衆議院

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第6号 平成14年4月5日(金曜日)

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平成十四年四月五日(金曜日)
    午前九時四十分開議
 出席委員
   委員長 園田 博之君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 棚橋 泰文君 理事 山本 有二君
   理事 加藤 公一君 理事 平岡 秀夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君
      荒井 広幸君    太田 誠一君
      後藤田正純君    左藤  章君
      鈴木 恒夫君    中川 昭一君
      西田  司君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    松島みどり君
      柳本 卓治君    吉野 正芳君
      岡田 克也君    佐々木秀典君
      日野 市朗君    細川 律夫君
      水島 広子君    山花 郁夫君
      石井 啓一君    藤井 裕久君
      木島日出夫君    中林よし子君
      植田 至紀君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        横内 正明君
   政府参考人
    (内閣審議官
    兼司法制度改革推進本
    部事務局長)      山崎  潮君
   政府参考人
   (警察庁刑事局長)    吉村 博人君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   経済取引局取引部長)   楢崎 憲安君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    古田 佑紀君
   政府参考人
   (法務省矯正局長)    鶴田 六郎君
   政府参考人
   (法務省入国管理局長)  中尾  巧君
   政府参考人
   (中小企業庁次長)    小脇 一朗君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月五日
 辞任         補欠選任
  鎌田さゆり君     細川 律夫君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  細川 律夫君     鎌田さゆり君
  中林よし子君     不破 哲三君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)


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     ――――◇―――――
園田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、警察庁刑事局長吉村博人君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長楢崎憲安君、法務省民事局長房村精一君、刑事局長古田佑紀君、矯正局長鶴田六郎君、入国管理局長中尾巧君及び中小企業庁次長小脇一朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
園田委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塩崎恭久君。
塩崎委員 皆さん、おはようございます。自民党の塩崎恭久でございます。
 十五分という大変短い時間なものですから簡潔に進めてまいりたいと思います。
 司法書士法並びに土地家屋調査士法の改正ということでありますが、規制緩和そしてまた司法制度改革の中で今回この法律の改正が行われるわけであります。土地家屋調査士法につきましては、むしろこれから先に、ADRの問題とかそういうことで、もっと大々的な改正が恐らく来るんだろうと思いますが、司法書士につきましてはかなり大きな改革が行われるというふうに理解をしております。
 言うまでもなく、簡裁での訴訟代理権ということなのでありますが、まずこの点につきまして、この間、法案の趣旨説明がございましたけれども、出っ張った引っ込んだではなくて、もう少し哲学を大臣からお聞きをしたいと思うわけであります。
 今回、簡裁での訴訟代理権というものが司法書士に認められるということになったわけでありますけれども、この意義をどうとらえておられるのかということで、特に、簡裁での事物管轄の範囲内で代理権を認められるということは、言ってみれば、弁護士と司法書士の両者がその範囲内においては全く同格で法廷に立つ、こういうふうに理解もできるのではないかなというふうに思うわけでありますけれども、特に、司法制度改革というのは、いわば国民にとってリーガルサービスを均てんさせよう、こういう話でありますから、国民のサイドに立ってみて二者の違いというのは今回あるのかどうか、そういったひとつ哲学的なお考えをお聞かせ願いたい。
 そして、これは大臣でも局長でもどちらでもいいんですが、研修を受けた後認定をされるということで初めてできるようになって、その認定第一号というのはいつになるのかということも含めてお話をいただきたいと思います。
森山国務大臣 昨年の六月十二日に司法制度改革審議会の意見書が出されまして、その提言に従いまして、国民の権利擁護を拡充しよう、司法書士の有する専門性を活用しようという観点から、司法書士に簡易裁判所における訴訟代理権等を付与することとなったのはお話しのとおりでございます。
 司法制度の利用者である国民の側からいたしますと、今までは、簡易裁判所の訴訟代理を依頼することができる法律専門家は弁護士に限られていたわけでございますが、新たに司法書士に付与される権限の範囲内では司法書士も弁護士と同様の権限を有するということになるわけでございまして、これからは司法書士にも依頼することが可能になるというわけでございます。ですから、国民の側の選択肢がふえるという意味で、国民の司法制度に対する利便性が向上いたします。身近で使いやすい司法制度という私どもの気持ちがここに実現される、一部これで実現するというふうに思います。したがいまして、この法律案は、司法制度改革の一環として極めて重要な意味があるというふうに思っております。
房村政府参考人 ただいまお尋ねの、認定をされた司法書士がいつ誕生するかということでございますが、今回の法律につきまして、成立をさせていただきました場合には、その施行として、司法書士関係では平成十五年の四月を施行時期として考えております。
 それに合わせまして、研修を実施する法人を指定する省令を制定いたしまして、その法人から研修計画を提出していただいて、法務大臣が研修として相当であるという指定を行います。その上で、その指定された法人に研修を実施していただいて、その研修を修了した者に対して考査を実施し、法務大臣が認定を行う、こういうことになりますので、どの程度の時期に研修を実施していただけるかということにかかわりますが、そう遠くない時期に研修が実施されると思いますので、研修実施後速やかに認定をするということで行いたいと思っております。
塩崎委員 先ほどの大臣の御答弁の中でもう少し明確にしてもらいたかったのは、この事物管轄の範囲内において弁護士と司法書士は国民から見れば同じだというふうに考えていいのかどうかという点だけ簡潔にお願いいたします。
森山国務大臣 与えられた権限の中では全く同じ権限がおありになるということになります。
塩崎委員 ありがとうございました。
 司法書士についてもう少しお尋ねをいたしますが、その前に、土地家屋調査士法の第六十八条というのに「第六十四条第一項に規定する事務」というリファーがあるわけでありますね。「非調査士等の取締り」というところの規定でありますけれども、司法書士法と比べると少しわかりづらくて、これは何を指しているんだと。
 これは、実は公嘱の規定を指しているんですね、六十四条というのは。その「第一項に規定する事務」ということであるものですから、何をもって「非調査士等」というのかというところがよくわからないので、どうも全国の調査士の皆さんが、これは何じゃ、こういうことになっているらしいので、司法書士法と同じような書き方をしていただいて、第三条をリファーしてくれればよかったんでしょうが、この辺についてもう少し明確にしていただいた方がいいんじゃないかなと思います。
房村政府参考人 お答え申し上げます。
 御指摘のように、今回の法案の六十八条のところでは、「調査士会に入会している調査士又は調査士法人でない者(協会を除く。)は、第六十四条第一項に規定する事務を行うことを業とすることができない。」ということで、調査士以外の方に禁止する業務を規定しているわけです。
 この六十四条第一項というのが、これまた御指摘のように、公共嘱託登記土地家屋調査士協会の業務として、「協会は、前条第一項の目的を達成するため、官公署等の依頼を受けて、第三条第一号並びに同条第二号及び第三号(同条第一号に掲げる調査又は測量を必要とする申請手続に関するものに限る。)に掲げる事務を行うことをその業務とする。」こういう条文を引いているものですから、あたかも協会の行う業務に限るような誤解を招くおそれがあるという御指摘だろうと思います。
 条文的に申しますと、六十八条で引用しております「六十四条第一項に規定する事務」というのは、この六十四条一項の中の調査士の業務を規定しております「第三条第一号並びに同条第二号及び第三号(同条第一号に掲げる調査又は測量を必要とする申請手続に関するものに限る。)に掲げる事務」、これを指しておりますので、直接的に協会が行う事務ということではなくて、調査士の行う事務、これがたまたま条文も非常に近いということで、同じ文言をすぐ直後に繰り返すのはいかがなものかということで「六十四条第一項に規定する事務」という書き方をいたしまして、やや専門的に過ぎたかなとは反省しておりますが、法律的には誤解の余地はないと思っておりますので、御理解いただきたいと思います。
塩崎委員 わかりました。
 次に、司法書士法の問題でありますけれども、今回、訴訟事件等の代理権は付与していくことになったわけでありますけれども、これは大臣にお尋ねしたいんですが、家事事件並びに民事執行事件については、司法書士制度改革の中でまださらにこれから検討しようということでありますけれども、将来この民事執行事件の代理権が司法書士に与えられる可能性というものをどうお考えになっているのか、端的にお答えいただきたい。
森山国務大臣 民事執行事件には、相当高度な専門的な知識が必要でございます。簡易裁判所が扱う事件とはされておりません。そのため、司法制度改革審議会におきましては、議論の結果、その最終意見では、民事執行事件についての司法書士に対する代理権付与は盛り込まれなかったわけでございまして、将来の課題として位置づけられたものと理解しております。
 私といたしましては、新しい権限を得た司法書士が簡易裁判所の民事訴訟などを、新たにその権限を与えられるわけでございますので、その面で大いに活躍をしていただいて、そしてその結果、実績が認められるということになり、民事執行事件の代理権付与についても、司法書士が簡易裁判所における訴訟代理について多くの国民から信頼を得たという実績の上で、さらに検討していくべき課題ではないかと思っております。
塩崎委員 国民の理解を得るということが大事だと思いますので、司法書士の皆さんには頑張っていただいて、この点についてもさらに展望が開かれるようになったらな、こう思います。
 それから、外国人登録法というのがありますが、実は二年前に私は参議院にいたときにこの問題をお聞きしたことがあるのですが、当時、臼井法務大臣でありましたが、この登録原票記載事項証明書の交付請求をできる者が、法律では弁護士になっておりますが、その他政令で定める者ということで、特殊法人がばあっと並んでいるわけですね。今度廃止される特殊法人も入っておりますが、その際に、司法書士ができないのか、こういう話でお聞きをいたしました。そのときの答えは、司法書士の司法制度における役割等も踏まえて、今後の検討課題とさせていただきたいと思いますというのが臼井大臣のお答えでありました。
 さあ、今回、この代理権も部分的ながら与えられるようになった、これで司法書士も請求ができるのかどうか。この点についてのお答え並びに展望について、端的にお話しをいただきたいと思います。
中尾政府参考人 お答え申し上げます。
