衆議院

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第10号 平成14年4月16日(火曜日)

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平成十四年四月十六日(火曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 園田 博之君
   理事 佐藤 剛男君 理事 塩崎 恭久君
   理事 棚橋 泰文君 理事 山本 有二君
   理事 加藤 公一君 理事 平岡 秀夫君
   理事 漆原 良夫君 理事 西村 眞悟君
      荒井 広幸君    太田 誠一君
      岡下 信子君    小西  理君
      後藤田正純君    左藤  章君
      下村 博文君    鈴木 恒夫君
      西川 京子君    平沢 勝栄君
      保利 耕輔君    柳本 卓治君
      吉野 正芳君    岡田 克也君
      鎌田さゆり君    今野  東君
      佐々木秀典君    日野 市朗君
      山内  功君    山田 敏雅君
      山花 郁夫君    石井 啓一君
      藤井 裕久君    木島日出夫君
      中林よし子君    植田 至紀君
      徳田 虎雄君
    …………………………………
   法務大臣         森山 眞弓君
   法務副大臣        横内 正明君
   法務大臣政務官      下村 博文君
   政府参考人
   (金融庁総務企画局審議官
   )            佐藤 隆文君
   政府参考人
   (法務省民事局長)    房村 精一君
   政府参考人
   (財務省大臣官房審議官) 石井 道遠君
   政府参考人
   (中小企業庁次長)    小脇 一朗君
   参考人
   (東京大学大学院法学政治
   学研究科教授)      江頭憲治郎君
   参考人
   (経済団体連合会経済法規
   委員会・経済法規専門部会
   長)           西川 元啓君
   参考人
   (社団法人日本監査役協会
   専務理事)        高橋 弘幸君
   参考人
   (日本労働組合総連合会総
   合政策局長)       成川 秀明君
   法務委員会専門員     横田 猛雄君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十六日
 辞任         補欠選任
  西田  司君     岡下 信子君
  松島みどり君     小西  理君
  岡田 克也君     山田 敏雅君
  鎌田さゆり君     今野  東君
  水島 広子君     山内  功君
  不破 哲三君     中林よし子君
同日
 辞任         補欠選任
  岡下 信子君     西田  司君
  小西  理君     西川 京子君
  今野  東君     鎌田さゆり君
  山内  功君     水島 広子君
  山田 敏雅君     岡田 克也君
  中林よし子君     不破 哲三君
同日
 辞任         補欠選任
  西川 京子君     松島みどり君
    ―――――――――――――
四月十五日
 裁判所速記官制度を守り、司法の充実・強化に関する請願(植田至紀君紹介)(第一八五一号)
 裁判所速記官制度を守り、司法の充実強化に関する請願(佐々木秀典君紹介)(第一八五二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 商法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)
 商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第七八号)


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     ――――◇―――――
園田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 本日は、両案審査のため、参考人として、東京大学大学院法学政治学研究科教授江頭憲治郎君、経済団体連合会経済法規委員会・経済法規専門部会長西川元啓君、社団法人日本監査役協会専務理事高橋弘幸君、日本労働組合総連合会総合政策局長成川秀明君、以上四名の方々に御出席いただいております。
 この際、参考人各位に委員会を代表してごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、江頭参考人、西川参考人、高橋参考人、成川参考人の順に、各十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 それでは、まず江頭参考人にお願いいたします。
江頭参考人 江頭でございます。
 今回の商法等の改正案に対する意見を申し述べさせていただきます。
 ここ毎年、商法は改正を繰り返しておりますけれども、バブル経済破綻の後始末的な改正は一段落いたしまして、今回は、日本の会社の将来のあり方を示す、いわば前向きの改正であると思っております。
 今回の改正の目標は、お手元にお配りした紙に記載した四項目であったと認識いたしております。
 第一が、コーポレートガバナンスの実効性確保。これは、大企業についてのコーポレートガバナンスのあり方がその国の産業の国際競争力を左右するという認識が世界的なものになっており、我が国もその例外ではないことからきております。
 そして第二が、ベンチャー企業、合弁会社等の非公開会社を中心とした定款自治の拡大でありまして、これは、とりわけベンチャー企業の育成がいわば国策になっておりますけれども、ベンチャーキャピタルファンドは法的にいろいろのテクニックを使います。例えば、リスクを減少させ、かつベンチャー企業が成功した場合の利益を多くするために、大部分の出資を転換社債で行い、株式はほとんど持たない。それでも取締役の過半数は握りたい。米国のベンチャーキャピタルファンドなどはそういうやり方をしておりますが、我が国の会社法もそうしたニーズへの対応の必要がある。
 それから第三が、会社の計算、つまり企業会計関係でありまして、会計の国際的な統一化の動き等があり、会計基準等の見直しが今後進むことへの商法の対応が求められているわけであります。
 第四が、より一般的な企業活動の国際化への商法の対応という問題であります。
 そして、今回の法律案の内容とその評価でありますが、私の評価でありますが、まず、大企業のコーポレートガバナンスの実効性の確保につきましては、この法律案は、今までなかった厳しい規制を会社に押しつけるということではなくて、専ら会社の選択の自由、例えば定款自治等でありますが、会社の選択の自由を拡大することによる解決を図っております。
 マスコミ等で最大の争点として取り上げられておりました、大会社につき社外取締役の選任を強制するかという問題につきましては、強制しないという結論になっております。それから、一定の要件を満たせば重要財産委員会の設置を選択できる。あるいは、複数社外取締役を選任することにより、委員会等設置会社の形態を選択することもできる。それから、インセンティブ報酬も、採用しようと思えば採用しやすくする。それから、経団連等が特に望んでおられた特別決議の定足数の緩和ということもできるようにする等々でありまして、つまり、各会社がその会社に合ったガバナンスの形態を選択できるようにして、ガバナンスの向上を図るという考えであります。
 私は、結論といたしましては、この社外取締役の選任強制をせず、各会社の選択の自由の拡大という方向で法案が一貫されたことはよかったと思っております。今まで、特に会社の機関につきまして、ある制度を強制して機関のあり方をよくしようとしてきたわけですが、余りうまくはいってこなかったのではないか。したがって、むしろ選択の自由により制度間競争を促す方が効果的ではないかと思います。
 もっとも、各会社の選択というのが、各会社の経営者による経営者のための選択というだけであってはならないわけで、この点については最後にもう一度述べさせていただきます。
 それから次に、非公開会社に関する定款自治の拡大でありますが、法案にはお手元記載のような事項が盛り込まれ、ベンチャー企業等のニーズに十分対応できるようなものになっていると思います。
 それから、会社の計算につきましては、法務省令を会計基準の改正に合わせて迅速に改正することにより、国際的動向等に迅速に対応できる手法が導入されたと思います。
 国際化への対応につきましては、外国会社の計算書類の開示制度等、昔から指摘されていた制度の不備について今回の法案は解決を示していると思います。
 ただ、この国際化関連は、国際的な企業合同の進展等の関係でまだ課題を多く抱えておりまして、今回は、時間も限られておりましたために、国際合併等、そうした問題は手つかずのまま残されておりますので、そういったことは今後の課題であるかと認識しております。
 最後に、この改正案が成立した場合の展望または課題につきまして、特にコーポレートガバナンスの問題について一言させていただきたいと思います。
 第一に、法案は各会社がその会社に適合したガバナンスの形態を選択できるようにしたことにより、一種の制度間競争が始まります。つまり、従来からの監査役とそれから監査委員会という競争が始まる。それから、社外取締役を置きますと重要財産委員会を設置できる、それをするか否かというようなこと。それから、委員会等設置会社になりますと、監査の問題以外にもいろいろなところが違ってまいります。
 そういうふうに、各制度には一長一短あるわけでありますが、それが競争することによって制度の運用が長所を伸ばす形で行われ、よい結果が生まれることを期待する次第であります。
 第二に、制度の選択の自由が社長等の経営者にだけ都合のよい選択であってはならないわけで、特に、今日の大企業は、株主、それから取引先等会社債権者、労働者等のいわゆるステークホルダーの利害の集合体であります。すべてのステークホルダーの利益が可能な限り大きくなる選択でなければならないと思います。
 それには、経営者にそうしたすべてのステークホルダーの利益ができる限り大きくなるような選択をさせるプレッシャー、いわば監視が必要になると思います。例えば、証券市場による監視、あるいは労働市場による監視といったようなものであります。
 そうしたマーケットによる経営者の監視が働くかどうかということ。改正法成立後は、そういう形でいわば日本の各マーケットの質が問われてくるということになるのではないかというふうに認識いたしております。
 以上で私の意見とさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
園田委員長 ありがとうございました。
 次に、西川参考人にお願いいたします。
西川参考人 おはようございます。経団連で経済法規専門部会長を務めております新日本製鉄常務取締役の西川でございます。
 本日は、商法等の一部を改正する法律案につきまして意見表明の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 経団連におきましては、経済のグローバル化、IT革命の進展、産業構造の転換、資本市場の拡大など、我が国経済環境がかつてない速さで大きく変化している中にありまして、この変化に対応して、商法を我が国産業の国際競争力向上のために機動的に改正することを求めてまいったのであります。欧州各国でも自国の競争力強化に向けた会社法の改正が進められておりまして、我が国も世界をリードする会社法づくりが強く求められておる、こういう認識をしております。こうした事情を踏まえまして、法制審議会会社法部会がこれまでにないハードなスケジュールで審議を進めましたことは、この部会委員の一人といたしまして、ありがたく、また満足に思っている次第でございます。
 本日は、本法案に賛成する立場から、経済界にとってのこの法案の意義につきまして御説明いたしたいと存じます。
 今回の商法改正の検討に当たり、経団連におきましては、一昨年の十月に、お手元の配付資料の二ページにあります「商法改正への提言」を取りまとめまして、商法改正の五つの基本目標と、その目標実現のために改正すべき具体的な項目を整理し、発表いたしたのであります。今回の商法改正は、これら基本目標に合致するものであると評価いたしております。
 五つの基本目標の第一は、資料の三ページになりますけれども、強行法規性の緩和と市場重視の法整備ということでございます。
 会社法は企業活動を支えるインフラとしてフレキシブルなものであるべきであって、国が法律で会社のあり方を子細に決めるのではなくて、株主がその自治により定款によって会社のあり方を決め、その会社のあり方に対して市場で投資家が審判を下す、こういうことがとるべき方向であると思います。
 昨年の三回にわたる商法改正においても多くの規制緩和がなされておりますけれども、今回の法案では、会社機関について委員会等設置会社の選択的採用などが盛り込まれております。会社ガバナンスの選択肢をふやすということで評価いたしております。また、外国人株主など投資家の地域的広がりに対応して、招集通知を早期に発送し、適切な議決権の行使を促すことができるように株主提案権の行使期限を繰り上げること、さらに、定款変更や組織再編などを機動的に実施できるように、現状では株主総会の特別決議の定足数確保が困難になっている中で、この定足数を定款で緩和できるようにすることが盛り込まれております。加えて、連結経営が志向されている中で、公開会社について連結決算制度を商法上も導入するとともに、商法と証券取引法の計算書類を統一できるよう商法の計算に関する規定を省令事項にすることが盛り込まれており、市場を重視した法整備であると存じます。
 商法改正の目標の第二は、資料の四ページにございます、事業・組織再編に資する法整備でございます。
 平成九年の合併法制の合理化に始まり、株式交換・移転制度、会社分割法制等、立て続けにこの面での整備が行われ、昨年の国会では、組織再編に有用な金庫株の解禁でありますとか、グループ企業の従業員への付与が可能となるなどストックオプション制度の改善などが実現いたしました。今回の法案では、裁判所の選任する検査役にかえて、弁護士や公認会計士、税理士等が現物出資等の財産の調査をできる制度が盛り込まれており、事業再編の手続がより機動的になるものと期待いたしております。
 商法改正の目標の第三は、資料の五ページにあります、資金調達手段の多様化、効率化でございます。
 間接金融から直接金融へという流れの中で、昨年の国会でCPのペーパーレス化や新株予約権制度の創設、種類株式の多様化などを実現していただきました。今回の法案では、取締役、監査役の選解任について内容の異なる種類株式が創設されており、ベンチャー企業等の資金調達手段が拡充されます。なお、実務界の長年の要望でありました株券失効制度の創設等の株式関係の改善もなされており、株主や会社にとって株式関連コストの低減などが期待されるところであります。
 商法改正の目標の第四は、資料の六ページにございます、ベンチャービジネスの育成であります。
 今回の法案では、先ほど申し上げましたように、取締役等の選解任について内容の異なる種類株式を発行することが盛り込まれており、ベンチャー企業がベンチャーキャピタルから資金調達をする上で大変結構なことだと評価いたしております。また、閉鎖会社等で株主総会の機動的な決議が可能となる措置も規定されているところでございます。
 商法改正目標の第五は、資料の七ページにございます、IT活用の推進でございます。
 これにつきましては、既に昨年の国会におきまして会社関係書類の電子化等かなりの措置が実現いたしております。
 続きまして、今後の検討課題につきまして、お手元の資料の八ページにあります六点の要望を申し述べさせていただきたく存じます。
 まず第一に、資料の九ページにございます、社外取締役を多く置いた会社ほど従来型の組織に比べてガバナンスが行き届いているとの考えに基づき、いわゆる委員会等設置会社においては、利益処分について株主総会から取締役会への権限委譲がなされ、また、取締役の会社に対する無過失責任事項の過失責任化がなされる仕組みとなっております。この考えは、米国エンロン社の企業倒産疑惑の例を引くまでもなく、実務事例からも相当の疑問があるところでございますので、昨年の議員立法で強化された監査役制度を採用する会社におきましても委員会等設置会社と同様の措置がとられるように、検討が望まれます。
 第二に、資料の十ページにあります、自己株式取得手続の改善でございます。
 昨年廃止になった消却特例法においては、自己株式の消却を目的とする株式の取得に限ってではございますが、定款によって取締役会に授権をすれば取締役会決議のみで自己株式を取得することができることとなっておりました。ところが、昨年春の金庫株解禁等による改正により消却特例法は廃止され、自己株式の取得は原則自由となったものの、自己株式の取得には毎年の定時株主総会の決議が必要となったわけでございます。機動的な資本政策を遂行できますように、定款授権に基づく取締役会決議による取得を復活していただきたいと存じます。
 第三に、資料の十一ページにありますとおり、株主代表訴訟制度について、国際競争力向上の観点から米国の制度との整合性を図っていただきたいと思います。例えば、社外監査役、社外取締役により構成される訴訟委員会が経営判断の原則により訴訟を却下すべきだと提案した場合には裁判所はこの訴えを却下するという仕組みができないか、ぜひ検討をお願いいたしたいと存じます。また、昨年の改正により単元未満株主は代表訴訟提起権を有することとなっていますが、不合理な制度だと思います。見直しをお願いいたしたく存じます。
 第四に、資料の十二ページにあります、株券の不発行制度の導入でございます。
 これは社債の決済制度を整備した後の課題とされて今回の法案には含まれておりません。決済リスクの削減等のために、決済期間を短縮する上で株券の不発行制度は不可欠であります。ぜひ早期の実現をお願いいたします。
 第五に、資料の十三ページにあります、会社の公告の電子化措置であります。
 既に決算公告につきましては電子化措置が手当てされておりますけれども、広く公告一般につきましても導入をしていただきたいと存じます。
 最後に、資料の十四ページにございます、LLCの導入についてでございます。
 米国では盛んに活用されておりますリミテッド・ライアビリティー・カンパニーとは、ジョイントベンチャーである組織が資産を保有し業務執行を行い、出資者は有限責任でありながら、その組織の損益は各出資者に出資率に応じて案分されて、パススルーによる課税がなされるという組織形態でございます。事業再編の場合でありますとか、資金力のないベンチャー企業が研究施設を共同利用するような場合にも活用が期待できます。早期の実現をよろしくお願いいたします。
 さらに、企業組織再編法制の積み残し課題であると私どもが認識しております株式強制買い取り制度でありますとか、キャッシュアウトマージャー制度、それから江頭参考人からもお話がありました国際的な企業再編法制の整備、これらにつきましても検討をお願いいたしたく存じます。
 さまざま申し上げましたけれども、経済法制全般を見渡してみますとまだまだ課題が山積しております。本法案の早期成立を希望いたしますとともに、引き続きこれら課題につきまして先生方のお力添えを賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。
 以上でございます。(拍手)
園田委員長 ありがとうございました。
 次に、高橋参考人にお願いいたします。
高橋参考人 私は、社団法人日本監査役協会で専務理事を務めております高橋でございます。本日は、商法等の一部を改正する法律案の御審議に当たり、意見表明をする機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 私ども日本監査役協会は、昭和四十九年に設立されました、我が国ではただ一つの監査役監査制度の調査、研究、普及、発展を目的といたしました公益法人でございます。
 さて、昨年四月に本件にかかわります法律案要綱中間試案が発表されました時点で、既に私どもは、監査にかかわる事項及び監査の対象となる取締役並びに取締役会にかかわる事項を中心に、私どもの意見を述べさせていただきました。これは、今回衆議院調査室が御用意されました法務参考資料の中に収録されております。
 今回、法制審議会の審議を経まして公表されました法律案要綱を拝見いたしまして、私どもとしまして、引き続き、委員会等設置会社の監査に関しまして若干の懸念を感じましたために、去る二月に法務省民事局参事官室にこの点を申し上げまして、懸念が現実化することのないよう御配慮を賜りたいとお願い申し上げました。この内容は、同様にお手元のこの資料第百ページに収録されておりますけれども、改めてこの点を申し上げたいと思います。
 すなわち、監査委員会制度につきましては、監査役制度に代替させるものとして想定されていると思われますが、下記の点で現行の監査役制度よりも監査品質が低下する懸念があるので、そのような懸念が現実のものとならないよう配慮していただきたい。
 一つには、一部自己監査となります。取締役をメンバーとする監査委員会の監査は、主として執行役の業務執行を対象とするものではありますが、取締役の職務執行も監査対象に含まれますことから、一部自己監査となり、監査に対する客観性と信頼性を低下させる懸念があります。そこで、監査委員会のメンバーとなる者は、自己監査の弊害を招かぬように、高い精神的独立性を保ち、厳正な監査に努めなければならないことを周知徹底していただきたいというふうにお願いしました。
 二番目には、常勤者による監査等の措置が必要であるという点でございます。現行の監査役制度では常勤制がとられておりまして、監査役は取締役会、経営会議等重要会議への出席などを通しまして情報収集を行い、会社の意思決定のプロセスを日常的に監査し、リスクの発見、未然防止を図っております。監査委員会に常勤の取締役を置かない場合は、こうした監査に必要な情報収集力を低下させ、監査品質が低下する懸念がございます。監査品質の低下を防止する観点から、取締役会で決定しなければならないとされております「監査委員会の職務の遂行のために必要なものとして法務省令で定める事項」というものがございますが、ここにおきまして、監査委員会の情報収集を確保、充実させるものとなるよう法務省令の策定に当たって御留意をお願いしたいというふうに申し上げました。
 まず、この第一点に関して、若干御説明申し上げます。
 新しい会社の機関が選択制で提供されます場合、その会社機関のもとで行われる監査が、現行制度のもとで行われております監査役監査と監査品質の面で劣らない、少なくとも同等のものでなければならないということであります。
 監査の要諦は大きく申しまして二つ、独立性と有効性であります。独立性とは、監査をする人間がその対象から独立であること、有効性とは、監査意見を形成するために必要な情報が十分に入手でき、かつ、監査人がその情報を十分理解できることであります。
 今回の委員会等設置会社における監査委員会は、そのメンバーを取締役としておりますことから、監査の独立において若干の懸念があります。しかし、今回の新しい会社機関の提案は、経営の迅速化と取締役会の監督機能を高めるためのものであり、一元的機関を採用する以上、これは避けることのできないことであります。したがいまして、監査に当たる取締役はこの弊害を招かぬよう高い精神的独立性を持つよう周知徹底をお願いした次第でございます。
 第二点といたしましては、監査が有効であるためには、必要な情報がリアルタイムで十分に入手できる体制が必要でございます。
 そのため、現行制度では、常勤の監査役を置くことを定めまして、監査役は、取締役会その他重要会議に出席し、重要書類を閲覧し、取締役、使用人に適宜報告を求め、子会社調査を行うなどで情報収集と分析を行っております。これがありまして初めて会社が法令、定款違反を犯すことのないよう、また不当なリスクを冒さぬよう未然防止が可能となります。
 今回の法律案は、監査委員会に対して、現行監査役制度で与えております各種監査役の権限のほとんどを与えております。このことは、新しく提案されております監査委員会は、米国のオーディットコミッティーとは大きく異なって、みずから監査をする取締役であると理解されます。さすれば、監査委員会がその責任を果たすには、現行監査役制度と同様に常勤者を置くことが必然的に必要になろうかと考えます。この間の事情を法務省令策定に当たりまして御勘案していただくようにお願いいたします。
 以上の点は、私ども協会といたしまして重要な論点だろうと認識しておりますので、この場をおかりしまして繰り返し申し上げた次第でございます。本法律の成立後の法律の運用や省令の策定に関しまして、ぜひ御留意賜りたいと思います。
 以上でございます。(拍手)
園田委員長 ありがとうございました。
 次に、成川参考人にお願いいたします。
成川参考人 おはようございます。労働組合連合の成川でございます。
 私ども労働組合としましても、会社組織のあり方につきまして内部でいろいろ議論をしております。これらの議論を踏まえて、今回の改正についての私どもの考えを二点について申し述べさせていただきたいと思います。主に、従業員あるいは消費者、こういうステークホルダーの観点に立ちまして、会社監査の強化並びに会社情報の開示の一層の促進につきまして意見を申し述べさせていただきたいと思います。
 まず、会社監査につきましては、ぜひ強化をしていただきたいということで意見を申し述べたいと思います。
 今回の商法の改正では、委員会等設置会社の特例が提起されておりまして、大会社においては、定款において一定の要件を満たした場合には、取締役の中から、過半数が社外取締役で構成される指名委員会、監査委員会、報酬委員会の三委員会と、業務執行を担当する執行役を置くことができる、こうなっております。そして、監査役は置かなくてよい、こういう形の新しい制度がここで提案されてございます。
 この制度におきます監査委員会の権限は、取締役及び執行役の職務執行の監査及び会計監査人の任命及び解任の提案であり、その組織は、取締役三人以上で組織し、過半数が社外取締役であること、さらに加えて、当該会社もしくは子会社の執行役もしくは使用人または当該子会社の取締役は監査委員会のメンバーになることはできない、こういう定めで提起されてございます。
