衆議院

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第18号 平成13年6月15日(金曜日)

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平成十三年六月十五日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 奥谷  通君 理事 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 長勢 甚遠君

   理事 佐々木秀典君 理事 野田 佳彦君

   理事 西村 眞悟君

      荒井 広幸君    熊代 昭彦君

      後藤田正純君    左藤  章君

      笹川  堯君    鈴木 恒夫君

      棚橋 泰文君    谷川 和穗君

      松宮  勲君    山本 明彦君

      吉野 正芳君    枝野 幸男君

      平岡 秀夫君    水島 広子君

      山内  功君    藤井 裕久君

      木島日出夫君    瀬古由起子君

      植田 至紀君    徳田 虎雄君

    …………………………………

   法務大臣         森山 眞弓君

   法務副大臣        横内 正明君

   法務大臣政務官      中川 義雄君

   外務大臣政務官      山口 泰明君

   政府参考人

   (警察庁刑事局暴力団対策

   部長)          岡田  薫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房訟務総括

   審議官)         都築  弘君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制

   部長)          房村 精一君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君

   法務委員会専門員     井上 隆久君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十五日

 辞任         補欠選任

  渡辺 喜美君     後藤田正純君

  不破 哲三君     瀬古由起子君

同日

 辞任         補欠選任

  後藤田正純君     渡辺 喜美君

  瀬古由起子君     不破 哲三君

    ―――――――――――――

六月十三日

 選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請願(前原誠司君紹介)(第二六三二号)

 同(石井郁子君紹介)(第二七〇三号)

 同(木島日出夫君紹介)(第二七〇四号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第二七〇五号)

 同(中林よし子君紹介)(第二七〇六号)

 同(藤木洋子君紹介)(第二七〇七号)

 選択的夫婦別姓導入など民法改正に関する請願(川田悦子君紹介)(第二七〇八号)

 法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員に関する請願(徳田虎雄君紹介)(第二七〇九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第六九号)




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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、民事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局暴力団対策部長岡田薫君、法務省大臣官房訟務総括審議官都築弘君、法務省大臣官房司法法制部長房村精一君、法務省民事局長山崎潮君及び法務省刑事局長古田佑紀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥谷通君。

奥谷委員 おはようございます。自民党の奥谷通でございます。

 きょうの民事訴訟法の一部を改正する法律案の審議に入る前に、もう一週間になりますが、今月の八日に、大阪教育大学附属池田小学校におきまして、児童の殺傷事件がございました。亡くなられた子供さんの御冥福、また遺族の方々への哀悼の誠をささげますとともに、けがをされた方の一日も早い回復を祈るわけでございます。また、そういった場に立ち会った子供さんにも非常に心的な傷が出ておるというようなことも聞いておりまして、そのあたりのケアについても十分な対策を講じていただきたいと思っております。

 それで、この容疑者につきましては、その後いろいろと新聞の報道がございまして、過去においても、一九九九年の三月に傷害事件を起こしながら、いわゆる刑事責任を問えないというような、精神状態の本格的な鑑定が必要というような判断で釈放されております。それから、現在も、別れた妻との調停離婚の無効を訴える訴訟を神戸地裁の姫路支部で起こしておりまして、何と、いわゆる自分の弁護士はなしで、そういった手続あるいは弁護においてすべて自分で行っておるというようなことも聞いておりまして、こういった犯罪につきまして、凶悪であればあるほど、また、たくさんの人を死亡させればさせるほど罪が重くなるわけでございますけれども、片やそういった判断能力というような面におきまして、ある時点でその罪を問えないというようなことが起こってまいります。

 これは、被害者にとってはまことに納得のいかない、釈然としない話でありますし、人権問題からのこともありますけれども、何らかの、いわゆる全く罪がなくなってしまうということではなくて、例えばそういう判断できない状態であったとか、そういう場合でもそれなりに私は罪が問えるのじゃないかというような気がいたしますので、そういったことを踏まえて、いわゆる役所横断的なこの種の犯罪に対するプロジェクトチームのようなものをつくって、これから本当に、二度と起こらないようにということをよく言いますけれども、本当に二度と起こらないようにその対策を講じていただきたいと思うわけでございます。

 本題に入らせていただきますけれども、今回の民事訴訟法の一部を改正する法律案でございますが、平成八年に現行制度ができております。そのときに、行政情報公開制度が検討された時期であったということで、民事訴訟法の附則第二十七条において、「行政機関の保有する情報を公開するための制度に関して行われている検討と並行して、総合的な検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるもの」、そういうようなことをそのときに決められたようなことを聞いておりますが、現在まで、この附則の二十七条を踏まえて、どのような経緯で本法案を提出されたのか、それをまず大臣にお伺いしたいと思います。

森山国務大臣 公文書を対象とする文書提出命令制度につきましては、平成八年に制定された新民事訴訟法の政府原案におきましては、文書提出義務の対象となる文書の範囲を拡張する反面、公務員の職務上の秘密に関する文書については、監督官庁が承認をしない限り提出義務はないものというのが原案でございました。このような制度の枠組みに対しまして、国会におきまして、行政情報公開の流れに逆行し、行政官庁による提出拒否を正当化することになるのではないかという御指摘がありまして、そのあり方について活発な議論が行われたのでございます。

 その結果、公文書の文書提出命令制度につきましては、先生おっしゃいましたとおり、当時検討が進められておりました行政情報公開制度の検討と並行して、総合的な検討を加え、その結果に基づいて、新民事訴訟法の公布後二年を目途として必要な措置を講ずるものとされまして、公文書について文書提出義務を一般義務化することは見送られたのでございます。

 そこで、法務省では、平成八年十月から公文書を対象とする文書提出命令制度について検討を開始いたしまして、諸外国における同種制度の比較法的検討や、この制度のあり方について、経済団体、労働団体、消費者団体及びマスコミ関係者などに対するヒアリングを行いまして、基礎資料の収集に努めてまいりました。そして、平成十年四月には、これらの資料の分析、整理を踏まえまして、行政情報公開制度とも整合性のある新たな公文書の文書提出命令制度を定めた民事訴訟法の一部を改正する法律案を国会に提出いたしました。一方、同年三月には、行政機関の保有する情報の公開に関する法律案も提出されております。

 しかし、その後、平成十二年六月に衆議院の解散によりましてこの法律案が廃案となってしまいましたことから、今回、同じ内容の民事訴訟法の一部を改正する法律案を再度提出するということになったものでございます。

奥谷委員 現行法は、当事者と文書との間に特別な関係がある場合に限って認められたということでございます。詳しくは、「当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。」あるいは「挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。」「文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。」具体的にこのようなことが書いてあるわけでありますけれども、これは、いわゆる文書提出義務がこれに限って認められておるということだけでありまして、こういうようなことを限定的に決めますと、証拠が一方の当事者に偏在している事件においては、当事者の実質的な対等を確保することができないというような指摘があったわけでございます。

 従来は、私文書の文書提出義務については、いわゆる原則としては一般義務化が図られておったわけでございますけれども、このたびの改正で公文書についても私文書と同様に文書提出義務を一般義務化した、こういうことになると思いますが、この主要な改正点というのをお聞かせいただきたいと思います。

森山国務大臣 先生御指摘のとおり、改正法案では、公文書の提出義務も私文書のそれと同様に一般義務化しまして、その提出により公共の利益を害し、または公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある文書等を除いて、一般的に提出義務があるということにしております。

 また、このように規定した場合に、例外に該当するかどうかの判断をだれがどのようにするかということが問題となりますが、平成八年に国会に提出された政府原案におきましては、公務員の職務上の秘密に関する文書については監督官庁が承認をしない限りその提出を命ずることができないものとされていたのに対し、改正法案では、公務員の職務上の秘密に関する文書に該当するか否かの点も裁判所が判断するということにされております。さらに、現行法では、裁判所のみが文書の提示を受けてこれを閲読する、いわゆるインカメラ手続は、私文書の提出義務の存否を判断する場合のみに認められておりますが、改正法案では公文書についてもこの手続が設けられているということでございます。

奥谷委員 その平成八年のときに、公文書の文書提出命令制度の検討に当たっての附帯決議が出ておるわけでございます。それは、その検討経過を広く開示しまして国民の意見が十分反映されるような格段の配慮をされるべきである、このような附帯決議がされておるわけでございますが、今回の改正案までに附帯決議を踏まえてどのような配慮が行われてきたのか、お聞かせいただきたいと思います。

山崎政府参考人 事務当局といたしまして、この附帯決議の趣旨を反映させるべく、さまざまなことを行ってまいりました。

 まず第一には、これは法制審議会で再度議論をしたわけでございますけれども、そこに民事訴訟法部会というのがありますが、その下に文書提出命令制度小委員会というものを設けまして、審議をしたわけでございます。これと並行いたしまして、文書提出命令制度研究会というものを設けまして、双方で研究をして、議論をしてまいったわけでございます。その間におきます法制審議会の議論あるいはその研究会の議論等、これは審議の概要として広く公表しておりますし、その検討状況を国民が知り得る状況に置いたということでございます。

