衆議院

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第17号 平成13年6月12日(火曜日)

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平成十三年六月十二日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員 

   委員長 保利 耕輔君

   理事 奥谷  通君 理事 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 長勢 甚遠君

   理事 佐々木秀典君 理事 野田 佳彦君

   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君

      荒井 広幸君    小此木八郎君

      太田 誠一君    北村 誠吾君

      熊代 昭彦君    左藤  章君

      佐田玄一郎君    笹川  堯君

      鈴木 恒夫君    棚橋 泰文君

      谷川 和穗君    林 省之介君

      松宮  勲君    山本 明彦君

      吉野 正芳君    渡辺 喜美君

      枝野 幸男君    津川 祥吾君

      日野 市朗君    平岡 秀夫君

      三井 辨雄君    水島 広子君

      山内  功君    山花 郁夫君

      上田  勇君    藤井 裕久君

      木島日出夫君    塩川 鉄也君

      瀬古由起子君    植田 至紀君

      徳田 虎雄君

    …………………………………

   議員           相沢 英之君

   議員           金子 一義君

   議員           長勢 甚遠君

   議員           根本  匠君

   議員           漆原 良夫君

   議員           谷口 隆義君

   議員           小池百合子君

   法務大臣         森山 眞弓君

   法務副大臣        横内 正明君

   法務大臣政務官      中川 義雄君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  乾  文男君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官

   )            渡辺 達郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局東京証

   券取引所監理官)     三國谷勝範君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官

   )            浦西 友義君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官

   )            田口 義明君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委

   員会事務局長)      五味 廣文君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 木村 幸俊君

   参考人

   (経済団体連合会経済法規

   委員会・経済法規専門部会

   長)           西川 元啓君

   参考人

   (早稲田大学法学部教授) 上村 達男君

   参考人

   (専修大学名誉教授)   熊野 剛雄君

   法務委員会専門員     井上 隆久君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十二日

 辞任         補欠選任

  熊代 昭彦君     小此木八郎君

  左藤  章君     北村 誠吾君

  中川 昭一君     林 省之介君

  西田  司君     佐田玄一郎君

  枝野 幸男君     津川 祥吾君

  山花 郁夫君     三井 辨雄君

  不破 哲三君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  小此木八郎君     熊代 昭彦君

  北村 誠吾君     左藤  章君

  佐田玄一郎君     西田  司君

  林 省之介君     中川 昭一君

  津川 祥吾君     枝野 幸男君

  三井 辨雄君     山花 郁夫君

  塩川 鉄也君     瀬古由起子君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬古由起子君     不破 哲三君

    ―――――――――――――

六月十二日

 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 商法等の一部を改正する等の法律案(相沢英之君外六名提出、衆法第二六号)

 商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(相沢英之君外六名提出、衆法第二七号)

 民事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第六九号)




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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 相沢英之君外六名提出、商法等の一部を改正する等の法律案及び商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、経済団体連合会経済法規委員会・経済法規専門部会長西川元啓君、早稲田大学法学部教授上村達男君、専修大学名誉教授熊野剛雄君、以上三名の方々に御出席いただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人におかれましては、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、西川参考人、上村参考人、熊野参考人の順に、各十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、まず西川参考人にお願いいたします。

西川参考人 おはようございます。経団連の経済法規専門部会長を務めております新日本製鉄株式会社常務取締役の西川でございます。

 本日は、商法等の一部を改正する等の法律案につきまして、意見表明の機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。

 経団連を初め経済界では、かねてより、経済のグローバル化、それからIT革命の進展、産業構造の転換、資本市場の拡大など、猛スピードで変化する我が国経済環境の変化に対応して、商法を、我が国産業の国際競争力向上のために、機動的に改正することを強く求めてまいった次第でございます。こうした観点から、今回のように、経済界のニーズをいち早くキャッチされまして、議員立法で迅速な法整備に取り組まれておられる諸先生方に対しまして、まずもって心より敬意と感謝の念を申し上げさせていただきたく思います。

 私は、本法案の商法改正の趣旨に賛同する立場から、経済界にとってのこの改正案の意義、必要性につきまして御説明申し上げたいと存じます。

 まず、私どもがこの法案につきまして一刻も早い成立を期待しておりますポイントは、既にお手元にお配りしてございます資料の一に記載の四点でございます。

 第一に、自己株式の取得及び保有制限の見直し、いわゆる金庫株の解禁でございます。第二に、法定準備金の減少手続の整備でございます。第三に、株式発行手続の簡素化、期間短縮化でございます。そして第四に、一株当たり純資産額基準の撤廃でございます。

 以下、経済界が期待する理由につきまして申し上げます。

 第一に、いわゆる金庫株の解禁についてでございます。資料の二をごらんいただきたいと存じます。

 まず、大競争時代におきまして、企業は競争力の向上を目指し、合併、株式交換など、組織再編を進めております。これら株式を対価といたします企業再編成を行う際には、新株発行方式による割り当てが原則とされておりますけれども、広く金庫株による割り当てが認められることとなりますと、新株発行によって配当負担が増加したり、株式価値が薄まったりすることなく、効率的な企業再編ができるようになるわけでございます。

 次に、株式価値の向上と連動しつつ、働く者の意欲を高める上で極めて有効なストックオプションに金庫株を活用できるようになれば、一層機動的にストックオプションを実施することができるようになると期待されます。

 また、敵対的買収に対する防衛の観点からも金庫株は有効でございます。大株主や提携先が何らかの理由で株式を手放すこととなった場合などに、この株式を一時的に会社が取得することが認められれば、企業の解体をねらう敵対的買収を防ぎ、雇用を含め、企業をゴーイングコンサーンとして維持することができるわけでございます。

 さらに、金庫株は、持ち合い株式解消の受け皿として株式市場の安定化に資するとともに、今後、年金制度の整備とともに、企業年金への拠出、運用につながることが期待されます。

 このように効用の大きな金庫株でございますけれども、その取得には、法案によりますと、定時株主総会の決議が必要でございます。ことし六月の株主総会にはもう間に合いませんけれども、全国証券取引所上場会社二千四百五十社のうち、十二月総会の会社は三十一社、一月総会の会社は十九社、二月総会の会社は四十七社、そして三月総会の会社は実に百五十九社もございます。一刻も早い本法案の成立、施行が望まれる次第でございます。

 第二に期待するポイントは、法定準備金の減少手続の整備でございます。資料の三をごらんください。

 資本準備金と利益準備金、すなわち法定準備金は、積み立てることはございましても、資本組み入れや欠損てん補以外には全く利用できない制度となっておりました。

 その結果、上場企業には、一九九九年時点で、約五十一兆円の資本金に対しまして約五十五兆円の法定準備金が積み立てられているわけでございます。九八年三月からは、時限立法で自己株式消却特例法の改正法が施行され、資本準備金に限りましては、自己株式の消却目的であれば、これを取り崩すことが可能となりました。

 さらに、昨年、この制度を延長したときに、資本準備金制度の趣旨及び社会経済情勢の変化等を考慮して、具体策を検討し、必要な措置をとることとの趣旨の附帯決議がなされております。

 今回の法案では、これを踏まえまして、法定準備金の使途の自由度を高め、これを、株主総会決議と債権者保護手続を踏むことにより、自己株取得に加え、配当などで株主に還元するために利用することができるようになります。また、資本の部をスリム化してROEを向上させることができるわけでございます。

 第三に期待いたしますポイントは、資料の四にありますように、株式発行手続の簡素化でございます。

 会社は、新株発行の際に、払込期日の二週間前に、新株の種類、数、発行価額、払込期日、募集の方法を公告し、あるいは株主に通知することが必要とされております。

 現行制度ですと、取締役会で発行数などを決めた後、証券取引法に従って有価証券届け出書を提出して、証券取引法上の手続を進め、その後、改めて取締役会を開いて発行価額を決めて、商法に基づく公告または通知を行うといった手続が必要でございました。

 今回の法案によりますと、取締役会決議及び商法上の公告または通知に際しましては、公正な価額で発行する場合については、発行価額はその決定の方法を示せばよいものとして、したがって、新株発行に係る取締役会は一回でよいこととされております。

 これによりまして、新株発行の手続が簡素化され、発行に要する日にちが短縮されまして、企業にとっては機動的な資金調達が可能となります。また、株主にとりましては、この公告の期間中に株価変動リスクにさらされるということがない、こういう利点があるわけでございます。極めて合理的でございまして、きめ細かい配慮がなされた案であると受けとめております。

 第四に期待するポイントは、資料の五にあります一株当たり純資産額規制の撤廃でございます。

 現行法では、株式分割に際しまして、投資単位を過度に零細化させないとの趣旨から、分割後の一株当たりの純資産額は五万円を下ることはできないとの定めがございます。そこで、例えば、急成長を遂げた純資産の少ないベンチャー企業などでは株価が高どまりし、流動性を持たせるため、株式分割によって投資単位を引き下げよう、こう試みましても、分割できる範囲に限界があるとの指摘がなされております。会社によりましては、一たん無額面株式に転換した上、一株一円で株主割り当て増資を行って株式数をふやして対応する、こういう苦労をしておったわけでございます。

 今回の改正案は、こうした制限を取り払うことによりまして、個人投資家を株式市場に呼び込むことを容易にして、株式市場の活性化に資することが期待されております。

 また、この資料には記載しておりませんけれども、今回、単位株制度を廃止して、あわせて手当てされることとなっております単元株制度の創設につきましても、一単元当たりの純資産額規制がないこと、また、取締役会決議で一単元の株式数を引き下げることができることとなりますことから、機動的に、投資家が投資しやすい単位で株式を市場で流通させる設計が可能となり、株式市場の一層の活性化が期待されることとなります。

 さらに、単元未満の株式につきましても名義書きかえが可能となります。現在、単位未満株式の場合には名義書きかえができませんけれども、単元未満の株式については名義書きかえが可能となるということでございます。このことは、発行会社にとりましては株式事務コストが増加するということがございますけれども、株式の流通促進に効果があるものと考えております。

 さて、これらの制度につきましては、早く施行すればするほど、経済の活性化、株式市場の活性化に効果があると考えます。資料の六をごらんいただきたいと思います。

 中でも、法定準備金を、来年六月の定時株主総会で配当原資に充てたり、この総会日以降に子会社が有している自己株式を取得する財源として活用しようとする企業にとりましては、来年三月末までに臨時株主総会を開催して、法定準備金を任意準備金に移しかえる決議を行う必要がございます。また、先ほど申し上げましたように、十二月や三月に総会を開催する企業も多くございます。そうした企業に制度の活用の道を開く意味で、この法案の施行は何とぞことしの秋としていただき、こうしたスケジュールに間に合うような御配慮をお願いできればと存じる次第でございます。

 なお、金庫株を導入するに当たっての問題を指摘されていた点が三点ございました。資料の七をごらんください。

 第一に、会社財産の確保のために要求される資本充実の原則に反するのではないかとの点でございますけれども、これにつきまして、法案は、定時株主総会決議で当年度に取得できる自己株式の取得範囲を配当可能利益及び減少手続がとられる法定準備金に制限することによって対応されております。ちなみに、今回の法案では、購入した自己株式を資産としては計上しないこととなっておりますので、自己株式を購入して見せかけの資産をふやすということはできないこととされており、こうした点でも配慮が行き届いていると感じております。

 第二に、株式取引の公正の観点から、会社自身による相場操縦や会社関係者によるインサイダー取引の懸念をどう払拭するかという点でございますけれども、これにつきましては、証券取引法で、ディスクロージャーの強化を含め、所要の規定を設けることとされております。

 第三に、一部の株主から株式を買い付けると株主間に機会の不平等をもたらすおそれがあるのではないかという点でございますが、これにつきましても、市場取引または公開買い付けとし、相対取得の場合には、株主総会の特別決議を要求するとともに、他の株主にも売り主になる機会を与えるといった取得方法の規制をかけることにより対応されておられます。

 こうした対応がとられることによりまして、金庫株解禁についての懸念は払拭されるものと考えております。

 なお、実務上は、今回の改正法制の活用に当たって幾つか改善をお願いしたい点もございますけれども、これらにつきましては、本法案成立後、所要の手当てが講じられることを望んでおります。

 また、商法改正に加えまして、株式市場の活性化のための税制改革でありますとか、米国でありますいわゆるESOPの導入等につきまして御検討を深めていただきたくお願い申し上げます。

 経済界といたしましては、この法案が成立、施行された暁には、拡大された経営の選択肢を適切に有効に行使して、企業の国際競争力を向上させるとともに、株主への還元に努めてまいる所存でございます。また、本法案に盛り込まれた措置にこれら施策が相まって、多くの個人投資家の参入による株式市場の活性化を期待するところでございます。

 本法案の一刻も早い成立、施行を重ねてお願い申し上げまして、私の説明を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

保利委員長 ありがとうございました。

 次に、上村参考人にお願いいたします。

上村参考人 御紹介いただきました早稲田大学の上村でございます。

 本日は、このような権威ある委員会におきまして商法等の一部を改正する等の法律案について所見を述べさせていただく機会を得ましたこと、まことに光栄に存じております。

 文章にしてまいりましたので、これを、ちょっと早口かもしれませんが、読み上げさせていただきます。

 とりわけ、本法案は議員立法の形をとっておりますためにパブリックコメントがなされておらず、参考人意見の比重は結果的にかなり大きくなっていると思われますので、責任の重さを痛感しているところでございます。

 初めに、いささか迂遠ではございますが、現時点で日本の企業法制を評価する視点とでもいうべき事柄について、若干の私見を述べさせていただきます。

 そもそも、株式会社制度を他の会社制度と区別する最大の特徴は、それが証券市場を活用する仕組みである点にあります。そこでは公正な証券市場が存在し、そこでの開示、会計、監査を支える会社法ガバナンスシステムが充実し、他方で、そうした公正な証券市場の存在が会社経営を正しい方向に導くという関係が存在し、あるいはそのことが目標とされているのでございます。十分な情報が投資家、マーケットに対して提供され、マーケットによって国民に開かれた株式会社が経営の評価をマーケットに問いかけ、マーケットの信認を受けながら経営者の創意が発揮される、そうしたシステムこそが株式会社制度本来の姿であり、欧米諸国が数百年の時間をかけて確立させてきた制度でございます。

 まさしく株式会社制度は、証券市場という流動的で不安定な存在を有していても立派に運営し得るシステムを時間をかけて構築してきたのであり、一筋縄ではいかないノウハウの積み重ねによって運営可能な制度でございます。こうした点で失敗の経験を豊富に積み重ねてきた英米において現在でも日々制度の見直しを行い続けているのは、こうした公開株式会社制度というものの扱いの難しさを熟知しているためであります。

 こうした観点から日本の状況を振り返ってみますと、戦後日本の企業社会は、資金調達を銀行借り入れ中心の間接金融にゆだね、金融は大蔵省中心の護送船団方式、企業の意思決定も通産省主導の産業政策が優先されてきており、まさに証券市場を使わない、あるいは使えない企業社会、換言すると株式会社制度の本来的な仕組みを活用しない企業社会であったと思われます。要するに、株式会社の何たるやを知らない企業社会だったと言っても過言ではないのであります。

 ところが、現在の日本は、一方で金融システム改革を断行しつつ、他方で公開株式会社法制を確立しようとしており、まさに本物の株式会社を知り、その運営のためのノウハウをいち早く身につけるべき段階にありますので、従来の発想、慣行の一切を見直し、まさに欧米が時間をかけて獲得してきた知恵やノウハウを短時間で習得しなければならない状況にあるように思います。

 昭和二十五年の会社法改正は、まさしく財閥解体、持ち株放出、独禁法制定、証券民主化、証券取引法制定、株式会社法改正という理念、すなわち証券市場を活用するアメリカ型システムを志向したのでございますが、何と申しましても、証券市場どころではない状況でございましたため、そうした理念は定着せず、その後は、先ほど申しましたような非株式会社法的システムで賄ってきたのであります。

 それから四半世紀後、今から二十五年ほど前に時価発行増資等が流行し、証券市場を活用するとの理念が高らかにうたわれましたが、証券市場改革を伴わない未熟な証券市場を前提とした市場メカニズムの強調でしかなかったため、証券市場の利用とは名ばかりであり、かえってこの時期を契機として、持ち合いの進行、バブルの形成、大量の国債発行といった弊害が生じ、今日のさまざまな困難の原因となっております。

 現在は、いよいよ本物の証券市場を構築しながら、本物のコーポレートガバナンスを導入し、まさしく本物の株式会社の時代に突入しつつあるわけでございます。その意味におきまして、現在の商法改正課題は、単なる従来の改正の延長ではなく、まさしく昭和二十五年改正の理念を定着させるべき改正であり、二十五年改正と直結する五十年ぶりの改正なのであります。

 ところで、本法案の主たるテーマであります自己株式の取得、とりわけ金庫株問題は、まさに各国の法的総合力と申しますか、法的なパワーの真価が問われる格好のテーマでございます。

 日本で自己株式の取得が禁止されてきた理由には幾つかございますが、一つ一つの理由は決定的なものではなく、そうした弊害が多く存在する状況に日本の制度が耐えられないと評価されてきたのが主たる理由であります。自己株式の取得は、第一に証券市場における不正行為の温床となりやすく、第二に経営支配をゆがめる要因となりやすいため、いわば警戒信号ないし赤信号が点滅する状態にあり、そうした状況に対して十分な制度的対応が用意され、いわば制度に太鼓判を押し得る場合に、一定の条件のもとでようやく認められるべきものであります。

 まさに、証券市場が信頼に値するシステムを備え、かつ株式会社におけるガバナンスシステムが充実した経営牽制制度を有し、その意味において企業法制に関する法的総合力が高まることを前提に、具体的な制度が一定の抑制のきいたものになっていることで、金庫株は利用可能な制度となるのであります。

 会社制度の運用に経験豊富な欧州においていまだ制限的な法制が堅持されていること、証券市場の発達したアメリカにおいて、厳格な市場規制と相まって金庫株に対して比較的緩やかな対応がなされてきたことは、この間の事情を物語るものであります。

 特に、近時のアメリカにあっては、金庫株という言葉が廃止され、単なる株式の授権未発行枠としか見ない傾向が強く、この場合、株式の消却と金庫株はほぼ同義であり、株式を有していても将来における紙の節約以上の意味はなく、不完全な市場を前提としない限り、株価引き上げ効果が伴うとの証明はなされていないように思われます。

 そこで、企業法制の総合力の問題をひとまずおいて、本法案の具体的な整合性について所見を述べさせていただきますと、評価されるべき点といたしましては、従来、日本の自己株式取得規制が制限的とは言われてきたものの、現実には、例外とされる取得事由に該当しさえすれば、まさに野方図とも言える形で自己株式が扱われてきた状況が改善されたことを挙げることができると思われます。

 ストックオプション目的であれば十年間自己株式を持ち続け、あるいは他の目的で取得された場合でも、処分の時期が明示されていないためにいつまでも保有し続けることが可能であり、しかもそれらすべてが流動資産として資産計上され、かつ処分時の規制が全く存在していなかった従来のあり方が、処分時の規制として新株発行規制と同等の規制が導入され、会計上の処理も資本の控除項目とされる予定でありますので、この点は大きな改善として評価できるように思われます。

 また、証券取引法上の対応としましては、インサイダー取引規制の対象とし、相場操縦規制についてセーフ・ハーバー・ルールが導入され、また自己株式保有状況の開示制度が三カ月に一度から一カ月に一度になることも一応の一貫性が存在するように思われます。

 いささか懸念される点といたしましては、保有数量規制が存在しない点を挙げることができるかと思います。

 確かに、法案には財源規制と取締役の責任規定が用意されておりますので一定の規律が存在しておりますが、欧州各国では、一定の数量を超えた場合にはその超過分を無効にする、すなわち当然に消却しなければならないとしている例が多く、もともと金庫株が実質的には減資に等しいものであるとするならば、財源規制に加えて数量規制を課することにも合理性があるように思われます。

 数量規制が存在しないことの背景としましては、現在意見照会中の商法の一部を改正する法律案要綱中間試案において新株発行型ストックオプションの数量規制を外そうとしていることとの均衡があるように思われますが、私は、日本のストックオプション制度それ自体にかなり疑問を抱いておりますので、中間試案で意見照会中の問題を先取りすることには若干の懸念を覚える次第であります。

 以上のように、金庫株問題を個別問題として評価いたしますと、法案には若干の懸念は存在いたしますが、一定の合理性は備えているように思われます。しかし、問題は、日本の企業法制をトータルに見た場合の総合力に対する評価にあるように思われます。

 その第一は、日本の証券市場法制ないし金融システム改革の現状に対する評価であります。

 法案は、証券市場に関する問題についても一定の対応がなされることを前提にしておりますが、相場操縦に関するセーフ・ハーバー・ルールとは、本来は、荒海のような厳格な相場操縦規制から免れるための安全港、すなわちセーフハーバーを求めるルールでありますので、日本のように瀬戸内海でセーフ・ハーバー・ルールをつくりましてもその意味は乏しく、問われるべきは証券市場規制における不公正取引規制自体の実効性にあります。

 また、インサイダー取引規制にしましても、バブル崩壊直前の昭和六十三年に極めてのんびりした発想でつくられたインサイダー取引規制のあり方を根本から見直し、真に実効性のあるルールを新たに構築することこそが必要であります。

 私見によりますと、金融システム改革は完全に一とんざしており、金融サービス法論議も、英国の二〇〇〇年金融サービス市場法に学ぶという議論はどこからも出ておらず、とりわけ相対型の不公正取引規制はないに等しく、現状は、率直に申しまして、新しいことをやると不祥事になりやすいシステムと評しても過言でないように思われます。日本では、欧米の規律面の充実については紹介されることすら少なく、かなり偏った世論形成がなされているように日ごろより痛感しているところでございます。

 株の単位に関する法案も、商法改正という見地からは合理的と評することができますが、純資産価値から見た株価という投資指標の重要性には変わりがありませんので、証券市場での規律が一層重視されているところであります。

 第二は、経営牽制制度の現状であります。

 日本の経営機構のあり方につきましては、現在、中間試案が意見照会の最中でございます。私見によりますと、この提案自体が欧米の水準の最も緩やかな部分をつなぎ合わせたものとなっているように思われますが、経済界はそうした最小限の改善提案にすら反対の態度を示しており、金庫株の導入を強く主張する立場にふさわしいガバナンス面での強化に熱心であるか、若干の疑問がないではありません。

 西川参考人のお隣で恐縮でございますけれども、とりわけ経団連の見解には、運営機構の問題につき、会社自治の問題であるとか経営手法の問題であるといった言葉が使われておりますが、コーポレートガバナンス問題の中心は、株主総会の無機能化に対応する経営牽制制度の構築にあることは世界の常識でありますので、これを経営手法の問題と言われる現状には危惧の念を禁じ得ません。

 さきに述べましたように、とりわけ日本にありましては、約二十五年ほど前の未熟な資本市場を前提に時価発行増資がもてはやされた時代に、資産価値の過度な増大と持ち合いが進行しましたため、実は、日本の大企業の経営権の根拠は世界一薄弱であります。持ち合いは、グループ内で株式を発行し合うほどに議決権がふえるシステムであり、実質的な出資がなくても支配権が強化されるシステムでございますので、いわば出資なき支配が容易に成立しております。

 もとより、こうした過去の現象は大きな経済発展を伴っていたのでありますから、これを一概に否定すればよいというものではありません。しかし、日本の経済界は、本物の株式会社を知らない時代の経験や感覚を振り回して軽々に将来の企業社会のあり方を論ずるべきではなく、また、経営権の根拠の極めて薄いことに配慮して、最も謙虚に多くの意見に耳を傾ける姿勢を有しなければならないのであります。

 資本市場規制が未発達で、コーポレートガバナンスの充実もこれからであり、かつ経営権の根拠が持ち合いによって薄弱な日本の経済界は、世界的に見ても比較的厳格なガバナンスシステムをみずから受け入れ、全力疾走し得るに足りる金融システム改革の規律面での充実強化を率先して主張すべきであります。

 私は、これだけ経営牽制が働かない日本で比較的スムーズな経済発展が実現してきたのは、経営牽制が働かなくても、経営者が少ない経営報酬を当然としてきたことにあるように思われてなりません。経営者のモラルが制度の欠陥を補ってきたように思われます。しかし、今日、不十分な市場規制のもとで安易な業績対応型報酬の強調がなされるようになり、まさしく証券市場規制の充実強化と規律あるガバナンスシステムが用意されることなしに企業社会の運営は不可能になりつつあります。

 以上、本法案につきまして、いささかの疑念は存在するものの、一定の整合性が図られていると思っておりますけれども、この制度に株価引き上げの効果を期待することにつきましては疑問がございます。また、この制度がもくろみどおりに機能するためには、企業社会を律する法制の実力が全体として底上げされていなければならず、その点に疑念を感じざるを得ません。

 経済界に対しましては、僣越でございますが、興銀事件第一審判決に見られるような、取締役に対する株主によるガバナンスの完全否定という状況に対しても法改正の緊急性を主張するようになって初めてその主張に対して信頼性が生ずること、規律面の緊急性には沈黙を守り、規制緩和面の緊急性だけを強調するのでは責任ある企業法制は実現しないことを繰り返し強調しなければならないと考えます。したがいまして、議員立法のあり方といたしましても、今後ともそうした視点に十分配慮していただきますよう、心よりお願い申し上げる次第でございます。

 以上をもちまして、私の意見とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

保利委員長 ありがとうございました。

 次に、熊野参考人にお願いいたします。

熊野参考人 ただいま御紹介いただきました熊野でございます。

 お手元に配付されておると思いますけれども、レジュメをつくっておきましたので、一応それに従いまして意見を申し述べさせていただきます。

 レジュメの最初にお断りしてございますように、私は法律の専門家ではございません。私の専攻は、金融及び証券市場の研究者でございます。したがいまして、法案の法律的に微細な点につきましては、私は何も申し上げる資格はございません。ただ、以前同じ大学の同僚でもございました上村教授がただいま詳細な意見をお述べになっておられますので、私は、金融市場、証券市場において今回の法案がどのような影響を及ぼすであろうかという点に限定して、お話をさせていただきたいと思います。