 この考えの中で、ぜひ監査委員会の権限の強化が必要であるというふうに指摘させていただきたいと思います。我々労働組合としまして、この間の会社のいろいろな不祥事、粉飾決算、あるいは安全性等の違反の事例が次々と発生しているということに大変心配をしているところでございます。日本の会社のいわゆる法令遵守、コンプライアンスがしっかり確立していないのではないかというふうに思っておりまして、ぜひこれらを早急に解決する必要がある、こういうふうに思っております。そのためには、ぜひこの監査の機能の強化をしていただきたいということでございます。
 今回の委員会等設置会社の監査委員会につきましては、法案で、違反行為の取締役会への報告、取締役による違反行為に対する差しとめ請求権、さらに会社及び子会社の業務に対する調査権を付与する、こういうことが書かれておりまして、これ自身は賛成でございます。
 しかし、さらに加えまして、監査の権限を強めるという趣旨からすれば、違法行為を行った取締役あるいは執行役に対しまして解任提案権をこの監査委員会に持たせるということが必要であるというふうに思ってございます。これは、従来の監査役会あるいは監査役についても同じようなこういう解任提案権を持たせるべきだというふうに思っております。
 二つ目には、監査委員会の組織メンバーについてでございます。先ほど紹介しましたように、今回の改正では、株主主権を反映するという考え方で、社外監査役が半数以上、そして執行役とその影響を受ける者を除外した取締役をもって監査委員会を構成する、こういう提案でございます。しかし、これによって監査の機能が強化され、監査の独立性が保障されるかどうかということについては、私ども疑問を感じるところでございます。業務執行役の影響を排除するということであれば、親会社の取締役あるいは執行役等の除外も必要である、こういうふうに思ってございます。
 さらに、監査の公正性あるいは独立性を保障するためには、単に社外取締役による株主主権を保障したとするのではなしに、ぜひ、会社の重要な構成要員である従業員の監査に対する声の反映をしていただきたい、こう思っております。すなわち、従業員が選出した従業員代表、または従業員が加盟した労働組合が選出した労働組合代表を監査委員会のメンバーにぜひ加えていただきたいという検討をお願いしたいと思います。
 これは、これまでの取締役と監査役によってのみ会社の管理機関を構成するというのではなしに、従業員が選出した代表、または労働組合が選出した代表を別枠でこの監査委員会あるいは監査役のメンバーにぜひ加えていただきまして、監査の公正性、独立性、そしてまたそのことによる効率性を高めていただきたいということでございます。すなわち、監査役の一人につきましては、会社の重要な構成員である従業員が選出したメンバーをぜひ別枠で加えていただきたいということでございます。
 この考えは、会社法制につきましては、株主が会社を所有するという所有の理論によって株主と経営者のみで会社の管理機関を今まで構成してきているところでございますが、それのみでなしに、会社の重要な構成員を参加させ、株主、経営者、従業員の三者による管理の機構を構成する中で、会社の公正性、効率性を確保するという形にさらに改善していただきたいということでございます。これは、従来の所有という概念を中心とした会社法制から考えますと戸惑うかもしれませんが、世界を見れば、ドイツの監査役会など、あるいはEUにおきます今の会社のあり方についての提案などを見ますと、会社利害関係者、いわゆるステークホルダーを会社の管理機関に参加させるという考え方はあり得るということでございます。
 したがいまして、ぜひ、これらの従業員を監査役あるいは監査委員会のメンバーに別枠で設けるということの御検討をお願いしたいというふうに考えてございます。これら従業員選出代表の監査の職務能力については、これをさらに高めるという趣旨で支援の形をつくりまして、しっかり能力育成を図れば会社監査の質をより高めることもできる、こう考えているところでございます。
 二つ目の問題は、会社情報のディスクロージャーにつきまして一層の改善をお願いしたいということでございます。
 現行の商法二百八十二条の二項におきまして、株主と債権者は、貸借対照表、損益計算書、営業報告書など、計算書類を閲覧できる、または謄本等の交付を受けられるという形になってございます。そして、昨年の秋の臨時国会におきましては、これを電磁的記録での交付も行えるという形にしていただきました。しかし、これは株主と債権者についての閲覧ができるということでございまして、残念ながら、従業員は今閲覧できておりません。ぜひ、従業員もこれらの会計の書類を閲覧できるという形にしていただきたいということでございます。これらの情報開示によりまして従業員がよりよく会社の内容を知るということは、株式会社の社会的責任、公正性を確保する、あるいは効率性を確保するという上で極めて重要であるというふうに思ってございます。
 また、情報開示につきましては、いわゆる貸借対照表等の公告の制度がございます。大会社につきましては、証取法等におきまして損益計算書も公告する、こういう定めになっており、また、先ほど紹介した昨年秋の臨時国会におきまして、これらについても電磁的記録での公告を受けることができる、こうなってございます。しかし、大会社以外につきましては、貸借対照表のみの公告であり、従来はなかなかこの公告がされていないという現実もございます。ぜひ、これら株式会社につきましては、貸借対照表のみならず損益計算書も含めまして公告をしていただく、特に電磁的な記録ということで、簡単に公告、見ることができる形を整えていただきたい、こういうふうにお願いしたいと思います。
 今回の商法改正におきましては、連結計算書類を作成し、これを承認を得た場合には公告するという形の提案がされております。これらの公告につきましても、電磁的記録により広く一般の人が見られるという形での公告をお願いしたいというふうに思っております。
 以上、二つの点につきまして改善をお願い申し上げまして、私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
園田委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
園田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。左藤章君。
左藤委員 おはようございます。自由民主党の左藤章でございます。
 きょうは、四人の参考人の方々に、大変お忙しい、しかも朝の時間にお越しをいただきまして、厚くお礼を申し上げます。
 それでは、今の御開陳の中のことで質問をさせていただきたいと思います。
 まず、西川参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。
 先ほど江頭参考人がおっしゃったように、コーポレートガバナンスの問題、経営監督のあり方、取締役制度の選択制なんですが、今までの日本の場合は、監査役を置いた取締役会というのがありました。今度、それに社外取締役を一人でも起用することによって、重要財産等委員会という新機関を導入する形で運営をする。俗に言うと、昔からいう常務会に近いんだろうと思います。それと、今いろいろお話ありました、取締役会から経営執行権を切り離して三委員会をそれぞれつくって、それぞれの三委員会に、経営監視という名目で、社外取締役が半数以上中に参加して執行させる。それで監査役は不要となる。こういう三つのシステムの中で、これについて、日本型、アメリカ型、俗に言うと真ん中になるのかもしれませんが、それぞれの長所、短所というのはあるんじゃないかなと思います。これについて、西川参考人の御意見を賜りたいと思います。
西川参考人 お答えを申し上げます。
 先生御指摘のとおり、三つのガバナンス類型ができる、一つは監査役設置会社であり、次は社外取締役を一人置いた場合の重要財産等委員会を設ける会社の類型、それから社外取締役を複数置いた場合における委員会等設置会社ということでございます。
 私ども、ガバナンスのあり方につきましては、二つに分けなければいけないと。一つは適法性確保のためのガバナンス、もう一つは、効率性確保、経営効率向上のためのガバナンス、こういうふうに二つガバナンスの定義を考えております。
 適法性確保のためのガバナンス、これは国が規制すべきである。今の社外監査役の強化による監査役会による監査、もしくは社外取締役による監査委員会による監査、このあたりは国が規制すべきである。それ以上のもの、経営効率の問題につきましては、国が関与すべきではない。これは、まさに会社が自由に選択をして、その評価は投資家が下すものである、市場の評価にゆだねるべきである。
 こういうふうに認識しておりますので、今先生の御指摘のありましたそれらについて、それぞれのいいところもあり、デメリットもこれはいろいろあるだろうと思いますけれども、それについて、私ども経済界の方から、これがいいものだ、これは悪いものだというふうなことを申し上げるというのは適切ではないと思います。何がいいかというのは、まさに市場に御評価をいただくというふうに認識いたしているところでございます。
 以上でございます。
左藤委員 今おっしゃったように、市場の評価というものは非常に大事だろう、このように思いますけれども、三委員会ができることによって、これまた先ほどお話ありましたけれども、社長に集中していた人事権とか報酬権とかいうものをそれぞれ委員会にゆだねることになります。それぞれのそういう考え方について、一万ほどの会社がこれを採用しようかなという話があるんですけれども、これについて、現状はどんなものでしょうか。西川参考人にお願いします。
西川参考人 お答え申し上げます。
 御質問の趣旨は、委員会等設置会社を採用する会社が一万ほどあるという……(左藤委員「話があるんですよ」と呼ぶ)今回の委員会等設置会社を選択できる会社は大会社、これは資本金五億円以上または負債総額二百億円以上、または、資本金一億円以上の中会社と呼ばれておりますけれども、中会社の中で会計監査人の監査を定款において選択する会社、これを含めまして、私は中会社の数は把握しておりませんけれども、大会社は一万社ということになっております。したがって、今の一万社が採用するということは、大会社のほぼすべてが採用する方向になるんではないかとのお話があるということでございますけれども、私どもの認識しているところでは、当面、この委員会等設置会社を採用する会社というのはそれほど多くはなかろうというふうに思っております。
 先ほど先生の方から、代表取締役を解任する権利、これを社外取締役が持つんだということでございますけれども、それはまさに制度上はそうでありますけれども、実際の仕組みといたしまして、本当に株主利益を考慮した社外取締役がそれほどたくさんいるのかどうかということになりますと、私ども、取締役を選任するに当たって、社外取締役が会社の人事権を持ち、報酬権を持つことが本当に会社の利益になるのかという説明責任を負わなければならない中で、一万の会社が直ちにそういう採用に踏み切るということは現実的にはないだろうと思っております。今のところ、数社程度がまず導入に踏み切るんではないか、一万社と数社の差だと思っております。
左藤委員 わかりました。
 それほどやはり、社外取締役の問題も含めて、いろいろ人選を含めて、難しい問題があるんじゃないかな。
 私ども、会社四季報を見ていますと、あ、あそこの会社に別な会社の社長さんがいるとか、元会長さんやとかというのはよく出ているわけですね。それだけお互いに交流があるからだなと思うんです。そうすると、監査委員会と言われても、言い方は悪いですけれども、今まで仲のいい人たちが多分なっているんだろうと思うんで、本当に純粋に監査委員会として機能するんだろうかという問題があるわけなんですけれども、これについてひとつ高橋参考人の御意見を賜りたいと思います。
高橋参考人 監査委員会のメンバーに選ばれた方が純粋に機能するかしないか、これはもうひとえにその方の精神的な独立にまつしかありません。
 社長もしくは代表執行役としては、自分の会社の取締役に人をお招きされるときに、全く見ず知らずの方をお呼びされるということは通常ないと思います。当然、何らかの形で知っていらっしゃる方をお選びしますので、その限りでは、友人ではなかろうかとか、学友ではないかということがありますけれども、選ばれた方は、その職責上自分の責任を果たすということでありますれば、決して友人であるから独立性を欠くということはないと思います。
 ただ、これはもう一人一人全部違います。アメリカでもこの問題でいろいろなことが起こっておりますが、使われておりますし、必ずしも全員が任務を忘れているということでもないと思いますので、一律では申せないかと思います。
左藤委員 そうだろうと思います。それぞれの倫理観を持ったすばらしい人が多分選ばれているんだろうと思いますが、そこで、今西川さんお話しありました、やはり社外取締役の人材というものについてのいろいろな問題が、人材不足と言っていいのかどうか知りませんが、あるようでございます。
 日本取締役協会というのが発足して、人材バンクというんですか、社外取締役を提供しようという話があるんですけれども、それ以外に、俗に言う有識者、大学教授とかそういう人たちを社外取締役に採用するとか、大株主や機関投資家、また年金基金の管理者等々、株主の立場から経営監視を行うという点から監査委員会等に入っていただく、社外取締役になって入っていただく、こういう考え方があるんですが、それについて、実際、現場というんですか、会社の常務さんとして御活躍ですから、この辺については、学者とかそういう人たちがどうなんだろうかという意見はどのように思われますか。
西川参考人 お答え申し上げます。
 今、新日本製鉄におきましては、社外取締役は一名も置いていない状況であります。
 一方、社外監査役につきましては、一人は法律学者、一人は工学の教授をされた方、もう一人は機関投資家であります日本生命の代表の方ということでございまして、社外監査役は三名を置いている状況でございます。
 今後、新日本製鉄におきまして社外取締役を導入するかどうかというのはまだ検討いたしておりませんけれども、また決めてもないわけでありますけれども、今先生がおっしゃいましたように、社外監査役がまさにそういうふうな状況になっている中で、社外監査役ではなくて社外取締役として、機関投資家の代表の方それから大学の先生の御経験のある方、この人たちを社外の取締役として招いてボードに参画してもらうということは十分に考えられるところでございます。
 現状のところは社外監査役ということになっておりますけれども、今後の検討課題ではある、こういうふうには思っております。
左藤委員 江頭先生にお尋ねをさせていただきたいと思います。
 高橋さんから先ほどお話しあった、常任監査役を置かないで監査委員会、これをすることについていろいろ、きちっといくのだろうかとか責任感はどうだろうかという問題もありますし、かといって、委員会ですと、社外取締役、常勤の取締役、社内と入っているわけですから、ある面では、従来の監査役制度から見れば一部自己監査、そういう考え方もできないことはないんじゃないかなという不安があります。
 それともう一つ、先ほど成川さんから、監査委員会に組合とかそういう方から登用してはどうか、こういう御意見もございましたけれども、江頭先生から見てこの辺はどのようなお考えをお持ちでしょうか。よろしくお願いを申し上げます。
江頭参考人 先ほど高橋参考人がおっしゃいましたこの監査委員、つまり監査委員会の構成員ですけれども、それには高い精神的独立性が必要である、それから、きちんとした監査ができるような組織といいますか、常任者を置くという形でおっしゃいましたけれども、この点は、まことにそのとおりだと思います。
 精神的独立性の点につきましては、これはまさに運用の問題でありますので、先ほど申しましたように、制度間競争ということがあり、みんなが注目しているということで、高いパフォーマンスが得られるように私は大変期待しております。
 それで、まず一つの点、自己監査という点でございますが、この点は、監査委員会は、妥当性監査も含めた取締役会の中に監査機関があることが望ましいという形で、取締役会の中の機関ということになっておりますので、おっしゃったように、自分で、一方では業務執行の決定をし、他方では監査をするという自己監査という面が出てこないではありません。
 ただ、監査委員は執行役を兼ねられないわけでありますから、そして、この委員会等設置会社での取締役会で決定するのは、業務執行は経営の基本方針にとどまると私は理解しております。具体的な日常の業務執行は執行役にゆだねるのがまさに制度の趣旨でありますから、その点で、自己監査になる局面が非常に多いとは思いません。
 それからまた、先ほど高橋さんが指摘された点、常勤監査役の点にもかかわるのですが、現在の監査役監査は、常勤監査役を初めとして、そういう方が一々自分で書類を繰られる監査なんですね。そうではなくて、この監査委員会制度による監査というのは、条文で申しますと、商法特例法二十一条の七第一項二号にありますように、監査委員会職務の遂行のため必要なものとして法務省令で定める事項、つまり内部統制組織をしっかりつくりまして、それが監査実務は行う、監査委員会は専ら監査戦略を議論するという形になりますので、その点でも、自己監査になるという面は非常に少ないのではないかと私は理解しております。
 それから、そういっても少しは自己監査の部分があるだろうということなのでありますが、これは確かにそのとおりなのであります。ただ、余り自己監査になるということを厳密に申しますと、現在の監査役制度にだって自己監査の面はないわけではない。といいますのは、いわゆる横滑り監査役というのがありますが、取締役から監査役になられる方、その場合は、自分が取締役であった期間のことを監査しなければならない場面が出てき得るわけであります。取締役の会社に対する責任の時効は十年でありますから、十年間は自己監査の面が現在の制度でもあるわけであります。そういった細かい点を言い出すと切りがないということではないかと思います。
 それから、いわゆる常勤監査役に当たる者を置くべきではないかという高橋さんの御指摘でありますけれども、法制審議会会社法部会ではそこまでは議論しておりません。先ほど申しましたように、実務はそういう内部統制組織にやらせる、そこが言ってみれば常勤なのでありますけれども、そこまでは議論しておりますけれども、監査委員として常勤者を置くかどうかというところまでは議論しておらないわけであります。
 それから、組合、従業員に監査の役割を担わせてはどうかという御指摘でありますけれども、この点は、コーポレートガバナンスの組織というのは国ごとにいろいろありまして、従来の伝統的な日本モデル、それからアメリカモデル、ドイツモデルといろいろあるわけでありますけれども、今回のこの委員会等設置会社のモデルというのは、これがアメリカモデルであることは否定できないと思います。そういう形でつくっておりまして、ドイツモデルを取り入れるべきかどうかといったようなことは、これは将来の課題かというふうに存じております。
左藤委員 どうも、江頭先生、ありがとうございます。
 最後に、成川参考人にお伺いをしたいと思います。
 いろいろ監査の問題でありましたけれども、実は、一つ、定款の変更や合併などを決める株主総会の特別決議について、必要な定足数を三分の一に下げようという話になっておりますけれども、合併とかそういうことになると、労働組合の問題含めたいろいろな問題が出てくると思います。これについて、三分の一じゃ少ないんじゃないか、もう少し高いハードルがいいんじゃないかという意見もあるのですが、これについて、成川参考人の御意見を賜りたいと思います。
成川参考人 合併あるいは企業分割など会社組織の変更につきましては、労働組合あるいは従業員組織との十分な議論の上で、雇用を保障してやっていただくというのが我々労働組合の前からの主張でございまして、これまでも、ぜひ会社組織再編等につきまして関係者の意見をしっかり聞いた上でやっていただく、こういう趣旨でお願いしてございます。
 今回の特別決議の要件を下げるということについては、これは定款等でしっかり定めるということでありますので、この段階でぜひ労働組合と十分議論した上で御提案し、確認していただくということをお願いしたい、こういうふうに思っております。
左藤委員 もう時間がありませんので、失礼します。
 本当に四人の参考人、ありがとうございます。
園田委員長 佐々木秀典君。
佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。
 きょうは、四人の参考人の皆さん、御苦労さまでございます。
 商法については、御指摘がありましたように、ここ数年、いろいろな問題についての改正をその都度行ってまいりました。今回の改正は、そういうことを受けて、これまでの部分的な改正との整合性を図るといいますか、一応の集大成を図ったものだろうと私ども心得ておるんですけれども、それだけに、いろいろな問題もないではないようにも思っております。
 そこで、今もお話がございましたけれども、今度の改正というのは、江頭先生御指摘のように、アメリカ流というか、アメリカの企業統制、ガバナンスの方式にどちらかというと非常に準じたというか、それをモデルにした改正だ、こういうように言われておるわけですね。初めて委員会の制度が置かれるということにもなる。しかし、特に監査の問題をめぐって高橋参考人からも懸念の点が御指摘された。それから、成川参考人からは、従業員の立場からのということで、これまた御指摘がございました。
 私は、企業で考えるべきことは、もちろん企業の所有者というのは建前上株主ということになっている、だからその株主を大事にする、株主の利益を大事にする、あるいは債権者の利益を大事にする、また取引先の利益も考えなければならないけれども、もう一つは従業員だと思うんですね。特に、今考えられている商法の改正は大企業に対するものであるわけですけれども、大企業であるだけに、従業員の数も非常に多いわけですね。
 ところが、バブルが崩壊後、大きな会社も、これは金融機関もそうですけれども、およそ倒産なんということはなかろうと思われている企業、金融機関がどんどん倒れて、上場会社でも今や倒産するということは不思議でないような状態になっている。その都度従業員のリストラが行われている。これは従業員に責任はないと私は思うのですね。やはり、経営者の経営のやり方が失敗しているから、間違っているから、あるいはその間に、その企業のさまざまな会計に関する情報なども、お話のように、知らされていないまま秘匿されてきた、その結果だと思うのですね。
 そういうことから考えますと、企業が破綻したときに一番迷惑を受け被害を受けるのは私は従業員だと思うんです。そういう意味では、会社の運営が本当にきちんと行われているかどうかに対して従業員が関心を持ち、これに対して影響をもたらすような言動を確保するということがどうしても必要だろう。
 そういう意味で、先ほど成川参考人から、この監査委員会の構成にぜひ従業員代表を入れてもらいたいと。ただ、これは別枠でというお話がありましたけれども、まず成川参考人にその点をお聞きしたいのですが、別枠でというのは、正規のメンバーとしてということなのかどうか。そして、その場合、そうでないとすれば、その権限はどういうようなことを考えておられるのか。この辺をまずお尋ねしたいと思います。
成川参考人 別枠でと言った趣旨は、従来の監査役ないし今度新しい制度におきます監査委員会を構成する取締役というのは取締役会等で選ばれるわけでございますが、それに対して、必ず一名の枠を従業員が選んだ代表に指定席として設けていただく、こういう趣旨でございます。別枠という表現はちょっと適切でないかもしれませんが、必ず一名従業員が選ぶということで、その席を設けてという趣旨でお願いしたい、こういう趣旨でございます。
 役目としては、いろいろな形でこれらの人の支援をしていくという中で、ほかのメンバーと全く同等の権限と責任を与えるということで結構ではないか、こう思っております。
佐々木(秀)委員 これは、法律で必ずというようにするのはなかなか難しいかもしれないですね。運用上の問題になるかもしれないのですけれども、これは、経営側として、西川参考人、どんなお考えでしょうか。
西川参考人 お答えを申し上げます。
 まず、日本の経営の現状は、それを是とするわけじゃございませんけれども、従業員が経営者になっていっているわけですね。今のところといたしますと、経営者のほぼすべてが従業員であるというのが実態でございます。それで本当にいいのかということ、株主利益を代表しないんではないか、そういう中で社外取締役の問題等が出てきているということでございますので、日本の経営者が、アメリカのように、従業員と対立することによって自分が利益を得るというふうなことではなくて、まさに経営者と従業員というのは同じボートに乗っているという認識の経営者が圧倒的だろうと思います。
 そういう中で、従業員の代表ないしは労働組合の代表を取締役会に、社外取締役というのか従業員取締役というのかわかりませんけれども、一名入れることを法律上強制するということは、私は、全くそれについては同意はいたしかねます。
 株主、それからたくさんいる債権者、取引先、特に中小企業はたくさんございます、そういう中で、自社の従業員を特別の存在と位置づけてボードの監査の役割を担わせるというのは、言ってみれば、かなり偏った監査になってくるんではないかという気もいたすところでございまして、また、その必要性等があれば、これは商法の問題ではなくて、労働者保護の面で別途検討が進められるところだろうとも思いますけれども、私個人の意見といたしましては、それはとるべき道じゃないんだろう。あまねく株主、従業員、それから地域、いろいろステークホルダーがいる中で特定の者を必ずボードのメンバーにしなければならない、監査をさせなければならないというふうなやり方につきましては、監査の中立性を損なうという点では反対をいたすところでございます。
 以上です。
佐々木(秀)委員 今、西川参考人のお話がありましたけれども、私は、冒頭申し上げましたように、会社の経営のあり方によって従業員が受ける影響というのは非常に大きいと思うんですね。
 もちろん、従業員は労働組合をつくることができる。特に、民間の場合には争議権まで認められているわけですね、労働組合法上。ですから、その経営のあり方についても交渉事項にすることができるし、それからまた、それをめぐって争議行為に訴えることもできるという権利はあるものの、しかし同時に、従業員も経営に対して常に関心を持ち、経営に対して意見を言うという労使協議会みたいなものが、これは欧米でもかなりモデルとして見られるようにもなってきていると私は思うんですね。
 そういうことで、労働組合というか、ある場合でもない場合でも、従業員として経営に関心を持つということは当然のことだと思うし、また、ある意味で、それに権限を与える、権利性を社内的に確保する、つくるということも、これは決して非難さるべきことではない、望ましいことではないかなとも私は思うんですね。