 それから、この研究会のメンバーに関しましては、民事訴訟法の学者それから実務家、そういう専門家だけではなくて、行政情報公開制度に造詣が深い行政法学者、あるいは経済団体、労働団体から推薦を受けた有識者等も参加をしていただいております。

 それからまた、ヒアリングの点でございますけれども、マスコミ関係団体、消費者団体、経済団体、労働団体、それぞれから推薦された方々からヒアリングを実施させていただいて、広く意見を取り入れて検討してまいった、こういう経緯でございます。

奥谷委員 民事訴訟法の附則の二十七条、文書提出命令制度というものがあるわけでございますけれども、これと行政情報公開制度がございますが、これとの関係についてはいかがでしょうか。

山崎政府参考人 委員御指摘のとおり、ことしの四月から、いわゆる情報公開法でございますが、これが施行されております。

 この制度趣旨は、政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判のもとにある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とするという制度でございます。それで、開示することにより、私的な権利利益を害し、または公共の利益を損なうおそれを生ずる情報が記載されている、いわゆる不開示情報と言われておりますけれども、そういうものの行政文書を除き、何人もその開示を受けることができるということでございまして、請求者に限定はないということでございます。

 これに対しまして、民事訴訟法のこの文書提出命令制度でございますけれども、これは訴訟制度の中にあるものでございますので、当事者が相手方または第三者が所持する文書、これを証拠として利用するための制度でございまして、提出命令の対象となる文書は行政文書に限定されませんで、また、個別の事案ごとに裁判所が証拠として必要性それから文書提出義務の存否を判断して、命令を発令するかどうかの要否、可否を決定するという制度でございます。

 このように、両者は異なる目的を持った別個の制度ではございますけれども、行政文書の開示という観点から見れば、いずれの制度も、一定の要件、手続のもとにこれを開示するという点におきまして、共通性を有するというものでございます。

奥谷委員 今、両制度について、共通性を有するというふうなお話があったわけでございますけれども、しからば、その共通性はわかるんですが、その範囲、いわゆる行政情報公開法による開示の範囲と、公文書に対する文書提出命令による提出が命ぜられる範囲、これはどちらが広いのでしょうか。

山崎政府参考人 情報がたくさんございますので、すべてを一概に申し上げることはなかなか難しいのでございますけれども、一番民事訴訟法の制度と関連がありますのは、いわゆる行政情報公開法五条でございます。

 ここで、一号から六号までの事由、これは除外事由、不開示事由でございますけれども、その中に、一号が個人に関する情報、二号が法人等に関する情報、三号が国の安全等に関する情報、四号が公共の安全等に関する情報、五号が審議それから検討または協議に関する情報、六号が事務または事業に関する情報、こういうふうに分かれているわけでございます。

 この関係で、民事訴訟法と関連がございますのは、この法律の二百二十条四号のロというところで、ロというのは、文書の除外事由を決めているわけでございます。ここで言っておりますのは、「公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」というわけでございます。これとの関係が一番問題になるわけでございます。

 この関係で申しますと、情報公開法の個人に関する情報それから法人に関する情報、これにつきましては、情報公開制度の中では不開示文書そのものに当たるという位置づけをしておりますけれども、私どもの、こちらの民事訴訟法に関しましては、そういうものであっても、「公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」は除外されるというふうに言っておりますので、これを比較いたしますと、民事訴訟法の方が提出される文書が広くなるというふうに理解しております。

 それ以外の情報、三号から六号につきまして、物すごく大ざっぱに申し上げますと、ほぼ同様であるというふうに理解をしております。

奥谷委員 ありがとうございました。

 平成八年の現行の民事訴訟法の制定時というのは、いわゆる薬害エイズ事件の訴訟があったころでございまして、行政庁における情報隠しというようなものが明るみに出まして、世間の指摘を受けたわけでございます。

 当時、衆議院の法務委員会において附帯決議がされているわけでありますけれども、その中で特に「公務員の職務上の秘密に関する文書に関し、秘密の要件の在り方、提出義務の存否についての判断権の在り方及びインカメラ手続を含む審理方式について司法権を尊重する立場から再検討を加えること。」というような附帯決議がなされています。

 ここで言う「公務員の職務上の秘密に関する文書」というのはどのような取り扱いになっておるのでしょうか。

山崎政府参考人 そもそも公務員は、公務の民主的かつ能率的運営を確保するために守秘義務が課されておりますけれども、その所轄庁の長または任命権者の許可がない限り、その職務上の秘密を公にすることはできないものとされているわけでございます。

 この守秘義務の制度の趣旨を民事訴訟手続においても実現するために、公務員が証人として尋問を受ける場合につきまして、現行法の百九十七条一号という条文がございまして、その職務上の秘密について証言拒絶権が認められておりまして、当該秘密が公開の法廷で顕出されることがないように保護をしているところでございます。

 このような保護の必要性は、文書提出命令の場面においてもひとしく当てはまるものというふうに理解をしております。物すごく大ざっぱに言えば、口でしゃべる証言と文書は同じ価値を持つ、同じ仕切りに従うべきだということから、この証言拒絶の事由に当たります「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」こういうものがない限り、その証言を拒絶してはならないという条文がございますけれども、それの仕切りと同じように、今回二百二十条四号のロというところで同じような記述をして除外文書にしたわけでございます。

奥谷委員 第二百二十三条の三項におきまして、文書提出命令の申し立てに理由がないことが明らかなときを除きまして、第二百二十条の第四号ロに該当する文書、いわゆる公務秘密文書に該当するかどうかにつきましては、当該監督官庁の意見を聞かなければならないということが記されておりますけれども、その趣旨というのはどういうことになるのでしょうか。

山崎政府参考人 公文書につきましては、その文書が必ずしもそこの所管の省庁にあるとは限らないわけでございまして、他の場面、他の第三者が所持しているとかいろいろな形態が考えられるわけでございます。

 国が文書提出命令の対象になる、相手方になるという場合には、当然裁判所で意見を聞かれるわけでございますので、そこで主張すればいいということになりますけれども、そうでない場合、第三者が持っている場合もあるわけでございます。そういう場合に、では行政庁のあるいは国の意見を全く聞かないまま出していいかということになるわけでございますが、やはりこれは公務に支障を与える場合もあり得るわけでございますので、そういうことを配慮して、監督官庁の意見を聞かなければならないという形にしているわけでございます。

 そういう趣旨をこの条文はあらわしているわけでございまして、監督官庁が意見を述べる場合には、監督官庁の判断内容を具体的に明らかにして、裁判所の適正な判断を担保するために、単にその結論だけ述べるのではなくて、その理由もきちっと述べなければならない、こういう規定にしているわけでございます。

奥谷委員 当該監督官庁からの意見を聴取した結果、いわゆる防衛秘密または外交秘密等の高度の秘密が害されるおそれがあることを理由として公務秘密文書に該当する旨の意見を述べるときは、その意見について相当の理由があると認めるに足りない場合に限り、文書の所持者に対してその提出を命じることができる、こうなっておりますが、これについてはいかがでしょう。

山崎政府参考人 委員御指摘のとおり、例えば防衛とか外交とか非常に高度の秘密を要するものにつきまして、犯罪の予防もいろいろ入りますけれども、こういうものについては、一般の文書とやや違う取り扱いをしております。

 なぜそうかということでございますけれども、秘密は秘密なんでございますけれども、その性質上、やはり高度の政策的判断を伴うということになりますし、我が国の安全保障あるいは対外関係上の将来予測あるいは犯罪等に関する将来の予測として、専門的あるいは技術的判断を要すること等特殊性があるということから、手続上も若干配慮をしているわけでございます。

 このような事由に当たるものとして、外交、防衛それから犯罪予防、刑の執行等、公共の安全と秩序を維持する、その維持に支障を及ぼすおそれがあることを、国の方がそれを理由に述べたときには、裁判所はそのようなおそれがあるかどうかについて、その監督官庁の第一次的な判断を尊重いたしまして、その意見に合理性があるかどうかということをまず審査すべきである。そこで合理性があるということになれば請求を却下するということになりますし、それで十分納得が得られないということになれば、さらにその中身について判断をして、最終的には、どうしても判断が難しいという場合には、インカメラ手続、裁判官だけがその文書を見られるという手続がございますが、そういうものを経て最終判断をするということで、二段構えの判断をするという構造をとらせていただいているわけでございます。

