衆議院

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第12号 平成26年4月11日(金曜日)

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平成二十六年四月十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 柴山 昌彦君

   理事 関  芳弘君 理事 平  将明君

   理事 橘 慶一郎君 理事 西川 公也君

   理事 平井たくや君 理事 近藤 洋介君

   理事 松田  学君 理事 高木美智代君

      青山 周平君    秋葉 賢也君

      大岡 敏孝君    勝俣 孝明君

      川田  隆君    小松  裕君

      新谷 正義君    田所 嘉徳君

      田中 英之君    高木 宏壽君

      武井 俊輔君    豊田真由子君

      中谷 真一君    中山 展宏君

      長島 忠美君    福山  守君

      藤井比早之君    山田 賢司君

      山田 美樹君    吉川  赳君

      大島  敦君    後藤 祐一君

      玉木雄一郎君    津村 啓介君

      若井 康彦君    遠藤  敬君

      杉田 水脈君    中丸  啓君

      山之内 毅君    輿水 恵一君

      浜地 雅一君    大熊 利昭君

      赤嶺 政賢君    村上 史好君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 古屋 圭司君

   国務大臣         森 まさこ君

   国務大臣

   (社会保障・税一体改革担当)

   (経済再生担当)

   (経済財政政策担当)   甘利  明君

   国務大臣

   (行政改革担当)     稲田 朋美君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  武藤 義哉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  佐々木裕介君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       長田  太君

   政府参考人

   (内閣官房行政改革推進本部事務局長)       宮島 守男君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  近藤 正春君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    岡田 憲和君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 笹島 誉行君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   石井 正文君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           永山 賀久君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   黒江 哲郎君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 宮園 司史君

   参考人

   (再就職等監視委員会委員長)           羽柴  駿君

   内閣委員会専門員     室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十一日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     山田 賢司君

  福山  守君     藤井比早之君

  後藤 祐一君     玉木雄一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     福山  守君

  山田 賢司君     武井 俊輔君

  玉木雄一郎君     後藤 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     鬼木  誠君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の実施に関する法律案(内閣提出第三五号)

 内閣の重要政策に関する件

 栄典及び公式制度に関する件

 男女共同参画社会の形成の促進に関する件

 国民生活の安定及び向上に関する件

 警察に関する件


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     ――――◇―――――

柴山委員長 これより会議を開きます。

 内閣の重要政策に関する件、栄典及び公式制度に関する件、男女共同参画社会の形成の促進に関する件、国民生活の安定及び向上に関する件及び警察に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、参考人として再就職等監視委員会委員長羽柴駿君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官武藤義哉君、内閣官房内閣参事官佐々木裕介君、内閣官房総合海洋政策本部事務局長長田太君、内閣官房行政改革推進本部事務局長宮島守男君、内閣法制局第一部長近藤正春君、消費者庁審議官岡田憲和君、総務省人事・恩給局長笹島誉行君、法務省大臣官房司法法制部長小川秀樹君、外務省大臣官房参事官水嶋光一君、外務省大臣官房参事官下川眞樹太君、外務省国際法局長石井正文君、文部科学省大臣官房審議官永山賀久君、防衛省大臣官房長黒江哲郎君、防衛省大臣官房審議官宮園司史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

柴山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

柴山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 きょうは、まず、法人税減税が検討されているということで、これに関係して、事業主が負担する社会保険料と法人税の関係について、小泉政務官にお伺いしたいと思います。

 今、法人税の税収総額は約十兆円です。これは景気がよくなって少し上がるのかもしれませんが、一方で、事業主負担の社会保険料は、ざっくり言って三十兆円です。法人税の三倍あります。法人税の減税を検討することもいいのですが、むしろ、私は、法人税を減税する財政的余力があるのであれば、社会保険料を下げるべきではないかというふうに考えます。

 例えば、厚生労働省が、平成二十二年就業形態の多様化に関する総合実態調査というところで、正社員以外の労働者を何で活用するのかという理由を聞いたところ、その理由の一番目が、賃金の節約のため、二番目が、一日、週の中の仕事の繁閑に対応するため、三番目が、賃金以外の労務コストの節約のため、つまり、この社会保険料の話が上がっています。賃金の節約のためというのは、もしかすると、その中にも社会保険料のことを含めて答えている方もおられるかもしれません。

 また一方で、国税庁の会社標本調査というものによりますと、全ての会社の七二・三%は赤字法人です、欠損法人です。つまり、これらの法人は法人税を払っておりません。

 そういうことからしても、正社員をできるだけふやそうということをもし政府がお考えになるのであれば、財政余力がもしあるならば、社会保険料の引き下げに使うべきだという考えについて、ぜひ、若者代表としての政治家としての意味合いも込めて、小泉政務官の御見解を伺いたいと思います。

小泉大臣政務官 御質問いただきました点でありますが、私が若者代表というのは、きのうの本会議での橋本先生の最年少の御指摘が鈴木貴子先生だったように、私以上に若い方もいますので、若者代表かわかりませんが、御指摘のあった社会保険とそして法人税とのあり方の中で、後藤先生のような御指摘が有識者の方の中からもあることは事実だと思います。

 ただ、今、政府の中で、さまざまな場で法人税の点についても議論をしていますが、この法人税の議論に対しては、やはり対内直接投資を、先進国と比べて日本は極端に低い、そして、これから国際競争力をどうやってつけていくかという中で、産業構造のあり方から、さまざまな観点で今議論を深めているところであります。そして、安倍総理も一月のダボスで、法人税の改革に着手をするということを明言されたわけでありますから、そういった観点の中で、それでは、税と社会保障の一体改革の中でも大きな議論になった社会保険のあり方、これをどう考えるか。

 私は、正社員の方、また雇用の改善ということを考えたときに、後藤先生のように、社会保険の負担をどうやって下げていくことができるかという視点は非常に大切だと思っています。

 ただし、社会保険というのは、やはり、給付と負担のあり方というのが、税と比べて比較したときにわかりやすい。そして、既に、この日本というのは、社会保険の象徴になっている国民皆保険、皆年金、この中においても相当税を突っ込んでいるわけですよね。だから、根本から考えたら果たして純粋な社会保険になっているのか、そこら辺も考えたときに、社会保険と税のあり方。

 そして、今回消費税が上がりましたけれども、その消費税が上がった分は全て社会保障に使う、そういった前提の中で、現実を見れば、それでもまだ、これからふえ行く少子高齢化に伴う社会保障の増大する予算に対して追いつかない、後年度の負担はさらにふえていく、そういったことをどうやって考えていくかと考えたときに、御指摘の点も踏まえつつ、だけれども法人税の改革にもしっかりと取り組む中で、総合的に判断すべきものであると思っております。

後藤(祐)委員 国際競争力のことを考えるときは、ぜひ、法人税の実効税率だけではなくて、社会保険料も含めた事業者の公的負担全てを比較した上で考えていただきたいと思います。

 十兆円に対して三十兆円ですから、これを無視して考えるのは非現実的だと思いますし、今非常に前向きな御答弁をいただいたと思いますので、ぜひ、余り偏らないで、総合的な観点からお考えいただきたいというふうに思います。

 実際、政務官がおっしゃったように、既に社会保険だけでは賄えなくて税を投入しているわけですから、その税の投入割合を上げていくという議論でしかないとも言えるわけです。

 ですから、ここはもう、今までも既に起きていることをさらに加速化すべきではないかということとも言えますし、特に年金については、保険料不払いという事象もたくさん起きているわけでございまして、これを税で負担することによって、この問題を解消するという観点もあると思います。

 ぜひ、これを厚労省だけ、財務省だけで検討すると物が進みませんので、だからこそ、内閣府そして政治が、総合的な観点から、若者雇用をしっかりと見据えながら、正社員化を進めていっていただきたいと思います。

 それでは、引き続きまして、特定秘密の話に移りたいと思います。

 前回、三月二十八日の一般質疑のときに、諮問会議の委員の方々と事務局との間のやりとりの文書を提出してほしいということを申し上げました。私に対して提出がありました。これに対しては、委員長そして理事会の皆様の御配慮に感謝したいと思いますし、森大臣以下事務局の皆様の今回の対応は評価したいと思います。

 ですが、ぜひ、これは私がここに置いておいてもしようがないんです。委員と事務局以外の中で、たったこの一冊だけです。結構分厚いんですよ。これは、みんな見たいんですよ。これを私はどうすればいいんですか。私がコピーして配るというのには限界があるんですよ。

 ですから、これは、ぜひ事務局のホームページに張りつけていただきたいんです。これは非常に重要なことが書いてあるんです。それほど秘密性があるようなことは、一部黒塗りになっている、いいんです、黒塗りのところは黒塗りで。黒塗りになっていないところは、私は全部読みましたけれども、秘密の保持上は問題ないです。ぜひこれはホームページに張りつけていただきたいと思います。

 あわせて、法律施行令に盛り込むべき事項、そして運用基準に盛り込むべき事項、こっちは黒塗りが多いんですが、これは項目だけで十分だと思うんですね。こういったものもあわせて役所のホームページに張りつけるべきだと思いますが、森大臣の御見解をいただきたいと思います。

森国務大臣 会議のプロセスの透明性を確保するために、委員の御指摘もございますので、適切な形で公表する方法について検討してまいりたいと思います。

後藤(祐)委員 ぜひ公表してください。

 少なくとも、この盛り込むべき事項が何であるかということは、これはもう単純な、単に項目が書いてあるだけなんですが、今後、これが具体的な中身を伴ってくるわけでありまして、では第三者機関については議論しているのかというようなことも、よく見るとこの中に、米印でしたか、チェック機関との関係という数文字であらわされているという事実自体はすごく重いことなんですね。

 そういうふうになっているということを、少なくとも、黒いところは縮めていいですから、これは掲載していただきたいということを改めて申し上げておきたいと思います。

 一方で、立法府の中では、国会による特定秘密に関するチェックの議論が与党、野党ともに少しずつ動いております。この中で、行政府の特定秘密を国会に提出する場合の秘密会の手続については、これはテクニカルな議論として当然あるんですけれども、そもそも、行政府内における特定秘密の指定の適否を国会側が判断して、これは指定を解除しなさいというようなことをすべき、すべきでないというような議論が行われておりますが、これは実は、立法府と行政府の間の関係において、私はやや疑義がある議論だと思っております。

 具体的にこれは法制局にお伺いしたいと思いますが、これは一般論で結構です。個別になされた行政府の決定に対して、立法府がその決定の解除ないし取り消し、こういったことを権限として求めることは可能でしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 今、具体的な国会での御議論が背景にあるので、なかなか一概にお答えすることは困難でございますけれども、一般的に申し上げれば、具体の法律により、今、一定の事項について国会による同意ですとか承認ですとかそういうことを定めている場合があるわけでございますけれども、他方、今御質問がございましたように、行政府がその権限に基づいて行った処分等につきまして、立法府が直接その解除や取り消しというようなことを行うということは、立法府と行政府の役割というものの別を曖昧にするという点で、憲法が定める三権分立の観点からは問題があるのではないかというふうに考えております。

 したがって、行政による違法、不当な処分というものについての個別の救済については、司法の判断、司法による救済というのが憲法上予定されているというふうに理解しております。

後藤(祐)委員 非常に重要な答弁だと思うんです。

 国会において委員会をつくって指定解除請求をさせるということはできないというのが、今の答弁の結論なんです。このことを踏まえてぜひ与野党は議論しなきゃいけないということを、各党のこの問題を考えておられる方は、これはむしろ国会側の責任であります、ぜひ踏まえて行動していただきたいと思います。

 ちょっと、一つ飛ばしてしまいました。

 行政府内の方の第三者機関、独立性の高い第三者機関、これは法律または政令で設置されるということになっておりますが、これは少なくとも、先ほどの盛り込むべき事項の中で検討事項になっていることはわかりましたが、今後、いつまでに、どのように決める運びになるんでしょうか。この二つのものがパブリックコメントとして案が出されるまでの間にどういう、これは大きな議論をしなきゃいけないんです、法律でやるとするならば、これはもう立法府そのものの話ですから、立法府に対してどういう形で相談をするのか。

 与党の中の事実上の手続の話だけではなくて、国会との関係も含めて、あるいはこういった委員会で審議することも含めて、どのような運びになっていくのか、森大臣にお答えいただきたいと思います。

森国務大臣 御指摘のとおり、四党協議におきまして、「内閣府に情報保全監察に関する機関を政令(または立法措置が必要な場合には立法)により設置する。」旨、合意をされております。

 この機関に具体的にどのような事務を所掌させるか、そしてそれにどのような機能を持たせるかということについて、現在、情報保全諮問会議の有識者の御意見を伺いつつ、検討を進めているところでございまして、その事務や機能がどのようになるかということを踏まえた上で、この機関を具体的にどのような形で設置するかを検討することになりますので、この点についての検討も、政令案や運用基準案についてパブリックコメントを実施する予定である夏をめどに進めていく必要があるというふうに考えております。

後藤(祐)委員 まず、法律でやるか政令でやるかを先に決めてから、細かい検討に入ってください。

 つまり、法律でやると決めた場合には皆さんだけでやるわけにはいかないはずなんですね。ちょっと今のお話だと大変危ういなという感じがいたしますが、これは四党合意もあるわけですし、我々は入っていませんが、そしてその四党の中には、これは法律で設置すべきだという意見を申し述べている議員の方もいらっしゃいます。

 そこも含めて、早い段階で法律でやるのか政令でやるのかは御決断いただいて、その先の細かい作業に入る前にその決断をいただきたいということを改めて申し上げておきたいと思います。

 それでは、集団的自衛権の方に入っていきたいと思います。

 あとは集団的自衛権の話なので、もしお忙しいようでしたら、お二人は結構でございます。

 まず、官房長官に伺いますけれども、四月八日のBSフジ、プライムニュースに安倍総理が御出席をされましたが、最終的に解釈の変更が必要となれば、与党との協議を経て、閣議決定によって変更するということになると考えていますと述べておられます。

 以前、官房長官は、閣議決定で集団的自衛権の行使を認めるということを決めるのか、あるいは安全保障基本法等の法律でもって決めるのかということについては決まっていないというようなお言葉だったと理解しておりますけれども、安倍政権として、この集団的自衛権の行使は、今検討中なことは十分わかっておるのですが、この決断をするとした場合には、法律ではなくて閣議決定によって行うということを決めたのでしょうか。

菅国務大臣 政府の現時点の立場でありますけれども、前より申し上げておりますように、安保法制懇の報告書、この提出を受けた後に、これを参考に政府としての基本的方向性を示して、内閣法制局の意見も踏まえつつ、与党とも相談の上、対応を検討した結果、仮に憲法解釈の変更ということになる場合には、閣議決定を行い、国会で御議論をいただく、このように考えておりますので、政府として正式決定をしたということは、まだであります。

後藤(祐)委員 そうすると、安倍総理のこのテレビでの発言は、まだ政府としての決定でないことをお話しになられたということですか。

 今官房長官がおっしゃった、閣議決定の後、国会において御議論をいただくというのは、法律案を立法府で審議するということではなくて、政府が集団的自衛権の行使を閣議決定で決めたということを何らかの形で国会の審議の場があるということは、全く別の話でありまして、法律案を出すということではないということはまだ決まっていない、つまり、四月八日の安倍総理の発言は間違いであるということですか。

菅国務大臣 総理の発言は、誤解を与えるといけませんので、ちょっと読ませていただきます。

 いずれにせよ、この安保法制懇の結論が出た段階において、政府としては、法制局を中心に議論を進めてまいります。与党、自民党、公明党ともよく相談をしながら、最終的に解釈の変更が必要となれば、与党の協議を経て、閣議決定によって変更をするということになると考えています。

 テレビの発言は、こういう発言を総理はされています。

後藤(祐)委員 閣議決定によってと言っているわけですね。では、法律は出さないということですね。

菅国務大臣 ここで、今申し上げていますように、閣議決定によって変更をするようなことになると考えています、ただ、それは前提条件があるわけですから。ですから、まだ報告書が提出されていませんので、そこは先ほど私が申し上げたことと全く同じことじゃないでしょうか。

 そして、閣議決定をして、いざ必要になれば、閣議決定の内容によって国会に法律を提出して、国会で議論をしていただくというのは、これは当然のことだと思います。

後藤(祐)委員 最後にまた余計な一言をつけるから。それは自衛隊法のことであって、個別法の話であって、集団的自衛権の行使そのものを認める法律ではないということは、この前もうお話しされていたので。そういうところで曖昧なことを言われると、国民がみんなこれは注目していますから。閣議決定でやるということが今の答弁で明らかになったと理解させていただきたいと思います。

