衆議院

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第8号 平成13年11月6日(火曜日)

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平成十三年十一月六日(火曜日)

    午後三時一分開議

 出席委員

   委員長 保利 耕輔君

   理事 奥谷  通君 理事 塩崎 恭久君

   理事 田村 憲久君 理事 長勢 甚遠君

   理事 佐々木秀典君 理事 平岡 秀夫君

   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君

      荒井 広幸君    小此木八郎君

      太田 誠一君    左藤  章君

      鈴木 恒夫君    棚橋 泰文君

      谷川 和穗君    西田  司君

      松宮  勲君    山本 明彦君

      吉野 正芳君    渡辺 喜美君

      肥田美代子君    細川 律夫君

      水島 広子君    山内  功君

      山花 郁夫君    青山 二三君

      藤井 裕久君    木島日出夫君

      瀬古由起子君    植田 至紀君

      徳田 虎雄君

    …………………………………

   法務大臣         森山 眞弓君

   法務大臣政務官      中川 義雄君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    坂東 自朗君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君

   法務委員会専門員     横田 猛雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月六日

 辞任         補欠選任

  笹川  堯君     小此木八郎君

  枝野 幸男君     細川 律夫君

  不破 哲三君     瀬古由起子君

同日

 辞任         補欠選任

  小此木八郎君     笹川  堯君

  細川 律夫君     枝野 幸男君

  瀬古由起子君     不破 哲三君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)




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     ――――◇―――――

保利委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑法の一部を改正する法律案及び刑事訴訟法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁交通局長坂東自朗君及び法務省刑事局長古田佑紀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉野正芳君。

吉野委員 自由民主党の吉野正芳でございます。刑法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。

 私たちの社会にとって車は非常に便利で、そして快適な生活をもたらしてくれるものであります。今やなくてはならない、そういう存在にもなっております。森山大臣も、大臣になる前は、愛車のベンツを自分で運転されて自由民主党の本部の部会に出席されているように、本当に身近な、なくてはならないものが今の車であると思います。

 しかし、車は、安全運転を一歩誤れば全く一瞬のうちに凶器と化してしまう、そういうものでもあります。今まで交通事故は、不注意による事故も、そして酒飲み運転や重大な悪質な運転での事故も、一律にいわゆる過失犯、不注意によるものとして、最高懲役五年、そういう不注意な事故という形で取り扱ってまいりました。

 しかし、今回この刑法の一部を改正する法律案によって、悪質で危険なものは危険運転致死傷罪という罰則を強化することで、まさに実態に即した対応をしていると思います。そして、それは被害者の、また遺族の皆様方の心情をも察すれば当然のことである、このように考えるものであります。

 一方、先ほども言いましたように、今、現代社会において車はなくてはならないものでありまして、その中で、軽微な事故については刑の免除をしていく。刑罰を重くし、一方では刑罰を免除していくというのも、これもまた今の社会にとっては合理的な部分もあろうかと思います。

 それで、お尋ねをしたいと思います。

 この法改正の背景となりました事故に、平成十一年十一月二十八日の東名の、三歳と一歳の姉妹が追突によって焼死したという大変痛ましい事故が背景にあるわけであります。この判決文の中でこのように書いてあります。立法にかかわる事項につき裁判所が軽々に意見を述べるべきではないにしても、所感としてあえて言えば、犯罪構成要件の新設、法定刑の引き上げなどの立法的な手当てをもってするのが本来のあり方であるように思われる、こう述べておられます。

 まさにこの判決文は、立法府は何をやっていたのか、行政は何をやっていたのかということもこの判決文の行間の中に込められているのかなというふうに私は思うわけであります。

 どうしてもっと早く法改正ができなかったのか、その点をまずお尋ねしたいと思います。

古田政府参考人 なぜもっと早くできなかったのかというおしかりを受けたわけでございますが、若干、前提の問題として、これまでの交通事故のいわゆる量刑、こういうものがどういうことで形成されてきたのかということを申し上げておきたいと思います。

 現行の業務上過失致死傷罪は、先ほど御指摘のとおり、懲役五年というのが最高刑になっておりますが、この法定刑の引き上げがありましたのが昭和四十三年のことでございまして、当時、いわゆる交通戦争と呼ばれる時代でございました。そこで、当時も非常に問題になりましたのが、酒酔い運転でありますとかあるいは無免許運転、非常に著しい高速度の速度違反、いわゆる交通三悪というものを対象にしてこの法定刑の引き上げが行われたわけでございます。

 その法定刑の引き上げがそういう趣旨で行われたものであるということを踏まえまして、これまでその運用が行われてきたわけでございますが、その後、自動車の性能も大変向上いたしましたり、また道路も整備される、したがって、多数の車が非常に高速度で走れるようになってきてしまう。そういう状態になって以降、非常に重大な危険、結果をもたらす行為というのがやはり多くなってくるということもまた事実でございまして、そういうことを受けまして、やはり社会的な認識というものも変わっていったんだろうと思うわけでございます。

 遺族の方々あるいは被害者の方々等から、現在の法定刑あるいは過失犯として処罰するというのはどうもしっくりしないという御要望というのが、特に昨年以降非常にとみに高まってまいったわけでございまして、こういう声を受けまして、先ほど申し上げました社会的な認識の変化あるいは交通事故の実態、こういうものも検討いたしまして、その一方でまた、委員御指摘のとおり国民生活に非常に大きな影響を及ぼすものでございますので、そういう点も考慮しつつ、私どもとしては、できる限り早く検討をして、今回御提案するに至ったということでございます。

吉野委員 十一月一日の産経新聞の朝刊にこんな記事が載っかっておりました。「以前、カリフォルニア州で酒気帯び運転で捕まり、弁護士費用などで一万ドル近い出費を強いられた友人の話を書いたが、彼が“更生”のため出席した講習会のテキストに掲載されていた各国の飲酒運転に対する罰則を幾つか紹介したい。」これは、アメリカの講習でのテキストの中身だと思います。「トルコでは三十二キロ離れた郊外に連行され、徒歩で町まで帰らされる。オーストラリアでは地方新聞に自費で、飲酒で刑務所に入っているとの実名記事を載せなければならない。マレーシアでは、運転者はもちろん、結婚していた場合は妻も刑務所入りとなる。ブルガリアでは飲酒運転で二度逮捕されると極刑。」極刑と書いてあります。死刑です。「エルサルバドルでも銃殺刑とあった。」云々、こういう記事が書いてあります。

 これは外国の講習会のテキストの中身ですから、真偽のほどはわかりませんけれども、外国でどのような刑罰があるのか、お聞かせ願いたいと思います。

古田政府参考人 すべての外国を網羅的に把握しているわけではございませんが、米英独仏について私どもの承知しているところを申し上げますと、それぞれ、実は国さまざまでございます。ただ、一般的に申し上げますと、酒酔い運転等の悪質、危険な運転行為、あるいはこれによって起こされた死傷事犯について、特別の規定を設けて処罰しているというところが多いように思います。

 アメリカの例を申し上げますと、州によって差がございますが、例えばミシガン州では、飲酒運転致死罪が十五年以下の自由刑または二千五百ドル以上一万ドル以下の罰金あるいはその併科、イギリスにおきましても、飲酒運転致死罪が十年以下の自由刑、そんなような処罰規定があるように承知しております。一方、ドイツにおきましては、これは五年以下の自由刑になっております。過失致死罪でございますが、これ以外に特段の加重処罰類型はないようでございます。フランスにおきましては、過失致死傷罪が酒酔い運転とともに犯された場合にはその法定刑を二倍とする、あるいは酒酔いで意図的な義務違反による致死を犯した場合は十年以下の自由刑ということになりますが、そんなような規定が設けられているというふうに承知しております。

吉野委員 この法律文を見ますと、二輪車は対象になっておりません。でも、バイクでの死亡の事故率とか、また被害者といいますか、これはやはりお年寄り、子供がたくさんおろうかと思いますけれども、どうして二輪車を含めなかったのかお尋ねしたいと思いますし、刑法ですから、自己責任、単に自損事故で死亡してもそれは刑法の対象になじまないという部分があろうかと思いますけれども、私は、人の命を守るという点ではこれが一番大切だと思っていますので、なじまない刑法であっても、交通事故の死亡を減らしていくという意味では二輪車も対象に入れるべきだと思うのですけれども、その辺お尋ねをしたいと思います。