奥谷委員 国家機密、いわゆる防衛、外交面においては当然のことかと思うわけでございます。

 その次に、第二百二十条の方で除外規定がずっと書いてありますが、第四号のハに記載されております、医師、弁護士等が職務上知り得た事実で黙秘すべきもの、または、技術もしくは職業の秘密に関する事項、この除外文書のことですけれども、これについての趣旨はいかがでしょうか。

山崎政府参考人 例を挙げて申し上げますと、医師とか弁護士等でございますけれども、もともと職務上知り得た事実については職業上の守秘義務が課されているわけでございますけれども、公務員の中でも、例えば国立病院の場合の医師が作成した診療録等いろいろございますけれども、その公務員である医師が職務上知り得た事実で法律上守秘義務を負っているものが記載されている文書がございます。

 また、国が民間の企業から、秘密を外部に漏らさないという合意のもとに、当該企業の技術あるいは職業上の秘密に関する情報を入手している場合があるわけでございまして、こういうような文書については、これを提出するということになりますと、守秘義務は守られないという結果になります。そこで、こういうものに関してやはり除外事由としているわけでございます。

奥谷委員 ハについてはよくわかりましたのですが、その次に、同じ二百二十条第四号のニでございますけれども、「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」を文書提出者の除外文書とした上で、「国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。」ということが書いてありますが、これについてはいかがでしょうか。

山崎政府参考人 ここで言っている文書、例を挙げますと、例えば個人的なメモ、それから備忘録、日記等のものでございまして、およそ外部の者に開示することを予定していないような文書、これは不開示であるということをうたっているわけでございます。これを提出するということになりますと、公務員の自由な活動が不当に妨げられるおそれがあるという趣旨によるものでございます。

 ただ、こういうものでございましても、公務員が組織的に用いるもの、そういうものに関しましてはやはり提出をさせるということで考えているわけでございまして、これは、いわゆる情報公開法、これでも同じような規律を置いておりまして、それとほぼ同じようなバランスをとった制度であるということでございます。

奥谷委員 まだ少し質問が残っておりましたけれども、時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。

保利委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 今回の民事訴訟法の改正につきましては、これまで何度となく同じようなテーマで国会でも論議がされておりまして、いろいろな観点から検討がされているわけであります。ただ、私は前回の総選挙で初めてこちらの方に参ったものですから、そうした過去に行われた論議についても、まだ自分なりに納得しがたい点が多々ありますので、その辺は重複するかもしれませんけれども、いろいろと政府の見解なりをお伺いしたいというふうに思っております。

 そこで、まず最初に、この民事訴訟法の一部改正については、どういう視点でこの改正をされたのかなというところが、私にはどうも腑に落ちないところがございます。これは、私、衆議院の本会議の質問の最後にも申し上げたのですけれども、裁判、司法というものが本当はだれのためにあるのかということをもう一度よく考えてみなければいけないんじゃないかというふうに思うわけです。

 どうも、今回の民事訴訟法の公文書の提出義務の問題についても、当事者の方が、自分たちの秘密を守ろう、あるいは、自分たちが何かをするに当たって邪魔になるようなことになるのであれば提出は拒めるようにしようといったような視点が強過ぎて、むしろ裁判で、民事訴訟であっても、お互いに国民の権利義務についてちゃんとしたものを確定して、そしてそれを適正に行使していこうという場において、真実の発見なりというようなことで必要になるような情報については、たとえそれが公的な情報であったとしても、公文書であったとしても、それは提出していくというような形を、やはり裁判制度でもつくっていかなければならないんじゃないかというふうに思うわけです。

 そういう意味で、私は本会議の場でも国民のための司法というような言葉を使ったわけでありますけれども、この前の平成八年の民事訴訟法改正の際にも、附帯決議の中で、官公庁が持っている文書についての提出命令の制度について「司法権を尊重する立場から再検討を加えること。」というふうなことが言われておりました。

 これはこれとして、確かに司法権を尊重するということは大切なことだろうと思うのですけれども、じゃ、なぜ司法権を尊重しなければならないかというと、司法権が実行される場である裁判所において国民がやはり正当な権利を守っていく、そして正当な権利を行使していく、そういう場であるからこそ、司法権を尊重する立場というのが必要であるというふうに私は思っているわけであります。

 そういう点からいいますと、今回のは、当事者としての国の立場というものが余りにも強く出過ぎているのではないかというような気がするのですけれども、その点について、法務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

森山国務大臣 法務省では、平成八年に制定されました新民事訴訟法の附則第二十七条におきまして、公文書を対象とする文書提出命令の制度について、「行政機関の保有する情報を公開するための制度に関して行われている検討と並行して、総合的な検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされたことを受けまして、この平成八年の十月からこの問題の検討を開始いたしました。その過程におきまして、「不合理な官民格差を生じない方向で、司法権を尊重する立場から検討を加え」、かつ、「その経過を広く開示し、国民の意見が十分反映されるように格段の配慮をすべきである」という国会の附帯決議の御趣旨に従いまして、幅広い角度から議論をし、結論を得るに至ったものでございます。

 今回の改正法案策定における政府の基本姿勢は、ただいま申し上げましたとおりでございまして、言うまでもなく、国民のための司法を目指したものでございます。

平岡委員 最後に国民のための司法という言葉をつければそれでいいということではないので、ぜひ本当にそういう視点に立って日本の司法制度を考えていっていただきたいというふうに思うわけであります。

 そこで、これもよく言われてきた話ではあるのですけれども、今回の民事訴訟法の改正法というのは平成十年に一度出されてきたものであるということで、その後の検討というのは余り行われてきていないわけであります。平成十年に法律案を提出する前の段階で、法制審議会でかなりいろいろな議論がされているというふうにも聞いているのですけれども、他方、特に刑事訴訟関係の文書については、どうも法制審議会の最後の段階でちょろちょろっと出てきて、一、二回ちょろちょろっと審議をして、そして立派な条文として提出されてきてしまったというようなことで、その辺の手続について、つまり、国民の意見あるいは関係者の意見が必ずしも十分反映されない状態で法案が提出されてしまったのではないかというようなことを言っておる方も大勢おられるわけです。

 ここの点は私もちょっと、まだ議員ではございませんでしたので、詳しく経緯はわからないのですけれども、その点、そういう不満を持っておられる方々に対して説得力ある説明をしていただきたいと思いますし、それからもう一つ、この前の商法、金庫株の問題についても申し上げたのですけれども、金庫株のときには、法制審議会で議論はしておったけれども、最終的には議員立法という形でやっちゃった。かなり、えいやっのところがあったわけであります。この問題についても、この民事訴訟法の改正についても、どこかでえいやっのところがあったような気がするのですけれども、その点について、国民の皆様方にちゃんと、手続がどういうふうに踏まれたのかということについて、説明していただきたいと思います。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどもちょっとお答えしたわけでございますけれども、この審議、実質は一年半ぐらいでございますけれども、法制審議会と、それから研究会を設けて、双方で研究を重ねまして、諸外国の制度等も調べましたし、あるいはいろいろな団体の代表者等からヒアリングを経て検討を加えてきたわけでございます。平成八年の十月から始めまして、平成九年十二月まで、一応基礎的な資料を収集いたしまして、その研究成果に基づいて個別的な検討を行ってきたわけでございます。

 この審議を踏まえまして、その要綱案もまとめたわけでございますけれども、確かに、この要綱案が明確な形で示されたというのが翌年十年の一月ということでございます。それから、一月にも二回法制審議会を開き、二月に入りましても部会を開き、それから総会を開きということで、都合四回、時期的には二カ月の間に四回ということで、多分その時期が短かったという御趣旨だろうと思いますけれども、その四回の会議でちゃんと検討したわけでございますし、基本的には、この法案とほぼ同じような作業を続けておりましたいわゆる情報公開法でございますけれども、その中で、一番今回の法案で問題になると思われます刑事記録等の扱いについてでございますけれども、これはほぼ情報公開法と同じような考え方で進んでおるわけでございまして、そのことはこの審議の中にも反映されていたはずでございまして、そういうような観点からは、大体こういうような案に落ちついていくという流れがあったわけでございます。

 しかしながら、二カ月で議論は終わったということになりますけれども、これにつきましても、最終的には採決を行いまして、賛成多数でこの法律案が了承された、こういう経緯にあるわけでございます。

平岡委員 今、言葉じりをとらえるわけではないのですけれども、情報公開法と同じ考え方でやったから、こっちの法制審議会でも問題がないんだというような御発言がありましたけれども、ここで議論していたのは、やはり民事訴訟における公文書の提出義務のあり方ということであるので、情報公開法がどうだから、そのまま持ち込めばいいというものではなくて、これは違うものであるということは、これまでの小委員会の議論でも行われているわけであって、やはり民事訴訟という場において、本当にこうした形での刑事訴訟関係書類の提出義務のあり方でいいのかというのは、やはり民事訴訟法の中できちっと議論しなければいけないというふうに思うのですね。そういう意味において、やはり法制審議会の審議が必ずしも十分ではなかったのではないかというふうに私は思うわけであります。