 そうした点では、今、もちろん法律的にこれを定めるところまでということは私もいかがなものかとは思うけれども、それぞれの企業がもう少し前向きに、この委員会の中のメンバーとして従業員の代表を入れるということ、入る以上は従業員の代表として十分に見識を持ち勉強してやるはずですから、そういうこともぜひお考えになった方がいいのではないか、そんなことを意見として申し上げておきたいと思います。
 江頭参考人、今度の法改正が、やはりアメリカ流といいますか、ドイツなどとは少し違うというようなことでございますけれども、ただ、昨年の法改正のときに、例の監査役の権限の問題での改正もしたわけですが、今回は、これを一元的にしないで併存して、委員会とそれから委員会でない監査役の存置と併存させてこれを選択させる、こういうことになっているんですけれども、この辺の整合性というか、これによる弊害というのは考えられないでしょうか。あちらの企業はこうだ、こちらの企業はこうだというようなことで、それは企業それぞれの独自だとはいうものの、法制のあり方としてはどうなんでしょうか。その辺は審議会などでも議論はあったんでしょうか。
江頭参考人 確かに、複数制度の併存というのは、日本では全く新しい会社制度のあり方であると思います。
 最初は多少混乱があるかもしれません。例えば、執行役という言葉にしても、従来から執行役員というのはおりますので、多少は混乱があるかもしれませんが、しかしながら、それは一時的なことであって、先ほども申しましたように、互いに相手を意識して、もうこの会社機関の問題というのは、私に言わせますと、組織図としてきれいな絵がかけるかどうかが問題の解決の本質ではなくて、まさに運用の問題だと思います。それで、運用がうまく制度の趣旨どおり行われるかどうかというのが一番大切でありまして、そのために制度が併存していて、それが互いに競争して切磋琢磨することがよいのではないかというのが今回の改正法の精神であると思っております。
 先ほど来、高橋参考人等からお話がありますように、監査役制度というのは、これは全く業務執行に関与しない者が監査するという、それはそれなりに長所がある制度であります。今回の委員会等設置会社という制度は、またこれは、一番重要な点は、社長が人事権を手放すということなんだと思いますが、そういう重要な長所もあります。
 そういうことで、互いに長所を伸ばすような運用が行われるということを私は期待しておる次第であります。
佐々木(秀)委員 高橋参考人、今度のこの監査についての委員会制度によって、監査の独立性、有効性あるいは公正性ということもあるんだろうと思いますけれども、そういう点で、むしろ質が落ちるんじゃないか、低下するんじゃないかというお話がさっきございました。
 その中で、これは先ほど御指摘のあった日本監査役協会の意見書の中にも書かれておりますけれども、厳正な監査に努めることをこの監査委員会のメンバーとなる者に周知徹底する必要があるということを言われている。しかし、周知徹底するというのはやや理念的なんじゃないかと思うんですね。本当に品質が落ちないように、有効にということであるならば、もう少し何か義務化するとか、こういう人たちについても、ちゃんとやらない場合にはこういうことになるよとか、ペナルティーとかそういうことがないと、ただ理念的に周知徹底というだけでは足りないんじゃないか、御指摘のことからすると。その辺はどうお考えでしょう。
高橋参考人 この委員会等設置会社は、今江頭先生もおっしゃいましたように、取締役会の監督機能を強化する、経営の効率を上げるという目的のもとに、いわゆる一元的機関と申しますか、単層型ボードを採用します。単層型ボードを採用する以上、やはり取締役さんしかおりませんので、その意味では、取締役が取締役を監査するという自己監査の要因は、これはもう消しようもない、こう思います。したがいまして、私どもとしては、これをあえて克服するためには、先ほど申しましたように、監査委員会のメンバーになる方の内面的な問題でしかないというふうに申し上げました。
 内面の問題は、実は制度、法律になかなかなじまないことでありまして、先生のおっしゃることはまさにそのとおりでございますが、私どもとしては、これの周知徹底というのをとにかく繰り返し繰り返し唱えることによって皆様のマインドを喚起する、これしかないのではないかと。
 ただ、実はこの責任を怠った方は当然事後的に責任を追及されるというところはあるわけですから、著しい任務懈怠に関しては事後的な責任追及という形で、当然法律はその手当てはしていると思います。そのことぐらいしかできないのではないかと思います。
佐々木(秀)委員 先ほど西川参考人は、この新しい制度ができても、実際にこれに取り組むというのは当面そんなに多くないのではないかというお話がございました。
 実は、マスコミなどでも、ことしの一月の十七日の日経新聞あるいは同日の読売新聞などでも、社外取締役に人を得られるか、人材の不足が深刻だとかいうことが言われておる。そういうことからなのでしょうか、実情として直ちに人材を得るというのが難しい、こういうことなんでしょうか。
西川参考人 お答えを申し上げます。二点あると思います。
 会社として、委員会等設置会社を設けた運営による方が株主利益になるのかということを考えたときに、今の監査役設置会社の方がいいのではないかというふうに思っている経営者が極めて多い。
 個別会社名を申し上げますと、例えば、自動車業界で世界一の業績を誇っているのはトヨタ自動車であり、五十数名取締役がおりますけれども、すべて社内であります。それから、今の状況下で常に利益を上げていっているキヤノンにおきましても、すべてが社内取締役であります。そういう会社を見てみますと、社外の取締役を入れて経営するよりは社内取締役でやる方がはるかに経営効率が上がって株主の利益のためである、こういうふうに考えている経営者が極めて多いということが言えます。
 鉄鋼業のケースも考えますと、今業績不振で、日本の鉄鋼業界も不振でございますけれども、アメリカの鉄鋼業界はすべて社外取締役が中心でございます。日本では社外の取締役が極めて少のうございます。経営成績を比べてみますと、アメリカの会社においては高炉の大手の半分がチャプターイレブンを申請している、そういう状況でございます。
 そういうことを見ましても、本当に、委員会等設置会社に移ったときに株主にとって経営効率が上がったよと言えるのかどうか、評価してもらえるのかどうか、ここは自信がないというのが一つ。
 それからもう一つは、やはり人材の面がございます。今までのように社外取締役を一名また二名入れて大所高所から御意見をいただくというふうなことは、各社、もう三割、四割の会社がやっておるところでございますけれども、本当に、そういう社外者の方に次期の取締役をだれにするかの権限をすべてゆだねて、社長の報酬をどうするのかをすべて社外者にゆだねる。そういう社外者について、本当に株主に説明できる、この方であればちゃんとしたことを判断してくれますと言える人が本当にどれぐらいいるのか。このあたりがまた制度上の強制ということになりますと、指名権、報酬権になりますとなかなか踏み切れないということで、なかなか進まないというふうに思います。
佐々木(秀)委員 ほかにもちょっとお尋ねしたいことがないわけではないんですが、時間でございます、ちょっとこれからだと足りなくなりますので、一応これで終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
園田委員長 石井啓一君。
石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。
 まず、経団連の西川参考人にお尋ねいたしますけれども、法案の中間試案の段階での経団連のコメントでは、委員会等設置会社、この三つの委員会と執行役を一体の制度とすることに対しては強く反対するというふうに表明をされておりましたけれども、今回の法案ではその御意向に反しまして一体の制度になっているわけですが、今回の法案の委員会等設置会社の制度に関しまして、評価なり御意見をまず確認をさせていただきたいと存じます。
西川参考人 お答えを申し上げます。
 中間試案に対する経団連のコメントでは、先生がおっしゃるとおり、委員会等設置会社の三つの委員会と執行役の強制的なリンケージということについては、私どもは、これはだれも食わない定食方式だ、それよりは、よりガバナンスの選択肢を広めるということではアラカルト方式にすべきであると。そういう中で、コンプライアンスという面、先ほど申し上げましたけれども、法律への適合性のためには、監査役制度か監査委員会か、どちらかを選ぶようにしてくれ、それ以外に指名委員会を設けたければ設ければいい、そのかわり、こういう効果がある、報酬委員会を設ければこういう効果があると。そういうことによって、監査委員会と監査役会との選択、あとの二つの委員会については任意に採用していったらどうかと。
 そうすることによって、よりガバナンスの構造が高まるのではないか、またそういうことを採用する経営者もふえてくるのではないかということを申し上げたわけでございますけれども、最終的に、法制審議会会社法部会の中における審議においては、やはり、人事権を持つ社外者がいて、報酬権を持つ社外者がいて、それでこそガバナンスが行き届くのである、三つの委員会と執行役とはセットである、こうでなければガバナンスは行き届かないのであるという御意見が大勢を占めたわけでございます。
 そういう中で、私どもとしても、選択肢が広がるという意味ではまさに選択肢が一つ広がったということでございますので、あとはそれを市場が評価されることでございますので、そういう面では評価している。できればもうちょっと選択肢があってよかったのではないかと今でも思っておりますけれども、全体の整合性、そういう中でのガバナンスということの向上を考えたときに、中途半端なものはいかぬよということであれば、それもやむを得なかったなと思っております。
石井(啓)委員 それでは次に、四人の参考人、それぞれお尋ねをしたいと思うんです。
 今回、委員会等設置会社では社外取締役が決定的に重要な役割を果たすわけでありますけれども、この社外取締役がその独立性あるいはその機能をきちんと果たすためには、人選をどうしたらいいのか。社外取締役の人選のあり方というのはどういうふうに考えたらいいのかということが一つ。もう一つは、取締役に就任した後、今申し上げましたような独立性を担保するような方策はいかにあるべきか。
 社外取締役の人選、独立性を保つための方策、この二点につきまして御見解をいただければと存じますので、四人の参考人、順次お願いをいたしたいと存じます。
江頭参考人 先ほど来西川参考人からもお話が出ておりますように、人材の問題というのが一番大きな問題だというふうに御指摘がされているわけであります。まさに私もそのとおりだと思います。
 日本の会社というのは、これはアメリカ型、日本型、ドイツ型、いろいろありますけれども、やはり日本の会社というのは、今までは、その会社に従業員として入って、そしてずっと出世していくという形でやってまいりました。いわゆるアメリカのような経営者のマーケットというようなものはないということは、これは否定しがたいことだと思います。
 これが実際にどの程度、よそに人材を求めるということが本当にできないのかどうか私は実務に暗いので必ずしもわかりませんけれども、多分、アメリカに比べれば、それは相対的に問題はあるんだろうと思います。それは今後、そういう制度をまさに整えていかなければいけないんだろうというふうに思います。
 アメリカの制度、アングロサクソンの制度というのは、本当に日本と対照的で、内部者を信用しないんですね。それで、エンロンの場合ですと、社外取締役が監査委員会をつくって、そしてまた社外のアーサーアンダーセンというものを雇って監査させる。それがうまくいかなかったわけですけれども、日本は、社内者を信用する、社外の人間などは信用しないということでずっとやってまいりましたので、この新しい制度にマッチするものがすぐにはできないのかもしれないというのは御指摘のとおりかと思います。
 それから、独立性の担保の点ですけれども、これもまさに運用ということでありまして、確かに法的な責任というのはありますけれども、裁判で法的責任を追及できるというケースは比較的まれであります。ですから、運用がうまくいくかどうかは、まさにその人の、個々の方々の精神的なあり方によることが多いわけであります。そのためには、最初から私繰り返しておりますけれども、制度間競争による緊張というのが一つには役に立つんではないかというふうに考えております。
西川参考人 人選についてでございますけれども、先ほど来申し上げておりますとおり、人選に非常に苦労するであろうという中で、どうすればいいのかということについてお答えすることは極めて困難でございます。
 恐らく、経営者の中でいろいろな活動をしている中で、この学者はいい意見を言ってくれるな、この大株主というのはかなり辛口の意見を言ってくれるな、そういう中で、自分に優しい者ではなくて、自分を厳しく鍛えて辛口の意見を言ってくれる人、そういう人を見つけていかなければいけないわけでございますので、これは極めて極めて難しいことだろう。だけれども、その委員会等設置会社を目指す会社においてはそういう努力をしなければならないということだろうと思います。
 独立性の問題でございますけれども、先ほど成川参考人の方から、親会社の者の社外性というのは否定すべきではないかという御意見がございましたけれども、これは恐らく会社法部会でも議論のあったところでございます。会社のガバナンスというのは株主のためのガバナンスであるという中で、大株主から派遣されてくる者というのは、まさに株主の利益を代表する者として社外性を十分に持っているということであろうと思っております。
 独立性の確保につきましては、今の法案で手当てされているところでよろしいんではないかと思っております。
高橋参考人 現在も、日本の企業では相当の数の社外取締役がいらっしゃると思います。
 ただ、私どもが観察いたしますのに、今社外取締役を務めていらっしゃる方々は、どちらかと申しますと、大所高所から御意見を述べられる、自分の産業背景から専門的な御意見を述べられるという意味で、経営者の参考になる意見を述べられるということがお役柄として一番ではなかろうか。
 したがいまして、今回の委員会等設置会社で考えられております人事権、報酬権を、もしくは監査をされるために会社に招かれていらっしゃるという認識をしていらっしゃる方はまだ少ない。したがいまして、このタイプの会社になられましたときの社外取締役は、全く構えを変えられておいでになる必要があろうかと思います。
 そういう意味で、先生おっしゃいましたように、どういう方がいいのかというのは大変難問でございますが、こういう意味で先輩でありますアメリカの事例を見ますと、アメリカで議論されていることはある程度参考になろうかと思います。
 一つは独立性でありますが、独立性を決めるに当たって、従来のアメリカはいわゆる形式的な独立性を言っておりましたが、今回のいろいろな事件から、もう少し実質的な独立性を見るべきではないかということの議論が今たくさんございます。実質的というのはなかなか決めにくいのでありますが、会社と経済的な関係があるかないかとか、いろいろな意味での、形だけではない独立性を見たらどうかという意見が出ております。
 それから、特に監査委員会に関しては、アメリカでは殊さらに財務経理に関する専門知識が要るんだと。従来はそれを要求してなかったと思いますが、財務経理に関する専門知識を強く要求する。また、一人は過去において財務経理担当の役員をしたことのある人間じゃなきゃいけないとか、そういうことを言い出しているのは一つ参考になります。
 もう一つ、就任後の問題でありますが、これも、最近アメリカで議論されておりますのは、お迎えした社外取締役に関して、その会社から最大限の情報を提供して、会社の業態もしくは置かれているその背景の業界の流れを周知徹底すること、もしくはその会社におけるガバナンスの手法を新しく選任されました社外取締役員には徹底的に教育をしなければいけないということを言っております。この辺は、私どもとしても参考になると思います。
 以上です。
成川参考人 日本の今の取締役の状況は社内取締役が中心になっている、こういうふうに我々も理解しておりまして、社外取締役、どういうふうな形で今後これらの方々がふえていくのか、あるいはそういう人材が育っていくのか、我々としても見詰めているという現状でございます。やはり、現状からすれば、これを育てるような制度を何らかの形で準備、用意をする必要があるんじゃないか、こういうふうに見ております。
 具体的に言えば、特に監査委員会等の社外取締役であれば、やはり専門性等が必要だと思っておりまして、これらについてそういう専門性、今財務関係ございましたけれども、法務なり、これらの点について何らかの形でこれを育成するような、そういう社会的な制度も必要なんじゃないか、こう思ってございます。
 それから、独立性の点でございますが、西川参考人の方からは、むしろ株主をしっかり代表するということでございますが、我々は、株主にといいましても、現在の経営は大株主の意見を非常に尊重しながらやっている、こういうのが現状だと思いまして、むしろ少数株主、これらの意見をどうやってしっかり反映していくのか、こういうシステムとして社外取締役などの制度が提起されておる、こう思っております。そういう意味で、この独立性については、単なる多数株主でない人たちの意見をしっかり聞く、こういうことで、我々としては、従業員などあるいは少数株主などがそれぞれ意見が出せる、そういう制度をしっかり準備していくというのが大事ではないか、こう思っております。
石井(啓)委員 それでは、時間の関係で最後の質問になると思いますが、また四人の参考人に御質問したいと思います。
 アメリカのエンロンの事件では、社外取締役や監査法人などがきちんと機能していなかったということで、米国式の監督・監査方式が万能でないことを証明したんではないかというふうに私は思っておりますけれども、この事件をどういうふうに受けとめて、この教訓をどういうふうに生かしていったらいいのか、それぞれの参考人に御見解を賜りたいと思っております。
江頭参考人 コーポレートガバナンスの制度につきましては、私は、絶対的なこれさえあればいいという制度はないというふうに思っております。それは、時代時代によっても違いますし、あるいは国民性等によっても違うのかもしれません。
 そもそも、エンロンの事件が起こるまでは、アメリカの制度が何かグローバルスタンダードというふうに言われておりましたが、八〇年代は、アメリカの制度というのは、アメリカ人自身がぼろくそに言っていたわけですね。つまり、主として証券市場が経営者を監視するという制度だ、だから視野が短期的になって、日本やドイツのように、これは本当かどうか知りませんが、メーンバンクが経営者を監視している制度はより情報に通じていて長期的視野で物を見る、だからアメリカは日本やドイツにやられるんだ、こう言っていたわけですが、今はそれが逆転しているということであります。
 ですから、要するに、コーポレートガバナンスの制度というのは、絶対的なものはないのであって、その会社に合ったもの、その時代に合ったものを選ぶのが大切だというふうに思っております。
 エンロンの場合というのは、まさに先ほど申しましたようにアメリカンスタイルでやっていたわけですけれども、一つには、外部者とそれから経営者の間に利益相反があったという問題があり、それから、著しくデリバティブ等が複雑になり、それに会計がついていけなかったという問題もあるんだと思います。
 いろいろな問題があると思いますが、とにかく絶対的な制度はないんだということを改めて認識させたものだというふうに思っております。
西川参考人 江頭参考人と全く同意見でございます。このガバナンスをとったから一〇〇%完璧であるということはないと思います。
 したがいまして、重要なのは、まさに経営トップの強い法律遵守意欲、倫理観だろうと思います。ただ口先だけで法律を守れよと言うのではなくて、本音と建前とが一致したところで、法律を守ることが会社のサステーナビリティーのためには必須であるということをまさに心の底から従業員に訴える力。それを踏まえて、規定の整備を図り、従業員教育を図り、定期的な監査を行い、違法な行為があった場合には厳罰に処する、こういう会社のコンプライアンスシステムというのが極めて重要だ。まさに、トップの信念なるものが一番重要だということをエンロン事件は思わせたわけでございます。
 しかし、私どもがエンロンの事件を見て感じますのは、捜査当局の機敏な動き、あれを受けて証券取引委員会が直ちに法改正等に動こうとしている動き、不祥事があったときの国を挙げての是正措置をとるスピードの速さ、このあたりというのはやはり資本主義を守ろうとするアメリカの国のよさがよく出てきているところだなと感心しているところでございます。
高橋参考人 もう今お二人の参考人から十分な御意見がございましたので、つけ加えることは余りございません。
 企業不祥事というものは、時代を問わず、国や制度を問わず、どこの国でも実は起こります。したがいまして、ガバナンスの大変な先輩国でありますアメリカでも、その制度は万全ではなかったということにはなります。
 ただ、今西川さんもおっしゃいましたように、今大変な議論を呼び起こしまして新しい対応策がつくられておりますので、これからまた見るべきものはあろうかと思います。
 今回、私どもが、メディアを通してでございますが、いろいろ情報をとっている中で、二つやはり問題があったのは、もう御指摘のように、独立であるはずの取締役が独立であったか、それから独立であるはずの会計監査委員が独立であったかという独立性の問題と、もう一つは、これは日本とアメリカの方式の差だと思いますが、監査委員会というのは御承知のように年に四、五回会議を開いて監査を終えます。向こうは、自分では監査をしない、監査をする人間を監査するというスタンスでございますので、したがいまして、内部には深く入らない。アメリカの場合には、内部に入っていけばいくほど独立性を失うという考え方でありますので、私がさっき申しました日本の常勤監査役はアメリカ流では全く独立性がないということになります。距離を置いてしか独立性は担保されませんので、どうしてもそうなります。
 ただ、私どもの日本の方式は、予防監査と私ども申しますが、常勤者はやはり毎日毎日を見ながら、ぼやの段階で消すというのが我々の身上でありますが、アメリカ流は、火事が起こったら火を消した後で責任者を罰する、こういう事後対処、この辺はやはり哲学の差だろうと思います。
 どちらがよいかというのはよくわかりませんが、日本としては、私どもは予備監査、未然防止に邁進している、こういうことでございます。
成川参考人 エンロン問題は我々十分検討しておりません。
 それぞれ関係者が法律遵守、コンプライアンスをしっかり確立するということが極めて大事じゃないか。我々労働組合としましても、みずからの法律遵守の考えを徹底し、それを各分野のところでぜひ発言していく、こういうことが我々として求められているのじゃないか。こう受けとめているところでございます。
石井(啓)委員 大変ありがとうございました。
園田委員長 西村眞悟君。
西村委員 よろしくお願いいたします。
 まず、江頭参考人に理論上のことをちょっとお聞きいたしますが、先ほど先生は、本件改正は会社のガバナンス上の選択の幅を広げたとおっしゃいました。しかしながら、委員会等設置会社においては、四委員会、これは指名委員会、報酬委員会、監査委員会、執行役、この四つがセットになって初めて導入可能なんですね。
 また、先ほど高橋参考人が御説明いただいた分野なんですが、監査委員会を導入すれば監査役との併存を許さないということも本件の改正でございます。
 これは、理論上セットでなければならない、また監査委員会が導入されれば監査役は理論上要らないということなのか。それとも、理論上でなければ何か実務上の問題があるのかということについて、お教えいただけますか。
江頭参考人 セットの問題でありますけれども、今回の改正のそもそもの発端は、やはり経営の効率あるいはスピード、これが現在の、これまでの制度では日本の会社は図れないという経済界の要望が最初にあったんだと思います。それで、現在は取締役会でかなり細かいところまで立ち入って決定しなければいけないことになっているのを、もっとスピーディーな手続でやれるようにするというのが、まずこれが最初にあったんだと思います。
 そうなりますと、これは権限を委譲するわけでありまして、まさに今回の制度は、執行役、これは社長を頂点とする業務執行機関でありますけれども、そこに新株発行まで含めて大幅に権限を委譲する。そうなりますと、それに対する監督というのが必要になる。そこで三つの委員会、指名、報酬、監査というものが必要である。こういうことで、セット、執行役だけを置くということにはならなかったんだというふうに理解しております。
 それから、監査委員会を置くと監査役はもう置けない、そういう制度になっております。これも、先ほど申しましたように、監査委員会というのは、妥当性監査まで含めた取締役会の中に監査機関を置くということで、その方が実効性があるだろう、少なくともそういう会社があるだろうという考えでできているわけでありまして、そして内部統制組織を使って監査する、そういうシステムであります。
 そうなりますと、それに加えて、現在の監査役にも監査委員会にない長所があるから置くということも論理的にはあり得ないではないのですが、屋上屋を重ねる制度になるだろうということで、監査役制度は採用しない、こういうことになっているのだというふうに理解しております。
西村委員 先生の御説明が監査で終わりましたので、高橋参考人にも監査についてちょっとお伺いをしますが、今御説明があって、お聞きになっていたと思いますが、先生の御説明は、監査委員会は自己監査となるのではないか、そして結論部分では、これはいたし方ない、このようにおっしゃっていたわけですが、監査の根幹は独立性であるとするならば、自己監査は監査の死活的な問題として重大な本改正案の欠陥であるというふうに論理上は結論づけざるを得ないんですが、これはいかがでしょうかということと、しからば、本改正案が、これは死活的な問題だと私は先生の御説明を聞いて結論づけざるを得ないと今申し上げたわけですが、監査委員会を導入するならば監査役との併存を許さないというふうな流れは妥当ではないという結論になるのではないでしょうか。御意見をお願いいたします。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
高橋参考人 先ほど申しましたように、監査ということに関しましては、二つの重要なファクターがあるというふうに申しました。一つは独立性、一つは有効性であります。
