちょっと詳しくお知らせください。

大田国務大臣 先生御指摘のように、四月から事業実施を予定しておりました求人開拓事業の民間競争入札におきまして、五つの地域のうち三つ、北海道旭川、高知中央地域、長崎県北地域について入札がなく、再入札によっても落札者が決定しませんでした。結果としまして、この実施要項に定めているとおり、落札者がいなかった場合として、国みずから事業を実施することになりました。

 市場化テストの目的というのは、民間事業者の創意工夫を生かして、よいサービスを低廉なコストで提供するということにありますので、できるだけ多くの民間事業者が参加して、公正で透明な入札が行われるということは大変重要なことです。したがいまして、この入札不調というのは、私どももしっかり受けとめなくてはいけないと考えております。

 まず、今、原因の把握に努めております。事業者のヒアリングをしまして、なぜ入札不調が起こったのか。これはモデル事業のときは入札不調ではなく、しっかり行われております。それが今回不調に終わった理由について調べております。

 今出てきている理由としましては、このとき三つの市場化テストの事業をやりまして、人材銀行、キャリア交流プラザ、求人開拓事業と三つをやったものですから、その別の事業に事業者が流れてしまったということもございますし、この求人開拓事業が一年間の単年度の事業でございました。それぞれの地域を一年間で移動するという事業だったようで、民間事業者からしますと、一年の事業のためになかなかコストをかけるわけにいかないというような背景もあったんだろうというふうに思います。

 今これは調査中ですので、これを踏まえて、こういう入札不調がないよう、問題点を改善していきたいと思っております。

市村委員 今、恐らくこういうことがあったんじゃないかというお話を大臣みずからいただいて、調査中ということなんですが、そもそも、これは今、今年度からやる。大変いろいろな議論があって、これはある種、政府の目玉としてこの市場化テストというのはやっていらっしゃるわけですね。当然、今お話があったようなことというのは、事前に予測可能な範囲ではないかと私は思わざるを得ないんですね。最初からこういうつまずきをされるというのは、これは非常にこの市場化テスト法の信頼、この法律は何なのかというそもそものところにかかわる問題に私はなってしまうような気がしてならない。

 やはり最初というのは肝心なんですね。最初にいい例を見せて、ほら見なさい、こんないいことがあるでしょうということがあったら、みんな、ああそうかというふうになるんですけれども、最初にこうなると、ほら見ろ、やはり難しいぞという話になってしまうと、やはり士気が落ちるということもあって、極めて残念な状況になっていると私は思います。

 では、もう一個、具体的な御質問をさせていただきますけれども、これはいわゆる官民競争入札というのはあったんでしょうか。官が入札したケースというのはあったんでしょうか、この場合において。

    〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕

大田国務大臣 官の入札はありません。官民ではありません。民間競争入札でございました。

市村委員 なぜ最初から民間競争入札というふうにされたんでしょうか。

大田国務大臣 官民競争入札になるためには、官の承諾がなくてはなりません。このケースについては、厚労省の方の承諾はなく、民間でやるということで実施要項が策定されております。

市村委員 では、これはそもそも論に戻らざるを得なくなるんですが、そもそもこの市場化テスト、市場化テストと我々は今呼んでいますけれども、正式名称は、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律ですね、この競争とは一体何でしょうか。

大田国務大臣 広く政府が行っている公共サービスについて、サービスの質と価格を競争するというものです。それを官民もしくは民民で競争いたします。

市村委員 ある意味でいえば、今までも民民競争というのはあったんですよね、公共事業をめぐって。

 では、あえてこのいわゆる市場化テスト法なるものをつくったそもそもの政策目的は、何だったんでしょうか。

大田国務大臣 市場化テストは、そもそも政府が行うべき事業で、その実施自体は必ずしも公務員でなくてもいい、民間事業者に委託することもできるのではないかという事業を対象に行います。

 今先生が例にお出しになりました公共事業のように最初から民と民がやるものと違いますのは、民間同士が競う場合でも、従来これは政府がやっていたわけですから、官がやっていた場合の人員ですとか設備ですとかコストというものを明らかにして、それを実施要項の中に盛り込んで、それをベースにして民間が競争入札を行うということになります。

 したがいまして、これまで官がやってきたときのコストが実施要項の中で明らかにされますので、民間は間接的に官と競争するということになります。

市村委員 今、コストを提出するということで、私もついさっきいただいたばかりなんですね、その詳細な要項を。まだつぶさに精査していませんけれども。

 では、私、その予備知識がないと考えても、要するに官、いわゆる行政というものの体系を考えた場合、これは地方自治体といいながら、実際はなかなか国との関係において切りがたい関係、東京都みたいに不交付団体は別として、ほとんどの団体というのは、やはり国県市、国府市というふうにつながっているわけですね。

 そうすると、ある意味で言えば、国という巨大なホールディングカンパニーがあって、そのブランチとして地方自治体がある。こう考えた場合、こういうものを相手にして、では民がコスト計算しろと言われたって、その事業の具体的なところではある程度、ではこれを出しなさい、これを出しなさい、これを出しなさいといったらコスト計算できるかもしれないけれども、恐らく現実的には余り意味がないんじゃないか、こう思うんですね。官がこれだけかけているんだから民はどれだけするんですかという言い方をしても。

 それよりも、もっと具体的に、ではこの事業に対してお互いがどれだけのパフォーマンスとどれだけのコストで出せるかということを、僕はその事業事業ごとにやはりやっていった方がいい、そこで競争させた方がいいと。

 そもそも、これだけ官はかけてきたんだから民はどうですかというのが、これが競争かというと、私はどうも、これを競争というのに含めていいのかというふうに、そこに疑問を持つんですけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

大田国務大臣 公共サービス改革法におきましては、まずは、民間から募集する具体的な提案を踏まえて、関係省庁間で協議し、監理委員会で審議して、閣議決定するということになっております。

 そのときに、コストは、まず、市場化テストを実施する事業ごとに、従来の事業実施に要したコストその他の情報を担当の役所が全部開示することになっております。したがいまして、市場化テストの過程において、官がどれだけのコストをかけてやっているのか、それが明らかになるという副産物もございます。

 したがいまして、先ほど入札不調の例がございますけれども、これについても、官が実際にかけているコストが明らかになったという副次的なメリットは、この場合もあったんだろうというふうに思います。そのコストをベースにして、民間が創意工夫を生かして、なるべくよりよいサービスを提供する。そのときに、要求される質につきましては、なるべく定量的な形で、このようなものを要求しているということが実施要項の中に書かれております。

市村委員 今の大臣の御答弁の中に、監理委員会が出てきました。

 私は、最近の内閣委員会、内閣府が出すいろいろな法律で、基本的には、いわゆる民のことは民でやるべきだ、これは大賛成なんです。ところが、何か、例えば何とか委員会ですね、この内閣委員会が問題にしている公益認定等委員会とか、何か委員会をつくるんですね、一生懸命。

 そもそも、競争を導入しようというときに監理委員会が仕切るんじゃなくて、競争させようというのは、競争に基づいて、それで白黒はっきりさせようとしているのではないかと思うんですね。そのときに、監理委員会というのをかませるというのが私にはやはりよくわからないんです。

 競争を導入して、公共サービスの質の向上、それからコスト削減を図っていこうということであれば、それは、競争です、だから官民競争でやらせましょう、そして競争に基づいて、負けた方は負け、勝った方は勝ち、これがやはり一般的に我々が競争と考えることじゃないかと思うんですね。監理委員会が事業を選定して、そしてその事業を今まで官がどれだけかけてきたかということを出すんだから、民がそれを見てやっていけばいいんだ、それが競争なんだと言われると、いや、それは競争かなと私は思わざるを得ないんですね。