 さて、前回、昭和二十九年の六月二日、参議院本会議における決議、「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。 右決議する。」という決議の海外出動とは何かということを議論させていただきました。

 そして、私の問題意識としては、集団的自衛権の行使は、極めて制約された形ではありますが、私は一部行使があり得るという立場でありますが、それは法律でもって、安全保障基本法等によって認めるべきであって、法律でもって行えば、この参議院本会議の決議との関係は、立法府の判断としてすることはできますが、内閣が閣議決定をもって行う場合は、この参議院の本会議の決議に、少なくとも、法的拘束力はあるかどうかは別として、これを尊重しなければならないと思いますが、もう一回、官房長官に伺います。この昭和二十九年六月二日の参議院本会議決議を尊重しますか。立法府における決議を一般論として尊重するではなく、この個別の決議を尊重しますか。

菅国務大臣 御指摘の決議を踏まえて、これは一般論として、政府としては、議院の意思として示された国会決議の趣旨を尊重すべきとは考えますけれども、法的拘束力まであるとは考えていないというのが政府の立場であります。

 そして、この決議について申し上げれば、今や自衛隊は、国会で立法いただいた法律等に基づいて、海外において、PKO、国際的なテロ対策、イラクの人道復興支援等に参加をし、国際社会の平和と安定のために大きく貢献をする時代になっていることも考慮しなければならないというふうに思っております。

後藤(祐)委員 尊重しないということですか。PKO法は、出動はないんです、派遣はあり得ますけれども。後でまた議論しますが、自衛隊法上、三種類の出動がありますが、PKO法に出動という概念はありません。ですから、この二十九年の決議とPKO法は矛盾しないんです。

 もう一度聞きます。

 この二十九年の本会議決議を尊重しますか。個別の決議として尊重するかどうか、はっきりお答えください。

菅国務大臣 政府とすれば、当然、院の意思として示された国会決議の趣旨は尊重はするというのは、これは当然のことだというふうに思いますけれども、拘束力はないと思います。

後藤(祐)委員 ありがとうございました。

 さて、海外とは何かについては前回も議論しましたが、昭和五十五年の質問主意書に対する答弁では、海外派兵の定義の中で公海が入っていないという御答弁が法制局長官からありました。一方で、PKO法三条一項五号では、海外の定義として、「我が国以外の領域(公海を含む。)をいう。」と明確に定義されています。

 つまり、海外とは何かということについては、状況によって解釈が多様なのだというような趣旨だと理解をしておりますが、そうしますと、この二十九年の参議院の本会議の決議における海外とは何かといった場合、この解釈権は行政府にありません、立法府にあります。ですから、行政府としては、この二十九年の参議院本会議における海外出動の海外に公海が含まれないと断定することはできないと考えます。つまり、公海は含まれ得ると考えて行政としては行動しなければならないと考えますが、この二十九年六月二日の参議院本会議の海外出動の海外に公海が含まれないと断定できますか。法制局長官。

近藤政府参考人 お答えいたします。

 ただいま、昭和二十九年の参議院における決議についての解釈ということでございますので、まさしく、その有権的解釈は参議院において行われるべきものであるというふうに考えております。

柴山委員長 いや、ちょっと質問に対して答えてください。

近藤政府参考人 そういう意味では、今お話がありましたような、海外が云々ということについては、文面上ははっきりいたしませんので、その中の公海が云々ということについては、私ども、まさしく公権解釈を待つということであろうかと思います。(後藤(祐)委員「答弁していないです」と呼ぶ)

柴山委員長 だから、断定できますかという質問なので、断定できるか断定できないか。

近藤政府参考人 断定はできないと思います。

後藤(祐)委員 ありがとうございます。

 出動についてですが、現在、出動については、自衛隊法上、防衛出動、治安出動、警護出動、この三種類だけがございます。そして、この出動とその他の自衛隊の行動の差は、きのう事務方から御説明いただきましたが、総理が下令するかどうか、この一点なんだという説明がありました。

 そして、現行解釈において個別的自衛権が行使される場合は、これは防衛出動に限定されると考えてよろしいでしょうか。

黒江政府参考人 ただいま御指摘のとおり、自衛隊法上、出動につきましては、議員御指摘の三種類の出動に限られておりますし、総理大臣が発令をいたす出動といったものは、この三種類に限られてございます。

 また、そのうちで、個別的自衛権の発動として自衛隊が行動するといったものを許す、その出動の類型は、自衛隊法第七十六条の防衛出動のみでございます。

後藤(祐)委員 そのとおりなんです。

 そうしますと、個別的自衛権の発動が防衛出動に限定されるとするならば、集団的自衛権が今後行使が認められた場合に、出動以外の形で出ることがあり得るんでしょうか。

 それは答弁できないと思いますが、少なくとも、集団的自衛権の行使が認められた場合に、自衛隊が行動するときに、総理が下令する可能性は大いにあると思うんです。そして、出動に該当する可能性は大いにあると思うんです。総理が下令し、または出動の形態に当たらないと断言できますか。

 ちょっとわかりにくいと思います。

 集団的自衛権の行使が認められた後の自衛隊の実際の行動を規定する法律を今後つくらなければいけなくなった場合に、出動または総理が下令する形を全て避けて、そうでない形だけで規定することができますか。

黒江政府参考人 今先生が御質問された点につきましては、まさに現在、政府として、いわゆる安保法制懇で御議論いただいておりまして、政府としての方針がまだ固まっておらない分野でございます。

 いかなる形の法制度を整えるかというものは、まさにそういった議論を踏まえた上で、政府としての方針が決まった後に我々検討するものでございますので、現時点で先生の御質問に対して仮定の条件を持ちながらお答えするというのは、適切ではないと思っております。

後藤(祐)委員 この二十九年の参議院決議の海外については、少なくとも公海を含まないと断定はできないということが、きょう明らかになりました。そして、出動は、現在の個別的自衛権ですら、全て防衛出動であることが明らかになりました。

 集団的自衛権の行使を認める場合に、出動に該当するのはほぼ確実と思われます、本当に自衛隊法等個別の法律をつくる場合には。そうすると、参議院決議に反する形でしか個別法は規定できません。だからこそ、集団的自衛権の行使は、法律でもって行えば、この決議とやや反する形であっても立法府の判断は可能だと思うんです。

 もう一度問います。

 尊重とは何ですか。先ほど官房長官は、この参議院の決議を尊重すると答弁された。法的拘束力はないが尊重するとは、一体どういう意味ですか。

菅国務大臣 今申し上げましたのは、まさに院で示される意思でありますから、それは国会決議の趣旨を尊重すべきということは当然のことじゃないでしょうか。

 そして、今御指摘の決議というのは、自衛隊の創設当時に当たって、自衛隊の海外における活動が基本的に想定されていない時代に行われたものであり、そのような状況の中で決議されたということは考慮する必要があるだろうというふうに思います。

 現在、そういう中で、時代が、先ほど言いましたけれども、海外において、PKOだとか国際テロ対策、あるいはイラクの人道復興支援、こうしたものに現実的には参加をし、国際社会の平和と安定のために貢献をいたしているわけであります。

 これだけの状況変化を踏まえた中、我が国の平和と安全を確保するためにいかなる対応をすべきかという観点から、今、安保法制懇の中で御議論をいただいておるわけでありますから、その報告書が提出された後に、そこを参考にしながら政府としての基本的方向性を示して、内閣法制局の相談も踏まえながら与党と相談をし、また対応を検討した結果、閣議決定をする、ここの基本ということはおかしくないんじゃないでしょうか。

後藤(祐)委員 ぜひ、その結果としての内容がどうなるかを見据えて、決議違反になりそうだということであれば、法律でやることをもう一度検討していただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 残りの時間で、砂川判決についてお伺いしたいと思います。

 砂川判決の本質は、一見明白に違憲無効でない限り、司法としては判断を差し控える、いわゆる統治行為論に本質がございます。

 つまり、砂川最高裁判決というのは、必要な自衛のための措置をとり得るとは言っておりますが、その中に集団的自衛権の行使を含むか含まないか、そこまで判断をしておりません。少なくとも、一見明白に違憲無効だとは言っていない。集団的自衛権については実は触れておるんですが、これは、アメリカの集団的自衛権の行使はこの中で論点になっています。

 ですが、日本、我が国としての集団的自衛権の行使を認めたものと言っていいんでしょうか、砂川最高裁判決は。禁止をしていないということは、認めたということとは違うと思います。判断をしていないというのが正しいのではないでしょうか。

 砂川判決は、日本の集団的自衛権の行使を認めるか認めないかということについて判断していないと私は考えていますが、官房長官、判断していないと思いませんか。

菅国務大臣 昭和三十四年の砂川事件における最高裁の判決でありますけれども、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとり得ることは国家固有の権能の行使として当然であるということを明白に認めたものであり、政府としても、このような見解を従来からとってきたところであります。

 そして、集団自衛権と憲法の関係については、先ほど来申し上げておりますように、安保法制懇の中で今議論をしておるので、その検討結果、先ほど申し上げましたように、報告書を受け、そしてまた、このことを参考にしながら、政府としての基本方針というものを定めて、まず与党の皆さんとそこはしっかりと相談をさせていただきながら、今後のことを、先ほど申し上げたような対応をするということであります。

柴山委員長 後藤君、質疑時間が終了しました。

後藤(祐)委員 今答弁がないので、判断していないということでよろしいかどうか、もう一度答弁してください。

柴山委員長 では、菅長官、短くお願いします。

菅国務大臣 今私が答弁したとおりです。

柴山委員長 質疑時間を終了します。

 次に、大熊利昭君。

大熊委員 みんなの党の大熊利昭でございます。本日はよろしくお願いをいたします。

 最初に、東京オリンピックの関係をちょっと手短にお伺いしたいと思います。

 マラソンコースの設定について、いろいろな観点があると思うんですが、当内閣委員会の警察関係ということになりますと、警備の関係があるんじゃないかと思います。そのほか、きょう参考人で来ていただいているかと思いますが、コースそのものということ、それから観光という観点もあるんじゃないかと思うんです。

 まず、古屋大臣に、この警備の観点、一般論でも結構なんですが、マラソンコースの警備について、どういうところをポイントとして考えていらっしゃるのか等々、御教示いただければというふうに思います。

古屋国務大臣 まず、マラソンのコースの設定は、競技団体の組織がありますので、そこが決めて、最終的にそういうルートにする、それに対して警察の方に道路の使用の許可の申請があるということでございます。

 今までは、基本的に、そういった団体が決められたルートについては了承しています。もちろん、どういった視点から承認を出すかというと、やはり、まず交通安全、観客の安全ですよね。やはり安全、安心、治安という視点から判断をしておりますけれども、基本的に、そういった競技団体から申し入れがあったときは全部承認をしています。

 その背景には、東京オリンピックに始まって、最近でも、例えば、二〇〇八年までは東京国際女子マラソン、あるいは、二〇〇七年からは東京マラソン、これは何万人も参加をする、あるいは、二〇〇六年までは男子の東京国際マラソンもありましたし、箱根駅伝、こういうので、警備等々に対するノウハウは警視庁の中でも相当蓄積をされていますので、そういった団体が設定をされたコース、やはり競技の戦略性からそういうセッティングをされるんでしょうから、セッティングをされたことについては基本的に全て承認をして、それならば、では、どういった警備が必要かとかいうようなことを警察として専門的な見地から考えている、こういう取り組みをしております。

大熊委員 ありがとうございました。

 承認という線でということで、よくわかりましたが、一言で、そうはいっても、やりやすいコース設定とやりにくいコース設定、一般論でも結構なんですが、何かその辺というのは、ノウハウがたくさん、いろいろなタイプでもう蓄積されているんだろうと思いますが、あえて、やりにくいコース設定というのはあるんでしょうか。(古屋国務大臣「警備がですか」と呼ぶ)はい。

古屋国務大臣 私も警備の現場にいたわけではないので、詳しく説明をするということはなかなかできないとは思いますけれども、一方では、警察はマラソンの関係者と常に密接な連携をとって話を聞きながら対応しています。ですから、どういうコースで設定したら、ではそのコース設定に合った警備をしていくというのが基本的な考え方でございまして、これは難しいからほかのコースに変えてくれというようなことは基本的にないというふうに理解をしております。

大熊委員 ありがとうございました。

 続いて、マラソン関係でもう一言。

 これは、オリンピック当日ということになりますと、全世界にテレビ中継等されるわけでございますので、東京をアピールするチャンスでもあるということなんですが、例えば、東京マラソンがそのまま東京オリンピックのマラソンコースになるかどうか、これはまだ決まっていないわけでございますが、現状の東京マラソンのコースですと、外人さんに、その他もちろん日本人も含めて有名な秋葉原、上野というのは通らないわけでございます。

 観光の観点からすると、特にフランス人とかヨーロッパの人がお好きな秋葉原、あの辺、そして上野を全然無視して通らない、余り人が通っていかない、現状の東京マラソンのコースも私の選挙区なんですけれども、秋葉原、上野を全く通らないというのは、ちょっと観光の観点からどうなのかなと思うんですが、この辺、一言お願いできればと思います。

永山政府参考人 二〇二〇年の東京オリンピックのマラソン競技につきましては、国立競技場がスタート地点でございまして、皇居前、東京タワー、銀座中央通りを通過して、最後、浅草を折り返し地点として戻ってくるというコースが設定されていますけれども、このコースの設定については、先ほど御答弁がありましたけれども、東京都とそれから日本陸上競技連盟が、東京マラソンなどの過去の大会のコースも踏まえて、国際陸上競技連盟の了解を得た上で行われているというふうに承知をしております。

 一方で、東京オリンピックあるいはパラリンピックを一過性のスポーツイベントに終わらせないで、大会開催を契機に日本各地の魅力を世界にアピールする、これも非常に大事でございます。もちろん、上野、秋葉原は大変有名な観光スポットでございますので、例えば、大会開催に合わせてさまざまな文化プログラム、こういったものを実施するということもあろうかと思いますが、いずれにしましても、今後、大会組織委員会とか東京都、関係省庁などと連携してしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

大熊委員 オリンピックのマラソンですから、通常の大会等々と違って幅広い観点から、大局的な見地で、やはり秋葉原、上野をスルーするというのはどうかなと思いますので、総合的に御検討を政府としていろいろ、政府としてなのかJOCさんということになるのか、お願いしたいというふうに思いまして、次に行きたいと思います。

 続きまして、前回、前々回からの続きでございまして、稲田大臣に特会、独法関係の数字のお話をお伺いいたします。五十分ちょっとに必ずお出にならなきゃいけないということで、手短にお願いしたいと思うんです。

 一般論の議論は前回、前々回で終わっております。きょうは、ぜひ個別のはっきりした御答弁をお願いしたいんですが、例えば、まず、労働特会の雇用勘定ですね。

 六兆四千億、前回も出しましたが、非常に過大な現預金が積み上がっておりまして、前回御答弁いただいた労使から入ってきている部分、確かに一般会計じゃないところが中心で、それは決算ベース五・九兆円、前回申し上げた五・五兆円というのは予算ベースで、決算を締めてみたらなぜか四千億も違っていたということで、四千億も多くあって五・九兆円あったということで、百歩譲ってこの五・九兆円を差っ引いたとしても五千億残るんですね。この五千億は国庫に返していただけるんじゃないかなと。

 前回と同じ前提で、アベノミクスがうまくいくんだったら、労働環境はよくなるわけですから、どんと失業者が出てきて給付が発生するということはないはずなんですよね、政府のお立場からすれば。私どもとしても、アベノミクスの特に金融緩和の部分、それから規制緩和、第三の矢ですね、これは応援している立場なので、うまくいくという前提に立てば、雇用環境はよくなるはずですから、こんな過大なものは。

 例えば、ちょっと先に非常に悪くなるであろうという予測が立てば、もうちょっと多目、つまり、現状のように積んでいてもいいのではないかと思うんですが、そうではないということであれば、ここは思い切って返していただくというようなことを、少なくとも、行革大臣、稲田大臣として、厚労省に強く求めていく、交渉していくということが行革大臣の職務として必要なんじゃないかなというふうに思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