 それで、これからの話というのも変なんですけれども、我々としては、特にこの刑事訴訟関係の書類についてのあり方については疑問に思っておりますので、修正案を出したいとか、あるいは、もしそれが多数で強引に否決されるのであれば、否決といっても公式の場ではないかもしれませんけれども、認められないのであれば、さらに検討していってもらいたいというような気持ちを強く持っておるのですけれども、そういう場において、やはり法制審議会においてきちっと議論することが基本的に必要であろうというふうに考えておるのですけれども、法務大臣の御意見をお伺いいたしたいと思います。

森山国務大臣 今回の改正法案は、新民事訴訟法附則第二十七条におきまして、新民事訴訟法が公布された平成八年六月から二年以内に必要な措置を講ずるものとするとされたことを受けまして立案したものでございまして、法制審議会においては、限られた時間ではありましたけれども、大変濃密で充実した審議がされたというふうに考えております。

 なお、一般論として申し上げれば、重要な立法課題につきましては慎重に調査審議を行うべきであることは当然のことでございますけれども、他方で、急激に変化していく時代の要請にこたえて、的確な立法措置を講ずる必要性も無視することはできないと思います。したがいまして、その両方のバランスをとりながら立法作業に当たることが大切なのではないでしょうか。

平岡委員 民事訴訟法という基本的な法律でございます。六法と言うときには必ず民事訴訟法も入っておりまして、法制審議会で議論すべきことはたくさんあろうかと思います。ぜひ、そういう場における議論、専門的な意見、それから国民の皆さん方の意見も踏まえたものができるように、法制審議会の適切な運営をぜひ法務大臣にお願いしたいと思います。

 そこで、次に法文の中身の方の話に入ってまいりますけれども、まず最初に、刑事訴訟に関する書類の扱いでございます。

 実は私、本会議でも申し上げたのですけれども、法務大臣の趣旨説明とかあるいは提案理由説明の中に、こういうふうに公文書については取り扱いますということを言っている中に、裁判所が判断します、そして場合によってはインカメラ手続もあります、こういうふうに言うのですけれども、刑事訴訟関係書類については全くそういうものがない状態の中で、堂々とそういうことを言っておられるということに対して、刑事訴訟に関する書類の扱いについての認識が非常に薄いというか、甘いのではないかという気が大変いたしております。

 そういう意味で、ちょっとこの辺について、関心も深いところでありますので、お伺いしたいと思いますけれども、法務省の見解では、既に刑事訴訟関係の法律あるいは運用で大概のものは出しているから、余り弊害がないんじゃないか、そういう意味で、民事訴訟法の方では一律的に除外したって構わないというような御説明になっているわけであります。

 ただ、いろいろ考えてみますと、直接の犯罪被害者ではないような、その刑事事件の当事者ではないような場合において、そうした刑事事件に関する情報が必要となってくるような場面、例えば、取締役による総会屋への利益供与の責任を追及しようとする株主代表訴訟とか、あるいは、談合業者への損害賠償を請求しようとする住民訴訟というものを提起した者については、これは直接の当事者ではないので、その事件が不起訴になっている、あるいは公判中である、あるいは裁判が確定した後である、さまざまな段階において、必ずしも十分な文書の提出がされないというような事態があると思うのですけれども、その点についてはどのようにお考えになっておりますでしょうか。

古田政府参考人 ただいま委員御指摘の問題でございますが、まず、御理解いただきたいことがございます。

 それは、御案内のとおり、刑事事件と申しますのは、一般的に申し上げまして、非常に個人のプライバシーにかかわるような情報その他を、刑罰権を適正に行使するという観点から、いろいろな形で御協力をいただき、あるいは強制手段を使って集めさせていただく、そういうものでございますので、その取り扱いというのは非常に慎重を要するという性格があるわけでございます。

 さて、ただいまお尋ねのありました株主代表訴訟あるいは住民訴訟等の問題でございますけれども、これも、刑事事件の記録のいわばステータスによりまして、いろいろな場面があるわけでございます。

 一つは、典型的には、刑事事件の裁判が確定した後、これは、訴訟記録法によりまして、そのような正当な権利行使ということでございますれば、もちろん開示ということが可能なわけでございます。また、裁判中、刑事の事件で訴訟係属中の事件、これは民事裁判所の方からの刑事裁判所への取り寄せ嘱託などがございますれば、その審理の状況等を勘案して、刑事の裁判所の方で適切に判断をするということになるわけでございます。

 また、不起訴記録につきましては、これも、検察庁におきまして、民事裁判所の方から取り寄せの嘱託等がございますれば、その記録の必要性等も十分お尋ねした上で、その上で、やはり必要と思われるものは、これは提出をするというふうな取り扱いをしているところでございます。

 いずれにいたしましても、刑事事件の場合には、捜査の段階から始まって裁判が確定するまでの間、さまざまな場面がございます。それにつきまして、やはりそれぞれの場面に応じた取り扱いということを十分考えていかなければならないと考えている次第です。

平岡委員 それぞれの段階で、それぞれ守らなければならないいろいろな法益というものがあろうかと思いますけれども、ただ、刑事事件関係者の手の中に、刑事関係、刑事訴訟に関する書類等の提出をするかしないかということの判断が余りにも偏り過ぎているということで、先ほど、冒頭私が申し上げましたように、民事裁判の場において、国民が自分の権利を守ろうとして頑張っている中で、やはりそうした方向の中から刑事関係の書類についても出さなければならない事態というのは私は多々あるんだろうと思いますね。

 そういうことを考えてみますと、刑事事件の方で、例えば検事さんとかが判断することだけで、文書を提出する、しないというような形にとどまっているという今回の案の仕組みでは、私は十分ではないというふうに思っているわけであります。

 そこで、一つ例を挙げて、例えばこういうのはどうなんだろうかということで聞いてみたいと思うんですけれども、かつて森総理が買春疑惑事件ということで報道がありまして、それに対する名誉毀損の問題とかいうようなことで裁判になってしまったことがあったわけでありますけれども、今回の民事訴訟法の規定の中で一つ疑問なのは、規定ぶりの中で、「刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書」、これが一体どこまで入っているのかというのが非常にわかりづらいんですよ。

 そういう意味でいくと、例えば今私が冒頭に申し上げました、警察の方に所持されている犯歴情報、検挙歴といったようなものは、一体今私が読み上げた条文に該当する文書になるんでしょうか、それともならないんでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま御指摘の点、犯歴の情報というふうに限定させていただきますけれども、これに関しましては、具体的な被疑事件あるいは被告事件における捜査資料や証拠として使用するために作成され、その捜査書類等と一体として取り扱われる場合には、刑事事件に係る訴訟に関する書類というふうに扱われるということになろうかと思います。

 これに対しまして、具体的な被疑事件あるいは被告事件とは直接の関連がなく、一般的に保管している犯歴情報につきましては、刑事事件に係る訴訟に関する書類には該当しないというふうに考えております。

平岡委員 そこで、もうちょっと話を進めてみますと、これまでは、改正前の規定であれば、こうした刑事訴訟に関する書類等の位置づけについては明示的に書いていなかったので、例えばこの前の事件のときには、裁判所の方から、調査嘱託というような形で書いてありましたけれども、警察に対してこういうものを出してほしいという依頼があったときに、警察当局の方ではそれなりの理由を述べてお断りしたということがあったわけであります。

 今回、こういう形で明示的に法律ができてしまうと、これは法律で提出義務のない、そもそも提出義務のない文書だから出しませんといったような、形式的な議論で裁判所に対する提出を拒むことがあるんじゃないかというふうに危惧するんですけれども、その点について、まず法務省の方から、どうお考えになられるかということと、それから、きょう警察庁の方に来ていただいておりますけれども、警察庁の方ではこの法律ができることによって一体どういうふうになるのかということについてお伺いしたいと思います。

山崎政府参考人 この法律の前提をちょっと理解のために申し上げさせていただきたいと思います。

 従来、従来というか現行法でございますけれども、一号から三号まで、この事由だけが公文書の提出義務があるというふうに言われているわけでございますけれども、それについて今度は四号を新しくつけ加えたわけです。その中で幾つかの除外事由を設けながら、それ以外は一般的に提出義務があるんだということを加えたわけでございます。従来の一号から三号については全く変わらないということで、新たにつけ加わったものだけがある、こういう理解で法律をつくっておりますし、法制審議会の議論でも当然それを前提にしていたわけでございます。

 そういう関係から、新しいものがつけ加わっただけで、既存のものに対しては何らの影響を与えない、いわんや、調査嘱託とか文書送付嘱託、これについての考え方はこの法律ができたことによって全くその影響を受けないという理解で法律を構成しているわけでございます。