 先ほど申し上げたように、コストについても、そのコスト計算をどんなに厳密にやろうとも、やはり大ホールディングカンパニーを掲げたものと株式会社等の一般民間企業、これはどうなのかなと。これを見て、では我々はもっと低くしなくちゃいけないということになるわけでしょう、結局。官がこれだけでやっているのを、少なくとも高くしては落札できないですね。

 実際に、この求人開拓事業も、応札もしなかったのが二件かな、それで、応札はしたけれども、官が設定したコストより高くなっちゃったから、結局落札できなかったということになるわけです。

 我々の一般的な意識からすると、官は本当は十でできるのに百かけているんじゃないかという思いがあるわけですよ。でも、計算してみたら、官は八で出してきたわけですね。それで民間が十だといったら、いや、それはちょっと高過ぎますと言われて、結局落札できなかったというケースになっちゃっているわけですね、この求人開拓事業。そもそも、前提が違うものを、そこで、さあといっても難しいんじゃないかなと思うんですね。

 後からちょっと議論したかったのは、要するに、競争といいながら競争の条件が整っていないんじゃないか。市場化テストといいながら、そうした官民が競争するような市場が本当にあるのかどうかということについて、ちゃんとこれは考えられているのか。考えた上で、公正公平な市場において本当にちゃんとした公平な競争ができるか、そういう制度が整えられているかどうかというのに非常に疑問に感ずるんですけれども、これについては、大臣、どのようにお考えですか。求人開拓事業で落札企業が決まらなかったという例も踏まえて、御答弁いただきたいと思います。

    〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕

大田国務大臣 幾つか御質問いただきました。

 まず、監理委員会ですけれども、これは競争ですので、競争条件が公平でなくてはいけませんし、ルールが整えられなくてはいけない。まさに先生がおっしゃった、競争という環境が整備されているのかどうか、ここは大変重要な点です。監理委員会は、まさにそれをやるところです。競争条件を整え、入札が適正に行われたか、そのときのルールは正しかったかを監理するものでありまして、民間の有識者の方に入ってやっていただいております。

 コストはなかなか計算できないじゃないかという二番目の御質問ですけれども、この算定方法につきましては、十八年十二月に、官民競争入札等監理委員会、この監理委員会で策定をしております情報の開示に関する指針、これで定められておりまして、各府省は、この指針に沿ってコストの算定をしております。この指針では、複数の事務事業に従事する職員について、対象公共サービスに従事する割合を勘案して人件費を算定する。それから、民間の会計基準を勘案して、退職給付費用についても算定するということで、人件費を適正に算定しております。このコストに基づいて競争入札がなされたかどうか、これをまた監理委員会でチェックいたします。公認会計士の方にも、入ってチェックしていただいております。

 この入札不調の例ですけれども、今調査中ですので先ほど申し上げなかった一つの理由としまして、モデル事業の二回目のときに、かなり安い価格で入札した企業がございます。それが、その価格自体を引き下げて、当初予定した、設定された価格よりも下がってしまったという可能性が考えられます。

 先生が御指摘のように、やはり最初が重要でして、ほかの市場化テストの実施例では成功例も幾つもございます。そういう意味では、競争条件はかなり綿密に考えられて設計され、監理委員会が厳しくチェックしていると認識しております。

市村委員 ちょっとまた戻りまして、求人開拓事業のことについて少し具体的な論議に入りたいんです。

 これで今の大臣の御答弁だと、国が結局やるということになるんですね。そもそもこれが事業に選定された理由は、やはり民間がやった方がいいだろうということでやったはずなのに、結局、国に戻るんですね。

 私からすれば、競争せずに結局国に戻ったということであって、残念だなと。特に、では、なぜさっき五つの地域が選ばれたかというと、やはりそこが一番厳しい状況だからということだと思います。その厳しい状況だからこそ、民間の力をおかりしたい、こう思ってやったところが、結局国に戻った。最も厳しいところが、変えてほしいと思って臨んだら変えられなかった。では、これについてどのように大臣はお考えになっていらっしゃいましょうか。

大田国務大臣 まず、厚生労働省でこの事業を選定したということが妥当であったのかどうか。それから、実施要項は適当であったのかどうか。先ほど申し上げた一年間、単年度であったというようなことでよかったのかどうか。もともと基本方針は、複数年を基本とするとなっておりますので、これが適当であったのかどうかなどをよく調べて、改善していく必要があると思っております。先生の御批判も謙虚に受けとめて、これから改善していきたいと考えております。

市村委員 そのときに、大臣、聞いていただいていますので、いわゆるこの求人開拓事業についてはモデルケースがあったということですけれども、では例えば民間業者から、これだけいいことがあったから、ぜひともうちにもやらせてほしい、また、ほかにもそういう声があったからこそ、この事業選定をされたのか。それとも、厚生労働省さんが、何か出さないかぬから渋々出してきたのか。なかなか答えづらいと思いますけれども、これは全然違うんですね。結局落札できなかったということを考えると、果たしてニーズがあったかどうかも調査せず出してしまった可能性があるということも含めて、問題があったんじゃないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

大田国務大臣 もともと、民間の提案あるいは要望を受けて対象事業の選定に入りますので、この求人開拓事業につきましては、平成十六年度に規制改革・民間開放推進会議がその募集を受け付けた際に要望があったというふうに確認しております。これを踏まえて、十七年度と十八年の二カ年、モデル事業を実施いたしました。この時、二カ年で延べ六社の民間事業者が事業を実施しております。

 やはり要望があったから本格的な実施に踏み切ったわけですけれども、このときに、繰り返しになって恐縮ですが、三つの事業が、同じ地域で割と類似した事業が行われてしまった、したがって他の三年間の事業の方に業者が流れてしまったという状況があるように聞いております。

市村委員 今の大臣の最後のことを素直に受けとめると、結局、それだけ応札する業者が限られていたということになると私は思うんですね。今の言葉を素直に解釈すると。つまり、新規参入がそこにあったらよかったけれども、結局、これまでモデル事業でおつき合いしてきたところにまた応じてねと言ったら、こっちよりこっちの方がよかったから、そっちに行っちゃった、そうとれなくもない状況になってしまっているんですね。そうじゃなくて、これだけのことをやっているんだから、皆さんもっとどんどんアプローチしてください、実はこういう事前のPRが足りなかったんじゃないか、こう思わざるを得ないものがあると思います、これについては。

 そもそも、この市場化テストの事業選定というのはどのようなプロセスで行われるのか、もう一回御説明いただけますでしょうか。

大田国務大臣 事業選定につきましては、まず、民間から募集する具体的な提案を踏まえて、関係省庁間での協議を行い、監理委員会での審議を経て、閣議決定によって行われる仕組みになっております。

 対象事業をなるべく広げることが、先生のおっしゃる、よい民間事業者を育てるということにもなると思いますので、対象事業はなるべく広げていきたいと思っております。そのため、毎年度不断に見直しをして、対象事業を逐次追加していくことを考えております。

市村委員 何事もそう一朝一夕にいかないということもありますので、それこそプロセスを大切にとっていかなくちゃいけないというのはわかりますが、恐らくこれは大田大臣の私的懇談会でも出されていると思うんですが、やはりスピードが足りないんじゃないかということですね。あと、政治がもっとリーダーシップを発揮しなくちゃいけないとかというようなことが、その委員長さんからの提案が行われたというふうにお聞きしています。この言葉はやはり真剣に受けとめないかぬと思います。

