衆議院

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第9号 平成13年5月16日(水曜日)

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平成十三年五月十六日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 奥谷  通君 理事 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 長勢 甚遠君

   理事 佐々木秀典君 理事 野田 佳彦君

   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君

      荒井 広幸君    太田 誠一君

      熊代 昭彦君    左藤  章君

      笹川  堯君    鈴木 恒夫君

      棚橋 泰文君    谷川 和穗君

      林 省之介君    松宮  勲君

      山本 明彦君    吉野 正芳君

      渡辺 喜美君    枝野 幸男君

      日野 市朗君    平岡 秀夫君

      水島 広子君    山内  功君

      山田 敏雅君    冬柴 鐵三君

      藤井 裕久君    木島日出夫君

      不破 哲三君    植田 至紀君

    …………………………………

   法務大臣         森山 眞弓君

   法務副大臣        横内 正明君

   法務大臣政務官      中川 義雄君

   最高裁判所事務総局民事局

   長

   兼最高裁判所事務総局行政

   局長           千葉 勝美君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  坂野 泰治君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君

   法務委員会専門員     井上 隆久君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  山本 明彦君     長勢 甚遠君

  横内 正明君     笹川  堯君

五月一日

 辞任         補欠選任

  杉浦 正健君     山本 明彦君

同月七日

 辞任         補欠選任

  新藤 義孝君     西田  司君

同月十六日

 辞任         補欠選任

  中川 昭一君     林 省之介君

  山花 郁夫君     山田 敏雅君

  上田  勇君     冬柴 鐵三君

同日

 辞任         補欠選任

  林 省之介君     中川 昭一君

  山田 敏雅君     山花 郁夫君

  冬柴 鐵三君     上田  勇君

同日

 理事杉浦正健君同月一日委員辞任につき、その補欠として長勢甚遠君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

四月十三日

 ドメスティック・バイオレンス(夫・恋人からの暴力)をなくすための立法措置に関する請願(阿部知子君紹介)(第一二八六号)

 同(石井郁子君紹介)(第一二八七号)

 同(石毛えい子君紹介)(第一二八八号)

 同(植田至紀君紹介)(第一二八九号)

 同(小沢和秋君紹介)(第一二九〇号)

 同(大島令子君紹介)(第一二九一号)

 同(木島日出夫君紹介)(第一二九二号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第一二九三号)

 同(土屋品子君紹介)(第一二九四号)

 同(土井たか子君紹介)(第一二九五号)

 同(中林よし子君紹介)(第一二九六号)

 同(原陽子君紹介)(第一二九七号)

 同(春名直章君紹介)(第一二九八号)

 同(肥田美代子君紹介)(第一二九九号)

 同(藤木洋子君紹介)(第一三〇〇号)

 同(松本善明君紹介)(第一三〇一号)

 同(松本剛明君紹介)(第一三四九号)

同月二十日

 犯罪捜査のための通信傍受法の廃止に関する請願(枝野幸男君紹介)(第一四一二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件




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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 まず、理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に長勢甚遠君を指名いたします。

     ――――◇―――――

保利委員長 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、森山法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森山法務大臣。

森山国務大臣 このたび法務大臣に就任いたしました森山眞弓でございます。

 委員長を初め委員の皆様方には、平素から法務行政の運営について格別の御理解と御支援を賜っており、厚く御礼を申し上げます。

 内外に重要な問題が山積しているこの時期に法務行政を担当することになり、その職責の重大さを実感しております。

 当面の重要課題につきましては、本年二月に高村前法務大臣から説明があったところでございますが、改めて重点的に私の所信として述べさせていただきます。

 二十一世紀という新しい時代を迎え、社会が大きく変化しつつあります。その中で、時代の要請を踏まえつつ、法秩序の維持と国民の権利保全を通して国民生活の安定、向上を図るという法務行政の基本的使命をよりよく果たす必要があります。そのため、幅広い視点に立って必要な改革を進め、国民にわかりやすい法務行政を実現し、国民の期待と負託にこたえてまいりたいと思っております。

 特に、我が国社会が事後監視・救済型社会へ急速に転換しつつある中で、我が国の司法制度について、時代の要請にこたえるべく変革を求められております。政府全体として、行財政改革等の諸改革の推進とあわせて、司法機能の質的、量的な充実強化を図るための司法制度改革を推進することが急務であることは共通認識となっております。

 本年六月には司法制度改革審議会における最終的な意見が取りまとめられる見込みとなっております。私は、この時期に司法制度を所管する法務省の責任者に任ぜられた者として、同審議会から示される意見を真剣かつ積極的に受けとめ、時代の変化に対応した司法制度の実現に向けて、その改革に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

 次に、この変革期にあって、時代に即応した経済活動を支えるにふさわしく、かつ、国民にわかりやすい民事、刑事の基本法制の整備を早急に行う必要があることも強調しなければなりません。法務省としては、平成十七年までを目途に全力を挙げて集中的にこれに取り組んでいるところでありますが、私としても、断固たる決意でこれを推し進めてまいるつもりです。

 第三に、人権の世紀とも呼ばれる今世紀にあって、人権擁護行政の一層の充実強化を図ることが必要であることは申し上げるまでもありません。今月下旬に予定されている人権擁護推進審議会における人権救済制度のあり方に関する答申を踏まえ、政府全体として、この新しい時代にふさわしい人権救済制度の確立のための施策の実現を着実に図ってまいりたいと考えております。

 さらに、目覚ましい国際化の中にあって、年間約四千六百万人に達する我が国への出入帰国者について、迅速、的確な出入国審査を行いつつ、不法入国や不法就労目的の入国を阻止するとともに、約二十六万人と推定される不法滞在者等の対策を積極的に推進していくことが国民から強く求められていますが、そのためには、出入国管理体制を整備することが喫緊の課題となっております。私としては、各般の御理解を得て、出入国管理行政に携わる人的・物的体制の充実強化に努め、この課題に適切に対処してまいりたいと考えております。

 以上が緊急に取り組むべき当面の重要課題であります。

 最後に、福岡地方検察庁前次席検事によるいわゆる捜査情報漏えい問題を契機として、国民から検察及び司法に対して多くの批判が寄せられましたが、私としましても、これを真摯かつ謙虚に受けとめ、研修等の充実強化を初め検察官の意識改革を図るための諸方策を講じ、検察及び司法に対する国民の信頼を回復し確保するために一層努力してまいりたいと考えております。

 このほかにも幅広い法務行政の抱える課題は数多くあります。このような課題の多い時期に当たり、委員長を初め委員の皆様の一層の御理解と御指導を賜りまして、法務大臣としての重責を果たしていくことが私の使命であると考えております。横内副大臣、中川大臣政務官とともに全力を尽くす所存でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

保利委員長 次に、横内法務副大臣及び中川法務大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。横内法務副大臣。

横内副大臣 このたび法務副大臣に就任をいたしました横内正明でございます。

 内外に重要な問題が山積しているこの時期に法務行政を担当することになりまして、職責の重大さを痛感しております。

 急激な社会変革の時代にあって、国民のニーズに的確にこたえ、社会が直面する種々困難な問題を迅速かつ的確に解決するために、森山法務大臣を補佐して、中川政務官とともに、国民にわかりやすい法務行政を実現し、国民の期待と負託にこたえてまいりたいと考えております。

 委員長を初め委員の皆様方からより一層の御指導、御支援を賜りまして、重責を果たしてまいりたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手)

保利委員長 次に、中川法務大臣政務官。

中川大臣政務官 このたび法務大臣政務官に就任いたしました中川義雄であります。

 時局柄大任ではありますが、森山法務大臣、横内法務副大臣のもとに、よき補佐役として、時代の要請にかなった法務行政の推進のため、誠心誠意尽くしてまいりたいと考えております。

 委員長を初め委員の皆さん方の御指導、御支援をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

保利委員長 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として総務省行政管理局長坂野泰治君、法務省民事局長山崎潮君、法務省刑事局長古田佑紀君、法務省矯正局長鶴田六郎君及び法務省入国管理局長中尾巧君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所千葉民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長勢甚遠君。