 委員御指摘の点につきましては、新たに付与されます簡易裁判所におきます訴訟代理権の範囲内で前向きに検討してまいりたいというふうに考えております。
塩崎委員 範囲内で前向きにということであります。その前向きにというのは、どういう前向きなのかはこれからよく我々も一緒に議論してまいりたいと思いますが、今後の議論を深めることが重要ではないかというふうに思っております。
 少なくとも、司法制度改革でかなり司法書士の役割も、そしてまたこれからの改革の審議の中で土地家屋調査士の役割も大分変わってくると思いますので、そういう意味で、入管の方でも、特殊法人を並べているこの中身を見ると、道路公団とか住宅金融公庫とか、これから民営化されたり廃止されたりするところの人たちができて、司法書士ができないというのも変な話なんで、ぜひこれも前向きにお願いをしたいと思います。
 きょうは時間厳守ということなものですから、若干、一分ぐらい残っておりますが、きょうはこれで質疑を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
園田委員長 石井啓一君。
石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。本日の私の質問時間も十五分と短うございますので、明快かつ簡潔な答弁をよろしくお願いいたします。
 具体的な事項についてお尋ねいたしますけれども、まず、土地家屋調査士会の関係でございますが、今回の改正案で調査士法人の設立を可能としているわけでございますけれども、既存の公共嘱託登記土地家屋調査士協会、この役割についてどういうふうに認識されているのか、これを確認いたしたいと思います。
 あわせて、この公嘱協会については官公署から受託をするわけでございますけれども、今、行政改革等が進められておりまして、従来官庁だったところが独立行政法人等に移行するということがございます。独立行政法人など行政改革の進展に的確に対応するように、この受託対象の官公署についても随時検討を行うべきというふうに考えますが、この点についてもあわせて確認をいたしたいと思います。
房村政府参考人 お答え申し上げます。
 まず官公署その他政令で定めるものが行う各種の公共事業につきましては、事業の性質上、不動産の登記の嘱託が大量かつ一時期に集中するということがございます。そのために、専門的知識、技能を有する土地家屋調査士が、公共嘱託登記土地家屋調査士協会という法人をつくりまして、組織的にその嘱託登記事件を受託するということを法律上認めているわけでございます。
 この土地家屋調査士法人の業務範囲というのは、土地家屋調査士の業務範囲と同様でございまして、公共嘱託登記に係る事件を受託することも可能ではあります。ただ、官公署が行う大規模な公共事業等に伴う不動産登記の嘱託については、大量かつ一時期に集中するということから、これらを適正迅速に処理できる組織力、信用力のある調査士法人が直ちに設立されるとは考えにくいわけでありまして、今後とも、公共事業等につきましては調査士協会の果たす役割は変わらないものと考えております。
 また、調査士法人も調査士協会の社員となることも認められておりますので、そのような調査士法人が調査士協会の社員に加わることによって、従前にも増して調査士協会の業務が充実するのではないか、こう考えているところでございます。
 なお、独立行政法人に官公署が移行するという点につきましては、そういう動きもございます。これについては、独立行政法人が従前と変わらず大量に不動産の登記の嘱託を伴う公共事業等を行うということを業務の目的とするかどうかというようなことを判断し、適正迅速に対応していきたいというぐあいに考えております。
石井(啓)委員 この公嘱協会については、公共嘱託登記の適正処理、こういう業務を行ってきたのみならず、法務局の既存地図の整備作業とか不動産登記法十七条の地図作成作業、こういった法務行政にも大きく貢献してきたというふうに実績があるということでございますので、今後も十分な役割を果たせるよう的確な配慮をお願いいたしたいと思います。
 続いて、司法書士の関係でございますけれども、今回、簡裁におけます代理権を与えるわけでありますが、この研修について、現在約一万七千人の司法書士の方がいらっしゃる、このうちどれだけの方が御希望をされるか、私も把握はしておりませんけれども、この希望者ができるだけ速やかに、全員この研修が受けられるように、そういう適切な配慮を行っていくというのが、制度をつくった以上これはやはり国の責務だと私は思っております。
 大体一カ月間の研修というふうに聞いておりますから、まず当初は、なるべくこれは頻度を高くやっていただくということが必要だと思いますし、あるいは過疎地とか島嶼部、そういう遠隔地にいらっしゃる方への配慮というのも当然必要だ、そういう円滑な研修をぜひ行っていただきたいと思っております。
 また、この研修の講師をされるのが弁護士さんあるいは裁判官というふうに聞いておりますから、こういった関係機関の支援の要請等の適切な措置もぜひお願いをいたしたいと思っております。
 その点について確認をいたしたいのと、また、この研修を受けた上で法務大臣が考査を行って認定を行うということでありますけれども、その認定の考え方について確認をしておきたいのですが、法曹資格の場合は年間何人という枠をつくっているわけですけれども、そういった人数枠を設定するような考え方があるのかどうか、この点について確認をしておきたいと思います。
房村政府参考人 研修のお話ですが、一万七千名いらっしゃる司法書士のうち、どのくらいの方々が希望されるかという点について、これは日本司法書士会連合会でことしの二月にアンケート調査をいたしましたが、その結果によりますと、約六〇%の会員が受講を希望している、さらに二三%の会員が受講を検討しているというようなことで、相当多数の方が研修を受講されるのではないかと思っております。
 そうしますと、改正後しばらくの間、相当多くの方々が研修を希望するということになりますので、この研修の実施機関は省令で定める法人ということになりますが、現在、日本司法書士会連合会では、その受け皿となるべく種々準備をされているというぐあいに聞いておりますが、その日本司法書士会連合会では、希望者が多い場合には年数回研修を実施するということも検討しているということを聞いておりますし、また具体的な実施方法としても、地方で業務を行っている司法書士に受講の機会を均等に与えるために各地で行うとか、あるいは受講を可能にするための中央からの方策というようなことを種々検討されていると聞いております。
 研修の指定は法務大臣が行うことになっておりますので、法務省といたしましても、そういう研修を実施する法人と綿密な打ち合わせをして、できるだけ多くの司法書士の方々が受講できるような研修体制を整えてまいりたいというぐあいに考えております。
 それから、研修実施後の法務大臣の認定でございますが、これにつきましては、法務省としては、研修を修了した方々について、訴訟代理人となり得る能力があるかどうか、修習で能力を身につけたかということを考査によって判定をいたしますが、これについては能力に達していると認められれば当然認定することになりますので、具体的な人数枠を設けるというような考えはございません。
石井(啓)委員 よくわかりました。ぜひそういった方向でよろしくお願いをいたしたいと思います。
 それから、続いて司法書士の件でありますけれども、今塩崎委員の方からも若干問題提起がございましたけれども、今回、代理業務として簡裁の訴訟等が代理ができるというふうになっているんですけれども、上訴の提起及び強制執行については外されているわけであります。ただ、これについては排除する必要はないんじゃないかという指摘もございます。この点についての見解を伺いたいと存じます。
房村政府参考人 今回、司法書士の方々に訴訟代理権を付与するという法案を提出いたしました背景は、司法制度改革審議会において、国民の利便性に資するために司法書士の専門性を活用すべきだということで、訴訟代理権を付与すべきだという結論が示されたことを受けたものでございます。司法制度改革審議会の御議論において、司法書士の訴訟代理権について、まずは簡易裁判所における訴訟代理権ということが議論されたわけでございますが、これは、地方裁判所以上のことになると法律的にも相当複雑な問題が含まれ、当初からそこまで与えるのはいかがなものかというようなことで議論がなされたものと承知しております。
 そういうことから、控訴審、これは簡裁の控訴審は当然地裁になりますし、また強制執行事件も地方裁判所の管轄になりますので、そういったところについてはやはり簡裁における通常の訴訟よりもより高度な法律的問題が含まれるというようなことで見送られたということでございますので、それを受けて、今回、私どももその点は除いた訴訟代理権としたわけでございます。
 そういう意味で、控訴審での訴訟追行ができない司法書士の方々に、控訴審への控訴状の提出、控訴の権限を与えると、かえって控訴審における代理権を持っているものと誤解を招くおそれもありますし、また、控訴状だけは提出したけれども後の訴訟追行が一切できないということでは、依頼者との関係でも困ってしまうのではないかということから、今回は控訴の提起も代理権から除いたということでございます。
 ただ、これは、先ほど大臣からも答弁申し上げましたように、今回与えられた訴訟代理権を司法書士の方々が適切に行使をする、実績を積むことによって、それを踏まえて将来的に検討をする課題だというぐあいには考えております。
石井(啓)委員 通常、一審の代理権の範囲というのは控訴の申し立てまで含むというふうに解されているというふうにお聞きしていますけれども、それはそうでしょうか。ちょっと確認します。
房村政府参考人 それは御指摘のとおりでございますが、ただ、通常は控訴審における代理権が法律上は制限されておりませんので当然そういうことになっているわけですが、先ほど申し上げましたように、基本的に、地裁レベルでの訴訟代理権の付与は、今回、先の検討課題ということになっておりますので、そういう点で、やや司法書士の方々には御不便かもしれませんが、当面は控訴も代理権の範囲から除かせていただいて、将来的な課題として検討したいというぐあいに考えているところでございます。
石井(啓)委員 それでは、これはぜひ、今後の司法書士さんの実績を見た上で、課題として十分検討していただきたいと思いますけれども、直ちに地裁における代理権を求めているわけではありませんで、控訴の権限だけでも差し上げても、今民事局長がおっしゃったように、一審の代理権はそもそも控訴の申し立てまで含めているわけですから、この上訴の提起だけ外す必要は別にないのではないかというふうに私は思っております。その点について申し上げておきたいと思っております。
 それから、最後に報酬規定について伺いたいと思いますけれども、今回、司法書士会、土地家屋調査士会の報酬規定を削除するわけでありますが、これは、報酬規定が本来は報酬の標準というふうにされているにもかかわらず、実際はそれが実際に受けるべき報酬というふうに位置づけられているということで、いわば報酬が高どまりしているのではないか、競争が行われないのではないかという観点から、今回、規制改革推進計画の一環としてこの報酬の規定が削除されたというふうに伺っております。
 ただ、一方で、では利用者が報酬の相場なり目安なりをどうやって判断すればいいのか。逆に、それがなくなってしまって、従来、ある意味でその報酬基準というのが、報酬のいわば上限、それ以上上がらない、そういう上限を規定したという役割もあったと思うんですけれども、それがなくなって本当に大丈夫なのかという、利用者の観点からの代替措置というのをどういうふうにお考えなのか、確認をいたしたいと思います。
房村政府参考人 今回、会則記載事項から報酬に関する規定を削除するというのは、先生御指摘のとおり、自由な競争を促進するという観点からでございます。
 ただ同時に、御指摘のとおり、利用者からすると、自分が司法書士あるいは調査士の方々に依頼したときに一体幾ら取られるのかわからないということでは、これは不安で利用できないということになりかねませんので、そのための対策を講ずる必要があると思っております。
 現に、資格者団体では、会則で、資格者自身が定めた報酬額を事務所に掲示するというようなことであらかじめ依頼者に明示しろというようなことを対策として考えているようでございますし、また、実際にどの程度の報酬になるかというようなことについて、インターネット等でいわば目安を公開するということによって利用者の利便を図るというようなことも考えているようでございます。
 また、法務省としても、そういった適切な対策については今後とも検討をしてまいりたいと思っております。