宮島政府参考人 今御指摘のあった数字でございますが、労働保険特別会計雇用勘定におきます現預金から積立金を控除した額のことの御指摘ではないかと考えますが、その差額は、将来の雇用安定事業費に充てるための雇用安定資金でありまして、好況期に資金を積み立てて、不況期にこれを財源として機動的かつ集中的に雇用対策を実施する目的で積み立てているもので、例えば、景気の変動等の影響で事業活動を縮小する事業主が、解雇せずに一時的な休業により従業員の雇用を維持した場合に助成する雇用調整助成金等に充てられるものであると承知しております。

 その雇用安定資金につきましては、過去において一年間に支出超過が五千億を超えたことがあるといったことにも留意する必要があると聞いているところでございます。

大熊委員 実は、事務方からその説明を聞いたんですが、それはうそですね。

 どういうことかというと、そういう変動のために、まず一点、負債として確定しているのは千四百億円だけですよ、これは財務省のバランスシートに出てくる。千四百億円。確定していないもの、今御説明にあった将来発生するかもしれないもの、これの数字は、事務方に確認をしたら、大体一年間、それ以上のことは考えていないとおっしゃった。一・八兆円ですよ。五・九兆よりもっとちっちゃい。今御説明があったのは、それは違いますよ。五千億はそのさらに上積みの部分ですから。五千億は返していただける。

 先ほど、社会保険料を下げるという話がございました。このケースでいうと、これは雇用保険料ですから、簡単に言うと、雇用保険料を下げられるんじゃないんですか、こういう話ですね。返してくれというのは、キャッシュをキャッシュバックするんじゃなければ、雇用保険料を、労使折半している部分を下げるという話です。これが可能なのではないかと申し上げているんですが、その可能性ですね。

 来月からやってくれということは申しません。こういうことを積極的に検討する必要があるんじゃないか、少なくとも、内閣、あるいは内閣府、内閣官房として、厚労省にしっかり要望していく必要が、総合調整機能を発揮していく必要があるんじゃないか、そういうことなんですが、いかがですか。

宮島政府参考人 雇用保険料のお話がございましたが、雇用保険料率につきましては、雇用保険財政の中期的な安定的運営を確保する観点から、給付の見通しと積立金の水準を考慮しつつ、労働政策審議会において費用負担者である労使に御議論いただいた上で、適正な水準が設定されていると聞いているところでございます。

 なお、今国会に雇用保険法の改正案が提出されていると聞いておりますが、給付拡充による支出の増加と積立金の水準を踏まえ、雇用保険料率の引き下げは行わないものとして合意されているというふうに聞いているところでございます。

大熊委員 この瞬間の話じゃなくて、今後のことを申し上げているわけですね。

 では、伺いますけれども、今後、将来的に発生する給付、これを全部、現在価値に割り戻した金額、これは幾らなんですか。

宮島政府参考人 申しわけありませんが、突然のお尋ねでして、手元にちょっと資料がございません。申しわけありません。

大熊委員 適正な現預金は幾らですかと通告しているんですから。これは言い方をかえた質問ですよ。

 要するに、今私が質問した金額が適正な規模なんですよ。それは、一年の部分であれば一・八兆円というお話を事務方からいただいています。二年目以降は計算していないとおっしゃっている。本来は計算すべきだと思う。何ぼ何でも五・九兆円を上回ることはありませんよ。

 だから、五千億、少なくとも国庫に返してくれということを申し上げているわけで、六・四兆のうちの五千億ですから、一〇%弱の部分ですよね。六兆全部返してくれ、そんなむちゃくちゃなことを言っているわけじゃなくて、五千億返してくれということを申し上げている。

 数字も幾らかというのは把握されていないんですか。

宮島政府参考人 済みません、労働保険特別会計雇用勘定の積立金についての御議論だと思いますが、この積立金につきましては、雇用情勢が悪化した際にも安定的な失業等給付を行うため……(大熊委員「だから、数字は幾らですか」と呼ぶ)数字は把握しておりません。申しわけありません。

大熊委員 通告しているので、把握していないという答弁をされても非常に困るんですが、では、次回もやりますので、ぜひ、事前のレクでもいいですので、数字をしっかりと明らかにしたいと思います。

 では、残りの時間、次に、前回に引き続き、国立病院機構です。

 これも九百三億返してくれという話でございますが、九百三億円返してくださいということで、返せないというんだったら、やはり同じ、これは、何兆という議論から、ここは一桁小さいといえば小さいんですね。現預金、流動性のものを合わせると千八百億ぐらい。

 前回、千四百億と申しますと、それは現預金と有価証券、これで千四百三十二億なんです。それで、今期使うであろうと説明されている五百二十九億の設備投資資金を差っ引くと九百三億、これを返してくれと申し上げているんですが、返せないとおっしゃるのであれば、なぜその九百三億、あるいは五百二十九億も合わせた千四百三十二億が適正規模の現預金を積んでいるのか、多過ぎるんじゃないですかということなんですね。

 これはもう業務キャッシュフロー七百億の黒字の機構ですから、組織ですから。毎年毎年八百億ももうかっているんですよ、医療費が大変だというのに八百億ずっともうかっているんですよ。これははっきり言って、医療費を取り過ぎているんじゃないか、あるいは国庫から出し過ぎているんじゃないか。社会保障費がかかるといったって、こういうところにお金が寝ているんですよ。だから申し上げている。

 これは厚労省に言えば彼らは反発するでしょうが、これは行革大臣として、行革の観点から厳しく、私なんぞに言われるまでもなく、私以上にドライブをかけて厳しくやっていただきたいから、これは公務員制度改革の議論じゃなくて、応援していますから。対立しているわけじゃないんです、ぜひ頑張ってほしいということで申し上げているので、どうですか、稲田大臣。

稲田国務大臣 一般論としては、委員の御指摘の点はよくわかります。

 ただ、何をもって適正な金額であるかというお尋ねでありますけれども、その何をもって適正であるかということについては、行革担当大臣として、今現在、お答えする立場にはないというふうに思います。

大熊委員 即答できないということであれば、それはそれで百歩譲って結構なんですが、ぜひ、例えば会社であれば、債権者なり株主であればある基準ですよね、例えば自己資本比率はこのぐらいとか、売り上げに対する比率でこのぐらいとか、いろいろな指標がありますよね、いろいろ民間の企業で財務指標。そういうものを踏まえて、では独法だったらこのぐらいという基準をしっかりと、今ないんですよ、はっきり言って。ないから数字が答えられない。後ろの方もうなずいているけれども、ないから。だから、こういうのをつくっていただきたい。

 独法はあと百個あるんです。これはまだ一個目ですよ。百二個あるうちの、あと百一個残っているんだから。一個目で一般質疑三回かかっているんだから、何回一般質疑をやるのか。次にまた選挙が来ちゃいますから、我が党の状況を考えると、次にまたこの場に立てるかどうか全くわかりませんので、これは私の任期中にぜひ百個終わらせたいんですよ。

 ぜひ、応援する観点で、事務方の細かい議論をまずさせていただきたいと思うので。いきなりこういう場での大臣の答弁じゃなくて結構です、まず事務方の皆さんとちょっと細かい議論を、数字の議論をさせていただきたいと思うので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 ちょっと、もうすぐお出になるというので、通告させていただいている、これも問題提起だけなんですが、もう一つ変なのがありまして、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構、これは新幹線の関係なんでしょうかね。

 この中で、特例業務勘定という勘定、この機構は非常にたくさんの勘定を抱えて、合併を契機にしていろいろあるんだろうと思うんですが、これは変なのは何が変かというと、処分用資産というのがあるんです。処分用資産というのがバランスシートに載っかっていて、処分用有価証券というのと、その他の処分用資産と書いてあるんですね。ところが、毎年毎年、処分用資産だから常識的には処分して減っていくはずじゃないですか、ところが、ふえていっているんです。こんなおかしなことはないですよねという、何でふえていっているのか。

 あるいは、有価証券について言うと、処分用有価証券、これは何なんですかね、千九百五十八億円が、ずっと千九百五十八億円なんですよ。証券会社に依頼するか信託銀行に依頼するか、つまり、売ってキャッシュにして国庫に戻してくださいよというために処分用なんでしょう。なのに何で処分されていないで、一年じゃないですよ、何年も処分されていないんですよ。

 千九百五十八億円、この有価証券は一体何で処分されていないのか。そして、その他の処分用財産が何でふえていっているのか。処分するんだったら、減って、現金にかわっていっているはずなのに、何でこういうことになっているのか、御教示いただきたいと思います。

宮島政府参考人 まず、処分用の有価証券につきましてでございますが、御指摘の処分用有価証券とは、国鉄の分割民営化により設立されましたJR北海道、JR四国、JR九州、JR貨物の株式であると承知しております。

 また、現在の残高は、二十四年度末決算額で千九百五十八億円となっておりまして、二十五年度末見込み額及び二十六年度末の見込み額も同額となっていると承知しております。

 これらが同額となっている理由につきましては、現在のところ、これらの四社の経営状況等に鑑み、当該有価証券を売却する見込みが立っていないからであると聞いているところでございます。

 また、もう一つの、その他の処分用資産のお話がございました。

 御指摘のその他の処分用資産とは、国鉄の分割民営化の際に承継した処分用土地等の資産でありまして、これまで順次売却を進めてきていると承知しております。これらの資産のうち、未処分の主なものは、大阪府の梅田駅の十五ヘクタール、仙台市の長町駅の二ヘクタールの土地であると聞いているところでございます。

柴山委員長 御答弁の途中ですけれども、稲田大臣が参議院の本会議に出席されますので、よろしいですか。では、どうぞ御退席ください。

 では、引き続き御答弁をお願いします。

宮島政府参考人 これらの土地の売却に向けましては、鉄道施設の撤去、移設等の工事を行い更地化する必要がありますが、会計処理上、その工事費がその他の処分用資産に上乗せされるため、増加する見込みとなっていると聞いているところでございます。

柴山委員長 大熊君、質疑時間が終了しました。

大熊委員 アベノミクスでJR株なんて上がっているんですよ。売ればいいじゃないですか。数%、たくさん持っているんだったら、それはいろいろ手法はあるんです、エクイティーデリバティブという、いろいろある、工夫ができるんです、株は上がっているんだから。何で売らないのか、おかしいじゃないですか。それを一言申し上げて、終わりにしたいと思います。

 以上です。

柴山委員長 次に、村上史好君。

村上(史)委員 生活の党の村上史好でございます。

 きょうは、甘利大臣にお聞きをしたいと思います。

 甘利大臣におかれましては、連日TPP交渉、大変お疲れのところお越しいただきまして、恐縮でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 さて、アベノミクス、スタート当初は海外からも評価をされる、期待感というのが大変大きなものがあったと私も認識をいたしておりますけれども、昨今の発言を聞いておりますと、海外からも、やや、アベノミクスの行く末に対する不安感、懸念というものが示されるようになってまいりました。

 その一つの例として、この四月の八日に、IMFの方から安倍総理に対して、景気回復を盤石にするために約束した改革を実行するようにという忠告があったと。報道ベースではございますけれども、こういう事実があったのかどうか、そして、あったのならば、政府としてはどのように受けとめておられるのか、お尋ねしたいと思います。

甘利国務大臣 御指摘のように、IMFが、日本の二〇一四年、これは暦年でありますけれども、成長率、これを修正しておりますが、当初の一・七%から一・四%に下方修正をしております。そして、二〇一五年、これも暦年、この成長率は一・〇%に鈍化するという見通しを示した、これは事実でございます。

 もちろん、IMFの見通しが、暦年、カレンダーイヤーであるのと、それから政府が発表する経済見通し、これは年度ベースですから、期間の違いがありますけれども、IMF自身が下方修正したのは事実でありまして、日本の経済見通しにつきまして、足元の統計等を踏まえてこういうふうに下方修正した、一・七から一・四にしたというふうに認識をいたしております。

 下方修正した理由について、内々にどういう理由をもとにということを聞いているんですけれども、幾つかあるんでしょうけれども、一番大きいのは、輸出が想定よりも伸びていないということを、下方修正している一番大きな理由にしているようであります。

村上(史)委員 まさに、輸出が伸びないということは、私も何度も大臣と議論させていただきました。円安誘導にしながらも国内の経済、景気がそれについていっていない、追いついていないということで、最後にまた質問させていただきますけれども、いわゆる内需の拡大の問題が背景にあるということを繰り返し申し上げてまいりました。

 特に、今回そういう形で海外の機関が日本の経済の見通しについて下方修正をするという大きな理由の一つは、今、輸出が伸びていないという御説明がありましたけれども、それとあわせて、いわゆる第三の矢の成長戦略あるいは規制改革などが思ったほど進んでいないということ、そしてまた、経済成長に合わせて構造改革あるいは財政再建への道筋が全く見えてこないという指摘の中でそのことが問われているのではないか。その点については、大臣、いかがお考えでしょうか。

甘利国務大臣 IMFにしてもOECDにしても、構造改革は重要な要素であるという指摘はいただいております。それが、第三の矢、成長戦略について具体的にどう発現をしていくのか、ここに非常に注目をいたしております。

 海外の経済学者によっては、第三の矢の具体的な成果を早く見せてくれないかと。自分たちが日本に対する期待と予測をしっかりと確認していくためにも、一の矢、二の矢はよく見えた、効果もわかった、三の矢の効果を実際に目の前に見せてくれというお話はよくあるのであります。

 ただ、成長戦略というのは、きょうやって、あしたすぐ何ができましたということではなくて、手順があります。

 臨時国会で、御案内のとおり、競争力強化法という、やるべき一番大枠の法律を出しましたし、国家戦略特区法というのも出しました、それから農地バンク法案も出しました。それに従って、今、この国会で、競争力強化に関しましては三十本程度の具体的な強化をする法律を出しているわけであります。

 具体的な成果が順を追って出ていくわけでありますけれども、例えば国家戦略特区については、いよいよ区域指定をいたしました。六地域を、コンセプトを決めて指定しまして、そこに具体的な規制緩和メニューというのをそろえて、投資がこれから始まっていく、投資を誘導していくということでありますし、ことしの初めに、成長戦略を具体的に実行していくための詳細な、いわばプログラムというんでしょうか、実行計画を決定しました。

 これは、向こう三年くらいの間に数十項目を実行していく。それは、誰が担当して、いつまでにきちっと成果を上げていくのかということを、担当者と期間を決めたわけであります。そういうふうに、次第に成長戦略の具体化、落とし込みを図っていっているわけであります。

 世界の企業が一番立地しやすい国を目指しての具体的な動きとか、あるいは、医療とか介護とか農業、従来はいわゆる成長エンジンには入っていませんでしたけれども、こういう従来は成長エンジンと言われなかったものを成長エンジン化していくための具体的な策等々、今、細かく決めて、実施計画に移っているところであります。

 企業実証特例の採用も何件かいたしました。成長戦略に従って、工程表に従って、少しずつ時間を追って、具体的な成果が発現していくということをしっかりと訴えていきたいと思っております。

村上(史)委員 もちろん、即効性、すぐに成長戦略として機能するかどうかというのは、タイムラグがあることは承知をしております。ただ、政府として、物価安定目標を二年以内、二年以内にそれを達成するんだ、そのために景気をよくしていくんだという期限を政府みずからがお持ちでございますので、今、即効性がないからもう少し待ってくれというだけでは、やはりちょっと説得力がないのではないかと思います。

 そういう中で、今現在の日本の経済がどういう状況にあるのか、そのことについて、消費税増税を受けて、大臣の御見解を伺いたいと思います。

 御承知のとおり、四月一日から消費税増税が実施をされました。そのために、さきの予算委員会では補正予算が組まれました。景気の腰折れ対策ということで、補正も組まれました。ところが、IMFではこの補正予算の規模にも言及をしておりますし、また、消費税増税のマイナス、そして経済対策のプラス、それを考えても、マイナスの方が大きいのではないかという懸念を示しております。

 現実に、消費増税前の駆け込み需要というものは、予想以上に高かったとも言われております。しかし、その反面、山が高ければ谷も深いということで、増税後の落ち込みが一層懸念をされておりますし、きょうの報道で、いわゆる家電の売り上げが、増税前に比べて、昨年に比しておよそ三〇%消費が落ちているということで、これは予想以上の落ち込みだということで、今後の先行きに懸念が広がっております。

 OECDにおいても、四―六期、マイナス二・九という成長率の見解を出しておりますけれども、もちろん、政府として、景気の腰折れ対策ということは前々から対応するとおっしゃっておりますけれども、こういう段階で新たに予想以上に厳しい落ち込みがあるのではないかという現状を踏まえて、どのような対策を打たれようとされるのか、再度確認したいと思います。