 なお、私の個人の見解におきましては、金庫株に関する条項以外の点につきましては、私の立場はニュートラルでございます。それは私が法律の専門家ではないという点にも関係いたしまして、金庫株に関する条項以外は意見を述べるのを差し控えさせていただきます。

 配付資料の前段階、ナンバーの二のところは単に形式的な、いわば法律論、原則論を述べておるだけでございまして、証券、株式というものは資本の調達の目的を持って発行されるものでございますから、それは本来、株式の本質と矛盾するものでありまして、それは消却その他特殊のケースに限定されるべきものであろう、そういうふうに考えております。今回の改正案は、買い入れ目的の制限を撤廃し保有を自由に認める、保有期間の制限も撤廃するというようなことでございますから、原則からの違背は一層際立っているというふうに考えざるを得ません。

 そのbは、先ほどから申し上げておりますように、法律の専門家ではない私の守備範囲外でございますけれども、単に金融・証券市場の研究者の立場から見ますと、株式を市場から吸収するというのは本来は減資、そして市場に供給するときには増資の手続によるべきものであろうと考えられるわけでございますけれども、それの抜け道を設けるものでございます。

 これに類するものとしましては、戦前の我が国の商法の分割払い込み制度、それから、戦後アメリカ法を導入して設けられたと理解しております授権資本制度と多少似た点もございますけれども、これはそれなりの合理性があると思いますけれども、この金庫株に関しましては、会社の経営者、取締役会に大変なフリーハンドを与えるものでありまして、これは、そこに書いておりますように、いろいろな厳重な制限を設けるべきであろうというふうに考えております。

 金融・証券市場の研究者の立場から、一番私が問題といたしますものは、我が国の証券市場における証券の保有構造からの見地でございます。

 今回の金庫株の制度が持ち出された最大の原因は、最近の株価の低迷をいかに救済しようかという点にあろうかと存じます。市場から、会社の恣意的な意思によって自由に株式を吸収し、そして今度は会社の都合によってまたそれを放出する。減資、増資の手段でなくて、会社が買い取り、そしてまたそれを売却するということは、会社の経営者、取締役会の大変な恣意によって株式の需要、供給に影響を与え、そうしてそれが株価の形成に大変な影響を与えるというところが一番問題とすべきではないかと思うわけでございます。

 法律家の立場からいいますといろいろの見解があると思いますけれども、大変大まかではございますが、金融市場、証券市場の研究者の立場から見ますと、株価の形成に最も大きな影響を与えるものは言うまでもなく需要と供給でございまして、それを会社が自由に行うということは、これはすなわち広い意味における株価操縦そのものではないだろうかというふうに私は感じるわけでございます。

 いろいろな見方があるわけでございますけれども、戦後、我が国の証券市場に大変大きな影響を与えたものは、株式の保有構造であろうかと思います。

 我が国の株式の保有構造というのは、戦前は、代表的な会社というのは財閥会社でございまして、財閥の内部で閉鎖的に株式が保有されておったわけでございます。それが第二次大戦後、財閥が解体され、財閥の閉鎖的な持ち株というのが開放されたわけでございまして、そうして、それは昭和二十年代には大変大衆的な保有構造という形になっておったわけでございますが、それから数十年たちまして、極端な法人保有という構造になったわけでございます。

 すなわち、これがいわゆる持ち合いという構造でございまして、その持ち合いというものは、企業金融上、全く資本の充実になっていないではないかというふうな非難がされておるわけでございますけれども、そのあたりのことはさておきまして、発行株式のほぼ七〇%以上が法人の所有になっておりまして、個人の所有というものは二五%ぐらいにしかなっておらないというような状況が一時形成されたわけでございます。

 個人の保有というものは、仮に二〇%、三〇%といたしましても、そのすべてが市場に出回るものではなく、そのごく一部でございます。こういうことが、我が国の市場の大変な投機的な性格というものを形づくってしまったというふうに私は理解いたしております。

 それをいかに正常化するかというのが、我が国の証券市場の正常な発展に最も必要なところでございますけれども、現在の株式市場の状況を見ますと、大変に株価が低迷いたしておりますが、それが正常化される一つのプロセスではないかというふうに私は理解しております。

 最近、株価が低迷しておりますが、それは一般に言われておりますように、持ち合いの解消売りというものが大きなファクターであるというふうに考えておりまして、問題の本質は、持ち合いの解消売りをいかに円滑に、そして大衆的な保有構造の中に吸収していくか、そういうところが一番必要ではないかと私は考えるわけでございます。それをまたまた、法人所有の一つの変形であろうと思いますけれども、金庫株という形で各発行会社に自由に吸収させるということは、これは大変な逆コースでございまして、証券市場の発展にまたまた大変有害な影響を与えるのではないかというふうに私は憂慮いたしております。

 なお、特に法人所有の中で最も問題とすべきは銀行の株式保有でございまして、戦後アメリカから、アメリカの一九三三年銀行法、三三年証券法、三四年証券取引所法その他が導入されて、我が国の戦後の証券市場規制が行われたわけでございますけれども、その中で最も重要なものは、銀行の株式保有の禁止でございます。

 先般、我が国におきましても、金融制度の改革によりまして、銀行の証券業務というのが許されたわけでございまして、それは、アメリカにおきましても、だんだんと銀行の業務は自由化されております。しかしながら、注目すべきは、アメリカにおきましても、本来、銀行の株式保有というのは厳重に制限されておりまして、これは、第二次大戦前も戦後も、つまり、アメリカの一九三三年銀行法制定以来、全く変わっておらない。現在におきましても、アメリカにおきましては、銀行の株式保有は厳重に制限されております。

 私は、今まで数多くの著書、論文におきまして、銀行の株式保有というのは厳重に規制すべきであるというふうに主張してまいりましたが、戦後、その点におきましては、全く手がつけられておりません。銀行の株式保有というものがいかに銀行の経営をゆがめ、証券市場をゆがめておるかということは非常に明らかでございまして、本来、銀行の株式保有が合衆国におけるように厳重に制限されておりますならば、現在のような困った状態というのは招来されなかったであろうと私は思っております。

 しかも、銀行はかつて大変な含み益を持っておりましたので、その含み益を、益出しという方法によりまして利益を出しまして、これが、不良資産、つまり不動産担保貸しによる不良資産、貸し出しの焦げつきの処理というものをおくらせた最も重要な原因であろうと思っております。

 このように、銀行の株式保有というのは大きな弊害を持っておるわけでございまして、そのあたりのことに手をつけることなく、そしてここに至って、またまた、法人所有の一つの変形であります金庫株というものを、ヨーロッパ、アメリカに比べましても大変ルーズに採用されるということは、私は賛成いたしかねるのでございます。

 レジュメの第四に書いておきましたけれども、現在の株価の絶対水準というのは大変低くなったわけでございますが、これは、一時大変高過ぎたから、それに比べて低くなっただけのことでございまして、現在、絶対水準が低いのかというと、必ずしもそうではない。四けたの株価が幾らでもございますし、三けたの株価も大変多いわけでございまして、時々二けたの株もございますけれども、二けたの株、しかも額面割れというのは、これは当然ずっと以前からそうなってしかるべきものがやっと最近そうなったというだけでございまして、決して現在の株価水準が低過ぎるとは必ずしも言えない。

 では、何に比べて低過ぎるかといいますと、これは、法人の保有、法人の資産状況に比較して低過ぎるだけでございまして、つまり、株価の絶対水準からいって低いというのではなくて、これ以上安くなると、銀行の資産上、大変悪影響を及ぼす、こういうだけのことでございます。すなわち、これも、銀行の株式保有というものがほかのものに大変強い影響を及ぼして、我が国のいろいろな経済運営あるいは法制に対しても大きな影響を与えるというようなことでございます。

 したがいまして、将来は株式の法人所有を厳重に規制すると同時に、現在進められておりますこのような金庫株その他の制度というものの将来の運用について、私は大変懸念するものでございます。

 なぜならば、かつて証券市場から株式を吸収したことがございまして、それは、昭和四十年に、銀行の保有株式に対して日本共同証券、それから証券会社の投資信託の保有株式に対して日本証券保有組合、こういう二つの棚上げ機関が結成されたわけでございますけれども、それは、昭和四十年代の株式市場の回復に伴いまして、全部、再び法人所有の方にまた逆戻りしたわけでございます。

 今回の措置が棚上げの効果を持つものとするならば、それがまた、昭和四十年代の日本証券保有組合あるいは日本共同証券の棚上げ株が再び法人のもとに逆戻りいたしまして、そして我が国の大変ゆがんだ株式保有構造を一層強化するものとなった、それと同じようなことにならないような措置を講ずべきであろうと思うわけでございますけれども、現在、今回の改正に対してそういうことが全く論議されておらないということは、我が国の証券・金融制度のゆがみを是正しなければならないという立場からいたしまして、私は大変憂慮するものでございます。

 なおいろいろ申し上げたいこともございますが、時間が参りましたので、これで私の意見を終わらせていただきます。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

保利委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田村憲久君。

田村委員 自由民主党の田村でございます。

 それでは、お三方に御質問をさせていただきたいと思います。

 ただいま参考人の先生方から大変参考になる御意見を聴取させていただきました。今回の商法改正案のメリット、そしてまた心配点等々、それぞれの先生方からお話を賜ったわけでありますけれども、まずは西川参考人に御質問をさせていただきます。

 今幾つか、今回の、特に金庫株解禁に対して、企業側としてはメリットがあるというお話がございました。もちろん、今までも自己株式の取得というものは、例えば自己株消却であるとかストックオプション等々認められておったわけでありますけれども、今回さらに自由度が増して、ある意味では財務計画の自由度が広がったといいますか、そんな形になるのであろうと思います。

 最も大きなメリット、今お話のあった中でも、この点が経済界にとっては大変役に立つんだよという部分がございますれば、お教えください。

西川参考人 お答え申し上げます。

 今の田村先生の御質問を自分なりに解釈いたしまして、今、現状、株式の消却のために取得できるだろう、ストックオプションのために取得できるではないか、金庫株を解禁することによって本当にメリットがあるのか、じゃ、どの辺なのかという御質問だと理解申し上げます。

 この問題につきましては、私ども経済界からいたしますと、今熊野参考人等からいろいろ御意見がございましたけれども、そもそも、今の消却取得、消却の場合は消却しなければいけない、それを新たに市場に出すということはできない。一方、金庫株なるものが認められますと、保有をしておいて、後は新株発行手続をとることなく市場で売れるような制度、こういうものがありますと、極めて企業の財務にいい影響を与えるだろう、こういうふうなことでひとつ主張してきたこともあるわけでございますけれども、しかし、その点については、金庫株の取得が認められるけれども、これを処分するときには、市場等で処分するということはできない、あくまでも増資の手続をとれということで、弊害の規制がなされているわけであります。

 こういう観点から考えますと、経済界から要望しております、金庫株の保有による財務に与える自由度といいますか、それについてはなくなっている、こう申し上げなければなりません。しかし、それは金庫株の解禁に伴う所要の措置だということで理解を申し上げております。

 では、本当のメリットは何かということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、企業の再編のときに、新株を発行するのではなくて、既に取得してある金庫株を使うことによって、発行済み株式総数を上げることがない、配当負担がふえない、そういう中で機動的な再編成ができるということが一番大きなメリットでございます。

 今後、商法改正の中間試案の中で、ストックオプション等についてのより拡充の議論がなされておりますけれども、それにつきましても金庫株を使用することができれば非常にありがたい話だ。それから、ESOP等の制度ができればそれに使っていけるというふうなことでございますので、年金の運用に当たりましても非常にいい効果を与えるだろうということがございます。

 最後に申し上げたいのは、先ほど、株券のコストだけだろうという上村参考人のお話がございました。なるほど、一たん消却をして、それから新株を発行するということになりますと、株券の発行コストでありますとか、印紙税でありますとか登録免許税、こういうものが節約できるということがあります。

 それ以上に、私どもは、今の発行済み株式総数は適正であるというふうに考えている中で、だけれども今の株価は極めて低い。これは、アナウンスメント効果からして、株主に対しても今の株価は低いんだということを意思表示をするために買いたい。だけれども、消却ということになりますと、今の発行済み株式総数を適正なるものと考えている経営者にとっては、これはできない。そういう中で、金庫株として持たせていただければ、今の発行済み株式総数は正しいということを考えながら、株価が異常に低くなったときにそれを取得できるという効果、こういう心理的な面が極めて大きい。

 株価が経営者の意図に反して暴落するというようなときでありますと、消却目的ではなかなか発動できないけれども、金庫株だということでありますと機動的な買いを入れることができるというふうに思うものですから、株価の変動リスクに対して金庫株を採用することによって、異常時が発生したとき適切に対処できるものだ、こういうふうに考えております。

 以上、御説明申し上げました。

田村委員 株価の安定にも非常に資するというような今お話をいただいたと思います。

 一方で、心配事ということであるんですけれども、要は、今回、取得に当たっての原資といいますか、配当可能利益及び法定準備金の取り崩しができる、もちろん、債権者の保護手続をする話でありますが、そういうことになりました。これは、ある意味ではみずからのしっぽを食べているようなもので、資本というものに対してどういう考えを持っておるのか疑問である、こういう意見があります。

 こういう心配に対して、経団連としてどのようにお考えになっておられるのか、お聞かせください。

西川参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、法定準備金の使用を行うに当たりましても株主総会の決議が要る。それから、債権者保護手続、これは、まさに減資に準じた債権者保護手続を行うわけでございますので、法定準備金の使用を株主へ還元のために、すなわち自己株式の取得に使いましたり配当に使うということにつきまして、そういう債権者との問題ということはこれでカバーされている。なおかつ株主総会の決議を要するということでございますので、債権者保護と株主保護がなされている中で行う限りにおいて、使途の限定されている法定準備金をより広く株主に、株主が出した株主にまた還元をする、これを株主が認める、債権者が認めるということでありますと、全く問題ないのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。

田村委員 この部分が、大変企業にとってメリットがあるのかなと私は思うわけであります。

 もう一点、大変心配されておりますのは、やはりインサイダー取引や相場操縦の問題。これは、それぞれ証取法等々で改正をして、法制度を強化しよう、そういう話でありますが、一方で、企業みずからが情報開示もしっかりやっていく必要があるのであろうと思います。この点に対して、経団連としてどのような今お考えをお持ちであるのか。これは西川参考人に。

 それから、上村参考人には、基本的に金庫株賛成であるのであろうというふうに私は受けとめさせていただきました。ただし、種々の手当てをしなければならないのであろうというお話だったと思うんですが、その中に、やはりこのインサイダー取引や相場操縦等々に関して非常に心配があると。この点、今回法改正する予定でありますけれども、これに対して、いかなる部分がまだ十分じゃないのか、その点をお教えいただければありがたい。

 二人からそれぞれ、今の質問に対して御意見をいただきますようにお願いいたします。

西川参考人 インサイダーの問題につきましては、日本はインサイダー天国だ、こういう金庫株の解禁ということになると、インサイダーが横行するのではないかというふうなことが言われるわけでございますけれども、私ども経済界の立場からすれば、それは全く逆だというふうに認識いたしております。

 むしろ、会社の経営者、従業員に限って話しますと、インサイダー規制に抵触するおそれがないにもかかわらず、そういうインサイダー情報がないときに株を取得した、ないしは株を処分したというときに、後であらぬそしりを受けるのではないかというふうなことに、インサイダーリスクに極めてセンシティブになり過ぎているというふうなことがございます。恐らく、経団連に加盟している企業の経営者、従業員は、株式取得に積極的になれない。なれないのは、インサイダーの摘発が怖いから。本当はインサイダーじゃないのに、インサイダーだと思われてしまうというふうなことがあるものですから、非常に保守的になっているということだろうと思います。

 実際、法律はそうじゃない。重要事実があって、それが公開されていないときにインサイダー取引ということに当たるわけですから、このあたりはもっと、インサイダー取引というのはこういうことなんだ、こういうことをしちゃいけないということじゃなくて、こういうことだけが禁止されているんだ、こういうふうな教育をしていかないと、多くの経営者が自分の会社の株式を持つことにすらちゅうちょしているという状況でございます。

 情報開示については、もちろん努めていかなければなりません。今回は、インサイダー、相場操縦の関係からいきますと、上村先生からお話がありましたように、三カ月に一回報告すればよかったのを、これからは一カ月に一回ということで開示がなされるということでございます。

 それ以外の一般的な情報開示につきましては、来年の国会に向けて検討がなされております商法改正の中間試案等におきましても、例えば、連結財務諸表というのを商法上の書類にしようという提案がなされているわけでございますけれども、この点につきましても、経済界の方からみずから、そういうものは必要ではないんだということではなくて、これから連結経営の時代だ、連結財務諸表というのを商法上の書類にもすべきだというようなことで提案をいたしておるところでございます。

 情報開示というのは、株価の適正な維持のために極めて重要でございますので、意を用いてやっている経営者が圧倒的に多いということを御理解いただきたいと思います。

上村参考人 お答えいたします。

 賛成なのか反対なのか、こういうことがあるのですけれども、確かに改善している点がある、現状のがひどいということはかなりある、これは事実であります。それから、部分的には、やはり私は数量規制は入れた方がいいんじゃないか。

 それから、そのほか、セーフハーバーとかルールが入りましたけれども、周りが厳しいからここは安全だというルールなんですけれども、周りが厳しくない。ですから、要するに、証券取引法とかコーポレートガバナンスの根幹部分について十分な、本格的な改革がないので、そういう状況のもとでセーフハーバーとかインサイダー取引の規制を入れましても、例えば最高裁は、インサイダーにつきましては、高裁の二つの判決を覆してまで、実質でいく、書いてなくたって実質でいくと言っているわけですから、問題は、そういうインサイダー取引規制とか資本市場法制とかコーポレートガバナンス自体の実力が強化されるということが一番大事であるということを申し上げているわけです。ただ、一概に全部葬り去るというところまではということでありますけれども、しかし、かなり懸念は持っているということも率直な印象であります。

 それから、インサイダー等の問題でありますけれども、証券取引法の、証券市場の改革というのは非常に進んでおりませんで、確かに金融商品販売法などができましたけれども、あれは判例理論がそのまま利用されているということでありますし、要するに、規律面での金融制度改革というのは進んでいない。もちろん、不良債権処理とかそういう困難な問題がありましたけれども、このままですと、健康体になったときにきちっとしたルールがないということがあると思いますので、そういう点を非常に懸念しております。

 今、西川参考人がおっしゃいましたように、六十三年にできたインサイダー取引規制というのは、全部形式犯で書こうとした。インサイダーとは何か、重要事実とは何か、重要とは何か、公表とは何か、全部形式的に書いて、ここに入っていれば違法だけれども、入っていなければ違法じゃない、こうやったわけです。

 ですから、例えば、二社に伝達して十二時間たったら公表だと書いてありますけれども、みんな知っていても、十二時間たっていなければ公表じゃない。そうすると、会社のインサイダーだけが不利になる。他方、二社に伝達して十二時間たつどころか、新聞のネタにもなっていない。だから、みんなが知らない。みんなが知らないけれども、十二時間たっていれば公表だということになると、今度は逆に、インサイダーはみんなが知らなくてもやれる。

 要するに、最初は六カ月五十万円という非常に軽い犯罪にしようと思ったために、非常に形式的に、赤信号だから渡っちゃいけないみたいな法律にしようとした。そのことがすべての問題の根幹にあるわけでして、ある意味では過剰規制もあります。しかし、ある意味では抜け道もいっぱいあるということでありますから、やはりもうちょっとインサイダー取引につきましても、そもそもなぜいけないのかというところから含めて、本格的な、根本的なつくり直しが必要だと私は痛感している次第でございます。

田村委員 今回の金庫株に限らず、インサイダー取引等々に対する規制、また、株価操縦、相場操縦に対する規制というものをもう少し抜本的に見直さなきゃいけない、そういうような御意見として承らせていただきました。

 最後に、熊野参考人にお伺いしたいんですが、株式の持ち合いが日本の株価構造、株式構造といいますか、それを狂わしてきた、そこら辺のところが実は日本の今の株の低迷にとっても非常に大きな影響がある、そういうような御意見であったと思うんです。

 要するに、持ち合いの解消が、今、株価の下落の大きな一因であろうと思うんです。であるならば、今回のこの法改正によって、その解消されるべき株式を金庫株という形で取得して、時期を見て徐々に、相場に適応した金額でといいますか、安定した金額で放出していくということをなすれば、これは株価の安定に逆に資するんではないかというような御意見もございます。いつまでもずっと持っているわけではありませんでして、あくまでも株価の安定のためにこれを持っておるんだ、適宜それを放出していくということであるならば、まさに先生のお考え方に適応しておるんじゃないのかなと思うわけでありますが、この点はいかがお考えでございましょうか。

熊野参考人 大変重要な指摘でございまして、では、株価が安定している、安定的な水準とはいかなるものかということが大変問題でございます。

 インサイダー規制にしろディスクロージャーにしろ、形式論ではなかなか片づかない。例えば、最近、東京証券取引所のマザーズで、マザーズに限りません、最近できましたナスダック・ジャパン、それから東証第二部、それから日本証券業協会が管理しております店頭市場において大変高い株価が形成されて、特に一番アビューズ、弊害が起こりましたのはマザーズでございます。これも形式論からいたしますと、ちゃんとディスクローズはされております。

 では、株価の安定的な水準とはどういうものか。少なくとも、結論からいいますと、あれは大変な食い逃げにすぎないわけでございまして、膨大な資金というものを市場から吸い上げて、これは詐欺ではないかという訴訟がアメリカで起こって、また、それで市場から吸い上げたものが必ずしも適当に処分、使用されておらない。こういうことでございまして、形式論を言っても仕方がない。

 株価を安定させるとはいかなるものか。それは、バブル期におきまして大変高い株価が形成されて、そして高い株価で株式を資本発行いたしまして、そして、それが果たしていかなるところに使用されたのか、これが適切に使用されたかどうかにつきましては、私は大変疑問を持っております。

 それはそうといたしまして、現在の株価の低迷が非常にいろいろな問題を起こしておる。では、それをいかなる水準にどういう手段で安定させるか、これが問題でございまして、仮に株価というものに対する安定策をある程度講じるとすれば、それを個々の発行会社の取締役会にゆだねるというものはいかがなものか。もし仮にそれをやるのであれば、もっとパブリックな機関、国民の声というものをもっと反映し得る、そういう組織というものを考えるべきであろう。

 現在、株式の買い上げ機構というような、正確な名前は承知いたしておりませんけれども、論議がされているかのように聞いております。これにつきましては、だれの意見を反映した組織をつくるかということと、それからもう一つは、起こり得べき損失が再び国民の負担にならないようにするにはどうしたらいいかということがポイントでございまして、私は、それについて十分に突っ込んだ議論がされておらない、それは大変遺憾なことではないかと思っております。それにつきましては、私は私なりの見解も持っておりますが、ここでは意見を差し控えさせていただきます。

田村委員 ありがとうございました。

保利委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 民主党の野田佳彦でございます。

 本日は、三名の参考人の皆様におかれましては、大変お忙しい中を当委員会に御出席をいただいて、大変示唆に富んだ御意見をお聞かせいただきました。まずは、心から感謝を申し上げたいと思います。

 限られた時間なので、自分の話をする時間はできるだけ短く、質問を簡潔に、先生方のお答えをできるだけお聞きしたいと思うのです。

 まずは、緊急性の問題で質問をしたいというふうに思います。

 金庫株の処分に伴う税や会計処理の扱いが政府内で十分決まっていないから、処分は来年の三月三十一日まで停止をされるということになっています。また、相場操縦防止の具体的な要件も法律では定まっておらず、これは内閣府令に委任をされているという状況で、よく見ると不備の多い法律だろうと思うのです。この不備の多い法律で商法の原則を大きく変えるまでの緊急性があるのかどうか。

 西川参考人におかれましては、株主総会の時期とか、るる御説明があって、そのお立場ではよくわかりますけれども、ほかの参考人にお聞きしたいのですが、まずは、商法の専門家である上村参考人、緊急性という意味ではいかがでしょうか。

上村参考人 この法律が何を目的にしているかによると思うんですが、株価対策であるということがはっきりしているのであれば緊急性があるかもしれない。しかし、そうではなくて、例えば自己株式の取得規制というものを合理的にするんだ、現時点で弊害があるからそれも正すんだ、そういう長期的な企業社会のあり方にとって必要だということだとすると、一刻を争うかどうかというと、それはちょっとどうかなという感じもいたします。ただ、マーケットが必ずしも完全でないという状況で、現実には需給を調整して株価を上げようということですから、そういうことに緊急性があるかと私みたいな研究者に言われますと、さあという感じはいたします。

 ただ、先ほど意見でも申しましたように、ほかに緊急性のあるものが実は山ほどある。ですから、学者が緊急だと言うことは取り上げられませんが、経済界が緊急だと言うことは全部取り上げられるということであります。例えば、先ほど申しましたように、興銀事件でもう本当に株主によるチェックはゼロだというような状況が生じているけれども、これ以上緊急を要することはないだろうと私などは思うのです。あるいは、事後の経営者に対するチェックが厳し過ぎるからというのであれば、事前の違法行為の差しとめ。回復すべからざる損害がなければ、法令、定款に違反する行為があっても差しとめられない。巨大な企業新日鉄にとって回復すべからざる損害なんといったら、これは普通ない。そういうものを外すということも緊急性があると私は思います。

 ですから、私は、やはりいろいろな問題について満遍なく緊急なことがすべて取り上げられるということが必要なんじゃないかというふうに、これは仲間の商法学者みんなが言っていることですので、かわりに申し上げさせていただきます。

野田(佳)委員 同じような趣旨で、緊急性について熊野参考人にお伺いしたいのですが、金融・証券市場の研究者というお立場で、緊急経済対策として今回の措置についてどういうふうにお考えをお持ちでしょうか。

熊野参考人 私の立場からいたしますと、必ずしも緊急性はないと思います。私、先ほど申し上げましたように、本来、我が国の株式の保有構造、なかんずく銀行の株式保有というものが、我が国の金融制度、金融システム、それから証券市場というものをゆがめておる、これが基本でございます。