石井(啓)委員 これはぜひ利用者が不利益をこうむらないような実効性のある措置をお願いしたいと思いますし、また、法施行後もこれはきちんとフォローアップをしていただきたいと思います。
 時間が参りましたので、以上で終わります。
園田委員長 細川律夫君。
細川委員 民主党の細川律夫でございます。
 司法制度改革審議会の議論あるいは規制改革の議論の成果といたしまして、今回の改正案が提出をされました。これは、司法書士あるいは土地家屋調査士の皆さんと、それから利用者である国民の皆さんにとっては意義のある改革になるのではないかということで、私は大変喜ばしいというふうに考えているところでございます。
 昨年の六月でございますけれども、この委員会におきまして、弁護士に隣接いたします法律専門職種について、佐藤司法制度改革審議会長あるいは森山大臣にいろいろ質疑をいたしました。
 その中で、私の方から、将来の司法書士制度というものはどういうふうに持っていくのが理想なのかというようなことを尋ねました。この質問に対しましては、山崎政府参考人は、「多方面の法律的な分野、こういうところにもきっちり力をつけた段階では、進出と言ってはおかしいですけれども、そういう分野もできるようにすべきであるということで考えております」と、余りすっきりした形での答弁ではなかったんですけれども、今後の司法制度の拡充につながる答弁がなされたところでございました。
 今回の改正に限っていえば、これは審議会の意見書から導かれました当然の帰結でございまして、むしろ今後どういう方向にこの司法書士の制度が進んでいくかということが注目されるところだろうというふうに私は考えております。今回の改正によりまして、能力の担保の上で、簡裁の代理権等がうまく機能して、充実がさらに図られたということになれば、全国的に分布いたしまして活動しております司法書士の皆さんに、より法律専門職としての幅広い位置づけがなされていくんではないかというふうに考えております。
 しかし、その一方では、司法制度改革によりまして弁護士の数がこれからたくさんふえるということが予想をされておりますので、司法書士の本来の業務である登記とかそういうところにも弁護士の仕事が進出をしていく、こういうことも心配もされておりまして、一部には、司法書士制度そのものが維持できなくなるんではないかというような議論もございます。
 そこでお聞きをいたしますけれども、司法書士の制度というもののあるべき姿、これをどういうふうに大臣はお考えになっているのか、これをまずお聞きいたしたいと思います。
森山国務大臣 司法制度改革の考え方というのは、今先生も御指摘になりましたように、司法制度、司法というものが、何となく取っつきにくくて、難しくて、わかりにくくて余り身近ではないという問題点を少しでも解消して、国民に使いやすいものにしていきたいということが大きな眼目でございます。
 そのような観点から申しますと、もちろん弁護士さん初め今法曹と言われている人々の数も必要でございますが、仕事はさらに大きく、多岐にわたってくるというふうに思われます。
 社会全体が、今まで事前の規制型でありましたのが事後チェック型になるということがもう目に見えておりますので、そうなりますと、司法全体の役割は、今までよりはるかに大きく、重くなってくる。そうなりますと、法曹の皆さんをふやすのは必要でありますけれども、周辺の業務をなさっていらっしゃる方にももっと大きな役目を果たしていただきたい。その非常に重要な部分が司法書士の皆さんの役割ではないかというふうに思っております。
 司法書士の皆さんは、今までは登記の代理の業務とか裁判所に提出する書類の作成などを中心にいたしまして、全国にあまねく所在しておられまして、むしろ弁護士さんよりは全国の隅々に広くいらっしゃって、国民に身近な法律家という役目を従来も果たしておられました。
 今回認められます簡易裁判所における代理権を有する司法書士がふえてまいりますと、従来に増して国民にとって身近な、そして頼りがいのある法律家として、その分野においてさらに大きな役割を果たしていただけるのではないかと期待しております。
細川委員 大臣の御答弁では、どうも、将来的に司法書士の制度というものがどういうふうになっていくのが理想なのか、この今度の改正によって簡易裁判所の訴訟などの代理権が与えられた、その範囲で十分やればそれで国民にも親しまれていいだろうということなのか、将来的にもっと権限をふやしていくのか、あるいは、そもそも弁護士の数がふえれば、ほかのことも弁護士にやってもらえればいいから余り期待もできないのか、そこらあたりをはっきりさせていただく方が、将来の司法書士、今現在仕事をされている、あるいはこれから司法書士になろうとする人たちにとって一つの大きな目標ができるからいいのではないかと私は思っておりますけれども、今の御答弁で、関連して次の質問に移ります。
 今回の司法制度改革審議会の意見書の中では、この司法書士の人たちにどういう権限、資格を拡充するかということについては、これは簡易裁判所の代理権としか、与えるということについてはなかったのですけれども、では、そのほかの、例えば家庭裁判所における家事審判とかあるいは家事調停とか、あるいは執行の代理権、こういうものについても、能力担保をきちっとできれば、当然代理権を付与するということはいいのではないか。むしろ、そういうことによって、今本人だけでやっている家事審判なんかについても、あるいは調停などについても、身近な司法書士の先生方がついてやっていくということで、いい形、国民からの要望にこたえる形になっていくのではないかというふうに考えておりますけれども、今後家庭裁判所あるいは民事執行などについて代理権を付与するというようなことについてどのようにお考えなのか、お聞きをしたいというふうに思います。
 もちろん、今回の改正によって能力担保システムがきちっと確立をして、国民の皆さんから司法書士に対する信頼がきちっと増した場合、そのときにそういうようなことを速やかにやっていくべきではないかというふうに私は思いますけれども、その点についてお考えをお聞きしたいと思います。
横内副大臣 今回の法改正、司法書士の権限の拡大は、先生も今御指摘がありましたように、司法制度改革審議会の議論を踏まえまして、簡易裁判所での訴訟代理権の範囲で拡大をするということにしたわけでございます。
 今御指摘がありました、家庭裁判所の家事事件だとかあるいは民事執行事件というようなことになりますと相当高度な法律知識を要するということから、その代理権を付与することについては、司法制度改革審議会としては今後の課題として位置づけたというふうに理解をしております。
 したがいまして、今回の新しい権限を付与された司法書士が、今後、その代理権を行使していく中で実績を積み、国民から司法書士の代理権行使について信頼を得た段階において、今のように拡大をするということも検討されていい課題ではないかというふうに考えております。
細川委員 次に、ワンストップサービスについてちょっとお聞きをいたしますけれども、この司法制度改革審議会の意見書の中には、ワンストップサービス、総合的法律経済関係事務所の積極的な推進がうたわれておりまして、こういうふうに書いています。「その際、異業種間共同事業の容認の可否については、更に検討すべきである」というふうになっております。
 そこで、この今回の法律案では、司法書士法人、土地家屋調査士法人というのが認められるということになっておりますけれども、既に業態としては同一事務所で司法書士あるいは土地家屋調査士の人たちが仕事をやっている、こういう場合もあるわけで、事実上はそういうワンストップサービスに踏み込んでいるという事務所がたくさんございます。
 そうしますと、今回の法案でこれを別の法人にするということは、この司法制度審議会の意見書の中にありますワンストップサービスの趣旨に反するんではないかというふうにも思えるわけなんです。特に、司法書士それから土地家屋調査士、この二つの職種というのは、監督官庁も全く同じでありますし、仕事も不動産の登記と共通しているわけなんです。そういう意味では、司法書士と土地家屋調査士がそれぞれ別々に法人をつくらなければいけない、これは一緒につくることができないということでは、このワンストップサービスの芽を摘んだような形になっているんです。
 この点について、そのほかの隣接専門職種でもいわゆる法人化が今行われておりまして、今後も法人化が行われると思うんですけれども、そういう異業種の場合に、兼業しているような場合には法人として一つにできるような、総合事務所の法人化というようなことを積極的に推進すべきではないかというふうに考えますけれども、この点についてどのようにお考えでしょうか。
房村政府参考人 先生御指摘のように、利用者の立場からしますと、一つの事務所で異なる法律サービスの提供を受けられる、いわゆるワンストップサービスというのは非常に有用なものであります。そういうことで、現行法のもとにおきましても、異なる職種の方々が経費共同型で共同の事務所を持つということは容認されているということで、現にそういう事務所もございます。
 ただ、法人化ということになりますと、法人の社員になりますと、当然その法人の職務執行権限を有しますし、また、法人に雇用される者に対する指揮命令もございます。そうなりますと、非資格者による業務の取り扱いを禁止しているような専門職種についての法人化の場合に、資格のない方が法人の社員になることを認めますと、実質的に資格のない人がその職務を行うことを認めることにつながる。こういうことから、現在まで、法律が制定されております各専門職種の法人につきましては、いずれもその資格を持った人にのみ社員となることを認めているという法制度になっております。したがいまして、今回の法律につきましても、司法書士法人については司法書士、土地家屋調査士法人については土地家屋調査士に、社員となる資格を限っているわけでございます。
 ただ、将来的な課題としては、御指摘のようにワンストップサービスを実現するための総合的な法人ということも当然検討はしなければならないと思っておりますが、今申し上げたような専門資格、特に業務の取り扱いを限定しているということとの法律的な問題については、相当検討しなければならない課題が多いものですから、今後、各専門職種の法人化の動向等も見ながら、引き続き検討してまいりたいというぐあいに考えております。
細川委員 全体的な説明としては、理屈としてはわかるんですけれども、では、例えば一人の人が資格を複数持っているような場合にはその理屈は当てはまらないのではないかというふうに思いますので、ぜひそれは検討していただきたいというふうに思います。
 次に、この改正案の内容についてちょっとお聞きをしたいと思いますが、簡裁代理権の付与に係る研修並びに法務大臣における認定について伺います。
 研修を実施する法人は省令で定めるということになっておりますが、この法人というのは日本司法書士会連合会というふうに、この一つというふうに考えてよいのか、また、日本司法書士会連合会を指定してやらせるということについての理由をお聞かせいただきたいと思います。
房村政府参考人 御指摘のように、研修を実施する法人については省令で定めることとしておりますが、これは、簡裁訴訟代理関係業務を行うのに必要な能力の習得に十分な研修を適正かつ確実に遂行できる法人というものを指定するつもりでございます。
 御指摘の日本司法書士会連合会では、現在、裁判官、弁護士、有識者などによる検討会を設けて、この研修について検討を加えているということを伺っておりますし、また、従前から会員に対して研修を実施するという実績も積み重ねておられます。したがいまして、このような実績を積み、かつ、現にその実施のための検討をしている日本司法書士会連合会がこの省令で定める法人に該当する可能性は高いというぐあいには考えております。
 いずれにいたしましても、法施行後、申請を待って判断をするということにはなります。
細川委員 それでは、法務大臣はその研修というのを指定するということになっておりますけれども、実施される研修ごとにこの指定行為が行われるのかどうなのか。また、履修項目や当該課程の修了基準というようなものはどのように考えているのか。これらの点についてお答えいただきたいと思います。
房村政府参考人 御指摘の法務大臣による研修の指定ですが、これは、研修の内容、研修実施計画等を確認の上、行われる研修ごとに指定をするということになります。
 この研修につきましては、司法書士が簡裁訴訟代理関係業務を行うのに必要な能力を身につけるのに必要なものということが要求されるわけでありまして、修了しているかどうかにつきましては、この研修の実施に関する計画について審査をいたしまして、指定をする際に研修の修了要件についても検討するということになります。
 研修修了の要件としては、出席状況であるとか研修態度、あるいは研修において提出されるレポートなど総合的に考慮して判断をするということになろうかと思っております。