長勢委員 おはようございます。

 まずもって、森山大臣、横内副大臣また中川政務官、御就任おめでとうございます。

 法務省は、言うまでもなく、生活の安全と安定の最も基礎的な基盤をなす大事な役所でございますし、今大臣から立派な所信表明をいただきましたが、司法制度改革を初め重要案件が山積をいたしております。ぜひ立派な御活躍を心から御祈念申し上げたいと思います。

 私も、つい先日まで副大臣という職を仰せつかっておりまして、正直言って、そっち側に座っておったものですから、ここで質問するのがちょっと調子が狂うのでございますが、うちの理事さん方が、筆頭がまずやれと言うものですから、質問させていただきたいと思います。

 きょうは、そういう立場でもございますので、法務行政のいろいろな点をああこうということよりも、私、短期間でございましたが法務省にお世話になって感じておりましたのは、いろいろ御批判もある、いろいろな要望も多い、またそれは非常に切実であり、大事な問題ばかりでありますが、一方で、そういうことは十分わかった上で、いろいろな制約状況の中で職員の方々が大変な苦労をされておられる。しかも、そのことをきちんと世間に言う機会が少ないのではないか。したがって、その制約条件を踏まえた上での議論というのが十分できていないのではないかということを幾つかの点で感じましたので、きょうは、こういうことをせいとかするなとかということではなくて、ひとつ、日ごろ感じておられる苦労話をここで御披瀝いただいて、制約条件と関係なくいろいろな要望がありますけれども、役所の方だってそんなこと知らないでやっているわけではないので、十分わかった上で、しかもやりたくてもやれないということも山ほどあるはずなんです。そのことをやはり国会の場でもよくわかって議論をしていくことがいいのではないかと思いますので、そういう立場で質問させていただきますので、きょうは余り構えないで、副大臣室で話しておったように気楽にお話をいただければ大変ありがたいと思っております。

 そういう意味で、十分に事前のレクもしておりませんので、知っている範囲で、何でも言いたいことを言う機会を与えていただいたというつもりで御答弁いただきたいとお願いをいたしたいと思います。

 最初に、入管の問題について御質問させていただきたいと思います。

 入管の仕事は、国民の方々に何をやっているのかということが必ずしも十分周知をされていないのではないか、そういう意味で言えば注目が少ないのではないかと思うのです。まず最初に、入管の仕事というのは具体的にどういう仕事なのかということを少しお話をいただければと思います。

 私が教えてもらった中では、まず入国審査の問題がある、それから在留審査の問題がある、また不法滞在者の摘発とか強制送還という仕事があるというようなことではないかと思いますが、それぞれどこでどういう仕事をされておるのか、その業務の対象人数、例えば入国審査であれば出入国の数ということになるでしょうけれども、そういう仕事の対象人数がどれぐらいになっているのか、またそれに携わっておる職員の方々がどれくらいおられるのかということを少し御説明いただきたいと思います。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 ほとんど想定しておらなかった御質問をいただきましたので、私の方で事前準備の方が十分できていなかったかと思いますけれども、私の記憶のある範囲で、まことに申しわけございませんが、そういうことで御説明させていただきたいと思います。

 まず、入国管理局は全国に八地方局がございます。その中に五の支局がございます。その下に八十一の出張所がございます。職員総数が、私が記憶しておるところで二千五百四十五人だったと思います。そのうち入国審査官が約千二百人でございます。入国警備官が、去年に比べて若干ふえて、一千人をちょっと超えた一千十一か二だったと思います。そういう状況で仕事をさせていただいております。

 去年の段階で、出入国者数が従前よりかなりふえてまいりまして、日本人の出国者だけでも一千七百八十万人ぐらいが海外に出ております。逆に、外国から入ってくる外国人の数が、去年で五百二十七万人でございます。したがいまして、それの出入りを勘定いたしますと、四千六百万人ぐらいの人が空港、海港で出入りしております。その関係の入国審査を行う審査官が、今先ほど申し上げた千二百人の中で割り振りをしております。

 それ以外に、さっき委員御指摘がございましたが、基本的に、在留審査ということで、例えば在留資格の変更とか期間の延長とか、そういう関係の執務をあわせてやらざるを得ないと思います。大体の去年の数で、記憶しているところでは千百十八万件ぐらいの在留資格審査をやっております。

 ですから、その両方で、あわせてそういう形の仕事をやっているのが入国審査官でございます。

 入国警備官の関係でございますけれども、これは委員先ほど御指摘のように、国内での不法就労者あるいは不法滞在者、いわゆるオーバーステイ、あるいは入管法違反の不法就労助長等々を含めまして、その摘発関係をやっております。

 また、入国の際に、不法に入国をする者とかあるいは集団密航で来る、そういうものに対する関係で対応、摘発等々に取り組んでおる。

 収容所等に関しましては、全国に三のセンターということで、入国者収容所がございます。大村、それから東日本の牛久、西日本には茨木と、三センターに職員が大体二百八十人前後が配置されております。

 そういうような状況で、収容所の警備、それから、五万人前後の送還を毎年しておりますけれども、その五万人前後の送還の送還業務もあわせてやっているのが実情でございます。

 以上でございます。

長勢委員 少ない人数で大変御苦労されておられると思うのです。入国審査については、突然、北朝鮮関係者の不法入国問題というのがあって、大分注目をされたことはよかったのではないかと思うのですけれども、恐らく、いろいろな面でえらい苦労をされておられて、恨みつらみもあるのではないかと思うのですね。まず、人が全く足りない。

 私の記憶では、成田でも三百何十人しかいないというふうに聞いておるのですが、例えばアジアでも、香港なりあるいは韓国は仁川というような空港と比べて、どういう状況になっているのでしょうか。それで、入国審査に関して、皆さん方のこんな苦労しているのだという話の一端でも御披瀝をいただけたらありがたいと思います。

中尾政府参考人 先生の方が詳しく御記憶されておられるのには感服する次第でございます。

 どういうふうに苦労しているのだというお話でございますけれども、摘発の関係で、民間の方からいろいろ情報をいただいております。オーバーステイの人がおるとか、どうも怪しい外国人がおるとかというような情報はいただいております。年間八千件前後の情報をいただいているように承知しておりますけれども、それに対応できているのが大体二五%、四件に一件ぐらいしかできていないというのが実情でございます。

 また、最近は、日系人を偽装したり、あるいは偽装婚という、いわゆる不正規在留を画策するブローカーを背景とした事件が続発をしております。あるいは、就労の関係で各種証明書を偽造する、それに行政書士が加わる、そういうものが新聞報道等されていることは皆さん方御案内のとおりであります。

 在留審査の関係で書類が出ましても、その裏づけ調査という形で実態調査することにはなっておりますが、そういう疑わしい実態を調べにゃならぬのが年間大体十二万件ぐらいございます。十二万件ぐらいを全部するわけにはまいりませんので、大体四万件ぐらいを実態調査するのが実情でございますので、まことに申しわけないのですが、残りの八万件ぐらいはやや問題あっても書類上通すというようなこともないわけではないというのが実情でございます。

 そんなところで、御理解のほどお願い申し上げます。

長勢委員 すべての分野について今お話をいただいたのでございますが、今度の北朝鮮関係者の問題で偽変造対策というのが注目をされたのではないかと思うのですね。最近、何かすごくこういう偽変造というのも巧妙になってきて、相当な対応を空港でもやっておられると思うのですが、どういう状況でしょうか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 不法滞在者対策は、基本的には、不法入国者の流入阻止、いわゆる水際で阻止する方法と、不法入国あるいは不法滞在しておる国内にいる者を摘発して海外に送還するということの二本立てだろうと私どもの方で考えております。

 水際作戦の中で一番最近問題になっておるのは、従来の集団密航で海から来るよりも、空から来る傾向がふえてまいりました。そんな関係上、偽変造の旅券を持った人間が入ってくるということがどんどんふえてくる現状でございます。

 そういうことで、関係当局等々の御理解、御配慮をいただきまして、平成十一年には成田空港支局、平成十二年には関西空港支局にそれぞれ偽変造文書対策室というのを設置いたしまして、鑑識機器でその辺のところの偽変造の鑑識をやっておるわけでありますけれども、その辺のところを今後ともできるだけ充実させて、即時にその辺の偽変造を見つけるというような形でまいりたいというふうに考えております。