 例えば、今回、長期の不況、それから株式市場の低迷が長く続いておりますけれども、日経平均でたしか三万九千何百円という高値があったと思いますけれども、それでは、その値段というのは一体どういう値段なんだろうか。あるいは、それがどのぐらい下がれば正常と言えるのであろうか。これは、どんどん九〇年代に下がっていきまして、そしてたしか一万四千円とか、一番安いので一万二千円台まであったと思いますけれども、これは一万五千円が妥当なのか、一万円が妥当なのか、五千円が妥当なのか、これはわからない。株価というものはそういうものでございまして、あのまま放置しておきまして、日経平均が八千円、五千円となりましたら自然と株価は反発しただろうと思います。安ければまた買う人が必ず出てくる。それが市場というものでございまして、それを途中でとどめた。なぜとどめたか、それは株式の保有構造からしからしめたわけでございます。つまり、これ以上下がったら銀行が困るあるいは企業が困る。そういったような我が国のゆがんだ株式の保有構造になっていなければ、もっと市場自体の機能にゆだねて、そうして自然と反発したであろう、恐らく証券市場というのはもっと活気を取り戻していたであろうと私は信じております。ですから、現在でもそういう意味では別に緊急性があるとは思わない。

 ただ、こういうふうになってしまいましたから、現在、これ以上株価が下がると、銀行がとにかくゆゆしき事態になる。それから、現在、アメリカあたりからの圧力もあるとは思いますけれども、いろいろな会計基準というものを非常に急いでやられておる。これで会計基準、時価会計というものを非常に早急に取り入れられた。

 これは、私の意見では、現在そういったように我が国の市場がいろいろな点で問題があるのであれば、しばらくこの施行を差し控えて、もう少し市場の落ちつくのを待ってもよかったのであろうと思いますけれども、しかしながら現状においてはほっておけないというのであれば、原則からいえば緊急性は認められない、ただこういうようなことではっきり困るということであるならば、それは個々の発行会社のフリーハンドにゆだねないで、何か国民の声あるいは市場の声というものをもっと反映させるような措置を講ずべきであろう、そういったような棚上げの方法を考慮すべきであろう、こういうふうに私は考えるわけでございます。

 ですから、緊急性の問題につきましては、あるようなないような、はっきりしないお答えかもしれませんけれども、私はそういうふうに存じております。

野田(佳)委員 今日のように極めて金利が低いときに個人の金融資産の大半が依然として預貯金に回っているという現状は、それだけまだ株式市場への信頼感というのが非常に欠けているということだと思うのです。その中で、株式市場の言ってみれば基本インフラみたいな信頼というものが欠けている中において、今回の措置、自社株を取得、保有、処分することが原則自由という金庫株というのは、株を発行する主体の企業にとっては非常に都合がいいのですけれども、マーケットの信頼性という意味においてはいささかまた信頼感が欠けていくような傾向になるのではないかなという印象を私は持っていますが、積極的に早目にやれというお立場の西川参考人はこの辺についてはどういうお考えでしょうか。

西川参考人 お答え申し上げます。

 私の誤解かもしれませんけれども、今回の金庫株の法案が今までの既存の制度をドラスチックに変えるという前提に立っていろいろと御議論がなされているようにお聞きするわけでございますけれども、既に申し上げましたように、今まで自己株の消却のための取得の制度があるわけでございますね。それにつきましては、株主総会決議でありますとか、場合によりましては、今の時限立法の株式消却特例法を改正するその法律でもちまして、定款授権に基づいてできているわけでございます。

 それが今度どうなるのかということでございますけれども、定款授権による取締役会授権は認められなくなる、株主総会で毎年毎年決議を受けなければできなくなる。これは規制強化なんでございますね。だから、今までの自己株式取得について今度ドラスチックに緩和しているということでは全くなくて、取得の面につきましてはそういうところで強化をしているというふうに認識しております。

 では、自己株式を取得した後でそれを処分する問題でございますけれども、これも増資手続をとらなければいけないということでございます。これは新株発行規制に服するわけでございますから、現状、新株発行はしかるべく手続がとられているということでございます。

 そういたしますと、取得の理由、目的について緩和がなされたということでございまして、取得の規制それから処分の規制というのは今までよりも強化されている中で、目的だけが緩和されるという状況なのでございます。

 そういうことを考えましたときに、この法律は、金庫株に関する限り今までのをドラスチックに変えるということでは全然ないと思いますので、御懸念の御心配ということはないんだ、私は根本的にこういうふうに認識している次第でございます。

野田(佳)委員 仮に金庫株制度を容認するという立場で考えた場合にも、もっと不正取引の監視、摘発を強力に進めるためにアメリカのSECのような番人が日本においても必要ではないかという意味で、民主党としては日本版SECの設置法案というのを別の委員会の方に提案をしているのです。それとセットならば金庫株解禁も容認できるのではないかという意見なんですけれども、それについては上村参考人はどういう御見解をお持ちでしょうか。

上村参考人 お答えいたします。

 日本版SECのところに関心が行くということは非常に大事なことだというふうに私は思っております。

 現在のシステムというのはかなりおかしなシステムになっている。といいますのは、一等上に大臣がいて、真ん中の胴体が業者規制の金融庁でありまして、手足が証券取引等監視委員会で、ここが独立しているのですね。手足が独立しているという形。やはり胴体が独立していて、手足が強力な執行部門であるということが本来は望ましい。ただし、企画立案がありますと、企画立案部門を残すとどうしても大臣がいなければいけないということだろうと思いますので、そこを例えば財務省に戻すとかそういうことも考えられるかもしれませんが、いずれにしましても、日本版SECが大事だということは私自身も全く賛成であります。

 ただ、ちょっと見せていただいたところでは、民主党の日本版SEC案は証券取引等監視委員会をそのままどこか変えているという感じでして、特に建議とか勧告とか、つまり建議、勧告しかできない第三条委員会というのはもともと非常に弱いですね。

 ですから、イギリスの金融サービス市場法でできましたFSA、ファイナンシャル・サービシズ・オーソリティー、これはイングランド銀行の権限まで持つような、巨大なしかも横断的な、保険も預金もそれから証券も全部包括するような、そして従来の自主規制機構を全部包括するような、そういう極めてスケールの大きな、SEC以上、スーパーSECと言われておりますけれども、それぐらいのものを現につくってやっているわけですね。あれだけ経験豊富なイギリスでもそこまでやっているということからしますと、やはりこの程度で民主党が満足してはいけないのではないかというふうに私は思います。

 そうしますと、これは相当本格的な議論をして、もうちょっと大きなスケールで考えていただきたいというふうに私は思っております。

野田(佳)委員 御叱正をいただきまして恐縮でございます。

 本当に限られた時間なので端的にお聞きしたいと思うのですけれども、西川参考人、基本的にはこの法案に賛成のお立場で主張をしていただきました。最後のところで、なお改善点があって、法の成立後にそれを早く是正してほしいというような言及がありましたが、具体的にどういうことでしょうか、ちょっと教えてください。

西川参考人 現時点で数点考えているわけでございますけれども、今具体的にそれを申し上げろということにつきましては、私個人的に考えていることでもございますので、今後、経団連全体の中で具体的な要望としてまた申し上げたいと思うのですけれども、一番の問題は、今度の商法改正についての中間試案でございます。できればストックオプションの拡充制度、今度の秋の臨時国会でぜひ、ストックオプションを自己の会社のみならず関連会社等にも渡すようなことができるような制度を充実していただきたいと思います。

 もう一つは、今度、利益処分案なるものが、来年の通常国会を目指しております法制審議会の審議からいたしますと、大会社におきましては取締役会でできるようになる。利益処分が取締役会でできるようになるということになりますと、株式の取得につきましても同じことでございますので、先ほど株主総会による規制があると申しましたけれども、アメリカと同じように取締役会で利益処分と同じようにできれば、こういうふうなことも考えているわけでございます。

 あとは株式実務等の観点で、本当にこの場で御議論いただく問題ではなく、細かな問題でございますので、実務的な要望を追ってさせていただきたい、こういうふうに考えております。

野田(佳)委員 大変参考になりました。ありがとうございました。

保利委員長 次に、上田勇君。

上田(勇)委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、三名の先生方、大変お忙しい中、当委員会の方に参考人として御出席をいただきまして、またそれぞれのお立場から貴重な御意見をいただきましたことに、心から御礼を申し上げます。

 まず、上村先生にお伺いをしたいというふうに思いますが、先生は御意見の中で、まず今重要なことというのは、コーポレートガバナンスを強化していく、それと証券市場の規律の強化にあるんだという御意見でございました。

 今、このコーポレートガバナンスの問題についてはさまざまな意見がございます。社外取締役の活用を促進すべきであるというような意見だとか、監査役の機能の促進だとか、いわゆるディスクロージャーの徹底とか、本当にいろいろな御意見が各方面からあるわけでありますけれども、上村先生に、現状のコーポレートガバナンス、我が国の場合、どういうふうに評価できるのかということと、それから、今いろいろな御意見が出ているわけでありますけれども、具体的にどのような方策が最も必要、効果的なのか、その辺の御意見を承れればというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

上村参考人 お答えいたします。

 先ほど、私、意見で申しましたように、今度の改正というのは、やはり証券市場改革と一体の公開株式会社法、そういう意味で五十年前の昭和二十五年の改正と理念的には一体のものである。そういう意味では、情報開示は原則として証取法の開示でいくという方向がかなり出てきていると思います。そして、そのかわり、基本的には株主総会というのはなかなか機能しない。

 そうしますと、経営権の根拠といいましょうか、そこはどこに来るかといいますと、従来は株主総会と細い糸でつながっているということが経営者の権威のよりどころであったわけですね。つまり、選任されるときに権威があった。それは、私の見方によりますと、例えばヨーロッパの王族の権威のようなものでして、辛うじて血統で正統性が維持されるというようなもの。しかし、大事なのは、選ばれた後のシステムが合理的だから経営者というのは信頼され、正統性があるということですので、株主総会による辛うじて細い糸で権威が維持されるというのではなくて、コーポレートガバナンスによって権威が維持されるということになる、理念的にはそういうふうに考えております。

 そういたしますと、具体的な問題としては、私は、証券市場が最も発達したアメリカでどうなっているかというのをまずは参考にすべきだろうというふうに考えております。ただし、日本の場合には、やはり監査役制度というのをずっと尊重してきたという経緯がございますので、監査役制度をどういうふうに統合していくか。監査役制度に例えば経営者の選解任権なぞを認めていきますと、似たようなものが二つできるということになってまいりますので、社外監査役もいる、社外取締役もいる、こうなってきますと、どこかで統合しなきゃいけないだろう。

 私は、個人的には、監査役制度をそのまま監査委員会の方に横滑りさせていくようなことも考えていく必要があるのではないかなと思っております。

 それからもう一つは、コーポレートガバナンスというシステムで会社の権威あるいは正統性というのが維持されるわけですから、やはりここは、責任につきましても、システムの役割に応じた責任というものがきちっと提示できるような、そういったことも必要だと。

 つまり、証取法が中心になってくる、総会の権威が弱まってくる、ガバナンスのシステムが重要になってくる、そうしますと取締役会は監督機関として純化していく。そして、経営機構というのはそこから分離されてくる、それで責任もそれにふさわしい責任になってくる。そういう観点からしますと、こういう問題について中間試案ではいろいろな項目が列挙されておりますので、これをめぐって今意見照会中であります。我々も意見を述べようとしております。

 しかし、私個人的には、今申しましたように、監査役制度の長所をそのまま監査委員会の中に時間をかけて横滑りさせていくというようなことを考えてはどうかと思っております。

上田(勇)委員 ありがとうございました。

 次に、熊野先生にお伺いをいたしますが、先生の御発言の中で、銀行の株式保有を禁止、制限すべきであるというお話がございました。これは、今の銀行の経営が株式市場の動向にいつも左右される中で、議論がいろいろなところで出てきておりますし、本来の銀行の預金の性格と、いわゆる元本保証の預金を価格変動の非常に大きい株式市場に運用するといったことに対する問題というのは、率直に言って非常にわかりやすい問題があるというふうな気はいたします。

 そこで、では具体的に、今銀行が保有している相当な株式をどういう形で吐き出すのかということになると、これは果たしてどうしたものかなというふうに私も思うんです。仮に市場にそれを売却するということになりますと、さっき先生も、株式市場というのは需給バランスで価格が決まるということになると、価格の動向にこれもまた必ずしも正常でない影響を与えることになりますし、また、相対でその会社に売買するということも、これもまた不透明な価格形成になるような気がいたします。

 その受け皿の一つとして、いわゆる企業の自社株の買い取りの範囲を拡大するというのも一つの方法なんでしょうけれども、先生はちょっとそれに対しては消極的な御意見だったんですけれども、そうすると、金融機関、銀行が持っている株式、この保有を制限、規制していくとなると、それをどういう形で解消していくのか。何かアイデアがございましたらお教えをいただければというふうに思います。

熊野参考人 大変この問題は微妙でございまして、先ほど私が申し上げましたように、一定の立場に偏らないこと、それから国民の負担を増大させないこと、この二つが原則だろうと思います。

 先生が御指摘のように、急に銀行の持ち株というものを全部取り上げてしまうということは非常に困難でございます。したがいまして、私は、銀行の持ち株というものをいずれは整理すべきだろうと思っておりますけれども、その具体的な方法は、いかなる機関によってそれを実行するかということと、どのぐらいの期間、ターム、年数でそれをやるかということでありまして、それを実行する機関というものは、大変具体的なことでございますからこの際ちょっと意見を差し控えさせていただきたいんですけれども、ある程度の年数をかけて徐々に処分していくということが適当であろうと思っております。

 基本的には、アメリカの銀行法のように禁止しておいて、そうして経過措置を講じるということが適当ではないかと思っております。

上田(勇)委員 ありがとうございます。

 次に、上村参考人そして西川参考人にあわせてお聞きをしたいんですが、西川参考人が御発言の中で、今回、金庫株解禁の意義の一つとして、敵対的買収に対する防衛ということを挙げておられます。確かに、企業経営者にとっては、そういうのは非常に重要な目的だし、この金庫株が解禁されることによってメリットがあるんだというふうには思いますけれども、こうした敵対的買収に対する防衛、これは企業経営者にとってはメリットがあるのはそのとおりだというふうに思いますが、株主あるいは従業員、またひいては日本経済全体に対して本当に果たしてメリットのあることなのかどうか。この辺を、西川参考人そして上村参考人の方からそれぞれ御意見をいただければというふうに思います。

西川参考人 お答えを申し上げます。

 敵対的買収の定義は、経営者にとって望ましくない者による買収ということだろうと思います。ただ、その買収対価、買収条件なるものが株主にとっていいものであるかどうかというのは経営者が判断しなければならない。株主にとって利益になる買収に対して、既存の経営者が自分の身を守るためにそれを阻止するということは商法上許されない話だろうと思います。

 私が申し上げておる敵対的買収といいますのは、株主のためにならない、従業員のためにならない買収ということでございまして、典型的な事例が、先ほど申し上げましたように、企業の解体をねらう企業買収でございます。株価が異常に安い、だけれども純資産が多いというふうな会社を安い価格でもって買収をする、そして会社を解体して全部うっちゃってしまう、従業員も解雇してしまう。こういうふうなことが本当に株主の利益になるのかどうかということでございまして、私どもからしますと、株主の利益にならない、ための買収は断固として阻止すべきである、それが雇用の安定にもつながる場合もあるというふうなことでございます。

 そういうことでございますので、あくまでも、敵対的買収というのが株主のためになるか、従業員のためになるかというのはケース・バイ・ケースでございます。私が申し上げたのは、今言ったような典型的事例のもとに、それを阻止するというのが株主のためになる、そのために一つの選択肢として金庫株は有効だと申し上げている次第でございます。

上村参考人 お答えいたします。

 敵対的買収に備えるという理由は、私は余り合理的な理由ではないというふうに思っております。といいますのは、やはり持ち合いによって、グループの中で株を発行すれば発行するほど議決権がふえてくる、そういうシステムによって過剰に守られてきたのが日本の経営者である、こういうことであります。

 それから、今西川参考人がおっしゃいましたけれども、経営者にとって望ましいというよりは株主にとって望ましいということが大事だ、これはそのとおりだと思います。

 しかし、それを経営者が判断するとおっしゃっている点は問題でありまして、やはりそれは証券市場が非常に公正で効率的な証券市場になっていなければいけない。それにはやはり機関投資家と個人が中心のマーケット。アメリカは機関投資家が中心ですが、アメリカの機関投資家というのは個人のために受託者責任を強烈に負っている。ですから、年金も保険も最終的には個人のためである。ですから、マーケットの中で個人よりも機関投資家がうまく立ち回ったとしても、立ち回られた株主は実は年金受給者でもあるし保険契約者でもあるということでありますから、そこでつじつまが合う。そういう中で経営者というものが淘汰される、そこでは筋の悪い買い占め側というものも自然にそのマーケットのルールの中で淘汰される。そういった市場の規律といいましょうか、あるいは市場のシステムをつくり上げるのがまず第一ではないか。

 その上で、市場が極めて不完全で、そういうときに緊急避難的な場合が理論上あり得なくはないと思いますけれども、しかし、そういう意味では、日本は経営者が持ち合いによって世界一防衛されている企業社会であるということは否めないというふうに思っております。

上田(勇)委員 ありがとうございます。

 もう時間もないので、最後に一つだけ西川参考人にお伺いをいたしますが、今回の改正の中で、一つは株式の大きさの規制の緩和が入っております。単位株制度が廃止されて、それによって、小口の取引が増加をして個人投資家がもっと株式市場に参入しやすくなるという面は私もわかるのですが、また一方で、それとはちょっと動きが逆な単元株の制度も新たに導入されている。その理由の一つが、いわゆる企業経営における実務上のいろいろな問題の整理のためにどうしても必要だというようなことも伺っているわけでありますけれども、その辺、企業経営の実務上の必要性について御見解をいただきたいというふうに思います。

西川参考人 お答えを申し上げます。

 単位株式制度が導入されましたのは、極めて零細な投資でもって、自益権ばかりか共益権を持つ、株主総会に出られる、一株数百円で株式を購入して、それでもって他の大きな株式を所有している株主と同様の権利を与える、これはやはり発行会社にとって株主管理コストを非常に増大させたものですから、そこで単位株式制度というのが設けられた次第でございます。

 今回、単位株式制度を廃止して、それではもう一株は一株にしてすべて同じ権利を与えろということになりますとまた同じ議論になるわけでございますので、単元株制度などを設けていただいて、なおかつ、単元株につきましては、一株当たり五万円の規制をなくしていただく中で、会社が、自由に設計をして、そういう株式の単位の低い方での流通問題、一方それに伴う株式コストの増大問題、これを比較考量しながら、何が株式利益かということを考えられるチャンスを与えてくれるものだというふうなことだと考えておりますので、今回の単元株制度導入には賛成をいたしているところでございます。

上田(勇)委員 以上で終わります。

保利委員長 次に、西村眞悟君。

西村委員 自由党の西村です。

 私は、この商法二百十条の基本的なものに関する改正の審議が緊急経済対策というレッテルのもとでされるのは少々不満でありますけれども、本来、自己株式取得は自由な領域にあると考えております。したがって、ここは法案審議ですから、熊野参考人が自己株式取得は本質に反するという立論のもとに論旨を展開されていることについては、やはり本質に反するということに御質問せずして法案審議は論理的にないと思うので、ここで御質問させていただきます。

 その本質というのは何だろうかと、先ほどのお話以降考えてきました。自己株式は、自分が自分に対する権利である、だから自分のものだ、金を渡して購入したら本質に反するのだ、本質に反しないようにするためにはただで受け取るのが当たり前だ、自分のものだから、こういう意味で本質に反するのか。しかし、そもそも自己株式は自分が発行した権利であるから本質に反するのか。仮に後者であれば、株式はなぜ有価証券なのか、自己株式は有価証券になり得ない、ということは、証券取引市場は成立しないということになるのでございます。

 先生が言われた本質というものは本当に本質なのか、だったらこの法案審議自体も成り立たない、こう思うのですが、いかがでございますか。

熊野参考人 私が本質と申しましたのは、株式というのは、株式会社の出資者のいわゆる財産権、権利をあらわすものでございますから、株式というものはだれが持つのかというと、それは株主が持つに決まっているわけでございます。したがって、会社は出資を受ける方でございますから、それが自分自身の株式を持つということ自体が矛盾しているわけでございまして、それはもう例外的にどうしても必要だというとき以外は認められるべきではないというだけのことでございます。

 それからもう一つ。現代の金融制度におきましては銀行制度が非常に発達しておりますから、資金調達という側面というのは必ずしもそれだけではないのでございますけれども、しかしながら、やはり株式会社は株式を発行して資金を調達するわけでございます。そうすると、調達する会社が株式を自分で買うということ自体がどう考えてもおかしい、そういう原則論を申しておるだけでございます。

 先生の御指摘が私もちょっとよく理解できない点がございますが、そういうことでよろしゅうございましょうか。

西村委員 どうもそういうことでも納得できない。有価証券というものの本質はそういうものではないのですね。先生の立論では株式市場は成り立ちませんよというふうに申し上げたいのですね。決して本質ではない。なぜなら、株式というのは有価証券で、有価証券であるからこそ証券市場があって、そして、転々流通するものを購入するのは経済主体の自由である、それが法人であれ自然人であれ。その中にたまたま自己株式もあるのだということであります。

 先生は学者でおられて、私は不勉強な議員ですから、延々ここでやっても仕方がありませんから、私としては、立法者として、自己株式取得が本質と矛盾するという立論についてはきっぱり否定して、この法案に賛成の立場ですから、この法案に賛成の立場でこれから御質問させていただきます。

 さて、本法案で西川参考人と上村参考人にお聞きしたいことは、取締役の責任は、先ほど私が冒頭言いましたように、本来自由の領域である、しかし不都合があれば規制するのだというふうなことでございますので、その規制というか制限を設ける部分については、取締役の責任、また、証券市場における一つの規制があるわけでございます。

 私は、この新しい法案の前の審議のときに、商法二百六十六条の責任と新たに設けられる二百十条の責任はどういう関係なのかということをお聞きしたのですが、学者であられる先生と、現実に実業界におられる西川参考人に、新しい法の取締役の責任は十分なのか不十分なのか、それとも過剰なのか、また、証券市場に関する法律の体制は現在で十分なのか否か、この二点についてそれぞれお伺いしたいと存じます。

西川参考人 お答えを申し上げます。

 第一点目の取締役の責任でございますけれども、これは基本的に、中間配当を行った、それにもかかわらず期末に欠損が生じちゃったというときの責任と同様の責任となっていることでございますので、自己株式の取得というのは配当と経済的には同じ行為だと私ども理解しているものですから、責任はそれとの関係でもバランスがとれている、こういうふうに思っております。

 二つ目のインサイダーの問題でございますけれども、今の証券取引等監視委員会の体制が十分で抑止されているのかということにつきましては、経済界としては、一般的な問題として、証券取引等監視委員会の機構、権限及び人員の充実を求めておるわけでございますけれども、あえて申し上げますと、この金庫株法案とセットにすべき問題ではなくて、中長期課題でお進めいただきたい、こう思っているところでございます。

 以上でございます。

上村参考人 お答えいたします。

 二百六十六条の取締役の会社に対する責任につきましては、これは一号から四号までの責任を無過失だというふうに考える見解がかなりありまして、これを強固に信じている人も多いのですが、最近の議論ではそうはなっておりませんで、違法配当についても、公認会計士や監査役が一年間を通じて監査してきたものについて、取締役会でそれを発見できなかったからといって無過失だ、まして「為シタルモノト看做ス」で、取締役会で異議をとどめないとやったのと同じだみたいな扱いになって、かつ連帯責任だ、これはどう考えても私は過剰だと思っております。

 そこで、中間試案ではここをなくして、一般的な取締役の責任に一本化するという方向が出ております。その上で、金庫株あるいは自己株の取得については、先ほど西川参考人がおっしゃいましたように、中間配当の場合に準じてかなり重い責任にしている。しかし、無過失ではなくて、十分に注意を尽くした場合には責任が逃れられるということになっておりますので、二百六十六条との間の均衡はとれているというふうに思っております。

 それから、証券市場につきましては、先ほど申しましたように、もうちょっと本格的な証券市場のための改革が必要だということを繰り返し述べさせていただきます。

西村委員 上村参考人に、後学のためにもう少し詳しくお聞きしたいのですが、自己株について、アメリカと欧州は対応が違うと先ほどおっしゃっておられました。対応の違いについて、そのよって来るところと、現実的にどういうふうに機能が相違しているのだということについて、ちょっとお教えいただけましたらありがたいと存じます。

上村参考人 お答えします。

 先ほど申しましたように、この問題は、証券市場での不正、それから経営に関する不正、その二つの点でいろいろな問題が起こりやすい状況である、そういう意味では、赤信号が点滅している状況だということが言えるかと思います。

 そこで、欧州はこれはかなり厳格に規制しております。イギリスのように無条件で全部消却だというところもありますし、例外は若干現在の日本より広目ですけれども、三年間持っていて、それ以上たった場合には消却しなきゃいけないとか、いろいろ厳格であります。

 アメリカは、会社法制というのはもともと非常に緩やかでありまして、連邦会社法がない珍しい国がアメリカでありますから、そこで州法というのは税収確保のための緩和競争をしてきた。勝ち残ったのはデラウェア州でありますけれども、そういう意味では、州法は緩い、そのかわり連邦法が厳しいというのがアメリカだ。特に厳しい連邦法の部分というのは証券規制で、会社法のかわりをしている、そういう要素もありますので、最も証券市場が発達した国で比較的緩やかでも何とかやれる、そして、証券市場が比較的未整備な欧州では、やはり事前のルールでもってチェックしている、そういうことかなというふうに思っております。

西村委員 限られた時間ですから、せっかく実業界から来ておられますので、この法案が成立して、短期的、長期的に実業界にいかなる景気浮揚効果があらわれるのか、どの程度見込まれるのか、そういうふうな試算がございましたら、お教えいただけましたらありがたいと存じます。