細川委員 それでは、この法務大臣の認定の際には考査の実施というものが考えられるわけなんですけれども、この研修の履修目標と認定のシステム、これはどういうように位置づけられるのか、この点についてお伺いいたします。
房村政府参考人 まず、研修の目標でございますが、これは、要するに簡易裁判所の法廷に訴訟代理人として立つために必要な能力、これを身につけていただくということでございます。既に司法書士は裁判書類の作成業務は従来から行ってきておりますので、主として、実際に訴訟代理人として法廷に立つという観点から、弁論であるとか証人尋問というような法廷実務であるとか、事実認定の手法に関する能力、こういうものについて、講義、ゼミナール、模擬裁判、あるいは裁判所の協力を得て行う実務研修、こういうようなものを実施することになるのではないかと思っております。
 その後に実施されます法務大臣の認定は、そういう研修によって目標とする能力が十分身についたかということを判定することを主眼に行うことになろうかと思います。その認定を適切に行うためには筆記式の考査ということが当然考えられるわけでございまして、そういうつもりで準備を進めております。
細川委員 そこで、この指定と認定の制度について、ちょっと私なりに疑問を感じるところがございます。
 それは、一つは、研修、認定によって簡裁の訴訟代理権を与えるというのが従前の資格制度と異なるという点でございます。普通は、資格が与えられますと、それに対応する当然のその職域というのがあるわけなんです。その上にさらに研修、考査、認定で、資格の上にさらに別の資格を置くような制度が果たしていい制度設計なのかどうなのかという点でございます。これは、この司法書士の制度の中で、同じ司法書士という資格がありながら、一部の人たちは簡易裁判所での訴訟ができない、また一部の人はできる、そういうような一つの司法書士という制度そのものでそういうものがあっていいのかどうなのかという点が一つございます。
 それから、これから現在資格を持っている司法書士の人たちに対して資格を与えるというのは、研修とか認定とかいうようなことによって与えるということは、これは万やむを得ないとしても、それでは、新しい司法書士になる場合のことについて考えると、司法書士という制度に合格しながら、しかし、また研修とか認定とかいうことをするというのは、これは何か制度としておかしいんではないか。初めから、もう司法書士の資格を取ったならば、当然、簡易裁判所の代理権もあるというような、そういう制度にしなければいけないんじゃないかというふうに思いますけれども、じゃ、今回提案されておりますこの制度、司法書士という資格があり、その上にさらに研修と認定によって新しい別の権限を与える、こういう仕組みが永久的なものとしてこれをずっとやっていくのか、それとも、きちっとした資格制度にするまでの過渡的な形としてこの制度を今回つくったのか。将来の展望も含めて、この点についてお聞きをいたします。
房村政府参考人 司法書士の方々に国民に最も身近な法律家として活躍をしていただくという観点からしますと、できるだけ多くの司法書士の方々にこの簡易裁判所における訴訟代理権限も取得していただきたいというぐあいに私どもとしては考えております。
 ただ、当然、新たな権限を付与し、しかも国民に重要な役割を果たすということになれば、その能力的な担保措置というものも必然的に必要になってまいりますので、もし司法書士の方々全員に訴訟代理業務の権限を付与しようということになれば、この研修を全員に義務づけるということにならざるを得ないものですから、当面、私どもとしては、希望をする方々に研修を受けていただいて、その認定を受けて、その業務をやっていただく、できるだけ多くの方にそういう道を通っていただくということを現段階では考えているわけでございますが、今後の司法書士の方々のこの代理権限の活用の仕方いかんによっては、将来的には全司法書士にこういった権限を付与する道を検討するということは十分あり得ると思っております。
細川委員 ありがとうございました。
 それでは、次に、土地家屋調査士法の改正について若干お伺いをいたしておきます。
 土地家屋調査士にしましても、司法書士と同様にこの将来像をきちっと見据えて、あるいはまた、司法制度改革審議会の意見書にあるように、専門職種の有する専門性を活用する方向に大きく踏み出すべきだというふうに考えます。
 具体的には、例えば裁判外の境界紛争解決制度というようなものを創設して土地家屋調査士に権限を付与するというようなことなども考えられると思いますけれども、こういうADRといいますか、こういうことなども含めて、どういうふうに将来のことなどについてもお考えになっているのか。この点についてお答えいただきたいと思います。
森山国務大臣 ことし三月二十九日に閣議決定されました規制改革推進三カ年計画の改定でございますが、ここにおきましては、土地境界紛争に関する裁判外紛争処理制度の仕組みにつきまして、現在、司法制度改革本部において行われている総合的なADRの制度基盤の整備に関する検討を踏まえて、必要な方策を検討することというふうに言われております。
 土地家屋調査士は、業務の性質上、境界問題について豊富な経験と専門的知識を有しておられるわけでございまして、そのようなことから、裁判外境界紛争解決制度が創設された場合には、ADR機関の構成員や申し立て代理人として積極的にその能力が活用されるものというふうに考えております。
細川委員 次に、ちょっとこれは細かくなるといいますか、実務的に問題になるので、このことについて確かめておきたいと思いますが、隣接の法律専門職種の法人化ということに当たりましては、どの職種でも問題になることでございますけれども、小規模企業共済の加入資格の問題がございます。これについてお伺いをいたします。
 小規模企業共済とは、小規模企業の個人事業主や会社役員の方が事業を廃止したりあるいは退職した場合の資金を準備するための共済制度であり、いわば事業主の退職金制度というふうに言われているものでございます。これには従来から、弁護士、税理士あるいは弁理士、そしてまた、この法案にあります司法書士、土地家屋調査士の方々の中にも、個人事業主として加入をしていた、あるいはしている人がたくさんございます。
 しかし、これまでのいろいろな法改正の中で法人化が認められた職種の法人、つまり弁護士法人あるいは税理士法人、特許業務法人、これらの法人というのは、小規模企業共済法上、会社というものに該当しないために加入対象から外されてしまっております。同様に、今度のこの司法書士法あるいは土地家屋調査士法の改正によりまして、司法書士法人、土地家屋調査士法人もこの小規模企業共済に加入資格がなくなるということになります。
 業態としては会社と同様な小規模な法人であっても、法人化したら直ちに加入資格がなくなるというのは、これは大変問題ではないかというふうに思います。
 簡単に言いますと、例えば今度の司法書士法改正それから土地家屋調査士法の改正によって、これまで司法書士さんあるいは土地家屋調査士さんがこの小規模企業共済に入っていて、そして今度同じように法人化した場合には、これをやめなければいけないということになるわけなんですよ。これはちょっと私は問題ではないかというふうに思います。
 これは今回の法案だけではないんですけれども、いわゆる士業の法人化に伴いまして小規模企業共済加入資格が失われないように、今まで入っていたのが、法人化した、法人化したからそれをやめなければいけないというのではなくて、法人化をしても、引き続きこの共済に加入して、ずっと続けられるというような法改正でなければならなかったのではないかというふうに思いますけれども、この共済を所管いたしております中小企業庁、それから法務省から、それぞれこの点についてどういうふうにお考えになっているのかお聞きをいたしたいと思います。まず中小企業庁、これについてどういうふうにお考えなのか。
小脇政府参考人 お答えを申し上げます。
 お尋ねの小規模企業共済制度でございますけれども、その加入資格は、常時使用する従業者の数が、製造業等では二十人以下、商業、サービス業では五人以下の個人事業主と会社の役員とされてきているところでございます。
 ここで言う会社とは、株式会社、有限会社、合名会社及び合資会社を指すものであるとされているところでございます。したがいまして、会社に該当しない学校法人あるいは宗教法人、あるいは社会福祉法人等々の役員の方々は、従来から本制度への加入資格がないものとして扱われてきているところでございます。
 私ども、こうした従来からの考え方に基づきまして、司法書士法人あるいは土地家屋調査士法人等につきましても、会社に該当しないために、その役員の方々には小規模企業共済制度への加入資格がないということになるものでございます。しかしながら、弁護士法人あるいは税理士法人等々、新たな形態の法人が生まれつつある状況にございます。そうした昨今の現状を踏まえまして、今先生から御指摘のあったような点につきましては、今後の検討課題として受けとめてまいりたい、このように考えているところでございます。
房村政府参考人 法務省といたしましても、御指摘のありました点については、この問題を所管しております中小企業庁と十分に協議をしてまいりたいと考えております。
細川委員 この点は、法律が改正をされまして、そして施行に至り、法人になったらすぐやめなければいけないという切実な問題でございますので、今、中小企業庁、法務省、それぞれ検討をいただくということになりましたので、ぜひ早急に、早く結論を出して、法改正なら改正ということで進めていただきたいとお願いもいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
園田委員長 佐々木秀典君。
佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。
 きょうは法案審査であるわけですけれども、その前に、大変恐縮ですが、前回、三月の二十日の一般質問のときに私がお尋ねをした事項に関連して、ちょっとお確かめをしておきたいことがございますので、先にその問題に入ることをお許しいただきたいと思います。
 まず第一に、先般お尋ねいたしました米子市の初等・中等少年院美保学園における教官の被収容少年に対する暴行事件、これは事実があったことを法務省としても認めておられて、これに対して、矯正管区での調査あるいは検察庁での刑事的な事件としての捜査も行われているということがございました。
 そのときには、まだその行為者に対する処分は決まっていなかったわけですが、その後に行政的な処分があったと聞いておりますし、それからまた、刑事関係の処分はどうなったのか、そのことについてお知らせをいただきたいと思います。
鶴田政府参考人 お尋ねの暴行事案につきましては、本年三月二十八日、行政処分といたしまして、直接被収容少年に暴行を加えた九名の職員に対しまして、暴行の程度に相応いたしまして、四名を停職、その内訳は、一名が停職三カ月、他の三名が停職二カ月、そして一名について減給、四名について戒告の各処分をしております。
 また、監督者につきましては、園長及び次長を戒告、首席専門官、及び、暴行を加えた職員の直属の上司である統括専門官を減給の各処分といたしました。
 なお、園長につきましては、本年三月三十一日付で引責辞職しており、停職処分の四名につきましては、処分終了後、他の施設に異動させる予定にしております。
 以上でございます。
佐々木(秀)委員 刑事処分については、刑事局長かな。
古田政府参考人 お尋ねの事件につきましては、鳥取地方検察庁におきまして、所要の捜査を遂げた結果、本年の三月二十九日、被疑者九名について、起訴猶予を理由とする不起訴処分としております。
 不起訴処分の理由の要旨を申し上げますと、暴行の程度が総じて比較的軽微であること、暴行の動機が、被害少年らに規律違反があったので、園全体の秩序を維持し被害少年らを指導することにあったこと、本件当時、過剰収容の状態が続き、問題少年の指導等の措置を講じることが困難な状況にあったことが誘発の一因と認められること、さらには、被害者及びその保護者におきまして処罰を希望している者は全くいないというふうなこと、さらに、停職等の懲戒処分を受けていることなどを考慮して起訴猶予としたと承知しております。
佐々木(秀)委員 この処分の内容は、事案の内容との比較で妥当なのかどうか、私はかなり問題があるのではないかとも思うのですね。今、詳しい、詳細な事案の内容についての御報告は必ずしもなかったわけですけれども、きょうは時間がありませんから、一応今の御報告を承っておいて、後日また、これについてはお尋ねをしたりあるいは意見を申し上げたりしたいと思います。きょうは御報告を受けたということにとどめておきたいと思います。
