衆議院

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第7号 平成13年11月2日(金曜日)

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平成十三年十一月二日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 奥谷  通君 理事 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 長勢 甚遠君

   理事 佐々木秀典君 理事 平岡 秀夫君

   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君

      荒井 広幸君    太田 誠一君

      後藤田正純君    左藤  章君

      笹川  堯君    鈴木 恒夫君

      棚橋 泰文君    谷川 和穗君

      西田  司君    林 省之介君

      松島みどり君    松宮  勲君

      山本 明彦君    吉野 正芳君

      渡辺 喜美君    枝野 幸男君

      仙谷 由人君    肥田美代子君

      松原  仁君    水島 広子君

      山内  功君    山田 敏雅君

      青山 二三君    佐藤 公治君

      木島日出夫君    塩川 鉄也君

      植田 至紀君    徳田 虎雄君

    …………………………………

   法務大臣         森山 眞弓君

   法務副大臣        横内 正明君

   法務大臣政務官      中川 義雄君

   経済産業大臣政務官    大村 秀章君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  原口 恒和君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委

   員会事務局長)      渡辺 達郎君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   但木 敬一君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    山崎  潮君

   政府参考人

   (国税庁課税部長)    村上 喜堂君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議

   官)           鈴木 直和君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二日

 辞任         補欠選任

  熊代 昭彦君     後藤田正純君

  中川 昭一君     林 省之介君

  吉野 正芳君     松島みどり君

  水島 広子君     山田 敏雅君

  山花 郁夫君     松原  仁君

  藤井 裕久君     佐藤 公治君

  不破 哲三君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  後藤田正純君     熊代 昭彦君

  林 省之介君     中川 昭一君

  松島みどり君     吉野 正芳君

  松原  仁君     山花 郁夫君

  山田 敏雅君     水島 広子君

  佐藤 公治君     藤井 裕久君

  塩川 鉄也君     不破 哲三君

    ―――――――――――――

十月三十一日

 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

十一月二日

 犯罪捜査のための通信傍受法の廃止に関する請願(植田至紀君紹介)(第一五五号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第一五六号)

 同(枝野幸男君紹介)(第一七五号)

 同(菅直人君紹介)(第一七六号)

 同(土井たか子君紹介)(第二三三号)

 同(土井たか子君紹介)(第二五七号)

 同(土井たか子君紹介)(第二六四号)

 裁判所速記官制度を守り、司法の充実・強化に関する請願(枝野幸男君紹介)(第一七四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 商法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

 商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第七号)

 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)




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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局長原口恒和君、証券取引等監視委員会事務局長渡辺達郎君、法務省大臣官房長但木敬一君、民事局長山崎潮君、国税庁課税部長村上喜堂君及び厚生労働省大臣官房審議官鈴木直和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝野幸男君。

枝野委員 民主党の枝野でございます。

 今回の改正は二つの大きな柱で、私は、そのうち、電磁的記録など電子的手法により会社のいろいろな事務あるいは株主の権利の行使を容易にするというような部分について、まず何点かお尋ねをさせていただきたいと思います。

 今度の改正で、株主総会における株主の議決権の行使を電磁的方法をもって行うことができるという改正が含まれております。私も、いわゆるインターネットなどを使って、ほとんど毎日インターネットを見ておりますし、毎週自分のメールマガジンなどもインターネットを通じて発信などをしておりますので、そういう使っている立場としては、こういったやり方がどんどん広まって便利になるということは大変望ましいことだとは思います。

 ただ、世の中には、年齢の高い方などを中心として、このインターネットなどのIT技術をなかなか事実上使うことができないという方が少なからずまだまだいらっしゃいます。そうした中で、確かに書面による議決権の行使というやり方もあるわけですけれども、ITを使いこなせるか使いこなせないかということの違いによって株主権、議決権の行使の容易さが違ってくるというのは、ITを使えない株主にとっては、事実上、使える株主に比べて不公平ではないかというような声が起こらないとも限らないんじゃないか。この点、どういうふうに御説明をされるのか、お尋ねをいたします。

横内副大臣 御指摘になりましたように、本改正案で新設される電子投票制度と書面投票制度は、いずれも、会社の判断で導入することができるように、任意の制度としております。いずれの制度も、会社にとっては、管理コストを節減するとか株主総会の定足数を確保しやすくするというメリットがありますし、株主にとっても、権利行使の機会の拡大というメリットがあるわけでありますけれども、その導入について費用がかかるということもありますので、採用するかどうかは会社の任意にしたということでございます。

 そこで、御指摘のように、会社として電子投票制度のみを採用するということも可能でありますけれども、現行法上では、株主はみずからまたは代理人が株主総会に出席をして投票しなければならないわけでありますけれども、改正案の場合には、現行のその方法に加えて電子投票もできるという形になりますので、少なくとも、インターネットを利用できる株主についてはこれまでよりは権利行使の機会の拡大を図ることになるということでございまして、必ずしも不当な、差別的な取り扱いではないというふうに考えております。

 なお、最近のインターネット利用人口の増加が顕著であることを考えますと、電子投票制度が採用されたときには、今後相当多くの株主がこれを利用することができるようになるものと思われます。

枝野委員 確かに、自分で行かなきゃならないとか代理人を選ばなきゃならないということに比べて便利になるという意味なのだからいいじゃないかということは、わからないわけではないんですけれども、今のお話を伺うだけでは、自分は、自分で行ったりとか代理人を通じて行使したりというところまではやれない、忙しくてできなかったりとか、だけれども自分は残念ながらITは使いこなせないという株主の人からの、あいつらだけいいなという素朴な感情にはなかなかこたえたことにはならないんではないだろうか。そこのところはもうちょっと説明の仕方を工夫されないと、私自身はこれは否定的ではない、むしろどんどん使った方がいいという立場にあるんですけれども、もうちょっと何かきちんと説明をする必要があるんではないかということを申し上げておいて、また戻るかもしれませんが、もう一つお尋ねをさせていただいておきます。

 逆に、せっかくITのような便利な機能を使うわけですから、この法律改正案によりますと前日までに提供するという規定の仕方になっていますが、必ずしも前日までという限定を法律で縛ってしまう必要はないんじゃないかという感じをまず受けました。

 つまり、例えば株主総会そのものの議事進行を、まさにこのITの時代ですから、インターネットなどを通じて実況中継することは、そんなにコストかからずにできます。現に、民主党という大変小さな貧乏な政党も、党大会をインターネットで全国中継いたしております。大きな規模とまではいかなくても、ある程度の規模の企業であれば、インターネットで株主総会を中継するというのは難しくないと思います。そうであれば、双方向性ですから、インターネットの画面を通じて株主総会の中継を見ながら、例えば新たに出てきた動議に対してであるとか、またネットを通じて投票するということも、技術的には全く難しくない仕組みになっているというふうに思います。

 そうだとすると、せっかく法改正するんですから、もちろんそれは、ネット中継するかどうか自体も、株主に対するサービスですから、会社の選択でいいと思うんですが、会社の側が選択すれば、ネット中継して、見ている人にその場で投票してもらうということを排除する必要はないんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

横内副大臣 御指摘のように、電子投票は前日までという規定にしているわけでございます。

 御指摘の問題は、現行の商法特例法上の書面投票制度についても同じ問題がございます。委員も御案内のように、現行でも、商法特例法上の大会社について、株主が千人以上の会社につきましては書面投票ができるということになっていて、その場合の書面投票は総会の前日までにしなければならないという制度になっております。

 そこで、この規定の解釈でございますけれども、そういう総会の前日までと限定した理由が会社の事務処理の便宜を考慮したものであることから、会社の側で当日提出されたものも有効として扱っても差し支えない、そういう解釈がとられております。

 そこで、今回の電子投票制度につきましても、権利行使の期限を総会の前日までとしましたけれども、これもまた会社の事務処理の便宜を図ったものでございますので、恣意的な取り扱いをしない限りは同様の解釈をする。端的に言いますと、当日来たものについても有効というふうに会社の側で判断して扱っても差し支えない、そのような解釈をしております。

枝野委員 大変結構なことだと思います。株主の側の便宜ということから考えれば、本当に将来的には、それも多分今のIT技術の進歩からすればそんなに遠くない将来は、株主総会、一カ所に集まるということ自体がナンセンスだ、そんな時代もあったなということになるんじゃないかと推測されますので、ぜひ今の解釈についての周知徹底を、特にベンチャーの新しい企業は、株主も含めてみんなそういう技術についてなれている人がほとんどのケースの企業もたくさんあると思いますので、ぜひ周知徹底をしていただきたいというふうに思います。

 そうすると、もう一つあります。今度は、前日までというふうに限定をされている逆方向のことをちょっと一つお尋ねをしたいんですが、確かに会社の方の便宜のことを考えますと、例えば書面投票制度にしても今度の電磁的方法による議決権の行使にしても、前日までにその議決権を行使するということになっております。ただ、例えば書面による郵便であれば、郵便局もわざわざ速達で夜中のど真ん中に送るということがあり得るのかどうかは別として、常識的には夕方までには着くということだと思いますが、ITであれば夜中の十一時五十五分まで前日ということになります。あるいは、株主に対する便宜を図るんだからということで、それぐらいは甘受しろという話はもちろんあるかもしれませんが、株主総会が月曜日で前日が休日であるとか、そういうケースも十分想定できるわけであります。

 あるいは、特に書面による議決権の行使や電磁的方法による議決権の行使というものを、株主の便宜を図るものだから、できるだけいろいろな会社でやってもらった方がいいという立場にもし立つならば、今までの特例法による大会社の書面行使ということであれば、前日までに届いたら総会までの半日ぐらいの間に全部整理してということは可能かもしれませんが、そこまで大きくはない会社だけれども株主の便宜のためだからITは使ってあげましょうとかというところが、ITだったら機械的にわっと出てくるので半日もあればできるかもしれませんが、書面による投票などを三日前に締め切って整理をしたいとか、そういう企業のニーズというのは僕はあり得るんじゃないかと思います。

 先ほどの御説明のとおり、この法律は、本来はやはり原則は本人が行くなり代理人が行って議決権を行使するんだけれども、会社の側が決めれば株主に対する一種のサービスとしてやってもいいということなわけですから、それを常に前日までを締め切りにしなきゃいけないと限定する理由はないんじゃないか。

 会社の判断によって、書面による行使や電磁的方法による行使は認めるけれども、うちはちょっと処理が大変だから三日前に締め切らせてくれとか、例えば前日でも前日の正午までに締め切らせてくれとか、そういうことの余地を認めてもいいんじゃないかと思うんですが、この法律ではそれが認められるのかどうか、まずお尋ねしたいと思います。

横内副大臣 御指摘の問題につきましては、現行の商法特例法上の書面投票制度についても同じ問題が生ずるわけでございます。そこでは、この商法特例法上の解釈としては、書面投票をする株主の権利を会社の都合で制限することを認めることは、会社の事務処理の便宜を考慮しても、株主の権利行使の機会を最大限に尊重しようとする法の趣旨に反するということで、今おっしゃったような、例えば三日前に締め切るとかあるいは前日の正午までに締め切るというようなことは、そういう定めを会社がすることは許されないというふうに解釈をしております。

 このことは、今回改正をお願いしております電磁的な方法による議決権の行使の場合も同様だというふうに考えておりまして、そういう定めはできないというふうに考えております。

枝野委員 いや、株主の権利として電子投票をする権利がもともとあるということであるならば、今の御判断のとおりなんだと思います。あるいは、株主の権利として書面による投票をする権利があるんだということを前提にするならば、今のお話のとおりだと思いますが、今度の法改正で出てくる書面による議決権の行使や電磁的方法による議決権の行使は、これは株主に権利として認められているものではなくて、会社の判断として、取締役会の判断としてすることができるという規定ですので、つまり株主の権利ではないですよね、取締役会が決める前は。

 取締役会が決めることで初めてその権利が生じるわけですから、取締役会としてその権利を一〇〇%付与するのか、それとも八〇%だけ付与するのかという、その余地を残してあげても問題はないんじゃないか。しかも、株主の側からすれば、その八〇%だけでも、電子投票や書面投票が全くできないよりは、今よりもよくなっているということだからいいんじゃないか、こんなふうに思うんですけれども、どうなんでしょうか。

横内副大臣 電磁的な方法でも投票を認めるというこの法の趣旨でございますが、株主の権利行使の機会を最大限に尊重する、できるだけ株主が権利行使をできるようにしよう、そういう趣旨で改正を行うわけでございます。ただしかし、そうはいっても、当日にどっと大量に来ますと事務処理が非常に大変だということがあるものですから、前日までの投票という規定にしているわけでございます。

 しかし、前提としては、株主の権利行使の機会を最大限に尊重するという趣旨で改正を行うわけでございますので、そういう観点からすると、やはり三日前に締め切るとかそういうことは許されないと思います。これは、現行の商法特例法上の書面投票制度の解釈でも同様な解釈をとっております。

枝野委員 いや、もしこれがすべての会社が電子投票制度をしなければならないという規定の仕方であるならば、それは、会社の都合で三日前にしてくれというのは困るというのはあり得ると思うんですが、会社が任意に電子投票をするかしないかを決めることができるわけですから、そのときに締め切りを前日までなのか三日前なのかということを決める自由を与えても何も困らないんじゃないかと思うんですが。

山崎政府参考人 ただいまの点は、確かに会社が採用するかどうかを決めるということになるのは御指摘のとおりでございますが、採用した以上は、それは反射的には株主の権利にもなるわけでございまして、株主になるべく最大限に権利行使をしてもらいたいということが前提にありましてこの制度を設けているわけでございまして、それを採用した以上はやはり最大限権利を尊重する、こういう考え方でできているわけでございます。現在の書面の投票制度ですか、これも同様な形で考えられているわけでございます。

枝野委員 では、民事局長で結構ですので、逆にお尋ねしますと、例えばこれを前日までじゃなくて三日前までということにしたら、何か困ることはあるんですか。

山崎政府参考人 確かに御指摘のとおり、困ることがあるかと言われますと、ないのかもしれません。ただ、会議が開かれるのは当日でございますから、事務の都合で前の日に締め切るわけでございますが、最大限認めてあげてもいいわけでございまして、株主の権利はなるべく行使していただきたいということの精神を優先させるという考えでございます。

枝野委員 私は弁護士を二年しかやっていないので、株主総会とかについて弁護士として仕事をしたことがないので、実務がわかっていませんからピント外れなのかもしれませんが、会社の側の立場に立ってみれば、前日締め切りでやらせろというんだったらちょっと事務処理大変だな、だけれども三日前締め切りとか一週間前締め切りとかというんだったら幾らでもできるわなという会社はあり得るんじゃないか。三日前締め切りだったらやってもいいかなという会社が、前日締め切りじゃないとできないんだったらやらないというよりは、三日前締め切りでも書面投票、電子投票を認めた方が株主にとってはメリットではないかというふうに思うんですけれども、どうですか、民事局長。

山崎政府参考人 委員御指摘の考え方も私もわからないわけではございませんけれども、従来から、この制度、書面投票でございますけれども、それを導入するときから、導入された以上は株主の権利を最大限に尊重するという考え方で行ってきておりまして、今回もそれと同様の考え方に立つ、こういうふうにしたわけでございます。

 委員御指摘の点、それは一つの考え方としてあるということはわかりますけれども、それを採用しなかったということでございます。

枝野委員 だから反対をしますというような種類のものではありませんが、今、大臣や副大臣、お聞きいただいて、申し上げていることは御理解いただけるんじゃないかと思いますので、特にこの電子投票の仕組みというのはもっと拡大をしていくと思いますので、ぜひ今後の検討課題としてテークノートしておいていただきたいと思うんですが、何か御答弁いただけますか。

横内副大臣 現在の商法特例法上の書面投票制度というのが、そういう解釈、学説的にも確立した解釈といいましょうか、そうなっておりますから、委員のおっしゃるような案は確かにあると思いますが、そうすると、それはやはり法律できちっと手当てをしなければいかぬと思いますし、御指摘のような点もあり得ると思いますので、今後の運用の状況を見ながら、また検討していきたいというふうに思います。

枝野委員 最初の、ITを使えない人に事実上不公平じゃないかという話も含めて、とにかく、今度こういったことが入ってくるというのは大変いいことだと思いますが、まさに今まで想定をしていなかったようなことが商法の中に入ってくるというところなので、いろいろ試行錯誤はあり得ると思うし、あっていいと僕は思いますので、ぜひ、より便利に、ただ、なおかつ使えない人にも不利益がないようにという視点は常に忘れずに、今後もこういった部分については、大体法務省の仕事というのは性格上、性質上いつも半歩おくれぎみというのは、それはそれで正しいことだと思うのですが、こういうところは逆に半歩踏み出すようなことがあってもいいと思いますので、いろいろな形での検討を進めていただきたいと思います。

 さて、続いて、この改正の条項そのものに直接かかわるわけではないのですが、会社株主の権利のあり方というようなところから一点お尋ねをさせていただきたい問題があります。

 まず、端的にお尋ねをしたいと思いますが、商法の二百八十五条ノ四に時価という規定があると思いますが、この時価の定義、時価はどういうふうに位置づけられているのでしょうか。

横内副大臣 一般に、法令用語として時価という場合には、その時点において一般にそのものが取引されている実際の価格をいうものと解されておりまして、本条による時価も同様であるというふうに考えられます。

枝野委員 さてそこで、今のような定義であるのならば、この二百八十五条ノ四の一項の金銭債権一般について時価と言ってもいいんじゃないか。なぜ、一般的には時価と言わずに、三項で、市場価格ある金銭債権に限って時価としているのでしょうか。その点についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