 先ほど先生おっしゃられました、最近出ました北朝鮮関係者と思われる事件の関係につきましても、幸い鑑識で、これも一時間ぐらいかかってやっと偽造がわかったというような実情でございまして、そんなに簡単に最近は偽造だということが判明するケースは少なくなっております。今回の事件についても、鑑識技術で何とか一時間ぐらいでやっと偽造だということで判明しまして、四件のうち一件については偽造部分を発見することすらできなかった状況でございますけれども、最終的には偽名でその旅券が発行されているというようなことで偽造としたことでございます。

 今後とも、その辺の関係は努力してまいりたいと考えております。

長勢委員 偽変造というのが多くなっておるようですけれども、成田でも、対策室というと何かえらい格好いいのですけれども、行ってみると三、四人ぐらいおられるだけで、大量の処理が本当にできるのかなという心配を私は感じました。また、審査ブースにおられる職員の方は、極端な話、何時間も立ちっ放しで、しかも大量の方々がどんどん来られるわけですから、そこでとにかくチェックをして偽変造対策室に送り込まない限りはこの問題はまずあらわれないので、そこを通られれば後は何にもならない、こういう仕掛けになっておる。私は、そういう意味で、おぼつかないところがあるのじゃないかということを大変心配をいたしました。

 先ほどお答えがございませんでしたけれども、香港とか仁川とかと比べて、日本は外国に遜色のない入国審査体制になっておるのでしょうか。

中尾政府参考人 手元に詳しい資料がございませんので、もしかすれば数字等で間違っているところがあろうかと思いますけれども、記憶の範囲で御説明させていただきたいと思います。

 金浦空港の関係でございますが、金浦空港は、私の記憶では入国審査官の数が五百人弱、ざっと五百人ぐらいでございます。成田空港の審査官の数は、今先生おっしゃっておられたような三百六十前後だったというふうに記憶をしております。ところが、出入国者数になりますと逆転現象で、成田が大体二千三百万人ぐらいだったと記憶しております。金浦が千五百万を超えたぐらいだったというふうに記憶しております。

 一人当たりの入国者数の割合で申し上げますと、成田が大体六万人オーダーを一人でやっている、六万数千人の出入国者を対象としておりますけれども、金浦の方が大体三万数千人ぐらいの対象を一人当たり担当しているようなことで、そういう形になっておるのが実情でございます。

長勢委員 今世界的に、G8の各国、治安にかかわる一つの大きな問題は、国際犯罪組織による人の密輸とか不法移民ということにどう対処していくかということが、ヨーロッパ諸国でも、アメリカ、カナダでも大変大きな課題になっておるわけで、日本もその例外ではないわけであります。そういう中で、今のお話は、日本の治安を守るという観点からは大変お寒い状況だなと深刻に受けとめておるわけであります。

 まして、今度ワールドカップのことがあって、審査体制の強化というか、このことは一時的な問題ですけれども、そこにあらわれているように、地方空港等は増便をしようにも審査官がいなくて、飛行機を飛ばすことに大変支障があって、いろいろな県からも、私の富山県からも陳情まで来ておりますけれども、そういうことも含めますと、治安の面でも、あるいはサービスという面でも大変に深刻な状況であると私は思っておりますので、ぜひきょうは委員の方々にも実情を知っていただきたいと思います。

 それから次に、先ほど、偽装結婚なりあるいは不法就労の在留資格審査もわずか三分の一しかできないということですから、簡単に言うと、本来書類審査では心配な人、先ほどの数字ですと八万人は、局長はえらい優しい言葉を言われましたが、わかりやすく言うと、書類だけで怪しいなと思いながらめくら判を押して在留を認めておるわけですから、その方々が全部悪い人ばかりじゃないでしょうけれども、仮に半分がよく調べれば出ていってもらわなきゃならない人だとすると、毎年四万人が、合法滞在者ではあるけれども実際は不法滞在者というのが累積していっておるという実情にあると思うのですね。このこともぜひひとつ皆さんで認識をしていかなきゃならぬと思うのです。

 偽装結婚というのが最近はやっておって、私の地元でも何かそういうことがよく、ちょいちょい相談を受けたりするのですが、偽装結婚というのはどういう状況になっていますか。

中尾政府参考人 入管法上、婚姻届を出せばそれで済むという形ではございません。入管法上、婚姻ということで在留資格を認めるのは、「日本人の配偶者等」という在留資格で在留を認めております。

 偽装結婚の典型的なものは、籍を入れる、戸籍上籍が入っているということで申請がございます。入管の立場から申し上げまして、実体のない婚姻、配偶関係というものは、それは偽装だということで在留資格を与えないということでございまして、年齢的にかなり離れて、三十歳の男性に六十歳の女性の婚姻届というようなことになりますと、形式上、こういう婚姻届、あるいは戸籍上これでいいのかという疑義があります。

 そういうときに、実際にそれが夫婦として、実態的に配偶者という生活を営んでいる限り、それは「日本人の配偶者等」という在留資格を与えます。ところが、女性の方はホステスとして稼働している、別居をしている、実体がないということになりますとそういう資格を与えない、こういう形になりますので、実態調査というのはそういう意味では必要なことでございます。

長勢委員 大体がこういう事件というのは、その背後にいわゆる犯罪組織、場合によっては国際犯罪組織が関与している場合もあるわけで、日本の治安維持上ゆゆしき問題である。きちんとしてもらいたい、このように思っておるわけであります。

 また、不法滞在外国人というのが、先ほど言ったように合法的な不法滞在外国人は別途いるのでしょうけれども、わかっておるだけでも二十六万人ぐらいおるというふうに聞いておりますが、これは地域的に何か偏りがあるでしょうか。

中尾政府参考人 お答えさせていただきます。

 首都圏を中心としていわゆる不法滞在者が集中しておるわけでございます。私どもの方で、太平洋ベルト地帯というふうに言っておるわけでありますが、首都圏と東海、最終的には関西の大阪までの範囲内を主として、半数以上おると見ております。ところが、最近の傾向といたしまして、その辺の首都圏あるいは名古屋、東海を中心に摘発に努めれば努めるほど、地方分散化が進んでおる状況にございます。今後、地方に分散しておる不法滞在者をどういうふうに検挙していくかという課題を抱えておるのが現状でございます。

長勢委員 首都圏に比較的集中しておるというのは当然のことだと思うのですが、先ほども、不法滞在ではないかという通報があっても、その二割ぐらいしか実際上摘発調査ができないという大変恐ろしい話で、通報しても何もしない。ですから、当然通報した方はこれはどうしてくれるのだ、こういう話になるわけであります。これは当然のことでありますが、しかし、行くに行けないものですから、どうなるかというと、今行きます、今行きますと、まるでそば屋の出前みたいになっておる。まことに私はお気の毒な話だなと痛感した次第であります。

 一番集中している関東甲信越に摘発に行くための要員というのは何人おられるのですか。

中尾政府参考人 昨年、その関係に特別摘発部隊ということで、八人体制で浦和、千葉等々につけていただきまして、二十四人体制ということで、この四月から、一個班八人が千葉あるいは浦和、横浜等々でやっていっておる状況でございます。

長勢委員 二十六万人のうちの、仮に三分の一が関東甲信越としても十万人ですね。それを捕まえに行くのが二十四人でやっておるということでは、それは何もならないというのは、まことにごもっともと言わざるを得ません。したがって、これは前々からこういう問題になっているにもかかわらず何もしないのは何だと国民の皆さんは随分思っておるわけであります。

 実際、入管の警備官の方々が御苦労されて、摘発をした、そして強制送還をしたというのは年間どれくらいになるのですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 大体、近年は五万人前後の不法滞在外国人を毎年送還しておりますが、最近若干減ってきましても四万五千人オーダーだったというふうに記憶しております。

長勢委員 その非常にわずかな人数で四万五千人も摘発しているのですか。

中尾政府参考人 摘発の数で申し上げますと、八千から九千ぐらいが自前摘発でございます。あとは、不法滞在は悪いのだといろいろ広報をいたしまして、不法就労をしていた人が働き口がなくなると帰りたいということで、自主申告で出てきた人、それから、警察で逮捕され、裁判所に行って有罪判決、あるいは検察庁で起訴猶予等で釈放になったケース、そういうようなことで引き取り事案というのがございます。そういう引き取り事案等を含めまして、先ほど申し上げたような形の四万数千件、こういう形になっております。