岡田政府参考人 若干重複があるかもわかりませんが、御案内のとおり、今回の問題の改正部分については、文書提出命令に係るものでございます。したがいまして、文書送付嘱託や調査嘱託に対する規定に変更はございませんので、その点についての取り扱いが今回の改正を理由に変わるものではない、このように考えております。

平岡委員 仕組みとしては、文書送付嘱託と文書提出命令は違うということで、これまでこうした情報についても文書送付嘱託で行われてきており、これからもそういう形で行われて、検察当局あるいは警察当局が、これは出せるか出せないかということを自分たちで判断をして、嫌だと思えば断れるというようなことになってしまうということで、私は、判断権というものが依然として、新しい制度においても検察、警察当局の方にゆだねられておって、全く、民事訴訟、民事裁判側の方から提出を強制することはできないというような、提出の是非を判断することができないという仕組みになっているということに対して非常に大きな疑義を持っているわけであります。

 そういう意味で、私は、これも本会議で御質問したんですけれども、大臣にもう一遍お聞きしたいと思います。

 刑事訴訟関係書類などについて、一律的にこれが民事訴訟の世界の中では提出義務から除外される文書ということになっているわけでありますけれども、これを特定の場合についてのみ除外する、例えば捜査に影響を及ぼさないとか、あるいは、それぞれのプライバシーを侵害しないとかというような実質的な判断基準というものを設けて、やはり民事裁判所の方においてその提出の是非を判断するという仕組みにすべきではないかというふうに思うわけであります。

 百歩譲っても、私は、刑事訴訟関係の法律の方で、こういう場合は出せないんだというふうに書いてあるのであれば、それぞれの判断が正しいのかどうかということを民事裁判所の方で最終的に判断する仕組みというものを、やはり民事訴訟法の中につくるべきだというふうに思っているわけであります。そういうことをすれば、インカメラ手続も認められるというか、つくらなければならないということにつながっていくと思うんですけれども、ぜひそうした制度にしてほしいと思っているんですけれども、法務大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。

森山国務大臣 刑事訴訟関係の書類等につきましては、刑事訴訟法等が、手続の段階に応じて開示の要件、方法等について独自の規律をしておりまして、民事訴訟において、刑事訴訟法等により開示が認められる範囲を超えてその提出を命じられることになると弊害が生ずるのではないかと思われます。

 また、刑事訴訟関係書類等について、裁判所のインカメラ手続により提出義務の有無を判断させる仕組みを採用する場合には、除外文書に該当するかどうかは、事件ごとの個別の判断によらざるを得なくなりますが、監督官庁が裁判所に対し捜査の秘密等との関係上詳細な事情を述べることができないときには、裁判所は適正に判断することができないということになります。

 また、裁判所は、文書提出命令の申し立てのされた文書のみをインカメラ手続で閲読いたしましても、開示による弊害の有無を的確に判断することは困難ではないかと思われます。

 したがいまして、御指摘のような制度を採用することは適当ではないのではないでしょうか。

平岡委員 今回の法律案でも、例えば二百二十三条の四項あたりに、いろいろな、提出を命じられないようなケースとして、国の安全とかあるいは犯罪の予防とか鎮圧、捜査、公訴の維持といったような場合には提出が命じられないというような形、そういうものについてまでもインカメラ手続でこれは審査するということを認めているということなんだろうと思うんですけれども、仮に、検察官なりが、これはいろいろな理由によって閲覧あるいは開示することが適当でないというふうに思っても、その理由をちゃんと民事裁判所の方で調べるという仕組みをつくって、そこでその検察官の考えていることが正当であるかどうかということを判断するという仕組みをとっても全くおかしくないのではないか。

 今の二百二十三条の四項でも似たような、もっともっと公益性の高い問題についてそういう仕組みをとっているわけでありますから、刑事訴訟関係書類について、はなから除外してしまうということではなくて、やはりちゃんと民事裁判所の方でも審査できる、そういう仕組みをぜひつくっていただきたいというふうに思うわけですけれども、その点について、もう一度法務大臣のその方向性としての御意見を承りたいと思います。よろしくお願いします。

森山国務大臣 先ほど申し上げましたとおりでございまして、おっしゃるような制度をつくるというのは適当ではないと考えます。

平岡委員 結論だけ言われても、ちょっとなかなか理解というか納得しがたいところがあります。この問題については、多分いろいろな方々がこの私の質問の後にもされると思いますので、ぜひ前向きに検討するようにしていただきたいというふうに思っています。

 それで、時間がありませんので、次に、公務秘密文書の取り扱いについてちょっとお話を申し上げたいと思います。

 今回の公務秘密文書についていいますと、「公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」という形で限定が付されているわけでありますけれども、この限定というのは、これまであった判例に照らしてみますと、必ずしも適当ではないのじゃないかというふうに思うわけであります。例えば、判例の中には、提出によって国家利益または公共の福祉に重大な損失、重大な不利益を及ぼすものについては、その提出義務が除外されるというような形を判示したものもございます。

 そういう意味でいくと、今回の改正法案は余りにも文書提出拒絶範囲を拡大するものになっているのではないかというふうに思うのですけれども、その点について御説明願えますでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま委員御指摘のような裁判例があるということは、私どもも承知しております。

 ただ、これ以外にも裁判例は区々に分かれているわけでございまして、若干御説明させていただきますが、例えば、国家あるいは公共の利益を害する性質を有する事項、そういう言い方をしているもの、それから、公表することが国の課税権の行使にも支障を来すことが明らかである事項、公表することが税務行政上の執行に重大な支障を来し、国家ないし公共の利益に重大な不利益を及ぼすおそれがある事項、それから、先ほど委員御指摘のように、国家利益または公共の福祉に重大な損失または不利益が及ぶ事項、こういうように区々に分かれているわけでございます。

 どれが決定的かというものは判例上はございませんで、私ども、この要件を採用いたしましたのは、学界でもほぼこの考え方が有力であったということ、実質的にもこれでいいのではないかという判断があったこと、それから、御案内のとおり、証言と文書は等価値であるということで、証人として供述する場合、その承諾について、やはりこの文書提出の関係で除外事由としているのと同じような事由がない限り承諾を拒んではならないという規定がもう既に置かれているわけでございまして、こういうものに倣って今回の条文を置いたということでございまして、決して従来の通説的な判例とかその辺を後退させたというわけではないということを御理解いただきたいと思います。

平岡委員 今までの規定との整合性みたいなお話も言われましたけれども、一番やはり問題なのは「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」というような表現の中に潜んでいる考え方なのですけれども、公務というのはいろいろなレベルのものがあって、非常に公益性の高い、本当に守っていかなければならないものもあれば、必ずしもそうでもない軽微なものもあれば、必ずしも適切ではないようなものも含まれているというようなこともあろうかと私は思うのですね。

 そう考えてみますと、やはり秘密として守るべきか、守らないでいいのかということについての判断の基準というのは、公務の遂行ということにあるのではなくて、その背後というか、その根源に潜んでいるところの公益性だとか国家の利益とか国民の利益、そういうものでなければならないのじゃないかというふうに思っているわけであります。

 そう考えていくと、今現在ある、先ほどの証言拒否の事由の中にも同じような文言があるというようなことがありましたけれども、そういう場所における文言も含めてやはり検討をしていかなければいけない、それが本当に国民の立場に立った司法のあり方ではないかというふうに思うのですけれども、大臣、これを大臣に聞くというふうに言ってありましたので、よろしくお願いします。

森山国務大臣 公務員は国民全体の奉仕者でございまして、公共の利益のために勤務するべき立場にあるわけでございます。ですから、その職務は、究極的には、公共の利益、国家の利益あるいは公共の福祉の実現に向けられているわけでございまして、公務が支障なく遂行されるということもこれらの利益の実現に資するというふうに考えられます。

 ここに用いました言葉につきましては、ただいま局長から御説明申し上げましたとおり、裁判所が文書提出義務があるか否かを判断する基準としての明確性ということが重要でございましたし、現行民事訴訟法中に既に用いられている用語との整合性をも考慮いたしまして、公務の遂行という用語を採用したものでございまして、このような考慮に基づくこの基準は適切であると考えております。

平岡委員 例えば、公務の遂行ということをいいますと、この前判決が出ましたハンセン病の隔離政策のような場合、隔離政策そのものを実行していくこと自体は公務ということであって、それを遂行していくために支障があるからこれは公文書として提出できないのだというようなことではなくて、その背後にある、なぜ隔離しなければならないか、その隔離していることが本当に国家の利益になっているのか、公共の利益になっているのか、そういうところまで踏み込んだところで、本当にその公文書というのは秘密性があって、本当に出してはならないものなのかという判断をやはりしていかなければいけない。ただ単に公務ということの形式的な基準をもってして、公務の遂行に支障が生ずるものはだめだというようなことはあるべきではなくて、進むべき道は、やはり公務の背後にあるというか、もとにある公共性とか公益性といったところに判断基準を持ってくるべきであるというふうに私は思っております。