山崎政府参考人 この規定、平成十一年の商法改正で設けられた三項でございますね、そういう規定でございます。

 これは、市場性のある金銭債権、社債、株式等のいわゆる金融商品につきましては時価で評価することが会社の資産状況を適正に表示することになるとの認識が当時一般的になっておりまして、国際的な動向にもなってきたということが一つでございます。

 それから、企業会計審議会におきましても、金融商品の時価評価を導入するために企業会計原則の見直し作業を進めまして、平成十一年一月に、金融商品についての時価会計制度を採用すべきであるという「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」、これが公表されたわけでございまして、その時価会計制度の導入を求めたこと等を考慮して新設されたという経緯にございます。

枝野委員 今のお答えは、三項を創設した理由の御説明としてはそのとおりだと思うのですが、その三項を設けた趣旨からすれば、つまり、金銭債権は時価で評価した方がいいというのが世の中の全体の流れなわけですから、市場価格ある金銭債権に限らず、一項そのものを改正して、金銭債権については時価を付することを要すというふうに一項そのものを書きかえてもいいんじゃないですか。なぜ、一項そのものを書きかえずに、市場価格ある金銭債権に限定したのですか、時価をつけるというのを。

山崎政府参考人 この規定は、市場価格がない金銭債権、これにつきまして時価評価を算定することが極めて困難であるということから、市場価格あるものについてはその時価で評価をする、こういう規定になったということでございます。

枝野委員 大臣、今の解釈でよろしいですね。大臣、今の民事局長の御説明でよろしいですね。できれば、これは大臣がいいと思うのですが。

横内副大臣 これは、先ほど民事局長が御説明しましたように、金融商品に匹敵するような、例えばコマーシャルペーパーというような、そういう市場価格のある、市場性のある金銭債権についてそういう扱いをしたということでありまして、通常の金銭消費貸借のような市場の取引が一般的に行われないものについては、時価の定義からして、なかなか時価を把握するということは困難なものですから、そういう扱いにしているということだと思います。

枝野委員 大臣、今の解釈でよろしいですね。

森山国務大臣 副大臣それから民事局長が御説明申し上げたとおりだと思います。

枝野委員 後でRCCの改正が出てきたときに、今の御答弁は使わせていただきますので。

 続いて、この二百八十五条ノ四の二項、「金銭債権ニ付取立不能ノ虞アルトキハ取立ツルコト能ハザル見込額ヲ控除スルコトヲ要ス」という規定になっております。

 きのうの質問取りのところでかなりやり合ったのですが、ちゃんと答えが出てくるかどうか心配ですが、具体的な刑事事件について、犯罪に当たるとか当たらないとかということを政府の立場としてお答えになれないというのはよくわかっています。ですけれども、法律の構成要件がどうなっているのかということについては、所管官庁として説明をしなければいけない責任があると思います。

 そうした立場からお尋ねを申し上げます。

 金銭債権について、会社の取締役が、取り立て不能のおそれがあると認識をしながら、「取立ツルコト能ハザル見込額」を控除せずに会社の利益を計算して、その利益に基づいて配当を行った。ここまでの事実関係がすべて構成要件に該当する、立証されたというケースでは、四百八十九条の「会社財産を危くする罪」の三号、法令または定款の規定に違反して利益もしくは利息の配当等を行ったときは、五年以下の懲役または五百万円以下の罰金に処するという規定があります。

 当然、二百八十五条ノ四の二項、取り立て不能のおそれあるときに、そのことを認識しながらその見込み額を控除しないというのは、ここに言う法令違反でありますし、その法令違反の計算に基づいて利益の配当を行ったら、この会社財産を危うくする罪に該当する。もちろん、違法性阻却事由とか責任阻却事由が存在しないということが前提ですが、構成要件該当性は充足するということになると思いますが、何か間違っていますか。

山崎政府参考人 個別の事情はちょっと捨象いたしまして、一般的な商法の解釈として申し上げますけれども、取り立て不能のおそれがある金銭債権について、取り立て不能見込み額を控除せずに、二百八十五条ノ四第二項、今御指摘ございましたが、それと、二百九十条で配当の規定がございますけれども、この規定に従った適正な計算を行った結果に基づいて算定いたしました配当可能利益額、これを超えて配当を行った場合、これは、御指摘のとおり、違法配当罪に当たるものと考えております。

枝野委員 違法配当罪には、当然、教唆をする者がいれば教唆犯が成立し得るはずでありますね。

山崎政府参考人 必ずしも所管ではないかもしれませんけれども、教唆犯は成立するというふうに解釈できると思います。

枝野委員 だとすると、日本じゅうとまで言うとまた問題になるかもしれませんが、相当多くの金融機関の取締役に相当濃厚な犯罪の嫌疑があるんじゃないか。さらに、その検査を行って見逃してきた金融庁の監督当局に、教唆または幇助の相当濃い嫌疑があるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

山崎政府参考人 個別の関係の事件に入りますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

枝野委員 ここから、もちろん今そのような回答があるのはよくわかってはいるんですが、これも政治問題です。

 つまり、銀行の経営は健全であると九九年に当時の金融再生委員長である柳澤さんがおっしゃって、公的資金を突っ込んでいます。ところが、また金融危機だ、金融危機だと大騒ぎをして、RCCの法律を何かわけわからなく変えるというような御提案が出そうだと聞いています。最近、大きな幾つかの企業倒産が出てきていますが、どうやらどの企業も、どの銀行についても、ほとんどのところが、我々の知る限りでは倒産企業の約七割については、いわゆる不良債権として分類をされていないということであります。

 つまりどういうことかというと、二百八十五条ノ四、二項に規定をする取り立て不能の見込み額を控除していないということであります。それはもちろん、人間のやることですから間違えるということはたくさんあります、たまには。だけれども、倒産している企業の七、八割ぐらいが不良債権として分類をされていない。つまり、一般的に、取り立てることあたわざる見込み額として控除されていないというケースが倒産をする。実際には、その結果取り立て不能に陥っているというケースがこれだけ相次いでいるということは、社会的に、この会社財産を危うくする罪の嫌疑が相当濃厚であるというのは、金融問題に関心を持っている政府関係以外の人間のほとんどの常識である。

 当然、政治の責任として、僕は法務大臣が指揮権を、積極発動の方はどんどんすべきだと一般的には思っていますので、場合によっては法務大臣が指揮権を発動しても、この金融機関の会社財産を危うくする罪、もっと端的に言えば不良債権をきちんと計上していないことが犯罪であるということについて捜査をさせるべきであるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

横内副大臣 刑事事件にかかわる問題でございまして、そういう疑いがあれば捜査当局はきちっと対応しているというふうに思います。

枝野委員 これだけ相次いで、だけれども、実際に金融機関の幹部が、犯罪であるとか、あるいは場合によっては特別背任、主観的要件によっては特別背任になる、その特別背任などで挙げられているのは、破綻をして第三者が銀行そのものに乗り込んできたというケース以外では、残念ながら聞いておりません。

 これらの銀行には、民間企業だから株主だけ損すればいいという話ではなくて、税金が突っ込まれているわけですから、現に公的資金が投入された金融機関が、結局その公的資金に対する株主としての配当が行われないという銀行が出てきているという状況にあるわけです。それは一刑事事件であるからきちんとやっているんでしょうということで、公的資金を投入している政府の立場として本当に許されるのか。

 もう一つ言えば、先ほど教唆、幇助の話をしましたが、金融監督当局がその不良債権の査定についてきちんと検査をしてきているという建前になっている。ところが、その検査の結果と全然違う。つまり、もう倒れているところですからいいでしょう、マイカルは危ないだなんというのは、銀行当局者じゃなくたって、検査をした金融当局者じゃなくたって、金融問題にかかわっている人間は、政府関係者以外はほとんど共通認識だったのに、不良債権に分類されていなかった。どう考えたって、この法律に違反しているんじゃないか。少なくとも、例えばこのマイカルについての話だけでも捜査をさせるというのが政府としての責任じゃないかと私は思います。

 まあ、お答えは期待できませんが、御答弁を求めます。期待はしませんが、御答弁を求めます。

森山国務大臣 先生の御主張は理解いたしましたが、個別具体的な問題につきましては、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

枝野委員 本当に重要な問題だと思っています。ここですべて解決するとは思っていませんが、国民の税金を使って金融機関は事実上助けられた、九九年に。その銀行のやめた役員なんかの退職金その他は全然下がっていないというのは、我が党の同僚議員が別の委員会でもやっています。

 その後、不良債権の問題はちゃんとやっている、やっている、もう大丈夫ですなどということを国務大臣が国会などで御答弁をされているのに、政府関係者以外は、やはりあそこはだめだよねとみんな、だけれども何か問題になっちゃいけないから表では言わないでいたところが、ああ、やっぱりだ、次々と倒れている。それが不良債権として査定されてこない。

 おれたちの税金を食い物にして自分たちの会社だけ守って、違法なことをやっても捕まらないんだということの中でこの国のモラルがきちんと保てるのかどうかということをきちんと考えなければ、本当に、この国は戦後五十年余り、とにかく金のためなら何でもありみたいな風潮が残念ながらある。それをむしろ助長することになっているのが、この金融機関の不良債権に対する現在の政治のあり方だと私は大変深刻に危惧をいたしますので、お答えになれないという事情もわかりますが、ぜひ国務大臣として、柳澤さんなどの動きなどについてしっかりとくぎを刺していただかないと大変なことになる。

 またこの問題については、別の委員会、財務金融委員会や予算委員会など含めて取り扱っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 最後に、全く別の次元の話ですが、後学のためにお尋ねをさせていただきたいんですが、法務省における課長人事の人事権というのは大臣がお持ちですよね。

森山国務大臣 法務省の課長職の任命権というのは法務大臣にございます。

枝野委員 当然のことですが、大臣がお決めになったら、事務次官とか官房長とか、そういう人たちの了解なくその人事は発令できますね。

森山国務大臣 現実には、その任命につきましては、法務省のことを考えますと約五万人の職員がおりますので、一人一人について大臣が全部精通しているわけではございませんから、事務当局の意見を踏まえまして決定するわけでございます。

枝野委員 当然だと思います。意見を聞かれるのはもちろん当然だと思います。

 意見を聞く前にチャンバラをしているところについては大問題だと思っていますが、みんなが笑っているその個別案件の問題と、それから制度の問題は別問題だと思っています。チャンバラをやっているそこは、僕は個別問題として、事務方が一方的に悪いとは全く思っていませんが、しかし制度としては、大臣が決めたら、事務次官や官房長が何と言おうとそれで決めることができる、法務省は少なくともそうなっていますよね。

森山国務大臣 今までのところ、事務当局との間で最終的に意見が一致しなかったということはございませんので、そういう経験はありません。

枝野委員 いや、まさに制度のことをお尋ねしているんで、私は、基本的には、事務方の皆さんときちんと意思疎通をして、お互い納得する形で人事は行うべきであるというふうに思いますが、そういった手順をきちっと踏んできた上でも、やはりここの人事だけは大臣どうしても困りますという話が、ケースとしてはあり得るわけですね。

 そのときに、どこかの役所のように、何か事務方が動かないと人事が発令できないというのでは、これは憲法に反するわけですね。行政権は内閣にあるんですから、国務大臣にあるんであって、申しわけないですけれども事務次官や官房長にあるんではないですから、制度としては大臣が、もちろん政治的にはというか社会的にというか組織論としては、きちんと事務方で積み重ねてきて、納得いくようにやっていって、お互い納得で発令するのがもう九九・九%だけれども、万が一のケースは大臣の判断で、事務方が何と言おうと人事は発動できますよね。大事なことですから、それはそうだとお答えいただかないとやはり大問題です。

森山国務大臣 先生がおっしゃいましたようなケース、最終的にどうしてもというようなことがもしあるとしましたら、それは任命権者は法務大臣でございますので、おっしゃるようになると思います。

枝野委員 ありがとうございます。

 本当に、個別ケースの適否の話と今のような制度がどうあるべきかという話は全く別問題ですので。逆に言えば、大臣は、そういう権限を持っているということを背景にしながらも、だけれども、ちゃんと事務方の皆さんと意思疎通を図った上で、できるだけ納得ずくで物事が進むという努力をしていただく。だけれども、事務方の皆さんも、最後は大臣が政治判断で決めるということについては、きちっとしたコミュニケーションの上だったらそれを認めていただくということがなければいけないと思うので、そうなっていない国務大臣が若干一名いるようでございますので、国務大臣のお仲間の一人として、きちんとしてぜひやっていただきたいなということを申し上げて、終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

保利委員長 次に、山内功君。

山内(功)委員 民主党の山内功でございます。

 高度情報化社会に対応して会社運営のIT化を可能とする今回の改正案は、企業の今の実態とかけ離れてもいけないと思っています。会社関係書類の電子化そして公開の問題について、十分な説明責任を内閣の方からまず果たしていただきたい、そういう思いで伺ってまいります。

 まず、現行法上、会社関係書類について署名が要求されている場合に、電磁的記録で作成する場合にはどのような手当てがなされているのでしょうか。

山崎政府参考人 御指摘のようなケースとしては、例えば貸借対照表がございまして、これにつきましては署名が要求されております。これを電磁的記録で作成する場合に関しましては、この法案でも、「署名ニ代フル措置ニシテ法務省令ニ定ムルモノ」ということになっておりまして、法務省令で内容を定めるということでございます。

 現在、その内容について検討中でございますけれども、この署名に関しましては、改変が行われていないかどうかを確認することができる装置、具体的には電子署名、これを付することを要するということを今検討中でございます。

山内(功)委員 電磁的記録で作成された会社関係書類についての閲覧、謄写などの方法は、それではどういうふうに行われるのでしょうか。現行法では謄本とか抄本の交付請求が認められているものに関しては、電磁的記録の複製を請求することはできないのでしょうか。お願いします。

山崎政府参考人 御指摘の点も、具体的な内容につきましては法務省令で定めるという規定になっておりますけれども、その内容的には、例えば閲覧のことを考えた場合に、映像画面への出力をするという方法、あるいはそれを書面へ出力をして閲覧する、こういう方法、両者を一応念頭に置いて考えているわけでございます。

 それから、謄抄本の関係でございますけれども、これにつきましても法務省令で定める予定でございますけれども、例えば電磁的記録の複製、いわゆるフロッピーディスクに写したもの、その交付ということも含まれるということを前提で検討をしております。

山内(功)委員 ということは、請求する側が費用を払えばCDとかフロッピーについても可能であるということになるわけですね。

山崎政府参考人 フロッピー等を御持参いただければ、そこへ謄写してお渡しするという形になろうかと思います。

山内(功)委員 それでは、株主総会の招集通知についても電子化がなされるということなんですが、電磁的方法による招集通知の効力は、この法律では発信主義がとられているんでしょうか、それとも到達主義がとられているんでしょうか。

 私は、経済産業委員会で電子的消費者契約法という法案について質疑に立った者です。その際に、間違いがあっては困る、クリックミスがあっては困るということで、承諾について確認の画面をわざわざつくって慎重を期しなさいという法案にしたつもりでございますので、その法案との関係ではどうなるのでしょうか。

山崎政府参考人 現行法上どうなっているかということがまず前提になろうかと思いますけれども、現在、書面による招集通知でございますけれども、これは商法に規定がございまして、株主名簿に記載した住所等にあてて発することで足りるということになっておりまして、その場合には、通常到達したであろうときに到達したものとみなされている、こういうことでございます。やや複雑でございますが、制度上は到達主義でございますけれども、実質的には発信主義によっているということになるわけでございます。

 なぜこういう制度を採用したかということでございますが、会社から株主に対して行われる通知等が大量になり得るということから、その効力の発生について、個々の到達とか不到達とか、そういう事情にかかわらしめることなく一律にそれを定めるということで法的安定性を確保しようとしたというものでございます。

 このたびの電磁的方法で行われる場合、これも書面で行われる場合と同様というふうに考えておりまして、先ほど委員から御指摘がございました法案の関係とは考え方が違っているということでございます。

山内(功)委員 しかし、実務では、株主総会の招集通知が来なかった、あるいは一日前に株主総会の招集通知が来て結局議決権が行使できなかったというような訴訟が割と多いのですが、株主保護に欠けるということはないんでしょうか。

山崎政府参考人 個々の問題としてはあり得る話でございますけれども、やはりかなり大量の株主を想定しているということから、商法上はそこのところは割り切ってこういう制度を設けているわけでございまして、それで、書面でやる場合と電磁的な方法でやる場合、これで使い分けをするということは相当ではないということで、従来の解釈のとおりに今したということでございます。

山内(功)委員 それでは、議決権を行使する場合、その場合も電磁的方法がとられているのですが、どのような方法で真の株主から議決権が行使されているということが確認できるシステムになっているんですか。

山崎政府参考人 確かに御指摘のとおり、本人性の確認ということは重要なことでございます。この点につきましては、法律で画一的に定めることは適当でないということから、各会社の工夫にゆだねるということで、規定は置いてございません。

 ただ、この問題は、決議の効力にかかわる重要な問題でございます。そういう意味で、個々の会社においては本人確認のための適切な方法がとられるということになろうと考えておりますが、具体的な方法としては、電磁的方法により議決権を行使するという場合に、暗号を使った電子署名でございますけれども、電子署名を付するという方法、あるいは、あらかじめ会社の方からきちっと割り当てたパスワードを使っていただいて本人を確認するということを考えているところでございます。