古田政府参考人 確かに、二輪車も対象にすべきではないかという御意見があることは私どもも承知しているわけでございますが、この点につきましては、さまざまな角度から検討をいたしました。

 その結果といたしまして、二輪車は、原付のようなものはもとより、大型の自動二輪でありましても、四輪以上の自動車に比べますと、重量におきまして格段に軽いわけでございます。そしてまた、走行の安定性がこれも著しく劣る、つまりひっくり返りやすいということですが、そういうことから、本罪に当たりますような悪質、危険な運転行為をする、これは、今委員のお言葉の中にもありましたけれども、一種の自爆事故につながるようなことでもあるわけで、重大な死傷事犯を生じさせる危険性が、四輪のものに比べれば、どうも類型的に低いということでございます。

 また、実際に二輪車による死傷事犯につきましても調べましたけれども、本罪に該当するような事犯の実態というのが乏しいのも事実でございます。

 委員御指摘の中にありました歩行者とかこういう関係になってまいりますと、これはもちろんあるわけですが、そういう場合に、例えば歩行者の横をすれすれで高速で走っていくとか、そういうような本当に危険な事犯につきましては、これは傷害あるいは傷害致死罪による対応も可能でございまして、それ以外のケースを考えてみますと、これは車になることも多いと思いますが、業務上過失致死傷罪等で対応することは十分可能ではないかと考えているわけでございます。

 また一方、二輪車による死傷事犯まで本罪の対象といたしますと、四輪以上の自動車と衝突した場合などは、これは軽傷事犯、相手方には軽傷になる場合が非常にたくさん含まれてくることになるわけでございまして、そうなりますと、本罪が一般的に非常に重大な結果をもたらすそういう危険な行為を処罰の対象としようとしている趣旨とどうも合わなくなってしまうという問題も生ずるおそれがある、そういうことから今回は自動二輪については除外したものでございます。

吉野委員 罪を受けて刑を満了して、その後の再教育の問題についてちょっとお尋ねをしたいと思います。

 今現在、いわゆる悪質ドライバーで刑を終えた方々が再度免許を取るといった場合に、現状どのようになっているのか。

 あと、自動車教習所で、そういう方々のためには特別教育カリキュラムというものをつくる、普通の初心者が運転免許を取るカリキュラムではなくて、技能とか技術はあるわけですから、問題は、一番メンタルな部分、心の部分、そういうところの特別教育カリキュラムもつくるべきではないかと私は考えています。その点について。

 もう一点は、それで免許を再取得した場合に、やはりある一定の保護観察期間的なものを設けて毎年一回特別講習を開く、すなわちフォローしていくという、本当に立ち直ったのかなという部分のフォロー体制というものもつくらねばならないと思っているのですけれども、その三点についてお尋ねしたいと思います。

坂東政府参考人 三点のお尋ねがございました。

 まず、免許の取り消しを受けた者が免許を再度取得しようとする場合に現行制度ではどうなっているかというお尋ねでございますけれども、現行の制度におきましては、違反行為等により免許を取り消された者が再び免許を取得しようとする場合におきましては、最長五年の中で公安委員会が指定する欠格期間、つまり、取り消しを受けた場合は、あなたは何年間は免許取得できませんよという欠格期間を定めますので、その欠格期間が経過した後でなければ運転免許試験を受験することができないということになっております。また、受験しようとする受験前の一年以内に、公安委員会が行う取り消し処分者講習、この講習を受けなければならないというようになっております。

 それから、二点目のお尋ねでございますけれども、自動車教習所の教育カリキュラムに特別なものを取り入れたらどうかというお尋ねでございますけれども、免許を取り消された者が再び免許を取得しようとする場合におきましては、実態としては、かなりの方が自動車教習所に入所して、そこで初心運転者教育を受けているところでございますけれども、こうした者につきましては、教習とは別に、今申し上げましたような取り消し処分者講習というものを事前に受講しなきゃいけないということになっております。そういった特別の制度上の取り扱いをしているところでございますので、委員御指摘の点も踏まえまして、この取り消し処分者講習というものを適切に実施することによりまして、悪質、危険な運転者の危険性の改善を図ってまいりたいというふうに考えております。

 それから、三点目のお尋ねでございますけれども、そういった者に対して、例えば一年に一回特別講習を行うとかいったようなことをしたらどうかというお尋ねでございますけれども、先ほど申しましたように、こういった免許を取り消された者が再度免許を受けようとする場合におきましては、道路交通上の危険性を改善するための特別配慮ということで取り消し処分者講習で対処しているところでございますので、これに加えまして委員御指摘のような新たな制度を設けるということにつきましては、国民にさらなる負担を負わせることが適切であるかどうかという点が非常に重要でございまして、先生、先ほど御指摘ございましたように、自動車が今日の車社会において必須の生活手段になっているということも踏まえまして、より慎重な検討が必要であろうか、このように考えております。

 いずれにいたしましても、今後とも、道路交通上の危険性を排除し、交通事故の抑止を図るために、点数制度による行政処分を迅速的確に行ってまいりたい、このように考えております。

吉野委員 今の答弁の、国民に新たなる負担を求めるというのが私は納得しかねます。やはり、悪質な運転者でありましたから、その悪質な運転者の更生のためにフォロー体制をつくるべきという提案をしておりますので、何とぞ御検討のほどをお願いしたいと思います。

 次に、自動車学校も競争でありまして、過当競争に入っていると思います。自動車学校が過当競争のために、自分の学校で教習を受ければ、短い時間で、時間単価ですから安い値段で卒業できるということでありまして、そういう意味で未熟なドライバーをつくってはいないのかというところが危惧されますので、その辺はいかがなっているのでしょうか。

坂東政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたように、免許を受けようとする者の大半の方が自動車教習所に入所して講習を受けているという実態がございますが、この自動車教習所に対しましては、教習の適正な水準が保たれますように、教習指導員の資質の向上を図るために講習というものを行っておりますが、こういったものをより実践的なものとする、あるいはその講習の実を上げるために受講単位の少数化を図る、そういったことを行っております。

 加えまして、教習所卒業者の初心運転者の事故率などの教習の水準に関する情報の公開ということも現在進めているところでございます。それからさらに、重大な交通事故を起こした初心運転者が卒業した教習所に対する臨時適正検査とか、あるいは定期的に行う総合試験等を通じて、教習所に対しまして必要な指導助言というのを行って、教育水準が適正に保たれるように努力をしているところでございます。

吉野委員 次に、交通安全対策ではなくて、私、政策という言葉を使っていきたいのですけれども、確かに死亡者の数は減りました。これは、車の安全対策、エアバッグとかシートベルトとか、ブレーキではABSとか、そういう車の安全対策が向上したということと、救命救急体制の充実という部分もありますけれども、事故の件数、負傷者数、これはふえています。ということは、いわゆる交通安全政策がまだまだ不十分だということだと思います。

 ちなみにイギリスが一番死亡事故が少ない。件数よりも、これは一九九九年のデータですけれども、十万人当たり、イギリスは六人、日本は八・二人です。一番多いのは韓国で二十三・二人になっております。また、自動車一万台当たりの死亡者数、これは一九九八年の資料ですけれども、やはりイギリスが少なくて一万台当たり一・二七人、日本が一・四〇です。韓国は八・〇三。

 このように、日本、韓国、イギリス、この三つの国を比較してもかなりの差がございます。これは、やはり交通政策についての考え方というものが国によってまちまちだから起こると思いますけれども、その辺、全般的な交通政策をどう考えているか、お尋ねをしたいと思います。

坂東政府参考人 事故発生要因というものはさまざまなことが考えられると思いますが、やはり道路交通を構成いたします人、それから車両、さらには交通状況等の交通上のさまざまな要因というのが複雑に絡み合って発生するのではないかというふうに考えておりますが、先ほども法務省の刑事局長からも御答弁がございましたように、交通戦争と言われた昭和四十年ごろから、政府としてもやはり総合的な交通安全対策を推進しなきゃいけないということで、関係省庁あるいは関係者、関係機関、自治体等が力を合わせていろいろな諸対策、交通安全対策をとってきたというところでございます。