 独立性と申しますのは、先ほど申しましたように、監査する人間と監査の対象との間がはっきり峻別されているということであります。そういう意味では、取締役が取締役自身を監査するというのは、その限りにおいては自己監査ということで、監査の原則には反します。
 ただ、先ほどからいろいろ御説明ございましたけれども、今回の委員会等設置会社においては、会社の業務執行のほとんど、何%と申しませんが、日常の業務執行はほとんど執行役が行いますので、監査委員会の取締役が執行役を監査する限りでは、自己監査の矛盾はありません。
 取締役会が行うものは何なのか。これは会社によって微妙に違いますので私ははっきりわかりませんが、先ほど江頭先生おっしゃったように、基本的な方針の決定といいますか承認行為でありますと、そういう意味のファクターは相対的には少ないんだろうという意味で、効率性、迅速性をたっとぶがゆえにこの単層型ボードをどうしても採用するというのであれば、その部分に関しては、私としましては、監査論からしますと矛盾はありますけれども、その弊害というのは方法によっては相当軽減できるんじゃないか、そのためにこういうことをしていただきたいというふうなお返事をした次第でございます。
西村委員 実務上の問題として西川参考人にお聞きします。
 いろいろ労働組合も、また社会の目もうるさいので、報酬委員会だけは設ける、また、本法は利益処分権限を取締役に吸収しているわけですから、監査についても、先ほどの自己監査のおそれありという御意見もあったことにかんがみ監査役は残すとか、こういうふうな経営戦略上の選択があってもいいと思うんですが、実務上はどうなんでしょうか。
西川参考人 お答えを申し上げます。
 先ほど申し上げたとおりでありまして、私ども経団連といたしましては、監査役会と監査委員会のどちらか、それ以外に任意の委員会ということを申し上げたわけでございますけれども、自己監査という面は、それほど大きな問題だとは認識しておりませんでした。監査委員会でもいい、監査役会でもいい。なぜならば、監査役会、監査委員会によってなされる評価なるものがおかしければ、あとは市場の問題なんだ。自己監査であるから手を抜く、監査役であるから手を抜かないということは恐らくないだろうと思います。理念的にはそういう対立はあると思いますけれども、実際は、自分たちのしたことを市場が評価していく、場合によっては法律問題も惹起するという中で、ガバナンス競争をさせるという意味では、私としては、監査役か監査委員会か、それでも十分ではないか。
 十分ではないかといいますか、今の自己監査の問題というのをそれほど大きな問題として認識するべきではなく、ガバナンス競争の一環としてとらえればいいんではないか、そういうふうに思っております。
西村委員 江頭先生にちょっとお伺いしますが、本法は、利益処分権限を株主総会ではなくて取締役に与えておるわけですね。昭和四十年代の前半に商法を習った人間が教えられたことからするならば、これは驚天動地のことであると解釈せざるを得ません。
 所有と経営の分離ということで、経営は迅速に独断専行でやる、しかし利益を株主にもたらすためだ、その利益こそ所有の最後に残った本質的な部分であって、これは株主総会が決めるんだと。しかし、それを取締役に任せた。
 さてそこで、本法改正案は、整合性という観点から非常に矛盾に満ち満ちておるのではないか。先生、携わられたので、理論的な観点からお聞きしますが、そこまで取締役に権限をゆだねれば、本法二十一条の七第三項で執行役に委任できない事項をかなりつくっておられる。いわゆる重要な営業の処分とかそんなのは執行役ができないんです。
 一方では執行役が決定できない事項をかなりつくっておりながら、つまり執行役を余り会社内部的には信頼しないという前提でありながら、株式制度の根幹である利益処分は取締役に移して、それで、そのために取締役の任期は一年にして、そして先ほどの監査の問題が出てくるんですが、監査委員会は、先ほどの高橋先生の御説明では自己監査というふうな信頼性低下につながるような制度的な問題になっておる。一体、利益処分権限を理論上取締役に吸収、回収することができるのかどうか。できるとして、回収した後の取締役の権限、執行役の権限の整合性は本法ではどうなっておるんだと。
 実務では、取締役が会社の利益処分もやれるんだ、そして、五年後の事業展開のために今設備投資を投入していくんだ、こういうダイナミックなことができる。しかし、その同じ執行役が二十一条の七の三項でかなりの部分は足を縛られて権限は持たされない、こういうことなんですよ。これがちょっと私の疑問とするところでございますが、お教えいただけますように。
江頭参考人 委員会等設置会社が利益処分権限を取締役会の権限にしている、逆に言いますと、株主総会からはその権限を奪ったという点でありますけれども、実は経団連等は法制審議会の会社法部会で、大会社については、委員会等設置会社でなくても、すべて総会から利益処分権限は奪って取締役会権限にしてくれという要望を出しておられました。
 これは、実はアメリカの制度がそうでありまして、利益処分を幾らするかあるいはしないかということもマーケットが評価すればいいんだというのがアメリカの哲学であります。日本もそれに倣うべきだというお考えから出たものだと私は理解いたしましたが、結論は委員会等設置会社に限ってこれは認めるということになったわけです。
 その理由は、アメリカは確かに取締役会限りで利益処分ができて総会には何の権限もその点ありませんが、アメリカは四半期決算で四半期ごとに利益配当をするわけです。ですから、これは当然総会にはかけられないということがあります。それに対して、日本は四半期ごとに配当するという制度を導入するわけでもありませんから、そういうことは必要ない。
 それからまた、現在物言う株主がふえておりまして、現に今回の六月の総会でも、ある株主の主張によれば、利益処分をしないで金融資産をうんとため込んでいる会社に対して委任状合戦をしかけるというようなことが新聞記事に出ておりますけれども、そういう物言う株主も出てきたところで、経済界の要望のような株主総会から一切利益処分の権限を奪うというようなことをするのは適当ではないだろうということで、今回はそれは採用されませんでした。
 しかしながら、委員会等設置会社になりますと、先ほど言いましたように、日常の業務執行の権限は執行役に大幅に委譲されますけれども、その反面、指名委員会が株主総会にかける取締役人事の原案をつくって、それが確定的なものになってしまう、会社案になってしまう。言いかえますと、社長も一年ごとに首を切られるかもしれないというような状態になる。そういう厳しい監督がなされる会社にあっては、今言いましたような利益処分を全然しないでというようなことは行われないであろう、そういう会社においてはこれは市場の評価に任せても弊害が生じないのではないかということで、委員会等設置会社に限っては利益処分を取締役会で行うということに私も賛成した次第であります。
 それから、執行役に権限をゆだねたにしては、二十一条の七第三項は、執行役にゆだねられない、取締役会で決定しろというものがたくさん並んでいるではないかという御指摘でありますけれども、確かにこれは条文を見ますとたくさん並んでおりますけれども、並んでいるのは、いわゆる人事の問題と、いわゆるファンダメンタルチェンジといいますか、合併とかそういうこと、それから執行役と会社との利益相反に関すること、そういったことでありまして、日常の業務執行は新株発行等も含めて大幅に執行役にゆだねられている。
 新株発行が取締役会でなくて執行役限りでできるというのはアメリカですら余りないのではないか、アメリカでも取締役会でやっているんではないか。ですから、経営の迅速性ということからは、今回のは執行役の権限にゆだねている面は大変大きなものだというふうに私は理解しております。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
西村委員 重複になるかもしれませんが、西川参考人にお聞きしますが、現実に我が国でこの委員会制度の採用をして企業を経営していく会社はどの程度数があると予想されておりますか。
西川参考人 お答えを申します。
 本件につきましては、先ほどお答えいたしたところでもございますけれども、私ども、委員会等設置会社を選択をする会社というのは数社、とりあえず数社程度でスタートするんではなかろうか。法律の施行後、数社程度が設置を真剣に考えているんではないか、そういう程度だろうと今のところは認識しておりますけれども、何分、各社にヒアリングしたわけではございませんので、漏れ聞こえてくる程度が数社かなという程度でございます。
西村委員 最後に成川参考人にお伺いしますが、先ほどのをもう少し御説明していただきたいなという部分であります。
 と申しますのは、監査委員に労働組合が選出する監査役を選んでほしいということでございました。つまり、労働組合の代表であるというふうに私はお聞きして認識しましたけれども、これはもう少し御説明していただきたいと思う点でございますけれども、労働組合は、商法上ではなくて、労働法上団体交渉権を与えられておりますですね。今回の新しい制度における会社は、株主から利益処分権限を、言葉はきついですが、剥奪して臨んでいるわけですね。労働組合は、一方でそれだけ利益があるならばベースアップに使ってくれと。会社側は株主抜きにしてやっておるわけですね。
 今までは、株主総会が株主の権限としてこれだけは配当に回せと納得して、その余を労使がやっておるわけでございますが、今回は裸のままの、株主抜きのものが労使の、設備投資に充てるんだ、いや、今ベースアップに使えという交渉の対象になっている中で、監査役が労働組合の代表として出てくるという会社の株は果たして値段がつくのかということであります。
 そういうことをちょっと先ほど疑問に思ったんですが、もう少し残された時間で御説明していただけませんでしょうか。
成川参考人 我々、従業員代表あるいは労働組合代表をぜひ監査委員会あるいは監査役のメンバーに選んでもらう制度にしていただきたい、こういうことで先ほどお願いを申し上げました。
 その趣旨は、従業員のもちろん利益もありますけれども、むしろ会社の長期的な経営の安定並びにいわゆる法律遵守、公正性をしっかり確立していくということについて、従来の経営者のみでなしに、やはり経営者と一定の距離のある従業員という立場で監査に当たるというのが会社の公正性あるいは法律遵守に大きく貢献する、こう考えております。もちろん経営者は従業員のことを配慮している、こういうことで日本の多くの経営者は言っておりますが、やはりこれは配慮というだけでなしに、従業員みずからが選んだ代表が会社の業務のあり方についてしっかり監査をするということが、会社の公正性なりあるいは長期的なしっかりした経営にとって重要だ、こういう趣旨でございます。
 そして、要求しているのは、利益処分のところで我々は要求しているのではなしに、まさに会社の業務全体の公正性あるいは法律遵守の面での監査だけを求めておりまして、こういう利益処分については当然団体交渉の席でやるべき問題だ、こういうふうに限定した上での役割を我々としてぜひ担いたい、こういう提案でございます。
西村委員 ありがとうございました。
 終わります。
園田委員長 木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。四人の参考人の皆さん、大変ありがとうございました。
 江頭参考人からお聞きをいたします。
 今回の商法改正の第一の目標は企業統治の実効性の確保だとおっしゃられました。私、この十数年来の日本の企業社会を見ますと、バブル時の建設、不動産のあの湯水のような不動産購入、そして破綻、そしてそれの崩壊した時点での証券の不祥事、金融の不祥事、そして今流通の不祥事、今また雪印等の問題が吹き出しておりまして、全体的に日本の企業社会は企業統治、コーポレートガバナンス、企業執行部の暴走に対するチェックが働いてこなかったと認識するものでありますが、江頭参考人の基本認識はどうなんでしょうか。
 もしそうだとすれば、どこが問題だと認識しているのか、二つの面で意見を開陳していただきたい。一つは、商法の組織法上のあり方の問題、そしてもう一つは、法律外の日本の企業社会の実態面の問題、その二つの面からの、法制審議会の幹部としての意見も踏まえて意見を述べていただきたい。
江頭参考人 ここ十年ばかり日本の企業が非常に厳しい状況にあるということは、私も承知しているつもりであります。
 どこにそういう不祥事等の原因があったのかということで、商法の組織上の問題、それから企業の実態の問題、二点からという御質問でありますが、これはある意味では、法律面といいますか商法の組織上の問題、それから実態面、二つにつながるところがあるかと思いますけれども、コーポレートガバナンスの組織が社内者で固められているというところにやはり一つの原因があったのではないかというふうに思っております。
 暴走し出すととめられないというのは、相対的なものでありますけれども、社内の人間だけで組織されていると、やはりそういう面は、そうでない組織、アメリカ型といいますか、社内者を信頼しない、そういうあれと比べますと、やはりリスクの評価等については、社内者だけでやっていると弱い面はあるのかなという気がいたします。これは、社内だけでやっておりますと意思決定も早いし、いい時代はいいんですけれども、そういう面はあるんだろうと思います。
 要するに、これは企業の実態の面にもつながるんですけれども、ガバナンスの組織がそういうふうにできていて、かつ外部的な目がなかなか――アメリカですと基本的にはこれはマーケットが評価する、企業をマーケットが監視するというシステムでありまして、これは八〇年代までは、先ほどもちょっと申しましたけれども、悪く言われていたわけですね。アメリカはそれをやっているから短期的視野で経営が行われて、日本やドイツに負けると言っていたんですけれども、それはそれで強みもあるわけであります。
 日本の場合はやはり、例えば証券市場の監視といったものがアングロサクソンの国に比べますと弱いということは、これは否定できないんだろうと思います。原因は、一つは伝統。つまり、アングロサクソンの場合は、投資家のための役割を担うものが自然発生的にマーケットで出てくるわけですね。例えば、典型的には格付であります。
 あれは、ジョン・ムーディーという人が勝手に社債の安全度を評価いたしまして、わかりやすい指標にして投資家に売ったわけです。それが割と当たっていたというので、格付をとらないと社債も出せなくなるというので、企業がお金を払ってでも格付をとるようになった。投資家のための制度としてそういうものが出てくる。ところが、日本の場合は、適債基準を撤廃するということの関連で、昔の大蔵省がかねや太鼓で格付機関というのをつくらせたわけであります。そういうふうに、日本のマーケットに比べますとアングロサクソンの方がそういう点で投資家のためのマーケットになっているということ。
 それからもう一つは、これは運用の点で申しますと、公認会計士の制度が、今アメリカでもエンロンの絡みで問題になっておりますけれども、どこが日本とアメリカと違うかという話を、せんだってあるところで、アメリカで仕事をしていた公認会計士の方の話を聞いたところにも出ておりましたけれども、やはりクラスアクションの恐怖というものがアメリカではあるというようなことですね。そういう違いはあるのかなと思っております。
 それで、どうしたらいいのかということについて、私、正直言いまして、もちろん商法の組織をいじってよくなる面もありますので、長年法制審議会あるいは議員立法で改革がなされてきておりますけれども、この商法の取締役会なり監査役なりの制度がもう一つうまくいかないから、だから商法で定めているそれを改正しようというのではどうも限度があるのでありまして、やはりそれがうまく動くように外部の環境を整えるということの方が大切なのではないかというふうに私は強く思っております。運用がうまくいくような外部からのプレッシャー、マーケットの監視、これがやはり今まで日本に一番欠けていたものではないかというふうに考えております。
木島委員 そうしますと、日本の企業社会では社内の者で取締役会を固めてきた、そうすると、率直に言って代表取締役に物が言えないということですね。それからもう一つ、参考人は、日本は恐らくアメリカと違って、マーケットによる監視、要するに証券取引による監視はなかなかうまく機能しないんじゃないかと。私もそうだと思うんです。
 外部からのプレッシャーがかかるような仕組み、そういう企業社会が必要だとなりますと、取締役の暴走、取締役会の暴走をチェックするのは、基本はやはり株主であり、株主総会なんですから、株主総会の機能を基本的に強める。今は逆ですね、弱まっていますね。実態としても、六月の末の同じ日に日本の大企業がみんな統一して開いてしまう、総会屋との癒着もある、しゃんしゃん総会で終わりにしてしまう。そういう株主総会の機能を強める方向こそが、少なくとも法制の上でも、日本の企業社会のありようを変える上でも、大事だと思うんですね。
 そうしますと、今度の法改正は、西村委員からも指摘されましたが、根本的なところでこの株主総会の基本的に重要な権限を剥奪してしまっている。一つは利益処分。根本問題です。それは逆方向じゃないか。先ほどちょっと答弁していましたが、逆方向だという点に対して、どう答えるんですか。
江頭参考人 確かに、御指摘のように、先ほど私も申しましたが、物言う株主というのはふえてきていることは確かだと思います。株主総会で発言したいという者が、外国人株主も日本人株主も、いわゆる総会屋ではなくてちゃんとした人で、総会で発言したいという人はふえてきていることは事実だと思います。
 しかしながら、これはアメリカでも機関化現象が進みましてそういう傾向は見られるのでありますけれども、やはり基本的には、株主というのは、総会で権利行使をするには非常にいろいろコストがかかります。それよりも、会社の経営に不満であれば株を売るという行動に出るのが普通でありまして、これはウォール・ストリート・ルールなどと呼ばれておりますけれども、要するに株を売って逃げてしまう、それが普通の株主の意思表示であります。
 ですから、株主の権利を擁護するのが大切だといった場合に、総会の権限を強めてみても結局余り効果はないのではないかというふうに、私は正直言って思っております。それよりももっと、総会でない形の、市場の監視というものがしっかり行われるような措置、そちらの方がより実効性のある制度になるのではないかというふうに思っております。
 しかし、総会の権限をどうするかというのも、これも相対的な問題でありまして、先ほど言いましたように、私は、すべての大会社について利益処分権限を総会から奪って取締役会に移すという案には反対をいたしました。ですから、現在の案にはいろいろ評価はあるかと思いますけれども、特に現在の案が必要なことに逆行しているというふうには私は思っておりません。
木島委員 日本の経営陣がなぜあんなにも総会の論議を嫌っているかというやはり根本問題は、総会では、比較的公開の場で取締役陣の違法、不当を質疑されるから嫌がっているんじゃないんでしょうか。そうしたら、株主総会をもっと充実させることが、何よりも取締役、代表取締役の違法に対するチェック機能が働くんじゃないかと私は思うので、時間がありませんからここで論争してもしようがありませんが、私の意見を申し述べておきたいと思います。
 西川参考人にお伺いをいたします。
 先ほどいただきました経団連の二〇〇〇年十月十七日の「商法改正への提言」、これを見ますと、企業の国際競争力の確保のために「強行法規性の緩和と市場重視の法整備」、これを第一に挙げておりますね。
 しかし、先ほど私、指摘しましたように、ここ十数年来の日本の企業社会を見ますと、やはりあらゆる業種で、大手企業も含めて、取締役の暴走に対するチェックが働かなかった、その結果、日本の企業が弱体化しただけではなくて、非常に不透明で、国際社会からも信用されないという状況が逆に生まれているんではないかと私は思うわけであります。ある企業の幹部からも、日本の企業の六つの異常なんというのが指摘されたときがありますね。賃金が余りに安過ぎる、労働時間が長過ぎる、下請をいじめ過ぎる、環境のことを考えない、地域社会のことを考えない等々の異常さを指摘されましたが、それはやはり外部からの企業経営に対するチェック機能が働いていない結果ではないかと思うんですね。
 しかし、今度の皆さんの提言を読みますと、そういう方向性がちっとも書かれていないんです。むしろ逆に、強行法規性を緩和して国際競争力を確保するという方向だけで突っ走っていきますと。私、これを見ますと、逆に企業経営陣に対するチェック機能を弱める方向を志向しているように読み取らざるを得ないんですが、どうなんでしょうか。
西川参考人 お答えを申し上げます。
 先ほど木島委員から、しゃんしゃん総会で、経営者が嫌っていると。これは、いっとき、昔の話でございます。今は恐らくどの会社においても、株主の質問を封じようとする態度は全くなくて、適正な質問に対してはちゃんと質疑に応じている。大企業においても二時間ぐらいの総会は普通になってきている、経営者においても質問に対して答えることをいとわない。まさにそういう経営者でなければもう経営者ではない、こういう時代になってきているんだろうと思っております。
 企業不祥事ですけれども、おっしゃるとおり、たくさん出てまいりました。そういう中で、経団連におきましては、たしか平成三年に経団連企業行動憲章なるものを作成して会員に徹底を図ったわけでありますけれども、まさに先生がおっしゃられた六つの日本における悪い点、それについて、まさにそういうことを正していこう、従業員の生活のゆとりを大事にしよう、環境を大事にしよう、独禁法を守ろう、それからディスクロージャーを徹底してやっていこう、何に増しても法律遵守が一番大事なんだということを経団連企業行動憲章として各社に徹底をしてきたわけであります。
 ところが、またその後もまだ企業不祥事が相次いだ中で、平成七年にもう一度新たに企業行動憲章を策定し直しまして、経団連の業務用の封筒がありますけれども、そこに必ず経団連企業行動憲章の十項目を書いているということで、周知徹底を図っているということであります。
 外部の目が厳しくないから企業不祥事が起こったのかどうか。確かにそういう面があるだろうと思います。そして、外部の目なるものが、恐らく十年前ぐらいには利益を上げている会社については非常に目が甘かったんだろうと思います。ところが、その後の企業を見る目というのは、利益を上げているだけでは意味がない、まさに法律を守って利益を上げることが重要なんだということになってきているだろうと思います。まさに、日本におきましても、環境投資ファンドでありますとか企業倫理投資ファンド、ソーシャル・レスポンシビリティー・インベストメント、SRIなるものが売れてきている時代になっている。まさに、そういう市場の目を意識した経営になってきている。
 私の先ほど説明したところで、経営者の自由度だけを確保してもらって、経営者としての自覚が足りない、その点について何もないじゃないかという御指摘でございますけれども、まさに市場重視の法整備というのはそういうことでございまして、ディスクロージャーを徹底して説明をよくしていく、その説明責任を果たせないところというのは株を売られてしまうというふうなことで企業の価値が下がってくる、市場を重視して、透明な、アカウンタビリティーを持った経営を進めていきたい、こういうことで市場重視ということを申し上げているわけでございます。
木島委員 日本の市場がそういう機能をなかなか果たさない、果たしていない。持ち合いの問題とかさまざまな問題が今指摘されておりまして、解消の努力もされているんでしょうが、やはり私は、そういう状況であるからこそ、法制度面でのチェックがきちっと働くような仕組みこそが、やはり改正するのなら方向性じゃないかと思うんです。
 高橋参考人にお伺いをいたします。
 日本監査役協会の本年二月十九日の意見書は、まことにそのとおりだと私は思いまして、先日当委員会の私の質疑でもそれを取り上げまして、一部自己監査、これは問題じゃないかということの指摘に使わせていただきました。
 先ほどの質問に答えられまして、高い精神的独立性が必要だ、内面的なものが必要だとおっしゃられましたが、まさに日本企業社会で精神的な独立性や内面ではだめだったということを現在の企業社会が示したんじゃないか。これは性悪説じゃありませんけれども、内面だけや精神だけを強調していたんではやはりだめだ。そういうすばらしい精神を持った人はまず代表取締役から選任されない。要するに、意見を言うような体質の者は排除されるという企業社会があるからじゃないでしょうか。やはり仕組みは必要じゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
高橋参考人 先生おっしゃいますとおり、内面というものは制度でとらえられぬものでございますので、おっしゃるように、これに対する解決法はございません。
 ただ、内面という意味は、監査役においても同じことでございまして、監査役も高い独立性を内面的に持たなきゃいけない。同じような意味で、監査委員会のメンバーになられます取締役にも内面的な独立性を持ってほしい、これは私どものお願いでございます。
 繰り返しになりますが、単層型ボードを採用される場合には、この問題はもうこういう形でしか対応できない、こう思いますので、これを御採用されるときには、とにかく内面性をしっかり主張すると同時に事後的な責任追及ということをきちんとやる。これは、市場の評価もございますが、個人的な責任追及という方法もあろうか。このくらいしか私どもは考えつきません。
木島委員 時間が参りましたので終わりますが、昨年の商法改正で、監査役会の強化、外部監査役を過半数にしよう、せっかくそういう方向で商法改正、一部なされたのに、今回それを選択しなくていいようなこういう法律になってきているというのは、まことに残念でなりません。
 成川参考人には、時間がなくて質問の機会がありませんでして、申しわけありませんでした。
 終わります。
園田委員長 植田至紀君。
植田委員 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
 きょうは、お忙しいところ、四参考人の各先生方、本当にありがとうございました。私もまた金曜日に質疑に立つ予定でございます。対政府質疑、やる予定でございますので、それぞれ四方のお話、非常に参考にさせていただいたところです。
 まず、江頭参考人にお伺いしたいわけですけれども、できるだけ先ほどの質疑と重複を避けてお伺いしたいと思いますが、重なるところは申しわけございません。