山内(功)委員 今、各会社の個々の判断にゆだねるという発言があったんですけれども、それでは法的な安定性というのがなかなか保てないんじゃないんでしょうか。例えばの話です。電磁的方法による議決権を行使できる期限について、総会の前日の営業時間内までに限りますとか、あるいは前日の午後三時までにメールを送ってください、そういうことも個々の会社の判断に任せるということにするとできるということになるのじゃないですか。

山崎政府参考人 この点は個々の会社の判断に任せるという形にはなっておりませんで、この制度を導入するかどうかにつきましては会社の判断が入りますけれども、書面投票も同じでございますけれども、導入した暁には、その解釈は個々の会社の自由であるということにはなりません。

 先ほどもちょっとお答え申し上げたわけですけれども、現在、書面投票制度がございます。ここでの解釈の問題もございまして、現在の解釈は、これは確かに、前日までにということは会社の事務処理の便宜を考慮したものであるということでございますけれども、やはりこの趣旨としては、株主の権利行使の機会を最大限に尊重しようという法の趣旨がございます。そのようなことから、前の日の午後三時に締め切る、こういうことは許されないというふうに解釈されておりまして、電磁的方法による投票、この場合も同じである。それから、拡大されます書面投票、これについても同様の解釈であるというふうに考えております。

山内(功)委員 今おっしゃったように、株主権を最大に尊重する、もしそういう前提に立つならば、これからの論点として、メールが二十四時間意思を瞬時に伝達できる、そういうツールなわけですから、総会の採決の直前までメールを受け付けますというような議論も今後なされていく予定なんですか。

山崎政府参考人 現在は、まだ制度導入当初でございますので、混乱のないようにということで前日ということになっております。

 現在の解釈でも、会社は、ある株主についてはその当日の分を認める、ある者については認めない、こういう恣意的なことはできないわけでございますけれども、会社の方として一律に、投票が行われる直前までの分、これを議決権として扱う、投票として扱うということについてはできるという解釈をしておりまして、今そこのところは、現行法と同じように、この改正法でも解釈にゆだねているというところでございます。

 今後、こういう問題が、もうほとんどがみんな電子投票とかそういう書面投票になっていくという時代になって会社の方の混乱もないということなら、場合によってはそういう問題も考えられるということでございますが、現段階では混乱を避けるために前日まで、こういうふうに考えているところでございます。

山内(功)委員 会社の最高の意思決定機関は株主総会であるということは、今後も絶対に不変の原理原則なんでしょうか。

山崎政府参考人 全く不変かと言われますと、これはいろいろ人為的につくっていった制度でございますので何とも言えませんけれども、ただいまのところ、私ども、最高の意思決定機関が株主総会であるということを変えるつもりはございません。

山内(功)委員 例えば、経団連の方からは、最高の意思決定機関である株主総会に書面投票制度とか電子的投票制度を認めるという法律になるわけですから、取締役会とか監査役の決議についても当然そういう方法を取り入れていいんじゃないかという議論がなされているのですが、この見解についてはどう思われますか。

山崎政府参考人 現行法の解釈として、取締役会について、書面による持ち回り決議とかあるいは電話等でできるかとか、それからテレビ会議システムでできるか、いろいろ議論はございます。

 書面や電話というのは、やはり社内の経営の意思をそこで内部的に決める話でございますので、これは持ち回り等は許されないという解釈がされておるようでございます。ただ、テレビ会議システムですと、画面は見ますけれども会話の交換ができるわけでございますので、この点については認められると解釈されているようでございます。

 いずれにしましても、ちょっとここは解釈で非常にあいまいなところでございますので、中間試案、法務省で今まとめてございますけれども、その中に、各取締役の同意があるときは書面による決議をすることができるものとするかどうか、この改正項目検討として取り上げられております。いずれ、次期通常国会にこの改正案として御審議をいただくということでございまして、現在検討中でございます。

山内(功)委員 しっかりと議論をしていただきたいと思っています。

 次に、貸借対照表をインターネットで公表できるという規定について質問させていただきます。

 株をたくさん持っている方というのは、遺産相続の相談なんかを受けると、特にお年寄りの方が結構投資信託とか随分やっておられるんですね。比較の問題ですけれども、お年寄りほどメカに弱い、都会に比べて地方、田舎ほどデジタルデバイドがある、こういう年代間格差あるいは地域間格差がまだまだ残っている時代に、まず、このような法律を制定する意味はどこら辺にあるんでしょうか。

山崎政府参考人 確かに、デジタルデバイドと言われていることで、人によりあるいは地域により格差があるということだろうと思います。

 この問題は、確かに私どももあるということは重々承知でございますけれども、ただ、現在、インターネットの利用人口、携帯のものも含めて言われておりますけれども、四千四百万以上という人口になるわけでございまして、今後の推移を考えれば、また世界のグローバル化を考えますと、もっともっとそれが進んでいくだろうというふうに思われます。そういうことをある程度先取りしたといえば先取りしたということになろうかと思います。

 それから、お年寄りの方等で機械に弱い方、別にお年寄りじゃなくても弱い方はおられると思いますけれども、こういう方については、例えばその貸借対照表、これをインターネットで見るかどうかという問題を考えた場合に、これにつきましては、株主であれば、電子投票オーケーと言わない限りは全部計算書類を送ってくるわけでございますので、それを全部見ることができます。それから、これから買おうとされる方は、通常であれば証券会社に行かれるだろうと思います。証券会社で見せてもらえば全部見ることが可能ということで、現状においてもほかの手段で見ることはできる。それからまた、インターネットが自由に使える方はそれでもできる。こういうことで、今導入しても、それほど格差があってどうしようもないという状況ではないというふうに理解をしております。

山内(功)委員 大臣、大臣は私の母親と同じぐらいの年代になるのですが、今サイバーテロとかハッカーの問題とかございますし、それから今山崎局長がおっしゃったように年齢や地域による情報格差の問題もある。この点については大臣はどう考えておられますか。

森山国務大臣 私自身はインターネットを自分で扱うということは今やっておりません。しかし、非常に関心は持っておりまして、間接的にはその恩恵にも随分あずかっております。これは非常に便利なものであるし、私もそのうち習いたいというふうには思っております。

 そのように年齢的、地域的に利用者が違う、差があるということはよくわかっておりますけれども、でもこれも早晩解決されていくのではないか。もう少し時間がたてばさらに普及が進んでいきまして、現在、先ほどの話では四千四百万人ということを申しておりましたが、人口のほとんど、考えられるほとんどの人が使うようになるのではないかというふうに思いますので、今御指摘の貸借対照表等についてインターネットを利用するということも十分可能であり、それのための法律的な措置を準備しておくということも重要ではないかというふうに思っております。

山内(功)委員 自分の会社のホームページに載せるということになるわけですけれども、客観性とか信頼性というものが担保できないのではないかというおそれもあるのですが、その点はどう考えておられるでしょうか。

山崎政府参考人 確かに、各会社に任せるわけでございますので、御指摘のような問題が生じるおそれがないとは言えないと思いますけれども、この点につきましては、例えば虚偽の内容の計算書類、これをインターネットに載せるということになった場合には百万円以下の過料の制裁を受けるということになります。また、これだけではなくて、これによって第三者に損害を与えたという場合には取締役は損害賠償責任を負うということになるわけでございまして、こういうような点から、背後の措置でございますけれども、客観性の担保になるだろうと考えております。

 では、現在、官報、日刊新聞に公告を出されておるわけですけれども、これについてどうかといいますと、これについても結局内容の審査をしておらないわけでございます。そこは各企業の良心に任せるという形になっておりまして、現在でもその点については手当てがないという状況で、電子化しても全く同じだというふうに私どもは考えております。

山内(功)委員 インターネットは安くない、あるいは容易な手段ではない、だから公開を促進するという法改正ではない、そういう指摘をしている団体もあるのですが、そのような見解についてはどう思いますか。

山崎政府参考人 私も機械に極めて弱い方でございますので必ずしも十分に承知はしておりませんけれども、ただ、ホームページを設けてインターネットで行うということでございますが、これは一般的に言えば、開設のときに一万円はいかない、何千円の単位でできるというふうに私ども聞いておりますし、その後の使用料としても月々千円、二千円の単位でなされるということでございまして、それほど高いという形にはならないのじゃないかというふうに理解しております。現在、公告とか官報の掲載もございますけれども、そういうものに比べたらはるかに安いということで、この点の支障はないというふうに私どもは理解をしております。

山内(功)委員 ところで、そもそも、日刊新聞や官報に決算書を公告するということ、これに違反した場合には過料の制裁を加えるという規定が商法にございますね。ところが、過料の制裁を科した例がほとんどない。

 つまり、法律があればその法律は守らなければならないというのが法治国家だと思うのですけれども、過料の制裁の規定を使わないのならば過料制裁規定は削除するべきではないのか。そして、もし削除するのであれば公告の制度自体をなくしちゃう、見直していく。そういう極端な議論は局長はどう思われますか。

山崎政府参考人 後の問題からちょっと申し上げたいと思いますけれども、やはり株主が株式会社は有限責任でございます。そういう関係から会社の財産状態の開示というのは非常に重要なことでございまして、仮に過料の方が余り機能していないといったからといってこれをやめてしまうというのは、やはり会社そのもののあり方としては大変重要な問題でございまして、これをなくすわけにはいかない。これはディスクロージャーが一番重要であるということで、私どももこれをなくすということは考えているわけではございません。

 では、有効に機能しているかと言われますと、過料でも、別の場面で過料が機能しているところも商法上の問題としてはございます。例えば、取締役の選解任を怠るというものについて過料がかなり科されているということはございますけれども、この問題に関しましては、残念ながらこれにその例が多いというふうには聞いておりません。

 機能していないということかもしれませんけれども、私どもの考え方といたしましては、やはりこういう制度が裏にあるという、一つの実行してもらう担保であるということで考えておりまして、これをもしなくすならば、ほかの制度、これは過料の制度たくさんございますので、それを全体の中で見直さざるを得ないということで、現在はそこまで考えているわけではございません。

山内(功)委員 しかし、日刊新聞にも公告を出さない、ホームページにも載せないからといっても、制裁を加える、過料の裁判を申し立てていくということはされないのでしょう。

 ですから、これは昭和三十年代からいろいろ議論があったようで、特に平成三年ですか、会社法の一部改正のときには附帯決議までつけられている。それを十一年間も怠っていたということも大きな問題だと思っています。

 その議論の中で、法務局、登記所に決算書類を持ってこさせてそこで公開すべきである、あるいは法務局決算書類サイトというものをホームページで立ち上げて、そこに決算書類を公告させて株主、債権者がアクセスする、そういうような仕組みを考えるべきではないかと思うのです。その方が、各会社がまちまちにホームページに載せようか載せまいかということも考えずに済むし、一覧性が保てるのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

山崎政府参考人 ただいま御指摘のような考え方があること、私どもも十分承知はしております。

 ただ、この問題は、平成二年ですか、商法改正の折に附帯決議で検討するようにということで、今回も検討はしたわけでございますが、この問題に関しましては、やはりどうしても関係者の理解を得ることが最後までできなかったという状況にございまして、登記所で公開をするという方法は断念した。

 確かに、おっしゃるとおりに、登記所で行う方法までの周知徹底はいかないわけでございますけれども、最近のこういうIT化の技術の発展、それからコストが安くなってきているということから、現在のような方法で御審議をいただくということになったわけでございますが、これは将来の課題であるということで、この改正案の制度を入れていって、やはりその運用状況を見ながら、本当に必要であるかどうか、もう一度また議論が必要であればしたいというふうに思っております。

山内(功)委員 大臣の所見も伺って、最後の質問にしたいと思うのです。

森山国務大臣 ただいま民事局長からも御説明申し上げましたとおり、法制審議会におきましてもたびたびこの問題については審議をしていただいておりまして、御指摘の平成二年の商法改正に際しましての答申された法律案要綱の内容にも盛り込まれておりましたのですが、最終的には関係者の御理解を得ることができなくて実現できなかったという経緯がございます。

 法務省といたしましては、インターネット公開の制度の運用の実態を注目いたしまして、この制度がどのような実績を上げるのかを見てまいりたいというふうに思います。その上で、関係者の意見をさらに十分伺いまして、その要否も含めて検討してまいりたいと思います。

山内(功)委員 私は、最近の会社法の質疑に少し疑問を感じることがございます。

 金庫株、自己株式の取得を認める、ストックオプションの拡大によって内向きの人間に引受権を割り当てる、広く市場から資金を調達するべきだという理念とは一見して乖離したような法改正が、しかも単発的に行われているように思っています。法律を体系的に考えていくという視点に欠けていると私は思っています。

 その上、与党は、株主代表訴訟を制限するような法案を用意しているようでございますけれども、市場で信認を得ていく、株主、債権者にきちんと説明責任を果たす、責任はしっかりとるという会社のあり方を、今後、大臣としてしっかり模索していただきたいと思っています。

 質問を終わります。ありがとうございました。

保利委員長 次に、山田敏雅君。

山田(敏)委員 民主党の山田敏雅でございます。

 まず最初に、大臣にお伺いします。

 大臣の諮問機関である法制審議会会社法部会、今回の部会でございます、この審議会について、大臣、今まで審議の過程をよく御存じだと思うのですが、おおむねこの審議会はうまくいったというふうにお思いでしょうか。ちょっとお答えください。

森山国務大臣 大変難しい御質問でございますが、法制審議会のメンバーの皆さんは、専門家もいらっしゃいますし、さまざまな分野の学識経験者も入っていただきまして、非常に熱心に議論をしていただいている、その成果も大いに上がりつつあるというふうに考えております。

山田(敏)委員 きょうお越しの皆さんにこの部会の名簿を用意していただいていると思うのですが、お手元にあると思います。

 平成十三年の一月十二日に法務大臣が法制審議会に対して以下のとおり諮問しました。これは今回の答申でございますけれども、企業統治の実効性の確保、高度情報化社会、それから資金調達手段の改善、企業活動の国際化への対応、これからこの会社法制を見直してくださいということで、今回この審議が行われたわけでございます。

 今回のメンバーは全部で三十五名いらっしゃいます。そのうちに、会社の実務をやっていらっしゃる方が二名です。新日本製鉄と住友化学。それから、委員二十名のうち六名が東京大学の教授でございます。これはきのうも法務省にお聞きしたのですが、今回の諮問に対して、本当に実質的な、本質的な議論ができるメンバーからはほど遠いと思います。

 新日鉄は、非常に古い会社、明治時代にできた会社です。今やるべきことは、企業の国際化、金融の多様化、そういうものに対応していく、そしてその法律がもう既に時代おくれになってしまった、この観点からきているわけです。それからいきますと、このメンバーは異様に時代おくれ、これからやるべきことに対して対応できないメンバーを任命なさっているというふうに思いますが、いかがでしょうか、大臣。

森山国務大臣 法制審議会の会社法部会におきましては、これまで、広く専門的な識見をお持ちになる方々に参加していただくために、学界からだけではなくて、経済界、実務界からも人選を行うように配慮をしてきたところでございます。経済界からも、経済団体連合会を通じるなどいたしまして、我が国の経済界を代表する識見にすぐれた方々に委員に就任していただいているというわけでございます。

 法制審議会の会社法部会におきましては、中小企業を代表する全国中小企業団体中央会の方に委員に就任していただいておりまして、また、中小企業を所管する中小企業庁からも幹事として審議に参加していただいておりますので、その審議には我が国の中小企業界の御意見も十分に反映されているというふうに思います。

山田(敏)委員 ここに経済産業省の意見というのがございます。当然、今回、会社法でございますので、経済に関係する経済産業省は意見がいろいろあると思います。読ませていただいたのですが、後ほど議論いたしますが、コーポレートガバナンス、この次の通常国会に出されるそうですが、その中間試案その他について、余り意見が取り入れられていないというふうに思います。

 それは結局、この委員の中で、後で申し上げますが、例えばコーポレートガバナンスについてこういう仕組みと制度、組織をつくりましょうというと、非常に組織がややこしくなって、そして煩雑になって、そして現実に合わない。いろいろな会社、いろいろな企業がございますから、当然、この中に中小企業の経営者がいらっしゃれば、こんなことはやめてくれと強くおっしゃるはずでございます。あるいは、外国の企業の経営者がこの中にいらっしゃったら、とんでもないけれども、このやり方では私たちは日本では経営はできない、こういう強い意見があるはずです。

 今おっしゃったように、中小企業の団体の専務理事が入っていますから意見を聴取いたしましたとか、中小企業のお役人が入っていますから十分です、こういうことで、今の問題の本質、特に会社法というのは時代に合っていかなきゃいけない、その中で、後で議論いたしますが、非常に大きな疑問が出てまいりました。

 大村政務官、この経済産業省の意見、特にこの中で、中小企業の実態に照らして大変不適切なところがある、こういうことだけでは、例えば社外取締役をつくっただけではだめだ、いろいろなことが書いてあるのですが、十分に経済産業省の意見がこの部会に反映されているとお思いですか。

大村大臣政務官 今委員御指摘の点でございますけれども、今回の会社法、商法の改正、大変な大改正でございます。社外取締役の問題でありますとか、また執行機関の問題、それからまたディスクロージャーの問題、大変多岐にわたっておりまして、そういう意味で、私どもといたしましては、今の経済の実態に合わせて、まさしく先ほど山田委員言われておりましたように、産業界、中小企業団体、中小企業の皆さん、そしてまた外国の企業の皆さん、関係者から御意見も聴取しながら今回御意見を提出させていただいたところでございます。