西川参考人 お答え申し上げます。

 量的にどの程度の経済浮揚効果があるかという問題につきましては、恐縮でございますが、全く検討いたしておりません。

 ただし、危機管理といたしまして、先ほど申し上げましたように、株価の暴落時に対処いたしまして、会社として、これは株主にとって好ましくない株価レベルになっているというときに、金庫株法案を使いまして金庫株取得に当たるということによりまして、株価の下落ということをある程度食いとめることができる。これはかなりの効果をもたらすということは紛れもない事実だろう、こういうふうに思っております。

 具体的な数字につきましては、持ち合わせておりませんので、かつ、計算しておりませんので、恐縮でございます。

西村委員 熊野参考人に対する御無礼をおわびしながら、質問を終えます。

保利委員長 次に、木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 三人の参考人の皆さんには、大変貴重な意見、ありがとうございました。

 最初に、西川参考人と熊野参考人に、我が国企業の株式保有構造と金庫株全面解禁の持つ意味についてお伺いしたいと思うのです。

 西川参考人は、金庫株解禁の意義の四番目に、持ち合い解消の受け皿としての意味があるのだということをおっしゃられました。そこで、熊野参考人から、我が国は法人株所有が七〇%、個人株が二〇%、これを是正することが必要なんだという指摘があったのですが、この指摘に対してどう考えるのかという点。特に、熊野参考人から、金庫株というのは法人所有の変形だという指摘もありましたね。ですから、その熊野参考人の見方に対してどう考えるのか。今回の金庫株の全面解禁の意味、もうちょっと詳しくお考えを述べていただきたいと思います。

 熊野参考人には、我が国の企業の株式の保有構造についてお話がありました。法人株所有、特に銀行の所有する株ですね、これの弊害について、どんな点に主にあらわれているのか、簡潔に述べていただきたいということと、西川参考人から指摘された、金庫株というのは持ち合い解消の受け皿なんだという指摘、これをどう見るか。

 それぞれ、ちょっと矛盾する意見のように私お伺いしましたので、もっと詳しくお述べいただきたい。

西川参考人 第一点目の、持ち合い解消の受け皿となるということでございますけれども、今の日本の持ち合い構造というのは、御案内のとおり、だんだんと持ち合い比率が縮小していっている状況にあります。昨年度ぐらいで、上場株式時価に占める持ち合い株というのは恐らく四十兆円程度、約一〇%程度が、ニッセイ研究所の調べによりますと、持たれ合っているということでございます。

 特に、持ち合い解消が進んでいるということの一番大きな理由というのは、やはり時価会計の導入だろうと思います。

 時価会計が導入されました、金融商品に時価会計が入ってくるということになりますと、ROE経営を目指す経営者にとりましては、特にEの部分、エクイティーの部分が年度末の株式の時価によって大きく変動する、Rでもってリターンをたくさんとろうと思っていても、Eが急に膨らんだり減ったりする、こういうふうなことでは、ROEなるものを経営の指標とするとき、投資家はそのROEを特に見ているわけですけれども、適切ではないということになってしまう。したがって他社株の株式を売っていこうという傾向があって、こういうふうに持ち合いが縮小してきているんだろうと思います。

 ところが、法人がそもそも他社の株式を持ってはいけないのかということになりますと、これは全然そういうことじゃございませんで、グループ経営でありますとか、戦略的提携を結ぶ、意図的に持ち合う、これは今後ふえてくるだろうと思います。ただ技術的な提携をする、販売を提携する、そういう契約関係でやるばかりではなくて、契約の履行の確保として、資本政策としてもお互いに持ち合う、それが契約の履行の安定度を確保して株主の長期的利益になる、こういう判断もございますので、私は、法人が他社の法人の株を持つのは悪だというふうなことの認識は間違っているんだろうと思います。

 意味もなく持ち合っているというのは、株主の厳しい目の中でどんどんなくなっていく、これは当然でございますけれども、意味のある提携に伴う持ち合い、これは今後ともふえる傾向にあるんだろう、そういうふうに思っております。

 以上でございます。

熊野参考人 私に対する御質問は、銀行が株式を保有していることの弊害についてということと、それから、持ち合い解消売りの受け皿という意見があるが、それに対する熊野の意見はどうかというような御質問であったように思われます。

 銀行の株式保有の制限というのは、これも簡単でございまして、先ほど西川参考人から、法人所有というのを悪と見るのはよくない、こういう御意見ございましたが、それは結局、いわば程度問題でございまして、本来法人が株式を保有するということ自体を否定するような見解もございますけれども、私はそこまで申しておるわけではございません。

 ただ、先ほどから上村参考人がいろいろおっしゃっておられますように、アメリカは、企業金融それから証券市場が大変発達しておりますけれども、我が国におけるように、非常に高い率での株式の法人所有というのは見られません。

 アメリカにおける株式所有というのは、いわゆる投資家、特に機関投資家、投資信託それから年金、こういったようなものが持っておるわけでございまして、これが、かつてはサイレントパートナーといって、ただ保有するだけで何にも意見は言わないという投資家でございましたけれども、最近、年金制度で非常に年金者のためになる運用というものを確保するというような法制なども整備されまして、それで機関投資家が、保有している株式の発行会社に対していろいろ意見を大変盛んに言うようになっております。これがコーポレートガバナンスが最近盛んに取りざたされるようになった一番の背景であろうと思っております。

 銀行ではどうかといいますと、これはアメリカで一九三三年銀行法ではっきり禁止されまして、そうして現在もなお、アメリカで銀行の証券業務が認められた今日においても、この点においては全く変わっておらない。

 我が国におきましては、三三年銀行法を戦後導入いたしまして、証券取引法の六十五条という形でありました。近年それが廃止されましたけれども、その六十五条がありましたときでさえ、我が国におきましては、銀行の株式保有というのは禁止されておりません。今日に至るまで一貫して銀行というのはたくさんの株式を保有しているわけでございます。

 こういったような銀行の負債、資金調達源泉というものは短期のものでございまして、これを株式というような資産の見合いとするにはいろいろなリスクがございまして、これは銀行の経営の原理からいっていいことではないということが言われておるわけでございまして、これはアメリカにおいても、金融の研究者からも、それから証券市場の研究者からも、意見は一致しておるところでございます。

 なお、アメリカでは、銀行の株式保有というのは一九三三年銀行法によって禁止されておりますが、生命保険会社も、生命保険会社の規制というのは、アメリカにおきましてはたしか州法だったと思いますけれども、連邦法はないと思うのですが、ニューヨーク州で、有名なアームストロング委員会報告というのがございまして、これで、生命保険会社が株式を保有することについては、やはりいろいろな弊害があるのでこれは規制すべきであるということで、少なくとも我が国におけるよりも、アメリカにおきましては、生命保険会社の株式保有に対してもいろいろな規制が加えられているのではないかと私は理解いたしております。

 現在、とにかく銀行がこれだけ持っておりますために、先ほど申しましたように、証券市場の機能からいいまして、とにかく自由な株価変動というものを阻害しておる。一定のところまで下落したら、これ以上下落しては困るということで、PKOという、プライス・キーピング・オペレーション、かつての大蔵省が主導いたしまして株価の操作をいたした。これで株式市場の自由な機能というものを阻害しているわけでございまして、現在におきましても、これ以上下がっては困るということでこういうようなことをやろうとしているということで、銀行の株式保有というものが銀行の経営自体に大変大きな影響を及ぼしていると同時に、今度は銀行の株式保有が、我が国の金融制度、証券市場制度、そういうものの健全性を阻害しているというふうに私は理解いたしております。

 なお、この持ち合いの解消売りというものが、我が国の企業のあり方のいろいろな変化に伴いまして、現在企業の保有から開放されているわけでございまして、それの受け皿として必要なんだということでございますけれども、これは、私がたびたび繰り返しておりますように、それを個々の発行会社の恣意にゆだねるべきではなく、仮に何か受け皿をつくるとするならば、もっと公的な性格のものを考えるべきであろう。公的な性格のもので、そうして、後でその損失の処理などの問題を起こさないような手段を考えるべきであろうと思っておりまして、これは私は私なりの案を持っておりますけれども、本席の趣旨ではございませんので、私のこれに関する見解は控えさせていただきます。

 したがいまして、金庫株と受け皿論に限って議論を申し上げますと、受け皿が仮に必要としても、これを個々の発行会社の自由に任せるべきではないというのが私の見解だというふうに御承知おきいただきたいと存じます。

    〔委員長退席、奥谷委員長代理着席〕

木島委員 ありがとうございました。

 上村参考人に一問だけ質問させていただきます。

 先生の基本的な立場は、今やるべき課題は経営陣の規律をきっちりつくることだ、その課題を抜きにして金庫株の全面解禁はやるべきではないというふうに私お聞きしたのですが、イギリスのスーパーSECなどのお話も承りました。

 基本的な日本の進むべき方向、ヨーロッパの方は原則自己株式取得は禁止、アメリカの方は全面解禁した上で取引規制をきっちりやると、タイプが違うのですが、我が国の株式会社法制の基本として、どちらの方向に進むべきだと上村参考人は考えているのか、その基本的な方向性についてお考えをお聞きしたいと思うのです。

上村参考人 お答えいたします。

 先ほど来、持ち合い解消の受け皿をめぐっていろいろな議論がございます。確かに、アメリカのような方向で市場規制を十分充実させ、あるいはコーポレートガバナンスを充実させる、これは避けられない方向としてやっていくべきだと思いますけれども、しかし、まだ必ずしもその方向での、つまり規律面での提案というのが十分に日本ではなされていないというふうに思っております。

 持ち合いについては、私は、先ほど西川参考人はこれからふえていくんだというふうなことをおっしゃっていましたけれども、やはりこれからは契約一個一個の合理性で競争していくという社会でありますから、そのために持ち合うという方向はちょっと逆方向じゃないかなと、まず一つ思っております。

 しかし、それにしましても、持ち合いというのは日本にとって負の遺産であります。私は個人的には、少しそれるかもしれませんけれども、やはりBIS基準に含み益を入れさせた、そのときは経済界や金融界がそれを強調したわけですけれども、BIS基準の中に含み益を算定させたというのが非常に問題だった。あのときから、自己資本比率というのは含み益などに頼らないという規制であるにもかかわらず、入れてしまったというのが非常に大きなマイナスになっていると思います。

 したがいまして、私は、持ち合っている株を同時に消すということを何とか工夫できないものか。そうしますと、もちろん自己資本比率は下がるわけです。しかし、含み益を自己資本に入れるということを国際社会が認めたときに、あれは毒まんじゅうだと言った人もいっぱいいたわけなんですけれども、それは結果的にそうなってしまった。そうだとすれば、特使でも派遣して、ヨーロッパでもアメリカでも、とにかく五年間なら五年間、含み益を入れたその部分が今はマイナスになっているわけですから、同時に消却して、かつ自己資本比率規制については一定の猶予を説得して回るというような、そういう政策もあり得たんじゃないかなと個人的には思っております。ただ、それはなかなかそういうところまではいっていないと思います。

 そこで、私としては個人的には、マーケットとガバナンスの規律は大いに強化し充実させるべきだということが基本でありまして、他方、その負の遺産に対する対策が、今私が申し上げたような対策があれば、私はそういう形を志向していくのが本来の筋じゃないかというふうに思っているのです。同時に消せば需給は一遍に改善するわけでして、そういう大胆な政策が提言されていなかったという中で、緊急避難的に金庫株というのが提案されざるを得なくなっている。そういう意味では、確かにヨーロッパ型で、事前にきちっとチェックするというのも私は立派な方策だと思っておりますが、それは、持ち合い解消のための明快な方策が明示されていないということがやはり負の遺産として残っているのではないかなと思っております。

木島委員 ありがとうございました。

 時間ですから、終わります。

    〔奥谷委員長代理退席、委員長着席〕

保利委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀と申します。

 きょうは、三人の参考人の方々、本当に長時間ありがとうございました。私で最後でございますので、あとしばらく御猶予をくださいませ。

 まず、西川参考人の方に幾つかお教えいただきたいわけですけれども、今回の商法改正のメリットについて先ほどの質疑の中でも幾つか申し述べられたやに思いますけれども、私、逆に、今の現行の体制での使い勝手の悪さ、問題点というのをどういうふうにお考えなのかということについて少しお伺いしたいのです。

 といいますのは、この間、九四年以降規制緩和が実施される中で、幾分そういう意味で自己株式の取得にかかわっての使い勝手は改善されてきたと思うわけなんですが、実際、九五年以降昨年末までで実施総額が二兆円ということで、そういう意味では非常に少ないのかな。といいますのは、銀行や損保や証券を除いた上場企業の中で、九九年度でいくと、手元流動性が連結ベースで六十五兆円もあったというふうに伺っておりますので、その割にはやはり少ないのかなというふうに思うわけです。

 そういう意味で、やはり現行では使い勝手が悪いなということで今回の金庫株ということが提起されてきたのかなというふうにも推察するわけなんですが、経営の観点から見て現行の自己株式の取得の方法についてどういう問題点があったとお考えなのか、まず御教示いただけますでしょうか。

西川参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃいますとおり、ヨーロッパそれから米国における自己株式の取得というのが、一九九九年度ぐらいですと、ヨーロッパでは恐らく年間七兆円ぐらい自己株式の取得がなされている。アメリカでは、若干このごろ、去年などは株価が高かったものですから減っていますけれども、九兆円ぐらいなされている。そういう中で、日本では、年度からしますとわずか三千億円、先生がおっしゃいましたように、四、五年では二兆数千億だという状況でございます。

 一方では流動性比率も高いという状況もあるわけでございますけれども、ただ、個々の企業を見ますと、やはり経営者といたしましては、一つは一株当たり利益の向上を目指したい、ROEの向上を目指したい、このためには資本の部を圧縮したいわけでございます。だけれども一方では、今のそういう貸し渋り状況がある中で、資本の部を縮小といいますと自己資本比率の低下につながる。これは財務格付が悪くなってくるということでございます。だから、経営者のバランス感覚は、一方ではROEの向上、一方では財務比率の向上、これをその時々に応じていかにバランスよく経営をしていくか、資本構造をどういう形に持っていくか、これが経営者にとっての一番の才覚なのだろうと思います。

 この四、五年は使い勝手の悪さも確かに、消却をしなければならないという意味で、使用目的が制限されている中での使い勝手の悪さがございましたけれども、一方では、そういう自己資本比率の低下、経営環境の悪化に伴って自己資本比率が下がる中で、やりたくともやれないという経営者もたくさんおったというのも事実でございます。

 以上、お答え申し上げます。

植田委員 もう一点、西川参考人にお伺いさせてください。

 といいますのは、確かに、お話を伺っておりますと、また状況の中では、経営を効率化させていくという意味での道のりはなかなか遠いだろうなというのが実感だろうと思うわけですけれども、やはり健全な企業社会を確立していく上では、戦後日本における企業間の関係をある意味で特徴づけてきた株式持ち合いについて、その意義も確認しつつも、規制のあり方も検討していかなければならないなというふうに思っているわけです。

 ただ、三年ほど前、旧の通産省がまとめた経営者の意識調査でいきますと、これは上場・店頭企業三千二百二社の経営者が対象で九七年十月に実施したのですけれども、一般に株式持ち合い制度が変化すると考える経営者が九〇%を超えている、企業系列の変化を予測する人も八割を超えているという中で、自分の会社のことになった場合、持ち合いを変える必要がないというのが四八・六%、また系列の見直しに否定的な経営者も五三%を超えている。

 そういう現状も踏まえながら、今後のあり方等々についてどんな御認識、またお考えをお持ちかということについて御教示いただけますでしょうか。

西川参考人 お答えを申し上げます。

 先ほども答弁したわけでございますけれども、持ち合いにつきましては、意味のない持ち合いと意味のある持ち合いがあるのだろうと思っております。

 今までの経営者は、意味のない持ち合いをしていても、資本市場、株主からは余り文句を言われない状況にあったのだろうと思います。これからは、投資効率のよくない株式を持っていること自身の不作為が、株主、証券市場から問われる時代になってくる。したがって、恐らく多くの会社において、今会社が持っているそれぞれの株式について、これは過去の商売上の経緯等で持たされた、ないしは持った、そういう中で意味もなく持ってきたものが、その当時は意味があった、現時点では意味がないものがあるだろうと思います。そういう投資の見直しというのをいろいろな会社で資本効率を高めるためになされている。そういう意味からは持ち合いが解消していくべきだと思います。

 だけれども、一方では、先ほど申し上げましたように、新たな新規事業に乗り出すときの事業提携問題等に絡んで国際的にも提携が進んできます。そういう中で、個々の契約よりは、契約に加えて株式を持ち合うことによって契約の履行の確保をより高めるということが株主のためだと判断したときには今後とも持ち合いは発生してくる、そういうふうに先ほどお答えしたとおりでございます。

植田委員 ありがとうございました。

 次に、上村参考人の方に幾つか御教示いただきたいと思います。

 確かに、株式の持ち合いの問題については、やはり企業社会のあり方を問う根源的な問題だろうと思うわけです。といいますのは、やはりコーポレートガバナンスの中核に位置するんじゃないだろうかというふうに私は考えておるわけですけれども、確かに、会社同士がお互いに株を持ち合って、経営者が相互に信任をし合う、そういう日本的な、経営者支配といいますか、経営のありようというものがずっとあったわけですけれども、これは安定株主による会社の安定という反面、コーポレートガバナンスの不在、無責任経営という状態もやはり一方であったのではないか、そういう側面も否定できないのではないか。特に、私は株主総会の形骸化については非常に問題だと思っておるわけです。

 だとするならば、私どもは今回の法律案については賛成の立場に立つわけではないんですが、反対なんですけれども、というのは、一つは、監視システム等々が未整備のままで、効果が必ずしも、やはり聞いていてもよくわからない金庫株の解禁よりは、むしろ、持ち株の解消にかかわってもうちょっと知恵を絞る方が健全な証券市場を構築する上では重要なのではないかと私は思うんですけれども、その辺、まず上村先生の方の御見解をお伺いできますでしょうか。

上村参考人 お答えいたします。

 持ち合いは、確かに、マーケットで株が流通しておりますと偶然持ち合うこともあるでしょうし、発行してから持ち合ってしまったという場合もあります。自己株の取得も、後で自己株の取得の形態になってしまうこともあります。ですから、状況によっては持ち合いになってしまったということもあると思います。それから、企業結合で株を持っているということも当然あります。

 ただし、一対一で仮に同時にやったとすれば、もちろんこれは出資がゼロですから、これは違法ですね。出資がないのと同じであります。それが複数で、グループの中で、経済合理的なそういう目的と離れて株を持ち合うということになれば、これはやはりトータルには出資がない、だけれども支配はどんどんふえていく、こういうことでありますから、コーポレートガバナンスをゆがめているというのは、おっしゃるとおりだというふうに思います。

 したがって、会社は株主のものだといいましても、あるいは株主によるチェックが必要だといいましても、その株主の大半は法人だったり持ち合い法人だったりしますと、これは実は会社は法人株主のためだというふうに事実上は総会ではなってしまいますし、ではその法人の議決権はだれが行使しているかというと経営者が行使するわけですから、株主のためイコール経営者のためというふうになりやすい。そういう面でもガバナンスを非常にゆがめる、これもそのとおりであります。

 ただ、戦後の日本の経済というのは、そういう根なし草であっても花が咲いたという点がありますので、せっかく咲いた花を持ち合い解消によってしぼんでしまいましたというのも芸がない話なので、ですから、花は咲いているけれどもシステムだけは立派にしましょうというのが、非常に難しいかじ取りがあるなというふうに思っております。

 そこで、先ほど申しましたように、私の個人的な意見は、やはり、BIS基準で含み益を自己資本に入れた、これが非常に問題です。ということは、株価が下がれば自己資本が下がる、それで銀行は一番最初にくたばる、こういう構造ですね。ですから、景気が悪くなったときに最後まで踏ん張るのが銀行なんですけれども、一番最初にくたばるのが銀行という構造になってしまった。こういうことが非常に問題だと思いますので、先ほど申しましたように、国際社会は、含み益をBIS基準に入れる、そういう余り上品でないことを認めたわけですから、今度は逆に、その裏目に出たときは、ちょっと助けてくれと。五年間なら五年間、自己資本比率について日本については特例を認めよというふうなことを特使でも派遣して強力に交渉するというようなことがあって、その上で対等に消す、消却するというような方策を本当は模索すべきだったんじゃないかなというふうに思っております。ちょっと格好よくはないかもしれませんが、しかしそれは仕方がなかったんじゃないかなというふうに個人的には思っております。

 ですから、持ち合いには、西川参考人おっしゃったように、どうしてもしようがないという場合はあり得ると思いますけれども、しかし、よい持ち合いであっても、これが対等であったりあるいは資本が実質的に明らかに空洞化している場合には、どんな合理的な理由でも、出資のないところに何かができるということはあり得ないわけですから、やはり限界はあるというふうに思っております。

植田委員 もう一つ上村先生にお伺いしたいんですけれども、今回の改正案で資本準備金の一部が取り崩せるわけになっているんですけれども、財務体質が優良な会社であればさして問題にはならないんでしょうが、むしろ逆に脆弱な会社がそうした場合、やはり経営基盤が危うくなるんじゃないかという素朴な危惧があるわけですけれども、その点についてはいかがでございますでしょうか。

上村参考人 これは、そういうふうにおっしゃられれば、そのとおりとしか言いようがないわけです。

 ただ、バブルが非常に膨らんだときに、例えば額面が五十円で発行価格が五千円とかいっているときに、これは資本が五十円で四千九百五十円が資本準備金だというような時代がございましたので、ある意味では、資本準備金がやたらとたまり過ぎているという点があることも事実かもしれません。

 ただ、基本的な考え方としては、資本準備金という観念が極めて大事であって、債権者のために資本に準ずる極めて重要なものである、そういう認識には変わりはないというふうに思っております。

植田委員 ありがとうございました。

 あと、次に熊野先生にお伺いしたいんですが、熊野先生が物された講談社の現代新書を図書館で取り寄せてきて、きょうの参考人の質疑で勉強させてもらおうと思っておったんですが、まあ初めにの部分をちょろちょろっと読んだだけで、実はそういう不勉強を恥じながら、簡単なことをちょっとお伺いしたいと思うんです。

 金庫株のように株式を売ったり買ったりするというのは、やはり不正取引の温床になりやすいだろうと思いますし、効果も疑わしいと私は思います。むしろ、いわゆる法人資本主義から個人と機関投資家中心の企業社会に生まれ変わっていくということを内外に示していくという意味では、やはり今回の金庫株の解禁というものは必ずしも望ましくないと私は思うわけです。

 そういう意味で、個人主役の企業社会というものを構築していくということをやはり明らかにしていくことと、その中で個人の証券市場に対する信頼というものを取り戻していくということが、株価対策という面においては健全な企業社会を築くことにもなりますし、また株価対策としての効果もあるだろうというふうに考えるわけですけれども、そういう意味で、その辺についての基本的な御見解、熊野先生からお伺いできましたらありがたいと思っております。よろしくお願いいたします。

熊野参考人 御質問の点でございますけれども、体制的に申しまして、現在の我が国の証券市場あるいは株式の保有構造というのは過渡期にあるというふうに理解いたしております。

 たびたび私が申し上げておりますように、戦後一たんは、財閥解体その他で、大変大衆的な、個人の所有比率が大変高い比率になったわけでございますが、それが再集中されまして、そして、ピークにおきましてはたしか個人持ち株比率は二五%を切るといったような、最近はまた法人の比率が少し下がっておりますけれども、ピークにおきましてはそのようなところまでいったわけでございます。これをどうやって是正するか。

 先生の御指摘のように、個人の比率を高くする。

 それから、先ほど上村参考人も御指摘になりましたけれども、アメリカでは、機関投資家がむしろ個人とみなされている。株式の保有統計というのは、悉皆調査が行われているのは実は世界じゅうで我が国だけでございまして、他の国は、主要国におきましても全部推計にしかすぎないので、我が国のように全国証券取引所協議会が中心になりましてやっておりますような悉皆調査ではございませんけれども、一応、とにかく推計に基づく統計におきましては、アメリカでは、機関投資家の保有は個人というふうにみなされております。

 我が国においてはどうかと申しますと、我が国は機関投資家ではなくて法人が持っておったわけでございまして、その方の状況はどうかと申しますと、例えば生命保険会社がかなり株式を保有しております。私どもがいろいろな研究会をやっておりまして、いろいろな金融機関の方からのヒアリングをやるわけでございますけれども、例えば生命保険会社ですと、生命保険会社の持ち株のかなりのものは、生命保険会社の事業会社との団体保険契約に基づいて取得されたものであるということで、これは、全く生命保険会社としては採算を無視して買っておりました。これが、現在、生命保険会社の財務状況が大変厳しいものになっておりますので、生命保険会社の方の言葉をかりますと、つめに火をともすような運用をせざるを得ない状況に追い込まれている、しからば、投資効率の悪い株式は全部処分したい、それがなかなか処分できないのだ、こういうふうに言っておられるわけでございます。

 したがって、我が国におきましては、生命保険会社、あるいは年金その他の資産はかなりのものになっているわけでございますけれども、これが、投資効率を重んじて自由に売買するという意味での機関投資家にはまだなっておらない。

 将来はどうかと申しますと、例えば企業年金は自然と今後も増大いたしていくものと思っております。そういうふうに理解しておりますので、将来は、現在法人の持ち株になっておりますものは、かなりその方面の年金あるいは保険、それから投資信託、こういうものに吸収されていくと思っております。そういう意味で、現在は過渡期である。過渡期で、しかもそういったような変化が待てない。待てるのか待てないのかということで、待てないから何とかしろという状況であろうと思うわけでございます。

 仮に待てないとすれば、その間、どういう受け皿をつくるかということでございまして、それは、私がたびたび申し上げておりますように、金庫株という形で個々の発行会社の恣意にゆだねるべきではなく、一定のパブリックな意見を反映した何かの機関で受け皿をつくるということを検討すべきではないだろうかというふうに考えております。