甘利国務大臣 山高ければ谷深し、それはおっしゃるとおりです。前回、消費税を三パーから五パーに上げたときにも、駆け込み需要があって、それに相応するような反動減というのがありました。前回は、消費自体は、実は四―六で落ちて、七―九で回復してきましたけれども、その後、通貨危機、金融危機というものが起こって、全部台なしになってしまったということであります。

 今回、そういう外的な要因はないと思いますけれども、加えて補正予算というのを対応いたしました。

 御指摘の実物経済の変動を見てみますと、さっきの家電の御指摘ですけれども、駆け込みが非常に強いです。三月は九〇%ぐらい伸びています。四月の第一週を見ますと、二〇パーくらい、今度は落ちています。四月全体を見てみないとまだ最終的な数字はわかりませんけれども、駆け込みが非常に強くて、反動減、そこまで強くないですけれども、あるということであります。

 ただ、小売分野においてはそれほど大きくないという声も聞こえてきます。ユニクロは影響ないというようなCEOからの発言があったというのを漏れ聞いておりますし、ビックカメラもほぼ巡航速度に戻ってきたというような話もきのう聞きました。ただ、この反動減については、月次じゃなくてなるべく短いタームをとっていきたいと思いまして、週次、一週間単位でとれる情報をとって注視していきたいと思います。

 それから、どういう対応をしているのかということの御指摘でありますけれども、補正を組みました、五・五兆円。これは、極力、落ち込みの部分にフォーカスを合わせて早期執行するということを、財務大臣そして私の方から要請いたしております。具体的に申し上げますと、六月末までに七割程度執行していく、九月末までに九割、そのほとんどを執行していく。

 それから、二十六年度、年度予算につきましても、六月末までに四割以上、九月末までに六割以上というふうに、前倒し執行できる部分、そこについては極力、落ち込みにフォーカスを合わせて出していって、反動減をできるだけ下支えしていこうというふうに考えております。

村上(史)委員 まさに、反動減対策として補正予算、そして本年度予算の極力前倒しの執行ということはずっと伺ってまいりました。もちろん、そのほとんどは、その中身は恐らく公共事業を中心とした内容になろうかと思います。

 この公共事業も、今までの景気対策として何度も何度も繰り返されてまいりました。しかし、この効果というのは限定的であるというのが一つの評価でもありますし、その結果、それが全てではありませんけれども、現在の借金が膨らんできたという経緯もございます。ですから、公共事業だけに頼っていくというのでは限界があるのではないかというふうに思います。

 最後にお尋ねをしたいんですけれども、まさに景気対策というのは国内対策であるわけであります。そういう視点から、今回あわせてIMFの方から、私は内需ということで何度も申し上げてまいりましたけれども、強い民需への転換が必要だということが指摘をされております。まさに、景気対策としての国内へのてこ入れ、これを早くすべきではないかという指摘でもあると思います。

 大臣と私で今まで何度か議論させていただいて、内需の回復、経済を転換させていくための施策を打つべきだということを申し上げて、大臣もその視点はそうだとおっしゃっておられますけれども、現実に、民需のてこ入れ、回復という面で、もっと強いインパクトのある政策を打ち出していくべきではないかなというふうに思います。

 海外の機関の指摘を受けるまでもなく、我々のこの日本国の経済でございます。日本国民の生活をより豊かにするためにも、この景気の回復というものは最も望まれているわけでありますので、勇断、果断をもって政策転換を図るべきではないか、そのように思いますが、最後に大臣の御見解を伺って、終わります。

甘利国務大臣 御指摘のように、公需というのは点火剤でありまして、民需、もっとより大きな経済主体が動いていくということがもちろん大事であります。

 そこで、内外バランスのとれた経済の拡張ということが必要だと思います。もちろん、内需を喚起していくための構造改革を進めていきます。同時に、成長する近隣経済も取り込んでいくということも同時進行で進めていっておりまして、内需、外需、バランスのとれた経済刺激策、対策を打って、刺激策というのは、財政上という意味ではなくて、規制緩和や税制等で投資意欲を発揮させるような、そういう方向で内需、外需をバランスよく取り込んでいきたいというふうに思っております。

村上(史)委員 ありがとうございました。

 ぜひ、今まで以上の、規制改革あるいは構造改革を含めて、積極的に政策を展開いただくことを心からお願い申し上げまして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、松田学君。

松田委員 日本維新の会の松田学でございます。

 甘利大臣、TPP問題でお悩みのときに、この委員会で全く別の議論をさせていただくのも大変恐縮ではございますが、ちょっと消費税を中心に、大変重要な問題なので、幾つか確認をさせていただきたいと思っています。

 前回の一般質疑で、私の質疑の際に、本日お配りのお手元の資料の三枚目、同じものを配っていますが、その際に、前回、九七年のときの消費税引き上げのときに、四―六月期は反動減で落ち込んだけれども、七―九月期は巡航速度の成長に回復している、消費税の影響というのは一旦そこで消えて、不況というのは、その後の、十一月の大手金融機関破綻を契機にした、そういった意味での日本のマネー収縮といいますか、そういったものを契機にしてデフレに突入していったということで、消費税がその後の不況や税収の減収になったという見方が非常に多いものですから、必ずしもそんなこともないんだということを申し上げて、大臣もその認識は同じだということをおっしゃっていただいたと思います。

 ところで、これから一番重要な問題になってくるのが、次の、来年十月の、さらに二%引き上げる、これをどうするかということなんですが、これも、景気との関連でどうするかということを論じられていることが非常に多いんです。

 この通常国会の予算委員会、二月十三日に、総理の答弁も、「七―九の段階において、消費税引き上げによる影響の後に、しっかりとまた現在のこの勢いを、成長軌道に戻れるかどうかということも見きわめながら判断をしていきたい。」、甘利大臣も、「八パー、一〇パーの判断というのは、経済状況が非常に判断材料として大きな要素を占めると思います。」というふうに御答弁されているわけであります。

 ところが、経済状況の判断といっても、御案内のように、ことし中に決めるというのは、来年度の予算編成のこともあると思いますから、そういうことではありますが、ことしの年末に出ている経済指標というのは、これは、ことしの七―九月期のGDP速報までなんですね。そうしますと、実際に引き上げになるのは来年の十月としても、出ている指標は一年以上前の指標である。

 今回の三%の引き上げについても、最終決定する直前の指標というのは、二〇一三年、昨年の四―六月期のGDP速報が出て、そのときに、実質GDP、前期比年率で二・六%という数字が出て、当時を思い出しますと、いろいろなエコノミストが、二・六%という数字ではまだ心配だと言っているエコノミストもいれば、二・六%、そこそこ成長しているから引き上げられると言ったり、いろいろな意見が出ていたわけなんですね。

 ところが、いずれにしても、引き上げということが決定した後に昨年七―九月期のGDPが出まして、そのときに、四―六月期のGDP速報が改定になりまして、二・六%から三・六%へ上方修正されて、同時に発表された七―九月期のGDPの前期比年率が一・一%と、伸びが四―六に比べてぐっと低下して、しかも、その内容が、公共投資と駆け込み需要前の民需であるということで、自律的な民間需要の成長ということは必ずしも描かれていなかった。

 こうやって考えてみますと、四―六月期のときの二・六%という数字では消費増税が心配だと言ったエコノミストは、その後、改定されて三・六%になった、しかし、七―九月期は一・一%に落ちている。そういうように判断材料がころころ変わるわけですね。

 判断材料がころころ変わることについて、ことしの年末に七―九月期のGDPを見て、それで判断するというのは、私はどうも、経済状況を見てといっても、どの経済状況を見るのか。よほどのことがなければ、これは例えばリーマン・ショックみたいなものが起こって、来年、一年以上後に向けてよほど経済が停滞しているとか、そういうことが確実に予想されるとか、そうでもない限り、経済状況を勘案してというのは、何かちょっと違和感、おかしいなという面があるんですけれども、この点についての甘利大臣の所見をお伺いしたいと思います。

甘利国務大臣 法律には、各般の経済状況をしっかり精査して判断をするということが書いてあります。総理は、十二月中に判断をしたいというふうにおっしゃっています。慎重にされると思うんですが。

 御指摘のように、経済状況が引き上げにふさわしいかというのは、それは直近が一番いいのでありまして、十月からどうするかというのは、九月に見るのが一番経済状況はいいんですけれども、そうしますと、手続上もう対応できないという混乱が起きるわけであります。

 今回の判断は半年前にやりましたが、では、これが法律上、半年前にやれと書いてあるのかというと、それは書いていないんですが、あえて引き合いに出すとすると、住宅の対応が半年前契約ということがありますから、それは一つの基準になるのかもしれません。

 では、そこからいって、半年前ということになると、四月ですよね。これは予算をやっている最中かもわからない。委員は大蔵省にいらっしゃいましたから、そういうときにどういうことが起こるかというのは私以上によく御存じでいらっしゃいます。それも一つの混乱になるかと思います。それで恐らく総理は、ぎりぎりの段階、予算編成等のこともあって十二月ということをおっしゃったんだと思います。

 そうすると、七―九の数字が出てくるのは十一月です。私が内閣府に命じておりますのは、できるだけ月次ベースでとれる情報は徹底的にとれと。それ以降、七―九以降、直近までどういうふうに変わっていくのか。十二月の判断材料として、七―九だけですと、これはちょっと正確な判断ができるかどうか厳しいぞということで、月次でとれる情報、あらゆる情報をそろえろということを命じております。

 直近の経済状況を見通すことの難しさというのは、御指摘のとおり、なかなか悩ましいところであります。

    〔委員長退席、橘委員長代理着席〕

松田委員 結局、これは経済状況を見きわめてという、法律にも書いてあるのは事実なんですが、それが意味するところは、足元でよほど大きな経済の大変動、リーマン・ショックみたいな、そういうものがあるかどうかを見きわめてということ、それから、直近、幾ら月次で見きわめても、一年後、一年近く後のことなので、やはりそこはちょっと無理があるかなという感じがいたします。

 やはりそこは、よほどの経済変動がなければ上げるということを想定しているんだというふうに理解せざるを得ないんですが、もう一度、大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 これは日本が初めてトライすることですよね、この短期間の間に二回引き上げるということは。これは、私は総理大臣ではありませんから総理の本当の心境はわかりませんけれども、相当慎重になられると思います。

 ということは、つまり、五パーから八パーに上げて、この回復の力強さがどうなっていくのかということも総理は注視をされて、五パーから八パーに引き上げたときの判断以上に慎重に取り組まれるのではないかと思います。特に、五パーから八パーに引き上げたときよりも判断環境というのはシビアでありますから、そこは相当慎重になるんじゃないかなと推測をいたしております。

松田委員 日本は、九七年のときに、消費税とは別の要因でその後大不況になったので、大きなトラウマを背負ってしまっているので、当然、皆さん慎重になってしまうということだと思うんです。

 ドイツでは、二〇〇七年に付加価値税率が一六パーから一九パーに上がりまして、あのときは、ドイツは、今回のように景気対策も何もしないで、所得税まで引き上げになっている。いろいろな増税が行われたんですが、景気に影響はほとんどなくて、その後も税収もどんとふえている。あれも、ドイツも、その後リーマン・ショックに入る前の景気が非常にいい時期に行って、そういうことがあった。しかも、ドイツの場合は、社会保障ということに限らず、財源が不足していたから、財政再建のためにやった増税だったといった事例もあった。

 付加価値税率、欧州諸国は二〇%前後の国々がたくさんあるんですが、今までずっといろいろな引き上げをやってきて今日に至っていて、その都度、経済が心配だ心配だと言っていたら、欧州の経済は今ごろ経済破綻、崩壊しているんじゃないかと思うんです。

 私がこうやって申し上げるのは、もう少し消費税についての理解を共有すべきじゃないかと思うことがございます。

 これはお配りした資料の二枚目なんですけれども、消費税は国民から国民へのお金の移転である、社会保障目的税であれば、こういう捉え方。

 こういうことを言うと、私は財務省の出身なものですから、財務省の詭弁であるというふうにいつも怒られるんですが、でも、これは経済的に見て、将来世代ということを私たちは国民の中でいつも外して考えているんですが、将来世代まで入れれば、これは要するに、現役世代と高齢世代が負担していなかった分が将来世代の負担になっていて、将来世代に負担を負わせていた分を適正化して現役世代と高齢世代が担う、また、超高齢化社会の財源の負担を平準化しようということではないか。

 これはちょっと、わかりやすいかわかりにくいかは、私もこういうポンチ絵は余りうまくないものですから別にしまして、もう少しこういう理解をきちっとしますと、国民から国民へのお金の移転なので、基本的な性格はそうなので、これは景気に悪くなるというものでは本来はないはずなんです。これはいろいろな説もあろうかと思いますが、特に、経済学では財政乗数というのがあって、増税額と同じだけ歳出をふやすと乗数一だけ経済効果があるという説もあるぐらいで、そのまま現実に言っていいかどうかは別にしまして。

 ただ、今回、今大臣もおっしゃったように、我が国が初めての経験というのは、一年半の間で五%急に上げる。私は、こういうふうな状態に日本が追い込まれた、あるいは追い込んだというか、もしかしたら政治の怠慢だったのかもしれませんが、それが非常に大きなこれからの負担になって、その負担というのは何かというと、今回私どもがやっているのは、必要な支出に応じて税負担を上げるのではなくて、本来税負担すべきものをしていなかった、後世代にツケ回した分を適正化して、その分は我々の世代が新たにきちっと負担しようと。そこの部分がまさに新しい負担だというふうに判断すべきだと思うんですね。

 ですから、国民に負担を求める以上というふうに、よくそういう言葉を使いますけれども、その負担が幾らであるのかというのが本来きちっと計算されていてしかるべきだと思うんです。その負担というのは、恐らく、国ベースでいえば、消費増税によってどれだけ赤字国債の発行減に寄与するか、あるいは地方もそうだと思いますが、それを少し金額的にはっきり明らかにしてほしいと私は思うんですが、大臣から、その金額的なことについても含めて御答弁いただければありがたいと思います。

甘利国務大臣 おっしゃるように、赤字国債で政策経費を賄うということは、消費は今の世代が受けます、請求書は将来の世代に回しますということですから、これは、今の世代が受けるサービスは今の世代の負担でというのは、本来の、真っ当な考え方だ、それは御指摘のとおりであります。

 そして、将来世代への負担をどう減らしていくかというお話でありますけれども、今回の消費税引き上げによる増収分、これをどう充てていくかというと、社会保障の充実、それから基礎年金国庫負担割合二分の一への引き上げ、それから消費税引き上げに伴う社会保障四経費の増、これは診療報酬にもきちっと入れていかなきゃならないわけでありますから、それから後代への負担のツケ回しの軽減に向けるということにされているわけであります。二十六年度予算で見ますと、後代への負担のツケ回しの軽減に該当する部分、国、地方ベースでいいますと一・三兆円程度、それが向かうということになっております。

 ただ、二分の一への引き上げも、実は、安定財源がなくてやったわけですから、これももうちょっと広範囲にとればツケ回しですよね。だから、この分も入ってくるというふうに私は思っております。

 それから、一〇%の話も含めて言いますか。(松田委員「お願いします」と呼ぶ)

 それから、仮に一〇%に引き上げた場合です。その場合は、増収分が満年度化する平成二十九年度、つまり二〇一七年度でいいますと、後代への負担のツケ回しの軽減に国、地方ベースで七・三兆円、それ以外に、これも基礎年金の部分が、この年度でいうと三・二兆円程度あります。ですから、七・三兆円、そして三・二兆円をどう見るかということだと思います。

松田委員 どうもありがとうございます。なかなかこういう数字が明確に示されてこなかったと思うので、非常にありがたい御答弁をいただいたと思います。

 そうしますと、二十六年度は一・三兆円プラス年金分ということなんですが、政府は、一方で、この負担が経済に与える影響を緩和するために五・五兆円の補正を組んだわけですね。基本的にこれは税収増を充てている。しかし、税収増というのは、過去の国債発行の減額に充てて、毎年の利払い費、償還負担を減らしていくというのが本来の財政運営の筋なんですけれども、しかし、消費税が景気を悪化させてはいけないということで五・五兆円を積んだ。