長勢委員 大変御苦労されておっても、何せ先ほど申し上げたような実情ですから、御努力の成果は今のお話だと八千人程度ということです。五万人送り返しているとおっしゃいましたけれども、三万何千が自分で出てきて申告していくというわけですから、入管局長は大変温和な方なものですから優しくおっしゃいましたけれども、ありていに申し上げれば、これは何も悪いことをしたから出てきたのではなくて、もうけるだけもうけたから帰ろうというので出てきたわけですから、その間はずっと不法滞在を黙認してきたという実態なんですね。

 本来なら来る前に捕まえなきゃならないのに、本人が来るまでじっと待っているという実にばかげた話だと私は思うのです。やはりこういうこともみんなで認識をして考えていくべきことだと私は思います。

 また、摘発をすれば、私が教えてもらったところでは、収容施設に収容して、その間に強制送還手続をするということで、まさか摘発した方をどこかにつないでおくわけにはいきませんから、収容施設がないと対応ができない、これは当たり前のことであります。その収容施設が極めて不十分で、そのために、摘発をしようにも部屋があいていないので摘発ができない、行けない、部屋があくまで摘発を待っているという状況があるように聞いておりますが、収容施設はどういう状況になっておりますか。

中尾政府参考人 収容施設の関係につきましては、財務御当局等の御理解をいただきまして、この四、五年前から順次進めさせておるところでございまして、定員が今のところ二千四百ぐらいの定員でございます。これは、先ほど御説明申し上げました三センターの収容定員等を含めての話でございます。

 問題は、首都圏を中心とする収容場、つまり先生御指摘の、検挙した直後にとりあえず収容する収容場については、必ずしも実情に見合った状況ではありませんけれども、おかげで平成十五年になりますと、東京入国管理局の新庁舎がもとの東京税関跡地に新しく建てていただくことに相なっておりまして、そこで三百五十ふえまして、八百人定員の収容場が可能となりますので、そのときにはかなり改善されるものと考えておるところでございます。

長勢委員 法務省は、政治家に対しては大変厳しい姿勢をお持ちで、これは大変頼もしいのでございますが、どうも予算官庁とか定員管理官庁に対してはえらく紳士的で、局長の御答弁ではございますが、そんな気楽な話じゃなくて、御配慮もいただいているというほどの話をされているのかなと私自身は疑問に思っておりまして、もう少し元気よく、必要なことは訴えていかれたらいいのじゃないかと私は考えます。

 さて、今のお話を皆さん方どうお聞きいただいたかわかりませんが、こういう深刻な状況にある中で、いろいろな仕組みを考えたり苦労されておられる。この問題を解決していくときに、やり方を変えるとか工夫をするとかということの限界をもう超えてしまっておって、例えば、収容施設をふやすといったって、ふやせばそこに警備官を配置しなきゃならぬわけですから、それも足りない。こういうことですから、この問題の根本的な問題は圧倒的な職員不足にあると断ぜざるを得ないと私は考えておるのです。

 総務省さんにおいでいただいておりますが、管理局長、今法務省から聞きましたような現状、そして私は、これは圧倒的な要員不足が原因にある、このように思っておりますが、定員管理上、こういう実情についてどういう御認識でおいでになるか。例えば、そういう問題は要員不足の問題ではなくてやり方が悪いんだという見方もあるかと思います。ぜひそこら辺のところを率直に御認識をお伺いしたいと思います。

坂野政府参考人 ただいまるる御質疑の中でお話がございましたように、入管の体制について今後さらに強化をしていく必要がある、そういうような認識は、法務省と私どもと共通した認識として持っておると私ども考えておるわけでございます。これまでも、法務省の中の内部努力も含めて、体制強化について私どもいろいろ増員措置などで努力もさせてきていただいておりますけれども、これからもそういう努力は重ねなきゃならぬと考えておるわけでございます。

 ただ、政府全体としての定員管理の仕組み、枠組みということについても念頭に置く必要があると考えておりまして、例えば、十年一〇%の計画削減を行う、あるいは十年二五%の純減を目指す、そういう枠組みは、やはり部門を問わず政府全体として努めなきゃならぬ。そういう枠組みの中で、できるだけの努力を、増員が必要とされる部門、入管もそうでございますが、他の部門もまだるるございます。そういうところに重点的に配分をしていって、そういう中で全体としての効率を高める。そういう方針で私ども定員管理をさせていただいていることは、ぜひ御理解をいただきたいというふうに考えるわけでございます。

長勢委員 行管局長さんの御努力は私も高く評価をいたしておりますが、まさに今おっしゃったように、定員削減方針の中での、制約の中での役所としての精いっぱいの御努力をされておられるということでありまして、そのことは大変評価をいたしますが、ありていに申すと、出入国者数の増とかあるいは空港建設の進捗にようやく対応するという程度の話であって、今申しましたように、摘発体制を強化するとか在留資格審査を強化するとか、その深刻な状況に対応するのには、もう百年河清を待つがごときことにならざるを得ない。これは何も総務省さんに責任があるわけであると思っているわけではないのですが、これが現実だと私は思います。

 そうすると、当然定員削減方針は堅持をしていかなきゃならないわけですけれども、そういう中で、こういう緊急に対応すべき深刻な事態に対してどうやっていくかということは、やはり政治的に、政治主導で解決をしていくしかない、そう思いまして、副大臣会議で、政府全体として要員確保を図るという方針を御決定いただいたわけでございます。

 政府全体として考えるのは、定員削減も政府全体として考えなきゃなりませんが、必要なところに必要なものをやるということも政府全体として考えていかなければ、各省ごとにその枠の中でやりくりするということでやっていたのでは、とてもじゃないけれども、何年たっても同じこと。これは、現実にこの十年間全然改善されていないということで明らかにあらわれておるわけでございます。

 これは大臣のお仕事だと思いますので、今私の質問を聞いていただいておったと思いますが、今回の所信表明にわざわざ取り上げていただいておって恐縮でございますが、ぜひ大臣のこの問題についての認識と取り組みの決意をお聞かせいただきたいと思います。

森山国務大臣 今、長勢先生が、非常に熱心に皆様によくわかるような御質問をいただきまして、副大臣として詳細に勉強され、第一線の苦労もよくわかっていただいてそのことを御披露いただいたことはまことにありがたく存じます。

 今お話しのように、副大臣会議でも決定していただいたというふうに承りましたし、また、前法務大臣の高村大臣からも熱心な引き継ぎを受けておりますし、私もいろいろ聞くに及びまして、これはなかなか、ほってはおけない、大変大事な緊急な問題であるという認識をしております。できるだけ努力いたしまして、できるだけ早く、物的な、また人的な体制を整備するように努力していきたいと思います。

 ありがとうございました。

長勢委員 こういう深刻な問題はほかのところにもあるかもしれません。私は全部を承知しているわけじゃありませんが、これを全部並列的にやっていこうとなると議論が拡散して、結局、一本道路をつくるのに十本も二十本も十メーターずつつくって、どれも十年たたないとできない、こういうのと同じで、国民にとってはまことに歯がゆい話になってしまうと思うのですね。

 ですから、ぜひ大臣、ほかのこともあるでしょうけれども、まずこれはこれでやる。その次は、どこかほかの大事なことはもちろんやってもらわなきゃいけません。ぜひ計画的に、例えば毎年五百人ずつふやすとか、これを五年間で二千五百人ふやす。私は、施設も要員も倍増すべきだと思っておりますので、例えばですが、そういうことを閣議で決定いただいてそれを実行していただくというぐらい、小泉改革断行内閣でやっていただきたいと御要望を申し上げたいと思います。