 例えば、第一次大戦と第二次大戦との間は、戦間期は大変な恐慌期でございましたが、アメリカはそこで、ウォール街征伐という形で、三三年証券法、三三年銀行法、三四年証券取引所法その他のいわゆるウォール街改革立法、金融改革立法がたくさんできたわけでございます。ヨーロッパでは、特に典型的にはイタリーでございまして、イタリーは国家持ち株会社をつくりまして、それで余剰株式とみなされたものを吸収したわけでございます。ただ、イタリーは不幸にしましてムソリーニが出てきましたものでございますから、ムソリーニが、ファシズムの手段として国家持ち株会社を利用したといういきさつがございます。しかし、ムソリーニが没落しました後も、イタリーのこういった持ち株会社というのは今なお機能いたしておりまして、IRI、イリと普通申しますが、それからENI、これは全体としてのIRIの傘下にいろいろな産業別に国家持ち株会社をつくりまして、それでかなりの機能を果たしているということがございます。

 これをどう評価するかでございますけれども、現在は、国家統制、官僚統制というものをいかに排除していくかというのが趨勢でございますから、特にムソリーニがそれをファシズムに利用したということは他山の石として、そういうことにならないように気をつけなければならないと思うわけでございます。

 したがいまして、私は、仮に受け皿をつくるとすると、個々の事業会社に任せないで、公的な、パブリックな意見を反映した機関をつくり、それを、昭和四十年代に日本共同証券あるいは日本証券保有組合の棚上げ株を再び全部法人保有に戻して、それが企業の持ち合いを促進したという形にならないように、市場の機能を見ながら、国民の貯蓄の中にそれをばらまいていく、そういう方法を考えるべきであろう。また、それを確保するにはどのような機構をつくるべきか、それを議論すべきではないかというふうに考えるわけでございます。

植田委員 ありがとうございました。終わります。

保利委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。

 午後三時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時一分開議

保利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 相沢英之君外六名提出、商法等の一部を改正する等の法律案及び商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局長乾文男君、金融庁総務企画局審議官渡辺達郎君、金融庁総務企画局東京証券取引所監理官三國谷勝範君、金融庁総務企画局参事官浦西友義君、金融庁総務企画局参事官田口義明君、金融庁証券取引等監視委員会事務局長五味廣文君、法務省民事局長山崎潮君、法務省刑事局長古田佑紀君及び財務省大臣官房審議官木村幸俊君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 本題の法案の質問に入る前に、一つだけちょっと確認したいことがございますので、よろしくお願いいたします。

 先週の金曜日に、大阪教育大学の附属小学校である池田小学校で痛ましい児童殺傷事件が起こったわけでございますけれども、この事件に関連して、小泉首相は、刑法の点でも対応しなければならない問題があるとか、あるいは、今回は法律の整備をきちんとしていきたいといったようなことを発言されておられまして、きょうの記者会見でも、森山法務大臣は、その前というのは多分刑法等の改正の前という意味だったと思うんですけれども、その前にやらなければならないことがたくさんあるというような趣旨の記者会見でのお話もされておられました。

 今政府として、この問題について、特にここは法務委員会でございますので、刑法あるいは刑事法の世界の中でどのようなことを検討しなければならないというふうに考えておられるのか。そこをちょっと森山大臣の方から御披露していただきたいというふうに思います。

森山国務大臣 小泉総理が精神障害者による犯罪に関してテレビ番組などで発言されたというのは私も聞いておりましたし、その後、メモも見せていただきました。

 これは、この問題に関して、医療や司法の各分野にわたり、法的な問題点や今後の適切な措置について、専門家の意見を聞きながら早急に検討するという趣旨であろうかと存じます。

 この問題に関しましては、精神障害に起因する犯罪の被害者を可能な限り減らして、また、重大な犯罪を犯した精神障害者が精神障害に起因するこのような不幸な事態を繰り返さないようにするために、いろいろな施策を検討することが必要であるというふうに考えられるわけでございまして、現在、厚生労働省とともに、触法精神障害者の処遇のあり方をめぐりまして、両省の担当者がさまざまな角度から調査検討するための場を設けるなどして検討しているところでございます。

 この点に関しては、今後とも厚生労働省などと協議しながら調査検討を推進していきたいと考えている次第でございまして、けさ私が記者会見のときに申し上げた意味もそのようなことでございます。

平岡委員 今回の商法改正についても言えることなんですけれども、我が国の基本的な法制にわたる部分が、えてして緊急性といったような理由で、議員立法のような形で出てくるということが多々あるわけであります。これは、ただ単に、例えば与党の議員の人たちが出しゃばりだからということではなくて、ある意味では、政府が本来やるべきことを怠ってきているというようなことが、こうした議員立法に走ってしまうというようなこともあるんだろうと思うんですね。

 そういう意味では、こうした基本的な法制にわたる部分については、常に政府においても基本的な検討を行い、そして必要な措置を講じていくという姿勢を忘れないでいただきたいというふうに思います。

 そういう意味におきまして、今回の、何が検討されるかということは、これからのいろいろな皆さん方の検討の結果出てくるんだろうと思いますけれども、基本的な法制にわたる部分については、しっかりとした政府としての見解を示しながら作業していただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 それでは、本題に入らせていただきます。

 今回の商法等の改正について申し上げますと、きょうの参考人の質疑の場でもお話があったんですけれども、緊急経済対策関連法案というには、どうも緊急性がどこにあるのかがよくわからないというのが一般の人たちの受けとめ方であろうと思います。

 実は、同じ問題は何度となくこの委員会でも質問をしておりまして、一応の答えはいただいているわけでありますけれども、どうも本当は、株価対策ではないんだということを幾ら言われても、言われれば言われるほど株価対策なんじゃないかなというような受けとめ方をされているのが実情であろうと思いますし、参考人の方も、きょう言っておられた中には、緊急性があるとしたら株価対策ということではないのかというようなことも発言としてありました。

 そういう意味で、こうした基本的な法制については、先ほど申し上げましたように、経済対策とかあるいは議員立法ということではなくて、きちっと法制審議会の審議も経た上でやるべきではないかというふうに思っているわけであります。

 この点については、法務大臣、何度となくお答えになっていると思いますけれども、この法律についての法務省としての見解、我々としては、本来は、法制審議会できちっと議論をした上で商法という基本的な法制にかかわる部分について検討すべきではないかという点についてどのようにお考えになっているか、ここでもう一度御披露いただきたいと思います。

森山国務大臣 法務省といたしましては、昨年来、会社法制全体に及ぶ大幅な見直し作業を行っているところでございます。その中の検討事項の一つといたしまして、自己株式の取得に関する規制の見直しを取り上げていたところでございます。

 法務省といたしましては、この改正を一括して行うということを予定しておりまして、今回の改正事項のみを取り出してこの国会に提出することは考えておりませんでした。

 しかし、ことしの一月、与党三党におきまして、議員立法により、自己株式の取得及び保有に関する規制の見直しなどを行うこととされまして、政府としても、これに協力する方針が決定されましたため、会社法制全体の整合性を図る等の観点から、検討課題で必要な御協力を行ってきたところでございます。

 今回の改正法案の内容について法制審議会において議論をしたことはございませんが、与党における改正法案の検討段階におきまして、与党からの御依頼に応じまして、法務省民事局におきまして、法制審議会会社法部会の諸先生方に、この時点における要綱案をお示しし、御意見を伺ったりいたしたわけでございます。

 そのような結果、この要綱に対する反対の意見は特にございませんで、おおむね法制審議会の必要な方々の御了承は得られたものというふうに考えているところでございます。

平岡委員 今、法務大臣の方から、特に金庫株の問題については法制審で審議したことはないけれども法制審のメンバーからも意見を聞いた、特に反対はなかったというようなお話がありました。せんだっても、同僚の中川議員の質問に対して金子議員の方から、金庫株については法制審のメンバーからもヒアリングを行っているんだというようなお話がありました。私、その答弁を聞きまして、法務省に対して、メンバーからヒアリングをしているんなら、そのヒアリングの中身を、どんな結果だったのか教えてくれというふうに言ったのですけれども、そんなメモはない、何も記録は残っていないという返事でありました。

 金子議員、ヒアリングの中身、この前の答弁で、やっているというふうに言われたのでありますから、一体メンバーの人たちはどういう意見を言われたのか、ちょっとここで皆さん方に説明していただけますか。

金子(一)議員 与党でこれを議論しましたときに、法制審のメンバーにいろいろ意見を聞いてヒアリングしてもらうように、私たち与党としても法務省に要請をいたしました。

 私、伺っておりますのは、法制審の前田部会長、落合誠一東京大学の教授、江頭憲治郎東京大学の教授、岩原紳作やはり東京大学の教授、神田秀樹東京大学の教授、この五人の委員の方に三月の八日、それから同じく三月の九日には、森本京都大学の教授、山下東京大学の教授、二名の委員に対して、要綱、改正案の骨子をもとにして御意見を伺ったと聞いております。要綱に対してのいろいろな御意見もあったようでありますけれども、反対の意見はなく、了解をされましたようであります。

 そして、その中で、伺っておりますのは、一番の問題は、自己株式の売却処分に際しての問題について御意見が出された。これについて、委員の皆様方の意見を十分に尊重、踏まえまして、今回の提出させていただいた法案についても、保有したものについての処分、これは新株発行の手続に準じてやるという内容にさせていただいたところであります。

平岡委員 本来ならば、法制審議会できちっと議論をしていれば、そこでどういうような議論が行われ、消極的な意見としてはどんなものがあり、積極的な意見としてはどんなものがあるというようなことが世の中の皆さん方に示された上で、それに対してそれぞれ国民の皆さんも判断はできるというようなことになろうと思うのですけれども、そうした過程が一切明らかにされない状態の中でこうした基本的な法制度が動かされていくということは、私は、本来あってはならないことだろうというふうに思っているわけであります。

 特に、今回の商法の改正の中身を見ますと、何か非常に制度としては中途半端な状態でスタートをするような内容、あるいは、本当にこれをやろうとしている意図がどこにあるのかよくわからないような内容のもの、こうしたものが散見されるというようなことであります。

 そこで、ちょっと私もこの法案の中身について御質問したいと思うのです。

 今回の自己株式の取得については、目的を限定することなく認めるということになったわけでありますけれども、来年の三月末まで、ストックオプションとかあるいは企業再編の場合の代用株式の場合を除いて、自己株式の処分を認めないということが附則の中に規定してあるのですけれども、これはどうしてですか。どうしてそんなことにならなければいけないのですか。

金子(一)議員 四月一日から、今申し上げた処分について、新株発行の手続に準じてやってくれ、それまではできませんというのは、簡単なんです。

 この処分について、経理上、資本勘定、資本準備金、利益準備金等々、どういう勘定から落としていくのか、そしてそのときに税法上どういうふうにしていくのか、この点についてはもう少し公認会計士協会等々からも詰めさせていただきたいということで、この部分だけは検討事項として残させていただきました。

 ただ、なぜその部分を残してまで、あえて今回提出させていただいたのか。これは先ほど来御質問のありました緊急性とも極めてかかわっております。

 余り緊急性がないのではないかという御指摘のようでありますけれども、もう既にこの四月一日からいろいろな会社再編法制が始まっております。もう言うまでもありませんけれども、平成九年には持ち株の解禁、合併法制見直し、それから十一年、株式の交換、株式移転制度の創設、十二年、会社分割制度の創設、こういったようなものがどんどん動き出しておる。そういう中で、我が国の企業がそれぞれの動きというのを示している中で、この部分だけが残ってしまっている。その結果として、新たにこういうものに対応しようとしますと、自己株式というものが使えずに新しく新株を発行するといったような、さなきだに株式の過剰感がある中で新たにそういう負担を負わせる、同時に将来の配当負担というようなものも考えなければいけない。今回既にそういう動きがある。

 そして、一番の緊急と私たちが申し上げているのは、我が国の企業に国際競争力をつけてもらう、そういう再編というものを通じていいものをどんどん伸ばしていくというのが、何といっても経済構造改革の一つであると思っておりますし、そういうものが今の法律では抑制されてしまっているというところが一番の問題であり、それができるように一刻も早くしていきたい。

 したがって、これを当面急ぐ理由は、処分をするために、つまり取得したものを単に処分してもらうためにやるだけでは決してありませんものですから、そういう意味で緊急だということで、あえて、今御指摘ありました部分を残しても、提案をさせていただいたところであります。

平岡委員 それも全くの詭弁みたいなものですよね。今だって別に、企業再編のときに新株発行手続をすれば出せるわけでありまして、それが今度、自己株式の取得をした、それを今度処分をする場合でも新株発行の手続に準じて進めていかなければならないということになっているのであって、機動性というような観点から言えば全くナンセンスな発言をしていると思うのですね。

 そこで、今言われましたが、経理上どうしたらいいかわからぬ、あるいは税法上の取り扱いがどうなるかわからない。こんな状態のもとで商法という基本的な法制を改正するというのは、私は、全くおかしい、主客転倒していると思うのですよね。

 どこがどういうふうに今検討ができていないのですか。まず経理上の取り扱いをどうするか、商法の規定にもかかわる話でありますので、法務省さんにお伺いしたいと思います。

 それから、税法について、何が問題で税法の改正ができないのか、それを財務省の方から説明願います。

山崎政府参考人 この自己株式につきまして、現在の会計上の扱いが資産の部に計上されているわけでございますが、この考え方を基本的に資本の部にするというところまでは決まっているわけでございますが、現実にこれを処分したときに、差益、差損がいろいろ生じるわけでございますけれども、それについて会計上どのように扱うか。例えば差益が出たときにどこの勘定に入れるか、それから差損が出たときにどこから取り崩すかとか、そういう問題についてまだ十分な検討ができていないということで、来年の四月までちょうだいすれば、そこはきちっとして、施行に伴いましてきちっとした形で処理ができるということでございます。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 法務省の方からただいま答弁ございましたように、取得した自己株式を来年の四月一日以降に売却する場合の法律関係、これにつきまして、今後、会計制度の手当てなども必要であると承知しているところでございます。税制につきましては、これらの取り扱い等も踏まえながら、その課税関係について検討してまいりたいと考えております。

平岡委員 繰り返しになりますけれども、そうした本来の基本的なところができないにもかかわらず、こういう商法の基本的な枠組みである制度を動かしてしまうというのは、本当に私は、こんなことで立法者としての良心があるのか、そういう気持ちにもなるわけであります。

 そういう意味で、ちょっとまた法務大臣にお聞かせ願いたいのですけれども、政令にゆだねられておりますけれども、聞くところによると、十月一日から、自己株式の取得については、目的を特に制限することなく取得できるような仕組みにするというふうにしておきながら、処分が来年の四月からしかできないというような片肺的な形で制度がスタートしてしまうというような点について、法務省として、我々は基本的な商法の仕組みはそういうことでは困りますというようなこととか、あるいは、それができるまでは待ってください、我々はちゃんとやりますからと。あるいは、例えば、十月一日に、事務方を叱咤激励して、処分もあわせて、片肺的でない仕組みでスタートするという政治的なリーダーシップを発揮する、そういうことはできないのですか。法務大臣、お聞かせ願います。

森山国務大臣 国会議員の方々が議員立法として検討された法案の内容につきまして、法務大臣として、いいとか悪いとかいうことを申し上げるのは差し控えるべきかと存じます。

 また、自己株式の処分に関する法制度の整備につきましては、商法だけの問題ではなくて、会計制度や税制上の手当ても必要であると承知しております。法務当局に対しましては、法案が成立すれば、これに応じて、他の制度との整合性に配慮した手当てを行うように指示をしているところでございます。

平岡委員 それから、今回、金庫株ということで恒久的な制度として位置づけられるわけでありますけれども、金庫株、自己株式については、今までも、どういう取り扱いをするかについて学者の意見が分かれているようなところ、例えば新株の割り当てについて、自己株式には新株の割り当ては任意であるというような見解もあるとか、いろいろな見解があったりして、必ずしも法律の中できちっと規定されていないということがあるわけですけれども、こうした部分について、自己株式の取得という制度を恒久的な制度としてつくるのであれば、きちっと、やはり法律の中で位置づけをはっきりさせるべきであるというふうに思うのですけれども、そうしたものについて手当てがきちっとされていないのはどういうことなんでしょうか。立法者にお伺いします。

長勢議員 自己株式の法的な位置づけを明確にすべきではないかという御意見だろうと思いますが、御案内のとおり、現行法におきましても自己株式の法的位置づけはされておるわけで、今回の改正において、その点について全く変わるところはないわけでございます。

 具体的にも、自己株式に対する利益配当云々については二百九十三条、また議決権につきましても、二百四十一条二項で明文で否定をしておりますし、また、自己株式に対する残余財産の分配は認められないとか、あるいは、株式の分割、併合は自己株式についてもその効果が生ずる、また、新株の割り当てにつきましても、会社は新株引受権を行使できないといったような解釈は、物の道理として確定をしておるわけでございますので、改めてその点の法的手当ては必要ないもの、このように思っております。

平岡委員 解釈で確定していればそれでいいということではなくて、いろいろ争いがある点もあるわけでありますから、そこは今回、恒久的な制度としてつくる場合には、法律的にはどのような位置づけになるのかということをはっきりとさせるという作業もきちっとやっておかなければいけない。そういう意味で、今回のこの金庫株の問題について言えば、余りにも急ぎ過ぎて、法律的に言うと、雑な法律になってしまっているというような気がいたします。

 ちょっと時間がないので次に話題を移しますけれども、例の法定準備金の減少手続の話なんですが、法定準備金の減少手続が今回定められたわけでありますけれども、これもまた、なぜ緊急経済対策の中に入っているのかということが非常にわかりづらい、一般の人にはわかりづらいということであります。

 一説によりますと、昨日、金融庁の方で、政府が持っている銀行の優先株について、無配に陥ったときに議決権をどのように行使するのかというようなことについての方針が示されたというようなこともありました。

 いろいろ憶測をしてみますと、政府が持っている銀行の優先株について議決権が与えられてしまうような事態、つまり、利益が上がらず無配になってしまって、法定準備金の取り崩しもできないというようなことで配当ができないというようなことで議決権を持ってしまうことに対して、どうしていいかわからない、そういうことにならないように、この際、法定準備金の減少手続を定めた方がいいのじゃないかといったようなことも憶測されているわけでありますけれども、この点について、金融庁の方から、政府が保有する銀行の優先株に議決権を与えることを避けるために今回の法定準備金の減少手続が行われているのではないかという点について、お答え願いたいと思います。

渡辺政府参考人 お答えいたします。

 先生御承知のように、現行の銀行法におきましては、法定準備金の取り扱いに関しまして、商法において、利益準備金の積み立てを資本の四分の一に達するまでとしているところを、銀行の場合に限りまして、資本の額に達するまでとしているということがございまして、これは、銀行の財務基盤充実の観点から、特則という位置づけでございました。

 そこで、今回、商法改正に伴う整備法案におきまして、この考え方を維持しまして、商法においては、法定準備金を資本の四分の一まで減少することができるという規定が新たに設けられることになっているわけでございますけれども、銀行法におきましては、先ほどの充実の規定、一般が四分の一に対して銀行が十割ということとのパラレルの考え方で、法定準備金を資本の額まで減少することができるという規定を新設するということにしているというふうに承知しております。

平岡委員 そこで、現在の資本注入行で、今回新たに銀行法も含めて改正になったわけでありますけれども、法定準備金の減少手続が認められたことによって、この新しい法律体系の中で取り崩しをすることが可能な銀行というのはどのくらいあるのでしょうか。

浦西政府参考人 お答え申し上げます。

 公的資本注入行のうち、現在の状況を前提といたしまして、そういう取り崩しが理論的に可能となるのは六行でございます。

平岡委員 きのうの森金融庁長官の記者会見の中に、無配に転落する可能性のある金融機関というのはあるのかというような質問に対して、現実的には考えていないというふうに言っているわけであります。この現実的にという言葉、これは、今回の資本減少、法定準備金の減少手続ができればそういうことは考えていないということなんでしょうか、それとも、もともと、これの手続がなくても、無配に転落する可能性については現実的には考えていないということなんでしょうか。

浦西政府参考人 お答え申し上げます。

 長官の申し上げた、現実的には考えていないということは、今回の商法改正にかかわらず、現在の銀行の状況から見て現実的には考えていないということでございます。

平岡委員 そこで、この法定準備金については、平成十二年の例の株式消却特例法のときに附帯決議が付されていまして、このときの附帯決議では、政府に対して注文をつけているわけであります。

 内容的には、「資本準備金による自己株式の消却については、今後二年を目途に、会社をめぐる最近の社会経済情勢とその変化に対応できるものとなるよう、具体策を検討し、必要な措置をとること。」に「格段の配慮をすべきである。」というふうに附帯決議で言っておりまして、政府に対して、ちゃんと検討した上で必要な措置をとれと言っているにもかかわらず、今回、そうしたことをみずから破って、議員立法という形でこういうものを出してしまったということであるわけなんですけれども、立法者としては、この附帯決議との関係でどのようにお考えになりますでしょうか。

谷口議員 まさにおっしゃったような附帯決議があったわけでございますけれども、そもそもエクイティーファイナンスが一九八〇年代に頻繁にやられまして、積み上がった法定準備金、特に資本準備金でございますね、発行価額の二分の一を積み立てるわけでございますけれども、民間企業はほとんど満額に近い積み立てをやっておったわけでございます。現に、状況を見ますと、上場企業のうち、ソニーだとかトヨタ自動車なんかは資本金を上回るような資本準備金がある。しかし一方で、これが取り崩せない、積み上がったままだ、そういうような状況があったわけでございます。

 これを取り崩すには、資本の欠損のてん補だとか資本の組み入れ以外にない。資本の減少手続があるということに対しまして、法定準備金の取り崩しの方法がない。こういうことで、多額の法定準備金が積み上がっておったということもあって、今回、この両者合わせて資本の四分の一まで積み立てればいい、あとは取り崩してもいい、こういうような形になったわけでございます。

 当時、平成十二年三月の株式消却特例法の附帯決議におきまして、今先生おっしゃったような附帯決議があったわけでございますが、会社をめぐる最近の社会経済状況の変化に対応するものとして、今申し上げました状況の中で、議員立法で措置をさせていただいたところでございます。

平岡委員 時間がないので終わりますけれども、きょうの審議をしてみても、緊急経済対策という、その緊急性というのは一体どこにあるのかということがどうもよくわからない、そういう法案になっていると私は思います。こうした商法の基本的な法制に係る部分については、きちっとした議論の中で、政府としても本来の果たすべき役割をきちっと果たした形でやっていただくということが必要であるということを私として指摘させていただきまして、私の質問を終わります。

保利委員長 次に、日野市朗君。

日野委員 日野市朗でございます。

 時間が三十分しかないんです。それで、このいわゆる金庫株問題についてもいろいろ議論をしたい点が多いのでありますが、実は私も法務委員の一人として、大阪の池田市の池田小学校事件、この問題についてやはり話題にしないわけにはいかない、少しそれで時間をとります。

 私は、この事件を知りまして絶句いたしました。アメリカの学校での銃の乱射事件なんというのがあって、アメリカというのは何て野蛮なことをやっている国だ、こう思っていたんですね。ところが、今度の出刃包丁を銃器に置きかえれば何にも変わるところはない。私も非常にこの事件を見て残念に思います。

 私は、法務省それから警察庁なんかには、こういう事件が起きないような、特に常習的な精神病質の犯罪者、犯罪者と呼んでいいのかどうかわかりませんが、そういう人というのは警察庁と法務省あたりがきちんと連携をとりながらその監視を強めていれば、この事件は避けられたのではないか、こう思っているんですよ、実は。

 その日に警察署に呼ばれる。その前にもいろいろなことがあって、処罰できないというのでほうり投げておいたような感じですね。まことにその点一点を見ても残念でならない。

 そのほかに、何か電車の中でもうちょっと詰めてと言っただけで殴り殺されたり、まことに日本の社会、かつては治安のよさを日本は誇りにしていたわけです、今やその誇りは地に落ちたと言ってもいいのではないか、こんなふうに思います。

 そこで、大臣に伺います。

 私もいろいろ勉強させてもらいました。法務省で今、この事件が起きてからですよ、きのうの話です、触法精神障害者についての検討を今法務省と厚生労働省とでやっている、そして、何か近いうちにもまたあるらしいですが、こういうものをさらに進めていきますというような感じなのでありますが、私はそれでいいのかなというふうに思います。

 私は、決して、人権に対する拘束を加えて、刑罰的、刑法的な感覚で処理していくということは必ずしもいいとは思わないが、何かこれは知恵を出してもらわなくちゃいかぬ。物事というのは、私はこう思うんです。最初に、こうこうこういうふうな目標、ターゲットといいますかゴールをねらいましょうといっても、それがなかなか難しいときはいろいろな試みをやってみるというのも一つの方法であろう、こう思っているんですね。ですから、現行法内でできること、これは一体どういうことか。

 さっきも言いましたように、例えば、警察庁ときちんと連絡をとって、そういう犯罪の可能性のある人物についてはきちんと見ておく。例えば保護司というのがありまして、私も保護司なんですが、やはりいろいろ委嘱をされれば注意してその人の生活態度なんかも見ているわけですよ。こういう制度を、保護司の皆さんには大変な御苦労をしていただいているわけだが、その御苦労をさらにしていただいて、犯罪的な性向のある人物をちゃんと見ていくというようなことなんかも考えられないのかとか、いろいろと考えているわけですが、現在の法制で何かできるということ、それから将来を展望しながら、将来を見ながらこうしたいという考え、これなんかがありましたら、ぜひ法務大臣にお聞かせをいただきたい。

 私は、総理大臣が言われた、刑法の改正をも含めてという考え方、これは法務省と恐らく相談されずにぱっと言ってしまわれたんだろうと思う。しかし、総理大臣がああやってマスコミに語ったということ、そしてテレビを通して全国に知れ渡ったということは、これは大変なことなんですよ。やはり総理大臣の発言でございますから。

 そういうことも含めて、どういうふうに考えておられるか。そういうことをやりたい、やりたいと言って、参議院選挙の後にというのでは困るんですよ。ひとつ法務大臣の御意見をお聞かせください。

森山国務大臣 あの事件が起こりましたのはちょうど金曜日のお昼ごろでございまして、ニュースを見て、その日の夕方、たまたま閣僚懇談会がございました。あのニュースについて、みんな何とも言いようがない痛ましさを感じると同時にやりきれなさも感じまして、絶句する気持ちというのは先生と全く同じ感じで、閣僚いずれも異口同音に、何とかしなければいけないということを言ったところでございました。