 私は、これはやはり、必要な税負担増を先送りしてきてこの一年半の間に五%上げなきゃいけないということをもたらした、これも一つのコストになってしまったなと。つまり、やるべきことを先送りしていくと、結局は国民経済的なコストがいろいろな形で発生してくるということで、これから我が国民は一年半の間にこのコストを払うという苦しみを味わうというか、そういうことになってしまったような気がしないでもありません。

 特に、今お示しいただいた、二〇一七年度では七・三兆円プラス基礎年金の分があるということでありますので、ここの部分もそういう意味では今の世代にとっては純負担ということになりますので、これについてもどういう対応をするのかということをやはり考えていかなければならなくなった。

 私は何を言いたいかといいますと、我が党はできたばかりの政党ですから自由に物が言えるんですが、やはり長年にわたって政治がきちっと課題に向き合ってこなかったということのツケを我々が今払おうとしている、これからの世代が払おうとしているという証左であって、では、ほかの国はどうしているかというと、例えばドイツですと、付加価値税率を三年ぐらいにわたって毎年一%ずつ引き上げていった、そんな時期もありまして、少しずつ引き上げるというやり方もあったんですね。

 これは、必ずしもリアリティーのある議論かどうか別にしまして、よく言われることなんですが、例えば、消費税率というのは毎年一%ずつ上がっていくんだということが長期的にプログラム化されていますと、消費者も、いわゆる駆け込み需要的なものがずっと起こっていくということになりますから、これは景気にもプラスであるし、あるいは企業の側も、毎年消費税率が一%上がっていくと、生産性をその分克服しようという一種の努力目標ができてプラスなんだ、そういった意味で経済的にはいいんじゃないかという説をおっしゃる方が結構いらっしゃいます。

 実務的にも、これは難しいと言われるんですが、いろいろな中小企業の経営者に聞いてみますと、それさえ決めてくれれば、そういうプログラムをつくればいいんだという話もあるんですが、そういう説につきまして大臣はどんなふうにお考えになるか、御答弁ください。

甘利国務大臣 確かに、毎年駆け込み需要という説もあります。

 ただ、委員御指摘のとおり、実務上のコストが大変だとか、それから毎年毎年転嫁が円滑にできるかを悩まなきゃならないとか、いろいろな声が聞こえてきます。

 理屈の上からは、反動減よりも駆け込みの連続ということも言えるのかもしれませんけれども、実務上はなかなか大変かなというふうに考えています。

松田委員 大半の方はそうおっしゃるんですが、実際にヨーロッパなんかでそういうのに近いことをやっていた国があったということ。それができないのは、インボイスが日本ではないとか、いろいろなインフラができていないということもあると思います。

 これからやはり課題にきちっと向き合うとすれば、消費税、なかなか選挙のことを考えると言えないというのは、政治家の立場はそうかもしれませんが、やはり長期的に、消費税を上げるたびに政局になるような大騒動が起こるようでは、とてもこの超高齢化社会を真面目に乗り切ることができない。消費税だけに頼るのが社会保障ではないと私は思っていますけれども、その辺もこれからいろいろ工夫が必要かなと思っています。

 それから、この消費税の引き上げについて、意外と有権者の方々が、最近ではさすがにわかり始めてきたと思うんですが、社会保障に全額を充てられているということを知らない方が実に多いんですね。ですから、これは公務員の給料に充てられるんじゃないかと思っていた方もいるかもしれませんし、そういった意味で、いや、実は今までも高齢者三経費なんですということを言うと、驚いている方が結構いらっしゃった。

 これからも社会保障四経費なんですということなんですが、そういうことを少しわかりやすくするために、この配付した資料、これは予算委員会でもちょっと配らせていただきましたけれども、財務省がつくった資料でして、私が財務金融委員会にいたころに、麻生大臣にも、こういうように、一般会計の中で、歳出を社会保障にして、歳入は消費税収、社会保障の特定財源なんだと。そして、残りは借金になっている、次の世代になっているということをわかりやすく示した方がいいんじゃないかというふうな質問なんかをさせていただいたんですが、今回の予算の説明からこういうものが入るようになった。

 私は、これは大変評価しているんですけれども、経済財政担当大臣の立場から見ても、この財源、受益と負担との関係がもう少しわかりやすい財政運営ということを、私が旧大蔵省にいたときは、財政といえば大蔵省だけがやっていたのが、今は経済財政担当大臣と、二人、財政を担当する大臣がいらっしゃるので、それぞれのお立場から財政をよくしていくということだと思うんですけれども、やはり経済財政というお立場に立たれれば、そういったことも提案すべきお立場ではないかと思いますが、特別会計とまでは言いませんけれども、こういうような財政運営について、ちゃんとわかりやすくするということについては、大臣としてはどんなふうにお考えなんでしょうか。

甘利国務大臣 消費税が、全額社会保障、従来は三経費、今回は子育て含めて四経費に充てられる、これは法律できちんと縛りがかかっているものですということを知らしめるのは、非常に大事なことです。

 そして、会計の上でも、具体的に、これだけ入ってきて、こういうふうに使われているということが目に見えるのは、受益と負担の関係では極めて説得力があることだと思います。

 それをどういうふうに会計の中で仕組んでいくか、いろいろな御議論があります。できるだけいいとこ取りをして、御趣旨に沿えるような工夫はしていくべきだと担当大臣としては考えております。

松田委員 その一つの提案としてあるのが、私どもが公会計改革と言っているのは、決して意味のないことではないものだと私は思っています。

 これは、財務省が反対しているものも結構ありますけれども、いわゆる複式会計ですね。発生主義で、今は決算の段階ではそれが発表されているけれども、予算の段階でそういうことをやるべきだ。これは、実務的に大変だということで財務省も猛反対しているんですが。

 ただ、経済財政担当大臣の立場から見れば、これはイギリスで、お手元の配付資料の四枚目に、これはちょっと調べてみたところ、この一番上に複数年度予算とありまして、これは閣議決定なんですが、議会の議決を経るものじゃないんですが、こういった一定の数年間にわたる財政の見通し的なものをいわゆる国民経済計算ベースということで策定をして、しかもそれも、見ていただくと、経常的支出と資本的支出、資源予算と資本予算を分ける、経費の性格別にこういう分類をした上で、そしてこれに基づいて単年度予算が編成されて、その単年度予算も発生主義ベースのものが中心になっていて、日本でやっている現金主義ベースというのは、一番下にある純現金要求額、最後にこれが変換されて出てくる。こういうような仕組みというのが既に機能しているんですね。

 例えばこういうものを旧経済企画庁の内閣府というのが政府の中で提案していくという立場にあるのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 単年度主義等の今の予算制度のいろいろな不都合な点というのは、いろいろ指摘をされております。複数年度にまたがる知恵として基金をつくったら、その基金がかえっていろいろと問題を起こしているじゃないかという御指摘も各委員会でいただいているわけであります。

 国の予算というのは、国民の皆さんから預かった税金を一年間の間でどういうふうに使う予定なのかを明確に示して、それについて財政民主主義の原則のもとに国会の議決を得ることが重要だということなんでありますが、今、国会における予算審議権の確保という観点から予算を毎年度国会で御審議いただいている、これがいわゆる単年度主義ということでありますが、国会による財政の確実なコントロールや国民にとってのわかりやすさという観点から、一年間の現金の出納を網羅的に現金主義によって確保しているということであります。

 他方、単年度予算ではなくて複数年度予算を策定すべきではないかという今の委員のような御指摘について、政府として、中期財政計画に基づきまして、中長期の経済財政に関する試算におきまして、今後十年間、十年程度の経済財政の姿を示しているところでありまして、毎年度の予算編成は中長期試算を踏まえて行われているところであります。

 それから、現金主義ではなく発生主義の予算を策定すべきではないかという御指摘でありますけれども、国の財政状況に関する説明責任の向上であるとか、予算執行の効率化、適正化に関する財務情報の提供を目的として、平成十五年度決算分より、発生主義の複式簿記の考え方や手法による国の財務書類を作成、公表しているところであります。こうした情報もあわせて公表することで、国民の皆様にも我が国の財政の状況をさまざまな面から把握していただきたいというふうに考えております。

 御指摘の点は、かねてより委員の御持論でいらっしゃいますし、委員以外からもいろいろ御指摘をいただいております。財務省が考えるメリット、デメリット等々も踏まえて、いろいろ今議論が行われているところと承知をいたしております。

    〔橘委員長代理退席、委員長着席〕

松田委員 これはまたしっかりと議論を深めていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

 それから、もうわずかの時間で恐縮ですが、菅官房長官にちょっとお伺いしたいと思います。

 前回、私の一般質疑における菅長官の御答弁もそうでしたが、砂川判決については、砂川判決がちゃんとあって、その後きちっといろいろな議論が整理されてこなかった、集団的自衛権の検討に当たって、そういうものも、今までの議論も整理しながら考えていきたいという、一種の、この砂川判決も一つの念頭に置きながらこれからの検討を進めていくというような趣旨の御答弁だったかと思いますし、また報道によりますと、法制懇もこの判決に基づいた検討をするというような報道も流れておりましたけれども、そういう理解でいいのかどうか。

 そして、先ほど後藤委員の質問にもありましたが、この砂川判決というのが、個別的自衛権について言っているもので集団的自衛権については全く関係ないんだという議論もあれば、それについての何の判断も示しているものじゃないんだという、いろいろな見方があるんですが、こういった見方がばらばらになっているといった状態で、この大昔に出た判決について政府がどういうふうに考えているかというのも明確にしないまま日本の安全保障が構築されてきたというのも、私もいかにもちょっと恐ろしいような気持ちもするんですけれども、官房長官、御答弁をいただければと思います。

菅国務大臣 安保法制懇の中で議論をされている、この砂川事件だけでなくて、さまざまな今までの判断の中で議論されている、そのうちの一つだというふうに考えております。

 ですから、これから、今、そうした議論を踏まえて、報告書を受けた後に政府としての基本方針というのは示して、与党との、最初入るわけですけれども、この砂川事件に関する判断だけということではなくて、さまざまということで御理解をいただければありがたいと思います。

松田委員 今はとにかく安保法制懇の検討だということで、中身についての御答弁はなかなかいただけないものというふうに今回も確認させていただいているところでございます。

 しかし、このいわゆる憲法解釈、現行の集団的自衛権を行使できないという解釈は、国会でのいろいろな議論の積み重ねでできたものでありますので、先ほども手順についての御答弁がございましたが、閣議決定をしてそれで決まりということで、もしそうであるとしても、その前にやはり国会での審議というものを十分尽くしてからの閣議決定じゃないといけないと思いますけれども、その点、官房長官、国会審議との関係について御答弁いただければと思います。

菅国務大臣 たびたびこの場でも申し上げておりますけれども、やはり政府としての基本的な方向を示すということはまず大事だと思います。

 そういう中で、政府の考えがまだ固まっていない、与党との間で固まっていないうちに国会で議論しても、総理として国会でも確たる方針というものは示すことができませんから、ここは、法制局とも相談をしながら、その方向性を、まず与党との中でその考え方を共有し、そこで、閣議決定した後に国会でこの部分については審議をすることがやはり当然のことだというふうに思います。

 ただ、それをいざ具体的に行使していくという形になった場合には、それはさまざまな法案を国会でお願いするようになるわけですから、今のところはまずその提出を待っているというところであります。

柴山委員長 松田君、質疑時間を終了しております。

松田委員 そういうことであっても、国会としては、これをできるだけたくさん議論して、それで臨んでいきたいと思っています。ぜひよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、杉田水脈さん。

杉田委員 日本維新の会の杉田水脈です。きょうもよろしくお願いいたします。

 まず最初に、日本の国益増進に資するよう、アジアを含め、欧米各国における対日理解、好感度を向上させる広報費についてお伺いしたいと思います。

 これは、昨年初めて内閣府の方で予算がとられておりまして、昨年度、二十五年度は五億円だったんですけれども、今年度はこれが三倍になりまして、十五億円の予算化がなされております。実際にどのように機能的、効率的な広報を行っていくのかというようなことが、まさしく国民の皆さん、関心のあるところではないかと思うんですけれども、ちょっときょうは具体的にお聞きしたいことがありますので、よろしくお願いいたします。

 まずは、アメリカのグレンデール市に建立されました慰安婦像のことにつきまして、現地に在住の日本人それから日系人の人たちでつくるNPO法人、歴史の真実を求める世界連合会というところが、このたび、アメリカのカリフォルニア州グレンデール市に設置された慰安婦像の撤去を求めて、グレンデール市を相手取って裁判を起こしました。グレンデール市を提訴しています。

 この裁判の詳細というのをどこまで把握なさっているか、まずお尋ねしたいと思います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 本年二月二十日、歴史の真実を求める世界連合会が、米国カリフォルニア州グレンデール市等に対して、米国連邦政府の地方裁判所に提訴したというふうに承知しております。原告は、グレンデール市における慰安婦像設置は、連邦政府の行政部門に外交問題を管轄する権限を付与している米国憲法に違反する行為である、そういう立場から慰安婦像の撤去を求めているというふうに承知しているところでございます。

 具体的には、連邦政府の権限である外交に地方政府が関与できないこと、二番目に、慰安婦像と碑文は市の条例に反すること、さらには三番目に、碑文は市議会決議を経ておらず無効であること、そういったようなことを論拠にいたしまして慰安婦像の撤去を求めているというふうに承知しているところでございます。

杉田委員 ありがとうございます。

 それで、この裁判の原告の方々が、先月の十一日なんですけれども、国会内で報告会を開きました。この会合には、西川京子文部科学副大臣ら与野党の先生、野党の国会議員が多く出席をいたしました。きょうこの中にいらっしゃる先生の中にも、来ていただいた方もいらっしゃいます。

 そのときに、原告の一人の目良浩一さんという方なんですが、この方はハーバード大学の元助教授で、非常に熱心にこの問題に取り組んでいらっしゃるんですけれども、これが勝訴して判例ができれば米国の他の自治体が慰安婦像をつくるのを阻止することができるということで、非常にこの訴訟は意義がある訴訟であるというようなことを説明されました。

 結局、この民間の方々が今この裁判を闘っております。なかなかいい弁護士さんがついたというふうなことも聞いているんですが、向こう側も非常に能力の高い弁護士さんを雇ったというようなこともニュースで報道されておりますし、目良氏は、連邦の最高裁まで訴訟が続いた場合に、期間にすれば大体五、六年かかる、その中で費用が約六億円ぐらいかかるというようなことをおっしゃっていました。

 これは、寄附を呼びかけて、かなり寄附は集まっているんですが、とてもじゃないですけれども六億円も寄附は集まっていないです。この間の報告会の中でも、海外で日本人としての誇りを持って子孫の名誉のために率先して闘おうとしている同胞を守ってほしいということで、日本政府に支援を求めていました。

 政府としてどのような支援ができるのか。そして、先ほど私申し上げました、日本の国益の増進に資するよう、アジアを含め、欧米各国における対日理解、好感度を向上させる広報費、この広報費というのはこういうところに使用していくべきじゃないかと私は思うんですけれども、このあたり、どのようにお考えか、お答えいただきたいと思います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 そもそも、慰安婦像の設置につきましては、我が国政府の立場と相入れないものであり、極めて残念であるというふうに考えておりますし、本件訴訟もそのような思いの中で起こされたものというふうに認識しております。

 その上で申し上げますれば、本件訴訟自体につきましては、米国内の裁判所において民間団体が提訴した係争中の訴訟でございますので、そして、日本政府自身が当事者ではございませんので、個別具体的にどういうふうに、その中身についてコメントないしは支援するというのはなかなか難しい面があるのかなというふうに考えてございます。

 他方で、今御指摘がございましたように、歴史の問題に関しましては、やはり、政府として、政治問題、外交問題化させるべきではないという基本的な立場のもとで、日本の立場、日本のこれまでの取り組みなどについて、もし海外において誤解が生じている場合であれば、国際社会の正しい理解を得るべく、日本政府の立場やこれまでの取り組みについてしっかり説明するなどして、対外的な広報を戦略的に行っていかなければならないというふうに考えておりまして、これからもそういうふうに取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

 そういう意味で、この訴訟に関連いたしましても、この従軍慰安婦問題に関しましても、我が国の大使館及び総領事館を通じまして、重層的に情報収集を行うと同時に、必要に応じて、関係する議会や地方自治体の関係者、あるいは世論に影響力のある有識者やメディア等に対して理解を得るべく努めていきたいというふうに考えているところでございます。

