衆議院

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第11号 平成13年5月23日(水曜日)

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平成十三年五月二十三日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 奥谷  通君 理事 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 長勢 甚遠君

   理事 佐々木秀典君 理事 野田 佳彦君

   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君

      荒井 広幸君    太田 誠一君

      岡下 信子君    熊代 昭彦君

      左藤  章君    笹川  堯君

      鈴木 恒夫君    棚橋 泰文君

      谷川 和穗君    中川 昭一君

      松宮  勲君    山本 明彦君

      吉野 正芳君    渡辺 喜美君

      枝野 幸男君    武正 公一君

      日野 市朗君    平岡 秀夫君

      水島 広子君    山内  功君

      山花 郁夫君    上田  勇君

      樋高  剛君    木島日出夫君

      瀬古由起子君    藤木 洋子君

      植田 至紀君    徳田 虎雄君

    …………………………………

   法務大臣         森山 眞弓君

   内閣官房副長官      上野 公成君

   法務副大臣        横内 正明君

   法務大臣政務官      中川 義雄君

   財務大臣政務官      中野  清君

   最高裁判所事務総局総務局

   長            中山 隆夫君

   最高裁判所事務総局人事局

   長            金築 誠志君

   政府参考人

   (法務省大臣官房訟務総括

   審議官)         都築  弘君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制

   部長)          房村 精一君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   法務委員会専門員     井上 隆久君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  西田  司君     岡下 信子君

  枝野 幸男君     武正 公一君

  藤井 裕久君     樋高  剛君

  不破 哲三君     瀬古由起子君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 信子君     西田  司君

  武正 公一君     枝野 幸男君

  樋高  剛君     藤井 裕久君

  瀬古由起子君     藤木 洋子君

同日

 辞任         補欠選任

  藤木 洋子君     不破 哲三君

    ―――――――――――――

五月二十三日

 中間法人法案(内閣提出第七〇号)

同月二十二日

 治安維持法犠牲者国家賠償法の制定に関する請願(石井紘基君紹介)(第一六九九号)

 同(小沢和秋君紹介)(第一七〇〇号)

 同(海江田万里君紹介)(第一七〇一号)

 同(小林憲司君紹介)(第一七〇二号)

 同(辻元清美君紹介)(第一七〇三号)

 同(中西績介君紹介)(第一七〇四号)

 同(日森文尋君紹介)(第一七〇五号)

 同(藤木洋子君紹介)(第一七〇六号)

 同(山口富男君紹介)(第一七〇七号)

 同(山元勉君紹介)(第一七〇八号)

 同(辻元清美君紹介)(第一七二四号)

 同(筒井信隆君紹介)(第一七二五号)

 同(北川れん子君紹介)(第一七五四号)

 同(鈴木淑夫君紹介)(第一七五五号)

 同(土井たか子君紹介)(第一七五六号)

 同(中井洽君紹介)(第一七五七号)

 同(前田雄吉君紹介)(第一七五八号)

 同(牧義夫君紹介)(第一七五九号)

 同(水島広子君紹介)(第一七六〇号)

 同(山花郁夫君紹介)(第一七六一号)

 選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請願(山花郁夫君紹介)(第一七五三号)

同月二十三日

 治安維持法犠牲者国家賠償法の制定に関する請願(大畠章宏君紹介)(第一九三〇号)

 同(大森猛君紹介)(第一九三一号)

 同(後藤斎君紹介)(第一九三二号)

 同(重野安正君紹介)(第一九三三号)

 同(羽田孜君紹介)(第一九三四号)

 同(原口一博君紹介)(第一九三五号)

 同(保坂展人君紹介)(第一九三六号)

 同(江崎洋一郎君紹介)(第二〇三〇号)

 同(大幡基夫君紹介)(第二〇三一号)

 選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請願(植田至紀君紹介)(第一九三七号)

 選択的夫婦別姓導入など民法改正に関する請願(大島令子君紹介)(第二〇六〇号)

 同(水島広子君紹介)(第二〇七三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 弁護士法の一部を改正する法律案(内閣提出第六二号)

 中間法人法案(内閣提出第七〇号)




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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、弁護士法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。森山法務大臣。

    ―――――――――――――

 弁護士法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

森山国務大臣 弁護士法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、弁護士を社員とし、弁護士業務を行うことを目的とする法人を設立することを可能にするためのものであり、弁護士業務の基盤を拡大強化することにより、複雑多様化する法律事務に的確に対応し、国民の利便性の一層の向上を図ることを目的とするものであります。

 以下、法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず第一に、この法人の社員は弁護士に限るものとし、設立の方式については、準則主義によるものとしております。なお、その名称中には、弁護士法人という文字を使用しなければならないこととしております。

 第二に、法人の業務範囲については、基本的に自然人たる弁護士と同様のものとしております。

 第三に、法人の業務については、原則として全社員が業務執行権限及び代表権限を有するものとしておりますが、特定の事件について、法人が業務を担当する社員を指定した場合には、その社員のみが当該事件についての業務執行権限及び代表権限を有するものとしております。

 第四に、弁護士法人がその債務を完済できない場合には、原則として全社員が無限連帯責任を負うこととしておりますが、特定の事件について指定がされた場合には、その事件に関し依頼者に対して負担することとなった弁護士法人の債務については、指定を受けた社員のみが無限連帯責任を負うものとしております。

 第五に、弁護士法人は、従たる事務所を設けることができるものとしております。

 第六に、弁護士法人は、弁護士と同様、弁護士会及び日本弁護士連合会の会員になるものとし、その指導監督を受けるものとしております。

 そのほか、所要の規定の整備を行っております。

 以上が、この法律案を提案いたしました理由及びその概要であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

保利委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

保利委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房訟務総括審議官都築弘君、法務省大臣官房司法法制部長房村精一君及び法務省民事局長山崎潮君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所中山総務局長及び金築人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝野幸男君。

枝野委員 官房副長官にお忙しい中おいでいただいておりますので、ちょっと順番が不自然でありますが、ハンセン病訴訟の問題についてお尋ねをいたします。

 確認をしておきますが、現時点では、控訴するかしないか結論は出ていないですね。

上野内閣官房副長官 まだ出ておりません。

枝野委員 官房副長官は、十五日ですか、原告とお会いになっておりますか。

上野内閣官房副長官 二十一日と二十二日でございます。

枝野委員 そのときに、弁護士の同行を拒否されて、介護者、車いすを押す人ということで同行したというふうに伝えられているのですが、事実でしょうか。

上野内閣官房副長官 ちょっと経過を説明させていただきたいと思いますけれども、実は最初にお会いしたのは二十一日、おとといでございます。

 これは、朝から参議院の予算委員会が開かれておりまして、官房副長官は、参議院の場合は私がずっと終日出席することになっております。

 夕方の四時ごろだと思いますけれども、官房長官から電話がありまして、原告の方を含めて何人かの方が官邸の前に見えていて、ちょうど飯島秘書官が対応されていたのですけれども、なかなか対応がスムーズでないので、おまえ、予算委員会の最中だけれども、帰ってきて対応しろということでありました。

 私が参りまして、少しもめていたのですけれども、お話を伺ってようやく話があれしまして、原告の元患者さんが、とにかく控訴をするとかしないとか決める前に、原告六人にぜひ会うように総理に言ってくれ、こういうお話がありましたので、私が、それではよくわかりましたから、そういう趣旨を、方針を決める前に原告の方六人にお会いするように総理の方にお伝えしましょうということです。

 ただ、当日、その翌日は外交日程を含めてずっと一日じゅう詰まっておりましたので、二十一日と二十二日は無理ですよ、しかし、きょう総理に申し上げた結果は夜には会長さんに御報告します、こういうことでありました。

 二日目に、また予算委員会の最中に電話がございまして、今度はどうなっているかということでございますので、それでは私がお会いしましょうということで、十二時半からお会いしました。

 そのときに、原告の元患者さんのそういう申し出がありましたので、その方たちがお会いするということで、私は直接交渉したわけではありませんけれども、官邸の方で六人の方と、しかし、お体が不自由な方もおりますので、介護の人を何人かよろしいですかということがあったようでございまして、それは結構でございますということで、十二時半から六人の方と三人の介護の方とお会いしました。

 冒頭、会長さん、曽我野さんから、我々弁護士もきょう来ているのでというお話を承りましたけれども、私が総理の代理に話を聞くということではなくて、総理にお会いするということを伝えるというお約束がありましたので、そのことでありましたから、患者さんにもそういうことでありましたけれども、きょうは発言はしてはだめだとかそういうことは言わなかったのですけれども、私がした約束ではありませんけれども、来るときの約束を守って、お三方とも発言はされませんでした。

 しかし、六人ともいろいろな発言をしまして、とにかく努力をしているから、きょうじゅうに決着すればまた御連絡しますと。きのうは決着しませんでしたので、申しわけないけれどもあしたまでお待ちいただきたいというお電話を差し上げた、それが現状でございます。

枝野委員 確認したいのですが、今総理に直接お会いいただくための努力をしている、これは間違いないでしょうか。

上野内閣官房副長官 そういう努力を今しておりまして、実はこれからまた、これが終わりましたら行って、引き続き努力をしたいと思っております。

枝野委員 これは原告や弁護団からも強い要望があるのですが、当然総理がお会いいただくときには弁護団が同行し、弁護団の発言もお認めいただくということでないと、原告、患者さんの気持ちとかあるいは話し合いとかについてきちんとしたことができないということを危惧する声が上がっております。

 これは御理解いただいていると思いますけれども、被告は国でありまして、内閣総理大臣も官房副長官もいずれも国の代理人であります。そういう意味では、専門的知識を持った人間が代表者、代理人的にお会いになるわけでありますから、当然原告側の方も代理人がついてサポートするというのは当たり前だというふうに思いますが、そうしていただけますね。

上野内閣官房副長官 国の代理人といいますか、国は、こういう場合、国会を含めて法務省でありますから、代理人ということが当たるかどうかわかりませんけれども、そういう弁護士の方々もというお話は総理にお伝えいたしますけれども、しかし基本は、これは本当に苦しい御経験をされた元患者さんたちの気持ちを素直に総理に聞いていただくということが基本でありますので、お伝えはしますけれども、その時間の範囲内で、その六人の方、あるいはもう少しふえられるかどうかわかりませんけれども、実現するとすれば、そのことを中心にやっていかなければいけないのではないかと思っておりますけれども、きょうこういう御質問があったことも総理にお伝えをして、これから対応していきたいと思っています。

枝野委員 もちろん、当事者の方の気持ちを聞いていただくということが一番大事なわけでありますけれども、では逆に、その気持ちの問題だけで対応していただけるんだったらそれでいいのですけれども、国の方は当然、法律論とか行政の立場とかということで、そこでお返事になるかどうかは別として、いろいろ判断の材料は言えるわけですから、場合によっては、そうしたことについて当事者にかわって説明をしたり、あるいは総理からもし何かおっしゃられたときに受けた話を御本人たちにわかるように伝えたりというような意味で、当然、これは代理人が同行をし、場合によっては発言をするということは当たり前だということでなければセレモニーに終わってしまうと思いますので、御答弁は結構ですので、ぜひそういった趣旨で総理にもお伝えをいただきたいということであります。

 では、お忙しいようですから、官房副長官、ありがとうございます。

 続いて、この件について法務大臣に一つ確認をさせていただきたいのですが、過日の法務委員会におきまして、十八日でしょうか、私がこの件について法務大臣にお聞きをして、国会の意思は事務総長に聞くのか、だれに聞くのかということを念を押しました。どうも、国会の方の議運で、与党の皆さんの側から、これは、控訴するかどうかということは事務総長に対して問い合わせが来ているので、我々院としては関係ないのだというような趣旨の発言が出ているということであります。ですから、私の議事録をつけて、おかしい、森山法務大臣はそう言っていないということを議運の方に伝えてもらうようにしてあるのですけれども、念を押しますが、事務総長に聞くというのは、事務総長を通じて聞くというふうに御答弁いただいておりますが、それでよろしいのですね。

森山国務大臣 私はそのように申し上げましたし、そのように御理解いただいてよろしいのではないかと思います。

枝野委員 であれば、ぜひ法務大臣も、議院内閣制で、参議院議員の、国会議員の一人でありますので、国会議員としての立場と国務大臣としての立場の両方を持っているわけでありますから、それは国会議員の方の立場としてちょっとおかしいぞということは、少なくとも参議院の議運関係者のところにはお伝えをいただく努力をされるのが普通ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

森山国務大臣 この件に関しては、私、発言をさせていただく立場は法務大臣としてということでございますので、もちろん、議員の一人であることは確かでございますけれども、法務大臣といたしまして、それぞれの院の事務総長を通じてお願いしたということでございますので、その後のそれぞれの院におけるお取り扱いについては両院で決めていただくということになるのではないでしょうか。

枝野委員 先ほどは失礼しました。衆議院であります。私も、選挙区は埼玉ですが、宇都宮が実家で、森山欽司先生の代からよく存じ上げているものですから、最初に参議院に出られた印象が残っていて、失礼しました。

 今の御答弁の趣旨はわかるのですけれども、これは私も含めて、被告というか、責任を問われている国会議員、森山大臣も、いわゆるらい予防法が廃止になる前の責任を問われている段階の国会議員でもいらしたわけでありますから、そういう立場としての行動というものも、ここでは国務大臣としての立場での御答弁ですので、御答弁は結構ですが、当然していただけるものというふうに期待をしたい。ちょっと理屈の通らない、事務総長が聞かれているんだから院としては反応しなくていいのだみたいな話はないというふうに思います。

 それから、これも答弁は大体想像できるのですが、その後、原告の皆さんの動き、いろいろな動きが出ております。現時点で、法務大臣としてこの控訴問題についてどうお考えになっているのか。

森山国務大臣 この件は前にも、別の機会に申し上げましたけれども、私も患者の皆さんにお会いしまして、まことに言葉もないほどショックを受けたと言ったらよろしいでしょうか、そういうことで本当に悩んでおります。実際にどのようにしてこの皆さん方の問題を解決したらいいだろうかということ、そして、それと法務省のあずかっております法律上のさまざまな問題ということを考えますと、本当に難しい問題で、みんな悩んでいるというのが本当のところではないかと思うんですが、私もその一人でございます。

 関係の、特に厚生労働省の責任者である厚生労働大臣、そして最終的には総理の御判断ということで決めていくことになると思いますが、現在調整中、協議中でございますので、この時点では何とも申し上げられないということでございます。

枝野委員 私も弁護士の出身ですので、法務省がお考えになっているであろう法律論、控訴すべきであるという法律論は法律の理屈の世界の上で理解できないわけではありません。しかしながら、議院内閣制で法律家あるいは官僚ではない大臣が行政権を担うということの意味はどういうところにあるのかと言えば、それは理屈の世界の建前よりももっと大事なことが政治判断として必要なことがある。本件の場合は明らかにそういうケースである。

 例えば、過去にも、今の小泉総理の師匠である福田内閣のときでしょうか、超法規的措置というのをハイジャック事件か何かのときにやったというケースもこの国はあります。人命あるいはそれにつながるような話ということについては、法律の理屈とか行政のいろいろな建前とか以上に、実体的な当事者の権利、命、こういったものを優先していくのは当然だというふうに思います。

 私は、法務省のためにも、ここで法務省が頑張って、法律のいろいろな理屈を言って控訴をさせようとしたというような流れになったとしたら、これは法務省にとっても不幸なことだというふうに思いますし、森山大臣も、女性政策を初めとして、いろいろな意味で期待をされて就任をされたばかりのところで、そういったおかしな批判というか、受けなくてもいい批判を受けるようなことになるということは不幸だと思いますので、ぜひ政治家としての判断で行動していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

森山国務大臣 枝野先生のおっしゃいましたことも重く心に受けとめながら、慎重に検討してまいります。

枝野委員 本当にこれは政治判断の問題でありますので、私どもが数日中に森山大臣や総理などの責任追及をしなきゃならないというようなことになることは望むところではありませんが、しかし、もしも政治家としての判断で、これで控訴をするということであれば、当然私たちは、総理、法務大臣を初め、その責任を国会の場で鋭く追及せざるを得なくなるということを申し上げておきたいというふうに思います。

 さて、財務省から中野政務官にもおいでいただいているので、これもちょっと順番を変えて先に済ませた方がほかの日程にも御迷惑をかけないかなというふうに思いますので、弁護士法に関連をして、司法制度改革のことについてお尋ねをしたいというふうに思います。

 五月二十一日付の毎日新聞に「司法改革 財務省が「異議」 財政負担、理由に」ということで、財務省の方が司法制度改革審議会の進めている制度改革に対して異論をまとめて一部の国会議員に働きかけを始めたというような報道がなされていますが、まさか事実ではございませんよね。

中野大臣政務官 枝野委員の御質問にお答えをしたいと思います。

 司法制度改革に伴いまして必要となる人的資源の拡充につきましては十分配慮すべきものと私ども考えております。財務省といたしまして、さまざまな機会をとらえまして各方面から意見を拝聴する、そういうことはございますけれども、改革に対して異議を唱えるようなことは決してないということを承知しておりますので、御理解願いたいと思います。

枝野委員 そうすると、この報道は間違いだということになると思いますが、当然、省内でこんな変な動きをしている者がいないかどうかということについての監視はしっかりしていただきたいし、万が一にもこういう動きをしている財務省の官僚がいらっしゃったら、当然責任を追及していただきたいと思いますが、よろしいですね。

中野大臣政務官 今おっしゃるような意味で、人的資源の拡充の問題については十分理解しております。ただ、国民の税金を預かる財務省といたしまして、改革を進めていく中で見直すべき点があれば、例えば制度とか手続の合理化とか、予算とか定員の面についても、当然これはしっかりと効率的にもやってもらいたい、そういう願いがあることだけはどうか御理解願いたい。しかし、おっしゃったとおり、審議会の意見を尊重するという基本線はきちっと守らせたいと思います。

枝野委員 これは司法制度改革審議会をつくったときからの話にもつながっていくので、私は、党内からも弁護士会などからもいろいろと批判を一部いただいたのですが最後まで反対をいたしまして、こんなものは立法府の仕事で、行政府の仕事じゃないと申し上げたのですが、それでもそれを押し切っておつくりになったということ。しかも内閣におつくりになった。法務省につくったのではなくて、内閣につくったということは、財政の問題から、経済の問題から、あらゆる問題をトータルに考える審議会として、司法制度改革審議会が内閣に置かれた。それに対して当然内閣としては全体として前向きにとらえて、答申が出てきたらそれを実行していくというのが内閣の負っている責任だというふうに思います。

 そうした意味からいえば、今の政務官がおっしゃった財政当局の立場からのいろいろな視点というのはもちろん大事ではありますが、法務省に置かれた審議会から何か出てきたことに対してだったらば、それは財務省の立場からいろいろあるかもしれませんが、あくまでもこれは内閣全体の問題としてこの審議会をつくったという経緯からすれば、今のようなお話は一般論としては認めますが、この審議会の答申に対しては少なくとも、私はいろいろこれから申し上げますが、異論がたくさんあるので、立法府に置かれているんじゃないとか、私はいろいろ反対部分がありますが、内閣としては基本的には前向きに全体として受けとめてやっていくということでないと、税金を使って審議会をつくった意味がありませんので、したがって、その点は理解して財務省としても判断をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

中野大臣政務官 委員の御意見については、十分これからも考えてまいりたいと思います。

 特に、改革の具体的な内容についてはこれから示されて最終的に決まることを承知しておりますけれども、財務省としてこの改革の推進については十分配慮していくという立場を堅持してこれからも努力したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

枝野委員 今私が申し上げた趣旨は、法務大臣、御理解いただいていると思いますし、この件については、答申に対して、法務省の審議会とか法務省で何かでき上がった案と違って、当然財務省も言うことを聞いてくれるはずですよねという前提で閣内で行動していただけると思いますが、よろしいでしょうか。

森山国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、先ほど御指摘の新聞記事につきましても、昨日閣僚懇談会の席で、塩川財務大臣から、司法制度改革に財務省が消極的であるとの新聞報道は根拠がないということをわざわざ大臣御自身の口から伺いまして、財務省としては司法制度改革審議会の最終報告が出れば積極的に取り組んでいきたいという積極的な御発言がございまして、大変私もありがたく思った次第でございます。

 当然、これは内閣に設けられた審議会でありますから、関係各省の意見もそれぞれ尊重しなければいけないでしょうけれども、財務省のことに関するその新聞記事には根拠がないというふうに財務大臣御自身の口から伺いまして、心強く思っているところでございます。

枝野委員 最高裁にもおいでをいただいていると思うのですが、最高裁とこの司法制度改革審議会との関係は複雑なのですね。先ほど申しましたとおり、立法府の一員としては、これは内閣が勝手に置いたものだというふうに私は受けとめていますので、出てきたものに対していろいろと注文をつけたいと思っていますが、最高裁はこれを尊重する立場なんでしょうかね、どうなんですかね。

中山最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 司法制度改革審議会は、現在、御案内のとおり最終意見の内閣への提出を目指して鋭意検討中、審議中ということで承知しておりますけれども、審議会におきましては、国民各層から選ばれた委員が、それぞれ司法制度全般にわたって、ユーザーとしての立場で、二年間調査検討を行ってまいりました。その間、最高裁判所といたしましても、資料等を提供し、あるいは求めに応じて、裁判を運営する立場でいろいろな意見を申し上げてきたところでございます。そういう意味で、その審議に全面的に協力してきたというふうに考えております。

 最終意見では、我が国の司法制度全般について幅広い大きな改革の方向性が示されるものと考えておりますけれども、最高裁として、審議会の意見を十分に尊重し、二十一世紀にふさわしい司法の実現に向けて努力してまいりたいと考えているところでございます。