 江頭先生が数年前に書かれた論文の中でも、社外取締役が多数存在しても、彼らが社内、業界等の情報から遮断されておれば経営者に対する監督機能は果たし得ないというふうなことを書かれております。私も、まさにそうだと思うわけです。そして、その上でアメリカの例を引き合いに出されて、アメリカにおいては、社外取締役にその点のアクセスを可能にしている制度は、取締役会の中にコミッティー制度、監査、人事、報酬等に関する種々の委員会を置き、社外取締役がその委員長になるということであるわけですね。これが幾ばくか今回の法案の中で反映されたものだろうというふうに思うわけです。今回、その意味で社外取締役にアクセスを可能とするような制度的工夫が凝らされたということは、それは一歩前進だろうと思います。その意味で社外取締役制度を積極的に評価するんであれば、今回の委員会制度の導入というものは有益であろうというふうに思いますし、アメリカでも、先生ここで引き合いに出されたようなこうしたものが委員会制度を通じて社外取締役制度が充実してきたということは伺っているわけです。
 ただ、委員会によって各取締役の職責が専門化され、効率が上がるということは事実だと思うんですけれども、機関としての取締役会全体の一般的なと申しましょうか、監督機能が逆に弱体化するんではないかという疑問が生じるわけでございます。委員会が主となって、取締役会が従となってしまうということになる、そういう疑問があるわけですが、その点については、先生の御見解はいかがでしょうか。
江頭参考人 御指摘のとおり、今回の委員会等設置会社は非常に委員会の権限が強い。と申しますのは、例えばアメリカでありますと、指名委員会というものは取締役会の下部組織でありまして、そこで決めたものが取締役会に上げられて、そこで理論的にはひっくり返すことも可能である。それに対して日本は、今回の案は、指名委員会で決めたらそれを取締役会がひっくり返せないで、そのまま総会に出さなければいけない。言ってみれば、御指摘のとおり、取締役会自体が形骸化しているんではないかというふうな印象も受けるわけであります。
 しかし、これは実はいたし方ない次第でありまして、というのは、アメリカの場合は、取締役会自体が、社外取締役が大会社の場合は少なくとも過半数、もう圧倒的多数が社外者というのが実態だと思います。ところが、日本の場合は、そういう制度にいたしますと、つまり取締役会の過半数を社外取締役にしろというようなことになったんでは、先ほど来話が出ておりますように、人材がいないということでどこの会社も採用できないということになってしまうんではないかという懸念がありますために、二人でもこの制度が動くようなものを考えた。そこで、各委員会でならば社外取締役が過半数を占められる、そういう形にしたわけであります。
 したがいまして、御指摘のとおり、その反面、取締役会自体の方は何だか委員会に権限が移った分だけ形骸化しているようでありますが、これは、今までそういうインフラがない日本でこういう社外取締役制度を採用するとしたらこれしかないという苦渋の選択ではないかというふうに考えております。
植田委員 苦渋の選択だと。先ほどの話では、いたし方ないというようなお話もあるわけですが、もう一点、委員とならない取締役の義務であるとか責任というものが今度は不明確になってしまうんじゃないかという疑問もあるんですね。というのは、委員会が取締役から委譲を受けて独立をするのであれば、他の委員会に属さない取締役の責任というのは逆にあんましあらへんということになってしまうのかな。その意味で、その場合の取締役会の機能が十分なのかどうなのか。
 やはり各委員に監視の責任を課するんであれば、今度は取締役にとっては負担が重くなっちゃうわけですし、少なくとも非委員の義務と責任のあり方というものも整理しておくべきだったのではないかと思うわけですが、その点は、先生の御見解はいかがでございますか。
江頭参考人 例えば報酬につきましては、報酬委員会で決定するわけで、直接責任を負うのは報酬委員会の委員になっている取締役であって、ほかの者の責任は形骸化するんではないかという御指摘かと思いますけれども、もちろん報酬の決定が不当であれば、第一義的に責任を負うのは報酬委員会の取締役であります。しかしながら、その報酬委員会の決定がおかしければ、この報酬委員会の人選をするのは取締役会でありますから、またそこでの責任というのは残っているわけですね。余り変な決定をする者は、それは報酬委員会の委員を解任するという形でほかの取締役の責任が出てくる、こういうふうに理解しております。
植田委員 そこで、今のお話に引き続いて、この社外取締役会にかかわりまして西川参考人にもお伺いしたいわけです。
 幾つか今江頭先生に御疑問をぶつけたところ、今回の委員会制度、また今回の法改正というのは、ある種苦渋の選択であるということもおっしゃっておられるわけですけれども、社外取締役には、素直に考えれば、経営者の業績評価、また経営の監督という観点からも、それは一定の効果というものは期待されるということは否定するものではないわけですけれども、先ほどの質問でも伺いましたけれども、社外ゆえのデメリットといいますか、社外の者に十分な監督が可能であるかどうかというのは、また疑問の点でございます。
 というのは、今申し上げましたように、実際さまざまな情報等を十分その社外取締役が掌握できるのかどうかという点、また、社外取締役の多くの方が、推察すれば恐らく他の会社で本業を有しておられて、非常勤で就任をするということになれば、こうした方々が複雑な業務執行を効果的に監督できるかどうかという疑問が出てくるのは当然だろうと思うわけなんです。
 とすると、特に非常勤の社外取締役におかれては情報へのアクセス面というのは恐らく不十分だということはわかり切っているわけですので、会社側がそれを補完する手当てというものをやっていく必要があるんじゃないのか。というのは、例えば社外取締役に対してきちんと特別に情報提供を行うということであるとか、また、社外取締役に補佐役としての監督スタッフをつける、充実させる、そうした配慮をやっておかないことには、社外取締役の効用といいますか効果というものが上がってこないんじゃないかと思うんですけれども、その点、実際の経営側のお立場としてどのようにお考えか。
西川参考人 先生御指摘のとおりだと思います。
 社外取締役への情報提供は、監査委員会という立場からしますと、今の社外監査役への情報提供と重なる面がある、ダブる面がありますですね。
 今いろいろな会社においては、単に取締役会の場で初めて議題を見る、初めて報告事項を受けるということではなくて、社外監査役、これは今の大会社におきましては設置が強制されているわけでございますけれども、そういう社外監査役に対しての説明というのを事前に前広にやっている会社が多かろうと思います。そうでなければ取締役会の場でそれはおかしいとか言えないわけでございますから。それと同じようなことが、社外取締役を設置する委員会等設置会社においては、会社として経営執行部がそういう情報を当然タイムリーに提供して判断に資するということが必要になってくるだろうと思います。
 一方において、社外取締役の一番重要なことは、日々の経営につきまして事細かに指図をすることではなくて、私が思うに、年に一回か二回、まさに会社がおかしいことをやっていると思ったときには社長を直ちに首にするというぐらいの、まさに年に一回発動するかどうか、そういう思いでやはりやらないと、日々の事細かな業務の状況の報告を受けて、一方ではほかの会社の社長をしている者が、とてもじゃないけれどもそういうことはできないと思うんですね。やはり年に一度、二年に一度の大勝負をかけるというのが社外取締役の本来の任務だろうと私は思っております。だけれども、情報の提供というのは、そういうことで定期的に渡さなければならないというのは当然のことだろうと思います。
植田委員 今西川参考人、いみじくもおっしゃいましたように、年に一度、年に何遍もあったら困るような話ですけれども、それこそ何年に一回の大勝負をかける、そのときの適切な判断をするためには、適切な、恒常的な情報の提供なり、そうしたことを常に社外取締役の方が把握していなければならないということでいいですよね。当然ながら、今まさに参考人がおっしゃったような役割を果たすためにも、そうした会社側の配慮というものが適切になされていなければならないということだろうと思います。
 では、今のお話を受けて、今度は高橋参考人にお伺いしたいわけですが、社外取締役の効用というのが、大ざっぱにおさらいいたしますと、三つの観点、一つは経営戦略の観点、一つは違法行為防止の観点、会社経営の監督機能とあるわけです。特にこの第二の違法行為の防止の観点、これは実際、そういうことがあれば、それこそ今西川参考人おっしゃったような、二年に一回か一年に一回かの大勝負にもなるだろうと思うわけですけれども、監査役と比べて、社外取締役が会社の違法行為を事前に防止することに効果があるというのは考えにくいという意見もあろうかと思います。その点について、逆に、監査役協会といいますか、監査役のお立場としては、どんなふうに御見解をお持ちでしょうか。
高橋参考人 この点は、先ほどから私が何回か申しました監査の二大要素である有効性にかかわります。
 監査というのは、その独立性も重要でございますが、監査をしている内容をわからなければ監査にならない。監査意見を形成するためには、自分が何を見ているかをしっかりわからないことには意見ができないわけです。
 現在の私どもの監査役制度は、こういう意味では、独立性も十分ございますけれども、常勤制を置くということを通しまして、日常的に、先ほどはリアルタイムという言葉を使いましたが、経営の流れをその場で、横で見ているという意味で、非常に情報を精緻に入手する仕組みをつくり上げました。同時に、監査役のスタッフもどんどん充実させていただいておりますので、そういう意味で、会社の中で起こっていることを逐一知る、ちょっとおかしいことがあったらそこでストップをかける、こういうことができるんだと思います。
 監査委員会制度に関しても同じことができないということはないと思います。ですから、私どもが申し上げましたのは、例えば、監査役制度にあります常勤制を置くといったような精神を生かしていただいて、監査委員会もやはり監査を実務としてやっていただけないだろうか。
 先ほどちょっとお話がありましたように、私は少し気になっておりますが、新しい監査委員会の委員さんは、いわゆるスタッフというのは会社の中にいるので、彼らに実際の監査を任せることによってそれのエッセンスを得ればいいのではないかというお話があったように思いますが、人がやった仕事の結論を聞いただけで監査意見をつくるということは、私自身も監査役をしておりましたので、非常に自分としては納得しがたいものがあります。
 特に、これは難しいことになりますけれども、日本の会社の内部統制部門がございますけれども、これはすぐれて社長の指揮下にある方でありますので、その方々の独立性という問題だってあるわけです。したがって、やはり監査役としては、自分の納得がいくだけある程度自分で調べるという行為がなければ、人の意見を聞いただけで監査が終わらないというのが私どもの信念でございますので、そういう意味で、有効性というのは重要なことでありますし、監査委員会の方がその有効性を発揮できないことはないです。ただ、そのためには、今申しましたように、監査というものを実務としてしっかりとらえていただけないだろうか、こういうお願いがございます。
植田委員 ちょっと時間が迫ってまいりましたので、実は高橋参考人にもう一点お伺いしたいことがあったんですけれども、時間があれば最後にお伺いいたします。
 連合の成川参考人の方にお伺いしたいわけですが、これも、成川さん御自身がお書きになった、「日本における企業統治のあり方と労働組合の役割」という文書を読ませていただいて、それも含めてちょっとお伺いしたいわけですけれども、私自身、労働組合としても、労使協議等の場で、経営チェックやコンプライアンスなど企業統治に対して積極的に関与していく必要はあるだろうというふうに思っているわけです。
 その場合、成川さんもいみじくもおっしゃっておられますように、多くの大企業の場合、労使の協議制度があって、その労使協議を労働組合がしっかり行っていれば企業のチェックを行える立場にあるということを成川さん御自身がお書きになっています。それにもかかわらずチェックの役割を果たせていないのはどうしてかと、組合運動の側から問題提起なり総括をされようとしているわけですが、ただ、ここでその総括というものはちょっと触れられていなくて、その次の文脈から具体的な方針提起の話になっているわけなんです。
 まず、実際、そういう労使協議の制度が労働組合の側から必ずしも有効に活用されてこなかったという反省があるとするのであれば、どういうところに問題があったのか。
 そして一方、労働組合として何ができるかということで、具体的にここでは、「労働組合の社会的役割の強化について」という連合さんとしての方針を定められて、例えば職場の安全衛生の確保、製品・サービスの安全性確保、社会的事故の防止、また、企業の社会的公正ルール遵守のための労使協議云々と、要するに、労働組合が企業の社会的責任をいろいろな側面でチェックしていこうという問題提起もなさっておられます。
 そうなりますと、一つは、これまでそうした役割を労働組合として果たしてこなかったということの総括、それともう一つは、こうした問題提起をした上で、具体的に組合としてどうした先進的事例があるのか、どうした取り組みがなされているのか、そういう点について現状はいかがかということをお伺いしたいと思うんです。
 というのは、日本の労働組合のありようは、産業別組合ではございませんで、企業別組合でございます。これが、ある意味で、企業別組合のもとでの相互信頼的な労使関係というものを醸成してきた。これはやはり労使双方が認めるプラスのファクターだろうと思います。そういう意味で、そうした条件を培ってきた中で、具体的な問題提起を、例えば組合としてどうしていくのかという点についてのお話なんですけれども、今申し上げました二点、ちょっとお答えいただけますでしょうか。
成川参考人 労働組合としては、確かに、労使協議という制度がございまして、多くの労働組合のあるところでは、労働条件に関しますいわゆる団体交渉のほかに、企業の経営問題、短中期の方針などについて労使協議という場で意見交換をしておる、こういうのが多くの企業でとられてございます。
 これらの労使協議の中では、もちろん、組合員、従業員から提起のあったような安全の問題など、特に職場の安全衛生問題などについては、組合員から提起があり、議論にものっているわけですけれども、やはり基本は、この労使協議の中では会社側の経営方針等の意見交換をするというのが中心でございまして、必ずしも、会社の業務の全体についてそこで意見交換をしているわけではない。すなわち、その議題がやはり、会社側主導、あるいは組合が提起した問題について会社が答える、こういう中身で、今、日本の場合は労使協議がされておるということでございます。
 そうしますと、我々労働組合として、日ごろから組合が職場の問題発生をチェックしなさい、こうやっておりますが、必ずしもこの労使協議の場でそれが十分に、よほど日ごろから組合がチェックの活動を組合員にお願いしていないとなかなかその情報が組合の方にも集まらない、こういう制度になっておる、こういうふうに理解してございます。しかし、やろうと思えば当然できるわけでありますので、先ほど先生が御指摘のように、それぞれの課題について、あるいは社会の求めているようないろいろな環境面での基準のさらなる改善などについて、組合としてもやるべきである、こういうことでやっておるところでございます。
 しかし、現在、特に上場会社等については、経営の協議の中では、経営情報等については、いわゆるインサイダー取引など株関係にも影響を与えるということで、経営側がこの議題について非常にセンシティブになっておるという現状もあります。
 そういう局面でございますので、どうしても我々としては、やはり組合としてしっかり日ごろからやらなければならない、しかし制度として見ると制約がある、こういうふうに受けとめたところでございます。
 したがいまして、こういう会社の業務に対する監視モニターの役割ということを従業員みずからがしっかりそれを担うということが大事じゃないかというのが、従業員が選んだ監査委員による、あるいは監査役による日ごろからの会社の業務に対するチェック、特にコンプライアンス関係のチェックをやるというのが大事であるというふうに思って、きょうはぜひお願いしたところでございます。
 もう一つは、やはり会社の情報の開示が必ずしも従業員のみならず周辺の住民あるいは消費者に届いていない、こういう問題がありまして、私としては、ぜひ会社の情報開示を、単に株主ということでなしに、今日本の特に大企業におきましては大変な社会的な影響力を持っているわけでありますから、日ごろから情報開示をしていただくということをぜひお願いしたい、こう思っております。
 今、この商法の中では公告の制度がございますけれども、極めて限られた情報でしかないし、しかも、それが中企業以下になりますとほとんど守られていないという現状があるわけでありまして、ぜひ企業における情報開示をしていただくということが、会社不祥事に対しましても社会のしっかりした批判の目がそこで生きるんじゃないか、こう思っているところでございます。これらについても、労働組合としてやるところについてはしっかりやっていかなきゃいけない、こう思ってございます。
植田委員 あと何点かお伺いしたいことがあったのですけれども、持ち時間を既に超えておりますので、申しわけございません。きょうは本当にありがとうございました。
 以上で終わります。
園田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々に申し上げます。
 本日は、貴重な時間を割いていただき、しかもさまざまな貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。
 この際、休憩いたします。
    午後零時十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十八分開議
園田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出、商法等の一部を改正する法律案及び商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局審議官佐藤隆文君、法務省民事局長房村精一君、財務省大臣官房審議官石井道遠君及び中小企業庁次長小脇一朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
園田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塩崎恭久君。
塩崎委員 自民党の塩崎恭久でございます。
 十五分というまた短い時間の質問で少し物足りないわけでありますが、きょう、商法の改正の参考人質疑があって、午前中いろいろな方々から御意見を伺いました。その中で、経団連の方からも、今回、監査役設置会社に加えて委員会等設置会社ということで、選択的にこれを設けることができるということになったことについて、その両方の制度の間にやはり少しギャップがあるんじゃないか、つまり、言ってみれば、今度の新しい委員会等設置会社に対するインセンティブにもなりかねないような部分があるんじゃないだろうかという話があったかと思うわけであります。一つは利益処分の問題であって、株主総会ではなくて取締役会で確定ができるという問題であり、それから、取締役の会社に対する責任ということで、無過失責任を課さないということにするということであります。
 時間がないので端的に申し上げますが、二つは別々の問題といえども、どちらの制度をとるのかという決定を会社がする際に、例えば利益処分の問題であれば、では、今回、取締役会でできるかわりに会社のコストとしてはどういうコストがあるかといえば、社外取締役が最低六人いればいいというのが多分コストになるんだろうと思うし、それから、取締役に無過失責任を課さないという問題については、社外取締役の独立性というのがまた一つのヘッジになるのかな、こう思うわけであります。
 それにしても、ちょっとこの両者の間に、言ってみればイコールフッティングに欠けている部分があるんじゃないだろうかということで、将来的に、監査役設置会社についても利益処分を取締役会で何らかの工夫を加えて認めるということであったり、それから、過失責任規定に改めるということについても何らかの工夫をして、お互いが平等な選択肢として目の前にあって、会社がそれを選べるというような形にすべきではないかと思うわけです。
 やや過渡的な改正になっているのかもわかりませんが、今後、そういった面で前向きにこの辺を検討するかどうか、そこをまずお答えをいただきたいと思います。
横内副大臣 委員の御指摘がありましたように、利益処分の決定というのは、一般の会社では株主総会でやるわけでございますが、今回の委員会等設置会社につきましては、取締役会で利益処分の決定ができるようになっております。
 これは、この委員会等設置会社では、取締役会による厳正な審査を期待することができるということと、それから、取締役の任期が一年とされている、したがって、利益処分について不服がある株主は、毎年毎年、その取締役を解任するかどうかの判断ができるということがありまして、そういうことで取締役会にゆだねることとしているわけであります。
 しかし、御指摘のありましたように、利益処分というのは非常に高度な経営判断を要する事項であって、一般の株主がなかなか判断できない、経営に関する知識、能力を有しない株主が利益処分案について的確な判断をすることは困難であるということもありますし、そういう意味で、この二つの制度にバランスの面でどうかという御指摘もあろうと思います。したがいまして、この点につきましては、今後の大事な検討課題として、いろいろ工夫を凝らしながら検討していきたいというふうに思っております。
 それからもう一点、同じように、委員会等設置会社につきましては、取締役の責任は原則として過失責任ということになっているわけでございますが、これは、理由といたしましては、取締役会というものが取締役及び執行役に対して監督体制が非常に強まっているということから、そのようにしているわけでございます。
 しかし、委員会等設置会社ではない通常の会社の取締役の責任についても、無過失責任というのはやや厳格に過ぎるんじゃないか、そういう議論も有力な意見としてあるところでございますので、この点につきましても、今後の大事な課題として検討していきたいというふうに思っております。
塩崎委員 何分にも、いわゆるコーポレートガバナンスの根幹にかかわる問題でありますから、その達成は制度的に確実に担保されなければいけないというふうに思うわけであって、今、副大臣の方から何らかの工夫をというお言葉がありましたが、ぜひその一点は外さないようにしながら工夫をしていっていただければな、こういうふうに思います。また、我が自由民主党でも、商法小委員会というのもございますし、我々は我々でまた議論していきますが、法務省では、今の御答弁のとおり、ひとつ前向きに、早目に御検討をいただきたい、このように思います。
 今回、商法の改正ということで、法律案の中には入っておりませんが、きょうも、LLCの導入などが検討課題ということで、将来の課題が参考人からも出ておりましたが、前々から、私、UP―REIT市場というのを日本につくった方がいいんじゃないだろうか、こういうふうに言ってまいりました、三年ぐらい前から、主に財務省というか、当時は大蔵省でありますけれども。何しろこれは税の問題であって、要は、優先出資部分を自分で持った場合に譲渡益の課税を繰り延べるという制度をアメリカではやっていて、日本でもJ―REIT市場というのができましたが、まだ本当に幼児期でありまして、まだ三つしか上場されていなかったりして、これからの伸びに期待をするわけであります。いわゆるアメリカのREIT市場も、このUP―REITという制度がうまくいくようになってから急激に大きくなった、こういうふうに聞いているわけであって、特に、含み益を持っている不動産を市場に出していくというためにも、これはぜひ必要だと私も言ってきたわけであります。
 いろいろな形でそういう不動産を持っているところがあると思いますが、まず第一に、きょうは財務省から来ていただいておりますけれども、アメリカのUP―REITのように、いわゆる投資ビークルに対する不動産現物出資時に譲渡益の課税繰り延べをする税制がなぜできないのかということを、まずお答えいただきたいと思います。簡潔にお願いいたします。
石井政府参考人 お答えいたします。
 先生御承知のとおり、今御指摘がございましたUP―REIT市場なるもの、これはアメリカのパートナーシップという法制が前提となっておるのではないかと思っております。既に類似したものにはSPC等ございますけれども、アメリカのこの制度自体が、パートナーシップというもの、日本にない法制が前提となっておることとの関係で、従来、我が国の法制では、資産の移転を、現物出資も含めまして、行った際にはその時点で課税をするという原則でございますので、現状ではそれにのっとった課税を行っておるということでございます。
塩崎委員 今お話があったように、法人格はあるけれども税制はパススルーだ、こういうことがこのパートナーシップ法制の言ってみれば一番の本質であるわけでありますけれども、日本にも実は中小企業等投資事業有限責任組合法というのがあって、ベンチャーのためにこういうのが実は実質的に用意されているわけですね。ですから、部分的にもう穴があいているわけでありますが、そうすると、パートナーシップ法制というものがきちっとできれば、我が国でも今言ったような税のパススルー、法人格はあるけれども税のパススルーというものができるのかどうかということを、税制の立場からちょっとお話しをいただきたいと思います。
石井政府参考人 今先生御指摘ございましたとおり、一部分、既にパススルー等の取り扱いをしている部分がございますけれども、このパートナーシップ法制そのものがまだ未整備でございますので、現状ではアメリカのようなものに至っていないわけでございます。
 今御質問の、今後、パートナーシップ法制が日本でも整備された暁に、パススルーあるいは現物出資への課税の繰り延べというようなことができるのかどうか、まさに税制上の取り扱いについてどうなのかという御質問だと思います。
 その点につきましては、その事業の内容ですとか経済的意義あるいは法的性格などを踏まえますとともに、現行制度のもとで現在行われております課税の趣旨ということも考えまして、具体的なパートナーシップ法制の仕組みを見た上で、その取り扱いを決めることになろうかと思います。