 このように、国際社会の正しい理解を得るべく対外的な広報を強化していくことは非常に重要でありまして、我が国の国益の実現に資するよう、効果的な発信に努めていきたいというふうに考えているところでございます。

杉田委員 これまでも、これからもという御答弁をいただいたんですけれども、これまでやってきた中で、実際に慰安婦像がアメリカに建ってしまったということがあるんですよ。その中で、この方々は、もし勝訴すればもうアメリカの中でほかの自治体が慰安婦像を建てることができなくなる、それを阻止するために闘っているんですよ。

 では、ほかの手段でこれを阻止する手段はありますか。これからも強化されるというふうな答弁でしたけれども。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの答弁とちょっと重複いたしますけれども、海外におけますこのような慰安婦像等の設置や決議に関しましては、現地の我が方大使館及び総領事館を通じて、これまでも、いろいろ情報収集を行うと同時に、いろいろなチャンネルを通じまして、必要に応じて、議会、地方自治体の関係者の方々に対して、直接、間接、あるいは世論に影響力のある有識者やメディアに対して働きかけを行い、慰安婦問題についての日本政府の考え方やこれまでの取り組みについて理解を求めるように努力してきたところでございます。

 いずれにしましても、日本政府としては、この問題は政治問題や外交問題化させるべきではないという基本的な立場のもとで、海外において誤解が生じている場合には、取り組みをさらに説明して、理解が得られるように、これからも積極的に取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

杉田委員 では、私たち一般国民は、日本政府と外務省の働きを信じていれば、もう世界じゅうに慰安婦像は建たないんですか。これ以上建たないですか、アメリカに。皆さんが頑張ってくださると今おっしゃいましたけれども。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 これからも、大使館、総領事館を通じまして働きかけを、いろいろな手だてを使いまして、最大限努力していきたいというふうに考えているところでございます。

杉田委員 最大限の努力で、一切建たないというような確約はしていただけないようなので、ちょっとこれは、アメリカから話をオーストラリアの方に持っていきたいと思います。

 オーストラリアのシドニーの近郊のストラスフィールドの市議会が、今月一日に、慰安婦像の設置の当否をめぐる初の審議会を開催いたしました。その中で、中国系と韓国系の市民が連携して同市に設置の嘆願書を出していたんですけれども、その内容を把握していらっしゃいますか。

下川政府参考人 ただいま御質問になりましたオーストラリア・シドニー市近郊のストラスフィールド市の話でございますが、本年四月一日に、慰安婦像の設置をめぐりまして、市議会公開セッションにおいて、中国、韓国系コミュニティーから提出された嘆願書について審議が行われたというふうに承知しております。

 その後、非公開セッションにおきまして、市長を含む市議会議員七名が議論し、慰安婦像の設置案については、これは地方自治体が判断できる事項ではないということで、連邦政府及び州政府に意見を照会する、そういう結論を発表したというふうに承知しているところでございます。

杉田委員 おっしゃったとおりなんですね。

 今回は、これは地方の議会が決めることではない、州か連邦政府の立場を明確にして、それに従うと言っているんですね。だから、オーストラリアのストラスフィールド市における慰安婦像の設置は一旦とまったようには見えますけれども、今後、連邦政府とかがもしもこれは建てるべきだという判断をすれば、今度はオーストラリアじゅうにこの慰安婦像が建ってしまうわけなんですよ。

 だから、ここのところに対して、日本政府として、今後、どのような働きかけをしていかれるんでしょうか。

下川政府参考人 ただいま御説明申し上げましたオーストラリアにおけます動きにつきましては、我が方の在オーストラリアの公館からも報告を受けているところでございまして、我が方としましても、状況を注視すると同時に、必要な働きかけ、先ほど申し上げましたような、我が国の取り組みに対する理解などについての説明ということもしっかりとやっているところでございます。

 先生御指摘のとおり、このプロセスは今後も続いていくことになりますので、今後も、引き続き情報収集、それから必要な働きかけということをやっていきたいというふうに考えているところでございます。

杉田委員 何回聞いても情報収集と必要な働きかけという答弁しか返ってこないんですけれども、どうしてこんなに日本政府、働きかけとおっしゃっても、強い働きかけは全くなされていないですよね。

 先ほど申し上げました、私はきょうは広報予算のことについて質問をしているんですよ。今後、広報予算をいかに戦略的に使って、ことしは十五億もとっているわけですから、ぜひこういった慰安婦像の設置なんかを阻止していただきたいと思っているんです。これは、対日理解、それから日本の好感度を上げる一番の目的はここにないといけないと私は思っているんですよ。

 その予算を使っていく、広報をこれからしていくにおいて、一点、私は、ちょっと明らかにしていただきたいことがあるんですが、きょう皆さんの方に資料としてお配りしております、いわゆる昭和二十年の九月に連合国の最高司令部が発したプレスコードです。

 きょうは三十項目全部、皆さんのお手元の方にお配りしておりますけれども、ここにいろいろ書かれているんですよ。こういったことは日本の報道機関は報道してはいけないというような、そのような指針だったんですけれども、これは現在も効力を持っているんですか。

水嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の連合国最高司令官が発出いたしましたプレスコードに関する総司令部覚書に基づいてとられた措置は、サンフランシスコ平和条約の発効に伴いまして失効してございます。

杉田委員 既にもう失効しているという御答弁であって、私もそのとおりだとは思うんですけれども、今考えると、失効しているとは思えないんですね。いまだに、日本の報道はこれにとらわれているように思いますし、日本政府の対応だとか見解とかもこれにとらわれているように思えて仕方がないんですよ。

 きのう、ちょうど上智大学の渡部昇一名誉教授が来られまして、国会内での勉強会がありました。その中で渡部教授がおっしゃったのは、今、世界的に見て、歴史問題が時事問題になっているんだ、時事問題として対応していかなければいけないんだ、いつまでたっても外交問題化しませんと言っているのでは日本はどんどんどんどんおくれていってしまうというようなことをおっしゃっているんです。

 このプレスコードは、先ほど、もう失効されていると言われたんですけれども、実は、昭和三十年代の初頭ぐらいまで新聞の部分はずっとGHQが握っていたという事実があります。だから、完全に失効していないんじゃないかという疑念があるんですけれども、このあたりはどうお考えですか。

水嶋政府参考人 先ほどの答弁の繰り返しになって恐縮でございますが、連合国の最高司令官の発出いたしましたプレスコードに関する総司令部覚書、これにつきましては、サンフランシスコ平和条約の発効に伴って失効しておるということでございます。

杉田委員 失効しているということですので、どうかこれをごらんになっていらっしゃる報道機関の皆さんとかは、こういったことにとらわれず、きっちりした報道をしていっていただきたいと思います。

 失効しているのならば、例えば、習近平国家主席がドイツで、南京大虐殺で三十万人、日本人に虐殺されたというような演説をしたんですけれども、これに対して、では、日本の総理なり官房長官なりが南京大虐殺はありませんでしたという事実をどうして反論しないんですか。

菅国務大臣 中国の主席の発言については、私の方から記者会見ですぐ抗議をしました。そしてまた、外務省ルートを通じてそこも申し上げました。

 ぜひ御理解をいただきたいんですけれども、私たちが政権の座に着いてから、やはりこの問題というのは極めて重要だというふうに私たちは考えております。そして、海外広報の広報費、三倍になったという話がありましたけれども、私たちは、まさにこの宣伝力、戦略的にこうしたことに対して国として取り組まな過ぎた、そこは反省をしなきゃならないというまず出発点に立ちまして、広報関連の予算を倍にさせていただきました。

 倍にしても、他国と比較をして非常に少ないということも事実です。しかし、その少ない中にあっても、私たちは、何かあったらすぐその場で対応するという、そこのことについて、外務省にここは指示をいたしました。

 国民の皆さんの思いをしっかりと反映することができるように、今政府としては取り組んでおるところであります。

 そして、これも御理解をいただきたいんですけれども、教科書につきましても、私たちは、一月二十八日に、指導の中で、尖閣さらには竹島について、明快に現状というものを、政府の考えというのを教科書の中に書き込むことができました。その中に、南京事件についても、従来のことではなくて、客観的事実というものを述べさせていただきました。

 こうして委員を初め皆さんから今までの問題点というのを指摘していただいて、その輪を広げていただいておるところであります。その中で、今政府としても、できる限り、この問題については、史実に基づいて、客観的に、しっかりと広報もできるようにしたいと思います。

 まだまだ御不満はあろうかと思いますけれども、そこは思いは同じだというふうに思っています。

杉田委員 ありがとうございます。

 思いは同じだとおっしゃっていただきましたので、ぜひ今後に期待していきたいと思うんです。

 一点、昨年の四月の予算委員会のときに、私、この広報費のことについて菅官房長官にお尋ねしたんですね。

 そのとき、日本が五億円という予算を計上したのに対して、中国、韓国の同様の予算はどれだけありますかという質問をさせていただいたんですが、そのときの御答弁が、中国は公表していないので幾らかけているかはわからないけれども、韓国の同様の予算は二億四千万だというお答えをいただいたんです。ということは、日本が五億だったら、二億四千万というのは、韓国は日本の半分の予算なんですね。

 ただ、では、韓国がいろいろ行っている広報活動、欧米で行っている広報活動について、日本と韓国を比べたらどっちがすごい広報活動をやっているかというと、全世界の方に聞いても、韓国の方が激しい活動をやっているということになると思うんですね。

 だから、額にしてみれば日本の方が多いけれども、向こうの方が有効的な広報活動をやっているのであれば、これは私はお願いをしておきたいんですけれども、ライバルがあるのならば、ライバルはどのような手を使ってやっているのかというのを徹底的に調べないと、相手があるんだったら、相手がどういう手を使ってやっているのかというのを徹底的に調べて、それを上回る戦術をとっていかないと、情報戦には勝てないと思うんです。

 ですから、外務省になるんでしょうか、これは、私、内閣府の予算なので内閣府ということでお願いしたんですが、結局、外務省からしか答弁をずっといただけていないんですよ。だから、そのあたり、しっかりと内閣府と外務省で連携をとっていただいて、それを上回る戦略的な広報活動を行っていっていただきたいというふうに思います。これは要望として申し上げます。

 それでは、次の質問なんですけれども、河野談話の検証を行うということで、これも二月二十日の予算委員会のときに、石原信雄元官房副長官が参考人招致で来られた質疑があったときに、検証を行いますということで官房長官がおっしゃっていただいたんですけれども、今現在、この検証の進捗状況はどのぐらいなんでしょうか。お尋ねしたいと思います。

菅国務大臣 まず、政府として検証を行うということを答弁いたしました。

 その背景としては、当時、河野談話を作成したときの事務方の責任者、官房副長官の石原さんが、高齢にもかかわらず国会に出席をしていただいて、そこで証言をされました。

 そこで明らかになってきたことが、河野談話作成については、韓国側とすり合わせをしてつくられたことが推測されるということが新たに明らかになったことであります。さらに、当時、日韓関係を考えて善意として行ったことが、今またこのような問題になっていることに対して、非常に残念であるという趣旨の発言もされました。

 そうした石原さんの思い、また山田委員からの発言を受けまして、私たちは、そこは検証させていただきますということを申し上げました。

 それで、その中で、現在、人選等を進めておりまして、いろいろな方にお願いをしているというところであります。

杉田委員 今、人選を進めていらっしゃるという御答弁だったんですけれども、多分、こういったところには有識者の方とか民間の方にも入っていただいて、検証チームみたいなものをつくって進めていかれるんだろうと思うんですけれども、どういう方がその検証チームに入って、どういった民間人の方とか有識者の方が入っているかということを、ぜひ公開していただきたいと思うんですけれども、そのあたりはいかがお考えでしょうか。

菅国務大臣 検証チームには、保秘に十分に留意しながら、有識者の方にお願いをするわけですけれども、基本的には、やはり法制度に明るい方とか、あるいはマスコミの方、女性の方、客観的に見て、偏ることなく、なるほどなと思われる方にお願いをいたしております。そして、ここについては、政府内の検討チームにしたいというふうに思います。

 そういう中で、やはり静かに検討する環境の中で行うべきだろうということを思っておりますので、公開の中でということでなくて、本来は、どういう状況の中でこの談話が出されたかということを検証することがやはり最重要ですから、そういう中で行っていきたいというふうに思います。

 そして、これは予算委員会でも申し上げましたけれども、この結果について、国会から要望があれば、そこは提出をさせていただきたいということを申し上げました。

 当然、そのときに、どのような方々によってチームがつくられてということは、その時点では明らかにすべきかなというふうに私は今は思っております。

杉田委員 今、御答弁の中で、静かな状態で検証を進めるというお言葉があったんですけれども、次の質問で私がさせていただきたいのは、その会議とかは公表されるのか。もしそれが公表されない、もし非公開でやるというのだったら、なぜ非公開なのかという理由をお尋ねしたいと思うんです。よろしくお願いいたします。

菅国務大臣 まず、この河野談話を作成するに当たって、日本と韓国の政府の間で、慰安婦については公開をしない、これは政府間の約束ですから、そこはしっかりと私たちは保秘するのが、約束は守る国民として、ここはやはり当然のことだろうというふうに思います。

 そういう中にあって検証をするわけでありますので、政府だけでなくて、有識者の方に入っていただいてお願いをするわけでありますけれども、その結果の際には、国会から要請があれば出させていただくということを私は述べていますし、どのような方によって、どういう回数行ったとか、そこについては、その時点で明らかにさせていただければなというふうに私は今思っています。

杉田委員 結果の際には公表していただけるということなんですけれども、この問題、今、本当に国民の皆さんの関心が非常に高いです。河野談話の見直しを求める署名活動というのを日本維新の会が行っておりましたけれども、一カ月の間に十四万筆を超えました。国民の声として、何とかそれを官邸の方にお届けしてまいりたいというふうに思っておるんですけれども、非常に関心の高いことでありますから、しっかりとした結果を出していただきたいということを要望したいと思います。

 ちょっと時間がなくなったんですけれども、最後に一問、今までとは流れの全然違う質問をさせていただきたいんです。食品のアレルギー表示のことなんです。

 アレルギー表示の特定原材料についてなんですけれども、いろいろ、アレルギーが起こる可能性があるものについて、食品に表示しなければならないというのと、表示が推奨されている食品というのがあるんですけれども、この特定原材料の中に米が含まれていないんですよ。最近、米アレルギーの子供さんというのが非常にふえておるらしく、その保護者の方なんかからも、非常に大変なんだというようなお声をいただきまして、なぜお米が入っていないのか。

 きょう、皆さんに二枚目の資料を配らせていただいているんですが、これを見ると、米よりも数値が低いようなものでも指定されていたりとかするんですが、一番端の欄を見ていただきますと、真ん中のところ、囲っていますが、米だけが指定されていないんですね。

 これはなぜなのかという理由を最後にお尋ねしたいと思います。

岡田政府参考人 お答え申し上げます。

 食物アレルギーへの対応につきましては、アレルギー情報が適切に提供されることが望ましいわけでございます。

 このため、食品衛生法に基づきまして、容器包装されました加工食品につきまして、特に発症数、重篤度から勘案して表示する必要性の高いものを特定原材料として定め、表示を義務づけているところでございます。この特定原材料として、卵、乳、小麦、エビ、カニ、ソバ、落花生の七品目を指定したところでございます。

 また、表示義務は課さないものの、表示を推奨する品目といたしまして、イクラなど二十品目を特定原材料に準ずるものとして指定しているところでございます。

 これらの品目の指定に際しましては、消費者庁において、おおむね三年ごとに即時型食物アレルギーによる健康被害の全国実態調査を行い、報告された症例数、それからアナフィラキシーショックの症例数などを踏まえまして、適宜見直しを行っているところでございます。

 委員御指摘の米につきましては、アレルギー発生の症例数等が少ないことから、現在、表示義務の対象あるいは表示を推奨する対象とはしていないところでございます。

杉田委員 これは、お米だけに、このぐらいの数値があるのにお米だけが外れているというのは、この表を見ていただいたら皆さんおわかりだと思うので、保護者の方にしてみれば、何か変な力が働いているんじゃないですかというようなことをおっしゃるような方もいらっしゃいます。

 きちっとしていただいて、もし米が、ずっと、長いことこういう形で上位に上がってくるようであれば、きちっとつけ加えていただきたいということを要望しまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