 その中で、来年の通常国会に商法改正という形で出されていかれるということになると思いますので、今調整中ということでございまして、引き続き、私どもの考え方、そして産業界の考え方、中小企業の関係の考え方が反映されるように、また御意見を申し上げていきたいと思いますし、調整をさせていただきたいというふうに思っております。

山田(敏)委員 私の質問は、東京大学の教授が二十名の中に六名入っていらっしゃる。これは御専門の方でいいんですが、私も東京大学でございますが、大学の教授というのは、学校からずっと助手、助教授、教授と、外の世界を知らないという方が多いように思います。

 この会社法というのは、本当に会社の経営に携わった人、本当に直接金融、間接金融にかかわってその問題の本質をつかんでいる人が出てこないと、本で読んだり人から聞いた話で私は専門家ですと出てこられる方が、教授の悪口を言うわけじゃないんですが、二十名中六名、ほかの大学の先生を入れると半分以上が大学の先生で、会社の実態の法律を審議しよう、こんなことは非常に古いやり方で、今、新しい時代に合わせてやろうということに法務省は逆らっているんじゃないかと思います。

 大村政務官に私がお聞きしたのは、こういう実態に合わないことでこの審議をしていいんですか、どうですかという質問なんですが、それをお答えください。

大村大臣政務官 これは法制度の話でございまして、特に商法、会社法は、やはり日本の法制度の根幹となる法律でありますし、そういう意味で、この法制度を所管する法務省そして法制審議会で十分な御議論をしていただいてつくっていただくことが一番いいんだろうと思っておりますし、法律的な観点から十二分に御検討いただく。そして、この学者の先生方も当然のことながらその道の御専門の方ばかりでございますので、そういった専門的な知見から十二分に御議論をしていただくということが当然必要だと思いますし、そういった中で産業界そして中小企業関係の皆さんの御意見、我々の意見を反映させていただければ、それが一番いいんじゃないかというふうに思っておりますので、こうしたやり方は、私は十分機能していると思いますし、その中で引き続き我々の考えを反映させていただくように頑張っていきたいと思います。

山田(敏)委員 今の御答弁はちょっとおかしいんですけれども、この中をよく読んでいただいたら、十分意見が反映されておりませんし、実態が出ておりません。

 その一つの例を申し上げます。

 今度、中間試案で、コーポレートガバナンス、企業統治の問題が出てまいりました。その案が、取締役会に各種委員会をつくって、そして執行役制をつくるという案がございます。この委員の中でこういう案がどういうふうに出てきたのか、何か奇異な感じがしましたので、ちょっとお伺いしたいんですが、どういう意見を聴取してこのテーブルにこういう案がのってくるのか、ちょっと法務省の方、答弁していただけますか。

山崎政府参考人 コーポレートガバナンスあるいは各種委員会、こういうものは参考としてはアメリカの制度もあるわけでございまして、そういう議論をしていくうちに当然それは上がってくる問題でございます。

 この関係で、確かに学者が多い、それから国内の企業の経済界の人ということで、海外関係の方がおられないということの御疑問のようでございますけれども、ただ、在日のアメリカの商工会議所、そういうふうな海外的な関係の企業にも意見照会をしておりまして、かなりの数のところから御意見をちょうだいしておりまして、そういう意見もちゃんと反映させながら議論をしているということでございます。

山田(敏)委員 この本を皆さん御存じだと思うんですが、これはアメリカ政府、アメリカ大使館が出したものですけれども、日本政府への米国政府要望書というのがございます。日本政府のやっておる改革について要望しますということでございます。その中に、商法、企業統治のことが書いてございます。今回の中間試案、ここに書いてあることともう全く同じことが書いてあります。すなわち、日本の今の監査役制度のかわりに、取締役委員会を設けなさい、社外取締役制度を設けなさい。それから、ここに書いてあるシステム、組織、これはこのアメリカの要望書のアイデアをそのままここに持ってきたような、そんな印象を私は持ちました。

 この審議会の委員の人たちは、これに対してどんな意見があったのか。これはアメリカのやり方ですから、当然日本の中小企業には全然合いません。それから、今日本の大企業の中にもいろいろな分割的な要素もあります。ですから、もともとこの意見がこの中で本当にもまれていないという実態を今私が申し上げたわけでございます。

 大臣、もう一度お伺いしますけれども、この中に、本当に中小企業の経営者、本当に企業経営をやった人、これを入れないとだめだと思います。

 もう一つは、私が質問したのは、何で新日鉄と住友化学が入っているんですかという質問をしました。その答えは、東の経済団体と西の経済団体を一社ずつ入れる建前になっております、法務省の答えはこういう答えです。建前で審議できないですから。新日鉄というのは大変古い会社です。今からやろうとすれば、多国籍に、国際的にいろいろな問題を、日本の今の会社法で問題を抱えてやっている会社がたくさんございます。それをこの審議会の委員に入れるべきだと考えますが、いかがですか。

森山国務大臣 いろいろな種類の企業がたくさんございまして、その皆さん方すべてに参加していただければよろしいんですが、そうもいきませんので、それぞれ、例えば経済界の代表をしてたくさんの経験をお持ちの、そしていろいろなことを御存じの方に代表していただくというしか差し当たって方法はございませんので、今は、経済界の代表という形では、先ほど先生がおっしゃいましたように、経団連を通じて御推薦をいただくという形をとっております。

 そのほかに、会社法の部会では、いろいろな方からの御意見をいただくべく、例えば実務家では、今おっしゃいました二人のほかに、弁護士さんとか公認会計士さん、税理士さん、シンクタンクの研究員など、幅広い分野から御参加いただいてそれぞれの御意見をいただいているわけでございますし、なお、中間試案は、広く一般に公開いたしましてこれに対する御意見を求めますとともに、日本商工会議所や商工会連合会等のような多くの中小企業を抱えていらっしゃる団体に対して個別に意見を照会いたしましたし、その結果を審議に反映してまいったところでございます。

 いろいろな努力をいたしまして先生に御懸念いただかなくてもいいように、最大の努力をしていることを御理解いただきたいと存じます。

山田(敏)委員 私の意見に余り賛成でないようでございますが、この後、企業統治について議論していただいて、もう一回考えを改めていただきたいと思います。

 その前に一つだけ。今回この審議会は七月と八月に行われました。私は、この委員会のために議事録を出してくださいと言いました。議事録はありませんということで、十一月中旬か下旬にできると。七月に行われた審議会の議事録がだれも手に入らないということをちょっとテークノートしていただいて、普通、審議会で議論したことは正々堂々と、国民の意見を聞くために審議会をやっているわけですから、翌日にホームページで公開する、こういうことで意見を聴取していただきたいと思います。

 次に、企業統治についてでございます。

 日本は、コーポレートガバナンスということが非常におくれておりました。過去四十年間にも数限りない事件が起こりました。記憶にあるだけでも五つも六つも出てくるのですが、ヤオハンは七年間粉飾決算を行いました。海外に展開して、倒産するわずか二年前に二百億円の転換社債を発行して、そしてそれを買われた一般投資家の方は紙切れになりました。コーポレートガバナンスが全く機能しなかった例であります。ヤシカもたしか五年間の粉飾決算が続けられたそうですが、中小企業の方が大変迷惑をされました。

 そごうはどうだったんですかね。水島会長は、本当に無謀な投資を続けて周りの意見を全く聞かない、一人で会社を私物化する。そうすると何十万人という方が被害を受けられる。そして、その関連の取引される方ですと恐らく何万社という方がいらっしゃる。こういう例が幾らでもあります。皆さんの御記憶があるのは三越の例じゃないでしょうか。愛人の会社に仕入れを倍にして幾らでも仕入れる、会社に莫大な損害を与える。これがだれもわからない。このコーポレートガバナンスの問題ですね。

 過去、こういうことが起こったことについて理由は何だったか、これをちょっと一言御意見を、大臣あるいは経済産業省、お願いいたします。

森山国務大臣 おっしゃいますようなさまざまな事件がございまして、最近でも粉飾決算等の企業の不祥事が後を絶たないという状況にあることはまことに遺憾なことだと思います。

 その原因につきましては、取締役、監査役、会計監査人という企業統治に携わる関係者の方々のみずからの職責に対する自覚が必ずしも十分ではなかったといったような運用上の問題もあるのではないかと思われますが、また、我が国の株式会社の企業統治に関する法制度自体につきましても、さらに改善をするべき点があるという指摘もなされているところでございます。

 このようなことから、法務省といたしましては、法制審議会の会社法部会におきまして、企業統治の実効性を高めるための制度上の方策について審議をお願いしているというのが現状でございます。

大村大臣政務官 企業統治につきましてお答えいたします。

 委員御指摘のように、適切な企業統治は企業の活力を持続的に維持向上する上で必要不可欠ということでございます。我が国の経済の発展のためにも大変重要な点であるのは、委員御指摘のとおりでございます。

 私ども、我が国におきましてこうした企業統治が必ずしも機能してこなかったというふうには認識はしておりませんけれども、ただ、言われるように、個別個別に、その折々にそうした大きな事件が起きてきたということは大変残念なことでございます。これは、関係者の自覚が足らなかった、またディスクロージャーに対するそうした自覚が足らなかったということもあるわけでありますけれども、そうした点を踏まえて、経済環境の変化を踏まえながら、やはり企業統治の実効性を常に向上させていくということを制度的にも進めていかなければならないというふうに思っております。

 そういう意味で、特に経営に対する監督機能の強化、それからディスクロージャーの拡充、そうしたことが重要でありまして、そういう意味で、委員先ほどから御指摘をいただいておりますように、法制審議会で商法、法制度の見直しといったものを今進めているわけでございます。そういう意味で、社外取締役を重視した機関、それから会計監査人の株主代表訴訟の対象化、また株主総会への連結計算書類の報告といったものが検討されていると承知をしているわけでございます。

 今後、商法の見直しにつきましてさらに検討を深めながら適切な制度面での対応を行うとともに、企業におきましても積極的にこうした認識を深めていただいて、まさしく委員御指摘のようなそうした企業統治が実効上がるように我々も努めていきたいというふうに思っております。

山田(敏)委員 お二人とも私の質問に的確に答えていただかなかったんですが、私の質問は、問題の本質は何なのかということです。もし二人とも企業を経営していらっしゃるんだったら一発で答えはわかります。監査役それから監査法人、給料はだれが払うのか。経営者が金を払うんです。粉飾決算をやらなかったら給料を変えればいいんですよ。給料を払わなきゃいいんですよ。非常に簡単なことなんです。これが行われるから粉飾決算がずっと続いて、それからだれにもわからない会計の内容が続くんです。これが問題の本質なんです。ここから出発しないと今の会社法の改正は全然違った方向に行ってしまうんです。

 その一番いい例がこれなんです。いろいろな組織をつくって、いろいろな仕組みを、委員会を三つもつくって、こんなこと、中小企業の実態に合うと思いますか。無理だといって、経済産業省、ここに書いてあるでしょう。ですから、今度通常国会に出されるんですから、もう一度それをよく考えていただきたいと思います。

 最後に、法律はできます、法律はできて、それでその魂が入ったかどうか、本当に実効性が上がったかどうか。これは私は、言葉はきついんですが、内部告発、この制度が日本にはありません。

 イギリスは一九九一年に大変な事件が起こりました。BCCIという銀行が十九年にわたって不正を行いました。二十億ポンド、約五千億円の不正、不法行為がございました。これに懲りまして、一九九八年に公益開示法によって内部告発をした人を法律的に保護するあるいは身分を保障する、すなわち内部告発を法律で整備してやるということです。

 アメリカは一九八九年にこの内部告発の制度をつくりました。オーストラリアも一九九二年に行いました。

 今、日本ではNECという会社が、防衛庁事件、一九九八年、いろいろな贈収賄にかかわる不正、刑事訴訟を行います。これに基づいて内部告発を会社の中に制度化してやりました。非常に民主的に行われました。ただいま僕が申し上げましたヤオハンとかヤシカ、そごう、三越。近くは三菱自動車。欠陥車の問題を長い間隠して、そしてそれを知らない消費者は交通事故でどんどん命を落とす。あるいは雪印の問題。内部にいる方はみんな知っていたわけですね。欠陥車両でリコールしなきゃいけない、それを経営者は隠してやった。内部告発があれば何人もの方の命が助かっていたという事実があるわけです。

 日本にはこの内部告発がないから、幾らこの制度をつくっても、今言いましたように、法律をつくってその魂が入らない、実効性が担保されないということがございます。この内部告発のことをぜひこの法案の中に入れて、内部告発するシステム、そして内部告発をした方の身分を保障する、これがこの法律の精神ですが、この委員会の場は政治家が議論する場でございますので、ぜひ私の今言ったことについて御意見、大臣、副大臣、お答えください。

森山国務大臣 内部告発者を保護して、不祥事を早期に発見して是正できるという仕組みをつくるということは、企業統治の実効性を高めるための一つの方法であるというふうに思います。

 今イギリスの例をお話しくださいましたが、日本でもNECその他、そういう具体化しているところもあるようでございます。しかし、内部告発者の保護を国の法制度として用意することがいいのかどうか、会社の自主的な取り組みに任せるべきではないかという意見もございますので、我が国の実情に照らしまして慎重に検討する必要があると考えます。

横内副大臣 ただいま大臣が御答弁になったとおりでございまして、やはりそれぞれ国情といいましょうか、国民感情、とりわけ我が国の場合には和をもってとうとしとなすというような国民感情もありますし、そういったものも配慮しながら慎重に検討する必要があると思っております。

大村大臣政務官 企業統治を実効あるものとするために、企業の主体的な取り組みというのは極めて重要であるというふうに認識をいたしております。そういう意味で、山田委員御指摘のように、NECでは行動規範をつくり、経営監査本部をつくり、そして内部告発制度をつくったということでございます。この企業倫理に関する自主的な取り組みというのは、これは一つの企業のあり方といいますか、取り組みとして大変評価できると私は思っております。

 今後とも企業統治を実効あるものとするために、広くこうした企業において自主的な取り組みが行われるということを期待いたしております。

山田(敏)委員 ただいま、大臣、副大臣の答弁の中に、日本の社会は和をもってとうとしとするから内部告発は合わないんだという御意見がございました。

 消費生活研究所というところがアンケートを行いました。内部告発についてどうかということでございますが、それによりますと、八〇%以上の方が、その会社がよくなるためそして日本の国のため、公益のためであれば内部告発というのはいいことなんだと答えられております。

 ですから、今大臣が思われたこととちょっと違うわけですけれども、それで、幾ら会社の中で、これは悪いから直そう、これは違法だからやめよう、あるいはこれは国民のためによくないからと言っても会社が聞かない場合は、今おっしゃったように自主性を重んじると言われても、そのために数限りないコーポレートガバナンスが機能しない事件が起こってきたわけですよ。それについて、副大臣、ちょっと御意見をお願いいたします。

横内副大臣 今おっしゃった内部告発を国の制度として義務づけるかどうかという点、これはなかなかいろいろな難しい議論があろうかと思います。既にNECを初めとして企業でのいろいろな取り組みがあるわけでありますし、それは、そういったものが積み重ねられていく、そういう中で今後の課題として検討する課題だというふうに考えております。

山田(敏)委員 ぜひ検討を進めていただきたいと思います。

 先ほど申しました新聞記事が出てまいりました。日経の二〇〇一年九月八日、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会消費生活研究所、これがアンケートを実施いたしました。回答者の八三・二%が、内部告発は公益のためならよいと答えています。さらに、一度内部で警告をしてもそれで改善されなければ告発してもいいんだ、こういうことでございますので、ぜひ深く考慮に入れて今後のコーポレートガバナンスについて検討していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 最後になりますが、今回のストックオプションの件でございます。

 経産省からいただいた資料に、ストックオプション制度が現在あるわけですが、一体何社が導入したかという企業数がございます。二〇〇〇年度で四百六十六社がこのストックオプション制度を導入した。株式会社は全国で約八十万社、このうち四百六十六社といいますと、〇・〇五%の会社がこのストックオプションを導入した。全く導入されていないんですね。これはなぜであるかということをちょっと、経済産業大臣、お答えいただけますか。

大村大臣政務官 今現在、二〇〇〇年度で四百六十六社という会社がこのストックオプション制度を導入しているというのは、委員御指摘のとおりでございます。

 なぜまだこの程度なのかということでございますけれども、この制度自体、認識が、大企業はもちろん浸透しておると思いますが、中小企業の皆さん等々にまだ十分行き渡っていないのではないかということも考えられますし、また、なかなかまだなじみにくいということもあります。

 これは、いずれ上場して、その株価の値上がりということで従業員、役員にインセンティブを与えるという制度でありますので、そうした上場を前提とするような制度でもありますので、その点がまだそれに至っていない会社が大部分であるとか、いろいろな理由があると思いますけれども、これが新たな成長企業を起こしていく一つのインセンティブ、要因になると我々も確信をいたしております。

 ぜひこの制度を、使い勝手がいいように、今回も法改正をお願いしているところでありますし、また、一部これから税制の問題もいろいろ御指摘もされているところもございますので、そうした点も関係方面に働きかけをお願いもして、できるだけ使いやすい、いい制度にして、そしてこの制度を委員が御指摘のようにもう少し使えるようにしていきたいというふうに思っております。