 その結果、交通死亡事故というものは、増減はございましたけれども、最近は減少傾向にある。ただ一方、交通事故発生件数あるいは負傷者数というものは、あるいは自動車台数がふえているとかあるいは運転免許保持者数が増加しているとかいったことに原因があるのかもわかりませんけれども、最近はやはり増加しているということでございますので、私ども警察におきましても、こういった状況にかんがみまして、政府において決めていただきました第七次交通安全基本計画、これに沿って関係者等とも連携をしながら交通安全諸対策というものを進めていきたいと思っております。

 それから、先ほど若干答弁に誤りがございましたので、修正をさせていただきたいと思います。

 自動車教習所の水準を保つためにどうだというお尋ねがございまして、重大な交通事故を起こした場合には、その起こした初心運転者が卒業した教習所に対して臨時適正検査を行っているというふうに答弁いたしましたが、これは臨時検査の誤りでございますので、訂正させていただきます。

吉野委員 いろいろ伺ってまいりましたけれども、今回の法改正で本当に抑止力が働くのか、そして、森山大臣として交通事故防止対策に対してどんな所見を持っているのか、お伺いしたいと思います。

森山国務大臣 交通事故の抑制のためにはいろいろな方法を総動員してやらなければいけないというふうに思っておりますが、交通に関する行政上の規制、制裁を初め道路及び交通安全施設の整備、交通安全教育、その他各種の行政的施策の充実を図るとともに、刑事的制裁の面におきましても、重大な事案や悪質な事案に対しては厳正に対処することが重要であるというふうに考えます。

 このたびの改正によって、危険運転致死傷罪の新設は、近時少なからず発生しております故意の危険な運転行為による死傷事犯に対しまして、それにふさわしい重い処罰を可能とするものでございます。現に被害を受けた方々からの求めも大変強く、多数の方の署名を集めた陳情などもたびたびちょうだいしてまいったところでございます。悪質、危険な運転行為を行う者に対する一般的な予防効果が期待できるかと思うわけでございます。

 また、刑の免除規定の新設は、事案の情状に応じたきめ細かな事件処理を行うための基本的な指針を示すとともに、処罰を要しない事案における捜査の効率化を図り、それによって生じた余力を他の真に罰すべき事犯に振り向けまして、もって全体として交通事犯の減少、撲滅に資するものと言えるかと思います。

 このように、今回の刑法の改正は、事案の実態に即した処罰と科刑を実現いたしまして、もって交通事犯の抑止に資するという大きな意義があるかと考えます。

吉野委員 軽微な事故は刑の免除をするという規定が今回盛り込まれております。

 聞くところによりますれば、被害者そして遺族の方々からは、刑の免除というのは反対だという声も伺うわけでありますけれども、遺族の方、被害者の方々に対して、この条項を理解させるためにどういう配慮をなさっているのか、そして行政罰、いわゆる行政処分は刑の免除を受けた場合はどうなるのか、その辺も含めて最後にお尋ねしたいと思います。

古田政府参考人 刑の裁量的免除規定につきましては、御指摘のとおり、被害者の方々の中から、この規定が設けられると交通事故を誘発することにならないか、あるいは不起訴になる範囲が広がるのではないかというふうな懸念、あるいは、捜査が丁寧に行われず、被害者の声が無視されることにならないかというような御心配などを伺っているわけでございます。

 しかしながら、この規定は、単に軽いということだけで一律に刑を免除することができるようにするということではございません。あくまで、その過失の態様でありますとか交通法規違反の有無、それから本人が反省しているかどうか、被害者の方がどういうふうにお考えになっているか、そういうようなことを総合的に考慮いたしまして、情状がいい、積極的にいい場合ということですけれども、そういうような場合について適用が可能となるものでございます。

 したがいまして、この点につきましては、情状に関してもその的確な捜査をするということは当然でありまして、その際に、被害者の方々の処罰感情等も十分に考慮する。これによって、先ほど大臣から申し上げましたとおり、きめ細かい捜査をするとともに、真にきちっとした処罰が必要なものについての捜査をさらに充実させるということにも資するわけでございまして、全体として交通事犯の取り締まりをより適正なものにすることに資するという趣旨でございますので、その点について、いろいろな形で御理解を得るように努めているところでございます。

坂東政府参考人 今回の刑法改正案で、傷害が軽いときは情状によりその刑を免除することができるといったような改正案と、免許の取り消しとか免許の停止とかいった行政処分との関係いかんというお尋ねでございます。

 その行為に基づいた行政処分につきましては、これまでと同様でございまして、将来における道路交通上の危険を防止する必要があるというときには的確に行われるべきものというように考えているところでございます。

吉野委員 ありがとうございました。

保利委員長 次に、漆原良夫君。

漆原委員 公明党の漆原でございます。

 まず大臣にお伺いしますが、今回、危険運転致死傷罪が新設をされた経緯についてお尋ねしたいと思います。

森山国務大臣 近時、飲酒運転や著しい高速度運転などの悪質かつ危険な自動車の運転行為による死傷事犯が少なからず発生している状況にございます。

 これまではこのような事犯につきまして、一般には、不注意な運転行為によるものとして業務上過失致死傷罪により処罰されてまいりましたが、これらの事犯の悪質性や重大性に的確に対応するものではなく、被害者やその遺族を初め広く国民の間にも、その刑が軽過ぎるなどとして罰則の整備を求める声が高まってまいりました。

 このような状況を踏まえ、自動車運転による死傷事件に対しまして、事案の実態に即した適切な処罰を可能にするための法整備といたしまして、刑法に危険運転致死傷罪を新設することといたしたものでございます。

漆原委員 続いて、この危険運転致死傷罪、これは刑法の二十七章「傷害の罪」の中に今回入っております。第二十八章「過失傷害の罪」の中に入れなかった理由についてお尋ねしたいと思います。

古田政府参考人 ただいま委員御指摘の刑法第二十八章は、これはあくまで過失と評価される事犯についての処罰規定を設けたものでございます。

 それで、今回御提案申し上げておりますいわゆる危険運転は、その危険運転自体、これは故意にやっていることでございまして、それの人身に対する影響というふうなことを考えますと、むしろこれは暴行に相当する、あるいはそれに準ずるような行為としてとらえるべきことが妥当であろう。

 そうなりますと、暴行の結果的加重犯としての傷害などを設けてある傷害の章に規定を設けることが適当であると考えたということでございます。

漆原委員 本罪の保護法益はどんなものが考えられるか、お答えいただきたいと思います。

古田政府参考人 本罪につきましては、先ほど申し上げましたとおり、暴行あるいは暴行に準ずるような行為という把握の仕方でございまして、人の生命、身体の安全を保護法益とするものと考えております。

漆原委員 保護法益が人の生命、身体ということだとすると、本罪は、人の生命、身体についての故意がないという前提なわけですね。だから、そういう意味ではこれは過失の部類に入るのじゃないか、こうも思うのですが、いかがでしょうか。

古田政府参考人 もとより、傷害あるいは極端な場合は殺意ですけれども、そういう故意はないことにはなります。

 しかしながら、こういう危険な運転行為は、やはり先ほども申し上げましたように暴行として考え、あるいはそれに準ずるものとして評価してよろしいのではないか。そうすると、暴行に相当するあるいはこれに準ずる行為自体は故意で行っているわけでございまして、傷害の罪の前提となる暴行、これも故意犯を前提としているわけで、そういう暴行に準ずるような行為についての故意があれば、故意犯としてとらえるということには特段の問題はないと考えております。

漆原委員 そうすると、本罪が故意犯だとすると、致死傷については結果的加重犯となる、こういうふうに考えていいのでしょうか。

古田政府参考人 前提となる行為自体を直接刑法上処罰しているわけではございませんので、従来の結果的加重犯とはやや違いますけれども、構造としては、御指摘のとおり結果的加重犯と同様のものでございます。

漆原委員 今の刑法典の中に、基本となる行為について処罰していない罪で結果的加重犯となるような犯罪類型はあるのですか。それとも今回が初めてでしょうか。

古田政府参考人 私の承知しております限りは、刑法典の中で前提行為自体についての処罰規定を設けないのは今回が初めてだと考えております。

漆原委員 そうすると、前提行為となる危険運転、二百八条の二の一項、二項とあるんですが、本条各項について前提となる行為は一体何罪に当たるのか、それをお示しいただきたいと思います。

古田政府参考人 今回の危険運転致死傷罪の前提となる犯罪行為は、これは主として道路交通法に実際はあるわけでございますが、酒酔い運転、あるいは薬物の影響下の運転、あるいは速度違反、無免許運転、それから、ケースによっていろいろな場合がありますけれども、追い越し方法違反でありますとか安全運転義務違反等々の罪がこれらの前提行為に該当することになろうかと存じます。