枝野委員 非常に難しいところなんですよ、これは。三権の話からすれば、内閣でやっている話を最高裁として無条件で受け入れる立場ではないとも思うのですが、今のようにいろいろと協力しているしということもあって尊重するということをもし前提にするとすれば、これは立法措置を要するものもあるでしょうが、まさに裁判官の人員とかそういったところについては予算措置の部分もたくさんあります。

 今、中野政務官がかなり明確に言っていただいたので大丈夫とは思いますけれども、司法制度審議会の答申に基づいて予算請求をする話が、内閣の方で、財務省などが財政の立場からいろいろ出てきたときに、矛盾をする可能性が可能性としてはあり得るわけです。最高裁としては、当然司法制度改革審議会の答申を尊重して、場合によっては、二重予算というのですか、そういうことも含めて、この審議会の答申で裁判所に期待をされる予算確保ということに向かっていただけると期待をしたいのですが、よろしいでしょうか。

中山最高裁判所長官代理者 今お話がありましたように、審議会で示された方向性というものを実現していくためには、もとより財政的な側面を含め、関係各方面の御理解と御協力が不可欠であります。裁判所としては、そのために最大限の努力をしている、していきたいということは申し上げたいと思いますが、ただ、その具体化について、現段階でまだ確たることを申し上げるわけにはまいりません。

枝野委員 中野政務官に最後まで今の話をずっと聞いてきていただいたのは、小泉内閣は、小泉総理である限り内閣をかえないとおっしゃっているので、我々としてはそう言っていいのかどうかわかりませんが、もしかすると長く財務省をお預かりをいただくことになるかもしれない立場なので、ぜひ理解をしていただきたい。

 今の話のとおり、裁判所はちょっと違うところにあるわけですけれども、裁判所は別に予算の請求権があります。したがって、法務省との関係では財務省がいろいろとおっしゃって、この予算を減らせとかなんとかとあるかもしれませんが、法務省と違って、裁判所は、三権が分かれていますので、独立して予算を請求する権利もありますし、司法制度改革審議会というのをわざわざ内閣につくって権威のある重たいものとした趣旨からすれば、それに基づいて裁判所が財務省の言うことを聞かないで予算請求してくるというのがむしろ自然なんだということをぜひ理解して、財務省としての判断をしていただきたいということを申し上げて、御答弁は結構でございますので、財務政務官に対する質問は以上ですので、お時間のあれがあれば退席いただいて結構でございます。ありがとうございます。

 さて、弁護士法改正の具体的な中身についてお尋ねをさせていただきます。

 今度の改正で、弁護士法人を設立した場合、従たる事務所を置くことができるということになっていますが、従たる事務所には社員たる弁護士を常駐させなければならない、こういうふうになっております。その趣旨はどこにあるのでしょうか。

横内副大臣 私から御答弁を申し上げます。

 委員にとりましては釈迦に説法でございますが、現行の弁護士法上は、弁護士さんは、事務所は一つだ、複数の事務所を持つことはできないということになっております。その理由というのは、弁護士が常駐しない事務所を設けますと、いわゆる非弁活動、弁護士でない者が弁護士のやるべき活動をしてしまう違法行為でありますけれども、そういう非弁活動を助長するおそれがあるというような理由から、弁護士が常駐しない事務所は認めないという前提に現行法上は立っているということでございます。

 今回の法案では、弁護士法人については従たる事務所を認める、複数の事務所の設置を認めるわけでございますけれども、しかし、今申し上げた法律の趣旨に照らしまして、従たる事務所についても社員弁護士を常駐させるというふうに規定するということにしたものでございます。

枝野委員 非弁の温床になるという話はわからないではないのでありますが、社員の弁護士であろうと社員でない弁護士であろうと、弁護士法に基づいた法的責任、あるいは弁護士会の規則に基づく弁護士としての倫理規定が全部かぶってきているわけでありまして、非弁の温床にならないようにしようということであるならば、その趣旨からは、社員たる弁護士ということの限定をつけることの理由にはならないと思いますが、いかがでしょうか。

横内副大臣 委員がおっしゃったような御意見はあると思います。立法の過程でも、かなりその点について日弁連を含めていろいろな議論があったというふうに聞いております。

 ただ、基本としては、弁護士法人の従たる事務所においても、法人内部での指揮命令を徹底して法人としてのしっかりした監督が行われる必要があるということから、法人の構成員であって法人業務の運営に責任を持っている社員たる弁護士を常駐させるということにしたものであります。

 しかし、委員おっしゃるように、社員たる弁護士でなくたって、いわゆるいそ弁的な使用人弁護士でもいいじゃないかということはあろうと思います。それは、その地域の実情によるわけでございまして、委員も御存じだと思いますが、今回の法律の三十条の十六のただし書きでございますけれども、その地域の状況によって、社員弁護士を置く必要がないんじゃないか、いそ弁的な弁護士でもいいし、あるいは単なる使用人でもいいじゃないかというような場合には、地域の弁護士会の許可を得て社員弁護士の常駐義務を免除するという形にしているということでございます。

枝野委員 例外措置にもこれから行くんですが、その前に、やはりそこの前のところがよくわからないんです。つまり、どうして社員じゃなきゃいけないのか。つまり、法人としての運営のことについては当然社員たる弁護士が責任を持つということでよくわかります。しかし、非弁の温床になるかならないかということが趣旨であるとすれば、社員たる弁護士であろうと社員でない弁護士であろうと、非弁活動を抑止する、防止するということの法的責任を負っているのは全く一緒なわけでありますから、それは社員たる弁護士に限定する理由とは結びつかないと思いますが、どうですか。

横内副大臣 確かに、非弁活動を抑制するという観点からはそうなんでありますけれども、一方において、やはり従たる事務所においてもしっかりした弁護士としての活動を行わせる必要があるということでありまして、社員たる弁護士は法人の業務の運営に責任を持っているわけでありますから、そういう法人の業務の運営について責任を持つ立場にある人間が常駐をしているという形にして、従たる事務所での業務の運営を適正にするという観点から、社員たる弁護士を原則としては置く。

 しかし、そこまで必要がないというような実情がありましたら、そのときには例外として、許可を得て社員でない弁護士を置いたり、あるいは単なる使用人でもいいという形にする、そういう立て方をしているということでございます。

枝野委員 では、例外の方から伺いますが、例外を部分的に認めた規定がある。どういう趣旨で例外を認めることにしたんですか。

横内副大臣 ごく一般的には、やはり全国的に見ますと、地域によっては、常時弁護士さんがいるほど事件数はないけれども、月に何回か弁護士さんが行ってそこでまとめて処理をする、そういうような地域があるだろうというふうに思います。

 そういうようなところでも、やはり国民の司法へのアクセスを一層容易にするために適切な法律サービスを提供するということから、弁護士法人の従たる事務所が設置されることが望ましいわけでありますけれども、常時弁護士がいる必要はない、そういうようなところについては、いわゆる使用人でもいいではないかということで、そういう状況では社員弁護士を常駐させる必要がないということで、地域の弁護士会が周辺における弁護士の分布状況その他の事情を考慮して許可したときには常駐義務を解除することにしたということであります。

枝野委員 よくわからないんですよ、今のお話が。

 つまり、地域によっては常時いなくても、まとめて週に何日か行けばいいようなところがある。だけれども、結局非弁活動を防止したいということであるならば、いないときに弁護士事務所の看板を掲げていて、だれかある程度法的知識を持った弁護士でない人間がいたりすれば、法律相談をしたいとかいう方にとっては、我々弁護士から見ればせっぱ詰まっている話じゃなくても、突然裁判所から書類が来たら大変な話だと思って弁護士のところへ飛び込んでくるというケースがほとんどです、一般の方々は。そうすると、たまたまきょうはいませんという話で、ではその弁護士事務所は弁護士がいないから来週来てくださいとかいった話になるのかといえば、もし非弁の温床になり得るんじゃないかということであるならば、そこでいろいろ、ああそうですね、ではこうしましょう、ああしましょうということになる。だから弁護士常駐なんじゃないんですか。

横内副大臣 おっしゃるとおりだと思います。そういう考え方ですね。

 ただしかし、要するに、社員弁護士が原則常駐しなければならない、それから、状況に応じて、そこまでは必要ない、単なる使用人でもいい。しかし、そこの中間に、やはり使用人弁護士でもいいという状況もあると思うんですね。そういうことももちろん認めるという考え方であります。

枝野委員 いや、ですから、弁護士常駐を原則とした趣旨からすれば、しかもそれを社員弁護士に限った趣旨からすれば、週に一回か二回来ればいいような件数しかないところであっても、そこに使用人だけでいたり、使用人たる弁護士だけでいたりということでは、そのいない日にちに非弁行為が行われる、非弁の温床になるというリスクは一緒じゃないですか。そこはどうして、要するに、事件数の少ないところでは非弁の温床にならずに事件数の多いところでは非弁の温床になるという理屈が出てくるのか。さっぱり理屈が通らないんですが。

横内副大臣 しかし、地域の状況で、余り事件数がないというようなところに常時社員弁護士を置くというのはやはりむだもあるし、そういうふうな場合には使用人でもいいのではないか。

 ただしかし、そこは弁護士会として一定の監督はするわけですから、したがって、非弁行為が行われているようなことであれば、それは弁護士会として一定の監督はするということだと思います。

枝野委員 弁護士会が非弁行為を監督するのは、例外を認めたケースであろうと例外を認めないケースであろうと、それはどちらでもちゃんと監督するのは一緒なわけですから、理由にならないわけですよ。

 それから、確かに、常駐をしていたのでは事件数が少ないから採算が合わないというケースは当然あります。ありますけれども、そういう場合は非弁の温床にならなくて、そうでない場合は非弁の温床になるという理屈にはならないんですよね。あくまでもこれは需給調整の規定じゃないですか。

横内副大臣 弁護士会とも協議の上で議論をしているわけですから、需給調整的な要素が全くないかといえば、それはそういうこともあろうかと思います。

 しかし、基本はやはり、できるだけ従たる事務所が弁護士過疎的な地域でも設置されることが望ましい。しかし、そうはいっても、そこに常時社員弁護士がいなきゃならぬというのは非常に非効率である。そういう場合には、いそ弁的な弁護士あるいは単なる従業員でもいいじゃないか。

 それに対しては、今おっしゃったような非弁活動が行われるような状況があれば、それは地域の弁護士会としてしっかり監督をしてもらう、そういう体制が現実的ではないかということでございます。

保利委員長 法務省から補足説明はありますか。いいですか。

枝野委員 いや、こちらが指名しなかったら、私が求めない限り答えないという約束に通告のときになっているんですが。

保利委員長 それでは、枝野君。

枝野委員 弁護士過疎地域で常時置かなくてもいいところについて例外を出すというところについて、ちゃんと監督をすれば非弁の温床にならないということであるならば、そうでない地域だってちゃんと監督をすることについてきちんとすれば、同じように非弁の温床にはならないはずですよね。だって監督の仕方は一緒なんですから、弁護士会の監督であったり、弁護士法などに基づいて弁護士に対する責任を持たせているということであれば。

 だから、その監督の部分について全く違わないのに、過疎地域だけは認める、そうでないところは認めないという話は完全な需給調整じゃないですか。そんなことが今の規制緩和の時代に許されるんですか。

横内副大臣 やはり程度問題というのがありまして、非常に過密的な地域で、事件数も多い、相談する人間も多いというところでは、やはり非弁活動が行われる確率も非常に高いわけですから、そういうところはやはりしっかりとした社員弁護士を設置してもらわないと困る。しかし、事件数が比較的少ないところでは、もちろん非弁活動が行われる可能性もありますけれども、それはやはり弁護士会の監督によって対応していく。そういう程度に応じた対応をしたいということでございます。

枝野委員 私も調べてきていないし、通告していないからあれですけれども、本当に弁護士が多いところの方が非弁活動が行われやすいというような立法事実はありますか。むしろ逆ではないでしょうか。弁護士が足りないところほど、弁護士さんに頼りようがない、弁護士がどこにいるかわからないというところで、これは批判ではなくて、やむなく弁護士ではない人が弁護士的な業務を事実上やらざるを得ない。だからこそ今度も、職域の話について少し広げよう、司法書士さんなどにいろいろできるようにしようという発想が出てきたんだと私は思うのですね。だから、都市部にだけやらない、過疎地域だけやるというのは、ここはおれたちの競争に関係がないから、出てこられたっておれたちの商売には影響しないからという、明らかに一種の弁護士エゴの世界だと私は思います。

 もう一つ、そういう点からすると、当該地域弁護士会の許可という話は非常にナンセンスですよ。まさに需給調整の話で、つまり、自分の職域が侵されるかどうか、競争相手がふえるかどうかという需給調整の判断を当事者にさせるだなんて、こんなわけのわからない話がありますか。

横内副大臣 弁護士会が地域のいろいろな実情というのを一番よくわかっているわけでありますから、弁護士会がやはり判断をするというのが一番、具体的にではそれ以外の人間がだれが判断できるかといえば、適当な人間はいないわけであって、その地域の事件の状況だとか弁護士の数だとかあるいは繁忙の状況とか、そういうことはやはり弁護士会が一番わかっていると思うのですね。したがって、弁護士会がそこで適正に判断をしていただくというのが適当だと思うのです。

 そこで、判断の合理性の問題があると思いますけれども、我々としては、やはり弁護士会が常識的なといいますか見識のある判断をしていただくように期待をしたいということであります。

枝野委員 確かにその部分限りで言えばそのとおりなんですね。判断しようがないというのはそのとおりです。だけれども、結果的に、つまり、出てこられて自分の商売がライバルがふえて困るかどうかという判断、当然弁護士だって食べていかなければいけないわけで、そういう判断は入ってきますよ。そういう当事者に判断させなければならない仕組みを組んだということ自体が組み方が間違っている。司法改革の全体の理念が事前チェックから事後チェックへと変えていく発想からすれば、従たる事務所に責任者たる弁護士はきちんと確認しなければいけないと思いますよ。例えばそこが非弁の温床になったときに、もちろん弁護士法人としても責任を負うでしょうけれども、個人としての弁護士にも責任をきちんと問えるように、だれが責任者なのかということは明確にすべきだと思いますが、常駐義務だとか、それから当該弁護士会の許可だとか、こんなわけのわからない仕組みはやめて、基本的には届け出で従たる事務所を認める、これが筋だと思いますが、いかがですか。

横内副大臣 冒頭でも申し上げましたように、確かにそういう考え方もあろうと思うのです。この立法の過程でもさまざまな議論がありました。議論があったのですけれども、そういう従たる事務所で弁護士がいない事務所も幅広く認めていったときに果たして本当に大丈夫なんだろうかということがありまして、やはりそれは非弁活動みたいなものを助長するおそれがあるという判断でこういう立て方にしているということでございます。

枝野委員 立法の経緯の事情はもちろんわからないわけではないので、これ以上法務省を責めてもしようがないので、もしかすると日弁連の総会で文句を言った方がいいのかもしれませんが、それはそれでまた別途考えようと思います。

 その経緯を考えれば、おっしゃることはわからないではないのです。だけれども、やはり理屈がおかしい。今の話は、弁護士性善説に立っているのか性悪説に立っているのか、この仕組みは全然ごちゃごちゃなわけですよ。やらせておいたらもしかすると非弁の温床になるかもしれないというのは性善説に立っていないわけですけれども、当該地域弁護士会で許可を与えるということについては、当該地域弁護士会を信用しているという話になるわけですね。

 理屈が全然通らないということなので、これは今後、こういう中途半端なことはやめて、従たる事務所は責任者だけきちんと置いたら、その責任者がもしおかしなことがあったら、弁護士資格剥奪を含めて、弁護士会の懲戒手続はある程度機能していると私は思いますから、そこできちんとやってもらえばいいということでぜひ進めていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 さて、弁護士も含めた法曹全体で大変深刻な事件が起きました。東京高裁、正確に言うと、東京高裁判事ではなくて、東京高裁の判事の職務取り扱いなんですかね、東京高等裁判所判事職務代行というのですか、それが児童買春罪、これは森山大臣と私と一緒につくった法律にひっかかったようでありますが、この件について、こういう裁判官が出てきた背景、そういったことについて最高裁はどういうことを考えていますか。

金築最高裁判所長官代理者 まず、現職の判事が児童買春という犯罪を犯した疑いで逮捕、勾留されたということはまことにゆゆしき事態でございまして、遺憾のきわみというほかないというふうに考えております。このことによって国民の司法に対する信頼を傷つけたということについて、深くおわびをしたいと思います。

 その原因ということでございますが、実は、裁判所の方といたしましては、現在、直接確認しております事実は、児童買春の容疑で逮捕、勾留されているということだけでございまして、新聞報道でいろいろな事実が報道されたということはもちろん承知しておりますけれども、具体的詳細な事実を直接こちらで確認する資料をまだ入手できておりません。

 これから捜査当局に対しまして、捜査の支障にならないような形で、本人との面接等もお許しいただいて、本人の話など聞き、その他の資料もできるだけ入手して事実関係を承知いたしまして、その上で厳正に処置をとっていきたいというふうに考えております。

 原因というふうなことにつきましても、現段階でこうではないかということをちょっと申し上げるだけの材料を持っていないわけでございます。

枝野委員 これは福岡の例の検察庁の情報漏えい事件のときにも申し上げたのですが、日本では立法も行政も残念ながら国民の信頼を大きく失う事件を繰り返してきた中で、司法だけはという信頼感があったと思うのですが、残念ながら、この福岡の事件、そして今回の児童買春の事件と、その司法に対する信頼を決定的に覆すような事件が続いております。

 こうした状況を踏まえて、司法制度改革審議会でも法曹養成の議論をされていますが、この議論がスタートし煮詰まってきている状況と、この二つの事件などが起こっている今の状況とでは司法に対する信頼感が全然変わってきていると思うのですけれども、それを踏まえた上で、法曹養成のあり方についてどう考えるのか、最高裁と法務大臣にお尋ねしたいと思います。

金築最高裁判所長官代理者 現在、司法制度改革審議会で検討されております新たな法曹養成制度というものは、法科大学院というものを新設いたしまして、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させたプロセスとしての法曹養成制度をつくるものである、こういうふうに承知しております。

 法科大学院における具体的な教育内容は今後さらに検討されていくということになると思いますが、法科大学院構想が、これからの司法を担う足腰のしっかりした法曹を養成することができる、養成するに足りる、大学法学教育と司法修習を有機的に結びつける制度として機能するということを私どもとしては期待しているわけでございます。

森山国務大臣 司法制度改革審議会で審議されております法科大学院の構想というのは、先生も御存じだと思いますが、今までの中間報告等によりますと、法曹に必要な専門的資質、能力の習得のみならず、法曹としての責任感や倫理観の涵養、向上を図るということを教育の理念といたしまして、特に今までと違いますと思いますのは、法学部以外の学部出身者や社会人など多様なバックグラウンドを有する人材を集めて、そこで充実した教育をしようという構想でございます。

 今まで、私も詳細には存じませんが、世間一般に思われております判事あるいは司法、法曹関係者の養成過程というのが、法律の専門家として、非常に難しい司法試験に合格し、その後修習生として法律の勉強をひたすらして、後は仕事も法律のことだけという感じで、割合に幅が狭いといいましょうか、限られた分野の専門家として仕事をしているというイメージでございますが、裁判その他の法律の仕事自体も今非常に多様化し、幅が広くなっておりまして、そのような養成では十分賄い切れない。むしろ、その弊害を除いて、幅の広い、人柄あるいは教養、見識というものが求められるということになった反省に基づく構想だろうと思います。

 新しい構想に基づいて、こちらの立案のとおりの趣旨が実現できるとすれば、議員が御心配なさっているような問題を避けるということができるのではないかというふうに思います。

枝野委員 間もなく時間なので御答弁はいいのですが、その趣旨、意図するところはわからないではないですけれども、裁判官だけはという信頼が失われてきている話の中で、そこに問題があるとすれば、やはり純粋培養だというところにあるんだろうというふうに思います。

 今言われている法科大学院の構想で前に進んでいくとすれば、これは日本の大学、大学院教育全体が大きく時代の変化とともに変わっていけばいいんですけれども、つまり高校を出たら大学に行くとか、大学を出たら大学院に行くとかというシステムではなくて、むしろ社会人をある程度経験してから大学とかへ行くものだというのが当たり前になれば、そこで純粋培養ではない期間というか、そういうものができてきていいと思うんですが、それは目指していく方向としてあると思いますが、これから五年、十年で日本がそうなるとはとても思えない。よほど入試制度から何から抜本的に全部変えないとそうはならないでしょう。

 そうすると、法科大学院構想的な話でいくと、それは高校から大学へ行き、大学の学部が別々だったとしても、ほかの学部だったとしても、それにしたって、要するに純粋培養ですね、学生というのは。それで法科大学院、そして司法の世界に入ってきてしまうという問題が出てくると思うわけです。

 今の司法試験の制度が本当にすべて百点満点とは思いませんけれども、でも、いろいろな人が入ってくるわけです、少数ですけれども。そして、私は反対しましたけれども、私の時代で二年間、今短くなって一年半、いろいろな人と接する機会が少なくともあるわけです。私も、どちらかといえば、司法試験に受かるまでほかの職業についたりした経験がなかったから、よくも悪くも純粋培養的なのかもしれませんが、司法研修所に入ったときに、例えばバーテンの仕事を何年かやっていたんだとか、板前を何年かやっていたんだなんという同級生がいたり、あるいは、子育てが終わったので司法試験を受けたんだという人がいたり、そういうような人と接して、その人たちに、ある意味では時間的余裕のある司法修習の期間でかなりの経験をさせてもらって勉強させてもらったという経験があります。純粋培養のシステムだと、そういう違った血が入ってこないという仕組みになってきてしまう。最近の判事さんの不祥事を考えたときには、むしろそれを助長することになりかねない。ここを相当気をつけないと。