山田(敏)委員 今のお答えは、まだ制度として認知されていないからというお答えだと思うんですが、私はそうではないと思います。

 ストックオプション制度というのは、今おっしゃったように、株価が上がっているときに、権利を得た人が利益を得るわけです。過去十年間株価が下がり続けて、今も下がり続けている。その局面でこのストックオプション制度を導入してもだれも見向きもしない、何の意味もないという会社が多いということですね、大部分の会社が、全部が全部とは言いませんけれども。ストックオプション制度が悪いと言っているんじゃないんです。

 そこで、経済産業省及び法務省、ひとつ考えていただきたいんですが、このような局面でストックオプション制度を導入しても、これは恐らく四百六十六社がせいぜい五百社ぐらいになる程度だと思います。このストックオプション制度は、株が上がったときに利益を得る、企業が成功したときに利益を得るという、まさに千に一つか千に三つか、要するにベンチャーを始めてうまくいったらという制度なんですね。非常に多くのケースでうまくいくというのじゃないわけですね。

 ですから、私は、税制をもうちょっとよく考えていただきたい。税制の優遇措置がないと、たまたまうまくいった方はこのストックオプションで数億円の利益を得るわけですね、ところが、税金で五〇%取られるんだったらそんなに大したことじゃない。おまけに、たまたまうまくいくのが〇・一%の確率ということであれば、この制度をつくっても何の意味もない、ほとんど実効性のないものになってしまいます。

 そこで、ちょっと副大臣、考えていただきたいんですが、〇・〇五%普及しているストックオプションを、今回の改正によってさらに多くの会社がインセンティブに使うために、税制の優遇措置、すなわち上場時の株の利益と同じように税を免除するという考え方はいかがでしょうか。お答えください。

横内副大臣 ストックオプションについて税法上の扱いにいろいろな議論がある、それを給与所得とするか一時所得とするかとか、そういう議論があることは承知しております。

 この問題については、やはり財務省の所管の問題でありますので、我々法務省としてそれについてどうのこうのという御返事は差し控えさせていただきます。

大村大臣政務官 委員御指摘のように、そもそもストックオプション制度を導入したときに、その取得時に所得税としてかけるのか、それとも株式の申告分離にするのかということで議論がありまして、一応、その部分は課税繰り延べをし、会社役員と従業員の方は売却時に申告分離でということになりました。今回、これの対象を広げるわけでありますので、我々経済産業省としては、その部分を税の方も少し対象を広げていただけないだろうかということで、関係御当局に今お願いをさせていただいているわけであります。

 そういう意味で、税のことがやはりセットであるべきだという御意見は我々もそうだと思います。ただ、その点は税務御当局の御判断もございますので、関係者と十分議論をしていきたいというふうに思っております。

山田(敏)委員 ぜひ経済産業省、頑張っていただいて、税の優遇措置を大幅にやらないと全く魅力のない制度になってしまいますので、よろしくお願いいたします。

 最後に、このストックオプション制度は、新規に会社を起こした会社が優秀な従業員を雇うときの非常に有効な武器になるわけですね。あるいは、これから成長しようという会社は役員に対してボーナスを払えない、しかし、このストックオプションを使うことによってモチベーションを持ってもらえる、こういう趣旨なんですが、問題は、百万円ボーナスを払います、ところが、そのうち二〇%はこのストックオプションで上げるからちょっと勘弁してください、こういう使われ方が現実にいろいろ使われております。しかし、今申し上げましたように、株式はどんどん下降を続けているわけですから、ストックオプションと言われても紙切れ以下のものであって、何のモチベーションにもならない。

 この点について、今回の運用、適用に当たって、報酬の一部をこれに充てるということを、何らかの見解を示していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか、法務省。

山崎政府参考人 このストックオプション、法的にどういう性質のものかという点があろうかと思いますけれども、これは、これの付与を受けた者がその行使の時期をみずから判断するわけでございまして、そういう意味では、もらった取締役あるいは従業員、それに判断がゆだねられている性質のものでございます。したがいまして、労働の対価ではないというふうに考えております。これはもともと厚生労働省の所管でもございますけれども、私どもも同じ考えでございまして、そういう意味では、従業員であっても労働基準法上の賃金には当たらないという解釈をしております。

山田(敏)委員 法務省の今回のこのストックオプションは労働の対価ではないということを、今回の法律に当たってやはり厳重に、大村政務官、ストックオプション制度は余り知らない人が多いんだということでございますけれども、それを知らしめるときに一緒にぜひやっていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

保利委員長 この際、休憩いたします。

    午前十一時二十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十二分開議

保利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。西村眞悟君。

西村委員 局長から実務的、また理論的な御答弁をいただくことを前提にして御質問しますので、大臣、副大臣、私の質問で拘束される必要はないというふうに御承知おきください。

 さて、このたびの商法の法改正は、我々学生時代商法を学んだ者から見ると、基本法であって、基本法の改正だと思いますが、実は、グローバル化する国際金融情勢の中で、日本もいよいよ直接金融の領域を商法の世界でも開いていこうとする戦略的な流れの中にあるということを承知しておりますが、個々の問題について、これからお聞きしていきたいと思います。

 まず、種類株式制度、この議決権制限株式等の発行をできることになるということでございますが、議決権制限株式とはどのようなものを考えておられるか、お教えいただきたい。

山崎政府参考人 議決権制限株でございますけれども、広い意味と狭い意味ございますけれども、広い意味では、全く議決権のないもの、これも入るということになりますし、狭い意味では議決権が一部制限されているもの、この二種類があろうかと思います。

 典型的な例をちょっと申し上げたいと思いますけれども、例えば、通称トラッキングストックと言われているものがございます。配当額が会社のある営業部門の利益に連動するような株式の発行でございますけれども、こういうものに関しましては、株主はその営業にしか多分興味がないということになろうかと思います。ほかのところは余り興味がないということになります。そういう場合に、その議決権を、当該営業部門の譲渡、こういうものには与えますけれども、それ以外はなし、こういうような制限をするという形のものが一つ考えられます。

 それからもう一つ、典型的に言えるのは、いわゆる新規企業、ベンチャー企業でございます。これは創業者株主がいるわけでございますけれども、それに新たな株主が入ってくる。いわゆるベンチャーキャピタルと言っているようでございますけれども、そこの関係で、新しく入ってきた投資家たちとの関係で、この方たちは、最終的にはそのベンチャー企業が育ってくれて、その利益配当にあずかればいいという興味で、そういうことで入ってくるわけでございます。そうなりますと、その投資家にも、利益処分案あるいは営業譲渡についての議決権、これのみを与えるということで、他は制限をする、こういうような利用の仕方があるというふうに理解をしております。

西村委員 制限の態様等々、よくわかりました。

 その中で、全く議決権を与えない、この株式の必要性はどういうところに現実的にあるんでしょうか。

山崎政府参考人 特に無議決権株式はベンチャー企業等が利用するのではないかということで、先ほどちょっと申し上げましたけれども、結局この株式は、もし議決権がないものとすれば、招集の通知等要りませんから、発送等、いわゆる株式管理費用というのをかなり軽減できるわけでございますし、また、株主総会の議決権がふえませんので、定足数も充足しやすいということでございます。また、議決権がございますと、結局、創業者の株主の方が経営権を失ってしまうということにもなるわけでございますので、しばらくの間、きちっとするまで、利益が安定的に上がるまで、自分たちが一生懸命経営権を失わないようにできるように、こういう利益もございます。

 それから、取得する方の側は、株主の管理費用が軽減される分、発行価額、流通価格が安くなるわけでございまして、普通株式でございますから優先配当ではございませんけれども、普通株式の範囲内で利益配当がされればそれだけ利幅が大きいことになりますので、お互いにメリットがあるということから、こういう場合に使われるのであろうということでございます。

 ただ、現実に市場としてどれだけの買い手がいるかという問題はもちろんございます。

西村委員 株式の本質論からいえば、いろいろ学説があるのでございましょうが、株式会社の所有と経営の分離というふうな分類からいうと、株式は所有権の領域にあると。議決権が全くない無議決権株式というのはこの株式の本質に反するものではないのか、反するのかという点についての確認をさせていただきたいと思います。

山崎政府参考人 株主にもさまざまな方がおられるわけでございまして、会社の経営に参加したいという方もおられますし、最終的にはそちらよりも利益配当がきちっとされればいいという方もおられるわけでございまして、そういう点で二つの権利がございますけれども、一方の利益配当の権利、これが確保されていれば議決権の制限があってもやむを得ない、こういう方もおられるわけでございます。そこのところは、私どもとしては、そこが守られればその本質には反しないと考えております。

 ただ、この法案の中で、種類株式につきましてはいろいろ条件をつけることもできますので、これは定款等で定めていただければ結構でございます。利益配当が何年間かされなかった、そういう場合に復活するという条件を定めることもできます。いろいろなパターンができますので、最終的に、最後までないというのもございますけれども、復活する方法もございますので、潜在的にはやはり議決権が残っているというふうに私どもは考えております。

西村委員 自由の領域にあることでございますから、株式というものを取得しようとする者が選択すれば、それで本質に反することはないというふうな御説明だったと思います。

 したがって、ここで本当に必要になってくるのは、この無議決権普通株式の内容が十分わかり、そして、取得しようとする者がその内容に応じて選択できるということではないかと思いますが、内容開示に関してどのような配慮がなされているか、御説明いただきたいと存じます。

山崎政府参考人 この種類株式の点につきましては、まず定款変更を要するということで、定款で明らかになります。それから、内容については、登記をされるということで、ここで開示がされるということになります。それから、取得される方の関係では、株式申込書の用紙それから株券いずれも、その内容は記載事項になっているということから周知ができるということでございます。

西村委員 そのようないろいろな種類株式制度を認めていくわけですが、定款で種類株主総会の決議を要する事項を定めることができるとされておりますが、この趣旨はどういうことかとお伺いするとともに、この種類株式制度を設けることによって企業の新規資金調達の便宜が図れることになるのかどうかということについて認識をお聞かせいただきます。

山崎政府参考人 今回の改正案では、通常の株主総会の決議に加えて種類株主総会の決議を要するということを定めることができるという規定を置いているわけでございます。これはもともと、現在ベンチャー企業なんかでは、創業者株主と新しい株主の間でいろいろ、契約事項として、この事項については議決権を行使するけれどもこの事項についてはしない、こういうようなことが行われていたようでございます。

 これは実務の知恵ということになろうかと思いますけれども、やはりこういうものを法制度としてきちっと設ける必要があるという声が実務から強かったわけでございます。その実務の要請を取り入れまして法制度にしたということでございまして、やはり事項によっては少数株主の利益にもいろいろ影響するわけでございますので、株主保護、少数者保護ということから加えたものでございます。

西村委員 実務の知恵からこのような制度が商法に吸収されていったということで、それが実務の要請にこたえるものであるという御答弁ですが、次に、この改正のもう一つの柱のストックオプション制度についてお聞きしていきます。

 現行ストックオプション制度はどれぐらい利用されておるものでしょうか。

山崎政府参考人 これは民間の調査機関が調査したものでございますけれども、平成十三年九月十七日現在ということでございます。

 これで、ストックオプションは二つの種類がもともとあるわけでございますが、自己株式を利用するものと新株引受権を利用するものとあるわけでございますが、前者の方でこの制度を採用しているのが三百五十四社、後者の関係が四百二十九社ということで、合計七百八十三社ということになるわけでございます。これは株主総会で決議をした点をとらえているわけでございますが、複数回決議した会社もございます。そういうことで、延べ回数で会社数を調べますと、千二百三十二社という状況でございます。

 これが多いのか少ないのか、いろいろ御議論はあろうかと思いますけれども、年々ふえてきているということでございます。まだまだ、制度を入れてからそう長い期間たっているわけではございませんけれども、今後ますますふえていくのではないか。特に、今回いろいろな条件を緩和いたしましたので、大いに利用されていくというふうに期待をしております。

西村委員 さて、そのストックオプション制度の今回の改正でどのような改正を行おうとしているのか、いま一度御説明いただきます。

山崎政府参考人 まず、現行のストックオプションはどういう要件があるかということを申し上げて、そこがどう変わったかを申し上げたいと思います。

 まず、現行のストックオプションでございますと格別に規定を設けているわけでございまして、その付与のためには定款の変更を要するということが一つ決まっております。それから、付与の対象者につきましては、氏名及びその人に付与する株式の種類とか数、これを株主総会の特別決議で定めるという形になっております。それから三番目は、その付与の対象者はその会社の取締役及び従業員に限るということでございます。それから、付与できるその株式の数でございますけれども、発行済み株式総数の十分の一に限定する、あるいは権利行使の期間が十年間に限定される、こういうような制限を設けているわけでございます。

 今回の改正案でどうなったかということでございますけれども、このストックオプションに関しましては、新株を発行する場合、新株発行はすぐに発行してもらえるわけでございますが、新株予約権という中にストックオプションを今回入れたわけでございますけれども、これは、将来一定の時期に一定の価額で株を発行してもらえる、こういう権利でございまして、将来か現在かという違いがございますけれども、基本的には新株の発行と同じだろうということで、格別の規定は設けないで、新株予約権という中で無償で与えるものという位置づけをしたわけでございます。

 その関係で、現在、新株の発行につきましては定款で定めるわけではございません、そういうことから、同じ並びで、定款で定める必要はない。有利発行をする場合には株主総会の特別決議で決めていく、それ以外の場合には取締役会で決める、こういうような形で定款事項ではなくなったということでございます。

 それから、二番目の株主総会の議決の対象でございますけれども、これは対象となる株式の種類と数でございます。この枠を承認いただければ、だれに付与するかというのは、これは取締役会の方で定めるということにしております。これは、新株の有利発行の場合も全く同じ考え方でできております。

 それから、付与の対象者でございますけれども、今まで制限を設けておりましたが、この制限を設けないということになります。これも、新株の有利発行の場合に第三者の制限がないというのと同じでございます。

 それから、付与できる株式数につきましても、授権枠の範囲内であれば、もちろん株主総会の特別決議が必要でございますけれども、その範囲内ならば数量の制限はない。それから権利行使期間の制限もない。

 こういう形で、幾つか規制がございましたが、全部緩和をしたという形になります。

西村委員 ストックオプションを、個別的な規定というよりも新株予約権の有利発行という中で位置づけておられる。この理由をいま一度説明していただけますでしょうか。

山崎政府参考人 少し先走ってしゃべってしまいましたけれども、このストックオプション、今までは格別に規定を置いていたわけでございますけれども、今回の改正案では、格別に規定を置かないで、それをいわゆる新株予約権の一態様ということで取り込んでいるわけでございます。

 新株予約権は、現在の法制で言えば新株引受権と言われているものでございますけれども、これは単独で発行することは非常に例外でございまして、原則として社債とセットでやる、いわゆる新株引受権付社債ということで発行が許されているわけでございまして、例外としてストックオプションに使ってもいい、こういう法制になっております。

 このセットでなければならないということでございますが、それほど大きな理由があったというよりも、技術的な問題がかなりございました。それから、現実の実務では、発行した後に、分離ができるものは分離して社債を償還してしまって、単独で新株引受権が譲渡されるという形で現実に動いていたわけでございまして、経済界からも独立させてほしいという希望がございました。そこで、これを独立させることにしたわけでございます。

 独立したときに、このストックオプションは新株予約権の一態様でございますが、これを無償で与えるものという形になるわけでございます。この中でどうしてそういう形で取り込んだのかということですが、先ほども申し上げましたけれども、新株の有利発行というものがございまして、これは、例えば資本の提携の場合、それから企業再建の支援、そういう対象に使うとか、それから業績向上のための動機づけにするとか、いろいろ多目的に使われるわけでございますけれども、新株の発行と新株予約権の発行、それは若干時期はずれることにはなりますけれども、基本的には同じ用途のものではないか、それなら統一的に制度を整理した方が非常に整合性があるということからこういうふうにしたわけでございます。それをやることによって、経済界からストックオプションをもう少し使いやすいようにしてほしいと言われていた要望もかなえられることになった、こういうことになるわけでございます。

西村委員 ストックオプションに関する多くの規制が撤廃されていった中で、最後の質問ですが、他の株主の利益を害するおそれはないのかどうかという点についての法案の配慮をちょっと御説明ください。

山崎政府参考人 この点につきましては、先ほど、現行法では定款で定めるということを申し上げましたが、それが定款で定めることでなくなりました。しかし、そのかわり、有利発行する場合、通常の有利じゃない場合は別でございますけれども、無償でやる場合は有利発行になりますけれども、この場合には株主総会の特別決議が必要になります。いわゆる三分の二以上の多数ということになりますので、まずここでチェックがされるということでございます。それから、数量的な制限も、授権枠の範囲内でございますので、それを超えてはできないという縛りがございます。そういう形で一応のチェック機能は備えているわけでございますし、仮にこれがもし乱用されるとか、そういう事態に至った場合には、この発行の差しとめという訴えができるわけでございまして、そこでもチェック機能が働くということでございます。

 また、もう一点申し上げさせていただければ、株主総会で個別にだれに与えるかということは決めなくなったわけでございますけれども、この点について、それでいいのかという御指摘もいろいろございましたけれども、これにつきましては、私どもも、法務省の規則の方で、省令の方で、営業報告書に、ストックオプションを従業員等だれに与えたか、これを記載することによって、これを開示するという形でチェック機能が働くということも考えているわけでございまして、株主の利益を害することにはならないというふうに考えております。

西村委員 ありがとうございました。

 会社計算書類の電子化については当然のことと考えておりますので、質問はいたしません。

 質問を終わります。ありがとうございました。

保利委員長 次に、木島日出夫君。

木島委員 日本共産党の木島日出夫です。

 今回の商法改正は、現在法務省が進めております会社法制の大幅な見直しのうち、特に緊急を要するものとして、株式制度の見直し、そして会社関係書類の電子化等、その部分だけが前倒しされて提出されてきました。