 せっかく刑事局長さんと矯正局長さんに来ていただいておりますので、一言だけ質問させていただきます。

 治安の問題についてはいろいろな問題がございますが、その一つは精神障害者の犯罪の問題があると思うのです。これについては、たくさん問題があるでしょうけれども、一つは、何か事件が起きても、特に少年の場合なんか目立っていますけれども、仮に殺人を犯しても、精神障害者だということで不起訴になったり無罪になったりするというのは、何か国民からすると割り切れない。しかも、不起訴なり無罪になれば、後はもうしばらくたつと全く野放し、かつその方々がまた再犯を起こすということがちょいちょい起きておる。新聞等で見ていますと、えらい事件を起こした人はどうしておったといったら、何か病院におられたのだけれども、いつの間にか出ていって何かしておるというようなことがよく議論になって、みんな不安に思っておるわけです。

 これは前々からいろいろな意味で議論されてきた問題でございますが、精神障害者の犯罪に関してどういう問題意識を持って取り組んでおられるか、御披瀝をいただきたいと思います。

古田政府参考人 委員御指摘のとおり、精神障害による犯罪にどう対応すべきかという問題につきましては、これはかつて刑法全面改正作業の中でいわゆる治療処分の問題ということで議論がされ、さまざまな経緯があった問題でございます。

 精神障害による犯罪の場合、法律上の考え方といたしましては、病気が原因で、いわば物事の是非、善悪の判断がつかなくて行った行為、これについては刑罰というのは適当ではない、そういう考えで現在でき上がっているわけで、こういう考え方は、基本的にはそのとおりだろうと考えているわけでございます。

 精神障害による犯罪につきましては、特に最近ふえているとかそういう傾向は必ずしもないわけでございますが、時として、いわば被害者になる方の方から見ますと、全くわけのわからないうちに被害に遭うというふうな問題がどうしても起こってくる。いわゆる通り魔でありますとか、こういうふうな問題が出てくるわけでございます。そういう点から、委員御指摘のようないろいろな思いというのが社会の中にあるということも、これもまた事実だろう。そういうことで、さまざまな観点から検討が必要な問題だろうと考えているわけです。

 どういう点に問題があるかというお尋ねでございますが、現在は、そういうことで物事の是非、善悪がわからないままで行動した、こういうのは基本的に治療の対象と考えられているわけで、御案内のとおり、精神医療関係の法律によりまして、自傷他害のおそれがあるときには措置入院という仕組みで対応される、病気がそれで軽快して社会生活を送ることができるようになればまた社会に戻る、こういう仕組みになっているわけでございます。

 ただ、現在の精神医療のいろいろな変化などからいたしまして、世の中でも非常に重大な関心を持つ、人を殺すことになってしまった方とか、そういうような方に対して、それを今の精神医療の現場の中で適切に対応していくのが医療にとっても非常に大きな負担になるというような声も、これは精神医療関係者の中からかなり強く起こってきているわけでございます。

 そういうことも踏まえまして、重い犯罪行為、犯罪と言うには、先ほど申し上げましたように責任がないという意味でその言葉は直ちには使えないわけですが、そういう行為をした方について、世の中としてどう対応すべきなのか。それからまた、仮に社会の中で生活ができるということにまで回復いたしたとしても、治療の継続というのが確保されていないと、また危険が生ずるおそれもある、そういうふうな問題をどう対応すべきかということが、現在検討しなければならない問題だろうというふうに考えているわけでございます。

長勢委員 最初の方の御答弁、精神病の方、病気の方々と刑罰との関係は、理論は非常に正しいと思いますが、ありていに申し上げますと、理屈は合っているけれども答えが違っているというケースが多いのじゃないか。精神病者であるからということで不起訴なり無罪になっておるということですけれども、一般の常識から見ると、あんな人まで無罪になるの、ああいう人まで不起訴になるのということをたくさんの国民の方々が思っておられることもたくさん起きておるのじゃないかと思うのですね。余りくだくだしいことを申し上げるのも恐縮でございますが、精神鑑定の実情なり、あるいは現場の検事さん方のそういう方々に対する対応の状況なりに若干改善すべき点もあるのではないか、国民の常識に合っているのかなということを御指摘申し上げたいと思います。

 また、措置入院のお話がありましたが、措置入院をもって病院任せにしたことによって、再犯なりなんなりの問題に十分対応できないということは、今局長もおっしゃったとおりでありますし、中には、あっという間に出てきちゃう人もいるわけです。それから、診療行為の中で再犯なり累犯なりの監視までやるということも実際的には無理なわけで、何か保護観察的な司法制度の中での取り組みもあわせてやらないと国民の不安というのは解消されないのではないか。ぜひ早急に解決の方向を見出していただきたいものだ。この点も御要望申し上げたいと思います。

 次に矯正関係でございますが、少年院あるいは刑務所等々、施設が、ありていに言うと満杯になってきて、私はよく地元で冗談に言うのですけれども、刑務所も満員で、今まで四人部屋だったところに五人入ってもらったりしているんだよと言って笑わせておるのですけれども、私は、これも大変深刻な状況じゃないかなと思っております。

 かてて加えて、外国人の受刑者がふえてきておるというふうに聞いております。現場の方々に聞いてみると、一部の断食が得意な方々、民族もあるわけで、断食されたりして、これは日本人だとすぐ参っちゃうのですけれども、なかなか参らないものですから、そのうちぶっ倒れたりして、病院に担ぎ込んだところ、そこから逃げられたとか、大変な苦労をされておる。また、言っている話もよくわからないということで、大変御苦労も多いのだろうと思うのです。

 法務省の方々はこういう話は余りしたがりませんけれども、こういうことは国民に知っておいてもらった方がいいと思うのですね。

 この委員会でもいろいろな矯正局関係の質問もよく聞きましたけれども、刑務所に入っておる方々が一般の生活の方々と同じことになっていないという観点からの質問ばかりで、皆さん方が一生懸命やっていることを、また、どういう状況の中でやっておるかということと全然関係のない話ばかりで、皆さん方が御答弁なさっているのが、皆さん方の認識だけが正しいわけじゃありませんけれども、何か一方的なような気もするのですね。ぜひ、どんな苦労をされておるのか、今どういう状況になっておるのか、これから何をしていかなきゃならないのか、簡単でいいですけれども、御説明いただければありがたいと思います。

鶴田政府参考人 お答えいたします。

 最初に収容状況でございますけれども、今委員御指摘いただいたとおり、このところ非常に収容者がふえております。それの原因が那辺にあるかというのは、ここで正確なことは申しにくいと思いますが、数的に申し上げますと、特に刑務所の収容が昨年で五千人ふえました。定員が四万八千くらいあるのですが、それを超えておりまして、最近の直近の数字では、現在一〇六%ということになっております。一方、少年院の方も最近徐々にふえてまいりまして、ここも、一部の少年院では一二〇、一五〇、もっとすごいところは一六〇くらいにあるところもありますけれども、全般的に九〇%くらいになっております。

 したがいまして、こういう収容が非常に多くなっておるところですので、収容者のストレスという問題も出てきますし、また職員の負担も出てきますけれども、当面は、刑務所の場合は、すいているところへ収容調整するとか、あるいは、雑居房であれば、定員七名のところを八名入れるとか、倉庫で使っていないところはできる限り利用するとかいうようなことで、それなりに努力はしておりますけれども、引き続き、収容キャパシティーを広げるための努力が必要というふうに考えております。

 もう一つは、先ほども言いましたように、そういう収容が過剰になってまいりますとストレスが出てくる。それが原因でいろいろな不測の事態が起こる、こういうことになりますと、また国民に御迷惑をかけることになりますので、規律の維持、保安、警備の点についても十分注意していこうと思っております。

 それから、外国人受刑者のことにもちょっと触れていただきましたので、ごく簡単に申し上げますと、ふえてきた要因の一つに、外国人受刑者がふえてきている。

 特に、言葉が通じないというのが処遇上なかなか難しい問題がありますし、先生が御指摘になりました宗教上の問題だとかあるいは食事の問題というようなことでいろいろ苦労がございますけれども、できる限り通訳人を確保するとか、そういうようなことで努力していきたいと思いますが、長期的な問題としては、国際受刑者移送という制度のことについて真剣に取り組んでいかなきゃいかぬというふうに今考えているところです。

長勢委員 質問時間が終わりましたのでこれで終わりますが、司法改革を初め大変重要な問題を抱えておられるわけでございますけれども、現実の現場の治安にかかわる、今申し上げましたような問題も一般国民にとっては大変深刻な問題でございます。