柴山委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。

 早速、質問をさせていただきたいと思います。

 まず、TPPについて質問をいたします。その前に、日豪EPAについて数点確認をさせていただきたいというふうに思います。

 今般合意に至った日豪EPAの内容は、いろいろな御苦労の中で苦心してまとめたなということが感じられるような中身になっておりますけれども、一つ確認したいのは、きょうは西川先生もいらっしゃいますけれども、平成十八年、二〇〇六年に、当時、西川農林水産委員長の際に決めた、先生もよく覚えていらっしゃると思いますけれども、日豪EPAに関する国会決議というものがございます。

 その中に、お手元の資料一に、小さい字で書いていますけれども、あえてこれは西川委員長だということがわかるように議事録で持ってきましたけれども、その一段目から二段目にかけまして、米、小麦、牛肉などの農林水産物の重要品目が除外または再協議の対象となるよう、全力を挙げて交渉することというふうになっております。

 まず外務省にお伺いしたいのは、ここで言う除外、再協議の定義であります。

 ここに、資料一の下に書いてあるんですが、これは外務省のホームページからとってきたんですけれども、TPP交渉の現状ということで幾つか外務省や内閣官房が情報を出しておりますけれども、その中に、除外の定義が括弧書きの中に書かれてありまして、除外というのは、「特定の物品を関税の撤廃・削減の対象としないこと」というふうになっております。

 今回の日豪EPAの牛肉に関しては、冷蔵、冷凍を分けておりますけれども、時間をかけて、十五年あるいは十八年で関税三八・五%を引き下げていくことになっております。

 単純に読みますと、除外というのは関税の削減の対象にもしないことというふうにされておりますので、今回の、関税を一定レベルまで削減していくということは、この定義からすると、平成十八年の農林水産委員会の決議に反するというふうに思われるんですけれども、まず、この除外の定義について明確に御答弁をいただきたいと思います。

木原(誠)大臣政務官 お答えを申し上げます。

 今御指摘をいただきました、平成十八年の両院での決議におきます除外についての定義そのものにつきましては、ぜひ院の方で、これはお考えいただくことであろうかというふうに思います。

 その上で、私どものEPAの中で使っている除外あるいは再協議という言葉についてでありますけれども、それぞれのEPAあるいはFTAの中でそれぞれの定義がございまして、統一的な定義は今のところないというのが現状でございます。

 そのことを申し上げた上で、今回の日豪EPAにおきましては、関税の撤廃そして引き下げに関する約束等の対象から除外される区分、それから合意された年等に再交渉される区分というものを設けてございます。

 そして、今玉木委員から御指摘いただきましたように、日豪EPAにおいて、今般、牛肉につきましては、まさに関税削減を行うということが決まったわけでございますので、この二つの区分には該当をしないということでございます。

玉木委員 よくわからない答弁です。

 なぜかというと、役所からいただいたペーパーによると、米については除外なんです、明確に。除外と書いてあるし、これはよく頑張ったと思います。実は、牛肉以外については、いろいろ重要品目が書かれていますけれども、今回は非常にいろいろな工夫をされて、よく頑張っていると思うんですね。米については明確に除外ですし、役所の文書にも除外と書いています。

 だからこそ、牛肉については、逆に言うと除外じゃないのかなというふうに思っておりまして、よってもって、この決議の、除外ということを求めるということにやはり反しているんじゃないのかというふうに思うんですけれども、いかがですか。

木原(誠)大臣政務官 お答え申し上げます。

 まさに米につきまして、除外ということに書いてございます。それは、先ほど申し上げた、関税の撤廃、引き下げ等に関する約束等の対象から除外される区分ということで、米がその区分に入っているという意味でございます。

 他方で、先ほど私が申し上げたことは、牛肉につきましては、まさに関税削減を行うということで今回決着をしておりますので、この除外の区分には当たらないということを申し上げたところでございます。

玉木委員 ということは、いわゆる除外の定義からすると、やはり除外されていないので、決議には反している、牛肉については。私は、これは認めざるを得ないというふうに思うんです。ただ、トータルのパッケージとして、このよしあしについては判断をおきます。

 ただ、いろいろ約束があり、それを目指してやってきて、ここは残念ながら、この決議のとおりはできなかったということについてはやはり認めた上で、では対策をどうしていくのか、これから、ではトータルとして逆に何をとっていくのか、そういう話が出てくると思うので、牛肉に関しては、今回、日豪EPAで、決議で定める除外については、ある意味、反してしまった。もう一回、ここはお認めになりますね。(発言する者あり)

柴山委員長 御静粛に願います。

木原(誠)大臣政務官 お答えを申し上げます。

 私どもといたしましては、先ほどから御指摘をいただいております、この衆参の両院におきます決議、これは重く受けとめながら、今回、精いっぱい全力で、そして、この決議にもありますように、粘り強く交渉させていただいた。その結果として、今委員も御指摘いただきましたように、全体として国益にかなう、利益になる協定を実現できたというふうに考えてございます。

 今委員から御指摘いただきました点につきましては、これは衆参の院で御決議をいただいたものでございますので、それとそごがあるのかないのかにつきましては、ぜひ両委員会の方でよく御議論いただいて、御決定いただければありがたいな、このように考えているところでございます。

玉木委員 木原政務官、最近、政府はそういう言い方に変えてきたんですけれども、院で決めたから院でそれが合っているかどうか判断してくれというのは、ちょっとさすがに苦しい、それは。林農水大臣も最近そういうふうにおっしゃいますけれどもね。

 やはりこれは、私は別に批判しているわけじゃないんですよ。そこはいろいろあったけれども、できなかったというところは認めた上で、トータルのパッケージは、私は必ずしも悪いとは言っていません。ただ、そこはやはりちゃんと認めて、国会、立法府で決めたことだからその解釈も全て立法府でやってくださいというのは、ちょっと私はいかがかなと思いますので、そこは、木原政務官、木原誠二といいますからね、誠実にお認めになったらどうかなというふうに私は思っております。

 なぜ冒頭この話をしたかというと、実は、今度はTPPの話に移りますが、甘利大臣も大変お忙しい中お越しをいただきまして、ありがとうございます。

 TPPにも両院の決議がございます。これは、私自身が提案をさせていただいて、農林水産委員会でも与野党が一緒になって決めたものでありますが、同じ言葉が出てきます。これは、いわゆる重要五項目について「除外又は再協議の対象とすること。」となっておりまして、加えて、TPPの決議には、もう一文入っています。「十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。」ということが、これは日豪にはない一文が、さらに入っております。

 同じ、除外と再協議という言葉を使っているので、今回の日豪についてまず確認をさせていただいたんですが、きのう、おとといと、大変厳しい中で交渉をされてこられました甘利大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

 重要五項目については除外、再協議ということが国会の決議でございます。もともと、これは五百八十六品目のタリフラインであって、西川先生が、そのうち、ある意味、貿易の実績のないもの、少ないものについてはそこから除いて、ハイスタンダードの、できるだけ九〇、九〇を超えていける、そういうものを目指していこうという方針を検討をされたやに報道を伺っております。

 私は、この方針についても、必ずしもおかしな方向ではないと思いますが、ただ、あのころから比べると、今、随分景色が変わったなと思うのは、牛肉本体の、もう本チャンのところの話に切り込んでいっているというところが、何かもう相場観になってしまっていて、なれてしまっているんです。五百八十六のうち百外せる、二百外せるという議論が懐かしく感じるんですね、先生。思い切り貿易量のある牛肉の関税そのものを、下げましょう、場合によっては時間をかけてゼロにしましょうなんということも最近ちらちら聞かれます。

 そこで、大臣に伺いたいんですけれども、フロマン代表が日本に来た際に、ぶら下がりのインタビューで、今回アメリカとしては、日豪で合意した以上のものを求めていく趣旨の発言もされております。

 戦略としては、私も以前こういうことを申し上げたことはあるんですが、日豪で合意した、一定の、ある種、日本が受け入れ可能な合意的なものをTPPの中にも持ち込んでいって、言葉は悪いですけれども、余りむちゃくちゃな関税撤廃をいきなりのみ込むというよりも、やはり、最大の農業国である日豪との枠組みを、何とかTPPに入れてこられないか。これも私は一つの戦略としてよかったと思うんですが、大臣、どうでしょうか、若干このもくろみが外れているんじゃないのかなというふうに感じます。

 フロマン代表は、さらなる削減、彼らの言葉で言うと、より高い水準の自由化を求めているということでありますけれども、まず確認したいのは、日豪EPAの水準を上回る一桁台の関税、これをアメリカから求められた、あるいは逆に、日本から妥結に向けてそれを提案したやの報道があるんですけれども、事実関係、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 誠二という名前だと誠実に、明という名前だとできるだけ明らかにしなくちゃいけないと思いますけれども、御案内のとおり、TPPには情報管理をする項目がございます。お話しできることとできないことはあります。

 二日間、都合十八時間、時々休憩を挟み、そして一対一の議論をしながら二日間を過ごしてきたわけであります。各般にわたる議論を行いました。

 ただ、報道にいろいろなことが書いてありますけれども、現時点で決まったことは何もないわけでありまして、具体的な数字がどうこうということもないわけでございます。

 それから、日豪は、TPPとは違いますから、情報開示の仕方が違うと思いますが、ああいう形で出ました。

 早速、アメリカ側から、記者から日豪との関係を聞かれたときに、TPPと日豪は直接は関係していない、第一、TPPは、その本来の目標が、かつてない、二国間で行われたEPA、FTAでないような高い野心を目指すものだということを早速おっしゃいました。

 アメリカが日豪EPAを全く気にしていないかといえば、私の印象からすれば、やはりそれは気になるんだと思います、やはりオーストラリアの牛肉とアメリカの牛肉は競合するわけでありますから。いずれにいたしましても、発効すれば直ちに現状より低い数字というのはオーストラリアに与えられるわけでありますから、それは気にならないわけはないと思います。

玉木委員 そういう事実関係はないという答弁と理解したんですけれども。

 大臣、では逆に、ちょっと違う方向から同じ質問をしますけれども、日豪EPAのレベルでTPPは何とか妥結可能だと思われますか。

甘利国務大臣 シンガポールの閣僚会議に臨みましたときに、全体会合の場で、日本のマスコミは、日本だけが物品の関税撤廃率、野心が低いということで集中砲火を浴びるという報道がありました。

 私は、衆参農水委員会の決議があり、党としての選挙公約もあるということをバイ会談で丁寧に説明をしまして、結果としては、別に集中砲火が来るということはありませんでした。

 ただ、初日でしたか二日目ですか、発言の中で、P4を中心に、TPPはかつてない野心の高さ、これが目標なんだから、そこを踏まえるようにという発言は相次ぎました。日本を暗に示している発言だというふうに受け取りましたけれども。

 でありますから、従来型のEPA、FTAで求められる水準よりは厳しい要求がTPP閣僚会合等で来ていることは事実であります。これから交渉力を発揮しながら、どこまで国益を守る、日本にとってのセンシティビティーをどこまで守り切れるかというのは、私及び日本の交渉力にかかっているというふうに思っております。

玉木委員 大変慎重な言い方をされましたけれども。

 お言葉の中に、通常のEPA、FTAよりも高い水準を求めていくと。いわゆる二十一世紀型の、非常に野心的でハイスタンダードで包括的なということをよく言いますけれども、ということは、やはりアメリカからの要求も、この日豪のバイで結んだ、直近結ばれたものよりも高いものを求めていくというのが原則であって、場合によってはというか、TPPが妥結をするとしたら、やはり日豪のレベルを超えたものでしかアメリカとしては妥結ができない、そういう理解でよろしいんでしょうか。

甘利国務大臣 要求は、アメリカに限らず、日本以外の全ての国の要求は、野心の高い要求をしてきます。具体的に数字がどうこうということではなくて、できるだけかつてないような野心ということを、バイでも、アメリカに限らず、各国は強い主張をしてきます。そこで、我々は、しかし、日本としてのセンシティビティーはどこにあるかといえばこういうところにあるということを常に反論しているわけであります。交渉の着地点は、正直言って、まだ見えてきません。

玉木委員 なかなか、外交交渉なのでお答えにくいところはあると思うんですけれども、大臣、答えられる範囲で結構なんですが、妥結をするとすれば、やはりそれは日豪のレベルを超えたものでしか、何らかの形で、そういった、より高いものでしか妥結は難しいという印象をお持ちなのかどうか。

 現時点での印象で結構ですので、できるだけ情報をお伝えいただければと思います。

甘利国務大臣 交渉中でありますから、軽々に見通しを申し述べることは不適切かと思いますが、各国とも相当厳しい姿勢で臨んできているということだけは交渉の事実として申し上げられると思います。ただ、着地点がどうなるかは、まだ軽々な推測もできないというところであります。

 ただ、日豪EPAを結んだということは、オーストラリアの牛肉が、発効次第、冷凍と冷蔵で数字は違いますけれども、冷蔵でいえば六%、冷凍でいえば八%、一年目から下がるわけでありますから、その分だけアメリカや他の競合国よりもオーストラリアの牛肉が安くなるわけでありますから、それは各国とも気にしているというふうに思います。

 それがどういうふうに交渉に反映していくのか。これは、我々としては、従来の要求を緩和させる手だてとして相手は気にしてくるのではないかというふうには推測をいたします。

玉木委員 決議との関係だけちょっと確認したいんですが、仮に日豪と同じレベルのものを、TPPでも仮にアメリカもそれで合意して、のんだとしたときに、そのレベルはTPP決議に違反したものになると考えるのか。日豪のレベルでTPPも妥結をしたら、それはこの衆参の農水委員会の決議にかなったものと考えるのか。それはいかがでしょうか。

甘利国務大臣 日豪の内容が仮にTPPで採用されたとした場合、決議との関係は整合性がとれるのではないかと思っておりますが、最終的な判断は、やはり国会がされることだというふうに思っております。

玉木委員 冒頭、木原政務官ともやりとりをさせていただきましたけれども、私は、仮にオーストラリアと同じレベルでTPPが合意したとしても、やはりこれはTPP決議には違反すると思います。明確にこれは除外とは言えませんし、かつ、場合によっては、さらにこのオーストラリアよりも厳しいものを求められるという、少なくとも、そういう要求が来ているということは、大臣、今お認めになりましたので、妥結をするとしたら日本からも相当の柔軟性を示さなければならない。そうすると、その際には、かなりこのTPP決議には反するということを、ある種、覚悟を決めていかないと合意は難しいんだというのが現状なんだということを、私は今、大臣の説明から理解をいたしました。

 最後に、TPPに関して、お手元の資料二に、これから、我々民主党の方で今まとめておりますけれども、TPPだけではないんですが、重要な通商交渉に関しては的確な情報公開を求めていく議員立法を今検討いたしております。

 というのは、右下にありますけれども、話題になっているアメリカのTPA法案の中にも、これは、包括的に議会から行政府に対して外交交渉権限を明確に与えるものですけれども、与えるかわりに、行政府からきちんとした情報を立法府、議会に対して報告しろ、提供しろということを求めております。例えば、テキストに対するアクセスなんかもしっかりと認めろということが書かれております。ただ一方で、守秘義務もありますので、そういった一定の範囲を画して、政策決定の責任、一定の議員にはしっかりと情報を開示していく。

 こういったことを参考に、我々としても、左上に書いてありますけれども、TPPを含む重要な通商交渉については国会への定期報告を義務づける、あるいは、国民への例えば経済的な影響についてきちんと情報提供するということを法律によって義務づけていくということを決めていきたいと思います。

 あわせて、国会議員の守秘義務もいろいろな形でこれは担保しつつ、しっかりとしたコミュニケーションが、行政府側と立法府側、そしてその背景にいる国民と行えるような仕組みをきっちりとつくっていくことが大事だというふうに思っておりますので、これからTPP交渉、佳境に入ってくると思いますので、こういった立法も、与野党の先生方の御理解も得て進めていきたいというふうに思っております。

 次に、外交交渉にもかかわると思いますが、捕鯨について質問したいと思います。

 三月三十一日に、ICJで判決が出ました。これは、日本の南極海での調査捕鯨について、いわば許可をしないという旨の内容でございます。このことについて官房長官が談話を出されて、大変遺憾だということは表明しつつ、今後のありようについては検討するということを発表されました。