 株式法制は、株主総会とか取締役会とか監査役の会社の機関、そして会社の計算、これと並ぶ商法とりわけ会社法制の核心部分だと思います。この部分を切り離して法改正を急ぐ理由は何か。そして、今回の株式法制改正の基本理念は一体何なのか。基本問題ですから法務大臣から御答弁願いたいと思います。

森山国務大臣 今回の改正法案中、株式制度の見直しに関する部分は、会社の資金調達の需要が拡大し、その方法が多様化している現状にかんがみまして、会社の円滑な資金調達を可能にし、また新規企業の育成等に資するため、新株発行に関する規制の緩和、種類株式の内容の拡大、ストックオプション制度の見直しを含む新株予約権制度の創設等を行おうとするものでございます。この部分は、景気の長期低迷が続く現在の我が国の経済情勢の中で、企業の活力を再生し、新規企業の育成を図るために早急に実現する必要があったわけでございます。

 また、会社関係書類の電子化につきましては、これにより株主総会の招集通知をインターネットを利用して送信し、また株主が議決権を電磁的方法により行使することが可能になるものでありまして、会社運営の合理化を図り、株主の権利行使の機会を確保するためにも早急に実現する必要がございます。

 改正法は平成十四年四月一日から施行を予定しておりますが、これは平成十四年の株主総会からIT化を実現したいという経済界の強い希望によるものでございまして、今国会で改正法が成立いたしませんと株主総会のIT化がさらに一年おくれるということになるわけでございます。このような理由から、会社法の全面見直し作業を前倒しして、特に必要な部分について今回の法案として提出させていただいた次第でございます。

 また、基本理念というお話でございますが、我が国の経済におきましては、伝統的に金融機関による間接金融が中心であったわけでございますが、今日では、企業がその実績に応じた有利な資金調達の実現を図ろうとする傾向が強まりまして、企業の資金調達方法に占める直接金融の割合が増加しております。また、いわゆるベンチャービジネスと呼ばれる新規企業における資金需要が拡大しておりまして、マザーズ等に代表される株式等の市場が整備されてきたことに伴って、企業の資金調達に関する環境の一層の整備が求められている状況でございます。

 このような状況のもとで、企業の市場における直接的な資金調達手段である株式制度については、新株発行における過剰な規制の廃止、企業の実情に応じた多様な種類株の発行の許容等の改善が必要となっております。

 さらに、新規企業の育成を支援する観点から、このような企業が優秀な人材を確保し、業績向上へのインセンティブを付与するための有力な手段であるストックオプション制度をより使いやすいものにしてほしいとの要望が寄せられております。

 本改正法案の柱の一つである株式制度の見直しは、このように、会社の資金調達の需要が拡大し、その方法が多様化した現状のもとで、会社の円滑な資金調達を可能にし、また新規企業の育成等に資するため、新株発行に関する規制の緩和、種類株式の内容の拡大、新株予約権制度の創設などを行おうとするものでございます。

木島委員 今回の株式法制改正の一つの大きな柱は、新株予約権というこれまでの株式法制になかった新しい概念をつくり出したことだと思います。

 そこで、お聞きします。新株予約権とは何か。これまでの新株発行手続の中の新株引受権とどう違うのか。なぜ今このような新しい枠組み、仕組みをつくり出さなければならないのか。答弁願います。

山崎政府参考人 新株予約権につきましては、定義は改正法の二百八十条の十九に定まっておりますけれども、会社に対して一定期間、あらかじめ定めた一定の価額で新株の発行を請求することができる権利ということでございまして、これが行使されたときは、会社はその権利者に対し新株を発行するか、あるいは、これにかえて、みずから有する自己株式を移転する義務を負うものということになるわけでございます。

 現在の新株引受権につきましては、原則として社債とセットであるということでございますけれども、これを独立させて新株予約権という概念でくくったわけでございます。

 なぜそうなったかということでございますが、新株引受権というのは、まだ現行法で改正がされていないところに残っております。これは、新株発行に際しまして株主に新株を与えるという場合は、新株引受権と呼んでおります。したがいまして、概念を混同してはなりませんので、新株予約権と名前を変えたわけでございますが、従来の新株引受権付社債の独立したものというふうに理解をしていただければと思っております。

木島委員 もう一点だけ。

 そうすると、今度の改正法案の新株予約権というものと、これまでの我が国の商法、会社法の中にあったストックオプション法制といいますかね、それとの関係というのは、簡単にわかりやすく言うとどうなるのでしょう。

山崎政府参考人 端的に申し上げれば、新株予約権の中の付与に関して、ストックオプションが新株予約権の無償交付という形で溶け込む、こういうことでございます。

木島委員 私、ストックオプションというものの位置づけ、定義づけについて、私なりの理解をここでしゃべってみたいと思うので、私の理解に間違いなければ、お墨つきを与えていただきたいと思うのです。

 九七年、当時の与党議員立法によりまして、ストックオプション制度が大幅に緩和をされました。このときの商法改正は議員立法でありまして、密室、拙速、ずさんきわまりないというもので、これに対しては、全国の商法学者二百三十四名が連名で、「開かれた商法改正手続を求める商法学者声明」というものが平成九年五月十二日付で出されている。大変異例の事態でありました。そこで、商法学者の皆さんからは、法案の立法プロセスの問題だけではなくて、ストックオプションの緩和、拡大について、具体的にたくさんの問題が指摘をされておるのです。根本問題もそこでは指摘をされております。

 今手元に持ってきておるのですが、ストックオプションは、取締役、従業員の職務忠実義務と株価上昇によってもたらされる個人的な利害との間の利益相反関係が大きくなる。したがって、株式会社法による経営監視制度の充実が不可欠の前提である。しかし、我が国では、取締役会の経営監視機能の強化ないしは監査役、監査役会の独立性強化といった課題が解決されていない。したがってストックオプションを導入しなければならない状況にあるか疑問である。こういう根幹にかかわる厳しい意見もこのとき全国の商法学者からはなされているわけであります。

 そこで、法務省にお聞きしたいのですが、株式会社の経営監視機能の強化は、九七年以来、四年たちますが、どう図られているでしょうか。

山崎政府参考人 平成九年以降では、毎年のように商法改正が行われておりますが、現在、その監査機能の云々というところはされておりません。来年の通常国会を一応予定させていただいておりますけれども、今、商法の全面改正の検討をしております。その中で、企業統治、いわゆるコーポレートガバナンスの実効性を高める諸方策について検討中ということでございまして、次期通常国会には、そのいろいろな成案をもって御審議をお願いするという予定でございます。

木島委員 そのとおりですね。

 現実には、逆に、規制緩和の流れの中で、経営監視機能を弱める方向に向いているのではないでしょうか。現に、当国会には、与党議員立法として、株主代表訴訟を制限しようとする商法改正法案がありますが、その典型だと思います。また、この間、消却特例法などでは、ある問題を株主総会にかけずに自己株式取得を認めるなど、株主総会の決議事項を縮小する、要するに取締役会決議だけで物事が進むようにするという意味で、経営者や取締役の裁量を拡大する立法が相次いでできている。

 これらは、商法学者が指摘するストックオプション制度存立の基盤を奪うのではないか。ストックオプションというのは、もらった株主個人と取締役ないしは従業員の職務忠実義務との間で利益相反がある。だから、ストックオプションをやる基盤としては、取締役会がきちっと仕事をしているか、それが前提なんだ。しかし、その監視機能がこの間後退しているではないか。そうすると、ストックオプションを存続させる前提が掘り崩されているのではないか、こういう指摘を今私もしました。法務大臣、どうでしょうか。

山崎政府参考人 平成九年に学者の声明が出されたということは、十分承知しております。この件に関しまして、ここで書かれているような利益相反という指摘があったということも承知しておりますけれども、その後、それほど年数がたっているわけではございませんけれども、徐々にこのストックオプションが導入されております。これに関して、今回の審議に当たっても、どういう問題点があったか、利益相反とかそういうような不都合があるかどうか、いろいろ聞いてみたわけでございますけれども、そういうことはないということで、全くそういう指摘はございませんでした。

 今回のストックオプションの導入につきましても、そういう意味では、逆に今度は全会一致で賛成という形になっているわけでございまして、導入した当初は、日本でも初めてのことでございますからさまざまな心配があったわけでございますが、導入してみて、今のところ、そういう問題は生じていないというふうに理解しております。

 それから、もう一点申し上げたいと思います。

 先ほど、取締役会で皆決まるのではないかという御指摘でございますけれども、ストックオプションは新株予約権の有利発行でございますので、そういう意味では株主総会の特別決議が必要であるということで、そこで総量、種類については全部チェックがされるということでございますし、また、だれに与えたかという点についても営業報告書等に記載されて、そのチェックをすることができるという体制になっているわけでございます。

木島委員 改めて整理したいと思うのです。

 九七年の議員立法によるストックオプション制度では、ストックオプション実施の方法として二種類が認められました。もう既に出ておりますが、自己株式取得方式と新株引受権付与方式であります。

 このうち、自己株式取得方式については、本年六月の通常国会で、与党三党の議員立法によりまして、自己株式の取得、売却の全面解禁、いわゆる金庫株の全面解禁が行われました。そして、今度の改正法案の中に、ストックオプション、新株予約権の履行のために自己株式をもって充てることが第二百八十条ノ十九で盛り込まれてきておりますから、事実上、今度の法改正によって自己株式取得方式が青天井になるということだと思うんです。

 もう一つのストックオプションの方法である新株引受権について、今回の商法改正で、先ほど答弁にあったように、新株予約権なる概念をつくり出しまして、この面でも、これから私、個別的には論じていきますが、ストックオプションに関する規制は大幅に緩和されることになります。

 今回の商法改正の最大の柱はストックオプションの規制の緩和、拡大だと考えるんですが、今の私のこうした整理、理解に大筋では間違いないでしょうか。

山崎政府参考人 議員御指摘の流れのとおりでございます。

木島委員 そこで、現行商法による取締役、使用人に対する新株引受権付与、現行法制と比べて今度の新株予約権はどんな点で緩和、拡大されているか、ただいま同僚議員から質問もあり、答弁もありました。

 幾つかあると思うんですが、言われたのは、現行法は付与対象者が取締役と使用人だけだった、これを全部撤廃した、だれに付与しても結構。

 二つ目は、株主総会決議事項の簡素化。要するに、付与対象者の名前を明らかにして、だれがストックオプションを受けるか明らかにして株主総会の特別決議が必要だったのが、今回それが外された。今、法務省は、省令ですか、省令か何かでつける、営業報告書で書かせたい、開示させたいとおっしゃっておりますが、要するに、だれがストックオプションの付与を受けるかについて株主総会の決議事項から外された。

 三つ目は、株式数の制限の撤廃です。これまでは発行済み株式総数の十分の一だったんですが、全部これが撤廃されて青天井になった。

 四つ目は、権利行使期間の制限の撤廃です。これまでは十年だったんですね。これを撤廃した。どんなに先長いものでも結構だ、こういうものであります。

 ほかにも細かい点はあるんでしょうが、私は主にこの四つだと思うので、大変な緩和であります。

 そこで、一つ一つ聞きます。

 まず、取締役と使用人に限定されていた対象が、今回限定を外しました。だれに対しても発行できる。そこで、これまでの現行法でこのストックオプションの発行対象を取締役と使用人に限定していた理由は何ですか。今回、なぜこの限定を外したんですか。

山崎政府参考人 もともとこの制限がされた理由は、これと同じような効用を果たす自己株方式のストックオプションがございましたけれども、自己株の取得につきましてはかなり厳しい規制が課されていたわけでございます。そういう中でこのストックオプションを認めるということから、非常に例外的な位置づけだということから、その会社の取締役または従業員、使用人ですか、それに限るという形で導入されたというふうに理解をしております。

木島委員 何かいろいろ読みますと、今回外した結果、想定している付与の相手が親子会社の場合の子会社の役員とか顧問弁護士などだと書かれておりますが、限定を外しましたから、やろうと思えば、今回の法改正によってストックオプションは、監査役とか、取引銀行の幹部とか、政治家とか、公務員とか、マスコミ関係者、要するに理屈さえつけばだれに対しても発行できるという理解でいいんですね。

山崎政府参考人 最も必要になるのは子会社の役員に親会社の株式を付与するという切実な必要性がございますけれども、ただいま議員御指摘のとおり、対象は制限を設けておりませんので、だれに対してでも構わないということになりますが、ただ、これは株主総会の特別決議をする場合に、これを発行する、必要とする理由、これについては開示をしなければならないということになっておりますので、そこで正当な理由、必要な理由、これを判断されるということになります。

 それから、先ほどから青天井と言われているんですが、これは青天井ではございませんので、授権株式数の範囲内ということで……(木島委員「政治用語です」と呼ぶ)そこは御理解いただいているようでございますが、そういうことでございます。

木島委員 株主総会の特別決議で必要な理由を開示するからチェックできるんだとおっしゃっておりますが、現行法は正当な理由なんですね。今度の法改正によっては、正当な理由の正当を切っちゃったんですね。

 理由なんというのは幾らでもつく。名前は伏せられるわけですし、後から論議もしますが、株主総会の特別決議が必要な発行と必要でない発行、そこにあやがあるので、今の答弁では、私は、やはりいろいろな取締役の不祥事などを隠ぺいするために、こういう不当な目的に使われるおそれが非常に今回の付与対象の規制撤廃で出てきたんじゃないかと指摘だけして、次に質問を移ります。

 取得者の氏名公表を今回外しました。公表させていた理由は何ですか。今回なぜこれを切ったんですか。

山崎政府参考人 これは先ほど若干申し上げましたけれども、新株予約権の発行と新株の発行、この二つの制度が並んでございます。それが、すぐ近いところで新株が発行されるのか、将来にわたって新株が発行されるのかという違いはございますけれども、基本的には両者は機能的には同じだということでございます。

 そういうことから、新株の発行につきましてと同じ考えで、新株の有利発行の場合も株主総会の特別決議が必要でございます。その必要とする理由も必要でございますし、それから発行する株式の種類、数、これも当然そこの決議事項になりますけれども、あと、だれに付与するかということは取締役会の経営判断でできるという形をとっておりますが、それと同じ考え方をとったということでございます。

木島委員 私は、株主総会の特別決議でストックオプションの付与を受ける者の名前まで明らかにさせて決議を受けたというのは、不正にこれが使われないための最大の担保だったと思うので、今回これが削り込まれたというのはその担保が失われたということを指摘だけしておきたいと思うんです。

 次に、新株予約株式数はこれまでの十分の一という制限が撤廃されました。同じく、権利行使期間十年というこの制約も撤廃されました。なぜこういうことをやったんでしょうか。今までこういう制約があったのはなぜだったんでしょうか。

山崎政府参考人 この点につきましても、従来は自己株式方式のストックオプションがございましたけれども、これは極めて制限がされていたということで、ほかの理由でも大量には持てないという法制になっておりました。そういう中にストックオプションを導入したということから、そこも極めて数は制限的にしなければならないという思想があったというふうに理解をしております。

 また、自己株式は、少ないながら保有できますが、割合速やかに解消しなければならないという法制になっておりました。そういうことから一応十年という単位で、それ以上の長いものは許さないというほかとの並びで、そういうことから制限が加えられていたというふうに理解をしております。

木島委員 では、聞きますが、現行法で自己株式について極めて厳しい制限がついていたということをおっしゃいました。なぜ自己株式方式に関してこういう極めて厳しい制限をつけていたんでしょうか。その立法目的、趣旨は何なんでしょうか。

山崎政府参考人 これは、従来から、その数が多くなると資本の空洞化ということが行われるということから言われていたと思われます。そういうことからかなり強い規制がかかっていたということだろうと思います。

木島委員 そのとおりなんですね。ですから、私、この春の通常国会で自己株取得のいろいろな規制を取っ払った、政治用語としては青天井にされたと。

 これは、根本的に株式会社法制の一番大事な部分、資本充実の原則。株式会社制度というのは有限責任ですから、株主は自分が出資した部分しか責任を負わないわけですから、会社債権者にとっては担保が全然ないんですね。その有限責任の株式会社法制の中で、債権者を守る最大のよりどころは資本です。ですから、資本充実の原則というのは株式会社法制の命の部分ですね。その命の部分である資本充実の原則を、自己株式の取得の、そして保有の、売却の自由化で崩してしまったというのがこの春の通常国会での金庫株の解禁だった。

 ですから、それが解禁されたから、今度のストックオプションでも、新株予約権の発行は十分の一だったんだが、それは天井をとってもいいんだというようなことの理屈を立てたんでは、まさに資本充実の原則を掘り崩す、最も大事な原則を掘り崩すことを追認する、さらにこれに追い打ちをかけるようなことに今回の規制緩和はなるんではないかということを指摘しておきたいと思うんです。株式会社法制の一番の大事な部分を今回の法制はストックオプションの規制緩和という形で崩しているということを指摘しておきたいと思います。

 次に、先ほど来局長は、いろいろな問題点の歯どめは、株主総会の特別決議でやられるんだから、そこでちゃんとしたチェックが行われるんだと。唯一の答弁、そこだと思うんですが、そこで聞きます。