 それからもう一つですけれども、これは通信傍受法の適用の問題です。
 前回、私が質問いたしましたときに、昨年度、一昨年度、これは通信傍受法が施行されて以後の二年間、適用例が一度もないという御報告を受けました。ところが、三月三十一日の新聞各紙、これは一紙だけのスクープではありません、各紙一斉にですけれども、この通信傍受法の初適用があったということが報道されております。
 その報道によりますと、これは警視庁だそうですけれども、覚せい剤を密売していたとされる川崎市内の暴力団組員ら数人を覚せい剤取締法違反などの疑いで逮捕していた。その逮捕について、この通信の傍受について裁判所に令状申請をして、これが認められて、ことしの一月下旬から約十日間にわたって関係者の通話内容を傍受し、その上で逮捕をしているというような報道が出ているわけですが、この事実があったのか、この事実は確かなのかどうか、これをまず警察庁にお尋ねしたいと思います。
吉村政府参考人 平成十二年中と十三年中につきましては通信傍受法の実施がなかったということにつきましては、既に国会で報告をしておりますとおりであります。
 ことし、平成十四年になりましてからの通信傍受の実施状況につきまして、随時これを明らかにいたしますと捜査上あるいは公判上の支障を生じるおそれがあるということで、これまでも随時の質問にはお答えを差し控えさせていただいているところであります。
 もちろん、捜査が終了するなど、公表しても捜査上の支障がなくなったという事案につきましては、通信傍受法二十九条に国会報告が定められているわけでありますが、その国会報告とは別に、その概要についてお答えする場合もあろうかと考えております。
 御指摘のような報道があったことはもちろん承知をしておりますが、そのような報道につきまして、警察として報道機関に対して発表した事実はございません。
 今申し上げましたような理由から通信傍受の実施の有無についてお答えできないということについて、御理解をいただきたいと思います。
佐々木(秀)委員 警察から発表したんじゃないということなんですけれども、それにしても、これは一紙だけじゃないんですね、数紙なんですよ。全国紙なんです、いずれも。全国紙数紙がほとんど同じ内容の記事を掲載しているわけですから、これはやはり自信を持って、責任を持って出したということになる。ニュースソースは相当確かなものでなければならない。警察が発表しなくても、私どもとしては、国民一般も、これだけ出ているのですからこの事実はあったんだと考えざるを得ないわけです。これはやはり、発表していないからお知らせできないというような態度では私はまずいと思うのですよ。
 それは、捜査のいろいろな問題で、まだ途中だということになれば、確かに全部をつまびらかにできないということはあるかもしれないけれども、今局長お話しのように、通信傍受法の二十九条では、国会に対する報告ということが義務づけられているわけですね。この点は私は評価いたしますけれども、お話しのように、年一回ということに限らず、必要に応じて報告をすることもあるという、これはぜひそうしてもらいたいと思うのです。
 何といっても、この法律は、国民の権利に非常にかかわり合いがある、問題があるということで、この委員会での審議でも随分深刻な議論がなされて、その上でつくられた法律なんですから、私は留意する上にも留意をしてもらわなければならないと思うのですね。そういう意味で、これに関する情報の公開というのは、この国会に対してあるいは委員会に対して適切に行われてしかるべきだというように私は思っているわけです。
 きょうの段階ではこれもまた時間がありませんからこの程度にしておきますけれども、議論をまた後にしたいと思いますので、本件についての経過あるいは結果についても、そしてまたこの手続が適正に果たして行われているのかどうか、またそれが本来の目的のように効果を上げるものかどうか。
 この新聞報道によると、逮捕されているのは末端の組員だけで、本来ならば、この法律の目的にしている組織そのもの、あるいは首謀者などの検挙に、なかなか一般の捜査方法では難しいから、だから特にこういう通信傍受が必要だと言われているわけだけれども、仮にそうでないとすれば、わざわざこの法律を置く必要がないという議論になってしまうわけですから、そういうことをどうか十分に意識をして対応していただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 そこで、本題の法案の質問に移りたいと思います。
 まず、先ほど同僚の細川委員から、非常に大所高所に立った、あるいは司法書士のあり方などについてのお尋ねがございましたけれども、私は具体的に各論の方から入っていきたいと思いますが、その前に一つだけ、今度のこの改正案の法形式についてお尋ねしたいのです。
 というのは、司法書士法の改正と土地家屋調査士法の改正、こういうことになるわけですね。これは本来、業務は不動産の登記に関する業務であるということで、その司法書士と土地家屋調査士さんの仕事の内容というのは関連していると言えば言えるんだけれども、しかし、やはり業種としては違うわけですね。しかも、それぞれの会員さんがつくっている協会も違うわけでしょう。きょうも両協会の役員さんたちお見えになっていますけれども、違うわけですね。
 そういうことも考えると、この改正というのは、本来はそれぞれの改正法案として出されるべきじゃないかと思うのに、今回はこれは一本になって出てきているというのが、どうも私は、何かその点をきちんと仕分けしていない、いささか問題があるんじゃないかと思っているのです。非常に便宜的だとも思うんだけれども、共通する部分があるといったってやはり違うと思うのですが、どうしてこういう法形式をとるようになったのか、その理由を言ってください。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
房村政府参考人 お答えいたします。
 立法形式の問題といたしまして、共通の動機に基づいて複数の法令を改正しようとする場合に、一つの改正案で二つ以上の法律の一部を改正するということは一般的に認められております。
 今回の司法書士法と土地家屋調査士法でございますが、いずれも法人化等につきましては規制改革三カ年計画に基づく改正でございますし、またその内容も非常に共通点が多いわけでございます。そういうことから、今回、司法書士法と土地家屋調査士法を一本の改正法で審議をお願いしたいということを考えたわけでございます。
 ちなみに、過去につきましても、司法書士法と土地家屋調査士法を一つの改正法で改正したということが、昭和四十二年の改正と昭和六十年の改正がございますので、そういう点も踏まえて、今回も一つの改正法でお願いをしたいということを考えたわけでございます。
佐々木(秀)委員 便宜的なということではわからないではないんだけれども、しかし、違うんですよね。特に今度のこの司法書士法の改正というのは、非常に大きな改正でしょう。特に、従来からの懸案であった簡易裁判所における訴訟の訴訟代理権を認めるなんという、これは本当に大きな問題だったわけですよ、弁護士会でもいろいろあって。それがやっとクリアされてできるということになったわけだ。このことについては土地家屋調査士さんの方は関係ないんです。
 というようなことを考えると、これを一本の法律でやるということは、私は、前例があるにしても問題がある、やはり別々に独自のものとして扱うべきだったというように思います。しかし、これはもう出されてしまっているからしようがない。これはしようがないんだけれども、これは苦言を呈しておきます。これからもこういうことを便宜的にやられたら私はいかぬと思う。今度のこれは本当に問題ですよ、本当は。そのことをぜひ肝に銘じておいていただきたい、こう思います。
 そこで、内容に入りますけれども、司法書士法の改正案で、三条の五号と七号に「相談」という言葉が出てまいります。
 司法書士さんたちが従来から、相談業務というか、業務の内容として相談ということをぜひ認めてもらいたい、やりたい、それを広げていきたいということで、消費者の皆さんのニーズにも応じていきたいというお気持ちを強く持っていたことは御承知のとおり。
 先ほども、法務大臣からも民事局長からも、司法書士さんは最も市民に身近な法律家だ、こういうお話がございました。ということになると、ここで言う「相談」というのは、私は、法律相談と書かれていないけれども、法律家の行う相談なんですから法律相談と理解をしてもいいのではないかと思うんですけれども、まず、それでよろしいかどうか。
房村政府参考人 まず、今回の新司法書士法第三条の第七号では、「民事に関する紛争」、括弧で制限はありますが、「について、相談に応じ、又は裁判外の和解について代理する」ということを司法書士の業務として明記しておりますが、これは、紛争についての相談に応ずるということでございますから、当然法律相談という理解でよろしいと思っております。
佐々木(秀)委員 そのお答えを聞いて安心しながら、しかし、実は五号と七号では、その相談の書き方がちょっと違うわけですね。というのは、第三条の五号の方では、「前各号の事務について相談に応ずること」、こうなっている。それから、七号の方では、民事に関する紛争について相談に応じ、この民事に関する紛争というのが、簡裁の民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるもので、今度の訴訟代理権限との関連でということになるわけですね。
 この両規定、七号の方は紛争に関する相談ということが書かれているんだけれども、これは、双方の違いというか使い分けというか、それが意識されてこういうように書かれたのかどうか、そこはどうなんですかね。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
房村政府参考人 五号の方で、「前各号の事務について相談に応ずること」というのは、前各号で登記申請であるとか裁判関係書類の作成という司法書士の業務について、それを当然依頼者から受ければ、その依頼の趣旨に沿って適切な登記申請あるいは裁判関係書類を作成するために一定範囲で相談に応ずることがあり得るということから、このようなことを改めて明記したわけでございますが、これは、基本的には、そういう登記申請あるいは裁判関係書類の作成についての相談ということになりますので、対象事務の性質から相談内容にも一定の制約が入ってくるだろうということは言えると思います。
 それに対しまして、七号の方はまさに紛争についての相談そのものですから、紛争解決に必要な法的手段の教示など、いわゆる法律相談として広く理解されているところがこの七号の、もちろん紛争についての制約はございますが、相談内容についてはそういう制約というものは考えにくいところでございます。
 そういう意味で、対象となるものが紛争についての相談であるのか、依頼を受ける事務についての相談であるのかということから、相談内容におのずから差は出るだろうと思っています。
佐々木(秀)委員 これもちょっと念のためにお尋ねをしておきたいんですが、御承知のように、私も弁護士なんですが、弁護士の場合には、法律相談に応じた場合に、その相談に対する報酬をいただくことができるんですね。有料法律相談。無料でもちろん法律相談することもございますけれども。そうすると、司法書士さんの場合には、相談に応じた場合に、それについて報酬をいただくことはできるのかどうか、それはどうなんですか。
房村政府参考人 司法書士の業務として法律に明記してございますので、それについての対価を報酬として受け取るということは何ら差し支えがございません。
佐々木(秀)委員 はい、よくわかりました。
 以前は私ども、私は旭川弁護士会に所属しているんですけれども、旭川の弁護士会でも旭川の司法書士会さんと共同で無料の法律相談をして、市民の皆さんに大いに利用してもらうなんということがあったんですね。これからもそういう機会がますますふえてくることを私どもとしては望んでいるわけですし、また、その相談内容、もちろん制約されるところも司法書士さんはあると思いますから、それをお互いに分担しながらでしょうけれども、場合によっては有料法律相談ということだってあり得るわけですね、共同でやる場合に。そういうふうにお聞きをしておきます。
 それから、現行法にある十条という規定が今度の改正で削除されることになりましたね。従来の十条というのは、「業務範囲を越える行為の禁止」、「司法書士は、その業務の範囲を越えて他人間の訴訟その他の事件に関与してはならない。」という規定であったんですけれども、これが削除されることになりました。この趣旨はどういうことなんですか。