 今回の判決、私は、近年まれに見る外交的な敗北だと思います。この間、外務省や水産庁や関係の省庁の方にもいろいろ話を聞いてきましたけれども、極めて楽観的でした。まさか完敗するとは私も思っていませんでしたし、しっかりとした主張がICJでも行われて、そしてしかるべき結論が出るというふうに私は信じておりましたけれども、結果は全く違うものでありました。受け入れがたいというふうに、私、個人的には思いますけれども、出てしまったことについては受け入れざるを得ないというのも、法治国家として、そうだと思います。

 確認をしたいのは、今後の北西太平洋における調査捕鯨、そして沿岸の捕鯨に関する影響について官房長官に伺いたいと思いますが、今回の判決の趣旨は、あくまで南極海における、いわゆるJARPA2と言われている今回の事案に限ったものであって、我が国が広く行っている他の調査捕鯨全てを禁止するものではないということについて、明確な御答弁をいただきたいと思います。

菅国務大臣 私は、この判決が出た際に、極めて遺憾であり、そして残念で、深く失望している、そういう趣旨を記者会見の中で発表しました。そして、いずれにしろ、判決の内容及び今後の対応に与える影響について引き続き慎重に精査していく、そういうことを申し上げました。

 今、外務省、農水省、ここの両省庁の中で、しっかり、この判決文の指しているもの、そうしたものを、まさに私が会見で申し上げたとおり、精査しているところであります。

玉木委員 官房長官、もっと明確なメッセージを速やかに出してもらいたいんですね。

 四月二十二日に被災地宮城県石巻市の鮎川から、もう予定がしっかりと組まれておりますけれども、沿岸域での捕鯨の船の出港式が、四月の二十二日に予定されています。

 今、準備も進めて、出られるのかと思ったら今回のICJの判決が出て、それが自分たちにも及ぶのか及ばないのかも教えてもらえない、わからない、役所からは何の返事もないということであります。

 私は、これは速やかに判断を示すべき、もちろん、行う、可能だという形での判断を示すべきだと思うんです。今回また検討に時間がかかるといって四月二十二日を一旦過ぎてしまうと、また、出港できないという既成事実ができてしまって、そして日本の調査捕鯨は国際的にも大きな批判をさらに浴びて、日本も認めたじゃないかということになってしまうので、官房長官、ぜひ速やかに、これはいつまでにその検討結果をまとめられますか。明確にお答えいただけますか。

菅国務大臣 今申し上げたとおりです。我が国は、先ほど委員からも発言の中にありましたけれども、判決には従うということですよね。我が国も、国際法の秩序及び法の支配を重視する国家として、そこは受け入れざるを得ないというふうに思います。

 その上に立って、この内容あるいは今後の対応に与える影響、そうしたものを精査して慎重に行う、今、外務省と、先ほど申し上げました農林水産省で、懸命にそこの精査をしているところであります。

柴山委員長 玉木君、質疑時間が終了しております。

玉木委員 はい。

 官房長官、シーシェパードの妨害がありました。これも、暴力、武力による現状変更なんですよ。こういうことをやすやすと受け入れてはだめだし、そういうことをされたときには国家として明確なメッセージを出さないと。

 では、我々はずっと間違ったことをしてきたんですか。捕鯨は我が国の文化であり、そして地域の経済活動を支えています。そういったことについてやはり国家として明確なメッセージを出して、自分たちがやっていることは間違ったことじゃないんだということを、全国で捕鯨に携わっている皆さんに明確なメッセージを出していただきますことをお願い申し上げたいと思います。

 一問、稲田大臣に質問を用意していたんですけれども、ちょっと時間がなくなってしまって、申しわけありません。

 ただ、官房長官、本当にこれは速やかに国家としてのメッセージを出していただきますことをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

柴山委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 二〇〇七年に、国家公務員法改定は、国家公務員が民間企業へ再就職することを原則禁止する規定を削除いたしました。そのかわりに、再就職のあっせん、いわゆる天下りのあっせんを禁止するなどの改正が行われております。この天下りのあっせんの禁止は効果を生んでいるのか、きょうはこの点を議論したいと思います。

 内閣官房は、国家公務員法に基づいて国家公務員の再就職状況の公表を行っております。国公法の規定に基づく通知並びに届け出の二〇〇九年度から二〇一二年度まで、それぞれ何件かお答えください。

笹島政府参考人 お答え申し上げます。

 国家公務員法第百六条の二十四第一項等の規定によりまして、管理職であった国家公務員は離職後二年間の再就職状況について届け出る義務があるとされているところでございます。

 この届け出に基づく再就職の件数は、同法百六条の二十五第二項の規定に基づきまして毎年度公表をされております。これによりますと、平成二十一年度が千四百十三件、二十二年度が七百三十三件、二十三年度が千百六十六件、二十四年度は千三百四十九件となっております。

赤嶺委員 この国公法に基づく報告は、一定の要件に係る国家公務員の再就職者数の合計を示しているものであります。

 二〇一三年度はまだ一年分のデータがありませんが、三四半期分のデータはあります。これはどうなっておりますか。

笹島政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十五年度の届け出件数のうち、第一・四半期から第三・四半期までの合計は千二百五十八件となっております。

赤嶺委員 今数字を答弁いただいたわけですが、国家公務員の再就職者数の件数というのは、いわゆる天下りの動向を示しております。

 二〇〇九年度には千百八十四件あったものが、二〇一〇年度には約半分に減少し、その後またふえてきているわけです。二〇一三年度は既に、十二月までで千二百五十八件、前年の同時期まで千七十件を既に上回っております。

 再就職者数がこうした推移をたどっているのは、これはなぜですか。

笹島政府参考人 お答え申し上げます。

 総務省といたしましては、再就職に係る個々の事情につきましては把握してございませんけれども、一般的に申し上げれば、再就職の件数は全体の退職者数と比例する傾向がございます。

 平成二十二年度でございますが、これは平成二十一年九月から再就職のあっせんを行わないことにしたことに伴いまして一時的に退職者数が減少し、その結果として再就職の届け出件数が減ったものと考えております。

 その後でございますけれども、その後は、一時的に減ったものでございますけれども、定年退職者数がふえております。その結果、全体としての再就職者数がふえているといったことであろうかと思います。

赤嶺委員 今のは、民主党政権時代にいわゆる勧奨退職をやめて、その結果、順次定年を迎えているということの説明もありました。その定年を迎えた人が次々と再就職し、その数が報告されているわけです。

 一般的に、定年を迎えた人が、同じところに再雇用されるのではなく、他の新たな勤め口を見つけるのは難しいと思いますけれども、公務員の場合はそうでもないということですか。

笹島政府参考人 お答え申し上げます。

 それぞれ、いろいろな事情があるんだろうと思います。今の法律のもとではあっせんというのは禁止されておりますので、それぞれが独自に努力されている、そういった結果であろうかと思います。

赤嶺委員 独自に努力された結果であるということでありますが、私たちのところには、国交省の関係者から、天下りあっせんに関する内部告発が複数寄せられております。

 実際に告発者の一人とお会いしまして、話を伺いました。

 退職者のうち、管理職には再就職先をあっせんして、これまでの年俸を保障している、その一方で、管理職以外の退職者は雇用延長で低賃金で働かせている、表向き、国交省当局はあっせんできないので、当局の意を受けたOBが申し込み窓口となり、当局の意向を受けてあっせんしているというものでありました。

 実際に、具体的にいろいろなお話もありまして、その方から、国土交通省のある地方支分局の天下りリストもいただきました。そこには、二〇一三年三月三十一日に退職した国交省の管理職職員の実名、そして旧役職、再就職先が記されております。その再就職先の幾つかは、大手企業の子会社であるとか、また大手企業の支店の中にあるとか、天下りの実態を小さく見せているとの解説もしてくれました。

 重要なのは、そのリストに加えて、天下りあっせんの窓口になっているOBの実名、肩書、そして対応する現役官僚のポスト名も具体的に指摘していたことであります。

 私たちは、その後、調査をしてみましたが、このOBと現役官僚のポストは実在し、しかも、国土交通省の資料によれば、この現役官僚のポストは、本省からの出向ポストとなっていることも判明をいたしました。

 ほかにも、国土交通省の別の内部告発もあります。天下りの窓口になっているのはやはりOB、天下り先を決めているのは現役、こういう指摘であります。

 こうしたやり方がまかり通っているとすれば、それは天下りあっせんを禁止した法律に対する脱法行為であると思います。癒着を断ち切るという天下りあっせんの禁止の法律の目的は達成されていないのではないかと思いますが、官房長官、いかがですか。

菅国務大臣 国家公務員の再就職については、再就職等監視委員会による監視のもと、天下りのあっせんなど不適切な行為を厳格に規制しているところであり、今後とも、同委員会による監視のもとに、こうした不適切な行為を厳格に規制していくことで、天下りを根絶し、再就職に関する国民の疑念を払拭していきたいというふうに考えています。

赤嶺委員 疑念の払拭、そのためには、やはりさらなる実態の調査、掌握をするべきではないかと思いますが、この点も加えて、長官、お答えいただけますか。

菅国務大臣 基本的には、今私が申し上げたとおりであります。

 その中で、具体的に事例があれば、そこは調べるのは当然のことだというふうに思います。

赤嶺委員 天下りあっせんの話というのは、この間は、あるジャーナリストが警察庁の天下りあっせんの幽霊会社の問題も取り上げておりました。

 きょうは、再就職等監視委員会からもせっかくお呼びいたしましたので、委員長に伺いますが、今、官房長官も、正していかれるということがありました。OBと現役官僚が二人三脚で天下りあっせんを行っているとすれば、これは国公法違反の疑いが濃厚であります。

 こういう内部告発、実は、私たちのところにも、そして再就職等監視委員会のところにも、同一人物と思われる方から告発が寄せられていると思いますが、そういう場合は、委員会の調査の対象となるのではないかと思いますが、いかがですか。

羽柴参考人 お答えをいたします。

 私どもの委員会は、独自にさまざまな情報収集をするほか、いわゆる内部告発のような類いの情報が寄せられるということもございます。いずれにせよ、そういったさまざまな情報を日ごろから精査をいたしております。

 その中で、再就職等規制に対する違反行為があるのではないかと疑われるような場合とか、あるいはその可能性があるのかなというような場合については、当然、これは積極的に委員会として調査をいたしますし、また、厳格に対処をいたしてきております。従来もそうしてきておりますし、これからもそのようにいたしてまいります。

赤嶺委員 厳格に対処するとおっしゃいますが、国土交通省の次官の口きき違反行為で我が党の塩川議員が議論した際にも、塩川議員から指摘をしておると思いますが、あっせん違反を実際に摘発するのは非常に難しいわけですね。そこにつけ込んで、OBを窓口にして、実際にはその背後で現役が采配を振るっているという疑惑が各方面から寄せられております。厳格な調査を求めると同時に、私たちもまた、それが改まらない場合は、やはりきちんと皆さんに対して問題を提起していきたい、このように思っています。

 それで、防衛装備移転三原則の問題について官房長官に伺います。

 これまで、安保委員会や、外務大臣や防衛大臣とも議論をしてきましたが、これは官房長官への質問が一番適切であろうと思いまして伺うわけですが、今回の運用指針によると、個別の輸出許可については、現時点において利用可能な情報に基づいて判断する、このようにされています。しかし、現時点では問題ないと判断した国であっても、移転後にどのような行動をとるかまでは保証できません。日本の武器輸出が国際紛争を助長する可能性は否定できないと思いますが、いかがですか。

菅国務大臣 防衛装備のこの移転三原則では、移転を禁止する場合を明確化するとともに、その場合に当たらないことをもって移転を可能とするということではなくて、防衛装備の移転を認め得るケースを、明確で適切な形で、まず限定をいたしました。

 また、移転先の適切性や安全保障上の懸念等は、個別に厳格に審査をすることにいたしました。これまで明らかでなかった審査基準や手続等についても明確化、透明化を図るとともに、国家安全保障会議での審議を含め、政府全体として厳格な審査体制を構築することといたしました。さらに、この移転された防衛装備が国際的な平和及び安全を妨げる用途に使用されることのないよう、目的外使用、第三国移転についても適正な管理を確保することになっています。

 今回のこの防衛装備の移転については、このような三原則のもとで個別具体的に判断することとなりますけれども、我が国としては、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念と、これまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持することに変わりはなく、これまで同様、厳正でかつ慎重に対処する方針でありまして、国際紛争を助長するというような指摘には当たらないと思います。

赤嶺委員 運用指針の中でも、原則として目的外使用と第三国移転について我が国の事前同意を義務づける、このようにしております。しかし、それで国際紛争の発生を防げるわけではありません。国連憲章の目的、原則に違反することを認めて戦争を起こす国はありません。

 一九九〇年のイラクのフセイン政権によるクウェート侵攻の背景には、欧米諸国による武器供与がありました。一九七九年のイラン革命以降、敵の敵は味方だ、こういう理由で、イラクに大量の武器が供与されました。ストックホルム国際平和研究所のデータによると、アメリカを初め、フランス、イギリス、ドイツ、イタリア、カナダ、デンマークなどが、戦闘機やヘリ、戦車などを供与したことがわかります。それがイラクの軍事大国化を招き、クウェート侵攻につながっていったのであります。

 こういうことを招くおそれは否定できないのではありませんか。

武藤政府参考人 お答えいたします。

 今回の原則のもとでは、しっかりと仕向け先の管理体制等も確認をしていくということをやってまいりますし、また移転後の防衛装備が適切に管理されていないという場合には、外為法に基づいて、しっかりこれは移転先における適正管理の状況について移転者から報告聴取を行い、万一適正管理が行われていないことが判明した場合には、同法に基づいて移転者等に罰則や行政制裁を科すなど厳正に対処するということでございまして、しっかりとそういう仕向け地の管理体制の確認等も行ってまいります。

 そのようなもとで、紛争を助長するというような御指摘は当たらないというふうに思ってございます。

柴山委員長 赤嶺君、質疑時間が終了しております。

赤嶺委員 イラクのクウェート侵攻のように、武器をそれ以前にはどんどんどんどん供与していて、そしてクウェートを侵略して、武器が適正に管理されていなかったと言ってみても、後の祭りであるわけですね。やはり防衛装備の移転は今の国際情勢で起こっている事態に照らすと国際紛争を助長する行為であるということを強く指摘して、質問を終わります。

柴山委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

柴山委員長 次に、内閣提出、重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の実施に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。古屋国家公安委員会委員長。

    ―――――――――――――

 重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の実施に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

古屋国務大臣 ただいま議題となりました、重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の実施に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、日本国政府及びアメリカ合衆国政府が、日米査証免除制度のもとで安全な国際的な渡航を一層容易にしつつ、両国の国民の安全を強化するため、重大な犯罪を防止し、及び捜査することを目的として、相互に必要な指紋情報等を交換するための枠組みを定めた、いわゆる日米重大犯罪防止対処協定を締結することに伴い、その実施に関し、アメリカ合衆国に入国した特定の者に係る指紋情報が照合用電子計算機に記録されているか否か等について合衆国連絡部局から照会を受けた場合の措置等を定めることをその内容としております。

 以下、項目ごとにその概要を御説明いたします。

 第一は、合衆国連絡部局から照会を受けた場合の措置についてであります。

 これは、警察庁長官が、合衆国連絡部局から、特定の者に係る指紋情報に関する照会を受けたときは、その者に係る指紋情報が照合用電子計算機に記録されているか否か等を自動的にオンラインで回答するものであります。

 第二は、合衆国連絡部局から追加の情報の提供の要請を受けた場合の措置についてであります。

 これは、警察庁長官が、第一の照会に対し、指紋情報が照合用電子計算機に記録されている旨を回答した場合において、合衆国連絡部局から、追加の情報の提供の要請を受けたときは、当該要請があったときに現に照合用電子計算機に記録されている情報であって、当該要請の目的に照らして必要かつ適当であると認められるものを提供することができることとするものであります。

 第三は、情報の適切な管理のための措置についてであります。

 これは、警察庁長官が、照合用電子計算機に記録された特定指紋情報等の漏えいの防止等のために、照合用電子計算機に係るアクセス制御機能の高度化その他の必要な措置を講ずるものであります。

 第四は、外務大臣の措置についてであります。

 これは、外務大臣が、日米査証免除制度のもとで安全な国際的な渡航を一層容易にしつつ、両国の国民の安全を強化する上でこの協定が果たす役割に鑑み、その実施に関し、必要に応じ、アメリカ合衆国政府と協議するものであります。

 その他所要の規定を整備することとしております。

 なお、この法律の施行期日は、協定の効力発生の日としております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同賜らんことをお願いいたします。

柴山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十六日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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