 二百八十条の十九、そして二百八十条の二十によりますと、基本的には新株予約権というものは取締役会決議だけで付与できる仕組みになっております。ただし、株主以外の者に対し特に有利なる条件で発行するときは株主総会の特別決議が必要とされます。その落差は極めて大きいです。取締役会決議だけで簡単に発行できるか、それとも株主総会の特別決議、全株主の過半数出席でその三分の二ですか、賛同を得なければできないという株主総会の特別決議、物すごい重い縛りで、その落差は極めて大きい。

 なぜこうしたのか。そして、特にこの法案の「株主以外ノ者ニ対シ特ニ有利ナル条件」、どういう意味でしょうか。

山崎政府参考人 まず、株主総会の議決の関係で、特に有利発行の場合は株主総会の議決が要りますけれども、それ以外、第三者に付与するという、有利発行にならない場合には取締役会でできる。

 なぜそうしたかということは、先ほど申し上げましたけれども、新株の発行の場合、この場合と全く考え方を同じにしたわけでございまして、現在、新株の発行も有利発行にならない限り取締役会で決定することができるということになっているわけでございまして、その制度を整合的にしたものでございます。

 それから、もう一点の御質問につきましては、これは有利発行の問題でございまして……(木島委員「その定義、株主以外の者に対し特に有利なる条件の解釈」と呼ぶ)その解釈ですね。これにつきましては、一つは、第三者に特に有利な条件で付与するという場合がございます。これは株主以外というふうに、まず一つは考えられます。

 それから、株主の場合もどうするかという問題がございますけれども、株主に、もともと持っている株式の割合、株式数に準じて比例して付与される、こういう場合には対象外になりますけれども、ある株主に特別に割り振るということになると、これは平等の株主数の割合で割るわけではございませんので、これも株主以外という考え方になりまして、有利発行の規定が必要になるということでございます。

木島委員 そこで、特に有利なる条件というのは、もっと具体的に、株価なんかの問題に絡ませますとどういうことですか。

山崎政府参考人 新株予約権を発行する場合に、通常であれば二つのものが必要になります。まず、発行するときの対価の問題でございます。それから、将来、権利行使をするわけでございますが、権利行使の価額がございます。この二つを合算したものが全体の価格ということになるわけでございますが、これが有利になるかどうかの問題は、その権利行使期間中における株価の平均値、これに比較して特に低額であるかどうかということでございます。そういうことでこの考えができているわけでございます。

木島委員 非常に具体的な話になってきました。

 要するに、発行価額と権利行使価額を合わせたものがいわゆる価格だと。これは公正な価格という概念がありますね。公正な価格でなければいけないと。それの価格は、それよりより安ければ有利なる条件となるわけなんですが、では、発行価額と権利行使価額をプラスした、いわゆる通常公正な価格という言葉を使われているようなんですが、それはだれが決めるんですか。どういう算定基準によってその数字が出てくるんですか。

山崎政府参考人 これにつきましては、実務界で取り入れられている方法を御紹介いたしますけれども、例えば市場価格がある株式ということを例にとった場合でございますけれども、権利行使期間中における平均値をどういうふうに出すかということでございます。

 これは、こういうような市場価格のあるものについては過去の値動きがあるはずでございまして、そういうものについて、当然、株価のばらつき度合いが時期によってあるわけでございます。そういうものを求めて、統計的な手法を用いまして、権利行使期間中に特定の価格になる確率を算出いたします。ある将来の三年間なら三年間、その間で幾らになる、確率がどうだということを全部出すわけでございます。その値段に確率を掛けます。これを全部トータルしたもの、これがいわゆる株価の平均値ということになるということで現実に動いているようでございます。

木島委員 すごい話ですよね。株価の平均値を割り出すと。基準があるんだと。過去のその会社の株価の変動なんかを見て、いろいろな要素を加味して、そして、ストックオプションですから、これから権利行使期間中の平均値を統計的な手法で割り出すんだというんです。

 先ほど私も指摘しました。今回の法で、せめて十年以内だったのが青天井になるわけですね、十五年以内でもいいと。これから先、十五年先の株価がどう動くかを見積もるというんですよ。そして、その中で一つの数字を割り出していくというんでしょう。こんなこと、科学的に、経済学的に、公正な株価なんというのは出てくるんですか。例えばこの十年の日本経済を見ても、十年前と現在の株価、どうですか。物すごい暴落しちゃったんでしょう。

 だから、私は、仕組みはわかりましたが、そういう仕組みで割り出された価格などどうにでもなる。取締役会がこれを割り出すんでしょう、最終的には。だから、どうにでもなる、さじかげんでどうにでもなるということだけ指摘しておきたいと思います。

 それで、では、特に有利なる条件というのは、そうやって割り出された価格ですね、株価の平均値といいましょうか、それより低ければいいと。逆に言うと、発行価額をゼロにした場合だけが特に有利なる条件なんですね。

山崎政府参考人 先ほどちょっと御説明が悪かったのかもしれませんが、権利行使期間中における株価の平均値、それに比較して特に有利なるかどうかということをいうわけでございます。

 それから、先ほどから、十年超えても云々という言葉でございますが、これは法律で十年以内にはやらなきゃいけないということを撤廃しただけでございまして、発行するときに、では権利行使期間は三年から五年の間だとか、それは全部決めることができるわけでございまして、さすがに、二十年先のものがどうかということは余り現実的ではないだろうと。現実に今、ストックオプションは、大体三年前後の行使期間、場合によっては五年とか、そういう形でやられておりますので、それはある程度の予測がつくということで理解をしております。

木島委員 それで、先ほど、発行価額と権利行使価額を合算したものがいわゆる取締役会でまず決められる価格だと。そうすると、発行価額をゼロにしないで、ゼロにするとこの法律にひっかかって、特別に有利な条件になるから株主総会の特別決議が必要、それではいかぬからゼロにはしない、発行価額を十円にする、百円にする、幾らでもいいんですね。その場合には、十円でも特に有利なる条件での発行にはならないわけですね。

山崎政府参考人 特に有利なるという言葉なんですが、これは若干幅はあろうかと思いますけれども、仮に最初の発行価額が二千円だとして、それについて十円だということになれば、これは特に有利なるということに当たるんだろうと私は思っています。

木島委員 では、その限界は何ですか。パーセントが出てくるんですか、この法律から。

山崎政府参考人 特にパーセントを言うわけではございませんが、一つの例として申し上げたわけでございますけれども、ではどの辺が限界かというのは、公的な、一般的にこの辺ならいいという見解はございません。

木島委員 大変な問題ですよね。株価が二千円が相当だったと。では、最初に十円で買ってもらったら特に有利なる条件になる、二十円出してもらったらそうじゃないというんなら、その基準が今答弁できませんでした。

 なぜこれを言うかというと、株主総会の特別決議が必要か、取締役会決議だけで簡単に発行できるか、これがかかっている物すごい大事な問題なんですよ。これが、こういう非常にあいまいで、どうにでもなる、数字のさじかげんでどうにでもなるような仕組みでこの法律体系が組み立てられているというところに、私は危うさを感じます。

 時間とのことでありますが、厚生労働省と国税当局を呼んでおりますので、一言だけ質問させてください。

 従業員がストックオプションを受ける、そしてたまたま株価が上がって利益が出た。その場合に、これは給与所得なのか、一時所得なのか、あるいは労働基準法の賃金なのかどうか、簡潔な答弁を願います。

鈴木政府参考人 ストックオプション制度につきましては、権利付与を受けた労働者が権利行使を行うか否か、それからまた、権利を行使する場合に、その時期それから株式の取得時期をどうするか、これを労働者が決定するということになっております。

 したがいまして、御指摘の売却益、これにつきましては、それが発生する時期、額ともに労働者の判断にゆだねられているということから、労働基準法の賃金には当たらないというふうに考えております。

村上政府参考人 お答えします。

 今回の商法改正に伴う税制上の措置につきましてはお答えする立場にございませんので、あくまで一般論でいたしますが、従業員のケースでございますが、従業員の場合は給与所得に該当すると思います。

木島委員 終わりますが、これは閣法です。政府が一致して出してきた法律ですが、従業員のストックオプションを、権利行使があって利益を得た場合に、国税庁は給与所得だと認定をして、そして一時所得よりも高い税金を取っているんです。労働省の方は、給与所得じゃない、労働基準法の適用はない。こういう根本問題で、概念について一致してないんですよ。ちょっといいかげんじゃないかということを指摘して、時間ですから終わります。

保利委員長 次に、植田至紀君。

植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。

 冒頭まず、簡単なことですが、この間の商法等の改正にかかわる進捗状況、準備状況等についてお伺いしたいと思います。

 これは大臣にお願いしたいと思いますが、まずは、その改正の経過及び検討開始以降、この間、例えば金庫株の解禁であるとか単元株等々、実現されたものもございますけれども、そうした主な項目にはいかなるものがあるのか。そして、いろいろと今検討されているようですけれども、次期通常国会に審議予定のものと、商法改正に係る準備状況がどうなっているのかについて、概略を御説明いただけますでしょうか。

森山国務大臣 法制審議会の会社法部会におきましては、昨年の会社分割法制の導入を内容とする商法改正法の成立以降、企業統治の実効性の確保、高度情報化社会への対応、資金調達手段の改善及び企業活動の国際化への対応等の観点から、会社法制の見直しのための審議を行われ、本年四月十八日に商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案を決定され、公表されたところでございます。

 今回の改正法案は、この中間試案で取り上げられました改正検討事項のうち、特に早期立法化の要請が強い株式制度の見直し、会社関係書類の電子化等について改正を行おうとするものでございます。

 中間試案におきましては、このほかに、会社の計算及び機関に関する改正検討事項として、商法特例法上の大会社への連結計算書類制度の導入、社外取締役選任の義務づけ、機関相互間の権限分配の見直し、株券失効制度の創設等、多くの事項が取り上げられておりますが、これらの事項につきましては、次期通常国会に商法等の改正法案を提出いたすべく、現在、法制審議会会社法部会におきまして鋭意検討を行っているところでございます。

植田委員 そこで、当然ながら、商法を改正することによってほかの課題にも波及していくものもあろうかと思うんですが、四年前、九七年に、ストックオプションにかかわっての商法の一部を改正する法律案、なぜか社民党も提案者に入っておるわけですけれども、このときの附帯決議で、「インサイダー取引などの不公正取引に対して、証券取引法の厳格な適用を行うとともに、罰則強化を含む法整備について、諸外国の制度や他の経済法規との均衡をも考慮しながら検討する」というような附帯決議がつけられているわけです。なぜこういうものが出てきたかというと、当時、やはりそうした株価操作であるとかインサイダー取引等の弊害が起こるんじゃないか、そういうことについてかなり学者の方々からも疑義があった、そういう経過は聞き及んでいるわけでございます。

 そういう背景もあって、こういう附帯決議があの当時盛られたんだろうと思いますけれども、ここでは大きく二点言っているわけですが、これについては、実際にこの事項がどんな形で実行されているのやどうかということについて、お伺いしたいと思います。

渡辺政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの先生の御指摘は、監視委員会において監視体制の強化とか厳格な運用を行うべきである、そういうことをどこまでやってきたかということというふうに承っておりますけれども、私ども証券取引等監視委員会は、特異な株の値動きなんかがありました場合には、その取引状況につきまして日常的に市場の監視活動を行っている、そういう組織でございます。

 御指摘の平成九年の商法改正におきまして一部解禁されました自己株式の取得に関する取引につきましても、そういう日常の監視活動の中で厳正に監視を行ってきておりまして、仮に取引の公正性を害するような事例が認められれば、その取引の手口の分析、例えば会社関係者がどういうような取引をしているかというようなことの分析を行いまして事実関係の解明に努める、そして調査をいたしまして、仮に証取法違反があった場合には厳正に対処するということを日ごろから活動としてやっておるということが一点でございます。

 今後とも、この監視委員会に与えられた任務というのを適切に果たしていくためには、引き続き、必要な人員の確保について関係当局の理解を求めつつ、監視体制の強化を図っていきたいと思っておりまして、そういう中で証取法の厳格な運用に引き続き努めてまいりたい、こんなふうに考えております。

植田委員 今のは、この附帯決議の中の一点目に係る部分でございましたですよね。

 次の二点目は、これは金融庁さん、お願いできますか。

原口政府参考人 二点目は、どのような法整備を行ってきたかという御指摘かと思いますが、平成九年の商法改正の際の附帯決議を踏まえた上で、同年十二月に成立、施行されました金融関係罰則法におきまして、インサイダーの取引規制、相場操縦等の不公正取引に対する罰則の水準の引き上げを行っております。

 例えば、相場操縦に対する刑罰につきましては、法定刑を懲役三年以下、罰金三百万円以下、法人に対しては罰金三億円以下から、懲役五年以下、罰金五百万円以下、法人に対しては罰金五億円以下ということまで引き上げておりまして、これは商法の「会社財産を危くする罪」等と同じ水準であり、経済関係の罰則としては厳しい水準にあるものと認識をしております。

 さらに加えまして、平成十年六月成立の金融システム改革法におきましても、相場操縦やインサイダー取引等の不公正取引により得た財産、またはその対価としての財産を没収、追徴するということとされております。

 このように、証券取引法上の罰則強化を図りつつ、公正な証券市場の確保に努めてきたところでございます。

植田委員 証券取引法にかかわってのところでは一定の進捗を見ているというお話だったわけですが、この間の商法改正の一つの獲得目標といたしましては、やはり公正な証券市場の整備にあるんじゃないか。すなわち、個人投資家が大量に市場参入していく、それに先駆けてやはり公正な証券市場を整備しておくという必要があるんじゃないか。そういう意味で、例えばそうした監視体制の強化、これは例えば取締役会における経営監視機能の強化等と、また監査役、監査役会の独立性強化とかいう、そうした課題についてもやっていかなきゃならない。

 その環境整備がまだ十分解決されたとは言えない状況の中で、単発的にこういうストックオプションだけが先にぴょんと跳んでしまっているというのは、いささか私も疑問がありますし、また、そういうことについて疑義をおっしゃる方々の御意見というものも私は理解できなくはないということなんですが、その点については、これは法務省さんの方になろうかと思いますが、御見解をお願いいたします。

山崎政府参考人 ただいま御指摘の例えば報酬委員会制度等は、これは次期通常国会に改正案を提出させていただきたいと予定しているところでございます。本来は、これは一体としてやる予定でございましたけれども、特に緊急性を要するということで、この問題を、ストックオプション等を前倒ししたわけでございます。

 それを待たずになぜやるかという御質問かもしれませんけれども、現在の体制でもチェック機能はございまして、株主総会の特別決議でチェックをする、あるいは、それでも本当におかしければ発行差しどめとかそういう訴えもできるわけでございます。それからもう一つは、法務省令で、営業報告書の記載事項としてストックオプションを書かせるということで株主等に開示をするという制度も設けておりまして、開示もしておりますし、手段もあるということで、報酬委員会等ができて、よりきちっとした体制ができれば、それにこしたことはないと思いますけれども、現段階でも十分にたえ得るということでやっております。

植田委員 来年の通常国会で、私も法務委員でおりましたら、恐らくその際にまた御質問もさせていただくだろうというふうに思います。

 ここで、お手数ですが、金融庁さんにお願いしておるのは、ストックオプションの内容にかかわって幾つかお伺いをしたかったわけなんです。

 というのは、実際ストックオプションが時価より低い行使価額で権利行使するものである限り、やはり一株当たりの価値は下がるわけですから、一般投資家の利益に逆行する、これはそういうふうに理解せざるを得ないわけですよね。ただ、そこで、でもやはりストックオプションはいいじゃないかという根拠としては、株式の価値の減少分以上に株式価値の上昇が、それを付与された役職員の努力によって生じるという、いわば推定といいますか、それがないとやはりまずいんじゃないかと思うわけです。

 そういう意味で、ストックオプション制度がほんまに社会の中できちんと認知されるように機能していくためには、一つは、やはり企業の業績というものが株価の形成にしっかりと反映するという信頼される市場があるということがまず大前提でしょうが、もう一つは、結果的には安い価格で株式を取得する、付与される方と、一般の株主、投資家との利害対立というものを回避するための、やはりその辺のシステムというものを構築しておく必要はあるんじゃないかというふうに思うわけなんですが、その点の御所見はいかがですか。

原口政府参考人 今まさに先生の御指摘になったように、ストックオプション制度そのものは、オプションの付与対象者の企業の業績向上に向けた意欲ですとか士気の向上、これを通じてまたその企業の業績のアップを目指すということで、それなりの意味を持っていると思います。

 他方、証券市場の公正性と健全性というものを維持することも大切で、そこのバランスをどうとるかという問題だろうと思いますが、その点については、現行の証取法上のインサイダー取引等あるいは風説の流布ですとか、そういうことに対する取り締まりといったような種々の規定がありますので、そういうものを活用しながら、できるだけ公正な市場を形成していくということで担保していきたいというふうに考えております。

植田委員 現行で対応できるというお話だったかと思いますが、例えば、戦前から導入されたアメリカのように、市場規制や経営監督機構が充実しておるわけですよね。これはまあ先進国でございますが。そういう意味で、こうした、言ってみれば司法の経済犯罪に対する備えが充実しておれば、やはり権威も強いわけですし、また情報開示も相当詳細に行われておれば、それは不公平だとか不公正だとかいうことは払拭できるだろうと思うのですけれども、日本のストックオプション制度を見たときに、その辺、現行でできると言い張らはるから言うのですが、やや配慮に欠けているんじゃないかというふうには私、思うわけです。