 今、時代はすごく速く動いているわけでありまして、日本一国だけでやっていればまだいいですけれども、日本国内の競争だけじゃなくて世界との競争もあるという中で、何か一年一年というのも、わからないではないんですけれども、そういう状況でもないということもある。やはりこれだけの財政赤字を抱えている状況を考えれば、おっしゃるように、質の向上を求めながらコストダウンしていくという、当たり前のことなんですけれども、それを実現していかなくちゃいけないということだと思っています。

 それで、この市場化テストなんですが、いわゆる民民競争というのがあるということなんですけれども、諸外国はどうなんでしょうか。市場化テストという場合は官民競争のことを言うんじゃないんでしょうか。

 ある新聞記事によると、市場化テスト法(官民競争法)と書いてある新聞記事もあったぐらいで、私、ちょっと諸外国の資料をさっきから探しているんですけれども、私がちらっと見た資料にも諸外国のことが、幾つかの国の例があったんですが、結局、民民競争よりもやはり官民競争を促進していくということ。例えばアメリカの法律は、何か公共サービス棚卸し法とかいうことだと思います。日本は民民競争が入っておりますけれども、もともとはこれは官民競争を促進するという法律ではなかったのかどうか、大臣のお考えを伺いたいと思います。

大田国務大臣 先生御案内のように、諸外国ではアメリカ、イギリス、オーストラリアその他で実施しておりまして、やはり官民で競争するというのが中心になっております。

 ただ、日本でも、官民も対象には加えられておりますし、制度上はもちろんございますのでこれからも積極的にふやしていきたいと考えておりますが、公共サービスをなるべく低いコストでよりよく提供するという趣旨にかんがみれば、官のコストを明らかにした上で民間をそこに積極的に参入させていくという試みもまた、重要な一つの手段であろうというふうに思います。

 したがいまして、なるべくこの制度の趣旨が生きるようにこれから全力で取り組みたいと思いますが、官民、それから民間、ともに趣旨が生きるような取り組みをしていきたいと思います。

市村委員 今まさに大臣におっしゃっていただいたように、結局、諸外国だと官民競争が中心なんですね。日本の場合は、官民競争もある。これは全然違う話であるんですね。だから、やはり競争というものに対するもっとシビアな感覚を私たちは持たなくちゃいけないと思うんですね。

 監理委員会の役割は、公正な競争をさせるための場所なんだと今大臣はおっしゃいましたけれども、私から見ると、そうじゃなくてやはりある種管理的な方向の範疇をまだ出ていない。そこが選んで、そこが事業対象を選定して出すというのは、やはり大きな意味での競争というか、競争の本義に沿わないものであると私は思わざるを得ないんですね。

 競争を導入するとまでうたっているこの法律であれば、やはり真剣に競争を導入するということを考えてこれからやっていかないと、この市場化テスト法そのものが、冒頭にも申し上げたように信用がない。ああ、結局これも本気ではないんだ、やったふりだけしていればいいんだというふうになっちゃうとだめなので、だからぜひとも、この趣旨はみんな賛成だと思うんですね。ただ、実効性がないと、またかということで、またまた別の法律をつくらないかぬということになって、堂々めぐりが行われるというのは、やはり避けなくちゃならない。せっかくやった以上は、それが実効を持つものにしなくちゃいけないと私は思います。

 そのためにも、やはり条件整備というのは必要だと思いますね、制度的にも。例えば、会計法とか予算決算及び会計令とかいうのがあるらしいんですけれども、そういうのをやはり改正して、もっと官が、競争に参入しやすくするような条件をみずから整えなくちゃいけないんじゃないか。つまり、このまま官が、はい、どうぞ、入りなさいといっても、なかなか法律的、制度的にも入りづらい面があるというふうに、ちょっと私ははっきりとまだ詳しくわかっていませんが、そういう御指摘があるということは受けとめています。

 大臣はこれについてどうお考えでしょうか。

大田国務大臣 先生おっしゃるように、競争というのは、それに勝った場合は、ベストのサービスをベストの価格で提供しているということの証明にもなるわけですので、官民が競争をして官が落札したら、官がベストであるという証明を納税者に向かってすることにもなるわけで、そのことが市場化テストの重要な意義だと考えております。したがいまして、やはり官も積極的に競争に参加して市場化テストが行われることが望ましいと私も考えております。

 ただ、一般的に言って、仕事が減ることを喜ぶ役所はございませんので、なかなかそこは難しい。官が入札に参加する意向があるかどうかというのが官民競争入札の一つの条件になりますので、官民でやる場合の条件になりますので、難しい点はありますが、今、そのような抵抗を排して、監理委員会も努力しております。

 先生が御指摘のような、制度面、会計上あるいは予算制度上の問題も含めて、今後制度設計をさらに詰めていきたいというふうに考えております。

市村委員 それからあと、情報遮断ということをやはりしていかないといけない。官民が競争するときは結局、官に情報が集まっちゃいますね、民間がどういう応札をしたかというのは。それが官に流れてしまったら、自分たちは仲間だから、ちょっとこれはこうなっているよと流れてしまったら、これは全然公平な競争にならないですね。

 だから、そういった意味で、そういう情報をきちっと遮断できるのかどうか、ファイアウオールをつくれるかどうかというのは大変重要な観点だと思うんですが、これについて大臣の御見解をいただきたいと思います。

大田国務大臣 御指摘のように、情報遮断というのは非常に重要です。公共サービス改革法では、官民競争入札の公正性を阻害するおそれがある情報の交換を遮断するための措置を実施要項であらかじめ定めるということになっております。この実施要項の策定に当たっては、監理委員会の議を経るということになっております。

 具体的な遮断措置といたしましては、この監理委員会が定める指針におきまして、大臣からの職務命令によりまして、まず、官民競争入札の実施に関する事務を担当する職員と、それから入札に参加する事務を担当する職員、これを特定いたします。そして、実施要項の決定以降は、それぞれの間での情報交換を禁止するといったような措置が講じられることになっております。

市村委員 禁止するという措置なんですが、具体的にそれは罰則とかあるんでしょうか。

中藤政府参考人 お答えいたします。

 これは、入札の実施に当たりまして、各府省の大臣が責任者となります。罰則というものは特に設けておりません。

市村委員 これも、別に官全体を言うわけでもないんですが、どうもやはりいろいろ、社会保険庁でも情報漏えい、うまく遮断ができなかった。みんなが自由に、だれだれの年金の納付状況、保険料の納付状況はどうだとかと。結局、いろいろ誘惑に駆られる部分があるわけですよね。今までふだん顔を突き合わせている人たちが、会っている人たちが、ちらっと、いやこうだよというようなことになってしまう。まあ、そもそもはもっと以前の問題として、官民競争入札がないわけですから、まだこれからだとは思うんですけれども、では官民競争入札が主になってきたときに、やはり官は、情報を得る立場であればこそ優位な立場になってしまう。それが官の中で流れてしまったらいかぬ。

 こういうのはやはり、大臣の御責任だというんですけれども、大臣が一々それで最後責任をとってやめるのかという話になると、そういうことではないわけでありまして、その立場の方が自覚を持つだけじゃなくて、やはり自覚だけではなかなか難しいところもあると思うんですね。

 これについては、やはりそういうことをやった場合はそれなりの罰則を設けなければならない。なかなか人は弱いということも考えると、実効性があるかどうかというふうに私は思うんですが、いかがでございますか。