 お尋ねの精神障害者による重大な犯罪を防ぐための方策といたしましては、まずもってその原因である精神障害について早期に適切な治療を行うということが先決ではないかと思います。現在は、都道府県知事が、このような犯罪に至った精神障害者を含め、自分を傷つけたり他人を傷つけるおそれのある精神障害者を、措置入院と称しまして、入院させる制度がございます。これが適切に運用されるということがまず大事であると考えております。

 もっとも、殺人とか放火などの重大犯罪を犯した精神障害者の処遇がどのように決定され、どのように処遇されるかについての、被害者を含めた社会の関心に十分にこたえるという観点などからいたしますと、今後、入院治療の必要性等の判断に当たりまして、医療的な判断に司法的な判断も加えるということも検討されてもよいのではないかと考えますし、その必要性やそのあり方などについて、各般の御意見などを参考にしながら、法改正も視野に入れ、さまざまな角度から調査検討する必要があると考えております。

 このほか、退院後、継続的に適切な医療を提供するシステムの必要性やそのあり方、医療施設のあり方などについても検討が必要であると考えております。

    〔委員長退席、奥谷委員長代理着席〕

日野委員 大臣の立場としてお話しになれるのはそのようなことにしかならないのかなと思いましたが、あの子供たちのこうむった被害、命を失い、傷害を受け、そして親たちがどのような立場に突き落とされたか、そういうことを考えていけば、これは我々としてもやはりきちんとやるべきことはやらなくちゃいかぬ、こういう思いに強く駆られます。

 法務省は、こういう治安を守る中枢部にいるわけだから、今やれること、将来に向けてどのようにすべきか、こういうことはしっかり考えていただきたい。それこそ政治家が自分の政治生命をかけて、そして行動をすべき一つのテーマであるというふうに私思いますので、その点は、我々も意見があれば積極的にこれからも言っていかなくちゃいかぬなと思いますし、我々の伝統的ないろいろな考え方に、場合によっては変更を加えなくちゃいかぬところもあるかもしらぬ。

 特に、日本の治安状態なんというのは、犯行に及ぶ者が切れたとよく言うけれども、一般社会の方がもう切れている。いつまでこんな状態をほうっておくんだという思い、これは非常に強いだろうというふうに思いますので、その責めはやはり我々も共同で負わなくちゃいかぬのですから、ひとつそこらを頑張ってもらいたい、こういうふうに思います。

 では、本題である金庫株に行きます。時間はだんだんなくなってきちゃってあれですが。

 問題意識は、今平岡委員が話したところと同じであります。それで、私も、はっきり言って緊急性はない、こう思うんですね。相沢さんがずっと、この緊急性の問題についていろいろ話しておられる。インフレターゲティングだとか、場合によってはこれだけでも相当の問題になる発言をやっておられるんですよ。恐らく、十分それだけの蓄積を持ってお話しになったことだろうと思いますが、今ここでそれをやったんじゃ金庫株の問題に入れませんから、その問題は今回はやりません。いずれまた議論する機会はあろうかというふうに思います。

 それで、今三つの問題を考えられて、株式市場の活性化、それから不良債権の処理、それから都市再生、こういうテーマを三つ考えて、その中で株式市場の活性化ということをおっしゃったんですが、これをやって株式市場が活性化するとは私は思わないんですよ。大体、日本の株式市場、これはもうみんなから信用を失墜しています。私は、一般の千四百兆と言われる個人の預貯金、これを株式市場に引っ張り出そうとしたって、考えてみてください、投資家なんかは全く信用してないです。大体、個人の投資家というのは市場にだまされ続けているんです。証券会社は、一部企業へのの損失保証をやってみたり、それから最近の新聞に出ていましたね、投信株の引き値保証をやっている。こんなのはけしからぬですよ。しっかりとこんなものは取り締まらなくちゃいかぬし、その前には、一応摘発はされたようですけれども、他社株転換債、EBの問題が出ておりましたね。私はもっともっと腐敗していると思うんだ、この株式。

 どうですか、どなたか、ささやき株というのは御存じですか。金融庁でも構いませんよ。――後でよく業者から聞いておいてください、ささやき株というのは何だと。これは、結局、いろいろな情報をささやいて自分では売買しない、よそにささやいて、そして株の売買をするわけです。証券会社がこんなこといまだにやっているんだ。

 こういう状態で、一般の投資家、これを引っ張り出したら、かえってまた大きな損をさせるというようなことになったりするんで、私はこのような状態で株式市場が活性化するとは思えない。どうですか、これで活性化すると思いますか。

相沢議員 いろいろなことをお話しされたのでありますが、私も、これをやったら株式市場が活性化するということは言えないと思っておる。これだけではね。

 ただしかし、今先生がおっしゃったような、いろいろな原因がある。特に、株式市場に対して個人がいわゆる市場離れを起こした原因の中には、先生おっしゃった、いろいろなこともあります。そんなことを言うといけませんが、例えばNTTの株なんかもそうだと思うんですね。今まで全く株に縁がない人も、政府の株なんだから損することはなかろうと思って買った。しかも、あれは抽せんでやったんでしょう。そして、当たったといって喜んで、ばあっと値が上がったらすとっと落っこった。あれなんかも、私の後援会の人なんかに聞いてみると、あれで懲りたと言うんですよ。

 ですから、これは一例ですけれども、そういうようなものがいろいろ積み上がって、株は危ないぞ、普通の者は近づかない方がいいだろうなんということになったんではいけないけれども、それに近い状態があるので、アメリカとかイギリスとかドイツなんかに比べても、日本の個人投資家、個人の金融資産というものの中での株式投資が非常に少ないんだと思うんですね。

 でありますから、私は、これをやったら株式市場の活性化になる、これだけでとは思いませんが、インサイダー取引とか、それから相場操縦に関しても厳しくする、今回そういう措置もとっております、等々、一般の個人投資家が特に安心して株式市場に近づけるように、それからまた、税制の問題は無論ございます。ですから、そういった点についての考慮をこれからもやっていかなきゃならぬ、こういうふうに思っております。

日野委員 今NTTの話が出たから、私お話ししたいが、例えばドイツを見てください。非常に安定しているでしょう。ドイツテレコムの株、やはり発売したんですよ、ドイツは。そのときは株価をずっと低く抑えて、そしてドイツテレコムの株ですから上がり続ける、こうやって彼らは株式市場の信用を守っているわけですね。日本とはえらい違いだ。やはりこれは、日本の市場というものがちゃんとしていないということになると、今相沢さんがおっしゃったようなことなのです。

 それで、私ちょっと聞いておきたい。来年の四月まで取得した自己株を放せないわけでしょう、処分できない。私は、こんな中途半端な法律があるかと。自己株を取得した場合は資本勘定へ入れて、それで処理をしていく。今までが資産勘定でやっていたなんて、これがおかしいのです、そもそも今までが。それを直すのだといえば直すのだでこれは結構なのだが、資本勘定にした場合、ではどのように処理していくか、それを今検討中でございますと金融庁はおっしゃっていました。(発言する者あり)だれでもいいですよ。ただ、これはそんなに時間がかかるわけがない。

 アメリカだって、その例はあるのですよ。アメリカでは、一般的には資本勘定に入れる、そして差益が出た場合は準備金に入ってくるのです。差損が出た場合はどうするか、準備金を取り崩していくのですよ。準備金を取り崩して、それでも足りないときは、今度は利益金からそれを取り崩していく。非常に筋の通った方法でちゃんとアメリカはやっているのです。アメリカのことを随分勉強したとおっしゃるのだが、何でこんなことがそんなに時間がかかるのですか、ちょっと聞かせてください、だれでもいいから。

    〔奥谷委員長代理退席、委員長着席〕

谷口議員 まさに先生おっしゃるように、すぐにできないのかということでございますが、現行の売却につきましては会計士協会で営業外でやる。これを、来年の四月から処分が行われるようになるわけでございますが、その段階でやる。

 ただ、税法上の扱いにつきましては、今、御存じのとおり、税法上は資本取引なのか損益取引なのか、自己株の処分が課税されるべきものなのか課税されないものなのか、こういうことを自己株の法的な位置づけ等々も勘案して決めなければいかぬ、こういうこともございまして、まだ決定をしておらないということでございます。

日野委員 それは余計なことを考えるからですよ。利益は利益でちゃんと課税するシステムをつくればいいだけの話。そのほかに、そっちこっち気配り目配りだか何だか知りませんけれども、余計なことを考えるからそうなる。

 それから、やはり市場をきちんとやらなければいかぬ、市場が信頼されるに足る市場でなければいかぬということで、SECのセーフ・ハーバー・ルールを模範としてやるのですから心配ございません、こうずっと答えているのです。

 ところが、セーフ・ハーバー・ルールというのは、市場に適用になっていくのですが、大体、自己株の取得、それから処分。まず処分について、市場で処分をする、市場で買い付けをする、こういうのは類型として一つある。アメリカの類型としては、オープン・マーケット・リパーチェスという一つの類型がある。それから、公開、ここはセルフ・テンダー・オファーという類型がある。それから今度は、今度の法案でも書いてありますけれども、相対の場合はプライベートリー・ネゴシエーテッド・トランザクションという類型。こういう三つの類型があって、ではセーフ・ハーバー・ルールが当てはまるのはどことどこなのだと考えてみると、これは市場だけなのですよ。公開買い付け、それから公開での処分、こういうのは別に連邦法で規制をされている。そして、この法案では相対となっていて、ほかにも買いますよというオファーが出ていれば、これは相対でいいのだ、こういう決め方をしているわけですが、これについて、セーフ・ハーバー・ルールによる証券取引法、これは適用はあるのですか、ないのですか。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 証券取引法上の話でございますが、自己株式の買い付けにつきましては、原則として市場買い付けまたは公開買い付けによることとされておりまして、株主に平等な売却の機会が確保されているものでございます。これに対しまして、相場操縦を防止するための所要の規定を新設するものと承知しております。

 一方、御指摘の株主平等原則の問題でございます。これは基本的には商法の問題、御指摘のとおり、特に相対の問題と認識しておりますが、今回の商法改正案におきましては、商法上、相対取引については厳格な規制が置かれておりまして、恣意的な価格で株式を買い受けることはなかなか困難になっていると承知をしております。

 具体的には、相対で自己株式の買い付けを行う場合は、その売り主につきまして株主総会の特別決議による承認を要するとする、あるいは、売り主以外の株主にも、売り主に自己を追加することを請求する権利を与える等の措置が講じられるものと承知しております。

日野委員 この法律で、相対もやれることにする、こう書いてあるが、では、これはアメリカでも問題になっているのだが、特定の株主に対してオファーを出す、これはいいのですか。

山崎政府参考人 それも可能でございますが、株主総会の特別決議が要るという縛りがございます。

日野委員 問題は、特定の株主に対してオファーを出す場合、その株価が問題ですよ。株式の時価よりも高い価格で特定の株主から買い取る、これは違法ですか、適法ですか。

山崎政府参考人 これは議員立法ですから、私ども所管して全部練ったわけではございませんけれども、私どもの理解といたしましては、それも含めて株主総会の特別決議というところで全部チェックをするということになるわけでございますから、不当に高いもので購入するという場合には、それは特別決議でチェックをする、こういうシステムだろうと思います。

日野委員 では、もう少し難しい問題を出しましょう。

 では、時価よりも安い価格で買い取るという話はどうですか。敵対的な買い手が入ったとき、安い株でもどんと買ってそれを防ぐという必要が生ずる場合があるわけですよ。これはどうですか。

山崎政府参考人 安い場合もございますけれども、安い、高いいかんを問わず特別決議が必要だということでございます。安いものを全部その会社の方で受けてそれを利用するという場合の問題点もあるわけでございますから、やはり株主総会の特別決議が要るということでございます。

日野委員 これは総会の特別決議もそうなのですが、アメリカの場合は、判例法の国でありますし、それからコモンローの原則というのがあるから、こういうのが処分できるのですね。

 日本の場合、セーフ・ハーバー・ルールから漏れている部分をどのように扱うか、こういう非常に難しい問題があることはよくわかるのですが、こういう問題について、現在、来年の四月までに、いろいろなケースを分けて全部検討をするということになるんでしょうか。

三國谷政府参考人 今回の相場操縦に関します規定につきまして、内閣府令でございますが、買いの部分につきましては施行日まで、それから売りの部分につきましては、来年の売りができるようになる時点までには成立するということで考えております。

日野委員 敵対的買収ということをよくお話しになるから、ちょっと応用問題のようで意地悪だったけれども、ちょっと聞かせてもらいました。

 セーフ・ハーバー・ルールをちゃんと我が国でも取り入れて、市場をきちんと整備しますからというような話は、これは本当はだめなんですよ。これだけの法律を出すのであれば、これはそのときまでに、証券取引法の方はちゃんとできているんですが、資本勘定の中でどのように会計処理をやっていくかなんということは、本当はちゃんともうできていなくちゃいかぬ。私に言わせてもらえば、おんぼろ法案だ。おんぼろ法案と言わせてもらいますよ、悪いけれども。少なくとも筋はよくないと思います。

 結局、さっき平岡さんも聞いていたけれども、ああそうだ、金子さんも我々の党に説明に来たときに、既にこの金庫株が解禁されることを予定して二つほど準備している企業がある、こう言われたが、私は、それがどういう業界であり、何という会社かそれは知りません、しかし、もう既にそれに合わせるためにある企業がそれの準備をしている。もしこれで法定準備金の取り崩しができないとそれは大変なことになっちゃうというので、慌てふためいて、ちゃんとこの法案とペアになって出てくるべきいろいろなものを間に合わないままに、どたばた、どさくさというか、そういう形で出しているんだと思うのですよ。

 私は、法務省の態度にも非常に問題あると思う。はっきり言わせていただいて、これは法務省がつくった法案です、議員立法とはなっているけれども。もっと法務省はきちんと自分たちの誇りを持って、日本の国の法秩序、これにしっかり取り組んでいるわけですから、日本の国の経済法秩序もあなた方の役割なんですよ、こういう法秩序をきちんと守ってやっていくという根性を据えた仕事をやってもらいたい。

 これは私は反対です。

 終わります。

保利委員長 次に、西村眞悟君。

西村委員 今の御質問の趣旨、極めてずさんだなという部分については、私もそのような感じを持っております。

 ただ、私は、自由党は、自己株式の取得は本来自由の領域にある、したがって、その上に立っているものが少々継ぎはぎだらけでも、自由な領域に戻すことならばそれはいいんだと。

 それで、自由な領域にあるものですから、有価証券を購入するんだという前提で、私は、やはりはっきりとこの有価証券法の原理、それを押さえて、自己株式取得についてはどうするのかというしっかりした、緊急経済対策ではなくて、しっかりした理論的な詰めがなされておる必要があると思っております。

 答弁を聞いておりますと、自己株式取得が即株式会社の構造上の問題と同じ次元で、そこに直結するんだという答弁がたびたび見受けられました。なぜそうなんだろうというふうに考えますと、本質は、自己株式取得は自由な領域であって、別に会社の構造上の問題と関係ない。しかしこの法案は、その自己株式取得を、法定準備金を取り崩して、その取り崩して減額した分だけの費用でできるというふうに書いてあるんですね。こういう法案なんでしょう。だから答弁が、前提としての理論から外れて、会社の構造上の問題に直結するような答弁になっているんだ、こう思うわけです。自己株式取得が即構造上の問題ではなくて、法定準備金を取り崩したその財源をもってするから構造上の問題になるんだ、出資の払い戻しになるんだということであります。

 そういうふうに見ますならば、法定準備金を取り崩して製薬会社が自動車を購入するというときも、同じ手続になるんですな、多分。構造を取り崩して自己株式を買うんじゃなくて自動車を買うのも同じことですから。こういうふうな私なりの整理の仕方でよろしいですか。

漆原議員 そこのところは先生の御持論のところでございまして、私どもは、株式会社というのは有限責任だというところでございますから、この有限責任である株式会社が会社債権者を害さないようにしなくちゃならない、会社の財産が散逸をすることを防がなきゃならない、こういう認識に立っております。

 したがって、もしも自己株取得の財源に規制をかけない場合には、例えば自己株式の取得財源が資本に食い込んでいくような場合、これはやはり自己株式の取得が出資の払い戻しになる場合もあり得ます。その結果、会社債権者の本来引き当てとなるべき会社資産が先に株主に払い戻される、こういうことになりかねません。したがって、改正法案では、自己株式の取得価額の総額を、株主に配当できる配当可能利益の範囲内というふうに限ることにさせていただいたわけでございます。

 また、改正法案は、法定準備金についても自己株式の取得財源になり得ることとしておりますが、この場合には、資本減少の場合と同様に、株主総会の決議とそして債権者保護の手続を経なければならないということとして、法定準備金の減少手続をとらせていただきました。

 したがって、改正法案は、自己株式の取得が会社の出資の払い戻しとならないように、細心の準備をして配慮しているところというふうに考えております。

西村委員 早く質問を終わろうと思っていましたけれども、そういう答弁があったら、ちょっと長引くかもわからぬ、時間いっぱい。

 資本というものは、紙に書かれた貸借対照表上の金額であって、現実に会社が何ぼあるかとは関係ないんですね。そういう前提からいうならば、自己株式を取得することが即株式保護の資本減少の手続を踏まねばならないということとは直結しないというふうなことを私は考えているんですよ。

 つまり、先ほどからたびたび例に出しますように、自己株式のかわりに自動車を買う。一億円の資本を持っている株式会社でも、中は空っぽでゼロだというのはざらにあるわけですから、自己株式を購入したからこうなったんじゃない、ずさんな経営、あるだけの財産で自動車を購入した、こういうことでもゼロになっておるんです。資本は変わらないということですな。

 そういうことで、繰り返しになるからやめますけれども、もう少しやはりじっくりと資本の意味と債権者保護の意味、自己株式についてはやっているように見えるけれども、本質的には自己株式が有価証券であるという前提から見るならば、少し論理的に整合性がつかないなというのが私の感想ですね。それをやっていてもしようがないし、もう採決があと数時間後にあるということですから、余りこれをやりませんが。

 さて、緊急経済対策で、相沢先生がお戻りになって、相沢先生、経済の専門家で、お聞きしたいと思っているのですけれども、これが緊急経済対策の名に値するのかどうかです、現下の我が国の経済を見ておりましてですね。

 午前中には参考人質疑がありまして、経済界の方が、会社としてはいろいろな行動ができるんだ、対処ができるということを言っておられましたけれども、これが経済界全体として現状の景気をどれほど浮揚するかということについては答えられないというふうに言っておりました。

 全般的に言うならば、私はこう思うのです。我々の経済は長年サプライサイドに原因がある、そして、サプライサイドに原因があるがゆえに構造の問題である。構造の問題であると言い始めれば、これは政策ニヒリズムに陥るのですな、政策の問題ではない、構造の問題だと言っておりますから。

 この法案も、結局、株式会社という供給側、サプライサイドの緊急経済対策と称してやっておる。さて、緊急経済対策と銘打って我々はこの法案を審議した以上、緊急経済対策の切っ先が、この法案が間違った方向をかき回しておるのなら、レッテルの詐欺ですわな。現状の、政府もやっと認めたデフレという状態。サプライサイドに問題があるのじゃなくて、巨大なデフレギャップが存在しておって、需要が高まれば供給サイドはそれに即応できる態勢にあるにもかかわらず、需要が低迷している。

 したがって、先生は、今の経済は供給側に問題があるから経済不況になっておるんだという御認識か、それとも需要側か、どちらの御認識を持たれて、緊急経済対策、具体的にこの法案を審議に付されておるのでしょうか。その点についてちょっとお伺いいたします。

相沢議員 ちょっとお答えしにくいような質問なんですが、私は、両方に本当は原因があるのだろうというふうに思っておりますけれども、現在の状態においては、やはり需要サイドに非常に問題が多いというふうに思っております。

 その原因としてはいろいろあろうかと思いますけれども、やはり一つは、企業のリストラが進んでいる、それはまた不良債権の整理というものとも関連をいたしておると思いますけれども。ですから、結局個人の消費支出というものが非常に低迷をしている。このことは、つい最近発表されました一―三月のGDPもマイナスだ、個人の消費支出の減少も一つの大きな原因になっているというふうに思います。平成十二年度は、実質というよりもむしろ名目で考えた方がいいと思うのですけれども、名目ゼロということで見ていたのが実はマイナス〇・六%ということなんですね。

 ですから、名目で見てGDPがマイナスになるというような状態は、やはり私はどう考えてもこれは、異常と言ってはいけないかもしれませんが、そうだろうと思うのですね。ですから、やはり需要サイドを何とか刺激する政策をとるのが一番早道ではないかというふうに私は思っております。

西村委員 法務委員会ですが、緊急経済対策というレッテルのもとでこの法案を審議されておりますので、この問題で、ちょっと今先生の重要な御答弁がありました。やはり需要サイドだと。需要サイドということは、緊急経済対策はサプライサイドにするのではなくて、需要サイドにしなければならない。

 さて、需要サイドの構造が悪いとはだれも言えないわけです。したがって、ここでは政策の問題になってきますね。供給サイドでは構造が悪い。これは政策ニヒリズムになってきておりました。政策の点検がないわけですから、構造が悪いと言うだけですから。

 需要サイドに関して我々の政策は成功しておったのか。つまり、ゼロ金利は何のためにやって、当然受け取るべき利息を国民から奪いながら、その目的を達しておったのかという問題であります。これは、G7で国際約束までしてきております。私の見るところ、ゼロ金利は、まだまだ強い日本の製造業を悪化させ、貿易黒字を瞬間にしてアメリカに抜き去るシステムだ、こう思います。

 さて、ゼロ金利のその目的どおり、通貨の流動を高めておるのかということを見ますと、全く高まっていない。ゼロ金利の中でどういう社会現象が起こっているのかといえば、日本全国、都道府県、主要都市のターミナルに一番目立つ広告はサラ金の広告であります。そして、ゼロ金利政策のもとで不況にあえぐ国民をしり目に、サラ金業者は世界的大富豪に名を連ねております。ゼロ金利政策で、国民は有利な金利で資金を借りることはできず、サラ金に走り、そのおかげで、債権取り立てで年間三万人も自殺者が出ております。これは、明らかに構造の問題ではなくて政策の失敗であります。

 つまり、大蔵省は解体された、日銀だけが聖域で残っておる。日銀がやるべきことをやっていなかった。さて、やるべきこととは何か。通貨を発行することである。政府が持っている通貨発行権を行使する、日銀が専権として持っている通貨を発行する、日銀券を。それをやらずしてゼロ金利だけで固定して、現実的にゼロ金利の中で、国民は高金利のサラ金に飛び込んで資金調達をしている。全国、庶民、津々浦々、これによって苦しんでいる。こういう矛盾が起こっているときに、我々はなぜ需要サイドに緊急経済対策をしないのだろうかというふうな思いを持っております。

 今、私の質問の前提は、需要サイドが一番問題だ、ここを刺激しなければならないというお答えをいただいた上でさせていただいておりますが、先生のお考えをちょっとお聞きしたいと思います。

相沢議員 どうも金庫株の法律の議論じゃないような気もしますけれども、私の考えを申し上げますと、やはりこの数年間、日本の経済がこういう低成長を続けたことも異常だと思いますし、特にゼロ金利というのは極めて異常な状態だと思っております。ですから、これは長く続けるべきものじゃないと思う。それはもう先生も全く同じお考えだと思うのですけれども。ただ、ここ数年間の経済情勢のもとにおいては、投資を刺激する、これは輸出もありましょうし、国内生産もありましょうけれども、そういうことを前提として考えますと、やはり金利の引き下げを続けていかざるを得なかったという情勢にあったのだろうと思うのですね。

 昨年の日銀が、もうゼロ金利を解除すべき時期であるということで、つまり経済が底を打ったという認識のもとにゼロ金利政策の解除をしたということで、その当時、政府サイドの審議委員、これは当時の大蔵省、それから経済企画庁、その代表は反対いたしました。反対したけれども、結局、採決でゼロ金利政策の解除というのは行われた。

 その後、日銀が考えているような姿で経済は推移したわけじゃありませんので、はっきり申しますと、結局、ゼロ金利解除は早急であったと言わざるを得ない。しかし、そのことを認めて再びゼロ金利に戻るということではなくて、恐らく、日銀は従来そういう政策をとったことがないと思うのですけれども、量的緩和ということでもって実質的にゼロ金利に復帰したというふうに受けとめておるわけであります。

 私は、日銀に、もっと資金を供給しろ、つまり、今当座預金五兆円ということになっていますけれども、もっとこれをふやせ、そのためには、短期国債等の買いオペだけじゃなくて、中期、場合によっては長期の買い切りオペをやったらいいじゃないかということを言うのですけれども、とにかく、実際の市中の金融機関の貸し出しが伸びない状況のもとにそういうことをやってもその効果がないということを日銀はしきりに言うわけです。そこは私は実はそうは思っていないので、そこで金融を緩めるということが、今の状態においては一番効果があるのじゃないかというふうに考えているわけなんです。

 ですから、おっしゃるように、ゼロ金利を継続するがゆえに、とにかく、預金者にとっては利息も得られない、昔から見たら考えられないような低金利のもとにおいて、要するに所得も減少しているという状態のもとにおいて、言うなれば、需要サイドから見れば、それが大きなブレーキになっていることは明らかです。ここ当面は、日銀が思い切って資金供給を緩和する、量的に緩和するということをやるのが一番有効なんじゃないかというふうに私は思っております。

西村委員 いい御答弁をいただいた。それで、先生がおっしゃっておるような方向には今なかなか行っていない。八方ふさがりなんですね。それで、政策ニヒリズムに陥って、構造が悪いのだ、構造改革なければ経済改革なし、不良債権処理なければ景気回復なしという方向に行っているわけですね。