房村政府参考人 現行の司法書士法の十条、先生御指摘のように、「業務の範囲を越えて他人間の訴訟その他の事件に関与してはならない。」ということを定めておりますが、これはねらいとしては、実質的には、現在、弁護士法によって、弁護士でない者が他人間の訴訟等に関与することを禁止しております。それと同じ趣旨で当初制定されたものと理解されているところでございますが、規定ぶりその他、やや異なっている面もありますので、今回、法改正をするときに、基本的に、他人間の法律問題に関与することは、一般的な禁止規定として弁護士法七十二条がございますので、そちらに譲るということにして、司法書士法の十条は削除するということにしたことでございますので、実質的な中身は変わっていないと思っております。
佐々木(秀)委員 ということは、弁護士法の七十二条を使う、その対象になるよ、こういうことなんですね。
 ただ、そうなってくると、果たしてそれで全部賄えるのかどうか。つまり、隣接法律専門職種だとか企業法務との関係から一概に弁護士法の七十二条でみんなくくるということでいいんだろうか。もう少しそれぞれの職種の実態なんかを踏まえて、それによる配慮というのもそれぞれの法律であってもいいようにも思うんだけれども、それを全部くくって支障はないんでしょうかね。
房村政府参考人 現行法の体系でいきますと、法律業務に関しましては弁護士法が一番基本的にございまして、そこで弁護士以外の者については法律事務の取り扱いを禁止しております。そういう一般的な禁止の中で、それぞれの専門士業がその専門士業の能力に応じた専門分野を設けて、そこについて、それぞれの士業でその職種として規定をする、そういうことによって弁護士法の適用が外れるという形になっておりますので、それは今回この十条を廃止しても基本的には同じでございますので、まさに司法書士の特性に応じて司法書士の業務とされたことについては七十二条は外れるという形になりますので、そういう意味では他の職種と比べましても差はございませんし、一般的に言っても、そういう形での扱いが現行法の理解としてよろしいのではないかと思っております。
佐々木(秀)委員 というようにおっしゃるのだけれども、さて運用上問題がないかどうか。これからこのような改正ができた場合に、また運用との関連で問題にするかもしれませんので、その点は心得ていてください。
 次に、先ほどもちょっと細川委員の質問の中でも触れられたかと思いますけれども、司法書士さんに、本当に長年の御要望、懸案が解決されて、簡裁事件の訴訟代理権が認められた。これは弁護士会ともいろいろなやりとりがあったんですけれども、弁護士会の方でも理解をしてこういうことが実現したというのは、本当に私は御同慶の至りだと思うし、よかったなと思っておるんです。
 しかし、そこまで認めながら、受任された簡易裁判所での民事訴訟、これが確定しても、その後の強制執行の手続については代理できない、こういう規定になっているのですね。これが改正案の三条一項の六号ただし書き、それから三条の七項、両方で強制執行についてはできないということになっているのは、これはどうも換骨奪胎じゃないかと思うのですよね。訴訟代理権まで認めておきながら、それがその段階で確定してしまった、そうすると、その事件の解決のためにはやはり強制執行までいかないと完結しないということになるわけで、このことについては、例の司法制度改革審議会でも、特にそれを認めちゃいけないよなんていうことは言っていないわけだと思うのですね。
 では、なぜ今度の改正案でそこまで踏み込めなかったのか。これについては、司法書士会あるいは司法書士さんからの要望もあるわけですよね。私は、それこそ業務研修をしっかりやって能力担保をされれば、せっかく訴訟代理権を認めたのだから、執行まで代理したっていいのじゃないかと。執行代理といったって直接に執行をやるわけじゃないですからね。手続の問題ですから。あとは執行官がやるわけですから、委任するということまでなんです。その辺はどういうことなんですか。
房村政府参考人 司法書士の方々に民事執行事件について代理権を付与すべきかどうかという点については、司法制度改革審議会の最終意見では何も書いていないわけですが、審議の経過では途中検討はされて、なお民事執行事件については相当高度な法律知識を含むものもあるので今後の検討課題ではないかということで、最終的に意見に盛り込まれなかったと承知しているわけでございます。
 そういう経過を踏まえて、今回の法案で、私どもとしても、民事執行事件の代理権については今後の検討課題ということでこの法案からは除いてございますが、訴訟代理権の行使の実績を積んでいただいて、その実績を踏まえて今後検討していきたいと考えております。
佐々木(秀)委員 今後の検討課題だということですね。では、ぜひ前向きに検討をしていきたいものだと思いますので、よろしくお願いします。
 そこで、今度は土地家屋調査士法の方に入りたいと思いますが、土地家屋調査士法人ができました。その業務の範囲について、改正法の二十九条というのがございます。
 この二十九条は、土地家屋調査士法人の業務の範囲として、「調査士の業務を行うほか、定款で定めるところにより、法令等に基づきすべての調査士が行うことができるものとして法務省令で定める業務の全部又は一部を行うことができる。」というふうにして、法務省令で定める業務、まだこれは決めていないわけですね。これではわからないわけです。
 どうもその辺が、どういうことを想定しているのかなと、ぴんとこないのですが、どんなことを想定しているのか。そしてまた、想定されているものがあるんだとすれば、むしろ法律の方で書いた方がはっきりしてよかったのではないかと思われるのだけれども、その辺どうなんですか。
房村政府参考人 自然人である土地家屋調査士の方々の場合は、法律で定められた土地家屋調査士の業務以外の業務については、法律で禁止されていない限り自由に行うことができるわけでございますが、法人ということになりますと、逆に、目的に記載されたこと以外の行為能力がないということになりますので、特段の手当てをいたしませんと、土地家屋調査士個人であればできるさまざまな業務が、法人にした場合にはできないということになってしまうわけです。それでは土地家屋調査士法人としてさまざまな不便が生ずることは目に見えておりますので、そのための手当てとして、今回こういう形で、定款に定めることによって目的とする土地家屋調査士の業務以外のことも法人としてできるようにした。
 ただ、これは、法人の目的が、あくまで土地家屋調査士業務を行うための法人でございますので、全く無関係なことを無制限に認めるわけにもいかない。しかしながら、実際に土地家屋調査士の方々が業務に関連してさまざまなことをやっておりますが、これは非常に多種多様でございますし、また時代の変化によって当然変わってくるだろう。そうしますと、法律に書いてしまって、時代が変わったのになかなか法律が変わらないということでは、これまた調査士法人の業務遂行上不都合が生ずるのではないか。そういうことから、省令で定めて、その範囲で定款で書いていただくということを考えたわけでございます。
 それで、具体的に考えておりますのは、例えば境界標あるいは境界に関する資料についての管理業務であるとか、不動産登記法十七条地図の作成に関する業務であるとか、あるいは調査士業務に関する講演会を開催するとか、あるいは事務員に対する研修を実施するとか、そういったようなことを想定しております。
 ちなみに、弁護士法人につきましても同種の規定を置いて、省令で定めるという形にしてございます。そういうことでございます。
佐々木(秀)委員 次に、改正法の六十八条、これは非調査士等の取り締まりの問題なんですけれども、六十八条は、「調査士会に入会している調査士又は調査士法人でない者は、第六十四条第一項に規定する事務を行うことを業とすることができない。」こうなっているのですね。
 六十四条と関連させているんだが、この六十四条の方を見ますと、この見出しは「業務」となっていて、主語が「協会は、」となっているのですね。「協会は、」云々云々とあって、「に掲げる事務を行うことをその業務とする」、こういうことになっている。主語が協会になっている。一方、六十八条の方は「非調査士等の取締り」ですから、法人じゃなくてこれは個人だろうと思うんだけれども、どうもこれの関係で、六十八条は何を言おうとしているのかというのはようわからない。
 もう少し読みやすく、わかりやすくしてもらわないと困ると思うんだけれども、これはどういうことなんですか。
房村政府参考人 六十四条は、公共嘱託登記土地家屋調査士協会の業務を規定しておりまして、協会がどういう事務を行うかということをこの第一項で規定しているわけです。その行う事務としては、「第三条第一号並びに同条第二号及び第三号」、括弧がありますが、「に掲げる事務」、まさにこういう事務を協会は嘱託、依頼を受けて行うんですよ、そういう規定でございます。
 それで、六十八条の一項は、要するに調査士でない人がこういう事務を行ってはいけません、そういうことを書いてあるわけですが、その行ってはいけない事務というのが、六十四条一項に書いてあります、「第三条第一号並びに同条第二号及び第三号」、括弧で長々書いてある、「に掲げる事務」、まさにこの事務なんですね。
 条文が非常に近いこともありますし、これだけのことをもう一度繰り返すのもということで、直前にあります、「第三条第一号並びに」云々と大分長いものですから、これを六十四条第一項に規定する事務と。
 法律的にはまさにもうそのとおりなんですが、確かに、協会の業務として規定されているものをここに使っているものですから、ややわかりにくいかなというのは反省はしておりますが、法律上は紛れはないと思っておりますので、御理解をいただきたいと思います。
佐々木(秀)委員 これは、わかりやすく解説書をつくってもらわなかったら、とてもじゃないけれどもみんなわからぬよ。わかりにくい法律をつくるというのは、下手ですよ、だめですよ。結局、よらしむべし知らしむべからずということになっちゃう。だめです、そういうことでは。もっとわかりやすくつくるようにしてください。もうこれもできちゃっているもので、本当は修正したいんだけれども、なかなか修正の余裕がないからこちらも困るんですけれども、できるだけ皆さんにわかりやすいような解説を心がけてください。
 時間が大分迫ってまいりましたので、最後になりますけれども、公共嘱託登記に関して、司法書士協会、それから司法書士でつくっている公共嘱託協会、それから土地家屋調査士の公共嘱託協会、これもできている。この役割は私は随分大きいと思うし、だんだんそれも認知をされて、業務範囲も拡大をして信頼も得てきていると思うんです。
 ところが、今度の行政改革で、従来、官公署であったものがいわゆる独立行政法人になる、性格を少し変えるということが大分ありますね。例えば国立大学なんかもそうですし、いろいろな研究機関もあるわけですけれども、そうすると、そういういわゆる独行法人の財産については、司法書士もそれから土地家屋調査士も、この公共嘱託協会の方が関与できないことになるのか、受託できないことになってしまうんじゃないかと思われるんですね。
 これはいささかいかがなものかとも思われるんですよ。それぞれ、今まではやれたのに、そしていろいろな財産を持っているわけでしょう。国立大学なんか演習林なんていうのがあって、私の北海道なんかにも、富良野というところに東大の演習林があるんですね。そういうことも今まではやれていたのが今度はやれなくなるなんということ、これは問題じゃないかと思うんだけれども、これはどうなんですか。
房村政府参考人 御指摘の公共嘱託登記制度、これにつきましては、公共事業に伴って大量に生じます登記事務を適切迅速に処理をするということによって、公共事業の適正迅速な処理を可能にするということでございます。そういう目的のために、司法書士あるいは土地家屋調査士の方々をメンバーとする公共嘱託登記協会をつくっていただいているわけでございますが、この対象となります官公署につきましては、政令で定めているわけでございます。
 御指摘のように、仮にその官公署等が独立行政法人になるという場合にどうなるかということでございますが、当然、政令で独立行政法人を対象としないと外れてしまうということになるわけでございますが、その点につきましては、本来のこの目的に照らしまして、独立行政法人が大量に不動産登記の嘱託を伴う公共事業等を業務の目的とするのかどうかという点を判断して、適切に対応していきたいというぐあいに考えております。
佐々木(秀)委員 今度の改正は、もちろん、今の問題はむしろ行政改革による法人の性格の変更というか、機構も変わるわけですから、それからの関連ということにはなるわけだけれども、しかし、いずれにしても、対応の仕方は確かに変化が出てくるわけですね。従来の関係ががらっと変わっちゃうとやはりいろいろなところで問題が出てくるんじゃないかと私は思うので、そういう実情を加味して対応をやはり考えていただかなければならないのではないだろうか。先ほど言った運用の問題もありますけれども、これを見定めて、なおよりよいものにしていかなければならないんじゃないかな、そういうことを感じます。