 この点について重ねて答弁していただいても同じ答弁かもしれませんので、強く私はそういう方向に進むべきということを申し上げまして、次の質問に移らさせていただきたいと思います。

 次の質問は、自己使用文書と呼ばれている問題であります。規定的には第二百二十条の第四号のニに当たるものであります。

 端的にお伺いいたしますと、私も本会議で質問いたしました郡司ファイルというものが薬害エイズ事件でありましたけれども、この郡司ファイルというのは、裁判所へ提出する義務のある文書から今回の法律改正によって除外されることになるのでしょうか、それとも除外されないのでしょうか。どういうふうに考えたらよろしいでしょうか。

山崎政府参考人 この文書につきましては、私どもが所持しているものでないので、一般的には、マスコミ等に報道された事実を前提にお答えをさせていただきたいと思いますけれども、具体的にはわからないのですが、当時厚生省に保管されていたものでございますけれども、何か仄聞するところによりますと、個人のメモというような、メモ書きがあったように報道されているわけでございますけれども、仮にそういう記載があっても、その文書自体が公務員が組織的に用いるものであるという実質を持っているとすれば、それは提出をしなければならない、自己使用文書には当たらない、こういう理解をしております。

平岡委員 これは個別の判断になるのかもしれませんので、これ以上突っ込んでも仕方ないとは思いますけれども、ただ、公務員が組織的に用いるものというのも非常にまた抽象的な概念であって、一体どういうものであったら組織的に用いるのか。例えば、私が、まじめに一生懸命会議のメモをとっておいて、もしかしたらいずれこれをどこかで使うかもしれないと思って個人的に控えておったというようなものについて、私が公務員であったとして、これを本当に組織的に用いるものなのかどうなのかという判断というのは非常に難しいんじゃないかというふうに思うわけです。

 そういう意味で、私は、これも本会議で質問申し上げたんですけれども、公務員が公務を遂行する際に作成して所持、保管している文書については、たとえそれが個人的なメモであったとしても、書かれている中身がそうした公務ということでありますから、文書提出命令の対象とすべき文書であるというふうに思うんですけれども、その点について大臣のお考えをお伺いいたしたいと思います。民事局長が先でも結構ですけれども。

山崎政府参考人 御指摘の点でございますけれども、それは個人で将来使うかもしれないという形で個人のファイルの中に残していたということになれば、これは自己使用文書であろうというふうに思います。ただ、先ほど私が申し上げた形態では、個人のメモではあるんですけれども、最終的には組織で使うということから組織の文書の中に置いておいたわけでございまして、これは、将来的にそれを使うということになれば、やはり組織共用文書であるという理解をするというふうに私は考えております。

平岡委員 私は思いますと言われても、民事局長さんとして言われていることであるので、多分法務省としての見解ということになるんだろうと思いますけれども、私としてそう思いますというぐらいしか答えが出ないというぐらい、この概念というのは非常にあいまいな概念であるわけでありまして、そうした概念の不明確なものをここで書くのではなくて、やはり、公務員が公務を遂行する際に作成したもの、そして保管しているものについてはすべて対象になるというように明確にし、そして先ほど私が申し上げましたように、それが、最終的には司法の場において、国民の権利を守り、そして適切な権利の行使をしていくために必要なものであれば、当然にそれは提出されるべきだ、提出義務の対象になるべきだというふうに考えるんですけれども、最後に、森山大臣のお考えをお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。

森山国務大臣 おっしゃる先生の御質問の気持ちはよくわかります。

 私も公務員をしばらくやっておりましたものですから、当時は、筆記の手段あるいは記録の手段も限られていて、自分の手で書くというのが主でございましたので、忘れないように書くという自分のためのものもありましたし、それを書いたものをみんなにも披露して、そして業務の参考にするという場合もございます。その境目が非常にはっきりわからない。一つ一つ具体的に検討してみなければわからないということは今でも同じだと思いますが、いろいろな種類のものがあると思いますので、局長としても御説明申し上げる場合にもあのような言い方しかできなかったのは当然だと思いますが、一口に申せば、公務員が個人的なメモなど、いわゆる自分が使用するということが中心である文書が提出の義務からは除外されているというのは、公務員が自由な意思活動をするということも必要でありますので、そのようなことを不当に妨げないようにするという配慮でございます。

 個々、それぞれ、一つ一つのケースについては、その内容あるいはその表現ぶりその他について、使用目的その他について一つ一つ検討しなければならないであろうと思いますが、公務員が組織的に用いるということを前提にしてあるものであれば、それが個人メモという形をとっていても、提出命令の対象になるというふうに思いますし、そうでない場合は除外されるということを申し上げるほかございません。

平岡委員 実際には、いろいろな運用といいますか、認定という問題にやはり帰着してしまうのかもしれませんけれども、公務員が仕事に際してつくったものというのは、必要があれば、国民の権利の保護のために提出していくべき書類という位置づけをとっていくということがやはり必要であろうというふうに思います。

 ぜひそういう方向でまた考えていただきたいというふうに思いまして、私の質問を終わります。

保利委員長 次に、山内功君。

山内(功)委員 民主党の山内功でございます。

 行政訴訟については、原告がなかなか勝てないということが指摘されております。加えて、弁護士費用の敗訴者負担の原則を導入すべきであるという議論もございますけれども、敗訴者負担とすると、市民が敗訴を恐れて行政訴訟を提起することをちゅうちょしてしまい、六月十二日に答申をいただきました司法改革審の司法の充実をうたう提言が無意味になるのではないかと思うのですが、大臣の見解を伺いたいと思います。

森山国務大臣 六月十二日に司法制度改革審議会がまとめていただきました意見書では、現行の行政訴訟制度の見直しに関する検討課題として幾つかのことが挙げられております。

 それは例えば、原告適格、処分性、訴えの利益、出訴期間、管轄、執行不停止原則などでございますが、このような行政訴訟制度の見直しを含む行政に対する司法審査のあり方につきましては、この意見書において指摘されておりますとおり、統治構造の中における行政及び司法の役割、機能とその限界、さらには、三権相互の関係を十分に吟味した上で、総合的、多角的な検討が進められる必要があると考えております。

山内(功)委員 敗訴者負担のことについて特にお聞きしたんですけれども、株主代表訴訟や住民訴訟では、勝訴しても株主や住民が直接利益を受けることがないわけです。株主や住民が敗訴した場合には相手方の弁護士費用まで負担しなければならないというのは不合理ではないでしょうか。

森山国務大臣 先ほど申し上げました司法制度改革審議会の意見におきましては、勝訴しても自己の弁護士報酬を回収できないために訴訟に踏み切れなかった当事者にも訴訟を利用しやすくするとの見地から、弁護士報酬の一部を敗訴者に負担させることができる制度を導入すべきであるというふうにされております。

 しかし、弁護士報酬の敗訴者負担制度を導入することについては、御指摘のような問題もございまして、司法制度改革審議会の意見の中でも、不当に訴えの提起を萎縮させないよう、これを一律に導入することなく、敗訴者負担を導入しない訴訟の範囲及びその取り扱いのあり方等について検討すべきであるとも言っておられます。

 政府は、本日、司法制度改革審議会意見に関する対処方針を閣議決定いたしまして、その中で、司法制度改革審議会意見を踏まえ、司法制度改革の推進体制等について定める法律案をできる限り早く国会に提出いたしまして、その成立を期したいと思いますとともに、司法制度改革を実現するための方策の具体化について鋭意検討を進め、所要の措置を講ずることとしておりますが、法務省といたしましても、御指摘の問題を含め、この方針に従って適切に対処してまいりたいと思います。

山内(功)委員 判検交流、あるときは行政の代理人、検事、そしてあるときは裁判官。その判検交流が行政訴訟において原告勝訴率一〇%を切るということの原因にもなっているのではないかと思うのですが、簡単に、その実態と、今後の見直しの検討課題とする考えはないのかどうか、当局に伺いたいと思います。

都築政府参考人 御答弁申し上げます。

 法曹は、裁判官、検察官、弁護士、いずれの立場におきましても、その立場に応じて職責を全うするというふうに考えております。

 判検交流につきまして、今回の答申におきましても御意見がございますので、それを十分踏まえた上で対応してまいりたい、かように考えております。

山内(功)委員 さて、公務秘密文書の点についてお聞きします。

 「提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの」との規定でございますが、公共の利益は著しく増進し、その反面、公務の遂行に著しく支障を来すような場合にはどうなるのですか。