 現状でまだそこの具体的な仕組みがございませんので、残念ながら、現段階では申し上げようがないわけでございますが、いずれにしましても、今後、法制上の検討も別途進められるものと思いますので、それとあわせまして、このパートナーシップを初めとするいわゆる多様な事業体、これに限らず、いろいろなものが諸外国であるように聞いておりますけれども、そういうものを含めた多様な事業体の税制上の扱いについて、今御指摘の点も含めて、今後検討をさせていただきたいというふうに思っております。
塩崎委員 そこで、法務省にお伺いをいたしたいと思いますけれども、今回、商法そのものということではこのパートナーシップ法制というのは入らないんだろうと思いますが、非常に関連の深い問題であって、言ってみれば商法の大改正、こうおっしゃっていたわけですから、それに関連して一緒にやればよかったのに、何か立法上で問題点があったのか、あるいは、あるんだとすればどういう問題があって今回これは入らなかったのか、今後どうするつもりなのか、それから、できたら、成案が得られるめどというか、どのぐらいのタイムスパンで考えているのかというのを、ちょっとお話しをいただきたいと思います。
房村政府参考人 御指摘の点、非常に難しい、ある意味でアメリカで採用されておりますリミテッドパートナーシップそのものに相当するものは日本にないわけですが、ただ、そういう類似するものとしては、既に御指摘の中小企業等投資事業有限責任組合がございますし、商法上の制度としては、匿名組合も、無限責任を負う営業者と有限責任しか負わない匿名組合員とでできている一種のパートナーシップでございますし、さらに法制的に言えば、合資会社も、有限責任社員と無限責任社員とで組み合わされているという意味では類似した面もあるわけでございますが、それぞれ、アメリカのものとは税金の扱いであるとか登録制度があるかどうかというような点で、いろいろな意味の違いがございます。
 そういう中で、御指摘のアメリカのリミテッドパートナーシップに近い制度を日本で考えられないかということでございますが、それはそれなりに商法あるいは民法等の法人法制、さらに有限責任、無限責任の関係、そういった点も含めて相当幅広く検討をしないと的確な案がなかなか出てこないのではないか。今回、主として株式会社を念頭に改正を考えたわけでございますので、今回の改正内容としては、このリミテッドパートナーシップ制度については外すということで進んできたわけでございます。
 ただ、この点につきましては、政府において総合規制改革会議の第一次答申、昨年の暮れに出ておりますが、その中で、平成十四年度中に、合理的かつ健全な事業組織形態のあり方についての税法上の取り扱いとあわせて私法上の問題点の整理と検討を開始することとされておりますので、法務省といたしましても、その答申を受けて、十四年度中に、従来、さまざまな指摘及び我が国の法制において認められている種々の組織形態に係る問題を考慮しつつ、私法上の問題点について必要な研究と検討を開始するということとしております。
塩崎委員 また財務省なんですが、今の規制改革会議の話で、税法等も含めて、こうありますが、今のは議論のスタートが十四年度というわけですが、もう十四年度に入っているので、それのタイムスパンをどんなふうに考えたらよろしいのでしょうか。
石井政府参考人 具体的な日程まで今ここで申し上げるだけの用意はございませんが、ただ、いずれにしても、検討に当たっては、具体的な仕組みがございませんと税制上どう扱うかの検討ができないものと思われますので、やはり具体的な仕組みについてある程度示された上で、私どもとしては、先ほど先生御指摘がありましたような点も含めた検討を行いたいというふうに思います。
塩崎委員 今の答弁にあったように、両省ともこの必要性については認めておられるわけであって、今までどういうことになっていたかというと、片や税制がないよ、片や法制がないよ、こういう話で何も事が進まないということで、私がやってくれ、やってくれと言っても、三年ぐらいほったらかしになっていたというのが実は実態なんですね。
 したがって、今回こういうことで、政府の方でも十四年度から税制とあわせて法制も考える、こういうことになって皆さんも了解をしているわけでありますから、今度こそ本当にちゃんとこれをきちっとしたものにして、また、やってみたけれども、NPOみたいにいまだに認定されているのは二件しかないみたいな中途半端で役にも立たないようなことにならないように、本当に役立つ、そして恐らくニーズはいろいろな形であるんだろうと思うのです。そういうことで、含み益があるような、昔から持っているようなもので、非常に税金取られてしまうから何ともならないということで有効活用されないとか、あるいは、相続のときにしようがないから半分売って、結局開発もうまくいかないようなところもいっぱいあるわけですね。ですから、やはり我々は政策手だてはたくさん持っていた方がいい。そういう意味で、両省とも本気になってひとつ頑張ってもらいたいと思いますので、よろしくお願いして終わりたいと思います。ありがとうございました。
園田委員長 漆原良夫君。
漆原委員 公明党の漆原でございます。
 前回の審議では株式関係の改正について質問をさせていただきましたが、今回は、機関関係を中心にお伺いしたいと思います。
 機関関係につきましては、前回の審議、今回の参考人の質疑においても、委員会等設置会社の制度、これに質疑が、討議が集中されておりますが、一般の会社についても、機動的な業務決定を可能とするため、重要財産委員会制度の創設ということが改正案に盛り込まれておりますので、これについてお尋ねします。
 大臣の提案理由説明によれば、この重要財産委員会制度は、従来型の大規模会社について、社外取締役を選任している場合には、取締役会がその中に取締役三人以上で組織する重要財産委員会を設け、これに重要な財産の処分や高額な借財等についての決定権限を委任することができる、こういう制度だということで説明されておりますが、まず、このような制度を創設されるに至った理由について、大臣にお伺いしたいと思います。
森山国務大臣 現行の商法二百六十条二項におきましては、業務決定の適正を確保するために、重要な業務は必ず取締役会の決議を要し、その決定を代表取締役その他の一部の取締役に委任することを禁止しております。他方、大規模な株式会社の実務におきましては、取締役の人数が多くなりまして、また外国常駐の取締役もおりますし、頻繁に取締役会を開催することが困難であるという実際の実情がございます。そのため、重要な業務の決定について必ず取締役会の決議を必要とするという現行法は、会社の業務の迅速な決定とその実行など機動的な経営の実現を困難にしていると指摘されておりました。
 そこで、改正法案におきましては、業務執行者への業務決定権限の大幅な委譲を可能とする制度といたしまして、委員会等設置会社の制度を創設することとしておりますが、委員会等設置会社の制度を選択しない一般の大会社につきましても、機動的な会社経営を可能とするために、一定の要件のもとで、取締役会の決議事項のうち、緊急に決定する必要が生ずることの多い重要な財産の処分及び譲り受けと多額の借財について、取締役会にかわり頻繁な開催が可能な会議体によりましてその決定をすることを認めるということにしたのでございます。
漆原委員 重要財産委員会を設置するためには、社外取締役の選任のほかに幾つかの要件が必要でございますが、重要財産委員会の設置の要件についてお尋ねしたいと思います。
房村政府参考人 お答えいたします。
 重要財産委員会を設置するためには、御指摘のように、まず大会社であること、あるいは、みなし大会社、資本金が一億円以上で会計監査人の監査を受けるということを定款で決めた会社でございますが、このいずれかの会社で、取締役の員数が十人以上であること、それから、取締役のうち一人以上が社外取締役であることということを要件として要求しております。
 この取締役が十人以上であることを要件といたしましたのは、やはり頻繁に取締役会を開催することが困難な会社にこの重要財産委員会を設置することを認めているわけでございますので、ある程度の人数のいらっしゃる会社、そうでないと取締役会の形骸化を招くおそれがあるということから、十人ということを要求いたしました。
 それからもう一点、社外取締役が一人以上いるということでございますが、これは、やはり従来取締役会にゆだねられていた権限を重要財産委員会にさらに委譲するわけでございますので、取締役会の監督権限がきちんと及ぶように、その監督機能の担保として、やはり中立公平な立場から意見を述べることができる社外取り締まりの人がその取締役会に入っていることを要求したということでございます。
漆原委員 今御説明いただいた重要財産委員会の設置には、社外取締役の選任によって取締役会の監督機能が強化されている、これが必要とのことでございますが、そうだとすると、その社外取締役は重要財産委員会のメンバーとなる必要があるんじゃないでしょうか。この点はいかがでしょう。
房村政府参考人 この改正法案におきましては、社外取締役が重要財産委員会のメンバーとなることまでは要求しておりません。と申しますのは、まず、社外取締役の方の場合には、どうしても社外で他の業務を持っておりますので、この方は実際上会社に常勤するということは困難だろうと思いますので、この方をメンバーにすると、重要財産委員会を機動的に開催しようと思ってもなかなか難しくなるおそれがございます。そういう点が一つ配慮としてございます。
 もう一つは、重要財産委員会のメンバーには入らなくとも、重要財産委員会のメンバーを選ぶのは取締役会でございますし、また、重要財産委員会で職務遂行については取締役会に報告義務が課せられております。こういう権限がございますので、社外取締役の方は、取締役会のメンバーの一員として重要財産委員会による適正な業務の遂行を十分監督できるだろう、こういうことを考えて、重要財産委員会のメンバーに社外取締役がなることまでは要求しなかったということでございます。
漆原委員 その点に関しては、そういう趣旨で社外取締役を要件としたわけですから、やはり社外取締役が重要財産委員会のメンバーに入ることの方が終始一貫するんじゃないのかな、合理性があるんじゃないのかなというふうに私は考えております。今御説明いただきましたから、そのとおりで結構でございますが、そんな考えでいるということを御指摘させていただきたいと思います。
 次に、取締役会から重要財産委員会に委任される事項についてでございますけれども、これは商法二百六十条の二項一号、二号に掲げる事項に限定しておりますが、これを限定した理由についてお尋ねしたいと思います。
房村政府参考人 商法の二百六十条は、基本的に重要なる業務執行を取締役会の権限としておりますが、これを全部重要財産委員会に委任できることといたしますと、取締役会決議事項の大半を委任することを認めることになりますので、形骸化をもたらすことになるだろうということでございます。
 それから次に、一号から四号まで各号に掲げていることにつきまして見ますと、三号の「支配人其ノ他ノ重要ナル使用人ノ選任」等、それから、四号の「支店其ノ他ノ重要ナル組織ノ設置」等でございますが、これは、取締役会を招集していたのでは間に合わないほど緊急に決定しなければならないということは通常はないだろうと。それに比較しますと、一号の「重要ナル財産ノ処分及譲受」、二号の「多額ノ借財」、これは会社経営を機動的に行うという観点からは最も必要性が高い事項でございますので、この二つの事項に限って重要財産委員会に委任できるということとしたものでございます。
漆原委員 次に、改正法案を見ますと、重要財産委員会については、重要財産委員会を置く旨の登記、それから、重要財産委員会のメンバーの氏名を登記する必要がある、こうなっておりますが、これらの事項について登記を必要とする理由について尋ねたいと思います。
房村政府参考人 会社に重要な財産を譲り渡すとかあるいは融資をするというときに、その会社と取引に入ろうとする者にとって、その会社においてその取引について取締役会の決議が要るのか、それとも重要財産委員会の決議で足りるのか、また、重要財産委員会で足りるとした場合に、その実際のメンバーはだれなのか、こういうことを知りませんと、その取引が正規の手続を踏んでされたものかどうかということの確認が行えなくなりますので、そういう点で、これらの情報は登記事項として開示することが取引の安全に資する、こう考えて登記事項としたものでございます。
漆原委員 次に、前回の質疑でちょっと落としたことがありますので引き続いて尋ねますが、株券喪失登録の制度について、若干の事項について追加的にお尋ねしたいと思っております。
 株券喪失登録の制度は、これは裁判外で、裁判所が関与しないで簡便な方法で失権手続を行う、こういう制度でございますけれども、逆に言うと、そのために株券の喪失を仮装して、そうした仮装した者による乱用行為が起きるんじゃないかという心配がなされております。そういう仮装した者による乱用行為によって真の株主の権利が害される事態が起きるんじゃないか、こういう懸念がなされておりますが、これに対してのお考えをお聞きしたいと思います。
房村政府参考人 おっしゃいますように、制度のつくり方によっては乱用的に株券喪失登録の申請をするというおそれもございますので、この制度を構築するに当たりましては、そういう乱用を防ごうということで、まず第一に申請に添付書類を要求いたしまして、その申請の真実性を担保しようということを考えたわけでございます。
 具体的には、株主名簿に記載されている日以後に申請者が当該株券を所持していた事実を証する書類、すなわち、実際にその株券の所持者ですということを証するものを要求することによって、無権限の者が乱用的に申請することをできるだけ防止しようということでございます。それから、その株券を喪失した事実を証する書類、これも、例えば盗難届であるとか罹災証明であるとか、なくなったということがある程度推測できるような資料を要求する、こういうことをまず要求しております。
 それから、そういう申請がありました場合には、申請をした人が株主名簿上の名義人でない場合には、会社の方では名義人に対しまして株券喪失登録がされたということを通知する。したがいまして、無権限な者がやった場合には、名義人は会社からの通知によって知り得る。それで、直ちに登録異議を出せばそれを失効させることが可能になりますので、そういうことで乱用を防止するということを考えております。さらに、名義書きかえ等のために会社に株券が提出された場合にも会社からこの登録がされている旨の通知が行きますので、そういうことによって、真実の権利者が不当に権利を奪われることのないように配慮をしております。
漆原委員 今おっしゃった株券の喪失の証明ということなんですが、株券をなくした、これは、相続関係なんかでなくなってしまった、あるいは盗まれた、火事で燃えた、いろいろあると思いますが、具体的にはどんな証明というふうにお考えなんでしょうか。
房村政府参考人 典型的なのは、盗難に遭ったという盗難の被害証明であるとか、火事に遭った罹災証明であるとかということになろうかと思います。
 ただ、純粋に、気がついたらなくなっていたという場合には、なかなかそういう客観的な証明資料というのも難しゅうございますので、そういうときにはその方の事情を説明した申述書のようなものになろうかと思いますが、これは、現行の公示催告でやる場合にも同じような資料が要求されておりますので、そういうことによって可能な限りの担保を図るということでございます。
漆原委員 株券の喪失登録がなされた株券が無効になるまでの期間は一年、こういうふうに設定しておられますが、まず、一年と設定された理由は何なのかが一点。また、期間が一年もあるのであれば、従来の公示催告手続も選択できるようにするという考え方もあっていいのじゃないか、選択的にしてもいいんじゃないかという考えがありますが、そういうふうにしなかった理由について。二点をお尋ねしたいと思います。
房村政府参考人 株券の喪失登録をして、それから無効になるまでの期間を長くとりますと、その間に善意取得をされてしまって、喪失登録をした人が保護されないという可能性が高くなります。しかし、一方、登録をしてから無効になるまでの期間を短くしますと、その間に、本来の所持人が気がつかないうちに無効とされることによって、権利を失ってしまうというおそれも出てきます。
 したがって、その期間をどこに置くかということはなかなか難しい問題でございますが、今回一年間といたしましたのは、株券につきましては、株券を取得した者が配当を得たりあるいは議決権を行使しようと思うと名義書きかえをします。したがいまして、通常、株式会社において、一年に一回定時総会が開かれまして、その総会における議決権行使あるいは利益配当を受けるために名義書きかえをする、そのために会社に株券が提出されるというのが通常でございます。
 したがいまして、株券喪失登録がされてから一年間の間に、通常は権利を取得した人であれば会社に株券を提出する、そして会社側からその登録がされているということを通知を受けますので、そこで登録異議を出して自分の権利を保全する機会が与えられる。これが、一年より短くしますと、知らない間に無効になってしまうということがどうしても避けられませんので、そういうことで一年といたしました。
 ただ、そうしますと、現在の公示催告が六カ月であるのに対して長くなるということはございます。ただ、現在の公示催告も、公示催告期間が六カ月ということでございますので、現実に申し立てをしてから公示催告をし、そして除権判決をして確定するというところまで見ますと、実際には大体平均で一年程度かかっているということがございます。そういうこともありまして、一年としても特に喪失登録をする人に今以上に大きな不利益を課することにはならないのではないか、こう思っておるわけでございます。
 それと、もう一つは、公示催告と株券喪失登録の併用を認めますと、どちらを利用されているかわからない。したがって、どちらか一本といいますか、特に株券喪失登録の制度に一本化しますと、株券を取引しようと思う者は、その会社に対して株券喪失登録がされているかどうかということを確認すれば、そこで出ていなければまず安心だ、そういう安心が得られるわけですが、併用しますと、確認して、ないといっても公示催告されているかもしれない。そういう意味で、やはり取引の安定という意味で、併用を認めるのは難点がある、そういうことから株券喪失登録制度に一本化をするということで考えました。
漆原委員 以上でございます。ありがとうございました。
園田委員長 山田敏雅君。
山田(敏)委員 民主党の山田敏雅でございます。
 私は、去年一年間、日本の経済の活性化とそれから中小企業のいろいろな問題を、現場で生で接してまいりました。きょうは、商法改正を含めて、しっかりこの問題について議論していただきたいと思います。
 まず最初に、今回の改正でございますが、コーポレートガバナンス、これは米国型のものを取り入れたということなんですけれども、形式はいいのですが、肝心の実効性、中身について、ちょっと及ばない点があるのではないかと思います。
 過去のいろいろな日本の例を見てみますと、例えばヤオハンの倒産のケースですが、このヤオハンという会社は、倒産する二年前に二百億円の転換社債を発行した、そして一般の国民の方が、たくさんの方が転換社債を買った、そして二年後にこれが紙切れになりました。その倒産のときに明らかになったのが、過去七年間にわたって粉飾決算が行われていた。もちろん投資家は一切わからない。しかも、その粉飾決算の中身は極めて幼稚な、子供だましのような、そういうやり方であったということですね。
 ほかにも山ほどこういう例がございます。例えばそごうの点もそうですが、コーポレートガバナンスがしっかり働いていれば、あんなむちゃくちゃなことはない。しかし、それによって何万人という方がたくさんの被害を受けた。例えばヤシカのケースもそうです。これもたしか十年近く粉飾決算があったと思うのですが、これも非常に幼稚なやり方で、そんな専門家でなくても一発でわかる、こういう内容だったのですね。
 この問題の本質は、私も企業経営をやったことがございます、それから企業戦略のコンサルティングもやったことがありますけれども、非常に簡単で単純なんですね。ある意味で経営者が監査法人を雇っているわけですよ、どこかの会社を。そして、社長というのですか、経営者は報酬を払う。ですから、ヤオハンのケースも、海外に戦略を立ててやったのですけれども、非常にずさんな送金を初めいろいろなことをやったわけですね。これはもちろん監査法人なり監査役ははっきりわかるわけですけれども、もしこれを粉飾しなかったら、もう要らないといって別の監査法人を連れてくればいいわけです。非常に簡単なんですね。ここのところがはっきりわかっていないと、コーポレートガバナンスの本質を解決することはできないと思います。
 そこで、会社法部会というのを私は見たのですが、このメンバーが、今私が言った経営の実態、実践にいるという方が一名ないし二名。過半数の方は東大の教授それから大学の先生で、会社法部会でコーポレートガバナンスについて審議をした、意見を言った、こういうことなんですね。では、どこからどういうふうにアイデアが出てきたのか。たまたまアメリカ大使館のコーポレートガバナンスに対する意見書を見たのですが、今回の会社法部会の審議された結論とほとんどうり二つ。すなわち、この部会で実質的な議論は行われなかった、こういうことだと思うのですね。
 こういう状況で、アメリカのエンロンに見られるように、形をまねて日本に持ってきた、そして三つも委員会をつくって、非常に会社にとって経費のかかる、また問題がいろいろ出てくると思うのですけれども、この点について、大臣の御意見を少しお伺いしたいと思うのです。
森山国務大臣 法制審議会等におきまして現場を御存じの方が少ないという御指摘がございましたが、そういう方も入っていただいて、非常に知識、経験の広い方々が一生懸命に今の問題点を分析し、それをどのようにしていったら日本の企業が国際競争力をつけ、日本の経済を活性化できるかということを長時間研究していただいた結果でございまして、それを立法の実務家が立案したものでございますので、もちろんこれでパーフェクトというわけではございませんし、経済というのは生き物ですから、どのようにどうこれからまた変わっていくか、いろいろあると思いますけれども、必要があればまたそのような事態に対応する工夫をしていくということになろうと思います。
 今のところ、この状況で、今の経済の情勢や今の日本の企業の問題ということを考えました場合には、このやり方がよろしいのではないかということで提案させていただいているわけでございます。
山田(敏)委員 先ほど申しましたように、一番簡単な方法は、監査法人を経営者が決めてそれを支払うのではなくて、その報酬を国あるいは第三者機関に預けて、全く外部の人間がその会社の監査法人を決めていく。こういうやり方をすれば会社の非常に単純な粉飾決算はすぐにわかる。別にこんなアメリカのやり方をみんなまねるやり方をしなくても、簡単で実効の上がるやり方がある。
 翻って、新たな三委員会をつくってやると、これも、今言っただれが報酬を払ってやるのかというのがはっきりしていないと、この人が監査をしっかりやると言ったら、では、あなた首にします、別の私の言うことを聞く人を持ってくればいい、こういう今の日本の数々の粉飾決算の例とまた同じことをやる、こういうことだと思うのですが、その点についていかがですか。
森山国務大臣 今おっしゃるようなことを考えて実際にやる人があると、いろいろな例をお挙げになりましたけれども、しかし、そういうことをされて、会社全体の信用は非常になくなりますし、結果その会社は倒産するということになっているわけでございまして、そういうことは決して得にはならないと私は思いますので、やはり会社というのは信用が大切、そのことが基本ではないかというふうに思います。
山田(敏)委員 そういう優等生的なことがある場合もあるし、劣等生的なところもある。まさにエンロンは非常に信用のある会計監査法人がめちゃくちゃなことをやったということが明らかになったわけですから、ぜひ今の点を踏まえて慎重にやっていただきたいと思います。
 それからもう一つは、先ほどの会社法部会は非常に重要な意見あるいは結果を経済界に及ぼすわけですから、現場の中小企業の方が本当に今どんなことになっているのか、本当に倒産するということはどういうことなのか、そういう人たちの声が入っていないということは非常に大きな問題をはらむと思いますので、大臣、委員についてはぜひ再考をしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
房村政府参考人 会社法部会は、確かに学者の方々が多いわけでございますが、しかし、経済界の実際に経営に当たっている方、あるいは中小企業の団体から御推薦を受けている中小企業の実情に明るい方、あるいは公認会計士協会の推薦を受けた会計事務について明るい方、そういう実務を踏まえた議論ができるようなメンバーをできるだけ選んで、実質的な議論をして、内容を詰めてきたつもりでございます。
 御指摘のように、現場の実情を十分踏まえた議論がなされなければならないのはもうそのとおりだと思いますので、これからもメンバーの選任に当たっては、なお一層そういった点を考慮して審議の充実に努めていきたいと考えております。
山田(敏)委員 大臣、委員の決裁は大臣がおやりになるわけですから、今おっしゃった中小企業の団体の代表、その団体の専務理事とか、これは実際知らないわけですね。それから、会社法という、まさに企業の方々、経済人の方々にとって重要なものですから、過半数が大学の先生というんじゃなくて、過半数が経済をよく御存じの方、そして本当に問題意識を持っていらっしゃる方、この人を入れないと、これから先、日本は非常に危ないと思います。一言お願いいたします。
森山国務大臣 実態をよく御存じの、しかも公平で公正な意見をお持ちの方々をお願いしてこれからもやっていきたいと思っております。
山田(敏)委員 ありがとうございました。
 次に、経済産業委員会でもさんざんやったんですが、今の日本の経済の状況は非常に悪いです。日本の経済を活性化するには、法的に、制度的に大きな問題がここにございます。もっと大きなことを言えば、中小企業の問題もございます。
 平沼大臣は、経済の活性化をするのに、新しい産業、新しい会社をどんどんつくりましょうという平沼プランを出しておられるのは御存じだと思うんですけれども、ところが、現実はもうほとんどゼロに近い。まして、ベンチャービジネスについては日本に起こらないという現状がございます。小泉総理も、敗者復活を認める、一たんだめな人はもう一回やり直そう、これが大事だとおっしゃるのはよく御存じだと思うんですが、現実に個人保証制度というのが日本にございます。これで日本には敗者復活というのはありません、現実に。一回倒産されると、もう二度と立ち上がることはできません。この点について詳しく議論いたします。