 以上申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
園田委員長 加藤公一君。
加藤(公)委員 民主党の加藤公一でございます。
 今回は、土地家屋調査士法、司法書士法、一括で出ておりますが、土地家屋調査士法につきましては、本日の諸先輩方の議論の中でおおむね疑問点は払拭をされておるかと思いますので、司法書士法の改正案、とりわけ、簡裁の訴訟代理業務の部分について、幾つかの視点から大臣のお考えを伺ってまいりたいというふうに思います。
 まず、改正後の司法書士法の三条二項一号の研修でございます。いわゆるちまたで言うところの百時間研修でございますが、この費用は一体どなたが負担をされるんでしょうか。
森山国務大臣 この研修は、司法書士が行い得る業務範囲を拡大するために任意に受講するものでございまして、その費用は、これを受講する司法書士が負担するというふうに考えております。
 なお、研修を実施する法人として想定されております日本司法書士会連合会においては、研修費用の一部をこの団体が負担することも検討していると承知しております。
加藤(公)委員 では、別の観点から伺いますが、司法修習生、司法修習については、今一体だれがこの費用負担をされていらっしゃいますか。
森山国務大臣 司法修習生の修習に関する事務は、法律上、最高裁判所に置かれた司法研修所がとり行うものとされておりまして、裁判所の経費は国の予算に計上されておりますので、司法修習生の修習に要する費用は国庫から支出されているものと承知しております。
加藤(公)委員 確かに、今の御説明のとおり、法律に従って国の予算で司法修習を行われている。一方、司法書士の皆さんは任意の研修だからと言われればそれまででありますが、しかし、別の観点ですと、これまで弁護士さんのみが認められていた訴訟の代理業務が、たとえ一部とはいえ司法書士さんにも今後認められる。
 一方は国の費用で修習が受けられて、一方はあくまでも自己負担ですよと。連合会から出るといっても、もとをただせば書士さんの集団でございますので。これは、やはり視点を変えれば不平等に当たるんじゃないかと思いますが、大臣、いかがお考えでしょうか。
森山国務大臣 この研修は、簡裁訴訟代理関係業務を行うための能力を涵養するということで、そのために、司法書士が行い得る業務範囲を拡大するために任意に行うというものでございます。ですから、この費用は、それを受講する司法書士本人が負担するのが相当ではないかと思います。先ほど、司法書士というものが改めてその内容について改革をして拡充していくということも必要ではないかという御指摘が質問者の中からございました。そういう場合にはまた違う考え方もあり得るかと思いますが、現在の場合は、従来の司法書士の仕事、免許を持って仕事をしていらっしゃる方が、さらに自分の業務を拡大したいということで任意にお受けになるということで、このようになっていると考えております。
加藤(公)委員 確かに、研修を受けるかどうかは任意かもしれませんが、国の司法制度の中でいえば、あくまでも利用者の利便性を向上させるために司法書士さんにもその簡裁の代理業務を受け持っていただくという考え方もあるわけでありまして、片や司法修習、確かにこれは弁護士さんのためだけじゃありません、検事さん、判事さんになられる方もあるし、それはさまざまでありますが、そちらは、当然国の費用でしていて、しかも、法律に従って給与もその間支払われているわけであります。聞くところによりますと、今年度のその費用、給与だけで予算が五十八億円ほどかかっているというふうに伺いました。
 それで、片や、幾ら任意の研修とはいえ、全額個人負担ですよというのは、どうも私の一市民感覚からいいますと腑に落ちないところがある。本当に利用者の利便性を向上するという国民の視点からいたしますと、何もすべて自費でやらせようということにしなくてもいいんじゃないか。もっと積極的に、簡裁の代理業務をしていただこうと思えば、国として何かしらのサポートをしてもしかるべきではないかと思いますが、いま一度大臣のお考えをお聞かせください。
森山国務大臣 先生御指摘のような考え方もあり得るとは思いますけれども、一方におきまして、司法修習生の経費を全部国が持つのはどうかという御意見もあるわけでございまして、いろいろな方面からこれから検討するべき課題がたくさんあると思います。したがいまして、今の時点では、当面このように新しい業務をつけ加えるということで任意にやっていただくという立場をとらせていただいております。
加藤(公)委員 司法修習の費用を全額国が負担するのがいかがかという議論があるという、私はそこまで予想しておりませんでしたが、御発言をいただきまして、感激していいのかどうかわかりませんが、この手の質問をするというのはなかなか勇気の要ることでございまして、実はこの委員会にもその司法修習を受けられた先生方多いものですから、恐らくこれは私でなければ聞けないだろうと思ってあえて質問させていただいております。
 あくまでも、私が申し上げているのは、国の役に立つから国費で負担をする、もうそれは当然結構なんです。ですから、検事さん、判事さんになられる方の研修費用を持つというのは、それは筋でいいと思いますが、非常に痛い視線を感じながら申し上げますと、弁護士さんの費用を国がすべて持つというのが本当に正しい道かということとのバランスで、司法書士さんの件については公費で負担をするのか、それとも両方とも私費にするのかということを今後ぜひこれは検討をしていただきたいなと。損得の問題ではなくて国としての筋論の問題だと思いますので、大変大切な血税の使い道でございますので、これはぜひ御検討をいただきたいと思いますが、せめて検討をするということに関して、いま一度御確認をとらせてください。
森山国務大臣 司法修習生というのは司法試験に受かった、合格した方でございますが、その後修習を受けなければ、何の役にも立たないと言っちゃ申しわけありませんけれども、仕事にはならないわけでございます。だから、これは義務でございますので、そういう観点もちょっとこの件とは違う、きょうの問題の司法書士さんの話とはちょっと違うと思いますが、先ほどもちょっと申し上げましたようないろいろな検討課題が提示されておりますので、全体としてよく考えるべきものだと思っております。
加藤(公)委員 ぜひお考えをいただきたいというふうに思います。
 続きまして、同じく研修の件でございますけれども、この研修を実際にいつから始められるのか。この点、改めて伺いたいと思います。
森山国務大臣 この改正司法書士法を成立させていただきますと、施行は平成十五年の四月一日を予定しております。同法第三条第二項第一号の指定を受けようとする者がそれまでの間に同条第三項に定める研修計画を策定いたしまして、改正法施行後速やかに法務大臣の指定を受けることができれば、平成十五年度の比較的早い時期、まあ希望的に申せば夏の前ぐらいから研修を開始することができるのではないかと考えております。
加藤(公)委員 では、その研修を始めるとして、一体どれぐらいの方がその研修を希望されるというふうに見込んでいらっしゃいますでしょうか。
森山国務大臣 既存の会員であります司法書士は約一万七千人いらっしゃいます。これらのうちどのくらいの方が研修を受講されるかというのは、今のところはまだ確実な予想は難しいわけでございます。
 しかし、日本司法書士会連合会が平成十四年、ことしの二月に会員を対象に実施いたしましたアンケートによりますと、約六〇%の会員が受講を希望していらっしゃる、さらに約二三%の会員が受講を検討しているという回答があったということでございますので、これらのことから考えますと、日本司法書士会連合会においては、一万人を超える者が希望するのではないかと予想しておられるわけでございます。相当数の司法書士が認定を受けるものと想定されるわけでございます。
 また、毎年、新規登録者は約六百人ぐらいでございますが、この新規登録者については、かなり多くの割合の方が認定を受けるための研修を受講するのではないか、これもまた予想でございますが、そんなふうに考えております。
加藤(公)委員 そうしますと、初年度、この法律が施行された後、まずとにかく、ざっとですけれども、約一万人の方が研修を受けたいというふうに希望されたといたしますと、果たして、その方々が皆さん研修を終えられるまでにどれぐらいかかるとお考えでいらっしゃいますか。
森山国務大臣 確実な予想は困難だという前提で申し上げますと、改正されてしばらくの間は多数の方が希望されるだろうというふうに思います。
 実施機関となると考えられております日本司法書士会連合会におきましては、年数回ぐらい実施したいというような御意向、そういう方向で検討していらっしゃるということでありますが、会場とか講師とか、そういう方々の確保の見込みについては今のところまだ現実に把握しておりませんので、具体的な見込みはちょっと申し上げかねるわけでございますが、まあ希望として申し上げれば、できるだけ速やかに研修の受講を希望する方に対する研修が完了するように期待したいというふうに思います。
加藤(公)委員 法が施行されますと、世間では、あ、なるほど、今度は司法書士さんの事務所に行ってもこういうことをお願いできるんだということに、一般の利用者からすると、そうとられるわけでして、普通であれば来年の四月一日から、あ、書士さんの事務所に行けば簡裁の件はお任せしていいんだなと思われる方が多いと思うんですね。
 ところが、今の御答弁ですと、研修スタート自体が夏か夏前、それから一万人の方が順番にということになりますと、あら、法律変わったはずなのに、いつになったらそのサービスしてくれるんだ、結局だめじゃないか、弁護士さんのところに最初から行った方がいいな、こういうことになってしまうんじゃないか。何も私、弁護士さんの仕事を奪おうと言っているわけじゃないんですが、結局そうなっては、実績を積んでいただいて利用者の利便性を向上させようという趣旨に反してしまうんじゃないかというふうに思います。
 その意味では、これは法律上いろいろ課題もあるかとは思いますが、法が施行される前に研修をスタートさせるということができないものでしょうか。大臣、いかがお考えですか。
森山国務大臣 そういう考え方もあり得るかもしれませんが、私どもといたしましては、やはり法律が施行された上で、それに基づいて行われるべきものだというふうに思いますので、その上でできるだけ早くというふうに思っております。
加藤(公)委員 もちろん急いでいただきたいのはやまやまですし、それは書士会の連合会の皆さんもそう御努力をされることになると思うんですが、そうはいっても、一万人がある日突然同時にその認定を受けられるわけじゃないわけですから、資格認定が始まった後も、ある方は何かしらの理由で先に代理業務ができる、ある方はずっと後になってしまう。そうすると、これは御同業の中で大変な不公平が生じることになるわけでして、例えば法の施行前から研修をスタートして、希望される方が皆さん研修を終わった段階で法施行ということになれば、この不公平感も払拭をされるんじゃないかと思いますが、いま一度伺います。これは多分法律上の知恵のレベルで改善をできることではないかと思うんですが、いかがでしょうか、大臣。
森山国務大臣 研修そのものが、法律が施行されて、その法律による指定があって初めて研修ができるという筋になっておりますので、残念ながら、御提案のとおりにはいかないと思います。現実には、できるだけ早くということでお願いするというしかほかに方法はないと思います。
加藤(公)委員 それであれば、私よりも法律のプロの方がつくられた法案でありますから、その研修の指定の施行だけ先にすればよかっただけのことではないかと思いますが、いかがですか。
森山国務大臣 私も法律の専門家ではありませんので、そのようなやり方が可能であるのかどうか、ちょっと判断いたしかねますが、現在お願いしているこの法案によりまして、これを成立させていただいた上で、できるだけ早くというふうに思っております。
加藤(公)委員 大臣に法律のプロじゃないと言われると、それはちょっと私もかみつかなきゃいけないわけでありまして、私は、国民の代表として、偉大なる素人の代表だと思って質問させていただいていますが、ぜひ誇り高き法律のプロとしてやはり法務大臣は御答弁をいただかなきゃいけませんので、ちょっとその逃げ口上は私も納得できないなと思います。