漆原委員 そうすると、この危険運転致死傷罪は、構造として、道路交通法違反の中で最も危険が多いと思われる行為を類型的に絞って刑法典に載っけて結果的加重犯とした、こういうふうに理解していいんでしょうか。

古田政府参考人 酒酔い運転とか信号無視でありますとか、そういういわゆる道路交通法違反の中で特に重い類型を絞り込んで、そういうのを前提行為として刑法の中に取り込んだというふうなことになるわけで、実質的には委員御指摘のように考えていただいてよろしかろうかと思っております。

漆原委員 ほかの法律を前提行為としたという、初めてのことなので私どももこの法案を読んで非常に戸惑いを感じるので、本条を各項ごとに質問させていただきたいんです。

 まず言葉の問題なんですが、第一項は「走行させ」となっているんですね。第二項は「運転し」となっているんですね。これはどのような差異があるんでしょうか。

古田政府参考人 ただいまのお尋ねにお答えする前に先ほどの点について若干補足的に申し上げますと、刑法上は道路交通法の各罪をそのまま持ってきているわけではございません。しかし、そこに掲げられている行為は、道路交通法に当てはめてみますと、先ほど申し上げたようなものの中の非常に重い類型ということになるということで御理解をいただきたいと思います。

 そこで、ただいまのお尋ねでございますが、この一項と二項での若干の言葉の使い分けがございますのは、一項は、これは全体としていわば車の走行のコントロールが非常に困難な状態、そういう運転行為を対象とするものでございまして、そういうことから、要するに、車をとにかく走らせるという意味で「走行」という言葉を用いているわけでございます。

 二項の方は、そういう車全体を走らせると申しますよりは、ある時点での車の操作自体が問題になる行為になるわけです。例えば、割り込みでありますとか、あおりでありますとか、信号無視とか。そこで、そういうある特定の運転のための行為をとらえるということから「運転」ということにしてあるということでございます。

漆原委員 先ほど、本罪が故意犯だということでございますので、まず第一項について、故意の内容について運転者はどこまで認識していることを要するのか、故意の内容についてお尋ねしたいと思います。

古田政府参考人 第一項の前段は、これはアルコール等の影響により正常な運転が困難な状態というのが要件になっておりまして、そこでそういうことの認識が必要なわけでございますが、その内容としては、アルコール等の影響によって道路あるいは交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な事態になっているという認識ということになります。

 ただ、そういう評価まで必要かと申しますと、それは別でございまして、例えば目がかすんでちらちら前方がよく見えなくなっているとか、そういうような困難な状態に当たる事実の認識があれば、故意としては十分であろうと考えております。

 それから、後段の高速度運転につきましては、もちろんこれは速度が速過ぎるために車のコントロールが非常に難しいという状態を意味しているわけですが、したがって、そういうことの認識が必要なわけですけれども、それは速度と同時に、カーブが曲がり切れないおそれを感じているとか、あるいはちょっとした運転のミスによってすぐぶつかってしまう可能性があるとか、そういうおそれを感じているような状態というようなことが基本的には本人の認識の重要な部分になろうかと思っております。(漆原委員「一番最後、もう一つ、進行を制御する技能」と呼ぶ)

 この進行の制御というのは、先ほど申し上げましたように、車の走行全体をコントロールすることが困難ということをあらわすためにこういう言葉を使っているわけで、そういう意味で、先ほど申し上げた酒酔い運転の場合であれば、どうも目がかすんでよく見えなくなっている、あるいは高速度運転の場合であるならば、カーブが曲がり切れないおそれがある、そういうふうなことを認識している、そういう状態のことをいうということでございます。

漆原委員 そこで、「正常な運転が困難な状態」ということは具体的にどのようなことなんでしょうか。

古田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、車両を道路あるいは交通の状況に従って的確に走行させることが困難な状態ということを意味しているということでございます。

漆原委員 いや、それは条文を読んだだけのことであって、表現として抽象的なんですね。正常な運転が困難な状態、認識する必要、故意の内容ですから、これは認識しなきゃなりませんので、どんな状況を認識すればこれに当たるのか、これはしっかり答弁していただかないと今後のこの法律の適用に困ると思うんですが、できたら具体的な事例を挙げて解釈の基準を示していただきたいと思います。

古田政府参考人 先ほど若干申し上げたところでございますけれども、例えば酒酔い運転であるならば、その影響のためにどうも前方がよく注視できなくなっている、見えなくなっている、あるいはふらふら蛇行運転を時々するという状態になっているというような、要するに、酒酔い運転で車の運転がまともにできないような兆候をあらわしているいろいろな事実、これはいろいろあると思いますけれども、そういう事実を認識しているということでございます。

漆原委員 第二項についてお尋ねしますが、第二項は「重大な交通の危険を生じさせる速度」、こうなっておりますが、この故意の内容として重大な交通の危険も認識する必要があると思いますが、いかがでしょうか。もう一つは、どの程度の認識が必要なのか。お答えいただきたいと思います。

古田政府参考人 「重大な交通の危険を生じさせる速度」と申しますのは、それによって衝突等の事故を起こした場合に、その事故が相当程度の大きな事故になる、そういう速度ということを意味しているわけで、具体的には、例えば、このスピードでぶつかれば、車は相当大きな損傷を生じ、当然相手もけがをするであろうとか、そういうような速度ということになるわけでございます。

 それを具体的にどういう話かといいますと、これはかなりその場面などの影響もあろうかとは思いますけれども、一般的に言って、例えば車がぶつかったときにどの程度の事故が起きるのか。これは類型的な判断になるわけですが、徐行程度のものではそういうことにはならないだろう。しかし、制限速度未満でありましても、例えば五十キロの制限速度のところを四十キロで走っていけば、四十キロで衝突すれば相当大きな事故になるということは、これはもう常識的にわかるわけでございます。

 そういうことで、やはり、この速度でぶつかれば事故として相当大きな事故になり得るというのが、これは常識的、日常的な判断でございますけれども、そういうことが基準になるということでございます。

漆原委員 特にこの第二項の危険な運転の場合は、現在の車社会、台数だとか高速性から考えますと、一台の車、一台の危険運転が何十人の人の生命、身体を奪う結果になることが十分考えられますね。

 では、そこで、本項所定の行為であっても人の死傷という結果がなければ、基本的には本条で処罰はできない。例えば往来妨害罪、往来危険罪は、往来の妨害を生じさせたこと、往来の危険を生じさせたことをもって処罰の対象としていますね。本項所定のこの危険運転の場合は、往来妨害罪あるいは往来危険罪を改正して、死傷の結果が生じなくても当該危険運転だけを処罰する、もちろん死傷の場合には刑の加重をするわけですけれども、そういうふうな往来妨害、往来危険を改正して対処する方法もあったのではないのかなというふうに思ったりするんですが、今改正の経過の中でそのような議論はなされなかったのかどうか、お尋ねしたいと思います。

古田政府参考人 確かに、御指摘のように、何らかの往来危険みたいな構成要件を新設するということができないかということも検討したことは事実でございます。

 ただ、御案内のとおり、現在の往来危険の罪は、これはかなり方法が限定されている。しかも、例えば鉄道でありますとかあるいは船舶とか、言ってみれば交通機関自体が対象になっている、そういう構成になっているわけでございます。

 それと、そういうようなことを考えますと、今回のケースは、実は手段、方法というのが類型化が今の往来危険罪に比べると非常に難しい、より絞り込まなければならない面があるということと、交通機関であるそのもの自体が危険なものになるという側面を持っているわけで、そういうことから、今の往来危険罪の中で対応するのには、やはりいろいろな場面がありますので、若干困難があるのではないか。そういうことから、むしろやはり暴行に準ずるような、そちらの面から考えることが相当ではないかという結論となった次第です。

漆原委員 続いて、刑の裁量的免除についてお伺いしたいんですが、今回、刑の裁量的免除の規定を新設した理由を述べていただきたいと思います。

森山国務大臣 今日、自動車が広く普及しておりまして、自動車運転による業務上過失傷害事犯は、多くの国民がその日常生活の過程でわずかな不注意により犯しかねない状況でございます。また、現に軽傷事犯の中には、到底悪質とは言えないようなわずかな不注意によって起こる事故であって、本人も十分に反省しており、被害者も犯人の処罰を望んでいないなどのケースがございます。その情状に照らして刑の言い渡しを要しないものも少なくございませんので、それらの事案のすべてを処罰することは適当ではないと考えられるわけでございます。