 かつ、誤解を生ずるかもしれませんが、法務省の方々は、若干おとなしいというか、温和な方々、良識的な方々ばかりでありますので、刑務所をふやすにしたって何にしたって、人の問題にしても、予算関係省庁あるいは定員管理関係省庁の理解を得なきゃならぬわけで、今回は森山大臣初め非常に腕力の強い副大臣、政務官がおいででございますから、ぜひ皆さんのときに立派な成果を上げて、国民の治安に法務省が責任を果たせるように頑張っていただくように強く御要望申し上げまして、質問を終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

保利委員長 次に、冬柴鐵三君。

冬柴委員 公明党の冬柴鐵三でございます。よろしくお願いします。

 二十一世紀に入りました。二十一世紀はやはり人権の世紀である、このようにも言われておりますし、またそうなければならない、このように思います。

 このように考えたときに、マスメディアの非常な発達、目覚ましい発達、そういうものは、非常に明るい面と影の部分が目立ちます。特に最近、一九八〇年代、九〇年代を通観しましても、判例集の中にあらわれる、マスメディアによる人権侵害というものを扱った判例が非常に多くなっているわけでございます。

 そういう問題をきょうは取り上げて、短い時間ではありますけれども、ひとつそういう面で、人権の世紀にふさわしい、そしてまた憲法の保障する表現の自由との調整を十分に考えた施策が望まれると思うわけでございます。

 平成九年九月九日の最高裁の大法廷判決によりまして、問題とされる表現が、人の品性、徳行あるいは名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的価値を低下させるものであれば、これが事実を摘示するものであるか、または意見ないし評論を表明するものであるかを問わず成立するものである、このように言われておりまして、刑事による名誉毀損という場合は、公然事実を摘示して、いわゆる事実の摘示ということが要件になっているわけですけれども、民事における名誉侵害というものについては、意見あるいは論評というものも取り上げられるべきである、これは確定した考え方だと言っていいと思います。

 そういうふうにした場合に、原告側としては、新しい民事訴訟法では、後に論及いたしますが、受けた損害というものを立証しなきゃならないということになります。

 これは大変困難でございまして、その受けた損害の範囲、どこまで請求できるかといいますと、これは民法七百二十二条に規定があります。四百十七条を準用しているわけですけれども、不法行為によりて通常生ずべき損害の賠償をなさしむるをもってその目的とする、こういうふうになっておりますので、通常生ずる、我々、相当因果関係、こういうふうに言っておりますけれども、その範囲に限られてしまうということになってまいりますので、立証するということ、それからその範囲がそのように相当因果関係の範囲だということで相当狭められているということでございます。

 したがいまして、そういう名誉を侵害されたという訴えを起こしましても、本人にとっては大変深刻な、例えば週刊誌で全く事実無根のことを書かれたということで、大変信用を落として、表にも出られないというような場合であっても、裁判を起こして、大変な費用と精神的な負担をあえて決意してまでも訴訟を起こしても、認容される額がまことにスズメの涙というのが実情のようでございます。

 若干、大体どんなぐあいで認容例があったか、概括的で結構ですけれども、説明をいただきたいと思います。

山崎政府参考人 お答えを申し上げます。

 私ども、名誉毀損関係の判例を全部網羅したものを把握しておるわけでございません。公刊物に登載されたものの概観をいたすわけでございますけれども、最近五百万という裁判例が幾つか、ちらほら見られるようになったということでございますけれども、まだ相変わらず数万円から百万円、あるいは数百万円前後という判例もかなりございます。

 そういう状況でございます。

冬柴委員 私も、この質問をするために相当数拾ってみまして、八〇年代は、マスコミによる損害賠償五十五件を拾ってみましたけれども、おっしゃいましたように、非常に棄却事例が多いのと、認容しましても百万以下という事例がほとんど。

 九〇年代になりますと、百七十六の判例を拾ってみますと、九〇年代ですから、先ほどおっしゃいましたように五百万と、大変な事件ですけれども認容事例が出ましたが、下は二万円というぐあいで、ほとんどが百万円にひっついているというような事例だったと思います。

 また、時間の関係もありますけれども、名古屋大学の加藤教授が平成元年から五年までの五十三件のこのような事件について調査をされたものが、これはジュリストですから、法律雑誌に掲載されているものを見ましても、認容される慰謝料の額が極めて低い。平成五年末までに公刊された裁判例五十三件を見ても、二百万円認容が二件あったけれども、百五十万円が一件、あとは弁護士費用を除外するとすべてが百万円以下になっておって、認容判決の認容平均額をとってみると七十五万三千円弱となっている、こういう記事がございます。

 いずれにしましても、ほかにもいろいろ論文を読んでみましたけれども、認容額が受けた損害に比べて物すごく低いということは多論を要しないところのように思われるわけでございます。

 そこで、アメリカでは懲罰的損害賠償という制度があるようでございまして、これは名誉毀損、非毀誹謗、暴行もしくは野蛮な行為のような物理的行為に対し、当事者を罰するため、またはその当事者と同じ立場にある他者の類似行為を抑止させるために、懲罰的損害賠償請求が民事請求訴訟制度の中で認められているということでございまして、我が国とは大分違うわけでございます。

 この米国における名誉毀損に対する懲罰的な賠償という考え方、私は今ちょっと概略を述べましたけれども、もう少し説明していただいたらどうかと思います。

山崎政府参考人 ただいま委員の方からもう内容の概括的な御説明がございましたけれども、基本的にはそのとおりでございまして、主に不法行為訴訟におきまして、加害行為の悪性が高い場合でございますけれども、そういう場合に加害者に対して制裁を加えるという趣旨、それと、二度とそういうことは起こさないということでございます。それとともに、一般的にほかの人もそういうことをしてはならないという抑止効果を与えるために、本来の損害賠償額の何倍、あるいはもう何百倍というようなものもあるようでございますけれども、そういうものを懲罰的に加えるということで、一種の制裁を民事の賠償額で行うという、民事と刑事が混同したような考え方というふうに私どもは承知をしております。

冬柴委員 そのような損害、問題は額ですけれども、アメリカでは陪審制度がとられております。したがいまして、損害賠償額がまず陪審によって評決されるわけですが、法廷にあらわれたいろいろな事例を総合しますと、素人の陪審員ですから、大変感情的になる。特に悪意によって人権が侵害されている場合ですから、そのような事例が多いわけでございますが、これも、一九八〇年から八四年までの四年間について、八十一件、マスコミ、報道による人権侵害事件で、まず評決ですが、驚くべき金額でございまして、四分の一が、百万ドル、一億数千万円を超える。それから八五年、後半になると、百万ドルを超えるということで、大変な高額、もうとんでもない金額でございます。しかし、それを、評決に基づきまして、裁判官が、報道の自由とのバランスをとったり、いろいろ他と比較しながら減額をするわけでございますが、大体、平均でも一千五百万円になっている。

 特に、ナイアガラ地域のレストラン、ホテルの経営者が、事件と全く無関係なのに、犯罪シンジケートから巨額の借金が原因で誘拐、暴行された、テレビ局にそういうふうに被害者取り違えをされた事件で、十八億四千八百万円の判決がテレビ会社に命じられている。ちょっと我々では考えられないような金額ですけれども、そのほかいろいろとございます。

 そしてまた、活字報道ですけれども、非常に高名なラジオ、テレビの評論家に対して、違う評論家が相当執拗にその人に対する報道、評論をしたわけですけれども、それは違うということで訂正を再々要求するのに、そういうことを全く無視してそれを書き続けた、そしてそれを新聞が報道した、制止するにもかかわらず報道したという事案には、相当因果関係の損害はそれぞれたった一ドルと見て、それでも執筆者には十万倍の十万ドル、そして新聞社には二万五千ドルと五万ドルをそれぞれ支払いを命じた判決が出ておりまして、いろいろ懲罰的損害賠償を考える上において非常におもしろい事例だというふうに思いましたが、日本とは制度は違いますけれども、そういう報道による人権侵害というものを許さないという姿勢が大変よくわかると思うわけでございます。