 一つの方法は、いわゆる法曹一元で、いきなり裁判官とか検察官とかというこれまた閉ざされた世界に入るのではなくて、弁護士だって不祥事を起こす弁護士はたくさんいますが、そうはいっても、いろいろな人と接する、それは暴力団の人から会社の社長さんから、倒産して身ぐるみない人から、いろいろな人と会うというところでは社会をある程度見ることができるし、その中で信頼感の厚い人が判事になっていくというシステムを同時に入れるんだったらまだ、私は百歩譲ってあり得るかなと思いますが、これを切り離すようなことがあったりして法科大学院を入れたら逆行だというふうに思いますし、もし法曹一元がすぐにいかないということであるならば法科大学院構想は見直すべきだということを申し上げて、私の質問は終わります。

 ありがとうございます。

保利委員長 次に、山花郁夫君。

山花委員 民主党の山花郁夫でございます。

 弁護士法の質疑に入ります前に、森山大臣にハンセン病の控訴問題についてお伺いしたいと思います。

 ただいま枝野委員からも少々質問がございましたけれども、違う論点についてちょっとお伺いしたいのですけれども、森山大臣も大変悩まれているというお話でございました。大臣に就任されて、先ほど枝野委員からも、女性政策などについても大変期待をされているというお話もございましたし、また私自身としても、森山大臣は大変マイノリティーに対する配慮ということをされる方だと思って尊敬をいたしておりますが、ただ、ちょっとここのところの報道で気になる報道がございます。

 と申しますのも、当初は、判決が出て直後ぐらいは、厚生労働大臣も控訴についてはちょっと慎重な御意見だったように思われます。また、けさもいろいろ報道がございましたけれども、そうした中で、これは報道で知る限りなので事実かどうかよくわからないのですが、その後、法務省の方が控訴すべきであるということを強く言って、どうも控訴するのではないかであるとか、あるいは控訴した上で和解をするのではないかといろいろ報じられておりますけれども、このあたりの事実について、お答えできる範囲で結構ですので、お願いいたします。

森山国務大臣 先ほど枝野議員に申し上げましたとおり、私も、患者の代表の方にお会いしたり、またいろいろな方から御意見を拝聴いたしまして、本当に悩んでいる最中でございます。政府としての態度を近日中に決めなければいけないということで、非常に追い詰められた状況でございますが、まだ鋭意、最後の瞬間まで真剣に相談をいたしまして決めなければならない。残念ながら、今ここでどのような結論ということは申し上げることができませんが、一生懸命に検討中としか申し上げられないところでございます。

山花委員 期間が大変迫っているというお話でありますけれども、控訴期限が二十五日ということですが、これもいろいろ報じられているところによりますと、もう本日中にも閣議決定がされるのではないかというお話です。お答えすべき立場ではないとは思いますけれども、もし本日ということであれば、本当にぜひ控訴しないでいただきたいと思います。

 と申しますのも、枝野委員からも先ほどお話がございましたが、法律論として国家賠償法上の違法性の認定のところで、立法不作為、最高裁の判例によりますと、憲法の一義的な文言に明らかに反していて、それでもなおかつ立法を行うというのが容易に想定しがたい場合であるという限定がついていますので、今回がそのケースに当たるかどうかというところが恐らく問題になるのではないかと思います。

 国家賠償法上違法であるかどうかということと、政策的に適切なものか、妥当なものか、そういうことは別のものであると思いますので、これは要請ということになりますけれども、ぜひとも原告の方たちが安心できるような判断がなされますことをお願いしたいと思います。何かございますでしょうか。

森山国務大臣 山花議員の御意見、十分深く受けとめまして、鋭意協議していきたいと思います。

山花委員 それでは、弁護士法の一部改正の問題に移っていきたいと思います。

 先ほど提案理由説明ということで少々御説明があったかと思いますけれども、この法案の最大のポイントといいますのは弁護士事務所が法人化するということなわけでありますが、この点、法人化することによるメリットというのは一体どういうところにあるのか。趣旨説明によりますと、弁護士業務の基盤の拡大強化ということ、複雑多様化する法律事務に的確に対応するということ、国民の利便性の一層の向上ということになっておりますけれども、もう少々具体的にお話ししていただけないでしょうか。

横内副大臣 私から御答弁させていただきます。

 委員も御案内のように、非常に社会が複雑化したり国際化していくことに伴って、非常に訴訟事務というのが専門化、複雑化、多様化しているという状況でございます。

 そこで、この弁護士法人制度は、法人組織で法律事務を扱うということによりまして、その法人組織にいろいろな専門的な能力を持った弁護士さんを多数置くことができる、そして専門的な難しい訴訟についてはそういういろいろな能力を持った人が一緒になって共同処理をするということができる、そうすることによって、非常に多様化するそういう訴訟あるいは国民の法的需要に的確に対応できるという点がメリットの第一点でございます。

 それから二点目は、弁護士さん個人じゃなくて、弁護士法人が依頼者から委任を受けることになりますので、仮に弁護士さんが死んじゃったりとかあるいは脱退したりというようなことがあっても、その法人が引き続き依頼者からの受任事務を行うということで、依頼者にとっても、頼めば後は安定的に処理をしてくれる、そういうメリットがあるということでございます。

 それから三点目として、法人化をすることによって事務所の大規模化をして、そして優秀な人材が確保できる。事務所が大きくなりますから、優秀な人材を確保することができたり、あるいは法人の名義で財産を取得したり、あるいは借り入れ等をするということによって、業務の基盤が強化できるというようなことがメリットということであります。

山花委員 法人化ということになりますと、一般的に言えば、人数が何人もいて、そして人が多少入れかわりがあっても主体に変更がないということになるわけであります。

 ところで、先ほど枝野委員からも司法改革の話が出ておりましたが、裁判官について、現在の法制度のもとで弁護士任官の数が大変少ないという議論もございます。やはり在野法曹から、そういう在野の感覚のある人が裁判官になるということは、人数はどれぐらいが適正規模かということについてはいろいろ議論はあろうかと思いますけれども、大変好ましいことだと思いますが、現在大変少ないわけであります。

 この弁護士法の改正によりまして法人化することができれば、今大変少ないその一つの理由は、例えば個人事務所で弁護士さんが開業されていて、五年、十年、弁護士事務所をあけて、任官をして、またさらに、もう十年もたって戻ってきたときに仕事があるかとか、そういう懸念があって非常に任官が少ないということになっているのではないかと思いますけれども、これは法人化してということになればそういう可能性もふえてくるのではなかろうかと思います。

 そうしますと、司法制度改革の議論とこの法案がリンクしているのかどうかちょっと存じませんけれども、弁護士任官の数の増加ということに寄与できるかどうか、またその見通しなどについてどのようにお考えでしょうか。

森山国務大臣 先生おっしゃいましたとおり、現在は弁護士さんから判事に、裁判官になるという方は非常に限られておりまして、数が少のうございます。それは、御指摘のように、個人事務所を持っているのが弁護士さんの今の形態でございますから、それを前提としますと、今まで築き上げてきた弁護士さんとしての地位とか収入とか、あるいは依頼者との関係とか、そういうことが事務所を閉鎖しますと切れてしまう、あるいはその閉鎖すること自体が非常に煩雑であるということもありまして、また復帰しようと思ったときに初めからやり直さなきゃいけないという大きな負担にもなるわけでございますので、この弁護士法の一部を改正することによって法人化ということができますと、そのような問題がかなり解決できると思いますので、これが直接リンクしているかどうかということとは別に、結果的にそのようなことが容易になって、弁護士さんが裁判官に任官されるということがふえてくるであろうということが見込まれると思います。

山花委員 そうなっていけば大変好ましいことだと思います。

 また、先ほど司法制度改革の話の中で出ておりましたけれども、これは質問ということではないのですけれども、枝野委員からも純粋培養とかいろいろなお話がありましたが、これから、法曹の人口拡大ということについては、いわゆる法律の専門家になるのは確かなんですが、法律だけということではなくて、より多くの経験をされた方あるいは知識を持っている方が法曹になることが好ましいと思っております。

 この士業の関係でいいますと、文系の資格、理系の資格というのが割とはっきり分かれておりまして、例えば弁理士さんというとどうしても理系の資格であったり、弁護士さんあるいは司法書士さんというと文系のという感じになるのですけれども、医療過誤訴訟であるとか、あるいは専門的な知識が必要になるところが今後もふえてくると思われます。

 そういった意味におきまして、例えば競争試験でやるというのであればというか、これからの司法制度改革の議論の中でも詰めていかなければいけないことだと思いますが、私はかねてより申し上げていることなんですけれども、例えば現行の国家1種の法律職の試験ですと、科目でいいますと司法試験とほとんど異ならない、訴訟法があるかないかぐらいの話でありまして、むしろ国際公法が入っているので広いぐらいのことなんですけれども、そういった方が、現行でも例えば法制局に何年かいれば法曹資格がというシステムもありますが、もう少しそういうところを広げるということも検討していっていいのではないかと思っております。

 国家1種というと、別に法律職に限らず、行政職、経済職がありますし、また理系の技術系の分野もありますけれども、そういった人たちから法曹の供給ということも考えられてよいのではないかと思いますが、これは意見として聞いていただければ結構です。

 さて、これは後学のためにちょっと伺いたいのですが、弁護士さんというと、ずっと今まで日本においては個人事務所だったということとか、あるいはイメージが先行しているのかもしれませんけれども、何か法人化というとぴんとこないところもないではないのですけれども、事務所の法人化を認めているような国とか地域、諸外国の例はどのようになっているのでしょうか。

房村政府参考人 お答えいたします。

 諸外国で弁護士事務所の法人化を認めているところはかなりございます。我々になじみのあるところでは、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスという先進諸国はいずれも認めておりますし、お隣の韓国においても認めております。そのほか、認めているということで私ども承知している国としては、オーストラリア、カナダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドというような国でも法人化は認められているということを承知しておりますので、相当数の国で認められているということが言えようかと思います。

山花委員 私の調べたところによりますと、アメリカにおいても州によってちょっと異なるようでありますし、イギリスでも全土というわけではないようです。ただ、そういった国で、連邦制の国などでは州によって異なるのはわかるのですけれども、同じような議論があったのかどうかは存じ上げませんが、今回の弁護士法人という形で法人化するに当たっては、最終的には日弁連も賛成の方向でということになったようですが、その間の議論で法人化について幾つかの懸念というものが表明されました。

 その代表的なものなのでありますけれども、例えば大阪とか東京とか、そういった巨大な地域において、たくさん法曹がいるところにおいて、巨大な法律事務所が地方に支所というものをどんどん置いていって、営利を目的とするような活動ばかりをする、そういう偏ったことをするのではないかという指摘があったかと思いますけれども、こういった指摘についてはどのような所感をお持ちなのでしょうか。

房村政府参考人 先ほど副大臣からも御説明いたしましたように、今回の法案では、弁護士法人に複数事務所の設置を認めておりますので、そういう大きなところが地方に従たる事務所を設けるということは予想されるわけでございます。

 そういう意味では、地方で新しく設けられた従たる事務所と、もともと地元にいらっしゃる弁護士の方々が住民に対してより高度な法律サービスを提供するということで競争をしていただく。それは、ある意味では利用する国民にとってはより適正な法律サービスを受ける機会がふえるということを意味する面があろうかと思います。

 ただ同時に、おっしゃるように、そこで不当な行為が行われるということは避けなければなりませんので、そのために今回の法案では、従たる事務所には、その地域の弁護士会に所属する社員たる弁護士が常駐することを義務づける。それと同時に、法人自体もその地域の弁護士会にも加入する。そういう意味で、地元における従たる事務所の活動について、そこに常駐する弁護士それから事務所双方について、地元の弁護士会において、適正な行為がなされている、あるいは違法な行為がなされないような、監督ができるような体制をとることによって、先生の御指摘のような懸念を払拭するつもりでございます。

山花委員 また、その議論の中で出されました懸念としては、似たような話かもしれませんけれども、地域におけるプロボノ的な活動をしなくなっちゃうんではないか、法律相談であるとか当番弁護士などについてもやらなくなってしまうのではないかというような議論もあったかと思いますけれども、恐らく回答は同じような、弁護士会の監督でということになるんでしょうけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。

房村政府参考人 おっしゃいますように、やはり地元に根づいた活動を従たる事務所でもしていただきたいということから、そこに常駐する社員の方についてはその地元の弁護士会に所属するということを要求しております。

山花委員 一応、そういった懸念についてはそういうフォローがされているということだと思います。

 さて、今回のこの法人化ということなんでありますけれども、弁護士以外でもいろいろ専門職種について法人化がされているもの、されていないものがございます。例えば、医師などでは医療法人という形で法人化されておりますし、公認会計士なんかも監査法人があったり、あるいは弁理士でいいますと特許業務法人という形で法人化されております。また、税理士については、今までありませんでしたけれども、今国会で法人化ということが、まだ通っておりませんが議論されております。

 ただ一方、隣接職種のようなところでも法人化されていないものも幾つかございます。例えば司法書士だとか土地家屋調査士などは法人化されていないわけでありますけれども、なぜされていないのか、あるいは今後検討されるのか、その辺、どういう事情でされていないのかということなんです。

 私の意見としては、先ほど法人化のメリットということで私が質問させていただいた横内副大臣の御回答の中で、大変メリットがあるのだというお話があったわけですけれども、そういったメリットというのは、例えば司法書士さんであっても土地家屋調査士さんであっても同様ではないかと思うんですが、みんな一遍にそうやって法人化すればいいではないかという気もするんですが、いかがでしょうか。

森山国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、司法書士や土地家屋調査士につきましても、国民の複雑多様かつ高度なニーズにこたえるということが必要でありますし、これらの資格者による継続的かつ安定的な業務提供を可能にするという観点から、事務所の法人化を認めるのがいいと私どもも考えております。

 本年度中に関係法案を国会に提出したいと考えておりまして、所要の準備を進めております。よろしくお願いします。

山花委員 その問題については、またその法案が審議される際に議論をさせていただきたいと思います。

 この弁護士法の一部改正に際して、弁護士法人を設立するときに準則主義をとるということになっております。この法案の議論の過程では、仄聞するところによりますと、認可主義ということも一応議論にはなったようであります。これは確認のためですけれども、なぜ認可主義ではなくて準則主義になったのかということについてお尋ねいたします。

房村政府参考人 御指摘のとおり、途中、認可がいいのか準則主義がいいのかという議論になりましたが、基本的に、弁護士法人というのは弁護士業務を行うことを目的とするわけですが、その社員となるのは、弁護士業務が行える有資格者たる弁護士のみでございます。そういう方々がつくった法人で、しかも設立した後は弁護士会及び日本弁護士連合会に所属してその指導監督を受けるということでございますので、その設立に当たって改めて主務大臣が要件を審査した上で認可をするという手続をとることなく、要件を満たしている場合には、登記をすることによって法人として設立できるという準則主義をとる方が妥当であろう、こういうことで準則主義を採用することにいたしたものでございます。

山花委員 一般論として申しますと、準則主義で設立する法人といいますのは、認可の場合と違って、監督官庁あるいは主務官庁というものが存在しないと理解しておりますけれども、弁護士会についても、別に法務省が主務官庁というわけでもありませんし、これはあくまでも弁護士法の枠内でということですから、主務官庁は存在しないという理解でよろしいでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、弁護士会につきまして、あるいは弁護士法人につきまして、直接的に指揮監督する主務大臣というものはございませんので、弁護士法人については業務に対して監督権を有する官庁がいないという意味で、委員の御指摘のとおりと思います。

山花委員 それでは、次の別個の論点に移りたいと思います。

 今回の弁護士法人ですけれども、社員が一人であっても法人化が認められるという理解でよろしいでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のとおりでございます。

山花委員 別に、それに対して反対をするつもりはないのでありますけれども、ただ、制度の趣旨からすれば、先ほどもお答えいただきましたけれども、例えば専門化した訴訟などについて多数の弁護士さんが共同の処理に当たる、それがメリットだというお話もあったわけですから、立法の趣旨からすると複数でということの方が自然なような気がするんですけれども、一人でもいいというのはなぜでしょうか。

房村政府参考人 御指摘の点は、立案の過程でもいろいろ議論が出たところでございます。

 確かに、共同化ということを強調しますと複数の社員を要求するという考え方もございますが、一方、日本の弁護士事務所の実際の形態を見ますと、いわゆる親弁と言われる中心となる弁護士が一名いて、その下に雇用されている弁護士が数名いるといういわゆる親弁型の事務所が一般的でございます。こういう事務所でも法人化をしたいという要望が強いということと、また、法人化を認めた場合に、社員は一人ですが、実際の事務所としては、複数の弁護士の方が勤務をする事務所である。また、そういう事務所を法人化した場合に、勤務をされている弁護士の中から、将来的にパートナーとして、社員として加わっていって、まさに社員が複数の事務所になって大型化していく、その端緒にもなり得る。

 そういうような弁護士の方々の御要望あるいは将来の発展ということ、それから、一人法人であっても、法人化した場合には、弁護士の方の個人資産と弁護士業務のための資産というものが法律的に明確に区分できる、そういうメリットもございますので、そういうような点を考慮いたしまして、一人法人を認めるということで立案を行ったものでございます。

山花委員 ちょっと所轄が違うのでお答えいただけるかどうかということなんですけれども、例えば、つい最近の法律でありますが、平成十二年の四月に成立してことしに入ってから施行されています弁理士法なんかでは一人法人というのは認められていないんですけれども、どうしてこういう違いが出てくるんでしょうか。

房村政府参考人 ちょっとほかの法人については何ともお答えしにくいんですが、それはやはり、事務所の形態の違いとかそういった点を考慮してそういう御判断をされたのではないか。私どもは、今の弁護士の方々の業務の実態を考えて、できるだけ使いやすいものをということで今回考えさせていただいたわけです。

山花委員 先ほど私、森山大臣に、理屈とは別に政策的なということを言っておきながら、ちょっとここで理屈っぽいことを言うようですけれども、一人法人が認められるとすると、その根拠というか、理論的にはどういうことになるのでしょうか。

 一般的には、法人というのは複数の人間が存在する、あるいは、財団の場合は別ですけれども、社団性ということが言われるわけです。例えば株式会社でも、一人会社が認められるときには株式譲渡自由の原則というのがあって、潜在的な社団性があるんだというような説明だったと思いますが、ちょっとその株式譲渡の議論とはパラレルに考えられるのかどうか疑問があるのですけれども、いかがでしょうか。

房村政府参考人 その点はいろいろ議論のあるところだと思います。御指摘のように、株式会社について、実質的に一人であっても、将来的に株式が譲渡されて複数の者が関与する、そういう潜在的な社団性があるんだと。そういう意味で申し上げますと、この弁護士法人についても、設立当初一名の弁護士であっても、それは将来的に社員として加わって複数になっていくという可能性を常に持っておりますので、そこは潜在的な社団性がある。

 この社団性の考え方というものも、あくまで考え方でありまして、例えば医療法人でも一人法人が認められておりますし、そういったそれぞれの実態に合わせた構成というものは法律的に十分可能であるというぐあいに考えて、今回この法案を提出させていただきました。

山花委員 次、これは確認になりますけれども、弁護士法人の業務範囲ということについてお尋ねいたします。

 三条二項の規定がありますので当然なのだと思いますが、弁理士の業務あるいは税理士業務などは、これは弁護士法人の法人としての業務範囲になるということでよろしいでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のとおりでございます。

山花委員 それでは、その次の質問にいきたいと思いますが、弁護士法人が法人化するに当たりまして、先ほど、非常に専門的な訴訟などについては多数の弁護士さんが共同して処理に当たる、それによってより合理的、効率的な解決が図られるのだというお話でありました。ただ、これは弁護士がという話ですけれども、やはり法律のスタッフがというふうに置きかえても同じことが言えるのではなかろうかと思うわけであります。

 先ほど来御答弁の中にも、親弁型とか、そういう言葉が飛び交っておりますけれども、今回の法人事務所というのは、収支共同型と言われます、収入と支出を共有している形態に法人格を与えるというような、大体そういうイメージかと思います。

 ところで、よく弁護士など法曹資格というのは社会的な事象に対するお医者さんに例えられることがあります。病気を治すのがお医者さんであるとすると、何か社会的な紛争という病理に対する処置をするのが法曹であるというふうに言われることがあるのですが、お医者さんの世界では総合病院というものがあって、何が原因だかよくわからないけれども体の調子が悪い、総合病院に行って内科に行ったけれども、ちょっと違うようだ、では、神経科に行って診てもらう、そして最終的にどこが悪いという診断が下って、病院に対してお金を払うというようなものがあるわけです。

 同じように、何か社会において紛争が起こったときに、一般の人というのはそんなに、この法務委員会の委員の方のように法律を知っているわけではありませんから、一体どこに行けばいいのかわからないことが多いと思います。例えば特許の関係であれば、知識があれば、ああ、それは弁理士さんのところねということになりますけれども、どれだけ弁理士という資格を皆さん御存じか。あるいは司法書士とか行政書士とかいっても何をやっているのかわからない方が大変多いわけであります。

 そこで、現在でも、事実上、経費共同型と申しますか、言ってみれば、個人事務所が総合しているような形で、総合法律事務所というような形で開業している事務所もございます。例えば、弁護士さんとか司法書士さんとか行政書士さんとか、場合によっては弁理士さんなどがいて、仕事が来たら、中で仕事を割り振りして、そこで問題の解決に当たるという事務所でありますけれども、現行では、収支共同型ということになりますと、弁護士の独立性ということなんでしょうか、弁護士法七十二条に恐らくひっかかってくるのだと思いますが、これが認められておりません。実際、総合事務所の方なんかの意見としてあるのは、やはりこの収支共同型の場合にも法人化というものを認めてほしいという意見があります。