 そこで、自動車運転に係る業務上過失傷害事犯のうち軽い傷害にとどまるものについては、情状によっては刑の言い渡しをしないことができる旨を明らかにすることといたしたものでございます。

漆原委員 局長にお尋ねしますが、検察官の起訴便宜主義のもとでは、現実的にはほとんどの軽い事件が起訴猶予処分になっているというのが実情だと思うんですね。調べてみましたら、平成十一年、起訴になったのは一二%、八八%のドライバーが不起訴処分。これは平成十二年も同じ、一一・四%が起訴になっておりまして、大体八九%近くの者がふるいにかけられて、裁判になっておりません。

 今、森山法務大臣から説明がございました。よくわかります。しかし、現実的には、このように八八%の被疑者が不起訴になっているわけですから、刑の免除を受けるような微罪の事案が裁判になるということは考えられない。にもかかわらず、なぜこういうのを今設けるのか。その辺はいかがでしょうか。

古田政府参考人 御指摘のとおり、検察官の訴追裁量によって本当に軽微な事件については起訴をしないということは可能なわけで、実際にもそういうふうに運用されているわけでございます。

 しかしながら、その一方で、一般的に単に軽いというだけで、ではこれが起訴猶予が相当かということになると、これはまた別な問題がございます。要するに情状というのをやはり十分考慮する必要があるわけでございまして、そういう点から、その辺を刑法上明示するということには意義があると考えられることが第一点。

 それと、確かにおっしゃるとおり、裁判になるということはほとんどないことではございますけれども、こういうふうな規定を設けることによりまして、先ほどもちょっと申し上げたところではございますが、警察のいろいろな事件処理、これは特に送致手続とか、そういうようなこともひっくるめて、本当に処罰の必要がないものにつきましてはこれをできるだけ合理化し、その一方で、きちっとした対応が必要なものについてはそれについて十分やっていく体制を整える。そういうことによって、全体として交通事犯の取り締まり、交通事故の捜査の姿というものを、本当に処罰が必要なものに集中ができるようにするというようなこともあわせて考えているということでございます。

漆原委員 捜査の合理化というふうなお言葉でございましたが、警察段階での捜査の合理化というのは、具体的にどんなことをお考えなんでしょうか。

古田政府参考人 これはいろいろなケースがあろうかと思うわけで、すべてについて申し上げるのは難しいかと思いますが、一つの例として考えられますことは、例えば送致書類、これを本当に必要最小限度のものに限る。この書類の作成、特に写真をつけた実況見分調書の作成とか、こういうふうなことはかなり警察の実質的な負担になっているわけでございまして、そういうようなものにつきまして、もちろん後で必要があればそれはつくっていただくにいたしましても、ある一定の類型に当たるようなものにつきましては、そこら辺を本当に必要最小限度のものにすることが可能になりますとか、しやすくなると申しますか、あるいは、いろいろな捜査にしましても、まず事故原因が何かということだけきっちり押さえていただいて、当然ながら被害感情とかそういうこともあわせて御捜査をいただく。そういういわば本当にコアになる部分の捜査をまずやっていただくということで、言ってみれば処理が可能になるケースというのも相当たくさんあり得るので、そういうことについて、そういう事案についての捜査を必要最小限度のものにしていくということがしやすくなるというふうなことが考えられると思います。

漆原委員 刑訴法の一部を改正する法律案についてお尋ねしますが、現在の刑訴法百九十七条二項の照会がありますね、捜査の照会。それから、本条の照会、これは報告を求められた団体等は報告すべき義務を負うことになっています。個人の情報の保護だとかプライバシーの保護という観点からいうと、照会の際には照会を求める理由だとか必要性が明確になっていなきゃならぬのではないかなと思っておりますが、現在行われている刑訴法百九十七条二項の照会は、実務上どのようになされているのか。これに関しては刑訴法規則にはありませんので、実務上その辺のプライバシーの保護についてはどんなふうな取り扱いをなされているのか、お聞きしたいと思います。

古田政府参考人 捜査関係事項照会でどういうように照会するかということでございますけれども、これは今委員御指摘にもありましたように、一つにはプライバシーの問題、それからもう一つは、捜査機関がどういうことをターゲットに捜査をしているのかというようなことがあらかじめわかりますと非常にぐあいの悪い事態も起こる。そういうことから、基本的には、捜査関係事項照会では、捜査のため必要があるということで御照会を申し上げているという実情でございます。

漆原委員 本条の照会手続の場合も、ぜひその辺、プライバシーの保護等の観点から御配慮いただきたいということをお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

保利委員長 次に、細川律夫君。

細川委員 民主党の細川でございます。まず、法案の細かいところに入る前に、大臣にお聞きをいたします。

 最近、犯罪そのものが大変多くなってきているような気がいたします。しかも、その犯罪というのが悪質な犯罪が多くなってきている、そういうように感じます。毎日のマスコミにも凶悪な犯罪が報道されない日はないほど犯罪が多くなってきております。日本という国は治安のよい国だと、これは世界からも評価され、私たち日本人もそのことを誇りとしてきたと思うのです。ところが、犯罪が大変ふえてきております。

 この五年間をとりましても、殺人事件が、平成八年で千五百六十一件が平成十二年では千八百七十一件、三百十件もふえております。強盗に至っては、平成八年の三千九件が十二年では五千百四十七件、この五年間で二千百三十八件もふえております。

 一体どうして日本はこういうような治安の悪い国になったのか、しかも凶悪犯罪が多い国になったのか。日本の国の行く末が大変心配になるわけでございます。なぜこういう社会になってきているのか、その原因を考えて、そしてその対策を早くきちっと打たないと大変な事態になるんではないかというふうに思います。今のこの社会というのが、余りにも自分だけを考えて他人のことを考えないといいますか、あるいは、効率のみを追求するような社会になっておりまして、汗を流して一生懸命働くという勤労精神などもだんだん薄くなってきているのではないかというような心配もございます。

 そこで、大臣にお聞きしますけれども、どうして、こういうような犯罪が、しかも凶悪犯罪がふえて治安が悪くなってきたのか、どういうふうにそのことを大臣は考えておられるのか、そしてまた、これに対してどういうような対策を考えておられるのか、まずお聞かせ願いたいと思います。

森山国務大臣 先生おっしゃいましたように、我が国はかつて世界に誇ることができる治安のよい社会でございまして、今も国際的に比較をすれば特に悪いという方ではなく、むしろいい方ではないかと思っておりますが、しかし、以前に比べると、先生おっしゃいましたような傾向が甚だ顕著に見えるという状況でございまして、最近では、これまで考えられなかった動機や態様による事件を含め、誘拐殺人とか保険金目的殺人、被害者が多数に及ぶ殺人など、国民の生活の平穏を脅かす凶悪重大事犯が後を絶たないというのが現実でございます。また、来日外国人による犯罪が増加傾向にございまして、薬物、銃器の大量密輸入事件等の組織的な犯罪も多発している状況でございます。

 これに対しまして、犯罪の認知件数の増加に検挙が追いつかない、犯罪の検挙率が低下するという傾向にもございまして、このようなことから、最近は治安の悪化が懸念される状況にありまして、国民の多くが強い不安を抱いているということが非常に心配されます。

 私といたしましては、今、国民が安心して暮らせる安全な社会が必要であるということを強く意識しておりまして、その実現のために微力を尽くさなければならないと考えているわけでございますが、原因はなぜかというお問いでございますけれども、一つだけではなくていろいろな理由が重なっているんではないかというふうに思います。

 先生が御指摘のように、国民の意識が変わってきた、特に若い人たちの規範意識が薄れてきたというようなことは、いろいろな意識調査の結果からもうかがわれるところでもございます。そのほかに、例えばさっきも申しました、外国人の来日する人が多く、不法入国者、不法就労者等も少なくございませんで、その中には普通の日本人が今まで考えつかなかったようなやり方で犯罪を犯すという人も出てきているわけでございまして、やはり、これも一種の国際化、グローバル化のデメリットの方かなと思いますが、昔のように島国になってだれともつき合わないというわけにもまいりませんし、このような社会の情勢の変化に応じて、それに対する対応策を考えていかなければいけないというふうに思っているところでございます。