 法務省は、破産法の改正をやっているからということで今まで来たんですが、どうもちょっと本質的な議論がだんだん外れてきた、こういうふうに思います。きょうは経済産業省の方、お見えになっていますか、今の、ベンチャービジネスが日本に存在しない、あるいは起こらない、これについてどういうふうに思われますか。
小脇政府参考人 お答えを申し上げます。
 今お尋ねの個人保証、そしてまた創業の関係でございます。
 一般的に申し上げまして、中小企業におきましては、企業の資産と個人の資産とが混然としている場合も非常に多うございまして、また、担保に供する十分な資産を企業として有していない、そういう場合も多いというような状況がございます。経営者の個人保証が求められるということはある程度避けがたい面もございますけれども、これは日本だけではなく、米国におきましても経営者の個人保証が求められるというのが一般的である、このように認識をいたしております。
 しかしながら、今先生御指摘のとおり、中小企業、個人事業主、あるいは開業者、そういった方々が事業破綻をした際に個人保証によって余りに厳しい責任を追及されるということになりますれば、創業への挑戦あるいは敗者復活への努力に水を差し、あるいは経営者の家族生活等に多大の影響を及ぼすということも事実でございます。
 こうした観点から、私ども、事業破綻の際に、個人保証をした中小企業経営者への責任の追及が、個人の再起の可能性さえ奪うようなものにならないようにしていくことが重要であるということで、私どもとしても、現在、法務省で進められておられます破産・倒産法制の検討において、こうした観点を十分踏まえていただくようお願いをしているところでございます。
 以上でございます。
山田(敏)委員 お願いをされているということなんですけれども、なかなかそのお願いが届いていないようなんです。
 私、去年の九月にサンフランシスコの講和条約五十周年の式典に参加しまして、シリコンバレーはすぐ近くですので、日米のベンチャービジネスのシンポジウムをやりました。そのときに、日本は今経済的な理由でみずから命を絶たれる方が大体一万五千人、一日に約三十三名の方ですが、そういうことを申し上げました。特に企業経営者の場合は、連帯保証ということでございますので、企業が倒産するとすべてなくなって、あしたから生きていくことはできない、したがってみずから命を絶たれる。それに、家族の方も、奥さんが連帯保証をとられているという場合もございますので、すべてなくなってしまう。みずから命を絶つことによって、保険金で家族は少し生きていけるかなということなんですが、この話をしましたら、アメリカのベンチャービジネスの方が即座に私にこう言いました。企業が倒産したら、次の日から新しい会社をつくってやればいいじゃないか、何で自殺しなきゃいけないんだ、そんなことがこの世の中にあるのかというふうに言いました。これは日米の今の法制度の差を明確に述べている言葉なんですね。
 アメリカの連邦破産法それから州の破産法、それぞれあるんですけれども、ほとんど調べてみましたけれども、まず、破産した場合、住んでいるおうちは残しましょう、金額無制限で、こういう州がざっと見て六つぐらいございます。それから、連邦全体の平均で四百万円は現金を残しましょう、それから車は残しましょう、そうでないとあしたから生きていけない。それから、住宅については、もし競売なんかで処分した場合、二百万円は残そう、二百万円あれば新たな家を借りたり、一年間生きていくことはできる、こういうことですね。
 日本の破産法はどうなっているかといいますと、二十一万円の現金を残していいです。二十二万だと一万円取ってもいいです。大体、以上ですね。あと衣服とかそういうことでございます。実質的にあしたから生きていくことはできない、こういう状況でございます。
 そこで、ちょっとお伺いしたいんですが、今破産法部会で審議されているということでございますが、どの程度今の問題意識を持ってやっていらっしゃるのか、お答えいただけますでしょうか。
房村政府参考人 御指摘の破産をした場合の自由財産、要するに執行の対象とならない財産の範囲でございますが、これについて、御指摘のように、債務者の経済生活の再建を容易にするという観点からは範囲を広げるべきであるという指摘がされておりますが、他方で、この範囲を広げるということは、結局のところ債権者に対する配当額が減少するということになりますので、財産がまだ残りつつ、しかももう払わなくていいということを認めることをどう考えるか、特に債務者のモラルハザードの問題が生じないか、こういう点からいろいろな議論がされているところでございます。
 特に、破産法はすべての破産事件を規律する一般法でございますので、特に中小企業の保証事件に限ったわけではなくて、すべての破産事件の基準となりますので、そういう意味で自由財産の範囲をどうするかということについては種々議論があり得るところでございます。
 なお、諸外国の自由財産の制度でございますが、御指摘のように、アメリカは非常に自由財産の範囲が広うございますが、しかし一方、例えばドイツ等では、自由財産とされるのは生活必需品であるとか食料あるいは給与生活者の継続的収入とか、非常に限定的で、ある意味では我が国と似たような法制になっておりますので、必ずしもアメリカのように自由財産が広く認められるのは世界の通例ではない。
 そういうことも踏まえて、現在、自由財産の範囲をどうするかという点について議論をしている段階でございます。
山田(敏)委員 日本が、アメリカ型のこういう自由財産の件について議論していくのか、あるいはほかの国をモデルにするのか、これは日本の方針というか、日本の考え方ですね。これから日本の経済をどういうふうにしてやっていくのかという大切な議論がないと、今の議論はできません。
 そこで、大臣、倒産法部会というのがございます。ここにメンバーがございます。二十六名いらっしゃいます。そのうち大学教授が十三名、民間の、多少経済というか経営に携わった方が二十六名中二名いらっしゃるんです。この中で、今言った、これからの破産法をどうすれば日本の経済は活性化するのか、議論が行われると思われますか。
森山国務大臣 私は、個別にどなたがなっていただいているかちょっとすぐにはわからないのでございますが、今までのことを考えますと、そういう問題についての専門的な知識のおありになる方、そのうちの多くの方は学者先生かもしれませんが、実際にそのような体験をなさる、あるいはそういう経済の実情に近い団体の関係者の方、あるいは具体的に御自分がそういう経験をなさった方というような方々が参加していただいてやっていらっしゃるのだろうというふうに思うわけでございます。それは、公正な議論をしていただくのに適当なバランスの配分を気をつけてやっているはずだと思っております。
山田(敏)委員 ちょっと、初めてであれなんで、もう一回よく見ていただきたいんですけれども、さっき二名と言いましたが、実質には、現実の経営なりそういうことをやった方は入っていないんです。
 民間の方は現実には三名入っているんですが、一人は東京ガス。しかし、この方は法務室長、要するに経営には一切タッチしていない人ですね。それから、もう一人は東京三菱銀行ですね。ですから、銀行の方からいえば、経営には関係のない方ですね。もう一人は東京商工会議所の中小企業金融委員会副委員長、要するに業界団体の中の事務をやっていらっしゃる方ですね。
 となりますと、この二十六名の委員の中で、一人も会社あるいは会社の経営の実態を知っている人は入っていない。この中で今おっしゃったようなことを議論されますと、どっち向いて日本が行くのか、本当に問題の解決をできるのか、これはできないと思うんです。
 今、もう一回今申し上げましたので、大臣、お聞きになったと思いますけれども、それについてどう思われますか。
森山国務大臣 今資料を探しまして、お名前のリストも今見たところでございますが、おっしゃいますように、学者の先生方、そして実務家の方、法曹関係の方、そして関係の団体というふうになっております。
 その中には労働組合の代表の方も入っておられますが、そんな方々がそれぞれのお立場から御自分の知識経験に基づいて議論をしていただいているというふうに思われますし、特にこの編成に特別の偏りがあるというふうに私は思いませんけれども、おっしゃいますような具体的なケースについてヒアリングをするとか、そのような方法もあることでございますし、また、一応の結論が出たそれぞれの段階でパブリックコメントを求めるとか、世論の動向にも十分注意をしていただいているというふうに思います。
房村政府参考人 今の委員構成の点ですが、関係団体で東京商工会議所中小企業金融委員会副委員長として入っていただいております石井委員は、実際に企業の経営に当たられている方でございます。これは、東京商工会議所の中の役割ということでこういう肩書になっておりますが、実際に企業経営に当たられておりますし、この石井委員から、中小企業の実情についてのプレゼンテーション等も分科会として受けたこともございます。
 それから、学者の方が多いのは、倒産法制の場合には、単に倒産法そのものを専攻している学者の方だけではなくて、民法とか商法、あるいは罰則の関係もありますので刑事法の学者の方にも入っていただいて、倒産法制としてきちんとした制度になるようにということで、通常の場合に比べて学者の方がやや多くなっております。
山田(敏)委員 今の御説明でわかりましたけれども、二十六名の中で会社の経営のことを知っているのはたった一名だ、こういうことだと思います。
 今後、この中で議論が出て、それからパブリックコメントといったって、もう今さら変えるわけにいかない、そういうことにならないように、そしてできるだけ早急に、この個人保証の問題、はっきり議論をしていただきたいと思います。
 私は地元を歩いておりまして、ある方が首をくくって自殺されました。生々しい話を私にしていただきました。その方は二階で首をくくられたんですけれども、警察を呼んでその処理をされているときに、奥さんが出られて、もう一回首をくくってつるしてくれということを言われました。そして、銀行の支店長三人に電話をして、今だんなが話があるから来てくださいということで、その三人が来た。そして、二階にいるからどうぞ話をしてみてくださいということでされたということなんです。
 これは、そんなに悪い経営じゃなくてやっていたんですけれども、銀行が貸しはがしそれから貸し渋りということで、あるいは最近の倒産の数が非常に多いですから連鎖倒産ということで、本人の会社は余り悪くないんだけれども何かの被害を受けた、こういうことでございます。
 何で銀行の支店長を三人呼んで、わざわざ二階に上がって首をくくって死んでいらっしゃる方を見てこいと言ったのかといいますと、銀行は約定書というのを書きます。これは、ドイツ等で禁止されている、優越的な地位を利用して非常に不平等条約的な内容が書かれております。これは、アメリカなんかもそうなんですけれども、金融取引規制法ということで禁止されている。
 個人保証をとります、奥さんが連帯保証になります。なりませんと言うと、じゃ、お貸しするのお断りしますと。だから、言われたとおりやらないとお金を貸してもらえない。担保追加します。お断りします。じゃ、もう貸しませんと。一方的にです。きょうから金利を上げます。お断りします。じゃ、資金を全部引き揚げさせていただきます。こういうことが今日本で行われております。これは、アメリカやヨーロッパでは法律で禁止されている考え方でございます。
 これについて金融庁の方にお伺いしますが、どういうふうなお考えでしょうか。
佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
 一般的に、金融機関の個々の融資業務等につきましては、基本的には、貸し手、借り手、双方、当事者の自主的な経営判断に基づいて、自主的な判断の上で決まってくる市場メカニズムに沿って行われるというのが本来の姿であろうと思いますし、そういうメカニズムの中で金融仲介という機能が発揮されていくということであろうかと思います。
 ただ、そういった当事者間の取引の中で、御指摘のような優越的地位の乱用といったようなことに該当する問題がございますれば、基本的には、まず独占禁止法のもとでチェックが行われ、行政対応が行われるというのが基本であろうかと思います。
 金融庁といたしましても、独占禁止法を所管する公正取引委員会におきまして、しかるべき、独占禁止法に違反する行為ということで処分がなされる場合には、金融庁としても、法令に則して適切な措置をしていくということであろうかと思います。
山田(敏)委員 独占禁止法を調べましたけれども、私が今言ったようなことが問題になったことは一度もありません。それから、実質的に公正取引委員会が今の銀行の優越的地位について取り締まりをしたという例もございません。今の問題は、公正取引委員会がやればというような話なんですけれども、日弁連が一九九六年十月二十五日に、「銀行取引における消費者の権利確立を求める決議」、現状の余りにもひどい銀行の優越的地位を利用したことに対して非常に重要な決議をしているわけです。それは、現実にそういうことがあるから、そして、今の金融庁と公取の機能は機能していないということなんですね。この問題提起。
 ドイツの法律がここにございますけれども、無効である件、一般条項ということで、相手方の信義の要請に反して不当に害する、これは無効であるというようなことをはっきり法律で書いております。
 この点を金融庁は真剣に考えるべきときに来ているんじゃないでしょうか。もう一度ちょっと。
佐藤政府参考人 先ほどのお答えに若干補足をさせていただきたいと思います。
 先ほど保証といったことが問題になってございましたので、保証あるいは担保を徴求するといったことに関連いたしまして一言申し上げますと、金融機関が必要に応じて融資の際に担保や保証を徴求すること自体は、適切なリスク管理を行うということで、金融機関が経営の健全性を確保するために必要なことだろうと思います。ただし、そういったことを行う際に、一般的に、取引条件等の設定に当たりましては、貸し手、借り手、両当事者間で事前に十分な協議を経て決めるということが筋でございまして、一方が一方的に設定するといった性格のものではないと思います。
 そもそも、金融機関の融資に当たりまして、金融機関が担保や保証のみに依存するということは適当ではないということでございましょうし、与信先の事業計画であるとか財務状況であるとか返済財源等といったことについて的確な把握をした上で、健全な借り手に対しては、条件設定を適切に行った上で適切な融資を行うということが求められているということであろうと思いますので、金融庁といたしましても、金融機関に対して、そういうきめの細かい審査のできる融資審査体制の一層の改善ということを繰り返し求めてきているところでございます。
 それからもう一つ、独占禁止法の対応だけではしゃくし定規ではないかといった御議論でございましたが、金融庁といたしまして、独占禁止法の世界に入る前段階の各種の対応といたしまして、これは金融庁としてということではございませんけれども、例えば、銀行協会が運営いたしておりますよろず相談所といったことがございまして、こういった機関において苦情を受け付ける、あるいは、銀行とのトラブルがなかなか解決しない場合におきましては仲裁センターへの取り次ぎを行うといったサービスを行っているということがございます。それから、金融庁といたしましても、こういった金融関係団体の設置している苦情相談窓口といったものについてインターネットで掲載するなど、窓口の存在につきましてその広報に努めているということでございます。
 いずれにいたしましても、独占禁止法の世界の外のケースもあり得ると思いますけれども、不適切な業務運営を行った金融機関に対しましては、銀行法二十六条の規定に基づく業務改善命令といったことが打てるようになっておるわけでございます。
山田(敏)委員 今の答弁では、アメリカやヨーロッパにあるような金融取引規制法というものについては、今の現状では考えていないということですか、それとも検討しているということですか。
佐藤政府参考人 冒頭のお答えでも申し上げましたけれども、金融機関の個々の融資業務につきましては、基本的には、貸し手、借り手、双方のいわば経営方針が出合ったところで、それぞれの資金ニーズあるいは資金供給能力といったことが反映されて契約が成り立つというふうに思っておりまして、その意味では、当事者間の自主的な判断と市場メカニズムを通じた金融仲介というのが基本であろうかと思います。
 したがいまして、そこに何らか一律の基準によって行政当局が枠を設定する、枠組みを設定するということにつきましては、慎重に考えざるを得ないのではないかと思っております。
山田(敏)委員 佐藤審議官、現実の現場を御存じないんじゃないですか。今あなたがおっしゃった、借り手と貸し手の単なる商売上の話し合いでこれが決まるのが原則であると。そういうことにならないから、アメリカでもヨーロッパでも原則、優越的な地位、一方的なやり方は間違いだと。
 企業の経営者は、連帯保証をとらされているわけですよ。家族も連帯保証人になりなさいと。その保証の内容なんてわからないんですよ、書いていないんですよ。これは、文書でちゃんとわかるようにしてから納得してやらなきゃいけない。現場でそんなことは行われていないんですよ。あなた、知らないで審議官をやっているんですか。今の借り手と貸し手の経済原則に基づいてやっていないんですよ。だから、こんなたくさんの被害者が出ているんじゃないですか。それをどう思いますか。もう一回言ってください。あなた、現場を知っているのかどうか、言ってください。
佐藤政府参考人 私自身、直接企業経営とか銀行業務に携わった経験があるわけではございませんけれども、私どもの可能な範囲で情報を収集し、考えをまとめているということでございます。
 そして、先ほどのお話、ちょっと補足させていただきますと、当事者間の事前の十分な協議に基づいて対等な立場で合意が形成される、そのプロセスにおいて、御指摘のような優越的な地位の乱用といったことがあれば、それは不適切な行為ということでチェックをしていかなくてはいけないというふうに思っております。
 そして、今御指摘のような、例えば保証人の義務に係る銀行取引約定書といったものがかつて存在いたしました。あるいは、契約の確認の際に、銀行取引約定書の差し入れ方式といったものが一般的でございました。こういった、一方を利するような、あるいは一方的な形の契約の締結の手続といったものは廃止をさせるなり削除させるなりということで、それなりの進展が図られ、努力が払われているということでございます。
山田(敏)委員 もう一回原点に返ってしっかり見ていただきたいんですが、この法律はぜひ必要であると私も民主党も考えておりますので、ぜひ検討してください。
 先ほどの答弁の中に、今までの銀行は担保と個人保証でやっていく、そういう時代じゃない、もっと別の要素を勘案してやると。個人保証をそんな重要な地位に置かなくてもいいということだと思います、今の答弁は。
 政府系の金融機関がございます。商工中金とか中小企業金融公庫、国民金融公庫。まずこの政府系金融機関から企業経営者の連帯保証をやめさせる、これは法律つくらなくてもいいんですけれども、こういうことを私どもは真剣に考えていますけれども、金融庁としてはいかがお考えでしょうか。
佐藤政府参考人 政府系金融機関につきましては私どもの所管外でございますけれども、個人保証というお尋ねということで、一般論としてお答えをさせていただきますと、担保を徴求したり保証を求めたりということは、先ほども申し上げましたように、金融機関がリスク管理をしていく上で一つの有力な手法、手段であるという点は変わらないと思います。
 ただし、先ほども申し上げましたように、これのみに依存して、融資対象である事業の採算性とか将来性とかあるいは借り手企業の経営指針、方針であるとか、そういったことを十分に審査しない口実というふうにこれが使われるということはあってはならないということで、融資審査体制が重要であるというふうに申し上げたわけでございまして、その意味におきましては、金利設定等におきましても、融資にかかわる信用リスクの大小ということを反映した貸出金利を取る、確保するといった、そういうプライスメカニズムを働かせる意味からも、こういう中身に即した審査ということが重要であるという点は御指摘のとおりであると思いますし、私どももそういうふうに考えております。
山田(敏)委員 今の答弁で明確になりましたので、ぜひその線で、口だけじゃなくて実行していただきたいと思います。
 日本経済新聞の十一月十九日の一面の記事がございました。これは私が冒頭申し上げました破産法の改正の中身を書いたものでございます。経営者の保証責任を軽減と書いてあります。これはどういうことかといいますと、今法務省は破産法の改正に当たってアメリカ並みの内容を検討していると。約四百万円、正確には三万ドル、これを手元に残そう、それから自動車を残す、それから最初に私が申し上げました家の中身をやると。これが出まして、非常に大きな反響がいろいろございました。破産法の改正は本当にいい方向に行っているんだな、これで多少なりとも、今個人保証をされて自殺をするかと考えていらっしゃる方が救われるかもしれない、こういうことでございます。
 今、最初に、破産法の審議はどうですかということで、この具体的な中身について、下村政務官、せっかくいらっしゃるので、どこかの席で私と議論したことがございますので、今議論をお聞きになって、この破産法の改正についてどうあるべきか、政務官としての個人的なお考えか、あるいはどうしたいか、ちょっと一言どうぞ。
    〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
下村大臣政務官 山田委員から御指摘がございましたように、先日委員とお話をさせていただく機会がございまして、私の選挙区も大変中小企業が多いところでございまして、先ほどのエピソードと似たような個人的体験を私も持っておりまして、今大変に中小企業経営者の方々にとっては苦難の時期であるというふうに思います。
 委員から御指摘があった後、私も、法務省、関係の方々と、破産法をできるだけ早く法務省としても取りまとめをすることによって、少しでも中小企業経営者の救済につながっていくような法律の改正が必要ではないかということで問題提起をさせていただきましたし、できるだけ早くそのような方向になるように努力をすることが、私にとっても必要なことだというふうに考えております。
山田(敏)委員 前向きな発言をどうもありがとうございます。
 実は、その発言とは裏腹に、今の破産法の言われている中身は、二十一万円と今申し上げましたが、これはまあ、ほとんど一月生きれるか生きれないか、もう家がなくなるわけですから、ほとんど生きれないと思いますけれども、これを三十万円か四十万円ぐらいにするのが妥当ではないかという議論が、ちょっとある筋から言われまして、そういう議論が行われている、破産法の改正について。これは、根本的に全く問題の解決にはならないわけですね。
 それともう一つ。平成十五年にやりましょうという、御存じだと思うんですけれども。今、下村政務官がおっしゃったように、今の個人保証による連鎖倒産、非常にふえております。さっき一万五千人の方が大体経済的な理由で命を絶たれると言ったのですが、先日、またお葬式の話で恐縮なんですが、まあまあの会社だったんですけれども、別に悪くないというところが倒産いたしまして、経営者の方のお葬式に行ってまいりましたけれども、心不全ですというふうに言われました。実際はそれはみずから命を絶たれたんですけれどもね。これはあちこちで今聞くようになりました。自殺の統計の中に入っていない方もこういうふうにふえて、私、今、一日に三十三名の方が命をなくされておるということを言いましたけれども、平成十五年に、今のような、二十一万円を三十万円にしようかと、この程度の議論で、本当に日本の経済がよくなるとお考えになりますか、大臣。
    〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
森山国務大臣 私は、その議論の中身が具体的にどのようなぐあいになっているかということを詳細には存じませんけれども、自由財産の範囲の問題ということは非常に大きな課題だろうと思います。債務者の経済生活の再建を容易にするという観点から、範囲を広げるべきであるという議論が強く唱えられている反面で、この範囲を広げることになると、破産の場合での債権者に対する配当額が少なくなることをどう考えるかというような反論も有力であるというふうに聞いておりまして、自由財産の範囲を決めるということは非常に大きな課題だと思いますが、再建を助ける、少なくともしばらくの間は、生きて考える必要があるということを考えますと、そういうことを考えた上での範囲に決めるのが妥当なんではないか、私個人としてはそう思います。
 しかし、最終的にその自由財産の範囲を広げたとしても、担保権が設定されますと、実行されてその財産を失うということにもなりますので、どのようにすれば最もよい解決方法なのかというのは、非常に難しい、知恵の要るところなんだろうと思います。
 まあ、何とかいたしましていい案を見つけまして、平成十五年中を目途にして進められております法律の見直し作業の中で、皆さんの御意見も伺いながらよい結論を得たいというふうに思いますが、平成十五年というともう来年でございますので、できるだけ早くという気持ちでございます。
山田(敏)委員 その答弁書は役所で書かれたんですが、十五年というのは今役所の方針で決まっているということなんですが、今、政治家として、国民の代表として、それでいいのかと。今その答弁書をちょっと横に置いていただいて、平成十五年の後ですから、今から一年以上もこのままほっておくということ。
 それからもう一点。私が言ったような意見を言うのは、この委員の中でたった一人しかいらっしゃらないんですね。もっと早くすべきであるとか、自由財産をもっと広げるべきだとか。それはおっしゃるようにいろいろな議論があります。しかし、今、喫緊の課題で、これを広げた方がいいという意見をおっしゃる方がたった一人しかいない。その中で今のような議論をしていたら、これは余りにも経済に対して、国民に対して無責任ではないかと思います。
 ちょっとその答弁書を横に置いていただいて、お答えいただきたいと思います。
森山国務大臣 おっしゃることもよくわかります。しかし、法律の改正、特にこういう各方面に大きな影響のある改正ということを具体的にやってまいりますのにはある程度の時間がかかるということは御理解いただけると思いますし、できるだけ早くという気持ちは先生と少しも変わらないのでございますけれども、現実には、一年の間に準備をして来年の国会にということになりますと、これからもう大急ぎでやらなければならないというのが現実でございます。