 話を聞いてみますと、なるほどもっともと思われることがあるわけでありまして、例えば、不動産の関係で相続であるとかそういったことが問題となったときには、もちろん弁護士一人ですべて解決できることもあれば、やはり司法書士さんと業務を分担したり、あるいは測量士の人の力をかりたり、そういうことで事務所の中で仕事を分担するのですけれども、ただ、あくまでもこれは個人事務所の集合という形でやっていますから、依頼者の方に報酬なんかを請求するときには、だれだれ先生にでは二十万払ってください、あの先生には三十万払ってください、あの先生には幾ら幾らというような形になる。もちろん事務所の対応の仕方のよしあしにもよるのでしょうけれども、依頼者の側からすると、何だかよくわけがわからない。場合によっては、この間お金を払ったじゃないですかというようなケースも出てくるということでありまして、収支共同型の事務所というのをできれば今後検討すべきではないかと思います。現行法のもとで容認すべきだというのはちょっと難しいかと思いますが、検討すべきだと思うのですけれども、この点についていかがお考えでしょうか。

房村政府参考人 先生御指摘のように、利用する国民の立場から見ますと、確かに、ある一つの事務所に行ったときに、そこに含まれている問題点をそこの方々が適宜分担してすべて解決してくれる、いわゆるワンストップサービスと呼ばれていますが、それが望ましいことは間違いございません。そういう観点から、政府の規制改革委員会からも、このワンストップサービスを促進するようにという御指摘を受けました。法務省と他省庁と一緒になって研究をいたしまして、先生が先ほど述べていただきましたように、経費共同型のワンストップサービスであれば現行法の枠内でも十分可能だということで認識が一致いたしまして、それをもって各省庁で現在そういう専門士業の方々に広報をして、できるだけ国民の利用のためにそういうワンストップサービスの総合事務所というものを活用してほしいというPRには努めております。また、そういうことで、現に相当数のそういう総合的事務所もできております。

 ただ、さらに進んで収支を共同にするということになりますと、それぞれの専門職種の持っている独立性、特に弁護士の場合には、先生先ほどおっしゃいました弁護士法の非弁護士との業務提携とか、非弁護士によるあっせんを禁止しております弁護士法の規定、こういうものとの抵触が非常に問題になってまいります。そういうことから、収支共同型を実行するについてはさらに検討を要するということで、引き続き検討をさせていただくということで規制改革委員会の方にも御報告をして、現段階では経費共同型にとどまっておりますが、おっしゃるように、収支共同型をどうするかということは検討課題だろうというぐあいには認識しております。

 また、その法人化につきましても、当然それと同じ問題がございますので、当面は、それぞれの専門士業がそれぞれの法人化を進めた上で、さらに総合的な法人をどうするかということは、関係各省庁それぞれの課題として検討していく必要があろうかと思っております。

山花委員 ぜひ積極的に検討を進めていただきたいと思います。

 さて、弁護士法七十二条の問題で、ちょっと非弁の問題についてお尋ね、また要望があるのでありますけれども、大変難しいところだと思いますが、司法書士とか隣接法律の専門職種であるとか、あるいは企業法務などでもこの七十二条の関係で非常に微妙な問題をはらんでいたりすることもあります。

 ところで、ちょっと特に申し上げたいことがあるんですけれども、隣接の法律専門職種の方は大体、弁護士法というのがあって、これはやっていい、やっていけない、企業の法務部門についても何となくぐらいはわかっていると思うんですが、最近非常にNPOの活動が活発になってきておりまして、例えば、ある事故の被害者のための救済に当たる人たち、あるいは人権の救済、人権問題については昔からあるかもしれませんけれども、あるいは犯罪の被害者の方の支援を一生懸命やる人たち、そういうのが今NPO法の施行に伴ってどんどんふえてきています。

 ただ、こういう方たちは本当に善意で活動されているんですが、ある特定の事件とか、事件という言葉を使うとちょっと問題があるかもしれませんけれども、ある特定の事柄について一生懸命活動してきて、そうするとだんだん知識もふえてきますし、こういうことについては大体こういう処理がなされるんだなということもだんだんわかってきます。決してこのことは否定すべきだとは思いませんし、また、かつては裁判外の紛争処理というのは、例えば日本人の権利意識というものが低いからだとか訴訟嫌いとかいうことで、非常に否定的な評価がされていた時期がありますけれども、近時は裁判外での紛争処理ということもある程度評価すべきではないかという議論もあるわけで、私もそのように考えるんです。ただ、実際、余り顕在化はしていないようですけれども、幾つか耳にしたケースがあるのです。

 例えば、ある問題が起きたとします。犯罪の被害者のケースだとしますが、それについてその救済のNPOのところにいろいろ相談に行く。そうすると、一般的な法律相談ぐらいのレベルなのか、それよりもうちょっと具体的に事件について個別の判断をしているのか、大変微妙なケースがあって、それに対してアドバイスをする。余り言うと問題があるのかもしれませんけれども、例えば、人情ですので、そうやって相談に乗ってもらったところに、どうもありがとうございましたと頭を下げる以上のことがあったりということになると、厳密に言うとちょっと問題があるのかなという話も聞かないわけではありません。

 なぜ顕在化していないのにこういうケースを耳にするかというと、例えば、今度、加害者の方にそういうNPOの団体が働きかけて間を取り持とうとすると、おまえは一体何の権限でやっているんだという話になったりするわけです。そういうことでちょっともめているんですよといって私なんかのところに来ますと、NPOの肩を持ちたいんですが、よく聞いてみると、ちょっと弁護士法に触れるかもなというケースもあるんです。

 先ほどもちょっと申し上げたかと思いますが、一般の方は、弁護士がどこまでできて、例えば司法書士ならどこまでできてということの認識は恐らくそんなにないと思いますし、わかっている団体はわかっているんでしょうけれども、本当に善意でそういうことをやってしまうことがあるわけでありまして、この七十二条については一体どこまでのことができるのか。限界的なケースとしては大変難しいかと思いますが、そういったことについて明確化したり、あるいはガイドラインをつくることが必要なのではなかろうかと思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、弁護士法七十二条というのは非常に規定の仕方が広いものですから、限界がどこかというのはなかなかわかりにくい面もございます。そういうこともありまして、現在、司法制度改革審議会においても、弁護士法七十二条の規制対象となる範囲、態様に関する予測可能性を確保するため、隣接法律専門職種の業務内容との関係も含め、規制内容を何らかの形で明確化すべきである、こういうような議論がなされております。先生の御指摘と全く同じ問題意識ではないかと思います。

 私どもとしても、この審議会における最終意見を踏まえまして、適切な対応をしてまいりたいと考えております。

山花委員 済みません、まだ質問通告していたのがあるんですけれども、時間が参りましたので終了させていただきます。ありがとうございました。

保利委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。

 きょうは、弁護士法の一部を改正する法律案にかかわって、私も弁護士になったことはありませんし、司法試験を受けようなどというような学生生活を送ったこともありませんので、この機会に、幾つか疑問点につきまして、森山法務大臣を基本にして御教示を賜れればと思っております。

 先ほどの質疑の中でもありましたように、きょうの提案理由説明の中でも、弁護士業務の基盤を拡大強化することにより、複雑多様化する法律事務に的確に対応し、国民の利便性の一層の向上を図ることを目的としているということで、そのメリットは非常によくわかるわけですけれども、法人化に当たって、まず幾つかの点について、ささやかな疑問もございますので、御教示賜れればと思います。

 一つは、法人化によって、言ってみれば地方支店みたいなものの開設が可能になりますし、そういう意味で弁護士の過疎地解消には道を開く、そういう意見があることは十分承知しておりますし、そういう意味で活動の専門性、サービスの高度化というものも期待されている。しかし一方、そうしたことを十分理解しつつも、営利至上主義の立場に立っちゃう弁護士企業を生み出さないかということであるとか、また、市場支配や弁護士の階層分化を招くおそれはないだろうかとか、言ってみれば弁護士業務のビジネス化につながるんじゃないか、そうした根強い疑問の声、反対の意見も日弁連の中で一部ではあったというふうにも聞いているわけでございます。

 そういう意味で、大都市の事務所の寡占化を一層進めてしまうとか、利潤追求型の弁護士をふやしてしまって人権救済活動が損なわれるとか、そういう反対意見等々もあるかと思うんですが、少なくともそういう懸念については否定はできないだろうと思いますので、そういう疑念に対してどういうふうにまずお答えになるのか、御教示いただけますでしょうか。

森山国務大臣 弁護士さんは、基本的人権を擁護して社会正義を実現するということを使命にする、これは弁護士法の第一条に書かれていることでございます。弁護士のみを社員とする弁護士法人も同じ使命を負っているわけでございます。

 弁護士法人の制度は、弁護士業務の質の向上、依頼者の地位の安定強化、弁護士過疎への対応、弁護士の公益的活動の容易化などを実現するための基盤となるものでございまして、立法化によって弁護士が従来にも増して多様かつ広域に法的サービスを提供することが可能になるということでございまして、一層の基本的人権の擁護と社会正義の実現が図られるものというふうに期待している次第でございまして、本質はいささかも変わるものではないと思います。

植田委員 その一条のまさに弁護士の任務といいますか、それにかかわっては後ほどまたお伺いしたいと思うんです。

 法人化にかかわりまして、例えば弁護士法人の解散についてちょっとお伺いしたいんですが、法案の三十条の二十四で、商法の第五十八条の規定を準用されている。それで、裁判所への解散申し立て権を法務大臣に与えてはるということについて少し疑問があるわけです。当然、二十四の二項で「あらかじめ、日本弁護士連合会の意見を聴くものとする。」という文章は挿入されているわけですけれども、かといって、これは法務大臣が日弁連の意見に拘束されるということを意味するわけではないだろうと思います。そういう意味では、実際の権限をこれにかかわっては法務大臣が握っているというふうに理解するわけなんです。

 また、商法の第五十八条を見ますと、法務省が裁判所に解散を申し立てる前にその法人に対して警告することになっているわけですけれども、これについては日弁連の意見を聞く必要はないわけですから、そういう意味で、法務省が対象の弁護士法人に対して調査に入るということもあるだろうと思うんですけれども、そういうことについての是非について日弁連が抑止力を持たへんというふうに読み取れるわけなんです。そういう意味では、弁護士会自体がそもそも自治権が認められているわけですし、また、先ほど質疑でもありましたように、主務官庁があるわけでもありませんし、他の職能団体とは異なるわけですから、何で商法をそのまま適用したのかということについてはどういう御所見なんでしょうか。

森山国務大臣 弁護士法人は、弁護士と同じく、弁護士会及び日本弁護士連合会、いわゆる日弁連の会員となりまして、それらの指導監督に服するものというふうになっております。弁護士法人に対する懲戒も、弁護士会及び日弁連のみが行い得るものとされておりまして、従来と同様の弁護士自治が認められているというふうに考えます。

 弁護士法人については、その設立の方式を準則主義によるものとしましたことから、これに伴って生じ得る弊害を是正するために、商法第五十八条の規定を準用し、商法上の会社等と同様に、裁判所が、公益を維持するため、法務大臣等の請求により法人の解散を命じることができるということになっております。この裁判所の解散命令は、法人が形骸化しているとか、あるいは法人形態を乱用しているというような場合などに限られておりまして、弁護士業務のあり方自体を問題にするものではなく、弁護士法人の本来の業務遂行を左右するものでもなく、弁護士自治を侵害するものとは考えられません。

 なお、法務大臣による解散命令請求については、あらかじめ日弁連の意見を聞く、これは先生もおっしゃったとおりでございます。

植田委員 例えば、既に弁理士法人とか監査法人もそうなんですから、弁護士法人だけを別扱いにするのはということはあろうかと思います。そういう意味ではよくわかるのです。

 ただ、やはり弁護士の帯びている、まさに冒頭の説明でおっしゃいましたように、一条の中にあります弁護士の任務ということを考えた場合、やはり普通の会社と社会的役割は異にするのではないのか。そういう意味では、弁護士の持っている任務の特殊性といいますか、固有の任務にやはり着目すべきなのではないかというふうに思うわけなんです。そういう意味で、法務大臣の解散権を認めてしまうということは、弁護士自治というものをそれだけ弱体化させるのと違うのだろうかと私は素朴に思うわけです。

 そういう意味で、実際、今でも個人事務所の場合はそういうふうにしているわけですから、弁護士会の中での綱紀、懲戒手続で十分できるのではないか、私なんぞは素人目にはそう思うわけです。法務大臣にそれを認めぬことには何かぐあいの悪いことでもあるのでしょうか。

森山国務大臣 ただいま御説明申し上げたとおりでございまして、終わりの方で申し上げましたように、準則主義によってつくられるものでございますから、やはりそれに基づいた歯どめも必要であるということでこのような仕組みになっていると理解しております。

房村政府参考人 若干追加させていただきますと、委員の御指摘になりましたように、まず、一次的には弁護士会の懲戒において措置をされるのが自然だろうと思っております。

 解散請求をするような事由が生じている場合には、当然懲戒事由にも該当していることが通常でございますので、そういうことも含めまして、あらかじめ日弁連の意見を聞くということは、日弁連において自主的な判断において取り組まれる機会を提供するという意味もございます。

 そういう意味で、でき得る限り弁護士会の自治に配慮した規定としているつもりでございます。

植田委員 今のお二人の御答弁を総合いたしますと、第一義的には弁護士会の自治というものがまず前提だということと、不都合があるとかないとかというよりは、準則主義なものですからこういう法律の構成になっていますよ、そういう理解をさせていただきたいと思います。

 そこで、特に監督、懲戒権限を中心にいたしまして、弁護士自治にかかわって幾つかちょっと勉強してきましたのでお教えいただきたいのです。

 戦後の弁護士制度の特徴というのは、やはりこの弁護士自治の確立にあったかと思うわけですが、これは、戦前のありようの反省の上に立って、いわば在野性であるとか人権擁護性というものを担保するためにこうした自治というものが確立されたというふうに、ちょっとにわか勉強で勉強させていただきました。そういう意味で、弁護士自治というのは、言ってみれば、裁判所にとっての裁判官の独立に匹敵するような重要なことであろうと思うわけです。

 そういう意味で、例えば、弁護士への指導監督、綱紀、懲戒手続、また会の運営等々にかかわっては、当然そうした意味での実効性の確保、透明化というものは必要になってくるわけですけれども、常に弁護士自治を侵すことなきよう配慮していかなければならないというふうに考えているわけです。

 そのことを前提にいたしまして、森山大臣の方から、改めて弁護士自治というものについての御認識を簡単にお伺いできればと思います。

森山国務大臣 弁護士が司法制度の一翼を担いまして、基本的人権を擁護して、社会正義を実現するという重大な使命を負っておりますことにかんがみまして、弁護士法では、弁護士会及び日本弁護士連合会が十分な自治能力を有するということを前提にして、弁護士に対する指導監督をゆだねているわけでございます。

 弁護士会及び日本弁護士連合会におかれましては、このような法律の趣旨を十分に踏まえていただきまして、弁護士に対し適切に監督を加えていただけるものと期待しているところでございます。

植田委員 今、基本認識をお伺いいたしたところですけれども、いずれにいたしましても、弁護士というものの存在が自律的存在であることは当然そういうふうに期待されているという御趣旨であろうと思います。

 例えば、それは憲法の三十四条において、捜査官憲によって身柄拘束されようとしている者に対する弁護人依頼権を保障しているであるとか、三十七条の三項において、刑事被告人に弁護人依頼権を保障している等々というものは、やはり弁護士というものは自律的存在であるということをいわば象徴的に示しているものだろうというふうに思います。

 また、そういう意味での弁護士の存在、活動というものが保障されていない社会に民主主義というものが存在し得るかというと、当然し得ないであろう。少なくとも、民主的な統治体制をとる国においては、世界各国全部調べたわけじゃないですけれども、何らかの形で弁護士自治というものは保障されていると私は理解をしているわけです。

 そういう意味で、弁護士法において、弁護士会に入らなければいかぬという強制加入、それを前提とする自治を認めているということは、まさに弁護士の自律によって日本社会における民主主義をしっかりと確保していくというものだろうと私は理解します。

 その意味では、弁護士自治というものは、言ってみれば、弁護士会における特権、既得権益ではなくて、少なくとも、弁護士と国民との共有財産、そういうふうに認識すべきだろうと思いますし、そういう意味では、少なくとも、具体的に今何度か出ています監督、懲戒権限というものも、言ってみれば、弁護士会が国民から負託を受けたものだというふうに考えていいのかと思うわけですが、その点について、いかがですか。

森山国務大臣 先生のおっしゃるとおりだと思います。

植田委員 国民共有の財産ということであれば、当然そこでの議論の中で、弁護士会を国民に開かれたものにするというふうな議論の中で、例えば、かつての行革審の規制改革委員会での、強制加入制度の廃止であるとか、懲戒権を弁護士会から取り上げてしまおうじゃないかというようなことも一部で議論があったやに聞いております。

 ただ、いずれ六月には最終答申が出るということですが、改革審の中間報告の中では、こうした弁護士の職務の質の向上というものは弁護士会自身による自律的機能の強化というところに求めているというふうに私は了解しておりますが、今大臣から何度か御答弁いただいた趣旨、すなわち弁護士自治の意義を十分踏まえて、弁護士の職務の質の向上は自身の自律的機能の強化によるんだというところに、少なくとも中間報告段階では帰着しているんだというふうに認識してこれは読めばいいのでしょうか。

房村政府参考人 御指摘のように、司法制度改革審議会の中間報告では、弁護士会の自律的機能につきまして、「弁護士会の諸権能を自律的に行使する上で、手続の透明化、国民に対する説明責任の実行、それらの運営・運用への国民参加など国民の意思を反映させ、国民の信頼に応える必要があると言える。」という指摘がされておりまして、このような指摘は、まさにこのような諸方策をとることによって自律的機能を強化するという方向性を持っているのではないかと理解しております。

植田委員 しつこいようですけれども、もう一度確認をいたします。

 懲戒権限、監督権限というものは戦前と今とは違ってきているわけですけれども、戦前の場合は、国家権力のもとに置かれていた。そのため不都合が起きてきたと思います。そういう意味で、国家権力による弁護士の監督、懲戒というその構造を断ち切ったということにおいては、現行の弁護士法というものは非常に画期的な意義を持っているということでございますから、まさにそこは弁護士法第一条の使命を全うせしめるためにそうした権限を弁護士会が持っている。その意義については、現段階においても、また今後もその意義というものは変わらないだろうなと私は確認したいわけですが、そこは、大臣、いかがでしょうか。

森山国務大臣 先生がおっしゃるとおりでございます。

植田委員 次に、今さんざんお伺いした上で、もう一つ二つお伺いしたいわけですけれども、もちろん国民の期待にこたえる司法の実現という意味におきましては、弁護士制度の改革というのは司法制度改革の重要な柱の一つだろうというふうに思うわけです。

 そこで、やはり問題になってきますのは、一条とのかかわりにおきますけれども、国民の求める弁護士制度改革、弁護士像というのがどういう姿であるべきなのかということになろうかと思うわけです。私自身は、当然国民のための司法改革ということである以上、一般国民の権利を擁護していく弁護士をどうこしらえていくかというか、養成していくかとかいうことになろうかと思うわけです。

 そこで、中間報告の二十三ページで、「国民が求める弁護士像」というのが「弁護士制度の改革」の中で記述されております。これについて私、若干疑問もございますので、幾つかここについてもお答えいただきたいわけですが、基本的に、今の答弁にもありますように、一条が確かに前提になっているわけです。「社会における弁護士の役割は、「国民の社会生活上の医師」たる法曹の一員として「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」」、これは一条一項ですね、「との使命に基づき、」云々、「「頼もしい権利の護り手」であるとともに「信頼し得る正義の担い手」として、高い質の法的サービスを提供すること」は、全くそのとおりだと思います。そして、その「弁護士がこのような役割を果たすためには、今後、その活動領域を大幅に拡大しながら、」、それもそうだと思います。「統治主体としての国民の社会生活上の諸活動の伴侶、」、それもそのとおりだと思います。「企業の経済活動におけるパートナー、国家・社会の公的部門の担い手など、様々な姿で国民に奉仕することを通じて、」というところで少し疑問がわいてきます。

 「企業の経済活動におけるパートナー」とか「国家・社会の公的部門の担い手」とかいうふうに書いてあるわけですけれども、むしろ我々下々の一般国民からしてみれば、企業の経済活動と対立を起こす、言ってみれば企業の経済活動にかかわってそれが基本的人権の侵害に当たる、また、社会正義に照らしたとき不正義じゃないかという訴訟は、御承知のように、いろいろな形で提起されていますし、国家社会の公的部門の中においても同様のことが言える。

 そこで、もちろんこうしたところの役割を弁護士が果たしちゃだめだということではないわけですけれども、どうもこういうふうに並列で書かれちゃうと、こういう言い方は余りよくないんですが、社会的弱者、社会的にいろいろな局面で弱い立場に立たされがちな多数の国民の人権を守るという観点からすると、そういう弱いものに立たされがちな方々と大企業や公権力が言ってみれば同等な扱いを受けているんじゃないか、私はひがんで読んでいるわけではないですけれども、素直に読んでみると、こう並列になっているとそういうふうに感じるわけです。

 その意味では、例えばユーザー間のニーズの対立というのは、もう御承知のように、きょうはハンセン病の話は私は触れませんけれども、いずれ集中審議がなされるものと信じておりますので触れませんけれども、例えばそうした公害裁判、消費者訴訟であるとか行政裁判でいろいろな問題が提起されているわけです。むしろ司法というのは、私は、そうした弱いものに立たされがちな方々が、いかなる力にも屈することなく基本的人権というものをしっかり獲得していく、そして社会正義を実現していく、そのためのその原点に立って活動する弁護士というものが本来必要なんじゃないのかというふうに思うわけですけれども、ここでの中間報告の読み方を含めて、その点について御答弁をお願いできますでしょうか。

森山国務大臣 先生が今引用なさいました中間報告の、先生がお読みになった文章のすぐ後に続きまして、「一層身近で、親しみやすく、頼りがいがあって信頼できる存在であるべく、」というのがございます。「自らを厳しく鍛え上げていかなければならない。」その文章の終わりまで読んでいただければ先生のおっしゃるような趣旨に合っているんではないかというふうに私は理解しております。