細川委員 治安が悪くなったこと、凶悪犯罪がふえたことに対する原因それから対策、私は、その対策が非常にこれから大事だというふうに思いますけれども、その点についてはちょっとお聞きになれなかったんですけれども、やはり、国民はまず第一に安心して生活できるといいますか、安心して暮らしができる、これが何をおいてもまず最初に大事なことだというふうに思いますので、ぜひ、法の秩序、社会秩序をつかさどる大臣としては、積極的にひとつよろしくお願いしたいというふうに思います。

 そこで、今度のこの悪質、危険な自動車運転による致死傷罪についての位置づけといいますか、これについてちょっとお聞きをいたします。

 今回の危険、悪質な自動車の運転による致死傷事犯に対しては、刑法の一部改正ということで提案をされました。これについては、先ほども漆原委員の方からちょっと疑問も提起をされたわけです。私も、この危険、悪質な運転行為による致死傷事件にどのように法律で対応していったらいいのか、これは三つ考えられると思います。

 一つは、政府の提案のような刑法の一部改正があると思います。もう一つは、道路交通法の改正、この方法も一つあると思います。それから、そのいずれでもなくて特別法で、特に悪質、危険な運転行為、これを処罰する法律をつくる、こういう三つの方法があると思うんです。

 それぞれに一長一短はあるかと思うんですけれども、聞くところによりますと、警察庁の方は、道交法の改正で、そこに今回のような改正の内容を組み入れての道交法改正案としての試案などもつくられておられました。そうではなくて、政府の方は、今回刑法の一部改正。私ども民主党は、いわゆる特別法がいいんではないか、こういうことで、この前の通常国会に提案したんですけれども、特別法の形式でつくってみました。

 そこでお聞きをするわけなんですけれども、道路交通法というのは、これは行為が危険であるかどうか、行為そのものを規制するというのが法体系になっておりますから、いわゆる結果の致死傷に対してのあれを入れていくということは、これは法体系からするとちょっとおかしいんではないかというようにも思いますし、それから、刑法の中に入れるということは、刑法は基本法でありますから、特別なものをここに入れるということが果たしてどうかという問題がありますし、いわゆる悪質で危険な運転行為というふうにいえば、車の場合もありますし、また、電車の場合もあるだろうし、飛行機の場合だって考えられるわけですね。それを特別に自動車だけをいわゆる一般法である刑法の中に入れることが果たしていいのだろうかとか、こういうことを考えますと、私どもは、特に道路交通法の中の悪質あるいは危険な行為だけを類型化して特別法としてつくるのがいいんではないか、こういうふうに考えたわけなんですけれども、それが今回、刑法の一部改正、こういうことで提案をされておりますけれども、その点について、どうしてそういうふうになったのか、お聞かせをいただきたいと思います。

中川大臣政務官 お答え申し上げます。

 確かに、ただいま委員が説明したように三通りの方法が考えられると思いますが、今回、本罪を刑法の改正で取り上げた理由について御説明申し上げたいと思います。

 本罪は、人の死傷の結果を生じさせる実質的な危険性を有する自動車の運転行為を故意に行い、その結果人を死傷させた者を処罰しようとするものであります。人の生命、身体の安全を保護法益とし、現行刑法の暴行の結果加重犯としての傷害、傷害致死罪に準ずる性格を有する犯罪だと思います。特に、今日における自動車の広範な普及の実情等を考慮すれば、国民の日常生活に極めて密接な犯罪であると認められます。

 本罪は、このように個人の生命、身体を保護法益とする基本的、一般的な犯罪であるとともに、国民の日常生活に密接なものであると考え、刑事の基本法である刑法に規定することとしたわけであります。

 よろしく御理解いただきたいと思います。

細川委員 いろいろ議論はありますけれども、先に進ませていただきます。

 そこで、今回、この臨時国会にこの法案が提案をされたわけですけれども、民主党が、この前の通常国会に、危険な運転により人を死傷させる行為の処罰に関する法律案というのを出して、審議をしていただいたんですけれども、こういう法案が出ていたことは大臣は御存じだったでしょうか。

森山国務大臣 民主党御提案の法案があったことは存じております。

細川委員 この民主党の法律案も、立法の趣旨といいますか考え方は大体同じで、内容的にも似ているところが多数あるわけなんです。私どもは、できるだけ早くこの法案も成立をさせたいということで、修正にも応じるし、ぜひ賛成していただいて可決をいただけるように、こういうお願いもしたわけなんですけれども、結局、否決ということで、通常国会では成立の日の目を見なかったわけなんです。

 そこで、その当時、私どもが言いましたのは、政府に対しても、なぜこういう法律案を早く出さないのか、国民の皆さんからいろいろな強い要望も来ているではないか、ぜひということを、私どももそういうことでお願いもいたしました。しかし、おくれたんです、今回の臨時国会になったわけなんです。

 そこで、聞くところによりますと、先ほども申し上げましたように、警察庁の方では、道路交通法改正でいいのではないか、しかし、法務省の方としては、刑法の一部改正でいこうと。こういうことで、そこの調整で手間取って提案がおくれたというように私どもは聞き及び、理解をしているんですけれども、私は、国民の皆さんの強い願いが、省庁の縦割りの弊害で、結局法案としての成立が遅くなるような結果になったんではないかというふうに思いますけれども、今国会に提案をしたその経過を御説明いただきたいと思います。

森山国務大臣 もっと早い法整備が必要であったという御指摘を受けまして、まことに恐縮に存じます。

 もし半年、一年早くこの法律が出て、成立しておりましたならば、また何人かの方のお命が助かったかもしれないということを考えますと、まことに申しわけないような気がいたしますが、一方、この法律が、実際に実施をいたしまして、円滑に動いていかなければなりませんので、関係の人たちの意見の調整ということも大変大事なことでございますので、そのために、あるいはそのほかにもいろいろな理由で多少時間がかかったのは、本当に残念でございますが、現実であったかというふうに思います。

 その間にも、交通事故の犠牲者の方々、被害者の方、遺族の方、そういう方々から非常に御熱心な御要請がございまして、私も何度か、何万人という署名の名簿をちょうだいしたり、実情のお話を伺ったりということがございまして、早くしなければという気持ちに駆り立てられたようなわけでございます。

 そのような一般の国民の要望、社会の認識、そして国民の日常生活に密接にかかわる問題であるということに配慮いたしまして、私どもといたしましては、可能な限り速やかに検討を加えたということでございまして、今回御提案することになったわけでございまして、ぜひ御理解をいただきたいと存じます。

細川委員 これからは、常に関係官庁、関係者等との連絡も密にしていただきまして、やはり国民の要望というか国民の願いというのを早急に法律化していくように、ぜひそういうふうに努めていただきたいと御要望を申し上げておきたいと思います。

 次に、それでは具体的な各論について質問をいたします。

 まず、法定刑の問題でございますけれども、この法案によりますと、危険運転によって人を死亡させた場合は一年以上の有期懲役ということになっております。一年以上の有期懲役ということですから、最高は十五年ということになります。この点は、傷害致死は二年以上ということになっていますから、その二年以上を一年低くして規定をされている、こういうことになろうかと思いますが、この十五年というのが果たして妥当かどうかということになってくると思います。

 外国の立法例を見ましても、故意犯以外で十五年というのはほとんどないのでありまして、イギリスでも最高刑は十年ということになっております。しかも、最高刑が十年で、では実際に判決はどうかというと、今までの最高が懲役の八年、そういうふうな話も聞いているところでございます。イギリス以外のヨーロッパの主要国は、さらに法定刑は低いということになっております。

 被害者の人たちあるいは遺族の方々の重罰化を望むその気持ちも十分によくわかるわけですけれども、あえて十五年という大変重い法定刑を規定したその根拠についてお伺いをいたします。

古田政府参考人 本罪の法定刑につきましては、いろいろな御議論もあろうかと存じますが、私どもといたしましては、今の委員のお言葉の中にもあったわけでございますが、要するに、危険な運転行為が暴行あるいはこれに準ずるような行為である、そうすると、その結果人を死亡させた場合、暴行であれば傷害致死ということで二年以上十五年ということになるわけでございまして、このような危険運転の場合に、そういう暴行に現に当たるようなケースというのも含まれるわけでございます。そういうことからいたしますと、やはり上限は傷害致死に合わせるということが適当であろうということが一点でございます。