 そこで、日本ではこういうことが認められないようですけれども、ではなぜ認められないのか、その点について若干説明をしていただきたいと思います。

山崎政府参考人 先ほどもお答え申し上げましたけれども、民事と刑事が混在化しているという点が一つでございまして、我が国では、不法行為は、民事の関係では、こうむった損害をその範囲でてん補する、こういう思想でできているわけでございまして、それ以上にわたる制裁というものについては刑事で処罰をしていく。この民事と刑事のすみ分けができているという点で、我が国の法体系に合わないというのが第一点でございます。

 それから第二点は、被害者は、こうむった損害がてん補される、それでいいわけですが、それ以上に利得をするというのは果たしていいのかどうかという、これは倫理的な問題とかいろいろございますけれども、そういうような考え方、それとやはり濫用のおそれがあるではないか、こういうようなことが言われておりまして、この点につきましては、最高裁判所の判断、これは、アメリカで判決されたものについて我が国で執行判決を行うわけでございますけれども、そのときに、公序良俗に反するということで承認をしなかったということでございまして、判例上もそのような考え方だというふうに理解しております。

冬柴委員 今御説明があったとおりの判決が平成九年七月十一日第二小法廷で言い渡されておりまして、これについての解説はいろいろな法律関係の書物でなされているところであり、これは普通の日本の民事裁判及び刑事裁判という立て分けから見れば、罰則は、悪いことをした罰は刑事手続でやる、しかしその受けた損害は民事訴訟でやるという立て分けがきちっとできているということで、したがいまして、民事の場合には、先ほど引用した外国の判決で言えば一ドルの部分を負担する、十万ドルの部分は刑事の方でやってもらう、こういうことのようでございます。

 さて、そうなりますと、日本の場合も、マスメディアによる名誉毀損というものが行われた場合に、民事における損害額が僅少であったとしても、刑事手続においてきちっと処罰をされているということになれば、その名誉を毀損した人に対して罰を加え、そして他者も、こういう記事を誤って書けばこういう懲役が待っているということで、一般的威嚇効果もあって、そういうものが抑止されるということになると思うのですね。

 果たして、その期待どおりになっているかどうかでございますが、刑事局の方に聞きたいのですが、こういう名誉毀損事件について、一体どれぐらいの人が事件として取り上げられたか、そしてそれについてどれぐらいの人が裁判を求められたか、起訴猶予になったのはどうか、その結果どれぐらいの人が罰を受けたのか、その点について御説明いただきたいと思います。

古田政府参考人 名誉毀損罪の受理、処理の状況について、一般的に直近の統計に基づいて御説明申し上げますと、現在私どもの方で持っております統計は、平成十年が一番新しいものでございます。

 同年におきます検察庁における受理人員は三百人で、処理人員は三百五十九となっております。そのうち、起訴した人員は三十七人、不起訴が三百二十二人、起訴率で計算いたしますと約一〇・三%ということになります。起訴人員のうち、公判請求に至った者は約半数の十八人、略式命令、これは罰金になるわけでございますけれども、十九人という状況でございます。

 不起訴理由につきましては、不起訴になったもののうち、その理由の主なものは、名誉毀損罪が親告罪でございます、その後の和解とかそういうことで告訴が取り消されたというケースが圧倒的に多いわけで、これが百十二で、不起訴件数の約三分の一余りとなっております。

 なお、裁判結果についてあわせて申し上げますと、平成十年では、名誉毀損罪で有罪判決を受けましたのが十五、これは懲役または禁錮ということでございますけれども、そのうち、実刑になった者は三、執行猶予を付された者が十二、こういう状況でございます。

冬柴委員 法務大臣、約三百人が告訴するというのは、もうよほどのことじゃないとしないと思うんですね。大概は、日本人は辛抱してしまうか、あきらめちゃうわけですけれども、とにかく、警察、検察庁に、こういうことをやられたからということで親告をする人があるわけですけれども、そういう中で、最終的に懲役とか禁錮は、これは相当悪性が高かったと思うんですが、三人でしたか。ということになりますと、アメリカの懲罰的損害賠償部分というものには代替していないんじゃないか。とてもじゃないけれども、一般的な抑止効果は期待できないと思うわけでございます。

 ですから懲罰的損害賠償をすぐとれ、私はそう言うわけではありませんけれども、これは法体系が民事と刑事と大変精緻に分けられていますけれども、いわゆる故意で悪いことをした、あるいは、過失と言ったらこれはそんなに有罪になりません、故意に人の名誉を毀損した。その毀損された人にとっては大変なダメージです、後で事例を挙げますけれども。

 そういうものに対して、頼りになる刑罰というものが、百分の一の人が刑務所に入る、あとは起訴猶予があったりということで、いろいろ調べられた人、いわゆる立件して調べられた人の中でも、三百数十人の中で約一割の人が起訴されたということを考えますと、日本の場合、何かこれはやり得みたいになってしまいまして、ですから、週刊誌を見てください、あるいはテレビを見てください。これは本当に人権国家かと思われるような報道があります。

 私は、そういう意味で、いわゆるジャスティス、正義というものをつかさどる司法がそういう面をもう少し考えなければ、二十一世紀は人権の世紀だ、人権国家だということは言うことができないように思うわけでございます。

 一件。これは本人の同意も得たんですけれども、これは裁判にもちろんなりましたけれども、すごくひどいですよ。私は、ここで言うとその人がまた二重に被害を受けるということを恐れるわけですけれども、名前は伏せますけれども、「スクープ!美人国会議員の四十万円買春SEX一部始終を暴露する! 元交際男性が全告白」ということで、顔写真から全部載っています。電車の中づりから全部出ているんですよ、これ。「元女優の美人国会議員が年若い男性と肉体関係を持った。それだけなら独身の彼女だけに、問題はない。だが、その関係の実態はオトコの肉体をカネで買うという買春行為だったのだ。」これ、四ページにわたって、しかも、もう読んだらへどが出るほどですよ。私のおしっこを飲んだら三十万円上げると言って飲まされた、こういうことですよ。

 もちろん告訴もしたし、民事訴訟も起こしました。全く告白した男性というのはいないんですよ。どれだけ言っても、出てこない。そして、ホストクラブというのですけれども、ホストクラブは実在していました。しかし、この美人国会議員は一回も来ていない。そして、その中には、ブランデーをボトルキープしたと書いてある。ところが、彼女は酒飲まない。こういうことが行われている。

 この事件もそうですけれども、いろいろな事件を見るにつけて、これは人権国家と言えないな、何とかしなきゃいけないよ。マスコミの人から怒られるかもわかりませんけれども、そうじゃなしに、私は、あくまで報道の自由は守り抜かなきゃならない、しかし、こういう人権侵害がこの日本の国で敢行されるということは絶対許されないと思うわけでございます。

 この裁判例たくさんを私読んでみて感じたことは二つあった。

 一つは、名誉毀損に対する損害を発生しながら賠償額が余りにも低過ぎるということが一つ。請求額が五千万というものでも、百万というようなのが多い。いわゆる百万円賠償ルールというふうに言われているルールがあるみたいです。したがいまして、損害発生したらおおむね百万円。私もたくさん判例、五百近い判例を見ましたけれども、百万円前後の事例が非常に多い。

 そうしますと、こういう困難な事件を、私も弁護士ですけれども、こんな事件を担当するのは嫌ですよ、実際。これを勝訴するためにその当事者の受ける精神的、経済的負担ということを考えたら、勝訴して百万円もらって、弁護士費用に消えますよ。したがって訴訟を断念するという事例が非常に多いんです。そして、社会通念からかけ離れた額で、実際の補償にはなっておりません。

 第二点は、認容額が低額に過ぎるがゆえに営利活動として行われる名誉毀損を誘発している、私はそういう現象が日本には見られると思います。

 ですから、静岡弁護士会が大変な労作でこういう判例の一覧をつくられました。出版されておりますが、三百七十一件のこういうプライバシー侵害の事件を挙げていられるのですが、特定の名前を挙げて申しわけないけれども、被告にされた人、新潮社が三十二件、これは週刊新潮とかフォーカスという雑誌が出ていますね。三百七十一件中三十二件が新潮社が相手でした。そして、そのうち認容賠償額が最高の五百万円という事例も新潮社でありました。