房村政府参考人 先生のおっしゃった、例えば企業とか行政に入る、それはある意味では国民のための活動をする場でもあり、また場面によっては国民と法的問題をめぐって対立する場面もございます。しかし、法律家として、企業の中でどういう役割を果たすべきかということで申し上げれば、現在においては、その企業内においていかに適法な活動を担保するかということが重要な課題になっている。会社法の改正等に当たっても、どうやって企業の正当な活動を確保するかという工夫が必要になってくるわけでございまして、まさにこれからの法律家に求められているのは、もちろん企業の中に入った人にとって企業のために活動するということは重要でございますが、それは同時に、企業に適法な活動をしてもらうことによって企業のためになる、そういうことが法律家の使命だろうと思います。

 そういう点で、必ずしも置かれた立場によって法律家のいわゆる社会正義の実現あるいは基本的人権の擁護ということができなくなるというものではない。そういう基本理念を持った法律家の方々が社会のあらゆる場面に入っていって、そういう法に従った社会が実現できるようにするということがまさに期待されているのではないか。この審議会においても、そういうことから、あらゆる部面で法律家が国民に奉仕することを期待しているのではないかというぐあいに考えております。

植田委員 ですから、ここでもきれいな文章でございますので、私自身さあっと読んでみますと、一瞬疑問もわかないわけですが、要するに、強い者と弱い者が同列に書かれているじゃないですか。一方で、ほかのところでは敗訴者負担なんということも書かれていて、訴訟する側が実際に訴訟を提起するまで、そこまでたどり着くまでますます大変になっちゃうじゃないか。そこに対する、弱い立場に立たされがちな方々へのまなざしがこの文章ではちょっと、それぞれの人たちをみんな公平に書いてあるがゆえに、むしろ、弁護士がどういうスタンスに立つのかということの一条の意味をもうちょっとどぎつく私としては展開してほしいなというふうに思っているわけでございます。

 そういう意味では、今司法法制部長の方がお話しになったように、少なくとも企業や国家社会の公的部門の担い手としての弁護士がそこで適正な活動をするように、そういう意味では監視役という役割も果たさないかぬということなんですね。そうですよね。もう、うんで結構でございます。

 それで、続いて、私がきょう用意いたしました質問の最後は、最高裁にごく簡単にお伺いしたいわけですけれども、弁護士は社会の医師でなければならないとよく言われますけれども、何ぼ名医であっても、その見立てがよくて処方せんを書いても、葛根湯しかなかったら肺炎はなかなか治せないと思います。弁護士の数だけふやしても、実際裁判をするその場の条件というものがやはり適正に機能していなければ機能しないだろうと思うわけです。

 そういう意味で、社会の医師といった場合、単にとりあえず弁護士をふやしましょうというふうな発想であると大きな間違いを犯すんじゃないか。むしろ、弁護士が十分な活動を行い得る条件とするためには、やはり裁判所の物的施設の充実というものは当然必要だと思うわけです。要するに、裁判所の数も減らすのじゃなくて、ふやしたらどうですか。この間、地裁や簡裁というのは減らしてきたじゃないですか。そういう意味では、こうした政策というものはどこかでちょっとぶった切って、もう一度、地域の人々が利用しやすい、使い勝手のあるありようをやはり追求していくべきだと思います。

 国家予算の〇・三七%というのが裁判所の予算、司法予算らしいですけれども、まず裁判所をもうちょっとふやすという方向転換が国民のための司法改革の中であっていいだろうというふうに思うわけです。決して困るような質問をしているつもりはございませんので、積極的な御答弁をいただければうれしゅうございます。

中山最高裁判所長官代理者 司法制度改革審議会におきましては、今委員も御指摘ありましたように、国民からの司法へのアクセスというものを、これまで以上にといいますか、より抜本的に容易にするという観点から、法曹人口の大幅な増加ということが提案されているところでございます。

 そして、法曹人口、特に弁護士がふえるということになりますと、当然のことながら事件数もまた大幅にふえてくるだろうと思います。その際に裁判所がそれに対してきちんと対応できませんと、それは絵にかいたもちということになるわけでございまして、いろいろな問題もまた波及して起きてくるかと思っております。

 裁判所としては、司法制度改革審議会の中で各委員が交わされた議論というものを十分踏まえて、その上で弁護士増に伴う事件動向というものも的確に踏まえて、これまで同様、利用しやすい司法の実現に向けて必要な人的・物的体制の整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。

植田委員 質問通告させていただきました質問は以上でございますので、時間はありますが、これで終わります。

保利委員長 次に、山本明彦君。

山本(明)委員 自由民主党の山本明彦であります。

 今司法制度改革がなされようとしておりますけれども、先ほど森山大臣からもお話がございました。この目的の一つに、法曹界というのは、法律専門家だけでなくて専門職の人にも、いろいろな社会経験をした人にも入ってもらっていろいろな社会の事案に対応していこう、こういうのが目的であるというお話がございました。したがって、法学部出身だけでなくて、工学部だとか医学部だとかの出身者も法曹人として登用しよう、こういったものが目的の一つ、こういうお話がありました。

 私ごとで恐縮でありますけれども、私は工学部出身でありまして、一級建築士であります。私も、もしロースクールができれば早速入学をして建築士出身の法曹人となりたい、今こんな夢を持っておるところであります。よろしくお願いをいたします。

 この弁護士法の改正というのは、まさに法律の専門家の皆さん方が英知を絞って考えられた法律でありますから、恐らく完璧なものだ、こんなふうに私は思っておりますけれども、素人の目から質問をさせていただきたいと思います。法律家を目指すこの若者が最初に挫折をしないように、ぜひ御丁寧な答弁をいただければありがたいな、そんなふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 先ほども質問がございましたけれども、弁護士法に入る前に、今の司法制度改革の件で二、三日前に新聞に記事が載っておりましたが、先ほど、中野財務省政務官が異議を唱えるということはないというふうに断言をしていかれました。この点につきまして、財務省の方が異議を唱えておっていろいろ動いておるというような話をどのように法務当局としては把握をしてみえるのか、御承知であればお伺いをしたいと思います。

森山国務大臣 私も新聞記事を見ましたときは大変驚きましたが、その直後に、閣僚懇談会の席で塩川財務大臣の方から、あの記事には全く根拠がない、財務省が司法制度改革に消極的であるなどということは全くないので、むしろ我々は司法制度改革に積極的に協力したいと思っているので誤解をしないでほしいということがございましたので、一安心したわけでございます。

 細かいことを申しますと、この記事の中にはいろいろ数を挙げまして、例えば日本の裁判官、検察官は受理件数千件当たりでは米国よりも多いとか出ておりました。しかし、アメリカと日本の司法制度は大変に異なっております。例えば訴訟となった事件であっても、民事事件ですと、証拠開示制度に基づく当事者主義の徹底などによりまして、大半が和解などで終結しているのがアメリカの事情でございます。また、刑事事件におきましても、司法取引や有罪答弁制度などによりまして、大半が事実審理を行わないで有罪判決に至るというようなことがございまして、訴訟事件における裁判官や検察官の負担が大きく違っているわけでございますので、両国の事件の件数と裁判官や検察官の数と単純に比較するということは適当でないというふうに思っております。

 そのほか、いろいろ制度の違うことを抜きにして単純な数字の比較というのは、何につけ余りいただけないものでございますが、ちょっとそういう傾向のある記事でございますので、私も、あの記事のようなことを財務当局がおっしゃるのであれば、大いに反論しなければいけないというふうに思っておりましたけれども、幸い、大臣がきちんとした方針を私におっしゃっていただきましたので、その点は心配ないかなというふうに考えております。

 いずれにせよ、司法制度改革審議会の答申が最終的に出ますのが来月の中旬でございますが、その意を受けまして、具体化のため努力していきたいというふうに考えております。

山本(明)委員 記事の報道というのが事実でない、財務省としても全面的に応援するということで、大変結構なことだというふうに思いますけれども、この数字も、日本とアメリカとは計算基準が違う、そういう意味だというふうに思いますけれども、ただ、一つ申し上げたいと思いますのは、先ほど最高裁の方から、法曹界の人数をふやすという話がはっきりありましたけれども、ただやみくもに人数をふやすというむだな充実ではなくて、だれでもが納得できる効率的な充実をぜひ図っていただきたいというふうに思います。先ほど財務省も効率的なという話をしておりましたけれども、やはり、だれでもが納得できる、その数要るんだというだけの人数をぜひお決めいただきたいなというふうに思います。

 例えばアメリカあたりと比べると人数的に少ないわけでありますけれども、どうして少ないかというと、話せばわかるというような内容が日本にはあるのではないかな。したがって訴訟まで起こさなくてもいい、そういった大変いい日本人の素質だというふうに私は思いますけれども、新しい司法制度ができて利用しやすくなる、人数がふえて利用しやすくなる、利用しやすくなることによって起こさなくてもよい訴訟まで起こしてしまう。

 弁護士の数がふえれば弁護士の営業もふえるように私も予想します。そうするとむだな訴訟がふえる。そうするとむだな裁判官だとかむだな検察官も必要になってくる。こんなことになると思いますので、適正な数というものをぜひ把握していただいて司法制度改革を進めていただきたい、こんなふうにまずお願いをするところであります。

 それでは、弁護士法の改正について順次質問をさせていただきます。

 今度、弁護士事務所が法人化を初めてされるわけです。弁護士制度というのは、制度ができて百年以上経過をしておるところでありますけれども、ほかの専門職法人ですか、弁理士の特許業務法人は昨年法人化されましたし、公認会計士の監査法人についてはもう昭和四十一年に法人化をされておるところであります。一番歴史の古いと思われる弁護士について今まで法人化されなかったことの方が私は不思議で仕方がないんですけれども、どうして今まで法人化されなかったのか、そこら辺の理由をお伺いしたいと思います。弁護士さんというのはプライドが高いんですかね。これをひとつよろしくお願いいたします。

横内副大臣 私から御答弁をさせていただきます。

 弁護士事務所の法人化につきましては、大分前からいろいろな議論が弁護士会の中でもあったようでございます。ただしかし、法人化をすることによって弁護士業務のビジネス化を招いて弁護士の本質を変容させるのではないか、端的に言うと、余りにも弁護士さんが商売熱心になり過ぎて、本来の公益目的みたいなものが失われちゃうんじゃないか、そういうふうな慎重意見もあったということで、なかなか今日まで法人化するには至らなかったということでございます。

 しかし、近年非常に、国際化だとかあるいは複雑多様化、専門化した訴訟がふえてきている。そういう中で、やはり法人化をしていかなければなかなか対応し切らぬということが広く認識をされるようになってまいりまして、法務省としても、日弁連と協議をして、その協議結果を踏まえて今回の法案を取りまとめたということでございます。

山本(明)委員 今いみじくもビジネス化という話が出ましたけれども、まさに先ほどの話でありまして、数がふえ過ぎますとビジネス化すると思いますので、そこら辺もぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 先ほどからも、法人化のメリットは何かという話も出ておりましたけれども、いろいろお話をお伺いしました。私は、今回質問するに当たりましてインターネットで調べてみようと思いまして、読売と毎日と東京新聞の三紙だったのでしたけれども、インターネットで弁護士法の改正と弁護士法人という項目で検索をしましたら、一件しかヒットしなかったのですね。私は、もう少しこの問題も社会的に認知されておるというのですか、もう少し広がっておるのかなと思っておったのですけれども、三紙でも一件しかヒットしなかったということは、余り注目をされていない。どうして注目されていないかというと、一般の国民の皆さん方に関心があればもっと報道されるわけでありますから、それだけ関心がないのかなという感じがいたします。

 したがって、先ほどからメリットの話がありましたけれども、弁護士側から見たメリットも当然あると思いますけれども、いわゆる依頼者、一般国民の皆さんから見た点のメリットということについてはどのようにお考えかをお尋ねしたいと思います。

横内副大臣 依頼者サイドから見たこの弁護士事務所の法人化のメリットというのは、やはり第一点としては、法人化をすることによっていろいろな専門的な能力を持った多様な弁護士さんを事務所に置くことができる。そうすることによって、高度化したり、専門化したりする訴訟に対して、それぞれそういういろいろな能力を持った人が共同して対応することによって、非常に難しい訴訟にも対応することができるのではないか。そういう意味で、受任者の依頼者に対するサービスの向上が図られるのではないかというのが一点だと思います。

 それからもう一点は、個人の弁護士さんが依頼を受けるという場合には、その弁護士さんが死んだりしてしまいますと、依頼者としてみればもう一回また別の弁護士さんに頼まなきゃいかぬというようなことがあるわけでありますけれども、弁護士法人に依頼をすれば、法人としてその依頼を受けるわけでありますから、たまたま直接担当している弁護士さんが死ぬとかあるいは退職をするとか、そういうことがあっても、弁護士法人としてすぐ別の弁護士を対応させたり、そういうことで依頼者の地位も安定したものになるというようなところが、依頼者から見てのメリットだというふうに思います。

山本(明)委員 ごもっともなお話を今いただきました。

 私も本当にごく通俗的な一般人でありますから感じるのですけれども、やはり弁護士さんのところへ行くには何となく行きにくいなというのがまだまだあるというふうに思います。どうして行きにくいかといいますと、行けば一体幾ら取られるんだろうかという気持ちがまず一つ、大体の人は働くようであります。

 今メリットの話を申し上げたのですけれども、副大臣のお話の中になかったのですが、果たしてそれによって依頼者の弁護料というのですか費用は少しは安くなるのかな、そういうのが逆にやはり国民の皆さんから見ると一番大事な点ではないかというような気がするわけでありますけれども、その辺について、法務当局、御答弁お願いします。

房村政府参考人 法人化をした場合に弁護士費用がどうなるだろうか、下がるだろうかという点は、確かに関心を持たれるところだと思います。具体的にどうなると予測するのは難しいわけですが、しかし、法人化をすることによって事務所の業務の基盤が拡大強化される、あるいは事務処理が効率化される、あるいは規模のメリットとか、そういうことによって経費的に少ない経費で同じサービスが提供できるようになるということになれば、費用が下がるということは当然あり得るのではないか。また、そういう方向でぜひ弁護士の方々に努力をしていただきたいというぐあいに考えております。

山本(明)委員 国民の皆さん方が興味を持たれる、ありがたいと思われるような形でぜひお進めをいただきたいというふうに思います。

 先ほども、一人法人でもいいのかというお話がありました。法人化の条件で、人数だとか出資金だとか経験年数というのは、これはないということでよろしいわけですね。非常に簡単に法人化ができるということだと思いますけれども、先ほども話がありましたけれども、やはりどうして一人でもいいのかなというのは疑問に思います。

 先ほどもメリットの中で話がありましたけれども、やはり大型化するということに大変大きなメリットがあると思いますので、私の考えでは、複数にして大型化するインセンティブを与えるためにも、複数が条件ですよということの方がそのメリットは生かせるんじゃないかな、そんなふうに思いますが、その点は御意見として申し上げておきたいと思います。

 今の、許可条件が大変簡単であるということでありますけれども、簡単に言うとお金が幾らでもいいわけでありますが、余りにも簡単過ぎるものですから基盤が非常に脆弱だというふうに思います。したがって、せめて、情報公開というのですか、資産内容の公開のようなものも私は必要ではないかと思うのですけれども、その点はどのようになっているのでしょうか。

房村政府参考人 弁護士法人については、確かに、例えば出資の額についての制限もございません。しかし同時に、弁護士法人につきましては、法人がその債務を完済できない場合には、原則としてその法人の社員が無限連帯責任を負う。したがいまして、法人で払えないときには、社員となっている弁護士の方個人がそれぞれ自分の持っている財産のある限り払う義務を負うわけでございます。そういうことから、商法の合名会社も同じような仕組みになっておりますし、監査法人、特許業務法人もそういう仕組みをとっております。そういう最終的に社員の無限連帯責任によって担保されているという各法人につきましては、資産内容の公開等について、法令上、特段の義務を課しておりません。

 これは、有限責任ですと、本当にその会社の財産しか担保がありませんので、その会社の資産内容の公開というようなことが非常に大きな課題になってまいりますが、弁護士法人については、そういうことから特段の義務を課しておりません。そのほか、弁護士法人は、社員が弁護士のみに限定され、弁護士会による指導監督に服するというようなこともございますので、こういう制度であっても特段の弊害は生じないのではないかというぐあいに考えております。

山本(明)委員 問題がなければ結構なことだというふうに思いますけれども、今の合名会社でも、あれは一番簡単だと思うのですけれども、たしか社員が二名以上ですよね。そんなふうに思いますが、それよりももっと簡単だということでありますので、弁護士業というのはやはり社会性も大変あるわけでありますし、それだけの信頼を受けなければならないわけでありますので、もちろん人的資源というのが一番だと思いますけれども、やはりそうした法人の基盤をしっかりするということも社会の信頼性を増すためにもぜひ必要だと思いますので、御検討いただきたいと思います。

 今、無限責任という話が出てまいりましたけれども、対外的責任についてお伺いをしたいと思います。

 まず最初に法人に責任があるのですね。法人で払えるものは全部払う。払い切れない場合は社員が全員で無限の責任を負う。それが指定事件の場合は指定社員が、複数であれば指定社員が複数で責任を負う、こういうことでよろしいわけですね。

 ほかの専門職法人を調べてみましたら、弁理士にしても、先ほどの公認会計士にしても、今審議中の税理士もそうですけれども、すべて無限責任制を採用しておるわけですね。ところが、今回の場合は、指定事件の場合は指定社員だけで責任、こういうふうに弁護士法だけ違うわけでありますけれども、特殊性はあると思いますけれども、この違いの理由というのですか、御説明いただきたいと思います。

房村政府参考人 御指摘のように、今回の法案では、指定社員の制度を設けまして、特定の事件について責任を持って処理をする社員を指定した場合には、無限連帯責任を負うのもその指定社員に限るという制度にしたわけでございます。

 このような制度を採用した理由でございますが、弁護士業務というのは、ある意味で、個々の弁護士の方の、特定のこの事件についての専門的能力、そういうものが非常に重視される場合とか、あるいは、依頼者と弁護士との非常に個人的な信頼関係、こういうものに基づいて処理をお願いするという場合がございます。特に、非常に機微にわたるような事件も扱うわけでございますので、依頼者からしますと、この弁護士の人に処理してもらいたいという場合がございますので、そういう場合には、法人としてその依頼者の希望にこたえて、この事件についてはこの人にすべて任せます、こういう仕組みをとる必要があるのではないかということが出発点でございます。

 そういうことで、この事件についてはこの弁護士の方が全責任を持って処理をするということにいたしますと、通常の事務処理に関しましては、弁護士法人の社員は全員が業務執行権限を持っております。したがいまして、意見が分かれた場合には全員の中の多数決で決めていくというようなことになるわけでございますが、特定の依頼者のために、この事件はこの人に全責任をということになればそういう仕組みはまずいわけで、どうしても指定された社員がすべてを決めていくということにせざるを得なくなります。そうなりますと、ほかの社員の人たちはその事件の処理におよそ関与できなくなる。

 そうすると、ある特定の社員の方が全責任を持って決めたことについて、その処理に関してたまたままずいことがあって依頼者に債務を負ってしまったという場合が生じてまいります。そのときに、ほかの社員の人たちは、およそ事件の処理に関与できなかったのにかかわらず、事件処理に関して依頼者に生じた債務を弁護士法人が払えないときに、個人的にも追及されるということになってしまうといささか酷ではないか。合名会社等が社員全員に無限連帯責任を負わせておりますのは、社員が全員業務執行権限を持っているということがやはり背後にあるのではないか。

 そういう意味で、指定社員の制度をとって、その事件についての業務執行権限をその指定社員、これは別に一名とは限りませんので、グループでやった場合にはそのグループというところで、やはり無限連帯責任もその方々に限っていただく必要があるのではないか。特に、弁護士事務所が非常に大型化してまいりまして、それぞれの専門分野を持って、この分野はここで処理をするというようなことになりますと、全く違う部門の人たちがいつ何どき巨額の無限連帯責任を負うかわからないということでは、なかなか事務所の大型化もできにくい。こういうような事情を考慮いたしまして、弁護士会とも意見交換の上、従来にないこういう指定社員の制度というものを考えてみたわけでございます。

山本(明)委員 今、監査法人でも何か逆に無限責任を有限にできないかというような動きがあるようでありますけれども、こういった制度が参考になるのかな、そんな気がしております。

 指定社員の件なんですけれども、指定社員は指定社員だけで責任を負う、しかし、ほかの社員が相談に乗った場合は、影響を与えていませんよというような証明をしない限りは共同の責任を負う、このような条文が書いてありましたけれども、指定社員が、難しい案件があったのでちょっと相談したいな、アドバイスを下さいということでほかの社員にアドバイスをもらったというような場合も、そのアドバイスをした人は責任が発生するのかどうか、お伺いしたいと思います。

房村政府参考人 御指摘のように、指定を受けていない社員が指定の前後を問わず指定事件に係る業務に関与したときは、その関与に当たり注意を怠らなかったことを証明した場合を除き、指定社員と同じ責任を負うという条文にしております。

 これは、一つには、例えば、財産を一番多く出した社員が、実質的に自分が関与するにかかわらず指定社員を別に設けておいて、それで自分は表に出ないで責任を追及されるのを免れよう、そういうような脱法行為を防ぐということを考えまして、事件の処理に実際に関与した以上はやはり責任をとってもらう。ただ、関与した内容が間違っていないにかかわらず追及されるのもまた酷ですから、関与に当たって注意を怠らなかったことを証明した場合には責任は負わない、こういう形にしたわけでございます。

 関与というのはどの程度かということでございますが、先生のおっしゃったような、いわば指定された社員が同僚にごく気軽に相談をしたという程度で本当に関与になるのか。それは、やはりその事件の処理に実質的に影響を与えたということになるのではないかと思っておりますので、単なる相談程度ではこの関与に当たらないとされる場合が多いのではないかと思います。もちろん具体的事象によりますので断言はできませんが、一応そんな考え方でございます。