 それからもう一つは、自動車事故の特徴として、一回の事故で多数の方がお亡くなりになるというようなこともあるわけでございまして、そういうことも考慮いたしますと、やはり法定刑は有期の限度まで定めておくというのが必要ではなかろうかと考えているわけでございます。

 外国の立法例、いろいろございますけれども、アメリカのミシガン州などにつきましては、飲酒運転致死罪が十五年以下の自由刑となっているという例もございます。そういうことから、日本の刑罰の体系といたしまして、今回の法定刑が特に重いというふうに私どもとしては考えていないところでございます。

細川委員 今、外国の例としてアメリカのミシガン州の例を出して、無免許運転致死罪が十五年以下の自由刑だ、こういうふうに言われたわけなんですけれども、このミシガン州の法律というのは、わけがわからぬといいますか、例えば故殺、故意に殺した場合ですね、車で殺したんだと思いますが、これも同じ十五年以下の自由刑になっているわけですね。本来、本質的な過失ですね、無免許運転致死罪が十五年で、故殺も十五年以下の自由刑というのは、どうもちょっと理解できないんですけれども、特別なミシガン州の例を出して、十五年が適当だというのはちょっと私は解せないんですけれども、世界の立法例からいくと、通常そんなに高くはない。最大十年ぐらいが適当な上限ではないかというふうに私どもは考えたんですけれども、それはいろいろ見解の相違でありましょうから、もう後は申しませんけれども、非常に刑が重いということで、これでは、運用上は非常にまた慎重にしていただかなければいけないというようなこともここで要望をさせていただきたいと思います。

 次に、この危険運転致死傷罪の対象が四輪以上の自動車ということについてお聞きしたいと思いましたけれども、これは既に最初の委員の方が質問しましたので、第二項の後段についてちょっとお聞きしたいと思います。その後段には、「その進行を制御することが困難な高速度で」こういうふうな規定になっておりまして、悪質なスピードに起因する事故で人を死傷させる場合を規定いたしております。

 この法案は、先ほどもお話ししましたように、十五年の懲役も予想される重罰規定でありますから、それなりのきちんとした根拠が必要でありまして、また、厳格に解釈もされなければいけないと思いますけれども、今言いました、「その進行を制御することが困難な高速度」というのはどれぐらいのスピードを言うのか、お聞きをしたいと思います。

 ちなみに、前回の通常国会におきまして道路交通法の改正がございました。その道路交通法の改正は、悪質、危険な運転行為の罰則の引き上げということが行われたわけですけれども、このスピード違反、速度超過につきましては改正はありませんで、懲役六月以下という罰則でございます。このいわゆる速度超過については道路交通法では非常に低いんです、六月以下ということで。酒酔いの場合は三年以下と大変重いものになっておりますけれども、薬物なんかじゃない過労運転でも一年以下と結構重いんです、改正されまして。それで、スピード違反は改正されずに六月以下、こうなっているわけであります。

 そこで、今回、「その進行を制御することが困難な高速度」、こういうふうなことで、いわゆる悪質、危険な運転行為、こういう類型で規定をしたわけですから、道路交通法とはちょっと食い違うわけなんですけれども、いわゆるここで言う「その進行を制御することが困難な高速度」というのはどういうことを言うのか、私が申し上げた道路交通法との関係などについてはどのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

古田政府参考人 「進行を制御することが困難」と申しますのは、要するに、車の走行をコントロールすることが困難な状態ということでございまして、そういうふうな高速度、これは、具体的には、非常に速度が速いために道路の状況に応じて進行することが困難なもの、例えば、カーブが到底曲がり切れないようなスピードでありますとか、あるいは、ほんのわずかのことで道路の外に飛び出してしまう可能性が非常に高いようなスピード。これは、道路の状況によってもいろいろ変わってくるわけでございまして、例えば、先ほど申し上げましたようなカーブの場合とかであれば、その速度というのもそれほど高くない場合もあり得ますでしょうし、逆に、一本道の高速道路みたいな場合であれば、相当なスピードにならないと暴走ということにもならない。そういうふうな道路状況に応じた判断ということになるわけですが、いずれにいたしましても、要するに、道路状況に応じて車をコントロールして走らせるということが大変難しい、そういうような高速度ということで御理解をいただきたいと存じます。(細川委員「道交法との関係は」と呼ぶ)失礼いたしました。

 これは、道路交通法上のいろいろな違反行為に当然当たるのが、実質的にはそういうことになっていくわけでございますが、基本的な考え方としては、他の走行車両あるいは歩行者等に対する、言ってみれば攻撃、加害行為になり得るような、そういう危ない運転行為ということを前提として考えておりますので、そういう観点から危険な行為として何を取り上げるべきかということで、異常な高速度というのも、それを除外する理由はないというか、やはり当然含ませるべきであろう、そういうふうに考えたということでございます。

細川委員 構成要件としての「制御することが困難な高速度」というのは、道路状況によって制御できない速度というようなことで、果たして厳密な解釈になるかどうか、ちょっと心配でありますけれども、先ほども申し上げましたように、刑を重くする、厳罰にするわけですから、そういう意味では、解釈については厳しくひとつお願いをしたいというふうに思うところであります。

 それから、続いて、やはり同じような点なんですけれども、赤色の信号またはこれに相当する信号を殊さら無視という表現の構成要件になっております。これは、第二項後段の「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。」と。

 この、赤色信号またはこれに相当する信号を殊さら無視という点ですけれども、これもまたあいまいな表現ではないかというふうに思います。信号無視というのは大変危険なものではありますけれども、道路交通法上は、これは三月以上の懲役という類型になっておりまして、ほかのあれと比べますと非常に、要請が低いといいますか、危険性が低いというような評価になっております。

 そういうことですから、立法上、これだけでは危険性とかあるいは反社会性が高いとは言えないために、殊さらということを加えたんだというふうに思いますけれども、信号を無視するというのと殊さらに無視するというのとどういうふうに意味が違うんでしょうかね。私にはちょっとわからないんですけれども、これをちょっと説明をしていただきたいというふうに思います。

 これは、検察官といいますか、捜査の方の裁量が非常に幅も多過ぎるということにもなってくるでありましょうし、いろいろな疑問が出てくるところでございます。

 殊さらということが具体的にどういうようなことかということと、道路交通法上の規定で三月以下の中で赤色信号だけを危険運転にしている。三月以下の危険な運転というのは、道路交通法上ではほかにもいろいろ規定をしているわけなんです。例えば急ブレーキの禁止とか追い越し禁止。こういうのは赤色信号を無視することと同じ規定なんですから、これは同じような危険だというふうに道交法は考えているのではないかと思いますけれども、この法案では、殊さらにということを加えて、赤色信号の無視ということを要件として構成要件をつくっているんですけれども、その点について説明をお願いいたしたいと思います。

古田政府参考人 赤信号を殊さらに無視しと申しますのは、故意による赤信号の無視の中で、およそ赤色信号に従う意思がない、そういうふうな行為をいうものと考えております。

 御案内のとおり、故意にというと、赤信号であることはわかっていて、たまたまそのまま走っていったというふうなケース、これも故意犯ということにはなるわけですが、単に、言ってみれば一瞬とまり損ねてそのまま入っていってしまったとか、そういうようなことではなくて、およそ信号というものに従わない、そういう走行の仕方をするというふうなことを考えているわけでございます。

 ですから、もちろん、過失によってとまれなかった場合とか、そういうのは除かれることは当然でございますが、ひょっとしたら赤になるかもしれないなと思って変わり際で入ってしまった、そういう場合なども除かれるわけでございます。

 こういうふうな赤信号無視の形態について、その危険性は、これは実際の事故の例を見ましても、およそ信号に従う意思がなくて暴走して事故を起こしているというふうな例も間々あるわけでございまして、これも先ほど申し上げました、要するに危険な運転行為、他の車両、それを運転する人に対する攻撃というふうな目で見れば、こういうようなものもやはりその対象とするということがいろいろな実情から見ても適当であろう、そういう考えでございます。

 もちろん、ほかに赤信号の無視と同じような法定刑を持っているケースのものもあるわけでございますが、それを全部網羅しているとは申しませんけれども、その中で、物によっては、他の車両等に自由な走行を妨害する意図で著しく接近して走行する、そのことによって事故を起こしたという類型に当たる場合もあろうかと考えております。