 少しでも早く結論を得まして、経済の、特に破産その他のために命をなくすというような方を少しでも食いとめるようにということを私たちも心から願っているわけでございます。
山田(敏)委員 横内副大臣、一言も御意見をおっしゃっていないので、今の議論を聞いて、ぜひ御意見をお願い申し上げます。
横内副大臣 ただいま委員から、中小企業の大変に苦しい状況を踏まえた御質問を承っておりまして、私自身も非常にいい勉強をさせていただいているというふうに思っております。
 破産法の改正も確かに早くやりたいわけでありますけれども、しかし、基本法でありますので、なかなかやはり一定の時間が必要だということはぜひ御理解をいただきたいと思いますけれども、そういう中でも、できるだけ議論を急ぎ、早く改正ができるように、私としても努力をしたいというふうに思います。
山田(敏)委員 ぜひ、破産法分科会の中でしっかり議論に入っていただきたいと思うのですね。何でそんなに一年もかかってやるのか。急いでやるんだったら、二カ月に一回、三カ月に一回やる必要はないので、やれる人が集まって一週間に一回、二週間に一回やればいいということもあるわけですね。それは政治家として、今まで一年かかったから一年やるというのでは、政治家の判断は何もないということになりますので、ぜひ議論の中に入っていただきたいと思います。
 最後に、私は経済産業委員会におりますので、日本の経済を救うのは、今大変失業者がふえておりますが、その失業された方も新たに会社をつくってアメリカのようにやっていきたい、政府もそれをやるということなんですが、今言いましたように、アメリカは、例えば大学の中でたくさんの企業が起こってくるわけですね、学生も先生も。これは、ある大学の先生が私に言ったんですけれども、隣の部屋の教授が会社をつくって上場して何十億か利益を上げた、あのばかでもできるんだったらおれでもできるといって会社をつくってやられた。要するに、成功事例があるということは、人間が勇気と希望を持ってやっていけるということなんですね。
 ちょっと最後に御紹介しますけれども、「シリコンバレー・アドベンチャー」という本がございまして、ジェリー・カプランというベンチャービジネスで成功した人なんですけれども、この人がこの本の中で言っていることは、要するに、私は会社をつくりますよとお父さんに言ったら、そんないろいろな書類にサインをして、大変な保証をして、とんでもない、やめろとそのお父さんは言ったんですね。その彼が言ったことは、もう今日では事業と個人の間に明確な一線が引かれている、だから無限責任を私がとらされることはないんだ、事業で失敗したら、次の日からまた新しい会社をつくってやればいいんだ、こういうふうに本に書いているんですね。
 これが今日本の中にない。すなわち、個人保証制度がしっかりとあって、日本は今、ちょうどアメリカがやった成功体験の逆をやっているんですね。若い人や大学の先生が、会社をつくりたい、もうそこらじゅう会社をつくって、銀行からお金を借りて、事業に失敗して身ぐるみはがれて、もう一生再起不能、こういう例が、あの人もそう、この人もそう、この人もそうと。これで平沼プランが順調にいくことは絶対にないと私は思いますので、個人保証制度をもう一回、事業と個人を分ける考え方でやらないと、日本の新しい事業も会社も起こってこない。これをぜひ法務省の方、わかっていただきたいと思います。
 ちなみに、シリコンバレーのベンチャーキャピタリストの人に会って、どういう人に投資をしますかと。アメリカは数兆円のベンチャーキャピタルがあるんですが、同じ内容で同じ人が投資をしてくださいと来たら、二回から三回事業に失敗した人、一回も事業に失敗していない人、二回から三回失敗した人の方に私は投資をしますと。事業に失敗することによって人間は学ぶ。だから、前こんなことをやった、ばかなことをやったから、では反省してもっといい経営をやろうと、いい経営者が育ってくるんですね。
 日本の場合は、今言いましたように、銀行からお金を借りないと新しい会社ができないんですね、アメリカはベンチャーキャピタルがたくさんありますけれども。その中に必ず個人保証制度がありますから、もう日本はそういうことは二度と起こらないことでございます。
 最後に、私のおじさんは、帝国海軍で戦艦武蔵で戦死したんですが、日本の帝国海軍は、戦艦武蔵という世界一の軍艦なんですが、これが沈むときに、艦長を生きたままくくって船とともに沈む。どんな船が沈んでも、艦長は責任をとって、生きたままくくって船は沈む。アメリカの海軍は、第二次世界大戦のときに、船が沈みそうになると艦長を一番先に助ける。水兵はもうおぼれてもいいから、艦長だけ先に逃げよと。なぜか。艦長をやるような人材は貴重な人材だから生かしておかなければいけない。船はもう一回つくればいいけれども、人間はもう一回できない。これがアメリカと日本の帝国海軍。帝国海軍は、その貴重な人材を船とともにどんどんなくして、最後は人材がいなくなってしまった。今、日本が個人保証制度によって、この帝国海軍の失敗を着実に歩みつつあるのではないかと思います。
 以上でございますが、もしよろしければ一言御感想を。
森山国務大臣 日本の国の経済を改革していこうという大変強いお気持ちが伝わってまいりまして、大変参考になりました。
 しかし、日本の国民の意識とアメリカの人たちの考え方というのはかなり違うと思いますので、もちろん、学ぶべきことは学ばなければいけませんけれども、やはり日本の国の中で行われる経済活動というのは、日本の国民にもサポートされなければいけないと思いますので、そこのところを調整して、国際的にも通用するし、日本の国民にも納得してもらえるというような法律制度をつくっていかなければいけない、そこが非常に難しいところでございまして、先生のお知恵もおかりしながら努力していきたいと思います。
山田(敏)委員 どうもありがとうございました。
園田委員長 山内功君。
山内(功)委員 民主党の山内功でございます。
 大臣は、コーポレートガバナンスという今の議論について、どういうふうに解釈しておられるのでしょうか。今、なぜこの議論がなされているのか、お聞きしたいと思います。
森山国務大臣 コーポレートガバナンスというのは、最近非常によく聞かれる言葉でございますが、改めてどういう意味かよく調べてみましたら、日本語に訳しますと、企業統治というふうに訳されるということでございます。
 これは、株主等の利益を最大化するために会社の事業活動を統制することであるというふうに書かれておりますが、その統制のあり方については、企業経営の適法性を確保すること、また、企業経営の効率性を確保することという二つの視点からとらえることができるのではないかというふうに思います。
山内(功)委員 効率性、実効性、あるいは競争社会の中で激化するこの国際競争にどう対処するかという議論を進めると、株主総会の形骸化につながるんじゃないかという懸念を抱く向きもあるんですが、本日は、株主総会で改正点が何点かございますので、その点に少し絞りまして質問をさせていただきます。
 今回の改正法案の中で、株式の譲渡についての取締役会の承認を要する会社に限って、定款によって招集通知の発出から総会前日までの期間を一週間を限度として短縮できるというふうになっておりますけれども、この改正の趣旨をお伺いしたいと思います。
房村政府参考人 現行法は、株主総会を開催するためには、会社は株主総会の日の二週間前までに各株主に対して招集通知を発出しなければならないとしております。これは、株主に対して株主総会に出席する機会を保障する、そういうこととともに議決権行使のための準備をする機会を与えるということが目的でございます。
 譲渡制限会社の場合は、一般に株主数が限定され、その異動も少ないということから、招集通知の発出期間を一定期間短縮することとしても招集通知について期間を要求している法の趣旨を害することはないだろうと考えられます。
 一方、近年、株主総会を機動的に開催するという要望も出ておりますので、譲渡制限会社については機動的に株主総会を開催することができるように、定款でその招集通知の発出期間を一週間前まで短縮するということを認めることとしたわけでございます。
山内(功)委員 総会の招集される場所に行く方法を考えたり、日程をとったり、あるいは会社が提案してくる議題について考えたりというためには、今のままで、つまり二週間のままでいいのではないか、それが株主の権利を害さないことになるのではないかという指摘もあるのですが、どうですか。
房村政府参考人 そういう意味で株主の方の準備期間を確保するということを考えれば、通知は早い方がいいということにはなります。
 ただ、同時に、会社としてやはり、特に臨時株主総会等を開く必要がある場合に、これをできるだけ早く開きたいという場合も予想されるわけでございまして、そういうことからいいますと、会社とすると、できるだけ早く株主総会を開いて適切に決めていただいて時宜にかなった会社としての経営を行っていきたいということも考えられるわけでございますので、そこは会社の株主の方々が定款を変えて、譲渡制限会社であれば、一週間でいいという判断をされればそれを優先させてもいいのではないか、こういうことでございます。
山内(功)委員 株主総会では、書面または電磁的方法による決議の方法が今回認められるようなんですが、この点について少し具体的なイメージがわかないんですけれども、結局どういう決議のやり方になるんですか。
房村政府参考人 書面または電磁的方法で株主総会決議を認めるということでございますので、ある議案について、議決権を持っている株主の全員がその決議の目的となる事項に賛成しているという、書面であれば、こういう決議に賛成ですという書面、もしくは電磁的方法、Eメールや何かが想定されますが、そういうものを議決権を持っているすべての株主が出した場合には、もう一度改めて株主総会を開く必要はないであろうということから、株主総会の議決にかえるということになっております。
山内(功)委員 法制審の中間試案では、取締役会の決議についても書面または電磁的方法による決議の方法が提案され、今回はそれが抜かれていますね。その決議の方法については、今後検討されるのでしょうか。
 もし機動性を重視するということなら、株主総会での書面または電磁的方法よりも、取締役会でそういう決議方法を採用した方がより機能的、機動的に審議できると思うんですが、どうでしょうか。
房村政府参考人 御指摘のように、会社経営に非常にスピードが要求されております。一方、取締役の方が外国にいるというようなこともありますので、機動的な意思決定を可能にするためには、そういう書面あるいは特に電磁的方法による取締役会決議というものを認めることを求める声が相当強いことは御指摘のとおりでございます。
 ただ、同時に、取締役会の場合には、直接取締役としての意見交換をするということによって適正な判断に到達するということも相当の重みを持っておりますので、今回は取締役会についての書面決議等については見送るということといたしましたが、なお、取締役会の形骸化を招かずにそのような方法が可能であるかどうかということについては、さらに検討を加えたいと考えているところでございます。
山内(功)委員 株主提案権の行使期限を六週間前から八週間前へと二週間も繰り上げていますが、この改正の趣旨は何でしょうか。
房村政府参考人 株主提案権が行使されますと、会社としては、その提案権の内容を招集通知に盛り込みまして株主の方々に通知をする必要がございます。
 ところで、先ほど申し上げましたように、株主総会の二週間前には招集通知を発送しなければなりませんので、六週間前の限度ということになりますと、提案権が行使されてから発送するまで四週間の期間しかないということになります。その期間に、求められた提案権の内容を入れた招集通知を印刷して封入して各株主に発送するという作業を会社としては行わなければならない。実は、六週間というのは、定められた当時から、期間的に非常に厳しいという声がありまして、実務的に何とか株主総会までにきちんとした準備ができるようにもう少し準備期間をとってほしいという要望が非常に強うございましたので、今回、提案権の行使期限を二週間繰り上げるということといたしたものでございます。
山内(功)委員 会社は、六週間であろうと八週間であろうと、期限以内に来なかった提案については総会で取り上げる義務はありませんよね。もしそうだとすれば、八週間前には、会社の不祥事等も発生しないで、提案までする考えがなかったけれども、例えば、今のこの改正案が通れば、六週間前に会社で大きな出来事があった、取締役の違法行為があったというような問題について、二週間分株主権が、つまりは会社の経営について異議を言う権利がなくなるという意味では、かなり大きな問題ではないんですか。
房村政府参考人 そういう意味では、株主にとって二週間早目にやらなければならないという制限がつくことは御指摘のとおりでございます。
 もちろん、新しい議題の提案はできませんが、既に議題となっている事柄については、株主総会当日、議案の内容として新たな議案を提出することは可能でございますので、その限りでは、行使する方法は多少ございます。
 ただ、御指摘のように、二週間早目にしなければならないという一定の制約をこうむることは事実でございますが、しかし、同時に、株主総会を円滑に実施するために、会社側の事務負担等についてもある程度考慮することが必要であろうということから、今回、期間を繰り上げるということといたしたものでございますので、御理解を賜りたいと考えております。
山内(功)委員 六週間前でしか提案権を区切れないということによって、発出期間の二週間を引けば四週間しか検討時間がないということでこの改正案を出されたと先ほど言われましたけれども、文句がたくさん来るような会社運営をしたから、たくさんそういう提案が来るのじゃないんですか。つまり、株主の利益が不当に侵害される、あるいは侵害されるような経営を行いそうだ、あるいは行ったということで提案をするんじゃないんでしょうか。
 もしそうだとすれば、たくさんの株主が全国に散らばっているような大きな会社あるいは公開会社、そういうのに限って二週間繰り延べを認めて、例えば今ある普通の会社とか中小会社とか閉鎖会社とか、そういう会社については現行法のままでもいいんじゃないんでしょうか。
房村政府参考人 株主の不満の多い会社についてこういう心配があるのではないかということですが、どんなに満足していただいている会社であっても、現行法上六週間前まで株主提案権が行使されるとなると、その六週間前までは議案の印刷等にかかれない、そこに来るまでは絶対待たなきゃいけませんので。ですから、どうしても四週間しか物理的に余裕が確保できないということになります。
 確かに御指摘のように、株主数が非常に多数の会社の方がそういう事務負担が多いのは事実だと思います。そして、大会社の方が株主が一般的に多いということも言えようかとは思います。しかし、必ずしも会社の規模、いわゆる資本金の大小と株主数というのは比例するわけではございませんので、資本金の額で期間を分けるということは必ずしも実情に合わない場合もあります。また、逆に今度は株主数ということになりますと、これは絶えず変動しますので、これを基準に何週間前というのを決めるのも株主にとってはわかりませんので、やはりすべての会社に一律に何週間前までにという方が、行使をする株主にとっても明快ではないかと思っております。
山内(功)委員 次に、現在、株主にとって大きな利害関係にある項目について株主総会の特別決議によっている。その定足数を定款の定めによって減少することが認められるということになるようなんですが、この改正によって株主の利益がやはり不当に侵害されるということにはなりませんでしょうか。
下村大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきたいと思います。
 改正法案は、総株主の議決権の過半数とされている株主総会の特別決議の定足数を、定款の定めによって総株主の議決権の三分の一まで引き下げることを認めることとしております。
 株主総会の特別決議の定足数の緩和を認めたのは、議決権を行使しない株主が増加しているという昨今の状況、また、定足数を充足しないために、組織再編や定款変更等の株主の利益にとって重要な、会社経営上必要な行為が行えなくなる、こういう事態を逆に避けようとするものでございます。
 また、定足数の緩和は、株主による議決権の行使を制限するということではございませんで、この特別決議の可決要件は現行法と同じでございまして、総会に出席した株主の議決権総数の三分の二ということでございますので、今回の改正によりまして議案に反対の株主の地位が弱まるということではございません。
 そのようなことから、株主総会の特別決議の定足数の緩和を認めることによって、株主の利益が害されることはないというふうに考えております。
山内(功)委員 会社関係についての先進国と言われる他の国では、株式の持ち合いということが余りない。つまり、解消をしていくということも当然必要だと思いますし、この議決権の種類とか、先ほどおっしゃいましたような行使の方法について、いろいろ書面化も含めて行使の方法の選択肢が拡大されていくわけですから、その実施状況を見ながら定足数の緩和について議論を行うという態度もとれたのではないでしょうか。
房村政府参考人 確かに御指摘のように、株主総会の決議の成立について、書面決議とかあるいは招集手続の不要化とか、できるだけ株主総会を適時適切に開催して結論が得られるような仕組みを今回いろいろ考えてはおります。
 ただ同時に、やはりこれだけ御指摘のような持ち合いが解消され、株主数が非常にふえてくる、あるいは外国株主もふえるというような事態になりますと、最も重要な議決機関である株主総会を成立させることがなかなか難しくなっているということも事実でございます。
 一方、この特別決議が要求されますような、会社にとって極めて重要な株主総会を適時適切に行うということが、例えば会社の再編であるとか、企業の最も基本的な経営方針にとって重要な意味がありますので、やはりそこを考えますと、そういう点について、ただいま政務官から申し上げたように、特に株主の利益が害されるおそれもないわけでございますので、この定足数の緩和をする必要があるというぐあいに考えております。
山内(功)委員 ですから、株式持ち合いの解消についてもっと積極的に対応するとか、あるいは先ほどの、二週間が一週間でも、定款によれば通知の発出が短縮できるというような法改正もなされるようですけれども、招集通知をもっと早く発出すれば、それだけ日程の関係についても、あるいはホテルを予約するとかの関係についても確実にできるわけですから、総会の出席も確保できるわけです。そういう会社側の、定足数を自分たちが充足していくんだというような努力を促すことも法の精神ではないんでしょうか。
房村政府参考人 もちろん、会社にとって最も重要な決議機関である株主総会ですから、会社として当然それが成立できるように種々配慮を行っているものと思いますし、またそういうことが必要だろうと思います。
 ただ、そうはいいましても、会社の規模であるとか株主数であるとか、そういうもろもろの状況から、現行の定足数ではこれを成立させるのはなかなか困難だという事情がある会社も存在するわけですので、そういう会社につきましては、その自主的な判断で、定款で定足数の緩和を認める。しかも、緩和につきましても、無限定に認めるわけではなくて、三分の一までという最小限必要な数字の確保は求めているわけでございますので、今回の定足数の緩和によって株主の利益が害されるというようなことはないだろうと思っております。
山内(功)委員 この定足数の緩和については大規模公開会社に限ろうというような議論はなかったんでしょうか。
下村大臣政務官 株主総会の特別決議の定足数の緩和を行う必要性の有無、またその理由というのは、個々の会社によってさまざまあるということが想定されます。会社の規模等によりまして一律に分けるということは困難ではないかと思います。また、同一の決議事項につきまして、その決議に必要な議決権の定足数を、大会社か中小規模の会社か、あるいは公開会社か閉鎖会社かといった会社の形態によって区別をするということは相当ではないのではないかというふうに考えられるのではないかと思います。
 そこで、改正法案におきましては、株主総会の特別決議の定足数の緩和は、会社の規模によって一律に分けるということではなくて、個々の会社の事情に応じた株主自身の自主的判断によることといたしまして、個々の会社の定款の定めによって行うことができる、そういう仕組みを設けたものでございます。
山内(功)委員 定足数の緩和の関係についてもう少しお聞きしますが、例えば、会社に資産が十分にあると思って会社に勤めている従業員あるいは会社と取引をしている債権者が、定足数が緩和されることによって、例えば分社化とか子会社化とか、あるいは反執行部の考えの人であっても優秀な役員が解雇されるとか、緩和によって容易にそういうことが行われるのではないかという懸念も私は持っております。例えばリストラとか配置転換などが多くなって、雇用の環境などにも大きな影響を与えるのではないかとも思うんですが、その辺の考慮はされたんでしょうか。
房村政府参考人 今回、特別決議につきまして定足数の緩和を認めたわけではありますが、しかし、三分の二の多数が要るという点につきましては変わっておりませんので、少なくともその決議事項について関心を持って株主総会に出席する方々の中で三分の二の多数を占めない限りはそういう決議が得られないわけでございますので、定足数が緩和されたから直ちにそういういろいろな問題について決議が得やすくなったかというと、これは必ずしもそうとも言えない。少なくとも株主総会が成立しやすくなったということは言えますが、そういうこともありまして、賛成の割合についてはその変更を認めていないわけでございます。
山内(功)委員 実施状況を見て、これからも問題点があれば指摘をさせていただきたいと思います。
 会社の監査の関係で二点お伺いします。
 今回の改正法案では、大会社以外の会社であっても、資本金が一億円を超えるものについては会計監査人の監査を受けることができるようになっておりますが、この改正を行う理由を伺いたいと思います。
森山国務大臣 現行の商法の特例法は、大会社の計算書類について、監査役の監査のほか、公認会計士または監査法人である会社監査人の監査を受けなければならないとした上で、会計監査人及び監査役の適合意見があるときは貸借対照表及び損益計算書の確定について定時総会の承認を要しないこととして特別な扱いを認めております。また、改正法案においては、大会社について重要財産委員会の設置を認めまして、さらに委員会等設置会社になることをも認めております。他方で、現行商法特例法は、大会社以外の会社には会計監査人の監査による特例を認めておりません。
 しかしながら、大会社以外の会社でありましても、証券取引法によりまして有価証券報告書の提出を義務づけられている会社などでは、計算書類について公認会計士または監査法人の監査を受けているわけでございまして、このように外部の専門家による会計監査を受けている会社について、大会社でないからという理由で、会計監査人の監査を受けることに伴う商法特例法上のメリットを享受させないとする合理的な理由は見当たらないというふうに考えたのでございます。
 そこで、改正法案は、大会社以外の会社であっても、資本の額が一億円を超えるものについては定款の定めにより会計監査人の監査を受けることを認め、会社の選択肢をふやすことといたしたものでございます。
山内(功)委員 大会社以外の会社で会計監査人の監査を受けることができる会社を、資本金が一億円を超え、かつ、証券取引法により公認会計士または監査法人の監査を受けている会社に限定すべきである、そういう指摘もあるのですが、そうしなかった理由はどこにあるんでしょうか。
房村政府参考人 御指摘のような御意見もあるわけでございますが、大会社以外の会社で、かつ、証券取引法の適用を受ける会社でなくとも、公認会計士または監査法人の監査を受けている会社というのはあるわけでございます。特に、上場を目指す会社の場合には、上場前二年あるいは三年、財務諸表をつくる必要がありますので、そういう場合には会計監査をそれぞれ受けておられるわけです。そういう専門家である会計監査人を使いまして自主的に会計監査を受けている会社について、商法特例法上の会計監査人の監査を受けることによるメリットを享受させないとするのは適当ではないだろう、やはりそういう専門家の信頼できる監査を受けているということを考慮して特例法ではそれなりのメリットを与えているわけでございますので、それら自主的に受けているものについても同じようにメリットを与えるべきではないかということを考えたわけでございます。
山内(功)委員 はい、わかりました。
 総会の関係、お伺いしてきましたけれども、三月決算会社が大多数を占めているわけなんですね。こういう公開会社においては、定時総会の開催日が、三カ月以内に開いてくださいよというような法の趣旨があるものですから、六月の後半の特定の日に集中する傾向にあるわけです。そうすると、分散化とか、そういう企業の努力というか、そういうものを求めることもやはり法のあり方じゃないかという思いが私はあるものですから、きょういろいろと質問をさせていただきました。
 商法は国民の経済生活に直結する基本法だと思っております。この二、三年の間の各国会ごと、短期間に頻繁に改正が行われております。実際に混乱が生じることがないように、改正の趣旨の国民への周知徹底などについても適切に対応していただくことが必要だと思います。
 最後に、大臣、この点について何かお考えがあったらお伺いしたいと思います。
森山国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、ビジネスの世界というのは日々非常に大きく動いておりますので、これに必要な法律制度というものの改正というものは常に心がけていなければいけないということで、結果として最近の国会でたびたび改正をお願いしたということがございます。
 今後も、どんな事態にも対応できるように常に感覚を研ぎ澄ませて、新しい事態に対応するべく努力をしていきたいというふうに思いますが、法律の改正というのは、特に商法のような基本法につきましては、いろいろとかかわるところも多くございまして、きょう必要だからといってすぐあしたというわけにもまいりませんで、現実の経済を実際にやっていらっしゃる方からごらんになると、なかなか進まないというお気持ちもあろうかと思いますが、これからできるだけ敏速に、柔軟に、一生懸命に対応していきたいというふうに思っております。
山内(功)委員 どうもありがとうございました。
園田委員長 次回は、来る十九日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時四十九分散会


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