大田国務大臣 私の方からお答えいたします。

 官であれ民であれ、民間の場合もみなし公務員規定が課せられまして、情報の守秘義務など厳しく規定されております。情報の漏えいのようなことがあっては、これはやはりとんでもないことになりますので、制度の改善などこれからも努めていきたいと思います。

市村委員 それから、さっきも出させていただいたんですが、大田大臣の私的諮問機関、ハローワークとILO条約に関する懇談会というのがあるんでしょうか、私的懇談会ですね。ここに、経済財政諮問会議の民間議員提案とILO条約との関係が検討されたということなんですね。それは事実ですね。しかも報告書が出されたということで、私も手元にあります。

 この中に、この私的懇談会の中に、包括的民間委託を提案した諮問会議の民間議員がオブザーバーとして出席をしているということなんですが、これも事実でございますか。

大田国務大臣 事実でございます。オブザーバーとして御参加いただいておりました。

 この経緯を申し上げますと、このILO八十八号条約とハローワークに関する懇談会は、そもそも諮問会議の民間議員の提案を受けて設置されたものです。ハローワークの本体業務、無料職業紹介ですけれども、これに市場化テストを導入するに当たって、民間議員から具体的な二つの提案がございまして、東京二十三区内の十九の出張所の幾つか、数カ所に市場化テストを導入し、それを官がしっかりと監督する、隣の、官のハローワークがしっかり監視する形をとってはどうかという御提案がございました。この御提案とILO八十八号条約との整合性を検討するというために専門の方に集まっていただいたのがこの懇談会です。したがいまして、提案者のお一人として、民間議員の一人である八代議員がオブザーバーの形で出席されておりました。

市村委員 この中でも、いわゆる民間議員提案についての解釈ということで一と二が、私も資料をいただいていますが、賛成論、反対論、いわゆる包括的民間委託ということ、つまりハローワークそのものを全部民間委託したらどうだという話ですよね。

 さっき冒頭で出ました求人開拓事業というのは、求人は開拓してきてほしいけれども、あっせんはハローワークでやりますよという話ですけれども、結局、ハローワークそのもの、つまり求人もあっせんも全部丸ごと、いわゆるハローワークがやっていること全部丸ごと民間委託してしまおうということを提案された方が入っていたということなんですね。違うんですか。済みません、ちょっと後で、では違うなら違うとおっしゃってください。

 それで、その中でいろいろな民間議員の提案が、賛成論、反対論もあったんですけれども、いわゆる包括的に民間委託をという方は一つの考え方ですね。その方が、私的懇談会の中にオブザーバーとして参加した。もともと、経済財政諮問会議から諮問されたわけですね、その懇談会が。済みません、ちょっと混乱しましたけれども、諮問された。その諮問した側がその懇談会の中に入っていった。しかも、いろいろ考え方はあるのに、一つの考え方を持った方がオブザーバーとして入っていった場合、つまり、答申をまとめる側の議論にも参加してしまったわけですね、諮問した側が。

 これは、ある意味でいえば、たとえオブザーバーとして議決権がないとしてもプレッシャーを与えることにはならないかということもあるかもしれませんが、大臣、これはどうお考えになりますか。

大田国務大臣 ハローワークの業務を包括的に民間委託するということではございません。この包括という意味は、いろいろな細かい指揮を受けてやるというのではなくて、業務をやるときに自律的に業者が判断するという意味で、包括という言葉が市場化テストでは使われております。つまり、あれはこうしろと細かい指揮命令系統の中でやるというのが通常の民間委託ですけれども、市場化テストの場合はそうではありませんで、任された業務に関しては民間事業者が独自の発想で自律的に行っていくという意味での包括です。

 もう少し申し上げたいんですが、ハローワークは三つの業務をやっております。無料職業紹介、雇用保険業務、それから事業所の指導、三つやっておりまして、今回市場化テストの対象にいたしましたのは無料職業紹介だけです。もともと、この提案でした。諮問会議で有識者議員がなさったのも、この無料職業紹介を東京二十三区内の二つ、三つの事業所でやると。そのとき、官のネットワークがそれをしっかりと監視するもとでやるという前提であります。

 したがって、八代議員が包括的に全部やるという立場でこの委員会に出ていたわけではありませんで、あくまで提案者として、その提案の趣旨が踏まえられているかどうかを、何か求められたときにはアドバイスするというようなオブザーバーとして出席しておりまして、結論を誘導するような立場では全くございませんでした。

市村委員 わかりました。

 ただ、大臣、私だけかもしれませんけれども、包括的といった場合に、それが自律的だという意味を含んでいるということは、これ、どうなんでしょうか。一般的に皆さん、そういうふうにとられる方というのは、私は少なくとも、包括的といったときには、自律的という言葉はすぐには浮かばないですね。言われて、いや、こういうものだ、市場化テストでは包括的というのは自律的を意味するんだと言われれば、そうとらないかぬのかなと素直に思いますけれども、しかし、一般的に包括的と聞いたときは、つまり全部丸ごとハローワークそのものをやってやろうという、これを民間に委託しようという考え方だというふうにとるのが一般的だと私は思います。だから、言葉遣いについても、では、そうじゃないということだとわかりましたので、やはり言葉は大切ですので、またよろしくお願いします。

 それで、大臣、では、結論を誘導するようなことにはなっていないということで、そうじゃないということだけ一言、お答えください。

大田国務大臣 結論を誘導するものでは全くありませんでした。

 極めて詳しい議事概要が出されておりますので、これは公開のもとでチェックされると思いますし、先生がごらんいただいたこの報告書をごらんいただきましても、労働法と国際関係法の先生方がそれぞれの見解をお示しいただいて、そもそも懇談会自体が、ある結論を導き出そうとするものではなく、考え方を整理していただこうというものですので、この点は、全くオブザーバーも誘導するような役割は担っておりません。

市村委員 このILO八十八号条約そのものが一九四八年のものだということでありますし、今憲法改正の論議もありますが、やはり時代に合わせていろいろなことを考えていかなくてはいけないということもありますので、日本からこれについて見直しを別に提案してもいいかもしれません。ただ、もちろんそのためにはきちっとした議論をしないと、やみくもに、では変えろ変えろと言っても仕方ないわけでありまして、やはりきちっとそのための議論をした上でと思います。

 少し時間があります。うれしいことなんですが、ちょっと根本的な議論をさせていただきたいんです。

 この市場化テスト法というのは、冒頭から申し上げているように、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律ということなんですが、大田大臣の中では、公共サービスというのはどういうものだととらえていらっしゃいますか。

大田国務大臣 公共サービスというのは、一般的な言葉ですとパブリック、これは広い概念だというふうに思いますが、この法律で言われております公共サービスは、広く国や独立行政法人、地方公共団体が実施する業務一般を指しております。

市村委員 今また、この法律によるととありましたけれども、まさに、さっき大臣が英語でパブリックとおっしゃっていただいたようなこと、これが重要なんです。ここが実は、日本の場合、このパブリックに対する意識が余りにも低いと私は思わざるを得ないんですね。

 やはり公というのは、今まさにここで大臣が後半におっしゃったのは、官の公のことをおっしゃっていると私は思います。私は、この内閣委員会を通じて、民の公をしっかりとこの日本に打ち立てないかぬということをずっと提案しておるものでありまして、結局、民の公のセクターをしっかりとしていくことが、実は今政府がやっていらっしゃることについても重要なインパクトを与えていくと私は思います。