細川委員 赤信号を無視するというのと殊さら無視をするというのと、この違いというのは、例えば暴走族なんかが全く赤信号なんかは無視して暴走する、こういうことをいうのではないんですか。

古田政府参考人 典型的にはそういうことでございます。

細川委員 そうすると、そういう暴走族でないようなもので信号を無視した場合、例えば、ふだんよくここは通るんだけれども、いつも車は通っていないから信号無視したような場合、そういう場合はどうなるんですか。殊さら無視したことになるんですか。

古田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、およそ信号に従う意思がない、ほかの車の安全に配慮しない、そういうふうなことでございますので、いろいろなケースがあろうかと思いますけれども、他者の安全というものにも十分注意して、なおかつ何らかの事情でそういう信号を無視するという事態が起こったという場合がこれに該当するということではございません。

細川委員 信号を無視するというのと殊さら無視をするというので、どういう場合を殊さら無視するというのかがどうもよくわかりませんけれども、これは多分、信号無視だけでは危険な行為ということで重罰にすることもない、あえて信号を無視する、殊さら無視するような場合が初めて危険なんだというようなことで、非常に絞りをかけているのではないかというふうに思いますので、そこは解釈上厳しい解釈になるのではないかというふうに思いますけれども、運用上もぜひそういうような解釈にしていただきたいというふうに思います。

 それから次に、刑の裁量的免除についてお聞きしますけれども、この免除の規定がこの改正で規定されたことによって、これまでの不起訴率が高まるようなことがあるんでしょうか、それとも少なくなるようなことがあるんでしょうか、それとも不起訴そのものは変わらないんでしょうか。

古田政府参考人 基本的には、軽微なといいますか、軽い傷害の結果の事件でありましても、情状の悪いものについてはこれは処罰すべきことは当然でございまして、この規定ができることによって、現状の起訴ないし起訴率に対して大きな影響はない、特にこれによって不起訴になるケースが多くなるとか、そういう事態はないと考えております。

細川委員 起訴便宜主義で、これまでも、事故を起こした運転者に対して処罰をする必要がないというふうに検察官が考えれば、これは不起訴処分にしたわけですから、あえてこの免除の規定をつくらなくても、起訴便宜主義で十分対応ができるんではないか。むしろ、こういう規定がつくられることによって安易に不起訴処分にされるんではないかというようなことが、被害者あるいは遺族、交通事故を経験した人たちの中からそういう危惧の念が出ているわけでございます。

 そしてまた、免除の規定、刑法典にある刑の免除ということも、それなりに事情があるようなもの、例えば情状によるもの、過剰防衛、過剰避難、それから、政策的なものといいますか、放火予備、殺人予備、こういうようなところ、あるいは親族間の特例、それから自白、これらが裁量的な免除であって、必要的免除も、中止未遂あるいは自首、あるいは親族間の特例、こういうふうに、罪そのものの形態から、これはもう免除した方がいい、できるんだとか、あるいは必要的に免除とか、あるいは政策的に免除にするような罪ということになっているんではないかと思いますけれども、なぜ今回のような交通事犯の中で免除が入ってくるのか。

 これは、単に捜査の便宜といいますか、そういうことでこういう免除という規定を入れたんではないか、持ってきたんではないかというふうに考えられますけれども、この点、いかがですか。

古田政府参考人 今委員御指摘のとおり、起訴便宜主義によって不起訴とするということは、これはもちろん可能なわけでございますけれども、しかし、非常に軽微というか軽い傷害の交通事故が多くて、被害者も処罰を必ずしも望まないというケースも大変多い。こういうケースにつきまして、全体として、単に軽いからということで軽く考えるというのは問題があるわけでございまして、そういうことから、それについてくる情状が悪くないようなもの、そういうものについては、軽いものであれば免除ということもあり得るということを明らかにしておくことが、一つのそういう指針には十分なり得るものと考えられるという点があるわけでございます。

 それからもう一つ、刑の免除規定につきまして、さまざまな免除規定があって、それぞれの目的でそれぞれに定められているのではないかということでございます。それは、まことにおっしゃるとおりでございます。

 特に、交通事故に関しまして免除規定を設けましたことは、交通事故につきましては一つの特殊性がございまして、それは、自己申告義務でありますとかあるいは保険の請求とかそういうことの関係で、ほかの場合であれば日常的にその場で終わりになってしまうようなものでも、ほとんど把握される。そういうふうな特殊事情もあるわけでございますので、そういう軽微な場合にまで一々刑を言い渡す、常に刑を言い渡すのが原則であるというふうなことにしておくというのも、これはやはりそれなりに問題のあることではなかろうか。そういう交通事故の特殊性ということから考えたものでございます。したがいまして、ほかの免除規定とは、そういう意味で別な考慮でできているということは間違いございません。

 ただ、委員も御指摘のとおり、それぞれ刑の免除規定はそれぞれの目的で設けられているということで、これは交通事故という特殊性を考慮したものというふうに御理解をいただきたいと存じます。

 そういうことで、もちろん捜査の合理化ということが実質的に非常に大きい問題でもありますけれども、それだけではなくて、やはり軽い傷害で情状がいいもの、特に、刑の言い渡しを原則とするまでの必要がないものというものはそれなりの処理ができるということを刑法上も明示しておくことが適当であるということもあるわけでございます。

細川委員 被害者の人たちからの声は、今までは裁判にされたような事件がこの免除規定によって不起訴処分になるんではないかとか、あるいは、検察官の捜査の段階でこの規定が適用されて不起訴処分になる場合が多くなるんではないかというような、非常に心配がございます。

 したがって、そういう人たちの心配なさっているそういうことに対して、今後の捜査の中できちっと、そういうことではないんだというようなことが言えるのかどうか、この点についてはどうでしょうか。

古田政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、単に軽いからということではないわけでございまして、あくまでそれ相当の情状がある場合に限ってできるということでございますので、現在の不起訴の範囲をこれによって拡大するとかそういうことになるものではございません。また、もちろん、その趣旨を徹底してそういうふうにならないように、万が一にもそういうことにならないように、そこは十分注意してまいりたいと思います。

細川委員 その点、よろしくお願いいたします。

 それでは、最後になりますけれども、免許制度についてお伺いいたします。

 この重罰化に当たりましては、当然免許制度を含めた総合的な施策が必要だというふうに思いますけれども、前の通常国会に提出しました民主党の案では、免許の欠格期間、つまり免許を取り消された人が再取得するまでの期間というのを十年間というふうに引き上げる提案をいたしましたけれども、こういうようなことが、今度は提案はもちろんされていないわけでございます。

 危険運転の事犯を見ますと、再犯あるいは累犯が非常に多いということも考えますと、現在のような、五年以内に再び免許が取得されるというのは大いなる欠陥があるというふうに思いますので、これをもっと長い期間、再取得の禁止の期間を十年というようなそういう期間に引き上げるというようなことをしていただきたいと思いますけれども、それについて、警察庁、いかがでしょうか。

坂東政府参考人 お答えいたします。

 委員から、悪質な違反行為をした者に対する免許の欠格期間を、これは現行道交法では最長で五年でございますが、さらに延長すべきではないか、例えば十年ぐらいに延長すべきじゃないかといったような御指摘がございました。

 自動車運転免許の欠格期間のあり方というものにつきましては、こういった悪質、危険な運転者を道路交通の場から排除する必要性というものは当然ありますが、また、片や一方、車社会が進展した今日、自動車等を運転することが必須の生活手段であるといったようなこともございますし、あるいは他の法令に基づく許可の欠格期間というものにつきましても考え合わせながら検討していかなければいけないということでございますので、そういった面を両々見ながら検討すべき課題であろうと考えております。

 なお、一言付言させていただきたいと思いますけれども、現行の制度では、過去に免許の取り消し等を受けていない場合は最長で三年の欠格期間を指定するということにされておりますけれども、近年、飲酒運転等の悪質、危険な運転によって引き起こされる悲惨な交通事故が後を絶たない、こういった状況を受けまして、極めて悪質、危険な違反をして死亡事故を起こした運転者に対しましては、一回目の取り消しであっても五年の期間が指定できるようにする方向で現在検討を進めているところでございます。

細川委員 ありがとうございました。

 それでは、まだ時間がありますけれども、これで質問を終わります。ありがとうございました。

保利委員長 次回は、明七日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会




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