 なお、講談社、これは週刊現代とかフライデーで、二十二件あります。

 そのほか、もちろんずっと、もう言うのはやめますけれども、週刊誌とかあるいは日刊新聞に対しても非常に事件が多いということに気がつきます。

 最高裁判所として、今私が指摘したことをどう受けとめられていますか。

千葉最高裁判所長官代理者 名誉毀損による精神的損害に対する慰謝料の額について、判決がいろいろ出されておりまして、委員御紹介のとおりでございますが、基本的には個々の裁判体の判断にかかわることでございますので、事務当局としてはコメントする立場にはないことについて御理解をいただきたいと思います。

 しかしながら、委員御指摘のとおり、名誉毀損による損害賠償額が低いのではないか、また、認容される賠償額が低いということが一部のマスコミにおいて名誉を毀損する言論活動に走る一因になっているのではないか、こういう意見があるということも我々承知しているところでございます。本年の三月二十一日の参議院の予算委員会におきましても、委員の方から同様の指摘がされているところでございます。

 我々も、適切な慰謝料額の算定のあり方につきましては十分に問題意識を持っているところでございまして、下級裁に対しましては、いろいろな機会をとらえまして、このような問題意識に立った情報提供をしているところでございますけれども、今後とも、本日の委員の御指摘も踏まえまして、さらに情報提供を続けていきたいと考えております。

冬柴委員 平成十年一月一日に新しい民事訴訟法が施行されました。その中で二百四十八条は、損害の発生が認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨、証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる。これはドイツの考え方を承継した新しい、今までの我々が勉強したときとは違う、すなわち、損害も立証しなきゃならないという非常に困難なハードルがあったわけですけれども、損害の発生というところを立証すれば、その損害の額については裁判官に相当大きな裁量権が与えられた規定だと私は思います。

 そういうことが影響したのだろうと私は思うのですけれども、ことしの三月二十七日に東京地裁で今までとは画期的に違う判決が言い渡されました。プロ野球の清原選手がアメリカへ行って自主トレーニングをやっていたわけですけれども、これを大変誹謗する記事、毎晩飲み歩いているとかふまじめだとかというような、私も判決全文を読ませていただきましたけれども、大変ひどい記事が週刊ポストに書かれておりまして、清原選手にとっては大きなダメージだということで五千万円の慰謝料請求をしたのに対して、東京地裁は一千万円を認容する判決を言い渡されました。

 私は、やはりこの平成十年の新しい民事訴訟法の精神を酌んで、非常に詳細に、この点が違う、この点が取材が不十分だということをやっておりますけれども、損害額については別に立証がないのですが、これについて一千万円というふうに認容したということは前進だと思うわけでございます。

 私もずっと調べてみますと、平成になってから、平成六年九月七日に、これも新潮社ですが、五百万円の損害を認容した東京高裁の判決が出ているとか、あるいは平成七年になりますと、これも月刊誌相手に五百万円というものが出ております。今までは百万円程度、もっと低いのは二万円ぐらいですよ。訴訟を起こして二万円の判決をもらったって大変ですけれども、五百万というものが二つ出て、そして清原で一千万が出た。そのほか、静岡地裁でも一千万というのが出たのですが、これは高裁で敗れておりますので、私ここへ挙げませんけれども、しかし、裁判官の認識というものが徐々に変わりつつあるんだなと。

 それで、それは、アメリカの懲罰的損害賠償というような難しい法制度の、民事、刑事の骨格を変えるような大きな議論を経由しなければ改正できないような難しいところへ踏み込むのではなく、そういう慰謝料の算定、損害額の発生については厳しく事実認定は求めるけれども、その賠償額については、いわば精神としてそういう違法な人を懲らしめる、そしてまた、同じような記事を書いたらこういうことになるよと、他者にそういうことを抑制するという効果が認められるような金額になりつつあるのかな。

 しかし、一千万では――もう二度と言うのは嫌ですけれども、先ほどのきわめつけのような名誉毀損、これは幾らぐらいしますか。裁判官だったら幾らやったらいいですか。大変ですよ。外へ出られませんよ、親戚だって。そして、これは国会議員ですから、支持した人たちは非難ごうごうです。そういうことを考えたときに、これは金銭で償うことができないほどの大きな痛手。しかも、裁判をやったら全く根拠がない、あやふや。そういうことをこの国では許してはいけないというふうに思うわけでございます。

 そこで、最高裁判所にお聞きしますけれども、私が挙げました新しい二百四十八条、こういうものについての注意を喚起して、そして社会通念に沿った損害賠償額の認定の方向を示すべきではないか。そしてまた、研修所で、量刑についての研究という非常にすぐれた研究があった、我々がこの事件だったらどれぐらいの刑が適当かということを考える上において非常に重要な手がかりになったすぐれた研究があったと思うのですけれども、やはりこういう損害賠償額算定についての手がかりを与えるような研究というものは、民事局においてもそうでしょうし、それから裁判所においてもそうだし、また司法研修所、これから判検事、弁護士になろうとする人たちにとっても非常に重要だと思うのです。

 その点について、こういう研究とか、あるいはそういう方向を示すということについてどうお考えか、お尋ねをしたいと思います。

千葉最高裁判所長官代理者 近時におきましては、委員御指摘の判決のほかにも、ことしの二月でございますけれども、週刊誌による名誉毀損の事案について、やはり慰謝料五百万の支払いを命じた判決がございます。比較的高額な慰謝料を認容するような、そういう判決が出てきつつあるということでございます。

 また、最近発行されました判例タイムズ誌の千五十五号では、名誉毀損による損害額の算定のあり方について検討した元裁判官の論文、それから、アメリカを中心としました諸外国における損害額を分析した現職裁判官の論文なども掲載されておりますし、今委員御指摘の判決などもあわせて載せてあるわけでございまして、こういう問題が大きく取り上げられるようになってきております。

 さらに、今委員から御指摘ございました点でございますけれども、ごく近い時期に司法研修所におきまして、東京それから大阪、名古屋の裁判官による損害賠償の実務のあり方について検討をする、そういう研究会が開かれるというふうに聞いております。この研究会では、今先生御指摘のような、社会通念に沿った適切な損害額の算定のあり方、こういう点についても検討がされるものというふうに思っております。

 我々も、こういう司法研修所の研究を見守るとともに、今後も下級裁に対しまして、この研究の結果等も含めた必要な情報を提供していきたいと考えております。

冬柴委員 最後に法務大臣に、今のやりとりを聞いた結果の御感想と、そしてまた、私は、人権の世紀、人権国家日本においてこういうものが許されてはならないと思っておるわけですが、その点についての御感想等をお伺いして終わりたいと思います。よろしくお願いします。

森山国務大臣 言論の自由あるいは報道の自由ということは、大変大事な人権でございますし、これからも尊重していかなければいけないと思いますが、御指摘のように、非常に常軌を逸したともいうようなマスコミの過当競争、その結果、売らんかなということで非常に刺激的な記事を書く傾向が最近大変目立っておりまして、その中には、個人のプライバシーあるいは名誉を著しく傷つけるというものがたびたび見られるようになりました。

 私も、マスコミのあり方というのは、よほどこの辺で考え直していただきたいというふうに思っている者でございますが、今おっしゃいましたような名誉毀損に関する損害賠償の額につきましては、議員が御指摘のとおり、今までのところ全体的に低過ぎるという印象が大変強うございます。深刻な被害を受けている者に対する救済手段としては不十分だというふうに率直に思う次第でございます。

 このような点を踏まえまして、法務省におきましても、本年、損害賠償制度を被害者の救済手段として有効に機能させる方法のあり方というのを含めまして、名誉、プライバシーの侵害に対する民事的救済に関して調査研究を行うということを予定しておりまして、今年度の予算にもそれを計上しております。

 この作業におきましては、損害賠償制度のあり方に関する諸外国の実情の調査研究、また、プライバシーの侵害に関する金銭賠償以外の特定の救済の方法についてありやなしや、あるとすればいかにすればいいかというようなことを考えることを予定しておりまして、これらを踏まえまして、必要な制度上の検討も行いたいというふうに考えております。

 ありがとうございました。

冬柴委員 どうもありがとうございました。

保利委員長 次回は、来る十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十三分散会




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