 結局、この国では、民間というと株式会社なんです。株式会社しかないということでやっていくんですね。ですから、この委員会と関係ある、例えば警察が駐車違反の取り締まりを民間委託するといったら、またこれも株式会社になるんですね。何でもかんでも株式会社がやるということになってしまって、結局、民の中にはいわゆる公を担う民もあるというところが、大変この概念が欠けていると私は思っておりますが、大臣、これについてはどうお考えでいらっしゃいますか。

 せっかくですから、僕は田村大臣政務官にもこの点をお聞きしたいと思います。お二人にお聞きしたいと思います。

大田国務大臣 御指摘のように、官ということと公ということはやはり違う概念で、公というのはより広い概念であるというふうに思っております。先生御指摘のとおりだと思います。

 大学でも、最近は、公共サービスといったときに希望する学生がふえておりまして、これは必ずしも公務員になるということではなくて、文化であったり、広く公共のサービスに携わりたいという学生もふえておりますので、徐々にそういう考え方も広がってきているのかなというふうに思います。

田村大臣政務官 私も同様に、やはりオーバーラップしているところはあると思うんですけれども、公の方がより広い概念で、その中に官というものが含まれている。官でない公というのもしっかりあるのではないか、そういうふうに思います。

市村委員 ありがとうございます。

 ですから、まさにそういう考え方、つまり公の方が広いという考え方。これまで、例えば公的サービスとか公的資金の導入というと、その公は必ず政府のこと、まさに官の公のことを言ってきたと思います。そこで議論がとまっていたんです、この国は。

 実は、民の公であるべき公益法人、本来は公益法人は民の公なんですね、民の公のセクターがいつの間にか官の手先みたいになっちゃって、天下り先とかになってしまった。なぜそうなったかというのは、私は民法三十四条のことも含めてこの委員会で皆さんには御説明しておりますけれども、結局、公といったらイコール官、この発想からもう抜け出さなくちゃいけないときだと思います。つまり、今お二人がおっしゃっていたように、公の方が官より広い概念なんだ、公の中には官の公だけじゃなくて民の公もあるということなんですね。

 このことがやはりしっかりと議論のベースにないと、私は、これからの議論はやはりできない。特に、こういう市場化テスト法とかを議論するときも、この意識がない限りは、やはりきょうのような、結局これからになるんですけれども、非常にびほう策といいますか、何か、一回縫ったら、またどこか破れちゃって、また縫っていくという、これに終始しなくちゃいけない。やはり、もっと堂々たる議論をするためには、公というのはパブリック、まさにパブリックというのはガバメントだけじゃないわけですね、ガバメントもその一つかもしれないけれども、それだけじゃないということをしっかりと我々は認識していく必要があると私は思います。これがないから、結局、いろいろな議論が非常に狭いものになってしまうと私は思います。

 ですから、市場化テスト法にいろいろな事業がこれから加えられていくと思いますが、株式会社じゃないものとしての民間、いわゆるNPO、NPOというのは本来そういう意味です、NPOに任すべきものもあっていいはずなんです。何も株式会社ばかり入札するんじゃなくて。しかし、そのNPOを支える制度的土壌がないんです、この国には。だから、それを私はつくるべきだという提案をしているんです。やはりNPOも競争に参加できる土壌をつくっていかなくちゃいけないというのが私が常に訴えていることなんですけれども、これも大臣、政務官からぜひともお考えをいただきたいと思います。

大田国務大臣 もちろん現在でも参加できますけれども、先生おっしゃるように、まだ十分に土壌が育っていないということもあるかと思います。それを含めて、対象事業、それから、なるべくそこにたくさんの団体、企業が応札してくるように、制度を一生懸命運営していきたいと思います。

田村大臣政務官 全く同様なんですけれども、今でもできることはできるんですけれども、そういうふうにしっかり育つような土壌を育てる、そういうこともしっかり任務としてやってまいりたいと思います。

市村委員 一つ具体的な例を挙げたいと思います。

 実は、駐車違反の標章の取りつけのサービスを民間に委託するということで警察がやっていますが、これもNPOが参加可能です。実際、NPOも応募していることもあるんですが、ある方からお聞きすると、そのところに実際応札しようとしたら、とてもとてもこれはできないといって、やめたというんですね。できないというか、怖いと。なぜかというと、億の金を年間もらえる、一億何千万という契約をするというんですね。NPOが突然一億何千万という金を出されると、驚くわけです。そんなうまい話があるのかといって、やめたというんですね。

 結局、これは何を対象にしているかというと、ここで私が言うまでもなく、やはりOBの天下りなんですね、これは今の議論そのままじゃありませんけれども。結局は、そういった点でも、では、NPOも入札可能なんだよと言われても、突然億と言われたら、とてもとても自分たちで扱い切れないお金だということになってしまって、驚くわけです。もちろん、それぐらいのことをできるNPOをもっと育てていかなくちゃいけないというのも当たり前の話なんですが。しかしながら、今現状はそういう状況にあるということ、ここをぜひともわかっていただきたいんです。

 土壌づくりというのは私がいつも申し上げていることなんですが、やはりそこから始めなくちゃならない。また、きょうの市場化テスト法についても、制度の構築、確立というのがないと、幾ら理念を叫んで、こうあるべきだと言っても、それが現場ではうまくいかないということになる。だから、実際、官民競争入札がうまくいかない、なかなかできない、こういうふうになっていると思います。

 大臣、ぜひとも、そういった制度面での確立、そういうものもまた議論していただいて、一刻も早くそれを出していただいて、スピードアップを図っていただきたい、まさに政治のリーダーシップも必要だということを最後に申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

河本委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 登記業務乙号事務と呼ばれる、登記事項証明書の交付とか登記簿の閲覧についての請求受け付け、証明書の作成交付など、登記事項の交付事務を丸ごと市場化テストの対象となる特定業務に追加して、民間に開放しようというのが今度の改正案ですが、登記業務というのは、本来的には、所有権とか抵当権とか会社設立、あるいは株式発行とか、それらの真正性を調査し、判断し、登記し、また証明する、これが主な業務だと思うんですが、それだけにこの登記業務というのは、国民の財産の権利義務を明確にして、取引の安定性といいますか、安全と保護を図るという非常に大事な役割を持っているものだと思うんです。

 ですから、そういう点では、登記業務の甲号事務と乙号事務というのは一体として行われているものですから、これは本来的にはやはり国が責任を持って行うべきものだというふうに思うんですが、この点について、最初に大臣の認識を伺っておきたいと思います。

大田国務大臣 市場化テストは、あくまで国が責任を持って行う業務です、国が責任を持って行うけれども、その実施は民間が実施してもいいというものを事業の対象にしております。必ずしも国の行政機関がみずから実施する必要がない業務、それから実施主体の創意と工夫を適切に反映させる必要性が高い業務というものを、国民の立場に立って、聖域なく選定するというところが趣旨でございます。乙号事務につきましても、国民の立場に立って、より良質かつ低廉な公共サービスを実現するという、この法の趣旨に資するというふうに考えております。

 甲号事務と乙号事務ですが、業務の性格が異なりますので、乙号事務のみを民間事業者に委託しても、特段の支障が生じると私どもは考えておりません。

 この趣旨を踏まえまして、公共サービスの実際の実現を行っていきたいと思っております。

吉井委員 しかし、事はそれほど単純な話じゃないと思うんです。

 法務省の方の政府参考人に伺っておきますが、登記制度にとって、信用と信頼の維持というのはこの仕事の生命ですね。この信用と信頼の維持という点では、登記は国が保証する信用制度であって、そのことは非常に大事なところだと思うんです。