山崎政府参考人 ただいまの御質問でございますけれども、基本的な考え方として、この「公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがある」場合ということでございますが、これは、公共の利益を害するおそれがある場合の一類型であるというふうに理解をしております。このおそれがある場合の内容をより明確にするために、特に明文で規定したものということでございまして、一番大きな範囲はやはり、公共の利益を害するおそれ、これにあるわけでございます。

山内(功)委員 だとすると、今の問いについては肯定的に解するということでいいんですね。

 では、次の質問に行きますが、この公務の遂行に支障を来すというのはどういう場合なんですか。例えば、役所から書類が一時的にでもどこかに行ってしまって、その書類を役所で見ることができないということならば、民事裁判所に、附せんでもつけて、早く閲覧、謄写して送り返してくれよと書けばいいわけで、公務の遂行に著しく支障を来すというような場合は考えにくいと思うのですが、どうですか。

山崎政府参考人 ただいま委員御指摘のような、一時的にそれを裁判所に出してまたすぐ戻す、そういう支障のことを言っているわけではなくて、そこに書かれている、記載されていることそれ自体が外へ出るということによって今後の公務の遂行にいろいろ支障がある、あるいは私人からいろいろ預かっているもの、これは秘密であるということで特に預かっているもの等がございます。こういうものを仮に出したということになりますと、今後はもう協力も得られない、あるいはその方の守秘義務を害するとか、そういうような実質的な公務の支障を言っているわけでございまして、形式的に、一時それがないから困る、こういうような事由ではないというふうに理解しております。

山内(功)委員 次に、自己使用文書の件についてお伺いしますが、なぜ除外文書とされているのでしょうか。具体的にはどのような文書をいうのか、局長、お願いします。

山崎政府参考人 これにつきましては、公務員が個人的に使用する、備忘録、メモ、それからノート、手帳の記載等、こういうことを言っているわけでございます。仮にこういうものも提出を命じられる、外部に出るということになりますと、公務員もいろいろ個人として自由な発想をし、自由な活動もする場面もあるわけでございますが、そういうものが阻害されるという理由から不提出文書に当たるとされているわけでございます。

 ただ、これにつきましては先ほど来いろいろ御議論ございまして、では、何でも、個人のメモである、個人の手帳であるというような形にすればそれでいいのかということになってしまいまして、それでは提出の範囲が非常に狭くなるわけでございます。そこで、あえて明文の規定を置きまして、そういうものであっても、それを組織として将来使うものということで、組織として所持をしているという種類のものがありますけれども、そういうものは自己使用文書には当たらないということで提出をしなければならない、こういう扱いをしているわけでございまして、この点は、いわゆる行政情報公開法の考え方と全く一緒にしているわけでございます。

山内(功)委員 真相は、後であれこれ手の入った秘密文書ではなくて、実は自筆のノートにこそ真相が隠されているのじゃないのでしょうか。

 例えば黒ひもでとじてあったり、あるいはファイリングされた中に官僚個人の自筆のメモがあったら、それをわざわざ取り外すのですか。具体的に考えても大変おかしなことが起きると思いますし、私は、例えばタイプ打ちの文書を受け取った後、鉛筆とかペンで書き込みをする場合があるんですね。書き込みの量が相当な部分にわたった場合には、それはもう自分の文書になるのですか。そうすると、ますます公務秘密文書という概念が広がり過ぎて、なかなか真相を書き込んである個人の文書というものが出にくくなるのじゃないでしょうか。

山崎政府参考人 私どもが仕事をする場合、確かに、会議のところで、それからいろいろなヒアリングをしているときにメモをいたします。相当な分量にわたることもございます。それを簡単に組織に報告して、もうそれ以上は別に組織に残す必要はない、自分の将来のために何か持っていればいいということであれば、これはまさに個人のメモということになるわけでございますが、それが将来的に組織で使うということになれば、幾ら自分の備忘録であっても、それは公文書に当たるということになるわけでございまして、そういう趣旨で私は先ほどから申し上げているということでございます。

山内(功)委員 公務秘密文書や自己使用文書の除外事由に該当する旨の立証責任は、それでは役所側、文書の所持者側にあるということが前提となっているとお聞きしていいのですね。もしそうだとしたら条文に書くべきじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。

山崎政府参考人 この立証責任の点につきましては、法文上は、例えば今一番問題になります四号該当文書かどうかという点につきましては、除外事由がございますけれども、その除外事由に当たらないということを、請求する側、申立人、そちら側が第一次的には主張、立証すべきであるという構造になっております。

 ただ、現実には、求められる側は、この文書に当たるから提出できないということを実質的に証明しないと、その該当文書に当たらないという判断をされるおそれがございますので、そういう意味では、実質上は所持者側が立証の負担を負うということでありまして、申し立て側はそれほど過剰な立証責任の負担を負うということではございません。

 そういう意味で、この法文上、現在のようなバランスにしておいても、それほど酷な結果になるということではないというふうに理解をしております。

山内(功)委員 それでは、刑事記録の件についてお伺いします。

 刑事記録については、インカメラ手続の対象にもしておりません。しかし、被疑者が例えば死亡している場合、あるいは目撃者等の証人がいない場合、あるいは被疑者、目撃者がみずからのプライバシーを放棄している場合等々のような被疑者、目撃者の供述調書などについては、個別の案件に限っては、関係者の名誉やプライバシーなどを保護する必要がない場合もあるのではないかと考えます。

 刑事記録については、真相を解明するために、文書提出命令の対象とし、その開示、不開示をインカメラ手続によって裁判所が判断すべきだと考えるのですが、どう思いますか。

山崎政府参考人 不起訴記録のお尋ねだろうと思いますけれども、そういうものに関しましてもさまざまな態様のものがあるわけでございまして、委員ただいま御指摘のように、プライバシーとかそういうものに影響がない、あるいは捜査の今後の遂行に影響がないというものもあるかもしれません。しかし、そういう態様のものだけではございません。その……(山内(功)委員「不起訴記録に限ってませんよ」と呼ぶ)不起訴記録に限っていないわけでございますか、はい。

 それは、例えば裁判を係属しているという場合ですと、その裁判における被告人、そういう者の防御にいろいろ影響もありますし、公判の遂行、そういうものに影響がある場合もございますので、それはやはり裁判所の方で判断をしていただくということでございますし、例えば、確定記録でございますと、特段の事由がない限り記録を閲覧することができるということで、刑事の手続の方で、どの範囲で閲覧、謄写ができるか、こういうことは全部決めているわけでございまして、基本的には、刑事の方で、どの範囲で名誉、プライバシー、捜査の情報を守るかとか、そういうのを決めているわけでございますので、その判断に従うということでございまして、こちらから、形式的には除外されておりますけれども、その関係の書類が全く出てこないということではないということでございます。

山内(功)委員 しかし、出てくる書類は実況見分調書とか検証調書ですよね。しかも、今の局長のお話は、結局は、自分たちがいろいろ考えて出してやっている文書もあるよというふうに、こちらの方には聞こえるのですよ。だから、それをある程度の類型化をして、法案できちんと決める必要があるのじゃないかという指摘を私たちはしているつもりなんです。

 例えば、不起訴裁定についても、被疑者が死亡した場合、あるいは罪に全くならない場合、あるいは示談とかいろいろあって起訴猶予にしてやったという場合もあるわけでしょう。この法文の決め方は全く一律じゃないですか。起訴猶予になって、被害者の人が一年もかけて警察や法務省に閲覧、謄写をお願いしても、実況見分しか出ないでしょう。そういう厳格な態度を見せながら、今のこの委員会で、柔軟に弾力的に対応しますと言われたって、それは、今、閲覧、謄写をして文書を見せていただけない方々にとっては大変酷な発言だと私は思います。

 例えば、刑事記録についても、関係者の名誉や生活の平穏を著しく害する場合という条項を付加してでも、その場合にはインカメラによって判断しますよというような法案の修正というのですか、見直しというものは考えられないのでしょうか。

山崎政府参考人 ただいまの点につきまして、じゃ、どういう要件を付すればいいのかという問題が第一点でございますが、これについて、大方こういう要件であればというふうに理解を得られるものがまだ合意が形成されていないということが第一点とともに、仮に、じゃ、これをもし認めてインカメラ手続だということになった場合に、ある書類が、プライバシーにかかわるものか、あるいは捜査の秘密にわたるものであるかということは、その書類だけを見て判断できるのかどうかということでございます。

 その関係の書類全部を見て、その中で判断がされるべき筋合いのものだということになるわけですが、このインカメラ手続はその対象となる書面しか見られないということで判断をするということになるわけでございまして、現在考えられている、現行法では私文書がそういうインカメラ手続を持っているわけでございますけれども、そういうような中で有効に機能するかどうかということについては疑義があるというふうに考えております。