 法律上は施行を一部早めることは可能なはずでありますから、何も、きょう、この段階で、この法律をめちゃくちゃにしようとかなんとかいうことはありませんけれども、それは幾らでも知恵を絞ればできるはずのことでして、今後さまざまな法案の審議がありますし、また、提出をされる法案もあると思いますが、そこはぜひ公正、公平な観点というのをもっと盛り込んでいただきたい。これは注文を申し上げたいというふうに思います。
 それからもう一つ、今回の百時間研修ですけれども、どのような内容の研修になるというふうにお考えか、簡単で結構でございます、御説明いただきたいと思います。
森山国務大臣 研修は、司法書士が裁判書類の作成業務を行ってきたことに加えまして、簡易裁判所の法廷に訴訟代理人として立つために必要な能力を付与するために行われるものでございますから、具体的には、弁論とか証人尋問等の法廷実務や事実認定の手法に関する能力などにつきまして、講義とかゼミナールとか模擬裁判とか、裁判所の協力を得て行う実務研修など、実践的な研修が検討されていると思います。
加藤(公)委員 率直なところ、その研修で簡裁の代理業務が十分に行えるようになるというふうにお感じになられますでしょうか、大臣は。
森山国務大臣 司法書士さんは既に現在でも裁判関係の書類の作成業務をやっていらっしゃる法律家の一人でございますので、改めて新しくつけ加わる部分についての勉強をしていただくということでよろしいかというふうに思いますので、今申し上げたようなところが要点になるのではないでしょうか。
加藤(公)委員 確かに、書士会の連合会さんの方で恐らくは研修をされるということになると思いますから、そこは当然、必要な事項というのは盛り込まれるんだと思いますが、私の感覚からいたしますと、そうはいっても、例えば模擬裁判をやったり技術的な指導を受けても、実際、現場でOJTがないと、なかなか自信を持ってその仕事、業務に携われないんじゃないかというふうに思えてなりません。
 その意味では、現状、訴訟代理業務は弁護士さんがすべてやっていらっしゃるわけですから、弁護士さんの事務所で今後簡裁の訴訟代理権を得られる司法書士さんが研修を受けられる、あるいは、実際に一緒になって訴訟代理をして力を身につけられるという制度をつくってはいかがかと思いますが、どうお考えでしょうか。
森山国務大臣 簡易裁判所における民事訴訟事件は、従来、弁護士が余り扱ってこなかったことでございますから、国民の権利保護の観点、及び司法書士が裁判書類の作成業務を通じて得てきた専門性を活用する観点から、今回、司法書士に簡易裁判所の訴訟代理権が付与されたというものでございます。
 したがいまして、新しい権限を付与する前提となる研修、先ほど申し上げたような研修によりまして簡易裁判所の法廷に立つために必要な能力の付与を図っていきたいというのが現在の考え方でございまして、そのために、訴訟代理能力を有する弁護士及び弁護士会の協力も得ましてこの研修を充実したものにしていきたいというふうに考えております。
 また、御指摘のとおり、訴訟代理業務についてのノウハウの蓄積があるのは弁護士さんでございますから、今後、その点を踏まえて、司法書士の訴訟代理業務に関する資質向上のための方策についても検討していきたいというふうに思います。
加藤(公)委員 時間の関係がありますから少しはしょりますが、要は、現状ですと、司法書士さんが簡裁の代理権を得られても、例えば弁護士事務所にお勤めになってとか、あるいは、もちろん今の法律でいえば弁護士さんと共同の事務所を持ってというわけにいかないわけですので、実地でOJTというのに取り組むのが今のままだとなかなか難しいのかなという気がしておりまして、しかし、それをしないことには本当の力というのがなかなかつかないのではないかという気がしてなりませんので、この点もぜひ御検討をいただきたいというふうに思います。
 ちょっと別の観点の質問に移らせていただきますが、現行の司法書士法ですと三条の二号の規定で資格を得ている司法書士さんの数、いわゆる事務官の方が十年たつとというところでありますが、何人いらっしゃいますか。
森山国務大臣 現行の司法書士法第三条第二号の規定によって法務大臣の認定を受けた会員数は、三千九人でございます。
加藤(公)委員 実際に、司法書士さん約一万七千有余人の中でいいますと、一七、八%になるんでしょうか、二割弱の方がこの規定によって登録をされているわけですけれども、これは書士さんに限らずいろいろな資格がそうでありますけれども、一方では試験があって、一方では、私ども政治家の最近話題になっている秘書制度もそうでありますが、経験年数によってというのがある。
 これは何のために試験をやっているのかという観点からいうと、一律十年で区切って、はい資格を上げますよというのは、どうも腑に落ちない。本当にそれでいいんだろうかという疑問を持たざるを得ません。
 せっかくの司法制度改革の一環として、今回、この司法書士制度を大きく変えていこうというタイミングでありますから、この認定規定についても変更するお考えがあるや否や、大臣に伺いたいと思います。
森山国務大臣 司法書士法第四条第二号に係る特例制度の趣旨は、法務事務官等の職務に長年従事したことによって培われた知識、能力が一種の社会的な財産であるという考え方で、その者が持っている法律に関する知識と実務経験を社会において有効に活用することによりまして、国民の権利の保護や取引の安全のために貢献させようとする趣旨でございます。
 したがいまして、この制度は、現在においても国民の権利保護等に有用な存在意義の高い制度でございまして、非常に役に立っているというふうに思いますので、今後とも維持していきたいと思っています。
加藤(公)委員 確かに、国民的財産というふうに言われると、大層な知的資産かなというふうに思えてくるわけでありますが、しかし一方で、余り言いたい話ではありませんけれども、最近、裁判所の、最高裁の事務官の方の不祥事というのが二つ続けて発生もしておりますし、こういうスキャンダルの議論をここでするのは時間がもったいないのであえてしませんが、こういうことが発生をすると、そんな仕事をしていて十年たったら資格が取れるのか、一生懸命試験を受けようと思って勉強されている方からすれば、当然そう思われるわけでありまして、それは確かに国としての財産かもしれませんが、一方で、資格の公平性、公正性ということから考えますと、これはやはり見直してもしかるべきではないかと思います。
 とりわけ、十年という期間に関しては科学的な根拠は何一つないというふうに思いますので、司法制度改革の一環として、ぜひこの点も頭に入れておいていただきたい。きょうはこの程度にしておきたいと思います。
 次のテーマでございますが、司法書士さんの報酬の件について伺いたいと思います。
 法律が改正されますと、これまでの現行法の十五条六号の報酬に関する規定というのが削除されることになります。この改正の目的というものを伺いたいと思います。
森山国務大臣 会則記載事項の中から報酬に関する規定を削除いたしましたのは、規制改革推進三カ年計画、これは平成十三年の三月三十日に閣議決定したものでございますが、その三カ年計画におきまして、資格者間における競争を活性化する観点から、資格者における報酬基準を削除するとされていた点を実現するものでございます。
 従来は報酬の額が会則で定められておりましたが、この改正によりまして、報酬の額がより自由に定められるということになりまして、資格者間における公正な競争の活性化が図られるというふうになるかと思います。
加藤(公)委員 きょう公取の方にもお見えいただいているかと思いますが、ちょっと確認をさせていただきますが、この規定がなくなったときに書士会及び書士会連合会の会則に報酬規定を置くということになると、これは独禁法に触れますか、どうですか。
楢崎政府参考人 御説明いたします。
 公正取引委員会では、司法書士会などの資格者団体の活動につきまして、昨年六月に、独占禁止法上の考え方、いわゆるガイドラインの原案を公表いたしまして、各界から意見を求めまして、その意見を踏まえまして、昨年十月に、考え方、いわゆるガイドラインを公表したところでございます。
 御指摘の報酬規定の件につきましては、このガイドラインにおきまして、会則に資格者の収受する報酬に関する基準を記載することが法定されていない場合において、標準額、目標額等、会員の収受する報酬について共通の目安となるような基準を設定することにつきましては、独占禁止法上、原則的に問題となるという考え方を明記しているところでございます。
 ただ、報酬に関する活動すべてが独占禁止法上問題となるというわけではございませんで、さまざまな活動がございます。例えば会員が収受している報酬の調査をして、平均値あるいはそれを概括的に取りまとめる、あるいは、会員の報酬に関する原価計算とか積算の方法につきまして一般的な指導をするとか、そういうふうな活動にとどまる限りにおいては原則的に問題がない。問題となる事例と問題とならない事例を書いているところでございます。
加藤(公)委員 ということですので、今後は、自由に決められるというよりは自由に決めなければならないわけでして、そのときに、先ほども申し上げましたけれども、あくまでも利用者の利便性という観点からすると、個々の司法書士さんの報酬というのが公開をされていなければならないと思いますが、これについてはどういう手だてをお考えでいらっしゃいますでしょうか。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、資格者に依頼する国民の立場から見ますと、報酬額がどうなるのか、高いのか安いのかというようなことは非常に重要な関心事でございます。
 そこで、資格者団体の会則におきまして資格者自身が定めた報酬額を事務所において掲示するなどいたしまして依頼者に明示するというほか、統計等の数値や報酬額の算定についての考え方などをインターネット等により公開するということによりまして、報酬に関する情報の公開を図るということを検討しております。
 また、従来は報酬の額が会則で定められておりましたけれども、先ほど来お話しのように、この改正によって会則として決めることはできなくなったわけでございます。ただ、重大な関心事であります報酬額につきまして、個々の資格者が自分で決めた報酬額を自分の事務所に掲示をいたすなどいたしまして、依頼者が不安に感じないように明示してはっきりとするようにというようなことを検討しているわけでございますが、法務省といたしましても、省令におきまして個々の司法書士にその報酬体系を依頼者に明示する義務を負わせるべきではないかと考えまして、その検討をいたしております。
加藤(公)委員 今の答弁の最後のところを確認させていただきますけれども、今、現行の司法書士法施行規則の十七条で、報酬に関する規定を掲示する義務というのがありますが、では、これが今後は個々の資格者の報酬を明示させるということになるということでよろしいですか。
森山国務大臣 そういう趣旨でございます。
加藤(公)委員 そのときに、今もその掲示あるいはインターネットでの公開という話がありましたが、掲示をするといっても、一般の方がよくよく相談した後でないと見えないというのでは実は競争にならないわけでありまして、本当のことを言えば、表から見えるぐらいじゃないと意味がないと思います。あるいはインターネットも、この御時世ですから、インターネットというと何でも情報を公開しているように思えるかもしれませんが、利用者はまだまだ大きく偏っております。恐らくは、余り司法書士さんにお世話にならずに済む若年層の利用者が圧倒的に多いわけでして、本来の司法書士さんの利用者に当たる方々には、インターネットに載っていますよと言っても、なかなか十分に浸透するものではないと思いますので、これは、個々の資格者の皆さんの報酬というのが事前に明らかになって初めて競争が起きる、公正な健全な市場ができるわけですから、その点、ぜひしっかりと取り組んでいただきたいと思います。最後に、ちょっと大臣のお考えを伺います。
森山国務大臣 おっしゃるとおり、利用者にとってはっきりとわからなければ意味がないわけでございまして、明示をするということを特に義務づける趣旨で省令に決めたいというふうに考えております。
加藤(公)委員 その点、改めてお願いをして、あとインターネットの件も、それをやったからオーケーとぜひ思わないでいただきたいというふうに思います。まだまだ利用されていない方は多いわけでございますので。
 最後になりますが、あくまでも利用者の利便性の向上という観点から、この法律もそうですし、今後の司法制度改革にも取り組んでいただきたいということをお願いして、終わりたいと思います。
園田委員長 次回は、来る九日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十七分散会


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