 そうすると、この改正案の中で、いつどんな形ででも信用と信頼は確保できるという保証が法文上どこに示されているのか、伺っておきたいと思うんです。

後藤政府参考人 委員御指摘のとおり、登記について信用性、信頼性の確保は極めて重要であるというのはまことに御指摘のとおりであると考えております。

 改正法案におきましても、この事務を民間事業者に委託いたしましても登記の信用性、信頼性が揺らぐことのないように、乙号事務を実施する公共サービス実施民間事業者の要件を設定すること、民間事業者に対して特定業務の実施に関して知り得た情報の目的外利用を禁止すること、民間事業者に対する登記簿等の帳簿類を初めとする設備、物品の適正取り扱い義務を課していること、乙号事務の民間事業者に対する特定業務の実施状況の報告義務を課していること、さらに、法務大臣が民間事業者に対して乙号業務の停止を命じ、または契約を解除することができる要件を設定するなどの手当てを施しているものと承知しております。

吉井委員 法文上は第六条だったかな、ここで民間事業者の責務が規定されておりまして、そこでは、要するに最後のところで、「努めなければならない。」そういう程度のものであって、確保されるという保証というのはないわけです。

 登記所の窓口では、単に登記証明書の交付などでは済まない専門的な知識と経験を蓄積して、職員が育っていくということが私はこの分野の非常に大事なところだと思うんですが、登記所に来る人の方は、一般の人もおれば、司法にかかわるそういう分野の有資格者もおれば、また不動産取引のプロも来るわけですし、非常に幅広い利用者があって、証明書の請求内容もさまざまなものがあるんですね。

 ですから、今、乙号事務に従事している職員というのは、これらの請求に関する説明、相談、それから対応についてさまざまなノウハウを身につけているし、時にはかゆいところまで手が届くサービスと言われるようなところがあるのも現実ですが、ただ、それだけにとどまらないで、やはりそういうふうに育っていくということが非常に重要な分野だと思っているんです。国が保証する信用制度ですから、専門性の高い業務の質というものが公務として追求されなきゃならないというふうに思います。

 そこで参考人に伺いますが、法案三十三条の二の第二項で、登記事務の乙号業務に参入できる民間業者の要件を「知識及び能力を有していること。」と定めているんですが、これは当然ですけれども、さらに、「その他法務省令で定める要件に適合するものであること。」という規定も、さっきもそのことを言っておられましたが、省令の内容いかんでは民間参入の敷居は下げられるということも可能なんですね。

 ですから、登記の乙号業務に参入するための知識と能力としては具体的にどういうものを求めているのかということをきちっと明らかにする必要があると思うんですが、知識と能力については具体的にどういうものを求めることになっていますか。

後藤政府参考人 乙号事務を実施する民間事業者について、具体的な知識、能力、どういうものを求めるかということでございますけれども、登記所で取り扱われている不動産登記あるいは商業・法人登記を初めとする各種登記制度に対する知識、理解、あるいはさまざまな証明書の記載内容の理解、さらに利用者の求めるニーズを的確に把握する、こういう能力も求められていると思います。

 これらの乙号事務の適正かつ確実な実施を確保するために必要な知識及び能力につきましては、今後、実施要項を策定し、官民競争入札等監理委員会の審議を経て、決定、公表していくことになると考えております。

吉井委員 これは後で議論に入っていきますが、それだけの知識と能力を持った人を派遣会社で、非常にすさまじいダンピングが行われておりますが、そういうことでそもそも確保できるのかということがまず問題になってくると思います。

 先に、引き続いて法務省の参考人に伺いますが、行革推進法四十八条の第二項に、「登記に関する事務」は、「その実施を民間にゆだねることの適否を検討し、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。」と定めているわけです。

 それで、民間にゆだねる適否の検討の対象は、乙号事務だけとしているのか、それとも甲号事務を含めた登記業務すべてを民間に開放することを検討対象にしていくことになるものなのか、そこを伺います。

後藤政府参考人 お答え申し上げます。

 簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律第四十八条の第二項に、「登記に関する事務」は、「その実施を民間にゆだねることの適否を検討し、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。」と定められておりまして、この「登記に関する事務」は、甲号事務、乙号事務、いずれも含んでいるものと理解しております。

吉井委員 要するに、甲号事務まで市場化テストに持っていこうという考えがあるということのようですが、法案では登記業務の乙号事務だけを市場化テストにかけることにしておるわけですね。

 それで、登記制度の信用と信頼の維持を根底から揺るがすようなことになっちゃいけないというのが大事なところで、甲号まで市場化テストにという、検討というのは、これはもうそれ自体が問題だと私は思うんです。乙号事務以外の事務、つまり、甲号事務と呼ばれる登記審査事務、また地図整備に関係する筆界特定事務などはどうなっていくのかということが、実はそこにかかってくる重要な問題だと思っているんです。

 法務省も、かねてから、甲号事務は厳正、公正、中立的立場から国家公務員に行わせるべきだという見解を示していたと思うんですが、考え方としては、この点は今もそのとおりなんですね。

後藤政府参考人 この関係につきましては、行政減量・効率化有識者会議におきまして、登記事務の民間開放について追加検討要請事項ということで検討が行われたところでございます。

 その場におきましては、私どもからは、登記事務のうち甲号事務についてでございますけれども、全国的に統一された基本ルールに従い、正確かつ迅速に遂行すべき事務であり、国みずからが企画立案から管理、執行までを一貫して担う必要のある事務である、とりわけ不動産登記、商業・法人登記等の甲号事務、さらに委員御指摘の地図整備関係事務あるいは筆界特定事務は、いずれも資本主義経済の基礎をなす私有財産制を支える重要なインフラであり、しかも私人の権利義務の存否、消長に多大な影響を与えるものであって、厳正、公平、中立に、全国統一的に行うことが必要な事務であり、国みずからが主体となって直接実施する必要があるという意見を述べたところであり、法務省としてはこのように考えておるところでございます。

吉井委員 それは、信用、信頼性という、国が保証する制度として非常に根幹をなす大事なところだと思うんです。

 登記事務には不動産登記のほかに商業・法人登記がありますし、企業の存在を公示する制度で、登記が企業の成立要件となっているものです。ですから、企業などの定められた事項を登記簿に記載することで取引の安全というものが確保されているわけですね。

 この分野では、今でも実はそういう商業分野、企業分野では、例えば帝国データバンクなどの企業情報提供をビジネスにしている企業というのは、商業登記簿の閲覧などによって企業情報を収集するということを業としてやっているわけですが、登記事務を市場化テストにより民間に開放すれば、企業情報をデータベース化してビジネスにしている企業が登記業務に参入しようとすることも考えられてくるわけです。

 登記事務に参入できれば、有料の閲覧手続を必要としないで企業情報を自由に集めるということが可能になってきます。商業・法人登記の中身だけでなくて、不動産登記の中身も自由に見ることができるということになれば、ビジネスとしては非常においしい話なんです。全く費用をかけずに、企業情報、個人情報、所有権移転、抵当権設定の情報を集めて、そしてそれをビジネスとしてまた販売する、提供する、そういうことが可能となりますから、私は、やはり情報の漏えいとか流用などの危険をどういうふうに防止していくかというその歯どめが問題になってくると思うんですが、その歯どめについてはどういうことをこの法律の中で考えているのか、参考人に伺っておきます。

後藤政府参考人 公共サービス改革法におきましては、事業者による情報の漏えいを防止するために民間事業者への守秘義務及びみなし公務員規定の適用等が定められており、民間事業者が守秘義務に違反した場合には、罰則の対象となり、一年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処せられることとなっております。