山内(功)委員 よく、インカメラ手続を採用しない理由の一つに、刑事確定記録法で刑事記録が見られるんじゃないかという議論がございますね。しかし、民事訴訟を今起こそう、あるいは起こしている方々にとって、刑事裁判が終わって確定するまで待ちなさいよ、そういうような法制度はないんじゃないんでしょうか。民事裁判をその期間中断あるいは中止するということによって、民事裁判自体の長期化にもつながると私は考えます。

 それから、犯罪被害者保護法によって、犯罪被害者には刑事記録の閲覧、謄写ができるんじゃないかと。それもインカメラを採用しない理由の一つによく掲げられますけれども、犯罪被害者保護法で閲覧が認められたのは九五%。しかし、五%は閲覧、謄写の請求が却下されています。こういうことからしても、今後の運用実態についてはやはりしっかりと見詰め続けて、そのあり方について検討する、それぐらいの答弁を、大臣、いただけないでしょうか。

森山国務大臣 この今御提案申し上げております改正法案といたしましては、今局長がるる御説明申し上げたような理由で、このような内容になっております。

 要するに、民事訴訟において、裁判所が、刑事訴訟法等により開示が認められる範囲を超えて刑事訴訟記録等の提出を命ずることになると、関係者の名誉やプライバシー等に対して重大な侵害が及ぶおそれや、捜査、公判の適正が確保されない心配があるということでありまして、このような弊害を防止するために、これらの書類については、その開示、不開示の規律を刑事訴訟法等にゆだねる趣旨で、一律に提出義務の対象から除外しているということでございます。

 公判記録の閲覧、謄写につきましては、受訴裁判所が、検察官及び被告人または弁護人の意見を聴取いたしまして、具体的な事件の審理状況と訴訟記録の内容に照らして、御指摘の法律の趣旨を十分に考慮しながら、要件の有無を吟味した上で適切に判断しているものと承知しております。

 犯罪被害者保護法の運用実態については、今後とも必要に応じてその把握に努めてまいりたいと考えます。

山内(功)委員 国防あるいは公安、それにわたる記録でもインカメラで出ることを思えば、刑事被疑者、被告人の人権は確かに重いものはあろうかと思いますけれども、それとのバランスから考えても、天下国家がどうなるかというものについてもインカメラで出てくることを考えれば、私は、刑事記録について一律に除外するというのは再考を促したいと思っています。

 次に、高度秘密文書についてお伺いします。

 これは通常の公務秘密文書と異なる取り扱いをされているようですけれども、局長、どのように違うのか教えていただけますか。

山崎政府参考人 この点、国の安全、防衛あるいは秩序の維持等が除外事由にされているわけでございますけれども、これも一般的には公務秘密文書に該当することは該当するわけでございますが、その中でもここに掲げられているものにつきましては、やはり高度な政策的な必要性がある、それから専門技術性があるということから、ほかの秘密とは一段ランクが違うという理解をしているわけでございます。そういうことから、審査構造を二段構えにして、まず当事者にその具体的理由を言わせ、その理由に合理性があるか否かを第一次的に裁判所に判断してもらう、仮に、それでどうしても裁判所が心証を得られないということになれば、その実質に入って審査をして、提出命令の適否を決めるという構造をとらせていただいているということでございます。

山内(功)委員 だとしますと、高度秘密文書については、どの場面でどのようにしてインカメラ手続が利用されることになるのか、お伺いします。

山崎政府参考人 先ほど申し上げましたように、第一次的には、提出を命じられる方、そちらの側から具体的な理由が言われるわけでございます。もちろん、それに対する相手の反論もあろうかと思いますけれども、そういうもので第一次的に審査をしていただく。そういう文書あるいは意見等で十分に判断ができない、心証がとれないというような場合、第一次的にはそこの合理性があれば従うわけですけれども、合理性に疑問があるということから、その文書の中身を見てみないと最終的に判断できない、こういう場合には裁判所はインカメラ手続を使って判断をすることもできる、こういう構造でございます。

山内(功)委員 結局、高度秘密文書というのは、監督官庁の意見が相当なものかどうかをまず審理するわけですね。そうすると、裁判官がその実物を見ないで役所の書面だけを判断しなさいよというのは、なかなか難しい問題があるんじゃないんですか。

山崎政府参考人 大変失礼しました。

 第一段階の審査の段階でも、疑義があれば使える。(山内(功)委員「そう言っていただかないといけない」と呼ぶ)わかりました。済みませんでした。ちょっと不十分な説明で申しわけございません。

山内(功)委員 では、今のことを前提に外務省にお伺いしたいと思います。

 外相会談の記録は、民事訴訟法が改正されることによって新しく規定される公務秘密文書に該当するのか、高度公務秘密文書に該当するのか、外務省のお考えを伺いたいと思います。

山口大臣政務官 今、外相会談の記録を明らかにするのは、相手の国、関係国との信頼関係を損なうおそれがあり、適切ではないというふうに何度も大臣も申し上げておるとおりであります。

 民事訴訟法が改正された場合の同法との関係については、同法案が現在国会において審議中であることにもかんがみ、現時点でのコメントはできませんが、いずれにしても、以上の観点から、一般的に外相会談の記録はしかるべき秘密指定を行っております。

山内(功)委員 一連の外相会談の内容が報道をされておりますけれども、その報道内容は事実ですか。

山口大臣政務官 一連の外相会談に関する報道内容については、六月の二日の外務大臣のコメント等を通じて根拠がない旨繰り返し御説明をしているとおりであり、個々の報道の内容についてコメントすることは差し控えております。

 また、本件について秘密漏えいがあったか否か、また、あったとすればどのような形で行われたのか、具体的に申し上げることは困難でありますが、適切な内部調査を含め、秘密保持体制の遺漏なきようを期してまいります。

 また、本件会談記録の開示要求については、これまで繰り返し御説明してきたとおり、相手国、関係国との信頼関係や、開示した際に損なわれる我が国の長期的な国益の擁護の観点から、これに応ずることはできません。

山内(功)委員 会談内容が仮に間違っていても、正しかったとしても、会談の内容が多少でも漏れたということになれば既にもう非公知の事実ではない、つまり、内容が周知の事実であるということになるわけですから、機密文書には当たらないのではないでしょうか。その点についての見解はどうですか。

山口大臣政務官 外務委員会ですとテレビカメラがいっぱいあるのであれなんでありますが、きょうはないんですが、本件について秘密漏えいがあったか否かについては明らかになっておらず、御指摘のような仮定の質問に対しては回答を控えさせていただきます。

 なお、一般論として、外務省は、外部からの資料請求に対し、国益や相手国との関係、関連法令等に基づき、可能な範囲で誠実に対応していきたいと思っております。

山内(功)委員 政務官、テレビが入っておりませんので、もし報道内容とそごがあるならば、真実を究明するためにも会談記録を開示すべきだと考えるのですが、政務官の御意見はどうでしょうか。

山口大臣政務官 先ほどもお話ししたのでありますけれども、会談の開示請求については、これまで繰り返し御説明のとおり、相手国、関係国との信頼関係、そして、開示がされたときに損なわれる我が国の長期的国益――先ほどと同じ答弁でございます。

山内(功)委員 一連の外相会談の内容を外務官僚がもしリークしたとするならば、外務省は都合のいいことは外に公開をする、しかし、外務機密費なんか都合の悪い文書については絶対に公開しないということ、これは極めて合理性に欠けるんだろうと思っています。

 このちぐはぐな対応を含めて、外務省あるいは政務官個人の意見はどうですか。

山口大臣政務官 それは、個々の個人のそれぞれの判断だと思っております。

山内(功)委員 はい、わかりました。

 高度公務秘密文書であっても、今討論をしましたようにいろいろな場面が考えられると思うんです。高度秘密文書に該当するかどうかを、公務秘密文書の場合と同じように直接裁判所が判断するというふうに考えるべきだと思うのですが、この点については、法務大臣、いかがでしょうか。

森山国務大臣 今いろいろ御説明がございましたが、国の安全などを害するおそれがあるかどうかの判断というのは、公共の利益を害し、または公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるかどうかの一般的な判断とは異なりまして、その性質上、高度の政策的判断や専門的、技術的判断を要する等の特殊性がございますので、司法府たる裁判所が直接国の安全等を害するおそれがあるかどうかを判断するというのは適切でないと思います。

山内(功)委員 いろいろ御答弁いただきまして、ありがとうございました。

 国民は、裁判所というものは、自分の権利を最終的に救済していただく機関だと思っていますし、真実がすべて明らかになるところであると思っています。資料を提出することによって、いろいろ国民から批判を受けることもあるでしょう。しかし、それに耐えて、それを改善することによって、必ずいい国につくり上げていくべきだと私は思っています。

 今後とも、法を見直す努力をしていただき、司法に対する国民の信頼を損なわないようにしていただきたいと強く念じまして、質問を終わらせていただこうと思います。ありがとうございました。

保利委員長 次回は、来る十九日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十分散会




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