山本(明)委員 私、この条文を読んだときに思ったのは、下手に相談に乗るとおれも責任をとらないかぬかなと思うと逃げちゃう、相談を受けても。そうなってくると事務所の中の運営も非常にぎくしゃくしてきますし、どうやって証明をするのかわかりませんけれども、実際大変難しい問題だろうな、そんなふうに思いますので、その点は、相談ぐらいは簡単に乗れる運営方法をしっかりと検討しておいてお示しをいただきたい、そんなふうに思うところであります。

 次に、従たる事務所を置く場合についてでありますけれども、これは先ほども話がありましたけれども、所属弁護士会は地元に所属する、中の弁護士も地元の会員である、こういうことでよろしいわけですね。

 弁護士会というのは、これも本当に外部から見た感覚でありますけれども、国民の数からいうと、市民の数からいうと数もそんなに多くないですよね。それと、非常に閉鎖社会のような気がいたします。中へ入ったことはありませんからどんなふうかわかりませんけれども、閉鎖社会というのは、外務省じゃありませんけれども、伏魔殿のようなイメージがあるような気がするわけでありますけれども、往々にして談合が生じやすいというのは世の常であります。弁護士さんでも談合があるかないか私はよく存じませんけれども、いろいろな打ち合わせは中であるんじゃないか、こんなふうに思います。

 したがって、今地元の弁護士会に所属するという話でありましたけれども、もちろん本店のあるところは本店に所属していますよね。逆にそのままで、地域の弁護士会に所属をしないという格好であれば恐らく地域の弁護士会は困りますよね。自分たちのテリトリーから外れちゃいますし、声が通じませんから困ると思います。困るということがこの閉鎖社会を打破するわけでありますから、一つの考え方として、地元の弁護士会に所属しなくてもいい、所属させない、いわゆる本店の弁護士会に所属していればそれで認められるというようなことも検討すべきではないかな、私はそんな気がしております。

 地元の弁護士会というのは、逆に、大きいところが入ってくると迷惑を受けるわけでありますから、どうしても中に入れておきたいという気持ちがあると思いますけれども、両方の面から、やはり地元の弁護士さんを侵してもいけませんし、いろいろな意味があると思いますけれども、その点もちょっとお考えいただきたいな、そんな気がしておるところでありますけれども、その点についてもしお考えがありましたらお願いします。

房村政府参考人 確かにいろいろな考え方はあろうかと思います。

 私どもが考えましたのは、従たる事務所をそこの地域に設置するかどうかというようなことについて地元弁護士会の許可にかからしめるというようなことですと、あるいは先生のおっしゃったような問題が生ずるおそれもあろうかと思いますが、今回はそういうことではなくて、基本的に従たる事務所を設置することは自由にできる。ただし、設置した従たる事務所の活動について、本店所在地の弁護士会の監督権限ももちろん及ぶわけでございますが、これが非常に離れたところにある、例えば東京にある事務所の支店が札幌にあるというようなことになりますと、なかなか日常的にそこの従たる事務所の活動を監督するということは難しゅうございますので、やはりそういう従たる事務所の行動の監督は一番身近で情報を把握しやすい地元の弁護士会にゆだねるという趣旨で、地元の弁護士会にも加入していただくということを考えたわけでございます。

山本(明)委員 住民から信頼をされる弁護士、弁護士会を目指していただきたいと思います。明治時代には弁護士と新聞記者にはうちを貸すなという言葉があったそうでありまして、非常に清く貧しく正しく活動しておられたようでありますので、ぜひその精神がこれからも続くようにお願いをしたいというふうに思います。

 今回の法人制は、従たる事務所を置くことができるということで、過疎地対策も大きなメリットの一つだというふうにお話がありました。私も大変それが大きなメリットだと思いますけれども、私も今中小企業を経営しておりますが、弁護士の先生というのは、先ほどの話じゃございませんけれども、ビジネス化しない方ばかりだと思いますが、実際に法人を運営していくためには、なかなかそうはいかぬというふうに思います。私がもし支店を出すときに、仕事がないなと思うところには絶対出さないわけでありまして、やはり仕事がありそうなところにしか出さないわけでありますから、そういった意味で、果たして過疎地対策というのがこれによって効果があるのかなという感じがいたします。

 実際どのように考えてみえるかわかりませんけれども、過疎地対策に実際なりそうなのか。無弁護士市町村、ゼロワンというのですか、弁護士の余りいない市町村が今どれぐらいあって、答えは出ないかもわかりませんけれども、行く行く目指すところは、無医師村をなくすわけではありません、違うと思いますけれども、そこら辺はどんなふうにお考えか、お尋ねをしたいと思います。

房村政府参考人 まず最初に、弁護士の方がおよそいない市区町村でございます。全国で三千三百七十一市区町村がございます。そのうち弁護士の方が全くいない市区町村が約八五%の二千八百七十カ所、弁護士の方が一人しかいないものも含めますと全体の九〇%の三千二十三の市区町村が該当するということになっております。

 それは全国津々浦々弁護士の方がいらっしゃるのが最も望ましいとは思いますが、これもまたなかなか難しい話でございます。できるだけ地方に弁護士の方にふえていただきたいと思いますし、この法人化の複数事務所がその一助になればと思っておりますが、ただ、先生御指摘のように、それはやはり事務所を経営する法人としては採算ベースも無視できませんので、そう過大な期待はできないかな。ただ、法人化することによって、単独でそこに一つで持つのではなかなか経費的に難しいところが、法人という全体の合理化の中で、法人の従たる事務所であれば採算が何とかとれるというようなところが少しでも出てくれば、従来よりも過疎地域に法律事務所がふえていくのではないかということを期待しております。

山本(明)委員 終わります。

保利委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

保利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 今回は、弁護士事務所の法人化の問題でございますが、この問題は、私が弁護士登録をした四十六年当時からずっと、法人化、ローファーム化の問題として議論されてまいりました。また、三十九年の臨司でも、法曹一元の基盤整備の一つとして取り上げられたところでございます。

 現行の弁護士法では、法人化を認めていないために、事務所経営というのは個人経営であり、いわゆる町医者的な経営にならざるを得ないところでございまして、弁護士事務所の経営というのは、弁護士個人と依頼者個人との極めて人的関係の強いものとなってまいりました。そのため、我々の間では、弁護士が病気やその他の理由で半年も仕事を休んだ場合にはお客が全員離れていく。そういう意味で厳しい現状でございます。

 また、例えば、特許事件とか税務事件、医療過誤事件なんかの自分の専門外の事件を担当した場合には、日常的な事件をこなしながら専門的事件の勉強をずっとやらなければならないという大変な苦労、労苦を強いられます。

 あるいは、大きな刑事事件で百日裁判なんてありますが、こういう訴訟を担当すると日常的な事件を犠牲にしなければならないということもあります。また、弁護士任官や、大学の教授になったり、あるいは国会議員になったりする場合には、長い間築いてきた自分のお客というのができているわけなのですが、それを全部失って事務所を畳む覚悟でないとこういう仕事につけない。国会議員の、当委員会でも弁護士出身の先生がいらっしゃいますが、同じ思いで国会においでになっているのではないかなと思っております。

 私は、弁護士事務所の法人化を禁止している現在の法律は、まさに弁護士の資質の向上を阻んでいる、あるいは弁護士の社会貢献を阻んでいる原因だと思います。また、ひいてはリーガルサービスの低下という問題の原因になっているというふうに考えております。

 私は、弁護士事務所が法人化されて、ローファームを構成して、あるときは、弁護士が日常的な雑務に煩わされることなく、じっくりと腰を据えて判例の研究だとかあるいは専門知識の研さんをしたり、またあるときは、本当に後顧の憂いなく法律事務所から離れて、裁判所あるいは大学、国会で思い切って活躍する、そんな時代の来ることを心より祈っておりますし、そしてまた、今回の弁護士事務所の法人化がその一歩であるというふうにかたく信じておるところでございます。

 そんな観点から御質問させていただきますが、総論と各論に分かれますが、総論は大臣にお尋ねしたいと思っております。

 今回の弁護士事務所の法人化というのは、司法改革の進む中で一つの課題として起きてきましたが、二十一世紀のあるべき弁護士像というものを大臣はどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

森山国務大臣 弁護士は、司法制度の一翼を担い、国民の基本的人権を擁護して、社会正義を実現するという重大な使命を持っている法律の専門家でいらっしゃいます。

 司法制度改革審議会の中間報告では、二十一世紀の社会において弁護士が果たすべき役割というものをうたっておりまして、このような使命に基づいて国民に高い質の法的サービスを提供することにある、この役割を果たすために、その活動領域を拡大し、国民に身近で親しみやすく、信頼できる存在とならなければならないと言っております。

 弁護士の皆様方につきましては、このような使命を十分に踏まえていただきまして、国民の広範かつ多様なニーズに的確に対応していくことによってその役割を果たしていくことが期待されていると考えております。

漆原委員 今おっしゃったように、国民のニーズにこたえるという観点と、ローファームからいろいろなところに社会貢献をする。その際に、弁護士が外に出て公的な仕事をする、そしてまたそのローファームに帰ってきて仕事をする、こういう出たり入ったりが自由な弁護士の社会基盤をつくることが弁護士の社会貢献に絶対に必要なことだと私は思っておりますので、そういう観点からもよろしくお願いしたいと思います。

 もう一つは、三十九年から始まったこの話なんですが、弁護士事務所の法人化がなぜ今なのかという点についてはいかがでございましょうか。

横内副大臣 最近の傾向といたしまして、もう先生御案内のとおり、経済社会の複雑化、多様化、さらに国際化ということに伴いまして、いろいろな分野での新しい法律問題が発生をし、また複雑になってきているという状況でございます。

 こうした状況に対応して、弁護士さんの業務をできるだけ共同化し、また専門化し、総合化することによって、弁護士さんの執務体制を強化して、お客さんに対する法律サービスの質の向上を図っていく必要があるということで、今回弁護士法人制度の立法化をすることにしたものでございます。

 こういった必要性につきましては、広く社会的にも認識をされてきておりまして、経緯を申し上げますと、平成十二年の三月三十一日に閣議決定されました規制緩和推進三カ年計画で、平成十二年度中に法的措置を講ずるというふうに決定をされました。

 また、司法制度改革審議会の中間報告、平成十二年十一月二十日の中間報告でございますが、そこでも、閣議決定を踏まえて、平成十二年度中に所要の立法措置が行われることを期待するというふうに言われております。

 こういったものを踏まえて、日本弁護士連合会とかなりの回数にわたって意見交換をして、今回の立法化に至ったものでございます。

漆原委員 私は、今回この弁護士事務所の法人化という法律を読ませていただいて、本当に弁護士会の意識も弁護士の意識も変わってきたものだなということを実は本当に痛感をしております。

 今でも強い反対はあったわけなんですが、昔は強い反対が多数を占めていまして、弁護士会が弁護士を法人化して、我々は商人ではないんだ、こういう意識が非常に強かったのですね。

 そういう意識が時代とともに変わってきたんだなというふうに思いますが、弁護士の社会貢献、それからもう一つは、リーガルサービスの問題と、いわゆる外弁というのですか、アメリカから日本の事務弁護士として、外からの弁護士が日本に大きく来ているわけですね。多分そういうのも関連しているのではないかなと思うのですが、この点はいかがでございましょうか。

房村政府参考人 外国からの弁護士の受け入れということで、外国法事務弁護士の制度を設けておりますが、基本的に、諸外国では非常に法人化が進んで、大規模なローファームが主流を占めております。そういうところの出先のような形で外国法事務弁護士の方々も日本に来て法律サービスを提供しておりますが、そういうものとの関係でも、日本においても弁護士事務所の法人化を進めて、多数の弁護士を集めたより高度な法的サービスが提供できるような体制を整えていく必要があるということが、広く社会的にも認識されるようになったためではないかと思っております。

漆原委員 日弁連ではことしの二月の臨時総会で法人化を認めた、こういうふうに聞いております。それでもまだ弁護士会の中で強い反対意見があったのだということを聞いておるのですが、どのような反対意見があったのか、どう承知されているか、お尋ねしたいと思います。

森山国務大臣 先ほど来先生がちょっとおっしゃっておりましたように、長い間の議論の対象でございましたが、最近ようやくこの基本的な方向には賛成という決定をしていただいたのですけれども、弁護士連合会の中で反対される意見としては、主として、解散命令の制度が設けられていることによりまして、弁護士自治が侵害されるのではないかという御心配をされる向きがあったわけです。またもう一つは、弁護士法人に従たる事務所の開設を認めることによって、地方においてさまざまな弊害が生ずるのではないかというような御心配もあったように聞いております。

 これらの御意見につきましては、いずれも真摯に受けとめまして、日弁連との協議をたびたび重ねてまいりました。その結果、共通の理解が得られまして、立案に当たって必要な措置を講じたわけでございます。

漆原委員 そうなんですね。大きな事務所が地方に支店をつくって、営利目的に偏った事件ばかりを扱うようになるのじゃないか。

 いわゆる弁護士の士は士なものですから商人じゃないという意識、商人じゃないから基本的人権を守るんだ、こういう意識が強かったわけですね。今回、それを乗り越えて、こういう法人化、従たる事務所ということになったわけなんですが、その辺はどんな意見の交換がされた上で、弁護士会の意見を調整されて、弁護士会がこの法案をのむようになったのか、その辺はいかがでございましょうか。

森山国務大臣 細かなやりとりのことは私は実は余り詳細には承知しておりませんが、結論としまして、解散命令につきましては、その要件が懲戒事由と事実上重なり合う面がありますことから、その判断の慎重を期するとともに、自発的な懲戒の機会を与えるなどのために、法務大臣が解散命令の請求をする際には、あらかじめ日弁連の御意見を聴取するということにいたしました。

 それから、従たる事務所の問題につきましては、その所在する地域の弁護士会の会員である社員の常駐を義務づけるということにいたしましたのとともに、当該弁護士会に法人としても入会していただいて、その監督に服させるということになったわけでございます。

 このように、今回の立案に当たりましては、日弁連と協議を重ねまして、その御意見を十分に法案に反映させたものでございます。

漆原委員 法人化を認めた場合には税法上有利な取り扱いになるのじゃないかというふうな声も聞かれるのですが、税法上、今の弁護士業務を法人化した場合に今よりも有利な取り扱いになるのかどうか。この辺はいかがでございましょうか。

横内副大臣 弁護士法人につきましては法人税が適用されまして、特に税制上の優遇措置が講じられるという予定はないというふうに承知をしております。

 なお、個人の事務所の場合と法人化した場合とで税務上のメリットがどうあるかということにつきましては、事務所の規模とか収入の額とか、そういうものによって異なるものですから、必ずしも一概に法人化した方が有利だとかいうことは言えないということでございます。

漆原委員 先ほど来問題になっておりましたが、一人法人というのですか、一人でも法人格を認める、これはどんな理由によるのか。

 それから、弁理士法との関係、弁理士法は一人じゃ認めないというこの関係で、特に弁護士にだけ有利な取り扱いをしているのじゃないかという批判もあるのですが、この点についてはいかがでございましょうか。

横内副大臣 先生には釈迦に説法でございますけれども、我が国の弁護士事務所の多くは、一人の経営弁護士、いわゆる親弁というものと、その下に雇われている勤務弁護士、いそ弁という形で構成される親弁型の事務所が非常に多いということでございます。そういう親弁型の事務所についても弁護士業務の一層の共同化を図る必要がありますし、また、経営をしている親弁の弁護士さんも、個人の資産と事務所の資産を区別して合理的な経営をするという必要がございます。そんなことで、弁護士さんの中でもこの法人化の要望が非常に強いというふうに聞いております。

 そこで、こういった弁護士の業務遂行の実情を考慮して、社員一人の親弁の弁護士の法人の設立も認めるということにいたしまして、個人と事務所の資産の区別を図る、そうすることによって合理的な経営をしていくということができるわけでございます。

 また、設立した後、いそ弁で雇われている弁護士さんでも、有能な人がいれば、その人を経営弁護士として、社員弁護士として共同化をしていくということも可能でございまして、そういうことで業務提供基盤の拡大強化を図っていくことにしたということでございます。

漆原委員 親弁という言葉は余り私は使わないのですけれども、今副大臣がおっしゃったから使いますが、今おっしゃったのは、その親弁という形態の事務所の経理上の都合をおっしゃったのですね。経理上の都合だけなんでしょうか。そのほかはないのでしょうか。

房村政府参考人 基本的には、できるだけ複数事務所を日本において発展させていただきたいと思っているわけであります。そのときに、個人経営の形で行っておりますと、共同事務所形態に移していく過程が、個人と個人との契約で、その事務所資産をどうするかとか、そういうものを一つ一つ決めていかなければならない。その点、法人化をして、そこに新たに社員として入っていくということであれば、もう少しやりやすくなるのではないか。そういうような将来的な弁護士事務所の共同化の基盤として一人法人というのが有用ではないかという観点もありましたし、また、実態として弁護士の方々の要望も非常に強かったというようなこともありまして、今回、日弁連との意見交換をした上で、一人事務所についても法人化を認めるという方向で法案を考えたものでございます。

漆原委員 先ほど後半に申しましたけれども、弁理士法との比較で、弁護士だけ有利に取り扱っているのじゃないか。今経理上のことだけをおっしゃったのだとすると、弁理士と変わらないわけですね。弁理士の方は認めないで弁護士だけ認めるというのは、ちょっとこれは公平に反するのじゃないのかな。だから、経理上のほかに、弁護士特有の一人法人を認めるメリットが何かあるのじゃないのかなという思いでお尋ねしたのですが、いかがでございましょうか。

房村政府参考人 弁理士は他省庁の所管に属することでありますし、また弁理士の業務の実態に即して御判断されたものと思っておりますので、そちらについてはコメントを差し控えさせていただきます。

 弁護士の場合につきましては、先ほど来申し上げているようなこととか、それから、仮に一人の弁護士の方に事件を依頼しているときに、その弁護士の方が例えば死亡してしまいますと、委任事務がそこで完全に中断してしまいまして、後の事件処理をどういうぐあいにしていくのかということがなかなか問題が多い、しかも訴訟事件については残念ながらかなりの年数を要するということもございますので、そういう危険も無視できない。

 その場合に、一人法人の形をとっている場合に、その弁護士さんが亡くなられますと、確かに今回法人の解散事由にはなっておりますが、新たに遺族の同意を得て法人を引き継いでいただくというようなことによって、引き続きその事件についての処理を責任を持ってその引き継いだ法人の弁護士の方にやっていただけるというようなメリットもあろうかと思います。その点は、弁護士の方の担当している事件が比較的長期間を要する事務が多いというような特色を考慮したものとはなっております。

漆原委員 それでは、各論についてお尋ねしますが、社員の資格を弁護士に限定していますね。この弁護士に限定した理由をお尋ねしたいと思います。

房村政府参考人 弁護士法人は、弁護士業務を行うことを目的としております。弁護士業務につきましては、現行弁護士法において、弁護士以外にはこれを取り扱えない、また、弁護士が弁護士以外の者と業務提携をしたり、事件の周旋を受けたりしてはいけない、こういうようなさまざまな制約がございます。そういうことから、仮に弁護士法人の社員に弁護士以外の者がなることを認めますと、社員として当然業務執行権限を持ちますので、その業務執行権限の行使を通じまして、実質的に弁護士でない者が弁護士業務を行うということを認める、あるいは弁護士と弁護士でない者の業務提携を認めると同じような事態を招くおそれがある。そういうことから、弁護士業務を行う法人の業務執行権を持っている社員は弁護士に限るということにいたしました。

漆原委員 業務の範囲でございますが、三十条の五で、三条の業務のほか、法務省令で定める業務というふうに業務の範囲を拡大しておるわけなのですが、法務省令で定める業務の内容についてお尋ねしたいと思います。

房村政府参考人 現在の弁護士の方々の行っております業務を見ますと、もちろん法律事務の処理という本来の業務が中心でございますが、そのほか、例えば各種の管財人あるいは財産管理人、後見人、後見監督人であるとか遺言執行者であるとか、そういう、多かれ少なかれ法律的知識があると非常にその業務が容易に遂行できるが、しかし必ずしも法律業務として弁護士の業務範囲に属さないというようなものも多く取り扱っております。

 今回、弁護士法人を認めるに当たりましては、本来の弁護士業務である法律的事務以外に、やはり法人としてそういう管財人をするとか後見人をするというようなことも有用な機能だろうと思いますので、そのようなものを省令で指定して、弁護士法人にこれを遂行していただきたいと考えております。

 そのほか、修習生とか弁護士業務を補助する者の研修、教育とかセミナー、そういう弁護士業務にとって有用だと思われるようなものを検討してまいりたいと考えております。

漆原委員 三十条の六、訴訟関係事務の取り扱い、訴訟関係事務については自然人である本人しか依頼を受けられない、こうなっていますね。これはどういう理由なのか。それからもう一つ、訴訟委任状だとか弁護人選任届というのは、だれがだれに出すのか、これをお尋ねします。

房村政府参考人 御指摘のように、訴訟関係事務については弁護士法人が法人として受任をする、しかし実際に法廷に行って活動するのは、法人としてではなく、それぞれそこにいる社員なり使用人なりの個々の弁護士である、こういう構成を今回とらせていただいております。

 その理由といたしましては、民事訴訟法における訴訟代理人あるいは刑事訴訟法における弁護人、これはいずれも自然人である弁護士の方を前提とした条文になっております。したがいまして、理論的に法人が訴訟代理人とか弁護人におよそ一切なり得ないかというと、これは法律的な構成によってはそういうことも可能かもしれませんが、やはり何といっても、資格を要求したり、いろいろな点で、自然人である弁護士を念頭に置いた規定が中心になっておりますので、法人が事件をやる場合にも、法廷に行って実際に活動するのは自然人たる弁護士に限るということにいたしました。