 これに加えまして、今回の改正法案におきましては、乙号事務を実施する民間事業者の要件としまして、個人情報の適正な取り扱いを確保するための措置が講じられていることを規定し、また、民間事業者に対して特定業務の実施に関して知り得た情報の目的外利用を禁止しております。さらに、民間事業者に対する登記簿等の帳簿類を初めとする設備、物品の適正取り扱い義務を課しております。

 民間事業者がこれらの義務に違反した場合には、法務大臣は、乙号事務の全部または一部の停止を命ずることができ、また委託契約の解除をすることもできます。

 さらに、法務大臣は、公共サービス改革法二十六条、二十七条の規定に基づきまして、乙号業務の適正かつ確実な実施を確保するため必要があると認めるときは、民間事業者に対し、報告を求め、立入検査をし、さらに必要な措置をとるべきことを指示することができるとされているところであります。

 これらの権限を適切に行使することによって、民間事業者によって情報漏えい等の不適切な行為が行われないように監督していくこととなると理解しております。

吉井委員 今あなたがおっしゃったのは、お話はお話として聞いておきますけれども、現実は、この間も総務委員会で取り上げましたけれども、例えばNTT西日本データが社員情報を六万人分情報漏えいしてしまった、一カ月間報告もしないで隠していたという問題を取り上げましたけれども、そういう話はもういっぱいあるんですね。だから、情報がどんどん流出している。こういう歯どめがありますとか、いろいろおっしゃるけれども、歯どめなくどんどん出てしまっているというのが現実ですよ。

 そういう中で、たとえばデータバンクのような情報産業が参入してきたときに、文字どおり、手数料も何もなしに閲覧その他をやってみずからの情報を豊かにして、非常に企業としてはおいしい話で、どんどんどんどんデータが、ある意味では非常に信頼性の高いデータなんですけれども、それがビジネスとして出ていくというふうになると、この問題は非常に深刻な別な問題を起こしてきますね。

 だから、このことについてのきちんとした歯どめがあるのかということを聞いているんですが、今、お話はお話として伺いましたけれども、現実に流出している事態とは全くかけ離れたものだということを言っておかなきゃならぬというふうに思います。

 次に伺っておきたいのは、登記簿の電子化というのはかなり進んでいるわけですが、登記情報入力作業のプログラムを開発したメーカーというのは、これは富士通と東芝ソリューションですね、ここのを使っておりますが、こうしたプログラム開発メーカーが参入すれば、情報を入手することはさらに容易な話になってきます。情報漏えい、流出につながりかねない問題ですから、やはりこの点では防止する歯どめに、この種の業をなしてきたものについてはそもそも市場化テストといっても参入を規制するんだと、何かそのことについての定めはありますか。

後藤政府参考人 御指摘のようなケースについての特段の規定はないものと承知しております。

吉井委員 ですから、情報産業も参入できるし、そもそもプログラミングをやってきた企業も参入できるわけです。そして、さっきおっしゃったように、言葉の上では、いや、罰則だ何だといっても、現実にはそれはほとんど役に立っていない、情報というのはいろいろな企業でじゃじゃ漏れになっているというのが実態ですから、私は、この話というのは簡単に進めることのできるようなものじゃないということを言っておかなきゃならぬと思います。

 次に、引き続いて法務省参考人に一つ伺ってから厚労省の参考人に伺いたいと思うんですが、昨年度、登記業務の乙号事務の市場化テストの実施に向けて、先ほど来も議論ありました十カ所の登記所で試行のための一般競争入札を行っております。実際入札に参加したのは財団法人民事法務協会だったわけですが、実は人材派遣会社が、市場化テストによるハローワーク関連業務に参入しているように、法務省の登記業務へも参入しようとしてきているわけです。入札説明会には人材派遣会社も参加していたと思うんですが、それはどういうところですか。

後藤政府参考人 全国十カ所の登記所で行いました外部委託の試行に係る一般競争入札の入札説明会には、全国で見ますと三社の人材派遣会社が来ていたと聞いております。

吉井委員 それは、テンプスタッフとかグッドジョブなどですね。

後藤政府参考人 テンプスタッフ株式会社、グッドジョブ株式会社、太平ビルサービス株式会社の三社であると承知しております。

吉井委員 次に、厚労省の参考人に伺いますが、ハローワークで入札した人材派遣会社はどういうところですか。伺います。

岡崎政府参考人 今年度、ハローワーク関連の事業につきまして、人材銀行、キャリア交流プラザ、それから求人開拓事業がございます。

 入札に参加しただけの企業は企業名を公表しておりませんが、延べ五十七社のうち、労働者派遣事業も実施している企業が四十二社でございます。

 それから、落札した企業につきまして六社ございますが、このうち労働者派遣事業を行っておりますのは、人材銀行の関係ではヴェディオール・キャリア、それからキャリア交流プラザ関係ではアルプスビジネスクリエーション新潟、ブライトキャリア、それから求人開拓事業ではアソウ・ヒューマニーセンターと東海道シグマ、こういうことになっております。

吉井委員 私、さっきも言いましたように、やはり登記業務というのは国が信用保証する制度なんですよ。そして、そこで働く人というのは非常に専門性とか経験を蓄積して育っていってもらうということがやはり非常に大事で、そういうところへコストダウンあるいは価格競争ということでダンピングに近いことをやって人材派遣だけの会社がどんどん入り込むと、私は、そういうことで国が信用とか信頼をきちんと保証することができるか、維持ができるのかと。そもそもの登記事務の生命というものが保たれるのかという根本問題をやはりきちんと今考えなきゃいけないと思うんです。

 厚労省に引き続いて伺いますが、ことし二月八日に、社会保険庁はモデル事業の評価についてという報告書を発表しております。これを見ますと、民間に委託した社会保険事務所がいずれも他の事務所のコストを下回ったと報告されておりますから、コストという面では低いわけです。人件費を中心に相当のコストダウンとなっている。しかし反対に、納付率の改善状況は、いずれも民間に委託しなかった社会保険事務所に比べて低調であったと。実績は上がらなかったが、人件費だけは安くなったという結果を示しています。

 改めて伺っておくんですが、厚労省の方の見方としては、業務の質の方は改善されたという見方ですか。

岡崎政府参考人 国民年金保険料の収納業務につきまして、納付率アップの要素というのは幾つかあろうかというふうに思います。社会保険事務所の中で、全体としての管理をしている部分、それから今回民間委託しました収納業務の部分等々、総合的な結果としまして納付率が出てくるということでございます。

 今回民間委託したところにつきましては、官がやっている部分と民間がやっている部分と両方相まざったわけでございます。そういう中で、委託した部分につきましてはそれなりの実績とコストダウンだったわけでございますが、社会保険事務所全体としての納付率では上がっていなかった。

 ですから、ここは、民間に委託したというだけではなくて、社会保険事務所全体の関係の中でも私どもは見直すべきことは見直して、より適切な形で実施していくということが必要ではないかな、こういうふうに考えております。

吉井委員 私が伺っておりますのは、要するに、民間に委託したところで顕著に業務の質が向上したんですかということを聞いているんです。

岡崎政府参考人 民間委託をした収納業務だけを見ますと、受託事業者に目標設定しました納付月数等々、要求水準はおおむね満たしているところが多いというのが実情でございます。

 したがいまして、その部分をもってどうかというふうに言われれば、そこについてはそれなりの、それからあとコストダウンの部分もありますから、全体として見れば、それなりの評価をしていいのではないかというふうに考えております。