 しかし、政治家の発想は別だろうと私は思うのですね。優良債権が不良債権になったのです。不況だから不良債権がふえたのです。不良債権があるから不況になっているのじゃない。政治家の発想というものは、現在ある不良債権を優良債権に転化する方法を考えたらいいであろう。不良債権の買いオペをやったらいいのです。特別銀行をつくって、その資金は通貨を発行してやったらいいのです。すべての銀行システムから不良債権の重荷を取り去る、そして銀行システムを回し始める。そうすれば、通貨は回り始め、需要はふえていく。先生がおっしゃった需要サイドが刺激される。そのときに、政府が買い取った不良債権は優良債権に転化していくだろう、こう思うわけでございます。

 先生がおられたから、一度こういうことを聞いてみたかった。というのはなぜかといいますと、緊急経済対策だから。我々、緊急経済対策だからといって、失礼な言い方ながら、いろいろ理論的に疑問のある法律を審議しているわけですが、これが経済の本当の活性化に切っ先が届いてなければ、何のためにこれをやっているのだ。もう少し落ちついて、商法の基本の、また有価証券法の基本のことぐらいやってくれよと私は言いたかったわけでございます。しかし、きょう、いい御答弁をいただきました。

 我々は、かけ声だけで、構造改革路線というのは政策ニヒリズムだと思っております。

 漫談をしても仕方がありませんので、聞きたいことはお聞きいたしました、これで質問をやめます。ありがとうございました。

保利委員長 次に、木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 先週の金曜日に続いて、商法改正、金庫株解禁問題についてお聞きをいたします。

 今度の改正法で、これまでの取得目的による規制を撤廃する、そして資金の面でも資本準備金の取り崩しまで認めて、会社が自己株式を取得し、保有し、売却することを認める。

 この最も大きな問題の一つが、私、前回は、資本充実の原則に反するという問題を指摘しましたが、もう一つの大きな問題が、何と言っても、これで我が国の公正、健全な株式取引市場が保障されるのか、この根本問題だと思うのです。

 自己株式を取得する会社は、当然ですが、株価を左右する、みずからの会社にかかわるすべての事実を知る立場にあります。ですから、私は、会社が自己株式を取引するということ自体、それ自体がもうインサイダー取引じゃないかと思うのですが、もう一つ、それに伴い、自己株式の買い付けや売却によって株価操縦を容易にできるという立場に立ちます。ですから、私は、これから、時間の許す限り、インサイダー取引の規制の問題と株価操縦の規制の問題についてお聞きをいたします。

 二つ、分けて聞きます。

 最初は、インサイダー取引規制の問題です。金融庁をお呼びしております。

 現行証券取引法百六十三条から百六十七条には、インサイダー取引の規制の仕組みが非常に詳しく記載されております。細かい内容は結構でありますが、大きく、現行証取法のインサイダー取引規制の基本的な考え方、どういう立場でこの法律が立案されているのか、簡潔に答弁願いたい。

乾政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘になりましたように、証券取引法は、インサイダー取引の発生を防止するために、上場会社等の関係者等が所定の事実を知った場合には、それが公表された後でなければその会社の株式等の取引をしてはならない旨を規定しているわけでございます。

 その重要事実は証取法に個別に具体的に列記されているわけでございますけれども、このインサイダー取引規制の考え方と申しますものは、上場会社等の会社関係者等が、会社の内部者としての地位、立場に基づきまして、当該上場会社等の業務等に関する未公表の事実を知った場合には、その者が、その未公表の重要事実に基づき当該上場会社等の株券等の売買等を行えば、そのような重要事実が公表されるまで重要事実を知り得ない他の一般投資者と比較いたしまして著しく有利となり、極めて不公平となることから、このような取引を禁止いたしまして、証券市場の公正性と透明性を確保し、もって証券市場に対する投資者の信頼を確保しようとするものでございます。

 この規定に違反いたしましてインサイダー取引を行った者につきましては、三年以下の懲役、三百万円以下の罰金、法人の場合には三億円以下の罰金という刑罰の適用対象となる。

 以上が、趣旨及び概要でございます。

木島委員 現行証券取引法がインサイダー取引規制をしている。細かい、非常に具体的な規定が並んでおりますが、答弁にありましたように、その中心的な考え方というのは、株式取引をする両当事者、売り手と買い手、これを対等な立場に立たせることにより公正な取引を担保するということだ、一言で言えばそういうことだと思うのです。

 そこで、証券取引等監視委員会をお呼びしております。この証券取引法によるインサイダー取引規制に対して、監視、告発をしているのが皆さん方であります。平成四年度以降で結構でありますが、何件ぐらい監視をし、告発をしているんでしょうか。数字をお述べいただきたい。

五味政府参考人 お答えいたします。

 平成四年度以降というお話でございました。何件ぐらい監視をし、何件ぐらい告発をしたかというお尋ねでございます。

 まず、告発の方を申し上げますと、平成四年の創設以来、インサイダー取引に係る刑事告発は合計十三件告発をいたしております。この間、すべての告発事案が合計三十六件でございます。その中の十三件がインサイダー取引の告発であります。

 また、監視をしというお話でございましたが、私ども取引審査部門というものを持っておりまして、日常的に、例えばインサイダー取引でございますと、重要事実が公表されますと、その銘柄につきまして直ちに監視活動に入ります。こうしたことで、いわゆる内部者取引、インサイダー取引に関する取引審査を行った件数というのは、平成四年以降で合計八百七十件ございます。

木島委員 ちょっと提案者に感想を聞きたいんですが、毎日毎日、我が国では膨大な株式の取引が行われている。それを監視し、証券取引法をしっかり守らせる任務を証券取引等監視委員会が担っている。平成四年以降、設立後今日まで、監視が八百七十件、告発が十三件、インサイダー取引についてですが、この数字をお聞きしてどんな印象をお持ちでしょうか。それぐらい公正に日本の株式取引が行われていると見ているでしょうか。それとも、そうじゃなくて、実際上は膨大なインサイダー取引はあるけれども、それはなかなか難しいから見つからないとお考えでしょうか。見つからないというお考えでしたら、その原因はどんなところにあると考えているか。まず、提案者の感想で結構ですが、この数字をどう見るか、お答えいただきたい。

谷口議員 非常に難しい問題でございます。どの程度実態的に相場操縦、またインサイダー取引が行われておるのか。今金融庁の方から報告があったわけでございますが、本来そういう相場操縦、インサイダーがすべて摘発され行われておるかということにつきましては、若干やはり疑問のあるところもあるわけでございます。

 そうした状況の中で、今回、自己株式を自由に取得し保有し処分するという法案を我々提出をさせていただいたわけでございますが、今の状況を十分勘案し、一般的な先生がおっしゃるような状況は我々もないと確信してやっておるわけでございますが、そこはより一層強化をしなければならないということもございまして、今回、インサイダー、株価操縦につきましての厳格な適用をやったわけでございます。

木島委員 ちょっとよくわからない答弁でありますが、やはり非常に難しい、摘発が難しいという問題だと思うんです。現行証券取引法の規制の仕方も問題があると思うんですが、それともう一つは、残念ながら、今の証券取引等監視委員会の体制が弱い。前回も申し上げましたが、そういういろいろな問題がやはりあるんだろうと思います。

 そこで、提案者に引き続いて聞きますが、今回、会社の自己株式の全面的な取得解禁、保有解禁、これをなすに当たって、インサイダー取引防止のために新たにどんな手だてをおとりになるのですか。簡潔に方針をお述べいただきたい。

谷口議員 今回、インサイダー取引を防止するために、証券取引法第百六十六条に重要事実を追加することといたしたわけでございます。まず第一点として、上場会社等の業務執行を決定する機関が自己の株式を取得または処分することについて決定をしたこと、また第二点といたしまして、当該機関が一たん公表された決定にかかわる事項を行わないことを決定したことが、今回、重要事実に追加をされたわけでございます。

木島委員 そこで、お聞きしたいんです。

 インサイダー取引規制のキー概念というのは、やはり重要事実が何かという問題なんですね。内部者が重要事実を知った場合には、それを公表した後でなければ株式取引が許されないという根本概念でありますから、自己株式取得の事実を重要事実にするということですが、もうちょっと具体的に、では、どういう事実を重要事実にするんでしょうか。自己株式を取得するという株主総会の決議、取締役会の決議、それを重要事実にするというんですが、具体的にどこまで重要事実にするんでしょうか。中身。

 では、もうちょっと具体的に聞きましょう。いつ、何株、幾らで買い付けをする、そういう具体的な決議が今回皆さんから提出されている法案には書き込まれているんでしょうか。取締役会決議では、どこまで具体的な買い付けの事実を決議するんでしょうか。そして、そのことが重要事実として公表されるんでしょうか。そういう具体的な決議の中身をお聞かせいただきたい。

谷口議員 この改正法案におきましては、個々の具体的な状況まで記載をいたしてはおらないということでございます。今申し上げましたこの二点の重要事実を追加いたしたということでございます。

木島委員 そうなんですね。法案を読んでみますと、自己株式を取得する株主総会決議、取締役会決議、株主総会ですと、次の株主総会まで一年間の自己株式を取得する総数、総額、それが決議されるだけですね。取締役会決議もそうなんでしょうか。

 そうすると、先ほど民事局長が何かそうでないかのごとき答弁に聞こえたんですが、そうでしょう。取締役会決議で自己株式を取得する決議はするんだけれども、それは非常に大ざっぱな大枠だけでしょう。大変大事なところですから、インサイダー取引が規制できるかどうかの根本問題に触れますから、きっちり答弁いただきたい。

山崎政府参考人 先ほど私、取締役会の件についてはお話し申し上げておりません。株主総会の特別決議のことは申し上げたと思いますが。(木島委員「それでは訂正しますか。総枠だけでしょう」と呼ぶ)いえ、その話ではなくて、処分のところ、自己株式の。(木島委員「処分のことだけ言ったんですか」と呼ぶ)はい。ですから、前のことは答えてございません。

 新しい質問に関しては、総額、その大枠を定めるというだけです。

木島委員 では、私の理解、イエスかノーか、間違っていたら訂正してください。

 会社が自己株式を取得するについては、株主総会でも取締役会でも、決議では総額と総数のみが決議される。売却については、新株発行手続によると書かれておりますから、新株発行手続の取締役会決議は、当然、株式の価格、売却価格が決められると思うんです。株総数も決められると思うんです。それでいいですか。要するに、売却と取得は違うんですよ。

山崎政府参考人 売却の場合、この場合は価格をはっきり決めるということになろうかと思います。

木島委員 否定できないから、そうなんですよ。これは詰めて読み込んでいきますと。商法はそうなんですよ。

 そうしますと、取得についてインサイダー取引を本当に防止できるかどうか、質問します。

 取締役会決議では、いつ、幾らで、何株取得するか決められないんじゃないでしょうか。もっと大きな枠だけが決められるんじゃないでしょうか。そうすると、何を公表するんでしょうか、提案者。重要事実というのは何なんでしょうか。法務省でもいい。

乾政府参考人 先ほど提案者が述べられましたように、商法に書いてございます、商法二百十条等の規定による自己株式の取得を行うことについて決定したことでございますけれども、決定したことという場合には、それは当然、どれだけの総額のものをいつまでの期間に取得するということを含むものというふうに考えております。

木島委員 ちょっと提案者に聞きますが、総額はいいです。取締役会決議で取得するときに、期間まで取締役会で決めなきゃいかぬのですか。例えば、三日以内に、総額幾ら、株式総数何株買い付けを認める、そういう法律ですか、これは。

谷口議員 だから、まず株主総会で枠取りをするわけですね。(木島委員「それは一年」と呼ぶ)一年です。総会の翌日から次の総会までの間に枠取りをいたす。その期間中に、取締役会決議をもちましてその総数を決定する。総数というか、その都度ごとの総数を決定するということになるわけでございます。(木島委員「ですから、期間。いつまでに」と呼ぶ)期間まではそこでは決定をされておらないわけでございます。

木島委員 はっきりしたと思うんです。株主総会では、一年間に買い付けることのできる株式の総数、総額、これが決定されますが、ぼやっとしたものですね。取締役会決議でも、買い付けをする株式の総数は決まるでしょう。しかし、一体いつその取締役会決議を実行して買い付けに入るか、そのときに何株買うか、幾らで買うか、それは全くないわけです。ないんですね。それは取締役会の自由に属することなんでしょう。

 そこで、私は聞くんです。肝心のそこが取締役会の自由の領域に入っているとなりますと、幾らで買っても構わない、幾らで何株買っても構わない。そして、期間も大事なんですね。取締役会決議があったということは重要事実として公表されますが、一体その会社がいつその取締役会決議を執行するのかわからない。肝心かなめのことがわからない。そして、相対というか、実際、株式売買ですから、売り手あり買い手ありですから、買い手の方には見えない。そのときには、本当に公正な株価というのはできるんでしょうか。

 先ほど、我が国の証券取引法のインサイダー取引規制の根幹は、株式取引をする当事者を対等な立場に立たせる、情報も対等な立場に立たせる、それによって公正な取引を担保するということだと理解するわけでありますが、その根幹のところで公正な取引は崩されるんじゃないかと思いますが、提案者の御見解を伺います。

谷口議員 買い付けの決議が公表された後でなければ買い付けができないということでございますので、これは実体的な判断に基づくわけでございますから、それがインサイダーになり得るのかどうかということは、実体的に考える必要がある。

木島委員 取締役会で、総額何株ぐらい買おう、総額幾らぐらい買い付けに出動しようと決めます。しかし、期限がないわけです。当然、提案者は御案内のとおり、株価というのは時々刻々変動しているわけです。その間、新しいいろいろな事実も出てきます。会社にとってもいろいろな重要事実が出てきます。重要まではいかぬけれども、株価の決定に影響を与えるかなりな事実もあるでしょう。そういうことが全く部外者にはわからない。知り得る立場にあるのは取締役会です。

 そうすると、幾ら現行証券取引法で、インサイダー取引規制のために重要事実を公表しろ、公表するまでは買い付けいかぬぞという規定がされていても、肝心のところがざるになっているんじゃないでしょうか。そのことを指摘して、時間もありませんから、次に、株価操縦問題についてお聞きをいたします。

 まず金融庁ですが、現行証券取引法は、百五十九条で株価操縦規制をかなり具体的な項目を掲げてしております。これも細かい中身は結構ですから、基本の考え方、どういう筋立てで日本の現行証券取引法は株価操縦規制をしているのか、簡潔に御答弁願います。

乾政府参考人 証券取引法の百五十九条におきまして、株価操縦あるいは相場操縦を規制しているわけでございますけれども、その基本的な考え方は、これから申し上げますような行為によりまして相場というものがつくられたときに、他の一般の投資者から見まして、それによりまして誤った情報等を受けまして、多大な損失をこうむることがありましたならば、株式市場に対する公正を害し、また信頼を失うという考え方から、そうしたことを規制しているものでございます。

 大きく分けまして、株価操縦の規制は三つのタイプがございまして、第一に、取引が繁盛に行われていると誤解させるなど、取引の状況について他人に誤解を生じさせる目的をもって仮装取引や通謀取引を行うこと。第二に、取引を誘引する目的をもって相場を変動させる一連の取引等を行うこと。第三に、政令で定めるところに違反して、相場をくぎづけ、固定、安定させる目的をもって一連の取引を行うこと。こうしたことが相場操縦行為として規制の対象となっているわけでございます。

 この規制に違反した者につきましては、五年以下の懲役または五百万円以下の罰金、法人に対しましては五億円以下の罰金に処せられることになっております。

木島委員 それでは、同じく証券取引等監視委員会にお聞きしますが、平成四年に委員会が立ち上がってから今日まで、証券取引法の相場操縦に対する監視がどれくらい行われて、何件ぐらい告発が行われているのか、数字を述べていただきたい。

五味政府参考人 お答えいたします。

 相場操縦と申しますか、価格形成に関する監視活動というのを行っておりまして、異様な値動きをするような株についての取引審査活動を日々行うということでございます。

 この価格形成に関する取引審査の実施状況は、平成四年の創設以降で千五十七件でございます。また、証券取引法百五十九条の相場操縦による、規定に基づく刑事告発を行いましたのは、平成四年以降で四件。

 それから、これは御参考でございますが、お尋ねにはございませんでしたが、価格形成に関して取引審査を実施いたしました結果、証券会社による作為的相場形成の摘発につながるケースがございます。これは刑事罰ではなくて行政罰でございます。これの件数は、平成四年以降で、証券会社に対する行政処分勧告が出ましたものが十八件、それから、証券会社の外務員等その従業員に対しまして、個人の処分の勧告が出ましたものが三十九件ございます。

木島委員 それでは、ついでに証券取引等監視委員会に聞きますが、この数字、平成四年以降千五十七件、相場操縦、価格に関して監視をした、何か問題あるんじゃないかということで監視した。恐らく調査にも入ったんでしょう。しかし、その結果、行政罰は証券会社には十八件、個人には三十九件、そして刑事告発はわずかに四件。

 この数字を、皆さん方一生懸命やっていますから感想を聞くのもなんですが、どう見ていますか。率直にお聞きしたい。

五味政府参考人 お答えいたします。

 大変御配慮のある御質問で、やはりもっと努力する必要があるというのが率直な感想でございます。

木島委員 余り精神的なことを言われてもいかぬと思うんですね。頑張っていると思うんですよ。それだけ相場操縦というのは難しい、これが相場操縦なのかそうじゃないのか、本当に難しいということだと思うんです、株取引の世界というのは。そのように学説、学者の書いたものにも一様に書いてあります。

 そこで聞くのです。

 株価というのは、基本的には需給で決まります。一方の当事者が自己株式だ、私はそれ自体が株価操縦につながるんじゃないかと思うのですが、それはさておき、株取引をする当事者についてどうなるか。株価というのは、買い手にとっては安い方がいいわけですよ。売り手にとっては高い方がいいわけですよ。その思惑同士ですね。売り手にとっては高い方がいい、買い手にとっては安い方がいい、その思惑同士で、非常に大勢の買い付け人、売りつけ人が結集してきて、そこで高値、安値の調整があって、一致がされて株価が決まってくるという世界だと思うんですが、自己株式を買い手企業がやるときにはどういう状況になるのか。

 恐らく立法者は株価を安定させたいということだと思うんです。午前中の参考人もそういう意見がありました。要するに、持ち合いが多過ぎる、日本の株式保有構造は、企業と企業が持ち合っちゃっている、銀行が企業の株を持ち合っちゃっている、その持ち合いを解消しないと日本の経済はよくならないという立場から、持ち合い解消、持ち合い解消ということは株が表に放出されますから株価が下がる、そして株価が下がったんじゃ大変だから、株価を維持するために今回の金庫株をつくるんだ、そういう論ですね。

 そうしますと、自己株を買う買い手企業の立場からいうと、本来、経済法則だと、買い手は株は安い方がいいわけです。安く買って高く売りつけることによって利ざやが稼げるわけですから。しかし、自己株を買うのは株価安定だ、それが目的だというふうに入りますと、高い方がよくなるわけですね、買い手にとって。そうすると、買い手の企業が自己株を買うとき高い方がいいということになれば、幾らでも高値で合意が形成されてくるんですね。そういう世界になるんです。ですから、私は高値買い付けの状況が簡単に生まれると思う。それは、理屈からいっても現実からいっても簡単に生まれます。そうすると、高値操縦は幾らでもできる世界になるということになると思うんです。それ自体が私は大変な株価操縦そのものじゃないかと思うんですが、いかがですか。

金子(一)議員 先生の御指摘された大前提が、私たち立法者の趣旨と大分異なっている部分があるんです。需給対策という位置づけで今構成されましたけれども、むしろ私たちは、需給だけで決まるという話ではない、企業の将来性とか収益性、まさにそれが株を決める話であるという観点。

 したがって、いろいろ産業再編法が準備されて動き出しているということを再三申し上げてまいりましたけれども、それを行うこと、つまり、企業がそれぞれ競争力をつけるためにいろいろなことをやる、そのことが、これは当然に企業競争力をつけるためにやるわけですから、結果として株式というものが、それなりの投資家にとってプラスに反映されてくるという話であると思っております。

 それからもう一つ、強いて申し上げれば、需給といっても、将来性のない企業の株がそれでもって支えられるわけがないと思っているんです。そんなものは一時的な話でありまして、一時的な、短期的なものとしては生きてくるかもしれませんけれども、早晩というよりも、すぐにそれは見抜かれてしまう。投資家というのはそんな甘いものではないのだろうと思っております。

 そういう意味で、やはり市場の対策というのは、根本は市場に任せる。しかし、企業が自分の持っている資産としての不動産や現金やそれから自己株という資本を有効に活用するという対策をとることが株主に対して評価されるかどうか、それが株価を決めるものだと思っております。

木島委員 大きく長い目で見れば、株価というのは、その会社の発展性、将来性というのはあるでしょう。

 しかし、毎日毎日、時々刻々株価が決まっている。その株価の決まり方というのは、需要と供給。もっと具体的に言いますと、買い手にとってはできるだけ安い方がいい、将来高く売り抜けてもうけたい、売り手にとってはできるだけ高く売りたい。当たり前ですね。

 しかし、自己株を買う会社にとっては、高値安定だというそんな目的が入り込んでくると、高くていい。買い手が高くていいということになりますと、幾らでも高値をつけますから、売り手が高い方がいいわけですから、高いところで安定するわけです。

 なぜ私はこれを言うかというと、そうやって高値で買った株を処分するときの問題があるのですね。

 売り払うときには新株発行手続に沿うのでしょう。そうすると、新株発行手続というのは取締役会決議で株価を決めます。何で決めるかといったら、相場ですよ。今、自分の会社の株価が幾らぐらいしているか、この株価なら市民が買ってくれる、機関投資家が買ってくれるというので株価を決めるわけですよ、取締役会の決定で。そうしますと、この法律ができますと、たくさんの自己株を持っているわけですね、持っているところは、株価操縦ができますから、高値で自分の会社の株価を操縦できます、高値で操縦したところですぱっと取締役会をやって、高値で株価を決定して新株発行手続に入っていったら、大量に自分が持ち込んでいる自己株を本当に高い値段で放出することができるということにもなる。

 ですから、私は、そういうことを考えますと、これは、幾らセーフ・ハーバー・ルールどうのこうの言う以前の問題として、インサイダー取引と株価操縦の根本のところでそれを防止できないということを厳しく指摘して、時間ですから質問を終わります。

谷口議員 まさに、今先生がおっしゃったことは相場操縦に当たるわけでございますから、今回のこのセーフ・ハーバー・ルールを参考にした我が国の内閣府令がこの施行とともに出されるわけでございますが、この買い付けの価格につきましては、先生がおっしゃったようなことも踏まえまして、そのような、時価よりも高い価格で買うというようなことは、すなわち相場操縦に当たるわけでございますから、そういうことにならないようにやっていくことになっておるわけでございます。

木島委員 終わりますが、セーフ・ハーバー・ルールの中身に立ち入って質疑できなくて、時間がなくて残念です。

 しかし、そういうふうには実際にはならぬ、セーフ・ハーバー・ルールを持ち出してきてもまことに不十分だ、根本的な欠陥があるということだけ指摘しておきまして、質問を終わります。

保利委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。

 先週に引き続きまして、先週のお話も踏まえながら、幾つか残った疑問についてお伺いしたいと思います。

 私自身は、金庫株の解禁については、この間の委員会の議論でもありますように、株価操作のおそれもありますし、効果も疑問だというふうに思っておりますが、先日来の質疑の中で、提案者の皆さん方は、そもそもの主たる目的は産業再編に寄与すべきものであって、副次効果として株価対策というものもあるだろうけれども、そこは主たる目的ではないですということは再三おっしゃっておられましたので、とりあえずその点は置いておきます。

 ただ、とはいえ、金庫株の話が今回出てきたのは、やはり持ち合いの解消売りが大きな政治問題になって、言ってみれば放出されて市場にだぶついた株式を何とかして証券市場を活性化させようということで始まったものだろう。そういう側面があるということは全否定できないんじゃないのかなというふうに思うわけですけれども、その点は提案者の方、いかがでございますでしょうか。

金子(一)議員 再三申し上げておりますとおり、主たる目的、それから、本来株式市場というものがどういう性格かという議論を与党の中で重ねてまいりました。これがなぜ緊急かという議論が再三御指摘ありましたけれども、私たちが今回提案をさせていただきましたのは、繰り返しませんけれども、今我が国で一番求められている、企業が国際資本市場で競争力を強めていく、それを制限しているようなものであるとすれば、それを緩和して、同じ土俵に立って競争力をつけてもらうことが我が国経済の一つの課題である、そういう意味で取り組んだものでありますし、その趣旨で提案させていただいております。

 ただ、副次的に、株式の持ち合いが放出される、それを企業が金庫株として保有するということもあり得るかもしれません。しかし、そのことは、これまた再三お話を申し上げているとおり、いかほどの効果があるものだろうか。株式というものはあくまでも企業の将来収益性に期待して株主が投資をするものでありますから、一時的なバッファーとはなり得ても、ちょっと時期がたてば、そんな企業というのはそれでもって支えられるものでもない。そういう意味で、これはあくまでも副次的で、あったとしても一時的な効果にすぎません。

 ただし、いろいろな形で今度取得目的をあえて外させていただいたのでありますけれども、何とか証券市場に個人に参入してもらいたい。そのためには、企業がいろいろな形で株主重視の政策をやってくれることを物すごく期待しているのです。俗に言うコーポレートガバナンスでありますけれども、今までの日本の企業というのは、大手企業といえども、転換社債をただみたいな価格で発行して、そして、本来それを株主に対して還元すべきところを全然還元せずに今過剰資本となっているような、やらずぶったくりと私はどこでも言うのでしかられますけれども、そういう企業も全くないわけではない。そういうものにいろいろな形で今回の金庫株を使って株主重視の対策をとってもらわなければ、そういう企業は国際的に生き残っていけないだろう。そういう意味で、企業経営者に財務戦略もしくは株主重視の政策としてこれを使っていただくことを私たちも大いに期待いたしているところであります。

植田委員 繰り返しの部分もありましたけれども、提案者の方が副次効果ということでおっしゃっておられますが、その点はとりあえず置いておいて、ただ、そういう側面は否定はされないというお話だというふうに承っております。