 しかしながら、事件の処理について責任を負うのは法人であるという意味で法人が受任主体であって、しかしながら、その業務遂行に当たっては自然人たる弁護士がこれを行うことということにいたしました。したがいまして、裁判所に提出いたします委任状であるとか弁護人選任届については、自然人たる弁護士を表示いたしまして、依頼者から直接その委任状等を出していただくという形になろうかと思っております。

漆原委員 実際に、弁護を引き受ける場合に、法人と依頼者の関係、もう一つは、担当の弁護士、まあ社員でも構いませんが、担当の弁護士と依頼者の関係、もう一つは、法人と社員たる弁護士の関係、三つの観点で法律関係が出てくると思うのですが、このおのおのの法律関係はどんなふうになるのでしょうか。

房村政府参考人 まず最初が、法人と依頼者との関係でございます。これは、委任契約の依頼者が委任者、弁護士法人が受任者という形になります。受任の内容といたしましては、その法人が、依頼者に対しまして、訴訟関係事務等をその社員等である担当弁護士に適正に行わせる義務を負い、委任の本旨に従った訴訟追行がなされなかった場合には債務不履行責任を負う、こういう委任契約関係に立つということになります。

 それから、法人と社員弁護士の関係ですが、社員弁護士は、法人の業務執行権限と代表権限を有しておりますので、まさに法人を代表して、その法人が受任した委任契約の内容を法人の代表者として業務執行権限に基づいて遂行する、こういう関係に立つということになります。なお、法人と、その法人に雇われている者、実際上の弁護士がやる場合には、これは雇用契約を通じて、いわば履行補助者としてその弁護士が遂行に当たる、こういう関係に立とうかと思っております。

 弁護士と依頼者の関係につきましては、直接的な契約関係には立ちませんが、代理権授与については、依頼者から直接その担当弁護士に代理権授与がなされる、こういう関係になります。したがって、代理人としては、直接的にその弁護士が依頼者の代理人になるという代理関係は発生いたします。

漆原委員 今の話、弁護人選任届を書いてもらった、あるいは訴訟委任状をもらった、これは依頼者からもらうわけですよね。そこで法律関係はないのですか、委任関係はないのですか。

房村政府参考人 ですから、それは、委任契約としてはあくまで法人と依頼者との間に発生する。したがって、その訴訟事務を処理した個々の弁護士が直接報酬請求権を依頼者に対して持つということはありません。これは、形としては、あくまで契約は法人と依頼者との間でしている。したがって、権利義務関係、受任義務の処理義務と報酬の支払い義務、これはそれぞれの間で発生いたしますので、担当している弁護士については、あくまで法人の代表者として、または法人の使用人として事務の遂行に当たっている。ただし、代理権だけは先ほど申したような個人の形でいきますので、代理権限授与は依頼者から直接弁護士にしていただく。

 ですから、通常、民法上、代理権授与と委任とはほとんど密接不可分の形になっておりますが、委員も御承知のように、代理権授与については、厳密にいえば、一方単独行為ということで、代理権の授与の意思表示によってこれを付することができるということで、委任と一応の区別がなされておりますので、この場合には、まさにそういう委任契約と代理権授与が別個の形をとるという法律的構成になろうかと思っております。

漆原委員 確認しますが、法人との間では善管注意義務がある。それで、実際に委任状をくれた依頼者との間では善管注意義務はない、こう理解してよろしいですか。

 指定社員についてお尋ねしたいのですが、法人の社員は全業務について執行の権利と義務を負うし、代表権を持っているし、そのかわり連帯して全責任を負うわけですね。こういうふうな連帯責任にした理由は何なのでしょうか。

房村政府参考人 合名会社等でもとられておりますが、このような人的結合に法人格を与えた場合に、要するに法人の債務の担保となる財産が必ずしも最低資本金の制度のように担保されておりませんので、法人の負った債務について、債権者保護のために、このような合名会社等においては業務執行権を有している社員に無限連帯責任を負わせるというのが一般的にとられている法制でございますので、弁護士法人についても同様に無限連帯責任を原則とするということにいたしました。

漆原委員 そのとおりだと思うんですね。ところが、指定社員制度というのを設けて、指定社員になった場合には権限も責任も限定されてくるわけですね。そういう意味で、実際にはすべての法人が社員を指定しちゃうんじゃないかな、こんな感じがします。その場合は、法人が自分の裁量で社員を指定できるものですから、依頼者の意向とは関係なく法人の意思で社員を指定できる。こうなると、今おっしゃった前提の趣旨が没却されてしまうんじゃないかな、こんな感じがします。

 もう一点は、ただ、業務に関与したときは指定社員じゃなくても責任を負うよという、この業務に関与するという程度の問題。この二点についてお尋ねしたいと思います。

房村政府参考人 まず、指定社員の趣旨でございます。

 先ほど委員の御指摘にもありましたように、弁護士と依頼者の場合に非常に個人的なつながりが強い、個人的な信頼関係に基づいて事件の処理を依頼するというような場合もございます。それからまた、極めて特殊、専門的な分野であるので、その弁護士の専門的能力を信頼して事件の処理を依頼するというような場合もございます。そのような場合には、弁護士法人の中で、やはり特定のこの人にお願いをしたい、あるいはこのグループにお願いをしたいという場合が当然あろうかと思います。

 そういう場合に、依頼者のそういう要望にこたえられるように弁護士法人の方でもその事件についての担当者を指定して、その事件についてはその担当者に全責任を持って判断し遂行してもらう、そういうことを可能にするためにこの指定制度というものを考えたわけであります。

 また、そうやってそこに全責任を持ってやってもらう以上、およそ関与する余地のないほかの社員に無限連帯責任を最終的に負わせるのはやはり酷だろうということで、責任の限定も出てきたわけでございます。

 そういう趣旨からいたしますと、弁護士事務所の方で依頼者の希望を十分酌んでそれに沿った指定をしていただく、あるいは、弁護士事務所全体を挙げて取り組むということであれば、特に指定をしないで全員が共同しながら行うということを適切に選択していただきたい、こう考えているわけでございます。

 もちろん、あるいは委員の御心配のように、中にはそこを曲解して責任を免れるために不必要な指定をするという場合もあり得なくはないと思いますが、そこは、やはり最終的には弁護士事務所が顧客に提供するサービスの質とその責任ということで淘汰されていくのではないかというぐあいに考えております。

 それと、そういう脱法的な場合を予防する趣旨もありまして、指定をされていなくても関与したらその責任を負うんだということにいたしているわけでございますが、そういう意味で、この関与というのは、その事件の処理の方針等について実質的に左右するような関与の仕方。単に担当弁護士からちょっと相談を受けたというようなものは多分含まれないだろうと考えております。指定社員がその方針を決めるのに当たって積極的にそれに関与して働きかけたり、あるいは実質的には指定社員と同じような行為をしている、そういう相当程度の関与が法の趣旨であろうというぐあいに私どもとしては考えております。

漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。

保利委員長 次に、西村眞悟君。

西村委員 自由党の西村でございます。

 総論的な部分については大臣に、条文に基づく質問については法務当局に御答弁いただきたいと存じます。

 司法サービス、法的サービスが国際化し、グローバルである、それを提供する者はグローバルな場で活動しなきゃならない、これは現世界経済を見れば自明のことでございまして、しかしながら、我が国弁護士は国内のタコつぼに潜っておるような状態でございます。この法律は、このような国内の閉塞状態にある意味では覆いを払って、我が国の弁護士が国際場裏で法的サービスを提供する基盤をつくるものであると高く評価するものでございます。

 質問の前提として、世界各国の、主にアメリカ等の法的サービスを国際的に提供する弁護士事務所と我が国内の現在の弁護士事務所の規模の違いをこの際お尋ねしてから具体的な質問を始めたいと思います。おおよその数字で結構ですから、御答弁いただきますようにお願いします。

房村政府参考人 雑誌に掲載されております所属弁護士数による世界の法律事務所ランキングというものがございますが、これを見ますと、二〇〇〇年一月の時点でございますが、世界最大の法律事務所はアメリカのベーカー・アンド・マッケンジーで、弁護士が二千六百二十五名おります。それから第二位が、クリフォード・チャンスというイギリスのローファームですが、二千六百名。四十位までずっと載っておりますが、四十位がオーストラリアの事務所で五百八十八名。

 当然のことながら、ここまで日本の法律事務所は入っておりません。現時点で、日本の法律事務所で最大のところの所属弁護士数は百二十八名ということでございます。

西村委員 今の数字を聞きますと、このような国際的に世界第二位の規模を持って活動する我が国において、弁護士の世界、法的サービスを自由業として提供する者の世界がまるで黒船が来る以前の江戸時代のような閉塞状態にあるということがわかるわけでございます。

 アメリカのローファームは、企業戦略のみならず国家戦略においてアメリカ政策を左右し、共和党、民主党いずれから大統領が出ようとも一つのローファームから国務長官ぐらいは送り出せるという体制のもとにあると聞いております。

 大臣、今我が国の弁護士事務所の規模はかくのごとしであり、我が国企業が必要とするグローバルの中で到底対応できないわけでございます。我が国の弁護士事務所が国際的に活動できる法的サービスを提供するというのは急務であると思うんですが、大臣の所感をお伺いいたします。

森山国務大臣 今私も、世界の大きなローファームの抱えている弁護士さんの数、全くけた違いに大きいということを改めて認識いたしまして、日本がいかに今までそのことに認識不足であったかということを改めて痛感したような次第でございます。

 この法律の改正によりまして弁護士事務所の法人化ということができますと、国内の弁護士事務所の規模を拡大し、多様な法的需要にこたえていくための基盤整備になるのではないかと思いますし、弁護士の専門性や国際性を高めることによりまして外国の法律事務所とも互角に競争できるようにしていくということになれるであろう、このことは非常に重要なことであるというふうに思います。

 司法制度改革審議会におきましても、弁護士の専門化、国際化を初めとする弁護士業務の質の向上とその執務体制の強化などの項目について最終意見の取りまとめに向けた審議が行われているところでございまして、実り多い最終意見ができますことを期待している次第でございます。

西村委員 この法律で国際的な活動にたえ得る弁護士業務の受け皿ができるわけでございますが、大臣が先ほどおっしゃったような司法制度審議会の最終意見も踏まえながら、国際性、専門性がある弁護士育成の強化について同時にお努めいただきたいと存じます。御要望申しておきます。

 それでは、以下、条文に基づいて、今まで御質問がなかった点を主に御質問いたします。法務当局にお答えいただきたいと存じます。

 まず、医療法人、監査法人等は、業務の内容に沿った名称をつけております。弁護士だけが弁護士法人という名称でございますが、これについては、何かそうであらねばならなかったということがございましょうか。

房村政府参考人 確かにそのものずばり弁護士法人という名称にいたしましたが、その過程では、例えば法務法人であるとか法律事務法人とか、幾つか検討はいたしたわけでございます。ただ、法務法人といいますと、法務というのもなかなか幅が広うございまして、法務省もいろいろ抱えておりますが、これも法務でございます。そういうことで、やはりその法人の行う業務は弁護士の方々の行う業務ということで、そのものずばり、法人の主たる業務を名称にもそのまま採用して弁護士法人とするのが最もわかりやすいのではないか、こういうぐあいに考えて弁護士法人という名称にいたしました。

西村委員 この立法の趣旨が先ほど大臣答弁にあったような趣旨でございますから、日本の弁護士が意欲的ならば、この法律が成立した直後に法人設立の動きが開始されるということが大いに期待されるのでしょうが、法務当局は、今の時点で、この法律成立とともに日本にどれぐらいのローファームが設立していくだろうかという見通しは持っておられますか。

房村政府参考人 私どもとしてはできるだけ多く利用していただきたいと思っておりますが、日弁連が弁護士事務所の法人化のときにアンケートを実施いたしまして、弁護士が複数所属する法律事務所すべてにアンケートを発送いたしまして、大体九百五十の回答を得ております。その九百五十の回答のうち、法人化する、あるいは法人化を検討するというのが約七百六十ございますので、複数の弁護士の方々がいらっしゃる法律事務所は、その大半が法人化を検討したいという御意向を持っておられるようです。最終的にどのくらいの数が法人になるのかということはちょっと私どももわかりませんが、この数からいって、相当多くの事務所が法人化をしていただけるのではないかというぐあいに考えております。

西村委員 次に、監督の問題に行きますけれども、弁護士といいますか、現在は、法曹というものに対する不祥事が相次ぎましたので、国民的には、非常にだらしないという思いがなされていると思うのです。

 この中で、弁護士自治ということで、今まで懲戒は弁護士会内部で行っております。これは実態は個々ばらばらで、私もすべての弁護士会のことは把握しませんけれども、例えば、昨年の選挙のときには落選させたい議員のリスト運動というのがございまして、現実にこの運動と連動して、候補者予定の弁護士に対して懲戒申し立てをして、それを懲戒の時点で新聞発表してしまって、そして選挙運動に資するという動きもあるわけですね。このような現実を踏まえながら、懲戒制度については司法制度審議会においても取り上げられると思うのですが、それを踏まえながら、法人の監督についてちょっとお伺いします。

 非弁活動というのがございまして、法人化を認めることは、この非弁活動を公然と行うことにつながりかねないのではないかという懸念がございますが、これに対する対処方法については、当局はどのような配慮をしておられますか。

房村政府参考人 弁護士法人の社員を弁護士に限ったという点がまず第一でございます。法人の中で業務執行権限を持つ者に弁護士以外の者が入ってくるということを認めることは、まさに委員の御指摘のような非弁提携を事実上合法化することにつながりかねない、そういう懸念から、今回、資格者を弁護士に限った法人ということにしております。

 次に、弁護士法人になったときに、使用者等を利用して事実上の非弁提携を行うおそれがあるのではないか。それは理論的にはあり得るわけでありますが、これは個人の弁護士が使用者を使って非弁を行うという場合と本質的には同じ状況でございますので、これは当然、法人化を認めた後も、弁護士法人についても罰則をもってそのような非弁提携が禁止されておりますので、弁護士会の監督を適切にしていただいて、そのような非弁行為が発生することを防いでいただけるというぐあいに私どもとしては期待しているところでございます。

西村委員 次に、主たる事務所の所在地、従たる事務所の所在地、管轄弁護士会が違う場合、懲戒の処分が一致すればそれはいいわけですが、各ばらばらにやって、私もよう知らないということで一致しない場合、懲戒すべし、また懲戒すべしでないと分かれたり、懲戒の種類が分かれたりする場合はどうしたらいいのでしょうかということでございます。

房村政府参考人 御指摘のように、主たる事務所と従たる事務所がある場合に、その弁護士法人は双方の弁護士会に入ることになります。主たる事務所の弁護士会は当然その事務所全体の活動について監督をし、処分をする権限を有しております。また、従たる事務所の所在地の弁護士会は従たる事務所の活動についてそういう処分をする権限を有している。したがって、場合によりますと、主たる事務所の監督をしているところが従たる事務所と主たる事務所の双方の違反行為について処分を検討する。したがって、従たる事務所の活動も主たる事務所所在地の弁護士会の懲戒の対象として取り上げられる、同時に、従たる事務所の所在地の弁護士会も独自に従たる事務所の所在地の活動を違反として取り上げるという事態が生じ得ます。

 その場合にどうなるかといいますと、これは弁護士会同士で当然連絡をとり合って、例えば双方の矛盾を生じないようにというようなことはもちろん期待されてはおりますが、法律的にはそれぞれ独自に懲戒権を行使し得るということになっております。したがって、その双方の処分が一致すれば問題はないわけでありますが、片方が重い、片方が軽い、あるいは、片方は処分をする、片方は処分をしないという場合も起こり得ます。結果的には、法律上はそれぞれ独立した懲戒処分となされますので、重い方がある意味では適用されるということになります。しかし、双方ともに、それぞれの弁護士会の懲戒処分につきましては、審査請求あるいは異議申し立てによって日本弁護士連合会の最終的な判断にゆだねられておりますので、最終的にはそこで統一された判断が確保されるのではないか、こういうことを期待しております。

西村委員 次に、弁護士法人が除名処分とか解散命令を受けた場合、弁護士法人は不祥事を起こして清算段階に入っていくわけでございますが、清算中の弁護士法人は弁護士業務を行うことができるのか否か。行うことができるとすれば、悪質だから解散を命ぜられた弁護士法人が業務を継続することになりますが、この弊害についてはいかなる対処をもって臨まれておりますか。

房村政府参考人 御指摘のように、除名または解散命令を受けると解散をいたします。そうすると清算手続に入るわけです。ただし、清算結了に至るまでは、清算の目的の範囲内で弁護士法人は存続をするという扱いにしております。そして、現に例えば訴訟事件が係属している場合には、それは現務の結了までの間は清算法人としてできるという形になります。

 したがいまして、もしそのまま従来の弁護士がその業務ができるということになりますと御懸念のような事態が生ずるわけでありますが、それに備えまして、このような場合の清算については裁判所によって清算人が選任される、そしてその弁護士法人が受任していた事件については清算人が現務の結了として職務を行うということで、従前の社員である弁護士がその事件の処理を行うということはないような措置を講じております。そうなりますと、弁護士法人の社員は業務執行権限、代表権限を失うということで弊害が生じないということでございます。

西村委員 次に、社員の資格についてお聞きしますが、弁護士の活動領域の拡大というのは司法制度改革審議会でも取り上げられていることでございます。

 現在の弁護士法三十条二項は、常勤勤務を要する公務員を兼務する場合には、その間弁護士の職務は行ってはならないと規定されているわけでございますが、弁護士法人の社員が常勤公務員を兼務する場合、これは社員をやめなければならないのか。となれば、活動領域拡大の障害にもなってくるわけですが、これについては、弁護士法人を脱退しなければならないのかという点についてはいかがでございますか。

房村政府参考人 御指摘のように、現行法の弁護士法三十条二項では、常時勤務を要する公職を兼ねるときは弁護士の職務を行ってはならないとしております。

 しかし、今回の法案では、そのような常時勤務を要する公務員となったことを弁護士法人の社員の欠格事由としてはおりませんので、脱退をするという必要はございません。

 ただ、その弁護士の活動を行ってはならないという三十条二項はかぶりますので、どこまでの活動ができるかということはその解釈の問題になりますが、脱退は要求しておりません。

西村委員 次に、一人法人については先ほどやられていたように思いますので、競業関係についてお尋ねしますが、条文は「弁護士法人の社員は、他の弁護士法人の社員となつてはならない。」と規定されておりますけれども、どういうわけでこのような規制を加えたのですか。

房村政府参考人 弁護士法人の社員となった場合には、その社員となった弁護士の方は、当然その弁護士法人のために自分の全力を振るって業務を遂行していただくという義務が発生するわけでありますが、これが複数の法人の社員となるということを認めますと、当然、Aという法人とBという法人の社員になりますと、AとBは弁護士法人同士ですから競業関係、いわば競争相手。その双方に社員として入るということは、恒常的に利益相反の状況が生じますし、また、業務の質を低下させる懸念もございます。

 諸外国の例を見ましても、このような複数に入ることを禁止している例も多うございますので、私どもとしては、自分の属する法人のために全力を尽くしていただきたいということで、複数の弁護士法人の社員となることを禁止しております。

 なお、一人法人を許している関係もございまして、仮に複数ということになりますと、一人の弁護士の方が法人格だけ幾つもつくってこれを乱用するという懸念もございますので、その点もあわせ考えまして、このような複数の弁護士法人の社員となってはいけないという規定にいたしました。

西村委員 次に、監査法人や税理士法人とは異なって、弁護士法人の場合は、社員が個人として事件を受任することもできるようでございますけれども、全面的に禁止しなかった理由はいかがなものですか。

房村政府参考人 弁護士の方々の取り扱う業務というのは非常に多岐にわたっておりまして、中には、非常に高度の専門性を要するもので、この人でなければというようなものもございますし、また、依頼者との個人的信頼関係で、どうしてもこの人にお願いしたいというようなこともございます。

 したがって、もちろん法人として受任してそういうことを可能にするために指定社員の制度も設けたわけでございますが、それで必ずしもすべての場合に対応できるとは限りませんので、そういう場合には、本質的に個人として受けてはいけないというのは、法人と利益相反をしてはいけないという法人保護のためでございますので、法人に属する他の社員の賛成を得れば法人に被害を及ぼすおそれはなくなりますので、そういう同意を得た場合には個人として事件を受けることができるという規定にいたしました。

西村委員 指定制度については先ほど触れられていたようですから、取り扱えない事件について二問ほどお尋ねいたします。

 利益相反等の関係で弁護士法人が取り扱うことができない事件、三十条の十七ですけれども、これについて基本的考えをお伺いいたします。

房村政府参考人 御指摘のように、三十条の十七で、事務所として業務を取り扱ってはいけない事件というものがございます。

 これは、基本的に弁護士についてもこのような取り扱ってはいけない事件が定められております。例えば、三十条の十七の一号、「相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件」、一転してその相手となった相手方の事件を受けたのでは、依頼した方からすれば裏切られたという思いを抱きます。これは弁護士についても同じですが、そのような依頼者との利益相反の関係にある場合に取り扱えないということとしております。

 このような規定を置いた目的としては、弁護士法人に依頼をする当事者の利益の擁護、弁護士法人の職務の公正の確保、それから弁護士法人の品位の保持、こういうねらいからこのようなそれぞれの取り扱えない事件を定めたものでございます。

西村委員 取り扱えない事件の反対でございますが、弁護士法人の中で特殊な関係を有する社員が半数に達しなければ法人が取り扱ってもよいとしておるわけですね。事件について特殊な関係、本来は取り扱えない弁護士が社員の半数未満であれば法人としては取り扱っていいのだ、これは基準として甘過ぎるのではないかという疑念もあるわけですが、当局はどう考えておられますか。