吉井委員 コストダウンの話は、おっしゃるとおりなんですね。それは価格の安いところを選ぶわけですから。しかし、業務の質というのは改善されたということになっていないんですよ。

 次に伺っておきますが、ハローワーク関連では、キャリア交流プラザ事業、人材銀行事業、求人開拓事業の三つの分野で実際には市場化テストの入札が行われ、落札者が決定したわけですが、落札したのは、ブライトキャリア、アソウ・ヒューマニーセンターなど、すべて人材派遣会社ですね。落札できなかったけれども入札に参加したという民間企業というのは、これも人材派遣会社だったんじゃありませんか。

岡崎政府参考人 先ほど申しましたように、入札に参加しただけの企業、数だけ申させていただきますと、延べ五十七社ありますが、このうち四十二社は人材派遣業務をやっているということでございます。

吉井委員 それで、今年度の入札結果を見ると、落札した人材派遣会社は、入札価格は予定価格の六割に満たなかったというものがありますが、キャリア交流プラザ事業では八カ所の中で五カ所ですね。それから、人材銀行事業では三カ所中二カ所。求人開拓事業の福岡筑豊地域では、株式会社アソウ・ヒューマニーセンターが落札したわけですが、入札価格は他の二社の半分以下と、物すごいダンピングですね。

 契約は数年ごとに更新されるので、契約のたびに入札が行われることになりますが、各人材派遣会社は、競争に勝つために、つまり入札価格を下げるために派遣労働者の賃金を徹底的に引き下げていく。労働条件を引き下げることによって人件費を下げる、それによって事業を受託するというやり方ですから、これは受託する民間企業の労働者の賃金、労働条件が保障されないという問題がまた出てきております。

 民間労働者の雇用環境も悪化する、そういう悪循環の中に入っていくという深刻な問題を抱えているんですが、何かこれを食いとめる仕組みというのはありますか。

岡崎政府参考人 一つには、人材派遣事業も当該それぞれの会社がやっておりますが、これは受託者として受けて、自社の労働者として事業を行っておりますので、そこの事業に従事している方は派遣労働者ではなくて自社の労働者であるというのを一点御指摘させていただきます。

 あと、低価格落札の問題につきましては、予定価格の六割に満たない場合につきまして、これは、業務につく方の予定賃金等々を含めまして、適切に事業が行われるかどうかを評価委員会で評価いたしまして、適切に実施できることを確認した上で最終的に契約を結ぶ、こういうことにしております。

吉井委員 説明としてはその程度のことを言わなきゃ仕方がないんだと思うんですけれども、アソウ・ヒューマニーセンターが他の二社の半分以下ですよ。物すごいダンピングですよ。どうしてこれが成り立つんですか。

 これは管理者の管理コストも見なきゃいけませんから、そういう点では、本当にこのやり方をしておったのでは、これは受託業者の労働者の賃金労働条件も悪くなるし、それとともに、競争に追い込まれる公務員労働者の賃金水準も悪くなるという、全体として悪循環の中へ陥っていきますよ。

 市場化テスト法の十条十号には、入札に参加することができない欠格事由として、次のように規定しております。「その者又はその者の親会社等が他の業務又は活動を行っている場合において、これらの者が当該他の業務又は活動を行うことによって官民競争入札対象公共サービスの公正な実施又は当該官民競争入札対象公共サービスに対する国民の信頼の確保に支障を及ぼすおそれがある者」これは外すわけでしょう。

 株式会社東京リーガルマインドが設置したLEC東京リーガルマインド大学に対して、文科省がことし一月二十五日に学校教育法第十五条第一項の規定に基づく勧告を出したことは、この内閣委員会で既に私は取り上げました。ところが、独立行政法人雇用・能力開発機構は、今年度のアビリティガーデンにおける職業訓練事業に市場化テストによる入札を実施し、株式会社東京リーガルマインドを落札者として決定していますね。

 あれだけ国会で、東京リーガルマインドが、これは文科大臣からもう勧告を受けて、とんでもない企業だということになっているときに、法律上は、市場化テスト法十条十号、入札に参加することができない欠格事由を挙げているわけですが、現実にはこれがまかり通っているんですね。

 そこで、大臣に最後に伺っておきますが、東京リーガルマインドは、文科省から改善勧告を受けており、国民の信頼の確保に支障を及ぼしている企業なんですが、そのような企業を入札に参加させ、ましてや落札者に決定して業務を担わせる市場化テストというのは、一体どういうものなんだということになってくると思うんですが、認識を伺いたいと思います。

大田国務大臣 御指摘の民間事業者が大学運営に関して国から勧告を受けたという点については、もちろんのことですが、望ましくないことであると考えております。ただ、この点をもって他の事業への入札参加を一律に認めないとする必要は必ずしもないと考えております。

 公共サービス改革法の趣旨、これは、国民の立場に立って、良質なサービスを低廉な価格で提供するというこの趣旨に照らし、入札の対象となる業務の内容に応じてよい業者が選定されるということが必要であって、その業者が提供しているサービスがよくないということになりますと、これは常に事後チェックを行っておりますので、指示あるいは契約解除を行うということになっております。

吉井委員 事後チェックのお話がありましたが、事前チェックの段階で外さなきゃいけないんですよ。十条十号にひっかかるでしょう、私が今言った東京リーガルなんというようなものは。既に入札の前に国会でも大問題になっているんですよ。それをやすやすと見過ごして、そして構わないとするのは、私はそういうやり方はとても許されるものじゃないということを申し上げまして、質問を終わります。

河本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河本委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。

吉井委員 私は、日本共産党を代表して、競争の導入による公共サービスの改革法改正案に対し、反対の討論を行います。

 反対の第一の理由は、登記業務を市場化テストにより民間に開放することは、国民の重要な財産である不動産などの国の登記業務の責任を後退させ、行政サービスの低下、個人情報の漏えいなど、国民の権利にかかわる登記制度の信用と信頼を損なうおそれがあるからです。

 登記業務は、国民の財産の権利義務を明確にして、取引の安全と保護を図る制度であり、国が責任を持って行う事務です。業務は甲号事務と乙号事務が一体となって行われており、基本的に国家公務員が行わなければならないものです。

 こうした公共性の高い事務の一部とはいえ、営利追求の民間企業が行うことは、経済活動の基盤となる登記事務を不安定な環境に置くものであり、国民の財産の安全性を確保する上から大きな問題を持つものであります。

 反対の第二の理由は、登記業務の民間開放は、公務員の定数削減とともに、業務を行う民間労働者の労働条件を低下させるからです。

 法務省は、乙号事務を民間に開放することにより、専従職員を順次千百八十一人削減していく計画です。登記所の定員は、現状でも、事件数が高水準を維持する中で、最近十年間で千百七十八人、約一二%削減され労働強化が増していますが、民間開放でますます厳しくなっていきます。

 また、業務に参入する民間事業者は、入札価格を低く抑えるため人件費を下げることは必至です。そのため、参入企業の労働者の労働条件はますます悪化します。社会保険庁の国民年金保険料の収納業務を受託した業者が社会保険事務所よりも事業経費が下回ったことについて、社会保険庁の評価は、人件費を中心としたコストダウンをした結果であると報告しています。

 市場化テストによる民間開放は、公務員労働者にとっても、参入企業で働く民間労働者にとっても、労働条件の悪化を招くことを指摘して、反対討論を終わります。

河本委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河本委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

河本委員長 次回は、来る十一日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十二分散会


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