 その点と、例えばドイツの事例をちょろちょろと調べていましたら、ドイツのストックオプションの制度では、株価がある水準以上に上昇した場合権利行使を認めないという条項も置かれているようですけれども、例えば、バブル時に代表されるように、異常に株価が上がったときに、棚ぼたのようなそういう利益はやはり与えないような対応だろうと思うわけです。

 私が聞いておるのは、ストックオプション制度が社会的にきちんと定着をしていく、社会的に認知をされなければならない、そういうスタンスで、むしろ補強する立場から言うているわけなんですが、そういう海外の事例等々、株主の利益保護という観点から充実させていくというお考えは今のところないということなんでしょうか、あるということなんでしょうか、その点。

原口政府参考人 ドイツにおきまして、ストックオプションに係る目標設定といったような規定があるということは聞いておりますが、具体的にどういうときに使われるかというようなことについては、いろいろな条件があるんだろうと思います。

 そういうようなことを参考に、仮に、一定以上対象株価が上昇したときにストックオプションの行使を認めないといったような規制を行うといたしましても、一つは、これは一義的にはストックオプションの保有者と会社との間の権利関係の問題ということもあると思いますので、円滑な流通を図るという証券取引法上の規制に基本的になじむかどうかという問題もあると思います。

 また、いずれにしろ、こういうような規制を課す場合に、もうこれは先生も御案内のとおりでございますが、先ほど申し上げたいろいろなストックオプションの利点といいますか、業績向上に基づく利益を株主なりその行使者が享受をする、その源泉としてのいろいろな意欲ですとか士気の向上といったようなことをある意味では制約する要因にもなりかねないという要素もございますので、こういうことを考えますと、かなり慎重に検討すべき御提案ではないかなという気はしております。

植田委員 慎重でも結構ですから、検討していただければよろしいかと思います。

 もう一点、報酬開示制度についても抜本的な見直しが必要なんじゃないのかなと思うわけなんです。

 というのは、ストックオプション制度の導入自体が、「今後の商法改正について」というペーパーを出されたときには、企業活動の国際化への対応というわけですから、当然、国際的な水準にのっとった報酬開示制度というものが必要じゃないかと思うわけです。

 現状では、たしか取締役全員に支払われた報酬の合計金額というものが附属明細書に開示されている、そういうことだったと思うのですが、実際、例えば欧米の方では、上場会社については、役員報酬の開示について、委任状説明書や年次報告書等で、個々の役員ごとの氏名を明らかにして、支給される報酬の種類や金額、ストックオプション対象株式数、また行使状況等が全部開示されている。同時に、その役員報酬が適正であるかどうかということもチェックするために、社外取締役を中心にして報酬委員会が設置されているということも聞いております。

 企業活動の国際化への対応という観点から今回ストックオプション制度は導入されたとか言われているわけですから、この報酬開示制度の抜本見直しということについても考えていくことはごく自然の理ではないかと思うわけですが、その点はどうでしょうか。これは法務省さんですね。

山崎政府参考人 先ほどもちょっとお話し申し上げたかもしれませんけれども、報酬委員会等の話、まさに次期通常国会にまとめて……(植田委員「経営委員会の中にあるのかな」と呼ぶ)各種委員会をどういうふうに設けるかというのは全部中間試案のテーマになっておりますし、それも含めまして、新しい統治機構はどうあるべきかということを全部含めて次期通常国会で御審議をいただくというふうに考えておりますので、そこまでしばらくお待ちをいただきたいということでございます。

植田委員 ある程度まとまり次第教えてください。

 ぎょうさん項目はありましたけれども、恐らく経営委員会制度という中に、これがいわゆる会社の機関関係にかかわるところです、このあたりなんでしょうね。大体こんなところでしょうね。

山崎政府参考人 この中間試案では、大会社に限っておりますけれども、定款をもって、各種委員会及び執行役を置くことを定めることができるということで、各種委員会は何かということで、その中で、例えば監査委員会、それから指名委員会、報酬委員会、こういうものを設けるかどうかという検討課題も入っております。

植田委員 以上で結構です。

 あと、きょうは厚生労働省さんにも御足労いただいておるのですが、ストックオプションの報酬というものが、私、やはり限りなく賃金という側面も持ち得るじゃないかというところでの労基法とのかかわりということでございます。

 これは、九七年当時、国会質疑でも、今もいらっしゃいます衆議院の佐々木先生も御質問なされておられますし、また当時参議院にいらっしゃいました塩崎先生もこの点については御質問されておられます。そして、大体それら先生方への答弁に沿うような形で通達が出されておりまして、ここでは、労働の対償ではないんだから、労基法十一条の賃金には当たらないということをまずおっしゃっています。

 それは確かにそうだろう。賃金と言おうが、給料と言おうが、賞与と言おうが、労働の対償である限り全部賃金ですけれども、今回は確かに、実際にその利益というものは労働者の判断にゆだねられる以上、そういう意味での賃金には当たらないということはわかるのです。ですから、それを就業規則等にあらかじめ定められた賃金の一部として取り扱うことは、今度労基法の二十四条には反しますよということなんです。

 ただ、一つは、ストックオプションの権利を付与した段階、権利を行使する前のオプション権自体は、これは労働者みずからの判断で決定した結果得られるというものではありませんし、オプション権自体が経済的な価値を持っているということであれば、やはりこのオプション権という側面では賃金に該当する部分がかなりあるんじゃないかと思うわけですが、まずそこを教えていただけますか。

鈴木政府参考人 今の御指摘の点につきましては、新株引受権の付与自体について、その賃金の性格がどうかという御指摘だろうと思います。

 これにつきましては、今般、譲渡可能性という問題も出てきておりますが、これが価格が明瞭で、具体的に譲渡可能性がどうなのか、そこら辺の実態を見ながら検討すべき問題というふうに考えております。

植田委員 その実態を見ながらですよね。その実態にかかわってですが、実際、ある種恩恵的なものであれば、二十四条での賃金制、毎月払わないかぬ、現金で払わないかぬということにはならないでしょうけれども、やはり賃金の代替的な機能を持ち得る場合が多かろうと思うのですよ。

 例えば、植田という男がベンチャー企業の社長をやっていて、今はもうからへん、でも、おまえら有為な人材やから、手取りは、基本給は二十万で辛抱してくれ、ただ、ストックオプションというのがある、まあとりあえず業績が上がるまで給料のかわりやと思うて受け取ってくれへんかと。私もベンチャーの社長やったら、やはりそうして言うかもしれませんわね。そうなったら、受けとめる側の社員は、これは要するに、基本給は安いけれども、そのかわりにこういうのをくれるんやな、これも給料の一部やなというふうに普通素朴に理解しますわね。

 というのは、例えば去年、流通大手の、たしかこれは西部でも南部でも東部でもないもう一つの方向らしいですが、三千五百人以上にストックオプション付与を決議したようでございます。これだけ従業員等にかなり大量に、そうした多数の従業員に対して現金がわりにストックオプションを付与するということになると、どうも実態としては賃金がわりやないかというふうに、賃金だというふうに答えてほしいんじゃなくて、限りなく賃金代替機能をストックオプションが持っているということを厚生労働省さんとしては認めざるを得ないんじゃないか、限りなく賃金性を持っている側面があるよということは認めざるを得ないんじゃないかというふうに思うわけなんです。

 例えば、ストックオプションが付与される一方で、そのかわりと言ってはなんだが、定期昇給がストップされたり賞与がストップされたりしたら、明らかにこれ、給料、賃金のかわりにストックオプションを付与するということになっちゃいますよね。その辺はやはり、賃金だとおっしゃっていただかなくて結構ですが、限りなく賃金に近い側面をストックオプションがその性格として持っておるんだということをお認めいただいた上で、それと、そういう中で、言ってみれば賃下げのために、因果関係がはっきりしないかもしれませんが、賃下げするかわりにそれをやるんだなどという、そうした手法というのはやはりけしからぬことだろうなというふうに私も思いますから、その辺を含めてちょっと御見解をお伺いしたいんですが。

鈴木政府参考人 大変難しい側面もございます。

 このストックオプション制度は、人材の確保という面で非常に有効な制度というふうに考えております。その中で、これを賃金として扱うかどうか、これは、先ほど申し上げた観点に沿って検討していきたいと考えておりますが、いずれにしても、賃金として考える場合には、それが価格の評価が可能で、換金が可能というものが望ましいということなので、そういった観点から、今後いろいろな側面から考えていきたいと思っております。

植田委員 私、実に簡単な例を出して申し上げたつもりなんですが、実際、ストックオプションというのは、将来の労働のインセンティブなわけですし、付与基準で、これまでの業績なり実績なりに応じて付与すればするほど、やはり賃金の性格は帯びてくるし、そうした賃金的性格を持っているわけですよね。要するに、そのことは否定できませんねということだけ聞いておきますから、それは否定なさらないでください。

鈴木政府参考人 ストックオプションが具体的にどのように行われるかということにも関係しますが、労働条件の一部というふうに考えられる場合が多いというふうに考えております。

植田委員 賛成するつもりで来たんですが、賛成しづらい答弁が出てくると困っちゃうんですが、ただ、いずれにしても、これから恐らく必ず、今だってあるわけですから、賃金的側面が強いケースというのは意外にやはり多いだろうと思いますから、その点についてはちゃんと目を光らせておいてくださいということだけ要請しておきます。

 あと、電子化にかかわって、例えば決算書等参考資料も招集通知と一緒に送るわけですが、書面で通知するんやったら郵送すればいいわけですけれども、さて、これをメールで通知となると、かなりの分量ですよね。ほんま、細かい話にこだわって申しわけないんですけれども、それは容量の大きいパソコンを持ってはる株主やったらいいけれども、容量が小さかったりしたら、これはなかなか大変だろうと思うわけです。その辺、メールに添付してこれを送るとなると、やや幾つか問題も出てくるんじゃないかと思うんですが、その辺は何かお考えでいらっしゃいますでしょうか。

山崎政府参考人 確かに御指摘のとおり、膨大な量が行ったときに容量としてあるかという問題はございますが、もし容量の少ない方であれば、これはあらかじめの同意が要りますので、そのときに、添付書面は別途送ってほしいということで外せば、それは別途書面で送られる、それが可能な形になっておりますので、そういう形で解決をしていただきたいということでございます。

植田委員 あと、これはあらかじめ話も聞いていたんですけれども、議決権の行使の委任についても電子投票を認めているわけです。これは条文ではないですけれども、この種の採用の可否は会社の判断にゆだねるということなんですよね。ただ、株主の委任状の場合、仮にこの株主が電磁的記録を提供するというのは、これはフロッピーを持っていくという話になりますわね。どういうことなんですか。

 というのは、不便やろうというだけの話なんですが、要するに、実際、委任状の意思と受任性の特定があるわけなんですが、受任者も、委任者からパスワードを受け取って、そして会社が持っているパスワードと合わせれば、それで委任状の所持の代替になるん違うかというふうに、そういうことを申し上げておるわけです。

 ですから、フロッピーなんていうことであれば結局持っていかぬことにはあれなんで不便やろう、そういう考え方もできるん違うやろかということをお尋ねしておりまして、余り法律の話ではございませんで、利便性の話ですが、そういうこともいいですよねということです。

山崎政府参考人 パスワードが基本的に合っているという形ならば、それは委任があったという確認もできますので、わざわざ持っていかなくても、そのパスワードが合っていればいいという方法もございます。

植田委員 時間が参りました。ちょっと幾つかやり残したものもございますが、これで終わります。お疲れさまです。

保利委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより両案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。木島日出夫君。

木島委員 私は、日本共産党を代表して、商法等の一部を改正する法律案外一案に対して、反対の討論をいたします。

 反対の理由は、本法案が、現行のストックオプション制度につけられていた制約をほぼ全面的に撤廃することによって、ストックオプション制度の持つさまざまな弊害を限りなく拡大することとなるからであります。

 ストックオプションとは、あらかじめ決められた権利行使価額で一定期間後に自社株を購入できる権利を言うのでありますが、それゆえに、それは、特定の者に対し、株価の上昇に伴う利益を付与するという性質を持ちます。

 したがって、現行商法では、ストックオプションは、自社の取締役と使用人に対してのみ認められ、しかも、その氏名を明らかにし、株主総会での特別決議を要し、かつ、その株式数は発行済み株式総数の十分の一、権利行使期間は十年と制限していたのであります。

 ところが、本改正法案では、これらの制限をすべて撤廃してしまいました。ストックオプションは、だれに対しても、氏名も明らかにされず、付与株式総数の限度も権利行使期限もなしに付与することができることとなったのであります。

 しかも、株主以外の者に対し特に有利なる条件で付与する場合以外は、取締役会決議のみで、会社が取得、保有している自社株、いわゆる金庫株をもってこれに充てることさえ可能となったのであります。特に有利なる条件の場合は株主総会の特別決議によるのですが、これを回避することなど、まことに容易であります。

 本改正によって、ストックオプションは、取締役会によってほしいままに乱用されるおそれが極めて大きくなります。その結果、取締役会の会社支配は限りなく強まり、その不正、乱脈経営などは隠ぺいされ、特定の者たちだけが利益を享受し、その一方で、株主や会社債権者の利益は害され、株価操縦やインサイダー取引など、証券取引の公正さが損なわれるおそれも大きくなるでしょう。

 本法案には、これらを防止するための、取締役会、取締役に対する監視監督制度が用意されておりません。

 このような改正では、株主利益の増大や経済の効率化、競争力の向上に資するどころか、逆に、目先の株価対策や会計面での粉飾にしかならず、我が国経済の着実な発展にも逆行するおそれが大きい。このことを指摘して、反対討論といたします。(拍手)

保利委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより採決に入ります。

 まず、内閣提出、商法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 この際、ただいま議決いたしました商法等の一部を改正する法律案に対し、田村憲久君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    商法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

 一 ストック・オプションの目的である株式の付与の上限及びストック・オプションの付与対象者の制限の撤廃に伴い、株主の利益が損なわれることのないよう、ストック・オプションを付与することを必要とする理由の開示に際して、十分な情報公開の必要性があることについて周知徹底に努めること。

 二 ストック・オプションに係る税制について、税の公平性・所得の捕捉可能性等を踏まえて整備すること。

 三 会社関係書類の電子化・計算書類の公開制度の電子化等の導入に伴い、会社等が用いる電磁的方法の信頼性・安全性の確保に向けて努力すること。

 四 株式会社の大多数を占める小規模会社における計算書類の公開制度が必ずしも十分に実効性を上げていない現状にかんがみ、公開制度に係る今回の改正が実効性のあるものとなるよう努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

保利委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 田村憲久君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森山法務大臣。

森山国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

保利委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

保利委員長 次に、内閣提出、刑法の一部を改正する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。森山法務大臣。

    ―――――――――――――

 刑法の一部を改正する法律案

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

森山国務大臣 刑法の一部を改正する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして、一括してその趣旨を御説明いたします。

 まず、刑法の一部を改正する法律案につき申し上げます。

 近時、飲酒運転や著しい高速度運転などの悪質かつ危険な自動車の運転行為による死傷事犯が少なからず発生しています。これまでは、このような事犯についても、不注意な運転行為によるものとして業務上過失致死傷罪により処罰されてきましたが、同罪は、これらの事犯の悪質性や重大性に的確に対応するものではなく、国民の間にも罰則の整備を求める声が高まっていることから、事案の実態に即した適切な処罰を行うための法整備が必要です。

 一方、今日、自動車の普及により、自動車運転による業務上過失傷害事犯は、多くの国民がその日常生活の過程でわずかな不注意により犯しかねない状況となっており、また現に、軽傷事犯の中には、その情状に照らし刑の言い渡しを要しないものも少なくなく、それらの事案のすべてを処罰することは適当ではないことから、その旨を刑法上明らかにすることが適当です。

 そこで、この法律案は、このような状況を踏まえ、自動車運転による死傷事犯に対し、事案の実態に即した処分と科刑を行うため、刑法を改正し、所要の法整備を行おうとするものです。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で四輪以上の自動車を走行させるなど、悪質かつ危険な運転行為により人を負傷させた者は十年以下の懲役に処し、死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する旨の処罰規定を新設するものです。

 第二は、自動車を運転して業務上過失傷害罪を犯した者について、傷害が軽いときは情状により刑を免除することができる旨の規定を設けるものです。

 その他所要の規定の整備を行うこととしております。

 次に、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 刑事訴訟法上、裁判は、原則として検察官の指揮により執行することとされていますが、財産刑、自由刑その他の裁判の執行につきましては、その執行を受ける者の所在や資産等の調査を行う必要がありますところ、現行法は、これらの調査に関する権限の規定を欠いており、調査に際し、その相手方から照会の根拠規定がないことを理由として協力を拒まれるなど、裁判の執行に困難を来している例が少なくない状況にあります。

 また、有罪の裁判のおよそ九割が自動車運転に係る事犯であるという実情を踏まえますと、自動車運転に係る死傷事犯に厳正に対処するとの観点からも、財産刑、自由刑等の裁判を的確に執行するため、法整備を行うことが必要です。

 そこで、この法律案は、このような状況を踏まえ、刑事訴訟法等を改正し、所要の法整備を行おうとするものです。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、刑事訴訟法の改正であり、裁判の執行に関し、検察官等が公務所または公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる旨の規定を新設するものです。

 第二は、過料の裁判を検察官の命令によって執行することを定める他の法律につき、第一と同様の規定を新設するものです。

 以上が、これらの法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

保利委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

保利委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま趣旨の説明を聴取いたしました刑法の一部を改正する法律案の審査のため、来る十一月七日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る六日火曜日午後二時五十分理事会、午後三時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十九分散会




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