房村政府参考人 御指摘の条項は、三十条の十七、五号でございまして、本来個人として取り扱えない事件が、社員についてそういう事件であった場合に、法人そのものではないのですが、そういう社員が本来取り扱えないような事件は法人にも取り扱わせてはいかぬという考え方があります。

 その場合に、極端なのは、一人でもいたら絶対だめだという考え方もありましょうし、あるいは、全社員について生じたらだめだというところまで要求するか、そのどこで線を引くかということだろうと思っております。

 委員御指摘のように、厳しく考えて、社員のうちの一人についてでもこのような取り扱えない事由がある場合には法人としても取り扱ってはいけないというのも一つの考えだとは思っております。

 ただ、余りにこれを厳しくいたしますと、特に社員の数がふえて大規模化する、例えば先ほどのような、アメリカのローファームのように何千人といるときに、その事件をチェックするだけでも大変でございますので、そういう実情。それから、弁護士の少ない地域に仮に法人が行ったときに、そこで一人でもあったらもう扱えないということになってしまうと、依頼者にとっても不都合ではないか。

 そういうことから、業務執行が原則として全社員の過半数によってされるということになっておりますので、過半数を超えるような人がそういう事由のある事件についてはまずいだろう、そういうことで過半数を基準といたしております。

西村委員 これで質問を終えます。ありがとうございました。

保利委員長 次に、木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 弁護士法一部改正法案についての質疑でありますが、その前に、ハンセン病熊本地裁判決について、控訴熟慮期間最終日である二十五日が目前であります。十八日の当委員会での私の質問に続いて、ハンセン病熊本地裁の判決に対して法務大臣として控訴しないように重ねて求めて、幾つかの質問をしたいと思います。

 十一日の判決言い渡しから、きょうで十三日目であります。明後日の二十五日が控訴期限の日でありますが、いまだ法務大臣として控訴手続はとっておりません。政府の態度はいまだに決まっていないとお見受けしております。

 現瞬間での、国の代表者である法務大臣としての、小泉総理や坂口厚生労働大臣及び衆参両院との調整の状況はどんな状況であるのでしょうか、御報告願います。

森山国務大臣 前回法務委員会において申し述べましてから、その後の経過について少し御報告したいと思います。

 いろいろな方の御意見をちょうだいいたしまして、私も大変悩んできたところでございますが、昨日、一度、厚生労働大臣と意見を交換する時間がちょっとございました。それは短い時間でもございましたので不十分でございましたが、重ねて、けさ厚生労働大臣さらに官房長官も入っていただいて意見交換をいたしました。

 なお、朝は時間に追われておりまして十分でもございませんでしたし、またさらに検討をしなければいけないということで、きょうのうちにもまたもう一度協議しましょうということになって、現在のところ、まだ結論は出ておりませんが、おっしゃいますように、日も大変迫っておりまして、非常に私どもも気持ちが切迫したところでございます。

 しかし、さらに総理のお考えも伺わなければいけないということもあり、残念ながら、おっしゃいますとおり、今のところ、これという具体的な結論を申し上げる段階ではございません。

木島委員 さまざまな報道が入り乱れております。

 そこで、改めて調整、協議の中身について立ち入って端的にお聞きをいたします。

 けさ、官房長官も入って厚生労働大臣と調整、意見交換をしたとおっしゃいました。控訴すべきか否かの一点についての質問です。その場で、法務大臣たるあなたはどういう態度を表明されたのですか、また福田官房長官はその問題についてどういう意見だったのですか、また官房長官の意見は総理の意を受けての意見だったのかどうか、あわせお伺いいたします。ついでに、坂口厚生労働大臣の控訴の要否に関する意見はどうだったのか、細かい話じゃないです、その結論部分についての三者のそれぞれの意見がけさの調整段階ではどうだったのか、具体的に御答弁願います。

森山国務大臣 結論だけとおっしゃいまして、それが前提だといたしますと、先ほど申し上げましたように、今この時点で結論を申し上げる段階にはなっておりません。

木島委員 それはいいのですよ。それは聞きましたよ。だから、調整の上結論を出すというわけですから、それぞれ立場があって、意見があったはずです。

 では、まず法務大臣であるあなたは、控訴の要否について、どういう立場でこの調整に臨み、どういう立場を披露したのですか。

森山国務大臣 それは調整の段階の最中でございますので、申し上げることは差し控えたいと存じます。

木島委員 前回も私はそういう法務大臣の態度は逃げだと言いました。法務省としての立場、法務大臣としての立場があるはずです。それは官房長官の意思、場合によっては総理の意思とも違うかもしれない、責任を直接問われた厚生労働大臣の立場とも違うかもしれない、それはいいですよ。しかし、少なくとも法務大臣としての意思があるはずでしょう。ぶつかり合っているのか、どの点でぶつかり合っているのか、明らかにしてほしいのですよ。

 私は前回の質問で、少なくとも国の代表者たる法務大臣は、人権擁護の所管省庁でもあるんだから、この所信のあいさつで二十一世紀を人権の世紀としたいとおっしゃったのだから、少なくとも法務大臣としては控訴しないというかたい決意で調整に臨んでもらいたいというのが私の要望であり、大臣も重く受けとめるという趣旨の答弁もいただいたわけですね。法務大臣としての意思があるはずです。それを述べていただきたいのですよ。

森山国務大臣 けさは、それぞれ検討した経過を、厚生労働大臣、私もその検討した問題点をお互いに交換しまして官房長官に報告したという方が正確ではないかと思いますが、そのような状況でございますので、今先生のおっしゃるような内容について、そのとき、具体的に私からはっきりとしたことを申し上げたわけでもございませんし、今そのことを先生に御報告するということは差し控えさせていただきたいと思います。

木島委員 今の答弁は納得できません。確かに、いろいろ論点はあるでしょう。しかし、すべての論点を取りまとめて、最後の結論は、控訴が否か必要かの一点なんですよ。立場は違うことだってあるかもしらぬですよ。言えるのじゃないのですか。言うべきじゃないのですか。それが少なくとも国会と国民とそしてとりわけ当事者である原告団の皆さんへの誠意というものじゃないでしょうか。どうでしょうか。

森山国務大臣 おっしゃるとおり、私も原告の皆さんにもお目にかかって痛切なお言葉を聞きました。それで、一方において法律的な問題も検討しなければいけない、その両方の間に立たされてといいますか、その両方をともに総合的に考えなければいけない。法務省だけでも非常にいろいろと調整をしなければならないことがございますし、さらに厚生労働省のお立場というものもあり、最終的には、政府の態度というのは総理大臣のお考えによって決定されるべきものと思いますので、大変申しわけございませんけれども、ここで今そのことを申し上げるのは御勘弁いただきたいと存じます。

木島委員 この問題は国会の意思も問われているのですね。衆議院の意思はどうなのか、参議院の意思はどうなのか、そっちの方はどうなっていますか。

森山国務大臣 両院に、それぞれ事務総長を通じまして、どのような御意見であるかということを問い合わせたわけでございますが、参議院の方はお答えを留保されるとおっしゃったと思います、言葉の一言一句は違っているかもしれませんけれども。それから、衆議院の方は御回答はなさらないとおっしゃったのではなかったかと思います。

 いずれも、現在のところ、これという具体的なお返事をちょうだいしておりません。

木島委員 そういう衆参両院の現状について答弁していただければ、それが事実かどうかすぐ検証できるのですよ。今の大臣の答弁は全然違います。

 最新の状況を言いますと、衆議院は、けさ議院運営委員会をやりましたよ。そして、衆議院としての意思をすり合わせて結論を得べく、あしたの午前中の議運まで、与野党各会派、協議を必死になって続けようというのが、きょう今の、現時点での衆議院の議院運営委員会の状況ですよ。回答をやらないなんという態度じゃ断じてないですよ。

 参議院の意思も全然違いますよ。留保されるとおっしゃったと法務大臣はお聞きになっているようでありますが、そうじゃないですよ。参議院の議院運営委員会は、まさにこの時間、各会派が一致した結論が出るかどうか、大変な議論に入っているのですよ、現時点で。そういう状況ですよ。どうしてそんな認識なんですかな。

森山国務大臣 大変申しわけございません。昨日まで聞いておりましたことを申し上げたのでございますが、けさ以来ずっとこの委員会に入っておりましたものですから、ほかの情報に通じませんで、大変失礼いたしました。

木島委員 私も衆議院議員ですから、衆議院のことだけについて質問いたします。

 私は、きょう質問に立つ直前に、議院運営委員会、理事会、理事懇談会に出席している我が党の児玉議員から状況を聞いてきました。あしたの午前中、衆議院議院運営委員会で協議をすると。それまでは結論は出ていないわけです。一致させるべく協議を続けようと。

 それで、大臣に改めて念を押しておきたいんですが、当事者の一員である衆議院としてのまとまった意思が、予断を許しませんけれども、法務大臣の手元に届くまでは、衆議院としての意思を無視して、結論が出ていない段階で控訴してしまう、そういう手続をしてしまったら、私は、法務大臣として、国会の意思を踏みつぶしたということになって許されないと思うんですが、少なくとも、議運での結論が出るまではそういう控訴をなさるなんということはしませんでしょうね。(発言する者あり)雑音に惑わされないで、法務大臣としての答弁を求めます。権限法に基づく答弁を願います。

森山国務大臣 私も、今先生から伺って、いろいろな動きが具体的に行われつつあるということを承知いたしましたので、それぞれの院の動きができるだけ早くまとめていただけるようにというふうに願っております。

木島委員 それぞれの院の動きができるだけ早くまとめていただけるようにと思っているということは、院のまとまった意思が伝えられるまでは軽々な行動はしないということだと、当然論理上そうなりますから、そう受けとめます。

 今、けさのマスコミもそうでありますが、控訴して和解の協議に入るという方向が政府・与党の部内で強まっているという報道がしきりと流されております。しかし、私は、こういう方向自体、それが正しい報道かどうかさっぱりわかりませんが、何重にも許せない態度だと思います。

 第一に、控訴するということは、熊本地裁判決を不服とする、これを否定する、そしてこれを覆したい、覆そうとする立場に立つことを意味するんです。当然です、控訴ということは。

 そこで、私は、法務大臣は、原告らや患者や元患者の皆さんが判決をどのようなものとして受けとめているのか、お考えになっているのかどうかお聞きしたいと思うんです。なぜ原告らは控訴しないでほしいと訴えているのか、叫んでいるのか考えていただきたいと思うんです。

 実は、ハンセン病訴訟全国原告団協議会の曽我野一美会長は、判決言い渡しの日、みずからかみしめるように全国約四千四百人の療養所入所者に呼びかけているという記事が翌五月十二日の毎日新聞に出ておりました。「私たちは人間だったんだ」という言葉であります。

 それから同じ毎日新聞の記事にはこういう報道も出ておりました。「法廷内で判決を聞いた星塚敬愛園(鹿児島県)の玉城シゲさん(82)は「(強制中絶で奪われた)我が子のかたき討ち」との思いで原告になった。」そしてその後にこういう言葉が報道されているんです。「「六十年続いた暗いトンネルに、やっと明かりが見えた」と笑顔で語った。」そうしますと、彼女は二十歳のときに強制収容されたんでしょう。妊娠もしたんでしょう。しかし、強制中絶されたんでしょう。「「六十年続いた暗いトンネルに、やっと明かりが見えた」と笑顔で語った。」と。

 これは一、二の例にすぎませんが、私は、原告らにとっては、この熊本地裁判決というのは、損害賠償請求権の証文ではないと思うんです。この判決というのは、原告らにとっては、まさに人間回復宣言、そういうものじゃないかと思うんですよ。

 原告らが、まさにこの玉城さんがそうでしょう、人間として生きるすべてを奪い尽くされた。奪い尽くした国が控訴することによって、再びこれから、八十なんですから余生短いでしょう、原告らの人間として生きるよりどころを奪うことになるんじゃないか。この判決を否定し、覆そうとするというのが控訴の意味ですから。これは、幾らだれが何を考えようとも、人道上からも許せないんじゃないかと思うんですが、法務大臣、原告らがこの判決をどういう意味を持つものとして受けとめているのか、お考えを聞かせてください。

森山国務大臣 今先生が新聞に出ている記事からおっしゃいましたような感じというのは、私が直接患者さんの代表にお目にかかったときにも同じような言葉をおっしゃっておりまして、本当にそうだろうなとつくづく私は痛感いたしまして、何と言葉で申し上げたらよろしいんでしょうか、本当に胸がつぶれるようなショックを感じたわけでございます。そんなことがあったのかと改めて非常に驚き、ショックを受けたわけでございますけれども、人道的には本当に、考えられないようなことがあったとすれば大変なことだ、おっしゃるとおりだと思います。

 しかし、これを法律のテーブルにのせまして、法律の面から考えなければいけないというのがこれの難しいところでございまして、その両方のはざまに立たされて、大変今悩んでいるのが私の心境でございますので、お察しいただきたいと思います。

木島委員 今大臣から、原告がどういう思いをもってこの判決を受けとめているか、答弁をいただきました。思いは同じだということを実感いたしました。

 今、この判決があった後、全国各地で次々と裁判提起者がふえてきている。この判決を受けた原告は、熊本での判決の原告は百二十七人でありますが、三つの裁判の原告団総数千七百三人でありますが、今次々と新しい訴え提起者がふえているというのも、やはりこの判決を受けて、私は、人間として認めてもらいたい、認めてもらえる、長い人生の上で初めて光明が見えたということに確信を持ってこういう行動に立ち上がってきているんじゃないかと思うんです。もし控訴するとすれば、その思いをみんなつぶしてしまうことになる。それは幾ら何でも許されないんじゃないかと思うんです。

 今、ただ一方、法律のテーブルにのせなきゃいかぬ、それが難しいんだという答弁もありました。巷間報道されている控訴して和解するという話ですが、私は、この問題で、第二に、控訴して和解するというが、そんな保証一体どこにあるんかということを言いたいんです。

 東京での判決、岡山での判決はこれからであります。裁判を起こせない患者、元患者、既に死亡してしまった皆さん、すべてを含む、いわゆる和解をどのような方法でいつやるのか、責任ある提起など、全くマスコミの報道を読んでも出てくるものじゃないのです。そんなこと今の時点でできるものじゃありませんよ。何一つそういう責任ある提起などない。和解などという言葉を現時点で使うということは、原告らと国民をだますまやかしの言葉にすぎないのではないかと私は思わざるを得ませんが、まさか森山法務大臣はそんな立場ではないと信じますが、どうですか。

森山国務大臣 いろいろの報道が憶測を書いておりますけれども、報道に書かれておりますことは、全く私どもが決めたことでもなければ、検討している具体的内容でもございませんで、これから協議し、調整をして結論を出すわけでございますので、新聞の記事はそういうものとしてお考えいただきたいと存じます。

木島委員 それでは、先ほど、法律のテーブルにのせる、そちらが難しいんだとおっしゃいました。まさにそこが法務大臣としての所掌の範囲の分野かもしれません。そこで、具体的にお聞きします。

 かりそめにも控訴しなければならない法律的な問題があると考えているんだとすれば、これは仮です、法務大臣は今そんなことを考えているという答弁はありませんから、それは何か。あるいは、今本当に法務大臣として、ここに判決文を持ってきています、この判決のどこが法律上のテーブルで考えると問題なんだと考えているのか披露してくださいよ。そして私と論争しましょうよ。一つ一つやりたいのですよ、それは。原告は命がけでやっていますから、私は命がけでここで質問しているのですから、どこが問題なのかきちっと言ってくださいよ。ないのなら、問題ないと答弁してくださいよ。

森山国務大臣 具体的な問題点について今ここで申し上げることはできませんし、仮にとおっしゃいますと、仮の話というのはここではお話ししにくいと思います。

木島委員 いや、だから、私も仮の話はしたくないんです。またマスコミが変な報道しますからね。

 だから、法務大臣として現時点で、もうあさってが期限ですよ、法務省の考えを取りまとめているのでしょう。そして大臣としての意思がそれに加わるのでしょう。最終的には、法務大臣森山眞弓という人格でほかの省庁あるいは総理とも折衝するのでしょう。国会サイドとも折衝をこれからするのでしょう。だから、権限法に基づく国の代表者たる法務大臣森山眞弓氏がどういうスタンスでいるのか、やはり言うべきじゃないですか。

 先ほど、法律のテーブルにのせる、それとの比較考量でしょうか、それが難しいんだとおっしゃいましたから、なおさらのことですよ。今、控訴する必要があると考えているのか、控訴してはならぬと考えているのか、どっちにスタンスを置いているのかということはやはり言うべきですよ。

森山国務大臣 大変申しわけございませんけれども、今それを申し上げることは差し控えさせていただきます。まだ本当に決まっていないのでございます。

木島委員 一切答弁しないというのは、あらゆる情報を国民に提供するという、小泉内閣がそういう立場だと、私は全く美化するつもりはありませんが、今の答弁は非常に不誠実だと思います。

 では、一点だけ。こういう論もあるのですね。この判決を確定させてしまうと、これからも国を被告とする裁判が容易に起こされてしまう、国会の責任や行政庁の責任が容易に追及されてしまう、それを避けるために控訴する、そんな論がマスコミを通じても伝えられております。私は、もう時間が迫っておりますから、もうこれこそ行政や政治の勝手な都合で原告らを犠牲にしてはばからない、無法の上塗りの論理だということを言いたいと思うのです。しっかりそういう私の考えを受けとめていただきたい。

 こういう考え方、いろいろ行政が間違った、国会が間違ったときに国民から裁判を起こされたら大変だ、だから控訴するんだという考え方こそが、そういう考え方こそがいわゆる社会防衛という名のもとに、九十年にわたってハンセン病患者を強制収容し、強制隔離し、強制労働をし、断種し、中絶し、世界に全く例のないような、本当にすさまじいばかりの人権侵害を一世紀近くにわたって続けてきた論理だった。だから、そんな論理の延長線上で、これを控訴させてしまったら、国が裁判を起こされるから大変だなんという論理に断じて立ってはならぬと思うのですが、法務大臣の御所見を。

森山国務大臣 新聞に出ておりましたことは、新聞が書かれたことでございますから、私どもと直接何の関係もございませんし、今先生が非常に熱を込めて弁じられました木島先生の御意見は、しっかりと拝聴させていただきました。

木島委員 では、私、最後に質問します。

 権限法によれば、だれが何と言おうと控訴する手続をする当事者は法務大臣である森山眞弓氏であります。それで、これから、きょうもあしたもあさっても、いろいろな紆余曲折があるかもしれません。そこで、法務大臣として、小泉総理が何と言おうと、どんな態度をとろうと、あるいは厚生労働大臣がどんな態度をとろうと、原告らの人間としての尊厳を取り戻すために、人権の回復のために、法務大臣として断固として控訴の判こは押さない、森山眞弓という署名はしない、そういう立場を、二十五日の夜の十二時まで貫き通してほしい。貫き通せば控訴はできないのですから。控訴しようと思ったら、総理大臣は法務大臣を罷免しなきゃ、かりそめにも小泉総理が控訴する意思で、法務大臣たるあなたが控訴しないと頑張れば、あなたの首を切らなければ小泉さんは控訴できないのですから。職を賭して控訴しないという立場で、日本の、そして二十一世紀の人権を守ってもらいたいと思うのですが、そういう覚悟のほどをここで最後に答弁いただきたいのですが、いかがでしょうか。

森山国務大臣 木島先生の御意見はしっかりと拝聴させていただきました。

木島委員 終わります。

保利委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、弁護士法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

保利委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、中間法人法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。森山法務大臣。

    ―――――――――――――

 中間法人法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

森山国務大臣 中間法人法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 現行法上、公益、すなわち、不特定かつ多数の者の利益の実現を目的とする社団または財団は、民法第三十四条の規定に基づき、主務官庁の許可を得て公益法人となることができます。また、営利を目的とする社団は、商法または有限会社法の規定に従い、株式会社、有限会社等の営利法人となることができます。しかし、公益も営利も目的としない中間的な団体については、法人格の取得を可能とする一般的な法制度がなく、その必要性が指摘されてまいりました。

 また、公益法人制度のあり方との関係でも、実質的には公益も営利も目的としない団体が公益法人として法人格を付与されている現状にあるという認識を前提として、そのような現状の改善のために、公益も営利も目的としない団体に法人格を付与するための制度を創設する必要があると指摘されてまいりました。

 そこで、この法律案は、これらの指摘を踏まえ、公益も営利も目的としない団体について、準則主義による法人格の取得を可能とするための一般的な法人制度を新たに設けようとするものであります。

 この法律案の要点は、次のとおりであります。

 第一に、中間法人としての法人格付与の対象とする団体は「社員に共通する利益を図ることを目的とし、かつ、剰余金を社員に分配することを目的としない社団」とし、そのような団体が設立の登記をすることによって法人格を取得することができるものとしております。

 第二に、中間法人の種類については、社員が法人の債権者に対して責任を負わない有限責任中間法人と、社員が法人の債権者に対して責任を負う無限責任中間法人の二つの類型を設けることにしております。

 第三に、中間法人においては、営利法人におけるのと異なり、出資をすることを社員となるための要件とはせず、社員は、法人に対して剰余金の分配を請求する権利等を有しないものとしております。

 第四に、有限責任中間法人においては、社員総会は法定の事項及び定款で定めた事項に限り決議することができ、理事が法人の業務の決定及び執行に当たるものとし、監事が法人の業務を監査することとしております。また、法人に一定の財産的基盤を備えさせるために基金制度を採用し、最低基金総額を三百万円としております。そのほか、設立、社員の地位、管理運営、解散、清算等について所要の規定を設けることとしておりますが、この規定は、第三の点を除いて、おおむね有限会社に準じたものとしております。

 第五に、無限責任中間法人においては、原則として、法人の業務は社員の過半数により決し、各社員が業務の執行に当たるものとしております。そのほか、設立、社員の地位、管理運営、解散、清算等について所要の規定を設けることとしておりますが、その規定は、第三の点を除いて、おおむね合名会社に準じたものとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

保利委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十三分散会




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