 ただ、提案者の問題意識自体は非常によくわかるのですが、そのことと緊急性というものが必ずしも重なり合ってこないような、逆に言うと、株価対策だと言った方が、その是非はともかく、緊急の対策なのだというふうにそれはそれとして理解するわけですけれども、産業再編に寄与するというふうに構えられると、逆に、その緊急性というところでは疑問の余地があろうということは申し上げておきたいわけです。

 午前中の参考人の質疑の中でも、経団連の方にお伺いしたわけですけれども、実際この間、九四年の商法改正以来、確かに自社株を取得して消却する会社はかなり出てきているわけですが、九五年から去年ぐらいまで全体でトータル二兆円ぐらい、実際のところ非常に多いとは言えない、少ない状況にあります。そして、お話を伺っていると、必ずしも制度の使い勝手のよしあしだけが要因ではないということを経団連の方もおっしゃっておられたわけです。

 とはいえ、少なくとも今のニーズとして、授権株式数には影響せず、企業防衛にも役に立つ、そういう特に目的を限定せぬと保有できたら、言ってみれば企業の再編成、役職員に一定の価格で自社株を買う権利を与えること、ストックオプション等々がやりやすくなるということで、金庫株を解禁してくれるのは非常に結構な話ですよという声が出てきた、そういうことも当然今回の背景にはあるという理解をしていいのかどうか、その点の提案者の御認識についてもお伺いさせていただけますでしょうか。

金子(一)議員 緊急性の点についても再三の議論なんでありますけれども、既に新聞等々でも散見されますように、かなり具体的な、決して銀行だけではありませんで、各産業それぞれの分野で、分割ですとか合併ですとかいろいろな形態でそういうものが出てきております。したがいまして、そういう意味での緊急性、こちら側の緊急性というもので、私たちは早く整えていく必要がある。これが最大の目的だと思っております。

 今の御質問の趣旨がはっきりわからなかったのですけれども、授権の範囲内で目的を限定せずに取得できるようにしてあげればいいじゃないかと。まさにそれを我々はやっているという理解なものですから、まさに委員から御指摘いただいたことを我々はやっているんじゃないですか。

植田委員 そういう背景があったのですねということを確認したかったわけです。

金子(一)議員 そういう意味であれば、私が今申し上げたようなことが立法趣旨であります。

植田委員 もうかなり前になると思いますけれども、例えば小糸製作所の株の買い占め、ある人は日本的買い占めというふうにおっしゃっているわけですけれども、ここのところ余り聞きませんけれども、特に大体六〇年代から八〇年代ぐらいにかけて、株を買い占めてそれを企業に引き取らせるということで、そしてその部分のさやをもうけるということはしょっちゅうあった、しょっちゅうでもないかもしれませんが、あったわけでございます。当時は、会社はそのまま自社株は引き取れませんから、ダミーといいますかほかに引き取らせて安定株主へはめ込むという手法をとっておったというふうに思うわけでございます。

 個別の事例でいけば、昔の話、いろいろあるでしょうけれども、最近、八〇年代であれば、例えば小糸製作所の例が非常に代表的な事例だろうと思うわけですけれども、金庫株を解禁した場合、結局、要するにそれが堂々と行われるということになると思うわけです。私はその点については懸念を持っておるのですけれども、その点はいかがでございますでしょうか。

長勢議員 先生御指摘のような問題はあってはならないことでございますので、今回の改正法案におきましても、そういう問題が起きないように、自己株式の取得あるいは処分によって会社支配の公正性が損なわれることがないように措置をしておるつもりでございます。

 具体的には、自己株式の取得に当たりましては、当然、買い受けができる総額も配当可能利益の範囲内ということで限定した上で、買い受けの方法につきましても、市場買い付けまたは公開買い付けによることとし、また、特定の株主から株式を買い受ける場合には、株主総会の特別決議を要することにしておりますとともに、他の株主にも売却の機会を与えるという措置を講じておるところでございます。

 また、自己株式の処分に当たりましては、新株発行と同様の手続を要求しておるわけでありまして、特定の者に不公正な割り当てを行うような場合には、自己株式の処分の差しとめや無効の訴えが提起できるように措置も講じておるわけでございます。

 このような状況でございますので、今回の改正法案において、自己株式の取得あるいは処分によって会社支配の不公正が行われる、公正性が不当に害されるということはないものと思っております。

植田委員 そこで、もう一つお伺いしておきたいのですが、そもそも金庫株が持ち合いの受け皿になるのだろうかなと、参考人の質疑を聞いておっても疑問に思ったのです。

 というのは、これまででも可能は可能であったわけですが、そんなに多くなかった。そして実際、それが今回金庫株を解禁したからといって、大規模にそういうことが行われるということが私としては余り考えにくいわけです。実際、企業の財務リストラが優先される中で、金庫株に資金を向けるということがやはり場面としては限られてくるんじゃないのかなというふうに思うわけですけれども、その点についてはどんな御理解、御認識でございますでしょうか。

金子(一)議員 今の認識の問題でありますけれども、要するに、企業経営が非常に厳しいのにこんなものやるのか、使えないじゃないのという御趣旨ですね。

 しょせんそうだと思いますよ、そのとおりだと思います。つまり、配当可能利益の中でっきりできませんから、そういう株式を他のものに有効に利用できる企業でなければそれはできないということになると思います。

植田委員 そうなると、いろいろな意見のある金庫株の解禁を行わなくても、逆に、そこに一つ着目するのであれば、それだけお考えになって今回の法案を提案されたわけじゃないとは思いますけれども、現行制度の枠内で、もうちょっと使い勝手のよくなるような、そういう手法もいいんじゃないのかなと私思います。

 といいますのは、要するに、今の同法の中では、自社株を消却する場合、時価取引であっても特定の先から株式を買い戻すことはできへんわけですよね。そしてあくまでも市場から買わないかぬということになっていますが、増資は時価だったら特定の先に増資ができるわけですから、消却についても、時価であったら特定の先から買ってもいいとか、そういうことも一つ考えられるんじゃないか。

 そうなると、別にその部分においては、金庫株の解禁という形をとらなくても、そういう現行法の中で工夫を凝らせば、今の持ち合いの解消を含めた受け皿ということを考えた場合にそういう手だてもあるんじゃないかなというふうにも思ったわけですが、その辺、私も専門的に勉強しているわけじゃないので、どういうのが一番使い勝手がいいのか、ニーズに合うのかというのはちょっとわからないところもあるんですけれども、今の私なりの意見に対しては、どんなふうに御感想を持たれますでしょうか。

長勢議員 現実にどういう形で使われるかということについては、金子議員から答弁申し上げたとおりでございますが、今回の金庫株の解禁に当たりましては、今現行法で主として行われておる消却だけではなくて、自己株式の取得、保有を認めることによって、企業の財務政策の機動性、柔軟性を高める、また企業経営の選択肢をふやすということを目指しておるわけでございまして、その点を考えますと、現行の消却だけを目的にしたような法体系の中では、金庫株の解禁のメリットというものは、また運用というのはしにくい、このように考えておるわけでございます。

植田委員 今、証券市場が活性化していない原因というのは、やはりバブルがはじけて、言ってみれば持ち合い崩れが起こったことが一つの要因だろうと思います。もちろんここは、提案者がいろいろな問題意識を持って法案を提案されているんでしょうけれども、そういうことであれば、持ち合い株にメスを入れる、その解消を図るということが第一義なんじゃないか。逆に、その意味での効果が疑わしい金庫株の解禁ということにすぐ誘引できるんだろうかというふうに思います。というのは、金庫株自体はいずれ売られるわけですから、根本的な解決にはその点ではならないわけです。

 そういう意味で、そもそもの前提としては、法人株主が圧倒的に多い日本の企業の現状を改めていかないかぬということは当然必要なわけですけれども、そうした企業のあり方を変えていくというためには、商法学者の中からも意見として出ておる、例えば持ち合い株を等額で交換して同時消却をする、そういう制度をつくったらいいじゃないかという意見、たしかきょう参考人で来ておられた上村先生はそういう御意見をどこかで開陳されていたやに伺っておりますけれども、そうなると、資金が余りない、乏しい企業にも可能ですし、実際株主の経営監視も厳しくなる。そういう意味で、全体としてやはり企業の体質強化というものが期待されるんじゃないかというふうに私思うわけです。

 もちろんこれは、今回の法案の提案者の問題意識の中にあるごく一部の側面を私は言っているにすぎないわけですけれども、私は、むしろそうした方がよろしいんじゃないのかなと素朴に思っておるわけですが、それは否定はされないと思うのですけれども、そうした意見を含めて、提案者の御認識についてはいかがでございますでしょうか。

相沢議員 これは、与党の三党での証券市場等活性化対策のプロジェクトチームにおいて検討されました幾つかの対策の中に実はあったのであります。等価交換を行うということは、今先生が言われましたように、一つの有効な手段だということは我々も認識をしておりました。

 ただし、問題は、等価交換をした場合に、これはいずれにしましても、譲渡損、譲渡益、いずれも発生するわけですね、発生し得るわけです。その譲渡益の処理をどうするかという課税上の問題もあります。それからもう一つ、自社株の取得をする際に仮に他社株を放出したときに、他社株の譲渡益についても課税上何らかの優遇措置を考えられないか、非課税というものが無理ならば繰り延べは考えられないかといったような議論をしたことは事実なのであります。

 ただ、それらの点につきまして、実はなかなか議論が終えんいたしませんで、その点はこれから引き続いて検討しよう、そのように考えております。

植田委員 恐らくこうした問題提起についても御議論なされたわけでございますが、一番冒頭の、今回の法案の主目的であるところの産業再編といったときに、当然ながら、今の企業の体質をどういうふうに変革していくか、そういうことを個別具体的にどう手当てしていくんだという、そのところから帰納法的に導出されることだろうと思います。そういう意味で、今のお話は非常にわかりますし、よその党で検討されたことですからそれ以上言えませんけれども、少なくともだらだらとした持ち合いの解消売りじゃなくて、やはり同時にさっとやっていかないことには、少なくとも法案提案者の主たる問題意識に到達するのが逆に困難になるんじゃないかというふうには思います。

 また、そういうことでいけば、実際、これは再三お話を伺っておるところですけれども、自社株式の買い戻しというのは市場価格で取引されているわけですから、当座は株式市場の活性化につながるだろうけれども、それが直接株価の上昇には結びつかないよというようなことは、もう既に共通の認識としてあろうかと思います。

 しかも、余剰資本がない企業が自社株を買う場合には、やはり追加融資に頼らざるを得ない場合もありますから、そういうことがもしあった場合は、逆に企業の借金体質がますます深化してしまう。そういう意味では、企業の財務状況、企業の構造改革というものと逆行するような場面も出てくるんじゃないか。そうなると、提案者の法案を今回提出されたところの大目標と背反するような事象というものが全く出てこないということが言えないんじゃないかなというふうに思うわけなんですが、その点についてはどんな御認識でございますでしょうか。

相沢議員 株式市場の活性化対策としましては、今回提案しております金庫株の解禁以外に、税制上の措置等々、それからもう一つは、金融機関、銀行の所有する株につきまして、これを自己資本の範囲内に制限する、また、このこととあわせて、その株を取得するところの機構をつくるとか、いろいろな問題があわせて検討されてまいりましたし、また今検討している中なのであります。

 繰り返しになるかもしれませんけれども、持ち合いの問題については、特に私は、日本の場合においては、企業相互間、それから金融機関と企業相互間においてそういうことが多く行われている。これは、もう言うなれば、ある意味においては株の水膨れになっておるわけですね。資本の水膨れになっておる。それをすっきりさせるということは、確かに考えなければならないことだというふうに思っておりますから、やはり先ほどのような問題点を解明しながら、その解決に向けて努力をする必要があろう、こういうふうに考えております。

植田委員 次に、あともう時間がございませんので、特に不正防止の仕組みにかかわって、二、三お伺いしたいわけですが、これについては、先ほども木島先生からも御議論がありましたので、重複は避けますけれども、やはり日本の証券取引等監視委員会、日本版SECとしてのこの委員会は、やはり弱体だろう。

 これは頭数だけ申し上げれば、アメリカの場合は、スタッフが三千人以上おりますし、弁護士が二千人、会計士が六百人おる。一方で、日本の場合は百名台にすぎない。これは何も金庫株を今回解禁するから改めてやらなければならなくなるということではないかもしれませんけれども、少なくとも今回いただいている内閣府令の内容等々を見ましても、米国と同じような、そういう制度を参考にして制度を導入するのであれば、法の施行に当たって、日本版SECのやはり強化充実ということをやっていかなければならないだろうな。

 いきなり三千人とは言いませんけれども、百人台ではこれはちょっと、実際、摘発件数も非常に少ないわけですし、ではそんなまともにちゃんと取引されているかということを、摘発件数の少なさが示しておるわけではないでしょうから、当座五百人ぐらいを目標にそういう委員会を構築する、そういう決意ぐらいはあってもいいのではないかなと思うわけです。

 これは、ちょっと提案者の方に、別に五百人は多いか少ないかは別といたしましても、私としては、それぐらいの御決意で臨んでいただきたいなと思いますが、どうでしょうか。

小池議員 私は同感でございます。企業であれ役所であれ、人、物、金、情報という中にあって、百人規模のこの委員会というのは、本当にアメリカと比べれば大変小さいものだというふうに思います。そしてまた、人材の内容ということも重要になってくるわけでございまして、また、これは役所同士で毎年すり合わせをして、一人プラスしたりした分はこっちでマイナス一だとか、何か細かい話をやっているので、これは政治力ではないかなというふうに思っております。ですから、今のお話、急に五百人はなかなか難しいと思いますけれども、そのお気持ちは十分酌み取りたいと思います。

植田委員 政治力は、やはり我々野党でございますので、与党の皆さんにそういう要望を申し上げたということです。

 もう一点、前回もちょっと伺ったと思うのですけれども、金庫株が導入されると、やはり経営監視のシステムとしての株主総会の重みが増すだろう。もっと言うと、株主の権利というものがどれぐらい保障されておるかということが今まで以上に重要になってくるということは、それぞれ共有できると思うわけです。そこで、今後またそういう法律が出てくるのかもしれませんが、株主代表訴訟の見直しも話題になっておるようです。

 ちょっと中身を見ていますと、私としては、株主の権利が希釈されてしまうのではないかと非常に、その見直しの方向については、それはそれとして危惧をしておるわけですけれども……(発言する者あり)

保利委員長 私語はしないようにしてください。

植田委員 ただ、ここで確認したいのは、その法案に対する評価はさておき、提案者といたしましては、株主の権利を保障する重要な制度としての株主代表訴訟の重要性、意義というものについて、どのようにお考えなのか。別途の今出ているであろう法案のことはとりあえず意識なさらずに、御答弁いただければと思います。

漆原議員 今度出るであろうという例のコーポレートガバナンスの法案については、重要な改正の眼目は取締役の機能を強化するというところにあるというふうに聞いております。独立性の強化された監査役による実効的な監査によって、御指摘のような事態に十分対処できるだろうというふうに思っております。

 また、そもそも違法、不当な行為について株主代表訴訟がいつでも提起され得る、こういうふうな制度が日本に用意されているということ自体が、おっしゃるような金庫株を持ち得た会社経営陣の恣意的な会社支配という事態を十分に抑止できるものだというふうに考えて、また、期待もしておるところでございます。

植田委員 今回、株式の単位の見直しにかかわって、最後お伺いしたいのですが、単位株制度から単元株制度ということになるわけです。これは素朴な疑問なんですけれども、そうなると、一株株主というのはどうなるんだろうという疑問があります。

 例えば、御承知のように、一株株主という形で企業の社会性についての問題提起というものが、一部の会社の株主総会では行われているわけです。もちろん、今も議決権について大体千株程度で一議決権ということになっていますから、こうなっても、その部分は実質的に変わりはないよといえばそれまでなんです。

 例えば、社民党は十九議席、十九株あるとします。でも、今だったら、議決権はないですが、発言権はあって、オブザーバー理事ということで、理事会も行けるわけなんですが、これが突然五十人一単元ですとなってしまえば、そのとき発言権はどうなるんですかということが、非常に不安にもなってしまうわけでございます。

 そういう場合、実際に一株株主の発言を認めている会社もあるわけでございますが、今回の改正理由に、あなたら、もう物は言われへんよということになることは、私は非常に心配しておるのですが、その点はいかがでございますでしょうか。

漆原議員 株主総会に出席する権利やあるいは株主総会での発言権というのは、株主総会において議決権を持っているということが大前提になっております。したがって、総会での議決権を有しない一単元未満の株式のみを有する株主、この方については、総会の出席権だとかあるいは総会での発言権のいずれもないということになります。

 御質問の趣旨は、従来認められていた株主総会での発言権が今回の改正によってなくなるのではないかということだと思いますが、従来の単位未満株主についても、総会での発言権を有しないことでございますから、総会での出席権、総会での発言権は従来でも認められていなかった。したがって、総会での議決権を有しない株主の発言権については、今回の法改正によって何も変わるものではない。特に今回の法改正によって不利益になったということではないということを申し上げておきたいと思います。

植田委員 もう時間がないので、幾つか疑問を残しましたけれども、質問を残しましたけれども、以上で終わります。

保利委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより両案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。田村憲久君。

田村委員 私は、自由民主党、公明党及び自由党を代表して、ただいま議題となっております商法等の一部を改正する等の法律案及び商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に賛成する立場から賛成討論を行うものであります。

 この法律案は、自己株式の取得及び保有規制を見直すとともに、株式の大きさに関する規制を廃止する等の措置を講ずるものであり、我が国企業の競争力の向上を図り、経済構造改革を実現する上で有益な施策となるものと考えます。

 すなわち、これらの施策により、合併等の際に代用自己株式の利用が可能となり、企業の機動的な組織再編が促進され、企業の競争力の向上が図られるほか、株式の投資単位の引き下げが実現し、証券市場に個人投資家を呼び戻すことが可能になり、証券市場の活性化につながるものと考えられるものであります。

 民主党及び共産党からは、この法律案は、資本維持の原則を危うくし、相場操縦やインサイダー取引を誘発するものではないかとの指摘がございました。しかしながら、今回の改正法案においては、これらの点についても十分な配慮が払われております。

 すなわち、資本の維持については、自己株式の取得財源について配当可能利益の範囲内とする財源規制を設ける等の措置を講じております。また、相場操縦の防止については、米国で整備されているセーフ・ハーバー・ルールの考え方や内容を参考にして、内閣府令で所要の手当てをすべきものとするほか、インサイダー取引の防止についても、自己株式の取得や処分に係る決定をインサイダー取引規制の重要事実に追加し、この決定が公表された後でなければ会社関係者がその会社の株式を売買することができないこととする等の措置を講じております。

 このほか、この法律案では、自己株式の処分の手続を定め、その貸借対照表上の取り扱いを国際的な会計処理の基準に合わせる等、現行制度を合理化するための手当てもなされております。

 以上が、本案に賛成する理由であります。(拍手)

保利委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、自由民主党、公明党、保守党の与党三党提出、商法等の一部を改正する等の法律案及び商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案について、反対の立場から討論を行います。

 第一に、いわゆる金庫株制度を容認する前提である相場操縦やインサイダー取引防止のための体制整備が不十分であります。

 会社がみずからの株式を取得、保有、処分することを自由にできる、いわゆる金庫株制度を導入することは、会社がみずからの株価を操縦、操作する危険性を生じさせるものであります。金庫株の導入によって株価の形成が一層不明朗になれば、個人投資家や外国人投資家が我が国の株式市場から逃げ出し、株価の低迷を招く事態となります。

 したがって、金庫株制度の導入という規制緩和を行うのであれば、米国と同様に、資本市場を監督する強力な行政機関を設置するのが当然必要であります。

 自民党のある議員が、雑誌に寄稿し、今の金融庁の行政組織では、明確なルールを備えた公正かつ効率的な資本市場を一元的に育てるための強力な企画・監視・執行体制という点で決定的に不十分だと主張されておりますが、全く同感であります。

 すなわち、民主党が既に本院に提出した証券取引委員会設置法案が同時に審議されるべきでありますが、いまだ付託すらされておりません。証券取引委員会設置法案の成立なくして、金庫株だけを到底容認することはできません。

 第二に、立法のあり方として余りにも拙速であります。

 金庫株の処分に伴う税や会計処理の扱いが政府内で決まっていないため、金庫株の処分は平成十四年三月三十一日まで停止されていますが、このような不備な形式のまま商法の原則を大きく変えることとなるこの法律を成立させなければならないほど、金庫株制度を導入しなければならない緊急性があるとは到底思えません。

 さらに、相場操縦防止の具体的要件は、法律では定めておらず、内閣府令に白紙委任されております。すなわち、本法案の核心が内閣府令にゆだねられている形で国会審議をすることは全く無意味であります。与党三党の立法姿勢は余りにも無責任と言わざるを得ません。

 以上、自由民主党、公明党、保守党の与党三党提出、商法等の一部を改正する等の法律案及び商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に反対する理由を申し述べ、討論を終わります。(拍手)

保利委員長 次に、瀬古由起子君。

瀬古委員 私は、日本共産党を代表して、金庫株を解禁する商法等改正等及び関連整備法案に対し、反対討論を行います。

 財界の長年の懸案であった金庫株を解禁する商法等改正は、持ち合い株式解消の受け皿や株価対策に活用できるとの理由で、資本充実や債権者・株主保護などを目的とした商法の基本原則を完全に葬り去るものです。また、金庫株解禁は、一定の歯どめ措置や制限を設けるにしても、企業による相場操縦やインサイダー取引に利用されやすくなることは否定できません。

 商法は、従来、原則として自己株式の取得、保有を禁止していました。その理由は、資本充実に反し、債権者の利益を害し、株主平等の原則に反すること、また、経営者の会社支配の目的に利用され、インサイダー取引で一般投資家を害するおそれがあるからとされていました。

 だからこそ、九四年の商法等改正の際にも、従業員持ち株会に株式を譲渡する場合など、正当な目的に限り、配当可能利益の範囲内で、発行済み株式総数の百分の三を限度とするなど厳しい解禁でありました。

 財界は、自己株取得制限の緩和を一九三八年の現行商法に改正した当時から要望しており、九四年の商法改正で制限緩和の風穴をあけたわけでありますが、まだ不十分とする財界の意を受けて、自民党は、九七年に、ストックオプション制度の導入目的で、株式消却特例法を法制審議会にも諮らずに議員立法という非常手段で立法し、さらに九八年、二〇〇〇年と議員立法で規制緩和をごり押ししてきたのでございます。

 自己株式取得、消却は、バブル時代に発行された過剰な株式を減らし、株価をてこ入れするねらいで、商法の原則を崩して改悪に改悪を重ねてきたものであり、我が党は一貫して反対してきました。

 今回は、曲がりなりにも設けていた自己株取得制限をさらに緩和するとともに、無制限な保有を認める金庫株解禁を図るものであり、不良債権処理の強行など一連の緊急経済対策とともに、財界、大企業の要求に応じて、資本主義の健全発達にも反する自己矛盾をあえて行ってまでも、またしても法制審にも諮らず議員立法で行うものであり、特に危険性が指摘されているインサイダー取引や株価操縦の防止については、内閣府令の内容も明確になっていないままに本改正が行われることは、我が国の証券市場の公正性や国際社会の信用性を大きく失わせるものであり、到底認められません。

 以上で、私の反対討論を終わります。(拍手)

保利委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、商法等の一部を改正する等の法律案及び商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案に反対する立場から討論を行います。

 現行商法は、消却目的やストックオプションに限定して自社株の一時保有を認めていますが、将来の売り戻しを前提にした保有を禁止しています。そのため、今回、商法の一部を改正し、金庫株を解禁することで、企業による自社株の保有を認めようとするものです。

 アメリカで認められている金庫株は、適当な融資先のない企業が一時的に自社株に投資したり、買収に対する防衛手段や、将来の株式交換などによる合併、買収に備えるのが目的です。また、意図的な株価操作やインサイダー取引が行われないような売買監視が、三千名以上の人員を擁する証券取引委員会などのハード面だけでなく、厳格なルールを定めるなど、ソフト面ともに十分な整備が行われています。

 しかし、提案されている商法等改正に伴う金庫株制度の導入は、アメリカのような売買監視が十分ではなく、インサイダー取引の横行に関する危惧はもとより、業績悪化で株価が下がったときなどに、無理をして自社株を買い支え、経営実態を覆い隠そうとする株価操作として悪用される懸念も払拭できません。

 また、本来なら、設備投資、従業員の待遇改善、借り入れ返済による財務内容の改善、株主への配当など、経済をよくするために使うべき資金が、実力以上に株価を高めるだけの危険な行為に使われてしまうことも懸念として払拭できません。

 さらに、何よりも重大なのは、資本充実の原則、会社支配権の維持、株主平等原則、株価操作取引規制などの商法、とりわけ会社法制の原則を潜脱するものであり、金庫株はその効果よりも問題点が肥大化しかねない危険性があると言わざるを得ません。

 持ち合い解消の受け皿なら、消却目的の自社株取得で十分ではないでしょうか。持ち合い解消の動きが出て、ゆがんだ株式市場を改善するチャンスが生まれている今、金庫株の導入はこの流れに逆行するものであると考えます。

 以上の理由により、本改正案に反対するものであります。

保利委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより採決に入ります。

 まず、相沢英之君外六名提出、商法等の一部を改正する等の法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、相沢英之君外六名提出、商法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

保利委員長 次に、内閣提出、民事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。森山法務大臣。

    ―――――――――――――

 民事訴訟法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

森山国務大臣 民事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、民事訴訟における証拠収集手続の一層の充実を図るため、公務員または公務員であった者がその職務に関し保管し、または所持する文書に係る文書提出命令について、文書提出義務を一般義務とするとともに、文書提出義務の存否を判断するための手続を整備する等の措置を講ずるものでありまして、その要点は、次のとおりであります。

 第一に、公務員がその職務に関し保管し、または所持する文書についても、私文書の場合に提出義務が除外されている文書のほか、その提出により公共の利益を害し、または公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある文書等を除いて、文書提出義務があるものとしております。

 第二に、除外された文書に該当するかどうかは、裁判所が判断するものとしております。

 第三に、除外された文書に該当するかどうかを判断するための手続として、いわゆるインカメラ手続を設けるものとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。

保利委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十四分散会




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